「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここは
都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたり
そんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりするスレです


「まとめwiki」 ttp://www29.atwiki.jp/legends/


まとめ(途中まで) ttp://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html


避難所は↓だよ!規制中やスレが落ちている間はこっちでゆっくりしていようね!
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13199/
2はないちもんめへ、2009年の謝罪を込めて(代理):2010/01/06(水) 18:04:24.90 ID:3PRUp7pz0
 ……かちこちと
 はないちもんめの少女は、緊張しきっていた
 緊張せざるを、得ない状況だ

「そんなに、緊張なさらなくても」
「で、でも…」

 …そうは言われても!!
 体の力を抜けない少女
 何をしているのか、と言うと

「−−−っん」
「もう少し奥、大丈夫ですか?」
「え、えぇ…」

 会話で誤解をされてしまいそうだが
 ただの耳掃除である
 少女が黒服に膝枕されて耳掃除されているだけだ
 少女が緊張しているのは、黒服に膝枕されているせいである

 何故、こんな状況になったのか?
 少女には、とんと思い出せない
 えぇと、大晦日で大掃除も終わって新年を迎える準備はばっちりできて
 お風呂上りに酒…じゃなくて、ジュースでも飲もうと思っていたんだったような
 …まぁ、経過は想い出せないが
 とまれ、少女としては緊張しつつも至福の時間

 −−今年一年、色々あったけれど
 でも、黒服と出会えて、本当に良かった
 至福を噛み締めながら…少女は、そう一年を振り返ったのだった
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 18:04:29.75 ID:quyzJQ/g0
スレたて乙です
まとめ
pass:toshi
ttp://kissho2.xii.jp/20/src/2yoshi10821.zip.html
4かごめかごめ 新年(代理):2010/01/06(水) 18:05:45.80 ID:3PRUp7pz0
久々にメインになったのに扱いがコレなかごめかごめは活躍しない方が幸せかもしれない

コン「今度Dさんに会ったら土下座するよ私は」
ハク「その時は私も一緒にします・・・」
Dさんからのお年玉は結構効いたらしい
これでしばらく大人しくしていてくれれば良いのですが・・・
そんな事を考えながらトイレのドアを開ける
禿「フンッ」
兄貴「アッ バタンッ
即座に閉めた
コン「何か有ったか?」
青年「何も無かった・・・えぇ、何もありませんとも、トイレに入ったら既に禿が入ってたなんて事は無かったぜ!」
ハク「入ってたんですね・・・」
禿以外にも何か居た気がするが気にしちゃいけない
兄貴と兄貴の絡みとか僕は見てない
見てて良い筈が無い
5かごめかごめ 新年(代理):2010/01/06(水) 18:06:55.82 ID:3PRUp7pz0
コン「しかし、今年も色々あったよなぁ・・・」
ハク「禿が南極割ったり、禿が海割ったり、禿がオーストラリア割ったり、禿が町の一角ふっ飛ばしたり、禿が光になったり「殆ど禿じゃねぇか」
何てこったい、我々の一年の印象的な出来事は殆ど禿が起こした不祥事じゃないか
コン「って言うかね、今嫌な事に気付いたんだわ」
ハク「?」
コン「怪談仮面に負けて修行に出た禿は金色になった」
そう言えばそうだった 秋祭り頃か
コン「死人のオッサンに追い詰められた禿はしばらくして兄気の塊になった」
マッドガッサー辺りの事らしい、あの頃はインフルで死んでたから詳しくは知らないが
コン「クリスマス・・・怪奇同盟盟主に負けたよな」
・・・まさか
コン「アイツ、次はどうなるんだ・・・?」

更なる禿の進化の予感に軽い頭痛を感じながら、今年も碌な事になりそうに無いという結論に達した2010年1月1日の夜でした
「アッー!!」
6かごめかごめ 新年(代理):2010/01/06(水) 18:07:53.13 ID:3PRUp7pz0
壊滅した町
傷だらけの契約者や都市伝説達・・・
その全てが、宙に浮くアレを睨みつけている
いくつもの視線を受けているアレが一段と輝きを増し
「 戊 出 衣 美 瑠 堕 亜 !!」
虹色の光が当たり一面を覆った

青年「ハイ、全滅ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」
そこで目が覚めた

「かごめかごめ」の初夢
禿によって世界が滅ぼされる

青年「と、言う夢を見た」
ハク「それはまた・・・」
コン「何一つそうはならないと断言できない所が恐ろしいな」
青年「でしょう?」
そうならない事を祈ります

それぞれの初夢 かごめかごめの場合 完
7一年生になったら(代理):2010/01/06(水) 18:09:25.83 ID:3PRUp7pz0
広い広い部屋で
チャラ男が何かから逃げる様に走っている
「捕まえた」
「ひッ!?」
しかし、簡単に捕まってしまい・・・
「いただきます」
バクン ムシャ ムシャ

子供「ウマー・・・zzzz」
中年「どうだ、凄く幸せそうな寝顔だと思わないか?」
死人「本当に満足気な顔してますねー、涎たらしたりウマーとか言ってるのが気になりますけど」

「一年生になったら」の初夢
遂にチャラ男を捕食する

中年「取り合えずお年玉の代わりはコロッケとかでいいよな?」
死人「お金渡したら食べちゃいますからねぇ・・・」

それぞれの初夢 一年生になったらの場合 完
8はないちもんめ(代理):2010/01/06(水) 18:10:07.52 ID:3PRUp7pz0
ベッドの上に衣服をはだけさせた「はないちもんめ」がいる
少女「や、やさしく・・・してね」
「も、もちろんさぁぁぁぁぁぁっ!!」
私は勢い良く彼女に飛び掛り・・・

友人「夢か・・・」
そこで目が覚めた

「友人」の初夢
はないちもんめの少女と(性的な意味で)ゴールイン

友人「どっかに可愛い子落ちて無いかなぁ(性別は問わん)・・・」

それぞれの初夢 友人の場合 完
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 18:15:30.22 ID:DyGXcPIL0
スレ建て、代理乙ー!
「ん………」

 うつらうつらと、意識が戻る
 ゆっくり、意識が引き上げられる感覚

「ほら、起きてください」
「いつまで寝てる気よ」
「−−−んん…」

 黒服と少女が呼んでいる
 早く、目を覚まさなければ
 「日焼けマシン」の契約者の青年はぼんやりと目を覚まし、体を起こし…


 ぷるんっ
 その胸元に、盛大な違和感を感じた


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っな!?」

 っちょ!?
 なんでまた女になっているんだ!?
 軽くパニック状態に陥る青年
 そんな彼に、そっと手が伸ばされる

「どうかなさいましたか?」
「ど、どうかしまたか、って!!」
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 18:17:24.79 ID:quyzJQ/g0
バイトの時間まで支援
 何故、黒服はそんなに冷静なんだ!?
 そう考えていると、するり
 少女も、手を伸ばしてきて

「別に、おかしい事なんてないでしょ?」
「いや、明らかにおかしだ……ろ……」

 …あれ
 少女の様子に、若干の違和感
 えぇと…なんだか…体格が違うような…
 ……………

「−−−男になってる!?」
「それがどうかしたの?」

 どうかしたの?じゃねぇっ!?
 軽くパニック状態になっている青年
 しかし、黒服も少女も笑っていて

「疲れていらっしゃるのですか?」
「そうだとしても、手加減しないわよ」

 …手加減?
 一体、何が?
 首をかしげる間もなく、青年は二人に押し倒される

「え?」
「大丈夫、怖くありませんからね」
「たっぷり可愛がってあげるわ」
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 18:20:28.26 ID:quyzJQ/g0
しえしえ
「え、ぁ………っちょ、待て待て待て!?これはどう言うじょうきょ……っんん!?」

 あっと言う間に唇も塞がれて
 ズボンも降ろされ、肌の上に手が伸びてきて……






「−−−−−っどんな初夢だよど畜生っ!!??」

 元日の朝
 盛大に叫んでいる青年の姿があったそうだが
 正夢になる予定はないのでどうでもいい



終われ
15はないちもんめ(代理):2010/01/06(水) 18:22:42.45 ID:3PRUp7pz0
「ん・・・」
目が覚める・・・朝か・・・ん?
左右に何か居る?
右を見る
黒服が寝てる
左を見る
チャラ男が寝てる
自分を見る
うん
何で全員全裸?

「――――――――――――――――どんな初夢よ!?」

「はないちもんめ」の初夢
黒服とチャラ男と三人で朝チュン

黒服はともかく、チャラ男とまでは勘弁してよ・・・

それぞれの初夢 はないちもんめの場合 完
16少女の初夢(代理):2010/01/06(水) 18:25:30.51 ID:3PRUp7pz0
「……寒っ」
荒涼とした高山の山頂付近
何故こんなところに自分がいるのかもわからないまま少女は歩く
こんなところを歩いているにも関わらず、服装はなぜか普段着のままである
「山を降りて帰らなきゃいけないんだろうけど、ここ何処だろう」
状況を把握できないにも関わらず、何故か心の内には焦燥は湧き上がらない
「おーい、大丈夫かー?」
声は山の上にいるはずの自分の頭上から聞こえてきた
そこには巨大な猛禽の鳥に乗った男の姿
「うわー、Hさんすごーい」
ばっさばっさと羽ばたいて降りてくる鳥の背中から、ひょいと飛び降りて眼前に立つ黒服H
「迎えに来てくれたの?」
「いや、忘れ物を届けに」
「忘れ物?」
首を傾げる少女に、黒服Hはにこやかな笑顔でポケットから茄子を取り出した
「この茄子をどうするかというとだな」
ざわざわと伸びる黒服Hの髪
そして――

「に゛ゃ―――――――――――――――っ!!??!?!?!!」
目を覚まし飛び起きる三面鏡の少女
顔を真っ赤にし涙目で、前身汗だく心臓バクバク
ついでに汗以外で濡r「地の文黙れ――――――――――――――――っ!」
おぐはぁっ!?
ネタとはいえ概念である地の文に攻撃するとは……(がく)
「まったくもう……どういう初夢だったんだか。初夢……ん?」
一富士、二鷹、三茄子、というどうでもいいネタでしたとさ
……詳細は投下できないスr「復活すんなっ!」
ぶげはっ!
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 18:26:59.71 ID:quyzJQ/g0
しえん
18元旦ネタだよ!(代理):2010/01/06(水) 18:32:56.67 ID:3PRUp7pz0
「おはようございます……?お二人とも、どうかなさったのですか?」
「…いや」
「別に」

 ギクシャク
 なんとも気まずい初夢を見た「日焼けマシン」の青年とはないちもんめの少女
 なんとも、なんとも…気まずすぎる

「黒服は、いい夢見れた?」
「初夢ですか?……それが、夢を見た、と言う覚えがありませんので」

 どうやら、初夢はまだのようです、と答えられた
 …まぁ、初夢は口に出すと正夢にはならないらしいから、いい夢を見ても口にしない方が…
 ………いや
 今年の初夢については、正夢にしたくなくとも口にはできないが!!
 できるか!!あんな夢!!!
 互いに口に出してはいないものの、青年と少女の心は本人達も知らないまま一つになっていた
 が、当然黒服はそんな事に気づいていない

 そして
 黒服は、気づいていない
 自分は、本当は既に初夢を見ていた事に



「……ふむ」

 目覚めて、将門は首を捻る

「誰ぞの夢に入り込んでしまったか」
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 18:35:19.98 ID:8g1pv3+M0
しえんしえん
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 18:35:27.26 ID:quyzJQ/g0
バイト行くぜ支援
21元旦ネタだよ!(代理):2010/01/06(水) 18:36:06.81 ID:3PRUp7pz0
 将門の本質は、悪霊的な存在である
 故に、念を飛ばすことによって、狙った相手に特定の夢を見せたり、夢に入り込むことも可能だ
 が、時折、意識せずに他人の夢に入り込んでしまうことがあるのだ
 その夢を、本来その夢を見るはずだった本人が覚えているかどうかは不明だが

「……ふむ。他人の夢に入り込んでしまったのだから、あれは初夢にはならんな」

 問題ない、と一人納得する将門
 まったく、あれは誰の夢だったのやら

 −−−−新年早々、般若の幻影を背負った状態のあの黒服に睨まれるなど、そんな初夢など見たくない
 あの青年にちょっかいを出している辺りまでは、愉快な夢だったのだが

 そんな事を考えて、将門は二度寝を決め込む事にしたのだった



終わってしまえよ
22元旦ネタだよ!(代理):2010/01/06(水) 18:41:12.17 ID:3PRUp7pz0
3コマ漫画的なもの

それぞれが受け取った年賀状に付いて
はないちもんめ「クラスメイト達から。まぁ…普通よりちょっと少ない程度?」

チャラ男「高校ん時の同級生からとバイト仲間からと…」
はないちもんめ「今時の人間にしては多い方じゃない?…って言うか、マメな知り合い多いわね」

黒服D「これは職場の同僚から…えぇと、これは…あぁ、以前仕事の最中に知り合った…」
チャラ男「…あれは個人が受け取る年賀状の量か?」
はないちもんめ「年賀ハガキが塔のようになって見えるのは…気のせい、よね?」
 人脈チート
23元旦 夢って引きずるよね、結構(代理):2010/01/06(水) 18:45:15.05 ID:3PRUp7pz0
「…ん」
…あれ?俺いつの間に布団入ったっけ?
確か居間でガキ使見ててその後…だめだ、別に酒入ってたわけでもないけど思い出せん…


「やぁ、お…おはよう」
「あれ?クーさ……!?」バッ!

…そりゃ驚くわ。クーさんが一緒の布団に多分服着てない感じだもの。しかもなんか顔赤らめてたし…?
「…ちょっと、質問なんだが…何故、クーさんがここにそのような格好でいらっしゃるのでしょうか…?」

「何を言ってるんだい、昨晩はあんなに激しく…」「ええええええ!?」

…そりゃ驚くわ。全く記憶もないのにいつの間にか初体験を、しかも好きな人と…

「…もしかして、覚えてないのかい?」「うぅむ…残念ながら」


「じゃあ……今からもう一回シようか?」



「ええええええええええええええええええええ!!!??」
24元旦 夢って引きずるよね、結構(代理):2010/01/06(水) 18:45:56.37 ID:3PRUp7pz0
ガバッ!

…そこは、俺しかいないいつも通りの俺の部屋だった。

「……夢…か」
胸をなでおろすとともに少し後悔。…せめて夢の中であっても…

「っつあっ!新年一日目から何を考えとるんだ俺は!」
布団の中で自己嫌悪に陥りジタバタともがく。


「…朝っぱらから騒がしいねぇ?いやな夢でも見たか?」
俺の叫びを聞いて父がやってきた。…そういや帰ってきてたっけな。

「いや、嫌な夢ではないんだが…心の準備的なアレが」「……??」
頭の上に?マークを浮かべまくってる父。いやそんなに悩まなくても。正直知られたくない内容だし…

「あぁそんなことより。お友達が初詣に行こうって来てるぞ?上がってもらってお雑煮食べてもらってるけど」「あぁ、そう…」


ドタドタドタ「…おはよざーっす。明けましておめでとうー」

「うぃーっす、おめでとーう」「や、やぁ、おめでとう」…まぁ予想通りに友とクーさんがいたわけだが。


……すっごい顔合わせづらいんだが…
25元旦 夢って引きずるよね、結構(代理):2010/01/06(水) 18:48:17.94 ID:3PRUp7pz0
「どした、顔赤いぜ?」「いや、別に何もないぞ…起き抜けだからじゃね?」
「ほらほら、そんなことよりお雑煮を食べなさい?やっぱり年の始めはお雑煮を食べないと始まらないわよ〜?」


……


「んじゃあ、行って来ます」「はいよ、行ってらっさいな〜」

どうにも適当な返事だが、こっちにいたころから父はこうである。
まぁそれはさておき…両親は先に仕事場の支部のほうへ行くから後でいく、とのこと。
つーわけで三人で神社へと向かおう…「あ、やべぇ。カメラ持ってくるの忘れたわ。先神社行っといてくれ、合流するから」


……え?


待ってぇぇぇぇぇぇ!?超気まずいぃぃぃぃぃ!!
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 18:50:26.63 ID:J+TEfyJE0
支援
27元旦 夢って引きずるよね、結構(代理):2010/01/06(水) 18:51:59.31 ID:3PRUp7pz0
あんな夢見た後で二人きりで神社までとか気まずすぎるわ!
いや元をたどればあんな夢見るところからすでに気まずい!しかも初夢!
いやある意味で縁起はいいのかも知れないがいやいやいや「…ねぇ」

「はっ、はい!?」…思いっきり考え事してたからすんごく驚いてしまった…

「君はもう、初夢は見たかい?」


…考え事の中心であることをその夢の重要人物本人に聞かれてしまったんだが…

「…まぁ、見たぞ?」「フフッ、だろうね。あれだけの声をあげていて夢を見ていないはずがない」
…聞こえてたのね。てか家全体に聞こえるほどの叫び声あげてたか俺…

「…で、その夢の内容は?」


……ええええええ!?言うの!?言わなきゃならんの!?この状況で!
「クーさんと朝チュンでしかも起き抜けに求められた」なんて言えるわきゃねぇだろーが!!


「……あの、すげぇ形容しづらいから内緒ってことで」「……なら仕方がない」

そいつぁよかった…新年一発目から俺すごい勢いで自害に追いやられてる感じだったわ…
28元旦 夢って引きずるよね、結構(代理):2010/01/06(水) 18:55:05.62 ID:3PRUp7pz0
「そういや、クーさんは初夢見たの?」「…僕かい…?まぁ……見たには見たがね」


「初夢の内容は、あまり人に言うものではないよ」悪戯気に微笑みながらすっぱりと内緒にする…

「…じゃあこっちに聞くなよ」「いやぁ、分かっていても人の夢の内容というのは聞きたくなるものでね。それに…」
「それに?」「…いや、何でもない」

「何だよー。ずるいぜクーさん」「まぁまぁ、お互いに内緒なんだからいいじゃないか」


…そんなこんなで神社前についたんだが。

「ひとまず、明けましておめでとうじゃな、契約者」「……元日」
まぁこいつらとも待ち合わせしてたわけだが。…ベートーヴェン。

誰だ、コレ…?
俺の知ってるキャラにこんな無口なちんちくりんいねぇぞ。

「遅れてごめんねー。おぉ、爺さんたち、おめでとう」
首からカメラをぶら下げて、遅れて友が到着した…久々にコイツ、新聞部なんだよな、って思い出したわ。
29元旦 夢って引きずるよね、結構(代理):2010/01/06(水) 18:58:38.05 ID:3PRUp7pz0
支援
30元旦 夢って引きずるよね、結構(代理):2010/01/06(水) 18:59:22.62 ID:3PRUp7pz0
「さて、あっという間に賽銭箱の前まで来たわけだが」「誰に向かって話しとるんじゃ」

…まぁそれは置いといて、各々賽銭を放り込んでお参りをする。

(今年も一年楽しく過ごせますように)(今年もうまいハンバーグが食えたらいいのぅ)
(……安全祈願)(今年こそは新たな出会いがある事を願います)(今年こそは…結ばれたらいいな)


「そんじゃ、おみくじでも引きますかね」ジャラジャラ

爺契約者:小吉
「…まぁいつも通りだわな」個別運もそんな面白いところなかったんで省略「お前の匙加減だろーが!」

爺さん:吉
「まぁまぁじゃな」 健康:食べすぎに注意するべし「…今年は肉を控えるかの」

ベートーヴェン:大吉
「…大吉」何かネタが無いんで省略「……諦めた」

昆虫少年:凶
「一発目からついてねぇな」 待人:来るが周囲に気をつけるべし「どういうことだろう…」

クーさん:中吉
「見事にみんな分かれたね」 待人:来る「…こういうシンプルなのが一番不安なんだよね」


唐突ながら終わり…てか正直言って正月からこんなたらたらと長文垂れてる俺はとっとと(ry
31元旦 夢って引きずるよね、結構(代理):2010/01/06(水) 19:00:04.15 ID:3PRUp7pz0
おまけ:クーさんの初夢
「…ん」
朝か。…しかし目の前に広がるのは見慣れない天井。どうやら僕の部屋ではないようだ。
「しかしここは一体d…」

僕の隣を見た瞬間に、思わず固まってしまった。
…誰だって、隣で好きな男性が横で、しかもおそらく裸で寝ていたら驚いてしまうだろう。
「…ん。あぁ、おはよ」「…おはよう」
目を覚ましたようなので、聞きたいことはいろいろあるのだが一つだけ聞いてみることにする。

「…その…ここで一体何を…?」

「…え?覚えてない…?そいつぁ参った…」「…とりあえず僕はこの状態から考えうるいろんなことを考えているんだが…
 その…もしかしたら…シちゃった、のかな?」

「…御名答。…え?本当に覚えてない?」「あぁ、すまない…」

そうか、とだけ呟いて僕とは逆の方向へと向くxx君。

「…ねぇ」…突然、僕の口が何者かに乗っ取られたかのように動き出す。

「その…やはり初体験を覚えていない、というのは何かと損だと思うんだ。だから…
 もう一回戦、というのかな…その……シないかい?」



「……ぁ。……夢…だったか」
…初夢に彼が出てくるとは。今年は幸せな一年が過ごせそうだ。
しかし夢の中とはいえ、彼と…。夢と分かれば、目覚めなかったのになぁ…
 …意識が覚醒する
 その瞬間まで、確かに何かの夢を見ていたはずであるのだが、思い出せない
 思い出すことを本能が拒んでいるような錯覚
 ……つまるところ、ロクな夢ではないのだ

「…新年早々、不吉、ってか?」

 苦笑しながら、その黒服は起き上がった
 そして、違和感

「…うん?」
「むにゅぅ…」

 すぴすぴ
 傍らで寝ているロリが一人
 なんとも心地よさそうに眠っていて

「…お嬢さん?」
「むにゅ?」

 ……むにむにむに
 ロリが、眠たそうに目をこすりながら起き上がる

「…むぅ、まだ早いではないか、もう少し寝かせい」
「なんでお嬢さんが俺のベッドにいるんだ?」

 むにーーーーー
 二度寝に入ろうとしたロリを起こす
 本当、何故いる?
 「組織」上層部メンバーである彼女は、「組織」本部からほぼ出られないはずなのだ
 …まぁ、彼女が本気になれば、抜け出す事など簡単なことだろうが

 むにゅん、となんとか目を覚ましてくれた彼女…お嬢さんは、堂々と言い切ってくる

「うむ!H-No,360よ、妾を「ハツモーデ」とやらに連れて行くのじゃ!!」
「初詣に?」
「そうじゃ!」

 好奇心剥き出しの表情で、そう言ってくるお嬢さん
 …なるほど、中世ヨーロッパ生まれのお嬢さん
 「組織」に所属するようになってからは、上層部メンバーであるが故に、ほぼ本部から出る事ができていない
 ……日本に来たものの、初詣なんて行った事もないだろう
 だが

「その為に、なんで俺のとこに来てんだよ。Gの野郎にでも連れ出してもらえ」
「Gはケチなのじゃ。妾をちっとも外に連れ出してくれんのじゃ!」

 ぷぅ、と子供っぽく頬を膨らませるお嬢さん
 可愛らしい様子にも見えるが…実際年齢を考えると婆自重しろ

「じゃから、お前が妾を初詣に連れて行くのじゃ!」
「新年早々の命令がそれかい」

 苦笑する黒服
 …Gは、このお嬢さんの我侭に日々振り回されているのだ
 同情しなくもないが…できれば、もうちょっとちゃんと彼女を見張っていて欲しいものだ

「ハツモーデに行きたいのじゃー!お願い事するのじゃー!おみくじを引きたいのじゃー!」
「わかったわかった」
 仕方ない
 新年早々だが…お嬢さんの我侭に付き合うとしようか
 そうしないと、このお嬢さんは諦めてはくれないだろう

「だが、せめて朝飯は食わせてくれよ」
「オゾーニとオセチじゃな!妾も食べたいのじゃ」
「…まぁ、彼女が作ってくれて渡してくれたもんがあるけどよ」

 雑煮もおせちも、呪われた歌の契約者が作ってくれた物がある
 雑煮は温めればすぐに食べられる状態だ。いい餅を使ってくれたようで、餅が溶け着る事もない

「…お嬢さん、雑煮とか食わせてやるから、俺の血をデザートに、ってのは勘弁してくれよ」
「む…仕方ない。諦めるのじゃ」

 吸う気だったのか
 吸う気だったのかよ、お嬢さん


 …黒服Hは新年早々、己の不運を呪うしかなく


 初夢の悪夢のことを考える余裕などないのだった


終われ
35初詣(代理):2010/01/06(水) 19:07:49.82 ID:3PRUp7pz0
 …うん、大変だったこいつを宥めるの
 ようやく、黒服と共にはないちもんめの少女を宥める事に成功した青年
 …やはり羨ましいな、と青年は思う
 自分も、あんな風に遊びに夢中になれる時期が欲しかった
 ぼんやり、そう考えていると

「…おや、翼」
「ん?……あ、お前か」

 人波から、少し離れた所
 ぱちぱち燃える焚き火の傍に、見覚えのある姿を見つけた

「新年、あけましておめでとう」

 優雅に一礼してくるそいつ
 直接に顔を合わせたのは随分と久しぶりだ
 相変わらず、少し痩せている…ちゃんと食べているのだろうか?

「おや、あなたは…」
「あぁ、黒服さんも。あけましておめでとう」

 黒服に気づき、再び優雅に一礼してくる
 手には、昔と変わらず分厚い本を持っていて…こうやって挨拶している間も、本は開かれたままだ

「…誰?」

 あ、しまった
 少女は、こいつを知らないのだった
 少女はやや警戒した様に、黒服の後ろに隠れている
36初詣(代理):2010/01/06(水) 19:10:36.41 ID:3PRUp7pz0
「俺の、高校の頃のダチだよ」
「お初にお目にかかる、可愛らしいお嬢さん」

 少女に対して、青年の友人は優雅に一礼して見せた
 そうしてから、青年に尋ねてくる

「随分と可愛らしいお嬢さんだが、君には妹がいなかったと思うが」
「妹じゃねぇよ。家族だけど」

 詳しくは話さない
 だが、友人はそれで納得したようで、深くは聞いてこなかった
 一方少女は、まだ友人を警戒しているようで、黒服の後ろから出てこない
 そんな少女の様子に、黒服は小さく苦笑した

「大丈夫ですよ。彼はあの子の大事な友人です」
「………」

 だからよ、と少女は口には出せなかった
 何せ、魔女の一撃の契約者という前例がある
 あちらは青年の親友だったが、こちらは友人
 …嫌な予感がするのはなぜか

「ふむ?…君の愛しの黒服とも一緒にいるということは。そちらのお嬢さんも都市伝説を認識していると考えていいのかな?」
「前半ともかく、後半はそうだよ」

 青年は、友人の言葉にそう答えた
 都市伝説、の単語に、少女はピクリ反応する

「…あなたも、契約者?」
「あぁ、そうだよ」
37初詣(代理):2010/01/06(水) 19:11:28.46 ID:3PRUp7pz0
 …少女は、気づく
 友人の持っている本が、誰の手も借りず、風のせいでもなく…勝手に、めくれ続けている事に

「僕は、この「光輝の書物(ゾハール)」と契約している。僕なんかの身には余る力だが、幸い、ある程度使いこなさせて頂いている」

 ぱらぱらぱらぱらぱらぱらぱら
 本は、勝手にめくれ続けている
 …何かの能力が発動している!?
 少女は、ますます警戒した

「お前、今、何に能力使ってるんだよ。こいつが警戒してるだろ」

 少女が警戒しているのを感じて青年がそう言うと
 友人は、小さく苦笑してきた

「仕方ないだろう。何分、逸れた連れを探さなければならないのだから」
「何の為に力使ってんだよ!?」
「ザフキエルとザドキエルとハニエルに上空から見てもらっているのだが、なかなか見付からなくてな」
「…できれば、そのような些細な事に、都市伝説能力を使うのは控えていただきたいのですが」

 友人の言葉に苦笑したのは、黒服
 つまり、この友人は初詣ではぐれた連れを探す為に、都市伝説を召喚してそれに空から探させている、ということになる
 目撃されたらどうするつもりなのか

「あぁ、安心してくれ。三人も出しているの冗談だ。実際出しているのはザフキエル一人だよ」

 三人も同時に出したら反動が辛い
 淡々と、友人はそう言って来た
 どうにも、昔から感情の気迫が薄く、冗談を言っていても冗談に感じられない
38初詣(代理):2010/01/06(水) 19:14:05.68 ID:3PRUp7pz0
「…まぁ、それはともかく。今年もよろしく頼むよ。君ができそうな仕事は、優先して君に任せよう」

 …仕事
 その単語に、黒服と少女が同時に反応した

「…仕事?」

 何の事?と少女は首をかしげ

「…まさか、まだ、「あのような事」をなさっていたので?」

 と、黒服は困ったように友人を見つめた
 青年が、しまった、というような表情を浮かべる

「おい」
「…?……あぁ、すまない。君は、黒服にはその仕事を秘密にしていたのだったか」

 申し訳ない、と友人が頭を下げる
 大して申し訳なく思っているように見えないが

「…どう言う事?」
「この方は、都市伝説組織の存在を知らない方が都市伝説事件に巻き込まれた時…それを助ける、という仕事をなさっているんです。有料で、ですが」
「金持ちからはふんだくるが、生活が苦しい者からはほぼ無料だぞ」

 悪びれた様子もなく、友人は言い切る

「それに、報酬を要求しなければ、彼のように手伝ってくれる者に、報酬を支払えないからな」
「…黒服、こいつも、困ってる奴を助けたい、ってのは真剣に考えてるからさ。見逃してやってくれないか?」

 青年が、懇願するように黒服を見あげた
39初詣(代理):2010/01/06(水) 19:16:37.26 ID:3PRUp7pz0
 どこか、困ったような表情をしながらも…きっと、この黒服は見逃すのだろう
 この黒服は契約者に甘いから

 …それよりも
 少女は、この友人がやっていると言う「仕事」が気になった
 手伝っているという青年が、報酬を受け取っている?

