「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここは
都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたり
そんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりするスレです


「まとめwiki」 ttp://www29.atwiki.jp/legends/


まとめ(途中まで) ttp://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html


避難所は↓になります。規制中やスレが落ちている間はこちらでくつろいで下さい。
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13199/
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 13:11:53.21 ID:Q7zQDIwJ0
よくある質問



 このスレってジャンプの某読みきりと関係あるの?



始めにこのスレを立てた>>1が何を考えて、スレを立てたのか
今となっては、その真相はわからない
ただ、ここに集まった者たちは、各自思い思いに妄想をぶちまけていき、今のこのスレの形となっていった


まぁ、結果としては関係あるかどうかとか、どうでもよくね?
ぶっちゃけ、ほぼ関係ない内容だし
3とある姉妹の制裁措置 (代理):2010/01/25(月) 13:16:51.77 ID:Q7zQDIwJ0
「迷子を捜して一日走り回ったのが無駄足だった上に、その事が既にバレてて大目玉でありました」
「きちんと報告してから捜索に出るべきでしたね……天使とサンタと筋肉の大乱戦なんてものを見て気が動転してました」
クリスマスの夜、『ウィンチェスター』少女の護送に失敗した『エニグマ暗号機』姉妹
翌日、どうやってか居所を突き止めてきたドクターによりきっちり説教をされ、宿泊しているホテルの部屋でぐったりとしていた
「失敗をした事よりも、報告をしなかった事で怒ってたであります……確かに誤魔化そうとしたのは失策でありました」
「というか、泊まっているホテルをにおいで突き止めたとか何ですか、総統閣下に犬でも借りてきたんですか」
「あの人の嗅覚は女性限定でおかしいぐらいの性能なのであります……ドクターに伝えれば、あの少女もすぐ見つかったかもしれないであります」
「今更どうこう言っても仕方ないです、今後はこのような失策は無いように善処しましょう……ところで」
エニグマ妹はぐったりとベッドに寝そべったまま、部屋の片隅に置かれた大きめの箱に視線を向ける
「アレは何ですか、お姉」
「ドクターと一緒に来た謎のメイドさんが置いていったであります。今回の失策の罰として、それの中から選んだ服で年内は活動しなきゃいけないそうであります」
「あの人の選ぶ服ですか……一体どんなものが入っているのやら」
ずるずると這うようにして箱の元へ行き、箱を開け中身を覗く
ごそごそと中を探り、適当な一枚を手に取って目の前に広げ
「何ですかこれー!?」
真っ赤になって、手に持っていた辛うじて布と言えなくもない代物を箱に突っ込むエニグマ妹と、呆気に取られるエニグマ姉
「無理です! 絶対無理! まさかこんなのばっかりって事はないですよね!?」
「南米にいた頃に見た、リオのカーニバル衣装から派手さを取っ払った感じであります……」
「も、もうちょっとマシなものは!? お姉も探すの手伝って下さい、着るのは私だけじゃないんですよ!?」
「りょ、了解であります! とりあえず布か紐か判別が難しいものは除外していくでありますよ!」
衣装箱をひっくり返して大捜索を開始するエニグマ姉妹
「制服系が多いでありますな……スカート丈がかなり短いでありますが」
「これは……水着? 随分と装飾過多ですが」
「おー、軍服発見であります! スカート丈は他のと同様短いでありますが、気分的に楽でありますな」
「神社の巫女の服とか、どっから仕入れてくるんでしょうか」
「それも布面積的にはかなりマシでありますな。袖がセパレートで腋が出てるのが寒そうでありますが」
「それではとりあえずこの二点は確保しておきましょう。着替えはホテルをチェックアウトして、ドクターの元へ行ってからです」
「ドクターの前で着替えるのは気が進まないでありますが、この格好でロビーに出るのは辛いでありますな、確かに」
顔を見合わせて、がっくりとうな垂れる二人
ちなみに衣装は日替わりにされるという事実は、後日着替えを済ませた後に告げられたそうな
4キス小ネタのボツにしたやつ (転載):2010/01/25(月) 13:20:00.86 ID:Q7zQDIwJ0
In die hohle Hand Verlangen, 掌なら懇願。


 伸ばされたその手は、彼女の腕を掴んで
 そっと引き寄せて、そして掌に落とされる口付け

「な、な、なななななななななな!!??」

 少女の頬は、面白いくらいに真っ赤に真っ赤に染まりあがっていて
 そんな様子を見て、黒服はどこか意地悪く、楽しげに笑う

「どうした?」
「ど、どどどど、どうしたって、い、今!!」

 半ば、パニック状態の彼女のそんな様子に
 この少女に若い頃よく似ていた、しかし、性格はまるっきり違う彼女を思い出す


『あなたは、化け物なんかじゃあありませんよ』


 そう言ってくれた彼女
 その言葉が、黒服を縛る鎖となる
 とっくに諦めたはずの願いに、未練を持ってしまうための

「何だ、別の場所にして欲しかったのか?」
「そ、そそそそ、そうじゃなくてっ!?」
「じゃあ、ここでいいな?」

 他の場所には、まだ早い
5キス小ネタのボツにしたやつ (転載):2010/01/25(月) 13:24:58.76 ID:Q7zQDIwJ0
 そう言って、笑って…黒服は再び、少女の掌に優しく、恭しく、口付けた


 まるで、懇願するかのような口付け
 一体、何を懇願する?


(……どこまで未練ったらしいんだか、俺は)


 未だに人間を諦めきれずに
 人間として認めて欲しいと願い続ける

 彼女の孫である、この少女にも
 人間だと、化け物ではないと、言われたいのだろうか?

 それを懇願するかのような口付け
 その本心は、彼すらもわからない



fin


6噂をすれば (代理):2010/01/25(月) 13:27:25.47 ID:Q7zQDIwJ0
その7 嘘つき捜査線

1月、正月休みが開けて最初の週、部長から緊急招集があった。

部長「今回集まってもらったのは他でもない、最近校内で問題になっている窃盗事件についてだ。」
けーちゃん「そういえばそんなことありましたね。なんでも肌身放さず持っていた財布だろうと、鍵をかけた机の中だろうと、どんなに警戒してても盗まれるみたいですね。」
ヒラ「凄腕のスリや泥棒にしては学校なんかで動いてる辺り、もっとねらうところがあるだろうにな。」
副部長「とすると、都市伝説でも絡んでそうね。」
部長「私もその線が強いと見ている。特に生徒か、学校関係者によるものだろう」
副部長「でも何でまた今になって招集したんですか?まあ窃盗犯は捕まえるべきだとは思いますが。」
部長「別に学校が被害を受けようとどうでも良いのだが、私の体操着が盗まれてね。」
副部長「ああ…」
部長「ふふふ、うら若き女子の体操着を狙う変態め、私の新型デジタル一眼『デジ子』の活躍するときが早速来た様だ。ただ警察に突き出すだけですむと思うなよ。魂の一つや二つは覚悟してもらおう。」
ヒラ「魂は二つないと思いますが…」
部長「まずは聞き込みだ。窃盗にあった人に、状況を出来るだけ詳しく聞いてくれ。」


7噂をすれば (代理):2010/01/25(月) 13:31:21.84 ID:Q7zQDIwJ0
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2日後
副部長「何人かに聞き込みをしてみたところ、案外簡単な共通点がありました」
けーちゃん「財布を盗まれた生徒は、最近出来た南区の雑貨屋で超イケメンが店長をしていると聞いたので行ってみたら、爺さんだったのでがっかりして、その時に財布がない事に気づいたそうです。」
コナ「テスト問題を盗まれた先生は、喧嘩している生徒がいると連絡を受けて駆けつけたら、見間違いだったので職員室に戻ったところ、鍵をかけた机の中のテスト問題が消えていたそうです。」
ヒラ「そして部長、あなたは体育の後、知らない生徒に携帯アドレスを交換しようと言われ、断ったら『自分の名前は真古土雄介だ。』といって去り、気付いたら鞄の中の体操着が無くなっていた。」
スケベ「このなかで共通すんのは、3人とも嘘をつかれてるってことっす。」
ヒラ「しかも、嘘をついたのはどれも同じ人物でした。」
副部長「というわけで『嘘つきの名前は、臼緒雄介である』」
副部長の能力で、その場に臼緒が現れる。
臼緒「わわっ!?なんだ?」
驚いている臼緒に、カメラを構えた部長が詰め寄る。
部長「さあ、私の体操着を盗んでくれた変態の臼緒君よ。覚悟は出来ているかい?」


8噂をすれば (代理):2010/01/25(月) 13:36:42.42 ID:Q7zQDIwJ0
ヒラ「(まだ確定した訳じゃ無いんだけどなぁ。)」
臼緒「やだなぁ先輩。僕の名前は臼緒じゃなくて白緒ですよ。よく間違える人がいるんですよね。」
部長「本当か?しかし副部長は臼緒の名前で呼び出したぞ」
臼緒「そりゃそうですよ嘘ですから」
部長「なに?あ!カメラ!」
臼緒の手には部長のカメラが握られていた。
臼緒「さっきいきなりワープした所から見て、都市伝説契約者いるよね?僕もなんだ。『嘘つきは泥棒のはじまり』ってのと契約してる。」
臼緒はその場から走り出す。
副部長「あ!逃げた!」
臼緒「悪いけど逃げるよ。言い触らしたかったらすれば?どうせ信じてもらえないよ。」
スケベ「くっそ速ぇ!あいつ陸上部だからな。」
そよ「私にお任せください。」
ヒラ「うお!いたのかそよちゃん。」
そよは、片目をつむり、両手で輪を作る。
"そよの視界で"廊下を走って逃げる臼緒が輪の中に入る。
そよ「『ペンローズの三角形』。」
廊下の突き当たりで曲がろうとした臼緒が、"そよの手"に進行を妨げられる。
臼緒「なんだこの手?クソッ、ここから出せ!」
臼緒はそよの手の中でもがいている。
9噂をすれば (代理):2010/01/25(月) 13:40:10.48 ID:Q7zQDIwJ0
そよ「"視界の映像の中で主観的に起こりそうなことを実現する"のが私の能力ですわ。あなたはどこまで逃げてもこの手の中からは逃れられない。」
副部長「ごめん。何度も説明受けてるけど、その能力よくわかんない。」
そよ「まあ…作者もよく分かってないので仕方ないですわ。今回は"遠近感の無視"とでも言いましょうか。」
部長「とにかく、捕まえられたなら何だって良いさ。」
臼緒から引ったくったカメラをスケベから受け取り、部長は冷酷に微笑む。
部長「さあ、ここからはお仕置きの時間だ。」
臼緒の意識はそこで暗転した。

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次の日、パソコン室に人だかりが出来ていた。
生徒A「この動画、臼緒…だよな。」
生徒B「多分…なんか閉じこめられてるように見えるけど。」
臼緒『出してくれ!ここから出してくれー!!』
兄貴『出してくれ?OKわかった!たっぷり出してあげようじゃないか。』
臼緒『ちがっ、そういう意味じゃっアッー!!』

パソコン室には気絶した臼緒、臼緒の盗品、そしてパソコンの中で騒ぐ臼緒の魂(兄貴AVと合成済み)
副部長「パソコンの中でも意識がある。動画モードで撮るとあんなことになるんですね…」
部長「私も最近知った。せいぜい2、3日羞恥プレイを楽しむことだな。」
コナ「ていうかあんなAV何でもってるんですか…」
けーちゃん「ガクガクブルブル」

この一件で、部員達は「部長にだけは逆らわないでおこう」と再認識するのだった。

fin
10噂をすれば (代理):2010/01/25(月) 13:43:21.35 ID:Q7zQDIwJ0
以上です。
正月ネタは「けーちゃんの宝船争奪戦」のタイトル以外なにも浮かばす諦めました。
そよの都市伝説と臼緒の設定をチラシの裏に投下しときます。


11口付けネタのちょっと続きの思い付き (代理):2010/01/25(月) 13:48:59.74 ID:Q7zQDIwJ0
「にゃー、まだなんか顔が熱い気がする」
片手でぺちぺちと頬を撫でながら、つい今し方口付けをされた手のひらを見詰める
「巫女よ、体温が高いぞ。暑くてかなわん」
「巫女じゃないって言ってるでしょ、もー」
にょろりと懐から顔を出す白蛇の頭を、ちょいと指先で小突く三面鏡の少女
「人の姿にして人に非ず者の口付けでそのように舞い上がっていては、妖の類に付け込まれるぞ?」
「Hさんが人間じゃないとしても、それはそれで恥ずかしいの! というかあなたが身体に巻きついてるのだってものっそい恥ずかしいんだからね!?」
「異な事を。我は人に非ず、人の姿もしておらず。口付けを受けたり素肌を晒す事など問題あるまい」
「人間と都市伝説なんて、姿形と生まれが違うだけで大した違いなんて無いでしょ?」
「……巫女はそのように異能や異形を見ておるのか」
「ドクターさんのとこの看護婦さん達はすっごく優しいし。組織のDさんだって、契約者の人と同居してるらしいし。都市伝説な存在と普通に一緒に暮らしてる人なんて、この町はたくさんいると思うよ?」
「しかし害意を持ったものも少なからず……いや、全体で見れば相当な数が居るものであろう?」
「そりゃいると思うけど、比率が違うだけで人間だって一緒だし。悪かったり怖かったりする存在がいるからって、全部を怖がったり嫌ったりする必要は無いでしょ」
白蛇の顎をぐりぐりと指先で突付きながら、少女は頬を膨らませる
「ともあれ、人間とか都市伝説とかそういうのじゃなくて。あの人はHさんであって、それ以外の何でもないの。あなただってそう」
「我もか」
「外見は蛇だし変な力持ってるけど、こうやって意思の疎通ができて共存してるでしょ? 身体に巻きつかれたら恥ずかしいし、嫌な事を言われたら怒るけど、助けてあげれるなら助けてあげたいと思ってるからこうやって契約者を探すのを手伝ってるの」
「ふむ……」
爬虫類特有の無表情であるため、白蛇の感情は全く読めない
「優しいようで厳しいな、巫女は」
12口付けネタのちょっと続きの思い付き (代理):2010/01/25(月) 13:51:30.61 ID:Q7zQDIwJ0
「にゃ? またよくわかんない事を……あと巫女言うな」
対等であろうとする事は、相手にもそれを強いる事
人でありたいという者に、人でないと認めさせる事
「もし、あの男が人間である事を望んでいたとしたら。巫女はそれを許すか?」
「あたしが許すとか決める事じゃないと思うんだけどなー」
「聞き方を変えよう。あの男が、自らが人間だと主張した場合、巫女はそれを認めるか?」
「だから、別にどっちも差があるとは思ってないんだけど……同じ世界で暮らしてるって意味なら、認めるとか以前にずっとそう思ってるよ?」
その解答に、白蛇はどうやったのか、くくと喉を鳴らせて笑う
「巫女よ、汝は本当に面白い存在だな」
「むー、バカにしてる?」
「そんな事は無い。さて、そろそろ落ち着いてきたようだし、外は寒い」
「にゃ!? 冷たっ! もうちょっと段階を踏んで温まってから……ひゃうぁっ!?」
「平時の巫女の肌は実に気持ちが良い。将来これをものにできる男が少々妬ましいほどだな」
「何を妙な事を言ってるの、このエロ蛇っ!?」
「抱き心地の良さを評していただけだが。何か問題でもあったか」
「問題だらけ! 他の人がいる時にそんな事言ったら氷水に浸けるかんね!?」
「良き点を伝える事を拒むとは……巫女は謙虚だな」
「んなわけあるかー!?」
傍から見れば一人で喚いている間抜けな様子で、一人と一匹は騒がしく帰途につくのであったとさ


13笛 (代理):2010/01/25(月) 13:54:47.74 ID:Q7zQDIwJ0
【上田明也の探偵倶楽部】

黒いコートに身を包んだ男がハッカパイプをふかしている。
勿論だが上田明也である。
「こんにちわ、私立探偵の笛吹丁です。
 第二回のお話で出てきた向坂境さんって覚えていますか?
 彼女は今、うちの事務所で助手やっているんですよ。
 助手、しかも人間、更に良いことには一般人。
 完璧じゃないですか。
 名探偵にはマスコットキャラクター的な助手とか頼りになる相棒が必要なんですよ!
 まあざっくり言うと人との繋がりか。
 大体なんですか?
 俺の周りに集う百鬼夜行どもは!
 俺は人間なんだ!
 人間が人間と生活して何が悪い!
 助手が身の回りで起きた事件を何気なく話して名探偵たるこの俺がそれを颯爽と解決!
 これぞ正しい探偵小説だ。
 これは探偵の探偵による探偵の為の物語だ。
 さぁ始めよう、探偵の時間だ。」
 
パチィン!
指が鳴ると幕は落ちた。
【上田明也の探偵倶楽部6
 〜ともだちのともだちはだいたいいない→
  自分は友達の友達じゃない→
  自分に友達はいない ってなると思うなよ!〜】


14笛 (代理):2010/01/25(月) 13:57:08.97 ID:Q7zQDIwJ0
真面目そうな顔で何かを話す向坂境。
「成る程ねえ……。あ、やべぇインスタントラーメンがのびる。
 ちょっと台所行ってくるわ。」
話半分にそれを聞く上田明也。
「ちゃんと話聞いてるんですか?ねぇメルちゃん。」
「まったくですよ、この人は人の話聞いてないこと多いですから。」
上田の人の話を聞かない癖に呆れるメル。

「俺の大好物が完成したぞー!」

上田の持っているフライパンにはできたてほかほかのキムチラーメンが入っていた。
具だくさんで美味しそうだが……赤い。
とにかく赤い。
それは例えるならば上田明也という一個人が背負っている血の池のように赤いのだ。
それは例えるならば絶望と共に降り注ぐ夕日のように赤いのだ。
端的に言うと辛そう、否、辛そうなんてものじゃない。
向こう二日は物を喰うと言うことの権利と義務を放棄しなくてはならないだろうことを覚悟させる色なのだ。


15笛 (代理):2010/01/25(月) 13:59:40.30 ID:Q7zQDIwJ0
「ああ……、所長?
 それは一体何処の国の食べ物なのでしょうか?」

「見れば解るだろう、ラーメンだ。」
向坂の顔を見て、フライパンの中のラーメンを見る上田。
「食うか――――?」
聞かれた向坂は「食うか――――!」と絶叫した。
「もしかして美味いのか。
 あのラー油と唐辛子を百年間ぐらい煮込んで合体事故のあげく、
 オレ外道マーボー今後トモヨロシクみたいな料理が美味いというのか。」
半ば放心状態になった向坂境はブツブツと問を発し続ける。

「そうか、喰わないのか。残念だ。メル、お前は喰わないのだろう?」
「唐辛子で頭やられたんじゃないですか?
 私がそんな物喰うわけ無いでしょうが。」
「仕方がない、では私だけで美味しく食べさせて貰おう。
 酢豚ができているからお前らはそれでも食べていろ。
 体重が気になるお年頃の女の子の為に肉の量は控えめにしてあるぞ。
 辛くない野菜でも嬉しそうにむさぼっていればいい。
 それじゃあ、いただきま〜っす。
 はふっ、ほんむ、むっは、はふっはふっ!
 ジュルルルル!
 うわ、辛い!辛い辛い辛い辛い!
 やめられない止まらない美味しい!美味しいけど食えない!
 食えないけど食べ続けるっていうこの矛盾した状況がああああ、うめええええ!」
16笛 (代理):2010/01/25(月) 14:01:30.26 ID:Q7zQDIwJ0
上田明也。
年齢21才。
身長は高めだが肉体的な話に限ればそれ程鍛えられた雰囲気はない。
学校町近辺のとある有名国公立大学の法学部出身。
卒業後は弁護士になる予定だった。
しかし、ひょんなことから都市伝説と契約し、それを切っ掛けに「組織」に追いかけ回されることになる。
生まれ持った弁舌と狡知で幾度となく危機を脱してきた。
契約の代償として今まで出会った人々から彼の記憶が奪われてしまったので、
今はとある都市伝説の協力の下で私立探偵「笛吹丁」として学校町で生活している。
探偵としての能力はかなり優秀で探偵事務所は偶に贅沢できる程度には繁盛している。

だが

都市伝説と契約した影響か彼自身の元々の性癖がそうだったのかは解らないが、
時間が空くと都市伝説の能力で人を殺して回る。
世の為人の為になろうとがんばっている人間を殺すのは気が引けると言う理由から、
できるだけ善人っぽい人は殺さないように努力しているらしい。

最近の悩みは探偵と殺人鬼の二重生活が疲れること。


17笛 (代理):2010/01/25(月) 14:06:51.60 ID:Q7zQDIwJ0
「………ごちそうさま。」
「ごちそうさま!」
「ごちそうさま!」
上田がキムチラーメン?を食べ終わると同時にメルと向坂もそれぞれ昼飯を食べ終わった。

「そういや、なんで向坂ここに居るの?」
「今日は土曜日で授業は半日です。
 昼飯代が無かったので食わせて貰いに来ました。」
「ああ〜、そうだった。」
「ついでになんか面白い事件がないかと言われたんで学校であった事件の話したんじゃないですか。」
「ああ〜、そうだったそうだった。
 で、どんな事件だったっけ?」
「え〜っと、下校中に口裂け女が現れたそうです。
 他には人面犬とか、赤マントとか……。
 まあ幸い死人は出ていないし大丈夫なんじゃないですかね。」
「なんだ、普通だな。この町じゃあ良くある話じゃないか。」
「ですよねー、こんなんじゃ事件とは言えないですよね。」
「もう嫌だこの町。」
二人のずれた会話を聞きながらため息をつくメル。


18笛 (代理):2010/01/25(月) 14:09:09.42 ID:Q7zQDIwJ0
「そういえば気になったんですけどメルちゃんと所長の関係ってなんなんですか?」
「え?」
「え?」
急な質問である、聞かないで適当に済ませていると思い込んでいた上田とメルは戸惑ってしまった。
「いや、親戚の子を預かっているんだよ。
 この子の両親が今色々と問題があってね……。」
「そ、そうなんですよ。所長さんのところが丁度空いていたんで転がり込ませて貰ったんです!」
「普段学校とかには……?」
「勿論、通っているぜ。学校町立(ピュー)小学校の五年生だ。」
「ちなみに得意科目は国語です。逃げて科目は算数。」
「逃げて科目ってなに!?」
「いや、算数逃げてーみたいな。」
「いやいやいや逃げるの逆だから、逃げるべきはお前だから。」
「あははは、おもしろーい。」
それにしてもこいつらノリノリである。
「……(ごまかせたかッ!?)。」
「………(まだです所長!)。」
目と目で会話する上田とメル。
数多の視線をくぐり抜けてきた二人だからこそ出来る芸当である。


19笛 (代理):2010/01/25(月) 14:11:39.92 ID:Q7zQDIwJ0
「そ、そうだ。なんか他に事件無いの?」
「う〜ん。まあ今クラスの中で話題になっているのはクラスの物が消えて無くなるってことですかね?」
「え、財布とか?」
「いや、女子の着替えとかですね。」
「うん、それは痴漢だね。」
即答する上田。
「ところがどっこい、そこが妙なんですよ。
 そう思って廊下にあった防犯カメラに何も映っていない。
 勿論、窓には鍵がかかっていましたよ?
 なのに着替えだけが消えてしまっている。
 変じゃないですか?
 これ、この事件を解決したら探偵です!名探偵です!」
何故か自信満々に断定する向坂。
しかしアニメや漫画の中の探偵ばかりが探偵ではないのだ。

「何を言っているのだ貴様は!
 探偵がそんな綺麗な仕事ばかりだと思うなよ!」
上田がはっきりと言う。


20笛 (代理):2010/01/25(月) 14:14:16.61 ID:Q7zQDIwJ0
「だからやるんだろうが所長!
 探偵の仕事の現実?
 探偵の仕事の苦労?
 知ったこっちゃ無いね!
 大事なのは思想だ!理想だ!
 例え偽装された理想だったとしたって!
 例え幻想みたいな発想だったとして!
 それでも守って見せろよ!
 泥にまみれて、砂を噛んで、誰からもあざ笑われてもさ!
 それでも………、誰かの幸せの為に必死になろうとするのが探偵だろうがよ………。」

「――――――――――――!!」

向坂の言葉を聞いて上田の眉毛がわずかに動く。

「良いぜ。解ったよ。
 調査してやる。」
「――――――え!?」
「聞こえなかったのか?
 その事件調査してやるって言っているんだ。」


21笛 (代理):2010/01/25(月) 14:18:24.69 ID:Q7zQDIwJ0
「所長……!」
「所長……!?」
上田明也のまるで良い人かのような発言に耳を疑うメルと向坂。
顔を見合わせて驚いている。
「ただし依頼が来たらな。言っておくが一生徒からの依頼で学校を調べたりなんかしないんだから勘違いするなよ。」
「所長……、良いとこ有るじゃないですか!」
「褒めろ、讃えろ、特別に無料で調査してやるよ。」
「馬鹿な、こんな善人私達の所長じゃない!偽物だ!」
「私達の愛した所長は死んだ!ラッキー!」
「お前ら酷い……。」
上田明也はがっくりと肩を落とした。

それから数時間後。


22笛 (代理):2010/01/25(月) 14:22:45.87 ID:Q7zQDIwJ0
上田はメルと一緒にキムチ鍋の材料の買い出しにでかけていた。
「所長、調査しようとか言っておいて何買い出し始めているんですか?
 現場に行ったりとか調査とかしないんですか?」
戸惑い気味のメル。
先程上田が「調子よく無料で調査してやる」と言っていたからすぐに調査すると思っていたのだろう。
「冷静に考えてみろよメル。この事件は急いで調査する必要がない。」
「え、なんでですか?」
「だって恐らくどこぞの正義の味方気取りがそんな事件とっくに調査しているもの。」
「正義の味方?誰ですか?」
「え、この前クラブで会ったあいつだよ。バチバチ少年。」
「あの電子レンジの二人組ですか。」
「そうそう、奴は学校では風紀委員をやっているそうだ。」
「へぇ……、いつの間に調査したんですか?」
「向坂ちゃんの後輩らしいよ、彼。」
「世間って狭いですねえ。あ、所長、卵のタイムバーゲンやってますよ。」
上田がメルの指さす方向を見ると確かにタイムバーゲン真っ最中だ。


23笛 (代理):2010/01/25(月) 14:26:21.36 ID:Q7zQDIwJ0
上田はメルの手を引く。
二人がスーパーの店の中に入ろうとしたときだった。


「――――――ねぇ、知ってる?」


「急にどうしたんだメル?」
「……いや、私何も言ってないです。」

真後ろから響く声。
聞き覚えのある声。
聞いた事もない声。

「今のは一体………。」
「都市伝説か何かか?」
「下手に返事すると不味いんだよなあ、ああいうのって。」
「ていうかマスター、野生の都市伝説に狙われすぎです。」
「マスターなんて呼ぶな、町中じゃ目立つだろうに。」
「二人の愛の証ってところでいかがでしょうか?」
「そいつぁ最高だ。」

軽口をたたき合いながら周囲の気配を探る二人。


24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 14:29:12.64 ID:ah+9e6PJO
支援
25笛 (代理):2010/01/25(月) 14:31:16.91 ID:Q7zQDIwJ0
「……次来ますよ。」


「友達の友達から聞いた話なんだけどね。
 【口裂け女】って知ってる?」

「―――――――――――しまっ……」

上田が後ろを振り返ると真っ赤なコートを着てマスクをした女性が立っていた。

「私、綺麗?」
上田に問いかける女。
「そうだな、君のひとみには一撃でやられてしまったよ。
 俺にとっては地上に降りた最後の天使だろうね。
 どうだい良かったらこのあとお茶でも……。」
「……綺麗なの?」
「そりゃああれだよ。これから二人で愛でも語りながらゆっくりとその答えを聞かせて……。」
「チェストォ!」
ゴギッ!
上田の内蔵が軋む嫌な音。
かけ声と共にメルが上田の身体を思い切り殴ったのだ。
「おぶぅわ!」
「キャアアアアア!!」
スーパーに向けて勢いよく吹き飛ばされる口裂け女と上田。


26笛 (代理):2010/01/25(月) 14:36:09.46 ID:Q7zQDIwJ0
よりによってまずい場所で目立ってしまった物だ。
上田明也は舌打ちをする。
すばやく起き上がって辺りを見回すとさっきまであれだけ居た人々が居ない。
「………推理しろ。」
この状況は異常だ。
「急に現れた都市伝説。
 友達の友達から聞いた話。
 急に消えた人々。
 いつもと変わらぬ風景。
 起きた事象から考えて奴の狙いは?
 出会いは常に偶然か?
 今俺の置かれている状況は果たしてどうなっているんだ?」
「ねぇ、知ってる?」
またも先程の声が上田の耳に届く。
「おそらく、この言葉が都市伝説始動の合図だ。メル!」
「はい、こっちです!つーかなに都市伝説口説いているんですか?
 馬鹿じゃないすか?死にたいんですか、ていうか貴方を殺して私も死ねば良いんですよね解りますよええ。」
「………怒ってらっしゃる。」
当たり前である。


27笛 (代理):2010/01/25(月) 14:40:21.95 ID:Q7zQDIwJ0
「友達の友達から聞いた話なんだけどさ。」

友達の友達から聞いた話。
友達が居ない人間には友達は居ない。
そのことに上田はとっくに気付いていた。

「友達?うちのマスターに友達なんて居るわけ無いじゃないですか!」

メルが『友達の友達』にたいしてはっきりと告げる。
そうだ、その通りなのだ。
彼女の言っていることは正しい。
一、二週間程前まではの話であるのだが。

「そうなの?でも其処の人はそう思っていないみたい。」
「マスター!?」
「ぐ………。」

上田明也、冷徹な殺人鬼。
笛吹丁、有能な探偵。
どちらも同じ人間。
臨界地点の人間。
友達と聞いて浮かべる顔がある。

「友を友と言えない人間には死んでもなりたくないね。」
彼はむしろ余裕さえ感じるような表情で嗤う。
「マスターーーーー!!何処で友達なんぞ作ってたんですか!
 私の閃きを無にするつもりですか!」
メルは上田の胸ぐらを掴んでゆさゆさ揺する。
28笛 (代理):2010/01/25(月) 14:44:04.80 ID:Q7zQDIwJ0
「なぁに、俺は死なないよ。」
「それで友達の友達から聞いた話なんだけどさ。」
「メル、ちょっとこっち来い。」
「なんですキャピィ!」
「済まないな……。」
この男、見た目だけとはいえ子供を、しかも女の子を手刀で気絶させた。
人でなしのロクデナシである。

「この場は逃げさせて貰うぜ?」
赤いコートを翻し、少女を抱えて探偵は走り出す。
「師匠って都市伝説、知っている?」
それに追いすがる声。
「友達の友達、それなら友達の居ない環境に貴様は来られない。
 つまりだ、――――――赤い部屋は好きか?」
空間がねじれる感覚。
気がつくと上田とメルは真っ赤な部屋の中に居た。


29笛 (代理):2010/01/25(月) 14:47:00.11 ID:Q7zQDIwJ0
「あれ、ここどこ……キュウ!?」
目覚めるメル。
もう一発手刀を決める上田。
奇声を発してメルは再び眠りについた。
なんとか逃げ切れたことを確認し安堵のため息をする上田。
赤い部屋を経由して彼らはなんとか探偵事務所に帰ったのだ。
しかし十秒後、彼は買い物の荷物を置いてきてしまったことに気付き、絶叫するのであった。
【上田明也の探偵倶楽部6
 〜ともだちのともだちはだいたいいない→
  自分は友達の友達じゃない→
  自分に友達はいない ってなると思うなよ!〜fin】

