「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…」
1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 13:26:54.53 ID:dsAK1zLJ0
よくある質問
Q
このスレってジャンプの某読みきりと関係あるの?
A
始めにこのスレを立てた
>>1が何を考えて、スレを立てたのか
今となっては、その真相はわからない
ただ、ここに集まった者たちは、各自思い思いに妄想をぶちまけていき、今のこのスレの形となっていった
まぁ、結果としては関係あるかどうかとか、どうでもよくね?
ぶっちゃけ、ほぼ関係ない内容だし
3 :
顎砕き飴 (代理):2010/02/15(月) 13:29:42.52 ID:dsAK1zLJ0
4年前のあの日
真実を知ったあの日から
私はただ、この為だけに生きてきた
4 :
顎砕き飴 (代理):2010/02/15(月) 13:31:55.64 ID:dsAK1zLJ0
1月某日
「っく!?」
襲い掛かってくる三つの影に光線銃で応戦するが、一つ、二つと撃ち抜いても次の瞬間にはまた三つに戻っている
「無駄ですよ」
「その光線銃では、私達を倒す事は」
「できません」
襲い掛かってくる全く同じ顔の三人の黒服
組織の過激派か強硬派か・・・いずれにせよ自分の存在を疎ましく思っている派閥の黒服
「(一人でも残ればそこからまた三人に分裂する・・・何の都市伝説かはわかりませんが厄介ですね)」
悔しいがたいした戦闘能力を持たない自分ではあの黒服の言うとおり倒す事はできそうも無い
「(地下カジノに一旦逃げ・・・ ピチャ 水?)」
足元から聞こえた水音
見るとその一箇所だけ不自然水溜りが出来ていて・・・
「爆ぜろ」
背後から聞こえた少女の声
ド ォ ンッ
それと共に足元から起こった爆発に吹き飛ばされた
5 :
顎砕き飴 (代理):2010/02/15(月) 13:34:04.97 ID:dsAK1zLJ0
「く・・・がっ!?」
ボロボロになった身体で何とか立ち上がろうとしたが少女に思い切り踏みつけられた
「・・・貴女は」
「こうして顔をあわせるのは初めてですね・・・雨村在処・・・『顎砕き飴の契約者』です」
顎砕き飴の契約者・・・その言葉に黒服Dは目を見開く
「・・・まさか」
最初は過激派か強硬派の攻撃だと思っていた
だが、この少女が絡むなら話は違う
彼女の目的は・・・
「えぇ、貴方には『はないちもんめ』を誘き寄せる為の餌になってもらいます」
「くっ ジャキッ 「「「貴方が能力で逃げるのと私達が引き金を引くの・・・どちらが速いでしょう?」」」・・・」
三方向から頭部へ銃を突きつけられる
完全に逃げ場を失った
「・・・大人しくしていてください、私としては『はないちもんめ』以外に無駄な殺しはしたくないんです」
黒服Dに茶色の液体が入ったボトルを見せながら顎砕き飴が笑った
「(望さんっ・・・)」
6 :
顎砕き飴 (代理):2010/02/15(月) 13:35:19.98 ID:dsAK1zLJ0
この日
合わせ鏡のアクマの契約者達の下から顎砕き飴の契約者が姿を消し
望の下に一通の手紙が届いた
D−962は預かった
返して欲しくば一人で東区の○×公園に来い
顎砕き飴の契約者
続く?
7 :
占い師と少女 (代理):2010/02/15(月) 13:40:09.54 ID:dsAK1zLJ0
「――――さて」
バレンタインデーも終わった二月。
部屋に帰ると、いつものように占い師さんは私の頭の上に手を置いた。
能力を使った、簡易的なスキャン。
脈拍数から血圧、果てには血糖値までの人体における全てを数値化するその行為は、多分そこら辺のお医者さんよりはよっぽど信頼できるものだと思う。
ただ、その分気にする程でもない細かな部分にまで占い師さんが気にしてしまうのがネックと言えばネックだった。
「…………ん?」
開始から僅か2秒。
何かを見つけたのか、占い師さんが軽く首を傾げた。
細かった目がさらに細められる。
「……卵、か。どこでこんな物を拾って来たのやら」
わしゃわしゃと自分の髪をかく占い師さん。
(……卵?)
自分で自分見る事もできるが、精神に少し負担がかかる。
だから占い師さんの言っている「卵」が比喩的な物なのか、はたまた本当に卵が私の身体の中にあるのか。
特にこれと言って卵を食べたような記憶はないのだけれど……。
思わず首を傾げる私をよそに、占い師さんは手を私の頭から離して
「ちょっと待ってろ」
ポン、ともう片方の手で頭を叩いてから、リビングを出て行った。
その行動に、ちょっと疑問を抱く。
8 :
占い師と少女 (代理):2010/02/15(月) 13:43:10.64 ID:dsAK1zLJ0
占い師さんの能力は、基本的に微生物や血中の詰まりなどを対象に出来る。
つまり、その気になれば大概の治療はものの数秒で行えるはずなのだ。
しかし、占い師さんはそれをしなかった。
(……治療、出来なかった?)
一体私の中には何が入っているのか。
そこまで思考して、身体に寒気が走った。
「……ああ……い……だが……お……」
時々リビングの外から聞こえてくる占い師さんの声。
どうやらどこかに電話しているようだ。
時折占い師さんの怒ったような、どこか疲れた声が聞こえてくるのを見ると、電話先とは上手くいっていないのか。
「……あ……まっ……る」
数秒が経ち、やっと話しが終わったのかガチャリ、と受話器が降ろされたような音が聞こえてきた。
同時に、占い師さんの少し疲れたようなため息も。
それからすぐに、リビングと廊下を繋ぐ扉が開いた。
少し疲れた……と言うより、何だかげんなりした表情をした占い師さんが、そこから入ってくる。
「すぐにじいさんがここに来る。もう少し待っててくれ」
そう言った占い師さんは、げんなりを通り越して苦虫をつぶしたような顔をしていた。
まるで、その「じいさん」に頼らなければならない事態になってしまった事を少し後悔しているかのように。
私は、記憶の中から「じいさん」に該当する人物を引っ張り出す。
引っ張り出して……ああ、と何となく占い師さんの表情を何となく理解した。
9 :
占い師と少女 (代理):2010/02/15(月) 13:45:24.46 ID:dsAK1zLJ0
「あのおじいさんですか……」
初めて占い師さんと出会ったときにも一緒にいた、一人の老人。
この世に何千年も生きる最古の都市伝説の一人……らしい。
私自身おじいさんが力を振う所を見た事がないので何とも言えないのだが、その気になれば都市の一つや二つ軽く更地に出来るとかできないとか。
正直眉つばな気がしなくもない。
「えっと……確か、『仙人』でしたよね?」
「……ああ。俺が『見て』確認もしてる」
苦虫をつぶしたような顔が、苦虫を二十匹ほど潰したような顔になった。
私と出会う以前に何があったのかは分からないが、かなり深い確執か何かがあるのかもしれない。
……と、窓の外で何かが光ったような気がした。
「……って、あの馬鹿っ」
占い師さんも気づいたのか、窓の方へと顔を向け
――――瞬間、窓が吹っ飛んだ。
跡形もなく、まるでそこだけ抉り取られたかのように。
占い師さんが咄嗟に何かしたのか、幸いガラスが飛び散るような事がなかった。
「……ふむ。少し行き過ぎてしまったようじゃの」
その爆発の中心。
ガラスまみれになりながら、一人の老人が立っていた。
身長は140センチあるかないか。白く染まった髪に、服なのか布なのかよく分からない白い何かを纏っている。
年を取らないのか、その姿は10年前に出会った時と何も変わっていなかった。
服も、身長も、それと多分髪の本数まで。
10 :
占い師と少女 (代理):2010/02/15(月) 13:47:25.24 ID:dsAK1zLJ0
「『行き過ぎてしまった』じゃない。人ん家の窓を壊すな、窓を」
「仕方ないじゃろう。お前さんが『急げ』と言ったから急いで来たんじゃ。むしろ褒めて称えて『仙人様最高ー!』と言いながら拍手してもバチは当たらんと思うが」
「誰が褒めるか称えるか拍手するかっ」
……おお。何だか10年前にタイムスリップしたみたいだ。
確かあの時も二人はこんなやり取りをしていたような気がする。
果たして変わらなくてよかったと喜ぶべきか全く成長していないと嘆くべきか。
「……で、未来ちゃんの体内に異常があるらしいの」
占い師さんと半ばど付き合い漫才状態だったおじいさんが、ふっと真面目な顔で私の顔を覗きこんできた。
ついでに、一瞬視線が私の胸のあたりにまで下がったような気がする。
ああ……本当に変わってないな、この人。
「ふむ……全く、お前さんが付いていながらこの体たらくとはの。やっぱり未来ちゃんはわしが預かって――――」
「死ね、じいさん」
おじいさんの言葉が最後まで終わらない内に、占い師さんが近くの大事典を一冊、おじいさんの頭に振り下ろした。
普通のご老体なら確実に死ぬような一撃。
……しかし飛び散ったのは肉片ではなく、粉々になった大事典の方だった。
何が起こったのか、私の目でもよく分からない。
おじいさんに大事典が触れる一瞬。
その一瞬、赤い何かがおじいさんの身体を包み、それに触れた途端、大事典が飛び散ったのだ。
「くそ、高いんだがな、これ」
「振り下ろしたお前さんが何を言うか……」
全く無傷で、少し呆れたように言うおじいさん。
その身体に纏っていた何かは既に消えていた。
11 :
占い師と少女 (代理):2010/02/15(月) 13:49:27.09 ID:dsAK1zLJ0
「本当に暴力的な弟子じゃのう。やっぱり未来ちゃん、わしと一緒に――――」
「死ね」
……仲が良いのか、悪いのか。
また再び漫才状態に戻ってしまった二人を見て、何だか懐かしいような気分になる。
いや、昔はこんなバイオレンスな状況じゃなかったような気がするが。
「…………とにかく、未来ちゃんの治療が先じゃ。全く」
「全くと言いたいのはこっちの方だ。まだ女を囲い足らないのか、この助平が」
「なっ……な、何を言うか。わわわわしはべべべつに女を囲ってなど……」
「………………」
「ああ未来ちゃん引くでない。この馬鹿弟子の戯言に決まっておるじゃろう」
「あんなに動揺した後で説得力なんて皆無だろうが」
「違うわい。わしが襲おうとしても全員『彼女』に守られてるから指一本出せないんじゃよ」
「……それ、否定になってないからな」
一歩。
何だか色々な危機を感じて、おじいさんから離れた。
「ああ違うんじゃよ未来ちゃん。大体わしがここへ来たのはこやつに頼まれたからで、別についでに未来ちゃんを連れて帰っちゃおうだとかそんな事は毛もうも――――」
「思ってたのかこのエロじじいっ!」
再びバイオレンスが始まろうとして
「待て待て待て。とかく未来ちゃんを治すのが先じゃろう」
「…………ああ」
慌てたように言ったおじいさんの制止の声で、何とかこの場は収まったようだ。
再び私の方へと向き直るおじいさん。
その視線も再び下へと向かったのは……うん、気にしないでおこう。
12 :
占い師と少女 (代理):2010/02/15(月) 13:52:16.82 ID:dsAK1zLJ0
少し私を観察してから、おじいさんは口を開いた。
「……心の内に植えつけられた卵、かの。ふむ、お前さんの言ってた通りか」
私たちのような「目」を持っていないおじいさんでも、どうやら私の異常は分かるらしい。
それだけ容態が悪いのか、それともただおじいさんが優れているだけか。
今の私には、そのどちらか判断できなかった。
「あの……悪いんですか? それ」
「なに、別段孵ったわけでもなし。すぐに取り除けばこれと言った害悪もなかろうて」
その言葉に、少しほっとした。
「……さて。今から取り除くが、よいかの?」
「じいさんが不埒な真似さえしなければ幾らでも」
「……ふむ、人を信用しない弟子じゃの」
そう少し渋い顔をして、おじいさんは少し背伸びをした。
そのまま何とか私の頭上に手をかざす。
どうやら、特に何かを唱えたり薬を飲む必要はないらしい。
一瞬、その手が光ったような気がして
パキン、と何かが割れるような音が、私の「身体の中」で鳴った。
「……特に破片が飛び散るような事もない。もう大丈夫じゃろうな」
「あ……えっと、ありがとうございました」
「何、未来ちゃんのためならどこへでも駈けつけるぞ。だからわしと一緒に――――」
「どこへでも駈けつけるなら一緒にいる必要もないだろう」
「……全く、師匠孝行しない弟子を持つと大変じゃのう」
また一つため息をついて、おじいさんは背伸びを止めた。
13 :
占い師と少女 (代理):2010/02/15(月) 13:54:32.61 ID:dsAK1zLJ0
衣服の乱れを直して、コキコキと首を鳴らす。
「さて。あまり家を開けるわけにもいかん。わしはそろそろ帰るぞ」
「ありがとうございました」
「悪いな。忙しい所呼びつけて」
「悪いと思うとるなら未来ちゃんをじゃな――――」
「さっさと帰れ。じいさん」
全く、と軽いため息をついて
途端、おじいさんの服が淡く光り出した。
服から身体へと、それは瞬く間に広がっていく。
「また来るからの、未来ちゃん。この無粋な男が嫌になったらいつでも来なさい」
「あの、えっと……」
「人を困らせるな、人を」
「ほっほ、困っている内はまだいいんじゃよ。まだのう」
そうおじいさんは笑って、身体を少し回転させた。
全身の光が一本に纏まって、矢のような形へと変化する。
既に、もうどこが顔なのかが分からなくなっていた。
「ではの。今度来る時は『愛好会』のみなも連れてこよう」
「ああ、それは少し楽しみだな」
「ほっほ……女ばかりじゃからの」
「……そういう意味じゃない」
ほっほ、と最後にまた一つ笑って
おじいさんはその場から消えた。
……また一つ、窓ガラスを打ち破って。
14 :
占い師と少女 (代理):2010/02/15(月) 13:56:20.74 ID:dsAK1zLJ0
「入ってきた窓から出ろよ、おい……」
窓ガラスを修復すべく、ガラスの散乱する窓辺へと占い師さんが寄る。
その後をとことこと付いて行きながら、私は占い師さんに尋ねた。
「結局、私の中には何が入ってたんですか」
「ん……? ああ、『悪魔の囁き』の卵みたいな奴だな」
「悪魔の囁きって言うと……よくテレビの中で天使と対になって出てくる、あれですか?」
「イメージ的にはそんな感じだ。これと言って力を持たない、小さな犯罪を引き起こすだけの都市伝説って所か」
一枚一枚、ガラス片を能力で繋ぎ合わせながら、占い師さんは何かに気付いたかのように「そういえば」と呟いた。
「あの青年も『悪魔の囁き』に取り憑かれていたみたいだが……あれから何も聞かない以上、何とかなったのか」
「あの青年?」
「いや、何でも無い」
そう言って、黙々を作業を進める占い師さん。
そこに、私はまた一つ、質問をぶつける事にした。
さっきから微妙に心の隅に引っかかっている、一つの疑問。
「……『愛好会』って何ですか? 何やら如何わしい響きですが」
「ああ、別に如何わしくも何ともない。ただの『占い愛好会』だ。さっきのじいさんが主催してる」
何だか休日に老人ホームで行われていそうな名前が出てきた。
「……何だかもうちょっと規模が大きいのを想像してたんですが、随分と小さくなりましたね」
「いや、『占い愛好会』なんて言っても世界に数千の加盟者がいるんじゃないか。詳しくは俺にも分からないが」
「数千って……」
それって『組織』何かよりよっぽど多いんじゃないだろうか。
15 :
占い師と少女 (代理):2010/02/15(月) 13:57:22.92 ID:dsAK1zLJ0
「まぁ、加盟してるって言ってもその加護が欲しくて『名前だけ一応』ってなような奴がほとんどだし、大した活動もしてないがな」
「加護って……まるで宗教みたいですね」
「そこら辺の宗教よりはマシだな。加盟するだけで他の組織から狙われなくなる特典付きだ」
「…………はい?」
他の組織から狙われなくなる。
一体何をすればそんな事が可能になるのだろうか。
「さっきじいさんも言ってた『彼女』の力なわけだが……詳しい話は後で、な。今は修復の方が先だ」
「あ、はい……」
一枚一枚、能力を使って破片を張り付けていく。
正直、暇である。
綺麗に、その痕すら残さずに修復できるのはいいが、いかんせん時間がかかるのだ。
だから、ついでにもう一つ質問をぶつけてみる事にした。
「……私たちも、その『愛好会』のメンバーなんですか? 何だかそんな感じの会話でしたけど」
「ん……そうだな。入ってるって事になるのか、一応」
「そう、ですか」
あのマッドガッサーの件で会った、様々な組織の人たちの事を思い浮かべる。
「組織」に「首塚」、「第三帝国」に「怪奇同盟」。
色々と格好良い名前が並んでいたような気がする。
そして、そんな中私たちは「占い愛好会」
……何だか締まらないような気がするのは、私だけなのだろうか。
「…………あ」
そんな中、私は一つ、ある重大な事に気がついた。
16 :
占い師と少女 (代理):2010/02/15(月) 13:58:46.46 ID:dsAK1zLJ0
「どうした、未来」
「……破片が、足りないんですが」
目の前のガラス。その破片がどう見ても足りない。
このままでは中央付近に穴が開いたガラスになってしまうだろう。
占い師さんはそれを見て、軽くため息をついて
「…………じいさんに請求するか」
電話をしようと、またリビングから出て行った。
――――それから数分後、抗議をしに来たおじいさんがまた一つ窓ガラスを割り、さらに騒動が広がったのだが……それはまた、別のお話だ。
【終】
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 13:59:58.16 ID:dsAK1zLJ0
代理投下完了
これより、自分のネタの投下に入る
18 :
黒服D誘拐を受けて:2010/02/15(月) 14:02:16.52 ID:dsAK1zLJ0
「−−−−−っ黒服が!?」
「組織」の黒服だと言う少年から、黒服と望の絶望的な未来を聞かされて以来、ずっと警戒はしてきていた
だと言うのに……まんまと、黒服を、捕えられた
その事実に、翼は己の至らなさを実感する
何故、もっと警戒しなかった
何故、ずっと傍にいなかった
…後悔しても、意味などない
そんな事をする前に、すべき事はある
聞かされているタイムリミットは、黒服の誘拐から、二日の間
今日、黒服が拉致されたのならば……今日中に、決着をつける!
『どうやら、相手は彼を餌に、望ちゃんをおびき出そうとしているようだな』
電話の向こうで、直希が淡々と…だが、どこか焦りを含んだ声で、そう言って来た
黒服が拉致された事を、翼にたった今伝えたのは、この直希だ
彼が、どんな情報網を持ってして、それを知る事が出来たのか…翼は、知らない
だが、翼は友人である直希を信じている
だから、今、この直希の言葉を信じるのだ
「黒服の居場所、わかるか!?」
『西区の廃工場だ、場所は……』
直希から場所を聞きながらも、翼はもう、動いている
上着を羽織り、そこに向かおうとしている
『…翼、まさかだが、君一人で行くつもりか?』
「時間がないんだよ」
19 :
黒服D誘拐を受けて:2010/02/15(月) 14:06:25.37 ID:dsAK1zLJ0
そうだ、時間がないのだ
早く
早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く
早く、助け出さなければ
脳裏で、最悪の状況がフラッシュバックする
真っ赤な光景が蘇る
駄目だ
そんな事は、絶対にさせない
黒服も望も、死なせてなるものか!
『僕も、行く。頼むから、一人で突っ込むのは………っ』
げほげほと、受話器の向こうで咳き込む声が聞こえてきた
翼は小さく苦笑し、告げる
「お前、今、風邪拗らせてるんだろ?いいから、ちゃんと休んどけ。栄養あって消化にいいもん食って温かくして寝とけ。汗かいたらちゃんと着替えろよ?」
『っこれくらい、大丈夫、だ、だから』
「………直希」
今は、まだ、辛うじて友人を気遣えるだけの余裕が、ほんの僅か、ある
だが、それももうそろそろ、限界で
だからこそ、最後に翼は直希を気遣い、こう言う
「…ありがとうな。俺は、大丈夫だから。あの時みたく………お前には、迷惑かけないから」
『−−−−−ッ翼、待て!!』
20 :
黒服D誘拐を受けて:2010/02/15(月) 14:09:36.33 ID:dsAK1zLJ0
珍しく声を荒げた直希の言葉を遮るように、ぶちり、通話を切る
そのまま、携帯の電源も切った
これでいい
これで、いいのだ
ちゅう、と、ケージから勝手に抜け出してきたノロイが、ちょろちょろと翼の足を登ってきて、肩まで乗ってきた
じ、とつぶらな瞳で翼を見つめ、首を傾げてくる
翼は小さく苦笑すると、ノロイを摘んで、テーブルの上に降ろした
「…ノロイ、お前は、詩織の傍にでも、いてやってくれよ」
ちゅちゅちゅ、と翼に付いていこうとするノロイ
だが、翼はそれを制する
「……必ず、黒服も、望も、連れて帰ってくるから」
強く
強く、決意を込めて、そう言って
翼は、家を飛び出した
家の中、ノロイだけが残されて
ちゅう……、と心細そうに、鳴いた
殺してやる
殺してやる、殺してやる、殺してやる
憎悪が、翼の中に渦巻く
21 :
黒服D誘拐を受けて:2010/02/15(月) 14:12:19.05 ID:dsAK1zLJ0
相手の目的など、知った事か
過激派の目論見など、知った事か
そんな事はどうでもいい
ただ、どんな理由があろうとも、黒服と望を傷つけることは許さない
家族に手を出す事など許さない!!
「首塚」は、復讐を肯定する
もし、狙いが復讐ならば、それを否定するつもりはない
だが、だからといって、家族が傷つけられるのを黙ってみているつもりなどないのだ
他人の復讐の対象が護るべきものならば、それを全力を持って阻止する
それが、「首塚」構成員側近組としての考えであると同時に、翼の考えだ
大切な相手を護る為ならば、この手がどれだけ血に染まろうが構わない
大切な相手を傷つけようというのなら、殺そうというのなら、そいつは敵だ
敵ならば、殺す
ただそれだけ、非常にシンプルで単純だ
翼の心が、憎悪に染まる
護りたい家族を護る為に、その家族を殺そうとする相手への憎悪が膨れていく
翼の中の力が、憎悪に染まり力を増していく
…それは、一歩間違えれば、翼自身をも焼き尽くして、全てを巻き込んで燃え広がり続けそうなほどに
22 :
黒服D誘拐を受けて…の、裏側:2010/02/15(月) 14:16:40.44 ID:dsAK1zLJ0
「翼………翼!?くそ、あいつ、携帯の電源まで切ったな………!?」
げほげほと、再び咳き込みだす直希
ベッドにもぐりこんだその状態から、咳き込みながらも起き上がろうとして
「いけません、我等が主」
しかし、「光輝の書」から勝手に出てきたザフキエルに、止められた
他の天使達もわらわらと出てきて、直希を強引にベッドに寝かせる
「っ放せ、ザフキエル、ザドキエル!僕も、翼のところに……!」
「いけません。熱が何度あると思っていらっしゃるのです。この状態で動くなど、自殺行為ですよ」
「−−−−−ッ僕の命など、どうでもいい!」
自分を気遣ってくる天使達の言葉に、直希は半ば叫ぶようにそう言った
その拍子に、また咳き込んでしまい…確かに、天使達の言うとおり、この体調で動くなど、自殺行為だ
元々、直希は体が丈夫ではない
「光輝の書」との契約により、辛うじて日常生活が送れるレベルまで回復しているものの……本来ならば、その命、とうの昔に消えていたはずのもの
今でも体は弱く、こうやって風邪を引けばすぐにこじらせ、寝込んでしまう
…そんな自分の体の弱さが、直希は恨めしい
そのせいで、こんな大事な時に、動く事ができないなど…
「…どうでもいいなどと、仰らないでください、我等が主」
「本当の、事を言ったまでだよ………あぁ、そうさ。翼の力になるのなら…………僕の命など、どうでも…いい」
苦しげに咳き込みながら、ぼそぼそと、口惜しげに直希は呟く
23 :
黒服D誘拐を受けて…の、裏側:2010/02/15(月) 14:18:07.78 ID:dsAK1zLJ0
「…翼の、心を傷つけてしまった、償いを………僕は、まだ、果たせていない。だから……翼の、力になって……償い、たいのに」
力になりたくて
だから、友人であるモンスの天使契約者 門条 天地から得た情報を、翼に流した
だが、それだけでは足りないのだ
戦いに赴くであろう翼の、力になりたい……!
痛々しいほどに、自分の身など省みず起き上がろうとする直希を…見て、いられなかったのだろう
「……申し訳ありません、我等が主」
そっと、ザドキエルの手が、直希の額に触れた
慈悲の天使の手は、直希の朦朧とし始めていた意識を包み込み、半ば強引に眠りへと付かせた
そうでもしなければ、直希はいつまでも翼の元へ行こうとし続けて、治る風邪も治らなくなってしまう
傷つけてしまった、と後悔し続けている
自分のせいで、と後悔し続けている
だからこそ、その償いをしようと焦り続けて
だが、結局、まだ償えていないと嘆き続ける
もう、とっくに許されているのに
自分はまだ許されてはいけないのだと、あがき続ける
もう、許されてもいいのだと
ようやく彼自身が認めるまで、あとどれくらい?
to be … ?
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 14:20:44.15 ID:dsAK1zLJ0
はないちもんめの人に土下座しつつ、黒服D誘拐に対する翼の反応、書かせていただきました
翼は、黒服Dが監禁されていると言う廃工場に向かっています
…えー、K-No.0に今回の件の情報を知らされていらい、めっさギリギリの精神状態が続いている翼ですが、多分大丈夫です
うん、まだ自分自身を燃やし尽くしたりはしないと思うよ!
ついでに、ちょっと翼と直希の複線的なものもこっそりと
翼シリアス受難編で、この辺りも回収できればいいんだが
25 :
小ネタ:2010/02/15(月) 14:26:23.42 ID:dsAK1zLJ0
我輩は百獣の王の息子である
名前はまだない
さて、この白い物がたくさん振り続けている時期はいつまで続くのか
正直、歩いていて足の裏が冷たくて敵わない
第一、食料が手に入りにくいのが問題だ
餓死の危険性が、常に隣り合わせにある
小さき生き物達は、人間とか言う生き物から、うまく餌を強奪する手段を得ているようだ
我輩も、一応それを学んだ
………ふむ
それを、実行してみようか?
ならば、どんな獲物を狙おうか
………あぁ
あれなんて、よさそうだ
早速、試してみるとしようか…
「…あら?」
しゃぎゃー
その生き物を前に、少女、未来は首を傾げた
大柄な、猫…に、一瞬は見える
いつも見るけど何なのこのスレ、邪魔なんだけど
27 :
小ネタ:2010/02/15(月) 14:27:51.45 ID:dsAK1zLJ0
だが、それはよくよく見えれば……ライオンの子供、のようだった
しゃぎゃ、と、猫の鳴き声にしては少しおかしな声をあげ、未来の足元に擦り寄ってきた
「えっと…」
じっと、その子ライオンを見つめる未来
…どうして、こんな所に、子ライオンが?