「あなた一人で、困っている人を助けるんじゃないの?」
「そうできればよいのだが、生憎、僕一人では力不足でね。協力してくれる同士に情報を提供する、と言う事もしている…仕事の斡旋のようにね」

 ぱたんっ、と
 友人は、本を閉じた

「そのせいだろうか、ある筋からはこう呼ばれているよ……「仲介者」、とね」
「…「仲介者」」
「一応、僕はどこの組織にも所属していない。仕事を手伝ってくれるなら、フリーだろうがどこかの組織に所属していようが問わない事にしているよ」

 悪人でさえなければね、と友人は淡々と言い切った

「…つまり、チャラ男がたまに夜突然出かけたりするのは、その仕事だったのね」
「……まぁ、そう言う事だ」

 親に隠し事がバレた子供のように、青年が肩をすくめてきた
 心配させない為なのか、それとも危険に巻き込まない為か…黒服にも少女にも、隠したままにするつもりだったようだ

「あぁ、黒服さん、そんな顔をしないでくれ。彼は僕にとっても大切な友人だ。彼にとって危険な仕事は回さないさ」
「……なら、良いのですが」

 …探し人が見付かったのだろうか
 友人が、焚き火から離れる
40初詣(代理):2010/01/06(水) 19:20:46.32 ID:3PRUp7pz0
 人波に向かって、ふらふらと歩き出す

「いい家族が出来たじゃないか、翼」

 大切にしろよ、と、友人は珍しくはっきりとした笑みを浮かべて
 ふらふら、そのまま人波の中へと消えていった


 ……その直前

「ーー友人と呼ばれる資格を失った僕を友人と認識し続けてくれて、ありがとう」

 と、小さく呟いていたのだが
 その呟きは、誰にも届く事はなかったのだった




to be … ?
41都市伝説4コマ風劇場@新年ネタ(代理):2010/01/06(水) 19:21:43.18 ID:3PRUp7pz0
一人暮らし中の主人公ですが、大晦日にとうとう実家(市内)に帰省したのでありました。
そして、正月の朝・・・




主「・・・あけましておめでとうございます」
妹「はい、あけましておめでとうございます兄さん」

主「父さんと母さんは?」
妹「兄さんが起きないので、先に初詣に」

主「お雑煮は?」
妹「帰ってから食べると言ってそのまま行きました」

主「よし、帰ってくる前に餅食い尽くすぞ!」
妹「ええ、負けませんよ!」
42都市伝説4コマ風劇場@新年ネタ(代理):2010/01/06(水) 19:22:24.99 ID:3PRUp7pz0
父「ただいま・・・お、起きてるじゃないか」
母「まったく、久しぶりに帰ってきたと思ったら紅白も見ずに爆睡・・・」

父・母「って、餅ッ!!?」
カラッポ

父「りょ、両親に向かってなんたる仕打ちを・・・」
母「鬼!悪魔!人でなし!!」
主・妹(否定できない・・・)

顎「餅が爆発しました」モクモク
ア・ザ「オーブントースターがぁああああ!!!」
43都市伝説4コマ風劇場@新年ネタ(代理):2010/01/06(水) 19:23:07.66 ID:3PRUp7pz0
主「というか父さんも母さんも言動がおかしくないか?」
妹「ハァ、それは・・・」

妹「ほら、兄さんと私が喧嘩したじゃないですか。
   兄さんが一人暮らしを始めてから二人とも・・・その、なんというか」

妹「幼児化しまして・・・」
父・母「そこまでひどくはないぞ(わよ)!!?」
主「・・・そ、そうなんだ」

顎「・・・? なんか焦げ臭く」
ア「お雑煮が焦げてるよっ!?」
ザ「火!早く火を消してくださいましっ!!」
44都市伝説4コマ風劇場@新年ネタ(代理):2010/01/06(水) 19:23:50.92 ID:3PRUp7pz0
サ「たっだいまー!あけましておめでとう♪」
ア「あ、おかえりー」

ザ「朝までどこに行ってたんですの?」
サ「え、ほらこの時期は初夢ってあるでしょ?」

サ「だから色々と仕掛けてきちゃった☆」
顎「コレ討伐していいんですよね」
ア「いいけど外でやってね」

父「・・・おもちがー」
母「がー」
主「そんな泣かなくても・・・」
45都市伝説4コマ風劇場@新年ネタ(代理):2010/01/06(水) 19:24:41.47 ID:3PRUp7pz0
父「ところで久しぶりに帰ってきた我が家はどうだ?」
主「とりあえず涙拭いてくれ」

主「まぁ・・・・・・そんなに変わってなくて安心したかな」
母「当たり前でしょ、1年も経ってないんだから」

妹「お父さんとお母さんは色々と変わりましたけどね」
主「精神面でな」
父・母「うっ」グサッ

顎「きゃー!?」
サ「にゃはは☆つかまえたー」
ア「0勝15敗・・・っと」
46都市伝説4コマ風劇場@新年ネタ(代理):2010/01/06(水) 19:25:24.89 ID:3PRUp7pz0
父「ま、仲直りできたようで良かった良かった」
母「これからはいつでも帰ってきていいのよ?」

主「・・・そうだな、たまには帰ってくるか」
妹「兄さん・・・・・・」

主「タダ飯万歳!」
父・母「そっち!?」
妹「食費ってけっこうかかりますからね・・・」

サ「続きは布団の上でねー♪」
顎「はっ、離してください!!」
ア「料理の片付けしようか」
ザ「え、ええ・・・」
47都市伝説4コマ風劇場@新年ネタ(代理):2010/01/06(水) 19:26:05.28 ID:3PRUp7pz0
顎「――あっ、それ以上はだめです!」
サ「却下☆だってこれは罰ゲームなんだから・・・」

サ「ほーら、どんどん奥まで手ぇ入れちゃって」
顎「あ、やっやめ―――」

サ「こちょこちょこちょこちょこちょ!」
顎「きゃはははははははははは!!!」
ア「コゲが取れないよー!」

主「初詣いってくるか・・・」
妹「いってきまーす」
48三面鏡の少女のアルバイト(代理):2010/01/06(水) 19:26:48.26 ID:3PRUp7pz0
「うー、夢見が悪いというかなんというか」
もそもそとした動作で、白い小袖と緋袴という巫女姿に着替えをする三面鏡の少女
「なんだカナちん、初夢変なの見たの?」
年末年始の臨時バイトの先輩であるお姉さんに興味津々という顔で聞かれ、少女はばつが悪そうに視線を逸らす
「まーアレだよ、元旦の朝に見た夢が初夢ってのは昔の話で、今は元旦から二日に掛けての夜に見た夢が初夢らしいよ?」
「らしいですけどねー。この町的には昔の方がやばい気がしないでもない」
「よくわかんないけど、初夢を正夢にしないためには夢の内容を人に話すといいらしいけど? 逆に叶えたい夢は黙ってろって事だね」
「……人に話せる内容じゃないかなぁ」
「どっかに穴掘って叫んでみるかい? 王様の耳はロバの耳ーって」
ぺしぺしと肩を叩きながら、にひひと笑うお姉さん
「ま、話す相手がいなかったらいつでも相談に乗るよ? それじゃお先っ」
そう言って身支度を整えたお姉さんは、一足先に更衣室を出ていった
「むー、とりあえずHさんと会わなきゃ落ち着くかなー」
ぺちぺちと頬を叩き、夢の内容を思い出して紅潮した顔を誤魔化す
「バイト中バイト中、平常心っと」
袴の帯をきゅっと締めて、少女は気合を入れ直し仕事へと向かうのであった



巫女のアルバイトって何やるんだろう
イメージでは破魔矢とか御神籤とか売ったり甘酒や御神酒配ったりとか?
初詣なんか行かないからなぁ(駄目人間)
あと、カナちんと呼ばれてるのは一応名前の設定を決めたからです
名前あると描写楽だし!
「・・・これで良し、と」
東区の路上で一人の女性がうんうんと頷いていた。
「この辺りは人通りも多いし、見てくれる人はいるはず」
黒髪を長く伸ばした女性は、クルリと振り返ると歩き出す。
「さーて・・・・・・神主さん、さぼってないといいけど」


その日の夜。誰もいない路上に一人の女性が黒い羽根を羽ばたかせて舞い降りた。
「あれ?なんか貼ってある!えーっと・・・
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 『臨時巫女バイト募集のお知らせ』
  北区○○神社では元日に破魔矢やおみくじを売る等の手伝いをしてくれる
  バイトさんを募集しています
  巫女服などはこちらで用意しますのでどうかご協力ください
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ・・・巫女服!なるほど、初夢なんだから巫女服っていうのもいいかもねー♪」
黒い羽根をバサリと動かし、再び舞い上がった女性を見たものは運よく誰もいなかった・・・
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 19:31:00.32 ID:Tf3K7vtT0
支援
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 19:33:14.99 ID:J+TEfyJE0
しえ
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 19:44:10.39 ID:Tf3K7vtT0
そろそろ正月も終わり支援
53やる気なさそうな妄想(代理):2010/01/06(水) 20:09:01.81 ID:3PRUp7pz0

同僚 「えいっ」 プシューー ←スプレー缶
黒服Y「ケホッゲホッ、同僚、いきなり何を……」
同僚 「何って、ただの女体化ガスですよ?」
少女Y「な!? 何で!??」
同僚 「そんなの……可愛いからに決まってるじゃないですかっ」
少女Y「そんなことして良いと思ってるのにゃ!? にゃにゃ??!」 ピコピコ←耳
同僚 「あ! 猫化薬も効果出たみたいですねっ」 キラン
少女Y「語尾が……耳が生えてる、にゃ……」 ピコン
同僚 「うふふ、やっぱり可愛いわ」 ガチャン
少女Y「ど、同僚…? にゃんで、部屋の鍵を閉めるのかにゃ? かにゃ?」ピコピコ
同僚 「それはね、貴方が可愛いからよ」 クルリ コツ コツ
少女Y「(話が噛み合ってない!)あ、そろそろ仕事しにゃいと……」ジリジリ←後退り
同僚 「貴方は休み取ってることになってるから心配いりません」 コツ コツ コツ
少女Y「にゃん…だと…(げ、壁に追い込まれた…!)」 ペタ
同僚 「だ か ら 、貴方が居なくても誰も 気に しな い のよ?」ガシッ
少女Y 「ひっ!」ビクッ
同僚 「何も心配することないわ。大丈夫だから、ね?」 ギュゥ 
少女Y「にゃ!? にゃぁぁぁぁああぁあああ!?!!!」
 
Q.これは誰の夢なんだ
54やる気なさそうな妄想(代理):2010/01/06(水) 20:10:39.85 ID:3PRUp7pz0
「…ふぅむ」

 …くるり
 人波の中で、黒いレース生地の日傘が回る
 こんな人波の中、彼女ほどの身長の少女が日傘をさして歩いている、と言うのは少々迷惑行為一歩手前である
 が、彼女はそんな事は、露ほども気にしていない
 てくてく歩きながら、人波を見回す

「…まったく、H-No,360め」

 彼女は、一緒に来たはずの連れのナンバーを口にした
 …その男は、今、彼女の傍にいない

「迷子になるとは、困った部下じゃ。ここは、上司である妾が、見つけてやらねばならぬな」

 …彼女は、気づいていない
 実際、迷子になったのは自分であると
 彼女は、迷子になったのは連れの方であると信じて疑っていない
 彼女が、久々の外に好奇心を丸出しにし、あっちにふらふらこっちにふらふらしていたのが迷子の原因だと、気づいていないのだ

 今も、彼女は部下を探すと口にしつつも、初詣の客狙いの綿菓子や鼈甲飴の屋台
 それに、おみくじなどに視線を奪われていて

 ……彼女が部下を見つける事ができる確率は、限りなく低いのだった


とx−びー??
55はないちもんめ(代理):2010/01/06(水) 20:13:18.51 ID:3PRUp7pz0
前方 人ばっかり
右側 人ばっかり
左側 人ばっかり
後方 人ばっかり
広域感知 都市伝説と契約者ばっかり・・・
まいった
「・・・はぐれた?」
56はないちもんめ(代理):2010/01/06(水) 20:16:04.13 ID:3PRUp7pz0
困った
翼・・・幾らなんでもその年で迷子は無いでしょう・・・
家族として恥ずかしいわ
多分、黒服は翼を捜しに行ったんだろう
うん、そうに違いない
だからはぐれたんだ、うん
少し無茶がある気がするがそこは気合で
世の中気合よ
「さて、どうするかな・・・きゃっ!?」「うおっ?!」
誰かとぶつかった
「ちょっと、何処見てるのよ!?」「何処に目を付けておる!」
「「ん?」」
小さい女の子だった
57はないちもんめ(代理):2010/01/06(水) 20:20:55.96 ID:3PRUp7pz0
「そうか・・・お前も連れが迷子か」
「えぇ、チャラ男には本当困ったものだわ・・・貴方は?誰とはぐれたの?」
どうも都市伝説らしい女の子とすっかり意気投合してしまった
「部下じゃ・・・全く迷子になるとは迂闊な奴・・・まぁ、特長的な頭をしてるからすぐに見つかる・・・と思う」
「そう?ついでだし私も一緒に探しましょうか?感知能力には少し自信が有る」
「そうか?ならば、共に行こう」
こうして、私達二人は歩き出した・・・
しかし、その行く先々で始めてみる初詣の様相に目を奪われ
連れ達と中々合流できない事など、この時の私達は知る由も無かった
58女装少年の人(代理):2010/01/06(水) 20:23:20.62 ID:3PRUp7pz0
 ちゃぷり。
 身体を洗い、熱めの湯船に浸かる。
 じんわりと、身体の芯にまで温かさが染み渡っていった。


 いろいろあって獄門寺君の家に泊めてもらうことになり、開かれるクリスマスパーティーの前にお母さんのご厚意でお風呂を貸してもらえることになった。
 そっちの道の人の家だけあって(?)所々にドスとかが置いてあるのが、軽くカルチャーショックだったり。
 パーティーにも参加させてもらえるとのことで、獄門寺君からは「濃い人ばかりだ」なんて忠告されたけど、それならたぶん大丈夫だと思う。
 実の孫が三メートル越えの人食いグリズリーに襲われてるのを笑って見てたり、この世で一番好きなことが息子をオモチャにすることだったり、
 会う度に実の息子に愛の言葉を囁いてきたり、「嫁に来い。婿でもいいけど」と真面目な顔で言ってきたりする人たちの中で育ってきたから、大抵のことは受け入れられる自信がある!
 ………自分で言っててなんだけど、なんて嫌な自信のつき方なんだ。
 ちなみに、順番で言うとじいちゃん、母さん、父さん、親友の順だ。
 一番親しい人が揃いも揃って変じ……じゃなくて変わり者というあたり、よく自分がこうもまともに育ったなあと思う。
 それはともかく、今こっちは、独りでお風呂に入っている。
 獄門寺君に「どうせなんだから、一緒にお風呂入らない?」と誘ったところ、にべもなく断られてしまったからだ。
 ………そのとき通りかかった人が「なんという、大胆な……っ!」と驚愕していたんだけど、いったいなんだったんだろう?
 それはともかくとして、いつもはクイちゃんと一緒にお風呂に入ってるから、少し寂しいような気もする。
 広い湯船の中、なんとなくはしっこで体操座りをしながらとりとめもなく考え事をするこっち。
 そうしているとつい、さっきのことが思い出される。
 獄門寺君に、妹さんがいた。
 それだけじゃない。
 妹さんは確かに「花子さん」と、そう言っていた。
 それはつまり、妹さんも、"そういう"ことに関わっているということで―――。

「―――いや」

 それは、こっちの役割じゃないだろう。
 友人の妹を心配するというのならともかく―――妹を護るのは、兄の役割だ。
59女装少年の人(代理):2010/01/06(水) 20:26:36.68 ID:3PRUp7pz0
 それに、"ぼく"たちとは違う。
 状況も、境遇も、想いも、在り方も―――なにもかも。
 だからきっと、大丈夫だと。
 心の底から、思う―――願う。

「―――妹、か」

 目に浮かぶのは、先程見た妹さんの姿。
 こっちたちよりも少し小さい……たぶん、中学生くらいの年齢だった。
 …………もし妹が生きていたら、どんな感じになっていただろうか?
 顔は………小さいころからよく間違われてたから、こっちとほとんど変わらないはず。
 じゃあ、身体付きはどうなっただろうか。
 中三あたりで一気に背が伸びたから、もしかしたらこっちが勝ってたかもしれないし……妹の方が背は高かったから、まだ負けたままだったかもしれない。
 ………そう、"かもしれない"。全部、ただの仮定に過ぎない。
 その無限にも等しい"かもしれない"はもう、永遠に失われてしまった―――。

「―――あれ、なんで」

 顔を覆うようにした両手のその指の間から、温かな雫が伝っていくのが感じられた。
 振り払うように目を擦り、ぎゅっと自分の身体を抱き締める。
 こんなことを思う資格は、ないかもしれない。
 こんなことを感じる権利も、ないのかもしれないけれど。

「…………羨ましい、なあ―――」

 ポツリと呟かれたその声は、浴室の中に立ち込める湯気に吸い込まれ、消えていった。
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 20:27:12.84 ID:6Lr1NJMM0
sien
61女装少年の人(代理):2010/01/06(水) 20:28:38.30 ID:3PRUp7pz0
 身体の水気を拭き取り、髪を乾かして着替えを手に取る。
 可愛らしい白いデザインの下着にピンクを基調にしたパーカー、ふんわりとしたスカート。
 やっぱりどこからどう見ても、女物の服だ。

「………まあ、いいか」

 諦めて順に身に付けていく。
 なんだか最近女装に慣れてきてしまった気がする。
 そうでなかったとしても、少なくとも女物の服を身に付けるのにあまり違和感を感じなくはなった。
 これは順応性が高いんだと誇るべきか、単純にへこむべきか。
 誇っておいた方が精神的には楽だよなあとへこみつつ、廊下への扉を開く。

「お、あがってきたか」
「あ、ゴメン……待っててくれたの?」

 廊下に出ると、獄門寺君が壁にもたれて待っていてくれた。
 ずっと待っててくれてたんだろうか……だとしたら、なんだか申し訳ない。
 でも、獄門寺君はこっちのそんな気持ちを読み取ったように、

「ああ、パーティーの手伝いがちょうど終わったから来てみただけだから」

 そういって、パーティーが開かれる部屋へと案内してくれた。

「……そういえば、何で目元が赤くなってるんだ?」
「え、これ!? こ、これは………そう! ちょっと目を擦りすぎちゃって……」
「………まあ、いいけどな」

 そんなやり取りをかわしつつ、ぺたぺたと足音を立てて獄門寺君についていく。
 ここだ、と一言呟いてその部屋へと入っていく獄門寺君。
 それに続いて、こっちも部屋に入る。
62女装少年の人(代理):2010/01/06(水) 20:30:43.37 ID:3PRUp7pz0
 すると、そこは。

「―――わ、すご……!」
「……まあ、家自体が広いからな」

 獄門寺君、なんで冷静でいられるの―――ってそっか、元々住んでるからか。
 その部屋は、なんというか………お座敷だった。
 お座敷といっても、そんじょそこらのお座敷じゃあない。
 広い。さらに広い。とにかく広い。
 もう、広いとしか言い様のないくらい広かった。
 そして、でっかい。
 クリスマスツリーも机も皿も、片っ端からでっかかった。
 もうパーティーは始まっているようで、でっかい机に乗った数多くの和と洋が混ざりあった料理に、これまた多くの極道なお兄さんたちが舌鼓を打っていた。
 これはどこに座ったものかと悩むこっちの手を、獄門寺君が引っ張る。
 当然逆らう理由があるはずもなく、そのまま連れられていくこっち。
 ………なんだか視線が集まってる気がするんだけど、なんでだろう?
 首を傾げながら到着したその場所は、獄門寺君のご両親のすぐ傍だった。
 妹さんの姿もある。

「あ、えと……お風呂まで貸してくださって、ありがとうございます。その上泊めてももらえるなんて、なんてお礼を言ったらいいのか………」

 なにはともあれ、まずはお礼を言う。
 すると、

「いえいえいいのよ。 ねぇ、あなた?」
「おう。息子が初めて家に連れてきた―――だからな。存分に楽しんでいってくれ」

 ご両親からは暖かい言葉。
 えっと、じゃあ……ありがたく。
 両手を合わせて、いただきますをする。
63女装少年の人(代理):2010/01/06(水) 20:31:54.32 ID:3PRUp7pz0
 手を伸ばし、お刺身を一切れ口に入れる。
 ―――おいしい。



 ―――しばらく、時間が経って。
 クリスマスパーティーだったはずが、今ではなぜか組員さんたちの飲み会となっていた。

「それにしても、息子がこんな別嬪さんを連れてくるとは!」
「あ、あはは……」
「………まあ、もう、何も言うまい」

 いい感じにほろ酔いなお父さんにニコニコ笑っているお母さん、疲れた様子の獄門寺君にちらちらこっちを見てくる妹さん、そして賑やかな組員さんたち。
 こういうのはやっぱり、人数が多ければ多いほど楽しいものだと思う。
 家のものより遥かに豪華な料理の数々に―――でも、味は負けていないはず……というか、そう思いたい―――頬を綻ばせていると、お父さんがこちらを見つめてきた。
 思いがけず真剣な眼差しに、思わず背筋が伸びる。
 そして、お父さんは口を開いた。

「―――息子のことを、どう思っている?」

 ふと気づくと、周りの組員さんたちまでがこっちのことを見つめていた。
 逆に、獄門寺君と妹さんは少し戸惑っているようだ。
 お母さんはといえば、相変わらずニコーとしたまま。
 ………む。これは……試されているのだろうか?
 仁義とかを大切にする分、こうやって友達になるにしろ、それなりのものを示さなきゃいけないのかもしれない。
 そう考え、お父さんの目を正面から見つめ返す。
 試されてるのなら―――認めさせてやろうじゃないか!
64女装少年の人(代理):2010/01/06(水) 20:33:28.41 ID:3PRUp7pz0
「獄門寺君のことは―――好きです」

 これは、偽らざるこっちの本音だ。
 獄門寺君のことは、友達として本気で好きだと思っている。
 答えたあともお父さんからは目を逸らさない―――ここで逸らしてしまったら、きっと"負け"だ。

「……こんな大人数を前に、言い切る、だと………?」
「なんと男前な……若は良い人を見つけなさった」

 周囲から聞こえる呟きをBGMに、しばし見つめ合い―――そして、お父さんはコクリと頷いた。
 真面目なものだった表情も緩んでいる……認めて、もらえたんだろうか?

「……うむ。そんなに真っ直ぐな言葉をぶつけられては、認めるしか―――「私は反対です、組長」

 お父さんが言葉を遮って、組員さんの一人が立ち上がった。
 その顔つきは鋭く、細身な身体もしっかりと鍛えられていることがわかる。

「……犬塚」
「こんな何処の馬の骨とも判らぬ輩が、若の―――などと。そう言うのならば、せめてそれなりのものを見せてもらわなければ、納得は出来かねます」

 鋭い目で、これまた鋭い目線をこっちに向けてくる組員さん―――犬塚さんというらしい。
 ………なるほど、獄門寺君が友達を家に連れてきたくなかった理由にはこういうのもあるのか。
 自分の力を示さなきゃ、友達とも認められないなんて……これが極道の世界なんだろうか。
 未だに向けられ続ける犬塚さんの視線を真っ向から受け止め、すっくと立ち上がる。
 不安そうにこっちを見ている獄門寺君に、大丈夫! という意味で親指を立てるのも忘れない。
 ………その獄門寺君が「いや、そうじゃなくて、確実に二人とも誤解だろ……」みたいなことを呟いている気もするけど、そんなことは気にしない!
65女装少年の人(代理):2010/01/06(水) 20:34:11.05 ID:3PRUp7pz0
「じゃあ、"それなりの力"を見せれば、獄門寺君との仲を認めて頂けるんですね?」
「まあ、そういうことになりますね。組長は納得しているみたいですが……私を納得させるだけのものを、見せて頂きたいのです」
「わかりました。方法は―――やっぱり、"これ"で?」

 ぐっ、と握り拳を突きだしながら言うと、もちろんだとでもいうかのように頷かれた。
 同時に有志の組員さんたちによって机がずらされ、相応のスペースが作られる。
 ………うん、なんか燃えてきた。

「………どう思う?」
「いや、ああ言ったってことは自信はあるんだろうが……相手が犬塚さんだからな」
「あらあら、元気ねぇ」
「……兄貴、本当にどうなってるの?」
「………正直、俺にもよくわからん……というか、長くなりそうだからな………」

 周りを囲む組員さんたちと獄門寺君一家の声を聞きながら、こっちは犬塚さんと相対する。
 こういう試合みたいなのはほぼ一年ぶりだからなあ……思わずミスらなかったらいいけど。
 頭の中でイメージするこっちに、犬塚さんが話しかけてきた。

「では、始めますが……手加減は?」

 ………なんか舐められてる気がするのは、気のせいじゃないと思う。

「もちろん、要りませんよ―――こっちもする気はありませんから」
「………そうですか。ですがこちらは試す者、何らかのハンデは必要です―――」

 犬塚さんはそう言うと両腕を上げ、

「―――そちらから、いつでもどうぞ」

 身体の前面で構え、リズムを刻み始めた。
66女装少年の人(代理):2010/01/06(水) 20:35:40.65 ID:3PRUp7pz0
 構えは、ボクシング。
 今の発言を考慮すれば、相当腕は立つんだろう。
 でも、獄門寺君との友人関係を認めてもらうためだ……やるしか、ない。
 覚悟を決め、こっちも構えをとる。
 その構えは、

「………ほう」

 相手と同じ、ボクシングスタイル。
 ………とはいっても、正直にぶつかる気はないけれど。
 フットワークを使いながら睨み合う。
 周りのだれかの喉がゴクリと鳴り―――その瞬間、こっちは動いた。
 上半身を左右に振り、踏み込んでいく。
 それに答えるように犬塚さんの身体に力が入り……でもその力は発揮されることはない。

「―――っく!?」

 犬塚さんの膝がガクンと落ちた。
 理由はごく単純だ。
 こっちの右足の踵が、犬塚さんの右の腿を打ち抜いたという、ただそれだけ。
 でもたかが腿、されど腿。
 腿を強く打たれると、しばらく上手く足が動かせなくなる……人体の都合上、それは避けられないはずだ。
 蹴りがないボクシングだと見せかけての、不意打ちの前蹴り。
 相手の手の内を知らない状況での手合わせである以上、卑怯だなんて言わせない。
 前蹴りから続いて外回し蹴り―――でも、首を反らして避けられる。
 だけど、それだけでは終わらない。
 腰を入れず振り回すように繰り出すからこそ可能な、高速の連続回し蹴り。
 今の外回し蹴りに繋げ、内回し蹴りを放つ―――が、
67女装少年の人(代理):2010/01/06(水) 20:36:23.15 ID:3PRUp7pz0
「この、程度では……っ!」

 足が落ちるのを堪えた犬塚さんはそれを受け止める。
 元々腰が入っていなくて遠心力だけで打ってるようなものだから、止められるのは当然だ。
 ―――だからこそ、本番はここから。
 こっちの蹴りを受け止めたことで多少余裕の出ていた犬塚さんの顔が、驚愕に歪む。
 蹴りを受け止められたこっち。
 でもその回転は止まることなく、身体を捻り、再び左の足が顔面を狙ったからだ。
 犬塚さんの顔面を薙ぐような軌道で迫っていく踵。
 それを驚愕の余韻を表情に残しながらも、回避しようとする犬塚さん。
 そして、こっちの足に伝わってきたのは―――うっすらとした、人の皮膚をかする感触だった。

 ―――外した。こうなったらもう、落ちていく間に一撃を入れて、終わり―――。

 顔は見えないけれど、犬塚さんはきっとそう思ってるだろう。
 身体が回転しきり、犬塚さんの姿が視界に入った。
 ………思った通り。
 空中に浮いたままのこっちを仕留めるため、右のストレートを放とうとしている。
 ただ蹴りを外しただけだったら、ここで顎を打ち抜かれて終わるしかない。
 でも―――こっちにとっては予測済みの、"そう"誘った一撃だ。
 そして、腰の捻りから一気に繰り出される、拳―――疾い。
 けどどんなに疾くても、わかってさえいれば避けられる。
 首だけでなく腰までを反らし、突き出された拳を回避。
 鼻先を掠めたけど……気にするほどのことでもない。
 ストレートを放ち、伸びきって一瞬動きを止める腕を、両手で握って捕まえた。
 これであとはもう、腕を腕に絡め、足を身体にかけてしまいさえすれば、腕ひしぎの完成になる。
 腕一本で人一人分の体重を支えることなんて普通はできないし、パンチを打った瞬間のバランスが崩れている状態なら尚更だ。
 つまり―――勝った。
 そう確信した、その時。
68女装少年の人(代理):2010/01/06(水) 20:37:23.47 ID:3PRUp7pz0
「―――なっ……!?」

 腕を捕まえ、腕ひしぎをかけるまではほんのゼロコンマ何秒の世界。
 その、一瞬。
 一瞬で犬塚さんは、こっちの手から逃れてみせた。
 腕を掴んだ瞬間、まだ掴みが甘いその隙を突いて腕を回転させ、無理矢理こっちの手を引き剥がして腕を引き抜いた。
 決定的なチャンスを逃した………いや、潰されたこっちが畳へと落ち、身を返して立ち上がるのと、バックステップで距離をとった犬塚さんが構えるのとはほぼ同時。
 ………それにしてもまさか、これでしくじるとは思わなかった。
 相手のパンチに対応して繰り出す、カウンター型のサブミッション(関節技)。
 相手の技を見切って出す以上、ただでさえ抜けるのは難しいし、その上初見では読まれることもないと言っていい。
 一度見せるまでは確実にかけられる技だから、今ここで使おうと思ったわけなんだけど……犬塚さんの腕は、こっちの予想を遥かに越えていたみたいだ。

「………最初、ボクシングの構えをとったかと思えばその実質は空手。それを凌ぎきったかと反撃してみれば今度は関節、そして次は中国拳法ですか」

 これは思ったよりきついということでまた違った構えをとっていたこっちに、犬塚さんは呟いた。
 犬塚さんのストレートはかすっただけのはずなのに、鼻の頭がヒリヒリする。
 まともにもらったら、たぶん痛いくらいじゃ済まないんだろうなあ。
 勝つため、さらに戦いのイメージを組み上げていくこっち。
 それに対する犬塚さんの方はというと、鋭かった目線がかなり柔らかいものとなっていた。

「その歳で複数の技術を使いこなし、動きのキレや読み、目も十分。さらにまだ打てる手があるとは………これは私も脱帽ものですね」

 ……って、脱帽?
 え、ということは………?

