「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」

このエントリーをはてなブックマークに追加
1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここは
都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたり
そんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりするスレです


「まとめwiki」 ttp://www29.atwiki.jp/legends/


まとめ(途中まで) ttp://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html


避難所は↓だよ!規制中やスレが落ちている間はこっちでゆっくりしていようね!
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13199/
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:48:59.52 ID:qCEkQnIF0
よくある質問



 このスレってジャンプの某読みきりと関係あるの?



始めにこのスレを立てた>>1が何を考えて、スレを立てたのか
今となっては、その真相はわからない
ただ、ここに集まった者たちは、各自思い思いに妄想をぶちまけていき、今のこのスレの形となっていった


まぁ、結果としては関係あるかどうかとか、どうでもよくね?
ぶっちゃけ、ほぼ関係ない内容だし
3ソニータイマー ホワイトデーネタ(代理):2010/03/14(日) 12:50:18.63 ID:qCEkQnIF0
「ホワイトデーには3倍返しとか言うけど、0を何倍したって0にしかならない」
3月14日。今日はホワイトデーである。義理だろうがなんだろうがバレンタインにチョコを貰った男子がそれを3倍にして返すという
お菓子会社の陰b…ゲフンゲフン バレンタインの対のような日である。この日にチョコのお返しをしてめでたくカップルに…というパターン
もあるようだが…チョコを貰っていない僕には関係ない。ああ、妬ましい。
疾風「…ホント妬ましい。リア充死ね、爆発しろ」
ホワイトデーの今日に周囲とは比べ物にならないほどの嫉妬オーラを出している青年。妬見女疾風である。バレンタインにチョコを貰えなかった彼にとっては
ホワイトデーの男女は嫉妬の対象にしかならない。返すチョコも無いのでチョコを貰えたと思わしき人を手当たりしだい爆破していく。
疾風「あいつもチョコ貰ったっぽいな…妬ましい…リア充死ね、爆発しろ!」
その頃笛吹幽夜は…
忙しい、忙しい!チョコは1つしか貰ってないけど、妖怪の数は100以上!3倍返しどころじゃないよぉ…
幽夜「…座敷童の分、雪女の分、鴉天狗の分…これでやっと半分かぁ…」
幽夜はバレンタインのお返しを妖怪全員に対して作っていた。
その頃如月十四日は…
…結構皆チョコ貰ってるみたいだね。カップルとか大量発生するんだろうな。…阻止しないと!
十四日「この『バレンタインデー』の能力で!対象は…お菓子」
その日、十四日の近くで渡そうとしたお菓子は全て消えていたという…
その頃任天堂寺は…
堂寺「小奈美から美味しいチョコ貰ったからね…ちゃんとお返ししないと」
小奈美にあげるチョコを作っていた。
堂寺「確かこういうのって3倍返しにするものなんだっけ。…何を3倍にしよう」
どうやら結構悩んでいるようだった。
堂寺「…! そうだ! デザインのクオリティを3倍にしよう」
どんなチョコを作るのか決めたようだ。
堂寺「まずこうして簡単な形を作って…」
チョコレートを四角く固める堂寺
4ソニータイマー ホワイトデーネタ(代理):2010/03/14(日) 12:50:58.94 ID:qCEkQnIF0
堂寺「で、削って細かいところを整えて…」
削って模様を付けたり形を整えたりしている。
堂寺「…よし。一つ目の部品完成!」
どうやらいくつかに分けて作るようだ。
堂寺「じゃ、2つ目の部品に…」
堂寺はこんな動作を何回か繰り返していた。
そして…
堂寺「やった! 部品全部完成! 後はこれを組み立てれば…」
少し削ったり溶かしたりしながら部品を組み立てる堂寺。
堂寺「…できた!」
堂寺が作り上げたチョコはnintend○DSのような形をしていた。
堂寺「後はこれを渡しに…」
チョコを箱詰めにして、堂寺は小奈美の部屋に向かった。
堂寺「小奈美〜入るよ〜」
小奈美「何? お兄ちゃん」
堂寺「ほら、これ。バレンタインのお返し」
作ったチョコを渡す堂寺。
小奈美「ありがと! ねぇ、開けていい?」
堂寺「うん、いいよ」
堂寺がそういったので箱を開ける小奈美。その中身を見てとても驚いた。
小奈美「…何これ、DS? え? チョコ? …クオリティ高すぎでしょ!」
堂寺「いやさ、ホワイトでーには3倍返しにする物だって聞いたから」
小奈美「いやこれ3倍どころじゃないわよ。才能の無駄遣いにもほどがあるわ」
予想外のクオリティに驚愕したようだ。
5ソニータイマー ホワイトデーネタ(代理):2010/03/14(日) 12:51:42.82 ID:qCEkQnIF0
小奈美「これほど『食べるのがもったいない』といえるチョコを我が家で見たのは初めてよ」
堂寺「え? …食べてくれないの?」
小奈美「そんなことはないけど…。」
堂寺「食べてくれるんだね! それじゃあ、バイバイ」
小奈美の部屋から出て行こうとする堂寺。しかし…
小奈美「あ! ちょっと待って! …一緒に食べようよ、お兄ちゃん」
一緒に食べるように誘われる堂寺。
堂寺「え、いいの? それなら喜んで!」
とても嬉しそうな顔をする堂寺。
堂寺「そうだ! 光輝も呼んでくるよ」
小奈美「うん。それじゃあ、待ってるね!」
光輝を連れてきた堂寺。
堂寺「お待たせ!」
光輝「僕も食べていいの?」
小奈美「もちろんよ! それじゃあ、3等分しましょう。私が下画面の表側で、お兄ちゃん(堂寺)が上画面。で、お兄ちゃんが下画面の裏側でいいわね」
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:52:25.05 ID:4rfmHrAh0
しえーん
7ソニータイマー ホワイトデーネタ(代理):2010/03/14(日) 12:52:34.95 ID:qCEkQnIF0
チョコを3つに分ける小奈美。
堂寺「それじゃあ」
「「「いただきます!!!」」」
小奈美「…美味しい!」
光輝「へぇ。兄さんもっけっこうやるじゃん」
堂寺「何で上から目線なの!?」
仲良くチョコを食べる兄妹。そして、堂寺が小奈美の方を見ると、口にチョコがついていた。
堂寺(ん…? …!!!チョコついてる! ヤバイ、めっちゃ可愛い! 見たところ気づいてないとことかもうたまんない! 写メで保存しないと!)
デジカメを取り出し、小奈美を撮影する堂寺。
小奈美「…何やってんの?」
どうやらこちらに気づいたようだ。
堂寺「え? あ、いや、小奈美可愛いn…じゃなくて…口の周りにチョコついてるよ」
小奈美「あ、ありがと。…で、今何か言いかけなかった?」
堂寺「え? いや、何でもないよ! ちょっと小奈美可w…ゲフンゲフン」
小奈美「?」
光輝「自重しろよシスコン」
堂寺「何言ってんの!光輝」
小奈美「ああ、なるほど…」
そんなこんなで、ホワイトデーは幕を閉じるのであった。


              続く
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:53:23.92 ID:4rfmHrAh0
ホワイトデーのチョコ食べつつ支援
9公園同盟(代理):2010/03/14(日) 12:54:33.75 ID:qCEkQnIF0
「あーした天気になぁ〜れっ!!」
はしゃいだ掛け声と共に片足を大きく振り上げる幼い少女。
ミニスカートから覗く足は素肌をむき出しで、まだ冷たさの残る春先の空気の中では寒々しく映る。
真っ直ぐ伸ばされた健康的な素足から飛ばされた履き物は、ポーンと、綺麗なアーチ型の弧を描き。数十cm先の地面に落ちると何度か転がり、やがて横倒しの体勢で動きを止めた。
そこにあったのは、小学校の低学年らしき体格の少女には似つかわしくない、大人物の古びた下駄。少女の片足に残っているのもそれと対のものだ。
とても足のサイズに合ってるとは思えないそれを少女は片足飛びでも危なげなく操り、落ちていた下駄に足を通すと駆け足で背後のベンチに駆け戻った。
「残念、明日は曇りだって!」
そこには年若い男女の姿があった。一見すると若夫婦とその子供のようにも見える組み合わせだ。
「そーかそーか。そりゃあ残念だなー」
「そうねぇ、それは残念かもしれないわねぇ……。と言っても、特にやることもない私らにはどうでもいいことだけどねー」
10公園同盟(代理):2010/03/14(日) 12:55:17.97 ID:qCEkQnIF0
だらしなく四肢を投げ出してだらけていた男は、それでも帰ってきた少女を褒めるように髪の毛をグシャグシャにかき混ぜて迎え。顔の下半分を大きなマスクで覆い隠した女も、労る手付きで少女の頬を撫でている。傍目からも分かる溺愛振りだ。
だが二人の明らかに気のない返事に、少女はムッとした顔で頬を膨らませた。
「もう……。そんなことばっかり言ってると明日は大雨に変えちゃうんだからね?!」
「いやいや、曇りで充分だって!むしろ曇りがいいんだよ、うん」
「そうそう。雨に降られたらこうやって外で会えなくなっちゃうからね!」
途端にワタワタと両手を振り回して取り乱す大人達に少女も溜飲を下げ、吊り上げていた目尻からも険が消える。
「そうだよね……。大雨なんかになっちゃったら、お兄ちゃんやお姉ちゃん達とも会えなくなっちゃうんだもんね。そうなったらちょっと寂しいかな」
「そうだぞ〜!兄ちゃんはソラちゃんと会えなくなったら、ちょっとどころじゃなく寂しいけどな!!」
「そんなの私だって負けてないんだから!ソラちゃんの顔を見れない日は、寂し過ぎてご飯もマトモに喉を通らないんだからね!!」
11公園同盟(代理):2010/03/14(日) 12:55:59.56 ID:qCEkQnIF0
変な所で張り合う、駄目人間の代表格を立派に張れそうな大人二人。ソラと呼ばれた少女は苦笑するとあらかじめ空けられていたスペース――男と女の間にすっぽりと身を収め、男によって乱された髪を直した。

「ケッ、都市伝説の口避け女なくせして良く言うぜ。一生飯なんか食わなくてもどうせお前らは平気なんだろ?」
「差別反対〜!都市伝説にだって人権があるんです〜!!」
「そういう生意気なセリフは住民票を確保してから言えや」
「都市伝説差別反対!反対〜!!私達にだって人格や思想はあるんだからね!!」
放っとけばいつまでも続きそうな他愛ない口論。いつものじゃれあいの延長だと知ってても、ソラは溜め息を吐かずにはいられなかった。
「もう!そんなんじゃ二人とも、パパとママとまるで同じじゃない。……パパ達もそうやって顔を会わせれば口喧嘩しかしないんだから……」
小声に付け足された呟きにハッとしたように彼らは息を飲み、ソラの頭上で視線を交わすと頷き合った。その間、実際の時間に換算するとコンマ一秒以下の出来事。
「ごめんな、ソラちゃん。嫌な思いさせて……」
「お姉ちゃんもお兄ちゃんも本当はちゃんと仲良しなのよ?ただちょっとソラちゃんを好き過ぎてたまに暴走しちゃうだけで……」
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:56:33.62 ID:4rfmHrAh0
しえしえ
13公園同盟(代理):2010/03/14(日) 12:57:24.38 ID:qCEkQnIF0
ヒートアップしていた声音をトーンダウンさせ、左右から優しい笑みが注がれる。
「本気で喧嘩してるわけじゃないけど、ソラちゃんが嫌だと思ったらいつでも止めてくれていいんだからな?」
「お姉ちゃん達も気を付けるつもりだけど、まだちょっと修行が足りないのよ」
一般に猫撫で声と言い表されるその場を取り繕う為だけの表面的なものとは違い、心から申し訳ないと思っていることを察せられる二人の声音は真摯で。左右からソラの頬に触れてくる手付きもおずおずとしたもので。
普段から向けられる彼らの嘘偽りない優しさを知っているだけに、ソラは知らず強ばらせていた表情を自然と和らげていた。
「お兄ちゃんもお姉ちゃんも本当にしょうがないなぁ……」
「分かってくれたか!」
「だからソラちゃんが好きなのよぉ!」
感極まり左右から伸ばされてきた腕がそれぞれ、遠慮の欠片もなくソラを強く抱き締めてきて。息苦しくすらあるそれに少女は文句の声を上げつつ、半ば諦めと至福の心地で受け入れたのだった。



続く
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:58:11.03 ID:4rfmHrAh0
しぇーん
 今日は3月14日だ
 ホワイトデーだ
 学校町では、色々と事件が起きている最中ではある訳だが
 この日くらいは、ちょっとはイチャつきたいと言うか夢見てもいいだろう、彼女持ちとして


「ただいま」
「お帰り、マステマ。どうだった?」
「駄目だ。空振りだな。もう少し、相手の情報が把握できりゃあ、もっと楽なんだが」

 あの犬メイドと協力体制をとる事になり、情報を集めるようになって数日
 今の所、有力な情報は手に入っていない
 とりあえず、別の誘拐犯と言うか犯罪者は見付かったりしているので、その辺りは軽くお仕置きしたり通報したりしておいてはいるが

「確かに、もうちょっと範囲を絞れればいいんだけど」

 んー、と考え込んでいるエリカ
 彼女もあちこち調べ回っているのだろう
 …それだけではなく、悪魔の囁きやコーク・ロアの件も、エリカは調べているのだ
 疲労が溜まるに決まっている

「少しは休めよ?どっちの件に関しても、動いてるのはお前だけじゃないんだ」
「わかってる。でも、ちょっとでも多く情報が欲しいのよ」

 犬メイドと協力する事になった件に関しては、人質の命が心配だし
 もう一方に関しては……翼が狙われているらしい事が心配なのだろう
 どちらも、急いで解決する事に越したことはない
 だが

「…だからって、お前が倒れたら元も子もないだろうがよ」


 ぎゅう、と
 ソファーに座っていたエリカの体を、背後から抱きしめる
 彼女なら大丈夫、と思う反面、やはり、何かあったらと思うと心配だ

 思い出すのは血塗れの光景
 ちらり、彼女の、しっかりと着込んで一切の露出を許さない胸元に視線をやる

 くすり、エリカは小さく笑ってきた

「平気平気。私、結構丈夫なのよ?」


 わかってる
 わかってるよ
 …だからこそ、不安なんだよ
 それをいい事に、無茶をしてしまうから


 ぎゅう、と抱きしめる力を強める
 無茶をする彼女を止めるのは…結局、自分の役目なのだ
 それを、自覚する

「せめて、今日くらいは休め……ほら」
「あら?」

 とんっ、と
 その手に、キャンディが入った瓶を渡してやると
 くすり、エリカは微笑んできた

「そうね、今日はホワイトデーだったわね」
「あぁ…今日くらいは、せめて、残りの時間だけでもゆっくりしてくれよ」
「………そうね」

 たまにはね、とエリカは笑い
 そっと、背後から抱きついてきているマステマを見あげ、その顔に両手を伸ばして


 静かに、甘く、マステマに口付けたのだった




fin
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:00:01.76 ID:4rfmHrAh0
支援
19恐怖のサンタ ◇c1fBPhtoT6(代理):2010/03/14(日) 13:00:24.95 ID:qCEkQnIF0
 この世に存在する物には、必ずそれと対になる物も同時に存在する。
 光があれば、闇が。
 男がいれば、女が。
 バレンタインデーがあれば、ホワイトデーが。

「ふっふっふー」

 とあるビルの屋上で、マゾは眼下を見下ろしながらほくそ笑んだ。
 今日はホワイトデーである。
 バレンタインデーに送られた分、相手に尽くす日だと、マゾは最近知った。
 テレビでそんな事を言っていたのだ。

 しかし、テレビは同時に、彼女に誤解ももたらした。
 最近「友チョコ」なるものが増えているせいか、男→女の図式ではなく、「バレンタインデーに貰った人がお返しをする」日として、そのテレビは特集を組んでしまっていた。
 マゾは、バレンタインデーに三人にプレゼントを受け取っている。
 ただしプレゼントといっても、殴る、蹴る、燃やすなどのマゾにとっての「プレゼント」である。
 そしてそれはつまり、「マゾは三人にお返しをする権利がある」と言う事になる。

「とうっ!」

 赤いワンピースをはためかせ、ビルの屋上からマゾが飛び降りる。
 目指すは、通りを歩く二つの影。

「待ってて下さいね、愛しの人よぉぉぉぉおおおおおおおおおおおっ!!」

 ドップラー効果を伴いながら、マゾは落ちていく。
 眼前の影二つは、まだその存在に気づいてはいない。
 いや、気付いていながら無視をしているのかもしれなかった。
20恐怖のサンタ ◇c1fBPhtoT6(代理):2010/03/14(日) 13:01:37.51 ID:qCEkQnIF0
 自由落下したマゾは、二人の目の前へと着地する。

「こんにちは、直希様に翼様」

 眼前の二人に、マゾはにっこりとほほ笑んだ。
 
「――――誠にしろ先程の彼にしろ、最近は男同士が流行っているのかい?」
「違う。それは断じて違う」

 しかし、男二人は歩くスピードを全く緩めず、マゾの横を通り過ぎた。
 一瞬きょとんとして、マゾは二人の後を追った。
 とてとてと二人の横を歩きながら、マゾが二人へと話しかける。

「翼様、翼様。今日はホワイトデーですよ、ホワイトデー。プレゼント倍返しの日ですよ」
「大体、あれはイレギュラーだろ」
「……ふむ、しかし君の周囲にはそういった趣向の持ち主が多いような気がするのは、僕の気のせいかな」
「直希様、ほら、今日はホワイトデーですよ。私もプレゼントを用意してきてですね」
「俺の周囲を基準にすんな。それこそイレギュラーだらけだっての」
「僕の姉は、そう思っていないようだが」
「あれー? 何だか無視されてるような気がしますよー? あれー?」

 マゾを無視して、二人はただ、歩みを進める。
 二人が折れるか、マゾが諦めるか、はたまた今日という日が終わるまで、それは続く。 

【終】
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:02:13.32 ID:4rfmHrAh0
支援!
22急に電波が来た  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/14(日) 13:02:19.59 ID:qCEkQnIF0
 ぎしゃー
 てちてちふみふみてちてちふみふみ

 最近、子ライオンは、うつ伏せになって力尽きている山田の背中に乗って、てちてち行ったり来たりして遊ぶ事を覚えた
 もしかしたら、子ライオン的には遊んでいるのではなく別の意図があるのかもしれないが、少なくとも山田にはそれは伝わっていない
 とりあえず、この背中に乗られての行ったり来たりが微妙にマッサージ効果を伴っている為、山田は子ライオンの好きにやらせていた
 …たまに、背中に乗ったまま寝られると、起き上がれなくて困るのだが

『ッハ、情ケネェナァ?ぺっとニ足蹴ニサレテテ抵抗ナシカヨ』
「うるせぇ」

 聞こえてきたデビ田の声に、そう答える山田
 いいじゃないか
 たまに、テレビで飼い主の背中に乗ってマッサージしてくる犬とか猫とか見るし

『知ッテルカァ?動物ガコウヤッテ飼イ主ノ上ニ乗ッテキテルノハ、飼イ主見下シテル証拠ナンダゼェ?』
「元からこいつ偉そうだし」
『身モ蓋モネェヨッ!?』

 デビ田の突っ込みの言葉も無視し、力尽きている山田
 かーなーり、疲労が溜まっているようである
 そろそろ、休みをとった方が良いのではないだろうか
 まぁ、仕事の入り具合にもよるだろうが

 ……しゃぎゃぎゃー
 てちてちふみふみ
23急に電波が来た  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/14(日) 13:03:05.38 ID:qCEkQnIF0

 力尽きている山田の背中の上をてちてち力強く踏みしめ続けている子ライオン
 その、子ライオンの、都市伝説としての、気配に

(…アー、ヨリニヨッテ、コイツガココニ居ヤガッタカヨ。別ニコッチハ、我主トノ関ワリナイカラばれネェダロウガ……ヤッベェナァ。今ノオレサマノ現状ガ我主ニばれタラ、オレサマ消サレルヨナァ…)

 …そんな事を考える、デビ田の思考は
 とり憑いている対象である山田にすら、届いていない

(…オレサマ消サレル事ニナッタラ、コノへたれモ巻キ込マレル事確実ダナ。サァテ、本当ニドウシタモンカ)

 どうせ、いつかは消える身だ
 都市伝説として、悪魔の囁きの一体としてばら撒かれただけに過ぎない存在である自分は、自我があるとは言え、あまりにも脆く弱い存在だ
 たまたま、とり憑いた対象が異様な丈夫さを持っている為、とり憑いた対象が死亡する事によって一緒に消える事はないが………死ぬ程のダメージを食らっても生きているせいで、そのダメージが自分にも返ってくるのはさておき
 だとしても、他の要因で、自分はいつ消えるかわからない
 だが

(……消エタクネェナァ)

 そんな事を、何時の間にか考えるようになっていた、事実に
 一番驚いていたのは、デビ田自身だった



続くかどうかはわからない
24恐怖のサンタ ◇c1fBPhtoT6(代理):2010/03/14(日) 13:03:58.36 ID:qCEkQnIF0
 不幸と言う言葉について、時々考える事がある。
 ここ最近の俺は不幸だ。
 思わず誰かの着替えを覗いてしまい、良子に制裁されたり。
 女性とぶつかって押し倒すように転んで、良子に制裁されたり。
 思わず仕事の最中に吹き飛ばされた先がランジェリーショップで、良子に制裁されたり。
 主に女性関係において、俺の運が良いとは到底思えない。

 しかしかといって、今の実情を鑑みると女性関係自体の運がそこまで悪いと思えないのも事実だ。
 恋人と同棲している上、マゾや沙希と言った女性二人と同居している現状。
 誰かに愚痴をこぼしても、「のろけか」と呆れられる始末である。

 どうしてこうなったのだろう。
 人に羨まれるはずの状況で、何故俺は苦しまなければならないのだろう。

 そこで、俺なりに考えて見た。
 不幸と言っても、結局は俺の行動が原因である。
 ただ、俺の行動のその元は偶然である。
 誰もわざと着替えを覗こうなんて思ってないし、ましてや吹き飛ばされた先なんてどう予測出来ようか。
 しかし、結果としてその先で災難に遭っているのは事実である。
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:04:19.02 ID:4rfmHrAh0
しええええええん
26恐怖のサンタ ◇c1fBPhtoT6(代理):2010/03/14(日) 13:04:49.13 ID:qCEkQnIF0
 誰かが俺の身体を乗っ取ってるんじゃないか、とすら最近は疑い始めた。
 しかし、誰がそんな事を出来るのだろうか。
 俺の身体は俺の物である。
 「俺」以外の誰かに操る事なんて出来るはずがない。

 ――――つまり

「お前が全ての原因かデビ田ぁぁあああああああああっ!!」
「ハァ? 何言ッテンダ」
「お前俺から派生してるんだろ。俺の身体動かせそうな奴ってお前以外にいないじゃん。ほら、お前以外に犯人候補いないじゃん!」
「……意味分カンネェゾ、オイ」
「くっそ、人の不幸を見て喜んでたんだなこん畜生っ!」
「別ニオレサマハ何モ……ッテ、チョット待テ、テメェ! 何壁ニ向カッテ頭打チ付ケテンダ。テメェト違ッテオレサマハ痛ミヲ感ジンダヨッ!」
「うるさい。お前のせいで、お前のせいで……」
「チョッ、イテェッ! 冷静ニナレ、オイッ。八ツ当タリジャネェカ、テメェッ!」

 壁越しに伝わる音がうるさいと文句を言われるのは、それから数分後の事である。


【終】
27少し昔のお話 ◇W5H6Y5Rl3M(代理):2010/03/14(日) 13:05:31.92 ID:qCEkQnIF0
ゆったりとしたソファに座り、静かに湯飲みを傾ける和服の女
逢瀬万華(おうせ・ばんか)という名の女は、『合わせ鏡に自分の死に顔が見える』という都市伝説の契約者
その正面に相対する黒服は、そんな彼女を警戒心たっぷりの顔で見据える黒服の幹部
「どういう風の吹き回しだね? 今まで我々が幾度となく『組織』へと勧誘し続けていたというのに、全く靡かなかった君が」
「あらあらうふふ、益体も無い冗談ぶっこいていやがりましたら死ぬまでぶっ殺し続けますわよ?」
これ以上ないほど上品な笑顔に鈴を転がすような可愛らしい声で、ドブの底に沈めたような言葉を吐く和服の女
「あなた方『組織』では首を縦に振らない人間に刺客を送り続ける事を『勧誘』と言うのですか? 冗談はその貧相で辛気臭いツラだけにしてくださいな」
「それは勧誘の後の事だ。我々『組織』と相容れないのであれば、それは敵対するという事だからな」
幹部の男は警戒心ありありの顔に怒りを混ぜた顔で和服少女を睨み付ける
「端的に言おうか……何が目的だ、貴様」
「別に何もありませんわ。あなた方の送りつけてくる刺客を返り討ちにするのが面倒になってきただけ。決して鮫島……いえ何でもないですわよ?」
幹部の男は内心で思い切り歯軋りをする
この女は彼の派閥が抱える『鮫島事件』という都市伝説の能力を知っている
更には、実在の空間に分身を生み出さずとも無限に増える事ができる能力を持つ彼女を邪魔者として認識し、排除しようとしている事も
その上で我々にそれを知らしめた上で自分を高く買わせた上に、内側にいる事で監視の目を強め、更にはそう簡単には排除できないようにしようとしているのだ
穏健派の誰かが入れ知恵したかもしれないが、それ以上に彼女自身が悪巧み行動した可能性が非常に高い
そんな彼女は湯飲みを置き、袖で口元を隠しながらころころと笑う
「ご心配なさらずとも、あなた方の派閥争いには興味は全くありませんわよ? ただ……私の存命のうちは、この町で面倒な事を引き起こして欲しくないだけ」
可憐なキョウチクトウの花のような笑顔を浮かべ、和服の女はそう告げる
「無限に増える私で襲撃を仕掛けて『組織』を丸ごと叩き潰そうだなんて考えないだけ、私も考えが丸くなったと思いません?」
28少し昔のお話 ◇W5H6Y5Rl3M(代理):2010/03/14(日) 13:06:16.00 ID:qCEkQnIF0
無論、たかだか都市伝説能力者が一人、戦うとなればいくらでも対処できる
だが派閥争いの火種が燻る現状では、それが得策ではない事を誰もが理解している
倒せはするだろうが一筋縄ではいかないのは目に見えており、その隙に派閥の力を殺がれる策を打たれるのは明らかである
「それで……『組織』に所属する上で、何か条件や希望のようなものはあるのかね?」
「あらあら、私はそんなに欲張りに見えます? でも折角そのような言葉を提示してくれるのですもの、お受けしないと折角の好意に泥をぶちまける事になりますわね」
この女狐が、という言葉を飲み込んで辛うじて真顔を保つ幹部
「それでしたら……そうね、担当してもらう子は私が選んでもいいかしら? 折角ですもの、仲良くできる子を選びたいじゃない」
その言葉に、幹部の男は考え込む
自らの派閥の黒服を担当に付けた場合、内側で何をされるか判ったものではない
かといって対立派閥に押し付けたとなると、『鮫島事件』に対する切り札をみすみすくれてやる事になる
上手く飼い殺せる者はいただろうかと思案を巡らせていたところで
「それではお散歩がてら、担当になってもらう子を見繕いに行かせてもらいますわね」
「ま、待て! 勝手に施設の中を歩き回られては!」
「見られて困るようなものがありますの? これから仲良くご一緒に働く仲間になりますのに」
「担当選びにしても、手の空いてない者を気に入られても困る! というか少しは大人しくだな!?」
こうして彼女が『組織』に所属し、そしていなくなるまでの数年間、強硬派は暴走は封じられる事となるのであった
29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:06:50.59 ID:4rfmHrAh0
C
30黒服H 少し昔の話  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/14(日) 13:06:59.85 ID:qCEkQnIF0
 それは、6年程前のこと
 黒服H-No.360と呼ばれる存在が、人間ではなくなってから、5年ほど経ち…ようやく、H-No.0とG-No.1によって、その身柄を確保された頃の事


「…すげぇな。体の痛みがほとんどねぇ」

 ちゃぷり
 液体に全身を浸していたH-No.360は、意識を取り戻し、ゆっくりと上半身を起こした
 ぽたり、彼が浸かっていた薬品の雫が、髪から零れ落ちる

 この薬品に浸かる前まで…この薬品を投薬されるまで、黒服と化してしまってからずっと感じていた体の内部の痛みが、完全に消えている
 H-No.360の言葉に、やや疲れた様子のH-No.0が答える

「都市伝説という存在として、内部から崩れてきておった体を固定させたからの…しかし、薬の効果はその内切れる。そうなると、また今回のように薬を投薬せねばならぬ」
「…化け物になっちまった上に、俺は薬なしじゃ生きていけない体になったってか?」

 皮肉気に……そして、憎悪すら込めて、H-No.0に視線をやって、そう言ったH-No.360
 彼の言葉に、H-N0.0は申し訳無さそうな表情を浮かべて、答える

「…すまぬ……何故、お前の体がそのように内側から崩れていってしまうのか、妾達には、まだ理由がわからぬのじゃ。それも、これから調べねばならぬ」
「そうかい」

 まぁ、仕方ないか
 H-No.360はざぱり、薬品で満たされた、そのプールのような場所から出る
 置かれていたタオルで、適当に体を拭き始める

「その内部から崩れていく状態がなんとかなりゃあ、薬ともおさらば、って事か」
「うむ。じゃが、この薬は劇薬と言っても良い代物じゃからの…なるべく早く、これに頼らぬ状態になった方が良いじゃろうな」

 原因の究明を急ごう、と言ってきたH-No.0
31黒服H 少し昔の話  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/14(日) 13:07:42.04 ID:qCEkQnIF0
 確かに、その通りなのだろうが…H-No.360からしてみれば、今日はもう、体を調べられるのはこりごりだ
 H-No.0が、本当にこちらの事を心配してきているのはわかっているが…彼からして見れば、この少女のような姿をした相手もまた、憎むべき相手の一人でしかない
 なるべく、体を弄りまわされたくないのも、また事実

「それよりも、お嬢さんよ。あのツギハギ野郎、さっさと治してやった方がいいんじゃねぇのか?あいつ、あの状態じゃ身動きひとつとれねぇだろ?」

 …まぁ、あそこまでバラバラにしてやったのは、自分だが
 H-No.360の言葉に、H-No.0は考え込んだ様子で……

「…わかった。妾は、ジェラルドの体を縫い直してくる。お前は、ここで休んでおると良い。ここには、タチの悪い連中も居るでの。なるべく、部屋の外には出ん方が良いじゃろ」
「あぁ、わかった」

 では、と部屋を後にするH-No.0
 …縫えば治るのか、あれ
 多分、ツギハギ増えるんだろうなぁ、と他人事のようにH-No.360は考えた

「………まぁ、いいさ。あのお嬢さんも、あのツギハギ野郎も……存分に、利用させてもらうとするか」

 己の、復讐の為に
 H-No.360は一人残されたその部屋で、暗く、暗く、笑った



 この日から
 彼の、本格的な復讐は、ゆっくりと始まっていたのだ



to be … ?
32笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:08:23.23 ID:qCEkQnIF0
【上田明也の探偵倶楽部】

「こんにちわ皆さん、上田明也です。
 探偵兼殺人鬼なんて因果な商売やっていると人の死に立ち会う機会が多いんですよ。
 俺が殺す相手はみんな死ぬときはそれはそれは間抜けな顔をして死んでいきます。
 なんでなんでしょうね?
 死ぬって解ってないんじゃないですかね?
 俺はどうにも最悪で最悪な悪人なんですが常に死んだらどうなるんだろうって考えて居るんですよ。
 まあろくな死に方はしないと思いますが……そうですね。
 ちょいと贅沢を言うなら出会った物全てに感謝しながら死にたいですね。
 だって生きている事ってそれだけで掛け替えのない奇跡だとおもいません?
 明日にでも死ぬかもしれない自分が今ここで生きている。
 さいっこうですよ、生命賛歌ですよ。
 とまあ思わされたお話です。それではどうぞ。」


【上田明也の探偵倶楽部13〜Viva la Vida〜】
33笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:09:29.29 ID:qCEkQnIF0
「と言うわけでやってきましたアメリカはニューヨーク!
 時刻は午前の十時です。」
学校町に早春の風が吹き抜ける頃。
俺達はアメリカに到着していた。
「うわー……、外国の人が一杯居るよおにいちゃん!」
「違うなあ穀雨ちゃん。俺達が外国人なんだ。」
「でもわたしは日本人だよ?」
「はっはっは、ここはアメリカだぜ?アメリカなら日本人は外国人さ。」
「そっか……。」
首をかしげる穀雨。
あまり納得できていないようだ。
「さて、迎えの人間が来ている筈なんだがなあ?」
穀雨をおんぶするとそこら辺を歩き回る。
俺に依頼をした、とある権力者によるとここに迎えの人間が来ている筈である。
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:09:35.12 ID:4rfmHrAh0
支援!!
35笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:10:12.08 ID:qCEkQnIF0
「こんにちわ、笛吹様でしょうか?私、今回FBIから派遣されましたユナ・オーエンと申します。」
上田がクルリと後ろを振り返ると綺麗な金髪を短く切った黒服の女性が立っていた。
ちょっと怖い印象の人だ。
「黒服……組織じゃねえよな?」
「どうなさったのですか?」
女性は日本語を一生懸命勉強したのだろうが、英語で話した方が楽だろう。
『こんにちわ。なんでもありませんよ。会話は英語で大丈夫です。』
「穀雨ちゃんもちゃんと挨拶しなさい。」
そう考えて俺は英語で返事をした。
そして穀雨にも挨拶を促す。
「こんにちわ!」
穀雨の可愛らしい様子を見て女性の表情がほころんだ。
意外と可愛い物好きなのかもしれない。
もしかして同族なのかもしれない。
36笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:10:57.00 ID:qCEkQnIF0
「英語で話せるなら楽だとは思いますが……。大分なまっている物ですから。」
『構いませんよ。』
「それでは……。」
女性はコホンと咳払いをする。
『日本の方だと聞いていてまったがずいぶん流暢な英語だがね。
 何処で習ったんだてか?』
やべぇ、聞き取り辛い………。
少々焦った。
黒服の女性の話す英語は典型的なニューヨーク訛りだったのだ。
『子供の時に少しイギリスに留学したことが有るんですよ。』
『そうだったんだてか。
 それなら通訳は必要なさそうだみゃあ。
 ところでそちらの女の子はどちら様だてか?』
女性は俺が背中に負ぶっている穀雨を見て尋ねる。
『ああ、娘です。』
アメリカ旅行中はこれで通すことにした。
『子連れ狼けゃあ?』
『あれ、意外と時代劇マニア?』
『水戸黄門と遠山の金さんが大好きだがね。』
先程までの意見は訂正しよう、意外と接しやすい人だ。
37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:11:06.78 ID:4rfmHrAh0
支援
38笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:11:39.88 ID:qCEkQnIF0
「お兄ちゃん、穀雨は英語わかんないよー!」
「ああ、ごめんごめん穀雨ちゃん。」
穀雨が頬を膨らませている。
「そういえば穀雨ちゃんって肉まん食べたいって言ってたよね?」
「うん!」
怒った顔が一瞬でパァッと輝く。
子供は単純だ。
其処が良いんだよ。
「よし、それじゃあこのお姉ちゃんに連れて行ってもらおうか。」
「お姉ちゃん連れて行ってくれるの?」
「ちゃんとお願いしますをするんだぞ。飛行機で教えただろ?」
『おねえちゃん、NYのほくとしんけんにつれていってください。』
穀雨も上田に教えて貰ったとおりに拙いながらも英語を話す。
「あら、穀雨さんは英語がお上手なんですね。
 お父様に教えて貰ったのですか?」
「お父さんじゃなくてお兄ちゃんだよ!穀雨にお父さんは居ないもん!」
女性が困惑した顔を上田に向ける。
『色々込み入った事情がございましてですね……。まあ師匠と弟子というかなんというか……。』
『若いのにずいぶん苦労なさっとるようだがね………。』
くそっ、可哀想な人を見るような目で俺を見るな!
いや幼い子に兄と呼ばれて喜んでいるロリコンと思われるよりはまだマシではあるのだがそれでもだ!
39笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:12:24.54 ID:qCEkQnIF0
『ま、まあとりあえず行きましょうよ。
 確か今日はまだ依頼の日ではないんですよね?』
とりあえず話題をすり替えてみる。
『そうだぎゃあ。明日だがね。』
「北斗神軒行きたいー!」
「穀雨さん、北斗神軒がどんな店かは知っていますよね……?」
「ああ、その子世紀末レベルの麻婆豆腐を簡単に平らげますよ。」
「――――――えぇ!?数多のニューヨーカーを卒倒させたあの店の世紀末レベルを!?」
「だから大丈夫です。俺の真似して辛い物食べ始めたら耐性がついたみたいで……。」
『東洋の神秘だぎゃあ………。
 車は駐車場に停めてあるのでついて来て下しゃあ。』
「解りました。行くよ穀雨。」
「はーい!」
ユナの先導にしたがって俺達は駐車場に向かった。
駐車場には立派なメルセデス・ベンツのSクラスが停めてあった。
「それではNY観光にご案内いたします。」
そう言うとユナは車を発進させた。
40笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:13:08.82 ID:qCEkQnIF0
「とりあえずお昼には少し早い時間ですが北斗神軒にもう行きますか?」
「はい、機内食も悪くはなかったんですが……。
 この子が食べ盛りなもので……。」
「麻婆豆腐!麻婆豆腐!」
穀雨がわめいている。
まったく可愛い奴め、なで回すぞこの野郎。
「解りました。それでは行きましょう。」
道路は平日の昼間の為かわりと空いている。
それ程苦労もなく北斗神軒に到着しそうだ。
「ところでユナさん。」
「どうしたんです?」
「今日はお仕事じゃないんですか?」
「休暇扱いになっています。」
「きゅうかってなぁに?」
「お休みのことだよ。」
「お兄ちゃんはお仕事で来たのにユナさんはお休みなの?」
「はっはっは、穀雨ちゃん、あまり面倒なことは聞いてはいけない。」
「むにゅー……。」
あくまで“休暇”扱いなのだ。
都市伝説のことが公になってはいけない。
それはアメリカでも同じらしい。
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:13:16.23 ID:4rfmHrAh0
ネタ書きつつ支援
42笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:13:52.84 ID:qCEkQnIF0
俺の親愛なる友人サンジェルマン伯爵によれば都市伝説は広く世に知られるべきだという。
それによって人間は都市伝説に恐怖し、都市伝説は人間により存在を保証される。
正直人間に得があるのか解らない関係性だが人間には物凄いメリットが生まれるそうだ。
俺は興味がないが彼の思想に賛同する人間も多いらしい。
俺みたいにこいつの保護下で活動している契約者や都市伝説も沢山いるという。
「つきましたよ、北斗神軒ニューヨーク支店です。」
北斗神軒と書いているがその上にはおもいっきり『ドラゴンボール』と書いてあった。
どちらかにして欲しい。
「わぁい!」
穀雨が走り始める。
「おっと、急に走ると危ないよ。」
すかさず彼女を抱え上げるとユナさんと店に入った。
『へい、いらっしゃい!あちらのテーブル席にどうぞ!』
北斗神軒はNYでも満員だった。
外国人にもこの味がわかるとは思ってなかったが意外とそれは誤りだったのかもしれない。
43笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:14:35.81 ID:qCEkQnIF0
『ご注文は如何いたしますか?』
チャイナドレスを着たお姉さんがやってきた。
『えっと、炒飯セットで』
ユナさんは普通のメニューを頼んでいる。
残念だ。
『麻婆豆腐スーパーサイヤ人10バージョン、鷹の爪マシマシで。』
『――――――――――――!?』
店員さんにドン引かれた。
貴様の店のメニューじゃろうが。
「激辛ラーメン聖帝レベル!お兄ちゃん、鷹の爪入れても……?」
「駄目。お前にはまだ早い。」
「たべたい〜!」
「仕方ないなあ………。駄目!」
「えー!」
皆さんご存じだろうか?子供を甘やかして得になることは絶対にない。
44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:15:18.61 ID:4rfmHrAh0
支援!
45笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:15:33.40 ID:qCEkQnIF0
『激辛ラーメン聖帝レベル』
穀雨の代わりに俺が注文を言った。
『以上で注文はよろしいでしょうか?』
『はい。』
店員のお姉さんは厨房に向けて今のメニューを伝える。
その瞬間、店内にどよめきが広がった。
『スーパーサイヤ人10だってよ?』
『あの日本人か?大方30分以内に完食できたら無料ってのに釣られたんだろ?』
『狂ってやがる!』
『どうせ何も知らない馬鹿だろう。』
『そんなことよりチェリーパイ喰おうぜ!』
『欧米か!』
『ちょっと見に行こうぜ!』
麻婆豆腐が俺のテーブルに着く頃にはちょっとした人だかりが出来ていた。
46笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:16:14.89 ID:qCEkQnIF0
「こりゃあ二人に迷惑かけちまうなあ。俺だけ別の席用意して貰うよ。」
「……狙ってたんじゃないんですか?」
「いやまあね。」
『店長、別の席用意してくれ。』
俺がそう言うと日本の北斗神軒の店長にそっくりな男性――日本の店長の弟らしい―――が別の席を用意してくれた。
『麻婆豆腐スーパーサイヤ人10バージョンになります。』
店長自らが麻婆豆腐を運んでくる。
『せいぜいがんばれよ!』
『期待しないで見ているぜ!』
観客のヤジが五月蠅いがまあ良い。
喰い尽くしてくれる。
俺はレンゲを煮えたぎる麻婆の中に突っ込むと勢いよくかき混ぜ始めた。
実は俺は猫舌なのだ。
辛いのは大好きだが熱い物はまったく喰えない。
俺がしばらくかき混ぜ作業を続けているとどんどんヤジが増え始めた。
『一口もくわねえとはどういうことだ?』
『びびってんのか!』
『それでもサムライか!』
『ちょっと待ってろお前ら!』
まったく、五月蠅い奴らめ。
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:16:35.57 ID:4rfmHrAh0
しえん
48笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:16:57.31 ID:qCEkQnIF0
『店長、ラーメンどんぶりをもって来てくれないか?』
『わかったが……何に使うんだ?』
『いや、観客にサービスでもしようかなあと。』
しばらくすると店長は巨大なラーメンどんぶりを持ってきた。
『ありがとよ。』
俺は店長に礼を言うとその中に激辛麻婆豆腐を流し込む。
煮えたぎる溶岩の如き唐辛子の鮮烈な赤、山の中を流れる清流の如き豆腐の白、
さらに絶妙にくずされて肉汁を迸らせる挽肉。
どれをとっても完璧な麻婆豆腐だ。
ここで始めて、レンゲにそれをすくい取り、貪る。
「――――――旨い!地獄のように、美味い!」
俺はおもわず叫んでいた。
口の中では熱を帯びた細胞の一つ一つが苦しみ蠢いている。
それは昔やったキャンプファイヤーの火の粉の如くパチパチと弾ける刺激。
これだ。
これが生きている実感という物だ。
人間という物の確かな証明だ。
こんな、料理の味付け程度のことに俺の心は確かに躍っている。
嗚呼駄目だ。
もう止められない。
溢れ出る感情のままに俺は麻婆豆腐を飲み込み始めていた。
49笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:17:39.24 ID:qCEkQnIF0
熱い。
溶けた黄金を直接身体の中に流し込まれているようだ。
観客が何か言っているがそんなことは関係無い。
俺の中に流れ込む味の黄金は今確かに至福という題名の彫刻を形作っているのだ。
俺が麻婆なのだろうか?
麻婆が俺なのだろうか?
もはやその問にすら意味は無い。
全身を支配する激辛の感覚だけが宇宙に満ちる。
これが中華4000年の歴史。
否、歴史の向こう側だ。
人々の、世界中のありとあらゆる人々の帰るべき原初の海。
“これ”が“それ”だ。
もう一度言おう、“これ”が“それ”だ。
50笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:18:32.89 ID:qCEkQnIF0
熱い。
胃袋で止まったと思った辛さが今度は真逆の方向に駆け上ってくる。
それは脳髄へと到達してそのまま肉体を突き破る。
もはやそれは熱いなどと言う言葉でも形容しがたいのかもしれない。
だが勿論、痛いなんていう言葉であらわすのはあまりに月並みであることもまた事実だ。
だから俺はこう言いたい。
熱い。
この熱さは物理的な物では無い。
激辛にかけた男達の志、時間、技術、その全てを含めて熱いのだ。
真っ赤に燃え上がる炎の熱さではない。
全てを完全にエネルギーへと変換して静かに燃える蒼い炎。
そういう辛さだ。
発散する辛さではなく内側に内側に収縮していく辛さ。
それは自己の内面と対峙する時にも似た暗く、しかし嫌ではない気分を俺に与える。
そうだ、これは俺に喰われることで始めて完成するのだ。
作るだけではなく、喰うことによって料理とは始めて完成するのだ。
俺の為に麻婆は居るし、麻婆の為に俺は居る。
そう、そうなのだ。
すべてが………一つ、なのだ。
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:19:02.63 ID:4rfmHrAh0
支援」
52笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/14(日) 13:19:15.87 ID:qCEkQnIF0
しかしそんな至福の時間にも終わりは来る。
麻婆は無くなってしまっていたのだ。
人々の歓声が聞こえる。
ああ、天国の門がそこまで迫っているようだ。
俺のような人間の為にこそああいう場所は有るに違いない。
惜しみない拍手の雨は俺を激しく包み込む。
だがこの中の誰が知っているだろうか?
俺は苦行に耐えたのではないことを。
むしろ、静かな感動に打ち震えていたことを。
『あんた、名前はなんて言うんだ!』
『笛吹丁、通りすがりの探偵さ。』
それだけ答えると、俺はゆっくりと崩れ落ちた。
遠くから鐘の音が聞こえる。
世界はこんなにも美しい。
【上田明也の探偵倶楽部13〜Viva la Vida〜】
 それは、彼らにとって一種のコミュニケーションのようなものである
 バレンタインの時のように、何かしら作って渡しあう
 それは、高校三年間でずっと続いていたことであり、三年ぶりに行われた事でもある

「こっちは俺から。で、こっちは辰也と恵からお前らにだってよ」
「おや、あの二人からもか」
「ありがとうな。誠、辰也達にも伝えておいてくれるか?」
「あぁ、もちろん」

 にんまり笑って、誠は翼の手をとって答えた
 1秒も間をおかず、翼の右ストレートが誠に叩き込まれたが、いつものことだ
 誠も大したダメージを受けていないので、なんらもんだいはない

「ちなみに、僕はマシュマロを作ってみたのだが。誠は何を作ったんだ?」
「飴」
「お前ら、妙にハイレベルだな、おい」

 苦笑する翼
 まぁ、直希は元々菓子作りが得意だから、納得だが
 誠も誠で、今回は凄い

「そう言う翼は?」
「シュークリーム。黒服達の分で作ったシュークリームタワーの余りで悪いんだけどよ」
「「お前も充分凄い」」

 何となく、誠も翼も感じ取った
 翼が作ったというシュークリームタワーが、多分、少なく見積もっても1m近い高さであろう事が

 つい最近、翼はまた、藤崎に襲われたばかりで…しかも、藤崎には、悪魔の囁きがとり憑いていることが判明して
 しかも…どうにも、相手方の黒幕の狙いが、翼であるように思えてきて
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:20:07.52 ID:4rfmHrAh0
あともうちょいか
支援!!
 正直なところ、翼は悩みを抱えている最中なのだ
 そう言う時の翼の行動パターンは、二人ともなんとなくだが、わかる

「…二人とも、あれ以来、何か襲われたりとか、してないか?」
「僕は何も」
「俺も、問題ないぜ」
「…そうか」

 なら、いいんだ、と
 翼が、ほっとしたように笑う


 己の問題に誰かを巻き込むことを、翼は酷く嫌う
 特に、都市伝説が絡んでいるならば、尚更だ
 自分のせいで、自分が原因で誰かが傷つく事を、翼は何よりも恐れている

 だから、今回も、もし、自分が原因であるならば
 一人で、全て解決しようとするのだろう

 だからこそ、無理矢理にでも、手を伸ばして、掴んでやらなければならない
 強引にでもなければ、翼は助けを借りてはくれないのだから


「黒服が言うには、一応、俺たちの高校の頃の同級生には、悪魔の囁きは憑いてなかったらしい」
「一応、藤崎だけ、か」

 翼の言葉に、誠は考え込む
 自分と藤崎の共通点は、高校時代翼と三年間同じクラスだった事と……翼に対して、何らかの形の強い感情を抱いていた事
 もし、自分達に憑いた悪魔の囁きが、誰かの悪意で意図的に憑かされたものだったとしたら…選定基準は、何だ?
(…やっぱ、翼に関する事だよなぁ…)

 そうとしか、思えない
 同時に、よくわからないが…何だか、不安を感じた

 近い未来、翼の心を酷く傷つける事態が、起きてしまうような
 そんな、不安

「…誠、どうかしたのか?」
「いや、何も」

 直希に首を傾げられて、慌てて誠は首を左右に振った
 …ただの、予感だ
 自分は、予知能力をもっている訳でもない
 無駄に不安を抱えている暇などないのだ
 自分は、翼を支えてやらねばならないのだから

「な、折角だし。それぞれ作った物、ここで食べていくか?」
「ここで?」
「ふむ、まぁ、味の感想をすぐに聞けるのはありがたいが」

 誠の突然の提案に、首をかしげる翼と、それに同意してくる直希
 …ニヤリ、誠が笑った

「翼には、俺が直接口移しで飴を食べさせっ!?」
「結局行き着く先はそこかよっ!?このど変態っ!!??」

 右ストレート→回し蹴り→エルボー→膝蹴りのコンボが、誠にきまった
 全てが綺麗に決まったはずなのだが…その全てを、急所から避けさせたのだろうか
 誠は、少し悶えただけですぐに復活する
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:21:46.06 ID:4rfmHrAh0
支援!!!
 それを理解してか、直希もそれを止める事はなく


 …せめて
 自分達と一緒にいる時だけでも、深刻な悩みから、解放されてほしい
 誠と直希の翼への願いは、共通しているのだった




 −−−−なお
 一連のやり取りの最中、ずっとマゾサンタが三人に話し掛けてきていたのだが
 三人とも、意地でスルーし続けていたのだそうな




終われ
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:23:01.25 ID:4rfmHrAh0
代理投下乙でした!!
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:24:43.57 ID:qCEkQnIF0
代理投下終了!

