ほむら「実家に帰らなくてはいけなくなった」(再会編)
1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
そろそろ夜明けか。
携帯電話の右上にある時間表示を確認しながら、暁美ほむらは気が重くなるのを感じた。
夜行バスの窓は雪のせいか曇っていて外の景色はほとんど見えなかった。
日付にすると何日、いや何年ぶりなのだろうか。 ――ぜんぜん憶えていない。
現在の時間軸ではわずかな時間に過ぎないが、世界が改変されるまでに暁美ほむらの中だけではとてつもない時間が流れてきた。
携帯の連絡先一欄を開くと真っ先に目に入る二つのデータ。
暁美敏和、暁美ユキ。
名前を見ながら、二人の顔をイメージする。
………
駄目だ、全く思い出せない。
もしうっかり道端で出会ったと思うと、うすら寒くなるのを感じた。
え?
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:31:33.94 ID:9m66abF90
まどか「初めまして転校生の鹿目まどかです」
まどか「家族みんなで」
これらの続きの作品です。
先にこちらを読んでもらえるといいかと思います。
友人に小説っぽく書いたほうがいいと勧められたので、文体が結構変わっています。
また本作は長くなるであろうと思うので、申し訳ないのですが今回で完結せず区切って投稿させてもらいたいと思います。
こういう文体で書くのは初めてですので、何か間違いとかおかしな点があれば指摘していただければと思います。
あと、原作や公式にないキャラクターが登場するので、それでもよければ見てやって下さい。
では続けます
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:34:01.58 ID:2wRLYcy60
まあ支援
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:34:27.13 ID:w2gRue0IO
あれ、そんなに劇中で時間経ってたっけ何周ぐらいした設定なんだ
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:35:52.31 ID:WHgY5gzt0
ほむパパとママの名前まで作っちまってオリキャラ出すと途端に拒絶する人が多いってのに
まぁ支援してやるよ…一人ぼっちは寂しいもんな
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:36:04.45 ID:9m66abF90
先日母親の方に帰省の電話を入れたが、声を聞いてもぴんとこなかった。
まどかに今年の正月は実家に帰ると約束した手前、奮い立って電話をかける以外ほむらにはなかった。
自分が母親を憶えていないように相手も忘れているのではないかとも思ったがそんなことはなかった。
用件を手短に伝えると、わかった。じゃあ待ってるね。とだけ返事をもらう。
今の状況や心境を長々と聞かれるのではないかと心配したが、拍子抜けだ。
数年ぶりの母との会話は、おそらく三十秒にも満たなかっただろう。
それでも電話をかけ終えてほっとした。
オレオレ詐欺がうまくいったようなそんな気分。
電話の最中、ほむらは母親がどんな人物であったかとか、これまで全く連絡がなかったことを咎める余裕はなかった。
罪悪感が胸を痛める中、平静を装うことでいっぱいいっぱいだったのだ。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:39:11.85 ID:9m66abF90
あんなこと言わなければよかった。
鹿目詢子と再会するまどかを見て、ほむらは甚く心を打たれた。
この世界にいないはずのまどかを、あの母親は完全に忘れていなかった。
美樹さやかや、巴マミでさえまどかのことを憶えていなかったというのに。
ほむらは嫉妬するぐらいに、家族というものの繋がりの深さを思い知らされた。
身震いがし、居ても立ってもられないぐらいに切なくなって、久しぶりに会いたいと思った。
でもすぐにまどかと自分は違うということに気づく。
鹿目まどかと鹿目詢子との間には強い絆があった。
それに対してほむらはどうだろう?
親の顔も忘れてしまう薄情者ではないか。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:41:17.30 ID:9m66abF90
東の空が少し明るくなった気がしたが、バスの中に朝日は届かない。
再会の時が刻々と近づいていると思うと深い溜息が出た。
「大丈夫、きっと思い出せる」
独り言のような声。
そうだといいのだが…
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:41:52.21 ID:2wRLYcy60
オリキャラとか外野の俺が心配になっちまうほど危険な要素だぜ
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:43:59.74 ID:9m66abF90
今さらだがどうして自分は親元を離れて一人暮らしをしていたのだろう。
気弱で病気がちだった自分が望んで巣立ったとは考えにくいので、おそらくは両親の提案だったはず。
確か親になんでもできる一人前の人間になりなさいと言われたような気がする。
それにしても病気がちの娘を放り出すのは、まともな親がすることなのだろうか?
よほど豪胆な人間か非情な者でなければできない所業だ。
今さらそのことを持ちだしてとやかく言うつもりはないが、電話どころかメールもよこさないところを考えるに、やはりそれなりの親であるということを覚悟しなくてはいけないのだろう。
このまま帰省しなければほむらは二度と会わない気がした。
向こうだって一度も便りをよこさない。
SS速報のほうが安全ではあるな
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:46:03.40 ID:9m66abF90
ほむらには断絶を受け入れる覚悟があった。
少なくともまどかと詢子の再会に立ち会うまでは。
自分だって人の道から大きく外れた業を背負った身だ。
お互い忘れることができるのならそれもいいではないか。
開けなくてもいい蓋を開けようとしているだけではないか。
今さら家族に会って何をしようというのだろう。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:48:24.92 ID:9m66abF90
六時二十三分青森駅到着。
東京では見ることの出来なかった深雪と凍えるような冷風が出迎えてくれた。
眠気が一気に吹き飛んだ。
後ろからこんな沢山の雪見たことない、という感嘆の声が上がった。
あちらに体感的には長くいたおかげで気づいたが、身長をゆうに超えるほどそびえ立つ白い塊をかき分け、よく車を動かせるようにしているものだと思う。
実家はもっとすごいことになっているのだろうか。
颯爽とJRの構内まで歩き、防寒着の雪を払いながら、財布と乗車用の電子カードを取り出す。
そういえばあちらで使われているものと型が違うが、代用できるのだろうか?
駅員に改札で尋ねると、向こうでは相互利用が可能だという。
それからコンビニでお茶と握飯を二個ずつ購入した。
食欲はなかったが、何も食べないと長旅で身体が持たないと思った。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:50:58.22 ID:m74I/my+O
あああのスレか支援
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:51:06.45 ID:9m66abF90
函館行き白鳥号が停車していたので、乗り込む。
ほむらは荷を上棚に起き、放心したように座席に凭れかかった。
バスの窓とは違い、くっきりと外の様子が見える。
窓際の乗客が朝食を取り出したので、ほむらもふくろから梅にぎりの袋をあけた。
こういった電車に乗って旅行するのをほむらは小さいころから嫌いではなかった。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:53:08.33 ID:oXQxw4po0
ほむらって普通に家族いるのに
両親出しただけでオリキャラ出すなって叩かれるのはなんでなの?
