「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」
よくある質問
Q
このスレってジャンプの某読みきりと関係あるの?
A
始めにこのスレを立てた
>>1が何を考えて、スレを立てたのか
今となっては、その真相はわからない
ただ、ここに集まった者たちは、各自思い思いに妄想をぶちまけていき、今のこのスレの形となっていった
まぁ、結果としては関係あるかどうかとか、どうでもよくね?
ぶっちゃけ、ほぼ関係ない内容だし
3 :
ヒップホップバトル:2010/03/07(日) 15:53:51.34 ID:EQTyQRlo0
今日は普段より早めに学校を出、古本屋へ急いだ。
「こんにちはー」
レジの向こうで寝ている店のおじさんに一応声をかけて、店へ入る。今日も古本屋には、お客は誰もいなかった。
暗ったい店の奥へ進んだ。一番奥の本棚の、上から三段目、一番左の本を手前に引く。音を立てずに本棚がスライドし、後ろから金属制のドアが現れる。
ドアの中央にかけられた、ヘブライ語が並ぶプレートの前に右手をかざすと、また音もなく入口が開ける。
ここからエレベーターのような物に乗ってひたすら下り、学校町の地下へと潜る。
エレベーターを降りると地下世界だ。空が見えない事以外は、地上と大差が無い作りになっている。
いつものビルに向かい、階段で303号室へ急ぐ。3階廊下に到達した瞬間に、目的の部屋のドアが開かれるのを見た。
「早かったな」
玄関から顔を出し、笑顔で出迎えてくれたのが境 奏世(さかい しんせ)同い年の17歳である。
僕は、手土産の甘〜いカステラを押し付けるように手早く渡すとすぐに本題に入った。
「境、フライングヒューマノイドと契約したんだろ?!すごいじゃん…詳しく聞かせてくれない?」
「いいよ。…あ、これあの旨いって評判のカステラじゃん。ありがとう!まあ上がってよ。」
僕は浮かれた。浮かれすぎて急いで靴を脱ごうとして、バランスを崩して盛大にコケた。
4 :
ヒップホップバトル:2010/03/07(日) 15:54:32.39 ID:EQTyQRlo0
「お邪魔しまーす」
黒い絨毯の敷かれた廊下を通り、明るいリビングに通された。
「お茶とか準備して来るからそこ座って待ってて」
「ほーい…」
グロテスクなんじゃないかってくらいに目一杯彫刻が施された重々しい椅子に、浅めに腰かけた。凄く落ち着くので、深く座りなおした。テーブルの方もいかにもアンティークってな感じだ。こないだ来た時には無かったテーブルセットだ。
「お待たせ」
境が、銀のトレーにお茶やらカステラやらを乗せて戻ってきた。
「今日は何のお茶?」
「時計草、パッションフラワー。眠りが良くなるんだ。確か君、最近不眠症気味とか言ってたじゃん」
「そうなんだよ。3月に入ってからまだ睡眠時間が二桁行かないくらいだ。」
「酷いな…お茶の葉沢山あるから、帰りに持ってって」
「ありがたい。」
その時だ。薄いカーテン越しに、ベランダへ何者かが入ってきた影が見えた。
「え、何?何か来たよ……」
「あぁ、あれはね……」
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:54:49.04 ID:TmeDlzPB0
新スレ乙しつつ支援!
6 :
ヒップホップバトル:2010/03/07(日) 15:55:17.11 ID:EQTyQRlo0
カーテンとガラス戸一枚越した向こうで、何者かがうごめくベランダ…そこに視線を向けたまま硬直する僕、深海一志。いくら都市伝説の多い学校町に通う者とて、やはり怖いものは怖い。慣れるなんて僕には不可能である!
「あら、早速来たのね。」
とか何とかつぶやきながら、ベランダへ移動する境奏世。
こいつの髪の色は誰よりも暗い漆黒なのだが、なぜか今はやたら明るく見えた。もうすぐブロンドになっちゃうんじゃね?って時だ。
ガラガラガラ……!!
ベランダのガラス戸が向こう側の何者かによって開かれた。そして何者かが入ってくる……。
「Hi!今日ノ空ハ滑りやすイね!」
……何だこのアメリカンな人型は…
頭にはニット帽とスノーボーダーみたいなでかいゴーグルをし、手にはグローブをはめ、ボードのような板を持っている?!
「もしや、あなたがフライングヒューマノi……」
「ソウデス!NICE TO MEET YOU!YO RO SHI KU!好きなスケーターや好きなミュージシャンはいるかい?」
「え?!えと…え……ミ…ミ……」
「Oh!EMINEM!」
てす
乙ですー
8 :
ヒップホップバトル:2010/03/07(日) 15:56:27.50 ID:EQTyQRlo0
ミートゥー!HAHAHA」
(いや…違うんだけどな……エミネムあんまり知らないんだけどな…まぁそういうことにしといていっかな………いいのかねえ)
と、かちかちな笑顔を貼り付けながら脳みそをフル回転させていた時だ。
「ちょぉーっと待ったあああああ!!!!!!」
隣りの部屋とこのリビングを遮る壁がドシャ!!!と割れ崩れた。明るかった部屋が急に暗転し、境も驚いて後ろに飛びのく。
すると突然、まばゆいばかりのスポットライトが飛び出したばあさんを映し出す。
「JI-I-SA-Nは」「どこだ!」ステージにばあさんの声が響く。
詰め掛けたオーディエンスはばあさんの久々のステージに期待で爆発しそうだ。
今晩も伝説のリリックが聴ける。ストリート生まれヒップホップ育ち。本物のラップが聴けるのだ。
キャップを斜めに被りオーバーサイズのTシャツをきたじいさんがターンテーブルをいじりながら目でばあさんに合図する……重たいサウンドがスピーカーから響く。ショウの始まりだ!!!
「 ここでTOUJO! わしがONRYO! 鬼のGYOUSO! ばあさんSANJYO! 違法なMAISO! じいさんTOUSO! 壁からわしが呼ぶGENCHO! (ドゥ〜ン ドゥンドゥンドゥ〜ン キュワキャキャキャッキャキュワキャ!)
年金減少! 医療費上昇! ボケてて大変! 食事の時間! 冷たい世間を生き抜き! パークゴルフで息抜き!
どこだJI-I-SA-N老人MONDAI! そんな毎日リアルなSONZAI! SAY HO!(HO!) SAY HO HO HO HO!」
じいさんのプレイも好調だ。オーディエンスの熱狂はこわいくらいだ。まだ俺らの時代は始まったばかりだ、そんなメッセージがマシンガンのようにばあさんの口から飛び出していく。
本物のヒップホップ。それがここにあるのだ。
続きます。。続きはもうちょっと都市伝説らしくしようと思います。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:57:12.28 ID:TmeDlzPB0
支援
中途半端なのもあれなんで、先にこっちから投下しました、と言い訳をして次に移ります
老人とG-No.1という黒服が部屋に取り残されてから約18時間。
きぃ、と軽い軋みを上げて扉が開いた。
中から出てきたのは、相変わらず無表情のG-No.1だ。
「――――もう、終わってしまいましたか」
出てきたG-No.1に、少し残念そうに声をかける人間がいた。
G-No.1はゆっくりを首を巡らせ、声のする方向を見やる。
「……わざわざ、待っていたのですか?」
G-No.1は無表情を崩さずに、疑問に疑問で返した。
扉の横の壁に張り付くように設置された椅子の上に、女性が一人座っている。
椅子の周囲には無数の文庫本が整頓され置かれていて、女性の手の中では今も一冊の小説がめくられている。
「それが、私の仕事ですので」
長時間同じ態勢でいたせいか、時折首に手をやる女性は、少し疲れたような表情で言った。
しかし、その表情の内にあるのは、G-No.1の説教の長さに対する疲れではない。
もっと長時間やってくれてもよかったのに、と今後の老人の挙動への対応に、また気を使わなければならない時間がやってきた事に対する疲労感だ。
「……あの長老、出来れば組織で預かってはくれませんか?」
「さすがに、それはできない」
G-No.1は今アメリカへと飛ばされている一人の黒服の事を思い出す。
あれ一人でも、組織は御するために相当の尽力を行った。
もし仮に、変態的な意味でも強さ的な意味でも、あのレベルが組織の中で再び暴れでもしたら。
そしてその場所が、今女体化している黒服のいるこの学校町だったとしたら。
「……これ以上は、本当に過労で倒れるかもしれませんので」
「そうですか」
答えを予想していたのか、女性の顔には落胆の色がない。
そもそも、あんな老人を引き取ってくれる組織自体、この世界にあるかどうか。
(……しかし過労死、ですか)
説教に入る前にG-No.1の言っていた一人の黒服の事を頭に思い描く。
穏健派から信頼され、必要とされる、一人の黒服。
その苦労がどんな類のものなのかは分からないが、女性は何だか少しだけ共感もしていた。
「――――では、私はこれで失礼する」
「はい。ご迷惑をかけてしまい、申し訳ありません」
恐らく、老人はあの長時間にわたる説教の中で、謝罪も、折れもしていないだろう。
だから代わりに、女性が謝る。
長老が何か面倒を起こした際の、ほぼ恒例ともいえる行いだった。
「いや、幸い後数日で彼も元に戻るらしい。これ以上何もなければ『組織』としてもこれ以上貴方方に干渉する事もないでしょう」
その言葉に、女性は苦笑いのような笑みしか返せなかった。
あの老人が、この程度で諦めるとは思えない。
**************************************************
黒服G-No.1が家を出るのを見送ってから、女性は小さくため息をついた。
玄関に背を向け、先ほどまで説教の行われていた部屋へと戻る。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:59:51.91 ID:TmeDlzPB0
支援
「――――ふぅ」
再びため息をついて、扉を開ける。
閉じていた扉を開けると、中は暗いままだった。
ずっとこの闇の中で説教が行われていたのか、それとも帰り際G-No.1が消したのか、女性には分からない。
「長老、いい加減に懲りましたか」
そんな闇の中に、老人は座っていた。
いや、正確には座らされていた。
一振りの剣がその老人の身体を貫き、老人を床へと縫いとめている。
「……ふん。あんな組織の雑用係のような人間の説教如き、わしはなんとも感じんぞ」
縫いとめられたまま、ふてくされたように老人が言う。
その想像通りの老人の様子に、女性は頭が痛くなった。
――――このままでは、自分の方が過労死をするかもしれない。
「大体、わしはああいうタイプが嫌いなんじゃよ、全く」
「ああいうタイプ、と言いますと……感情の起伏が表面に現れない、と言う事でしょうか」
「違う。あやつを律しているのはエロスでも性欲でも男の本能でもない、『忠誠』なんじゃよ。それも怖いほどの」
何を思い出したのか、老人は小さく首を振った。
「何を信条にしておるのかは知らんが、あれでは従えている方も大変じゃろうて」
「……用は、『わしはあいつが嫌いだから、あいつの説教なんてうけないもん』と、そういうことですか」
「…………ふむ」
黙り込んでしまった老人に、女性はまた一つ溜息をついた。
「…………しかし、わしはまだやるぞ!」
しかし沈黙は数秒。
老人は縫いとめられたままの身体をゆさゆさと動かし、何かを決意したような瞳で窓から空を見上げる。
「あやつは『体力の低下を招いている』から、女体化は駄目だと念を押しよった。この意味が分かるかの」
「……いえ」
永遠に分かりたくないと、女性は思う。
分かってしまったその時は、自分がこの老人と同じ思考レベルにまで落ちてしまったということだ。
もしそうなったら死ぬしかないと、女性は真剣に考える。
そんな女性を傍らに、老人はハイテンションで続ける。
「つまり! 『体力の低下しない』女体化薬を作ればおーるこれくと! 組織に怒られる事はない!」
「………………」
それは違うだろうという言葉を、女性は飲み込む。
そもそも恐らく、この老人の思考レベルでも分かりやすいようにそんな例えをあのG-No.1は出したのだろう。
他にもいくつも弊害があるに違いない。
しかし、それを一々羅列していく気にはなれなかった。
G-No.1が老人には理解できないだろうという印を押した事情を、自分が説明した所で結局老人は理解できないだろう。
そう、女性は思った。
「あの青年にも試してみたいしの……ほっほ、今日から忙しくなるのう!」
喜々として続ける老人に、女性は背を向けた。
「とかく、まずはこの剣を外してもらうのが先決……って、ふむ? どこへ行くんじゃお前さん。行くならほら、わしの身体に突き刺さっているこれをじゃな……無視するでない。ほら、この身体の――――」
――――パタンと、老人を残して扉が閉まる。
後二十四時間くらい一人で反省すればいいと、女性はその場を立ち去った。
どうせ、一人になっても老人は妄想を続けるのだから。
【終】
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:02:07.57 ID:TmeDlzPB0
支援!
呑み込まれるな
自分を保て
そんなバケモンに飲み込まれるんじゃねぇ
もし、飲み込まれちまったら
お前も、化け物の仲間入り、だぞ?
Black Suit H
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:03:31.96 ID:TmeDlzPB0
しええええん
「なぁ、翼。今の黒服さんに会わせてくれよ」
「却下」
そんな事を話しながら歩く、青年二人
「日焼けマシンで人間ステーキ」の契約者 日景 翼と、「魔女の一撃」の契約者 清川 真だ
翼はバイトの帰り、誠は大学の帰りだ
二人が話している話題は、つい最近、見事なナイスバディ女性状態にされた黒服Dの事
二人とも巨乳好き故、見事な神々の谷間を持つ状態の黒服Dの今の状態は……あえて言うならば、ストライクゾーンである
特に、翼にとっては
「何だよ、いいだろ?そろそろ元に戻るらしいし、戻る前に一回だけでも!」
「却下。お前、手ぇ速いし」
誠の頼みを、即座に却下している翼
その却下の理由に、誠は苦笑する
「流石に、お前の大切な家族にまでは手ぇ出さないっての」
それに、と
誠はニヤり、笑った
「今、俺が一番性的な意味で手ぇ出したいのはお前がはっ!!??」
ごがっ!!と
翼の正拳が、吸い込まれるように誠の鳩尾にヒットした
おぉぉ…と悶える親友の姿に、翼は小さくため息をついた
…どうして、巨乳好きはそのままなのに、新世界の扉を開けてしまったんだ、こいつは
何とか、この大切な幼馴染をノーマルに戻せないだろうか?
しえ
翼が、そんな事に悩んでいると
「…誠」
「あぁ」
感じた、気配
あたりに、自分達以外の人間の姿は見当たらないが…
だが、それでも
二人は警戒し……ほぼ同時に、振り返る
目に飛び込んできたのは、真っ赤なワンピースを纏った美少女で
「愛しの人々!今日こそ、お二人を私の谷間で愛しつくしがっ!!!???」
ごががっ!!と
二人の拳が、ほぼ同時に少女…マゾサンタに直撃し、殴り飛ばした
高校の頃、不良達との喧嘩で養われたコンビネーションは健在である
マゾサンタは殴られた衝撃で吹き飛び、頭から落下してゴグギっ!!と嫌な音をたてて……幸せそうに、ピクピクと痙攣している
多分、これでも死なないのだろう
しばらくは動かないと思うが、多分
とりあえず、飛び掛ろうとしてきた存在は殴り飛ばした訳だが…
二人が感じた気配は、あのマゾサンタのものでは、ない
「…出て来いよ」
翼が、低く、そう呼びかけると
「あれぇ?どうして、バレちゃったんだろう?」
不思議そうに、首をかしげながら……彼女、藤崎 沙織は姿を現した
以前、翼を襲った時と、特に変わった様子はない
以前と同じ……都市伝説に、飲まれかけた状態
どこか、狂気に捕らわれた状態だ
「駄目だ。全然駄目だな。気配の消し方が、なっちゃいねぇんだよ」
そんな藤崎を、誠がじろりと睨みつける
決定的な敵意を向け、翼を庇うような位置に立とうとする
…だが、翼が、自身が誰かに庇われるなどと言う状況をよしとするはずもなく、翼はすぐに誠の隣に立つ
二人のそんな様子に……藤崎は、どこか、羨ましそうに、妬ましそうに、目を細めた
「相変わらずだよね。やっぱり、私じゃ日景君たちには、敵わないかな…?」
……べちゃり
藤崎の、両足の間から…タコが、落ちた
大きな、大きな、タコが
「…でも、諦めたりしないよっ!」
にゅるにゅると、タコが二人に迫る
たった今、藤崎が生み出したタコの他にも、あらかじめ用意していたのだろうか
無数のタコが、辺りから這い出てきて
タコの狙いは………翼
「っの………」
「へ?」
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:05:37.69 ID:TmeDlzPB0
支援
ば、と
誠は、痙攣していたマゾサンタを無造作に掴んだ
そして
「え、あ、誠様?…………わきゃあっ!?」
ぼんっ!!と
その体を、タコの群れに向かって、投げつけた
べちゃ!と、マゾサンタはタコの群れの中心に落下して
…にゅるにゅるにゅる
このタコ達は、「たこ妊娠」と言う都市伝説によって、生み出された存在である
藤崎の意思によって、一応、目標を翼を定めてはいたが…その本能が求めるのは、女性である
よって
「あぁっ!?っか、絡んでくる!?吸盤が吸い付いてっ!?」
自分達の元に落下してきた獲物を、逃す訳もなく
タコ達は、あっと言う間に、マゾサンタへと群がった
「鬼か、お前」
「翼なら焼けばすぐだろうけど、数が多すぎると厄介だろ?
翼のもっともな突っ込みに、あっさりと答えた誠
むしろ、厄介払いができたとばかりに、若干清々しい表情なのは気のせいか
そんな誠の様子に、藤崎はくすりと笑う
「本当、清川君って、酷い人だよね。どうして、そんな人なのに女の子にモテてたんだろ?」
「知るか」
タコは、全てマゾサンタに群がっている
それでも、まだ戦うのか?…とでも言うように、二人は藤崎を見据えた
タコは、そんなに素早く量産できないように見える
そうそう、手駒を増やす事はできまい
「…もう、仕方ないなぁ………みんな!!」
「……っまた、コーク・ロアか!?」
藤崎の呼びかけに応じて…フラフラ、フラフラと
虚ろな表情をした者達が、物影から姿を現し始めた
コーク・ロア支配型の被害者達だろう
それらは、翼と誠を視界に納めると……雄叫びを上げながら突進してくる!
踊りかかってきたそれらを、片っ端から、翼と誠は殴り飛ばし、蹴り飛ばす
麻薬によって痛覚を麻痺させられている相手ではあるが、気絶させられない訳ではない
二人とも、コーク・ロア支配型の被害者とは何度か交戦経験があるからコツは心得たものだ
翼は、能力を使えばもっと早く相手を気絶させられるのだが…それは、しない
翼自身の誓いとして、「都市伝説と都市伝説契約者以外には能力を使わない」というものがあるのだ
相手は、あくまでのコーク・ロア支配型の「被害者」
それを相手に、能力を使う訳にはいかないのだ
自分が不利な状態になろうとも…翼は、その誓いを破らない
隣に、誠と言う頼れる幼馴染がいるからこそ、破らずに居られるのかもしれない
響き渡る、打撃音、罵声、雄叫び
むむぅ……と、藤崎はつまらなそうに、その様子を眺めている
「本当、二人とも、強いなぁ……どうすればいいんだろ」
…藤崎の目的は、翼だ
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずぅっと、翼を想い続けていた藤崎
悪魔の囁きにそそのかされた彼女は…その想い人を、無理矢理手に入れることにした
タコ妊娠との契約の力で、彼女はそれを可能にする力を手に入れた
非常に間違った方向性ではあるが、その力を手に入れたのだ
それを実現すること……それだけが、今の藤崎の望みだ
狂った思考で、悪魔の囁きに囁かれ続けながら、それを実行しようとしている
『ホラホラ早ク!サッサトアイツヲ手ニ入レチマエ!!』
「うん…早く…日景君が、ほしいなぁ……」
内側からの囁きに、藤崎はうっとりと答えた
早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く………!
その願望を、実現する為に…このままでは、分が悪い
ならば、どうしようか…?
思案するする藤崎の、その視界の先に……翼と誠が、コーク・ロア支配型の被害者達と殴り合っている、その向こう側に、人影が現れて
…………くすり、と
藤崎は、いい事を思いついたように……笑った
「チャラい兄ちゃん!?」
「……っ!?」
かけられた、声
殴りかかって来たコーク・ロア支配型被害者を殴り飛ばしながら、翼はそちらに視線をやった
そこにいたは…Tさんと、Tさんの契約者の、少女
少女の鞄からは、ぴょこり、人形のリカちゃんが顔を覗かせている
「…あの子、だぁれ…?ひょっとして、日景君が一緒に生活してるって言う、家族?」
藤崎の、暗い…しかし、どこか楽しそうな、その声に
翼は、ゾクリ……背筋に、冷たいものを感じた
…ぐちゃり、と藤崎が再び、タコを生み出す
びちゃり、ぐちゃり
タコは、次々と、生み出されて
「そうなの、かなぁ…?」
「−−−っ違う!あいつらは何の関係もない!!」
慌てて、藤崎が口にした言葉を否定する翼
今まで、何度か都市伝説契約者相手に戦ってきた経験が、警告する
今の、藤崎は…こちらの関係者と知れば、それを、巻き込んでくる
関係者にも、危害を加えようとしてくる
そんな、状態になっている、と
しかし、翼が否定したことが…結果的に、藤崎を刺激してしまった
「ふぅん?……でも、日景君の知り合い、なんだよね?…きっと、私の知らない日景君を…知ってるんだ」
後半は小声で、呟くような声で…翼の耳には、届かなかった、呟き
くすくすと暗く笑い…藤崎は、生み出したタコ達に命令する
「やっちゃえ!!」
タコの群れが、信じられないスピードで…Tさんの契約者に迫っていく
へ?と、状況が認識で敵ない彼女を庇うように、Tさんが前に出て
それよりも、先に
タコ達と、Tさんの契約者を結ぶ直線状の位置に……翼は、身を躍らせた
「このっ!」
じゅうっ、と近づいてくるタコ達を焼いていく
巻きついたそれも、体温を急上昇させる事で焼いて行こうとする
タコ達がTさんの契約者に辿り着かないよう、阻止しようとして
「−−−う、わっ!?」
「翼っ!?」
タコの数が、あまりにも多くて、多くて、多くて
多勢に無勢のその状態に……翼の体は、無数のタコに覆われて、地面に引き倒されてしまった
「あっはははははははははははははははは!!そうだよね、日景君は優しいから……やっぱり、そうなるよね!」
ケラケラ、ケラケラと藤崎は笑う
そうだ、わかっていた
翼は、優しいから…自分が狙われている状況で、他人が巻き込まれそうになったならば、間違いなく、そちらを庇う
わかっていて、藤崎はあの少女に、タコを向かわせたのだ
正直、あの二人が何者か、なんて、彼女にとってはどうでもいい事だ
翼さえ手に入れば……どうでもいい
「−−−−藤崎、てめぇっ!!」
支援
じろり
誠が、怒気のこもった眼差しで、藤崎を睨みつけてきた
かつての藤崎ならば、その一睨みで恐怖で震えてしまうであろう程の、怒りと……殺意の篭った眼差し
しかし、今の壊れかけた藤崎は、それにすら、動じない
くすくすと笑い続けている
…通常ならば、タコに群がれている翼を、助けるべき状況
しかし、怒りが一定ラインを超えている誠に、その判断ができるだけの冷静さは、ない
怒りが一定ラインを超えてしまうと、どうしても、冷静な判断ができなくなる性質なのだ
全身に、怒りを纏う
藤崎を睨みつける視線は、どこまでも、どこまでも、怒りに満ちていて
だんっ!!と
アスファルトを強く蹴り、藤崎に飛び掛る誠
その衝撃で、誠が蹴ったアスファルトが、軽く抉れている
人間の限界を超えたスピードで、誠は藤崎の、胸元………心臓を狙って、手を突き出す
−−−−−どすっ、と
鈍い、鈍い、音が響いて
「−−っ舞、見るな!!」
そんな、Tさんの声が聞こえたような気がしたが…誠には、それに構っている暇もなかった
小さく、舌打ちする
誠は、藤崎の心臓を、抉り出してやるつもりだった
そのつもりで、攻撃したのだが
「清川君って…本当、怖いよね」
くすくすと微笑む藤崎
そんな藤崎と、誠の…間に
「か、は………っ」
…誠の手に、胸元を貫かれ…心臓を、握られているマゾサンタの姿があった
タコによって絡められ、無理矢理に体をそこに割りこまされたのだ
誠はマゾサンタから手を離し、距離をとる
タコは…藤崎は、ぺい、とマゾサンタの体を投げ捨てた
胸元から血を流し、口から血を吐きながら、マゾサンタの体がアスファルトの上を転がる
「私、あんな事されたら、死んじゃうよ」
わかっている
わかっていて、やったのだ
殺すつもりで攻撃したのだから
殺してやる
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!!