投下しつつネタ書こうかと思ったが、どうやら二つの作業を同時に行うのは私には無理なようだ
ということで、ゆっくりネタ書く作業に戻るとしよう
今日中には投下したいぜ…
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:26:09.20 ID:4rfmHrAh0
投下しつつネタ書くのは、投下と投下の間が4,5分くらいあいてないと難しいかな、と
それなら、投下と投下の間に数行くらい書けたりするから何とかいける
62ホワイトデーネタを書き散らすテスト ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 13:30:17.80 ID:4rfmHrAh0
「ねぇ、マリ」
「何です?」

 ホワイトデー
 今年のホワイトデーは、日曜日だ
 毎週日曜日の礼拝に教会にやってくる奥様たちや子供達には、バレンタインにチョコレートを受け取っている訳で
 人の良い温和な司祭……という事になっているマリも、当然のようにお返しを配っていた
 …まぁ、そのお返しのクッキーを作ったのは誠なのだが

「…その」

 ……何を、言おうとしているのやら
 小さく、苦笑する
 別に、ヤキモチとかじゃ、ないけれど
 でも

 …小さく、マリが笑ってくる
 礼拝の時間も終わって、奥様方も子供達も、皆、もう帰っていて
 ぐ、と腰を抱き寄せられた

「…あなたへのお返しも、当然、用意してますよ?」

 伊達眼鏡の下、マリが笑う
 その温和な表情の下の肉食獣の顔を知っている、けれど
 それでも、彼の全てが、愛しい

「それで、質問なのですが」
「嫌な予感がするんだけど、一応聞いておくわね」
63ホワイトデーネタを書き散らすテスト ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 13:31:20.91 ID:4rfmHrAh0
「嫌な予感なんて、抱く必要ありませんよ」

 そうやって、温和に笑っているくせに
 どうせ、考えている事は

「上の口と下の口と、どちらで食べたいですか?」
「〜〜〜〜マリ」

 …心がまえは、出来ていたはずなのに
 それでも、頬が赤く染まってしまう

 どこまでも、欲望に正直で
 …でも、そのマリがどこまでも愛しく思える自分も、また
 欲望に正直なのだろうか?

「…何を用意してくれたの?」
「キャンディですよ。ほら」
「……っ大人のキャンディ、って何!?何かちょっと昼間食べるには不安が…っ」
「大丈夫ですよ。さぁ、寝室に……あぁ、皆さんお帰りになったのですし、講堂でも問題ありませんね」
「っだ、駄目よ。誰か帰ってきたらどうするのっ!?」

 …少なくとも、恵には見せられるものじゃない
 こちらの反応を楽しむように笑ってくるマリに、もう、と呆れたように、笑って
 これ以上、言葉で辱められるのも、御免だから
 何か言おうとしてきた唇を、自分の唇で塞いでやったのだった


fin
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:32:23.48 ID:4rfmHrAh0
何だかんだでバカップルなマリとスパニッシュフライ契約者のホワイトデー
マリは24時間いつでも発情してますよ
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:46:23.43 ID:qCEkQnIF0
投下乙ー

うん、マリはエロいからこそマリだと思います
でも羨ましいからもげろ
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 13:54:26.30 ID:4rfmHrAh0
マリからエロをとったら、多分食欲しか残らない妖怪ハラヘッタになっちまうんだぜ
67ある組織の構成員の憂鬱 ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 14:05:31.87 ID:4rfmHrAh0
 暦の上ではそろそろ春といっても良いのだが、まだ頬を撫でる風は冷たい
 翼の高校の頃の同級生が、悪魔の囁きにとり憑かれていないかどうか
 その、最後の一人の検査を終えて、黒服は街中を歩いていた
 ひとまず、検査した全員は、悪魔の囁きにとり憑かれてはいなかった
 結局、翼の高校の頃の同級生で悪魔の囁きにとり憑かれたのは、誠と藤崎 沙織だけだ

「…一応、あの子のアルバイト先も調べた方が良いかもしれませんね…」

 相手の悪意が、翼に絡みついているような錯覚
 何者かが、翼を精神的に追い込もうとしているかのような
 そんな、悪意を感じる
 もし、誰かが翼を精神的に追い詰める為に、翼の周囲の人間に悪魔の囁きを意図的にとり憑かせているのだとしたら、翼のバイト先の人間も危ないだろう
 今すぐにでも、調べに……

 …そう、考えていた、黒服の前に
 できる事ならば、顔を合わせたくなかった人物の姿が、目に入ってきた
 いや、できる事ならば、顔を合わせたくはないのだが…念のため、顔を合わせなければならない相手、でもある
 あちらも、黒服に気づいた
 かつかつとハイヒールをならし、近づいてくる
 ……こっそりと、悪魔の囁きの検査に使う装置を、作動させておいた

「また、会ったねぇ?初詣以来だね」
「…そうですね」

 タバコを咥えたその相手に、なるたけ、嫌悪を示さないよう、努力する
 それでも、嫌悪感が表に出てしまっていたのだろうか
 女性が、小さく苦笑した

「そこまで、嫌う事ぁないんじゃないかい?」
「…申し訳ありません」
68ある組織の構成員の憂鬱 ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 14:08:20.30 ID:4rfmHrAh0
 小さく、頭を下げる
 出来る限り、嫌悪と言う感情は、相手に悟られるべきではないと言うのに
 特に、相手は一応仮にも、翼の実の母親なのだ
 どれだけ、母親としての責務を放棄してきた者だとしても…翼の、たった一人の、血の繋がった母親なのだから

「まだ、翼が見つからないんだよ…あんた、翼があたしに会わないように、何かやってるんじゃないのかい?」
「…私は、何も。翼自身が、あなたを避けているのでは?」

 どうしても、彼女に対しては言葉に棘が混じってしまうのを自覚する
 だが、それは相手もわかりきっているのだろう
 彼女…朝比奈 マリナは、肩をすくめてきた

「かもねぇ。翼がアルバイトしてる店によく行くんだけど、一回も顔を合わせたことないよ。逃げられてるんだろうねぇ、あたしは」
「……本当に、嫌われていらっしゃるのですね」
「まったくだよ」

 そう
 彼女自身、己の息子に嫌われている自覚はあるのだ
 それでも、今、彼女は翼に会おうとしている

「あの子に、何かご用がおありなのですか?」
「うん?………それを、あんたに言わなきゃいけない理由があるってのかい?」

 黒服の言葉に、彼女はやや挑発するように、そう言って来た
 …表に現すべきではない、と思いつつ
 口にするべきではない、と思いつつ、どうしても、嫌味のような言葉が、口をつく

「いえ…ずっと、あの子の事を放置して、母親としての責務を放棄し続けていたあなたが、今更、あの子に何の用があるのかと思いまして」
「……あたしゃ、翼の母親さ。会う為に理由なんていらないだろう?」
69ある組織の構成員の憂鬱 ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 14:10:27.78 ID:4rfmHrAh0
 …その、彼女の言葉に
 明確な、嘘を感じた

 何か、理由がある
 詳細はわからないが……翼に会う事に、何かはっきりとした理由が存在している
 彼女は、嘘があまり得意ではない
 隠し事が、得意ではない
 だから、それがはっきりと、伝わってきて
 かすかに、黒服は警戒を強めた

 そうであってほしくない、と願いながら
 彼女から…都市伝説の気配を、探って

「………っ」

 …都市伝説の、気配を
 彼女から、はっきりと、感じ取った
 都市伝説契約者
 何と契約しているかまでは、わからないが…
 ……その、契約している都市伝説が、悪魔の囁きである可能性は、否定しきれない

「…どうかしたのかい?」

 黒服の様子に、彼女が眉をひそめる
 いえ、と小さく首を振り…黒服は、真正面から彼女を睨み付けた

「…今、あの子は少々、難しい事情を抱えています。できる事ならば、あの子を刺激するような事は、なさらないでいただきたいのですが」
「刺激なんて、しやしないよ。あの子は、あたしが腹痛めて産んだ子供さ。あの子を傷つけるような事なんて…」
「……してこなかった、とおっしゃるおつもりで?」
70ある組織の構成員の憂鬱 ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 14:11:51.29 ID:4rfmHrAh0
 黒服の、その言葉に
 彼女の表情が、歪んだ
 視線が、右往左往する

「…そりゃ、その………親はなくても子は育つ、と言うか…………自由主義で育てたけど、さ」
「あの子が一番、親の愛情を必要としていた、その時に……あなた達は、何をなさっていたのです?」

 責めるような黒服の言葉に、彼女は後ずさった
 …タバコを地面に落とし、踏みにじり、吐き出すように答えてくる

「そりゃ…あたしは、いい母親じゃあ、なかったさ。でも、息子に会う権利くらいは、あるだろう?」
「あの子は、あなたたち両親と会う事事態を拒絶し続けてきています…出来る限り、あの子の心の整理がつくまでは、待っていただきたいのですが」
「……心の整理、ねぇ」

 っは、と
 彼女の表情が、暗く沈む

「…それを、待ってなんて、いられないのさ」

 くるり
 彼女は、黒服に背を向ける

「あんたがどう言おうが、あたしは翼に会わなきゃいけないのさ……あんたがいない場所で、翼を見つけてみせるよ」
「…っお待ちください」

 はっきりと感じる、都市伝説契約者の気配
 それに、ただ、不安しか感じない

「あの子に会って…本当に、あなたは何をなさるおつもりなのです?あの子に、何の用があるのですか?」
「…あんたに言う必要なんて、ないさ。それとも、あんたには聞く権利があるってのかい?」
71ある組織の構成員の憂鬱 ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 14:13:53.49 ID:4rfmHrAh0
「……あの子、は」

 翼は
 自分の、都市伝説である自分の契約者であり
 …そして

「…あの子は…私の、家族ですから」

 黒服の、その言葉に
 ぴくり、彼女の背中が、小さく震えた

「……そうかい。じゃあ、なおさら言えないねぇ?」

 一瞬、振り返ってそう言って来た、その表情は
 酷く意地悪なようで、同時に、何か意地でもはっているような、そんな表情で
 彼女はそのまま…さっさと、逃げるように黒服の前から立ち去ってしまった


 …小さく、ため息をつく
 スーツのポケットから、悪魔の囁きの気配を探る装置を、取り出した

「…反応は、ありませんか……とり憑かれてもいないし、悪魔の囁きの契約者でもないようですね」

 とりあえず、そこにはほっとする
 …だが、しかし
 彼女が、いつからかそうだったかはわからないが、何らかの都市伝説契約者となっている事は、事実だ

 …そして
 何らかの、明確な理由をもって、翼と会おうとしている
72ある組織の構成員の憂鬱 ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 14:15:09.55 ID:4rfmHrAh0

 その、理由に
 悪意が含まれて居ないとは、言い切れず

「…目的がわかるまでは、警戒した方がいいでしょうね」

 だが
 この事実を翼に伝えるつもりには、黒服はなれなかった

 両親の事は、翼にとって幼少期の、悲しい思い出でしかなくて
 憎しみの対象でしかなく……しかし、だからと言って、憎みきることもできずにいる存在
 その存在の事は、あまり翼の前では口に出したくなかった



 …どうか
 これ以上、翼の心を傷つけるような事態が起こって欲しくない
 黒服はそう、祈る事しかできなかった





to be … ?
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 14:16:25.13 ID:4rfmHrAh0
そう言えば、事件本格化する前に書かなきゃ駄目だったのに忘れかけていたネタ
若干の誤解が含まれていたり意地をはってしまっているのが悪かったり
まぁ、そんな感じ
74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 14:35:37.67 ID:4rfmHrAh0
引き続きネタ構想しつつほ
75ホワイトデーネタを書き散らすテスト ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 14:46:47.91 ID:4rfmHrAh0
「いやー、凄いねぇ」
「うん、私もそう思うわ」
「何日前から作ってたのよ、って感じよね」
「ちゅー」

 …望達、三人と一匹の前に聳え立つ物
 それは、全長170pに到達するであろう、シュークリームタワーだった
 翼から望や黒服達への、ホワイトデーのお返しである
 今年のホワイトデーは日曜日の為、友美も家に呼ばれて、これが提供されたのだ
 …なお、翼本人は、誠や直希と会う約束があるようで、今は出かけている

「どっから手をつけたらいいのか、さっぱりわからないのよね」
「下からとったら崩れるの確実だし」

 なんと言うか、その、迫力が凄い
 特に、あまり身長が高くない望と詩織から見れば、尚更だ
 ノロイから見れば、多分、天にも届くほどの高さに感じられるのではないだろうか

「まぁ、いただこうじゃないか。上のほうから私がとっていくからさ」

 ちょっと足場使わせてもらうけど、と言って、友美が皿を手に、シュークリームタワーの天辺に手を伸ばし始めた
 どうせ、翼の事だ
 シュークリームの味も一種類ではなく、数種類ある事だろう
 変な所で凝り性と言うか、こだわる奴だから

(……それに)
76ホワイトデーネタを書き散らすテスト ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 14:47:36.08 ID:4rfmHrAh0
 少々落ち着かないほど綺麗になっている家の中を見回し、望は考える
 どうにも、悩みがある時などは、家事に逃げる傾向があるらしい翼
 顎砕き飴の件があった頃も、家の中はこう言う状態だった
 黒服から聞いた話では、以前、翼を襲った藤崎とか言う翼の元同級生が、再び翼を襲って
 しかも…その藤崎は、悪魔の囁きにとり憑かれていたと言う
 どうにも、翼自身が狙われているらしい状況
 それを、悩んでいるのかもしれない

「ん?どしたん?」
「いえ、何でもないわ」

 友美がとったシュークリームを受け取る望
 ちゅうちゅう、とノロイも皿の前にちょこん、と座って、シュークリームを待っている
 …ハツカネズミが、シュークリームを食べても大丈夫なのだろうか
 都市伝説化しかけているから平気なのだろうか
 どうにも、最近、ノロイがハツカネズミを超越した存在になりつつあるような気がして困る

「そう言えば、望。黒服さんからは、何かもらってないの?ホワイトデーのお返し」
「…別に、何も。黒服も何か忙しいし、それどころじゃないんじゃない?」
「まぁ、あの人なら、何だかんだで用意してくれてそうだし、夜に期待すればいいじゃない?」

 あむ、とシュークリームに食いつきながら、そう言って来た詩織
 …うん
 まぁ、翼からのお返しも、美味しくいただくが
 ……黒服からのお返し、を、期待してもいいだろうか
 望は、そんな事を考えるのだった


終われ
77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 14:52:37.73 ID:3ir1K/iR0
支援
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 15:00:12.07 ID:4rfmHrAh0
誰も居ないすきにこっそりとホワイトデーネタ
ってか、誰も居なくてコメントでサルくらうとか相変わらずすぎてもう

なお、シュークリームの味はカスタードクリーム、生クリーム、チョコレートクリーム、生クリーム+イチゴ、抹茶クリームの計5種類だったそうな
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 15:20:49.69 ID:4rfmHrAh0
wiki編集しながらほ
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 15:41:12.21 ID:4rfmHrAh0
独りぼっちの予感ほ
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 15:45:17.61 ID:4rfmHrAh0
ぎゃあ、投下したネタ中にミス発見
マリナじゃねぇ、マドカだよ
避難所>>964、指摘してくれてありがとうorz
82小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 16:06:49.46 ID:4rfmHrAh0
「セイレーン、か」
「えぇ」

 Tさん達は場所を玄宗姉弟の自宅に移動し、エリカから、彼女が遭遇したコーク・ロア支配型契約者の口をふさいできた相手…セイレーン、もしくはその契約者の話をB聞いていた
 相手の戦力が、またひとつ判明する

「それって、相当厄介じゃね?歌聴いたらアウトなんだろ?」

 直希が大量買いしていたタイヤキを分けてもらいつつ、舞がそうぼやく
 確かに、歌声を聞いてしまえば操られる、となると、かなり厄介な存在だ
 舞の言葉に、エリカはんー、と考えて

「歌われる前に、やっつけちゃえばいいんじゃないかしら」

 と、さらりと言い切ってきた

「少々乱暴だが、それが手っ取り早いといえば、手っ取り早いな」

 歌声を聴かないようにする、と言う対策もない訳ではないが、少々面倒だ
 やや乱暴ではあるが、エリカの言うとおり、歌われる前に倒してしまうのが得策だろう
 ただし、相手は空中を飛び回る能力を有している
 そのあたりの対策も、考えなければならないが

「あぁ、それで、相手の顔だけどね…」

 そう言って、エリカは紙の上に、さらさらと鉛筆を走らせ始めた
 あっと言う間に、似顔絵が完成する

「……こんな感じだったわ」
83小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 16:12:47.19 ID:4rfmHrAh0
 どうぞ、とエリカは描き終えたその似顔絵を、Tさん達に手渡す

「うわ、写真見てぇ」
「じょうずなの」
「ふふっ、ありがと。おねーさん、絵を描くのがお仕事だから」

 舞とリカちゃんの言葉に、エリカは嬉しそうに微笑んだ
 似顔絵を見つめ、ふむ、とTさんはその顔を覚えこむ

「あの、ゲーム系統の都市伝説といい、空中戦力が二人か。上にも警戒しなければならないと言うのはちと、面倒だな」
「僕ならば、上空への警戒は問題ないのだが」

 タイヤキを口にしつつ、そう言ってくる直希 
 確かに、直希の「光輝の書」で天使を呼べば、上空の警戒は心配がない
 もっとも、直希がその場にいれば、だが

「情報、感謝する」
「こちらこそ。あなた達には、翼君も助けられてるみたいだし。それなら、おねーさんも、あなた達の味方よ」

 くすり、微笑むエリカ
 …そして、彼女の視線は、舞とリカちゃんに向けられ
 キュピリーン!!と、一瞬、光を放ったように見えた

 びくっ!と、何か感じたリカちゃんが、ごそごそと舞の鞄へと避難を開始する

「あぁっ!?逃げないで!!おねーさん、ちょっとお洋服作ってあげたいだけだからっ!?」
「いや、視線が怖いんだよ、色んな意味でっ!」

 思わず突っ込む舞
 エリカ自身に悪気はないのかもしれないが、その……確かに、若干、視線が怖い
84小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 16:18:17.35 ID:4rfmHrAh0
「まぁまぁ、そんな事言わないで。さ、おねーさん、ちょっと布と針と糸持ってくるから!」
「この場で作る気かよ!?」
「……申し訳ない。ちょっと、姉さんの好きにさせてくれると、ありがたい」

 立ち上がって、自分の部屋に向かったエリカに舞が突っ込むと、少し困っているような表情で、直希がそう言って来た
 ぱらり、本をめくりつつ、続ける

「いくつかの厄介事に首を突っ込んで、どれも問題が滞っている最中。少し、気分転換をしたいのかもしれない…まぁ、服を作るだけならば、問題はないか、と」
「…いや、まぁ、俺はいいけどよ」
「およーふく、もらえるの?」

 ぴょこん
 舞の鞄から顔を出し、首をかしげるリカちゃん
 Tさんは、小さく苦笑する

「なかなか、元気なお姉さんだな」
「…あぁ、様々な意味で」

 小さく、直希がため息をつく
 直希からすれば、早く姉を何とかできる存在が待ち遠しいのかもしれない

「我等が主、お紅茶、お代わりいります?」
「うん?……あぁ、頼む、ハニエル」

 ふわり
 何時の間にか姿を現していた、長い金髪に真っ赤な花飾りをつけた女性天使が、直希の言葉にはぁい、と頷き、直希のティーカップを持ってキッチンに向かう
 その後ろ姿を何気なく見送って、舞が呟く

「あの天使のねーちゃん、こないだ、俺が写真取らせてもらった天使だよな?」
「あぁ。どうにも、君達の傍に居ると心地よいらしくてな。積極的に姿を現したがるようだ」
85小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 16:23:12.48 ID:4rfmHrAh0
「…どゆ事??」

 首をかしげる舞
 心地よい??

「あぁ。ハニエルは愛の天使だからな。愛し合う二人の前は、なんとも心地がいいらしい」
「あぁ、なるほ…………へ!?」

 ぼしゅっ
 思わず、頬を赤らめる舞
 いや、その
 Tさんとは確かに、その、あれだが
 そう、具体的にストレートに言われると、照れてしまう
 頬を赤らめている舞の様子に、直希は小さく首を傾げた

「どうかしたのだろうか?」
「あ、いや、その…だってなぁ?Tさん」

 ちらり
 Tさんに視線をやる舞
 そこで話を振られても困るのだろうか
 Tさんは、どう答えたらいいものか、ふと悩んで

 …その、悩んでしまったのが、不味かったのだろうか
 ふむ、と直希もまた、考え込んで

「愛し合う、という事は、知られると恥ずかしい事なのだろうか?」

 と、首をかしげ、舞に尋ねてきた
86小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 16:27:23.07 ID:4rfmHrAh0
「あ、いや、その、恥ずかしいっつーか」

 …って、何を言おうとしているのだ、自分は?!
 つか、聞いて来る方も聞いて来るほうだ、と思うのだが
 しかし、舞が突っ込みの言葉を紡ぎだすよりも先に、直希が続けてくる

「僕達の両親は、愛し合う事を一切隠す様子がなかったが…そこは、一によって違うのだろうか」
「う、うん、まぁ、違うんじゃね?」
「それは、人それぞれだろうな」

 あぅあぅ、何とか言葉を紡ぎだしている舞と、それをフォローしているTさん
 ふむ…と、直希はまた、考え込んで、尋ねる

「…愛する、と言うのは、どう言った感覚なのだろうか?」
「ど、どう言った、って…」
「どうすれば、そのような感情に、気づけるのだろうか?」

 感情の薄い淡白な表情で、首を傾げてくる直希
 …いっそ、好奇心丸出しの表情で言われれば、まだ、突っ込みやすかっただろうか
 何を考えているのかわからぬ表情で尋ねられ、どう答えたらいいものか、わからない

「青年には、その感覚がわからないのか?」

 赤くなっている舞の様子に苦笑しつつ、Tさんが逆に直希に尋ねた
 すると、直希はふむ…と、また考え込む様子を見せる

「…よく、わからないんだ。どうにも、僕は愛という感情が、よくわからない」

 ………だから、翼のあの時の辛さを、完全に理解してやれない
 小さく、呟かれたその言葉は、少なくとも、耳まで赤くなりつつある舞には、届いていないだろう
87小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 16:28:09.09 ID:4rfmHrAh0
「だから、知りたいのだよ。愛という感情について。誰かを愛する、と言うのがどう言う事かについて、ね」
「そ、それって、人に聞いて知ることじゃないんじゃね?」
「わからないからには、経験者に聞くのが一番早いかと」

 じ、と舞とTさんを見つめてくる直希
 悪気と言うものは一切なく、純粋にただ知りたくて、尋ねてきているようで

「おねーちゃん?おかお、まっかなの」
「そ、そそそそそ、そうか?そ、そんな事はないぞ???」

 やれやれ、と大分思考が羞恥やら照れで染められてきつつある舞の姿と、直希の純粋な視線を前に
 Tさんは、困ったように笑うしかないのだった




終われ
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 16:29:27.24 ID:4rfmHrAh0
Tさんの人に焼き土下座!!!orz
こないだ書いたネタの続き的なもの
おかしい、最初は真面目な情報交換のつもりで書いていたのに、どうしてこうなったんだろう
ひとまず、セイレーンの情報がTさんに伝わりました
後で、直希経由で黒服とかにも伝わっていきます
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 16:40:22.36 ID:qCEkQnIF0
ちょいと昼寝してたら大量投下されててびっくりしたwww

なんだろう、全然かみ合ってないはずなのに、直希と舞がいいコンビに見えてきたw
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 16:48:21.54 ID:4rfmHrAh0
人がいないのでカっとなって書き続けた
後悔はしていない

>>89
>なんだろう、全然かみ合ってないはずなのに、直希と舞がいいコンビに見えてきたw
直希は誰と会話しても、会話が微妙にかみ合わなかったりする事がある気がする
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 16:52:49.11 ID:rVtDzj4d0
乙です。
舞の反応に、ニヤニヤとさせて頂きました。


ノロイはこのまま行くと、
「とっくにご存知なんだろ!? 俺は、都市伝説の力によって目覚めた伝説の小動物……
 超ハツカネズミ、ノロイだ!!」
等と覚醒を、果たす訳がないんだろうなぁ〜。
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 16:57:24.83 ID:4rfmHrAh0
夕食作ってくるー
お風呂上りもスレが残っていれば幸せだ

>>91
スーパーハツカネズミwwwwwwww
93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 17:11:48.51 ID:qCEkQnIF0
風かと思ったら地震だった
東北南部あたりで震度4だとさ
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 17:23:00.51 ID:qCEkQnIF0
言えない…誤爆だったなんて言えない…
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 17:46:49.75 ID:qCEkQnIF0
ほー
96ちょっと単発かいてみる(代理):2010/03/14(日) 17:48:01.64 ID:qCEkQnIF0
ブブブブブブブブブブブ
あたりに響き渡る、羽音 羽音 羽音
「・・・・・・・・・」
・・・大量の蝿に囲まれて、男が一人、立っていた
ブゥン
一匹の蝿が、男の耳を目掛けて突進する
男はそれを払う
かなりの速度を持つ掌に小さな蝿がかなうはずも無く、あっけなく吹っ飛び、光となって四散した
それが合図になったように、大量の蝿がいっせいに男へ向かいはじめる
「あぁもー、めんどくせぇなこの虫どもが!」
そう言って、男は何かを取り出す
それはタバコの箱 真ん中に大きな赤い丸が描かれており、そこに書かれた商品名
『Lucky Strike』
箱からタバコを取り出し、口にくわえて火をつける
一度深く吸い込み、吐き出した煙は瞬時に密度を高め、男の体に集った
煙は炎に変わり、炎は光となる
「虫が、俺に勝てるわけ無いだろう」
光は一瞬小さくなり、次の瞬間、大きな爆発音を放ちながらドーム状に膨らんだ
光は周りの全てを巻き込みながら、さらに大きくなっていく

光が消えたとき、そこに蝿達の姿は無く、残っていたのは大きなクレーターの中心に立つ、タバコをくわえた男だけだった
97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 17:55:08.77 ID:qCEkQnIF0
乙でしたー!

Lucky Strikeのネーミング説かな?
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 18:03:21.05 ID:rVtDzj4d0
代理乙です。
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 18:37:12.49 ID:qCEkQnIF0
ほしー
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 18:59:45.16 ID:qCEkQnIF0
風呂前ほ
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 19:18:02.34 ID:rVtDzj4d0
保守
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 19:41:27.89 ID:EmhzJR760
ただいまー、いい温泉でした
代理乙なんだぜ!!
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 19:59:35.65 ID:EmhzJR760
にゅう
104ホワイトデーネタを書き散らすテスト ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 20:10:45.95 ID:EmhzJR760
 あなたの心がわからない
 私はあなたではないから

 あなたの想いがわからない
 私はあなたではないから


 あなたの心も想いも
 あなたは理解できていますか?






              aika harukaze
105ホワイトデーネタを書き散らすテスト ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 20:13:54.12 ID:EmhzJR760
 3月14日
 この日、彼は約束を果たす為に、佳奈美の前に姿を現した


「佳奈美、ほら、バレンタインにもらったチョコのお返しな」

 そう言って、綺麗にラッピングされたそれを手渡す黒服H
 佳奈美は、ややおっかなびっくり、それを受け取った

「あ、ありがとうHさん」
「なぁに、そう警戒するなって。媚薬入りにするかどうか悩んだ結果、普通の飴にしておいたから」
「悩んだんだ!?って言うか、何渡そうとしてるの!?」

 うん、いい突っ込みだ
 佳奈美の突っ込みに、Hはくっくと楽しげに笑う
 あの時の分身相手では、こうはいかない
 やはり、佳奈美の反応が一番だ

「ん〜、でも、Hさん。いいの?こんな高そうなのもらっちゃって」

 改めて、その飴が入った瓶のラッピングを見て、何となく値段を悟ったのだろうか
 佳奈美がそんな事を尋ねてきたので、Hは笑って答えてやる

「なぁに、ホワイトデーは三倍返しが基本なんだろ?」
「そうだけど、本当に三倍返ししてくる人なんて、ほとんどいないよ」
「そんなもんかねぇ?」

 黒服Hの知っている限り、真面目に三倍返ししそうなのが、一人、心当たりがある訳だが
 まぁ、あいつは変な所で真面目だから、例外か
106ホワイトデーネタを書き散らすテスト ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 20:16:32.84 ID:EmhzJR760
「いいから、受け取っておけ。口に合わなかったら、好きに処分していいから」
「そ、そんな事できないよ」

 きゅう、と
 佳奈美は渡されたそれを、大切そうに、大切そうに、抱えて

「…ありがとう、Hさん」

 と、嬉しそうに、礼を言ってきて
 それを、素直に嬉しいと、黒服Hはそう感じた

「…にゃ?Hさん、体調、悪い?」
「うん?いや、そんな事ぁないが、どうしてだ?」
「その…ちょっと、顔色、悪いように見えるから」


 …佳奈美の、その言葉に
 ぴくり、黒服Hは、一瞬反応したが


「…なぁに、気のせいだって」
「そう?体調悪いなら、無理しちゃ駄目だよ?」
「Dの奴じゃあるまいし、本当に大丈夫だって」

 心配してきた佳奈美を気遣うように、黒服Hはそっと、佳奈美の頭を撫でてやる


 体の内部の激痛を、押し隠しながら

to be … ?
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 20:18:03.51 ID:EmhzJR760
三面鏡の人に焼き土下座なホワイトデーネタですた
残念ながら、普通のお返しです






もしかしたら、最後の贈り物になるかもしれんしね
108都市伝説4コマ風劇場 (代理):2010/03/14(日) 20:25:04.07 ID:EmhzJR760
美「この作戦は迅速に、そして気取られないように行わなければならない・・・・・・」
文「はい、兄さん」

美「盟主が鍵をあけた窓から搬入し、1時間以内に組み上げて窓から撤収」
文「事前にできる準備は終わり・・・いつでもOKです!」

美「作戦決行は今夜だ、ぬかるなよ!」
文「はい兄さん!!」

飴「・・・・・・不法侵入ですよね?」
サ「楽しそうだし別にいいと思うな♪」
盟「どのみちもう止まりませんよ」




深夜 姫野家
ガラララッ

ガチャガチャ
ゴト
ガタガタッ

3月14日 朝
姫「いやー・・・」

姫「三段ケーキは予想外よ、うん」
※近所の人達と美味しくいただきました
109笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/14(日) 20:31:43.39 ID:EmhzJR760
【電磁人の韻律詩18〜本日の依頼一件〜】

こんにちわ、レイモンの契約しているラプラスの悪魔だ。
覚えている人は居るだろうか?
自分は小説で言うところの地の文みたいな生き物なのでここからしか挨拶できないことを許して欲しい。
「橙ー、人捜しお願い。」
「ああ、写真か名前は有るんだろうな?」
「はい、どうぞ。」
笛吹探偵事務所には優秀な人材が揃っている。
荒事ならば所長か明日自身が向かえば良いし、
調べ物ならば橙に敵う都市伝説はそうそう無い。
さらに上田の培った幅広い人脈が色々な所で効いてくる。
明日真が正義の味方を行うには其処は最高の環境だった。
「解ったぞ、市内のホテルを転々としている。
 場所は……今のところ北区だな。
 もうそろそろ居場所を変えるようだが。
 あとお前の友人だけど嘘ついてるぞ。」
とまあ話している間に人は見つかるのである。
「良いよ、別にその人を傷つけようって訳じゃないんだろう?」
「ああ、それなら良いというのか?」
「だって悪いことしてないもん。嘘くらいなら俺は別にどうだって良い。
 人間はそれぞれに事情が有るんだからそれ位は俺だって考える。」
「そうか……。」
「それじゃあ俺は別の依頼をこなしてくるよ。」
「ストーカーだったっけか?恋路と行かなくて良いのか?」
「ほら、あいつ今日は向坂と遊びに行っているから。」
「そうか、なら良いんだ。」
明日真は探偵事務所を出ると地下駐車場から上田のV-MAXに乗ってとある喫茶店に出かけた。
110笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/14(日) 20:33:44.67 ID:EmhzJR760
「ルーモア……ここで良いんだよな?」
ルーモアと看板に書かれた喫茶店を見つけた明日はその店の前にバイクを停める。
店の中に入ると穏やかな表情をした中年の男性が明日を出迎えた。
「いらっしゃい。」
「ええと……待ち合わせをしているんですが……。」
「それならあちらの方ですね。」
彼はとあるテーブルの方向を指す。
そこには依頼者の女性がいた。
「笛吹探偵事務所の方ですか?」
「はい、所長の代理で来ました。依頼をお伺いします。」
「それでは……。」
女性は落ち着かなさそうに窓の外の様子を伺うと明日に依頼を告げた。


111笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/14(日) 20:36:38.97 ID:EmhzJR760
数時間後。
明日真はまだ寒さの残る三月の空の下でじっと座っていた。
場所は依頼者の女性の家の庭である。
「ストーカーにつきまとわれているので何とかして欲しい。」
それが女性の依頼だった。
最初は明日も警察に頼ることを勧めた。
彼女が言うには何度も警察や法律事務所にお願いしているのだが犯人が捕まらないらしいのだ。
その上、ストーキングの手段が変わっているそうで
彼女そっくりの人物が彼女を真似ていつも彼女が行く場所を訪ねる様を録画して送りつけてくるそうだ。
彼女しか知らないような場所で彼女しか知らない行為まで真似て送りつけているらしい。
笛吹探偵事務所ならばこのような怪事件も解決してくれると聞いて依頼したらしい。
「まあ依頼を断るわけにも行かないし……。
 その上ストーカー退治なら正義の味方の仕事だしなあ。
 やるしかないかな?」
結局彼はこの依頼を受けることにしたのであった。
「しかし本当にあと三分で来るのか……?」
橙によればあと三分でストーカーが現れるという。
「そもそも張り込みって忍耐だろ?狙った奴が決まった時間に来るなんてそんな都合が良いことあるわけ………。」
明日はあれほど橙の能力を見たにも関わらずあまり彼女のことを信用していなかった。
しかし彼は即座にその思い込みを否定されることになる。
ガサ、ガサガサ!
なんと橙の言った通りの時刻に女性の家の前に男が現れたのだ。
どことなく挙動不審な所もあるし明日はその男がストーカーだと断定した。
「おい、そこのあんた!」
どこからともなく明日が現れたので驚いたのだろう。
慌てて後ろにのけぞる男性。
112笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/14(日) 20:38:54.78 ID:EmhzJR760
その反応を見て明日は更に疑いを深めた。
「この家に住んでいる人にストーキングを続けているのはあんたか?」
「わわ………えっ、と………!」
男は言葉に詰まってしまったらしく何も言えないままジリジリと後ずさる。
少し明日と距離を取ると男は逃げ出した。
「あ、待てっ!」
明日は男を追って走り出す。
「1000W………!」
明日の掌の中でバチバチと火花が散る。
明日の電磁波を操る能力は遠距離だと攻撃力が格段に落ちる。
遠くからジワジワと相手を暖めるだけでは敵に逃げられることも多い。
だから明日は恋路と協力して電磁波を何重にも屈折・反射させてその全てを一気に相手に当てる技を練習していたのだ。
「スパーク!」
明日は指を銃の形にすると男性の足に狙いを定めた。
バチィン!
男性の足下で火花が散る。
「ヒイイイイ!?」
男性は腰を抜かせてその場にへたり込んでしまった。
「答えて貰いますよお兄さん。貴方が彼女を……」
「ち、ちちちち!違うんだ!あんたの言うストーキングなんて俺は何も知らない!
 たださっき出会った見知らぬ男に脅されてやらされていただけで………。
 あいつ、俺の恥ずかしい写真を持っていて言うことを聞かないとばらまくって言われたんだ!」
「………え?」
男から帰ってきたのは思いもしない答えだった。
113笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/14(日) 20:40:38.91 ID:EmhzJR760
「アーイ ワズボーン トゥーラビューラビューラビュー……」 
明日が首をかしげているところで急に彼の携帯電話が鳴った。
「どうした、橙か?」
「おい明日、そいつは囮だ!急いで依頼人の家に向かえ!」
「――――――そういうことか!」
この男はストーカーの用意した囮だったのだ。
笛吹ならば男の様子からそうであることが一発で見抜けたのだろうが明日にそのような器用な真似は出来なかった。
明日は全力で依頼人の女性の家まで走る。
「ドアが開きっぱなしだ。
 ………間に合えよ!」
靴も脱がずに家の中に駆け込む明日。
「何で貴方は私の気持ちを解ってくれないの?
 私がどれだけ貴方のことを思っていたか…………。」
「何言っているんですか!もうつきまとわないで!」
ストーカーらしき人物と女性はリビングにいた。
「待て!………ってあれ?」
明日は困惑した。
彼の踏み込んだ家の中には同じ顔をした女性が二人居たのだ。
双子……ならストーキングするわけ無い。
良く見ると片方には見覚えのない泣きぼくろがある。
そちらがストーカーだろうと明日は判断した。
114笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/14(日) 21:03:34.15 ID:EmhzJR760
「貴方誰!?私と彼女の間に入ってこないでよ!」
ストーカーの女は明日の前に立ちふさがる。
「彼女が嫌がっているじゃないか!こんなこと今すぐやめるんだ!」
明日はとりあえずの説得を試みる。
「何よ、貴方まで邪魔するって言うなら……殺してやる!」
女はコートの中から鉈を取り出して明日に向けて振りかざす。
バキン!
しかし、鉈を真上に振り上げた瞬間に明日の右ストレートがストーカーの顔面に入っていた。
それにしても速い。
普通の人間の反応速度ではない。
鉈を取り出してから瞬きする程度の時間で彼はストーカーの懐に潜り込んだ。
「――――――!?」
「身体、暖まってるからな。」
それだけ言うと明日は恋路に教えて貰った通りの型で構える。
彼は電子レンジの能力で自らの身体を最初から暖め、動きを良くしていたのだ。
あっという間に攻撃を受けて信じられないと言った顔で
ストーカーは真っ赤になった自らの頬を撫でる。
「加賀美さん、ここから離れていて下さい!」
「え、あ、……はい!」
依頼者の女性をその隙に素早く家の外に逃げ出した。
ストーカーは明日を恨めしそうに見詰める。
「彼女と違う顔になっちゃったじゃない!」
半ば狂ったようにストーカーは叫んだ。
いや、元々狂ってはいるのだが。
115笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/14(日) 21:06:07.36 ID:EmhzJR760
「何を言っているんだこいつ……?」
いきなり訳のわからないことを言われて戸惑う明日。
「貴方に私の何が解るって言うの?
 私は彼女が大好きなのよ!」
ひるんだ明日の隙を突いて畳みかけるように言葉を浴びせるストーカー。
「朝も昼も夜も彼女のことばかり考えた。
 彼女のことを考えて居るときはすごく幸せだったの!
 あのふわふわした柔らかそうな髪、色素の薄い瞳!
 柔らかな二の腕と腕を組んで歩きたかった!
 彼女は私の物なの!
 私には彼女しか居ないのよ!
 でも彼女は、郁美は私のことを振り向いてくれなかった。
 彼女は私の物になってくれなかった。
 だから、―――――――――――なった。
 私は加賀美になった。
 加賀美になって彼女の行く場所行く場所で彼女として振る舞った。
 そしたらね、邪魔になって来ちゃったのよ。
 私の愛する加賀美はたった一人。
 この私こそが私の愛する加賀美なのよ。
 あの加賀美が私を愛しているならそれでも良かった。
 でも現実はそうじゃなかった。
 加賀美は私を否定した。
 もう私が本物、本物の加賀美としか言えないじゃない!」
116笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/14(日) 21:10:58.57 ID:EmhzJR760
「それでも、普通整形してもそこまで他人に顔を似せるのは無理だろう!?
 いったいどうなってるんだ?」
明日はやっと声を上げる。
明日真は普通の人間だ。
それ故に彼女のような人間には対応しづらいようである。
「うふふ………、そんな時にこの都市伝説の力を知ったのよ。」
ストーカーは顔を手で隠す。
いないいないばぁのように手を顔から離すとストーカーの顔は明日の顔になっていた。
だが、やはり泣きぼくろが残っている。
「シェイプシフター、それが私の契約した都市伝説の名前。
 能力は他人の肉体と記憶の一部を模写すること。
 契約条件は自らの存在の抹消。
 最高でしょう?」
明日真の向こう側で明日真の顔をしたストーカーは笑う。
「……最後にもう一度聞く。
 貴方は加賀美さんに対するストーキングをやめる気は無いんだな?」
「ストーキング?
 勘違いしないで。
 彼女が彼女じゃなくなって、
 始めて私は私になるの。」
二人が動き出したのは同時だった。
117笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/14(日) 21:14:34.21 ID:EmhzJR760
「面白い物を見せてあげる、お兄さん。」
ストーカーの女が自らの顔を覆う。
彼女が次に顔を見せると、その顔は最近まで、というか今も町を騒がせている筋肉の男だった。
「これなら簡単に君も倒せちゃうよね!」
真っ直ぐに明日に向けて突っ込んでくるストーカー。
明日はすばやく身を躱そうとするが簡単に捕まってしまう。
明日の首を掴むとそのまま真上まで持ち上げる。
「さっきの妙なバチバチなら今の私には効かないよ!
 なんといってもこの身体は丈夫だからね!」
明日の首をストーカーはゆっくりと締め上げ始める。
「おい。」
しかしその状況でも明日は落ち着いていた。
「本当に、貴方はストーキングをまだ続ける気なんだな?」
「なにあの子の心配をしているの?もう自分が死にそうじゃない!」
「質問をしている。まだ、あの子に危害を加える気なのか?」
「ばっかじゃないの!?あんたを殺したら次はあの子。
 決まってるじゃない!」
「そうか。それならカハッ!
 ………それなら良いんだ。仕方がない。」
バチッ!バチバチッ!
明日の掌で再び火花が散る。
118笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/14(日) 21:16:53.20 ID:EmhzJR760
「仕方がない?自分が殺されるのにずいぶん余裕かまして………!」
バチバチバチバチ!
バァン!
ストーカーの女性はもう喋ることができなかった。
何故なら

彼女の腕は血を吹き出しながら破裂してしまったのだから。

激痛の余り、話す事なんて出来るわけがない。
拘束から逃れた明日はすばやく女性から距離を取る。
「俺の能力は攻撃に時間がかかる。
 それだけ相手を苦しませることにもなる。
 それは正義の味方のやる事じゃない。」
そう言いつつ明日はストーカーの足に向けて都市伝説を発動する。
5秒ほどすると足もまっかに火傷し始めた。
「体内で一気に暖められた水分子は一瞬で破裂する。
 多量のマイクロ波を照射されたらそうなるのも仕方がないさ。
 今回は見逃すからさっさと逃げろよ。
 ただ………、次があると思うなよ?」
能力の使いすぎで少々熱を帯びてしまった腕を抑えながら彼女に宣告する。
「貴方にどんな事情があろうと悪い物は悪いんだ。
 そこに一切の特例はない。
 悪いことして生き延びるくらいだったら……死ね。」
明日がそう言って片手をストーカーに向けると彼女は一目散に逃げ出した。
殺さないで済んだ。
明日はその事に安心してため息を吐く。
119笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/14(日) 21:19:05.49 ID:EmhzJR760
「加賀美さん、もう終わりましたよ。」
家の外に逃げていた依頼人の女性を呼ぶ明日。
加賀美は明日の首に付いている痣と返り血を見て驚いたようだが彼には今そんなことはどうでも良かった。
「あ、ありがとうございました!
 もうあの人は来ないんですよね?」
「はい、一応ああいうのを退治するのが専門ですから。
 それじゃあ今日の仕事は終わったのでお暇しますね……。」
「あ、あの……!」
「すいません、ちょっとこれから仕事がまだ有るので……。」
バイクに乗って明日はそそくさとその場を離れてしまった。
確かにあれだけの怪我を負った以上、しばらくは再起不能だろう。
あとはあの都市伝説のことを「組織」に告げておけば問題は無い。
そう考えた明日は一仕事終えた満足感と共に家路についたのである。
【電磁人の韻律詩18〜本日の依頼一件〜fin】
120都市伝説4コマ風劇場(飴ちゃんの受難) (代理):2010/03/14(日) 21:21:09.76 ID:EmhzJR760
ア「暇だしトランプしようよ!」

飴「七並べですか」
幽「他のもやるけどね」

数分後
飴(全てのカードがすぐ出せる・・・勝った!)
サ「んー」

サ「ジョーカー使うねー、ほらほらハートのQ出して♪」
飴「・・・・・・ぇ゙」
一位、サキュバス 最下位、雨村在処
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 21:24:16.49 ID:qCEkQnIF0
ちくしょう、お隣さんに捕まっててスレ見れなかったぜ支援!
122都市伝説4コマ風劇場(飴ちゃんの受難) (代理):2010/03/14(日) 21:25:29.79 ID:EmhzJR760
飴「・・・・・・・・・」ズーン
幽「次は神経衰弱でもしようか」

飴「あんまり自信ないなあ」ペラッ
サ「当たらないー!」ペラッ

ア「ほい、次はこれとこれ。それとこれが4であれは・・・」ペラッペラッペラッペラッ
飴「な、なんでそんなに分かるんですか!?」

ア「え?カードの傷で分かるじゃん」
皆「「「いやわからないよ普通」」」
一位、アクマ 最下位、幽霊くん(床からカードを見たので反則負け)

123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 21:30:54.20 ID:qCEkQnIF0
代理乙でしたー!