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:54:31.24 ID:9m66abF90
幼い頃から病気がちだったこともあって、病院にいることがままあった。
幼少時は祖父の家で過ごしていたため、その時憶えてる景色は家の中、学校、病院の3つだけ。
毎日似たようなものを見て、似たような日々を過ごしていた。
だから祖父に電車でどこかに連れていってもらうのが新鮮で瑞々しく、今でも覚えているものもある。
窓際だけは譲らない子供だった。
静止した風景に飽いていたのだろう。
何の因果か…… 今も昔もほむらは同じもの、同じ景色ばかりを繰り返し、繰り返しみてきたのだ。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:57:18.12 ID:9m66abF90
青函トンネルを超えると、吹雪が出迎えてくれた。
故郷に近づけば何か母たちのことを思い出すかと思ったが、そんなことはなかった。
本州を抜けても代わり映えのしない雪景色が広がっているだけだ。
別段懐かしいとも思わない。
億劫な瞬間が近づいて憂欝になっただけ。
このままどこか別の所へ旅行に行ってしまいたかった。
隣にまどかを連れて、そう。できるだけ暖かいところがいい。
しかし函館に到着すると、足が呪われたように札幌行きへと歩ませてくるのだった。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:58:10.54 ID:2wRLYcy60
>>17 そら「居る」ってこと以上の設定はほとんど無いからな
登場させるには名前から人となりまで全てオリジナルにならざるを得ない
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 22:59:22.94 ID:WHgY5gzt0
>>17 知久さんや詢子さんみたいにちゃんと本編とかでキャラがはっきりしてるのなら問題ないが
設定上だけの親なんていていないようなもんだぜ
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:02:25.64 ID:9m66abF90
仮に父と母に会ったとしよう。
自分は昔のような気弱な姿を演じるをべきなのだろうか?
染み付いてしまった行動や習慣は直すのが難しいように、言葉遣いや雰囲気は急に直せるものではない。
必ずぼろがでる。
長年培った思考はもはやあの頃の自分とは程遠い。
娘が別人になって帰ってきた二人の気持ちを考えると複雑なものだろう。
しかしそれは普通の家庭の話だ。
うちのご両親というものは世間とはかけ離れた考えをお持ちのようだ。
連絡もよこさないぐらい忙しいのか知らないが、未熟で身体の弱い中学生の娘を東京に送るぐらいの冷血漢――なのかわからないが。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:05:56.76 ID:9m66abF90
もしかしたら素でスルーするなんて無神経ぶりを発揮されるかもしれない。
いわんや外観が変わったせいで、娘と認識することができない事態がないと言い切れるだろうか。
そんな身の毛もよだつような想像が現実になるのだけは回避しようと、メガネと三編だけはしてくることにした。
この姿をまどかに見られたくなかったが、ほぼ同棲していることもあってそれは叶わなかった。
まどかの気が済むまで愛でられた。
ほむらは弱かった頃の自分が嫌いだった。
まどかに撫でられるのは嬉しくても、このままの姿でいることは抵抗がある。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:08:44.87 ID:2wRLYcy60
気が済むまで愛でられた
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:09:11.63 ID:X/rRVp3h0
ほむ
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:10:07.79 ID:9m66abF90
札幌に着いたのは昼過ぎになってからの事だった。
駅の食堂で暖をとっていると、観光に来ている大学生らしき団体が目についた。
連中のように暢気にふかし芋でも食べて行ければよいのだが、そんな気分ではない。
ぞろぞろと人が集まってきた。
万一声をかけられてはたまらないので仕方なく立ち去ることにした。
札幌からタクシーを飛ばす。
雪がなければ十分歩いていける距離だったが、長旅で疲れているであろう身を案じたのだ。
それにうっかり道端で顔のわからない親に出会ってしまったら最悪だ。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:11:08.80 ID:VhyUUClY0
そっとじ
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:11:32.12 ID:oXQxw4po0
ほむ両親は札幌にいるのか
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:13:19.88 ID:9m66abF90
校生かい、と運転手に尋ねられた。
バックミラーには、しわの寄った六十近くの年長者の顔が映った。
自分は中学生だと答えて、それっきり押し黙った。
なのに運転手は観光に来ていると思っているせいか、聞いてもいない札幌周囲のことを楽しそうに話すのだった。
この手のサービス業者はどうして、話し好きが多いのだろうとうんざりした。
ここは地元なのだから、そんな案内話いらないと言ってやろうか。
でもそんなことをして身の上を聞かれるのも面倒だった。
運転手の話を聞き流し、流れる景色を見ていると、胸の奥がじりじりと締め付けられる感覚が増していった。
動く風景を見るのは好きなのに、胸が痛い。
憶えているけれど、忘れてしまったという実感が動悸をさらに掻き立てるのだ。
最後に一度携帯で父と母の名前を確認した。
敏和、ユキ。
これがの両親の名前らしい。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:17:11.62 ID:9m66abF90
実家は古い住宅街の区画に位置していた。
中でもほむらの家は古い部類に入ると思う。
外から見てもわかるくらい、結構な庭付きの家。
堂々とした青塗りの塀が目の前にそびえ立っていた。
二人で暮らすにはもったいないほど広壮な土地を余していた。
この家はもともと父の実家だったらしい。
しかし父は両親を亡くしていたので、このだだっ広い家を母と二人で使っているのだ。
今のほむらの目からみると、自分が離れて暮らしているのがいかに不経済であるのかがわかった。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:20:10.47 ID:9m66abF90
門をくぐり、家の前まで新しい足跡をつけてきた。
ある程度雪かきをした跡が見られるものの、既に石畳の上に新雪が降り積もっていた。
足音が重なってズブズブと音をたてながら進む。
結局逃げることが出来なかった。
もはやそういう運命だったと思い諦め、ゆっくりと戸を叩いた。
中から人が出てくるのを待ったが、物音ひとつしない。
……出なおすか。
それでも構わないがもうタクシーも行ってしまったので、歩いて人通りまで出るだけの元気は残ってないだろう。
戸惑いながらも、ほむら戸に向かって手を伸ばす。
ちょうどその時家の扉が開いた。
32 :
忍法帖【Lv=9,xxxP】 :2012/04/02(月) 23:22:31.63 ID:i3IMg+eG0
33 :
忍法帖【Lv=10,xxxPT】 :2012/04/02(月) 23:23:41.46 ID:i3IMg+eG0
幾多のキュゥマミSSを見たがいまだにこのネタを使ったキュゥマミSSはない
パターン1
マミ「あなた誰なの?」
QB「確かに “この僕” は、三時間ほど前まで君のそばにいたのとは別の個体だよそちらは暁美ほむらに撃ち殺された」
黒い魔法少女。暁美ほむら。あの女だけは、絶対に許さない。
まどか「わたしの願いでマミさんのそばにいた子を蘇生すれば、ほむらちゃんのこと許してあげられませんか?」
マミ「今日も紅茶が美味しいわ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1304834183/1 パターン2
QB「うううっ……マミ、どうして、死んじゃったんだよ、マミを蘇らせて欲しい」
まどか「私の願い事はマミさんの蘇生。叶えてよインキュベーター!」
こんな感じの旧QB蘇生キュゥマミ魔法少女全員生存ワルプルギス撃破誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:23:53.22 ID:9m66abF90
刹那に和服の女性が中から現れた。
背丈は美樹さやかぐらいはあるだろうか。透けるように白い肌。
顔立ちは凛として、底知れぬ深い黒い瞳をしていた。
鹿目詢子のような覇気はないが、聡明そうな落ち着きと奥ゆかしさを感じた。
自分の母かもしれない相手なので憚れるが、一言で言ってしまえば大和撫子の和服美人といった印象だ。
何かの間違いで離れ離れになった家族が、偶然街で出会った時にお互いが親子や兄妹であるとわかる瞬間があるというが、あれは映画や漫画の世界だけのことらしい。
実際にそれらしき人に出会ったというのにほむらはいまひとつぴんと来なかった。
ひとまずとんでもない変人でなかったことに安堵する。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:25:09.48 ID:Pj/9gQ0QO
ほむらって東京から見滝原に引っ越してきたんじゃ・・・
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:26:40.26 ID:2wRLYcy60
東京で親と同居してたのかどうかも不明じゃね?
