31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 19:36:22.12 ID:6bSPf8qy0
「聞いたことない曲だったし……もしかして和奏の作った歌?」
「……うん。私、作曲コースだから」
「そうだったんだ! うん。良い歌だね」
「そうかな」
お世辞だろう。
比較をするのであれば、母と共に作った歌の方が完成度が高い。
元々あの曲だって……。
ベースを、あれだけの心を動かせる母、まひるが作っていたから。
自分も関わっていたとはいえど、到達域に達したとは思えないのだ。
「やっぱ、和奏は音楽好きだもんねー。ね、卒業したらどうするの? やっぱ、作曲家?」
まくしたてるように、夢を語る来夏。
相変わらず、デリカシーがないというか。聞きにくいことをサラッと聞いてくる。
言いたいことを、言わないで後悔するより言って後悔した性格だからだろう。
「まだ、わからない」
「へ?」
「音大に入ったからって、みんながみんな作曲家や歌手になれるわけじゃないんだよ」
「そうなんだ……。でも、和奏なら大丈夫だよね? だって、素敵な歌作れるもん!」
「ッ!」
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 19:39:38.59 ID:6bSPf8qy0
根拠が感じられないような、励ましの言葉。
今、自分がどれだけ苦しんでいるかもわかっていないくせに。
「来夏は? 卒業したらどうするの? 就職先は?」
「あたし? あたしは、この前やっと内定もらえたんだー」
「……へえ」
「でも年間休日がちょーっと少なくてさ、土日休みなのはいいんだけど……」
「だけど?」
「うん。あたし、大学卒業しても、やっぱり歌うことを続けたいんだ。和奏みたいに、立派なものじゃないけど。
小さな舞台でも、自分の力で自分の歌で、聴いてくれる人に思いを届けたい。そう思ってるんだ。」
照れくさそうに来夏は笑った。
それはとても良いことだと思う。好きなものを好きなまま続けられるのだから。
「そっか。良いね、来夏は」
「和奏ほどじゃないよ〜。好きなものを極める為に、専門の大学入るなんて、あたしにはとてもとても」
「……」
「あたし、いつか和奏の歌が聞ける日を楽しみにしてるね!」
屈託のない、裏表のない笑顔が。
やけに癇にさわった。
「……簡単に言わないでよ」
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 19:41:59.30 ID:i5NJD0AM0
C
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 19:42:46.32 ID:i5NJD0AM0
もう一丁C
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 19:44:05.29 ID:6bSPf8qy0
「え?」
「世の中には、私よりもっともっと凄い人がたくさん居るの。
その中で、揉まれて、負けないように、一日一日、一分一秒を音楽に捧げてるんだよ。
凄い人たちに、置いて行かれないように必死なの。わかる?」
「和奏……?」
「お気楽でいいよね、来夏は。歌を、ただ歌いたいままに歌えればいいんだもん。
私は、もうそれだけじゃダメなの。そこから先の、更に高い領域に足を踏み入れちゃったの。
だから、好きとか嫌いとか。そんな気持ちじゃ、絶対に上手くいかないんだよ!」
「……ど、どうしたの?」
「あ……。……ごめん」
「……ううん。こっちこそ、ごめんね。適当なこと……言っちゃって」
ついつい、喋ってしまった本音。憎しみや妬みを、関係のない親友にぶつけてしまった。
気まずくなりかけたその時、来夏はそそくさと食事を終えると、立ち上がって、言った。
「お邪魔しちゃったみたいだし、今日はもう帰るね」
「え? 電車は大丈夫なの?」
「うん。ここから駅まで時間かからないでしょ? 乗り換えちゃんとやれば、まだまだ全然帰れるから」
「そっか……」
少しさみしいような。でもホッとしたような。
もやもやを胸に秘めつつ、和奏も食事半ばで席を立つ。退室しようとする、来夏を見送るために。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 19:48:15.99 ID:6bSPf8qy0
「……ね、和奏」
「ん?」
「また、会いに来ても良い?」
「え……」
玄関で靴を履きながら、来夏は背を向けつつ言う。
「ううん。和奏が嫌って言っても、絶対また来るから。連絡するから」
「……」
「だから、和奏も頑張ってね!」
「……うん。ありがとう」
「それじゃ、遅れると危ないから。ばいばい」
「ばいばい」
扉を閉め、視界に小さな頭が入らなくなるその時まで。
来夏は振り返ることなく、別れの挨拶をして去って行った。
「……」
残された和奏は、申し訳なさを覚えつつも、為すべきことを思い出しリビングへと戻る。