ちくしょう、ネタを書こうと思ったのに思わぬ伏兵が居たもんだぜ…
なんとか書き上げたいが…苦しいなぁ
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 21:33:35.93 ID:EmhzJR760
>>123
なぁに、2,30分あれば何とかなるさ
125都市伝説4コマ風劇場(飴ちゃんの受難) (代理):2010/03/14(日) 21:36:00.48 ID:EmhzJR760
飴「大富豪やりませんか?」(これなら勝てるかも)
ア「おっけー」

飴「・・・これで決まりです!Aの革命!!」

飴(よし!これでこの回は勝っ)
サ「9の革命♪」
飴「・・・・・・ぇ゙」

一位、サキュバス 最下位、雨村在処
飴「またこの展開!?」

126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 21:43:28.50 ID:3ir1K/iR0
支援

サ「罰ゲームターイム♪」
飴「やっぱり・・・・・・」

サ「今回はこれっ!メイド服を着ましょう☆」
ア「ちなみにメイドイン姫さんね。メイド服だけに」

サ「さあ飴ちゃん・・・・・・脱げー!!」
飴「あ、ま・・・どこ触って・・・・・・にゃー!?」

キャー!!ワー!?
幽「メイドさん萌えー!」
ア「疲れたな、昼寝しよっと」


飴ちゃんの受難は続く・・・・・・・・・
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 21:48:02.41 ID:XA60u9A60
アクマの人乙でした!
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 21:52:08.38 ID:qCEkQnIF0
アクマの人と、代理乙です!
130ホワイトデーネタを書き散らすテスト ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 22:00:50.03 ID:EmhzJR760
 3月14日、ホワイトデー
 ようやき、男の姿に戻った黒服
 仕事で忙しくとも、今日と言う日がホワイトデーである事は、きちんと覚えていた

「はい、望さん、詩織さん、どうぞ」
「あ、ありがとう」
「ありがと、黒服」

 仕事から帰ってきた黒服は、望と詩織に、バレンタインにもらったチョコのお返しを渡した
 ぽ、と望がほんのりと頬を赤らめた事に気づいて………は、いないだろう、この天然記念物クラスの鈍感は
 どうやら、翼にもお返しを渡すつもりのようで、台所の掃除をしていた翼の元に向かっている

「あ、マシュマロだ。望のもマシュマロ?」
「……いえ、キャンディね」

 可愛らしい飴玉が、瓶の中で綺麗に輝いて見える
 黒服からもらった物なら、なんでも嬉しくて、自然と望は笑みを浮かべた

 ちゅうちゅちゅう
 おこぼれを狙ってか、ノロイが近づいてきている事にも、気づかない

「キャンディね……ねぇ、望、知ってる?」
「何をよ?」
「ホワイトデーのお返し。マシュマロは「ごめんなさい」って意味で、本命へのお返しはキャンディらしいわね?」

 ………
 …………
 え!?
 思わず、ぼぼぼぼ、と頬を赤らめた望だったが
 ぷるぷる、慌てて首を振る
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:01:59.78 ID:qCEkQnIF0
支援!
132Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/14(日) 22:02:14.83 ID:XA60u9A60
皆様もろもろ乙ですだー!
何故か最近リアルがにわかに忙しい

>>88
舞が直希に赤面させられるのは翼のアレな写真を撮りまくった罰だな、うん。

それでですね、もし御迷惑でないならこの後の続きのシーンを書かせていただきたいのですがどうでしょう?
内容的には玄宗姉弟宅のシーンの続きからで、
・Tさん、セイレーンについて話すついでに、という建前でDさんからマドカについての調査結果を電話で聞く
・リカちゃん、洋服をもらう
・舞、呻いてるだけ

の三展開になると思います


セイレーンの事に対しては本題の呼び水にするだけなので軽く話す程度で
マドカについても調査結果を聞くだけで問題の内面にまでは踏み込みません
133ホワイトデーネタを書き散らすテスト ◆nBXmJajMvU :2010/03/14(日) 22:02:30.63 ID:EmhzJR760
「く、黒服が、そのあたりの意味、わかってると思う?」
「さぁ?でも、全員に同じ物じゃなくて、別々の物、って辺り、意味があってもいいと思わない?」

 楽しそうに、からかうように言ってくる詩織
 うぅ、と赤くなりながら…いや、でも、変に期待しすぎてもいけない

 ただ、お返しをもらえただけで、嬉しいのだから
 望は大切そうに、キャンディの入った瓶を抱える

「…本当、もっと強引にいかないと気づかれないわよ?」
「煩い」

 横槍を入れてきた詩織を睨む望
 …大体、だ

「マシュマロとキャンディの意味がそうだったら、クッキーはどうなのよ?」
「…ん?」

 ちらり
 二人が、翼と黒服に視線をやると
 どうやら、翼が黒服から受け取ったのは、クッキーのようで
 ………

 つつつつつ、と
 誤魔化すように視線をそらしてきた詩織の様子に
 はぁ、と望は小さく、呆れたようにため息をついたのだった


終われ
134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:02:53.96 ID:rVtDzj4d0
ニヤニヤ、しえん
135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:04:00.90 ID:EmhzJR760
はないちもんめの人に土下座しつつ、本日までに書くと決めていたホワイトデーネタラストでしたー
よし、これで明日、遠慮なく事件本格化編に入っていける!
それまでに書くと決めていたネタは全部かけた、はず

>>132
はい、続き書いてくださるなら是非!!!
舞を恥ずかしがらせまくったことに関しては土下座なんだぜ
うん、直希に悪気はないんだ、あれでも
136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:06:50.92 ID:XA60u9A60
変なタイミングでやっちまったよ乙でしたー!
今日投下し過ぎだろう花子さんの人w
すげえwwwww

>>135
どうもです!
他、細かい指定(特に情報関連)、こういうシーン書いて見れ等あったら是非
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:09:47.13 ID:EmhzJR760
>>136
>今日投下し過ぎだろう花子さんの人w
だって、昼間は人いなくて寂しかったんだもん
ついつい書きたくもなるさ、味気ない保守じゃなく

>他、細かい指定(特に情報関連)、こういうシーン書いて見れ等あったら是非
あ、そうだ
翼が名乗っている「日景」と言う苗字に関して、Tさんが学校町ではわりと古くからある旧家の家名である事
また、政治家なども出していて、あちこちに影響力を持っている家である事に気づいてくれるとちょっと嬉しいかも、と言って見る
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:13:11.81 ID:rVtDzj4d0
支援しようとしたら終わってたとか……ともあれ、乙でした。

さーて、ちょっくら投下しますかね。
139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:13:35.79 ID:XA60u9A60
>>137
了解です!
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:14:04.45 ID:EmhzJR760
>>138
wktk支援開始!
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:15:28.73 ID:qCEkQnIF0
支援だぜ!
…もう、今日中の投下は諦めたよ
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:16:08.03 ID:XA60u9A60
支援体制
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:19:20.37 ID:cttGJwvC0
クッキーはどうなんだろう? と首をひねりつつ二重に(もちろん舞と望に)ニヤニヤしております

久々に来たら事態がものっそい進展してて吹いた。
なんか浦島太郎にでもなった気分だ・・・
144残された思いの読み手 ◇caHoDnkdag:2010/03/14(日) 22:19:22.84 ID:rVtDzj4d0
やって来た他の黒服たちに、死体の処理などを任せ2人はその街を立ち去っていた。
能力によって読み取った情報を本部に伝えた所、此方に来て詳しく話せと言われたからだ。

「や〜。ビックリしましたねぇ」
「そうだな。《七人みさき》何て大物が居たなんてな」
「いえ。それもですけど、ビルの方ですよぉ」
「そっちか……」
話し合う《残留思念》の黒服ことS-No.560と、担当契約者である《女の勘》の女性。
初めは大量の死体に注意を奪われていたのだが、暫らくしてそれ以外にも気を向けるようになった。
ふと、少し離れた建物に目をやると眼前のソレと同じ位とんでもない物が在った。
ビルのフロア1つが、そっくりそのまま消し飛んでいたのだ、まるでだるま落としの様に。

「あれも、《七人みさき》の仕業なんですよね。大丈夫ですかねぇ」
「何がだっととと」
不意にSが声を上げる、これは彼らの現在の状態が原因に有る。
移動のために、女性の運転するバイクに2人乗りをしており、先程はカーブで少しばかりバランスが崩れたのだ。
妙齢の女性である《女の勘》の契約者に、後ろから抱きついている黒服の姿は、一部の人間には羨望の対象になるかもしれない。
「えと、ですね。今の現状って、《悪魔の囁き》が猛威を奮ってるし他にも厄介な事があるでしょう。その上に、《七人みさき》じゃないですかぁ」
「大丈夫だろう。他の件は兎に角、《七人みさき》に関しては対策を思い付いたからな」
Sのその言葉に女性は驚いた。大勢の人間を一度に相手取り、建物の階一つを消し飛ばした《七人みさき》。
詳しくは分らないが、その戦力がかなり高い事は簡単に想像することが出来た。
それをどうやって、倒すつもりなのだろうか?
145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:19:43.09 ID:qCEkQnIF0
支援!
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:19:56.89 ID:EmhzJR760
>>141
諦めたらそこで試合終了だって身内が言ってた
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:20:40.23 ID:XA60u9A60
支援
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:22:10.15 ID:qCEkQnIF0
>>146
姉に叱咤されつつ修羅場を乗り切る花子さんの人の姿が脳裏によぎった
俺、がんばってみるよ支援!
149残された思いの読み手 ◇caHoDnkdag:2010/03/14(日) 22:22:25.39 ID:rVtDzj4d0
※トリップって、避難所の奴をそのままコピペして良かったんだろうか?

そんな女性の疑問に気付いたSが、補足するように声をだす。
「あぁ。対策っつても、本当に効果が有るか分らんけどな。
 ヒントを出すとしたら《七人みさき》に取り込まれるのは《七人みさき》に“殺された人間”だけって事だな」
「それってどう言う……」

ダーン、ダーン、ダーン、ダン、ダン…………………

突然、ボールの弾む音が、女性の言葉を遮るように聞こえて来た。
それも、全く音が小さくなる気配が無い。バイクはそれなりのスピードで走っているのにだ。
音のする方に、Sが眼をやるとそこには。
「《ドリブルババア》かよ。厄介なのに会っちまったか?」
「っちょ、私達2人とも戦闘は専門じゃ無いですよ!? しかもバイクに乗ってる最中ですしぃ」
バスケットボールをドリブルしながら自分達と同じ速さで走っている老婆がいた。
老婆はバイクの真横にピッタリと張り付きながら、2人に向かってニタリと笑う。
《ジェットババア》や《100キロババア》等の亜種として知られるのが、この都市伝説だ。
だが、その2つと《ドリブルババア》には、大きな違いが有る。それは、ボールをぶつけて来ると言う事だ。
ボールを受け取ればハンドルから手が離れ、無視すれば体に当てられバランスを崩す。どう対処しても質の悪い都市伝説である。

「大丈夫だ。1人ならキツイかも知れんが、幸い今は2人いる。お前はそのまま運転を続けてろ。俺が処理する」
「そ、そうですか。分りましたぁ」
女性は運転に集中するために、《ドリブルババア》から目を離して前方を見直す。
一方Sは、女性の体から片手を離しスーツの内側から何かを取り出した。それは、片手に収まるサイズらしく見る事は出来ない。
「さて、こいつで如何にか出来るか?」
確認するようSは、手の中のソレをいじる。そして、睨みつけるように老婆を見やった。
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:22:45.88 ID:EmhzJR760
しえーん
トリはきちんと入力しないと、◆が◇になっちゃって本人証明にならないぜ
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:24:39.43 ID:XA60u9A60
支援!
>>150
あ、ホントだ……
152残された思いの読み手 ◇caHoDnkdag:2010/03/14(日) 22:25:21.69 ID:rVtDzj4d0
「ハーイ! 若いの、元気してるかい!!」
「…………」
老婆とは思えないテンションで、《ドリブルババア》が喋りかけて来た。
まぁ、バスケットボールをドリブルしながらバイクと併走する様な、ハッスル婆ちゃんだ可笑しくは無いかも知れない。
「どうしたんだい?! 黙っちゃって、返事ぐらいしなよ!!」
「……いや。テンションの高い、婆さんだと思ってな」
行き成りのハイテンションに驚き、黙ってしまったSが、《ドリブルババア》の2回目の言葉に、呆れたように答える。
運転をしている女性も、同じように呆れて居るのが感じられた。
「さて。見逃してくれ、と言いたい所だが、どうせ無駄なんだろう?」
「そーの通りさ。んじゃ、喰らいなぁ!!」
そう言うと同時に、老婆はボールを投げつけようと腕を振りかぶった。

「断るに決まってんだろう。思念開放」
握っていた手を開き、Sはそう告げた。
開けられた手からは、金属製の何かが数個バラバラと零れ落ちる。
それは……使用済みの銃弾だった。
「そんな物で、何をする気だい?」
突然のSの行動にタイミングを逃され、ボールを投げる姿勢のまま止まっていた老婆が怪訝な表情を浮かべる。
銃弾は《ドリブルババア》に当たる事も無く、後方へと流れて行く。意味のある行動とは思えなかった。
今度こそ、ボールをぶつけ様とした。が、それは叶わなかった。
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:25:35.64 ID:qCEkQnIF0
支援!
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:26:36.79 ID:EmhzJR760
しえええええん
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:29:00.27 ID:cttGJwvC0
しえん!
156残された思いの読み手 ◆caHoDnkdag :2010/03/14(日) 22:31:25.26 ID:rVtDzj4d0
何故ならば、遥か後方へと流れ去って行った筈の弾丸が、《ドリブルババア》を背後から撃ち抜いたのだから。
背後からの不意打ちにより、バランスを崩した《ドリブルババア》はボールを取りこぼしてしまった。
「何、だい?! どういう事だい、これは」
驚愕と困惑の混じった声を出す、《ドリブルババア》。
無理も無いだろう。何の変哲も無い、捨てる様にばら撒かれた銃弾が自分に向かって襲い掛かる等普通では考えられない。
だが、その普通では無い事を起こすのが都市伝説の力……なのだ。

ここで、《残留思念》と言う都市伝説に付いての、簡単な話をしよう。
この能力は、言うなれば思念(記録)を読み取る力の事だ。そこには、生物・無生物の関係は無い。
さらに無生物の場合は、込められた思念を開放する事によって、それを実現させる事が出来るのである。
そして、今回Sが使ったのは、かつて都市伝説を攻撃するために使用された銃弾であり。
そこには、都市伝説を攻撃すると言う思念がこびり付いていたのだ。
故に、その思念を開放された銃弾は《ドリブルババア》を狙い攻撃したと言う事だ。

「よし! 今のうちだ、全速力で引き離せ!」
倒すまでには行かなかったが、銃弾に怯み老婆が動きを止めた事を確認したSは、女性にしがみ付き直しそう言った。
それに返事をする事無く、女性はバイクのスピードを限界まで上げる。
これで、バイクと《ドリブルババア》の距離は大きく離されていった。
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:32:18.45 ID:qCEkQnIF0
支援!
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:32:51.86 ID:XA60u9A60
支援
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:33:10.09 ID:EmhzJR760
しぇーん
160残された思いの読み手 ◆caHoDnkdag :2010/03/14(日) 22:33:24.70 ID:rVtDzj4d0
「はぁ、失敗かい。ま、良いさ次の獲物を狙うとするかね。おぉ、痛い」
遠ざかって行くバイクを見送りながら、《ドリブルババア》は諦める様にそう言い。
銃撃による痛みに顔を顰めながら姿を消していった。

《ドリブルババア》を撃退する事は出来たが、別の都市伝説に襲われる可能性が無いとも言い切れない。
2人の乗ったバイクは、急ぐように目的地である組織へと走っている。

続く
161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:34:46.77 ID:qCEkQnIF0
支援
162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:36:48.52 ID:EmhzJR760
七人みさきの人様乙でしたー!
ドリブルババア元気だなwwwwwww
そのうち、誰かに退治されるんだろうか
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:38:48.05 ID:qCEkQnIF0
おっと乙でした!

うん、俺の頭脳じゃ七人みさきへの対策が思いつかないんだぜ…
いずれ七人みさきと戦うときをwktkしてます!
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:38:54.03 ID:XA60u9A60
乙でした!
元気な老人は良いなぁ
165残された思いの読み手 ◆caHoDnkdag :2010/03/14(日) 22:40:04.90 ID:rVtDzj4d0
はい、前回の七人みさきラストに出て来た黒服と担当契約者の話です。
このまま2人は、何事も無く組織の施設へと辿り着ける筈です。
それから、組織内にて《七人みさき》についての説明にいきます。


《ドリブルババア》については、今後も出没して行く事でしょう。
このハッスル婆ちゃんは、皆さんご自由にお使いして結構です。
166昨日(今日)深夜のテンションで書いてたらなんか出来上がってた:2010/03/14(日) 22:40:37.71 ID:tLjPTry+0
大きな廃工場
その前に俺らは立っていた
「ここが例の場所です」
横にいる黒服の女が言う ぶっちゃけ例の場所と言われても目的がちゃんといわれてないのでよくわからない
まぁ、どうせ敵の排除だろう・・・・・・いや待てよ?
もしかしたらこの廃工場の中には全裸の美少女がいるかもしれない!
「いる」か、「いない」か、確立は五分五分・・・
期待をしながら工場内に入り、あたりを見回す
左 いない 右 いない 上 いない 下 いない
「はっ そうか、後ろに・・・」
そう思って振り向くとそこには
 大男がいた
「・・・はい?」
疑問の声を漏らしている間に大男の持つ斧の刃が迫る
それを後ろに飛んで避けた
・・・美少女じゃない!てか女じゃない!全裸でもない!いやおっさんの全裸はいらねぇよ!
「畜生騙された!!ふざけんな!!」

167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:41:39.90 ID:EmhzJR760
しえん!!
168昨日(今日)深夜のテンションで書いてたらなんか出来上がってた:2010/03/14(日) 22:42:40.70 ID:tLjPTry+0
悪態をつきながら次々と振り下ろされる斧を避け続ける
大男の正体は恐らく「ベッドの下の大男」だろう
どうせベッドの下に来るんなら可愛い女の子とかにしろよ!なんだよ大男って!てかこの周辺にベッドなんぞねぇのになんでいるんだよ!
「・・・とりあえず」
美少女だったらいろいろと(主に性的な(ryを)死なない程度にやったあと逃がすつもりだったが、大男なら話は別だ
〜♪ あまりうまくない口笛を、遠くへ響かせるようにして吹く
今の時間帯は丑三つ時 つまり夜
「夜に口笛を吹くと蛇が来る」 俺の契約した都市伝説の一つ
工場の天井を突き破り、現れたのは人間の大人ほどはある大蛇
降ってきたそれの尻尾を掴み、もう一つの能力を発動する
すると、大蛇は巨大な刀と化した
「名刀は蛇に変身する」 それがもう一つの契約した都市伝説
刀は蛇に変わり、またその逆もある
得た能力は「蛇を刀に変える」 名刀なのかどうかは知らんが
蛇なんぞ今の時代殆どお目にかかれない 故に普通ならば使用が難しく、使用難易度と強さは比例するためかなりの力を有している
しかし、俺は「夜に口笛を吹くと〜」で簡単に蛇を出現させることが出来るのだ
振り下ろされた斧を刀で止めそのまま弾き飛ばす
斧は回転しながら宙をまい、遠くの地面に刺さる
斧が無くなった大男へ、俺は思いっきり刀を振り下ろした

鼻歌を歌いながら帰路を歩く
後始末は黒服の女がやってくれるらしい なんでもそういうものに特化した能力の都市伝説と契約しているそうで
にしてもお礼もいわず帰されるとは こんどなんかして仕返ししてやる もちろん性的な(ry
あの鉄化面が崩壊するのが楽しみだぜ
だからそれまで俺は死なん 絶対に生きてなんか放送できないようなことをたっぷりとしてくれる
・・・それまで俺は死なん
          
   めっちゃ中途半端になったけど終わりでいいよもう
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:44:52.69 ID:qCEkQnIF0
支援しようと思ったら終わってた、乙でした!

>「いる」か、「いない」か、確立は五分五分・・・
それはいろいろと違うwwwwwwwww
170昨日(今日)深夜のテンションで書いてたらなんか出来上がってた:2010/03/14(日) 22:45:27.85 ID:tLjPTry+0
フハハハハハハハハハハ
駄目だコレ すごく駄目だコレ
変態書こうと思ったらよくわからんことになったよ

あ、この変態は一応使用自由ですのでー
・・・自由って言っても誰が好き好んで使うんしょうね コイツ
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:45:31.24 ID:EmhzJR760
深夜のテンション乙!!
はっはっは、主人公よ
このスレでは、美少女よりも全裸兄貴の方がそう言うときの出現率は高いんだ
掘られなかっただけよしとしようぜ!!!
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:47:53.37 ID:cttGJwvC0
またエロスの申し子が・・・

なんかアレだ、ものすごい前向きなシュレディンガー的思考だなwww
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:48:31.40 ID:rVtDzj4d0
乙でした。
174昨日(今日)深夜のテンションで書いてたらなんか出来上がってた:2010/03/14(日) 22:57:54.67 ID:tLjPTry+0
おまけ?
「はっ!待てよ・・・もしかしたらあの大男は実は幼女が魔法で変えられてしまったものなのかもしれない
畜生!それだったら殺さなければよかった!いや、でもどうやって魔法を解くんだ?・・・そうだ!魔法をかけたやつをコテンパンにしてやればいい!
いや!でももしその魔法をかけたやつが美少女魔法使いだったら(ry」

変態って止める物・者がないとひどいことになるんですね
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 22:58:49.26 ID:EmhzJR760
>>170
>あ、この変態は一応使用自由ですのでー



 …帰り道、彼は思った
 そう言えば、「組織」の黒服で巨乳の奴がいると聞いたことがあるような
 しかも、黒スーツの下のその胸は確実にブラをつけておらず、大分エロい事になっているとか
 是非、顔をあわせて性的なことをしたいなぁ、と考えた


 彼は、知らない
 その黒服は、うっかり二度も女体化させられたが、元々男である事を
 彼は、知らない
 その黒服が、とっくに男に戻っている事実を


 そられの事実を知らないまま、彼はまだ見ぬ巨乳黒服に思いを馳せるのだった



こうですか!?
わかりません!!!!
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 23:18:13.93 ID:4EUWDzx+0
えぇい、、またフリーズかおれのMeたん
177ホワイトデーの出来事 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/03/14(日) 23:24:23.13 ID:4EUWDzx+0
3月14日、ホワイトデーである
逢瀬佳奈美は先月のバレンタインデーに、縁のある男性数名にチョコレートを贈っているのだが
『組織』での彼女の担当黒服であるHと、近所の公園でよく遊んでいる手塚星
年齢の差はあれど、二人とも出会えば何かとセクハラ行為に及ぶ困った男性である
かといって縁を切りたいほど悪い人間ではなく、セクハラ以外の面ではむしろ良い人であるのが更に困った存在なのだ
そんな二人はタイミングもあってか今まで顔を合わせる事は無かったのだが

―――

「あれ、カナお姉ちゃん何やってんの?」
「はわっ!? せ、星くん!?」
年上の男性に頭を撫でられている状況を知り合いに見られて、びくんと身体を竦ませる佳奈美
「ん、知り合いか?」
「う、うん、近所に住んでる子! どうしたのかな星くん!?」
わたわたと慌てふためき上擦った声を上げる佳奈美
「……誰、その人?」
とびっきりに胡散臭いものを見る目と、警戒心ありありの低い声で訪ねる星
「あ、怪しいけど怪しい人じゃないよ? 怪しいけどあたしのバイト先の人でね、怪しいけどすっごくお世話になってる人なんだよ?」
「どんだけ怪しいんだよ俺」
「黒ずくめの人は一般人の感覚だと怪しいよ?」
親しげに話す二人の様子を見てもなお、星は訝しげにHを睨み付ける
「お姉ちゃん、これホワイトデーのお返し」
小さい紙包みに入ったそれを押し付けるように渡し
「帰ってから開けろよ! そいつの前では開けるなよ!」
「へ? 何で?」
「いいから! それじゃ俺は用事あるから!」
そう言って駆け出す星だが、途中でぴたりと足を止めていきなり叫ぶ
「お姉ちゃんは俺んだからな!」
「ちょ、星くん!?」
言うだけ言っていなくなった星に、佳奈美は困ったなーといった表情で頬を掻く
178ホワイトデーの出来事 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/03/14(日) 23:25:30.85 ID:4EUWDzx+0
「マジで許婚とかなのか?」
「ご近所付き合いで仲は良いけどそんな事ないよ!? よくスカートめくられたりするぐらいで!」
「そこまで全力で否定せんでもいいだろ、可哀想に」
「むう……でもあたしみたいなのに拘ってちゃダメだと思うんだよね。将来有望だと思うし、もっと良い人に出会えると思うんだよね、あの子なら」
「お前な、自分を卑下するのは悪い癖だぞ?」
「そうは言われてなー、綺麗とか可愛いとかそういう芸風じゃないし、身体だって女らしさってのが……って何言わせるのー!?」
「いや今のは俺のせいじゃないだろ。最近ノリツッコミ多いぞ」
そう言って笑いながら佳奈美の頭を撫でるH
「お前は自分で言うほど魅力が無い訳じゃない。もう少し自信を持っていいと思うがね」
「自信かぁ……一番苦手な分野かもしんない」
「大丈夫だよ、気長にやってけ。さて……俺もそろそろ帰るかね」
「あ、うん。騒がせてごめんね。あと」
ホワイトデーのプレゼントを片手で抱え、不安げな顔でHの腕に縋りつく佳奈美
「ちゃんと休んでね? 無理しちゃダメだよ?」
「心配すんな、俺はそんなに仕事熱心じゃないっての」

『詳しくは言えないんだけどさー』

ある日、鏡の中の自分の一人が言った事

『Hさんいなくなったら、あたしの生存率50%切るかんね?』

今までどれだけ助けられてきたかを思い出すだけで、その数字はむしろ過剰ですらあると理解できる
何故それを鏡の中の自分が告げてくるのかを考えると、黒服Hの身に何かがある可能性が高い
「あんまり行った事ないけど、『組織』に行って聞いてみたら何か判るかなぁ」
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 23:29:51.74 ID:4EUWDzx+0
もう、みんな寝たよな?
今夜はもう投下ないよな?


よし、おやすみー
明日もスレが残っていたら幸せだ!!!
180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 23:29:51.91 ID:qCEkQnIF0
三面鏡の人と代理乙!

私はもう眠気が限界だ…
後は最後の1レスと全体の見直しだけだし、明日には投下したい…おやすみ
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 23:37:50.39 ID:tLjPTry+0
保守
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 23:42:43.20 ID:3ir1K/iR0
保守
183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 23:47:38.06 ID:tLjPTry+0
君が!起きるまで!僕は保守するのをやめないっ!
いや無理でしょうけど
184以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 23:58:25.67 ID:cttGJwvC0
佳奈美嬢モテ女説をッ俺はここに提唱するッッ!

深夜は変なテンションになるぜ・・・眠気を我慢してるとなおさらな!
185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 00:04:03.24 ID:1UMLSTaB0
保守!
186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 00:30:30.68 ID:3WlJMQi40
187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 00:52:32.43 ID:3WlJMQi40
188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 01:11:12.01 ID:Da7wNJR30
>>184
>佳奈美嬢モテ女説
このモテは、弄ばれる(性的&ギャグ的)のモテですか?
189ソニータイマー:2010/03/15(月) 01:13:49.02 ID:JvNd2Xe90
「声優の重要性」
とある男女2人が都市伝説と戦っていた。が、カップルとは違う。少し似通った2人。そう、彼らは二卵性双生児。名前は
中人本規(なかひと もとのり)と中人釘実(なかひと くぎみ)。彼らが戦っているのは『首なしライダー』。
本規「まずいねー。これは能力発動しないと…」
釘実「確かに…。やるしかないわね」 (そういうことなら、私に任せるネ!!)
釘実の頭に某ジャンプ漫画の似非中国娘の声が響く。彼女の契約した都市伝説は『釘宮病』。
「フハハハハハハハ!!! お前たち人間が俺に勝てると思っているのか!」
少し噛ませ的な台詞を吐く首なしライダー。
釘実(そうね…。ここは戦闘能力の高い貴方に任せるわ。“K型”)
釘実(K)「ほあたアアアアアアアアアアアアアア!!!」
某似非中k(ryっぽい掛け声を出しながら首なしライダーを蹴飛ばす。『釘宮病』の能力のひとつ、釘宮理恵が中の人をしているキャラの能力の使用である。
本規「ぶるあああああああああああああああ!!!」
突然渋い声になる本規。そして飛ばされてきたライダーを攻撃する。彼の契約した都市伝説は『C.V.若本』。能力は若本ボイスになり戦闘力が上がる、と言うものである。
「なめるなああああ!!!」
が、バイクを器用に使い回避する。そして、ピアノ線を出し絞殺しようとする。しかし、
本規「骨まで砕けろぅぅぅぅぅぅ!」
本規が強烈な一撃を叩き込む。これは流石に避けられない。
釘実(今のうちに…行くわよ“L型”!)「バカバカバカバカバカバカバカァーーーー!!!」
首なしライダーの耳にルイズ(ryの声が響き渡る。そして…
「今のは結構やばかtt…くぎゅううううううううううううううううう!!!」
感染した。首なしライダーが感染したのはL型ウィルス。ルイズ(ryの声や画像から感染する。そして、釘宮病の主な症状『定期的に釘宮ボイスを聞かずにはいられない』。
首なしライダーが感染したのを確認すると、釘実は黙った。これ以上釘宮ボイスが聞けなくなるように。最初のうちはまだ平気だったが、時間が経つにつれ禁断症状が出るようになる。
「う…く、くぎゅうううう…あの、声を…」
禁断症状で身動きが取れなくなった首なしライダー。動けなくなったのを確認し、中人兄妹はその場をあとにするのだった…


                    つづく
190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 01:36:51.65 ID:3WlJMQi40
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 02:12:42.46 ID:3WlJMQi40
192以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 02:46:49.57 ID:3z0ZICkM0
乙っすー
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 02:57:36.47 ID:wnmBD+ae0
ほっしゅっしゅ
194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 03:10:43.12 ID:Da7wNJR30
ほっしゅっしゅっしゅ
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 04:03:22.13 ID:Da7wNJR30
保しュ
196以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 04:19:57.99 ID:3WlJMQi40
197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 04:33:37.76 ID:wnmBD+ae0
私も書いてみようかしら。。。
198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 06:05:13.37 ID:wnmBD+ae0
199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 07:37:07.65 ID:1UMLSTaB0
ho
200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 07:58:37.55 ID:3z0ZICkM0
きゃっほー残ってたー
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 08:39:34.35 ID:3z0ZICkM0
ほっしゅほっしゅ
202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 09:44:52.55 ID:qCjc6nJv0
おお残ってたかほ

>>197
書いてみようぜ!
今まで小説なんか書いたこと無いのに、衝動に駆られて連載始めた私も居るし、大丈夫さ!
203以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 10:10:39.29 ID:uMNtxZgV0
おっはよー!
スレ残ってたいやっほぉおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!1


書きたいネタと、書くと宣告したネタ、それらの合計が6個に達している事が判明した俺を見てくれ、どう思う?
…ちゅ、昼食終わってもスレ残ってたら、本気出すんだからっ!!!!
204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 10:13:59.30 ID:qCjc6nJv0
>>203
凄く…旺盛です(執筆意欲が)

今日もこれから予定入りそうなんだよなぁ…とりあえず、保守しつつネタ書いてるぜ!
205以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 10:31:18.61 ID:uMNtxZgV0
>凄く…旺盛です(執筆意欲が)
問題は、書く時間なんだぜ…とりあえず、とっとと寝間着から服に着替えろおれ
206小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 10:37:37.80 ID:uMNtxZgV0
 佳奈美は困っていた
 自分を担当してくれている黒服Hの身に、何かあるのでは
 それを感じ取り、「組織」で聞けば、何かわかるかもとも思ったのだが

「…そう言えば、「組織」の建物、ってどこなんだろう?」

 黒服Hが以前、冗談めかして言ったことによれば「東京の地下全部が「組織」のものさ」と言うことなのだが
 …どうやって、そこにアクセスすれば良いと言うのか
 そう、佳奈美が悩んでいると

「……あれ、あの子……」

 自動販売機の前に立ち、何やら一生懸命、背伸びして手を伸ばしている少女の姿が、目に入った
 黒いゴスロリ服に、黒いレース生地の日傘を持った、小さな少女
 どうやら、自販機のジュースを買おうとして…上の方に、手が届かないようだ

 佳奈美は、あの少女に見覚えがあった
 バレンタインの日、突然現れて、チョコレートを渡してきた少女

(…確か、あの時)


『お前達、H-No.360が担当しておる契約者じゃな。それならば、間接的に妾の部下じゃ』


 そう、あの少女は言っていた
 つまり、あの少女も、「組織」の関係者で……どう見ても年下の少女にしか見えないが、きっと、「組織」の偉い人なのだろう
 そう判断して……佳奈美は、意を決して、少女に近づいて行った

207小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 10:41:14.59 ID:uMNtxZgV0

「……むぅ、手が届かないのじゃ」

 むむぅ
 自販機の前で、悪戦苦闘しているヘンリエッタ
 初詣の時以来、カードがつかえない状況もあるのだ、と学習し、紙幣も持ち歩いていたのだが
 …まさか、こんな強敵が存在するとは
 どうしたらよいものか、悩んでいると

「あの」
「む?」

 声をかけられ、顔をあげる
 そこにいた少女の姿に…ヘンリエッタは、おや、と声をあげた

「確か、お前は…」
「えと、Hさんに担当してもらってる、逢瀬佳奈美です。あなたは…」
「妾はヘンリエッタじゃ」

 H0No.360の担当契約者ならば、間接的に自分の部下である
 ならば、上司らしい態度をとらなければ

「ヘンリエッタさん、ですね」
「何、もっと気楽に話して良いのじゃ。この通り、妾は子供の姿じゃからの」
「そ、そう、かな?……それじゃ、その、えっと…ジュース、買いたいの?」
「うむ、あれが飲みたいのじゃ!」

 ヘンリエッタが指差したそれのボタンを、佳奈美が押してくれた
 やっと、ジュースを手に入れた!
 嬉しくて、ヘンリエッタは笑みを浮かべる
208小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 10:46:14.16 ID:uMNtxZgV0
「ありがとうなのじゃ」
「どういたしまして」

 ヘンリエッタの無邪気な姿に、佳奈美もにこりと微笑んできた
 …が、すぐに、どこか深刻そうな表情を浮かべてくる

「…む?どうしたのじゃ?」
「あの……Hさんの事について、ちょっと」

 …ぴくり
 ヘンリエッタは、わずかに体を跳ねらせた

「あやつが、どうかしたかの?」
「あの…Hさんって、最近、忙しいのかな?」
「む?…まぁ、近頃は学校町全体が騒がしい故、黒服は皆平均して忙しいはずじゃが」

 ヘンリエッタの言葉に、佳奈美はう〜ん、と考え込んだ様子で

「何だか、Hさん、ちょっと顔色悪いみたいだったから…休んでないのかな、って」
「…顔色が、悪い?」

 うん、と頷いてきた佳奈美


 自分の、前では
 そんな様子、見せてもくれていないのに


 一瞬、ヘンリエッタは表情を沈み込ませたが
 すぐに、笑ってみせる
209小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 10:47:59.49 ID:uMNtxZgV0
「なぁに、あいつなら、大丈夫じゃ。どうしても、忙しいからの。少し休めば大丈夫じゃろ」
「そっか、やっぱり忙しいせいなんだ」
「うむ。そうじゃ」

 ヘンリエッタは、じっと、佳奈美を見あげて
 …そして、力強く、続ける

「妾は、あいつの上司じゃ。あいつの体調を管理する責任が妾にはある。あいつが倒れそうな事になったら、必ず、妾があいつを助けてみせる」

 だから、と
 ヘンリエッタは、笑って見せた

「だから、心配する必要など、ないのじゃ。あやつも、お前を心配させたくないと思っているはずじゃ」
「う〜ん……そっか」

 うぅん、と
 まだ、悩んでいる様子の佳奈美ではあったが…ヘンリエッタが、あまりにもはっきりと断言するせいで、反論が出来ないのだろうか
 何とか、納得しようとしているようだった



「……H-No.360め」

 佳奈美と別れた後
 公園のベンチに腰掛、ジュースを飲みながら…ヘンリエッタは、ぽつりと呟く

「…どうして、妾にメンテナンスをさせてくれぬのじゃ……あの少女の言う事が事実ならば、すでに、体は限界に近いはずじゃと言うのに…!」

 …わかっている
 結局、自分は「頼られて」などいないのだ
210小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 10:48:44.93 ID:uMNtxZgV0
 ただ、利用されているだけ
 彼の復讐に利用されているだけだ
 自分もまた、彼の復讐対象であり……彼の復讐を果たす為の、駒でしかないのだ


 それを、ヘンリエッタはよくわかっている
 わかっていても、諦めきれない


 もっと、彼の役に立ちたい
 彼の力になりたい

 彼の唯一になりたい


 決して叶わぬ願いを、ヘンリエッタは抱え続ける
 自分が抱えた願いは叶ったためしがない、と自嘲しながら


 人間に戻る願いも
 彼の唯一になりたいと言う願いも


 きっと、決して叶いはしないのだ



to be … ?
211以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 10:49:32.24 ID:uMNtxZgV0
三面鏡の人に焼き土下座orz
昨夜の三面鏡の人のホワイトデーネタを見て思いついたネタのひとつでした
あとでも一個書くー!

だが、その前に歯を磨いて着替えて買出し行って昼食の準備をしてくるぜ!!
帰ってきてもスレが残ってますように!!
212以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 10:55:19.97 ID:qCjc6nJv0
投下乙でした!

戻られるまで保守したいが、残念ながら出かける用事が入ってしまった…
帰宅してもスレが残ってますように!
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 11:19:05.86 ID:3z0ZICkM0
書き終わんねえどうしようもねえ保守
214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 11:38:16.25 ID:+td3ByWQQ
ほしー
215以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 12:04:32.49 ID:3z0ZICkM0
ひるごはん作ってくるほしゅ
216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 12:19:26.96 ID:3WlJMQi40
乙です!
Hもだけどお嬢さんも死亡フラグが……貴重なロリば――――

保守しつつ質問を
・直希は日景が旧家であること、翼が当主の孫にあたる事等を知ってますか?
217以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 12:33:50.17 ID:tJFxqhzp0
ごちそうさまでしたー!

>>216
直希は、一応知ってますね
…実は、日景家の事について一番わかってないのは翼だし
218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 12:37:23.10 ID:3WlJMQi40
>>217
なんと、チャラ男自分家の事知らないのか……
よーし、用事から帰ってきて書けそうだったら今日中に書ききるぞー!
219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 12:43:59.12 ID:tJFxqhzp0
>>218
>なんと、チャラ男自分家の事知らないのか……
日景家の事は、母親の実家としか認識してないですね

翼「は?あのババアが名家の出身?んな訳ねぇじゃん」
 って感じなんだよ、こいつは…

>よーし、用事から帰ってきて書けそうだったら今日中に書ききるぞー!
wktk
さて、俺も書くぞー!!
220黒服H  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 13:02:31.42 ID:tJFxqhzp0
 少年、手塚 星にとって、それは警戒すべき相手だった
 想いを抱く年上の女性に近づく不審な男
 そうとしか認識できなかった


 だから、こそ


「よぉ、坊主」

 そう言って、その男が近づいて来た時
 少年は、激しい警戒感を示した


「そう、警戒するこたぁねぇだろ」

 くっく、と黒服Hは、少年の反応に笑って見せた
 …これはまた、随分と嫌われたものだ
 どうにも、G相手といい辰也相手といい、自分は同性相手には嫌われがちなのだろうか
 いや、G相手に関しては、ほぼ自業自得なのだが

「…何か、用?」
「あぁ、ちょいとな……お前さん、佳奈美のことをどう思っているんだ?」

 少年が浮かべた表情に、わかりやすい、とそう考えた
 子供だからこその、素直さ、正直さ
 自分にはもはやカケラも残っていないその要素が、酷く眩しく見える

「カナお姉ちゃんは、俺のお嫁さんだよ」
「まだ、結婚しちゃあいねぇだろ?」
221黒服H  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 13:06:45.49 ID:tJFxqhzp0
 意地悪く笑ってやれば、少年はむすっとした表情を浮かべてくる
 その反応に、黒服Hはくっく、とからかうように笑って

 −−−−−刹那
 真面目な表情で、少年を見つめる

「…それで?お前は、佳奈美を護れるのか?」
「え?」
「お前に、それだけの力があるのか?」

 彼女を好いているというのなら
 彼女を護れる程度の力は、持っていると言うのか?

「お前さんも都市伝説契約者のようだが。攻撃的な能力でもないんだろ?それは。彼女を護れるのか?お前は」

 少年を見下ろす黒服Hの表情は
 酷く真面目で、しかし、同時に酷く意地の悪い表情だ
 少年を、試しているかのような
 そんな表情にすら、見える

「まだ、子供だしな。お前さんは」
「−−っ、今は、まだ子供だけど!ちゃんと勉強して良い仕事に就いて、カナ姉ちゃんを幸せにしてやるんだ!」

 力強く、少年は言い切る
 その、強い意思が、真正面から黒服Hを見抜いた

「今は、まだ……ねぇ」

 少年は、まだあまりにも子供で
 その強い意志は、未来に向けたものだ
222黒服H  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 13:09:10.92 ID:tJFxqhzp0

 ……遠い、未来へ

「………それじゃあ、間に合わねぇんだよ」
「え?」

 黒服Hが呟いた言葉に、少年が眉をひそめる
 少年が浮かべた疑問符に答える余裕もなく……黒服Hはけほけほと、小さく咳き込み始めた
 口の中に、血の味が広がる

「…まぁ、いいや。忘れとけ、少年」

 何とか、血を吐き出す事はなく、黒服Hは少年を見下ろした

「……ただ、な。佳奈美と一緒にいたいなら、覚悟しとけ」

 色んな意味で、なと
 どこか意地悪く、笑って
 黒服Hはくるり、少年に背を向けて、この場を立ち去った



「……あー、辰也くらいの年齢か、せめて佳奈美と同じ歳だったら任せられたんだがなぁ……」

 そう、小さく呟かれたその言葉は
 誰の耳にも、届かなかった



to be … ?
223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 13:10:43.09 ID:tJFxqhzp0
午前中に引き続き、三面鏡の人に焼き土下座orz
昨夜の三面鏡の人のホワイトデーネタを読んで思いついたネタその2ですた
何か、書けば書くほど黒服Hの死亡フラグが強化されていっているような気がしないでもないのは気のせいだろう、きっと
224ネタ以外の何物でもない1レス (代理):2010/03/15(月) 13:30:31.23 ID:tJFxqhzp0
「あー、今日も疲れ……っあ!?」
俺にとっては聖域にも等しい、この世で一番安らげるはずの自宅のベッド。その下に見付けた理解の範疇を越えた存在に、俺は間が抜けた声を上げて動きを止めた。
「…………」
「…………」
ソイツも俺も、一言も発することなくただ見つめ合う。きっと視線を外した瞬間に間違いなくヤられる。そんな危機感に後押しされ、ベッドの下に潜むガチムチマッチョな男と目を逸らすことが出来なかった。
「…………あの……。ここに女性はいませんよ……?」
「俺はノンケでも構わず食っちまう男なんだせ?」
その返答に命以外の危険を覚えた俺は、考えるよりも早く部屋を飛び出し逃げたのだった。








……もしベッドの下の男がこんなんだったら怖いと思うんだ
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 13:38:40.83 ID:JvNd2Xe90
支援
226:2010/03/15(月) 13:50:11.74 ID:AnLkgXkTO
 皆様こんにちは、猿夢の運転手です。
 従業員の猿達と共に乗客の皆様に素晴らしい恐怖とエンターテイメントを届けるのが私の使命でございます。

 しかし、そんな私達はある問題に直面しております。
 『ネタ』が無くってしまったのです。

 『挽き肉』、『串刺し』、『活け作り』など各種様々なアトラクションを今まで用いて来たのですが
 最近、マンネリ化してきた事が否めません。

 折角ご乗車頂いたお客様からも「なんだまた串刺しか」とのお声を頂く事がございます。

227:2010/03/15(月) 13:52:10.35 ID:AnLkgXkTO

 そこで運転手である私が新しいアトラクションのヒントを探すべく現世に繰り出す事にしました。
 従業員も一緒に行きたいと駄々をこねたのですが東京の街中を猿の集団が闊歩するのはマズいので今回はお留守番です。
 今度日光にでも連れて行ってあげましょう。


 それはさておき、東京は秋葉原です。
 色んな格好をした人達が歩いています。 カオスです。
 アトラクションを求め近くの店へ入ることにします。


「これはこれは……」

 入った店はゲームショップだったようです。
 ゲームといえば幼少の頃にやったスーファミ以来なのですが。

「最近のゲームは凄いですねぇ…」
228:2010/03/15(月) 13:54:06.75 ID:AnLkgXkTO
 まるで映画のような滑らかな画面に思わず溜め息が出ます。
 折角なので店の片隅に置いてある試遊機で遊ばせて貰いましょう。

『ヒャッフー!』

 懐かしい赤い帽子の髭親父が画面を所狭しと走り回ります。
 技術は変わりましたが遊ぶ楽しさはあの頃のままです。すこし涙が出ます。

 何点かソフトを堪能した後、家路につきました。
 頭の中で今夜のアトラクションのアイデアが次々と浮かんでくるのを感じながら……。
229:2010/03/15(月) 13:56:07.16 ID:AnLkgXkTO
〜その夜〜

 今日もお客様は満員御礼。
 皆様の期待に応えるべく張り切ってマイクを取ります。

「え〜、次は〜、丸呑み〜、丸呑み〜」

 後方の扉が開き、中からピンク色の生物が現れたかと思うと乗客纏めて5人程を吸い込みはじめました。
 あっという間に全員を頬張ると星形に固められた人体を吐き出し去って行きました。
 お客様は大喝采です。

「次は〜、かたまり〜、かたまり〜」

 再び後ろの扉が開くと従業員が一つの球体を転がしながら入って来ました。
 球体は雪だまのように周りの物を巻き込みながら大きくなり、乗客の半分以上を巻き込んだ後、壁にぶつかり止まりました。
 巻き込まれたお客様も折れた首をもたげて大興奮です。

230:2010/03/15(月) 13:57:21.76 ID:AnLkgXkTO
「次は〜、首切り〜、首切り〜」

 ガッシャーンと窓を突き破って入ってきたのは数匹のウサギです。
 その長い耳を使って乗客の首をズバズバ斬っていきます。
 少し年のいったお客様もその懐かしい光景に頬が緩みます。


 そうこうしている内に夜明けの時間。
 今回の運行は大成功に終わりました。


 新しいアトラクションを追求し続ける猿夢では皆様のご搭乗をいつでもお待ちしております。
 それではまた。
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 13:59:21.69 ID:JvNd2Xe90
支援
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 14:08:08.22 ID:AdcpNFP30
またフリーズってたぜ畜生
猿の人乙でした!!
233悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 14:26:53.18 ID:AdcpNFP30
 どろりとそれが這い寄ってくる
 牙を隠し 爪を隠し
 それはゆっくり這い寄ってくる
 気づいた時にはもう遅い
 悪意は もうすぐ傍まで這い寄って来ている




                      Red Cape
234悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 14:30:35.39 ID:AdcpNFP30
 …それは、望と詩織が、ちょうど学校から帰っていた、帰り道で
 ちょうど、アルバイトを終えて「首塚」に向かおうとしていた翼と、たまたま顔を合わせた
 どうせ途中までは道が一緒だし、と三人で歩いていたのだが
 その最中に、「また」、コーク・ロア支配型の被害者たちの集団に遭遇した
 最近、随分と数が増えたような気がする
 とは言え、相手は身体能力などが強化されていると言っても、三人の敵ではない
 あっと言う間に、叩きのめした訳で

「く、くそっ……!」

 被害者達を操っていたコーク・ロアの契約者が、慌てて逃げ出す
 口封じを恐れてだろう
 何とか、逃げ切るつもりなのだ

「逃がすかっ!」
「あ……ちょっと、翼っ!」

 その契約者を追い、翼も走り出す
 今は、少しでも情報が欲しい状態だ
 逃がす訳にはいかない
 もし、口封じにかかってくる相手が現れたら、そちらも叩きのめせばいい
 翼はシンプルに、そう考えていた


 この、決断が
 さらに、己を追い詰める事になるなどと、予想もする事なく


「ちょっと、翼!」
「…っと、お前らも、付いて来たのかよ」
235悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 14:35:22.24 ID:AdcpNFP30
 追いかけていたコーク・ロア契約者を見失ってしまい
 辺りを見回すと、望と詩織が、翼の後を追いかけてきていた
 …何かあった時巻き込みたくないから、置いていこうとしたのだが

「一人で突っ走っても、ロクな事ないわよ。ただでさえ、あなた頭悪いんだから。相手の罠にでもはまったらどうする気よ」
「そうね。わりと重度の馬鹿だし」
「容赦ないなお前らっ!?」

 年下に容赦なく馬鹿といわれて、若干落ち込んでいる様子の翼
 しかし、落ち込んでいる暇などないのだ
 逃げた契約者を探し、辺りを見回す

「…向こうね」

 都市伝説の気配を感じ取った望が、路地の脇道を指差した
 そちらに向かって駆け出せば、見付かった事を悟ったのだろう
 隠れていたその契約者が、がたがたとまた逃げ出そうとしている音が聞こえてきた
 だが、今度こそ追い込む!
 そう考え、路地に飛び込むと


「ぁ……ま、待って、くれ……!」

 聞こえて来たのは、命乞いをしているコーク・ロア支配型契約者の、声と
 無数の、犬の唸り声

 見れば、コーク・ロア支配型の契約者が、無数の犬に囲まれていて
 その、向こう側に
 灰色のコートを着た4,50代程の男が、尾のない犬を従えて、コーク・ロア支配型の契約者を見下ろしていた
236悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 14:38:42.69 ID:AdcpNFP30
「……役立たずが」

 男は、小さく、見下すようにそう言って
 次の瞬間、犬達がコーク・ロア支配型の契約者に、襲い掛かった
 今から助けようにも、間に合わない

「っひ、ぎゃ……!?や、やめてくれ、朝比奈………っうあああああああああああああああああああああ!!??」

 絶叫の中、コーク・ロア支配型の契約者は、犬達に体を食い散らかされ、命を落としていった


「…翼?」

 立ち尽くしている翼に、望は小さく首を傾げた
 どうしたと言うのか
 まさか、この程度のスプラッタな状況に怖気づいた訳でもあるまい
 翼は、これくらいは平気なはずだ

 ……なら、どうして?