リーディングしてみるのだが……なぜか、情報が混乱していて、よくわからない
どうやら、都市伝説ではあるらしいのだが…なぜか、その正体がわからないのだ
まるで
この子ライオン自身が、自分が何者なのか、忘れてしまっているかのように
ただ、今、リーディングしてみて、はっきりとわかったのは…
「おなか、すいてるの?」
しゃー
そうだ、と言わんばかりに声をあげる子ライオン
どうやら、空腹らしい
特に、害意は感じないし
何だか、見捨てるのも気の毒だが…どうすればいいのだろうか?
擦り寄ってくる子ライオンを前に、未来は困ってしまうのだった
とぅーびー???
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 14:29:01.50 ID:dsAK1zLJ0
占い師の人にスライディング焼き土下座orz
避難所でも話していたけど、巻き込む気満々ですとも、えぇ
何だか偉そうな子ライオンが、未来ちゃんにくっついてきたようです
つまらん
うぼあ
もりもり
マホメッwwwwマホメッwwww
カピバラオンwwwwwwww
34 :
保守ネタ:2010/02/15(月) 14:36:50.23 ID:dsAK1zLJ0
ひたひた
ひたひた、ひたひた、ひたひたひた
何かの足音、響き渡る
ひたひた、ひたひた、ひたひたひた
私の後を付いて来る、あなたはだぁれ?
口が裂けてる女の人?
男の人の顔した犬?
ゆっくり歩いているから、車の後を追いかけてくるお婆さんではないよね?
あなたが誰でも構わない
この街には、都市伝説が一杯だから
だから、あなたが誰でも私は構わない
私の都市伝説の餌になる事に、代わりはないのだから
「−−−−−−−ぎゃっ!?」
ばきり、ごきり
骨を租借する音が聞こえてきて
はい、おりこうさん、と私は私の都市伝説に笑う
学校町 都市伝説の多い街
私の契約都市伝説「謎の生物兵器」のご飯が一杯な、素敵な街
フフフwwwふうふうふうwww
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
まだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのかまだやんのか
39 :
保守ネタ:2010/02/15(月) 14:42:49.92 ID:dsAK1zLJ0
まだ戦い続けるの?と彼女が泣いた
戦うよ、と僕は笑った
このままじゃ飲み込まれるわ、と彼女が泣いた
知ってるよ、と僕は笑った
どうして戦い続けるの、と彼女が泣いた
みんな護りたいからだよ、と僕は笑った
たまたま、都市伝説の存在を知って
たまたま、都市伝説と契約して
その時に、誓ったのだ
守りたい者を、全て護って見せると
たとえ、その結末が、都市伝説に飲み込まれてしまう結果になろうとも
「だから、御免ね」
僕は行くよ
僕は戦うよ
「−−−−ッ駄目!!」
行かないで、と
とめようとした彼女の手から、僕は逃げた
「…行くよ、赤いちゃんちゃんこ。悪い都市伝説を…退治しよう」
相棒は、僕の言葉に、わかった、と笑って
僕らは、悪意の群れに、飛び込んだ
40 :
保守ネタ:2010/02/15(月) 14:44:12.60 ID:dsAK1zLJ0
さようなら
もう、戻れないかもしれないけれど
それでも、僕は後悔しない
これは、僕の選んだ道だから
「……御免ね」
泣いていた彼女に、謝って
牙むく悪意に、僕と赤いちゃんちゃんこは立ち向かった
後には何も残らない
ただ、真っ赤に染まった赤いちゃんちゃんこが、一着
忘れ去られたように、残されていたのだった
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 15:04:51.23 ID:dsAK1zLJ0
バ
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 15:25:27.91 ID:dsAK1zLJ0
レ
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 15:45:26.36 ID:dsAK1zLJ0
ン
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 15:54:49.80 ID:dsAK1zLJ0
いつも投下してるのよりは、ちょっと長めの話を投下する
途中サルくらったら御免
45 :
笛:2010/02/15(月) 15:55:28.47 ID:dPMj0K7T0
【上田明也の協奏曲15〜極楽鳥が舞う野には〜】
バイク――それ程高級でない物―――を一台用意しよう。
小粋な曲―――そうだテクノが良い―――を鼻歌で歌おう、それは既にテクノじゃないが。
センスの良い武器を一つ――MP7をブリーフケースに入れて――持っていこう。
今の自分にはそれが丁度良い。
赤い部屋から出て外を見ると太陽が昇っており、時刻はすっかり昼過ぎになっていた。
サンジェルマンはどうせハーメルンの笛吹き相手に苦戦しているに違いない。
奴は戦闘において甘いのだ。
戦闘から遠ざかるを得ないというハンデは有るがそれにしても甘いのだ。
スイートな彼にはメルという特上のビターポイズンを相手にすることは出来ない。
……どうやらあの子供の口癖が移ったようだ。
気を取り直して探偵事務所を出ようとすると留守番をしていた向坂に呼び止められた。
何時から居たのだこいつ。
「生きていたのですか所長、大怪我したと聞いていたんですが。」
「なんだ、俺が死んだとでも思ったかい?」
「いや、このまま所長が死んだら給料どうなるかなあと……。」
「そんなことを気にしていたのか?
愛する俺の危機に胸を痛めていた訳じゃないのか。
これでも俺ってモテモテなんだぜ?」
元気であることを見せる為に戯けてみせる。
俺は誰にも心配されてはいけない。
46 :
笛:2010/02/15(月) 15:56:57.49 ID:dPMj0K7T0
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 15:57:41.93 ID:dsAK1zLJ0
おっと、その前に支援だ!!!
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 15:58:26.05 ID:dsAK1zLJ0
>>46 いえいえ、お先にどうぞなんだぜ!
その内に、俺は投下するネタの誤字脱字をチェックする!!
49 :
笛:2010/02/15(月) 15:59:31.79 ID:dPMj0K7T0
【ではお先に】
「でしょうね、所長の傍に居られる人間に、愛される人間になれれば……。
それはそれは人生の特等席ですから。」
あははと笑う向坂。
「特等席かあ……。そこでは何のショーが始まるんだい?」
「観客のリクエストでしょう?」
「成る程、間違いではない。」
「行ってらっしゃい。」
「行って来ます。依頼に来た人の連絡先だけメモっといて。
内容はあまり深く聞かなくても良い。」
向坂はまるで当たり前のように俺を送り出してくれた。
「さて、行こうか。」
気を取り直して今度こそ俺はメルの居場所に向かうことにした。
契約しているので何処に居るかは大体解る。
丁度、俺がバイクに跨りエンジンをかけた時だった。
「笛吹さん。」
「おやおや友ちゃん。」
「だからちゃんは……。」
「済まない、友。」
「良し。」
俺は友美に出会った。
妙な偶然だ。
支援
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 16:02:24.29 ID:dsAK1zLJ0
しええん
52 :
笛:2010/02/15(月) 16:05:32.88 ID:dPMj0K7T0
「ところでもうすぐバレンタインなんだが、君の好きな子とはどうだい?」
「私の好きな人はみんなですからねえ……。」
「………ふむ、そうか。」
そういう少女なのだ。
「今まで出会ったみんなを平等に本気で愛せるならそれは素晴らしいことだと思いませんか?」
「全員を愛するのは誰も愛さないに等しい行為だ。」
「ナルホドね。」
「君の本当に好きな子にさっさと愛を告げたまえよ。
駄目でも俺が慰めてやる。」
「ありがとう、笛吹さん。でも愛するばかりが愛じゃないでしょう?」
俺は少しばかり驚いた。
まだ小学生である彼女がこんな良いこと言うなんて。
「まったくだな、一本とられたよ。」
やはり、心のゆがみは比較不可能な美しい黄金に昇華するのだなあ……と実感させられる。
「それより笛吹さん。またまた妙な物持っているじゃないか?」
「仕事道具だよ、只の。」
「またまた面倒ごと?本当にいつか限界が来るよ?」
「はは、俺ってドMなんだ。」
彼女は俺のことをどこまで知っているのだろう。
まあ友人なんだから幾ら知られても構わないのか?
「じゃあな。」
「生きて帰って来いよ、笛吹さん。」
「俺には似合わぬセリフだね。」
憎まれ口を叩いて俺は早々にその場を離れることにした。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 16:06:34.04 ID:dsAK1zLJ0
真冬のバトルを書きつつ支援
54 :
笛:2010/02/15(月) 16:07:17.98 ID:dPMj0K7T0
メルの気配は神社の方角にあるようだ。
サンジェルマンも恐らく其処か……。
何かしらの人払いの術が為されていると考えても良いよな。
俺はバイクを走らせながら考え続けていた。
空は快晴、気持ちは曇天。
どうしてだろうこの感覚。
「さっさと行かないと……。」
とにかく今やるべき事は現場に急ぐことだ。
神社の近くの駐車場にバイクを止める。
真っ昼間だというのに人が居ない。
おかしな話だ。
そう思って辺りを見回している時だった。
「――――――!!」
真後ろから殺気が飛んでくる。
この直接突き刺すような殺気の特徴は……あいつだな。
そのまま真横に飛び跳ねると足下のアスファルトの水分が蒸発する。
俺の後ろには正義の味方―――明日真が立っていた。
55 :
笛:2010/02/15(月) 16:08:19.24 ID:dPMj0K7T0
「笛吹き、何をやっているんだ?」
それはこちらのセリフである。
「ついに俺の都市伝説が暴走してね。今から殺しに行く。」
だが答える、俺って紳士だねえ。
俺が殺すという言葉を吐くととてつもなく嫌そうな顔をする。
なんて偽善者なのだろう。
「今回は人に被害を与えに来たって訳じゃないみたいだな……。」
「ああ、その通りだ。お前はどうしてここに?」
「いや、人が少なすぎるから何か有った物だとばかり……。」
「丁度良い、手伝えヒーロー。」
うわ、露骨に嫌な顔してやがる。
まあ正義の味方だから仕方がないか……。
だが、俺と手を組む以上にこの異常な事態を解決しなきゃいけない。
それがこいつの使命だ。
しばらく考え込んだ後、明日は俺と手を組むことを決めた。
「問題の元凶である俺の都市伝説はこの先だ。
あいつのことだから無関係の人々を操っているとおもうんだよ。
そいつらをお前に任せたい。」
「え?それ位お前だって……、ああできないな。」
「その通り、俺じゃあ間違えてしまう。」
「正義の味方であるお前ならなんとかなるだろう?
……とでも思っているのか?」
「解っているじゃないか。」
遠目に神社の境内を見回す。
小山が一つ出来ているがあれはなんだろう?
俺達二人は軽口を交わし合いながら神社の境内に入った。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 16:08:22.57 ID:dsAK1zLJ0
支援
57 :
笛:2010/02/15(月) 16:09:31.60 ID:dPMj0K7T0
神社に入るとそこにはハーメルンの笛吹きの能力で操られたと思しき少年少女が大量に集まっていた。
「ふふ、さっそく仕事だ正義の味方。善良な市民共を精々保護していろ。」
こいつは面白そうだ。
奴の正義の味方っぷりを堪能させてもらうのも悪くない。
「言われなくてもだよ。邪魔するなよ?」
「出来る限り頑張る。」
「あと、うちの黒服がお前に怒ってたぞ。」
「知ってる。」
「それじゃあさっさと殺されてこい。」
「じゃあさっさと殺してくる。」
俺は走り始めた。
成る程、俺に向かってくる奴は全部あの明日が動きを止めてくれる。
遠距離攻撃というのはなかなか便利だな。
シンプルな能力ほど応用が利くから俺と違って複数契約しなくても戦えるのか。
以後、参考にするとしよう。
さて、俺が目指す対象はこの先に居る。
石段を踏み、鳥居を越えて、ついでに手を洗って先に進む。
丁度ピッタリお賽銭箱の所に彼女は居た。
「あ、マスター……やっと来た。」
髪はボサボサ、目は空ろ。
所々破れ欠けた服から黒い影みたいなものがしみ出ている。
「私、やっと自分が何なのか思い出したんですよ。」
そう言って、彼女は笑った。
その微笑みが徒に痛々しかった。
58 :
笛:2010/02/15(月) 16:10:37.32 ID:dPMj0K7T0
「そうか、それは良かったな。」
精一杯の笑顔で俺はそれに応える。
駄目だ、ぎこちない。
笑う
駄目だ
笑う
駄目だ
「私ね、なんか居るだけ悲しい何かだったんですよ。」
「そうか……。」
「私としての私が居る限り、誰も幸福にはならないんですよ。
だからこれでさようならしませんか?」
「それを言ったら俺だって同じだよ。さよならには応じられないね。」
「いいや、マスターは誰かを幸福にしてますよ。
全員じゃなくても、少なくとも貴方は貴方を幸福にしている。」
「お前は違うのか?」
「私は……都市伝説として生きている事すら苦痛です。」
「俺と居たときは幸せじゃなかったか?」
「幸せでした。でも………。」
「でも?」
「私と契約していなかったら、マスターって別に組織に追われなかったですよね?
殺人鬼と呼ばれ、誰からも恐れられる事なんて無かったですよね?
貴方に助けて貰いながら私は貴方を不幸にしていましたよ。」
「別に?俺は小さい女のこを好き放題できるならそれで構わん。」
「それが高いリスクを払ってまで私である必要は無い。」
「リスクの無い人生など退屈だよ。」
「そんな口先だけの話をしているんじゃない。必然性がないんだよ、私と貴方の間に。」
「……そうか。」
必然性が無くても、否、無いからこそ彼女が目の前に居るのはきっと素敵な奇跡なのだ。
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 16:11:30.47 ID:dsAK1zLJ0
支援
60 :
笛:2010/02/15(月) 16:13:04.20 ID:dPMj0K7T0
「こんな夢を見ました。
マスターが口裂け女と契約していてすごくその子と相性が良いんですよ。
私なんかよりずっとずっと。
それ見てたらね、私なんて居ない方が良いじゃないかと思ったんです。
私が居ない方が……マスターも楽でしょう?」
やめろ、そんな顔を、“俺の味方”がそんな顔をするな。
「下らない問題じゃないか。否、問題ですらない。」
いつも通りのセリフを俺は吐く。
問題無い。
それだけで大抵の物事はさらっと片付くものだ。
「いつもそう言うんですね。」
「ああ、だって問題なんて無いもの。」
「それは貴方がそう思っているだけでしょ?」
「そうだよ、だけどそれで十分だ。」
一歩ずつ、俺はメルに近づく。
「もうそろそろ離れないと危ないですよ。また私は暴れ始める。
マスターだって平気な顔して相当負担が来ているんじゃないですか?」
「でも止めなきゃいけないだろうが。」
まったく身体に負担は来ていない。
俺の器は暴走した彼女すら容易に受け止めてしまっているそうだ。
だからこそ、俺にはサンジェルマンの与えた解決方法以外にもう一つの解決方法が有った。
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 16:14:09.35 ID:dsAK1zLJ0
支援!
62 :
笛:2010/02/15(月) 16:14:48.97 ID:dPMj0K7T0
「貴方に、私を、止められるんですか?」
馬鹿にしたように笑いながらメルは俺に尋ねる。
きっと彼女の今までのマスターは簡単に飲まれたのだろう。
「簡単だよ。」
問題にならないくらい簡単だ、とさっきから言い続けていたのだが解ってくれないようだ。
「そう、すごく簡単な話だ。」
それを聞いたメルの瞳に希望の光が灯る。
「じゃあ私、やっと消えて無くなれるんですか?
誰かを飲み込んだり殺したりすることなく。」
そこまでして居なくなりたいか。
「ああ、お前は消えて無くなれるよ。全部俺の心の中に帰るんだ。」
「じゃあ一思いにお願いしますよ。サンジェルマン伯爵にも迷惑かけちゃいましたし。
どうせ私に帰る場所なんてありません。」
メルは俺に向けてすがるように手を伸ばす。
ああ、あの時と、始めて会ったときと一緒だ。
俺が助けてやらないと駄目なんだ。
「まあお前が居なくなっても……、俺の心の中には残るよ。ずっとだ。」
「何を言ってるんですか?
貴方は私が期待した悪い人なんだから悪い人らしくして下さい。」
がっかりしたような声をあげるメル。
「そうだったな……。」
俺はその手をつかみ取ると彼女を抱きしめた。
ああ、軽いなあ。
すごく軽い。
63 :
笛:2010/02/15(月) 16:16:02.78 ID:dPMj0K7T0
「じゃあ悪人として哀れな都市伝説に命令させて貰おう。お前は俺の従順な僕として俺の傍に居ろ。」
「……それが無理なんじゃあないですか。」
「無理ならば力尽くでここに留め置く。」
「もう、また元に戻りますよ?」
彼女から染み出す影が一層濃くなる。
成る程、これが彼女の本体らしい。
「元に戻れば貴方は私に触れることさえ出来ない。
私以外の私は確かにサンジェルマンが殺し尽くしたかもしれないけれど……。
私はこのまま、ここを離れてまた増えて復活しますよ?」
「成る程、俺は触れられないだろうな。」
蜻蛉切を腰から抜き放つ。
「だけどこれならどうだよ。」
俺は蜻蛉切でメルごと自分を貫いた。
「――――――離れられない!?」
「蜻蛉切……村正の名前を持つこいつならば切れない物は無い。
鋼より固い身体も、雲のように消えていく影さえも。」
「この段になって都市伝説を進化させるなんて……。」
「良いね、新必殺技だ。」
「これじゃあまるっきり正義の味方じゃないですか。」
「下らないね、俺は正義の味方なんかじゃないよ。」
蜻蛉切で無理矢理繋がっているせいだろうか?
ハーメルンの笛吹きの中に眠るどす黒い感情が、記憶が流れ込んでくる。
どうあっても人を殺せと嵐のように叫んでいる彼ら。
それの命ずるままにハーメルンの笛吹きとして行動したメル達の記憶。
それが、そんなものが俺の愛する彼女を苦しめていたのか。
そんな理由も意味もない曖昧な感情が俺から大切な女性を奪っていこうとしたのか。
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 16:16:07.37 ID:dsAK1zLJ0
しぇんn
65 :
笛:2010/02/15(月) 16:17:05.77 ID:dPMj0K7T0
「メル……、一度俺に関わり合っておいて……。
お前の都合とか、そんな下らない物で……、俺から逃げられると思うな!
俺は絶対にお前を逃がさない。
ずっと傍に居ろ。
お前がお前の力に耐えられないならば俺が背負ってやる。
俺がお前の辛いことを幾らでも肩代わりしてやる。
だからここに居ろ!」
「う……………、ああ!やめて下さい、私はそんなこと言われるような……。」
「俺の決めたことに逆らうな!」
祈るように
「――――――ッ!」
彼女に届けと祈るように、彼女の頭部を殴る。
拳は鈍い音を立てて彼女の身体に突き刺さった。
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 16:17:53.86 ID:dsAK1zLJ0
支援!!!
67 :
笛:2010/02/15(月) 16:18:49.16 ID:dPMj0K7T0
「お前が苦しんでいた理由も、お前が何をやったのかも今知った。」
流れ出てくる血の代わりに、メルと繋がる蜻蛉切の傷口から真っ黒い影が流れ込んでくる。
だがその程度で、俺の自己は無くならない。
たかだか千年、二千年積み上げられた悪意が俺という唯一の存在を染める事なんてできるだろうか?
いや、出来ない。
俺を変えたいのならばこの三倍は持ってこいというものだ。
「それを俺に渡せ。全部俺が使いこなして、使い潰してやる。」
激痛で顔を歪めているメル。
ああ、なんて可愛らしいんだろう。
「お前は無能で良い、今以上に無能で居ることをこの俺が許可しよう。
だからここに居ろ、俺無しでは何も出来ないくらい弱くて良い。俺は一人で何でも出来るんだから。
役に立たなくて良い。
そんなお前でも俺は大好きだ。どんなお前でも、俺だけがお前の居場所になってやる。」
痛みによってだろうか、いや、きっと違うな、俺の腕の中でメルは大泣きに泣いていた。
最初から俺に頼れば良いのだ、馬鹿野郎。
影が全部俺の身体に入り込んだのを確認すると、俺は蜻蛉切を引き抜いてメルを抱え、神社から離れることにした。
【上田明也の協奏曲15〜極楽鳥が舞う野には〜fin】
68 :
笛:2010/02/15(月) 16:20:35.60 ID:dPMj0K7T0
さて、一方その頃。
「……何時になったら出られるんでしょう。」
サンジェルマン伯爵は地面の中で大分暇していた。
「あ゛ー!もう!Hさん!ちょっとたすけてこれ!!
引き受けさせられたけどこれは俺の仕事じゃねえ!
適材適所って言うだろうがチクショーめえ!!」
明日真は黒服Hに助けを求めていた。
【上田明也の協奏曲 続】
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 16:21:31.97 ID:dsAK1zLJ0
笛吹きの人乙!!!
さて、避難所に代理投下もきてるんだが、申し訳ないが俺は俺のネタを投下するぜ!!!
何故パー速でやらないのか
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 16:24:35.31 ID:dPMj0K7T0
忙しいからここで抜けるんだ……。
すまない。
帰って来たら代理投下かけるから許してくれ
72 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 16:25:17.48 ID:dsAK1zLJ0
−−−−−−−2月のはじめ、節分よりは後で、バレンタインよりは前の話……
「…ふぅ、凄い雪だなぁ…」
ざかざか
レストラン「うわさの産物」の前で、一人の青年が雪かきをしていた
例年にない大寒波が襲い掛かった学校町
日によっては、1日二回雪かきしなければ、間に合わない
夕食時の時間帯、店の前や駐車場に積った雪がかなりの量になった為、ちょうど手が空いていた青年が雪かきをしていたのだ
ポケットにコーラのペットボトルを入れた、その青年
雪かきが一段落ついて、う〜ん、と背伸びする
「雪、雪なのれす〜、雪うさぎ作るのれす〜」
「雪歩ちゃん、雪うさぎ作るんなら、お店の入り口の前には置いちゃ駄目だよ?……それと、手袋した方がいいんじゃないかな?」
はらはらと振り続けている雪に、無邪気にはしゃぐ雪歩に、青年は苦笑してみせた
以前の青年だったら、放置していたところなのだが…彼も、少しずつだが変わってきているのだ、辛うじて
「こんばんは〜、食料の配達……って、雪歩ちゃん、手ぇ赤くなってる!?手袋、手袋!!」
「あ、友人しゃん」
と、そこに、虫少年…虫川 友人が、食料の配達にやってきた
雪歩の寒さで赤くなった手を見て、慌てて両手で包んで温めてやっている
微笑ましいな、と青年は笑った
「友人君、できれば、雪歩ちゃんに、手袋とかの防寒の重要性、教えてあげてね?」
「俺がですか?」
「うん、君が教えるのが、適任なんじゃないかな、って思うんだ」
73 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 16:28:14.03 ID:dsAK1zLJ0
どこか子供っぽく首をかしげ、そう友人に告げる青年
何のこっちゃ、と友人が疑問を投げかけようとして……
虫が報せる
危険が、近づいている事を
「…?どうしたの?」
「何か……ヤバイもんが、近づいてる…!」
「…ヤバイもの?」
何かの都市伝説だろうか
青年は、コーラのペットボトルを取り出す
「友人君、雪歩ちゃんを連れて、店の中に。ノミ沢さんか、金さんを呼んできてくれるかな?店長でもいいけど」
「わかりましたっ!」
「ふぇ??」
ひょい、と雪歩を抱き上げて、店の中に駆け込む友人
…これで、巻き込まないですむ
近づいてきた気配、青年も気づいた
「何者かは知らないけど、まぁ、敵だったら溶かせばいいんだしね」
あっさりと、危険なことを言い切った青年
近づく悪意の気配に、身構えて
−−−−−っひゅう!!!と
支援
75 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 16:30:09.35 ID:dsAK1zLJ0
吹雪を伴う突風が、辺りに吹き荒れて
「−−−−−ぇ」
ふわり
背後から、抱きしめられた感覚に……青年は、ゾクリ、体を振るわせた
「うわっ!?」
友人の話を聞いて、急いで店の外に出た「うわさの産物」の店長
その瞬間、突風が吹き荒れ、一瞬、外に出る事ができなかった
「くそ、今年の冬は本当に酷いな……おい、新入り君!」
迫っていた何かの危険に、立ち向かおうとしていた青年
一人では、危険かもしれない
だから、助太刀に出たのだが…
「…新入り、君?」
危険な気配は、感じない
もう、どこかに行ってしまったのだろうか?
その、代わりに
「……おい!?どうしたんだ、何があった!?」
雪の中、青年が倒れていた
76 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 16:33:18.59 ID:dsAK1zLJ0
友人が、店内に入って店長を呼ぶまで、3分もかかっていない
その短い時間に、一体、何があったというのか
「……さむ、い……」
「おい……おい、しっかりするんだ!!」
倒れていた青年の体は、冷え切っていた
ずっと雪かきをしていたのだ、温かい格好をしていたし、むしろ、体温はあがっていたはずなのに…その体温が、どんどん、どんどんと冷えていっている
「これは……よくわからんが、ヤバイ…!」
このまま、体温が下がっていっては命に関る
早く、温めなければ
店長は、慌てて青年の体を抱え上げ、店内へと入っていく
倒れていた青年の傍らに落ちていた、コーラのペットボトル
「骨を溶かすコーラ」と言う、青年が契約している都市伝説の影響下で、凍るはずなどないそれは……完全に凍り付いてしまっていた
ーーーーーー同日
「遅くなったな…」
はぁ、と白い息を吐き出し、急いで帰路についている翼
夕食の下ごしらえは済ませていたから、望と詩織でも問題なく作れるとは思うが…
「…望も、料理の腕、あがってきたしな」
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 16:33:39.42 ID:dPMj0K7T0
支援
78 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 16:35:31.23 ID:dsAK1zLJ0
最近は、恐ろしい材料を使うこともなくなってきた
翼としても、教えがいがある
今度は、どんな料理を教えてやろうか
そんな事を考えながら、雪道を駆けていて
−−−ひゅうっ、と
強い、風の音がして
「−−−−−っ!?」
ぞくり
全身を駆け抜けた、悪寒
何かが近づいてきている
翼は、本能的にそれを感じ取った
咄嗟に、振り返ろうとして
「うっ!?」
びゅう!!と
向かい風がが吹き荒れ、雪が口の中に入りそうになる
思わず目を閉じた、その瞬間
ふわり、と
何かに、抱きしめられたような気がした
「−−−この!?」
悪意ある攻撃を感じ取り、能力を発動する
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 16:43:15.34 ID:dPMj0K7T0
支援
80 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 16:43:30.74 ID:dsAK1zLJ0
体温があがり、翼に降りかかる雪が、一瞬で融けていった
ひゅうひゅう、風の音はどんどん遠くなって……気配も、もう、消えた
「何だったんだ、くそ……」
ぜぇ、と辺りを見回す翼
自分以外の足跡は、何も残っていない
何だったのだろう
首をかしげて…ぶるり、体を振るわせた
「……さむ、い……?」
十数年ぶりの、その感覚に
翼は、ただ、首を傾げた
「…あ、翼かしら、黒服かしら…」
玄関の扉が、開いた音がした
翼か黒服が帰ってきたのだろう
そう考えた望だったが…
「………?」
玄関の扉が、開いた音はしたのに
閉じた音が……しない?
