1 :
よろしく:
妹「最近ファッションセンスも良くなってきてるし」
妹「ずいぶんフレンドリーになってる気もする」
妹「絶対。なんかある」
兄「なんだよ、藪から棒に」
妹「いたの?」
兄「いたよさっきから」
妹「うっさい」
兄「へえへえ。じゃ昼飯買ってくるから。おとなしくしてろよ」
妹「うっさい。指図すんな」
兄「かわいくないやつ」
妹「もーはやく行け!あとアイス忘れんな!」
兄「わがままなやつ」
妹「でーてーけ!」
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 20:48:13.68 ID:rgpAY7zO0
ブログでやれ
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 20:48:40.78 ID:uHJMadai0
HNまでつけて何こいつ痛々しい
妹「はあ。だるい」
妹「お母さんもお父さんもしばらく留守だし。ほんと死ぬかと思ったけど」
そこにしゃしゃり出てきたのがあの兄。
妹「キモいのが致命的だけど」
兄「なーにぶつくさ言ってんだ?」
妹「いたの?」
兄「いるよ帰ってきたんだから」
妹「うっさい」
兄「ほら、アイス買ってきたぞ。ハーゲンダッツでよかったろ」
妹「あずきバーが良かった。投げたらダメージ判定ありそうだし」
兄「俺にかよ!」
兄「ほら、飯もできたから。食え」
妹「なにこれ」
兄「なにって?うどんだけど」
妹「見ればわかるわよ。うどんが何でこんなにスパイシーな匂いがするのよ」
兄「なんでって。そりゃあカレーうどんだから」
妹「…あのね。どこの世界に、病人に香辛料たっぷりのインド料理食わせる家庭があるのよ」
兄「カレーうどんがインド料理なわけあるか!」
妹「あ、インドならあるか。病人にカレー」
兄「聞けよ!」
兄「それにこれは俺の分だ。おまえは、こっち」
そういってお盆にもう一つ乗った普通のうどんを差し出す兄。
妹「うーん。なんか、だしが薄そうじゃない?色ないじゃん」
兄「そりゃあカレーうどん見た後だからじゃねえの。だいたい、病人なんだから薄味で丁度いいくらいだろ」
妹「むー」
妹「わたし、そっちが食べたい」
兄「はあ?おまえ、病人だろ。こんなん食べたら、胃が驚くぞ」
妹「何よ。食べたいものを食べた方が身体に良いに決まってるでしょ!」
妹「さっさとよこす」
兄「…まあ俺はいいけどよ。ベッドの上なんだから、気を付けて食えよ」
そっと箸とカレーうどんを差し出す兄
妹「わかってるわかってる」
兄「こらまて、いただきますは」
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 20:51:35.88 ID:xgsQkYhe0
妹「こんな時まで保護者面?キモ。」
兄「なわけあるか。食べる前に言うのは当たり前のことだろう」
妹「ていうか。なんであんたいつまで私の部屋にいるのよ。用が無いならさっさと出てって」
兄「一応俺だって看病してる訳だからな。…まあ、お前がいいってんなら出てくけど」
妹「私はそんなの頼んだ覚えないから」
兄「へえへえ、これは俺が勝手にやったことですよー」
兄「かわいくないやつ」
去り際にちくりと言い放つ。
妹「…あーもう」
ほんと余計な一言が多いやつ。なんであんなのが、実の兄なんだか。
だんだん、腹が立ってきた
妹「こんなときは…やけ食い!」
妹「ずるずるずるゴフッ!!」
のど痛っ!!
カレーがこんなに腫れたのどを攻撃してくるなんて知らなかった。
ドタドタドタ、ガチャリ
兄「おいどした。…なんだ、むせてるのか?いわんこっちゃない」
もう、お節介焼きがすぐに飛んできた。隣の部屋だから聞こえたみたい。
妹「むううう」
わたしは涙目になりながら意味もなく睨んでみる。
兄「そう睨むなよ。いま拭いてやるから」
妹「むううう」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 20:54:07.07 ID:xgsQkYhe0
兄「やっぱカレーうどんはダメだな。おれのやるよ」
妹「は。あんたの手え付けたのなんか食べられるかあ!