>>26 諦めたら?
おまえまた晒されるぞ
>>27,33
いや、つまらん上にキモいっす
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:27:57.76 ID:9m66abF90
ほっと胸をなでおろしたとき……
その人はこちらを見下ろすとカタカタと下駄の音を鳴らし、足元の雪を蹴散らしながら向かってきた。
ほむらの隣で悲鳴にも似た狼狽の声が上がった。
女性は嬉しくてたまらないといった様子で、少女をぐいぐいっと抱きしめた。
東京からずっと、ずっとつないでくれていた手が、母親らしき人によって断ち切られた。
「ほむらちゃん、この子があなたの言ってたお友達ね! ねぇ、お名前はなんて言うの?」
思考が停止する。
目の前には、まるで子供が子犬とじゃれる楽しそうな光景が繰り広げられていた。
ただし片方は母親らしき人で、もう片方は親友だった。
まどかが助けを求めるようにこちらを見ているが、あまりにも予想外の出来事にただ呆然とするしかなかった。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:29:09.98 ID:oXQxw4po0
>>36 北海道を「地元」って言ってるから、東京にいた期間はあんまり長くなかったのか
いや前スレ読んでないけど
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:32:58.80 ID:9m66abF90
居間に通されると、上寿司が皿の上に盛られていた。五人前はあるだろうか。
女は先程出前をとったばかりだからと言った。
確かに昼飯も食べてないからかなりお腹が減っていた。
でもあまりに衝撃的な映像が抜けずそれどころではない。
隣に座ったまどかはほむらの影に隠れるようにしてぶるぶる震えていた。
「どうしたの? お腹空いてないのかしら?」
あんたのせいで食欲が出ないのだとほむらは言いかけた。
怒鳴りたくなる気持ちを飲み込んで、まどかに声をかける。
「いただきましょう?」
うん…と躊躇いがちに返事するまどか。
適当なネタを口に運ぶ。
母親らしき人物の言ったとおり、シャリは歯ごたえがあり新鮮な海の幸の味がした。
おいしい。とまどかが口をほころばせた。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:34:10.83 ID:2wRLYcy60
ああなんかすげーひっそりした描写だったけど、まどかと二人で来てたのな
≫38を読むまで、
まどかが隣にいることがまったく分からなかったんで驚いたよ
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:36:03.55 ID:2wRLYcy60
お茶とおにぎり二個とか窓際の乗客とかそうだったのな
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:36:15.25 ID:RUiBPm+C0
>>42 いやまどかはこっそりついて来てたので
余計驚いたと見ている。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:36:57.92 ID:9m66abF90
「良かった。遠慮せずどんどん食べてちょうだい」
その人も箸を伸ばして一緒に食事をとる。
和服姿で寿司を食べる様はなかなか品があるようで、こうして見れば悪くないと思った。
「ところであなたたちはどこまで進んでいるのかしら?」
品のある姿を台無しにする台詞。
まどかは顔を染めて、俯いてしまった。
「あのね、私たちは女同士なのよ。そんなふしだらな関係なわけないでしょ」
面識が薄いため遠慮していたが、沸々と怒りが湧いてきた。
「あらあら……。ほむらちゃんは母さんの子だから、てっきり……」
てっきりなんだこら。
娘の友だちの前で自分は百合なのだと公言するな。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:37:39.16 ID:2wRLYcy60
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:39:49.47 ID:9m66abF90
しかし口振りからすると、やはりこの人物が暁美ユキ。ほむらの母親らしい。
ほむらはひどく頭痛がした。
親の顔を忘れていた原因が少しわかった。
うっかりまどかをこんな危険な場所に連れてきてしまったことを後悔した。
せめて父親だけはまともであって欲しい。
49 :
45:2012/04/02(月) 23:40:56.13 ID:RUiBPm+C0
>>47 改めて見てちょうどそこのところまで読んだ。
う〜んまだまだだな(汗)
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:43:12.43 ID:9m66abF90
昼食を取り終えると、ユキはほむらたちをほむらの部屋へと案内した。
「それじゃ、若い二人でお楽しみに」
いい加減にしろ。
部屋にはご丁寧にぎっちり密着したように二組の布団がしかれていた。
にこやかにユキが立ち去ると、旅の疲れがどっと押し寄せてきた。
「えへへ、面白いお母さんだね」
まどかに気を使わせるために連れてきたはずではなかったのだが…
「ごめんなさい。気を悪くしないでちょうだい。あと、身の危険を感じたら遠慮なく引っぱたいていいから」
まどかは苦笑いしながら、大丈夫だよと言った。
「でもよかったね。ほむらちゃん、あんなに心配してた割に普通にお母さんと話せてるじゃん。羨ましい、やっぱり親子だね」
一言余計だと思ったが、確かにぎこちない雰囲気はなかった。
にしても、自分の母親があんな残念な人だとは予想していなかった。
「それに着物が似合ってて、綺麗な人だった。ほむらちゃんも将来あんな美人さんになるんだね」
「まあ姿だけなら似ても悪くないわね」
ふふ、とまどかが笑いながら荷物の整理をする。
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:43:16.68 ID:RUiBPm+C0
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:47:07.26 ID:9m66abF90
ほむらは布団の上で横になった。やはり長旅で疲れた。
本当なら羽田から空の旅を選択すれば時間も経費も安くなる。
それでもほむらには心の準備が必要だった。
腹を痛めて産んでくれたあの人よりも、友人……まどかを選んでしまったことに罪悪感を感じていた。
時間を移動すれば移動するだけまどかへの執着は強くなり、気づけば親の存在など頭から抜け出していたのだ。
咎める人もおらず、自分の罪の意識を知る者もいない。
だけど本当に帰りたくなかった理由は違う。
何の便りも寄越さない両親が自分の帰りを待っていると思えなかったからだ。
ほむらの頭からユキに会った時のことが忘れられなかった。
ユキが真っ先に抱きしめたのは自分ではなくまどかだった。
普通久々に出会った娘のことが気になるものではないか。
怒りににも似たやりきれない気持ちが、ほむらを支配していた。
家を捨てた自分が責めるなどできない。そんなことはわかっているのに。
>>44 たしかに、おにぎりならともかく、お茶も2本買ってるもんな。
一人ならお茶は一本しか買わないから。
そう思ってから読み返すと、たしかに、隣にまどかがいるという意味で書いてある表現と思われる部分は何箇所か見つかる気がする。
>>9 の 独り言のような声 とか、
>>14 後ろから〜感嘆の声 とか、
>>19 の隣にまどかを連れて もか。
>>16の 窓際の乗客 もそうなのか?
