1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
用があってとある海辺の町に行った
曇天のためか人気はなく、往路上見下ろせた砂浜では一人の人間が凧を揚げているだけだった
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:37:47.97 ID:5dG8WKpS0
途中港の定職屋によって食事を取った
中では地元の人間と思われる中年女性が4,5人固まって座り食事を取っていて
自分の顔を見ると少し冷たい目をした
中年女性たちは船の話をしていた
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:40:28.10 ID:5dG8WKpS0
店を出て改めて浜辺に向かった
途中古びた地図板があって、少し有名な灯台があるようなことが書かれていて
少し迷ったのだけれども、結局そこへはよらず
砂浜へと降りていって、30分ほど時間をつぶした
500メートルほど向こうにはまだ凧をあげている人がいた
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:41:26.09 ID:5dG8WKpS0
そうしているうちに急に暗くなった
雨でも降り出すのだろうかと空を見上げるとむしろ雲は掻き消えていた
日も昇っていた
にもかかわらず天全体が暗い水色に沈んでいた
少しおかしい気がしたので自分はもう帰ることにした
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:42:23.20 ID:5dG8WKpS0
砂浜から道路へつながる階段目指して歩いていると
その上り口に誰か立っていた
水色のパジャマに身を包んだ人間で
こちらへ背を向け立っていた
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:42:30.76 ID:XCppRHEZ0
食事は摂るのがいいぞ
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:42:44.39 ID:3Tju302u0
?wwwwwwwwwwwwwwwwwwww
之能被編集博客転載的wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:43:13.66 ID:T2MqpeZ+0
もう続き書かなくていいよ
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:44:15.00 ID:fySZBciVO
小島水色
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:44:37.37 ID:5dG8WKpS0
その人間が階段への入り口をふさいでしまっているため
自分は階段を上がることができなかった
声をかけてどいてもらったり、無理やり割り込もうかとも思ったけれども
パジャマの人間は微動だにせずむこうむきで
その後頭部あたりを眺めているうちに
どうにもそいつと接触したくない気持ちが起こり
自分はあきらめて別な階段を探した
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:46:00.03 ID:5dG8WKpS0
幸いにもそれは先ほどまで凧を揚げていた人のいた近くに見つかった
凧揚げの人間はすでにいなかった
自分はその別な階段を通じて道路に出て、家路の方向を目指したのだけれども
いつまでたっても浜沿いの道が終わらなかった
本来ならすでに幹線道路に出ているはずだった
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:46:04.00 ID:LXhF2Q6P0
こうして今日も地下鉄に乗り
無口な他人と線路に置き去りで
だから孤独孤独切なくて
壊れそうな夜にさえ
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:47:24.12 ID:5dG8WKpS0
それでおそらく、階段をひとつ違えただけで道を外れてしまったのだろうと思い引き返した
目印になるパジャマの人間はいないかと浜を探したけれどその姿はなかった
そうして結局浜沿いの通りを何度か往復したのだけれども
今度は問題の階段が見つからなくなっていた
階段自体がなかった
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:48:02.94 ID:0lPJ7Mj70
アフィ
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:49:08.67 ID:5dG8WKpS0
それでさらに自分はさらにあせって
海岸沿いを右往左往したのだけれどもやはりどうしようもなく
最終的に半ば腹をくくって、もと来た方向へどこまでも歩き続けたところ
どうしたことか先ほどの港に出た
方向としては逆の気がしていたのだけれども、問題の港には間違いなかったし
誰かに道を聞くこともできるだろうと
自分はその内部へ入っていった
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:50:30.21 ID:Ln+c6GO50
なん・・・だと・・・
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:50:34.60 ID:3Tju302u0
アフィくっせえ
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:50:36.71 ID:5dG8WKpS0
港に人の姿は見当たらなかった
空はなおなお暗く、冷たい風が吹いていた
自分は先ほどの食堂に入ってみた
幸いそこは開いていた
中には誰もいなかった
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:52:21.74 ID:5dG8WKpS0
自分は食堂の中でしばらくじっとしていた
なんどかレジの奥をのぞいて
それでも人が見当たらないのを確認しては
客用の机に戻り
そのまま意味もなく5分ほど時間をつぶし
そして何の気なくレジの方向を振り返ると
そこに人が立っていた
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:54:23.73 ID:5dG8WKpS0
人は全身水色の布に身を包んでいた
イスラム教国の女性がするように
全身をすっぽり水色の布で覆っていた
顔の部分だけがなぜか茶色だった
自分があっけにとられていると、その人は言い訳するかのように
「船が着たから」
「異国の船が着いたから」
と言った
なぜ船が着たらそういう格好をするのかはわからなかった
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:54:31.89 ID:3Tju302u0
それ俺だわ
之で終了な
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:56:40.78 ID:5dG8WKpS0
その声は中年の女性のもので、わずかに聞き覚えがあり
一度顔をあわせた食堂の店主のものに似ていた
自分が道を聞くと、布の人はメモ用紙に図面を書いて説明してくれた
その後布の人は
「灯台にいったか?」
としつこく聞いてきたので自分は行っていないと答えて店を出た
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:57:44.46 ID:5dG8WKpS0
そうして店主の言うとおりに歩くと実際帰宅することができた
途中人とは一切会わず空は暗いままだった
家に帰り着く手前で
自分は自分の部屋の窓が開いていることに気づいた
戸締りは厳重にしていったので
これは誰かが中に侵入したのに違いなかった
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:58:53.54 ID:5dG8WKpS0
