「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者たち……」

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここは
都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたり
そんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりするスレです

今までのお話は↓でゆっくり読んでいってね!

「まとめwiki」 ttp://www29.atwiki.jp/legends/

まとめ(途中まで) 
ttp://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html
ttp://zipdkr.net/loda/src/zipdkr_14825.zip.html
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 15:17:39.46 ID:2THYSz92O
なんとも微妙なタイミングだが乙
3はないちもんめ(代理):2009/11/28(土) 15:21:39.71 ID:64XOlb630
終わった・・・
悪魔の囁きはチャラ男に焼かれ消滅
魔女の一撃の契約者は気を失ってる
後は、学校内のマッドガッサー達がどうなってるかと、魔女の一撃か
魔女の一撃は、コイツから支配権取ればどうとでもなるとして・・・
うん、まだ時間には余裕がある・・・何とかなるわね

少女「親友・・・ねぇ」
魔女の一撃の契約者の手を握っているチャラ男を見て呟く
黒服D「どうかしましたか?」
少女「別に、あそこまでされておいて親友だから許せるなんて甘ちゃんだなぁって思っただけよ」
黒服D「それが、彼の良い所ですよ」
少女「確かにそうかもしれないけどね・・・」
ソレは美点だけど、同時に弱点にも成り得る訳で・・・まぁ、会って間も無い素性も知れない私の事をすぐに仲間と呼んだりする位根がまっすぐな奴だから、そこら辺は私がフォローしてやるとして・・・・・・・・ん?

黒服D「どうかしましたか?」
少女「・・・いや」
感知に引っ掛かる明らかな違和感
学校内の状況、クラブハウス内の状況は然程変わってない
ただ、上空が・・・上空に物凄い数の都市伝説の気配が・・・
これは、一体何?
Tさんが、魔女の一撃の契約者がぶち破った壁から空の様子を見る
見ると
巨大な鳥と、見覚えのあるロボが戦ってるのは良いとして
何時かどこかで、見た様な、翼の生えた全裸の筋肉男が飛んでるのは何なんだろう・・・・・・
取り合えず、余りに精神衛生上よろしく無かったので、即座に忘れる事にした



続く?
4死人達(代理):2009/11/28(土) 15:23:19.65 ID:64XOlb630
○月×日 21:50 学校周辺
兄貴「AHAHAHAHAHAHAHAHA!!観念して掘られなさい!!」
死人「死んでも断る!!」
死人「数多の積みゲー残したまま死ねるか!!」
死人「まぁ、俺達既に死んでるんだけどな!!」
スタングレネード、手榴弾、火炎放射機等、とにかく相手の視界を少しでも遮れる武器を選択し、使いながら死人達は走り続ける
兄貴達を少しでも学校から遠ざける為に

死人「散れ!!」
死人の一体が何かを投げると同時に辺りが煙に包まれる
兄貴「煙幕!?ハァッ!!」
兄貴は兄気を放ち煙を吹き飛ばすが、時既に遅し、死人達の姿が見当たらない
兄貴「どこへ・・・「ここだ!!」ぬ!?」
交差点の角に、建物の影に、マンホールの中に、潜んでいた死人達が一斉に飛び出し手に持った巨大な銃火器を兄貴に向け放つ
兄貴「ぬぅっ・・・」
死人「物陰に潜むこと、gkbrのごとし!!」
死人「蜘蛛の子の様に散り」
死人「海月のように刺す!!」


5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 15:24:00.59 ID:0RNGiVrkO
支援
6死人達(代理):2009/11/28(土) 15:24:30.86 ID:64XOlb630
兄貴「むぅ・・・不意打ちとは卑怯な・・・」
死人「戦場ではなぁ、すばしっこい奴、ズルイ奴、影が薄い奴の方が生き残りやすいんだよ!!」
死人「まぁ、俺らは死んだんだけどね!!」
死人「お前しつこい、同じネタが許されんのは3度までだろう」
再び煙幕を張り隠れようとする死人達
兄貴「これでは、埒が明きませんね・・・仕方が無い・・・はぁぁぁぁぁっ!!!」
兄貴の身体が光輝き、その背中に二枚の翼を形成する
兄貴「トワイライト・ウイング・兄貴(劣化版 第一形態)ハァッ!!」
兄貴は翼をはためかせ空へ舞う
死人「飛んだぁ!?」
死人「全裸でな」
死人「男の全裸とか誰得」

見上げると、自分達を追っていた兄貴だけではない
他の連中を追っていた兄貴達もが翼を広げ空を舞っている
死人「俺、これに良く似た光景見たこと有るわ」
死人「どこで?」
死人「劇場版エヴァンゲリオンの量産型が丁度こんな感じに・・・」
死人「うわぁ・・・」
学校町の上空を数多の兄貴達が舞う
サンダーバードや、巨大ロボも飛んでいる為学校町の上空は既に人外魔境だ
その兄貴達が一斉に構えを取る
死人「やば・・・」
兄貴達「「「「「「「「「「「武 炉 手 印 !!」」」」」」」」」」」」」
幾筋もの光が、町に降り注いだ

続く?
7占い師と少女(代理):2009/11/28(土) 15:26:55.17 ID:64XOlb630
○月×日 22:07 二階廊下

ドクターさん達が合流し、その後に金さんと女装少年さんが合流して……いつの間にか、私たちのグループは10人を超える程のものになっていた。
幅の広い廊下を目一杯使っても、何列かにならないといけない程の人数。多分、かなり目立っている事だろう。

「……大体、何であんたも来てるんだ。さっきの『お願い』は嘘か?」

占い師さんが言った対象は、私たちの少し後ろを歩いている黒服Hさんだった。

「なに、どんな大怪我してる最中でも、美少女のピンチは救わねばならないだろう、常識で考えて」
「それが生物の本能、それが『漢』と言うものだよ」

黒服Hさんの隣にいたドクターさんも賛同する。
ちなみに、ドクターさんは既に化学準備室で借りた白衣を着ていた。
その横には、軽い応急手当を終えた女装少年さんと、ザクロさんもいる。

「……お前は男じゃないだろう」
「兄さん、愛は性別を超えるんだよ」

私たちの斜め前では、不良教師さんと「骨を溶かすコーラ」の契約者さんが何かを言いあいながら、皆を先導するように歩いていた。
不良教師さんの向かう先は、美術準備室。…………そこに、階段を使わずに3階へと上がる抜け道があるのだという。

『いやー、そやけどほんま懐かしいわー』
『今は、どちらに?』
「あ、はい。『うわさの産物』というレストランで――――」

不良教師さん達の少し後ろでは、金さん達が互いの意近況報告に咲かせていた。
女体化によってフィギュア化されているのが、何というか……原型を留めてなくて、普通に可愛いと思ってしまった。
……そういえば、もし白骨標本さんがガスを浴びたら、女性の骨格になるのだろうか。
8占い師と少女(代理):2009/11/28(土) 15:28:12.18 ID:64XOlb630
「……っと、着いたぞ。ここだ」

数分が経ち、幾つかあるうちの一つのドアの前に、不良教師さんが立ち止まった。
暗がりで見づらいプレートには「美術準備室」の文字。

「……さて、どの鍵だったか……」

化学準備室と同様、懐から取りだした鍵を一つ一つ合せていく。
非常灯の灯りを頼りが、銀色の鍵を緑色に照らし出した。

かちゃり

少しして、その内の一つが当たり、辺りに錠の空く乾いた音が響いた。
不良教師さんによって扉が開かれ、中から空気が漏れてくる。

「…………あれ?」

その空気に、私は違和感を覚えた。
化学準備室を開けた時の空気は籠っていて、少しの固さと湿っぽさがあった。
しかし、この空気は……非常に冷たい上、どこかが空いているのか、解放後も風が出入りしていた。

「……ほう……」

さきに中に入った不良教師さんが、軽いため息を漏らす。

「誰か先に来た人間がいたみたいだな……」

その視線の先には、大量の鼠の死骸と、ある点を中心とした爆風の後。
その中心には、椅子が一脚、ぽつんと置いてあった。
9占い師と少女(代理):2009/11/28(土) 15:28:53.71 ID:64XOlb630
「……ハーメルンの笛吹き、か」

鼠を見た占い師さんが呟く。
ハーメルンの笛吹きと言えば、購買で私たちを襲った鼠を操っていた人だけれど……。

『大丈夫だったんでしょうか……?』
「爆発した跡に足場として椅子が置かれてるんだ。まず平気だろう」

白骨標本さんの言葉に、不良教師さんが周囲を見聞して答えた。

「さて…………」

占い師さんが、天井の一部空いている所を中心に、室内を見回す。
能力を使っているのか、その目に映っているのは室内の情景ではない。

「……特に罠らしい罠もない。これなら行けそうだが……」

占い師さんの視線が、ふと一角に止まる。

「何だね?」

その先にはドクターさんと、

「……ワタクシには、ちょっと通るのが無理だと思いますわ」

その巨躯に気絶した少女を乗せた、ザクロさんだった。
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 15:29:14.55 ID:0RNGiVrkO
しえ
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 15:30:43.93 ID:d5fHkMD30
支援
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 15:31:58.80 ID:txlM+LXfO
立ってた事実に吹いた
13占い師と少女(代理):2009/11/28(土) 15:35:11.38 ID:64XOlb630
「ああ……確かにザクロさんには……」
「俺の髪で天井までなら、押し上げる事は出来るが……」

女装少年さんの言葉を受けた形で言った黒服Hさんに、不良教師さんが首を振った。

「その後も少し歩かなくちゃならない。入るだけじゃ駄目だな」
「ふむ……なら、ここで一旦別行動、という事かね」
「別行動、ですか……?」

私の疑問に、ドクターさんが答えてくれる。

「ザクロ君が階段を使うしかない以上、ここから3階へあがる班と、階段を通る班に分かれた方がいいという事だよ、お嬢さん」
「え? でも、全員で行動した方がいいんじゃないんですか?」
「階段を渡るとなると、あいつを説得しなくちゃならないな。下手に大勢で行くと身構えられるさ」
「あいつ……? ……ああ、『13階段』か」

占い師さんの言葉に、黒服Hさんは手を軽く振った

「もしあいつを説得する気なら、その名前であいつを呼ばないほうがいい。嫌がるからな」

占い師さんは軽く首を振って

「……いや、俺たちは説得には回らない。ここから3階へ行くつもりだ」
「案内人としては、俺も3階までは付き添わなければ、な」
「兄さんが行くなら、もちろん僕も」
『わても行きまっせ―』

占い師さんの言葉に反応して、意向を示し始める不良教師さん達。
14占い師と少女(代理):2009/11/28(土) 15:35:58.27 ID:64XOlb630
「あ、えっと……」

そこに、おずおずとした声がかかった。

「私も、白骨さん達と一緒に行きたいんですけど……いいですか?」
『もちろん大歓迎やでー!』
「ここから行けるなら、その人数が多いのに越したことはない」

人体模型さんがばしばしと金さんを叩き、占い師さんもそれに同意した。
…………えっと、不良教師さん達にドクターさんたち、黒服Hさんに、金さんと、私たちが決まった事になるから、後は……。

「あ、えっと、元々説得予定だったし、ザクロさん達に付いていこうと思ってるんだけど……」

そう言って、女装少年さんはドクターさンたちの方を伺った。

「ふむ……お嬢さんが加わるのはボク的には全く構わないよ」
「もちろん、美少女はウェルカムだ」

それに答えたのは、何とも純粋な男性陣の言葉だった。
……女装少年さんが少し心配になってきた。
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 15:36:20.38 ID:d5fHkMD30
支援
16占い師と少女(代理):2009/11/28(土) 15:38:31.83 ID:64XOlb630
「……さて、これで組み分けは終わりか?」

占い師さんの言葉に、面々が頷いた。

「よし、じゃ、取りあえずの目的は3階で合流。俺たちはここから、あんた達は『13階段』を説得で3階まで上る」
「ワタクシ達が説得に失敗した場合は?」
「それなら、天井を壊してでも来ればいい。主戦力のあんたらがいないままでマッドガッサーには挑めんさ。最低限、あんたらかTさん達と合流するまで、戦闘を始めるつもりはない」

そこまで言って、占い師さんは天井を見上げ

「……まぁ、罠を解除したり、スパニッシュフライに操られた奴がいたら気絶させる位はするかもしれんが」
「……ふむ、では、ここで」

そう言って私に差し出されたドクターの手を

パシッ

占い師さんが取った。

「…………ふむ」

残念そうな顔をするドクターさん。
こんな状況下でも自分の欲求を通そうとするドクターさんに、私は少し感心してしまった……。
17小ネタ(代理):2009/11/28(土) 15:39:28.27 ID:64XOlb630
○月×日 22:10 中央高等学校上空


 −−−−−天から、雷が降り注いだ
 その雷が、兄貴達の放った光を打ち消す

「む………!?」

 続けざま、いくつも降り注ぐ雷
 それが、兄貴達に命中し、その体を焼いていっている
 ……半数以上の雷が目標に当たる事なく、グラウンドに大穴や黒こげた跡を作って言っているが

 サンダーバードの雷では、ない
 では…誰が?