>>26 の 〜案じた も、自分のことでは使わない表現だもんな。
>>45 でも、同じタクシーに乗ってきたんじゃないの?
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:51:15.25 ID:9m66abF90
鹿目まどかは荷物の整理を終えると、布団の上で寝息をたてているほむらに気がついた。
ほむらがぐっすり眠るのを見て同じ布団に入って眠ろうかとまどかは思った。
しかし万が一ユキにその光景を見られたらほむらの立場がないし自分も恥ずかしい。
まどかから見てもユキは今まで出会ってきた人とは変わった人という印象を持った。
いきなり抱きつかれたのは初めての経験だし、外見に合わない行動に驚いた。
ほむらと比べてしまうからだろうか?
確かに人前でほむらがあんな風に甘えて来る姿は想像できない。
二人きりでなら稀にあるのだけれど。
何はともあれ、ほむらの母親には気に入られたようだ。
家構えから萎縮してしまい、厳しい人だったらどうしようと思っていたがそんなことはなかった。
かといってあの人がほむらの母親でよかったかと言われると、かなり微妙なところではあるのだが。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:53:38.24 ID:oXQxw4po0
>>53 ということは、
>>40で衝撃的だったのはまどかがいたからじゃなくて
ママンが早くもまどかと遊んでたからか
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 23:56:29.81 ID:9m66abF90
窓から外を眺めると、また雪が降っている。
これだけの雪を目にしたのは初めてだったので、機会があればほむらと一緒に遊んでみたいと思ってた。
が、肝心のほむらが疲れて眠ってしまっている。
仕方ないから自分も素直に横になろうか。
すると、障子戸の向こうから扉を叩く音が聞こえた。
ユキが顔を覗かせる。
「ごめんなさい、起こしてしまったかしら?」
「私は大丈夫です。ほむらちゃんは、この通りぐっすり」
顔を憶えていない家族に会うということで、ほむらは相当緊張していた。
決して同じ境遇とは言えないが、ほむらの気持ちはまどかには痛いほどわかった。
自分も身を削る思いで――といっても偶然だが――詢子と再会したのだから。
「少しまどかちゃんお話がしたいのだけれど、いいかしら?」
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:00:13.23 ID:9m66abF90
居間で梅昆布茶をいただきながら、ほむらの母親の話を聞くことになった。
「先に言っておくけど、あまりここで話したことをほむらには聞かせないで欲しいの」
どうしてですかと問うと、神妙な顔でユキはこう答えた。
「まどかちゃんがこの正月に家にも帰らないでこんな場所に来ているのには、何か事情があるのでしょ? それを聞かれるとまどかちゃんが困るように私にもいろいろあるのね」
まどかが実家に帰らないことを、あえて何も言わず見過ごしていたのか。
「すいません、私……」
「いいえ。あなたが男の子だったら門前払いしてたかもしれないけど、可愛い女の子ならいくらでも歓迎だわ」
ユキの眼光が怪しい光を放つ。
まどかは周りの温度がぐっと下がっていくのを感じた。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:04:30.16 ID:ba71caRE0
「まぁ、半分冗談だけどまどかちゃんが来てくれてすごく安心したわ。あの子にも大切な人が見つかったのだってわかったのだから」
た、大切な人?
どっちかっていうと、姉妹みたいなものでと言いかけたが、本物の家族の前でそれを言うのは失礼な気がした。
「私ほむらちゃんの恋人ってわけじゃ…」
「あら、私は大切な人と言っただけで、そんなことは恋人とは言っていないのだけど……もしかしてまどかちゃんはほむらのことをそういう目で見ているのかしら?」
嬉々としながら期待の視線をユキは向けてきた。
「ち、違いますっ!?」
まどかは視線の先を逸らしながら、顔を赤くした。というか、今のは明らかにそういうニュアンスが含まれていたと思うのだが。
ほむらに抱きついて甘えることはよくある。寝るとき布団に潜り込んだりすることもざらだ。
他人が見たら、そんなのレズだとか百合だとか疑われても仕方ないのかもしれない。
さらに邪推されるような言い方しかできないが、まどかはほむらに触れいていないと不安でどうしようもない時がある。
そして髪を触ってもらったり、頭をなでてもらいたいと思うこともままあるのだ。
ほむらのことを好きかと言われれば首を縦にふるだろう。
しかし、ユキが思うような特別な関係を築きたいと思ったことはなかった。
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:10:53.88 ID:ba71caRE0
「まどかちゃんがほむらをそう言う風に見てなくても、ほむらはきっとそう思ってないわよ。私の娘だもの」
「ほむらちゃんが?」
ほむらの気持ちを聞いたことはないが、まどかには信じ難いものがあった。
ほむらの隣で眠るようになって、もしほむらが妄りに手を出してきたらと考えたことがある。
例えばまどかが寝ているときに、自分の胸を揉んできたり尻を触らりとか、そういう淫靡な妄想だ。
そういう考えをしてしまったことを、頭から火が出るほど恥ずかしくて思い返したくもないが、あのほむらに限ってそのようなことは決してしないという自信があった。
その時は母親がユキのような人間だということを知らなかったのの、ユキのことを知った今でもそのような事をされるとは思わなかった。
いくら自分が抱きついても、ほむらが積極的に自分の身体を触るということはなかったから。
なぜそんな妄想をしてしまったかというと、多分ほむらに頭を撫でられるのが好きだったからだと思う。
もっと身体に触れてもらえば、安心できる。そんな安易な発想が余計なお節介をしたのだとまどかは考えていた。
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:10:55.35 ID:IUxVai/E0
ほ
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:15:31.71 ID:ba71caRE0
ユキは咳払いをして、そんなことより本題に入ろうかという雰囲気を出した。
「ねえ、ほむらはなんで帰省する気になったのかしら?まどかちゃんこころあたりない?」
突然話を切り替えられ、どうもつかみ所のない人だと感じた。
心当たり……というか原因は多分自分にあるのだろうけど説明するには様々な事実を伝える必要がありそうだ。
でもよくよく考えるとほむらが帰省するのにこの母親には理由がいるのだろうか?