「ねぇ、師匠って都市伝説知っている?」
「うん、知っているよ。」
誰もいなくなったはずの空間に響く声。
「だってそれ、僕だもの。」
「え?」
「楽しそうな町だなあ学校町。妙な物だらけじゃないか。」
空間の密度がそこだけ違う。
黒く霧のような物がぼんやりと集まっている。
それは見る間に人の形になり、歩き始めた。
「うに君、ちょっと遊びに行ってくるよ。」
男はそれだけ呟くと声を無視するように歩き始めてしまった。
【上田明也の探偵倶楽部 続】


30笛 (代理):2010/01/25(月) 14:50:38.78 ID:Q7zQDIwJ0
【上田明也の探偵倶楽部】

昼下がり、君へのプレゼントを買いに出かけると、冬の風が虚しい速度で頬をかすめていった。
俺はそれに縋り付くことも出来ずに唯々惚けてしまったかのように頬を触り、その感触を思い出すだけだった。
空を見上げると太陽は白く輝いていて自分のようなプー太郎には少々眩しく感じられたのだ。
「こんにちわ、俺の名前は上田明也。今日は前から気になっていた雑貨屋に寄ろうと思っていたんだ。」
そんな風に呟いていないとこのプー太郎は実際やっていられなかったのさ。
ちょっと古い建物。
目当ての雑貨屋に辿り着いた俺は当たり前のように扉を開いた。

【上田明也の探偵倶楽部7〜間違い探しのペアルック〜】

そう、その時丁度俺は赤い部屋にインテリアを飾る為に家具を少しばかり買いに来ていたんだ。
茜さんは殺風景な部屋の方が好みだと言い張っていたが俺が何か好きな動物がないか聞くと
「………ウサギ」
と小さく呟いていたのでウサギの置物を買うことにしたのだ。
「ウサギが好きなのか、意外と子供っぽいなあ」
と言うと彼女はうつぶせになって床をドスドスと叩いていた。

まあ良い。
そんな話はほほえましいのだがどうでも良い。

それよりもだ。
雑貨店に入った俺を出迎えた人間、否、都市伝説の方が問題だったのだ。
31笛 (代理):2010/01/25(月) 14:55:12.68 ID:Q7zQDIwJ0
「いらっしゃい………!」
「っあ!」
目と目が合ってしまった。
そこには俺が以前戦った吸血鬼の都市伝説が居たのだ。
彼の契約者は厨二病全開だったのだが俺がノリノリで合わせていたらわりと喜んでいてくれた記憶がある。
そう、カンタレラだったかな?
俺のような男にはピッタリだ。
店内に流れる気まずい空気。
「済まないが、ウサギの置物は無いかな?」
ええい、こうなったら仕方がない。
徹底的に知らない振りしてやる。
「……ああ、それならそっちの奥の方に有ったかもしれませんなあ。」
「それはそれはアリガトウゴザイマス。ところでお爺さん?」
「なんじゃろうか?」
「俺達会ったことあるような気がしたんですけどそんなこと全くないですよね。」
「はっはっは、妙な事を言うお客さんじゃのう。そんなこと有るわけがない。」
「ですよねー……。」

それだけ会話すると店内のウサギコーナーを適当に漁る。
ウサギのランプ
ウサギの皿
ウサギの燭台
ウサギの食器棚
ウサギのナイフ
ウサギのフォーク
よくまあここまでそろえたものである。
32笛 (代理):2010/01/25(月) 14:58:25.06 ID:Q7zQDIwJ0
その中で、一つ妙な物を見つけた。

「お爺さーん、コレなんですか?」
モフモフの毛玉だ。
モフモフの毛玉がキーホルダーに加工されている。
「ああ、それは……、あれ?それはなんじゃろう?」
「え?」
「いや、見覚えが無くてのう……、それ。」
「じゃあコレを貰っていくことにするよ。」
「訳の解らないものを?」
「俺が直感で良い物だと思った。だから買っていく。」
「ずいぶん酷い判断をするものじゃ。」
「間違ってても悪くて死ぬだけさ。」
「やれやれ……。お代は、どうしようかのう。」
「とりあえず一万円でお願いします。二つで二万円。」
「只のキーホルダーかもしれないのにかい?」
「でも一万円で買えばどんな物でも一万円のキーホルダー。」
「………まったくもって度し難い。」
呆れた様子の吸血鬼を尻目に俺は鼻歌混じりで店を出た。
【上田明也の探偵倶楽部7〜間違い探しのペアルック〜】


33笛 (代理):2010/01/25(月) 15:01:54.48 ID:Q7zQDIwJ0
「とまあそういう事情で買ってきたんだ。やる。」
茜さんにキーホルダーを投げつける。
「……それってウサギの尻尾じゃない?」
冷静に突っ込む茜さん。
恐らく俺にはどっちでも良いのだろう。
「眠い。」
「ここに家具なんて無いわ。」
「じゃあそこで寝させろ。」
茜さんの膝を指さす。
「え……、いや床で寝なさいよ。常識的に考えて。」
「良いだろう?キーホルダー買ってきてあげたんだからそれ位親切をしたって……。」
【上田明也の探偵倶楽部 続】


34うわさの産物 雪中の少女 (代理):2010/01/25(月) 15:06:36.88 ID:Q7zQDIwJ0
「うぃ〜…寒ぃ〜…」ガラガラ
冬のある日の早朝。「レストラン うわさの産物」の店長の朝は早い。

「全く、何でこうも毎年毎年雪が積もるかね…関東だろここ?」シャコシャコ
店の周りの雪かき。冬季の店長の仕事だ。結構遠いところから車で来るお客さんも少なからずいるので、そういう思いやりを忘れないのがこのレストランだ。


……


「ま、こんなもんかね…」
数十分後、レストランの脇に、店長の腰くらいまでの高さの雪の山がいくつかできていた。
「さて、そんじゃ、仕込みでも始めるkギュオォォギュルル……ん?」

店に入ろうとふり返った店長の耳に、雪景色の学校町に似合わない爆音が聞こえてきた。

ギュオォォォォギュルルィ…

何の音だか全く判別がつかないが、とりあえずあたりを見渡してみる。すると…雪に埋もれた道路のあたりに、何かが見えた。
「ん?…んん?……えぇっ!?ひ、人!?え、こんな寒い中行き倒れ!?おい、大丈夫かー!?」

「…ぅ…ぅぅ…」「おい、大丈夫か!?一体何があった!?」
「ぅ…ぉ……す……」「何言ってるか全然わっかんnギュルルルリラルララギュオォォォォ……え?」
…何この音?え、この行き倒れてる少女?発生源これ?


「…おなか…すいたのれすぅ…」


35うわさの産物 雪中の少女 (代理):2010/01/25(月) 15:09:06.16 ID:Q7zQDIwJ0
………

「…そんな焦って食わんでも、まだまだあるからゆっくり味わってかみしめて食いなって…」
パクパクガツガツムシャムシャ「…で、行き倒れてたのを…?」「そのまま放っておくわけにもいかんだろ、どーせケーキが余ってるし、処理にちょうどいいかな〜って」
「店長しゃん、このケーキ、まらありまふか?」「ん、おう…ってまだ食う気か!?」彼女の前には、すでに食べ終わったケーキの皿が十数枚。
「らって、こんなにおいひいもの、食べた覚えらいから…」「おk任せときな、遠慮せずどんどん食え!」
「おだてに弱い…」


……

「はふぅ、ごちそうさまれした〜」…最終的に、彼女の前には三十数枚もの皿が山積みになっていた。

「……信じられない…こんなに…」
こっちゃんが驚くのも無理はない。
少女が食べていたケーキ、「ミッドナイトケーキ」。クリスマス限定であり材料もダークマターという希少なものだったので五十個しか作ってない。
しかし売れたのは三個。十五個あたりはこっちゃんがサンタに投げつけた。故に三十個ほど在庫が余っていてどうしよう…という状態になっていたのである。

…まさか、それを一度に全て処理、いや食べてしまう人が現れるとは…


「しかし…どうしてあんなところで行き倒れを?」「…あぅ…あぅぁ…覚えてない…れす…」
「…じゃあどこから来た?家出でもしてきた?」「…うぅぁ…分かららい…れすぅ…」
しょんぼりとうつむいた様子で答える。
「いや、別に事情聴取してるわけじゃないからそんな申し訳なさそうにせんでも」
「ぁぅ…ごめんなひゃい…」
36うわさの産物 雪中の少女 (代理):2010/01/25(月) 15:12:50.94 ID:Q7zQDIwJ0
「……じゃあ、あなたの名前は…?」


「その…本当の名前は覚えてらいんれす……れも、『きゅう』ってよわれてたのは覚えてまふ」


「きゅう?あだ名みたいなものか?」「…ぅぅ、わかららいれす…れも、周りの人たちもみんら同じ名前れよわれてまひた」
「…周りも…?」こっちゃんが疑うような声をあげる。

「ひゃ、ひゃい!その、その人たちは思いらせないんれす…ごめんなひゃい…」
「気にしなくていい…別に、あなたの周りを聞こうと思ったわけじゃない…」「ぁぅ…」


「ちわーっす!食用ミミズ5kg持ってきましたー!」

おっと、すっかり忘れていたが今日は材料の仕入れの日だったな。そしてミミズの仕入れ人である昆虫少年も来る予定だったか。
最近のミミズバーグ用のミミズは昆虫少年に頼むようにしている。最初は拒否こそしたものの、ミミズバーグを食べさせようとしたら一発OKしてくれた。

「ふわぁー、これがミミズしゃんれふか〜!」箱いっぱいにうねるミミズたちを覗き込み好奇心いっぱいの目を輝かせる少女。
「…えっと…て、店長。この娘誰?」この状況に困惑した様子で聞いてくる昆虫少年。

「実はかくかくしかじか…」「……は、はぁ…で、どうしようか、と。」「そう…家も分からないだし…何より…」


「「記憶喪失みたいなんだ…」」
店長とこっちゃんの声がシンクロする。いかにも困ったといわんばかりの顔で互いに顔を見合っている…



「店長しゃん!これ、食べられるんれすかぁ〜!?」当の本人は箱の中のミミズに興味津々の様子である。
37うわさの産物 雪中の少女 (代理):2010/01/25(月) 15:17:27.61 ID:Q7zQDIwJ0
「…見る感じ、心の底では帰りたくないと思っているみたい…」「まぁそんなわけなんだ。どうすりゃいいと思う?」
「ん〜……そうだね…ここで保護しとけばいいんじゃね?」

「……残念だけど、ここはもう住める場所がない…」適当に行った友人にこっちゃんが諦めたような雰囲気で反論する。

「いや、こっちゃんのスペース使えばよくね?」「…私はどうなるの?」

「俺のところに寝に来ればいい」


「!!?…私が…ま、守のところに…?///」…いろんな意味で予想外の回答だったのであろう。こっちゃんは顔を赤くして驚いている。
「おぅ、そうすればスペースは足りるだろ?…こっちゃんが嫌だっていうなら俺は店のソファでも寝るs「だだだ大丈夫…!全然構わない」


…このとき、昆虫少年の心には「ツンデレ乙」という言葉が浮かんだという。無論、俺もだ。


「じゃあそれでいいか。おーいきゅうちゃん、ってそれ食べちゃダメ!まだ下処理済んでないから!」「ぷぇ?」

見ると、少女はミミズを何匹か咥えこんでいた。…無知って恐ろしい…



……
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 15:19:55.75 ID:94CD5ZUG0
しえ
39うわさの産物 雪中の少女 (代理):2010/01/25(月) 15:21:34.41 ID:Q7zQDIwJ0
「…というわけで、君さえ良ければここに住み込みで働く、という形で住んでもいいが…どうだ?」

「い、いいんれふか?ありがとうごらいらす!」ぱぁ、と屈託のない笑顔で店長達に感謝する少女。
「でもこの店で働くんだったらいつまでもきゅうって呼ぶわけにはいかないんじゃないか?」
「大丈夫…こっくりさんの名に懸けて、私が彼女に会う最高の名前を考える…!」グッ
親指を立てて自信満々の様子で友人に答えるこっちゃん。

…数分後…


「…というわけで決まったぞ」「い、いったい、どんあ名前に…?」


「あなたの名前は…これから、九野 雪歩(クノ ユキホ)」

「とりあえずきゅうと呼ばれてたらしいから名前に九を入れて、あとは雪の中倒れてたから雪っていう字を入れてみた」



「ぁぅ…わらひなんかのために…ありがとうごらいらす!ありがとうごらいらす!」ぺこぺこと頭を下げる雪歩。
「いいっていいって。これからうちの大事なメンバーになるんだからな」「そういうわけで…雪歩、これからよろしく」


「は、はいっ!よろしくお願いします!」



こうして行き倒れ少女雪歩がうわさの産物新メンバーとなった。
雪歩の過去の呼び名『きゅう』とは?雪歩はどこから来たのか?そしてなぜ雪歩は雪中で行き倒れていたのか?
謎だらけの少女がその後、メンバーをいろんなことへと巻き込んでいく…かもしれない 続く…
40首塚組織の憂鬱 日焼けマシンの思い出 (転載):2010/01/25(月) 15:24:34.66 ID:Q7zQDIwJ0
 彼の、その姿を見て

「…見立ては完璧だったわ…!」
「ブラボー…おぉ、ブラボー…!!」

 女子たちは、きゃいきゃいと騒ぎ出し

「これは…すげぇ…!」
「…男の子もいいよね!!」

 新世界の扉を開けそうな男子、数名

「−−−−てめぇら、そんなにジロジロ見るんじゃねぇ!!」

 様々な意味の好奇の視線に晒されて
 彼、日景 翼は、盛大に叫んだのだった


「よく似合っているではないか。何が不満なんだ?」
「直希、お前は抵抗もなく着てんじゃねぇよ…」

 セーラー服を身に纏った友人の姿に、翼はがっくりと脱力する
 …翼も、同じようにセーラー服を着ていた、否、着せられていた
 本日は学園祭
 翼達のクラスの出し物は「女装喫茶」である
 翼も直希も、店員として女装するハメになったのだ
 ほぼ、強制である

「いやいや、二人ともよく似合ってるぜ?」
「誠っ!てめぇ一人だけ女装逃れてんじゃねぇぞ!?」
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 15:27:34.99 ID:ah+9e6PJO
しえ
42首塚組織の憂鬱 日焼けマシンの思い出 (転載):2010/01/25(月) 15:28:34.74 ID:Q7zQDIwJ0
 女装などせず、エプロン姿の幼馴染相手に翼は盛大に突っ込んだ
 が、誠はくっく、と楽しげに笑ってくる

「俺、厨房の係だし」
「畜生……!」

 俺もそっちが良かった
 項垂れる翼だが、時既に遅し
 クラス会議の時に、あれよあれよと言う間に、厨房ではなくウェイトレス係を押し付けられてしまったのだ
 きゃいきゃいきゃい、女子たちは楽しげに騒いでいる

「さっすが清川君!日景君に女装が似合うなんて素敵な情報をありがとう!」
「これは永久保存ものだわ……あ、撮った写真、焼き増ししてあげるから」
「あぁ、ありがとうな」

 …この野郎、やけに女子たちが張り切って厨房係に立候補していっていたのはこれが原因か
 幼馴染に、怒気交じりの視線を送るのだが、誠は全く意に介した様子はない
 ぽん、とそんな翼の肩を、直希は慰めるように叩いてきた

「まぁ、いいじゃないか。どうせ僕たちは午前だけの係なのだから」
「……そうだけどよ」

 …黒服が、来てくれると言っていた。何時になるかはわからない、とも言っていたが
 できれば、午後からきて欲しい
 翼は、そう願わずにはいられなかった


(…何、これ)

 その様子を……望は、半ば呆れた表情で見つめていた
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 15:33:03.34 ID:94CD5ZUG0
しえ
44首塚組織の憂鬱 日焼けマシンの思い出 (転載):2010/01/25(月) 15:33:10.81 ID:Q7zQDIwJ0
 この一連の流れを、望はなぜか見せられていたのだ

(…夢、かしらね?)

 誰も、ここにいる望を気にしている様子はない
 まるで、この場にいないかのように
 きっと、これは夢なのだろう
 彼女はそう理解する

(翼が…高校生、だった頃?ヤケにリアルな夢ね…)

 夢だと、なぜかわかる
 しかし、酷く現実感のある夢だ
 まるで、本当に起こった出来事を、見せ付けられているかのように

 色々と抗議しながらも、翼はきちんとウェイトレスとしての仕事をやっていた
 途中、クラスメイトの男子にスカート捲りされそうになって鉄拳が飛んだりもしていたが
 なんとも、穏かな光景だ
 賑やかな学園祭の様子が伝わってくる

「…よし、そろそろ終わりだな」
「あぁ、そうだな」

 ふぅ、と一息つこうとしている翼
 黒服の姿はまだ、ない
 黒服にこの姿を見られずにすみそうな事を、翼は喜んでいるようだった

 ……が
 世の中、そんなに甘くない
45首塚組織の憂鬱 日焼けマシンの思い出 (転載):2010/01/25(月) 15:37:57.01 ID:Q7zQDIwJ0
「ナオ君ー、ごめーん!お姉ちゃん遅れちゃっ……った……」
「!!エ、エリカさん!?」

 −−ぴくり
 翼の口から出たその名前に、望は思わず、翼の視線の先を見つめる
 そこにいたのは…あの、写真に写っていた、女性だ
 教室の入り口に立ち、呆然と翼を見つめている
 翼に視線を戻せば、羞恥のせいか、翼は真っ赤になっていて

「おや、姉さん…そう言えば、来ると言っていたな」
「っちょ、おま、そう言う事は早く……」

 直希の、淡々としたその言葉に、翼は突っ込んだが


 直後
 翼の姿が、消えた


(え?)

 慌てて視線を彷徨わせ…すぐに、その姿は見付かった

「っつ、翼君、かかかかかかか、かぁいい〜〜〜〜〜!!お持ち帰りぃいいい!!!!」
「〜〜〜っちょ、エ、エリカさん!?お、落ち着いて……!」

 自分よりも背丈のある翼の体を軽々担ぎ、爆走している女性…エリカ
 その表情は、至福そのもの

 何、この変態
46首塚組織の憂鬱 日焼けマシンの思い出 (転載):2010/01/25(月) 15:41:37.12 ID:Q7zQDIwJ0
 望はそんな真っ当かつ正直な感想を抱く

 と、そうしていると

「翼さん、すみません、遅れてしまい……………」
「っぎゃーーーーー!?」

 あ、黒服も来た
 何というか、色々と大変な現場を見られて、硬直している翼
 誰にも姿を認識されていないのをいい事に、望はばしばし床をたたきながら笑ってしまう


 …この後も、穏かな光景が続いた
 エリカの暴走を黒服が何とか収め、エリカが翼に謝りたおし
 その間…翼は、どこか照れたように、ほんのりと頬を赤らめていて
 あぁ、本当に、好きだったのだな、とそれが伝わってくる
 周囲も、それがわかっていて
 翼の恋を、応援してやろうとしているような
 そんな、雰囲気が伝わって……


(−−−−−−−−っ!?)

 …が
 その、穏かな光景が…突然、一変した
 周囲の風景が、ガラリと変わる
 多分、夜の廃工場か、どこか
 暗くて、赤い光景
 赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い
47首塚組織の憂鬱 日焼けマシンの思い出 (転載):2010/01/25(月) 15:46:10.43 ID:Q7zQDIwJ0
 その、風景の、真ん中に
 胸元を真っ赤に染め上げたエリカが、倒れていた
 ごほごほと血を吐き、口元も赤く染まっている
 胸元を、何かで深く抉られたらしい傷
 どう見ても…助かりそうに、ない

「−−−ッエリカさん!」
(翼……!)

 翼が、そのエリカに駆け寄っている
 翼も、体中所々、裂傷ができていた
 何かの都市伝説と戦ったらしい事が、推察できる

「エリカさん……ッエリカさん!」
「……さ、くん」

 …エリカが
 その血塗れの姿で、今にも、命の灯火を消してしまいそうな、その状態で
 だが、それでも、自分よりも翼を気遣うかのように…申し訳なさそうに、笑いかけている

「ごめん、ね……おねーさん…ちょっと、ドジ、踏んじゃったみたい……」
「…ッ黒服が!黒服が来たら、「蝦蟇の油」でその怪我、治せますから……だから、しっかり……!」

 …泣いている
 ぼろぼろ、ぼろぼろと
 大粒の涙をこぼして、翼は泣いていた

 翼も、きっと理解しているのだ
 これだけの傷、最早手遅れだ、と
 それでも、その現実を信じたくないかのように
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 15:46:25.42 ID:94CD5ZUG0
しえ
49首塚組織の憂鬱 日焼けマシンの思い出 (転載):2010/01/25(月) 15:50:10.28 ID:Q7zQDIwJ0
 彼は、必死に彼女を助けようとしていた

「…だ、め…翼君、逃げて……あいつら、が……来る……」
「…………!」

 何時の間にか、翼は包囲されていた
 取り囲むのは、真っ赤な帽子を被った小人達

「…赤帽子(レッドキャップ)……!」

 翼が、涙を乱暴にぬぐい、立ち上がる
 …能力が発動され、斧を手に飛び掛ろうとしていた小人が、体を焼かれ始めた
 たった一人で、死に行こうとしているエリカを庇いながら、翼が戦い始めた
 体に、決して浅くない傷が増えていく
 それでも、翼は退こうとしない
 エリカの命を諦めきれず、まだ護ろうと、必死にもがいて……


「…………っ!?」

 …そこで
 目が、覚めてしまった
 全身、ぐっしょりと汗をかいていて、酷く気持ち悪い
 夢の内容は、目覚めても消えることなく…ただ、重苦しい現実感と共に、望の記憶に残される

「何よ…あの、夢…」

 汗をぬぐいつつ、呟く望
 まるで、翼の記憶を見せ付けられたような、そんな錯覚
 …いや
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 15:50:25.27 ID:94CD5ZUG0
しえーん
51首塚組織の憂鬱 日焼けマシンの思い出 (転載):2010/01/25(月) 15:54:34.65 ID:Q7zQDIwJ0
 錯覚では、ない?

 望と翼は、黒服と契約している
 二人で、一つの都市伝説と契約しているのだ
 都市伝説と契約者は、多かれ少なかれ、精神的なつながりが出来る
 間接的に、翼ともつながりができて…記憶を、垣間見てしまったのか?

「…………」

 血で染まり上がった光景
 あの後、一体どうなったのか
 少なくとも、翼は助かったのだろう
 今、生きているのだから
 だが、あのエリカという女性は…

 自分以外の人間のトラウマを覗いてしまった気まずさ
 それを感じながら、望はふと気づく

「…まさか、私の記憶を、翼が夢で見ていたりしないでしょうね…」

 …そんな事、なければいい
 そう、願わずに入られなかった




fin
52(代理):2010/01/25(月) 15:59:08.90 ID:Q7zQDIwJ0
適当に書いた奴を投下させていただきます
きるのは適当

・・・巨大なロボットが歩いている
そして真下には人影が二つあった
姉「・・・あれなのか?「都超ロボ」というのは」
弟「そーだと思うよー」
その人影の正体は少し小さめな女性と少年だ
姉「よし、それなら私の「カーギロチン」で・・・」
弟「あ、姉さん危ない」
姉「え?」
そういわれ女性は後ろへ飛び退く
と、同時に女性の元いた場所に文字通りの鉄拳が振り下ろされた
轟音とともに軽い衝撃波が周りに放たれ、直撃した地面は陥没している


53(代理):2010/01/25(月) 16:02:24.13 ID:Q7zQDIwJ0
姉「・・・アーオトウトクン?コノトシデンセツノアイテハキミニマカセヨウトオモウ」
弟「え?どうしてボクが?」
姉「・・・いっいや、姉としてはだなっ!弟に華を持たせてやろうと思ってな!?」
弟「なんでそんなに必死なの?・・・・・・まぁいいや ボクがやるよ」
そういいながら少年は銃、もとい「銃のようなもの」を取り出し、構える
・・・その構えは「撃つ構え」ではなく、「投げる構え」
弟「ていっ!」
掛け声とともにその「銃のようなもの」をロボットへぶん投げる
「銃のようなもの」はロボットの胸パーツにあたり・・・・・・・・・貫通する
さらに貫通した場所を中心にひびが入りはじめ、ロボットは崩れていく
弟「やった!勝った!」
姉「・・・相変わらず破壊力がチートな能力だな」
弟「で、これどうするの?」
少年が、完全に鉄屑と化した元ロボットを指しながら問う
姉「ああ、そこらへんは組織が何とかしてくれるらしい」
弟「そうなんだ。じゃあほうっておいていいんだよね」
女性と少年は鉄屑から離れ、家へ帰り始める。
弟「さて、ボクらはいつまで生き残ってられるのかな?」
姉「わからない・・・が、まぁせいぜい楽しんでいこう 何れ死ぬのだからな」
そんな会話をしながら、薄暗くなった道路を二人は去っていった・・・・・・


54(代理):2010/01/25(月) 16:06:08.60 ID:Q7zQDIwJ0
はい、自分で書いていてなんだこれと思いました
以下、説明


年齢の平均身長より少し小さい
素直クール的な口調を考えていたが全然別物に

契約した都市伝説    カーギロチン
問答無用で相手の首を砕く
ただしかなりの時間「ため」が必要で、その間動くことはできない上、首がない奴には効かない


ショタ
自分のショタのイメージそのままで書いたものだからそれ以上説明できない

契約した都市伝説    ポロリ温泉伝統製品初の支援型モルスァ試合専用ガン
ポロリ温泉伝統製品初の支援型モルスァ試合専用ガンを生成、投擲して攻撃する
その破壊力は・・・なんていうか「ヒドイ」



もしよろしければ適当に使ってください


55(代理):2010/01/25(月) 16:10:16.06 ID:Q7zQDIwJ0
日も暮れ町中の街灯が灯り終えた頃、人もあまり通らないような裏道を歩いている学生がそこにいた。
裏道の地面は荒れている上に狭くて暗く、街灯は大体20メートルほどの間隔にしかない。
そんな環境整備も行き届いていない場所だからだろうか、この裏道は町でも有数の怪談話の噂スポットになっていた。
裏道を歩く学生もこの町に住んでいるのだから、もちろんこの裏道の噂話は耳に入ってきている。
そもそも噂話の中心はいつも学校だ。こういった類の噂話は学校にいれば聞く気がなくても耳に入ってきてしまう。
だからこの学生もいろいろ知ったのだ。いわく、

『足を売っているおばあさんがいる』
『首なしライダーの通り道』
『テケテケが襲ってくる』
『殺されたお爺さんが足を掴んでくる』

などなど。
数えだせば切りがないくらいのうわさが流れている。どれも与太話以下の代物だが、ひとつだけ事実に基づいているものがあった。
それは『殺されたお爺さんが足を掴んでくる』である。
それはまだ学生が子供のころの話だが、この裏道でお爺さんが殺されるという事件があった。犯人はまだ見つかってはいないらしい。
学生はその噂以外は全く気にとめてなどいなかった。学生の家はこの裏道を抜けてすぐのところにある。
通学路を通るよりここを通った方が学校に近いのでいつも通っているが、よく聞く噂の類は一切遭遇したことはない。お爺さんの幽霊に足を掴まれたことなどもちろんない。
昔は気にして通らなかったり、通ったとしても不安を感じて全速力で出口まで駆け抜けていた。
しかし、年を重ねるごとにそんな噂は気にならなくなっていった。家庭環境や学校のことで手一杯なのだ。
そもそも学生は4月には高二になるのだ。そこまで年をとっていて怪談話を過剰なまでに気にするのがおかしな方だろう。
いつもどおり下を向いて歩いていた学生は、何かを感じて不意に視線を少し上げる。
5メートルほど先、街灯のすぐ真下に、真っ赤なコートを来た人間がそこに立っていた。
学生は思い出す。最近新しい噂が流れていたことを。
56(代理):2010/01/25(月) 16:13:55.66 ID:Q7zQDIwJ0

『知ってる?あの裏道の新しいウワサ』
『ナニナニ?またなにか出たのあそこ?』
『真っ赤なコートを着た女の人が出るんだって』
『まっかなコート?そんなのおしゃれしてるだけじゃん』
『話はこれだけじゃないのよ。その女の人はね口にマスクをしてるのよ』
『あっ、それってまさか……』

学生は歩くのを止めない。そんな噂はいつもどおり、なんの意味もないものだと決めつける。
あれもただの話題作りのためにあそこに立っているだけだ。人を脅かしたいだけ。
4メートル
コートは全く動こうとしない。
3メートル
目を隠すほどの長く黒い髪だ。口元には大きな白いマスクが確認できる。
2メートル
ここまで近づくと、視覚的な情報から女だと断定する。
そして女に1メートルまで近づいたところで女は初めて動いた。コートの胸部に右手を入れ、棒状のものを取り出した。
学生が歩みを止め立ち止まる。学生は女が取り出したものに気が付いてしまったのだ。
女が取り出したのは鋭利な鎌だった。

『それでさ。こう、通りかかる人に尋ねるんだって』
「わたし、きれい?」



モデルケース『口裂け女』@
57(代理):2010/01/25(月) 16:18:17.18 ID:Q7zQDIwJ0

最近、町中である一つの噂が蔓延している。口裂け女の噂だ。
別の県いるいとこにそのことを話したら『いつの時代だよ』と一笑に付されたが、口裂け女の噂が蔓延していう事実は確かなものなのだ。
わたしはその噂を信じているし、町中のみんなだって信じている。
学生はみんな集団下校が言いわたされてるし、夜で歩く人なんてほとんどいない。なぜなら、口裂け女による被害がすでに出ているからだ。
すべての始まりは、3週間ぐらい前だった気がする。それぐらいのころから赤いコートにマスクをした、いわゆる口裂け女スタイルをした人を見たという噂があった。
わたしと同じ学校の人も見たって言ってた気がする。それも町でも怪談話の裏道で。わたしは裏道じゃ見てないけど。
その頃は、誰もがいつものようにくだらない冗談だと思っていた。誰かが流した適当な噂。そう信じて疑ってなどいなかった。
しかし、2週間前にすぐこの高校から200メートルほどしか離れていない小学校の生徒が殺されるという事件が発生した。
それを皮切りにして、次々と殺人事件は起こっていった。老若男女無差別に。一番新しい事件では、私と同じ学校の人が被害にあった。
3年生の山本という先輩が被害者として、つい2日前見つかった。
この殺人事件の被害者には全員共通していることがある。それは被害者全員の口が鋭利な刃物によって切り裂かれていることだ。
さらに、殺人現場の目撃証言もある。目撃者によると犯人は赤いコートを着た長髪の女性で、鎌によって人を殺害した証言している。
そしてこの証言でもっとも注目された証言は、犯人の口がぱっくりと耳元まで裂けていたという証言だ。
まさしく口裂け女のイメージ想像図に一致する。この事件は今じゃ『口裂け女連続殺人事件』なんていってテレビや新聞で大きく取り上げられている。
事件初めの頃こそ、わたしたちは盛り上がっていた。新聞やニュースを見てコワーイなどと茶化し合っていた。
テレビや新聞も『現代によみがえった口裂け女』とか『口裂け女のルーツを探る』とか不謹慎な上に変な特集を組んでた。
けど11人。この2週間で11人の人間が殺されるのはもう茶化すことなんてできないくらいの恐怖を感じる。自分の学校からも犠牲者が出た。
もしかすると次は自分が襲われてしまうかもしれない。そんな恐怖が頭をよぎるようになった。