翼を、あんな目に合わせた奴を、生かしてなどおけない!!
誠の心が、憎悪に彩られていく
その、心の中で
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:11:45.04 ID:TmeDlzPB0
支援
−−−−−−ぱきっ………と
何か……卵が、割れるかのような音が
はっきりと、響き渡った
to be … ?
「破ぁっ!!」
Tさんの放った白い光が、舞に近づこうとしてきたタコ達を薙ぎ払った
マゾサンタに群がっていたタコ達が、藤崎が一度彼女を盾にすべく引き寄せた際、一部落っこちていて…それが、新たな目標として舞を狙ってきたのだ
もっとも、この通り、Tさんによって全て薙ぎ払われたのだが…
「Tさん、チャラい兄ちゃんを助けねぇと!」
「あぁ…そう、したいのは山々なんだが」
ゆらり
コーク・ロア支配型の被害者達が…ゆっくりと、Tさん達に向かってきている
大量のタコ妊娠に群がられている翼を助ける余裕は…さて、見付かるだろうか?
(……いや、そちらも心配だが)
Tさんは、ちらりと、向こうがわの誠に視線をやる
…誠の、中から感じる、覚えのある気配に
昨年の中央高校での出来事を思い出してしまって…はたして、どちらに先に手を貸すべきか
いや、それよりも、まずは、向かってくるコーク・ロア支配型の被害者達をどうにかせねば
リカちゃんを抱きかかえた舞の前に立ち、Tさんは構えた
『憎イナァ?憎タラシイヨナァ?オ前ノ大事ナ奴ヲ、アンナ目ニ合ワセテンダカラナァ?』
悪魔の囁きが、楽しげに囁く
内側で響く声を、誠ははっきりと聞いた
『殺シチマオウゼェ?コンナ女。オ前ノ大事ナ奴ニ酷イ事スル奴ナンテ、生キテル資格ネェヨナァアア?』
けたけた、響く笑い声
目の前の藤崎を、誠は鋭く睨みつける
『ホラホラホラホラホラァ!!サッサト殺シ……』
「………煩ぇ」
ぼそり、呟く誠
己の内側にいる、悪魔の囁きの存在を…はっきりと、認識する
「もう、てめぇの言葉になんざ、惑わされねぇぞ」
『ナ…………ッ!?』
−−−ぐしゃり
悪魔の囁きは…誠の中で生まれた、爆発的に大きな気の力に飲み込まれて…消滅した
「俺は、もう、二度と…翼を、裏切らない」
それが、己の誓い
もう二度と、大切な幼馴染を裏切らないと、決めたのだから
「翼が、助けると決めたのなら……殺す訳に、いかねぇだろ……!」
目の前の相手は、敵だ
だが、殺すわけにはいかない
大切な幼馴染が、彼女を助けると決めたのなら
自分は、それを殺す訳にはいかないのだ
「…?どうしたの、清川君?」
くすくすと、藤崎が笑っている
あぁ、煩い
殺すわけにはいかないが、叩きのめすくらいはできるのだ
再び距離を詰め、殴り飛ばそうとして…その誠に、コーク・ロア支配型の被害者達が、飛び掛る
「邪魔だっ!!」
腕にしがみ付いてきたそれを、誠は力任せに振り回した
壁に叩きつけ、地面に叩きつけ、放り投げ
麻薬で身体能力を強化した程度の相手では、誠を止める事など不可能だ
Tさんの力と誠の力とで、コーク・ロア支配型の被害者達は、次々と倒されていく
「藤崎…っ、てめぇ、どうして翼を狙いやがる……!」
「だって、私、日景君が欲しいんだもん」
じりじりと、誠から距離をとりながら、藤崎ははっきりと、言い切った
歪んだ、狂気まじりの笑みで、続ける
「高校の頃から、ずっと好きだった。私は、日景君が大好きなんだもの」
「翼に告白もしなかった癖に、何言ってやがる」
「高校の頃は、日景君の傍にはあなたや玄宗君がいて…私が入る隙間なんて、なかった。あった隙間には、黒服の人とか、玄宗君のお姉さんが入ってしまっていたから」
…藤崎が、殺意交じりの眼差しで、誠を睨み付けた
−−−−どろり
藤崎の胸元に…黒い、染みが浮き出す
「私だって、日景君の傍にいたかったのに…!あなた達が、その隙間を全部埋めてしまってて、私は入り込めなかった……それじゃあ、あなた達がいなくなっちゃえば!!」
「……駄目だな」
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:14:36.96 ID:TmeDlzPB0
支援ー!
ぼそり
コーク・ロア支配型被害者を叩き伏せながら藤崎を睨み、誠は告げる
「駄目だ、全然駄目だな。あいつの傍にいたかったなら、無理矢理にでも、こっちの輪に入ってくりゃ良かっただろうが。翼は優しいから、それを拒みはしなかっただろうよ」
「清川君が、邪魔したんじゃないの?」
「翼と直希が許したら、俺だって許すさ」
…あの頃は、翼への想いになど、気づいていなかったし
自嘲気味に笑い、しかし、藤崎を睨む事はやめない
「お前が、翼を傷つけるような手段をとるなら、お前は俺の敵だ。叩きのめされても文句はねぇだろ?」
「…そう言うなら、日景君を、助けなくてもいいの?…あっちの人達が、先に日景君を助けそうだよ?」
藤崎の視界の先では、コーク・ロア支配型被害者を粗方叩き伏せたTさんが、翼に群がるタコ達に、光を放とうとしていた
だが、それをする必要はない、と誠はわかっていた
「…その必要は、ねぇよ」
−−−−−−−ごぉう!!
タコの群れの、内側から…火柱が、あがった
それが、一気にタコ達を焼いていく
「−−−−−っな!?」
「翼は、俺なんかに簡単に助けられてくれるほど、弱くはないからな」
厨2病との多重契約での炎の力が、タコを焼いていく
げほ、と咳き込みながら…焼きダコになったタコ達を押しのけて、翼が顔を出した
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:15:58.62 ID:TmeDlzPB0
支援
体中べとべとになっているが、それだけで他に被害はなさそうだ
「お前ら、無事かっ!?」
「あぁ、問題ない」
「……良かった」
先に、Tさん達の心配をした翼
それが若干気に入らない誠だが、翼が無事だったなら、それでいい
「誠っ!」
「俺も大丈夫だよ」
良かった、とほっとしたように笑みを浮かべた翼
…だが、すぐに、視線は藤崎に向かう
「…強いね、日景君。そんな事もできるんだ」
「………藤崎」
じっと、藤崎を見詰める翼
睨んではいない
敵意がない、訳ではないのだが…向けている感情は、怒りよりも戸惑いの方が大きい
「…そんなに、俺が憎いか?」
「…………え?」
「俺だけじゃなくて、俺以外の奴を巻き込んでまで、俺を攻撃するくらい……憎いか?」
先ほど、藤崎が思いを吐露した、その瞬間
翼は大量のタコに覆われていて……その内容が、聞こえなかったのだ
だから、決定的な勘違いをしてしまっている
藤崎が、自分が憎くて…こんなことをしているのだ、と
そもそも、高校時代、女性ととことん縁がなかった翼
なまじ、その経験が、余計にそんな勘違いを引き起こさせていた
「ぇ、あ……ち、違う、違う、よ、日景君」
「じゃあ、どうして」
じ、と真正面から翼に見詰められて…藤崎は、答えられない
彼女の、元々のどこか引っ込み思案だった部分が、愛しい人に見つめられる事で表に出てきて…想いを、吐露する事ができない
じり、と藤崎は後ろに下がる
「違う、違う、の………憎いんじゃあ、なく、て……」
『…手ニ入れレタインダロォ?欲シインダロォ?』
…どろ
藤崎の胸元の黒いしみが、大きくなる
どろりどろりと大きくなる、それあh……やがて、山羊の頭に女性の体を持った漆黒の悪魔へと姿を変えて、藤崎に背後から抱きついた
『ホラァ、早ク手ニ入レチマエ!他ノ誰カノモノニナッテシマウマエニヨォオオオオオ!!!』
「−−−−−悪魔の囁き!?」
以前、誠にとり憑いていた悪魔の囁きとは、姿こそ違うものの…それは間違いなく、悪魔の囁き、そのもの
ケタケタと笑い、藤崎の耳元で囁き続けている
『ソノ為ニハ、アイツノマワリニイル連中ガ邪魔ダヨナァ?』
「…うん、邪魔………邪魔、なの……」
『ナラ……殺シチマエバイインダヨォオオ!!ソウスレバ、ダァレモ邪魔シテコナイゼェエエエエ!!』
「うん、わかってる…わかってるよ……」
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:17:14.98 ID:TmeDlzPB0
しえん
虚ろな眼差しで、藤崎は翼を見つめた
純粋な想いと願いは歪められ、狂気となって翼に向けられる
「原因は、てめぇかっ!!」
藤崎に密着する悪魔の囁きを、睨みつける翼
悪魔の囁きが、藤崎をそそのかしたというのなら、それを焼き尽くすまでだ
翼の「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力は、藤崎を巻き込むことなく、悪魔の囁きだけを焼く事が可能な能力だから
だが、その能力発動よりも、前に……翼たちの頭上から、影が、さして
「カイザー、きりさく!!」
響き渡った、少年の声
慌てて声の先を見れば…まるで、ドラゴンのような生き物が、その鋭い爪を剥き出しにして、上空から翼たちに向かって襲い掛かってきていた
−−−避けられない!?
「結界が張れれば幸せだ!!」
その爪が翼たちに届くよりも、前に…その爪の射程圏内に入っていたTさんが、結界を展開した
ガギィン!!と、爪は白い結界によって弾かれる
ずぅん!と、地響きを立てて、ドラゴンは藤崎の前に降り立った
「沙織ねーちゃん、乗って!こっちに黒服と、何か一杯呼び出してくる奴が向かってきてる!」
「−−−−−−っ」
ドラゴンの背中に乗った少年に促され……藤崎は、一瞬、迷いを浮かべた
しかし…多勢に無勢な状態になっては、不利だと感じ取ったのだろう
ドラゴンの背中に登っていく
「逃がすかっ!」
「詳しい事情は知らないが……ここで逃がしては、厄介な事になりそうだな」
誠とTさんが、ドラゴンに向かって、攻撃しようとして
だが、それよりも、少年の指示の方が、速かった
「カイザー、かえんほうしゃ!」
少年の指示に、大口を開けるドラゴン
めら……と、その口内では、炎がちらついていて
「っちょ、Tさん、何だかヤバそうだぞ!?」
「ひはこわいの」
「……ッ随分と、厄介なものが飛来してきたものだ…!」
舞の悲鳴じみた叫びと、リカちゃんの怯えた声に、Tさんは再び結界を展開する
翼や誠の能力では、あの炎を防げそうにない
吐き出された炎と、Tさんの結界がぶつかり合い、拮抗する
……キラ、と
一行の背後から…石が、飛んできて
一瞬、光を放ったそれが、Tさんの結界に触れた瞬間、結界がさらに強化され、吐き出された炎を打ち消した
「カイザー、そらをとぶ!」
ぐぉおおおおおおおん!!
炎の向こう側、そんな少年の声と、雄叫びが聞こえてきて…ドラゴンが、藤崎と少年を乗せて飛び立っていく、その様子を
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:18:57.10 ID:TmeDlzPB0
C
一行は、見送る事しか、できなかった
「翼!……皆さん、ご無事ですか!?」
「…むぅ。逃げられたか」
Tさんの結界を強化した石を…パワーストーンを投擲してきたのは、黒服だった
その後ろを、「光輝の書」を持った直希が、ゆっくりと追いかけてくる
−−−−−たゆーん
「…えぇと、黒服さん?」
「……できれば、私の現状には触れないでいただけるとありがたいです」
「…相変わらず、苦労しているな」
絶賛女体化中の黒服の様子に、以前もこの状態を見たことのあるTさん達は、どう言葉をかけるべきか、悩んだ
…誠の視線が、黒服の胸元にいき、慌てて翼が黒服を庇う位置に向かう
「だから、お前の大事な家族には手を出さないってのに…」
小さく、苦笑する誠
まぁ、あの必死な様子が可愛いんだけど、と呟いた声は、幸い、翼には届かなかった
「黒服、どうしてここに…」
「見回りをしていましたら、あなたが戦闘している気配を感じましたので……厨2病との多重契約での炎を使いましたね?大丈夫ですか?」
「あ、あぁ」
こくり、頷く翼
良かった、と黒服がほっとしたような表情を浮かべる
「でも、チャラいにーちゃん、タコにたっぷりのしかかられてたじゃん。大丈夫なのか?」
「平気だよ。俺は男だし」
女性だったら、あのタコの粘液が分泌する媚薬の影響を受けてしまうところだが、男性である翼はその影響を受けない
今のところ、藤崎のタコ妊娠の能力は、そこまでは進化していないのだ
「それでも、早く拭き取った方が良い事に変わりはありませんね。翼、少し、大人しくしていてください」
「っと…じ、自分できるから」
いつも持ちある手いる鞄から大判のタオルを取り出し、粘液でべとべとになっている翼を拭き始めた黒服
子供扱いされているような気がして、慌てて翼が反論するが、手を止める様子はない
……誠の嫉妬の視線が、ものの見事に黒服に突き刺さっているのだがん、黒服も翼も、その事実に気づいていない
黒服に拭かれながら……ちらり、翼はTさん達に視線をやった
そうして、酷く申し訳無さそうな表情を浮かべて
「……悪い、巻き込んだ……御免な」
と、そう、謝ってきた声が、普段の彼からは想像もつかないほど、酷く弱々しく聞こえたのは
はたして、一行の聞き間違いだっただろうか?
……なお
あのドラゴンが炎を吐き出した際、うっかりと結界の範囲外にいたマゾサンタが、ものの見事に黒こげになっていたが
それでも、彼女は死ぬ事無く……普通なら死ぬほどのダメージに、酷く悦んでいたのだった
to be … ?
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:20:29.65 ID:TmeDlzPB0
支援
「チィ、しぶとい。一体どんだけ居るのよ。面倒くさいわね」
「ックックック。文句を言うでない。好きなだけ殺していいんじゃ。悪くは無いじゃろ?」
「あんたと一緒にしないでくれ。にしても、完全に殺さなきゃ動きを止めないなんてな」
そう言い合いながら襲いかかる人々を切り刻みまくっているレッドキャップ∞赤マント∞口裂け女=B
腕や足が無かったり、服が真っ赤に染まっていながらも、人々は攻撃を止まる様子は無い。
腕が無ければ噛付きや蹴りで攻撃し、足が無ければ這い蹲って攻撃してくる。止めをさしてやっと動かなくなるのだ。
さらに、《行き交う人々》にいたっては、暫くすれば傷が治っていくという始末だ。
「ふぅ、流石にしんどいな。けどなあ、ここで止まる訳にはいかねえんだよ」
辛そうにしながらも、《行き交う人々》の契約者は戦いを見続けている。
亡霊たちを戦わせるだけなら良いが傷を治すには相当のエネルギーが必要になる。
だが、《行き交う人々》の発動も傷の回復も止める気は無い。
レッドキャップ£Bを攻撃していた軍団が、突然、彼らの動きを止めるように手足に纏わりついてくる。
「何だ!? いきなり!?」
「知らないわよ!? この、離しなさいよ!」
3・4人程度なら、簡単に振り解く事が出来るが、十数人単位で抑えつけに来るのだ。
これによって、3体は動きを制限されてしまう。
「鬱陶しいのお。ん? 何じゃ、この音は?」
そんな中、何かが近付く音が聞こえてくる。
それは、エンジン音を轟かせ、猛スピードで3体が居る所に突っ込んでくる。
満足に動けない彼らは、それ……大型トラックを初めとした車の突撃をモロに喰らってしまった。
51 :
◆Rumor/.9.2 :2010/03/07(日) 16:20:58.45 ID:5XodjAUe0
しえん
支援といこうじゃないか
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:21:43.49 ID:TmeDlzPB0
みんなで支援だ!
「ッつ、皆!?」
「大丈夫。素体が無事なら修復可能」
その様子を目撃し、慌てるテケテケ≠淡々となだめる美咲。だが、その顔には薄らと焦りが浮かんでいる。
それによって、出来た隙を狙っていたのか。
パッーンと言う、銃声が聞こえ美咲の腹部に銃弾が命中した。
「ッく――!」
ドサッと、崩れ落ちそうになった体を片手で支え。銃弾の飛んできた方角を見れば、数人の人間が虚ろな表情のまま此方に銃口を向けている。
その全員の指が、引き金を引いた瞬間。
「――――――――危ないんだよねッ!」
大鋏を投げ捨てたテケテケ≠ェ、ズザザァァと、音を上げて移動し美咲を庇う様に壁になった。
美咲の身長の半分程度しかないテケテケ≠ナは、壁になった所で本来それ程の期待は出来ないが、倒れている今ならば問題は無い。
パッーン、パッーン、パッーン、パッーン、パッーン…………………
全員の銃弾が尽きた所で、やっと銃声は鳴り止んだ。と、同時にテケテケ≠ェ倒れる。
「結局、まともに当たったのは最初の一発だけか……。まぁ、当たった事に変わりはねぇな」
銃撃の嵐に気を取られていた間に、近づいていたらしく。美咲が顔をあげたのとほぼ同時に、彼女の首元に、《行き交う人々》の契約者は刃を突き立てる。
呼び出した4体は、全員動けそうにない。その上、あとの2体を呼び出しても、刃が首を裂く方が早いだろう。
「俺達の勝ちだ。最期に何か言う事は有るか?」
「そうですね。実の所、感謝してるんですよ。復讐に来てくれた事を、殺しに来てくれた事を」
「何だ。止めてくれる人を望んでいた、とでも言いたいのか?」
「いえいえ。だって……相手が殺意を持って来たのなら。
――こっちが、殺しても問題ないでしょ」
クスリと、笑った気がした。
美咲の背後に居る《行き交う人々》の契約者には、彼女の表情は分らない筈だと言うのに。
確かに、確実に。笑ったのを感じた。
それに、なにか嫌な気配を感じ反射的に刃を引いた。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:23:32.73 ID:TmeDlzPB0
支援
ガキン、と美咲の動脈を切り裂くはずの刃は、何か硬いものに当たったような音を立てる。
血が噴き出す事はおろか、刃に血が付いた様子も無い。
その事態に、必殺となる攻撃が効かなかった事に、《行き交う人々》の契約者は叫びをあげる。
「なっ、何でだ?! 《七人みさき》に契約者の肉体強化の能力は無い筈だろ!?」
「ええ。《七人みさき》にはそんな力は有りませんよ。ズッ、く。
今のは、ッツく。硬気功≠ナす。そして、……これが軟気功=v
傷口を指で広げて、貫通せず体に残っていた弾丸を取り出すながら喋る美咲。
取り出すたところで、淡く光る左手を傷口に当てると、見る見るうちに傷口が治されていく。
「多重契約者? いや、そんな訳はねえ。《七人みさき》の契約コストは相当の筈だ。
多重契約なんて、普通は出来る訳が無い」
「私をいいえ、《七人みさき》を調べたなら知ってる筈ですよね?
【七人みさきに殺された者は七人みさきになる】って話ぐらいはね。
レッドキャップ£Bの様に使役するだけじゃ無くて、私自身がその能力を使用する事も出来るんです。
まぁ、無条件って訳でも有りませんけど。そして――」
そう語る美咲の影が、本来の物を残して左右に3つに分かれていき、計7つの影が出来上がる。
新しく現れた影が盛り上がり、それぞれ人の姿と成っていく。具体的にいえば、美咲と同年代の少女の姿へと変わった。
支援
「「「「「「「私達が、《七人みさき》本来の姿です」」」」」」」
それは、《七人みさき》と美咲が契約する際に、元になった亡霊である少女たちの姿だった。
彼女達が現れると同時に、辺りの《百匹目の猿現象》に操られていた群衆がバタバタと倒れていく。
「そしてさ」「《七人みさき》によ」「出会った者はだね」「高熱にですね」「襲われる」「な〜んて」「話もありますよ」
髪型が、服装が、性格がそれぞれ違う7人の少女達が交互に喋る。
その内容から、《行き交う人々》の契約者は美咲が他の都市伝説の力を使った理由と、群衆が倒れた原因を理解した。
「殺した都市伝説を取り込んで支配出来る上に、存在するだけで相手を病気にさせるってのか?」
「その通り。とは言え、発病の能力は一般人にしか効果は無いんだけどね」「まぁ、こういう時には便利だけどよ」
「最近は、私達が出てくる機会も無かったからな」「久しぶりに外に出れて嬉しいです」「同感」「ホントにラッキーだよ」
「まぁ。都市伝説が相手だとあまり役に立たないうえ、五月蝿くなるだけですしね」
ブーブー、と文句を言いだす亡霊少女達を美咲はさらりとスル―し、周囲を亡霊で固め始めている《行き交う人々》の契約者に目を向ける。
「彼女達が全員揃わないと、発病の力は使えない上に、人並みの力しかないので取り込んだ都市伝説に戦わせる方が手っ取り早いんですよ。
ともかく、先に貴方の奥さんを潰しときましょうか。さとるくん°緒齒鰍教えて下さい」
「オーケー。……あのビルの最上階に居るみたいだね」
「……っ! させるかぁぁぁぁッ!!!!」
さとるくん≠ェ指を指すビルを見た《行き交う人々》の契約者は、眼の色を変えて亡霊達と共に飛び掛かって来た。
その反応は、自分からさとるくん≠フ示したビルが正しいと言っているようなものだった。
よ〜し、トリップもうまい事出来たしプロットが出来上がってきた
支援
「鬼女=v
美咲や《七人みさき》を仕留めようとした彼らは、その一言で現れた和服の美女に触れること無く、まとめて吹き飛ばされた。
「大盤振る舞いじゃないか。妾まで呼ぶなんてさ」
「仕方がないでしょう。私を含めた本体やさとるくん≠カゃあ攻撃力に欠けるんだから。
ついでに、あのビルも潰して貰おうと。どんな都市伝説かは分かりませんけど、街の人達を操っているのが居るみたいですから」
額に小さな角がある彼女は、鬼女≠ニ言う名の通り鬼の一種である。
ただし、普通の鬼のように他者を圧倒する筋力は持っていない。その変わりに有するのが、多種多様な術式だ。
まぁ、身体強化の術式を修めて居るので殴り合いも出来なくはない。
それ故に彼女は、《七人みさき》に取り込まれている都市伝説で、トップの実力の持ち主と言える存在なのだ。
「成程ね。発動者が死ねば支配が解ける可能性も有るって事かい? そう言う事なら分かったよ」
先程の一撃で気絶した《行き交う人々》の契約者を一瞥し、ビルを見やる鬼女=Bその右手には、目に見える程の力が集まっていく。
集まった力は、腕先から肘までを渦巻きながら纏われている。
力の集束が止むと同時に身体ごと右腕を引き、ビルに狙いを定め撃ち出そうとしている。
それを阻もうとしている者は、誰も居ない。
操られた人々は、《七人みさき》の力で倒れ、男性は気絶したままだ。
「っりゃあぁぁぁぁぁぁァァァ!!!!!!!」
その鬼女≠フ一声と共に、ビルに向かって爆音を響かせながら螺旋を描き放たれた――。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:25:45.35 ID:TmeDlzPB0
しえしえ
油断していた、と言うべきだろう。
呼び出された都市伝説を全て倒され、《七人みさき》に止めがさされる。
そう思っていた《百匹目の猿現象》の契約者である女性は、提げていた双眼鏡でその様子を見ていた。
夫の刃が防がれたり、少女が増え支配下の群衆が倒れたり、現れた少年によって自分の居る場所を知られた事も解った。
だが、これだけ離れて居れば大丈夫だと思っていた。
「ヒッ」
故に、現れた和服の美女に都市伝説ごと夫が倒され、双眼鏡越しに目が合って、恐怖に包まれる。
だからなのか、まだ余裕を感じていたのかその場を動きはしなかった。
だが、和服美女の腕に集まって行く力に、不味いと思いビルから去ろうと行動を起こした。
が、遅すぎた。契約によっての身体強化が全くない彼女には、逃げる事は叶わなかった。
閃光に包まれて消えゆく中で、《百匹目の猿現象》の契約者が最期に思ったのは、娘の仇を取れなかった無念と夫の無事だった。
支援
俺も後で酉作成依頼でも出そうかしら
気絶から目覚めた《行き交う人々》の契約者が最初に目にしたのは、妻が居るビルが崩れて行く光景だった。
呆然とそれを見て居た彼だったが、段々と眼の前で起こっている事を理解していった。
「な、あ、な、〜〜〜〜〜〜〜!!!」
言葉にならない悲鳴を上げ、呆然とする《行き交う人々》の契約者を尻目に美咲達は話し始める。
「うん。相変わらず凄いですね。鬼女≠フ一撃は、もう二度と敵には回したくないですよ」
「そんなに褒めないでくれよ。で、如何だい? 成果は有ったかい?」
「大丈夫みたいだよ。敵意や殺意みたいなのが周りの人達から感じなくなったから」
さとるくん≠フ言葉通り、苦しみながらも向けられ続けて居た自分達への害意が無くなった事に成功と判断した。
「んじゃ私達の出番もお仕舞い?」「おいおい。まだ、出たりねぇぞ」「それは、同感だな」
「えと、私は別に……」「素直に」「遊びた〜い。転がってる奴らで遊びた〜い!」
群衆を抑えるために呼び出された《七人みさき》の本体たちが口々に文句を言ってくるが、美咲は呆れたように溜息を吐いて言った。
「何を言ってるんですか。抵抗するのを分ってて、戻す訳がないでしょう。倒れてる人達への止めお願いしますよ」
「「「イェーイ!!!」」」「「よし!」」「やった」
そこら中に落ちている武器を手に、苦しんでいる人々に襲い掛かる少女達。
発病の力によって満足に反抗もできずに、群衆は確実に殺されていく。
何が起こっているのか? 自分達が先程まで何をしていたのか? そんな疑問を抱えたままに殺されていく。
「「「アハ、アハハハハハハ!!!!!」」」「「クス、クスクスクス!!!」」「フ、フフフフ!!!」
殺しまわる少女達の笑い声に、男性は気を取り直した。
「止めろ! 支配が解けたのならこの人達は関係無いだろう?!」
周りの出来ごとに焦って、《行き交う人々》を再び展開し、亡霊少女達を止めさせようとする。
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:27:24.32 ID:TmeDlzPB0
支援
「言ったでしょう。殺意には殺意で返すと、操られていようと何だろうと。いえ、私達に遭遇した時点で変わりはありません」
「そう言う事。《七人みさき》に、僕達に出会った時点でこの人達が死ぬのは確定してるんだよ」
それを遮るように美咲とさとるくん≠ェ語り、
「そもそも、捨て駒だったんだろう? 今更何言ってるんだい」
阻むように鬼女≠ェ彼らの前に立つ。
「それは……ッ!」
「反論なんかしなくて良いよ。それじゃ、僕は戻らせてもらって良いかな? する事も無いみたいだし」
「そうですね。良いですよ、戻ってて下さい」
さとるくん≠ェ消えても、《行き交う人々》の契約者に余裕は生まれない。
そもそも、敵戦力として数えて居なかったのだ。居なくなっても変わりは無い。
警戒しているのは鬼女≠ニ呼ばれた眼の前の女性だ。
先程、都市伝説ごとまとめて吹き飛ばされたのだから当然だろう。
「ついでに、他の皆も回収しておきますか。何時までも、倒れたままで居られても困りますし」
倒れていたテケテケ≠ニ車の群れに潰されていた3体の都市伝説もさとるくん≠ニ同様に美咲の中に戻っていく。
その最中も人々を殺し尽していた少女達は、満足したのか飽きたのか美咲の傍に寄って来た。
もう既に、その場に居たほぼ全ての人間が息絶え。残りの全員も、呼吸を荒くしたり血を吐いたりとかなり衰弱している。
ヤバイ、その一言が、今の《行き交う人々》の契約者の頭を占めている。
自分達の力だけでは鬼女≠倒す事が出来ず、自分達に仲間が居る訳でもない。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:28:29.52 ID:TmeDlzPB0
支援!!
