1 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:
私はとある油送船に乗船する四級海技士航海士だ
これから語るにあたりVIPPERというキャラクタを捨て、島国日本の誇り高き船乗りとして防災救急及び海難に関する情報の周知として語る
完全に仕事しているの時の姿勢で語るので、多少の堅い言い回し、更に投下速度にはご容赦願いたい
そして何よりも被災者の皆様のご清栄と、惜しくも亡くなってしまった方々のご冥福を心より祈る
2 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/11(火) 23:54:55.30 ID:/vLXTye50
はよ
素敵ね!
4 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/11(火) 23:55:43.32 ID:EBo41uuR0
期待
5 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/11(火) 23:56:00.87 ID:h5nAyGfT0
ほ
6 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/11(火) 23:56:50.10 ID:wYNORZBm0
グォンンンン……。
船が啼いた。そして揺れる。サロンで休憩する乗組員の表情が変わり機関部人員が立ち上がる。
航海部の私でも解る明らかな異音。しかも今まで聴いたことの無いような重いうねりのような音。
一等機関士(以下、一機)「なんだ今の?停発の音じゃねえぞ?」
二等機関士(以下、二機)「なんでしょうね?」
私「船位は特段変わってないな(座礁の心配はない)」
一機「底から来たな機関室見に行くぞ」
二機「はい」
私「私も一応上に行って船長と話してくる」
※停発: 非常用及び停泊用発電機。平時は錨泊(アンカーによって船が動かないようにしてる状態)で使用するもの。
※船位: 船の位置、場所。現代ではGPSにより緯度経度によって示されることが多くなってきている。
※底から来たな: 船底。船底には通常主機関(メインエンジン)や発電機などの様々な機器のある機関室が配置されている。
※上に行って: 上とは船橋(ブリッジ)のこと。船長や航海士などが操舵輪によって操舵したり危険がないか見張り(ワッチ)をする場所。
7 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/11(火) 23:59:54.37 ID:wYNORZBm0
私「船長、今の聴きました?」
間抜けた声でワッチをしている船長へ質問しながら船橋へ繋がる階段を上がった。
船長「黙ってろタカシ!」
ピシャリと一刀両断される。船長は不機嫌な日でも流石にここまで横暴にするような人ではない。
何をしているのかと見るとVHF無線機へ耳を傾け、感度調整しながら入ってくるノイズとのバランスを取っていた。
それと並行してソワソワと海面の様子を見ていた。
私「えっもしかして擦りました?」
船長「そうじゃねえ黙ってろよお前!」
私「はいスイマセン!!!」
明らかにいつもとは違う鬼気迫る様子の船長に大変なことが起きてるんじゃないかと驚いた。
擦りました?: 擦るとは船底が岩礁や海底に当ってしまうこと。座礁とまでは行かないが結構危険な状態。挫傷した場合は乗り上げという言い回しになる。
8 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:03:46.43 ID:mQsM4inu0
船長「おい流量計どうなってる?」
私「あっえっと・・・東へ・・・5ノットです!」
船長「東へ5ノット!?スタンバイだ!津波くるぞ!!!!!」
津波という単語を頭の中で探そうとするも見つからない。頭が真っ白になった。
船長「馬鹿野郎!突っ立ってねえで配置つけよコノヤロー!!!!」
私「はっはい!アンカー揚げて来ます!」
情けないことに船長の一喝によって我に返る。学生時代に習った津波に関する知識を船首へ駆け足で向かいながら必死に思い出そうとしていた。
流量計: 海流計とも。海流の方角や速度のわかる計測装置。
ノット: ノット(K'not)とは海運で使われる速度単位。1K'not=1852m
東へ5ノット: 津波の場合は先ず海面が下がるため沖の方向へ海流が動く。その後逆方向へ海流が転換し津波となる。
9 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:06:08.03 ID:VenBZOYW0
でかい船なん?