「認める……いや、そもそも組長が認めていたのに横から口を出したのは私ですから、こう言うのが正しいでしょう―――若を、頼みます」

 ………認められた。
 その上、けっこうベタ褒め気味だった。
 ……おお、なんだか思いがけず嬉しい感じ……!
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 20:37:31.61 ID:5Xc0l85X0
支援
70女装少年の人(代理):2010/01/06(水) 20:39:42.33 ID:3PRUp7pz0
 気分が舞い上がるこっちにつられるように、いつのまにかギャラリーのテンションも最高潮に達していて、わっと歓声があがった。
 周囲の酔いが加速する中、犬塚さんがこっちに近づいてきて、握手を求めてくる。
 当然ながらこっちもそれに応え、互いに言葉を交わした。

「一体どう鍛えられたらそうなるのか、興味はありますが……今この場では止めておきましょう。それより……そんなに、若のことを想ってらっしゃるので?」
「当たり前です、獄門寺君のことは好きですから。末永くお付き合いさせてもらいたいです」
「そう、ですか。私にとっても、若は息子のようなもの。ですから―――改めて、若をよろしくお頼みします」
「あっ、はい、こちらこそ。えっと……みなさん。ふつつかものですが、よろしくお願いします」

 丁寧に、畳に指をついて頭を下げられた。
 慌ててその動作を返す。
 ………なんとか、獄門寺君の友達でいられるようになって、よかった。
 そう思い、肝心の獄門寺君のことを探す。
 机が戻され、飲み会というかむしろ宴会となりつつある中で、獄門寺君はお父さんや組員さんたちに囲まれていた。
 その表情がなんだか頭痛を堪えているような表情で、? とこっちは首を傾げる。
 さらに盛り上がるクリスマスパーティーという名の宴会。
 賑やかながらも少しずつ、夜は更けていく―――。
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 20:40:26.31 ID:6Lr1NJMM0
sien
72黒服H 初詣 (転載):2010/01/06(水) 20:51:24.43 ID:6Lr1NJMM0
「よぉ、あけましておめでとう」
「にゃ!?え、Hさん!?」

 一番、顔を合わせたくなかった人物を顔を合わせてしまい、思わず頬を赤らめる少女
 黒服Hはその様子に首をかしげる

「どうかしたか?」
「い、いえ…あ、あけましておめでとうございます」
「あぁ。…お年玉でもやりたいところだが、バイト中に渡す訳にもいかないか」

 今度渡してやるからな、と言ってくる黒服H
 …良かった、新年早々、いきなりセクハラとかなくて良かった!!
 もしかしたら、周囲に人が一杯いるから、かもしれないけど良かった!!

 少女は気づいていない
 今、まさに、黒服Hの脳内で巫女衣装+触手=最高の組み合わせと言う方程式が成り立ち、とてもじゃないが全年齢板では書けない事になっている事実に

「…ところで、お前さん、黒いレース生地の日傘差した女の子見なかったか?」
「え?…いえ、見てませんけど」

 そうか、と困った様子の黒服H
 今度は、少女が首をかしげる

「…迷子、ですか?」
「あぁ、悪いが、見つけたらここにいるよう言っておいてくれるか?」

 はい、と少女は頷いた
73黒服H 初詣 (転載):2010/01/06(水) 20:52:47.79 ID:6Lr1NJMM0
 それじゃあ任せた、と黒服Hは少女がいたおみくじ売り場を後にする

「……まったく、困ったお嬢さんだ」

 この人ごみの中、確実に好奇心だけでフラフラして逸れたのだろうが…
 さて、見つけ出す事ができるか?
 逸れている間に彼女に何かあった日には、Gがうるさくて仕方ない
 まぁ、彼女のことだから、危険な目にあったとしたら、むしろ相手の心配をするべきだと思うが

 黒服Hは小さくため息をつきながら、人ゴミの中に姿を消していったのだった







to be ?
74初詣ネタ (転載):2010/01/06(水) 20:53:50.73 ID:6Lr1NJMM0
「えらい混んどるなぁ」
「もうちょい早く来れば良かったか…逸れるなよ?」
「ん、わかってる」

 人波の中、そっと手を繋いでいるマッドガッサーと似非関西弁の女性
 しかも、繋ぎ方は恋人つなぎ
 とりあえず、お前らはもげろ

「でも、ほんとはぐれちゃいそう。気をつけないとね」
「逸れたら、なかなか合流できなさそうだしね」

 スパニッシュフライ契約者の隣、美しい女性の姿をとったマリも呟く
 神父姿ではないのは、教会に顔を出す人々と会った時の対処が面倒だからだろう

「大丈夫か?人酔いしてないか?」
「……平気、だ」

 辰也は、「爆発する携帯電話」を気遣いながら歩いている
 なお、「爆発する携帯電話」が抱えている大きな鞄の中では、ジャッカロープがもぞもぞしていた

「ひっひっひ、いざはぐれたら、私が空から探してあげるわよ?」

 お気楽に魔女の一撃が笑う
 …なお、彼女の隣に、彼女の契約者の姿はない

「しっかし、あいつ、元旦から忙しいんだな」

 その魔女の一撃契約者を指して、辰也が呟く
 一応、彼は年末からは学校町内の実家に帰ってはいるのだが…元旦には、また別の用があるようで、ここには来ていない
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 20:54:11.45 ID:3nJj8UPA0
支援
76初詣ネタ (転載):2010/01/06(水) 20:55:38.64 ID:6Lr1NJMM0
「何の用事があるって言ってたっけ?」
「琴の発表会とか言ってたねぇ」
「…想像つかないけどな」

 昔からやっていた習い事の発表会、らしい
 その他にも、茶道の方で付き合いがあるとも言っていた
 魔女の一撃という西洋の都市伝説と契約してはいるが、全体的に和風な男なのだ

「まぁ、主の代わりに、私がお願い事しないとねぇ?」
「…わかるの、か?…あいつの、願い事」
「そりゃあ、私の主様だからねぇ?」

 わかるさ、と魔女の一撃は笑う
 自信に満ちた表情
 契約によるつながりの深さを、彼女は信じている
 ……実際、契約による契約者と都市伝説との繋がりは、深いものなのだ
 まぁ、例外も存在するが

 …………もっとも
 それがなかったとしても、彼らの願いは、ある種、共通しているのだから…わかったかもしれない


 今年も、皆がずっと一緒にいられますように、と


fin
77はないちもんめ (代理):2010/01/06(水) 20:57:27.78 ID:6Lr1NJMM0
「しかし中々見つからないのう」
「その迷子の特徴って面白い頭してるのよね?」
「うむ、特徴的だし面白いぞ」
一緒に連れを探す事になった女の子(女の子じゃあれなので取り合えずヘンリエッタと仮称)を連れて神社を探し回る
彼女も初詣は始めてらしく行く先々で出店を楽しんでいる・・・私の金で
どうも、カードしか持って無いらしく立て替えてやっているのだ
その内絶対返して貰うが
話は逸れたけど、一応感知は働かせてるから翼達が近くにいればわかる筈なんだけど・・・離れているからか反応が弱く、しかも都市伝説が多すぎてわかりにくい
「それは外見的な意味で?それとも中身が?」
「・・・両方じゃな」
両方・・・つまり見た目的にも思考的にも面白いのか
「それって目立つんじゃない?」
「目立つ、確実に目立つ」
それって色々とやばいんじゃない?
そんな目立つ都市伝説なんて「組織」とかに見付かったら討伐されちゃうんじゃ・・・
78はないちもんめ (代理):2010/01/06(水) 20:58:52.60 ID:6Lr1NJMM0
「まぁ、そんなに心配は要らんと思うがの・・・ん!」
「どしたの?」
「あれ!あれはなんじゃ!?」
あれ・・・あぁ
「綿菓子ね・・・」
「菓子?食えるのか?!甘いのか!?」
「まぁ、食べ物よ・・・砂糖の塊みたいな物だから甘い」
「食べたい!」
「はいはい、わかったから引っ張らないの・・・300円?」
高っ!?流石出店、値段がぼったくりもいい所だ
「これで2500円貸しだからね?返してよ?」
「うむ、あいつが見付かれば返させるから安心せい!」
こんな調子で、チャラ男達が見付かるのはまだまだ先になりそうです

続く・・・のか?
79女装少年 (代理):2010/01/06(水) 21:01:16.76 ID:6Lr1NJMM0
 ―――暖かい。

 なんだかとろけてしまいそうな暖かさを感じながら、クイは目をさました。
 真っ暗な中。
 誰かに抱き締められている感覚だけがはっきりとしている。
 徐々に目が慣れてきて、クイを抱き締めているのが誰なのか知ることができた。

「………お兄、さん……?」

 呟くと、にこりと微笑む気配が伝わってきて、

「あ、クイちゃん……起きちゃった?」

 ぎゅ、と抱き締められ、頭を撫でられる。
 ………落ち着く。
 落ち着くし、気持ちもいいんだけど、問題なのはそこじゃなくて………、

「・・・なんで、裸?」

 そう。
 クイとお兄さんは今、裸で抱き合っている。
 いつもいっしょにお風呂に入ってるから、恥ずかしくないといえば恥ずかしくないんだけど…….

「なんでってクイちゃん、クイちゃんの方から誘ってきたんじゃない」
「・・・え……!?」

 た、確かにお兄さんのことは好きだけど、そんなことはしない………!
 そう心の中で反論するけど、

「―――むぐっ!?」
80女装少年 (代理):2010/01/06(水) 21:02:38.19 ID:6Lr1NJMM0
 柔らかいもので、口を塞がれた。
 目の前にはドアップのお兄さんの顔。
 …………え、これって………キス、してる!?

 置かれている状況を理解し、一気に顔が熱くなる。
 混乱する頭。
 思わず身体を離そうとするけれど、またもや抱き締められ、動きを封じられた。
 同時に唇をこじ開けてお兄さんの舌が入り込んでくる。

「〜〜〜〜〜〜っ!?」

 あげた叫びも声にならず、逆にクイ自身の舌を絡めとられただけだった。
 ぴちゃり、くちゃり、ぺちゃり。
 二人の舌と唾がエッチな音をたてる。
 好きな人に口内を貪られる、その感触。
 あまりに気持ちいいそれに、抵抗の意思は全部剥ぎ取られ―――、

「―――ぷはっ、はあ、はあ………」

 お兄さんの唇が離れると、二人の唇の間につつつ、と糸がひいた。

「クイちゃん、好きだよ………」

 耳元で囁かれ、なんともいえない快感に身体中がぞくりと震える。
 お兄さんはそのままクイの耳たぶを口に含み、少しずつ身体を下りてきた。
 首筋をなぞり、鎖骨に沿って舌を這わせ、そしてほんの少しだけ膨らんだ胸へ。
 そして―――
81女装少年 (代理):2010/01/06(水) 21:03:49.26 ID:6Lr1NJMM0
 ―――至福。

 今私が置かれている状況は、そうとしか形容できないものでした。
 日頃私たちが暮らしているリビングの中に、卑猥な雰囲気のぺちゃぺちゃという音が響いています。
 私は何も履いていない足を組み、企業の社長が座るようなクッションの効いた椅子に座っていました。
 部屋の中にいるのは私と少年の二人だけです。
 クイちゃんとメルヘンちゃんは出掛けているようで、姿が見えません。
 ………まあその方が都合がいいんですけどね、あの二人には少々刺激が強すぎますし。
 そう考えを巡らせながら、私は右の足を突き出します。

「むぐっ!? ……っ、げほ………」

 耐えきれないように咳き込む少年を、私は見下ろしていました。
 その女の子のような顔が歪むのを見るだけで頬が緩むのを自覚します。
 しかし、ここで止めたら面白くありません。

「あら、少年・・…・誰が口を離してもいいと言いましたか?」
「けほ………で、でもトバさん……」
「でももストもありません。私は"口を離してもいいと言ったか"と訊いたんですよ? それに、"トバさん"じゃあないでしょう。私のことは、"ご主人様"と呼びなさい」
「……は、はい………ご主人様」
「わかったのならいいんです。ほら、早く嘗めなさい」

 少年の目の前に足を差し出し、一言。
 う、と少年は躊躇いますが、足を揺らして催促すると、諦めたように私の足の指を口に含みました。
 暖かい感触が私の指を包み込みます。

「そうです、そう……ほらもっと舌を絡ませて・・・」
「んっ……んむ、はむ、むぐ……」
82女装少年 (代理):2010/01/06(水) 21:04:45.23 ID:6Lr1NJMM0
 教え込んだ通り、隅々まで舌を絡めながら順番に指を嘗めていく少年。
 その奥底に眠るM心を刺激されでもしたのか、少年の瞳は潤んだ上にとろんとしていて、頬は上気しています。
 ………私も、そろそろ我慢が辛いです、ね―――。

「―――少年」

 呼び掛けると、少年は顔を上げました。
 ちゅぱ、という音とともに、私の指と少年の唇との間に糸がひきます。
 その淫靡な光景に昂っていく乙女心という名の性欲に身を任せ、組んでいた足を開いて穿いていたスカートの中心を指差しました。

「足は、もう、いいですから。次は、ここを―――」

 言葉を聞いた少年の唇が、少しずつ足の甲、膝、腿へと遡っていき、そして―――


83女装少年 (代理):2010/01/06(水) 21:05:36.06 ID:6Lr1NJMM0
「―――あ、ひゃうぅっ!?」
「―――ん、ああっ!」

 新しい年の始まり、一月一日元旦の朝。
 トバさんとクイちゃんは、嬌声をあげながら同時に飛び起きました。
 もう外は明るくなっており、閉じられたカーテンの隙間から、日の光が差し込んできています。
 未だに幸せそうに寝ている《呪いのメルヘンカルタ》の契約者を挟んで、飛び起きた―――というか、夢のせいで飛び起こされた―――二人は、はあはあと荒げてしまっている呼吸を整えます。
 そして、部屋の中に響くのが、すーすーという静かな寝息だけになった頃。
 トバさんとクイちゃんは、どちらからともなく互いに目を合わせました。
 双方とも顔は上気して赤くなっており、うっすらとかいた汗とそれによって額に張り付いた髪の毛が色っぽい魅力を放っています。
 もしそこに男性が居合わせたなら―――極一部の例外を除いて―――その魅力に本能を掻き立てられたでしょうが、今この部屋にいるのは女性のみ。
 同姓のことは同姓が一番よくわかるということで、トバさんとクイちゃんは、互いに何があったのかを理解します。

「…………クイちゃん」
「・・・わかってる」

 互いに理解しているだけあって意思の疏通もまた素早く、あっという間に今見ていた夢のことには触れないという協定が酌み交わされました。
 トバさんはまだ布団にくるまったままの《呪いのメルヘンカルタの契約者》に目をやりますが、

「……まあ、妙な夢を見ているわけでもないようですし、寝かせておいてあげますか」

 呟くと、クイちゃんと一緒にリビングへと向かいます。
 二人が身を刺すような寒さを覚悟しながらドアを開けると、何故だかリビングは暖まっていました。
 それだけではなく、家の(一応の)主である女装少年こと小鳥遊渚の趣味によって選ばれたちゃぶ台の上にはおせちなどが並んでおり、見事に朝御飯の準備がされています。
 二人は少し悩み、現在この家の中において主婦(正確には主夫ですが、ここではあえてこちらを使わせて頂きます)の役目を負っている渚がやったのだろうとあたりをつけますが、肝心な本人の姿が見当たりません。
 キッチンを探してお雑煮とぜんざいがたっぷりと用意された鍋を発見したりしていると、冷蔵庫を見ていたクイちゃんが突然声をあげました。
84女装少年 (代理):2010/01/06(水) 21:06:33.46 ID:6Lr1NJMM0
「・・・お姉さん、これ……」

 渚の部屋を調べていたトバさんが駆けつけると、冷蔵庫に磁石で貼られたメモをクイちゃんが指差していました。
 そのメモに書かれた小さな文字を、トバさんが読み上げます。

「えっと……『神社にバイトをしに行ってくるので、自由に食べておいてください。PS.初詣に来るのはいいけど、冷やかさないように! 写真とかも撮っちゃダメ!』ですって。バイトというと、アレですか? 巫女さんの」
「・・・たぶん、そう。・・・みんなで説得してやることにさせた、巫女さんのやつ」

 トバさんもクイちゃんも何かを―――十中八九渚の巫女さん姿でしょうが、想像するように目を瞑りました。
 程度の差こそあれど、二人の顔にニヤリとした笑みが浮かびます。
 二人は同時に目を開くと、一瞬だけ目線を合わし―――それぞれ、行動を始めました。
 トバさんは三人分の食事をよそいだし、クイちゃんはといえば未だ寝たままの《呪いのメルヘンカルタの契約者》を起こしに走ります。
 二人が頭の中で思っている………というか企んでいることは、全く一緒でした。
 それ即ち、『少年(お兄さん)の巫女さん姿を永久保存し、イジるための材料とする。あとついでに初夢の内容も吐かせる』というもの。
 二人とも、渚への嗜虐心だけは全く隠そうとはしません。
 むしろ競うようにして急ぐ二人のキビキビとした動きは、渚の受難が新年になっても終わらないのを予感させるのでした。


85思いついたら書くしかないじゃないか (代理):2010/01/06(水) 21:08:12.32 ID:6Lr1NJMM0
「皆さん、あけましておめでとうございます・・・本日付けでアメリカ支部より日本に配属されました 黒服K-232です よろしく」
感情の感じられない淡々とした挨拶
最近ではこちらの方が珍しくなってきた純粋な感情を有さない非人間の黒服
しかし、そのコードを聞いた瞬間周囲に居た黒服達が引いた
それは、もう、見事にドン引きである
「k、K-232だと?」
「232って確か・・・」
「アメリカめ・・・厄介ごとを押し付ける気か・・・!」


86思いついたら書くしかないじゃないか (代理):2010/01/06(水) 21:09:36.59 ID:6Lr1NJMM0
どよどよとざわめく黒服たちには目も向けず、近場にいた女性の黒服に尋ねる
「すいません・・・アニキ・・・いえ、マ神様はどちらに?」
「さ、さぁ・・・多分、町の方ではないかと」
「そうですか、ありがとうございます・・・では、私はこれから町の見回りに向かいます」
それだけ言って、K-232は去って行った
「あの・・・アレって・・・」
「K-232・・・感情を持たぬ純粋な黒服・・・だった」
「だった?」
「奴は昔、マ神の討伐を担当していた」
「・・・それで?」
「無論その任務は失敗に終わった・・・だが、奴は・・・目覚めてしまった・・・筋肉美に」
「・・・・・・」
「感情を持たぬ黒服すら、筋肉に男色に目覚めさせる・・・本当、化物だよ、マ神は・・・」


「・・・そう言えば日本には姫初めと言う文化が存在するそうですが、男同士でも姫初めで良いんでしょうか」
こうして、学校町にまた一人新たな変態が現れた・・・
終われよもう
87思いついたら書くしかないじゃないか (代理):2010/01/06(水) 21:11:09.55 ID:6Lr1NJMM0
K-232
純粋な感情を持たない組織の黒服・・・だった
かつて任務で禿の討伐を命じられた彼は果敢にも禿に挑み【アッー】が原因で
筋肉美と男色に目覚めてしまったのだ
それ以来すっかり禿を妄信する変態に
今尚、感情は殆ど無い(と思われる)が
無論筋肉である
ガチムチである
ガチホモである
ノンケでも食っちゃうのである
男は注意せよ

外見的な特徴は長身でロンゲ
脱ぐと凄いんです
禿と違って行儀が良いから破いたりはしません
ちゃんと脱ぎます
88占い師と少女 (代理):2010/01/06(水) 21:12:30.71 ID:6Lr1NJMM0
 明けましておめでとうございます。聖 未来です。
 マッドガッサーの騒動も一段落して、今日はもう元日。
 と言う事で、占い師さんと一緒に近くの神社に初詣に来てみたのですが……。

「――――人で一杯ですねー」

 見渡す限り人、人、人。
 日本各地を転々としてきましたが、ここまで混雑した初詣は初めてかもしれません。

「都市伝説も紛れ込んでるな」

 そう言って周囲を見渡す占い師さんの姿は、いつものラフな格好ではなく、袴姿。
 長身に銀髪の髪が、袴に何ともミスマッチです。
 お正月ですから、と着せた本人が言うのも何ですが……完璧に、周囲からも浮いてます。本当に見事なまでに。
 これではまるで――――

(…………コスプレ好きの外人さんみたい)

 ……何て思いましたが、さすがに口には出しません。
 一応、私も占い師さんに習って振袖姿で来ているのですが、こちらはあまり目立った様子はありませんでした。
 やっぱり女の子はお正月に振袖を着たいと思うのか、先程からちらほらと振袖姿の人を見かけます。
 中には占い師さんのように、取り合わせの妙な格好をしている人もいて――――

(…………あれ?)

 ――――ふと、視線を向けた先。
 二人の女の子が、うろうろと人の流れを縫うように歩いていました。
 片手に金魚を下げ、綿菓子を食べながら歩く、身長120センチ程度の小さな女の子達。
 それだけならどこにでもある、出店を楽しむ女の子達の光景でした。
 でも、その片方の子がこの人ごみの中でレースの着いた日傘を差していた事、そして何より誰かを探すような素振りをしている事が、私の目を引きました。
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 21:40:26.00 ID:J+TEfyJE0
90占い師と少女 (代理):2010/01/06(水) 22:00:01.88 ID:6Lr1NJMM0
(迷子…………?)

 一度気付いてしまえば、もうそれ以外の何にも見えない光景。
 ですが、その女の子達には迷子にあるような不安が見受けられませんでした。

「占い師さん……」
「迷子か」

 占い師さんも気づいていたのか、呼びかけるとすぐに返事をしてくれました。

「この人混みだからな……無理もない」
「どうしますか?」
「このまま見捨てても構わない、が……」

 ――それだと寝覚めが悪いな
 そう小さく呟いて、少女達の元へと占い師さんが歩きだしました。
 私も小走りに、その後を追おうとしましたが

「――――どうしたんですか?」

 唐突に占い師さんが立ち止まったので、慌てて私も急停止しました。
 見ると、占い師さんは女の子達を見て、何やら首を傾げています。
 そのまま、占い師さんは数秒、二人を注視して

「…………ふむ」

 そう小さく呟き、ポケットから何かを取りだしました。
91占い師と少女 (代理):2010/01/06(水) 22:01:28.48 ID:6Lr1NJMM0
 太陽の光が反射し、きらきらと光るそれは

「――――ビー玉?」

 青く輝く、小さなビー玉でした。
 時々占い師さんが占いの際に使うのを、何度か見た事があります。
 占い師さんは手の中にあるそれをちらりと見て、軽く地面に転がしました。
 小さなビー玉は、人の間を縫うようにコロコロと転がり

「………………?」

 やがて女の子達の足元へと辿り着きました。
 足元へと転がってきたそれを、首をかしげながら一人が拾います。

「行くぞ」

 それを見終えると、占い師さんはすぐに進路を元に戻しました。

「いいんですか?」
「大丈夫だ。必要な時にはあれが何とかしてくれる」
「ビー玉に何かを掛けたのは分かってましたけど……」

 何故自分で行かなかったのか、謎だ。


92占い師と少女 (代理):2010/01/06(水) 22:02:18.48 ID:6Lr1NJMM0
 首をかしげる私の頭に、占い師さんはポム、と手を乗せ

「さっさと行くぞ」

 そう言って、小走り気味に歩き出しました。

「あーっ、待って下さいよー!」

 慌てて、その後を追う私。
 その途中でちらりと後ろを見ましたが……あの女の子達は、既に人ごみに紛れてしまっていました。





【終】


93占い師と少女 (代理):2010/01/06(水) 22:04:42.20 ID:6Lr1NJMM0
占い師たちの初詣ネタ。
お嬢さんとはないちもんめの少女と少しばかりクロスさせてみました。
ただ、途中で二人とも都市伝説(か契約者)だと占い師が気付いたので、直接の接触は避ける事に。
本音は二人の口調が全然掴めてないとか言う作者の都合です、申し訳ありません。
ちなみに占い師が少女達に渡したビー玉、俗に言う待ち人と二人を引き寄せるような働きをします。
半径10メートル以内に対象となる人物がいると、勝手にビー玉がその人の方へと転がるよ!
でも待ち人だから、探さないで普通に露店を楽しんでると多分全く発動しないよ!





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すまん、代理投下途中だが、風邪気味微熱により力尽きて寝る、おやすみー
明日もスレが残っていてくれれば幸せだ!!
94はないちもんめの友人(代理):2010/01/06(水) 22:35:51.75 ID:quyzJQ/g0
赤い靴を連れ女の子が人ごみの中を歩いていく
「本当に人が多いわね」
「まぁ、初詣だからな・・・幼女の和装って良いよね!!」
「ハァハァしないでくれる、気持ち悪いっ!?」
赤い靴に突っ込みを入れようと振り向いた拍子に躓いてこけかけ
誰かに支えられた
「大丈夫?」
「え、あ、ありがとう・・・」
見た事も無い女・・・身長は160台後半と言った所か
「うん、気にしなくて良いよー・・・えっと、そちらさんは連れかな?」
赤い靴を指差して聞いてくる
「う、うん・・・認めたくは無いけどね」
「ババアに興味ないぞ、俺は」
助けてくれた人になに失礼な事を!と蹴り飛ばそうとするよりも先に
女が喋りだした
95はないちもんめの友人(代理):2010/01/06(水) 22:37:10.52 ID:quyzJQ/g0
「ふむ・・・君のストライクゾーンは?」
「10歳以下、それ以上のババアは認めねぇ」
「コイツロリコンなのよ・・・失礼な奴でゴメンね」
「10歳以上はアウトか・・・なら、仕方ないな私今年で12だし」
「仕方ないの!?」
事も無げに言う女に思わず突っ込んでしまう
「まぁ、気持ちはわからなくもないからね・・・そんな私のストライクゾーンは『老若男女ゆりかごから墓場まで』な訳だけど」
「節操無しかよ」
「なら、言い方を変えようか?私は人間が好きだ!」
「結局節操無しじゃねぇか!?」
「全てを平等に性愛の対象としてみてるだけだよ・・・そういう君こそロリコンを名乗りながら10歳以上はアウトだと?正しいロリコンの対象は小中学生だろう、常識的に考えて」
コイツも変態か!?
「と、言うわけでお嬢さん・・・友人が見付からず暇なので私に付き合ってくれ、君の連れとももう少し深い話がしたい」
「・・・全力で遠慮していい?」
「君に拒否権は無いよ」
ちょっ!?
こうして、赤い靴とその契約者の初詣に『はないちもんめの友人』が加わったのです
96はないちもんめの友人(代理):2010/01/06(水) 22:37:50.95 ID:quyzJQ/g0
「しかし、幸先が良いな・・・今朝ある初夢を見て思ったのだよ『何処かに可愛い女の子落ちて無いかな』」
「赤い靴助けて!!」
「コイツがかわいいのは認めるがYESロリ、NOタッチ手を出すのは認めねぇ」
「私だってそれ位はわきまえてるさ・・・同意の上でしか手は出さないよ」
「同意とかしないからね?!」
「大丈夫大丈夫、私に任せて置け・・・今日中には同意させて見せるさ」
「赤い靴助けてぇぇぇ!!!」
「良いか、そもそもロリコンてのは」
「スルーしないでよ!!」
終われ
 あの頃、俺はいたって普通の人間だった。
 中流階級と呼ばれるそこそこの家に生まれ、これといって取り柄もなく、しかしそこそこに友人のいる少年生活を送り
 そこそこの大学に一浪して入って、そこそこの会社に入社した。
 人並みに災難に遭い、人並みに運も良かった人生。
 このままそこそこの人生を送って死ぬのだと、当時の俺は思っていた。
 だから、あの時俺に生まれて初めて「彼女」と言う存在が出来た時も、ただ漠然と

――――このまま彼女と結婚して、そこそこ幸せな人生を送るのかな

 なんて思っていたものだ。
 ……今となっては、笑いの種にすらなりはしないが。

 会社の同僚の一人であった彼女の容姿もまた、至って平凡なものだった。
 こんな事を言うと毎回誰かに「平凡な顔って何だよ」なんて突っ込まれたものだったが、まさに平凡なのだから仕方がない。
 強いて言えば印象に残らない顔、とでも言った所だろうか。
 特に目立った行動を取るわけでもなく、かと言って目立ちすぎないわけでもない、そんな存在。
 それが良い意味でも悪い意味でも、彼女の印象を薄くしていた。
 だからこそ、彼女から告白された時、何でそれを受けたのかも俺自身よく分からなかったし、それが元で後で色々悩む事になったのだが…………それはまだ、どうでもいいことだ。

 彼女との交際は幸せだった。多分、人並みかそれ以上には。
 週に何度か会っていたのが毎日になり、そのまま段階的に、世間一般が言う「清い交際」を続ける日々。
 順調に、しかしそこそこに挫折をしながら、延々と続いていく仕事。
 彼女が出来てからも平凡に、あまりに平凡に、俺の人生は過ぎて行った。

 ……しかし、彼女と同棲をし始めてから半年後。
 給料数ヶ月分の指輪を贈り、彼女と婚約を交わした辺りから、何かが少しずつ、本当に少しずつ、ズレていった。
 何がきっかけだったのか、正確な所は分からない。
 その歪みは本当に僅かな物で……だからこそ、それが大きく、手に負えなくなるまで、俺はその存在に気付けなかったのだ。

 最初は、ただの嫉妬だと思っていた。
 デート中にちょっと別の女に視線を向けたとかいう、可愛らしいもの。
 ドラマにでもありそうなシーンだな、なんてその時の俺は思ったものだ。
 …………しかし

――――ねぇ、今日Y子と話してたよね。何の話だったの?