だからこそ、この状況を打破するため、鬼女≠謔閧熕謔ノ美咲や少女達に矛先を向けて襲いかかろうとし、
「判断としては、間違っちゃいないね。けどまぁ、させる訳が無いけどね。土式――」
辛うじて息の合った群衆とまとめて、地面から突き出た石の槍にその身を貫かれた。
「ガ……ッハ!!」
「操技っとね」
「カハッ。ぐ、そっ。ヒューヒュー」
鬼女≠ェ創りだした槍に穿たれ、倒れていた全ての人間は止めを刺され、命を落としていった。
そんな中で《行き交う人々》の契約者である男性だけは微かだが息が有った。
しかし、すでに都市伝説を維持する力は無いようだ。
その様子に、何かを思いついたような表情を見せる美咲。
集まっていた亡霊少女達に何かを告げて、彼女達もそれに賛同する。
「その傷だと、もう長くは無いみたいですね。最期の手向けとして良い物を見せてあげますね」
「良、イ物? な、んノ、事だ」
「秘密だよ〜。美咲っち、こっちは良いよ」
「それじゃあ、初めますか。これだけ居ると、私だけじゃ大変ですからね。」
7人が手を掲げると、死んだ人たちの体から人魂と呼べる様な光の球が出て来る。それは、吸い込まれるように《七人みさき》の手に向かっていく。
無数の光球が湧き出る様子は、とても綺麗で幻想的な光景であり。確かに美咲の言った通り、良い物と呼べるかもしれない。
だが、それも光球の正体が何なのか知らないから感じられる事だろう。
「綺麗よね。これが所謂、命の輝きってヤツなのかしらね」
「言い得て妙だな、命の輝きとは。確かに、その通りだ」
この光球は、知識や経験・能力と言った物が凝縮されたモノの塊であり、その人の生きた証と言っても良い。
《七人みさき》に殺されている事を条件に、人間や都市伝説に関係なく人型の存在にのみ現れる。
これを吸収する事によって、別の都市伝説を《七人みさき》に取り込むことが出来るのだ。
「い〜っぱい集まったね。これだけ有れば、今日の分は大丈夫かな?」
「大丈夫どころかお釣りが来る位ですね。あなた達や鬼女≠熄oしたのに、消費分以上が集まりました。」
また、都市伝説を使うために必要なエネルギーの代わりにも出来る。
ただし、消費した分は決して戻らず、都市伝説や契約者の方がエネルギーが多い。
この機能によって、美咲は都市伝説に取り込まれる事無く、ギリギリのラインで人間としての自分を保っているのだ。
薄れゆく意識の中で、その様子を見ながら《行き交う人々》の契約者は、自分達の復讐が失敗した事を理解した。
いや、余計に力を蓄えさせてしまった分、逆効果だったとしか言いようが無いのかもしれない。
そもそも、前提から間違っていたのだ。《七人みさき》を相手に、物量戦で戦おうとした事が。
それを理解したのかは分らないが、悔しさと無念さを感じながら彼は、息を引き取った。
「うっし、全部集まったみてぇだな」
「そ、そうですね。あ、あれ? 鬼女≠ウんは何処に」
「ええと。やる事やったから戻るって言って、戻りましたよ」
「私達も戻る」
「あぁ。そろそろ、移動しないと不味いかもしれん。戻るとしよう」
「むぅ〜。しょ〜がないか」
そう言うと、出て来た時とは反対に、亡霊少女達の体は影に沈んでいき。6つの影は美咲の影へと合わさった。
残ったのは、無数の死体とたった1人の少女の姿。その少女……美咲は急ぐ様子も無く、のんびりと街を去っていく。
Tripcode Explorerで一晩放置したら出来上がってたよ!
支援
しえん
「うわ?! 何じゃこりゃ……」
「辺り一面、死体だらけですねぇ……」
美咲が離れてから十数分後程で、入れ違いになるように黒服と女性の2人がやって来た。
彼らは、一番近くに居た事とその能力の関係から、組織がこの街から観測した都市伝説の調査を命じられたのだ。
それでやって来た現場は、死体だらけ。組織の人間として、それなりに人の死は見て来た2人も唖然としている。
「取り合えず、この街封鎖しとくべきか」
黒服が携帯で本部に連絡し、現場の状況を報告し街の封鎖を依頼する。
組織の方も、報告の内容から隠蔽が難しく時間がかかると判断し封鎖を決定したようだ。
「取り合えず。調べてみましょうか、危険は無いって私の《女の勘》が言ってますしぃ」
黒服の電話の間に、気を取り直していたらしい女性がそう告げる。
彼女は、女性限定の都市伝説である《女の勘》の契約者だ。その的中率は90%とかなり高い。
「だな。そんで、誰を調べれば良いんだ。教えてくれ」
「ええと、ですね。…………あ、あの人ですねぇ」
「アイツだな。んじゃま、調べるとしますかな」
女性が示した死体へ向かう黒服。
その死体は、他の幾つかと同じく地面からの槍によって体を貫かれている。
それは、《行き交う人々》と契約していた男性だった。
「さぁて、教えてくれ《残留思念》。此処で、何が起きたのかを」
《行き交う人々》の契約者の死体に手を当てて、黒服は都市伝説の力を発動させた。
『もしもし、私メリーさん。今、学校の前にいるの』
『もしもし、私メリーさん。今、理科室にいるの。躍りが得意な人体模型さんが、四回転サルコウを見せてくれたわ。内蔵を撒き散らしながらジャンプするコツを教えてくれたけど、難しくて真似出来なかったの』
『もしもし、私メリーさん。今、女子トイレにいるの。鏡を見ながらジャンプの練習をしてたら、花子さんに見られちゃったの』
『もしもし、私メリーさん。今、自販機の前にいるの。お釣りの返却口にお金が忘れられてるわ。早速ジュースを買おうとしたけど、百円玉だけじゃ買えない時代になったのね……』
『もしもし、私メリーさん。今、大きな沼の近くにいるの。おいてけ〜、って声が聞こえてきたから、さっき拾った百円玉を置いて逃げてきたの。また一文なしになっちゃったわ』
『もしもし、私メリーさん。今、不思議な桜の木の下にいるの。今までピンク色の桜しか見たことなかったけど、紫色も綺麗でいいと思うわ。……え?根本からたくさん手が伸びて……?!引っ張られる!!助け……っ、』
ツー、ツー、ツー……
始まりと同じくいきなり通話は途切れた。
寝入り端に番号非通知でかかってきて、勝手に繋がった電話。それが都市伝説のメリーさんからのものだと知った時は、驚き半分、怖さ半分で眠気が吹き飛びかけもしたが――。
続く内容はおよそ非現実な上に呑気で、後半は睡魔と格闘しながら辛うじて聞いていたようなものだった。
大体うちの学校に、理科室で踊る人体模型やトイレの花子さんが出るなんて噂は聞いたことはない。そもそも俺の通う学校には肝心の人体模型がないのだ。おおかた幼い子供のタチが悪いイタズラか何かだったんだろう。
最後の着信が悲鳴混じりだったのは流石に気にはなったが、押し寄せる眠気には勝てず、いつしか俺の意識は深い眠りの中に引きずり込まれていた。
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:31:03.72 ID:TmeDlzPB0
支援!!
●
また何か問題が起こっているようだな……。
なにやら戦闘を行っていたらしい翼と誠。
学校帰りにそれらと行き合わせたTさんと舞、リカちゃんはさしあたっての脅威を退け、ともかく話を聞こうと思っていた。
その直前、黒服に粘液を拭きとられながら普段よりも力の無い声で謝ってきた翼にTさんは首を振って答える。
「かまわん。舞も無事だったのだしな。――それよりも」
Tさんは視線を転じた。そこには黒服に嫉妬の視線を向けている誠がおり、
「青年、≪悪魔の囁き≫を排除できたようだな」
去年のこともあって半ば乗っ取られると思っていたのだが。と先程感じた≪悪魔の囁き≫の気配について話すTさんを誠は鼻で笑うと、
「当然だ。――愛の力だからな」
そう言って翼へと熱いまなざしを向けた。
「ぎりぎり間に合ってなかったんじゃねえの? Tさんに目隠しされて見えなかったけどなんかを殴ったっぽい音したぜ?」
実際にはその場に居た都市伝説の少女の心臓が抉りだされたのだが、まあ知らなくても良いことだ。
故にTさんは訂正しない。
誠もそのことには特に言及せず、少女へと翼に向けるものとは180度違う、醒めた視線を向けた。
「あれは変態だから問題ねえ」
言われた少女の方は何やら艶っぽい声を出して悶えている。
誠の言葉が正しいことを確認し、ひとまず無視することに満場一致した。
「……ところで、なんか変わったか?」
タオルで黒服にタコの粘液を拭われながら翼がTさんに不思議そうな顔を向けた。
「なにが?」
舞が問いかけると翼は首を捻りながら、
「いや、Tさんなんだが、確かお前の事契約者って呼んでなかったか?」
「ああ、それは――」
「ちょっと待ったぁああああああ!」
Tさんが説明しようすると舞が大声でそれを遮った。
「な、なんだ?」
「いや、別に、なんでも、ねえ……」
驚き顔の翼に対して肩で息をしながら答える舞。
Tさんが苦笑していると、リカちゃんが声を発した。
「あのね、お兄ちゃんとお姉ちゃんね、ぎゅーってしてね、ちゅーってしたの」
ジェスチャー付きで言われた言葉にTさんは苦笑を完全な笑みに変え、
「――というわけだ」
周囲でほう、と生温かい応答が返る。
舞は顔を俯けると「は、はは……」と笑い、
「ちょっと、リカちゃん……いいか?」
鞄からリカちゃんを引っ張りだし、電柱の陰へと移動した。
「お姉ちゃん? ……あ、いたいの、そんなに開いたらさけちゃうの、わ、こ、こわれちゃうの! お兄ちゃん! お兄ちゃん!!」
何やら声が聞こえるがまあすぐに戻ってくるだろう。
そう考え、周囲に「好きにやらせておいてくれ」と前置きし、Tさんは話を続けることにした。
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:33:35.68 ID:TmeDlzPB0
支援
支援
「あの≪コーク・ロア≫の影響下にあった者たち、もしや以前≪魔女の一撃≫の青年が襲われていたのと同じ一派か?」
あの時、髪が伸びる黒服は「ヘタしたら親玉がいて、この能力を使える奴を増やしてる可能性もある」と言っていた。
ならばその親玉がまた動いているのかもしれない。
そう思い訊いてみると、黒服がええ、と答えた。
「おそらくは。ここ最近≪コーク・ロア≫が多く発生していますし、更にそれを治めている者もいるようです」
「そうか……」
それだけではない。あの藤崎と呼ばれていた女性。あの女性に取り憑いていたのは、
「あの山羊頭の異形、≪悪魔の囁き≫の実体化したものだな?」
本来ほんの一瞬だけ人間にとり憑き突発的な悪事を起こさせる存在であるはずのアレがまたあのような姿を顕現するまでに至っている……。
「何者かが、悪意を持って、彼に悪魔の囁きをとり憑かせていたように思えます」以前黒服はそう言っていた。
もしその通り、人為的に憑いたものだとしたならば、おそらくこの件――
「まだ裏がある……か?」
ならばその件について調べると言っていた黒服さんに進捗状況を聞くべきか。
Tさんが呟いていると舞が電柱の陰からリカちゃんを連れて帰って来た。
リカちゃんはTさんの頭に乗っかり「お姉ちゃん乱暴だったの」と若干涙声で言った。
「照れ隠しなんだ。大目に見てやってくれ」
「そこ! 少し黙れ!」
赤い顔で喚いている舞を見ながらリカちゃんは数秒Tさんの頭で悩み、
「わかったの」
舞の頭上へと飛び移った。
「お姉ちゃんはずかしがりやさん?」
舞はその言葉にしばらく唸り声を上げていたが、やがて「あーもうそうだよ」と言って大きく息を吐き出すと、
「……またでかくなってんのな」
どことは言わないけど。と照れ隠しまぎれに半目でカメラを取り出して黒服をシャッターに収め始めた。
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:34:40.00 ID:TmeDlzPB0
ネタ固めつつ支援
支援
なにやら難しい顔をしている黒服に対して幾枚かシャッターを切ると、舞は翼に目を向ける。
「ってかなんだ? あのタコとかラリった人間大量発生とか昔の携帯ゲーム機の中のモンスターを合体させたみたいなやつとか」
「あのドラゴンはゲームから実体化した都市伝説か」
ゲームをほとんどやらないTさんはなるほどと頷いている。それを横目に舞は話を続ける。
「話聞いてるとさ、あのタコの姉ちゃん、チャラい兄ちゃんの知り合いなんだろ?」
「あ、ああ。そうだけど」
「で、あの≪悪魔の囁き≫はあの姉ちゃんを操ってると」
「おそらく後ろで手引きをしている者がいるな」
Tさんの言葉にそうかそうかと一人でなにやら納得している舞は、
「Tさん」
Tさんへと振り返った。Tさんもああ、と頷き、
「ともかく、一度状況を整理しようか」
言った。
「でも巻き込むのは……」
翼がやはり常の力が無い言葉をかける。
舞はそれに「何言ってやがる」と笑い、
「俺は自分から首突っ込みに行くんだぜ?」
告げた。
「だ、そうだ」
薄らとTさんが口元に笑みを浮かべた。そんなTさんに声がかかる。
「では場所を移して話をしないか?」
さすがに少し冷える。そう言って声をかけてきたのは黒服と共にやって来た、分厚い本を手にした薄茶色の髪に白い肌をして眼鏡をかけた小柄な――
「おお、初めて見る………………兄ちゃん? 姉ちゃん?」
「自己紹介も必要になりそうだな」
「なの」
どこか空気の緩んだ笑いが生まれた。
『通りゃんせの相棒』
みなさん、僕を覚えておいででしょうか。神威 神司(かむい しんじ)です。え? 知らない? あれですよ、ホラ。『通りゃんせ』の契約者です。
それと今「神」という字が2つも入ってる名前を見て(うわぁ…)とか思った奴、ちょっと表に出ろ。
さて、それはともかく。実は僕相方的な人が居るんですよ。もうすぐ来るとは思うんですけど…
「クスクスクス…お待たせ、神司君…」
来た。彼の名前は富士海 樹(ふじみ いつき)。『富士の樹海』系統の都市伝説と契約しています。
ところで僕は以前も言ったように、『通りゃんせ』の能力で子供を神隠ししているのですが…
なにせ子供だけでは足りないみたいでしてね…。最近は子供のいうことを信じない大人が多いですから。
まあ、そこで彼の能力が活躍するわけですよ。今日はとりあえず…大人を3人くらい隠しておきますか。
神司「それじゃあ、お願いするよ」
樹「クスクスクス…少し場所を変えてから使うよ…」
少し広い場所に移動する二人。
樹「よし…この辺で…」
能力を発動した樹。しかし、周りの様子に変化は見られない。だが…
「…? ここ、さっき通ったか?」
「まただ、ずっと同じ景色…。これで何回目だ…?」
「同じ道を回っているようにしか思えない」
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:35:32.78 ID:TmeDlzPB0
しーえーん
支援
道を歩いてい人々が、今の状況を不思議に感じる。当然である。いつも歩いているなれた道で迷っているのだから…
樹「クスクスクス……貴方達はここから出られないよ…」
これが彼の契約した『富士の樹海』の一部、『富士の樹海に入ったら脱出できない』である。能力は
樹の指定した半径10km以内の空間に居た、入ってきた生き物を外に出られなくするというものである
神司「…よし、それじゃあ」
樹の能力が発動したのを確認すると、神司も能力発動の準備をする。
神司「通りゃんせ 通りゃんせ ここはどこの細道じゃ 天神様の細道じゃ
ちっと通して下しゃんせ 御用のないもの通しゃせぬ この子の七つのお祝いに
お札を納めにまいります 行きはよいよい 帰りはこわい 怖いながらも 通りゃんせ 通りゃんせ」
その歌を引き金に、細くて薄暗い怪しげな道が現れる。普通なら大の大人がこんな怪しい道を通るようなことはしないだろう。
だが、道に迷っていれば話は別である。そう、今まで無かったその道にどんどん入っていく人々。
その先に広がる世界は見たことも無い異世界。後ろを振り返ると、来た道はもうない。
神司「さぁ…1日限りの異世界旅行だよ…。存分に、ゆっくりしていってね!!!」
今日もまた数名の人が行方不明になるのでした…
続く…
支援
話を書いている自分がちょっと混乱してきたぞ!
支援
「私は誰でしょう?」
突然だが…俺の名を言ってみろ!!! ………え?知らないって?それもそうだ。名乗ってないもん。
何? だったら名乗れって?…残念だがそうはいかないんだよな。…でも確かに名乗らないのは失礼だな…
よし、それじゃあ仮に「山田」とでも名乗っておこう。あ、ちなみにこれ本名じゃないぞ。
山田(仮)「…そういや最近よく都市伝説が出るって聞くな…。気をつけないと…」
そんなことを言いながら歩いている山田(仮)。すると、赤いマントとシルクハットに身を包んだ男に
話しかけられた。
「赤いマントは如何かね?」
赤マントか。おそらくコイツは人殺しの赤マントか?「赤いマントは如何かな」という質問にうまく
答えないと自分の血で真っ赤に染められる…。怖いねぇ…
山田(仮)「赤マント。その質問に答える前に俺の質問に答えてもらおう。さぁ! 俺の名を言ってみろ!!!」
赤「知るわけないだろう。そんなもの。さ、私の質問にも答えてもらおうか」
狙い通り。“相手が自分の名前を知らないこと”これが俺の能力を発動させる条件。
山田(仮)「そうだよなぁ!知らないよなぁ!…ならば!!」
赤「赤いマント如何か…!?」
驚く赤マント。無理も無いだろう。目の前に居た人間が突然消えたのだから。
赤「…瞬間移動系の能力か? それなら…」
右を見てみる。誰も居ない。左を見てみる。誰も居ない。後ろを振り向く。誰も居ない。だとすれば…!
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:37:53.74 ID:TmeDlzPB0
>>87 志村ー、名前欄名前欄ー!支援
そのネタはソニータイマーの人だぜー
赤「上か」
上を見上げる赤マント。しかし、上にも居なかった。相手がどこにも居ない。だが、それは当然のことなのである。
彼の能力は瞬間移動なんかではないのだから。山田(仮)の契約した都市伝説は『私は誰でしょう?』。
試験時間終了後も延々と解答を続けていた学生に対し、監督官は時間切れ失格を言い渡す。慌てる様子も無く学生は聞いた。
「ところであなたは僕のことを知ってますか?」。怒った監督官は「お前なんか知るものか!!」と答える。学生は「ならば!」
と他の答案の中に自分の答案を混ぜ込み逃げ出した(wikipediaより引用)、と言う都市伝説である。能力は相手に自分の
名前を聞き、相手が自分の名前を知らなかった場合、その相手は自分の居場所と存在を認識できなくなる、と言うものである。
山田(仮)「ハハハハハハ! 残念だったなぁ、赤マント! お前が俺の名前を知らない限り、俺を見つけることは出来ない!
だがある意味運が良かったぜお前! 俺がもし“攻撃能力のある都市伝説”と契約してたら今頃俺に倒されているだろうからなぁ!」
赤マントにそう告げると、山田(仮)は帰っていくのだった。
赤「…」
その場に立ったまま動かない赤マント。おそらく、予想外の能力で驚いているのだろう。そして、その赤マントを隠し撮りする影が…
真「…人殺しの赤マントか。くっくっく…。いい写真が撮れた…。明日日の記事はコイツで決まりだな!」
新聞部の部長だった。彼の言ったとおり、次の日のの都市伝説新聞はこんな内容であった。
『真っ赤に染まる服〜狂気の赤マント?〜』
昨夜、道で赤いシルクハットと赤いマントに身を包んだ20代くらいの男性が目撃された。
その男性は道行く人々に「赤いマントは如何かな」などと尋ね、返答した人を殺害し血で真っ赤に染める
などの凶行に及んでいる。犯行の手口や話し方などから都市伝説の『赤マント』なのではないかと言われているが、真相は定かではない。
だが、皆さんも注意していただきたい。次は貴方かも知れないのだから。
[写真]←これが赤マントと思わしき男である。狂ったように立ち尽くしている姿がうかがえるだろう。
つづく
支援
【電磁人の韻律詩17〜笛吹探偵事務所の日常〜】
麻薬みたいな男を一人知っている。
その男は人を酔わせる不思議な魅力を持っている。
その男は万人が求める悪人としての要素を十分すぎるくらいに持っていた。
他人など意に介さず自らの意志の赴くままにあらゆる悪行を為し、
自分の目的の為には他人を道具としてしか考えない。
人を酔わせる麻薬そのものか、麻薬に操られる人間か。
この差は大きい。
同じ悪を為す人間であっても前者は自らの意志で悪事を行い、後者は状況に流されて悪事を行うからだ。
どちらが悪いという話でもないが……。
正義の味方をやっていると善にはなり得ない人間が居るってことを実感せざるを得ない。
自らの意志で悪事を行う人間はそういう意味で恐ろしい。
彼らは自分が悪だなんて欠片も思わずに自らの思うままに行動するのだ。
自分を大事にとか心のままになんて言葉は良く聞くが、程々にして欲しい物だ。
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:39:53.18 ID:TmeDlzPB0
支援
しえ
「悪魔の囁きの契約者とその仲間。
今の学校町を騒がせているのはそいつらだ。
お前が言うところの悪人ってならそいつらじゃねえかな?
組織から任務が降りてくるだろうからくれぐれもお前一人で突っ走るなよ?」
「はい、ありがとうございます。」
「それとお前さんが会ったポケモンマスターだったっけか?