「………ぁ、あ」

 翼の、視線は
 犬達の向こう側…灰色のコートを着た男に、真っ直ぐ、向けられていて

「…………して」

 ぐ、と拳を握り緊めて
 翼は、その男を睨み付けた
237悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 14:41:39.59 ID:AdcpNFP30
「…どうして……っ、てめぇが、ここにいやがる……!」

 その声には、たっぷりの憎悪と
 恐怖と、困惑とが、混ぜこぜになっていた

 灰色のコートを着た男が、ゆっくりと、翼に視線を向ける
 男の仕草にシンクロするように、尾なしの犬も、翼に視線をやった

「…父親に対して、なんだ、その口の聞き方は……翼」

 ……ちち、おや?
 望ははっとして、翼とその男を見比べた
 あまり、似てはいない
 だが、翼の年齢を考えれば、彼の父親となると、あれくらいの年齢でおかしくないだろう


 以前、酒に酔って幼児退行していた時の翼の様子を思い出す
 家に帰りたくないと泣いていた姿
 翼が、両親を嫌っているのであろう事は、あの時にはっきりと感じ取る事ができた


 その、翼の嫌う両親の、その片割れが
 今、すぐそこにいる
 しかも、この状況は…

「あんた、本当に翼の父親なの?」

 詩織が発した、その疑問に
 男は、詩織を見ることすらせず、答える
238悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 14:44:40.69 ID:AdcpNFP30
「第三者が、口を挟むな」

 反論を許さない、そんな声
 その言葉を肯定と受け取り…望が、続く

「…あんたが、コーク・ロア騒動の、親玉なのね?」

 望が、男を睨みつけてそう言ってやれば………じろり、男は望を睨み付けた来た
 冷たい眼差し
 人を見下してくるその眼は、不快感しか感じない

「そうだ、と言ったら、お前たちはどうする?」
「………ってめぇ!」

 翼が、男を睨みつけている
 父親、だと言うその男を
 男は再び、翼に視線をやった
 ……コーク・ロア支配型の契約者の体を食い散らかした犬達が、一斉に翼を
 ………いや、望と詩織に、視線をやる

「無駄話をするつもりはない……来い、翼。お前は、私の下で私の言う事を聞いていればいいんだ」
「何を…!」
「…そうすれば、その子供達は、無事に逃がしてやるぞ」

 男の言葉に、翼はびくり、小さく体を跳ねらせた
 ゆっくり、ゆっくりと
 犬達が、近づいてきている
 ちらりと、詩織が背後に視線をやると…そこにも、いつの間にか犬が集まってきていて
 何時の間にか、囲まれてしまっていた
 強行突破は、できなくもない
239悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 14:48:32.90 ID:AdcpNFP30
 ただ、生傷のひとつや二つを覚悟しなければならない程度だ

「その子供達を傷つけることなく、逃がしてやるぞ」

 誘うような、男の言葉
 それが、翼の心を、揺さぶっている

「お前は、その子供達に傷ついて欲しくないのだろう?」
「−−−−−−っ」

 …こいつ、こちらの事情を知っている…!
 翼を見下してきているその男は、酷く残酷な笑いを浮かべてきた
 何が目的なのかは、わからない
 ただ、こいつは確実に、翼を自分の下において、何かやらせようとしている
 それは、確実にロクな事じゃない

「…翼、聞くんじゃないわよ」

 硬貨で作った鎖を手に、望はそう翼に告げた
 こちらを囲んできている犬達は、どうやら目の前の男の…恐らくは、都市伝説の気配がする、あの尾なしの犬に操られているのだろう
 だが、ただ操られているだけで、何か能力が付属されているようには感じない
 ならば、「はないちもんめ」の能力で、支配権を奪い取ってしまえばいい

 とにかく、翼をあちらに行かせてはならない 
 望は、そう判断した

 ……だが

「…本当、に……望と詩織を、傷つけない、か?」
「……っ翼!」
240悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 14:52:35.28 ID:AdcpNFP30
 翼が、尋ねた言葉に…男が、笑う

「あぁ、そうだ。父親のいう事が信じられないのか?」
「翼!聞くんじゃないわよ!!」

 駄目だ
 あの男は、信用してはならない
 望の本能が、そう告げてくる

 あれは……絶対に、信用してはならないタイプの男だ
 自分のためならば、平気で他人を利用し、裏切り、見捨てるタイプ

 男の……己の父親と、望の言葉に、板ばさみになって

「………」

 ……一歩
 翼は、男に近づいていった

「翼っ」
「……望、詩織。ちょっと、待ってろよ。すぐ、終らせるから」

 一瞬、振り返って、望と詩織に、そう言って
 翼は、ゆっくり、男に近づいていく
 犬達は、一応、望達に近づくのをやめて、止まっている
 途中、犬に食い散らかされた死体の横を通って……翼は、男の前に、立つ

 にやり、男は笑った

「…私の元に戻る気になったか、翼」
241悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 14:55:50.32 ID:AdcpNFP30
「………あぁ、そうだ」

 翼が、右手を上げて

 その右手で、男の顔を、鷲掴みにした
 じゅううううう……っ、と音をたて、煙があがる

「……そうとでも、言うと思ったか、糞親父が!!!」

 怒気の篭った声で、翼が叫んだ
 「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力が、発動している
 翼の体温が急上昇し、男の顔を鷲掴みにしているその手で触れられれば、火傷は必至だろう

「何の目的かは、知らねぇが……てめぇが、コーク・ロア騒動の親玉だってんなら!望達を傷つけようとするんだったら!!てめぇは、俺の敵だっ!!!」

 己の父親相手に、容赦ない攻撃を加える翼
 すぐにでも、男の傍に居る尾なしの犬が、翼に攻撃を仕掛けるだろうと、そう望は考えた
 己の契約者を、護ろうとするはずだ、と
 だから、そのサポートをしようとした
 だが

(…動かない?)

 尾なしの犬は、動かないどころか………ニヤリ、と笑っていた


「…それが、お前の能力か」


「っ!?」
242悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 15:01:19.18 ID:AdcpNFP30
 翼に、顔を鷲掴みにされて
 その顔を、高温で焼かれているはずの男が、口を開いた

「なるほど。通常ならば、これで勝負はついただろうな」

 男の手が、翼に伸びて

「だが、私には効かん」

 次の瞬間、翼は男に首をつかまれ、壁に叩きつけられた

「−−−−−−っが」
「翼!?」

 みしり、壁にひびが入る
 かは、と翼が血を吐き出したのにも構わず、男は翼の首を片手で締め上げ、その体を壁に押し付けていた
 翼に鷲掴みにされていたその顔は…火傷ひとつ負っていない
 翼の、「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力が…全く、通用していない

 自分の父親相手だから、手加減した?
 まさか
 翼は全力で能力を使っていたように見えた
 手加減などしていなかったはずだ
 ……ならば、何故?

 その答えを見つけるよりも、先に、男が口を開いた

「父親に手を上げるとはな………どうやら、お前の立場をわからせた方が良さそうだ」
「……!」
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 15:03:02.49 ID:OTvMi1sU0
支援
244悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 15:04:43.03 ID:AdcpNFP30
 望を、囲んでいた犬達が
 一斉に、動き出した

「殺せ」
「−−−−−やめろ!!」

 翼は男の手から逃れようとするが、動けない
 まるで、人間とは思えぬ強力で押さえ込まれ、身動きひとつ取れない
 その間に、尾なしの犬が遠吠えするように吼えて
 望と詩織を囲んでいた犬が、一斉に地を蹴った

「この…っ」

 鎖を、犬達に放とうとした、その時


 ころんっ、と
 望の足元に…石が、転がってきて
 石が光を放った瞬間、望と詩織の体は、光のドームに覆われた
 その結界に弾かれ、犬達は「ぎゃんっ!?」と悲鳴をあげる


「…パワーストーン?」

 ころん、と
 転がって、光を放っているそれは、パワーストーンだ
 黒服が、いつも持ち歩いている…

「動かないでください」
245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 15:06:25.92 ID:OTvMi1sU0
支援
246悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 15:08:34.85 ID:AdcpNFP30
 ぱきり、石が砕けた音がして…直後、黒服の、声が
 男のすぐ傍から、聞こえてきた
 光線銃の先端を、ぴたり、男のこめかみに突きつけた黒服の姿が…いつの間にか、姿を現していた

「…くろ、ふく」
「朝比奈 秀雄……コーク・ロア支配型騒動及び、悪魔の囁き騒動の、主犯として…あなたの身柄を、拘束します」

 銃を突きつけたまま、黒服は男に…朝比奈に、そう告げた
 黒服の言葉に、朝比奈に首を絞められたままの翼が、小さく体を震わせた

「翼から、手を離しなさい」

 黒服が、朝比奈を睨みつけている
 黒服にしては珍しい、はっきりとした敵意を、朝比奈に向けている
 …朝比奈は、黒服に視線を向けようともしない
 視線を翼に固定したまま、ゆっくりと口を開く

「…お前か。私の手元から、私の最高傑作である翼を、引き離したのは」
「翼は、物ではありません。あなたの所有物ではない」
「私の息子をどうしようが、私の勝手だ」
「……誰、が……てめぇ、の、息子だ」

 首を絞められた状態のまま
 その絞めてくる腕を掴み、翼が朝比奈を睨み付けた
 腕を掴むその手は、相変わらず能力で高温に達しているはずなのだが、朝比奈はその手でつかまれても微動だにしない

「てめぇなんざ、父親じゃねぇ……!」
「…何を言う。お前は私の息子だ」
「……違う!!」
247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 15:11:36.60 ID:OTvMi1sU0
しえ
248悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 15:12:39.35 ID:AdcpNFP30
 はっきりと、翼は叫んだ
 朝比奈を睨みつけるその目に、強い憎悪を浮かべて

「てめぇなんざ、父親じゃねぇ!家族じゃねぇ!!俺の家族は、黒服達だけだ!!!」
「…化け物と、家族ゴッコか」

 吐き捨てるように、朝比奈はそう口にした
 じろり、と、ようやく黒服に視線をやる

「化け物が。私の息子を、どうやって誑かした」
「ッ黒服を、化け物と呼ぶな!」
「…聞き捨てならないわね」

 結界が展開された中で、望がぼそりと呟いた
 …黒服を、化け物と呼んだ
 望には、それが許せない
 それは、翼も同じなのだろう
 朝比奈を睨む視線に、憎悪が強くなっていく

「化け物を化け物と呼んで、何が悪い。こいつは、人間ではないのだ」

 化け物、と
 嫌悪した声で、朝比奈はそう口にする
 その言葉に、動揺を見せる様子なく、動じる様子なく、黒服は朝比奈に銃口を突きつけ続けていた

「私のことをどう呼ぼうと、構いません……今すぐ、翼から、手を放しなさい」
「化け物風情が、私に口を出すな…貴様が銃を撃つのと、私が翼の首を折るのと、どっちが早いと思っている」

 …そうだ
 朝比奈は、翼の首を絞め続けている
249以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 15:14:08.05 ID:OTvMi1sU0
しえ
250悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 15:16:52.35 ID:AdcpNFP30
 人間離れした怪力が身についているらしい朝比奈
 恐らく、もう少し、力を入れれば……翼の首の骨は、あっさりと折られてしまう
 ぎり…と、朝比奈が、その手に力を入れたのか
 ぐ、と翼が苦しみだす

「っ翼!」
「銃を下ろせ。私も、息子を手にかけたくはない」

 苦しむ翼に、黒服が迷いを見せた
 だが

「……っだか、ら……俺は、てめぇなんかの息子で、あるつもりはねぇ……っ!」

 首を絞められながらも、翼は叫んで
 己の首を絞めてきている、その腕から…何時の間にか、翼の手は離れていて
 じゃらり
 腰から下げていたチェーンベルトを、掴んでいた

 っひゅん、と
 放たれたそれが、朝比奈の首に絡んだ

「む……?」
「てめぇは、俺の敵だっ!!」

 絡んだそれを、翼は力一杯、引く
 熱の力は効かなくとも、首を絞められるのは効果があったのだろうか
 朝比奈の力が一瞬緩み…その隙に、翼は己の首を絞めてきている腕を、蹴り上げた
 その拍子に、朝比奈の手から、翼の首が放される

「く……っ」
251以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 15:17:11.27 ID:OTvMi1sU0
支援
252悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 15:21:59.11 ID:AdcpNFP30
「翼!」
「………おのれ!」

 おぉおおおん
 尾なしの犬が、再び吼える結界に阻まれ、望達に近づけずにいた犬達が、一斉に黒服を睨んだ
 そちらに向かって駆け出そうとした犬の、一匹に…じゃらんっ、と
 硬貨で作られた鎖が絡む

「買って嬉しいはないちもんめ!」
「…っ貴様も、支配系能力者か!?」

 望の支配権の下に入った犬達が、一斉に朝比奈に襲い掛かる
 朝比奈は襲い掛かってきた犬を蹴り飛ばすと、忌々しそうな表情を浮かべる

「化け物に、薄汚れた餓鬼が!!私の邪魔をするのか!」
「…俺の家族を、馬鹿にするんじゃねぇ!!」

 翼は、朝比奈の首に絡んだままのチェーンを再び引いた
 そのまま首を締め上げようとしたが…そのチェーンは、跳びあがった尾なしの犬に、食いちぎられる
 ぐるる、と唸り声をあげる尾なしの犬
 朝比奈は、自分を囲む者達を、憎悪を込めて睨みつける
 視線は、そのうち、翼に固定された

「…翼。私に逆らって、どうなるかわかっているのか?」
「俺は、もう、てめぇの言いなりになんざ、ならねぇ」

 翼も、朝比奈を睨み返す
 …その体が、かすかに震えている事に、望は気づいてしまった

「…ふん、まぁ、いい……お前を私の元に取り戻す事など、いつでもできる」
253悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 15:29:04.21 ID:AdcpNFP30
 朝比奈も、それに気づいたのだろうか
 翼に見下した視線を向け、続ける

「この化け物が言った通りだ。私は、悪魔の囁きと契約している……お前に縁ある者を堕としめれば、お前の心が揺れると思ったが。思ったより、うまくいかなかったな」
「……ってめぇが、誠と藤崎に……っ」
「コーク・ロアをばら撒いているのも、私だ。兵は多ければ多い方がいい……私の、目的の為に」

 くっく、と朝比奈は笑う
 ゆらり、その片腕を揺らした

「この世界には、馬鹿共が多すぎる。そんな馬鹿共よりも、私が、世界のトップに立てば、全てがうまくいく……私が、世界を支配する」
「…それこそ、バカの妄言に聞こえるわね」

 望の言葉にも、朝比奈は笑うばかりだ
 己の考えが正しいと、絶対だと、信じ込んでいて
 それ以外、全ての意見を一切聞きいれない、どこまでも自分勝手な思考

「………翼。私の元に戻れ。お前を一番うまく扱えるのは、私だ」
「…ッ誰が!」
「お前が私の元に戻らぬ限り。この街に、私は悪意を振りまき続ける」

 朝比奈の言葉に、翼の顔に、恐怖が浮かんだ
 自分の事よりも、むしろ、他の者を巻き込む方が、翼を脅迫する事に適していると、この男はわかりきっていた

「そんな事は、させません」
「ここから、逃げられると思っているの?」

 黒服と望の言葉に、朝比奈は笑った

「あぁ、思っているさ!!」
254以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 15:29:33.98 ID:OTvMi1sU0
しえ
255悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 15:33:06.03 ID:AdcpNFP30
 ぶぅん!と
 朝比奈が腕を振るった
 目にも止まらぬスピードで、一瞬で振るわれた、腕は

「……ぇ」

 すぱぁん、と
 この路地を形成していた、壁を
 この道の左右の、廃墟ビル、二つの壁を
 あっさりと、切り裂いて

「はっはははははははははははははははははははは!!!!」

 朝比奈が高笑いする中、ビルが崩れていく
 その巨大な破片は、この場にいる全員に向かって降り注いできて

「−−−−っ!!」

 黒服は、光線銃を投げ捨て、懐からパワーストーンをいくつも取り出した
 それが作り出す結界が、黒服と翼、望と詩織を包み込んでいく

「クールトー!」

 朝比奈の呼びかけに、尾なしの犬…クールトーが、彼を背中に乗せた
 巨大な尾なしの犬が、降り注ぐ破片を避けて駆け抜けていく

「翼!!貴様が私の元に戻らぬ限り!!貴様のその大切な者が無事でいられると思うな!!!」
「−−−−−てめぇ!!」

 逃げ出していく朝比奈を止める事が、出来ず
256以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 15:34:48.94 ID:OTvMi1sU0
支援
257悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 15:36:50.09 ID:AdcpNFP30
 倒壊したビルの崩壊音が、あたりに響き渡った



 数分後

「皆さん、無事ですか!?」
「えぇ」
「平気よ」

 パワーストーンの結界に護られていたお陰で、全員、傷ひとつ負っていない
 辺りでは、支配から解放された犬達が、きょときょとと不思議そうに辺りを見回している

「…翼」
「大丈夫ですか?」

 望達に、声をかけられたが
 翼は俯いたまま…答えない
 その体は、かたかたと、はっきりと震えていた

「……俺の、せい、で……?」

 小さく、小さく、呟かれたその声は
 はっきりとした、恐怖と絶望で彩られていた
 




258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 15:38:03.08 ID:OTvMi1sU0
>「翼!!貴様が私の元に戻らぬ限り!!貴様のその大切な者が無事でいられると思うな!!!」
>貴様のその大切な者が無事でいられると思うな!!!
>貴様のその大切な者
マゾ「…………ふむ」
259悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 15:39:21.37 ID:AdcpNFP30
 同日
 学校町のあちらこちらで、それは動き出した


 とある路地裏で

「ぁ……い、いや………」

 一人の女性が、無数のタコに囲まれていた
 袋小路に追い詰められ、逃げられない
 怯える女性を前に、藤崎はくすくすと笑っていた

「大丈夫……怖くなんてないわ。気持ちよくなって、私のためのタコを作ってもらうだけだから」
「−−−−−いやぁあああああ!!??」

 タコ達に群がられ、悲鳴をあげる女性
 くすくすと、藤崎は笑い続ける

 その顔に、最早理性は残っていない
 自我の半分以上を、タコ妊娠に飲み込まれつつあった

 ただ、それでも

「あはははは…待っててね、日景君。絶対、私のものにしてあげるから」

 その願いは、ただひとつ
 狂わされた願いをかなえるためだけに、行動し続けていた
260以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 15:40:13.04 ID:OTvMi1sU0
しえ
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 15:41:52.49 ID:qCjc6nJv0
帰宅支援!
262悪意が来たりて牙を剥く  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/15(月) 15:46:55.48 ID:OTvMi1sU0
 繁華街の、一角で

 車の中で、イチャついているカップルがいた
 それを、少し離れたところから、一人の青年が憎悪を込めて睨みつけていて

『ホラホラァ、気ニ食ワネェダロォ!?殺シチマエ!!』
「……あぁ、そうだな」

 内側から響いた声に、答えて
 青年は、一言、口にする


「……爆ぜろ」


 次の瞬間、バカップルが乗っていた車が、大爆発を起こした
 辺りの人々が、パニックを起こし始める

 その様子を、青年は楽しげに見つめていた

「くっくっく……滅べ、リア充共め」
『ソウサソウサァ!!気ニ食ワネェ奴ァ、ミィンナ殺シチマエェエエエエ!!!!』

 くっくっく、と笑いながら
 青年は、喧騒の中に溶け込むように、消えていった
263以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 15:51:05.83 ID:qCjc6nJv0
支援が遅かったか…支援!
264悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 15:53:47.00 ID:AdcpNFP30
 人気のない、工業地帯で


 そのホームレスは、使われなくなった工場の隅で、昼寝していた
 彼の行動時間は、どちらかと言うと夜だ
 だから、今のうちに睡眠をとっておくつもりでいて

 しかし、彼は最早、その眠りから目覚める事は叶わなかった
 音もなく近づいてきた、巨大なそれは…ガブリ、眠るホームレスの首筋に、噛み付いて
 一瞬で、ホームレスは命を落とす

 巨大なそのライオンは、ずる、ずる、と
 どこかへと、ホームレスの体を引きずっていってしまった
 …食料として、己の胃袋に、飲み込むために

 この日より、学校町内にて、ホームレス等路上生活者の失踪が多発することになる
265悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 15:55:56.59 ID:AdcpNFP30
 住宅街の、一角で


「な、何、よ………な、何なのよ……!?」

 女性は、パニックを起こしていた
 何、だ?
 目の前にいるこれは、一体何なのだ?

 ぶるるっ、と、それは、女性に角を向けたまま、体を震わせて

「………死ね、ビッチ」

 と、一言そう告げて

「−−−−っひ!?」

 次の、瞬間
 女性の体は、その美しい白馬の額から生えた、太く長い角に付きぬかれ…女性は、一瞬でその命を、奪われた


266以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 15:56:06.23 ID:qCjc6nJv0
支援!
267悪意が来たりて牙を剥く ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 15:57:18.09 ID:AdcpNFP30
 とある、ビルの屋上で



「そう言う訳だからぁ〜〜♪好き勝手に、暴れちゃってねぇ〜〜〜〜♪」
「うん、わかったよ」

 ばさりっ
 両腕が翼になっている女性は、少年に主の言葉を告げて飛び去っていった
 古い、旧式のゲームボーイを持った少年は、楽しげに呟く

「ゲームの開始だね、カイザー」

 さぁ、楽しみだ楽しみだ
 どうせ、自分達が勝つに決まっている
 少年、竜宮はそう信じきって、楽しげに楽しげに笑った




 この日より
 学校町内にて、ありとあらゆる都市伝説犯罪が、一斉に増加する事になるのだった


to be … ?
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:00:35.69 ID:AdcpNFP30
えー、と、言う訳で、無駄に長い「悪魔の囁き&コーク・ロア事件」本格化なネタでした
はないちもんめの人に焼き土下座orz
そして、学校町の全ての皆様にも焼き土下座ぁああああああ!!!!orz
学校町全体が、親子喧嘩に巻き込まれているような状況です
この日より、学校町全体で、朝比奈の部下達が暴れ出します
巻き込まれたい!!と言う方は、ゆっくり巻き込まれていってね!!

ちまちまと、朝比奈の設定とかも投下するねー
269以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:01:14.33 ID:qCjc6nJv0
乙でした!
今日が15日だということを忘れてたぜ

翼父…どう見てもド外道です、本当に(ry
翼とか黒服Dみたいにどこか甘い人たちには、これくらい外道の方が遠慮なく戦えていいよね!
270以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:04:23.88 ID:AdcpNFP30
・朝比奈 秀雄

 翼の実の父親で、マドカの元夫
 翼の家出直後、マドカと離婚、仕事の都合でヨーロッパに渡った際に悪魔の囁きと契約し、自ら姿を消した
 世界中を回り、あちこちで悪魔の囁きの卵を振りまき、その広がり具合を実験し続けていた
 支配欲や野心が強く、家族や部下は支配しきらないと気がすまない
 悪魔の囁きとの契約により野心が増加し、世界を支配したいと言う願望に取り付かれるようになる
 まずは、学校町から支配するつもりになっているようだ
 己の野望を達成する為に、翼を自分の手元に戻したがっている
 クールトーともう一つ、とある都市伝説と多重契約を結んでおり、犬を自由に操る能力を持っている他、熱や炎の攻撃に対する無敵性と人間離れした怪力を身につけている
271以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:08:12.86 ID:AdcpNFP30
>>258
>マゾ「…………ふむ」
少なくとも、マゾは含まれてないと思うよ!思うよ!!
…でも、たとえマゾでも、この騒動に巻き込まれたら翼は気にしそうだから困る

>>269
頑張ってド外道にしてみたよ!!
>翼とか黒服Dみたいにどこか甘い人たちには、これくらい外道の方が遠慮なく戦えていいよね!
うん、俺もそう思うんだ
が、翼は、相手が実の父親という事が問題となってどこまで遠慮なくいけるやら
272デビ田の憂鬱  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 16:20:12.37 ID:AdcpNFP30
 …それは、学校町内で都市伝説や都市伝説契約者による犯罪が急増し始めた、翌日の事


「あー…疲れた」
「いやー、数が多かったですね。コーク・ロア」

 よろりっ
 よろめいて歩く山田と、その隣を歩くマゾサンタ
 暴れているコーク・ロア支配型被害者達を止める、という仕事を終えてきたところである
 相手は一応は被害者、殺さずに無力化しないといけない訳で
 …疲れた
 いや、ここんとこ、休みがほとんどないせいもあるのだが

『さぼッチマエバイイダロォ?仕事ナンテヨォ』

 デビ田が、山田の中で囁いてくる
 が、サボる訳にはいかないのだ
 デビ田の囁きを無視して、山田は家に向かって歩き続ける

『ッケ、ツマンネェナァ…………ン?』


 …ふ、と
 山田の中で、デビ田が警戒するような様子を見せた


(…デビ田?どうし)
『オイッ!!今スグ逃ゲロ!!!』

 ……は?
273デビ田の憂鬱  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 16:24:11.08 ID:AdcpNFP30
 どう言う事なのか?
 山田が、デビ田に尋ねようとすると

「…あれ?どちらさまですか??」

 マゾが、そう声をあげた
 山田が、立ち止まり、きょとんとしているマゾの視線の先に目をやると…そこには、見覚えのない青年が立っていた
 山田を、睨みつけてきている

 …え?誰だ?
 正直、山田には見覚えのない相手だ
 それなのに、何故、睨みつけてきているんだ?

『オイ、こらへたれ!!逃ゲロッツッテンダヨ!!!』

 デビ田が、山田の中で叫び続ける


 …青年は、ゆっくりと
 山田に……否

 デビ田に、告げてくる


「…役立たずの悪魔の囁き、か。悪魔の囁きにも個体差があるのか」
「……悪魔の囁き?」
「…いや、それよりも!!」

 かっ!!と
 青年が、山田を激しく憎悪の篭った眼差しで睨み、叫ぶ!!
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:25:30.47 ID:qCjc6nJv0
>>271
>が、翼は、相手が実の父親という事が問題となってどこまで遠慮なくいけるやら
やっぱり翼はそうなるのか…
翼らしいっちゃ翼らしいんだけどね
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:26:15.85 ID:qCjc6nJv0
おっと支援だ!
276デビ田の憂鬱  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 16:27:30.09 ID:AdcpNFP30
「女と二人で歩いているだと!?しかも巨乳美少女と!?」
「は?」
「くそくそっ!!どうしていつも俺以外が!!!」

 いきなりハイテンションで叫びだした青年の様子に、山田もマゾもあっけにとられてしまう
 …そして、青年は、憎悪の篭った眼差しで、山田を睨み続けて


「爆ぜろ」


 と、ただ一言、告げた
 次の、瞬間

「−−−−っ!?」
「契約者!?」

 山田の体が爆発した
 己の体の爆発によって、その体が吹き飛ばされる

「突然、何を……」
「爆ぜろ」

 再び、青年が呟くと
 今度は、マゾの体が爆発した
 数回、青年は呟き続け
 その度、山田とマゾの体が爆発し続ける

 ……数分後
 いい加減、死んだと判断したのだろうか
277デビ田の憂鬱  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 16:30:29.23 ID:AdcpNFP30
「………」

 青年は、倒れて動かない山田とマゾを、一瞥して
 ふらり、この場を立ち去っていった




『……ヨシ、行ッタゾ』
「わかった……死んだフリ、終わって大丈夫だぞ」
「あ、そうですか?」

 むくりっ、むくりっ
 山田もマゾも、起き上がった
 この二人、基本的に不死である
 いくら爆発しても、死にはしない

「全く、何なんだ、あいつは」
「なかなか素敵な爆発でしたけどねー」

 …マゾの言葉はほっとくと、してだ
 一体、突然何だと言うのか

『…………』
(デビ田?)

 …山田の中で、デビ田が考え込んでいるような気配を、感じた
 やがて、デビ田は山田に告げる

『…オイ、へたれ。テメェニ仕事モッテキテル野郎ニ連絡シロ』
278デビ田の憂鬱  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 16:31:35.32 ID:AdcpNFP30
(は?)
『始末サレソウニナッテマデ、主ニ忠誠誓ウ気ハネェヤ。コウナッタラ、オレサマガ知ッテル限リデ、全部話シテヤル』


 …山田にとり憑く悪魔の囁き、デビ田は
 この日、己の契約者を、裏切る事を、決めた



to be … ?
279以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:32:25.40 ID:qCjc6nJv0
さすが不死身の二人だ、なんともないぜ!支援ー
280以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:33:04.35 ID:AdcpNFP30
占い師の人に焼き土下座orz
はい、山田を悪の道に走らせる事ができないでいるデビ田は、うっかり消されそうになりました
山田にとり憑いている限り、ほぼ死なないってか死ねないけどね!!!!
痛いのも嫌なんで、契約者を裏切る事にしたようです


>>274
殺したいほど恨んでいた訳ではなかったからね
いっそ、殺したいほど恨んでいたなら、そうはならないんだけど
281以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:39:03.53 ID:AdcpNFP30
あと二つくらい書きたいネタがあるが、いい加減目と首が限界な罠
夕食終わってもスレが残っていれば幸せだ!!!


あれ、待てよ
このシーンも書いてみたいからそうなると二つどころじゃな(ry
282以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:40:09.95 ID:qCjc6nJv0
乙でした!

>痛いのも嫌なんで、契約者を裏切る事にしたようです
そういえば山田は痛みを感じないけど、デビ田は普通に痛みを感じるんだったなwwww
そしてデビ田がデビル山田ではないと知ったとき、山田はどういう反応をするんだろうかww
283以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:41:23.29 ID:qCjc6nJv0
目の疲れって、なぜか首の痛みに繋がるんだよな…
休憩は大事だと思うんだぜー
284生命は電池仕掛け 電池切れ:2010/03/15(月) 16:54:45.44 ID:1UMLSTaB0
死人の体に電池を差し込む
すると死人は生き返る
「・・・あと何人ですか」
「この人で最後ですよ」
よし、さっさと終わらせて帰ろう
そう思って電池を作り出し、

視界が漆黒に染まった

「・・・?」
すぐに黒が抜け、周りが見えるようになる
・・・自分は倒れているようだった
「どうかしたんですか?」
あの人・・・黒服が尋ねてくる
「・・・あぁ、なるほど」
しかし、こちらが答える前に自分で納得してしまったようだ
・・・こちらも状況はよくわかっていた
 能力の使用限界が:来た
それだけだ
再び漆黒が訪れる こんどはゆっくりと
視界を黒が蝕んでいく

・・・僕は死ぬのか
まぁ、どうでもいいか
285以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:55:31.54 ID:OTvMi1sU0
花子さんの方、乙でした―!
ようし、明日辺りに占い師に話を持っていくネタを投下するぞー

>>271
>…でも、たとえマゾでも、この騒動に巻き込まれたら翼は気にしそうだから困る
マゾ「非常事態の中で芽生えた恋は長続きしないと言いますが、今がチャンス! 短期間でもいいからちょっとでも距離を縮めるチャンス!」

>>282
>そしてデビ田がデビル山田ではないと知ったとき、山田はどういう反応をするんだろうかww
山田「(∩゜д゜)アーアーキコエナーイ」
 とまではさすがに行かないけど、色々とショックを受けると思うよ!
286生命は電池仕掛け 電池切れ:2010/03/15(月) 16:56:56.69 ID:1UMLSTaB0
「・・・・・・・・・」
黒服が覗き込んでくる
少し悲しそうだった

当たり前だろう
貴重な能力を持つ人間が死んでしまった・・・否、「道具」が「壊れてしまった」のだから
だが、道具ならまた買いなおせばいいだろう 僕と同じ能力を持つ契約者を探せばいい

ブゥン と、機械音とともに虫の羽音が聞こえ、遠くへ消えていった
287以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:58:10.66 ID:1UMLSTaB0
ワーってなってかいてたらなんか電池仕掛けのカブトムシの契約者が死んでた
288以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 16:59:57.31 ID:OTvMi1sU0
乙乙!
さて、悪魔の囁きが本格始動する前のサンタネタでも投下しよう
289恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/15(月) 17:04:55.88 ID:OTvMi1sU0
 学校町南区。
 繁華街を中心に発展を遂げたその区からひっそりと隠れるように、その建物は存在していた。
 何坪あるのかも分からない、大きな屋敷。
 地価の高騰している南区では珍しい程巨大なその家屋には、しかし人の気配一つなかった。
 割れ、罅の入った窓に、半壊した扉。家の一部を覆っていただけの蔦はいつの間にか生い茂り、その壁を縦横無尽に這っていた。
 かつては町の中でも財力のある人間が住んでいた屋敷は、子どもの肝試しの場となり、その面影すらない。

「まさに幽霊屋敷って感じだな」

 屋敷の庭。
 誰にも手入れをされずに伸びきった草花を踏みしめるように、一人の男が立っていた。
 中肉中背の身体に、一度見ただけでは決して記憶する事の出来ない特徴のない顔。
 唯一そこそこ身長が高い事だけが救いの男は、夕陽に照らされた屋敷を一人見上げていた。

「ソリャソウダ。コレカラオレタチガブッ殺スノガマサニソノ『幽霊』ナンダカラナァ」

 ふと、町の喧嘩からも離れたその場所に、別の声が響き渡った。
 男の脳へと直接語りかけるようなその声に、しかし男はこれと言って動揺しなかった。
 溜息をついて、脳内へと聞こえてきた声に返答する。

「情緒がないのな、お前。ほら、こう言う時は『ぶっ殺す』じゃなくてさ、成仏させるとか滅するとかかっこいい表現が色々あるだろ? な?」
「ナ? ジャネェヨ。タダノ厨二病ジャネェカ、ソレ」
「なっ……馬鹿言うな。俺のセンスは年相応だ」
「オレサマに『デビ田』トカせんすノネェ名前付ケヤガッタテメェガ何ヲイイヤガル」
「え? いいじゃん、デビ田。お前の方がセンスがないっての」
「フザケンナ。テメェガ普通ダナンテ絶対認メネェゾ」

 一人脳内の声に語りかける光景は、はたから見ればかなり異様な光景である。
 しかもそれが廃れた屋敷の前となれば尚更だ。
 屋敷の前を通りかかった人間は皆、警察に通報するかどうかで悩んだ挙句、気味悪そうにその場を去っていった。
290以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 17:05:15.25 ID:qCjc6nJv0
支援!
291恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/15(月) 17:07:53.65 ID:OTvMi1sU0
「大体へたれノテメェノ仕事ガ何デ都市伝説退治ナンダヨ。オカシイダロ、世ノ中絶対間違ッテルダロ」
「ばっか、これでも評判いいんだぞ。町内でそこそこ噂になってるレベルだって、マジで」
「……ソレ、微妙ジャネェ?」
「都市伝説自体そこそこしかいないからいいの! 同業者も一杯いるこの町でそこそこ噂されれば十分なの!」

 そんな周囲からの視線を気にすることなく、二人の議論は燃え上っていく。
 元々都市伝説退治のためにここに来た彼らだったが、この数分でその本来の目的すら忘れかけていた。
 後で彼の恋人辺りに知られたら制裁間違いなしの失態である。

「――――ようし、俺ってば頑張っちゃうもんね。入ってから十分で終わらせてお前を見返してやるからな!」
「ヤッテミヤガレ。テメェカラ戦闘ノせんすガ一欠ケラモ感ジラレネェヨ」

 男――――山田の内側で、デビ田はくつくつと笑った。
 もはや最初の頃の戸惑いも少なくなり、山田と対等に話せるようになってきている。
 山田はデビ田の挑発に乗ることなく、むしろ鼻で笑って

「言ってろ。後で今の台詞、撤回させてやるからな」
「オゥオゥ、楽シミダネェ」
「ふん」

 はやし立てる声を無視して、山田はようやく一歩を踏み出した。
 一歩進む度に、草に纏わりついた露が山田のズボンの裾を濡らしていく。
 冬の寒さも相まって、足を刺されたような感覚が山田の脳へと伝わった。
292以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 17:09:00.33 ID:qCjc6nJv0
支援
293恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/15(月) 17:11:31.48 ID:OTvMi1sU0
「やべ、冷たいな、これ」
「オイ、オレサマニモ伝ワッテンダ。サッサト中ニ入リヤガレ」
「…………ほう」

 瞬間、山田の眼が光ったような錯覚を、内側にいるデビ田は感じた。
 やっちまった、と中で頭を抱える。

「ほうほう? つまりこうすれば、どうなるのかなぁ?」

 どこから取り出したのか、山田の手には緑色のバケツがぶら下がっていた。
 その中では透明な水が振動に合わせてちゃぷちゃぷと揺れている。
 デビ田には嫌な予感しかしなかった。
 手に持ったバケツを、山田は頭上へと持ち上げる。

「テメェヤメロコノ馬鹿野郎ォオオオオオオオオオッ!?」
「はっはっは、内側から語りかけた所でもう遅いわーっ! イヤッホォォォオオオオオオウ!!」

 掛け声とともに、山田が宙でバケツをひっくり返す。
 中に入っていた水は当然、重力に従って落下を始めた。
 向かう先は、山田の頭。
 避ける動作すらせず、山田はその氷のような水を頭から被った。

「――――いやぁぁぁぁぁああああああ、つめてぇええええええっ!?」
「死ネッ! テメェソノママ凍死シロッ! クッソ冷テメェナ畜生ォオオオオオッ!!」
「あれっ、何でっ!? 痛覚はキャンセルされるんじゃなかったっけ俺の身体っ!?」
「馬鹿野郎。サッキモ冷タサ感ジテタジャネェカッ! ドウセ熱イ寒イハ対象外ナンダロウヨォ」
「ちょっ、聞いてない、俺そんなの聞いてないぃいいいいいいっ!?」
「チッタァ考エテカラ行動シヤガレコノ野郎ッ!」
294以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 17:12:19.99 ID:qCjc6nJv0
山田wwwwwww支援
295恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/15(月) 17:14:54.42 ID:OTvMi1sU0
 寒空の元、廃屋の庭でがくがくと震える馬鹿一人と、巻き添えを喰らって脳内でもだえる悪魔が一人。
 通りかかった人間が立ち去る速度が、それを見てさらに加速した。
 春は近いと言ってももう三月である。
 外で服を着たまま冷水を被るなんて、変態以外の何物にも見えない。

「うっわ冷てぇ。北風がやばいよこれ」
「早ク建物ン中入リヤガレッ! 霊ニ会ウマデモナク凍死トカ笑エネェゾ」
「あ、ああ……何やってんだろうなぁ、俺」

 寒さで震えながら、一歩一歩山田が歩み始める。
 もはや草露がどうのこうのの限度を超えていた。
 一刻も早くこの風を防ぎたい、その一心で山田は歩み、デビ田がせかす。

「………………」

 無人のはずの屋敷の二階で
 これから討伐させられる予定の霊は二人の様子を見て、音を立てずに笑い転げていたのだが、それを外にいる二人が知ることはない。

【ちょっぴり続くよ!】
296以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 17:16:13.37 ID:qCjc6nJv0
ほんとに何やってるんだよ山田wwwwwww支援!
297以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 17:17:06.96 ID:OTvMi1sU0
山田が颯爽と格好よく戦うはずだったのにどうしてこうなった
だんだん山田の頭のネジが緩くなってるような気がしなくもない今日この頃
298以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 17:20:38.25 ID:qCjc6nJv0
おっと終わってたか、乙でしたー!

>山田が颯爽と格好よく戦うはずだったのにどうしてこうなった
き、きっと屋敷の中で、颯爽とかっこよく戦ってくれるはずだよ!
299以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 17:24:39.59 ID:OTvMi1sU0
>>298
>き、きっと屋敷の中で、颯爽とかっこよく戦ってくれるはずだよ!
かっこいいかどうかは分からないけど頑張って戦うよ!
ただ、脳内では話が組み上がってるのに、いざ書くと全く別の話になる不思議
300以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 17:50:35.80 ID:qCjc6nJv0
ご飯食い終わったら何か投下するかもしれない保守
301以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 18:25:36.56 ID:3WlJMQi40
302ケモノツキ ◆kemono..Qk :2010/03/15(月) 18:33:21.57 ID:qCjc6nJv0

【ケモノツキ_03_週末のエール】



 穏やかな陽気の日曜日。高校のボクシング場のリングで、橘野悠司がミット打ちを行っている。
 相手はボクシング部部長、黒鉄 武。彼の構えたミットに悠司のグローブが吸い込まれ、小気味のいい音を響かせる。
 ワンツー、ボディブロー、ジャブ2連からの右フック。ミットに指示されるまま、悠司はひたすら拳を振るう。

「…ラストだ、きっちり締めろ。」

 部長はそう言うと、わき腹と顔の前にミットを構えた。
 一拍おいて、悠司は左足を踏み込み、抉りこむようにして左のボディブローを打つ。
 続けざま右ストレートを放ち、顔に構えられたミットを打ち抜いた。
 パァン、と一際高い音が響く。部長がミットを下ろしたのを確認し、悠司は緊張を解いて息を吐く。

「良し、少し休憩だ。」
「ふぅ…ありがとうございました。」

 リングを降りると、先ほどから彼らを見ていた少女が歩み寄ってきて、グローブを外してくれた。
 彼女はボクシング部マネージャー、黒鉄 遥。ボクシング部部長、黒鉄 武の妹である。
 現在、このボクシング場に居るのは、部長、マネージャー、橘野悠司の三人のみ。
 他にも多数の部員が居るが、土日は自主練習となっており、特に日曜日はほとんどの部員が休むため、実質彼らの貸しきり状態となっている。

「はい、お疲れ様。」
「ありがとう、マネージャーさん。」

 グローブを外し終え、差し出されたタオルを受け取って汗を拭う。
 視線を横に向けると、リングの反対側から部長がこちらへ歩いてくるのが見えた。
303ケモノツキ ◆kemono..Qk :2010/03/15(月) 18:34:05.94 ID:qCjc6nJv0

「遥、俺にはそういう気遣いは無いのか?」
「兄さんは一人で出来るでしょう?妹に甘えてんじゃないわよ。」

 そう言いながらも、持っていたもう一つのタオルを兄に差し出す。
 タオルを受け取り、ごしごしと乱暴に顔の汗を拭く部長。
 たったそれだけの動作だが、二人の仲の良さが感じられた。

「橘野、なかなかいいパンチを打つようになったな。」

 リング横のベンチに座りながら、部長は悠司に話しかける。
 部長と少し距離を開けて、悠司も同じベンチに腰掛ける。

「だが、まだ全体的に拳が軽いし、段々と威力が落ちてきている。体力と筋力…特に足腰を鍛えた方がいい。」
「ありがとうございます。この前、タイガにも同じようなことを言われました。」
「ほぅ…さすが、体を共有しているだけのことはある。ならばなおさら、鍛錬に励むことだ。」
「これでも頑張ってるんですけど…なかなか結果が付いてこなくて。」
「なに、焦ることはない。これから背も伸びて、体も強くなっていくだろう。」

 部長は、橘野悠司が契約者であることを知っている。
 正確にはマネージャーも知っており、さらに言えば兄妹共々、都市伝説の契約者である。
 そのおかげで気兼ねなく、このような話をすることが出来る。

「さて、最後にスパーして終わりだ。準備しろ。」

 そう言って部長はベンチから立ち上がり、道具を用意する。
 悠司もマネージャーに手伝ってもらい、グローブなどを装着してリングに上がった。
304ケモノツキ ◆kemono..Qk :2010/03/15(月) 18:34:54.27 ID:qCjc6nJv0

 リングの上でコーナーを背にして対峙する二人。
 両者ともグローブとヘッドギアを装着し、手にはマウスピースを持っている。

「準備はいいか、”タイガ”。」
「…今度こそぶっ潰してやるよ。」

 両者がマウスピースを付けたのを確認し、マネージャーはゴングを鳴らした。

 先に仕掛けたのはタイガ。懐にステップインし、左のボディブローを打つ。
 部長は落ち着いて半歩下がり、右手でそれを払う。
 間髪入れずに放たれる、顔面への右ストレート。ミット打ちで行ったコンビネーションブローだ。
 しかし、部長はヘッドスリップでこれもかわし、カウンターぎみに右のボディブローを打ち込んだ。

 タイガの体が一瞬宙に浮くほどの強力な一撃。なんとか左腕で防いではいるが、よろけて隙が出来る。
 その隙を逃さず、今度は左のボディブローが放たれる。すぐさま反応し、右腕でしっかりと防御する。
 だが直後、タイガの顔面に右ストレートが迫る。先ほどタイガが放ったコンビネーションブローそのものである。
 とっさに左のガードに右腕を交差させ、いわゆるクロスアームブロックの形でそれを防ぐ。

 衝撃がガードを貫いて、体の芯まで響くような感覚。
 足が下がりそうになるのをこらえ、タイガは前へと踏み込む。
 部長もそれに応じるように踏み出し、リング中央で再び激しい打ち合いが始まった。

   ・
   ・
   ・
305ケモノツキ ◆kemono..Qk :2010/03/15(月) 18:35:42.09 ID:qCjc6nJv0
 互いに引くことなく打ち合う二人。
 先ほどから絶え間ない打ち合いを続けているが、両者とも攻撃の手を緩めない。
 むしろ、徐々に激しさを増しているように見える。

 タイガの右ストレートが部長の顔面に入る。しかし部長は、上体をわずかに反らし、鍛えられた背筋で衝撃を吸収する。
 そして、その攻撃によって隙が出来たタイガの右わき腹に、部長の左フックが迫る。
 あわてて右腕を下げてガードの体勢を取るタイガ。しかし、部長の拳の軌道が急激に変化する。
 それはフックではなく、スマッシュと呼ばれる技術。
 ガードを下げたことによって、がら空きになったタイガの頭部に、斜め下からアッパーぎみの一撃が打ち込まれる。

 タイガは、一歩、二歩とよろけ、ついには尻餅ををついた。

「ワンダウン…俺の勝ちだ。」

 ヘッドギアとマウスピースを外しながら、部長が告げる。
 タイガは、ふぅ、と息を吐くと、マウスピースを吐き捨て、リング上に大の字に寝転がる。

「あああああ!糞ッ!!また負けた畜生ッ!!!」
「身体能力だけならともかく、ボクシングではそう簡単に勝たせんよ。」
「大体なぁ、この体が弱すぎんだよ!体格も筋力もまるで足りねぇ!!もっと鍛えやがれ!!」
『…頑張ってはいるんだけど、やっぱりまだ足りないか…。』
「まぁそう言ってやるな、タイガ。橘野自身の力は、その体格にしては強い方だと思うぞ。」

 今まで何度か、タイガと部長はスパーを行っている。
 ルールは、ダウンを一度奪うか、マネージャーのストップがかかるまで。
 しかし過去のスパーは全て、部長がダウンを取って勝利している。

 橘野悠司の力は、タイガの能力によって強化されている。それと互角以上に渡り合う部長の力も、都市伝説によって強化されたもの。
 ボクシング部部長、黒鉄 武の契約都市伝説は『リミッター』。
 人の体にかけられているリミッターを解除し、限界を超えた力を発揮する能力である。
306ケモノツキ ◆kemono..Qk :2010/03/15(月) 18:36:23.81 ID:qCjc6nJv0

 リングを降りた部長を、マネージャーが迎える。

「お疲れ様。じゃ、そこに横になって。」
「ああ。頼んだ、遥。」

 部長はグローブを外し、タオルが敷かれたベンチに横たわる。
 そして目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をする。
 直後、部長の体が、ビクン、と跳ね上がる。
 その顔が一瞬で青ざめ、苦痛に歪んだ。
 息は上がり、全身から汗が噴出し、拳は苦痛に耐えるかのように固く握り締められている。

 身体を強化している悠司とは違い、部長は体の能力を限界まで引き出すことで、力を得ている。
 体が壊れないためのリミッターを外したがため、その体は壊れる寸前まで追い詰められていた。

 マネージャーは、そんな部長の額に手を当て、固く握られた拳に手を添える。
 そして、祈るかのように目を閉じ、拳に添えた手をぎゅっと握る。
 すると部長の荒い息が、だんだんと深く、ゆっくりとしたものになってゆく。
 顔色はみるみるうちに良くなり、苦痛の色が和らいでくる。

 マネージャー、黒鉄 遥の契約都市伝説は『手当て』。
 文字通り手を当てることで、対象の治療を行うことが出来る能力。
 この能力があるからこそ、部長は全力でタイガとの勝負に臨むことが出来ている。

「ふう…もういいぞ、遥。」
「だーめ、まだ腕が痛いでしょ?ほら、こっちに腕出しなさい。」

 部長が起き上りながら告げるが、マネージャーは部長の腕のマッサージを始める。
 実際、まだ腕には痛みが残っていたが、『手当て』の能力とマッサージによって、その痛みも消えた。
 部長は立ち上がって軽く拳を振るが、体が痛むような様子は見受けられない。
307ケモノツキ ◆kemono..Qk :2010/03/15(月) 18:37:05.75 ID:qCjc6nJv0

「さてタイガ…いや、橘野。そっちは大丈夫か?」
「大丈夫…です。ちゃんと、動けます。」

 ぎりぎりと音を立てそうな、ぎこちない動きで、ストレッチを行っている悠司。
 その体は、タイガの能力による代償、全身の筋肉痛に襲われていた。

「毎度のことながら、辛そうだな。しっかり柔軟して、痛みを残さないようにしておけ。」
「まあ…部長に比べたら、大したことないですよ。」
「いや、俺には遥が居るからな。橘野の方が大変だろう。」
「橘野君も無理しないで、私を頼ってくれてもいいのよ?」

 悠司の体を襲うこの痛みも、マネージャーの能力なら1分もせずに完治できるだろう。
 だが、悠司はそれをしない。それは、能力を使うことによる、マネージャーの負担への気遣い。
 そして、橘野悠司が抱く、強い信念のあらわれ。