それに、あんたまでまた風邪引いたらどうすんのよ!」
兄「心配すんな。まだ手付けてなかったから。
あと、だーれがお前と一緒のどんぶりをすすると言った」
妹「え」
兄「お前が全部食べていいに決まってるだろ」
妹「そ、そ…
そんなことわかってるわよ!だーれが、あんたなんかと!」
兄「はいはい。わかったから冷めないうちに食べろ
あ、食べきれないなら残すんだぞ、無理すんな」
妹「私はさっちゃんか!」
※さっちゃんの歌のね
10 :
忍法帖【Lv=12,xxxPT】 :2011/04/02(土) 20:56:19.81 ID:hESuokNvI
ほんわかするね
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 20:57:10.78 ID:xgsQkYhe0
妹「じゃあ…いただきます」
兄「はいよ」
ずずず。 ん、おいしい。
そのまま無言で箸をすすめる私
妹「…そういえば」
兄「ん?」
妹「あんたはそこで見てるだけでお腹膨らむの?」
兄「いんや?ワタミの社長じゃあるまいし、もちろん俺も食うぞ」
妹「ブラックな発言ね」
兄「悪ィ…って、おまえもだよ!」
※わからない子は ワタミ 生きていける で検索してみよう
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 20:58:06.66 ID:xgsQkYhe0
妹「で、何食べるの?」
兄「そりゃあお前が普通のうどんを食べてるんだから、俺は・・・
・・・・・・・あ」
妹「ばっかじゃないの。だから言ったのに」
私もいま気付いただけだけど。
兄「そういうことか…お前の手つけたカレーうどんを俺が食うと、風邪がうつる、と」
妹「だから、私はタンドリーチキンパイの包み焼きでいいって言ったのに」
兄「言ってないよね!?」
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:00:05.44 ID:xgsQkYhe0
兄「まあ、いいや。食っても大丈夫だろ」
妹「は、なんで?移るに決まってんじゃん」
兄「いいや、移らないよ。俺抗体持ってるもん」
妹「なにそれ」
兄「元はと言えば、俺の風邪をお前にうつしちまったんだからな。俺にうつるわけないじゃん」
妹「なっ!…まあ確かにデリカシーのかけらもないあんたに移されたんだろーけど…
そんな確証もないし」
兄「なんだ、らしくないのな。いつものお前なら間接とかすげー嫌がるのに」
妹「はっ!」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:01:47.30 ID:xgsQkYhe0
妹「食べるの禁止!食べるの反対!やっぱり私が食べるから──」
兄「遅い。もう食べた」
そう言いながら口をもぐもぐさせている兄
妹「…がーん」
兄「ほんと、お前が気にすることじゃねえのによ。いろいろとさ」
妹「…気にするってぇの」
ぼそり。
兄「ん。なんか言ったか?」
妹「はぁ。もう知らない。勝手にしろ」
しばらくうどんをすする音だけになる。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:04:27.32 ID:xgsQkYhe0
妹「…ごちそうさま」
兄「はいはい、お粗末様。全部食べられたんだな、えらいぞ」
そう言って頭をなでなでしてくる兄
妹「っ!!
や、やめろ ばかあ」
兄「ん、嫌か?」
妹「嫌とかいやじゃないとかじゃなくてええ…」
風邪でナーバスになっているせいか、うまく反論ができない。
兄「あれ、顔が赤いな。また熱が上がったか?」
妹「ばっ!!ちっがーう!!
もう、いいから出てって!!」
そう言って兄を追い出そうとする。
兄「ば、よせ。わかった、わかったから」
兄「じゃあまた夜に薬と飯、持ってくるから。それまで大人しくしてるんだぞ」
兄「…じゃあな、桐乃」
妹「…ふんっ」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:04:57.74 ID:/Nw6qGeh0
なんか高須と大河が浮かぶ
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:05:09.56 ID:xgsQkYhe0
-‐=‐ _
/ ′ 丶
, /l i、 、
. // .′、{ \ \ l }} 〈〕 l7 ,、 私の兄がこんなにかっこいい訳がない
/ { l{ , -ミヽ 、,>_<x| , { , -、`′
. 〉ヘ《 fり ´f'う}}ノ ,ヘ. 、 /⌒ヽ はじまるわよ!
fト、 ー_介ー:: ' _`´::ィレ个:7 l
〈√ ̄ /.ィゝ、イ ) .ィ :ト ヽ,′ | 刮目して見なさい!
 ̄ ー- ソ / { />r- // 厶- 7 '
. / / \:} {__{./ / // / /
/ / /:|〈と朮、/ 〃 / ∠ \
. ; ; Y/::Krくリレ /ィ7 ―/ }_ \
| { {トミ三/ ̄ ̄`く. フ7 , い }
. 丶 、 K ゝ-―‐-、 { ′ / } }ノ
. \ミ- 丶>トぃヽ_ 丶.ー、`ー-、 ,ノリ
` {/! .ヘ こ> .`ー'ごノ
. 〈 /∨ ∧ _/ト r ´
〉{ 人 丁 } いヽ
/ \/ / / } }」
. / >{___{_ ィ/
/ / | /
て
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:18:14.64 ID:xgsQkYhe0
そんなこともあって2日後。
私がほどよく元気を取り戻した、ある日の晩の話。
妹「パソコン立ち上げるのも、ほんと久しぶりね」
立ち上がるなり、Skypeに友人からメッセージが入っていた。
妹「あっ…いっけない!」
早速、通話ボタンを押してSkype通話をしてみる。
トゥルルルルル
トゥルルルルル
友「こんばんは!久しぶりだねー、桐乃!」
妹「連絡してなくてごめんね。ほんと久しぶり!」
桐乃だったのかよ
さげ
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:20:46.90 ID:xgsQkYhe0
この友人とは、しばらく連絡を取り合ってなかったので話が弾む。
私たちは取り留めも無い話をしばらく続けた。
そんななか
友「でね、その子のお兄さんがコラーって助けに来たんだけど」
妹「へえ、良かったじゃん。助けに来てくれたんだ」
友「そう!そうしたらみんなお兄さんにばっかり注目が集まっちゃって!」
妹「…へえ」
友「その子は嬉しいやら恥ずかしいやらで、いられなかったって」
妹「……」
友「…桐乃?」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:21:20.03 ID:xgsQkYhe0
妹「んっ?なになに?」
友「桐乃、まーた何かあったの?」
妹「なにっ?別になにも?兄貴って家によって全然違うんだなあってびっくりしただけと言うか」
友「…私は"なんか"としか、聞いてないんだけど」
一杯食わされた?いや、自爆しただけ。
友「桐乃、またお兄さんとなんかあったんでしょ」
妹「ええ?な、なにもないよ?