お前とは相性が悪すぎるから戦うのはやめておけ。
超遠距離から契約者を一撃で倒すタイプの都市伝説で対処することになると思う。
お前らには恐らく蛸妊娠だかの契約者の対処が割り当てられるんじゃないか?
対生物が一番刺さるだろう?お前らの攻撃って。」
「そうですか……。
解りました、でも俺達の接触した契約者って………。」
「ああ、知っている。子供なんだろう?
組織だってそこまで酷い奴らばかりじゃねえよ。
というか今は善良な奴が多いぜ?何故か“事故死”する過激派の黒服が多いそうだ。」
「そうですか……。」
「そうなんだよ。それじゃあ切るぜ。」
「はい、それじゃあ。」
携帯電話の電源を切ると俺はそれをポケットに投げ込んだ。
身体をバタンとソファーに投げ出す。
俺は笛吹探偵事務所の所長室の椅子に腰をかけていた。
学校は終わって、今は春休みである。
「どうしたのアスマー?」
「いや、Hさんからの電話。」
「おーい、恋路!もう一回勝負しろ!」
奥の部屋、恐らくここの主がプライベートで使っている部屋から子供の声が聞こえる。
「あ、ちょっと待っててねレモンちゃん!」
「橙だ!」
「似たような物じゃないか!」
ハーメルンの笛吹きからこの事務所を預かり受けた時、助手を一人紹介された。
橙レイモンという少女だそうだ。
複雑な経緯で彼の事務所の助手をしているらしいが詳しいことはまだ教えられていない。
ただ、このレイモンという少女はハーメルンの笛吹きの語るときに嬉しそうな顔をする。
だからハーメルンの笛吹きに何か恩義が有るのだろう。
「小足みてから昇竜拳!」
「うわああああああああああ!!!」
恋路と橙は格闘ゲームをやっていた。
そしてまた橙が負けた。
恋路の超速反応について行っている分、今までの挑戦者よりはまともに戦えているのだがそれでも彼女には勝てないようだ。
「なあ、橙……さん。」
「なんだ明日真。」
「その、君の都市伝説ってのは本当に……?」
「しつこい奴だな、僕の都市伝説はラプラスの悪魔だと言っているだろう。」
「アスマー、女の子に詮索かけるのはあんまり良くないよー!」
「むぅ……。」
しえ
しぇん
橙レイモンという少女は『ラプラスの悪魔』と契約している契約者なのだそうだ。
どうも俺にはそれが信じられない。
こんな小さい少女がそれ程巨大な都市伝説と契約できそうには思えない。
その辺りの詳しい事情も聞きたいが恋路に阻まれて聞き出せない。
「壁際まで追い詰めて1killコンボ!」
「うわー!また負けた!」
「レモンちゃん大分強くなってきたねえ!」
まあ解らなくても良いかと思う。
橙は優秀な助手だったしこれ以上探るのも野暮という物である。
というか探偵そのものだった。
おそらく笛吹は彼女に探偵業務の大半を行わせていたに違いない。
「明日君、頼まれていた都市伝説の出没マップ持ってきたよ。
元気無さげじゃない?」
ドアが開くとセーラー服の少女が事務所に入ってきた。
向坂境、この探偵事務所の所長だ。
笛吹がまとめた都市伝説の資料を向坂が持ってきてくれたのだ。
「ああ、向坂さん。いやどうにも笛吹という男が解らないんだよね。」
「そう?あの人って良い人よ。私のお姉ちゃん見つけてくれたし。」
「そりゃあ仕事だったからだろう。」
「わたしお金払ってないよ?」
「ああ、そういやそうだったな。良い人って……どんな風に?」
よく考えれば俺は笛吹という人間をよく知らない。
これから戦うことになるにしてもこのまま協力関係が続くにしてもあいつのことを知っておくべきだろう。
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:41:50.87 ID:TmeDlzPB0
支援
「彼は、神様みたいに良い人でした。」
歌うように語り始める向坂。
そうとうあの男が好きなのだろう。
そういえば笛吹は女性に好かれやすいな、この事務所のスタッフも彼が契約している都市伝説も女性だ。
あんな性格なのに何故だろう?
理不尽だ。
「まあ神様というのは冗談として彼って基本的にずれた人です。
だからなのか知らないんですけどついつい見ていたくなります。
彼は彼しか愛せない人間ですが、そんな彼だからこそ不思議な魅力を持っている。
むしろあれほど魅力的な自分だったならば愛せざるを得ないかもしれない。」
「変わっているけど良い奴なのか?」
おかしい、俺は会った瞬間殺されかけたはずなのだけどな?
「自分はろくでもないド外道の畜生野郎だからできるだけ人に優しくしているって言ってました。」
うん、確かにあいつはド外道だ。
「成る程ね、他になんか特徴って無いの?」
「ああ、すごく自己中だよ。」
今度は後ろから声が届く。
橙レイモンが口を挟んできた。
「あいつはとにかく自分の感性を優先する。
他人の事なんて一切考えない。
自分の都合で誰かを幸せにして誰かを不幸にする。
そこそこ優秀な人間だからなおのこと他人に迷惑かけるんだよ。
人間味が薄い、ってのが一番言い得ているかな?」
「あー、それは私も思った。
笛吹さんって人間っていうには頭の捻子外れちゃっているよね。」
今度は恋路だ。
なんでみんなあいつのことを話したがるのだろう?
「お前ら楽しそうだなおい……。」
思わず呟く。
悪人ほど人を惹き付けると言うがその通りなのだろうか?
誰かと人間関係を作るとき善悪なんて人はそれほど気にしない物なのかもしれない。
でも、悪いことは悪いこと。
どこまで言っても変わることはない。
だからそういう考え方は駄目だと思うのだが、今言っても仕方がないか。
「話題にしてると飽きないから。」
「話題にしかならないから。」
みんな、同じようにそう言った。
「メルちゃんとりあえずスマブラやろうぜー。」
女性陣は四人揃ったのでスマブラを始めることにしたらしい。
俺は人数にカウントされていないようだ。
「私wii出してきますね。」
「――――――向坂さんそこを開けちゃ駄目だアアアアアア!!」
「え、あ、…………うわあ。」
絶叫するレイモン。
愕然とする向坂。
「所長が何か妙な物でも隠してたんですか?」
メルが後ろから覗き込もうとする。
「駄目だ、メルちゃん貴方は見ちゃ駄目!」
「あ〜れ〜!?」
向坂はすばやくメルの目を隠す。
「あはは、まあ所長も成人男子だしねえ……。これくらいなら許容範囲内じゃない?」
恋路がとりあえず弁護し始める。
「じゃあ恋路さん、仮に明日君がこんな物持ってたらどうしますか?」
俺の話にするな、向坂。
「そりゃ決まってるじゃないか向坂さん。」
「と、言いますと?」
「正直引くわー………。」
俺は家に帰ったらすぐに『Hで綺麗なお姉さん』のDVDを処分することに決めた。
さらば、俺の秘蔵コレクション。
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:44:01.14 ID:TmeDlzPB0
支援
しえn
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:47:34.74 ID:TmeDlzPB0
っと、どうやらサルったそうだ。次、誰が行く?
よーし、じゃあ俺が行くよー
114 :
笛(代理):2010/03/07(日) 16:53:48.09 ID:O1SZuDHf0
「さて、気を取り直してゲームやりましょうか。」
「そだね、これは見なかったことにしよう。」
くそっ、あいつの隠してたDVDってなんだったんだ!
すげえ気になるじゃないか!
あいつの好みってなんなんだ?
わがままな性格だから年下か?
いや、もしかしたら人妻とかそういうドロドロしたのなのか?
気になる!すっげえ気になるじゃないか!!!
「あ、あのさ……。」
意を決して聞いてみることにした。
「其処にあったのって……。」
女性陣が同時に振り返る。
少々怖い。
「あ、すいませんでした。」
とてつもない疎外感を感じた。
115 :
笛(代理):2010/03/07(日) 16:56:06.50 ID:O1SZuDHf0
「テンッ!クウ……ウボァー!」
「ふっ……そこだぁ!」
女性四名はスマブラをしている。
先程までは恋路が圧倒的に強かったようだが今度は橙が強いらしい。
「橙さん、弱った相手だけ狙いますよね。」
それに真っ先に気付いたのはメルだった。
ピクミンを投げながら向坂を牽制している。
「これはそういうゲームだよ。」
「それにしてもまさか私達の動きを能力で読んでいるなんてことは……。」
まさかこのゲームでも橙は都市伝説の能力を使っているのか?
「だからどうしたんだと言うんだ!ハッハー!勝てば良いんだよ勝てば!」
もはやキャラが違う。
スマブラが友情破壊ゲームだとは聞いていたがここまでとは知らなかった……。
「その通りだ、レモンちゃん。」
「えっ、嘘!?」
一瞬で橙のマルスまでの距離を詰める恋路のウルフ。
「こいつで遊んでやるぜ!」
「あーれー!?」
橙のマルスはなすすべもなく吹き飛ばされていった。
はて、ここは探偵事務所だったような気がするのだが……?
これだけ遊んでいても良いのだろうか?
116 :
笛(代理):2010/03/07(日) 16:57:34.70 ID:O1SZuDHf0
一しきり遊ぶと恋路は夕飯の為に買い出しに行ってしまった、
橙は親御さんらしき謎の紳士のお迎えで帰り、
向坂は親と約束した時間なので自宅に帰って行った。
そして俺とハーメルンの笛吹きのみが事務所に残されてしまった。
「明日さん、私が暴走している時に所長の手助けをして頂いたって話を聞きました。
本当にありがとうございます」
急に真面目な顔になって俺に頭を下げるメル。
どうにもこうやってまともに感謝されるのは苦手だ。
別に当たり前のことを当たり前にやっているだけな訳だから。
「いや、誰かを助けるのに理由なんて要らないよ。」
「……本当に良い人なんですね。理由が有ればなんでもするあの人とは正反対だ。」
「理由が有れば?」
「ええ、あの人は都市伝説として消えかけていた私を明確に人々に記憶させる為にあんなことしてたんです。
そこに彼自身の趣味趣向はあったのでしょうけど……。
そういう大義名分は少なくともありました。」
「この前の孤児院襲撃もそうなのか?
男の子一人に説教決める為だけに大暴れしたそうじゃないか。」
「ああ、あれも組織の過激派に連れて行かれそうだった女の子救い出す為にですね。
あの人は悪魔ですから、自分と自分の周りの物の為ならなんでもやります。」
「悪魔ねえ……。誰かを守る悪魔?」
「誰かを守るから悪魔なんですよ。」
「まったくだな。」
メルの言葉は不思議と胸に納まった。
117 :
笛(代理):2010/03/07(日) 16:58:31.19 ID:O1SZuDHf0
「誰かを守るから、誰かを傷つけなきゃならない。」
「私は他人を犠牲にしてでも生き残ろうと思った。
でも私は手を染めたくない。
そんな時、彼が私の代わりになんでもやってやると言ってくれた。
ほんと、そんなもんですよ彼なんて。」
「悪だなあ、退治するべきだったか?」
「もう遅いですよ。
私は恐怖の都市伝説として生きていけるんで向こう1000年いけますね。
もうしばらく私が戦うことはないです。
だから私を殺しても無駄です。」
「そっか、じゃあやめる。」
わるいことをもうしないなら良いんだ。
「ていうかあれです。
もう私は只の人間とそんなに変わらないんですよ。
都市伝説の能力がほとんど無くなっちゃったんで。」
突然、メルから思わぬ言葉が飛び出た。
信じられなくてもう一度聞き返す。
「今、なんていった?」
「いや、だから所長にとりこまれちゃったんですよ。
私はまあ……ハーメルンの抜け殻的なあれです。」
「都市伝説を取り込むって……。」
「だから、私はもう何も出来ない無害な存在ですよ。」
そういってメルは力なく笑った。
118 :
笛(代理):2010/03/07(日) 17:00:39.61 ID:O1SZuDHf0
「その話を聞いて気になったんだけどさ。
じゃあ今、お前の契約者はどうなっているんだ?」
「特に変わった様子はないみたいですけどねえ?」
「……少し気になるな。」
「まあ学校町もすっかり平和になりそうですからあの人は大人しくなりますよ。
いつも平和になったら真っ先に消されるのは自分だってぼやいてますし。
それを避ける為にも静かになるんじゃないですか、多分。」
「悪人も苦労しているわけだ。」
「ていうか悪いことするのってすごい労力が必要ですから。」
「苦労してわざわざ悪いことするのか?
やめて欲しいなそれは。」
苦笑せざるを得ない。
「善悪なんて誰かが後から決めるものですよ。」
「いいや、善悪は自分が決めるのさ。」
「決められるほど立派な人間なんですか?」
自分は立派な人間じゃない。
それ位は解っている。
「いいや、でも悪いことは悪いって誰もが解るだろう?
常識的に考えて。」
「常識………、ですか。」
「良心でも良い。」
常識とか良心が無かったらお終いだろう?
そうとしか自分には言えない。
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:01:25.42 ID:vUEc5e6y0
フリーズから復帰したぜ支援
120 :
笛(代理):2010/03/07(日) 17:01:47.74 ID:O1SZuDHf0
「只今ー!夕ご飯の材料買ってきたよ、メルちゃんも食べていくかい?」
しばらくすると恋路が両手にスーパーの袋を抱えて帰って来た。
「お、恋路おかえりー。」
「ああ、じゃあ私も食べていきます。」
「今日の晩ご飯はウナギです。」
「うわっ、贅沢!?」
「あれ、ああそういうことなら邪魔者は退散しますね。」
いそいそと帰り支度を始めるメル。
「いや待って!?そういうんじゃないから!」
慌ててメルを止める恋路。
個人的には彼女が帰ってくれた方が俺は嬉しかった。
「じゃあ私キッチン借りるからー!」
「じゃあ私はお皿とか準備しときますね。」
いそいそと二人が夕食の準備を始める。
俺も事務所の表札をopenからclosedにしてくることにしよう。
ウナギの焼ける良い香りを楽しみながら俺は所長の椅子から立ち上がったのである。
【電磁人の韻律詩17〜笛吹探偵事務所の日常〜fin】
それは、春休みに入ってからのこと
家の仕事の手伝いの一環でだった
「……ここか」
笛吹探偵事務所
そこに、俺は足を踏み入れた
「すみませ…………あ」
「あ」
…そこの、多分、所長が座るのだろう、椅子
そこに座っているのは、思いっきり、俺の顔見知りだった
「…獄門寺?」
「……明日か」
クラスメイトの、明日 真だ
いや、二年になったらクラス替えがある訳だから、またクラスメイトになるかどうかは、知らないが
「…ここ、笛吹探偵事務所、だよな?」
念のため、尋ねると
「あぁ、そうだ」
と、すぐに答えが返ってきて
………
どういうことだ?
17時か、支援再開
すまねぇ、支援に移るぜ!
「えぇと、とりあえず…何か、探偵に依頼が?」
「そうなんだが…」
「それなら、俺が依頼を受けるから、話を聞かせてもらえないか?」
ひとまず、明日がこの探偵事務所にいた事情やら何やら、簡単に説明されて…とりあえず、納得する事にした
少し驚いたが、相手が知り合いだろうが何だろうが、俺はここで人探しを頼まなければならないのだから
「人探し?」
「あぁ…俺は、ある人の代理で依頼を持ってきてるんで、その人の事は詳しく知らないんだが……名前は、朝比奈 まどか。つっても、離婚したんで姓は変わってて、どんな姓を名乗ってるかわからないんだが」
「離婚して姓が変わってるのなら、旧姓になってるんだろう?」
「…その人は、実家から勘当されていて、その家の姓を名乗る事を禁じられている」
ややこしい事情だと思う
これだから、旧家と言うやつは
「だから、今、その人がどんな姓を名乗っているのか、全くわからない。そのせいで、その家の人間がその人を探してもずっと見つからない。だが、その人を勘当した両親も、そろそろ歳だし…いい加減、許してやろうって事で、顔を合わせたいんだそうだ」
「その両親が、本来の依頼人と言う事か」
「そうなるな」
全く、日景さん達も
六年前だかに、その娘さんが、お孫さんのことで家に乗り込んできた時に、許してやれば良かっただろうに
まぁ、その時に許せなかったからこそ、ここまでややこしくなってしまっているのだが…
「その…マドカさん、の写真とか、あるだろうか?」
「あぁ、預かってきてるけど…その人、今年で40歳になるらしいけど、写真は女子高生時代の物なんだが」
「これは酷い」
一応、写真を渡しておく
そこには…どう見ても当時の不良です、ありがとうございました、と言う印象の女性が映し出されていた
女性は化粧や髪形や服でいくらでも化けるから、この写真が手がかりになるかどうか
「…本来の依頼人は、日景家 現当主代行 日景 薫。現当主 日景 宗光と、その妻日景 千鶴の娘……マドカを、見つけて欲しい。居場所を伝えてくれれば、一千万払うそうだ」
「一千万!?」
「足りないようだったら、もう一千万追加する、と言っていた」
言われた事を、俺は伝えているだけだ
流石金持ちは違う、とかこっそりと思っている
あの家なら、一千万の二千万も大して違わないだろうし
「受けてくれるだろうか?」
じっと、俺は明日を見詰めた
…正直、断れると結構困る
ここの探偵事務所は評判がいからと、任せられてきたのだ
薫さんとしては、現当主である宗光さんが、表向きまだ娘さんを許していないから…当主代行として、あの人自身が依頼を持ってくるわけにはいかない
当主の、表の顔を立てなければいけないから
だから、日景家の人間ではない俺が、頼まれる事になったのだ
親父やお袋とか、組の人達が動いたら、気づかれる可能性もあるから
お使いといえば、お使い
…だが、非常にプレッシャーがかかると言うか期待を背負っているというか
正直、面倒くさい
ある意味で、他人の親子喧嘩の尻拭いに近い事を、これまた他人に頼むことなのだから
明日は、写真をじっと見つめて…考え込んでいる様子で
「…その、宗光さん、だったか?…マドカさんを、許そうとしてるん、だよな?」
支援
あと少しだ
支援
支援!
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:06:13.93 ID:vUEc5e6y0
ゆうしょくでりだつする支援
風呂上りもスレが残っていてくれれば幸せだ
「あぁ。大きい病気とか手術とかして、気が弱ってるから…死ぬ前に、娘の顔が見たいって気持ちがあるのかもしれない」
そうか、と頷いて、明日は顔をあげてきた
「それなら、依頼を断るわけにはいかない…その依頼、受けさせてもらう」
「!……そうか、良かった」
俺は、ほっと息を吐いた
ごそごそと、鞄から預かって来た封筒を手渡す
「これ、当面の調査費用として使ってくれ、って預かってきてたんだ。マドカさんが見付かった場合の報酬とは別だってよ」
「わかった……って、この封筒、かなり分厚いんだが…」
「俺は中身を見てないんで、いくら入ってるかは知らない」
…ただ、この厚さ
中身が全部一万円札だったら、軽く二百万くらいだと思うんだが…
……高校生にこんな大金預けるなよな、日景さんも
「調査結果は、どこに連絡すれば?」
「俺の携帯に頼む。日景さんたちには俺から伝えるから……携帯の番号は、初詣の時に知らせたよな」
あぁ、と頷いてきた明日
……よし
これで、俺の役目は終わった
「それじゃあ、よろしく頼んだ。期限は特にもうけないそうだから、他に優先すべき依頼があった時はそっちを優先しておいてくれ」
「わかった。本来の依頼人さんによろしくな」
それじゃあ、また新学期にでも…と、別れの挨拶をして、俺は探偵事務所を出た
すぐに、携帯を取り出す
「…日景さん?……はい、依頼、受けてもらえました……当主様の様子は?………はぁ。まぁ、あの人だったらまだまだ何十年も元気に生きそうですけど……」
それでも、病は気から
マドカさんと会えば、宗光さんも元気になるだろう
……喧嘩腰的な意味で元気にならない事を祈るしかない訳だが
本当なら、お孫さんである、翼とか言う人もその場に立ち会った方がいいのかも、しれないが…
…まぁ、他人の家の事情に、深く首を突っ込むまい
ひとまずは、仕事から解放されて
俺は大きく伸びをしながら、帰路についた
途中、花子さんと合流して何か甘い物でも食べさせてやろうかな、とか、そんな事を考えながら
fin
支援ー
それは、同族殺しの襲撃で破壊された「第三帝国」のドクターたちの診療所の修復改築工事が終わった頃の事
「……うん?」
お使いから帰って来たバイト君は、診療所に入る直前、視線を感じて立ち止まった
…敵意は感じない
しかし、どこか、探ってきているような視線だ
視線の先を探ると、そこには
「…子供?」
黒いゴスロリ服を纏い、黒いレース生地の日傘を差した少女が
じっと、じっと、バイト君を…否
診療所を、見つめていた
……敵、だろうか?
かすかに警戒するバイト君
敵意は感じないし、見かけは子供に見えるが、油断はできまい
どう、対応したらいいものか、その判断に迷っていると
「うん?どうしたのかね?」
がちゃり
入り口の前で立ち止まっていたバイト君を、不審に思ったのだろうか
ドクターが、診療所から顔を出した
「あ、ドクター。その…」
「…おや、随分と可愛らしいお嬢さんだ」
支援だ
支援
ドクターも、すぐにその視線に気付いた
そして、すぐにバイト君は気づく
ドクターの姿を確認した途端…少女の視線に、鋭さが増した事に
てとてとてと
少女が、ゆっくりと、バイト君とドクターに歩み寄ってくる
「…ドクター、念のため、診療所の中に」
「敵意は感じない。それに、どうやらあの少女は、僕に用があるようだ。あんな可愛らしいお嬢さんが会いに来てくれたに、相手をしない訳にはいかないだろう」
えぇい、この人は!!
バイト君が突っ込みの言葉を入れるよりも、前に
「お前が、「第三帝国」所属の、ドクターかの?」
と、少女が、外見に似合わぬ、どこか年寄りめいた話し方で、そう話しかけてきた
ふむ、とドクターは少女と視線を合わせるよう屈んで、答える
「その通りだが、君は?」
「妾か?妾はヘンリエッタ・ホークウッドと言う者じゃ」
ドクターの問いかけに、少女…ヘンリエッタは、正直にそう答えてきた
そして、じっと、じっと
じっと、ドクターを
…否、ドクターの、豊満な胸元を見詰めてくる
「むむぅ……」
そして
今度は、じっと…己の、平たい胸元に視線を落としている
あと少しか支援
しえー
ヘンリエッタは、何度か交互に、ドクターと自分の胸元を見比べて
「…H-No.360め。妾よりも、このムチプリを選ぶと言うのか」
と、そうぼそり、呟いた
「……H-No.360……?」
聞き覚えのあるシリアルナンバーに、眉をひそめるドクター
確か、それは、広瀬 辰也の「13階段」内で亡者達が憎悪と共に吐き出していた…
「あやつめ、妾のメンテナンスよりも、こちらのムチプリにメンテナンスされる事を選んだか!?えぇい、妾だって、その気になればこれくらいのムチプリにはなれるというのに!?」
面白くなさそうに、そう言ってくるヘンリエッタの言葉に、ドクターの思考は中断されてしまった
っき!とドクターを睨んでくるヘンリエッタ
…ちょっぴり、悔しそうな涙目なのは、気のせいか
「ムチプリよ!妾からH-No.360は奪わせぬぞ!妾は、絶対あやつを取り返してみせるのじゃ!!」
「あ……」
くるり
踵を返し、走り去ってしまってヘンリエッタ
後には、ドクターと、ヘンリエッタの言葉に呆然としていたバイト君が残される
「…ドクター、どこかで、恋人ありの女性を引っ掛けましたか?」
「失礼な、他人のものを奪うのは主義に反する…………H-No.360か………」
恐らく、それはあの、髪の伸びる黒服の事
それでは、先程、口走っていた内容から見て、あの少女は…
少女が走り去っていったその先を見つめながら、ドクターは静かに思考を思案の海へと沈ませた
外出前支援
止めて
お願い誰か止めて本気で止めてマジお願い
激しい怒りの視線を向けてきている同僚…黒服Oの姿に、硬直してしまっている黒服Y
皆、巻き込まれることを恐れてか、周囲には誰もいない
こんな時に限って、あの優しいDは忙しいのか、いないのだ
どうする!?
どうやって、Oの怒りを解けばよいのだ!?
Yが、必死に悩んでいると
『−−−−死ンダラ、治ルカモ知レナイゼェ??』
そんな声が、聞こえてきた
「…え」
思わずそらしていた視線を、Oに向けた
そこにいるのは、いつもと変わらぬ姿のO
その、彼女の体に……何か、黒い、布のようなものが、巻きついて……?