「それにしてもさー。夜遊べないなんてすっごい不便だよねー」

そんな町中の不安などをよそに、いつも危機感がないやつなんてのはよくいるもので。この教室の中にももちろんいる。
58(代理):2010/01/25(月) 16:25:52.01 ID:Q7zQDIwJ0
「私さー、最近カラオケに凝ってるんだけどー、ほらー茶店の横のカラオケってさー、夜しかレディースタイムないじゃん?マジ不便」
「……ハァ〜」

わたしの目の前の机の上に肩まで伸びた黒髪のストレート、化粧を薄く乗せた端正な顔立ちの同級生が腰かけている。
腰かけているのはやつの名前は藤枝。私の親友だ。彼女は口裂け女など歯牙にもかけていない。きっと頭から恐怖が根こそぎ欠け落ちているに違いない。

「藤枝、あなた自分がいかにバカなこといってるか気づいてる?」
「えーーー、正論しか言ってないんですけどー?」
「自分の命が大切じゃないんかいあんた!」
「私のカラオケに対する情熱なめんなよ!」
「もぉ!マジでなんなのよあんたの頭のカラっぽさは!ママのおなかに忘れてきたの!?」
「いや、きっと彼氏とキスしすぎて吸い取られたんじゃないかなー?キスのときよく吸われるんだよねー」
「うざー!なんでラブラブ自慢されてんのわたし!?」
「落着きなさいよナオコ。そんなカリカリしてると処女のまま死ぬわよ」

わたしはその言葉に反応し、背後の席にいいる黒髪でエンジェルショート、顔にはメンズ用の黒縁メガネかけている同級生方を向く。
教科書を読んでいる彼女は篤子。彼女も私の親友だ。彼女はいつも容赦のない罵倒をわたしに浴びせてくる。

「アッハハハハハハハハハ!アッツーまじで鬼畜だしー」
「メガネーーーー!張っ倒すわよあんた!」
「やめてよ肩揺らすの。眼鏡がずれるじゃない」

たしかに町中は口裂け女の噂であふれていし、学校もその例外じゃない。わたしは真面目にこの事件に恐怖を感じてる。
でも、私たちの日常がそこから一変したわけじゃない。いつもどおり、冗談を言い合ったりして過ごしてる。
59(代理):2010/01/25(月) 16:28:15.80 ID:Q7zQDIwJ0

「まあ、ナオコもそんなに怒らないでいいじゃない。藤枝だってあなたの夜に出歩くなって言い付けをきちんと守ってるんだから」
「そーそー。ナオコがうるさいから出歩いてないよー」
「……別に怒ってないわよ」
「あなたが藤枝のことを思って口を酸っぱくしてるのは、藤枝だってわかってるわ」
「わかってるわかってるー。だからナオコは彼氏いない歴に終止符を打つ努力をしたらー?」
「ねぇ藤枝、あんたの彼氏にあんたの本名が百々(どど)藤枝ってこと教えるわよ?」
「やめてー!もうドドフジなんて呼ばないでー!藤枝なんて名前つけたばっちゃんまじで鬼畜だしー」

怖いけど、わたしは自分が襲われるなんて思ってもないし、ともだちのみんなが襲われるとも思ってない。
みんなと行動して暗くなったら出歩かない。テレビによれば殺された人たちはみんな夜ひとりで行動してたらしいし。
きちんとした対処さえしてれば、殺されずにすむ。

「お〜い。先生来るぞ」

廊下にいた男子がいつものようにみんなに知らせを持ってくる。

「ちぇっ。もう来たのかー。んじゃねナオコアツコ」
「わたしらは漫才師か」
「なんでやねん」

わたしたちそんな別れの挨拶を交わし、藤枝は去っていく。藤枝だけは別のクラスだから自分の教室へ帰っていく。次に会うのは昼休憩になるだろう。
藤枝が教室を出て行って10秒ほどあと、先生が入ってきた。いつものように教卓の上にバインダーを置き両手を置いて体を支える。

「えー皆さんにぃ、重大なお知らせがあります。だから静かにしなさい」

開口一番、先生の重大なお知らせ。ここ最近よく聞く気がする。小学生が殺された時や集団下校を言い渡された時。
そして山本とかいう先輩が死んだ時。不吉なことばかり。
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 16:32:07.11 ID:ah+9e6PJO
支援
61(代理の代理):2010/01/25(月) 16:50:49.58 ID:94CD5ZUG0
「またも口裂け女事件の被害者が出てしまいました」

先生の口から発せられたのはやっぱり不吉なお知らせだった。朝のニュースじゃ言ってなかったからまだマスコミは知らないのかな。
でもどうせすぐに嗅ぎつけて取材とか行くんだろーなー。山本先輩が死んだときもたくさんマスコミ来たし。ってかインタビューもされたし。

「被害者はぁ、嘆かわしいことにまた我が校の生徒です」

えっ……
クラス中のおしゃべりが一斉にやみ、クラス中の視線が先生の方へ注がれる。みんなの顔には驚きの表情が張り付いている。
もちろん私の顔にもだ。

「被害にあったのは一年生の子だ。なのでみんな目をつぶれ。1分間黙とうを捧げるぞ」

クラス中のみんなが先生の言葉に逆らわず、目を閉じ始める。目をつむる人の中には顔をひどく青ざめさせている人もいる。
無理もないと思う。今まで場所も、人も、被害者はみんなバラバラだった。共通点なんて一つもなかった。
でも今回は違う。前回の被害者と今回の被害者は共通点がある。
62(代理の代理):2010/01/25(月) 16:54:26.79 ID:94CD5ZUG0
「じゃぁ、黙とー!」

二人ともこの学校生徒だ。はじめて事件に共通点が出来てしまった。
もちろん、偶然だと言い切ることもできる。でも、もしかしたら犯人が、口裂け女がこの学校に目をつけてしまったんじゃないか?
心にそんな疑惑が渦巻き始める。みんなも同じ考えだと思う。

『2連続でこの高校で被害者が出た。次は俺の番かもしれない』
『もしかしら私かも』
『あの子が死んじゃうんじゃ』

したくもない方向で、クラスの心意気が団結しているのが感じられる。

「おい、みんな目ぇあけていいぞ」

先生の合図でみんな目をあける。

「えー、とですね。いまから今日の授業割の変更をお知らせします。1限目の数学が無くなって全校集会になりました。それとぉ、授業は3限で終了です」

ま、当然のことだろうと思う。

「まだ寒いのでぇ、寒い人はジャンパーの着てもいいですよ。んじゃぁ準備ができた人から体育館に行ってください」

先生が言葉終えて、それでも動き出さない生徒が多々いた。無論わたしもその一人である。後ろにいる篤子も動き出す気配はない。
すると、先生がバンバンと黒板を大きく叩く。
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 16:54:44.92 ID:5z5bFq700
支援
64(代理の代理):2010/01/25(月) 16:58:15.25 ID:94CD5ZUG0
「おまえらぁ、心配になるは確かにわかるが動かなきゃ始まらんぞ。みんなで動けば襲ってくることなんてない。大丈夫だ。わかったら動く!早く動く!」

先生の言葉に促され、みんながようやく動き出す。しかし、わたしはなかなか立ち上がることができない。
そんな私の肩に手が置かれる。

「大丈夫ナオコ?顔青いわよ」
「うん。大丈夫」
「ねぇ。もしかしてまた見たの?」
「……うん。今朝見た」

そう、ここ3日ほどわたしはよく見るのだ。真っ赤なコートを着た人物を。
はじめはただの見間違いだと思った。
でも、電信柱の影に、屋根の上に、電線の上に、車の影に、人の影に。連日見ればそれはもう見間違えとは言わないだろう。

「まったく、その場で言えばいいじゃない」
「ごめん。でも周りに人がたくさんいたから。あんまり騒ぎになるのも嫌だし」
「なったって構わないでしょう?その方が安全よ。近所から人がわらわら出てきてくれるわ。それに」

篤子がわたしの目の前まで来て目線を合わせる。

「藤枝は口裂け女なんて信じてないから怖がってないし、私は、うん、少なくともお化けだとは思ってないわね。犯人は人間よ。なら私も怖くない」

笑ってわたしを励まそうとしてくれる。
65(代理の代理):2010/01/25(月) 17:02:26.84 ID:94CD5ZUG0
「だから、ナオコや周りがいくら騒いだって私たちが冷静に対処してあげるわよ」
「ありがとメガネ」
「うん。じゃあ行きましょう寝ゲロ女」
「調子に乗ってすみません」
「何を謝ってるの中三でおねしょ女」
「ほんとごめん」

ほんと、藤枝や篤子が親友でよかった。わたしが落ち込んでる時や怖がってるとき、いつも励ましてくれる。
小学生からの友達。彼女たちの励ましがなかったら、わたしはきっとこの3日をまともな精神で耐えられなかったと思う。

「アッツー、ナーオーまだ教室出てないのー」
昼休憩なんて待たずの再会。いい方向で予定が食ったなと思う。
「ドドフジー!篤子がいじめるー!」
「私はいまナオコからいじめられたー!」
「うるさわよ二人とも。早いところ行きましょ」
「うわ、出ましたよ篤子さんのボケ殺し」
「全然ノらないなんて、ボケる身にもなってほしいわよねナオコさん」
「……」
「「ほんと(まじで)調子に乗りました!だから無視しないで!」」

足早に去っていく篤子を藤枝と二人で追いかけながら、今日もいつもと変わらない毎日だと思っていた。でもそうじゃなかった。
66(代理の代理):2010/01/25(月) 17:06:31.76 ID:94CD5ZUG0
それがわかったのは3限目も終わって集団下校のため校庭に集合し始めた頃。

「そういえば公園の近くにたこ焼き屋できたじゃん。あれ今の騒ぎで客来てなさそうだよね」
「あそこね。母さんが買ってきたことあるけどそんなに美味しくなかったわよ」

校庭で篤子と二人、藤枝を待っている時に『それ』は聞こえてきた。

『聞いたか1年のこと』
『ああ、死んだ1年だろ』
『名前なんだっけな。後輩が職員室で聞いたらしくてさ。さっき教えてもらったんだけどな』

わたしも篤子も自然とその方向へ目を向けてしまう。やはり、誰が死んでしまったのか、不謹慎だとは思うけど気になってしまう。
だから、こんな会話に反応してしまう。

『確かクワムラだったかな』

クワムラ。その苗字を聞いた瞬間、心臓が跳ね上がるのを感じた。隣にいた篤子も目を見開いている。

『あ〜そうそうカンペキ思い出したわ。クワムラ。クワムライトコだ』

その名前を聞いた瞬間膝から力が抜けるのを感じる。そしてそのまま体勢が崩れ地面倒れそうになったところで、

「ちょ、ちょっとナオコ!?」

篤子に支えてもらう。
67(代理の代理):2010/01/25(月) 17:10:07.85 ID:94CD5ZUG0

「ナオコ!気をしっかり持ちなさい!」
「なになに!?どうかしたの!?」

そこにいつの間にかそばにいた藤枝が加わる。

「ふ、ふじえだぁ、、、、イ、イトコが、イトコが、、、、!」

涙が溜まり過ぎてもう前が見えなくなってきた。

「えっ……。なによちょっと、やめてよ、、、、そんな、そんな泣きながら伊斗子の話なんてさ!やめてよ!」

朝にあった1年生が死んだという訃報。わたしのこの態度。そして伊斗子の名前。

「う、、、うえ、、うううう、、、イトコが、」
「やめてったら!泣かないでよ!そんな声出さないでよ!そんな声で伊斗子の名前を出さないでよ!」

藤枝が私の体を乱暴に揺らし怒鳴り散らす。それでもわたしは泣くことをやめることができない。

「やめなさい藤枝!」
「篤子!違うわよね!伊斗子は!伊斗子は違うよね!」

藤枝も察したのだろう。

「……残念だけど本当だと思う。携帯で連絡が取れない。家の電話にも」

わたしたちの大事な後輩が死んだことに。
68(代理の代理):2010/01/25(月) 17:13:15.78 ID:94CD5ZUG0

わたしのそばで藤枝も崩れ落ちる音がする。
今回の被害者の桑村伊斗子。彼女は私たちの昔からの後輩だ。わたしと藤枝は小学校のころから、篤子は中学生のころからの付き合いになる。
ぱっちり開いた目に薄い唇。男子のように短く切った、最低限の手入れしかしてない髪の毛が印象的な子だった。
伊斗子は私たち三人にとても懐いてくれていた。わたしたちも彼女が可愛くて大好きだった。藤枝と篤子を除いたら一番仲が良かったのが伊斗子だった。
わたしと藤枝は小学校のころから一緒に卓球してきた仲だ。篤子も中学生から一緒にやっている。
この高校には卓球部がなかったから、わたしたち4人で卓球愛好会なんてものを設立した。ずっと一緒にやってきた、ひとつ下の後輩。
今はこの事件で部活動全てが中止になってるけど、わたしたちは関係なく集まっていた。昨日も一緒に話した。夜にメールのやり取りもしてた。
10分ぐらいだけ電話でやり取りもした。つい昨日まで、伊斗子は確かに生きていた。でも、口裂け女に殺された。
何で……、何で殺されなきゃいけないのよ!あの子がなにかしたって言うの!そもそもあの子は夜ひとりで出歩くような子じゃない!
殺されるような状況なんてならないはずよ!

「お前等何してんだ?どうした腹でもいたいのか?」
「すみません先生。少しショックなことがあって。落ち着くまで待ってもらえないでしょうか」
「あ〜、まあこの調子じゃな。いいよ。どうせお前等の地区学校からちかいしな。よくわかんないど元気出せよ?」
「ありがとうございます」

伊斗子が、伊斗子が、伊斗子が、どうして?なんで?いつ?どこで?どんなふうに?だれに?

「二人とも。悲しいのはわかるけど、いつまでもこうしてるわけにはいかないのよ」
「今私たちは家に帰らなきゃいけない。これ以上遅れたら今度は他の人たちが被害に遭うかもしれない」
「家ならいくら泣いても何も言われないし、迷惑もかからないわ。ほら二人とも、支えてあげるから」
「あと少し、あと少しよ。そしたら出発するの。私たちたちのせいで、わたしたちの地区の人たちだけ足止めを食らってるわ」
「早く家に帰らして両親を安心させてあげないと」
69(代理の代理):2010/01/25(月) 17:16:50.79 ID:94CD5ZUG0

泣き始めて40分、いや50分は経ったかもそれない。落ち着いたころには校庭に生徒はわたしたちしか残っていなかった。
どうやら、わたしたちの地区の人たちも出発してしまったらしい。

「ナオコ。もう大丈夫?}
「……うん。も”うだい”じょう”ぶ。こ”め”ん”」
「ひどい鼻声になってるわよ。このティッシュ使いなさい」
「あ”り”がと”」

篤子からポケットティッシュを受け取ると2枚ほど引き抜いて鼻をかむ。
ずいぶんと詰まっていたみたいで、すっきりする。

「藤枝。はいハンカチ」
「……ありがとね」

篤子は立派だといつも思う。こんなときでもわたしたちみたいに取り乱さない。篤子もきっと悲しんでるはずなのに、辛いはずなのに。
いつもいつもわたしや藤枝にそんなそぶりを見せずにわたしたちを助けてくれる。

「おいお前等。もう大丈夫か?大丈夫ならさっさと帰ってもらわなきゃ困るぜ。先生たちにも用事があるからな」
「すみません。わざわざ特別に付き添ってくださって」
「あ〜。気にすんな。こいつも教師の仕事ってやつだ」
「ほらナオコ、藤枝。立ちなさい」

わたしも藤枝も篤子に腕を引っ張られ、ようやく立つことに成功する。
70(代理の代理):2010/01/25(月) 17:20:36.48 ID:94CD5ZUG0

「お前等たしかS地区だったよな」
「はい」
「んじゃいくか」

そういって歩き出す先生の足はそんなに早くない。もっと早く歩けるんだろうけど、わたしたちに合してくれてるんだとその意に気づく。
この先生はガサツだと思ってたけど、意外と気遣いができる先生っぽい。
先生を先頭に自分たちが住んでいるS地区へと足を動かす。
いつもなら他にも人数がたくさんいて、注意されるぐらい騒ぎながら帰ってる頃だけど、今はわたしたちの靴音しか聞こえない。
正直なところなにも話す気が起きない。
気持ちが落ち着いたとはいえ、伊斗子が死んだという事実は消えるわけじゃない。沈んだ気持ちが急に浮上するわけでもない。
わたしたちにとって伊斗子の死はあまりにも重い。

「お前等まじでどうしたんだ。泣いてた思ったら今度は黙りこくって?悩みあるならのってやるぞ!」

沈黙に耐えられなくなったのか、十字路に差し掛かったところで先生は無駄に元気にわたしたちにしゃべりかけてくる。
でも、わたしはとてもしゃべる気にはなれない。きっと藤枝もそうだ。もししゃべる気力があるとすれば、

「先生。一つ聞いてもいいですか?」

篤子くらいだ。

「おお!なんだなんだ!じゃんじゃん聞け!」
「今回の被害者が桑村伊斗子だっていうのは本当なんですか?」
「……」

先生はしゃべるのをやめるとともに、その歩みも止める。
こんな反応をするということは、伊斗子が死んでいる証明に他ならない。
死んでいないという答えを期待していなかったといえばウソになる。でも、その淡い期待ははかなく散って行った。
現実は容赦なくわたしたちの身に襲い掛かってくる。
71(代理の代理):2010/01/25(月) 17:23:23.45 ID:94CD5ZUG0

「お前等、友達だったのか」
「友達じゃありません。親友です」
「……今回死んだのは確かに1年の桑村伊斗子だ。家についてテレビをつけたら、ニュースでも放送されてるかもしれん」
「そうですか」
「すまんな。その〜、場違いなことばかり言ってな」
「いえ、いいんです」

先生はほんとにすまなそうな顔をすると、わたしたちから顔をそむけ再び足を前に進め始める。

「ほら、二人ともいくわよ」

伊斗子に促され、わたしたちも再び足を動き出す
その時ふと左の方、ギリギリ視界に入るか入らないかのところで、何かを捉えた。
左に顔を向ける。

「ヒッ!」

あまりの衝撃に喉が締め付けられ息が漏れる。心臓はかつてないほど躍動し、体から汗が噴き出す。
十字路の左折方向の10メートルほど先に、真っ赤なコートを身にまとった人物が立っていた。あのコートの色、あの背格好、間違いない。
ここ数日わたしを監視しているあいつだった。体が恐怖ですくみ篤子にもたれかかる。

「どうしたのナオ、、、な、あ、、、、まさか、、、!」
72(代理の代理):2010/01/25(月) 17:26:50.45 ID:94CD5ZUG0

体はどうしようもなく震え、歯はかみ合わずカチカチとぶつかって音を立て続ける。
汗はどんどんと噴き出ているが体はこれ以上にないほど冷えていた。
今、わたしたちの目の前には、伊斗子を殺した殺人鬼が、口裂け女がいる!

「あいつかぁぁぁあああああああああああああああああ!」

後ろから怒号が発せられたかと思うと、わたしと篤子の横を誰かが駆け抜けていく。あれはまさか、

「「藤枝っ!?」」

わたしと篤子が同時に叫ぶ。
そう、わたしたちの横を駆け抜けていったのは、わたしたちの親友百々藤枝その人だった。

「お前が伊斗子をぉおおおおおおお!」

ダメだ!ダメだダメダメダメダメだ駄目だ駄目だ!あれに向かったら!そんなものに向かったら!異常なものに向かったら!
藤枝まで、伊斗子と同じ運命を辿ってしまう!

「待ってふじえだぁ!」
73(代理の代理):2010/01/25(月) 17:29:41.48 ID:94CD5ZUG0

そう考えると、体すでに動き出し、藤枝へと走り出していた。
頭にはすでに口裂け女の恐怖なんて掻き消えている。その代わりに、別のものが支配していた。
小学生からの親友が、百々藤枝が殺されてしまうという恐怖。伊斗子に続き藤枝までいなくなってしまうという圧倒的恐怖が体を動かす。
なんとしても藤枝を止めなくちゃいけない!あいつのもとへ行かせちゃいけない!あいつに近づかせちゃいけない!
それだけを思い、ただ藤枝に向かって走る。しかし、追いつくことはできない。
藤枝はもともと運動能力はわたしたち3人の中では1番だ。チャラチャラした性格とは裏腹に、その体はスポーツによって鍛えられている。
そんな藤枝の脚力にわたしでは追いつけない!藤枝が、口裂け女の前に立ちはだかってしまう。
藤枝が走り出し、口裂け女のところにたどりつくのはほんの数秒。そのほんの数秒の間に口裂け女は後ろへ50メートル下がっていた。
それも、姿勢を一切乱さずわたしたちに正面をむけたまま。
しかし、口裂け女が移動した先には逃げ道がない。口裂け女のすぐ後ろはブロック塀がそそり立ち、両隣りには高い塀に囲まれた民家。
ブロック塀も民家の塀もすぐすぐよじ登れる高さじゃない。でも、口裂け女が逃げられない代わりに、わたしたちも逃げることはできない。
わたしたちだって塀をよじ登ることはできないのだ。50メートルの距離を一瞬で詰める化け物から逃げる手段がない。
化け物の巣穴にみすみす飛び込んでしまうだけだ。
しかし、それでも藤枝の疾走は止まらない。そんなこともわからないかのように、あるいは知ったことではないというように走る。
だから、わたしも追うことをやめるわけにはいかない。

「ふ、二人とも待ちなさいよ!」
74(代理の代理):2010/01/25(月) 17:32:09.24 ID:94CD5ZUG0

篤子の焦った声と走るような靴音が聞こえる。
それを無視し、ひた走る。いくら走っても藤枝に追いつける気がしない。むしろ離されていっているかのような感覚に襲われる。
その感覚を打ち消すため、さらに足に力を込める。
しかしその時、再び口裂け女が動きを見せる。跳んだのだ。上に。目測としては約20メートルぐらいだろうか。
その光景に自然と足も止まる。藤枝の足も止まっているし、後ろで聞こえていた篤子の足音も聞こえない。
口裂け女はそのまま民家の屋根に着地するとこちらを一瞥すると、どこかへ去って行った。
……わたしたちの町が遭遇している事件とは、一体なに?わたしたちは何に狙われているの?
わたしは確かに口裂け女を信じている。町中のみんなも信じていると思う。だって実際に事件が起こっているのだから。
でも、どんなに信じている人でも心の奥底では人間が犯人だって思っていたはずだ。わたしだって思ってた。
この事件の犯人も、わたしをつけ狙っている口裂け女もみんな人間の仕業だって。

「こぉらぁ!お前等何をしてんだ!!急にこんな場所に入り込んで!危ないだろうが!」
「せ、先生!?」

じゃあ、人は20メートルもジャンプできるのか?正面を向いたまま身動き一つとらず50メートルを一瞬で移動できるのか?
できない。できない。できない。できない。できない。できない。
あれは人間じゃない。じゃあ、なに?

「百々ぉ!石田ぁ!櫛間ぁ!速くこっちに来い!ダッシュゥ!」

口裂け女、、、、都市伝説が現実になったっていうの?
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 17:36:30.47 ID:5z5bFq700
紫煙
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 17:40:59.21 ID:R+aWWE2n0
いい加減パー速でやれks
77代理の代理のも一つ代理:2010/01/25(月) 18:17:14.06 ID:IcGd8iOD0
登場人物

石田ナオコ……主人公
百々(どど)藤枝……頭悪い
櫛間(くしま)篤子……メガネ
口裂け女A……噂、犯人
口裂け女B……ストーカー
先生……筋肉
 この世には、都市伝説というものが存在するらしい。
 それも、ただの「噂」としてではなく、「実体」として。
 ……といって、俺は別段そういったものを信じているわけでもないのだが。
 神? 伝説? それが実際に存在する?
 そんなものは馬鹿げた妄想にすぎない。

 もちろん、世の中には科学で証明できないものなどいくらでもあるだろう。
 しかし、あくまでそれは「今の」科学だ。
 あと数十年、あるいは数百年が経てば、この世に科学で解明しえないものなど消えてなくなっているはずだと、俺は常々思っている。


 ――――そういえば、と。
 「百花屋」という喫茶店からの帰路。
 そこで買ったお土産を片手に歩きながら、俺はあることを思い出していた。

(この町にも、そんな類の噂があったな……)

 誰から聞いたのかは思い出せない。
 しかし、この町に関する噂や都市伝説のいくつかを、俺は確かに知っていた。
 ただ、俺の記憶――もとより、記憶した覚えもないのだが――によれば。その全てが眉唾物の話だったような気がする。
 やれ動くヌイグルミだとか、やれ殺人ジャムだとかパンだとかいう、馬鹿げた話。

(……全く、どうせならもっと現実性のある話にすればいいものを)

 ……そんな事を考えていた、その時、

「どいてどいてーっ!」

 俺の後方から、そんな声が聞こえてきた。
 同時に、パタパタと人が走っているような音も。
(何だ……?)

 俺は振り返ろうとして……ふと、ある一つの噂を、思い出していた。
 数年前に大木から落ちて意識不明のはずの少女が、町を元気に走り回っているとかいう、どこにでもありそうな怪談の混じった噂。
 ……なぜ、唐突にそんな事を今更思いだしたのやら、と一瞬思案して――

「――――うぐっ!!」
「のあっ!?」

 思考が全く別の方向へと飛んでいたせいか。
 俺は走りくる茶色い何かを避けることができなかった。
 俺に弾かれ、尻もちをつく「何か」。

「うぐぅ……痛いよぉ……」

 ぶつかった際に打ち付けたのか、「何か」は腰ではなく鼻を押さえた。
 ……いや、「何か」ではない。
 茶色いダッフルコートに身を包んだそれは、小柄な女の子だった。
 小学生……いや、中学生くらいだろうか。

「大丈夫か」

 いまだ尻もちをついたままの少女を助け起こそうと、手を差し伸べる。
 少女は、涙目になりながらも、俺の手を見て

「……うぐっ!?」

 何かに弾かれたかのように、唐突に後ろを振り返った。
 つられて俺もそちらを見るが、特に怪しいものはない。
 強いて言えば、ジョギングの途中なのか息を切らせたおっさんと、大きなヌイグルミを担いだ少女がいるだけだ。
 ……まぁ、おっさんの方はエプロン姿なのが、若干怪しいと言えなくもないが。

「――――おい、何もないぞ」

 怪しいものなんて、何もない。
 そう言って、視線をもとに戻すと――――
 
「…………ん?」

 ――――そこに、あの少女はいなかった。
 幻覚だったのか、と一瞬馬鹿げた考えに捉われ、しかしすぐに、その考えを打ち消した。
 俺の視線の先、道にうっすらと積もった雪の中に、小さなくぼみができている。
 それは、ちょうど少女がいた辺りだった。
 恐らく、俺が向こうに気を取られている間に、少女はどこかへ行ってしまったんだろう。
 ……ちょっと足が速すぎるような、俺に気づかれることなく消え去るのは無理なような……そんな気がしなくもないが、多分そうに違いない。ああ、きっとそうだ。
 この世に、不思議などあってはならないんだ。

「全く、ぶつかっておいて謝罪もなしか……」

 頭にいくつも浮かんだ疑問を打ち払い、俺はそう呟いた。
 今の子供はどんな教育を受けているんだとか、親のしつけがなってないとか、そういった愚痴にだけ、意識を集中させる。
 …………が、その集中が途切れた瞬間、俺はある一つの重大な事に気がついた。
「俺の、パンが…………」

 雪がうっすらと積もった道路の上。
 そこに、白い箱が上下逆さになって落ちていた。
 これは、俺が先ほど「百花屋」で買った箱。
 つまり、俺が買ったジャムサンドの入っている、箱。

「ああ…………」

 慌てて、俺はそれを拾い上げる。
 すぐに箱を開き、中身を確認して……俺はほっと、ため息をついた。

「ふぅ……セーフか……」

 幸い、箱の中身は無事だった。
 鈍く、紅く光るジャムの塗られた、七色に輝くパンが3つ。
 物理法則を無視しているんじゃないかと思うくらい、それらは綺麗に並んだままだった。
 ……いや、物理法則に則った結果こうなったに違いない。物理の法則を無視して動くなんて不可能なはずだ。うん、不可能。

「早く帰って食べよ……」

 またさっきのような目にあってはかなわない。
 俺はそそくさと、その場を後にした。
 ……箱から立ち上った匂いをかいだ鳩が数匹、電線から落ちた事にも、気付かずに。

 俺が「殺人ジャム」や「殺人パン」が実際に存在することを知ることができたのは、それから約十分後の事だった。 



【終】
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 18:34:13.00 ID:IcGd8iOD0
989 名前:占い師と少女[] 投稿日:2010/01/25(月) 17:45:01
Kanonのssでもあり、都市伝説のssでもある
そんなコンセプトで書いた結果がこれだよ!orz
何という中途半端感……。
しかも途中でタイトル間違えてるし。
……クッキーって怖いね。

さてさて、まずは花子様の方に土下座っorz
オオアリクイのヌイグルミ、微妙にしか登場させられませんでした。
というか、ほとんど登場させられませんでした。
約束の不履行って情けないよねorz

そして発端となった絵の微妙さ
トレースと違って、模写は難しいね!
見ながら書くんだし、楽だろうと思った結果がこれだよ!

***
kanon懐かしいなー。あの頃は俺もまだ今よりは若干きっと純粋だった……
83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 18:47:42.70 ID:uiEfUnA50
Q00. あなたは都市伝説を信じますか?
Q01. あなたはどんな都市伝説が好きですか?
Q02. あなたがこのスレで好きな物語はなんですか?
Q03. Q02.のどこが好きですか?
Q04. あなたがこのスレで好きなキャラクターは誰ですか?
Q05. Q04.のどこが好きですか?
Q06. あなたの契約したい都市伝説はなんですか?
Q07. あなたのフェティズムを教えてください。
Q08. あなたの好きな曲を教えてください(ジャンルは自由です)。
Q09. 御感想、御意見など、御自由にどうぞ!!
Q10. さっきからあなたの後ろにいる方はどなたですか?
Q11. わたし、きれい?
84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 18:49:53.96 ID:TqlYBQQA0
帰ったらスレが立ってて代理投下も終わってた驚き
スレ立て&投下乙でした!
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 19:27:49.81 ID:+oEJuKzS0
ごちそうさまでしたー!
代理投下続き乙!!
86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 20:02:56.76 ID:ah+9e6PJO
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 20:03:24.70 ID:KZM1Wi4L0
ほするー
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 20:27:37.04 ID:KZM1Wi4L0
落としてなるものカー!
89保守ネタ:2010/01/25(月) 20:46:33.43 ID:+oEJuKzS0
 てちてちてち
 気まぐれに、野良猫が散歩する
 真黒な、真黒な、可愛らしい猫
 てちてちてちてち
 人々の前を横切っていく

 横切られた人間達
 次々、不幸な目に会っていく

「何ぃいいいいいい!!??1日限定30個の特製タイヤキ、発売5分で売り切れだとぉおお!!??」
「振られた…………ウツダシノウ('A`) 」
「っちょ、噂の全裸兄貴が目の前にッアーーー!?」
「きゃああ!?買ったばかりの真っ白なコートがドロはね喰らって大変な事に!?」

 ねぇ、知ってる?
 黒猫に横切られるのは不吉なんだよ?


 その黒猫は都市伝説
 「黒猫に横切られると不吉」と言う都市伝説

 でも、黒猫はそんな事知ったこっちゃない
 今日も気まぐれ、街中を散歩して
 あちこちに不幸をばら撒いているのでした



おしまい
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 21:16:37.71 ID:qGeCcFA00
91頑張って1レスネタに挑戦してみた (代理):2010/01/25(月) 21:23:48.51 ID:qGeCcFA00
 僕は、都市伝説が大好きだ。
 昔から、そういった伝説やホラーを、僕はなによりも愛していた。
 だから、その都市伝説が実際に存在していると知った時、僕は歓喜したものだった。
 …………なのに
「や、やめろ……来るんじゃねぇよ……」
 どうして、君は逃げるの?
 僕はただ、君とハグがしたいだけなのに。
「くそっ、くんなよ、化け物がっ!」
 どうして、君はそんなに敵意を向けるの?
 僕はただ、君と出会えて嬉しかっただけなのに。
 僕は今、とっても悲しい。
 …………でも、君ならきっと分かってくれる。
 君ならきっと、抱きしめさせてくれる。
「くそっ、くそっ、くそっ!」
 そんなに怯えなくても、大丈夫。君はきっと、他の奴らとは違うから。
 …………さあ、追いついた。

 ……君も、駄目なんだ。
 残念だよ、悲しいよ。
 どうして、僕は都市伝説に触れないの?
 どうして、僕が触るとみんな消えちゃうの?
 君たちは、僕には手の届かない世界の住人なの?
 せっかく君たちのために、僕も都市伝説と契約したのに。

 ……まぁ、いいや。
 また、都市伝説を探そう。
 僕がハグしても消えたりしない、そんな強い都市伝説を……。

92頑張って1レスネタに挑戦してみた (代理):2010/01/25(月) 21:35:55.35 ID:qGeCcFA00
まさかの規制
さっきまで代理やってた時はなんとも無かったのにorz

さて、急に電波を受信したので1レスネタにして投下してみた
普段長い文ばかり書いてたから、1レスにするのも新鮮でいいね!

今回出した都市伝説は、「対抗都市伝説」
この都市伝説の契約者に触れるだけで、都市伝説が消滅する能力を持つ
どんな都市伝説の攻撃も無力化し、どんな速度で逃げても追いつく、そんな存在
たとえ相手が契約者でも、契約者ごと都市伝説を殺せるチート
灼シャナの天目一個みたいな、出会ったら死ぬしかない、生きる災害みたいなものを意識して書いたらこんな事に

ちなみに、世界にこの一つしかこの都市伝説は存在しないこと、また契約者を一人しかもてないことが弱点
また、一体都市伝説を殺す度、契約者の体の肉が100g消えてなくなる代償有り
しかも、契約した場合は都市伝説に支配され、死ぬまで飲まず食わずで世界をさまようことになります
契約者を殺すには、都市伝説と契約していない人間が、都市伝説とは関係のない手段(拳銃等)で殺すしかないです
93保守ネタ:2010/01/25(月) 21:42:25.00 ID:qGeCcFA00
 突然だが、俺、紐緒 レイは命を狙われている
 誰にかって言うと、「組織」とか言うよくわからん連中にだ
 協力しろと脅迫交じりに迫ってきたので断ったら命を狙われた
 何、この理不尽、ふざけてるの?

 −−−−ぱぁんっ!と
 乾いた音が響き渡った
 撃たれたのだと、そう理解する
 一般人の俺は、心臓なんぞ撃たれたら死んでしまうだろう
 だが…

「「こんな事もあろうかと」……防弾チョッキをコートの下に身につけていて助かったぜ!」

 銃弾は、防弾チョッキで見事に防がれていた
 良かった!!
 普通の銃弾で本当に良かった!
 これが都市伝説絡みの銃弾だったら防弾チョッキじゃ防げずに普通に死ねたと思うぜ!!

「逃がすな!」
「穏健派の連中に知られると不味い。口を封じるぞ!」

 うわ、面倒くさ!
 何、穏健派とか。派閥争いでもあるのか!?
 黒スーツにサングラスという、素敵にメン・イン・ブラックな男達が銃を向けてくる
 っちょ、待て待て待て
 防弾チョッキでガードできない部分を撃たれたらやばい!?
 ダッシュで逃げ出す俺
 当然、追いかけられる
 二本の足でどこまで逃げられるか
 問題は、そこだが…
94保守ネタ:2010/01/25(月) 21:45:43.30 ID:qGeCcFA00
 だが……大丈夫だ、逃げ切れる
 俺は、確信していた
 素早く、路地裏に入り込む

「追い込め!」

 黒服達の叫び声を聞きながら、路地裏に入り込み、叫ぶ!

「「こんな事もあろうかと」!!」

 俺の叫びに呼応して、それは路地裏に出現した
 乗り込みながら、叫び続ける

「こうやって路地裏にバイクを隠しておいて正解だったぜ!!」

 エンジンをいれ、走り出す
 路地裏に入り込んできた連中を半ば突き飛ばしながら俺は表通りに出て…そのまま、バイクで失踪した


 ………
 …………
 ……………

 OK、連中、付いてこれないようだ
 ほっと、俺は息を吐く

 …あぁ、そうだ
 一般人、と言ったが、本当は俺は一般人とは、少し違う
 俺は…都市伝説との、契約者だ
 普通の一般人とは、残念ながら、少し違う
95保守ネタ:2010/01/25(月) 21:49:23.04 ID:qGeCcFA00
 俺が契約してしまった都市伝説は「こんな事もあろうかと」
 …何?都市伝説じゃない?
 細けぇこたぁ気にするな。俺だって、どうしてこんな都市伝説があるのか不思議で仕方ないわ

 能力は、「こんな事もあろうかと」と言う言葉をキーワードに、事前に準備する事が可能な事を、準備していなくても準備していたことにできる能力
 …まぁ、一撃必殺とか、攻撃的な能力ではないわな
 でも、結構これが便利なのだ
 突然地震に見舞われたって、「こんなこともあろうかと、地震の備えはバッチリだ!」と言えばしっかり事前の備えが出来るんだから


 ……さて
 「組織」は、俺を追い続けるのだろうか?
 面倒だなぁ、どうにかならないだろうか

 ま、いいや
 追われたら、その時はその時
 多分大丈夫だろう、と気楽に生きるしかないのだろう

 「こんな事もあろうかと」、借りておいた月決め駐車場にバイクを止めながら、俺は深々とため息をついたのだった





終われ
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:08:50.87 ID:qGeCcFA00
みゅ
97:2010/01/25(月) 22:14:00.24 ID:5z5bFq700
乙っしたー
98:2010/01/25(月) 22:19:23.35 ID:5z5bFq700
【電磁人の韻律詩13〜悪い人〜 】

目を覚ますとそこは病院だった。
鼻腔に満ちる消毒液の香り。
バタバタと騒がしそうに歩き回る白衣の天使の足音。
窓際にいけられた菫の花。
その下では人々が相変わらずせわしなく動き回っている。
全身がずきずきと痛む。
まだ死んでいない、まだ死んでいない。
そういえばお腹がぺこぺこだ。
恐らく不味いであろう病院食を食わせられるのか?
死ぬような思いをした直後の心配は下らないことにそんなものらしい。
命の危機も過ぎてしまえばそんなものらしい。

「目を覚ましたようだね、昨日は大変だったよ……。」
「あ、ゴスロリ………さん。」
「ゴスロリってなんだ、僕にだってちゃんと名前はある。
 太宰紫。
 それが僕の名前だ。
 あとさんは要らない。」
「つか年上だったんですか……?」
「知らないのか?女性は18から年を取らなくなるんだぞ?」
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:21:21.85 ID:qGeCcFA00
笛の人支援!
100:2010/01/25(月) 22:25:38.17 ID:5z5bFq700
「それでも俺よりは年上です。」
「君は女性との話し方を知らないらしいな。ところでご両親は?
 あと学校とかにも連絡しないと……。」
「ああ、それが……。」

言うしかない。
しかし出会って間もない人間にこんな事言うのも抵抗がある。
しかもゴスロリだ。
病院内部では流石に自重している様子だがあの白衣の下はゴスロリファッションになっているに違いない。
絶対変態の類に違いない。
明日真は確信していた。

「なんだい、面倒ごとでもあるのかい?
 治療費なら私が出してあげるよ。
 見ず知らずの他人を治してくれる美人女医(18)など中々居ないから感謝すると良い。」
「いや、あげるよ、じゃねーって。
 少なくとも赤の他人ではないから!
 昨日誰に助けて貰ったと思っているんだ!」

(18)にすら突っ込めない程、真は疲れていたようだ。
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:26:45.98 ID:qGeCcFA00
支援!!
102:2010/01/25(月) 22:28:06.63 ID:5z5bFq700
【前回までのあらすじ1、恋路と真は喧嘩していたのである】
「うむ、その通りだ。君と僕は昨日だけで同じ蓮の花の上に座りかけていた訳だよ。
 そんな相手に隠し事ってのも中々寂しい物じゃないか?」

美人女医(18)はため息をついた。
性格はあれだが美人なので中々様になっている。
厭がっていても真が話さないとどうしようもない。
そのことは真も解っていた。

「住所は学校町西区の35-1、家への電話番号は……。」
「はいどうぞ、連絡ぐらいはした方が。」
ポン、と林檎社の音楽プレイヤー付き携帯を渡された。
「ありがとうございます。」
「だから敬語はやめなさい。君より二つしか年は行っていないんだ。」
「わかった。」
家への電話番号を打ち込むとすぐに恋路が出た。
「……何処に居るのよ。」
「ちょっと車にはねられた。今入院中。」
「はぁ!?何処の病院なの?今行くから待ってて!」
「まあ落ち着け、お前が今の時間に家から出たら近所の人が不自然に思うだろうが?
 ちなみに場所は市民病院の4階の35号室。」
「まあそうだけど……。」
「とりあえず見舞いは少し待っていてくれ。
 ああ、でも着替えとか必要か……。」
「夕方からでも行くよ。」
「そうしてくれ。それじゃあ……、昨日はごめん。」
「…………うん。」
――――――プツ
恋路は曖昧に返事をすると電話を切った。
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:30:29.45 ID:qGeCcFA00
今更だが俺の出した登場人物とアスマの名前が漢字は違うが読みが被ったひぎぃ支援
104:2010/01/25(月) 22:31:44.36 ID:5z5bFq700
【前回までのあらすじ2、すったもんだの末に明日は美人女医の病院に入院したのである】
「家族の方に連絡付いた?」
「いやぁ……、家の両親仕事で世界中飛び回っているんですよ。」
「ありゃりゃ……、じゃあ今電話したのは誰?」
「……都市伝説。家で待っています。」
「成る程ねえ、あたしが迎えに行こうか?」
「いや、あいつも一人でここまで来られると思うんで……。」
「そっか……、じゃあ僕も仕事に戻るからなんかあったら看護師さんよんでちょーだい。」
「解りました。」
「元気出せ、君は僕のヒーローだ。」
「………どうも。」
彼がゴスロリ少女だと思っていた女医はそう言うと病室から出て行った。


さて、ここで視点は少しばかり移動する。


「そろそろ行っても良いかな?」
恋路は時計を見てポツリと呟く。
時計の針はとっくに午後四時を過ぎていた。
深く差し込む西日は彼女の長くて綺麗な髪の隙間を余すことなく照らしつけていた。
彼女は虚しく虚しく座り続けていた。
「うぃーん、がっちゃん。」
昨日からずっと明日真を待っていたのだ。
昨日から明日を待っていたのだ
明日のない今日など待っていなかったのだ。
壊れた機械の真似をしながら彼女は家を出る。
恋路は誰も居ない静かな町並みをゆらゆらと歩き始めた。
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:34:04.68 ID:qGeCcFA00
君の!投下が終わるまで!!俺は支援をやめない!!!
106:2010/01/25(月) 22:35:45.29 ID:5z5bFq700
「……誰にやられた?」
「嫌ですねえ先生、この腕はバイクで転んだだけですってば。」
「ふむふむ……。」
同時刻、舞台は病院に戻る。
明日の担任教師がお見舞いに来ていた。
「だがおかしいなあ?」
普段はやる気なさげな彼の瞳が今日は珍しく真剣だ。
「どこをどうやったらバイクで腕だけ綺麗に怪我できるんだ?」
「え………。」
「明かしたくないなら良いが、少しは色んな人間に頼ったらどうだ?」
「すいません……。」
「すいませんってことはやっぱり何かあったのな?」
「あああああ!?って叫んだら傷が!」
明日真は誘導尋問に引っかかっていた。
「無理するな、まあ犯人がわかったら教えろよ。話は俺がつけるから。」
「って先生待って下さ……、行っちゃった。」
病室にメロンを置いてやる気なさげな教師は病室を出て行った。
話をつける、そう言った彼の目は笑ってなんていやしなかった。
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:36:43.32 ID:qGeCcFA00
何という誘導尋問支援
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:37:02.69 ID:TqlYBQQA0
おっと支援だ!
109:2010/01/25(月) 22:38:02.79 ID:5z5bFq700
その頃、恋路はバスに乗っていた。
ガタンゴトンと揺れるバス。
車内は空いているわけでも混んでいるわけでもないいつもの調子。
それが彼女の胸にはなんだか腹立たしかった。
「あれっ!?」
彼女の隣の座席に座る男の子が彼のポケットをまさぐっている。
どうやら定期券か何かを忘れてしまったようだ。
関わるのも面倒臭い。
そう考えた恋路は知らない振りして窓の外を見ていた。
黒猫が一匹窓の外を駆けていく。
「これ、使いなよ。」
「ありがとうお兄ちゃん!」
「――――――――――――!?」
背の高いオールバックの男が子供にバスの回数券を渡している。
いつの間に一人増えた?
それは小さな違和感と驚愕。
彼女の感覚は元々鋭い筈なのだ。
それが自分の隣の座席にいきなり座ったはずの男にも気付かない。
声のする方向を振り返ると彼女はもう一度驚いた。

「笛吹き……!」
恋路が呟くと男は彼女の方を見てにこりと笑う。
男は自らの人差し指を口の前で立てる。
「ここではお静かに。」
学校町を騒がせた連続殺人犯、上田明也は其処にいる。
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:39:03.30 ID:qGeCcFA00
支援!!!
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:39:36.37 ID:TqlYBQQA0
支援
112:2010/01/25(月) 22:41:31.90 ID:5z5bFq700
「一体何の用なの?」
「いやぁ……話は簡単。あいつに伝えて欲しいことがあるんだ。」
上田と恋路の二人はバスを降りてとある河川敷で話していた。
その距離は10m。
電子レンジで猫をチン!の都市伝説の攻撃可能範囲だ。
「用件は簡単。」
恋路の見る上田明也は前回のそれと異なっていた。
右腕だ。
包帯を巻いているのだ。
恐らく腕でも折ったのだろう。
それを見て恋路は油断していた。


ヌルリ


上田明也のコートの中から黒々として大きなそれが出てきたのと恋路が真横に飛び退いたのは同時だった。
BANG!
BANG!BANG!
一瞬で三発、上田明也は引き金を引いた。
恋路の背後のコンクリートの柱が豆腐のように砕け散った。
欠片の一つ一つが風花のように舞う。
上田明也の射撃の腕そのものはたいしたこと無い。
それは恋路に銃弾の軌道を先読みされて回避されたことからも解る。
正確に狙って撃つのが彼の限界なのだ。

しかし今はそれでよかった。
113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:41:55.42 ID:TqlYBQQA0
支援
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:43:49.48 ID:qGeCcFA00
しぇーん
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:44:07.56 ID:TqlYBQQA0
支援
116:2010/01/25(月) 22:44:34.20 ID:5z5bFq700
彼女が飛び退いたのは上田明也から見て右。
彼が包帯をグルグル巻きにしている腕と同じ方向。
「1000w――――――chin!」
10メートル先からのマイクロ波の照射。
普通の人間ならば全身から水分が蒸発していき苦痛と共に死を迎えるだろう。
恋路が腕を彼に向けてマイクロ波を出すか出さぬかの刹那、上田の腕に纏った包帯がハラリとほどけた。


「ッキイャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


夕暮れの河川敷に響く少女の絹を裂くような悲鳴、絶叫。
一羽の鴉が驚いて空に躍り出る。
「今までお前が他人に与えてきた痛みだよ。」
両手から煙をあげて恋路が崩れ落ちる。
包帯が風にながれて空の彼方へ飛んでいく。
上田明也の巻いていた包帯の下には、一面にアルミ箔が張り巡らされていた。
上田明也は電子レンジのマイクロ波を反射したのだ。
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:46:20.90 ID:qGeCcFA00
恋路ぃいいいいいいいいいいいいいい!!!???
支援
118:2010/01/25(月) 22:47:11.93 ID:5z5bFq700
「本当はあの正義の味方の為のとっておきにしたかったんだけど……。
 それが無いと何やっても死ぬからさ。」
「手が……、私の手が……!」
激痛の余り涙の混じった声で震える恋路。
「さて、電子レンジで猫をチン!の元契約者。
 ――――――貴様の罪を数えろ。」
抜きはなった刃物を高く掲げて恋路に近づく。

夕日を受けて真っ赤に染まる上田明也。
「くくくくく………。」
笑う。
「ふふふふふふふ……。」
嗤う
「はは、はっはっはっは!
 アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:48:51.30 ID:TqlYBQQA0
支援
120:2010/01/25(月) 22:50:58.85 ID:5z5bFq700
「死ぬんだなあ!
 やっぱりあっけなく死ぬんだ!
 これはこれはつまらない。
 もうちょっと粘ると思っていたがここまでか?
 ここまでで良いのか?
 いや、良いんだよな。
 知っているぜ、お前のやっていたことくらい。
 そうだともさ、お前みたいな小悪党はしっかり死ぬべきだ。
 俺みたいなどうしようもない殺人鬼の手にかかってゴミのように死ねば良い!
 それがお前にピッタリだよ!
 あの距離で銃弾を撃てばお前はそれを使わざるをえないものな!
 そして包帯を巻いている方を当然、狙うに決まっている!
 お前は本当に馬鹿だよ!
 最高だ、本当に最高だ!」

ブン!
ガキィン!

彼はお気に入りの鉈を恋路に向けて振り下ろした。
しかし鉈は恋路には当たらない。
否、正確には当たったのだ。
だがそれは彼女の命には届かない。
恋路は手を使わないで肘打ちで上田の手首を打ち据え、手を使わないで鉈を弾いたのだ。
その後上田の懐にサッと潜り込んで急所に蹴りを入れる。
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:52:20.84 ID:TqlYBQQA0
支援
122:2010/01/25(月) 22:53:58.71 ID:5z5bFq700
「――――――あぶねえええええええええ!!!」
思わず絶叫する上田。
しかしそんなことに構わず鳩尾、首、鼻、へ肘鉄を刺す。
入れ終わるとなりふり構わず彼女は逃げ出した。

「あ………、っがああああぁあぁ…………。」
ゾンビ映画の類のようにうめく上田、鳩尾をやられて呼吸が出来ないようだ。
鼻血も大量に出ている。
懐の銃に手をかけ、彼女が逃げていく方向に構える。
こんな事態を想定していたのだろう。
恋路は先程彼女が背にしていたコンクリートの橋の影に隠れた。
そのままそこで隠れて逃げ切るつもりだろう。

BANG!BANG!BANG!

上田明也はめったやたらに銃を撃ちまくる。
だが恋路には一発も当てていない。
そう、彼が狙って居たのは………


ガラガラガラガラ!


橋の崩壊。
恋路は橋の下を通ろうとしていたのにこれで逃げ道を塞がれてしまった。
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:53:58.88 ID:qGeCcFA00
伝えてほしいことがあるなら倒しちゃ駄目じゃね?とか思いつつ支援
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:55:44.16 ID:TqlYBQQA0
良かった…股間を蹴られた上田は居なかったんだね…支援
125:2010/01/25(月) 22:56:42.86 ID:5z5bFq700
「反射を動作の主軸に据えるイスラエルの格闘技か?面白い物つかうじゃねえか……。
 それなら恐怖で心折られていたとしても、ひ弱な殺人鬼の一人くらい簡単に圧倒できるわな。
 只のあえかな都市伝説だと思っていたら大間違いかよ。
 まあやっぱり手足からしかチンできないのが解った分収穫だよな。」
「探さなきゃ……、逃げる方向……。」
「無駄だよ。もう俺の策は全部終わっている。」
「マスター、もうそろそろいけます!この距離なら!」
「………え?」
彼女の真後ろにはいつの間にか小さな女の子が立っていた。
「居たんだよ、さっきから橋の上に。
 三次元で考えれば瞬間移動なんてチャチなものじゃないことが解るはずだ。」
「でも気配は……!」
「気配はしなかった?」
「ちがう、ここじゃなくてもっと遠くに……!」
「遠近感のトリックだよ。遠くに大きな物、近くに小さな物があれば距離感が狂うだろう?
 ハーメルンの笛吹きの本体はもっと遠くにいる。
 まぁそいつはお前の真後ろに居たんだけどさ。」
「そんな……。」
「そう言うわけだ。殺しはしないから大人しく捕まっておけ。」
ゆっくりと近づく上田。
逃げようとした恋路は気付く。
足が動かない。
「いやぁ都市伝説は効きが悪くて困るよ。お前に自由はもう無いよ。メル、分身はもう消して良いよ。」
恋路の後ろに立っていた幼女が風に吹かれた煙のようにかき消える。
「さて問おう、都市伝説よ。赤い部屋は好きか?」
「はい。」
彼女にはそう答える以外の行動を選択できなかった。
この瞬間、恋路の姿は学校町から消え去った。
126:2010/01/25(月) 22:59:21.36 ID:5z5bFq700
さて、その頃病院では

「明日君、病院食じゃ味気ないと思ってご飯作ってきたぞ−!」
「なにやってるんですか太宰さん、仕事中でしょう?」
ゴスロリお姉さん(18)が明日真に料理を振る舞っていた。
ちなみに和食である。
「気にするなよ、君と僕との仲だ。」
「まあ感謝はしますけど……。」
「ところで君の契約している都市伝説は?」
「それが来ないんですよね……、電話も繋がらないし。」
「それは気になるねえ。」
「いやまあ喧嘩しているからだと思いますよ。仕方ないですよね。」
「でもそれじゃあ君が困るだろう。ほら。」
ゴスロリお姉さん(18)は真に袋を手渡した。
「着替えだ。使うと良い。」
「あ、ありがとうございます。」
「どうも男の人の趣味は解らないけどそれで我慢してくれ。」

真は袋を枕元に置くと和定食Aセットに箸をつけ……られない。
「はい、あーん。」
「え、えと、それは……。」
「良いから良いから!」
彼の枕元に置かれた菫の花が一輪落ちた。
【電磁人の韻律詩13〜悪い人〜 fin】
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:59:29.35 ID:qGeCcFA00
上田………とうとう、誘拐犯にクラスチェンジしたか
いっそ、これを機会にメルに浮気ばれてしまえ支援!!!
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 22:59:52.76 ID:TqlYBQQA0
支援
129:2010/01/25(月) 23:01:58.47 ID:5z5bFq700
>伝えて欲しいこと
「え?
 伝えたいことなら紙渡せば済むじゃないですか。
 河原に誘う必要ないじゃないですか。」
……だそうです。
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 23:02:06.96 ID:TqlYBQQA0
おっと終わってた乙です!
ロリ誘拐から女性誘拐に進化したか…
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 23:03:54.51 ID:qGeCcFA00
支援と思ったら乙だった!!!
アスマ、もげろ、もげておけ!!
貴様それどころじゃねぇんだぞぉおおおお!!!!!!!!!!!!!

そして、上田は色々と正しい悪役だと思います
なんて言うか…………酷い目にあわせたくてゾクゾクしてくる、読んでると
っつか、想定中の小ネタで盛大に殴り飛ばして星にして御免、上田

>>129
上田てめぇwwwwwwwwwwwww
それだったら手紙でも書いて送っておけwwwwwwwwwwwwww
悪人じゃない美女を痛めつけるのは悪だってじっちゃが言ってた
132:2010/01/25(月) 23:04:38.33 ID:5z5bFq700
クラスチェンジとかゆーなw
あれだよ、悪役やりたくてしゃーなかったんだよ彼。
133:2010/01/25(月) 23:07:35.10 ID:5z5bFq700
まああれだよ。
上田自身は恋路に何もやっていないから彼のルールには反していない。
恋路は丁重に人質として扱うから心配しなくても大丈夫だよ。
134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 23:11:25.10 ID:qGeCcFA00
おやすみー
くそ、今日は保守ネタしか書けんかった……上田に土下座しながら明日には小ネタ完成させよう
上田以外にも、色んな人に迷惑かけるけどね!!!

>>133
>上田自身は恋路に何もやっていないから彼のルールには反していない。
かなりスレスレだと思うんだがwwwwwwwww
135:2010/01/25(月) 23:15:24.69 ID:5z5bFq700
おやすみー
>>134
「スレスレでも破ってなキャ良いんだよ!」
……だそうです。
久しぶりに頭脳戦紛いが書けて満足している。
136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 23:41:54.13 ID:ah+9e6PJO
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 00:11:06.73 ID:r1D9twJ70
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 00:33:39.74 ID:0RVy2yWcO
ほし
139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 01:02:33.21 ID:0RVy2yWcO
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 01:21:46.45 ID:r1D9twJ70
ほっけ
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 02:12:28.12 ID:MDu/TEpT0
うにゃー
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 02:54:38.70 ID:dB1wyW0j0
スターゅ
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 04:37:12.32 ID:UnvR7MijO
ほし
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 05:44:36.32 ID:0RVy2yWcO
145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 06:22:31.09 ID:r1D9twJ70
ho
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 06:47:21.41 ID:ol/Q2cyKQ
干し
147ドクターとミツキさん出会い編(代理):2010/01/26(火) 07:44:20.43 ID:pNJvAeLK0
口裂け女
都市伝説の吹き溜まりとでも言うべきこの学校町には、多数の口裂け女が存在している
バリエーションも地方差により豊富で、それでいて確固たるイメージがあるせいだろう
そして、彼女達の多くは人を襲い傷付け時には死に至らしめ、やがて違う都市伝説と契約した人間と遭遇し――殺される
そんな末路が予想される事を、別段疑問には思わなかった
周りは皆そうなのだから、そういうものだと思っていた
時折、他の都市伝説に襲われている人間に契約を持ち掛け、助けようとする同属もいた
だが名の知れた、つまり攻撃手段も弱点も知れ渡った都市伝説の力など、たかが知れている
そもそも、人間を圧倒する程度の身体能力を持っている程度では、様々な異能を使いこなす他の都市伝説に敵うはずもない
この町では、所詮はやられ役でしかないのだ
だが、それで生き方が変わる事も無い
薬で殺され、叩き潰されても、血を吸い種を残す蚊のように
人間を脅かし、傷付けて、恐怖と伝承を以って種を残すのが存在意義なのだから
だからこそ、彼女はいつもと変わらぬ足取りで歩み
前を歩く男女二人に向かって声を掛ける
「ねえ、そこのお二人さん」
先に振り返ったのは男の方だった
まだ若い大学生ぐらいの年齢の男は、マスクとロングコート姿の彼女の姿を見てすぐに警戒の色を浮かべる
「ドクター、返答をしないで下さい。すぐに倒します」
腰に下げていた布袋から、鎖で繋がれた棒状の武器を取り出す男
その節がすぐさま繋ぎ合わされ、一本の長い棍の形になる
戦い慣れている、そう理解できる反応と表情だった
「私、綺麗?」
諦めたわけではない
自棄になったわけではない
そもそもそんな感情があるわけではない
ただ役目を全うするために
己の存在意義のために
口避け女は、自らの伝説の常套句を告げ
148ドクターとミツキさん出会い編(代理):2010/01/26(火) 07:47:06.09 ID:pNJvAeLK0
返答をする事なく、微塵の容赦も見せずに攻撃を繰り出した男の一撃が
「待ちたまえ」
女の一言で、身体に触れる寸前で止まった
「女性に問われた以上は返答をせねばなるまい」
「何を言ってるんですかドクター、返答をするのは攻撃のスイッチを入れるようなものです。口裂け女の話ぐらい知っているでしょう?」
「知っているからこそ、ボクには常々言ってやりたい事があるのだ」
女はやや不機嫌そうにそう告げると、つかつかと口裂け女に歩み寄る
「綺麗か、そう聞かれればこう答えよう。綺麗だと」
その言葉に、口裂け女は確固たる反応を持ち合わせている
真っ直ぐに見詰めてくる女の視線に、マスクで隠していた頬が耳まで裂けた口を見せ付け
「これでも綺麗だって言うの?」
「勿論だ! 何故ならボクはこの世に存在するありとあらゆる女性を愛しているからだ! むしろあの世だろうが異次元だろうが女性は全て愛し慈しみ守るべき対象であるとここに宣言しよう!」
即答だった
余りにも素早い解答とアレな内容に、口裂け女の方が一瞬呆気に取られていた
だが素顔を見せても綺麗だと答えたのなら、その返答への対応は既に決まっている
「そう……それなら、あなたも同じようにしてあげる!」
口裂け女の手に大振りな鎌と裁ち鋏が現れ、それを女の顔目掛けて振り下ろそうとした、その瞬間
「その傷跡も含めて、それが君の個性だ。全て同じになったらそれは標準であり何の価値も無くなるではないか」
「……は?」
「いやいや標準的な女性もそれはそれで良いものだが、傷跡の一つや二つはアクセントだとボクは思う。それを含めて君という個すべてを愛したいと心の底から思っているのだ」
ぽふ、と音を立てるほどに耳まで裂けた頬を染める口裂け女
「だが……この傷跡が嫌だというのなら、ボクが必ず治そうではないか。都市伝説という存在であるためにアイデンティティを消せないというのなら」
伸ばされた手が背中に回され、優しく、とても優しく抱き締められる
「君を人間にしてでも、必ずその傷跡を消してみせる」
口裂け女の手からは、既に物騒な刃物は消え失せていた
「ボクが君を愛する事にせよ、君を治す事にせよ……それはボクを信じてくれるかどうか、まずはそれからだ」
与えられた役目を果たしていただけの命に、選ぶべき道を示してくれた
外の世界への扉を開いてくれた、そんな気がして
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 07:47:44.65 ID:GC4faGXe0
しえ
150ドクターとミツキさん出会い編(代理):2010/01/26(火) 07:50:12.78 ID:pNJvAeLK0
「よろしく、お願いします」
胸が一杯で、それを言うのが精一杯だった
そして、それを察するように、よくできましたと言わんばかりに頭を撫でられる
「ところで、その傷に触れてみてもいいかね? 痛みなどがあるなら遠慮しておくが」
「え、いいえ、特に痛みとかはな無いです。元からこういう形みたいなものですから」
「ふむ、それでは」
「へ、あ、ええっ!?」
そっと頬に添えられた手
そして傷跡に触れる唇と舌先の感触
「あ、そんなっ、はわっ、わ!?」
上擦った声が漏れる口裂け女
そんな状況を察して、男は視線を逸らし
「適当な頃合に迎えに来るよう、運転手に連絡をしておきます」
呆れたようにその場を立ち去る男と、軽く片手を振って見送る女
「さ……君の全てを見せて欲しい。いいだろう?」
「え、で、でもこんな道端で、あっ、んぅっ!」
口裂け女が都市伝説としての存在が故に、第三者をあまり寄せ付けないようにする人払いの力が自然と漏れ出していた
それが幸運だったのか不運だったのかは、当事者の判断に任せるとして
迎えが現れる頃には既に都市伝説としての存在以前に、一人の女としてべったりと身を寄せている口裂け女の姿がそこにはあったのだった

