1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
代理ですん
うおー、ありがとう!
(´<_` )「ところでドクオ。この村はもう門限だが、宿は決めたかい?」
('A`)「……お前の知るところではない」
(´<_` )「そうはいかん。どうせ地べたで寝るつもりなんだろう?
治安維持は私の課題だ。おい、兄者!」
( ´_ゝ`)
兄者がとつぜん動き出し、ドクオに詰め寄った。
('A`)「なにを……」
ドクオは向かってくる兄者に、すばやく拳を突き出した。
だがしかし、それは掌でたやすく受け止められる。
('A`)「!?」
さらにその握り拳を掴まれ、無理やり引き寄せられた。
弾みでよろけるドクオの身体を兄者はもう一方の手で捕まえ、
完全に身柄を拘束した。
5 :
リプライズ投下 ◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 22:31:46.32 ID:xuSodBKs0
('A`;)「くっ……くぉ…!」
(´<_` )「私が寝床を用意してやるよ。フフ……牢獄なんだが、ね。
治安維持のためだが、安心しろ寝食は不自由させない。
そこで一晩ゆっくり考えるといい。
自分の未来を、利益を、立場を……!
さあ、連れてゆけ兄者!」
('A`)「離せっ……くそ、この馬鹿力が…!」
( ´_ゝ`)
从;゚∀从「ドクオさん!」
腕の関節を極められ、そのままドクオは無理やり歩かされる。
棒立ちになっている客や踊り子は、道を空けようと後ろに下がった。
誰も味方にはならない。ばかりか雑談や飲酒を再開する者もいた。
(´<_` )「ではまた後でな。ドクオ」
そういって、弟者はオンザロックのグラスを掲げてみせた。
ドクオは兄者によって、外に連れ出された。
目に入ったのは夕日が沈んだ、紫いろの空。
だがこれから向かう場所は広場の方に位置する、牢屋に違いなかった。……
6 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 22:36:54.83 ID:xuSodBKs0
ドクオは後ろ手にされ、日の落ちたハーモニーの道を歩かされていた。
兄者の腕力で完全に身動きが取れない。手錠の方がまだましだと思えるレベルだった。
('A`;)「っ……!」
( ´_ゝ`)
広場の方へただただ歩を進める。村は、酒場に入る前と変わった部分があった。
空の色だけではない。人の気がまったく増えていた。
禿散らかした頭の散髪屋ふうの男、寄れたネグリジェを着込んだマダム、一般的な村人から
それに派手な踊り子、そしてカウボーイ風の格好をしたハンター達。建物の窓からも、
スイングドアの隙間からも、その数は知れなかった。
皆がみな、好奇の目をドクオへ向けていた。
見世物になったようで気分が悪かったが、どうにもならない。
('A`;)「………」
連行されるしかなかった。
7 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 22:41:07.96 ID:xuSodBKs0
「「おいお前らッ! この野郎ハーモニーが気にいらねえんだとよ!!」」
酒場で相手にしたハンターが喧伝するように叫んだ。
ドアを勢いよく開けて、そう叫んでから連れられるドクオのほうへ走ってさらに、
「「この村がハリボテだとよォ!! こいつにとって村人は人間以下なんだとさぁ!!」」
('A`;)「(やかましい奴だ…)」
当然、いきり立つ野次馬が出てくる。あっという間にドクオの近くに人だかりが出来た。
歩くドクオと兄者とは一定の距離を置いていながら、それでも人はどんどん増えた。
喧伝したハンターやその取巻きは銃やナイフをちらつかせ、ドクオの歩調に合わせてくる。
「ふざけんじゃねえぞこの新顔!」 「やっちまえっ! 首吊りさせろ!!」
「ハンターをバカにしてんのか!!」 「殺せ! 殺しちまえ!!」
「潰れたカエルみたいな顔しやがってよお!!」 「俺らに楯突く気かァ!!」
「生意気だ! ぶっ殺せ!」 「死にてぇのかオラア!!」
('A`)「(つぶれたカエル…)」
( ´_ゝ`)
広場に着いた。外に出る人間の数はどんどん増えている。
もはや何を言っているのか分からないほどに、叫び声や怒号が飛び交っていた。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/23(日) 22:42:25.07 ID:TEezAWLT0
休日なのにここまで一切支援無しとか酷すぎるだろ、いくらなんでも
昨日は夕凪(笑)やら久々の良作短編で盛り上がってたのに……
つーかこんだけ過疎ってるならスレ立てた奴が率先して支援しろよな
どんだけ薄情なんだよシベリア民は
せっかく荒らしも自重してんだからもっとVIP盛り上げろよ糞が
創作板が全ての原因なのか?佐藤死ねよマジで
9 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 22:46:11.56 ID:xuSodBKs0
ドクオはあることに気がついた。これだけ興奮しているのにもかかわらず、誰一人
石を投げつけてきたり、もっと近づいて殴ってきたりと暴力を振るわない。
さっきの喧伝野郎はドクオについて回っているのに、武器を見せながら恨み言だけ吐いている。
「学者か知んねーけどよぉ!! この村バカにしたツケは払ってもらうぞッ!!」
('A`)「んじゃ払ってやるよ。ほら今のうちに殴ってみろよ」
その途端、ハンターの威勢はたちまち下がった。うう、と呻く声もした。
バツが悪そうな顔をして、周りと目配せしている。
('A`)「そんだけ怒ってんのに、今は絶好の機会なのにお前らは騒ぐだけ、か? ははぁん」
('A`)「この兄者ってのが、そんなにこえーのか。だから手出しできないんだろ?」
これには誰も反論できなかった。ドクオはそのさまを鼻で笑って、
('A`)「(決定的だな。流石兄弟以外は恐るるに足らず。なにが俺らの村だ。
ただの流石村に住む仔犬風情じゃないか。
……逆に言えば、これだけの犬をまとめる流石兄弟は……厄介なモンだ)」
10 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 22:50:12.83 ID:xuSodBKs0
ドクオと兄者は「シェリフ」と掲げた駐在所に入った。