 川幅が、下流へと行くにつれて広くなるように

――――夕方に会ってた女の人、取引先の人かな? 見たことない人だったけど……。

 小さな亀裂が、段々時と共に大きくなっていくように、

――――最近、帰りが遅いよね。どうしたの?

 徐々に、徐々に、

――――ねぇ、どうしたの? ねぇ…………

 それは、姿を現していった。
 大きくなっていく影、細かくなっていく疑念。
 その影の色が段々と濃くなるにつれ、俺はそれを知覚するようになり……

――――これは、彼女なりの愛情表現なんだ。きっと、そう。きっと…………

 ……しかし、俺は自分をごまかし続けた。
 自分のため、彼女のため、将来のため――――
 そう、自分に言い聞かせ、欺く日々。
 それは、危ういながらも僅かな均衡を保ち続け

――――なぁ、お前の担当してる取引先にさ、美人さんが二人いたじゃん?

 それでもすぐに、その均衡はあっけなく崩れ去った。

――――あの二人さ、自殺したらしいぜ。しかも同じ日の同じ時間に、全く別の場所でだってよ



【続】
100花子様のメイド(代理):2010/01/06(水) 22:43:39.97 ID:quyzJQ/g0
元日。
コミケから帰還し、間もないこの日に私は神社に来ていた。

メ「流石にこの格好は目立ちますね。」

新「皆さんが和服などを着ている中、それも神社で英国式ロングメイド服じゃ浮きますよぉ。」

メ「だからと言って、和風な従者なら良いというわけでもありませんよ、新人。」

マッドガッサー事件辺りからペアを組むことになった新人メイドを連れてきたのは良いのですが・・・この娘、なにかずれてます。
確かにメイド服は目立ちます。神社には相応しくないでしょう。それは正論ですし、認めます。
しかしそういう新人は割烹着を着ていやがります。
和風なら良いというわけではないというのは、その事です。
まあ、可愛らしく良く似合っているとは思いますが、やはり初詣では浮きます。
101花子様のメイド(代理):2010/01/06(水) 22:44:30.52 ID:quyzJQ/g0
メ「そんな事はさておき、目的を果たしましょう。」

お参りを差し置いて絵馬を描きに向かう。
昨今、某埼玉県の神社では某アニメの影響で絵馬にキャラクターを描くのが流行っているとか。
ならば私もやらねばならないでしょう。

備え付けのマッキーで美少女と美少年を描く。こんなのに下書きもいりません。
というより、私くらいになると下書きという概念は無くなります。

新「あの、10枚も描くんですか?」

メ「盗まれることも計算に入れてるのですよ。」

あとは、然るべきところに結いつけ、完成です。

メ「さて、初詣るとしましょう。」

新「あ、待って下さい〜!」

おわり?
102初詣の迷子探し(代理):2010/01/06(水) 22:45:42.36 ID:quyzJQ/g0
「見付かりましたか?」
『いや、駄目だ。まだ』
「そうですか…」

 初詣の人波の中
 携帯電話で話しながら、黒服は少女を探していた
 いない
 これだけの人並みの中、あの小柄な少女を探すのは至難の技だ
 …黒服は、「組織」の黒服だ
 その力を持って、この初詣の人ごみの中から、都市伝説や都市伝説契約者を感知する事は可能だ
 ……しかし、それを特定個人に限定する事はできない
 この街は、都市伝説も契約者も多すぎるのだ
 感知能力を使っても、絞りきれない

『あいつ、携帯の電源切ってるか充電きれてんのか、かけても出ないしよ…』
「…わかりました。とにかく、彼女も境内からは出ていないでしょうし…このまま探しましょう」
『あぁ、見付かったら、すぐ連絡するから』

 通話が切れる
 「日焼けマシン」の契約者の青年は、今、黒服と別行動をとって少女を探している
 …それでも、見つからない

 かすかに感じる不安
 彼女は「顎砕き飴」の契約者に狙われているのだ
 このような人の多い場所で仕掛けてくるとは思えないが…それでも、用心しなければいけないと言うのに
 何故、自分は彼女から目を離してしまったのか?
 後悔の念が、黒服に襲い掛かる

(……いや)
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 22:46:42.51 ID:J+TEfyJE0
支援
104初詣の迷子探し(代理):2010/01/06(水) 22:47:38.25 ID:quyzJQ/g0
 そんなものに囚われている場合ではない
 とにかく、彼女を見つけ出さなければ


 −−−−−−−ざわり
 かすかに、己の内部に感じる変化
 都市伝説である自分の中に、今までの力とは、少し違う力が芽生えようとする感覚
 都市伝説…特に、人間と契約した都市伝説は、時として己の能力を進化させる
 その感覚が、近い
 はないちもんめの少女を見つけ出す為に
 彼女を、護る為の力
 それを、掴み取ろうとして……

「…おや、あんたかい」
「−−−−−−っ」

 声をかけられ、集中が途切れる
 だが、力の感覚は掴んだ
 再び集中すれば、その力は手に入る

 …だから
 まずは、声をかけてきた者に、対処しなければ

 聞き覚えのある声に、黒服はゆっくりと振り返る

「……あなた、ですか」

 かすかな敵意を、込めて
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 22:48:49.00 ID:5Xc0l85X0
支援
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/06(水) 22:57:06.50 ID:5Xc0l85X0
支援
107初詣の迷子探し(代理):2010/01/06(水) 23:02:13.93 ID:quyzJQ/g0
「嫌そうな顔しないでくれるかい?」

 その女性は、肩をすくめてきた
 染めた髪、彼女の年齢からすれば、少々若作りの気のある服装
 …黒服は、この女性を知っていた
 できれば、会いたくない相手だ

 …だが、同時に思う
 あの子が傍にいる時ではない今、遭遇できたのは幸運だ、と

「何かご用でしょうか?」
「あんたなら知ってるんじゃないか、って思ってねぇ?…翼の居場所を」
「知りません」

 即答する
 サングラスの下から、黒服は女性を睨みつけた

「知っていたとしても…あなたに、伝える義務はありません」
「何でだい?あたしゃ、あのバカ息子の母親だよ?」
「……あなたは、母親の義務を全うしていたでしょうか?…あなたに、あの子の母親を名乗る資格があると?」

 …この黒服を知っている者ならば、今の黒服の状態に、違和感を感じるかもしれない
 この黒服が、他者に対してはっきりとした敵意を抱く事は少ない
 たとえ、悪人相手であっても、時として同情や哀れみを覚える男なのだから

 …その、黒服が
 一切の同情もなく、ただまっすぐに敵意を向けているのだから

「…嫌われてるねぇ。ま、あのバカ息子もそう思ってるんだろうけど」
108初詣の迷子探し(代理):2010/01/06(水) 23:02:54.55 ID:quyzJQ/g0
 女は困ったように笑う
 しばし、視線が交差し…やがて、女の方が諦めた

「…まぁ、いいさ。あんたから聞き出すのは諦めるよ」

 女が、人波の中に消えていく

「でもねぇ……あたしだって、一応は母親なんだよ。一応、ね」
「………」

 最後の、女の呟きを聞きながらも
 それでも、黒服の敵意は消えなかった
 女の姿を見送り…黒服は、人波から少し、離れる
 そして、すぐ携帯を操作し、「日焼けマシン」の契約者に…翼に、連絡をとることにした
 あの女と彼が遭遇しないよう、一緒に行動した方がいい
 少女を探す効率は下がるが…いや、自分が、「彼女を見つけ出す能力」を手に入れればいいだけだ
 そうすれば、一緒に行動していても、問題はない

「…会わせるべきでは、ありませんからね」

 翼が、この世の誰よりも憎み、忌み嫌い……そして、あの子にとって、最も辛い記憶を呼び戻される
 両親と言う存在に、会わせる訳には行かないのだ



to be … ?
109笛(代理):2010/01/06(水) 23:11:53.80 ID:quyzJQ/g0
【上田明也の探偵倶楽部】

キィ……
キィ………

ずいぶん古い安楽椅子が軋んで揺れて音を立てる。
黒いコートを着た男が暖炉の前でパイプをふかしている。

「どうも皆さんこんにちわ。
 私立探偵の笛吹丁、元人間です。
 人間であった頃の名前は上田明也。
 今はもうその名前で呼ぶ人間など居ません。
 てか中の人の事情で綺想曲シリーズのラストでやろうと思っていた私のトラウマ関係無しになりました。
 まあずばっと言うと『都合悪いので無しでお願いします、先生』ってことです。
 やはり悪人じゃない俺なんて需要ないんですよね。
 そこら辺を作者は解ってないというかなんというか……。
 あ、今俺探偵やっているんですよ。
 安楽椅子探偵。
 調査は都市伝説に全部任せています。
 ほら、こういう仕事していれば殺人鬼の活動もしやすくなるでしょう?
 失せ物探し、素行調査や浮気調査、家出人調査、ストーカー対策、所在調査なんかでも良いし……
 とりあえず何でもできます。
 さて、今日の依頼人が来る時間だ。それでは皆様ノチホド。」

【上田明也の探偵倶楽部1〜笛吹探偵事務所、創設〜】
110笛(代理):2010/01/06(水) 23:19:57.80 ID:quyzJQ/g0
上田明也は椅子から立ち上がりビルの一室、探偵事務所の窓の外の風景を眺める。
彼の眼下には学校町の繁華街が広がっていた。
正月が終わってからしばらく後のこと、上田明也は探偵事務所を開いていたのだ。
少し待っているとノックの音が響いた。
どうやらハーメルンの笛吹きが彼への依頼人を連れてきたらしい。

「マス……、所長。
 お客様です。」
メルの声がドア越しに響く。
「通してくれ。」

ガチャリ

上田明也の座っている所長室に一人の男が入ってくる。
気弱そうな雰囲気で少々頭髪がうすら寂しくなっている。

「こんにちわ、桂様ですね?
 笛吹探偵事務所所長の笛吹丁です。
 法律相談から浮気調査まで何でもしていますけど、今回のご依頼を念のためもう一度お聞かせ下さい。」
立て板に水を流すように喋る。
しかし単に喋るだけでなく相手に喋る機会を与えながら話す。
人間という物は警戒心が強い。
見ず知らずの相手に積極的に話そうとは思わない物だ。
そこで上田明也、この探偵はまず自分から話す。
能弁に雄弁に語る。
自分から話して、その後相手に話をさせる。
相手が話さざるを得ない状況
相手が話すべき状況
相手が話したい状況
これらをゆっくりと作り上げるのだ。
111笛(代理):2010/01/06(水) 23:24:06.22 ID:quyzJQ/g0

ちなみに笛吹丁とは上田明也が探偵をやるときの偽名である。
これ名義の運転免許証とか銀行口座とかも彼は用意していた。
ちなみに名前の由来は笛吹ヒノト→笛吹きの人、という洒落である。
「あ、はい……。
 今回は妻の浮気の証拠を見つけて欲しいんです。
 私は妻の家に婿として入ったんですがその、まあ……。」
「解ります、色々とやりづらいことがおありになるんでしょうねえ?」
「そうなんですよ……。
 私に自由なんて有りません、妻は若い男を連れ込んで知らない振りだし……。
 女房の父がやっている会社に勤めている物ですから強くも言えなくて……。
 だから証拠を集めてなんとか離婚できればと……。」
「苦労なさってますね、解りました。お引き受けしましょう!
 任せて下さい、当探偵事務所は困っている方々の味方です!」
「ありがとうございます。それで料金の方なのですが……。」
「お電話の通り20万円でお願いします。
 調査費用に前金として5万円頂きます。」


「はい、5万円ですね。解りました……。」
桂は鞄から財布を取り出す。
そこで上田明也はすかさず声をかけた。
「この事務所の経理が渋い奴でしてねえ、調査費は前金で出して貰っておけって五月蠅いのですよ。
 自分で持ち出すと怒るんですよ、赤字になるって。
 あいつは困った奴ですよね、ははは。
 俺の私生活にまで口出して来ちゃったり。」
「ああ、解ります解ります!
 私も大変なんですよ……。」
112笛(代理):2010/01/06(水) 23:45:15.85 ID:quyzJQ/g0
会話は人間関係の基本だ。
上田は人間関係において雑談をすることを大事にするタイプらしく、この手の話を引き出したがる。
「やはり月のお小遣いとかも……?」
「そうなんですよ!昼飯代しかくれませんよ!
 しかも幾ら使ったかも細かくチェックされて……。
 これが今の所持金の全てですよ。
 さっさとあいつとは離婚して、出来たお金で自分の商売をやりたいです……。」
「解りました、桂さんの為にも一肌脱がせて頂きます。」
上田は商売用の人の良い笑顔を作り上げる。
上田と桂は立ち上がるとお互いに固く握手した。

さて、それから数日後。

上田明也、探偵“笛吹丁”は対象の女性『桂冴子』の調査に勤しんでいた。
カメラ搭載の鼠や沢山の本体を持ったメルを使った尾行のおかげで上田明也本人はまったく顔を出さずに彼女の情報を集めることが出来ていた。
調査の概要はこうだ。
朝、旦那と子供を送り出すと家事をこなし、日によっては午後から愛人に会っている。
中学生の子供が帰って来るまでには家に戻っているようだ。
旦那には昼飯代をケチっているのに自分はホテルのレストランで友人と昼食を取ることが多いらしい。
113笛(代理):2010/01/06(水) 23:53:42.66 ID:quyzJQ/g0
「ハーメルンの笛吹きの能力の価値は戦闘以外に有るよなあ……。
 あとはこれを渡すだけだぜ?」
完璧にまとめられた調査書を見ながら上田明也は驚いていた。
まさかここまで上手く行くとは彼自身思っていなかったようだ。
この結果が出るまで探偵らしいことを彼“自身”は何一つしていないのだ。
「なんていうか、私も殆ど働きませんでしたよ?」
「お前は尾行をしていただろうが。」
「尾行っていうか私の本体を大量に出していただけですから……。
 尾行っていうか待ち伏せ×100みたいな……。」
「ひどいな、仕事しろよ俺。」
「探偵をしない探偵ですね。」
「まったくだよ。そういや今何時だったっけ?
 仕事の成功祝いにどこか食べに行こうか?」

そう言って上田明也が時計を眺めると丁度十二時だった。
メルの目が輝く。

「私中華料理食べたいです!」
「よぉし、じゃあ行こうか。」

上田明也が車の鍵をポケットから取り出した時だった。
114笛(代理):2010/01/06(水) 23:54:22.22 ID:quyzJQ/g0
ピリリリリリ
ピリリリリリリリリ

急に事務所の電話が鳴りだした。
すかさず上田がそれに応対する。

「はい、笛吹探偵事務所です。
 はい、桂さんじゃないですかどうしたんです?
 ええ、解りました。
 もう調査結果なら出てきていますよ。
 ええ、証拠になります。写真に盗聴もしてましたから。
 解りました。
 場所は……、西区の廃工場群ですね?
 お金用意してきて下さいよ?
 それでは……。」
「どうしたんですかマスター?」
「え、桂さんが調査結果を届けてくれないかだって。
 飯はその後にしようぜ。」
「えー、解りました……。」


不満そうなメルを車に乗せると上田は西区に車で向かったのであった。
115笛(代理):2010/01/06(水) 23:55:03.81 ID:quyzJQ/g0
西区の廃工場群に辿り着くとそこには桂が待っていた。
上田はとりあえず廃工場の中に入って写真の入った紙袋などを彼に渡した。
「女房が私のことを疑い始めた物ですから早く連絡したんですが……。
 これでなんとかなりそうです。
 本当にありがとうございます!」
ぺこぺことお辞儀をする桂。
「いえいえ、それで報酬の方は……。」
「はい、こちらです。」
桂は上田に封筒を差し出す。
彼が数えると前金を除いた報酬がきっちり入っていた。

「今後ともごひいきにして頂けるとありがたいです。」
上田は頭を下げる。
「こちらこそよろしくお願いします!」
それを見た桂も深く頭を下げる、腰の低い人物だ。
仕事の成功に満足して上田が帰ろうとしたその時だった。

ドスンドスンドスン!
上田の頭上に三連続で鉄骨が降り注いできた。
ハーメルンの笛吹きと契約していた為、感知能力に優れていた彼は間一髪の所でそれを回避する。
「なんだいきなり!?」
「畜生!外しちまったか!てめえが探偵だな?」
工場の上から声がする。
116笛(代理):2010/01/06(水) 23:55:44.24 ID:quyzJQ/g0
ドスンドスンドスン!
上田の頭上に三連続で鉄骨が降り注いできた。
ハーメルンの笛吹きと契約していた為、感知能力に優れていた彼は間一髪の所でそれを回避する。
「なんだいきなり!?」
「畜生!外しちまったか!てめえが探偵だな?」
工場の上から声がする。
「な、なんだ!?妻の手の者か!?」
桂は脅えて腰を抜かしてしまった。
「所長、都市伝説です!」
メルが上田に警告をする。
「人を襲う廃工場の都市伝説ってか?やられたな……。
 桂さん、俺から離れないで下さいよ?」
またも飛んでくる鉄骨。
ガキィン!
それを蜻蛉切りで叩き切るとメルに指令を出す。
「さっさとさっきの男を叩きに行ってこい!」
「了解しました!」
メルが工場の外へ走り出す。
117笛(代理):2010/01/07(木) 00:00:05.42 ID:quyzJQ/g0
「え?え?」
桂は都市伝説というものを見たことがないらしくてかなり戸惑っている。
ガキィン!
「今日ここに来ることを誰かに言いましたか?」
鉄骨やブルドーザーを食い止めながらわざとよそ見して桂への攻撃を通してみる。
「うわぁあ!!」
彼がかすり傷を負ったところから考えるとどうやら彼が契約者ではないらしい。
「いや、言っては居ないが……。もしかしたらつけられていた?
 ていうか笛吹さん、あれはなんなんですか?」
腕のかすり傷をおさえながら桂は上田に問いかける。
「ざっくばらんに言うと超能力者ですね。」
「はぁ?超能力者なんて居るわけ無いじゃないですか!
 そのうえさっきの女の子、助手の方ですか?危ないんじゃないですか?」
ガキィン!
ガキィン!
鉄骨の性質上、移動する際にはどうしても大きな音が出る。
また、巨大な物である為かあまり複雑には動かせないらしい。
ハーメルンの笛吹きの能力を得て聴力があがっている上田にはその軌道を簡単に見切ることができる。
桂の目の前で鉄骨を破壊しながら上田は解説を続ける。
118It is a red room like blood. :2010/01/07(木) 00:00:41.26 ID:8+jrml0k0
コノ世ハ醜イ
故ニコノ世ニ生キルモノハ全テ醜イ
奴ラハ散ッテコソ美シイ
ダカラ俺ハ何度デモ問ウ

「赤い│は好きですか?」
119笛(代理):2010/01/07(木) 00:02:40.93 ID:QTk3bBG70
「超能力があり得ないなんて言いますけどね、それを言ったら貴方の目の前で鉄骨をただの小刀で切り裂いている男だってあり得ないでしょうが。
 都市伝説ってあるじゃないですか?
 まああれが現実に有るような物だと考えて下さい。
 それとあの女の子も立派な超能力者、みたいな物ですから安心して下さい。」
「は、はぁ……。」
すこし強い調子で上田が言うと桂は大人しくなってしまった。

しばらく上田が待っているとドスン、という大きな音が鳴って鉄骨の襲撃もやんだ。
どうやらメルが廃工場の契約者を捕まえたらしい。
勢い余って殺していないことを上田は願っていた。
彼は彼で廃工場の契約者に聞きたいことがあるらしい。

「静かになったみたいですね、行きますよ桂さん。」
「は、はい……。」

上田は気絶した廃工場の契約者をしばりつけて車のトランクに放り込むと桂を家まで届けた。
探偵事務所に辿り着くとまだ気絶している廃工場の契約者をたたき起こす。
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 00:03:21.97 ID:QTk3bBG70
お、支援の構え!
121笛(代理):2010/01/07(木) 00:24:35.48 ID:QTk3bBG70
「う、うう………。ここはどこ!?」
キョロキョロと辺りを見回す廃工場の契約者。
「よう、起きたか。洗いざらい喋って貰うぞ。」
「げげ、探偵!私はお金であの男の妻に雇われただけなんだ!」
「ほうほう、そうか……。ところでさっき身体を調べさせて貰ったんだが……。
 お前、女だろう?」
上田は廃工場の契約者の胸をつついてみる。
「ひぃっ!!や、やめろお!!」
「安心したまえ、俺の都市伝説はもう買い出しに行っている。
 俺とお前の二人きりだ。」
「それが駄目なんだろうが!この前の電子レンジの契約者と言い今回と言い……
 ちょっと暴れていただけなのにぃ〜……。」
「安心しろ、俺はロリコンだ。
 残念ながらお前は幼女とはちょっと違うからな。」
「うわぁ、寄るな変態!」
「ところでさっき電子レンジとか言っていたな?
 その話ゆっくり聞かせて貰おうか。
 先に名乗っておくけど俺はハーメルンの笛吹き、巷を騒がす殺人鬼でもある。
 さっさと話せば簡単に楽にしてやれるから安心しろよ☆
 昼は探偵、夜は殺人鬼、してまたその正体はロリコン野郎。
 お前みたいな人を襲う都市伝説は容赦しないぜ?」
はっきりと名乗った、まあつまりはそういうことなのだろう。
「え、……誰か助けて〜!!」
“そういうこと”に気付いて悲鳴をあげる廃工場の契約者。
「お前は廃工場が無いと只の人間だからなあ!ゆっくりお話ししようぜ!!
 ハァーッハッハッハッハッハ!」
いかにも悪そうな高笑いが事務所に響く。
とりあえず、上田明也の始めての探偵業務は思わぬ形でおまけを生み出しながら成功したのであった。
【上田明也の探偵倶楽部1〜笛吹探偵事務所、創設〜 fin】
122笛(代理):2010/01/07(木) 00:25:15.91 ID:QTk3bBG70
場面は最初の暖炉の有る部屋に戻る。
「どうも、上田明也です。今回のお話は楽しんで頂けましたか?
 廃工場の契約者の彼女ですが聞きたいだけ情報聞いた後さっさと始末させてもらいました。
 もしかしたら生きているかもしれないので作者の方々は瀕死のところを保護するなりなんなり好きにして下さい。
 あの電子レンジの二人組の消息も聞き出せましたしなかなか楽しい思いが出来ました。
 それよりも楽しいッスね探偵業務。世の為人の為になるのはとても心地がよい。
 もし学校町でお困りの際は親切丁寧秘密厳守がモットーの笛吹探偵事務所にご一報下さい。
 相談次第では料金もリーズナブルにできると思いますよ?
 働くのは鼠ですから、ははは。」
笑いながら立ち上がると上田はウイスキーの瓶をどこからともなく持って来る。
「それでは初仕事が終わったので一人で祝杯でも挙げたいと思います。
 さようなら、さようなら。」
上田明也はそう言うと事務所の奥に消えていった。

【上田明也の探偵倶楽部 fin】
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 00:26:49.54 ID:xYDd4mAKO
支援
124笛の人と上田に焼き土下座(代理):2010/01/07(木) 00:29:10.38 ID:QTk3bBG70
 ぺたし
 ぺたぺた
 街中にポスターを張っている男と少女
 …誰がこれを知るだろう
 この男が、街を騒がせる連続殺人鬼「ハーメルンの笛吹き男」であると

「さて、メル。あとどれくらいポスター残ってる?」
「ぶっちゃけ、まだ相当残ってます。調子こいて印刷しすぎですよ。マスター」
「そ、そんな事ないぞ?うっかり印刷枚数桁間違えたとか、そんな事はないからなっ!?」
「間違えてたんですね。何だか多いなー、って思ってたんですけど、突っ込むべきだったんですね、止めるべきだったんですね、あの場面は」

 …自分の契約都市伝説になんだか突っ込みを受けたりしているが、まぁ、この男は連続殺人犯なのである
 間違えなく善人ではなく、しかし、完全な悪人か?と問われれば、それを断定する事は誰にも出来ない
 いっそ愛おしい程に狂っているようでいて、しかし、狂ってすらいない
 最凶にして最悪で、しかし身内には優しい、そんな殺人鬼

 ぺたぺたぺたし
 街中に、ポスターを張っていく二人
 …許可?何それ、美味しいの??
 とまれ、そうやってポスターを貼っていっていると

「…む、メルよ、見ろ」
「?……幼女ですね」
「あぁ、幼女だ」

 ロリーーーン
 上田の視線の先、そこに、一人の幼女…いや、幼女と少女の中間、と言った所か
 そんな少女が歩いていた
 ふりふりのゴスロリ服に、黒いレース生地の日傘
 俗に言う美少女であろう
125笛の人と上田に焼き土下座(代理):2010/01/07(木) 00:29:50.83 ID:QTk3bBG70
 こんな曇り空の日に、日傘を差しているのはやや不自然だが…

「とりあえず、友好的に接触しようと思うんだ。人気もないし」
「軽く誘拐フラグなセリフですよね」

 …記述を忘れていたが、この上田と言う男、ロリコンである
 契約都市伝説であるハーメルンの笛吹きこと、メルとは性的な意味でもナイスパートナーである

「そんな訳で…これを身につけようと思う」

 すちゃり
 取り出しますはネコミミカチューシャ
 上田は、躊躇いなくそれをつけた
 「持ち歩いてたんですか。持ち歩いてたんですか、それ」と言うメルの突っ込みはひとまずスルー
 上田はネコミミカチューシャをつけた状態で、幼女に近づこうとして

「−−−−−−−!」

 ぴくり
 気配と視線を感じて…足を、止める
 メルと一緒に、ほぼ同時に視線の先に振り返った

 そこにいたのは、一人の女
 すらりと背が高く、豊かな胸を持っている
 正直、上田の好みではない…いや、それは関係ないとして、上田もメルも、面識がない相手だ
 だと言うのに、じっと上田を見つめてきている…その様子に、二人は警戒する

「…何か用かにゃ?」
「マスター、やめてくださいその口調」
126笛の人と上田に焼き土下座(代理):2010/01/07(木) 00:30:36.61 ID:QTk3bBG70
 ネコミミをつけている状態だったので、うっかりと口調が「にゃ」になってしまった上田
 仕方ない、ネコミミを外すか…と、ネコミミカチューシャに手を伸ばそうとして

 気づく
 女性の様子が、おかしい事に

「…………い」

 何か、呟いている

「……ネコミミ……かぁいい……」
「は?」

 二人が、その呟きを聞き取った、その瞬間


 女の姿が消えた
 上田の姿が、消えた


「−−−−−え!?」

 慌てて、辺りを見回すメル
 上田も女も、すぐに見付かった

「お、おおおおおお、お持ち帰りぃいいいいいいいいいい!!!!」
「…………っな!?」

 女に抱えられている上田
 決して小柄でもないし細身と言う訳でもない上田の体を、女はあっさりと抱えていた
127笛の人と上田に焼き土下座(代理):2010/01/07(木) 00:31:17.00 ID:QTk3bBG70
 そして、なんとも幸福そうな顔で、走り去る
 …まさしく、お持ち帰り