食器を片づけ、食休みもろくに取らず、机を作曲仕様に変えた。
やはりまだ、壁は和奏の前から動いてくれない。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 19:52:28.12 ID:6bSPf8qy0
――――――――
「はぁ……」
数日後の明け方であった。
大学4年生、内定も既に取得している宮本来夏は、珍しく早起きをした。
理由は、とあるものを待っているから。
周りの使用者に合わせるため購入したスマートホンを持ちつつ、眠気と戦いながらひたすら待っていた。
「!」
不意に、携帯に備わっている着信音とは別の音が鳴った。
手馴れた手つきでタッチパネルを操作し、来夏はマイクへ向かって声を出す。
「あ、紗羽!?」
来夏は、和奏をよく知る人物だった。
それは現在海外の乗馬学校に通っている、親友の沖田紗羽による着信を待っていたのだ。
無料で海外の対象者と通話の出来るアプリは、来夏が機種変更をしてもっとも嬉しかった機能なのである。
「あ、来夏。そっちじゃ、今はおはよう、かな?」
「うん。そっちは、こんばんは?」
「そうだね。それで、どうしたの?」
ちょっと話したいことがある。大事なこと。そんな、短く簡素なメールを送ってすぐである。
紗羽はじゃあ今度、電話をしようと返信してくれた。
時差の関係もあるので、それを考慮して。とても距離の遠い、不思議な待ち合わせ。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 19:55:48.96 ID:6bSPf8qy0
「うん。あのね、和奏のことなんだ」
「和奏? 和奏がどうしたの?」
「あのね、それがさ……」
来夏は、昨日自分が感じた、今の和奏のことを親友へと話した。
好きなことをやってるはずなんだけど、辛そうで、大変そうで、忙しそうで。
まるで、転科してきた頃みたいで。なんだか寂しい。
「そりゃ、来夏が子どもだからじゃ?」
「ナンダト?」
「そんないつまでも、何も変わらない方がおかしいよ。誰だって、ちょっとずつ大人になるもんだし。
子どもみたいに、好きだからやる。ってだけじゃ、難しくなってきちゃったんじゃない?」
「和奏も、同じようなこと言ってた……。やっぱ、あたしが変なのかなー?」
「……でも、だからって、問題だよ。それは」
「え?」
「和奏、きっと大切なこと忘れちゃってる。だから、今辛いんだと思う」
「大切なこと……? なに?」
「それは……んー、来夏でも良いけど、ちょうど適任が今いるんだよね。そいつにちょっと相談してみる!」
「?」
――――――――
「ね、和奏。今度の日曜日空いてる?」
「日曜日?」
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 19:59:23.58 ID:i5NJD0AM0
C
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 19:59:30.63 ID:6bSPf8qy0
少しの期間をおいて、来夏は和奏へと連絡を取った。
制作発表まで、まだ時間はある。とはいえ、せっかくの日曜日を潰したくない。
来夏の誘いだ、きっと息抜きにでも遊ぼうとか、そういったことだろう。
察した和奏は、ため息を混じらせつつ電話越しに断り文句を言った。
「ちょっと今忙しいから……ごめん」
「……本当に?」
「……」
来夏の声に、真剣さが混じった。
ふざけているようで、明るく振る舞っているようで、能天気なのだけれど。
来夏は、やる時はやってくれる。考えつかない行動力に驚かされたことも、しばしば。
だから、その真剣さが伝わるということは……それだけ真面目な話なのだ。
「……どうして?」
「うん。和奏も、きっといい刺激になるかな、って思って。……ちょっと不安はあるけど」
「?」
「とにかく、日曜日の午後は空けられる?」
「だから、どうしてかを教えて」
「……同じ合唱部だった、田中。覚えてる?」
「うん、もちろん。バドミントンでしょ?」
「それそれ。その田中がね、今週の日曜日にインカレ、大学の全国大会に出るんだって」
「へえ。やっぱり強いんだね」
「だから、その応援に行かない?」
「え?」
「和奏にとっては、関係ないことかもしれないけど……。でも、絶対無駄にはしないから!」
「……」
「だから、行こうよ!」
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:01:36.18 ID:BP1DkbV60
田中は黙ってて
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:03:50.37 ID:6bSPf8qy0
――――――――
日曜日の昼下がり。早めに昼食を終えた和奏は、大きな体育館の日陰で来夏を待っていた。
押しに弱い和奏と、押しが強い来夏。優位なのは、やはり後者なのだ。