その名の通り、保安官のための建物らしい。
入ってすぐに事務机や生活用品が一式そろった空間が広がっている。
そしてその脇には、牢屋が二つ並んでいた。牢獄だけ明かりが届いておらず、薄暗い。
駐在所に入ったのはドクオと兄者、それと恰幅のいい判事風の男の三人だけだった。
牢屋の外には番をしているハンター風の男、牢屋の中には囚人が一人。
野次馬は駐在所の外で、ふたたび怒号を飛ばしていた。
('A`)「それが今日のホテルかい」
判事「ああ。脱出など考えんほうがいいぞ」
牢屋の扉が開き、兄者に背中をどんと突き飛ばされ、尻餅をついている間に施錠された。
金属音が残響する。ドクオは立ち上がって牢屋を確認する。
固そうなベッドが一つ、簡易トイレが脇に、扉の反対側には鉄格子の小さな窓がついているが、
ガラスはなく、雨が降ればびしょ濡れになりそうだ。そしてその窓からは広場とうごめく人だかりが見えた。
ドクオの入った牢屋の外で、判事が電話で話していた。おそらく相手は弟者だろう。
そして判事の近くには兄者がふたたび不動で立ち、牢屋番もその隣にいた。
判事「はい……はい。そうです、野次馬がうるさく……」
11 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 22:53:54.84 ID:xuSodBKs0
判事「はい……畏まりました。それではまた」
電話を切ると、判事は牢屋番に命令した。
判事「ダミエルを出せ。処刑するそうだ」
ダミエルというのは隣の牢にいる囚人だろう。
「ひぃっ」とダミエルの口から恐れが漏れた。目が恐怖に濡れている。
牢屋番と兄者は牢を開け、ダミエルを無理やり引っ張り出して歩かせた。
必死に抵抗するダミエルは「助けて! たのむやめてくれ!」と懇願をするも、
そのまま外に放り捨てられた。
そして、興奮する野次馬によって、どんどんと首吊りロープの樹へ進まされる。
('A`)「(縛り首か……)」
外の騒ぎを窓から眺めていた。すると、駆け出してくる踊り子の姿が見えた。
从;゚∀从「お願いやめて! 彼を殺さないで!!」
ハインリッヒが現れ、人だかりの中に割って入っていく。
どんどん圧され、樹に近づくダミエルはなおも叫び続けていた。
从;゚∀从「弟なの! 誰か助けて! お願いだからぁ!!」
('A`)「………」
12 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 22:58:38.49 ID:xuSodBKs0
しかし誰も助けようとしない。ダミエルは手錠のせいで防御も出来ず、
殴られ蹴られをただ耐えるしかなかった。そして持ち上げられ、首が
ロープの輪のなかに入れられようとする。ダミエルは首を振って抵抗しながら、
「誰か! 誰か助けてくれ! 頼むやめてくれぇえ!!」
从;゚∀从「ダミエル! お願いやめて、彼を助けて!!」
('A`)「………」
ドクオは結末を見ず、ベッドに座り込んだ。外のハインリッヒの叫び声と
野次馬の「わぁあぁあ」という歓声が響いたことから、おそらく処刑は済んだのだろう。
('A`)「胸糞わりぃ……ん?」
牢屋番が交代をした。さっきまでの寡黙な男は引継ぎに敬礼をしながら出て行った。
兄者はいつの間にか居ない。駐在所に居るのは、ドクオと新しい牢屋番だった。
( ФωФ)「よぉードクオ。へへへ、いいザマじゃねえか」
('A`)「……まーた、てめぇか」
13 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 23:03:50.51 ID:xuSodBKs0
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
牢屋番のロマネスクはドクオをにやにや見下し続けていた。
時折ガンベルトから銃を取り出してドクオに狙いを定め、
( ФωФ)y=-「ばーん!」
撃つ真似をして、いびっていた。当のドクオはそ知らぬ顔で出された食事を頬張る。
なんだかんだお上が怖いのだろう。どれだけドクオを苛めたくても手は出せないし、
言われたとおりに食事は提供せざるをえない。所詮小物だとドクオは無視を決め込んでいた。
('A`)「(くそ不味いなァこのオートミール)」
( ФωФ)「へっへへ……ばーん! ばーん!」
('A`)「(カレー食べてぇ)」
ただ時間だけが過ぎていった。完全に夜になった。
闇夜のハーモニーを、ドクオは窓の外から見つめていた。
あれだけの喧騒がうそだったかのように、今は人っ子一人いなかった。
ただ、処刑されたダミエルの吊られた肉体が、満月に照らされている。
ロマネスクは遊ぶのにも飽きたようで、椅子に座り込んであくびをしていた。
支援がないのは当然じゃねえの?
はっきり言ってVIPに居る奴らがたまたまこのスレを開いて、まとめから全話を読む程興味を持ってくれる訳はねえだろ
初見の人間が興味を惹かれるような物がここにあるとは思えないし
寧ろそんな新規読者を期待してVIPでこんなスレ立てて投下してんだったらアホとしか言いようがねえよ
15 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 23:08:41.49 ID:xuSodBKs0
('A`)「おいお前ェ!」
眠る寸前だったロマネスクに、ドクオが鋭い声をかけた。
不機嫌そうに目を擦り、ロマネスクは苛苛したように、
( ФωФ)「ああ? んだこらぁ」
('A`)「お前いつだったか俺のファンだとか抜かしてたな……出せ」
( #ФωФ)「
ふざけんなよてめえ……!」
ロマネスクは立ち上がって牢屋のすぐ傍まで来た。
( #ФωФ)「誰がてめぇなんかの……!」
('A`)「いつだったか俺のシマ荒らしたときお前のほかにも二人いたな。
あのエベンキとおたふく顔。あいつらはお前とは別行動なのか?」
( #ФωФ)「いい気になってんじゃねえ! 誰が質問していいっつったコラァ!」
( ФωФ)「……が、まあアイツらと俺は能力が違ったからな。
俺は出世してあいつらはまだ下っ端をやってんのさハハ」
('A`)「(あーはいはいむしむし)」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/23(日) 23:09:48.44 ID:TEezAWLT0
>>14 じゃあなんで昨日はあんなに支援多かったんだ?