 一瞬の事で、対応しきれなかったのだろう
 そして、状況の把握が遅れているのだろうか
 上田は、固まったままだ

「ッマ、マスター!?」

 慌てて、メルは女を追いかけていく
 しばし…女とメルの、追いかけっこが続いた



 −−−−数分後

「いやぁ、御免ねぇ」

 申し訳無さそうに、女は笑う
 上田は、解放されている
 メルが、女を警戒して見上げながら、上田にしっかりとくっ付いていた

「まぁ、何というか、言い訳を聞こうか」
「ネコミミ青年なんて言うかぁいい生き物を見つけて…正気を失ってしまっていたわ」
「むしろ聞きたくなかった!?」
「普段はそんな事ないんだけど…ネコミミをつけたあなたが、あまりにもかぁいいものだから」

 ほぅ、と至福の表情を浮かべる女
 あぁ、変態だ
 上田とメルは、即座に結論を出した
128笛の人と上田に焼き土下座(代理):2010/01/07(木) 00:32:57.19 ID:QTk3bBG70
「…ねぇ、今度は連れ去らないから、またネコミミを」
「だが断る」
「…愛でたいだけなのに」

 むぅ、と不満そうな女性
 はっきり言って、却下である
 と言うか、これ以上関わりあいたくない

「ま、仕方ないわよね…せめて、お詫びしたいんだけど。そのポスター貼るの、手伝おうか?」
「おや、それはありがたい」

 ぶっちゃけ、二人で貼っていくにはきつい量である
 いや、一応メルを増やしてそれにも貼らせているが、それにしてもきつい
 どう考えても印刷しすぎです、ありがとうございました

「それじゃあ、お任せしようか。ちなみに、俺は笛吹丁。探偵だ」
「笛吹さんね、探偵かぁ…カッコイイわね」

 くすりと笑う女
 そして、名乗ってくる

「それなら…私は「追撃者」と名乗ろうかしら?」
「追撃者?」

 首を傾げたメルに、女はそうよ、と笑った

「一部の筋の人から、そう呼ばれてるの」

 くすくすと、女は笑っている
 嘘をついている様子はない、真っ直ぐな言葉
129笛の人と上田に焼き土下座(代理):2010/01/07(木) 00:33:37.57 ID:QTk3bBG70
「こちらは名前を名乗ったのだから、そっちも名前を名乗って欲しかったな」
「あら、だって」

 …ポスターを抱えたまま
 くすり、と女…「追撃者」が笑う

「だって、あなた、笛吹丁って、本名じゃないでしょ?」


 この、瞬間
 場の空気が、凍りついた


 だが、追撃者はそれを基にした様子すらなく
 ポスターを抱えて、この場を後にしようとする

「じゃあね、笛吹さん。今度会えた時は、本当の名前を教えてね?」

 くすくすくす
 笑いながら、女は上田に背を向け、小走りにかけていく

 …今、なら
 背後から一撃を加えられる
 人目も、ほとんどない

「どうします?マスター」
「………いや」

 一瞬、村正に手を伸ばす
 しかし…すぐに、放した
130笛の人と上田に焼き土下座(代理):2010/01/07(木) 01:04:11.66 ID:QTk3bBG70
 追撃者の正面から、一人の男が彼女に近づいていっていたからだ

「あら?どうしたの?マステマ」
「どうしたの?じゃないだろ…酷くね?かぁいいセンサーが働いたからって、デート中の彼氏置き去りとか酷くね??」

 …何だか、男に同情したくなるような、生暖かい視線を送りたくなるような会話が聞こえてきた
 ……あぁ…苦労、してるんだな……
 男と追撃者は、あっと言う間に二人の視線から消えてしまって
 後には、残りのポスターを抱えた上田とメルだけが残されたのだった




 −−−これが、ハーメルの笛吹きと追撃者のファーストコンタクトである
 後に、彼らがどんな再会を果たすのか
 それはまだ、誰にもわからない




to be … ?
131占い師と少女(代理):2010/01/07(木) 01:33:02.47 ID:QTk3bBG70
 ペタペタ
 ペタペタ

「………………」
「………………」

 ペタペタ
 ペタペタ

「………………」
「………………」

 ……この状況は一体何だろう。
 占いの館のポスターを貼っている途中。
 たまたま他の業者の人のポスター貼りに出食わしてしまったわけですが……。

「………………」
「………………」

 ペタペタ
 ペタペタ

 片や占いの館のポスター。
 片や私立探偵事務所のポスター。
 そしてそれをただ黙々と貼り続ける私と一人の女の子。
132占い師と少女(代理):2010/01/07(木) 02:07:59.76 ID:QTk3bBG70
(…………えっと)

 リーディングの能力を使って、ちらりと女の子を見れば

(…………ハーメルンの笛吹き)

 そこから入ってくる情報は、彼女が都市伝説であるという事実。

 ハーメルンの笛吹きって、こんな幼い子供だったんでしょうか。
 確か元の話では青年だったはずじゃないんでしょうか。
 そういえば、マッドガッサーの一件で出会った男の人がハーメルンの笛吹きと契約していたような。
 しかも、組織の人に追われていたような。

(…………………)

 ぐるぐると、頭の中を渦巻く疑問。
 ペタペタと、ただただ貼られて行くポスター。
 それは、ポスターの枚数が尽きるまで続いた。



【終】
133ビター・スウィート・ビター・ポイズン(代理):2010/01/07(木) 02:13:30.03 ID:QTk3bBG70
【初詣小ネタ 〜すいません、小ネタすぎて厨2病なサブタイ思いつかなかった 〜】


 世界は、50%以上のビター・ポイズンと10%以下のスウィート・ポイズン
 そして、それ以外で出来ている
 それ以外は、ビター・ポイズンでもなくスウィート・ポイズンでもない
 しかし、そのどちらにもなりうる存在
 苦い毒のような存在でもなく、甘い毒のような存在でもなく 
 毒でも薬でもない、そんな存在
 それは、たとえ困っている人を見かけても見ているだけであり、スウィート・ポイズンのように手を差し伸べるようなことは決してしない
 いや、できないだけかもしれない
 手を差し伸べる、たったそれだけの事にも勇気というものは必要であったりするのだ
 だから、決して彼らを責めるなどと言う事はできやしない

 よって、この俺、祐樹 ペリシャは、この危機に一人で立ち向かわなくてはならないのだ
 誰の力も借りてはいけない
 たった一人で、戦わなければならない


 −−−−ククージィと逸れたという、この現実から


続く予定はない
134はないちもんめの友人(代理):2010/01/07(木) 02:14:22.33 ID:QTk3bBG70
さてさて、少女は連れの男に抱えられてしまっている
「心外だなぁ・・・そんなに私が信用できない?」
「「できない」」
即答か
「君たち失礼だな、君たち失礼
私がまるで変質者みたいじゃないか」
「みたいじゃなくてそうなのよ」
「何となくヤバい気がすんだよ、お前からは」
「君はともかくロリコン君にまで言われたく無いな、君こそ変質者じゃないか
それに私は変質者じゃないよ、仮に変質者だとしても変質者と言う名の淑女だ・・・
ただ、ちょっとした異常性癖に目覚めただけのね」
「「思いっきり変質者じゃない(か)」」
物凄く冷たい視線・・・あぁ
「良いな、実に良い・・・もっと蔑む様な視線で見てくれ、そっちの方が私は悦べるから」
「変態だぁぁぁぁぁっ!?」
変質者から変態に格上げされてしまった・・・むぅ
135はないちもんめの友人(代理):2010/01/07(木) 02:15:02.60 ID:QTk3bBG70
「ロリコン君・・・君のお嬢さんとはもう少し深く話した方が良さそうだ・・・ちょっと貸してくれないか?」
「断「これでも?」
取り出したのは3年ほど前に(盗)撮った友人の写真
「とうぜんだろう」
「ちょっと!?口と行動が真逆よ!?」
写真を受け取り女の子を私に差し出す
「では、人通りの無いあっちの茂みに行こうか、何心配は要らない・・・野外も中々良い物だ」
「あんた本当に小学生!?」
「あぁ、今年から6年生だが何か問題が?」
「赤い靴助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
「スク水ハァハァ・・・」
「ロリコン君は写真に夢中らしいな・・・良し何も問題ない」
「問題しか無いわよ!?誰かァァァ!!!」
赤い靴の契約者の叫びとほぼ同時に
タタタッ と何かが走る音が背後から聞こえ
振り返ると同時に
「アホかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
唯一無二の親友
はないちもんめの契約者の蹴りが私の顔面にめり込んだ
136はないちもんめの友人(代理):2010/01/07(木) 02:15:45.00 ID:QTk3bBG70
「こんな昼間から野外ぷれいとは最近の子供はすすんでるのう」
「いや、コイツがおかしいだけだから・・・って赤い靴何でアンタがその写真持ってるのよ?!」
「貰った・・・ってこの写真の子、お前じゃねぇか!?」
「3年位前のだけど・・・・・・友」
「何かな?あの跳び蹴りで私のLPはもう0だ」
「もっぺん死ね、そして帰ってくるな・・・買ってうれしいはないちもんめぇぇぇ!!!!」
「ノォォォォォォォォォ?!」
続くのか?続けるのか?
137闇子さん達と黒服と初詣(代理):2010/01/07(木) 02:50:50.04 ID:QTk3bBG70
「ひどい人混みね……」
闇子さんは呟いく。
流石は元旦といったところか、神社の境内は鮨詰め状態一歩手前というところまで達していた。
「お正月だからね。しょうがないよ」
闇子さんの隣にいた少年はそう言い彼女に手を差し出した。
「……なによこれ」
闇子さんはその差し出された手を指差す。
「はぐれたら大変でしょ」
下心のない純粋な笑顔がそこにあった。
「…そ…そうね、はぐれたら大変よね」
闇子さんは照れながらも少年の手を握る。

「そうですね。はぐれたら大変ですからね」
そう言い少年の反対側の手を握る謎の人物。
「あ、くぅちゃん」
そこにいたのは、彼らの担当の小さな黒服であった。
138闇子さん達と黒服と初詣(代理):2010/01/07(木) 02:51:31.56 ID:QTk3bBG70
「あ、あ、あ、あんたっ!なんでここにいんのよっ!」
闇子さんは、かなり驚いているようだ。
「あけましておめでとう」
それにひきかえ、少年は特に驚いた様子もなく黒服に新年の挨拶をすませる。
「あけましておめでとうございます」
黒服も少年に頭を深々と下げ新年の恒例行事をすませたようだ。
「ちょっと!なに無視してんのよっ!」
黒服はその声で初めて闇子さんのほうへと顔を向けた。
「いたのですか」

黒服に、新年初のげんこつがおみまいされた。
139闇子さん達と黒服と初詣(代理):2010/01/07(木) 02:52:12.22 ID:QTk3bBG70
闇子さん達はその後、黒服が何故この神社に来たのかという説明をうけていた。
「ようするに迷子探し?」
「はい」
黒服は少年の質問に即座に答えた。
「迷子って…誰が迷子なのよ」
「組織の上層部の者らしいです」

数瞬の間。

「いや…あんた……組織の上層部って……迷子って…」
なんとも呆れた様子の闇子さん。
黒服はその空気を気にせず話を続けた。
「見つけだすのは困難だと思います。
理由としては、この人の数、私の捜索能力、そしてなにより……」
「何か問題でもあるの?」
少年が尋ねる。
「私はその上層部との面識がありません」

闇子さんは頭を抱えた。
本物にこの組織は大丈夫なのだろうかと……


140花子さんとかの人(代理):2010/01/07(木) 02:53:18.42 ID:QTk3bBG70
「うむ、美味いのぅ」

 もぐもぐ
 チョコバナナを食べて、満足そうなゴスロリ日傘の少女…ヘンリエッタ
 なお、赤い靴とはなんちもんめの友人をガッカリさせる為…と言う意味だけではないのだが、切り分けられた食べやすいチョコバナナを購入した
 はないちもんめと赤い靴の契約者も、同じ物を食べている
 ついでに言うと、この度の金の出所は赤い靴の契約者である

「…それにしても、あなた、本当に屋台とか知らないのね」

 ヘンリエッタの世間知らずぶりに、思わず少女は呟いた
 世間知らずにも程がある
 そう言いたくなるほどに、ヘンリエッタは知らない事が多すぎる
 屋台の商品を、どれもこれも珍しいそうに見て周り、好奇心を隠そうともしない

「妾は、めったに外に出してもらえぬのじゃ。ハツモーデも、今回が初めてじゃ」
「…外に出してもらえない?」

 赤い靴の呟きに、そうじゃ、と答えるヘンリエッタ
 その現状に、不満を抱いているような表情だ

「誰もかれも、理由をつけて妾を閉じ込めてくるのじゃ。妾ももっと外に出て、仕事がしたいのに」

 もぐ、とチョコバナナを飲み込むヘンリエッタ

「もっと外に出て、現場を知りたいのじゃ」

 …部下たちの事を理解する為にも
 小さく呟かれた言葉は、真冬の冷たい空気の中に、静かに溶け込んでいった
to be ??
141巫女さんのアルバイト・正しい続き(代理):2010/01/07(木) 02:54:21.71 ID:QTk3bBG70
ぞわり、と背中を走る悪寒に、三面鏡の少女は変な声を上げて身を震わせる
「な、なんかものっそい寒気がっ!? 変な妄想の材料にされたような!?」
巫女のアルバイトが集まる年末年始、境内には初詣客とは微妙に違うカメラ持ちの人がちらほらと見受けられる
アルバイト巫女の面々の対応も、ポーズを決める、スルー、注意、鉄拳制裁など様々だった
「ん、どったのカナちん」
「あーいや、ちょっと知り合いに迷子について聞かれちゃって」
「あはは、この町の子供は迷子でも平然と屋台回ってたりするからね。迷子って空気出さないでしっかり遊んでるかもよ?」
「そんなもんですかねー」
「そんなもんよー? てかさっきの黒い人は何だね、彼氏?」
「違いますよー、別のバイト……うん、バイトかな? そっちの上司っていうか先輩の人で、すっごい美人で声の綺麗な人と仲が良いんですよー」
適当に誤魔化す事にしたのだが、概ね嘘は言ってない
「ふーん……で、どんなバイト?」
間合いを取ったつもりが即座に詰められる
「あーいや実はあたしはあんまり戦力になってないもんで、具体的な内容はー」
「いやさー、あの男の人? なんていうか……どう表現したもんかなー」
先輩巫女は色々首を捻りながらあれこれ言葉を探っているのだが
「……まあいいや。とりあえず初見の印象だから気にしないでね?」
その瞳から、表情から、一瞬だけ熱がすぅっと引いていく、そんな印象の顔で発した、抑揚も変化も何も無い直球の一言
「気をつけてね」
「ふぇ? いや、確かにちょっと変な人だけど、良い人ですから大丈夫ですよ」
それに気付いたのか気付かないのか、いつもの調子の笑顔で手をぱたぱたと振る少女
「んー、まあ気にしないで。私にはちょっと胡散臭く見えたもんだから。水商売系の元締めとかそんな感じ」
「あ、あはは、大丈夫ですって、健全なお仕事ですからー」

142巫女さんのアルバイト・正しい続き(代理):2010/01/07(木) 03:00:34.12 ID:QTk3bBG70
たまに命の危険なんかはありますが
そんな言葉はぐっと飲み込み、接客用の笑顔を浮かべる
「それじゃ、売り場の方戻りますねー」
「あーい、頑張れー」
明るい笑顔で売り場に出る少女を、のんびりした調子で送り出す先輩巫女
「ん〜……なーんかあんまり良い印象無いっていうか」
ちろり、とその舌先が蠢き唇を湿らせる
「迷子の事とかは本当なんだろうけどなー、なんていうか……嘘吐きのにおいがすんのよねー」



バイトだと出店方面は行けない事に気が付いた
ソフトタッチな触手都市伝説を模索中してるものの
結局エロくする脳のお陰で難航中……いやエロくない触手って存在意義無いですよね?(ひでぇ)

先輩巫女
ここ何年かアルバイト巫女としてよく働いている女子大生
特に都市伝説と契約もしておらず存在も知らないが嘘に対して敏感
好奇心で殺される猫タイプ

カナちん
三面鏡の少女の事
本名は逢瀬佳奈美(おうせ・かなみ)
143はないちもんめ(代理):2010/01/07(木) 03:01:14.49 ID:QTk3bBG70
「外に出たいかぁ・・・気持ちはわかるな」
「うむ?」
「私も昔は家に監禁されてたからね・・・」
「監禁・・・?」
赤い靴の契約者が首を傾げているがあえて無視する
「私にとって外はテレビとか窓とかベランダで見る事ができる景色でしかなかった」
「・・・・・・」
某オルフェノクにでもやられたかのようになってた友も復活してる
相変わらず回復の早い奴
「だけど私はこうして自由を得たわ、色々な悪行に手を染めたけどね・・・」
最後の一個を口に含んで立ち上がる
144はないちもんめ(代理):2010/01/07(木) 03:01:55.59 ID:QTk3bBG70
「外に出たいなら出れば良い・・・貴女は見た感じいい所のお嬢様みたいだし出ようと思えば出れるんでしょ?」
「だが、周りの者が・・・」
「周りの奴なんてどうでも良いじゃない、それとも周りの奴の言う事を聞いて・・・そいつ等の言いなりになって過ごす人生で貴女は満足してるの?違うでしょう?」
難しい顔したヘンリエッタと向かい合う
「外にはこんなに面白い物がたくさんあるわ・・・どうせ、一度だけの人生、沢山の事を知って沢山楽しんだ方が得でしょ?」
そう、あの時両親を殺して外に出なければ私は夏祭りも、秋祭りも、ハロウィンも、クリスマスや正月、初詣だって知らずに終わっていたかもしれなかった
でも、私は外に出て、友と出会って、沢山の事を知った
黒服や翼にも出会えた
「一人で出るのが難しいなら私が出来る範囲で手伝ってあげても良い・・・どう?」
ヘンリエッタに手を差し出す
「・・・考えておく」
「そう」
そっぽ向かれてしまったが・・・まぁ、嫌われたわけじゃないでしょう
うん
「流石元ひきこもりは言う事が違う「買って嬉しいはないちもんめぇぇぇ!!」ノォォォォォッ?!」
続く?
145笛(代理):2010/01/07(木) 03:02:36.60 ID:QTk3bBG70
【上田明也の探偵倶楽部】
シャーロック・ホームズのコスプレをした男が安楽椅子に腰掛ける。
キィ、キィ、と椅子の軋む音色。
「こんにちわ、皆さん。
 誰もが愛する名探偵笛吹丁です。
 こんばんわ、皆さん。
 誰もが愛する殺人鬼上田明也です。
 いつも考えて居るんですが探偵ってなんなんでしょうね?
 例えば医者は人を救うし軍人は国を守ります。
 商売人は物を売るだろうし政治家は天下国家を論じるでしょう。
 そう、多分だけど探偵は真実なんて語らない。
 探偵は事実を語るんだ。
 更に言えば……、殺人鬼は愛を語るに違いない。」

安楽椅子から立ち上がると上田明也は所長室のドアを開き、事務所へ向かう。

「良いフレーズじゃないかな?
 殺人鬼は愛を語る。
 韻も含みも無いシンプルな言葉が胸を打つ。
 法則の無さが何時だって歴史を作り上げるんだ。」
【上田明也の探偵倶楽部2〜殺人鬼は愛を語る〜】
146笛(代理):2010/01/07(木) 03:03:17.00 ID:QTk3bBG70
「……というわけなんです。」
「成る程ねえ、お姉さんが帰ってこないと。」
「大学に行くようになってから帰りがどんどん遅くなって……。
 それである日友達と遊びに行くって言ってから帰ってこなくなりました……。」
笛吹丁は探偵として目の前の少女から依頼を受けていた。
少女の姉がこの町のとあるクラブに遊びに行ってから帰っていないらしい。
ちなみにこの少女の姉が失踪した日、上田明也という殺人鬼がそのとあるクラブで人を殺して回って居る。
彼が少女の姉を手にかけている可能性もある。
探偵・笛吹丁は心を痛めていた。
「ふむ………。
 行方不明人の捜索は大変なんだけど……、お金かかるよお姉さん。」
「貯金なら有ります!どうしても姉を捜して欲しいんです!」
「そうか……、ちなみに幾らぐらい有るのかな?」
「10万円、位……です。」
「あのねえ、こういうのって普通稼働時間×一万円くらいかかるんだよ。
 十万円だと十時間かな?
 その時間でお姉さんを見つけられると思うかい?」
「う………。」
言葉に詰まる少女。
そんなこと、少女だって解っていたはずだ。
しかし笛吹丁は容赦しない。
147笛(代理):2010/01/07(木) 03:03:57.37 ID:QTk3bBG70
「恐らくこのような非生産的なことにお金を使う暇があったら自分の為に貯金する方が良い。
 チラシを見てきたんだろうけどお互いの為に俺は半端な仕事をするつもりはないな。」
「そんな………。
 どこでも相手して貰えなくてもうここしか無いんですよ!
 だからお願いします!何もやらないわけにはいかないんです!」
少女が頭を下げる。
笛吹はそれを見て困った顔をしていた。
「うぅ……。仕方ない。
 調査費用でまず5万円貰って、もしお姉さんを見つけられたら残りの5万円を貰う。
 それで良いかな?」
「……受けて下さるんですか!?」
「人の心を持っていたらこの状況では断れないでしょうに……。」
やれやれ、といった感じでため息混じりに笛吹丁は答える。
「ありがとうございます!
 両親も諦めていたのに……本当にありがとうございます!」
「連絡先教えておいてくれるかな、もし見つかった時には連絡したいから。」
「はい!」
そういって少女、――――――向坂境は嬉しそうに笛吹丁に自分の携帯の電話番号を教えた。
148笛(代理):2010/01/07(木) 03:04:37.77 ID:QTk3bBG70
少女が去ってから、笛吹丁、否、上田明也は後ろに居るらしい誰かに話しかけた。
「なぁ、どう思うよお前は?」
「まあお前の口からそんな言葉を聞けるとは思わなかったかな?
 ずいぶん人情派の探偵の演技が板についているじゃないか上田明也。
 そもそも無理ってなんだ、私が居るんだから楽勝じゃないか。
 私の目から逃れうる一個人がこの世界に存在すると思っているのか?
 それとも私に手伝わせてくれないのか?」
扉を開けて出てくる赤毛の少女。
彼女の名前は橙・レイモン。
ラプラスの悪魔とウォーリ―を探せ!という二つの都市伝説と契約している少女だ。
「言ってくれるな橙。お前はまだ都市伝説を使うのがきついんじゃないのか?」
「何を言っている、それ位手伝うよ。」
フ、と鼻で笑うと最近膨らんできた胸をトンと叩く橙。
「なぁ橙。」
「なんだ上田明也。」
「お前は将来ロリとはほど遠いキャラクターになりそうだな。」
橙の胸元を凝視しながらなげく上田明也。
「安心しているよ。それともその前につまみ食いするか?」
不敵に微笑む小六ロリ。
149笛(代理):2010/01/07(木) 03:05:18.10 ID:QTk3bBG70
「残念ながら俺は純愛派だ。つまみ食いなんて不埒な真似は美学に反する。
 さっさとさっきの女の子のお姉さんを探してくれ。」
あっさり誘いを断る上田明也。
彼は純粋な愛に生きる男なのだ。
「本当に上田明也は探偵の仕事をしないな。」
「よく言われる。」
「誰に?」
「自分に。」
「一人じゃないか。」
「それが俺にとっての全員だろうが。」
「やれやれ……。じゃあ始めるぞ。」

橙が安眠用のアイマスクを目につけて椅子に座り込む。
「探す人間の名前は?」
「向坂垣間だな。」
「サキサカカイマね、噛むぞ、三階くらい言えば十中八九噛むぞ。
 身長とかって解るか?」
「身長は160cm前後だとよ。」
「ふむ……。」
そのままポケ―っと椅子に座り込む。
恐らく彼女の都市伝説を使っているのだろう。
150笛(代理):2010/01/07(木) 03:06:41.55 ID:QTk3bBG70
「お!」
橙が何かを見つけたらしい。
「どうした橙。」
「意外と近いところに居るぞ、学校町の東区の住宅街だ。」
「え、死体じゃないの?」
上田は最初から死んでいる物と決めていたらしい。
探偵にあらざる態度だ。
「ああ、生きて居るぞ。割と元気だ。」
「じゃあ準備をしたらさっさと迎えに行くか。」
「なんか都市伝説と契約しているみたいだから気をつけろよ?」
「そうか、その話も聞かせてくれ。」
「ああ、それがだな………。」


数日後、ハーメルンの二人組はフィアット500に乗っていた。
笛吹丁とメルは東区のとある住宅街、その中にあるアパートに向かっていたのだ。
「マスター、お姉さんが契約している都市伝説ってなんなんですか?」
「スナッフフィルム。
 効果は解らないけれど仕掛けられたカメラに一度写るとアウトって考えた方が良いと思うぞ。」
「もしいきなり襲いかかられたらどうしようもないじゃないですか?」
「そう思うだろう?
 ところがどっこいなんだよね。
 良いか?」
何かをメルに耳打ちする上田明也。
それを聞くとメルは納得したように手を打った。
151笛(代理):2010/01/07(木) 03:07:23.50 ID:QTk3bBG70
数分後。
フィアットをアパートの前に止めると二人は橙に伝えられた部屋の前に来る。
「じゃあ行くぞメル。お前は少し隠れていろ。」
「はい、解りました。」
アパートの陰に隠れるメル。
そして笛吹丁はチャイムを鳴らした。

ガチャリ
なんの警戒もなくドアを開けて中から出てくる女性。
「すいません、只今化粧品のアンケートをしているのですがお時間宜しいでしょうか?
 お肌にやさしい自然由来の製品を使った物についてでして………」
化粧品のセールスマンになりきって話をする笛吹丁。
適当すぎるが結局顔さえ解ればいいのだ。
それが向坂垣間らしき人物だということが解れば向坂境にそれを伝えれば良い。
「あ、丁度良いわ。
 化粧品変えようかと思っていたんですよ!
 お茶も入ってますからちょっとお話聞かせてくれないかしら!」
そう言われて部屋に招き入れられる笛吹丁。
あまりに簡単に家に入れる物だから逆に彼の方が警戒していた。

「あの……、ずいぶん沢山カメラが有りますね?」
「あらあらうふふ、これ趣味なんですよ。」
「は、はぁ……。」
リアルにあらあらうふふなど聞くとは思っていなかったのだろう。
笛吹丁はちょっと退いていた。
152笛(代理)2人目:2010/01/07(木) 03:28:52.62 ID:rG39ku2Z0
「化粧水とか扱ってますかね?出来ればそういう物が欲しいんですよ。」
「はい、有りますよ。ああ、あとこちらのアンケートもよろしくお願いします。」
「あら、忘れていました。」
目の前の女性はアンケートに名前を書き込む。
間違いなく向坂垣間と書いているところが彼の目に見えた。
アンケートを書いている間、しばらく会話が無くなる。

「そう言えば、最近都市伝説みたいな殺人事件が有ったらしいですね。」
「え?」
先に口を開いたのは向坂垣間だった。
「事件の発生現場ってクラブだったらしいんですけど女性が一人買い物に行っている間にみんな殺されていたそうです。
 世間ではハーメルンの笛吹きと呼ばれる殺人鬼の犯行だって言われています。」
「そ、それがどうしたんですか?」
「その女性って……、私のことなんですよね。
 待っていましたよ、殺人鬼サン。」
笛吹丁はたち上がって逃げようとする。
だが身体の自由が効かない。
153笛(代理)2人目:2010/01/07(木) 03:30:55.96 ID:rG39ku2Z0
「――――――これは!?」
身体の自由を奪われて焦る笛吹丁。
「私の都市伝説『スナッフフィルム』はカメラで撮影されている相手の動きを問答無用で止めてしまいます。
 相手はカメラの電池が無くなるか死ぬまで動けません。
 あ、でも安心して下さい。
 喋る自由はちゃあんと有るんで助けを呼んでも良いんですよ?
 カメラが回って居る限り誰も助けに来ないですけど。」
「馬鹿な!そんな能力が有るなんて……!
 俺の正体をどこで知ったっていうんだ!?」
「そりゃあ……、クラブから出てくる貴方を見ていましたから。
 DJの人が血相変えて中から出てきたんで何かと思ったらすぐに返り血を浴びた貴方が出てくるんですもの。
 顔なんてはっきり覚えていましたよ。
 クラブに戻った時は驚いたなあ……。
 青が基調の内装が真っ赤になっているんですもの。
 赤、赤、赤………。
 良いわよね血のどす黒い赤ってゾクゾクしちゃう!
 個人的には動脈から出てくる鮮やかな色も良いんだけどやっぱり死んでから少し経ったくらいが絶品ね。
 そんな時、この都市伝説と契約したの。
 この前から沢山の“作品”を作っていてですね、正直人を殺すのって楽しいんですよね。」
「スナッフフィルムか……。
 自分の欲望で人を殺すなんて邪悪なことをやっていると……死ぬよ?」
笛吹丁は冷たい声で言い放つ。
154笛(代理)2人目:2010/01/07(木) 03:33:00.61 ID:rG39ku2Z0
「どこぞの過去視の探偵でも気取っているんですか?
 殺人鬼が探偵を気取るなんてずいぶんですね。」
「いやいや、これが中々冗談でもない。貴方の妹さんに依頼されてここには来たんです。」

そう言って不敵に笑う笛吹丁。

「あ、外に隠れていた貴方の仲間ですけど隠しカメラで撮影中ですからね?
 あと妹が人質にとられても私はもう痛くもかゆくもないですよ?
 もう家族とかよりこっちの方が大事ですから。」
「え………。」
「あの小さい女の子はもう動けない筈ですよ?」
「えええ………。」
弱り切った顔をする笛吹丁。
「もしかして貴方が囮になって私を倒そうとしていたんですか?
 それは無理という物です。 
 ベタな台詞ではありますがここであなたは私の作品になるからです。
 チェーンソーでザクッといきますか?
 それとも柳刃包丁を何本も何本も突き刺して失血死するのを待ちますか?
 リアルで真綿で首をしめてみるのも楽しめますよ?
 あっ、そうだ!
 灯油でゆっくり燃やされるのなんて新しいですよね!
 動けないのに火だるまになってゆっくり燃やされるんですよ!」
「狂ってる………。」
笛吹丁は信じられない、といった表情で呟いた。
155笛(代理)2人目:2010/01/07(木) 03:34:26.41 ID:rG39ku2Z0
「よぉし!私決めちゃった☆」
台所に向かった垣間が小出刃包丁を持ってくる。
「これでゆっくり頭蓋骨を解体しようかと思います!」
「ええええええええええええ!?」
「それではケーキ(脳みその白的な意味で)入刀です!」
垣間が包丁を振り上げて笛吹の頭にそれを突き立てようとした瞬間だった。

「ごめんなさい!許して下さい!」
「え……?」
場に広がる沈黙。
何が起きているのか解っていないようだ。
「命だけは許して貰えないですか?」
「な、何を言っているの?」
「え、ほら、俺ってイケメンじゃないですか?」
笛吹丁はクルリと後ろを“振り返って”垣間に話しかける。

「え、何を言っているの?
 ――――――――――――!」
向坂垣間が見たのは操作を無視して立ち上がる笛吹丁だった。
156笛(代理)2人目:2010/01/07(木) 03:35:26.37 ID:rG39ku2Z0
「知らなかったみたいだから言っておこうか。
 操作系の都市伝説は都市伝説やその契約者に対しては効きが悪いんだよ。
 そして、――――――イケメンが命じる!
 ここで有ったことを誰にも言わずに一日後、できるだけ私達が来たことを秘密にして、証拠も消して自殺しろ!」
笛吹丁は向坂垣間の瞳をまっすぐに見つめると一息で命令を与えた。
「………はい。」

ピキーン!