「どうしたの?」
「…詩織は、そこにいて」
支援だー
82 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 16:46:56.92 ID:dsAK1zLJ0
ノロイ相手に遊んでやっていた詩織にそう声をかけ、望はやや警戒しながら、玄関に向かった
ノロイが何も感じていないから、危険はないと思うが…
玄関に向かった望が、見たものは
「……翼!?」
玄関で倒れている、翼だった
家に入ると同時に、力尽きたのだろうか
扉が開きっぱなしで、冷たい風が家の中に入り込んでいる
急いで扉を閉めて、望は翼の上半身を抱え起こした
「ちょっと、どうしたの!?」
「………寒ぃ……」
望の問いかけに、ぼそり、翼はそう答えてきた
それは、こんな軽装じゃ寒いに決まって…
……きま、って?
おかしい
翼は、「日焼けマシンで人間ステーキ」と契約している影響下で、やや、体温が高いと聞いている
それなのに…今、望が触れている翼の体は…酷く、冷え込んでいて
「何があったの!?」
「…わから、ねぇ……寒ぃ…」
「ちょっと!?寝るんじゃないわよ、絶対に!」
何かわからないが……不味い
多分、意識を失ったら…そのまま、死んでしまう
支援
84 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 17:00:22.50 ID:dsAK1zLJ0
とにかく、体を温めなければ
翼本人には酷だが、自分の腕力では翼を運べないから仕方ない
望は「はないちもんめ」の能力を発動して翼の体を操り、リビングに向かわせた
同時刻 レストラン「うわさの産物」
ガチガチと、青年が寒さに震え続けている
部屋を随分と温めて、その体を毛布で包んでいるのだが…一行に、体温があがらないのだ
辛うじて、これ以上体温が下がる事だけは防げているのだが…
「…一体、何があったんだ?」
苛立たしげに口を開いたのは、青年の双子の兄
青年が倒れた知らせを受けて、駆けつけてきたのだ
暖房の前で、毛布に包まれて横たわっている青年の傍に付き、その様子をじっと見つめている
「我々が目を放していた間のことで、何が起こったのかわからないのです。とにかく、今、店長が何の都市伝説の影響を受けたのかを調べています」
「…そうか」
小さなおじさんである長谷川の言葉に、頷く青年の兄
青年が、何らかの都市伝説の影響を受けた事は、確かなのだ
まるで、雪女か何かの影響に似ているのだが、それともどこか違う
とにかく、原因がわからなければ、対処のしようがないのだ
「わかったぞ!」
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 17:02:30.27 ID:dPMj0K7T0
支援
86 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 17:03:34.82 ID:dsAK1zLJ0
ばたん!と扉を開けて、店長と副店長であるこっちゃんが部屋に入ってきた
青年の兄と長谷川が、そちらに視線をやる
「……寒い、よ………おにい、ちゃん………助けて……」
−−−ぼそり
寒さによって、意識が朦朧としている青年が…小さな声で、そう呟いて
「………」
その声を、聞き逃さなかった、青年の兄は
青年を気遣うように、その手を握ってやった
握ったその手は、まるで氷のように冷え切っていた
ーーーー数分後、東区のとある住宅
「ファーザー・フロスト?」
望の言葉に、はい、と頷く黒服
ソファーでは、翼が毛布に包まれて、丸くなっていた
部屋の中は暖かいと言うのに、ガチガチと寒さに震える翼
ノロイが翼を気遣い、もそもそとくっついて…翼の冷え切った体温に、一緒に震えていた
「それって、確かロシアのサンタクロースよね?」
「サンタクロースと言いますか、それに近い存在ではありますね。もっとも、サンタクロースと違い、冬の厳しさの具現化の側面が強いのですが」
87 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 17:05:51.04 ID:dsAK1zLJ0
詩織の疑問に、すぐに答える黒服
先ほどから、携帯でどこかに連絡をとろうとしている
「そのように、冬の寒さの厳しさの具現化であるが故に、その全身は氷のように冷たいといわれています。その腕に抱きしめられると、体温がどんどんと下がって凍死してしまうのだとか…」
「翼は、それにやられたって言うの?」
「恐らく……今朝から何件か、それらしき被害を「組織」で確認していますので」
この黒服が担当している「骨を溶かすコーラ」の契約者も、それにやられたようだ
まだ、無事なようだが…早く対処しなければ、不味い
「ファーザー・フロストを倒すなりどうにかするなりしなければ、この状態を解除できません。慈悲深さも持っているはずのファーザー・フロストがどうして人々を襲っているのかはわかりませんが…送球に、対処しなければ」
相手は強大な力の持ち主だが、小細工を要すれば勝てる相手だ
…問題は、今はその「小細工」を準備する時間がないと言う事だ
翼は、まだ自身の能力の影響もあって意識をしっかりと保てているが、他の被害者達はそうはいかないだろう
早くしなければ、凍死者が続出する事になる
「…できれば、あの方には頼りたくはなかったのですが…」
口惜しげに、呟く黒服
その時、ピ………と
携帯の通話が、繋がった
ーーーーひゅう、と
冷たい風が吹き荒れる
88 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 17:08:57.67 ID:dsAK1zLJ0
それは、学校町を彷徨っていた
故郷を離れ、遠く離れたこの地に来て、獲物を探し続けていた
内なる声が誘惑する
殺セ、殺セ、殺セ、殺セ、殺セ、と
全てを凍らせてしまえと叫び続ける
ずっと、無視し続けてきたはずのその声に、それはいつからか耳を傾けるようになってしまっていた
声に導かれてやってきたこの地
今日一日で、もう随分とこの腕に包み込んだ
このまま、この街全ての人間を包み込んで……
「…見つけたぞ」
かけられた声
殺意の混じった、その声に、それは振り返った
向けられたのは、剥き出しの殺意
月明かりに照らされて、刃がきらめく
「−−−−っ!!!」
ひゅん!!と
横薙ぎに向かってきた刃を、それは冬の風となることで避けた
くっかかかかかかかかかかかか!!と、刃の主が笑う
「ほぅ!これを避けたか!!」
89 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 17:11:47.08 ID:dsAK1zLJ0
そこにいたのは、甲冑を纏った若武者
…「首塚」の首領、平将門だった
ひゅうひゅうと、雪を含んだ風が一箇所に集まって、人型を作る
それは、白い毛皮を纏い、長いあごひげを生やした老人の姿をとった
真っ赤な目が、将門を睨みつける
「ふぁあざあ・ふろすとであったな……我が配下に手を出したのだ、その命、諦めてもらおうかぁ?」
ニタリ、将門は刀をファーザー・フロストに突きつけて笑う
ファーザー・フロストは向けられた刃に怯む様子も見せず
−−−ひゅううっ、と、再び風に姿を変えて、将門に襲い掛かる
ぶぅん、と振るわれる刀
それは、風すらも引き裂いた
しかし、ファーザー・フロストにはダメージがいっていない
ファーザー・フロストは将門をその腕で抱きしめようと、腕を伸ばし…
「くっかかかかかかかかか!!!」
楽しげに笑う将門
何時の間にか刀を持っているのとは逆の手に、槍が現れていた
それは、ざくり、ファーザー・フロストの手を貫く
「−−っ!?」
「ほほぅ、痛みは感じるかぁ?」
90 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 17:15:10.12 ID:dsAK1zLJ0
飛び散る鮮血
ずぶり、槍が抜かれて、傷口から流れ出る出血が辺りの雪を汚す
将門の刀は、槍は…彼の持つ武器は、将門の霊気の影響を受けているがゆえに、実体のないものをも切り伏せる
祟り神の武器に、切れぬもの、なし
「さぁて、細切れにでもしてやろうか?」
「…………」
じゅうじゅうと、雪に覆われて、傷口が再生していくファーザー・フロスト
治るのならば、治らなくなるまで切り伏せるまで
そう考え、将門は刀を振るおうとして
「……む?」
刀の、表面に……雪が、付着しだした
雪は、氷となってどんどんと刀を覆っていく
そして、氷はどんどん、どんどん、将門の手を伝い、将門を凍らせ始めた
「ほぉう?面白い事をするなぁ?」
将門は、それに焦った様子もなく
−−−−やがて、将門の全身を氷が覆い尽くし、その動きを封じ込めてしまった
ファーザー・フロストは、凍りつかせた対象を静かに睨みつけた
自分を、傷つけるだけの技量を持った相手
生かしておいては、面倒だ
91 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 17:18:51.90 ID:dsAK1zLJ0
殺セ、殺セと内なる声が騒ぎ続ける
あぁ、そうだ、速く殺してしまおう
凍りつかせたそいつを、砕こうと手を伸ばした
その、瞬間に
ファーザー・フロストを、特大のプラズマが襲い掛かった
「っ!?」
ばちん!!!と
その電撃よりも、むしろそれが発生させる熱に苦しむファーザー・フロスト
それでも、ロシアの冬の化身たる彼を殺しきるには、まだ足りない
「…流石に、それでは倒れませんか」
現れたのは、プラズマを放ったのは、半透明の若い女性
人は、彼女をこう呼ぶ……「盟主」、と
「まさか、ロシアから冬将軍だけではなく、あなたほどの存在まで来ているなんて…一体、この街に何の用なのですか?」
「………」
ファーザー・フロストは、盟主の言葉に答えない
ただ、新たに現れた敵を倒さんと、その腕を広げる
ファーザー・フロストほどの存在となれば、たとえ相手が霊体であろうとも関係ない
その腕に抱き込めば、たちまち凍りつかせる事が出来る
「っ答える口をもちませんか…!」
92 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 17:21:35.18 ID:dsAK1zLJ0
盟主は、迫り来るファーザー・フロストに、再びプラズマを放とうとする
だが、それよりも早く、ファーザー・フロストは盟主を抱きしめようとして
ーーーーどすどすどすどすどすっ!!と
その背中に、無数の矢が突き刺さった
「…その女を抱くのは我の役目だ」
凍り付いていたはずの、将門が
弓を手に、笑ってそう言いはなった
「っち、死んでいませんでしたか、落ち武者」
「くっかかか!我があの程度で死ぬと思うかぁ?」
「…死んでも死なないでしょうね、腹の立つ事に」
笑う将門の様子に、盟主は深々とため息をついた
この祟り神は、簡単には死なない
いや、死んだとしても、「首塚」の呪いと言う都市伝説はあまりにも有名すぎて、きっと大して時間も経たないうちに復活してしまうだろう
封印でもしない限り、ずっとそれが続くのだ
「我を助けにでも来たかぁ?」
「違います。あなたに本気を出されては困るからです」
きっぱり、そう言い切った盟主
ファーザー・フロストクラスともなれば、将門が本気を出さざるを得ない状況になりかねない
そんな事をされては、困るのだ
93 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 17:25:07.64 ID:dsAK1zLJ0
将門の本領である「祟り」の力は強すぎる
将門が本気で「祟り」の力を使って戦ったならば、学校町に雷が無数に落ち、震度7強の直下型地震が学校町を襲うだろう
……学校町が、崩壊しかねない
「ファーザー・フロストに暴れられては困るのは、こちらも同じですしね」
「くくっ、ならば、共同戦線とでもいこうかぁ?」
「…仕方ありませんね」
背中に無数の矢が突き刺さりながらも、ファーザー・フロストは倒れない
その傷口は、再び雪に覆われて再生していく
このままでは、きりがない
「盟主よ、あやつの動き、止められるか?」
「できなくもないですけど、何をするつもりです?」
「……あれの中に、覚えのある気配がある」
将門の、その言葉に
盟主は、じっとファーザー・フロストを見つめた
……この、気配は
「っ何故、ファーザー・フロストの中に!?」
「わからん。だが、こやつが暴れているのは、あれのせいかもしれんからな」
すらり
将門が、刀を構える
ファーザー・フロストの「中」にいる、それを切り捨てんとするがために
「わかりました。無駄に殺すわけにもいきませんからね」
ばち
94 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 17:28:34.45 ID:dsAK1zLJ0
ばちばちっ、と音を立てて、プラズマが発生する
それは、一直線にファーザー・フロストへと向かっていった
びゅうううう!!!と吹雪が吹き荒れる
暴風のようなそれは、プラズマを包み込んでその威力を押し殺していっている
「まだですっ!」
ばちばちばちばちばちばちばち!!
プラズマの球が、一つ、二つ
新たに現れたそれが、次々とファーザー・フロストに襲い掛かる
吹雪を操り、ファーザー・フロストはそれらを全て打ち消そうとした
ひゅんっ!と、ばちばち音を立てながら、特大のプラズマがファーザー・フロストに襲い掛かる
ファーザー・フロストは、片手に意識を集中し、それを受け止めた
じゅうじゅうと、手が溶けていく
それを、次から次へと雪で補充していく
このまま、受け止めようとして
その、次の瞬間
プラズマの向こう側から……プラズマごと、刺しぬくように、刀が姿を現して
将門の一撃が、ファーザー・フロストの心臓に突き刺さった
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!???』
吹雪の音を掻き消すかのような、絶叫
どろり……将門が突き刺した、ファーザー・フロストのその胸元に、黒い染みが現れた
支援
帰宅支援
支援
さるってたのか支援
こうなったらさるさん喰らうまで支援だ!
たくさん書き込めば解けるのか?
支援
後5分ちょい
103 :
.:2010/02/15(月) 17:57:37.48 ID:dw3yMR2L0
.
支援
105 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 17:59:37.44 ID:dsAK1zLJ0
どろどろとしたそれは、黒い、山羊の形となっていく
ずる、と将門がファーザー・フロストから刀を引き抜くと、刀にはその黒い山羊だけが突き刺さった状態となった
『ク、ソ…………オノレェエエエエエエエエエエエエエエ!?邪魔ヲ、シヤガッテェエエエエ……!!』
「…なるほど、これが悪魔の囁きか」
じたばたと暴れる、黒山羊の姿をとった悪魔の囁き
将門は、それを冷たく見下ろして
−−−ざんっ!と、刀を薙ぐ
黒山羊の体は、それによって真っ二つに切り裂かれて……吹雪の中、跡形もなく、消えうせた
ーーーー同時刻、レストラン「うわさの産物」
「…!」
握っていた手に…温かみが、戻ってきた
青年の呼吸が、安定してくる
「はい……はい、わかりました。伝えておきます」
誰かと、連絡をとっていたらしい店長
電話を切ると、青年の兄に告げる
「ファーザー・フロストが倒されたそうだ。このまま温かくしておけば大丈夫らしい」
お帰り!支援
107 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 18:02:30.34 ID:dsAK1zLJ0
「……そうか」
ほっとしたように、青年の兄はため息をついた
青年は、ぼんやりとした瞳で、周囲を見回す
「…にい、さん?店長……?……僕、は…」
「いいから、休んでおけ。後で、お兄さんと一緒に車で送るから」
店長にそう言われて、青年は不思議そうに首を傾げたが
…兄が、傍にいてくれているから、問題ないと感じたのだろうか
ほっとしたように笑って…安心しきったように目を閉じて、眠り始めた
ーーー同時刻 東区のとある住宅にて
うわさの産物への連絡を終えて、黒服はほっと息を吐いた
どうやら、あちらで被害にあっていた、「骨を溶かすコーラ」の契約者も、無事生き延びる事ができたようだ
間に合って、良かった
翼も、体温が戻ってきていて…今は疲れ切っていたからか、静かに寝息を立てている
「まさか、あなたが将門様に頼るとはね…」
「…私がお願いできる相手で、小細工無しの真っ向勝負でファーザー・フロストクラスと戦える相手となると、あの方しか思い浮ばなかったもので」
…まぁ、頼み事の代償を考えると、頭が痛くなってくるが
翼の命には、変えられない
……将門の事だから、翼が危険な状態に陥っている事を知ったところで、無償でもファーザー・フロストと戦いそうだった事実はさておき、だ
支援
109 :
吹雪の中で:2010/02/15(月) 18:03:56.96 ID:dsAK1zLJ0
「…とにかく、翼が無事で良かったです」
ほっとした表情で微笑み、眠る翼の頭を撫でる黒服
む、と望がやや不機嫌になっているのだが、その様子には気づいていない
(……それにしても)
先ほどの、ファーザー・フロストを制したと言う将門の報告
その際に、聞かされた事実が、引っかかる
(学校町内で、何者かと契約した悪魔の囁きが増殖している事は、「組織」の報告でも聞いていますが…)
ファーザー・フロストは悪魔の囁きにとり憑かれていた
かえって、強大な都市伝説である事が仇となり、とり憑かれた事に周囲さえも気づかずに、暴走状態になってしまったのかもしれない
つまり、だ
ファーザー・フロストもまた、清川 誠のように、長期間、悪魔の囁きに取り憑かれていた事になる
(…悪魔の囁きにとり憑かれた存在に、翼が二度も襲われるとは……)
偶然、なのだろうか?
穏かな翼の寝顔を見つめつつ…黒服は、酷く嫌な予感がするのだった
to be … ?
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 18:05:38.84 ID:dsAK1zLJ0
投下終了ぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!
三回もサル喰らうとか久しぶりだったよ!!
支援にマジ感謝
そして、店長の人とアクマの人とはないちもんめの人に焼き土下座!!!orz
巻き込んでしまいました
もしかしたら、他にもファーザー・フロストに抱きしめられた被害者がいたかもしれませんが、きっと無事、生き延びてくれてる事でしょう
…三面鏡の人の許可とれたら、少女が被害にあった様子でも書こうかな
黒服Hが人肌で温めるとk(ry
支援
投下乙でした!
昼の保守はほぼあなた一人だったから、さるさん喰らうのも仕方ないwww
代理投下もしてくれて感謝なんだぜ
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 18:10:45.49 ID:dsAK1zLJ0
そして、占い師さんのネタを代理投下したいのだが、夕食準備があるので一旦パソコンを離れる
ハンバーグを焼かなければ!
夜もスレが残っていてくれれば幸せだ!!!
小さな子ライオンを連れて帰ってきた私に、まず占い師さんがかけた言葉は
「飼わないぞ」
と言う一言だった。
……うん、予想通り過ぎて何も言えない。
「でも…………」
「一時的に餌を与える程度なら構わない。が、このマンションは犬猫のペット禁止だ」
「大丈夫ですよ。子ライオンですし」
「そういう問題じゃないだろう……」
ぎしゃー、と。
私の腕の中で鳴く子ライオン。
何だか少し尊大そうな響きがあったのは、気のせいだろうか。
「ほら! こんなに可愛いじゃないですか」
「……今のを日本語に直すのなら『苦しゅうないぞ』と言った所か」
……やっぱり尊大だった。
でも、このままあの寒さの中にこの子ライオンを一人ぼっちにするわけにもいかない。
なおも反論しようとする私を見て、占い師さんはため息をつき
「分かった。分かったからそんな顔をするな」
「じゃあ、飼ってもいいんですか!」
「いや、それは駄目だ」
ああ、一度持ちあげてから蹴落とされた気分だ……。
と言うか、これが「いじめ」と言うものなのかもしれない。
「知り合いになら飼って暮れそうな人間がいる。そこに引き渡せば少なくとも凍死や餓死の心配はない」
「知り合いって……大将ですか?」
「曲がりなりにも食べ物を扱う店に動物を預けるわけにはいかないだろう……」
つまりその人は大将でなく、尚且つ占い師さんの知り合いと言う事になる。。
あのマッドガッサーの件で知り合った誰かだろうか。
……でも、無条件で快諾してくれそうな人、いたっけ。
私の考えている事を見透かしたのか、占い師さんは軽く首を振って
「いや、あの事件の際に知り合った人間じゃない。つい最近だな」
「はぁ…………」
つい最近。
そう言えば、最近誰かと時々連絡を取っているようなそぶりがあったような気がしなくもない。
「ここから近いんですか? その人の家」
「それなりに、な」
ここからそこそこ近くて、ちゃんと飼ってくれそうな家。
つい最近と言うのが引っかかるけど……ここで飼えない以上、贅沢は言えない。
これ以上は占い師さんを困らせるだけになってしまうに違いない。
「じゃあ、それでお願いします……」
「ああ」
頷いて、電話の方へと向かう占い師さん。
ぎしゃー
何となくうなだれた私を見て、この子ライオンは果たして慰めてくれたのだろうか。
廊下を歩み進める占い師さんには「餌はまだか、人間」と子ライオンが言っている事が分かったらしいが、随分後になるまで言わないでくれた。
**************************************************
――――所変わって、恐怖のサンタ契約者、山田治重の住むアパートにて。
「……疲れた」
今日も仕事を終え、俺はアパートの階段を一段一段上っていた。
最近の俺の仕事は、主に都市伝説退治である。
ある方面から入ってくる仕事をこなし、一応そこそこの収入が入るようにはなっていた。
都市伝説のようなある種希少な物の退治で生活できるのは、ここが学校町だからか。
「……ふぅ」
何とか自分の部屋の前にまで到着する。
中では恋人であり、現在内縁の妻となっている良子が夕飯の支度をしてくれているはずだ。
それを思うだけで、自然と扉を開ける気力が生まれた。
「ただいまー」
鍵を開け、中へと入る。
……と。
ぎしゃー
何やら、小さな猫のような動物が山田を迎えた。
一瞬、恋人が猫にでも化けてしまったのかと思い
「あ、お帰りなさい」
その奥から彼女が顔を出した事に、ほっと安堵した。
しかし、この猫が何であるかの疑問がまだ残っている。
「……なんだ、こいつ?」
「こいつじゃないですよ、子ライオンです」
「…………は?」
中から出てきた赤いワンピース姿の少女が、猫を抱きかかえた。
ふしゃー、とその豊満な胸に抱かれ気持ちいいのか猫なで声を出す猫。
…………羨ましくなんかないぞ。
「……で、何だ。子ライオンってのはその猫の名前か?」
だとしたら、かなりおかしいセンスだと断定しなければならない。
いや、そもそもマゾに「まとも」を求めてもいいのだろうか。
「違いますよー。この子の種類がライオンなんです」
「…………。はい?」
わしゃわしゃと猫……もとい、子ライオンの頭をなでるマゾ。
多分、俺は何かを聞き間違えたんだろう。
ああ、きっとそうに違いない。
「その子ね。はるくんに仕事を回してくれる男の人からお願いされたの。『出来れば預かってくれないか』って」
台所へと戻りながら、良子が微笑みながら言った。
仕事を貰ってる男……と言えば、あの占い師になるのだろうか。
……あの男、こんな捨て猫を拾うような人間には見えなかったのだが。
まぁ、人は見かけによらないと言うし、案外猫好きなのかもしれない。
「……で、預かる事にしたのか」
「うん、飼う事にしたんだよ」
…………うん?
何だか、会話に少し食い違いがあったような気がする。
おかしい、何かがおかしい。
俺は確か「預かる事に」と言ったはずだ。
それが何故「飼う事に」なっているのか。
そう、それだ。
そこがおかしい。
「……預かるんじゃ、無いのか?」
その質問には、マゾが答えた。
「聞く所によるとこの子、親がいないらしいんですよねー。だから預かると言ってもほら、いつからいつまでの区切りが出来ないわけでして」
「だから『どうせなら飼っちゃいましょう』って。向こうの娘さん……だと思うんだけど、その子も喜んでたよ?」
「いや、待て。今の我が家の経済状況的にそれはまずい。すごぶるまずい」
ただでさえマゾがいるせいで全身チョコレートコーディングとか言う意味のわからない無駄な出費がかさむのだ。
これ以上支出が増えた場合、どう考えても我が山田家は破たんする。
そんな俺に向かって、彼女はにっこりと笑って
「だから頑張ってね、はるくん」
「な、あ…………」
これは卑怯だと思う。
そして断ったら俺にどんなバイオレンス展開が待っているのか。
救いを求めようにも、猫はマゾに抱かれたままだし、マゾが役に立つとは――――
「大丈夫ですよー、今度から私も手伝いますから」
――――役に立った。
「本当か?」
「はい。でも愛しの人との愛のひとときの合間になら、ですけど」
「ああ、それでいいよ。それなら何とかなるかもしれない」
ほっと、一息ついて
その合間がそれだけの時間なのか、少し心配にもなった。
――――その日、我が家に新たな家族と出費が増える事になった。
【終】
ho
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 19:16:35.42 ID:dPMj0K7T0
保守
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 19:24:40.58 ID:6WX/OcL60
ごちそうさまでした
代理乙!!
出かける保守
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 19:49:45.55 ID:6WX/OcL60
いってらっしゃいませほ
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 20:10:23.71 ID:6WX/OcL60
にゅ
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 20:10:28.44 ID:dPMj0K7T0
なんか保守ついでにネタ書きたいが……
127 :
吹雪の中で その裏で:2010/02/15(月) 20:32:57.63 ID:6WX/OcL60
己の担当契約者である三面鏡の少女、逢瀬佳奈美からの連絡に、黒服Hは急いで彼女の自宅に向かった
鍵は、あいている
両親は出かけているのだろうか
家の中の気配は、佳奈美のものしか感じない
「大丈夫か!?」
「あ……H、さん」
ガチガチガチ
暖房機の前で毛布に包まり、佳奈美は震えていた
かなり、温められている部屋の中
しかし、その唇は青紫になってきていて、寒さに震えているのがはっきりとわかる
「な、なんだか、寒くて…もしかして、何か都市伝説のせいかな、って…」
「外歩いてる時か何か、誰かに抱きしめられたような感覚はなかったか?」
「…そう、言えば…家に入る直前、に…」
原因は、それだ
ファーザー・フロストによる被害
それが、佳奈美にも及んでいたとは
そっと、佳奈美の頬に触れる黒服H
かなり、体温が下がってきてしまっている
意識を保てているのが、奇跡のような状態だ
「…ちょっと、じっとしてろよ」
「……にゃ??」
しゅるり
黒服Hの髪が、伸びる
128 :
吹雪の中で その裏で:2010/02/15(月) 20:36:02.69 ID:6WX/OcL60
しゅるしゅると、目にも止まらぬ速さで伸びていく髪
それは、H自身と…佳奈美の体を、包み込んだ
するり、Hの腕が佳奈美の背中に回されて…ぴったりと、抱きしめられる
「ひゃ!?」
ぺとり
顔を胸板に押し付けられ、その感覚に佳奈美は目をぱちくりとさせる
伸びた髪は、二人をまるで繭のように包み込んだ
視界が、一気に真っ暗になる
「いいか、絶対に寝るなよ。俺が温めておいてやるから」
「え、ええええ、Hさん!?」
「体温をこれ以上さげると不味いからな。この状態で、温める」
…確かに
髪で包み込まれている事と、Hに抱きしめられていることにより…温かみを、感じる
体温が下がり続けている状況ではあるが、ほっと一息つけたような、そんな感覚
どくん
どくんっ、と
感じる、Hの心臓の鼓動
その鼓動よりも、速い速い、佳奈美の鼓動
青白くなってきていた頬を真っ赤にそめて、佳奈美は半ばパニック状態だった
「…大丈夫だ」
ぼそり
しえん!