「…そうですね」
ぼそり
低く、呟いたO
直後
ヒュンッ………と、Yに向かって、何かが迫ってきて
「っ!!」
しかし毎度のことながら、よくもまぁこんなに書き溜めたものだねぇ
ガキンッ!!と
迫ってきたそれを、咄嗟に拳銃を取り出して防いだY
自分に迫ってきていた、それは
「鉈っ!?どこから出した!?」
それは、鉈
鋭いそれが、Yの首を狙ってきていたのだ
Oはいつでも武器を所持していたのだが…それは能力によって隠されていて、Yには視認できていなかった
はっきり言おう
いくら、「組織」の黒服が普通の人間より(若干)体が丈夫だからといっても、首を切り落とされたら死ねる!?
『ホラ、早ク治ルカ、試シテミロヨォオオ!!』
けたけたけたけたけたけたけたけたけたけた
Oに巻きついた黒い布のようなそれから、先ほどと同じ声が聞こえてきた
よく見ると、それには眼と口がついていて
「…悪魔の囁き!?」
報告に聞いていた、悪魔の囁きだ
「組織」内では、つい最近、構成員達が悪魔の囁きにとり憑かれていないかどうか…その卵を体内に宿していないかどうか、一斉検査が行われたばかりだ
とは言え、外回りの仕事がある黒服など、どうしてもどこかかしらで卵を拾ってくる可能性はある訳で、親玉がどうにかなるまで、定期的に検査を行う事になっているのだが…
…まさか、Oもどこかで拾ってきた!?
「動かないでくださいよ、Y」
ブンッ、と
悪魔の囁きの声に応じて、無造作に鉈を振るうO
Yは、それを慌てて避けた
…攻撃したくないが、仕方ない
せめて、ゴム弾で動きを止めて…………って
「げっ、さっきので銃が壊れてる!?」
始めの一撃を受けた時の衝撃で、銃が壊れてしまっている
まずい
袖に仕込んでいる銃に込めている弾は、ゴム弾ではない
ゴム弾に替えようにも…Oが、その隙を与えてはくれないだろう
このままでは、ジリジリと追い詰められる…!?
再び、振り上げられる鉈
それが、Yに振り下ろされる直前
−−−しゅるり
どこからか伸びてきた黒い触手…ではなく、髪の毛が、Oの腕に絡みついて動きを止めた
「!?」
「何、バイオレンスな事やってんだ……って、悪魔の囁き、か?」
YとO、二人だけだった部屋に入ってきたのは、黒服H
能力で伸びた髪は、Oの腕をしっかりと束縛し、放さない
「ちょうど良かった!Hさん、Oを止めて!縛り方は問わないから!」
縛り方は問わない
Yのその言葉に、Hはニヤリと笑う
「よし、任せろ」
しゅる、と
髪が、一斉にOに襲い掛かる
黒い渦のようなそれが、落ち着いたと思った時…Oは、完全に全身を髪の毛で絡めとられ、動きを封じられていた
その縛り方は…何と言うか
「これはエロい」
「縛り方は問わないんだろ?」
「うん。まぁ、そうなんだけど」
えーと…、と、突っ込みたい気持ちも、あるのだが
とにかく、今は、Oを何とかしなければ
見た感じ、悪魔の囁きは具現化こそしているが…さほど、深くはとり憑いていないように見える
「Hさん、銃をちょっと貸して欲しいんだけど。できれば、光線銃じゃないの」
「俺、銃は持ってないぜ。光線銃拳銃問わず」
………
…………
……………
「何…だと…!?Hさん、それでも黒服!?」
「お前、俺の射撃テストの点数知らないのか。「組織」の黒服とは思えないほど最低の成績って言われたんだぞ」
「威張れないよね、それっ!?」
あぁ、もう、仕方ない
袖に仕込んでいた小型の拳銃を取り出すと、Yは懐から、小さな銃弾を取り出した
それは、中に薬品が仕込まれた特殊な物
銃弾をそれと入れ替え、Hによって束縛され、それから必死に逃れようとしているOに向ける
「っく……H、放しなさい!?」
一晩放置したら妄想が文章化されてたらいいのに……支援
「視覚的にもいい感じなんで、放したくないねぇ」
Oの言葉に、肩をすくめるH
Yが、ピッタリと銃口をOに向けると…Oにとり憑いている悪魔の囁きが、暴れ出した
『グ………ヤ、ヤメロ!』
「駄目だよ。彼女から、離れてもらうよ」
ぱんっ、と
響き渡る銃声
薬品が仕込まれたその銃弾は…Oの胸元に、直撃した
「−−−っ」
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』
Oの体内に入りこんだ銃弾は…その体内で溶けて、薬品を彼女の中ではじけさせる
それは、「組織」が作り出した、悪魔の囁きを除去する為の、薬
長期間の寄生には完全には対処しきれないが、短期間の寄生や卵の状態の悪魔の囁きを、宿主から排除する事ができる薬だ
一応、口からの摂取を前提としている物も作られているが…悪魔の囁きの宿主が薬の摂取を拒んだ時に備え、問答無用で使用できるように、特殊な銃弾に込めた物も作られたのだ
支給されていた物を、持っていて良かった
Oの体から排出され、床の上でのたうち回る悪魔の囁きを見ながら、Yはほっと息を吐き出したのだった
30分ほど、後
「そう言う訳でさ。君にとり憑いてた悪魔の囁きは、一応、研究班に渡しておいたよ」
悪魔の囁き排出直後、衝撃でか気を失っていたO
そんな彼女が目を覚ましたので、Yは彼女の事情を説明していた
あとちょい
「なるほど…事情はわかりました。迷惑をかけてしまい、申し訳ありません」
「うん、別にいいよ」
…元はといえば、こっちが悪いような気がしないでもないし
そこは、口に出さないでおくY
「ところで……H、いい加減、放してくれませんか?」
「えー」
「えー、じゃなくて」
……しゅるり
Hが、束縛状態から放さない為
Oは、絶賛エロ縛られ中だった
体の凹凸を強調した縛り方は、どこまでもエロい
「せっかくいい機会だし、なぁ?」
「いや、僕に同意を求められても」
正直、同意を求められても、どこまでも困るしかないのだが
「…Y?まさか、Hに賛同したりはしませんよね?」
怖い!?
視線と笑顔と声が怖いよO!?
Oから向けられる怒り交じりの視線とオーラに、Yは再び硬直するしかないのだった
終わってしまえ
代理引継ぎ感謝&乙でしたー
さて、構想を練る作業に戻るとしよう
乙―
さて、ネタでも投下しようかしら
「――――酷いな」
血まみれの女性を見た占い師の第一声はそれだった。
ここは、山田が三人(+一匹)で住んでいるアパートの一室。
部屋の中央の畳の上には何枚ものシーツが敷かれ、その上に一人の女性が横たわっている。
山田家の面々はそれを取り囲むように、占い師は女性の横に跪くようにして座っていた。
「……そんなに、酷いのか?」
半ばやっぱりと思いつつも、山田が占い師に尋ねる。
子ライオンがここまでやってしまったと考えている山田は、内心びくびくである。
占い師はそんな山田の顔を見ずに、女性の腕に軽く触れた。
「少なくとも、俺がどうこうできる範囲じゃない」
「マジか……」
「とうとう殺人ですか、契約者。日ごろの鬱憤が溜まってたのは分かりますが、発散方法が過激ですねー」
「……違う。これをやったのは猫で、俺じゃないぞ」
呆れたように呟くマゾに、山田が噛みつく。
しかしそれを聞いて、占い師が怪訝そうな顔をした。
「見た限り、その子ライオンは何も関与していないと思うが」
「…………へ?」
きょとん、と山田が目を丸くする。
その背後では、マゾが何やらうんうんと頷いていた。
にょ
「そうでしょうそうでしょう。やっぱり契約者が憂さ晴らしに――――」
「……いや、この血は外からついた物だろう。外傷は一つもない」
占い師の言葉に、その場にいた全員の目が点になる。
一匹の子ライオンだけが、眠たそうに眼をしょぼしょぼさせながら欠伸をした。
「とにかく、俺にはどうしようもない」
膝を立て、占い師が立ちあがる。
それに合わせて畳が鈍い音をたてて軋んだ。
立ち上がった占い師は、どこか睨むような視線を一点に向けている。
その先にいたのは、一人の女性。
「……えっと、何でしょうか」
占い師に視線を向けられた女性、良子は首を傾げた。
怪訝そうな顔をする彼女に、占い師は首を振る。
「いや、あんたじゃない」
「…………?」
さらに首を傾げる良子を無視して、占い師は彼女の元へ歩き始める。
占い師の言葉とは裏腹に、彼の眼は良子の方向に固定されていた。
どこか呆れたような、少し疲れたような視線。
「……俺が何もできない以上、あんたに頼むしかないわけだが――――」
占い師の手が、良子へと伸びる。
どことなく刺のある言葉とその手に、良子は身体を竦めた。
おい、と訝しむ山田を横に、その手は彼女へと向かい
「――――隠れてないで出て来てもらおうか、じいさん」
……その手が、良子の後ろにいた「何か」を掴んだ。
空中で静止し、しかし何かをつかむように握りこまれた手。
それを見て、山田が怪訝な顔をする。
「おい、一体何を――――」
「見てれば分かる」
山田の問いかけを切り捨てて、占い師が手に力を込める。
ギリギリと、その手が何かに食い込んでいく。
「いつまでも出て来ないつもりなら、引きずり出すだけだ」
占い師が小さく呟いた途端、その手が淡く輝き始めた。
光は占い師の手から離れ、その周囲へと散らばっていく。
角度によって、赤から黄色、黄色から緑へと変色していく光。
「確かに、光を反射しなければ透明にもなれる――――」
光は浮遊し、隠れた「何か」へと付着していく。
最初はただの肌色の光の塊のように見えたそれは、指、手、腕と形を作っていった。
「――――だが、身体の色素と同じ発色をする光を身体に付着させれば、擬似的に身体を浮かび上がらせる事も出来る」
やがてそこに現れたのは、一人の老人。
140cmの小柄な身長に、ただの白い布を纏った老人は、「仙人」と呼ばれる都市伝説である。
老人は、自身の身体についた光を、そしてそのせいで浮かび上がった身体を見降ろし、渋い顔をした。
「……つまらんの。透明人間は男の浪漫じゃろうが」
「そんな幻想は子供の時に捨てろ。仮にも数千年生きるじいさんが持つべきものじゃない」
「――――おい、何だその爺は」
占い師が光の粒を発生させるのをぽかんと眺めていた山田が、ようやく声を出す。
ちなみに、その視線の先にいる老人はわきわきと手を蠢かし、山田の恋人の胸へと伸ばしている。
「えっ? ……ひゃっ」
それに気付いた良子は、慌てて老人から距離を取った。
名残惜しそうに、老人が後一歩で届くはずだった夢へと視線を向ける。
その手は空を掴み、虚しく蠢いていた。
「……浪漫の分からん弟子を持つと大変じゃな」
「現在進行形で大変な事態になってるこの部屋で何が『大変』だ」
突然現れた老人に警戒し毛を逆立てる子ライオンに、後一歩で色々とされていただろう恋人を背に庇う山田。そして極め付けにはシーツの上に血まみれで横たわる女性。
どれを取っても「平穏」のへの字もない光景である。
唯一「まとも」な部類に入る占い師は、寝かされた女性を指差して
「アレを救えるのはあんただけだ。喜べ、無条件で女の身体に触れるぞ」
「医者は患者に性的な興奮を抱かん。そのような劣情など持てるか、阿呆」
「……えらくまともな事を言うな、じいさん。偽物か?」
「なぜそこを疑われねばならん……」
未だに占い師の手が食い込む肩を落とし、老人が考え込む。
その目は血まみれの女性と、山田の後ろに隠れる良子を行き来していた。
大方、何をすれば一番徳なのかを頭の中で計算しているのだろう。
にゃっ
「…………ふむ」
答えが出たのか、老人が頷く。
「――――おいっ!?」
老人が何をしようとしているのかに気づいた占い師が両手で老人に掴みかかるも、少しだけ遅かった。
老人の方を掴んでいた右手からその感触が抜ける。
占い師の目の前から、老人が消えていた。
何が起こったのか、などは考えるまでもない。
老人は自分の身体を霞に出来る。
「サンタの契約者、恋人を隠せっ!」
「え? あ、けど――――」
――――いきなり隠せと言われても。
そう困惑する山田の前に、部屋に散らばっていた霞が集中し始める。
白いそれは、やがて塊へと変貌し、その塊は人を形作っていく。
「ほっほ」
笑い声と共に、老人が山田の目の前に現れる。
その目は欲に暗く輝き、手は再び蠢き始めている。
老人の視線は、山田の背後にいる恋人へと注がれていた。
「――――くそっ!」
思わぬ登場を前に、山田が拳を振りかぶる。
いくら透明になっても、霞になっても、その実体はただの老人。
成人男性である山田にとって、それ程の難敵とは思えなかった。
「違う、それは偽物だ!」
そこに響いた、占い師の声。
驚き思わず手を止めた山田の目の前で、老人の姿が揺らいだ。
紐がほどけるように、、ただの白い霧のような煙へと身体が崩れていく。
目の前にいた老人は、偽物。
つまり、老人の狙いは、山田を倒してわざわざそれを乗り越える事ではなく
「――――きゃっ」
背後で、小さな驚きの声が漏れる。
振り返ると、良子の前にあの老人が立っていた。
偽物の時でさえ陰鬱だと思えた瞳は、今や欲望で光り輝いていた。手の蠢きに至っては二倍の速度でわきわきとしている。
老人でも仙人でもない、ただの変態がそこにいた。
「…………っ!」
目の前の老人を見て、良子は身の危険を感じた。
それは身体的な意味でもそうだし、また精神的な汚染すらなぜか連想させる。
とにかく、この老人に触れられていい事はないと、彼女は思った。
しかし同時に、彼女は自身の安全の確信していた。
良子の身体が、薄く、半透明になっていく。
全ては老人が彼女の身に触れる事で起こる。
ならば霊体となり、老人に触れさせなければいい。
実体が霊体に触れる事は出来ない。
半人半霊である彼女だからこそできる芸当である。
「……ほっほ、甘いの」
しかし老人は、笑っていた。
良子は、目の前の老人を見て驚く。
先ほどとは変わっていないように見える、老人の身体。
しかしその周囲を、淡白い光が覆っていた。
彼女は本能で悟る。
今の老人は、霊体でも自由に触れる事が出来るだろう、と。
「『仙人』とは幽界と顕界を往還する者。霊体に触れるのは簡単じゃよ」
ほっほと笑って、老人は良子へと手を伸ばす。
正確には、その胸へ。
老人の顔は、勝利を確信していた。
後数秒で、その確信は事実へと変わる。
「――――なら、こうしたらどうなるんですかねー?」
しかし、その時老人の耳が、一人の少女の言葉を捉えた。
わざわざ目を向けなくても分かる。
この部屋にいる「少女」と呼ばれる部類の人間は、ただ一人。
「ふっふっふー」
マゾサンタが、何やら得意そうな顔で立っていた。
その手には、1メートル程もある巨大な袋が握られている。
老人はあの袋が何を意味するのか、知らない。
しかし何かとてつもない嫌な予感に襲われ、老人は手を伸ばす速度を速めた。
マゾが何をしようとも、決して届かない距離と速さ。
老人の野望が成就するまで、後1秒もない。
一瞬揺らいだ勝利への確信を、老人は再び取り戻して
「…………む?」
しかしその手は、到達目標の地点へとは届かなかった。
老人の手が、これ以上前へと進まない。
それどころか、指一本動かせない。
似たような現象を、老人は移住後に一度体験している。
「組織」の黒服がやってきた時、縫いとめられた際にも同じように指一本動かせなかった。
「…………まさか」
唯一動かせる眼球を下へと向ける。
視線の先は、腹部。
そこに一振りの剣が突き刺さっていた。
それは中国において伝説とされる霊剣の一種である。
老人はその持ち主を知っていた。
眼球だけを動かし、恐る恐る少女の声のした方向、さらに言えばその手に持った袋へと視線を向ける。
その袋は奇妙な形に歪み、その一部は真一文字に裂けていた。
まるで何かが突き破って出来たような破け方を、さらには人でも入っているかのように揺れる白い袋を見て、老人の顔が初めて驚きと恐怖に染められる。
「まさか空間転移系の都市伝説、かの……」
袋を持ったマゾを、老人が窺うように見やる。
戦々恐々の体である。
「ふっふっふー」
それに対して、マゾは不気味に笑うだけだった。
その表情に、老人は己の嫌な予感が的中した事を悟る。
マゾの手に持った袋を結わいていた紐が、ひとりでにほどける。
軽い音を立てて紐は床へと落ち、括りのなくなった袋の口が大きく開いていく。
ゆっくりと、しかし老人には永遠のように感じられる時間。
やがて、袋の中からは一人の女性が立ちあがった。
長身のロングの黒髪。
老人のよく知る女性が、そこにいた。
「あぁ…………」
思わず、老人がうめき声を洩らす。
もう、楽しい時間は終わってしまった。
そう感じずには、いられなかった。
**************************************************
「――――全く、また人様に迷惑をかけて……よりにもよってあの人にまで……」
ぶつぶつと、老人の背後で長身の女性が呟き続けている。
老人の身体には、つい先日と同じように剣が突き刺さり、床へと老人を縫いとめていた。
山田などは「虐待なんじゃないのか」と内心戦々恐々である。
老人の目の前には、血に塗れた女性が未だに横たわっている。
女性そっちのけでずっと騒いでいたわけだが、特にその身体に変調は見られなかった。良い意味でも、悪い意味でも。
「……まるで扱いが囚人じゃの」
文句を言いつつ、老人が唯一動かせる腕を女性の元へと運ぶ。
その動作はぎこちなく、まさに「運ぶ」としか形容できないものだった。
それだけ老人の力を制限しないと、老人が何がし始めるか分からない程危険なのだが、山田などはその姿を前に「虐待? 警察沙汰!?」とさらに怯え始める始末である。
「…………ふむ」
老人の手が横たわる女性へと触れ、淡く光る。
その様子を見て、老人は眉を潜めた。
「……何じゃ、これは」
治療はまだ、始まったばかり。
長い夜は、まだ明ける兆しすら見せない。
【続】
743 名前:占い師と少女 ◆c1fBPhtoT6[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:44:28
同族殺しネタの続編……のはずが、どうしてこうなった
爺が登場するとシリアス成分がなくなる上に、話が長くなって困る
本当は今回で同族殺しネタは一旦完結させる予定だったのだけれど
取りあえず治療に関しては次回に持ち越しになります
***********************
そういや、2ちゃんと避難所でトリップ変わるのか
まあ区別はつくし、大丈夫かな?
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:44:53.28 ID:njZOubI60
代理、乙です。
代理乙ですー
代理他もろもろ乙です
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:41:34.19 ID:rfL+zqce0
ただいま
代理投下と恐怖のサンタ乙です!!
再び外出ほ
170 :
保守ネタ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 20:20:36.18 ID:rfL+zqce0
恋愛要素(?)で10のお題 「舐める」
いつだって、いつだって
私は、チャンスを狙ってる
「ったぁ…」
「だ、大丈夫?宗像君」
あぁ、私は悪い女
怪我したのを見て、喜んで
「−−っ、て、早乙女、何すんだよ?!」
「え?」
ぴちゃり
傷ついた彼の指先に、舌を這わせた
血の味が、口の中に広がる
「舐めれば早く治るって言うでしょ?」
「そりゃ、よく言うけど…」
「あはは、ほら、バンソウコウもあるから」
くすくす笑って、私は傷口にバンソウコウを撒いてあげた
これで、もう大丈夫
私は、「舐めると傷の治りが速い」と契約してるから
これで、あなたの怪我は、明日には治ってるはずだから
あなたが怪我したら、私がいつでも舐めて治してあげるからね
【上田明也の探偵倶楽部11〜アキナリ先生の都市伝説狩り講座〜】
彼は間違いなく悪人だった。
「悪」には様々な定義がある。
「悪」とは何だろう?
人を傷つけること?
秩序を乱すこと?
挙げて行けばきりがない。
きりが無いけど五里霧中。
そんな自由な在り方こそが人々を惹き付けるのもまた一つの事実。
人を惹き付け、人を傷つけ、そうされてから人は気付くのかもしれない。
「ああ、あれこそが悪そのものじゃないんだろうか?」と。
さて、人々から悪そのものと疑われた青年は、真夜中の公園に車を停めていた。
172 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:28:17.30 ID:rfL+zqce0
上田支援
「お兄ちゃん、もう眠い!」
「うーん、もうちょっと待ってくれないかな?」
お兄ちゃん、と呼ばれた青年はそう言って人の良さそうな笑みを幼女に向けた。
時刻は夜の11時。
青年と一緒に車に乗り込んでいるのは幼女。
年の頃は6才、時刻を考えればもう寝ていても良いはずだ。
「悪い都市伝説も眠くてでないよー!」
「そうかな?おにいちゃんの都市伝説講座その1を思い出してみようか。」
「悪い人も都市伝説も夜中に動く?」
「その通り、良くできました。」
上田明也は穀雨に自らの持つ対都市伝説の技術を全て教え込もうとしていた。
それは自らが人を襲った経験、都市伝説に襲われた経験、それらから学んだこと。
それを名付けるならば都市伝説と戦う為に都市伝説を学んだ技術だった。
そもそも上田明也は不器用な人間だ。
だからこそあらゆる物事をマニュアル化して徹底的に覚え込むことでそれを補うのだ。
素晴らしいセンスで100点を取るのではなくどんな科目でもマニュアル通りに動いて90点を取るタイプ。
しかし追い詰められれば自らの実力以上の力を発揮する。
そういう人間性が彼を助けていたし、穀雨に都市伝説を狩る方法を教えるのにも役立っていたのである。
自らが人を襲うときに夜を選んでいた以上、今回の相手も夜を選ぶ。
彼は解っていた。
「良いかい、穀雨ちゃん。
安全に生きていく一番大事な方法は夜に外を出歩かないことだ。
だから一番最初に君に教えることはその悪者は夜中に動くってことだ。」
「はーい。」
穀雨の持つ心の器は大きい。
それは十三階段の契約者のみならず上田もうすうす感じていたことだった。
だから穀雨に戦闘技術を教えるのは上田にとっては急務になっていた。
何時、彼女が戦いに巻き込まれてもいいように。
「今日は新しいことを教えたいと思う。
都市伝説との戦いは相手の情報を手に入れた時点で半分は終わっている。」
「なんで?」
「相手の長所や弱点を知っていれば戦いやすいだろう?
それに相手が強くて勝てないと思ったら逃げれば良いんだ。
逃げる手段だけは何時でも確保しておいた方が良い。
逃げればその時点で戦闘は終わりだしね。」
「うーん……、解った。」
「今日の相手はザ・フック。車で夜道を行くカップルに襲いかかる右手が鈎爪の男の姿をした都市伝説。
身体能力は高く、被害者の真上までワープできる力もあるがそれ以外に大した特徴はない。
車の中に居る限り襲って来られないのも中々間抜けだしな。」
「お兄ちゃんと私ってカップルなの?」
非常に幸せそうに微笑む上田。
「まあ男女二人なら何とかなるよ、多分。」
「浮気したら茜お姉ちゃんに怒られるよ?」
「そうだな、気をつけないとな。」
そういって笑う上田、しかしその実二股ってレベルじゃないのは秘密である。
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:33:33.93 ID:rfL+zqce0
支援
カップルという言葉を聞いてだろうか?
彼も普段は子供と思っている穀雨がやはり女性に見えてしまう。
彼は自分のどうしようも無さが嫌になったようだ。
「なあ、穀雨ちゃん。」
それを誤魔化すように穀雨の肩を掴んで瞳をジッと見つめる上田。
その表情は泣いているようで笑っているような不思議な表情。
「どうしたのお兄ちゃん?」
「ん?いや、穀雨ちゃんに聞きたいことがあるんだよ。」
さて、この幼女に自らの言葉は刺さるのだろうか?
自分の言葉で踊るのだろうか?
彼女という人間は俺の言葉で俺の思うがままになってくれるのだろうか?
彼は急に、それを実験してみたくなっていた。
幸い今は真夜中。
彼女に何かしても気付く人など居ない。
上田明也は彼女を都合で救った以上、都合で彼女を汚す可能性もある。
それに気付いた人間は何人いただろうか?
居たとして彼女を助けられただろうか?
そうやって自らを悪におとしめることで自らを正当化する。
悪いことをしても良い、だって俺は悪人だから。
上田明也が口を開こうと思った瞬間だった。
コンコン
車の天井を二回程叩く音。
どうやら彼らの元に都市伝説が来たようだ。
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:34:50.34 ID:rfL+zqce0
このロリコンめ(褒め言葉)支援
「おにいちゃん!」
「ああ、ごめん。後で話すよ。それじゃあお兄ちゃんの都市伝説狩り講座3だ。
まずは先手必勝。
襲う側の人間がいきなり襲われるなんて誰も思わないからな。
俺も思わないし。」
最後の言葉はぼそっと呟くに留める。
「じゃあサングラスかけて、耳栓して……。」
てきぱきと穀雨に耳栓とサングラスをつける上田。
車のドアをわずかにあけるとぬいぐるみを投げ出す。
次の瞬間。
ぬいぐるみは上から伸びてきたフックに捕まってあっという間に真上に持って行かれた。
上田は素早くドアを閉めると耳を塞いで目を閉じた。
――――――キィイン!