「……これは、まさか」
「……これは、もしや」

 離れた場所にいる、死人部隊の契約者と、盟主
 この二人は、ほぼ同時にこの雷を落としているのが誰なのか、思い当たった


○月×日 22:15 「首塚」


「……ふむ、大分落ちたか?」
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 15:39:54.39 ID:d5fHkMD30
支援
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 15:41:40.11 ID:yJ8gnERJO
しえ
20小ネタ(代理):2009/11/28(土) 15:43:10.35 ID:64XOlb630
 首だけの状態から、武者の姿に戻り
 静かに空を見上げ、将門が呟く

 …マッドガッサーとやら達が立てこもっているという寺子屋
 その上空に発生した、不快な気配
 それが、寺子屋を消滅させかねない攻撃をしたようだったので…とりあえず、打ち消しておいた
 ついでに、撃ち落そうといくつか雷を放っておいたが…さて、目標が見えない状態で放ったが、いくつ落とせたやら
 一応、あの強大な力については、力が強大だった故に目標をたがう事なく打ち消したはずだが

「…覚えのある力だ。「組織」の黒服の一人であったか……くっかかか、「組織」の狗めが。我同士が、我の嫁候補もおる場所を消滅させようとはいい度胸だ…呪ってやろうか」

 くっくっく、と
 「首塚」の主は笑う

 道真公に釘を刺され、今回の戦、直接参加はできないが…まぁ、これくらいはよかろう
 もし、再び同じ攻撃を放とうというのなら、何度でも撃ち落してくれる


 …我仲間を、我の嫁候補を、護る為に






続く予定はない
21女装少年の人(代理):2009/11/28(土) 15:44:07.94 ID:64XOlb630
 全体重と全ての速度のこもった蹴りを食らったその中年男性は勢いよく吹き飛んでいき、逆に綺麗に着地した少女は、突然のことに目を真ん丸にしている女の子にぐっと親指を立ててみせ、その背中合わせに構えをとる。
 その行動に込められたのは、"話は後で、背中は守る"というただ一つのメッセージ。
 それは無事伝わったようで、背中越しに女の子がすっと構える気配を感じた。
 突然の闖入者に警戒したのだろう、一時的に距離をとって様子を窺っていた若者や中年達の集団もそれぞれ体勢を立て直し、一人増えて二人となった標的達に純粋な敵意のみを向ける。
 その意思を感じて、場を掻き乱すことであわよくば、と狙っていた話し合いは不可能だと少女は悟った。
 目には見えず、しかしこの状況においては確かな拘束力を持った緊張が空き地の空気を埋め尽くしていき―――先に動いたのは、男達の方だった。
 かなりの速度で突き出された若者の太い腕。それを少女は見切り、その腕に飛び付いて逆関節を極める。
 サンボに見られるような飛び付き腕十字。ボキリ、という音とともにその腕から力が抜けるが―――それでもその若者の動きは止まらなかった。痛みを感じないかのように狂った笑みを浮かべながら、もう一方の拳を少女に叩きつけようとする。
 それを見た少女は若者の腕を支点に身体を半回転させ、左足で若者の足を払う。
 殴りかかろうとした瞬間にバランスを崩され、若者は仰向けの状態で地面に倒れ―――その後頭部が地面に当たるその瞬間、落下の勢いを利用し加速した少女の右足が若者の顔面に降った。
 与えられた衝撃は逃げ場をなくし、若者の頭部で炸裂する。
 その若者の目がぐるんと裏返るのを確認もせず、少女は即座に立ち上がる。
 チラリと女の子の方を覗き見ると、二人の男性を無理矢理に振り回して地面に叩きつける女の子の姿が目に入った。
 その暴れっぷりを見て、不意打たれなかったら余裕っぽいなーと分析しつつ、タックルしてきた中年男のこめかみへと身体のねじりを利用したフックを叩き込む。
 ついで突進してきたホームレスっぽい人の脇腹には回し蹴りを。しかし今度は受け止められ、逆に足を捕らえられた。更に身体を捻って後ろ回し蹴りをその顎先に見舞い、意識を刈り取る。
 そこまでで少女が地面へ沈めた人数は四人。その内二人は一撃で倒れず、反撃を加えようとしてきた。
 その事実を頭の中で分析し、少女はとある仮説を打ち出す。
 その仮説とは、"この男達は痛みを感じないのではないか"というものだ。
 女の子に投げ飛ばされた男性達が手足を奇妙に折り曲げながらも立ち上がろうとしているのが、その信憑性に拍車をかける。

―――もしそうだとしたら、厄介だな。

 少女は襲いかかってくる男性の腕をいなしながら思う。
 現在、少女はその能力を発動させていない。
 その身体能力は―――契約者だということで、多少は強化されてはいるが―――それでも人間の域を越えてはいないだろう。
22女装少年の人(代理):2009/11/28(土) 15:44:52.57 ID:64XOlb630
―――痛みで止まってくれるんだったら、小指捻るくらいでもなんとかなったのに。

 痛みを感じないというのは、常識で考えればデメリットだらけのことだ。しかし戦いにおいては、ある意味ではそれはメリットとなりうる。
 例えば―――こういう話を知っているだろうか。
 アメリカの麻薬常習者が多く住む地域に勤める警官は、大口径の銃を好んで使うという。
 抑止力を求めるならどんな銃だろうとただあればいいのだし、人を殺すのにはそんな大口径の銃のような威力はいらない。小口径のもので十分だ。
 ならば、なぜ反動も大きい大口径の銃を使うのか?
 それは、麻薬常習者の痛覚は鈍っていることが多いからだ。
 痛みを感じない麻薬常習者達は、小口径の銃の銃撃だけでは止まらない。
 つまり人間は、どれだけ身体を痛めつけられようが、身体が死に瀕していようが、動くことはできるのだ―――痛みさえ無視できれば。
 この集団も正にそうだった。
 殴ろうが蹴ろうが投げようが、その身体が動く限り怯まず襲いかかってくる―――鬱陶しいことこの上ない。

―――でも、やりようはある。

 痛みで止まらないのなら、物理的に止まらざるをえないようにしてしまえばいい。
 さっきの話の中で警官達が大口径の銃を愛用する理由もそれだ。
 小口径の銃の銃撃の痛みで止まらないならば、大口径の銃の銃撃の単純な破壊力で無理矢理に止めてしまえばいいのだ。
 そしてその考えを元に、少女は今の敵への対策を立てる。

――― 一撃一撃をピンポイントで急所に叩き込んで、確実に意識を飛ばす!

 殴りかかってきたその腕を左手でいなし、残った右の掌底でその相手の顎を撃ち抜く。
 胴を薙ぐような軌道で繰り出された回し蹴りを、身を回転させつつかがむことでくぐるようにしてかわし、その勢いを乗せた飛び後ろ回し蹴りを相手のこめかみへめり込ませる。

 敵の数が多いこの状況で確実に相手の攻撃を避け、正確な急所への一撃で一人、また一人と地面へと沈めていく少女。
 その膂力とスピードでもって数を圧倒し、時には相手の身体をすら振り回し武器として活用して、次々に敵を吹き飛ばしていく女の子。
 力と技。それぞれ違う戦い方をする二人の動きは、それでも不思議と噛み合って―――その集団が全員沈黙するのに、長い時間はかからなかった。
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 15:44:52.97 ID:yJ8gnERJO
都市
24女装少年の人(代理):2009/11/28(土) 15:45:39.47 ID:64XOlb630
 突き出された大きく無骨な男の拳の側面を白く柔らかな少女の拳が叩き、拳を弾いた流れに乗って懐へと潜り込んだ少女の肘が相手の男の鳩尾を抉る。
 そうして、その男―――女の子を襲っていた集団の最後の一人は、口から泡を吹いて動かなくなった。
 少女は適当に自分の身体をパッパと払うと、地面に転がる男達を踏まないよう気を付けながら女の子へ近寄っていく。

「えっと……怪我とかない? 大丈夫だった?」

 女の子の肩などを払いながらそう訊く少女に、

「大丈夫ー」

 といたって元気に答える女の子。
 それはよかった、と少女は微笑み―――途端に表情を一変させると、鋭い目で上を見上げた。
 それを見た女の子は、? と首をかしげながらその視線を追って顔を上へと向ける。
 その視線の先、そこにその男はいた。
 ビルの屋上から身を乗り出して、少女と女の子、そして何人もの男達が倒れ伏す空き地の様子を窺っている、その男。
 その手には、コーラのペットボトルが握られていた。
 女の子―――《マリ・ヴェルデのベート》の優れた目は、男の顔がひきつり、その頬を汗がたらりと垂れていくのを捉える。
 慌てた様子で身を翻し、男の姿はビルの屋上へと消えた。

―――最近増えてるっていう《コーク・ロア》か。
―――《爆発する携帯電話》の契約者やらが襲われたのとは違う奴みたいだが………殺っておくか?

 幼い女の子の姿に似合わない、血生臭いことを考えるマリ。
 そんなマリの思考を、少女の言葉が遮った。

「―――ねえ、ごめん。ちょっと待っててくれる?」
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 15:45:41.02 ID:d5fHkMD30
26女装少年の人(代理):2009/11/28(土) 15:46:56.35 ID:64XOlb630
 脈絡もなくマリの手を取り、その爪で自らの手を傷つけながらそう訊く少女。マリのその鋭い爪は、少女の白い手に一筋の赤い線を刻んだ。
 驚いたマリは少女の顔を見る。
 その顔は、不自然なほど優しい笑顔。
 マリはその笑みを、とても危険なものだと感じた。
 その笑顔は、心の中で燃え盛る激しい怒りを無理矢理その中へと押し込め、幼女の姿のマリへそれ相応の形で接するためのもの。
 それなのにも関わらず、マリは思わず少女の問いに頷いてしまっていた。
 別に拒否するようなことではないということもある。それも確かにあるが―――人狼や司祭の姿ならばまた違っていたのだろうが―――少女の笑顔のその異様な迫力に気圧された部分があるというのも、確かな事実だった。
 直接向けられた訳でもないのに、気圧される程の怒り。ならばその、押し込められて凝縮された怒りをぶつけられた者は、どうなってしまうのか―――。

「そっか、ありがとうね。―――30秒で終わらせてくるから」

 マリが頷くのを見た少女は、そう言い放つと同時に、能力を発動させて跳躍した。

―――あの男が持ってたペットボトルの中身は、コーラ。
―――反応の仕方からして、あの男はほぼ間違いなく黒。
―――痛覚の麻痺など、麻薬と同じような効果―――恐らくは、《コーク・ロア》。

 少女はビルの壁をその人間離れした脚力で蹴り、三角飛びの要領でビルの中ほどまで飛び上がると、両手に出現させた鎌をスパイク代わりに一気に屋上へと登り詰めた。
 ビルの屋上には、既に男の姿はない。

―――ふざけてる。
―――あんな小さな子を襲ったっていうのも気に入らない。
―――人を物みたいに操って襲わせるっていうのも、気に入らない。

 それを確認すると、少女は屋上の反対側へと走り、そこに非常階段を発見した――――――10秒。
 ビルの中か非常階段か、一瞬迷うが……非常階段を飛び出した人影を地上に発見し、少女はすぐさま行動に移る。
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 15:48:58.29 ID:yJ8gnERJO
28女装少年の人(代理):2009/11/28(土) 15:50:32.52 ID:64XOlb630
―――これだけで、あいつはこっちの敵だと判断するのに十分だ。
―――けど、何よりも一番気に入らないのは。
―――あいつ、他の人に無理矢理戦わせておいて、自分だけ逃げやがった!

 ビルから飛び降りつつ壁を蹴って距離を稼ぎ、バタバタと手足を振り乱して走る男の前方へと着地。

「…………今のは、お前だな」

 温度を感じさせない静かな声が響いた――――――20秒。
 男は本能で感じとる。それは分からないことを訊く質問ではなく、既に分かっていることを声に出すだけの確認だと。

「―――っ、ひ、ヒィッ!」

 恥も外聞もなく情けない叫びを上げ、男はただ生きるためだけにその手を振るう。
 ペットボトルからコーラが勢いよく飛び出し、少女に向かって降り注いだ。

―――この程度、なにも怖くない。

 空中に網のように広がったコーラを地を這うような軌道でかわし、少女は男との距離を詰める。
 その恐怖にひきつった顔が、怯えた瞳が、今にも泣き出しそうに歪んだ口が、目の前に迫った。
 少女の身体が限界まで捩られ―――まるで引き絞られた矢が放たれるかのように、右の抜き手が放たれる―――――30秒。

 極限の一瞬、そのスローになった世界の中で、少女は男の耳元に優しく囁いた。

―――さようなら。
29女装少年の人(代理):2009/11/28(土) 15:51:29.38 ID:64XOlb630
 再びビルを飛び越えて姿を現した少女に、マリはピクリと反応する。少女を見るその目は鋭く、警戒心が露になっていた。

(うう……確かに今の格好、通報されても文句言えないようなのだけど、これはちょっと傷つく……)

 両手を上げてふるふると振り、害意のないことをアピールする少女。軽くショックを受けたのが顔に出ていたのもあって、マリの警戒は目に見えて和らぐ。

「……これ、どうしようかな、マジで。生暖かい上にぬるぬるべたべたして気持ち悪いし……」

 このままじゃ通報されかねんし、と少女はぼやく。
 実際、少女が今の格好のまま街中を歩けば確実にアウトだろう。本当に通報されて逮捕される可能性すらある。しかも、かなり高い可能性で。

(家に帰ろうにも街中を絶対に通らなきゃいけないし………ビルの上でも飛んでいこうか……?)

 ローラーを足場にすれば何とか……と、結構真剣に"ビルの上を飛んで帰ろう案"について検討を開始する少女。
 地べたにしゃがみこみ、ブツブツ呟く少女の肩を、マリの小さな手が叩く。
 ん? と振り向く少女に、マリは言った。

「うち、くるー?」

 近いしー、と続けるマリ。
 マリとしては、これは特に意図があってのことではない。どちらかというとただの気まぐれに近い。
 あのままでも負けはなかったとはいえそれなりに面倒だったことは確かで、そこに助太刀してくれたこの少女に対してなら、服を貸すくらいならいいかと思ったのだ。
 襲ってきたあの男に対してみせたあの怒りを見たことも、プラス要素になっている。
30女装少年の人(代理):2009/11/28(土) 15:54:35.76 ID:64XOlb630
「……え、いいの? ホントに?」
「いいのー」

 こんなどこの馬の骨とも分からない輩に、と訊く少女に、こくりと頷くマリ。
 それを聞いた少女はすくっと立ち上がると、さっき置いておいた紙袋を回収しにいく。
 左手に紙袋をぶら下げて戻ってきた少女は、マリに向かって右手を差し出そうとし―――途中でふと気づき、右手を慌てて引っ込めて左手の方を差し出す。

「えと、―――じゃあ、よろしくね?」

 そう微笑んで言った少女の右半身、その白かったはずの上着とYシャツは―――どっぷりと粘つく赤に染まっていた。

 ―――その日。
 北区にあるとある路地の一つで、胸を引き裂かれ、心臓を潰されるという、奇妙にして悲惨な死を遂げた男の死体が発見されたのだが―――何故かそれは大きな話題とはならず、警察の捜査も成果を挙げないまま、異常なまでに早々と終わることとなる。
31「辺境」 マッドガッサー戦と同じ頃(代理):2009/11/28(土) 15:55:32.62 ID:64XOlb630
前回までのあらすじ

「災厄を招く彗星」と契約した青年が猟銃持ってビルの屋上に立て篭もりました。
不眠症で下半身不能の後輩(黒服I)の知り合いと一緒に、俺こと黒服Mが
この状況をどうしようかどうしましょうと慌てています。
みなさん、どうしましょう?


22:30 辺湖市「旧村」 商社ビル 屋上

オッス、オレオレ。黒服Mです。
モテカワスリムの愛されボディ。
ヒョロくてへっぽこな後輩I(以下、へっぽこ)が厄介シゴト持ってきてー
アタシと後輩の知り合いが、事態の収容に当たってるんだけどー
何つーか、ちょいヤバ気、なカンジィ?
てか、アタシってばヤサシ→ へっぽこのヤツ、チョ→きんも→☆

「ってンな事ぁ、どォでもいいンだよ……」
屋上へ続く非常階段で相変わらず這いつくばっている俺と地元の協力者。
少々デンパが飛来したのでとりあえず溜息をついてみた。
32「辺境」 マッドガッサー戦と同じ頃(代理):2009/11/28(土) 15:56:34.09 ID:64XOlb630

『ブリコルール!』
「る、る……ルーマニア!」
『アニマル!』
「おのれまた『る』か……。る、流罪!」
『インテグラル!』
「お、おのれ……」

俺の横に居る、へっぽこの知り合いという男が始めた
「とりあえずしりとりでもして、『彼』を落ち着かせよう作戦」が功を奏し、
何とか対話の機会は生まれた。
状況を見るに、先刻より幾分かは青年の方も落ち着いてきているみたいだ。
地元の協力者の方は、「る」で返されてばかりで苦戦しているようだが。

「都市伝説と契約したばかりの能力者は、力の制御ができずに力を暴走させる危険性がある」
というのは、真に正しい。
先程までの精神不安定な『彼』であれば、
何かの拍子に彗星を発現させる可能性は十分にあっただろう。

そもそも『彼』は何故これほどまでに精神不安定であったのか。
何故猟銃などを持ってこのビルの屋上に立て篭もったのか。
2時間ほど前からの必死の説得の末、『彼』がぽつりぽつりと話し始めた内容を総合し、
ようやく、『彼』のおおよその事情を掴むに至った。
33「辺境」 マッドガッサー戦と同じ頃(代理):2009/11/28(土) 15:57:18.13 ID:64XOlb630
『彼』――この青年は、大学の3回生だった。
ずっと片思いだったという同じ学科の女の子とようやく恋人になり、
就職活動の末にどうにか正社員として内定を貰う事もできて、
花のキャンパスライフとやらを周囲に遅れて謳歌し始めた頃。

就職先から突如連絡があり、内定を取り消されたらしい。
この世知辛いご時世、ありふれた話ではある。
そして悪い事は重なるようで、その日のうちに彼女が寝取られている事を知ってしまう。
寝取った男に二度と俺達に近づくなと告げられ、手向かったものの完膚なきまでに殴られ。
男の後ろに隠れるようにしていた元・彼女の姿は、
奇しくも、幼い頃過労で父親が死んだ直後に
自分を捨てるようにして駆け落ちしていった母親と重なるものがあったという。

なんというステレオタイプ。御涙頂戴な話とはまさにこの事だろう。

そして、問題は今日の昼過ぎに起こる。
茫然自失で魂の抜け殻のように「新町」を彷徨っていた『彼』は、
突如不思議な青年に行き遇ったのだという。
暇なのなら楽しませろ――。そう言って「契約書」を渡してきたらしい。
この出し抜けな状況に、『彼』は考えるでもなく「契約書」を受け取ってしまい、
――契約が成立してしまった。
その瞬間に『彼』は、幾つかの、断片的な知識を「知った」。
気づくと青年は居なくなっており、その替わりに、前方に黒服が立ってこちらを見ているのを見止めたのだという。
恐らく、この前方の黒服というが、後輩であるへっぽこの事なのだろう。
34「辺境」 マッドガッサー戦と同じ頃(代理):2009/11/28(土) 15:58:00.82 ID:64XOlb630

『彼』は「知って」しまっていた。
『組織』に捕えられたらならば、命は無いと。
それ故にパニック状態となり、その場から逃げだしたという。
成程、そうであれば、へっぽこの言っていた「異常に怯えた様子」「奇声をあげながら、逃走した」
という状況にも合点がいく。
彼が猟銃を手にしたのも、『組織』の刺客に対する自衛の為からだったようだ。
因みに、この猟銃は元々父親の所有物だったもので、唯一の形見らしい。

正直なところ、『彼』の状況に関しては、むしろ興味はない。
『組織』の一構成員として、『彼』に「契約書」を手渡したという謎の青年には
かなり興味がある。何故、『彼』に「契約書」を譲渡したか。
その動機は? そもそも何処で「契約書」を入手したのか? 背景には何らかの勢力があるのか?
しかし、それ以上に――俺はこの話を『組織』の構成員どもに聞かせてやりたかった。

『組織』というものは悪役だ。『組織』に目をつけられたら最後、
従えば飼殺され、従わぬなら「消され」る。――結局そんなイメージが罷り通っている。
「保護」なんて言葉は所詮御題目でしかない。『組織』の周縁に居ればソレが嫌でも目に入る。
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 15:58:11.38 ID:d5fHkMD30
支援
36「辺境」 マッドガッサー戦と同じ頃(代理):2009/11/28(土) 15:58:54.68 ID:64XOlb630

「『組織』に捕えられたならば、命は無い」

『組織』はそんな『組織』でない、とどれだけ声を大にして言えるだろうか。
この問いを俺が発したとしても、結局は、『組織』の黒服である俺自身にも降りかかってくる。
勿論、『組織』をより良いものであってほしいと願い、行動する黒服のいる事は知っている。

だが。俺やへっぽこ、上司の"ヴァイオレット"は、「辺境」は。
『組織』の状況を良くしよう、などという考えは。とうに投げ捨てた。

「ッたく、へっぽこのヤツも"ヴァイオレット"さんも何処に行っちまったんだ?
 電話にも出ねえし。あ、アレか。俺に全部押し付けようって魂胆か畜生。
 ああクソ早く猟銃捨ててこっちに来てくんねえかなあの青年。
 おでん奢ってやるから、早く馬鹿な真似は止めてだな……」

さあ、『組織』のク*ったれども。
俺を監視しているのだろう? 『イルミナティ』の目が怖くとも、辺湖に居る俺達を監視しているのだろう?
「災厄を招く彗星」の能力者を、『彼』を捕えに来てみろよ。
監視しているのだろう? 早く来いよ。怖いのか?
"首輪"のシステムで、俺達を消してみろ。不要因子なら、「辺境」に3人ばかり居るんだよ。
どうした? たかだか「構成員」風情、「消す」のは造作ないのだろう?

『アロマオイル!』
「ええと、る、る、る。る、ルンバ!」
『バイリンガル!』
「る、る、る、る、る、るり色プリンセス!」
『スクランブル!』
「なあ頼むよ、金渡すから広辞苑買って来てもらえないか?」
「……今の時間に開いてる本屋ってあるのかよ……?」
  つ  づく
37久方ぶり投下(代理):2009/11/28(土) 15:59:36.31 ID:64XOlb630
この学校のトイレは、つい最近改装工事が行われた。

和式だった便器は洋式になり、床や壁も新しいタイルへと張替えられた。
全体的に明るく清潔感のある印象へと変わっていた。

生徒達への評判も良好である。
ただ、その変化をあまり良く感じていない生徒(?)もいた。

「あー…なんなのよこれー…たしかに綺麗になったのはいいんだけど…」

女子トイレ、前から三番の個室の便器にけだるそうに座る女の子。
真っ黒な洋服、真っ黒な靴、真っ黒なリボン。
見た目は小学校高学年程度だろうか?

「こんな明るい雰囲気になったら怖くもなんともないじゃないのー…私の力も弱まる一方ねぇ……」

彼女の名前は「闇子さん」
「トイレの花子さん」の派生の学校の怪談である。

そんな彼女のいる個室をノックする音がきこえた。

「闇子さーん。いるー?」

男の子の声だった。

「いるわよ。さっさと入ってきなさいよ。他の子に見られたら噂になるわよ」
38久方ぶり投下(代理):2009/11/28(土) 16:00:18.93 ID:64XOlb630
闇子さんがそう言うと少年は慌てた様子で個室のドアを開け入ってきた。

見た目年齢的に闇子さんとはそうかわらない年代だ。
やはり小学校高学年くらいだろう。

「もぅ、なんで闇子さん、女子トイレなんかにいるんだよ。
毎回誰かに見られてないかヒヤヒヤしてるんだから」

「しょうがないでしょ。私は女子トイレの怪談なんだから」

闇子さんがそう言うと、男の子は渋々とだが一応納得したそぶりを見せる。

そんな彼の様子を確認した後、闇子さんが口を開く。

「そんなことより、私の噂はちゃんと流行らせてくれてるの?」

「え…あ…うん……」

返ってきたのは何とも歯切れの悪い返答だった。

「……本当かしら?また一割引くらい力が弱まった気がするんだけど」

怪談、都市伝説の力の根源は人々の噂である。
人々に多く伝わるものの力は大きくなり、逆に誰にも知られないものの力は弱くなる。
39久方ぶり投下(代理):2009/11/28(土) 16:01:24.86 ID:64XOlb630
「あ、いや、そんなことよりさっ」

少年は少し慌てた口調で話しだす。
闇子さんは彼の言い回しにピクリと反応を示す。

「そんなことって何よ。私にとっては死活問題なわけで……」

自身の力が弱まっていることを、そんなこと扱いされたのに腹を立てたのだろう。

「今日は黒服さんが来るんでしょっ!」

「………ああ、そうだったわね。忘れてたわ」

それから間もなくして黒服は現れた。
黒服の名の通り、黒いスーツという出で立ちで。

「……えっと」

身長は少年や闇子さんよりも低く、よくみても小学校中学年程度、そんな容姿の女の子がそこにいた。

「あなた…本当に黒服なの?」

少年と闇子さんはあきらかに動揺していた。
それも無理はない。黒服の姿が、まさか自分達よりも幼いとは夢にも思わなかったのだろうから。

「はい。私が本日より貴方達の担当の黒服です」

黒服は、その容姿に似合ないしっかりとした言動でこたえた。

しばし無言の時間が続いた。
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 16:06:28.26 ID:DIkQYlcqO
おつおつ
代理投下もたまると大変だな
41久方ぶり投下(代理):2009/11/28(土) 16:09:03.75 ID:64XOlb630
その無言の時間を打ち破ったのは少年であった。

「あのさ…さっき担当って言ってたよね?」

「はい。言いました。」

これまた、しっかりはっきりと黒服はこたえた。

「担当って何?今までそういうのあまり聞かなかったんだけど……」

「組織の運営方針の変化だとでも思ってください。
今までよりも契約者一人一人へのサポート面への強化を目指してのものです」

またまた黒服は言いよどむこともなく、はっきりとこたえる。

「だからって何であなたみたいな、ちっこいのが来たのよ」

闇子さんは、今回来た黒服に対し少し不満げな様子のようだ。

「適性ですかね。あなた達のような子供には私のような容姿のほうが親しみやすいと上も思ったのでしょう。
本来私は外周りの仕事は管轄外なんですがね。
人手不足というのもあるのかもしれません」

闇子さんは思った。
何とも親しみにくい奴だ、と。

再び、なんとも気まずい無言の時間が流れた。
42久方ぶり投下(代理):2009/11/28(土) 16:09:45.79 ID:64XOlb630
黒服は自ら発言する様子はない。ただじっと二人のほうを見すえていた。
「えと、さ…」

口を開いたのは、やはり少年だった。

「君のことをなんて呼べばいいのかな?
黒服さんだったら、他の人達と同じになっちゃうし……」

「組織内では一応固有識別としての呼び方があります。
私の場合は……」

「そうだっ!」

少年は何かを思いついたのか、手をぽんっとうつ。

「なんですか?」
「くーちゃんでいいんじゃないかな?」
「くっ………?」

黒服が初めて言葉を詰まらせた。

43久方ぶり投下(代理):2009/11/28(土) 16:12:52.92 ID:64XOlb630
「あら、いいじゃない。ぴったりよ。くーちゃん。」

闇子さんが黒服の頭を軽く小突く。
その表情は、やけに楽しそうな笑顔であった。

「私はこのような容姿をしていますが、黒服としての活動年数は貴方の年齢よりずっと……」

それに対し、今までほぼ無表情だった黒服は明らかに動揺しているようだ。

「これからよろしくね。くーちゃん。」
少年はそんな黒服に手を差し出した。満面の笑みで。
黒服は何とも言えない複雑そうな表情でその手を握った。

「…はい、これからよろしくお願いします」

44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 16:13:12.42 ID:d5fHkMD30
支援
45マッドガッサー決戦編 激闘の後に:2009/11/28(土) 16:14:25.82 ID:64XOlb630
○月×日 22:00 クラブハウス・武道場


「…あれ、大丈夫なのか?」
「悪魔の囁きは引き剥がした。ただ…かなり、無茶な動きをしていたからな。しばらく、身動きはとれんだろう」

 ひょこんっ
 ボロボロになった武道場に、Tさんの契約者が入り込んだ
 …もはや、武道場とすら呼べる状態ではない場所
 その、ほぼ中央で…魔女の一撃の契約者は、眠ったように気を失っていた
 「日焼けマシン」の契約者と黒服が、その容態を確認している

 ……魔女の一撃の契約者は、その手にしっかりと、あの戦いの最中、鎖が引き千切れてしまった首飾りを、しっかりと握り緊めていた
 あれが、魔女の一撃契約者にとってどう言う意味を持つ物なのか……ただ、あの首飾りが、魔女の一撃契約者を狂気から引き上げる一因となった
 それは、確かな事実だ

「…命に、別状はないようです」
「良かった…」

 黒服の診断に、「日焼けマシン」の契約者がほっとしたような声を出す
 長い間、悪魔の囁きに取り憑かれてしまっていた魔女の一撃の契約者
 引き剥がした事で、何らかの影響が体に現れている可能性もあったのだが…ひとまずは、その心配もないようだ

「まずは、相手の戦力を一つ潰せたか」

 ふぅ、と壁にもたれかかりつつ、厨2病が呟いた
 姫さんも同じように、壁にもたれかかって腰をおろし、休んでいる
46マッドガッサー決戦編 激闘の後に(代理):2009/11/28(土) 16:15:52.01 ID:64XOlb630
 あれだけの激戦の後だ
 少し休まない事には、体が持たないだろう

「外は……相変わらず、みたいね」

 黒服の傍に居たはないちもんめの少女が呟き、壊れた壁から空を見上げる
 空では、巨大な鳥と巨大ロボットが戦い続けていた
 …何か、他にも飛んでいるような気がするが気のせいだ
 あれが何なのか、確認してはいけない
 見てはいけない、知ってはいけないのだ
 全裸筋肉兄貴が翼を生やして空を飛んでいるなど、「あってはいけない」のだ

「あの巨大な鳥は…雷が鳥のせいであるとしたら、サンダーバードでしょう。あの巨大ロボにサンダーバードの意識は向けられていますから、魔女の一撃にさえ気をつければ…」
「……私が、どうかしたかい?」

 響いた、声
 ふわりと……小さな魔女が、壁の穴から入り込み…箒に乗ったまま、降り立った
 警戒する一同の様子に、魔女の一撃は笑う
 見れば、彼女もまた誰かと交戦した後なのだろうか
 治療は終えているようだが、怪我をした形跡がある

「ひっひっひ…そう、警戒しないでおくれ。主が倒れた今…わたしゃ、あんた達と戦う気はないさ」
「…あなた、私たちの足止めも、本気ではしていませんでしたね?…何を企んでいるのですか?」

 妹ちゃんが、いつでも結界をはれるよう警戒しながら、魔女の一撃に訪ねた
 ひっひっひ……と、魔女の一撃は箒から、降りる

「べぇつにぃ?企んだつもりなんてないわぁ」

 すたすたと、魔女の一撃は…己の契約者に、近づいてく
47マッドガッサー決戦編 激闘の後に(代理):2009/11/28(土) 16:17:30.43 ID:64XOlb630
 気を失ったままの、魔女の一撃の契約者……その傍らに、腰を下ろし


 −−−−慈悲深い母親の顔で、笑った


「ようやっと…悪魔の囁きから解放されたんだねぇ……主」
「…っお前、こいつがとり憑かれてるの…」
「知ってたさ…だぁって、私の主様なんだもの。契約した瞬間に、相手の状態はわかるさね」

 「日焼けマシン」の契約者の批難する声にも、魔女の一撃は笑うだけだ
 そっと、彼女は己の契約者に手を伸ばす
 その頬を撫でる手は、酷く優しかった

「三年前…主が、大学ってとこに通い始めて、三ヶ月目くらいだったらしいねぇ……私は、主と契約した。その時、主の心にはもう、悪魔の囁きが憑いていたよ」

 でも、どうする事もできなかった
 魔女の一撃は、自嘲気味にそう笑う
 魔女の一撃の力では、悪魔の囁きを契約者から引き剥がす事はできずに
 −−−ただ、その心が歪み続けるのを、見ている事しかできなかったのだ

「…マッドガッサー達は、この件には関係ないのですね?」
「あぁ。皆はこのことを知らないよ…私が、話さなかったからねぇ」

 心の奥深くに憑く悪魔の囁きの気配は、通常感じる事など不可能だ
 ーーそれこそ、契約により「絆」でも生まれていなければ
 もしくは、都市伝説感知能力がよっぽど高くない限りは、不可能だから
 だから、マッドガッサー達は知らない、と魔女は笑う

「あんたたち、ガスを撒き散らすのを、どうしても邪魔するのかい?」
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 16:17:45.78 ID:d5fHkMD30
支援
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 16:18:09.29 ID:DIkQYlcqO
しえ
50マッドガッサー決戦編 激闘の後に(代理):2009/11/28(土) 16:20:39.94 ID:64XOlb630
「当たり前だ」

 Tさんが、しっかりと言い切る
 それは、この場にいるほぼ全員の共通認識である
 マッドガッサーの野望を阻止する
 …その為に、この高校まで集まったのだから

「…参ったねぇ。私達、誰かを殺そうってんじゃないのよぉ?ただ、男をみぃんな女に変えて、ハーレム作ろうってだけさね……人間も都市伝説も、区別なくねぇ」
「大迷惑よ」
「おやおや、そうかぁい?」

 姫さんの突っ込みに、ひっひっひ……と、魔女の一撃は再び意地悪く笑い出した
 それでも、己の主の頬を撫でる手は、優しいままだ

「悪い話じゃあないと思うんだけどねぇ?ハーレムはさておくとして…うまくいけば、みぃんな仲良しこよしさね。人間も都市伝説も、そんな事まったく関係なく仲良くできるんだよぉ?」
「……それは、ある意味で素晴らしい世界かもしれませんね」

 ですが、と
 黒服は、静かに告げる

「方法が間違っています。あなた達のやり方では、たとえそれが実現できたとしても…いつか、破綻します」
「…残念だねぇ。あんたとは別の黒服は、わかってくれたんだがねぇ」
「……別の?」

 はないちもんめの少女が、眉をひそめる
 そうさ、と魔女の一撃は笑った

「髪の伸びる黒服が……まぁ、スパニッシュフライを飲み込んだせいもあるんだろうけど、私たちの目的に共感してくれたよぉ?『人間と都市伝説の境界を取っ払えるんだとしたら素晴らしい』ってねぇ?」
「髪の伸びる……」
「あのおじさんー?」
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 16:22:04.11 ID:d5fHkMD30
支援
52マッドガッサー決戦編 激闘の後に(代理):2009/11/28(土) 16:26:12.38 ID:64XOlb630
 …数名、ピンポイントで、そんな事をのたまった人物に心当たりを感じる
 その中で、黒服のみが微かに疑問を感じた
 あの同僚が、スパニッシュフライの影響下にあったとしても、そんな事を言うだろうか?と

「……まぁ、止めるつもりなら、急ぐんだねぇ?11時半には、ガスの精製が終わる…そして、その25分後にミサイルは発射。その丁度5分後には、ミサイルが炸裂してガスが噴出されるよ」
「いいのか?そんな事を俺らに話しても」

 一同の中で、一番疲労の色が濃い様子の厨2病が疑問の声をあげた
 …疑っている、と言うのもあるのだろう、魔女の一撃の言葉を
 魔女の一撃が、ますます意地の悪い笑みを浮かべてきた

「主を悪魔の囁きから解放してくれた、その礼さね。まぁ、私の言葉を信じるも信じないも自由だけどねぇ?」
「だとしても」
「あんたたちなら、皆を殺さないでくれそうだしねぇ?」

 …それが一番の理由か、と黒服は気づく
 マッドガッサーの一味は、仲間同士を酷く大切にしている
 どうせ誰かに止められるのなら…仲間を殺すことがないだろうあいてに止めて欲しい
 そう言う、事か

「とにかく、黒服、早く止めに行こ………っ!?」

 ーーーぐら、と
 立ち上がろうとした「日焼けマシン」の契約者の体が、ふらついた
 倒れそうになった体を、黒服は慌てて抱きとめる

「…あ、あれ?」
「ちょっと、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ」
53マッドガッサー決戦編 激闘の後に(代理):2009/11/28(土) 16:28:46.71 ID:64XOlb630
 はないちもんめに「日焼けマシン」の契約者はそう答えているが…顔色が、悪い
 やはり、「厨2病」との特殊な多重契約によるあの炎の力は、体力の消耗が激しすぎる
 今日、これ以上戦えない訳ではないが…あまり、無理はできないだろう
 「日焼けマシン」の契約者の体を抱きとめたまま、黒服は皆に告げる

「…私達もマッドガッサーを止めには向かいますが、この子の体の事もありますので…少し、遅れていきます」
「俺、大丈夫だぞ?」

 大丈夫じゃないだろう
 その場にいる全員が、心の中で突っ込んだ
 かなり顔色が酷いし、体もふらついている…とてもじゃないが、大丈夫な状態には見えない
 黒服は小さく苦笑し、皆に向き直った

「……見ての通りの、状態ですので。どうか皆さん、お先に屋上へと向かってください」
「あなた達だけでここに残って、大丈夫なの?」

 すくり、姫さんが立ち上がる
 はい、と黒服と…はないちもんめが、頷いた

「敵戦力は、校舎の方に集中してるみたいだしね」
「魔女の一撃に戦う意思はありませんし、大丈夫です」
「……わかった。だが、気をつけるんだぞ」

 Tさんの言葉に、はい、と黒服は頷いた


 外では、雷雲が立ち込めている
 次から次へと雷が落ち続け…戦いの激化を嫌と言うほど知らしめてきていた……
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 16:32:53.88 ID:d5fHkMD30
支援
55マッドガッサー決戦編 激闘の後に(代理):2009/11/28(土) 16:34:59.84 ID:64XOlb630
「……あんたは、何も悪くないよ」
「………え」

 ぽつり
 魔女の一撃が呟いた言葉に…「日焼けマシン」の契約者は、彼女を見詰めた
 皆に背を向けた状態で、己の契約者に膝枕をしてやりながら…魔女の一撃は、ゆっくりと続ける

「主は、悪魔の囁きに心の隙を付け入られた……確かに、その隙が生まれたのは、あんたや、そこの黒服が原因かもしれない」

 ぴくり
 「日焼けマシン」の契約者は、微かに動揺する
 −−−己が考えていた事を、魔女の一撃に言い当てられてしまったから

 けれど、と
 魔女の一撃は、ゆっくりと続ける

「でも、ね。あんたも、その黒服も、何も悪くないのさ……主を思って、都市伝説の事を黙っていた。それが、事実なんだから……主はちょぉっと、それに気づくのが遅かった、だけ」

 ……そして
 魔女の一撃は…この場にいる全員に告げるように、こう言った


「−−−主を悪魔の囁きから解放してくれて……ありがとう」


 それは、この魔女の一撃がこの世に生み出されて、数百年
 生まれてはじめての…心からの、感謝の言葉だったのである


to be … ?
56Tさん(代理):2009/11/28(土) 16:35:43.29 ID:64XOlb630

 ≪魔女の一撃≫の兄ちゃんとの戦いの決着がついた。初めはいきなり敵宣言されてものすごく驚いたけど、どうもチャラい兄ちゃんと≪魔女の一撃≫の兄ちゃんは仲直りできそうな感じだ。
 よかったよかった。
 チャラい兄ちゃんの今の服装から何が起ころうとしてたのか分からないわけじゃないけど、終わりが良けりゃ全部いいんだよな? たぶん。
 そう思っているとTさんに頭をグシャグシャかき混ぜられた。
 なんじゃいとTさんに目を向けると、
「難しいことは考えなくてもいい。――無事に済んだんだからな」
「……おう」
 相変わらず読心術でも身に付けてんじゃないかと疑いたくなる奴め。
 Tさんとそんな会話をしていると他の皆さんがなにやら小声で話し合っていた。
「11時半にはガスの精製が終わってその55分にミサイル発射。その五分後にミサイルが炸裂してガスが噴出、ね……本当に信用できるのか?」
 ≪首塚≫の人で、夢子ちゃんの腕にあの謎の痣をつけたらしい≪厨二病≫の兄ちゃんが胡乱気に呟いた。
「主を悪魔の囁きから解放してくれたお礼だと言ってらっしゃいましたから信用してもいいんじゃないですか?」
「私の言葉を信じるも信じないも自由とも言ってたけどね」
「でも、あの感謝の言葉をくれた彼女を私は信じたいです」
「それは……私だってそうよ」
 結界を張ってた嬢ちゃんと≪魔女の一撃≫の兄ちゃんと格闘戦をやらかしてた姉ちゃんが言い合っている。
「≪魔女の一撃≫が言ったことはおそらく本当だ」
 Tさんが情報の真偽をどう判断するか悩んでいる一同に言った。
57Tさん(代理):2009/11/28(土) 16:39:25.68 ID:64XOlb630
 視線がTさんに集まる。Tさんは頷くと、
「先日学校町に持ち込まれたというマッドガッサーの用意したガスを詰め込むタイプのミサイル。それの爆発は確かに、午前零時らしい」
「確かなの?」
 格闘姉ちゃんの言葉にああ、とTさんは頷き、
「情報の出所は先程校舎内で会った契約者一行でな。全幅の信頼を置くには少し躊躇いがないわけではないが一つ、指針にはなるだろう」
 そう≪魔女の一撃≫の発言を肯定するように言った。
 ……ん?
「でもTさん。あの≪必ず当たる占い師≫の兄ちゃん、なんかいろいろ視えてたじゃねえか。間違いなんかあんのか? 占いで見たにしてもさ。ほら、必ず当たるって銘打ってんだし」
 全幅の信頼を置くには少し躊躇いがないわけではないという所が気になって訊いてみると、Tさんは、
「可能性は低いが偽の情報ということもあるだろうし、そもそもあの視る力も万能ではない」
「は?」
 疑問符を頭に浮かべているとTさんは笑んで自分を指さし、
「≪寺生まれで霊感の強いTさん≫は見抜けても俺の中の≪ケサランパサラン≫までは見抜いてはいなかった。まあ俺の場合は特殊例だからな。例外なんだろう」
 だが、と言って少し目を鋭くして、
「それは例外があれば見落としも出るかもしれないということも示している」
 そう言って、次は肩をすくめて力を抜いて、
「まあ元々爆弾爆発の時間を知らなかった俺たちに嘘をつく意味も無いし、爆弾程度があの視る力を欺けるとも思えんがな」
 だから零時にミサイルが爆発するという情報は正しいのだろう。
58Tさん(代理):2009/11/28(土) 16:40:54.52 ID:64XOlb630
 そう締めて説明を終えるとTさんは再び黒服さんに向き直って、
「黒服さんが≪組織≫で担当している≪骨を溶かすコーラ≫の契約者だが、――操られて襲ってきたので気絶させた」
 あ〜、と俺も苦笑いする。
「あんの兄ちゃん≪スパニッシュフライ≫に操られてたらしいけど……なんかこう、起きた時に記憶があるにも関わらず反省が見れなかったな」
 しかも操られてた時、殺さないとか言ってたくせになんか攻撃が全部殺人コースだったし……。
「にいさんにめいわくかけてなければもんだいないっていってたのー」
 リカちゃんの言葉にTさんも俺も深く頷く。
 あれはもうなんか操られるとかそういうの以前に頭のネジがダース単位で緩んでるんだと思う。
「彼は今双子の兄、白衣の教師に同行している。おそらく屋上へと向かっているだろう」
 さて、と一息ついてTさんは皆に問いかけた。
「黒服さんたちはここで休憩として、俺たちはこれからどうする? どうやらまだマッドガッサーたちは止められてはいないようだが……」
 そう言って校舎を見上げる。未だどこかで戦闘が行われているらしく、衝撃音や破砕音が低く響いてきた。
「さしあたって俺たちはまた校舎に乗り込もうと思う」
「うし、とっとと行くか!」
「がんばるのー」
 多少疲れた声になってるなーと自覚しつつ、それでも元気にTさんに同意してやった。
59闇子さんと黒服さんと(代理):2009/11/28(土) 16:41:37.19 ID:64XOlb630
ここは、とある児童公園。
ブランコやシーソーなどという、ありきたりな遊具とベンチが置いてある程度の規模のよくある公園である。

そのベンチに、明らかに、その場に似つかわしくない異質な存在が座っていた。

体格は、幼い子供なのだが、ガスマスクに全身防護服といった異様な格好。


「闇子さん…あれだよね?」

「……多分ね」

その後方数メートルに一組の少年少女がいた。
二人とも小学生高学年くらいだろう。
その二人は、怪しいガスマスクを警戒しつつも徐々に近づいていく。
「くーちゃん…だよね?」
少年が謎のガスマスクに声をかける。

「はい。そうです。」
ガスマスクによりくぐもってはいたが、少年達にとって聞き覚えのある声がかえってきた。

「よかったぁ…くーちゃんで…」

少年は安堵のため息をはいた。
謎のガスマスクの正体は、この二人の担当の黒服であった。
見た目、どうよく見ても小学校中学年程度の女の子にしか見えないのだが、
今現在はパッと見、宇宙人である。

「っていうか、何でそんな格好してんのよ!」
闇子さんは少し怒り口調で黒服を問い詰めた。
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 16:42:02.60 ID:d5fHkMD30
支援
61闇子さんと黒服さんと(代理):2009/11/28(土) 16:42:40.31 ID:64XOlb630
「マッドガッサーという都市伝説が引き起こそうとしている計画にたいする装備をしてきました。
なんでも危険なガスが発生するとのことなので、この装備が妥当かと思いまして。」
「とりあえずソレ脱ぎなさい」

闇子さんが黒服を指先と、黒服は即座に反論をする。

「ですが、我々組織の契約者や黒服の中にもマッドガッサーの被害にあった者も少なからずいまして、そのガスの効果や成分も完全に解明されていない今、この装備をはずすというのはあまりにも…」

「い・い・か・ら・脱ぎなさい!」

闇子さんが黒服の反論を遮る。
口調は先程よりも強くなっていた。
黒服は「ですが…」と更に反論を続けようとするも、闇子さんに一喝されてしまう。

「悪目立ちすんのよソレ!」

黒服は渋々と防護服を脱ぎ畳む。
なごりおしいのかマスクは一番最後にとるつもりのようだ。

その様子を見ていた闇子さんは、はたから見てもわかる程にイラツイていた。
少年がそんな彼女をなだめる。
62闇子さんと黒服さんと(代理):2009/11/28(土) 16:43:44.91 ID:64XOlb630
「まぁまぁ、くーちゃんは、お仕事が初めてらしいんだから勝手がわからないんだよ。あんまり怒らないであげようよ、闇子さん」

そう言われると、闇子さんはしばらく黙った後、視線をそらし、「そうね…」とつぶやいた。

「さっきは悪かったわね」

闇子さんが再び黒服のほうへ視線をやると、
黒服はコンビニで買ったような菓子パンをほおばっていた。
「ひへ、ははひはへふほ」

いえ、かまいませんよ、と言っているのだろう。

闇子さんは黒服の頭頂部をぶん殴った。
俗に言うげんこつである。


黒服は殴られた頭頂部をさすっていた。
自身が何故殴られたのかわからないようで、頭にハテナマークでも浮かぶくらいに首を傾げている。

いっぽう闇子さんはいまだに怒りが収まらない様子で、少年に押さえつけられている状況である。

「あ、あんたっ!私達を呼び出しておいて何食べてんのよっ!」

「パンですが。」

黒服の返答により闇子さんの怒りのボルテージは更に上がった。
まるで獣のような唸り声をあげている。
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 16:47:42.56 ID:d5fHkMD30
支援
64闇子さんと黒服さんと(代理):2009/11/28(土) 17:02:38.67 ID:64XOlb630
「や、や、闇子さんっ!落ち着いて!くーちゃんは何もわからないだけなんだからっ!」

闇子さんの怒りがその日収まることはなかった。



「くーちゃん、大丈夫?頭痛くない?」
少年が黒服の頭を優しく撫でながら話しかける。

「痛いですが大丈夫です。」

黒服は少年の顔まっすぐ見つめながらこたえる。
ちなみに闇子さんには一時的に退散していただいている。

「そっかぁ、ごめんね。闇子さんも普段はあんなに恐い子じゃないんだよ。
ちょっと怒りっぽいだけだからね。」

少年の黒服に対する態度は年下の子に対するそれのようだ。
65闇子さんと黒服さんと(代理):2009/11/28(土) 17:03:29.28 ID:64XOlb630
「ですから私はあなたの何倍も年上なわけで…」

「うがぁあああああああああああああああああああああああ!」

獣の咆哮があたりにこだまする。

「えっ!?あんなにしっかり縛っておいたのに!」

少年が明らかに動揺している。

「くーちゃん逃げて!危ないからっ!」

「いえ、ですが、用件があって今回あなた達を呼び出したので…」

獣の咆哮は徐々に近づいてきているようだ。

「いいから逃げてっ!闇子さんは僕がどうにかするからっ!」

黒服はさっぱり現状を理解していなかった。
彼女は場の空気を読むのが少し苦手なのである。
が、少年にこうも強く「逃げろ」と言われたので仕方なくその場離れることにした。


人付き合いとは難しいものだ。黒服は再認識した。
そして自分には、やはり書類仕事のほうが向いているのではないか…と思った。


66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 17:03:44.46 ID:d5fHkMD30
支援
67先生、俺、シリアス書くの疲れました(代理):2009/11/28(土) 17:10:03.30 ID:64XOlb630
○月×日 22:05 クラブハウス・武道場


 …明らかに
 明らかに、黒服は頭痛を覚えているようだった
 様々な要因が、黒服に胃痛までもを引き起こさせようとしていた

「…お、おい、大丈夫か?」
「……問題ありません。私などのことよりも、まずはあなたの事が優先です」

 心配そうな声を出した「日焼けマシン」の契約者に、黒服は優しく笑いかけながら、そう伝える

 …「骨を溶かすコーラ」の契約者が無事だった事は、ほっとした
 スパニッシュフライに操られていたとしても、その支配が解けたのなら、いい
 そこまではいいのだが

 ……操られている時の記憶があったのなら、少しは反省してほしいものだ
 相変わらず、彼は兄以外はどうでもいいと言うのか
 まったく、あのヤンデレブラコンは……!!
 恐らく、殺人コースにしか見えなかった攻撃も、本人としてはその気はなかったはず、だと思いたい
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 17:10:30.91 ID:0RNGiVrkO
支援
69先生、俺、シリアス書くの疲れました(代理):2009/11/28(土) 17:13:21.56 ID:64XOlb630
 あの能力で操るコーラは、溶かす大将を本人の意思で指定できる
 恐らく、相手の全身にコーラをかけても、相手そのものを溶かす気はなかったはず、と思いたい
 無力化を狙っていたのなら、服なり体の一部だけを溶かす、ということが可能なのだから

 …だとしても
 少しは反省してほしいものだ

(……それに)

 ふと、空を見上げる
 …視界に入り込む、あまり認識したくないもの
 それを撒き散らした張本人が一発で思い当たり、ますます頭が痛い
 ……いい加減…彼にも、何かしら言わなければならない気がする
 「組織」の誰もが諦めてしまっているガ、諦めたままでは駄目だろう
 自分程度で何か影響を与えられるとは思わないが、何もしないままでは駄目だ…!

「…本当に大丈夫?ますます顔色悪いわよ?」
「大丈夫、です。ご心配なく…」
「いや、心配だよ。俺よりも体調悪くなってるように見えるぞ?」

 大丈夫です、と
 黒服は心配してくる契約者二人を少しでも安心させるよう、胃痛と頭痛を堪えて優しく微笑みかけ続けるのだった


とぅーびー?
70黒服DさんとLちゃんと(代理):2009/11/28(土) 17:22:50.04 ID:64XOlb630
「すいません。任務の合間の貴重な時間をいただいて」

「いえ、かまいませんよ」

淡い光のさす。雰囲気のあるダイニングバー。
そこのカウンターに二人の黒服が並んで腰掛けている。
一人は成人男子なのだが、もう一人はどうみても小学生程度にしかみえない女の子だった。
そんな小学生がいるというのにマスターは眉一つ動かさずに仕事をこなす。
組織のいきのかかった店なのだろうか?
ちなみに彼らは組織での固有識別があるのだが、ここではそれぞれ「D」「L」ということにしておこう。

「ですが、私に用とはなんですか?」
黒服Dがグラスに軽く口をつけた後、黒服Lに問い掛ける。
「担当の契約者についてなのですが」
黒服Lがそう言うと、黒服Dは「なるほど」と頷く。
彼も担当の契約者達には色々と苦労をかけられている身なので、その悩みが痛いほどわかるのだ。
「確かに契約者との間には色々と思うところはありますね。具体的にどのような所をお悩みなんですか?」
そういうことなら相談にのってあげられる。彼はそう思った。

「率直なところ私は元の配置に戻りたいと思っています」

「…………はい?」
彼女の悩みは彼が思ったよりも差し迫ったもののようだった。
「あ、あの、どうしてそのような?」
彼女の突然の発言により黒服Dは少なからず動揺しているみたいだ。
「私には適性が無い職種だと思っているからです。」
いっぽう、そんな発言をした黒服Lは淡々と理由を述べる。「いえ、ですから具体的にどのような?」
「担当の契約者が何を考えている、かわからないんです。」

「…そういうことですか。」
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 17:23:36.78 ID:0RNGiVrkO
しえん
72黒服DさんとLちゃんと(代理):2009/11/28(土) 17:24:11.65 ID:64XOlb630
黒服Lの悩みの、直接的な理由がわかると黒服Dは平常を取り戻した。

「確かに、彼らには私達の知らない多くの面がありますからね」

黒服Dは自身が担当する契約者達のことを頭によぎらせる。
「ですが、そのような面を加味した上で彼らとは付き合っていかなくてはなりません。
彼らの中には、他人には触れられたくない非常にデリケートな一面を抱えた者も少なくありませんからね。
そういったところをフォローをしていくのが私達の仕事ではないかと私は……」

「すいませんマスター。ミルクお代わりお願いします。」

黒服Dの動きが止まる。

「どうかしましたか?話を続けてください。」
明らかに雰囲気がおかしいのだが、彼女はそんなことを気にするそぶりもない。
「…は…はぁ」

黒服Dは面食らいながらも話を続けた。
「つまりですね、契約者達の、何を考えているかわからない、という一面も含めて私達は……」
「あ、マスター。ミルクにホットはあるんですか?」

黒服Dはガクッと崩れ落ちる。

黒服Lはそんな彼を見て「どうしました?」と首をかしげた。
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 17:25:09.81 ID:DIkQYlcqO
74黒服DさんとLちゃんと(代理):2009/11/28(土) 17:25:14.33 ID:64XOlb630
そう、彼女はわかっていないのだ。
相談を受け、その解決案を聞いている間にその話を中断してしまうということが大変失礼にあたるという基本的事項すら理解していない。
そんな彼女の様子を見て黒服Dもそのことを理解したみたいである。

本来ならその前に怒りを覚えるかもしれないが、彼の懐の深さがそれを可能とした。
子供に対して甘いという一面も、容姿が子供の黒服Lへの場合は加味されているかもしれない。

「あのですね。こういうときは相手の話をきちんと聞かなくては駄目なんですよ。わかりますか?」

自然と彼女に対する口調が優しいものへと変化する。
まるで子供を諭すかのような口調だ。

「あの……」

「はい、なんですか?」

こういうときは、あまりキツく言ってはいけない。
彼女は何も知らなかったのだから……
それに、彼女がその幼い容姿で黒服をしているということは、その時期に黒服になったということだ。
彼女も心に大きな闇を持っているのだろう。
黒服Dはそんな彼女のことをおもい胸を痛めた。少しでも気のきいた返事をしてやろう。彼は頭をめぐらせる。


「私のほうが組織にいた期間は長く、おそらく年齢でいえば私のほうが年上なので子供扱いはやめてくれませんか?」

黒服Dが再びその場に崩れ落ちた。

彼は完全に理解した、問題があるのは彼女の契約者ではなく彼女自身にだと……

75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 17:26:27.11 ID:d5fHkMD30
支援
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 17:26:48.97 ID:DIkQYlcqO
77藁人形は恨みをため込む(代理):2009/11/28(土) 17:30:46.83 ID:64XOlb630
○月×日 22:** 中央高等学校三階

てち、てち……


二つの藁人形は、屋上へと進む…


その過程で、自らに蓄えられる負の感情がさらに高まる感覚を覚え…

それは、自分達を生み出した者の恨みではなく…

何か別の次元から…恨みを得ているような…

そして、恨みの所々にもげろだの何だのと聞こえてくる。


一体何をもげというのだろうか。

頭部をもげというか。手足をもげというか。


自分達には何の事だかわからない。だが…恨みの主へ向け、少しずつ進んでいく…
78はないちもんめ(代理):2009/11/28(土) 17:31:33.45 ID:64XOlb630
黒服は頭とお腹を押さえて難しい顔をしている・・・多分頭痛や胃痛が再発したんだろう
気持ちは判らなくも無い
あんな物が空を飛んでて良い筈が・・・忘れよう
それはともかく
少女「皆で仲良しこよしねぇ」
魔女「悪い話じゃないと思うんだけどねぇ」
少女「さっき言ってたでしょ、やり方の問題だって・・・確かに人間だとか都市伝説だとかそんな事も考えずに皆仲良くってなればソレは素晴らしい事なんでしょうね」
普通なら
魔女「でしょぉ?」
少女「でも、私は貴方達のやり方には賛同できないわね」
だって

42 名前:はないちもんめ[] 投稿日:2009/11/27(金) 15:12:07
少女「貴方達のやり方だと黒服まで女にされちゃうもん」
それは困る
少女「彼を女にされる訳には行かないし、私も彼もマッドガッサーのハーレムにされる積りも無い、私は彼以外の物になる積りは無いし、彼を誰かに譲る積りも無いからね」
その言葉に魔女の一撃は眼を丸くする
魔女「そうかい、ひっひっひっひっ」
少女「えぇ、だから邪魔させてもらうわ」
そう言って私は黒服とチャラ男の所へ向かう
まずは、チャラ男の格好をどうにかしないと・・・

続く?

79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 17:33:59.22 ID:d5fHkMD30
支援
80Tさん(代理の代理):2009/11/28(土) 17:37:17.62 ID:d5fHkMD30
 しんどそうにしていた≪厨二病≫の兄ちゃんとチャラい兄ちゃんの介護に忙しい黒服さんたちを置いて、俺とリカちゃんとTさん、格闘姉ちゃんに結界嬢ちゃんの五人は校舎へと向かっていた。
「Tさん、また一階から上がるのか?」
 ついさっき、校舎に侵入するときに通った昇降口があった方を見ながらTさんに訊く。グラウンドがいい感じに壊れている。……直すの大変そうだなおい。
「いや、真正面からわざわざ行くこともないだろう」
 Tさんはそう答えて校舎二階を指さす。そこには≪魔女の一撃≫の契約者の兄ちゃんが壊した壁があり、
「あそこから飛び込む」
 待て待て。
「や、俺たちは大丈夫だろうけどこっちの嬢ちゃんたちは……」
 振り向き、二人を窺うと、
「あ、問題ありません」
「二階ね。まぁあれくらいなら」
 何も問題無いかのように二人とも答えた。
 ……常識ってやつぁー、いつの間に変わっちまったんだろうな……。
「乗りこんだらその後どうするんですか?」
 結界嬢ちゃんの問いにTさんは数瞬考え、
「こそこそやってもおそらく乗っ取られている監視カメラにすぐ補足されるだろうな……一気に三階・屋上へと走り抜けるのが得策かもしれん」
 そう言って俺をひょいと抱え上げた。
 ……顔が近い。
 なんとなく目を逸らしていると、リカちゃんが頭の上で呟いた。
「むしがこないのー」
「あ、そういやそうだ」
 さっきクラブハウスに行くまであれだけうるさかった≪スパニッシュフライ≫がどこからも湧いてこない。
「戦況が動いているのだろう。おそらく、こちらの有利な方へ」
 Tさんはそう言うと地面を強く蹴った。
 浮遊感。
 校舎は無理やり開けられた新たな入口を開いて、俺たちを再びその中へと招き入れた。
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 17:39:16.77 ID:2THYSz92O
代理投下作業お疲れ様です
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 17:42:11.17 ID:DIkQYlcqO
しえーん
83【平唯の人間観察 第四話「呼」】(代理の代理):2009/11/28(土) 17:42:50.57 ID:d5fHkMD30
――――――――――ねぇ

子供の頃、要らなくなった人形とか捨てたこと無いかな?
捨てていなくても良いんだ。
子供の頃は一緒に眠って、一緒に笑って、一緒に遊んでいた人形。
いつの間にか忘れちゃって何処に行ったかも解らなくなっていないかな?
私はある。
金色の髪に青い瞳。
メリーさんって名前を付けて可愛がっていた。

携帯電話は鳴り止まない。
何処に行っていても私を追いかける。
私を愛しているからどこまでも彼女は付いてきてくれる。


「――――――私、メリーさん――――」

ほら、電話ごしに声が聞こえる。

「今、貴方の家の前に居るの。」
84【平唯の人間観察 第四話「呼」】(代理の代理):2009/11/28(土) 17:44:47.69 ID:d5fHkMD30
「冗談みたいでしょう?」
「ええ。」
こんにちわ、皆様。
私の名前は平唯。
※ただしイケメンに(ryと呼ばれる都市伝説と契約した人間だ。
今は友人とお茶していた。

「それは怪談なの?」
「いいえ、実話よ。家の中に入れないの、って言って最後に帰るのがいつものパターンなのよ。」

私にこんな信じられない話をしている目の前の女性は久瀬由美。
至ってまともな電波系一般人。
家は大変なお嬢様な為か無意識に上品な気配を漂わせている。
気品って言うのかしらね、こういうの。
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 17:45:04.20 ID:64XOlb630
しえ
86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 17:45:44.59 ID:64XOlb630
おお! サル直ってるwwww
でも出かけるので後は任せた!!
「本当なの?」
「本当よぉ。なんだったら今日、家に確かめに来る?毎晩電話は来るから。」
「別にお泊まりなら良いけど……。」

実はあまり良くない。
彼女こそ私を男装に目覚めさせた張本人なのだ。
中学生の時に学園祭で私を女装させて、
その年の学園祭の出し物のランキングで一位を取った彼女は今でも隙あらば私を男装させようとする。

「あら、嬉しい。じゃあ家の皆様に用意させるわね。」
そう言うとそそくさと携帯電話を出して電話しようとする


オーモーイーガーシュンヲーカケーヌーケテー

「あらあら、着信。」

丁度良く電話がかかってきたらしい。
なんだろうと思っていると彼女の顔がどんどん青くなっていく。
真っ青な顔のままこちらをみつめて携帯電話を私に渡す。
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 17:49:53.86 ID:DIkQYlcqO
しえん!
89【平唯の人間観察 第四話「呼」】(代理の代理) :2009/11/28(土) 17:50:19.48 ID:d5fHkMD30
「私、メリーさん。今、貴方のお茶している喫茶店の前に居るの。」

コトン
足下で何かが転がる音がする。

「私、メリーさん。今、貴方のお茶している席の真下にいるの。」
「私、メ…………。」

プツッ

素早く電話を切った。
新手の都市伝説か……?
由美の手を引くと振り返らずにすぐに店を出る。
彼女の家までは人気のないトンネルを通ると近いのでその方向へ真っ直ぐ向かう。

「その電話ね、電話からかけられていないのよ。
 何度電話を変えても携帯電話を持っていなくても
 どこからともなく私に告げてくるの。
 嘘だと……思う?」
「何時からなの?」
「私のこの前の誕生日からだけど……。」
「解った、ちょっと待ってて。」

歩きながら電話をかける。
勿論、黒服Fの所にだ。
90【平唯の人間観察 第四話「呼」】(代理の代理) :2009/11/28(土) 17:54:58.56 ID:d5fHkMD30
プルルルルルルル
プルルルルルルルルルルル

「はい、こちらFだよ、どうしたの平さん。」

プツッ
 
「私、メリーさん。いま、久瀬さんはどこなの?
 貴方が私の大事な久瀬さんを隠したの?
 返してよ、返し………」

プツッ

唯一の専門家と連絡がつかない。
不味い。
そうしている間にも私達はトンネルに辿り着いていた。
一旦、由美の家に帰ればメリーさんは入れない。
『コマッテルミタイジャネーカ、契約者。多分そいつはメリーサンダゼェ?』
急に頭の中に声が響いてきた。
ケメの声だ。
『当たり前じゃない!どうにかしてよ!』
『おやすいご用ダ!※ただしイケメンに(ryのノウリョクの正しい使い方をオシエテヤルヨー』
『どうすれば良いの?』
『マズハ………。』
『うっそ……、それはずるくない?』
『イケメンだからユルサレルンだよぉ!!』
91【平唯の人間観察 第四話「呼」】(代理の代理) :2009/11/28(土) 17:55:51.04 ID:d5fHkMD30
私はケメから聞いた嘘みたいな能力の使い方を試してみることにした。
「ねぇ、由美。男装セット持っている?」
「え?貴方に使う為に持っているけど……。」

すばやくそれを奪い取るとトンネルの中で男装を始める。
ぴしっ!バシッ!ピキーン!

「ちゃんとできてるかい?」
「完璧…………///」
鏡がないので由美に尋ねると何故か顔を赤くしている。
「ねぇ唯ちゃん、押し倒して良い?」
「え、ちょ、ちょっと待って?俺、女だから?ね?」
この娘は友人に向けて何を言い出しているのだろうか?
そうだ、中学生の時もこうやって暴走していて……。
彼女は男装した女性と百合百合するのが好きな方なのだ。
「ああ、もう駄目!貴方の子供ならァ!!!愛の力でえええええええええ!!」
「いいいやあぁあぁぁああああああ!!」
やばい、奪われる。
そう思った瞬間だった。


プルルルルルルルルル


二人の動きが止まる。
また電話だ。
「ねぇ、由美。これから見ることは秘密だよ?」
「え……?」
92【平唯の人間観察 第四話「呼」】(代理の代理) :2009/11/28(土) 18:00:42.96 ID:d5fHkMD30
手に残るのは柔らかい感触。
フワフワとした物が手の中にある。
綿の入った……、ぬいぐるみ?

「「え?」」

メリーさんと私はほぼ同時に素っ頓狂な声をあげた。

「なんで私をつかまえられるの?」
「もしかして只のぬいぐるみ?」

「あ、メリー!!!」

由美の声がトンネルに響く。
私が掴んでいるのは只のぬいぐるみだ。

「くーちゃん……。」

うわっ、喋った。
只のぬいぐるみじゃない。
93【平唯の人間観察 第四話「呼」】(代理の代理) :2009/11/28(土) 18:04:38.98 ID:d5fHkMD30
「えっとね、唯ちゃん。そのぬいぐるみは私の小さい頃に持っていたぬいぐるみで……。
 名前はメリー。
 本当はもう捨てた筈だったの。」
目の前で起きている妙な状況に怖じ気づくこともなく彼女は私に説明をする。
メリーさんの方向に向き直ると彼女は問いかけた。
「ねぇ、貴方は本当にメリーなの?」
「そうよ、私はメリー。
 くーちゃんにまた会いたくって……。」
「でも、それなら何でまたわざわざこんな由美が怖がる方法で現れたの?
 嫌われちゃうじゃない。」
「う………。」



「それしかなかったんだよ。」



急に背後から声が響いた。
「その人形だって元を正せば只の人形だ。
 自分を捨てた主の所まで戻る力なんて有るわけがない。
 だから『なった』。そういうものに。
 解るかな、二年生の……平さんと久瀬さん。」
94【平唯の人間観察 第四話「呼」】(代理の代理) :2009/11/28(土) 18:06:00.48 ID:d5fHkMD30
後ろを振り返ると見上げるような長身の男性が経っていた。
整った顔立ち、私達と同じ学校の制服、胸に輝くバッジに書かれているのは……。
“生徒会会計”の文字。
「こんにちわ、二人とも。
 俺は生徒会会計の田居中光だ。
 ちょっとした都市伝説マニア。」

謎の闖入者に私はメリーさんを持ったまま身構える。

「……俺は敵じゃないぜ?あとそのメリーさん、離してやれよ。
 そいつの目的はもう達成されている。
 そいつはそこの久瀬さんに会いたがっていたからなあ……。」
「まだ信用でき無いじゃない。
 メリーさんってそもそも危ない都市伝説だし……。」
「メリーさんはもう正気に戻っている。
 あとはそこの久瀬さんに判断を任せるべきだと思うぜ?」

「え?私は………、」
由美はゆっくりと口を開く。
「私は一度この子を捨てました。
 でも彼女は帰ってきて……
 だから、もうしばらくは家に居させてあげたいかなあ?って思うんです。
 狂ってしまうほどで、迷惑を掛けながらだったけど、私のことを思ってくれたから。
 つまりその………、うーんと……。」
95【平唯の人間観察 第四話「呼」】(代理の代理) :2009/11/28(土) 18:11:57.26 ID:d5fHkMD30
………そうだな、そういうことなら仕方がないか。
ポン、と彼女にメリーさんを手渡して田井中の方向に向き直る。

「そうだね、それでメリーさんも幸せだ。
 ところで契約はしないのかい?」
いきなり由美に対して問いかける田井中。
「え?」
「えっとね、都市伝説は人間と契約ができて、
 契約すると人間が都市伝説の能力を使えたり、都市伝説がパワーアップするの。」
「へぇ……。
 なら私は別に良いわ?」

「ほう、なんでだい?」
「え、なんで?」

「もう、この子には普通の人形として過ごして欲しいもの。
 別にそう言うのも悪くないでしょう?」

久瀬由美は優しい笑顔でそう言った。
96【平唯の人間観察 第四話「呼」】(代理の代理) :2009/11/28(土) 18:14:58.64 ID:d5fHkMD30
「ハッ……、敵わないね。
 優しい人だよ、あんたは。
 契約するっていうならまた別だったんだがそれじゃあ仕方ない。」
田井中はため息をつく。
「一体貴方は何の為に出てきたの?」
急な登場で驚いていたがこれだけは聞かねばなるまい。
「俺?
 いやぁ、会長のお使いでね。
 平唯、あんたにメッセージだ。
 【あまり組織と関わるな】
 だってよ、俺としてはあいつら嫌いじゃないってか良い奴だと思うんだけどな。
 あと今のあんたの能力?あれも黒服には絶対見せない方が良いぜ。
 良いように使われるから。
 そんじゃあ。」

田井中は面倒臭そうにあくびをしながらトンネルから出て行った。
それを確認すると私達、メリーさんと久世由美と私の三人は久瀬由美の家に向かったのであった。

【平唯の人間観察 第四話「呼」】
97黒服H せんみつ(代理の代理) :2009/11/28(土) 18:15:48.33 ID:d5fHkMD30
○月×日 22:11 二階廊下


「あの……体、大丈夫なんですか?」
「ん?……あぁ、問題ないさ」

 女装少年との戦い、その後のマリを逃がした後に受けたダメージ
 それらを総合するに、この黒服H、あまり動ける状態ではないはずである
 が、この状況において、彼は共に行動している面子の前を導くように歩いていた
 多少ふらついてはいるが、倒れそうな様子はない

「なぁに、俺は都市伝説だからな。大丈夫さ」
「だが、無理に動き続けては、都市伝説とは言え専門的な治療が必要になるぞ?」
「だろうねぇ。まぁ、「組織」にもそこら辺やってくれる奴はいるんで大丈夫さ………それに」

 ニタリ
 共に歩く面子を見回し、黒服Hは笑う

「このハーレム状態から離脱しなきゃいけないだなんて、男としてちょっと、なぁ?」
「む…君が女になるか離脱してくれれば、むしろ僕にとってのハーレム状態なのだが」
「女になるのは御免だねぇ。俺は突っ込まれるよりもむしろ突っ込む方が」
『下品な会話はおやめください。主に黒服さん』

 ザクロの突っ込みが、会話を中断させる
 女装少年(いや、今は少女だが…)は、黒服Hの言った言葉の意味がわからないのだろう
 きょとん、と首をかしげていた

『それよりも、「13階段」の契約者ですが…どこかの階段の踊り場にいる、と言うのは確かですの?』
「あぁ。そこが、あいつにとって一番の安全地点だからな」
98黒服H せんみつ(代理の代理) :2009/11/28(土) 18:21:10.37 ID:d5fHkMD30
 家庭科室前の階段の前に立ち、踊り場を見あげながら黒服Hはザクロの疑問に答える
 どうやら、ここにはいないようだ
 一向は移動を開始する

「窓から入り込まれない限り、まず踏み込まれないだろ?…まぁ、遠距離攻撃されたらアウトな訳だが」
「その、「13階段」って、13段目を飛び越えても駄目なんですね?」

 女装少年の言葉に、あぁ、と頷く黒服H

「昔はそれで対処できたんだがなぁ。あいつが都市伝説の力をより引き出せるようになったから、今はそれでもアウトだな。引きずり込まれたら、漏れなく亡者と一緒に血の池地獄で混浴だぞ」
「血の池地獄か……毒性はあるのかい?」
「ない。ただし、亡者たちが引きずり込んでくるから溺死するだろうな」

 移動しながら、黒服Hは「13階段」の能力を説明する
 一時期面倒を見ていたせいか……担当であったせいか、能力の特性などはほぼ、把握している
 スパニッシュフライに支配された…はず…事により、一時的に久々に共に行動したせいで、今の状態もしっかりと把握していた

『説得、ですが……うまく行くでしょうか?』
「さぁなぁ。俺の過労死候補ナンバー1の同僚だったら、その辺うまくやってくれそうなんだが…」
「…それって、もしかしてDさんですか?」

 化学準備室隣の、空き教室の横、そこの階段の踊り場に視線をやる
 ……ここにも、いない
 となると、残りは一箇所
 視聴覚室隣の階段へと、一向は向かう

「あぁ、そうさ。あいつは色々と特殊だしな。おかげさまで、性格的にも説得交渉に向いてる」
「ふむ、特殊、か」

 わずかに、ドクターが反応する
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 18:21:20.02 ID:DIkQYlcqO
しえん
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 18:22:12.35 ID:0RNGiVrkO
えん
101黒服H せんみつ(代理の代理) :2009/11/28(土) 18:22:22.39 ID:d5fHkMD30
 男には興味は無いが…「特殊な都市伝説」ならば、興味がある
 突然変異などの特殊な都市伝説は、貴重な存在だからだ

「あぁ、あいつは特殊で貴重さ……何せ、「組織」が人為的に都市伝説と契約させて、人為的に都市伝説と同化させた存在なんだからな」
「…………え?」

 黒服Hの言葉に、女装少年がきょとんと声をあげた
 …くっくっく、と黒服Hは低く笑う

「何でも、「組織」において、「組織の黒服」以外の能力を持つ黒服…すなわち、元・人間の黒服を量産する実験、だったかねぇ?あいつはそれの被害者で唯一の生き残りなのさ」
『そんな実験が、行われていたのですか?』

 背負っているバイトちゃんを落とさないよう歩きながら、ザクロはやや嫌悪を滲ませた様子でそう言った
 …それが、事実だとしたら
 なんとも、非人道的な実験である

「ま、昔の話さ。今は責任者が暗殺されただかなんだかでプロジェクトは凍結。「なかった事になった」実験の一つだからな」

 肩をすくめる黒服H
 自分も、詳しくは知らない
 そうとでも言いたそうな様子だ

「結構な人数が実験されたそうなんだがな。そうなった連中、ほとんど正気を保ってないのが多くて、そもそも黒服化しなかったのが大半らしい。そこら辺は全部「廃棄」されたらしいな」
「………」

 −−−−廃棄
 されは、すなわち 
 …「組織」によって、殺されたという事
 凄惨なその事実を、黒服Hはまるで映画の内容でも話すように続ける
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 18:51:29.12 ID:V9mvz+yz0
c\
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 18:53:43.08 ID:DIkQYlcqO
みー
104黒服H せんみつ(代理の代理) :2009/11/28(土) 19:00:14.67 ID:d5fHkMD30
「その唯一の生き残り。さぞや貴重で特殊だろうよ?………あいつは色々と好かれてるから、調べる気があるんだったら、命をかける必要があるかもしれんがね?」
「なるほど………ところで」

 じっと、黒服Hを見詰め…ドクターは尋ねる

「どの辺りまでが真実で、どの辺りまでが嘘だね?」
「…………え??」

 ??と首をかしげる女装少年
 ドクターの疑問に対して、黒服Hは………くくくっ、と笑って肩をすくめた

「おや、もうバレたか。結構うまくできた話だと思ったんだがね」
「え………嘘、なんですか?」
「あぁ」

 きっぱり
 悪びれた様子もなく、黒服Hはそう言い切った

「あいつはそんな実験なんざ受けてねぇよ。まぁ、色々と特殊な事実に変わりはないけどな」
「う、嘘つくなんて酷いじゃないですか!?」
「ま、許してくれや。暇つぶしにはなっただろ?」

 くってかかる女装少年相手に、黒服Hはなんとも楽しそうに笑った
 ザクロは、呆れたように小さくため息をつく

「…………」

 −−−そんな中
 ドクターは一人、静かに黒服Hを観察していた
105黒服H せんみつ(代理の代理) :2009/11/28(土) 19:01:26.97 ID:d5fHkMD30
 確かに、先ほどの話は「嘘」だろう、彼の過労死候補ナンバー1とやらの同僚は、実験など受けていない
 それが、「真実」なのだろう

 しかし
 黒服Hが語った、実験
 それは、確かにあった事実なのではないか?
 そして、その実験の被害者であり、唯一であろう生き残りは…確かに、存在するのではないだろうか?

 真実混じりの嘘は、嘘であると見抜きにくい
 嘘混じりの真実は、たとえそれが真実であっても、真実であると認識されにくい
 …先程の話は、どこまでが「真実」だ?

「……っと、そろそろお喋りは終わり、だな」

 …声が、聞こえてくる
 なんだか惚気と言うか、いかに自分が誰かを愛していると言う事を熱弁している声に聞こえるのだが
 なんとも、場にそぐわない

「さて、と…こっちの話を、聞いてくれりゃあいいんだがねぇ?」

 …一向は
 視聴覚室横の階段前まで……到着した


to be … ?
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 19:02:27.43 ID:d5fHkMD30
以上
代理の代理でした

途中でサルったぜ・・・
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 19:02:37.76 ID:vF9gEkos0
代理投下、乙

これでとりあえず、かな?
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 19:09:47.69 ID:d5fHkMD30
>>107
たまってた分は全部投下された筈
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 19:18:40.73 ID:DIkQYlcqO
超乙でした!
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 19:54:47.92 ID:HwZWZCAC0
三日分くらいの未投下分を全部投下し終えたのか…超乙!
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 20:05:24.95 ID:DIkQYlcqO
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 20:34:02.17 ID:0RNGiVrkO
113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 20:45:39.20 ID:xrmXJyxw0
てす
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 20:46:21.05 ID:xrmXJyxw0
!!!!!!!!!!!!!!!????????????????
いいいっやっほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!
規制が解けたぞぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!1
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 20:51:01.24 ID:0RNGiVrkO
おめ
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 20:54:32.27 ID:HwZWZCAC0
おめでとう
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 21:04:53.09 ID:DIkQYlcqO
>>114
おめ
118黒服H せんみつの弟子:2009/11/28(土) 21:09:24.83 ID:xrmXJyxw0
○月×日 22:20 視聴覚室横階段前


「……来やがったか」

 一同の気配に気づいたのだろう
 階段の踊り場に…「13階段」の契約者が姿を現した
 その外見は、やや目つきの悪い普通の青年にしか見えない

「よぉ」

 ひらひらと、気軽な様子で、黒服Hが「13階段」に手を振った
 っち、と「13階段」が舌打ちする

「支配が解けたのか」
「お陰さんでな。そう言う訳なんで…お前の能力、解除してくんねぇ?」
「嫌だね」

 黒服Hの言葉に、あっさりと返してくる「13階段」
 黒服Hは、困ったように肩をすくめた

「駄目みたいだ」
「え、そんな、いきなり諦めちゃ駄目ですよ!」

 わたわた
 女装少年が、慌てて黒服Hの前に出た
 階段から「13階段」を見あげ、「13階段」に告げる

「僕達、戦いに来たんじゃあないんです。ただ…」
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 21:10:21.67 ID:HwZWZCAC0
支援
120黒服H せんみつの弟子:2009/11/28(土) 21:13:40.25 ID:xrmXJyxw0
「…説得でもしに来た、ってか?」

 嘲笑うかのような表情を浮かべる「13階段」
 …説得に応じるつもりは、ない
 そうとでも言いたいのだろうか?

「君は、君達が目的を達した時…それが世界にどんな影響を与えるか。考えては見ているかね?」

 ドクターが女装少年の隣に立ち、尋ねる
 すると、「13階段」は笑いながら答えた

「んー?この街は、人間と都市伝説が分け隔てなく暮らすテストケースの街になって、いい影響与えると俺は思うぜ?」
『本気で仰っているのですか?』

 ザクロの言葉にも、あぁ、と「13階段」は頷く
 どこまでが、本気なのか
 それは、「13階段」と言う人間をよく知らない、一同にはわからない
 ……ただ、黒服Hだけは、わかっているようだが、それを口には出さない

「それによって、君達が世界を敵に回してしまう。そうとは思わないのかね?」
「その可能性もあるだろうな……だが、どうにかなるさ。俺達なら」

 そう言って、「13階段」は笑う
 −−−今の仲間達となら、世界を敵に回しても怖くはない」
 そうとでも、言いたそうな様子だ
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 21:15:33.82 ID:MIUu+G4U0
こういうのって昔はスペース借りてウェブリンク貼ったりして
こじんまりしてたのにな、VIPから出て行ってくれない?
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 21:16:17.25 ID:HwZWZCAC0
支援
123黒服H せんみつの弟子:2009/11/28(土) 21:17:09.46 ID:xrmXJyxw0
「世界中の都市伝説に関わる組織が、君達を消しに来るかもしれないんだぞ?」
「なぁに、どうにかなるさ…少なくとも、俺は「組織」を黙らせたり、いざとなればこっちに協力させる手段を、持っている」

 あまりにも自信満々なその言葉に、全員が疑問を抱いた
 …若干、自信過剰そうと言うか、馬鹿っぽそうな印象を感じる「13階段」ではあるが
 ……何故、そこまで自信を持つ?
 疑問を持たれた事に気づいたのだろう
 「13階段」はニヤニヤと笑う

「そこの黒服に、その方法は教えてもらったしなぁ?」
「…………え」

 つ、つ、つ……・・・と
 女性陣の視線が、黒服Hに集中した
 黒服Hは、しばし考え

「………おぉ」

 と、ぽん、と手を打った

「あー、うん。そう言えば教えたなぁ」
「何を教えたんですかっ!?」
「うん、まぁ……色々?」

 くっく、と笑いながら、黒服Hは女装少年に答えた
 悪びれた様子は、さっぱりとない
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 21:20:19.71 ID:Oc6MkErK0
しぇーーーん
125黒服H せんみつの弟子:2009/11/28(土) 21:21:27.24 ID:xrmXJyxw0
「その辺りは全部覚えてるか。さすが俺の息子」
「誰が息子だ。どう考えても年齢計算合わねぇだろうがっ!」

 「13階段」からすら、突込みを受ける黒服H
 くっくっく、となんとも楽しそうで

『…あなた、彼を説得する気はありますの?』
「あぁ、あるぞ?そりゃもう、説得する気満々さ」

 ザクロの言葉にそう答えはするのだが…どこまでが、本気やら
 ドクターは小さくため息をついて、「13階段」に向き直った

「説得に応じる気はあるかね?」
「ないね。俺の「13階段」を破らない限り…てめぇらは、ここを通れないんだからな」

 −−−−絶対に、通しはしない
 そうとでも言うように、「13階段」は一同を見下ろす

 階段さえなければ無力の「13階段」
 しかし、今の彼は階段に守られた状態だ
 余計に、強気で居られるのだろう


 ……さて、どうしたらいいやら
 黒服Hは悩むふりをしながらも、どこか楽しそうなのだった


to be … ?
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 21:23:23.85 ID:xrmXJyxw0
ドクターの人と女装少年の人と合わせ鏡のアクマの人に焼き土下座っ!!orz
説得する気あんのかこの野郎、な黒服Hでした
……駄目だこいつ、早くなんとかしないと
っつか、こいつのせいで説得が困難になっているような気もしないでもない
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 21:23:48.45 ID:HwZWZCAC0
支援
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 21:37:44.08 ID:xTT+pxqh0


千三つ(せんみつ)
1.真実が千言のうちに三つしかないという意味で、嘘(うそ)、偽(いつわり)りのこと。また、嘘吐(つ)き。
2.纏(まと)まる話が千件に三件であるという意味で、土地の売買や貸し金の斡旋(あっせん)をする職業。また、その人。

くろご式ことわざ辞典(ttp://www.geocities.jp/tomomi965/)「千三つ」の項目より抜粋


こりりゃあ、黒服Hと十三階段の舌技になるのか……?
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 21:40:06.14 ID:xrmXJyxw0
>>128
>こりりゃあ、黒服Hと十三階段の舌技になるのか……?
黒服H「舌技、ねぇ」(しゅるしゅるしゅるしゅる)
ザクロ『何を想像しましたの?』
 合わせ鏡のアクマの人スマン、この場で突っ込んでくれそうなのがザクロしかいなかった
 バイトちゃんが目を覚ませば別だが
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 21:48:44.60 ID:txlM+LXfO
>>129
俺「確かにあのメンバーはツッコミ不足だな」
盟「ある意味、集まるべきではないメンバーですよね」
俺「むしろバイトさんが起きるとツッコミが足りなくなるという事態に・・・」
盟「気絶していた方が都合が良いと」
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 21:53:14.19 ID:xrmXJyxw0
>>130
>盟「気絶していた方が都合が良いと」
バイトちゃんはいつ目を覚ます事ができるんだwwwwwwwww

エロネタ以外なら女装少年も突っ込めると思うが、そうじゃないと突っ込みがザクロしかいない罠
132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 22:01:12.94 ID:xTT+pxqh0

???「突っ込む突っ込まないって、アンタら……」
133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 22:04:35.13 ID:xrmXJyxw0
>>132
>???「突っ込む突っ込まないって、アンタら……」
黒服H「少なくとも、俺は突っ込む方が好きだ」(しゅるしゅるしゅるしゅるしゅる)
ザクロ『だから、何の話ですの?』
 …ザクロ、今度この変態を一発焼いてくれ、頼むから
134橙・レイモンのブギーバック (代理):2009/11/28(土) 22:07:24.23 ID:xrmXJyxw0
【橙・レイモンのブギー・バック@〜彼方からの手紙〜】

世界中には意志が満ちている。
善意、悪意、無意。
悲しみ、喜び、怒り、まあまあ感情の見本市だ。
君達は泣いてる人を見ると何を思うだろうか?
都市生活は弱者を見殺しにする事から始まるそうで。
ぼくは能力故に常に三人称視点。
見殺しもへったくれもない只の語り部なのだ。
ところでぼくの同居人は感情をほぼ100%支配することが出来る。
普段はしていないが戦闘の時――――― 一度、私と出会ったとき
それをおこなっていた。
それはまるで回転寿司の皿をとろうとしたらそれが模造品だった時のような気持ち悪さを感じた。
まあそれは良いんだ。
これはぼくのお話。
ぼくの物語。
他に出てくるべき人間など居ないぼくだけのぼく専用の物語。
どこからともなく沸いて出てくる不気味な泡のように
なんとも意味を把握しがたいブギー・バックのように
好きなように物語を享受すれば良い。
さて、今夜はブギー・バックだ。
それともビート・イットかい?
始まったばかりでビート・イット(さようなら)もあんまりだ。
135橙・レイモンのブギーバック (代理):2009/11/28(土) 22:08:54.11 ID:xrmXJyxw0
それでは始めよう。



少女が一人、真夜中の部屋で本を読んでいた。
彼女の名は橙・レイモン、数ヶ月前まで某所で軟禁され、
都市伝説の能力を増幅させる実験に使われていた可哀想な女の子。
彼女が読んでいる本の名前は「ウォーリーをさがせ」
そう、子供の頃には誰でも読んでいるあの本だ。
彼女はこの本を読んだことはない。
しかしこの本の内容はすべて把握している。
ラプラスの悪魔、それが彼女に与えられた都市伝説だ。
全てを知る、なんて言うと聞こえが良いがそんなことに人間の脳髄が堪えられるわけがない。
とある薬を使えば別だが彼女には目の前にある本の内容を一瞬で把握するのが関の山だった。


136橙・レイモンのブギーバック (代理):2009/11/28(土) 22:10:32.81 ID:xrmXJyxw0
「ウォーリーは、この城の門の下と町の街路樹の上と……。
 都市伝説なんて使うんじゃなかったわ。」

面倒臭そうに本を投げ出す少女。
しかし彼女の目に視力は無い。
最初からこの本を楽しめるわけがないのだ。
部屋にこの本を置いた人間に悪意は無かった。
例え今彼女が少々憂鬱になっていたとしてもそれは彼のせいではない。

「どうなってんのよ、あの変態、信じられないわ!」
人の心を覗くことは自身に対する負担が大きすぎるので彼女はしていない。
だから彼女はこの部屋に本を置いた人間に愚痴を言った。
その他にも川端康成や芥川龍之介、三島由紀夫などとりあえずメジャーどころが揃っているのだが彼女は面倒で読まない。
彼女は軟禁されていた間、本などあまり読まなかったのだ。



――――――時計は丁度、午前二時を指していた――――――


137橙・レイモンのブギーバック (代理):2009/11/28(土) 22:13:49.43 ID:xrmXJyxw0
「……ここはどこ?」
少女は呟いた。
彼女はこんな場所を知らない。
彼女が知っているのは暖かい布団の感触と午前二時丁度を指している家の時計。
そして殺風景な彼女の部屋。

いや、正確には彼女はこの場所を知っている。
ここは本の中の風景、本の中の世界なのだから。
彼女をここに引きずり込んだのは紛れもなく都市伝説「ウォーリーをさがせ」

「この気配は都市伝説!?
 一体何の……。」

橙と呼ばれるこの少女は都市伝説についてあまり詳しくない。
故に何が起きたのかを把握できていない。
焦りと動揺のままに辺りを走り始めてしまった。

それから数十分後、彼女は妙な事に気づいた。
「疲れていない………?」
そう、ずっと走り続けているのに彼女の身体は疲れを覚えていない。
この世界は本の世界。
疲れたと思わなきゃ疲れはしない。
しかし彼女はそんな事を知らない。
危機が迫っていることも知らない。
138橙・レイモンのブギーバック (代理):2009/11/28(土) 22:15:59.30 ID:xrmXJyxw0
「やぁ、そこのお嬢さん。」

赤い縞々、囚人服。
狂ったように、否。
狂ったからこそ赤い服。
赤い服は狂った囚人の服。
警告色。
病院には病人が多い、病院生活が長かったゆえに彼女は解ったのだろう。

目の前に居るメガネで中肉中背で顔に大きな傷のある男が正気なんかじゃないことに。

「待ってくれ待ってくれ待ってくれ待ってくれ!
 久しぶりの久しぶりの久しぶりぃのぉ訪問者なんだよ!
 じっくりゆっくり解体させておくれぇよぉ!」

笑いながら男は迫ってくる。
彼女は急いで走り出す。
恐怖で思考が混濁しているようだ。
しかし、それが幸いだと言えるかもしれない。
『男の足に自分が敵うわけがない』
そう考えたならば彼女の足はすぐに止まってしまうのだから。


139橙・レイモンのブギーバック (代理):2009/11/28(土) 22:18:39.34 ID:xrmXJyxw0
急いでウォーリーを探したまえ
秋の風が吹く前に
白鳥たちが逃げてくる前に
君はあのバスに乗って
――――ああ、定期は無くしたのか?
とにかく乗りたまえよ、契約者
私の声すら聞けぬ幼い契約者よ
ウォーリーさえ探せばこのゲームはお終いだ
ジム・ジャックじゃない。
ウォーリーを探せ

「はぁ……、ハァ……。
 そうか、ぼかぁウォーリーを探せばいいのか。」

ああ、やっと気づいたか。

「後ろを追ってくる人間達がウォーリーだとすれば……
 僕はもうウォーリーを見つけている。
 ゲーム・セットになる筈なんだ。
 でもこのゲームは終わらない。
 何故?
 つまり私を追いかけてきている赤い服の人間の中にウォーリーは居ない。
 ウォーリーはこの中に居る。
 それがルール。
 ならば今使うべきは私の都市伝説。
 検索条件はウォーリー、教えて頂戴。」
140橙・レイモンのブギーバック (代理):2009/11/28(土) 22:19:52.65 ID:xrmXJyxw0
彼女の行動は正解だ。
ウォーリーの場所はその先の角を右に曲がってから扉を開ければよい。
さて、聞こえたのだろうか?
彼女は私の声が聞こえる。
しかし今、聞こえる能力は制限されている。

「解ったわ、ありがとう。」

ああ、良かった。
彼女には聞こえたようだ。
指示通りに道を進む。

バタン!