窓が開いていて
カーテンが風にたなびいていた
カーテンは水色だった
自分はそんな愚かな色のカーテンを購入したはずはないので
誰かが取り替えたに違いなかった
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:00:22.85 ID:5dG8WKpS0
自分は頭に血が上って家に走った
途中で開いた窓から部屋の内部が見えた
中には誰か見知らぬ人間がいた
見知らぬ人間は赤茶けた帽子をかぶっていた
人間は誰かと談笑していた
その人間は本当におかしそうに笑っていた
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:01:57.91 ID:5dG8WKpS0
自分は走っていってドアを開け
家の中に乗り込んだ
その場で取り押さえて警察に突き出してやろうと思った
部屋の中には一人の人間が立っていた
人間は水色のパジャマを着ていた
上も下も水色だった
赤茶帽の人間とはまた別だった
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:01:59.85 ID:TF3Az4/I0
きのう姉が子供に水色って名前つけたスレあったよな
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:03:34.42 ID:5dG8WKpS0
パジャマの人間は自分に対して背中を向けてたっていた
ちょうど窓に正対していた
窓にはやはり水色のカーテンがかけられており
その先に見える空間は水色だった
人間には自分が戻ってきたことが分かっているはずなのだけれども
振り返りもせず直立しており
反応する気配がなかった
こんなとこにいたのかよ
さっさと作業に戻れや
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:05:12.15 ID:5dG8WKpS0
自分はあいつかなと思った
昔浜で出会ったあいつかなと思った
自分は浜辺を歩いていた
道筋のむこうに一人の人間がポツリと立っていた
その人間は何をするでもなくただポツリとたっていた
その人間はたしかに水色のパジャマを着ていた
その人間は、自分が近づいていっても微動だにせず
振り返りもしなかった
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:07:37.24 ID:5dG8WKpS0
さらによく見ると
その前にも誰か人がいた
人はひざまづいており、茶色い服をきていてを着ていて目立ちにくかった
別な人間はパジャマの人間に背を向けて座りかすかに震えていた
水色の人間はそれをじっと見下ろしていた
そのさらに奥に見える海には一隻の船が浮かんでいた
船からは使いのものと思われるボートが
パジャマ人間たちめがけてまっすぐに進んできていた
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:09:18.13 ID:5dG8WKpS0
気持ち悪かったのだけれども
そいつらがいるからといって引き返すわけにもいかないので
自分はポツリと立っているパジャマたちのいる方向へ歩いていった
パジャマはびくともしなかった
自分はなるべく向こうを意識しているそぶりを見せないようにして
無言でその脇を通り抜けた
通り際、自分はそのパジャマの顔を一瞬だけ確認した
パジャマに顔はなかった
その後自分がどうしたのかは一切覚えていない
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:10:16.66 ID:5dG8WKpS0
そういうことがあったので
今部屋の中に立っている人間は
あれはあいつなのかなと自分は思った
もしかしたらそうなのかもしれないし、違うかもしれなかった
自分は人間の背後で観察を続けた
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:12:22.32 ID:5dG8WKpS0
「A〜」
と人間は小声を漏らした
人間の体が振るえ、ぐちゃぐちゃ音を立て始めた
水色シャツの袖口から
なにか水色の液体が零れ落ちてきた
それは粘性が強く、油のようにも見えた
液体は人間の体のあらゆるところから零れ落ち
人間は瞬く間に粘液まみれになっていった
同時に人間の身体の体積は明らかに減少し
背丈が見る見る縮んでいった
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:14:42.19 ID:5dG8WKpS0
「だめだった」
人間は初めて言葉を発した
「無いから」
「ほんとうにもう無いから」
消滅しかかりながら人間は何かを探していた
「やり方間違ったかな?」
「こうしたらどうかな?」
人間は独り言を続けながらもどんどん死んでいった
「あ、終わった」
人間は前のめりになって窓に倒れこんだ
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:15:58.21 ID:5dG8WKpS0
「いいや」
「もういいや」
人間はぶるぶる痙攣を始めた
体が壊れるいやな音がした
あ、これは死ぬなと思った
人が死ぬ瞬間を本当にこの目で見てしまうのだなと怖くなった
それはとてもいやなことだった
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:16:49.05 ID:hA3+AqbD0
なにこのスレ
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:17:19.76 ID:5dG8WKpS0
水色の人間の向こう側に開かれた外の空は水色だった
自分は止めなくてはならないのだろうと思った
あの時と同じように水色パジャマの脇をすり抜けていかなくてなからないと感じた
水色の人間は半分崩壊していた
自分は顔を見た
水色の人間に顔は無かった
なのでもう駄目だった
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:18:33.77 ID:5dG8WKpS0
自分は二体の像の前に立っていた
像は高さが15メートルほどもあり
水色の空の下
水色の地上に立っていた
地面には水色のパウダーのようなものが分厚く堆積しており
それが地表を水色に見せているらしかった
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:19:46.82 ID:5dG8WKpS0
像のうち一体は赤茶けており
体中に銃で撃たれたような穴や
無数のひび割れがあって
胴体部分には細長いヘビのような構造体が巻きついていた
さらに、その頭部は水色の布で覆われていた
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:21:06.86 ID:5dG8WKpS0
もう一体の像は水色で
顔は顕だった
ただ彫刻が極めて薄く、そこに顔があるということが分かる程度で
どのような顔つきをしているのかまでは定かではなかった
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:22:30.04 ID:5dG8WKpS0
赤茶けた像の下には同じく赤い物体があった
水色の地面の上でそれはよく目立った
近づいてみるとそれは流木のようだった
それが何でなぜそこにあるのかは不明だった
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:23:55.39 ID:5dG8WKpS0
その像は自分の側方に立っていて
目の前には道路があった
ということはパジャマ人間の視線の延長線上にあったのもやはりその道ということになるので
自分はその道路に沿って進んでいかなくてはならないのだと思った
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:24:20.13 ID:TkKmnN0k0!
エロますか?