130 :
吹雪の中で その裏で:2010/02/15(月) 20:37:19.24 ID:6WX/OcL60
Hが、佳奈美の耳元で、低く囁く
「大丈夫だ……必ず、護ってやるから」
「H、さん…?」
「原因が払拭されるまで、こうしていてやる。絶対に眠るなよ………絶対に、放さない。護ってやるから」
いつになく真剣な、Hの言葉に
佳奈美は、ぎゅう、とHにすがりつく
どくん
どくんっ、と
しばし、二人の鼓動だけが、この場を支配し続けた
続く予定はない
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 20:41:06.32 ID:6WX/OcL60
避難所で許可いただけたので書いてみた
この後「人肌で温める」展開になったかどうかは、皆様の判断とか三面鏡の人にお任せするんだぜ!!
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 20:46:28.71 ID:dPMj0K7T0
乙でしたー
133 :
色んなところで擦れ違い (代理):2010/02/15(月) 21:03:39.55 ID:6WX/OcL60
くちゅん、と小さなくしゃみが廃ビルの一室に響く
くしゃみを発した少女を囲む犬達が、心配そうに顔を上げる
「だいじょうぶ、です。さむい、なれる、います」
少女にとってはそれよりも、犬達を家に帰せない事、家主である総統に心配を掛けているだろう事が辛かった
「くろいひと、あきらめる、まだ、です……ながい、いる、けが、しぬ、よくない、です」
彼女の能力が発動している間は、建物は迷宮となる他にゾンビやゴーストが徘徊するようになる
ある程度戦えればそこいらのホラーゲームよりは楽な相手ではあるものの、ゲームと違い長く居れば肉体的にも精神的にも疲労していくだろう
「でんわ、どこ、ある、れんらく、できる、です。かえる、おもう、はなす、ねがう、です」
建物の中に電話があれば、それを介して話す事もできる
だが既に設備の大半が取り払われた廃ビルの中には、使えそうな電話は設置されていなかった
―――
「まずいな」
「ああ、まずいな」
特にこれといった特殊能力の無いただの黒服である二人は、幸いにして光線銃を所持していたためにゾンビやゴーストに対抗する事ができていた
「これは犬を操る能力とは関係無いな」
「多重契約者か、それとも仲間がいたか」
背中合わせに座り込んで休憩していた二人には、互いの表情は見えない
「……もしかして関係無い奴だったとか」
「だとしたら何で俺達は閉じ込められてるんだ」
「追い掛けられてびっくりしたからとか」
「……んなわきゃないだろ」
「そうだな、楽観視し過ぎた」
「とりあえず増援を頼むか」
「携帯は通じそうか?」
「電波妨害は無いな」
134 :
色んなところで擦れ違い (代理):2010/02/15(月) 21:05:52.40 ID:6WX/OcL60
黒服の片割れは取り出した携帯電話を確認し、信頼できそうな人物を選んで電話を掛ける、が
《こちらは『組織』留守番電話サービスです。お掛けになった対象の黒服は現在電波の届かないところにいるか、携帯電話の電源を――》
「Dさん繋がらねぇ」
「あの人は忙しそうだから仕方ない」
気を取り直して次の番号に
《こちらは『組織』留守番電話サービスです。お掛けになった対象の黒服は現在睡眠中です。別の手段で連絡するか直接叩き起こしに――》
「Yさんもダメだ」
「まあ割といつもの事だな」
溜息混じりにまた違う番号に
《こちらは『組織』留守番電話サービスです。お掛けになった対象の黒服は男性からの着信を拒否しています。女体化ガスなどを吸引の上改めて――》
「ダメだ、Hさんは色んな意味でダメだ」
「どうする、Kさんは嫌だぞ流石に」
「あの人アメリカに飛ばされてる、安心しろ」
「更に上に増援要請をするのは色々まずいな」
「派閥争いでゴタゴタしてるしな、いつもの事だが」
「……マジでどうしようか、この状況」
二人は携帯の電話帳一覧を見ながら頭を抱えていた
―――
しばらく電話の類を探してうろうろしていた少女だが、日も落ちて暗くなった状態では探索も捗らない
なんとか見つけたのは、インクの切れかけたボールペンと砂埃で汚れたメモ帳だけだった
会話こそ単語のぶつ切りでたどたどしく成立する程にはできる少女だが、日本語の書き取りに関しては全く自信がない
実は黒服達には英語は通じるのだが、そこまで頭は回らなかった
「たたかう、きもち、ない、おしえる、です。ちから、とめる、めも、はこぶ、おねがい、できる、ですか?」
その言葉に、群れの中で一番足の速い犬が喉を鳴らして少女に擦り寄る
「それじゃ、がんばる」
少女は月明かりを頼りにメモ用紙にペンを走らせた
―――
135 :
色んなところで擦れ違い (代理):2010/02/15(月) 21:10:31.67 ID:6WX/OcL60
「……どうした?」
「雰囲気が変わった。迷宮化が解除されたっぽい」
二人は変化を察知して警戒態勢を取る
爪がタイルに当たる音から、犬が近付いてきてると判断する
「あの少女か」
「わからん、警戒は怠るな」
そんな二人の警戒をよそに、犬は咥えていたメモを落として走り去る
「罠か」
「わからん、確認する」
やや涎で濡れたメモ用紙は、特に異常も無く黒服の一人の手に渡り
《わるいことはしてないです こわかったのでまよわせてしまいました ごめんなさい》
そう書いてあったはずなのだが、少女の字が下手で判読が難しい上に折り畳まれたメモ用紙が涎で滲んで一部読めなくなってしまっていた
《わるいこ は わかったので しまいました なさい》
「悪い子は……判ったので……しまいました?」
「しまっちゃうおじさんか!?」
「厄介なものと契約を……どうする、このままでは俺達は外に出られないぞ」
「最後の『なさい』は何なんだ」
「わからん」
「能力が解除されてるとして……すぐ後ろの扉、入ってきたところじゃないか?」
「マジか」
「どうする、能力が解除されてるなら奥にも行けるかもしれんが」
何か色々と追い詰められていた二人の黒服
二人は顔を見合わせて頷き合い
「上の判断を仰ぐ為に一時撤退しよう」
「懸命な判断だ」
この辺り、個性の強い黒服達に毒されてるのかもしれない
感情の無いような本来の黒服らしい様子は欠片も見せず、すたこらさっさと撤退していってしまった
136 :
色んなところで擦れ違い (代理):2010/02/15(月) 21:13:30.75 ID:6WX/OcL60
―――
その様子をガラスの割れた窓からこっそりと覗いていた少女は、はふうと溜息を吐く
「よかった、かえる、する、でした」
安堵でくたりと座り込む少女の顔を、犬達がぺろぺろと舐め回してくる
「あはは、くすぐる、だめー」
楽しそうにじゃれあう少女と犬達
一方その頃、彼女が帰ってこない事を心配した総統の野良犬ネットワークが町を微妙に騒がせたそうだがそれはまた別の話である
星が綺麗な霧の夜でした支援
138 :
業火 【少年はハロウィンもどきを体験し】 (代理):2010/02/15(月) 21:19:13.09 ID:6WX/OcL60
学校町、北区に面したとある山中。
しばしば小さな事件が起きこそするが、基本的にそこはのどかな場所である。
夏には子供が駆け巡り、秋には紅葉で彩られ、冬には正月の参拝客で賑わい、春にはまた様々な生命が生まれる。
そんな穏やかに時が過ぎるはずの一角が、今。
爆煙と炎の支配する地獄へと変化していた。
「オレサマに楯つこうなんて百年はえーなぁ、坊主っ!」
橙色の影が一つ、燃え盛る木々の間を縫うように移動していた。
でっかちな頭に、輝くマント。
時折その顔から火が放たれては、周囲の木々を、そしてそこに隠れる人間を燃やし尽くそうとしていた。
「おらおらおらっ! 逃げてばっかじゃつまんねーだろうがよぉ!」
ケタケタと愉快そうに笑うその顔は、巨大なかぼちゃ。
彼の名は「ジャック・ランタン」。最近では「ジャックオーランタン」などと呼ばれる事の方が多いかもしれない。
北欧に伝わる霊の一種である。
「隠れてねーで出てこよーぜぇ?」
宙を滑るように走っては、木々を燃やしていく。
冬の乾燥した気候も手伝って、その火は瞬く間に山中へと広がっていた。
大火災とも呼べる大きな山火事。
しかし、その場には誰も、消火活動に当たる人間さえいない。
「ジャック・ランタン」の力は魔除けであり、悪霊払い。
彼は自身の周囲何百メートルにも渡って巨大な「結界」を貼り、この「戦い」に邪魔が入らないようにしていた。
「逃げてもだーれも助けに来ないんだぜぇ? いい加減諦めて戦ってくれよ、なー?」
半ばつまらなそうに、しかし火の手を緩める事はなく、ジャック・ランタンはその先を走る人間の後を追った。
139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 21:20:10.62 ID:dPMj0K7T0
支援
140 :
業火 【少年はハロウィンもどきを体験し】 (代理):2010/02/15(月) 21:22:58.36 ID:6WX/OcL60
彼には木々の間を走る人間が――――意味も分からず己に襲いかかってきた人間の姿が見えていた。
ジャック・ランタンには目がない。
正確にいえば顔についてはいるのだろうが、それは本来の目的を果たさず、ただ身体の内にある炎を排出する一種の気孔となっていた。
だから、彼は視るのではなくその存在自体をただ「感じる」
いかに逃げようと、どんなに足掻こうと、彼から逃れることはできないし、結局「死ぬ」という運命が変わることはない。
――――しかし、だ。
存在を感じるだけの彼は、それ故に気づけなかった。
目の前の標的が、ただ逃げているわけではない事に。
それどころか、彼自身が標的に試され、測られているという、その事実に。
「…………んー?」
ジャック・ランタンは、感じた。
標的が走るのを止め、こちらに向き直っている。
間に数本の木こそあるが、それは別段奇襲や隠遁を狙っているわけではないらしい。
「ほっほーっ! やっとやる気になったわけか。いいねぇ、坊主。燃えるじゃないか」
轟々と内部の炎が湧き上がり、幾筋かの炎が顔から漏れ出す。
その輝くマントの前にはいつの間にか、大きな鎌が一振り現れていた。
まるで何か透明な腕にでも支えられているかのように、宙に浮く鎌。
彼の本質ではない、派生の話から生まれた力の一つである。
「さーて、始めようじゃーないか。今更逃げないでくれよぉ?」
意味もなく鎌を一回転させ、ジャック・ランタンはケタケタと笑う。
141 :
業火 【少年はハロウィンもどきを体験し】 (代理):2010/02/15(月) 21:27:02.86 ID:6WX/OcL60
彼は、まだ自身の力を全て使ってはいなかった。
……たとえば、そう。こんな事ができる。
白く輝くマント。それが風がないのにも関わらずなびいた。
そしてマントが大きく翻り、彼自信を包んだと思われた、その時。
――――ジャック・ランタンは一瞬で、標的の前へと移動していた。
「……へー、おもしれぇことできんだなぁ、かぼちゃ」
周囲の木も大方焼かれ、少し大きく開けたその場所で。
今日初めて、ジャック・ランタンはまともに「標的」と対峙していた。
最初の一瞬以外、遠くて「感じる」事のできなかったその姿も、今や手に取るように分かる。
身長180近い、長身の少年。
それが、くっくっと笑いながら、彼を見据えていた。
「あーりゃ、これくらいじゃ驚いてくれないわけか。つまんねーなぁ、最近の子供は」
自分のある種「とっておき」の一つを披露して、驚きの一つも見せてくれない少年に、ジャック・ランタンは少しの落胆を覚えた。
ついでに言えば、少年がちっとも恐怖におびえていない事にも。
しかし彼は、それをそんなに気にしてはいなかった。
驚いていないのなら、これから驚かせばいい。
怖がっていないのなら、これから怖がらせればいい。
そう、彼は思っている。
「なーら、これからたっぷり驚かせてやらなきゃなぁ?」
思った事をそのまま言葉に置き換えて
彼は再びケタケタと笑った。
142 :
業火 【少年はハロウィンもどきを体験し】 (代理):2010/02/15(月) 21:32:30.18 ID:6WX/OcL60
「………………」
対する少年は、無言。
何かを値踏みするように、彼を見ているだけだった。
それに、少しだけ苛立ちを覚えて
「ちったぁ事前の会話を楽しむもんだぜ、坊主」
ジャック・ランタンは少年へと襲いかかった。
鎌による、一閃。
時間にして僅か一秒にも満たないその斬撃は、しかし少年の身体にかする事も無い。
軽いバックステップ。必要最低限の運動のみで、少年はそれをかわしていた。
しかし、それで取れる距離はせいぜい数メートル。
ジャック・ランタンの口から出る炎にとって、十分射程圏内である。
「らぁっ!」
言葉と共に、口から発せられる炎。
溜め込んでいたそれは、鎌とは比べ物にならない速度で、少年を襲った。
人間ならば、ひとたまりもないような灼熱の炎。
それが少年のいた辺りを喰らい、焼き、灰へと変えていく。
……しかし、その最中で。
ジャック・ランタンは少年の存在が全く消えていない事を、感じ取っていた。
支援
144 :
業火 【少年はハロウィンもどきを体験し】 (代理):2010/02/15(月) 21:40:01.61 ID:6WX/OcL60
むしろ、先ほどよりも増したような気がする存在感。
彼の炎の中、少年の周囲へと何かが展開されていた。
それは何かバリヤや結界の類ではなく、むしろ――――
「……なーる。どーりでこの山火事ん中で汗一つかいてねーわけだ」
唐突に、炎が周囲へと駆逐される。
もっと巨大な何かに押されるように、一瞬で。
その中心には、先ほどの少年が、先ほどのままの姿勢で立っていた。
……その全身に、ジャック・ランタンの物とは違う色の「炎」を纏って。
「坊主も俺と同じっつーわけだ」
ケタケタと。
ジャック・ランタンは笑い、しかし一方で少しの焦りも感じていた。
少年の纏う炎は、己のそれとは明らかに違う。
他の炎を喰らい、そのまま退ける炎など、彼は知らない。
こんなにも強大で、圧倒的な威力を誇るものになど、彼は今まで一度たりとも対峙した事がなかった。
しかし、ジャック・ランタンはひるまない。
むしろ同じ炎使いである事で、彼はより大きなアドバンテージを得ていた。
(……さて、どーすっかなぁ)
ぎゅっ、と。
手の形を取らない手で鎌を握り締める。
この戦の勝敗を分ける、その鎌を。
宙に浮かび、策を巡らせるジャック・ランタン。
それを見て、対する少年はつまらなそうな、どこかがっかりしたような表情を浮かべた。
支援
146 :
業火 【少年はハロウィンもどきを体験し】 (代理):2010/02/15(月) 21:43:54.41 ID:6WX/OcL60
「…………これだけなのか? つまんねぇな」
「いーや? このオレサマがこれだけで終わりなわきゃねーだろうが」
そう答えるジャック・ランタンの顔は、笑顔。
顔であるかぼちゃをいびつに歪ませて、彼は笑っていた。
「んじゃ、始めよーぜ。坊主」
その言葉が終わるかどうか。
そんな一瞬で、ジャック・ランタンの姿は少年の前から消えていた。
幾つかの炎の欠片を残して消えたそれは、何も透明になったわけではない。
――彼の本質は、炎。
己の放ったそれは、全てが彼であり、また攻撃の一手にもなる。
つまり、だ。
「さーて、この一撃はかわせるのかなー?」
少年のの背後の炎が、ジャック・ランタンを形作る。
大きなかぼちゃに、輝くマント。
それはすぐに、実体として現れた。
――彼の本質は、炎。
彼が放ち、そして広がった炎全てが彼であり、彼はそのどこにでも現れる事が出来る。
支援
支援
149 :
業火 【少年はハロウィンもどきを体験し】 (代理):2010/02/15(月) 22:02:17.64 ID:6WX/OcL60
現れ、鎌を持った彼は、先ほどよりも幾分早い速度で少年に襲いかかった。
距離はほぼ零。
鎌をかわせる時間など、ない。
――――しかし
「炎藝――牆壁(しょうへき)――」
少年が何か一言呟いた、その瞬間。
少年の四方を覆うように、四枚の壁が出現した。
その材質は、先ほど少年が身に纏っていたのと同じ、強大な炎。
……しかし、その近くにいるだけで身を焦がされそうな炎の壁を前にして。
(――――かかった!)
ジャック・ランタンは密かにほほ笑んだ。
彼の持っている鎌は、特別製。
通常の鉄製の鎌とは、その性質が異なっている。
炎を操る彼の鎌は、炎で融ける事はない
彼の鎌には、炎の盾など何の意味も持たないのだ。
「楽しかったぜー? 坊主」
何の迷いも無く、ジャック。ランタンは鎌を振る。
その戦いを、終わらせようと。
少年の命を、終わらせようと。
……しかし、それは結果として叶わなかった。
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 22:06:47.94 ID:dPMj0K7T0
支援
しえーん
152 :
業火 【少年はハロウィンもどきを体験し】 (代理):2010/02/15(月) 22:08:15.04 ID:6WX/OcL60
ガギン、という、鉄と鉄とが触れ合ったような音。
ジャック・ランタンの振った鎌は炎の壁に弾かれていた。
まるで、そこに本当に壁が存在するかのように。
「なっ…………」
その結果に、ジャック・ランタンは絶句する。
そんなはずはない、と彼は「知っている」。
炎とは、一般にはエネルギーそのものである。
だから、そこに重さなどは基本的に存在しない。
ましてや、彼の放った鎌を弾くほどの質量など、存在するはずがない。
決して、あってはならない事象。
それが起こった事に、彼はうろたえ
「くっく……驚いたのはそっちじゃねぇか」
少年の声を、聞いた。
炎の壁で囲まれたその、中心で。
少年はさもおかしそうに、くつくつと笑っていた。
「『厨二病』ってのは便利だよなぁ、かぼちゃ」
炎の中、小さく呟いた少年の言葉は、しかし混乱したジャック・ランタンには届かない。
――――何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ。
今、ジャック・ランタンの思考を支配しているのはただその三文字だけだった。
炎を切る鎌という、決して揺らぐはずの無い存在。
その確信が壊された事に、彼は自分でも驚くほど混乱していた。
己の炎を駆逐し、あまつさえ絶対的な力を持つ鎌を退けた少年。
端的にいえば、ジャック・ランタンは彼を恐れていたのだ。
己の常識が通用しない、この少年を。
支援
154 :
業火 【少年はハロウィンもどきを体験し】 (代理):2010/02/15(月) 22:12:33.17 ID:6WX/OcL60
「だがっ、オレサマは負けねーぞ。負けるわけがねぇ」
しかし、ジャック・ランタンは虚勢を張った。
自分が負けることなどありはしない、と。
――彼の本質は、炎。
彼には特定の個体というものがない。
すなわち今この山に広がる炎全てが彼であり、その全てが彼を形成する核でもあるのだ。
だから、彼を殺すには、その全ての炎を駆逐し、消さなければならない。
(……んな事、出来るわけがねぇ)
故に、ジャック・ランタンは少年と対峙する。
決して負けないと知っているからこそ、少年と対峙する。
(そーだ、俺が負けるはずねーじゃねぇか。負けるはずが――――)
ジャック・ランタンは自信をそう鼓舞しようとして
(――――あん?)
「それ」を、感じてしまった。
それは、「視る」のではなく「感じる」彼だからこそ知りえた事。
少年の真後ろに、影が一対。
ちょうど守護霊のように、「それ」浮遊していた。
ジャック・ランタンはその時初めて「それ」を見て……しかし何故か、瞬時にそれが何かを理解していた。
支援
156 :
業火 【少年はハロウィンもどきを体験し】 (代理):2010/02/15(月) 22:15:19.85 ID:6WX/OcL60
「てめぇは全部燃やさねぇと死なぇねんだろ? 知ってんだよ、こっちは」
その時、少年がまた何かを呟いたのだが、ジャック・ランタンはそれどころではなかった。
少年の側を浮遊するその影。
この国にやって来る際、ジャック・ランタンは他の霊からその存在について忠告を受けていた。
古来日本に存在していたという、史上最強の火の神について。
「炎藝――狂瀾(きょうらん)――」
少年の言葉とともに、巨大な炎の波が彼の足もとから立ち上った。
その高さ、およそ10メートル以上。
全てを呑み尽そうと、それはうねりを上げて方々へ四散していく。
無論、ジャック・ランタンの元へも。
(この坊主が契約してんのは、まさか――――)
しかし最後まで、彼はその波を気にする事はなかった。
その波がジャック・ランタンを。そしてその周囲に散らばっていた彼の核が炎に呑まれるまで、ずっと「それ」について考えていた。
その、存在。
彼が呑みこまれる間際まで考えていた、その存在は――――
(――――迦具土神……)
**************************************************
その日、学校町北部に面する山の一部が焦土と化し
少年の持つリストに新たな線がまた一本、刻まれた。
【終】
157 :
業火 【少年はハロウィンもどきを体験し】 (代理):2010/02/15(月) 22:17:16.23 ID:6WX/OcL60
炎使いを探す少年の動向をまた少しばかり
こいつついにやらかしました
学校町の山の一部を灰にするとか何を考えてるのか
書き始めた当初はそんな気はなかったのに、どーしてこうなった(AA略
さて、今回は少年の契約した都市伝説についての詳細を少しばかり
ちなみに、彼は不殺生を心に決めているのでジャック・ランタンは死んでいません
今後出てくる予定は現状ありませんので、もしよろしければ適当に皆様で使って頂けると嬉しいです
以下少年の契約都市伝説について
正直、その内半チート化しそうな気がしなくもない
・火之迦具土神(ヒノカグツチノカミ)
イザナミの産んだ(死の間際化生してきた神を除いて)最後の子供
自身の炎で母を焼き殺してしまった火の神でもある。
契約者には強大すぎる程の炎の力を与える。
ちなみに少年は制御できないので「厨二病」の力を借りてその力を小出しにしている感じ。
ある意味翼と真逆の意味で厨二病を使用してる
現在カグツチに関して少年が出来るのは手に炎を出現させたり、体中を炎で覆ったりする事くらい
その内使いこなしたらシャナみたいに足の裏で爆発を起こして云々が出来るようになるかも
なお、自分の精神力を燃やして使用しているのであまり長時間の戦闘には向かない
・厨二病
技名を叫ぶとそれが具現化するタイプの厨二病
ちなみに基本は「炎藝(えんげい)」の後に技名を追加することで彼のカグチチの力を厨二に追加してる
能力的には技名と少年の想像に呼応してその姿を取った炎が出現、さらには少年の思考次第で自由にその質量も決める事が出来る
158 :
はないちもんめ (代理):2010/02/15(月) 22:24:22.55 ID:6WX/OcL60
日景家 詩織
「ただいまー」
何時も通りのはずの家
なのに、何だか違和感を感じる・・・一体何が・・・
「翼と望の靴が無い?」
望は私より先に帰った筈だし、今日は翼は家に居る筈だ
それが二人揃っていない?
二人で何処かに出かけた?
違う、それなら書置きの一つ位あっても良い筈だ
急いで望の携帯にかけるが繋がらない・・・何かあった?
続けて翼にかけて・・・繋がった!
159 :
はないちもんめ (代理):2010/02/15(月) 22:26:23.92 ID:6WX/OcL60
「翼!?」
『詩織か?』
「アンタ何処にいるのよ?!ってか望は?!」
『・・・望は一緒じゃないのか?』
「先に帰った筈なのに家に居ないし連絡が付かない・・・何があったの?」
『・・・黒服が攫われた、望を呼び出す餌にする積りらしい』
黒服が・・・?
「ちょっと待ってよ、それじゃ、望は・・・」
『まんまと釣られた訳か・・・お前は家で待ってろ、二人とも俺が連れて帰る』
「・・・貴方今、何処に向かってるの?」
『西区の廃工場だ・・・黒服はそこに居るらしい』
「西区・・・判った、私は家で待機してるから、黒服の事任せるわね」
『あぁ、じゃあ切るぞ」
それだけ言うと翼は携帯を切ったらしい
焦ってる・・・と言うか怒ってる?