ガラスが罅割れるような音がして向坂垣間は崩れ落ちる。
それを確認すると笛吹丁は部屋から立ち去った。
157笛(代理)2人目:2010/01/07(木) 03:36:28.77 ID:rG39ku2Z0
それから数分後。
「ああ、見つかったぜ。
 東区のアパート、●●アパートの三号室な。
 あんたのことを待っているはずだ。
 じゃあなー。
 報酬?
 あー、………調査に一時間かからなかったから良いや。
 どうせお金なんて最初から無いんだろう?
 どうしても払いたい?
 ………じゃあ俺の事務所でバイトでもするか?
 そのうち面接にでも来なよ、お茶くみの子が一人欲しかった。」
フィアットの運転席で携帯電話を切る上田明也。
「まったく、兄ぃも人使いが荒い。わざわざ冬休みの僕を呼ばないでくれよ。」
「はっはっは、ごっめん!バイト代は弾むぞ!」
「キャッホゥ!」
フィアットの客席で愚痴る笛吹丁。
「てか所長、私が今回欠片も役に立ってないんですけど。」
つまらなさそうな顔のメル。
158笛(代理)2人目:2010/01/07(木) 03:37:55.05 ID:rG39ku2Z0
「安心しろ、“俺”はもっと何もしていない。探偵『笛吹丁』は八面六臂の大活躍だったけどな。」
「もうこれ外して良い?
 かなり蒸れるんだよね、このマスク。」
ベリベリベリ!
笛吹丁の顔が二つに裂けて中から中性的な顔立ちをした少女が現れる。
彼女の名前は平唯。
※ただしイケメンに限る、の契約者。
イケメンであることを生かして人間(ただし彼女をイケメンと思った相手に限る)を自らの支配下におけるのだ。
上田明也とは従兄弟同士の間柄で、学校町には親の里帰りのついでに寄っていたのだ。

「ほら、お兄ちゃんからのお年玉。」
ポン、と四万円を手渡す上田。
「キィヤッホゥ!」
喜ぶ平唯。
「ところで美味いスイーツの店を見つけたんだがお前も来るか?」
「待っていましたお兄様!」
「じゃあ少し飛ばすぜ!」
唯とメルが青くなって顔を見合わせると上田明也は容赦なくアクセルを踏み込んだ。
赤いフィアットは速度を上げて真冬の凍った道路を走り出したのであった………。

【平唯の人間観察第五話「探」 fin】
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 05:47:36.64 ID:xYDd4mAKO
160第六感:2010/01/07(木) 06:10:09.14 ID:8+jrml0k0
保守がてら小説を書いてみる

『私メリーさん。今、バス停にいるの』
「・・・・・・・・・」
・・・久しぶりに携帯電話がなったと思ったら『私メリーさん』とかふざけてるの?
それはいいとして・・・さて、イタズラか?本物か?
まぁいい。それは背後に立たれてから考えるとしよう。


『私メリーさん。今・・・貴方の後ろにいるの』
私はターゲットの後ろに立つ。
ターゲットは振り向かない。おそらくイタズラだと思っているのだろう。
私はナイフを抜き、ターゲットの男へ―――
・・・男の背中にナイフが突き刺さろうとした直後、彼は『振り向かないまま』私の攻撃を避ける。
161第六感:2010/01/07(木) 06:11:38.35 ID:8+jrml0k0

勢いが止まらなかったのか、受身をしそこなって思いっきり顔から地面に叩きつけられた人形を見ながら俺は携帯電話を弄る。それにしても、本物だったか・・・。めんどくせぇ・・・。


痛い痛い痛い。
顔がメッチャ痛い。
まさか視覚で確認もされずに避けられるとは思わなかった。
おかげで地面に顔からモロに突っ込んでしまったじゃないか。
別にあいつのせいではないと思うが誰かのせいにしないとやってられない。
私は少しの間顔を抑えて悶絶した後、再び立ち上がりターゲットに向かう。
助走をつけて飛び上がり、ターゲットへとナイフを構える。
当然ターゲットは腕で頭を庇うが・・・
それが命取りだ。
次の瞬間私はターゲットの背後に移動する。一度『後ろにいる』ことを相手に伝えた今、別に携帯を通さなくてもこの行為は可能だ。
ターゲットは完全に前からの攻撃のみを防ぐ体制になっている。
つまり後ろからは完全に無防備。都市伝説として、少女をギリギリ刺し殺す程度の力しか持ってない私でも男一人に十分致命傷になるダメージを与えられる。
そして再びナイフを背中・・・心臓の付近に突き刺そうとして・・・私の手からナイフがなくなる。
消えたナイフは宙を舞っている。そして目の前の男の体制から考えておそらくナイフを蹴り上げられたのだろう。
何故?最初の攻撃は一度後ろにいることを伝えてからの攻撃だから見なくとも避けれないことはないだろうが・・・何故この完全に不意をついた状態の自分の行動についてこられる?
その思考は宙に舞うナイフを掴み、こちらへ構え突くという男の攻撃によって永遠に中断させられた・・・―――
162第六感:2010/01/07(木) 06:12:28.99 ID:8+jrml0k0

「来たよー」
「おぉ、ちょうどいい。今終わったところだ」
先ほど電話で後始末をさせるために呼んだ友が現れる。
相変わらず明るく話す奴だ。
「どれ?」
「コイツコイツ」
俺はそう言ってメリーさん・・・いや、今はもうただの人形になっているようだ
で、その人形を指す
「さて、どうやって消そう」
「人体発火現象で消し炭に――とか?」
「あれはもう使ったから一週間は使えない。てかそもそも人じゃなくて人形だし」
「じゃぁどうするんだよ」
「・・・『タイムマシンの作成者』に頼んで時限の狭間にでも落としてきてもらうよ」
「あぁ、それがいいな。頼んだぞー」
「――ところで男」
さっきまでかなり軽い口調だった友が急に重い口調に切り替わる。
「そろそろボクの組織に入らないか?別に常に支配下においておくわけじゃないし・・・」
また勧誘か
「だから前から何度も言ってるだろ?例え一時的にでも支配下に置かれるとかが大嫌いなんだ俺は」
「だよね〜」
重い口調だった友はまた軽い口調に戻る
「まぁでももし入りたくなったら言ってよ。歓迎するからさ」
「永遠にないだろうが一応わかった」
「それじゃ、じゃーねー」
「あぁ、またなー」
友は片手で人形をつかみ、片手を思いっきり振りながら去っていく・・・。元メリーさんの人形のせいで軽くホラーな気がしないでもない。
つづく 多分
163第六感:2010/01/07(木) 06:13:17.03 ID:8+jrml0k0
訂正
友は片手で人形をつかみ、片手を思いっきり振りながら去っていく・・・。元メリーさんの人形のせいで軽くホラーな気がしないでもない。

自分の友人と別れた男は帰り始める。
できるだけ都市伝説にあうことがないよう、願いながら・・・――

つづく 多分
164第六感:2010/01/07(木) 06:15:49.30 ID:8+jrml0k0
以上、自作小説でした
「ヘタすぎて吹いたww」等感想をどうぞ
以下、男(主人公)とその契約した都市伝説について


主人公。名前はまだない。
第六感との契約により先読みににた能力を得た。(と、いうより元々あったものを強化、操作できるようになった)
親が修行マニアで、小さいころからいろいろと修行をしてた(強制的にさせられてた)ので、身体能力は高い。

第六感
男と契約した都市伝説。
契約したものの第六感と呼ばれるもののいずれかを強化し、契約者の意思によって発動を可能にする。
男が得たのは「力の流れを読む能力」早い話対意識を持つ者限定のレーダー。
力の流れから相手の次の行動を読み取ることで先読みとよばれるものの遥かに上を行く速さで相手の行動を予知できる。
だが、あくまで『察知できる』だけの能力。いかに攻撃の軌道が読めようと、身体能力がついてこなければ当然避けることはできない。
連続攻撃を喰らえば避けきることは難しく、広範囲の攻撃は察知できてもよけることが出来ない。
また、常時発動しているわけでもないので(すごく疲れるらしい)完全な不意打ちは読みきれない。
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 08:04:30.74 ID:QTk3bBG70
おつでしたー!
主人公が友人によってどこかの組織に強制参加させられないことを祈ってるぜ!
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 08:05:21.37 ID:MKTO7VJaQ
docomoはまだ規制だったか…
ちらほらと末尾Oが居たから行けると思ったんだが
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 08:12:06.68 ID:xYDd4mAKO
マイ ケータイ イズ SoftBank
168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 09:38:07.76 ID:xYDd4mAKO
ほし
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 11:19:35.64 ID:xYDd4mAKO
170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 12:05:21.59 ID:9tgdOgMe0
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 13:14:41.35 ID:XKShIEwv0
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 13:28:11.19 ID:XKShIEwv0
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 13:38:16.72 ID:eCXbyYoq0
174笛 (代理三人目):2010/01/07(木) 13:39:23.77 ID:XKShIEwv0
バツン!
古畑任●郎よろしく場面が暗転してどこからともなくスポットライトを浴びた上田明也が現れる。
「と、言うわけで今回のお話楽しんで頂けましたか?
 平唯に橙と普段活躍していない面々がメインの話になりましたねえ。
 意外と俺も優しいところがあるでしょう?
 姉を失って傷心の少女の心をケアする為にバイトに誘ってみたり
 従妹を殺そうとしたひどい輩に妹と会話をする為の最後の時間を与えたり
 やはり幾つになっても心配ですからね、年下の親族ってものは。
 探偵笛吹丁は笛吹探偵事務所の探偵であって俺のことではない。
 俺はあくまで上田明也という一個人であって笛吹探偵事務所の探偵こそが笛吹丁と名乗るべきなんですよ。
 だからあくまで途中に出てきた平唯は笛吹丁であって平唯でもあると。
 今回探偵をやらなかった俺が笛吹丁を名乗る資格はないでしょう?
 そう、探偵はイケメンだから許されるという下らない事実を語り、
 殺人鬼は離ればなれの姉妹に再会の時間を与える為に嘘を吐いた。
 どうですか?
 殺人鬼ってなかなか愛に満ちた仕事でしょう?
 ちなみに向坂さんですが今は俺の事務所でバイトしています。
 中々真面目な子で助かっていますよ。」
どこぞの探偵を気取っているのだろうか?
愁いに満ちた表情で滔々と語り始める上田明也。

「ところで彼女の学校で面白い事件が有ったのですが……。
 まあ良い。
 これはまた次の機会のお話です。
 主人公が探偵と殺人鬼の二足のわらじを履く推理をしない探偵小説をどうぞヨロシク。
 さようなら、さようなら。」

それだけ言うと上田明也は暗闇の中に消え去っていった。
彼の立っていた場所にスポットライトが当たり続けているだけだった……。
【上田明也の探偵倶楽部】
175小ネタ (転載):2010/01/07(木) 13:42:08.96 ID:XKShIEwv0
 意識が遠ざかっていく
 全身に、ナイフが突き刺さっている
 この出血量、助かるはずもない
 「魔除けのお札」の契約者は、静かに死を迎えようとしていた
 彼を殺した少女は既に立ち去っていて、代わりに近づいてくるのは「組織」の黒服
 「夢の国」騒動以降は珍しくなった、感情を持たない、元から人間ではない黒服
 あぁ、くそ、俺はこんな奴に止めを刺されるのか
 混濁していく意識の中、その意識が消える直前、彼が見たものは
 その黒服の背後に近づき……右手を振り上げた、誰かだった
















 −−−−−−−何かが触れている
 その手が、酷く暖かいと感じた


 感じた、瞬間
176小ネタ (転載):2010/01/07(木) 13:44:46.18 ID:XKShIEwv0
 意識が、急速に引き上げられる!!

「−−−−−−がはっ!?」

 感じなくなっていた痛覚が、戻ってきた
 しかし、その痛みはすぐに消えていく
 壊された体の組織が、無理矢理に、しかし、確実に修復されていっている感覚
 「魔除けのお札」は、ばちり、勢いよく目をあけた

「大丈夫?」
「…!」

 そこにいたのは、一人の女
 …彼が、「組織」の情報を漏らした相手だ
 「仲介者」とか言う、都市伝説事件の被害者たちから都市伝説事件の解決を依頼され、それを有料で請け負っている何者かの関係者であるらしい
 それ以外、彼は彼女に付いてよく知らない
 あと、せいぜい知っている事は…彼女が「追撃者」と呼ばれているという事実だけだ
 追撃者の左手が、「魔除けのお札」から離れる

「良かった、間に合って」
「あ……え、あ……」

 自分に近づいてきていた黒服の姿は、ない
 …助かった、のか?
 「魔除けのお札」が混乱していると、追撃者が、申し訳なさそうな表情を浮かべてきた

「…御免なさい。私のせいで、あなたを危険な目にあわせてしまった」
「い、いや、俺がミスったせいだから…」

 その、申し訳無さそうな顔が、あまりにも悲しげなものだから
177小ネタ (転載):2010/01/07(木) 13:46:38.85 ID:XKShIEwv0
 …気のせいだろうか?
 その表情は、まるで過去に起こった何かと今回の事を重ねて、より、辛く感じているように思えた

「あなたは、もう「組織」にはいられないのね?」
「そりゃ、そうだろうな…」

 むくり、と「魔除けのお札」は起き上がった
 …体中、空から降ってきたナイフでメッタ刺しにされたはずなのだが、傷一つ残っていない
 服こそボロボロではあるが、体には傷一つないのだ
 追撃者が契約している都市伝説の能力なのだろうか?
 一体、どんな都市伝説と契約しているのだろう

「行くアテは?」
「…ないな」
「そう…」

 うぅん、と追撃者は考え込む

「…「首塚」辺り、どうかしら?「組織」の情報をもって逃げ込めば、保護してくれるかもしれないわ」
「「首塚」か…」

 なるほど、あそこなら、と思う
 だが、「首塚」の人間と接触できるポイントがわからないと、どうにもならない
 先に「組織」に見付かって生きていることが知られたら、改めて消されてしまう
 そんな、「魔除けのお札」の不安を感じ取ったのか
 安心させるように、追撃者は笑みを浮かべてきた

「大丈夫!「首塚」と接触できそうな場所、私たちが探すから!それまでは、私たちがあなたを護ってあげる!」
「…は?」
「おねーさん、こう見えて結構強いのよ?だから、大丈夫!」
178小ネタ (転載):2010/01/07(木) 13:48:28.26 ID:XKShIEwv0
 自信満々な様子で言い切る追撃者
 嘘も、偽りも、一切なく…心から、「魔除けのお札」を護って見せると、そう言いきっている

「ま、待て、俺相手にそこまでするメリット、あんた達にはないはずだ」
「…めりっと??」

 きょとん、と
 追撃者は首をかしげて…そして、笑った

「そんなの関係ないわ。私のせいで、あなたは死んでしまうところだった。でも、私はギリギリ、あなたを助ける事が出来た…ならば、私はあなたを死なせない。「組織」から護ってみせるわ」

 強い言葉
 胸を張った拍子に、その見事なバストが揺れた

「…おねーさん、ね。知り合いが自分のせいで傷つくとか死んじゃうとか、あんまり好きじゃないの」

 だから護らせてね?と追撃者は笑う
 その笑みの後ろに見えた…大きな大きな、過去の後悔と懺悔に
 「魔除けのお札」は思わず、こくりと頷いたのだった


 …そして
 「魔除けのお札」の契約者が「首塚」に保護され、同じく保護されている者達が住まう無人島へと向かうまで
 彼は、追撃者が仲介者と共に暮らす家に同居させてもらえる事になるのだが
 所詮、これは小ネタであり突発的な電波である為、続く予定はない


終われ
179初詣の迷子探しとお年玉をどうぞ (転載):2010/01/07(木) 13:56:01.79 ID:XKShIEwv0
 人波を掻き分けて進む
 今の黒服には、はないちもんめの少女の位置がはっきりとわかっていた
 少女が、今現在、特に危険な状態に陥っている訳ではないことも、わかる

 …黒服は、己の契約者の為に、己の契約者を護る為に
 自身に、新たな力を芽生えさせたのだ
 人間と契約した都市伝説の特権
 契約者のためならば、よほど本来の存在と間逆の力でない限り、都市伝説はその力を得られる可能性がある

 「日焼けマシン」の契約者の青年と合流し、二人は真っ直ぐに少女の元へ向かっていた
 危険な状態には陥っていないようだが、なるべく急ぐべきだろう
 何分、少女はその場に留まっている訳ではないのだ
 あちらこちら、移動している
 ……もしかしたら、迷子になっている自覚がないのかもしれない
 ならば、自覚をする前に合流するべきだろう
 不安には、させたくない
 そう考え、急ぐのだが

「…あ、Dさん。あけましておめでとうございます」
「え………あぁ、あけましておめでとうございます」

 知り合いに声をかけられ、思わず足を止めてしまう
 そこにいたのは、小柄な体格の、少女の姿の黒服
 「夢の国」騒動以降、現場に出るようになった黒服Lだ
 この黒服から見れば10年程先輩に当たるのだが、どうにも彼は彼女を外見や行動の印象のせいか、子供扱いしてしまう
 黒服Lの傍には、少年の姿と、もう一人少女の姿
 …話に聞いた事がある
 闇子さんと、それと契約している少年だろう
 黒服Lは、この少年の担当になったと聞いている
 今まで面識はなく、今回が初対面だ
180初詣の迷子探しとお年玉をどうぞ (転載):2010/01/07(木) 13:58:17.55 ID:XKShIEwv0
 少年は黒服と青年を見上げて、首を傾げてくる

「くーちゃん、知り合い?」
「仕事の同僚です…そちらの青年とは、面識が在りませんが」

 闇子さんが、やや警戒するように、黒服と青年を見上げてきていた
 三人の中、闇子さんだけが二人を警戒してきている
 せめて、闇子さんの警戒を解くように、黒服は柔らかく微笑む
 …そして、同時に、少年に対し、申し訳なさを感じた
 こんな幼い少年にまで、「組織」は仕事をさせているのだ
 せめて、汚い仕事をさせらていなければいい、そう思う
 ……マッドガッサー騒動の騒ぎの最中、担当の黒服と共に「組織」から姿を消した、ケムトレイルの少女のように

「はじめまして。「骨を溶かすコーラ」の契約者の担当をしております、黒服です」
「あ…は、はじめまして」

 ぺこり、少年が頭を下げてきた
 闇子さんは、未だに警戒したままだ
 青年は、一応「組織」の者相手と言う事で少しは警戒しているようだが、一番の警戒は黒服Lに向いていて、闇子さんと契約者の少年相手はほぼ無警戒だ
 …彼もまた、子供には甘いのだ
 ただ、あまり長く、彼女達と接触しているべきではない、と黒服は考えた
 青年は「首塚」のメンバーなのだ
 一応、「組織」と「首塚」は休戦状態とは言え、敵対関係のままだ
 「首塚」は、「組織」から逃げ出した者や「組織」に追われている者を、多数保護しているのだから

「申し訳ありません。人を探して居る最中ですので、私達はこれで」
「あなたもですか…随分と、迷子が多いのですね」

 どうやら、彼女たちも人を探している最中だったようだ
 はないちもんめの少女の事がなければ手伝ってあげたいのだが、今はそれどころではない
181初詣の迷子探しとお年玉をどうぞ (転載):2010/01/07(木) 14:00:31.49 ID:XKShIEwv0
「…どうぞ、お年玉です。せめて、あなた達も人探しが終わりましたら、それで出店を楽しんでいてください」
「あ、ありがとうございます」

 三人にお年玉を渡す
 黒服Lは厳密には年上だが、この黒服、既に数千年単位での年齢詐欺ロリ二人にお年玉を渡した後である
 今更、そんな事は関係ない
 小さく礼をして、黒服は青年と共に、黒服L達から離れた
 人波の中、三人の姿はあっと言う間に見えなくなる

「…あんな子供も、「組織」にいるんだな」

 ぼそり、と青年が呟いた
 はい、と黒服は小さく頷く

 …「組織」には、あんな子供の契約者相手すら、保護ではなく、仕事をさせているのだ
 時には、汚い仕事すら
 「組織」は、都市伝説から人を護る存在
 ならば、あぁいう子供は保護すべきだと言うのに

 …少しずつ
 少しずつでも、いい
 「組織」を、内側から変えていきたい
 そして、それは、契約者二人を護る事にも繋がる

「…急ぎましょう。彼女と合流する為にも」

 思考を、はないちもんめの少女の保護へと戻す
 あぁ、と青年も思考を切り替え、頷いてきた
182初詣の迷子探しとお年玉をどうぞ (転載):2010/01/07(木) 14:01:21.63 ID:XKShIEwv0



 −−−−願わくば、あの純粋な少年が、「組織」に利用されませんように





 そう祈りながら、黒服は青年と共に、はないちもんめの少女の元へ小走りに駆けたのだった



to be … ?


183やる気なさそうな人 (代理):2010/01/07(木) 14:04:04.05 ID:XKShIEwv0
 初詣に来た人で溢れかえる中を歩いていた
 服はいつもの黒いスーツだ

 歩いていると前方にゴシック調の日傘が見え、その横に見たことのある少女が居た

Y 「あれ? 君は確かDさんの……」

はないちもんめ「誰よあんた」

 いきなり警戒するように睨まれた
 猛犬注意の貼紙でも見落としただろうか

Y 「誰って…あ、そうか。ほら、マッドガッサーの事件の時に、ゴスロリ服で銃持ってたのが居たろ」

はないちもんめ「そういえばそんなのが黒服と話してた気がするわね。その子の知り合い?」

Y 「いや、それが僕、黒服のYだよ。女体化ガスの影響でああなってたんだ。Dさんから聞いてないかな?」

はないちもんめ(…え? どう見ても普通の女の子に見えたんだけど……そっち系の趣味があるのかしら……)

 少女は一瞬考え込んだような表情になったけどすぐ戻った
 何か不審人物への警戒とは別の意味で警戒されてる気がする
 少女が若干引いているような気がしないでもない

はないちもんめ「…まあいいわ、それで何か用?」
184やる気なさそうな人 (代理):2010/01/07(木) 14:05:17.63 ID:XKShIEwv0
Y 「今日はDさんと一緒じゃないのかと思って。もしかして迷…」

はないちもんめ「はぐれたのは私の方じゃないわ」

Y「そっか相手が早く見つかるといいね」

 迷子かどうか聞こうとした言葉を遮って否定されてしまった
 それほどして迷子だと認めたくないか

お嬢さま「のう、その口にくわえておるのはなんじゃ?」

 少女の隣にいたゴスロリお嬢さまが声をかけてきた
 どうやらはないちもんめの少女の知り合いらしく、二人でいろいろ楽しんでいるみたいだ
 話の途中からなんか観察するような視線を向けてきていたけど、これが気になっていたんだろうか

Y 「これ? これは飴細工、飴をこねて綺麗に飾り付けたやつ。食べてみる? まだあるからあげるよ」

 包みを広げて二人の前に差し出した
 中には飴細工がまだ3本入っている

お嬢さま「む、これが綺麗じゃ、これを貰おう。なかなか良い奴じゃな」

はないちもんめ「…私は遠慮するわ」

 はないちもんめの少女は何やら苦い顔をして断ってきた
 ゴスロリのお嬢さまは見知らぬ人でも余り物怖じしないらしい
 言葉遣いとか、態度や雰囲気とか見てると
 もしかして本当にどっかの深窓のお嬢さまで世間知らずだったりするのだろうか
 こんなところに居て大丈夫なんだろうか、このお嬢さま
185やる気なさそうな人 (代理):2010/01/07(木) 14:06:28.00 ID:XKShIEwv0
Y 「え〜と……探すの、手伝おうか?」

はないちもんめ「別にいいわ」

 拒絶の言葉とともに睨まれた
 誰か、猛獣注意の看板を持って来てくれないか

はないちもんめ「さぁ行きましょ」

 はないちもんめの少女はゴスロリお嬢さまの手を引いてさっさといってしまった
 ゴスロリお嬢さまは去り際に飴細工を振って挨拶してくれたが
 二人を見送ったあとに思った

Y 「あ〜……Dさんに電話した方がよかったのかな」

 今さら電話しても、もうどこに居るか分からないので手遅れなんだけど
 まぁはないちもんめの少女のあの警戒心の強さなら大丈夫だよね

Y「さて、おみくじでもするかな」

 また少女と顔を会わせると気まずくなりそうなので少し違う方向へと歩き出した

 おわる
186黒い鬼の外出事情 (代理):2010/01/07(木) 14:07:47.11 ID:XKShIEwv0
組織上層部の能力とは絶大なものである。
破壊力や周囲への影響力はそこいらの都市伝説の比ではない。
だからこそ、上層部の者はむやみに外に出ることはない。
自らを律し戒めている。
……のだが、この黒いコートを着た鬼は、そのようなことを一切気にすることなく外の世界へと出ていく。
「……ん、これは」
だからこそ、彼の部下達は彼の迷惑きわまりない外出を阻止するのだ。
外へと通ずる出入口の扉には柊の葉が飾られていた。

鬼、それは絶大な力を有する一方、多くの弱点を有する存在。
この柊もその一つである。
節分の時期には家屋の出入口に飾ることにより、鬼の侵入を阻止するものだったりする。


187黒い鬼の外出事情 (代理):2010/01/07(木) 14:10:04.69 ID:XKShIEwv0
鬼はその場に立ち尽くし、その扉を見つめていた。
「今日という今日は自粛していただきます」
後方から聞こえてきたのは女の声。
「ああ、君か。これをやったのは」
声の主にたいし振り向く鬼。
そこにいたのは、黒い着物を身に纏った白髪の女。
「いつも思うんだけどさ…」
鬼は頭をポリポリと掻いた。
「雪女なら白い着物着るべきじゃないの」
女の着物を指差す。
「私は雪女である前に黒服なんですっ!……って、そうじゃなくてっ!
もうっ、話をそらさないで下さい!」


188黒い鬼の外出事情 (代理):2010/01/07(木) 14:11:12.24 ID:XKShIEwv0
ぷんすかと怒る黒い雪女を見て鬼は笑う。
「ははっ、そんなに顔を真っ赤にして。溶けちゃうんじゃないのかな」
「誰のせいだと思ってるんですかっ!」
本当に湯気でも出そうな怒りようだ。
「あなた様が外に出るということが、どれだけ私達、下の者に迷惑をかけているのか、わかってるんですかっ!」
「へぇ、迷惑だったんだ。知らなかったよ。ごめんね」
謝罪こそしているが悪びれた様子はない。明らかにわかっていない。
そんな彼の態度が雪女の精神を逆なでたのも当然といえる。
「当分の間外出禁止ですからねっ!」
ピシリと人差し指をを立てる雪女。