10 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:10:49.85 ID:mQsM4inu0
船長「津波だぁ!総員スタンバイ!ィィィ!!!」
船長が船内放送でハウリングも構わず怒声をあげる。
船長「機関長ぉ!暖機は要らん!始動後直ぐ緊急全速で行くぞ!!!今すぐ始動しろ早くしろぉぉぉ!!!!!」
船長「タカシ!トシアキ!ぶっ壊しても良いから全速で揚錨だ!全格納しなくて良い!水面から揚げたら戻って来い!!!!」
船長からの指示に手を振って応じる。ヘルメットも救命胴衣も軍手も付けるのを忘れていた。今すぐにでもアンカーを揚げる
私「トシアキ!遠隔じゃねえ機側でぶん回せ!エア抜きしてる暇なんかねえだろ!」
二等航海士(以下、二航)「はい!」
スタンバイ: 直ぐに動ける準備をすること。
暖機: 大型船のエンジンは少なくとも30分以上の暖機をしてから本格的に動かすものだが緊急時なので手順を省略した。省略する場合故障の確率が高まる。
緊急全速: 通常は使わないいわゆる全速前進以上のパワーでエンジンを動かすこと。燃費と故障率が相当悪いので平時は使っちゃいけない。
錨: いかり。つまりアンカーのこと。
全格納しなくて良い: アンカーは通常ぶら下がって動かないように固定するためしっかりと格納するがそんな暇はない。
機側でぶん回せ: 大型船のほとんどの機器は作業しやすいように機器の近くの主スイッチの他にリモートコントローラが付いている。
エア抜き: ただしリモートコントローラのモノによっては油圧で動いているため空気が溜まってしっかりと動作しないことがある。
11 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:12:11.46 ID:mQsM4inu0
>>9 そこそこ
トン数を言うと当時のデータと照らし合わせればバレるから言えんすまんな
12 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:19:20.86 ID:tosCzQdA0
ほう…
13 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:24:24.76 ID:qiuzLc+90
続けろください
注釈詳しすぎww
14 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:25:39.40 ID:mQsM4inu0
私「1シャックル!」
船橋に居る船長へも伝わるように指を一本伸ばして船長へ見せつける。
船長「1シャックルゥゥゥ!!!」
機関室で始動準備している機関士たちにも判るように船長が船内放送で伝える。
私「3シャックル!」
船長「3シャックルゥゥゥ!!!」
アンカーの巻きあげ速度が遅い。こんなにも遅かったか。はやる気持ちに反してアンカーが全然巻きあげられない。
私「7シャックル!」
船長「7シャックルゥゥゥ!!!」
自分で自分自身が焦っていることがすごくわかる。早く揚がれ。
シャックル: アンカーチェーン(錨鎖)の長さの単位。
15 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:28:43.64 ID:mQsM4inu0
グォングォン!!!グォオオオォォオォォォオォォ!!!!!!!!
エンジンが始動した。後はアンカーだけだ!