少なくとも冷静じゃ無さそうだ
「・・・・・・うん」
気は進まない
気は進まないけど・・・あの人達なら多分力を貸してくれる筈
160 :
はないちもんめ (代理):2010/02/15(月) 22:29:19.36 ID:6WX/OcL60
新島家 友美
prrrrprrrr
「はい、新島・・・何だ詩織?」
最近分裂した親友の片割からの電話
心なしか焦っている様だ
「落ち着きなよ・・・うん、うん・・・へぇ」
なるほどね・・・
「つまり」
台所に視線をやる
「力が必要かい?」
運が良い
今日はあの人が家に居る
161 :
はないちもんめ (代理):2010/02/15(月) 22:31:40.35 ID:6WX/OcL60
東区 公園 望
D−962は預かった
返して欲しくば一人で東区の○×公園に来い
顎砕き飴の契約者
そう書かれた手紙を握り
私は顎砕き飴の契約者と対峙している
「思ったより速かったですね・・・」
「黒服は何処?」
前回・・・去年の年末に遭遇した時とは様子が違う顎砕きに警戒しつつ尋ねる
「少なくともここには居ませんね」
「黒服を返せ・・・と言ったら?」
「私に勝てば返して上げても良いです「そう」よ!?」
私の足が、顎砕き飴の腹にめり込む
「くっ」
「悪いけど・・・そう言う事なら手加減は無し」
鎖を抜き顔面に叩きつける
「がっ」
「黒服は返してもらう!」
この時私は気付いていなかった
押されている筈の顎砕き飴の契約者が
ずっと、笑っていた事に・・・
続く
寝るほ
163 :
吹雪の中で その裏で その後で (代理):2010/02/15(月) 22:38:07.91 ID:6WX/OcL60
寒い
寒い
とても寒い
いくら厚着をしても部屋を暖めても、まるで素肌の上に真冬の冷気が張り付いているかのように
熱い
熱い
とても熱い
いつもはセクハラ被害で恥ずかしいだけなのに、そういう事をしないで抱き締められているだけで心臓の鼓動が激しくなる
「え、ええ、Hさん、大丈夫だだよ、ああああたし、まままだが我慢できるから」
嘘だ、まともに喋る事すら出来ていないじゃないか
そう言うかのように、抱き締める腕に力を込める
「つつ冷たい、でしょ、あたし、えHさんまで冷えちゃうよ」
「心配すんな、身体の鍛え方が違う」
文字通りの意味でな、と内心自嘲し
それでも震えが収まらず虚ろな目をしている佳奈美に、Hは最後の手段を取る事にした
「素肌の上に冷気を纏ってるような状態だとしたら、こうやっていてもダメだ。直接肌を合わせて温める」
「あ、あはは、ダメだよ、Hさん、こんな時……まで、せくはら……だ……っ……てば」
一瞬意識が遠のいたのか、かくんと頭が揺れ声が消え入りかける
「生きるか死ぬかが賭かってる時にセクハラも何もあるか」
髪を手櫛でかき上げられ、その手が触れた首筋がほんの少しだけ温かい
「ふぁ……」
吹雪の雪山で暖かいカイロにでも触れたような
安堵にも似た快感に思わず声が漏れ、身体を預けてしまう
「セクハラは元気になってから改めてする。今は身体を温める以外には絶対何もしないから安心しろ」
「あとででも……するなー……」
真っ青な顔でする精一杯の突っ込みを合意と取り、Hの髪の毛が優しく服の下に潜り込む
抱き締めている状態にも関わらず、丁寧にトレーナーを脱がしブラウスのボタンを外して傍らに置いていく
露わになった素肌に触れてみると、凍てつくほどの冷気に晒されて氷のように冷たかった
「あー、Hさんのて……あったかい……」
「触れ合う面積を少しでも確保したい。全部脱がすぞ」
164 :
吹雪の中で その裏で その後で (代理):2010/02/15(月) 23:00:55.90 ID:6WX/OcL60
「い、いちいち確認されると余計恥ずかしいよ!?」
「よし、少し元気が出てきたな」
「うにゅぅ……」
正直なところこれで済めば良いと思っていたが、血流を考えれば首、脇、内股、心臓近くは暖める必要がある
スカート、タイツを脱がせ、そして
「んっ……ぅ……」
出来るだけ敏感な部位には触れないようにしつつ、下着もするりと取り払う
そして直接肌を合わせるために、自分もまた同じように服を脱ぎ
「温めるだけだ。今回ばかりは絶対に嫌がる事はしない」
脇の下をくぐるように両腕を回し、片手は首筋に片手は背中に
胸をぴったりと押し当てて、足を絡めるようにして少女の身体を抱きすくめる
「少しでも寒気は収まってるか?」
「うん……あったかい……でもHさんは大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
嘘だ
少女の身体に触れている場所が冷たさを通り越して痛い程だ
だがそれは少女が感じている冷たさでもある
「……何でHさんはここまでしてあたしを守ってくれるの?」
「担当だからな」
約束だからだ
それは決して口には出さない
「Hさん……いつまでこうしていられるのかな」
「そうだな、この町で敵に回したくない奴のツートップが解決に動いてるらしいから、それほど時間は掛からないとみたが」
少女の言い回しに、Hは気付かなかったのか気付かないふりをしたのか
「体温と意識の確保のために、適当に喋りながら時間でも潰すか」
「んー、そう言われても何を話していいのかなー」
それからしばらくの後
元凶が倒され体温が戻ってもしばらく少女は解放されずに大騒ぎとなったのは言うまでもない
165 :
吹雪の中で その裏で その後で (代理):2010/02/15(月) 23:06:38.45 ID:6WX/OcL60
なんかああいう風に書かれたら、ねえ?(何がだ)
なお「中から温める」というネタは投下できないスレ送りになるので見送らせていただきました
166 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 23:16:23.56 ID:HpKZGcBW0
ほ
167 :
黒服H:2010/02/15(月) 23:19:10.32 ID:6WX/OcL60
「はいよ」
思わず、助けを求めるように叫んだ明日の言葉に、答えるように
彼の背後から、無数の黒い奔流が、彼の周囲を通り過ぎていく
それは、黒く太い縄となって、操られている子供達を縛りだした
「…Hさん!?」
「よぉ」
ひらひらと手を振りながら、神社の境内に入り込む黒服H
あの黒い奔流は、Hの伸びた髪だ
相変わらず、髪だけが独立した都市伝説であるかのように、自在に動いている
「どうしてここに!?」
「ハーメルンに関する報告があったからだよ。無茶言って、俺以外に「組織」の連中が来ないようにさせておいた」
Gの野郎に借りができちまった、とぼやくH
しゅるしゅると動き続ける髪が、子供達を束縛していはいるが…
「…あー、余計に動かれても面倒だな、気絶させるか…」
「……まさか、首とかしめて気絶させる気じゃあ?」
「駄目か?」
「それは、ちょっと」
さすがは正義の味方、とHは笑う
別に、間違って首の骨を折ったりするつもりはないのだが……まぁ、相手は操られている被害者だ
正義の味方としては、力づくで気絶させるのは、気が引けるのだろう
「しゃあねぇ。明日、ちょっと後ろ向いてろ」
「へ?」
168 :
黒服H:2010/02/15(月) 23:23:59.35 ID:6WX/OcL60
「お前の分のサングラスは用意してねぇ」
その言葉に、明日の脳裏に浮かんだのは…映画に出てくる黒服の男が、赤い光を放つ装置で、人々の記憶を消す様子
ば!と急いで明日は子供達から、Hから背を向ける
「よし、それでいい」
Hは笑って、懐から細い、棒状の装置を取り出した
それを、子供達に向けて、スイッチを押す
−−−−−−ピカっ
一瞬だけ、放たれた赤い光
それを見た、子供達は………一斉に、意識を失っていく
記憶消去の影響で、一時的に意識を失うのだ
これによって、ハーメルンの影響からも逃れられるはずだ
「Hさん、終わったか?」
明日が声をかける
…答えは、なく
「…H、さん?」
聞こえて、きたのは
げほげほと、咳き込んでいる声
「…!?」
169 :
黒服H:2010/02/15(月) 23:27:44.85 ID:6WX/OcL60
振り返った、明日が見た光景は
膝をつき、項垂れ、苦しげに急きこんでいるHの姿だった
子供達を抑えていた髪が、力を失って…しゅるり、元に戻っていき、Hが本来の短髪の姿に戻る
「く、ぁ…」
「お、おい、どうし…」
激しく咳き込み続けるH
ぽたぽたと……口元を抑える手の間から、血が流れ落ちる
吐血しているのだと、その段階になって、明日はようやく気づいた
咳き込む口元を抑えながら、Hはスーツの懐を探り、何かを取り出そうとして…
−−−カタンっ
小さなピルケースが、石畳の上に落ちた
中に入っていたどす黒い錠剤が、辺りに散らばる
「あー………くそ…」
必死に、錠剤に手を伸ばすH
…体の内部が、ぐちゃぐちゃに崩れていっている
「組織」の黒服の能力を使った反動が、もろにでてしまっている
そして、その壊れた内部を……体内に仕込んでいる「切り札」が、勝手に治していく
壊れ治れ壊れ治れ
無限の痛みが、Hを襲う
「Hさん、ほら!」
ピルケースから錠剤を数個、取り出した明日
170 :
黒服H:2010/02/15(月) 23:31:46.44 ID:6WX/OcL60
慌てて、Hに手渡す
赤く染まった手で、Hはそれを受け取って……自分で拾った分とあわせ、十数個の錠剤を、一気に煽った
しばし、げほげほと咳き込み続けていたが……少しずつ、落ち着いてくる
「大丈夫、なのか?」
「………あぁ」
嘘だ
明日は、すぐに理解する
顔色が、蒼白になっている
どう考えても、大丈夫ではない
「誰か、呼んで…」
「駄目だ」
携帯を取り出した明日を制するH
傍にあった木に寄りかかり、呼吸を整えている
「でも…」
「いいから……それと、この事は誰にも言うな…特に、「組織」の奴には」
絶対に、言うな、と
暗く、告げてきたH
その、暗い、暗い表情に…思わず、明日は頷いてしまった
「…OK、いい子だ。今度、恋路ちゃんとのデートプランでもたててやるからな」
くっく、とようやく、いつもの調子に戻って…ただし、顔面蒼白のまま…Hは、笑って
そして、誰かを呼び出すように、携帯を取り出す
171 :
黒服H:2010/02/15(月) 23:34:03.80 ID:6WX/OcL60
「……辰也、か?………悪い、また、アレを………………あぁ、わかってるよ…」
明日の知らない誰かに、連絡をとっているようだ
「組織」の人間ですらないのかもしれない
…ちらり、気絶した子供達に視線をやる明日
子供達は、すやすやと穏かな寝息を立てていて…ひとまず、大丈夫そうだ
Hのことは気がかりではあるが、まずは一つ、事態が解決したようで
明日は、ほっとしたようにため息をついたのだった
to be … ?
------------------------------
明日が助けを求めてたんで、Hが来たよ!
ついでに吐血もしたよ!!!
乙でした。
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 23:45:00.12 ID:3euHZZZi0
路地の続き。第四話。折り返し。
規制でもなしに人の手を煩わせるほどのものではないので直接。
前スレ落ちた時は代理投下スレに行こうか迷いましたが。
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 23:45:03.64 ID:6WX/OcL60
そして力尽きる、おやすみー
俺…明日、スレが残っていたら、占い師の人に土下座する必要性を感じるネタを書くんだ…
175 :
路地裏の散歩者:2010/02/15(月) 23:45:53.65 ID:3euHZZZi0
「なあ、どうして都市伝説の契約者ってどこかおかしいのが多いんだろうな」
「まあ確かにそうだな」
藤堂の疑問にあのやっかいな友人の顔を思い浮かべつつ答える。
あれ以来藤堂とは親しくなり、一緒に講義を受ける機会も多い。
「契約者ってのは都市伝説の存在を確信してないとなれない。
もともとが存在しないはずのものだから、常人ならそれを認めることができないんだろう。
お前みたいに強烈な体験でもしない限り、な」
つまり契約者とは特別頭のネジが外れやすい連中ということだ。
超常のものを認められる選ばれし馬鹿達。自然普段の言動も珍妙な者が多い。
「勿論あいつもそうだけど。諒子もちょっとな」
「ああ、ちょっと、な」
ふたり苦い表情でため息をつく。諒子というのは絶対領域の契約者だ。
足売り婆の一件でさらに懐かれてしまったらしく、あれ以来所構わず抱きついてくるようになった。
「私がどうかしました? 先輩」
噂をすればなんとやら。諒子が近づいてきた。
「先輩、この後お暇ですか? 私、すっごく素敵な喫茶店を見つけたんですよ」
藤堂のことなんて眼中にないのか、行きましょう行きましょうと腕を掴んで引っ張ってくる。
176 :
路地裏の散歩者:2010/02/15(月) 23:46:57.46 ID:3euHZZZi0
「足売り倒して押し売りに困る、か。もてる男はつらいねえ」
いつの間にかあいつが隣に座っていた。
どこから湧いてきやがった、こいつ。大体全部が全部お前のせいじゃねーか。
最近は俺の周囲もなんだか賑やかになってきた。
極端に友人が少なかったころと比べて、大変なことも多いがその分楽しくなってきた。
「俺達はこのままここで授業があるの。喫茶店はまた今度ね」
友人の出現も諒子を止める要因にはならないらしい。尚も行こう行こうとせがんでくる。
「明後日の土曜なら午後から暇だから。その時にな」
頭を撫でて何とかなだめる。一度言いだすと聞かないので中々に厄介な相手だ。
ちょうどその時教授が講堂に入ってきたので、昼食を食べ終えて講義に向かう学生の波に乗せて諒子を追い出す。
「それで、また何か出たのか」
「やさしいねえ。彼女を巻き込まないために、追い払うなんて。
別に講義なんてサボって素敵な喫茶店とやらに行っても良かったんじゃないのかい」
「何言ってるんだ。お前が俺のところに来るのは決まって都市伝説がらみのことじゃないか」
講義が始まっても気にせずに会話を続ける俺達を尻目に、藤堂はノートを開いて真面目に聞く姿勢だ。
俺たちに比べてはるかに根が真っ当なのだ、この男は。
177 :
路地裏の散歩者:2010/02/15(月) 23:48:17.02 ID:3euHZZZi0
西沢諒子は不満を持て余し夜の街を歩いていた。不満の種は塩崎。彼女の一つ上の学年の先輩だ。
彼とは都市伝説がらみの一件で助けられたことで知り合った。それ以来諒子は彼のことばかりを考えている。
やさしいのはいい。しかし、まともに見られていないような気がする。
今日だってまるっきり子供扱い。約束通り喫茶店には一緒に行ってくれるのだろう。
しかしおそらくはそれでおしまい。
自分がどこかに行きたいと言えばついてきてくれるのかもしれないが、
それは彼女の本意ではない。有り体にいえばもっと自分のことを見てほしいのだ。
頭を撫でられて嬉しく思ったことは本当だ。しかしそれでは子供に対するものと同じなのだ。
彼の為になると思って契約した都市伝説もこのところ活躍の機会はない。
ふとバーの看板が目にとまった。自分だって大人なのだ。
バーでお酒を飲むくらい当たり前。それに今日はまともに眠れそうにない。
バーで酒を飲めば大人という発想そのものがすでに大人になりきれていないのだが、本人はそんなことに気付かない。
階段を降り地下にあるバーへと歩みを進めた。
178 :
路地裏の散歩者:2010/02/15(月) 23:49:18.21 ID:3euHZZZi0
「ひとりかな? どうも待ち合わせってわけじゃなさそうだしね」
今まで酒など殆ど飲んだことのないので最初の注文の際にえらく戸惑い、
とっくに一杯目を飲み干したにも関わらず中々二杯目を注文できずにいた。
そんな諒子に声をかけてきた若い男。
自然な動作でカウンターの隣の席に腰をおろし注文を済ませる。
「君も何か飲む? 良かったら奢らせてもらえないかな?」
爽やかな笑顔で言う男に対し、まごつきながら同じものでいいとしか返せない諒子。
あまり男と接するのに慣れていない。
塩崎との接し方はあくまでもこちらから迫るものだ。
それにある程度勢いがつき、自分にそのようなキャラクターを被せてしまえば積極的に振る舞える。
しかし、このように向こうから言い寄られた経験は無い。
まして勢い余って入ったはいいものの、慣れない場に困っていた所への助け船である。
ありがたいやら、恥ずかしいやら。もうどうして良いか分からない。
「あ、あの私ちょっと、トイレに行ってきます」
慌ててその場を立つ諒子。
「ああ、化粧室ならあっちの奥にあるよ」
ほほ笑みを絶やさずに指さしながら説明する男。
この男の笑みに、悪意がこもっていることを見抜けなかったのは、仕方のないことといえばそうかもしれない。
179 :
路地裏の散歩者:2010/02/15(月) 23:50:08.07 ID:3euHZZZi0
目薬には睡眠薬としての成分が含まれている。
そんな話を聞いたことはないだろうか。
酒の席で、女性がいなくなった隙を狙って目薬をたらせば眠らせることができる。そのあとはもちろん……。
数多く存在する目薬の中には睡眠作用を持ったものもある。
しかし人体に対して効果を発揮するにはバケツ一杯分くらいの量の目薬を飲ませなければいけない。
もちろんそんなことができるはずもなく、この目薬睡眠薬の話自体、まったくの嘘なのだが。
それが都市伝説として効力を持ってしまえば話は別だ。
諒子が席を立ったのを好機と捉え、ニタニタと笑いながらグラスの中に目薬をたらす男。
この男は契約者。もちろん契約した都市伝説は、目薬睡眠薬。
このように夜な夜なバーに現れては目薬を落とし込み、女性をその毒牙にかけていた。
明らかに夜の店に慣れていない様子だった諒子は格好の獲物だった。
「うまくいったな」
目薬の入った酒を飲み眠り込んでしまった諒子を前に男はいやらしく笑う。
あとはいつも通り介抱するふりをして店から連れ出し、近くのホテルに入ればいい。
能力によって当分は目を覚ますことはない。安心してことに及べる。
180 :
路地裏の散歩者:2010/02/15(月) 23:51:12.75 ID:3euHZZZi0
「諒子!?」
店に入るなり大声を出してカウンターにつっぷしている諒子に近寄る。
その横に座っている男は俺のいきなりの登場に面喰っているようだが。
「お友達ですか? 助かりました。いやあ、まだお酒に慣れていないのか、
少し飲んだだけで寝てしまってね。困っていたところなんですよ」
冷静さを取り戻したのか落ち着いた声で説明し始める男。
「お前、契約者か。目薬を酒に入れると睡眠薬になるってところかな」
男の目を見て冷たく言い放つと、男はひどく驚いたようで椅子から立ちあがった。
「大かたばれないとでも思っていたんだろうが、わかる奴には分かるんだよ。
お前、こんなこと繰り返して虚しくならないのか」
契約のことをいい当てられて焦った男は俺を突き飛ばし出口へと走りだした。
「行ったぞ、佑太。そいつだ」
店の入り口には藤堂が待ち受けている。
無理やり突破しようとした男だったが、俺が相手なのとは勝手が違う。
二メートルに届くかという長身に鍛えられた体。
睡眠薬を使う卑怯者が藤堂に敵うはずがない。
俺が駆け寄った時には既に、絞め落とされ気絶させられた後だった。
181 :
路地裏の散歩者:2010/02/15(月) 23:52:06.53 ID:3euHZZZi0
目薬睡眠薬の契約者の男を拘束。なんと俺達と同じ大学の学生だった。
本人いわく就職活動の息抜きだったとのこと。確かにお祈りメールが続くと中々辛いものがあるだろう。
しかしだからといって都市伝説を悪用していいわけにはならない。
ひとまず身元を抑え、二度と犯行を繰り返さないことを約束し解放した。
人を眠らせる能力。いつか役に立つことがあるかもしれない、その時には協力してもらおう。
あの店に都市伝説がいると教えてくれたあいつに報告を済ませ、諒子を背負って歩きだす。
「あれ、先輩がいる。どうしたんですか」
諒子が目を覚ましたのは男を解放した後だった。
よっぽど深く眠っていたらしく、自然と起きるまでは声をかけても一切反応が無かった。
「おはよう。ひとりであんなところに行ったら危ないよ」
何はともあれ彼女が無事でよかった。
「まずいな」
今まで黙っていた藤堂が呟いた。
「どうした。まだ何かいるのか」
もしかしたらあの男が戻ってきたのかと身構える。
「いや、違う。あの店で代金を払うのを忘れていた」
なるほど確かにそれはまずい。
「もうあの店には二度といけないな」
「今までだって行ったことなんてなかったんだ。これからも行くことはないだろう」
やけに不安げな藤堂に、大丈夫だからと笑って返す。
182 :
路地裏の散歩者:2010/02/15(月) 23:52:48.03 ID:3euHZZZi0
曇り空。星も見えない。
都市伝説に満点の星は似合わない。それを消して回っている俺達にも。
こんな日には彼らも活発に動くのだろうか。
天気なんて関係ないか、と苦笑いをして重い足を進める。
まだまだ遠い。だけども今日はそれが嬉しくもあった。
気がついた時には塩崎に背負われていた。また子供扱いだ。
しかしそれでも諒子は満足だった。自分のことを心配してくれる。助けてくれる。
何があったかは分からなかったが今回も先輩が助けてくれたことだけは理解できた。
諒子は大好きな人の背の中で幸せに笑った。
終わり。また来ます。これは完結させる気のある話なので、これで大体半分です。
もしかしたら予想外に短くなったり長くなったりするかもしれませんが。あるとしたら前者。
wiki対応ありがとうございました。それではお邪魔しました。
乙ほ
星
★
ほ
も
さ
い
ん
保守
のこてたね
194 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 07:55:11.91 ID:GjKm4NmA0
のこてたな
残ってたかほ
196 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 10:36:23.31 ID:b4VfIqAW0
おはほしゅ
話を書く時心がけてることってあるかしら
198 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 11:06:53.54 ID:b4VfIqAW0
>>197 ・クロスする際はお互いを尊重して
・誤字脱字に気をつける(が、何度チェックしても残る罠)
・伏線はいっそ出しすぎるほどの勢いで
199 :
正義の鉄槌 (代理):2010/02/16(火) 11:08:42.71 ID:b4VfIqAW0
正義の味方の朝は、早い。
こんな風に言うと格好いいかもしれませんが、そうでもないのが実情というもの。
「ね、眠い……」
昨日も何体か都市伝説を倒した関係で、睡眠時間が極端に短くなってしまいました。
睡眠時間は昨夜21時から今朝5時まで。
他人から見れば8時間は寝てるんじゃないかと言う話になると思いますが、その内5、6時間は力の代償としての睡眠時間になるので、正直寝た気がしません。
普段ならもっとちゃんと睡眠時間を取れるのですが……。
まぁ、この町に都市伝説が多い以上、それは仕方のない事かも知れませんね。
「…………おはよう」
リビングへと入ると、既に起きていたのかアリスが出迎えてくれます。
俺と違い、能力の使用に制限がない彼女にとっては昨夜の8時間はまるまる睡眠時間。
何だか小ざっぱりした顔をしているのは、その関係でしょう。
正直ちょっと羨ましいです。
**************************************************
アリスと一緒に朝食を食べてから、外へ。
大体5時40分くらいでしょうか。
この時間から、俺たちの仕事……と言うより、ボランティアが始まります。
基本的に行うのは、二手に分かれての地域の見回り。
どんな都市伝説が、どんな時間に活動するのかを俺たちは把握していませんし、またこの町の都市伝説全員となると把握しようがありません。
ですから、必然的に行う事になるのはただ闇雲にあたりを歩くだけ。
それでも毎日のように都市伝説と遭遇できるのですから、この町は本当に奇妙な所だと思います。
200 :
正義の鉄槌 (代理):2010/02/16(火) 11:09:44.99 ID:b4VfIqAW0
また、その中でも俺にしかできない仕事も一つ。
そこでは俺の契約したリミッター以外のもう一つの都市伝説が必要になります。
ただ、凡庸性はあるものの使用回数に制限があるせいであまり使う機会がない事も事実ですが。
…………と。
「……おや、おや。今日は遭遇が早いですね」
見上げると、あるマンションの屋上に影が一つ。
都市伝説の気配はありません。
つまり、彼は普通の一般人と言う事になりますが……。
「……わざわざフェンスの外側に立つ一般人となると、ねぇ」
彼が立っているのは、安全用に設けられたフェンスの「外」
つまり一歩でも外へと踏み出せばそのまま真っ逆さまになる事間違いなし。
言葉そのまま地獄への一歩と言った所でしょうか。
別に覚悟の上の自殺ならば俺も気にしませんが……一度助けて見ない事には分かりませんね。
……さて、この場合俺に出来る事は二つ。
一つは、「人間にはリミッターがかけられている」を使用して彼を助ける事。
もう一つは、俺の契約しているもう片方の都市伝説で彼を助ける事。
どの道助ける事になるのは変わりませんが、その代償を考えると後者の方がこの場合は適任でしょう。
今にも飛び降りそうな男を見て、小さく呟きます。
「…………『九死に一生』」
その言葉が終わった途端、彼は飛び降りました。
落ちて、落ちて、落ちて。
物の数秒で、彼は地面へと激突しました。
201 :
正義の鉄槌 (代理):2010/02/16(火) 11:12:04.61 ID:b4VfIqAW0
普通なら、18禁にでも指定されそうなスプラッタなシーンが展開される事でしょう。
「…………?」
しかし、男は首をかしげて起き上がりました。
……その身に傷一つ負わずに。
――――九死に一生。
ありとあらゆる「生命の危機」からその人を救ってくれる都市伝説。
例えば、救急車の中で。
例えば、交通事故の最中で。
一度使うと「リミッター」以上に精神を削られる、なんて代償こそありますが、その力はいかなる危機にも対応し、その命を助ける事が出来ます。
例えば、この男性のように。
(さて……どうしますか)
起き上がり、自分の身体を探っている男を見て、少しの思案をします。
命を大切にしろ、と説教でもするか、はたまた神が助けてくれたんだと嘯くか。
しばし悩んで……しかし、その必要はないようでした。
マンションの玄関ホールから出てきた、一人の女性。
血相を抱えて何かの入った封筒を握っている所を見ると、先程の男性の細君か、はたまた恋人か。
うろたえる男性を見て、その女性を見て、俺はその場を後にしました。
いかなる理由で命を捨てたのかは知りませんが、遺書だけ残して死ぬのは卑怯と言うものでしょう。
あの後きっちり話し合って、それでもその結論が死であれば、俺も干渉する事はできません。
いかに俺が命を助けようと、いくらでも死ぬ方法はあるのですから。
202 :
正義の鉄槌 (代理):2010/02/16(火) 11:16:04.76 ID:b4VfIqAW0
今日の朝の仕事はこれくらいでしょうか。
一度「九死に一生」を使った以上、一度家に帰るのが妥当と言うものです。
家に帰ろうとして、ふっと、今日もあのサンタが来なかったな、と思い当りました。
12月24日と25日の二日間。
九死に一生を使う度、なぜかサンタクロースが現れました。
例えば、車に轢かれかけたおばあさんの場合。
例えば、火事に巻き込まれた少女の場合。
結果として彼女たちはサンタが代わりに轢かれたり、焼かれたりする事で助かったわけですが、あれは一体何だったのでしょうか。
クリスマスが終わってからもう一週間ほど経ちますが、25日を境にサンタが現れる事はなくなりました。
……クリスマス限定イベント、でしょうか?
アリスが何だか会いたがっていたので出てきて欲しくはありますが……まぁ、答えの出ない問題を深く考えても仕方がありません。
俺は携帯電話を取り出して、アリスに報告を始めました。
今日もあのサンタはでませんでしたよ、と。
【終】
203 :
正義の鉄槌 (代理):2010/02/16(火) 11:17:43.06 ID:b4VfIqAW0
一番進めなきゃいけない「正義の鉄槌」を進め忘れてた罠。
取りあえず主人公の契約都市伝説紹介第二回になります。
これで彼の契約する都市伝説は全てですね。
ついでに、マゾ誕生秘話の少し。
全ての元凶はこの主人公でした、というオチ。
つまり彼はいなければ恐らくマゾが「主人公補正」と結びつくことも、誠と直希が追いかけまわされることも、翼もマゾに魅入られる事もなかったわけですね。
以下都市伝説についての解説。
・九死に一生
どんな生命の危機からも助けてくれる都市伝説。
一度の使用で「人間にはリミッターがかけられている」の倍近い精神力を消費する上、それとは違って強制睡眠も無いので直に契約者にそれが降りかります。
ただ、器さえ大きければ使用には全く問題がない事や、その凡庸性の高さを考えるとある種のチート。
ちなみに、クリスマス限定で使用するとマゾサンタが召喚されます。
204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 11:22:51.71 ID:b4VfIqAW0
お昼ご飯終わってもスレが残ってますように!