鬼は頭をポリポリと掻いた。

「悪いけどいやだね。僕は出るよ」

鬼のその言葉を聞いて雪女はキョトンとした顔をする。


189黒い鬼の外出事情 (代理):2010/01/07(木) 14:12:14.67 ID:XKShIEwv0
「え、あ、いえ、柊の葉ですよ?その扉からは出入口できないんですよ?」
「あーうん、まぁね……」
鬼はそう言い扉のほうへと向き直る。
正確にいうと扉の横の壁あたりだろうか……

その様子を見た雪女の顔が青くなる。
元々色白なだけに、はっきりとわかる。
「あ…もしかして……ま、待って下さい!柊の葉なら取りますから、それだけは…」
彼女の悲痛な声を遮るように鳴り響く爆音。

鬼は柊の葉の飾られた扉の、その横の壁を吹き飛ばして出ていった。

「……どうしよう」大きな穴のあいた壁を見つめて雪女は、ただ…ただ立ち尽くしていた。




190でんし☆れんじっ! (代理):2010/01/07(木) 14:18:02.36 ID:XKShIEwv0
【電磁人の韻律詩11号〜とある疑似科学の初詣〜】

人間が三人、炬燵の中に入っている。
炬燵に電源は入っていない。
「遠赤外線効果で骨の芯から温まっているねえ……。」
「姉さん、マイクロ波は遠赤外線じゃないです。」
「まぁまぁ、細かいことは良いじゃないかアスマ。」
「そうだそうだ!細かいことを気にするなんて男らしくないぞ!」
「っもぉ〜……。あんだよぉ………。」

電源が入っていない炬燵で温まる三人。
勿論、人肌で温まっているわけではない。
恋路が都市伝説の能力を生かして炬燵の中に居る明日真と明日晶を暖めていたのだ。

「しかし恋路ちゃんのおかげで暖房器具にお金使わないで済むねえ、ありがたいねえ。」
手を合わせて恋路を拝む晶。
「いえいえ、私達家族じゃないですか!当然ですよ!」
慌ててそんな晶を止める恋路。
「泣かせるねえ恋路ちゃん。この穀潰しの弟に聞かせてやりたいよ。」
この会話を聞いて憮然としている真。
「悪かったな、俺だけ役立たずで!」
「はっはっは、そこまで怒るこたぁ無いだろ。」

明日家においては学校町の一般的な正月とは異なり大変に平和的な寝正月が進んでいた。
明日家の人間は普段アクティブな分、家ではだらしないらしい。
191でんし☆れんじっ! (代理):2010/01/07(木) 15:00:48.58 ID:XKShIEwv0
「ところで姉さんは何時帰るのさ?どうせ年末年始過ごしてアメリカに戻るんでしょう?」
「あ?三ヶ日終わるまでには家を出るつもりだよ。私だって何時までも家に居たらあんた達に悪いし。」
「それは残念ですね。」
恋路が本当に残念そうに言う。
その言葉を聞いて明日真は嫌そうな顔をしているが、
どうやら彼は恋路の顔が大変嬉しそうなことに気付いていないようだ。
「仮面ライダーは世界の平和を守る為に忙しいのである。」
まじめくさった顔で話す晶。
「仮面ライダーって柄でもないでしょう。精々ゴーストライダー。」
「なんだ、お父さんを殺す気か?」
「居ようと居まいと一緒だよ、あんな奴。」
「あ、良かったらお茶でも淹れてきましょうか?」
「頼んだ恋路。」
「頼んだよ恋路ちゃん。」
炬燵を出て台所に向かう恋路。

「良い子だねえ、本当に良い子だ。あの子が居れば私は必要ないよね。
 あんなに良い子だから都市伝説に飲み込まれたんだろうかね?」
その後ろ姿を見詰めながら明日晶はポツリと呟いた。


192でんし☆れんじっ! (代理):2010/01/07(木) 15:02:04.66 ID:XKShIEwv0
「……………。」
明日真は何も言わない、言えない。
黙って炬燵の電源を入れた。
「都市伝説なんて話には聞いていたけどまさか目の前に現れるとはおもわなんだ。」
「姉さん、本当に聞いていただけなの?やたら詳しいよね。」
明日晶は一瞬驚いたような顔をすると炬燵の出力を弱くした。

「知り合いに都市伝説関連の人間が居てね、最初は超能力かと思っていた。
 始めて知ったときにはビックリしたっけなあ……。」
「ふぅん………。」
明日真は気の抜けた声でそう言うと炬燵を抜け出た。
「姉さん。」
「どうした?」
「今年は初詣にでも行こうよ。三人で。」
「え、……どうしよう。」
弟からの急な誘いに明日晶は戸惑った。
馴れ馴れしい癖に急に踏み込まれると困惑する。
受け身になれない性格が彼女を恋愛ごとから遠ざける原因であったりもする。
「お茶入りましたよー。」
その時、丁度恋路が台所から緑茶を持ってくる。
「ありがとう、恋路ちゃん。」
明日晶はそれを詰まった言葉ごとゴクゴクと飲み干す。
193でんし☆れんじっ! (代理):2010/01/07(木) 15:03:35.61 ID:XKShIEwv0
「待てよ姉さん!」
すかさず炬燵から出てきて姉を追いかける明日真。
「お姉様、家の荷物は!?」
送り出す気満々の恋路。
「適当に処分しておいてくれ!じゃあな!」

ブォオオオオオオン………
青いハヤブサはあっという間に遠くに行ってしまっていた。

「行っちまった……。」
「やっと行ったか……。」
恋路が小さく呟いたことに明日真は気付かない。
恋路は肩の力が抜けてよろけた。
「おっと、大丈夫か?」
「いや、少し無理してたみたいだね。そういえば初詣どうするの?」
「お前一人の身体じゃなかろうに……、行けるわけがないだろう?」
「あはは、有らぬ誤解を受けるよ、その発言は。」
「え、う、うう………。
 いやいやお前が体調崩すとこっちにも来るんだよ、なんか。」
顔を真っ赤にし始める真。
「冗談だよ、別に初詣くらい良いじゃないか。私は興味あるなあ。」
「いきなり倒れるなよ?」
心配する真。
「そうしたら負ぶって貰うから良いもん。」
そんな彼を余所に悪戯っぽく恋路は笑っていた。
「しかたねえ、行くぞ。」
二人は神社の初詣に向かうことにした。
194でんし☆れんじっ! (代理):2010/01/07(木) 15:04:37.49 ID:XKShIEwv0
「なあアスマくん。」
それから数分後、振り袖を着た恋路といつも通りの服装の明日はバイクで神社に向かっていた。
「なんだ?」
「道路がここまで混んでいるとは聞いていないぞ。」
またも二人組は渋滞に巻き込まれていた。
「当たり前だろ、初詣だぞ?渋滞の一つや二つ、ない方がおかしい。」
「待つの嫌だ〜!」
「……ソウイウだろうなあと思って今回はバイク、じゃなくてスク―ターを変えてみた。」
「そういえば今回はちょっと小さいね。あと形も面白いなあ………。」

面白い、その言葉を聞いた瞬間に明日真の表情が変わった。


195でんし☆れんじっ! (代理):2010/01/07(木) 15:07:03.76 ID:XKShIEwv0
「面白い………?
 面白いてなんだ面白いて……。
 ベスパだぞ、天下のベスパLX125だぞ?
 伝統のスチールモノコックボディだぞ?
 ローマの休日もびっくりのお洒落っぷりだろうが!!
 それをなんだ!面白いとは!
 馬鹿にするにも程がある!
 良いか!
 古来からベスパというものはお洒落でアーバンで知性的な男の必須アイテムだったんだよ!
 それを面白い一言で済まそうとは良い根性しているじゃないか!
 良いのか?
 お前そんな適当なこと言っていたらマグナ50乗せるぞ!
 遅いぞ!?
 その上デザインとサイズ噛み合ってないから物凄く恥ずかしいぞ!?
 ス―パーカブなんかはレトロモダンな美しさがあるがあれにはそれすらない!
 性能がイマイチとか言う人が居てもベスパはベスパはベスパなんだい!!!
 ……まあその割にビンテージ仕様じゃないとか突っ込みたいことは多々あるんだけどさ。」
一息に喋り終えて肩で息をする明日。
恋路は寝てばかりのパンダを見るような目でそれを見ている。
「悪いが……、私にも解る言葉で話してくれよ。」
「うん、ごめん。とりあえず渋滞を躱して神社に行くくらいは楽勝って言いたかっただけなんだ。」

数分後、二人は神社に到着した。
196でんし☆れんじっ! (代理):2010/01/07(木) 15:08:05.72 ID:XKShIEwv0

「わーい!お店回ろうよ!」
恋路は動きにくい振り袖ではしゃいで………
「アベシ!」
転んだ。
「ったく……。ほら立ち上がって。」
恋路の腕を掴んで抱き上げる明日。
「まずは神社にお参りからな。」
「えー……。ていうかこれ立ち上がってないよね。」
「良いからついてきなさい。」
まるで保護者のような口調で恋路に言いつける明日。
「はーい。」
まるで子供みたいに恋路もそんな明日についていったのであった。

【電磁人の韻律詩11号〜とある疑似科学の初詣〜 fin】
197小ネタ (転載):2010/01/07(木) 15:13:29.96 ID:XKShIEwv0
 我輩は百獣の王の息子である
 名前はまだない
 この寒き地に突然連れてこられて、早くも十日以上が経った
 我輩のような幼き命でも、この土地は辛うじて生き延びる事ができるらしい

 本日は、随分と人間がたむろしている場所へとやってきた
 人間、と言うのは、この必要以上にたくさん存在する生き物である
 他の猫達が、教えてくれた知識だ
 この土地の猫達は随分と親切であり、我輩に色々と教えてくれる
 我輩が成長した暁には、猫たちを護る事で恩を返そうと思う

 とまれ、この人間の多い場所
 我輩のような小さき存在、踏み潰されないように気をつけなければ…

「きゃあ!見てみて!この猫可愛い〜〜v」
「本当!ミックスかなぁ。何の血が入ってるんだろ?」

 何やら、騒がしい人間がこちらを見つめている
 ぱしゃぱしゃと音がするが、何の音であろうか?
 思わず立ち止まり、そちらを見あげる

「きゃああ!こっち見たよ!」
「ほら、おいで〜」

 何やら、手招きをしてくる
 その反対の手に、食物らしき物を持っていたので、奪ってやろうと近づく
 てちてちてち、ゆっくり、ゆっくり近づいて
198小ネタ (転載):2010/01/07(木) 15:14:40.22 ID:XKShIEwv0
 ぽふんっ
 人間の手が伸びてきて
 もふもふもふもふもふもふもふ
 容赦なく、こちらの体を撫で回してくる
 …なんと、愚かな
 幼くも百獣の王の血を引く我輩相手にうかつに手を出すなど、愚の骨頂………………
 …………







「やぁん、おなか見せてきた〜!超可愛い〜vvvvv」
「人懐っこいね〜、この神社で飼われてるのかな??」

 もふもふもふもふもふもふもふもふ
 小さな小さな子供ライオン
 参拝客の女性に撫で回され、満足そうにころりん、腹を見せているのだった


続く予定なんてない
199花子さんと契約した男の話 (転載):2010/01/07(木) 15:17:06.79 ID:XKShIEwv0
 元日の初詣
 予想はしていた事だが、かなりの混み合いだ
 花子さんと一緒に来ていたら、速攻で逸れてだな、と考えてしまう
 花子さんは、赤マントや赤いはんてんと一緒に初詣に行く焼く右側をしてたらしいので、今日は一緒ではない
 向こうは向こうで楽しくやっているだろう
 そう考えて、俺は境内に広がる出店を見て回っていた
 しばし、そうやって一人出歩いていると

「……ん」
「あ」

 ばったりと、クラスメイトを顔を合わせた
 風紀委員の、明日真だ
 傍らに、振袖を着た少女が一緒にいるが…多分、彼女か誰かだろう
 姉や妹、と言う感じではないし

「あけましておめでとう」
「あぁ、おめでとう」
「アスマ、知り合い?」

 クラスメイトだ、と明日は少女に説明している
 随分と、仲が良さそうな様子を見るに、やっぱり彼女なんだろう

「獄門寺は、一人で来たのか?」
「いや、家族と来た。新年の願掛け終わったから、後は別行動だ」

 …正直
 正直、家族と組員達と一緒の時に会わなくてよかった
 心からそう思う
 あの状態を見られたら引かれる
200花子さんと契約した男の話 (転載):2010/01/07(木) 15:18:37.48 ID:XKShIEwv0
 絶対、引かれる自信がある
 これだけ混雑していた状態だったと言うのに、俺たちの周り、微妙に空間できてたし
 …やはり、極道者は他者から拒絶されるものなのだろう

「迷子とか多発してるみたいだから、逸れないようにな」

 後ろ向きな考えを引きずりつつ、とりあえずそう言っておいた
 こう言う時はタチの悪いナンパも出没する時期だろうし
 彼女持ちとしては、はぐれたくないだろうから

「あぁ、それじゃあ」

 彼女と一緒にいる所を見られて、気まずかったのだろうか
 足早に立ち去ろうとする明日
 …あぁ、そうだ
 大事な事を聞き忘れていた!

「あ、そうだ。明日、お前、餅好きか?」
「………は??」

 きょとん、と立ち止まる明日
 手を引かれていた少女が、突然明日が立ち止まったものだから、おっとっと、と転びかけていて、明日がそrを支えてやっている

「いや、家で餅をついたんだが…確実に、食べきれない量になったから。好きなら、少し分けようかと」
「いいのか?」

 頷く
 …いや、な
 親父も御手洗さんも卯月さんも、みんなはりきりすぎなんだよ
 どんだけ餅つけば気がすむんだよ!?ってくらい、ついたから
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 15:18:48.44 ID:xYDd4mAKO
支援
202花子さんと契約した男の話 (転載):2010/01/07(木) 15:44:50.45 ID:7tUWPwlc0
 正直、あと2,3人くらいにも分けても問題ないくらい、あるのだ
 受け取ってくれれば、大変ありがたい

「くれるんなら、もらうぞ?」
「わかった。今度、家に届ける」
「は?いや、それは悪いからこっちかた受け取りに」
「届けるから」

 …うん
 家に来られるのは、まずい
 大変と、まずい
 だから、こっちから届けるべきだ
 家に来られたら、一発アウトだから

「…わかった。せめて、どっかで待ち合わせしよう。家まで来てもらうのも悪いから」
「………悪い」

 家に来られないなら、それでも問題ない
 後で待ち合わせ場所を決められるよう、携帯の番号だけ交換して、とりあえず別れた

 人波の中に消えていく明日と彼女らしき少女は、しっかりと手を繋いでいて
 …本当に、仲がいいのだな、と
 その幸せそうな様子が、少し羨ましいのだった



終わる


203猫達と百獣の王なネコ (代理):2010/01/07(木) 15:46:31.82 ID:7tUWPwlc0
「おっしゃぁー!私の年がきたぁー!」
元気に跳びはねる少女。
金髪だが、センターが虎模様に黒い、という特徴的な髪。
言動の通り、活発的なイメージを思わせる容姿をしている。
彼女の名前は「トラ」その名前のまんまのトラ猫である。
とても数日前に生死をさまようような大怪我をしたとは思えないようなはしゃぎようだ。
「トラ、病み上がりなのにはしゃがないの」
その後を追っかけてきたのは、トラとは対照的に、いかにもなお嬢様といった感じの容姿をした少女。
こちらも特徴的な髪の色をしている。
白髪のロングヘアーなのだが、前髪だけがワンポイントで黒い。
彼女の名前は「シャム」名前の通りシャム猫……というわけではない。
シャムのような毛色をしてはいるが、雑種である。彼女自身はシャム猫だと信じきっているようだが……


204猫達と百獣の王なネコ (代理):2010/01/07(木) 15:49:02.53 ID:7tUWPwlc0
「おまえらー、あんまり先に行くなよー。迷子になるぞ」
さらにその後から来たのは、二人の飼い主の男。
歳は二十代前半といったところか、
胸には幼稚園児程度の女の子を抱いている。
もちろん、この男の娘というわけではない。
この女の子も猫なのだ。
名前は「チビ」所謂黒猫というやつだ。おそらくは雑種だろう。
「仕方ありませんよ、坊ちゃん。初めての初詣なんですから」
「でもミケさん。迷子にでもなったら……」
最後に現れたのは、二十代半ばくらいの、おっとりとした雰囲気を漂わせる女。
唯一、猫としての特徴を残さずに人に化けているが、彼女も猫である。
名前のまんま三毛猫だったりする。


205猫達と百獣の王なネコ (代理):2010/01/07(木) 15:50:58.66 ID:7tUWPwlc0
男と猫達は初詣にきていた。
ミケさん以外の猫達にとっては生まれて初めての初詣だったりする。
「…にゃー」
男が抱いていたチビが小さく鳴いた。
おそらくは、多くの参拝客に驚いているのだろうか。
「大丈夫だよチビたん。こわがらなくて」
男はそう言い、辺りを見回す。
「とは言ったけど…すごい人混みだな……」
そのとき、男は見てしまった。
「………あ」
がっちりとした体つきの大きめのネコを…
「あら、あの子は…」
ミケさんもそのネコを発見したようだ。


206猫達と百獣の王なネコ (代理):2010/01/07(木) 15:53:17.36 ID:7tUWPwlc0
「レオちゃん、こんにちは」
ミケさんは、そのネコに挨拶をする。
ちなみに「レオ」とはミケさんが勝手につけた名前だったりする。
猫達の間ではそれで通ってるらしいが……

ネコは男達のほうへと寄ってきた。
「お、お、なんだあいつ!」
トラは体が大きめなネコを見て驚いているようだ。
「おい、お前」
トラがそのネコの前に屈み込む。

なにやら話こんでるようだ。
「…は?なんだって?」
トラの表情がかわる。
「お前…生意気だな…おう、表でろ」
ちなみに、ここは屋外である。
トラは猫の姿に戻るとそのネコへと飛び掛かっていった。

ケンカ……というよりはじゃれあってるような感じである。
数十秒後、体の小さなトラがそのネコを押さえ付けると形で決着がついた。


207猫達と百獣の王なネコ (代理):2010/01/07(木) 15:55:17.39 ID:7tUWPwlc0
一見、ただのトラ猫に見えるトラだが、その実、かなりの身体能力を有する化け猫だったりする。
ある意味当然の結果ともいえるかもしれない。

トラは人の姿に化けると、ご機嫌そうに高笑いをする。
「はっはっは、やっぱり今年は私のふごぉっ…」
そして倒れた。
病み上がりだというのに、激しい運動をしたせいだろう。

飼い主の男は慌ててトラに駆け寄る。
「大丈夫ですわ、お父様。ちょっと馬鹿をして貧血気味になっただけですから」
そんな男をシャムがなだめる。


208猫達と百獣の王なネコ (代理):2010/01/07(木) 15:57:24.79 ID:7tUWPwlc0
それを聞くと、男は平静を取り戻したようだ。
「トラはしばらく、そのまま地べたに寝かせておきましょう」
地べたに寝るという辺りは猫らしい考えともいえる。
「そういえばシャムちゃん」
「なんでしょうか、ミケお姉様」
このときのミケさんの顔は本当に楽しそうなそれだった。
「シャムちゃんは英語が話せるのよね?
この子、外国の子みたいなの。お話してみてくれないかしら?」
シャムの顔に大量の汗が流れた。

「シャム猫はタイ原産ながらも、イギリスへともちこまれた種類である」
この話を男がしてから、シャムのお嬢様キャラクターは始まった。
「も、もももちろん話せますわっ!なにせ、わ、わわわわ私は血統書付きの由緒ある猫ですから!」
まぁ、英語ができたところで、このネコはアフリカ生まれなのだろうが…
「もちろん英語くらいできますわよっ!」
それに、先程トラが普通に、このネコと話していたみたいなのだが…
「で、ですが!急用を思い出したので今日は失礼いたします!」
シャムはダッシュでその場から消え去った。


209猫達と百獣の王なネコ (代理):2010/01/07(木) 15:59:16.01 ID:7tUWPwlc0
「あらあら」
ミケさんの不適な笑い。
「ミケさん……」
男はそんなミケさんをなんとも言えない表情で見つめた。
「本当にトラちゃんもシャムちゃんもかわいいですよね、坊ちゃん」
ミケさんは敵にまわしてはいけない存在だ。
男はそう思った。

そんな男のスボンを何かが引っ張った。
ネコだった。
先程トラにコテンパンにやられた(じゃれられただけだが)そのネコだ。
「どうかしたのか?」
男はネコにたずねる。
「にゃー」
返事が返ってきたのは男の腕の中から、チビだった。


210猫達と百獣の王なネコ (代理):2010/01/07(木) 16:00:04.38 ID:7tUWPwlc0
男は抱いていた子猫を地におろす。
小さな黒猫は百獣の王であるネコへと歩み寄っていく。
怯える様子はない。
「あらあら」
ミケさんが笑う。
なんとも仲よさ気な二匹。
ミケさんは男の耳元で呟いた。
「坊ちゃん、チビちゃんにボーイフレンドができちゃいましたね」

男の動きが止まった。
「うわぁあああああああ!」
そして叫ぶ。
そしてどこかへと走り去っていった。

おそらくは娘を嫁に送る父親の心境なのだろう。
男の脳裏にはチビとの思い出が走馬灯のように流れていたりするのかもしれない。


211猫達と百獣の王なネコ (代理):2010/01/07(木) 16:01:54.26 ID:7tUWPwlc0
残された小さな黒猫は首を傾げていた。
ただ仲良く遊んでいただけで男は泣いて走っていった。
チビには理解不能の行動だ。

そんな黒猫の鼻先をちょんとつついて、ミケさんは呟く。
「本当に坊ちゃんもかわいいわ」

黒猫の隣にいたネコの鼻先もついでにつつく。
「あなたもね」

百獣の王はキョトンとした顔をしていた。




212初詣の迷子確保 (転載):2010/01/07(木) 16:04:27.02 ID:7tUWPwlc0
 雪が降り積もった境内を進んでいく
 出店が並ぶ辺り、ちょうど、タコヤキの屋台の傍に、はないちもんめの少女はいた
 傍には、彼女の友人や赤い靴とその契約者、それに、見覚えのない少女の姿が見える

「む……食べにくいのじゃ」
「あー、ちっちゃい爪楊枝だと食べにくいよね、タコヤキって。箸もらってこようか?」
「むぅ。箸は使いにくいのじゃ」

 彼女の友人と、その見覚えのない日傘の少女が、和やかな会話をしていて
 はないちもんめの少女は、何やら財布の中身を確認中のようだった
 ……無事で会った事に、酷くほっとする

「望」
「あ……黒服、チャラ男」

 名前を呼べば、すぐに振り返ってくれた
 この様子…やはり、迷子の自覚はなかったようである
 いや、ヘタに迷子の自覚があって、心細い思いをするよりは、ましか

「おや、そちらがお前の連れかの?」

 タコヤキに苦戦していた日傘の少女が顔をあげ、黒服を見つめてきた
 黒髪だが、恐らく西洋系の出身であろう顔立ちと赤い瞳
 …その瞳の色は、なぜか血の色を連想させた

 何やら話している少女と日傘の少女
 「日焼けマシン」の契約者の青年が、逸れた事で少女に何か言おうとしていたようでは有るが…見付かった事にほっとしていて、ひとまず、その文句は消えたらしい

「やっぱり、迷子だったのか」
「そうみたいね」
213初詣の迷子確保 (転載):2010/01/07(木) 16:05:54.49 ID:7tUWPwlc0
 赤い靴と契約者が、ぼそりと呟いている
 …少女が迷子なんじゃないか、となんとなく感じていたようだ
 黒服は小さく苦笑し、赤い靴達や少女の友人に向き直る

「皆さん、あけましておめでとうございます……あの子の傍にいてくれて、ありがとうございました」
「気にしないでいいんだよ、黒服さん」

 まぁ、ちょっと酷い目にあったけど!と答える少女の友人
 …若干、ボロボロになっているように見えるのは、気のせいか、否か

「さて、あとはあなたの連れだけね?」
「うむ。まったく、どこにいるのやら」

 タコヤキをこの場で食べるのは、ひとまず諦めたようで
 日傘の少女はパックを閉じつつ、ぼやいている
 …こちらも、迷子だったようだ

「あの、あなたは…」
「妾はヘンリエッタ・ホークウッドじゃ」

 唯我に一礼してくる日傘の少女
 黒服も、釣られたように一礼した

「あの、あなたは、ご両親と一緒に来られたので?」
「いいや、部下とじゃ。まったく、逸れるとは情けない男じゃ」

 …部下?
 違和感を感じたその言葉に、黒服はじっとヘンリエッタを観察する

(…都市伝説?)
214初詣の迷子確保 (転載):2010/01/07(木) 16:07:17.32 ID:7tUWPwlc0
 いや、正確には…「都市伝説に飲まれた人間」とでも言うべきか
 それならば、部下と言う存在がいてもおかしくない
 それは同時に、彼女がどこかの組織に所属しているであろうことを意味するが…

 …どちらにせよ、彼女が迷子である事実に変わりはない
 彼女の言う部下とやらと、合流させてやるべきだろう

「なぁ、その部下、名前なんて言うんだ?」

 「日焼けマシン」の契約者が、そうヘンリエッタに尋ねた
 迷子の放送でもかけさせる気なのかもしれない
 確かに、最終手段はそれだ
 …自分達は、少女が「顎砕き飴」の契約者に狙われている事実から、その方法は使えなかったが
 青年の言葉に、ヘンリエッタはうむ、と答えてきた

「広瀬 宏也じゃ」
「……広瀬?」

 聞き覚えのある名前に、黒服は眉を顰めた
 その名前は、確か
 彼の同僚が使っている…


「…お嬢さん、やっと見つけたぜ」


 雪を踏みしめる音
 ヘンリエッタの背後から、一人の男が現れる
 黒服よりは若い印象の、しかし、彼と同じようにサングラスをつけた「黒服の男」
 その髪が一瞬、しゅるりと伸びた
215初詣の迷子確保 (転載):2010/01/07(木) 16:09:03.27 ID:7tUWPwlc0
 間違いなく、黒服の同僚である、黒服Hだ
 あちらも黒服に気づき、よう、と気さくに声をかけてくる

 …その姿に、少女が一瞬、警戒する
 マッドガッサー騒動の時に顔を合わせてはいるが、まだ信用していないようだ
 それは、「日焼けマシン」の契約者も同じ事のようで、警戒態勢に入っている

「おぉ、やっと来おったか、どこに行っていたのじゃ」

 そんな、少女達の警戒など気づいていないようで
 ヘンリエッタは、黒服Hに不満の声を漏らしている

「それはこっちのセリフだ。俺と行動している時に迷子なんて、勘弁してくれ」
「妾は迷子になんぞなっていないのじゃ」

 こちらも、迷子の自覚は皆無だった
 …何故、この街の迷子は揃いもそろって自覚がないのだろうか
 恐らく、黒服Hも似たような事を考えているのではないだろうか?