私「離れましたァァァ!!!」
両腕を大きく使って海底からアンカーが離れたことを伝える。
船長「出すぞ!緊急全速だ揺れるぞ!!!!」
アンカーが海底から離れたとわかると船内放送で走り始めることを伝えてきた。
私「トシアキ!まだ巻け!海面まで揚げんぞ!」
二航「はい!!!」
J( 'ー`)し<タカシ……
17 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:34:27.93 ID:6QjQZJMM0
C
わりかし面白いから困る
19 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:37:39.09 ID:mQsM4inu0
俺「船長アンカー揚げました!」
船長「地震だ。海保がさっき無線で言ってた。船でわかるんじゃ相当でかい」
俺「どれくらいですか?」
船長「わからんハンドル代われ」
俺「はい!!!」
操舵輪を受け持つと船長が深呼吸をして居た。経験豊富な船長でさえ緊張している。
エンジンがものすごい音でうなり船も振動で揺れている。常に騒音のある大型船であっても今まで経験したこともないほど大きな音だ。
船長「良いか?しっかり頭に叩きこめ。津波はまず波が引く。波が引いている東へ船首を立てろ」
船長「横っ腹に受けたら沈するぞ流量計の確認を忘れんな」
船長「トシアキ!おめえは双眼鏡で障害物ないか見てろ見逃すんじゃねえぞ!」
二航「はい!!!」
無線: VHF無線機のこと。大型船にはすべて備え付けてある。これによって陸上や他の船舶と連絡を取り合う。
沈する: 沈没するということ
20 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:44:09.82 ID:mQsM4inu0
船長「流量計見ろ。海流が落ちてきた・・・そろそろ来るぞ」
船長「総員津波が来るぞ。衝撃に備えろ津波は避けられん突っ込む」
船長が怖いくらいに淡々と状況とこれからすることを船内放送で説明する。
船長「津波には船首を直角に立てて突っ込むのがやり方だ。津波越えだ!!!」
船長「トシアキ!どうだなんか見えたか?」
二航「わっ・・・わかりません・・・なんにも見えないっす・・・」
船長「ちゃんと見とけよ!男だろが腹決めろ!」
二航「はい・・・」
津波は避けられん: 津波は点ではなく面でくるので左右に逃げようとしても回避不可能
21 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:52:17.01 ID:mQsM4inu0
船長「タカシ冷静か?」
私「正直、膝震えてます」
船長「膝震えてんのわかってんならマシな方だ」
船長「よく聴け。さっき言ったとおり今から津波へ突っ込んで全速で津波を登る」
私「はい!」
船長「津波のてっぺんに行ったら今度は全速で緊急後進にぶち込む」
私「はい!」
船長「津波を下ってる間も前進してたら海面へ刺さって沈だ。わかるな?てっぺん来たら速度落とせ」
私「はい!」
てっぺん来たら速度落とせ: つまり下り坂でアクセル全開にしちゃいけないってこと。船にはブレーキついてないので後進させるようにプロペラを回す
パーフェクトストーム思い出す
23 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:02:59.54 ID:mQsM4inu0
船長「来たぞおお!!!総員衝撃体制ぇぇぇ!!!!!!」
ゴゥ・・・・ッッッバァァァアアァァァアアアンンンギギギィィィイィィィィ!!!
一瞬津波へ船首が刺さり直ぐに海面へ飛び出す、船体がきしみを揚げ物凄く振動する。
空だ。荒波を越える時に空が目の前に来ることは何度かあったがこんな長時間空を見ることなんて今まで無かった。
長い。本当に長い間空が見える。異常すぎる状態に心がおかしくなりそうだ。
船はきしみ音をあげながらどんどん津波を登る。空へ向かってどんどん突き進んだ。
浮遊。浮遊感が乗組員全体を襲った。そして目の前には水平線しか見え無かった。直ぐそばにあるはずの海面が見えなかった。
空: 船首が波によって持ち上げられると空が見えるが通常は一瞬だけであり何秒間も空を見続けることはない。この状態は本当に気持ちが悪い。
しえん
25 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:16:24.25 ID:mQsM4inu0
船長「緊急後進!総員揺れんぞおおぉぉぉぉ!!!!!」
津波の頂上まで来ると船が一瞬本当に浮き、まさに谷へ飛び出す状態になった。
言葉では言い表せないほどエンジンがうなり、船体がきしみ、空間が歪んでいるように見えた。
なにせ目の前には海面しかない。海面へ船が突っ込んでいく光景に戦慄する。
私は感覚で可能な限り船首が津波と直角になるように操舵することだけしか頭になかった。
ゴッッッバァァァァァアアアアアアアアアアア!!!!!!!