激しい光の奔流と音の固まりが辺りに満ちる。
幸い公園でのことなので近くに人は居ない。
ドスンと音を立ててフックの都市伝説は落ちてきた。
「とまあこういう風に囮で騙す作戦は汎用性が高くて使いやすい。
囮は何時でも上手に使うんだよ。」
「わかった。この後はどうするのお兄ちゃん?」
「うーん、依頼した人から生け捕りにするように頼まれていてね。
もう連絡は済んでいるから後はこいつを捕まえておくだけさ。」
警戒しながら車を降りてフックに近づく上田。
「都市伝説講座狩り講座4、一撃必殺。」
上田は袖から村正を取り出すとフックの由縁たる鈎爪を真っ二つに切り裂いた。
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:38:01.89 ID:rfL+zqce0
しええん
「お兄ちゃん、悪い都市伝説でもあんまり虐めちゃ駄目だよ!」
上田明也の殺気を敏感に感じ取ったのだろう。
子供らしい優しさでそれをたしなめる穀雨。
「安心しな穀雨ちゃん。殺しちゃったりはしないよ。
でも都市伝説は人間よりも力が強かったり頭が良い者も多い。
最後の最後まで優しいことを考えちゃ駄目だ。
一撃で相手の戦闘能力を確実に削ぐことを考えて動こうね。
それじゃあ今日の都市伝説講座は終わり。
茜お姉ちゃんの所に先に帰っていてくれ。」
半端な温情をかければ逆に殺される。
それが解っている以上、上田明也は容赦しない。
「はーい!」
穀雨が赤い部屋に入ったのを確認すると上田はフックに向き直る。
「まぁ、非情を学ぶのはまだまだ先で良いよね。」
既に手足の腱は切っているのだが念には念を入れておこうと彼は思ったのだ。
それと女性を口説こうと言うときに邪魔された恨みもある。
「ここから先は女の子には目の毒かな?」
村正をしまって特殊警棒を取り出すと、上田はフックの骨を折る作業に入った。
いっそ殺した方が優しさだよなあとか、殺さない限り何しても良いんだよなあとか呟く。
彼は不器用な人間だ。
しかし、なんだかんだいって他人を痛めつけることだけは生まれつき超得意なのだ。
【上田明也の探偵倶楽部11〜アキナリ先生の都市伝説狩り講座〜fin】
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:39:07.30 ID:rfL+zqce0
上田乙ー!
>しかし、なんだかんだいって他人を痛めつけることだけは生まれつき超得意なのだ。
相変わらず最低で何よりだ(褒め言葉)
アメリカに行った(行く?)上田が、どうか禿に見付かりませんように
【禿に見つかったらそれはそれで面白いよね!】
【上田明也の探偵倶楽部】
俺は何故にこんな世をすねた人間になったのだろうか?
時々、疑問に思うことがある。
君たちは考えたことがないだろうか?
この世界には自分より不幸な人間が星の数ほど居るのだ。
原因は自業自得な物から悲劇としか言いようのない人間まで様々にいるが、自分より不幸な人間が居るのだ。
小学校の時、給食時間にパセリを残した俺に教師が言った。
世界には俺の残したパセリ程の食事も食べられずに死ぬ子供が居ると。
当時まだ心の優しかった俺は言ったのだ。
じゃあ僕が届けてくると。
そしたらその教師なんて言ったと思う?
その子達の分まで貴方が食べなさいだぜ?
狂ってやがるよ、あれだから日本の教育はおかしくなっていくんだ。
こうして見知らぬ他人を平気で見捨てられる心を持った人間を育てるのがこの国の教育なのだ。
俺に責任は無いのだ。
俺は国家によってこのような冷酷な人間に製造されたのだ。
……という戯れ言を吐いた所でこんにちわ。
上田明也だ。只今空港に居る。
あと少しでアメリカに出発しなくてはいけない。
さて、戯れ言の次は真面目な話をしてみよう。
俺は小学生の頃からろくでもない子供だった。
ちょっと乱暴だけど元気の良い男の子の振りしてクラスの暗い男子を水泳の授業で何度もプールに突き落として虐めてみたり、
吠えた声が五月蠅い近所の犬に毒を毎日ゆっくり盛ってみたり、
女子を口喧嘩で徹底的に追い詰めて全員泣かせてみたり、
クラスで威勢の良い奴を中学生相手に喧嘩するようにこっそり誘導してみたり、
とにかくろくでもない子供だった。
殺人以外の犯罪をフルコンプする挑戦をしててね。
真面目に六法全書を読み込んだよ。
中学生の頃も似たような物だったんだけど……。
まあ猫被ることを学んだ。
悪いだけの奴って長生きできないからね。
自分で手を下すのは余り良くないのだと教えられたよ。
高校生になってからは少し賢くなってトラブルの種をまき散らすだけになっていたよ。
そんな学生時代の中で学んだことは簡単さ。
俺って他人が不幸だと心の中にぬくもりみたいなのを感じるんだよ。
良いね、人の不幸は蜜の味なんて物じゃない。
他人の不幸を蜜の味なんて言っている人間は単に性根腐っているだけさ。
他人の不幸ってのは蜜じゃなくて暖かい毛布なのさ。
個人的な趣味としては不幸を噛みしめて前向きに生きている人間なんて見るともう堪らなくなっちゃうね。
俺は子供の頃からそういう人間だったのさ。
でも、単に不幸なだけじゃつまらない。
必死に不幸を克服しようとする姿が好きなんだ、涙を誘う。
例えば犬を殺された飼い主の女子はそいつが寿命で死んだと勘違いしてね。
俺がちょっと慰めてあげただけでコロッと俺に頼るようになっちゃった。
俺に依存して愛犬の死を乗り越えようとしたわけだ。
傑作だ。
笑いが止まらない。
人間を誘導するというのはこんなにも楽しい。
人間は人間が手に入れた玩具の中で最良の物だろう。
でもそれは俺が悪人だから人を不幸にするのが楽しいとかそういうのじゃない。
俺は自分の不幸も愛する。
それを克服する度に強く大きく成長する自分という人間が大好きだ。
人間の持つ無限の可能性の存在をはっきり信じられる。
そう言う意味ではメルも素晴らしい……パートナーだった。
玩具というのは余りに薄情だからねえ。
やっぱり素敵なパートナーだ。
優秀な契約者を探し続けた彼女の旅は想像するだけで堪らない。
偉い、よく頑張った。
俺が褒めてやる。
185 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:43:07.04 ID:rfL+zqce0
>【禿に見つかったらそれはそれで面白いよね!】
それはつまり、上田が禿に見付かるネタを書いてもいいことだな支援
【逃げるぞー、超逃げる】
さて、それは良い。
それは良いんだ。
俺が話したいのはそういう些末なことではない。
そんな俺の誘導に唯一かからない奴が居た。
小中高と友人でね。
明日晶という女だ。
奴は超能力者だった。
一日三分間限定の超能力者だった。
俺が面白可笑しく他人を不幸に陥れるのを彼女は黙って見守ってくれた。
そういう彼女が俺は好きだったし、彼女も俺が好きだったから、俺の本性を知って尚一緒に居てくれた。
せめて彼女が幼女だったら本気でつきあえたんだがなあ……。
ちなみに何故か弟にだけは会わせてくれなかった。
まああいつと俺は本来会わない方が良いタイプの人間同士だ。
会ったらその場で戦争だよ。
そいつから電話が来たんだよ。
内容は弟に手を出さないで欲しいだとさ。
泣かせるねえ。
あまりにも泣かされたから俺はそれを受けた。
というわけで明日君との和解があった訳よ。
話してみると、否、話してみなくてもあいつも良い奴だよね。
正義の味方という在り方、他人の幸福に安心を覚える人間は嫌いだがあいつのことは気に入った。
今日はそんな明日晶と俺の昔話をしようと思う、暇つぶしにね。
本当にいい女だぜ、あいつはさ。
187 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:45:58.88 ID:rfL+zqce0
俺…上田を大変な目にあわせるネタ書くと、なんだかゾクゾクしちゃうんだ
これって恋だよね支援
188 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:48:44.44 ID:O1SZuDHf0
酔っ払いって恐ろしい帰宅支援
190 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:52:11.47 ID:rfL+zqce0
っと、サルったご様子
でも、あと10分以内でサル解除のはずだが…どうしましょか、代理
191 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:54:09.74 ID:O1SZuDHf0
はてさてPSPの俺にはどうしようもないなorz
tst
【上田明也の探偵倶楽部12〜超能力者の取扱説明書〜】
「学校終わったら遊ぼうぜ!」
「あー、僕パス!今日は家庭教師来るんだよ、ごめんな!」
「委員長来ないのかよー。」
「ごめんって!今度は俺の家で遊ぼうぜ!」
中学生の頃。
俺は友達っぽい人間とのたるい遊びを適当に断ると寄り道しながら家に帰ることにした。
当時の俺は厨二病まっさかりで一人で寄り道しながら帰る自分が格好良いと思っていたのだ。
今も大好きな一人の散歩さ。
しかし、そんな時に限って幸福も不幸も訪れる。
あの時もそうだった。
天から少女が一人降ってきたんだよ。
宮崎パヤオさんもびっくりの展開だろう?
事実は小説より奇なり、俺はこの言葉を実感したね。
俺は丁度ビルの谷間で空を見上げていた。
そうしたら真上のビルの屋上で爆発が起きた、で次の瞬間には俺の手の中に明日晶が居た。
「何処に行った?探せ!」
遠くから知らない大人達の声が響く。
一定の速さを保った足音が近づいてきた。
屋上から落ちてきた少女。
何かを探し回る大人達。
間違いない、狙われているのはこの少女だ。
俺はそこら辺にあった粗大ゴミの回収箱に明日晶を突っ込むと持っていた煙草で一服し始めた。
「おい、そこのガキ!」
しばらく待っていると黒服の男達が走ってきた。
恐らくこいつらが明日晶を捜していると俺は思った。
「うわっ、見つかっちまった!すいません黙ってて下さいよ!」
「そんなことどうでも良い!ここにお前と同じくらいの年頃のガキは来なかったか?」
「しし、知らないですよ!頼むから黙ってて下さいね?」
「本当だろうな……?」
彼我の間に流れる沈黙。
見知らぬ黒服に心底びびっているような振りをする。
黒服の男達も何処にでも居る普通の不良少年だと思ってくれたようだ。
「くそ……、役に立たん奴め!」
吐き捨てるように言うと黒服は路地のむこうに行ってしまった。
ゴミ箱の中でごそごそと動く音が聞こえる。
「……まだ動くな。」
小さく呟いてゴミ箱に寄りかかるようにへたり込む。
さっきの男はまだ俺を疑っている。
だからもう一度ここを見に来ると俺は踏んでいた。
当時お気に入りだったピアニッシモペティルに火を点けてしばらく待つ。
ゴミ箱の中の明日はすっかり静かになっていた。
二三分すると俺の読み通り先程の黒服がここを見に来た。
俺はヘラヘラ笑いながら頭を下げると黒服はその場所を離れた。
195 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:02:57.85 ID:rfL+zqce0
っと、支援
「もう出てきて良いぞ。」
「………プハッ!」
ゴミ箱をがたりと開けて明日晶は息を吐いた。
そして俺は煙を吐いた。
「女の子をゴミ箱に突っ込むなんてどんな神経……って委員長!」
「よう、明日晶。出席番号二番、成績は中の上、運動神経は良くて体育の時間は人気者。
ただし人に言えない秘密がある。
それは正体を隠しながら悪の組織と戦っているということで………。」
正直適当嘘八百だ。
「わわわわ!?何言っているの委員長?ていうかいつもとキャラが違う!
なんで煙草なんか吸っているの?私達まだ中学生だよね?」
「質問は一つにしてくれ。」
「うぅ………。」
「それと、」
「それと?」
「助けて貰ったらありがとうだ。」
「ありがとう……。」
「更に言うならアリガトウゴザイマスだ。」
「ありがとうございます……。」
「よし、良くできた。改めて自己紹介だ。初めまして明日晶さん。
僕の名前は上田明也、心優しい学級委員長の皮を被ったド外道です。
貴方は一体何者ですか?」
そう言って俺は手を伸ばす。
明日晶はその手を握る。
俺は彼女をゴミ箱から引き上げた。
そうだ、それが本当の意味での俺達の出会いだったと思う。
「私は……。」
「俺がここまで言ったんだ、君だって何か教えてくれ。」
「私は……、その………。」
戸惑う明日晶。
当然だろう、彼女は先程まで非日常の中に居た。
そして帰って来た日常さえ非日常だったのだ。
小学校の頃から知り合いだった心優しい友人が全くの別人になっている。
これを非日常と呼ばないならなんて呼べるだろう?
「言えないのか?君と僕との間でそんな冷たい話は無しだろう?
一応同じ中学校だぜ?」
「う〜………。」
「友達の間に、隠し事は無し。」
そう言って俺は優しく笑った。
勿論嘘である。
友達じゃないのだからいくらでも俺は嘘を吐いて良い。
だが明日晶は俺を友達だと思ってくれていたようだ。
「私ね、超能力が使えるんだよ。」
「ほうほう、それはすごいな。」
「疑わないの?」
ビルから落ちてきて無傷な少女が只の人間と言うことの方が信じられない。
俺は友達を疑う事なんてしないよ。
そういって俺は煙草をそこら辺にポイ捨てした。
【上田明也の探偵倶楽部12〜超能力者の取り扱い説明書〜 fin】
と言うわけで今日はここまで。
俺の過去話はそのうちまた語ることになると思うのでその時はどーぞヨロシク。
上田少年の犯罪フルコンプの旅は強力な助っ人を手に入れてまだまだ続くよ−。
「おにいちゃん、準備できたよー!」
ほら、もうアメリカに発つ飛行機の時間なんだ。
続きは空の上ででも語らせて貰うとしよう。
それじゃあね。
【上田明也の探偵倶楽部 続】
199 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:08:37.62 ID:rfL+zqce0
笛の人乙でしたー!
>犯罪フルコンプの旅
何という最低の旅だ(褒め言葉)
作者は上田が好きなのに、自キャラがどんどん上田嫌いになっていく現象をどうしたらいいものか
どうしたんだ黒服H、始めは上田に友好的だったのに
Hはほら、担当契約者襲撃されたし。
上田は基本悪役だから良いじゃない。
悪役が居ないことは正義の味方が居ないことより厄介だ。とか
201 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:26:53.72 ID:bQYZcDDNO
久しぶりに来たら波に乗りきれなくなってるんだぜ!
まとめ見てくる
202 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:32:00.70 ID:rfL+zqce0
久しぶりー
いつ以来だい??
てらー
さてだれのなのだろう
204 :
保守ネタ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 21:53:54.13 ID:rfL+zqce0
恋愛(?)要素で10のお題 「夢に見るほど」
夢に見る
愛しい、あの人のことを
夢に見る
毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日
夢の中であの人が出ると嬉しいけれど
けれど、同時に恐ろしくなる
夢の中で、僕はいつも、あの人に酷いことをしているから
どうして、そんな夢を見るのか
夢は、願望を表すという
僕は、あの人にあんな事をしたいというのか
よく、夢と同じような状況が、現実で起こることがある
あと少し、あと少しで
僕が、あの人に酷いことをしてしまう、その直前まで、夢そっくりで
……でも、大抵、直前で夢と違う事がおきて
だから、僕はあの人に酷い事をできないまま
もし
ずっと、夢と同じだったら
僕は、あの人にあんな事をしてしまうのだろうか
だから、僕は祈り続ける
どうか、どうか
「夢と違うじゃないか」と言う状況が、続きますように、と
『親父を親戚の飲み会から引っ張り出して来い。』という母からの命令により、俺は公民館へと車を走らせた。
ところで諸君らは、このような親戚が集まる飲み会に行ったことがあるだろうか?
親戚からすると、程よく酔いが回った最中に現れた、自分の兄弟の息子。すなわち−−−−
「おお、ひろ君か、まあこっち来て座りなさい。」
「ひろ君も大きくなったなぁ。」
「昔はあんなに可愛かったのに、すっかり立派になって。」
「お父さんに似て、男前だこと。」
「仕事はどうだ?うまくいってるか?」
すなわち、格好の酒のツマミである。
適当に受け答えしているうちに、時間はどんどん過ぎていく。正直、早く帰りたい。
「ひろ君はもう30だったかな?嫁さんのあてはあるのか?」
「彼女でも作って、親を安心させてやりな。」
「お父さんも、孫の顔を早く見てぇだろうよ。」
ザクリ、と、それらの言葉が心に突き刺さる。
彼女いない暦=年齢の俺に、そんなことをほざきやがりますか、あなたたちは。
「…”キャット・ナップ”。」
俺がそうつぶやくと同時に、部屋の親戚たちは次々と眠りについた。
「酔っ払いはこれだから…”ブースト・アーム”。」
今度はそうつぶやくと、同じように眠りこけている親父を軽々と担ぎ上げて、酒臭い部屋を後にする。
家で待つ母の心境を想像し、少々憂鬱になりながら、親父を助手席に座らせた車は自宅へと走り出した。
どう見ても私怨ネタです、本当にありがとうございました
ちなみにこの後、親父は母の雷魔法を喰らって疲れた様子でした
自己の名誉のために行っておくが、私はまだ魔法使いじゃないぞ!
207 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:03:30.72 ID:rfL+zqce0
乙でしたー!
よくある事だと思うんだぜ、こう言う事は!!
そう言う俺も、6歳年上の姉が未婚なのが心配でいつ嫁にいけるだろうとハラハラして…
あ、ちょ、姉ちゃん待って覗かないで(ry
うわああああああ!!画面の前で寝るとかいい加減にしろよ俺!!
あ、お疲れ様です。
魔法使いか・・・・・・・・・・・・フッ
あれは蒸し暑い八月のある日のこと。
じっちゃんの友人宅へ行った俺は酔っぱらったじっちゃんにジョッキ一杯の焼酎を飲まされ、そしてーーーそこから先はよく覚えていません。
翌日、ガンガン痛む頭を引きずって居間に顔を出すと、親戚一同揃って生温かい笑みで迎えてくれました。
・・・果たして俺は何をやらかしたのでしょうか。
酔っぱらいって地上最強の生物だと思うんだ。
だって羞恥心とか遠慮とか人間として必要なものが全部麻痺してるし。
あと友人達の「だれそれとつき合ってて云々」な話を聞いていつも思うんだけど、カップルって一体どういうものなんだろう?
ただ仲がいいのとどう違うのか、全くわからん・・・
210 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:17:30.59 ID:rfL+zqce0
>ただ仲がいいのとどう違うのか、全くわからん・・・
えー、2,3年前から彼女がいやがります、リア充氏ねな友人曰く
「彼女といるのは疲れる。楽しくないわけではないが」
「彼女からの誕生日プレゼントより、お前からもらった誕生日プレゼントの方がリアルで嬉しかった件」
だそうだ
俺もよくわかんね
HAHAHA、君たちはいったい何の話をしてるのやら
『彼女なんて都市伝説』だろう?
…泣いてない。断じて泣いてない。
>俺もよくわかんね
ですよねー
俺の友人も休日は部活やってるか家で寝てるか俺と二人でスマブラ大会orモンハンしてるかだった。
挙げ句の果てに、何でつき合ったのか聞いてみたら、
「いや、なんかノリで」
とかぬかしやがる。意味わかんねえ。
いやまあ、俺の恋愛観も相当変わってるって言われるんだけどね!
つき合う=結婚前提 というのはそんなに変なんだろうか
213 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:26:42.77 ID:rfL+zqce0
>>212 >つき合う=結婚前提 というのはそんなに変なんだろうか
どうなんだろうなー
友人の彼女は、わりとそう言う考え方らしいぜ
そのわりには、その職場に入って三ヶ月だった友人に猛アピールして付き合うようになったらしいんだが
会って三ヶ月で結婚前提を考えるものなのだろうか
214 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:29:50.65 ID:O1SZuDHf0
>>212 友人にそれを言ったら、だからお前は童貞なんだって返されたなぁ
くそぅ、どうせ魔法使いになる気まんまんだよ馬鹿野郎
215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:31:08.83 ID:rfL+zqce0
>>214 …今夜は、一緒に飲もうぜ?眠気MAXになるまで付き合うよ
残念ながら、俺は下戸なのでペプシと飲むヨーグルトを飲む事になるが
216 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:33:31.31 ID:O1SZuDHf0
>>215 俺はジンジャエールで乾杯しようじゃないか
なに、その気になれば水でも酔えるさ
217 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:35:30.34 ID:rfL+zqce0
>>216 そろそろ、真夜中のハイになってくる時間帯だしな
そんな状態で書かれているネタとか危険な予感しかしません、先生
>会って三ヶ月で結婚前提
世の中一目惚れって言葉もあるし、あり得なくはない・・・のかな?
そもそもなぜに童貞だとバカにされねばならぬのか。
純潔を一生を共にすると誓った人に捧げたいと思って何が悪い!
一目惚れというものは、そこに打算や期待が一切存在しない、真実の愛である、と聞いた覚えが
だがそんな境地は、私にはわからんよ…
220 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:42:43.91 ID:rfL+zqce0
>>218 >世の中一目惚れって言葉もあるし、あり得なくはない・・・のかな?
若干気になるのは、その恋人は俺や友人より年上でそろそろ結婚に焦る歳と言う事くらいだが…
…うん、今度、友人から彼女の愚痴聞かされる時は、もうちょっと優しくしてやろう
ケーキは奢ってもらうが
221 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:45:31.46 ID:O1SZuDHf0
夜のハイテンションでしか書けない俺は駄目な子かもしれん
童貞は悪くないさ
しかし捧げたいのと捧げられないのには大きな壁がある
そして世間はその壁を無視して全てを「童貞」というくくりにして差別してしまう
・・・ええ、そうですとも。俺は後者ですよ畜生
というか勢いに任せて俺はなにを言っているのか
222 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:45:45.02 ID:bQYZcDDNO
マッドガッサー編読んできた
男「気がついたらおっさんとアンサーの女体化が治っていた件について」
エ「二ヶ月放置してればな」
ア「治った! 治った!」
男「正直少しもったいなかった気もする」
エ「戻ってみれば男三人だからな」
男「誰か俺に彼女プリーズ」
俺にも彼女プリーズorz
223 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:47:04.17 ID:rfL+zqce0
>>222 貴殿だったか!!お帰りなさい!
多分、騒動終結後にマッドガッサー一味の誰かが解毒剤を持ってきたのかな、と
エンジェルさんの人、お帰りなさい!
>俺にも彼女プリーズorz
俺にもお願いします…エンジェルさん、私に彼女は出来るのでしょうか…
>ケーキは奢ってもらうが
無償ではないのかwww友人哀れwww
そもそも「結婚を焦る」ってのがよくわからないんだ、俺。
好きな人がいて、その人と一生一緒にいたいと思ったから結婚するのではなかろうか・・・
226 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:53:40.79 ID:rfL+zqce0
>>225 >無償ではないのかwww友人哀れwww
だって
「ちょっとケーキとかパフェ奢るから付き合ってくれ」
って言われるんだもん
好意は受け取らねばなるまい
普通にランチ一緒して愚痴聞いてる事もあるよ?あるよ??
自分に彼女ができないことを悔しがって主人公に彼女を作らせないのか
逆に主人公くらい幸せにしてやらないと駄目だろうと作中で彼女作らせるのかは
自由だぁーーーーー!!