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:25:16.61 ID:p91Izq8T0
ボンバーマンかと
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:25:20.10 ID:5dG8WKpS0
しばらく歩いていくと潮の香りがして
左側に海が見えてきた
海は空よりも少し濃い水色だった
その海面上に、一隻の船が浮かんでいた
船は巨大で、全長300メートル近くはあった
その形状から、自分はそれは石油タンカーであろうと思った
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:25:55.46 ID:wG3B4Ib1O
笑点じゃねーのか
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:26:33.11 ID:5dG8WKpS0
船は碇を下ろしているのか微動だにしなかった
固まったように動かなかった
よく見ると海自体動いていなかった
水色の海面はどこまでも一様に水色で
波は一切たっていなかった
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:27:27.50 ID:5dG8WKpS0
そんな海上に、一つだけ移動する何かがあった
よく見るとそれは小型ボートだった
ボートはこちら側の岸に対して直角にまっすぐ向かってきていた
ボートの上には何人かの人間が乗っていた
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:28:47.05 ID:5dG8WKpS0
それは自分がその場所で初めて目にする他者だった
自分はその人間たちに興味を持ったのと
逆に向こうからもこちらのことが見えてしまっているのではという警戒心から
ボートの動きをじっと監視した
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:30:04.33 ID:5dG8WKpS0
ボートのスピードが突然上がった
ビデオ映像を途中から早送りに切り替えたような急変ぶりだった
ボートはあっという間に岸にたどり着き
中からは搭乗員がわらわら降りてきた
搭乗員たちはやはりコマ送りのような迅速さで身を動かすと
そのまま岸壁に取り付きあっという間に登攀して
こちらから見えない陸地の奥へと消えていった
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:31:03.29 ID:5dG8WKpS0
そしてそれとは対照的に
その間自分の体はしびれてひどくゆっくりとしか動かなかった
周囲の空気が重油のように粘性を帯びて感じられ
その中を自分の両手が漂っている様子が観察できた
自分は搭乗員の身のこなしと自分の感覚が高速化しているのか
自分の体の動きがスローにされているのかどちらかであろうと考えた
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:32:12.86 ID:5dG8WKpS0
搭乗員が見えなくなった直後自分は解放された
不可解な気がしたものの自分は再び先を急いだ
その先は搭乗員の消えた方角であったが怯えても仕方がないし
自分は先へ進まなくてはならないのだし
どうせ出くわさないだろうからかまわないと思った
一歩歩いただけで自分は数キロ進んだ
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:33:10.00 ID:5dG8WKpS0
前方50メートルほどの路上に搭乗員たちがいた
ここへきて自分の時間が帳尻を合わされたらしかった
しかし自分はあんな搭乗員たちに出くわしたくなかったわけだし
普通に歩いていればもっと前の段階でその存在を察知して回避することもできたわけだから
こんなやり方は理不尽だと腹が立った
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:34:28.97 ID:5dG8WKpS0
幸いなことに搭乗員たちは自分に気がついていないようだった
搭乗員たちは4,5人いた
4,5人で地面を掘っていた
水色のアスファルトは既に剥がされ、水色の地層がむき出しになってのぞいていた
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:36:32.12 ID:5dG8WKpS0
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:37:21.14 ID:vX9x569c0
1レスにまとめろチンカス
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:37:52.28 ID:5dG8WKpS0
首だけで振り返ると
そこには赤茶の帽子をかぶった人間が腹ばいになっていた
こんなところにまでついてきたのかと思った
赤茶帽の男はしかし自分のことは二の次らしく
じっと搭乗員たちのほうを見ていた
その体は震えていた
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:39:14.74 ID:5dG8WKpS0
自分の肩をつかむ腕も震えていた
搭乗員たちは掘削工事を続けていた
地面のより深い層が露になっていった
そこの土は赤かった
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:39:48.84 ID:5dG8WKpS0
地層の中には水色のパイプのようなものが埋まっていた
搭乗員たちは穴の底にジャッキのようなよくわからない工具を取り付けると
パイプを上へ上へと押し上げ始めた
パイプはするすると持ち上げられ
思っていたよりもかなり長いものであることが明らかになっていった
パイプというよりはパイプラインだった
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:40:49.87 ID:5dG8WKpS0
『あれは石油売りだよ』
赤茶帽の人間は言った
「石油売りとは何ですか?」
自分は聞いた
『石油を売りつけにきているのです』
赤茶帽は意味のない回答をよこした
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:41:59.14 ID:5dG8WKpS0
『あれは怖いよ』
赤茶帽は言った
『油売りは本当に怖いよ』
「怖いの?」
『油売りは本当に何をするかわからないよ』
一人でうんうんとうなづいていた
『油売りはあれは本当に自分のためにしか生きてない連中だから』
『ああいうのがいるから民は搾取され、苦しむことになるのです』
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:43:29.50 ID:5dG8WKpS0
「あれは何をしているのですか?」
自分は聞いた
『パイプラインを壊そうとしているのです』
赤茶帽は答えた
水色のパイプラインはどんどん持ち上がっていった
ついに地表と同じ高さにまで達した
パイプラインは重そうだった
ジャッキのような装置が軋んでいた
搭乗員たちはみなでそれを支えた
その腕や足もがくがくと震えていた
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:45:11.54 ID:5dG8WKpS0
『あ、あれはいけない』
赤茶帽の人間はいった
『ああいうのはいけない』
パイプの表面にシュウシュウと水色の煙が立ち昇り始めた
『外気と接触したことでが反応しているのです』
『反応すると爆発します』
「なぜ爆発させようとしているのですか?」
『パイプラインが爆破されれば石油の価格が高騰するのです』
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:46:19.09 ID:5dG8WKpS0
パイプの表面にひびが入り始めた
今にも破裂しそうだった
自分はこれは本当に爆発するなと思った
茂みの中から何かが出てきた
赤い人間たちだった
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:47:35.93 ID:5dG8WKpS0
赤い人たちはパイプに向かってわらわらと踊りかかった
そのまま一人がパイプのひび割れに覆いかぶさった
続いて次の一人がその上に重なった
他の人もそれに続いた
あっという間に赤い人間じゅうたんが出来上がった
その底でパイプラインは水色の煙と
水色の閃光をあげ続けていた
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:49:17.61 ID:5dG8WKpS0
「なぜあの人たちはあんなことをするのですか?」
自分は聞いた
「あんなところにいると死んでしまう」
『石油が撒き散らされたら困るからです』
「なぜ撒き散らされてはならないのですか?」
『なぜ撒き散らされてはならないかですって?』
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:50:09.65 ID:5dG8WKpS0
赤茶帽は怒りの目でこちらを見た
『水色の石油がまかれてしまっては大地が汚染されるではないですか』
石油は害の多い物質だと聞くので、自分はなるほどと思った
ただなぜ命を懸けてまで大地を守ろうとするのかについてはよく分からなかった
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:51:11.24 ID:5dG8WKpS0
そうしているうちにも
とうとうパイプラインは裂け破れ
何らかの化学反応が起きた結果か
そこから水色の柱が立ち上がった
一番底の人間は死んでしまった
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:51:49.40 ID:5dG8WKpS0
石油売りたちはそれを見物していた
何か理解不能な言語でニヤニヤ笑っていた
『全部で9人いるから』
赤茶帽は言った
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:53:12.28 ID:5dG8WKpS0
『9人いるからわからないよこれは9人もいるんだから』
水色柱は次に二人目を貫いた
二人目もそのまま死んでしまった
自分は人体の変わりに石でも乗っけておいて、蓋にすることはできなかったのだろうかと思ったけれども
ときすでに遅かった
人の覆いは4人目までが破壊されつつあった
またその流れの中で人の覆いは地上5メートル付近に打ち上げられていた
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:54:18.56 ID:5dG8WKpS0
『まだ大丈夫だから』
『9人いたら正直どっち行くか分からないから』
赤茶帽は冷や汗を垂れ流しながら、本当に苦しそうにそう呻いた
赤茶帽は赤い人たちに思い入れがあるようだった
下では石油売りたちがげらげら笑っていた
『笑ってるでしょう?』
赤茶帽は不快げに顔をゆがませそう言った
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:55:24.64 ID:5dG8WKpS0
『ああやって、もう9人目まで死ぬのは確定というようなムードになって笑っているでしょう?』
『そういうのはよくないよねまだ何も確定していないのに。ああやって笑ってたら罰が当たりますよ』
「罰が当たるのですか?」
『あたりますよだいたね、ああやって笑ってるときはそうなりますよ』
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:56:51.48 ID:5dG8WKpS0
水色柱は突然20メートルほど高くなった
その先端で人の覆いがどうなってるかは分からなかったが
少なくとも6人目あたりまでは破壊されているはずだった
もしかしたら既に全員死んでしまっている可能性もあった
『あ』
赤茶帽は信じられないといった顔で呆然と空を見上げた
(コオオオオオオ)
石油売りたちは下品な笑いをあげた
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 17:59:04.99 ID:5dG8WKpS0
自分はこれはもうだめだと思った
赤い集団はみな無意味に死んで石油は撒き散らされるのだと観念した
石油売りたちはなおも笑っていた
石油が飛散することで自分は直接の害は受けないのだけれども、
それでもその態度にはいい気がしなかった
『おかしいおかしい』
赤帽子は爪を噛んでいた
『そういういかにも9人全員貫かれるような予定調和はおかしい』
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:00:33.20 ID:5dG8WKpS0
上空から
「キ」
という声が聞こえた
赤の数人は生きているようだった
水色の光柱はそこで止まった
赤茶帽の目が光った
水色柱は小刻みに振動していた
人の盾が障害となってこれ以上伸びられないようだった
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:02:21.50 ID:5dG8WKpS0
『生きさせてください生きさせてください』
赤茶帽の男は手を合わせ始めてた
『生きさせてください生きさせてください」
「生きさせてください生きさせてください」
「生きさせてください生きさせてください」
「生きさせてください生きさせてください」
「生きさせてください生きさせてください」
「生きさせてください生きさせてください」
赤い集団に助かってほしくて祈っているのか
大地が汚染からのがれてほしくて祈っているのか
そのどちらなのかは分からなかった
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:07:33.69 ID:5dG8WKpS0
水色柱の高さはじりじり下がり始めた
人の盾が確実に効果を与えているようだった
赤茶帽の人間は
「お」
という顔でそれを見た
石油売りたちは相変わらず笑い転げていた
自分はますます不愉快になった
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:09:01.04 ID:5dG8WKpS0
光の柱が60メートルほど上に跳ねた
一瞬の出来事で、自分には何がおきたのかしばらく分からなかった
その先端で何かが砕け散った
最後に残った人の体だろうと自分は思った
同時に水色柱は矢になって天の頂まで飛んでいった
その数秒後水色の石油でできた重たい雨がバラバラとそこらじゅうに落下し始めた
大地は水色で汚染された
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:10:03.23 ID:5dG8WKpS0
自分は逃げ惑った
石油売りたちはまったく意に介しておらず
それどころかもうおかしくてたまらないという様子で互いにハイタッチしあいながら笑いあっていた
水色の石油を浴びても平気なのは扱いなれているからなのかもしれなかったし、
単にレインコートを被り守られているからなのかもしれなかった
赤帽子の人間は微動だにしなかった
ただ地面に座り込み
その状態で固まっていた
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:11:38.40 ID:5dG8WKpS0
空から石油とは違う何かが落ちてきた
それは石油売りたちの20メートルほど脇の茂みに落下し
3度ほどバウンドして静止した
赤いシルエットには二本の腕と頭がはえているものが見えた
下半身はなかった
飛ばされていった赤い人の死骸の一部らしかった
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:12:44.96 ID:5dG8WKpS0
石油売りたちはその元に駆け寄った