約束の時間より、少し早めに来ていたがどうやら来夏はまだ到着していない模様。
空は真っ青に染まっていて、雲一つ存在しない。
不意に和奏は両手を空にかざしてみた。天からアイデアでも降ってこないかな、と淡い期待を込めて。
けれど、それは徒労に終わる。走光性の昆虫じゃあるまいし、と和奏はため息をついた。
降り注ぐ日差しと、にじみでる汗が頬を辿る。眼鏡の蔓に汗が溜まって鬱陶しい。
一度外して、顔を拭い、再度元に戻した時だった。
「やっほー」
「うわっ!? 来夏!?」
「そっ、そんなに驚かなくてもいーじゃん」
笑顔からむくれた顔の変遷を見事にやってのける来夏が、いつの間にか目の前に立っていた。
「遅かったね」
「少し用事があったからねー。じゃ、行こうか!」
「うん」
学校の小さな体育館とも、音楽のコンサート会場とも違う雰囲気。
最高のパフォーマンスを、みんなが、誰でも見られるような構造の体育施設だ。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:06:40.15 ID:6bSPf8qy0
施設の大半であるコートの中では、シャトルを打ち合う学生が数名。
たったの数名だ。人口が決して多くはないバドミントンと言えど、たかだが数名にまで絞られてしまっている。
その場所に足を踏み入れる為、一体どれだけの人が白線の中で膝を落としたのだろうか。
コート上階にある見学者用の、少し硬い席に座って来夏と和奏は観戦を始める。
田中が所属している大学の部旗はあるが、当の本人たちは見かけない。
試合の準備をしているのだろうか。
「あ、来た来た! あのユニフォームだよ、田中の大学」
「……あ、来夏。田中、居たよ。後ろから二番目」
短髪にヘアバンドのスタイルは変わらない。
高校時代よりは、体躯が良くなっているのが遠目でもわかる。少し日にも焼けていた。
多少の変化はあれ、二人はすぐに視認できた。かつての友人を。
コートに入る前、田中はウォームアップをしつつもキョロキョロと周りを窺っていた。
そして、その動きは一点を見つめると停止する。
完璧に見えないけれど、わかりやすい。表情が笑顔になり、手を振っていたのだ。
無論、和奏と来夏に向けてだ。
「手、振ってるね」
「うん」
二人も振りかえすと、田中は他の部員に軽く頭を小突かれ、問い詰められてしまっていた。
なんだ? 彼女か? え、友達? うそつけ! 後で紹介しろよ?
なんて会話が見て取れる。リラックスは出来ているようだ。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:10:38.59 ID:6bSPf8qy0
「がんばれー!」
来夏が応援をする。和奏は黙って、コートを見るだけだった。
田中は、やりたいことを、好きなことを、ただひたすら修練してこの域に達した。
並の努力ではなかっただろう。今このコートに立てるのは、大学生の中でたったの数名なのだ。
凄いと思う。そして、やっぱり羨ましく……嫉妬を覚えてしまう。
和奏は自分の感情が不安定なことを自覚しつつも、そう思わざるを得ないのだ。
道は違えど、何かを修めようと進んだ道。田中は、多分誰よりも先にその領域へ踏み入れた。
だから、妬ましさが出てくるのだろうか。高校時代を、まだ誰も何者になれなかった時期を、見てたから。
陰鬱な気持ちに入りつつある和奏だったが、それでも時間は進んで行く。
田中はいつの間にか、中央のコートで相手と対峙していた。
今日の試合は、準決勝から決勝までを一気に行う日。これはその第一試合。
「……わっ! ああっ! もー、ダメじゃん田中! 完全に押されてる!」
隣では来夏が自分だけの世界に入ったかのように実況している。
その無意識な言葉の通り、田中は苦戦を強いられていた。
いつぞや、合唱部とバドミントン部の存亡をかけて戦ったことはあったが。
その時よりも、全然動きが違う。
速く、強く、上手くなっている。素人目でもわかるくらい、成長していた。
45 :
忍法帖【Lv=30,xxxPT】(1+0:15) :2012/10/10(水) 20:12:31.38 ID:8tLLLVTti
支援しTARI
期待しTARI
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:13:48.53 ID:6bSPf8qy0
けれど、勝てない。点数の優勢をつけられない。
上手くなって、強くなったのに。相手のが一枚も二枚も上手なのだ。
後がない状態で、執念の1セットを奪取するも、その後接戦の末に敗北。
田中はベスト3という結果で、大学生活最後のバドミントン大会を終えた。
「……ねえ、来夏」
「ん?」
外はすっかり夕暮れ時であった。
来夏は応援に夢中だったので、若干声がしわがれている。
「どうして、田中の大会を応援しようって言ったの?」
「ん?」
来夏はすっとぼけた表情で返事をした。
まさか、何も考えていなかったのだろうか。単に、気晴らしに誘うために?
「……そろそろかな」
「え?」
「宮本、坂井!」
聞きなれた声が後ろから届いた。
振り返り、その存在を確認する。
遠くで見た時より、はるかに大きく見える身体。
浅黒くなった肌と対照的な白い歯を見せるその人物は、間違いなく田中大智であった。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:17:51.91 ID:+g94SXW2O
支援
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:18:00.03 ID:6bSPf8qy0
「久しぶりだな」
「ういーっす! ベスト3おめでとー!」
「サンキュ。……ま、ホントは優勝したかったけどな」
「……お疲れ様」
「おう」
体育館へと続く階段の途中で、田中は腰をかける。
ほのかに香る制汗スプレーの匂いが和奏の鼻へと入ってきた。
「……ん。坂井、眼鏡だったっけ?」
「あ、うん。最近ね」
「そっか。でも、なんか大人っぽくなったな」
「そうかな」
「ねーねー、あたしは?」
「お前は、相変わらずだな。身長も、何もかも」
「なんだと?」
「ま、そこが宮本らしくて良いけどよ」
「……なんか複雑。それ、褒めてんの?」
「いいや」
「おいっ!?」
じゃれ合う二人を、和奏は目を細めて見つめる。
そうなんだ。二人は変わらない。変わっていない。
あの頃も、やりたいことをやりたくて、やり遂げようとしていた。だから、輝いて見えたんだ。
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:18:34.24 ID:OSRd3zCW0
あら逞しい
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:21:54.83 ID:6bSPf8qy0
「……なぁ、坂井」
「ん?」
「沖田からさ、ちょっとだけ話を聞いたんだ」
「紗羽から……?」
何で、突然紗羽の名前が?
チラッと視線を水平……から、少し下に向ける。
来夏が、ニコッと笑っていた。出所はここだろう。
「ああ。ま、詳しくはわかんねーけど。でも、何をすりゃ良いのかだけは、ちゃんと聞いてきたからさ」
「うん……」
「……まー、そのな。つっても、単に俺が今、どういう気持ちでバドミントンやってるか、ってことなんだけど……」
少し照れて、頬をかく。本心を伝えるのが苦手なのも、相変わらずだった。
「俺さ、バドミントンが好きだからやってんだ」
「うん」
「好きで、やりたくて、成りたい姿に憧れてたから。だから、やってる。
でも、それでも、今日の俺は三位だった。
大学生活、最後の大舞台で、俺は優勝を取れなかった。」
「うん。知ってる」
「はは。相変わらず直球だな。
……正直言えば、俺も小さい頃からやってるしさ。その、やっぱ多少は自負してんだ。強い方じゃねーかな、って」
「うん」
「でも、上には上が居て。試合して、ああ、勝てないんだ、ってわかって……すげー落ち込んだ。
ずっと昔からやってるのに、何で上手くいかねーことってあるんだろ、って」
「うん」
「でもな、坂井」
「ん?」
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:25:20.33 ID:+g94SXW2O
支援だよ
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:25:32.57 ID:6bSPf8qy0
「それで俺は、バドミントンすることを諦めたりはしない」
「……」
「だって、俺、バドミントン好きだからさ。やりたいから、夢があるから。だから、続けるんだ!」
「……そっか」
「ああ。一応、社会人入っても続けられる手筈は、もう整ってるしな。
続けるぜ、バドミントン」
「……タナカクン、カァッコイー!」
「んーな時に茶化すなチビ!」
「あはは。ごめん、ごめん」
好きで、やりたくて、夢がある。だから、あきらめないで、続ける。
田中の、真っ直ぐな思いは和奏の心に間違いなく、届いていた。
「田中」
「ん?」
来夏のほっぺたを両手でひっぱりながら、とぼけた顔をして田中が振り向く。
来夏も、田中も。なんだかおかしくて。
和奏はちょっとだけ笑い、そして言う。
「ありがとう」
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:29:28.57 ID:6bSPf8qy0
「おう、こっちこそ。応援しに来てくれて、ありがとな。遠かったろ?」
「ううん。そんなことないよ」
「よひ、ひゃー、おへーとひて、けーひをおほって!」
「誰がケーキなんか奢るか! あ、俺そろそろみんなと合流しねーといけねぇから」
「うん。お疲れ様」
「おう。んじゃな。頑張れよ」
「うん。ありがとう」
大学に入り、更にスポーツマンらしく爽やかになった。そういう印象を受ける。
小走りなのに、やけに速いスピードで田中は部員の下へと戻っていった。
「……よし、あたし達も帰りますか」
「そうだね」
広い空が眼前には展開されている。夕焼けを見て、和奏は久々に物寂しさ以外の感情を覚えた。
それから、今日のことを記憶に刻むように。いっぱいの空気を吸い、前で揺れる小さな背中を追った。
―――――――
その日の天気は荒れ模様だった。
朝型、晴れていたので洗濯をしてから家を出た。講義中に、大雨が降って和奏は肩を落とす。
移動時には太陽が顔を出したので、わざわざ傘を買う必要もない。
と思っていたのに、帰宅時にはまた豪雨が襲ってきた。踏んだり蹴ったりである。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:33:28.07 ID:6bSPf8qy0
慌てて部屋に戻り、風邪予防の為にシャワーを浴びた。
肩にタオルをかけたまま、和奏はピアノ席に着く。
汗で眼鏡がずり下がるので、一度顔を拭いながらも、気持ちを入れ替えた。
もう、余り時間がない。
実習の発表の期間が迫っている。
それにもかかわらず、和奏の楽譜はまだ白い。五線譜がどこまでも続いているような錯覚に陥る。
来夏や田中のおかげで、和奏は少しだけ平静を取り戻せた。
けれど、結局は一時的なもの。夢みたいな感覚。
実際にやってくる現実の重さは、そんな簡単には覆せなかったのだ。
ペンを置き、和奏は電子ピアノの電源を落としてカバーをする。
そしてそのまま眼鏡も外さずに、突っ伏した。
「……ダメだ」
言葉にしてしまうほど、切羽詰まっていた。
考えても、繋がらない。見えそうで見えない、届きそうで届かない。
やらなきゃいけない、という焦りは、更に和奏から、音楽を消し去っていく。
天井に響く激しい雨音のみが部屋を満たしていた。
とりあえず、喉が渇いた。思い立ち、冷蔵庫の中にあるお茶を取り出そうとした時だった。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:36:49.24 ID:6bSPf8qy0
「?」
鼻から少しずり落ちている眼鏡を、しっかりかけ直し確認する。
そういえば、慌てて戻ってきたから見てなかったのだ。ポストに届いている郵便物を。
そこに、見慣れない封筒が入っている。
チラシや水道料金の請求書にまぎれていても、はっきりとわかる異端さ。
赤と青のラインが手紙の縁を覆うようなデザインのそれは、どこかで見覚えがあった。
「……これ……!」
和奏は急いでそれを取りだした。
差出人にも、宛先にも書かれているその文字は、和奏には解読できなかった。
見慣れない異国の文字。
けれど、見たことのある筆跡だった。
かろうじで読めた、たった一つの名前。
マエダ アツヒロ
和奏は焦るように、しかし丁寧に包装を剥がした。
出てきた手紙は、幸いなことに日本語だった。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:40:16.65 ID:6bSPf8qy0
『親愛なる和奏へ
久しぶりだね。元気かな。西之端ヒーローショウテンジャー、ニクレッドの、ウィーンです。
僕は今、日本から遠く離れた国で通訳の仕事をしています。
日本のアニメーションを日本語に翻訳したり、声を吹き込んだりする仕事です。
実際に僕が出演することは出来ないけれど、立派なヒーローの仕事の一つだと思ってます。
和奏は、今どうしてるかな? 音楽の道を進んで行くと聞いて、僕たちはみんな喜んだよね。
素敵な歌を作れる和奏なら、きっともっと素敵になれるんだろうなぁ。
大変なこともいっぱいあるけれど、辛くなったり、悲しくなった時は、いつもあの歌を聞いて
みんなのことを思い出して、頑張っています。
僕ももちろん、みんなを応援してるよ。
また、日本に帰る予定があったら連絡をします。そしたら、もう一度』
最後の文章を、和奏は声に出して読んだ。
無意識だった。でも、音に出したかった。
「一緒に……『楽しく』歌おうよ……」
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:44:20.05 ID:6bSPf8qy0
何度も読んだ。読み返した。
そうだ。
そうだったんだ。
忘れていた。大事なこと。
「私……」
感情が堰を切ったようにあふれ出てくる。
つっかえていた何かが、身体へ影響を及ぼし始めようとした、その時だった。
インターホンが鳴ったのだ。
こんな時に、一体誰かと思った矢先に、扉の向こう側から声が飛んできた。
「和奏、居るー?」
その声が、耳に入ったと同時に和奏は扉を開けた。
知ってる声だったから。
「来夏……!」
「あ、良かった。居た!」
「俺も居るぞ」
来夏の笑顔の上に、田中の柔らかな笑みもあった。
驚きながらも、まずは雨で少し濡れていることを心配し、和奏は家に二人をあげる。
落ち着いたところを見計らってから、和奏は質問をした。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:47:54.83 ID:6bSPf8qy0
「どうして……?」
「うん、それがねー。この前、田中が言い忘れたことあったから、って」
「それで、わざわざ?」
「電話でも良いけど……ま、せっかく、みんなが揃う機会だしな」
「え?」
「お、きたきたー!」
来夏の小さな鞄の中から着信音が鳴った。
だが、急いで取り出そうとして、手を滑らせてしまう。
それを田中が華麗にキャッチすると、勝手にパネルをいじり始めた。
「あ、ちょっと田中!」
「いーだろ、誰が取っても一緒だ」
「和奏ー! こんな小慣れたチャラ男なんて、田中っぽくないよねー!?」
思い切りがあると思いきや、恥ずかしがり屋な一面もある田中。
けれど、この大胆さというかサラッとした性格は、以前には見かけられなかった面だ。
下手に返答しても、両者どちらかが文句を言いそうなので、和奏は苦笑いで誤魔化す。
「うるさい。お、沖田か?」
「え? 紗羽?」
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:51:52.14 ID:6bSPf8qy0
「ああ、俺だ。……おう。居るぜ、ちゃんと。代わるか?」
「田中、代わらなくていいよ。そっちのパネル押して」
「ん? ああ、これか。ほい、坂井」
「あ、うん」
突然、触ったこともない最新式携帯を田中から渡される、和奏。
画面には、沖田紗羽の名前と、紗羽が大事にしていた馬のサブレの写真があった。
《……和奏?》
「紗羽!」
久しぶりに聞いた声だった。
スピーカーがハンズフリーモードなので、みんなにも聞こえるようになっている。
そこから響いた声は、少しも変わっていなかった。
《久しぶり。メールとか、中々返せなくてごめんね》
「ううん。良いよ」
《その日の内に返さないとすーぐ忘れちゃうんだよね。今度からは気を付けるから、許してね》
「うん」
《ウィーンも、何か言う?》
「ウィーン?」
どういうことなのだろう。考える間もなく、雑音の後に声が切り替わった。
《和奏? 僕だよ。久しぶりだね》
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:55:19.29 ID:wCN91yqf0
し
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:55:56.99 ID:6bSPf8qy0
「ウィーン! なんで?」
《仕事の関係でね。紗羽の居る場所から、そんな遠くない場所に配属されたんだ。
今は休暇中で、旅行がてらに紗羽の所に寄ったんだ。
そしたら、和奏が大変だって聞いて、馳せ参じたわけさ!》
「あはは。何それ……」
《和奏、手紙は届いた?》
「うん。読んだよ。ありがとう」
《そっか。なら良かった。紗羽、僕はもう大丈夫だから、後は紗羽が》
言葉は既に、手紙に綴ってある。ウィーンはそう考えて、電話を紗羽へと受け渡す。
《はいはい。あ、和奏。今度は、わたしね》
「うん」
《和奏、今大変でしょ?》
「……うん。それなりに」
《実はね、わたしもけっこー大変なんだ!》
「うん。知ってるよ」
《えー、知ってるの? ……ま、いいや。わたし、和奏にどうしても言いたいことがあってさ》
「言いたいこと……?」
《うん。来夏から色々聞いただけだから、ちょっとずれてる所はあるかもだけど》
また来夏か。
和奏は軽く睨むように来夏を見る。
元凶は悪びれたように、頭を掻いて少しだけ誇らしげに笑っていた。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:58:17.83 ID:OSRd3zCW0
屑!
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 20:59:40.72 ID:6bSPf8qy0
《わたしさ、今年やっと競馬学校に入れたんだ》
「語学の勉強が、思ったより大変だったんだよね」
《そ。文化も何もかも違うから、馴染むのに時間かかっちゃってさ》
「言ってたね」
《……なんて、みんなには明るく話したけど……》
「うん」
《本当は……死ぬほど苦しかった》
「!」
《自分で決めて、親にも迷惑かけて、無理やり進んだ道だから。後に引けないのは、覚悟してた。
けどね、やっぱり苦しかったんだ。辛かった。遊びじゃないから》
「……」
《でも、ある日ね。パソコンのフォルダを整頓してたらさ……和奏の歌が出て来たんだ。
みんなで歌った、あの歌。映像も一緒だよ》
「私の歌……」
《歌詞は全部和奏なんだよね。それが、ほんっとーに効いてさー。一番、好きだったのがココ》
『自分だけの速さで行こう』
「……」
《なんか聞いた途端に涙が出てきちゃって。ああ、そうだ。焦る必要はないから、しっかりやっていこう。
なーんて、思えるようになったんだ。》
「……うん」
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:03:10.50 ID:6bSPf8qy0
《だから、わたしが今も頑張れているのは、和奏のおかげなの》
「……うん」
《ね、和奏》
「うん……?」
《今、楽しい?》
「……」
《わたし、今大変で、苦しくて、辛くて、泣きたいこともたくさんあるけど》
「でも、楽しんでやってる」
ふいに田中が後を継いだ。
「俺も、バドミントンが楽しいからやってんだ。それが言いたくてさ」
《ちょっと田中、わたしの良い所取らないでよ!》
「あはは。わりぃわりぃ」
「……でも、あたしもそう思ってる」
来夏は少し微笑みながら、けれど真剣な眼差しで和奏を見つめる。
「大変だから、苦しいから、辛いから」
「だから……楽しむために、好きなことを続けたい」
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:06:22.25 ID:6bSPf8qy0
「……うん。」
和奏はいつしか、涙が抑えきれなくなっていた。
単調な返事は、もう心を抑えきれなかったため。
忘れていたんだ。
母の教えを。
みんなが教えてくれたことを。
「一人じゃないよ、和奏」
《音楽がある限り、僕たちはずっと一緒だ!》
「音楽って、音を楽しむって書くよな。バドミントンより、よっぽど向いてるじゃねーか」
《だから、和奏。楽しもうよ、音楽!》
「うん……うん!」
レンズに涙がしたたり落ちる。
それがなくても、あっても。既に関係はない。
結局のところ、もう今は視界は歪んで見えないから。
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:07:01.76 ID:BP1DkbV60
いいね、眩しすぎて死にたくなってくる
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:09:44.96 ID:6bSPf8qy0
「ありがとう……ありがとう。みんな」
「……なんか、泣かせにきちゃったみたいだね」
《田中……女の子泣かすなんてサイテーだよ》
「俺のせいかよ!」
《大智、しらすホワイトは、心優しき人間が担う役のはずだったろう!?》
「なんで俺ばっかり……」
「あはは」
和奏は、自然と笑みが零れていた。
大変な時期を、辛い時代を、苦しい時を。
みんなと過ごせて。みんなと会えてよかった。
「……よし、じゃあ歌いますか」
「は? 何だよ宮本、いきなり」
《お。良いねー》
「こういう時こそ、歌を歌うもんなんだよ! ね、良いでしょ和奏」
「……うん。いいよ。でも、ここじゃご近所さんに迷惑だから……」
「おぉっけい! じゃ、近くの公園へゴーだ!」
「結局近所迷惑じゃねーか、それ」
「いーの! 節度ある歌声で、楽しく歌うことのどこがいけないのさ!」
「お前、本当めちゃくちゃなことばっか言うよな」
「行こっ、和奏!」
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:13:13.67 ID:6bSPf8qy0
差し伸べられた手を、和奏はじっと見つめる。
数年前、音楽の道から外れた時。
誘ってくれたのは来夏だった。
最初は鬱陶しくて、面倒で、迷惑だったけど。
一緒に歌おう、と言ってくれたのは嬉しかった。
「うん!」
けれど、今は来夏だけじゃない。
田中も、紗羽も、ウィーンも。みんな居る。繋がっている。
ああ、そうか。
音楽は
歌は
こうして、いつも傍にあるものなんだ。
だから、いつでもどんな時も。みんな一緒なんだ。
雨はいつの間にかあがり、大きな虹が空にかかっていた。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:16:32.08 ID:6bSPf8qy0
――――――――
大学へ向かう途中、和奏は肩を叩かれた。
おずおずとした、遠慮がちなその行為の主は上野だった。
「坂井さん」
「ああ、上野さん」
振り向いた笑顔が余りにも眩しくて、上野はしばし狼狽する。
今までの口数の少なさからはイメージできなかったからである。
「ちょうど良かった。ね、上野さん。作曲って、したことある?」
「え? うん。ちょっとだけなら」
「そうなんだ。あの、良かったら少し相談に乗ってくれないかな。色々意見とか、聞いてみたくて……」