ほ
206 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 12:42:57.98 ID:fnCHRvbr0
ごちそうさまほ
207 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 13:11:31.39 ID:fnCHRvbr0
にゅう
208 :
小ネタ:2010/02/16(火) 13:24:09.60 ID:fnCHRvbr0
…街中で、たまたま、その姿を見かけて
あちらも、こちらに気付いた様子に…魔女の一撃契約者、清川 誠は小さく舌打ちした
隣を歩いていた直希が、小さく首をかしげる
「どうした?誠。あちらの銀髪男性は、君の知り合いか?」
「……知り合い、ってレベルでもないんだがな」
できば、顔を合わせたくない相手である事は、事実だ
秋の終わり、中央高校を陣取ってのあの騒ぎの時、ほんの少し、顔を合わせただけの相手だ
とっくに忘れ去られていると思っていたのだが…どうやら、覚えられていたらしい
マッドガッサーじゃあるまいし、そこまで特徴的な顔をしているつもりもなかったのだが
「久しぶりだな…魔女の一撃の、契約者」
「………よく、覚えていたもんだな」
無意識に、視線をそらす
…あの時は、悪魔の囁きに耳を貸してしまっていた状態だった
それを、言い訳にするつもりはない
だが、目の前であんな事をやらかしたのである
やや、気まずい
その銀髪の青年は、じっと、誠を見つめ……何か、納得したように頷いている
「「悪魔の囁き」は、もう離れたか」
「……気づいていたのか」
再び、舌打ちする
自分でも気づいていなかった、内に住み着いた「悪魔の囁き」の存在
この銀髪の男は、あんな短い間しか顔を合わせていなかったと言うのに、それに気づいていたのか
マッドガッサーが言っていた通り、対象の状態その他を把握する能力を持っているようだ
209 :
小ネタ:2010/02/16(火) 13:28:19.88 ID:fnCHRvbr0
…そんな能力を持っている相手が、誠は正直苦手だ
普段、表に出さないようにしている、自分のどす黒い…醜い部分まで、全て見透かされてしまうような錯覚
大して親しくもない相手に、それを悟られるのがどうにも落ち着かない
「…?ふむ。一連の会話から察するに、あなたも都市伝説契約者、もしくは都市伝説本体、と判断しても、よろしいのかな?」
誠と銀髪の青年の言葉に黙って耳を傾けていた直希が、小さく首を傾げた
その拍子に、青いリボンで結ばれた長い髪が揺れる
直希の言葉に、銀髪の青年は直希に視線をやって
「………」
…一瞬、黙り込む
「……特殊な趣味を持っているようで」
「何を誤解したのか知らないが、直希はただの友人だぞ」
確かに
今、直希は身内の陰謀により、どう見ても女にしか見えません、ありがとうございました、と言う服装になってはいるが
たまたま、街で顔を合わせたらちょうどそんな格好だっただけであり、間違っても直希とデートをしていた訳ではない
特殊な趣味なんぞない
ただ、翼の事が好きなだけだ
銀髪の青年が言った特殊な趣味、というのがわからなかったのか
直希は、再び首を傾げた
「誠、それは、どんな趣味なのだろうか?」
「あぁ、お前は気にするな」
ぼふ、と軽く頭を撫でてやる
知識欲は人一倍旺盛で、実際、それなりに頭がいいと言うのに、直希はどこか決定的なところで抜けている
クマー!クマー ,:::-、 クマ __ クマー!
,,r::::::::::::〈:::::::::) ィ::::::ヽ クマー!
〃::::::::::::;r‐''´:::::::::::::::::::::ヽ::ノ クマー!
クマ ,'::;'::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::
l::::::::::::::::::l::::::::::●::::::::::::::●:::::ji
|::::::::::::::::::、::::::::::::::( _●_)::::::,j:l クマー!
クマー!}::::::::::::::::::::ゝ、::::::::::|∪|_ノ::;! クマー!
. {::::::::::::::::::::::::::::`='=::ヽノ:::::/
';::::::::::::ト、::::::::::::::i^i::::::::::::/ クマー!
クマー `ー--' ヽ:::::::::::l l;;;;::::ノ クマー!
【ラッキーレス】
このレスを見た人はコピペでもいいので
10分以内に3つのスレへ貼り付けてください。
そうすれば14日後好きな人から告白されるわ宝くじは当たるわ
出世しまくるわ体の悪い所全部治るわでえらい事です
しえ
212 :
小ネタ:2010/02/16(火) 13:34:56.30 ID:fnCHRvbr0
首をかしげながらも…直希は、銀髪の青年に向き直ると、小さく頭を下げた
「お初にお目にかかる。あなたも都市伝説契約者、もしくは都市伝説ならば、報せる必要があるだろう…僕は、「仲介者」。都市伝説組織を知らぬ者が都市伝説事件に巻き込まれた際、それを助ける仕事をさせていただいている」
「仲介者……そう言えば、聞いた事があるな。フリーの都市伝説契約者に仕事を斡旋している何者かがいると」
銀髪の青年の視線が、直希に向けられた
直希の情報が、ゆっくりと読み取られていく
(……「光輝の書」の契約者……相性が悪いのに、よく扱えているな。都市伝説自身との対話が成立したからこそか…?)
ゆっくり、ゆっくりと読み取られていく情報
…その中で、ある、一つの情報に辿り着こうとした、その瞬間
−−−−−−ギロリ
直希が手にしていた、「光輝の書」の中の、直希の呼びかけに答える天使たちが………一斉に、銀髪の青年を見やった
「!?」
まるで
それを見るな、と言わんばかりに
それを知るな、と言わんばかりに
天使達が、情報を読み取るのを邪魔しようとしてきている
「……ふむ?」
手にしていた「光輝の書」に、直希は視線を落として
まさかの規制解除きてた支援
214 :
小ネタ:2010/02/16(火) 13:40:19.68 ID:fnCHRvbr0
ふむ、と頷くと…ぱたん、と「光輝の書」を閉じた
そして、つ…と、その細い人差し指を口元に持ってきて、告げる
「…その先は、僕のトップシークレットだ。まだ、伝えていない友人もいるのでね?」
秘密だ、と
かすかに、その淡白な表情に笑みを浮かべる
「どうしたんだ?………まさか」
「あぁ、誠、身構えるな。読まれてはいないはずだ」
多分な、と
銀髪の青年に、警戒体勢を見せた誠に、直希はそう告げる
…天使達の視線は、もう、銀髪の青年を向いてはいない
「…申し訳ない。「仲介者」に関しては、その情報が酷く曖昧だったからな。少し、確認をしたかったんだ」
「問題ない。諸事情あって、僕はあまり表に出させてもらえていないのでね。できれば、僕自身がもっと事件解決に動きたいのだが」
「お前は体が弱いんだから。あまり表に出るべきじゃないだろうが。あちこち心配させるぞ」
わしゅ、と
誠が、また直希の頭を撫でた
同じ歳のはずなのだが、どうにも、誠は直希を若干、子供扱いしてしまう傾向があった
直希自身が抗議もしてきていないので、高校の頃から、それはずっとそのままだ
「そこまで、弱いつもりもないのだが…」
「一月の終わりに大風邪ひいて死にかけたのは誰だ。また翼に心配させて」
「………むぅ」
翼の名前を出されて、直希は押し黙る
215 :
小ネタ:2010/02/16(火) 13:43:58.31 ID:fnCHRvbr0
…ちらり
誠は、銀髪の青年に視線をやった
正直、これ以上関わりあいたくない
もう、自分の中に「悪魔の囁き」はいないとは言え…どうにも、居心地が悪いのだ
「直希、行くぞ」
「うん?……あぁ、そうだな。それでは、失礼」
銀髪の青年に、優雅に一礼して見せて
直希は、誠の後をついて、この場を後にした
人通りの多い道、羽毛をあしらったマフラーをした女性にぶつかりかけながらも、その姿はすぐに見えなくなった
銀髪の青年は、その二人の後ろ姿に視線をやって
「………?」
…気のせい、だろうか
誠の中に……かつて、己の契約者の中に、見つけたような
黒い、黒い…………「悪魔の囁き」の、卵が
一瞬、見えたような、気がしたのは
「…」
「…誠、どうかしたのか?」
「……いや」
…気のせい、か?
さっき、ぶつかりかけた女…どこか、で、見た事があるような?
しえ
217 :
小ネタ:2010/02/16(火) 13:46:12.96 ID:fnCHRvbr0
(…確か、あれは…)
……あれは……確か……
高校の…卒業式の、時
一瞬、見かけた、翼の父親の隣に居た、女だったような?
(でも…あれは、翼の母親じゃねぇ)
あれは、誰だったのだろうか?
それに、あの時見かけたのは…本当に、翼の父親だったのだろうか?
どうにも、思い出せない
(……まぁ、いい)
もし、翼の父親が、翼に接触しようとしたならば、邪魔してやるだけだ
…あんな男を、翼に近寄らせて溜まるか
もし、無理矢理にでも近づくようだったら……
自分の中で、黒い感情がかすかに動いた事に
誠は、この時はまだ気づいていなかった
to be … ?
218 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 13:47:33.11 ID:fnCHRvbr0
占い師の人に剣山土下座orz
誠は、占い師さんが若干、苦手なようです
直希は興味を持ったみたいですが、この場は誠が引っ張っていっちゃったので会話あまり成立せず。うにゅう
ついでに、ちらっと直希の事情に関する伏線とかもこっそりと
伝えていない友人、ってのはモンスの天使契約者のほうですね
翼と誠は、知ってる事情
219 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 13:51:23.87 ID:fnCHRvbr0
乙ー!
ふむ、さすがに情報探索に関しては能力がチートなだけあってよく弾かれる
むしろ弾かれないとただの伏線ブレイカーになりかねないけど
直希に関しては今後仕事として会いに行くかもしれませんねー
山田達は既にチートな戦闘力ですが、それでもどうにもならない問題とかが浮上した時なんかに
221 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 13:57:43.97 ID:fnCHRvbr0
>>220 実は、「光輝の書」の中の天使が、一斉に見つめてくる描写が書きたかっただけとか秘密
まぁ、知ったところで特に影響はないと思う情報なんですけどね
そして、本当は未来ちゃんともあわせて、直希に「可愛らしいお嬢さん」とか「愛らしいレディ」とか言わせようと思ったんですが、うまく会話に参加させられる自信がなくて占い師さんだけになったとかもっと秘密
>>221 >実は、「光輝の書」の中の天使が、一斉に見つめてくる描写が書きたかっただけとか秘密
書きたい描写ってあるよね
時々「こんなの書きたいな!」って思っても書く機会がなくて記憶から消える事がしばしば
>そして、本当は未来ちゃんともあわせて、直希に「可愛らしいお嬢さん」とか「愛らしいレディ」とか言わせようと思ったんですが、うまく会話に参加させられる自信がなくて占い師さんだけになったとかもっと秘密
未来を主人公にしてなければ多分彼女は空気化してただろうな、何て最近思うのは内緒……
ついでに言えば未来の口調は俺ですら書いてて訳が分からなくなるから困る
今一番量を書いてる連載のはずなのに、今一番書きやすいのが最近出したマゾや爺いってどう言う事だ
223 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 14:06:06.98 ID:fnCHRvbr0
>時々「こんなの書きたいな!」って思っても書く機会がなくて記憶から消える事がしばしば
あるある
何とか忘れないうちに、その1シーンだけでも書いてストックしたりとかよくある
>今一番量を書いてる連載のはずなのに、今一番書きやすいのが最近出したマゾや爺いってどう言う事だ
あるあるあるあるwwwwww
俺も、ぶっちゃけ花子さん契約者や不良教師達よりも、翼達親友三人組とかの方が後からでたのに書きやすくて必然的に出番が(このレスはトイレに流されました
よし、そろそろ投下しようか
>何とか忘れないうちに、その1シーンだけでも書いてストックしたりとかよくある
メモ帳か携帯は必須ですたい
でもメモ帳だと字が汚くて見えない事もあるんだ……
くそぅ、もっと字が上手くなりたいな
>俺も、ぶっちゃけ花子さん契約者や不良教師達よりも、翼達親友三人組とかの方が後からでたのに書きやすくて必然的に出番が(このレスはトイレに流されました
ハイテンションにならないと書けないのがいくつかあるなぁ
夜が一番ハイだけど夜には書けないジレンマ
225 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 14:17:05.99 ID:fnCHRvbr0
支援を開始する!!
>でもメモ帳だと字が汚くて見えない事もあるんだ……
ナカーマ
226 :
占い師と少女:2010/02/16(火) 14:22:48.19 ID:aKtdcERN0
「はっ……はっ……はっ……」
私は走っていた。
小さな小道や路地裏を右に左にと進んでいく。
久々の全力疾走だ。
別に何もスーパーの特売が近いとか、家に帰るのが遅くなったとかそんな事ではない。
その原因は目の前の猫……ではなく、子ライオンである。
「これっ……もうっ……散歩じゃないってっ!」
占い師さんの知り合いの家に子ライオンを預けてから数日。
毎日子ライオンの散歩をするのが私の日課になっていた。
と言うより、頼まれたのだ。
日中はあの家に誰もいなくなるとかで、誰も子ライオンの世話ができないらしい。
かと言って一日中家の中に置いておくのも可哀そうだ、と。
そんなわけで子ライオンの様子を見に行った私に「散歩の付き添い」と言う役割を任されたわけなのだけれど……。
ふしゃー
目の前の子ライオン。やはりネコ科なのかやたらめったら奇妙な所に登りたがる。
路地を抜け、塀を登り、屋根を伝って。
正直これはもう「走る」と言うより「アスレチック」な気がしなくもない。
227 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 14:24:51.01 ID:fnCHRvbr0
もはや追いかけっこ状態支援
228 :
占い師と少女:2010/02/16(火) 14:25:46.84 ID:aKtdcERN0
しかし、私も山育ちである。
さすがに人の家の屋根に登るのこそ躊躇するが、その躊躇さえ乗り越えればそんなに難しいコースでもない。
山中の天然アスレチックコースに比べれば、ある程度足場のしっかりしているこちらの方が幾分やりやすい……と思う。
ぎしゃー
子ライオンが再び塀へと飛び乗る。
「うわっ、ちょっとっ!」
慌てて私も、少し高さの低い塀へと飛び乗った。
近くにいたおじいさんがぎょっとしたような顔でこちらを見てるけど……うん、気にしないでおこう。
現在の私と子ライオンの差は、離されず、しかし全く追いつけない微妙な距離。
実を言えば今まで一度も、私は子ライオンを捕まえられなかった。
「うあーっ、何だか遊ばれてるような気が……」
時折こちらを見ては「ぎゃしゃー」とか言ってる子ライオン。
……うん、これは間違いなく遊ばれている。
しかし、これでめげる私ではない。
今日と言う今日こそ、子ライオンを捕まえるのだ。
そのための秘策もちゃんと用意してきた。
塀を渡り、反対側の道路へと出る。
子ライオンがそう言った道を選んでいるのか、車の通りは全くなかった。
229 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 14:26:40.29 ID:fnCHRvbr0
しええん
230 :
占い師と少女:2010/02/16(火) 14:28:26.31 ID:aKtdcERN0
安全を確認して、とんっと塀から降りる。
その音に反応したのか、それともちゃんと付いてきているか確認するためか、子ライオンがこちらを振り向いた。
(…………チャンスッ!)
すかさず、私は長時間のアスレチックでくたくたになったポケットから「それ」を取りだした。
ぴくり、と一瞬子ライオンが警戒するように後ずさる。
しかし、「それ」は別に子ライオンを捕まえるための遠距離攻撃用の機械でも何でもない。
私の右手にあるのは小さな袋。
大体文庫本くらいのサイズの袋の表面には「ビーフジャーキー」と書かれていた。
早い話がペット用フードである。
ここ数日、何となく徒競争まがいの事をしていて分かったのだが、どうにもこの子ライオン、食い意地が張っているらしい。
時々商店街で餌をもらっている場面を何度か目撃しているし、この徒競争も夕飯時になるまでには必ず終わる。
そもそも私がこの子ライオンを拾った時も、確か空腹でフラフラになっていたはずだ。
だったら、と用意してみたのがこのビーフジャーキーである。
(ちゃ、ちゃんと反応してるのかな……)
こちらをじっと凝視しているのは分かるのだが、ちゃんとこのビーフジャーキーを見ているのかどうかがよく分からない。
試しに、軽くビーフジャーキーの袋を振ってみる。
しゃー
と、その動きに合わせて子ライオンの首が揺れた。
231 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 14:28:54.08 ID:fnCHRvbr0
支援!
232 :
占い師と少女:2010/02/16(火) 14:31:31.88 ID:aKtdcERN0
(………………これは)
振ってみる。
しゃー
振ってみる。
しゃー
振ってみ……と見せかけてちょっと逆に傾けてみる。
しゃ……しゃー
(…………うわ、これ面白い)
はたから見ればただの変人にしか見えないような行動に、しかし私は熱中した。
今まで翻弄されるだけだった子ライオンに逆襲する機会を得たからかもしれない。
袋を振っては、子ライオンの首が動く。
私は、少しの間それに夢中になって
とととと
しかし、子ライオンが少しずつ近づいているのに気が付けなかった。
233 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 14:32:02.86 ID:fnCHRvbr0
もはやただの愛玩動物wwww支援
234 :
占い師と少女:2010/02/16(火) 14:34:11.86 ID:aKtdcERN0
首を振ると見せかけて、小さく、本当に少しずつ近づいてくる子ライオン。
それに全く気付かず、私はビーフジャーキーの袋をひらひらと振って
「うあっ!?」
唐突に、それが飛びかかってきた子ライオンに奪われた。
袋を咥え、一目散に逃げる子ライオン。
私は一瞬茫然として、けれどすぐに我に返った。
「それ三食分っ! 全部食べたら駄目だってーっ!」
慌てて追いかけ始めるも、子ライオンには既にかなりの距離を取られていた。
「うあーっ、何だかさっきより状況が悪化した気がする―っ!?」
食べ物で釣る作戦も失敗に終わり
その日一日、私はまた子ライオンに振りまわされる事になった……。
【終】
235 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 14:35:01.55 ID:fnCHRvbr0
乙ー!!
さすが百獣の王の息子wwwwwww
獲物ゲットだぜwwwwwwwwwwwww
時々こういうほのぼの書きたくなるよねって事で投下
今日も未来と子ライオンはたわむれてます
そしてその内屋根伝いに走る女の子とか何だとか噂され始めたとか
ちなみに、山田家総出なのは都市伝説退治のお仕事
生物に対してチートな磯良契約者である山田の恋人が加わった事で多分滅茶苦茶はかどってます
237 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 14:40:29.20 ID:fnCHRvbr0
>そしてその内屋根伝いに走る女の子とか何だとか噂され始めたとか
新たな都市伝説の誕生ですね、よくわかります
>生物に対してチートな磯良契約者である山田の恋人が加わった事で多分滅茶苦茶はかどってます
確かに、メチャクチャはかどってそうだ
仲介者「…商売敵?」
まぁ、仲介者は学校町だけじゃなくて世界規模で客が居ることにしてるから問題なさそうだが
>>237 >新たな都市伝説の誕生ですね、よくわかります
こんな風に学校町では日々新しい都市伝説が出現してそうだ
>確かに、メチャクチャはかどってそうだ
触れるだけで相手の心臓を止められる磯良の能力はチートでしかない
異空間に逃げても追跡されるし、建て物の中に隠れてもすり抜けてくるし
>仲介者「…商売敵?」
基本学校町の主婦相手の山田と仲介者じゃ規模が違いすぎるぜ!
239 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 14:49:08.25 ID:fnCHRvbr0
>>238 そりゃあ、野生の兄貴が生まれるような街ですから!!
>異空間に逃げても追跡されるし、建て物の中に隠れてもすり抜けてくるし
追いかけられたら怖くて仕方ないwwwwwww
240 :
ビター・スウィート・ビターポイズン:2010/02/16(火) 15:10:12.12 ID:fnCHRvbr0
世界には、ビター・ポイズンが溢れている
そんな中でも、特に、この学校町には、ビター・ポイズンが多い気がする
ククージィと共に世界中を旅してきたが、やはり、学校町が一番多い
それは、多分、都市伝説が多いせいもあるのだと思う
世界的に見ても、学校町の都市伝説の数は多すぎる
都市伝説が集まりやすく、都市伝説契約者が集まりやすい
故に、都市伝説組織が集まりやすく、トラブルも置きやすい
故に……ビター・ポイズンが生まれやすい
ならば、俺は、そのビター・ポイズンを狩り続けよう
それが、スウィート・ポイズンのためになるならば、躊躇などしない
スウィート・ポイズン中毒に陥っている俺が、それを躊躇する理由などないのだ
蝙蝠の群れが、コーク・ロア支配型の影響を受けた人間達に群がっている
殺しはしない
ただ、ちょっと動けなくなるまで血を吸い続けるだけだ
蝙蝠の群れに姿を変えたククージィのその行動を、祐樹は少し離れたところから見つめていた
街中を歩いていたら、たまたま、コーク・ロア支配型の影響を受けた人間を目撃したのだ
…傍には、その契約者の姿も居て
放っておく訳にはいかなかった
こいつを捕えて情報を聞き出すことができれば、スウィート・ポイズンの力になる事ができる
そう考え、祐樹はククージィとともに戦っていたのだ
…もっとも
ほぼ、ククージィが戦って居る為、祐樹は何もさせてもらえていないのだが…
「く、くそ!?」
241 :
ビター・スウィート・ビターポイズン:2010/02/16(火) 15:13:30.44 ID:fnCHRvbr0
「…いい加減、諦めろ。ククージィに、お前は勝てない」
弱点を失った吸血鬼
それに、勝てる存在などそうそういない
コーク・ロア支配型程度が、ククージィに勝てるものか
相手の手駒は、どんどんと動きを封じられていっている
たとえ、麻薬で痛覚を消されていたとしても、血をたくさん吸われてしまえば、動けなくなるのは必然
相性が、悪すぎるのだ、コーク・ロア支配型にとって
「…ククージィは、犬もある程度操れる。ここに、口封じの犬は来ない……話してしまえ」
「うぅぅうううう………!」
降伏勧告にも、耳を貸さず
コーク・ロア支配型の契約者は、コーラの瓶を手に、ここを突破する手段を考えているようだ
……無駄なことを
そう考えながら、祐樹はコーク・ロア支配型の契約者を睨みつけて…
「………!」
背後に感じた、気配
この路地に、誰か入ってきた?
何も知らない一般人だったら大変だ
祐樹は、慌てて振り返る
そこにいたのは、一組の男女
銀髪の青年と、長い髪の少女だった
一般人かどうかは、わからない
ただ
しえーん!
243 :
ビター・スウィート・ビターポイズン:2010/02/16(火) 15:16:53.97 ID:fnCHRvbr0
「しまっ…………!?」
まだ、動ける状態だったコーク・ロア被害者が、雄叫びをあげながら、そちらに突撃していこうとしている
その射線上には、祐樹もいて………いや、その射線上からは、祐樹は僅かに、ズレている
このまま、祐樹が動かずに居れば、このコーク・ロア被害者は、あの男女の下に到達してしまう
それは、不味い
人質にとられるか、もしくは、即座に傷つけられる…!!
「このっ!?」
その射線上に割り込む祐樹
咄嗟に、ご信用に持ち歩くようになっていた改造スタンガンを取り出す
真正面から突撃してくるそいつに、それを押し当てて
−−−−−ばちんっ!!!
通常のスタンガンではありえない電流が、コーク・ロア被害者に襲い掛かった
被害者は、びくりと痙攣して、倒れこみ…
「うわっ!?」
どさっ
走ってきた勢いそのままに、祐樹に向かって倒れてきた
避けきれず、押し倒される体勢になってしまう
「だ、大丈夫ですか?」
改造スタンガンだと……しえ
245 :
ビター・スウィート・ビターポイズン:2010/02/16(火) 15:20:08.57 ID:fnCHRvbr0
少女が、青年と共に、祐樹の元に駆け寄ってきた
コーク・ロア被害者に押しつぶされる状態となった祐樹を、助け出してくれる
「…ありがとう。それより、危ない……一般人は、逃げろ」
「コーク・ロア支配型か?増えているとは聞いていたが、遭遇するとはな」
「……?」
銀髪の青年の呟きに、祐樹は眉をひそめた
一般人じゃ、ない?
…都市伝説契約者か?
「祐樹!」
ばさり
大柄な蝙蝠が、祐樹の傍に降りてくる
ククージィが、祐樹を心配して寄ってきたのだろう
…過保護だ、と祐樹は考えてしまう
これくらい、大丈夫なのに
「俺は、いい。それより、契約者を確保して…」
「相手の手駒は全員倒したわい。後は、契約者の動きを封じて………!?」
……その時
何か………野獣の雄叫びのような声が、辺りに響き渡った
ビリビリと、空気が震える
「−−−−っひ!?」
246 :
ビター・スウィート・ビターポイズン:2010/02/16(火) 15:22:40.75 ID:fnCHRvbr0
その声の正体を、知っているのだろうか?
支配型の契約者が、怯えた様子を見せる
「ッククージィ!!」
支配型の口を封じる為に、犬が来たのかもしれない
慌てて祐樹が声をかけるが
「…犬、ではない。他の何かが近づいておる」
ククージィは舌打ちし、蝙蝠の姿のまま、支配型契約者に飛びかかろうとする
何者かはわからないが、口を封じさせる訳にはいかない
貴重な情報源を失って、溜まるか
人間ほどの大きさの蝙蝠の姿で、ククージィはどんどんと支配型契約者に近づいていって
その、体が
何者かに、弾き飛ばされた
「爺ちゃん!?」
壁に叩きつけられたククージィ
何が、ククージィを弾き飛ばしたのか
祐樹は、それを確認しようとして
「−−−−−−−−!!」
…それの、姿に
そういえば祐樹に吸血鬼としての力はないのか支援
248 :
ビター・スウィート・ビターポイズン:2010/02/16(火) 15:27:35.98 ID:fnCHRvbr0
その、あまりにも…祐樹にとって…恐ろしい、姿に
祐樹は、絶叫して………意識を、闇に沈めた
「何だ…!?」
銀髪の青年、占い師は、この事態にどう対処したらいいものか、素早く思考をめぐらせる
コーク・ロア支配型の被害者は片付いたようだが…
あれは、何だ?