「大体な、俺と一緒のときにそうやってはぐれられちゃあ…」

 −−−−−ぬぅ、と
 黒服Hの背後から……大きな人影が、姿をあらわす

「…こいつに、どやされるのは俺なんだぜ?」

 その、赤い靴に匹敵する大柄な姿に、先ほどまで警戒していなかった赤い靴とその契約者まで敬愛する
 人に威圧感を与える、大柄な体格とそれを包み込む黒いスーツにサングラス
 だが、その体格よりも彼が人に威圧感を与えるのは、その顔に走るツギハギのような縫い目だ
 手術後のようなそれがくっきりと顔に表れていて、その人相を酷く凶悪なものにしていた
216初詣の迷子確保 (転載):2010/01/07(木) 16:11:08.82 ID:7tUWPwlc0
 少女が、ヘンリエッタを庇うように立って、その巨体の黒服を睨んでいる

 …警戒が、ピークに達しようとしている中
 それでも、黒服は警戒してはいなかった

「…Gさん?」
「……?黒服、知り合いか?」

 青年の言葉に、黒服はは、と頷いた
 知り合いも、何も

「私の上司です」

 自分や、黒服H、黒服Cの上司である黒服G
 上層部の意思を自分達現場の黒服に伝えるのがおもな仕事であり…このように、現場に出てくることなど、ないはずなのだが

「……見つけましたよ、お嬢様」

 Gの口から、低い声が漏れる
 その矛先は、ヘンリエッタに向いていた

「むぅ、もう抜け出したのがバレたというのか」
「当たり前です………帰りますよ、お嬢様」

 極力、感情を押し殺しているGの声
 それに対し、ヘンリエッタは不満そうに日傘を回している

「嫌じゃ。まだオマイリとやらをしていないし、オミクジもひいておらぬ!」
「…そう言えば、食べてばっかりだったわね」
217初詣の迷子確保 (転載):2010/01/07(木) 16:12:09.13 ID:7tUWPwlc0
 思い出したように呟いている少女
 …どうやら、二人は初詣にきた当初の目的を忘却していたらしい

「駄目です。帰りますよ」
「嫌じゃ!!」

 Gの言葉に、ヘンリエッタは頑として首を上下に振らない
 困ったような表情を見せ始めたGに、黒服はあの、と遠慮がちに声をかけた

「…この、少女は?」
「む、Dか………………あぁ、私が担当している契約者だ」

 一瞬、視線を彷徨わせ、そう答えてきたG
 若干の、嘘が含まれている言葉
 だが、嘘をつかなければならない、と言う申し訳なさを含んだ声だった

「この方は、とある理由から、あまり本部から外に出られては困るのだ」
「嫌じゃ!!妾はもう閉じ込められる籠の鳥は嫌なのじゃ!!」

 地団駄を踏むように、ヘンリエッタが主張する
 はっきりとGを見あげ、己の意思を通そうとしている
 どこまでもどこまでも強い、強い主張
 それを前に、Gは困り果てている様子で
 …極力、勘上を表に出さないようにしている上司が、ここまで困惑している様子を始めて見て
 黒服はどう、この状況で動いたらいいものか、悩んでしまう

 ……ただ、少女が、望が無事で良かった、と言う安堵
 その感情が一番強いのは、確かであった

to be ??
218はないちもんめ (代理):2010/01/07(木) 16:15:36.53 ID:7tUWPwlc0
「あの・・・黒服さん?」
ヘンリエッタの担当らしい(イマイチ信用ならないが)黒服に声をかける
「ん?」
「別に正月位は好きにさせて上げても良いんじゃない?それとも、『組織』って所はその程度の子供のお願いも聞けない位懐の小さい連中なのかしら?」
少し小バカにした様に言ってやる
私はヘンリエッタに手伝ってやると言った
約束は守らないとね
「ソレにさっき、あまり本部から外に出られては困るって言ったわよね?
あまり・・・って事は多少は大丈夫なんでしょう?今日位は認めてやりなさいよ」
「・・・君には関係ないことだ」
「関係ないことは無いわ・・・コイツは私の友達だもの
ダチが無理矢理連れて行かれそうになってるのを黙ってみてるわけには行かないし
それに・・・」


219はないちもんめ (代理):2010/01/07(木) 16:17:21.83 ID:7tUWPwlc0
「それに?」
デカイ奴の顔を睨みつけてやる
「私が立て替えたヘンリエッタの飲食費、計10350円まだ返してもらって無いわ
連れ帰るにしても払ってからにしなさい」
その言葉に・・・周りの連中の時が止まった(色んな意味で)
続く?


220笛(代理):2010/01/07(木) 16:50:30.18 ID:QTk3bBG70
【上田明也の探偵倶楽部】
パンッ!パンッ!
チャリーン!
人気のない神社に参拝する男が一人。
ひとしきり拝み終わると空中を向いて誰かが居るかのように話し始める。

「こんにちわ。
 上田明也と申します。
 今日は少し遅れた初詣にやってきていました。
 ほら、俺が人の多いところに行くと妙な者を引き寄せちゃうでしょう?
 まあ七割方自業自得なんですけれどもね。
 それでも残り三割は朝にパンを咥えて走る美少女のように唐突に向こう側からやってきます。」

神社の境内をゆっくりと歩きながら上田明也は語り続ける。

「元来神社とは境界でした。
 ほら、境内っていうでしょう?
 例えば自然と市街。
 例えば正常と異常。
 例えば…………………。
 まあ良い、とにかく沢山の存在の境界として存在し続けた神社は妙な存在がたむろしやすい場所です。
 真夜中の神社を
 たった一人の殺人鬼が
 意味もなく思考も指向もなく歩けば
 何が起こるんでしょうね?」
【上田明也の探偵倶楽部3〜丑の刻参り〜】
221笛(代理):2010/01/07(木) 16:56:40.11 ID:QTk3bBG70
「さて、さっきの話の続きですよ。」
上田明也は語り続ける。
「俺はつい先日、ここの神社の神主に
 『うちの神社で丑の刻参りをしている女が居るから証拠を押さえてくれ』
 と、言われたんです。
 そうでもなかったら俺だって神社に来るほど暇じゃあないです。」

上田明也は懐から電子煙草を取り出してくわえる。
まだ二十代前半なのにその姿は妙に様になっている。
辺りに漂う香りは苺か何かのようだ。

「ああ、これ?
 最近買ったんですよ、煙草って身体に悪いから嫌っていたんですけど……
 ほら、これならストロベリーの香りで身体にも精神にも優しい。
 本物の煙草は身体を削って精神を救っていると思うんですよ。
 ――――――さて、私はなんの話をしていたんでしょう?」

答える者は居ない。
222笛(代理):2010/01/07(木) 16:58:19.09 ID:QTk3bBG70
「あらら、答えてくれない。
 そうだ、思い出しました。
 私が妙な者を引き寄せてしまう体質だから困るって話です。
 コレって別に私が都市伝説と契約してからの話じゃないんですよ?」
そう言って上田明也は腰に差している村正を見せつける。
「更に言えば都市伝説とかのスーパーナチュラルに限った話ですらない。
 俺も昔はそこそこに普通人として生きていこうと務めてきていたんですが
 そんな頃であっても私の周りには変人奇人が集まって来ていました。
 しかもそういう変な奴らにも好かれましたよ。
 本当に疲れる話だ。
 少し待っていて下さい。
 ……ああ、良いや。やっぱついて来て下さい。」

カメラをしまってバッグの中に入れる。
神社の前に停めてあったフィアットまで探偵としての仕事道具を運んで積み込む。

「仕事の最中にこんなにゆっくり人と話が出来るのも久しぶりですよ。
 ああ、そっぽ向かないで下さい。
 もう話に飽きてしまいましたか?
 さっき話したように俺の周囲には異常な人間か常識的な化け物か非常識的な化け物しか居ないんです。
 貴女みたいに人畜無害な存在も少ないんですよ。
 それじゃあ車出すんで助手席にでも乗って下さい。
 え、シートが汚れないかって?
 ああ、カバーつけてるから大丈夫ですよ。」
223笛(代理):2010/01/07(木) 16:59:19.16 ID:QTk3bBG70
初期型のフィアット500のエンジンをかける。
鼠のような車だがこの独特のデザインが上田明也の好みらしい。

「さて行かないと、事務所で助手が待っているんですよ。
 そいつも都市伝説でね。
 ハーメルンの笛吹きっていうんですけど……、あ、知っている?
 その通り、町を騒がせる連続殺人鬼と同じ名前なんですよ。
 あ、解りましたか。
 そうなんですよ、私があの殺人鬼の正体なんです。
 貴女は喧嘩を売る相手を間違えたことを解ってくれたようでなによりです。
 ああ、そうやって驚いてくれると嬉しいです。
 さて、それじゃあ帰りましょうか。
 丑の刻参りの契約者さん。」

力なく項垂れる丑の刻参りの契約者。
すでに上田の手にかかっておりもう長くはないことは明らかだ。
首を裂かれ
足を引きちぎられ
腕をへし折られた女性
それがフィアットの助手席に座っている人間。
当然、すでに声をあげることも敵わない。

「いやー、運が悪かったですよね。まあ人を呪わば穴二つでしょうか。
 まぁ丑の刻参りの呪いじゃ村正の呪いには勝てませんよ。
 念のためにメルを事務所で待たせていて正解でした。
 私は無理でも彼女くらいなら道連れにできたかもしれませんよね。」
丑の刻参りの契約者の目から光が失われる。
224笛(代理):2010/01/07(木) 17:08:59.35 ID:QTk3bBG70
「……もうちょっと話に付き合って下さい。」 
バチィン!
上田は丑の刻参りの契約者の頬を思い切り叩く。

「ああ、駄目だ。起きない。
 完全に死んだなこりゃあ。
 神主にこの女が犯人って証拠のビデオだけ渡して報酬貰うとするか。」

ガッカリしたような感じで呟く上田明也。
いつも通りの砕けた口調だ。
先程まではあくまで探偵として丑の刻参りの契約者に接していたのだろう。
上田がアクセルを踏むと彼が愛する赤い鼠は夜の町を軽快に走り始めた。

【上田明也の探偵倶楽部3〜問わず語り〜 fin】
225笛(代理):2010/01/07(木) 17:10:03.32 ID:QTk3bBG70
「まったく、何処へ行っても都市伝説だらけだよ。」
フィアットの中で上田明也はぼやく。
「あの神社の神主がもうちょっと仕事すれば良いんだけどね。
 そのおかげで俺の仕事も増えるから文句は言えないか。
 まあ探偵と言っても派手な事件が有るわけでもなければ
 心温まる人情物語が有るわけでもない。
 そこにあるのは非日常の繰り返し。
 全ての事件がそれぞれに異なっているし
 それを解決することはやりがいがある。
 それでも結局繰り返しなんだよ。
 その上、今回みたいに最初から終わっていたような事件もある。
 でもまあ繰り返さないと生きていけない以上、人間ってのも面倒な生き物だよね。
 繰り返さないと生きていけない異常……。
 いや、繰り返すのは正常だよね。
 人間というのはそれすら忘れがちだ。
 それでは皆さんさようなら、さようなら。」
上田の乗るフィアットは雑居ビルの地下にある駐車場に潜っていった。
【上田明也の探偵倶楽部 続く】

226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 17:26:12.99 ID:eBDqy6U+0
代理さん乙

☆ゅ
227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 17:26:43.80 ID:QTk3bBG70
全部終わりましたねー
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 17:33:45.01 ID:fbZbl2Sz0
夜にも代理投下あったのか、乙です
229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 17:54:27.88 ID:QTk3bBG70
230以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 18:31:51.21 ID:QTk3bBG70
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 18:56:59.42 ID:QTk3bBG70
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 18:58:50.01 ID:GkBejni40
233以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 19:05:13.71 ID:fbZbl2Sz0
234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 19:23:02.22 ID:ic1lJNpR0
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 19:55:24.39 ID:QTk3bBG70
236初詣迷子ネタの続き:2010/01/07(木) 20:00:06.70 ID:ic1lJNpR0
 彼、黒服G-No,1は、上層部メンバーであるヘンリエッタ・ホークウッドことH-No,0の腹心の部下である
 彼は、彼女と共に「組織」の一員になる前からずっと、彼女に仕え続けてきていた
 そのせいなのか、彼はヘンリエッタに対して、少々過保護ですら、ある
 …彼女を外に出さない理由は、彼女が「組織」の上層部メンバーであるから、という理由以外に、彼女に危険な目にあってほしくない、という想いもあるのだ
 その、彼にとって…この度のヘンリエッタの願いは、本来ならば承諾する訳にはいかない願いだ
 ヘンリエッタの気持ちとて、わからない訳ではない
 「籠の鳥」
 ヘンリエッタは、己の境遇をそう表現した
 その通りの生活になってしまっている事は、確かに事実だろう
 だが、Gにとって、それはヘンリエッタを護る為の手段なのだ

 ………しかし
 今の状況は、Gにとって非常に分が悪い状況だった
 D-No,962の家族である「はないちもんめ」の契約者の少女が、ヘンリエッタの味方をしてしまっている
 ここから、さらにGにとって分が悪い事に

「……あの」

 と、D-No,962が、遠慮がちに、声をかけてきたのだ

「あの、Gさん…せめて、今日だけでも、この少女に自由を与える事は、できないでしょうか?」

 ……Dは、ヘンリエッタが己の上司であるGの、更に上司であるなどと気づいていない
 彼から見れば、ヘンリエッタもまた、ただの一人の少女にしか過ぎないのだろう…実際には、少女と言う言葉など生温い年齢なのだが、それに気づいているはずもない
 Dは、いつだって子供の味方だ
 こんな少女が、自由を奪われて生活している…それを、憂いているのだろう
 表情に、それがはっきりと表れている
 …過労死候補などと言う不名誉な呼ばれ方すらされているこの部下に、このような表情をさせてしまうのは心苦しい
237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 20:03:29.98 ID:QTk3bBG70
>>過労死候補などと言う不名誉な呼ばれ方
もっとひどい呼ばれ方があったと思うんだ支援
238初詣迷子ネタの続き:2010/01/07(木) 20:04:48.95 ID:ic1lJNpR0
 …それでも、承諾する訳には行かない
 Gは、心を鬼にしようとして

 ………しかし、ここで彼にとって、最悪の援護射撃が来た

「いいんじゃねぇの?正月くらいは」
「………」

 H-No,360
 彼の言葉に、Gは表情を歪める
 余計な口出しをするな
 そんな言葉が、反射的に喉を付きそうになるが

「そうじゃ!今日くらいはゆっくりしたいのじゃ!自由に行動したいのじゃ!!」

 Hの言葉に続くように、ヘンリエッタが要求を続けてくる
 …周囲の視線が、Gに集中する
 どこか、避難するような色の視線
 ………Gは、深々とため息をついた
 日頃、感情を表に出さないようにしている彼としては、これほどの人の前で感情がはっきりと表れるのは珍しい事だ

「…仕方ありませんね。今日だけですよ」

 Gの言葉に、ヘンリエッタがぱぁ、と表情を輝かせた

「ありがとう、G」
「……お嬢様が、そちらの少女に迷惑をかけたようですしね……今日だけ、ですからね」

 ヘンリエッタにそう言いながら、Gははないちもんめの少女に、ヘンリエッタが食べた分だと言う飲食代を払う
239初詣迷子ネタの続き:2010/01/07(木) 20:15:12.04 ID:ic1lJNpR0
 そのまま、ヘンリエッタは少女達と共に、初詣のお参りをすませるつもりのようだ
 D達もまだだったようで、Dは少女の手を引いて歩き出している

「…ねぇ、赤い靴履いたお嬢さん。せめて、そこから降りてくれてば嬉しいんだけど」
「ぜっったい嫌!!」
「俺も、下ろしたくないな」
「何モシナイヨ?愛デルダケダヨ??」
「信用できる訳ないでしょ!!」
「…黒服、ちょっと、友に止めさしてきて、いい?」
「あの……確かに、あの年齢であの手の事に積極的なのはどうかと思いますが…その、止め、までは」
「まぁ、あぁ言うの見てると日本の将来暗いなー、とは思うけど、いつかは正気に戻るかもしれないし、止め刺すまではしなくていいんじゃね?」
「全体的に私を否定する存在しかいない!?酷い!?」

 賑やかな集団
 その中で、ヘンリエッタが楽しそうに笑っている

 …彼女の、あのような笑顔を見たのは数十年ぶりのような気がする
 笑っていても、心から笑っていた事が、はたしてどれだけあっただろうか?

「どうした?娘が嫁にでも行ったような顔して」
「………黙れ、H-No,360」

 茶化すようなHの言葉に、Gは低く、低く返す
 彼にとって、憎しみすら抱いている相手
 その相手のいいように事態が動いているかのような状況が、気に食わない

「…これも、お前の思うがままの状態、か?」
「まさか」

 肩をすくめてくるH
240初詣迷子ネタの続き:2010/01/07(木) 20:21:08.68 ID:ic1lJNpR0
 …Gは、Hの言葉などカケラも信じてはいない
 疑いの眼差しが、サングラスごしに向けられる
 が、Hはそれを気にした様子もなく、くっく、と笑う

「たまたまだよ。お嬢さんが俺と逸れたのも、そのお嬢さんが、Dの大事な大事な家族の、はないちもんめの契約者と会ったのも」
「…………」
「お嬢さんの好きな言葉を使えば、運命、って奴なんじゃねぇの?」

 へらへらと笑っていってくるH
 …真実を語ろうとしない、本心を語ろうとしないその様子が、Gは気に食わない
 己の主が、何故こんな男を重宝するのか、心を許すのか、未だに理解できず…ただ、この男に対する憎しみだけが、募る

「んな顔すんなや。あのお嬢さんだって、もうちょっと現場を知るべきなのは事実だろ?知り合いが増えるのは悪い事じゃない」
「……だが」
「−−−『上層部の正体が隠されているのは、暗殺を防ぐ為』」

 Hが口にした、それは……事実だ
 「夢の国」の騒動以降、上層部メンバーの…それも、強硬派や過激派のメンバーが暗殺されたのを機に、その方向性が「組織」内では強くなっていた
 そうじゃなくとも、秘密主義の「組織」だ、上層部メンバーの詳細は、上層部メンバーすら全ては知らないのだが…

 くくくっ、とHが笑う
 その顔に浮かんでいるのは………はっきりとした、悪意だった

「あのお嬢さんには、その心配がないんだ。気にしなくていいんじゃないか?何せ、あのお嬢さんは…」
「………口を慎め」

 Gの低い声に、Hは再び肩をすくめてきた
 ……許されるならば、この男の首をこの場でへし折ってやりたい
 だが、それは許されない
241初詣迷子ネタの続き:2010/01/07(木) 20:23:34.26 ID:ic1lJNpR0
 自分は、この男に一矢報いる事すら、できないのだ
 その事実が、Gにとっては歯痒い

「…まぁ、仲良くやろうぜぇ?同じ上司を持つ同僚同士なんだからよぉ?」
「…………」

 Hの言葉に、Gは答えない
 ただ、不機嫌さを隠そうともせず、Hを睨みつけたのだった





「…む、どうしたのじゃ、あやつらは」

 付いてこない部下達の様子に、ヘンリエッタは不思議そうに首を傾げた
 …まぁ、いいか、と結論付ける
 Gは、あの高身長で目立つ
 いざとなれば、きっとすぐに合流できるだろう

「…望よ」
「なぁに?」
「ありがとう」

 手伝ってくれて、と
 ヘンリエッタは、嬉しそうに笑って、はないちもんめの少女にそう伝えたのだった


to be ??
242以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 20:26:38.10 ID:ic1lJNpR0
はないちもんめの人に土下座!
ひとまず、立て替えていたお金は無事はないちもんめに支払われました
これから、みんなでお参りしたりおみくじひけばいいと思うよ

ってか、おみくじ引くシーンまで書こうと思ったがDが凶とか大凶引く様子しか想像できなくて書かなかったとか秘密
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 20:39:35.59 ID:QTk3bBG70
乙でした!
Gさんも大変だ
244以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 20:56:19.49 ID:ic1lJNpR0
俺の出す黒服は苦労人かフリーダムかの二種類しかおらんのかいって気になってきた
245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 21:02:17.74 ID:fbZbl2Sz0
いい感じに二極化してるなw
それぞれに違った活躍の場があっていいじゃないか
だけど、黒服Dは活躍しないでゆっくり休んで欲しいと思う俺が居る
246以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 21:05:53.49 ID:s9yTwmq90
乙です!
都市伝説に関係する人は『変態』『常識人』『フリーダム』に分けられると思う
247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 21:07:07.33 ID:ic1lJNpR0
>>245
>だけど、黒服Dは活躍しないでゆっくり休んで欲しいと思う俺が居る
大丈夫だよ
初詣の後は「首塚」の新年会に参加予定だからゆっくり休め……ゆっくり………

ゆっくり休めるはず、だよ!
248笛(代理):2010/01/07(木) 21:16:22.15 ID:FxhfgMeW0
【上田明也の探偵倶楽部】

「知っているか?
 ロリコンは三つのタイプに分けられる。
 二次元や妄想のみで我慢する遊び人
 三次元をなんとかしてばれないように狩りにいく勇者
 そして、ついに創作活動を始めてしまう賢者
 この三つだ。
 そう、奴は………」

【上田明也の探偵倶楽部4〜もしもそれが許されるなら〜】


249笛(代理):2010/01/07(木) 21:17:13.69 ID:FxhfgMeW0
「暇だな。」
「暇ですね。」
探偵業を始めた上田達であったがそういつも仕事が来るわけではない。
このように暇をすることもある。
「適当に友達呼んで麻雀とかやる?」
「いや、マスター友達居ましたっけ?」
「大学にいた頃は友達と言う名のボッチ回避装置を沢山装備していました。」
「大分重かったんじゃないですか?」
「そう思うだろう?でもタンパク質って金属よりは軽いんだぜ。」
「そうですか、でも問題は現在です。
 残念ながらマスターには援助者や下僕や慕ってくれる人は居ても友人は居ない。
 そう考えるとマスターって実は対等な人間関係築くの苦手なんじゃないですか?」
「何を今更、俺よりすごい奴は居ても俺と対等な奴は中々居ないよ。」
「やれやれだ。」
時計の針は午後三時を指している。
なんとも半端な時間帯であった。
250笛(代理):2010/01/07(木) 21:18:09.12 ID:FxhfgMeW0
「よし、ちょっと近くのゲームショップにでも遊びに行くか。
 メル、お前も来る?」
「いえ、良いです。留守番要員居なくなるでしょうに。」
「解った。それじゃあ行ってくるよ、もし帰ってこなかったら橙辺りに連絡してくれ。」
ふらふらと事務所を出て行く上田。
「はーい。………よく考えたら私暇じゃん、ってあれ?
 マスター!蜻蛉切忘れている!!!!」
メルが慌てて上田を呼んだ頃には既に彼は出かけていたのである。

上田明也は事務所のドアの前の札を所長不在にするとまずはベスパに乗って行きつけの煙草屋に向かった。
電子煙草のカートリッジを買い足しに来たのである。
「お姉さん、いつもの。」
「あら笛吹ちゃん。お姉さんなんて都市じゃないですよ。ちょっと待ってなさい、苺味よね。」
もう60は越しているであろうおばあちゃんがいつもこの店の店番をしている。
電子煙草なんてわざわざ買う人間は少ないので上田の電子煙草のカートリッジは取り寄せて貰っているのだ。
いつも通りにカートリッジを貰うと代金を払い、店を去る。

「やっぱ良いねえ、苺味。」
まだ肌寒い一月の風邪を頬に受けながらベスパで走り抜ける上田。
探偵物語を見てからというもの性能など一切無視してベスパである。
性能だけ見ればもっと良い物が沢山あるというのに彼はそれを使おうとしない。
「根っからの情緒主義者なんですよ。」
誰に言うとでもなく電子煙草をしまって呟く。
しばらく走ると彼がよく行くゲームショップに辿り着いた。
251以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 21:18:19.63 ID:ic1lJNpR0
支援
252笛(代理):2010/01/07(木) 21:19:09.76 ID:FxhfgMeW0
「さて、何か新作無いかなぁ?」
向かう先は勿論アダルトコーナー。
棚に並ぶ少女達の絵が放つ眩しい笑顔に見向きもしないで上田明也はアダルトコーナーの奥地まで行く。
そう、彼が探している物はたった一つ。
幼女の放つ眩しい笑顔である。
「あった!アグネスに喧嘩を売る問題作として有名な『肛虐の監禁病棟24時〜小児科編〜』じゃないか!
 ハードな雰囲気漂うタイトルとストーリーを重視した徹底的な作り込みから大人気になって
 品切れが連続しているのに!!
 神よ、これは私にあなた様が与えたご褒美か何かですね!
 ありがとうございます!」
そう言って肛虐の監禁病棟24時〜小児科編〜に上田明也が手を伸ばしたその瞬間だった。

「あ。」
「あ。」

手と手が触れあった。
エロゲを買おうとして手と手が触れあうなどあまり経験したくない状況である。

「おっとすいません。」
上田がすかさず手を引っ込めて相手の方を見る。
「いえいえ、こちらこそ。」
そう言って上田と偶然手が触れあった少女も彼を見る。
253以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 21:19:10.95 ID:s9yTwmq90
支援
254笛(代理):2010/01/07(木) 21:20:51.89 ID:FxhfgMeW0
「って少女?」
上田明也と手と手が触れあって居るのはロリではないが立派な少女であった。
「ああ……、気にしないで下さいお兄さん。」
「いや、そう言っても良いのだろうか子供がこんな場所で………。」
「このコーナーに出てくる人は みぃんな18歳以上だからね!!」
「ああ、うっかり忘れていたよ。そうだな、18才未満な訳がない。」
「いえいえ、それよりお兄さんもロリが好きなんですか?」
気さくに会話を進める二人。まるで長年の友人のようだ。
これからは少女のことを仮に友と呼びたい。
「ああ、大好きだ。信仰しているといっても過言ではない。」
「ほうほう、本当に好きなんですね……。」
「昔から中々理解して貰えなくて困っていたんだよ。
 一人暮らししてからだ、自分の趣味に充分に浸れるようになったのは。」
「成る程、苦労してらっしゃったようで……。」
二人はそのままレジに向かう。
その間も会話は弾んでいた。
255笛(代理):2010/01/07(木) 21:22:09.85 ID:FxhfgMeW0
「友達に一人可愛い子が居てさ……。」
友には気になる同性が居るらしかった。
「マジで?その年なら女の子同士でも勢いで行けるんじゃないか?」
「いやいや、これが意外とガードが厳しいんだ。」
「良いじゃないか、落としがいが有って。」
「ポジティブっすねえ〜。」
上田がレジの店員に肛虐の監禁病棟〜小児科編〜の在庫があるか尋ねる。
幸いなことに二人分あったようである。
「お金大丈夫か?」
「何いってんですか、私はリサーチ済みだって言ったじゃないか。
 お兄さんこそ昼間からこんなことしてて大丈夫なの?」
二人とも代金を払う。
「はっはっは、まったく言うとおりだ。でも俺って探偵なのよ。
 これ、事務所の住所。」
代金を払いながら財布から名刺を出して友に渡す上田。
「笛吹探偵事務所……、あーあのチラシの!」
「そうそう、解ってるじゃないか友ちゃん。」
「友ちゃんってなんなのさ笛吹さん。」
「笛吹で良いぜ、紳士の絆の前には性別も年齢も無意味だ。」
「じゃあ笛吹。」
「友ちゃんがなんなのかって?ほら、友人Aみたいな意味だよ。」
「じゃあちゃんってなんなんだい。」
「愛称、友ちゃんなんか可愛いから。」
「………ちゃんは外す方針で。」
「じゃあ友。」
「よし。」
中が見えなくなっているレジ袋を手にぶら下げて店を出る二人。
256以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 21:22:38.01 ID:ic1lJNpR0
支援
つーか友人、18禁コーナー出入りしてるの教師とかに見付かったらヤバイよなwww
257笛(代理):2010/01/07(木) 21:23:10.29 ID:FxhfgMeW0
「さらばだよ紳士・友、何か問題が起きたら笛吹探偵事務所に来い、安くしておくぜ。
 好きなこの家に盗聴機くらいはしかけてやるよ、……今のジョークな。」
駐車場の上田のベスパの前で二人は話し込んでいた。
仕掛けようとすると黒服Dやチャラ男にも出会うかもしれないのでジョークにすらならない。
「はっはっは、どうしようもなくなったら頼むかも、なんて。
 それじゃあさようならだ紳士・笛吹、また会えたらどっか適当な場所でゆっくりロリについて語り合おう。
 私としてはそれ以外も語りたいんだけどさ。」
「ふむ、それは気になるな。ロリ以外には基本興味は無いけど好きな人から聞く話は面白い。
 場所ならルーモアって喫茶が中々雰囲気良いからそこなんか良いかもしれないな。
 あとは噂の産物ってレストランとかもチェックしてたんだよなあ……。」
ちなみにどちらへ行っても上田なら危ない目に遭う可能性がある。
258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 21:24:35.51 ID:fbZbl2Sz0
支援だ!
259笛(代理):2010/01/07(木) 21:24:36.01 ID:FxhfgMeW0
「口説くなよ?」
「それも悪くないとは思っている。
 一部のロリコンの真面目に幼女・少女を口説こうとしない傾向は問題すぎる。」
「口説いたことあるの?」
「高級なレストランに連れて行って花束をプレゼントしたよ。」
「結果は?」
「駄目だった。まだ誰か一人に決めるつもりはないんだと。」

二人はどちらからともなく笑い始めた。
上田明也は友達というのも悪くないと考え始めていた。
「こんどこそじゃあな。」
そう言ってベスパに跨ると上田明也は夕暮れに飲み込まれ始めた町のどこかに消えていった。

【上田明也の探偵倶楽部4〜もしもそれが許されるなら〜 fin】

「ああ、なんか知らないけど友と居ると中々心が温まったな。
 もし縁が有るならば……、もう一度会いたいな。
 そうか、俺は俺を理解して、受け入れてくれる人を探しているのかもしれないな。
 俺を認める人間は幾らでも居るけど俺を受け入れてくれた人間はそんなに居ないからな。
 単純なことだけど今気付いたよ。
 神様、二つもご褒美をくれてありがとう。」

【上田明也の探偵倶楽部〜続〜】
260以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 21:26:57.79 ID:QTk3bBG70
乙でしたー!
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 21:28:48.56 ID:ic1lJNpR0
代理投下乙!!
262以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 21:29:11.96 ID:s9yTwmq90
代理乙ー
263以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 21:30:52.41 ID:fbZbl2Sz0
代理乙
ロリコン仲間…いや、紳士の間に芽生えた友情か、美しいな
264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 21:46:18.97 ID:ic1lJNpR0
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 22:01:52.99 ID:QTk3bBG70
十八禁コーナーはともかくタイトルが鬼畜すぎるw
266以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 22:07:56.28 ID:s9yTwmq90
作者さんに土下座!!
一応黒服Dのつもり

ttp://imepita.jp/20100107/756650
267以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 22:12:05.95 ID:ic1lJNpR0
>>266
速攻保存したGJ!!!!
黒服D、そんな感じっす!!
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 22:22:15.17 ID:QTk3bBG70
おお! 絵だ!! GJ!
269以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 22:32:06.40 ID:ic1lJNpR0
おやすみー明日もスレがのこっていればしあわせだ!!
270以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/07(木) 22:54:07.16 ID:QTk3bBG70
271以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします