「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者たち……」
乙
ほ
夜の間に落ちたっぽいな
彼女は日常を愛する
非日常を望まない
日常を侵される事を彼女は拒む
非日常が近づく事を望まない
彼女は気づかない
望む望まざるに関わらず
非日常は、自分の隣にいつでもある事に
Red Cape
暗くなった道を、私は二人で歩いていた
図書館からの帰り道、たまたま、クラスメイトと一緒になって
途中までは帰り道が一緒だから、二人で帰る事にしたのだ
最近、なんだか物騒だから…折角なら、一人より二人の方が心強い
「委員長、いつもあの時間まで図書館で勉強してるの?」
「塾がない日はね。家だと、なんだか集中できなくて」
ほへぇ、と関心したような顔をされる
…私としては、それが特別な事であると意識した事は、あまりないのだけれども
他の人から見れば、それは少し変わった事なのだろうか?
私は、誰よりも普通でありたいと思っているけれど…普通じゃないのだろうか?
「あなたは…勉強以外にも、何か調べ事でもしてたの?」
「え?……あはは、ちょっと」
誤魔化すように笑われた
…気を使われているのだろうな、と思った
彼女が調べていたらしい事は、「都市伝説」だったのだ
……私が、その手の都市伝説とかそう言う非現実的な事が苦手であると知っていて、気を使ってくれているのかもしれない
…どうにも、私は都市伝説が苦手だ
その非現実的な、非日常的なそれが苦手だ
そんな物はありえない
現実に存在するはずがない
なのに、まるで本当に存在するかのように語られる、それらが
あるはずがないのだ
そんなものたちが存在するならば、私たちの日常など、簡単に壊されてしまうから
私達の日常が存在している限り…そんなものは、あるはずがない
私はそう信じている
…そう、信じる事しか、できない
ほぉ、と吐いた息がほのかに白くなる
ここ数日、12月並の寒波が押し寄せてくる、とか言っていた
もしかしたら、雪でも降るのかもしれない
「寒いわね。インフルエンザとか流行ってるし、風邪とか引かないようにね?」
「あ、うん。クラスでも何人か休んでるしね…委員長も気をつけてね?」
えぇ、と私は頷く
確かに、クラスでもここ最近、ぽつぽつと休む生徒が出始めている
………男子生徒、ばかり
奇妙な偶然だと思う
男子ばかり、ぽつぽつと休み始めて…休んだ生徒は、まだみんな、学校に出てきていない
私達のクラスだけではなく、他のクラスでもそうらしくて…その内、学級閉鎖学年閉鎖どころか、学校閉鎖になりそうな状態だ
…まだ、彼は休んでいない
いつも通り、どこか眠たそうだったり、ぼ〜っと窓の外を眺めていたりして
いつも通り、学校に通ってきている
…彼が、そのままならば
今の現状も、私にとって、まだ、日常のままだ
公園の前にさしかかる
この辺りで、彼女とは帰り道が別々になる
支援
「それじゃあ、またね、委員長」
「えぇ、また…」
…そう、言いかけた、その時
ぞくり、背筋を悪寒が走りぬけた
ざわざわと、背筋を走り抜ける感覚
−−−−−怖い
恐ろしい
脳裏に、思い出したくもない記憶が蘇る
首だけで浮かんでた黄色い雨合羽
拘束台で拘束され、向けられたチェーンソー
迫ってくる、黒い不気味な子供達
あるはずがない
ありえるはずがない存在たち
私が見てしまった、あるはずのない………
「い、委員長、どうしたの?」
「−−−ぁ」
彼女が、こちらを気遣うように声をかけてきた
…駄目
ここから、逃げないと
今すぐにでも、彼女の手を引いて逃げないと
よくわからないけれど、怖くて恐ろしい
公園に………何か、いる
駄目
そっちを見てはいけない
非現実を、認めてはいけない
「−−−−−そのまま真っ直ぐ走れ!!」
聞こえてきた、声
それで、私は正気に戻った
彼女の手を、掴む
「え、いいんちょ…」
彼女の声に答える間もなく、走り出す
…直後、私たちの隣を、誰かが駆け抜けて行って
すれ違ったのは、ほんの一瞬
しかし、私は確かに見た
すれ違ったのは……彼で
その彼の傍に…小さな、おかっぱ頭の女の子が、いたのを
私は…確かに、見てしまったのだ
しえ
「花子さんっ!」
「うんっ!!」
花子さんが、公園のトイレから、水を呼び寄せる
呼び寄せられた水は激流となって、そいつに襲い掛かった
「っち!」
だが、早い
人狼みたいなそいつは、女者っぽいヴェールをひらひらとたなびかせて、こちらの攻撃を交わしてくる
「ひゃっははははは!!その程度の攻撃、当たるわけねぇだろぉ!?」
「む〜……当てるの!」
水は、花子さんの意思に従って動く
まるで蛇のように…いや、縦横無尽に飛び回る、龍のように、激しい水の流れは人狼に襲い掛かる
ガッ、ガッ!!と、そいつは地面を蹴り、時に樹木を足場に飛び回り、攻撃をかわしている
「………」
その様子を見ながら、意識を集中する
この空いた手に、武器が存在するイメージを
……不名誉ながらも、俺がもっともうまく扱える、その武器の存在を
「…隙だらけだぜぇ!餓鬼がっ!!」
「み!?け、けーやくしゃっ!」
人狼が、こちらに飛び掛ってくる
…それよりも、早く
俺の手の中に……水で出来た銃が、出現した
「−−−−−っ!?」
俺の手の中の銃を見て、一瞬、人狼は怯んだようだった
その隙を逃すものか
水の弾丸を発射する
相手の心臓を、頭を狙い、数発続けて発砲した
ーーーーぐるんっ!!と
人狼は、空中で無理矢理体勢を入れ替えてきた
水の弾丸は、ヴェールの端に小さな穴を空けただけで終わる
「っち……くそ、早いな…」
「……ッガキが、銃なんて扱ってんじゃねぇよ!?」
俺と花子さんの間に着地した狼がぼやいてくる
知るか
困った事に、銃の扱い方は大分子供の頃から教えられてきたのだ
人外の相手と戦う際、使えるならば使うさ
「邪魔しやがってよぉ…」
風に、ヴェールがたなびく
狼の頭をしたそいつは、しかしその癖して、その目は酷く人間的だった
「で?俺様の狩りを邪魔しやがって、一体何の用なんだ?」
…狩り、か
一歩間違うと、委員長たちが危なかったか
………間に合って、良かった
「クラスメイトを助ける事は、当然だと思っているんでね」
…それと
もう一つ
「お前、マッドガッサーとか言う都市伝説の、仲間なんだな?」
…先生から、聞いている
今、学校町で暴れているマッドガッサーには、何人かの仲間がいるらしい
その内の一体が、女物のヴェールを纏った人狼の姿をとる事は聞いていた
「あぁ?……だったら、どうだってんだ」
…気のせいだろうか
こちらを睨む目が鋭くなった気がした
当たり、か
「女にした奴を、元に戻す方法、教えてもらおうか?」
「教えてもらうの!」
ごうごうと、花子さんが水を制御し続けている
いつでも、目の前の人狼を攻撃できるよう、水の制御を止めようとしない
「んな事、俺が教えるとでも思うかぁ?」
「…教えてもらわないと、困るんだよ」
銃を、まっすぐに人狼に向ける
「………うちの組のもんが迷惑してるんだ。力付くでも教えてもらうぞ」
「−−−っは」
人狼が、こちらを嘲笑ってくる
「やれるものなら、やってみやがれ!!」
吼えた人狼の姿が…変わる
ヴェールが消え、その姿が完全な狼となった
月に向かって一吼えした後、こちらに襲い掛かってくる
「っく!」
水の弾丸を放つが……スピードが、さらに早くなっている!?
水の弾丸で、狙いきれない
狼は、右へ左へ素早く動きながら…こちらに飛び掛る
「み!駄目なの!」
ごぅっ!と轟音をたてて、激流が狼に狙いをつけた
横殴りに襲い掛かってきたその激流を、しかし、狼は避けた
くるり、宙で回転し……次に、狙ったのは
「ッ花子さん、逃げろ!」
「みーーっ!?」
慌てて移動する花子さん
一瞬前まで花子さんがいたそこに、狼はずどぉん!!と半ば地面にめり込みながら着地した
あの体当たりを受けたら、やばい
死ぬまではいかなくとも、わりと全身の骨がやばい
そのまま喉笛にでも噛み付かれた日は死ねる!!
…だが、退く訳にもいかない
女の体になった状態を、元に戻す方法
何とか、聞き出さないと
御手洗さんがあのままだと、気の毒だ
もう一度、水の弾丸で狙いをつける
花子さんも、まずは相手の動きを止めようと思ったのか、トイレの方からふよふよとトイレットペーパーを取り寄せていた
…とにかく取り押さえて、話を聞きだす!
おぉぉん、狼が吼える
その巨体が、だん!!と跳び上がった
月をバックに、こちらに襲い掛かって…
「−−−−だぁめ、悪い事しちゃ駄目だよ?」
楽しげな声
俺の目の前に、茶色の液体の壁が出来た
…茶色で、液体?
まさかっ!?
「っちょ、どうして!?」
「うん、バイトの帰り」
にっこりと
俺の背後に、何時の間にか先生の弟さんが立っていた
……気配をまったく感じなかったぞ!?忍者かこの人はっ!?
じゅうっ、と
何かが溶けた音がした
見ると、弟さんが出現させたコーラの壁に半分、体を突っ込んでしまったのか…狼が、毛並みを半分溶かしながら苦しんでいた
即座にコーラから離れ、ぶるぶるっ!と、体についたコーラを払うように、体を震わせている
「兄さんの教え子が危ないのを黙って見てちゃ駄目だよね?」
そう言って、小さく首を傾げてくる
…うん、その、助けてもらったのはありがたいんだけど、若干怖い
「けーやくしゃ、だいじょーぶ!?」
「あぁ、俺は大丈夫だ!……だから、花子さん」
「み!わかったの!!」
しゅるり
トイレットペーパーが、闇夜に舞う
それは、真っ直ぐに苦しむ狼に向かって飛んでいった
その動きを束縛する為に、巻きつこうとして
……っひゅん!と
どこからか飛んできた、衝撃破が
そのトイレットペーパーを…ズタズタに、切り裂いた
「み!?」
「…っ、新手か!?」
辺りを見回すと…一瞬、人影が見えたような気がした
しかし、それはすぐに夜の闇に紛れ込んでしまって
狼が、半ば花子さんを突き飛ばすようにしながら走っていく
大きくジャンプして、公園の柵を乗り越えて……その姿が、消えていく
追いかけようとした、俺の足元に……ぽ〜ん、と
何かが、投げ込まれた
「…へ?」
それは、携帯電話
ピピピピピピピピ、と異様な音をたて、異様な光を放ち…
「危ないっ!」
ぐい!と弟さんに後ろに引っ張られる
ぼんっ!!と
直後、携帯電話は爆発して…地面を、軽く抉った
……危なっ!?
ちょっとした爆弾並の威力があるじゃねぇか
…これで、相手を完全に見失ってしまった
とにかく、俺は花子さんに駆け寄る事にした
「花子さん、大丈夫か?」
「み、平気なの。ちょっとびっくりしたけど」
突き飛ばされて転んでいた花子さんだが…うん、怪我はないようだ
ほっと、息を吐く
「…すみません、助けていただいて」
「ありがとうなの」
「うん、どういたしまして」
コーラのペットボトルを弄びながら、笑っている先生の弟さん
狼が走り去っていった先を、見つめている
「逃げ足早いなぁ。それに、マッドガッサーの一味は、誰かが危なくなれば、傍に仲間がいれば高確立で助けに入るからね」
「…相手が一体でも、油断するなと?」
「うん、そう言う事」
…どこかで、誰かがこっちの戦いを見ていたと言うことか
花子さんのトイレットペーパーを引き裂いた衝撃破を放った奴と…さっき、携帯電話を爆発させてきた奴
同一人物かどうか、わからないけれど
最低でも、一人は味方が傍にいた、ということか
俺は、それにまったく気づけなかったのだ
…その結果
花子さんも、危険に巻き込んでしまうとは
ぽんっ、と
先生の弟さんが、こちらの頭に手を置いてきた
ぽふぽふ、そのまま撫でてくる
支援
「二人とも、無理は駄目だよ?相手の目的は馬鹿らしいけど、戦闘力は結構洒落にならないらしいから」
「……はい」
「み、気をつけるの」
それじゃあ、とその夜はそこで弟さんと別れた
花子さんと一緒に、帰路につく
「…花子さん」
「み?」
きょとん、と
花子さんが、こちらを見あげてくる
いつも通りの、無邪気な視線
「どーしたの?」
「…どうしても、あの連中の被害者を元に戻す方法を見つけたい……協力、してくれるか?」
「うん!だって、けーやくしゃの為だもん!」
にぱっ、と
花子さんは、元気に笑ってくる
「危ないんだぞ?」
「み?だって、けーやくしゃが危ないなら、私がけーやくしゃを護らなくちゃ」
「……なんだかなぁ」
…こっちに、護らせてはくれないのか、花子さんや
相変わらず、男としては色々な避けなくて仕方ない
……まぁ、それは、もしかしたら
花子さんと契約した時点で、決まっていた運命なのかもしれないが
「…わかった。それじゃあ、付き合ってくれよ?」
「うん!頑張る!!」
元気に返事した花子さんの頭を撫でる
…さぁ、忙しくなりそうだ
必ず、被害者達を元に戻してやらなければ
俺はそう、強く誓ったのだった
彼は非日常を受け入れる
日常を望まない訳ではないけれど
彼は非日常を拒絶しない
彼は、既に非日常を知ってしまっているから
だから、彼は誓うのだ
非日常を知らぬ者を護るのは、自分たちの役目である、と
Red Cape
むむぅ、無駄に長くグダグダになってしまった花子さん&契約者VSマリ・ヴェリテでした
…まぁ、この二人じゃこれが限界だ
そして、三面鏡の人に焼き土下座っ!!orz
三面鏡の少女を勝手に花子さん契約者やら委員長やらのクラスメイトにしちまいました
同じ学校に通っていると言うのなら、是非クラスメイトと言う立場にした方が絡ませやすい…!
代理投下してくださっている方感謝!!
避難所より支援のエールを送ります!
***
代理投下でした。乙!
花子さんしか目に入らない俺はもうダメだと思うwww
「み!」がかわいすぎるハァハァ
398 名前:名も亡き都市伝説契約者[] 投稿日:2009/11/05(木) 14:53:11
代理投下乙&感謝!!
そして、このロリコンめ!!(褒め言葉
マリの幼女verとか大好物です^p^
ああ、赤マントと赤い靴と上田が手招きしている・・
399 名前:名も亡き都市伝説契約者[] 投稿日:2009/11/05(木) 14:58:28
本スレ
>>26 >ああ、赤マントと赤い靴と上田が手招きしている・・
手招きしてる面子がwwwwwwwwwww
赤マントは熟女好き属性も一応あるんだが、やはりロリコン属性の方が目立つなwwww
そういや熟女好きだったっけww
ひきこさんの買収とか幼女マリ観察してたりのイメージが強かったww
400 名前:名も亡き都市伝説契約者[] 投稿日:2009/11/05(木) 15:07:14
本すれ
>>27 >ひきこさんの買収とか幼女マリ観察してたりのイメージが強かったww
Q どうして赤マントの熟女好き属性は影薄いですか?
A
赤マント「熟女キャラが少ないからな」
赤いはんてん「あぅあぅあぅ、そもそも、熟女の基準って曖昧なのですよ」
赤マント「中の人的には、40代後半から半ば〜50代くらいがそれに当たるのでは、と考えているようだがね」
幼女とかロリの基準もそうだが、熟女の基準も結構曖昧だと思ってみた
言われてみると確かにはっきりしないよな・・それにしても赤マント、何という局地的なストライクゾーンなんだ
衝撃波放つ人材だれかいたっけか?
>>29 衝撃波かどうかはアレだが、Tさんが浮かんだ
402 名前:名も亡き都市伝説契約者[] 投稿日:2009/11/05(木) 15:19:49
本スレ
>>28 >それにしても赤マント、何という局地的なストライクゾーンなんだ
何か特徴をつけようと思った結果がこれだよ!!
本スレ
>>29 魔女の一撃の契約者。VS禿戦で使ってる
>>401 問題ない…!
俺も、13階段がころころされそうな投下できないネタを、たった今書いているところだ…!
>遠慮なく酷い目にあわせてやって下されー
うぉいwwwwwwwwwwwwwwwww
因みに、彼女が委員長にどこまで手を引っ張られていったとかその辺は全く考えてなかったとです
…まぁ、あの後こっそり戻って花子さん契約者経ちのバトルを見てた、とかはないだろうなとは勝手に思ってた
あれ衝撃波まで放ってたのかww
あの衝撃波は魔女の一撃の契約者なのか
てっきり木刀持った人が何とか流剣術とか使って放ったのかと思った
403 名前:名も亡き都市伝説契約者[] 投稿日:2009/11/05(木) 15:24:55
本スレ
>>31 >あれ衝撃波まで放ってたのかww
あの技、元ネタではでかい仏像をバラバラにするくらいの威力あるんだよなぁ…www
それを喰らっても無傷な禿はやっぱ凄いって事でwwwwwwwww
魔女の一撃もぱねぇが禿wwwww
皆乙保守
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 16:47:10.21 ID:7E5hxekj0
405 名前:名も亡き都市伝説契約者[] 投稿日:2009/11/05(木) 17:08:15
本スレ
>>32 >てっきり木刀持った人が何とか流剣術とか使って放ったのかと思った
似非関西弁「虎眼流も飛天御剣流も斬撃とか飛ばす技は無かったはずやでー」
マッドガッサー「まあお前の剣術自体は都市伝説能力の類じゃないしな」
似非関西弁「石つぶてや刀自体は飛ばすけど」
マッドガッサー「あそこで木刀と一緒に転がってる十三階段はそのせいか」
十三階段「ちょっと洗濯物を失敬しただけなのに……ごふっ」(小さな布の塊を握り締めながら)
【上田明也の綺想曲4〜断片兆候(バラバラフラグメンツ)〜 】
空は快晴、風は爽快。
優しく流れる初秋の風を切り裂いて一台の赤い車が高速道路を駆けていた。
乗っているのは俺こと上田明也と我が忠実なる都市伝説、“ハーメルンの笛吹き”ことメル。
車は東北にあるとある県の番屋町と呼ばれる町に向かっていた。
「マスター、なんで今日はまた遠出なんか……。
もうすぐマッドガッサーの捕獲作戦もやるんだから準備しておくべきなんじゃないですか?」
車内に流れるメタリカの曲が五月蠅いらしく、メルはカーステレオの音を下げながら俺に尋ねた。
「そうなんだけどもさぁ……。そうも言ってられないのよ。指輪買ってやったんだから黙って付き合え。」
「むぅ……、従弟が都市伝説関係の事件に巻き込まれたんでしたっけ?」
そういう少女の首にはネックレス代わりの指輪が光っていた。
「そう、俺の従妹が都市伝説と契約しちまったらしい。恐らく、“※ただしイケメンに限る”だろう。」
「そんなの解るんですか?ああ、教えて貰ったのか。」
「いいや、事件のあらましを聞けばそれしかありえないから予想しただけ。」
「へへぇ……、流石というかまあそうだろうなというか……。」
魔法を見たときのような顔をしているが単純な推理である。
誰だって家の冷蔵庫に入れていたプリンが食べられていたら一定の根拠を元に犯人を予想するだろう?
そんなもの、そんな程度のものである。
数時間後
車は順調に飛ばしていたのだが、諸事情から番屋町近郊の道の駅に寄り道していた。
「マスター、ちょっと……その………トイレに。」
「オッケー、じゃあ休憩しているからさっさと行ってこい。
なんか変なのが居たら一般人の振りして適当に助けを求めろ。」
まあ大した用事ではない、車で待っていればすぐに帰ってくるだろう。
しかし秋の風景があまりにも綺麗だったので自分も車から降りて煙草を吸うことにした。
「プハァー………。」
煙草を吸いながら辺りを見回しているとすこし珍しい車を発見した。
デロリアン、DMCー12
デビルメイクライでもデトロイトメタルシティでもないぞ。
有名な映画“バックトゥザフーチャー”で使われてから人気に火がついた車だ。
どうでも良いが火と人って似ているよね。
この国でこんな妙な車に乗っている奴って一体どんな奴なんだろう……?
気になってしまったので近くによって細部を確認させてもらうことにした。
「ここが開くのか……、ガルウィングドアねえ。
塗装も凝っているなあ、ただ金色って趣味が頂けねえけど……最終生産モデルか?
偶然とはいえそんなモデルが有って良いのかよ……。」
「DMC-12なら無塗装モデルも家にありますが?」
背後から急に声をかけられた。
後ろに立っていたのは男。
男と言うにはまだ若い、20才にもなっていないような雰囲気を醸し出していた。
「おっと、すまないね。日本でも珍しいからついつい見入っちゃってたよ……!」
そして
男は黒いスーツを着ていた。
新手の都市伝説契約者か?俺は怪しまれないように男と雑談を続ける。
どうやら気取られなかったらしく奴は車についての蘊蓄を一くさり述べた後に行ってしまった。
車に戻るとメルが不機嫌そうに待っていた。
「何やってたんですか、ずいぶん遅いですね。」
「悪い悪い、ちょっと煙草吸ってた。」
「やめた方が良いですよ、健康に悪い。」
「健康が煙草に悪いのさ。」
「ふ〜ん……、それはそうとしてマスターの靴紐切れてますよ。煙草吸うにしたって何処行ってきたんですか?」
「いや、駐車場で珍しい車見つけてさ。その持ち主と雑談していた。
黒いスーツだったから組織の人間かと思ったんだけど違ったみたいで助かった。」
「亜阿相界。」
「つれない返事だね、まあ良い、行くぞ。」
「ああ、そういえばこんなの勝ったんですよ。」
渡されたのは鉄でできたお守り。
「この辺りの伝統工芸らしいです。鋳物が人気らしいんで。」
「ふふ〜ん……、成る程ねえ。悪くないデザインだ。」
車は再び走り始めた。
走り始めてからすぐに異変は生じた。
笛吹支援
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 18:05:23.48 ID:7E5hxekj0
ハーメルンの代理支援!
「おい、メル。ブレーキが上手くきかない。」
「はあ?故障ですか!」
「故障だとは思うんだけど……。」
パー!
ドカァン!
「うわっ、マスター!目の前で事故です!」
「嘘だろ……?」
前で二台の車が衝突していた。
丁度、俺たちの車の進路をふさぐかの如く並んでいる。
「シートベルトはしてるな?捕まってろ!」
「へ?」
小刻みにブレーキを踏みながらハンドルをそれに合わせて回す。
車が途切れた一瞬の間に対向車線に入り込んでまた元の車線に戻ってくる。
後ろではガン!と音が車のぶつかる音がした。
「危ない……、なんでいきなりあんなことが?」
「事故なんて大抵……。」
大抵そんなものだと、言おうとした瞬間だった。
一陣の風。
メキィ、と巨木の折れる音が響く。
「偶然が一日起きて良いのは三回までだよな?」
目の前にあった木が道を分断するように倒れてくる。
アクセルを踏み込んで木が倒れきる前に無理矢理突破した。
メリメリと後部のトランクが壊れた音。
「マスター!車が!!」
「知ってる!高かったのによおおおおおおお!!」
しえ
パァン
―――――ガクン
「タイヤがパンクしたァァァァアァァアア!」
「それも知ってる!!」
今度はタイヤのパンクだ。
洒落になっていないぞ……。
運が悪すぎる。
ふと、前を見ると見覚えのある金色の車。
「あれは……。」
「どうしたんですか?」
「さっきの車の持ち主だよ。」
「……まさか?」
「ああ、新手の契約者だな。」
「自律機動タイプの都市伝説ですかね?こんな遠距離から攻撃を開始できるなんて……。」
「車を運転しながら攻撃もできなくは……うっっわ!」
牧場から逃げ出した牛が飛び出してきた。
あんなのにぶつかったらこっちが危ない。
当然上手に回避。
「ねぇ、マスター。」
「ああ、そうだな。」
ハプニングがどんどんしょぼくなっている。
相手に近づけば近づくほどハプニングが地味になるのか?
カツン!
あ、鴉の落としたクルミを割ってしまったらしい。
「アザッスwwwwwwwwwwwサーセンwwwwwwwwwwwwwww」
鴉の声が聞こえた気がした。
しえーん
しかし奴の都市伝説は何なんだ?