それに全然誰にも、関係ないことだって」
友「関係あるよ!わたし、前もね、お兄さんと桐乃のことで首つっこんだじゃん
…あの時のことでね、もし二人がすごく気まずくなったんなら、私のせいだよ」
だから、関係あるんだよ!」
妹「…あやせは優しいんだかかき回してるんだか、よくわからないわ」
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:22:45.54 ID:xgsQkYhe0
友「だから、ねっ?相談してみて?」
妹「…話したとしても何も面白い話じゃないんだけど」
友「大丈夫だよ!桐乃のことだからこそ私も一緒になって考えてあげたいんだよ。だから私に相談してみてっ?」
妹「もー、調子いいことばっかり……」
友「桐乃、しばらく居なかった間に、なにかあったんだよね?」
妹「別になにかあったわけじゃないけど。
…あいつ、私に頂きますとごちそうさまを無理矢理にでも言わせたり」
友「いいお兄さんじゃない。桐乃もいただきますは言わなきゃだめだよ」
妹「そりゃあっ! そうだけどお……
あいつ、よくできましたとか何とかで頭撫でてきやがったのよ!マジありえない!
ほんと行動の一つ一つがキモいのよ!あいつって」
友「はは…それは」
妹「あやせも兄貴と話すってんなら、言ってやってよ!
そういうキモいことばっかしてるから彼女いないんだーって!」
友「……お兄さん、彼女いないの?」
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:24:01.31 ID:xgsQkYhe0
はっとした。そういえばあいつ…いるの、かな?彼女とか。
友「桐乃は知ってるの?お兄さんに彼女がいるかって」
気になる気になる〜としきりにまくし立てるあやせ。
束の間、私は我にかえりすぐに言い返す。
妹「ばっ!
……ばっかじゃないの!
あたしが知るわけないじゃん!あいつのプライベートとか。うえ〜想像したら鳥肌ものだわ」
ものの例えでなく鳥肌がたった。あいつに彼女って。
あの芋みたいな奴にどんな女の人が惹かれるんだか。
友「そう?いま桐乃だんまりしてたじゃん。想像してたんじゃないの?
お兄さんの彼女がいたらどんなんかな〜、とか」
妹「はああっ!?マジありえないって!
もーやめてよ。あやせってそんなキャラだっけ」
友「え〜私はいつもこんなんだよ?いつも一緒に話してるじゃんっ」
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:26:00.01 ID:xgsQkYhe0
さっきから疑問に感じていた。
あやせって、コイバナとか、誰が誰と付き合ってるとか、元々そういうことに首を突っ込んでくる子じゃなかった。
…それとも夜に2人で話すコイバナって、こんなに盛り上がるモンなの?
妹「って!そんなわけないでしょ!私の兄貴でそんな話!うえ〜、私もうだめだわ。ついてけない」
私は画面から身を引いて椅子にもたれ掛かる。
友「…そう。
ごめんね。人のお兄さんでこんな有ることないことばっかり言っちゃ、悪いもんね」
妹「んん…別に悪いってことはないけど」
あの兄貴なんだし。
ただ…
妹「ただ…気持ち悪いだけ」
友「ふふっ!そっか。
桐乃はお兄さんに彼女がいるところ、想像したくないんだね」
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:27:07.67 ID:xgsQkYhe0
妹「はあっ!?
なんでそーなるのよ!なわけないじゃない!」
…今晩の、あやせの幸せ回路はほんと全開すぎて付いていけないわ。
友「もう、けんそんけんそん。
…やだこんな時間になっちゃった。桐乃、明日話そうね!」
妹「ちょ、ここで終わり?」
友「ごめんね。明日早いの忘れてたんだ。
それともお兄さんの話、もっとする?」
あやせはわかっていながら意地悪な質問を投げ掛けてくる。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:28:18.89 ID:xgsQkYhe0
妹「そうじゃなくってー!
…もう、いい!あやせがそんな意地悪だなんて知らなかった」
友「ごめんね、桐乃。また明日ちゃんと謝るから。
じゃあ、また明日ね?あんまり夜更かししちゃだめだよ」
あやせは口早に話す。
いつもはもっと早くにSkypeを切るあやせだったが、今日は本当に夜更かしをしてしまったらしい。
そんなあやせを引き留めることは、さすがに気が引ける。
妹「もー、わかったわよ。おやすみ、あやせ」
友「うん、おやすみ、桐乃」
プツッ...
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:29:17.29 ID:xgsQkYhe0
私ははあっ、と深くため息をついて、まるで一つエロゲをやり終えた後のようにベッドに向かってダイブする。
枕元にあったクッションを一つ抱いてベッドに寝転ったまま、天井を見上げる。
「な〜んでこんなに疲れてんのよ、あたし」
「……」
「有ることないこと……ね」
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:30:01.31 ID:KIe4uyXD0
チラシの裏
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:30:26.18 ID:xgsQkYhe0
「…おい」
誰よ。わたしは、おいなんて名前じゃない
「…おい桐乃」
なんかむかつく。桐乃って呼んでいいのは、お父さんとお母さんとあやせと…
「ちーこーくーだーぞ」
……
「…はへ?」
情けない声が出る。
「また父さんたちが静かだったからって、ずっとエロゲーでもしてたんじゃねえの」
カーテンを開ける音。
「いま何時だとおグヘォあッ!!?」
兄貴が奇声を発する。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:31:06.99 ID:xgsQkYhe0
「…私の部屋で変な声出さないで。キモ」
「おまっ…俺の横っ腹に蹴りを入れてきたのはお前だろっ…!」
兄が中腰になりながら応酬するが、無視してベッドから立ち上がる。
「それと、裸足で入ってこないでって言ったでしょ。クサイのが移るから」
「お前ほんっと性格きっついのな…」
朝食もそこそこに家を出た。
昨日、あやせの言った通りだった…
でも夜更かしは強いほうなんだけど、昨日は疲れていたからかな…。
正直、兄が起こしに来なかったら遅刻は確実だった、と思う。
少し考えて、すぐに頭を振りかむる。
「あーもう!昨日からあやせはおかしいのよ!」
余計なことを考えないように、
私はいつもの通学路をトップスピードで駆け抜けた。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:31:58.10 ID:xgsQkYhe0
キミトフタリデコーイヲシテー キミトフタリデナーミダシテー
授業も終わり、部活の更衣室で着替えている最中
メールの着信が鳴った。
“きりの。今朝は起きられた?寝坊してないよね?”