―――

「彼女にミツキと名前を付けたのは君だったな」
「まあ日本生まれの存在ですし、日本名の方が似合うと思っただけです」
休憩時間に、口裂け女のミツキが淹れたお茶を啜りながら、のんびりと昔語りをするドクター
バイトちゃんもまた、当時を思い出しながら適当に相槌を打つ
151ドクターとミツキさん出会い編(代理):2010/01/26(火) 07:53:06.12 ID:pNJvAeLK0
「ん、私はこの名前は気に入ってるよ。でもさ、遭遇した時は殺る気満々だったのにね」
「そっちだってそうだったじゃないですか」
顔を見合わせて苦笑を浮かべあうミツキとバイトちゃん
「むしろ、メアリーとの初顔合わせの時が一番大事だった気がします」
「あはは、あの頃は若かったわねー」
「まだ一年も経ってませんけどね」
誤魔化すように笑うメアリーと、冷静に突っ込むバイトちゃん
「浮気だの契約者を取られるだの、マジ泣きして大騒ぎだったじゃないですか」
「私も、ドクターに契約者がいるとは思ってなかったものねー」
のんびりと煎餅を齧りながら、思い出し笑いをするミツキ
「結局はドクターに説得されて二人とも落ち着いたみたいですけど。何を言われたんですか」
「それは……ねぇ?」
「ドクターの全力がどれぐらいか、思い知らされたというか」
真っ赤になって視線を逸らす、メアリーとミツキ
「まあ、なんとなく何があったかは想定してましたからその反応も納得ですが」
諦めたように溜息を吐くバイトちゃん
その傍らで、煎餅を食みながらちょこんと座っているエニグマ姉妹
「ドクターは何処に行っても変わらないでありますな」
「女性の為なら命知らず過ぎます」
二人の言葉に、バイトちゃんは軽く溜息を吐く
「ついこないだも、ホルマリンプールやら亡者の血の池やらに飛び込んで、色々無茶をしでかしたばかりですし」
「ははは、それは君のせいだと理解した上での発言かね?」
「俺の為だとか言って無茶されるのが怖いって言ってるんですよ……というか鉄砲玉の護衛役を逆に庇ってどうするんですか。いつかあっさり死にますよ?」
「ボクは死なんよ、この世に女性がいる限りな」
「どこまで本気かわかりません。というかそれ人類が滅亡するまで死なないって事ですか」
「ボクは常に本気だとも。さて、そろそろ午後の診療受付を始めるぞ」
ドクターがぱんぱんと手を叩くと、それぞれがてきぱきと動きお茶の片付けをして診療所のあちこちに散っていく
一時の慌しい平和を楽しむために
いつかまた訪れるトラブルに挑む英気を養うために
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 07:59:46.47 ID:pNJvAeLK0
おつでしたー
説得……肉体言語ですね(違)!!
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 09:21:06.19 ID:eNVrIimP0
ho
154Tさん:2010/01/26(火) 09:28:03.50 ID:pNJvAeLK0

 今日俺たちは≪夢の国の地下カジノ≫に来て夢子ちゃんと話しこんでいた。話の主な内容は前回、クリスマスの時は時間がなくて話せなかったマッドガッサーたちの事で、

「――――で、これがその時に撮った写真だ」
 俺はそう言ってその時に撮った写真を夢子ちゃんに見せた。夢子ちゃんはしきりに感心してくれるから見ていて面白い。そう思っていると、ある写真で夢子ちゃんの動きが止まった。
夢子ちゃんが見ているのは金髪の可愛い感じの女の人の写真だ。
「あれ? この方、以前お会いしたような……?」
 お、さすが、お目が高い(話しのネタ的な意味で)。
「ああ、それチャラい兄ちゃんだよ」
「あ、そうなんです……え?」
 夢子ちゃんが写真を凝視し始めた。
 まあ不思議だろうな。どっからどう見ても女にしか見えないと言うか体的には完全に女だったわけだからな。
「女体化ガスにやられてたんだぜ」
「違和感が……ないんですね」
 一種感動したかのような声で夢子ちゃんが言う。……うん、まあ確かに。女装の時とはまた違ったフィット感がある。
「だよなー、それはそうとその騒動の時に花子さんとかもいてさ、これもなかなかかわいいぜ〜」
 そんなことを言っているとリカちゃんがどこからか本を持って現れた。
「なんだ? その本」
「わかんないの、そこに置いてあったの」
 そう言ってルーレットの台を指さす。
「フランツ・グリルパルツァーですね」
 夢子ちゃんが本の表紙を見て言った。
155Tさん:2010/01/26(火) 09:32:19.34 ID:pNJvAeLK0
 ……グ、グリ?
「……だれ?」
「あまり詳しくは……劇作家などをしていた方です。面白いですよ」
「ふーん……何語で書かれてるんだ?」
 日本語以外の言葉はのーせんきゅーなんだが。
「訳文ですよ」
 夢子ちゃんはおかしそうに笑うと本を開いた。そのページには『接吻』というタイトルと共になにやら格言が添えてあった。
 曰く、

  手なら尊敬 額なら友情
  頬なら厚意 唇なら愛情
  瞼なら憧れ 掌なら懇願
  腕と首は欲望
  それ以外は狂気の沙汰

 どうも口付けする位置によってそういう意味があると言いたいらしい。
「随分とばっさり言うんだな」
「格言ですから」
 本を放りだして言っていると俺の頭の上から本を見下ろしていたリカちゃんがピョンと飛び下りた。
「お姉ちゃん」
「ん?」
 唇に布の感触がした。
「あいじょうなの」
 そう楽しそうに言って夢子ちゃんのところにも飛んでいくリカちゃん。子供は影響受けやすいな〜。と思いながらリカちゃんに二人でお礼を言う。
「ありがとうございます」
「ありがとな」
 そうしながらリカちゃんを拾い上げてその口(にあたると思われるけどそういやリカちゃん喋るときも特に口とか動いてねえよなー)に口をつける。
156Tさん:2010/01/26(火) 09:35:43.74 ID:pNJvAeLK0
リカちゃんは嬉しそうに「んー」と口を合わせると、
「つぎはお姉ちゃんたちなの」
 びしりと手で指してきた。
「あー、じゃあどうしようか?」
 いきなり言われても困るもんなんだぞ、リカちゃんよ。
 そう思いながら少し考え、……閃いた。
「友情のあとに愛情でそのまま欲望になだれ込むか!?」
 ある意味王道かもしれないと思いつつ言ってみると、あはは、と夢子ちゃんに笑われた。夢子ちゃんはゆるーく目を弓なりにして質問してくる。
「本当にそうしたいのは私ですか?」
「へ?」
 どういうことかと一瞬返答に窮しているとさっき俺が放りだした本を持った夢の国のお姫様が笑顔で声をかけてきた。
「王さまー」
 そして、夢子ちゃんの手を掴む。「わ」と驚く夢子ちゃん。
「私たちも」
「王様が大好きでーす」
 どんどん姫さんが集まってくるのを見て俺はおもむろに席を立ち上がる。
「だから」
「みんなで〜」
 姫さんたちは嬉しそうに言う。俺、夢子ちゃんに憐みの視線照射中。
 そして、
「かかれー!」
 お姫さんたちが飛びかかった。
「え? わ? きゃ!?」
 夢子ちゃんが飛びかかっていった姫さんたちの衣装に埋もれる。
157Tさん:2010/01/26(火) 09:39:15.28 ID:pNJvAeLK0
 助けを求めるような声が聞こえたような気がするけどきっと気のせいだ。そう自分に言い聞かせ、俺は騒ぎから離れるように安全圏もといTさんの所へと移動して……って、
「Tさん飲みすぎだろ」
「ひとつ、ふたつ……むっつめなの」
 酒瓶の壁を築きつつあるTさんに呆れつつ言う。
「たまにはいいだろう。あちらは……すごいな」
 グラスを呷りながらTさん。Tさんに付き合って飲んでた小人が荒らされていく地下カジノを見てため息、やけ酒をはじめた。
 カジノ内には「王様待て〜!」とか大声をあげながら楽しげに走り回る音が聞こえる。
「よく慕われてるな」
 Tさんがその光景を眺めつつ言った。
「んー、ま、そうだけどさ」
 なんか着衣の乱れ具合がヤバ気というか、あの貫頭衣っぽい服は大丈夫なのか?
 そんなことを思っていると驚愕の声が聞こえた。

「穿いてない……ですって?」

「……なに?」
 俺は呟くと同時にすくっと立ち上がる。流れる動作でカメラを起動させると俺はTさんに言い放った。
「Tさん、俺、夢の国を探してくる」
「……ほどほどにな」
 頷き、そして俺は戦場へと向かった。
158Tさん:2010/01/26(火) 09:42:25.96 ID:pNJvAeLK0


            ●


 よりいっそう騒がしさを増した地下カジノで青年は小人の愚痴を聞いていた。どうも自分のお話の姫のおてんば具合が目に余るらしい。
「――悪いとはいいませんがせめてもう少し我々の王様を見習っておしとやかになっていただきたいと申しますか」
 くどくど言いながら目の前で繰り広げられている騒ぎを見て小人は心配気な顔をする。
「……それにしてもあれは止めなくてもいいんでしょうか?」
「夢子ちゃんが本当に嫌がっているわけでもなし、好きにさせておけ」
 青年は七本目のボトルにとりかかりながら答える。
「嫌がってませんか?」
 小人の言葉に青年は「大丈夫だ」と断言し、
「しかし、『それ以外は狂気の沙汰』か。確かにそうだな」
 そうしみじみと言う。
「?」
 疑問符を頭上に浮かべる小人。
「フランツ・グリルパルツァーの言葉だ」
 そうして青年の口から語られた格言に、はぁ、と感心したように小人。
「その言葉でいくのなら」
 一人にだけするのなら、と前置きし、
「私は王様か、私の話の姫の手になりましょうか……あなたはどうですか?」
 質問を振られた青年は青年は数瞬考え、
「……さて」
 なにかを答えようとしたその時、緑の衣と光る羽根を持つ妖精が貫頭衣の裾を勢いよく捲り上げた。――青年や小人の真正面の位置で。
159Tさん:2010/01/26(火) 09:46:04.16 ID:pNJvAeLK0
 簡素な衣服はあっさりと胸元まで捲りあげられ、下着も纏わぬ姿を披露した。
 地下カジノの薄暗い照明の下でなだらかな双の丘陵の間に収まっている首からかかった毛玉と石のお守りや、わずかにくびれた腰が臍を中心にしてさらけ出され、それらの下の、真になにも隠すもののない、いっそ幼ささえ感じる――
「夢の国が……っ」
「おっと」
 青年が鼻から血を噴いて倒れた小人を支える間にそれらは共に捲られた綺麗な長髪と同様、すぐに元の位置に収まった衣によって数秒だけの御開帳を閉めた。
 あの夢の国の創始者は下着を用意することはしなかったか。
 そう青年は思い、途中参戦の癖にいつの間にか騒ぎの中心にいる少女が楽しそうに笑っているのを視界に収める。
「いい肴だ」
 言葉は喧騒にかき消され、新たに空き瓶が製造された。


            ●


 そして、
「さて、反省しているか?」
 場を収めたTさんの言葉に俺たちは一同床に正座したまま答えた。
「正直やりすぎた。反省してる」
「してるの」
「でも王様も転移しないからつい……」
 後方で(何故か俺は最前列に座らされてる)誰か姫さんが言った言葉に夢子ちゃんはそこいら中にキスマークを付けていろいろと疲れた、けど緩やかな笑顔で答えた。
「私を好いてくれているんですからこれくらいで拒絶なんてできませんよ」

『う』 

 なんだろう。なにかこう、悪いことを悪いことと認めざるを得ないような、そんな感じの……っ!

『反省してます』

 一同はまた深く深く頭を下げた。
160Tさん:2010/01/26(火) 09:50:17.81 ID:pNJvAeLK0
「ん、よし。では小人や給仕一同は諸事情でそこで伏せっているので片付けは自分たちでやるように」
 誰からも否やがあろうはずもなく、粛々とお掃除が始まった。夢子ちゃんが見かねたように言う。
「あ、夢の国の黒服さんを呼びましょうか?」
「やめておけ、そこまでしたら彼女たちが罪悪感に悶えるぞ。――それと契約者」
「なに? Tさん?」
 俺は一仕事の後の一杯の水を堪能しながら返事をする。と、
「片付けをするのにカメラは邪魔だろう?」
 Tさんはそう言って掌を突き出した。
「あ、俺も片付けるんだ」
「当然だ。散らかしたのだから片付けて来い。そもそも何故騒ぎの中心に居た契約者がここで水飲んでくつろいでるんだ」
 うーん、なんでだろう? ……場の流れ?
「おし、じゃあ片付けてくるかー。――でも」
「どうした?」
 俺はカメラを手にしたままTさんに渡したものかどうか少し迷う。というのも、
「いや、ちょっとオトコノコには見せられない写真が映りこんでるかな〜……なんて」
「撮ったのか……」
 呆れたようにTさん。俺はフッ、と笑ってみせて、
「夢の国を探しに行くって、言っただろ?」
「何故誇らしげなんだ……」
 そんなやり取りをしていると夢子ちゃんが言った。
「別に見てもかまいませんよ?」
「え?」
「減るものでもないですし」
 いやいやいや夢子ちゃんはもっと自分の価値をわからなきゃだめじゃないかと思「ですけど」……え?
「先程の質問の答えをうかがいたいです」
 そう言って俺に顔を向けた。
161Tさん:2010/01/26(火) 09:53:15.47 ID:pNJvAeLK0
「さっきの?」
 はてどれだろうと思いながら訊くと夢子ちゃんは「はい」と答え、
「本当にそうしたいのは私ですか? という質問です」
 ああ、あの格言の時のか。その話を知らないTさんは「?」マークを頭に浮かべてる。とはいっても俺もその質問には、
「えー、んー……特に他にそうしたい奴はいないしな」
 リカちゃんか? いや、リカちゃんは手がちっさ過ぎて腕に当たる部分がないしなー。
「……そうなんですか」
 あ、なんか微妙に呆れたような顔だ。
「じゃあ代わりに脱ぎましょう?」
「なんでそうなるよ!?」
「だってさっき一人で逃げたじゃないですか」
 実は怒ってらっしゃる!?
 俺はダッシュを敢行し――
「……ねぇ、知ってる?」

 ――王様は一人しか居ないけどね、世界中のどこにも居るんだよ?

「あっれええ!?」
 手を掴まれたってかこういう場面で使う能力じゃねえ!
「Tさん!」
 救援を求める。Tさんはふむ、と一つ頷き、
「眼福か」
 言いながらカウンターから勝手に酒を引っ張って来た。
 まだ飲むか! 寺生まれってすげえ! ってか助けろ!
 俺はそう思わずにはいられなかった。
 最終的にやばい所でTさんに止められるまで俺は若干百合の園の住人になりかけたとさ。
 そうそう、夢子ちゃんは俺に友情を感じてくれてるらしいぜ。
162Tさん:2010/01/26(火) 09:56:00.60 ID:pNJvAeLK0
花子さんの人に土下座をしつつ。
俺には、無理でした……八つの短編とかむりだあああああ!!
あとギャグ成分補給!
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 10:27:36.88 ID:pNJvAeLK0
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 11:33:19.86 ID:0RVy2yWcO
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 12:37:44.99 ID:ol/Q2cyKQ
夢子ちゃんに加えて契約者の着せ替えショーとは、Tさんなんて羨ま…ゲフンゲフン
(一部を除いて)みんな楽しそうで何よりだ!
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 13:15:54.13 ID:oXHVbWxq0
ドクターの人とTさん乙!!!
夢の国の地下カジノで大変なことがwwwwwwwwwwwww

良かった!
Dが地下カジノとの契約解除済みで本当に良かった!
解除済みじゃなかったら何が起こったのか察知できてしまうから多分頭痛とか胃痛を覚えたwwwwwwwwwwww
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 13:57:36.41 ID:ol/Q2cyKQ
ほー
168保守ネタ:2010/01/26(火) 14:04:41.83 ID:oXHVbWxq0
 暗い、暗い、暗い部屋
 漆黒の闇をそのまま塗り固めたかのような、その空間に

 ぽっ、ぽっ、ぽっ、と
 淡く、光が現れていく
 薄っぺらな板のようなそれは淡く光り、それぞれにアルファベットが浮かびだす
 板のようなものは全部で26枚あるのだが、その全てに光が灯っている訳ではない
 B、D,Xなど、いくつかは光をともす事なく、ただ、沈黙し続けていた



『……それでは、会議を始めましょうか』

 部屋の中に響き渡る、声
 Aと記された板から、その声は響く

『今回の議題は………』
『ちょっと待ってもらおうか』

 別の板から響く声
 何でしょう?とAがやや不機嫌さを滲ませながら、話の先を促す

『今回の議題に付いては、あらかじめ聞いてはいるが…それよりも、優先すべき議題があるはずだが?』
『何を言っているのじゃ?今回の議題は、それはそれは重要な話に思えるがのぅ?』

 Hと記された板から、どこか幼い、少女のような声が響いた
 どこか、挑発的ですらある声
 その声に、周囲から反発の声があがる

『−−−−とぼけるな!!』
169保守ネタ:2010/01/26(火) 14:10:06.31 ID:oXHVbWxq0
『また、我等の同士に死者が出た!!明らかに内部犯だ!』
『H-No,0、貴様の差し金ではないのか!?』
『……さて、何のことやら?』

 周囲の攻め立てる声に、少女の声は動揺一つしない
 ただ、幼いくせに、どこか老獪さすら含んだ声で反論してくる

『その件については、妾も心を痛めておる。何故に、「組織」内の内部犯を思わせるような暗殺が続いているのか?それもまた、重要な議題ではあるのぅ』
『まだとぼけるか……!』
『まぁ、待て待て』

 Gと記された板から、どこか危機感がそがれる声が響く
 Hを責め立てる声達をいさめるように、声は続いた

『証拠がある訳じゃないだろう?だってのに、彼女を責めるのは筋違いだ』
『証拠など……っ』
『証拠がないのなら』

 ………その、声に
 鋭さが混じった
 一片の優しさも含まぬ、無慈悲な声へと変わる

『その証拠が見付かるまで、彼女を責める事は許さない…・・・お前達とて、容疑者である事に変わりはないんだぞ』
『−−−−−−っ!!』

 疑心暗鬼が渦巻く
 怒りが、憎しみが、HとGに注がれる
 派閥争い
 それは、この「組織」に置いて、命の取り合いにすらなりかねない
 …事実、その派閥争いにて、命を落とした者もいる
170保守ネタ:2010/01/26(火) 14:19:31.42 ID:oXHVbWxq0
 穏健派の筆頭として動いていた、D-No,0の死など、その筆頭だろう
 犯人は強硬派の者だとすでに知れているが、その犯人は今でものうのうと生き延びていて…この会議に、参加している
 D-,No0の死により、台頭を表していった強硬派と過激派だが……今、その立場は逆転しつつあった

 「夢の国」及び「鮫島事件」騒動における、強硬派と過激派の主力黒服であった、純粋たる「組織」の黒服…すなわち、元・人間ではない「組織」の黒服達の激減
 そして、その騒動を機に増え始めた、強硬派と過激派の黒服や契約者、そして上層部メンバーの相次ぐ不審死
 強硬派も過激派も、じわじわと、まるで、虫の手足を一本ずつむしりとられていくかのように力をそがれていっていた
 マッドガッサー達の騒動の後にも、強硬派の有する「始末屋」のメンバーの一人である「モンスの天使」の契約者の担当が、強硬派の黒服から穏健派の黒服に挿げ替えられた
 彼の元・黒服は………既に、死体となって発見されている
 いや、死体として発見されたからこそ、新たな担当をつける必要性が出て…それに、穏健派の黒服が選ばれたのだが

 強硬派も過激派も、疑っている
 これは、穏健派の差し金であると、陰謀であると
 しかし、同時に、互いを疑ってもいる
 強硬派や過激派の中で、内部分裂でも起きているのでは?と、裏切り者が出ているのでは?と
 疑心暗鬼が、広がり続ける

『………話を戻してもよろしいでしょうか?』

 再び、Aが口を開く
 …今度は、誰も反論しなかった


『今回の議題は…「都市伝説の契約書」についてです。我々が管理しているはずのそれが、数枚……いえ、数十枚単位で、紛失しています』
『届けなく、持ち出されていると?』
『もしくは、窃盗か…』
『窃盗?「都市伝説の契約書」は、「組織」本部で保存しているのだぞ?』

 「組織」本部に入り込めるのは、「組織」の黒服だけだ
 …窃盗、となると
171保守ネタ:2010/01/26(火) 14:29:11.57 ID:oXHVbWxq0
 それは、内部犯以外に有り得ない事となってしまう 
 即ち

『裏切り者がいる、そう考えた方が良いと?』
『それは早急でしょう。それこそ、使用申請を忘れた馬鹿がいるだけかもしれません』
『っは。元・人間の黒服を主力に使うから、そんな事になるんだ。純粋たる「組織」の黒服をもっと量産すべきだ』
『…それは危険だな。「夢の国」騒動の、あの時の二の舞になるような事態が起こるとも限らん』

 それぞれが、好き勝手に意見を言い合う
 会議、と言っても、まともな会議にならない事も多いのだ
 強硬派、過激派、穏健派
 派閥争いが加速している最近は、特にそうだ
 こんな事態でも、「組織」がまだ稼動し続けることが可能なのは……たとえ争っていても、その考えの根っこは、それぞれ同じだからに過ぎない


 都市伝説の管理
 それが、「組織」の存在意義

 ただ、問題はその方法、管理を行う上での心構え

 力で抑え付け、都市伝説を管理している自分達は他よりも上の存在であると、他の都市伝説を、他の組織を、何も知らぬ人間達を見下すか?
 都市伝説を管理するという責任を全て背負い、何も知らぬ人間達を、存在する事に戸惑いを覚える都市伝説達に救いの手を差し伸べ…人間と都市伝説の関係を良好に保つか?

 その考え方の違いが対立を生み派閥を生む


『…とにかく、「都市伝説の契約書」の管理を担当している者は、これ以上それが無断に使用される事がないよう、管理を徹底するように』
『使用申請についても、もう少し厳しくしても良いかもしれん…それによって能力を得ても、「組織」に従わぬ者もいるんじゃろ?』
『…考慮に入れておきましょうか』
172保守ネタ:2010/01/26(火) 14:33:59.84 ID:oXHVbWxq0
 −−−−結局、結論はこれ
 犯人を見つけ出す事は、この会議では不可能だ
 現場の黒服達に任せるしかない

 この会議に参加している上層部メンバーは、その力の強大さや周囲に与える影響力などから、積極的に現場に出ることなど、不可能なのだから

『−−我等が存在は、「組織」の為に』
『全ては、我等が主の為に』
『都市伝説ある限り、「組織」有り』
『故に、我等は永遠なり……-----』


 ふっ、と
 光が、全て消えた
 部屋は再び暗闇に包み込まれ、沈黙が部屋を支配する

 何度も繰り返され続けたこの光景
 見届ける者は誰もいない
 「組織」が存在し続ける限り……この光景は、きっと永遠に、何度も繰り返され続けるのだ




fin
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 14:39:08.92 ID:m1ViZN0r0
何故パー速でやらないのか教えてくれないか?
174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 15:11:20.87 ID:oXHVbWxq0
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 15:42:58.23 ID:oXHVbWxq0
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 16:14:19.74 ID:oXHVbWxq0
177色んな人に焼き土下座なネタ:2010/01/26(火) 16:28:04.70 ID:oXHVbWxq0
 何故、こんな事態になってしまったのか?
 それは、誰にもわからない
 陳腐な言葉で片付けるなら、「運命」としか言いようがない出来事で
 だが、巻き込まれた当人達にとっては、それはただただ迷惑でしかなく、天災に巻き込まれたかのような、そんな突発的で迷惑着回り内、そんな出来事だった


 そもそもの始まりは、恐らく、この姉妹が街を出歩いていた事
 そして、姉妹が自分達の服装が恥ずかしいからと、人毛のない路地を歩いていた事

「…何だか、このような変わった服で出歩く事に、慣れてきてしまったであります」
「お姉、悲しい現実を突きつけないでください。ちょっと泣きたくなってきます…」

 どう見てもコスプレです、ありがとうございます、と言う服装の姉妹二人
 まぁ、それは二人に課せられた罰なのだから、仕方ないのだろう
 だが、あえて言うならば…罰として科せられている、その格好が不味かったといえるのだ

「…あの、お姉、視線を感じませんか」
「確かに、感じるであります。ドクターの視線とはまた違うけど…何だか、危険な気配を感じるであります」

 敵意は、感じられない
 だが、用心すべき気配のような気がして、姉妹は周囲を警戒した
 彼女たちに、戦闘能力はない
 万が一、戦闘行為を仕掛けられたならば、何とか逃げ出す方法を見つけなければならない

 ……視線の主は、すぐに見付かった
 それは、前方から歩いてくる、一人の女性
 …彼女達の知るドクターほどではないが、この国の女性としては長身な方ではないだろうか
 すらりとした背に、サイズが大きめの胸元
 露出を躊躇しないタチなのか、大きくスリットの入ったスカートからはちらちらと脚が見え隠れしている
 その癖して、その大きな胸元だけはガッチリと着込んでいるような、不思議な服装
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 16:30:18.37 ID:0RVy2yWcO
支援
179色んな人に焼き土下座なネタ:2010/01/26(火) 16:32:30.20 ID:oXHVbWxq0
 そんな女性が、前方から姉妹に近づいてきている

 …女性は、笑顔だった
 このうえなく、笑顔だった
 至福、とでも言うような表情
 何がそんなに幸せなのか、姉妹たちにはわからない
 …いや、わからなかった、というべきか
 本能は、わからないままでいたいと思っている

「………かぁいい………」
「「へ??」」

 その女性の呟きに対して、間の抜けた声をあげてしまったとしても
 それは、間違っても彼女達の罪ではないのだ

「み、みみみみみみ、巫女さん衣装……かぁいい…………お、おおおおおおおお、お持ちかえりぃいいいいいい!!!!!」
「「みゃあああああああああああ!!!???」

 女性が
 その、恐るべし瞬発力で、一瞬で姉妹に接近した
 ひょい、と
 次の瞬間には……姉妹の体は、持ち上げられた
 両腕にそれぞれ一人ずつ、軽々と女性は二人を持ち上げていた

 持ち上げて、何をするか?
 先程の、女性の叫びを聞けば、それは一目瞭然な訳で

「っちょ!!??ま、待って欲しいであります!?突然何でありますかっ!?」
「ゆ、誘拐犯!?こんな真昼間に!?この国では安全と水はタダ同然ではなかったのですかっ!?」
180色んな人に焼き土下座なネタ:2010/01/26(火) 16:38:22.36 ID:oXHVbWxq0
 突然の出来事に、姉妹はパニック状態である
 むしろ、パニックにならない方が、おかしい
 とまれ、女性は二人を抱えたまま、疾走しているわけで
 ……このままでは、本当にいずこかへと連れ去られてしまう

「こら、エリカ!」

 …そんな姉妹の前に
 翼を生やして、顔の上半分を仮面で覆った救世主が!!

「変な人が増えたでありますーーーーーっ!?」
「誰が変な人だっ!?」

 姉妹の、姉の方のある意味であんまりな、しかし、至極真っ当な突っ込みに、その救世主が盛大に異議の言葉を申し立てる
 ……否定できないのだから、仕方ない
 こんな真昼間に、顔の上半分を、まるでオペラにでも出てくる怪人のようなマスクで覆って目元を隠しているのだから
 変人以外の何物でもないだろう、常識で考えて
 だが、救世主たる彼からしてみれば…この仮面を纏ったこの姿が、自分の姿なのだから仕方ない

「とにかく!エリカ、いい加減誘拐未遂はやめろっ、って、うわっ!?」

 っひゅん!!
 風を切るような音が響く

 すんでのところで、恋人の容赦ない一撃を避けて、救世主…マステマは、冷や汗をかいた

「二人抱えたままでも戦える、ってか。畜生、相変わらず規格外だな、その状態は」
「はぁうぅ………邪魔しちゃだめぇ」

 …マステマの言葉は、彼女が言う所の「かぁいいもの」を捕縛し、至福に浸っている彼女には届かない
181色んな人に焼き土下座なネタ:2010/01/26(火) 16:42:04.85 ID:oXHVbWxq0
 ……わかりきっていた事である、悲しいほどに
 かぁいいものを見つけると、どうにも彼女は理性のタガが外れる
 いや、これでもマシになってきているほうなのだ
 ただ…

(…どうして、都市伝説が絡むと理性が外れやすくなるんだよ、畜生)

 今、彼女に抱えられている二人も、きっと都市伝説か、その契約者なのだろうな、と
 マステマは諦めたようにため息をつきながら…目の前の暴走状態の恋人を、どう止めたらいいものか悩みながら彼女に対峙しているのだった



 少年、明日真は本日のたいくつな授業を終えて、家路についている所だった
 家に帰れば、契約都市伝説であり、恋人共言える恋路が待っている
 だから、早く、早く帰られなければならない

 ならない、の、だが
 そう言う時に限って、面倒ごとに巻き込まれてしまうものなのか
 それとも、近道しようと、路地に入ったのが不味かったのか

 っご、と
 真の足元に、何かが、否、誰かが転がって来た

「っ!?」

 突然のことに、やや警戒したように視線をやれば、そこには青紫の髪をして、背中から黒い翼を生やした…どうか考えても人間ではない、都市伝説らしき男がいて

「ぐ……さっきのは肘か、膝か、どっちなんだ…?」

 と、よくわからない事を口走っていた
182色んな人に焼き土下座なネタ:2010/01/26(火) 16:47:30.49 ID:oXHVbWxq0
 間違いなく、厄介事に巻き込まれる
 そう判断した真が、男が飛んできた、その方向に視線をやると、そこには二人の少女を抱えた女が一人
 どうやら、男は彼女の攻撃によって、倒れこんできたようだ
 ………えぇと
 女に抱えられている少女達の様子を、見るに

「…誘拐未遂?」
「まさしくその通りだ。本人にそんな自覚は一切ないけどな、畜生」

 よろ、と真の言葉に答えながら立ち上がった男
 ばさり、黒い翼がはばたく

「坊主、面倒に巻き込まれたくなかったら、さっさと立ち去れ」
「誰が坊主だ」

 男に反論しつつ、真は目の前の女性を睨む
 誘拐
 そんな悪事、止めなければならない
 そう、正義のヒーローとして
 立ち向かうべきである、真はそう判断したのだ

「はぁぁう………邪魔するの?するの??」

 至福の表情を浮かべている女性
 少女を二人抱えたまま……ありえない瞬発力で、駆けてくる

「っ!!」

 咄嗟に身構える……いや、身構えようとした、真
 だがそれは間に合わなかった
183色んな人に焼き土下座なネタ:2010/01/26(火) 16:51:11.49 ID:oXHVbWxq0
 ぱんっ、と
 乾いた音が響いて……真の体は、殴り飛ばされた

「っく!?」
「うぁっ!?」

 同時に、青紫の髪の男性も殴り飛ばされたようだ
 少女を抱え、両腕が塞がっているはずの状態で、どうやって!?
 理解する事ができず、殴り飛ばされたその体で、何とか受身を取って即座に立ち上がる

「く……やはり、都市伝説契約者か…っ!」
「それは間違ってない。が、彼女は都市伝説の力をまだ使ってないぞ」

 ………何!?
 青紫の髪の男の言葉に、やや衝撃を受ける真
 都市伝説の力を、使ってない?
 どう考えても、人間離れした動きなのに!?