228 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:58:39.90 ID:rfL+zqce0
さて
まだ途中までしか書いてないけど、こっそりと投下を開始してみようかな
229 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 22:59:59.83 ID:bQYZcDDNO
ではこっそりと支援させていただこう
しえんしえん
231 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:01:01.38 ID:O1SZuDHf0
こっそりと胸の内で支援しよう
232 :
悪意が降り立つ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 23:01:26.52 ID:rfL+zqce0
「…そう言う訳で。僕は、翼と真の友人だ。ある筋では「仲介者」とも呼ばれている…ご理解いただけただろうか?」
「あぁ。それと、ものすっごい甘いもんが好きな事を理解した」
バケツプリンを食べつつ、自己紹介してきた直樹の様子に
思わずそんな事を言い放ってしまったTさんの契約者である舞だが、彼女の言葉は事実なので否定しようがない
「疲労回復には甘い物が良いと聞くのだが」
舞の言葉にそう答えつつ、直希はまた、その大きな大きなプリンにスプーンを伸ばしている
ぷるんっ、と震えるバケツプリン
女性としては、ちょっと憧れなメニューではあるのだが…食べているうちに確実に体が冷えそうだ
ついでに言うと、直希のような小柄で細い人間が食べきれるメニューにも見えないのだが
だが、直希自身が疲労しているのも、また事実
この場所に移動してくる前に、直希があの場にいた全員が悪魔の囁きにとり憑かれていないか、「光輝の書」の力を使って調べたのだ
結果は、全員卵も植え付けられておらず、とり憑かれてもいないと言うほっとするもの
が、代わりに、いまだちゃんと使いこなせぬ力を無理矢理使った反動で、直希が疲れきったわけで
疲労回復に甘い物を摂取するのはまぁ、間違っていないのだが
とまれ、ここは喫茶店「兎の尻尾」
直希がオーナーを勤めているこの店は、大きな看板も出していないし特に宣伝活動もしておらず、住宅街にひっそりと建っており、客は少ない
よって、今回のような状況で集まるには、わりと最適な場所である
「なるほど…で、そちらの少女だが」
「「変態ストーカー」」
きっぱり
Tさんが、マゾサンタの紹介を促そうとしたのだが…真と直希が、ほぼ同時にそう言いきって自己紹介を防いでしまった
なお、現在、店のシャワーを借りている翼(タオルだけでは、タコ妊娠の粘液が取りきれなかった)がこの場にいたら、多分、二人と同時に同じ事を口走ったのだろう
エンジェルさんの人、おかえりなんだぜー
>好意は受け取らねばなるまい
ですよねー
でも
>あるよ?あるよ??
この語尾は信用できねえw
俺の友人なんか「ハワイアンバーガー奢るから奴隷契約しようぜ」なんて言ってくるSな外道だから困る。
一体何させられるんだろうなあ。無事に済んだらいいなあ・・・
234 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:04:32.68 ID:O1SZuDHf0
あれ、ぷるんっの部分に何かを感じたよ・・・疲れてるのかな支援
235 :
悪意が降り立つ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 23:04:56.42 ID:rfL+zqce0
「あぁっ!?自己紹介すらさせてもらえない!?………でも、そんな冷たさがまた素敵………!」
「アフ、ヘマハ、ボヤ起こさない程度に火力アップ」
「はぁうっ!?私のハートも燃やされる!?」
ついでに言うと、マゾは直希が呼び出したアフとヘマハによって、炎の鎖で絶賛束縛中である
リカちゃんに見せていい光景ではないので、舞の背後の方でそれは行われていた
これも、他に店内に客がいないからこそできる芸当だ
「…あの、放してあげてもいいのでは…」
「大丈夫だって、黒服さん。あれ、死なないから」
心配そうにマゾサンタに視線をやっている黒服に、そう伝える誠
そう言う問題でもないのだが、マゾがあの程度で死なないのは事実だから仕方ない
…本当なら、マゾサンタのストーカー被害にあっている三人の意見により、マゾサンタはあの道に放置してこようかと言う事になっていたのだが
タコ妊娠に襲われ、誠に心臓を握りつぶされかけ、オマケに全身黒こげになるほど焼かれた彼女を黒服が心配して声をかけてしまい、復活したマゾサンタは半ば地面を這いながら付いてきてしまったのだ
なお、一応直希の検査の結果、マゾサンタはタコを妊娠した状態にはなっていなかった
乙女の純潔は、ギリギリ護りきったらしい
「まぁ、趣味の問題には口を出さないとして、だ」
できれば、舞には見せたくないが…と思いつつ
Tさんは、黒服に視線をやる
「黒服さん、あなたは悪魔の囁きの件について、調べると言っていたな?何か進展はあっただろうか?」
「…正直、悪い情報しか、入ってきませんね」
どこか難しい顔をしながら、黒服はTさんに答える
その通り、調べれば調べるほど、悪い情報しか入ってこないのだ
236 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:06:50.78 ID:O1SZuDHf0
相変わらずのマゾで安心した
い、いつかマゾで乙女ちっくなネタを書いてやるんだから!
237 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:08:58.28 ID:bQYZcDDNO
良い感じにマゾだな
238 :
悪意が降り立つ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 23:09:51.30 ID:rfL+zqce0
「6,7年程前からなのですが…ヨーロッパを中心として、世界各地で、今回のような悪魔の囁きがぽつ、ぽつ、と姿を現し始めているんです」
「俺に憑いてたような、長期間に人間にとり憑く悪魔の囁きがか?」
誠の言葉に、黒服は頷き
「はい…それまで、そのような性質を持つ悪魔の囁きは、確認されていません」
少しずつ、少しずつだが
そのような報告が、世界各地で増え始めている
「恐らく、その頃から、悪魔の囁きが契約者を得るか何かして、能力を強化したのだと思われます」
「んー、それはわかるんだけど。どうして、それが世界中で見付かるようになったんだ?」
「いっぱいふえたの?」
舞が首をかしげ、リカちゃんが真似して首をかしげる
「恐らく、その頃と同時に卵をばら撒き始めただろうと思われます。一人の中で卵が孵れば、そこから爆発的に卵は広がっていきます。たとえ、孵った卵が一割に満たなかったとしても、
この数年で相当な数の悪魔の囁きが生まれてしまったのかと」
一つ、放り投げられた悪意が、無限に増殖していくような
そんな、タチの悪い事態
まるで、何者かが、その広がり具合を実験でもしているかのように、あちこちで卵が広がり続けたのだ
「先月、学校町内にて、ファーザー・フロストが人々を襲うという事件がありました。そのファーザ−ア・フロストは2年前からロシアで失踪していたのだそうで…
悪魔の囁きにとり憑かれた事に本人が気づき、他の方に迷惑がかからない場所で抗い続けていたそうなのですが、結局飲み込まれてしまい、学校町まで流れてきたのだそうです」
「へ?2月にそんな事件あったのか?」
きょとん、とする舞
彼女の知っている限り、そんな大騒ぎは聞いてないが…
239 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:10:32.10 ID:O1SZuDHf0
そういえばマゾは一応破れても再生するんだぜとどうでもいい情報を投げつつ支援
うにゃ、支援ー
バケツプリンか・・・あれは存外キツイものだ・・・
すまねぇ寝る…明日もスレが残ってるといいなぁ…
242 :
悪意が降り立つ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 23:13:34.50 ID:rfL+zqce0
「バレンタインの一週間前だよ。知らなかったのか?」
ようやく、粘液を流し終わったのか
店の奥から、翼が出てきた
風呂上りの上気した肌に誠が見とれ、目にも止まらぬスピードの右ストレートをくらったりしているが、それはわりとどうでもいい
「ん〜…?」
「舞、あの日は朝から酷く寒かったからと、休日なのをいい事に、1日家に篭り切りだっただろう」
「…あ、そう言えば」
「おねーちゃん、ずっとテレビ見てたの」
ぽん、と思い出した様子の舞
…ある意味、それで良かったのだろう
あれに巻き込まれていては、命の危険もあったのだから
「「組織」内部でも、悪魔の囁きにとり憑かれてしまった者が数名、出ています。幸い、大事に至ったのは一度だけでしたが…」
「…幸い、じゃねぇだろ。お前も望も殺されるところだったんだぞ」
ぼそ、と
低い声で、黒服の言葉を聞いてそう呟いた翼
低い、低い……どこまでも、憎悪が篭った冷たい声
翼の、そんな聴きなれぬ声に、一瞬、舞がびくりと、違和感でも感じたように体を震わせた
あの時の事件を思い出し、顎砕き飴契約者への憎悪を思い出している翼の様子に、黒服が慌てて話の流れを変えようとする
「…とにかく。「組織」では、悪魔の囁きの卵や、とり憑かれた初期の状態ならば、それを駆除できる薬を開発しています。早い段階で見付かれば、対処は可能です」
「藤崎ほどに、症状が進んでいる場合は?」
いい加減体が冷えてきたのか、ホットココアを口にしつつ、直希が首をかしげる
その疑問に、黒服は困ったように答えた
エンジェルさんの人おかえりなさーい!
そして支援だ
ぷるんっ
245 :
悪意が降り立つ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 23:18:39.36 ID:rfL+zqce0
「…残念ながら、翼達の話を聞いている限りでは、彼女はかなり深く、悪魔の囁きにとり憑かれてしまっているように思えます。とり憑かれた期間はわかりませんが、駆除するのは難しいかと…」
つまるところ
藤崎 沙織にとり憑いた悪魔の囁きを駆除するには、以前、誠にとり憑いていた悪魔の囁きを倒した時のように、悪魔の囁きにのみ、ダメージを与えていくしかない
正直、かなり方法が限られてきてしまう
「じゃあ、俺が焼けばいいだろ?どうせ、狙われてるのは俺みたいだし」
黒服の隣の席に腰をおろしながら、けろりとそう答える翼
ただ…若干、無理をしているようにも見えた
誠の時に続けて、再び自分が知っている人物が悪魔の囁きにとり憑かれた上、狙われたのはまた自分
ショックを受けていない訳ではないのだ
だが、翼はそう言った考えを、なるべく表に出そうとしない
全て自分の中に抱え込んで、自分だけで何とかしようとしてしまうところがある
…翼は隠し事が苦手だから、付き合いの長い者や、勘がいい者にはすぐにバレてしまうのだが
「そうですが…翼、無理はしないでくださいね」
「あぁ、平気だって。今度、藤崎と会ったら…その時に、終わらせるから」
大丈夫だ、と
そう言ったその言葉は、黒服に言い聞かせているようでいて、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえる言葉だった
「その時は、僕も手伝うぞ?」
「俺も。出来る限り、傍にいるからな」
直希と誠の、その言葉に
翼は、小さく首を振る
「大丈夫だって、俺一人で充分だから」
翼に悪魔の囁きが憑きそうでふあんだよママン
247 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:20:43.72 ID:O1SZuDHf0
248 :
悪意が降り立つ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 23:23:27.31 ID:rfL+zqce0
「でも、チャラい兄ちゃん。相手が物量作戦できたら、ちょっとヤバいんじゃないのか?」
舞の言葉に、翼はう、と反論できずにいる
…事実、先ほどの戦いで、大量のタコに圧し掛かられ、焼ききるのに時間がかかってしまった
相手が、大量のタコを放ってきたり…誰かから借り受けているらしいコーク・ロア支配型の被害者を大量に連れてこられた場合、押し切られる危険がない訳ではない
「そう言う事だから。俺は、お前が断っても、お前を助けるからな」
翼の手を握って、そう言った誠
軽くジャブをくらっているが、懲りた様子はない
「その点に関しては、僕も同じだ。僕や姉さんは、いつだって無条件で君の味方だ。君の身に危険が及ぶならば、いつでも力になろう」
バケツプリンを半分ほど食べ進めた直希が、誠の言葉に続いた
彼の姉の事も引き合いに出されて、うぅ、と翼はますます押し黙る
…それでも、素直に友人達の助けを承諾する事が、翼はできない
翼は、自分の事で他人を危険な事に巻き込むことが、どうしてもできない
小学生の頃、誠を初めクラスメイト達を都市伝説の引き起こした事件に巻き込む形になってしまい、恐ろしい思いをさせてしまった、と言う経験が、それを躊躇わせてしまうのだ
それを、わかっていて
誠も直希も、協力を惜しもうとしない
三人全員が都市伝説契約者となっている今なら、なおさらだ
「いい友達もってんじゃん、チャラい兄ちゃん」
ちょっと、ッアー、な匂いがしなくもないけど
…そんな言葉は、舞は喉の奥に飲み込んでおいた
うん、そう言う世界もあるのだ
249 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:25:14.14 ID:Ay4q2OA3O
ああ、本当にいいおほもだちだな支援
250 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:26:21.85 ID:O1SZuDHf0
ああ、全くいいおホモだちだ
251 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:26:22.26 ID:ArZ/s/sQ0
オホモダチ・・・いい響きだな支援
おほもだちの美しい友情だ……
253 :
悪意が降り立つ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 23:27:20.99 ID:rfL+zqce0
……と、ここで
黒服から聞いた情報などを頭で整理していたらしいTさんが、再び口を開く
「…ところで、黒服さん。あの藤崎という女性だが…「意図的」に悪魔の囁きを植え付けられた、という可能性はあるだろうか?」
Tさんの、その問いかけに
ぴくりと…かすかに、翼が体を跳ねらせた
そんな翼に気遣うような視線をやって…一瞬、迷いを見せながら、黒服は答える
「確証は、ありません。ですが……私個人の考えとしましては、藤崎 沙織さんもまた、何者かによって意図的に悪魔の囁きを植え付けられた可能性が、あります」
翼と関わりのある人間が、二人も悪魔の囁きにとり憑かれ、翼を襲った
それが偶然とは、黒服はどうしても思えない
何者かの明確な悪意を、はっきりと感じるのだ
「大丈夫だとは思いますが…今度、念のために、翼が高校生だった頃の同窓生に、悪魔の囁きがとり憑いていないか、調べてみようと思います…確か、藤崎さんは、翼とは三年間、同じクラスでしたね?」
「あ、あぁ」
「僕や誠と同じで、三年間一緒だったな」
誠と藤崎の共通点は、それだ
それだけ、翼と関わっている事になる
…悪魔の囁きを植え付けられた条件は、それかもしれない
確証は、まだ、ないが
「そう言えば、あのポケモンっぽいドラゴンに乗ってた子供。あれ、その藤崎って人をねーちゃん、って呼んでたよな?弟か?」
「いや、藤崎に弟はいなかったはずだ。兄貴ならいたと思うが」
「あれは、実のお姉さんって言うより、慕っている年上の女性をそう呼んだ、って感じじゃないでしょうか?」
ぶらんっ、と
炎の鎖に絡めとられ、悶えているうちに逆さ吊り状態になっていたマゾが、ここで会話に参加してきた
マンを持してマゾが動いた支援
255 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:30:45.44 ID:Ay4q2OA3O
クラスで好意を寄せていた人全員が取り憑かれていて尚且つ半数以上が男だったらどうしよう支援
256 :
悪意が降り立つ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 23:32:36.82 ID:rfL+zqce0
…ちゃんと、スカートがめくれないよう一生懸命抑えているあたりは乙女である
恋する乙女として、そう言う感情は何となく感じ取れるようだ
単なる偶然かもしれないが
「だとしたら、藤崎は運がいいのかもしれないな。コーク・ロア支配型を使役している者は、捕らわれそうになったり情報を漏らそうとすると、口封じされるらしいからな」
「…何らかの都市伝説よって操られた犬や、巨大なライオン型の都市伝説。それに、皆さんが遭遇したゲームから生まれた都市伝説に口を封じられた、と言う報告がありますね」
少し悲しそうな表情で、直希の言葉に頷く黒服
もう、結構な数の人間が、口封じされてしまっている
それだけ、残りのコーク・ロア支配型の契約者達は…彼らにその能力を与えた人間に、近いと言う事か
「……だったら、藤崎を正気に戻すのも、急いだ方がいいな」
「でしょうね。彼女の場合、タコ妊娠に意識を飲まれかけている点も、心配です」
藤崎の身を心配している翼と黒服の言葉に、そこまで心配する価値はないだろうに、と誠がぼそり、呟いたが
それは、翼と黒服の耳には届かなかったらしい
「コーク・ロアか。その問題は、悪魔のささやきの騒動と連動していると考えていいのか?」
「そのようです……お恥ずかしい事に、コーク・ロア支配型契約者の増大に関しましては、どうも「組織」内部による何者かの手引きもあるようで…」
かすかに、頭痛を覚えた様子の黒服
…何者かが、都市伝説の契約書を誰かに大量に横流ししたらしいのだが、その犯人は未だに見付かっていない
「Tさんたちも、どうかお気をつけください。まだ、相手の戦力が完全にわかっていませんし…」
「…敵の大ボスが、まだわからないからな」
マッドガッサーの騒動の時は、むしろ騒動の大元が前面に出て暴れていた
が、今回の敵は、裏に裏にと隠れるタイプのようだ
そう簡単に、尻尾を出してくれるかどうか
257 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:34:14.06 ID:njZOubI60
し・え・ん
258 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:35:27.82 ID:O1SZuDHf0
羞恥心とマゾは似て非なるものなんです支援
しえん!
260 :
悪意が降り立つ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 23:36:18.76 ID:rfL+zqce0
…一同が、考え込む中
翼は、俯いて…かすかに、暗い考えにとり憑かれかける
狙われたのが、自分だとして
まさか、自分を狙う為だけに、相手が色んな人間を巻き込んでいるのだと、したら?
…まさか、と思いつつも
感じ取った悪意の大きさに、小さく身震いする
(……いや)
そんなものに、怯えていてはいけない
自分は、黒服と望を、護らなければいけないのだから
家族を、護らなければいけないのだから
たとえ、どんな相手からの、どんなに大きな悪意が向けられていようとも
自分は、それから逃げる訳には行かないのだ
出来うる限り、誰の手も借りずに事を済ませたい
翼は、そう考えるのだった
…一同が、喫茶店「兎の尻尾」で話し合っていた頃
学校町 駅
「……ココが、学校町か」
そこに
一人の男が降り立った
まるで人形を思わせる、美形の西洋人男性だ
261 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:38:46.32 ID:O1SZuDHf0
もし仮にマゾがこの日のことを周囲に語るとしたら、「人気のない店内で熱い時間を過ごした」と表現するでしょう支援
262 :
悪意が降り立つ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 23:39:00.37 ID:rfL+zqce0
道行く女性達が、思わず彼に視線を奪われている
だが、彼はそれを全く気にした様子なく
ニヤリ、端整な顔立ちに笑みを浮かべていた
「さぁて……ボスから呼ばれた事だし。好き勝手やらせてもらおうか」
『ソウサァ!!好キ勝手ニヤラセテモラオウジャネェカァ!!』
「アァ、そうさ………滅びよビッチ」
くっく、と男は笑う
この日、学校町にまた一人
悪魔の囁きを宿した男が、降り立ったのだった
to be … ?
263 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:39:17.90 ID:bQYZcDDNO
しえーん
264 :
おまけ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 23:42:42.86 ID:rfL+zqce0
…話が、粗方終わった後
バケツプリンを食べ終えた直希がココアを追加注文して、やっぱ体冷やしてんじゃねぇか、と翼に怒られている、その状況で
マゾの状態を心配して、少し席をはずしていた黒服
その黒服に、Tさんが近づく
「ところで、黒服さん」
「はい、何でしょう?」
「今年の初詣の時なんだが…日焼けマシンの契約者、翼を捜している女性と会ったんだ」
…ぴくり
Tさんのその言葉に…黒服の表情に、かすかに、嫌悪感が浮かんだ
「それは、もしや…少々、年齢に会わぬ服装をなさっていた方では?」
「あぁ、そうだな」
「……朝比奈 マリナですね」
小さく、ため息をついた黒服
軽く頭を振って、Tさんに微笑を向ける
「…翼に直接伝えないで頂いて、ありがとうございます…できれば、その事は翼には、黙っておいてください」
「彼の関係者なのか?」
だとしたら、悪魔の囁きが憑く可能性もある
そう考えて、Tさんは伝えのだが
黒服は、困ったような表情で答える
「……あの子の、実の母親です。彼女は」
「…?」
翼は、藤崎に「日景君」と呼ばれていた
265 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:43:42.91 ID:tBjS9WML0
保守
支援!
267 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:44:56.44 ID:O1SZuDHf0
Dさんが嫌悪とは珍しい支援
268 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:45:05.71 ID:Ay4q2OA3O
敵がまた増えただと?
支援
269 :
おまけ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 23:46:34.52 ID:rfL+zqce0
苗字が違うのに…母親?
「…複雑な事情があるようだな」
「はい…あの子は、親と同じ苗字を名乗る事を、拒絶してしまいましたから」
もっとも、朝比奈 マリナは既に離婚している訳で、別の苗字を名乗っているだろう
「日景」姓は、実家に勘当されている身で使えないから、多分、別の苗字を
「…どう言う事情があったにせよ、青年の関係者だ。もし、青年の関係者に悪魔の囁きが植え付けられていっているなら、そちらも警戒する必要があるかもしれない」
「……そう、ですね」
Tさんの言葉に頷いた黒服
今度、顔を合わせたならば…できれば、顔をあせたくないが…調べてみよう、と考える
「ご忠告、ありがとうございます」
「あなたには、正直世話になってばかりだからな」
この程度では足りんさ、と苦笑するTさん
とまれ、伝えるべき事は伝えた
舞の隣の席へと戻っていく
………?
舞が、店のメニューを見て、考え込んでいる
視線の先のメニューは…
「…舞よ」
「ふぇ!?な、何だよ」
「タライババロアは、バケツプリン並に体が冷えるメニューだと思うぞ」
「う」
270 :
おまけ ◆nBXmJajMvU :2010/03/07(日) 23:48:32.16 ID:rfL+zqce0
わかってるよ、と視線をそらす舞
…まぁ、女性として、その手のメニューにちょっと憧れる気持ちはあるのかもしれないが
「…随分と、量の多い甘味が充実している店だ」
メニュー表に並ぶ、金魚鉢パフェにバケツプリン。タライババロアというメニューを眺めながら
Tさんは、軽く苦笑してそう呟いたのだった
to be … ?
なんでそんなメニューしかないんだよwwしえ
272 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:49:21.81 ID:Ay4q2OA3O
乙でしたー!
273 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:49:36.61 ID:rfL+zqce0
ぎゃあ、
>>269の一行目が抜けてるorz
一行目に「 だが、黒服が口にした女性の苗字は「朝比奈」だった」が入ります
とまれ、情報整理的なもの
あんまり整理できてないのは作者である俺のせいですごめんなさい
そして、Tさんの人と占い師の人に焼き土下座orz
274 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:49:42.62 ID:bQYZcDDNO
タライババロア食ってみたいwwww
乙!
275 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 23:51:49.85 ID:rfL+zqce0
>>233 >この語尾は信用できねえw
そんな ひどい
>>249-252 おホモだち言うなお前らwwwwww
>>255 それはない…と、思いたい
>>261 マゾwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
>>271 ふ、普通のメニューもあるよ!?
直希の好みのせいで、やたら甘味が充実してるけど
乙っしたー!
続きにwktkしとります!
277 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 00:00:39.04 ID:sL/18oN40
>>268 >敵がまた増えただと?
…実は、騒動にTさんが参戦してくれる事が決定したので登場したとか秘密
Tさん契約者ってか舞ちゃんに一瞬で無力化される程度の相手ですが
今現在出てるだけの情報で、今回追加した敵の契約都市伝説わかった人が居たら一番最初に当てた人のリクエスト受けちゃうぞー。と眠気でハイな頭で言いつつおやすみ
明日もスレが残っていれば幸せだ
舞に一瞬で!?
なんなんだコイツはー!?