石油売りたちはその赤い影がなんであるのか確認し終えると
千切れ飛ぶような哄笑を上げた
もう雨は上がっていた
自分の中に悔しいという感情が生まれた
同時に赤茶帽の心中が気になった
赤茶帽は半分水色に染まりながら
先ほどと同じ姿勢で小刻みに震えていた
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:14:00.75 ID:5dG8WKpS0
石油売り達は死骸の一部を小突いていた
石油売り達は死骸の一部を足蹴りにしていた
そのたびに地面にたまった水色の石油が
死骸の一部を汚した
死骸の一部はだんだん水色に染まっていった
『ああ、なぜなのかなあ』
赤茶帽は言った
赤茶帽の人間は立ち上がった
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:15:49.08 ID:5dG8WKpS0
『楽しいの?』
赤帽子は集団のほうに近づいていった
『そんなことして楽しいの?』
『何でそうやっていつも笑ってるの?』
『なんでそんなに楽しそうなの?』
赤茶帽は一人石油売りのほうへ向かっていった
石油売りたちはそれに気づき始めた
石油売りたちはおどけた調子で赤茶帽が来るのを待ち受けていた
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:16:37.08 ID:5dG8WKpS0
『楽しいの?』
赤茶帽は
石油売り達は(コオオオオオオ)と笑った
笑いながらもそのうちの一人はわざとらしく遺骸を転がして遊んだ
赤茶帽はその一人の下へ進路を変えた
別の石油売りが通せん坊をするかのように立ちはだかった
自分はあれは危ないと思った
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:18:01.95 ID:5dG8WKpS0
赤茶帽はたちまち石油売りに囲まれた
石油売りは(コオオ)(コオオ)と笑っていた
その口からは水色の気体が出ていた
揮発した石油かも知れなかった
赤茶帽は煙に巻かれていた
その背中がひどく小さく見えた
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:20:16.67 ID:5dG8WKpS0
石油売りたちが騒ぎ始めた
赤茶帽を始末する気なのだろうと自分は覚悟を決めた
石油の値段を上げるためにパイプラインを爆破し、人を殺して笑っている集団なので
どんな恐ろしいことをされるのだろうと思うと、自分は気分が悪くなった
石油売り達はなおも騒いでいた
赤茶帽はいまだ手を出されてはいなかった
石油売り達の声の調子が、急にそれまでとは変わった
石油売りたちは空へむかい
こぶしを振りあげて何かわめいていた
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:21:46.62 ID:5dG8WKpS0
コーンと言う音が海のほうから聞こえてきた
水色の夜空全体にこだまする鈍い音だった
振り返ると船が二隻になっていた
石油売りの数が増えたのだろうかと思い、そうならそれで大変にまずいことになると考えたが
新たに現れたほうの船はごてごてしてやけにいかめしかった
それは戦艦のようなシルエットをしていた
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:22:16.18 ID:uO2wDszHO
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:23:13.62 ID:5dG8WKpS0
再びこーんという音が響いた
戦艦が水色の火を噴いていた
同時に隣接したタンカーから水色の煙が上がった
戦艦がタンカーを砲撃したらしかった
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:24:02.40 ID:5dG8WKpS0
次に頭上で「++++++++++++」という声がした
見上げると案の定水色の鳥がいた
水色の鳥まで来てしまうと絶望的な状況になるので
自分は地に身を潜めながら観察しているしかなかった
石油の雨に打たれ体が水色になっているので地表に溶けカムフラージュされることに期待した
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:25:10.44 ID:5dG8WKpS0
水色の鳥は何度も何度も石油売りたちの上を舞った
水色の鳥は笑っているようだった
石油売り達は怒声をあげて上空を威嚇した
赤茶帽はもはや意識されていなかった
石油売りの一人が懐から小さな缶を取り出し鳥めがけて投げつけた
しかしそれは高度20メートル付近を舞う水色の鳥に届く手前で失速し落下を開始した
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:26:36.54 ID:5dG8WKpS0
戦艦はさらに砲撃を続けていた
タンカーからはあちらこちらから水色の炎が上がっていた
あれはタンカーなので、石油を搭載しているはずだから
それに引火すれば大変なことになるのではないかと思い見ていると
やはり石油売り達にとっても都合が悪かったのか
鳥のことすら視野になくなった様子で
その辺に散らばっていた手荷物をまとめると海へと向かって走り去っていった
今戻ればむしろ危険なように思えたのだけれども、石油売りたちに迷いはなかった
水色の鳥は心底愉快でたまらないという様子で
猫をからかうカラスのようにその後を追跡していった
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:27:43.51 ID:5dG8WKpS0
しばらくすると洋上のタンカーが
燃えながらどこかへと消えていった
戦艦のほうもそれを追っていずこかへと去った
後には赤茶帽と、死骸の一部だけが残った
赤茶帽は死骸の一部を見下ろしていた
体から浴びた水色の石油がぽたぽた滴っていた
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:29:14.60 ID:5dG8WKpS0
自分はそのまま場を立ち去ることもできず
赤茶帽のもとまで歩いていった
汚れた死体が転がっていた
体が半分に千切れていた
顔が血まみれだった
その血は赤黒かった
自分はそれは本当に人間だったのだと思った
『私は、巡礼に来たのです』
とそれは言った
驚いたことにまだ死んではいなかった
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:31:18.06 ID:5dG8WKpS0
『巡礼をするために、家を売ったのです』
『巡礼をすることだけが私の願いだったのです』
『ですが母なる大地が汚されるのを見ているわけには行かないではないですか』
『大地が汚されるということはわたしがわたしではなくなるということです』
赤い人はひゅうひゅうと息をした
自分のほうを空ろな目で見つめた
『こんなからだになってしまった』
残された体も衣服も水色に染まっていた
それはその人からするとひどく不本意なことなのだろうと思った
『なんで生きさせてくれないのですか』
『生きていてはいけないのですか?』
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:32:42.67 ID:5dG8WKpS0
赤い人は自分のちぎれた下半身を見ていた
自分の体がそんなことになってしまうのは
ひどく悲しいことだろうなと
赤い人の気持ちに立ってみるとやりきれない思いがした
『生きさせてください』
『生きさせてください』
赤い人は懇願するようにうめいた
『生きさせてください』
『生きさせてください』
『生きさせてください』
『生きさせてください』
もう死んでいた
死ぬと死骸は急速に乾燥した
ただの流木のようなものが残った
赤茶帽はそれを拾った
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:34:22.97 ID:Ii/NiU+bO
なん……だと……?
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:34:36.83 ID:5dG8WKpS0
赤茶帽は何もいわなかった
無言で石油売りたちが掘り返した道の向こう側を歩いていった
その背中がどんどん小さくなっていった
一人きりでいる状態で再びあの石油売りや水色鳥に襲われたら堪らないので
自分はやむなくその後を追った
道はゆっくり左側へと湾曲していった
左がどの方角に相当するのかは知るすべがなかったけれども
自分はなんとなく西だろうなと感じていた
地表はどこまでも水色の素材に覆われていた
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:35:52.00 ID:5dG8WKpS0
やがて港町に出た
たいした規模ではなかったが
商店がいくつも連なっていたので町に違いはなかった
商店にはすべてシャッターが下りていた
シャッターには水色の錆が厚くこびり付いていた
油売りに搾取されて地元商人は死に絶えたのかなと思った
そのうちの一軒はあの定職屋に似ていた
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:38:33.28 ID:5dG8WKpS0
水色のすすのようなものが振ってきた
先ほど大気中に舞い上げられた石油の破片らしかった
それが体にまとわりつき持ちが悪くて仕方がなかった
『かわらないよ』
と赤茶帽はぼそりとつぶやいた
『すでにもうこんなに汚染されてるんだからいまさら変わらないよ』
『この世界は』
『もう侵略されてしまったのだから』
『かわらないよ』
ならば先ほどの赤の人たちは完全に犬死になるのだなと思ったのだけれども
それは口に出さなかった
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:39:28.06 ID:5dG8WKpS0
商店街はあっという間に尽き
あとはまばらな人家が続いた
ひとつの古びた家の前では
屋根の上で水色のすすまみれになった人間が
降り積もった水色の素材を延々と払い落とし続けていた
雪落としのようにも見えた
その動きはひどくぎこちなかった
赤茶帽はそれには一瞥もくれず前に進んだ
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:40:59.35 ID:5dG8WKpS0
やがて家屋も姿を消し
目の前には再び水色の平原が出現した
赤茶帽はかまわず進んでいった
自分は赤茶帽がどこを目指しているのか分からなくなった
もしかするとあてなどないのかもしれなかった
自分が途方にくれ始めたところで
赤茶帽は左折した
左折といってもその方向に道はなかった
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:41:46.20 ID:5dG8WKpS0
赤茶帽は雪のように堆積した水色の素材を掻き分け掻き分け進んでいった
頭がおかしくなったのだろうかと思った
赤茶帽は15メートルほど進んだところで立ち止まった
そこには水色の素材が積もり重なってできたらしい高さ4メートルほどの隆起体があった
赤茶帽はその表面を両手でえいえいと引っ掻き始めた
自分はあきれてそれを見ていた
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106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:43:04.96 ID:5dG8WKpS0
水色の素材はぼろぼろ崩れた
いくら掘っても現れるのは水色だった
あんなことをして何の意味があるのか、カマクラでも作りたいのかと自分がいぶかしんでいると
その中から赤黒い何かが顔をのぞかせた
赤茶帽はさらにその周りを崩していった
最終的に長方形をした赤黒い物体が出現した
近寄ってみるとそれは赤黒い物質でできた扉のようだった
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:44:09.56 ID:3cAc3jcu0
朝起きたら妹がいなくなっていた
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:45:21.95 ID:5dG8WKpS0
『閉館かな?』
赤茶帽の人間は言った
『閉館日なのかな?』
扉の表面には何やら見たことのない文字が刻み込まれていた
赤茶帽はそれを読んでいるらしかった
『おかしいな?』
『開いているはずなんだけどな?』
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:47:01.93 ID:5dG8WKpS0
赤茶帽は水色丘の裏手に回った
その表面をノックするとやはり水色は剥がれ
今度はガラス窓が出現した
ガラス窓には水色の色素が浸透し
その内側を伺うことは困難だったが
暗く簡素な部屋が存在していることだけは見て取れた
部屋の置くには光る何かが存在していた
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:48:38.37 ID:5dG8WKpS0
『閉館の時間じゃないのにな』
『廃館なのかな』
『廃館になってしまったのかな』
赤茶帽は窓を覗き込みながら一人ぶつぶつ呟いていた
『おかしいな』
顔を窓から離すと赤茶帽は再び扉のある表側へと戻っていった
『残念だな』
赤茶帽はさらに道路のほうへと歩き始めた
もう諦めたのかなと思い、自分が跡を追おうか考えていると
赤茶帽はいきなり踵を返し
再び扉のほうへとつかつか向かっていった
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:50:10.88 ID:5dG8WKpS0
赤茶帽が扉に手をかけると、それはあっさり開いた
赤茶帽はためらわず中に入っていった
自分が「勝手に入って大丈夫なのか」と問うと
赤茶帽は『え、博物館ですよ』とだけ答えた
赤茶帽はあっという間に屋内に消えた
自分はその後を追った
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:51:42.74 ID:5dG8WKpS0
扉の内部はカマクラの中にいるような暗さでしばらくは何も見えなかった
怪我をしたくないので恐る恐る進んだが
目が慣れるより先に赤茶帽が明かりを付けた
赤錆色の灯りだった
天井からつるされたたった一個の裸電球がその光を放っていた
室内が赤錆色になった
やっと水色から解放された自分はほっとした
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:52:55.08 ID:5dG8WKpS0
8畳ほどの部屋だった
ひどく殺風景で
テレビと本棚が置かれているだけだった
部屋の奥には窓があり
薄い水色に濁っていた
先ほど裏手で見た窓のようだった
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:54:12.64 ID:5dG8WKpS0
その下から何か水がうごめく音がした
なんだろうと視線を下ろすとそこには水槽があった
最初に部屋を見渡したときその存在に気がつかなかったのは
何が溶けているのか内部を満たす水全体が
完全な赤錆色に染まり部屋の光と同化してしまっている為だった
水槽の底ではポンプのようなものが微かに気泡を吐き出していた
水槽には蓋がされていた
赤茶帽はその蓋をはずすと
何を考えたのか水槽の中に赤い人間の遺骸であるところの
流木様構造物を投入した
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:55:23.70 ID:5dG8WKpS0
水槽の中からはぽしゃという音が聞こえた
何かが飼われているようだった
赤茶帽は水槽に向かって手を合わせた
『さまお願いします』
赤茶帽は言った
『どうか返してください』
『哀れなものたちを返してください』
『哀れなものたちに返してください』
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:57:45.39 ID:5dG8WKpS0
水槽の中で何かが蠢いていた
それは木をついばんでいた
『さまお願いします』
『さまお願いします』
そうしているうちにも木片はどんどんかじられ小さくなっていった
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:58:47.39 ID:5dG8WKpS0
やがて木片がすべて食い尽くされると赤茶帽は腰を上げた
『ちょっと出てくるから』
赤茶帽は急にぞんざいな口調になって自分にそういった
「どこへいくのですか?」
『ちょっとさんのとこ行ってくるから』
「さんとは何か」
『さんは城にいる』
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 18:59:59.67 ID:5dG8WKpS0
去り際赤茶帽は振り返り
ひどく冷たい目をして
『あいつ本当に使えないな』
と言った
視線の先にはさっきまで散々拝んでいた水槽があった
『やっぱりさんじゃないと話にならない』
『その水槽の蓋をあけるんじゃないよ』
『あいつが出せといってくるだろけど応じるんじゃないよ』
そんな捨て台詞を放つと赤茶帽は風のように去っていった
もういなかった
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:00:30.12 ID:yRbb0MHg0
チラ裏スレと聞いて
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:01:09.09 ID:5dG8WKpS0
自分は完全に取り残されてしまった
書棚には本があった
本の背表紙には妙なマークが入れられていた
『無駄だよ』
後ろから声がした
驚いて振り返ったが、そこには誰もおらず
ただ水槽が泡を吐いているだけだった
『無駄だよ』
再び同じ声がした
高周波のように甲高い声だった
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:02:49.52 ID:5dG8WKpS0
自分は水槽に目を凝らした
やはり生き物が蠢いていた
細長い、うなぎのような蛇のような生き物だった
それは赤茶の体色を有していた
『無駄だよ』
それはみたび言った
「何が無駄なのか?」
『さんだよ』
「さんがどうしたのか?」
『さんでは無理だよ』
『さんは助けてくれないよ』
『さんでは無理だよ』
自分は赤茶帽のことを皮肉っているのかなと思った
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:03:56.14 ID:5dG8WKpS0
『出してよ』
とそいつは続けた
『ここから出してくれよ』
うなぎのような蛇のようなものがしゃべるとは思わなかったので驚いたものの
そのようなことをすれば赤帽子が怒り狂うかもしれないので
自分は無視してよそを向いていた
『あれはだめなやつなんだよ』
『あんなのといっしょにいたらお前もだめになるよ』
『出してよ』
それは続けた
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:05:11.05 ID:5dG8WKpS0
『証拠があります』
うなぎのような蛇のようなものは言った
『ビデオテープの23巻を見てください』
『ビデオテープはその本棚にあります』
本棚に本しかおかれていなかった
自分はその上段左から数えて23番目にある本を
手に取った
開くとそれはビデオケースとなっており
内部には赤茶けたVHSが入っていた
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:06:17.98 ID:5dG8WKpS0
自分はそれを部屋のテレビで再生した
真っ暗な画面が1分ほど続いた後
突然の水色のマークが表れた
石油売りのレインコートにあったものと似ていた
続いて水色の風景が映った
水色の素材が堆積した地表から
水色の水を湛えた巨大な水溜りの向こう岸に
城のような建造物が映っていた
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:07:21.77 ID:5dG8WKpS0
次に薄暗い廊下が映った
その暗い廊下の奥で何か動くものがあった
画面の右上隅だった
なんだろうとそちらに目を凝らすと
まるでこちらの意図を汲み取ったかのようなタイミングでカメラもその方向へズームしていった
それは檻だった
水色の柵で構築された檻だった
檻の中でなにか赤茶けた物が動いていた
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:08:18.63 ID:5dG8WKpS0
画面が変わった
カメラは檻の内部を映していた
汚れた水色のベッドの上に
茶色い何かが横たわっていた
それは人だった
人は水色のロープで体を固定され
逃げ出すことができなくなっていた
人はぶるぶる体を痙攣させていた
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:08:41.02 ID:tAq0oRu30
淡々としていてなんだか恐い
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:08:56.56 ID:5dG8WKpS0
よく見ると人の両腕は根元から千切れているようだった
変わりに義手が二本埋め込まれていた
義手は水色の塗装が塗られた金属性のもので
腕というよりは棒と言ったほうが近いような粗雑なつくりになっており
使い勝手はひどく悪そうだった
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:09:35.04 ID:IrhVutQC0
ちゅうに
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:09:53.65 ID:5dG8WKpS0
何か音がした
赤茶の人ではなかった
赤茶の人が足を向けている先
カメラからは死角になっている方向からその音は聞こえた
カメラの前を影が横切った
音の主だった
音の主はベッドの枕元に立った
音の主は赤茶の帽子をかぶっていた
あの赤茶帽だった
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:10:59.34 ID:5dG8WKpS0
「あ」
と自分が言うと
『ほらほら見なさい』
と、ウナギのようなものは言った
ウナギのようなものは笑っているようだった
自分はなおも画面に食い入った
『よね』
『時間ないからね』
画面の中で赤茶帽はぶつぶつ呟いていた
水色義手の人間はさらに体を震わせた
どうやら赤茶帽のこと嫌がっているようだった
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:11:56.71 ID:5dG8WKpS0
『時間ないからね』
『しかたがないね』
赤茶帽は懐から何かを取り出した
赤い錆だらけのペンチだった
そのペンチで赤茶帽は
水色義手の胸部をはさみ
ねじり
引き裂いた
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:13:31.75 ID:5dG8WKpS0
『GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGI』
と水色義手は鳴いた
赤茶帽が握るペンチには、千切られた水色義手の赤茶シャツと表皮が巻きついていた
横に走った数十センチもの傷跡からは
泡を含んだ水色の体液が絶えず零れ落ちていた
『これがあなたの本性なのです』
赤茶帽はそういうと、その下の部分に再びペンチを挿し込んだ
『GIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII』
水色義手はさらに鳴いた
水色義手の胸から腹にかけて、たちまち3本の横線が刻み込まれた
これではもう死んだほうがいいのだなと自分は思った
『あれに救いはないのだ』
へびのようなうなぎのようなものは言った
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:15:25.37 ID:5dG8WKpS0
再び画面が変わった
『これを見なさいよ』
『これを』
うなぎのようなへびのようなものは言った
『全部茶番ですよ』
無数の水色のうねりが起きていた
広場だった
巨大な広場で数え切れない水色の旗が振られていた
その中央に赤茶の冠をかぶった子供がいた
人間はニコニコしていた
その横に水色の鳥もいた
大衆は沸いていた
『ほら全部茶番だったでしょう』
『全部茶番だったではないですか』
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:16:24.69 ID:5dG8WKpS0
ダン
とドアがたたかれた
()
という泣き声が扉の向こうから聞こえた
『ほらきたよ』
『あれがきたよ』
蛇のようなものは言った
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:17:07.32 ID:5dG8WKpS0
(いりませんか?)
扉の前でそれは言った
(買いませんか?)
言葉を話しているもののそれは明らかに人間ではなかった
人間が出せる周波数とは違っていた
そいつはなおも一分ほど扉をたたいた後
一回ドアから離れた
自分は少しだけほっとしたが
すぐにそいつが立てる足音が、反時計回りに小屋の裏側へ
回り込んでいっているのに気がついた
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:18:06.83 ID:5dG8WKpS0
水色ににごった窓から
そいつの顔がのぞいた
それはあの石油売りであった
自分は慌てて隠れられる場所を探したのだけれども
どこにもそのようなスペースはなく
ただ呆然と石油売りの視野に収まらざるを得なかった
138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:19:54.33 ID:5dG8WKpS0
(なんだあいるではありませんか)
と石油売りは言った
(買いますよね)
(買いますよね)
石油売りは懐から極小のドラム缶を取り出した
缶の表面にはやはりあのマークが刻み込まれていた
(000000000000です)
とそいつは続けた
どうやら石油の値段を言っているようだった
(000000000000です)
『高いよ高いよ』
と蛇のようなものは言った
『ね、ね、ぼったくりだよあれは民から財をむしりとるぼったくりだよ』
139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:20:01.03 ID:tHyG00UD0
何だこれ糖質の日記かよ
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:20:58.48 ID:5dG8WKpS0
(買えよ)
石油売りの口調が変わった
(買えよ)
石油売りはガラスをドンドンたたいた
ガラスはたちまち悲鳴をあげ
水色の粉塵を撒き散らしつつ振動した
破壊されるのは時間の問題だった
『あけちゃおうよあけちゃおうよ』
うなぎのようなものは言った
『大丈夫だからあけちゃおうよあけちゃおうよ』
141 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:22:01.78 ID:5dG8WKpS0
(買えよ)
石油売りは窓をなおも殴った
ガラスはもう割れそうだった
赤茶帽の姿が脳裏に浮かんだ
しかし赤茶帽は自分の与り知らぬところで人を切り刻んでいるのだった
その顔はもう思い出せなかった
自分は水槽の蓋をあけた
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:22:43.21 ID:5dG8WKpS0
ガラスが割れた
水色のガラス繊維が飛び散った
あいた穴は直径30センチほどだった
それをどうしたことか
石油売りは体をうなぎのように細長く変形させ
にょろりと室内に侵入した
もう目の前にいた
(買えよ)
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:23:52.13 ID:5dG8WKpS0
石油売りはすごんだ
(買えよ)
石油売りの背後の壁を
水槽から出たうなぎのようなものがはっていた
うなぎのような者は首を伸ばし
シュモクザメのような口を開いて
石油売りの右肩に噛み付いた
石油売りはあっという間に右半身を持っていかれ
体から水色の重油そのものの血液を撒き散らし
くるくる回転しながら倒れたところを
さらに完全に捕食され
この世から消滅した
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:25:52.53 ID:5dG8WKpS0
自分はそれを見ても
先ほどの残虐な行いを知っているだけに
同情する気にはならなかった
ただただひざが震えた
『殺せたでしょう?』
うなぎのようなものは言った
『もっと殺そうか?』
『もっと殺そうか?』
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:27:11.80 ID:5dG8WKpS0
それはもう水槽の中のうなぎサイズに戻っていた
しかしながら先ほどは確かにエラスモサウルスの首ほどの大きさはあったのだった
だから自分はこれこそほんとうに守り神なのだと思った
哀れなものを守ってくれる守り神は
このうなぎのようなものに間違いないのだと思った
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:27:48.83 ID:5dG8WKpS0
外で
「+++++++++++」
という声がした
割れた窓から表をのぞくと
案の定水色の鳥が空を舞っていた
舞いながらこちらへ近づいてきた
あの鳥は石油売りたちを追い回していたはずなので
その流れで向かってきているらしかった
自分は震えた
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:28:36.83 ID:5dG8WKpS0
水色の鳥は結局小屋から20メートルほど離れた位置に着地した
それは割れた窓の真正面だった
水色の鳥の目が一瞬、くわっと見開かれた
ふくろうのようだった
明らかに自分や、部屋の内部に残った石油売りの血を見つめていた
148 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:29:24.71 ID:5dG8WKpS0
そのまま水色鳥はてとてとと歩み寄ってきた
ゆっくりゆっくり接近してきた
自分は逃げようと思った
『殺そうか?』
うなぎのようなものは言った
『殺そうか?』
しかし自分はあれの恐ろしさをよく知っているので
そんな言葉に耳を貸す気はなかった
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:30:17.57 ID:5dG8WKpS0
水色の鳥は窓から5メートルほど離れたところでなぜか方向を転換させ
大きく左へ迂回した
おやおやと思っているとしかし鳥は小屋の表のほうへ回りこもうとしているようだった
どうやら律儀に表戸から入ろうとしているらしかった
ごんごん
とドアがノックされた
「+++++++++」
という声が聞こえた
ドアがさらにたたかれた
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:31:14.62 ID:5dG8WKpS0
『殺そうか?』
うなぎのようなものは再び言った
『殺せるよ』
『殺せるよ』
『水色は殺せるよ』
うなぎのようなものは鎌首を持ち上げていた
ドアがバンと音を立てて開かれた
151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:31:35.07 ID:lWtGkx0z0
規制されてるVIPPER、今のVIPに嫌気が差してるVIPPERはこっちに移住しようぜ!
規制無し・各種専ブラ対応・クソスレ立て放題・転載禁止
VIP移民用(避難所ではない)に有志が作った掲示板
裏ニュー速VIP
http://uravip.tonkotsu.jp/news7vip/ ※BB2Cの方は外部板登録してください
FAQ
Q.BB2Cで登録すると何かおかしい
A.他の「news7vip」をURLに含む外部板を削除してください。
これは鯖側のバグではなくBB2C側のバグです。
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:32:04.37 ID:5dG8WKpS0
くるしい
153 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:32:39.82 ID:5dG8WKpS0
くるしい
がんばれ
155 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:33:24.73 ID:5dG8WKpS0
くるしい
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:33:48.31 ID:5dG8WKpS0
くるしい
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:36:03.95 ID:LN3eAGQf0
鰤スレかとおもた
くるぶしになにかあると見たななんかあざあったらおまえは・・
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:45:18.75 ID:tHyG00UD0
みずいrおがらFbfawbj
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 19:45:49.24 ID:tHyG00UD0
眠くて変な文章を送ってしまった
何だこのスレは...