出会って
車を見て
靴紐が切れて
ハプニングに襲われて……
「そうか!」
靴を見てみる。
ひもは切れっぱなし。
ひもだけを抜き取って素早く捨てた。
効果はすぐに現れた。
「ブレーキが直った!」
「え、嘘?」
「だけどこれで解ったぞ……。」
「都市伝説の名前ですか?」
「ああ、“死亡フラグ”じゃねえかな。」
「そんなのまで都市伝説になるの!?」
「しらねえよ!」
次の瞬間、黒いネコが目の前を通り過ぎようと……。
「ちょ、マスター!黒猫!!」
「前さえ通られなきゃ良いんだろ?」
今度はハンドルを回してぐるぐると車も回転させる。
「スピンしてるぅう〜!!」
「スピンさせたんだよ。」
これなら黒猫に目の前は通られない。
そうこうしていると金色のデロリアンが目の前に近づいてきた。
「マスター!あれですね!」
「そうだ、捕まってろよ?一気に行く。近づけば近づくほど効果が弱まるんならば手段は一つだけだ。」
俺たちの乗ったポルシェは加速して加速して加速して……
ガァン!
「純金モデルの癖に固い!?」
目の前の金色のデロリアンにぶつかった。
デロリアンはめちゃくちゃにひしゃげて路肩まで吹き飛ばされる。
しかしこちらにも純金ではなくステンレスにぶつかった以上相当なダメージは有ったわけで……。
「っつぅ〜!」
車の中から這い出て来た。
太陽が眩しい。
支援
しえん
服が大分汚れてしまったのでパフパフ、と汚れを払っていると指先に痛みを感じる。
割と大きなガラスの破片が胸に刺さっていたのだ。
「……何故生きている?」
痛みはない。
胸ポケットの中を探ると先程メルから貰ったお守りが入っていた。
「生存フラグかい……?」
都市伝説だから大丈夫だとは思うが見に行ってやるか……。
車の反対側に行くとコクピット、もとい助手席は血塗れだった。
いやいやいやいや、●クロスだったら死亡だよ?これ完全死亡だよ?
覚悟してガチャリとドアを開けると中でメルは血塗れになっていた。
「っメル!!」
すぐに車から彼女を降ろすと脈を取る。
脈はある。
「マスター……、もうゴールしても」
「DAMEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!」
「さて、冗談は置いといて、私は大丈夫です。致命傷は避けてますし生存フラグ立ててますし。」
「生存フラグ?ああ、指輪か。」
「とりあえずあれが生きているか確認しません?」
メルが指さす先には森の中に突っ込んでいる金ぴかの車が転がっていた。
「そうしたい所なんだがな……。」
遠くからサイレンの音が聞こえてくる。
ここにやってくるのも時間の問題だろう。
「行くぞ、どうせあの状況じゃ生きてなんかいないさ。」
番屋町までは近い。
待ち合わせの駅ももうすぐだろう。
後部座席の下に摘んでいた着替えでメルの服を着替えさせた後で俺とメルは徒歩で町の中心部まで向かったのだった。
【上田明也の綺想曲4〜断片兆候(バラバラフラグメンツ)〜 fin】
以上代理投下でした。乙!
カラスの声に盛大に吹いたwww
そして番屋町が自宅から案外遠くない気がする件
代理乙!
俺の家からも近いかもしれん気がするwww
代理おつー!
からすwwwww
俺、明日学校行ったらあの娘に告白するんだ……
>>53 早速立てんなwwww
「もうゴールしても・・」って元ネタ何なんだろうとふと気になった
406 名前:ハーメルンの笛吹き[] 投稿日:2009/11/05(木) 18:58:58
本スレ
>>54 「もうゴール(ry」は
AIRの神尾美鈴というキャラでだな……
上田にもAIRで涙を流す優しい心があるんです。
>>54 AIRなのか! 名前は知ってるんだけど見た事ないんだよな
>>55避難所
>>406 ギャルゲやってる上田の横で、顔真っ赤にしながらも指の隙間から画面見てるメルが浮かんだ俺ガイル
407 名前:ハーメルンの笛吹き[] 投稿日:2009/11/05(木) 19:30:58
本スレ
>>57 ちょ……
素敵すぎるなそのシチュ……
あ
っと
驚
62 :
Y:2009/11/05(木) 21:27:35.67 ID:fZxEgrnWO
同僚「……もっとその子供みたいな言動を……調子に乗るのも……」
黒服Y「……ぁ〜……」
同僚「……大体、貴方は……ですから……」
黒服Y「……ぅ〜……」
上司「真面目な姉に怒られるやんちゃな妹の図、だな」
ひ
ま
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 22:37:11.91 ID:4zuKkOVN0
ら
ー
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/05(木) 23:13:06.32 ID:/lpTBCLvO
に
ゃ
!