1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
「よしっ!」
キッチンで、エプロンを着け、腕まくりをした梓ちゃんが気合を入れます。
「梓、やる気満々じゃん」
「澪さんと付き合い始めて、始めてのバレンタインだもんね」
「えへへ」
純ちゃんと私の言葉に、梓ちゃんは、少し恥ずかしそうに微笑みました。
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:16:40.94 ID:/vAOXqHV0
今日は、梓ちゃんと、準ちゃんと一緒にバレンタインチョコレート作りです。
「で、梓ちゃんはどんなの作るの?」
「うん、チョコタルトにしようかなと思って……」
梓ちゃんはそう答えながら、ハート形のタルト型を取り出しました。
「え〜?タルトって難しそうじゃない?」
「……難しいかなぁ?」
「ううん、結構簡単だよ」
「ほんと?」
純ちゃんの言葉に、不安げな表情を浮かべた梓ちゃんでしたが、
私が答えると、梓ちゃんの顔がパーっと明るくなりました。
「うん、じゃぁ、がんばって作ろっか?」
「うん!」
そして、私たち3人は、早速チョコレート作りに取り掛かりました。
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:19:06.14 ID:/vAOXqHV0
―――
「それにしても、梓に澪先輩取られるとはなぁ」
チョコレートを湯煎にかけながら、純ちゃんが少し不満そうにつぶやきます。
「なによ、もともと澪先輩は純のものじゃないでしょ?」
そんな純ちゃんに、梓ちゃんは少し口を尖らせて答えます。
「そんなこと言いながら、純ちゃんも応援してたくせに」
「まぁ、そうだけどさ」
「澪さんのお誕生日の日、梓ちゃんからのメール見るなり飛び出してっちゃったしね」
「そ、そりゃぁあんなメール見たら心配になるって」
純ちゃんは顔を真っ赤にしてわたわたと手を振りながら答えます。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:21:00.29 ID:9DNMASk80
続けて
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:21:27.27 ID:/vAOXqHV0
「あ、あの時はごめん……
あれはそういう意味じゃなくって、純粋に応援してくれてたのに申し訳なくって……」
梓ちゃんはすまなさそうに謝ります。
「でもよかったよ。なんだかんだでうまくいって」
「うん、澪さんも幸せそうだしね」
「えへへ」
梓ちゃんは、とろけそうな笑顔を浮かべます。
澪さんと付き合いだしてからの梓ちゃんは、本当に幸せそうで、少しうらやましくなっちゃいます。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:24:17.65 ID:/vAOXqHV0
「そういえばさ、澪先輩、この前ブレスレッド着けてたけど、
梓が誕生日にあげたってやつ?」
「私も見た。
あのブルーのビーズのやつでしょ?すっごくきれいだよね」
「うん、澪先輩、毎日つけてくれてるんだ」
「おうおう、のろけてくれますなぁ」
「もー、純が振ったくせに」
「でも、梓ちゃん、澪さんのこと話す時、本当に幸せそうだよね」
「ま、まぁね……」
「まぁ、憂も、唯先輩のこと話す時、こんな感じだけどね」
「え?」
思ってもいなかった純ちゃんの言葉に、思わず手にしていたボールを取り落としそうになってしまいました。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:26:58.37 ID:/vAOXqHV0
「ねぇ、憂。次は憂の番だよ」
「でも……」
突然、真剣な表情に変わった梓ちゃんにまっすぐに見つめられ、私は思わず目をそらしてしまいました。
「そうだよ憂、怖がってたって始まらないよ」
「そう……だよね……」
でも、私は一応の同意で、お茶を濁すことしかできませんでした。
馬鹿共にはちょうどいい目くらましだ
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:30:09.08 ID:/vAOXqHV0
―――
「はぁ……」
梓ちゃんは澪さんとのデートへ、純ちゃんはジャズ研へと向かった後、
一人になると、自然にため息がこぼれます。
『ねぇ、憂。次は憂の番だよ』
『そうだよ憂、怖がってたって始まらないよ』
そうは言うものの、私は梓ちゃんとは違うんだもの。
梓ちゃんも同性って言う障壁はあったけれど、私はさらに……。
どうしてお姉ちゃんを好きになってしまったんだろう?
そんなこと、いまさら思ってもしょうがないのに、そんなことばかり考えてしまいます。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:32:00.09 ID:9DNMASk80
唯憂期待せずにはいられない
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:33:50.11 ID:/vAOXqHV0
「憂……」
「え?」
突然の声とともに、私は後ろから暖かいものに包まれていました。
「お姉ちゃん?」
「どうしたの憂?
なんど声かけても気づかなかった世?」
「ごめんなさい……ちょっと考え事してて……」
「何かあったの?元気ないよ?」
お姉ちゃんは、後ろから、心配そうな顔で覗き込んできます。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:37:04.29 ID:/vAOXqHV0
「ううん、なんでもないよ?」
でも、私はそう答えることしかできませんでした。
だって、お姉ちゃんのことを好きになってしまい、悩んでるなんていえるはずもありませんから。
「よし、じゃぁ憂が元気になるように、これをあげよう」
お姉ちゃんは、ふっと柔らかな微笑を浮かべると、いったん離れ、
小さな箱を手渡してきました。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:41:42.28 ID:/vAOXqHV0
「お姉ちゃん?」
「ハッピーバレンタイン、憂。
バレンタインチョコ、一生懸命作ったんだよ」
「あけてもいい?」
「もちろんです!」
私は、ちょっと不器用なラッピングを丁寧にはがすと、中のチョコレートを取り出しました。
それはハート型のチョコレートに、ピンクの文字で
『うい、いつもありがとう!
大好きだよ(ハート)』
と書かれていました。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:46:58.21 ID:/vAOXqHV0
「お姉ちゃん、ありがとう」
私はなんとも言えない気持ちになり、お姉ちゃんに抱きつきました。
「どうしたんだいこの子はぁ」
お姉ちゃんは少しおどけながら、頭をなでてくれます。
「ほら、食べてみて?元気になるよ」
お姉ちゃんはそう言うと、チョコレートをつまみ上げ、あーんと言うように、口元に持ってきます。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:49:33.32 ID:/vAOXqHV0
「折角お姉ちゃんが作ってくれたのに、すぐ食べちゃったらもったいないよ」
私がそう言うと、お姉ちゃんは自信満々で答えます。
「じゃぁ、シャメ撮っておけばいいんだよ」
そして、お姉ちゃんは、携帯を取り出すと何枚か写真を撮り、
再びチョコレートをつまみあげました。
「ほら、あ〜ん」
「お姉ちゃん……」
そして、私は今度はそれに従いました。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:52:09.45 ID:/vAOXqHV0
「お姉ちゃん、本当にありがとう」
「えへへ、憂のためだからね」
私が感極まって抱きつくと、お姉ちゃんはいつもの笑顔で答えてくれました。
「で、憂?」
しばらくすると、お姉ちゃんは、こちらを伺うように尋ねてきます。
「なぁに?」
「あの〜……私にはチョコレートいただけないのでしょうか?」
躊躇いながら尋ねてくるお姉ちゃんに、私は微笑んで答えました。
「ご飯食べてから」
「しょんなぁ」
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:54:32.86 ID:/vAOXqHV0
―――
本当はお姉ちゃんともっともっと仲良くなりたいけれど―――
でも。今はこの幸せで十分だと思い直しました。
いつか勇気が持てる日まで、今はこの幸せを大切にしていきたいと思います。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:57:45.82 ID:/vAOXqHV0
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:59:03.32 ID:9DNMASk80
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:04:42.57 ID:HZQjxDAp0
乙
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:11:46.32 ID:aR6hndeN0
コピペミス発見!
>>15と
>>16の間にしたの分が入ります。
「どう?おいしい?」
「うん、おいしいよお姉ちゃん」
私が笑顔で答えると、お姉ちゃんも安心したような、誇らしそうな笑顔を浮かべます。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:14:24.25 ID:aR6hndeN0
お目汚し失礼しました。
レスクレタ皆さん、ありがとうございました。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
おつ、好きだわ