 「組織」に属する以上、否応なしに都市伝説に巻き込まれるだろう。戦いが避けられないときもある。
 橘野悠司の力は、その体に負担をかける。だが、それを言い訳にして逃げる気はない。

 自らの力の代償は、自らの力で乗り越える。
 それが、橘野悠司の信念。

 160cmという小柄な体でボクシングを選んだのは、自らを鍛えるため。
 タイガと部長の対決は、橘野悠司自身の申し出によるもの。
 それによって、自分自身の力と都市伝説の力を鍛えようとしている。

 苦難の道に身を置くことで、自らを成長させたいという、強い意思によるものである。
308ケモノツキ ◆kemono..Qk :2010/03/15(月) 18:37:47.95 ID:qCjc6nJv0

「橘野、手伝おう。柔軟が終わったら、ダウン2kmだ。」

 部長は悠司のストレッチに手を貸し、悠司の筋肉をほぐしていく。
 これはあくまで部活動の一環であり、悠司の信念に反することではない。
 柔軟を終え、ゆっくりと立ち上がる悠司。体の具合を確かめるように、軽く屈伸をする。

「ふぅ…大分良くなりました。ありがとうございます。」
「よし、じゃあ行くぞ。遥、ここの片づけを頼む。」
「二人が戻るまでには終わらせとくわ。いってらっしゃい。」

 二人はシューズを履いて外へ走り出し、その後ろ姿をマネージャーが見送る。

「…オトコノコ、だもんね。頑張れ、橘野君。」

 その呟きは風に紛れ、誰にも届くことなく消えていった。



【ケモノツキ_03_週末のエール】    終
309ケモノツキ ◆kemono..Qk :2010/03/15(月) 18:42:53.22 ID:qCjc6nJv0
ということで、部活動の様子その1・ボクシング部でした
本当は、全部の部活をまとめて投下しようと思ってたけど、予想に反して長くなったので、どうせなら別々に書いちゃえ、と

橘野悠司、結構頑張り屋さんです
ちなみに、この兄妹の今後の登場予定は、今のところ未定
『……それじゃあ、間に合わねぇんだよ』

黒服の男にそう言われた事を、手塚星は嫌というほど理解している
以前、コークロアに支配された人間に襲われた時に、その無力さは痛感させられている
あの時は通りすがりの女性に助けられたお陰で助かったものの、その場に誰も来なかったらどうなっていたか
「好き勝手言いやがって……俺だって好きで遅く生まれたわけじゃないのに」
《そうだよなぁ、どうしようもない事をぐちぐちとうるせぇよなぁ? 嫉妬してんじゃねぇっての》
その声は聞こえてはいない、意識してはいない、だが確実に心を蝕んでいる

『お前さんも都市伝説契約者のようだが。攻撃的な能力でもないんだろ、それは? 彼女を護れるのか、お前は』

「俺の都市伝説を舐めるなよ……俺は、あんたなんかよりずっと強いんだ」
ずくん、と
星の内側で都市伝説の力が脈動する
《そうだ、お前の力は強いんだ。お前が抱えている都市伝説の力は強いんだ、確信し、言葉にし、それを現実のものとしろ》
「俺の持つ都市伝説能力は強い、強い、強い強い強い強い強い強い、最強だ」
彼の持つ『ファンタ・ゴールデンアップル』の『語られた言葉を現実にする』という力が
その能力を強め、更に強まった能力がより大きな力を生み出す
そして――たった今、憑いたばかり孵ったばかりの小さな囁きもまた、そこから溢れ出た力のおこぼれでより強力な存在へと変貌していく
「お姉ちゃんを守るのは俺だ、俺は誰よりも強くなるんだ」
《そうだとも、誰もお前の邪魔はできない。誰もお前の邪魔はさせない。お前が最強を語り続ける限り。さあそれを証明してやれ》
「ああ……強い人を倒し続けていけば、最強だって判るもんな。だから」
自分から歩むまでもなく、言葉にした力が全てを引き寄せる
「あの時助けてくれたお姉ちゃんより、俺は強い。今なら頼らなくてもカナお姉ちゃんを守ってみせる」
「お? いつぞやの少年やん、元気しとったかー?」
突然の再会に、にこやかな笑顔で手を振るのは、過去に佳奈美と星を助けた通りすがりの似非関西弁女、染桐葵
この再会が偶然だと思ったまま
この少年が異常だと思わぬまま
「俺の攻撃は一撃必殺、俺の攻撃は速い、絶対に避けられない」
「――っ!?」
その姿が消えたように見えるほどの速度で、懐に飛び込んできた星の蹴り
咄嗟に木刀の入ったバットケースでそれを受け止めるも、皮製の頑丈なケースごと木刀を真っ二つに引き裂いた
「なんや、ウチが気に障る事でもしたんかいな?」
あくまで冷静に、真っ二つになったバットケースと木刀を投げ捨てる葵
「避けられないはずだったんだけど」
《ああ、避けてないだろ? 言葉は具体的にすればするほど効果は確実になる。長いとその分隙もできるから気をつけろ》
「事情も判らんままに子供は斬れんなぁ……マッドはんやったら穏便に大人しくさせられるんやろけど」
拳で居合の構えを取り、葵は地面を蹴る
「ちょいと記憶を失って、大人しくしてもらうで!」
「その攻撃は当たらない、一発も当たらない、俺は全部避けてしまう」
「冗談は口だけに、しときっ!」
勢いを増して死角から放たれる裏拳
星はその見もせずに潜り抜けるようにかわし
「この一撃は岩をも砕く、避けたり防いだりは絶対にできない」
いくら懐に潜り込まれたとはいえ、子供の拳
普通の人間ならそう油断するであろうところだが、彼女の身内には幼女の姿で人狼の力を揮う者もいる
その経験が警戒心となり、思い切りのいい全力の逃げに走る事が出来た
だが
「ぐっ、ぅ、あっ!?」
胴体は辛うじて避けたものの、右腕を僅かに掠めてしまう
「なんやその威力……ちゃんと当たっとらんのに……骨イってるやろコレ」
《威力と当てる事に集中して何処に当てるかまで気が回ってないだろう。きっちり脳天か心臓ぶち抜いてやれ》
「俺は強い強い強い強い……次の攻撃で止めを」
《常に一対一だと思うな、来るぞ》
「俺には」
唐突に視界を真っ白に覆い尽くされる
霞む視界の中に、ガスマスク姿の人影がちらりと見えた
「ガスは効かない」
相手を無力化する睡眠効果があるガスが漂う中、少年は声を発するために躊躇無くガスと共に大きく息を吸い
「次の一撃で、仲間もろとも叩き潰す」
視界を遮るガスをあっさりと突っ切ると、そこには腕を押さえた葵とガスマスクの男、マッドガッサー
《携帯電話だ、爆発するぞ》
進路を遮るようにばら撒かれた携帯電話が、一斉に着信音を掻き鳴らす
「携帯電話の爆発は、起こらない」
ただ着信音を鳴らすだけの携帯電話を蹴散らし
「そこまでだ、ガキが」
横薙ぎに叩き込まれた一撃が、星の腕の骨と肋骨をへし折り砕き、その小さな身体を吹っ飛ばして塀に叩きつけた
「マリ、やり過ぎ!」
「死んじゃいねぇ。ジャッカロープの乳で治るだろ」
スパニッシュフライの契約者の叱責に、悪びれた様子も無く応えるマリ
「仲間に怪我させたんだ、あいこだろ?」
「こんな怪我、すぐ治る。痛くない、治る治る治る治る、治ってお前を殴り倒す」
「あぁ? 何言ってやがるこいつ……!?」
塀に叩きつけられた星がそう語ると、すぐにその痛みも怪我も消えて、何事も無かったかのように立ち上がる
《待て、今のお前じゃ数の多い相手は辛い。逃げるぞ》
「こんな強さじゃ満足できない。全員倒す、俺はもっと強く強く強く強く強く」
《強くなる前にやられちまったら意味が無いだろ。今は逃げてもっと強くなれ。そうすれば俺も強くなって色々アドバイスしてやれる》
星は舌打ちし、自分を取り囲むマッドガッサー一味を睨み付ける
「俺がもっともっともっともっともっと強くなって、強い奴は全部全部全部全部倒すんだ。だから今は姿を消す。俺の姿は誰にも見えない、誰も俺を追う事は出来ない」
言うなりその姿が一瞬で掻き消える
「消えた!? マリ!」
「ダメだ、気配どころか匂いも姿を消した場所で途絶えてる。ガキが言ったままの通り追えそうにない」
鼻と耳をひくつかせているマリだったが、周囲から怪しい気配は何も感じ取れず舌打ちする
「仕方ない、追撃を警戒しながらこっちも退くぞ……葵、あいつは何者だ?」
マッドガッサーの問いに、葵は僅かに首を傾げる
「前に会った時は普通の子供やったんけどなぁ……『悪魔の囁き』が騒動起こしてるらしいし、憑かれてるんちゃうかな」

―――

「負けない俺は強くなるどんどん強くなる誰にも負けない負けないこの町でこの世界で誰よりも強くなる」
ぶつぶつと呟きながら、その強さをどんどん膨らませ続けていく
《程々にしておけよ、呑まれちまったら意味がない。そろそろ使い方に習熟していった方がいいだろうさ。そこいらの雑魚を狩りながら慣れていこうや》
「倒す倒す倒す都市伝説を倒す俺はこの力を使いこなして」
その身長が、僅かに伸びている
身体つきが逞しくなっている
顔つきが大人びている
歩きながら目に見える速度でその身体は成長し、服もまたそれに合わせて姿形を変えていく
「カナお姉ちゃんは、俺が守るんだ」

手塚星という少年の捜索願が警察に届けられたのは、その日の夜の事だった
314以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 19:13:25.17 ID:qCjc6nJv0
さるさん喰らわなくてよかった…
以上、代理投下でした

星少年…守る力は倒す力じゃないぞ…
315以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 19:31:47.67 ID:pvo/Boe20
皆様乙!!
っつか、山田wwwwwwwwww
何やってんだよお前はwwwwwwwwwwwwww

そして、おぉっとHの言葉のせいで星少年が

>>285
>ようし、明日辺りに占い師に話を持っていくネタを投下するぞー
wktkしてるんだぜ!
>マゾ「非常事態の中で芽生えた恋は長続きしないと言いますが、今がチャンス! 短期間でもいいからちょっとでも距離を縮めるチャンス!」
マゾwwwwwwwwどこまでも前向きだwwwwwwwwwwwwww
316以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 19:41:53.09 ID:qCjc6nJv0
外出前ほ
317以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 19:42:44.29 ID:JvNd2Xe90
保守
318以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 20:01:28.58 ID:pvo/Boe20
ネタ固めつつほ
319顎砕き編 ◇ijXVtdIY/Y (代理):2010/03/15(月) 20:17:05.39 ID:pvo/Boe20
西区 廃工場
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二人の黒服が向かい合って座っている
柱に縛り付けてある方は項垂れ
もう片方は宙を見つめていた
「・・・・・・あの」
「・・・・・・はい?」
ドォンッ
「近づいてますよね?」
「近づいて来てますね」
再び二人は沈黙した
縛られている方、黒服Dは胃痛と頭痛で
もう片方は、予想外の事態に思考が停止しかけている


320顎砕き編 ◇ijXVtdIY/Y (代理):2010/03/15(月) 20:19:37.93 ID:pvo/Boe20
ドォンッ
「・・・貴方は部下に爆発物を持たせていたのですか?」
「銃は持たせましたが爆発物は目立つので持たせてません」
「では、この爆発音は貴方の部下ではありませんね」
ドォンッ
「貴方の契約者は、炎だけでなく爆発も起こせるのですか?」
「あの子にそんな能力は無い筈ですが」
ドォンッ
「では、一体誰が ドォンッ !?」
黒服の言葉を遮り廃工場の壁が吹き飛び
爆炎の中から一つの影が現れる
「つば・・・さ?」
違う
翼じゃない
翼にしては影が小さい・・・
顎砕き飴の担当の黒服が銃を構え
爆煙の中から一人の女性が姿を現す
「何者だ?」
その問い掛けに女性は不適な笑みを浮べ
「主婦だ!!」
パァンッ
その言葉と共に黒服の頭を銃で撃ちぬいた


321顎砕き編 ◇ijXVtdIY/Y (代理):2010/03/15(月) 20:22:24.22 ID:pvo/Boe20
何処からとも無く現れたさっきの黒服と全く同じ顔の2人の黒服が背後から女性に銃を突きつけ
更にその背後から襲い掛かった炎によって炭となった
「上出来だな」
得意面で言う女性の背後から疲れた表情の翼が現れる
「何が上出来だな・・・だ、こっちは気が気で無かったぞ」
「私が囮になって、お前が倒す・・・悪い作戦じゃなかっただろう?」
「・・・ハァ、黒服無事だな?」
「え、えぇ・・・・・・そちらの女性は?」
「新島愛美・・・娘と望が世話になってるな、黒服君?」
「娘・・・友美さんの・・・?」
「そう、母親だ・・・さっさと行こう、望の事だからくたばっては無いだろうが「そう簡単に逃がすと思いますか?」?!」


322顎砕き編 ◇ijXVtdIY/Y (代理):2010/03/15(月) 20:25:13.43 ID:pvo/Boe20
さっきまで頭を打ちぬかれて倒れていた筈の黒服が立ち上がり銃をこちらに向けている
「まさか、あんな突然撃たれるとは思「喧しい」!?」ドォンッ
またもや台詞を言い切る前に黒服は吹き飛んだ
ただし今回は手榴弾だったが
「「・・・・・・」」
「どうした?さっさと行くぞ」
「あの・・・せめて話位聞いてあげても」
「そんな面倒な事やってられるか」
「コイツ、来る時もそんな感じで手榴弾で強行突破してきたんだぜ?」
あの爆発音はソレか・・・再び黒服Dは胃の辺りを押さえた
「・・・貴方鬼ですか」
「人間だよ・・・しかしお前丈夫だな?手榴弾でも吹き飛ばんのか」
「私は人間の頃に『この世には同じ顔が三人いる』と契約していましてね・・・私は常に三人居るのです」
壁に空いた穴の前に二人の黒服が立ち塞がる
「成る程・・・数が少ないムーンフェイスと言う事か」
「お前は何を言ってるんだ?」
「要は三人同時に殺さねばならないって事だろう・・・私には無理だな、翼任せる」
「ハァッ!?」
「だって、黒服君は戦闘能力皆無なのだろう?私じゃ三人同時には殺せない・・・となればお前のブレイズオブグローリーしか無いじゃないか」
「お前が何を言ってるのか俺には理解できない・・・が」
「「「予定が狂いましたが、まずはD-962から始末するとしましょう」」」
「元から黒服に手出した奴を生かして帰す気は無ぇ!」

中途半端に続く
323元囁きは主に恐怖す  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 20:30:15.02 ID:pvo/Boe20
 わかっていた
 わかりきっていた
 自分は、失敗してしまったから
 自分は、役立たずだから
 それが、自分の契約者にバレたら、殺される

 人間の姿に変えられてもまだ、沙々耶と名付けられたその悪魔の囁きは、己の契約者の事を恐怖していた
 人間になった今、その契約者とのつながりは切れている
 だが、それでも、いつかバレてしまうのではないかと、恐ろしくて、恐ろしくて………


「やだー、そとはやだー」
「君は、これから人間として生きるんだぞ?篭り切りでいる訳にもいかないだろう」
「やだー。ひきこもりすねかじりのにーとでいいー。そとはやだー」
「…まったく」

 外に出るのを嫌がる沙々耶の様子に、ドクターは苦笑した
 優しくその手を握り、ドクターあh街中を歩く
 少しでも、沙々耶に人間の生活に慣れてもらいたい
 そんな想いからだったのだが……

 この日、そんな想いは、裏目に出てしまう事になる

「………っひ」
「うん?……む、犬か」

 野良犬だろうか
 てとてとと、尻尾を振りながら忙しなく歩いている

 沙々耶は、酷く犬を怖がる
324元囁きは主に恐怖す  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 20:33:45.75 ID:pvo/Boe20
 それが原因で、いまだ「第三手国」日本担当の総統に会わせられずにいるくらいだ
 今、目の前にいる野良犬の事も、沙々耶は酷く怖がり、ドクターの背中に隠れてしまった

「道を変えようか」
「イヌコワイイヌコワイイヌコワイイヌコワイイヌコワイイヌコワイ」

 かたかたと震える沙々耶の手を引き、道を変える

「……む」
「………っ」

 そこにも、犬が
 こちらも、首輪をつけていないところを見ると、脱走犬などではなく、野良犬だ
 ゴミ箱を漁っているようである

 別の道に
 そこにも犬が
 別の道に
 そこにも、また、犬が

「…ぁ、あ」
「そう怖がるな。偶然だ」
「ち、ちがう……ぜったい、違う」

 完全に、怯えきってしまっている沙々耶
 …これは、一度診療所に戻った方が良さそうだ
 ドクターは、沙々耶と共に診療所に戻ろうと…

「………!!」
「ひぃ………っ!?」
325以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 20:36:32.00 ID:OTvMi1sU0
皆様乙です!
ケモノツキの方ので思い出したけど、そういえば正義の鉄槌全然動かしてないなぁ
山田を書くのが面白くて困る

>>315
>何やってんだよお前はwwwwwwwwwww
脳内戦争が勃発中なんだぜ
仲良く口論しあって、時には力に頼ってます

>マゾwwwwwwwwwどこまでも前向きだwwwwwwwwwwwwwwww
健気に今日もストーカーに精を出しております
326元囁きは主に恐怖す  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 20:37:58.51 ID:pvo/Boe20


 そこには、犬が
 たくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんのたくさんの
 たくさんの、野良犬達が、集まって
 その全てが、沙々耶を見つめていた


 −−−−−ぉぉぉおん
 どこからか、犬の遠吠えが聞こえてくる


「ぁ……い、いや………」

 じり、じり、と
 包囲を狭めてくる犬達
 …逃げ場は、ない

「…おかしい。どうして気づいたんだ」
「や、や………だ………」

 だんっ!と
 一匹が地を蹴ったのを、合図に
 数十匹の犬達が、沙々耶に向かって、飛び掛る

「−−−−い、いや、だ、わがあるじ、ころさないで……っ!!」
「く……っ」

 ドクターが沙々耶を護るように抱きしめるが、犬達は構わず、飛び掛ってきて
 その牙が、爪が、ドクターに届こうとした、その時
327元囁きは主に恐怖す  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 20:39:29.63 ID:pvo/Boe20


「動くなっ!!!」


 響き渡った、声
 その声に…ぴたり
 犬達が、止まった

「…総統閣下?」
「間に合ったか」

 ほっと、息を吐いたのは…数匹の犬のリードを握る、総統
 動きを止めた犬達は…支配がとけたのだろうか
 不思議そうに首をかしげたり、人間の姿を見て、慌てたように逃げ出す

 支配の上書き 
 総統の声により、一瞬とは言え洗脳された犬達は、自分達を操っていた何者かから、解放されたのだ

「散歩中に犬達の様子がおかしくなったのでな。話に聞いていた犬を操る能力者の仕業と見たのだが………ふむ、この子は?」
「元・悪魔の囁きです……人間になったのですから、元の契約者からは、もはや認識されないと思ったのですが…」

 何故、気づいたのか
 もしかしたら、異常に犬を怖がる沙々耶の様子に、気付いたのかもしれないが

 かたかた、かたかた
 沙々耶は、ドクターの腕の中で震え続けていた

「沙々耶」
「…………い」
328元囁きは主に恐怖す  ◆nBXmJajMvU :2010/03/15(月) 20:42:12.52 ID:pvo/Boe20


 囁くような、その声で
 沙々耶は、ただ延々と呟き続ける


「わたしはなにもはなしません。あるじたちのことも、なにもかも、はなしません。あるじのじょうほうをもらしたりなんかしません。あるじのふりえきにつながることはなにもしません」

 だから
 だから

「だから…ころさないで、しにたくない。いや、けさないで。しにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくない………」


 かたかたかたかたかたと
 いつまでも、いつまでも、震え続けながら
 ただ、沙々耶はそう呟き続けていた



to be … ?
329以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 21:08:59.58 ID:pvo/Boe20
本日何度目かと言う三面鏡の人への焼き土下座!!!orz
事件本格化後の沙々耶の様子的な
うん、こっちはデビ田と違って、襲われたらあっさり死ねるので何も話せませんとも


…と、サル解除されたんで改めてコメント投下しつつ、代理投下はっじめるよー!
330笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/15(月) 21:12:02.52 ID:pvo/Boe20
【電磁人の韻律詩19〜依頼外来太宰紫〜】

「あ〜あ゛……。忙しいなコンチクショー!」
医者・太宰紫はわめいていた。
一週間ほど前から増え続けている都市伝説事件で、彼女の父の病院には沢山の怪我人が運び込まれているのだ。
簡単に言うと……、彼女はここ一週間病院から外に出ていない。
本日で徹夜三日目である。
「研修医でもこんな激務やらねえわ!ふざけんじゃねえぞ酒持ってこい酒!」
ストレスも限界まで達していた。
コツン、コツン……
リノリウムの廊下に靴音が反響する。
「……ってあら?」
可愛らしく首をかしげる。
彼女の目の前にはあり得ない物が立っていた。
骨、である。
「私ったら疲れているのね。」
柄にもなく『ワタクシ』なんて言っている。
それぐらい非日常な出来事が起きているのだ。
「いくら幽霊が出そうな病院だからってこんなそのものずばりの死神なんて出るわけが……。」
そう、彼女の目の前には大きな鎌を持った骸骨が立っていた。
ぐるりと頭蓋骨だけを回して太宰の方を見る。
そしてそのまま骸骨は何も言わずに―――言える訳無いが―――駆け寄って来るではないか。
「あ〜れ〜!?」
恐怖のあまり太宰紫はそのまま失神してしまった。
331笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/15(月) 21:16:27.31 ID:pvo/Boe20
「……というわけだ。
 あれが何だったのか確かめてくれないか?
 君と僕との仲じゃないか!」
翌日。
太宰は父の友人に紹介された探偵事務所に足を運んでいた。
笛吹探偵事務所である。
しかし今居るのは探偵・笛吹丁ではない。
バイト探偵・明日真だ。
だから明日探偵事務所である。
「そういってもですね太宰さん。
 三徹ですよ?
 そんな状況で死神を見たとか言っても信じられないじゃないですか。」
「明日君、医者が三徹くらいで幻覚を見ると思うなよ!
 僕の知り合いの産婦人科医は二週間眠らなかった!」
この前まで三徹なんて研修医でもやらないと言っていた人間の台詞ではない。
「それはあぶねえよ!?」
「あ、これはオフレコね。」
この物語は現実の人物・団体・事件等とはなんら関係ございません。
「私だって最初は疲れていて有らぬ物でも見たのかと思ったよ。
 でもね、私が死神に会った廊下沿いの病室で患者さんが一人死んでいるんだよ。
 死にかけとかだった訳ではない。むしろおかしいと思わない?」
「……それは確かに。」
「今晩、また病院に出てくるかもしれないから調査に来てはくれないかな?」
確かにそれはおかしい。
そう思って明日真は依頼を受けた。
332以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 21:16:59.40 ID:qCjc6nJv0
>>325
身体強化の都市伝説を探してたら、正義の鉄槌がヒットしたので、参考にさせてもらいました!
そして、リミッターの代償が思いのほか大きかったので、どうしたものかと考えた結果、彼には妹が出来ました
333以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 21:18:03.60 ID:qCjc6nJv0
おおっと支援だ!
334以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 21:18:40.32 ID:9xhtkevW0
しえしえ
335笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/15(月) 21:20:15.00 ID:pvo/Boe20
さて、その晩。
時刻は二時半、草木も眠る丑三つ時だ。
明日は恋路と二人で夜の病院を太宰さんに案内されていた。
「昨日はこの辺りで出たんだよ。」
廃……ではないが古い病院。
そこは死神でなくても幽霊の一つや二つ、平気で出てきそうな気がした。
「アスマー、これ結構怖いんだけど……。」
明日の肩によりかかる恋路。
これではカップルの肝試しである。
「恋路ちゃんだっけ、幽霊くらいなら出るぜ、マジで。」
「出るの!?」
「出るね、ほいほい出てくる。」
「いやああああ!!!」
「あまり声を出しちゃいけない。患者さんが寝ている。」
「あ、ごめんなさい。そういえばここ廃病院じゃないんですよね。」
「うん、ちょっと後で病棟裏に来ようか。」
女性二人が漫才を始めている間に明日真は辺りを警戒していた。
非常灯の明かりだけが緑色に辺りを照らす、夜の病院の廊下。
何処に何が居ても不思議ではない。
336以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 21:20:26.46 ID:qCjc6nJv0
支援
337笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/15(月) 21:24:01.93 ID:pvo/Boe20
「………う〜ん。」
明日真は自分の手をジッと見詰める。
マイクロ波を屈折・反射させて一度に放出する技は溜めが必要だ。
しかし、一度溜めたら十秒以内に発射しないと今度は逆に自分の方がダメージを受ける。
だから前もって溜めておいて出会い頭に攻撃、みたいな真似はできない。
「なんでもありって訳にはいかないんだよなあ……。」
明日真の憂鬱である。
「……というわけでさ、本当に面倒だったんだよね。」
「あはははは!そりゃ面白い!」
「二人とも五月蠅い!」
「「はーい……。」」
コツン、コツン、コツン、コツン
明日に注意されて二人が静かになった瞬間、急に遠くから誰かの足音が響いてくる。
コツン、コツン
リノリウムの廊下に足音が反響する。
残響する。
「あれですか……?」
明日が小声で太宰に尋ねる。
「多分、そうだと思う。あいつに会う前に私も靴音を聞いたし……。」
コツン、コツン、コツン
「そういえば明日君。
 君、仮に死神がやってきたとして倒したりなんだり出来るのかい?」
「一応神様ですけど……都市伝説ならば倒す手立てはあります。」
「ほうほう、それは一体?」
明日真は銃弾を一つ取り出した。
338以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 21:25:39.73 ID:qCjc6nJv0
支援ー
339笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/15(月) 21:28:29.18 ID:pvo/Boe20
「これは死神だろうとなんだろうと一発で倒してしまう魔法の銃弾です。
 オリハルコンだかで出来ているらしく、貴重なので一発分しか持ってきていません。
 まあ出会い頭にこれを銃に込めて撃てばなんとか……。」
「無理だったら?」
「逃げる。」
「ずいぶん行き当たりばったりだね。」
コツン、コツン、コツン、コツン
足音はすぐそこの曲がり角まで近づいている。
「アスマ、こんどこそ来るよ。」
全員に緊張が走る。
明日は笛吹から貰った銃に弾を入れる。
廊下の曲がり角を曲がる影。
明日は片手を構えて待つ。
「おや、そこで何をしているんだい?」
「お、お父様!?」
「……………………え?」
曲がり角から現れたのは太宰の父だった。
「もしかして笛吹探偵事務所の方かな?
 ずいぶん若いようだが……。」
「えっと明日真と申します。こっちは助手の恋路です。」
「明日……何時かの怪我人じゃないか!腕は大丈夫だったのかい?」
怪我で人を覚えているらしい。
「おかげさまで……、ありがとうございました。」
ぺこりと頭を下げる明日真。
340以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 21:30:44.14 ID:qCjc6nJv0
支援
341以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 21:30:53.35 ID:9xhtkevW0
しえしえん
342笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/15(月) 21:32:57.41 ID:pvo/Boe20
「じゃあなにかい?君たちはバイトしているのかい?」
数分後、一行は太宰紫の父である太宰竜之介を加えて廊下を歩いていた。
「都市伝説絡みっぽい事件だけですけどね。」
「ふふーん……。やはりあそこの所長は面白い。そういう商売か。」
「会ったことあるんですか?」
「まぁ一応ね。面白い、見ている分には非常に面白い男だよ。
 私とは相容れないタイプの人間だとは思ったがね。」
「はぁ……。」
「ところで君は将来何になりたい?」
「え、……将来ですか。」
「興味が沸いた。私は老若男女問わず、始めて会った人間には聞いているんだ。」
「俺は正義の味方になりたいんですよ。」
「ほう、正義の味方か。私と同じだ。」
「そうなんですか?」
「ああ、子供の頃から正義の味方に憧れていた。
 だから私は医者になったんだよ。」
「命を救いたくてですか?」
竜之介は何も言わずに静かに笑った。
343以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 21:33:48.43 ID:qCjc6nJv0
支援
344笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/15(月) 21:39:05.45 ID:pvo/Boe20
結局、その晩は何も出なかった。
午前四時くらいまで彼らは夜の病院を回ったが結局本当に何も出なかったのだ。
「まあそう毎日出るってもんでもないですしね。」
「そうだね……、おかしいなあ?」
首をかしげる太宰。
「死神だの何だの言っている暇があったら一人でも多くの患者を救うことを心がけろ。」
コツン、と彼女の頭をこづく竜之介。
「お父様、そうは言ってもこれだって立派な人助けです!」
「ったく……。
 明日君、恋路ちゃん、娘のワガママにつきあってもらって申し訳ない。
 春休みの遊興費と正義の味方になる為の前準備代わりに受け取ってくれ。
 あと、私の話し相手になってくれたお礼だ。」
ポン、と封筒を渡す。
「え、こんなに不味いですよ。結局何もしていないのに!
 所長に依頼を完璧にこなしていないのにお金を貰うわけには……。」
「いや、良いんだよ。受け取ってくれ。
 志を同じくする若人に、ちょっとしたお小遣いだ。
 要らないなら適当な所に募金でもしてくれ。」
「解りました……。」
それじゃあ、と言って太宰竜之介はそのまま病院の中に消えてしまった。
紫も竜之介に付いていった。
恐らく徹夜四日目に入るのだろう。
お疲れ様です、としか言いようがない。
明日と恋路は仕方がないのでバイクで帰ることにしたのである。
345笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/15(月) 21:41:05.23 ID:pvo/Boe20
太宰竜之介は夜の病院を徘徊していた。
今日は緊急外来に患者が来ることもなく静かだ。
「来い、【病院の死神】。」
彼の纏う白衣から黒い霧のような物が噴き出す。
それはひたすら黒く重たい印象を与える。
病院に現れる死神の契約者は彼だった。
「124番、意識が戻る可能性も無いのに無駄な延命治療が行われている。殺す。」
「534番、権力者の息子の為に犯罪を犯しても匿われている。面会謝絶ということで警察の追求を逃れている。殺す。」
「374番、事故で重たい障害を負った為に自ら死を望んでいる。殺す。」
「全員、私がこの手でこの能力で、責任を持ってあの世に送ろう。」
黒い霧は止めどなく噴き出して彼を包み込む。
白衣は墨で染めたように黒く色づき、さながら死神の衣装のようだ。
「いずれも死こそが救いになる人間だけだ。」
霧が晴れると、其処にいたのは穏やか老人ではなく、どちらかと言えば冷たい瞳をした若者だった。
「そもそも、人が人の命をどうこうできるなどと思ってはいけない。
 おこがましい。
 でも……、それでもだよ。どうこうする人間は必要だ。」
自分に対して言い訳するように彼は呟く。
いつも持っている骸骨の仮面を彼は装着した。

「さぁ、【正義の味方】を始めよう。」

太宰竜之介―――正義の味方―――は夜中に歩く。
正義の味方に正義の味方は倒せない。
「私はあの頃願った正義の味方になれたのだろうか?」
天を仰ぎ、彼は問うた。
【電磁人の韻律詩19〜依頼外来太宰紫〜fin】
346以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 21:41:05.44 ID:qCjc6nJv0
支援ー
347以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 21:45:39.09 ID:qCjc6nJv0
おっと終わってたか、笛の人と代理の人乙でした!

これはダークヒーローと言って良いのか、それとも単なるエゴイストなのか…
いい感じに歪んでますな
348以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 22:02:30.50 ID:qCjc6nJv0
部活ネタを書きたいけど、vsコーク・ロアも書きたいジレンマ保守
349以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 22:08:21.84 ID:JvNd2Xe90
投下乙です
350以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 22:23:10.93 ID:pvo/Boe20
せんせー、書きたいネタヲどんどこ書いていって、ふぅおちついた、と思ったら、また同じくらい書きたいネタが溜まっています
これなんて都市伝説???
351以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 22:37:32.85 ID:qCjc6nJv0
都市伝説:創作の電波が降って来る

きっと憑かれてるんだよ…今日はゆっくり休むといい
352以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 22:48:35.37 ID:3WlJMQi40
皆様乙です!
悪魔の囁きが本格進行してきて大変だー!?
こんなハイペースで作者さん大丈夫だろうか?

タイガはきっと喧嘩は強くても武道は勝手が違うせいでやりづらいタイプだと妄想した!

あとマッドガッサーもげろ
いいじゃん乳で治そうよ! 仕事大事よ!? 俺はよくサボってるが

どんな正義を太宰が見せるのか楽しみにしとります。

では投下しますよー
353以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 22:49:59.51 ID:T2udc+vq0
相変わらずMeたんは不安定だぜふぅはははー!orz

>>352
>こんなハイペースで作者さん大丈夫だろうか?
何か、リアルに昨日から腹痛いんだけど、書いてる間ってそれを忘れられるんだよね

そして支援開始!!
354Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/15(月) 22:53:48.35 ID:3WlJMQi40


            ●


 舞が天使――ハニエルに淹れてもらった紅茶を自棄気味に飲んでいる。
給仕をしているハニエルはやけに嬉しそうだ。そんな光景を見てTさんは苦笑し、
 ……さて。
 思考を切り替え、舞と己の天使を興味深げに眺めている直希へと問いかけた。
「この情報は黒服さんには?」
「彼にもまた話すつもりだが」
 それがどうしたのだろうか?
 そう言いたげな直希に「いや、ならまた詳しくは青年の口から言ってくれ。
聞きたい事があったのでついでに伝えておこうと思っただけだ」と言いながら、「失礼」と携帯を取り出す。
 数秒の呼び出し音の後、黒服が出た。
「……黒服さん、≪コーク・ロア≫の件、新たに一人加担しているモノの正体が分かった」
『能力なども?』
「ああ、契約しているのは≪セイレーン≫、遭遇者は≪光輝の書≫の契約者の姉だ。
どうやらその歌声で相手を支配できるらしいが、これがどこまで効くのかは分からない。
少なくとも彼女には効かなかったようだ。
 詳しいことは彼女本人に聞くといい。彼女は精度の高い似顔絵も描く」
355以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 22:55:34.16 ID:T2udc+vq0
舞wwwwwwwwwwww支援
356Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/15(月) 22:56:20.02 ID:3WlJMQi40
 Tさんが話していると直希が怪訝な顔をした。
 自分がまた話すのになぜそんなことを話すのかと言いたげな表情だ。
Tさんはその表情を見て苦笑する。
 最初の話題は呼び水だ。
「……それと」
 一呼吸、
「調査結果は出ただろうか?」
 彼の周囲の状況的にいきなり訊くには躊躇われる事柄で、しかしTさんにとってはここからが本題だった。
『はい、翼の元クラスメイトたちの≪悪魔の囁き≫の調査は終わってますよ』
「情報を流してもらっても構わないか?」
 気になる情報ではあるが、彼が≪組織≫としてその情報を流せないと言うのなら無理に聞く気も無かった。
『ええ、構いませんよ』
 返事は当然のように情報を渡そうとするもので、ありがたいとしか言いようがない。
『翼の高校の同級生たちからは≪悪魔の囁き≫は発見されませんでした』
「そうか……彼の、母親については?」
『……反応はありませんでした』
「そうか……わかった」
 やはり彼にしては珍しく明らかな嫌悪が感じられる声だ。
 Tさんはそう思いながら電話口に礼を言う。
「すまない、ありがとう」
『いえ、では私はこれで』
 ああ、と応えて電話を切った。
 得た情報を頭の中で簡単に整理し、
「青年、一ついいだろうか?」
 直希に声をかけた。
357以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 22:57:09.64 ID:T2udc+vq0
しええん
358Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/15(月) 22:58:44.22 ID:3WlJMQi40
「なんだい?」
 気になっていた事がある。
「≪日焼けマシーンで人間ステーキ≫の青年の苗字、あれはこの町にある旧家のそれだろうか?」
 舞が呻きながら机に伏せていた顔を上げた。
「チャラい兄ちゃんの苗字?」
「日景の事か。――確かにそうだが。翼はたしかそこの当主の孫にあたる」
「とーしゅ?」
「家で一番偉い奴のこったな。……え? なに? チャラい兄ちゃん実はいいとこの人間か?」
 リカちゃんへ言葉を教えながら舞はTさんへと疑問符の浮かんだ顔を向けた。Tさんは思案顔で頷く。
「の、ようだな」
 日景、学校町ではわりと古くからある家の家名のようだ。
「それがどうかしたのだろうか?」
「いや、以前小耳に挟んだことがあって、気になってな」
 秋祭りが終わった直後、無理を通して秋祭りの運営を乗っ取った≪赤い靴≫の少女の父親に文句を言ってきた者たちがいたようだ。
その文句を言ってきた者の中に日景の姓の者がいたという話を聞いた憶えがある。
359以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 22:59:34.57 ID:T2udc+vq0
しえしえ
360Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/15(月) 23:01:06.07 ID:3WlJMQi40
 ≪赤い靴≫の父親がその時愚痴交じりに言っていた話によると、
「たしか、政治家なども出していて各界に影響力を持っている家のはずだな」
「その通りだ。どうも翼自身はそのことを把握していないようだが」
「そうか」
「自分の家の事なのになー」
「ねー」
「翼にもいろいろあるんだ」
 直希の困ったような言葉にTさんは無言で頷く。
 ……家の関係で狙われている線もあるわけだ。
 せめて犯行声明でも出てこれば黒服さんも仕事が楽だろうにと思う。
 ふと気づくとハニエルが紅茶のポットを手に持って笑顔で横に居た。
見ると、カップの中身が空になっている。
「ああ……すまんな」
 表情を緩めると天使へとカップを差し出した。
361以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:01:57.60 ID:T2udc+vq0
Tさん、読みはわりとばっちりですしえーん
362以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:02:24.78 ID:qCjc6nJv0
これを見てからじゃないと寝れねぇ!支援!
363Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/15(月) 23:05:31.10 ID:3WlJMQi40


            ●


「じゃーん!」
 なんかよく分かんねえが難しいってことはよく分かる会話をしてたTさんと直希の兄ちゃんが醸し出していた空気を盛大にぶち壊す効果音をセルフで発しながら出し抜けに現れた、
足とかの露出がすげえエリカの姉ちゃんに最速で反応したのはリカちゃんだった。
机から飛び上がるとそのまま俺の鞄の中へと潜っていく。
「ああん、待って待ってー! ほら、お洋服作ったんだよープリーズカムバーック!」
 姉ちゃんが片膝をついて手に持ったリカちゃんサイズの服をひらひら振りながら叫ぶ。
「およーふく、なの?」
「みたいだぜ」
 中身がほとんど入っていない鞄から窺うように出てきたリカちゃんをそのまま取り出してエリカの姉ちゃんに渡す。
姉ちゃんはリカちゃんに服を合わせてるけど……。
「すげえ」
 この短時間で作り上げたのもすげえけどそれがぴったりと似合うのがまたすげえ。
「おねーさんがんばっちゃったからね!」
 ピースサインしてるけどがんばっちゃっただけでロクに寸法も採ってない人形の服をあそこまで完璧に作れるもんなんだろうか?
「すごいの! きれいなのっ!」
 確かに可愛いし、リカちゃんも嬉しそうだし、いっか。
364以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:06:23.14 ID:T2udc+vq0
リカちゃんナイス反応wwwwww支援
365以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:07:41.64 ID:qCjc6nJv0
絵が上手くて裁縫できて、なおかつおpp…ゲフンゲフン、女性としての魅力もある姉
直希が羨ましいぜ支援
366Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/15(月) 23:08:00.83 ID:3WlJMQi40
「ほら、リカちゃん、お礼は?」
「ありがとうございます! なの」
「ああ、良い……っ!」
 恍惚とした表情でなんか別世界にトリップしてる。
目が超キラキラしてその視線がリカちゃんをひたと見据えている。
 またリカちゃん怖がんねえかな……。
 そんなことを考えながら姉ちゃんを見ていると、Tさんが席を立った。
「さて、そろそろお暇するとしようか」
 言われて、つと窓の外を見るとそろそろ日が落ちる頃だった。
 ありゃ、結構お邪魔してたんだな。
「じゃあ――ってなんかいろいろもらってばっかで悪りぃな」
 俺も席を立ってご機嫌なリカちゃんを鞄に戻す。
「いや、こちらも姉さんが迷惑をかけてしまって申し訳ない」
 直希の兄ちゃんがエリカの姉ちゃんを見ながら疲れた感じで言う。
「いやいやこんな良いもんもらえたんだし迷惑もくそもねえよ」
 な? とTさんとリカちゃんに言うと二人はそれぞれ頷く。
 帰ろうと部屋を出ようとすると、Tさんが直希の兄ちゃんを振り向いた。
367以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:08:38.66 ID:T2udc+vq0
しえーん
>>365
直希曰く、エリカは「天才」
ただし、天才となんとかは紙一重です
368以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:09:41.03 ID:qCjc6nJv0
支援ー
369Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/15(月) 23:10:43.89 ID:3WlJMQi40
「ああそうだ、青年」
「む?」
「愛という感情が分からないと言ったな」
「ああ、そうだが」
 Tさんは力の抜けた笑みを直希の兄ちゃんに向ける。
「翼や誠、彼らに対する青年の友誼、それも広義には愛だ」
「ふむ……」
 なんか難しそなこと考えてそうな顔になった直希の兄ちゃんにTさんは言葉を重ねた。
「青年が知りたい愛とは違うのだろうが、な」
「あれだ。ある時ぱっと気づくこともあるのかも知んねえぞ」
 俺がそうだったし。もしかしたら気づいてないだけなのかも知んねえ。
「何か焦っているようだが辞書的な意味を知りたいわけではないのだろう? 
自身でゆっくりと、通り一遍の知識ではなく青年の本当の愛を知っていくのが一番だ」
「君は、そうして愛を見つけたのだろうか?」
 どうでもいいけどこの男共は愛愛言ってて恥ずかしくねえんだろうか……。
370以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:12:04.33 ID:T2udc+vq0
>どうでもいいけどこの男共は愛愛言ってて恥ずかしくねえんだろうか……。
いいツッコミだwwwwwwwww支援
371以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:12:12.57 ID:qCjc6nJv0
支援
372Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/15(月) 23:14:24.58 ID:3WlJMQi40
「ああ、俺はそうして幸せを見つけたよ」
 そう言って抱き寄せられた。
「――っ!?」
 何をっ!? や、ちょっ――
「まあ少々蓮っ葉だがな」
 腕の中で暴れてると笑みを含んだ言葉をかけられて、腕を離される。
 直希の兄ちゃんはふむ、なるほどと頷くと、感情が薄い目で俺を見た。
「レディ、もう腕は離されているのに離れないのかい?」
「……」
 そっぽを向いて無視してやった。
 兄ちゃんは姉ちゃんになんか耳打ちされてふむ、と納得したように頷くと、Tさんに問いかけた。
「僕にも見つけることができるだろうか?」
「できるだろう」
 またむやみやたらに断定口調だ。
 直希の兄ちゃんは口の端を緩める。
「また、機会があれば話を聞きたい」
「ああ、では」
「いろいろあんがとな! 姉ちゃん、兄ちゃん!」
「ありがとうなの」
 挨拶をして、俺たちは玄関へと向かっていった。
373以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:15:16.32 ID:T2udc+vq0
にやにやにやにや支援
374以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:15:34.93 ID:qCjc6nJv0
あらやだ、Tさんったら大胆!支援!
375Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/15(月) 23:17:30.91 ID:3WlJMQi40
さあ土下座だ!
情報を得たり交換したり知ったりと。今回はマッドの時よりも情報が錯綜気味で大変そうだ〜
事件が本格化しましたのでこのまま玄関先でまた電話がかかってきて一気に情報が入るというのも悪くないと思っていたりしますが
そこら辺は花子さんの人の裁量に任せるという事で

>>353
うへえwww俺なんか一日一本がやっとですよw
376以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:20:48.98 ID:qCjc6nJv0
投下乙でした!
甘酸っぱいよ!Tさんと舞の絡みが甘酸っぱいよ!

>情報を得たり交換したり知ったりと。今回はマッドの時よりも情報が錯綜気味で大変そうだ〜
「組織」がどこまで情報を知っているのかが気になるところ
いずれクロスさせてもらうときに、質問するかもしれません

そして私は寝る…明日もスレが残ってmすように…
377以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:21:12.57 ID:T2udc+vq0
Tさん乙でしたー!!
翼が狙われている事については、Tさん半分以上正解です、流石はTさん
せっかくなんで、このシーンに続けて報告させたいなぁとか妄想爆発させるぜ!!!

だが、今日はもう寝る、おやすみー
明日もスレが残っていてくれれば幸せだ!


>>365
改めて、もっかい言うと
エリカは、わりとパーフェクトに何でもできるんですよ
職業も、画家兼小説家だし(同人活動もまだやってますが)、たまにグルメ本の執筆もやってます(こっちは直希と合同の事もありますが)
そう言うエリカは直希曰く「天才」
そんな姉が、直希にとっては誇りであると同時に、決して越えられない存在としてわりと複雑だったり
378以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:24:41.35 ID:Da7wNJR30
Tさん乙でした。
379以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:27:24.15 ID:3WlJMQi40
>>361>>377
『ほら、読みばっちしだって!』
T「なぜお前一度作者さんに確認を取った後に書かない……」
『だってそっちの方が面白いじゃん』

>>365
まったくだ。しかも>>377見た感じだとほぼ完璧超人だ……と?

>>374
たまにはそんなことも。舞も悪い気はしていないのです

>>376
この味はまさにスウィート!
380以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:30:31.08 ID:wnmBD+ae0
>>202
亀だが、ありがとう 書いてみることにするよ

文章も固めず、書いていくのは不安が残るが 乗りかかった何とかと思いやってみる
381以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:44:06.61 ID:3WlJMQi40
でも見当違いをしてたら書きなおしたくなるのよね、Tさんのキャラ的に
幸い今までそんなこともないけども
この書き方が花子さんの人に迷惑をかけていないか心配だ。

>>380
ガンガレ!
382以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/15(月) 23:59:51.36 ID:3WlJMQi40
書き忘れてた!
Tさんは町出身じゃないので誰か知ってそうな人ということで≪赤い靴≫の父親を使用させていただきましたぁ!