「…その顔、信じてないな?だが、彼女が都市伝説の力を使ってたなら、俺たちはとっくに死んでるぞ」
「……どんな能力なんだか」

 目の前の女性は、先ほどと何も変わっていない状態だ
 息一つ乱さず、二人の少女を抱えたまま、軽々と動いている
 とにかく…あの少女達を、解放しなければ
 真は、この目の前の規格外の女性を相手に、どう対処したらいいものか…都市伝説の力を使ってもいいものか、悩む



 ……そんな彼らを
 やや離れた所から見つめる影が、一つ
184色んな人に焼き土下座なネタ:2010/01/26(火) 16:55:14.67 ID:oXHVbWxq0
「随分と、面白そうな事をやっているじゃないか」

 笛吹 丁
 本名はまた別にあるはずだが、それよりも彼の名前で浸透しているのは……「ハーメルンの笛吹き男」
 限りなく狂っていて、しかし、限りなく正常な殺人鬼

 彼にとって、今、愉快なバトルを繰り広げている一行の中に、見知った顔が二人
 そして、見知った顔ではないが、ナイスロリータが二人
 そして、どうでもいいのが一人
 …見知った顔の一人には、以前、あのナイスロリータ達のようにうっかりと誘拐されかけた経験がある為、できれば顔をあわせたくない相手では、あるのだが
 だが…これは、ある意味チャンスかもしれない

 あの女性の味方につけば、今この瞬間だけでも、味方についたふりをすれば
 うまくすれば、あのナイスロリータ二人を自分のものにできるかもしれない
 もしくは、あの女性から何とかしてナイスロリータを助け出せば、いい具合に自分のものにできるかもしれない

 やってみる価値はあるだろう
 あの女性は、以前、自分をお持ち帰りしようとしてきたのだ
 こちらには攻撃をしてこない可能性もある

 そう考え、彼は女性と、女性と戦っている男と少年の間に割り込んだ

 …決定的な誤算に、気づく事もなく

「まぁ、待て!ちょっと話がおぼわっ!!??」

 −−−−−−−ッガ!!!
 飛んで来たのは、拳か?肘か?膝か?それとも脚か?
 それを判断する事は、この場にいる誰にも不可能であった
 何せ、それはほんの一瞬の出来事で
185色んな人に焼き土下座なネタ:2010/01/26(火) 16:59:08.86 ID:oXHVbWxq0
 盛大に殴り飛ばされたハーメルンの笛吹きは、どこぞに吹き飛ばされて……お空のお星様になってしまったのだから

 ハーメルンの笛吹きにとっての、誤算は
 この女性が、以前彼をお持ち帰りしようとしたのは、彼がネコミミをつけていて、なおかつ語尾に「にゃ」をつけて話したからであって
 別に、ノーマル状態は、彼女にとっての「かぁいい」対象ではなかった
 ただ、それだけの事である


 −−−ありがとう、ハーメルンの笛吹き!
 君の悪事を、俺たちは忘れない!!!


(※) 上田は別に死んでいません。盛大に殴り飛ばされて、多分どっかのビルの屋上でばたんきゅ〜してます



「…今、誰か割り込んできて殴り飛ばされたよな?」
「目の錯覚じゃないか?」

 男の言葉に、そう答える真
 そうだ、目の錯覚に決まっている
 自分が倒すべき、因縁の相手が、一瞬で殴り飛ばされて空の星と化したなど、そんな事があるはずはない
 全ては、目の錯覚なのだ

「……った、助かったでありますか?」
「とりあえず、危機は脱した…と、思いたいんですけどね」

 だが、その目の錯覚と判断した出来事は、チャンスだったのだ
 目の前に現れた障害を排除すべく、彼女は攻撃をしかけ…その、一瞬の隙をついて、少女二人は女性の腕を脱出した
 そう、解放されたのだ
186色んな人に焼き土下座なネタ:2010/01/26(火) 17:02:27.88 ID:oXHVbWxq0
 ならば、今、自分達がすべき事は…この少女達を、無事に逃がす事だろう

「俺達が時間を稼ぐ。その間に、逃げろ」
「い、いいのでありますか?見ず知らずの人に、盾になっていただくわけには…」
「見ず知らずだろうが何だろうが、助けると決めたからには、助ける……さぁ、行くんだ!」

 きっぱりと、そう言い切った真
 これはこれは正義の味方様で、と男が呟いた気がするが、気にしない事にする

「…申し訳ありません。このご恩は、決して忘れません………お姉、逃げましょう!」
「っりょ、了解であります!」

 駆け出す少女達

「はぁうぅ……逃げちゃ駄目ぇ」

 そして、その少女達を追わんと…駆け出そうとする女性
 真も男も、そんな女性を真っ向から迎え撃とうと構える
 …止められるのは、ほんの一瞬かもしれない
 だが、そのほんの一瞬だけでも時間稼ぎが出来れば…少女達は、逃げられる

 次に襲い掛かってくるであろう衝撃を、真達は覚悟して…


「……何か、凄い音が聞こえてきたけど……」


 ……女性の、後方から
 誰かが、この路地に入り込んできた
187色んな人に焼き土下座なネタ:2010/01/26(火) 17:04:37.70 ID:oXHVbWxq0
それは、少女…に、見えた
 女物の制服を着ているのだ、それは少女にしか見えないだろう
 だが、真は理解する
 それは、少女ではなく少年であると

 遠目に見て、何故理解できたか?
 それは、単純な事である
 何せ、その少年は、真のクラスメイトだったのだから

「あ、あれ。真君?それと、初詣の時に顔を合わせたお姉さんとお兄さ……」

 ……くるぅり
 ゆっくり、ゆっくりと 
 女性は、女装少年に向き直った
 びくんっ!!と、かすかに怯えたように、少年は体を跳ねらせる

 …以前、この女性の被害に、女装少年はあっている
 ゆえに、女装少年の本能が警告する…………「今すぐ、全力で逃げ出せ!!!」と

「っじょ、女装少年…はぁう、かぁいい……!」
「んなっ……どうして、またこいつのかぁいいセンサーに反応するような奴が現れるんだ畜生っ!?」

 男が、頭を抱えたくなるようにそう叫ぶが、時既に遅し
 女装少年は、己の契約都市伝説の力を使って、この場を逃げ出そうとした

 だと、言うのに

 ふわり
 女装少年の体が、浮かび上がる
188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 17:05:47.72 ID:0RVy2yWcO
しえ
189色んな人に焼き土下座なネタ:2010/01/26(火) 17:07:02.29 ID:oXHVbWxq0
「お持ち帰りぃいいいいいいいいいい!!!!」
「えぇええええ!!??」

 −−−馬鹿な!?
 既に、走り始めていたのだ
 人間の脚力で、追いつけるはずがない!?
 ありえない事態に、女装少年はパニックを起こしかける

 …女装少年が、知る由もない
 この女性は、一定条件を満たす事によって…その身体能力を、人間の限界を変えて強化させる事ができる事に
 都市伝説の力すら借りず、そんな理不尽な事をやらかすその状態の彼女は…その状態でなれば、かのマ神相手ですら、互角で戦える、その事実を
 まさか、知る由もなかったのだ



「……あぁああ!?やってしまった!?」

 女装少年を抱え、疾走していく恋人の姿に…マステマは、盛大に頭を抱えた
 自分達がふさいでいた道とは、完全に逆方向に駆けていっている
 彼女を妨害するものは、存在しない

 ばさ、と翼をはばたかせ、マステマは飛び上がる
 とにかく、彼女を正気に戻さなければ
 誘拐とか、本当に洒落にならんだろう、色々と!

「…変な事に巻き込んで悪かったな、坊主。それじゃあ!!」
190色んな人に焼き土下座なネタ:2010/01/26(火) 17:09:46.15 ID:oXHVbWxq0
 ばさ!!と
 空へと飛び上がっていくマステマ
 こうなっては、飛ばなければ彼女に追いつけない
 真に軽く謝罪の言葉を告げて、マステマは勢いよく、彼女を追いかけていくのだった



 …何だったのだ、一体
 後には、呆然とした表情の真だけが、ただ一人残されてしまったのだった







終わってしまえばいいんだ
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 17:12:39.20 ID:oXHVbWxq0
………さて
三面鏡の人と笛の人と女装少年の人に、熱した剣山に向かって紐なしバンジー焼き土下座ぁあああああ!!!!!!!!orz
何書いてんだろうな!俺は!!
笛の人にはマジ土下座です
上田、御免
避難所雑談スレで話していた

エニグマ姉妹が街を歩く
→追撃者がお持ち帰りしようとする
→マステマとたまたま近くにいたアスマが止めに入る
→通りかかった上田が茶々をいれる
→隙をついて姉妹が逃げる
→騒ぎに気付いてやってきた女装少年とバッタリ再会

に沿って書こうとしたんだが、無理だった
この後に花子さん契約者も巻き込まれるとか無理だった
己の構想力の限界に絶望した
192以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 17:25:27.16 ID:oXHVbWxq0
夕食終えてもスレが残っていれば幸せだ



俺……余裕があったら、その内、今回お持ち変えられた女装少年がどうなるのかも書くんだ……
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 18:07:09.64 ID:Bo4KR52f0
保守
194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 18:16:35.69 ID:pNJvAeLK0
乙でしたー

>>166
くそう、まだ契約していればDさんが苦しんでくれたのか(歪んだ愛情)

かあいいモードの彼女ははたしてお持ち帰りしたものをどうするのだろうか……妄想が膨らむね!?

D-,No0相当良い人だったんだろうなー……
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 18:44:23.47 ID:eNVrIimP0
1961レス単発:2010/01/26(火) 18:51:59.56 ID:eSvnbUdQ0
「では、こちらにサインをお願いします。」
それは某高層マンションの購入契約書。俺はその内容をろくに読みもせず、名前を記入する。
「しかし、この不況時に現金一括でご購入なさるとは、よほど良い事業をなさってるのでしょうね。」
「なあに、宝くじが当たったようなもんさ。」
「いずれにせよ、こちらとしてはありがたい限りです。では私はこれで失礼します。」

俺以外誰も居なくなった、だだっ広い高層マンションの一室。こみ上げてくる笑いをこらえきれず、部屋に笑い声が響く。
ああ、俺は本当に運がいい。なんたって、何もせずに数十億もの金を手にしたんだからな。
いや、何もせずと言うには語弊があるか。奴の言葉を信じるなら、俺の知らないどこかの誰かのおかげだ。
奴が言うには、俺が受け取った金と引き換えにそいつは死んだらしいが、そんなの俺の知ったこっちゃない。
一度きりの人生だ。他人を蹴落としてでも、自分の人生を素晴らしいものにしなきゃ損ってもんだろう。

一昨日の夜に金を受け取り、昨日は一日中遊び歩いて、今日はよさげなマンションを探して即購入。
我ながら金遣いが荒いと思うが、金はまだまだ有り余ってる。明日はこのマンションに見合う家具と車探しだ。
とりあえず今日は疲れたし腹が減った。ハイヤーを呼んで、適当な高級料理店にでも入るとしよう。
そうと決まれば早速行動だ。昨日買い換えたばかりの携帯で、ハイヤー会社にリダイヤルする。
「ありがとうございます、こちら都市交通です。……もしもし、お客様?…すみません、聞こえてますかー?…もしもーし…」



「…で、その”誰か”は本当に死んだのか?」
スイッチを持った青年が、スーツを着た男に問いかける。
「ええ、間違いなく死亡しました。」
「まあ、俺に一切関係ない人ならいいんだけどさ…。ところであんたは一体何者なんだい?」
「しいて言うなら、これを生きがいにしてる変わり者、でしょうかね。」
「答えになってない気がするが、どうでもいいや。とにかくありがとよ、これで思う存分遊んで暮らせるぜ。」
「それは何よりです。では、良い人生を。」

男はそう言うと青年からスイッチを受け取り、小さな箱に入れて懐に仕舞った。
そして男は歩き出す。再びこのスイッチを押してくれる人の元へと。
197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 18:56:08.48 ID:eSvnbUdQ0
以上、コピペ改変という名の単発
以下、元のコピペ



ある日のこと、一人の男の前に、紳士が現れ言いました。
「このスイッチを押していただければ、あなたに1000万ドル差し上げましょう」
男は怪しみ、尋ねました。
「そのスイッチを押すとどうなるのだ」
紳士は答えます。
「どこか遠くの地で、あなたの知らない誰かが死にます。」
男は考えた末、スイッチを押し、巨額の金を紳士から受け取りました。
「ありがとうございました」
「どこへ行くのだ?」
「どこか遠くの地で、あなたの知らない誰かにスイッチを押してもらうよう頼みます」
198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:25:12.23 ID:9SPQbgIv0
1レスネタの人乙!!!
地味に怖いぜ…ガクブル

>>194
>くそう、まだ契約していればDさんが苦しんでくれたのか(歪んだ愛情)
鬼!鬼!!wwwwwwwwwwwwwwwww
199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:53:46.40 ID:9SPQbgIv0
200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:06:44.67 ID:MDu/TEpT0
乙ですー!
スイッチの話、普通に怖いんだぜ・・・
そして女装少年をどうしてくれるのかとてもwktk
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:12:25.17 ID:9SPQbgIv0
>>200
>そして女装少年をどうしてくれるのかとてもwktk
大丈夫、恥ずかしい思いとかはさせないから!


ホントダヨ?
202女装少年に土下座すべき続き:2010/01/26(火) 20:27:23.14 ID:9SPQbgIv0
 彼女は、可愛い物が好きである
 彼女曰く「かぁいいもの」が好きである
 それは、生物無生物を問わない
 かぁいいものを見つけると、彼女はそれはもう、メロメロになってしまって
 時として、理性のタガが外れてしまう

 …無生物相手ならば、それが店の売り物などであるならば、それを手に入れるべく努力するという真っ当な手段をとってくれるのに
 どうして、都市伝説とか都市伝説契約者相手だと、その辺りの理性のタガが見事に外れてしまうのか

 彼女の弟と彼女の恋人は、そう悩まざるを得なかった


「…少年、本当に申し訳ない」

 深々と頭を下げる、中性的な外見の青年、玄宗 直希
 直希に深々と頭を下げられて、少女…否、女装少年は、困ったような表情を浮かべる

「流石に、家まで誘拐されてくると、ちょっと事情を聞きたいです」
「OK。君が思ったよりも冷静で助かった」

 ほっと息を吐いている直希
 …苦労してるんだなぁ、と女装少年はそんな様子を見てしみじみと考える

 ……と、そうしていると
 部屋の扉が開き、女装少年をお持ち帰りしてしまった女性と、そんな女性を正気に戻そうと悪戦苦闘していた青年…マステマが、よろりと部屋に入ってきた

「……御免なさいっ!また、迷惑かけちゃって」
「っふ……やっと、エリカを正気に戻した、ぞ…」

 女装少年に頭を下げてくるエリカと、割と本気で力尽きそうなマステマ
203女装少年に土下座すべき続き:2010/01/26(火) 20:31:02.65 ID:9SPQbgIv0
 …一体、向こうの部屋で何があったのだろう
 想像しようとした女装少年だが、うまく想像できなかった

 ……そのまま事情を聞いた所によれば
 彼女は、かぁいいものが好き、との事
 そのかぁいいものには、世間一般が認めるかぁいいもの以外にも、ネコミミつけた成人男子やら、女装した男やらも含まれるらしい

 …まぁ、つまり
 女装した少年、しかも、女装がとってもとっても似合っている女装少年などは、見事にどストライクだった訳である
 女装少年にとっては、迷惑極まりない事実だが

「あの…」
「なぁに?」

 正気に戻った女性…エリカは、あの暴走時の様子など嘘のように、穏かに女装少年に対応していた
 お茶等淹れて来て、ケーキまで出してくれて
 …いいのかなぁ、と思いつつ、女装少年はそれらをご馳走になっていた

「その、エリカさんは…お持ち帰りしたものを、どうするん、ですか…?」
「あぁ、そうそう。その事で、あなたに話があるのよ」

 にっこり、微笑むエリカ
 …綺麗な人、なんだけどなぁ、と思う
 あの暴走さえなければ、多分、モテるのではないだろうか

「あなた、私の絵のモデルになってくれない?」
「…………もでる??」

 きょとんとする女装少年
 えぇ、とエリカは微笑みながら続ける
204女装少年に土下座すべき続き:2010/01/26(火) 20:34:17.98 ID:9SPQbgIv0
「あなた、とってもいい素材なの!構想がモリモリ沸いてくるわ」
「…画家、なんですか?」
「姉さんは、業界ではそれなりに知られている画家だよ」

 紅茶のお代わりを持ってきた直希が、女装少年の問いに答えた
 そして、少し呆れたような表情浮かべて、続ける

「姉さん曰く、かぁいいものは素晴らしい素材らしいな。絵画的に」
「そうよ。かぁいいものを見てるとね、絵に残したくなるの」

 キラキラと瞳を輝かせて、エリカは言い切る
 うーん、と、女装少年は考え込んだ
 絵のモデル
 どうやら、エリカは真剣に、女装少年をモデルじ絵を描きたいらしい
 その真剣な様子は、はっきりと伝わってくる

「もちろん、お礼はするわよ?」
「う〜ん…」

 考えて、考え込んで
 …やがて、答える

「夕食の時間までには、帰らないと駄目ですけど…」
「構わないわ。出来れば、絵が描き上がるまで通ってくれるとありがたいけど……」
「いいですよ」

 真剣な思いを、無碍にするのも悪い
 それに…自分がモデルをやっている間は、少なくとも他にお持ち帰り被害者は出ないのではないか
 そう考えて、女装少年はそれを承諾した
 嬉しそうに、嬉しそうに、エリカは満面の笑みを浮かべてくる
205女装少年に土下座すべき続き:2010/01/26(火) 20:38:56.71 ID:9SPQbgIv0
「ありがとっ!それじゃ、おねーさん準備してくるわね!」

 すっく!と立ち上がり、ぱたぱたと部屋に向かう女性
 その後ろ姿を見送り、直希が女装少年に視線を向けてくる

「本当に、良かったのか?」
「はい。あの、エリカさんは、真剣に僕を描きたい、って言ってくれていたみたいだし…」
「……本当、申し訳ないな」

 苦笑し、直希が女装少年に頭を下げる
 ……なお、マステマは結局、力尽きてソファーに寝かされていた
 どうやら、彼女相手に色々と苦労しているようである

 もぐ、とケーキを食べ終えて、女装少年は直希の案内で、エリカのアトリエに向かう
 がちゃり、アトリエの扉が開かれ…わぁ、と女装少年は、小さく感嘆の声をあげた
 いくつものキャンパスが並ぶアトリエ
 完成済みの絵もあれば、途中で描く事をやめてしまったのか、やけに中途半端な絵もある
 完成済みの絵に描かれている人物は、生き生きとした表情をしていて…まるで、今にも絵から飛び出しそうだ

「あ、もうケーキ食べ終わっちゃった?ちょっと待ってね、あともうちょっとだから…」

 ぱたぱたと、何やら準備をしているエリカ
 待っている間…女装少年は、何気なく、周囲の完成済みの絵を見回して
206女装少年に土下座すべき続き:2010/01/26(火) 20:41:57.38 ID:9SPQbgIv0
(………あれ?)

 …その中の、一枚
 その絵に描かれている、仲の良さそうな三人の高校生くらいの少年
 その中の一人に…見覚えが、あるような気がした
 正確に言えば、三人全員に見覚えがある
 一人は、女装少年をこのアトリエまで案内してきた直希によく似ているし
 もう一人は、マッドガッサー騒動の時、ちらりと姿を見たような気がするし
 最後の一人は

(……チャラ男、さん?)

 絵の中心に描かれている、その少年は
 何度か顔を合わせたことのある、「日焼けマシンで人間ステーキ」の契約者…その姿に、酷似していたのだから





続きそうだけど続く予定はない
207以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:48:22.56 ID:9SPQbgIv0
女装少年の人に焼き土下座っ!!orz
追撃者は、絵のモデルを浴していたようです
変な絵じゃなくて、普通に人物画だから安心してモデルになっていってね!!
208以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 21:19:07.83 ID:eSvnbUdQ0
投下乙ー

画のモデルと聞いて、ネコミミやメイド服や服とはいえない布のような何かを着せられた女装少年を想像してしまった
俺はもういろいろと駄目だ
209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 21:19:12.10 ID:9SPQbgIv0
210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 21:26:38.22 ID:9SPQbgIv0
>>208
しまった、その手があったか!!
211以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 21:47:11.03 ID:GC4faGXe0
212こけし専門店丑三つ時 営業日誌:2010/01/26(火) 21:55:03.42 ID:+DgNRx0Y0
「マイドドーモ。マチガッテモカノジョニアゲンジャネーゾ、マァイネーンダローガナ!」

客に対してこんなことを言っているがきっちり商売が成り立っているというのが謎のこけし店、丑三つ時。
まぁその暴言のほとんどが今現在カウンターで店番をしているゼロ発なのだが。

和風な店内、売り物にまったく似合わない洋風でホラーな見た目の喋る人形、ゼロ。
本来なら喋る人形なんて言うものは気味悪がられる一択なのだが…学校町だからだろうか、店のマスコットとして成り立ってしまっている。
今ではゼロ見たさに客が集まる始末である。余談だが、ゼロを模したこけし、「ゼロこけし」の売れ行きが好調である。


「…ヒマニナッタナ。オーイ、マロー!ルービックキューブモッテコイ!」
ゼロの呼びかけに、店の奥からマロと呼ばれた白塗りの貴族風の人形がとことこと歩いてくる。

「黙りゃ!我は恐れ多くも帝より三位の位を賜り、中納言w「ウルセェヨトットトモッテコイッツッテンダローガ」…ショボーン」
…ものすごくしょんぼりした様子で奥へ戻って行く。たとえ三位だろうとゼロにはまったく頭が上がらないご様子。



ガラガラ「…ン、ラッシャイ。サガシモンハフツーノコケシカ?ソレトモアブネーコケシカ?」
客が来たのでいつも通りに応対をする。…が。
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 21:56:25.72 ID:9SPQbgIv0
支援!
214こけし専門店丑三つ時 営業日誌:2010/01/26(火) 21:57:49.43 ID:+DgNRx0Y0
「…お前、人形なのに働いてるのか…?」「?…マァナ、イチオウココニスンデルシ」
「人形でさえ働いてるのに…俺ときたら……羨ましい…嫉妬するぅ…!」「オ、オイキャク?」
…いきなり独り言を言いながら自分の世界に入ってしまった客。


が、次の瞬間。

「人形風情が!爆ぜろ!」




ドギャァン!




客の目の前で、ゼロの体が弾けた。

「人形の分際で仕事があるだと?ざけんじゃねぇ!」ゼロの胴体を蹴り飛ばしながら男は叫ぶ。


「俺が何件の面接受けたと思ってやがる!?俺の電話帳何人登録してると思ってやがる!?
 彼女いない歴何年だと思ってやがる!?メール一カ月に何通届くと思ってやがる!?」バキベキ

正直全く関係ない恨みを込めて砕け散ったゼロを踏み潰す。


「人形ごとき働けて、何故人間の俺が働けない!?人間の俺のほうが働けるはずだ!
 だったらお前みたいなやつとっとといなくなるほうが俺のためだ!」ガチャン!
215こけし専門店丑三つ時 営業日誌:2010/01/26(火) 22:00:28.11 ID:+DgNRx0Y0
「…ジブンカッテナキャクダナ、テメェミテェナヤローガイナクナルホウガ、セケンノタメダトオモウゼ?」

「!?」
慌てて声のするほうに振り向く。


「シンダトオモッタカ?バカジャネーノ?」

…そこには、ゼロがいた。
頭と手足がそれぞれ独立してふわふわと浮いていて。

「て、てめぇ…何故生きてやがる!?」
「ニンギョウダカラナ。カラダノツクリガチゲーンダヨ…ソレヨリ、テメェハエイギョウボウガイダ!」
その言葉と共に、ゼロの手足からジャキンという音と共に刃が姿を現す。


「コノソンガイハ…テメェノ『血』デ、ハラッテモラオウカ…」


「…ちぃ!お前相手じゃ分が悪い!」ダッ!
それだけいうと男はあっという間に店の外へと走り去って行った…

「…ッケッ、コンジョウナシガ。ソンナンダカラシゴトガネーンダヨ!」
216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 22:01:15.44 ID:9SPQbgIv0
しえーん!
217こけし専門店丑三つ時 営業日誌:2010/01/26(火) 22:04:00.47 ID:+DgNRx0Y0
「ゼロ殿〜、ルービックキューブ持ってきたでおじゃ…おじゃー!?ゼロ殿、一体何があったでおじゃるか!?」
その時ちょうど、マロが奥から帰ってきた。

マロの目には、胴体なくふわふわと浮くゼロ、そしてその手足からは刃が出ているという明らかに異常な光景が見えている…
しかしゼロは慣れているかのような口調で問いに答える。
「ナァニ、チョットトラブッチマッタダケダ…ワリィ、ゴシュジンヨンデキテクレ。ドウタイネェト、ウゴキヅレェワ」
マロは、ひどく驚いた様子でコクリと頷くと、足早に店の奥へと駆けていった。



「オレヨリ、ニンゲンノホウガマサッテル?…ンナコトアルカヨ」
誰もいなくなった店内で、ゼロが呟く。



「オレヨリスグレタニンゲンナンザ、イネェンダヨ…ゴシュジンイガイハナ」




棚に並ぶこけしだけが、その言葉を顔色一つ変えず、すまし顔で聞いていた。
218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 22:09:32.81 ID:+DgNRx0Y0
なんだかゼロが書きたかった。そしてマロが書きたかった。
劇中で全く触れられていない客は『リア充爆発しろ』の契約者。多分もう二度と出ない。


『リア充爆発しろ』
非リア充がリア充に恨みを込めて言う言葉が力を持った都市伝説(?)
対象に恨みを込めて「爆ぜろ」と言うとその一部が爆発する。

制約
・友達をつくると契約解除
・彼女を作ると契約解除
・異性から好意を持たれると契約解除

坊池 一人(ボウチ カズト)
友達いない。彼女いない歴=年齢。メールは一か月に三通くらい。そのうち二通は迷惑メール。
電話帳は家族のみという典型的すぎるほどの非リア充。大学卒業後定職を得られずさまよっていたところ訳あって契約。
顔は普通で性格も悪いというわけではない、のだが…なぜこうなった。
219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 22:18:12.84 ID:eSvnbUdQ0
投下乙です

これは…もげろ契約者との運命の出会いフラグ!?
いやそうなると制約に反してしまうか…むぅ
220以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 22:30:43.42 ID:9SPQbgIv0
乙っしたー
なんと言う都市伝説wwwwwwww
221以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 22:51:55.92 ID:+DgNRx0Y0
222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 22:53:59.64 ID:9SPQbgIv0
あ、そうだ、白装束の人ー!
坊池さん、今後登場予定がないなら……使っちゃって大丈夫、でしょうか!?
223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 22:56:25.02 ID:+DgNRx0Y0
>>222
全くもって無問題なのぜ!
煮るなり焼くなり非リア充から脱却させるなり好きにしてやって下せぇ!
224以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 22:58:05.63 ID:9SPQbgIv0
>>223
ひゃっほぅ!!!
では、うっかり囁かれ組として使わせていただきます!!
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 23:14:14.98 ID:9SPQbgIv0
もうそろそろ等価はあるまい…おやすみー
明日もスレが残っていてくれれば幸せだ!
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 23:14:38.64 ID:pNJvAeLK0
ただいま皆さん乙ですほ
227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 23:29:15.76 ID:GC4faGXe0
ねるまえほ
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 23:47:55.59 ID:pNJvAeLK0
229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 23:59:13.27 ID:pNJvAeLK0
230以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 00:26:05.80 ID:qO+70Nf50
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 00:39:47.71 ID:GSCv1YGM0
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 01:21:05.89 ID:tr0Ugo0Y0
233以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 01:48:13.34 ID:tr0Ugo0Y0
234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 02:30:59.67 ID:23yOrARh0
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 03:15:22.82 ID:i/JGy02T0
236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 04:35:49.82 ID:W9dy2KmD0
237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 05:45:10.03 ID:Rrkz9hbsO
保守
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 06:58:31.38 ID:BXQjgAEsQ
ほー
239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 07:29:36.22 ID:i/JGy02T0
にゃー
240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 08:23:54.05 ID:tr0Ugo0Y0
みゃー
241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 09:13:28.71 ID:RIjaE1xE0
みー
242双子のその後の出来事 (代理):2010/01/27(水) 09:59:38.14 ID:wn7FNdbw0
「日本の路上がここまで危険だったとは想定外であります。あの少女の護送を失敗したドクターの怒りも納得であります」
「あくまで特殊な事例な気もしますが、その特殊な事例が存在する以上は確かに納得ですね」
訳のわからない激闘に巻き込まれ命辛々逃げ延びたエニグマ姉妹
「良い人が多い環境で少々気が緩んでいました。今回はたまたま助かったから良いものの、これが敵対組織による拉致などだったら私達はあっさりと捕虜となっていたところです」
「都市伝説組織の抗争では、ジュネーヴ条約は適用外でありますからな」
「かといってここ日本では武装するわけにもいきません。今後の自衛手段をドクターと総統閣下に相談した方がいいですね」
「組織ぐるみで敵対する事は無いよう気を遣ってはいるのだが。通り魔的犯行の対策は確かにしておかねばな」
「そ、総統閣下!」
「何故ここに……と聞くまでもないお姿ですね」
姉妹の元へ現れた『第三帝国』の『総統』は、散歩ではしゃぐ犬が繋がれた大量のリードを手に立っていた
「散歩の途中だったのだが。野良の子達が君達が浚われた現場を目撃し連絡をくれてな」
「そういえば、あちこちで犬が遠吠えをしていましたが……あれは総統閣下への連絡をしていたんですね」
「とはいえフットワークが軽過ぎであります、総統閣下。小官らよりもご自身の安全をお考え下さい」
「私は死なぬし、死ねぬからな。心配は無用だ」
ぱたぱたと尻尾を振る犬達の頭を撫でながら、総統は静かに語る
「先程の誘拐犯とは別に、どうも最近、またきな臭い雰囲気が漂っている。連絡が密に必要になるだろう、くれぐれも自愛したまえ」
「きな臭い、ですか」
エニグマ妹が不安そうに呟く
「軍人として、為政者としての勘だがね。まあ私も戦争を離れて長い、こんな勘は鈍っていてくれると有難いのだが」
「いえ……町内の電波チェックの精度を上げておきます。何かありましたら直ちに報告いたしますので」
「ああ、宜しく頼む。では私は散歩の続きがあるのでな、気をつけて帰りたまえ」
「はっ! 総統閣下もお気をつけて!」
びしりと敬礼して見送る姉妹に、何度も振り返りながら犬の群れを引き連れて去っていく総統
その姿は部下に仕事を任せた組織の長というより、孫の心配をする祖父のようだった
「……日本の総統閣下は、本当に人の良い御方であります」
「一兵卒である私達に対して、情が深過ぎます。いざという時に切り捨てられないと、より大きな被害があるかもしれないというのに」
「大のために小を切り捨てる事がなく、大も小も生かすために力を尽くす。そんなお方だからこそ、小官達は総統閣下に忠誠を尽くしているのでありますよ!」
243双子のその後の出来事 (代理):2010/01/27(水) 10:02:41.22 ID:wn7FNdbw0
ふふんと胸を張る姉に、やや冷めた視線を向ける妹
その思考の奥底深くに、小さな棘が刺さったような僅かな疼きを感じながら