「ほむらちゃんが帰ってくることが不思議なんですか?」
そうね。とユキは笑った。
「前は同じ東京のミッション系の学校通っていたのだけど、あの子は一度も帰ってくることはなかった」
「寮生活で帰れなかったとかじゃないんですか?」
「寮でも、ふつう年末ぐらいは帰省するよう呼びかけるものよ」
確かに中学生という年齢を考えれば、それが妥当だ。
昨年はさぞやユキたちも心配したことだろう。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:18:34.07 ID:ba71caRE0
「ほむらちゃんは、なんで帰らなかったんでしょうか」
「それは、私達が帰ってくるなって言ったからよ」
えっ。と素っ頓狂な声をあげる。
親は子供の顔を見たいものではないのか?
「それにも色々と理由があるのだけど、専らあの子が病気がちで祖父母に甘やかされて育った。ほむらの将来を考えると、それでは困ると思い、私たちは東京の学校へ送ることにしたの。一人前になるまで帰ってくるなという条件をつけて」
なるほどユキが言いたいことはわかった。
だがまどかには納得できなかった。厳しさも必要だろうが、そこまでやる必要があったのだろうか。
「心配じゃなかったんですか?」
「中途半端な情けは、人のためにならないわ」
まどかの懸念を薙ぎ払うように、一蹴された。
ユキの目はまるで修羅を潜り抜けた侍のように厳しい眼光を放っていた。
「私たちはあの子に一人でも生きていけるぐらいの気概と精神を身に着けて欲しいと思ったの。弱さを持った人間は社会で食い物にされる。甘えを持った人間は、自ら成長することを怠る」
さっきまでの人懐っこさはどこへいったというのだろうか?
さすがほむらの家族というべきか、言うことが全くシビアだった。
このように豪華な邸宅に住んでいるだけあってか、富を築く人とは根本的に考え方が違うのだとまどかは思った。
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:21:54.81 ID:ba71caRE0
「私が気にしているのはきちんと言い付けを守ってきたあの子が、どうして急にこの家に帰ってきたかということ。
本人が一人前になった感じているというのなら納得するわ。
友達の少なかったあの子がまどかちゃんみたいな子を連れてくるなんて、思いもよらなかったし。
細かく条件を出していなかったのだから、あの子が胸を張れるぐらいに成長できたというのなら少なくとも私は認めるつもりだった。
けれど、何かしっくりこなくて……まるで約束事態を忘れてしまっているような」
ユキの勘の鋭さにまどかは震えそうになった。
黙っていれば秀麗な美人。それだけでなく優れた観察眼という武器まで兼ね備えていたのだ。
自分にないものを持つユキが恐ろしく、下手に嘘をつけば心を読まれてしまいそうだった。
「私からは何も言えません……」
「それは、暗にほむらに何があったか知っていると言ってるようなものね」
まどかは自分の未熟さを呪うばかりだった。
この話をオフレコにしろ約束されたからには、ほむらに後で謝る術もない。
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:23:49.76 ID:1ccQkM160
読んでないけどなにやらガチの作品っぽいのでC
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:25:15.18 ID:ba71caRE0
ほむらは約束どころか母親の顔さえ忘れている。
そんな大事なことを自分のせいで悟られるわけにはいかないのだ。
「娘のことを把握しておきたい母親の気持ちというのはまどかちゃんにもわかるでしょう?」
こくりとうなずく。
一瞬詢子の顔が浮かんだ。痛いところをついてくる。
それでも自分が勝手に踏み込んでいい問題ではない。
いくらほむらが姉妹のように慕ってくれているとはいえ、秘密を暴露する権利などあるのだろうか。
なんとか話の焦点をずらさなければ。
「ほむらちゃんは、私から見たらとても立派でお姉ちゃんみたいな存在です。いつもいつも、私を助けてくれます。勉強もスポーツもできて、クラスでは憧れている人も多いと思います」
侍の眼光はまどかの目を嘘をついていないか確認するようにじろりと見つめていた。
背筋が凍るような寒さにさらされる。北海道特有の凍てつく気温のせいではない。
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:28:57.07 ID:IUxVai/E0
ところどころ誤字脱字はあるけど、相変わらず読み易くて面白い
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:29:14.97 ID:ba71caRE0
「なるほど。ほむらはよほどあなたから厚い信頼を得ているようね。まあいいわ。これ以上まどかちゃんに嫌われたくないし、後はほむら本人から聞くとしましょうか」
まどかはほむらの身を案じた。
このような大きな家に生まれる苦労というものを身をもって思い知った。
解放され少し気が緩むと、急につま先が痛くなってきた。
「正座慣れていないのでしょう? くずしてしまってもいいわよ」
足をまっすぐ伸ばしながら、この人だけは敵にしないようにと心に誓った。
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:33:24.19 ID:ba71caRE0
まどかが部屋に戻ると、ほむらはまだ布団の上で眠っていた。
ほむらが不憫に思えてならなかった。
堪らなくなって、ほむらの頭を抱きかかえるように隣によこたわる。
「ごめんね、ほむらちゃん……いつも私のことを守ってくれてるのに、私……何の力にもなれなかったよ」
怖くて反論できなかったが、子供に帰ってくるななどという親がいることがまどかには信じられなかった。
ユキの気持ちが理解できないし、そんなことを言わなければならなかったほむらの気持ちも図り知ることができなかった。
まどかの知らないところで、数多くの苦労を重ねてきたのだろう。
せめてユキがメールや電話を寄越せば、ほむらちゃんも顔を忘れることもなかったかもしれないのに。
会わないと決めれば一切の連絡をとらないほど、暁美家でのしつけは徹底していたのだ、
決してユキがほむらのことを疎んでいるわけではないのだろう。
だからこそ何かがズレている。蟠りのような違和感を感じずにはいられない。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:36:39.31 ID:ba71caRE0
まどかはふと詢子のことを思い出した。
優しくてかっこよかった母。
世界の理が歪められてもなお、自分のことをぼんやりと憶えてくれていた。
思わず涙が出そうになった。
「世の中には、いろんなお母さんがいるんだね、ほむらちゃん」
切ない気持ちを胸に、ほむらを離さなかった。
親の記憶はあるけれど、二度と家族には戻れない親子。
親の記憶がないのに、つながりがある家族。
どちらが不幸でどちらが辛いのかなんて、まどかにはわかりそうもなかった。
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:39:35.20 ID:ba71caRE0
暁美ほむらが目を覚ましたのは、空がにわかに暗くなってからのことだった。
目を覚ましたといっても、疲労のせいか半分意識が飛んでいるので実際は寝ているようなものだ。
まどかの匂いがした。
いつもの調子で甘えてきたのだろうか?
