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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
「テメェいい加減鬱陶しいんだよおおおおぉぉぉ!!!」
「しぃを、離せよぉぉぉぉおおおお――― ガッはッ!!」
外から酒場へ、二つの怒鳴り声が転がり込んだ。
何やら外で物騒なことが起こっているようだ。
少し前まで酒を飲み、陽気に言葉を交わしていた酒場の男達が、
今では大人にイタズラをたしなめられた子どものように、顔を真っ青にして俯いている。
自分は"ああ"なりたくはないと誰の顔にも書いてある。
ただ一人、カウンターに座る、錆色のマントに身を包んだ男を除いて。
異常事態が日常だと言わんばかりにマントの男はゆっくりグラスを傾け、
深紅に濁ったトマトジュースを飲み干す。
決して耳が遠く、外の騒ぎが聞こえなかったわけではない。
聞いた上で平静を保っていたのだ。