《君が日本で起きている事を我々のエージェントに余さず報告しなければいけない
何故そのような事をしなければいけないか?
そ れ は
我   々 ア   メ
    リ         カ   政
   府  の  陰 謀な
 の だ    か    ら  だ                      》

「……どうしたでありますか?」
姉の声に、妹のぼんやりとしていた意識が引き戻される
「少しぼうっとしてました。変な事に巻き込まれて疲れたのかもしれません」
どこかで何かがあったような気がしたのだが、それを全く思い出す事が出来ない
だがそれぐらいの事なら、大した事ではないのだろう
「それよりも、先程までの騒ぎで余計な時間を費やしてしまった分、夕食の買い物を急がないといけないですよ、お姉」
「はっ!? 急がないとスーパーマーケットが閉まってしまうでありますよ!」
「わわ、引っ張らないで下さいお姉! まったくもう」
244双子のその後の出来事 (代理):2010/01/27(水) 10:05:17.91 ID:wn7FNdbw0
―――

床に広がる大きな水鏡に映る学校町の全景
それを囲むように居並ぶ黒服達は、不気味な色と形に彩られ、黄色い符で封をされた壷をそれぞれ抱えている
「さて、種はいくつ蒔いておいても問題あるまいて」
「不信と不安が募れば自ずと喰らい合うのが人というもの」
「学校町という大きな壷はまだまだ未成熟。小さな壷のうち『組織』はそこそこに喰らい合っているが充分とは言えぬ」
「一つが完成すれば後は事もなし」
「出来上がりし力を以ってすれば、他の組織と喰らわせ合う事など容易いものよ」
「ならば『組織』を混ぜ返すか」
「手を入れて逆に噛み付かれては、喰い合うのを邪魔するというもの」
「我らが主以外にも、『悪魔の囁き』なども跋扈しておる」
「急ぎはせぬ。壷さえ構えておけば、あとはゆるりと成るのを待つばかりよ」
黒服姿の中国人達は、サングラスの下で目を細めくくくと喉を鳴らせて笑う
「待とうではないか、我らが練り上げる毒が熟す時をな」
245双子のその後の出来事 (代理):2010/01/27(水) 10:09:55.08 ID:wn7FNdbw0
伏線をばら撒くのは大好きです
回収? 後で考えます(待てコラ)




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蟲毒か…………っく、反応するネタ書きてぇ……!
静まれ、俺の妄想力…………!!
246以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 10:36:41.01 ID:wn7FNdbw0
ほ                             お昼ご飯終わってもスレが残っていれば幸せだ
247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 11:22:38.50 ID:RIjaE1xE0
248恐怖のサンタ 【サンタの仕事は、いつも正確】:2010/01/27(水) 11:29:07.16 ID:RIjaE1xE0
「む……くっ……」

 とある廃ビルの屋上。
 隣町との境界付近に位置するそのビルの上で、その男は目を覚ました。
 辺りは闇に包まれ、月明かりだけが男を照らし出している。
 男がその地へと落下してきてから、優に8時間が経過していた。
 普通の人間ならば、痛みと寒さですぐにでも目が覚めそうな状況。
 しかし、男の体は少々丈夫だった。良い意味でも、悪い言意味でも。

「全く、酷い目にあった……」

 元より、それは男の邪心と軽率さによって引き起こされた事態であるのだが……彼はそのことに、気づいてすらいない。
 こきこきと何度か首を鳴らして、男は自らの服を探り始めた。
 拳銃が数丁に、良く砥がれたナイフ、そしてなぜかネコミミなど、ごちゃごちゃと色々なものが、ビルの屋上に並べられていく。
 そして、屋上で闇市でも開けそうな量へと、それは達し

「…………ないか」

 並べられたそれらを見て、男――上田明也は小さく、溜息をついた。
 彼が捜していたのは、モバイルPCか、あるいは携帯電話のような小型通信機。
 もしモバイルPCがあれば「赤い部屋」で、もし携帯端末があればメルにでも迎えい来させるつもりだったのだけど――
 上田は、自らの置かれた状況を再認識して

「…………ふぅ」

 また一つ、小さなため息をついた。
 そのまま座った状態で、広げた所持品を一つ一つ、回収しては服へとしまい込んでいく。
249恐怖のサンタ 【サンタの仕事は、いつも正確】:2010/01/27(水) 11:32:34.80 ID:RIjaE1xE0
「さて、と……これからどうするか」

 ――数分後、全ての所持品を元の状態へと戻し、上田は静かに立ち上がった。
 普通なら、このまま一直線に家へと帰るべきなのだろう。
 ……しかし、「それではつまらない」と、上田の心のどこかが叫んでいた。
 もっと正確に言うならば、「俺は何も悪くないのに、何故こんな目にあわされるのか?」という腹立ちからきているのだが……もちろん彼は、それに気づいていない。

 ――――さあ、何をしよう
 上田は心の声にひかれるまま、そう無邪気に、しかし残酷に思考を巡らせ

「…………ん?」
 
 ふと、自分の背後に人の気配を感じた。
 ハーメルンの笛吹きと契約した彼だからこそ感じる、かすかな気配。
 それを明確に認め……上田はすぐに、振り返った。
 いつの間に取り出したのか、その両手には大きな、黒光りする拳銃が一丁ずつ、握られている。

「こんな夜更けに気配を消して人の背後に立つなんて、趣味が悪いとしか思えないな」

 銃口の向けられた先。
 闇に紛れるように、一人の少女が立っていた。
 赤い服を着た、16才くらいの女の子。
 ……残念ながら、上田の趣味からは少し外れている。

「上田明也さんですね?」

 向けられた銃口に全く臆する事無く、少女は質問を返した。
 にこにこと変わらない笑顔は愛嬌があるようにも、また挑発しているようにも見える。
 ――――撃てるものなら、撃ってみろ、と。
250恐怖のサンタ 【サンタの仕事は、いつも正確】:2010/01/27(水) 11:35:37.06 ID:RIjaE1xE0
 それを見て、上田はしかし、眉一つ動かさず

「上田明也? 知らないね。俺は笛吹丁、勤労意欲の塊みたいな私立探偵だ」
「ああ、笛吹丁さんでも構いませんよ、私としては」

 にっこりと、笑みを作って答える少女。
 どこから取り出したのか、その手には一枚の紙が握られていた。
 紙を右手に、少女は淡々とそれを読み上げていく。

「さっさと終わらせちゃいましょう。上田明也。契約都市伝説はハーメルンの笛吹き、村正、赤い部屋。また付喪神も同様に使用可能、と。……で、肝心の今日に至るまでのあなたの振る舞いですが――――」

 ――殺人、虚言、二股などなど。
 今まで上田の行ってきた数々の暴虐(+α)が読み上げられていく。
 それも事細かに、その話の細部に至るまで。

「――――以上の点をもちまして、上田明也に対して、担当者はできる限り最大限、彼を苦しめること、と。……あ、ちなみに偽名に関しては数が多すぎたんで割愛しました」

 少女が話し始めてから約二十分。
 その間、二人の立ち位置は全く変化していなかった。
 上田は銃口を下げた状態で、少女は片手に紙を握ったままの状態で。
 ……そんなどこか硬直したような空気を全く気にすることなく
 少女は楽しそうに、口を開いた。

「ささ、ちゃっちゃとやっちゃいましょー!」

 用紙を持っていない、片方の手。
 そこに、白い袋が出現していた。
251恐怖のサンタ 【サンタの仕事は、いつも正確】:2010/01/27(水) 11:38:56.39 ID:RIjaE1xE0
「上田明也さんには、できる限り苦しんでもらわなきゃいけないんで、私もがんばりますよー!」
「…………もし、いらない、と言ったら?」

 軽く口元を曲げて、上田はどこか楽しそうに、面白そうに笑った。
 そんな上田に、少女は軽く首をかしげて

「じゃあ、逃げるか、私を倒せばいいんじゃないですか?」

 ――――もし出来るのなら、ですけど。
 そう少女は言い……同時に、上田は引き金を引いた。
 バン、と少しこもったような音が二度、屋上から響き渡る。
 発射された弾丸は、正確に少女の赤い服を、そして腹部を貫き

「……ほうほう、面白いじゃないか」

 少女の腹部に一瞬できた傷も、服も、しかしすぐに回復、再生した。
 それを見て、上田はくつくつと笑いを笑いを洩らす。

「もう、終わりですかー?」

 上田がそれ以上撃ってこないのを見て、少女はつまらなそうに、そしてどこか物足りなさそうに眉をひそめ
 その手に持った袋を、開けた。

ボウンッ!

 同時に袋から噴出する、大量の白い煙。
 一瞬にして、それが上田を、そして少女をも、包み込んでいく。
252恐怖のサンタ 【サンタの仕事は、いつも正確】:2010/01/27(水) 11:41:42.43 ID:RIjaE1xE0
「袋から煙とはまた古典的な……吸ったら年でも取るのかい?」

 煙の中、どこか余裕のある顔で、上田は面白そうに笑い続けている。
 ……しかしそれとは対照的に、少女は全く笑っていなかった。
 今の内に笑っておけばいい、と。
 この後何が起こるのかを知っている少女は、ただそうとだけ思った。
 その間も、煙は辺りを満たしていき――――

 ――――そして、数分後。
 屋上から、だんだんと煙が薄れていった。
 徐々に、徐々に、ゆっくりと。
 ……やがて、屋上に立つ人間が視認できるようになり
 そこには、「三人」の人間が立っていた。

 一人は、赤い服を着た少女。
 一人は、黒く長い髪をした、女性。
 そして、もう一人は

「…………にゃ」

 ネコミミを生やした、上田明也。
 そして彼の全身を覆う服は、ゴスロリ。
 そして彼の頭から流れ落ちているのは、なぜか長くなった黒髪。
 ゴスロリに、ネコミミ。
 黒のロングに、ネコミミ。
253恐怖のサンタ 【サンタの仕事は、いつも正確】:2010/01/27(水) 11:44:30.35 ID:RIjaE1xE0
「…………あら」

 突然現れた女性は、上田のその姿に気づき

「………………」
「………………」
「…………かぁいい」
「……っ!?」

 上田の頬を一筋の汗が、伝った。


――――――――上田明也 vs 追撃者―――――――――
        

 攻防戦開始の、合図である。

「かぁいい…………」
「待て! 俺は男だ! そしてさっきお前が殴り飛ばした男だにゃ!」
「ゴスロリにネコミミ…………かぁいい……」
「かぁいくにゃい! 断じて絶対かぁいくないにゃ!」

 上田がそう言った途端、さっと目の前に鏡が差し出された。
 赤い服の少女の持ったそれに映し出されたのは、うっすらと化粧すらした、ネコミミ姿の上田の顔。

「……あら、かぁいい」

 上田は思わず、そう呟いて
 ハッとすぐに、我に返った。
254恐怖のサンタ 【サンタの仕事は、いつも正確】:2010/01/27(水) 11:47:20.43 ID:RIjaE1xE0
「かぁいくにゃい! ぜんっぜん、全く、これっぽちもかぁいくないにゃーっ!?」
「はううぅぅぅうううううううう」
「待て! 待つんだ二や! 話せばわかる。そうだにゃ、ここはじっくり話し合って――――」
「おっ持ちかえりぃぃぃいいいいいいーーーーーーーっ!!」
「ぎにゃぁぁあああああああああああーーーーーっ!?」


―――――――――上田明也 LOSE...―――――――――

 
 抵抗虚しく、追撃者に抱きかかえられる上田明也。
 一瞬で、彼女は闇へと紛れ
 後には少女が一人、残された。
 少女は、追撃者が見えなくなるまで、その後ろ姿を見送り

「今日のお仕事終了ー!!」

 んー、と大きく伸びをした。
 びりびりと、鼻歌を交えながら、用紙を引きちぎる少女。
 その顔は、満面の笑みで彩られていた。

「さーて、やることはやったし、『観察』に戻りましょー!」

 パチン! と。
 少女が指を鳴らした瞬間、少女の足元から煙突が一本、せり上がってくる。
 それはすぐに、少女を覆い――――

「待っててね、愛しの人よーっ!!」

 ――――ハートマークがついていそうな少女の言葉を残して、消えた。
255恐怖のサンタ 【サンタの仕事は、いつも正確】 (代理):2010/01/27(水) 12:40:29.42 ID:QCytazWv0
「ぎぃにゃぁぁぁぁあああああああああああああああーーーーーーっ!!」

 ……その夜、一時間もの間猫の叫びが学校町中に響き渡ったとか、いないとか。
 その真偽は誰にも、分からない。




【終】

256恐怖のサンタ 【サンタの仕事は、いつも正確】 (代理):2010/01/27(水) 12:43:05.66 ID:QCytazWv0
笛の人と花子さんの人に土下座ぁっ!orz
追撃者に殴り飛ばされた後の上田の処置をサンタが引き受けました。

今回登場した赤い服の少女。
12月25日時点でのマゾサンタになります。
まだそっちの話が終わってもいないのに出してしまった俺は早漏。

多分この後上田はきちんと家に帰ったと思うよ!
……多分だけど

257以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 12:44:13.80 ID:BXQjgAEsQ
投下乙です
何されたんだ上田あああああああああ!!!?!?
258恐怖のサンタに土下座な続きっぽいの:2010/01/27(水) 12:55:05.88 ID:QCytazWv0
「………む」

 ふと、パソコンの前に座っていた青年は、顔をあげた
 中性的な顔立ちが、パソコンの灯りに照らされる

「どうなさいました?我等が主(マイ・マスター)……ところで、深夜のネットサーフィンはお控えください。お体に触ります」
「疑問を発するか、小言を言うかどちらかにしてくれ。ザフキエル」

 己の契約都市伝説で呼び出した…いや、今回は勝手に出てきたのだが…存在にそう答え……ふむ、と青年は首をかしげる

「何故だろう。どこかで姉さんが、また人様に迷惑をかけたようなかけなかったような。ただ、相手が何だか悪人っぽいから別にいいかな、という気がしないでもないような」
「相手が悪人ならば、たとえどんな目に合おうとも問題はないのでは?」
「そうだな。姉さんが迷惑をかけた相手が、吐き気をもよおす邪悪である事を祈ろう」

 あっさりそう判断し、青年はパソコンに向き直った
 ザフキエルの小言を聞くわけではないが、そろそろ眠たくなってきた
 いい加減、眠るとしようか…

「………」

 ……ふと
 感じた、気配
 顔をあげ、周囲を見回す

「…ザフキエル」
「はい」

 ザフキエルが、部屋を見回す
 相手が都市伝説ならば…彼の目から、逃れる事など不可能だ
259恐怖のサンタに土下座な続きっぽいの:2010/01/27(水) 12:58:15.98 ID:QCytazWv0
「−−−−っそこです!」

 彼の眼鏡が一瞬、光り、潜むそれを見つけ出した


 す、と
 それが、姿を現す


「こんばんは、愛しひ」
「屠れ、ゼルエル」

 −−−−−−−ッガ

 振り下ろされたのは、斧
 甲冑を身に纏った男が振るった斧は、狙いたがわず、現れた赤い服着た少女に振り下ろされ……




 −−−−− ただ今、スプラッタな描写が行われています。しばらくお待ちください −−−−−




「よし」

 パソコンを終了させ、青年は立ち上がった
 少々、血の匂いが濃い
260恐怖のサンタに土下座な続きっぽいの:2010/01/27(水) 13:03:06.35 ID:QCytazWv0
「すまない。後片付けは頼んだ」
「「了解いたしました。我等が主(マイ・マスター)」」

 天使二人に指示を出し、青年は歯を磨きに洗面所に向かう
 斧で屠られた恐怖のサンタ
 その強い再生力で再生していってはいるが…流石に、気を失っていたようで
 せっせと、二人に片付けられていく

「…それにしても、珍しいですわねー?」
「我等が主が、レディ相手にあんな事するなんてぇ」

 ふわり
 褐色肌の美女二人、青年の左右に現れて口々にそう言ってくる
 二人の言葉に、青年は小さく苦笑した

「そう言わないでくれ。ナァマ、エイシェト・ゼヌニム…僕とて、レディ相手にあぁ言う事は心苦しい」

 だが、と
 困ったように、肩をすくめてくる

「あれとのファーストコンタクトで、あれは男だった。よって一応レディとして認識しない事にしておく」
「そう言うものですのー?」
「そう言うものさ。流石に男性相手に色恋沙汰に落ちるつもりはないよ」
「あらぁ?でも…」

 ふ、と
 エイシェト・ゼヌニムと呼ばれた方の、その豊満な胸を丸出しにした服装の黒い翼を生やした女天使は、首をかしげる

「我等が主、ご友人の………翼さん、でしたっけぇ?彼なら、嫁にもらってもいいと言ってたようなぁ?」
261恐怖のサンタに土下座な続きっぽいの:2010/01/27(水) 13:07:05.83 ID:QCytazWv0
「あぁ、翼は大切な友人だし、家事万能だしな」

 …微妙に、答えがズレている
 と、答えがズレているのを自覚したのか……ふむ、と青年は首をかしげ

「…いや、翼相手なら、僕が嫁か?…だが、女装は翼の方が似合うしな。僕が嫁ポジションになるとしたら、誠相手か?」

 …結論から言って
 この青年、特に同性愛の趣味がある訳ではない
 ただ、どこかズレているのだ
 決定的なまでに、ズレているのだ
 ズレているが為の、この言動
 彼にとって、先ほど名前があがった二人は大切な友人であり、恋愛対象ではないのは確定的な事実
 …これらの発言は、本人達の前で言ったら突っ込みうける事確実なのだが、その自覚すら、この青年にはない

「……まぁ、どちらにせよ。僕はあの恐怖のサンタの思いに答えるつもりは、今のところないという事だ」
「了解しましたわー」
「我等が主に近づきそうになったら、私達も追い払いますわぁ」

 ありがとう、と二人の天使に例を述べて
 「光輝の書」の契約者たる仲介者は、今後の恐怖のサンタ対策と、姉の暴走対策について考え込みつつ、眠る準備を進めていくのだった



終わってしまえ
262以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 13:09:19.45 ID:QCytazWv0
恐怖のサンタの人に焼き土下座っ!!!orz
恐怖のサンタがどっちかの元に向かったっぽいので対応させてみた
カっとなって書いた
正直反省している
263以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 13:40:14.29 ID:QCytazWv0
264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 14:03:20.60 ID:QCytazWv0
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 14:03:24.43 ID:RIjaE1xE0
ほしゅー
266以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 14:30:42.69 ID:RIjaE1xE0
267以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 14:59:11.22 ID:QCytazWv0
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 15:25:01.23 ID:RIjaE1xE0
269以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 15:54:03.04 ID:qO+70Nf50
ho
270以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 16:36:06.51 ID:RIjaE1xE0
271以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 17:04:36.65 ID:qO+70Nf50
272以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 17:56:06.64 ID:qO+70Nf50
ほし
273以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 18:18:20.52 ID:GSCv1YGM0
ほむーらんぼーる
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 18:42:00.60 ID:tr0Ugo0Y0
るーずべると
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 19:04:16.33 ID:0vyJFimL0
とっとりさきゅう
276以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 19:31:26.87 ID:71+DqoHw0
うさぎ
277以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 20:01:24.13 ID:71+DqoHw0
ぎんぎつね
278以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 20:28:02.58 ID:tr0Ugo0Y0
ねらー
279:2010/01/27(水) 20:39:46.71 ID:W9dy2KmD0
【上田明也の探偵倶楽部】

「前回までのあらすじだ。」
シャーロック・ホームズのコスプレに猫耳を装着した男。
名前は上田明也。
殺人鬼兼探偵。
趣味は猫耳(をつけること)。
「んー!んー!」
ここで猿ぐつわをかまされてあばれている少女は恋路。
都市伝説「電子レンジで猫をチン」の少女である。

「邪悪の権化であるこの俺は長年のライバルである正義の味方『明日真』の彼女を誘拐することに成功したのであった。
 これからこいつを人質にして彼をおびき寄せて正々堂々バトルしたいと思います。以上。
 茜さん、そいつの世話頼む。
 俺がやったらなんか悪役っぽくない。
 怪我はさっき渡した薬塗っておいて、腹減ること有るのか知らないけど腹減ったと言ったなら料理でも振る舞ってやってくれ。」 
「はーい。ていうか明也さんは何をやっているんですか?」
「女性を誘拐して人質にしてみた。最低だろ?」
「はい!」
嬉しそうに頷く茜さん。
「そうか、何よりだ。
 それじゃあ上田明也の探偵倶楽部、始まるぜ?」
 
【上田明也の探偵倶楽部8〜優しい人〜】
280:2010/01/27(水) 20:45:42.07 ID:W9dy2KmD0
上田明也は紳士だった。
上田明也は恋路を直接攻撃することなく彼女を生け捕ることに成功していた。
上田明也は生け捕った彼女に何をすると言うこともなく、赤い部屋の中に軟禁していた。
上田明也は恋路の過去を知っていた。
上田明也は恋路を殺しても構わない人間だったと判断した。
上田明也はそれでもなお彼女を殺すという判断は下さなかった。
上田明也は嘘つきだった。
上田明也は嘘つきだが優しい男だ。
上田明也は極悪人だから幸せそうな人間や努力している人間や仲間には誰よりも優しかった。
上田明也は極悪人だからモラルや常識を無視する人間や人の痛みに無知な人間は容赦無く殺した。
「…………プハァ!」
赤い部屋の主、茜さんに猿ぐつわを外される恋路。
「いらっしゃいませお客様。ホテルカリフォルニアへ。
 チェックインチェックアウトはご自由ですが自らの意志で出ることは出来ません。
 酒ならなんでも有るが1969年以降の物は無いんだ。」
恭しくお辞儀をしてみせる上田明也。
圧倒的に勝った、と思っているからこその戯けた振る舞い。
「……ここは赤い部屋?都市伝説が使えない真っ赤な異空間なんてそれしかない。」
「その通り、君には自殺する自由さえ与えられていない。
 治療はしたけど両手は確り動くかい?
 先程は済まなかった、明日君をおびき出すにはあの方法しかなかったんだよ。」
「私を捕まえて真をおびき出すつもり?」
「そのつもりだったが……何か問題があったかい?
 例えば……、二人は喧嘩しているとか。」
「………なんで知っているのよ。」
「おや、本当に喧嘩していたのか。」
「――――――――――――!!!」
「成る程、頭脳戦はあまり得手ではないみたいだね。」
上田明也は楽しそうに笑った。
281以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 20:47:18.92 ID:71+DqoHw0
上田最低だ!!(褒め言葉)支援
282:2010/01/27(水) 20:49:59.32 ID:W9dy2KmD0
ドス!
「おぶう!!」
上田明也は思いきり殴り飛ばされた。
赤い部屋の壁に激突する上田。
「騙されて悪かったわね。自殺する自由が無くても殺人する自由なら有るかしら?」
頬がピクピクしている恋路。
割と腹が立ったらしい。
「ちょ、痛い痛い!茜さん止めてよこいつを!殺す気だよ?絶対殺す気!」
むくりと起き上がって腹をさする上田。
「だって………、面白そうだったんですもの。」
「あれ?殺す気でやったのに?」
「ほら、こんなこと言ってるよ茜さん!」
「良いじゃないですか、生きているんですから。」
ほっこり笑う茜さん。
上田との割と落ち着いた日々のおかげで性格もすっかり円くなったらしい。
「生きているんですから(ハート)じゃないよおおおおおおお!!!」
「だって生きていることって素敵な奇跡だと思いません?」
「だからって駄目!契約者の危機だよ!ちゃんと助けろよ!」
上田はちょっぴり怒ったようだ。
彼を知る人間からは考えられない表情だろう。

「お、怒らないでよ!」
怒った上田に対して脅える茜さん。
「怒ってねえよ。」
「怒ってるでしょ。」
283以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 20:50:05.36 ID:i/JGy02T0
む、これは・・・紫煙!
284以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 20:52:50.71 ID:71+DqoHw0
上田が酷い目に合うネタストックが一つ。上田に酷い事言ってる小ネタストックがひとつ
こんな俺ですが上田を愛しています。だが上田もげろ支援
285:2010/01/27(水) 20:55:33.67 ID:W9dy2KmD0
「怒ってねえってば。」
「ほら、怒っているじゃない!
 やっぱりそうだったんだ、どうせそんな事だろうと思っていた。
 私なんてその場限りの適当な言葉で言いくるめられた安い都市伝説だったんですね。
 なら半端に優しさなんか見せないでよ!
 ひどい!ひどいわ!怒ってるんでしょう!殴ってよ殴ればいいじゃない!
 暴力でも振るってくれた方がいっそ楽よ!
 どうせ私は誰にも必要とされてないんだうわ〜ん!」
性格は円くなったようだがガラスのハートな所は変わらないらしい。
「あーあー、解った。俺が悪かった。
 だから泣くなよ、ほらな?
 今度お前の好きな物買ってきてあげるから。
 あ、ディズニーグッズが何か欲しいって言っていたよな?
 プーさん?プーさんでも買ってくればいいのかな?
 俺にはお前が必要なんだよ、お前無しでは何も出来ないんだ。
 俺もお前が一緒に居て楽しめる人間で居たいからさ、もう少し手伝ってくれよ?」
「本当?」
「ああ、勿論本当だ。」
「あのさー、ハーメルンの笛吹き?」
「あー、ちょっと待ってくれ恋路ちゃん。」
「ちゃんはつけなくて良い。」
「じゃあ恋路、今ちょっと茜さんに落ち着いて貰っているんだ。
 暇だったらそこらへんに紅茶とか有るから適当に飲んでおいてくれ。
 そうだ、Wi●とか●s3とかも有るからテレビに繋いで遊ぶなりしていてくれ。
 とりあえず王子様が殴り込みに来てくれるまで待機して頂く為に部屋用意してるから待っててくれない?」
恋路は完全に戦闘意欲を失っていた。
毒かもしれないので紅茶には手をつけずにゲームだけそこらへんから運び出すことにしたようだ。
286:2010/01/27(水) 20:58:48.78 ID:W9dy2KmD0
【お前ら上田に優しくしてやれよ……、悪人なんだぜ?弱いんだぜ?】
「私、何やっているんだろう……。」
恋路は鉄拳6のアーケードモードのタイムアタックを開始していた。
彼女のスティーブは面白いくらいにコンボを決めまくっている。
とてもじゃないが彼女が人質とは思えなかった。

コン、コン、コン、コン
「どうぞ。」
「すまん、少しバタバタした。」
上田明也が顔にひっかき傷をつけて部屋に入ってきた。
おそらく茜さんにひっかかれたのだろう。
「……ずいぶんやられたみたいだね。」
「いい女だぜ?少しハードなプレイを好んでいらっしゃるが。」
「はいはい、そうですか。」
「明日真が来るまではのんびり過ごしてくれ。
 俺はお前に恨みはない。むしろ恋人と幸せに日々を生きている事に対してほほえましく思っている位だ。」
「恨みはない?恨みがない人間に向けて良く殺すなんて言えたわね。冗談に聞こえなかった。」
「いやだってそりゃあ、殺すのも悪くないって思ってたから。」
「……なにそれ。」
「いや、人質にしてもぶっ殺しても真君は来るだろう?
 ただ愛し合う二人を死で分かつのはとても………無粋だ。」
「それだけの理由でわざわざ生け捕りにしたの?」
「何者にも優先するだろう?」
「粋なことがそんなに大切?」
「粋な悪役で居ることが大切なんだ。
 例え億千の無辜の市民を戮そうとも無粋にだけはなっちゃいけない。」
「理解できない。」
恋路のスティーブが簡単にラスボスを倒してゲーム終了。
とてつもなく早く終わった。
287以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 21:00:02.31 ID:71+DqoHw0
あ、間違った、酷い目にあうネタじゃなくて酷い目にあいそうな予感がするネタだった支援
288:2010/01/27(水) 21:01:26.64 ID:W9dy2KmD0
「うまいもんだな。」
「慣れているから。」
「前から思うんだけどお前さ、人間だった頃の記憶、有るだろ?」
「………その問は無粋じゃないの?」
「嫌ならば今の話は忘れても良い。」
「あんた正直さ、粋だの無粋だのすらどうでも良いんでしょう?」
「粋な人間はつまらないことに拘らない。」
「もう、……どっちでも良いや。」
恋路は今度はプラクティスモードを始めた。
主人公キャラで基礎的なコンボから一つ一つ丁寧に決める。
「別に私は後ろめたいことをしたとは思っていないよ。やらなきゃやられてた。」
「俺のがもっと後ろめたい事しているから一々言う気は無いよ。」
「悪役の悪事自慢に付き合う気はない。」
「残念だ。じゃあ俺はすこし仕事に行ってくる。
 これでも真面目な社会人なんだ。」
ドアを開けると上田明也はどこかに行ってしまった。
「これから暇だなあ……。」
恋路はベッドに寝転がって目を閉じた。
289以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 21:04:23.08 ID:71+DqoHw0
赤ねさん…あなたには、上田をナイスボートする権限があると思います支援
290:2010/01/27(水) 21:04:46.36 ID:W9dy2KmD0
「……さーん。…じさーん。恋路さーん?」
頬をペチペチ叩く音が響く。
茜さんが恋路のベッドの隣に立っていた。
「……何?」
「ビーフストロガノフ作ったんだけど食べますか?」
「要らないです。」
「むぅ〜……。」
むくれる茜さん、可愛い。
「人質なんだから殺すわけ無いじゃないですか。」
「信じられない。一応極悪殺人鬼の根城だよ?」
「あの人悪い人だけど私に優しいですよ?」
「貴方に優しいことと私を殺すかもしれないことは別でしょう。」
「そうかなあ?あの人貴方にも優しいよ?」
「優しいことと殺すことは別でしょう?」
「そっか。」
「そうだよ。」
ベッドからムクリと起き上がると恋路は時計を見る。
確かに丁度夕飯時だった。
「名前なんだったっけ?」
「茜です、あの人がつけてくれました。」
「アキナリ……、だっけ?」
「はい、明也さんです。江戸時代の作家の名前と読みが一緒だと笑っていました。」
「じゃあ茜、貴方は普段どうやって過ごしているの?」
「基本NEETです。」
「ずばり言うね……。」
「偶にアキナリさんが料理を作ったりお話に来てくれたりします。」
「あいつって料理作るの?」
「すごく上手です。」
「嘘………。意外だわ。そういえば君たちどうやって出会ったの?」
291以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 21:06:57.56 ID:tr0Ugo0Y0
茜さん料理できるのか……支援
292:2010/01/27(水) 21:11:36.71 ID:W9dy2KmD0
【※恐らく上田の関係者全員が上田をぶっ●す権利があります】
茜さんは目を丸くして少し驚いたような顔をした後、嬉しそうに語り始めた。
「私が彼を襲おうとしたら返り討ちにされて……。」
「ああ、ハーメルンの笛吹きの能力は強力だものね。」
「いえ、彼は都市伝説を使わずに私を……。」
茜さんの頬が赤く染まる。
赤い部屋の中の為にそれも解りづらいのだが。
「………やっぱり無茶苦茶だ。」
どうやら恋路は普通に倒したのだと思ったらしい。
「この前はウサギの尻尾のキーホルダーをくれました。
 彼も同じ物を持っているんです。」
「へえ……。」
「ほら、都市伝説の性質上、私って人とあんまり交流できないじゃないですか?
 でも彼のおかげで今はそこそこ楽しいんですよ。
 誰かに必要とされている、っていうか……。」
「茜には彼が必要なの?」
「はい。」
また、ほっこり笑う。
赤い部屋の彼女は間違いなく幸せなのだろう。
恋路は確信していた。
自分は明日真に必要なのだろうか?
恋路は急に考えさせられた。


「良い香りだなあ。」
ドアの向こうから声が響く。
上田明也が帰ってきたようだ。
「あ、帰って来たぁ!」
嬉しそうに声の方向へ走る茜さん。
293以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 21:13:52.79 ID:71+DqoHw0
>>292
●の部分に入るのは「殺」か「犯」か支援
294:2010/01/27(水) 21:14:22.40 ID:W9dy2KmD0
「とりあえず明日に宣戦布告してきたから、明日辺りにでもバトるから今日は早く寝な。
 俺倒れるまで出てくるのはやめてね?
 ほら、人質いきなり帰したらテンション下がるだろう?」
「どうせ私に拒否権は無いんだろう?」
「勿論。真君やる気満々だったぞー。」
悪戯を終えた悪ガキのように笑う上田。
「ふふっ、やれやれだ。とりあえず夕飯でも食べるのかい。」
恋路はため息をつく。
だが、嫌そうな顔はしていない。
真が自分の為に必死で戦いに来る。
そう思うとなぜだか少し、否、すごく嬉しいのだ。
明日真は彼女を必要としている。
「お、喰う気になってくれたか。」
「アキナリさん、今日はビーフストロガノフです。」
「俺大好きなんだよ〜。」
余程好きなのだろう、喜びを抑えきれなず声ににじみ出ている。

数分後。
「思うにね、誰もが誰かを必要としているんだ。」
「は?」
「へ?」
茜さんと恋路が同時に首をかしげる。
テーブルの上には美味しそうな料理が並ぶ。
三人は同じテーブルを囲んでいた。
295:2010/01/27(水) 21:19:34.78 ID:W9dy2KmD0
「世界には様々な化け物が居る。
 それらは全て超人的な身体能力にスーパーコンピュータの如き頭脳を持ち、
 何時だってそれを使って命のギリギリを見定めるような戦いを続ける。
 それだけならまだマシだ。
 俺達の想像も付かないような特殊能力を操る奴だっている。
 でもね、俺にはそいつらが恐ろしく見えない。
 むしろ悲しく見えるんだよ。
 親にしかられ野辺をさまよう哀れな童に見える。
 だって彼ら寂しそうなんだもの。
 都市伝説も人間も互いが互いを必要としているんだ。
 そうじゃなきゃ人間は都市伝説を語らない。
 だからどんな人間にも都市伝説にもそいつと相性の合うパートナーが居るし、
 逆に言えばそれが見つかっていない人間も都市伝説も恐るるに足らない。」

カチャリ、と食器を置いて上田が話始める。

「………まぁ、なんだ。気にせず食べてくれ。」
二人はポカーンとして上田の方を見る。

「変な人。」
茜さんはまた、ほっこり笑った。
「………説教臭い悪人だ。」
「善人も悪人もこの世界に生きる人間として寄り正しくあるべきだと俺は思っている。
 だから説教でもしなくてはやっていられないんだ。
 ……さっさと仲直りして俺に倒されに来い。」
【上田明也の探偵倶楽部8〜優しい人〜 fin】
296以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 21:27:32.28 ID:71+DqoHw0
説教臭い悪役乙ー!