案の定目を開けると、まどかに抱きしめられるように寝ていた。
嬉しくもあったが、ユキに見つかったら後で何を言われるかわからない。
暁美ユキ……。
あんな変態が自分の母親だったのか。
寝る前にはきっと、悪夢から覚めることを祈りながら布団をかぶったことだろう。
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:43:42.13 ID:ba71caRE0
親に会えばコマのように頭の中が急回転するとほむらは思っていたのだが、実際は違った。
ユキが母親だったという実感がまるでない。
よほどあの人のことを忘れたかったのか、自分が薄情だったせいかそこだけがすっぽり抜け落ちているようだった。
ただ思い出せない原因が、ユキ自身にもあるかもしれないと思うと肩の荷が下りた。
ユキが来る前に布団から抜けだして、すこし家の中をふらつくことにした。
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:46:26.23 ID:ba71caRE0
ほむらが初めてこの家に来たのは、小学生にあがってしばらくたってからだっただろうか。
それまでは母方の祖父母と暮らしていたが、祖父も祖母もほむらに対して優しかった。
どちらの顔もおぼろげだが、どんな人達だったか憶えてる。
正月には餅をついたり、電車で動物園に出かけたり、祖父の趣味に乗じて渓流に釣りに連れて行ってもらったこともある。
下手したら……いや、間違いなく両親よりも記憶が残ってた。
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:49:40.62 ID:ba71caRE0
障子張りの廊下をギシギシと音をたてながら歩くと、下り階段の直ぐ側に大きな染みを見つけた。
黒く淀んだ壁のもやもやは、ほむらがこの家にきた時には既にあった。
一階のトイレに行くにはこの前を通らなくてはならない。
夜中に一人でトイレに行くには、けっこうな時間を要した気がする。
つまり、それまでは母か父に付き添ってもらったのだ。
夜中に起こされ迷惑をかけたことだろう。
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:52:59.46 ID:ba71caRE0
一階に降りるとちょうどユキが膝をつきながら床の掃除をしているところだった。
そういえばお手伝いらしき人も見えないし、ユキ以外の誰かの気配もなかった。
この広い家を一人で管理しているのだろうか。
朧気な記憶だが、母もあまり身体が丈夫ではなかった気がする。
ほむらがユキの隣に経っても無言のままだったので、仕方なくほむらから話かけた。
「何か手伝うことはない? 一人では大変でしょ?」
すると母は、いつもやっていることだから。とだけ返事した。
床を磨くユキは第一印象とは異なり、ただただ真摯なのだった。
広々とした家の庭を見る。
「人を雇ってもいいような気がするのだけれど」
「ふふ。そうかもしれないわね。でも私が好きでやってることだし。それにお金がかかるわ」
ただの変態ではないのか?未だにユキの性格が真面目なんだか、尖ってるのか、凹んでいるのか掴めかった。
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:53:29.52 ID:mjaYJCR/0
お前か、支援
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 00:59:04.51 ID:ba71caRE0
調子を崩されたと思うと、また母は無言で掃除を続けた。
久しぶりに娘が帰ってきたというのに、話すことはないのだろうか?
寂しい気持ちが溢れてくる。
自分がそうだったように、この人の頭の中に『私』という存在はとうに消えてしまったのだろうか。
……もし昔の弱い自分のままこの状況にいたらどうだろう。
部屋に篭ってすすり泣いていたかもしれない。
今はまどかがいてくれるという安心感が支えとなっているから、よほどのことがないとうちひしがれることなどないが。
そんなほむらでもこのまま立ち尽くすのはなんだか惨めな気がしたので、逃げるようにその場を立ち去った。
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:02:20.48 ID:ba71caRE0
居間に腰を据えてユキの姿を見つめる。
おそらく家事だけで一日を終えるのだろう。
うまくお金を回せばもっと楽な生活ができるはずなのに……
本当にお金がないのだろうか?