その後も親交があるのかは謎ということで一つ
383以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 00:09:08.56 ID:hrdxo5aS0
ここは学校町の南地区にあるとある公園
規模はそこそこあり、昼時の時間となると親子連れやカップル、昼休み中のOLなどでそれなりに賑わう。
しかし、そんなのどかな公園のひと時をぶち壊すかのような ブロロロという爆音が近付いて来ていた。
爆音の発生源である大型のバイクに乗っているそれは、細身の体を、黒いボディスーツで包み、
花の模様の描かれているフルフェイスヘルメットをかぶっている。
真昼間に暴走行為をはたらいて、相当目立っている上に、その風貌がより一層それの存在を異質にしていた。

当の本人は、全く気にしていないようで、バイクを路肩に止めると、何食わぬ素振りで公園内へ入っていった
噴水の近くにあるベンチにどかっと腰かけ、ヘルメットに手をかける。
その下に隠れているのが、栗色の長髪の美人女性であれば
どこからともなく現れた屈強なバイク乗りが「お,,,,,,女!?」とでも言いそうだが
残念ながら、現れたのは,,,,,,,短い銀髪、いや白髪をワシワシと掻き毟る,,,,,,,,,



ババアであった
384以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 00:26:17.14 ID:lJKWkEHC0
支援
385以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 00:28:54.59 ID:hrdxo5aS0
「ング、ング,,,,,,,ップハァーーー!!いやあ、ガッツリ走った後のビールは格別だねぇ
本当、残り少ない人生これのために生きてるって感じだわ」

といいつつ手に持っていた袋から煙草を取り出し、火をつける
当然、この公園は禁煙区域であるが、このババアは全く気にしていない

「ハアァ,,,,,うめぇ。,,,,それにしても、この町は本当、いいとこだわ、孫に紹介されて来たかいがあったよ」
「まぁ、それでもどうせすぐ飽きて、またフラフラとそこらへん旅するんだろうけどねぇ,,,,,,この町に祭りやら
ユーレイやら都市伝説やらの一つ二つでもあれば、ちょっとは滞在期間が延びるだろうけどさ」

当然、彼女は知らない  いや、知らなかった
この町に都市伝説が一つ二つどころじゃなく いる ことを
そして それに自分から飛び込んでいってしまうことも

386以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 00:35:59.14 ID:4CxH89vU0
支援
387以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 00:52:26.86 ID:hrdxo5aS0
「さて、今日はどこにとまろうかねぇ,,,,さっき走ってる途中でラブホテル見っけたけど、流石にあそこは気が引けるし,,,,,,,,
第一、ホテルってがらでもねぇ,,,,,,,」

暫くの間、蟹の念仏の様にブツブツ言いながら悩んでいたが、ふと顔をあげて、本日9本目の缶ビールに手をかけた

「ま、悩んでもしかたないさ、なるようになれってな」

と言い、一気にグイッとビールを飲み、缶の半分以上を開けてしまった
しかし、一向にこのババアは、酔っぱらう気配どころか、顔を赤くする素振りさえ見せない
実に恐ろしいババアである

その日は、日がな一日、飲んで吸って、屋台の焼き芋を食い、おっかなびっくり近付いてきた子供たちと戯れたりと
割と充実した一日をすごしてた

そんなこんなで、時間が過ぎ 今は一日遊んで仲良くなった子供達を見送り、ボーッとベンチに座りながら
本日17本目のビールを飲んでいる

その時だった 彼女の目の前をあり得ないものが横切った
「んあ?........なんだありゃ?」

流石に酔ったかなと、反省しつつ目を凝らしてよくよく見てみる が、確かにそれは居た
シャカシャカとせわしなくその脚を動かして歩いていたのは,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,タラバガニだった
388以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 01:19:17.23 ID:lJKWkEHC0
389とある甲殻類の独白:2010/03/16(火) 01:21:19.91 ID:hrdxo5aS0
はああぁぁぁ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,だめだ、全然いいのが見つからん,,,,,,,,,,,,,,せっかくネットで噂を聞きつけてわざわざ学校町に来たっつうのに
肝心の契約者候補にリストアップ出来るような 素質あり&カワイコちゃんな人間がいねぇ
俺は単体じゃあ糞弱いからなぁ、なんせカニだし
はぁ、いっそ、素質の事は目をつむって、テキトーにナイスバディなねーちゃんをだまくらかして、あんな事やこんな事,,,,,,,,,,,,,,,
じゃなくて、裏でひっそりと支配ケーカクでも進行させようかなぁ
最近のガキンチョは大体の機械類は扱えるし,,,,,,,,,,,,,,,問題ねぇよなぁ

って、もう逢魔ヶ時かよ、勘弁してほしいぜ 他の奴らにみつからねぇ内にとっとと隠れて休もう
ん?お? あの人影は,,,,,,,,,,,,,女だ!!!よし!!!どんなねーち,,,,,,,,,,,,,,,,ババアかよ、糞
あーしかもあの大量の空き缶,,,酔っぱらいかよ
どーせ、ニンゲンには俺のことみえねぇだろーが 退散したほうが賢明だな,,,,,,
まぁ こんなババア 俺の能力使えば、なんてことないんだけどな
って、あれ?なんかこっちみt「ドゴッ!!!!」

そうして彼(?)は そのババアがぶん投げた350mlの缶によって 意識を手放すハメになった



390以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 01:45:45.59 ID:hrdxo5aS0
バチバチバチ,,,,,,,
「うへへーもっと揉ませろやー,,,,,,,,,,,,,,,ふひっひひひ,,,,,,,,,,んお?なんだか体があったかいナリィ,,,,,じゃなくて熱い!!!
ものっそい熱い!!!!」
「うお!?カニが喋った!?あ、痛い痛い!このやろーアタシの指挟みやがったね!!」
「てめぇ..........人様に缶投げつけるわ、焼いて食おうとするわ,,,,,,,,,いい度胸じゃねぇか,,,,,,,,,,このまま指をねじりきってやろうか!」
「カニ風情が 調子に乗ってんじゃないよ! おとなしく食われな!」

ギャーギャーと騒いでいるが、時刻はすでに10時近くになっている
近隣住民にとっては、いい迷惑である
しかし、その二人に近付く複数のの影があった

あるいは、好奇の目を あるいは敵意むき出しの目を向けて
あるものはバット、あるものはスタンガンなどを手にし ひたひたと二人に向けて歩を進めている

「あれもさぁ、ホームレスかなぁ」
「じゃねえの?」
「でもさ、根城にしてるってわけでもなさそーだし」
「んなのカンケーねーべ 大体ここらへん根城にしてたやつらは、俺たちが狩っちまっただろ?」
「ヒヒヒ、それもそーだな」
「まあ、どっかから流れ着いた新人さんだろ?俺たちの事もしらないでさ」
「んじゃあ、その新人さんをいっちょもんでやりますか!」
「俺の鉄パイプの錆にしてやるぜ〜ってか?」
「簡単に仏にすんなよ?改造したてのスタンガンもためしてえしよぉ」
「おい、ちんたらやってんな、いくぞ」

391以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 02:13:04.24 ID:4CxH89vU0
支援〜
392以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 02:20:09.93 ID:hrdxo5aS0
「おい、そこの変な踊りしてるババア、ちょっと遊びに付き合えや」
「五月蠅いよ今こっちは取り込んでんだ、野球の練習の誘いなら、よそあたっておくれ!」
「あータクちゃん、バット持ってるから勘違いしてんじゃね?」
「フツーこの状況でそう思うか?」
「バカじゃね?つーかキチ○イ?」
「ヒヒヒ、違ぇねぇ」

と、ここでカニがババアの指に食い込ませていた鋏を離した

「あーおいババア、あいつら手前の事、狩るつもりだぞ」
「はぁ?狩るって?」
「この状況見たらわかんだろうが..........まぁ、所謂 絶 体 絶 命ってやつだな」
「おいおい.........勘弁しとくれよぉ、アンタ妖怪かなんかだろ? 化かすなりなんなりしてこいつら追っ払っちまってくれよ」
「俺は妖怪じゃねぇ、都市伝説だ つか、ケータイ使って、警察なり家族なり呼べばいいだろ,,,,,,,,」
「けーたいなんて持ってないよ、使い方わからんし」
「んだそれ,,,,,,,,,,,なあババア、俺の事を二度と食おうとしないって約束できるか? 出来るっつうんなら、助けてやってもいいんだけどなぁ,,,,,,,,,」
「ワカッタワカッタ、約束スル、絶対クワナイヨ」
「,,,,,,,,,,,,,,なんか気に食わねえが、まぁいい、本来こんなクソババアと契約なんざ、ありえねえ事なんだが,,,,,,,,,,しゃあねえ 結んでやるよ」

そう言い終わるやいなや、彼女とカニを光が包んだ
突然の出来事にただただ驚くことしか出来ないホームレス狩りの目の前に 再度現れたのは
やはり先ほどの、黒いボディスーツの彼女だった

ただ、何点か違っているのは、いつの間にかサングラスをつけている事
そして彼女のボディスーツの手から肘の部分が真っ赤に染まっている事だった
393以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 02:38:07.98 ID:HYrIuRqD0
しえん
394以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 02:55:23.94 ID:hrdxo5aS0
「,,,,,,,,,,,,,っと、よし契約成立だ、いいかババアこの俺の能r「ババアパーンチ!!!!」
「んだこれ,,,,,,,,手品かぶべらっ!!」

と、彼女はカニの話を全く聞かずに、ホームレス狩りの一人を一発でのしてしまった

「おい!!この糞甲殻類!!全然強くなってねえじゃないか!!」
「てめえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!人の話は最後まで聞きやがれ!!!つーか、てめえ単体でも十分強いじゃねえか!
残りの奴らもとっととぶっとばしゃあいいだろ!!」
「無理、もう無理、ババアはあれで精いっぱい、もう限界だよ」
「こんの,,,,,,,いけしゃあしゃあと,,,,,,,,おいそののした男のスタンガン拾え、その黒い箱だ!!!」

カニがそう言い終わるやいなや、とても還暦をとうに過ぎた者の身のこなしとは思えないスピードでスタンガンを拾い上げた
一連の出来事に呆気にとられていたホームレス狩り達も仲間の一人が張り倒され更に武器を盗られた時点で、臨戦態勢になっている
一発触発の状態だ

「いいか?今度こそ俺の話をよく聞けよ? この俺,,,,,,,,,,『カ○道楽の看板は人力で動いている』の都市伝説の能力の『仕掛けのあるものを人力(念)で操作出来る様になる』
を使えば、対象の機械に触れながら念ずれば、勝手に作動させる事が出来る、但し、対象の機械の存在、用途を知らねえと能力は使えない,,,,,,,,,まぁ、念ずることも出来ねぇからな
,,,,,,,,,携帯電話も使えねぇてめぇは、スタンガンの使い方もわからんだろうから、特別に教えてやる、そいつは『電気を発する機械』だ!!「電気が出る」と念じればその通りになる
余計な事考えるなよ、「電気が出る」それだけを念じ続けろ!!」
「なあんだかよくわからんが、兎に角念じればいいんだね?よし、やってやるよ」

 
395以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 03:06:36.44 ID:hrdxo5aS0
「(電気が出る、電気が出る、電気が出る,,,,,,,,,,,,,)」
彼女がそう念じるにつれ、じょじょに彼女の指がスタンガンの内部に入りこんでゆく
「そうだ、念じ続ければ対象に自分の体が入り込んでいく,,,,,,,,,まぁようするに看板の中の人ってえ事だ」
「ごちゃごちゃ五月蠅いよ! 気が散るからだまっとくれ!」

「(電気が出る、電気が出る、電気が出る,,,,,,,,,,,,電気が,,,,,,,,,,,,,,,,,出る!!!!,)」
そう念じた瞬間、スタンガンの先端が数回チカチカ点滅し、まばゆい光を放った

「よし!やったか!」
「おい、やめろババア、そいつは死亡フラグだ」
396以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 03:21:25.99 ID:HYrIuRqD0
支援
397以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 03:31:47.94 ID:hrdxo5aS0
フラグが成立したのかどうかはわからないが、サングラス越しにホームレス狩りをみても、光に怯んでいるだけでダメージは特に無さそうだ
彼女はそれを確認すると、彼らとは反対方向に脱兎のごときスピードで逃げ出した

「,,,,,,,,,,,,っつあ、なんだいまの,,,,,,,,,,,,あ、おい!!あのババア逃げるぞ!!追いかけろ!!」
「交番にでも駆け込まれたらやっかいだ、とっととやっちまおう!」


「,,,,,,,,,,,,,,,,,なんだよ今の!!余計な事考えんなっつったろーが!!」
「うるせーー!!電気出ろってちゃんと念じたわい!!!」
必死に振る腕から聞こえる声に、若干のドップラー効果を感じながら彼女は走っていた
一方カニは、もはや自分の力が衰えてしまったのではないか、と一抹の不安を抱えていた
ふと、彼はサングラスから直接広がる自分の視界の中に、走っている彼女の足元をヒュンと照らしているスタンガンを見つけた

「,,,,,,,,,,,,んのババア、確かにライトの事も電気っつうがよぉ,,,,,,,,,,,ぬお!?急に止まんじゃねえよ!」
「,,,,,,,,,,,,,,,なあカニ、今頑張って逃げたら、後ろのガキからは逃げれるよな」
「まぁな、てめえのその足ならな」
「でもさ、多分奴ら、アタシの事逃がしたってなったら、血眼になってこの公園の周り、探し回るだろうなぁ」
「,,,,,,だろうな」
「,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,昼間の子供達、怖がって遊べなくなるよなぁ」
「,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,だな」
「,,,,,,,,,,,,それは、いやだねぇ」
そして、彼女は、彼らのいる方向に、クルリと踵を返した。

398以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 03:53:52.61 ID:hrdxo5aS0
「いいかババア、さっきの説明は間違いだ、そいつは雷みてえなもんがでる機械だ」
「なんだい、そうならそうと最初からいっとくれよ」

軽口をたたく口とは裏腹に、彼女のその眼は、サングラス越しにでもわかる程の覚悟と怒気をはらんでいた

「ババア、チャンスは一回だけだ、これでダメならもう御終いだ」
「んなこたぁ、わかっとるよ,,,,,,,,,,,それでも、ガキンチョどもが平和にくらせるっつうんなら、それがババアの本望さね」
「けっ、そりゃあ大層な事で,,,,,,,,,おい、やっこさんども、そろそろ来るぞ」
「嫌でも騒がしい声が聞こえてくるわい,,,,,,,,,,さて、こっちのガキにゃあ、ちと御仕置きせんといかんねぇ」

そういって彼女はスタンガンを構える


「おりゃあああああ!!!!!!!!くたばれこの糞ババアぁ!!!!!!」
「(雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷)」

彼女の周りを電流が流れていく

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
「(雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷雷...................がでる!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」

「喰らえこんガキャアァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!」

そう叫ぶと、彼女の持つスタンガンからまばゆい光と、自分のバイクのそれとは比べ物にならない轟音と

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン

文字通り、雷が出た

399以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 04:10:30.67 ID:HYrIuRqD0
支援
400以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 04:38:48.17 ID:hrdxo5aS0
「,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,えーそれでは次のニュースです、昨夜 学校町で突発的な落雷があり学校町全体、
及び周辺区域で大規模な停電があり、一時騒然となりました。
幸い死者は出ておらず、当時、落雷したxx公園にいた、少年数名が火傷を負うなどのけがを負いましたが
いずれも軽傷です。
当時、付近に雲は発生しておらず、警察は事件、事故両方で操作を進める予定です
また、被害にあった少年達は、付近で発生していたホームレス連続殺人事件に
何らかの関わり合いがあるとみて、少年達が意識を取り戻し次第、別件として聴取する予定です
それでは次に,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,」

「なあババア、てめえのバイクぐらい、てめえで動かせるだろ」
「いいじゃないか、別に、それにほらそろそろ,,,,,,,,,,,,,,」
と彼女のポケットの中に500円硬貨1枚と100円硬貨3枚が現れた。
「能力を1時間使うごとに800円もらえんだ、使わない手はないだろ?」
「,,,,,,,,,,まぁ、俺の財布から出てるわけじゃねえし、それでてめえがこの町で家賃払って飯食って生活してんだから
文句はねえんだけどよ,,,,,,,,,,,,,」
「フフ,,,,,,,,ならブツブツ言ってないでだまってなよ」

「(しかし、あの時まさかスタンガンも近くにあった電灯もグズグズに溶けるほどの電撃を放つとはな,,,,,,,,こいつは大当たりだぜ
機械音痴が功を奏したんだろうな,,,,,,,,,,,まあしいて欲を言うなら,,,,,,,,,,,,,)」
「とっとと、若返りの都市伝説と契約してもらわんとなぁ,,,,,,,,,,,」
「ん?なんかいったかい?」
「いや別にぃ」
「あそ、それにしても、あの公園早く直んないかねえ、ガキンチョどもにあえやしないよ」
「それでも、業者がいない間はてめえが重機操作してっから、直りはだいぶ早いんだけどな」
「まぁねぇ、ところで、今日は,,,,,,,,,ええと,,,,,,,,なんだっけ?けーたいと,,,,,,,,パコソンだかなんだかを買うんだっけ?」
「,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,あ、信号青だぞ、早く行けよ」
「はいはい、んじゃあ、ぱぱっと行くか!!」
そうして今日も、腕の部分だけ赤い、黒のライダースーツの彼女は、繁華街の喧騒に負けないくらいの爆音を、撒き散らしながら暴走する
デフォルメされたカニの描かれたフルフェイスヘルメットが、太陽に反射して、輝いていた
〜fin〜
401訂正:2010/03/16(火) 04:47:00.63 ID:hrdxo5aS0
訂正
操作×→捜査○







402以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 04:48:01.13 ID:hrdxo5aS0
カニ道楽の看板は人力で動いている
自給800円

↓課題解釈
仕掛けのあるものを人力(念)で操作出来る様になる
総使用時間1時間毎に800円貰える
ある程度までならその物体の機能を超えて操作出来る
例:携帯電話を使って複数人と同時に通話をする
但し、物理的に不可能な操作は無理
例:携帯電話を使って空を飛ぶ
尚、操作するものに対しての知識量、潜在意識
によっては操作に制限がかかってしまう
例:電話は一度に一人の人としかできない
という潜在意識があると、複数人と同時に
通話するのがむずかしく、もしくは不可能になる
例:電子レンジ自体を知らなければ電子レンジを
人力で操作する事は出来ない。

都市伝説の姿はタラバガニ
ある程度なら、姿を変化出来る
口は悪い
機械類に疎いババアに、可能性を見出し、契約に至る

契約者
不良ババア ババアとは思えない素行の悪さと身体能力
しかし、根は優しい
日本中をふらふらと旅していたが、学校町
に立ち寄った際カニと出会い、この町に興味を持ち、しばらく滞在することにした
白髪単発の細身、モデルはpingpongに主演した際のの夏木マリ
403以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 04:50:04.12 ID:HYrIuRqD0
乙でした。
404以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 04:57:19.61 ID:hrdxo5aS0
最後に
私の背中を押してくれた
>>202
>>381

そしてこんな時間まで支援してくれた方 並びにこれから読んでくださるだろう方に感謝!!

このssのババアは好きなように使ってやってください、てか使ってくださいお願いします
私自身がこのババアがどれだけ大暴れするのか見てみたいのです

それでは、寝るまで捕手に回ります
質問等あれば 承りたいと思います

それでは
405以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 05:04:53.43 ID:HYrIuRqD0
406以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 05:11:58.80 ID:hrdxo5aS0
ほっしゅっしゅ
407以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 05:34:17.68 ID:hrdxo5aS0
ほっしゅっしゅ
408以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 06:54:37.71 ID:4CxH89vU0
保守
409以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 07:51:29.19 ID:KMJtyYPSO
410以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 09:15:07.56 ID:ieSnxugc0
やっほう残ってたぜ!
深夜投下乙&保守感謝!
411以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 10:11:42.49 ID:YkPra+LX0
ひゃっはぁーーーーー!!残ってた!!!!
甲殻類乙なんだぜ!!!!!!!!!!!!
412花子さんと契約した男の話  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 10:40:45.61 ID:YkPra+LX0
「はい…そうか、わかったから」

 明日から、頼んでいた件についての報告の電話が来た
 傍でタイヤキを食べていた花子さんが、みー?と首を傾げている
 その花子さんの頭を撫でてやりながら、俺はその電話に対応していた

「…北区、か。わかった」
『でも、そろそろ移動しそうだって話だ。移動したら、その場所も連絡するようにするか?』
「…すまない、頼んだ。俺からは、その度に日景さんの方に伝えるから」

 それじゃあ、と電話を切る
 もぐもぐ、ごくん、とタイヤキを飲みこんで、花子さんが俺を見上げてきた

「誰かにお話しに行くの?」
「あぁ、ちょっとな」

 さて…行くとするか
 俺が歩き出すと、花子さんもてちてちと追いかけてくる
 向かう先は住宅街の一角、学校町でも古くからある屋敷類が並んでいる一角だ
 その中でも、五大旧家とか呼ばれる、一際大きな屋敷の一つに向かう

「…花子さん、悪いけど、ちょっと外で待っててくれるか?」
「うん、いーよ」

 いってらっしゃい、と見送られて、俺はその家……日景家の門に向かう
 開け放たれた大きな門を潜り抜けると、ちょうど、本来の依頼人である日景 薫さんが、庭の掃除をしていたところで
 俺の姿に気づいて、おや、と声をあげてくる

「こんにちは、龍一君。どうしたんだい」
「…こんにちは。獄門寺組若頭 龍一。日景家当主代行 薫殿に、少々お話が」
413以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 10:46:15.08 ID:/RwPqFea0
支援
414花子さんと契約した男の話  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 10:47:17.44 ID:YkPra+LX0
「はは、そんな堅苦しい挨拶はいらないよ……姉さんの事、だね?」

 俺が来た用件を、すぐに察してくれた
 はい、と頷くと、薫さんは俺を離れに案内してくれる
 そして、いつもの温和な表情に、やや寂しそうな笑みを浮かべる

「それで、姉さんは?」
「やっぱり、学校町内のホテルを転々としているみたいです。今は北区にいるようですが、そろそろ移動しそうな気配があるようですね。次の宿泊先がわかったら、また改めてご連絡します」
「そうか…」

 やっぱり、どこか少し寂しそうだ
 マドカさんは、薫さんにとってはたった一人のお姉さんなのだ
 宗光さんや千鶴さんからはマドカさんは大層嫌われていたようだが、薫さんだけはマドカさんの味方だったのだろう

「君に頼んで、良かったよ。次の場所がわかったら、また頼む」
「…俺の力じゃなくて、探偵の力ですよ。直接会える状況になったら、礼を言ってやってください」

 そうだね、と薫さんは力なく笑った
 少し、疲れているようにも見える

「お疲れのようですが、大丈夫ですか?」
「あ…うん、大丈夫だよ。現当主の父さんが今、弱気の状態だからね。僕がしっかりしなければ」

 …当主代行のプレッシャー、か
 家は、親父がいっそ少し自重しろと言うくらい元気だから、俺みたいなのでものんびり若頭を名乗っていられるが
 ……日景家は、宗光さんが少し大きな病気をした後だ
 後継ぎやらなにやらの問題で、一応、今は薫さんが当主代行であり…次の当主候補筆頭とは言え、難しい状態が続いているのだろう

「…あの」
「何かな?」
415以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 10:49:14.22 ID:/RwPqFea0
支援
416花子さんと契約した男の話  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 10:52:49.57 ID:YkPra+LX0
「マドカさんの、息子さんのことなんですが」
「あぁ、翼君の事かい?」
 
 それがどうしたのか?と言うように首を傾げてくる薫さん
 一応、念のために尋ねておきたかったのだが

「翼さんは、日景家の当主候補としては、名前を連ねているんですか?」
「いや、翼君は、そちらの序列には名前があがっていないよ。父さんも、翼君を家のゴタゴタした争いに巻き込みたくないみたいでね」

 小さく、薫さんは苦笑してくる

「姉さんの事は勘当しても、孫の翼君の事は可愛くて仕方ないみたいだ。姉さんに対しては、服装とか言動とか色々と煩かったのに、翼君には一切、怒らないんだよ」
「…それはまた、極端ですね」
「むしろ、姉さんに厳しくしすぎて、結局追い出すことになった反動かもしれないけどね」

 そうなのかもしれない
 まぁ、孫馬鹿と言うかそう言うのもかなり含んでそうだが。あの人なら

「でも、もし、万が一…翼君が、日景家に深く関わるという意志を見せたら。多分、序列は僕の次だろうね。一応、現当主の長女の息子だから:
「…そうなりますか」

 まぁ、聞いた話によれば、翼さんはその手の争いには一切、興味を持ってないみたいだし
 そもそも、日景家がどう言う家なのかも、よくわかってないそうだから、大丈夫だとは思うが

「…わかりました。では、俺はこれで」
「もう帰るのかい?お茶の一杯でも飲んでいけばいいのに」
「いえ、人を待たせているので」

 花子さんを待たせているのだ
 あまり、長話をする訳にも
417花子さんと契約した男の話  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 10:55:58.33 ID:YkPra+LX0
「そうか…それじゃあ、またね。獄門寺家は家と付き合いが長いのだから、もっと気軽に遊びに来てもいいんだよ?」
「仮にも極道の家の息子が、こう言う旧家にそう易々と顔見せちゃマズイでしょう……まぁ、機会がありましたら」

 それでは、と挨拶して、離れを後にする
 門を出ようとしたら、ちょうど千鶴さんがどこからか帰ってきた所だったのか、姿を見せていて
 小さく微笑み、頭を下げてきたので、俺も慌てて頭を下げた
 特に、何も話し掛けられずにすんで、良かった
 門を出て、俺はほっと息を吐く
 てちてちと、花子さんが駆け寄ってきた

「…お待たせ。じゃあ、行こうか」
「は〜い」

 花子さんと手を繋いで、歩き出す
 何時の間にか、日が暮れ始めていた
 そろそろ、帰らないと


 帰り道、随分と急いで走っていく様子の車とすれ違いながら
 俺は、花子さんとゆっくり歩いて、帰路についたのだった



fin
418以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 10:57:15.26 ID:YkPra+LX0
明日の調査報告を受けての、花子さん契約者のシーンでした
本格化編に絡む情報をある程度持っている花子さん契約者だが、さて、事件に絡めるかどうか


では、食器洗ってくる
昼食後もスレが残っていれば幸せだ!!
419以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 11:26:33.20 ID:/RwPqFea0
乙ー!
420以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 12:14:57.94 ID:ieSnxugc0
投下乙ー
昼飯前ほ
421以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 13:03:21.13 ID:qUgALMiL0
ほー
422以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 13:45:27.80 ID:7pZSQQSx0
ごちそうさまでしたほ
423恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 14:00:57.31 ID:/RwPqFea0
 山田は震えていた。
 しかしそれは別段、恐怖に怯えていたわけではない。

「やっべ寒い! 風は凌げたけど滅茶苦茶寒い!」
「廃屋ナンダ。暖房ガ利イイテルハズナンカネェシ、当タリ前ダロ」

 廃屋のエントランスに積もった埃の上に、山田はがくがくと震えながら立っていた。
 先程気温10度にも満たない外で冷水を浴びてきたばかりである。
 ほとんど外と変わらない気温の中、山田の体温は刻一刻と削られていた。

「け、けど、何とか侵入には成功したな、うん。前向きに考えていこう」
「侵入ッツーカ、モロニすぺあきーデ玄関カラ入ッテキタダケジャネェカ」
「言うな。何か『窓とか破って侵入しましたよ』な雰囲気ださないと悲しくなるだろ」

 身も蓋もない事を言うデビ田に、山田は呆れたように言い返した。

「ほら、子どもの頃スパイごっことかやったろ? あの時だって玩具の銃に針金とか持ってきゃっきゃしてただろ? 夢を壊すなよ、夢を」
「オレサマニ子ドモノ頃ナンテネェカラ分カンネェヨ。大体、ンナ夢子ドモノ頃ニ捨テルモンジャネェノカ」
「何だ、あれか、『俺は大人なんだぜ』アピールか。くそ……童心をずっと持ち続けるのって大事だろ……」

 意気消沈して、山田が肩を落とす。
 正直、デビ田には山田が何を言っているのかさっぱり理解できない。
 むしろ理解できたらそれはそれで駄目なんじゃないかとすら、最近は思い始めていた。

「――――デ、ココニ住ミ着イテル『幽霊』ヲ倒スンダッケカ」

 山田の内側から、デビ田が周囲へと視線を巡らせる。
 埃まみれの室内に、夕刻となり赤い光が差し込んでいる。
 割れた窓が光を曲げ、隠し、どこか幻想的な雰囲気を醸し出していた。
 この状況だけ見れば「幽霊屋敷」とは到底思えなかっただろう。
424以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 14:03:46.97 ID:7pZSQQSx0
山田wwwwww支援
425恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 14:04:26.34 ID:/RwPqFea0

「らしいな。俺にもよく分からないけど」
「頼リネェナァ。ソレデモ町デ『ソコソコ』噂サレテル都市伝説退治専門ノ業者カヨ」
「そこそこを強調している所にそこはかとなく悪意を感じるのは俺の気のせいかな、デビ田」
「気ノセイナンジャネェノ?」

 軽い笑いを含んで、デビ田がとぼける。
 山田はさらに追求しようとして、止めた。
 元より、デビ田はそういった悪知恵に関しては山田よりも頭が回る。
 さすがデビル山田というか何と言うか、とにかく山田が深追いしてデビ田が白状した事は一度たりともなかった。

「ケドヨォ、ワザワザ高イ金払ッテマデ幽霊退治ナンテスルモンナノカ? モウ誰モ住ンデネェンダロ? ホットキャイイジャネェカ」
「そう言う訳にもいかないんだよ」

 先方は何も、この家の住人や管理人に頼まれて山田に依頼したわけではない。
 当たり前だ。
 この家はもうすぐ叩きつぶされ、ここには新しくマンションが建つのだから。

「家を解体したいのに、ポルターガイストやら女の霊やらが出てきて作業にならないんだってよ」
「ハッ、ンナノ無視シテブッ壊シチマエバイイジャネェカ。何ビビッテンダカ、ダラシネェ」
「日本人はそう言う霊的な物を大事にするの! ほら、家建てる前にちゃんとお払いするだろ? それと同じだよ」
「ソレダッテ結局『祟リガ怖イカラ』ダロ? タダノ迷信ジャネェカ」
「日本人はそういうもんなんだって。普段科学で頭固めてる奴だって葬式はするし、クリスマスだって祝う。それでいいんだよ、日本人は」

 デビ田と脳内で話しながら、山田は歩みを進めていく。
 元は豪奢だったろう絨毯を踏むと、それだけで埃が舞いあがってきた。
 マスクを持ってくるべきだったと後悔しながら、山田は建物の内部を観察する。
 希少価値があるのかどうかもよく分からない絵画に騎士の鎧、はては巨大なピアノまでもが、奇妙な調和を持って配置されていた。
 それら全て、本来なら既に運び出されているはずのものである。
426以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 14:07:06.15 ID:7pZSQQSx0
しええん
427恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 14:07:34.90 ID:/RwPqFea0
「ポルターガイスト、ねぇ……」

 本来の用途すらまっとうされなくなった工芸品を眺め、山田は呟いた。
 聞く所によれば、これら工芸品は運び出されそうになった途端、勝手に浮き、元の位置へと戻ってしまうのだという。
 屈強な男4人がかりで持ち上げていたグランドピアノまでも、だ。
 かわいそうな事に、それを目撃してしまったバイト君は今でも寝込んでいるそうだ。

「幽霊っていうと未練の塊みたいなイメージがあるけど、運び出さないのはそれと何か関係があるのかな」
「知ルカ。ソレヨリサッサト片ヅケテ帰ロウゼ。空気ガワリィンダヨ、ココ」

 基本的に面倒くさがりなのか、デビ田は山田の仕事に対していつも早々に切り上げる事を提案してくる。
 その本意は山田を堕落させる事にあるのだが、山田がそれに気づく様子はない。

「金を貰ったからにはそれ相応の仕事をする。これ社会の常識な」
「イイジャネェカ。コンナ霊商売、詐欺ミテェナモンダロ。一々退治スル必要モネェ」
「馬鹿、それだとうちの信頼に関わるだろうが。あの占い師に仕事を回して貰えなくなったらそれこそ野垂れ死にだっての」
「ソウナッタラ都市伝説ノ力使ッテ銀行デモ襲エバイインジャネェノ? テメェてれぽーと系の力モ使エルミテェダシ、簡単ダロ?」
「あのなぁ…………」

 この社会常識の欠如している幻聴どうしてくれようか、と山田が考えていた、その時だった。
 何かを感じ取ったかのように、デビ田が山田の中で蠢く。

「――――来ルゾッ!」
「ん? 何が」

 訝しげな顔で、山田がその場に立ち止まる。
 一体何が来るというのか。
 デビ田と違って全く都市伝説の気配を感じ取れない山田には、デビ田が何を言っているのかさっぱり理解できなかった。
428以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 14:09:48.78 ID:7pZSQQSx0
デビ田的には山田を悪の道に誘惑するのが仕事だしなwwww支援
429恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 14:10:29.93 ID:/RwPqFea0
「バカッ、立チ止マッテンジャネェ、伏セロッ!」
「だから、何で――――」

 山田が聞き返そうとした、次の瞬間。
 何かが山田のすぐ隣の壁を突き破って、山田へ向かって突進してきた。

「何だっ!?」

 ぎょっとして山田が壊れた壁を見るが、襲撃者は既に眼前にまで迫って来ていた。
 一瞬で間合いを詰められ、山田の身体に衝撃が走る。
 何か固い鈍器で全身を殴られたような感覚。
 それを意識する間もなく、山田の身体は後ろへ数メートル吹き飛ばされた。

「――――ガァッ!」

 そこに痛みはない。
 しかしそれでも、肺の中に溜まっていた酸素が口を突いて出てきた。
 胃を圧迫されたせいか、酸っぱい何かが喉元にまでせり上がって来ている。

「……くそ、何が起きた」

 普通の人間なら一撃で気絶しそうな一撃を受けて、それでも山田は難なく立ち上がった。
 その身体には傷どころか、汚れ一つない。
 顔に付着した埃を手で払いながら、山田は襲撃者の方向へと目を向けた。
 先程の一撃で壁は半壊し、その瓦礫が絨毯に積もった埃を砂のように舞い上げ、視界を覆っている。
 粉塵の中、立ち上がる一つの影が見えた。
 ポストのように寸胴な体型が、なぜか少し宙に浮いている。
 ここからでは影しか見えないので何とも言えないのだが、とにかくそのシルエットから相手が人ではない事だけは分かった。
430以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 14:12:31.46 ID:7pZSQQSx0
山田にはダメージなくてもデビ田にダメージがいってるんですね、わかります支援
431恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 14:13:34.03 ID:/RwPqFea0
【何故ばれたし……】
「……おい、デビ田。アレ、何だと思う?」

 目で襲撃者の動きを追いながら、山田は声を出さずにデビ田へと問いかけた。
 デビ田は襲撃者が来る事をあらかじめ予知できていた。
 なら、もしかしたら相手が誰かを知っているのかもしれない。
 そう、思っていたのだが

「………………」

 なぜか、返ってきたのは沈黙だけだった。
 何となく不安になって、山田はもう一度問いかける。

「おい、デビ――――」
「話カケンナ。今、身体ガ痛ミデヤベェ」
「なんだ、喋れるじゃん。いや、お前が死んだかと思ってちょっと不安になっちゃったとかそういうわけじゃないんだけどさ、出来ればちゃんと質問には何らかの返事が欲しいかなぁ、って」
「話カケンナッツッテンダロウガッ! テメェト違ッテオレサマハ痛ミヲモロニ感ジテンダヨッ!!」
「あ……あー、そういやそうだっけ。残念な体質だなぁ、お前」

 呑気にデビ田と会話をしている間にも、謎の襲撃者は再び動き始めていた。
 3メートルはあるだろう巨体が、その重量を全く感じさせずに宙を滑ってくる。
 もう一度体当たりを喰らわせるつもりだろうか。

「つか、ここに住み着いてる都市伝説って幽霊なんじゃなかったっけ?」
「知ルカ。少ナクトモアリャ人間ジャネェヨ」
「だろうなぁ、でかいし」

 部屋に粉塵が充満しているにもかかわらず、巨大な影は一直線に山田の元へと向かって来ている。
 速度はそれ程でもない。
 ちゃんと相手の姿さえ確認できていれば、十分に引きつけてからでも避けられるだろう。
432恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 14:16:28.50 ID:/RwPqFea0
「よし、ここはかっこよく避けてみようじゃないか」
「……下ラネェ事スンノガ好キダヨナ、テメェ」
「下らなくなんかない。遊び心は大事だぞ」

 そうこう言っている内に、影は粉塵を突破しようとしていた。
 巨躯が動く事で風でも発生しているのか、宙に舞う誇りに規則的な流れが出来上がっている。
 その流れの中心。
 ちょうど周囲の壁を押しやるかのように、「ソレ」は現れた。

「…………ん?」

 襲撃者の姿を確認にして、山田の目が点になる。
 山田の目に入ったのは、黒く、顔のみで構成されている石像。
 何をどう削ればそんな形になるのかも山田にはよく分からないが、少なくともソレが何であるかは知っていた。

「……何で、モアイ像が動いてんの?」

 モアイ像。
 世界的に有名な石像の一つである。
 なぜ作られたのか、その意図すら判明していない石像。
 それが今、山田の前で宙に浮いていた。

「え、何、俺たちの仕事ってモアイ像倒す事だっけ? あれ? 何か違うような」
「ぽるたーがいすとダロ。何焦ッテンダ」

 混乱する山田とは対照的に、デビ田は冷静だった。
 宙に浮いているモアイ像自体からは、何も都市伝説的な気配を感じられない。
 何者かがこの石像を動かし、山田たちを襲わせているのだろうと、デビ田は判断した。
433以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 14:16:36.76 ID:7pZSQQSx0
デビ田wwwwwwwwwwww支援
434恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 14:19:18.62 ID:/RwPqFea0
「マジか。レプリカとは言えモアイ像まで集めて何がしたいんだ、この家」
「成金趣味ジャネェノ? 金持チノ考エル事ナンテ理解デキネェヨ」

 宙に浮いたモアイ像は、動かない。
 何か観察するように、山田を凝視していた。
 先程の一撃を受けても立ち上がった山田を警戒しているのか、はたまた攻撃のタイミングを図っているのか。
 どちらにせよ、あまり友好的な雰囲気とは言えなかった。
 その様子を見て、山田はよし、と拳を握る。

「――――話合おうじゃないか」
「……コノ期ニ及ンデへたれ全面ニ押シ出シ点ジャネェヨ」
「ヘタレ言うな。ポルターガイストにしろ幽霊にしろ、ここに留まるには何か理由があるはずだろ。わざわざ力で捻じ伏せなくてももっと平和的に解決できるかもしれないじゃないか」
「ンナ事言ッテモ、アッチハヤル気ミテェダゼェ?」
「…………ん?」

 デビ田の言葉に従って、山田が意識を内から外へと移行させ、石像のいた方へと視線を向けた。
 しかし、視界には何も映らない。
 正確には、視界一杯に黒い何かが写っていた。
 さらに正確に言うなら、モアイ像が目の前にまで急接近していた。

「…………ありゃ」

 二度目の体当たり。
 脳震盪でも起こしそうな強い衝撃と共に、山田の身体が再び宙を舞った。
 痛みはないが、それでも二転三転と山田の身体が埃まみれの絨毯の上を転がる。
 先程は手加減でもしていたのだろう。
 今ので山田の内臓が幾つか持っていかれていた。
 人間なら既に死んでいそうな状況下で、しかしやっと停止した山田はすぐに跳ね起きた。
435以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 14:20:10.45 ID:7pZSQQSx0
モアイかよwwwwwwww支援
436恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 14:22:14.47 ID:/RwPqFea0
「……ふふん、この俺に普通の攻撃が効くと思うなよ!」

 ふはははーと悪役のような声をあげて石像を指差す。
 一見すると格好よさそうな状況の中

「イッテェェェエエエエエエエッ!? テメェニ効イテナクテモ、オレサマニハ効イテンダヨ馬鹿野郎ッ! チッタァ避ケヤガレ!!」

 しかし山田の脳内では、デビ田が痛みに吠えていた。
 モアイ像は無表情で、それでもどこか困惑した空気を漂わせている。
 デビ田の声が外へ漏れる事は、基本的にない。
 だからモアイ像から見れば、今の山田はまさに超人だった。

「(……まぁ、こっちもあんな石像に効く有効打なんて持ってないんだけどな)」
「(……ハッタイモイイ加減ニシロヨ。テメェノ虚勢ノタメニ痛メツケラレンノハごめんダ)」
「(分かってる。とにかくあのモアイ像を止めて、ちゃんと話を聞いてもらわないとな)」

 内側でデビ田と算段をしながら、山田は警戒を続けるモアイ像を、そしてその周囲を注意深く観察する。
 あの石像が本体ではないのは確かである。
 つまりそれを動かしている都市伝説が必ずどこかに存在しているはずなのだ。

「(……って言っても、気配も何にも感じないな)」
「(『感ジナイ』ンジャナクテ『感ジラレナイ』ンダロ、テメェハ。ヨクソンナンデ都市伝説退治ナンテデキルモンダ)」
「(いや、大抵は何回か攻撃された後に起き上がると、相手も驚いて話し合いにも乗ってくれるんだけどさ、今回はそもそもどこに本体がいるかが分からないからなぁ)」
「(アン? 本体ナラテメェノスグ目ノ前ニイルジャネェカ)」
「(…………え?)」

 慌てて山田が周囲を見渡すが、どこにもそれらしき人影はない。
 ただモアイ像が一体、宙に浮いているだけである。
 それを見て、山田の頬に一筋の汗が伝った。
437以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 14:23:39.63 ID:7pZSQQSx0
っちょ、まさかのモアイが本体wwwwwwwwwwwww支援
438恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 14:25:14.21 ID:/RwPqFea0
「(……まさか、このモアイ像が本体だとか言うんじゃ)」
「(ンナ訳アルカ馬鹿野郎。もあいノ後ロヲ良ク見テミロ。幾ラテメェデモ『見エ』ハスルンダヨナァ?)」
「(モアイ像の後ろ、ねぇ…………)」

 じっと宙に制止し、動かないモアイ像。
 今山田の立っている位置からでは、その裏側までは見る事が出来ない。

「…………ふむ」

 試しに、モアイ像を一周するように、その裏側へ回り込んでみる。

「………………」

 それに合わせて、モアイ像が山田を追うように回転した。
 モアイ像の顔が、無表情に山田を見つめている。

「…………ふむ」

 もう一度、モアイ像の周囲を回りこんでみる。

「………………」

 しかし、再度モアイ像はその動きに合わせるように回転してきた。
 相変わらず、無表情でモアイ像が山田を見つめている。

「(…………おい、見れないぞ)」
「(ダーッ!? マドロッコシイナ、オイ! テメェてれぽーと使エンダロ。ソレデサッサトもあいヲ消シチマエバイイダロウガ)」
「(あ、なに、そんな強引な方法でもいいの?)」
「(手段ヲ選ンデンジャネェヨ。イツマデモ馬鹿ミテェニ回ッテルツモリカ、テメェ)」
「(……いいじゃん、その内目を廻すかもしれないじゃん……)」
439以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 14:26:19.06 ID:7pZSQQSx0
良かった、モアイが本体ではなくてwwwwwwww支援
440恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 14:28:10.43 ID:/RwPqFea0
【一度モアイ本体でもいいかな、なんて書いてる時に思ったのは内緒】

 もごもごと口の中で何かを呟いて、山田は右手を頭上に掲げた。
 警戒するように、モアイ像が一歩分、宙を後方に下がる。
 しかしたかがた一歩如き、山田の前では大した距離でもない。

「つか、これってテレポートじゃないんだけどな」

 再度ぼやいて、山田はパチンと指を鳴らした。
 その瞬間、モアイ像の下の絨毯から一本の煙突がせり上がって来る。
 慌ててモアイ像が移動を再開したが、それは少しだけ遅かった。
 四角い煙突は大きな口を開けて、モアイ像を飲み込んでいく。
 一度飲み始めてからは速かった。
 あっという間に煙突はモアイ像を飲み込み、その全てを覆い隠してしまう。

「(……どこに移動させればいいんだ、これ)」
「(ドコデモ構ワネェヨ。トニカクもあいガドカセリャイイ)」
「(大ざっぱだな……)」

 さっきの騎士の鎧の前でいいか、と呟いて、山田は再び指を鳴らした。
 その音が鳴った途端、煙突は煙となって消失した。
 中にいたはずのモアイ像は当然、そこにはない。
 山田が遠くへ飛ばしたのだから、当たり前だ。

「…………ん?」

 しかし代わりに、そこに誰かが立っていた。
 その誰かは何かを持ちあげるように腰を落とし、その両腕を広げている。
441以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 14:29:03.87 ID:7pZSQQSx0
ところで、モアイと言うとなぜかモアイ型ティッシュカバーが頭に浮かぶ件支援
442占い師と少女 ◇c1fBPhtoT6 (代理):2010/03/16(火) 14:34:06.68 ID:7pZSQQSx0
「(……おい、何だあれ)」
「(アレガ本体ナンダロ。チッチェェがきダナ)」

 呆気にとられたような表情で、ソレは立ちつくしていた。
 茶の入ったセミロングの髪に、まだあどけない瞳。
 山田を驚きの目で、ソレは見つめていた。

「(……つか、女の子じゃん)」

 山田の前に立っていたのは、まだ年端もいかない少女だった。
 外見的には10か11歳といった所か。
 ちょっと上狙いのロリコンなら十分に射程圏内に収めそうな年齢である。

「(ナンダ、テメェ貞子ミタイナノデモ想像シテタノカ? 先入観バリバリジャネェカ」
「(うるさい。いいだろ、『女の霊』なんて聞いてたからもっと年食ってると思ったんだよ)」

 目の前の少女を、山田は一瞥する。
 最初は怯えたように竦んでいた少女も、今では敵意一杯で山田を睨んでいた。

「……やりにくいよなぁ、これ」

 元より、山田はあまり殺人が好きではない。
 山田は別に殺人鬼という訳でもないのだ。
 だから出来るだけ、山田は退治の際に、話し合いで都市伝説との間に折り合いをつける方法を取っていた。
 大抵は、幾ら攻撃しても死なない山田を恐れるか、説得に応じて承諾する。
 しかし今、山田の前で敵意むき出しで睨んでいる少女は、山田を恐れても、また説得に応じそうでもなかった。
443以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:02:26.12 ID:7pZSQQSx0
そろそろサル解除のはず支援
444恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 15:02:31.24 ID:/RwPqFea0
てす
445恐怖のサンタ ◆hwSdJYFK0NYi :2010/03/16(火) 15:04:10.06 ID:/RwPqFea0
 だからこそ、山田はそんな事を呟いたのだが

「……なめないでよ」

 何を勘違いしたのか、少女の霊は敵意をさらに1割増しで山田を睨んできた。
 興奮からか、顔が少し赤くなっている。

「あんたもこの家を壊しに来た悪い奴の仲間なんでしょ? 嫌よ、私は出ていかない」
「いや、そこを何とかして欲しいなぁ、なんて……」
「(……何頼ミ込ンデンダ。サッサトブッ殺シャイイダロ)」
「(出来るだけ無駄な戦闘は避けたいの! 話し合いで解決できるならこれが一番なの! これも社会の常識な)

 黙ってしまった山田を、少女は相変わらず親の敵のように睨んでいる。
 山田にとっては、やりにくい事この上ない状況である。

「(どうするよ、お前が強引な方法取ったせいでなんか相手怒ってるぽいぞ)」
「(オレサマジャネェダロッ!? 人ニ罪擦リ付ケテンジャネェゾ、コノへたれ)」
「(なっ、ヘタっ……ふふん、ようし、じゃあ見せちゃうもんね。俺が3年ちょいだけど社会で培った交渉術を見せちゃうもんね)」
「(ハッ、出来ルモンナラヤッテミヤガレ。ツイデニ言ットクト、モウサッキ約束シタ10分ハ経ッチマッテルゼェ?)」
「(うわいやらしい! お前何そんな昔の約束引っ張り出してんの。時効だろ、時効)」
「(言ッテ10分チョイデ時効ニナル約束ナンテネェダロウガッ!)」

 もはや少女など存在しないかのような体である。
 しかも少女からはデビ田が見えないため、山田が一人でぼけっと立っているようにしか見えなかった。
 舐められてる。
 そう少女は、目の前の山田を見て判断した。

「子供だからって馬鹿にしないでよっ!」

 少女の叫びに、ようやく山田の注意が少女へと向いた。
446以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:04:42.30 ID:7pZSQQSx0
ネタ書きつつ支援
447恐怖のサンタ ◆hwSdJYFK0NYi :2010/03/16(火) 15:07:25.37 ID:/RwPqFea0
「まだパパもママも帰ってきてないの。絶対に私がこの家を守るんだからっ!」

 少女がそう叫んだ途端、地震のように家が揺れ始めた。
 ピアノや鎧が揺れ、家が鈍い軋みを上げている。

「(……なんだか意味深な事言ってるけどどうするよ、これ)」
「(テメェデ解決シヤガレ、交渉術見センダロ?)」
「(いや、何か交渉とかそれ所じゃないっぽいし、それももう時効な)」
「(時効ハエェヨッ!? 汚ェゾ、テメェ)」
「(つか、何だ、地震? 何が起こってんの?)」

 もはや立つ事も覚束なくなり、山田は地に膝をついていた。
 目の前の少女は幽霊だからか、先程から一ミリたりとも動いていない。

「(ぽるたーがいすとナンジャネェノ? 大規模ニナルト地震ミテェニナルラシィゼェ?)」
「(え、何それ。やばいんじゃないの)」

 揺れは段々と大きくなっている。
 このままではこの家自体が崩壊を始めそうである。
 それは山田としては万々歳な事態のはずなのだが、何だか心にもやもやとした物が残っていた。
 それは家の下敷きになる事への危惧でもあるし、目の前の少女がどこか苦しそうな表情をしているからでもある。

「……どうしようか」

 少女を止めるにしても、今からでは手遅れだろう。
 もはや簡単に止まらないだろう事は、揺れの大きさを見るだけで分かる。
 かといって、このまま放置しているのも山田としてはあまり良い気分ではない。
448以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:08:08.95 ID:7pZSQQSx0
しぇーーん
449恐怖のサンタ ◆hwSdJYFK0NYi :2010/03/16(火) 15:11:23.03 ID:/RwPqFea0
 どうしたものか、と山田が考えあぐねていると

「(……大丈夫ナンジャネェ? スグニ止マルダロ、コンナ地震)」
「(何で)」
「(ドォ考エテモアノがきノきゃぱしてぃヲ超エテンダロ、コンナノ。普通ナラソロソロ意識ガ飛ブ頃ダロウヨ)」

 そうデビ田が言った、その時だった。
 とさり、と何かが倒れるような音が、軋みを上げる室内に響き渡った。
 ほぼ同時に、家の振動が止まる。
 何が起こったのか、なんて考えるまでもない。

「…………マジかよ」

 見ると、デビ田の言った通り、少女が絨毯の上に倒れ込んでいた。
 指だけが微かに動いている所を見ると、まだ意識だけはあるのか。
 しかしその僅かな動きすら、徐々に弱々しくなっている。

「(……マ、死ンダ後都市伝説ニ飲マレタノカ何ナノカハ知ラネェガ、ドウ考エテモ、力ニ対スル器ガチッチェェナ、コリャ)」
「(大丈夫なのか、あの子)」
「(ドォセ気絶シテルダケダロ。スグニ起キ上ガンジャネェノ? 暫クハ動ケネェダロウガヨ)」
「(……そうか)」
「(ンジャ、動ケネェ内ニ殺シテ、チャッチャト帰ロウゼェ? 早ク風呂ニ入ッテクレネェト、オレサマノ身体ガヤベェ)」
「(ん、そうだな)」

 脳内で返事をして、山田は立ち上がった。
 振動で移動したのか、埃のない絨毯の上を歩いていく。
 その間に、山田はズボンのポケットから小さな小瓶を取り出した。
 「幽霊に触れる」ための薬。
 今回の仕事のために、仙人に特別に調合してもらったものだ。
 それを一口で飲んで、山田は足を速める。
450以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:12:35.98 ID:7pZSQQSx0
しーえん
451恐怖のサンタ ◆hwSdJYFK0NYi :2010/03/16(火) 15:14:39.35 ID:/RwPqFea0
 少女の元へは、すぐに到着した。

「さて、と……」

 膝をついて、山田は少女の額に手を触れさせた。

「(…………アン?)」

 そこで、デビ田は気付いた。
 山田は本来、触れるだけで相手を殺せるような、そんな便利な能力を持たない。
 口裂け女と契約した今、山田のメインウェポンは打撃による殺傷のはずだ。
 それがなぜ、少女の額に触れているのか。

「(何ヤッテンダ、テメェ)」
「(いいんだよ、これで)」

 訝しむデビ田に脳内で答えて、山田は目を瞑った。

「(仕事のアフターケアみたいなもんだ)」

 触れた所から、少女の記憶が流れ込んでくる。
 山田の契約した「恐怖のサンタ」は、相手の最も嫌いな物、あるいはトラウマを記憶から選びとって袋から出現させる能力を持っている。
 その能力を応用すれば、記憶の閲覧も可能になるのだ。
 といっても、その能力は山田がその手で触れる必要があるし、触れた上でさらに極限にまで精神を削らなければならないわけなのだが。
452以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:15:57.11 ID:7pZSQQSx0
支援
453恐怖のサンタ ◆hwSdJYFK0NYi :2010/03/16(火) 15:17:24.18 ID:/RwPqFea0
 山田が記憶を読み取り、その上で何をしようとしているのか、デビ田には何となく分かっていた。
 つい十分ほど前、山田が「成仏」という単語を使った事を思い出す。

「(……未練無クシテ成仏サセテアゲマショウ、ッテカ? ワザワザ一番面倒クセェ方法選ンデ、何ガシテェンダカ)」

 その言葉を、デビ田は胸の内で呟いた。
 山田にそれを言った所で、今更止めるような人間でもないだろう。
 むしろ、さらに頑なになる可能性すらある。

 デビ田はただ、山田の行動を見ていた。
 この悪魔にはまだ、自分の囁きを退けたこの男の全容が掴めていない。

**************************************************

 まだ日の明ける気配すら見えない午前3時。
 山田はもはや死にかけの体で、帰路についていた。
 屋敷でポルターガイストに遭った時よりも覚束ない足取りで、街灯に照らされた道を歩いていく。

「結局、成仏サセルマデ付キッキリダッタナァ、へたれ」
「ヘタレ言うな。むしろ俺、今回滅茶苦茶頑張っただろ?」
「サァ、ドォダロォナ」

 実際、よくあそこまでやったものだとデビ田は思う。
 あれから数時間、山田はひたすら奔走していた。
 少女の両親の墓を見つけたり、霊を降ろす事の出来る都市伝説を見つけたり。
 それこそ、結果的に貰った報収が霞んで見えるほどに。
454以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:18:12.53 ID:7pZSQQSx0
C
455以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:20:22.96 ID:ieSnxugc0
帰宅支援ー
456恐怖のサンタ ◆hwSdJYFK0NYi :2010/03/16(火) 15:20:34.06 ID:/RwPqFea0
「あほダヨナァ、へたれ」
「おま、あんなに頑張った俺に対する慰めの一言もないのか。ほら、『よくやった』とか、『頑張った』とか」
「テメェノセイデ帰リガコンナニ遅クナッタンジャネェカ。慰メルワケネェダロ」
「酷い! 宿主に対する態度とは思えないくらいに酷い!」

 ぶつぶつとデビ田に対する呪詛を呟いている内に、山田たちは自宅のアパートへと到着していた。
 外と内を繋ぐ玄関のドアの前で、山田はしばらく逡巡を重ねる。
 なんだか、山田は気が重かった。
 事前に恋人に遅くなる旨は伝えてはいる。
 しかし、それでも遅くなった理由を問い詰められるのは必至だろう。
 別に、山田としては良い事をしたつもりなのだから、恥じたり責められたりする言われはない。
 それでも、山田が救ったのが少女だと知ったら、恋人はちょっとだけ不機嫌になる事間違いなしだ。
 これを幸せと取るか、不幸と取るか。

「……まぁ、なるようになるか」

 取りあえず前向きになろう。
 そう思って、山田は鍵を開け、玄関へと足を踏み入れたのだが

「はろーっ!」

 中からかけられた声と、そしてその声を主を見て、パタンと扉を閉じた。

「――――オイ、ドォシタ。入ラネェノカ?」

 中を見るまでには至らなかったのか、デビ田が山田の内側で首を傾げている。
 せっかく帰宅したのにまた外へと出てきたのだから、それは当然の疑問だろう。
457以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:21:09.19 ID:ieSnxugc0
支援
458以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:21:43.44 ID:7pZSQQSx0
支援
459恐怖のサンタ(転載) ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 15:23:07.98 ID:/RwPqFea0
 それに対して、山田はぎこちない笑みを浮かべて答えた。

「い、いや、どうやら部屋を間違えたみたいだ。うん、そうだ、そうに違いない」
「アァ? テメェノ家ハココダロウガ。何言ッテンダ、テメェ」
「いや違う! 断じて違う! というか違うと信じたい!」

 もはや支離滅裂な言葉を発する山田に、デビ田は眉をひそめた。
 しかし数秒後、なぜ山田がそんなにも帰宅を拒絶したのか、デビ田はその目で目撃する事になる。

「――――何やってるの? さっさと入りなよ、風邪引いちゃうよ」

 山田家の玄関のドアを開け、一人の少女が顔をのぞかせていた。
 山田もデビ田も、その少女の事を知っている。

「……何やってんの、お前」
「居候の身として、家の主人のためにドア開けてるの」

 真顔でそう答えたのは、茶の混じったセミロングの少女。
 つい先ほど成仏したはずの少女が、そこに立っていた。
 山田もデビ田も、嫌な予感しかしない。

 分かっている事は、二つ。
 なぜかこの少女が、山田家に居つこうとしているかもしれない事。
 そして山田の恋人である良子が、少女の向こう側でぴくぴくと頬を引きつかせている事。

「(……逃げてもいい?)」
「(捕マッテ倍ノ制裁ガ待ッテル。止メトケ)」

 会話は数秒。
 しかしそれで自身に逃げ道がないと悟った山田は、肩を落として小さくため息をついた。
460以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:23:42.54 ID:7pZSQQSx0
山田に合掌しつつ支援
461恐怖のサンタ(転載) ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 15:26:05.64 ID:/RwPqFea0
 山田はまだ、気付かない。
 契約したマゾの中にある「主人公補正」は、契約によって、少しだけ変化を遂げていた。
 その小さな変化によって、山田が手に入れたのは、「フラグメーカー」とでも呼ぶべき出会いの力。

「は、はは…………」

 無意識の内に使用されるその力は、その効果とは裏腹に、山田をさらなる窮地へと追いやっていた。

【終】
462以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:29:08.92 ID:7pZSQQSx0
改めて山田乙でしたー!!