んでわ、代理投下を開始いたしますだぜ
297はないちもんめ (代理):2010/01/27(水) 21:31:31.60 ID:71+DqoHw0
「・・・・・・は?」
「いや・・・その・・・スマン!」
黒服は呆然とし、翼は黒服に土下座してる
中々にカオスな状況だけど仕方ないだろう
「・・・・・・」
「・・・・・・」
私が二人居るんだから
298はないちもんめ (代理):2010/01/27(水) 21:37:37.64 ID:71+DqoHw0
事の起こりは冬休みの最終日
翼と一緒に参加した都市伝説退治のバイト
内容はとある小学校の『写った人を引きずりこむ鏡』
本当はもっと別の都市伝説かもしれない
けど、今現在の情報じゃそれ位しかわからない
そんな都市伝説の鏡を壊すのが私達の仕事だった

「でも、鏡って事は非生物よね?普通に割って終りじゃないの?」
「多分それでいい筈だ・・・ただ、不気味だから誰もやりたがらないってだけだろ」

成る程ね
まぁ、そのお陰で私達に仕事が回ってくるんだからありがたい事なのかもしれない

「気になるとすれば・・・『鏡を処分して来る』って言い残して出て行った教員が戻ってきた時には鏡の事を忘れてたって所か」
「・・・記憶を操作する?」
「かもしれねぇな」

そんな事を話しながら怪談を登ったその先に
あった

299笛(代理):2010/01/27(水) 21:39:01.47 ID:odOxRR2r0
【どーみてもサルです、本当に(ry】
「いやはや、恋路君は意外と人質生活に馴染んでくれて助かったよ。
 いやまあ俺が誘拐してからずっと暗示をかけ続けているからなんだけどさ。
 あの女は正義の味方とかそういうのよりはこっちよりの人間、もとい都市伝説なんだろうな。
 まあだからこそ……明日真、あいつは気に入らない。
 彼女に自分を曲げさせてまで正義の味方か?
 人は知らない他人に好き勝手悪意をぶつけるから大切な人を大切にできるんだ。
 人間の心は一つに偏りなんてできない。
 何が無償の正義の味方だ。
 そんなことをしていたら傍に居る人間を絶対に傷つけるに違いない。
 そんな人でなしな真似俺は出来ないしたくない。
 好き勝手に生きて好き勝手に人を好きになればいいじゃないか。
 正義の味方なんて俺は認めない。
 人間は自分の味方以外の何者にもなれない。
 さて、来週の上田明也の探偵倶楽部はー!
 上田明也、二股がばれてぶっ殺される。
 上田明也、ラスボスになる。
 上田明也、猫耳状態で年上お姉様に(ピュー)の三本、ってなんじゃこりゃあああああ!?」
「アキナリさんどこ〜!もしや、捨てられた……?
 ウワーーーーーーン!!」
「うわ、茜さんが泣き出したのでなだめに行って来ますそれでは。」
チャンチャンってか。
【上田明也の探偵倶楽部 続】
300はないちもんめ (代理):2010/01/27(水) 21:41:18.29 ID:71+DqoHw0
「見た感じは普通の鏡だよなぁ?」
「でも、確かに都市伝説の気配はするわ」

今のところは何の変哲も無いただの鏡
だけど、其処からする気配は確かに都市伝説の物で・・・
鏡に映っている私の顔が
ニヤリ
と笑った

「っ翼!!」
「な!?」

鏡に映る私が腕を伸ばし
鏡から生えた腕に腕を掴まれ引っ張られ引きずり込まれそうになった所で
ガシィッ と翼が私のもう片方の腕を掴んだ

301以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 21:43:04.53 ID:odOxRR2r0
割り込んでしまったorz支援
302はないちもんめ (代理):2010/01/27(水) 21:44:10.40 ID:71+DqoHw0
「翼!!」
「ちょっ!?踏ん張れ!!」

今、私は右腕を鏡に物凄い力で引っ張られ
左腕を翼に全力で引っ張られている状態で
下手するとそろそろ足が地から浮きそうな訳で
そんな状態の私に踏ん張れは幾ら何でも無茶振りってそんな事言ってる場合じゃない!?
このまま引きずり込まれる訳には・・・あ

「・・・翼」
「んだよ!?」
「先に謝っとく・・・買って嬉しいはないちもんめ!!」
「なぁ!?」

人間の身体にはリミッターが付いていると言う
そのリミッターを外した状態が俗に言う火事場のクソ力と言う奴らしく
対象の肉体を操る事に関してはかなり強力な部類に入る『はないちもんめ』の能力なら
翼のリミッターを外す位は造作も無い
ただ、絶対明日辺りに筋肉痛で苦しむだろうけど・・・翼が
何はともあれ
火事場のクソ力を発揮した翼が、物凄い勢いで私を引っ張り
スポンッと言う音と共に
私達は後ろ向きに倒れた

303以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 21:45:24.59 ID:odOxRR2r0
しえんた
304以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 21:48:28.65 ID:W9dy2KmD0
紫煙
305以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 21:50:31.82 ID:odOxRR2r0
しえーん
306はないちもんめ (代理):2010/01/27(水) 21:50:51.03 ID:71+DqoHw0
「ったぁ・・・大丈夫か?」
「何とかね・・・」
とりあえず翼の上から退く
「成る程、確かにこの鏡さっさと処分した方が良いな・・・」
「確かに・・・あんな簡単に引きずり込めるなら、何で行方不明者が出て無いんだろう?」
「さぁな・・・ん?」
怪訝そうな翼の声
何かあった?
「なぁ・・・その右腕の・・・何だ?」
「え?」
言われて気付く
そう言えばまだ、右腕を掴まれてる様な・・・「あいたたたた・・・」ん?
右側を向くと
「あれ・・・?」
「は・・・?」
私がもう一人居た
「「はぁっ!?」」

307はないちもんめ (代理):2010/01/27(水) 21:54:09.03 ID:71+DqoHw0
「って事があってな」
「スイマセン、全然状況が判りません」
黒服が頭を抱えながら言う
そりゃそうだ、私だって全然判らないんだから
「つまり簡単に言うとね、あの鏡は『引き摺り込んだ相手に成り代わる鏡』だったのよ
だから犠牲者が出ても鏡の中から偽者が出てくるから誰も行方不明者が出てなかったのよ
で、今回も本当ならそこの『私』を引き摺りこんで私が成り代わる筈だったんだけど、引きずり込む所か逆に引っ張り出されちゃったからこんな愉快な事になったって訳」
得意顔で説明する私の偽者・・・何か腹立つわね
「取り合えず鏡本体は割って処分したんだけどな・・・コイツはその・・・望と同じ顔してるし退治するのは躊躇われたと言うか何と言うか・・・」
「私としては即刻処分して欲しいところだけどね」
「酷いわね?一応私は貴女なのよ?」
「同じ顔で同じ声のが目の前にいるのが凄い気持ち悪い」
不気味ってレベルじゃないわ
「黒服ぅ!!本体が苛める〜!!」
がしっと半泣きで黒服に抱きつく偽者
何処からかピシッと音が鳴った
何の音かしらね?
翼、何でそんな脅えた顔してるの?

308以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 21:54:30.95 ID:odOxRR2r0
支援
309以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 21:59:05.85 ID:W9dy2KmD0
紫煙
310以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:01:22.34 ID:i/JGy02T0
私怨
311以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:02:15.07 ID:tr0Ugo0Y0
笛の人乙です支援
312はないちもんめ (代理):2010/01/27(水) 22:02:18.56 ID:71+DqoHw0
「いや・・・その・・・処分は流石に可哀相ですし、少し様子を見「何?黒服は偽者の味方なの?」いえ、味方とかでは無く」
黒服が珍しくあたふたしてる・・・本当に珍しい
「黒服って優しいよね
私、黒服のそういう所好きよ?」
黒服にしがみ付いたままそんな事をのたまう偽者に
次はブチッと音が鳴った
「黒服・・・取り合えずその子から離れましょうか「え?いや、その」良いから「・・・はい」

313はないちもんめ (代理):2010/01/27(水) 22:06:44.45 ID:71+DqoHw0
私から離れた黒服詰め寄る本体を他所に私は翼の隣に移動していた
「お前・・・」
「流石は私の本体、アノ位でヤキモチなんて可愛いわよねぇ?」
「わざとか、わざとなのか」
「当然でしょう?私はあの子と違って年上趣味は無いの、どちらかと言うと年下・・・ショタ派よ」
「聞いて無ぇよ・・・結局お前は何なんだ?」
「写った相手に取って代わる鏡の都市伝説が、あの子を写した事で出来上がった『写った時点での望のコピー』よ」
「・・・わかんねぇ」
「翼の頭には少し難しいかもね」
良くわからないと言った風な顔をする翼を小馬鹿にする様に言ってやると、翼は絶句した
どういう因果か、折角鏡の外に出られたのだ
精々、現世を楽しませてもらうとしよう


続く?


314はないちもんめ (代理):2010/01/27(水) 22:09:47.29 ID:71+DqoHw0
御神楽 詩織
鏡から出て来たもう一人の望
顔も声も同じなのに名前まで同じだとややこしいので望の本名である詩織を名乗っている
望より少し素直で少し意地が悪い
身体能力も望と全く同じ
『はないちもんめ』の支配権行使だけ使える
よって、望の様に金を渡した相手を新たに支配下に置く事はできないが、望が支配下に置いた相手なら操れる
後は『鏡を使った移動』
あらゆる鏡に出入りできる
都市伝説なので基本的に成長しないが、望が鏡に映る事で更新される
望とは利き腕が逆

315以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:16:44.15 ID:71+DqoHw0
代理投下完了
そして、笛の人マジスンマセンっしたぁ!!!orz


続けて、ぺふぺふ自分のネタを投下していくんだぜー
サルさんが舞い降りませんように!!
316以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:18:44.48 ID:odOxRR2r0
代理直後の投下は高確率でさるってしまうと思うが支援だ
317あまぁいお菓子で5のお題:2010/01/27(水) 22:20:33.77 ID:71+DqoHw0
1 チョコレート



 そろそろ、バレンタインが近づいてきている
 そのせいか、スーパーでもコンビニでも限定チョコレートなどが出始めて、商店街では、店先でもチョコレートが売られていたりする

「賑やかな時期だよなー」
「ちょこれーと、いっぱいなの?」
「お菓子会社の策略だけどなー。限定物って美味そうなのも多いし、負けちまうんだよな」

 悔しい、と呟きつつ、商店街を歩くTさんの契約者
 ……と
 前方に、見覚えのある人物が

「あ、チャラい兄ちゃんとその友達……と、もう一人は、知らない相手だな…」

 「日焼けマシンで人間ステーキ」の契約者と、魔女の一撃の契約者
 それに、Tさんの契約者は見覚えのない…多分、青年…が、一人
 計三人で、何やら楽しげに話しながら歩いている
 何話してんだろうなー?と、何となく好奇心をもったTさんの契約者
 そ〜っと、三人に近づいていって……聞こえてきた、会話の内容は

「おや、翼。今年はそんなにチョコレートケーキを作るのか?」
「んー、「首塚」の離れ小島のガキ共の分とか。あと、構成員で一人、相当大食いなのがいるから…そいつ用にホール2個作っても問題ないだろ」
「それでも作りすぎだろうよ」
318以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:22:03.40 ID:odOxRR2r0
しえん
319あまぁいお菓子で5のお題:2010/01/27(水) 22:24:34.09 ID:71+DqoHw0
「誠は?」
「俺はせいぜい、お前らにやる分作るくらいだな」
「誠の手作りのチョコレートなど、高校の時以来だな。楽しみにしておこう」
「こっちこそ、直希の作るトリュフチョコ、楽しみにしてるぜ?」

 ………
 …………
 ……………

 すすすすすすすすすすすす

「おねーちゃん、どーしたのー?」
「あー……うん。なんでもないぞ、リカちゃん」

 ……うん
 何て言うか
 いや、最近は男性から女性に送る逆チョコとか言うのもあるらしいけど、さ
 男同士で、とか
 やっぱあれなのか?
 ッアー!?なのか?
 っつか、お前ら、女子高生みたいな会話するな
 色々と突っ込みの言葉を思い浮かべつつ、Tさんの契約者はそっと三人から距離をとっていったのだった



おわれ
320以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:25:25.45 ID:odOxRR2r0
支援!
321以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:25:37.72 ID:tr0Ugo0Y0
支援とおもってたら終わったー!
はないちもんめと花子さんの人おつでした!
322あまぁいお菓子で5のお題:2010/01/27(水) 22:27:29.96 ID:71+DqoHw0
2 キャラメル


 とろり、と
 甘い香りが部屋を満たす
 とろり、とろり
 思考まで侵されそうな、甘いあまぁい、匂い

「…何作ってんだ?」

 その、甘い匂いで起こされた黒服
 呪われた歌の契約者のエプロン姿にしゅる……と、髪を伸ばしつつ起き上がった

「あら、起こしてしまいました?」
「いや、いいけどよ……随分、甘ったるい匂いだな」

 ぺとん
 呪われた歌の契約者にもたれかかる黒服
 くすり、と呪われた歌の契約者は、そんな彼の行為に幸せそうに微笑んだ
 たとえ、愛されていなくとも…ただ、こうしてくれるだけで、とても嬉しい

「生キャラメル、ですわ。正確には生キャラメル風なのですが…テレビで、作り方をやっていたものですから」

 とろり、とろり
 …そろそろ、いいだろうか
 つい、と混ぜていたそれを救い上げ、それを指先につけて味見しようとして
323以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:28:06.13 ID:odOxRR2r0
おっと終わってた
と思ったら始まったwww
324以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:28:23.72 ID:W9dy2KmD0
投下おつっしたー
そして次の支援
325あまぁいお菓子で5のお題:2010/01/27(水) 22:29:56.07 ID:71+DqoHw0
「………あ」

 その手をとられ…………ぴちゃり
 指先が、黒服の口内に招かれた

 ぬるり、舌が指先に絡む感触
 ぞくり、背筋を何かが走りぬける

「……うん、甘くて美味い。お前は料理がうまいよな?」

 にんまり、笑う黒服
 頬を赤く染め上げて…彼女は、幸せに笑った


 この甘い時間が、嘘だったとしても私は構わない
 嘘でも構わないから、あなたに喜んで欲しいのです





fin
326以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:32:12.12 ID:odOxRR2r0
支援
327あまぁいお菓子で5のお題:2010/01/27(水) 22:35:49.03 ID:71+DqoHw0
3 キャンディ


 ころり
 口の中で転がる甘い球体
 ころり、ころり
 じっくり、味わっていく

「あれ?何舐めてるんだ?」
「ん、商店街で配ってた試作品の飴ー」

 ころり
 ネームを描きつつ、飴玉を舐める
 ころころ、ころり
 甘い味が口内に広がる

「味、どうだ?」
「結構、美味しい方やと思うけど」
「へぇ……俺も欲しいな」
「ん〜、一個しかもらって来てへんから…」

 御免な、マッドはん
 そう言おうとして、顔をあげると
 目の前に、ガスマスクを外した、マッドガッサーの顔があって

「−−−−−っん」
328以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:36:46.80 ID:odOxRR2r0
だんだんもげろと叫びたくなってきたよ支援!
329以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:37:24.96 ID:W9dy2KmD0
支援
330以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:37:26.87 ID:tr0Ugo0Y0
そうか……これが、嫉妬!! 支援!
331以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:39:41.74 ID:odOxRR2r0
支援
332以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:42:47.01 ID:odOxRR2r0
寝る直前になると妄想が進んでネタを書き留めたくなる不思議
支援
333以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 22:48:22.58 ID:odOxRR2r0
どうやらさるったみたいだが、支援して寝させてもらう…
334あまぁいお菓子で5のお題:2010/01/27(水) 22:58:24.00 ID:Kol+ocGF0
 重なり合った唇
 そっと、舌が入り込んできて…………

「なるほど、結構美味いな」
「……もう」

 マッドはんのアホ
 そう呟いたら、どこか楽しそうに笑われて
 改めて、もう一度……甘く、口付けられる


 飴玉よりも、ずっと甘い
 愛しい人の、甘い口付け






fin


335あまぁいお菓子で5のお題:2010/01/27(水) 23:00:27.65 ID:Kol+ocGF0
4 ケーキ


 綺麗に、綺麗に盛り付けられたそれは
 まるで、一種の芸術品のようで

「変な所で器用よね、あんたも」
「ロリは甘い物が好きなことが多いからな。全てはロリを喜ばせるため」

 はいはい、と呆れた声を出す赤い靴の契約者
 彼女の目の前には、赤い靴が作ったケーキが、皿に盛り付けられている
 彼女が一人で充分食べきれるサイズの、小さな1ホールケーキ
 可愛らしく飾り付けられたそれは、食欲を誘う
 フォークを入れるのが、勿体無い
 そう思ってしまう、そんなケーキ

「口にあえばいいんだがな」
「………」

 そっと、フォークを入れて
 一口、ぱくり
 甘すぎない、優しい甘さが広がる

「………」
「どうだ?」


336あまぁいお菓子で5のお題:2010/01/27(水) 23:02:46.54 ID:Kol+ocGF0
 …美味しい、と認めるのは悔しい
 けれど

「……美味しいわ」

 そう、認めざるを得ない味で
 彼女の答えに、赤い靴はほっとしたように笑った

 …こいつを喜ばせるなんて、なんと悔しい
 だが、このケーキは、本当に美味しくて
 赤い靴の契約者はしばし、その優しい甘さを存分に味わったのだった




fin


337あまぁいお菓子で5のお題:2010/01/27(水) 23:04:55.76 ID:Kol+ocGF0
5 お饅頭


 兎の顔したお饅頭
 あまぁいあまぁい、お饅頭

 もむもむと、少年はそんな饅頭を頬張っていた
 「首塚」の本部、真昼間のせいか、将門は眠りに付いていて
 少年は一人、おやつを食べていた
 いつものお気に入りのお菓子の箱は、傍らに置かれたままだ

「……うー……」

 やや、不満そうな顔をあげる少年
 じっと、兎の饅頭を見つめる
 不味い訳ではない
 ただ

「…うー」

 つまらなそうな表情で、饅頭を見つめ続ける少年
 ……と、ひょい、と
 その饅頭を、誰かに取り上げられた

「う?」
「どうしたのじゃ?そんな不貞腐れた顔をして」


338以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 23:06:20.16 ID:tr0Ugo0Y0
おおっとここで支援だ!
339あまぁいお菓子で5のお題:2010/01/27(水) 23:07:09.89 ID:Kol+ocGF0
 少年が、顔をあげると
 そこには、何時の間にか滝夜叉が立っていて

「この饅頭、もらうぞ?」

 と、少年の答えも聞かずに、ぱくり
 饅頭を食べてしまった

「うむ、美味いのぅ」
「…うー!おいしー!うーうー!」
「おや」

 うーうーうー
 一転、ご機嫌になった少年
 滝夜叉は、面白そうに笑って少年の傍らに腰を下ろした

 …そんなに、一人が寂しかったか
 よしよしと頭を撫でてやれば、少年はますます嬉しそうに笑って


 一人で食べるよりも
 二人で食べた方が、ずっとずっと、甘くて美味しいのだ


終わる


340以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 23:08:48.91 ID:tr0Ugo0Y0
ところでコアラ少年のママなパパは(すごい日本語!)どこにいるんだろ?
341以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 23:12:08.81 ID:Kol+ocGF0
以上、でっちあげお題で小ネタ5つでした
多分、こんなお題ないと思う。多分

今回は全て1レス以内に収められなかったなぁ、まだまだ修行不足です


続けて、代理投下に入ろうと思うんだが、よろしいだろうか?


>>340
仕事中なんだぜ、だぜ
342以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 23:15:12.61 ID:tr0Ugo0Y0
仕事中か! そいつぁ仕方ねえや!
代理投下了解です
343はないちもんめ (代理):2010/01/27(水) 23:15:50.07 ID:Kol+ocGF0
1月8日 始業式 小学校校門にて
「おう」
「友・・・おはよう、久しぶりって感じじゃないわよね?」
「何だかんだでクリスマスも正月も顔合わせてたしなぁ」
色々と濃かった冬休みも終えた3学期の初日
殆どのクラスメイトとは久しぶりに顔を合わせる事になる
「友ちゃん、望ちゃん、おはよー!!!」
挨拶してきたのは比較的親しいクラスメイトの一人
私よりデカイ癖に(まぁ、私は学年最小だから仕方ないんだけど)私より子供っぽいのはどう言う事か


344はないちもんめ (代理):2010/01/27(水) 23:19:36.74 ID:Kol+ocGF0
「クリスマス凄かったね!!」
「クリスマス?」
「うん!空をね、筋肉ムキムキなサンタさんが飛んでたの!!」
それって・・・
「へ、へぇ〜」
「不思議な事もあるんだなぁ・・・」
「うん!」
無邪気な笑顔を前に私と友は密かに顔を見合わせる
「(なぁ・・・筋肉サンタって・・・)」
「(色々混ざってそうだけど十中八九アレね・・・組織ももう少ししっかりして欲しいわ)」
目撃者の記憶の書き換えくらいは徹底して欲しい物だ


345はないちもんめ (代理):2010/01/27(水) 23:22:23.79 ID:Kol+ocGF0
「後ね、後ね、お正月にお隣の家が爆発したの!!」
「・・・爆発?」
「うん、爆発」
ばぁんってと手を広げて説明する彼女を見て頭が痛くなってきた・・・
「なぁ、爆発って・・・」
「一人思い当たるのがいるけど・・・」

某所にて
「っくしゅん!!」
「風邪―?」
鼻をすする顎砕き飴の契約者にアクマが尋ねる
「かもしれません・・・アクマさん、薬貰いますね」
「良いよ〜ってソレ違う!!ソレ小麦粉!!どんな間違い?!」
「昔聞いたことがあります・・・小麦粉を鼻から吸えば皆ハッピー、独創的なアイデアがドンドン沸いて来て、疲れ等忘れられると」
「違うから!それ多分ヤバイお薬だから!!!」
「?」

「違うと願いたいわ」
「相変わらず面倒ごとに巻き込まれてるのな・・・」
「何時もの事よ」
同情を含んだ視線を向けてくる友に答えつつ、今頃家でダラけているであろうもう一人の自分を思い出す
多分、アレが今一番の厄介ごとだ
346以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 23:24:42.76 ID:tr0Ugo0Y0
しえ
347はないちもんめ (代理):2010/01/27(水) 23:25:31.02 ID:Kol+ocGF0
そんな事を考えているとチャイムが鳴り、それぞれ自分の席に戻る
しばらく、すると教師が入ってきて

「皆おはよう、始業式の前に転入生が居るから紹介しておこうと思う」
転入生?
「転入生?」
「・・・嫌な予感しかしないわ」
「へ?」
「入れー」
教師が呼びかけ
ドアが開き
入ってきたのは・・・
「皆さん始めまして・・・転入生の御神楽詩織です
よろしくお願いします」

もう一人の私が転入してきた・・・



続く?
348以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 23:32:22.15 ID:W9dy2KmD0
おつっしたー
349以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 23:37:38.87 ID:tr0Ugo0Y0
乙です!
350以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 23:51:24.30 ID:tr0Ugo0Y0
351以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 23:59:40.08 ID:tr0Ugo0Y0
352以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/28(木) 00:22:01.88 ID:o3zFEhdz0
353ソニータイマー:2010/01/28(木) 00:49:23.27 ID:VEguDLJY0
初投稿です。リア厨の書いた駄文ですので不快な点や誤字、脱字があるかもしれませんが、どうか生温かい目で見守ってやって下さい。
               「ソニータイマー」
「やあ、僕の名前は任天 堂寺。ゲームが大好きな普通の高校生さ。強いて人と違うところをあげるとするなら、幼女に興味があるってことかナー」
 どこかで聞いたような台詞を呟く青年は任天堂寺。公立の高校に通う2年生である。そして最後の台詞からも分かるように彼にはロリコンの気がある。彼はいつものようにプレステ2を楽しんでいるのだが…
「よし、順調に進んでる。あとはラ○ポスを5体倒せば終わりだな」
彼は今モ○ハンをプレイしている。
「よし、あと2体…ってアレ?」
突然、画面の映像が消える。コントローラーの操作も利かない。
「???…故障か…?何でこんな時に………!!?」
彼が困惑していると、画面に初代ド○クエのような文字が浮かび上がるのであった…《ケイヤクかんりょう》と…
『オドロイタカ?オレノナマエハ「ソニータイマー」。キカイニヒソム“都市伝説”ダ』
354ソニータイマー
なんだこの声?どこから聞こえてくるんだ?と言うかそもそも都市伝説って何なんだ!!?
突然の出来事に彼は驚きの表情を隠せないでいる。
「どこにいるんだ? それに都市伝説って一体…」
『ココダ』
声の主がPS2の中から現れる。それはまるで目覚まし時計のような姿だった。
『都市伝説ッテノハナ、…マアカンタンニイウト〈ニンゲンノウワサガグゲンカシタヨウナモノ〉ダ。都市伝説ハニンゲント“ケイヤク”スルコトデニンゲンニジブンノノウリョクヲアタエタリ、ミズカラノノウリョクヲパワーアップスルコトガデキル。
チナミニオレノノウリョクハ、〈視界ニハイッタモノニ“SONY”マークヲツケル〉、〈“SONY”マークヲツケタモノガ、作ラレテカラ1年イジョウタッテイタバアイ、ジブンノ指定シタ時間ニ、ソレヲコワスコトガデキル〉ダ』
「…成程、大体理解した。でも何故僕を契約者に選んだんだ?」
冷静さを取り戻した彼は、ソニータイマーに質問をする。
『オマエヲエランダリユウカ?順番ニセツメイスルカラヨクキケヨ。マズ、最近アタリデワルイ都市伝説ガサワギヲオコシタリシテル。
 デ、オレタチハソイツラヲタオサナケレバナラナイッテコトダ。ダガソレニハオレノチカラダケデハ荷ガオモスギテナ、
 ソレデ“ケイヤク”ヲスルヒツヨウガアッタ。デ、ゲーム好キナオマエト、オレハアイショウガヨカッタッテワケダ。アトハマア…オレノ知名度ヲアゲルコト…ダナ。』
「おk把握した。つまり産業で説明すると、
都市伝説が暴れてる!
でもオレだけの力じゃどうにもできない!
あなたと…契約したい…←今ココ ってことだね?」
ソニータイマーの説明を理解した彼は、何故かそれを三行にまとめる。
『ナカナカリカイガハエージャネエカ。ジャ、ソウイウワケデコンゴトモヨロシクナ。…エット…』
「堂寺でいいよ」
『…堂寺』「こちらこそよろしく。ソニータイマー」
こうして、彼は都市伝説と契約し、“普通の高校生”では無くなるのでした。

             続く…かも
お目汚しすみませんでした