39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:22:08.08 ID:tfAG87r+0
( ^ω^)「あと少しってとこですお」
(´・ω・`)「完成したら…本当に行くのかい?」
( ^ω^)「そのための船ですお」
(´・ω・`)「そうか…」
僕はしがらみから逃れるために自らしがらみを受け入れている。
矛盾してるって、自分でも思う。
多分僕は残酷なんかじゃない。
甘ったるい、都合のいい、子供だ。
きっとそう言った意味では
ショボンの優しさは心地いい。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:22:21.09 ID:vqWGbC/x0
支援
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:22:32.85 ID:bcEfkxFb0
支援
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:24:04.72 ID:tfAG87r+0
昨日回収したデブリの中に、有用な部品があった。
最も重要な、エンジン稼働部の部品だ。
(´・ω・`)「それ、本当に飛べるのかい?僕には車にしか見えないけど」
( ^ω^)「少なくとも地球までは行けますお」
(´・ω・`)「ふぅん。帰る事は考えてないわけだ」
( ^ω^)「……ショボンさんには感謝してますお」
(´・ω・`)「否定はしないんだね」
僕は無言で作業を続けた。
後ろでショボンの溜息が聞こえる。
(´・ω・`)「まぁ、好きにやんなさいよ」
( ^ω^)「ありがとうございますお」
このお礼に意味があるかは分からないけど、言ったほうがいい、そんな気がした。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:25:23.42 ID:bcEfkxFb0
地球に来る気なのか…
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:26:18.75 ID:tfAG87r+0
4――
その後、都村トソンと二度ほど会話した。
どちらも宇宙に関しての話だったように思う。
(゚、゚トソン「ソラは…何というか違いますよ」
(゚、゚トソン「うまく言えませんけど」
( ^ω^)「だからこの職場に?」
(゚、゚トソン「えぇ」
たいしたことのない会話だけど僕には有意義な時間だ。
似たような感性を持つ人なんてそう巡り会えないから。
(゚、゚トソン「このあとお暇ですか?」
思わず聞き返した。
口調に棘があるのが自分でもわかった。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:26:37.11 ID:/rIZkdAZ0
しえ
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:28:06.90 ID:tfAG87r+0
(゚、゚トソン「つまり…お食事なんか」
( ^ω^)「忙しいからお断りしますお」
この一言で、先ほどまでの有意義な時間が一気に陳腐な物に思えてしまった。
彼女の言葉に、深い意味や下心とかがないのは分かるのだけれど。
どうしてだろう。
プライベートな時間まで束縛されたくはない、そう考えてしまう。
やっぱり僕は都合のいい奴だ。
(゚、゚トソン「そうですか、ではまた今度」
( ^ω^)「じゃあ、失礼するお」
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:29:23.21 ID:D93DaOjC0
ふむふむ
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:30:09.47 ID:tfAG87r+0
宇宙船の開発に関しては、もうほとんど完成している。念のため造形は当たり障りのない、車と同様のデザインになっていて、あとはエンジンを積み込むだけだ。
( ^ω^)「あと少しかお…」
僕は格納庫に移動し、組み立てを始めた。
重量のある荷物は機械で運ぶのが普通だけど、あいにく僕にはそんなお金が無い。
給料の殆どを開発費に充てているからだ。
おかげでここ最近少し筋肉がついた気がする。
もともと太り気味だった僕にはちょうどいいかもしれない。
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:32:11.02 ID:bcEfkxFb0
しえん
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:32:38.16 ID:tfAG87r+0
少し、疲れたから、タバコを吸う事にした。
ポケットの中のライターを探るけど、見つからない。
( ^ω^)「あれ…?」
(゚、゚トソン「これですか?」
何時の間にか現れた都村がライターを片手に歩み寄る。
(゚、゚トソン「どうぞ」
( ^ω^)「どうして僕のを?」
(゚、゚トソン「デスクに置いてました。」
(゚、゚トソン「どうせ探すだろうと思って」
( ^ω^)「ありがとうお」
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:33:30.09 ID:NwcHOH1jP
土星マンション?
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:35:08.38 ID:tfAG87r+0
渡されたライターを使って火を着けた。
僕の顔の目の前で煙が燻っている。
(゚、゚トソン「何をなさってたんですか?」
( ^ω^)「車の修理だお」
(゚、゚トソン「嘘、ですね」
沈黙。
ただ僕は都村を見つめていた。
(゚、゚トソン「…本当に行くんですか?」
( ^ω^)「そうだお」
またしても、沈黙。
それ以外に言うべき言葉が浮かばなかったから。
数秒か数分か分からないけれど、僕は都村から目を逸らせずにいた。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:36:16.68 ID:tfAG87r+0
再び、都村が口を開く。
(゚、゚トソン「何故です?」
( ^ω^)「…ずっと夢だったんだお」
( ^ω^)「僕は…作りものじゃない本物の空が見たい」
(゚、゚トソン「そうですか」
それだけ言って都村は踵を返した。
(゚、゚トソン「安心してください。誰にも言いませんから」
最後にそう言った都村の背中に、寂慘の念を感じたのは、僕の思い過ごしだろうか。
読む気になれんけど文章は綺麗
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:37:21.67 ID:tfAG87r+0
5――
僕は、完成した船に乗り込んだ。
(´・ω・`)「本当に行っちゃうのかい?」
( ^ω^)「ずっと、ずっと夢だったんですお」
今まで何度聞いたかわからないこの質問も、今となっては名残惜しい気がする。
(´・ω・`)「そうか…。君はいい奴だったよ」
(´・ω・`)「またいつか会おう」
( ^ω^)「お世話になりましたお」
宇宙船は緩やかに速度を上げていった。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:38:07.09 ID:bcEfkxFb0
どうなるんだ
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:38:35.97 ID:tfAG87r+0
漆黒の宇宙が広がる。
今からこの中へ飛び込んで行くのだと思うと、少し寒気がした。
( ^ω^)「じゃ、行くかお」
あらかじめ設定しておいた通りにボタンを押した。
すると自動操縦に切り替わり、一直線に宇宙へと駆け抜けた。
ふと、後ろを見た。
そこには都村がいて、こちらを見ていた。
僕と目が合い、控えめに手を振っている。
僕は、これがなんだか過去との決別のような気がして大きく手を振った。
僕の過去も、しがらみも、名前も、僕を成すもの全て置き去りにして飛び出した。
本物の蒼が知りたくて、本物の空が知りたくて。
きっとそこには人類が探し求めていた自由があって、それこそ楽園のような場所なんだろう。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:40:10.97 ID:tfAG87r+0
6――
何も無い。
それが最初の感想だった。
ただただ無限に宇宙が広がり、前に進んでいるのかさえも分からない。
そして
( ^ω^)「小さいお」
宇宙が過ごした悠久の時に比べれば、僕のことなんて本当にちっぽけだ。
あまりに壮大で時々息をするのを忘れてしまうほどに。
だから僕は笑ってやった。
大声で。
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:41:05.44 ID:qtihnmsy0
おおおおおおおおおおお!!!!!!!
SFだあああああああああああああああああああああ!!!!!!!
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:41:11.05 ID:qtihnmsy0
Sfてちいよね
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:41:18.63 ID:qtihnmsy0
SFっていいよね!
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:41:26.98 ID:qtihnmsy0
やっぱブーン系はSFだよ!!
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:41:40.78 ID:tfAG87r+0
( ^ω^)「あぁ、可笑しいお」
こんなに笑ったのは何年ぶりだろう。
笑い声も、吐いた息も、全てが漆黒の中に霧散していく。
太陽が放つ那由他の光が螺旋を描いて。
その螺旋の中に僕らはいる。
その中で僕が住んでいた星は、より一際美しく輝いている。
その時僕は、初めて月を美しいと感じた。
.
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:42:46.00 ID:tfAG87r+0
7――
アラームが鳴って、地球への到着を告げた。
何時の間にか寝ていたらしく宇宙観光を楽しむこともできなかった。
少しだけ、残念。
( ^ω^)「短い旅行だったおね」
誰に向けたのかも分からないジョークを一つ言った。
緊張してたんだ。
実際僕はまだ地球を見れずにいたから。
一呼吸おいて、左を見た。
そこに迫っていたのは、蒼い地球。
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:42:57.71 ID:qtihnmsy0
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:43:22.46 ID:tfAG87r+0
( ;ω;) 「これが…」
初めて真近で見る人類の母に僕は泣いてしまった。
何度も見たことがあるはずなのになんでだろう。
涙が止まらない。
( ;ω;) 「僕は…とうとう…」
ふと、この光景をショボンや都村に見せたいと思った。
なんだ、僕は結局何も捨てきれてないじゃないか。
それがなんだか可笑しくてまた笑った。
きっと涙と笑顔のないまぜになったグチャグチャな顔をしてただろう。
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:44:10.69 ID:vqWGbC/x0
読んだことある
支援
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:44:45.81 ID:tfAG87r+0
涙を拭いて、着陸を始めた。
一刻も早く大地を踏んで空気を吸いたかった。
堕ちる。
蒼へ吸い込まれるように。
緩やかに速度を上げる宇宙船が、だんだんと地球に引き寄せられていく。
それに伴って僕の体は強烈なGを受けた。
( `ω´)「ううっ…」
肺が軋んで嫌な音がする。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:45:46.85 ID:tfAG87r+0
大気圏に入った。
スパイラルして、堕ちる。
パラシュートが開き、僕を乗せた船は海に投げ出される。
(( ; ゚ω゚))「うぉぇえ」
全身が震える。
頭が揺れて、空が落ちてくるみたいだ。
立ち上がろうと思ったけど、身体が酷く重い。
五体が鉛か何かでできてるみたいだ。
諦めて、仰向けになった
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:46:33.34 ID:tfAG87r+0
( ;ω;) 「蒼い」
それ以上に言葉が出なかった。
頭上には作り物なんかじゃない本物の空が広がっていて、時折見たこともないような動物が空を翔けている。
そう、ソラじゃない、空。
そして、僕を抱く蒼い海。
境なんて存在しない。
永遠に続く、ホライゾン。
追い求めていたものはこんなに蒼くて壮大だった。
僕の想像なんか遥かに凌駕していた。
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:47:41.95 ID:tfAG87r+0
( ;ω;) 「ハハっ…」
自然と笑みが零れた。
涙の訳も笑みの理由も分からない。
ただ、目が血走って押し潰されそうだったから、目を閉じた。
( ;ω;) 「おやすみなさいお…」
一人呟く。
多分、僕はもう目を開けない。
開けられない。
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:47:49.98 ID:bcEfkxFb0
支援支援
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:48:21.68 ID:tfAG87r+0
たとえ生まれた場所が違ったって
海に抱かれ
空に見守られ
永遠に眠るだろう。
最後の地球人として。
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:49:10.80 ID:qtihnmsy0
お?
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:49:32.85 ID:tfAG87r+0
終わり
支援合いの手ありがとうございました
おかげで猿さんこなかったです
寝ます
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:50:37.11 ID:IfEje/AMi
支援!!!
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:50:47.25 ID:qtihnmsy0
みじけええええええええええ!!!!!!!!
おいいいい!!!
これから『ブーンと原住民の心温まるふれあいとか色んなトコ旅したりと化するんじゃねえのかよお!!!!
乙!!!!!!!!!!!!!!!!
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:51:16.84 ID:6wLFfKsY0
乙だった
ありがとう
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:51:32.51 ID:q7+VYZ4R0
乙
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:52:25.36 ID:T79Rghh/0
乙
雰囲気とテンポが凄く良かったぜ
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:52:55.23 ID:D93DaOjC0
乙ー
結末は前のと変わらないのね
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:53:14.14 ID:bcEfkxFb0
えっ。面白かったからもっと読みたかった
空を見た時ブーンが涙を流すシーン、良かった
乙
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:54:03.34 ID:KmKtxIzl0
面白かったぜ!
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:55:32.45 ID:GetJ0ejV0
乙
85 :
【無職歴一ヶ月め、荒らしはしません】拳王 ◆UXLJQjVdlRKc :2012/04/18(水) 00:55:49.11 ID:b9WDe/vsO
乙かれ
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:56:17.51 ID:vqWGbC/x0
乙!
すごく印象的な話だったから覚えてた
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 00:58:50.22 ID:tfAG87r+0
初スレ立てで緊張した
蒼にしたのは一応リメイクって意味を込めてです
オチは色々考えたけどやっぱこれが一番しっくり来たので
乙支援ありがとうございました
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
乙!