279 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 00:18:13.41 ID:z82ksaTq0
>舞ちゃんに一瞬で無力化
つまり写真に撮られてアウトな都市伝説か、と予測してみる
じゃあ俺は
>>「アァ、そうさ………滅びよビッチ」
から妄想して処女厨ことユニコーンで
281 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 00:25:49.40 ID:z82ksaTq0
そういえばユニコーン使ったネタも考えてたなあ・・・メモっとかないと。
よし久しぶりに来れるようになったことだし、徹夜体制で明日投下できるよう頑張るかー
ほ
ろ
284 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 01:42:01.56 ID:LvdV/zhDO
こ
285 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 02:09:36.14 ID:LvdV/zhDO
ー
す
287 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 03:05:28.27 ID:F+OPkvSK0
と
ほ
289 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 04:21:06.46 ID:F+OPkvSK0
っ
ぷ
290 :
方向音痴なメリーさん:2010/03/08(月) 04:33:16.04 ID:lQOwR3KxO
数十席を備えた室内にはまばらに人影が点在していた。
決して多くも少なくもない人数。だというのに彼らが声を張り上げることはなく、その口から漏れるのは主に呼気ばかり。時折その中に溜め息や囁きが混じり込みはしても、騒音になるには程遠い。
場を支配するのは圧倒的な静寂。ページをめくる音もペンを走らせる音も、ささやか過ぎて静寂の後押しにしかならない有り様だ。
いつもの定位置のカウンター内で、俺はクン、と鼻をひくつかせた。
長くここに身を置いていても容易に嗅ぎ取れる、濃いインクと微かなカビの匂い。古書特有の空気は本に慣れ親しんだ者にとって、不快どころか心を落ち着かせる要因以外の何物でもない。
首の痛さが麻痺するほどに没頭していた読書から顔を上げると、校庭に面した窓から一面に差し込む西陽に染まった図書室が見えた。
(そろそろ閉館の時間かな……)
いつもの習慣で壁に掛けられた時計で時刻を確認しようとしてたところで、不意に室内の中央から競り上がってくる鉄塔に意識を奪われた。
ドンドン カッ ドンドン カッ
どこからともなく響いてくる重低音を伴い、木造の床から脈絡なくニョキニョキと生え、急速に成長していくそれ。その先端で長いツインテールをはためかせた少女が身を乗り出し、拡声器を口元に押し当てた――。
【もう……行き場がないの この恋の 熱量♪Ahhhhhhhhh!!】
耳をつんざくデスボイスに思わず目を見開いた俺の視界を、急転直下で真っ暗闇が塗り潰した。
「……あれ……?」
暗さに慣れていく目はようやく、十数年以上馴染んだ自室の天井を認識し。遅まきながらさっきまでの現象は夢だったのだという結論に至る。
その間も枕元では携帯が、ソウルフルな歌声とメロディーとを流し続けていた。
――こいつが元凶か。
肝心の着信音を設定した俺自身の咎は無視して、携帯を睨み付ける。とはいえ無機物の携帯が殺意を感じ取ってくれるわけもなく。仕方なしに俺はそれを耳元へ運んだ。
「ふぁい、もひもひ……?」
『わ、私、メリーさん。今、空き地の土管の中にい――』
「あー……。どちらのメリーさんで?」
『――え?メ、メリーさんはメリーさん、なの!』
「うん、だからぁ……。ただメリーさんってだけ言われてもさぁ……」
『だってだって!そんなこと言われてもメリーさんはメリーさんなんだもん!!」
「だからよぉ……、ただメリーさんってだけ言われてもなぁ……」
291 :
方向音痴なメリーさん:2010/03/08(月) 04:34:42.85 ID:lQOwR3KxO
八割以上を睡魔に支配されていた思考に、ゆっくりと理性が戻り染み渡っていく。
「……もしかして。昨夜、桜がどうこう言ってたメリーさん……なのか?」
『ヒッ?!サクラコワイ、サクラコワイ、サクラコワイ、サクラコワイ、サクラコワイ、サクラコワイ』
「おーい……?」
『サクラコワイ、サクラコワイ、サクラコワイ、サクラコワイ』
……ダメだ、こりゃ。
受話器に押し立てた耳からは、呪詛にも似た呟きと共に尋常でなくガチガチいう歯の音と体の震えだけが聞こえてくる。
その怯えの理由を知りたい気はしたものの、再び押し寄せてきた眠気には抗えず。意味不明なメリーさんの呪文を子守唄に再び俺の意識は途切れた。
292 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 04:46:12.34 ID:lQOwR3KxO
遅まきながら代理乙&ありがとうございました。
元々保守を兼ねて考えていたネタだったので、規制が解け自力で書き込めて良かったです。こんなネタでお手を煩わせるのは流石に忍びなかったので……。
基本的にギャグベースの設定なので戦闘力の有無はさておき、のんびりちまちまと進めさせて頂くつもりでおります。
293 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 07:05:14.92 ID:z82ksaTq0
おはよー&残ってた!
ていうか投下早え!?
上田や明日からしたら極道の息子の獄門寺とかどうなんだろうか
295 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 09:33:03.21 ID:SrWqb6sL0
おっはよー、咆哮音痴のメリーさん乙!!
>>280 ビンゴ!!
>>294 一応、獄門寺組は、地域密着型の極道なんで悪さはあんまりしていませんが
どうなんでしょうね
『あれ? 俺すごくね? なんか目覚めてね? 超能力とか』
T「非常にどうでもいい所でな」
舞「こうやって人生のラッキーを消費してくんだな」
リ「しょじょ?」
T「リカちゃんはまだ知らなくて良い」
297 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 09:58:08.54 ID:SrWqb6sL0
>>296 そんな訳で、リクエスト受けるんだぜー!
そいつ、な…ユニコーンと契約してるのはいいけど、弱点もユニコーンと一緒になっちゃってるんだ
よって、処女の膝枕で寝ちゃって無力化されちゃうんだぜ
299 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 10:04:55.09 ID:SrWqb6sL0
お昼ご飯後もスレが残っていたら幸せだ!!
そして、皆さん
ホワイトデーまで一週間をきりましたよ
ホワイトデー特に書くネタが無い俺は皆の投稿を待つ構え(一応完結してるし)
舞「写真増やしたい!」
誠を買収して(前回黒服の写真を撮影しています)。今度は直希に面白そうな写真を求めたいそうです。(天使とかでも可)
うわぁ、無茶ぶりだ……
でかけるほ
302 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 11:54:55.43 ID:dg6UtCOhO
ほしゆ
303 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 12:47:18.35 ID:X0bTX0ZV0
ほほほほほ
304 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 13:03:52.04 ID:JgKFUCk80
ドーナッツごちそうさまでしたー
>>300 了解しましたなんだぜ!!
305 :
小ネタ ◆nBXmJajMvU :2010/03/08(月) 13:20:38.58 ID:JgKFUCk80
それは、喫茶店「兎の尻尾」でのやり取りから、数日後の事
「直希の面白そうな写真?」
「あぁ」
たまたま、学校帰り、茶会の帰りの誠と遭遇した舞
誠にこんなことを提案していた
舞が見た感じ、直希は性別の判断に迷うほど、中性的な姿だった
よって…彼女の勘が、告げていた
あれも、絶対女装が似合う!!と
「ちなみに、もし面白い写真が撮れたら、報酬としてこんなもんがあるんだけど」
と、そう言ってぴらり、誠に見せたのは
昨年、初めて黒服がマッドガッサーの被害にあった時の写真
その、見事なバストが強調されている写真で
「よし、任せろ」
誠は、いい笑顔で携帯を取り出した
駄目だ、この巨乳好き。早くなんとかしないと
「……あぁ、直希か?今、お前…………………あぁ、ちょうどいい。ちょっと来てくれっか?場所は………」
何かしら、二言三言、話して
……数分後
「誠、僕に用とは、何だろうか?」
306 :
小ネタ ◆nBXmJajMvU :2010/03/08(月) 13:24:09.86 ID:JgKFUCk80
現れた、直希の姿
それを、見て………舞は、素早くカメラを取り出すと、いい勢いでフラッシュを連打した
「…ふむ?そちらのレディは、以前お会いした人形と一緒のお嬢さん。僕に用があったのは、そちらのお嬢さんか?」
「あぁ。ついでに言うと、その用はもう済まされてるな」
「………むぅ?」
小さく、首をかしげる直希
白いリボンが結ばれた髪が揺れる
「まさか、女装でまんま来てくれるとは思わなかったぜ」
「かわいいの」
ぴょこん
舞の鞄から、リカちゃんがそっと顔を出してそう言ってくる
直希の、本日の服装
それは、カッソク
すなわち、シスターの格好です、本当にありがとうございました
「ふむ、姉さんの陰謀により、服がこれしかなかったのでな」
「だからって、ごく自然に着るなよ。お前は」
誠の突っ込みにも、直希は小さく首をかしげるばかりだ
慣れとは、正直恐ろしい
この日
舞の写真コレクションに、また新たな一枚が追加されたのだそうな
おしまい
307 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 13:25:04.28 ID:JgKFUCk80
Tさんの人に土下座しつつorz
リクに答え切れてるかどうか不安ですが、書いてみたんだぜ!!
308 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 13:42:41.86 ID:JgKFUCk80
ホ
309 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 13:59:32.39 ID:JgKFUCk80
ワ
したらばでやれ
311 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 14:25:38.24 ID:JgKFUCk80
ほ
312 :
保守ネタ ◆nBXmJajMvU :2010/03/08(月) 14:43:24.31 ID:JgKFUCk80
恋愛(?)要素で10のお題 「視線が重なる」
眠るために、ベッドに横たわる
天井を見上げれば…そこに貼った、アイドルのポスターと視線があう
視線が合うように、そこに貼ったのだ
こうやって視線が合うたび、幸せになる
「おやすみ」
そう、ポスターに声をかけた
返事は返ってこないとわかりきってはいるが、習慣のようなものだ
ポスターにおやすみの挨拶をして、俺は意識を眠りへと沈ませていった
「…おやすみなさい」
彼が寝てから、私はそっと、おやすみの返事を返す
ポスターと視線が合うように貼ると、何かが起こるという都市伝説
それで、私は自我を得た
でも、彼に何か危害を加えようとは思わない
だって、彼は私を大切にしてくれるから
視線を合わせておやすみといってもらって
彼が寝てから返事を返す
これが唯一の、私たちのコミュニケーション
313 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 15:03:08.26 ID:JgKFUCk80
あ
314 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 15:22:34.69 ID:JgKFUCk80
く
315 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 15:42:31.88 ID:JgKFUCk80
ま
316 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 16:00:18.78 ID:X0bTX0ZV0
で
「…………ふむ」
老人の手が、血まみれの女性の腕へと触れた。
ただそれだけの動作のはずなのに、女性の体全体が淡く輝き始める。
何が起こっているのか、山田には知る術はない。
しかしあの占い師と似たような検分を行っているのだろうという予測はついた。
光は時折強く淡く、波打つように強弱を繰り返している。
瞑想にふけるかのように目を閉じている老人の顔を、光が照らし出していた。
数秒間それを行い、老人が静かに手を離す。
既にその目は開かれている。
老人は興味深そうに、目の前の女性を凝視していた。
その口から言葉がこぼれおちる。
「突然変異体、かの」
「……突然変異?」
山田には老人が何を言っているのかがよく分からない。
しかし背後の占い師にはその意味を理解できるのか、小さく頷いて
「『組織』にも狙われていたらしい。マッドガッサーと同じような理由だろうな」
「マッドガッサーっていうと、アレか。去年この町で騒ぎを起こしたとか言う」
「誠様をこの町に連れてきて下さった方ですね。まさに恋のキューピット!」
パチンと指を鳴らすマゾは、誠の周囲の人間関係をあらかた調べつくしている。
一瞬マッドガッサーが裸に布を巻いて、背に翼を生やした姿を想像してしまった占い師が顔をしかめた。
なまじ顔が美少女なだけに似合ってしまいそうなのが怖い。
その力からしてもそんな役割を担えそうだからなおさらである。
318 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 16:02:46.38 ID:JgKFUCk80
支援
「……あれ? けど突然変異って都市伝説特有の者のはずだろ。何でこの人が」
怪訝そうな顔をした山田に、占い師が呆れたような視線を向ける。
「気付かなかったのか?」
「何を」
本当に不思議そうな顔をする山田に、老人が口の中で小さく笑った。
占い師に至っては手で頭を押さえている。
「……その女の口元を見てみろ」
「口元、ねぇ……」
夜とはいえ、蛍光灯の灯った室内は明るい。
わざわざ近寄らずとも、遠目で山田からの位置でも見える。
決して、近寄らないのは恋人に誤解されるのが怖いからではない。
目を細めて、山田は女性の口元へと目をやった。
吐血でもしたのか、口周りにべっとりと血が付き、所々黒ずんでいる以外、特におかしい所はない。
「特に変わった所なんて……」
変わった所なんてない、そう山田は言おうとして、気付いた。
女性の口元、その唇の端から耳元にかけて、一本の線が延びている。
口が閉じ、さらにその上に血がべっとり付いているせいでよく分からなかったが、それは口の一部のように見えた。
真一文字に裂けた口。
それが、一つの単語を連想させる。
320 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 16:04:44.42 ID:JgKFUCk80
やっと気づいたのか山田www支援
「口裂け女……?」
「……気づかんでここまで運んできたとはの」
驚く山田の顔を見て、老人がくつくつと笑う。
占い師に至っては、呆れを通り越して無表情になっていた。
「もし害意のある都市伝説だったらどうする。職業の立場上、俺やあんたらは都市伝説から恨みを買いやすい。それを分かっているのか?」
「あ、いや、けど血まみれだったし……」
「血糊という可能性もある。現にこの口裂け女が被っているのは自分の血ではない」
半ば説教のようになってしまった占い師の言葉に、山田はうなだれるしかなかった。
子ライオンがやってしまったと勘違いし、てんぱってしまったのは確かである。
もし口裂け女が山田に殺意を持って近づいた都市伝説だった場合、容易に山田の首をはねる事ができただろう。
契約都市伝説のおかげで不死になっているとはいえ、その気の緩みは後に大きな失敗となって山田自身に返ってくる可能性すらある。
都市伝説を狩る事を職業としている身としては、あってはならない失態だった。
落ち込み、しかしふと、山田は何かに気づいたように顔をあげた。
「けど、この口裂け女を濡らしてる血が自分の物じゃなかったら、何なんだ……?」
占い師は先程、この口裂け女に外傷はないというような事を言った。
そしてその身体に付着した血は口裂け女の物ではないという。
返り血か、と考えて、山田はすぐに首を振った。
こんな雨でずぶ濡れになったように血を被るには、一体何人を殺せばいいのか。
一人や二人では、頸動脈を切った所でここまでの惨状にはならないだろう。
「……見た限りでは、13階段の血の池と同質の物のようだが」
「ふむ……そんな所じゃろうな」
既に見分を終えた占い師の言葉に、老人が頷く。
山田にとっては「13階段」がどんな都市伝説なのかもわからない状況ではあるが、とにかくこの目の前の口裂け女はその都市伝説か、あるいは契約者にやられたらしい。
322 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 16:07:58.07 ID:JgKFUCk80
しええん
「……ん? じゃあ別に猫は関係ないのか?」
「ついさっきもそう言っただろう」
「じゃあ猫が襲ってスプラッタは?」
「……なんだ、それは」
「え、じゃあ何、猫関係なし?」
「だから、そう言っているだろうが」
占い師に呆れられたが、山田には老人出現のインパクトが強すぎて、そんな些事を留めておけるほど脳に余裕はない。
単に馬鹿だと言ってしまえばそれまでだが、何もない空間から老人が現れるわ、その老人が剣で串刺しにされるわ、人間だと思っていた女性が口裂け女だったわで今山田の脳内は完全に混乱していた。
現実の出来事に脳の処理が追い付いていないのである。
「……マジか、じゃあ俺の頑張りって一体」
思わぬ現実に、山田が足から崩れ落ちる。
その脳内ではこれまで必死になっていた自分の姿が滑稽なBGMと共にリピートされていた。
「……ふむ、絶望するのは勝手じゃが。この口裂け女はどうするんじゃの? このまま放っておけばその内消えるじゃろうが」
「……え? けどさっき外傷はないって」
老人の言葉に、山田が顔をあげる。
「確かに『外傷』はない。じゃが内面的なダメージは相当大きいの。……それこそちょっと下手に衝撃を加えれば崩壊が始まるくらいには」
「あんたも運んできたんだから分かるだろう。この口裂け女は大分弱っている」
二人の言葉につられるように、山田が横たわる口裂け女を見た。
その胸は説明とは裏腹に規則的に上下している上、顔に苦悶の色はない。
身体を覆う血のせいで誤解をしていたが、それさえ除けば全く問題はないように見える。
「……そこまで危険な状態には見えないけどな」
324 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 16:10:53.30 ID:JgKFUCk80
子ライオンの責任じゃなくて良かったね山田支援
拾ったのがライオンな事に変わりはないがな!!!
【山田があれを子ライオンだと認める日は果たしてくるのか】
「だから言っておるじゃろう。問題なのは外ではなく内、しかもわしでもよく分からん事態になっておる」
「よく分からない事態っていうと……アレか。突然変異がどうたらこうたらって言う」
都市伝説に関しての知識が薄い山田にはよく分からないが、目の前の口裂け女は「普通」ではないらしい。
そもそも、あの占い師が匙を投げ、頼られた仙人の老人すらよく分からないという口裂け女の症状。
それは一体、何を意味しているのか。
「まぁ、原因は分かるんじゃがの」
「……あれ? 原因も分からない奇病とかそういう事じゃないのか?」
「舐めるな。何をどうしたらこうなったのかは分からんが、少なくとも原因とその治療法くらいなら分かるわい」
ちらりと老人が口裂け女を見て、続ける。
「消えるのは単なる存在自体の崩壊じゃな。原理としては都市伝説が語られなくなって消失するのと同じか」
「……よく分からないけど、口裂け女ってポピュラーなんじゃないの? 消えてなくなるようには思えないな」
「だから『原理としては』と前置きしたじゃろうが。人の話を聞かない若造じゃな」
はぁ、と山田は相槌を打つ事しか出来ない。
「何がどうなったのかは知らんが、この口裂け女は他の同じ種を飲み込んで自らの力とする性質があるらしいの。力を掛け合わせる事で自分の存在を強くし、その分能力自体も強くなっていったはずじゃ」
そこまで聞いて、山田は小首を傾げた。
同じ種を飲み込む口裂け女。
どこかで聞いた事のある話である。
あれはどこだったか、と山田が考え込む。
そもそも、山田が都市伝説について聞く機会は少ない。
マゾが己の想い人とその周囲を取り巻く環境についてうっとりと語るか、占い師から仕事の依頼を受ける時の二択である。
326 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 16:13:57.11 ID:JgKFUCk80
>マゾが己の想い人とその周囲を取り巻く環境についてうっとりと語るか
マゾwwwwwwwwwwwwwwwww支援
前者は論外だとして、残るは仕事の線。
そして最近仕事で口裂け女に関して占い師から聞いたことと言えば――――
「――同族殺しの口裂け女、だっけか」
「…………む」
話を中断させられて、老人が少しだけむくれる。
全く最近の若いもんは本当に、とその目が語っていた。
山田としては頭の中を整理していたら出てきた単語なので、出来れば許して欲しい所ではあるが。
二人を傍目に、占い師は口裂け女の顔を数秒間見続け、頷いた。
「……だろうな。ほとんど力自体は消えているが、間違いなくあの『同族殺し』だ」
占い師の言葉を受けて、山田が再度目の前の口裂け女を見る。
一度だけ対峙した事のある存在。
その時山田はなす術もなく宙へと吹き飛ばされていた。
ただの口裂け女にしては多彩すぎる能力に、剛腕の持ち主。
それが今、目の前にボロボロの状態で横たわっている。
「――とかく、この口裂け女は都市伝説を飲み込む力を持っていたらしいの」
何だか不思議な気分に囚われている山田の注意を引こうと、老人は強引に説明を進め始めた。
「その結果としてこやつは強くなったんじゃろうが、今はその取り込む力自体がこの口裂け女を消し去ろうとしておる」
「どういう事だ?」
「本来、こやつは同じ『口裂け女』と似たような性質を持つ都市伝説しか飲み込んではいけなかったはずじゃ。他の都市伝説とは本質が違うからの」
328 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 16:15:53.55 ID:JgKFUCk80
しえええん
老人は唯一動く指でぴっと口裂け女を指差して
「しかしこやつは別の都市伝説を飲み込んでしまった。その結果がこれじゃな」
「……その結果が、と言われても俺には何が何だかさっぱりなわけだが」
思い切り途中経過をはしょったらしい老人の言葉に、山田がかみつく。
複数の都市伝説と契約し、また都市伝説と生活を共にしているものの、山田はごく最近契約を交わした一般人である。
そんな本質がどうのこうのの話をされても意味が分からない。
老人はそんな山田の様子を見て、深いため息をついた。
「全く、困った奴じゃの。馬鹿弟子以上に手間がかかる」
「……おい、馬鹿弟子って誰の事だ、じいさん」
睨む占い師の視線に対して、老人はほっほと笑うだけで何も言わない。
と言うよりも、身体が剣で固定されているせいで背後の占い師がどんな視線を送っているのかが分からないのだ。
「時間がない。馬鹿でもわかるように簡単に説明しようかの」
「……何だか引っ掛かるが、分かった」
「ほっほ、何事も素直が一番じゃよ」
笑い、老人が背を向けたままの姿勢で山田に語りかける。
「この口裂け女の都市伝説の本質を赤とする。その場合、こやつが飲み込めるのは赤い本質を持つ都市伝説だけじゃ」
老人の手が宙に浮き、赤い光球を生み出す。
その周囲には、真っ赤な光の球を中心にしてピンクや赤紫色の光が浮遊していた。
330 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 16:18:33.28 ID:JgKFUCk80
こう言う時だけは頼りに見えるような気がするぜ爺さん支援
「赤しか飲み込まなければ、本質が揺らぐことはない」
中心の赤い玉へと、周囲の赤系統の色が吸収されていく。
時折黒っぽく、白っぽくなる赤い光は、しかし決して別の色へは変化しない。
「赤」という核を中心にした色を配合した所で、その色が変わる事はないのだ。
「しかし、ここで青い本質を持った都市伝説が出てくるとするとな」
赤く揺らめく光のすぐ隣に、青い光がぽつんと出現した。
「もしこの青が赤と混じった場合、その反応は顕著に表れる」
青い光に標準を合わせ、老人がその指を振る。
老人の指の動きに合わせて、青い光は赤い光の中へと飲み込まれていった。
何が起こるのか、想像はそう難しくなかった。
赤と青が合わさった色など、山田にだって分かる。
青い光を吸収した途端、赤い光は紫色の光へと変化した。
「そして、二種類の合わさったこの本質は、全く別の物へと変化してしまう。これが現状のこの口裂け女じゃな」
ゆらゆらと浮かぶ、紫色の光。
「都市伝説とは人の噂を糧にして成り立つ。しかし今のこやつは何の都市伝説でもない、全く新しい本質を持つ都市伝説じゃ。それが誰かに噂される事はない以上、その存在を保っていた力は消え――――」
パチンと老人が指を鳴らすと、光の球は弾けて消滅した。
「――――こういうわけじゃな」
老人の説明は分かりやすかった。
分かりやすいだけに、残酷だった。
332 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 16:20:53.61 ID:JgKFUCk80
支援
【戦闘にも出しにくい老人の唯一のまともな活躍の場、「解説」】
つまり、この口裂け女はもう消滅するしかないのか、と山田は漠然と思う。
「……でも、私は何ともありませんでしたよー?」
しかし、そこにマゾが異議を唱えた。
冬なのに赤いワンピースを揺らし、かわいらしく首を傾げている。
そんな様子を見る度、もしその性癖さえなければ男なんて簡単に釣れただろうに、と山田はいつも惜しい気分になった。
「私も別の都市伝説と融合したような状態ですし、他にも同じような境遇にある都市伝説はいくつも存在すると思うんですがね」
「…………ふむ」
マゾも元は大量生産された「恐怖のサンタ」の一個体にすぎなかった。
それが一人の都市伝説として確立したのは、別の「主人公補正」という都市伝説と結びついたからである。
だから、マゾは問う。
もし仮に老人の仮説が本当なら、マゾ自身も消えているはずなのだ。
「……恐らく、『核』の問題じゃろうな」
老人はマゾの言葉に一瞬考え込んで、しかしすぐに答えた。
核? とマゾが聞き返すのより先に、老人は言葉を紡ぐ。
「一つの存在としての『核』が確立されていれば本来は何の問題もないんじゃよ、都市伝説を飲み込むのは、の」
飲み込むこと自体例外的な能力じゃが、と老人は付け加える。
334 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 16:23:26.90 ID:JgKFUCk80
唯一かよwwwwwwwwwwwwww支援
「核を確立し、その上で別の都市伝説の力を付加するのは何の問題もない。その結果存在が崩壊する事もなく、ただ力のみを手に入れる事が出来る」
「なら――――」
「じゃが、この口裂け女はそれを持っていなかった。持てなかったのかもしれんし、核となる自分自身の事を嫌悪していたのかもしれん」
だから、結果として口裂け女は別の本質と混じりあい、全く別の都市伝説となってしまったのだろう。
そう、老人は繋げた。
「……そんな事が、あるのか」
山田は呆然として、老人の言葉を聞いていた。
そもそも力が欲しいから、そんな突然変異が起きたのではないのか。
しかしそのせいで自身の存在が消えるようでは本末転倒である。
横たわる口裂け女へと、山田は視線を向ける。
眠り続ける彼女はしかし、山田に何も答えはしない。
【続】
336 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 16:27:12.39 ID:JgKFUCk80
乙なんだぜー!
真面目な話だと言うのに、このシーンの最中、背後でボール追っかけて遊んでる子ライオンを幻視した
本当、山田はいつ、あれをライオンと認めるのやらwwwwwwww
337 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 17:01:28.78 ID:JgKFUCk80
そろそろサルとけたかな
338 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/08(月) 17:06:30.54 ID:JgKFUCk80
夕食後もスレが残っていれば幸せだ!
339 :
(転載):2010/03/08(月) 17:11:34.53 ID:bKeE9RFp0
同族殺し治療編第二話になります
想定外に同族殺しの現状説明に時間がかかってしまいまた終わりは次回持ち越しorz
遅筆が恨めしい
さて、爺初の活躍回とトンデモ理論再登場
正直本質云々の話はほとんど俺理論というか何と言うか、細かく突っ込まれると泣きます
>>336 子ライオンを挟めずに空気だったからなぁ
と言うか良子も子ライオンも一言もしゃべってないや……orz
子ライオンの事だから本当に眠るか遊んでるかしそうだwwww
山田が認めるのは目の前で子ライオンが都市伝説っぽい事をした時かな……
夕飯いってくるほ
占い師さん乙
山田は都市伝説に気付かない天性の才能でもあるんだろうか……
>>307 ありがとうございましたぁ!
うん、直希の女装写真が手に入るとは思わなんだぜ! 収穫だな!
342 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
保守るぜ