「う、占い師さん…!」
未来が、やや不安そうな声を出す
目の前で、現れたそれを見て気を失ってしまった少年を気遣うようにしながらも、その恐怖から逃れられないで居る
…ククージィと呼ばれた蝙蝠を、弾き飛ばした存在
それは、巨大な猫科の生き物に見えた
体長3m、体高1.5mと言った所か
恐らく、長い鬣を持っていたならば、それをライオンと判断したかもしれない
事実、それはきっと、ライオンなのだろう
…だが、それをライオンと呼ぶのは、一瞬躊躇ってしまうかもしれない
恐らくは、成獣の、オスのライオン
しかし、その鬣は…まったく、伸びていなかったのだ
それが、酷く不気味な印象を与えてくる
「…や、やめて、くれ……ダークネス……!」
支配型の契約者が、腰を抜かしながら、そのライオンらしき生き物に懇願する
たてがみの無いライオン……チーターを連想してしまったorz
250 :
ビター・スウィート・ビターポイズン:2010/02/16(火) 15:30:58.93 ID:fnCHRvbr0
その懇願は、届きはしなかった
ダークネスと呼ばれたそのライオンは…一瞬で、支配型契約者の喉笛に、噛み付いたのだ
「−−−−−っが!?」
喉笛に噛み付き、そのまま、ライオンは壁を蹴って、そのまま壁を登っていってしまう
通常のライオンに、そんな事ができるはずもない
明らかに…都市伝説だ
ばさ、と
壁に叩きつけられていた蝙蝠が、西洋人の老人の姿に代わった
その腕が蝙蝠の群れに代わり、ライオンを追いかけるが…
「………駄目、か」
舌打ちしている
どうやら、振り切られたらしい
諦めたようにため息をついて、老人は占い師たちに駆け寄ってきた
「…ふむ、お前たちは、怪我はないか?」
「あ、は………はい」
ややショック状態だった未来が、こくこくと頷く
占い師は、その老人にやや警戒するような視線を向けた
老人が、小さく苦笑する
「まぁ、気持ちはわかるが警戒せんでくれ。わしらは、悪人以外に害を与えるつもりはないからの」
そう言って、老人は気絶している少年の前でしゃがみこむ
しえしえ
252 :
ビター・スウィート・ビターポイズン:2010/02/16(火) 15:36:44.59 ID:fnCHRvbr0
ぺちぺち、軽く少年の頬を叩いて……目覚める様子がないのを見て、再びため息をついて
ひょい、とその体を軽々と背負った
「…ふむ、警戒を解いてもらうためにも、自己紹介と行こうかの……わしは、ククージィ。この子は祐樹。まぁ、都市伝説と契約者、と言う関係じゃ」
「ククージィ………吸血鬼の一種か」
そう捕えてくれて構わんよ、と老人…ククージィが笑う
どうやら、敵対行動を取ってくる様子はないようだ
占い師は、ショック状態の未来を気遣いつつ、二人で簡単な自己紹介をした
「…あの、その子、大丈夫ですか?」
ようやく、ショックから戻ってきたらしい未来が、ククージィに背負われた少年、祐樹を気遣うようにそう言った
ククージィは、小さく苦笑する
「この子は、ライオンが苦手での。それはもう、気絶するほどにな」
「…なるほど。ライオン恐怖症か」
「そう言う事じゃ…それに、もしかしたら、あいつはこの子がライオン恐怖症になった、原因に近い存在かもしれんのぉ」
ククージィの、その呟きに
え?と未来が首をかしげる
「どう言う事ですか?」
「どうにも、この子がライオン嫌いになったのは、ある実話を元にした映画が原因らしくての……『ゴースト・アンド・ダークネス』をご存知かな?」
「ツァボの人食いを元にした映画だな?」
占い師の言葉に、そうじゃ、とククージィは頷いてくる
…ツァボの人食い
1989年、東アフリカの鉄道工事に参加していた技術者達を、恐怖のどん底に叩き落した、二匹の兄弟と思われるライオンだ
子ライオンの片割れなのか
でか過ぎワロタ支援
254 :
ビター・スウィート・ビターポイズン:2010/02/16(火) 15:42:31.30 ID:fnCHRvbr0
その犠牲者は、もっとも多い記録によれば135人
射殺されるまでに、その二匹のライオンに殺された犠牲者達の人骨が、二匹が住処としていた洞窟に山積みにされていたという
人々は、恐怖をこめてその二匹のライオンをこう呼んだ
『幽霊(ゴースト)』と『暗黒(ダークネス)』、と
「あのライオンは、ダークネスと呼ばれていた…もしかしたら、その都市伝説かもしれないのか」
「そう言う事じゃ。ダークネスがいる、ということは、ゴーストもおるかもしれんなぁ」
厄介な事じゃ、とククージィがため息をついている
そして…ククージィは、未来を気遣うように、優しく笑ってきた
「怖い思いをさせてしまったようで、申し訳ない。わしらは、繁華街で雑貨屋を開いておるでの。顔を見せてくれれば、お茶の一杯でもご馳走しよう」
「え、あ…は、はい」
す、と
渡された、多分、手作りらしい小さなチラシを、未来は受け取った
では、と、ククージィは祐樹を背負ったまま、この場を後にしようとする
「……おい、このコーク・ロアの被害者達は、どうするんだ?」
思わず、占い師がそう声をかける
そう
被害者達は血を吸われた状態で、放置されている
この冬の寒さでは、凍死しかねない
「知り合いの「組織」の者に連絡するでな、回収してくれるじゃろ……祐樹のお気に入りの、あのお人好しに迷惑をかけるのは気が引けるがの」
しえーん
256 :
ビター・スウィート・ビターポイズン:2010/02/16(火) 15:44:26.00 ID:fnCHRvbr0
そう言って、ククージィは祐樹を背負ったまま、この場を後にした
占い師と未来だけが、この場にとり残される
「…占い師さん」
「……信じるしかないだろう。せめて、道の端にでも寄せておいてやろうか」
固まっていれば、寒くないかもしれないし…多分
ある意味、厄介ごとを押し付けられたような状態になって
占い師は、ため息をついたのだった
to be … ?
-----------------------------------------
占い師の人に剣山焼き土下座orz
ククージィ&祐樹と知り合わせつつ、ダークネス目撃させつつ、厄介事を押し付けてしまいました
乙ー!
こういう時応戦出来ない占い師は本当に駄目な子
そういえば占いの館ってどこに位置してたっけって今さらながら過去の設定忘れた俺も駄目な子
確か繁華街にあったし、暇を見て占い師たちを立ち寄らせようかしら
258 :
ビター・スウィート・ビターポイズン:2010/02/16(火) 16:00:38.70 ID:fnCHRvbr0
投下直後にサル……だとorz
>>244>>247>>253 >改造スタンガンだと……
祐樹本体があまりに弱すぎるので持たせた
後悔はしていない
>そういえば祐樹に吸血鬼としての力はないのか
せいぜい、ククージィが操る伝染病に対する無敵耐性があるくらいですね
集中すれば、一部の吸血鬼能力借りられますが、使い勝手が悪いので
>子ライオンの片割れなのか
デカいのは、こっちはちゃんと自分が誰かを覚えているせいだと思うんだぜ!
>>257 なぁに、戦えないキャラは他にも結構いるし大丈夫さ!
お客さんとして来てくれれば俺とククージィが喜びます(出番と経営的に)
投下後サルがよくあって困るww
>>258 吸血鬼と言うと超人的イメージしかないけど、契約者にその力はないのかー
>デカいのは、こっちはちゃんと自分が誰かを覚えているせいだと思うんだぜ!
しかし片方が小さすぎて吹いたww
覚醒すると大きくなるのかな
>お客さんとして来てくれれば俺とククージィが喜びます(出番と経営的に)
山田が雑貨屋に行くネタならあるんだ、山無しオチ無しのあれなネタだったけど
しかし今なら子ライオンがいるし、裕樹を苛めちゃおうなんて考えてないよ?
260 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 16:13:23.55 ID:fnCHRvbr0
おぉっと、名前欄消し忘れてた
>吸血鬼と言うと超人的イメージしかないけど、契約者にその力はないのかー
ククージィ本体が「弱点を克服した吸血鬼」と言うチートなんで、バランス考えて契約者はそんな感じに
それにしても弱すぎるかなぁ、とも思ったり
>しかし片方が小さすぎて吹いたww
どうせなら、ちっさくてかぁいいのがいいじゃないか!!
おっきくなれるかどうかはまだ未定
>しかし今なら子ライオンがいるし、裕樹を苛めちゃおうなんて考えてないよ?
むしろ、虐めてくれると俺が喜びます
祐樹「ふざけるな」
だって、お前他キャラとの絡み薄いし
>ククージィ本体が「弱点を克服した吸血鬼」と言うチートなんで、バランス考えて契約者はそんな感じに
>それにしても弱すぎるかなぁ、とも思ったり
全く同じ能力にすると何だかキャラが被って片方の存在感が薄くなる事がしばしばあるからいいと思うんだぜ!
というか、未来がまさにそんな感j(ry
>どうせなら、ちっさくてかぁいいのがいいじゃないか!!
子供の頃のライオンの可愛さはチートだと思います
何で猫を超越しちゃってるんだ……。
>むしろ、虐めてくれると俺が喜びます
雑貨屋に未来含む山田家数名が押し掛けると思います
262 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 16:29:10.67 ID:fnCHRvbr0
夕食後もスレが残っていてくれれば幸せだ!!
>>261 >子供の頃のライオンの可愛さはチートだと思います
ライオンに限らず、猫科猛獣の子供の頃の可愛さはチートだと思います!!!
>雑貨屋に未来含む山田家数名が押し掛けると思います
wktk
>>262 >ライオンに限らず、猫科猛獣の子供の頃の可愛さはチートだと思います!!!
同感だぜ―!
>wktk
まだ構想も何も決まってないので書くのに時間がかかるかもしれないけど、出来るだけ頑張るー!
帰宅保守
飯前星
ごちそうさまでしたほ
267 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 19:03:54.06 ID:aKtdcERN0
ほ
268 :
Tさん:2010/02/16(火) 19:29:26.20 ID:voT5k6jZ0
ただいまほしゅしつつ
赤い二人に対するさっちゃん消滅報告をどうしたもんかと思ってます
できれば話に絡ませたかったのですが連絡先も住居も知らないので絡ませられなかったのが心残り
黒服Dから連絡行ったことにしてTさん個人を彼らに会いに行かせるor会いに行くをさせてもらって構いませんでしょうか?
269 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 19:34:56.96 ID:ty4IsUwn0
ごっそうさまっしたー!
>>268 はい、構いませんよ!
赤マントは携帯もってるんだから、番号交換とかさせるべきだったなぁ
ちなみに、住所は学校町内のどっかの小学校の女子トイレです
270 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 19:52:56.22 ID:ty4IsUwn0
みょ
271 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 19:56:40.61 ID:35aBpspx0
そういや、実体化した悪魔の囁きに攻撃能力はあるんだろうか
272 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 19:58:07.65 ID:ty4IsUwn0
>>271 >そういや、実体化した悪魔の囁きに攻撃能力はあるんだろうか
一切ないよ!
能力は囁き続けてその人を悪の道に走らせたり願望を歪んだ形で実現させようとしたりするくらいだよ!!
273 :
女装少年の人:2010/02/16(火) 20:05:36.99 ID:35aBpspx0
>>272 むむ、そーなのかー。
まあ、確かに攻撃までできたらシャレにならないか・・・
そういえば、時間軸的には一月の半ばくらいからククージィさんのとこに女装少年をバイトに行かせていただこうと思っております
読んできたー
>>197 >>198とプラスして
プロットはてきとーに参考程度に、でも外れすぎないように
投下乙です!
マゾはあんたのせいだったのかwww
山田家に居るライオンってもしかしてそのうちおっきくなるんだろうか……
>>269 どもです!
……おれ、試験終わったら、書くんだ…………
不躾ですがいくつか質問をさせていただきます。
・あの二人に対してさっちゃんを殺したのは自分のようなものだと言った場合の二人の反応
・
275 :
笛:2010/02/16(火) 20:12:59.07 ID:GjKm4NmA0
出来たぜー
投下するぜー
弾圧ガジェットに対する世間の風当たりが厳しいぜー
276 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 20:13:11.21 ID:ty4IsUwn0
>>273 どんなに強そうな外見をしていても、一切攻撃能力内のガ悪魔の囁き
黒山羊姿の奴も、角はただの飾りだよ!!
そしてバイトwktk
祐樹もククージィも歓迎するぜ!
>>274 >山田家に居るライオンってもしかしてそのうちおっきくなるんだろうか……
秘密で未定なんだぜ
まぁ、ノリと勢いにもよる
>・あの二人に対してさっちゃんを殺したのは自分のようなものだと言った場合の二人の反応
赤マントは、さっちゃんの事をTさんに伝えたのは自分であり、ある意味で押し付けてしまった事を謝罪してくるでしょう
赤いはんてんは複雑な思いを抱きつつも、さっちゃんが間違いを犯さずに(再び夢の国を狂わせずに)すんだ事を知って、ほっとすると思う
>>275 支援開始だぜ!!
よし支援だ
読んできた&支援!
このスレの九割くらいがもげろと変態と奇人狂人て構成されてるような気がしてきた・・・
書き方といえば、プロットというものを一度も書いたことがない。やっぱ書いた方が色々安定するんだろうか?
280 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 20:21:18.96 ID:ty4IsUwn0
支援の準備をしつつ
>>279 >書き方といえば、プロットというものを一度も書いたことがない。やっぱ書いた方が色々安定するんだろうか?
俺は、プロットは毎度脳内で、だなぁ
書きながら投下とかざらなんで
一応、メモに書いたのをコピペしながら投下って事もあるが
281 :
笛:2010/02/16(火) 20:21:26.03 ID:GjKm4NmA0
【上田明也の協奏曲16〜野に咲く花を手折るとしても〜】
「歩けるか?」
「無理です。」
説得が終わるとメルはわりと大人しくなっていた。
冷静に考えると刀で突き刺した上に思い切り殴った相手に歩けるか?はないというものである。
「じゃあ仕方ないな。」
「大丈夫なんですかマスター。」
「これくらい、お前の為なら。」
俺はメルを担ぎ上げると神社を出て行くことにした。
ここに黒服が向かっていることだろう。
今、この状態で会えば逃げ切れるかどうかは正直怪しい。
参道を回避しながらバイクに向かい、探偵事務所に戻る。
「所長お帰りー!って……メルちゃん!?なにがあったんですか!」
事務所に戻ると向坂が出迎えてくれた。
「ああー……、仕事がらみ。今回はわりと手強かった。」
「……都市伝説ですか。」
「ああ、そうだよ。」
「メルちゃんに……、無理させないで下さい。」
彼女の言う通りか。
だがこれからはあまり無理させなくても済みそうだ。
それよりも、だ。
「……そうだな、この後もう一仕事有るんだ。こいつを頼む。」
メルを向坂に任せて、俺は孤児院に向かうことにした。
穀雨の居るあの孤児院に行き、彼女を連れ去る。
誰かの意志にゆだねていれば手遅れになるから。
どんなに悪であろうと、手が汚れようと、守りたい物が有るって解ったから。
だから俺は今から彼女を誘拐してこよう。
殺人鬼「ハーメルンの笛吹き男」として。
282 :
笛:2010/02/16(火) 20:22:40.62 ID:GjKm4NmA0
「じゃあ行ってくるぜ向坂。この仕事が終わったらボーナスでも出そう。」
「行ってらっしゃい、所長。期待しないで待っています。」
後ろを向いたまま手を振る。
いきなり彼女が追いかけてきて肩を叩かれた。
「どうし………!」
「始めてそんな顔をしてくれましたね。」
頬にキスされてしまった。
「ばれたら怒られるねえ。」
「所長付き合ってる人でも居るんですか?」
君が今だっこしている人だよ。とは口が裂けても言えないので適当に誤魔化すことにした。
「全世界が俺に恋してるんだぜ?」
向坂は少しだけ笑うと照れ隠しに俺を探偵事務所から追い出すように送り出してくれた。
「こりゃあへまする訳にはいかないな。」
やれやれと肩をすくめながら車に乗り込む。
隣には誰もいない。
前にも後ろにも真上にもましてや真下にも居ない。
たった一人。
サッと行ってサッと帰ってくればそれでよし。
駄目だったならば皆殺し。
黒いスーツにサングラスをかけて黒服とやらの変装だけでもしておくことにした。
使う車は地下駐車場の隠し部屋に止めてある赤いフィアット500だ。
殺人鬼ハーメルンの笛吹きが鼠を使わなくてどうするというのだ。
283 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 20:22:52.94 ID:ty4IsUwn0
支援
しえーん!
285 :
笛:2010/02/16(火) 20:23:55.57 ID:GjKm4NmA0
「エンジン良し、タイヤ良し、搭載兵器も完璧。」
車の中に積み込まれている武器を確認する。
ああ、どれも完璧だ。
ワルサーWA2000と一緒に届いたあれも入っている。
「あー、「組織」の者と理事長におねがいします。
はい、少女を迎えに来る予定が速くなったと、はい。
それだけで解ると思いますので、どうもありがとうございました。」
電話口の女性も騙されてくれた様子だ。
俺は車を発進させると穀雨の居る孤児院に向かった。
「どうも、少女を引き取りに来ました。」
孤児院へは正面から正々堂々と入り込んだ。
サングラス、ダークスーツ、ブリーフケース。
どれをとっても「組織」の黒服だ。俺の変装も完璧である。
車も駐車場に止めてある。
玄関で「組織」を名乗ると職員はさして疑問を抱く様子もなく、俺を理事長室に通した。
ここの職員はどうやら仕事に対して大したこだわりを持っていないらしい。
まず最初に、こういう手合いは身元をきっちり確認するのが筋という物だと俺は思うのだが。
こいつらは子供が何処に引き取られようと本当にどうでも良いのだろうな。
俺はできるだけ顔を見せないようにしながら理事長室に入り込み、すばやくドアを閉めて理事長と二人きりになった。
彼は金魚に餌を与えていた。
「今、職員に彼女を連れてこさせているのですが……、少々来る日程が速くなったのですってね。」
「はい、最近我々に対して工作を行っている者が多いので安全の為に少しずつ計画のスケジュールを早めているのですよ。」
「成る程、それなら良いのです。」
こいつは恐らく組織のことを解っていない。
金やら何やらの為に子供を横流ししているのか。
「まったく、ろくでもないな。」
「どうしたんです?」
「いえ、邪魔者が多くて少々イライラしていましてね。」
「はぁ……。」
支援
287 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 20:24:59.33 ID:ty4IsUwn0
支援
288 :
笛:2010/02/16(火) 20:26:00.20 ID:GjKm4NmA0
コンコン
誰かが扉を叩いた。
「理事長、穀雨ちゃんを連れてきました。」
「おお、そうか。少し待っていてくれ……。あの、ところで報酬の方はしっかりございますかね?」
理事長が俺の持っているブリーフケースをチラチラと見ながら問いかけてくる。
「おっと、忘れる所でした。こちらに……。」
俺は持っていたブリーフケースを理事長に渡すような素振りをして………
BANG!BANG!
腹に二発
BANG!
頭部に一発
銃弾を撃ち込んだ。
ブリーフケースからうっすらと煙が立ち上る。
それでは説明しよう、このブリーフケースの中にはH&KMP7が入っているのだ。
H&K社の銃はその命中精度とサイズから要人警護などによく使用されるので隠し持ちやすさを追求される傾向がある。
その中で開発されたのがH&KMP5Kの派生バージョンであるMP5Kコッファーだ。
これはブリーフケースなどの内部にそのまま突っ込める大きさでしかもケースと銃を内部で連結させることで
ケースの中から銃撃が可能になっている。
俺はサンジェルマンに頼み込んでMP7をケースに詰め込めるように改造して貰っていたのだ
MP7事態が音のあまりでない銃だが、更にサイレンサーのおかげで音はほとんど無くて済んだようである。
だが銃の音がわずかでも隣の部屋からすれば誰だって警戒する。
俺はすばやく口笛を吹いて扉の向こうにいる子供を気絶させると部屋を出た。
支援
290 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 20:27:25.19 ID:ty4IsUwn0
しぇーーーん
291 :
笛:2010/02/16(火) 20:28:34.90 ID:GjKm4NmA0
「あの、何かあったので……」
声から判断するに俺が電話口で話した職員だろう。
ナニモシラナイイッパンシミンノカタに違いない。
「いえ、」
再び腹に二発、頭に一発。
降り注ぐ血の雨
「貴方が心配するようなことは何もありませんでした。」
綺麗に笑顔を作って応対してみた。
穀雨は具合良く俺の笛で気を失っているようだ。
ブリーフケースをすばやく開封すると中からMP7と真っ赤なネットブックが現れた。
ネットブックはすでに起動されており、赤い部屋が何時でも発動できるようになっている。
「茜さん、頼んだ。」
俺は穀雨を赤い部屋に回収させる。
「……来たか。」
遠くから響いてくる足音。
誰が連絡したかは知らないがどうやらお客様がいらっしゃったようだ。
丁寧に応対せざるを得ないな、これは。
俺は首をクルリと回して愉快に笑った。
支援
293 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 20:29:58.46 ID:ty4IsUwn0
支援を続ける!
294 :
笛:2010/02/16(火) 20:30:33.08 ID:GjKm4NmA0
「現場に到着した。どうぞ。」
無線を行いながらこちらに近づいてくる黒服。
「血痕を発見したので理事長室の探索から行うことにする。」
そういって彼は周囲を警戒しつつ、こちらにゆっくり近づいてきた。
俺が思うに、穀雨を助けたところで組織の過激派は彼女以外の子供を使って実験を始めるだろう。
ではどうすれば良いだろうか?
俺が思うに、この孤児院を破壊すればいいのだ。
いや、本当に破壊するとそれはそれでまた不都合だからやらないけどさ。
たとえば、のこのこやってくる黒服を次々殺してみせるとか。
たとえば、この施設の職員を片っ端から殺してみせるとか。
この孤児院のシステムが根底から揺らがされるようなことを行えばそれだけ、彼らが実験台にされるリスクは減る。
まあ単純に言ってしまえば俺による組織への徹底的な嫌がらせを行えば自然と彼らも救われるのだ。
とにかく、俺は目の前のこの不運な黒服を屠ることにした。
「付喪神……!」
付喪神を呼び出して物陰に仕込んでいたナイフに憑依させる。
丁度十本分だ、これで仕込みは完璧。
「都市伝説の気配が濃厚だ。詳しくは解らないがまだ建物内部に残っている可能性………。」
ハーメルンの笛吹きの都市伝説の気配のせいで付喪神に気付いていないようだ。
――――――ヒゥン
わずかに空気の裂ける音がする。
生憎、彼の無線はそこで途切れることになった。
何故ならA-92と名乗ったその黒服の首は一瞬で真っ二つになっていたのだから。
295 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 20:31:46.50 ID:ty4IsUwn0
あなたに血の花束を支援
296 :
笛:2010/02/16(火) 20:32:11.82 ID:GjKm4NmA0
手元にナイフを戻して素早く服の中にしまう。
「いやー……、狙い通りで笑っちまったぜ。」
俺は黒服Hを見ているといつも思うのだ。
あいつと戦うのだけは願い下げだと。
その理由はいたって簡単。
あいつは糸使いなのだ。
それどころか相模は風魔の必殺忍法『風閂』を使う髪の毛使いなのだ。
いや、風閂かはまた別なんだけどさ。
糸使いと前もって解っていたとしてもそういう奴らとは戦いたくない。
勝つ方法が少ないのにそれを使う手は無いという物だ。
と、言うわけで自分も使ってみた。
ナイフに鋼線をくくりつけて付喪神経由で自在に操ってみる。
これだけでかなり強力な糸による攻撃になるのだ。
とりあえず俺はピンクフロイドの原子心母でも口笛で演奏しながら孤児院を歩き始めることにした。
大人の目撃者がいると行けない。
それじゃあ片っ端からヤってみよう!
支援
298 :
笛:2010/02/16(火) 20:33:09.28 ID:GjKm4NmA0
「居たぞっ!あそこだ!」
「一人で居る内に囲んで殺せ!」
結局孤児院の中に大した物はなかった。
強いて言えば俺の車が完璧に破壊されていて少々以上の殺意を覚えたことくらいだ。
あのフィアットは中々勝ちのある物だったので……本当に残念だ。
口笛の音に誘われて、一人また一人と黒服が誘われてくる。
或る者はセンスの悪い光線銃を片手に、
また或る者は己の都市伝説と思しき何かを従えて、
成る程、数で押せば勝てると思っているようだ。
空気が涙ししゃくり上げるようなヒゥンヒゥンという音。
光線銃を鋼線で切り捨てる時にあがるのはそんな音。
「……糸?ハーメルンの笛吹きや蜻蛉切にそんな能力は無い筈だ!」
怒濤のような射撃の群、群、群。
だがそんな物では俺は倒せない、いまやハーメルンの笛吹きを取り込んだ俺に、幾つ命のストックが有ると思っているのだ。
コートの下に隠した大量のナイフを射出して光線銃の持ち主達の急所を貫く。
「なんだ!?こいつ、今までになかった都市伝説と契約していやがる!」
他愛ない。これで終わりか。
そう思った次の瞬間だった。
ダン!ダン!
速い。
ハーメルンの笛吹きで強化された聴覚を以てしてやっと気づけるレベルだ。
壁や天井を蹴って三次元の移動をしている何かが居る。
味方を囮にしてでも俺を殺そうとする何かが居る。
299 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 20:33:39.53 ID:ty4IsUwn0
これは、あとでちょっと反応を書こうかな支援
300 :
笛:2010/02/16(火) 20:35:14.98 ID:GjKm4NmA0
【
>>299バッチコイ!】
味方を犠牲にしてでも俺を殺す?
まったく――――――最高じゃないか!
「口裂け女!」
俺がそいつの正体を知った瞬間には、俺のパクリである真っ赤なコートを身につけた女が俺の背後をとっていた。
「ッシャアアアアアアアア!!!」
裂帛の気合いと共に拳が俺の身体に突き刺さる。
われ鐘が身体の中で鳴り響くような衝撃と生温い内蔵が暖房もろくに効いてないこの場所でぶちまけられる激痛が身体を疾走る。
「今までのは囮か!」
吹っ飛んできた俺をテケテケの契約者らしき女がさらに殴り殺そうと待っている。
「内蔵零してるのに容赦が無いことで……。」
持っていたナイフをすぐさま捨て去ると先程のワイヤーナイフに付いていた付喪神を総動員。
ワイヤーを使って自分の身体をなんとか受け止める。
隣ではテケテケの契約者らしき女の拳が床を割っていた。
「ずいぶん丈夫になったみたいね、ハーメルンの笛吹き!」
女は空中でグルグル巻きになっている俺をにらみつける。
「猫は九つ命があるそうだ。ハーメルンの笛吹きは悪魔だぜ?」
すぐに自らへの拘束を解くと懐からM29を取り出して女に向ける。
「Go ahead. Make my day.」
映画の1シーンを気取りながら44マグナムの弾丸を彼女の頭部に向けて撃ち込む。
その刹那
メキリメキリと鉄の砕ける音がする。
「そのセリフは正義の味方のセリフよ?」
「そんなの知るか、それよりも銃弾を砕くなんて最高に化け物の所行だよ!」
今すぐスタンディングオベーションでも決めてやりたいところだが生憎そうも行かない。
口裂け女が真後ろにいるのだ。
301 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 20:36:27.67 ID:ty4IsUwn0
やっほぅ!いやぁ、この孤児院に因縁ある奴多すぎるんで、支援
302 :
笛:2010/02/16(火) 20:36:44.65 ID:GjKm4NmA0
コートの肘の部分を強く押すとMP5Kが2丁程滑り落ちてくる。
ワイヤーを操りながら口裂け女の行動を制限し、居るであろうと予想できるところにありったけの弾丸を撃ち込んだ。
断末魔の悲鳴。
ビンゴだ。
「H&K社のMP5Kだ、貴様らに使ってやるには勿体ない代物だったか?」
「祐美江!」
テケテケの女が悲鳴を上げる。
さて、後ろはどれほど恐ろしい事になっているのだろう。
銃段に遅れてワイヤー付きのナイフが祐美江と呼ばれていた女に突き刺さり、体内に潜り込み、彼女を食い荒らす。
「ハッハッハ!化け物同士が友情ごっこか!美しいなあ!えぇ、オイ?」
「この野郎……、この野郎!!」
テケテケの女は俺に素早く殴りかかってくるが俺は使い終わったMP5を捨ててM29で牽制を行う。
「やめてくれやめてくれ!人間は弱いんだ!お前らに殴られたら一溜まりもない!」
「許さない!お前は許さないぞ!」
残る弾はあと5発。
決して安い物では無いそれを湯水のように使い捨てる。
銃撃の反動に耐えられずに骨が悲鳴を上げている。
都市伝説一つ取り込んだのもまた決して安い買い物じゃなかったようだ。
「弾が切れたな!」
テケテケの女はそれを狙って飛びかかってくる。
「はっはっは、俺が弾無しになると思うかい?特にアンタみたいな可愛い女の子を目の前にすると……。」
服の袖からリボルバーの拳銃が滑り降りてくる。
ドガァン!手元で炸薬が破裂する。
またも腕の骨はきしみ始めている。
「俺の黒くて大きなマグナムは何度でもいきり立ってしまうようだがね。」
正直なところちょっと年を取りすぎているのだが。
再び銃段を防御しようとしたテケテケは白魚のような右手を無様に破裂させてのたうち回る結果になった。
そうだそうだ、その苦しそうな声をもっと聞かせて貰わないと俺は楽しくないんだよ。
303 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 20:37:57.43 ID:ty4IsUwn0
>「俺の黒くて大きなマグナムは何度でもいきり立ってしまうようだがね。」
上田ー、それ、ウホっな人達が反応しちゃうセリフー支援
304 :
笛 (代理):2010/02/16(火) 20:44:08.74 ID:ty4IsUwn0
「どうだい?M29は防げてもM500の弾丸は防げなかったみたいだね。」
声も出ないらしい。
仕方ない。
どんな銃がこいつの命を奪ったかくらいは教えてやろう。
「M500とは市販品としては最強の拳銃弾「.500S&W」を使用し、
マズルエネルギーは.44Magnum弾の3倍(S&W社比)を誇る世界最強の銃だ。
威力に於いてはだけどね。
いや、厳密に言えばオーストラリアのプファイファーツェリスカとかいうハンドメイドの作品が最強だよ?
でもありゃあ人間には扱えないからさ。」
「人間……。」
掠れた声で吐き捨てるように呟く。
「ああ、そうだ。間違いなく人間だ。」
「お前の……、何処が……人間だぁ!」
「人間の証明が欲しいか?
私利私欲の為に無垢な子供を実験台にするような「組織」の構成員がこの俺に人間の証明を求めるか!
良いだろう、証明してやる。これから完膚無きまでに証明し尽くしてやろう。」
「うわあああああああああああああああああ!!!」
先程までくたばっていた筈の口裂け女がもう一度動き始める。
M500……、ああ、躱されちまった。
今度は奴の蹴りが迫る。
「無粋な奴め。」
だが、それも問題は無い。
指をパチン、とならすと口裂け女は見事に爆発解体されてしまった。
先程ナイフで触手プレイを決めていたときにナイフごと爆弾を一つおいてきたのだ。
「ちょっとした即席クレイモアはお気に召して頂けたようだね。」
飛び散ってきた肉片が掌に乗る。
おやおや丁度頬の部分だ。
「ほら、ほっぺが落ちた。」
邪魔くさいので床に捨てた。
305 :
笛 (代理):2010/02/16(火) 20:45:48.29 ID:ty4IsUwn0
「見たまえ、テケテケの女。これが……人間だ。
愉悦と利益と保身の為に同胞を殺して殺して殺しまくる方法を突き詰め続けた共食いのプロフェッショナル。
その牙が一度外部を向けば生存していられる種など存在しないんだよ。」
蜻蛉切で自慢の両手両足を切り落とすと俺のM500を無理矢理しゃぶらせる。
「君たち組織は都市伝説の事件を隠蔽しているよね?
それって何でだと思う?
理由は単純だよ。
怖いからさ。
人間が都市伝説の敵になれば君、一瞬でお終いだよ。
なんもかんも消えて無くなり、唯一残った君らの死骸の上で人間だけが明日の朝日を拝むのさ。
どうだい?これが人間だ。人間というのはこういう物なのだ。
そして、それ故に俺こそが人間だ。
QED(解答ははかくて示された)。
まだ何か質問や異議や言いがかりなどが有るかな?
達磨女!」
返事はない。
「これにて君の人生最後の授業を終わる。
起立、礼。……ってもう死んでいたか。」
ため息を吐いて俺は彼女に背を向けた。
散歩ほど歩くと子供の悲鳴が聞こえる。
「おい、ハーメルンの笛吹き!
お前、子供が大好きで大好きでしょうがないらしいじゃないか。
お前は目の前で罪もない子供が殺されそうになっても黙っていられるのか!?」
テケテケの女は男の子を一人、人質に取っていた。
306 :
笛 (代理):2010/02/16(火) 20:47:16.00 ID:ty4IsUwn0
「ヒュー、頑張るねえ。肉体再生も出来たのか。」
「五月蠅い!いますぐ武器を捨てろ!」
「解った解った。」
言われたとおりに武器を捨てる。
「くくく……、これでお前もちょっと丈夫なだけの人間だ!嬲り殺してやる!」
ジワリジワリと近づくテケテケ。
「まずは足、テメエの足を削いで腕を拉ぎ、鼻を砕き目をくりぬいて、その後からじっくり殺してやる!」
こっそり付喪神を発動させようとしたが……。
気付かれてしまった。
「舐めやがって……!このガキ殺すぞ!良いのか?」
「女の子がそんな汚い言葉を使うもんじゃないよ。」
人質というアイディアには素直に賞賛を送りたいが俺にはそれは通用しない。
特に子供の人質なんて絶対通用しない。
だから結局の所、問題無い。
俺は余裕たっぷりに聞き返してやった。
「そもそもガキって言うけどそのガキは何処に居るんだい?」
「――――――!!」
「子供の誘拐で俺に勝ちたいなら赤い靴でも連れてきたまえよ!」
「そんな!何処に!」
「あそこだよ。」
人質の男の子は先程まで金魚の入っていた水槽に頭を突っ込んでいた。
307 :
笛 (代理):2010/02/16(火) 20:50:33.53 ID:ty4IsUwn0
「知っているかテケテケ?」
余裕ぶったポーズで解説してやることにした。
なんて優しいんだろう、俺。
「ハーメルンの笛吹きの事件で死んだ子供達は……
――――――――――――鼠のように溺れて死んだんだよ。
あとは解るな?」
「――――――そんな!じゃあ……。」
「子供を水辺で溺れさせるくらい、俺には一瞬で出来ることだ。」
あーあ、と残念そうな声を上げる俺。
これでお終いとは骨がない。
化け物なら化け物らしくもっと圧倒的な力で俺をねじ伏せてみろという物だ。
恐怖に歪むテケテケの顔。
「ちゃっちゃとオッ死ね、ゲス野郎。」
デリンジャーをベルトの中から取り出すと俺はテケテケに止めを刺した。
「さて、警察でも呼ぶか。」
男の子を水槽から助け上げて、監視カメラやテープを破壊してから警察を呼ぶ。
警察が来るまでの時間、俺は暇つぶしに少年にいい話をすることにした。
308 :
笛:2010/02/16(火) 20:51:08.17 ID:GjKm4NmA0
復活してるかな……?
309 :
笛:2010/02/16(火) 20:54:14.29 ID:GjKm4NmA0
「なぁ、少年。今怖かったか?」
首を縦に振る少年。まあ当たり前だ。
「少年、安心とは何か知っているか?」
首を横に振る少年。まあ当たり前だ。
「安心って言うのは車の後部座席で眠ることに似ている。
前の席には頼れる大人が居て、心配事は何も無い。
でもな、あるとき頼れる大人は居なくなってしまう。
その時は、君が前の座席に行って君の隣で寝ている君の大切な人を守ってあげなくちゃ行けない。
男の子はきっとそうやって大人になっていくんだ。
今君は怖かっただろう?
きっと後部座席に居たら後ろから車に激突されたくらい怖かった筈だ。
今までの生活は大変だったかもしれないけどこれからはもっと大変だ、保証してやる。
でも、配られたカードにワガママいっちゃいけない。
君は生まれる前にその手札で勝負すると宣言してしまったんだ。
今更文句なんていっちゃいけない。
でも、どうしても力を貸して欲しかったらこのハーメルンの笛吹きに頼れ。
今回妙な事件に巻き込んだお詫び程度には力を貸してやる。
だから、できるだけ自分の力で人生切り開いて行けよ。
他人に安心を花束一杯くれてやれる大人になれ。」
ちょっといい話がが終わると俺は警察のサイレンの音を確認してから悠々と赤い部屋に逃げ込んだのであった。
ちなみにこの話、あとちょっとばかり後日譚がある。
【上田明也の協奏曲16〜野に咲く花を手折るとしても〜 fin】
310 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 20:58:50.65 ID:ty4IsUwn0
ハーメルン乙でした!!!
近日中に、この孤児院がこの後どうなったか書きますね
311 :
笛:2010/02/16(火) 21:02:46.40 ID:GjKm4NmA0
ういっす。
スレに思ったよりも人が少ないぜ。
312 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 21:03:31.37 ID:ty4IsUwn0
みんな食事時orお風呂の時間or試験中で忙しいと見た
笛の人乙―!
今から読んでくるんだぜ―
さて、花子さんの方に質問ー!
ククージィの雑貨屋で、裕樹はお客さんに対して「いらっしゃい」をどんな口調でいいますでしょうか?
また、ククージィは未来の事をなんて呼ぶでしょうか?
315 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 21:07:11.89 ID:ty4IsUwn0
>>313 >ククージィの雑貨屋で、裕樹はお客さんに対して「いらっしゃい」をどんな口調でいいますでしょうか?
「……いらっしゃいませ」
って感じで、明らかに接客に慣れてない不慣れな感じでいってきますね
女性客が好みそうな品揃えの雑貨屋なんで、自分は場違いだと思ってるし
>また、ククージィは未来の事をなんて呼ぶでしょうか?
「お嬢さん」って呼んでくると思うよ!
>>314 銃は男のロマンだと思います。
しかし俺は銃と剣でいえば剣派かな……
>>315 了解です―!
ククージィの呼び方の方は想像通りで良かったwww
そうそう、ちょっと細かい事になりますが、裕樹は勤務中エプロンを使用しますか?
ついでに、もし使用するなら名前の書かれたプレートを使うかどうかも教えていただけると幸いです
>>312 2番目の理由で途中から支援できなかったよ!ごめんよ!
これで組織がにわかに騒がしくなりそうだな…
318 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 21:12:54.03 ID:ty4IsUwn0
>>316 俺も剣派だなぁ、と呟きつつ
>裕樹は勤務中エプロンを使用しますか?
ククージィに可愛いエプロン用意されて、必死の抵抗をして逃げましたが着せられました
猫模様のかぁいいエプロンつけてます
名前のプレート、付いてますね
苗字である「ペリシャ」の方が書かれてるかな、プレートには
>>316 熱く滾る黒金と炸薬の鼻を突くような香りが〜〜〜。
orz
>>317 こっちも最近支援できてないしごめんよ!
そうだなあ……。
穏健派の黒服は多分やってないとおもうけど見境ないしなあ……
>>318 こうなったら次回からストックしてた刀剣トリビアを……
320 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 21:15:56.93 ID:AHEc7TJg0
>>316 銃か剣か
俺はドリルかビームかでしか考えた事がなかった
321 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 21:16:55.62 ID:ty4IsUwn0
「組織」ないは、過激派の方がゴタゴタしそうだな、と思ったり
元々、そっちが内緒に勝手にやってた事だしね
孤児院自体には、「組織」は何の繋がりもなかったし
>>320 その発想は無かった。
だが男ならばドリルだと思う。
>>321 まあそっちかぁ。
上田が更におっかけまわされると楽しそうだけどな。
正直、書いてて誰が主人公だか解らなくなってた。
あ、そうだ花子さんの人ー
ククージィさんとこのバイトについてなんですが、面接とかってありますか?
>>318 了解ー!
明日中には書きあげたいなぁ
>>319 よくファンタジーで言うと剣と魔法
何故か銃がそこから疎外されてるっていう……
325 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 21:26:43.79 ID:ty4IsUwn0
>>322 >上田が更におっかけまわされると楽しそうだけどな。
Hが上田相手にちょっかい出してきたり、K-No.232を差し向けようとしている様子なら思い浮んでいる
>>323 ククージィが簡単な面接するかな?一応
面接のふりした危ない都市伝説がついてないかどうかのチェックだと思うけど、実際は
326 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 21:28:18.88 ID:ty4IsUwn0
>>324 wktkしてるぜ!
>何故か銃がそこから疎外されてるっていう……
ファンタジー世界に銃はあっても良いか否か、って議論があったりするしなぁ
>>320 ドリルの素晴らしさを説いた顔面型ロボットアニメは偉大だと思うんだ
>>324 銃は歴史が浅いからなぁ…
ファンタジーってか近代兵器の分野だし、阻害されるのも分かる気がする
>>324 銃を阻害するとかもうね。
だから書く時は現代ものかスチームパンクを書きたいとおもふのです。
>>327 ああ、あれの好きな友人が居てね……。
ドリルについて小一時間語られた。
>>325 主に尻があぶねえよwwwwww
嫌な予感しかしねえwwwww
330 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 21:35:13.36 ID:ty4IsUwn0
>>329 大丈夫、Hにちょっかい出されても(処女が)危ないし
K-No.232に狙われても(尻が)危ないから
なぁに、上田なら大丈夫だって、俺は信じてるよ!!
>>330 ちょっと待って!
処女ってなに!?
怖いよ、それこわいよ!!!
332 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 21:41:57.91 ID:ty4IsUwn0
>>331 黒服H「俺は、マッドガッサー一味の広瀬辰也とのつながりがある………あとは、わかるな?」
女体化ガスをもらってくるくらいは楽勝です
つまりは上田、逃げてーーーーーっ!!!
まぁ、多分処女、大丈夫だと思うよ!きっと多分恐らくメイビー
>>332 うわ、やべぇ。
今の上田を女体化させると村正、鋼線、重火器の類とかで只の堕天使エロメイドにしか思えない。
334 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 21:53:00.49 ID:ty4IsUwn0
>>333 >堕天使エロメイドにしか思えない。
黒服H「それは素晴らしい」(しゅるしゅるしゅるしゅる
………上田逃げてーーーーーーーっ!!??
>>334 一遍女性になってしまった上田を戦わせても良いかもしれない。
上田「暗器とか隠すところ多くなるしさ。」
ちょ、一遍本当にやってみるかw
336 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 21:59:13.78 ID:ty4IsUwn0
>上田「暗器とか隠すところ多くなるしさ。」
ドコに隠す気だwwwwwwwwwwwwwwwwwww
なお、黒服Hの女体化ガス入手法↓
黒服H「あー、辰也?悪いがマッドガッサーの女体化ガス分けてもらいたいんだが。お前、頼んでくれよ」
辰也『は?なんで俺がてめぇなんぞの為に』
黒服H「ハーメルンをちょっとこらしめたくてな」
辰也『で、どれくらい必要なんだ?マッドの奴に相談しないと駄目だからな」
黒服H「お前、本当にハーメルンが嫌いだよな」
>>336 胸とか胸とか(ピー)とかです。
そしてノリノリな!
すげえノリノリなのな!階段!
338 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 22:04:53.06 ID:ty4IsUwn0
>すげえノリノリなのな!階段!
辰也「あの変態に女体化ガス渡したのが原因でハーメルンが痛い目あうならそれで良し」
さらっと鬼です、こいつ
「毎度ー、宅配便でーす」
「はいはーい」
元気の良い青年の声に、看護婦姿のバイトちゃんがぱたぱたと玄関へと向かう
「去年の暮れから荷物多いですねー。あ、サインか判子、ここにお願いします」
「診療所も開設したばっかりの頃から比べて色々と落ち着きましたからね。ドクターの趣味なんですよ、本とか機材集めるの」
「あー、本ですか。道理で重たいと思った。気ぃ付けて下さいね」
「大丈夫ですよ、力仕事は慣れてるんで。それじゃどうもご苦労様でした」
「いえいえ、それじゃ失礼しまーす」
ぺこりと頭を下げてトラックに乗り込む青年
フロントガラスのところに寝そべるように乗っている少女は『崖へ案内するカーナビ』
にこにこと笑いながら手を振ってきたので、青年には気付かれないように手を振り返してあげる
ここに診療所を開いてから、よく彼が荷物の配達に訪れる事から、どうやら仲良くやっている存在のようだ
「さてと、それじゃ患者さんの邪魔になる前に運んでおくか」
一抱えもあるダンボール箱は、どうやら本がみっしりと詰まっているようで
一瞬、昨年の騒動で見た魔女の少女が頭に浮かんだような気がした後に、バイトちゃんは箱を持ち上げようと屈んだ姿勢のままメアリーに発見されるまで動けなくなっていた
―――
「男の時の体格と筋量の感覚で動いちゃダメだってあれほど言ったじゃないですか」
「……面目ない」
ベッドにうつ伏せになり、メアリーに腰に湿布を貼り付けられているバイトちゃん
その傍らの椅子では、開いた本を抱えたままうたた寝をしているドクターの姿があった
「ここしばらく、休憩時間によく寝てますね」
「夜寝てませんからね、ドクター」
「……休憩時間、二時間ぐらいじゃないですか」
「身体を壊すからちゃんと寝て下さいって言ってるんですけどね」
本当に困ったように苦笑いするメアリー
「私と契約してなければ、薬で無理矢理でも眠らせたりするんですけど」
「メアリーと契約してなくても、それやったら絶対怒ると思うよー」
がちゃがちゃと謎の機材を整理しながら、ミツキが溜息を吐く
「貰ったデータに報いるために、出来るだけ早く成果を上げたいんだってさ」
「ああ、小官がパスワードを解読したやつでありますか?」
「中身は見せて貰えませんでしたけどね」
お茶菓子をつまんでいたエニグマ姉妹が、思い出したように顔を見合わせる
「それにしても、最近は錬金術の分野に特化してきましたね、ドクター。南米支部に居た頃に、あちらの総統が集めていたものがちらほら見受けられます」
「錬金術、か」
「無茶な成果を要求する上で、ボクの知識や技術、経験を一番活かせると判断したからな」
何時の間に目を覚ましたのか、椅子の上でぐうっと伸びをしながら語るドクター
「錬丹術もかじってみたが、あちらは外丹よりも内丹や房中術の資料ばかりでな。ボク好みだが処置をするには向いていない」
開いていた本に栞を挟み、机の上に置いて椅子から立ち上がるドクター
「まあとりあえずは検体がいるマッドガッサーの女体化ガスの除去薬は近日中に出来る予定だ」
「マジですか! やっ、た、あたたたた……」
喜びの余りに跳ね起きようとして、腰の痛みに再びベッドに沈み込むバイトちゃん
「ついでにマッドガッサーの女体化ガスと同じ効果の女体化薬も精製してみた」
「何余計なもんまで作ってんですかあんたは!?」
「解毒の為に毒を知るのは当然の事だろう」
不思議そうに首を傾げるドクターに、バイトちゃんは溜息を漏らす
「女体化の事は調べ終わったんですし、元に戻ったら改めて女になったりするのは御免ですからね?」
「まあ君も身体は充分に役に立ってくれた、これ以上求めるのは無体というものだな……ちっ」
「今舌打ちしましたよね!?」
「冗談だ冗談。しかし一つ一つの事案に詳細な研究をしていては時間も手数も足りない事極まりない。最終目標のために……これを足掛かりに目指すは――賢者の石であり万能薬エリクシールだな」
「目指すのはいいですが、ちゃんと休みながらやって下さいね」
「まあまずは先に君がきちんと休みたまえ。腰が治ったら女体化解除薬の臨床実験だぞ。さてメアリー、ミツキ、午後の診療だ。エニグマの二人はその弱腰者の世話を頼む」
「了解であります! 小官、一命を賭して任務に臨む気概であります!」
「お姉、気合を入れ過ぎるのも彼に迷惑ですからね」
―――
昇る昇る
高みへ昇る
人の領域を越えて遥かなる高みへ
与えられるもの以上を望む彼女の末路は
崩れ落ちるバベルの塔か
翼の溶け落ちたイカロスか
それとも、もっと別の何か、か
支援
>>338 上田明子「何時か殺す。」
堕天使エロメイドも良いんだけど……
彼女にはネコミミも装着して欲しい。
921 名前:三面鏡@ドクター[] 投稿日:2010/02/16(火) 22:01:17
皆様色々乙ですー
ドクターの死亡フラグを全力で立てまくり
真面目に都市伝説を人間にしようとすると、やっぱり色々調べた後に色々準備して色々やらなきゃいけないんだろうなぁ
検査一〜二週間、処置数日、リハビリたっぷりぐらいに人体錬成ぐらいのリスク付きぐらいで
************************
人体練成は神か悪魔の所業だぜ、ドクター…
344 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 22:09:08.35 ID:ty4IsUwn0
おっと、代理先こされたwwwww
乙っしたー!
>>342 >上田明子「何時か殺す。」
多分、辰也的にはそっくり同じ言葉返すと思うwwwwwwww
恵が、ハーメルン操る鼠に怯えていたのがそうとう気に食わないようです
終わってたか…乙でした。
人体錬成は愉快すぎる展開になりそうだな。
代理がかぶりそうになったようで申し訳ない
さるさん回避のためにも、あまりレスしてない俺が行くべきだと思ったんだぜ
>>344 「猫耳エンジェル探偵明子ちゃん」
明子ちゃんは学校町に潜む悪人を懲らしめる私立探偵!
明子ちゃんは説教好きだから戦いながら説教始めるよ!
説教しても聞いてくれないと暴力に訴えるぞ!
348 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 22:20:56.43 ID:ty4IsUwn0
>>346 お気になさらずなんだぜー
サル回避的に正しい
>>347 >「猫耳エンジェル探偵明子ちゃん」
ネコミミ標準装備かよ
ネコミミ標準装備かよwwwwwwwwwwwwwwwwwww
追撃者「はぁう、かぁいい……!」
おぉっと、別のハンターが現れた
>>348 もうやだこの町……。
とりあえず猫耳エンジェル探偵明子ちゃんでギャグを書いてみることにするよ……。
350 :
小ネタ:2010/02/16(火) 22:44:27.81 ID:ty4IsUwn0
「はい、ではそう言う事で…………子供達の今後の処遇は、こちらにお任せください。土地と建物は、まとめてこちらで買い取ります」
学校町の隣町
とある、大きな屋敷にて
額に大きな赤い宝石をつけた生き物を膝に乗せた男性が、電話でどこかと取引をしているようだった
「……はい。改めて、そこに孤児院を建てようかと……前のような場所には、させません。子供たちの為の場所にしてみせます」
つい先日、何者かの襲撃を受け、当時施設にいた大人達が全滅した
子供達には怪我はなかったのだが、一人は相当、怖い思いをしてしまったようで…精神的なケアは必須だろう
あの、施設は
彼、カーバンクル契約者にとっては、思い出の場所でもある
地獄のような日々を過ごした場所
しかし、かけがえのない友人を作った場所
あそこを抜け出して以来、よく、その20近くも歳の離れた友人達と、語り合ったものだ
…あんな、地獄のような場所じゃない
子供達が安心できる施設を、作ろうと
事業家として成功して、彼はそれを実現してきていた
そして、最後に…あの、自分達が育った施設を、何とか手中に収めて、その仕組みを改革しようとしていた
政治家が絡んでいて、なかなか手が出せなかったが…あの事件の後だ
ようやく、こちらの手中に収める事ができた
取引を終えて、ふぅ、とため息をつく
くー、と、カーバンクルが心配そうに見あげてきた
「…大丈夫だよ」
反応早いよ!支援!
支援紫煙だ!
353 :
小ネタ:2010/02/16(火) 22:47:46.64 ID:ty4IsUwn0
カーバンクルを、優しくなでてやる
まだ、休んでいる暇はない
まずは、子供達を別の、自分が経営している孤児院に移動させて……そちらで収容しきれないようだったら、あの話題の孤児院に、協力を願いでてみよう
「ひき子」なる女性が経営しているあの孤児院は、素晴らしい場所だと聞いているから
「……僕らが居た頃に……救いの手が、伸びてくれていれば、な…」
ぽつり、思わず呟く
いや、たら、れば、にすがるつもりなど、ないし
それに、あのような場所だったからこそ…自分は、友人たちと知り合えて、共に生きられたのだし
カーバンクルと、出会うこともできたのだろう
その皮肉に、苦笑する
「でも…もう、僕らみたいな目にあう子供達は…出しちゃ、いけないんだ」
子供を守るのは、大人の仕事
友人達の中で一番年上で、一番慈悲深かった…いや、今でも、飛び切り慈悲深い、彼の言葉を思い出す
自分は、もう子供じゃない
子供を守るべき大人の立場になったのだ
ならば、自分は自分が成し遂げるべきことを成し遂げるのだ
皆の夢だった
皆で実現したかった
でも、皆はもう、いないから
……だから、自分がやり遂げるのだ
fin
354 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 22:48:39.66 ID:ty4IsUwn0
そんな訳で、上田が大暴れした孤児院は土地・建物共にカーバンクル契約者が買収
建物は縁起悪いんでぶっ壊して、新たな孤児院を作るようです
今までとは違う、温かい場所になることでしょう
上田が相当怖い思いさせちまってたwwwwwwww
乙でした。
色々絡む場所だったんだと改めて実感。
投下乙!
あのひき子さんならためらうことなく資金や衣服を提供してくれそうだwwww
357 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 22:52:01.97 ID:ty4IsUwn0
>>355 >色々絡む場所だったんだと改めて実感。
少なくとも、俺のキャラでその施設出身者が多いんだよ
・黒服D&彼の人間時代の友人's
・祐樹 ペリシャ
・空条 恵
と、計7人は関わってる
穀雨加えると8人か
>>357 8人かあ、多いな。
さて、この後穀雨ちゃんはどうなるものか。
上田がさっくり助けちゃったけどこの後の予定はっきり決まってないし。
359 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 23:02:32.05 ID:ty4IsUwn0
>さて、この後穀雨ちゃんはどうなるものか。
上田なり誰かが引き取ってくれないと、路頭に迷いますね
一応、あの事件で行方不明扱いになってるか、もしくは事件前に引き取られていったと判断されてると思う
>>359 よし、じゃあ上田と一緒に海外編のヒロイン抜擢ということで。
どうせこの後しばらく海外回る予定だったし。
探偵業務はしばらく橙がやることになります。
361 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 23:12:16.59 ID:ty4IsUwn0
みゅ、力尽きるぜおやすみー
俺…明日、スレが残っていたら、追撃者VS呂布を書くんだ……
おやすー
ほし
干し