“連絡遅れてごめんね。お兄さんの話楽しかったね。今朝も思い出してたら、遅刻しそうになっちゃった”
“今夜また、スカイプでね”
……どこかで私のこと見てるの?
あやせの一言一言が、するどく心当たりを刺す。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:32:53.66 ID:xgsQkYhe0
部活も終わり、家に帰ったところ。
家の前で、ばったり兄と出くわす。
…あんた、帰宅部なのにどうしてこんなに遅いのよ。
お互い、しばし立ちつくす。
けれど、
「…おかえり」
先に口を開いたのは兄だった。
私はふんと鼻を鳴らし、兄貴より先に玄関を開けた。
夕食もそこそこに、私はまた自室に戻る。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:33:57.49 ID:xgsQkYhe0
パソコンを立ち上げると、Skypeのメンバーリストには既にあやせの名前があった。
テッテッレー、 ポニョ!
テッテッレー、 ポニョ!
私が掛けるより早く、あやせから掛かってくる。
「やっ!きーりの」
第一声はあやせから。
「こんばんは、あやせ。…昨日のテンションまだ引きずってるの?」
続いて私。やっぱりどこかおかしいあやせのテンションに、思わず身を引いてしまう。
「そんな、あからさまに変なやつ扱いしないでよきりのぉ…」
そう言いチャットで泣き顔マークを送ってくる。
「わかったわよ。それより、ね、あやせ。
お昼休みにアゾンをコンビニで少し立ち読みしてきたんだけど…
イメージ出てたんだよ〜新作の!イメージキャラはライリって言うんだって!」
「へえ、ほんと!?まだ見てないから、早くアゾン買いに行かなきゃ」
そうして私たちはいつもの、他愛もない話をする。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:34:22.37 ID:xgsQkYhe0
そんな、なんでもない話題の中。
あやせは、少し声色を変えて話し始める。
「…ねえ、桐乃?昨日の夜、話したじゃん」
「も〜、またその話?その話はもういいって…」
私は一蹴しようとするも、あやせは負けじと話を切り出す。
「違うの。聞いて。
…桐乃、お兄さん彼女がいないかって聞いたよね」
あやせは神妙な声で間髪入れずに言葉を続ける。
「私、見たの。今日の夕方。
…桐乃のお兄さんが、知らない女の人と歩いてるの」
「…え?」
ヽ`
´
´.
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...‐''゙ . ` ´ ´、 ゝ ''‐...
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ノi|lli; i . .;, 、 .,, ` ; 、 .; ´ ;,il||iγ
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`;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `, ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙
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´゙゙´`゙``´゙`゙´``´゙`゙゙´´
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:35:14.58 ID:xgsQkYhe0
「私、見たの。
お兄さんが、知らない女の人と歩いてるの」
あやせはそう言った。
「……」
「へ、へえ。あいつがねえ。
やるじゃん?あいつ一生彼女できないかと思ってたんだけど〜」
どう返答していいか一瞬わからず、しどろもどろに答える。
「…桐乃、キモいとか不潔とか言うかと思ったけど。
思ったより、お兄さん思いなんだね。
よかった。」
「へ?あっ」
つい余計な一声が口をついて出てしまう。
38 :
爆破オチきた!!これで勝てる!!:2011/04/02(土) 21:35:56.73 ID:xgsQkYhe0
「ねえ、桐乃って、お兄さんのこと言うほど悪く思ってないよね?」
突然の、"確認"とも取れる質問に不意を打たれる。
「桐乃、お兄さんのこと気にならない風を装ってるけど、本心は嘘でしょ?嘘だよね?」
あやせは畳み掛けるように私に問い掛ける。
「私ね、このままだと、よくないと思うの。
そりゃあね?お兄さんには素敵な彼女がいたら、それはとっても幸せなことだと思うけれど…」
「ばっ…」
しかし私の反論を遮るように、あやせは言葉を途切らせない。
「だけど、桐乃の気持ちはどうなるの!?
兄妹がいがみ合ったままで、お兄さんに彼女が出来て、それで兄妹の溝が埋まらないままお互い
いつか離ればなれになったりするのって、それってすごく悲しいことだと思うの!」
「はっ、私の気持ちぃぃ!?」
思わず絶叫。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:37:11.36 ID:xgsQkYhe0
パソコンの排気音が、かすかに聞こえる。
「なんで、あやせがそんなこと、気に掛けるのよ」
それに、"いつか離ればなれ"って…
「ううん、…なんでかな。 だけど、桐乃とお兄さんのこと、黙って見てられないの。
おかしいよね。おせっかいだよね、こんなの」
ごめんね、と言ったきりあやせは黙り込む。
どうしてキリノにしたのか
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:38:04.71 ID:xgsQkYhe0
「…黙らないでよ。
別に、おせっかいとか思ってないし」
あやせは黙ったままだ。
「それに、私いつも言ってるじゃん。あやせのこと、信じてるって。
私、あやせの言うことに頭ごなしに反対したことなんて、ないよ」
「本当っ!?うれしい。わたしね、実はね、とってもいいアイデアがあるの!」
さっきまでの沈黙は何だったの。
「な、なによ」
とたんに、いやな予感がする。
「それはね…」
「ええええぇぇぇ〜〜〜!!??」
あやせは藪から棒に…いや、もう猪突猛進のままに、とんでもないことを口走った。
つづく
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:42:14.74 ID:xgsQkYhe0
「バレンタインにあいつとデートぉぉぉ!!??」
私は椅子から転げ落ちそうになったところを踏んばって… 転げ落ちた。
机に手を掛けながらよたよたと姿勢を戻す。
「あ、あやせ。冗談だよね…冗談きついって」
あやせはたぶん、こう言った…と思う。
“バレンタインの2月14日にお兄さんをデートに誘うの。それで誘いに付いてきたら、彼女はいないわ。
付いてこなかったら…当日、お兄さんをビコウよ!!!”
「何言ってるのよ!いつ私が冗談を言ったの!」
あやせはさっきから、いや昨日からテンションハイになりっぱなし。
いったい何が彼女をそうさせるの?
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:43:24.03 ID:xgsQkYhe0
「桐乃、お兄さんとの関係に白黒はっきり付けたいよね?
大丈夫、当日は私も一緒に付いてってあげるから!ね?」
私はさっきから自分の耳を疑ってばかりだ。
そうでなければ、音声チャットが混線してるのかな…Skypeに混線ってあるの?
さらに“実は私たちのスケジュールも都合を付けてあるの。もちろん、桐乃のマネージャーさんともね”
…とダメ押しの一言。
「…はあ」
頭痛がしてきた。
「…何があやせをそうさせるの」
「何か、言った?桐乃」
んーん、なんでもない。と頭を振りかむりながら、
私は机に突っ伏した。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:44:26.82 ID:xgsQkYhe0
「でね、桐乃」
どうも、お構いなしに話を続けるようだ。
「場所なんだけど…少しここを離れて、
みなとみらいから山下公園なんて!どう?」
あやせは嬉々としながらすでにプランを練り始めていた。
唖然とするしか無かった。
「あやせ」
「山下公園って。
デート、スポット…じゃない?」
冷静を装ったつもりが、声がうわずっていた。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:44:53.51 ID:xgsQkYhe0
「バレンタインデーに一緒に行くところなんて決まってるわよっ」
私の反応をものともせず、チャットのほうでも地図を出したり、
音符マークをふんだんに使って楽しさを表現してみせるあやせ
「あ、あ、…」
わなわなと声が震えだす。
「あ?」
あやせはきょとんとした声で返す。
「ない!ない!!ありえなーーい!!!」
絶叫。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:46:55.59 ID:xgsQkYhe0
「おい桐乃、うっせーぞ!」
ほとんど同時に、隣の部屋から怒声が飛ぶ。
それも"かなり"イライラを募らせた声だった。
「き、桐乃…いまの、お兄さん、だよね」
ヘッドフォンからきゃっ、と声がした後、恐れおののいた様子であやせが話し掛けてくる。
「うん。でも気にしなくていいよ。
あいつのやってることなんて、どうせどうでもいい電話だけだし」
「お兄さんも、電話してるんだ。…お兄さんの邪魔しちゃったね」
私はいまの怒鳴り声で心頭、頭に来ていた。
“どうしてこんな、バカ兄相手に”
私はいつの間にか小さく、舌打ちをしていた。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:47:47.53 ID:xgsQkYhe0
「桐乃…ごめんね」
「えっ?」
まずっ…マイク越しに舌打ち、聞こえちゃったのかな。
マイクの向こう側にいるあやせに向けた癇癪じゃないのに、それが誤解されてしまう。
なんと言い繕おうか…
“違う、今のはバカ兄に向けた舌打ちなの”と切り出そうとするより早く、あやせが話し出す。
「わたし、今までも、今回のことだって、桐乃のことを思って言ってたつもりなのに」
先ほどまであんなに嬉しそうだったあやせが、すっかりしおらしい声になっていた。
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:48:30.48 ID:xgsQkYhe0
「お兄さんを怒らせて…桐乃にもつらい思いばかりさせて、裏目にばっかり出てる。
私の都合でみんなを、好きかってにかき回してるだけ」
違う。
「こんな自分勝手なことばかりして友達づらだなんて、本当に迷惑もいいところだよね。
…私って、ほんとバカ」
バカなのは 私。
「あやせ」
私は落ち着きを取り戻し、静かにあやせに話し掛ける。
「…なに?桐乃」
「ごめんね、あやせ」
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:50:05.17 ID:xgsQkYhe0
「えっ?」
今度はあやせが驚いたような声を上げる。
「どうして、どうして桐乃が謝るの」
謝るのは私のほうだよと気を遣うあやせの声に、私は堰を切ったように話し出す。
「ううん。謝らなきゃいけないのは私。あやせ、ほんとごめん!」
「私ね、あやせの思ってた通りさっきまですごくイライラしてたの。
あいつのことを考えるとこう、むかーってなって、あるもの何でも掴んで投げ飛ばしたくなるくらい」
本当は、あいつの話をするのだって癪だった。
あいつは昔っから一匹狼なやつで、勝手に遊びに行ったり勝手にお昼ご飯食べたり、私のことなんて気にも掛けてくれなかった。
そのうえプリンを勝手に食べるし、足もクサイし。かと思うと頭撫でたりするし。…撮影行く前にセットしたばかりの頭を。
「…だけどね」
「だけどそれは、私が勝手にむかついて、勝手に怒ってること。
私の都合と、あやせが私にしてくれてることは、別問題。
だから、あやせが私を思ってしてくれてるっていうことそのものは、とっても嬉しいの。だから!」
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:50:45.65 ID:xgsQkYhe0
私こそあやせに押し付けてたんだ。兄妹のいがみ合いっていうのかな、そういう問題を。
あやせは本当に私と、周りのみんなのことを考えてくれてるんだよね。
「…だから。あやせが言うことじゃない…
ごめんって言うのは、私のほう」
最後の一言
「ごめんね。あやせ。
…あと、絶交はヤだかんね」
「…きりの」
ふるえた声。
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:51:42.50 ID:xgsQkYhe0
「うえええぇぇん、きりのぉぉぉ…」
「うえっ!?あ、あやせ?」
今度こそ本当にびっくりした。…あやせが泣いてる。
「ちょちょちょっとあやせ!なにも泣くこと、ないじゃん…」
「だってだってだってぇぇ、桐乃が、桐乃がぁぁ」
きりのーきりのーと繰り返しながらめそめそ泣きじゃくるあやせをなぐさめるのに、ずいぶん時間が掛かった。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:52:23.96 ID:xgsQkYhe0
「…こほん」
一息。あやせが咳払いをする。
「さっきはごめんね。私、桐乃の告白に、本当に心を打たれちゃって。
桐乃は本当にうまいんだもん…私もう、桐乃と一生離れたくないって思っちゃった」
「もう、お互い謝るのはなしにしよ?ね」
告白とかそういう間違った単語はスルーすることにした。
「…うん。そうだね」
そうしてやっと、あやせの顔に笑みが戻った…気がした。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:53:29.01 ID:xgsQkYhe0
閑話休題。話は元に戻る。…別に戻らなくてもいいと思うんだけど
そう言いながらも話の舵を戻したのは、わたし。
「…でさ。さっきの話、どうするの」
気恥ずかしさもあって私は、藪から棒に切り出す。
「んー…桐乃はどうしたい?」
質問に質問で返してくるあやせ。どうあっても私の意見を尊重したいと言うことか。
本当にあやせらしい。
「そ、そうね…さっきも言った通り、私個人の感情は別としても、あやせの案そのものは悪くはないって感じ?まあ…」
“そういうのはトシ相応に興味持つものだし?” “家族としても知っておいて悪い情報じゃないし?” ともっともらしい理由が口をついて出てくる。
…自分でもわかってる。これは言い訳だって。
でも、とまらなかった。
ここで口を止めたら、気恥ずかしさやらで頭がぼうぼうと燃えそうだった。
そうして私は、あやせの案に譲歩した。地球六周半くらい譲った。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:57:09.29 ID:xgsQkYhe0
冷静になりつつある頭で、今回の計画を煮詰めていた。
お兄さんはきっと連れ出せるとして、私は私で準備をしておかなくちゃ。
万が一、連れ出すのに失敗することなんて… あとは桐乃のがんばり次第だけど、きっと大丈夫だよね。
それにしてもさっきの桐乃の熱烈告白は、すごかったな。
“絶交はヤだかんね”だなんて、正直、同性なのにどきどきしてしまった。
もう、桐乃に泣かされたのこれで何度目だろう。そんなに多くはないと思うけれど。
勢いで有ることないこと口走った気もするけど…考えない考えない。
「…あやせ、聞いてる?
ロムってる?ねおちー?」
私ははっとした。桐乃が真面目に説明してくれてたのに、どうやら心地よいBGMになっていたようだ。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:57:49.99 ID:xgsQkYhe0
「え!ああ、ごめんね。聞いてるよ、それで、なんだっけ」
「…もう、聞いてないじゃない。
最初から話すのも面倒だし、知りたいところだけ聞くけどいーよね」
コツンと、肘をつく音。
「うん。そうして、そうして」
苦笑いしながら促す私。
「一つが、あいつをどう連れ出すのかってこと。バレンタインの日って言ってもあいつにも予定があるかもしれないし。
あやせが誘い出せばほいほい付いてくるんだろーけど。
…けどそんな汚れ役、あやせにさせたくないし」
桐乃はふて腐れたように、だけど力強い言葉で話す。
最初はあんなに嫌とかキモいとか言ってたのに、やるぞって腹を決めたらこれだもん。
やっぱりえらいよ、桐乃。
「うん、そうね…
それなんだけど実は、もう考えてあるの」
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:58:19.23 ID:xgsQkYhe0
「えっ、なに?電話越しに脅迫でもする?それともロープとダンベルで縛って横浜湾に持ってく?」
桐乃が身を乗り出すように食いついてくる。
「そんなの簡単だよ。桐乃がお兄さんを誘惑すればいいのよ」
一転、部屋が静かになる。
「ばっ!」
机を叩く音と、椅子が倒れる音。
桐乃、うるさくしたらまたお兄さんに怒られちゃうよ。
「〜〜〜…っかじゃないの」
よかった、なんとか大声を出すのは堪えたみたい。えらいよ、桐乃。
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 21:59:48.44 ID:xgsQkYhe0
「ごめんね、冗談だよ、冗談。
でもね、桐乃がお兄さんを誘い出すっていうアイデアは本気だよ」
「はあ〜私が、あいつに?なんでよ!」
桐乃の心に何かがくすぶり出したみたい。早く消火しないと危ないかも。
…と思いつつも、いたずら心がくすぐられてしょうがない私。
「それは〜、お兄さんの妹だからじゃない?」
「……あやせ〜、あんたねえ…
どこの世の中に、"実の兄"をデートに誘う"実の妹"がいるって言うのよ!」
「そう?そんなことがあっても、それほど不思議じゃないと思うなあ」
私も最初は気持ち悪いことだと思ってたけど、案外、古文なんかを読むと日本ではとてもベターなことらしいって、最近知ったんだ。
まだ全部が理解できる気はしないけれど…ある種の兄弟愛ってやつだよね、きっと。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:01:35.93 ID:xgsQkYhe0
「…あやせ。私があいつに頭を下げて“バレンタインは山下公園で膝枕させて下さい”とか言うの、ほんとキモすぎて鳥肌がおさまらないんだけど」
オエ、と擬音を付け加える桐乃。
桐乃、私べつにそこまで言ってないよ…
想像力豊かだね。
「あはは、まあ、それもそうだね。でも聞いて、桐乃。
これはチャンスでもあるの。お兄さんとは今、ほとんど口をきいてないんでしょ?
だからこそ誘うんだよ。男の人から見てくれないと分からないファッションがあるとか言ってさ。
それに私も一緒なんだよ?怪しまれもしないし、大丈夫だよ!」
「はあ〜〜」
桐乃のながい溜め息。
「まあ、あやせがそう言うならそうなんだろうけど…
あやせと一緒ってのがまた危ないのよね〜あいつの場合はさ」
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:01:54.07 ID:xgsQkYhe0
んもう、煮え切らない。さっきのパワフルさはどこへいったのかな。
ちょっと意地悪しすぎたかな?
「決まらないなら、私とお兄さんの二人だけになっちゃうよ?」
「うひゃあ!それは一番まずいって!あやせにあのぼっちオーラとかキモい仕草とかうつるのだけは全力で阻止よ!」
「そう、なら決まりね。お兄さんから私を守って貰うためにも、三人でいきましょ♪」
桐乃はわたしのナイトだもんね。
それに桐乃はきっと、誘うことに成功するよ。
だって私が今日、お兄さんに会って話したこと…
あの言葉はきっと桐乃の助けになってくれるよね。
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:04:12.68 ID:xgsQkYhe0
夜も更けてきた。
そろそろ、私もあやせも寝ないとまずい時間だ。
「じゃあね、桐乃。健闘を祈ってるね。がんばって!」
Skypeを切る間際にエールを送ってくれるあやせ。
嬉しいけど…よりにもよって、あいつとの仲を応援されるなんて。
「ホント、気は乗らないけどさ。
でも、あやせもそのために予定空けてくれてるんだもんね」
「そゆことっ!じゃあね、桐乃。おやすみ。ばいばいっ!」
「おやすみ。あやせ」
プツッ...
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:04:33.43 ID:xgsQkYhe0
「…はあ」
溜め息。
あいつへの誘いの口実は、まあ、あやせの言ってた通り“男に見て貰わなきゃわからないアクセ”とか“なんやかんやの予行演習に必要”とか“荷物持ち”とか言えばいいんだろうけどさ
あいつも私も、お互いに何かをしよう、どこかに行こうって誘うなんてこと、ほとんど無かった。
それこそ、私が小学生の時以来か、あるいはもっと、昔…だったかな。
さあて、もう考えるのは明日に回そう。わたしも早く寝ないと
こう見えても撮影に部活に学校と、現役女子中学生は忙しいのだ…
とベッドに寝転んだところで気が付いた。
「…お風呂、まだだった」
私としたことが、毎日のお風呂を忘れるなんて、あり得ない…
「…あいつ、なんで呼ばないのよ」
ひとり天井に向かって、文句を言ってやった。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:08:42.23 ID:xgsQkYhe0
「…おい、また寝坊か?」
「…おいきりドゴぅッ!!?」
兄貴が奇声を発する。
「おまっ…起きてたのかよ…!」
「当然でしょ、今日は朝練あるんだから」
桐乃はぱちりと目を開け、立ち上がる。
「わかってんなら、もっと早く起きろよなあ。
…最近お前、夜更かししてんだろ、どうせ。チャットとかゲームとか」
「そんなのあんたに関係ないでしょ。早く出てって」
「へえへえわかったよ…」
兄貴は力なげにドアノブに手を掛ける。
「あ、それと」
しかし桐乃は小さな声で、兄貴を引き留める。
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:09:15.18 ID:xgsQkYhe0
「んー?まだ何か文句あんのか」
兄貴は睨んでいるようで、でもそうではないジト目で桐乃に向き直る。
「そうじゃなくって。…人生相談!あるから、今日の夕方。
帰ってきたらだからね!」
「…お、おう。
なんか、久しぶりだな」
兄はまんざらでもないという風に、かゆくもない頭を掻く。
「…それと。
靴下履いたまま入ってこないでって言ったでしょ。菌が移るから」
追い打ちの一言。
「おまっ、言ってることがメチャクチャじゃねぇかっ!」
兄貴も突っ込まずにはいられなかった。
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:12:13.85 ID:xgsQkYhe0
朝練も終わり、教室での朝礼が終わったころ。
キミトフタリデコーイヲシテー キミトフタリデナーミダシテー
着信音が鳴る。あやせからのメールだ。
“おはよう、桐乃! 昨日はまた長いこと話しちゃったね…。反省反省”
“それで今日はお兄さんを誘うんだよね?がんばるんだよ!”
