1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
雑居ビルの二階にある、怪しげな占いの店。
つんと鼻を刺すお香が立ちこめる中、ドクオはいた。
( )「見えます、見えます」
大きな丸い水晶に手を翳して、占い師は声を潜めた。フードを深く被っているせいで顔も分からない。
('A`)「なにが……見えたんですか?」
( )「あなたの未来です」
ドクオの表情が変わる。それは、まさに彼が知りたかったこと。
('A`)「俺は……何をしていますか?」
占い師はそれには答えず、囁くような声でこう告げた。
( )「これから一月の間に、あなたを好きになる人が現れる。そしてあなたもその人に恋をする。しかし、二人を結び付けるためには、あなたは努力をしなければならない。もしーーこの機会を逃せば」
('A`)「逃せばーー」
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 22:43:16.60 ID:s5U6MXZmO
期待
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 22:47:44.12 ID:l4HFXbW+0
馬鹿馬鹿しい。
自ら訪れておいてそう思うのは些か理不尽な気もするが、ドクオは唾を吐きかけてやりたい気持ちだった。
大体、占いほど胡散臭いものはない。あんな水晶を見て何か見えるのだとしたらそれは幻覚か何かだ。薬物か精神疾患に違いない。
電車に揺られながら、失った一枚の福沢諭吉のことを思う。彼がいれば、どんなに美味しいものが食べれただろう。回転寿司なら多く見積もっても五回は行ける。
福沢諭吉が言っていた。学のないものは愚かだと。まさに俺ではないか。まったく、まったくーー
陰鬱とした気持ちのまま朝を迎え、会社に向かう。自分のデスクに着いて溜息を吐き出した時、ちょうど同僚の長岡が出勤して来た。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 22:53:59.60 ID:l4HFXbW+0
( ゚∀゚)「よう、お早う」
('A`)「おはよ。今日は早いんだな」
隣の隣が長岡のデスクだ。ビジネスバッグを置くと、キャスター付きの椅子に乗りながら、滑るようにドクオの隣に来た。
( ゚∀゚)「で、どうだったんだ?」
('A`)「どうって、なにが?」
( ゚∀゚)「占いだよ、占い。昨日行くって言ってただろ?」
('A`)「ああーー」
ドクオはほんの少し躊躇った。しかし、あんなもなは会話のネタとして笑い流してしまった方がいいのだ。上司がまだ出勤していないことを横目で確認して、ドクオは話し出した。
('A`)「ーーそれで、もし機会を逃せば」
( ゚∀゚)「逃せば?」
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 22:59:58.72 ID:lyoC11Eq0
支援
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 23:00:45.33 ID:CEvufYzi0
四畳半っぽいな
恋人が占い師だったてオチだろ
完
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 23:04:41.48 ID:l4HFXbW+0
('A`)「俺は一生恋愛は出来ないらしい」
ドクオはさあ笑え、と構えたが、何故だか長岡は神妙な顔をしていた。
( ゚∀゚)「案外さあ、当たったりしてな」
('A`)「ええ?」
ドクオは意外だった。長岡がまさかそんなことを言うとは思わなかったからだ。占いの類いなどを信じるような人物だったとは。いつも冗談を言い、明るくておちゃらけた彼が。
('A`)「信じるって言うのか?」
( ゚∀゚)「そりゃあそのまま鵜呑みにすることは出来ないぜ。でも、もしかしたらって思わない? もし当たってたら、お前の行動如何で後悔するはめになるってことだろ?」
ドクオは鈍い声を出す。もし占い師の告げたことが真実ならば、このまま過ごせば一生独身。
( ゚∀゚)「そもそもドクオがそこに行ったのって、なんでだったっけ?」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 23:14:57.13 ID:l4HFXbW+0
('A`)「彼女が、欲しいから……」
ドクオは頬がかっと熱くなるのを感じる。
( ゚∀゚)「……ほら、そうだろ?」
長岡が少し、顔を歪めた。
( ゚∀゚)「つまりは、その占いの真偽はともかくとして、これから一月の間、自分自身を変えることが大事なんじゃないか、ってこと」