なんであいつら煙のように消えてんだよ気味悪いな
もう荒らしてないんだから存分に支援すりゃいいじゃねえかよ
まああまりにも調子こいてる奴がいたら荒らすかもわからんけどさ、もうよっぽどのことが無い限りは荒らさないからVIPに戻ってこいよ
このままじゃマジで終わるぞブーン系
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/23(日) 23:12:44.46 ID:CU0cWAzp0
どれ、支援してみようかね
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/23(日) 23:13:16.64 ID:78ZgfeFF0
終わりを認めるか認めないか
そういう段階だろ
とりま支援
19 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 23:14:10.55 ID:xuSodBKs0
( ФωФ)「なんせおれはよう、………」
ロマネスクの自慢話も聞かず、ドクオはさっさとベッドで横になった。
ドクオに目もくれず、ロマネスクは空に向かって喋り続けている。
そんな様子をドクオは笑いたかったが、そのとき、駐在所の外で人の気配がした。
('A`)「(誰だ?)」
( ФωФ)「……ってわけだからぁ…………ん、あれ、え!?」
从 ゚∀从「や。調子はどぉう?」
ハインリッヒが踊り子の服のまま、駐在所に入ってきた。
手にはウォトカの酒瓶とグラスを持って、ドクオを見ることなくロマネスクに、
从 ゚∀从「大変そうじゃんロマちゃん。こんな大役」
( *ФωФ)「い、いやあ! 責任感はあるからね俺、平気さ」
从 ゚∀从「ふふ……そういう男っていいよね」
突然の来訪者を、ドクオは体勢を崩さずに目で追った。
>>16 昨日は殆ど見てないがそんなに支援多かったのか?
1人当たりの支援数が多かったとかじゃねえの?
どっちにしろ初見が寄ってくるような話じゃなかったろ
21 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 23:19:46.43 ID:xuSodBKs0
ハインリッヒは事務机に酒瓶とグラスを置いて、にやけ面をしたロマネスクに、
こっちへおいでよと手招きをし、
从 ゚∀从「一緒に飲まない? あたし……あんたのこと気に入ってんの」
('A`)「(ケッ! ケーッ!)」
ウシャン・メットを顔にかぶせ己の視界を遮った。
しかし声だけは聞こえてくる。心の中で二人に毒づきながら、耳を立てる。
( *ФωФ)「え、ええ……。はい! 僕もハインさんのことが!」
从 ゚∀从「あら待ってよ、キスは早いじゃない。まずは乾杯ね」
('A`)「………」
ドクオはそれでもやっぱり二人の様子が気になって、ウシャン・メットを少しずらして視界をあけた。
すると、興奮しながら二つのグラスに酒を注ぐロマネスクの姿と、
壁にそろそろと近づくハインリッヒの姿が見えた。
不自然な動きをする彼女の姿を目で追い続ける。
( *ФωФ)「ど、どうぞハインさん……」
从 ゚∀从「じゃ、乾杯ね」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/23(日) 23:20:28.35 ID:CU0cWAzp0
しーえんするーよ
23 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 23:23:12.97 ID:xuSodBKs0
二人の様子が気になる。どうも様子がおかしい、とドクオは観察し続ける。
( *ФωФ)「………っぷはー!」
从 ゚∀从「すごいじゃない、ウォッカって強いのに一気なんて」
( *ФωФ)「いやいやいや! まだまだ余裕っすよー!」
すでにふらふらのロマネスクは、落ち着かない手つきで再びグラスに酒を注いだ。
そのときだった。ドクオはハインリッヒの目的をついに知った。
壁にかけられている牢屋の鍵をこっそり奪い取り、
胸元にしまうハインリッヒを、目撃してしまったのだから。
('A`)「!」
( *ФωФ)「まだまらあ……うひひ、ハインちゃん……あとで君の部屋にいっていーい?」
从 ゚∀从「ふふ、何をする気? ……待ってね。まだ店の後片付けが残ってるから」
( *ФωФ)「仕事ほったらかして会いにきたの? 悪い人だなぁーもう!」
从 ゚∀从「それはお互い様でしょ。……それじゃ、またあとでね」
ハインリッヒは用事が済んだら、さっさと出て行ってしまった。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/23(日) 23:26:02.97 ID:vZIkK2mOO
いつの間に復活してたんだ
25 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 23:28:05.12 ID:xuSodBKs0
ロマネスクはふらふらになりながら、ハインリッヒの出た扉のほうを見つめて、
( *ФωФ)「……う、うひひ……いいおっぱいしてやがる」
('A`)「(それは同感だな)」
( *ФωФ)「あの身体が……うひ! おれの、おれのモンに!」
('A`)「(それは認めねぇな)」
美しい来訪者が去って、また時間が過ぎていった。ドクオは寝たふりを続けているが、
ロマネスクは完全に寝入っている。酒瓶を片手に、床の上で突っ伏していた。
外で物音がした。「チャリ」という金属っぽい小さな音だった。
ドクオは窓のほうに目を向けると、そこには鍵束が置いてあった。
('A`)「………」
そっと起き上がって窓の格子へ近づく。鍵を置いた者はまだそこにいた。
从 ゚∀从「はやく……この村から脱出して!」
26 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 23:32:03.48 ID:xuSodBKs0
('A`)「………」
从;゚∀从「夜明けの向かいの裏路地なら警戒が薄いわ…塀をよじ登れば、きっと出れる」
小声でハインリッヒはそういうと、背後を警戒しながら、
从 ゚∀从「がんばって……この町のヒーローさん」
そしてハインリッヒは駆け出し、闇夜に消えていった。
ドクオは鍵束を受け取ると、手でそれを弄んだ。そして、
('A`)「(やさしくされた……女に、しかも美人に)」
o('∀`)o「(生きててよかったァ―――!!)」
ドクオは鉄格子に近づき、鍵を持った手を隙間から伸ばした。そして、
鍵を差し込んで、解錠をした。ガチャンという音が、耳に心地いい。
ロマネスクは起きる気配がなかった。ドクオは外に出て、おおきく伸びをした。
('∀`)「(生きてればいいこともあるもんだなあ!)」
そして玄関まで行き、去り際にロマネスクに向かって、
('A`)「俺の魅力>>>越えられない壁>>>お前の魅力。じゃあの」
27 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 23:36:43.57 ID:xuSodBKs0
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
('A`)「夜明け……か。どこに隠れるべきかね」
夜のハーモニーを、忍び歩きで進んでいった。
はじめに来たように人っ子ひとり居ないが、今回はそこまで視線や気配を感じない。
乾いた風がせわしなく吹き、地面の砂が音を立てては動いているが、
足音は自分以外のは聞こえてきやしない。
町並みの灯りはいくつか点いているが、半分以上は既に消灯していた。
時刻はおそらく日付が変わる頃合だろう。ごろつきが多い割には規則正しい連中ばかりらしい。
いや、体力が資本なだけかも知れないが。
('A`) ザッザッザ......
駐在所のほうを振り返ったが、ロマネスクが追いかけてくることもなかった。
あの様子からいって、気がつくのは朝、日がさんさんと昇ってからだろう。
ハインリッヒのいう裏路地はすぐに気がついた。灯りが少ないとはいえ、
広場の街灯はきちんと等間隔に設置されているうえにともされているので、
むしろ夕暮れ時より分かりやすいといえた。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/23(日) 23:36:43.86 ID:vZIkK2mOO
とりあえず支援
29 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 23:42:20.56 ID:xuSodBKs0
駐在所の向かい側から路地裏に入っていった。
ただでさえ薄い人の気配が、更に消えていく。
街灯の残光で照らされた細い道を、ゆっくりと歩いていった。
木箱が乱雑に積み上げられていて妙に進みにくい。ゴミ箱のすえた臭いも、鼻につく。
ドクオは木箱の中身をいちいち確認しようとしたが、きりがないのでやめにした。
中身は暗くてよく見えないが、古ぼけた布や靴、ゴミの入ったビニール袋などが詰まっていた。
('A`)「(俺の入れそうな大きさではあるが……)」
なんだか臭いし、とりあえず足を進めることにする。
そのうち壁が見えてきたが、それはどうやら民家らしい。横を見ると、
同じような民家がずっと続いていた。道は右と左の二手に分かれているが、どちらに行けばよいのか。
('A`)「(ハインちゃんはどこを行けと言ったんだっけ……ああ、向かいの路地裏を進む……
塀をよじのぼるといっても、これは民家だしな。……正門に近そうな、左にするか。
大雑把な説明ですむんなら大雑把な進み方で大丈夫だろう)」
月明かりとわずかに漏れる暖光を頼りに、気配を消して慎重に進む。
30 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 23:49:31.37 ID:xuSodBKs0
裏町は表通りと比べると、同じ木造りの建物でもずいぶん荒れ果てていた。
木材も古そうだし、用途不明な縄だの車輪だのが打ち捨てられている。
だが、ドクオからしてみたらこちらのほうがウェスタンの空気を感じられた。
人の香りがしない表通りはまさしくジオラマという趣だと、しみじみ痛感した。
('A`)「(埃っぽく砂っぽく、労働の臭いがする。……この場所はおそらく、昔の
ハーモニーの名残なんじゃないか? わずかにボロの臭いがするし、
牧場が近くにあったりするんじゃ……)」
狭い路地を進むと、さらに外側へ通じる道を発見した。道といっても、民家と
民家の隙間のような細いものだったが、ともかくそこへ行くと、牧場の姿が見えた。
牧場に近づくにつれ、足元の荒れ土がやがて清潔な芝生に変った。
森と芝生とに囲まれた乾燥地帯が、ハーモニーの環境らしい。
牧場の先には塀があった。塀といっても刑務所のように高くはなく、ジャンプを
せずとも乗り越えられそうな容易いものだった。正門の豪勢さ、堅牢さとは比べ物にならない。
そろそろと歩いていって、少しだけ塀から身を乗り出して外を確認した。
薄暗い世界のままだった。牧場よりも草木が盛んに伸びているグリーンフィールドだったが、
しかし、人の気配を感じた。塀から身体を戻したときにわずかに見えたのは、
ライフルを背負ったハンターの警備姿であった。
しえ
32 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/23(日) 23:56:52.95 ID:xuSodBKs0
('A`)「(まずいな……ライフルかよ)」
さすがにそんな飛び道具には立ち向かえない。ドクオはきょろきょろと辺りを見渡した。
傍には伸びた大樹が生えているので、それによじ登って身を隠しつつ様子を伺うことは可能だ。
葉の擦れる音で警戒される可能性はあるだろうが、背に腹は変えられない。しかし、
('A`)「(それだけじゃ解決にもならんしな……。あれ、今ってそもそも夜明けじゃないじゃん)」
ハインリッヒは「夜明けなら警戒が薄い」といっていた。
今は真夜中である。それならライフル野郎がうろうろ動いているのも頷けるというか、当然だ。
今度は馬小屋の方へ行く。塀との隙間は粗大ゴミの捨て置き場になっていた。
ドクオはもう一度まわりを確認すると、音をなるべく立てないように、ゴミの上を匍匐前進した。
すると手ごろなソファを見つけられ、
さらに近くには汚いラグが何層にもなって捨てられていた。
ドクオはにんまりと笑った。ソファに横になると、ラグを毛布代わりに、仮眠の体勢を取った。
('A`)「(おっとと。寝過ごす真似はしねえようにっと)」
腕時計で時刻を確認し、朝の四時に振動アラームをセットする。
それから腕枕をし、満月をしばらく見上げていた。
疲れた。
敵地進入が、ここまで緊張をするとは。
ドクオは目を閉じると、すぐに眠りについた。……
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/23(日) 23:58:40.42 ID:A96Te9YeO
どっくん余裕綽々すぎる
34 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 00:01:53.21 ID:m+Orkj8C0
寝てしまえば、朝までなど一瞬だ。アラームに起こされ、ドクオは覚醒した。
あくびを必死に噛み殺し、空をうかがう。
気持ちのいい天気だった。薄いもやのような雲と、紫や橙の混じった美しい空の色。
風がひんやりと涼しく、眠りからさましてくれている。
('A`)「(よくない状況のときほど天気はいつもいいもんだ)」
ドクオはラグをどけ、全身を起こしながら、使えそうなゴミはないかと見回す。
せいぜい縄くらいだろうか。強度を確認してから、適当な長さを頂戴した。
そうして、元の大樹の近くに戻っていった。ふたたび身を乗り出した。
('A`)「(おっ。誰もいねー。ラッキー)」
乗り込んで、塀を背中につけてふたたび注意を払う。しかし、聞こえるのは
ふくろうの調子っ外れな独奏くらいなものだった。やはりハインちゃんの
言うことは正しかったのか。ドクオはうんうんと頷いた。
緑土を進んでいった。足を動かしながら、逃げた先のことを考える。
自分からハーモニーに突入しておいて、何もしないまま脱走とはおろかなことだ。
しかし町の構造を確認できただけでも収穫というべきか。また村に行けばいい、そして……。
ドクオの思考が停止したのは、森まであと半ばという場面だった。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:04:15.47 ID:1w2QEjDjO
ドクオさん余裕すぎ
36 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 00:05:00.64 ID:m+Orkj8C0
('A`)
('A`;)「な……なんでお前がここに……」
( ´_ゝ`)
兄者が無言のまま、芝生の上に立っていた。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:08:38.65 ID:JpeMJfriO
不気味
38 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 00:08:42.04 ID:m+Orkj8C0
見晴らしのいい原っぱで、ドクオと兄者は対峙した。
しかし、条件はドクオにひどく悪い。
自分は丸腰。対し兄者は銃をベルトに差し込んでいるのだから。
('A`;)
( ´_ゝ`)
('A`;)「くっ!」
( ´_ゝ`)
ドクオは隠れる場の多い森の方へ逃げようとした。
考えるより先に身体が動いた、という感じだった。
39 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 00:11:42.78 ID:m+Orkj8C0
しかし、ドクオが駆け足をした途端、
兄者は一瞬でガンベルトから銃を抜き、
(;'A`)「っ!? うお!」
( ´_ゝ`)
閃光のような速さで銃弾を放った。
たちまち、ドクオの目の前の芝生がえぐれた。
(;'A`)「……な、なんだ?」
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:13:16.95 ID:1HlAHhn30
しえーん
41 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 00:17:10.46 ID:m+Orkj8C0
えぐれた、というよりは爆発したようだった。兄者の銃弾がドクオの足元の
地面を貫くと、いきなりそれらは白煙と大きな破裂音をたてたのだ。
(;'A`)「(……これは、地爆竹!)」
兄者の撃った地面には、地雷のように仕掛けられた爆竹が仕込まれていたのだった。
(;'A`)「そんな……ばかな!」
(;'A`)「(仕掛けた爆竹の位置を正確に覚え、それをあんな場所から……狙ったのか?)」
ドクオは膝をついた。敵うわけがない。そしてなにより、
地爆竹の放つ煙は往々にして毒や催眠ガスを含んでいるのだった。
気がつけばもう、身体の自由が、きかない。
(;'A`)「く、くそ……催眠ガスか」
( ´_ゝ`)
兄者がゆっくりと近づいてくる。だが、抵抗もなにも出来なかった。
ドクオは眩暈のような感覚に酔いながら、やがては地面に突っ伏したのだった。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:17:48.05 ID:1w2QEjDjO
支援
43 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 00:18:48.67 ID:m+Orkj8C0
by hook or by crook, we will....
.
44 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 00:24:34.97 ID:m+Orkj8C0
('A`)「ン……」
「お目覚めかな。ドクオ」
眩しさに襲われ目を開けると、そこには輝かしいばかりに照らす白色灯があった。
ゆっくり、視線を横にずらして顔を動かしながら辺りを確認した。
そこには広大な空間が広がっていた。やはり木造だが、見覚えのない場所だ。
ドクオは中央に座らされている、周りには椅子に座った民衆が居る。その間には
柵がしかれている。目を奥に向けると、ゆったりと皮付きのチェアに座ってる
弟者の姿と、やはり横には兄者の姿。まるで裁判のようだ、とドクオは思った。
(´<_` )「ここは村の奥に位置する裁判館……私の住居でもあるんだがね、
ともかく、ここは全ての裁きを行う厳正な地である。
ジャッジとして私はお前を見つめ、そうしてお前は被告として座っている。
……状況は嫌でもわかるだろう。いまから、裁判をするのさ」
('A`)「裁判……だと…」
( ´_ゝ`)
(´<_` )「そうだ。このハーモニーの治安と秩序を守る立場として、
"犯罪を犯した極悪人"の未来を、これから取り決めようと、いっている」
('A`)「(なにが極悪人だ……お前ら、悪の上にのさばってる連中が言えることか!)」
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:27:45.25 ID:JpeMJfriO
支援
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:28:23.13 ID:1w2QEjDjO
ほう
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:31:32.61 ID:HBdrXuTp0
だめだこれ
つまんねえ
48 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 00:31:54.49 ID:m+Orkj8C0
(´<_` )「静粛に! 静粛に!」
傍聴へ向けて弟者が一喝する。ぴたりとざわつきが止んだ。
(´<_` )「裁判を開廷する」
そういって、弟者はじろりとドクオを睨んだ。だがドクオはそ知らぬ顔で、
('A`)「裁判? 脱走罪のことか?」
( ´_ゝ`)
('A`)「そりゃ驚いたな。無実の罪で投獄されて、命からがら脱走したら罪ですってか?
知らねぇのか? 火星の現行刑法じゃ脱獄罪の重さは投獄の理由……元々の
罪を基準に変量すんだぜ? 不当に逮捕された人間の救済のために、な」
(´<_` )「……ク……ククク…」
('A`)「なにがおかしい! 治外法権だから無意味とでもいうのか?」
(´<_` )「ご教授ありがとうよドクオ。だがね、誰がお前を裁くといった?」
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:33:10.37 ID:HBdrXuTp0
才能っつーかクソ
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:33:22.71 ID:HBdrXuTp0
ゴミなんだよ
51 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 00:37:23.65 ID:m+Orkj8C0
('A`)「なんだと?」
(´<_` )「お前はその通り、無実の身さ。
―――我々が裁くのは、囚人逃亡の手助けをした、ハインリッヒだ!
被告は前に!」
傍聴の人間の中から、手錠をかけられたハインリッヒが現れ、弱弱しい歩き方でやってきた。
('A`)「!?」
从; ∀从「………」
(;'A`)「ちょっ…待てよ! ふざけんなよお前!」
(´<_` )「何がかね?」
弟者は悠然と言葉を発する。
(;'A`)「……この人が脱獄幇助? 証拠は……どこに……」
(´<_` )「本人が吐いてくれましたよ。監視をたぶらかし、酒を飲ませて
鍵を奪い、囚人にそれを渡しましたとね。なかなか強情だったがねぇ、ふふ」
(;'A`)「………」
ハインの顔を見やった。
乱れた髪でよく分からないが、少なくとも泣きはらしていたのは確かだった。
52 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 00:41:48.63 ID:m+Orkj8C0
从; ー从「いいんです、ドクオさん」
(;'A`)「…」
(´<_` )「脱獄幇助。いかなる理由があろうと、これだけは懲役三年以下の
罪に囚われるのさ。脱獄罪はドクオの言ったとおり変動するが、
幇助に関しては、一定の裁きが下る……ですよねえドクオ?」
(;'A`)「黙れ…」
(´<_` )「これが刑法の面白いところさ。やさしい天使に情状酌量はない。
そういうわけで被告、申し開きは?」
ハインは黙ってかぶりを振る。弟者はニヤリと笑い、
(´<_` )「酌量の余地もないな。脱獄幇助の罪により、ハインリッヒ・タカオカを
鉱山労働二年の刑に処する! さあ、連れていけ!」
立っていた番兵が動き出し、何も喋らないハインリッヒを引きずるように連れて行く。
(;'A`)「おい……待てよ…!」
ドクオは無理にでも暴れ出し、ハインリッヒを助け出そうと考えていた。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:43:59.70 ID:1w2QEjDjO
支援
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:44:29.02 ID:HBdrXuTp0
はあ?
55 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 00:47:11.60 ID:m+Orkj8C0
しかし、
( ´_ゝ`)
(;'A`)「……!」
兄者がいつの間にかドクオの背後に立ち、じぃっと見つめている。
(´<_` )「暴れたら殺すぜドクオ」
流石兄弟に阻まれ、ドクオはついに助け出すことが出来なかった。
扉の向こうにハインリッヒは連れて行かれる。扉の閉まる無常な音が、耳にいつまでも残響した。
(#'A`)「てめぇら……!」
ドクオはどす黒い感情に包まれていく自分を感じていた。
目の前の裁判長と背後のガンマン。この二人に今すぐにでも飛び掛りたい。
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、
ドクオは怒りを堪えるのに精一杯だった。
56 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 00:51:42.04 ID:m+Orkj8C0
気がつくと、部屋から人の気配が消えつつあった。
ドクオはふと背後を見ると、もう傍聴人は退出しようとしている。
そのなかに、傷だらけになったロマネスクを見つけた。
手ひどいリンチを食らったような、痛々しい姿だった。
残っているのはドクオと流石兄弟だけになった。
口火を切ったのは弟者だった。腕組をしながら難しい顔をして、
(´<_` )「さてさて……いやはや、心苦しい判決になったものだな」
('A`)「あ?」
(´<_` )「可哀想なことになったものよ。あんないたいけな女性が
野蛮な男だらけの鉱山に放り出されたら、どうなることやら」
('A`)「
黙れ」
(´<_` )「二年……果たして耐えられるものかね? 望んでもいないのに、
いきなり野獣どもの慰み者とは、嗚呼、心も身体も……
(#'A`)「黙れぇッ!!」
(#'A`)「ごちゃごちゃうるっせえ! 用件だけ喋りやがれ!」
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:51:48.52 ID:JpeMJfriO
いやらしいやり口だな
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:53:06.34 ID:HBdrXuTp0
クスクス
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 00:53:33.71 ID:1w2QEjDjO
えげつないね
60 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 00:57:26.82 ID:m+Orkj8C0
弟者の顔に見下したような笑いが現れる。
(´<_` )「フン……分かりきったことだろう。『仲間になれ』。
そうすればあの小娘も私の力で助けてやる」
(#'A`)「………」
(´<_` )「もう意地の張る場面じゃないさドクオ。
見殺しにしてまで、自分だけで発掘を頑張るつもりか?」
それでも沈黙を続けるドクオに、弟者はやれやれという口ぶりになって、
(´<_` )「しょうがないな……なら一つ、私のアキレス腱を教えてやろう。
お前をそこまで手駒にしたいのはな。お前が、ハンター組合の
最大権力者、ジョルジュさんの過去を知るものだからさ。
それも含めて、私はお前を仲間にしたがっている、というワケ」
(#'A`)「だとしても、こんなクソみたいな町で……」
(´<_` )「いい加減にしたらどうだい?
愚かな奴は愚かな意地を張るものだが、常にそれらは死んでいくよな。
ドクオォ……聡明な君もこの状況は分かっているだろう?」
61 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 01:01:55.62 ID:m+Orkj8C0
(´<_` )「我々はここから絶対に"逃がさん"。しかし仲間になるのなら手厚い歓迎をしよう。
今日、お前は一人の善人を見殺しにし、それでも頷かないというのか?
更に言えば我々の対応だって、日に日に悪い物になっていくだろう……」
('A`)「………」
(´<_` )「ここからむざむざ帰すくらいなら、殺しますよ。私達はね」
('A`)「………」
(´<_` )「それでもお前は、勧誘を拒むというのか?」
('A`)「考えさせろ」
ドクオは二人を見もせず、扉の向こうの外に出た。
弟者はドクオのその背中に向け、「今日中までに答えを出せ」と条件を添えた。
( ´_ゝ`)
(´<_` )「フン……」
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 01:02:44.37 ID:1w2QEjDjO
支援
もう止めたら?
次からは創作板にでも行って書いてろ
正直言ってつまらん
一話見てきたがそれでもつまらん
マジで
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 01:04:44.13 ID:mS3+c1MWO
おっおっお
支援
65 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 01:06:39.57 ID:m+Orkj8C0
('A`)「くそっ……!」
ドクオはハーモニーの町を彷徨っていた。
あてどなく歩くのは、答えが見つからない心境と一致している。
大通りには通行人が多かった。そしてそのどれもが、ドクオを目で追っている。
好奇の目もあれば、あきらかな嘲笑の目、更には怒りの目も見つかった。
ドクオは歩みを止めず、その視線に構うことなく、ただ闇雲に進んでいく。
('A`)「………」
酒場、「バイフック」の扉の前で足が止まった。
臓腑が熱くなるアルコールを強烈に身体が求めている。
しかしこの酒場に入るのは躊躇われた。踊り子の一人を、自分のせいで
失った店に、どの面を下げて入ればいいというのだろうか。
ドクオはそれでも、バイフックに入った。前回と同じくドクオの
来店と同時に喧騒がぴたりとやんだ。昼下がりでも客はそれなりに入っている。
そのどれもが、往来の人間と同じくドクオに目を向けていた。
その目はどれもが怒りを帯びている。
66 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 01:12:12.89 ID:m+Orkj8C0
「……なにしにきやがったてめぇ…」
チンピラがさっそくドクオに詰め寄ってきた。酒臭い息がドクオの嗅覚を刺激する。
赤ら顔ではじめは気づかなかったが、どうやら昨日絡んできた連中の一人らしかった。
「どの面下げてここに来れると思ってんだよッ! ああ!?」
('A`)「………」
「なんとか言えやコラ!」
いきなりみぞおちに一撃をくらった。思わずよろめくドクオへ、今度は
遠方からグラスが飛んできた。それも直撃し、ドクオは片膝をついた。
「おめぇがしゃしゃったせいでハインちゃんがなァ……! おめぇが……!」
('A`)「……ここのマスターは、いるかい?」
「はぁ…? 俺らへの言葉はないってか?」
いきり立つ人数が増えてきた。
('A`)「おれが謝らなくちゃいけないのは……マスターとここで働いている方々だけだ」
「殺すぞコラァ!」
顔に蹴りを、いきなり入れられた。それが合図となって、ほかの人間も騒いだ。
弾けるような痛みが走り続けた。殴る、蹴ると思うままにドクオへ加えようとする。
ドクオは立ち上がると、壁を背後にして、打撃を受け流すことに集中した。
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 01:15:53.35 ID:mS3+c1MWO
支援
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 01:16:23.21 ID:HBdrXuTp0
尿漏れレベルの
69 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 01:17:02.41 ID:m+Orkj8C0
「よさんか!!」
ドスのきいた一喝が飛んできた。カウンターにいる恰幅のいいマスターからだった、
厳しい表情でその場面を見つめている。
「よさんかお前ら……ドクオさん、この酒を、一杯目を受け取ってくれ」
('A`)「……御店主」
ふらふらした足取りでカウンターに向かった。
そこに置かれたショットグラスには、透明な色をしたアルコールが注がれている。
「この問いにだけ、答えてくれ。ハインは助けられそうなのか? YESかNOかで答えてくれ」
('A`)「………」
ドクオは何もいえなかった。マスターとも目を合わせられない。
沈黙がずぅっと流れた。するとマスターから、
「わかった。もういい。出ていってくれ……もうお前の顔など見たくはない」
謝ることさえできなかった。
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 01:17:42.68 ID:1w2QEjDjO
支援
71 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 01:22:07.43 ID:m+Orkj8C0
('A`)「……(何だっていうんだ、くそう! 何だっていうんだ!)」
バイフックから逃げるように飛び出すと、ドクオは裏路地の、
誰にも見つかりそうになりゴミための近くで考えをめぐらした。
途中に行商から買ったウォッカの酒瓶を片手に、飲んでは弟者の条件を思い出す。
('A`)「(俺の長年の計画を……ハンターなんかに渡すなど、絶対あってはならねぇ…)」
('A`)「(それにもっと言えば、ハインちゃんだって本当に俺の味方だったのか、
その前提さえ、疑わしいんだから……だから、突っぱねても……)」
しかし、しかし、、、
('A`)「もしハインちゃんが何も事情を知らぬ町娘で……
ほんとうに善意で助けたのだとしたら……
その可能性が、まだ残っているとしたら……」
('A`)「助けなくっちゃいけねえだろ……助けてくれた人は……」
72 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 01:26:33.17 ID:m+Orkj8C0
日が沈もうとしている。ハーモニーの夜が再び訪れようとしていた。
('A`)「(くそ! 俺はどうすればいいんだ……!)」
('A`)「………」
ウォッカの瓶をゴミだめに投げ入れた。もう期限は迫っている。
いずれにせよ、弟者の屋敷に行かねばならない。
('A`)「……行く、か」
立ち上がった、そのときだった。
路地の角から声が飛んできた。
「――だめよ! 弟者のとこにいっちゃ、ぜったいにダメ」
('A`)「はっ?」
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 01:29:45.58 ID:1w2QEjDjO
ん?
74 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 01:30:40.16 ID:m+Orkj8C0
人影がそのとき、ドクオの眼前に現れた。
明かりに照らされたその人影は、声の主らしい少女だった。
カウガールの格好をし、ドクオの行き先をふさいでいた。
||‘‐‘||レ「罠ですよ。絶対に行っちゃだめ」
('A`)「君は誰デスカ……?」
||‘‐‘||レ「事情を知ってるの。本当です。……詳しい話は後で、私についてきて」
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
ドクオは謎の少女の言うままに、その娘の家までやって来た。
とても粗末な家だった。
ガラスや鉄細工が見当たらない、古ぼけたうえに小さい木造の建築だった。
チャイムの横の表札には「アローン」と掲げられていた。
それがファミリーネームなのだろう。
75 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 01:35:56.46 ID:m+Orkj8C0
ドクオは家の内部を目視した。玄関から一本道で居間に続いている。
その脇には3つの扉があり、それぞれ「寝室」「WC」「バスルーム」とあった。
居間に通される。ソファに座らされると、ドニアンティーが出された。
||‘‐‘||レ「……ここなら安心です」
('A`)「何を話しても、か?」
照明で少女の顔がはっきりと確認できる。やはり十代の顔つきだった。
自分とは齢が15ほど離れているのではないか。
守備範囲外なので、女性相手でも緊張せずにすらすらと言葉が出てきた。
('A`)「まず匿ってくれたお礼を言わせてくれ。そして自己紹介を。
俺は考古学者のドクオ・ウツタール。その様子じゃもう知ってるだろうがね」
||‘‐‘||レ「ええ知ってるわ。…わたしはカウガールのエノーラ!
アーノラでも、エノラでもいいけど」
('A`)「なるほど、エノーラ・アローンさんね。……」
76 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 01:41:32.34 ID:m+Orkj8C0
('A`)「で、……聞きたいことは山ほどあるんだけど、まず始めに。
弟者の罠というのは」
||‘‐‘||レ「私も傍聴席にいたから、すぐにこれはウツタールさんを
はめる罠だなって分かったの。」
('A`)「それは、やはり……」
ドクオは言葉を紡ぎながら、頭の中の「違和感」のピースをはめていった。
そうだった。この一連の騒動には無視できない違和感が潜んでいた。
その違和感こそが、ドクオを引き止めていたといっても過言ではないほどの。……
从;゚∀从『弟なの! 誰か助けて! お願いだからぁ!!』
『誰か! 誰か助けてくれ! 頼むやめてくれぇえ!!』
从;゚∀从『ダミエル! お願いやめて、彼を助けて!!』
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 01:43:16.54 ID:1w2QEjDjO
支援
78 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 01:47:17.81 ID:m+Orkj8C0
最初の違和感はこのやり取りだった。弟だと絶叫するハインリッヒと、
その姉の言葉に耳を貸さず、「誰か助けて」と求めるダミエル。
更に言えば、夜のハインリッヒの行動。あれだけ簡単に鍵を囚人に
渡せるのなら、弟などさっさと助けてやれただろうに。
『弟なの! 誰か助けて! お願いだからぁ!!』
『誰か! 誰か助けてくれ! 頼むやめてくれぇえ!!』
『ダミエル! お願いやめて、彼を助けて!!』
ハインリッヒとダミエルの絶叫の奇妙な噛合わなさと踏まえてみれば、
一つの推察が浮かんでくる。
('A`)「ダミエルはハインリッヒの弟じゃない、とか」
||‘‐‘||レ「……そうですね、ダミエルは私と同じここの原住民です」
('A`)「……そしてハインリッヒは、善意で俺を助けたわけではない?」
||‘‐‘||レ「はい。あの裁判はただの……芝居ですよ」
('A`)「そう、か…………やっぱりな」
その確信がなかったが故に、ドクオはひたすら振り回されていた。
そして軽く、落胆もした。
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 01:51:04.25 ID:S+mc9l2r0
この書き手全然人気出なかったよねー^^
80 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 01:51:48.48 ID:m+Orkj8C0
||‘‐‘||レ「ダミエルは……ハインリッヒの弟なんかじゃない!
仕事をハンターに奪われ、空腹のあまりパンをひとつ盗んでつかまった人。
そしてそんな猿芝居のために、殺されたの……!」
エノーラの声が震えてきた。目には涙を浮かべ、
|| ;‐ ;||レ「私は許せないっ……! ハンターたちが……」
('A`)「……同感だな」
|| ;‐ ;||レ「だから私はあなたを止めたんです……あいつらの、
あいつらの思い通りにだけは、絶対にしたくないから」
まだやってたのか
もうちょっと時間の使い方ってのを見直した方がいいよ
それと自分の力量も
82 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 01:54:45.89 ID:m+Orkj8C0
話があらかた終ると、エノーラは台所に立った。
夕食を振舞ってくれるという。ドクオはソファで雑誌を読んでいたが、
('A`)「この匂い……カレーか!?」
||‘‐‘||レ「ええ。今日はこれと決めてて……お好きですか?」
d('A`)「お好きです!」
||‘‐‘||レ「それはよかった!……すみません、私が作ってる間、
お風呂掃除の方よろしくしてくれません? まだ洗ってなくて」
('A`)「構いませんよ」
ドクオは立ち上がって、バスルームへ向かった。
その間にエノーラの調理風景を盗み見る。
('A`)「(……安価のカレー粉かぁ。野菜は新鮮そうだけど、あの粉うまくねぇんだよな)」
83 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 01:57:56.60 ID:m+Orkj8C0
浴槽の掃除をしながら、ドクオはエノーラの話を反芻していた。
エノーラによれば、ハーモニーが変わったのは二年ほど前からという。
前村長の謎の失脚後、後任に不気味な男性――弟者が選ばれてから、全てが変貌した。
治安自治権を習得し、私設の団体に治安を管理させ……つまり、村内部の状態を
政府や警察の目から逸らせると、ガラの悪い移民をどっと寄せてきた。
そして混乱の中、近くの鉱山の発掘を産業のメインにすると宣言したのだった。……
強引な政策と無法の暴力。その二つを駆使し、弟者は完全にハーモニーを堕落させた。
今では原住民の大半は鉱山送りになっている。残った者は貧困に喘ぎながら、
ハンターの所有する動物の世話、掃除等の雑用をさせられている。
('A`)「(治安自治権と近辺のマーポールの癒着。それがあってこその無法か)」
デッキブラシでタイルを磨く。
('A`)「(人類ってのはなんだかんだ成長しねぇよな。22世紀にもなって、
こんな出来損ないの村を放置しちゃえるんだから)」
ドクオはため息をついて、それからデッキブラシの頭部を眺めた。……
84 :
ラスト投下 ◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 02:01:50.30 ID:m+Orkj8C0
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
||‘‐‘||レ「あ、お疲れ様です。すみません急に連れたくせして」
('A`)「いやいや。客人として過ごすのも居心地が悪い」
食卓についた。机の上にはすでにディナーが用意されていた。
宣言どおりのカレーライスだった。スパイスの匂いがつんと鼻を刺激した。
('A`)「うん、うまそう」
カレーの具材はベーコン、玉ねぎ、ニンジン、ジャガイモだった。
ライスはどうやらレトルトらしい。ツヤや見た目の重さがそう物語っていた。
ドクオの皿にはベーコンが多く乗せられているが、エノーラの皿にはほとんどない。
('A`)「そんな、遠慮せずに肉も食えばいいのに」
||‘‐‘||レ「いいんですいいんです」
ドクオはちらりと台所のほうへ目を向けた。
寸胴鍋が二つ、コンロの上に置いたままでいる。
カレーの量はそれだけでは分からないが、鍋の大きさからして結構作っているようだ。
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 02:03:23.72 ID:mS3+c1MWO
いつの世にも悪徳は蔓延るもんやでぇ・・・
86 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 02:05:30.61 ID:m+Orkj8C0
これで今日は投下終わりじゃい。
やっぱvip投下じゃないと張り合いがないぜ。
書き溜め分はこれで尽きたんで、もう寝ます。みんなお疲れさまでした。
いや、張り合えてないし
葬式みたいなスレで一体何を言っているんだか
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 02:09:57.34 ID:mS3+c1MWO
乙でした
次も待ってる
89 :
◆tOPTGOuTpU :2011/10/24(月) 02:19:59.94 ID:m+Orkj8C0
おっとっと一つだけ言い忘れてた、
プリズナーno.6を知っている人はいるかな、あれは名作だよ。
これだけは言わないよね、展開的に。
それじゃ今度こそ、またvipで
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/24(月) 02:22:01.88 ID:HBdrXuTp0
え?これで??w
出来損ない
おっつっつー
期待