結論から言おう。
彼女はウォーリーに出会えた。
この都市伝説の内部に潜む良心に


「やぁ、俺が……ウォーリーだ。」

眼鏡をかけて犬を連れた冴えない男。
だがその瞳は優しさに満ちあふれている。
子供の好きな優しい男。
ここにねむる善意そのもの。

141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 22:21:10.73 ID:HwZWZCAC0
支援
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 22:21:53.68 ID:HwZWZCAC0
支援
143橙・レイモンのブギーバック (代理):2009/11/28(土) 22:23:25.83 ID:xrmXJyxw0
「貴方がウォーリー?
 はやくここから出してよ!」

慌てて私の契約者は彼に詰め寄る。

「ああ、待ってくれ待ってくれ!
 俺を見つけたからってゲーム・セットじゃないんだ!
 見つけるべきは俺じゃない。
 この都市伝説の手にかかった被害者だよ。
 ああ、場所なら俺が案内してあげるよ。
 必要なのは君の辿り着こうとする意志。
 ついてきな。」

本物のウォーリーは彼女を誘って扉を開ける。
扉を開けるとそこは階段があった。
螺旋階段
長い階段

「ここを登るの?」

橙は彼に問うた。


144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 22:25:04.64 ID:HwZWZCAC0
しえn
145橙・レイモンのブギーバック (代理):2009/11/28(土) 22:25:31.04 ID:xrmXJyxw0
「登るよ。その先に居る。
 諦めるな、さもなくば君も被害者だ。
 諦めなくても会えるとは限らないけれどな。
 さぁ、行こうか。」

「行ってやるわ、行ってやろうじゃない。」


階段を登り始める。
一時間
二時間
三時間
時間はあっという間に過ぎていく。
終わらない、幾ら登っても階段は尽きない。
覗き窓から見える月は空の彼方に落ちていきそうだ。


コツ
コツコツコツ
コツコツコツコツコツ
ココココココココココココココココ!


146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 22:28:03.98 ID:HwZWZCAC0
試練
147橙・レイモンのブギーバック (代理2):2009/11/28(土) 22:30:47.56 ID:HwZWZCAC0

「ねえ、あの音は何?」
「君をさっきから追いかけていたジム達だろう?」
「なんで追いかけてきているの?」
「君が諦めそうだからさ。大事なのは意志だ。
 なんとしても辿り着こうとする意志だよ。
 君には何かを予知する能力があるようだけれど……
 使うだけ無駄だと思った方が良い。
 大事なのは意志だ、狂った殺人鬼をも超える意志の力。
 何者にも染まらない、そう漆黒の意志とでも呼ぼうか?
 君は弱い、全てを知ることが出来たが故に君は弱い。」
「ふざけないで、私だってまだやれるわ!」
「まあ良い……。」

足音はとおざかっていった。
しかしそれでは駄目なのだ。
『まだやれる』ではない。
それに彼女は気づかない。
148橙・レイモンのブギーバック (代理2):2009/11/28(土) 22:31:33.71 ID:HwZWZCAC0
数時間
さらに
数時間
それでも
数時間
到着しない

ああ、彼女に何が足りないのだろうか?
答えは簡単。
辿り着こうとする意志なんだよ。
まだやれる、ではなくて
私はやる、と彼女は答えるべきだった。

足音は彼女のすぐ後ろまで迫ってくる。
人々は手に手に鉈を持って彼女を解体する瞬間を今か今かと待っているのだ。

「ねぇ……、もう……。」
「駄目だ、君はまだ意志が足りない。」

そう言われた瞬間
彼女は階段に足を取られて転んでしまった。

「やっと諦めたか!」

喜んで躍りかかるジム――――――二五人の殺人鬼達。
しかし彼らの目的は達成されない。
149橙・レイモンのブギーバック (代理2):2009/11/28(土) 22:35:34.60 ID:HwZWZCAC0

「ここらへんで許してやれ、ウォーリー。
 被害者は居ない、見つかりようがない。
 何故なら君が全員助けているからな。」


金髪碧眼の男が階段から降りてきた。
降りてきたと思ったら彼女の後ろに立ってジム達を殴り倒す。

「知っているだろう?サンジェルマン、僕は忍耐強い人間が大好きなんだ。
 彼女には圧倒的にそれが足りない。」

サンジェルマン、そう呼ばれた男は彼女の部屋に「ウォーリーを探せ!」を準備した男だった。
彼の意志は覗きようがない。

「しかし及第点だろう?」
「まぁ、予想よりはついてきたよ。」
ウォーリーは向き直って橙に説明を始める。
150橙・レイモンのブギーバック (代理2):2009/11/28(土) 22:36:17.30 ID:HwZWZCAC0
「元々、俺は俺を捜索しようとしてくれない人間の存在に困っていてね。
 彼らったらすぐに諦めるんだ。
 だから俺は面白いことを思いついた。
 人間達をここに閉じ込めて擬似的に命を懸けた捜索を行わせる。
 ちょっとした仕返しだよ。
 まあそれを何度も繰り返している内に都市伝説として成長してしまったんだけどね。
 本当に殺させるわけには行かないから大抵危なくなったら被害者は保護することにしている。
 世に名高いウォーリーを探せの都市伝説も実のところそんだけだお。
 で、あんたに聞きたいんだが俺と契約するか?
 心の器は……、ああなんだこりゃ、ボロボロのぐちゃぐちゃだ。
 さっきまで良く日常会話が成り立っていたな。
 こんなんじゃどれだけ増えようがもう同じなのか?」
「あのさ、これは結局なんだったの?」
「私からのプレゼントですよ、橙さん。
 上田さんが腰に下げていた刀が有ったでしょう?
 あれと一緒です。」

橙・レイモンはしばらく考え込むような表情をした後こういった。

「………じゃあ受け取っておくよ。
 ウォーリー、君と契約する。」
「了解だ、必要とあらばいつでも呼び給え。」
151橙・レイモンのブギーバック (代理2):2009/11/28(土) 22:38:16.72 ID:HwZWZCAC0
「帰るよ、橙。
 気づかないだけで扉は目の前に有るんだから。」

サンジェルマンについていくとすぐに扉に辿り着いた。
「一旦、サヨナラだ。契約者。
 だが私は君が必要とするときに何時でも浮かび上がる。
 ただし、君が自らの目的地――――――今は見つからなくとも
 それに向かう意志を失った瞬間、君の所に浮かび上がるのはジムだ。
 それだけは忘れるな。」

扉をくぐる前、そう言っていた言葉だけが彼女の耳には何度も何度も響いていた。

バフン
そして布団が柔らかく弾む音がした。

【橙・レイモンのブギーバック@〜彼方からの手紙〜 fin】
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 22:38:57.17 ID:NnPeNVhz0
乙です!
153橙・レイモンのブギーバック (代理2):2009/11/28(土) 22:39:02.71 ID:HwZWZCAC0
208 名前:笛[] 投稿日:2009/11/28(土) 22:37:49
契約都市伝説名「ウォーリー(ジム)を探せ!」

能力
・本を読んだ相手を本の世界に引きずり込む
 本の世界の中には25人の殺人鬼が居る
・現実世界に殺人鬼を呼び出す、制御は不能だが出し入れするタイミングは自由自在
 一度に三人までが限界


破壊力:B
持続力:C
スピード:D
精密動作生:C
射程距離:E
成長性:E
契約コスト:B

サンジェルマンがろくでもないことをやろうとしているのはひみちゅ
154橙・レイモンのブギーバック (代理):2009/11/28(土) 22:44:26.22 ID:xrmXJyxw0
代理投下引継ぎ乙です!!
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 23:01:57.65 ID:64XOlb630
乙で〜す。
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 23:19:55.65 ID:xrmXJyxw0
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 23:22:34.79 ID:ayMUPeWD0
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 23:24:12.04 ID:64XOlb630
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 23:33:36.47 ID:Oc6MkErK0
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 23:38:47.46 ID:V9mvz+yz0
161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/28(土) 23:49:35.56 ID:DIkQYlcqO
ねるほ

ほしゅついでにアンケートに答えたりしてみてはどうだろう? いや、俺が見たいだけだけど

あと、字詰め・キャラ名前にセリフのみ・セリフと地の文を分けるとかいろんな形式でみんな書いてるけどどんな書き方が一番読みやすいかとか知りたい。
当然、俺が知りたいだけ

162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 00:02:44.99 ID:kIVfj0sW0
てすてすついでに答えてみる。全然参考にならないけど。

俺としては、いろんな書き方それぞれにいいところがあると思ってる。
なので結論としては「どんな書き方でも個性ってことでおK」
……本当に中身がないな、この結論
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 00:03:42.76 ID:IKDzI2ZL0
って、書き込めた………だと……!?
いつのまに解除してやがったんだちくしょう
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 00:05:29.94 ID:M0nVEhTU0
おめでとう>>163
このブラックコーラは私のオゴリだ

シュッ
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 00:21:18.78 ID:U4g6g8Wp0
>>161良く意見が変わる俺のアンケート結果で良いのなら

Q00. あなたは都市伝説を信じますか?
 あったら面白いし、あると信じた方が楽しいですよ!
Q01. あなたはどんな都市伝説が好きですか?
 メリットがある奴とか! 美少女とか!
Q02. あなたがこのスレで好きな物語はなんですか?
 喫茶ルーモアさん・黒服Dさん・花子さん・フォークロアさん
Q03. Q02.のどこが好きですか?
 作品の空気とか雰囲気とか、あとはキャラクターの個性が好きです
Q04. あなたがこのスレで好きなキャラクターは誰ですか?
 割と皆好きですが、上の人々と、あとパワーストーンの契約者とかHさんとか……
Q05. Q04.のどこが好きですか?
 落ち着いた人とか結構好きです!
Q06. あなたの契約したい都市伝説はなんですか?
 幸運系か美少女(即物的)
Q07. あなたのフェティズムを教えてください。
 ん〜、うなじ?
Q08. あなたの好きな曲を教えてください(ジャンルは自由です)。
 傾向がばらばらなのでちょっと一口には……
Q09. 御感想、御意見など、御自由にどうぞ!!
 皆さん上手くていいな〜いいなー、……文才を咲かす才種はありますかね?
Q10. さっきからあなたの後ろにいる方はどなたですか?
 よし、君は俺の課題をやってくれ。俺はそろそろ寝るから!
Q11. あなたは赤/好きですか?
 赤も好きだけどポケスペ的に黄色が好きです
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 00:42:10.35 ID:U4g6g8Wp0
>>161
書き方ですが、まあ俺は自分の書き方が一番書きやすいのでしているだけで
書き方それぞれにメリットとかがあると思いますよ
つまり何が言いたいのかというと>>162の人と同じ意見!
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 00:55:42.53 ID:M0nVEhTU0
>>161
読みやすさ、ねえ
今までの作者の話で読みにくいと思った物は、まだ一つもない
見栄えの点では気になることも多いかとは思われるが、まあそんなにキツいものでもないしね

そういや、マッドガッサー決戦が終った後の日常パートでこんな電波が飛んできた。

・題
「はないちもんめの授業参観日」

・あらすじ
ある日、はないちもんめが夕食の席で
「授業参観のお知らせ」というプリントを取り出し、
「別に無理して来て欲しいわけじゃないけど」とそっけなく告げる。
一方、黒服Dはチャラ男の提案に賛同し、密かに授業参観に参加することを決める。
だがしかし、授業参観当日に黒服Dはチャラ男と一緒に来たのだからさあ大変。
授業そっちのけでクラスの女子たち、担任の女教師の妄想が教室内に跋扈する……。

・主な登場人物
はないちもんめ (黒服Dには授業参観に来て欲しいのだが素直に言えない辺り、ツンデレちゃん)
チャラ男 (はないちもんめの今までの境遇を慮り、黒服Dに授業参観へ密かに参加することを提案する)
黒服D (はないちもんめの今までの境遇を慮り、チャラ男の提案に乗るが、あろうことかチャラ男と一緒に参加する)
友人 (授業参観当日、授業そっちのけでチャラ男と黒服Dの×××な妄想を始め出す)
クラスメイト (上に同じ)
担任の女教師 (授業参観ではイケメン父兄を物色している。当日は授業そっちのけで父兄を巻き込んだ「授業」という名の暴挙に出る)
ハク&コン (ゲスト出演・狂言回し)
かごめかごめ (ゲスト出演・掘られる担当)
禿&兄貴の皆さん(ゲスト出演・掘る担当)
黒服H (ゲスト出演・次回予告のお兄さん)
168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 01:21:31.30 ID:U4g6g8Wp0
っと
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 01:32:10.11 ID:jZaUCN890
そい
170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 01:51:49.69 ID:M0nVEhTU0
どら
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 01:51:53.41 ID:U4g6g8Wp0
やー
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 02:23:34.38 ID:U4g6g8Wp0
きっ!
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/29(日) 02:53:58.75 ID:U4g6g8Wp0
174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします