「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここは
都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたり
そんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりするスレです


「まとめwiki」 ttp://www29.atwiki.jp/legends/


まとめ(途中まで) ttp://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html


避難所は↓だよ!規制中やスレが落ちている間はこっちでゆっくりしていようね!
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13199/
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 13:51:04.07 ID:Pb3uliFY0
よくある質問



 このスレってジャンプの某読みきりと関係あるの?



始めにこのスレを立てた>>1が何を考えて、スレを立てたのか
今となっては、その真相はわからない
ただ、ここに集まった者たちは、各自思い思いに妄想をぶちまけていき、今のこのスレの形となっていった


まぁ、結果としては関係あるかどうかとか、どうでもよくね?
ぶっちゃけ、ほぼ関係ない内容だし


3マッドガッサー決戦編 祈りは彼らに届くか (転載):2010/01/29(金) 13:53:27.63 ID:Pb3uliFY0
○月×日 23:32 中央高校屋上


 …マッドガッサー達を挟んで、向こう側
 そこに、五基のミサイルが設置されていた
 発射台らしきものから延びるケーブルは……マッドガッサーの傍に置かれている、ノートパソコンに繋がっていた
 恐らく、あのノートパソコンを捜査すれば…ミサイルを、発射できるのだろう
 恐らく、エンターキーでもぽん、と押してしまえば…ミサイルの、発射準備が始まってしまうのだ

「なぁ、携帯のにーちゃん…」
「……くけ……発射の、プログラム、は……あの、パソコンに、インプット……してる」

 人肉料理店契約者の少年(少女)の問いかけに、こくり、と頷く「爆発する携帯電話」の契約者
 …どうやら、読みは間違いなかったようで

 屋上に上がってきたメンバーと一緒にいる「爆発する携帯電話」の契約者と、「13階段」の契約者…広瀬 辰也、それにジャッカロープの姿を見ても、マッドガッサー達は動揺していない
 …彼らの傍にある、開かれたままの携帯電話
 恐らく、それか、もしくはノートパソコンか……はたまた、その両方かで、スーパーハカーが校内の映像をリアルタイムでマッドガッサー達に見せていたのだろう
 二人と一匹が説得側に回った事を、彼らは知っているのだ

 まだ、傷が完全に治りきっていないマリ・ヴェリテが、警戒体勢をとって一行を睨んでいる
 その背後に、弓を持ったスパニッシュフライの契約者を庇うような体勢だ
 刀を手にした女性…「頭を強打すると記憶を失う」の契約者、こちらは、マッドガッサーを庇うような位置に立っている
 彼らの立ち位置のせいで、ミサイル発射の肝であるノートパソコンを、なんらかの攻撃で直接狙うのは難しい体制だ
 …まぁ、屋上に集まった面子ならば、その気になればできなくもないだろうが

(…穏健にいきたいものだ)

 そう、考えたのは誰だったか
 とまれ…残りの一味である四人の説得が、始まろうとしていた
4マッドガッサー決戦編 祈りは彼らに届くか (転載):2010/01/29(金) 13:56:03.89 ID:Pb3uliFY0
「…さぁて、お前達は、どうやって俺達の邪魔をしてくれるんだろうな?」

 どこか挑発的に、一行を見回してそう言って来たマッドガッサー
 その様子に……以前に、彼との遭遇経験がある者達は、表に出てか出ていないかに関わらず、首を傾げた
 −−−以前遭遇した時とは、どこか印象が違う
 はっきりと断言はできないのだが、何か以前よりも…「頼りない」と言った感じの雰囲気が、薄らいでいるような
 そんな、印象

「………」

 その違和感に、思わず銀髪の青年はマッドガッサーを見つめた
 以前も読み取った、マッドガッサーの情報
 それが………以前と、少し、変化していた
 更新された情報が、彼の中に流れ込んでくる

「…契約者を得たのか」

 小さく、そう呟く
 契約者は…「頭を強打すると記憶を失う」の契約者
 すなわち、多重契約
 仲間思いのマッドガッサーが、多重契約などというリスクを仲間に負わせた?
 その疑問は……続けざま、入ってきた情報で、解決した

「…なるほど、そう言う仲か」
「随分と便利な能力持ってるみたいだが、これ以上は読まないでもらいたいもんだな」

 リーディングされているのを感じ取ったのだろうか
 小さく笑って、そう言って来たマッドガッサー
 ……っぽ、と、「頭を強打すると記憶を失う」と契約している女性が、ほんのりと頬を赤く染めた
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 13:57:20.04 ID:muUBYS2DO
支援
6マッドガッサー決戦編 祈りは彼らに届くか (転載):2010/01/29(金) 13:58:55.99 ID:Pb3uliFY0
「…けけ……マ、マッド……」
「恵」

 マッドガッサーを説得しようと、口を開こうとした「爆発する携帯電話」だったが
 本名を呼ばれ、ぴくり、言葉が止まる

「うまくやってやるさ。俺達なら、うまくやれる」
「…本気で、そう仰っているのですか?」

 黒服の言葉に、あぁ、と、マッドガッサーは頷いてきた
 ガスマスクのせいで、その真意ははっきりとは伝わってこない

「俺達全員が揃っていれば、やれる。この学校町から始まって…世界だって、相手にできるさ」
「…マッドガッサー、さん」

 ……す、と
 一歩、前に出たのは…女装少年
 たゆんっ、と、そのあまりにも豊か過ぎる胸元を揺らしながら…じっと、マッドガッサー達を、見詰めている

「街一つを丸々都市伝説の力の影響下に置くだなんて、ダメです。当然、それにはいろんな組織の人も巻き込まれますよね?」
「だろうな」

 あっさりと、女装少年の言葉を認めるマッドガッサー
 女装少年は、ゆっくりと、続ける

「こっちは組織とか、そういうことは詳しくありませんけど……そうなったらきっと、いろんな方面から目の敵にされちゃいます」
「そんな事、改めて言われなくとも……とっくに、その状態だぜ?」

 くっく、と笑ってそう言って来たのは…マリだ
 その獣の瞳は…どこか、自虐的ともとれる光を放っていた
7マッドガッサー決戦編 祈りは彼らに届くか (転載):2010/01/29(金) 14:01:15.40 ID:Pb3uliFY0
「どうせ、何もしなくても、あちらこちらから目の敵にされてんだ。だったら……いっそ、派手な事をやってもいいだろ?」
「それに」

 すぅ、と
 小さく深呼吸して、スパニッシュフライの契約者が、マリの言葉に続く

「街一つを、丸々都市伝説の力の影響下に置くだなんて……って、言ったわね?でも、「そう言う状態にある」街が、都市が、世界中にいくつあると思っているのかしら?」

 …その言葉に、黒服がかすかに、表情を歪める
 彼女の言葉を、否定する事ができないのだ
 国内でも、都市伝説影響下に入ってしまっている村などがいくつかある事は確認済みであるし、世界的に見ると…確かに、そんな状態の街や都市も存在するのだ
 いっそ、街丸々都市伝説であると言う場所まで存在している
 ……ならば、今更そんな状態の街が一つ増えたところで、問題にならない
 そう、彼らは言いたいのかもしれない

「確かに、そう言う場所も、ある…だが、だからと言って、そんな場所を増やしていい理由には、ならないだろう」

 それを否定してきたのは、メイドちゃん
 スパニッシュフライの契約者を、どこか心配そうに見つめている

「そうですよ、それに、このまま進んでいったら……!」
「マリが言ったろ?とっくに、俺たちは敵がたっぷりいる状態なんだ。今更一つ二つ、三つ四つ増えようが対して変わらない」
「そうやで。せやから………うちらは、そいつらみぃんなと、やりあったるわ」

 「頭を強打すると記憶を失う」の契約者が、そっとマッドガッサーに寄り添いながら、彼の言葉に続けた

「…全員が、共に在り続けるために…これしか、方法がないんでな」


 護る為に
8マッドガッサー決戦編 祈りは彼らに届くか (転載):2010/01/29(金) 14:04:19.01 ID:Pb3uliFY0
 大切な相手を護る為に
 もっと他にも方法はあるはずなのに、彼らはそれを知らない
 わからない
 どうせ、自分達は誰にも信じてもらえない
 そんな、自暴自棄も重なって
 だから、これしかないのだと
 そう、譲ろうとしないかのように


「…だ、めだ……きっと、他にも……方法はある、から…」

 …ぼそり、と
 それを否定したのは…「爆発する携帯電話」の契約者だった
 泣き出しそうなその声に、う、と、スパニッシュフライの契約者と「頭を強打すると記憶を失う」の契約者が、困ったような表情をする

「爆やん、そないな泣きそうな声、出さんといてや」
「そ、そうよ。今回の件がうまくいけば、私たち、ずぅっと一緒にいられるわよ?」
「………でも」

 ぎゅう、と
 ジャッカロープを抱きしめたまま……俯いたまま、ぼそぼそと、「爆発する携帯電話」の契約者は続ける

「……もう………誰にも、傷ついて欲しく……ない……」

 泣き出しそうな声
 心から、仲間を心配していて
 もう、誰にも…仲間以外すらも傷ついて欲しくないと、そう願う声
 その言葉が、マッドガッサー達に届かない訳がない
 「爆発する携帯電話」の隣に立つ辰也も、複雑そうな表情を浮かべている…説得側に回ったとは言え、彼の本心はどちらかと言うと、まだマッドガッサー達の主張に傾いたままなのだ
9マッドガッサー決戦編 祈りは彼らに届くか (転載):2010/01/29(金) 14:07:11.02 ID:Pb3uliFY0
 相手が、押し黙った
 その隙を突くように…いや、恐らく、本人にそんな気はないのかもしれないが…女装少年は続ける

「…あなた達は、お互いのことをホントに大切に想ってるんでしょう?このまま止まらず進んでいったら、その大切な仲間も失くしちゃうかもしれないです」

 …失くさずに、すんだとしても
 その、大切な仲間の心に、大きな傷を残してしまう
 少なくとも…この、「爆発する携帯電話」の心は、酷く傷つくだろう
 …この「爆発する携帯電話」は、純粋すぎる
 その手を血で染めた経験すらあると言うのに、その心は一点も汚れちゃいない

「………大切な人を失った辛さって、どうやっても言葉で言い表す事なんてできません。だからもう、止めてください」
「…奇麗事を」

 マリが、小さく牙をむく
 わかっている
 わかりきっている
 だが、自分達には、これしか方法がないのだ

「奇麗事だって、なんだっていいです。でも…心の底から大事だと思う人たちと一緒にいられれば―――それでもう、十分じゃないですか?」
「こんなことをしなくとも」

 …こんな手段を使わなくとも
 ずっと、傍にいられるのなら

「最初から、そっちを選んでるさ」

 どこか、自虐的な、どこか、諦めた言葉を
 マッドガッサーは、ガスマスクの下で…はたして、どんな表情で、喋っているのだろうか?
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 14:09:22.08 ID:muUBYS2DO
しえ
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 14:09:46.00 ID:+nynECGJO
てすてす
スレたて乙です
12マッドガッサー決戦編 祈りは彼らに届くか (転載):2010/01/29(金) 14:09:52.73 ID:Pb3uliFY0
「それが許されそうにもないから、こうやってるんだろう?」
「…あなた、たちは」

 …黒服が、口を開いた
 なにやら、合点がいったという表情で、マッドガッサー達を見つめた

「あなた達は、今まで、ずっと目立ちすぎないように行動していて…しかし、今回、こんなにも目立つ行動を行いましたね。その気になれば、水面下で動く事もできたでしょうに」

 ミサイルの発射とて、もっと密やかに行う事ができたはずだ
 だと言うのに、わざわざサンダーバードに乗って移動し、サンダーバードがミサイルを運ぶというあまりにも目立つ手段を使って
 こうやって立てこもって行動する、と言う、いかにも目立つ行動をとって
 それが、ずっと疑問だった
 だが、ようやく合点が行った
 黒服と同じような疑問を抱いていたTさんと赤い靴も、それに気づく

「…止めて、欲しかったのか?自分達がしようとしている事を」

 気づいたその事実を、赤い靴が口にした
 きょとん、と赤い靴の契約者が、赤い靴を見つめる

「お前さんたち、自分達がしていることをとめられるとわかっていて…その上で目立つ行動をした。止めてほしかったんじゃないのか?」
「…………」

 −−−マッドガッサー達は、答えない
 ただ、小さく俯いてくる


 これしか方法を知らない
 他に方法なんて知らない
 だが、これでは間違っているとわかっている
13マッドガッサー決戦編 祈りは彼らに届くか (転載):2010/01/29(金) 14:12:27.45 ID:Pb3uliFY0
 だが、これ以外、どうすればいいのかもわからなくて
 なら、どうすればいい?


「そんな手段を、使わなくとも。あなた達がともにあり続ける方法は、あります」
「……辰也に言っていた方法か」

 スーパーハカーが、全てリアルタイムで伝えてきていたから
 だから、あの説得は知っている

「ですから、どうか……そのミサイルを発射する事を、止めてください。あなた達も、それでは駄目だとわかっているのなら、尚更です」

 黒服が、静かにマッドガッサー達を見つめた

 ……冷たい風が、彼らの間を通り過ぎる
 これしか方法がないと
 他の方法では駄目なのだと、そう信じ切っていた

 だが他にも方法があるのなら
 それが、実現可能ならば……


「………全く」

 マッドガッサーが、小さくため息をついた
 ざ、と他の三人の前に、出る

「マ、マッドはん…」
「……本当に、お前達は、俺たちを…いや、こいつらを、害さないか?」
14マッドガッサー決戦編 祈りは彼らに届くか (転載):2010/01/29(金) 14:15:27.67 ID:Pb3uliFY0
 自分はどうでもいいが、周りは
 そうとでも言うような、マッドガッサーの言葉

 黒服が、まるで一同を代表するかのように、ひどく慈悲深い表情で、言い切る

「約束します」


 ……あぁ、まったく


「…この、お人好し共が」

 ガスマスクの下で、マッドガッサーは苦笑したようだった

「いっそ、力付くで止めてきてくれた方が、どれだけ楽だったか」

 呟くようにそう言って、天を仰ぐ


 ……もう
 マッドガッサーには、ミサイルを発射するという気は………とっくの昔に、失せていた





○月×日 23:45 マッドガッサー一味 ミサイル発射放棄
15マッドガッサー決戦編 かくて仮面は剥ぎ落とされ (転載):2010/01/29(金) 14:18:13.56 ID:Pb3uliFY0
○月×日 23:47 中央高校屋上


「……?あんた、どうしたの?」

 始めに、それに気づいたのは……恐らく、ちゅうちゅうと騒ぎ出した、「はないちもんめ」の少女の鎖に絡んだままの鼠
 次に気づいたのは、たまたま、バイトちゃんの傍にいた赤い靴の契約者

 バイトちゃんが……喉に、異変でも感じているかのように、喉のあたりを、軽く抑えていて

「いや、何か…喉、が………−−−−−−−っ!?」

 ……恐らく
 その事態に一番驚いたのは、バイトちゃん、本人

 女体化して細くなっていたバイトちゃんの喉から……ぬぅ、と
 何者かの手が、突然現れて

 それが、一直線に…………彼らの前に立っていた、マッドガッサー向かって伸びた

「な…っ!?」
「ッマッドはんっ!!」

 ひゅんっ
 似非関西弁の女性が振るった刀…斬鉄剣が、延びてきた手を切り落とした
 しかし、その手は即座に再生し、迷う事なく……マッドガッサーのガスマスクを、掴んだ


16マッドガッサー決戦編 かくて仮面は剥ぎ落とされ (転載):2010/01/29(金) 14:20:33.52 ID:Pb3uliFY0
○月×日 23:47 中央高校近辺


「………よし!!」

 捕った!!!
 マッドガッサーを掴んだ感触を、「壁に耳あり」の契約者は、確かに感じ取った
 このまま引っ張り込んで……


「−−−−ひぃっひっひっひっひっひっひっひっひっひぃ!!!」


 響いた、少女の不気味な笑い声
 直後、ぐぎぃ……!!と、「壁に耳あり」の契約者の腰に、激痛が走った

「が……!?」

 あまりの痛みに、うずくまる
 能力発動の集中が切れてしまった
 声がした方向を、彼は見上げて……

 己に向かって、構えたまま飛び降りてきている青年の姿に
 直後、激痛すら感じる余裕もなく、彼は意識を飛ばした


○月×日 23:49 中央高校屋上

 ばたばたと、階段を駆け上がる音
17マッドガッサー決戦編 かくて仮面は剥ぎ落とされ (転載):2010/01/29(金) 14:24:01.16 ID:Pb3uliFY0
「おい、無事か!?」

 ばたん!!と屋上に飛び込んできた黒服H
 ドクターも、その後に続いている

「けは………っ」
「大丈夫ですか!?」

 けほけほと、手が消えた喉を抑えているバイトちゃん
 黒服Dが、それを気遣っていて……ピキ、と、若干不機嫌な「はないちもんめ」の少女の様子に、鼠がちゅうちゅう怯えた声をあげる

「マッドはん!?」
「マッド、大丈夫か!?」
「……あぁ」

 バイトちゃんの喉から出現した手が消滅した為…マッドガッサーは、引き込まれずにすんでいた
 彼の仲間たちが、マッドガッサーを気遣い、傍に駆け寄っている

「くそ、今のは…」
「「喉から手が出る」、ですね。「壁に耳あり」に関連のある能力と聞いていますが」
「…………まさか」

 まさか、あいつが?
 やや混乱するバイトちゃん
 理由はわからないが、己の旧友が今の出来事の原因であると、直感する

「「MI6」がマッドガッサーを手に入れようとする動機に心当たりは?」
「いや、何も……「アメリカ政府の陰謀論」ならともかく……」

 …混乱、しているがゆえに
18マッドガッサー決戦編 かくて仮面は剥ぎ落とされ (転載):2010/01/29(金) 14:28:58.30 ID:Pb3uliFY0
 何故、己の旧友が「MI6」に所属している事を黒服Hが知っているのか?
 そこまで、考えが及ばなかった

「……「アメリカ政府の陰謀論」………。…………!!!っの、糞兄貴が!!死んでまで俺に迷惑かけやがるのかあの野郎っ!?」

 何か、心当たりがあったのだろうか
 罵声をはいているマッドガッサー

 ……その声に、一行は一瞬、違和感を覚えた
 ガスマスク越しの、どこかくぐもった声
 それが、マッドガッサーの聞きなれた声だ

 その、声が
 やけに、クリアに聞こえてきたような…?

「………あ」

 Tさんの契約者が、それに気づいた
 落ちているガスマスク、黒い帽子

 そう
 「喉から手が出る」によってガスマスクを捕まれ、引っ張られた拍子に……マッドガッサーのガスマスクが、外れてしまっていたのだ
 さらにその拍子に、いつも被っていた帽子も落ちてしまっていて

「………」

 自然と
 一行の視線が……素顔を曝け出しているマッドガッサーに、向いた
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 14:30:20.02 ID:muUBYS2DO
支援
20マッドガッサー決戦編 かくて仮面は剥ぎ落とされ (転載):2010/01/29(金) 14:32:30.46 ID:Pb3uliFY0
 月光の下、美しく輝く、緩くウェーブがかった白銀のロングヘア
 まるで、エメラルドグリーンの宝石のような大きな瞳
 ぷっくりとした、艶やかな唇
 頬はほんのりと赤く、木目細やかで

 マッドガッサーがコンプレックスを抱き、隠し続けた、その顔は

 どう見ても、美少女ロリ顔でした
 本当に………本当に、ありがとうございました


 マッドガッサーは、細身とは言え、その身長は170p台後半
 その体型で、そんな顔な訳で


 数秒の、沈黙の後
 屋上は、爆笑の渦に包み込まれた

「ってめぇらぁ!?笑うなっ!?てめぇらに女顔の苦労がわかるかっ!!??」
「ま、マッドはん、落ち着いて!!うちは、マッドはんのその顔が好きやで!」

 ちょっぴり本気泣きのマッドガッサーに、ぎゅうと抱きついて必死に慰めている似非関西弁の女性

「…あの、そんなに笑っては、彼に気の毒では…」
「ま、気持ちはわからんでもないけどな」

 マッドガッサー一味の他は、性格の関係上、周りが笑い出した事によってむしろマッドガッサーに同情を覚えている黒服D以外と、以前にもその顔を見て居る為耐性が出来ていた黒服H以外のほぼ全員が
 マッドガッサーの、そのあまりにもミスマッチな素顔を前に………盛大に、盛大に、笑い転げてしまったのだった

とぅーびー???
21怨 死 獄 (代理):2010/01/29(金) 14:36:45.16 ID:Pb3uliFY0
○月×日 23:41 中央高校屋上入口



二つの藁人形は、屋上へとたどり着いた…


もうすぐ…もうすぐで…恨みが晴らせる…


恨みの対象に反応して自らの内に眠る憎しみの念が脈打つのを感じる…

二体の藁人形からは…おぞましい負の情念が漏れ出している…


……さぁ、戸を開けよ。


誰かの恨みを晴らしに…恨みの対象を…もぐ…



……誰…かに…持ちあげられ…ている……

足が、燃やされ…てい…く……

体に、火、が……まわってい…く……

心は…不完全…燃焼な…のに……。…から、だ…が燃え…ていく…
22怨 死 獄 (代理):2010/01/29(金) 14:39:24.49 ID:Pb3uliFY0
「どうやらこれが、負のエネルギーの根源のようだね」

手のひらの藁人形の燃えカスを見つめながら、誰に言う訳でもなく呟く死神。



「…よっぽど恨みを買っているんだね、マッドガッサー一味は。
 でも…説得の妨害は、させないよ…彼らなら、穏便に済ませることができそうだしね」

そう言って彼は懐から携帯を取り出す。


「もしもし…こちら現世偵察部のT66。
 …あぁ、穏便に終わりそうだよ。……ちょっと気になるものはいくつかあるけどね」


13階段の契約者。怨念の藁人形。そして、一人の女性から感じた…何か。
彼女の契約している都市伝説はよくは知らないが、おそらく何か別の都市伝説によるもの…


…まぁ、僕の知ったことではないよ。


23怨 死 獄 (代理):2010/01/29(金) 14:43:00.21 ID:Pb3uliFY0
「ん、うん。…えぇ?報告する?…やれやれ。偵察業務も楽じゃないね。
 ……分かった分かった。三分で戻るから待っててよ」ピッ

通信を切った後で、ため息をひとつ。
「事の顛末を見届けないうちに報告って、少しおかしいんじゃないかな?
 …まぁ、あまり上司を怒らせるものではないね。マサムネ」

うんざりとした様子で猫を呼ぶ。
その呼びかけにこたえるようにみゃぁ、と一鳴きして肩から飛び降りる。


床に着地する頃には、すでにバスのような巨体になっていた。

「じゃ、地獄まで頼むよ…僕は少し休むとするよ」
マサムネの前に、この世のものとは思えない混沌とした空気漂う穴が出現する…




穴が消えた後、そこには誰もいなかった。
あったのは、何かが燃えた後。ただそれだけである。


24Tさん (代理):2010/01/29(金) 14:46:40.66 ID:Pb3uliFY0


            ●


 マッドガッサーの素顔が銀髪ロリ顔だった。
「あっはははははははははははははははっ!!!」
 体系と顔とのミスマッチがなんとも笑いを誘うじゃねえか!
 しかもそれを隠してないんならまだいいがこのタイミングまで隠してやがったせいで緊張が変な風に解けて笑いが止まんない!
 周囲もそんな感じなのか笑いが起こってて、それを受けてマッドガッサーが叫んだ。
「ってめぇらぁ!? 笑うなっ!? てめぇらに女顔の苦労がわかるかっ!!??」
「まあそう言わずに俺の趣味のためにはい、一枚!」
 パシャッ、とシャッターを切る。
 さりげなく落ちているガスマスクと帽子を隠す位置に体を移動させつつ更に別アングルで一枚!
 そんなことをしていると、
「お姉ちゃん」
 頭の上でリカちゃんの声がした。
「どうした? リカちゃん?」
 声をかけるとリカちゃんはTさんの方を向いて言った。
「リカちゃん、お兄ちゃんのところにいってるの」
「おう、わかった。連れてくか?」
「一人で大丈夫なの」
 そう答えてリカちゃんはTさんの所へとのんびり飛んで行った。


25Tさん (代理):2010/01/29(金) 14:49:20.93 ID:Pb3uliFY0


            ●


 ひたすら爆笑しながらシャッターを切っている己の契約者を見て、青年はのんびりと安堵の息を吐いた。
「間に会った、か」
 時計を確認すると23:50分。なかなかスリリングな残り時間だったと言える。
「まだ何か違う所では騒ぎが続いているようだが……」
 差し当たっては問題ないだろう。もし手を出してきたならその時に祓えばいいと考える。
「それにしても、≪赤い靴≫に頼んだことも無用の長物だったな」
 交渉材料が一つ無くなってしまった。と思いつつ、周囲の状況を見て思わず頬が緩む。
「止めて欲しかったか……」
 はた迷惑な事だ。しかし、
 彼らと戦うということにならなくてよかった。
 コンプレックスだったのか盛大に笑われて沈んでいるマッドガッサーを必死に慰めている彼の契約者や、彼らの周りでどこか吹っ切れたようにしている仲間たちを見てそう思う。
 と、リカちゃんがふよふよと青年の許へ飛んできた。
「お兄ちゃん」
「どうした?」
 頭の上に収まると、リカちゃんはうん、と言って、
「お姉ちゃんにきこうとおもったけど、お姉ちゃんいま、いそがしそうだから……けんか、おわったの?」


26Tさん (代理):2010/01/29(金) 14:53:14.40 ID:Pb3uliFY0
 発された質問に青年は「そうか、契約者は今忙しいからな」と笑いながら答える。
「終わったようだ」
「みんなわらってるの。いいことあったの?」
 発される問い、リカちゃんには彼女の契約者が笑っていることの笑いどころがいまいちわからないのだろう。青年は頷き、
「ああ、きっといいことなんだろうさ。笑っていられるのだからな」
「よかったの!」
 喜んでいるリカちゃんを頭上に手を回して撫でていると彼らのよく知る黒服が少し困ったように声をかけてきた。
「あの、すみませんが彼女を止めて頂けませんか?」
 そう言って黒服が目を向ける先では青年の契約者の少女がマッドガッサー一味の写真撮影を楽しみながらガスマスクと帽子を取り返そうとしているマッドガッサーと鬼ごっこをしていた。
 打ち解けているな。と青年は呆れつつ苦笑し、
「契約者もガスの被害者なのだし、迷惑料だと思ってもらおう。少し好きにやらせてやってくれ」
「なの」
 黒服にそう返して青年とリカちゃんは彼らの契約者の元気な姿をしばし楽しむことにした。


27小ネタ (転載):2010/01/29(金) 14:56:37.10 ID:Pb3uliFY0
 それは、望が二人に分裂してしまった翌日の事

「………本当に、申し訳ない」
「な、直希、そんなに頭下げるなよ」
「だが、これは僕のミスだ」

 仲介者こと、直希が翼達の家を訪れ、深々と謝罪していた
 いつもの感情が薄い顔が、申し訳なさそうな表情を浮かべている

「全ては、僕の調査不足が招いた事だ。もっとしっかりと調べてから、君達に任せるべきだった」
「でも、そうなると、もっと被害者が出ていたかもしれないでしょ?」

 仕方ないわよ、とため息をつく望
 なんとも気に食わない存在が増えてしまったが、仕方ない
 ……謝罪費含めて、報酬はたっぷりと出るみたいだし

「それで……御神楽 詩織ちゃん、だったか?」
「えぇ、そうよ」

 直希の言葉に答える詩織
 彼女をじっと見つめ、直希は言葉を続ける

「君は、この世に生まれでて…望ちゃんと、入れ替わる事なくこの世に存在して。悪事を働く予定などは?」
「…普通、そう言う事聞かれて正直に答える奴、いると思う?」
「いないと思うな」

 詩織の突っ込みに、直希は淡々と答えた
 なら聞くな、と突っ込みたいところではあるが…ぱらぱら、と直希が持っている光輝の書が勝手にめくれ始めているところを見ると、誰か天使を召還して、嘘発見でもするつもりだったのかもしれない
 詩織は肩をすくめ、答えてくる
28小ネタ (転載):2010/01/29(金) 14:59:26.36 ID:Pb3uliFY0
「一応、現世を楽しませてもらうつもり、そのためにも、退治されるようなことをするつもりはないわよ?」
「………なら、いいのだがね」

 ぱたん、と
 直希は本を閉じ…静かに、告げる

「僕の大切な友人や、その家族に何かあってからでは遅いのでね。何かあったら、僕は容赦しない」
「厳しいのね」
「僕のミスが、そもそもの原因だからね」

 小さく、ため息をついて
 くるり、直希は黒服に向き直った

「…それで、黒服さん。詩織ちゃんだが、この家に同居させるのかね?それが難しいのなら、彼女はこちらで引き取るが」
「え……」
「こちらも、三人であの家は少々広すぎるくらいだからな。幼女一人引き取るくらいはできる」
「直希、幼女言うな。こいつらはそうは見えないだろうけど10さがはっ!?」

 そうは見えない、は余計だ
 そうとでも言うように、望が翼に問答無用の一撃を加えた
 うめく翼の様子に、黒服と直希が小さく苦笑した

「…まぁ、答えは後でもいい。とりあえず、これは謝罪の気持ちもこめて」

 ……す、と
 直希が取り出してきたのは、手作りのケーキだった
29小ネタ (転載):2010/01/29(金) 15:01:49.13 ID:Pb3uliFY0
 動物を象った、可愛らしいケーキ

 ………
 …………

「おや?望さん、詩織さん、どうしました?」
「……その」
「ちょっと、ね」

 手作りの甘い菓子
 それには、若干嫌な思い出が
 自分は被害にあっていないが、友と翼が被害にあっている訳で
 何かを感じ取ったのか、黒服は望の頭をそっと撫でて微笑む

「大丈夫ですよ、直希さんの作る菓子類は、私の友人が作るような食物兵器ではありませんので」
「以前から思っていたが、黒服さんは時折優しい顔で容赦ない事を言うな」

 まったくもって、その通りだと思う
 まぁ、それはさておき…黒服がこう言うのなら、大丈夫だろう
 そう判断して、望も詩織も、差し出されたケーキに手を伸ばすのだった



投下が被ってしまったTさんの人に土下座しつつ終わるorz


30笛の人ってか上田に焼き土下座!orz (転載):2010/01/29(金) 15:05:53.74 ID:Pb3uliFY0
ハーメルンの笛吹きに対する対応

・良い子の場合

H子「近寄っちゃいけません、って言われてるの。だから逃げるー」

・普通の子の場合

A契約者「死ねばいいのに」
A「あぅあぅあぅ、死ねなのですよ」

・悪い子の場合

H「そうじゃのぅ……遭遇したならば、ギッタンギッタンに叩きのめしてやりたいのぅ
  尊厳など踏みにじって踏みにじって踏みにじってやって痛めつけ、屈服させてやりたいわ
  妾のつま先にキスさせて屈服させ、犬畜生以下の扱いをしてやるわ
  そうじゃのぅ……妾の、足置場にでもしてやろうかぁ??
  それとも、洋服かけの方が良いかなぁあ???
  そうじゃ、妾の家具にしてやるわ!!!
  家具なのだから、洋服など当然着せてやらぬ、声を発する事も許さぬ
  意思を持つ事すら許さぬ!!
  ただ家具として存在し、妾に使い古されるが良いわ!!!!
  貴様が壊れるまで、否、壊れてでも、使い続け貴様を嘲笑い続けてやろう!!
  くひゃぁーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは
  ひぃっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひぃ!!!

  ………あぁん?文句でもあるのかぁ?
  っは!!このロ○コンの変態野郎が!悪党の上に変態とはタチが悪すぎるわ
  家具として使ってやるだけでも、光栄に思うが良い!!!」
終われ
31女装少年 (代理):2010/01/29(金) 15:12:09.29 ID:Pb3uliFY0
 「・・・とりあえず、無事に終わったのかな?」

 緊張に満ちていた状況から一転、笑いの溢れるステキ空間へと変貌を遂げた屋上で、こっちはぽつりと呟いた。
 止まらなきゃいけないことはわかってる、でも止まれないから止めてほしいというマッドガッサーさんの気持ちは、なんとなくわかる気がする。
 ともあれ、平和的に・・・とはいえないかもしれないけど、丸く収まったみたいだから安心だ。
 ここにきて争う羽目にならなくて、ほんとうによかったなあと思いながら、こっちは周りを見回す。
 視界に入るのは、マッドガッサーさんの素顔を見て、お腹を抱えて笑いころげてたり携帯で写真を撮っていたりする人が多数。
 そうでない人もいるけれど、明らかに少数派だ。
 確かに、背が高いのにあの可愛い顔はアンバランスで、笑える気持ちもわからないでもないけれど・・・それでも、こっちは笑えない。
 なぜなら。

「・・・・・・なんだか、顔面的に親近感・・・」

 女顔、かつ他人にそれをネタにされてるということで、自分でもびっくりするくらいマッドガッサーさんのことが他人とは思えないからだ。


32女装少年 (代理):2010/01/29(金) 15:14:54.82 ID:Pb3uliFY0
 こっちは背が低めだから、まだ女装させられるくらいで済んでるけど・・・これで背が高かったとしたら、その末路は目の前で特大の物笑いの種になってるマッドガッサーさんと、同じようなものだったかもしれない。
 そう考えると、どうしてもマッドガッサーさんの顔と体型のアンバランスさを笑う気にはなれなくて。
 結果、こっちは「辛いでしょうけど、耐えてください。いつかきっと慣れますから・・・」というメッセージを込めた視線を、目にたっぷりの涙を浮かべているマッドガッサーさんに送り続けることにする。

「・・・お互い色々大変ですけど、がんばって生きてきましょう・・・・・・」

 思わず漏れた呟きは、笑い声に被さり消えた。


33ある祟り神の一時 (代理):2010/01/29(金) 15:17:52.97 ID:Pb3uliFY0
 余は、祟り神。
 古より、余は天災を引き起こし、また人心を惑わせることで、余の存在を周囲へと知らしめてきた。
 人々に恐れられ、奉られる、そんな存在。それが余だ。
 ……しかし。
 余が没してから800年余り。
 この国は……いや、この世界は、あまりに変わってしまった。
 かつてあれだけ人々の心に根ざしていた御霊信仰も、今や退廃の一途。
 一部の物好きな人間のみが信仰する……そんな存在にまで成り下がってしまった。
 あれ程の栄華を誇った余の力も、今となっては見る影もない。
 
 本来ならば、ここで余ら祟り神が災厄を引き起こし、再び人々に心身を復活させる……はずだった。
 少なくとも、余が没してから数百年の間は、確かにそうされてきた。
 当たり前のことだ。
 それが、余らの務めなのだから。

 ……しかし、彼奴が心変わりをしてから、全ては変わってしまった。
 かつて日本最大の祟り神として、火雷天神とすら呼ばれた男。
 異境の地の創造神、大天神の名すら別名として称された、そんな男。
 余よりも数百年前に没し、長きに渡り祟り神としてこの地で猛威を奮っていたその男が、いつからか「学問の神」などと言うしょぼくれた神へと成り下がったのだ。
 その上、何を血迷ったか余らが人々を祟り、苦しめる事を抑圧し始める始末。
 
 幾人かは、彼奴に逆らう者もいた。
 しかし、彼奴の強大な力を恐れたのか何なのかは知らんが、翻った者は皆、彼奴に説得され、彼奴と共に歩むようになった。
 全く持って、情けない話だ。
 無論、余にも幾人か守護を約束した人間がいる。
 しかしそれは限られた数名であり、土地に住む全ての人間を対象としたものではない。
 確かに守護神の面こそあれ、余らの本質はあくまで祟り神。それ一つであるというのに……。
 愚かしい事、この上ない。
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 15:18:28.62 ID:Ij54rKPf0
支援
35ある祟り神の一時 (代理):2010/01/29(金) 15:20:34.01 ID:Pb3uliFY0
 ――――そして、現在。
 道真と並び、二大御霊とさえ呼ばれるかの平将門までも、道真に賛同し始めた。
 既に、余ら祟り神の中で彼奴らに逆らおうなどと考えるものは、いない。
 ……しかし、それはあくまで表面上。
 もし仮に彼奴……道真の力が弱りでもすれば、きっと反乱の烽火が上がる。
 そうに、違いないのだ。
 そして、余はそれを先導する。
 今こそ……道真が「学問の神」として忙殺されている今こそがその時だと、周囲の神々へと知らしめるのだ。

 ――――人々に忘れ去られるのは、もう沢山だ。
 ――――暗き所での安息など、もう沢山だ。

 余が……余こそが、この暗き時代を終わらせる。
 さあ、行こう。
 余が、道真を打倒し、この御霊の世界の頂点へと――――

「――――いかがなされた、崇徳殿よ」
「っ!?」

 いざ参らんと拳を握り締め、立ち上がった余の背後から、声。
 唐突に発せられたその声に、思わず身体が跳ね上がった。
 ――――どこか聞き覚えのある、この重みある声は……。
 聞いているだけで威圧されそうなその声を前に、思わず身体が竦みかける。
 ……しかし、余も名の知られた祟り神。
 そのような愚挙を見られる事など、あってはならない。
36ある祟り神の一時 (代理):2010/01/29(金) 15:23:09.46 ID:Pb3uliFY0

「少々、気の乱れを感じ取ったのだが……」
「い、いや? 別段何もしておりませんぞ――――」

 恐る恐る、しかし絶対にそうとは見られないよう虚勢を貼りながら、振り返る。
 背後の暗き闇。
 その中に浮かぶ、黒き衣を纏った姿。

「――――道真公」
「…………ふむ」

 ――――なら、良いのだが、と。
 彼奴……道真公は何やらのリストを片手に、そう唸った。

「……道真公、そのリストは?」
「これか?」

 道真公は苦笑いをして手に持ったリストを捲った。
 パラパラと、静かだった空間に音が広がっていく。

「すまないな。持ってくるつもりはなかったのだが……」
「大宰府に寄せられた祈願の類、か」
「あぁ、ここへ来る前まで見ていたのでな」

 間違って持って来てしまったようだ、と道真公は少し渋い顔をして、リストを持ち直す。
 パラパラ、パラパラと。
 まるで一種の催眠であるかのように、揺れるリスト。
37ある祟り神の一時 (代理):2010/01/29(金) 15:27:02.80 ID:Pb3uliFY0
「今年はどうにも、参拝者の人数が多い」
「フキョーとかいうもののせいだと聞くが……余にはよく分からん」

 時折、余の所にもフキョーがどうのこうのとかで厄除けに来る者がいる。
 しかし、それは果たして余の厄除けでどうにかなる対象なのかどうか、余にはどうにもよく、分からない。
 ……そういえば、最近は「コンカツ」などと言って参拝に来るものも多くなった。
 あれも、フキョーとやらと何か関係があるのだろうか。
 あまり、あの者たちの欲望にぎらぎらとした願いは、受け入れがたいのだが……。

「……いずれにせよ、このような事態が一刻も早く終息するのを願うばかりだ」
「全く」

 そう道真公は頷き、ふっとどこか寂しそうに笑った。

「しかし、このような時にのみ頼られる存在であると分かってはいるが……そうなったらそうなったで、またきっと寂しいのだろうな」

 ……どきり、とした。
 人々から忘れ去られる、悲愁。
 それはつい先程まで、余が思っていた事で
 それを道真公も同様に感じていた事に、軽い驚きを覚えた。
 そんな感情が表に出ていたのか、道真公はまた苦笑いをして

「ふむ……少々、愚痴が過ぎたようだ。すまないな、崇徳殿とて忙しい時期だろうに」
「いや……貴公に比べれば、余の所に来る祈願の量など、まだまだだ」
38ある祟り神の一時 (代理):2010/01/29(金) 15:29:41.46 ID:Pb3uliFY0
「私たちが暇な事ほど、良き事はない」

 そう、道真公は目を細め

「……さて、そろそろ戻らねばならん。崇徳殿には迷惑をかけたな」
「気にせずとも、よい」
「あぁ…………では、また」

 すぅっと、その体を消していく道真公。
 余は一瞬、声をかけるかどうかを迷い……しかし最後まで、虚勢を張る事にした。

「この時期が終われば暇にもなろう。その時には一局でも、どうだ」
「……それも、よいな」

 姿を消していく中で、最後に道真公はふっと笑い……そして、姿を消した。
 それを見届けると同時、余の身体から力が……緊張が、抜け落ちる。

(……気勢を、削がれたな)

 反乱を起こそうなどと言う心持など、とうに失せていた。
 菅原道真……面白い男だ、全く。
 将門も、あの男のそんな所に惹かれたのか。

(とかく、余もそう長くその座を開けているわけにもいかんな)

 恐らく、また「コンカツ」がどうのこうのと言う女子の願い事が貯まっているのだろう。
 反乱の機など、またいずれ熟す。
 その時にまた反旗を翻せば良いと考え、しかし同時に、その時はもう来ないような……そのような気も、した。

【終】
39戦後処理の一幕 (代理):2010/01/29(金) 15:34:07.91 ID:Pb3uliFY0
疲れきった顔で階段を下りてくる、メイド姿のバイトちゃん
「どうやら丸く収まったようだな」
「ギリギリでご破算になりかけましたけどね」
階段の下で待っていたドクターに、バイトちゃんは疲れ切った顔で応える
「俺の昔の連れ……『MI6』のエージェントが『アメリカ政府の陰謀論』に憑かれてました。危うくマッドガッサーを攫うのに利用されるところでしたよ」
「何だ、ボク達は彼に良いように動かされていたわけか」
「……ドクター、あいつの事知ってましたっけ?」
「君が連絡不能、つまりマッドガッサー達の手に落ちた時に、ボクに連絡をくれたのは彼だからな」
「あの野郎……」
ぎり、と握り締めた拳に、ドクターの手がそっと添えられる
「落ち着きたまえ。君は感情的になって状況をすぐ見失うのが欠点だぞ。今回の無茶とてそれが招いた事だ」
「……すいません」
「今後は気をつけるように。さて」
ドクターの膝が、がくりと折れる
「ドクター!?」
「流石にボクの体力で、ホルマリンプールと亡者の血の池のハシゴは辛かったようだ。正直階段を昇る余力も無かったので、マッドガッサー達に嫌われていたのは助かったな」
ぐったりとしたその身体を抱き上げるバイトちゃん
「辛かったなら辛かったと素直に言って下さいよ!?」
「それでボクに手数を割いた結果、マッドガッサー達の説得が失敗したりしたら目も当てられないだろう? 他にも、君がボクについて残っていたとしたら、君の旧友が『陰謀論』の影響下にある事も判断できなかったしな」
「わかりましたから、少し黙って下さい! 上にいる人達が霊薬の類を持ってたら分けてもらいますから!」
「それでは医者の不養生を公開するようなものではないか。これぐらい可愛い女の子とイチャイチャしてれば回復する」
「医者が医学を全力で無視した事を言わないで下さいよ!?」
「病は気からというのはネタではなく、プラシーボ効果として実際にだな」
「病気と体力の衰弱は別問題でしょう……ってさっきから何処触ってるんですかドクター!?」
「エネルギーの充填をだな」
「ここでしなくてもいいでしょうが!? 上にはまだ皆いるって言ったでしょうが!」
この後、階段を降りて帰ろうとした面々は、やけに元気になったドクターと半裸に剥かれて隅っこで丸くなっているバイトちゃんを目撃する事になったという

―――
40戦後処理の一幕 (代理):2010/01/29(金) 15:37:19.63 ID:Pb3uliFY0
視界の全てが闇に覆われた空間
その中で、煌びやかな造形の椅子にどっしりと腰を下ろした『総統』の姿がスポットライトで照らされるように浮かび上がっていた
「珍しいな、貴様が召集をかけるとは」
暗闇の中から近付いてくる軍靴の音
また一つ、照らし出された椅子に、現れたもう一人の『総統』はゆっくりと腰を下ろす
椅子の背にはドイツ語で南極と刻まれている
「この間、貴様の部下の逃亡を手伝ったばかりではないか。そろそろ見返りが欲しいところだな」
南米の椅子に座った『総統』が、不機嫌そうに呟く
「まあそう尖がるな。何なら私が何か面白そうなものをくれてやろう。発掘作業の手を貸してくれるだけで構わんぞ」
「こちらも手数は足りんのだがな。オリハルコンの精製は手間が掛かってたまらん」
冗談混じりに笑いながら、新たなる『総統』が現れてムー、アトランティスの席に着く
「済まんな、遅くなった。戦線が膠着してな……いやはやウサギの軍勢め、巨大蟹まで出してくるとは」
そう言って月の席に座った事で、等間隔に並べられた六つの椅子が埋まる
「今日集まるのはこの六人だけかね?」
「本国の『総統』はどうしたのだ」
「イタリアのアレと観光旅行中らしい」
「なるほどな、アレの機嫌を損ねて他所と喧嘩された挙句に泣き付かれて同盟などする羽目になったら目も当てられん」
「アメリカのヤギや大阪の大佐などと比較にならん敗北の呪いを持っているからな、奴は」
「敵に回すのではなく味方にすると、というのがまた扱いに困る」
同じ顔、同じ声で繰り広げられる雑談が一通り落ち着いたところで
「さて、積もる話は後にして、今回皆を招集した私から端的な話をしよう」
日本の『総統』がぐるりと他の『総統』の顔を見回す
「現在日本にいる『マリ・ヴェリテのベート』と『マッドガッサー』についてだ」
その言葉に表情を微妙に歪めたのは、南極と南米の『総統』だった
「まずは『マッドガッサー』だ。彼は『アメリカ政府の陰謀論』を始め、様々な組織から身柄を狙われている」
「それを我々で確保してしまおうというのかね?」
「逆だ。彼を一つの組織の長として認め、対等な立場として接したい。基本的に相互不干渉を貫くが、求められれば『陰謀論』やその他敵対組織に対抗するために同盟を組む可能性もある」
「ははは、それはいい! アメリカの若造どもに一泡吹かせてやれるではないか!」
南米の『総統』がさも楽しそうに笑い手を叩く
「私は支持するぞ! 何か欲しいものがあれば存分に持っていくといい! 彼らを存分に守ってやろうではないか!」
41戦後処理の一幕 (代理):2010/01/29(金) 15:40:32.13 ID:Pb3uliFY0
「『マッドガッサー』は別にいい。『マリ・ヴェリテのベート』の話は何なのだ!」
対照的に渋面の南極の『総統』が椅子から立ち上がらんばかりの勢いで怒鳴る
「『マリ・ヴェリテのベート』も『マッドガッサー』の組織の一員だ。人狼研究を行っている南極には手を引いてもらいたい」
「ふざけるな! 我々の研究にアレは必要な存在なのだ!」
「ふざけてなどいるものか。そもそも私は以前から人狼や吸血鬼の研究や私兵化には反対しているのだ」
「狼や蝙蝠を可愛がっているだけだろう貴様は!?」
「動物を愛でる事の何が悪い!」
「開き直るな馬鹿者!」
怒鳴り合いを始める日本と南極の総統を、他の総統が間に割り込みながら宥める
「少なくとも私は日本の側だな。そもそも我々の軍はアーリア人で構成されるべきなのだ」
「高潔な意思を以って従軍するならともかく、改造や洗脳などで動かす兵など興が削がれるではないか」
「ぐぬぅ……」
味方が少ない事を実感した南極の『総統』は、唸りながらどすりと椅子に深く腰を下ろす
「我々の研究を止める以上、見返りはあるのだろうな?」
「あるわけがなかろう」
「馬鹿にしとるのか貴様は!?」
「貴様の悪評で私も部下も苦労しているのだ。大人しく手を引かぬというのなら……私にも考えがある」
「ほほう、武力行使でもするつもりか? 私の超兵器と超力兵団を相手に手勢も無い貴様がどうするつもりだ」
「戦争をしようというのなら『スツーカの悪魔』一人が居れば充分だがな」
ぐ、と息を呑む南極の『総統』を、日本の『総統』は至極真剣な顔で睨み付ける
「戦争で済むと思うな……私のペットショップへの出入りを禁止するぞ」
「済まんかった。金輪際決して『マリ・ヴェリテのベート』には手を出さん」
土下座でもしそうな勢いで頭を下げる南極の『総統』
「本国の『総統』もいい顔はしないだろうが、ここにいる面々が賛成してくれれば問題は無かろう」
「まあうちからは、手伝い兼監視という事で人員を送らせてもらうぞ? 任せきりにするには少々不安な素材ではあるからな」
南米の『総統』の言葉に、鷹揚に頷く日本の『総統』
「構わんよ。手が増えるのは非常に有難い」
「では会議は終わりかね? 私は取り急ぎ前線に戻りたいのだが」
「ああ、手間を取らせたな。あと、お節介かもしれんが武力行使は程々にな」
「せめて交渉ができるほど落ち着いてくれればいいのだがな。では」
42戦後処理の一幕 (代理):2010/01/29(金) 15:44:12.91 ID:Pb3uliFY0
軍靴の音を響かせて闇の中に消えていく月の『総統』
「私はムーとアトランティスに寄ってから帰るとしよう」
南米、ムー、アトランティスの『総統』が肩を並べて消えて行き
「……いつまでもお前の甘い考えが通用すると思うな。米、露の連中が動き出せば、私の軍事力に頼らざるを得なくなるぞ」
「あの大戦を経験しておいて、未だに武力に拘るかね」
「私は私のそういう部分の具現化だ。国の発展と人民の安寧を具現化した貴様とは違うのだ」
「『マッドガッサー』も『マリ・ヴェリテのベート』も、元の伝承から随分と変わったのだ。我々とて変わっていく事は可能だとも」
日本の『総統』はそう言って不敵に笑い、上着を脱いでペットショップのエプロンを身に着ける
「『マリ・ヴェリテのベート』に手を出さぬのなら、いつでも日本への来訪を歓迎するぞ……ペットショップの店長としてだがな」



表のオチと裏での組織としての対応をちょろっと……ちょろっとって量じゃないなコレ
流れ次第では総統本人が屋上に来る事も考えてましたがややこしくなりそうなのでこんな形に

・総統の会話中に出てきたもの
イタリアのヤツ『ヘタリア』
アメリカのヤギ『ビリー・ゴートの呪い』
大阪の大佐『カーネル・サンダースの呪い』



43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 15:47:26.72 ID:Pb3uliFY0
以上で、代理投下終了


引き続き、マッドガッサー決戦編ラストの投下に入っていこうと思います
同時進行で書いているエピローグも、調子よく書ければ投下していきたい心意気
44マッドガッサー決戦編 連中は最後にとんでもない事をしやがりました:2010/01/29(金) 15:50:38.01 ID:Pb3uliFY0
○月×日 23:52 中央高校屋上


 笑いの渦が、ようやく治まろうとしていた頃

「…あれだ。焦りすぎてて、ガスマスクはすぐ手元に戻せる事忘れてた」
「っち、卑怯な」
「舌打ちするなっ!?」

 ぶーぶー不満を述べるTさんの契約者に、ガスマスクを再び装着したマッドガッサーが盛大に突っ込んだ
 どうやら、帽子は手元に戻せないようで、その艶やかな銀髪は露になったままだが

 ……と
 っふ、と、上空にさした影

 −−−−−どさっ!!と
 何者かが、上空から降ってきた
 殴られた痕があり、きゅう、と気を失っているそれは…バイトちゃんには、見覚えがありすぎる男
 …彼(彼女)の旧友だった

「ひっひっひぃ!怪しい動きをしていたから、とりあえず気絶させておいたよぉ?」
「死んでないから大丈夫だろ、多分」

 ふわり
 魔女の一撃が主を箒に乗せてゆっくりと降りてきた
 たん、と屋上に降り立った魔女の一撃の契約者は…ややふらつきながらも、しっかりとした足取りをしている
 …一瞬、彼は「日焼けマシン」の契約者に視線をやって…酷く、申し訳無さそうな顔をした
 その表情に、「日焼けマシン」の契約者が、複雑そうな表情を浮かべる

「そいつの傍、怪しい影はなかったか?……俺達のような、黒服の姿は」
45マッドガッサー決戦編 連中は最後にとんでもない事をしやがりま:2010/01/29(金) 15:54:09.22 ID:Pb3uliFY0
「いいやぁ?なかったよぉ?」

 黒服Hの言葉に、即答する魔女の一撃
 ふむ、と黒服Hは、やや難しそうな顔をする

「「アメリカ政府の陰謀論」が、先ほどの件に絡んでいると?」
「…どーも、それっぽい気配がするんだよ」

 バイトちゃんの言葉に、黒服Hは面倒くさそうに答えた
 ガスマスクが外れた直後のマッドガッサーの罵声を聞くに、どうやら彼の兄……彼の片割れたるマッドガッサーは、死亡したらしい
 確か、あれは「アメリカ政府の陰謀論」に目をつけられていた
 その片割れが死んで、目標がこちらのマッドガッサーに移ってもおかしくはないのだ
 マッドガッサー自身も、それをわかっているからこそ、あの罵声が出たのだろう

 マッドガッサーも、魔女の一撃とその契約者から話を聞いて…考え込んでいるようだ
 「喉から手が出る」の作動が、そちらの陰謀だったとしたら……それが失敗したならば、別の手段をとってくる可能性もある
 今、この状況とて、見張られているかもしれない……

 ……と
 マッドガッサーが、何やら「爆発する携帯電話」に、ぼそぼそと耳打ちを始めた
 「爆発する携帯電話」は、一瞬、悩んだ表情を浮かべたが……こくり、小さく頷く

「…悪いが、厄介な連中にたった今、狙われているらしいんで…こっちは、退散させてもらうぜ」

 す、と
 マッドガッサー一味が…一箇所に、集まりだした
 気のせいか?
 マッドガッサー一味が、一行に申し訳なさそうな表情や、ニヤニヤ笑いを向けてきているような…

「………で。申し訳ないんだが、相談が。っつか、むしろ答えを聞かずに実行させてもらうんだが」
46マッドガッサー決戦編 連中は最後にとんでもない事をしやがりま:2010/01/29(金) 15:57:17.86 ID:Pb3uliFY0
「…嫌な予感しかしないな」

 銀髪の青年が、Tさんが…警戒しだす
 この期に及んで、彼らが問題を起こす事はないだろう
 ただ……今、彼らは「アメリカ政府の陰謀論」を振り払う為に、何かをしようとしていて

 それに、一行を巻き込もうとしているのは、確実だった

「アレだ、あとで解毒剤は順番に渡していくんで……勘弁してくれ」


 −−−ピピピピピピピピピピピピピピピピ
 じりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりり
 トゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル………!


 響き渡る、電話の着信音
 はっとして視線をやれば…何時の間にか、「爆発する携帯電話」が、しっかりと携帯電話を握り緊めていた

「ッ爆風でも起こして逃げる気か!?」
「ですが、どの携帯電話を……?」

 一行の携帯は、何の音も発していない
 音は、どこかくぐもった感じで、どこからともなく響いていて

 ……ちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅ!?と
 はないちもんめの少女の鎖に絡まっている鼠が、何かを感じたようにじたばたと、逃げ出そうとしだす

「……っ、あ、あそこ!あの、ミサイルの中です!!」
47マッドガッサー決戦編 連中は最後にとんでもない事をしやがりま:2010/01/29(金) 16:00:57.14 ID:Pb3uliFY0
 銀髪の青年の契約者たる少女が、透視によって、それを見つけた


 マッドガッサーが精製したガスが詰まった、ミサイルの、中
 その中に、どうやって設置したのか……携帯電話が、貼り付けられていて
 五基のミサイル全ての中に設置されたそれらが、光を発し、今にも爆発しそうになっていた


 ガスがたまったミサイル
 それが爆破されたら…………どうなる?

「逃げるのはいいが、こちらを巻き込むのは勘弁してもらいたい……!」
「リカちゃん!」
「わかったの」

 銀髪の青年が、ミサイル内に設置された携帯電話に干渉しようとする
 Tさんもまた、リカちゃんに頼んで携帯の主導権を握ってもらおうとして…………

「−−−−−−−っ!?」
「あれ???」

 銀髪の青年が、驚愕に目を見開き
 リカちゃんが、きょとん、と首をかしげる

「ど、どうしたんですか?」
「…あの携帯電話に…干渉、できない」
「リカちゃん、どうした!?」
「しゅどーけんをにぎれないの」

 ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ
48マッドガッサー決戦編 連中は最後にとんでもない事をしやがりま:2010/01/29(金) 16:04:04.48 ID:Pb3uliFY0
 携帯電話は、光り続けていて……

『−−−−−−−ヒャッハハハハハハハハハハハハ!!!』

 その音に混じって、響いた声
 ハっとして、Tさんが己の携帯電話を取り出すと…その、画面に
 見覚えのない、デジタル画像の男性が現れていて、ケタケタと笑っていた

『ザァンネン!!しゅどうけんヲにぎルのうりょくハ、オジョーチャンヨリモおれさまノほうガうえダッタミテェダナァ!!』
「−−−−ッスーパーハカーか!?」

 ミサイルの中の携帯電話の主導権は、スーパーハカーが握っている
 既に他の都市伝説が干渉しているがゆえに、占い師の能力で干渉できず
 主導権を握るその能力は、まだ幼いリカちゃんよりも、スーパーハカーの方が上で……


「−−−−BOM」


 どこか、おどけた声がした、その直後
 ミサイルの中に設置された携帯電話が、一斉に爆発して

 ミサイル内に充満していた女体化のガスが、中央高校屋上と、校舎三階の一部を、一瞬で包み込んだ




 …我ながら、よく間に合ったものだと思う
 赤い靴は、自らを自画自賛したい気分だった
 ガスの炸裂の瞬間…彼は、確かにTさんとの約束を守った
49マッドガッサー決戦編 連中は最後にとんでもない事をしやがりま:2010/01/29(金) 16:07:53.64 ID:Pb3uliFY0
 彼の契約者とリカちゃんを、己の作り出した異空間内へと、ガスを吸い込むよりも前に引っ張り込んだのだ
 そこには、己の契約者と…もう一人、姿を見かけたナイスロリータを異空間に隔離させた
 これで、彼女たちはガスを吸わずにすんでいるはずだ

「……うん、頑張ったぞ、俺……!」

 ぐら、と思考が揺れる
 女体化のガスは、女性相手には強烈な媚薬効果を持っている
 女体化している赤い靴には、このガスは強烈な媚薬の効果を表していた
 ぐらぐらと揺れる思考を、必死に抑える
 が、体を支えきれずに、ガックリと膝をついた

 …ロリが助かったなら、それでいい
 そう考えながら、赤い靴は己の状態を制御しようと、必死なのだった



 視界が、ショッキングピンクのガスで覆われている
 けほ、と少しガスを吸い込んでしまい、黒服Dは咳き込んだ
 …パワーストーンの結界を発動させるのが、間に合わなかった
 自分は、今回の任務につくさいに、既に「征露丸」を飲んでいるから大丈夫だが、他の者達は……
 せめて、はないちもんめの少女にも「征露丸」を飲ませたかったのだが、手元にあったのは一錠のみ
 彼女に飲ませたかったのだが、彼女は「黒服が飲んで」と聞かず、自分が飲むしかなかった

 ……つまり
 はないちもんめの少女も、無防備な状態で、このガスを吸ってしまっている訳……で……

 がし、と
 己の足に、誰かがしがみ付いてきた事に、黒服Dは気づき…それが、はないちもんめの少女である事も、すぐに気づいた
50マッドガッサー決戦編 連中は最後にとんでもない事をしやがりました:2010/01/29(金) 16:10:44.08 ID:Pb3uliFY0
「…くろ、ふく」

 じっと
 己を見上げてくる眼差しは、熱が篭っていて…

「っお、落ち着いてください。その効果は一時的なもののはずですから、すぐに消え……っ!?」

 がし、と
 反対側から腕にしがみ付いてきた、誰か

「…黒服ぅ」

 じっと、己を見上げてきているのは…「日焼けマシン」の契約者
 …女体化しているから、その身に及んでいる効果は、当然媚薬で……!?

「っふ、二人とも、落ち着いてください!冷静になって!?」
「…冷静よ、私たちは。誰よりもね…!」
「っつ、翼!あなたは元々男なのですから…っ」
「……お前、相手なら……いい……」

 −−−−この、混沌とした状況の中、彼らの会話は誰の耳にも届く事はなく
 黒服Dがどうなったのかも、この濃すぎるガスのせいで、誰にも見えない




「今ほど、透視能力が欲しいと思った瞬間はねぇな」」

 まピンクのガスの中
 その効果を受けていない、黒服H
51マッドガッサー決戦編 連中は最後にとんでもない事をしやがりま:2010/01/29(金) 16:14:08.19 ID:Pb3uliFY0
 黒服Hは、マッドガッサー達が今までの被害者達を放置していたビルに乗り込む際に「征露丸」を飲んでいたのだ
 混沌とした状況の中、それ故に彼は冷静だった

 聞こえてくる、大きな鳥がはばたく音
 恐らく、サンダーバードが降りて来て、一行を回収しているのだろう
 サンダーバードのはばたきによって、ガスはある程度流されているはずなのだが…それでも視界は晴れない
 一体、どれだけの量がここに充満しているのか

「よーし、しっかり逃げろよー。「組織」も、某マッスル禿の事後処理で、少なくとも今はお前さん達を追いかける余裕はないからな」

 聞こえてはいないだろう
 そうわかっていながら、黒服Hは続ける

「…しっかり生きろよ、辰也。お前さんが生き延びてくれんなら、とりあえず俺は満足だ」

 はばたく音が遠ざかっていく
 視界が効かない中、黒服Hはくっくっく、となんとも上機嫌に笑い続けていたのだった




 …この、混沌とした状況より、数分後
 マッドガッサーのガスの解毒剤を持ったゲデが、屋上に到達した訳だが
 彼は、解毒剤をばら撒くよりも前に…そのカオスな現状を見下ろし、ぐ!と親指をたてて

「グッジョォオオオブ!であるよ!か〜〜〜っらからからからからからからから!!!」

 と、愉快に笑ったのだそうな
52マッドガッサー決戦編 連中は最後にとんでもない事をしやがりました:2010/01/29(金) 16:17:17.66 ID:Pb3uliFY0
 なお、余談だが
 意図して連れて行かれたのか、それとも、サンダーバードの足にでも引っかかったのか
 「壁に耳あり」の契約者の姿がない事に誰かが気づくのは、大分後になってからだったと言う









to be … ?
53マッドガッサー決戦編 エピローグその1:2010/01/29(金) 16:20:34.27 ID:Pb3uliFY0
 −−−− マッドガッサー達の騒動より、一週間後 −−−−


「にゃー、明日からとうとう学校かー」

 ようやく、学校閉鎖は解かれようとしていた
 …実は、この少女が通う学校は、他の学校よりも、学校閉鎖が解けるのが少し遅れていた
 何でも、テスト導入された最新警備システムに不備があったとかで、一旦取り付けた監視カメラを再び外したり…の作業が行われたそうで

 てくてく、図書館の帰り道
 ついでに頼まれていたお使いも済ませ、少女は繁華街を歩いて帰路についていて…


 −−−どんっ!と
 背後から、ぶつかられた


「にゃっ!?あれ、何か冷た……」
「ソーリー!!」

 え?と、駆けられた声に振り返る
 見ると、そこにはアイスクリームを持った外人さんが
 …そのアイス、なんだか形が歪になってて…?

「……っあ!?」

 どうやら、少女にぶつかって、アイスが少女の服についてしまったらしかった
 相手は申し訳なさそうに、早口の英語で捲くし立ててきていて…正直、半分もその内容が理解できない
 何とか、相手を落ち着かせようとする少女
54マッドガッサー決戦編 エピローグその1:2010/01/29(金) 16:24:22.44 ID:Pb3uliFY0
 ……す、と
 少女の鞄に、誰かの手が伸びて


「…アイスクリーム強盗か」
「ふぇ?」

 第三者からかけられた声
 少女の鞄に伸びていた手が、びくりと止まった

「相手にぶつかって、その拍子にアイスクリームを相手の服につける。それに早口で捲くし立てて謝罪し、それに相手があっけに撮られている間に荷物を奪っていく……主なターゲットは日本人、ってな。アメリカ本国以外で見ることになるとは思わなかったな」

 買い物袋を抱えた、長い銀髪の青年が…ゆっくりと歩いてきながら、そう言ってくる
 その相手の顔を…少女は思わず、きょとん、と見つめてしまった
 体格や声は、間違いなく男性なのだが…その顔立ちは、どこか愛らしい少女のようなものだったからだ
 どこか、酷くアンバランス
 だが、少女はすぐに、自分の鞄に手を伸ばしてきていた、もう一人の外国人の手に気づき、そんな事はどうでもよくなる

「あぁっ!?言われたとおりっ!?」
「っく………!?」

 自分達が犯そうとしていた犯罪を見破られた事に気づき
 その外国人二人組は、急いで逃げ出した
 逃げていく彼らの前方…そちらからも、買い物袋を抱えている青年が、歩いてきていて


「……あぁ、駄目だな、全然駄目だ」


 彼が、そう呟いた直後
55マッドガッサー決戦編 エピローグその1:2010/01/29(金) 16:28:19.65 ID:Pb3uliFY0
 外国人二人組は、一瞬で足払いを受け、アスファルトの地面に強かに頭を打って気絶していた

「計画性も、実行力も、あまりにも稚拙すぎる。全然駄目だ。お前らには、悪事を犯すという覚悟が足りねぇ」
「足りても困るやん、それ」

 もう、と呆れたような声とともに、長い銀髪の青年…よく見れば、彼も西洋人的な顔立ちをしている…の傍に、ポニーテールの女性が姿を現した
 あれ?と、少女はその姿に見覚えがあった
 以前、コーク・ロアに操られていたらしい人に襲われた時、助けてくれた……

「大丈夫やった?」
「あ、は、はい…」
「ほんなら良かったわ。ほな、マッドはん、清川はん、行こか」

 少女を気遣って、声をかけてきた女性
 少女の無事を確認すると、長い銀髪の青年と、外国人二人を叩きのめした男性と一緒に歩き出した
 お礼をちゃんと言おうとして、少女は声をかけようと

「……って、あれ……マッド、って、やっぱり…?…………あ」

 一瞬、抱いた疑問
 その答えを導き出すよりも前に……もう、三人の姿は見えなくなっていた



 北区 教会にて

「しさいさま、どこいってたのー?」
「おかえりなさーーい!」
「お久しぶりです……すみません。急に、本国に用事ができたものですから」
56マッドガッサー決戦編 エピローグその1:2010/01/29(金) 16:32:42.65 ID:Pb3uliFY0
 教会を任せられている…と、言う事になっている…若き司祭、マリに、近所の子供達が駆け寄っていた
 この一週間、彼はずっと姿を見せていなかったのだ
 その間、彼は本国に用事で帰っていた……と、言う事になっている

「もう、何も言わずにいなくなったりはしませんよ」
「ほんとー?」
「やくそくだよー」

 きゃあきゃあと、無邪気な子供達
 …そんな子供達を見つめるマリの瞳に、邪悪な影はもう、ない

 帰っていく子供達を見送って…それと入れ替わりに、マッドガッサー達が買出しから帰ってきた

「お帰りなさい」
「お帰りー。外寒かったでしょ?ほら、早く入って」

 カソックを身に纏ったスパニッシュフライの契約者が、三人を教会に招き入れる
 教会の中では、「13階段」…広瀬辰也や、「爆発する携帯電話」の契約者が、講堂を掃除しているところで

「お、帰ったか」
「……おかえ、り」
「今夜の食材買い足してきたぞ。マリ、今日こそ食事当番から逃げんな」
「何ー?」

 …ちょこーん
 仲間達以外の目がないのをいい事に、マリはさっさと幼女姿になっていた
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 16:58:26.03 ID:muUBYS2DO
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 17:25:12.97 ID:muUBYS2DO
ほし
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 17:57:09.37 ID:muUBYS2DO
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 18:25:39.03 ID:+nynECGJO
むぅ
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 18:53:59.45 ID:muUBYS2DO
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 18:58:49.46 ID:c2tkqVeH0
wikiの方からリンク繋いどいたんだぜー
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 19:10:13.31 ID:JiISAgQa0
wiki編集乙です
@ウィキの説明を見ながら編集してる俺は、自分の書いた奴を掲載するので精一杯なんだぜ…
64マッドガッサー決戦編 エピローグその1:2010/01/29(金) 19:27:43.32 ID:JXazb9WU0
 肉ー、と、仲間たちが買ってきた食材の…肉に、目を奪われている

「マリ、このやろっ!?今日こそてめぇも家事やれ!逃げるな!?」
「肉ー」

 賑やかな教会内
 彼らの安息を邪魔するものは……今はもう、いない





 この平和な状況を手に入れるために
 彼らは約一週間、奔走し続けたのだから




to be … ?



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この他にもいくつかエピローグを投下して、マッドガッサー決戦編、終了させていただく心意気です
今月中には全部書き終われる、はず!!!
色んな人に焼き土下座です、本当orz


65占い師と少女 (代理):2010/01/29(金) 19:30:12.82 ID:JXazb9WU0
○月×日 23:53 中央高校屋上

 ミサイルが爆発した、直後。
 
「――――くそがっ!」

 占い師さんにしては珍しい暴言が、その口から洩れた。
 迫り来る煙の中、それよりも先に私の元へとたどり着く。
 そして、そのまま

「もがっ!?」

 私の口に、一枚の布切れをあてた。
 そんな物で、マッドガッサーのガスを防ぐことはできない。
 …………ただし、通常ならば。

「布に『女体化ガス遮断の性質』を」

 口早に呟かれたその言葉が終わり
 周囲をピンク色のガスが、覆った。


66占い師と少女 (代理):2010/01/29(金) 19:33:04.87 ID:JXazb9WU0
「占い師さんっ!?」

 煙の中、口に布を当てながら、すぐ隣にいるはずの占い師さんの方を向く。
 真ピンクの煙。
 本来ならば、一寸先すら見えないはずのその状況で

(うわぁ…………)

 しかし私には、全てが見えていた。
 …………正直、年齢制限を付けてもよさそうな、その光景。
 というよりも、黒服の人にまとわりついている女の子は、どう見積もっても法律的にアウトな気しかしない。
 ……いや、それよりも、だ。
 
「これは、酷いな……」

 私の隣で頭をかいている占い師さん。
 その髪は、いつの間にか伸びていて
 その身体は、身長に相応しく丸みを帯びていて
 思わず見とれてしまう程、美人だった。
 ……ドクターさんと、どっこいどっこい位だろうか。
 正直、声を大にしては言えないけれど、色々と羨ましい。
 
「――――なんだぁ? こりゃ」

 ……そして、そのさらに隣で
 なぜか少し前まで見ていた大将と同じ格好をした、オカマバーにいそうな男性がいたのは……見なかった事にしよう。



【終】
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 19:40:43.85 ID:d4VF1P6k0
皆さん乙です!
マッド編のまさかのラストwww
ガス放出中の発言も書かねば!
68マッドガッサー決戦編 エピローグその2:2010/01/29(金) 19:43:50.18 ID:JXazb9WU0
中央高校での決戦翌日 北区 教会内


「…本当、南米のエルさんが、そちらに迷惑をかけているようで…」
「いや、こちらこそ。そもそも、先にちょっかいを出したのはこちらの南米支部なのだしな」

 くー
 額に真っ赤な宝石をつけた小動物が、鳴き声をあげる
 「薔薇十字団」日本支部代表と、「第三帝国」日本支部代表
 本来なら、対立しあっているはずの二人が、同じ空間にいて
 そして、互いに、互いの身内の事で謝罪しあっていた

「エルさんは、これ以上手を出さなければ多分、これ以上は怒ってこない…と、思います、多分」
「そう願いたいところだ」

 互いに、それぞれの所属組織の中では穏健派同士
 わりと、苦労がわかりあっているようである

 ……と
 二人がいた部屋の扉が開いて

「すまない、遅くなった」

 姿を現したのは……素顔を露にした、マッドガッサー
 あの決戦の日、盛大に素顔を笑われて……まぁ、ある意味吹っ切れたようである
 未だに、その顔がコンプレックスである事に変わりはないのだが

「構わんよ。こちらとしては、直接交渉にでてくれただけ、ありがたい」
「それは、こちらも同感だよ…「薔薇十字団」も、マリ・ヴェリテには嫌われているみたいだから」
「あぁ、正直、マリの説得が一番手間取った」
69マッドガッサー決戦編 エピローグその2:2010/01/29(金) 19:46:18.41 ID:JXazb9WU0
 ぼす、とソファーに腰掛けるマッドガッサー
 カーバンクルの契約者と総統に、真正面から向かい合う

「…俺達は、今後、あんた達みたいな都市伝説組織として、活動していこうと思う。まぁ、活動っつっても、自分達の身を護るので精一杯だけどな」
「あなた達を、1組織として認めて欲しい…僕らを呼んだのは、そう言う事だね?」

 カーバンクル契約者の言葉に、マッドガッサーはあぁ、と頷いた

「「組織」相手は交渉はほぼ無理だったが、幸い「首塚」とは交渉ができそうでな。三つくらいの組織に認めてもらえれば、どうにかなるだろう」
「なるほど、確かにその通りだろう」

 マッドガッサーを見つめ返す総統
 静かに、彼に告げる

「「第三帝国」は、君達を1組織として認めよう。「アメリカ政府の陰謀論」等に対抗する為に力が必要ならば、同盟を組んでもいい」
「「薔薇十字団」も、同じ考えだよ。あなた達がもう悪事を犯さないのなら、敵対する理由はないからね」
「…信じていいんだな?」

 おや、と総統とカーバンクル契約者は、小さく苦笑した
 ……疑り深いのは、そのままか?
 いや、今までの彼らの経歴を考えれば、無理もないが…

 ……二人の、そんな様子に
 マッドガッサーは、笑ってきた

「冗談だ。認めてもらえるなら、ありがたい。同盟云々は今のところ考えてないが…いざと言う時は、頼もうか」
70マッドガッサー決戦編 エピローグその2:2010/01/29(金) 19:47:57.78 ID:JXazb9WU0

 ……交渉、成立
 マッドガッサー達は、この瞬間より、一つの都市伝説組織として、認められたのだ
 後は、「首塚」相手の交渉がうまく行くのを待つばかりである

「ところで、こちらの部下のあの状態についてなのだが…」
「あー、あの何やったのか、中途半端に治った状態のだろ?「薔薇十字団」製の解毒剤も効かなかった奴。あれ、ジャッカロープを向かわせたから、多分それで治ると思うぞ」

 それでも治らなかったら、諦めてくれ
 肩をすくめて、相当の言葉にそう答えたマッドガッサー
 …いや、本当、どうしてふたなりになっていたのだろう
 不思議で仕方ない

 穏かに進んでくれた交渉
 …仲間達を護る手段が増えた事に、マッドガッサーはほっとしたのだった








to be … ?
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 19:52:10.05 ID:d4VF1P6k0
乙です
ふたなりwwwwww
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 20:09:55.71 ID:GljQ/PX+0
投下中フリーズする俺のパソコンはいい加減どうにかならんもんか
ゆっくりと続き構想しよう、うん
73マッドガッサー決戦編 エピローグその3:2010/01/29(金) 20:12:35.75 ID:GljQ/PX+0
中央高校での決戦翌日 北区 診療所にて


「……できた、ぞ」
「ありがとう………!」

 ジャッカロープの乳が入ったコップを受け取ったバイトちゃん
 これで!!!
 これで、真っ当な男に戻れる!!

 …後でまた、女体化させられそうな予感もするが、まずは気にしない!!

 なお、その乳を出したジャッカロープ、ただ今メアリーとミヅキにモフられている最中である
 都市伝説だろうと、女性は可愛い生物に弱いものだ

「万能薬、か。なんとも便利なものだな」
「あんた、前はアメリカにいたんだろ。ジャッカロープと遭遇したことはなかったのか?」
「話には聞いていたが、ジャッカロープの実物を見たのは今回が初めてだよ」

 そんな会話をしている、ドクターと広瀬辰也
 ジャッカロープの乳でバイトちゃんを治してやる、ということで、ジャッカロープを連れた「爆発する携帯電話」の契約者だけがここに来る予定だったのだが…彼女を心配して、辰也もついてきたのだ

「彼…いや、今は彼女か。彼女は、男性に戻らないのかい?」
「今のままでいい、って本人が言ってるし…それと、あいつ「組織」以外相手でも、少し狙われてるからな。顔は隠したままの方がいい」

 …俺としても、嬉しいし
 その言葉は口の中で濁らせた辰也
 わかっている
 元は男だと、わかっている!!!
 だが、ストライクゾーンど真ん中なのだから、仕方ないだろう
74マッドガッサー決戦編 エピローグその3:2010/01/29(金) 20:16:03.16 ID:GljQ/PX+0
「なるほどね……それで、ここに来たのは、彼女に付いて来ると言う、その理由だけなのかい?」
「…勘のいい相手は、好きじゃねぇ」

 ぼそり、ドクターの言葉に辰也は居心地悪そうに呟き…懐を探る
 そこから取り出した小さなデータチップを、ドクターに放り投げた
 ぱし、とドクターはそれをキャッチする

「これは?」
「俺が「組織」を出る時に持ち出したデータの、投薬実験関係のデータだけを抽出したもんだ」

 ほう?とデータチップを見つめるドクター
 この、小さなデータチップに…「組織」の闇の一部が、凝縮されている、ということか

「僕に、それを渡してもいいのかい?」
「あんたは、都市伝説化した奴を人間に戻す研究もしてんだろ?…その実験データ、初期の頃の実験は、都市伝説化した人間を元に戻す研究なんだよ」

 …最も
 失敗を重ねたそれは、無数の犠牲者を生んでいて
 その研究の役に立つなら、とどんどんと他の実験も行われて……当初の目的から、どんどんと遠ざかってしまって
 その結果の実験被害者の一人が、この広瀬 辰也な訳だが

「そのデータが、あんたのその研究の役に立つなら、それでいい。悪用しないなら、な」
「……君は」

 言いかけて…いや、とドクターは被りをふった
 広瀬辰也にも…都市伝説化してしまった者で、元に戻してやりたいと思う相手が、いるのだろうか?
 一瞬、それを考えたが、聞く事はヤボだろう
 「組織」を激しく嫌い、憎む彼としては、「組織」の闇のデータの一部が他の組織に伝わると言うのも、復讐の一環なのかもしれないし

「…さて、こっちの用件はこれだけだ。恵、帰ろうぜ」
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 20:17:07.09 ID:d4VF1P6k0
そして愛を貫くんですね支援!
76マッドガッサー決戦編 エピローグその3:2010/01/29(金) 20:18:03.49 ID:GljQ/PX+0
「……くけ……わかった……」

 ひょい、とモフられていたジャッカロープを抱き上げる「爆発する携帯電話」の契約者
 ジャッカロープはぴすぴすと鼻を鳴らし、もぞもぞと「爆発する携帯電話」の持っている鞄に入り込んでいく

「あぁ、ところで、女体化のガス、もしくは薬だが」
「後で教会にでも来れば、マッドがいつでもガス噴射すると思うぜ」

 落ち着いてから来てくれ
 そう言って、辰也は「爆発する携帯電話」の……空条 恵の手を引いて、診療所を後にした

 そよ、と二人の頬を撫でる風は、冷たい
 ゆっくりと、冬が近づいてきている

「……辰也」
「ん?」
「…あの、データ……本当に、良かった、のか?」

 …「組織」の投薬実験データ
 あれには、辰也の実験記録も残っているのだ
 彼にとって、それはあまり知られたくない記憶のはず
 だが

「あー、いいんだよ。まぁ、あいつらがそれを有効利用できなかったら、承知しねぇが」

 都市伝説化した人間を、元に戻す方法
77マッドガッサー決戦編 エピローグその3:2010/01/29(金) 20:20:54.57 ID:GljQ/PX+0
 どこかの誰かさんが誰よりも切望して、しかし、とっくの昔に諦めてしまった事
 もし、その方法が、実現したならば

(……ま、俺にはどうでもいいんだがな)

 もし、その方法が手に入ったならば、あいつに恩を売ってやればいい
 そう考えながら、辰也は恵の手を引いて、教会への帰路につくのだった






to be … ?
78Tさん:2010/01/29(金) 20:29:46.25 ID:d4VF1P6k0


            ●


 最後の最後でやってくれた。
 そう思いながら青年はショッキングピンク色の視界で結界の具合を確認する。
 ギリギリだったな……。
 リカちゃんの能力が阻止されたと≪スーパーハカ―≫から知らされた瞬間に張った結界、だがそれは、
 契約者たちは遠すぎた。
 自分一人を包む結界を張るのが手いっぱいで契約者やリカちゃんを包む事は出来なかった。しかし、
「用心はしておくものだな」
 ガスが蔓延する直前、≪赤い靴≫によって異空間に契約者とリカちゃんが引っ張り込まれるのを確認できた。
「約束が無用の長物にならずに済んでよかった……のだろうか? まあ、契約者たちに被害が無いのならば問題は無い」
 別にガスが町全体に広まっているわけではないようではあるし、あとはガスが晴れるまで待つだけだろう。
「しかし、まあ――」
 視界は無く、結界で閉じこもっているため音から探る気配のみの情報ではあるが、
 町でガスが爆発しなくてよかった……。
 周囲の混乱を感じながら青年は苦く笑った。
 そしてため息を一つ、彼らが去った空を見上げ、
「ここまでやってくれたんだ、せいぜい幸せになれ」
 離脱した彼らに届くことのない幸運を願う言葉を送った青年の顔からは苦さは消えていた。
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 20:31:06.86 ID:GljQ/PX+0
Tさん支援!!!
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 20:32:32.88 ID:d4VF1P6k0
というわけでガスに対する反応ですた!
ああ! もうマジに乙です! ご苦労様です!
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 20:34:18.40 ID:GljQ/PX+0
おっと、乙でしたー!!
残念、Tさんは女体化しなかったかwwwwwwwww
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 20:35:26.39 ID:d4VF1P6k0
女体化してもTさんは面白味が無さそ(ry
83マッドガッサー決戦編 エピローグその4:2010/01/29(金) 20:42:10.07 ID:GljQ/PX+0
中央高校での決戦より二日後 北区 某所にて


「………」
「…あー…」

 …どう、口を開いたらいいものか
 互いに、目的は同じなのだ
 だが、うまく切り出せず

 ……だが、それでも
 互いに、互いの考えは…もう、とっくにわかりきっているのだ



「…黒服、あの二人、大丈夫なの?」
「大丈夫だ、と私は信じていますよ」

 やんわり微笑み、そう答える黒服
 …そう言われると、はないちもんめの少女としては、それ以上言いようがない

「ひっひ、主も悪魔の囁きから解放されたからねぇ。問題ないさね」

 くすくすと笑うのは、魔女の一撃
 三人は、少し離れたところから、「日焼けマシン」の契約者の青年と魔女の一撃契約者の様子を見守っていた
 …二人だけで会わせても、良かったのだが
 心配と言うか、経過が気になると言うか…

「黒服さーん」
「あ…Tさん達。どうなさいました」
84マッドガッサー決戦編 エピローグその4:2010/01/29(金) 20:45:15.36 ID:GljQ/PX+0
「いや、たまたま、近くを通りかかったのでな」

 ぱたぱたと
 三人に、駆け寄ってきたTさん達
 遠目に、あの二人を眺める

「なかなおりするのー?」
「えぇ…そうですよ」

 …どうか、うまくいきますように
 そう、祈るような気持ちで、黒服は二人を見つめていた


「…翼」

 ぽつり
 先に口を開いたのは、魔女の一撃契約者の方だった
 暗い表情
 深い、深い、後悔に彩られた表情

 悪魔の囁きに操られていたとは言え…自分がしたことは、「日焼けマシン」の契約者…翼に、許される事ではないと
 彼は、そう自覚していた
 いや、そもそも…悪魔の囁きの誘惑に乗ってしまった
 それ事態、彼にとって深く後悔している事だった
 心に、隙があったのだ
 翼を、疑ってしまった
 その事実自体、彼は自分自身を許せなかった
 確かに、高校時代、嫉妬などからやりあった事はある、裏切りギリギリの行為を働いた事もある
 だが、それでも…翼との友情を、疑った事などなかったはずだったと言うのに
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 20:47:59.69 ID:d4VF1P6k0
薔薇枠きた(違)支援!
86マッドガッサー決戦編 エピローグその4:2010/01/29(金) 20:48:45.47 ID:GljQ/PX+0
 結局、一番の裏切り者は、自分だったのだ
 それが、何よりも許せない

「俺のせいで……御免な。またお前に迷惑をかけて」

 もう、親友でいられなかったと、しても
 それでもいい、と覚悟している
 許されるはずなどないと

 ……だが

「…いや、こっちこそ」

 翼が、小さく被りを振る
 魔女の一撃契約者に、申し訳無さそうな表情を浮かべてきていて

 −−−−−あぁ、畜生
 どうして、お前がそんな顔をするんだ

「お前に、都市伝説のこと、ずっと黙っていたのは、俺の方だから」
「…直希は、知ってたのか?お前が都市伝説と契約している事を」
「あぁ。あいつも、都市伝説と契約していたから」

 あぁ、そうだったのか
 高校時代の、こいつの次くらいに仲が良かったあの友人に嫉妬する
 …いや、嫉妬などできる権利など、自分にはないのだが

「誠」
「…?」
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 20:54:48.26 ID:buKpKMZeO
マッド終了おめー!
支援!
88マッドガッサー決戦編 エピローグその4:2010/01/29(金) 21:01:05.82 ID:GljQ/PX+0
 俯いていた顔をあげると、翼がじっと、見つめてきていた 
 昔と代わらない、どこまでも真っ直ぐな目
 ……あぁ
 俺とは、大違いだ

「お前が都市伝説と契約した事、話したら…直希も、心配してたんだよ。だから…今度、また、三人で酒でも飲まないか?」

 あ、いや、直希は下戸だから飲めないけど…と、そう言って来た、翼を
 魔女の一撃契約者…誠は、じっと見つめた

「……翼」
「うん?」
「いいのか?まだ……俺なんかと、付き合って」

 あんなに、酷い裏切りをしたと言うのに
 もう少しで……取り返しのつかないことを、してしまうところだったというのに


 それでも、まだ、許すというのか?


「当たり前だろ?」

 当たり前だ、と
 翼は、そう言って誠に笑った

「お前は、俺の幼馴染で……親友、だから」

 あぁ、それにしたって
 俺は、お前に、あんな事を
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:05:03.57 ID:d4VF1P6k0
おお、感動だ! 支援
90マッドガッサー決戦編 エピローグその4:2010/01/29(金) 21:05:11.64 ID:GljQ/PX+0
「…それに」

 つい、と翼が指差してきたのは
 誠が、首から下げている……首飾り

 悪魔の囁きを、引き剥がそうとしていた、その時
 鎖が切れた、あの首飾りだ
 誠が、悪魔の囁きの言葉を無視して手を伸ばした、あの首飾り

「それ、まだ、持っていてくれてたんだな」
「………当たり前だろ」

 嬉しそうに、笑う翼
 …この、首飾りは
 翼が、シルバーアクセサリーを作り始めてすぐの頃、作った物だ
 今見れば稚拙な出来だが、それでも、当時はよく出来た、と思って
 誠に、プレゼントしたものなのだ

 誠は、それをずっと身につけていた
 誠にとって、それは、翼との思い出の品であったから
 だから、あの瞬間…悪魔の囁きの言葉よりも、それを優先して
 だからこそ、悪魔の囁きから解放されたのだ

「俺は、お前が無事でいてくれたなら、それでいいんだ」

 そう言って
 翼は、す、と誠に手を差し出した

「こっちこそ、お前の気持ちに、気づいてやれなかったんだ……そんな俺でもよかったら。まだ、親友(ダチ)でいてくれるか?」
「……翼」
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:05:32.03 ID:buKpKMZeO
イイハナシダナー
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:07:45.32 ID:d4VF1P6k0
支援
93マッドガッサー決戦編 エピローグその4:2010/01/29(金) 21:08:07.66 ID:GljQ/PX+0
 …あぁ、こいつは、本当に…
 ……だからこそ、俺は

 誠は、ふっと笑って……そっと、翼に手を伸ばした


「お、何か大丈夫そうじゃん」

 二人の様子を眺め、そう呟いたTさんの契約者
 距離的に、会話の内容は聞こえてこないが…二人の表情や雰囲気から、見て
 どうやら、和解できたようだ

 …黒服は、ほっと安堵の息を吐いた
 これで一つ…懸念が、晴れた

「ひっひっひ、私もほっとしたよ」

 魔女の一撃も、主の様子にほっとしたように笑っていた
 はないちもんめの少女は、やや複雑そうな表情を浮かべつつも…まぁ、いいか、と考えているようで

 二人を眺める黒服に
 つ、とTさんが、声をかけてくる

「黒服さん、あとのあなたの懸念は……もしかすると、魔女の一撃契約者に憑いていた、悪魔の囁きの事か?」
「………はい」

 はないちもんめの少女や、Tさん達には聞こえないように
 黒服は、静かに頷いた

「三年、って言う時間は、異常だからねぇ?」
94マッドガッサー決戦編 エピローグその4:2010/01/29(金) 21:10:46.88 ID:GljQ/PX+0
「悪魔の囁きとは、本来、ほんの一瞬だけ人間にとり憑き、突発的な悪事を起こさせる存在のはずだな?」
「そう、なんですよ…」

 彼にとり憑いていた悪魔の囁きは、本来の性質とはあまりにもかけ離れた行動をとっていた
 黒服も、魔女の一撃も、それが引っかかっていたのだ

「まるで…何者かが、悪意を持って、彼に悪魔の囁きをとり憑かせていたように思えます」
「あたしもそう思ってねぇ?でも、主は心当たりがない、って言うし」

 調べようにも、手がかりが少なすぎる
 お手上げ、とでも言うように、魔女の一撃は肩をすくめた

「黒服さん、調べるつもりか?」
「はい……やはり、気になりますので」

 一体、誰がそんな事をしたのか
 調べる必要があるだろう
 黒服は、そう考えていた
 調べていけば、きっと、何かしら手がかりが見付かるはずだし……

「……あら?」
「あれ?様子、おかしくね???」

 …日焼けマシンの契約者と、魔女の一撃契約者の様子を見続けていた少女と、Tさんの契約者の言葉に
 え?と、三人は、二人に視線を戻した
 そこでは、魔女の一撃契約者が、「日焼けマシン」の契約者が差し出した手を……両手で、しっかりと握っていて………


「……誠?」
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:12:04.99 ID:d4VF1P6k0
くるか!くるよな!!
96マッドガッサー決戦編 エピローグその4:2010/01/29(金) 21:14:10.24 ID:GljQ/PX+0
 差し出したその手を、両手でしっかりと握られて
 きょとん、と翼は首を傾げた

 じっと、じっと
 誠は、翼を見つめている

「本当、お前は昔っから、可愛い奴だよなぁ……」
「は?」
「馬鹿みたいに真っ直ぐで、正直で……やっぱり、護ってやらないとな」

 す、と
 誠は、翼に近づく
 息がかかりそうな、至近距離
 誠は、にんまりと……翼に、笑ってやった

「翼」
「な、何だよ」

 親友の様子に、ただならぬものを感じたのだろうか
 翼が、やや身を引く

「俺、今回の事でわかったよ」
「な、何が?」

 ニヤ、と
 誠は、まるで真理を手に入れたかのように、笑った

「俺が一番好きなのは、お前だったんだ。道理で、今までどんな女と付き合ってももの足りないと思ったよ。俺が一番欲しいのはお前だ………だから、伝える。俺と付き合わないかっが!!??」

 −−−−−−っご!!!と
97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:18:33.89 ID:d4VF1P6k0
な……に? 誤解ワードじゃない……だと?支援
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:19:05.60 ID:JiISAgQa0
これは予想外wwwwwwww支援!
99マッドガッサー決戦編 エピローグその4:2010/01/29(金) 21:21:01.20 ID:GljQ/PX+0
 翼の膝蹴りが、誠に直撃した
 続けて、エルボー、回し蹴りと、連続コンボが決まる!!!

「−−−−い、いきなり何言いやがるんだ、この変態っ!?」
「ぐ……この黄金コンボは流石に効く……っ……………何、俺は目覚めただけだ!!」
「目覚めるなっ!?新世界の扉開けてんじゃねぇっ!?」
「俺は長年、どうしてお前に固執し続けてきたのか、その疑問がとけてスッキリしてるけどな」
「するなっ!?って、こら、寄るな!?どこ触ろうとしていやがるてめぇっ!!??」

 ごがっ!!と
 再び、翼の拳が誠に直撃した訳だが

 ……翼は何も悪くないだろうし、きっと、誠も何も悪くはないのだ、多分


「…うわ、すっげぇ連続コンボ」
「けんかなの?」
「……喧嘩、のような、何か違うような…」

 ………えー………
 日焼けマシンの契約者が怒鳴りだしたせいで、何が起こったのか、大体、わかった訳だが…
 …どう、対処したらいいものか
 魔女の一撃など、主が大変な目にあっていると言うのに、腹を抱えてけらけらと笑っている

「…ちょっと、止めてきます」

 かすかに頭痛を覚えたような表情で、黒服が二人に駆け寄っていく
 …何と言うか、殴られている方がまったく反撃していないせいで、事情をわからぬ者が見たら、一方的に叩きのめしているようにしか見えない
 いや、一方的に叩きのめしているのだが
100マッドガッサー決戦編 エピローグその4:2010/01/29(金) 21:24:05.17 ID:GljQ/PX+0
「…お前さんは、止めなくてもいいのか?主の危機に見えるんだが」
「ひっひっひっひ。なぁに、大丈夫さね。主はちゃぁんと、急所は外されるようにしてるから」

 言われて見れば、殴られっぱなしなのに、魔女の一撃契約者はほぼ、ダメージを受けているよう見えない
 かすかに体を動かして、急所を外させているようだ
 「日焼けマシン」の契約者の方も、容赦なく殴っているように見えてアレで手加減しているのかもしれないが…



 …この日
 一人の青年が、新世界の扉を開けた
 明らかに間違った道に見えなくもないが、彼はそれを正しい道だと信じていて

 ……まぁ
 その新世界の扉を開けたが故の想いさえ、表に現さなければ
 彼らは今まで通り、仲の良い親友同士なのだ



 …もう、その友情を壊すものは、どこにも存在してやいない



とぅーびー??
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:25:55.11 ID:buKpKMZeO
イイハナシダッタナーwwwwwwww
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:27:27.01 ID:GljQ/PX+0
っしゃあ、本日の目標としてた部分までかけたぞー!!!
もう、ガス結局屋上でバラまいたりエピローグでも好き勝手やってるわで書く方面に土下座なんだぜorz
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:28:18.78 ID:gcrSuMmSO
マッドガッサー編終了か!
皆乙!
104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:28:27.98 ID:d4VF1P6k0
乙でしたwwww
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:32:03.13 ID:GljQ/PX+0
>>97
ある意味で、誤解ワードより酷い内容にできたと思っているんだぜwwwwwwww
みんなが薔薇薔薇言うのが悪いんだい
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:34:16.09 ID:JiISAgQa0
魔女の一撃契約者、トゥルーエンド到達おめでとうwwwww
まさかその道に目覚めるとは…あれ、黒服D危なくね?(誤解ワード的に考えて)
107マッドガッサー決戦編 エピローグその4 おまけ:2010/01/29(金) 21:39:15.93 ID:GljQ/PX+0
「…っふ……あいつの黄金コンボを喰らうなんざ、高校の時以来だな、懐かしい……!」
「…あんまり、あの子におかしな事を言わないであげてくださいね」

 ぼろっ
 翼に叩きのめされ、ぼろぼろの誠
 が、それでもわりと平気そうなのは、やはり鍛えているからだろう
 翼はようやく宥められ、今はひとまず落ち着いて…
 …いや、あっちではないちもんめやTさんの契約者に、またからかわれているようだが…

「俺は別におかしな事は言っちゃいねぇよ……ところで、黒服さん」
「はい?」
「あんた、翼が実家を出た後……あいつの両親がどうなったか、知ってるか?」

 …誠の、言葉に
 黒服は、少し悲しそうな表情を浮かべた

「…離婚、なさったそうですね」
「あぁ。まぁ、昔っから夫婦と思えない夫婦だったんでまぁ納得なんだが…問題は、その後。どうなったか、知ってるか?」

 ……黒服の、暗い表情に
 誠は、小さく舌打ちして、続ける

「…知ってやがるな?」
「………はい」
「それじゃあ」

 誠が、黒服を真正面から睨みつける

「……翼は、自分の父親が行方不明になっているのを、知っているのか?」
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:41:18.08 ID:JiISAgQa0
おっと支援だ
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:41:58.24 ID:YOqCifI00
まとめwikiの過去ログリスト途中が抜けてるね
手抜き更新しました
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:42:36.60 ID:YOqCifI00
あれ? まだ投下中だった御免
111マッドガッサー決戦編 エピローグその4 おまけ:2010/01/29(金) 21:43:14.97 ID:GljQ/PX+0
 …その、問いかけに
 黒服は、答えない
 それを否定ととって、誠はますます舌打ちした

「話してないのかよ?」
「…あの子には、彼の両親が離婚した事も伝えていません…その事は、あの子自身もなんとなく感じ取ってはいるようですが…」

 両親の離婚については、いつか話そうと思っていた
 だが……彼の父親が、行方不明になっている、事実
 それを、どう伝えたらいいものか……黒服は、ずっと悩んでいた

 翼が、両親の元を離れてすぐ…彼の両親は、離婚した
 その直後、父親は仕事でヨーロッパに向かっていて

 そのヨーロッパの地で、消息を断っているのだ

 はたして、都市伝説絡みなのか、どうか
 それすらも、わからない
 あまりにも、情報が少なすぎて…逆に、話す事ができないのだ

「…ま、あんたがどう思ってそれを話していないのか。俺は興味ない。俺からも、それを話す気はないしな………ただ」

 誠の視線が、鋭くなる
 殺気すら含んだ、眼差し

「……もし、あいつに何かあったら。俺はあんたを許さない」
「…肝に銘じておきます」

 小さく、苦笑する黒服
 彼の言葉に、誠は満足したように、彼から離れようとして…
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:45:11.03 ID:d4VF1P6k0
支援

>>109
乙であります!
113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:45:57.60 ID:JiISAgQa0
しえーん
114マッドガッサー決戦編 エピローグその4 おまけ:2010/01/29(金) 21:46:56.45 ID:GljQ/PX+0

「あ、そうだ」
「…?」
「俺達が、高校卒業した日、あるだろ?……あの日、あいつの父親を、見かけたような気がするんだよ」
「……朝比奈さんを、ですか?」

 あぁ、と頷く誠
 だが、その表情は、やや自信なさげだ

「いや、ほんの一瞬、だけどよ……すれ違った気がするんだよ。そんな訳、ないんだが」

 あの時点で、翼の父親は行方不明で
 どこにいるのかも、わからない状況で
 まさか、あの場にいたはずはないのに
 そう言うように、自信なさげに、告げて…誠は今度こそ、黒服から離れて翼に駆け寄っていっている
 ……あぁ、また拳が飛んで…

 黒服は小さく苦笑して…しかし、先ほどの誠の言葉が、気になって
 やや、悩むように、思考をめぐらせたのだった



to be … ?
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:49:07.02 ID:GljQ/PX+0
伏線的なおまけでした
伏線バラまくの好きです


>>109
乙っした!!
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 21:50:13.55 ID:d4VF1P6k0
乙でした!
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 22:01:05.89 ID:JiISAgQa0
乙でしたー
使う予定が無かろうと、伏線出してもいいじゃないか!
118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 22:22:43.00 ID:JiISAgQa0
寝る前保守
休日は投下が増えるだろうし、スレが残ってることを祈るぜ
119小ネタ 先生、マジメなネタ書くの疲れました:2010/01/29(金) 22:37:08.31 ID:GljQ/PX+0
 すやすやと、翼がソファーに横たわって眠っている
 目覚める気配は…………ない

「…俺の契約都市伝説が、迷惑をかけている」

 深々と
 黒服と望に頭を下げている誠
 …起きる気配のない翼
 魔女の一撃がうっかりと作った睡眠薬のせいだ
 誠が作った菓子の中に、いつの間にか投入されていたようで
 それを知らずに、翼が食べてしまったのだ

「まぁ、早々と原因がわかったので、良しとしましょう。魔女の一撃の魔法薬が原因で、間違いないのですね?」

 頭を下げ続ける誠の様子に小さく苦笑し、黒服はそう尋ねる
 あぁ、と誠が頷いたのを見て…す、と黒服は眠っている翼に、近づいた

「…ちょっと、待って」
「はい?」

 そんな黒服を、望が制した

「…何、しようとしてるの?」
「魔女の一撃の薬の効果は、口付けで解けるそうなので」

 それは、知っている
 知っているけれど、ちょっと待った!!??

「黒服が、翼にキスする必要はないでしょ!?」
「しかし、私の契約者ですし…」
120小ネタ 先生、マジメなネタ書くの疲れました:2010/01/29(金) 22:40:02.46 ID:GljQ/PX+0
 わかっている
 黒服にその気がないことは、望とてよくわかっている

 わかっている、けれど!!!
 頭で理解していても、気持ちの上で納得できない事は存在するのだ!!!

「そいつの言うとおりだろ。あんたがする必要はない」
「ですが、それでは…」
「……つまり」

 ぐい、と
 黒服を押しのける誠
 つ、と静かに寝息を立てる翼の頬に、触れる

「ここは俺が起こしてやるべきだろう。契約都市伝説の責任をとって!!」
「…あなた、むしろ、それを目的に、薬が混ざってるってわかってて翼に食べさせたんじゃ」
「聞こえねぇなぁ?」

 望の呆れたような言葉に、誠は笑うだけで
 …そっと、翼に顔を近づけて


 ごがっ!!!


 黄金の右が、誠に直撃して殴り飛ばす!!!

「あだっ!?」
「!!??つ、翼、目を覚ましたのですか!?」
「……いえ、寝たままよ。間違いなく。何か魘されてるけど」
121小ネタ 先生、マジメなネタ書くの疲れました:2010/01/29(金) 22:46:20.22 ID:GljQ/PX+0
 うーんうーん、と魘されている翼
 が、間違いなく、眠ったままである

 …どうやら、眠ったままにして、本能的に何かを感じて誠を殴り飛ばしたようだ
 ある意味、見事な防衛本能だ

「やはり、私が起こしますね」
「だから、待って、黒服」

 がし!!
 黒服の手を掴み、断固阻止の体性の望
 させてたまるか!!
 変な意味などなかったとしても、黒服から翼へのキスなど却下!!

 望の行動の意図がわからないようで
 黒服が、やや困った顔を浮かべていると…

「…よくわからんが、翼に口付けをすればいいのか?」

 と、リビングに、直希が顔を見せた

「直希さん?どうしてここに…」
「先ほどからチャイムを鳴らしていたのだが、応答がなかった。申し訳ないが、勝手に上がらせてもらった」

 てくてく、翼に近づく直希
 誠が気を失っている様子に首を傾げつつ……翼の横に、跪く

「つまり、あれだ。人工呼吸のようなものだろう?」
「まぁ、そうですね」
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 22:48:46.42 ID:b7iD9tdL0
支援
123小ネタ 先生、マジメなネタ書くの疲れました:2010/01/29(金) 22:51:25.56 ID:GljQ/PX+0
「なら、問題はあるまい」

 そっと、翼に顔を近づけている直希
 ……よし、これで黒服の唇は護られた!!!
 望が小さくガッツポーズをとった、その時!


「……まぁ、待て」


 かしゃり
 響いた、甲冑の音
 ずぅん、と感じる、圧倒的な存在感

「……将門公!?」

 部屋の、中に
 一体、どこから入り込んだと言うのか………将門が、姿を現していた
 眠ったままの翼を見下ろし…くっく、と楽しげに笑っている

「部下がこのような状態になっているのならば、上司たる我が救ってやらねばなぁ?」
「却下です」

 ……黒服の背後に、般若が見えるのは気のせいか?
 やんわり微笑んではいるが、黒服は確実に、将門を睨んでいる

「おやぁ?問題あるまい。ただ、接吻するだけぞ?」
「あなたの場合、何かしら嫌な予感がいたします。却下です。あなたにやらせるくらいでしたら、私が翼を起こします」

 …契約者のためならば、祟り神相手でも怖くはないようで
124小ネタ 先生、マジメなネタ書くの疲れました:2010/01/29(金) 22:54:27.94 ID:GljQ/PX+0
 バチバチ、バチバチと
 静かに、しかし、周囲に恐怖すら抱かせる睨みあいが始まった!!


「…僕は、どうすればいいのだろうか?」
「私に聞かれても困るわよ」

 目の前で始まった睨みあいを前に、直希は小さく首をかしげ
 望は、こんな騒ぎなど知る由もなく眠り続ける翼を軽く睨み……ぺし、と、小突いてやったのだった






オチ?それってなぁに?美味しいの????
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 22:56:38.76 ID:GljQ/PX+0
大分前に避難所の雑談スレで口走ってた「チャラ男が四人の男に次々とキスされそうになるネタ」でした
誠が新世界の扉あけたの公開したんで解禁
いや、どうでもいいネタだけどな!!!!

そして、当初は直希の代わりにヤンデレ弟が名を連ねていたとか秘密
理由は「嫌がらせになりそうだから」とかもっと秘密
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 23:02:11.31 ID:b7iD9tdL0
乙なのぜ!しかし本当に翼は男にもてるなぁww
127とある組織の極秘計画:2010/01/29(金) 23:10:29.56 ID:b7iD9tdL0
…まだ、まだ見つからないのか…!


アイツを保護するお人よしなどいる訳が……

…いや、お人よしならいるにはいるが…

まぁ奴のところならばとうの昔に情報が入っているはずだ。

だとしたら…一体誰が…?


捜索班!何か新たな情報はないのか!?

…手掛かりなし…か…



何だNo.8。今忙し…何!?それは本当か!?

ククク…奴ならばすぐに見つかるだろう……

捜索班の一部はNo.18の捕縛!残りは変わらずNo.28の捜索を続けろ!


……早く、早く潰さねぇと、俺の炎が…消えちまう…

極秘計画F&S CU
進行状況:No.28未だ見つからず。しかしNo.18が失踪に関する手掛かりを持っているようなので捕縛へと捜索班の一部を向かわせる。
No.28を発見次第連れ戻し能力の覚醒に努める。尚、戦闘開始日時は計画当初と同じく×月△日とする。
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 23:11:45.71 ID:GljQ/PX+0
おやすみー
明日もスレが残っていてくれれば幸せだ
さて、あと俺が書くべきネタはマッド編エピローグの「首塚」交渉と壁に耳あり契約者がどうなったかと、黒服Hの事後処理と…
……あれ、まだ結構あるんじゃね???

>>126
>しかし本当に翼は男にもてるなぁww
だって翼だしwwwwwwwwwww
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 23:29:04.49 ID:d4VF1P6k0
乙です!
おれもねるー
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/29(金) 23:42:52.75 ID:d4VF1P6k0
寝る歩
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 00:10:42.41 ID:1mICp4jVO
てす
132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 00:20:02.57 ID:UI8GyFaIO
保守しようかね
133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 00:42:52.45 ID:1mICp4jVO
ほー
134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 01:11:13.53 ID:1mICp4jVO
135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 01:43:06.51 ID:1mICp4jVO
136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 02:59:19.47 ID:ZRt65HPI0
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 04:37:53.74 ID:ZRt65HPI0
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 06:41:31.50 ID:hzoP1Y5+O
ほし
139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 06:49:23.56 ID:UI8GyFaIO
保守
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 08:09:59.18 ID:UI8GyFaIO
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 08:53:53.18 ID:1mICp4jVO
142首なしライダー(代理):2010/01/30(土) 08:55:27.44 ID:7aAJZW+c0

…誰か…この声を…止めて

 マッドガッサーによる騒動からしばらく、学校町はいつもと変わらない日々が続いている
 その日の夜も一見、いつもと変わらない夜だった。

「…む、やっぱり出ない…」
「どうしましたお嬢?」

 朝野は携帯電話を眺めながら呟くと携帯電話を閉じた

「いや、最近先輩と連絡取れないんですよー」
「先輩…?ああ、あの首なしライダーですか」
 そう腕を組みながら話しているのは『夜中に口笛吹くと』の都市伝説
名前はまだない

「あの女体化ガスの騒動直後からなんか変だったんですけどねー…どうしたんですかね……」
143首なしライダー(代理):2010/01/30(土) 08:58:13.39 ID:7aAJZW+c0
同時刻、学校町 とある公園

「来るな…貴様っ!」
 叫んでいるのは通称斧男
 ベッドの下に潜んでいるのが基本の都市伝説だが、この斧男はたまたまこの公園を訪れていた。

 斧男の視線の先には 青いヘルメットを被った一人の男の姿
 黒色のライダースーツを身に纏い無言で斧男に近づく
「来るなって言ってんだろ!」

 斧男はライダースーツの男性に手に持っていた斧を勢いよく横に振るう

 しかし、振るわれた斧は男性のヘルメットだけを吹っ飛ばした。
 そして
首から上がないライダースーツの男性がそこに立っていた。
144首なしライダー(代理):2010/01/30(土) 09:01:30.66 ID:7aAJZW+c0
 首なしライダーは斧に怯む様子もなく
そのまま斧男の後ろに回りこみ、斧男の首にワイヤーを巻き付けた。

「………」

 斧男の首に回された細く頑丈な一本のワイヤー
ワイヤーは斧男の首を一周するように巻かれ徐々に首に食い込む

「あ………がっ………」
 斧男は首に巻かれたワイヤーを外そうと必死に藻掻くが
さらに首にワイヤーが食い込み、とうとう皮膚が破れ血が滲む

しかし、斧男の首を締めるワイヤーはさらにキツく締められていく
――――そして


…………タス…ケ…



ドサっと地面に落ちた丸い塊

続けてドサリと落ちた大きな塊

「…………」

無言のまま落ちたヘルメットを拾い上げるいる首なしライダー

そのライダースーツは血によって濡れていた。
145首なしライダー(代理):2010/01/30(土) 09:04:31.83 ID:7aAJZW+c0

……………タスケテ…


……コノ…コエヲ…トメテ…

ないはずの頭に響く声


「クビヲカレクビヲカレクビヲカレクビヲカレクビヲカレクビヲカレクビヲカレクビヲカレクビヲカレ―――」

元人間の首なしライダーは
徐々に都市伝説に飲まれて壊れ始めていた。



続く?
146首なしライダー(代理):2010/01/30(土) 09:07:25.21 ID:7aAJZW+c0
久しぶりにシリアス?な奴を投下
そしてマッドガッサー編終了お疲れさまです!
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 09:27:54.53 ID:1Q+yuCgk0
首なしライダー乙!!!
ハラハラ展開なんだぜ
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 09:48:47.27 ID:1Q+yuCgk0
戻ってきてもスレが残ってますように!!!
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 10:05:29.43 ID:Zls7quDV0
お出かけ前ほすー
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 10:27:27.39 ID:7aAJZW+c0
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 11:19:20.60 ID:7aAJZW+c0
152???:2010/01/30(土) 11:37:08.29 ID:977x+8/L0

 マレー半島のとある場所、昼でも暗く薄汚い、それ故に人目のない路地裏。そこに二人の男がいた。
 一人は縄で縛られ、壁際に座らされているマレー系の若者。もう一人、その若者を見下ろしているのはくたびれたスーツを着たサラリーマン風の日本人だ。
年は30代半ばといったところだろうか。頬に古い傷跡、無精に髭を伸ばしておりボサボサの髪、首からは石がついたネックレスが二つ下がっている。
 サラリーマン風の男は頬の古傷に指先で触れながらんー、と唸り、
「――そうかい、≪ウパス≫ねえ」
 口に咥えた煙草から紫煙をくゆらせながら英語で発されたその言葉に、縛られている若者も首を縦に振る。
「一時期大量発生していた余波でいまだ活動が活発なんだ。それでアレは、あの毒の木に近づく奴を道中で取り込んでは追い返すなり近くの村に送っているなりしているらしい」
「まったく、何を今更人助けじみたことなんざ……」
 呆れたように言うサラリーマン風の男に若者は問うた。
「……お前、目的はなんだ? なんでいきなり俺を襲った?」
「ここいらの情報が欲しかったっつーのと、あとはお前さんのお仕事風景を見たからなー」
 そう答えるサラリーマン風の男。若者は尚も続ける。
「俺がどこに所属しているか知っているのか? こんなことをして、いずれ仲間が――」
「興味ねえな」
 サラリーマン風の男の言葉には取りつく島も無い。
「っ! 貴様」
 激昂した若者が何らかの力を発動しようとすると、
「無駄無駄、お前正面からきて俺に手も足も出なかったじゃねえか」
 サラリーマン風の男は若者の腹を蹴りつけた。
「ガッ……!」
 肺の中の空気を吐き出すような苦悶の声を上げる若者の前に中途半端に発動した能力で生み出された手術台が一つ落ち、直後に何事もなかったかのように消滅した。サラリーマン風の男はその光景を見て、
「その都市伝説の能力、≪臓器を奪う病院≫だっけか?」

 ――こういう都市伝説がある。海外に渡ったときの事。風邪で病院にいったはずなのになぜか麻酔を打たれ、手術を行われてしまった。
風邪は治ったが、帰国後体の調子が思わしくないため病院に行くとなぜか臓器がいくつかなくなっていた――

「分かってんなら大人しく臓器を差し出せ!」
153???:2010/01/30(土) 11:40:08.56 ID:977x+8/L0
 睨みつけるようにサラリーマン風の男を見上げる≪臓器を奪う病院≫の契約者の若者。それを見てサラリーマン風の男は苦笑いして、
「そりゃ勘弁だ。それに俺の臓器は汚れまくってるから売れねえぞ〜」
 古傷を緩く引っ掻きながら煙を吐き出す。
「あんたが標的さんをバラしているのを見たんで、ああこいつならいいやって思ったんだ。俺、腹ぁ減ってんのよ。――で、俺は今、都市伝説との契約の影響で人肉しか受け付けなくなっててな」
 煙草を地面へと吹き捨て、靴底で踏み消しながら言う。 
「そろそろ餓死の心配をしなきゃならんくらい腹減ってたんだ。いや、これでまたしばらく人を殺さなくて済みそうだわ」
 よかったよかったと人好きのする笑いを浮かべるサラリーマン風の男。その笑顔が敵対する若者には妙な凄みをきかせる。そして思う。こいつは本気だ、喰われる。と。
「おい、や、やめっ」
 若者は後じさろうともがくが、もうそこは壁際である。若者の足は無為に地面を掻き、体は壁面に余計に押し付けられるだけだ。
「あんたが契約している都市伝説、臓器持ってくってのはいけねぇや」
 男は拳を振り上げ、言う。

「俺の娘はな、臓器を奪われて殺されちまったのさ」

 男の首から下げられているネックレスのうちの片方、その先に付いている石が青白く光って――


            ●


「ごちそーさん」
 サラリーマン風の男は食い残った骨を折って爪楊枝のように使っていた。辺りに散らばっているのは人骨と赤黒くぬめる多少の食い残し、いくつかの血だまり、そして若者が着ていた衣服だけである。
154???:2010/01/30(土) 11:42:26.91 ID:977x+8/L0
「おとーさん?」
 そんな血生臭い臭いが支配する路地裏の空気に合わない、とてもかわいらしい童女の声が響いた。
「おう」
 サラリーマン風の男は骨を地面に捨てると立ち上がり、その声の主に手を振った。
「見つけた?」
 童女の声に男は答える。
「ああ、見つけた」
 何を。とは言わない。二人の間でそれは言うまでもないことだからだ。サラリーマン風の男に近づくと、童女は男を見上げて確認の声をあげる。
「ほんと?」
 そう問いを発する声と同じく、とてもかわいらしい童女だった。おかっぱに、白く整った顔立ちは精巧な日本人形を思わせる。
そしてその首にはネックレスが一つかかっていた。青白い石がついたそれは男が身に付けているネックレスの内の一つと同じものだ。
「本当本当」
 そう答えるサラリーマン風の男の言葉を聞いて嬉しそうな顔をする童女。彼女には、男の周囲にある血だまりも人骨も全く気にした様子がない。
「じゃあ、行くか」
 サラリーマン風の男は伸びをして、若者の着ていた服で荒く手を拭うと童女へと手を差し出す。童女は差し出された手を握り、
「うん」
 頷いて歩き出した。路地から出るとそこは人が溢れている市場だ。サラリーマン風の男はそこですれ違った適当な人間の肩を叩き、声をかける。
155???:2010/01/30(土) 11:45:08.52 ID:977x+8/L0
「よお、兄ちゃん!」
 声に振り向いた相手は不審げな顔を男へと向けた。「なぜこの男は親しげに声をかけてくるのだろう?」そんな疑問が顔に浮かんでいる。
 サラリーマン風の男は人好きのする、友好的な笑みを浮かべている。そしてその男の笑みの下、首に下がったネックレスの片方――先程とは違うもう片方から赤い燐光が発された。
 それを見た途端に不審げな顔をしていた相手の男の顔が虚ろなものになり、次の瞬間にはこちらも友好的な笑みを浮かべていた。それを確認してサラリーマン風の男は依頼する。
「そこにちょっと人骨まき散らしてあるんだよ、悪りいけど片付け頼めるか?」
「オーケーオーケー」
 サラリーマン風の男の異常な要求に相手の男は笑顔で承諾した。
「サンキュ。全部終わったら記憶無くしてもいいからな」
 サラリーマン風の男の言葉に頷き、相手の男は先程男と童女が出てきた路地へと消えていった。
 そちらへと視線を向け、サラリーマン風の男は小さな声で呟いた。
「……これで人食は最後にしたいもんだねぇ」
「おとーさん、何か言った?」
「いんや、何も?」
 男は見上げて来る童女に笑いかけ、口の端を歪めると背中にポン、と手を当て、童女に先を歩くことを促した。
 やがて二人の姿は市場の雑踏に紛れて、消えた。
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 11:47:19.23 ID:977x+8/L0
お目汚し失礼いたしました!
書けたら続きも今日中に投下したいです
都市伝説説明等はその時にでも
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 12:23:14.51 ID:977x+8/L0
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 12:55:11.71 ID:1Jr4seiK0
乙!!
まさかウパスネタが拾われるとは思ってなかったwwwwwwww
159少年は、学校町を目指す:2010/01/30(土) 13:11:39.55 ID:7aAJZW+c0
「ぐ……ああ……」
「なんだ……こいつも違うのか」

 とある町の一角。
 ビルとビルに挟まれた路地裏に、その二人はいた。

「や、やめてくれ……殺さないで……」

 縮こまり、震えながら命乞いをする男。
 その周囲は火事にでもあったかのように焼け、溶け、そして焦げている。
 その中心、男と対峙するかのように、一人の少年が立っていた。
 彼は、男を見降ろし……そして、ふっと笑った。

「安心しろ、殺しやしない」

 少年は、巨大な炎を、その手に出現させ

「――――ま、再起不能なくらいにはすっけどよ」

 男へ向けて、軽く放った。
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 13:12:36.59 ID:1Jr4seiK0
支援!
161少年は、学校町を目指す:2010/01/30(土) 13:14:43.75 ID:7aAJZW+c0
「この町にもいない、か」

 裏路地から十メートルほど離れた外。
 男からはぎ取った金品で服をジャラジャラと言わせながら、少年は繁華街を歩いていた。
 右手には、一枚のリスト。
 左手には、一本のペン。
 その左手で、彼はリストに書かれた文字に一本の線を引いていく。
 既にその半分以上が埋められたリスト。
 そこに、新たな一本が刻み込まれた。

「次は、と……」

 リストの線でまだ埋められていない、文字のみが書かれた部分。
 その一部を彼は読み……少し、眉をひそめた。
 
「何だ、こりゃ……随分と多いな」

 ――――そこに記された地名は、学校町。

「人体発火現象に、日焼けマシンで人間ステーキ……その他もわらわらじゃねぇか」

 ――――彼が狙うのは、炎を操る都市伝説。

「こりゃ、期待できそうだ……」

 にやり、と笑って
 少年は、ゆっくりと歩み続けた……。

【終】
162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 13:16:35.76 ID:7aAJZW+c0
今後登場させる予定の新キャラ予告っぽい何か。
とりあえず今から花子さんの方と人体発火現象の方には土下座orz
もしかしたら今後ご迷惑をおかけすることになりかもしれません。
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 13:17:31.78 ID:1Jr4seiK0
乙!!
おぉっと、チャラ男がピンチ!?wwwwwwwwwwwwwwwww

チャラ男の炎は、厳密には「厨2病」との多重契約後にしか炎出せませんが、それでも構いませんか!?
元々の「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力は、炎使ってないとですよ
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 13:20:27.32 ID:7aAJZW+c0
>>163
炎というよりは、相手に火傷をさせる事の出来る人間を探しとるのですよー
炎を使ってなくても、火傷のような症状を出せる都市伝説なら何でも狙ってます
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 13:22:20.56 ID:1Jr4seiK0
>>164
あいあいさー、了解っす
シリアス受難編も控えているし、チャラ男大変だwwwwwwwwwwwww
166マッドガッサー決戦編 エピローグその5:2010/01/30(土) 13:25:57.13 ID:1Jr4seiK0
中央高校での決戦より三日後 「首塚」本部にて


「…よかろう。お前達の存在、気にいった」

 にたり、笑う祟り神
 −−マッドガッサーは、ほっと息を吐いた
 できることならば、同じ空間にはいたくない相手だ
 だが、交渉相手なのだから、仕方ない
 こう言う相手には、こちらから出向いた方がいい

「「あめりか政府の陰謀論」、であったか……あれは、我も好きではない」
「関わった事が?」
「…今、まさに、関わらされている最中、と言った所か」

 ……将門の視線が、マッドガッサーとは別の……ここにはいない、しかし、ここを見ている可能性がある、それに向けられた
 その口元に、笑みが浮かぶ

「もっとも……我をも蟲毒に組み込もうとは、良い度胸だ。かような呪いなど、我が飲み込んでくれようぞ」
「……あー……」

 あぁ、そう言えば、あそこには蟲毒使いがいたようないなかったような…
 ……まぁ、いいか
 これはヘタをしたら、既に「アメリカ政府の陰謀論」に対して、将門の呪いが発動していてもおかしくない
 それは、マッドガッサーにとっても良い状況なのだから…放置する事にした

「………ところで」

 ……と、そこに
 将門と、マッドガッサー以外の声が、響いた
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 13:29:03.31 ID:B4UZvJ340
チャラ男の負担が増す=黒服Dの負担が増す
上層部の方々、黒服Dに頭痛と胃痛に効く薬を支給してやってください…
168マッドガッサー決戦編 エピローグその5:2010/01/30(土) 13:29:40.19 ID:1Jr4seiK0
「俺のこの現状に関して、説明を求む」

 それは、「壁に耳あり」の契約者
 あの決戦の日、うっかりとサンダーバードの足に引っかかってしまい、マッドガッサー達に持っていかれていた彼だ
 …いや、今、彼は「彼」ではなくなっている
 「彼女」になっていた
 つまり、マッドガッサーの女体化ガスを喰らったのである、物の見事に
 彼女の問いかけに、マッドガッサーは答えてやる

「俺を持っていこうとした訳で、色々とムカついた。とりあえず、女体化させても罪はないと思った。反省も後悔もしていない」
「この犬耳と尻尾に関しては?」

 犬耳と、尻尾
 何故か彼女には、愛らしい犬耳と尻尾が生えていたのだ
 恐らく、ダックスフント辺りの愛らしい犬耳と、尻尾が

「ちょっと目を放した隙に、魔女の一撃が薬品投与してた。解除方法わかってるし別にいいかと思った」
「更に言うと、この服装は」

 彼女が身にまとう服装は、クラシックメイド
 これはもう、メイド姿の旧友を笑えるような状態ではない

「約二名ほど、それはそれは楽しそうに着替えさせていた。女二人を止める勇気は俺にはなかった」

 …まぁ、その一方は、自分の契約者であり、恋人なのだが
 楽しそうだったので、止める気はなかった

「最後に……何で俺、「首塚」に連れてこられてんの?」
「お前のとこのリーダーが、こちらと知り合いだと言うんで」
169マッドガッサー決戦編 エピローグその5:2010/01/30(土) 13:31:27.68 ID:1Jr4seiK0
 ……「MI6」の代表者は、将門と知り合いなのだ
 くっくっく、と将門が楽しげに笑う

「あぁ、アレとは知り合いだ。近々、またこの国に来ると言うから、酒でも飲もうかと言う事になっている」
「その時に、あっちに返せばいいだろ」
「この状態でっ!?」

 最大限に、異議を申し立てたい様子の「壁に耳あり」の契約者
 ……まぁ、仕方ない
 うっかりと「アメリカ政府の陰謀論」に操られてしまい、マッドガッサーを捕らえる所だったのだ
 マッドガッサーとしては、この程度の扱い、問題ないと考えていた
 将門も、面白いから問題ない、と考えているようで

「なぁに、安心しろ。受け取りを拒否されたら、こちらで可愛がってやろう」
「どんな意味で!?可愛がるってどんな意味で!?」
「おや、知りたいかぁ?」

 ニタリ、笑った将門
 その笑みに…「壁に耳あり」の契約者は、最大限の嫌な予感を覚えた!!!

「…あー、じゃあ、俺はそう言う事で」
「ちょ!?帰るな、マッドガッサー!?あ、っちょ、ま、どこに手を伸ばして………ッ助けてーーーー!?」

 …「首塚」本部にて、盛大に女性の悲鳴があがったが
 特に、問題はなかったと言う


to be … ?
170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 13:32:49.23 ID:zswu1LI0O
ふーん
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 13:33:19.70 ID:1Jr4seiK0
ドクターの人に焼き土下座っ!!!!orz
「壁に耳あり」の契約者がこの後どうなったかは、作者様にお任せいたします
多分、アメリカ政府の陰謀論の能力効果は解除され済のはず

さて、出かけてくる
帰ってきてもスレが残っていますように!!!


>>167
黒服Dの上司曰く「とっくに渡している。これ以上強い薬はあいつの体を壊す」だそうでs
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 13:33:52.51 ID:1mICp4jVO
首なしライダーの人おつ!

???の人のは……ネクロマンサー?
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 13:39:51.10 ID:B4UZvJ340
>>171
黒服D…あまり頑張らないでくれ…
174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 13:55:50.72 ID:1mICp4jVO
将門さんと火の人おつ!
将門さんwwww
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 14:19:04.46 ID:7aAJZW+c0
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 14:35:38.22 ID:977x+8/L0
炎の人、マッドガッサーの人乙です!

火傷ってーとヤンデレのコーラとかもかな?
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 14:43:45.22 ID:7aAJZW+c0
>>176
火傷をさらに詳しく言うと、相手の体を焦がす力を持った人間を探しているので、ヤンデレのコーラは対象外ですね
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 14:50:13.06 ID:GQLglEYVO
恋に胸を焦がす女の子や
俺に触ると火傷するぜとか言ってる気障な男は
対象に入りますか入りませんねすいません
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 15:07:05.43 ID:B4UZvJ340
消えるカラスも発火を利用してたから対象なのかな?
180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 15:18:31.97 ID:977x+8/L0
なかなか判定が厳しいぜ!
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 15:33:46.01 ID:7aAJZW+c0
むー、サンタのプロットを書いたはいいけど筆が進まなくて困る。
あの話を終わらせないとマゾサンタを使えないんだが……。

>>178
実際にそんな能力を持った都市伝説が学校町にならいそうだから困るw

>>179
ん……火傷と言ってもちょっと手を火傷させるとかそんなレベルではなく、相手を死傷させるレベルなので対象外……かな?
実際にその発火がどれくらいなのか分からないので何とも言えませんが

>>180
一応自分の中で基準は決まってますので、追々書いていければ、とー
深夜、というより明け方という時刻
診療所の二階にある寝室から、一階のトイレに向かってぺたぺたと歩いていくエニグマ妹
「………………んや?」
寝惚けた目に映る、事務室の明かり
それほど広くない診療所なので、そこで何が行われているのかはすぐに判った
「何をしているのですか、ドクター?」
「ん? 静かにしているつもりだったが、起こしてしまったかね?」
「トイレに降りてきただけです……こんな時間にパソコンで何をしているんですか?」
診療所の日常業務はミツキとメアリーが片付けており、多少手が足りなくともバイトちゃんがいれば事足りている
最近ではエニグマ姉妹もいるため、夜中にやる仕事など殆ど無いはずなのだが
「去年の騒動の折に、とある研究に関する成果を譲渡されてな」
「ドクターがそこまで根を詰めるという事は……総統閣下が望むあの研究ですか」
「ああ……都市伝説を人間にする。総統閣下の望む成果であり、ボクの研究の最終地点だ」
視線はモニターに向けたままドクターは語る
「人間と共に生き、人間と共に死す事を望む都市伝説。忘れられ消え去る恐怖に怯える都市伝説。都市伝説へ変じてしまった人間。そんな者達に与えられる選択肢の一つを、完成させれるかもしれん」
「隣人を守る力を持つ都市伝説。永遠を共に歩む事を誓い合った都市伝説。人間を望んで捨てた都市伝説。そんな者達にもそれは与えられるのですか?」
「望まぬ者に押し付けるほど、ボクは傲慢ではないさ」
エニグマ妹の問いに、ドクターは苦笑を浮かべる
「例えばだ。肝臓を痛めている患者に、医者として長生きのために禁酒を勧める。だが酒の無い人生など真っ平だと言われれば、ボクにそれを止める権利は無い」
あふ、と小さく欠伸を漏らし、ドクターはかちかちとマウスを動かしてパソコンの電源を落とす
「さて、夢中になると時間を忘れていたが流石に眠いな。少し眠っておくか」
「あの、ドクター」
遠慮がちなエニグマ妹の声
「その研究が完成したら……もしかしたら、強い力を持つ都市伝説を容易に倒す事が可能になりますか?」
「ふむ、例えば……『アメリカ政府の陰謀論』とかをかね?」
「ええ。私達姉妹は、あいつのせいで故郷も家族も友達も、全てを失いました。お姉は軍人かぶれで自分を誤魔化していますが……私は」
ぎり、と歯を食い縛り
「あいつを殺せる手があるのなら、私は何でもしますよ」
「落ち着きたまえ。実際にこの研究の成果が現実のものとなったとしても、医療で言えば大規模な外科手術ほどの規模になるだろう。望まぬ者に施せるほどのものにはならんよ」
「そう、ですか」
悔しそうな、それでいて安堵したような、そんな複雑な表情
「概念的存在である奴を倒す手段は、第三帝国のみならず様々な組織が研究を重ねている。そう遠くない未来に実現させてみせるさ」
「……はい」
椅子から立ち上がったドクターは、エニグマ妹の頭を軽く撫でる
「さて、話し込んでしまったボクが言うのも難だが夜更かしは美容の大敵だぞ。トイレを済ませて二度寝と洒落込みたまえ」
「はい、ドクターも無理はせずきちんと休んで下さいね?」
「ああ、それではおやすみ」
寝室への階段を昇りながら、ドクターは先程まで見ていたデータを脳内で反芻する
「あのデータの礎になった者達のためにも、この研究は必ず完成させなくては。例えボクがやった実験でなくとも、成果を享受する以上はその業は背負わなければな」

―――

ドクターの足音が遠ざかっていくのを確認し、エニグマ妹は静かに電波を飛ばす
つい先程までの会話の内容を
ドクターの研究の進展状況の推測を
何処へ電波を飛ばしているのか、自分では理解できないまま無意識に
憎むべき敵に蝕まれた事に気付く事無く

―――
「あの女の研究は、予想以上に進んでおるようだ」
「なるほど、『組織』の研究成果を手に入れたのだな。随分と運の良い事だ」
「化物が減れば我らの『毒』が成せぬではないか」
「早急に始末するべきか?」
「だが我らの『毒』はあの女には効かぬ」
「呪詛とて成果が毒や病で蝕むものでは通用せぬ」
「第三帝国の不死者共を始末する方策、まずは成らせるのも手ではある」
「今は泳がせておくのが得策か」
「本国に知らせておけば問題あるまいて」
「しかしこの地の『組織』もそうだが、上層は適切な手駒を使う術を心得ておるまい」
「ならば我らも策を練るとしようではないか」
「駒を用意し舞台を整えようではないか」
「十重二十重に巡らせた策の糸で、あの女を縊り殺し嬲り尽くし」
「魂も骸も我らの玩具としてくれようではないか」
「ところで、この地に住まう将門の怨霊めが我らに気付いているようだが」
「その怨念こそ強いが祟り神としては所詮島国の一将よ」
「『太歳星君』を動かすか?」
「あれは我々総出ですら手に余る最後の手段。今は彼奴めで問題あるまい」
「しかし彼奴めは、裏切りが常。役に立つものか?」
「彼奴めを飼い慣らす駒はこちらの手の内。それに役に立たねば『毒』の礎となるまでよ」
中国人黒服の集団は、まるで造形の違う顔にまったく同じ笑みを張り付かせ
けたけたけたけたけたけたけたけたと笑う
人形劇の人形のように
身体を揺らせて
けたけたけたけたけたけたけたけたと



死亡フラグ?
うちのキャラは全員、作った時点で何本も立ててありますから安心して下さい
185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 15:54:05.66 ID:B4UZvJ340
162 名前:三面鏡@ドクター[] 投稿日:2010/01/30(土) 15:15:50
ダメっぷりが素敵な人々の生活や、様々な事件の前兆が実に楽しみ
手持ちのネタも色々あり過ぎてどこから手を付けていいか迷い気味だ!

>「壁に耳あり」の契約者がこの後どうなったかは、作者様にお任せいたします
旧友「俺……嫁と婿、どっちも行けないんだろうなぁ」(遠い目)

> 火傷をさらに詳しく言うと、相手の体を焦がす力を持った人間を探しているので、ヤンデレのコーラは対象外ですね
アメリカ黒服女「私も熱線発射できまーす」
アメリカ黒服男「お前の熱線食らったら火傷どころか消し炭だ」



以上、代理でした
消し炭どころか灰すら残らないんじゃ…
186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 16:23:10.04 ID:ITpiMH2RP
>>181
   消えるカラス「ついに出番が!?」
山手線の列車砲「姉さん、それあんまりいい役割じゃないと思うよ」

火の玉状態のカラスが落下してくるくらいだから対象外かなぁ
187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 16:57:47.44 ID:Zls7quDV0
むむ、伏線いっぱいでこれからどうなってくのかwktk
つーか今日は投下多いなあ
PSPにキーボード繋げられたら書く速度も速くなるのにーorz
188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 17:22:27.67 ID:Zls7quDV0
189以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 17:32:15.58 ID:B4UZvJ340
休日は創作時間があるからな
スレが残っててうれしいぜ
明日も残ってるともっとうれしいぜ
190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 18:02:11.67 ID:hzoP1Y5+O
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 18:24:36.15 ID:B4UZvJ340
192以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 18:50:55.72 ID:1mICp4jVO
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 18:51:48.13 ID:Zls7quDV0
ただ保守してるだけってのもつまらないからみんななんか喋ろうぜ!
聞いて衝撃を受けた都市伝説についてとか、なんでもいいから!
194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 19:19:17.37 ID:GQLglEYVO
にょーん
195はないちもんめ(代理):2010/01/30(土) 19:19:46.32 ID:B4UZvJ340
「と言う訳で、私はアメリカに出張になりました」
部屋に入ってくるなりそうのたまったのは筋肉達磨、もとい禿
って・・・は?
「出張・・・ですか?」
「はい、暫く帰れませんが後の事は―――」
「ぃいやったぁぁ!!!」
「は?」
やっと、やっと禿から!兄貴から!解放される!!
「出張って左遷の間違いじゃないのか?」
「何にせよ、日本が平和になるのは良い事です
オメデトウ日本、サヨナラアメリカ」
196はないちもんめ(代理):2010/01/30(土) 19:22:00.20 ID:B4UZvJ340
後ろで狐達が何かボヤいているがそんな事はどうでも良い
「・・・言っておきますが左遷じゃないですからね?」
「違うの?」
「アメリカの方で不穏な動きがあるそうで・・・その調査を」
調査とか、一番向いてない人選だと思うが・・・あぁ、殲滅と書いて調査と読むんですね、わかります
「で、貴方の担当なんですが・・・」
「あぁ、そうですね・・・誰が引き継ぐんですか?」
出来ればマトモな人が良い・・・いや、禿と比べればあの髪が伸びるエロい人とてマトモに見えるんだが・・・
「彼が引き継いでくれます!!」
ガラッと勢い良く開かれるドア
「はじめまして、K-2 ガシャンッ
その向こうにいた筋肉に速攻でドアを閉めた
197はないちもんめ(代理):2010/01/30(土) 19:24:14.87 ID:B4UZvJ340
「何をするのです?」
「チェンジで」
やっと禿から解放されると思ったのにまた筋肉とか冗談じゃない!!
「むぅ・・・私の後釜に彼以上の逸材はいないと思うのですが・・・」
「もっと普通の面白みが無い黒服はいないんですか?」ガラッ
「心配は要りません・・・仕事は出来ます」
再び開くドアから出てきたマッスルクリーチャー
「実は彼は純粋な『組織の黒服』なのです・・・だから仕事の点では問題は有りません」
「・・・純粋なのは感情を持たない筈では?」
「そうです、しかし私はマ神と出会い目覚めました・・・」
サイドチェスト!!
「愛と!!」
ラットスプレッド・フロント!!
「筋肉美に!!」
ダブルバイセップス・フロント!!
「一々ポーズを取るんじゃない!!」
「では232、後の事は任せました」
「ハッ!ご期待には全力で」
「え!?何?!マジでこの人なの?!」
「では、日本は任せました!!」
「はい!!」
「聞けよ!!」
何だか話を纏めようとしてる禿にツッコミを入れたが聞いちゃいねぇ!?
198はないちもんめ(代理):2010/01/30(土) 19:26:39.30 ID:B4UZvJ340
「かごめかごめの契約者、影守さんでしたか、私はK-232改めてよろしくお願いします
先に言っておきますが、私は筋肉でなかろうとノンケだろうと構わないで食っちまう黒服ですのでその積りで」
「・・・禿より見境が無いと申すか」
既に逃げの体勢を取っていたコンがポツリと漏らす
「あぁ、ご安心を・・・女性には興味ありませんから・・・では、かごめかごめの契約者是非親睦を深める意味でも男同士の突き合いを」
「付き合いの字が違うと思うのですが気のせいですか?」
「えぇ、気のせいです・・・では、イキましょうか」
何処に?!
ジリジリとよって来る232
既に我関せずと言った風の白面金毛
壁際に追い詰められる
逃げられない!!
「ちょっ・・・二人共!!」
「私は何も聞こえていない」
「・・・成仏してくれ」
ちょっ?!
「では、イキますよ」
「え?!あ、あ」
199はないちもんめ(代理):2010/01/30(土) 19:31:44.02 ID:B4UZvJ340
                  ,,,r------.、   , -‐――- .,_
   __,,,,,,,,---――-、   ,r"       i、 ,/'       ゙ヽ、   ┌―、
 | ̄      _、  ゙i  ,r"         V          '、    l   │
 |,,,,,-―''''''"゙゙゙ ,i  / ,i                      i    |  │
     .| ̄~ァ ,l  /  |        ________    i   l゙  ,i
    ,i'  │ ヽ_/  | ̄| | ̄ l/ ̄ 7 |     __,,,,,,,,,,,,,|  l   i'  .!
    ,i'   ,i'      l、_从__ツ   ./ "''''"" ̄          /   ゝ--'
   ,l'   ,i'         ヽ/  ,/              ./    i´""!
   く   ,i'          l  /              /     ゝ- '
    ヽノ           ヽノ \,_          ,r''″
                      ゙'ー、,_  _,,r‐''"
                         ''v"

その後、(しばらく)かごめかごめの姿を見た者はいない・・・







かごめかごめの不遇っぷりは異常だと思います…
だが、それでこそかごめかごめだと思います
200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 19:38:33.42 ID:977x+8/L0
乙でしたwwwかごめかごめwwwwもう目覚めてしまえwww

さて、俺も投下行きます!(長い)
201???:2010/01/30(土) 19:41:00.49 ID:977x+8/L0


            ●


 傾き始めた日差しの下、オープンカフェにあるような白い丸テーブルに座って談笑しているのはサラリーマン風の男と一人の少女。
丸テーブルにはそれぞれコーヒーと紅茶、それにクッキーが置いてある。
 くたびれたスーツに無精髭の30代半ば程に見える男が辺りにいる人々を一度見まわし、
そこに居る人々が皆楽しそうに歩きまわっている様にどこか所在なげに頬の古傷をボリボリかきつつ、対面の席に着いて紅茶を飲んでいる少女に頭を下げた。
「いやぁ、悪りいな」
 十代の前半か後半か、いまいち判然としない容姿の少女がサラリーマン風の男の言葉に腰まで伸びた濡れたように艶やかな長い髪を揺らして笑みで答える。
「いえ、浅井秀也(あさいしゅうや)さん、でしたよね? 驚かれないんですね。皆さんここを見ると初めは驚かれますよ?」
 サラリーマン風の男――浅井秀也は少女の言葉に周囲を、今度はカラフルな石畳や遠くにちらりと見えるジャングルのような森、様々な国から移設したような多種多様な建物などの景色を見回して、半ば呆れながら答えた。
「そいつぁまあ、そうだろうよ。いきなりこんなところに連れてこられればビックリするわ」
「やはりそうでしょうか?」
 少女は口をつけていた紅茶をテーブルに置いて小首をかしげる。浅井はその仕草を見て小さく噴き出しながら頷き、笑いの残滓が残る声で言う。
202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 19:42:57.02 ID:B4UZvJ340
しえーん
203???:2010/01/30(土) 19:43:56.66 ID:977x+8/L0
「しっかし、皆に夢を与えるために活動しています、ねえ……まあ白昼夢にしては派手だな」
「白昼夢、ですか」
 浅井の言葉に少女がくすりと笑う。
 おいおい、と浅井は困ったように髪をかきまわし、
「こいつは俺が見てる夢ってことでいいんだよな?」
「……ええ」
 少し考えるような間を置き、笑顔で答える少女。
「一瞬の間が気になるぞおい」
 コーヒーを啜ってぼやく浅井にただ笑顔を向け、少女は別の話題を振る。
「でもあのままあの道を進まれては危なかったんですよ?」
 その言葉に、彼はここに来ることとなった経緯を思い出す。
 山道をあの若者から得た情報を元に歩いていて、気が付いたら周囲の風景ががらりと変わっててここにいて。で、話を聞いてみたら――
「……≪ウパス≫だっけか? この国にある毒の木とかいう」
「ええ、ちょっと毒が勢いよく広がっていて危険だそうですよ」
 世界規模で一時期この類の問題が起きていたんです。だからせめて私が守れる範囲は、と思って。
 そう告げる少女を見て浅井はしばし思案し、なにか閃いたように唸る。
「んん、まさか今俺が見てるこれは俺がその毒にやられている証とかか? 幻覚とか? あ〜だから俺はこんなにかわいらしい娘っ子と話してるのか……?」
「そんなことないですよ」
 頭を抱えて唸りだした浅井を見て、困ったように少女。
 まあいいか。と浅井も苦笑し、少女をまじまじと見て問うた。
「ところで娘っ子、日本人か?」
「あ、はい」
 ああ、やっぱり。と浅井は手を打ち、言葉を日本語へと変える。
やっぱりこっちの方がしっくりくるねえと笑いながら、
「こんな不思議なところでまさか同郷と会えるとはなー。あ、俺クッキーとか食えないから娘っ子にやろう」
 「いただきます」と控えめに受け取った少女。
204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 19:45:13.13 ID:B4UZvJ340
えーん
205???:2010/01/30(土) 19:46:20.23 ID:977x+8/L0
 浅井は頷き、三度、周囲を見回した。
そしてそこにある幸せそうな光景を見て居心地の悪そうな深いため息を吐くと、「じゃあ」という言葉を切りだしの合図にして、
「娘を遊ばせてもらってる間わざわざ話相手になってくれてる娘っ子に俺の軽快な茶飲み話をしてやろう。これでも歳は50も後半でな、いろんな話知ってるんだぜー? つっても日本人ならどっかで聞いたことがあるかもしれない話だがな」
 そうおどけて言う浅井はどうみても30代だ。少女が意外そうな顔をしていると、彼は語り始めた。

「――あるところにごく普通と言ってもいい家族があったとさ。三人家族でな、夫婦の間には娘がいたんだ」

 それはそういう、どこにでもあるような語りだしから始まった。
206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 19:47:23.82 ID:B4UZvJ340
しえしえ
207???:2010/01/30(土) 19:48:43.03 ID:977x+8/L0
「ある時、その家族は遊園地に行ったんだよ。ひと通り遊んで楽しい時間を過ごしたんだ。ところが、両親がふと目を離した隙に娘の姿は消えちまってた。
 両親はそれはそれは必死になって探したんだけどな? どうしても見つかんねえのよ。どうしても、どうしても見つかんねえけどやっぱり諦めきれなくてな。
ずっとずっと探してたんだ。そんなことをしていたらその内嫁さんの方が不安定になっちまってな。
こんなことになったのは『≪結婚相手が見える洗面器≫なんかと契約した自分のせいだ!』って言い出すようになっちまった。
 まあそんなこんなで嫁さんは責任感じて自殺しちゃうんだよな。夫の方は自殺するような度胸もなくて、かといって積極的に生きることもできなくて、しょうもないことに日々酒に逃げてたんだよ。
そんなある日さ、駄目親父の所に一人の娘っ子が現れたのさ」
 浅井はそこで一度話を切り、カップに残ったコーヒーをぐいと飲み干した。
 少女は浅井の話を聞いて心なしか顔をこわばらせている。それを見て、しかし彼は何も言わずに先程までとはうって変わった無表情で、まるで罪状を読み上げる裁判官のように淡々と話を続けた。
「その娘っ子はな? その駄目親父の娘が遊園地、そう、夢の国とか呼ばれることもある遊園地で都市伝説としての≪夢の国≫にとっ捕まって、おそらくはもう内臓を抜かれて殺されているだろうって聞かせてくれたんだよ。
 ――はは、笑えるよなぁ? その駄目親父は娘っ子の話なんて当然信じたいとは思わなかった。
でもさ、どうしてもその駄目親父は娘っ子の話を信じざるを得なかったわけよ。その駄目親父はもともと都市伝説っつーもんと契約していたし、娘っ子に映像を見せられちまったからなぁ。ビックリだぜ? 
目の前にいきなり自分の娘が虚ろ〜な顔して土気色の顔でゾンビみたいに歩いてる映像が出てくんの。で、刺されちまってた。
その映像を見た瞬間そのままその娘っ子と契約したのよ。娘っ子も≪夢の国≫に恨みがあるらしくてな。娘っ子が見せてくれた映像はどうも一度そいつと戦って負けたときのやつだったらしい」
208???:2010/01/30(土) 19:53:29.60 ID:977x+8/L0
 浅井はそこで言葉を切る。少女は顔を彼に向けて、訊く。
「……それで、その人は……どうしたんですか?」
「ああ、無気力だった駄目親父はそこでやっと復讐っつー生きる目的を見つけてな。≪夢の国≫を倒すための力を求めながら≪夢の国≫を、仇を探したんだ。その駄目親父が娘っ子と会う前から契約していた都市伝説。
その力で探そうとしたんだがよ、これが大した力も持ってなくてさ、やっと見つけたと思って≪夢の国≫が居る現場に行った時にはもう≪夢の国≫はいなくなってたんだ。で、また見つけてみたら≪夢の国≫は遠くはマレー半島にいやがるときた」
 いや、まいったまいったと呟く浅井。そんな彼を見て、何かを覚悟したような顔で少女は問いかけた。
「その人というのは、そして娘さんの臓器を奪っていったのは…………」
 「ああ」と浅井は歪んだ笑みで笑いかける。
「その人、駄目親父ってのは俺のこと。――で、臓器を奪ってったのは≪夢の国≫の王様、つまり……」
 歪んだ笑みを張り付けたまま、醜く爛れた心の傷を少女に見せつけた浅井は糾弾の言葉を叫んだ。


     「お前だよっ!!」



209夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 19:58:10.65 ID:977x+8/L0


            ●


 浅井の叫び声が木霊した直後、彼等が間に挟んでいた白い丸テーブルが、乗せていた皿とカップごと高く宙を舞った。
 浅井が椅子に座ったまま直上に蹴り上げたのだ。光を放つ二つのネックレスが彼の首元で跳ね、その動きの名残を残している。
「――だからまあ、死んでくれ」
 浅井と少女――≪夢の国≫の王様、夢子の間を遮るものが無くなり、彼女へと一直線に開けた通路を浅井が駆ける。
 半歩もいらない。出した足は身を起こし、拳を放つための踏み込みであり、
「――っ!」
 通路を踏み砕く震脚と共に放たれた拳は豪速。
 未だ椅子に座って驚いた表情をしている夢子に避ける術はなく、
 しかし浅井の拳は誰も座っていない椅子を破壊しただけであった。

 ――知ってる? 王様は一人しか居ないけどね、世界中のどこにも居るんだよ。

 浅井の背後から夢子の声が聞こえる。
210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 20:00:15.61 ID:B4UZvJ340
しえーん
211夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 20:02:16.38 ID:977x+8/L0
「ちっ!」
 舌打ちが響き、周囲に居た≪夢の国≫のゲストたちが事態に気付き悲鳴を上げる。浅井は落下してきた白い丸テーブルを片手で受け止め、
「流石に当たんねえかあ、≪夢の国≫の王様さんよぉ!」
 続く動作で投擲。
 白い丸テーブルが向かう先にはいつの間にか移動していた夢子が立っている。
 だがテーブルが夢子の居た地点に届くまでの間に再び彼女の姿は消え失せ、テーブルが砕音と共に壁に激突して砕け散った。
「皆、避難を!」
 そして浅井の後方で張り上げられた声。
 彼女の周囲に集まってきていたマスコットと住人が王の命令の下、≪夢の国≫内部に居る人々の避難を開始しようとした。
 しかし、
「おっと皆さん、あの娘っ子――≪夢の国≫の王様を捕らえてくれや」
 そう割って入った声に従い周囲の人間がマスコットや住人を突き飛ばし、こぞって夢子を拘束しにかかった。
「え?」
 避難誘導をしようとするマスコットの腕をかいくぐって自分を捕らえに来た老若男女を見、夢子は疑問の声を上げる。
 悲鳴が、ない?
 先程上がり始めたばかりの悲鳴が静まるには早すぎる。そう思った直後、彼らの目に操られている者特有の、――以前彼女自身がしていたであろう――虚ろな光があるのを夢子は確認して、
「手荒にしちゃダメだよ!」
 反射的にマスコットや住民たちに厳命を下した。とっさに駆け寄ろうとしていたマスコットたちが彼らに手を出せなくなり、到着が遅れる。
 夢子がそうしている間に浅井はネックレスの片方を青白く、もう片方を赤い燐光で発光させ、拳を引き絞り迫っていた。
「そうそう、手荒にさせねえでくれよー」
 放たれる拳は一直線。夢子が避ければ彼女を拘束している幾人かが巻き込まれる軌道。
 相手の力の正体は分からず、しかし先程の震脚の威力から見るに少なくとも普通ではないものだと判別はつく。そんな人間から放たれる拳に打たれれば人など簡単に砕けるだろう。だから、
「っ」
 四肢を何人もの手で掴まれたままその場から移動せず、夢子は身を固くした。自分の体が彼らに向かうであろう衝撃を軽減してくれるように祈りながら。
212夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 20:05:37.38 ID:977x+8/L0
 しかし、浅井の拳は夢子を打たず、代わりに夢子の首元のペンダントから発された緑がかった青色の光に弾き飛ばされた。
「何だ!?」
 目を見張った浅井が咄嗟に身を引いた。同時に夢子の首元からは何かが砕けるような小さな音がする。
「――ぁ」
 砕けたのはターコイズ、旅の守護を祈り災いをさける≪パワーストーン≫。旅立ちに際して彼女の友人がくれた物だ。
 ペンダントの崩壊と共に浅井とは逆方向へと弾き飛ばされた夢子はペンダントの残骸を見、「すみません」と小さく呟き、大きく息を吸う。
「これよりこの場を順次関係者以外立ち入り禁止にしますっ!」
 張り上げられた言葉と共に周囲に居た人々が一人、また一人と消えていった。同時に、
「しっかり送り届けてね。全ては白昼夢だったって思わせることを忘れちゃだめだよ?」
 そう言ってマスコットや住人を人々と共に≪夢の国≫の外へと飛ばす夢子。
 周囲から全ての気配が消えたのを確認していると、
「こりゃあ、外に出したのか? 異空間を挟んだっつーことは、操作範囲から逃げられちまったかな」
 頬の傷跡を撫でながら浅井が立ち上がって呟く。そして夢子の周囲を見て誰も居ないことを察すると、
「アンタの護衛もいなくなってるな、――じゃあ」
 彼は一歩を踏み、二歩目から疾走。
「もう少し頑張ってみようかぁ!」
 接敵と同時、蹴りが放たれ、夢子が避けた。
 標的を見失った足はオープンカフェ風の建物の壁をなんなく蹴り砕く。その結果に「当たらねえか」と吐き捨て、
「その力は……?」
 蹴りで壁を打ち壊した浅井へと夢子は問いを放った。彼は頷き、足を壁から引き抜きながら答える。
「おうよ、アンタを倒すために契約した都市伝説の能力ってやつだ」
「……思いとどまっては」
 話し合いで済めば良いと思いながら夢子は訴えかける。
「やれねえな。何を思って宗旨変えしたのか知らねえが、アンタがやったことを無しにゃあできねえ」
 浅井の言葉に夢子は「そうですか」とだけ言い、数呼吸置いて、
「……私は、あなた方のためには、死ねません」
 約束がありますから。そう、はっきりと告げた。
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 20:09:28.92 ID:B4UZvJ340
支援
214夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 20:09:36.92 ID:977x+8/L0
「……そうかい」
 浅井はそれだけ言うと拳を構え――――

 その時、「おとーさーん」と、幼い女の子の声が聞こえた。

「!? まだ人が!?」
 夢子が慌てたように振り向く。と、そこにはおかっぱの童女が居た。
「子供、立ち入り禁止になってんじゃなかったのか?」
 浅井がそう言う間に夢子は童女の前に現れていた。父親とはぐれたためか、それとも戦闘の気配を敏感に察したのか、どこか緊張した面持ちの童女は、
「王様?」
 突然目の前に現れた夢子へと窺うように声をかけ、それに夢子は眉尻を下げた笑みを浮かべる。
「ごめんね、ここは立ち入り禁止になっちゃったから、また今度、ね?」
 言葉に童女は夢子を見上げ、安心したように満面に笑みを浮かべて彼女の首っ玉に抱きついた。
 同時、夢子の背から腹へと衝撃が抜ける。

 ズブッ、

 という肉を抉り抜く音と共に背から腹へと浅井の貫手が貫通した。彼のどこか気の抜けたような声が夢子の耳に届く。
215夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 20:12:04.64 ID:977x+8/L0
「……まさか本当に噂通り、まともになってやがるとはな。こんなに上手くいくとは思ってなかったわ。
――ああそうそう、その子はこの件の関係者だから『関係者以外立ち入り禁止』じゃあ通じないぜ。なぁ? ――さっちゃん」
「……ガ、……ッ?」
 血と共に吐きだした疑問。それに答えたのは首っ玉に抱きついている童女だった。
「うん」
 童女――さっちゃんは、警戒されずに≪夢の国≫の王様へと近づけた事で浮いた満面の笑みを浮かべたまま、彼女の耳元へと口を寄せ、歌を朗じた。
「さっちゃんはね――」
 それは詞の裏に不吉な意味を含んだとされる歌で、

 ――バナナが大好き、ほんとだよ?

「!?」
 歌が耳に入った瞬間、夢子の身体から力が失われ、
「飛んでけ」
 力が抜けたその身体は貫手の刺さった腹を支点にして振り回され、

 グシャッ、

 と壁に叩きつけられた。血が、内臓が、骨が、砕けて潰され張り付きずり落ち、
 そこにはズタズタになった肉の塊が――
216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 20:14:54.83 ID:B4UZvJ340
支援だ
217夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 20:15:23.89 ID:977x+8/L0
「――っ、みん、なの避難は……終わった?」
 夢子は起き上ると、周囲、数人残って≪夢の国≫を見回っていた住人たちに確認を取り始めた。
 その身体に空いていた穴は血の跡だけをべっとりと残して既に塞がっている。
「チッ、駄目か」
「おとーさんっ!」
「ああ、分かってる、夢の国では人は死なねえっつーやつだな」
 浅井の言葉に童女は頷く。そして、
「でも、さっちゃんやったよ!」
 笑みで言った。
「ああ、流石自慢の娘だ。じゃあ切り札いくか!」
 そう口を笑みの形に歪めて言うと、夢子へと浅井は声をかけた。
「おい、王様さん」
 夢子はふらつきながら答える。
「……は、い」
「もうここには一般人は誰もいねえんだよな?」
「は……い」
 浅井の念を押すような質問に答えながら夢子は呼吸を無理やりにでも整えようとしていた。
 ……おかしい。
 彼女はそう思う。今だに先程の歌を聞いてから感じる身体の不調が抜けないのだ。ともすると意識が刈り取られそうになる。
「じゃあ試すぞ」
「なに、を」
 うまく回らない口を動かして夢子が問いかける。浅井は彼女を見て一つ頷き、問いに答えた。
「死なねえ≪夢の国≫は蒸発したらさてどうなるかってな。逃げる気力もなくなってるだろ?」
 その言葉が終わるか終わらないかのうちに夢子の体が傾ぎ、地面に倒れる。その間際、彼女はまるで地面にでも潜り込んでしまったかのようなタイミングで転移し、距離をとった。
「これ、は……?」
 転移した先で震える体をなんとか持ち上げようと足掻き、苦しんでいると遠くから浅井の声が聞こえてきた。
「どうよ? バナナを半分しか食えなくなっちまうような病ってのは。つってもちょいと手を加えてあるからもっともっと苦しいのか? ――まあどっちでもいいや。ともかく、死んで復活しても付きまとってくる呪いはキツイだろ?」
218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 20:17:51.98 ID:1mICp4jVO
なんかすごいことに!
支援
219夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 20:19:13.52 ID:977x+8/L0
 その言葉に続くようにさっちゃんの声が聞こえる。
「呪いだから、お兄たんの、みんなのかたきがうてるまで、死んでも死んでも死んでも死んでも死んでも……どこまでも……死ぬまで殺してやるんだもん」
「……のろ、い」
 呟く夢子を見てさっちゃんが浅井を急かすように言う。
「おとーさん、早く」
「ああ」
 浅井が何かしようとすることを察し、ゲストを送り届けてきた≪夢の国≫の住人が男の前に立ちはだかり、立ちふさがる。
「そんなんじゃ止めらんねぇよ」
 浅井がそう言うと、その首元のネックレスの光が一際強く瞬き、身体全体をスーツが唐突に変化してできた堅い殻に包んだ。
彼の姿は一瞬にして外殻を纏う異形と化し、その異形は襲いかかってきた住人たちを剛腕で殴り飛ばすと、夢子を庇う壁のように布陣した≪夢の国≫の住人たちに向けて大きく息を吸い、口を開け、
 告げる。
「喰らえ」
 その言葉と共に、異形となった浅井の口から強烈な閃光と共に熱線が放たれた。
 一番初めに突き抜けたのは一直線の光だった。次いで衝撃が巻き起こり、音が響く。
 熱線は遥か遠方で弾けると己の持っていた衝撃力を周囲に開放し、爆発が起こる。
 カラフルな舗装路が見る影もなく捲りあげられ吹き飛ばされ、並んでいたアトラクションや屋台が破裂する。
 嵐のような強風が爆心地を中心にして吹き荒れ、大気がかき乱れる。
 そして、その全てが十秒足らずで収束したとき、浅井の目の前にあった≪夢の国≫の構造物はその全てを焦土へと変じていた。
220夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 20:23:25.08 ID:977x+8/L0


            ●


「――――、ゲホ、ゴボッ……ハァ、……どうだ?」
 苦しそうな呼吸と共に血を吐き捨て、外殻をただのボロスーツに戻しながら、浅井は廃墟と化した≪夢の国≫を見つめて呟いた。
「おとーさん、大丈夫?」
「ああ、一応な」
 さっちゃんの心配気な声に努めて笑顔で答え、彼は周囲を見回す。前方、≪夢の国≫の王がいた場所にはただ一面の焦土が広がっているだけだ。
「……これは、やったってことで、いいのか?」
 周りの、未だ残っていた≪夢の国≫の結界が解けていく光景を見ながら言う浅井に、しかし、
「ううん」
 さっちゃんは首を横に振る。
「逃げた。地下に」
「地下?」
 さっちゃんの言葉に浅井が地面へと目を向けるとさっちゃんは、「そこじゃない」と頭を振り、
「地下カジノ」
 言った単語に浅井は「そうか」と呟き、彼女の頭を撫でた。
「じゃあまた、どうにかして追いかけねえとな」
 地下カジノにはどうしたら行けるもんかなあ。と彼は思案するが、さっちゃんはこともなげに言った。
「うん、このまま一気にいこう。ぜったいに、カタキをうつんだもん」
「ん?」
 浅井の疑問の声と共に二人の姿も瞬時に消え、焦土と廃墟になった≪夢の国≫の姿も霧散し、後には白昼夢のごとく何事もなかったかのように、山道が広がっているのみであった。
221夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 20:28:14.05 ID:977x+8/L0



            ●


 ≪夢の国の地下カジノ≫は混乱していた。

 ≪夢の国≫の王様が突然血まみれの衣服と共に衰弱しきった状態で落ちてくればそれも必然だろう。
 夢の国のお姫様たちが地下カジノ中に異変を知らしめるように口を開く。
「王様が落ちてきたわ!」
「服に血が付いています!」
「大丈夫!?」
 お姫様たちが騒ぎながらもテーブルを一つ空け、その上に夢子を乗せて介抱し、小人が夢子の症状を見る。やがて小人の表情がこわばり、
「この症状は……まさか」
 いや、彼女にしては症状が強力過ぎる。そう小人が呟いた時、重量物が落下する音がまた一つ響いた。
 落下音の正体は二人の人影で、
「――っつー、いきなり移動とか勘弁してくれよなー……、と」
 落ちてきた人影の片方、所々穴があき、ボロボロになったスーツを着たサラリーマン風の男――浅井秀也は手に持っていた外殻の破片を放り捨て、周囲を見回し、感心したように言った。
「≪夢の国の地下カジノ≫だったか、立派だなあおい」
222夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 20:30:39.63 ID:977x+8/L0
「貴方がたはいったい……!?」
 浅井に誰何の声を上げようとした小人もお姫様も、もう一人の人影、さっちゃんを見て時が止まったかのように口の動きを止める。そんな中、
「どう、して……?」
 どうして地下へ入ってこれたのか? テーブルから下り、手を着いて身体を支えながら、夢子はその理由を半ば確信しつつ問う。
答えはさっちゃんの口から発された。
「だって、ずっと前にもらったんだもん。地下トンネルのお兄ちゃんに、ここに入る権利を」
 出てきた都市伝説名は夢子にとっても覚えのあるもので、
「あの人、から……じゃ、あ」
「思い出した?」
「確信しま、した」
 夢子は憶えている。自身がまだ夢の国の創始者に操られて間もないころに戦い、殺した契約者たちを。
 じゃあやっぱり。と小人や姫たちが囁き合う。夢子はそれら全てを代表するように、言った。
「≪さっちゃんの歌の四番目≫ですね」
 それに「うん」と答え、さっちゃんは俯き、呟いた。
「ただいま」
 発された帰宅の言葉。二度の闖入者にざわつく≪夢の国の地下カジノ≫。
 事情が把握しきれず、動けない彼らの隙をついて浅井が動いた。為す動作は簡潔だ。≪夢の国≫の王を殺す。ただそれだけ。
他の一切を無視して、何かに手をつくことによってようやく身体を支えて立っている夢子へと能力によって人外の威力に強化されたその剛腕を――

「――受け止められれば、幸せだな?」

 受け止める青年の姿があった。
223Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 20:33:30.74 ID:977x+8/L0
 ……なに?
 浅井は一瞬目を見張る。視界の隅では彼が首から下げている二つのペンダントがそれぞれの光を放っており、拳の重さに顔を顰める青年の足元は男の打撃のあまりの重さに床を割り、沈みこんでいる。
 能力は発動してるな。
 一考。
「契約者か」
「都市伝説だ」
 浅井が逆の拳を持ち上げた時には青年のもう片方の手に白い光があった。
「破ぁ!!」
 青年の気合い。浅井はとっさにスーツの腕部分を都市伝説の能力で変異させ、堅い外殻にして纏い防ぐ。しかし青年から放たれた光弾を受けた外殻は弾け飛び、体も吹き飛ばされた。
 ソファを破壊して止まった体を起こし、浅井は口を開く。
「どけっ! その王様は俺たちの仇なんだよ!」
 叫びと共に口から熱線を放とうとして、
「――ガッ、フ!?」
 不意の痛みと共に血がこぼれ出た。
「……チッ、やっぱ無理か」
 そう吐き捨て、もう片方の腕のスーツの袖で口を拭い、突然割って入ってきた青年を睨む。
 二十代前半といったところだろうか。その年代の者にしては少し落ち着いた印象を受ける容姿。
黒髪を先程自ら放った光の余波で小さく揺らし、端整な顔立ちにどこか超然とした雰囲気を纏い、鋭い目で浅井を射抜くように見据えている。
224以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 20:42:23.77 ID:GQLglEYVO
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 20:42:52.28 ID:1mICp4jVO
Tさんきたか。支援
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 20:57:01.62 ID:B4UZvJ340
風呂上り支援
227Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 21:00:22.84 ID:977x+8/L0
 睨みあうこと数秒、二人はほぼ同時に言葉を放つ。
「契約している都市伝説と能力が分かれば幸せだが」/「ついうっかり能力とか話してくんねえかな」
 青年の体から一瞬フラッシュのように光が、浅井の首に下がったペンダントの片方から発されている赤い燐光が一瞬その輝きを増した。……が、
「やはり(やっぱり)都市伝説や契約者には効きづらい(づれえ)か」
 そう互いが呟いていると、
「Tさん! 夢子ちゃんが!」
「分かってる」
 青年が肩口までの長さの黒髪を適当にまとめ、頭に人形を乗せた少女の言葉に返答した。そうしつつも浅井の睨む眼光は揺るがない。
 一筋縄じゃあいかねえか、めんどくせえ……。
 浅井はそう思い、さっちゃんへちらりと視線を向けた。


            ●


 さっちゃんは周りを見回し、半ば呆然としていた。
「なんで……」
 なぜ≪夢の国≫の王を皆こんなにも心配するのだろうか。
「それに、おとーさんを止められる人がちょうど居るなんて……」
 それだけの物理的な力を持っている者が居るなんて、なんという偶然だろうか。
「……まさか」
 はっとして目を向ける。
228Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 21:03:03.90 ID:977x+8/L0
 ≪夢の国≫の王様の首から一つ、先程のパワーストーンとは違う、力のある装飾品の気配を感じた。それは以前見知っていた都市伝説が持つ気配と同じもので、
 頭に人形を乗せた少女に支えられ、身を折った≪夢の国≫の王様の胸元から装飾品が――≪カーバンクル≫の毛でできたお守りが零れた。
「≪カーバンクル≫のお兄、ちゃん?」
 それは≪カーバンクル≫本体のような強烈な幸運をもたらすわけではない。与えるのはささやかな幸運のみ。しかしそんなものは関係がない。
さっちゃんは≪カーバンクル≫のお守りが運気を与えていることを見てとり、その意味を理解し、しかし認めたくなくて、周りの皆を見、声を放つ。
「みんな! この人が何をしたかわすれちゃったの!?」
 声が地下カジノ内に反響し、ザワついていた地下カジノから音が消えた。そんな中、青年の声が諭すように響く。
「それは今の≪夢の国≫の王――夢子ちゃんがその意思で為した事ではない」
 そうして語られたのは≪夢の国≫にまつわる一連の事件の顛末。夢子の立場。そして――
「夢の国の創始者……」
 青年は頷き、
「それが夢子ちゃんを操っていた犯人で、お前たちの仇だった存在だ」
 浅井は依然青年を睨み据えたまま問いかける。
「その話、本当か?」
 浅井の言葉を受け、青年はさっちゃんへと視線を向ける。
「≪さっちゃんの四番目≫。夢子ちゃんに≪カーバンクル≫の加護があり、かつて敵対していたはずの夢の国の姫君やこの地下カジノが彼女を拒んでいない意味。君になら分かるな?」
 青年の言葉にさっちゃんはしばし沈黙、地下カジノ内の自分たち以外の全ての存在が≪夢の国≫の王様を守ろうとしているのを確認して、頷き。
 そして小さく声が発された。
 それは、
「……そんなの」
 少しずつ大きくなり、
「そんなの」
 感情がにじみ、
「そんなの!」

 最後は、どうしようもない心の叫びとなった。

「そんなの、――――――――ゆるせないよっ!」

229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:04:02.22 ID:GQLglEYVO
支援
230Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 21:06:25.25 ID:977x+8/L0

            ●


「サッちゃんはね、バナナが大好き! ほんとだよっ!!」
 そうさっちゃんの叫びが響いた直後、青年――Tさんは体に不調を感じた。
 周りでも次々とお姫様たちが倒れていく。
「これは……」
「さっちゃんはねー、バナナが大好きほんとだよー」
 自らの突然の不調を訝しむ青年の耳に浅井が口ずさむ童謡が聞こえてきた。
「だけどちっちゃいから、バナナを半分しか食べられなーいのー」
 そして浅井はにやりと笑う。それは意外にも人好きのする笑みに見えた。
「可哀相だと思わねえか?」
 同意を求めるように言われた言葉に青年はああそうか。と思い、
「バナナを半分しか食べれないのはさっちゃんが病気でそれだけしか食べることができなかったからという……」
「ご名答」
 ≪さっちゃんの歌の四番目≫が契約して得た能力ってやつだ。二番目の歌詞だっけか? と浅井は言うと、
「さってと」
 ソファを蹴飛ばし、足元がおぼつかなくなってきた青年へ突っ込もうと足を折り曲げ力を溜め、
 眼前に立ちふさがった夢子を見て驚きの声を上げた。
「ぅおっと!?」
 浅井はとっさに後方に跳びはねて夢子から距離をとる。夢子は憔悴しきった顔で、それでも目だけは真っ直ぐに浅井を見ていた。
「おいおいおい、ブーストされた二番だぞ? 多少緩めたって何万人規模で呪殺できる負荷がかかってるはず……」
 浅井の戸惑いを含んだ呟きに夢子は声を振り絞って答えた。
「王……様、ですから」
 手にネヴァーランドの永遠の少年が持つ短剣を構え、
「私の力が及ぶ限り皆さんを護る義務が、私にはあるんです。そも……そも、皆さんをこんな目にあわせているのは私の、せいですしね」
 途切れ途切れの言葉で告げる。と、
「解呪できれば幸せだ」
 声に合わせてガラスの割れるような音が響き、全身に淡い光を纏わせた青年がゆらりと立ち上がって身構えた。
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:07:37.23 ID:B4UZvJ340
支援
232Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 21:09:23.47 ID:977x+8/L0
「……やるねぇ、青年」
 夢子と、解呪を連続で宣言する青年を交互に見ながら言う浅井に青年は頷き、
「まあ、身体の構造自体をいじる必要のない状態異常ならばなんとかな」
 そうかい。と言い捨てて浅井はさっちゃんへと声をかける。
「さっちゃん! 呪いは≪夢の国≫の王個人に全力でかけ続けろ! 少しでも緩めると起き上ってくるぞ!」
「うんっ!」
 さっちゃんの返事と共に再び夢子は自らの足で立つことすら危うくなり、危うく倒れかかるところを青年に掴まれ、背後のソファへと放り投げられた。
 青年は夢子の扱いに文句を言っている少女の言葉を聞き流しながら、余韻として残る倦怠感を振り払うように首を振り、さっちゃんへと視線を向ける。
 浅井は周囲で倒れていた者たちがよろよろと起き上がってくることを確認。更に、≪夢の国≫内部で人々の避難と記憶処理にあたっていたマスコットたちが≪夢の国の地下カジノ≫へと次々現れるのを見る。
 次々と増えていく≪夢の国≫の協力者たちを見て、彼は判断した。
「一旦退くぞ」
「おとーさん、まださっちゃんやれるよ!」
 抗議の声を上げるさっちゃんへと浅井は口元の血を拭いながら告げる。
「俺がしんどいからな」
 そう言ってさっちゃんの居る所へと歩いていく。
「待て!」
 青年がそれを止めようと光弾を放った。
「っ!」
 浅井はそれを腕で殴り、防ぐ。とっさに纏った外殻の破片が飛び散るが、それだけだ。そして残りの距離を一足飛びで近づき、さっちゃんの腕をとる。
233以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:10:08.60 ID:1mICp4jVO
さるか支援
234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:11:01.72 ID:B4UZvJ340
支援だ
235Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/30(土) 21:11:50.98 ID:977x+8/L0
「どっから逃げりゃいい?」
 浅井の質問にさっちゃんはどうして皆が自分たちの復讐を分かってくれないのかと泣きそうな顔になりながら、
「こんなの……いらないっ!」
 叫ばれたその言葉と共に二人の姿はぶれて、地下カジノ内から消失した。
「消え……た?」
 青年の契約者の少女がその光景を見て端的に言う。
「地下への権利を、……放、棄されて、しまいました」
 夢子はそう言うと、激しく咳き込み、床へと倒れ伏した。
「夢子ちゃん!」
 少女が、お姫様が、住人が、マスコットが、皆夢子へと駆け寄る。
「マスコットがいきなり血相変えてやってくるから何かと思えば……」
 その光景を眺めながら青年は苦く呟く。
「罰を与えに来てしまったか……」
 沈んだ調子で言われた言葉は地下カジノの喧騒に溶けた。
236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:14:01.70 ID:B4UZvJ340
しえーん
237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:15:38.44 ID:977x+8/L0
<次回予告>
 
「これは意地ってやつだ……」

 ――男の声は街路に響き、

「――再び≪夢の国≫が悪夢に歪む」

 ――青年の危惧は悪夢の再来を語り、

「その時は私の始末をお願いできますか?」

 ――王の懇願は…………

 【Tさん:夢の国への復讐者二章、待て次回!!】
 なんか作者が次回予告とか書いてやがりますがネタばれ気味な気がせんでもない。
 以下、作者の言い訳
 ≪夢の国≫編が終了したある時、
『おいおいおい、なんかこう、エピローグに繋げるための話を一つ書きてえなあ』
 とか頭おかしいことを考えた作者。
『書くなら回収してない伏線を回収しつつやるべきだよな!』
 そして白羽の矢が立てられた≪さっちゃんの歌の四番目≫。
 作者様に許可を取りに行く……
『許可きたああああああああああああああああっ!! おっちゃんも出すぞおおおおおおお! 光線吐くぞおおおおおおおお!!』
 そして書いてみた。
『…………≪さっちゃんの歌の四番目≫がなんという俺エディション……』
 ――っという流れで書き始めましたこのお話。Tさんたち中心の話はもう書かないだろうと言っておきながらこの体たらくですよ奥さん。そう長くは続かない(と思う)ので邪険にせずに少しお付き合いくださいお願いいいいいい!!
 そしてさっちゃんの作者様に恒例の土下座ああああ!! 俺のさっちゃんこんなんじゃねえよ! とかあるでしょうが一応能力面はいろいろ手を加えてあるせいなので完結まで見てくださるとありがたい……まだ最後まで完成してませんけども!
 作中に出てきた小物とかよく分からない人は作者の過去の話を呼んでね☆ 宴会辺りとか!
T「宣伝するな」
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:17:22.19 ID:GQLglEYVO
乙です
239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:19:36.27 ID:977x+8/L0
・おとーさん:浅井・秀也(あさい・しゅうや)
男・50代半ば(見た目は三十代)
くたびれたスーツを着たサラリーマン風、30代半ばに見える。無精に髭を伸ばし、ボサボサの髪。頬に古い傷跡がある。
 チェーンに丸い石が付いているだけのシンプルなネックレスが二つ。

性格は適当、いい加減。しかし、≪夢の国≫に恨みを持ってはいてもさっちゃんのような幼子に復讐を果たしてほしくはないと思ったり弱っている自分を見せたくはないというような父親としての自覚をさっちゃんに対して持っている。
また、食人をしなければ生きられない状態ではあるが出来るだけ人を食べないようにしている。食べるときは臓器を奪う感じの都市伝説の契約者を≪結婚相手が見える洗面器≫で探す。
これで探すと能力の関係上善人はまず引っかからない。不思議!
 頬の傷に触れる癖がある。
復讐対象以外には行動は紳士的。(発言はエロ親父)

自分の契約できる限界はとっくに突破、意思力でがんばってる。そのため健康状態は代価やら都市伝説の影響やらですこぶる悪い。

契約都市伝説・能力:
≪さっちゃんの歌の四番目≫
 童謡、さっちゃんの四番目の歌詞通りに相手の脚を奪う。出血、痛みも与えず断面はなぜか見えない。脚を返すことも可能。また、脚を奪う呪いを与えた場合相手の居場所の把握が可能。
 契約によってバナナを半分しか食べれないのはさっちゃんが病気でそれだけしか食べることができなかったからという話を得て、相手を死ぬ一歩手前の病気にさせる呪いを発動可能。

≪結婚相手が見える洗面器≫
 深夜0時丁度にカミソリを口に咥えて水を張った洗面器をのぞくと『将来の結婚相手が見える』というもの。女性がカミソリを水に落としてしまうと、洗面器の水が血のように真っ赤に染まった。
それから数年後マスクをした異性と出会い、「なぜマスクをしているのか?」と尋ねると、マスクを外し醜い傷跡を見せ 「お前のせいだよ!」 と続く。
 能力は話の中の女性のように一方的に何かに被害を与えたものに対して発動。正体を突き止める。契約によりその居場所も大まかに特定できるようになった。
契約者はこの能力で以下にある都市伝説を突き止め、契約した。ただし、力自体は弱いため≪夢の国≫のカラス除けの特殊電波のような妨害系を突破できず、これまで特定不可能だった。
 ちなみに嫁さんは占いをする女の方の力が使えた。

≪???≫
≪???≫
≪???≫
※全ての契約都市伝説がある程度以上に有名であり、どれもが強力なため契約コストもそれなりのものとなっている。
240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:21:56.69 ID:977x+8/L0
・さっちゃん≪さっちゃんの歌の四番目≫
外見:童女、おかっぱでかわいらしい娘っ子。おとーさんとおそろいのネックレスを一つ装備。

性格:無邪気幼女であったが≪夢の国≫に対しては深い恨みがある

知性・健康:子供だが実際はそれなりの年のため判断ができないわけでは、ない。ただし容姿と元となった都市伝説に精神が引きずられるため理性より感情を優先する。
≪???≫と≪???≫・≪???≫によって能力のブーストをしているため、及ぼす病は国をも落とす。

能力:さっちゃんの四番目の歌詞通りに相手の脚を奪う。出血、痛みも与えず断面はなぜか見えない。脚を返すことも可能。また、脚を奪う呪いを与えた場合相手の居場所の把握が可能。
 契約によってバナナを半分しか食べれないのはさっちゃんが病気でそれだけしか食べることができなかったからという話を得て、相手を死ぬ一歩手前の病気にさせる呪いを発動可能。


彼女の変遷:以前の契約者の死(三十年ほど前)→友人たちと分かれる(この時点で黒服Dは死んだものと思ったまま、共に仇討ちに行った他の仲間たちも全滅したと思っている)
→噂やニュースを頼りに≪夢の国≫を探すうちにおとーさんと出会う(十年ほど前)。事情を話し、契約。
→学校町にて≪夢の国≫の革命が成る。夢子ちゃんが旅に出た辺りで居場所の把握→お話のはじまりはじまり……

 以前の契約者とは兄妹のような関係にあり、「お兄たん」と呼び、慕っていた。
 現在の契約者との関係は親子、「おとーさん」と呼び、こちらも慕っている。
241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:24:46.05 ID:977x+8/L0
規制時間長いのはしんどいっすよ先生……
長々と失礼いたしました!
242以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:26:15.71 ID:B4UZvJ340
投下乙です!
これは壮大なストーリーになりそうな予感…他の契約者たちも、この騒動にかかわることは出来るのかな?
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:28:30.28 ID:lHWsxcPg0
ただいまー……
ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!???????????
Tさん、乙であります!!!!
244以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:32:46.36 ID:2I57F5nz0
Tさん乙なのぜ!
何という壮大さ…続きにwktkせざるを得ない
245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:36:17.25 ID:977x+8/L0
>>242
む……この子らはたぶん流星のように散っていくので関わるのはちとキツイかもです(寿命が)
246以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:45:10.29 ID:1mICp4jVO
乙でした!
やっべオラなんだかわくわくしてきたぞ!
にしても浅井さんの扱いひでえなwww
247マッドガッサー決戦編 エピローグその5 の、裏側:2010/01/30(土) 21:50:31.79 ID:lHWsxcPg0
中央高校での決戦より三日後 「首塚」本部にて


 …マッドガッサーが、将門と交渉していたのと、ほぼ同時刻
 「首塚」本部内、浴室(岩風呂)にて……


「本当にいいのか?」
「あぁ」

 「日焼けマシンで人間ステーキ」の契約者に背を向けて、頷く「13階段」の契約者、広瀬 辰也
 上半身に纏っていた衣服は全て脱ぎ去っていて……

 …背中に刻印された「H-96」のナンバーが、晒されている

「お前なら、ピンポイントでこの部分を焼けるだろ?」
「……まぁ、その気になりゃできるけどよ…」

 「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力の、応用
 能力発動時、急上昇する体温…触れれば、相手を火傷させるほどのそれを利用し、触れた部分だけを焼く
 そう言う事を、この「日焼けマシンで人間ステーキ」の契約者たる日景 翼は可能である

 だが、まさか
 その能力を、こう言う事に使って欲しい、と頼まれるとは

「…この、「H-96」の刻印を、焼いて消してくれ」

 マッドガッサーに付いてきて「首塚」にやってきた辰也
 彼の目的は、翼に会って…先程の台詞通り、この背中の刻印を、焼いて消してもらう事だった
248以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:53:58.83 ID:1mICp4jVO
根性焼きか・・・しえん!
249マッドガッサー決戦編 エピローグその5 の、裏側:2010/01/30(土) 21:54:11.06 ID:lHWsxcPg0
 広瀬 辰也にとっての、忌まわしい過去
 背中の刻印は、その象徴とも言える
 もう一つの象徴でもある、己が受けた実験データすらも詰まった「組織」のHナンバー関連実験の投薬データのコピーを「第三帝国」に渡した事により、ある程度己の過去に踏ん切りがついた辰也

 その過去を、完全に振り切るために
 それは、彼にとって、必要なことだったのだ


 辰也の頼みに、始めは途惑っていた翼だったが…こうも熱心に頼まれては、断れない

「わかったよ。ただ、相当痛いぞ?」
「…覚悟はできてる」

 −−能力を発動する
 急上昇していく体温
 右手に、意識を集中して…

 じゅうっ!!と
 右手が、辰也の背中の「H-96」の刻印に触れる
 皮膚が焼け焦げる匂い
 激しい熱さと痛みに、辰也は唇を噛み締め、耐える

 感じた熱さは、ほんの一瞬
 すぐに、翼が能力を解除し、用意しておいた水を、辰也の背中にかけてくる

「大丈夫か?」
「……あぁ」

 じくじくとした痛みを感じる
 暫く、仰向けに眠る事は不可能だろう
250以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:56:52.90 ID:977x+8/L0
過去と決別か……支援!

ああ! Dさんと≪パワーストーン≫の契約者をお借りいたします!
あとDさんにはまた見届け役になっていただくかもです! すみません

>>245に関わり方によるかもと追記!
マッドガッサー編のように深い関わりではなくて、町で見かけて死相を見たりとか!

浅「あ? なんだこの扱い、死ぬこと前提とかふざけんなよこの作者」
251マッドガッサー決戦編 エピローグその5 の、裏側:2010/01/30(土) 21:56:54.49 ID:lHWsxcPg0
「「蝦蟇の油」か何かで…」
「…いや、それで治したら……また、刻印が浮き出てきちまう…」

 だから、ダメなのだ
 自然治癒に任せるしかない

「…悪いな、面倒な事頼んで」
「いや、力になれたなら、それでいい」

 翼からしてみれば、相手は親友の仲間である
 その力になれたのなら、悪い気はしない

 ただ、他に方法はなかったのか、と
 ほんの少し、考えて

(……いや)

 これが、辰也なりのけじめなのだろう、と気づく
 他に方法があったとしても、きっと、彼はこの方法を選んだのだ


 広瀬 辰也の背中から、「H-96」の刻印が消えた
 これにて、「組織」内のHナンバー関連の実験の証であるHナンバーの刻印は…この世から、消えた


 −−−刻印、は

to be … ?
252以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 21:58:31.02 ID:lHWsxcPg0
あっぶね、書くのすっかし忘れるとこだった、な「13階段」の背中の刻印抹消シーンですた
背中に火傷の跡は残りますが、彼にとっては刻印が残っている方が精神的にアレなんで

>>248
根性焼きいうなwwwwwwwwwwww
ある意味その通りなんだが

>>250
お気になさらずなんだぜー
こちらこそ、チャラ男シリアス受難編にTさんたちを巻き込む気こっそり満々で焼き土下座!!!orz
253以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 22:00:25.34 ID:1mICp4jVO
乙です!
これはつまり、

俺に消えない焼き痕を残してくれたのはアナタだけよ・・・

みたいな!?
254以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 22:02:06.23 ID:977x+8/L0
>>252
こちらこそお気になさらずー

>>253
おwwwwまwwwえww
255以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 22:02:24.33 ID:lHWsxcPg0
>>253
辰也「清川に誤解を抱かせるようなことを言うなっ!?俺の本命は恵だし!?」
 こいつもどうかと思う今日この頃
256以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 22:04:35.29 ID:B4UZvJ340
>>253
そこまで翼と他の男をくっつけたいかwwwwwwwwwwww

ええ、私もくっつけたいですとも
257以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 22:08:00.20 ID:lHWsxcPg0
>>256
>そこまで翼と他の男をくっつけたいかwwwwwwwwwwww
貴様等wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
翼はノーマルだと言うのにwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
辛い失恋は経験しているが、新世界の扉は開いてないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
258マッドガッサー決戦編 エピローグその6:2010/01/30(土) 22:21:26.97 ID:lHWsxcPg0
中央高校での決戦より一週間後 北区 教会にて


「女体化とかの被害者への解毒剤譲渡、全部終わったのよね?」
「あぁ。流石に一週間もかかったが、もう完了だ」

 その日の夕食を終えて(なお、結局マリが家事から逃げた為、夕食は誠が作成した)
 スパニッシュフライ契約者の言葉に、マッドガッサーは頷いた

 …解毒剤の譲渡と、謝罪の言葉
 それだけで、許されるとは…到底、思っていない
 だが、これで、一つの区切りはできた

「あとは、うちらの行動次第、って事なん?」
「そう言う事なのでしょうね?」

 司祭の姿のマリが、似非関西弁の女性の言葉に頷いた
 一応、いくつかの都市伝説組織から、自分達は1組織として認められた
 だが、あれだけの騒ぎを起こしたのだ
 現在の状態は、「執行猶予中」とでも言うべきなのだろうか?

「でもよ。自分達の身を護るな、とは言われてないんだよな…なら」
「ひっひっひ、襲われたら返り討ち、くらいはいいんだよねぇ?」
「そう言うこった」

 誠と魔女の一撃契約者の言葉に、マッドガッサーは頷いて見せた
 つまりは、そう言う事なのだ
 まぁ、それでも派手にやりすぎたら問題になるかもしれないが…

259マッドガッサー決戦編 エピローグその6:2010/01/30(土) 22:25:07.16 ID:lHWsxcPg0
 自分達には敵が多すぎる
 マッドガッサーを狙う「アメリカ政府の陰謀論」
 マリに「悪」のレッテルを貼り付け、悪であり続けさせようとした「教会」
 辰也と恵を追い続ける「組織」の強硬派と過激派
 ………そして、誠に意図的に悪魔の囁きをとり憑かせた、どこかの誰か
 他にも、色々と
 それらから、自分達の身を護る権利までは、自分達は失っていない

 だから
 これから、自分達は…互いに、互いを護っていく
 ずっと、共にあり続ける
 その願いを、叶える為に
 大切な存在を、護り続ける為に
 他者に迷惑をかける事を除けば、自分達がしていくことは…

 …何だ、今までと、対して変わらないじゃないか

「敵には、容赦なし」
「…だ、な……けけっ」

 そうだ
 その方針は、別に前から変わらないじゃないか
 ぴすぴす、鼻を鳴らしてジャッカロープも同意する
 …今ごろ、上空を飛んでいるサンダーバードも、きっとこの話を聞いたら同意してくれる事だろう

「せっかく、他の組織に認めさせてもらったんだ…いざとなったら、そっちも利用させてもらえばいいさ」

 自分達の身を護る為ならば、なんだって利用してやろう
 そう考えて…マッドガッサー達は、笑いあった
260マッドガッサー決戦編 エピローグその6:2010/01/30(土) 22:28:59.94 ID:lHWsxcPg0
 ようやく、手に入れた平穏
 もう二度と、放すものか
 この生活を、決して誰にも邪魔させやしない



「………な、恵」
「くけっ??」

 …あの話の後、部屋に戻って
 部屋に入ってきた辰也の様子に、恵は首を傾げた
 …どうかしたのだろうか?

「どうした…?……背中、まだ、痛む、か?」
「いや、大分よくなってきてるよ」

 …そうか、ならば、良かった
 ジャッカロープの乳で、せめて、痛みだけでも緩和させられないかと考えていたのだが
 ……その心配がないなら、良かった

 ………??
 それなら、何の用だろう?
 恵は再び、首をかしげる

「あのよ……お前、いつまで、その姿でいるんだ?」
「………くけ??」

 その姿?
 …あぁ、そうだ
 自分は、女の姿の、ままだった
261マッドガッサー決戦編 エピローグその6:2010/01/30(土) 22:32:07.85 ID:lHWsxcPg0
 最近、この姿に慣れてきてしまって、忘れかけていた
 ……未だに、自分以外の女性の裸は、苦手なのだが

「…この姿で、落ち着いたから……戻らなくても、いいの、かもしれない」
「本当に、いいのか?」

 こくり、頷く
 …「組織」以外にも、自分は少し、狙われていて
 その目を欺くのにも、丁度いいのだ
 幸い、編集者達と直接顔を合わせたことはないから、携帯小説書籍化の際などの打ち合わせも、問題はない
 別に、この女性の姿のままでも、自分はいい
 恵は、そう考えていた

「…俺が、この姿だと……困る、か?」
「い、いや、そんな事ないぞ!?」

 慌てて、そう言って来た辰也
 …良かった
 迷惑をかけていたらどうしようか、とそれが心配だったから

「あー……それでな、その…」
「………?」

 …そう言えば
 辰也、先ほどから、頬が赤いような
 ……風邪でも引いて、熱っぽいのだろうか?

「その……………………………お、お前の事は、俺がちゃんと、護ってやるからな?」

 頬を赤く染めたまま、そう言って来た辰也
262マッドガッサー決戦編 エピローグその6:2010/01/30(土) 22:36:56.84 ID:lHWsxcPg0
 その言葉に、恵は一瞬、きょとん、として

「………ありがとう」

 と、やんわりと微笑んで、感謝の言葉を告げて

 …その笑顔に、ますます、辰也が赤くなったのだが
 恵が、その理由に気づく様子はなく
 ぴすぴす、ジャッカロープは呆れたように、ころん、と丸くなったのだった




「…マァリ」
「どうしました?」

 ぽすんっ
 マリの寝室で…スパニッシュフライの契約者が、彼の背中に抱きつく
 ぎゅう、と抱きつく様子は、どこか甘えているようで……同時に、必死にすがり付いているようで

「本当に……私で、いいわけ?」
「…あなたこそ、私相手でよいのですか?」

 う、と逆に問われて、赤くなっているスパニッシュフライの契約者
 …中央高校での、あの戦い以降
 この二人は、いつの間にやら、気持ちが通じ合っていた
 正式に、想いを告げあった訳ではないけれど
 自然と……互いの気持ちに、気づいていて

「私がどんな存在か、知っているでしょう?どんな男なのかも」
263マッドガッサー決戦編 エピローグその6:2010/01/30(土) 22:40:27.07 ID:lHWsxcPg0
「…知ってるけどぉ」

 ぎゅう、と
 彼女はますます、マリにすがりつく

「でも……マリじゃなきゃ、嫌なのよ」

 すがりつくように、まるで、泣き出しそうな声でそう言われて


 −−−あぁ、泣くな
 お前の泣き顔なんて、俺は見たくねぇんだよ
 お前は笑っているのが、一番いいんだ


「……まったく」

 ざわり
 司祭の姿から…本来の、人狼の姿に戻ったマリ
 ぼす、と寝台に彼女を押し倒した

「……後悔するなよ?」
「する訳ないじゃない」

 …愛する事を、後悔などするものか
 スパニッシュフライの契約者は、幸せそうに笑って…
 ……そっと、マリに口付けたのだった


264マッドガッサー決戦編 エピローグその6:2010/01/30(土) 22:45:00.62 ID:lHWsxcPg0
 夜
 寝る前に、軽く逆立ち片手腕立てふせなどをやっている誠
 寝る前の、軽い運動である
 …こう言う運動を軽い、と言えるくらい、この男、体を鍛えているのだ
 だからこそ、あれほどまでに無茶な流派を学べたのだが

「それじゃあ、主ぃ、私は先に寝てるわね」
「あぁ、おやすみ」

 魔女の一撃の言葉に、そう答える誠
 …魔女の一撃は、小さく苦笑する

「ひっひ、夜の相手はいらないかい?」
「お前とそう言う事になった事は一度もねぇだろ。それに、今の俺の本命は翼だ」

 きっぱり、言い切る誠
 どうしようもなく、新世界の扉を開け放ってしまった
 ……ある意味、悪魔の囁きから解放された反動なのかもしれない
 もしくは、はじめからその気があったか、どちらかだろう

「今まで、翼に迷惑かけたんだから……今度こそ、護ってやらないと」

 高校までの、何も知らなかった自分
 翼だけではない、もう一人の友人にまで、自分は護られてしまっていた
 だから、これからは
 自分が、周りを護れるようになるべきなのだ
 今のままでは、まだ足りない
 まだまだ、全然足りないのだ
 もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと、もっと強く!!
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 22:48:02.25 ID:B4UZvJ340
支援
266以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 22:49:37.22 ID:977x+8/L0
誠……ギャグじゃなく、マジに新世界の扉を開いただと?
支援!
267マッドガッサー決戦編 エピローグその6:2010/01/30(土) 22:50:02.35 ID:lHWsxcPg0
「…ひひっ。主の努力は、必ず認められるさね」

 必ずね、と
 そう言って…魔女の一撃は、布団にもぐりこんで眠りについた

 静かになった、その部屋で
 ぼそり、誠は呟く


「……翼の為なら、俺は世界だって、敵に回してやるさ」


 それは、何よりも強い誓いであり
 しかし、当の想いを向けている本人には、きっとカケラも届かないであろう想いであった




 ……月の灯りが眩しくて、カーテンを閉めた
 そう言えば、昔は明るすぎるのが苦手だったな、と思い出す
 マッドガッサーと言う存在は、明るい時間帯に活動するものではないから

「マッドはん?」
「…あぁ、いや、何でもない」

 芋づる式に思い出しそうになった過去を、振り払う
 …もう、自分はあの頃とは違う

 人を殺し続けたマッドガッサーとも
 あの、横暴な兄に…片割れに支配されていた自分とも、違う
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 22:50:44.14 ID:1mICp4jVO
しえ!
269以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 22:57:39.83 ID:GQLglEYVO
岩風呂|<本当にいいのか?
    <あぁ
     <……まぁ、その気になりゃ……


岩風呂|<わかったよ。ただ、相当痛いぞ?」
    <…覚悟はできてる


岩風呂|


岩風呂|<大丈夫か?
    <……あぁ


貴腐人「……」
270以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 22:59:13.52 ID:B4UZvJ340
しえーん
271マッドガッサー決戦編 エピローグその6:2010/01/30(土) 23:00:11.36 ID:lHWsxcPg0
 護る者など何もなかった自分
 だが、今は、すぐ傍にこんなにも、愛しい人がいてくれている

 先に寝台に横たわっていた己の契約者に近づき…マッドガッサーは、そっと、その頬を撫でる

「…これからは、ずっと一緒だからな」
「当たり前やん……これからも、ずっと一緒や」

 …思えば、出会ってからも、一緒にいた時間が結構長かったではないか
 あぁ、思えば、今更か

 二人は幸せに笑いあい、そっと、唇を重ねあって
 ……そのまま、寝台の上で絡み合った



 ずっと、一緒にいられますように
 その願いは叶えられた

 彼らの未来に、幸あれ



fin
272以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 23:02:18.64 ID:B4UZvJ340
>>269
おwwwまwwwwえwwwww
そして貴腐人wwwwwwwwww
273以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 23:03:10.18 ID:lHWsxcPg0
うにゃ、以上にて、マッドガッサー達の全エピローグ(多分)終了ですー
書いていたら今冬最大の「もげろ」になってしまったから困る

まぁ、以降、彼らは学校町内にて、1組織として生活していきます
手を出されない限りは、どこの組織相手も一応中立を保つ、かな?

>>266
マジに開いたよ!!
翼が偉い迷惑だよ!!!
それでも親友だと言い続ける翼は偉いと思った

>>269
確かに部分的に会話を聞くとそうなるけどさwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 23:05:52.03 ID:B4UZvJ340
長編投下乙でした!
マッド一味は全体的にもげろだと思うんだもげろ!
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 23:09:19.40 ID:2I57F5nz0
乙なのぜ!くそ、マッド一味全員もげて爆発しちまえ!!
…誠がだんだん25に見えてきて困る…
276以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 23:11:24.06 ID:B4UZvJ340
さて、そろそろ深夜だし俺は寝るとするよ…
明日までスレが残ってるだろうか
277黒服H マッドガッサー編エピローグ:2010/01/30(土) 23:16:37.21 ID:lHWsxcPg0
……中央高校での決戦翌日  「組織」本部


「…いやはや」

 まいったねぇ
 小さく苦笑する黒服H
 彼の周囲には、アルファベットが浮かんだ26枚の無機質な板が並んでいる
 それらは、DやXなど一部を除いて、淡く光っていて

『…呼び出された理由はわかっているな?H-No.360』

 その板の一つから、冷酷な声が響いた
 だが、それに臆した様子もなく、黒服Hは肩をすくめる

「さぁ?一体、俺は何かしでかしてしまったでしょうか?」
『とぼけるな!!』
『この期に及んでしらを切るつもりか!?』

 激しい怒気を浴びせられても、彼は一切、怯まない
 ただ、恐らくこちらの様子を見て、激昂しているであろう連中の様子を想像して、小さく笑っていた

「俺は、スパニッシュフライを飲み込まされて操られていましたからね。その間の行動につきましては、一切、責任をもてませんので」
『本当に、操られていたのか?意図して、あの実験体の味方をした訳ではないのだろうな?』
「………当然」

 不敵に笑って、そう答える


 ……実際、はどうだったのか?
278黒服H マッドガッサー編エピローグ:2010/01/30(土) 23:20:34.01 ID:lHWsxcPg0
 実のところ、それは彼自身にもわからない
 ただ、自分は間違った事など、何一つしてはいない
 そう、考えているだけだ


『…今まで下されてきた処分と、同じ処分が下ると思うなよ……!!』

 たっぷりの憎悪をこめて、告げられた言葉
 あぁ、これは確か、強硬派の奴だ
 …なるほど、こちらを恨んでいるだろう
 何せ自分は、あいつの部下をたっぷりと「処分」してきたのだから

 ……ちらり
 黒服Hは、「H」の板をじっと見つめた
 沈黙し続けている、その板を

『H-No.360、今回こそ、貴様を処分して……』

 激昂した声が、そう告げようとした、その時


 前触れもなく、その部屋の扉が開け放たれた
 暗い部屋に、光が差し込む

 入ってきたのは、長身で大柄な黒服の男
 その顔には、縫い目が入っていた

『−−−何だ!?G-No.1!』
『審議中だぞ!?』
「……失礼、急いでいましたもので、ノックを忘れました」
279黒服H マッドガッサー編エピローグ:2010/01/30(土) 23:24:11.00 ID:lHWsxcPg0
淡々と口を開く顔に縫い目のある黒服……G
 彼は、すたすたと黒服Hに近づいていく

『何をしている!?出て行け、G-No.1!!』
『…出て行く必要など、ない』

 …幼い少女の声が、部屋に響き渡る
 Hと浮かび上がるその板から響く、声

『H-No.360の処分、妾に任せてもらおうか』
『−−H-No.0!?何を言っている!』
『また、もみ消すつもりか!?』
『もみ消す?はて、何のことやら。こやつは間接的に妾の部下じゃ。部下の処分を上司が行うのは当たり前じゃろう?』

 投げかけられる罵声を、H-No.0と呼ばれた少女の声は、意に介している様子などなかった
 上司の様子に、黒服Hはくくっ、と小さく笑う
 …そんな彼を、黒服Gが、憎悪をかすかに滲ませて、睨んでいた

『今回のマッドガッサー達の騒動、その後始末を、全てこの男に任せる。それでは駄目かのう?』
「全部?流石に過労死しそうなんですが?」

 あのお人好しじゃないんだからよ
 そう言いたいのを、流石にぐっと堪える
 相手は、全員上層部のメンバーだ
 一応、素を出すのは控えるべきだろう

『だからこそ、罰になるであろう?』
『…なるほど。それでこいつが過労死しようが、一切構わない、そう言う事だな?』
『そう言う事じゃ』
280以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 23:25:47.63 ID:977x+8/L0
いや、コイツは誰かに押し付けるぞたぶん支援!
281黒服H マッドガッサー編エピローグ:2010/01/30(土) 23:29:42.38 ID:lHWsxcPg0
 うわ、酷ぇ
 こっそり、口の中で呟く黒服H
 …まぁ、自業自得といえば、自業自得なのだが

「…それでは、彼を連行させていただきます」

 がし、と
 黒服Gの武骨な手が、黒服Hの肩を掴んだ
 仕方ない、と黒服Hは無抵抗に引きずられて行く

 ……部屋を、出て
 くっくっく…と、黒服Hは、肩の力を抜いて笑った

「いやぁ、助かった。お嬢さんに礼を言わないとな」
「…ならば、今からその感謝を口にするがいい。お嬢様がお前をお呼びだ」

 苦々しい声で、そう告げてきたG
 連行された部屋は…「組織」本部内の、上層部メンバーH-No.0の部屋
 黒服Hの、間接的な…

 −−−−−否
 直接の、上司の部屋だ

「来たか。H-No.360」

 黒いスーツを身に纏った少女が、黒服Hを見あげた
 その愛らしい姿に、正直そのスーツは似合っていない

「お久しゅう、お嬢さん。いい加減、そんなスーツじゃなくてもっと可愛らしい服を着る気はねぇか?」
「……H-No.360…」
282以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 23:31:55.39 ID:977x+8/L0
ばっかおめえスーツの幼女とかなかなかGJだと俺は思いつつしえーん!
283黒服H マッドガッサー編エピローグ:2010/01/30(土) 23:35:43.54 ID:lHWsxcPg0
「うむ、妾ももっと可愛らしい服を着たいのじゃ」

 ぷぅ、と可愛らしく、頬を膨らませる少女
 そんな仕草は、その外見相応だ

「…まぁ、それはさておき、じゃ……よく、無事でいてくれた」
「俺がそう簡単にくたばると思ったか?」

 くっく、と楽しげに笑う黒服H
 その髪が、しゅるりと伸びて


 −−−−−ごがっ!!と
 少女の体を絡めとり、そのまま壁に叩き付けた
 突然の衝撃に、かはっ、と少女の口から血痕が漏れ出す


「−−−っお嬢様!?H-No.360、貴様……っ」
「動くな、G」

 しゅるり
 黒服Hの髪は、いつの間にやら、Gの体にも絡み付いていた
 彼が意図すれば…すぐに、Gを引き裂くことが出来るように

「やめておけ。お前が俺に勝てると思ってるのか?……あぁ、それとも。また、縫い目を増やしたいか?」
「貴様……っ」
「よさぬか、G-No.1!」

 今にも、黒服Hに殴りかかろうとしていたGを、少女が制した
 けほけほと血を吐きながら……微笑み、黒服Hを見つめる
284黒服H マッドガッサー編エピローグ:2010/01/30(土) 23:40:09.19 ID:lHWsxcPg0
「…わかっておるわ……お前が、そう簡単に死ぬはずがない。お前は嘘吐きじゃが、約束を護る男じゃからな」
「そりゃあ、どうも」

 しゅるしゅると伸び続ける髪
 それは、少女の細い喉にも絡んでいた

 黒服Hが、それを望んだならば
 少女は、今すぐにでも、その命を散らすだろう

「……その約束、今、果たしてくれるのかの?」
「…………」

 …黒服Hから
 一瞬、全ての感情が、消えうせた
 だが、すぐに、いつものどこか軽い笑顔に戻って

「いいや、まださ」

 −−−−−しゅるり
 髪が、解かれる
 解放されて床に落ち、少女はけほけほ、咳き込み続ける

「お嬢様!!」

 Gもまた髪から解放され、急いで少女に駆け寄った
 そんな様子を眺め、黒服Hは笑い続ける

「今回の件も、見逃してくれてどーも。一応、罰は受けとくわ。死なない程度に」
「…あぁ……また、あの過労死候補が仕事を一挙に引き受けてしまいそうだったから、の……すまんが、今回は頼んだぞ」
「あー……うん、確かに。こうでもしないと、またあいつが過労死一歩手前になりそうだよな」
285黒服H マッドガッサー編エピローグ:2010/01/30(土) 23:44:12.82 ID:lHWsxcPg0
 納得しつつ、黒服Hは部屋を出た
 まっすぐに、己の仕事場に向かう

「……面倒くさ」

 仕方ないとは言え、面倒な仕事を押し付けられたものだ
 …まぁ、いいや
 後で、Yとか誰か、ちょっと巻き込もう
 そう考え、黒服Hは暗い廊下の中、姿を消していった


「………お嬢様」

 ようやく呼吸が落ち着いた主を、黒服Gは悲しげに見つめていた
 …彼の中では、ただ、黒服Hへの憎悪が育ち続ける

「…良い、のじゃ。これで、良いのじゃ」

 ぼそり、呟く少女
 酷く悲しげに、黒服Hが退室していった扉を見つめる

「…この程度で、許されるとは思うておらぬ。妾には、死の安息など、到底許されぬ」

 だが、それでも願わずにはいられない、だから、彼と約束したのだ


 …お前が全ての目的を終えたその時には、自分を殺してくれ、と

to be … ?
286以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/30(土) 23:47:26.22 ID:lHWsxcPg0
以上、黒服Hの上司とのハートフルなやりとりと言う名前の黒服Hマッドガッサー編戦後処理でした
うん、これですんだのはありがたいことだと思うよ、こいつ
正直、マッド騒動最大の戦犯だから



そしておやすみー
明日もスレが残っていてくれれば幸せだ!!!
287以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 00:03:46.45 ID:kNMShqkJ0
ねるまえほ
288以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 00:23:41.23 ID:QEr3Ibop0
289とある組織の極秘計画 会議の後で:2010/01/31(日) 00:26:47.85 ID:zXEgsq/E0
「全く、呑気な連中なもんだ」

通信が完全に切断されたのを確認してから、嘲るように笑う黒い服が一人。


「その言葉は…Hナンバーに言ってるのか?それとも…この『組織』全体に対して言ってるのか?」
そしてその後ろに、笑いの意味を問うもう一人の黒い服。

「…両方さ」
回転イスをくるりと180度回転させて後ろへと向き直る。


「町で起こった問題に対しても、結局は内側でのつぶし合い。
 『組織』内には、町の事考えてる人間なんてほとんどいない。結局は自分のエゴで動いてる。」
手に持っているコーヒーカップを傾けながら話を続ける。
「たとえ何人他のところの部下が死のうがどうってことはない、って思ってるのかね…敵は外にもウヨウヨいるってのに。
 ただ単に自分の手駒を減らしたくないだけじゃんか。うまく扱えもしない癖に」


「どれだけ手駒があるかじゃない。どれだけ少ない手駒で大将を落とせるか、だ」
290とある組織の極秘計画 会議の後で:2010/01/31(日) 00:29:13.93 ID:zXEgsq/E0
「それが盤上の鉄則、か?」「フフ、分かってきたじゃんか。Q-No.8」
部屋の隅に置いてあるチェスを弄りながら答えるQ-No.8と、それに対して僅かに笑う黒服。


「そういえば、18の捕縛が終了したらしい。黙秘を続けているらしいが」
黒いポーンをつまみながら、どうでもよさそうに用件を伝える。

「…そうか。まぁいい。その担当はNo.8、お前に任せる」
「う、本当か?俺はそういうのは苦手なのだが」

「他の誰かがやるよりはよっぽどましだ。無論、俺がやっても逆効果だろうしな」

「はいはい、了解しましたよ…っと」面倒くさそうに戸を開け、部屋から出ていくQ-No.8。


「…む、ヒマよ。コーヒーを注いでくれ」
黒服以外に誰もいないはずの部屋で、誰かに向かって話しかける。
部屋にあるのは、通信用の機器と業務のための机、チェスにコンポ。

それと…大量の植物。
291とある組織の極秘計画 会議の後で:2010/01/31(日) 00:31:52.43 ID:zXEgsq/E0
少しして…その植物から何かが出てきた。


…ひまわり。ヒマワリが根で立ち、草で盆を持っている。
ヒマと呼ばれたそのヒマワリはカップを盆へと載せ、部屋の奥へと進んでいった…

「よろしく頼むぞ、No.8…お前は俺の…一番大事な仲間であり、手駒だ」
コンポのリモコンに手をかけながら、そう呟く。



彼の名、いや番号は…Q-No.0。『組織』の、いわゆる上層部の一人。
『植物に音楽を聞かせると良く育つ』という都市伝説を能力に持つ黒服。

そして――――裏切りを敢行しようとする者の、一人。
292以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 00:35:49.18 ID:zXEgsq/E0
そろそろ正体明かしたかったのでQ-No.0登場。
設定がいまいちかたまってないので設定投下は後日…
293やるきー:2010/01/31(日) 00:38:04.61 ID:MOnR44l2O

>>後で、Yとか誰か、ちょっと巻き込もう

何かと損をしてそうな黒服Yはきっと不運体質(不幸ではなく)
そして後始末も少女姿でしていてほしい、薬飲まなくてもそろそろ自然に戻るはずだし

そいえば屋上でミサイル爆発したときのYどうしょう
294以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 00:45:36.54 ID:LvGmeUXqO
ヒマワリだからヒマ
ハムスターにハムちゃん、ヒヨコにピヨちゃんとか名付けそうだな
295以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 01:05:44.89 ID:5fASjbBvO
寝れない保守
296以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 01:31:41.07 ID:Z3CXbWFNO
眠れぬ
297以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 02:03:32.23 ID:Z3CXbWFNO
夜は
298以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 02:13:07.87 ID:5fASjbBvO
路地裏の
299以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 02:52:54.95 ID:Z3CXbWFNO
淫らな雌猫に八つ当たりして
300以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 03:43:56.84 ID:QEr3Ibop0
ねるほ
301以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 05:00:26.67 ID:Z3CXbWFNO
寝れねぇぇ!
302以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 05:51:17.14 ID:LvGmeUXqO
葡萄酒でも飲めば寝れるんじゃね
303以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 07:27:56.62 ID:LvGmeUXqO
304以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 08:25:31.88 ID:kNMShqkJ0
おはようほ
305以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 09:13:29.47 ID:gh5uDl270
おはほしゅ
306以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 10:03:05.48 ID:Z3CXbWFNO
いつの間にか寝てたほ
307首なしライダー(代理):2010/01/31(日) 10:45:39.06 ID:QEr3Ibop0
とある黒服見習いの報告記録

報告します

 昨日深夜、学校町北区にて青色のヘルメットを被った都市伝説『首なしライダー』と遭遇

 彼は最近多くの都市伝説を狙って首を狩っているという情報があったため、接触を図った所
 こちらに攻撃をしてきました

 こちらも都市伝説で応戦しましたが
 所持していた都市伝説三体が首を狩られ消滅
 自分も片腕を失いました

 今後あの首なしライダーを危険対称とみなし、討伐対象にするべきではないかと提案します

 以上で報告を終わります

―――――――――
308首なしライダー(代理):2010/01/31(日) 10:47:56.37 ID:QEr3Ibop0
「ふぅ………」
 左手で肘から先のない右腕を掴みながら黒服見習いはゆっくりと息を吐く
 首なしライダーとの戦闘によってこの黒服見習いは、自分の右腕と仲のよかった都市伝説を三人失った。

 黒服見習いの目の前には首なしライダーとの接触に関する報告書……これを提出して組織にあの首なしライダーが危険と判断されれば、あの青色のヘルメットの首なしライダーは組織の討伐対象として狙われる事になる

「首なしライダー…覚えてろよ……」

 そう呟くと黒服見習いは携帯電話を取出し、複数のアドレスにメールを送信する
まずはあの首なしライダーの情報を入手する事が重要だ

情報を集めて追い詰めて
いずれ俺が殺してやる
彼女達の敵討ちだ
―――――――――――
数日後

首なしライダーは組織から討伐対象として認定され

学校町にいる黒服に連絡が回り始める

もちろん、この事を首なしライダーの契約者は知らない
続く
309首なしライダー?(代理):2010/01/31(日) 10:51:16.36 ID:QEr3Ibop0
・黒服見習い
契約都市伝説
『彼女なんて都市伝説』

とある一種の僻みから生まれた都市伝説
彼女がいない男性がこの都市伝説と契約すると

都市伝説の女性に好かれるようになるというリア充気分を味わえる
そのまま都市伝説と恋愛関係になるという事も可能

この黒服見習いの携帯電話の中には複数の女性の都市伝説のメールアドレスや電話番号などが登録されている
310以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 11:04:40.79 ID:QEr3Ibop0
187 名前:首なしライダーの人[] 投稿日:2010/01/31(日) 02:33:33
夜中にこっそりと投下
首なしライダーは今後組織から狙われる事になりました

もうこれは一種の死亡フラグだよなぁ…ww

さて、朝まで本スレが残ってればちょっとパソコン起動して自己代理投稿するかな

***
代理投下でしたー
ライダーのまさかの死亡フラグ……だと?
見習いの都市伝説wwwwww
311以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 11:57:01.94 ID:DqJE0ACp0
出かける星
312以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 12:20:33.31 ID:kNMShqkJ0
313以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 13:07:29.19 ID:kNMShqkJ0
314以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 13:14:53.61 ID:ygj1eYgZ0
ごちそうさまでしたー
皆様乙!!

っつか、ライダァアアアアアアアアアアアア!!??
これは反応せざるを得ない
315保守ネタ:2010/01/31(日) 13:52:41.74 ID:ygj1eYgZ0
4コマ風

Tさん契約者「へ?チャラい兄ちゃんの女装写真?」
魔女の一撃契約者(以下誠)「あぁ、前見せてくれた奴とか、他にも持ってないか?」

Tさん契約者「まぁ、持ってるけどよ…」
誠「あぁ、安心しろ、悪用はしない」

誠「そして、それらの写真をくれるなら、こちらからも見返りがあるぜ」(ピラリ
Tさん契約者「!!!」

Tさん「……で、日焼けマシンの青年の中学までの女装写真と引き換えに、焼き増し分を渡してきたと」
Tさん契約者「いやぁ、コレクションが増えた増えた」
リカちゃん「おねーちゃん、まんぞくそうなの」



Tさんの人に土下座orz
316ある組織の構成員の憂鬱:2010/01/31(日) 14:19:25.70 ID:ygj1eYgZ0
 マッドガッサー達の騒動から、数日後
 学校町東区にある、一軒のとある住宅にて

 ようやく、鎖から解放された鼠が、逃げもせずにテーブルの上でゴロゴロしていた
 そう、逃げる気配、0である

 ハーメルンの笛吹きに操られ、その後、はないちもんめの能力で仲間を買い取られた鼠
 結局、彼女らの家まで付いてきてしまっていて
 そして、今に至る


「どうするんだ?こいつ」

 軽くその鼠をつつきつつ、「日焼けマシンで人間ステーキ」の契約者の青年が言ってくる
 鼠は、つついてくる指を嫌がるどころかむしろじゃれついている始末であり
 野良鼠の本能はどこに行った

「どうするって言ってもね………非常食?」
「やめてあげてください」

 ちゅちゅちゅ!?と、少女の言葉に恐怖を覚えたのか、じたばたと青年の手の向こう側に逃げる鼠
 生存本能までは失っていないようである
 そんな鼠を見つめて……黒服は、少々難しそうな顔をしていた

「黒服?何か気になる事でもあるの?」
「……かすかに、ですが。その鼠から、都市伝説の気配がするんです」

 黒服の呟きに、え、と、少女と青年は鼠を見つめる
 青年は、それを感じられないが、少女は…
317ある組織の構成員の憂鬱:2010/01/31(日) 14:24:28.61 ID:ygj1eYgZ0
「……確かに。都市伝説と言うか、なりかけと言うか…」

 非常に、曖昧な気配
 それを、鼠から感じた
 向けられる視線に、鼠はちゅ??と首を傾げている
 ……そもそも、こう言う仕草をする時点で、既にただの鼠ではないか

「ハーメルンの笛吹きと、はないちもんめ。二つの都市伝説の効果を短期間に続けて受けた事で、その生態に変化が生じたのかもしれませんね」
「そんな事、ありえるのか?」
「極々低確率ですが、ないとは言い切れないのですよ」

 青年の疑問に、黒服は答える
 魔女の使い魔にされた動物が、後々何らかの都市伝説に変貌したと言う報告などは、1%以下の確立ではあるが、ない訳ではないのだ
 この鼠に、その手の変化が起きていてもおかしくない

「どんな都市伝説か、わかる?」
「恐らく、鼠に関連した都市伝説である事に間違いはないと思いますが…」

 ちゅうちゅう、のんびり丸くなり始める鼠
 そんな様子からは、特に凶暴な都市伝説の印象はない
 いや、都市伝説を外見で判断するのは、危険な事ではあるが
 その手の、危険な気配も、その鼠からは感じられない

 黒服は、じっと、鼠を見つめて…「組織」の黒服としての能力で、その正体を探ろうとする

「……「鼠は、沈没する船から真っ先に逃げ出す」、でしょうか?」
「それって、都市伝説?」
「一応、都市伝説として、存在が確認された事がありますから…」

 そう言えば、この鼠は黒い悪魔の群れが体育館の扉を破ってこようとした時や、マッドガッサー達がミサイルを爆破させてガスをその場にばら撒こうとした時、いち早く反応していた
318以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 14:25:38.14 ID:Z3CXbWFNO
支援だ!
319ある組織の構成員の憂鬱:2010/01/31(日) 14:28:42.50 ID:ygj1eYgZ0
 危険感知能力が高いのかもしれない

「放っておくのも、目覚めが悪いわね」

 首をかしげていた鼠を、軽くつつく少女
 都市伝説になりかけている状態
 そんな中途半端な存在、ある意味珍しい状態だ
 「組織」にでも見付かったら、妙な実験にでも使われるかもしれない
 …それは、流石に気の毒だ

「鼠一匹分くらいなら、どうとでもなるしな」

 青年も、少女と同じ考えらしい
 …どうやら、この鼠がこの家の同居人となるのは、ほぼ決定したようだ

「後で、名前でもつけてやらないとな」

 腹を撫でられ、気持ち良さそうにしている鼠
 …名前、か、と
 少女が呟いたのを、黒服は聞き逃さなかった

「どうなさいました?」
「え?………うん、その」

 黒服に尋ねられ、一瞬、少女は視線をそらして
 ……うん、と、何やら結論を出したように、顔をあげる

「黒服…私に、名前をつけてくれる?」
「え」
320ある組織の構成員の憂鬱:2010/01/31(日) 14:33:05.86 ID:ygj1eYgZ0
 じ、と
 真剣に、少女は黒服を見上げて、そうお願いしてきた
 ……名前を?

「私が、あなたの名前をですか?」
「えぇ。駄目かしら?」
「いえ、駄目ではありませんが…」
「あれ?でも、お前、名前は…」

 青年が、疑問の声を発しかけて
 ……しかし、何かに気づいたように、それ以上は口にしなかった


 少女の、名前
 あの両親に、つけられた名前
 その名前を、この少女はとっくに捨てている
 …そもそも、この少女、戸籍が存在しない
 出生届を、出されていない状態なのだ
 日本には、何らかの事情で戸籍の存在しない子供達は確かに存在する
 …少女は、そんな中の一人なのだ


「…わかりました。私等がつけても、よろしいのでしたら」
「えぇ、ありがとう」

 黒服の返答に、少女は少し嬉しそうに笑う
 少女が笑みを浮かべたのを見て、黒服もほっとしたように微笑んだ

「せっかくですから、あなたの戸籍も、作っておきましょう。「薔薇十字団」の協力で、どうにかなると思いますから」
「いいの?」
321以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 14:35:26.11 ID:Z3CXbWFNO
しえーん
322以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 14:36:31.61 ID:MOnR44l2O
しえ
323ある組織の構成員の憂鬱:2010/01/31(日) 14:37:46.26 ID:ygj1eYgZ0
「えぇ…私の養子、と言う扱いにすれば、比較的簡単に作れるはずですから」

 ……養子
 その言葉に、嬉しいような、でもちょっと残念なような、少女は複雑な表情を浮かべてきた

「何か問題がありましたら、別手段で戸籍を作りますが…」
「………いえ、問題ないわ。それでお願いできる?」

 はい、と黒服は頷く
 …「組織」の黒服として、偽造戸籍を修得していて良かった
 この時、黒服は始めて、そう考えた



 ……こうして
 はないちもんめの契約者たる少女は、黒服に名付けられた「大門 望」と言う名前を手に入れて
 今後は、その名前を名乗る事になるのだった









「…そう言えば」
「ん?」
「チャラ男、あなた、なんて名前なの?」
324以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 14:39:55.79 ID:QEr3Ibop0
人をほぼ代名詞か巧みに呼ばない会話をするため未だに友人の名前を把握しきれてない俺がしえん!
325以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 14:41:12.15 ID:Z3CXbWFNO
しえん
326ある組織の構成員の憂鬱:2010/01/31(日) 14:41:57.18 ID:ygj1eYgZ0
 今更ながらではあるが、少女はその疑問を青年にぶつけた
 今まで、何だかんだで、名前を呼ぶ機会はなかったのだ
 ずっと、「チャラ男」と呼んでいたし
 マッドガッサーが女体化ガスを屋上にバラまいたあの時、黒服が名前を呼んだような気もしたが…あの時、少女はそれをしっかりと聞き届ける余裕など、なかったから

「…………」
「あ、この子は…」

 一瞬、押し黙った青年
 その青年の代わりに、黒服が答えようとして

「…………翼」

 ぼそり、と
 それを遮って、青年は答える

「日景、翼だ」
「翼?」
「あぁ」

 ……日景、と
 そう、青年が姓を名乗った瞬間…黒服が、複雑そうな表情を浮かべたのだが
 それは、青年に視線を向けていた少女には見えない

「……似合わない」
「ほっとけ!?」

 わかってるよ畜生!?と
 名前を口にした瞬間の暗さなど吹き飛んだ様子で、少女に突っ込んでいる青年…翼
 …ひとまず、ほっとしながらも…やはり、黒服はどこか複雑な表情を、翼に向けていた
327ある組織の構成員の憂鬱:2010/01/31(日) 14:44:21.51 ID:ygj1eYgZ0

(…やはり、あの家名を名乗るつもりはないのですね…)

 …日景
 それは、翼の両親の姓ではない
 彼は本来の姓を、親元から飛び出した瞬間に捨ててしまった
 あんな連中と同じ姓を名乗るなど御免だ、と、そう言って

 …彼の母親については、その所在を黒服は把握している
 しかし、つい先日の魔女の一撃契約者…清川 誠とのやり取りで語ったとおり、翼の父親に関しては所在がつかめないのだ
 ヨーロッパで忽然と姿を消して以来、ずっとその痕跡はつかめないままだった

 だが
 清川 誠は、高校の卒業の時に、その翼の父親を見たような気がすると言っていた
 翼は、そんな事は一言も言っていなかったから…多分、あの子はその姿を見ていないのだろう
 もし、清川 誠が見た相手が、本当に翼の父親だったとしたら……あの子に会う事もなく、何故、あの場に現れたのだろうか?
 息子の卒業式に出席した、だけか?
 普通なら、そう考えてもいいのかもしれない
 家出した息子の事を何だかんだで気にかけて、卒業式にこっそりと出席していたのだ、と

 ……だが、しかし
 黒服は、翼の父親がどんな人間であるのかを知っているが故に、その結論には至れない

「……厄介な事に、巻き込まれていなければいいのですが」

 こっそりと呟かれた言葉は、誰の耳にも届かず、消えた


to be … ?
328以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 14:47:52.35 ID:Z3CXbWFNO
329以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 14:47:57.04 ID:ygj1eYgZ0
誰もいない隙に投下ー、って思ったらふつうに人いたwwww
支援感謝


マッドガッサー騒動、黒服Dとかのエピローグっぽいのでした
330以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 14:49:24.11 ID:QEr3Ibop0
おつでしたー!
鼠はこれから危機察知センサーとして若干スリリングな鼠生を送るのですね!
331以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 14:52:59.91 ID:ygj1eYgZ0
>>330
普段はハムスターケージで滑車回したりゴロゴロしてると思うよ!


ついでなので鼠設定

鼠(名前募集中)

「鼠は、沈没する船から真っ先に逃げ出す」という都市伝説になりかけている鼠
そのせいか、異様に危険感知能力が高い
が、危険な感知能力が高いだけで、実際逃げられるかどうかは別問題である
本当の都市伝説になれば、逃亡能力も身につくのかもしれないが

なお、種類はハツカネズミ
望と、餌をくれる翼によく懐いている
332以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 14:56:54.40 ID:QEr3Ibop0
>>331
なんか勝ち組のかほりがする鼠だなちくしょうww

とうかするー
333以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 14:58:05.29 ID:MOnR44l2O
大イタチを倒したねずみじゃなかったのか
334以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 14:58:40.88 ID:ygj1eYgZ0
>>332
そう言えば勝ち組かもしれんwwwwwwwwwwwwwww
そしてwktk支援
335Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/31(日) 14:59:06.91 ID:QEr3Ibop0



           ●


「あーあ、せっかくの奴さんの懐に飛び込む手段だったんだけどなー」
 地図を折り畳んだ男の呟きが人気のない路地裏に響いた。
 浅井とさっちゃんは地下カジノへの入室権を放棄し、それによって地下カジノから放りだされてから数時間、現在自分たちのいる場所の把握に努めつつ休憩をとっていた。
 まったく、と言ってさっちゃんの方へと浅井は目を向ける。彼女はコンビニで浅井が買い与えたバナナの皮を剥きにかかっており、そのたどたどしく皮を剥いていく様は、
 下手すりゃ俺より長生きのくせしてどっからどう見ても子供なんだよな。
 そう思いながら地図をそこら辺へと放りだしてぼんやりしていると、さっちゃんが浅井へと振り返った。そして笑顔で半分ほどに折ったバナナを「はい」浅井へと差し出す。
「おとーさん、あげる!」
「……おう」
 浅井はさっちゃんからバナナを受け取り、一瞬ためらって――口に押し込んだ。そのまま碌に噛みもせずに胃へとバナナを流し込んでいると、さっちゃんが小さく小さく発した声が聞こえた。
「……ゆるせない、みんながゆるしても、さっちゃんは、無かったことにできない。――わすれるのはいやだ」
「……そうだな」
 彼女自身に言い聞かせるように呟かれる言葉に浅井は同意する。
「おとーさん、≪夢の国≫をいつ殺しに行くの?」
 バナナを咀嚼しながらさっちゃんが浅井に訊いた。浅井はそうだなあ、と少し考え、
「とりあえず熱線を出せれるまで身体の調子が戻ってから、だな」
 そう答えながらさっちゃんからバナナの皮を受け取る。交換するようにさっちゃんには毛布を渡して寝るように言いおき、自身は皮を捨てに行くために立ち上がった。
 そんな背中に声がかけられる。
「おとーさん」
「ん?」
 振り返った浅井にさっちゃんは訊ねる。
「だいじょうぶ? 無理、しないでね?」
 先程地下カジノでしんどいと言ったのを真に受けているのだろう、浅井はそう考え、人好きのする笑みでさっちゃんを見た。
336以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:00:03.27 ID:ygj1eYgZ0
復讐者支援!!
337Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/31(日) 15:01:46.23 ID:QEr3Ibop0
「余裕だ余裕。さっちゃんこそ大丈夫か? ≪夢の国≫の王様に呪いをかけ続けてんだ」
 他の都市伝説の力を利用して元の力を大きく逸脱させているのだ。呪いをかけられる相手もさることながら、その術者も相当な負担を負っているはずだ。しかし、
「だいじょうぶ!」
 ぶい、とピースサインをするさっちゃんにそうか、と浅井は眉尻を下げて笑う。
「さて、夜も遅いぞー、子供はとっとと寝た寝た! 明日になったらどっか適当なホテルにでも泊まろうぜ」
「さっちゃんそんなにこどもじゃないもん」
 不満そうにむー、と唸るさっちゃんにはいはい、と答えて浅井はバナナの皮を捨てに行くためにいくつか路地を折れた。そしてどこかの飲食店の残飯入れを見つけ、 
「ここでいいか」
 バナナの皮を捨て――そのまま嘔吐した。
「ゲ、ゴァ――」
 胃の中身を全てひっくり返したように中身を吐き出した浅井は荒い吐息で困ったように笑う。
「ハァ、ハァッ…………あー、人肉以外やっぱ駄目かぁ」
 額に浮いた汗を拭い、ふらつきながら路地をいくつか戻り、周囲に街灯も無い所にまで来ると、座り込んで空を見上げた。そして今日あったことを思い出す。
自身の娘がどのようにして死んだのかを知った日から十年程、やっと会えた復讐の相手の事を、いや、正確には復讐の相手と同じ身体をしていた者のことを考える。
「あの娘っ子、宗旨変えしたわけだ……いや、元々別人だったんだし、被害者だってんだから、行動も変わるわな」
 Tさんと呼ばれていた青年の話を思い出す。そしてそれを聞いたさっちゃんの反応も。
 以前さっちゃんから話に聞いていた地下カジノの奴らもあの娘っ子の側についてたし、なにより俺自身がこの目であの≪夢の国≫を見た。
 話を聞いただけでは信じられなかったが周りの人々の反応を見る限り、
「事実なんだろうなー」
 頬の傷痕を指先でなぞりながら煙草を取り出して火をつける。
338以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:02:46.14 ID:ygj1eYgZ0
しええん
339Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/31(日) 15:03:57.10 ID:QEr3Ibop0
「≪夢の国≫の中での話も嘘じゃあなかったわけだ」
 浅井の抱く≪夢の国≫への復讐心が揺らぐ。彼女は≪夢の国≫での茶会の時に彼にこう言ったのだ。
「――夢を与えるねぇ」
 紫煙を吐き出す。
「……クソ、もう復讐を果たすべき相手はいないってか。……だけどよぉ、」
 腕を見る。Tさんの光弾を弾き飛ばした部分のスーツの袖が破れていた。
 その穴を撫でながら言い聞かせるように彼は呟く。
「もうこうして生きるしかねえんだよ」
 そう言って立ち上がると彼はさっちゃんのいる場所へと歩いていく。
「これは意地ってやつだ……」
 再び、自らに言い聞かせるように彼は言葉を紡いだ。




            ●


 夢子ちゃんを荒れてすごいことになった地下カジノから連れて来た俺たちは苦しんでいる夢子ちゃんをともかく寝かせることにした。
「地下カジノのソファよりはたぶん寝心地いいぜ」
 そう言いながら用意した布団に夢子ちゃんを横たえる。
「すみ、ません」
 夢子ちゃんの言葉には力が無く、顔面は蒼白になっている。
「気にすんなよ、おかげでさっちゃんの病気から逃げられたんだしな」
 布団を被せてその上から二、三度体をぽんぽん叩く。
「それだって、……私が」
 申し訳なさそうに言う夢子ちゃんの言葉を全部言わせずにTさんに話を振る。
340以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:05:59.88 ID:ygj1eYgZ0
夢子ちゃん頑張ってくれ支援
341Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/31(日) 15:08:45.55 ID:QEr3Ibop0
「Tさん、とりあえずどうするよ? 咳き込んだり時折言葉に詰まったりしている所から見るに肺辺りに病気があるのか?」
 見た感じの事を言って意見を聞いてみると、
「いや、あの歌から派生した呪いならば正体は分からないな。どんな症状を出してでもバナナを半分しか食べれない状態にするのかもしれん」
 つまり、
「原因不明かよ。んー、風邪薬で大丈夫かな?」
「いや、おそらくは……」
「お姉ちゃーん、薬箱もってきたの」
「おう、ありがとな、リカちゃん」
 薬箱をリカちゃんから受け取って常備薬を取り出すと、Tさんが止めに入った。
「契約者、おそらくそれは効きはしない。無闇な投薬はやめておけ。彼らはさっちゃんの歌の他にも別の都市伝説を用いて夢子ちゃんをこの状態にまでしていたようだしな」
「そうなのか?」
「ああ、俺の解呪が夢子ちゃんにもう効いていない所を見ると、ずっと二番が継続している上に何らかの方法で俺の解呪を無効化するような……そんな何かが――」
 そこまで言うと髪を掻き毟るTさん。
「情報が足りないな。道中聞いた話しを元にしてもう少し情報をもらうとしよう」
 そう言って携帯を取り出した。
「情報?」
「あのスーツの男、浅井秀也と言ったか。彼が契約していた都市伝説の少女はおそらく黒服さんの古い知り合いだ」
「マジか?」
 あの嬢ちゃんが?
「ああ、地下カジノでの言動の端々を聞くにまず間違いない」
 そう言ってTさんは部屋から出ていった。遠ざかっていく声が微かに聞こえてくる。
「――、ああ、黒服さん突然ですまないがさっちゃんのことについて知っている限り全て教えてもらいたい」


            ●


 ついさっき地下カジノであったことの説明から始めたTさんの声が聞こえなくなった所で俺は夢子ちゃんに声をかけた。
「夢子ちゃん大変だったなー、大丈夫か?」
342以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:10:59.54 ID:ygj1eYgZ0
支援!
343Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/31(日) 15:11:58.90 ID:QEr3Ibop0
「夢のお姉ちゃんだいじょうぶ?」
 二人で問いかけると夢子ちゃんはぎこちない笑みで答える。
「は、い……大丈夫です」
 うん、しんどそうだ。
 頭の上のリカちゃんと頷きあって認識は同じだと確かめ合う。夢子ちゃんは本気で大丈夫だと俺たちに思わせることができてると思ってるんだろうなと考えながら夢子ちゃんに訊く。
「なんか食えるか?」
 夢子ちゃんの今の状態がさっちゃんの歌の二番目の通りならバナナの半分くらいは食えるはずだけど。
「いえ、食べ物は……バナナの半分も無理そうです」
 どうも駄目らしい。
「あー、クソ、あんにゃろう、歌詞通りかそれ以下の力にしとけよな」
 あんまりにもつらそうで見てらんねえっての。
 悪態をついていると夢子ちゃんは咳き込みながら言った。
「あの子の、力は……増幅されてました、から」
「増幅?」
 そういやTさんも何か他の都市伝説も一緒に使って夢子ちゃんをこの状態にしてるみたいなことを言ってたな。
「はい。これほどまでの力です……」
 そこで何故か夢子ちゃんは悲しそうな表情になった。
「あの方たちにも相当な、負荷がかかっているはずです……」
344以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:14:28.67 ID:MOnR44l2O
しえ
345以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:14:56.47 ID:ygj1eYgZ0
支援!!!
346Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/31(日) 15:15:37.87 ID:QEr3Ibop0



            ●


「――――、そうか、足を奪う四番目以外に契約によって二番の歌詞の病気にさせる呪いを……それでもやはり妙だな」
『妙……ですか?』
 青年の言葉に電話の向こうで黒服の疑問が返る。ん、と青年は応じ、
「以前彼女らが≪夢の国≫に挑んだ時、その力を使わなかったはずがない。だが結果としてそれで≪夢の国≫は揺らがなかった。
当時の≪夢の国≫を揺るがせられなかったモノが今の≪夢の国≫を揺るがすことができるとは思えん。
 王が夢子ちゃんに代わって、その甘さに付け入られる隙はできてしまってはいるし、戦い方自体が≪夢の国≫の住人たちを庇うようなものになって王が前線に立つせいで彼女自身の危険も増えてはいるが、
能力的にはほとんど以前の≪夢の国≫のままなのだからな。
 それにだ。呪いというものは対象が死ねば消えて失せるものだ。病気もしかり、宿主が機能停止するのだからな。
呪いも病気も、その効果はそこで死ぬはずなんだ。そもそも死んだ後にその対象が再生するなんていうイレギュラーはそうそう起こりはしない。
だからこそ秋祭りの時にあの世界一有名なネズミも、無意識の内に夢子ちゃんも創始者の支配から逃れられる可能性である自らにかけられた呪いを守るために死なないよう立ち回ったのだからな。
それが、今回は一度夢子ちゃんが明らかに殺されたにも関わらず呪いが消えていない」
 ――異常だ。そう電話口に告げる。
『彼女は大丈夫なのですか?』
 電話の向こうからは夢子の生命を心配する声が返って来た。
「……最悪」
 そう前置きして青年は黒服に言う。
「夢子ちゃんにも確認したことだが、最悪、今回の復讐が成っても相当な都市伝説がついていない限りはあの子が消えることはないだろう。それほどまでに≪夢の国で人は死なない≫という条項は強力らしい」
 ――が、
「それが先代同様仇になる」
347以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:17:51.07 ID:ygj1eYgZ0
夢子ちゃん、どうか気をしっかり……!支援
348Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/31(日) 15:21:05.85 ID:QEr3Ibop0
 そう言って深く息を吐いた。
『仇になる……とは?』
 黒服の疑問の声。
「ああ、今、夢子ちゃんは痛覚がないわけじゃない。刺されれば痛いし病が身体を蝕めば苦しむ。だが、そんなことが続けばその内に夢子ちゃんは呪いが与える苦しみなどでは動じなくなるだろう」
 しかし、
「その時には夢子ちゃんが目覚めてしまった夢の国の創始者――前王と同様の状態になっている」
 電話からはそれがどういうことなのか悟ったのか、黒服が息を呑む気配が伝わって来た。青年は続ける。
「当時の医学では治療困難なウイルス性の病気にかかり、いつかその治療法が確立されるまで肉体を冷凍保存したという都市伝説として存在し、
しかし≪夢の国≫の集合体の主として目覚めてしまい、死んでもウイルスありきで蘇ったために最終的に病に狂った彼と、
今強力な呪いによってもたらされる原因不明の病によって何度死んでもその身体を侵す病から逃れられない夢子ちゃんは構図がとても似ている。
そしてこのままその構図が辿る末路は前の王と同じ。このままでは――」
 最悪の予想を告げた。


「――再び≪夢の国≫が悪夢に歪む」

349以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:23:15.04 ID:Z3CXbWFNO
しえー
350以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:23:27.82 ID:ygj1eYgZ0
ハラハラ支援!!!
351以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:23:39.47 ID:MOnR44l2O
352Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/31(日) 15:25:22.88 ID:QEr3Ibop0
『そんなこと、どうにかしなければ』
 焦ったような声、黒服も青年も≪夢の国≫が狂い、人を害した時の恐ろしさを知っている。だから、と言うように青年は黒服に告げる。
「当然そんなことにはさせんさ。――悪いが一つ頼まれてくれるか?」
『はい、なんでしょうか?』
「ああ……」
 あの人が黒服さんを慕っているのを知っていながら黒服さん越しに頼むのはやはり卑怯だなと思い、苦笑しながら青年は言う。
「≪パワーストーン≫契約者に結界関係の石を出来得る限り用意してもらい、そして契約者の部屋へと来てもらいたい。金に糸目はつけないと言っておいてくれ。――それと」
 思い出し、告げる。
「青白い光を放つ石と赤い光を放つ石、しかも何度も使用に耐えられるような代物、そんな≪パワーストーン≫があるのかについても訊いておいてもらいたい」
『わかりました。――貴方がたも、さっちゃんも、皆が無事で済むように祈っています』
「……そうなると良いな」
 青年は礼を言い、電話を切った。そして一人呟く。
「さっちゃんもそうだが、あのスーツの男、あの能力はなんだ? 服か何かが変形する能力……か?」
 それに殴打を止める時に受けたあの怪力、二つのペンダント……いったいいくつの都市伝説と契約しているのだろうか?
 疑問は多く、だがそれらを調べるには実際に彼らに会うしかないのだと思うと気が重くなるのだった。  



            ●


 黒服さんとの連絡が済んだのかTさんが帰ってきた。厳しい顔をしているのを見ると特にこの状態をどうにかする方法は分からなかったみたいだ。
353以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:27:32.03 ID:ygj1eYgZ0
本当、何の都市伝説だろ?支援
354Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/31(日) 15:29:17.47 ID:QEr3Ibop0

「なあTさん」
「どうした?」
「あの嬢ちゃん、さっちゃんだけどさ」
「?」
 無言で先を促すTさん。俺はん、と応じて話す。
「能力の増幅をしてるって話なんだけど……」
 ああ、とTさんは相槌を打って、
「多少緩めても何万人規模で呪殺出来るようブーストされているとスーツの男が言っていたからな。その通りに増幅されているんだろう」
「おいおい……」
 何万って……。
「それってやっぱり無茶なんじゃねえのか? あのちっちゃい嬢ちゃんにそんな大きな力が収まるとは思えねえんだけど」
「都市伝説は見ためとその能力が釣り合わない者も多いが、まあ、彼女のあの能力に限って言えばそうだろうな。
元々はさっちゃん一人が罹っている病を相手に与えるはずのところを何万人規模などに膨れ上がらせているんだ。相当な無茶だろう、それはあのスーツの男の方にしてもそうだ。
力を使うのはさっちゃんだろうが、力を増幅するモノと契約をしているのはあの男の方なのだしな」
 なんつー話だよ……。
「……そこまでして」
 言葉は切れた。「そこまでして夢子ちゃんを殺したいかよ」と、その先を本人の前では言いたくない。
355Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/31(日) 15:32:02.23 ID:QEr3Ibop0
「……T、さん」
 何と言ったらいいものか分からなくて黙ってうつむいていると、ケホケホ咳き込みながら夢子ちゃんがTさんに話しかけた。
「なんだ?」
 夢子ちゃんは話をするために深く何度も深呼吸をしている。荒かった呼吸がいくらかマシになるけど顔色は蒼白を通り越して土気色になってる……まるで死んだ人間のように見える。
 もしかしたら俺なんかじゃ気付かない間に何回も死んでるのかもしれない。
「呪いの元からは離れていますから、まだ楽ですよ」
 心配の表情が読まれたのか夢子ちゃんが俺に笑って言った。……説得力無えよ、ばか。
「もし」
 夢子ちゃんはTさんを見据える。そして聞き捨てならない事をぬかしやがった。
「もし私がまた歪んでしまったら、その時は私の始末をお願いできますか?」
「ゆめのお姉ちゃん!?」
「おい夢子ちゃんどういうことだ!?」
 あまりの言葉に胸倉を引っ掴んで寝ている夢子ちゃんの上体を引き上げる。夢子ちゃんは薄く笑んで、
「このままの状態が長く続けば、私はたぶん壊れてしまいます」
 どこか諦めたように言った。
「何言ってんだよ!?」
 夢子ちゃんは、すみませんと謝りながら、
「町を発ってから、何人かの方々から復讐を受けました。話し合いや、場合によっては戦いもしましたが、最後には分かってくれたんです。
でも、あの二人は……私を赦さないと言い、そしてここまでする力があります。それだけの力を求めてしまう程に、私を怨んで……失ったものを、失わせてしまったものを哀しんでいるんです。
 そして、このままでは私は、彼らの思いに壊されてしまいます……」
 そして顔を上げた。その瞳はまるで暗闇を怖がる子供のように揺らいでいる。その目を見て、俺は気勢を削がれる。
「私が壊れたら、きっとまた子供たちを攫って……、っ殺すような存在になります。そうはなりたくありません。≪夢の国≫の皆をまた、そんな悪夢に溺れさせたくは、ないです」
 そうなるのなら、私は消えた方がずっといい。
356以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:32:54.49 ID:ygj1eYgZ0
うぁああああああああああああああ夢子ちゃーーーーーんっ!?
支援
357以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:34:57.69 ID:MOnR44l2O
しえん
358以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:35:02.20 ID:Z3CXbWFNO
支援よ!
359Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/31(日) 15:36:22.77 ID:QEr3Ibop0
 咳に詰まりながら言われた言葉に、俺は何も言えずに、でも自分を消せなんていう夢子ちゃんの胸倉を離す気も起きなくてただ睨みつけて、
「こら契約者。病人なんだ、放してやれ」
「でも」
 反論しようとしたけど、Tさんに無言で手を離すよう重圧じみた視線で訴えられる。
「……わかったよ」
 視線に圧されてしぶしぶながら手を離して一歩下がった。
 Tさんはさて、と一息入れて、重圧じみた視線の矛先を、上体を起こして、だけど視線は伏せている夢子ちゃんへと変えた。
「夢子ちゃん」
「……はい」
 Tさんの言葉に夢子ちゃんは顔を上げる。Tさんは周囲の気配たち――≪夢の国≫の住人たちの気配を腕を軽く広げて示しながら、
「王がそんなに簡単に諦めを語るな。お前を慕うモノたちが悲しむ。それに――」
 俺とリカちゃんの頭を軽く叩くと、
「お前が居なくなると悲しむ者がいる」
「ですが」
「あの二人が望む復讐、その対象は最早居ないんだ」
「……でも私は確かにこの手で殺しました……」
「手を下したのが夢子ちゃん自身だとしても、そこに夢子ちゃんの意思はない」
「それでも、彼らの復讐には正当性があります」
「そうだ、確かに彼らには理がある。だが、それでも」
「それで、も?」
「今の≪夢の国≫は彼らに歪められる謂われはない。そう言い切るがいい。王にはそれぐらいの思い切りがあった方が好ましい。
 そして、もし夢子ちゃんが壊れたらという場合の事などはまずそうならないように最善の手を打った後で言えばいい」
 そう言って強気な笑みを浮かべた。
360Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/31(日) 15:39:24.25 ID:QEr3Ibop0
 夢子ちゃんは困惑したような、どうしたらいいか迷っているような顔をしていて、それを見てTさんはため息を一つ吐き、
「一生をかけて償うのだろう? 簡単に消えることができると思うな」
 たぶん、ワザと厳しく言ったその言葉に、夢子ちゃんも決心が固まったみたいだった。
 夢子ちゃんは俺、リカちゃん、Tさんをそれぞれ見て、小さく言葉を発した。
「……じゃあ」
 次いで、深呼吸を一つ。言い直すように言葉を作る。
 それは力がこもった言葉で、
「では、≪夢の国≫の王として、Tさん、貴方に頼みがあります」
「聞こう」
 Tさんが応えた。夢子ちゃんはTさんを見据える。顔色も悪く、疲れきってはいるけど、意思だけははっきりと感じられる。そんな声で、
「私を、そして≪夢の国≫を再び歪むるに至る呪いの元を止めて頂きたく思います」
 自分が壊れないために、俺から見たらたぶん最大限の方策を口にした。
 Tさんは満足そうに笑み、
「承知した」
 深く頷いた。
361以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:40:22.46 ID:ygj1eYgZ0
支援!!
362以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:40:34.96 ID:MOnR44l2O
支援
363Tさん:夢の国への復讐者:2010/01/31(日) 15:42:23.47 ID:QEr3Ibop0
長々と失礼いたしました!
Dさんの作者さんにごめんなさああああい!!
更に次回≪パワーストーン≫の契約者をお借りします土下座あああ!

どうも今回のお話は全編通してそれぞれの理由とかが複雑そうです作者も把握しづらいいいいい
それはさておき、
次回、浅井の契約都市伝説が一つ割れます
364以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:44:03.44 ID:ygj1eYgZ0
Tさん乙っしたー!
いえいえ、パワーストーン契約者は俺のネタでの出番予定皆無な可哀想な人なので、いくらでも使ってくださいなんだぜ!!
そして次回もwktk
365小ネタ:2010/01/31(日) 15:47:26.34 ID:ygj1eYgZ0
 −−−−マッドガッサー達の騒動が、終結したその日
 正確には、マッドガッサー達が、中央高校の屋上から、サンダーバードに乗って逃亡した、その日


「……つまらんな。所詮、連中はあの程度か」

 遠くから、遠くから、彼らの様子を観察していた男が、なんともつまらなそうに呟いた
 灰色のコートを身に纏った、壮年一歩手前の、中年の男だ
 その表情は、どこまでも冷徹で、慈愛と言うものを知らないかのような表情だ

「だが、あの戦闘能力は欲しいな………あの青年につけていた悪魔の囁きが外れたのは、惜しい…」

 あの連中を、手駒として使いたい
 だが、それは少々、難しそうである
 心に隙がなければ、悪魔の囁きの「卵」は孵化しない
 何とかして、コーク・ロア支配型の能力でこちらの手駒にでもできないだろうか…

「……まぁ、いい。時間はたっぷりとある……」

 くるり、男は踵を返す
 男の顔に、笑みが浮かんだ
 この世の邪悪を全て凝縮したような、そんな笑顔を

「…この街を起点として………全て、手に入れてやる」

 マッドガッサー達の騒動に紛れての実験の結果から、これからの行動を決めるとしよう
 楽しげに笑う灰色のコートの男
 その男の後ろを……一匹の犬が、付き従ってついていく
 尾なしの犬は、男の後をついて歩いて……ニヤリ、笑った
to be … ?
366以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:49:19.77 ID:Z3CXbWFNO
お二人共おつー!
367以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:49:24.77 ID:ygj1eYgZ0
言えない…マッドガッサー達がミサイル爆破させて逃亡したシーンの最後に入れるはずだったのに、すっかり入れ忘れていたシーンを今更こっそり投下したなんて恥ずかしくて言えない……!

他にやるって方がいらっしゃらなかったら、続けて代理投下に入っていくんだぜー
368以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:50:46.51 ID:MOnR44l2O
クールトーだろか……
深夜 廃工場の一角に
「アッー!?」
絹を裂くような漢の叫びと
赤い、血の雨が降った


370かごめかごめ 普段大人しい奴程キレるとry (代理):2010/01/31(日) 15:53:22.87 ID:ygj1eYgZ0
「貴様ぁっ!よくも兄貴を!!!」
「ヤッてしまえ!!」
今回、上から回ってきた仕事は
廃工場の辺りに発生するようになった『野生の兄貴』の駆除
禿が原因で発生したのだから責任を取れと言う事らしい・・・全く持っていい迷惑だ
まぁ・・・
憂さ晴らし(ナニのかは聞くな)には丁度良いが
構える兄貴達を前に
鎧の指が、手の甲が、肘が、肩が、膝が、尻尾が、鋭く、平たく、固く伸び全身に刃を形成する


371以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 15:55:17.04 ID:MOnR44l2O
しえ
372かごめかごめ 普段大人しい奴程キレるとry (代理):2010/01/31(日) 15:55:53.17 ID:ygj1eYgZ0
「かぁごめかごめ 篭の中の鳥は」

そのまま兄貴の集団の中を駆け抜け

「何時何時出やる」

擦違う所から順に切り刻み

「夜明けの晩に」

兄貴達の身体を少しずつ削ぎ落とし

「鶴と亀が滑った」

最後に

「後ろの正面だぁれ?」

全ての首を切り落とした


373かごめかごめ 普段大人しい奴程キレるとry (代理):2010/01/31(日) 15:58:29.39 ID:ygj1eYgZ0
「これで今何体?」
兄貴達の血で真っ赤に染まった廃工場を背にコンが尋ねてくる
「36・・・まだ、確認された内の1割程です」
「それだけ居るというのも驚きですが・・・」
今現在町で確認されていた野生種の数は三七〇弱
「今日中に後10体は片付けますよ」
「まだやんの!?」
何を驚いているのだろう?
兄貴を駆逐するのは当然だろうに
「滅ぼしてやる・・・」
そう
「兄貴も、ガチムチも、ガチホモも、全部俺が滅ぼしてやる!!!」

この日から学校町内での兄貴の目撃情報は序々にその数を減らしていく事となる・・・しかし、実はこの時世界(主にアメリカ)でソレを上回る速度で兄貴が増殖していたりするのだが
まぁ、今は、そしてこれからも日本には関係の無い話である・・・多分


374かごめかごめ 普段大人しい奴程キレるとry (代理):2010/01/31(日) 16:01:10.41 ID:ygj1eYgZ0
そんなこんなで掘られたかごめかごめ
掘られた事で色々価値観が変わったと言うか
容赦無くなっています
つかあの鎧って狐が変化してるだけだから固定の形無いので実は全身武器も同意だったり




--------------------------------------------------------------------
誰か……誰か!かごめかごめに愛の手を!!!!!!!!
375恐怖のサンタ 【回想:全ての原因 part3】:2010/01/31(日) 16:05:02.14 ID:kNMShqkJ0
 先輩の葬儀が終わってから、約一週間。
 俺は、何事もなかったかのように、日々を過ごしている。
 ……いや、過ごしていた、とでも言うべきか。

 コツッ コツッ コツッ

 仕事帰り。
 俺は一人、アパートの階段を上っていた。

 コツッ コツッ コツッ

 一段、一段、正確に踏みしめながら、上っていく。
 かみしめるように、大切に、大切に、上っていく。
 ――――もう、俺がこの階段を上ることなど、ないのかもしれないのだから。

**************************************************

「――あ、はるくん……お帰りなさい」

 玄関をくぐり、部屋へと入ると、料理でもしていたのか、エプロン姿の彼女がパタパタと寄ってきた。
 これは、いつもの日常。
 それは、いつもの風景。
 しかしそこに違和感を感じてしまうのは……今鞄の中にある、何枚かの紙きれのせいだろうか。

「…………はるくん?」

 返事をしないことを訝ったのか、彼女が下から俺を覗き込んでいた。
 いつものような、顔で。
 いつも俺に向けてきた、顔で。
376以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:05:34.24 ID:ygj1eYgZ0
残り書いてないネタを整理しつつ一旦パソコンから離れる
家族風呂から帰ってきてもスレが残っていてくれれば幸せだ


そして、>>368
せっかく予想がビンゴしたので、今後の話に出します敵方都市伝説で、リクエストありましたら受け付けますなんだぜ


…っべ、別に、敵が全部決まってない訳じゃないんだからねっ!?
377恐怖のサンタ 【回想:全ての原因 part3】:2010/01/31(日) 16:07:52.74 ID:kNMShqkJ0

「いや……何でもない」

 部屋の奥へと入りながら、俺はいつものように答え……内心で、苦笑した。
 ――――何が、「何でもない」のか。
 今日こそ、決着をつけるのだと、そう決めたではないか。

 こんな所でうじうじとして、また誰かが死ぬのを見るのか?
 また人が死ぬのを、静観するのか?
 これ以上彼女が人を殺すのを……黙って見ているのか?
 少しの逡巡。
 その答えを出すのに、さほど時間はかからなかった。

「いーや……やっぱり何かあった、かな?」

 俺は今、どんな顔をしているのだろう。
 笑顔でいるのか、しかめっ面をしているのか。
 自分の物であるはずの顔の様子が、まるでわからない。
 彼女は、一瞬怪訝そうな顔をして……俺のそんな様子に気づいたのか、おずおずと尋ねてきた。

「どう、したの……?」

 小さく首をかしげる彼女に、俺はまた少し、逡巡を重ねて

「もう、やめないか……あんなこと」

 しかしはっきりと、口にした。
 ぎゅっと、鞄を握る手に力がこもる。
378恐怖のサンタ 【回想:全ての原因 part3】:2010/01/31(日) 16:11:02.59 ID:kNMShqkJ0
「やめるって……何を?」

 ……あくまで、とぼけるつもりなのか。
 それとも、質問の意図が伝わらなかったのか。
 どちらにせよ、構わない。
 俺はただ、質問を重ねていくだけだ。

「最近……いや、ここ数カ月、俺の周囲で起きた変死――――」

 俺は静かに、語りだした。
 出棺前の先輩の顔……その少し苦悶の残る顔を思い出して、思わず足が竦みそうになる。
 しかし、逃げるわけにはいかない。
 逃げるわけには……いかないのだ。

「――――あれは、お前が引き起こしたんだろう?」

 振り絞るようにして言った、その言葉。
 それを聞いて、彼女は眼を見開き

「……何を、言ってるの?」

 そう、問い返してきた。
 今は少しも揺れていない、目。
 いつも通りのように見える、彼女。
 しかし、最初の一瞬の動揺が、たったそれだけの動作が、「いつも」を過ごしてきた俺たちにとって、あり得ない反応だった。
 ……あってはならない、反応だったのだ。
379以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:11:42.20 ID:QEr3Ibop0
支援!
380恐怖のサンタ 【回想:全ての原因 part3】:2010/01/31(日) 16:14:07.68 ID:kNMShqkJ0
「ここにレポートがある」

 鞄から、何枚かの紙と写真を取り出す。
 ここへ来る前、興信所から取ってきたものだ。
 ……もう、担当の職員は死んでいたが。
 半ば盗人のように取ってきたそれらをテーブルの上に置き、俺はその何枚かを指差した。

「これは、お前のここ一週間の行動を逐一……それこそ、法なんかいくつも破ってるくらいに観察して、事細かに記してもらったものだ」
「………………」

 俺の言葉を、彼女は無表情で聞いている。

「この中で重要なのは……この紙のここと、これだ」

 俺は、一枚の紙の中にあるある時刻と、一枚の写真を指差した。
 そこに写っているのは、浮気や不倫の現場なんて陳腐な物じゃ、もちろんない。
 ましてや誰かと会っていたとかいう、そんなものでもない。

「これは、一体どういうことなんだ……?」

 そこに写っていたのは、彼女ただ一人。
 しかし、その光景は……あまりに日常と、かけ離れていた。
 腕をだらりと下げ、正座のように足を折りたたんだ彼女。
 その顔は天井へと向けられ……その目は白く、何も見ていない。
 普通なら、薬物中毒か何かと捉えられそうな、そんな光景。

 ――――もしそうなら、どんなに良かったことか。
381以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:15:36.26 ID:QEr3Ibop0
犯人彼女か! 支援
382以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:16:09.52 ID:Z3CXbWFNO
しえ
383恐怖のサンタ 【回想:全ての原因 part3】:2010/01/31(日) 16:16:55.11 ID:kNMShqkJ0
 問題は、その時刻。
 俺の指差す、レポートの一枚の示され、また写真の右下にも描かれた、その時刻。
 その時……彼女がそのような奇行をする、その時に

「どうして、お前の奇行と、変死した人間の死亡時刻が、一致してるんだよ……!」

 この一週間で、三度。
 彼女は三回、奇行を見せ……その度に、一人ずつ人間が死んでいった。
 これは一体、魔法なのか、超能力なのか、はたまた呪いなのか。
 そんな事は、分からない。
 ただ一つ、彼女の奇行と、死亡時刻の一致。これは事実であり、真実だ。

「どうして、何だ……?」
「………………」

 もし彼女が沈黙を守るのなら、それを打ち崩すレポートはまだ幾らでもある。
 今の質問でだめなら、また、次を。
 次の質問でだめなら、また、次を。
 口を閉ざす彼女を見て、俺はそう覚悟を決め

「…………どこで、失敗しちゃったのかな」

 しかし一言、彼女はぽつりとつぶやいた。
 そのまま、彼女がぶつぶつと呟き始める。

「この一週間で、三人殺すのを見られたところ……? ううん、それを見たのは、はるくんじゃない」
「おい…………」

 ……しかし、それは俺の期待していたような、懺悔の言葉ではなかった。
384以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:19:11.70 ID:DqJE0ACp0
帰ってきたら大量投下に驚いた支援!
385恐怖のサンタ 【回想:全ての原因 part3】:2010/01/31(日) 16:19:59.26 ID:kNMShqkJ0
「あの興信所の男を殺すのに、手間取ったから……? ううん、興信所にはるくんが依頼をした時点で、私は疑われてた」
「お前は、一体、何を……」
「じゃあやっぱり、あの先輩とかいう男のせい……? たぶん、そう。「憑いてる」私を見て、しかも戦いを挑んできたのは、あの男が初めて」
「何を、言ってるんだっ!?」

 バンッ、と机を叩く。
 失敗? 殺すのに手間取った? 戦いを挑んできた?
 ――――分からない。
 これが、あの彼女の言動なのか?

 写真を見た時点で、ある程度の覚悟はしていた。
 「日常」が「非日常」へと変わってしまうことくらい、覚悟はしていた。
 しかし、今の彼女は何だ?
 いつもの彼女なら……例え、「非日常」における彼女ですら、問い詰めればちゃんと罪を告白して、悔いてくれる……そう、思っていたのに。
 それはただの、甘い幻想だったのか?
 俺のどうしようもない、願望だったのか?

「……どう、したの?」

 ハッと、した。
 ほんの少し前にもかけられたはずの、彼女の言葉。
 しかし、その声はあまりに、無機質で
 それを発した彼女の目には、何も映ってなくて
 ……一体、どうしたというのか。
 この変わりようは、何なのか。
 今、俺の目の前にいる、この女――――

「――――お前は、誰だ?」
386以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:21:56.13 ID:DqJE0ACp0
支援
387恐怖のサンタ 【回想:全ての原因 part3】:2010/01/31(日) 16:23:17.41 ID:kNMShqkJ0
 俺の質問に、彼女はただ、無表情で答える。
 まるで、感情の表現方法を忘れてしまったかのように。

「私は、私……あなたを好きな、そしてあなたが好きになってくれた、私……」

 ――違う! と。
 心の中で、俺は大きく叫んだ。
 こんなのは、彼女ではない。
 彼女であるはずが、ない。
 これでは、まるで――――

「私はあなたを、ずっと信じてきた……でも、もう、駄目」
「何を、する気だ……」

 唐突に、彼女の雰囲気が変わった。
 表面的には、特に何も変わってはいない。
 しかし、そのまとう空気……部屋全体の空気が、重くなったような気がした。

「待て、まだ、俺は――――」
「もう、いいの。もう、いいのよ……」

 そろり、と彼女が立ちあがる。
 その目は、何も移していなくて
 ……でも、その奥に、彼女以外の別の「何か」を見たような気も、した。

「あなたを永遠に、私にものにしてあげる」

 ――異様だ。
 あまりに、異様だ。
 今までに一度も出会った事のない恐怖を感じて、俺はとっさに、玄関へと向かって走り出していた。
388以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:24:00.90 ID:QEr3Ibop0
支援
389以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:24:36.31 ID:Z3CXbWFNO
390恐怖のサンタ 【回想:全ての原因 part3】:2010/01/31(日) 16:26:03.91 ID:kNMShqkJ0
 ……しかし

「逃げても、無駄」

 突然、暗くなる俺の周囲。
 停電で電球が消えたとか、そんな感じではない。
 まるで、部屋のすべての明かりが、消えてしまったような
 この世の全ての明かりが消えてしまったような、そんな感覚。

「逃げ場は、ないの」

 まるで俺の周囲すべてから聞こえてくるかのような、彼女の声。
 ……一体何が、起こっているというのか。

(落ち着け……落ち着くんだ……)
 
 これが彼女の引き起こした事なのは、間違いない。
 今までもこうして、彼女が邪魔者を排除してきた事も、間違いない。
 ……つまり、だ。

(…………ここで、俺は死ぬのか?)

 彼女は俺も、消してしまうのか。
 今までそうしてきたように、俺も。
391以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:27:26.01 ID:DqJE0ACp0
しえーん
392以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:27:27.49 ID:Z3CXbWFNO
393恐怖のサンタ 【回想:全ての原因 part3】:2010/01/31(日) 16:29:06.65 ID:kNMShqkJ0
 ――死ぬ覚悟は、もちろんしている。
 いや……している、はずだった。
 ではなぜ、俺の体は震えているのか。
 ここまで、来て……こんな死の淵にまで来て、怖くなったとでもいうのか。
 そんな……。
 そんな、はずは――――

 パキーンッ!

「――――っ!?」

 突如、背広のポケットから響いた、音。
 それは、どこか澄んだ音色で、辺りを満たし

「あ……え……?」

 急速に、周囲に明かりが戻っていった。
 闇が、光に駆逐され
 徐々に部屋の本来の姿を、取り戻していく。

「な、何で……?」

 その、部屋の一角。
 先ほどまでと同じ場所に、彼女は立っていた。

「何で、とけちゃったの……?」

 その目は落ち着きなく動き、口はパクパクと開閉を繰り返している。
394以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:31:51.58 ID:DqJE0ACp0
支援
395恐怖のサンタ 【回想:全ての原因 part3】:2010/01/31(日) 16:32:05.05 ID:kNMShqkJ0
 俺は、彼女を――髪を振り乱し驚愕の表情を浮かべる、彼女を見て

(「これ」は、彼女じゃない……!)

 俺はそう、確信した。

 ――――それからの事は、あまりよく覚えていない。
 覚えているのは、取り乱した彼女と、飛びかかる俺。
 それ以降は、全く記憶にない。
 気づいたら、俺は彼女にまたがり、その首を絞めていたのだ。
 
 俺は、逃げた。
 絶命した彼女を置いて、逃げた。
 怖かったのだ。
 この世のものとは思えない、怪異を体験したこと。
 この世でもっとも醜いとされる、殺人を犯してしまったこと。
 そして、何より……

 ――――はる……くん……

 死ぬ直前の彼女が、憑き物の落ちたような顔で
 いつものように微笑んでくれたような、そんな記憶が頭に残っている事が、どうしようもなく、怖かった。
 
 ――――俺は、正気に戻った彼女を、この手で殺してしまったのかも……しれない。

**************************************************

 俺が全国に指名手配されたのは、それから二日後のことだった。

【終】
396以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:33:34.95 ID:Z3CXbWFNO
サンタの方おつです
397以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:34:45.68 ID:kNMShqkJ0
支援ありがとうございました!

恐怖のサンタ回想編のラストになります。
一ヶ月以上かけてしまったこの回想。
どう考えても、皆さんの記憶から抜け落ちてる可能性が高いです、時間をかけてしまい申し訳ありませんでしたorz
後は12月25日深夜、それとエピローグを書いて終わりになります。
398以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:34:45.56 ID:DqJE0ACp0
支援
399以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 16:53:17.12 ID:MOnR44l2O
>>376
正直いうとクールトー見て
「こいつ雑魚敵にちょうどよくね?」
って思って書く気ないにメモってただけだったりする

そしてリクエスト出来るほど知識も資料もないから困る
セイレンの唄とか無理そうだし
400以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 17:00:54.50 ID:DqJE0ACp0
クールトーがクトゥルーに見えた
クトゥルーの方もシェアードワールドなんだよな
401以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 17:30:27.87 ID:DqJE0ACp0
402以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 17:47:09.58 ID:ejHboPAN0
まずは誰もいない→其れが零(過疎)だ

其処に私が現れた→其れが壱(保守)だ

そして君が現れた→其れが弐(レス)だ


やってみたかっただけ。
上の方でサンホラしてたから
403白蛇の里親もとい契約者探し(代理):2010/01/31(日) 18:08:05.47 ID:DqJE0ACp0
冬休みも明けたある日の事
いつも通り騒がしい教室の隅の席で、静かに本を読んでる三面鏡の少女
中学から付き合いがある友人は学校内に何人かいるが、高校に入ってから積極的に友達を作ってはいない
都市伝説同士は引かれ合う
事実、それまで全く縁の無かった都市伝説事件が、自らが契約者となってからはそれなりの頻度で起こるようになったからだ
彼女自身が巻き込まれた場合は、黒服Hが裏で立ち回り知らぬ間に解決している事も多いのだが
深くもなくかといって疎遠という程でもない、友人という間柄が目も手も届かなく一番危険だと思うようになっていた
だから彼女は、都市伝説に関わりの無い友人を作りたがらないのだ
そんな事を知ってか知らずか、彼女の担当である黒服Hは彼女を都市伝説契約者に積極的に関わらせようとしなかった
元より何かに長けた能力があるわけではないので、無闇に関わらせても危険があるだけなので当然の判断ではあるのだが
「逢瀬、ちょっといいか?」
「ふぇ!? ご、ごごご獄門寺くん!?」
少女はその声に聞き覚えがあった
あらかさまに動揺し、机に膝をぶつけ本を落としそれを拾おうとして椅子から転げ落ちそうになる
「いや、そういう反応をされても困るんだが」
「あ、あはは、そうだよね? うん、き、気を付ける」
「それより、ちょっといいか? 話したい事があるんだが」
「あ、うん。何かな」
「正月の時の件なんだが」
少女はごしゃんと音を立てて、椅子ごと転がった
「大丈夫か?」
「あ、あはは、うん、大丈夫大丈夫」
打ち付けた額を赤くしながら、転げた椅子を起こし立ち上がる少女
「教室で話すのも難な内容だし、ちょっと場所を変えていいか?」
「うん、できればあたしもそうして貰った方が助かるかも」
じんわりと頬を赤らめ、声を抑えて周囲の様子を窺いながらこくこくと頷き
二人は休み時間の喧騒の中、教室を出て行った
二人の気配が遠ざかっていったのを確認して、それまで無関心を装っていた5〜6の男子連中がざざっと一箇所に集まってくる
404白蛇の里親もとい契約者探し(代理):2010/01/31(日) 18:10:19.47 ID:DqJE0ACp0
「おい、獄門寺って委員長と仲良くなかったっけ?」
「妹も可愛いんだよなあいつ」
「小学生ぐらいの子とよく一緒にいるのを見掛けるぞ」
「中学生の子じゃなくてか?」
「それが妹だろ?」
「小鳥遊とも最近親しげだな」
「それでいて逢瀬にも手を出すつもりか」
「しかも何か満更でもなさそうなあのリアクションは何だ」
「あんな逢瀬、初めて見たぞ俺」
「……ちょっと待て。小鳥遊って確か男だろあいつ」
「バカだなお前、あんな可愛い子が女の子のはずないだろ」
「それもそうか」
「待て、お前ら色々と待て。ツッコんでいいところかそこは」
「ああ、かなりツッコミたいな」
「むしろツッコまれてもいいな」
「よしお前ら心の病院行ってこい。脳の病院でもいいぞ」
「そうだぞ、男はもっと筋肉質であるべきだ。そういえばこないだ公園で実に良い男と出会ってだな」
「お前も病院行ってこい」

―――
405白蛇の里親もとい契約者探し(代理):2010/01/31(日) 18:12:31.67 ID:DqJE0ACp0
「あの、お正月の時の話って……えーと、アレ自体は色々と誤解があると思うんだけど」
「いや、趣味は人それぞれだしそれは問題じゃないんだが」
「問題だよ!? 誤解されっ放しなの!? あの時も目一杯説明したよね!?」
「あの時は特殊なプレイ中だったわけじゃないって言い訳が中心で、事情は説明されてなかったからな」
「いや、その……えーと……」
「あの時は気のせいか、あの黒服のせいだと思ってたんだが」
ひょこりと獄門寺の陰から顔を出す、小さな女の子――花子さん
「みー、やっぱり蛇さんなのですよ。『トイレから出てくる下水蛇』に似てるのです」
「にゃ? その子って……たまに教室に入ってきてたりしたけど」
「花子さんに気が付いてるって事は、都市伝説絡みだと確定か」
困ったような、呆れたようなそんな口調
「花子さんって……獄門寺くん、もしかして都市伝説とか詳しい?」
「そう聞いてくるという事は、都市伝説について説明はいらないな。俺は……詳しいというか、この花子さんと契約してる」
「けーやくしゃなのです」
にぱーと笑う花子さんに、思わず微笑み返しをする少女
「それはともかくとしてだ。正月に一体何があったんだ? もしかしてあの時の黒服のせいか」
「うーん、話せば長くなりそうなんだけど……」
ちらりと視線を腕時計に落とす少女に、つられて獄門寺も時計を見る
「休み時間終わりそう」
「それじゃ続きは放課後だな。用事とかはあるか?」
「ううん、別にこれといっては無いけど……獄門寺くんはいいの?」
「構わない。周りにある面倒事は、ややこしい事になる前に解決しておきたい性分なんだ」
「ん、わかった。でも経緯はめんどくさいけど、そんな大事じゃないからね?」
暗に心配しないでと言っているとすぐに理解し、とりあえず頷いて返しておく
「それじゃ、教室戻ろっか。花子さん、またねー」
笑顔で手を振る少女と、嬉しそうに手を振り返す花子さん
「……大人しい奴だと思ってたけど、結構テンション高い方なんだな、逢瀬」
「そ、そんなにテンション高いかな!? 騒がしかったらごめんね!?」
「普段が普段だから、まあ少し驚いたな」
「うう、誤解が解ければこんなノリにならなくて済むのにー」
406白蛇の里親もとい契約者探し(代理):2010/01/31(日) 18:14:51.51 ID:DqJE0ACp0


白蛇の相談に乗ってくれるみたいな話が前にちょろっとあったので

白蛇「できれば契約者は女性で頼む。体温やら波長の相性やら触り心地やら色々あるのでな」
三面鏡の少女「贅沢言うなこのエロ蛇ー!?」


209 名前:三面鏡@ドクター[] 投稿日:2010/01/31(日) 18:00:30
白蛇はどうしてくれようか思案中
新キャラ投入して契約者にするのも難だしなぁ


****************
ああ…この高校の男子生徒と友達になりたいぜ
407以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 18:37:34.84 ID:MOnR44l2O
にょーん
408以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 19:00:43.97 ID:DqJE0ACp0
409以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 19:13:26.24 ID:GYZRomPB0
410以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 19:23:27.48 ID:pMlq9iknO
にゃるらとほてっぷ!!
411以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 19:42:11.24 ID:9rynqd+L0
たっだいまー、皆様乙!!