もうちょっとたったら俺も何か投下すりゅー
463恐怖のサンタ(転載) ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 15:29:45.54 ID:/RwPqFea0
さて、取りあえず山田とデビ田の仕事第一回の様子でも
当初の予定ではあのまま成仏させるつもりが、いつのまにか居候にプラス1
あれ、どうしてこうなった……
464以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:32:34.67 ID:ieSnxugc0
投下乙でした!

山田…強く生きるんだ…
ちゃんと説明すれば、きっと良子さんもわかって…くれる前にフルボッコか
465悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 15:42:33.20 ID:7pZSQQSx0
 …それは、Tさん達が玄宗家の玄関から、外に出ようとした時だった
 Tさんの携帯と、直希の携帯が、ほぼ同時に着信を告げる

「すまない……む、黒服さんからか」
「いや、こちらこそ………。……?誠から?」

 Tさんには、黒服から
 直希には、誠から電話がかかってきたのだ
 ほぼ同時の、このタイミング
 …嫌な予感が、しなくもない

「へ?黒服さんと、魔女の一撃の兄ちゃんから電話?」
「……?黒服さんと、誠君から?」

 舞とエリカも、その奇妙なタイミングの一致に、首をかしげる
 嫌な予感を感じながら、Tさんも直希も、電話に応じる

「黒服さん?どうしたんだ?」
「誠、どうし……………落ち着け。緊急事態ならば、とりあえず用件のみを」

 黒服からの電話は…やや沈みながらも、落ち着いた声なの、だが
 直希にかかってきた誠からの電話は、誠がやや冷静さを欠いているのだろうか
『……っの、腐れ外道野郎が!!』
 と、半ば怒鳴っているかのようなその声が、受話器から漏れ出してきている

「…!また、翼が襲われたか」
「………っ!よりによって……!」

 ほぼ、同時にかかってきた、その電話の内容は
 かけてきた相手こそ違えど、内容はほぼ、同じもので
466悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 15:46:42.62 ID:7pZSQQSx0
「わかった。そちらに向かっても大丈夫か?」
「…僕も、すぐに翼の元に向かう。誠は先に………あぁ、言うまでもなかったか」

 電話を切ったのも、ほぼ、同時だ
 二人の言葉から、大体のことを察したらしい舞とエリカが、二人に問い掛ける

「何、またチャラい兄ちゃんが襲われたのかよ!?」
「ナオ君?翼君に、また何かあったの?」
「……あぁ」
「怪我はないようだし、相手の黒幕がわかったのは良いのだが………正直、最悪だな」

 翼が、またコーク・ロア支配型の被害者に襲われた
 もっとも、傍に望や詩織が一緒にいる時だったし、途中で黒服も駆けつけたようだから、翼はたいした怪我もしていない
 …怪我、は
 ただ、翼を狙っていた、そのコーク・ロアと悪魔の囁きの騒動の黒幕も、姿を現して
 ……何よりも、それが問題なのだ
 Tさんに連絡してきた黒服は、言葉を濁してきてその人物に付いて、まだ語ってこなかったが
 誠からの連絡を受けた直希は、その名前を聞いて…その、いつもは感情の薄い顔に、暗さを含んだ感情を浮かべていた

「翼君の所に行くなら、車出すわよ?」
「すまない、姉さん。頼む……Tさん達も、翼の元へ向かうなら、乗っていくといい」

 ぱたぱたと、車庫に向かっていく姉の背中に視線をやりつつ、そう言って来た直希
 すまん、とTさんが苦笑する

「なぁ、相手の黒幕もわかった、って…チャラい兄ちゃんを狙ってる奴が、わかったのか?」
「わかったのー?」
「…………あぁ」

 舞の疑問に…直希が、表情を暗くして、答える
467悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 15:50:55.63 ID:7pZSQQSx0
「…黒幕は、悪魔の囁きの契約者は……朝比奈 秀雄」

 朝比奈
 その苗字に、Tさんが反応を見せた
 …確か、その苗字は、翼の母親の
 では、その、男は…

「……翼の、父親だ」

 そう、口にした直希の表情は、どこまでも暗く沈んでいた




 数分後
 学校町東区 住宅街の一角、とある住宅にて…


「大丈夫だって、そんな、大袈裟に心配しなくとも」

 心配して駆けつけてきた誠に、翼はそう言って苦笑してきた
 だが、その表情は、明らかに無理をしているものだ

「どこが大丈夫なのよ。そんな酷い顔色して」
「無理するなって、いつも言ってるだろ?」
「いや、本当に大丈夫だから…」

 口々にそう言って来た望と誠に、翼はそう言って誤魔化そうとしたが

 ……ちゅちゅー
468以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:53:30.25 ID:/RwPqFea0
支援

>>464
>ちゃんと説明すれば、きっと良子さんもわかって…くれる前にフルボッコか
い、いや、少なくともあの女の子がいる前でそんな事はしないさ!
後で見えないとことでどんな尋問されるか分かったもんじゃないですが
469悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 15:54:52.91 ID:7pZSQQSx0
 ハムスターケージを抜け出したノロイが、てちてちと翼に近づいた
 にじにじと、ソファーに座っていた翼の膝の上まで登ってきて、ぺとし、翼に寄り添ってくる

「ノロイ?」

 ちゅちゅちゅー
 小さく、鳴き声をあげて、翼を見あげるノロイ
 どうやら、心配してきているようで

「小動物にまで心配されてどうするのよ」

 詩織にそう言われて、う、と押し黙る翼
 黒服は小さく苦笑して、気遣うように翼の頭を撫でた
 申し訳無さそうに、翼も苦笑する

「……御免」
「あなたが謝る必要など、どこにもありません。あなたには、何の責任もないのですから」
「でも………よりによって、あの糞親父が、黒幕だったなんて」

 吐き出すようにそう言った翼の声には、憎悪と…絶望が、含まれていた
 わずか、ほんのかすかにだけれども……抱いていた希望を、打ち壊されたような
 そんな、絶望感が
 本当の父親のことを、まだ、ほんの少しは、父親だと思いたかった、思いも
 …もしかしたら、ほんの少しは、その父親から、普通に、息子らしく、扱ってもらえるのではないか…そんな、思いも
 全て、壊されたのだ
 結局、あの男は、翼を都合のいい道具としてしか見てないのだと、それを再確認させられた

「…そう言えば、黒服。あなた、あの場に来た時点で、あの男が騒動の黒幕だって、わかってたみたいだったわね。どうして?」

 ふと、思い立った疑問を望が黒服にぶつけると
470以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:58:44.39 ID:/RwPqFea0
支援
471以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:59:00.07 ID:cOj0oVr40
sien
472悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 15:59:02.19 ID:7pZSQQSx0
 黒服は、翼を気遣いつつ、答える

「「組織」で、長く人にとり憑くタイプの悪魔の囁きが発生した場所や時期について、調べていたんです」

 そうすれば、どこで、誰が、悪魔の囁きと契約し……どこが、事件の発祥となったのか
 それが、わかると思ったからだ
 調べていくと…始めに発生が確認されたそこは、朝比奈 秀雄が失踪した国であり、また、失踪した時期であり
 嫌な予感がして、当時の残っている資料などを、全て調べた
 「組織」の力だけではなく、「薔薇十字団」の力も得て、調べつくした、その結果が

「朝比奈 秀雄は6年前、ヨーロッパにて、悪魔の囁きとクールトー。そして、もう一つ、何らかの都市伝説と契約をしたようです。以降、世界中で悪魔の囁きの卵をばら撒き、騒動の広がり具合などを実験していたようですね」
「6年前、って…俺が、家を出た後か?」

 翼の言葉に、はい、と黒服は頷く
 翼が両親の元を飛び出し、翼の両親が離婚した、その直後
 …その直後に、朝比奈 秀雄は、歪んだ力を手に入れてしまったのだ

「そこから調べていきますと、昨年、朝比奈 秀雄が、「組織」の人間と接触した記録があったんです」
「…それで、黒幕だと感づいた訳ね?」
「はい。そこまで調べたところで、あなた達が戦闘している気配を感じましたので」
「駆けつけてきてくれた、って訳ね」

 己の契約者の状態感知能力
 黒服のそれは、初詣の時その力を手に入れて以来、どんどん精度が上がってきている
 それだけ、黒服が望と翼を大切にしている証拠だ

「……翼」

 そして 
 その能力を持っている、からこそ
473以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 15:59:40.77 ID:cOj0oVr40
支援
474悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 16:00:56.90 ID:7pZSQQSx0
 今、翼がどれだけ精神的に追い込まれた状態なのか、黒服はわかってしまう
 それでも、翼は大丈夫だ、とでも言うように、振舞おうとしているのだ
 それが、酷く痛々しい

「いいさ。相手がわかったんだ。それじゃあ、あの糞親父をぶっ倒せばいい。それだけだ」

 黒幕がわかったから、それでいい、と
 翼は、そう自分自身に言い聞かせるように、そう言ってくる

「糞親父の狙いが俺なら……他の奴らに糞親父が迷惑かける前に、俺がぶっ倒してやればいい」


 ………たとえ、殺す事になろうとも


 翼が口の中で呟いたそれは、しかし、黒服の耳に届いてしまって
 黒服は、酷く心配そうに翼を見つめた

 翼は、父親である朝比奈 秀雄を恨んでいたし、憎んでいた
 しかし、殺したいほど、とまではいってはいなかったのだ
 そんな翼が、父親殺しなど
 …もし、それを実行したならば、翼は

 黒服の思考が、悪い方向へ悪い方向へ、流れていこうとした、その時
 玄関から、来客を告げるチャイムの音が聞こえてきた

「私が出るわ」

 詩織が立ち上がり、玄関に向かう
 ものの、数秒もしないうちに
475以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:01:28.86 ID:/RwPqFea0
支援
476悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 16:05:12.34 ID:7pZSQQSx0
「あら、Tさん達……あ、ちょっと」

 ぱたぱたぱたと、騒がしい足音が、聞こえてきて

「翼君、大丈夫!?」

 ばたーーーん!!と
 勢いよく扉が開き、エリカがリビングに入ってきた

「エ、エエエエ、エリカさん!?」

 即座に反応したのは、翼
 先ほどまでの暗い表情が吹き飛ぶほど驚き、頬が赤くなっていて
 エリカは、そんな翼に早足で近づくと
 むにょむぎゅ
 翼の体を、優しく、が、強く抱きしめた

「襲われたって聞いたけど、大丈夫!?どこも怪我してない!?」
「…姉さん。翼が目立った負傷をしていない事は、僕が車の中で説明しただろう。あと、その体勢、翼が窒息する」

 つかつかと
 詩織に連れられて、直希やTさん、舞も部屋に入ってきた
 直希の言う通り…ソファーに座っていた翼を、エリカは真正面から、立った体勢で抱きしめた訳で
 その、翼好みのバストが、ものの見事に翼の顔に押し付けられていた訳で

「あら」

 …ぷっしぅ
 翼は様々な要因が重なって、軽く窒息しかけていた
477以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:07:12.80 ID:/RwPqFea0
天然だろうけどうらやま支援
478悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 16:10:07.13 ID:7pZSQQSx0


 軽く嫉妬が爆発しそうになった誠を宥めたりで、若干、タイムロスを要したが
 望達に説明したのとほぼ同じ事を、黒服はTさん達にも説明した
 ふむ、とTさんが難しい表情を浮かべる

「三つの都市伝説の、多重契約者か」
「はい。三つ目の都市伝説が何なのか、それがわからないのが不安ですが…」

 …恐らく、だが
 翼の「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力を防いだのは、その三つ目の都市伝説の能力だろう
 ビルを二つ、ほぼ同時に真っ二つにしたあの力も、恐らくはそれ
 はっきりと、何の都市伝説かわからないのは不安だ

「…翼君」

 翼を気遣うように、エリカが翼と視線を合わせる
 顎砕き飴の騒動の直後、彼女に対する想いなどは吹っ切った翼ではあるが…彼女が、憧れの女性である事実に、代わりはなく
 あわせられた視線に、照れやらなにやらで頬を若干染めながら視線をそらし、答える

「俺は、大丈夫ですから。都市伝説の能力が効かないからって、殺せない訳じゃないんだし」

 長く、都市伝説契約者として、戦い続けてきて
 己の契約都市伝説である「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力が通用しない相手とも、翼は何度か戦ってきている
 ……しかし、「最強」の都市伝説や、「無敵」の都市伝説など、所詮、この世には存在しない
 一見、「最強」や「無敵」のように思えても、それ相応のリスクが伴ったり弱点を伴っているのが常あd
 だからこそ、その弱点をつく事で、相手の背負っているリスクを利用する事で…相手を倒すこともまた、可能である

 翼を長く見てきた黒服は、翼がそう言う戦い方もできる事を知っている
 …ただ、やはり問題は
479以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:11:17.54 ID:/RwPqFea0
支援
480悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 16:15:59.56 ID:7pZSQQSx0
 翼が、「殺せない訳じゃない」と口にした事だ
 翼は、実の父親を殺す覚悟を、背負ってしまっている
 狙われているのは自分だから、と自分の父親が、学校町を悪意の渦に陥れている黒幕だったから、と
 その全ての責任を、一人で背負おうとしてしまっている
 …これでは、翼の心が、もたない

「…なあ、黒服さん」
「?はい、何でしょう?」

 と
 なにやら考え込んでいた様子の誠が、黒服に話し掛ける
 …ちらり、と
 一瞬、気遣うように、翼に視線をやって
 それに気づいた直希が、腰をあげた

「翼。今回の件の事で、少々、話したい事が。君の部屋で、話したいのだが」
「へ?別に、ここで話せばいいだろ?」

 直希の言葉に、首をかしげる翼
 直希は、ちらり、姉に視線をやって
 それで、エリカには伝わったのだろうか
 エリカは微笑み、立ち上がる

「翼君、おねーさんたちと、あっちでお話しましょ?」
「え、あ、ち、ちょっと、エリカさ」

 ぐい、と
 エリカが、やや強引に翼を立ち上がらせて、ぐいぐいと引っ張っていく
 ころりん、翼が立ち上がった拍子に翼の膝を転がり落ちたノロイが、ちゅうちゅう鳴きながら慌てて翼を追いかけていく
481以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:17:29.80 ID:/RwPqFea0
部屋で話したい事……はは、何を想像してるのか、俺は支援
482以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:17:53.63 ID:4CxH89vU0
支援
483以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:19:32.26 ID:cOj0oVr40
>部屋で話したい事……はは、何を想像してるのか、俺は支援
愛を見つけたんだよ
484悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 16:20:08.69 ID:7pZSQQSx0
「…悪い、直希」
「構わん。翼には聞かせたくないのだろう」

 翼に聞こえないように、誠と直希は、そう苦笑しあって
 直希は、姉と翼の後を追って、リビングを退出する

「…チャラい兄ちゃんに、聞かせられない話?」
「はい…翼が、朝比奈 秀雄に、狙われた件について」
「でも、それは翼が一番、知るべき事じゃないの?」

 舞の疑問に答えた黒服に、今度は望がそう尋ねる
 すると、黒服はやや困ったような表情を浮かべて、答えてきた

「そう、なのですが…これは、あの子の母親の実家の件、と絡みますので」
「……日景家か」

 Tさんの言葉に、はい、と頷く黒服
 誠が、やや忌々しそうな表情を浮かべる

「翼は、あの家のことを何も知らないからな。母親の実家ってくらいにしか思ってない……まぁ、デカい家だ、って程度の認識はあるだろうけどな」
「…ですが。翼が朝比奈 秀雄に狙われたのは、恐らく、その実家絡みでしょうから」

 日景家
 学校町に古くからある旧家のひとつ
 あちらこちらに影響力を持つ、その家

「そもそも、あの腐れ外道が翼の母親と結婚したのだって、あの家がそう言う家だったからだからな」
「……どゆ事?」
「日景って、たまにニュースで名前見るわね。あちこちに影響力を持つ家って事は…権力を握るのに適してる、って事よね?」
485悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 16:25:22.17 ID:7pZSQQSx0
 舞が浮かべた疑問に、何か思いついたらしい望がそう口にした
 あぁ、と誠が頷く

「そう言うこった。はじめはあの外道、日景家に婿養子に入るはずだったんだからな。日景家の傘下に入ることで、その影響力を手に入れようとしたんだろ」
「でも、朝比奈って苗字を名乗ってるって事は、婿養子には入らなかったのね?」

 詩織の言葉に、今度は黒服が頷いた
 結局、朝比奈 秀雄は日景家に婿養子には入らず、日景 マドカが朝比奈家に嫁入りした形になっている

「…少々、色々と問題があったようでして。翼の母親である朝比奈 マドカは、結婚前に日景家から勘当されています」
「それで、婿養子には入れなかった、って訳さ」

 それによって
 朝比奈 秀雄は、日景家の影響力を手に入れることを、失敗した

「んー……あれ?チャラい兄ちゃんの母親は、日景って家から勘当…されたんだよな?じゃあ、どうしてチャラい兄ちゃんは、その日景って苗字を名乗れてるんだ?」
「翼は、両親の元を飛び出した後、誠さんの家にお世話になっていましたが…その後、母親の実家を調べて、少しの間、そちらのお世話にもなっていたんです」
「…まぁ、それを調べたのは、俺の両親なんだけどよ」

 弁護士をしている誠の父親と、探偵をしている誠の母親が、翼の母親の実家を調べて、その住所を聞いた翼はそちらを少しの間、頼ったのあd
 日景家の方でも、勘当したとは言え、娘の事が気がかりだったのだろうか
 孫である翼の存在は知っており…そして、娘は勘当しても、孫は可愛かったのだろうか
 翼のことを、歓迎してくれたのだ

「その際、両親と同じ家名を名乗る事を嫌っていた翼に、「日景」の姓を名乗る事を許したのだと、聞いています」
「翼は、日景家がどう言う家なのかわかってなかったし。当主候補とかそっちの方にも名乗りを上げる気はないから、後継ぎ争いにも縁がないし。親戚連中も口は出さなかったらしいな」
「……なんつーか、複雑なのな」

 若干、こんがらがってきた様子の舞
 リカちゃんは、すでに話についていけないようで、首をかしげたまま舞の頭の上で固まっている
486悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 16:30:29.42 ID:7pZSQQSx0
「…大体の事情は、わかった。だが、それでどうして、「日焼けマシンで人間ステーキ」の青年が、父親似狙われる事に繋がるんだ?」
「翼は、日景家の当主の後継ぎ争いには、興味を抱いていません………が、「日景」の姓を名乗っている、それは事実です」

 Tさんの疑問に、黒服が答えようとして
 それを遮るように、誠が続けた

「あそこの現当主…ようは、翼の爺ちゃんな。孫馬鹿っつーかなんつーか。夫婦揃ってわりと翼の事可愛がってるんだよ。で、勘当した娘の息子とは言え、可愛い孫って事で。翼本人がその気になれば当主候補の序列に加えるつもりなんだ」
「…序列に加わった場合。翼は朝比奈 マドカの弟の日景 薫についで、第2位の序列となります」
「で、翼がいくら嫌っていようが、朝比奈 秀雄は翼の父親だ…もし、翼が当主候補とかになった場合、当然、発言権を得る」

 つまる、ところ
 朝比奈 秀雄が、翼を狙うのは

「…つまり。翼を、権力を得るための道具にしよう、って訳?」

 不快感を露に、望がそう、口にした

 …つまりは、そう言う事なのだ
 朝比奈 秀雄が翼を狙うとなると、それしか理由が考えられない

 一度、手にしそこねた権力を
 朝比奈 秀雄は、再び手に入れようとしているのだ

「……あの、腐れ外道野郎、昔っから権力欲とか、強かったからな。翼の母親と結婚する前にも、警察関係者の娘と関係もって、そっちの権力手に入れようとした時期もあったみたいだからな」

 朝比奈 秀雄への嫌悪感を露に、誠はそう呟いた
 そちら絡みで調べていて、自分の仲間の「本当の」家族に関する事実も知ってしまったからか
 余計に、あの男への憎悪が、増しているのだろう

「……翼は、日景家の事情を知りませんし。日景家の方でも、翼には、そう言った醜い権力争いとは無縁でいて欲しいようですから。あの子の前で話すのは、躊躇われて」
487以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:30:54.69 ID:/RwPqFea0
支援
488以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:33:00.59 ID:cOj0oVr40
支援
489悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 16:35:12.23 ID:7pZSQQSx0
「…なるほど」

 なかなか、厄介な事情だ
 つまり、朝比奈 秀雄はその権力を手に入れるために、学校町全体を巻き込もうとしているのだ
 ……いや
 そもそも、歪んだ形で権力その他に執着しているらしい相手だ
 それすらも、野望の一端でしか、なくて

 全ての始まりに、学校町を選んで
 そして、己の野望を実現していくのに都合がいい翼に目をつけた
 …つまりは、そう言う事なのだ


 翼に絡みついた悪意は、あまりにも大きくて、厄介で
 それでも、翼は周囲を巻き込まないように、一人で背負おうとしてしまう
 一人で戦う事が、あまりにも当たり前になってしまっていたから

『貴様が私の元に戻らぬ限り!!貴様のその大切な者が無事でいられると思うな!!!』

 その言葉が、翼の心を大きく抉る
 手に入れた大切な家族を失う事を、翼は何よりも恐れているから


「………もし」

 …スーツの下の、いつも護身用に持ち歩いている光線銃に、スーツ越しにそっと触れながら
 黒服は、小さく呟く

「もし、もう一度、朝比奈 秀雄と遭遇する事がありましたら……私が、応戦します。翼には、手を汚させません」
「…黒服?」
490以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:35:42.21 ID:/RwPqFea0
支援
491以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:36:16.43 ID:cOj0oVr40
sien
492悪意が絡む  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 16:36:59.41 ID:7pZSQQSx0
 決意、したように
 自分に言い聞かせるように、黒服は続ける

「…あの子は、自分の父親との決着を、自分の手でつける気かもしれません……ですが、それが実行されたならば…きっと、あの子の心が、持ちませんから」

 翼は、優しいから
 殺したいほどまで、父親を憎む事ができなかったから
 翼の心は、父親殺しと言う罪には耐えられない
 だから


「朝比奈 秀雄は、私が倒します」


 その命を、奪う事になろうとも


 黒服はこの日、そう、決意を固めたのだった



to be … ?
493以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:38:22.08 ID:cOj0oVr40
支援
494以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:39:01.61 ID:7pZSQQSx0
………さて、あれだ
Tさんの人とはないちもんめの人に、剣山に向かって紐なしバンジー土下座ぁあああ!!orz
なぁにを聞かせてるんだか、俺は!!!

まぁ、翼が狙われた事情に付いての説明です
無駄に長くてわかりにくくて申し訳ないんだぜー

あぁ、そして、裏設定好きな俺の本能が、今回の件に関係ない情報までちらつかせてしまっている
余計に混乱させないか心配です
495以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:40:10.13 ID:/RwPqFea0
乙!
本格始動って感じでオラwktkしてきたぞ!

さて、占い師と山田と話投下してくる―
496以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:43:20.58 ID:7pZSQQSx0
ちなみに
本当なら車はマステマに出させるつもりだったが、出すの面倒だったのでエリカが免許持ってる事にした
すまん、マステマ
497恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 16:44:11.11 ID:/RwPqFea0
 ――――オイ、へたれ。テメェニ仕事モッテキテル野郎ニ連絡シロ

 こんな事を突然言われたのは約一時間前の事だ。
 そのちょっと前、俺は突然、マゾと歩いていたとか言う意味のわからない理由で爆破された。
 意味のわからない攻撃を意味のわからないなりにやり過ごした後に出た言葉が、これである。
 さらに意味のわからない言葉を重ねられて、正直俺の頭はかなり混乱していた。

「……それで、何の用だ」

 そんなこんなで、今、俺の家にはやってきた占い師を含め6人の人間がいる。
 さらに詳しく言えば霊が一人、半霊が一人、都市伝説が三人、人間が一人という構図なのだが、何だか虚しくなるのでこれ以上の説明はできれば避けたい。
 というか、何で俺の部屋がこんな人外魔境みたいになっているのか。
 一体何の陰謀だというのだろう。
 俺が何をしたというのだろう。
 疑問は募るばかりでしかなかった。

「あまり長居はできない。出来れば手短に頼む」

 そう言う占い師の傍らに、今日はあの少女はいない。
 「猫の散歩」というもっともらしい理由を付けて、占い師が来て早々に追い出していた。
 別にここでの会話を聞かせる事に拒否感があるわけではない、とその後で占い師は言っていた。
 なんでもあの仙人の爺が「わしも行くぞ」とか駄々をこね始めたらしく、あの長身の女性に家に縛り付けて貰っているらしい。
 いつ爺が脱出するか分からないからこその策なのだろう。
 だから、この占い師が微妙に急いでいるのもなんとなく分かるのだが

「と言われても、俺にも何が何だか……」

 この場を設けたのはデビ田の案だ。
 急げと言われても、肝心のデビ田が何をするのかが分からない以上、俺にはどうしようもない。
 大体、俺の幻聴であるデビ田が一体何をしようというのか。
498以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:45:16.65 ID:7pZSQQSx0
しえーん
499恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 16:47:09.92 ID:/RwPqFea0
「(……で、占い師に来てもらったけど、どうすんの)」
「(マダ分カンネェノカ? サッキノ野郎ノ言葉ヲ聞イテタダロウガ)」
「(さっきの野郎って言ってもな……何か言ってたっけ?)」
「(へたれナ上ニ鶏頭カ。幸先クライナァ、テメェ)」

 なぜちょっと記憶にないだけでここまでぼろくそに言われなければならないのだろうか……。
 ちょっとへこむ俺をよそに、デビ田はけらけらと笑って

「(……マァ、鶏頭ノテメェデモ見テレバ分カルダロウヨ)」
「(そこで鶏頭を強調するのな、お前……)」

 もういじけるしかない。
 肩を落とし、一人溜息をついていると、何かの準備をしていたらしいデビ田から声がかかった。

「(オイ、頭借リルゾ)」
「(鶏頭なんじゃないのか)」
「(ソッチノ頭ジャネェッ! イイカラジットシテロ、チョットノ間ダケダ)」

 もはやデビ田の言動は俺の理解の範疇を超えていた。
 取りあえず、デビ田の言葉に従って頭を動かさないようにじっとしてみる。
 何だか周囲の視線の色が変わったような気がするのは、出来れば気のせいだと思いたい。
 デビ田のせいでただでさえ、周囲から見れば奇妙な無言時間が俺の中に存在するのだ。
 これ以上周りから変人扱いされるのは精神的に耐えられない。

「(さっさと終わらせてくれよ、全く……)」
「(大丈夫ダ。話スダケ話シャ終ワル)」
「(つか、一体何を――――)」

 そこまで言った時だ。
 突然、俺の身体から黒い何かが噴出し始めた。
500以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:49:39.67 ID:7pZSQQSx0
しええん
501恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 16:50:11.41 ID:/RwPqFea0
 部屋にいた誰もが、驚いたように俺の方を見ている。
 ……そんなに驚かれても、正直一番驚いているのは俺なのだが。

「(おい、何だこれっ!? なんか俺の身体から変な煙が噴き出してるんだけどっ!?)」
「(変ナノジャネェ。ソレヨリモ動ンジャネェヨ、ジットシテロ)」

 こんな事態になっても説明してくれないってどういう事なのだろうか。
 訴えても勝てるんじゃないんだろうか。

 黒い煙は身体の中から噴出し、しかし部屋を黒く染める程の量はなかった。
 ものの数秒で煙は消え、辺りには何もなかったかのような平穏が戻る。
 少なくとも、俺はその時、戻ったと思っていた。

「――――外界ハイイナァ、オイ」

 しかしそれも、頭上から響いてきた声によって簡単に打ち消される。
 何か頭に、そこまで重くないものの何かが乗っかっているのが皮膚越しに分かった。
 その何かはとぐろを巻いているのか、時々頭皮をこすっている。
 声のしたタイミングから考えても、今頭の上でとぐろを巻いているのは声の主なのだろう。

「……いや待て、今何か聞き覚えのある声がしたような」
「ソリャソウダ。ツイサッキマデ話シテタンダカラナァ」

 そう、確かにこの声と、俺はついさっきまで会話をしていたはずだ。
 しかし、おかしい。
 ならばなぜ、今俺は重さを感じているのか。
 そう、デビ田は幻聴のはずである。
 俺のストレスが生んだ、一時の幻覚症状のはずである。
502以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:50:51.82 ID:7pZSQQSx0
デビ田実体化キターーーーー!!!支援
503恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 16:53:28.07 ID:/RwPqFea0
「……オイ、まじデ気ヅイテナカッタノカ、テメェ」

 困惑している俺に、デビ田は呆れたように語りかけた。
 デビ田と話す俺と、周囲は少しだけ警戒しながら見ている。

「オレサマハ『悪魔ノ囁キ』ナンダヨ。サッキモ聞イタダロ、都市伝説ダ」
「いやいや、まさかそんな…………」

 そんな事があるわけないだろう、と俺は首を巡らせて、部屋に据え付けられた鏡を見た。
 きっと、この感触も幻覚なのだろう。
 つまり、鏡を見れば頭の上に何もないのが――――

「ナ? イイ加減諦メヤガレ」

 ――――俺の頭上で、蛇が日本語を話していた。
 体長20cmほどの、子どもの蛇。
 どう見ても、「日常」にはあってはならない光景である。
 そしてそれはつまり、「非日常」であり、デビ田が都市伝説である事を示していた。

「…………マジか」
「まじダナ」

 ちろちろと長い舌を出し入れしているデビ田。
 ドッキリじゃないか、と一応周囲を見渡してみるが、小型カメラのこの字もない。
504恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 16:56:58.57 ID:/RwPqFea0
「ああ……さようなら、俺の日常」
「……都市伝説退治ヲ職業ニシテル奴ガ何ヲ言ッテヤガル」

 鼻で笑って、デビ田はその首を占い師へと向けた。
 これからデビ田が何を始めるのか、今の俺には全く分からない。
 しかし何故か、今よりさらに面倒な事に巻き込まれそうな、そんな嫌な予感が漠然と、俺の頭の中に存在していた。

【続?】
505以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:58:28.78 ID:7pZSQQSx0
占い師の人乙でしたー!!
頑張れ山田wwwwwwwwww
君は既に「非日常」に包囲されている!!!


後で、デビ田が占い師さんに情報漏らすシーン書きますねー!!
まぁ、大体は先ほど書いたネタとほぼ情報重なるんですが
506以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 16:59:09.68 ID:/RwPqFea0
デビ田に従って占い師を召喚しました。
その代わり山田の信じていたものが一つ崩れ去りました
この後も、デビ田へは前と同じように接すると思うよ!
507以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 17:03:24.70 ID:7pZSQQSx0
避難所に禿のネタが来てるんですが、一端夕食準備の為に席はずします
夕食後もスレが残っていて、禿のネタが代理投下終えられていれば幸せだ!





どうでもいいけど、もし、翼が女性として生まれていたら、朝比奈 秀雄がもっと腐れ外道になっていたとかひみちゅ
ついでに、黒服が翼の両親をフルネーム敬称なしで呼んでいるのは、彼なりの最大級の嫌悪の表れなのもひみちゅ
508以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 17:03:48.19 ID:/RwPqFea0
>>505
>君は既に「非日常」に包囲されている!!!
日常を切望してるのに、どうしても仕事柄都市伝説と関わってしまうジレンマ

>後で、デビ田が占い師さんに情報漏らすシーン書きますねー!!
wktkしてるー!
509敵対組織構成員の日記  ◇ijXVtdIY/Y(代理):2010/03/16(火) 17:10:33.97 ID:ieSnxugc0
2/14
今日、組織のおえら方から新しい対象の観察を頼まれた。
毛の無いゴリラのような奴だ。
男なら怪しまれないてんで、部下を接近させたら、アイツ、ピーったりピーしたり
遊んだあげく食いやがった。(性的な意味で)


2/22
今朝5時頃、宇宙服みてえな防護衣を着たジョンに突然たたき起こされて
俺も宇宙服を着せられた。なんでも、組織の研究所が襲撃されたらしい。
そこから漏れ出したピンクの光がヤバイとの事だ。
研究員の連中ときたら、一体何を作ってたんだ?
510敵対組織構成員の日記  ◇ijXVtdIY/Y(代理):2010/03/16(火) 17:11:16.24 ID:ieSnxugc0
3/2
昨日、この屋しきから逃げ出そとした研究いんが一人、ほられた、て はなしだ。
夜、からだ中 あついあつい。
からだ み たら 筋肉が発達してやがた。
いったいおれ どうな て

3/5
やと ねつ ひいた も とても火てる
今日 、 あにき くう

3/8
こわい こわい き にく きた
すごく大き  で ほられ
んぎもっぢ です。

3/9
うほ               


          

              アッー
511敵対組織構成員の日記  ◇ijXVtdIY/Y(代理):2010/03/16(火) 17:11:58.59 ID:ieSnxugc0
以降記述は無い
512以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 17:12:23.95 ID:cOj0oVr40
支援
513敵対組織構成員の日記  ◇ijXVtdIY/Y(代理):2010/03/16(火) 17:12:41.12 ID:ieSnxugc0
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「処分」
「ですよねー」
頭を抱えて呻いたK-0の言葉に近く居たハクが同意する
「あの馬鹿は・・・ 良 い ぞ も っ と や れ
予想以上の好き勝手ぶりじゃないか、「アメリカ政府の陰謀論」の情報は欲しかったが元々そんなの期待していない
 アメリカ支部の連中め、思い知ったか」
アーハッハッハッハッハと机の上で大笑いするK-0の姿にハクは深くため息を付いた
「ウチ(K-)はこんなんで良いんでしょうか?」
K-bヘ圧倒的な能力と問題の有りすぎる性格及び性癖により
組織の手に余る連中の集まりである

fin
514以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 17:14:57.53 ID:ieSnxugc0
昼寝してたらいろいろ投下されてたよ!
ってことで代理投下でした

最近昼になると眠くてかなわんです
これはあれか、春が近づいてるからか
515以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 17:39:02.41 ID:/RwPqFea0
夕飯前ほ
516以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 18:27:02.01 ID:ieSnxugc0
晩飯前ほ
517以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 18:47:39.89 ID:+lWTNOgK0
518以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 19:17:53.30 ID:/RwPqFea0
おいしかったですほ
519四枚葉の奇跡 ◇OgWxfIe4h2(代理):2010/03/16(火) 19:29:16.07 ID:ieSnxugc0
和弥のいる「学校町」に来た俺。まあ軽い様子見程度だったんだが、和弥が余りに引き留めるために2〜3日はこっちに滞在する事に決めた。
・・・まあ、親父は最初からこうするつもりだったのだろう。親父が何を考えてるのか俺にはさっぱり分からん。

―そして夜。余り寝付けない俺は、気晴らしに夜の街を散歩することにした。
ふらりと立ち寄った近くの公園。そのベンチに腰掛け、俺を取り巻く環境を脳内で整理していた。
和弥には『糸井和祢』という人格があって、さらに俺と同じ契約者だ、という事らしい。
まあ、理解できなくない訳ではない。だが内心俺も吃驚していた。
いろいろ考えていると、誰かが俺に近づいてきた。
「・・・一体何処に行ったかと思ったら、そんな所で何してるの?」
聞き覚えのある女性の声。カズネさんか?
しかし声のする方を向くと、そこには見知らぬ女性が立っていた。
「・・・あ、貴女は!?」
「そんなに警戒しないで。私よ。」
よく見ると、細かな動作や仕草はカズネさんのそれだった。そして月明かりに映える深紅の瞳は正しく彼女のものだった。
「カズネさんですか・・・っていうかその身体、一体どうしたんですか?」
「ああ、今和弥は寝てるからね。この身体の『昼の支配者』は和弥だけど、『夜の支配者』は私なの。」
「いや、そういう事じゃなくて・・・」
「ああ、身体の性別の事?その事だったら伯父様、つまり貴方のお父様に感謝しなくては・・・」
え?何故ここであの冴えないダメ親父が出てくるんだ?
「あの・・・それってどういう・・・」
「あら?和弥から何も聞いてないの?全く・・・」
「で、何故うちのダメ親父に感謝するんです?その身体と関係が―」
「ええ、あるわよ。貴方のお父様が作ってくださった『薬』のおかげでまたこの身体に戻れたんだから・・・」
520四枚葉の奇跡 ◇OgWxfIe4h2(代理):2010/03/16(火) 19:30:00.12 ID:ieSnxugc0
「また?和弥は、というかカズネさんたちは前にも女性化したことがあったんですか?」
「ええ、そうよ。ちょっと前の話になるんだけどね、まあ、その時私はまだ眠ってた頃だったんだけど。この街に『かかると身体が女性化するガス』をばら撒く変な奴が居たの。」
「はあ…」
「それでね、和弥は運よk・・・ゲフンゲフン運悪くそのガスを食らっちゃったのよ。」
カズネさんの話を総合すると、和弥はその変な奴のガスを食らったせいで身体が女性化し、身体が女性化したおかげでカズネさんが目を覚ましたって訳だ。そしてその変な奴が作った集団とまあ一悶着があったようだ。でも何処でうちのクソ親父が出てくるんだろう。
「で、その集団とは決着はついたんですか?」
「ええ、双方痛み分け・・・っていうか和解って感じね。まあそれは置いといて、ガスの効果はとっくの昔に解けちゃったの。ここで貴方のお父様が登場するのよ。」
「はあ…、ってええ!?」
親父が薬を作れるなんて聞いたことがない。というか、性転換の薬なんか作れるはずが―
「貴方のお父様は契約者よ。それも多重契約者。」
「多重・・・契約・・・・・・?」
「多重契約って言うのは、一人で複数の都市伝説と契約する事よ。契約する都市伝説の性質が似通っていればそんなに苦労はないんだけど・・・」
「もし違っていたりすれば・・・?」
「最悪、都市伝説に飲み込まれるわね。私は詳しくは知らないけど、和弥なら知ってるんじゃない?」
「それで、うちのクソ親父は何と契約してんだ?」
「さあ?そこまでは知らないわ。まあ強いて言えば、『お金』と『薬』に関係するものかしらね。」
「・・・何故『お金』が関係するんです?」
「薬を作るのにはお金がかかる。そして臨床実験も行わなければいけない。あとは分かるでしょう?」
「はあ・・・」
今の話をまとめると親父も都市伝説の契約者で、それも複数の都市伝説と契約してるらしい。でもあの親父、契約者なんて素振り見せなかったぞ?
「あ、伯父様の件は忘れてちょうだい。貴方には内緒って言われてるの忘れてたわ。」
「・・・は?」
「ほら、伯父様の契約している都市伝説が都市伝説だし、どっかに狙われると色々と厄介なのよ。特に私達が。」
「・・・つまり、俺を介してどっかに漏れるのを危惧してるのか?」
「さあね。少なくともそれはないんじゃない?でも何処で聞いてるか分からないのよ、そういうのに限って。」
「ふーん・・・」
「ねえ、そろそろ帰らない?」
「そうッスね。帰りましょう。」
帰る、と言っておきながらカズネさんにそこらじゅう引き摺り回され、挙句の果てに色々と奢らされた。・・・カードとはいえ不幸だ。
しかし、どうして俺がクレジットカードを持っているのを知っていたんだろう?まさか親父が喋ったのか?・・・いや、有り得るなそれは。
5214コマ風 はないちもんめ ◇ijXVtdIY/Y(代理):2010/03/16(火) 19:30:45.84 ID:ieSnxugc0
望「最近翼と黒服が過労で倒れそうで心配です
  休めと言っても休まないしどうすれば良いと思いますか?」
愛美「強制的に眠らせれば良いだろう」
望「・・・どうやって?」

愛美「・・・友美、ちょっとこっちに来い」
友美「ん?」

ガシッ コキッ バタッ

愛美「こうやって」
望「流石愛美さん、わっかりやすい!!」
詩織「・・・(黒服、翼・・・止める術を持たない私を許せ)」

この後翼と黒服がどうなったかは想像か花子さんの人に任せた
522以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 19:34:12.19 ID:ieSnxugc0
以上、代理投下でした

筆が進まんぜー
523以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 19:38:12.56 ID:lJKWkEHC0
皆々様おつです

あの蟹は食えるのかwww

そして山田wwwwついに気付いたwwwwwこの調子でゴーストの正体もはっきりしたら彼の日常はどうなるのかwwww

K-bヘ相変わらずだw
524以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 19:39:36.09 ID:ujhse91m0
ごちそうさまでした〜
代理乙!!!
525以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 19:57:02.29 ID:ujhse91m0
にゅ
526以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 20:16:45.90 ID:lJKWkEHC0
527以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 20:24:59.72 ID:/RwPqFea0
>>523
>そして山田wwwwついに気付いたwwwwwこの調子でゴーストの正体もはっきりしたら彼の日常はどうなるのかwwww
あれだけは違うと心の支えにして山田は現在生活中です
それが折れたら開き直るか、それとも一週間くらい落ち込むかの二択になるでしょう
528以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 20:27:23.62 ID:ujhse91m0
>>527
山田wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
これはぜひともダークネスVSゴースト現場に山田も居合わせさせるしかないじゃないかwwwwwwwwwwwwwwwwww


なお、デビ田、色々話す予定ですが、ゴーストについては核心もてないとの、話したことでゴーストが元に戻ったとして、悪魔の囁き側に疲れる可能性が0ではないとか考えて話しません
529Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/16(火) 20:29:46.95 ID:lJKWkEHC0
>>527
山田の未来は暗いww
530以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 20:31:55.34 ID:lJKWkEHC0
っと名前が
531以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 20:32:30.52 ID:ujhse91m0
>>529
それでも、山田なら……山田なら、きっと、乗り越えてくれる……!!
532以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 20:32:35.43 ID:/RwPqFea0
>>528
>これはぜひともダークネスVSゴースト現場に山田も居合わせさせるしかないじゃないかwwwwwwwwwwwwwwwwww
山田「鬼だ! 鬼がるぞ!」
デビ田「現実ヲ直視シヤガレ」