「……うん。もちろん。私で良かったら」
「ありがとう、上野さん」
手を取り、嬉しそうに和奏は笑う。
その瞳はきらきらと輝き、未来へ、先への希望に……。
いや、それはまさしく純粋だった。
子どもが初めておもちゃを買ってもらったかのように
ただ、ひたすら。楽しいことへのあくなき欲求。
無邪気さだったのだ。
「……ねえ、坂井さん」
「ん?」
「前から思ってたんだけど、坂井さんって……」
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:19:52.64 ID:6bSPf8qy0
――――――――月日は流れ。
「せんせー!」
夏に差し掛かる季節だった。
職員室へ戻る途中の渡り廊下で、自分の受け持つクラスの女子生徒に呼び止められる。
「なんですか?」
厳かに、もったいぶって眼鏡の鼻当てを押し上げて、テンプルの位置を調整する。
かつて、こんな仕草をする怖い先生が居たことを脳裏に浮かべながら。
「先生、あの……あたし、今度の文化祭で、この歌がやりたいんです!」
額にうっすらと汗を浮かべ、息も浅いままに突き出した冊子は、覚えがあった。
『radiant melody』と書かれたそれを、受け取りながら目を細める。
数瞬だけ懐古をしてから、自分の立場をハッと思い出し、もっともらしく尋ねてみる。
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:23:31.58 ID:6bSPf8qy0
「何故、この曲を?」
「それは……。その、好きなんです。その歌が!」
「この曲は、遊びでやるような曲ではないんですよ。
今はもう廃校になってしまいましたですが……とある高校の、最後の文化祭で歌われた曲です。
このままでは自分たちは終わりたくないから。そんな気持ちで。あなたに、それほどの気負いや覚悟はありますか?」
女子生徒は少しひるんだ。そこまで重たい返答がくるだなんて、思っていなかったのだろう。
返答をした方は、何も悪気を感じていない。中途半端に、ただの遊びでやって欲しいものではないから。
だから、あえて厳しく接しているのだ。
「……先生には、たかだか文化祭の……遊びに見えるかもしません。
あたしも、将来を考えて、歌をやってるわけでもありません。」
懐かしさに笑みどころか、涙がこぼれそうになるのを堪えつつ、次の言葉を待つ。
「でも、あたしは今歌いたいんです。今は、今しかないから。だから、今の気持ちを込めて、歌いたい!」
癖のある栗色の髪を揺らしながら、熱弁する年齢の割に小柄な女子生徒。
もう一度、眼鏡をかけ直す仕草をする。無意識に、じんわりと帯びてしまった涙を隠すため。
「やっぱり、そう言うんだね……あなたは」
「え?」
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:26:18.13 ID:OSRd3zCW0
ナン……ダト!?
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:26:47.21 ID:6bSPf8qy0
「……良いでしょう、わかりました。やってみなさい」
「え! ほんとですか、和奏さん!」
「こら。学校では先生をつけなさいって、いつも言ってるでしょ」
「あ、ごめんなさい。……それで、あの」
「なんですか?」
「出来れば、その……やるからには、やっぱり本気でやりたいので。指導、をしていただけたら良いなー、って」
恥ずかしそうに、けれど本心で。生徒は言う。
「先生となら、きっと楽しく歌えると思うから!」
和奏は、それを聞いて嬉しそうに笑った。
何度も挫折して、間違ったこともあるけれど。もう、大丈夫。
「私は、音楽教師ですから」
だから
音を楽しく、伝えましょう。
おしまい
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:28:05.14 ID:vW6sPA7A0
もちろん来夏ちゃんの相手は俺だから
乙
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:28:58.27 ID:6bSPf8qy0
長々とお付き合い&支援ありがとうございました。
いい加減ネタ切れしてきました。でも、また何か思いついたら突発的にやります。
ない、ない、と言っていますが、探せばTTのSSはあります。スクランとのクロスオーバーとかあって、面白いですよ。
実は……一回くらい……その……こう長ったらしいのを……やってみたくて……えっと……。
追記:話の中に、radiant melodyの歌詞や情景がちょくちょく混ざっています。暇があったら、探してみてね!
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:37:17.15 ID:BP1DkbV60
乙
長いのやってみなさいよ!
乙!
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/10(水) 21:39:33.07 ID:OSRd3zCW0
乙
先生か、作詞家になってても面白そうだな
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
携帯から。最後の最後で、PCさるさんくらった……。危なかった。
作詞家より、やっぱり先生のが良いかな、と。
教頭の影響もちょっとあったり。
今回の場合は、最初に勧めたのは上野さん、という設定ですが。