水しぶきが船橋まで届くほど勢い良く船は海面へ突っ込んだ。船の半分が見えなくなっていた。
轟音と目の前の光景にただただ唖然とするしか無かった。
26 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:24:01.62 ID:qlsaQRIL0
支援
27 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:27:26.15 ID:mQsM4inu0
衝撃を過ぎると船が木の葉のようにふわふわと揺れる。目の前に異常は何も無かった。ただただ穏やかな海が広がっていた。
状況の変化に全く頭がついてこなかった。「何なんだこれは・・・」としか考えられなかった。
船長「ふうううぅぅぅぅぅ!!!越えた・・・越えたぁ・・・」
大きく息を吐きドカッと思いっきり椅子へ船長は身を預けた。
私「せんちょお・・・」
船長「大丈夫だ・・・津波越えた・・・もう大丈夫だ・・・」
二航「越えたぁ・・・」
船橋へ安堵が広がった。何分間かわからないが誰も何も喋らなかった。
28 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:35:26.64 ID:qlsaQRIL0
支援
29 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:39:11.05 ID:mQsM4inu0
「海保ォォォォ!!!応答しろやァァァ!!!」
静寂を破ったのはVHF無線だった。」
他船がしきりに海上保安庁を呼ぶが海上保安庁からの応答がまるでない。
まだ本船の外では混乱が続いていた。
船長「タカシトシアキ、船体に損傷が無いか調べてこい」
船長「総員、異常が無いか確認してくれ」
船長「エンジンはこのまま停めずに起動状態。考えたくもねえが余震による第2波第3波が考えられる」
船長「計器から目を放すな直ぐにでもまた動けるようにしておけ」
他船「海保津波だぞどうなってやがる!」
船長「タカシ俺は会社と海保、他船へ連絡してみる。想像以上にでかい津波だったから陸上(おか)もやべぇぞ」
私「はい。トシアキまずはダメージでかそうな船首から順に船尾まで見に行くぞ。タンクどうします?」
船長「タンクは津波の心配が完全になくなってからだ。いつでも入れるようにタンクに空気入れとけ」
私「承知しました」
タンクどうします?: つまりタンクに穴が開いてたら沈没しちゃいますけどどうするか?ってこと。しかしタンクを確認するには時間がかかるので津波に対応できないと船長は判断した。
タンクに空気入れとけ: 油送船(オイルタンカー)のタンクには石油が詰まっているので酸素濃度が非常に低い。そのまま入ると酸欠で窒息死する危険性があるので入る前には空気を入れる。
なんだろうすごくタメになる気がする
31 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:46:24.81 ID:mQsM4inu0
二航「タカシさん・・・これからどうなるんですか?」
私「さあな俺は今まで経験のないことだから船長の指示に従うしか無い」
二航「うぅ・・・」
私「まあ流すしかないだろアンカー打ってたら今度は間に合わんかも知れん」
二航「えぇ!?また来るんすかぁ!!!!!」
私「余震がデカけりゃ来るだろ気ぃ抜くなよ」
私「今は損傷無いかに集中しろボケ!船長の心労を少しでも減らすぞ」
二航「はい・・・」
二等航海士をけしかけたものの私の頭の中には陸上(おか)に残してきた家族への心配が正直に言えば広がっていて損傷確認に気が回っていなかった。
この時はまだ地震の規模が全くわからず震源地さえ知らなかったので何処の地域が被災したかなんて把握できていなかったのだ。
流す:船をアンカーで停泊せずに敢えて漂流状態にしておくこと。
32 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:49:31.39 ID:qlsaQRIL0
支援
33 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:53:09.58 ID:mQsM4inu0
船体の損傷は不幸中の幸いか何も無かった。周囲を見渡せばいつもどおりの海原でそれが逆に恐ろしく感じた。
私「船長戻りました。ハンドレールの歪みなどは多少見られましたが緊迫するような損傷は無いようです」
船長「そうかそれは良かった。これで穴開いてたら洒落にならん」
私「えぇ・・・ほんとに・・・」
船長「会社への電話が繋がらん。海保も応答なし。他船に連絡はできたが結局連携するって約束できたくらいだな何もわからん」
私「これからどうします?」
船長「船は流しておく。海図上には付近に岩礁はないようだし大丈夫だろ。海保と連絡取れないのは困ったな情報が何もないと動けん」
私「もしかして海保自体が津波くらったんですかね?」
船長「最悪・・・そうだろうな・・・まあ関西の時は飛行機から無線飛ばしたりしたらしいしずっと連絡取れないってことは無いと思うぞ」
海保自体が津波くらったんですかね?: 実は3.11では本当に海保の通信機器が津波によって損傷しており連絡が取れない状況だった。そのためか船舶電話回線が混雑してパンクしていた。ちなみに船舶電話は人工衛星経由である。
34 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:57:15.80 ID:qlsaQRIL0
支援
35 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:02:49.39 ID:qlsaQRIL0
し
36 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:05:13.52 ID:mQsM4inu0
私「とりあえずトシアキ休ませて良いですかね?コイツいっぱいいっぱいですわ」
二航「」
船長「おうトシアキ!休める間に休んどけ何もなければ1時間後また上がってこい交代で休む呼んだら直ぐ来いよ」
二航「はいありがとうございます・・・」
船長「俺は機関部の様子を見てくる燃料のこともあるし機関長と話す」
私「じゃあ私はワッチしながら引き続き会社と海保に連絡取ってみますね」
船長「頼む。どっちかへ連絡取れたら船内放送で読んでくれ」
私「承知しました」
37 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:09:03.55 ID:qlsaQRIL0
支援
38 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:11:43.03 ID:mQsM4inu0
他船「周囲の船舶へ。周囲の船舶へ。周囲の船舶へ。こちらは○○丸。こちらは○○丸こちらは○○丸。どうやら現在海保への連絡が途絶えている模様。どうやら現在海保への連絡が途絶えている模様。周囲の船舶いらっしゃいましたら応答願います」
私「○○丸。こちらは△△丸。海保へ連絡取れない了解した。本船でも同じく海保へ連絡が取れない。船舶電話も不通である。船体の損傷はなし。貴船はいかがか?どうぞ」
他船「△△丸。こちらは○○丸。船舶電話不通こちらも同じ。貴船損傷なし了解。本船も目立った損傷はない。どうぞ」
私「○○丸。こちらは△△丸。損傷はなし了解した。遅れましたが私は△△丸一等航海士。貴船と今後共連携を取りたいがいかがか?どうぞ」
他船「△△丸。こちらは○○丸。貴船の連携したいという提案非常に助かります。こちらの現在の船位はE******N******付近。どうぞ」
私「○○丸。こちらは△△丸。貴船の船位E******N******付近了解。本船の船位はE******N******付近。どうぞ」
他船「△△丸。こちらは○○丸。貴船の船位E******N******付近了解。それでは一旦終了します。これからよろしくおねがいします。さよなら。
私「よろしくおねがいします。さよなら」
上記のようなことを繰り返し、週委に居る船舶と連携を取り合う準備を進められたが、やはり海保と連絡は取れなかった。
この連携は食料や飲料水、医薬品などを融通しあうために緊急時には非常に重要なことだった。
39 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:24:47.98 ID:mQsM4inu0
津波を越えてから1日がたち交代で休みつつ見張りについていたが津波の第2波第3波の影響は無いように感じた。
海保とは飛行機や緊急で通信設備を設けたのか連絡が徐々に(常にではない)取れるようになっていった。
そして海面へ1つの変化が現れた
いわゆる震災瓦礫である。震災瓦礫が沖の方まで流れてくるようになり海面が徐々に細かな木片や金属、生活物資であろうもので汚れていった。
私「ひどいですね・・・」
船長「この量・・・陸上(おか)はどうなってんだ・・・」
私「さっき大きな屋根が流れたましたよ?」
二航「えっ・・・あ・・・船長・・・あの・・・」
船長「どうした?」
二航「2時の方向、200m先くらいに浮いてるのって・・・いや・・・その・・・」
私「歯切れ悪いな双眼鏡貸せ見せてみろ」
双眼鏡を覗いた先に見えたものは被災された方だった。
予想もしていなかったものだった。冷静に考えれば当たり前の話である。
これだけの量の漂流物、陸上(おか)が津波に飲まれたのは明白、それはつまり巻き込まれた方々も居たということなのだ。
私はまだ現実としてしっかり今の状況を認識していなかったとショックを受けた。
40 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:29:17.99 ID:ITlWxWc50
良スレ支援
41 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:33:22.44 ID:mQsM4inu0
船長に直ぐそのことを伝えてる。
船長「生存を確認しろ。もし残念な結果の場合はそのまま。お前らがどう思おうが俺は危険な状況下での回収を許可しない」
船長「今後、そういった漂流物を見つけた場合はその発見した座標と漂流物の特徴を航海日誌へ記載。後日しかりべき場所へ報告するものとする」
私「承知しました」
二航「承知しました」
真顔で指示を出す船長は何となく無理をしているなと感じた。
船長には家族が居るどころか孫すら居るおじいちゃんだ。私達の中で一番家族の大切さをわかってる方が敢えて"漂流物"と表現したのは痛々しかった。
私はそういった"漂流物"を発見した場合、可能な限り詳細な特徴を記録するように努めた。
そりゃ流れもするよなあ
43 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:47:51.54 ID:d98ExJErO
いまも猿あるのかわかんないけど猿除け支援
44 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:48:19.98 ID:mQsM4inu0
津波を越えてから2日目会社との連絡が取れるようになった。
横浜へ向けて船を動かし、乗組員は全員特別に休暇へ入ることとなった。
3日目。横浜について直ぐ船長は海保へ向かって当時の状況の説明をしにいった。航海日誌を大事そうに抱えて。
前日の2日目の夜、乗組員全員で簡易的に航海日誌へ手を合わさせて頂いた。
線香などは無いので男臭くて申し訳ないが料理やおかし、酒、タバコなどを添えてご冥福を祈った。
ほんの欠片であっても惜しくも亡くなられた17つの魂を陸上(おか)へ運んだと皆様に感じていただけたのならば船乗り冥利に尽きることこの上ないと私は思う。
以上、私が見た福島沖から見た陸上(おか)でした。
45 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:51:06.31 ID:u23e2nq+0
46 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:51:54.97 ID:ITlWxWc50
47 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:56:23.94 ID:fhVmHqL/i
これはいいスレ
48 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:58:35.22 ID:mQsM4inu0
>>46 私の家族は大丈夫でしたが、会社の中にはご家族や親類を失われた方が居らっしゃいます。
特別に休暇へ入ったので私は直ぐに被災地へボランティアとして入らせて頂きました。
学生の頃、ビル解体のアルバイトをした経験から瓦礫運びなどをさせていただけることになりました。
可能ならば海保や海自の方々と私もボートに乗って1つでも多くの魂を陸上(おか)へ届けたかったですが、許可がおりなかったのが少々残念です(危険が伴う作業なので民間人ができないのは当たり前の話)。
大変申し訳無いですが瓦礫運びを2週間くらいしかできず地元へ帰りました。
その後、私も2ちゃんねるサーバーへ負荷を掛けるのが趣味なものですから、同好の士を手助けできたらなと募金と共にローエンドなマシンですが20台PCを被災地の教育委へ寄付させて頂きました。
49 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:03:20.38 ID:Zmu+6ENy0
乙
あんまり思い出したくないだろうけど
何人見つけた?
50 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:06:12.92 ID:mQsM4inu0
>>49 私は6人だな老若男女って感じだ
もちろん見逃しもあるだろうからそこが心残り
51 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:07:34.57 ID:ITlWxWc50
>>48 そっか 大変だったんだな…
未曽有の事態に冷静に今やれることしっかり出来る
>>1も船長さんも尊敬します
52 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:07:44.42 ID:mQsM4inu0
さてここからは津波に関することをVIPPERに学んでもらおうと思う。
理系VIPPERなら知ってると思うがH20は全物質の中でも結構重い物質である。
それが加速度を持って何らかへ衝突した場合、かなりの圧力を生じさせる。
この圧力はたった水深30〜50cmで成人を押し流すほどの圧力である。
気象庁から津波に関する情報で「津波注意報」と「津波警報」の2種類がある。
レベルとしては津波注意報の方が下であるのだが、この内容は「50cm以下の津波が発生するおそれ」であるのはおまり知られていない。
レベルの低い津波注意報であっても成人を押し流すには十分であり、絶対に津波関連の注意報警報が出てる時は海に近寄ってはならない。
53 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:16:09.91 ID:mQsM4inu0
水の事故で怖いのは何も津波だけではない。
更にこれから夏へ入り海水浴や川原で水浴びして遊ぶVIPPERも多いだろうと思われる。
水で遊べば溺れる事故も多発し、もしかしたらその現場へ出くわす可能性がある。
もし溺れてる人を見つけた場合はすぐに飛び込んで助けてはならない。
溺れてる人間は危機的状況に火事場の馬鹿力をだし非常に助けるのが大変だ。
しかも溺れてる人間は本能的に水面から顔を出そうとして、助けに来た人を沈めて自分が浮かぼうとする。
こうなると助けに来た人が先に体力つ来てしまい両者とも溺れる。
自分の子供を助けようと親まで一緒に溺死してしまう悲しい事故があるが、このためである。
そのため溺れてる人を見つけたらライフセーバーが「居るのなら彼らに頼もう。ライフセーバーはプロだから大丈夫だ。
ライフセーバーが居ない場合は、溺れてる対象が沈むまで待とう。つまりあえて気絶させるのだ。
人間は10分間くらい息が止まってても正しい人工呼吸などをすると息を吹き返すので、気絶して暴れなくなったら助けに行こう。
溺れてる人が苦しそうで可哀相でも、たとえ自分の子供であっても待つのが大切だ。
54 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:19:56.64 ID:CTgPzWDIO
ふむ
55 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:23:46.23 ID:ITlWxWc50
4
56 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:25:42.98 ID:mQsM4inu0
あと災害の際、電子機器はクソほどにも役にたたなくなる場合があると知っておこう。電子機器は電気がなけりゃタダの重りである。
避難用グッズには方位磁針くらい入れておくべきである。もしくは北極星を一発で見つけられるようになれ。船乗りの私は出来る。
更に数学が不得意でも三角関数を使えるようになろう。三角関数は距離や時間を割り出すのに非常に便利な知識である。
57 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:25:44.54 ID:SuflYsyfI
なるほど
俺がキングゲイナー歌ってる時にこんなことになってたのか…
59 :
以下、転載禁止でVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:37:52.86 ID:mQsM4inu0
最後に「勉強が将来の何に役立つんだよ!」って思ってるVIPPER。
知識は文明がぶっ壊れても人々が語り継げば消え失せず再び文明を築けるものだ。
文明とは知識の集合体だ。火の無い所に火を起こすのが文明であり知識だ。
火を起こすには可燃物の発火点を超えれば良い。発火点を超えるにはどうするか?摩擦で運動エネルギーを熱へ変換すれば良い。
危機的状況になればなるほど勉強というのは活きてくる。就活だって学生からすりゃ危機的状況だろ?
そして人類史上常に勝者は知恵者だったということを学ぶのも勉強だと知れ。
説教臭くなったのでこれで終わりにする。それではおやすみなさい。
乙。
おつ