>なお、デビ田、色々話す予定ですが、ゴーストについては核心もてないとの、話したことでゴーストが元に戻ったとして、悪魔の囁き側に疲れる可能性が0ではないとか考えて話しません
こうして、山田の心を最も大きく抉るタイミングを待ち続けるんですね、わかります
533以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 20:35:26.47 ID:/RwPqFea0
>>529
>山田の未来は暗いww
きっとそれを乗り越えて強くなってくれるさ!
多分
534以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 20:37:57.01 ID:ujhse91m0
>>532
>山田「鬼だ! 鬼がるぞ!」
どちらにせよ、ゴースト単体では事件に絡みにくいですからwwwwwwwwwww
なぁに、未来ちゃんや占い師さんも傍にいるかもしれないから多分きっと恐らく大丈夫

>こうして、山田の心を最も大きく抉るタイミングを待ち続けるんですね、わかります
可能性は否定できませんwwwwwwwwwwwwwwwwwww
535以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 20:50:11.47 ID:4CxH89vU0
保守
536以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 20:54:56.07 ID:/RwPqFea0
>>534
>なぁに、未来ちゃんや占い師さんも傍にいるかもしれないから多分きっと恐らく大丈夫
むしろ、彼らが今まで言ってきた事が証明されて、山田が精神的にさらなる窮地に立たされそうな気がするのは何故だろう

>可能性は否定できませんwwwwwwwwwwwwwwwwwww
山田「何……だと……」
デビ田「馬鹿ハ死ンデモ直ラネェ。デ、テメェハ死ナネェ。一度精神的ニずたずたニナッテモイインジャネェ?」
537以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 21:06:46.75 ID:ujhse91m0
>>536
それでも、山田なら…山田なら、大丈夫さ!!
538恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 21:23:54.39 ID:/RwPqFea0

 あの占い師との会談から二日が経過した。
 つまり、デビ田が悪魔の囁きであると暴露されてから四十八時間という長い時間が経過したわけである。

「…………はぁ」

 しかし、山田の表情は暗かった。
 別に、デビ田が都市伝説だから、これ以上非日常に漬かりたくないのにとかそんな風に拗ねているわけではない。
 そこはもう、半ば開き直っていた。

「(ドォシタ、辛気クセェ)」
「いや、自分の鈍感さに呆れてるというか、絶望してるというか……」

 脳に響いてきた声に返答して、はぁ、と再び溜息をつく山田。
 この二日間、常時こんな感じであるわけではない。
 時折思い出したように溜息をついては、陰鬱な雰囲気を纏うのだ。
 アップダウンが激しいという事実のみを取れば、それは鬱病と似ているのかもしれない。
 結局は思春期にもよくある、ただの自己嫌悪なのだが。

「あぁ、俺にも都市伝説の気配を察知できる力が欲しい……」

 そんな風に、本日三度目の溜息を山田がついていると

「山田、暇だよー」

 がばぁ、と後ろから誰かに抱きつかれた。
539恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 21:27:14.67 ID:/RwPqFea0
 基本的に、この家には山田を含め五人しか存在しない。
 つまり、必然的にその候補は限定されるのだ。
 そして今、山田の背に当たっている起伏。
 このまな板のようにまっ平らな胸から想像するに――――

「……何してんだ、佑香」

 あぐらをかいて座る山田の背中にぴったりと張り付いていたのは、10歳程に見える一人の少女だった。
 茶色の混じったセミロングの髪が、山田の顔にかかってくすぐったい。
 少女の名前は、二条 佑香。
 つい最近この家に居候する事になった幽霊である。
 一度で名前を言い当てられた彼女は、しかし何故か頬を膨らませて、山田を睨んだ。

「む。何やら今ものすごい失礼な推理が山田の中で行われていたような気がするの」
「気のせいだ。錯覚だ。勘違いだ」
「何か、すごく嘘くさいよ」
「何を言う。だてに二十五年生きてないぞ、俺は。人様に平気で嘘をつくような大人じゃない」
「むしろ、大人になればなるほど嘘つきになる気がする」

 この年で半ば悟った事を言う佑香に、山田は別の意味で溜息をついた。

「(テメェヨリヨッポド『人間』ガ分カッテンジャネェカ、将来明ルイナァ)」
「(いや、暗い未来しか想像できないんだけど)」

 脳内で笑うデビ田に、山田も表には出さない声で突っ込んだ。
 人を信じられない大人ほど惨めな物はないと、山田は思う。
 不信は他者からの不信を招き、それによりさらなる不信へと陥る。
 そんな負のスパイラルしか、そこからは生まれないだろう。
540以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 21:28:53.94 ID:ujhse91m0
デビ田のシーン書きつつ支援
くそ、悪魔の囁きのセリフがカタカナなのがコンナに面倒とはっ!!!
541以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 21:30:02.44 ID:HYrIuRqD0
支援しようか



542恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 21:30:17.74 ID:/RwPqFea0
 後でちゃんと説教をしておこう、と何気なく問題を先送りした山田をよそに、佑香はパタパタとその背で暴れた。

「暇だよー。お姉ちゃん達もいないし、山田、遊べー」
「何気に命令口調だな、おい。つか、猫がいるだろう、お前のお気に入りの猫が。アレで我慢しろ」
「猫はもうダウンしちゃったよ?」
「ダウン……?」

 佑香の言葉に、何となく嫌な予感を覚える。
 まさかな、と思いつつ、先程まで子ライオンが日向ぼっこをしていたはずの窓際へと目を向けると――――

 ぎゃ……しゃー……

 ――――そこには、断末魔を上げる子ライオンがいた。
 ふさふさだったはずの毛はぼさぼさになり、今にもくたっとどこかへ逝ってしまいそうである。

「猫ぉぉぉぉおおおおおおおおっ!?」

 その惨状を目にして、山田は慌てて子ライオンの元へと走った。
 この子ライオン、「非日常」まみれの山田の精神を支えている唯一の柱でもある。
 実はこの子ライオンが都市伝説である事を知っているデビ田としては何とも心苦しい状況でもあるのだが、ひとまずそれが山田に休息を与えているのは間違いない。

「ゆ、佑香、お前一体何をした」
「猫と数分遊んだ」
「数分でこれかよっ!? え、なに、お前そんな怖い遊びしてるの?」
「……山田も試す?」

 遠慮しておきます、と山田は丁重にお断りしつつ、ぐてっとした子ライオンを抱えた。
 「ぎゃしゃ」と何やら山田に伝えようとしているらしいのだが、山田にはさっぱり理解が出来ない。
 理解できたとしても、「最後に腹いっぱい、肉が食べたかった……」と言っているだけなので、むしろ山田が落胆するかもしれないのだが、そんな事山田は知ったこっちゃない。
543以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 21:31:20.58 ID:ujhse91m0
っちょ、子ライオーーーーーーーンっ!!??wwwwwwwwwwww支援
544恐怖のサンタ ◆8SAuypmHlgjS :2010/03/16(火) 21:33:27.49 ID:/RwPqFea0
「救急車か!? いやでも猫に救急車? いやそもそもこれそんなに酷い状況かもわからないし……ああ何でこんな時に良子も沙希もいないんだ……」

 以前沙希を子ライオンが咥えてきたような慌てっぷりで、山田があたふたする。
 今挙げた「山田家の頼れる人」の中にマゾがいないのは偶然か、それとも必然か。

「山田、暇―」
「(コノママ見捨テテモイインジャネェ?)」

 ぺたりと再び張り付く佑香に、この際子ライオンを消し去ろうと企てるデビ田。
 休日の山田家は、その混沌を平日よりもさらに深めていた。
 
【終】
545以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 21:37:28.23 ID:/RwPqFea0
デビ田が悪魔の囁きだと気付いた後の山田の動向を少し
ついでに新しい同居人の名前とかも
子ライオンは本格的に山田の精神安定剤を化しているような気がしなくもない

>>540
カタカナに直すのって、結構面倒くさいよね……
どこかにそんな文訂正ソフトがないものか
546以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 21:40:44.31 ID:ujhse91m0
乙でした!!!
子ライオン、精神安定剤かwwwwwww

さて、避難所で笛の人の投下もあるんだが、代理投下の前に俺がこっそり投下しますねっと
547以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 21:42:04.08 ID:/RwPqFea0
支援に回るよー
548裏切りのデビ田  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 21:43:09.21 ID:ujhse91m0
「あれだ、これは悪い夢だ。夢なら覚めなければいけない。えぇと、こう言う時はどうするんだったかそうだ頬を抓って痛みで目覚めて」
『オイオイオイィィィィ、コノ期ニ及ンデマダ現実逃避カァ?ドウセ、テメェハ痛ミナンザ感ジネェンダカラ、目覚メル事ナンザネェンダヨォオオ!!イイ加減、認メチマエヨへたれぇええええええ!!!!』

 軽く現実から逃避した山田に、山田の頭の上に実体化したデビ田が、けたけたと笑う
 そんな様子に、むぅ、と良子が機嫌悪そうにデビ田に告げる

「はる君を虐めないで」
『−−−−ッチ、ワカッタヨ』

 …軽く、恐怖心を抱いているせいだろうか
 デビ田は良子の言葉に、あっさりと悪魔の囁きとしての仕事を放棄した

 じ、と
 やや警戒するようにデビ田を見つめていた占い師が、口を開く

「…俺に用があるというのは、お前か」
『アァ、ソウサァ。オレサマノ主様…ツッテモ、今カラオレサマ裏切リ行為ヲスル訳ダカラ、元主様ニナルガナ。ソイツラノ事ヲ話シテヤルヨ』
「主様、って…」
『ツマリハ、オレサマノ契約者ダナァ』

 沙希の言葉に答えるデビ田
 悪魔の囁きの、契約者
 それは、つまり

『今、コノ街ヲ騒ガセテイル、こーく・ろあ支配型ヲばら巻イテル、張本人トソノ部下ノ情報ダゼェ?欲シイダロォ?』
「…なるほど。確かに、それは重要な情報だな」
『ソウサァ!オレサマヲ消サナイデクレルナラ、オレサマガ知ッテル範囲デ、ミィンナ話シテヤルゼェ?ドウセ、オレサマハ見捨テラレテルシナァ?話シテモ問題ネェダロウシナァ』
「…見捨てられた?」

 今度は、山田が疑問符を浮かべる
549以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 21:43:49.16 ID:HYrIuRqD0
乙でした。
子ライオンをダウンさせる佑香の遊びとは……


関係無いですけど、組織の本部って学校町にあるって判断で良かったけ?
550裏切りのデビ田  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 21:44:48.62 ID:ujhse91m0
 アァ、とデビ田は頷いた

『てめぇトソコノどまぞヲ爆破シテキタ野郎ガイタダロォ?アイツモ、オレサマノ元主様ノ部下ノ一人ダヨ。確カ、「りあ充爆発シロ」ノ契約者ダ』
「…それで、爆発か」

 …あれ?
 でも、俺ってリア充だったのか?
 思わず、首をかしげる山田
 その拍子に、山田の頭から落ちそうになったデビ田が、ずりずりと頭から落ちないよう、移動する

『元主様ニハ、他ニモ「せいれーん」の契約者ト「たこ妊娠」の契約者、「かいざー」の契約者、「つぁぼノ人食イ」ノ片割レ、だーくねす。ソレニ「ゆにこーん」ノ契約者ガイルハズダゼェ?』
「……多いな」
『マァ、元主様ガオレサマミタイナ悪魔ノ囁キヲタップリバラ撒イテルカラナァ?元主様ニ従ッテナイ奴デモ、暴レテル奴ガイルカモナァ?』

 そこまでは把握できねぇ、と答えるデビ田
 自分のような悪魔の囁きの卵がどの程度孵っているのか、そこまでは認識できないようだ

『アァ、ソレト、元主様ハ、多重契約者ダゼェ?他ニ、くーるとーッテ都市伝説ト、モウ一ツ別ノ都市伝説ト契約シテル。ブッチャケ、器ぎりぎりダナ。飲ミ込マレテネェノガ不思議ナクライダ』
「あともう一つって、何なんですか?」

 首を傾げたマゾに、デビ田は

『知ラネェ』

 と、あっさり、シンプルに答えた
551以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 21:45:36.03 ID:HYrIuRqD0
ありゃ、乙でしたのタイミング悪かったかね。
とりあえず、支援
552裏切りのデビ田  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 21:47:15.08 ID:ujhse91m0
「…知らない?お前の契約者なんだろ?」
『知ラネェモンハ知ラネェンダヨ。オレサマノ本能ガ、ソレニハ関ワルナって言ッテキテンダ』

 不機嫌そうに尻尾を揺らしながら、占い師に答えたデビ田


 本能レベルで関わる事を拒絶するような、都市伝説
 …それは、一体どんな都市伝説だと言うのだ?

 それは、よほど恐ろしい存在なのか
 それとも、よほど強大すぎる存在なのか
 ……それとも、単に悪魔の囁きとの相性が悪い存在なのか


「…それで。その、契約者の名前は」
『アァ、名前ナ』

 核心の、それを
 デビ田は、ゆっくりと話す

『…朝比奈 秀雄。支配欲ト権力欲ニトリ憑カレタ、大馬鹿野郎ダヨ』



to be … ?
553以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 21:49:28.52 ID:/RwPqFea0
支援
554以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 21:50:30.91 ID:ujhse91m0
朝比奈秀雄関連の情報は、昼間投下したネタと完全に内容被るのでカットさせていただきました
デビ田より、占い師さんや山田達に、朝比奈サイドの情報が行き渡ったようです

あと、提示してないのは、朝比奈に「都市伝説の契約書」を流した「組織」のやつに付いてだけだな

>>549
個人的には、「組織」本部は「東京には巨大な地下要塞がある」って都市伝説を本部として使ってるイメージだった
555以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 21:54:50.65 ID:lJKWkEHC0
お二方共乙ですー
556以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 21:58:51.58 ID:/RwPqFea0
乙でした!
これで山田以下爺も動かせるのか
・・・いや、爺は動かすと周囲に迷惑かけそう、というか主に翼に迷惑をかけそうだし止めるべきか

>>549
ポクターガイストの「触れたものを動かす」性質を利用して、「二足歩行当たり前。間接? そんなの知らん」状態の超リアル人形遊び子ライオンverとか
お嬢様として無駄に甘やかされて常識も一部欠如しているので、それを今後山田が少しずつ補完していくことになります
557以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:01:14.40 ID:ujhse91m0
>>556
>・・・いや、爺は動かすと周囲に迷惑かけそう、というか主に翼に迷惑をかけそうだし止めるべきか
もし万が一翼が女体化したら、朝比奈は翼を手篭めにして妻扱いにして日景家に入り込みそうだしな
何?近親相姦?
今の朝比奈にそこら辺の倫理観は欠如している

>ポクターガイストの「触れたものを動かす」性質を利用して、「二足歩行当たり前。間接? そんなの知らん」状態の超リアル人形遊び子ライオンverとか
子ライオーーーーーーーーーンっ!!??wwwwwwwwwwwwwww
558以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:01:30.32 ID:HYrIuRqD0
>>554
そうですか。つまり、組織本部は東京の地下に存在するって事ですね。
なら、《残留思念》と《女の勘》の通り道に学校町を配置しましょうかね。

野生の都市伝説に見つからない様に、学校町を脱出せよって感じに。
559以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:11:38.03 ID:/RwPqFea0
>>557
爺「近親相姦? ふざけるでない、その小僧はわしが貰う!」
 アホみたいな理由で本当に戦闘が始まりそうだから怖い

>子ライオーーーーーーーーーンっ!!??wwwwwwwwwwww
子ライオンのため、山田は日々佑香の常識修正に奮闘中
子ライオンが力尽きるのが先か、山田の尽力が実るのが先か
560以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:20:26.35 ID:ujhse91m0
>>559
>爺「近親相姦? ふざけるでない、その小僧はわしが貰う!」
っちょ、こら爺wwwwwwwwwwwwwwwwww

将門「ほほぅ?いい度胸だ。翼は我の嫁候補ぞ?」
黒服D「…将門公、何を仰っているので?それと、お爺さんも何を口走っていらっしゃいますか?」
 おぉっと、事態をさらに混乱させる奴と、ラスボス(反射のオーラを背負った黒服D)が


さて、笛の人の代理投下はっじめるよー!
561以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:27:06.53 ID:/RwPqFea0
>>560
爺「嫁争奪戦争(ハルマゲドン)の始まりじゃぁぁぁあああああああああっ!!」
562笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 22:27:43.07 ID:ujhse91m0
【上田明也の探偵倶楽部14〜上田明也の事情〜】

「それじゃあこの辺りで降ろして下さい。
 一応滞在用の場所は自前で確保しているんで。」
ニューヨークの夜は早い。
激辛麻婆豆腐を食べ、ニューヨーク観光を楽しんでいると日はあっという間に落ちていた。
穀雨が大人だったならこのまま夜のニューヨークを楽しむのだが今回は我慢することにしよう。
「良いんですか?笛吹さん。」
「はい、恨みを買いやすい仕事なもんで自分の用意したところ以外で寝泊まりする気にはなれませんよ。」
「その台詞から考えるとこちらを信用して頂けて居ないように思えますが?」
「会ったばかりの人間と友達にはなれても信用はできませんよ。
 どんなお店でもお客さんにおつりを数えて貰うのと一緒です。」
「ふむ……。解りました。
 それではこれからお互いがより良い関係を築けることを願っています。」
「はい、それじゃあ。」
満足げにぐっすり眠っている穀雨を抱え上げると俺はユナさんの車から降りた。
そこから最寄りの駅まで歩いてコインロッカーの置いてある辺りまで向かう。
そこでノートパソコンを開き都市伝説『赤い部屋』を起動した。
「お、アキナリさん。やっと来ましたか。」
モニターに茜さんの姿が映る。
「済まないな、連絡した時間より少し遅れた。すぐに運んでくれ。」
「解りました。」
グニャリと世界が歪む。
アメリカであってもこの感覚は変わらないらしい。
そう思っていると俺の視界は真っ黒に染まっていった。
563以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:28:40.22 ID:ieSnxugc0
支援!
564笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 22:29:03.33 ID:ujhse91m0
「アキナリさん、少し報告したいことがあります。」
「なんだ?」
赤い部屋に入るとすぐに茜さんは真面目な顔をして俺に告げた。
「アメリカに入ってから私の力が弱くなってます。
 アメリカでは赤い部屋の知名度が低いせいだと思うんですが……。
 レベル(十段階)で言うと2〜3位は落ちています。
 具体的に言うとネット回線を通じてじゃないと対象を赤い部屋に引きずり込めません。
 あ、でもあれですよ。
 それは決して私が役立たずとかそういう訳ではなくて、
 むしろいつも以上に頑張っちゃうから決して使えねえとかそういうことは無いですよ?
 だから私を役立たずとか思って捨てないで下さい。
 ていうか捨てられるくらいなら貴方を殺して私も……」
どんどん危ない方向に向かってるよ!!
何とかして止めなくては穀雨ごとniceboatだ。
「ちょっと待って!
 お前の中で俺はどれだけ鬼なの!?」
「いや、だってアキナリさんいつも
 『どんな人間でも何か一つは才能がある。
  何も出来ない奴は何もしてこなかった奴だ。
  何もしてこない奴なんて俺は認めねえぞゴルァ!』
 ってスポ根漫画の鬼コーチみたいな事言っているじゃないですか!」
言われてみれば少し覚えがある。
まあそれは言葉の綾ということにしてほしい。
565以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:29:28.31 ID:ieSnxugc0
支援
566以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:34:52.18 ID:lJKWkEHC0
支援
567笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 22:35:27.93 ID:ujhse91m0
「何を言っているんだ茜さん。
 君は何時だって俺のことを大事に思ってくれて傍に居てくれるじゃないか。
 俺が何度君に助けられたと思っているんだ?
 俺はどうにも君が居ないと駄目なんだよ。
 そもそも、俺自身と穀雨が赤い部屋に入れるなら何の問題も無いよ。
 役に立ってくれてありがとう、愛しているぜ。」
とりあえずこういう場合役に立っても立たなくてもとか言ってはいけない。
じゃあやっぱり役に立ってないんじゃない!
とか逆上されて死ぬ思いをすることになるのは目に見えているからだ。
素直に役に立つと言ってあげましょう。
「えへへ……、それなら良いんです。」
嬉しそうにえへらえへら笑う茜さん。
はっはっは、可愛い奴め。
もう少しイチャイチャしてやりたいが俺には余り時間がない。
「さて、とりあえずここから晶の家までは行ける?」
「はい、アキナリさんを運ぶだけでしたら幾らでもなんとかなります。」
「良い仕事だ。それじゃあちょっと行ってくるぜ。」
「え〜、もうちょっと……」
寂しそうな顔で俺の袖を引く茜さん。
「約束なんだよ、遅れるわけにはいかないんだ。
 だから……な?」
不満そうな茜さんをなんとか振り切って俺は明日晶の家に移動することにした。


568以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:35:37.80 ID:ieSnxugc0
支援
569以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:37:00.65 ID:lJKWkEHC0
支援!
570笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 22:40:30.97 ID:ujhse91m0
ニュルン
「パソコンのモニターからお邪魔しマース。
 学校町立中央小学校6年1組学級委員長上田君でーす。」
「おぅ、やっと来たか委員長。遅かったね。」
赤い部屋からインターネット回線を伝って移動すると明日晶の家に出た。
明日晶を知らない人は明日真が主人公の電磁人シリーズでも読むと良いと思うよ!
……ちょっと宣伝してみた。
「ああ、日中はニューヨーク観光を楽しんでいたから。
 アメリカのとある組織の方が案内して下さってだなあ。
 超楽しかったぜ。」
「知ってるよ。」
「え……?」
これはびっくりだ。
昼間から俺をストーキングしていたのだろうか?
「いや、ストーキングはしていない。てか心を読んですらいない」
「と行った傍から心を読むな!」
「今日はまだ使ってないからね、超能力。
 余った時間は有効に使わないと。」
知らない人の為に解説だ。
説明しよう!明日晶は超能力者である!
だから人の心を覗くくらい簡単なのだ!
……以上。
「ところで委員長が背負っている子供は誰?
 わたし、委員長が結婚したとかまったく聞いてないんだけど。」
「ああ、親戚の子供を預かっている。」
「はい、ダウトー。」
例えばこんな風にである。
571以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:40:35.09 ID:/RwPqFea0
支援
572以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:41:10.84 ID:ieSnxugc0
支援
573以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:41:38.28 ID:lJKWkEHC0
しーえん
574笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 22:43:16.84 ID:ujhse91m0
「まあ正直なところを話すとだなあ。」
「うん。」
「攫ってきた。」
「うわっ!?最低だ!」
「あまり大きな声を出すな、こいつが起きる。」
パソコンのモニターから完全に身体が出てきたことを確認すると
穀雨をそこらへんのソファーに適当に寝かせる。
「あ、ごめん……。」
「解れば宜しい。」
そう言って俺は明日の物と思しきもう一つのソファーにどっかりと座った。
「……私座れないんだけど。」
「ごめんね。」
可愛らしく謝ってみた。
殴られた。


575以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:43:54.81 ID:ieSnxugc0
支援
576以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:44:23.50 ID:lJKWkEHC0
紫煙
577笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 22:46:37.20 ID:ujhse91m0
「しかし委員長も変わったねえ。」
明日が感慨深げに呟く。
「と、言うと?」
「昔は他人のことなんてちっとも考えて居なかったのに、
 眠っている子供に気を遣って起こすなよなんて……。」
ほろほろと泣く振りをしてみる明日。
「あ゛〜……、言われてみれば確かにそうか。」
「そうだよ、ところで仕事で来たって聞いているけどどんな仕事なんだい?」
「ああ、何でも都市伝説に支配された町の開放だそうだ。
 詳しく言えないけれど割と面倒になりそうだ。」
「ふ〜ん。死ぬなよ。」
自分で聞いておいて興味なさげである。
「ありがと。」
しかし俺に死ぬなよ、などと言ってくれる人間が何人いるだろうか?
いや違うな。
俺を心配してくれる人間が何人いるだろうか?だ。
どうせあいつなら大丈夫だろう、と言われ続けて約二十年。
そろそろ心配されてみたいお年頃である。
まあ彼女にはそこそこ感謝だ。


578以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:47:09.11 ID:ieSnxugc0
支援ー
579笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 22:50:53.98 ID:ujhse91m0
「じゃあ今日は早めに寝るのかい?」
「ああ、そうだな。
 ところで仕事に行っている間は穀雨を預かっていてくれないか。」
「………うーん、解った。」
「や、お前が子供の世話が苦手なのは解っているんだけどさ。」
「弟一人まともに面倒見られなかったんだぜ?」
「知ってる。立派な善人に育ちやがって……。」
説明するまでもないが一応こいつは明日真の姉である。
「あいつ元気にしてた?」
「超元気、あいつに殺されかけた。ついでに組織に所属してやがる。」
「それは元気だねえ。」
遠くからクラクションの音が聞こえる。
明日は静かに目をつぶっている。
弟のことを色々と考えて居るのだろう。
「ねぇ委員長、日本に帰ったらあいつに………」
「断る、それはお前が言え。」
「ひどい……。」
恨めしげに俺を見詰める明日。
正直すまない。
でもそれはお前が言わないと意味が無い。
「どうするんだ明日晶、お前は弟にまで先を越されそうだぞ。」
軽く挑発してみる。
「うるせーやい馬鹿野郎。飲むぞ、付き合え。」
明日はキッチンからワインを持ってきた。


580以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:51:07.13 ID:lJKWkEHC0
支援!
581以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:51:44.51 ID:ieSnxugc0
支援
582笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 22:51:51.26 ID:ujhse91m0
数十分後。
「どーせ男なんてよぉ……。」
そこには立派にできあがった明日晶と
「まあ泣くなよ、男も女も世の中には星の数程居るぜ?」
「違うの!私は運命の出会いがしたいのぉ!白馬の王子様に出会いたいの!」
「王子様より騎乗の上手い姫様とかどこを探せば出てくるんだ?」
「うるせえ馬鹿野郎!」
「おぅふ!」
思い切り絡まれている俺がいた。
明日晶はお酒が苦手だ。
飲むとすぐ酔って暴れるのだ。
友人としては良い迷惑である。
「あーん!もうやだよー!バイク関係の知り合いはなんか皆怖いしさぁ!
 英語とか私高校時代の成績2だよ?2!弟に勉強教えられてたわ!」
「俺にカンニングの手伝いさせてたな。」
「くっそー!私無しで悪いことできなかったくせにー!
 ばらすぞ!お前の犯罪ぜーっんぶばらすぞ!」
「それはマジヤメテクダサイ。」
こいつが居なくてもアキナリ君の犯罪旅行はコンプリートできたとは思う。
思うが土下座せざるを得なかった。
いや、こいつも共犯ではあるのだが。
「ふっふっふ、解れば宜しい。」
ドヤ顔で思い切り背中を踏まれた。
ちょっとマゾ楽しい。


583笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 22:53:08.28 ID:ujhse91m0
「……と言うわけで、あんたはさっさとまともな生活に戻りなさい!
 あんたあんまり悪いことやっていると本当に罰が当たるよ?
 別に、あんたが良い事してぇ、今までの罪が消えるとは思ってないけどぉ……ヒック。
 てゆーか罪を償えとか私もまったく思ってないしー。
 でもあんた根っからの悪人なんだからもっと大人しくしてなさいよ!
 好き放題にやればやるほどあんたは自分の首を絞めるんだから!」
今度はお説教タイムだ。
こいつは普段は俺に何も言えない癖に飲んだときだけは態度が大きいのだ。
「あとねえ、あとねえ……!」
今日はまだ何か言うことがあるらしい。
「………もっと私を頼りなさい!解った?」
「はいはい、解りました。」
何かを言いかけて別のことを言った。
さて、彼女は何を言いたかったのだろうか?
俺は超能力者じゃないので何も知りません。
「…………むふぅ。」
眠ってしまった。
本当に子供だなこいつは。
まあ其処が可愛いとも言える。


584以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:53:21.45 ID:ieSnxugc0
支援
585以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:53:48.45 ID:lJKWkEHC0
しえん
586笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 22:55:18.38 ID:ujhse91m0
「さてと……。」
ため息を吐く。
宴会ならば正々堂々と混ざればいいのだ。
「そこのあんた、何しにきた?」
俺はクルリと後ろを振り返って闖入者に問いかける。
そこには蜘蛛が一匹。
プラーンと天井にぶら下がっている……、って蜘蛛?
おかしいな?
「まあいい、俺は蜘蛛が苦手なんだ。
 ティッシュでとって屋外に捨てるぞ?」
蜘蛛は俺の言葉なんて聞こえていないかのようにプラーンとぶら下がり続けている。
「そうかそうか、じゃあ仕方がない。
 生き返らない程度に殺してやるよ。
 こいつは虫タイプの相手に対しては+補正がかかるぞーカッコワライ」
蜻蛉切でおもいっきり斬りかかってみた。
「ストオオオオオオオオオオオオオオオオップウ!」
蜘蛛は空中で華麗に宙返りを決めると完璧なフォームで床に着地した。
「へっへっへ、そいつが蜻蛉切か。面白い物持ってるんじゃネエか。」
「お前は誰だ?」
「おっと、紹介が遅れたな。」
蜘蛛は床の上に立ってお辞儀をする。
「それは良いが人間の姿で自己紹介をしてくれるとありがたい。」
「ああ、じゃあそれに乗ってやるよ。」
「お前、良い奴だな。」
「ありがとよ。」
そう言うと、蜘蛛はあっという間に人間の姿になった。


587以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:55:30.63 ID:ieSnxugc0
支援
588笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 22:56:42.84 ID:ujhse91m0
「俺の名前はイクトミ。
 アメリカの都市伝説だ。」
男はそう名乗った。
「ネイティブアメリカンの神話の神様じゃねえか。
 都市伝説でも何でもねえよ!
 ………嘘だろ。」
「ところがどっこい本当なんだな、居る者は居る。
 お前だって非日常の住人だ、それ位解るだろう?お前だって神様使っているんだからさ。
 それにしてもなぁ、気付かれるとは思わなかった。
 聞いていた程度には鋭いな。」
「そりゃドーモ、誰から聞いたのよ?」
「秘密だ。お前とそこで寝ているねーちゃんが何時バタバタし始めるか覗き準備万端だったんだがな。
 最高画質のブルーレイだ。」
「残念だったな、妄想のHDDVDに録画してバックアップに撮っておいてくれ。
 それにそもそもこいつと俺はそんな関係じゃない。」
「えっ」
「えっ」
戸惑われたがこちらも困る。
本当に俺は明日晶とはそういう仲ではないのだ。
「ナニソレコワイ。
 女が家に男を呼んでおいて一緒に酒まで飲んでおいて何も無し?」
「いや、子供居るしさ。」
「おま……そこは正しく性教育だろうが。」
「なにこの都市伝説卑猥、ヒワい!」
「ヒワいとか形容詞みたく言うなよ、イクトミって名前知ってるんだから俺の性格は解るだろ?」


589以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:57:35.54 ID:ieSnxugc0
しえ
590笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 22:58:27.71 ID:ujhse91m0
説明しよう。
イクトミとはアメリカの神話の神様だ。
神様としては不良も良いところで北欧神話におけるロキのようなトリックスターの役割を担っている。
そして何よりエロい。
超エロい。
彼にまつわる小話は五割(以上)エロだ。
気になる人はwikipediaで調べてみると良い。
多分乗っていないと思うけれど。
「で、そんなお前がなんでわざわざ俺の所に?
 まさか俺主演の素人物のポルノを撮る為にわざわざ遊びに来たんじゃないだろう。」
「いや、その為に来た。」
「そうか、やはり組織絡みか。
 ……………って、え?」
「いや、日本で恐れられたハーメルンの笛吹きが彼女とアンアンとか最高すぎるだろ。」
な、なんだとこいつ。
俺はこいつに対して呆れた以上に愉快だと思った。
わざわざ盗撮の為にここまで来たなんて、本当に最高に傑作じゃないか。
「お前、結構面白い奴だな……!」
「やっと解ったか。酒もってこいよ。
 お前ともう少し話をしたくなった。」
俺はとりあえず明日と穀雨を寝室に連れて行くとイクトミとサシで飲むことを決めた。


591以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 22:58:49.19 ID:ieSnxugc0
しえーん
592笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 22:59:43.53 ID:ujhse91m0
さて、一時間後。
「そもそもなんでロリが素晴らしいかと言うとだな。
 日本人の美意識の根幹に関わるそれはそれは深い理由があるわけだよ。」
「ほうほう。聞かせてくれよ。」
「まず、徒然草という日本では源氏物語に並ぶ名作と呼ばれている古典が有ってだな。」
「源氏物語なら知っているぜ、マザコンでロリコンの変態が主人公なあれだろ?
 一応世界三大文学だしな。」
「流石神様話が早い。
 その徒然草は日本人の美意識について様々に述べているのだがその中にこういう一節がある。
  花は盛りに,月は隈なきをの見るものかは。
 花は満開だけ見るもんじゃない、月は満月だけが美しいんじゃない。
 あらゆる状況の景物を愛する心こそが本当に美しいってことさ。
 だから俺はロリを愛するんだよ。
 花ではなく、つぼみの内に花の美しさを見いだしてその境界を楽しむんだ。
 儚い、しかし夢のような遊び方だ。」
「ふむ、だがその理屈だとババァでも良いぜってことにならないか?」
「ハッハッハ、何を言っているんだイクトミ。
 無い花は愛でようがない。
 新月の夜には月のあった夜を思い出すしかない。」
「良く回る口だなおい。」
明日晶のワインセラーのコレクションは物凄い勢いで消費されていた。
翌日起きた彼女が絶叫すること間違いなしである。
あいつ飲めないのに。
飲めない酒をあいつは集め続けるんだ。


593以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:00:03.53 ID:4CxH89vU0
支援ー
594以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:00:23.04 ID:ieSnxugc0
しえ
595以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:00:26.72 ID:lJKWkEHC0
支援!
596笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 23:00:43.84 ID:ujhse91m0
「ところでお前が今度行く先、アニキに汚染された町だっけ?
 本当に大丈夫なのか?」
「問題無いぜ〜、一応対策は打っているから。」
「んなこと言ったってお前……相手はアメリカも持て余している兄貴だぜ?」
「本体の禿は居ないんだろう?なら浄化くらい簡単だ。」
「あ〜、それなんだけど本体居るぜ。黒服Kだろう?」
……え゛。
「ナニソレコワイ。」
「残念だったな、応援しているぜ。」
「逃げようかなあ?」
「対策有るんじゃないのかよ。ていうかその蜻蛉切で殺せるだろ?
 ゲームで言えば防御無視で常にクリティカルヒットみたいな物だし。」
「それプラス剣術スキル補正(大)な。
 それにしても数が多すぎるわ。本当に町ごと焼き払うぞゴルァ。」
「あっは、ガンバレー。」
「あ、そうだ。お前助けろよ。」
「俺の撮影会に付き合ってくれるなら考えないでもない。」
「俺は脱ぐと残念な男なんだ。やめてくれ。」
「残念だ。本当にあの女と何も無いのなら俺が頂いちまおうかな。」
「それは駄目〜。」
イクトミは不思議そうな顔をしてこっちを見た。
こちらにも複雑な事情が有るのだ。


597以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:01:11.05 ID:ieSnxugc0
23時をお知らせします
598笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/16(火) 23:01:29.96 ID:ujhse91m0
「わっけわかんねえなあ?何もないんじゃネエのか?」
「色々事情が有るんだよ。」
「色々ネエ………。」
俺の顔をじっと見詰めるイクトミ。
あ、そうか、って顔をしている。
気付いたか、神様も中々鋭いねえ。
「中々どうして残酷じゃねえのおめえ。」
どうやら察してくれたようだ。
「複雑だろ?」
「歪んでるだけだよ。」
「俺は清く正しいまっすぐな悪役だ。
 歪んでいるなんて言葉とはほど遠い。
 俺は彼女の為を思ってそうしているんだ。」
「ふーん………、そうか。なら良いぜ。飽きた。
 また遊びに来る。」
「今度は俺の家に来いよ、酒なら神様よりはそろえている。」
「楽しみにしてるぜ、あばよ笛吹。」
そう言ってイクトミは窓の隙間から帰って行った。
「あばよ。」
俺はそう言うと穀雨の寝ている寝室に向かうことにする。
幼女の香りを嗅ぎながら酒を飲むとまた最高なのだ。
もうちょっと仲良くなったらイクトミに教えてやろう。
そう思って俺は缶ビールを1本取り出した。
【上田明也の探偵倶楽部14〜上田明也の事情〜fin】
599以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:02:30.41 ID:ieSnxugc0
しえ
600以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:03:13.47 ID:ieSnxugc0
っと、終わってた
代理乙でした!
601以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:04:15.11 ID:lJKWkEHC0
代理乙でした!
602ある女の日記  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 23:08:13.16 ID:ujhse91m0
●月▲日

 翼と、改めて話がしたいと思った
 いくらでも、恨み言を吐いてくれていい
 むしろ、恨みも何もかも、全てぶつけてほしい
 翼は、そう言った感情すら、私や旦那…いや、元旦那になるが…と共に生活していた頃、ずっと抱えんで着てしまっていたようだから
 きっと、家を飛び出した時、私たちに向かってぶつけてきたあの怒りでは、まだ足りないはず
 いっそ、全て吐き出してしまえばいいのだ
 溜め込むのは体に良くない
 全部、感情をぶつけてくれればいいのだ

 そう思って、翼がバイトを始めたらしい中華料理屋に行ったのだが、翼の姿は見えなかった
 …厨房の方にいたのだろうか?
 そう言えば、翼が通ってる高校、バイトは届出とか色々面倒だったはず
 さては、届け出ないでバイトしてるな
 流石、私の息子だ
 いいぞもっとやれ

 それにしても、あの店の料理はうまかった
 青春軒だったか
 翼と顔も合わせたいし、今度から通わせてもらおう




(ここから数年、記述がない)
603以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:11:28.35 ID:lJKWkEHC0
うおっと支援だ!
604ある女の日記  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 23:13:08.26 ID:ujhse91m0
▽月◇日

 未だに翼と会えない
 どうやら、完全に避けられているらしい
 私とは、顔も合わせたくないという事か
 結局、私たちの家にも、あれ以来一度も帰っていないようだ
 いや、私も帰っていないけれど

 つまり、そこまで徹底して避けるほどに、私は翼に嫌われているという事か
 一応仮にも母親の癖に、こんなにも嫌われてしまうだなんて
 いや、自業自得だろう
 私はどこまでも、翼の母親ではなかったのだ
 母親らしい事を、ほんの一度でもしてやれなかった
 今からでは、もう間に合わないのだろうか
 もうそろそろ、翼も高校を卒業する
 その前に、せめて一回くらいは会いたいのだが…


 むしゃくしゃしてしまったので、襲ってきた都市伝説を返り討ちにして半殺しにした
 ついでに、ナンパしてきたぶ男も叩きのめした
 後悔も反省もしていない



(ここから数週間、記述がない)


605以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:16:18.21 ID:lJKWkEHC0
微妙に反省してるww支援
606ある女の日記  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 23:17:49.29 ID:ujhse91m0
×月●日

 うん、やばい
 マジでヤバイ
 やっぱ、母親として駄目だね、私


 昨日が、翼の高校の卒業式だった訳だけど
 めっちゃ忘れて、寝過ごしたよ畜生め
 あぁ、もう、翼と顔合わせるチャンスだったのに
 何やってんだい、私って女は!!!
 きっと、あの黒服は卒業式に顔を出したのだろう
 あの黒服は、私や元旦那より、ずっとずっと、翼の親らしい男だから
 今気づいたけど、結局私、小学校から高校まで、翼の入学式にも卒業式にも顔を出さなかった
 どこまで母親失格なんだよ、本当に私は

 もう、翼に合わせる顔がない
 …この街を、出よう
 私には、もう、母親としての資格もない
 いっそ、翼には、私のことも忘れてもらった方がいいのかもしれない
 こんな駄目親の事なんて、忘れた方が幸せだ




(ここから数年間、記述がない)
607ある女の日記  ◆nBXmJajMvU :2010/03/16(火) 23:20:12.24 ID:ujhse91m0
○月×日

 今日、久しぶりに元旦那の顔を見た
 といっても、直接顔を合わせたわけじゃない
 テレビで空港の様子を移していたら、たまたま、その姿が映っていたのだ
 どうやら、外国から日本に帰ってきた様子だった
 相変わらず、昔と変わらない様子で…いや、違う
 昔よりも、随分とタチが悪くなっているような
 そんな印象を、テレビに映ったほんの数秒間の姿を見ただけで、感じた

 何故だろう
 どうして、こんなにも嫌な予感がするんだろう

 テレビに映っていた元旦那の隣には、私から元旦那を奪いやがった陰気女も一緒に映っていた
 イメージチェンジでもしたのか、鳥の羽をあしらった襟巻きなんて巻いてたけど、相変わらず陰気な印象だ
 …そっちの陰気女からも、なんだか、嫌な印象が伝わってきて

 ふいに、翼のことを思い出した
 何故だろう、気のせいであってほしい
 翼に悪い事が起きるような、そんな予感がする


 …一端、学校町に、戻ろう
 秋祭りの時期にもずっと帰らずにいたけれど、一度、戻ろう
 嫌な予感がする
 翼の傍に、いてやらなければいけない気がするのだ



(ここから数ヶ月、記述はない)
608以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:21:31.68 ID:ujhse91m0
翼の母親こと朝比奈 マドカの心情が一番よくわかる日記シリーズですた
そろそろ、現在に追いつきつつあります


そして、力尽きるよお休みー
明日もスレが残っていますように
609以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:23:43.54 ID:lJKWkEHC0
乙でした!
本人はチャラ男に対しては反省の気が強い感じ、彼女が今後どう動くのか楽しみです!
610以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:31:49.58 ID:lJKWkEHC0
611以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:45:48.51 ID:4CxH89vU0
しゅ
612以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/16(火) 23:55:24.47 ID:lJKWkEHC0
613カニとババアの人 ◆O1qyI9JUPg :2010/03/17(水) 00:14:12.70 ID:vDFakEL00
どうも、こんばんわ。
昨日、カニとババアのssを書いた者です
今日から、カニとババアの人と 名乗ります

ではでは、保守がてら、小ネタでも、投下しようかしないか,,,,,,,,,,,
614以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 00:45:06.89 ID:FYFlDmMB0
615以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 00:50:48.38 ID:yED/LZYS0
│д`)<SS投稿したいのですが、何か準備とか必要ですかね?
616以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 00:59:52.38 ID:N241Va6W0
メモ帳とかに書き溜めてあるネタと、それを投稿するテンションがあれば大丈夫だと思いますよ!
617喫煙少女A:2010/03/17(水) 01:21:11.08 ID:vDFakEL00
あー、ええっと どうもこんにちは
私は、この町―学校町に住む高校1年生の清水 涼っていいます
女の子です。 趣味は釣りと喫煙です
あ、大丈夫、心の中ではもう大人なので、吸っても平気です。お母さんが言ってました。

で、今日も学校帰りに、河原でボーッと糸を垂らしていました。
調子が悪いのか、さっき後ろを通っていったバイクの音に魚がビビったのか、河童でもいるのか知りませんが
全く釣れません、ボウズです。
ふと、横に人影が見えたので、あーいつものおっちゃんかなーとか思いつつ目をやるとそこには河童がいました。
そこには、河童がいました。
勘弁してほしいです、なんか襲いかかってくるし。
腹がたったんで、煙草の煙を吹きかけてやりました。
すると、河童は急に倒れこみ、腕をバタバタとさせてます。
あ、これが、私の「メンソールを吸うとインポになる」の都市伝説の力です
私の吸った煙草の煙を吸いこむと、暫く下半身がマヒするらしいです。
ついでに、男性の場合は、1週間くらいインポってゆうのにになるそうです。
ところで、インポってなんですかね、この間お父さんに聞いたら「女の子がそういう事を言っちゃいかんよ、ちなみに私の息子は未だ現役だ」
って、いってました。よくわかりません。はぐらかされて腹が立ったので、煙を吹きかけてやりました
暫くの間「俺は未だ現役なんだ,,,,,,,,,,,,,,そんなはずはない,,,,,,,,,,,,,息子よ,,,,,,,,,目を覚ましてくれ,,,,,,,,,,,,,」とかブツブツ言ってました、気持ち悪い。
とりあえず、河童は川にけり落としました、バタバタもがく様子は、正に河童の川流れってやつでした、ざまみろ。

結局、その後も一匹も釣れずじまいでした。
家に帰ると、お父さんに「なんだ、釣れなかったのか,,,,,,だからあれほど私の下の釣竿を使えと言ったのに,,,,,,,,」
と言われたので、股間を思い切りけり上げました。
お父さんが、わけのわからない事を言ったら、こうしろって、兄貴が言ってました、お母さんもやってました。
そんなこんなで、今日も一日が終わりました。

-fin-
618以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 01:32:44.85 ID:FYFlDmMB0
乙ですだ
正統派なエロ親父だw
>>615
>>616な感じでだいじょぶ!
619以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 02:00:57.61 ID:FYFlDmMB0
620以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 02:17:19.07 ID:N241Va6W0
お休み保守
621以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 02:50:42.99 ID:FYFlDmMB0
622嫌煙青年A:2010/03/17(水) 03:16:32.67 ID:vDFakEL00
えー、あーどうも、俺はこの町―学校町のとある大学の文化学部民族学科に所属している清水 青です。
個人的には主に下位の民間説話―都市伝説を研究している。
今は、夜遅くまで仲の良い教授の研究室に残り、セカセカとレポートを仕上げているところだ。
教授は大層適当なお方で「巡回に見つかんなよー」と言って先に帰って行った。
この研究室がある棟は、学内でも最古の棟で、感知機等も設置されていない。大丈夫なんだろうか、この大学は。
そんなこんなでレポートも粗方片づき、そろそろ帰ろうかと伸びをすると、後ろに青白い顔をした女の人が立っていた。
「,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,どちら様ですか?」
「,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,シネ」
会話にならない、泣きそうだ。そういえば教授が帰り際に「ここ、出るから気をつけろよー」なんて言ってたな。
確か、昔とある女学生が教授と不倫をして、結局教授は家庭を選び、その女学生は教授の研究室で首つり自殺をし、今でもさまよい続けている
っていう噂話を耳にした事があったが,,,,,,,,,まさか、彼女がそうなのか。
とかなんとか思っていると、彼女が掴みかかってきた。やばい死ぬタスケテ。
何とか腕を振り払い、出入り口へ逃げようとする。しかし、彼女も後ろから、物凄いスピードで追ってくる。もうやだ、家に帰りたい。
とっさに俺は、ポケットから煙草を取り出し、急いで火をつけ、一気に吸い込んだ。
すると、周りの景色が霞み、フウゥと息を吐きだすと、今まで霞んでいた景色がはっきりとしてきた。
これが、俺の「ラッキーストライクは天国に一番近い煙草」の都市伝説のテレポート能力。自分が今、一番行きたい所に行けるってやつ。
けど、あんま使いたくないんだよなぁ,,,,,,,,,,,,だって
「ヴゥエ、ッゲホ、ゲホゲホウエッ」
煙草吸えないんだもん。
とにかく、助かった,,,,,,,,,,部屋の眩いライトが目に染みる。同時に、何処かで嗅いだ事のある煙草の匂いがツンと鼻に入ってくる。

え?煙草おおおおおおおおおおおお!!!!「どっから入って来たんだこのエロ兄貴!!!!!」
どうやら、俺は妹の部屋にテレポートしてしまったらしい、しかも運良k,,,,,,,,,,,運悪く着替え中だった。
こうして、妹にボコボコにされながら、俺の災難続きの一日は終わった,,,,,,,,,,,,,,,,,

あ、レポート研究室に忘れた,,,,,,,,,,,,

-fin-

623以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 03:22:39.52 ID:hhBZupla0
最近になってwiki読み始めたんだけど、面白いなこれ!
シェアワールドが物凄く活きてて、話が繋がる度に興奮するわ。
それぞれの作者が誰なのか知りたいんだけど、無理なのかな?
624以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 03:30:52.57 ID:FYFlDmMB0
それぞれの作者が誰、と言うとどの話とどの話がどの作者かってこと?
625以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 03:32:29.84 ID:vDFakEL00
>>623
現時点では無理だと思いますよ
まぁ、まだ自分も詳しい事はわかりませんが,,,,,,,,,,,
朝になって、私よりエロい人が回答してくれると信じて,,,,,,,,,,,,,

お休みほしゅっしゅ
626以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 03:39:20.67 ID:hhBZupla0
>>624
変な日本語ですんませんw

そういうことです。まあ、思いっきり個人的な希望ですが。
どの作者さんも、あまりに自然に話を繋げていくものですから、
同じ人が書いてるんじゃないか、と錯覚をおこしちゃったり(;´_ゝ`)
627以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 03:46:31.36 ID:FYFlDmMB0
>>626
あー、かなり作品が多くなってますから全部を説明するのはちと骨ですね
一応wikiのキャラクター一覧表の詳細設定欄で繋がってるキャラクターは基本同一の人が書いていますけど
628以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
保守