もしかしてほむらが単身で遠くの学校に通っていることが家計に響いているのかもしれない。
………
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:04:10.83 ID:IUxVai/E0
さるよけも必要か
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:05:52.91 ID:ba71caRE0
外はすっかり暗くなっていた。雪はもう止んでいたので視界だけはまともに確保できる。
倉から取り出したスコップを両手に表の雪を掻き分けていく。
息をするとすぐにメガネが曇るので上着のポケットにしまいこんだ。
知ってはいたが豪雪は信じられないぐらい重い。
無理に大量の雪をかきあげようものなら、腰や腕に多大な負担がかかるので、自分の力に合った一定量の雪をスコップですくい取ることがコツだった。
それでも腰に負担がかかるので、汗が滲んでくる。
とんでもない広さに思わず爆薬や魔法で吹き飛ばしてしまいたくなるが、家ごと飛ばしかねない。
しばらく雪掻きをつづけていると、防寒着を来たまどかが現れた。
「私一度雪かきやってみたかったんだ。手伝うよ、ほむらちゃん」
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:09:52.26 ID:ba71caRE0
生き生きとした笑顔を見せるまどか。
お礼の言葉を言うと、手元のスコップを渡して倉から柄のついていないプラスチック製の雪かきを持ちだした。
正直二人でも終わる気がしないが出来る限りの手を尽くして雪を掻きわけた。
「何が楽しくて二人だけでこんな無駄に広い家に住んでるのかしらね」
「ほむらちゃん……帰りたくなった?」
「別に。ただ母もいつまでも体が持つかわからないのに、こんな暮らしを続けるのかってこと」
「ふふ、お母さんのこと心配なんだね」
……心配なんだろうか? 全く何も思い出せないあの人のことを、自分はどこまで母だと認識しているのか。
そういや、さるよけってのが必要なんだっけ。
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:14:09.04 ID:ba71caRE0
気がつけと表の通り道にはほとんど雪がなくなっていたが、そのかわり庭に巨大な雪山エベレストができていた。
一応邪魔にならないように端のほうに積んだつもりだが、エベレストの存在感は尋常ではなかった。
春になるまで残り続けそうな生命力を感じた。
スコップと雪かきをしまうと、まどかが雪山の上を駆け上がっていく。
しかし斜面が急なので、半分もいかない地点でズルズルと滑り落ちてしまった。
それを見てほむらはクスクスと笑うのだった。
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:17:28.35 ID:K3C5IonY0
まどかわいい
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:18:05.15 ID:e/KwNIUq0
まどほむかわいい
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:18:17.49 ID:ba71caRE0
「もう、ひどいよ。ほむらちゃんは登れるの?」
子供の頃から雪には慣れていた。
滑らないように雪の柔らかい部分を見つけてそこを足場にする。
両手を使いながら、なんとかエベレストの頂上までたどりつくことができた。
下にいるまどかが感心したように、拍手するのが見えた。
塀の高さぐらいはあるから、住宅街が一望できる。
いつの間にか雪が降り出していた。
銀色の世界。
この景色をほむらはまどかと共有したいと思った。
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:22:58.95 ID:ba71caRE0
腰を下ろして、ほら。と下に向かって手を伸ばす。
ゆっくり登ってきたまどかと繋がり、滑り落ち全身を使って身体を支える。
もう少し……肩に力をいれ、思いっきりまどかを引き上げた。
するとほむらの身体が一瞬宙に浮き、まどかの身体と一緒に落下する。危うく転げ落ちるところだった。
仰向けになって、天を見上げる格好になっている。
ほむらを覗き込むまどかの心配そうな顔がうかがえた。
大丈夫、とほむらは言う。
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:26:27.92 ID:ba71caRE0
まどかの顔が白い吐息が振りかかる距離にあった。
心配する顔が笑顔に変わり、その輝きがまるでほむらの胸の奥へ溶けていくような感覚を覚えた。
まどかの甘い髪の匂いが、死んでいたはずの嗅覚をよみがえらせる。
降り積もっていく雪の背景など視界に入らなかった。
今まで感じたことのない熱くて切ない熱情にほむらは襲われた。
顔が燃やされるような錯覚に、思わずまどかから顔を背けた。
きょとんとした顔で、ほむらを見つめるまどか。
「その、どいてもらってもいいかしら?」
ああ、ごめん。いそいそと謝りながらまどかは離れていった。
身体が離れると切なさの槍が再び胸をえぐるようにつき刺してくる。
「うわあ、絶景だね!」
感嘆の声を上げるまどか。
ほむらはぎこちなく、そうね、と答えた。
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:28:47.98 ID:+FO6ZS6YP
し
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:29:20.80 ID:ba71caRE0
同じ景色を見ているはずなのに、不思議だ。
さっきまでと全然違うものを見ている気がするのはなぜだろう。
まどかがほむらの手を握ってきた。
動悸が激しいリズムへと変わる。
変だ。
ほむらは自分の中で何が起きているのか全くわからなくなった。
まどかの側から一刻も離れたいという気持ちと、もっと触れていたいという気持ちが同居してただただ苦しかった。
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:30:27.54 ID:+FO6ZS6YP
5分に1回ぐらいのペースが良いと聞いたことが
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:31:49.38 ID:IUxVai/E0
ほむかわいい
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:32:40.65 ID:ba71caRE0
「ありがとう。私なんか連れてきてくれて。本当はほむらちゃん一人で家族水入らずにしてあがったのに。心配してくれたんだよね。家に帰れないから……」
「ま、まどかがいなかったら、私はここにいなかったわ。こうして手を引いてくれなければ、辿りつけなかったもの」
まどかの顔を見ないでほむらは答えた。
実際まどかの監視がなければ、青森から十八切符でも購入して観光に出ていたに違いない。
でもほむらにとって今はそんなことどうでもよかった。
きまりが悪くなってまどかと距離をおいた。
「私先に降りるから、あなたも早く降りてきなさい」
「え、もう降りちゃうの?」
うつむきながら雪の手の塊に手をかける。
下を見ないようにして適当な足場を見つけ下っていく。
しかし、焦ったせいかほむらは足を滑らして、真下に落下してしまった。
ほむらを呼ぶ声がエベレストの上から響いた。
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:36:03.04 ID:ba71caRE0
全身を防寒着で覆っていたので、痛みは殆ど無かった。
ちょっと膝をすりむいて、背中をぶつけたぐらいで済んだ。
ほむらが立ち上がろうとすると、すぐ後ろから手が添えられた。
その人物を見上げると、黒いコートを着用したサラリーマン風の男が立っていた。
下からなのでわからないが背丈は、それほど高くないように思える。
ほとんどあどけない顔を残したまま大人になったという感じで、まだ随分と若く見えた。
「ほむら。おかえりなさい。」
男は優しくほむらの手をとった。
もしかしてこの人が私の父親なのだろうかと、ほむらは思った。
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:42:22.15 ID:K3C5IonY0
はよ
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:47:36.47 ID:e/KwNIUq0
ホシュホム
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:51:46.65 ID:IUxVai/E0
マダカァー!
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:52:30.59 ID:IUxVai/E0
マジで猿ったか?
98 :
早速さるがつきました。:2012/04/03(火) 01:53:21.58 ID:ba71caRE0
まどかが滑り台から降りるように降りてきた。
「こんばんわ。君がほむらの友達か。遠いところよく来てくれたものだ。自分の家だと思ってゆっくりしてくれ」
「ありがとうございます。えっと、ほむらちゃんのお父さん?」
いかにもと笑みを漏らす。
ほむらが想像していたよりもずっと柔らかい物腰。爽やかな青年といった印象だった。
ユキのような変人であることを覚悟していたが……いや、まだ油断はできないか。
カエルの子はカエルというように、変態の妻には変態の夫と相場は決まっている。
「なんだそんなに睨んで? 俺の顔に何かついているか?」
いけない。必要以上に怖い顔をしていたようだ。
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 01:58:28.16 ID:e/KwNIUq0
変態の妻に変態の夫…
そして変態のむすry
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 02:00:16.71 ID:ba71caRE0
ユキの前ではついつい普段通りでも問題なさそうだったが、敏和の前ではどうなのだろう?
余計な疑いを持たれることを考えると、昔のままに戻ったほうがいいかもしれない。
しかし目の前にはまどかがいる。
まどかの前であの弱かった頃の自分を見せるのは嫌だった。
「あ、あの……私……」
狼狽してうまく言葉にならない。
敏和が頭に手を置いて、ゆっくりと髪をなでる。
あ…と、ほむらが口を開けたまま敏和の笑顔を見た。
「大きくなったな、ほむら。もう母さん位あるんじゃないか? 」
懐かしいこの感覚。
そうだ。私は憶えている。この人に撫でられるのが好きだった。
今でもそれは変わらないようだ。
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 02:05:08.26 ID:ba71caRE0
ほむらの中だけで幾年という時が過ぎた。
人と同じ時間を分かつことなく、ただ時の狭間に取り残されてしまった。
家に帰ってきてもここが自分の家だと実感できずいた。
母と会って、親子の関係の希薄さにむなしくなったものだけど。
今日初めて実感した。ここが自分の家であるということを。
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 02:09:19.51 ID:ba71caRE0
わたし……帰ってきたんだね……お父さんっ!」
ほむらの目からぼろぼろと水滴がこぼれ落ちた。
「一年と半年ぶりか。もうずいぶんほむらには会っていなかったもんな」
たった一年半。
敏和にとってはその程度の時間だったらしい。
ほむらにとっては気の遠くなるような年月だった。
まどかにこれが自分の父だと誇らしげに言ってやろうと思ったが、まどかが涙を堪えているのがわかった。
思い出したんだね。よかった。と目で訴えてくる。
父の知らない事情を知っているだけにここで泣くわけにはいかないのだ。
後でたくさんお礼を言おう。
まどかのおかげで、二度と帰るつもりのない場所へと辿りついたのだから。
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 02:13:30.14 ID:ba71caRE0
夕餉の時刻は普段より幾分か早い時刻だった。
本州とは太陽が沈む時間が違うのでそれも妥当だと思う。
机の上には、昼間の残りの寿司と鰻丼が人数分添えられていた。
父と母と向かい合うようにまどかと隣同士に座る。
「ほむらちゃんもすみにおけないわよね、こんな可愛い女の子を連れてくるなんて」
まどかは恐縮するように、俯いた。客に気を使わせるなと突っ込みをいれる。
「ユキの子だからな。そういうこともあると思ってたさ」
敏和が笑う。この両親は基本的に人の話を聞かないらしい。
というか父は母が百合であることを許容しているだけではく、笑い話にするのか。
「まどかちゃんと同じ部屋に布団を引いたのはまずかったかしらね」
「そりゃあ、猫と熱帯魚を同じ部屋で飼うようなものじゃないか? でも母さんと同じ部屋にするわけにもな……」
どんな会話だよ……言っても無駄らしいので心の中で突っ込みをいれる。
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 02:17:31.10 ID:ba71caRE0
どうにも居心地が悪くて、となりのまどかを見る。
まどかも同じ思いをしているとおもいきや、意外にもにこやかに笑っていた。
阿呆な両親で申し訳ないと言おうとしたが、まどかが楽しんでくれているなら悪くないと思った。
「まどかちゃんは、ほむらみたいな無愛想な子のどこがよかったんだい?」
無愛想?
聞き捨てならない言葉だ。
いまならともかく、昔のほむらは人見知りをする方ではあったが、無愛想ではなかったはずだ。
父に怒りの言葉を吐こうとしたその瞬間はっとなった。
「どうしたの、ほむらちゃん?」
「ごめんなさい、ちょっと気分が悪くて……先に部屋に戻っててもいいかしら?」
「あらあら? 長旅での疲れが出たのかしら」
まどかは心配そうにこちらを見ているが、大丈夫だからと笑顔を向ける。
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 02:21:07.23 ID:ba71caRE0
部屋に戻ると机の中から、紙とペンを取り出した。
まどか、改変、私、まどか母、さやか、マミ……それぞれを丸と矢印で因果関係を整理していく。
まどかに関する記憶が多くの人間の中で書き換えられた。
美樹さやかや巴マミはまどかの存在自体を忘れ、鹿目詢子は自分に娘がいたことを忘れてしまった。
それが旧まどかが行った世界の改変だ。
しかし世界の改変にあたり、行われるはずの記憶処理が、自分の中では行われなかった。
さらに暁美ほむらの人格はまどかによって大きく変化したと言えよう。
鹿目まどかと出会ったことによって、ほむらは全くの別人になった。
これが一体何を意味するのか。
まどかに出会わなかったことになっているこの世界で、暁美ほむらが昔からずっと落ち着いた性格の持ち主でなくては、つじつまが合わなくなるのだ。
まどかに守られていた、あの頃の自分というのはいなかったことになる。
昔から今のように落ち着き払った性格だったと、人々の記憶は書き換えらてしまった。
ほむらは血の気が引いていくのを感じた。
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 02:24:36.52 ID:ba71caRE0
もう両親は昔の自分を覚えていないのだ。
まどかの家族のように、ほむらの両親は本当の暁美ほむらを忘れてしまった。
ユキたちは、本当の自分ではないものを自分と見なし、娘としてきたのだ。
当然ながらほむらの中に、この時間軸で両親と時間を歩んだ記憶はない。
「あの二人の中に、もう昔の私はいないのね……ふふふ。この三つ編みも必要なかったんだ。まどかの前であの頃の自分に戻るのが嫌だとか、余計な気をまわすこともなかった。そうね。この方がよっぽど楽だわ」
言葉とは裏腹に、ポトポトと涙が滴る。
まどかの気持ちが少しだけ理解できた。
忘れられる悔しさ。自分が居なかったことになる虚無感。人々のつながりが消える喪失感。やりきれない思い。
自分に言い聞かせる。何よ、まどかに比べたらぬるいじゃない。あの子は存在そのものを忘れられているのよ。こうして家に帰ることもできるし、ぬくもりを分け与えてもらえる。
それなのに……それなのに……
こんなにつらいなんて。
忘れかけた両親の記憶の断片を少しいじられただけでこれほど胸が痛むなんて思いもよらなかった。
ほむらは思い知った。
自分の身に不幸が降りかからないと、本当につらさを分かち合うことはできないということを。
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 02:28:49.87 ID:ba71caRE0
今回はここまでです。
駄文ですが付き合ってくれた方どうも。
多分来週にまた続きを書いてあげる予定です。
意見質問感想がいただけるとありがたいです。
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 02:33:39.92 ID:K3C5IonY0
乙乙
落ち着いた切な気なふいんきがとても良い
続きも機体しとく
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 02:37:16.29 ID:+FO6ZS6YP
乙
前作とかみてないが楽しめた
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 02:56:45.74 ID:IUxVai/E0
両親はまだ良く分からんけどまどかもほむらもかわい初々しくてよい
文も読み易いと思うし続きが気になる
オリキャラ云々で読まずに離れちゃう人が居そうなのはもったいないなあと思うが頑張ってくれ
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/03(火) 03:07:07.59 ID:4642lGmh0
やるじゃない
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
>>109 上の方にリンクあるから見といた方が身の為だぜ