>>399
セイレンの唄了解なんだぜ!!!
412女装少年 (代理):2010/01/31(日) 19:49:24.96 ID:9rynqd+L0
 ………お正月、バイトのあとで引いてみたおみくじは末吉だったなあ。
 末吉って吉の中では一番立場悪いけど、凶よりはマシなはずなのになあ。
 なぜか中学生になってからは凶しか引いたことなかったから、久々に吉引いて「これは今年いいことある!」って喜んでたのになあ。

「ほらほら少年! ボーっとしてないで、手を動かしてください!」

 やれ早く、それ早くとこっちのことを急かしてくるトバさん。

「早くしなサイ、時間ありマセンよ? 休み明け早々遅刻しようってんデスか?」

 すっかり馴染んで、最近ではトバさんをサポートしてこっちのことを追いつめてくれるメルヘンちゃん。

「…大丈夫、最近は"そういう"需要もあるみたいだから。…似合うし、可愛い」

 フォローしてくれてるみたいだけど、それでも他二人の奇行を止めてはくれないクイちゃん。

「全く……ただでさえ学校まで距離があるから早めに家を出なければいけないのに。仕方ありません。実力行使で着替えさせてあげます」

 あきれたような声色とは裏腹に満面の笑みを浮かべながら、トバさんがこっちに近づいてくる。
 その手にある、トバさんがこっちに着させようとしている"女物の"制服を見て―――こっちはふと「あ、神様っていないのか。いてもきっとこっちのことが嫌いなんだな」なんてことを思った。


413女装少年 (代理):2010/01/31(日) 19:51:18.45 ID:9rynqd+L0
「うぃーっす」
「おう、はよー。休みどうだった?」
「そこそこ。っつか初詣で会ったじゃねえか」

 冬休みが終わり、久々に通った学校では、これまた久々に……じゃないかもだけど、再会した友達たちとのやり取りが交わされていた。
 そんな中、こっちは大きめのコートに身を包み、こそこそと隠れるようにして一人教室へと入っていく。
 だけど、教室の中に入っても気が休まることはない。
 教室の中は暖房が既に入っているようで暖かく、その中でコートを着っぱなしというのはかなり目立つ。
 なにがなんでもコートを脱ぎたくないし目立ちたくもないけれど、でもコートを着たままだと目立ってしまうというどうしようもなく"詰み"な状況下で、それでもこっちは諦めるわけにはいかない。
 ここで、諦めたら―――平和な学校生活が、きっと崩壊する。してしまう。
 そんな思いで今にも折れてしまいそうな心を支え、目立たないよう必要最低限の動きで自分の席へと向かう。

「あ、小鳥遊君。新年明けましておめでとう」
「あ……おはよう、逢瀬さん。あけおめことよろー」

 こっちが無事席につくなりいきなり話し掛けてきたのは、隣の席の逢瀬さん。
 向こうは気付いてない………というか気付かれてたら困るんだけど、実は逢瀬さんと今年顔を合わせるのはこれが初めてじゃあない。
 お正月にやった巫女さんのバイト。
 そのとき、なんていう不幸か、逢瀬さんもバイトに参加していたのだ。
 睡眠不足に疲労満載、さらに恥を忍んでまで参加したバイトで同級生と鉢合わせるなんて、どれだけ運が悪いんだと自分でも思った。
 ………まあ、それでもバレていないというのは、不幸中の幸いだといえなくもない。
 こっちのそんな思考には気づいていないだろう逢瀬さんは、ちょこんと可愛らしく小首をかしげて、

「小鳥遊君、それ、暑くないの?」

 と訊いてきた。
 そりゃあ確かに、暖房の入った部屋の中でコートを着たままというのは、端から見ると暑苦しく見えるだろう。事実、暑い。
 それでも、この格好がバレるのは嫌だ。
 たとえ、いつかはバレてしまうことでも―――少しでもその時間を引き延ばしたいと思うのは、悪いことなのだろうか。
414女装少年 (代理):2010/01/31(日) 19:53:33.28 ID:9rynqd+L0
「う、うん。あの、えっと……そう、冷え性だから! 暖かい格好してないと辛くて………」
「そうなの? へー……」

 なぜかこっちをじろじろ見てくる逢瀬さん。な、なにですか?

「うーん。何か小鳥遊君、冷え性なんて女の子みたいだね。顔とかも女の子みたいだし」
「え゛。……い、イヤ、ソンナコトナイヨ。アハハ、アハハハハ………」

 なんてとこを突いてくるんだ逢瀬さん。
 ていうか今この状況だと、それシャレにならない………。
 そんな風に表面上は笑いつつ心の中で泣いていると、先生が教室に入ってきた。どうやら、いつの間にかHRの時間になったみたいだ。
 クラス委員でもある逢瀬さんの号令で挨拶をすると、先生が冬休みの生活がなんだの、年が明けたからどうだのと話し始める。
 それを聞き流しながら、こっちは必死に考えを巡らせていた。
 内容は、どうすれば自分が負う精神的なダメージを小さくすることができるか。
 この格好がバレてしまうことについては、諦めた。学校にいる間ずっとコートを着ているなんて、無理だろうから。
 だけれどせめて、せめてほんの少しくらいは救いを求めてもバチはあたらないはず……!

「…………だから、ちゃんと気を引き締めるように。それで、小鳥遊」
「ひゃい!?」

 全く気を配っていなかった先生が、いきなり声をかけてきた。

「もう授業だ。コートを脱げ」
「え、いや、あの」
「暖房もかかってて十分暖かいだろう。周りを見てみろ、誰も防寒着なんて着てないぞ」
「あ、や。も、もう少し、もう少しだけ……!」
「駄目だ。いいから脱げ」
「そ、そんな殺生な!?」
415女装少年 (代理):2010/01/31(日) 19:55:17.04 ID:9rynqd+L0
 問答無用とばかりに、先生はこっちに鋭い視線を向けてくる。
 ちょっと待って、こんな教室中の視線を集めた状況でこのコート脱いだりしたら、こっちの精神が大惨事に―――ッ!?
 そう、こっちがパニックになりかけた、その瞬間。
 ガシリ、と。
 横から伸びてきた手が、こっちのコートを掴んでいた。

「もう、小鳥遊君。早く脱がないと先生怒っちゃうよ?」

 逢瀬さんはそういうと、コートを掴んだ手を勢いよく引っ張り―――

「「「………え?」」」

 ―――世界が、停止した。

 少なくともこっちには、そう、感じられた。
 こっちの名前は小鳥遊渚。まだ十五歳の、"男"だ。
 そして、逢瀬さんの手によって剥ぎ取られたコートの下から現れたのは、"女子用の"制服だった。
 着ているのは、誰か―――自分だ。"男"である、自分だ。
 普通男は、女子用の制服を着たりしない。ましてや、女子用の制服を着て学校に通うことなんてありえないといっていい。
 その"ありえない"を、あろうことか自分自身が実際に体現してしまっているという、この現実。
 ……………え、なにこれ? 泣いていい? いいよね? むしろ泣かせて!?

「………小鳥遊って、女だったっけ?」
「お前バカだろ。冬休み前は普通に男子の制服着てたじゃねえか」
「いやでも、アレ女にしか見えねえし……」
「………そういや、体育のときもあいつの裸見たことなかったな……」
「と、いうことは………?」
「ああ……もしかしたら、もしかするかもしれん………」
「前々から女の子みたいだとは思ってたけど、まさか本当に……!?」
416女装少年 (代理):2010/01/31(日) 19:57:05.63 ID:9rynqd+L0
「ま、待って! 男子、トイレはどうだったのよ?」
「いや、あいつがトイレ行ったとこなんて見たことねえよ」
「でも、いくらなんでも三ヶ月も性別隠して学校通うなんて……」

 教室中に広がるざわめき。なにこれ悪夢?
 これがホントに夢だったらいいなあと思って、ほっぺをつねってみた。痛かった。
 
「……あれ? んー、えーと……まいっか」

 隣では、逢瀬さんがなにやら呟いている。自分の中でなにかの折り合いをつけているみたいだ。
 そりゃ、ね。三ヶ月も隣にいた人間がいきなり女装してきたら、そうなりもするだろうね!

「あー、まあ小鳥遊」
「なんですか先生! これ校則違反ですよね、そうに決まってますよね!」
「いや、一応校則違反ではないんだが」

 ここは嘘でも校則違反だと言い張って着がえさせて欲しかった。

「まあ、その、なんだ。……先生は、自分に正直になるのは別に悪くないと思うぞ?」


417花子様のひと:2010/01/31(日) 19:57:10.72 ID:ejHboPAN0
>>411
メ「大変だお頭。前方で巨大な嵐が発生しやがった。」
男「あ、あああっ!ありゃセイレーンですぜお頭!」
花「セイレーンごときでビビッてンじゃないよ、情けないねえ。
  あっちが海の魔女なら、こっちは海の美女だっつーの。
  麗しき姿ウェヌスのごとしと歌われた、この花子様を舐めんじゃないよ。」
男「そりゃあ、猛し姿パラスアテネのごとしの間違いじゃ・・・」
花「駄犬、何か言ったかい?」
男「ひいいいいい!!!!」
メ「それ、おいでなすった。」

新人(ク、Chronicle 2nd…またコアなネタを…。)

ごめん、我慢できなかった。
418以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 19:57:12.36 ID:MOnR44l2O
>>411
セイレンノ唄
かなり無茶ぶりだとおもったんだけどだいじょぶかしら
ところでセイレンって鳥女で合ってるよね…?
419以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 20:01:19.69 ID:QEr3Ibop0
最初鳥だったけど途中から水属性にクラスチェンジして世間様に認識されるようになってた……はず
420女装少年 (代理):2010/01/31(日) 20:02:03.04 ID:9rynqd+L0
 先生の目が、慈しみに溢れていた。
 なんというか、こう、逆に辛い。心配されてるのはわかるけど、励まされてるのもわかるけど、それがむしろ心に突き刺さる。
 助けを求めて目まぐるしく動くこっちの視線は、教室内にいるある人を捉えた。
 そのある人とは、獄門寺君のこと。
 会うのはクリスマス以来になるけれど……あのときにだいぶ仲良くなれたと思うし、きっと助けてくれるはず………!
 そんなこっちの願いを感じ取ったかのように、獄門寺君と視線が合う。
 そして、獄門寺君は若干視線を逸らしながら、こういった。

「……個人の趣味に、口出す気はないから」
「獄門寺くぅん!? 趣味じゃない、趣味じゃないからー!!」

―――これからの学校生活は、色々アレなことになるんだろうなあ。

 最後の頼みの綱にもやんわりと見捨てられた絶望の中、こっちは他人事のようにそう思った。



421女装少年 (代理):2010/01/31(日) 20:04:57.81 ID:9rynqd+L0
規制ひっかかった&時間がねえ!?
三面鏡の人、逢瀬さんを女装少年の隣に配置させていただきましたすいませんっ!or
マジで時間やバイの出いまはこのへんで! アディオス!

422花子様のひと:2010/01/31(日) 20:06:39.81 ID:ejHboPAN0
>>418
セイレン(セイレーン)
ギリシャ神話に登場する、上半身が人間の女、下半身は鳥の海の魔物。
元は女神的な奴だったけどドSアフロ(ディーテ)によってキメラ状態に。
それからは美しい歌声と胸(多分)で船を海の迷子にする子になっちゃった。

※参考資料:wiki
423以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 20:07:20.01 ID:9rynqd+L0
>>418
なんら問題はないんだぜ!
ぱぱぱっと設定も浮かんだし使わせていただくんだぜ!!
コークロア支配型大量発生事件に関わってくれるといってくれた人にどの敵をぶつけるか考えつつ敵戦力整え中

鳥女であってるよー
ただ、歌ってた場所が海に近かったせいか、水的属性が後世で付け加えられたりられなかったり
424以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 20:12:20.46 ID:9rynqd+L0
>>422
胸いうなwwwwwwwwwwwwwww
確かに、イメージて気にセイレーンは乳丸出しっぽいけど胸言うなwwwwwwwwwwwwwww


確か、セイレーンは唄対決で負けるとショックのあまり海に身を投げ出して死んじゃうんだったかな
425以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 20:13:38.23 ID:LvGmeUXqO
>>417
メイドが筋肉馬鹿に!?
426以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 20:14:57.95 ID:5fASjbBvO
乙ー
そしてなんか一部の人にしか分からないネタが沢山あるなww

427花子様のひと:2010/01/31(日) 20:19:08.49 ID:ejHboPAN0
>>425 良かった、ネタが通じたwww
メ「どちらかというと、私の商品が筋肉馬鹿です。」
新人「大口径対戦車ライフルを軽々振り回せるので、否定はできませんよね。」

>>424 人魚→貝ブラ   セイレン→手ブラ のイメージ

セイレンも下半身魚だと思っていた時期が僕にもありました。
428以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 20:22:51.44 ID:ze/fKE6xO
>>414
クラス委員・・・って、あれ?
逢瀬さんだっけ、俺の記憶違いかな


誰か彼らのクラスにいる契約者他の詳細をプリーズ!!
429以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 20:25:50.08 ID:9rynqd+L0
>>428
・獄門寺龍一(花子さん契約者)
・明日真(電子レンジで猫をチン!)
・小鳥遊(女装少年)
・逢瀬(三面鏡)

担任教師が不良教師??
あと、委員長がいます
430以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 20:31:05.45 ID:DqJE0ACp0
ああそうか…明日真もげろもげろ言い過ぎたから、てっきり彼は大学生くらいだと勘違いしてた…
高校生であんなうらやまけしからん行為(チェックインとか)してるなんてもげろちくしょう!
431以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 20:33:29.32 ID:ze/fKE6xO
>>429
サンクス
この四人がいれば学校でなにかあってもすぐ対処できそうだな
432以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 20:37:36.86 ID:9rynqd+L0
>>431
丁度男二人女二人でバランスもいいしね!


……………あれ??
433花子様のひと:2010/01/31(日) 20:47:35.69 ID:ejHboPAN0
>>432
メ「男×男、女×女ですね、わかります。」
新人「分かりかねます。」
434以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 20:48:41.43 ID:9rynqd+L0
>>433
貴腐人「男×男に関してはよくわかるわぁ」
追撃者「おねーさんも、男×男の方はよくわかるわ」
435はないちもんめの友人 改め 新島家の日常 (代理):2010/01/31(日) 20:50:58.12 ID:9rynqd+L0
「ただい・・・ま?」
学校から帰宅した私が最初に見た光景
「さて、何か言い訳はあるか?」
ソファに座ってタバコ片手に踏ん反り返っている母と
「命だけは勘弁してください!!」
床で正座・・・もとい土下座している警官の姿だった

436以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 20:52:26.54 ID:DqJE0ACp0
危うく代理がかぶるところだったぜ支援!
437はないちもんめの友人 改め 新島家の日常 (代理):2010/01/31(日) 20:54:29.21 ID:9rynqd+L0
「って、叔父さんじゃないか、どうしたの?」
「あぁ、お帰り友美・・・何、この愚弟がまたご町内に御迷惑をお掛けしただけの話さ」
あぁ、またやったのか・・・
私の叔父はこの町で警官をやっているのだが・・・その、少し過激な人なので町内では割と有名だったりする
ご町内の奥様曰く
「警官が筋肉達磨相手に容赦なく発砲していた」
「パトカーから手榴弾が飛んできた」
「極道の方の方がまだ大人しい」
etc.etc.

438はないちもんめの友人 改め 新島家の日常 (代理):2010/01/31(日) 20:57:32.81 ID:9rynqd+L0
「お前が警官になると言った時に、私は言ったな?
 『危ないから止めて置け』と・・・貴様何て言い返したか覚えてるか?
 ・・・・・・『市民を守りたいんだ』だ」
「・・・覚えてます」
「そうかそうか、覚えてるか・・・」
ゆらぁと母さんが立ち上がり胸元に手を入れた
「なら、何でその守るべき市民に迷惑かけとるんだ己はぁぁぁぁぁっ!!!!」
バンッバンッバンッ
叔父さん向けて放たれる銃弾・・・って、当たったら死んじゃいますよ、お母様
それ以前に騒音で近所迷惑です
「スミマセン!マジスミマセン!でも、仕方なかったんだよ!!兄貴とか兄貴とか筋肉とか!!あいつ等銃弾も効かねぇんだぞ!?バズーカなりロケランなり使わねぇと対抗できねぇだろうがぁぁぁっ!!!」
遂に叔父さんもキレて銃を抜いた
一体何時から我が家は無法地帯になったんだろう
ここはロアナプラじゃ無いんだよ、お二人さん

439はないちもんめの友人 改め 新島家の日常 (代理):2010/01/31(日) 21:00:29.79 ID:9rynqd+L0
「それで、町に被害出してたら本末転倒だろうが!!」
「町には被害出した覚えねぇよ!!精々廃工場ふっ飛ばした位だ!!」
「その時点で既におかしいだろう!?それだけじゃないだろう!!正月に民家が一件爆発してるそうだな・・・何だアレは!?」
「正月は俺何もして無い!!冤罪だ!!」
「嘘付けぇっ!!お前以外に誰がやるんだ?!えぇ!?」
あぁ・・・ヤバイ
このままじゃ、巻き添え食らいかねない・・・逃げるか
「あー、私ちょっと出かけてくるわ」
「「行ってらっしゃい!!」」
二人に見送られ(?)私は当ても無く町に出ることにした
取り合えず、帰ってきたときに家が残ってれば良い
それだけが、私の望みです

続く?多分続かない

440以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 21:12:21.91 ID:DqJE0ACp0
代理乙です
市民の安全を守るために市民に迷惑をかける…
それでも、兄貴に掘られるよかましだと思うんだ…
441以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 21:16:57.34 ID:kNMShqkJ0
男としての貞操の死と、人間としての生命の死
あなたは、どちらを選びますか?
442以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 21:20:22.12 ID:/203RZfE0
なんという究極の選択www
でも貞操選んで新たな扉を開けば、そこには新世界が・・・
443以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 21:43:38.09 ID:DqJE0ACp0
444以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 22:02:16.66 ID:9rynqd+L0
ぺそぺそ書きつつほし
445顎砕き飴さんは今日も元気です。(代理):2010/01/31(日) 22:05:32.08 ID:DqJE0ACp0
都市伝説4コマ風劇場

「今日は彼女に料理を教えようと思う」
「賢明な判断です、兄さん」

「あの、復讐に調理技術なんて必要ないと思」
「君の意見は初めから聞いていない」

「まずはゆでたまごを作るぞ」
「それなら簡単です」

「電子レンジで・・・チン!」
「待て待て待て」


「まず、水をいれた鍋に卵を入れる」
「なんで私小突かれたんですか・・・?」

「この時、水に塩をいれておくといいらしい。さ、ゆでるぞ」
「ねえ、なんで私小突かれたんですか?」

「だいたい10分、半熟は5分くらいで」
「なんで私小突かれ」
「少し黙ってろ」

「・・・」ズーン
「最後にざるにあけて水で急冷し、殻をむく・・・おい聞いてるのか!」
446顎砕き飴さんは今日も元気です。(代理):2010/01/31(日) 22:07:53.52 ID:DqJE0ACp0
「次は炊飯だ。炊飯器を使うから楽だぞ」
「教えている兄さんは厳しいですけどね」

「このカップすりきれ一杯で一合だから、4合いれてくれ」
「はーい・・・」

「あの、兄さん・・・いいんですかこんなこと?」
「必要なことだ。あの子の身の安全も考えると」
「爆発しますからね・・・」

「できました!」
「何故顔に大量の米粒がつくんだ!料理関係だけ不器用すぎるだろ!!」


「それじゃ、米研ぎだ」
「水が濁ってきたら水を変えてください」
「はい」

「・・・・・・」ジャコジャコジャコ!!

「・・・・・・」ドッパーン!

「あれ?なんだかお米が少なく」
「「お前(あなた)のせいだ(です)っ!!」」
447顎砕き飴さんは今日も元気です。(代理):2010/01/31(日) 22:10:48.65 ID:DqJE0ACp0
「最後は野菜炒めだ」
「まずはフライパンに油をひくんですよね?これは知ってます」

「わあ待て!油をしいてから熱してくれ!」
「え?でも確か熱してから油をひくんじゃ・・・」

「鉄のフライパンは確かに熱してからしくんだがな・・・」
「このフライパンはテフロン加工がしてあって、空焚きしちゃいけないんですよ」

「へー、勉強になりますね」
「いいから火を消せ!早く!!」


「最初は豚肉だ。肉類は切った時に味付けしておくといい」
「はーい」

「次に根菜類、軽く混ぜたらもやしやピーマンを入れてササッと炒める」
「んっ」

「ちなみに野菜は水分が多いから、火にかけて水分が少し飛んでから味付けする」
「・・・・・・」

「とまぁこんな感じで、あとは盛りつけ・・・・・・どうした?」
「いえ、なんか作れたことが信じられなくて・・・」
448顎砕き飴さんは今日も元気です。(代理):2010/01/31(日) 22:14:04.03 ID:DqJE0ACp0
「さ、冷めないうちに食べるぞ」
「それじゃあ盛りつけますね、兄さん」
「私もやります!」

「・・・どうした?アクマ」
「ううん。人間やればできるんだなーって」

「なに言ってる、まだ終わってないぞ」
「え?」
「危ない!」

「きゃうっ!?」ガシャーン
「盛りつけるまでが料理だ」
「へー、そうなんだ・・・」


顎砕き飴がドジっこみたくなった。
はないちもんめの方に土下座ッ!
449以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 22:17:47.82 ID:DqJE0ACp0
243 名前:アクマの書き手[] 投稿日:2010/01/31(日) 21:59:36
はないちもんめの方に改めて土下座ッ!
顎砕き飴さんは今日も元気です。



*********************
顎砕き飴は復讐相手に年賀状を送っちゃうあたり、ちょっとアホの子だと思うんだ…
450以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 22:18:38.73 ID:QEr3Ibop0
はないちもんめの火ととアクマの人と代理の人おつです!
451首塚組織の憂鬱:2010/01/31(日) 22:36:09.25 ID:9rynqd+L0
 叶わぬ願いと諦めた
 それでも、捨てられぬこの願い
 狂おしい程に求めるそれを
 しかし、手に入れることは叶わずに
 願いを抱え続ける故に、狂ってしまうのだとしたら
 それは、一体誰の罪なのだ?




           La bele du Mary Verile
452首塚組織の憂鬱:2010/01/31(日) 22:41:22.93 ID:9rynqd+L0
 はらはらと雪がちらつく中、バイト帰りの翼は帰路に付いていた
 そろそろ二月に入ろうというのに、学校町はまだまだ雪深い
 ……冬将軍でも、学校町に滞在中なんじゃないだろうな
 そんな疑念すら、抱いてしまう
 もっとも、翼にとっては、雪があると言うことは雪かきのバイトがあるという事で、収入的には美味しいのだが

「さてっと…今日の晩飯はどうするかな…」

 寒いと、どうしても鍋物が続いてしまう
 だが、いい加減鍋物ばかりでは駄目だろう
 何か他に、温かくてなおかつバランスのとれた献立は…
 年齢の割りに体格が小さい望を心配してか、家で作る食事の栄養バランスをしっかりと考えている翼
 その努力が報われるかどうかは、現時点では不明である
 とまれ、この日の夕食の献立を考えつつ、やや足早に家に向かっていたのだが


 −−−都市伝説同士は、引かれ合う
 故に、都市伝説契約者は、都市伝説事件に遭遇しやすい


 路地の傍を通りかかったところで
 どんっ!!と、路地から出てきた影にぶつかる

「っと…!?」
「きゃっ!?」

 一瞬、バランスを崩して転倒しかけたが、すぐに持ち直す翼
 ぶつかってきた相手に視線をやって…おや、と思わず見つめる

「藤崎?」
453以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 22:45:11.71 ID:DqJE0ACp0
寝るほ
454首塚組織の憂鬱:2010/01/31(日) 22:46:30.57 ID:9rynqd+L0
「あ、ひ、日景君!?………った、助けて!!」

 …助けて?
 抱きついてきた、高校の頃のクラスメイト、藤崎 沙織
 彼女が飛び出してきた路地に、視線をやると
 っば!!と、まるで、彼女を追いかけてきたかのように
 規制を発する男が、飛び出してきて

「−−−−っひ!?」

 恐怖に怯え、ますます翼に抱きつく沙織
 その沙織をカバ用に前に出て……翼は、その相手を殴り飛ばした
 無防備に飛び出してきた相手は、その拳を避けきれずにあっさりと殴られ、倒れる

「大丈夫か?」
「う、うん…」

 ひとまず、昔のクラスメイトが無事だった事にほっとする
 そして、気絶した相手を見下ろした
 半開きとなった口から、ぶくぶくと泡を吐き…なにやら、ぶつぶつと言葉にならぬ声が漏れ出している
 先ほど、飛び出してきた様子から見ても…

(…コーク・ロア支配型の犠牲者か?)

 コーク・ロアの、支配型の契約者が異様に増えているという話は、黒服から聞いていたし、誠がそれに襲われた事も知っている
 まさか、こんな住宅街にまで、そいつが出たのだろうか?

「ひ、日景君」
「ん?」
455以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 22:49:51.21 ID:QEr3Ibop0
ぺロリ、これは……罠っ!支援
456首塚組織の憂鬱:2010/01/31(日) 22:51:03.09 ID:9rynqd+L0
「ん?」

 難しい顔をしていたつばさに、沙織がおずおずと、話し掛けてくる
 じっと、上目遣いで見てくる、その眼差しの…………その奥にある思考に、翼は気づかない

「こ、この道の奥に、倒れてる子がいたの。さっきの奴に、何かされたのかも…」
「なんだって?……わかった。様子見てくるから、藤崎はここにいろよ」

 翼の言葉に、沙織はうん、と素直に頷いた
 …都市伝説を知らない元クラスメイトを、事件に巻き込みたくはない
 そう考えて、翼は沙織を置いて路地裏に入っていく
 少し、進んだ所で…それは、見付かった

「うぅ………」
「おい、大丈夫か?」

 それは、少女だった
 恐らく、高校生くらいだろうか?
 目を閉じ、ぐったりとそこに座り込んでいて…はたして、翼の言葉が届いているかどうか
 とにかく、状態を確認しようと、翼はその少女に近づいて…


 −−−−ぐにゅん
 何かを、踏んだ


「へ?」

 踏んだそれを確認しようと、視線を落とした……その、瞬間に
 それは、翼の足に絡みついてきた
457以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 22:52:45.05 ID:DqJE0ACp0
支援だ!
458以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 22:55:11.75 ID:QEr3Ibop0
しえ
459首塚組織の憂鬱:2010/01/31(日) 22:55:51.82 ID:9rynqd+L0
 突然のことに、反応が遅れる
 しゅるしゅると、物凄いスピードで絡み付いてくるそれは、脚だけではなく腕にも伸びてきて

「なっ!?このや……………んぐっ!?」

 咄嗟に、能力を発動させてそれを焼こうとしたのだが…伸びてきた触手のようなそれが翼の口に飛び込んできた
 息苦しさに集中をそがれ、その隙にそれは翼の全身に絡みつく

「んん…………っ!?」

 ぬるり
 気味の悪い感触に、眉をしかめる翼
 息苦しさの中、絡みついてきているそれの全容を確認する

 …それは、タコだった
 人間ほどの大きさもある、タコ
 それが、ぬるぬると粘液を光らせて、翼の体に絡みついてきていた
 口内に入り込んできたのは、タコの足
 翼の口内に入り込んできたそれは、好き勝手に口内を蹂躙する

「んむぅ…………っぐ……」

 息苦しさに、翼は眉をひそめる
 とにかく、このタコから逃れなければ……


 −−−−くすくす
 くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす

 暗い、暗い路地裏に……笑い声が、響き渡った
460首塚組織の憂鬱:2010/01/31(日) 22:59:58.77 ID:9rynqd+L0
 捕まえた
 こんなに簡単だったんだ
 どうして、今までできなかったんだろう?

 さぁ、捕まえたよ、日景君
 ちょっと待っててね、大丈夫
 はじめては痛いらしいけど、私がうまくやるから大丈夫

 藤崎 沙織は、どこかうっとりとした表情で…タコに絡み疲れている翼に、近づいていた

 タコ妊娠
 それが悪魔の囁きの誘惑に乗ってしまった沙織が契約した都市伝説
 それの契約は、沙織の肉体にまで変化を及ぼしていた
 女性を妊娠させるタコ妊娠
 その拡大解釈により、彼女の体は………まぁ、みなまで言うまい
 その、おぞましいはずの体の変化を、沙織はむしろ喜んでいて

 ゆっくり
 ゆっくりと
 沙織は、タコに動きを封じられ、もはや獲物でしかない翼に、近づいて…


 刹那
 背後からの突然の衝撃に殴り飛ばされ、壁に体を激突させた


「−−−藤崎ぃい……!てめぇ、翼に何していやがる……!!」

 路地裏に響く、怒気がたっぷりと篭った声
 沙織を殴り飛ばしたのは、誠だった
461首塚組織の憂鬱:2010/01/31(日) 23:04:05.04 ID:9rynqd+L0
 沙織を殴り飛ばしたのは、誠だった
 その表情を、たっぷりの憎悪で歪めて、殴り飛ばした沙織を睨む

「…ひどぉい、清川君。女の子を殴るなんて…」

 …むくり
 壁に叩きつけられた沙織だったが…ダメージらしきダメージは、受けていない
 その体が、まるでタコのようにぐにゃりと曲がる
 これも、タコ妊娠と契約したが故に得た力だ

「てめぇなんざ、どうでもいいんだよ……翼に、何をしている…!」
「…清川君って、結構冷たいよね」

 くすくすと、睨んでくる誠を恐れる様子もなく、沙織は笑う

 ぐしゃりっ
 彼女の両足の間から…にゅるり、新たなタコが姿を現す

「邪魔しないでね?」

 だって、やっと彼を手に入れられるのだから
 誰にも、邪魔なんてさせない
 誠に、タコを差し向けようとした…その時


 じゅぅううううう……………
 路地裏に充満する、香ばしい匂い


「………え」
462以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 23:07:07.00 ID:QEr3Ibop0
うああああなんかこのタコは美味だって設定を思い出しちまったああああ支援!!
463首塚組織の憂鬱:2010/01/31(日) 23:08:55.41 ID:9rynqd+L0
 じゅうううう
 先ほど出したばかりのタコが……その身を焼かれて、動きを鈍らせていっている
 あっと言う間に焼きダコと化したそれは、すぐに動かなくなってしまった

「かは……っ」
「翼!!」

 げほげほと、咲きこみながら立ち上がっている翼
 何時の間にか、彼に絡み付いていたタコは、いい具合に焼かれて美味しそうに転がっていた
 あれ?と沙織は首をかしげる

「あれ?どうして………日景君、もしかして、あなたも何か都市伝説と契約してる?」
「……あぁ、そうだよ」

 じろり、沙織を睨みつける翼
 …どうして、そんな怖い顔をするのだろう?
 わからなくて、沙織は再び首を傾げた

「藤崎…どう言う事だ」
「どう言う事って………見ての通りだけど」

 ぐちゃりっ
 沙織は、再びタコを出現させた
 彼女は、何匹だって、タコを生み出す事ができる

「日景君……私のものに、なって?」

 うっとりとした表情でそう言って、沙織はタコを翼と誠に襲い掛からせる
 誠相手は、時間稼ぎができればいい
 打撃攻撃をほぼ無効化できるタコ相手ならば、いくら誠でも苦戦してくれるはず
464首塚組織の憂鬱:2010/01/31(日) 23:13:15.46 ID:9rynqd+L0
 翼相手は……その体の自由を、奪ってあげよう
 タコは、全身に媚薬成分を持った粘液を纏っている
 それが体につけば、じわじわと自由を奪われるはず……男相手に効くかどうかはわからないが、きっと効く、多分

「このっ!?」

 じゅううううううううううう
 しかし、翼はタコの接近を許してくれない
 その能力で、タコをあっという間に焼いてしまう
 不意打ちでもなければ、動きが緩慢なタコでは、翼を捕らえる事はできない
 そして……ぶちぃ!!と、何かを引きちぎる音が響く
 見れば、誠に向かったタコは足を引きちぎられ、残った足を固結びにされて動きを封じられていた

「…打撃が効かなきゃ、俺に勝てると思ってたのか?……駄目だ。全然駄目だな」

 冷酷に、沙織を見下ろす誠
 …路地裏に、翼を誘い込んだことが沙織にとって仇となっていた
 二人に、挟み撃ちにされた状況になってしまう

「…残念。この力があれば、うまくいくと思ったのに……邪魔が入っちゃった」
「藤崎、お前……」

 やや、途惑ったような表情を浮かべてきている翼に
 くすくすと、沙織は笑いかける

「でも、ね…私は、諦めない。絶対に………日景君を手に入れて、ずぅっとずぅっと、放さないんだから…」

 病んだ表情で、沙織は笑い続ける
 その表情に、ぞくり、翼は悪寒を感じた
465以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 23:13:34.07 ID:5fASjbBvO
たこ焼き食べたくなった支援
466以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 23:15:20.83 ID:QEr3Ibop0
タコの粘液は普通の男には効かなくても翼には効くと思うの支援!
467首塚組織の憂鬱:2010/01/31(日) 23:17:33.89 ID:9rynqd+L0
「逃げられるとでも思ってんのか?」
「うん、逃げられるよ、大丈夫…………ねぇ、みんな!!」

 沙織が、叫ぶと同時に
 ゆらり
 路地裏に……男達が、集まってきた
 目の焦点は定まらず、かすかにうめき声をあげている、そいつらは…

「−−−コーク・ロアの被害者!?」
「その二人を足止めして!………あぁ、日景君は殺しちゃ駄目よ。清川君はどうでもいいけど!!」

 コーク・ロアの被害者たちが、一斉に翼と誠に襲い掛かる
 数は多いが、この二人の敵ではない
 が、如何せん数が多すぎる

「−−−藤崎!!」
「諦めないよ、絶対に」

 くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす………!
 襲い掛かってくる、コーク・ロア被害者達を殴り飛ばしながら、翼が最後に見た沙織の表情は
 悪魔の囁きによって歪められていた時の、誠の表情に、酷似していて

 沙織は、夜の闇の中へと、そのまま姿を消してしまったのだった




 十数分後
 路地裏に、黒服が姿を見せていた
 仕事帰りだった彼は、契約者たる翼の危機を感じて、急いで駆けつけてきたのだ
468首塚組織の憂鬱:2010/01/31(日) 23:22:06.51 ID:9rynqd+L0
 …もっとも、彼が来た時には、既に沙織の姿はなく、コーク・ロア被害者たちも、全員叩きのめされた後だったが

「…この少女は、タコ妊娠の被害にあっていますね…「組織」の方で保護しまして、浄化しておきます」
「わかった」
「それと……男性相手に何らかの効果があるとは思えませんが、翼、すぐに、体に付いているその粘液を拭き取ってください」

 できれば、洗い流した方がいいのだが…
 ……いや、洗い流しても、効果があるとしたら手遅れなのだが
 恐らく、翼の様子から見て、それは多分、大丈夫だろう
 だが、念のためと言う言葉がある
 家に帰ったら、すぐに風呂に入れるべきだ

「…藤崎 沙織さん、ですか。あなた達の、高校の頃のクラスメイトでしたよね?」
「……あぁ」

 黒服の言葉に、翼はこくりと頷く
 特に仲が良かったわけではないが、つい最近、同窓会でも顔を合わせているから、ちゃんと覚えている
 あの時は、都市伝説と契約した気配などなかったというのに…

「あいつ、大丈夫なのか?都市伝説に飲まれかけてるようにも見えたけどよ…」
「私は直接見ていませんので、なんとも…ただ、少女を襲ったらしいところから見ても、都市伝説の志向に流されている可能性はありますね」
「なら、さっさと都市伝説から引き剥がさないと不味い、って事か」

 誠の言葉に、黒服ははい、と頷いた
 予想できた答えとは言え、翼は複雑な心境だ
 よくわからないが襲われたとは言え、相手は元クラスメイトだ
 見捨てたら、目覚めが悪い

「とにかく、見つけたら気絶でもさせておけばいいのか?」
「はい、その状態で、都市伝説との契約を強制的に解除させます。幸いといいますか、「組織」にはその手段がありますので」
469首塚組織の憂鬱:2010/01/31(日) 23:25:39.48 ID:9rynqd+L0
 そうか
 ならば、自分がすべき事は決まっている

「…翼、藤崎を助けるつもりなのか?」
「?当たり前だろ。元クラスメイトなんだし」
「お前な…」

 あっさりと答えた翼に、やや呆れたような表情を浮かべた誠
 が、直後、ニヤリと笑ってくる

「そう言うところが、お前らしいよな。俺はお前のそう言うところが好おごはっ!?」

 ーーーーーごが!!と
 翼に抱きつこうとした誠に、問答無用で叩き込まれる翼の拳
 黒服は小さく苦笑して、路地裏に放置されていた少女に、そっとコートをかけてやった
 「組織」の回収員が来るまで、この状態で放置するのは酷だ

(……それにしても)

 …翼の元クラスメイトが、翼を襲った
 それは、誠の件も含めて二度目だ
 これは、偶然なのだろうか?

 黒服は、酷く嫌な予感がして………何か、見えない脅威が翼に近づいているような
 そんな錯覚を覚えたのだった


to be … ?
470以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 23:29:05.11 ID:9rynqd+L0
以上、避難所で話していたネタでした
えぇ、何書いてんだろうね、俺
貴重な女性を何ふた○なりにしてるの俺

今後、藤崎沙織は街中を彷徨い、女性を襲ってたこを妊娠させて戦力を増やそうとしているようです
殺さない限りは好きに使ってやってね!!!

>>466
翼を何だと思ってんだwwwwwwww
471以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 23:31:55.13 ID:TUoPgHZ20
ここって適当に俺の妄想ぶちまけていいの?
472以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 23:33:32.18 ID:5fASjbBvO
>>471
もちろんOK
473以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 23:39:47.30 ID:9rynqd+L0
おやすみー
明日もスレが残っていれば幸せだ

>>471
OKなんだぜ!
クロスする時以外は特に注意事項もないんだぜ!!
474以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 23:55:16.24 ID:TUoPgHZ20
>>472
>>473
そうか
でももうちょっと構想練ってみる
475以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/31(日) 23:55:49.58 ID:QEr3Ibop0
>>470
え? ……普通のナイスガイだと思ってますよ? ほ、ほんとだよ!?
476以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/01(月) 00:16:41.44 ID:Qnl6PlCX0
477以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/01(月) 00:46:20.09 ID:w4i63ugCO
ほし
478以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/01(月) 00:46:22.72 ID:Qnl6PlCX0
479以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/01(月) 01:13:22.04 ID:Z41yZgReO
にょーん
480以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/01(月) 01:45:41.82 ID:Qnl6PlCX0
ねるほ
481以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ホシュ・ス・ル・ノデス