('A`)「自分を変える……」
( ゚∀゚)「そう。例えば、髪型を変えてみるとか、服装に気を使ってみるとか。今までの女の子に対する消極的な行動を改めてみるとか」
('A`)「なるほど……」
彼女いない歴年齢であり、女友達すらいないドクオにとってはなかなかハードルが高そうだ。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 23:25:55.95 ID:lyoC11Eq0
ほほうほう
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 23:26:03.92 ID:l4HFXbW+0
( ゚∀゚)「今まで何とも思っていなかった女と、もしかしたら……なんてこともあるだろ。どこに出会いがあるのかなんて誰にも分からないしな」
('A`)「確かに……」
( ゚∀゚)「だから、まあ、ちょっと頑張ってみたらどうだ? 本当に彼女、出来るかもしれないぞ」
(*'A`)「……」
彼女と二人で、並木道を歩く自分を想像する。お互い微笑み合う幸福な二人が街中に溶け込む。
いい、かなりいい。今年で二十五歳。今まで味わったことのない幸福を、そろそろ得てもいいんじゃないか。
('A`)「長岡、お前に頼みがある」
( ゚∀゚)「な、なんだよ」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 23:32:40.13 ID:EFgEE85mO
25歳って妙にリアルな感じがする
支援
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 23:33:13.75 ID:l4HFXbW+0
('A`)「俺、頑張ってみようと思うんだ」
思わず長岡の手を取り、握る。
( ゚∀゚)「い、いいんじゃないか?」
('A`)「だから、俺が彼女出来るようアドバイスをくれないか?」
( ゚∀゚)「アドバイスって……」
('A`)「お前、彼女いたことあるよな?」
( ゚∀゚)「こ、恋人はそりゃあ何人か……いたけど」
('A`)「俺、彼女出来たことないんだよ。だから、どうしたらいいのか全く分からないんだ。髪型も服装もセンスないし、何より自分に自信がない。だから女の子とどう話したらいいのか分からない。頼む、俺を変えてくれ」
困惑気味の長岡に、ドクオは頭を下げて懇願した。もしかしたら、本当にもしかしたら、最後のチャンスかもしれない。自分を変えるためには、これしかない。
( ゚∀゚)「……わかった」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 23:36:25.60 ID:c6l8fCzC0
支援
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 23:37:34.23 ID:6MthuGrpO
ふむ。支援する
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 23:41:41.49 ID:l4HFXbW+0
('A`)「長岡……」
( ゚∀゚)「ただし、やるなら本気出せよ。途中でやっぱやめた、はダメだからな。自分を変える、しかもこの年になると、それってすげー大変なんだからな!」
ドクオは少し考える。今まで、身を削るくらい努力したことはなかった。すべてなあなあに暮らしてきた。
答えは決まっている。
('A`)「宜しく頼みます!」
( ゚∀゚)「よし、じゃあ俺も本気で協力する。頑張ろう」
('A`)「はい!」
二人はがっちりと堅く握手をした。
俺、頑張ろう。どこの誰が俺を好きになってくれるのか分からないけど、もしチャンスがあるのならそれにすがり付こう。
回転寿司より恋人だ。昨夜までとは打って変わり、ドクオは晴れ晴れした気持ちを感じていた。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/03(日) 23:53:27.28 ID:l4HFXbW+0
昼休み。ドクオと長岡は、作戦会議をしようと近所の定食屋に来ていた。
生姜焼き、カツ丼をそれぞれ注文し、長岡はメモを取りながらいくつか質問をしていた。
( ゚∀゚)「持ってる服ってどんな系統?」
('A`)「系統って言ってもな。ほぼユニクロだし……」
( ゚∀゚)「マジ? オールユニクロ?」
('A`)「あれ、俺ってちょっと異常?」
( ゚∀゚)「結構……いや、もしかしたらそういう奴、他にもいるのかもしれない」
ξ゚听)ξ 「お待たせしました」
きっちりカールされた髪の毛を揺らしながら、店員が料理を運んで来た。いつも通っているこの店だが、始めて見る。こう言ってはなんだが、少々くたびれたこの雰囲気に合わないような。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 00:00:54.11 ID:mTb0BuPg0
ξ゚听)ξ 「カツ丼の方はーー」
( ゚∀゚)「あ、俺です」
長岡の前にどんぶりが置かれる。
ξ゚听)ξ 「失礼します」
店員がドクオの前に定食を置く。ふんわりといい匂いがして、ドクオはほんの少し心臓が高鳴った。あまりにも女性に慣れていないせいか、ほんの少しの接触でいろんなことを考えてしまう。
( ゚∀゚)「あのさあ」
ドクオはぎょっとした。立ち去ろうとする店員に長岡が声をかけたからだ。
ξ゚听)ξ 「はい?」
( ゚∀゚)「いや、初めて見るなあ、って思ってさ」
にかっと長岡が笑うと、店員もつられて微笑んでいた。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 00:11:15.55 ID:mTb0BuPg0
ξ゚听)ξ 「実は、店主の娘なんです。こっちに戻って来たんでお店手伝い始めまして」
( ゚∀゚)「へえー。かわいい女の子がどうしてこの店に、って思ったんですよ。な、ドクオ」
('A`)「あ、う、うん」
ξ゚听)ξ 「女の子って、あたしもう二十五ですよ」
店員はくすくす笑いながら答えた。
( ゚∀゚)「マジ? 俺たち同い年!」
ξ゚听)ξ 「ええ、本当ですか?」
( ゚∀゚)「これからもこの店来るから、覚えといてよ」
ξ゚听)ξ 「あはは、わかりました」
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 00:12:36.84 ID:+I+dAg9Z0
面白そうだが何時終わるんだか
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 00:15:40.23 ID:mTb0BuPg0
店員が奥に戻ると、長岡は真面目な顔でドクオと向き直る。
( ゚∀゚)「とまあ、こんな感じだ。話そうと思えば、どんなきっかけでもいいんだよ。出会いっていうのはどこにでも転がってる」
('A`)「すげえ……」
普段、昼休みに共に食べに行くくらいしか付き合いがなかったことをドクオは悔やんだ。もっと一緒にいれば、こういうテクニックを盗めたかもしれないというのに。
( ゚∀゚)「で、さっきの店員どうだったんだ?」
('A`)「えっ、いやあ、まあーー可愛いけど」
( ゚∀゚)「けど?」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 00:24:09.95 ID:mTb0BuPg0
('A`)「けども……」
自分とは合わないのでは、とドクオは思う。一緒に並木道を歩く姿が想像出来ないのだ。
( ゚∀゚)「そもそも、ドクオってどういう子が好きなの?」
('A`)「ううむ……」
初恋は、知世ちゃんだった。しかしそれはテレビから出て来てはくれない。
待てよ、とドクオは思う。俺、好きな人、出来たことない。
そのことを告げると、長岡は驚いた。思わずむせてしまったくらいだ。
( ゚∀゚)「マジかよ……。それじゃあ、彼女、出来ないよなあ」
('A`)「なんていうんだ。こう、好きになるくらい女性とかかわったことがあまりないんだ」
( ゚∀゚)「大学でもか? サークル入ってれば、嫌でも関わるだろ」
('A`)「メンバー、男しかいなかった」
( ゚∀゚)「oh…」
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 00:28:37.84 ID:mTb0BuPg0
ごめん…
思った以上に時間かかった
書き溜めてまたスレ立てる
お休み……
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 00:30:27.77 ID:9hODLDaa0
待ってる
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 00:31:53.94 ID:12C+IOn3O
乙!待ってる
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 00:33:00.74 ID:+I+dAg9Z0
乙
次回楽しみにしてる
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
楽しみにしてるよ
乙