“バックアップは、任せてね”
あやせはいざ出陣とばかりに激励してくれるが、それが逆にプレッシャーだ。
だいたい、ここまでしてやったのにあっさり断られたら、どーするのよ、わたしたち。
って、断られたらそれでいいだけじゃん。私ってバカなのかな。
どう返そうか悩んだが、けっきょく “ぜんしょします” とだけ送っておいた。
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
| |
| |
/  ̄ ̄ ̄ ̄ /_____
/ 善しょします / //
/ ハ,,ハ / / /
/ ( ゚ω゚ ) / / /
/ ____ / / /
/ / / /
/ / / /
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ / /
65 :
忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2011/04/02(土) 22:13:26.49 ID:VQSxWyghO
し
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:14:03.89 ID:xgsQkYhe0
夜になる。
夕食もお風呂も済ませて例の件に備える。準備は万端だ。
夕方と言ってたけど、まあ、いい。
あいつもそのつもりだったんだろうし。
「桐乃、いるかー」
かわいらしいプレートが下げられたドアの前で妹を呼ぶ。
少しの間のあと、ドアが開き妹・桐乃が顔をのぞかせる。
「…入って」
「おれいま裸足だけど?入っていいのかよ」
菌が移る〜とか言ってたくせに。
「お風呂入ったから、いいのよ」
「そういうものかね…。んじゃ」
そういって遠慮なく妹の部屋に上がらせてもらう。
67 :
支援ありがたいです:2011/04/02(土) 22:14:47.99 ID:xgsQkYhe0
「で。人生相談って?今度は何だ」
俺はテーブルの前にあぐらをかき、早速本題に入ろうとする。
「え?あ、うん…」
妹のほうはベッドに腰掛けている。髪をくるくるといじりながらはっきりしない返事をする。
「まあ、たいしたことじゃ、ないんだけど」
…なんだ、やけにしおらしいな。
こういうことはそりゃあ、過去にもあったと思うけど。今日は特に、なんというか、
まるで自分に非があります的なしおらしさっていうのかな。
こいつは非なんて感じたこと、絶対無いんだろうけどな。
「お前のいう大したことじゃないってこえぇよ…
まさか、また俺にエロゲーを買ってこいとか言うんじゃないだろうな」
「違うわよ!あれが大したことじゃない訳ないじゃない!」
なんだそりゃ。あれはそんなに大したことだったのか…。
まあ確かに、妹の場合“自分の好きなもの”かどうかが最大の焦点だからな、そういうものか。
「そ、そうかよ。で、今回の大したことない相談はなんなんだ?」
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:15:36.35 ID:xgsQkYhe0
「…ああ、うん」
かーっと腕を振り上げていた妹は、また借りてきた猫のようにしぼみ込む。
「でもまあ、あれと比べたら今回も大したことないってこともないの、かも…」
妹は一人でつぶやきながら、
しまいにはむう、とひとり腕を組み考え込む妹。
「なんなんだよ、煮え切らないな。
いまさらお前に無茶振りされたって、最初以上のインパクトはないからさ、言ってみ」
はぁ、ああそう…と頭を掻きながら表情がまたムスっとなる。
観念したのかようやく話す気になったようだ。わかりやすいヤツ。
「あの、さ。
来週の、月曜って何してんの」
俺の今後の予定をチェックするだと。これからどんな恐ろしいことが…?
「へ?んー…何してるって、何してるんだろ」
ぼーっと壁を見つめながら、考えた。特別この日に何がある!って俺には少ないんだよな。妹と違って部活もバイトもやってないし。
と妹のいつも着ている制服が目に入る。
「平日だろ?学校行ってる」
そう答える以外、俺にはなかった。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:18:34.73 ID:xgsQkYhe0
「そんなことはわかってるわよ!そのあとよ、その後!」
やはり、そんな当たり前な回答は求めていなかったようだ。
となると、こいつの言いたいことは…
放課後にやること、か。
来週の月曜日といえば…2月14日。バレンタインデーか。
バレンタインなら、麻奈実の和菓子屋も忙しいだろうな。
店を手伝いにいくのもありかな。労いにお茶と菓子の一つでも出してくれるし。
それにまた、風呂の一つでも入らせてもらえたりしてな。
しかしそう考えるとまた、じーちゃんが変なことばっかりするんじゃないだろうか…。
と過去の出来事を思い出してみたり。
って、バレンタインデー?
…カレンダーを確かめるまでもなく、そうだよな。
「ああ、そういうこと」
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:19:06.16 ID:xgsQkYhe0
俺は少し思い当たることがあった。
昨日あやせが、わざわざ俺を呼び出したのは、そういうことだったんだろうな。
「来週のことだろ?予定なんてないね。おれ帰宅部だし」
「…そう」
妹は、ならいいんだけど、と前置きをして話し出す。何がいいんだかさっぱりわからんが。
「あ、あんたさ。ちょっと学校終わってから、行ってほしいところ…あるんだけど」
「行ってほしいって。結局パシリか?」
「だからそう言うんじゃないわよっ。行ってほしいっていうか」
「いうか?」
「一緒にきて、ていうか」
「ていうか?」
「だ・か・らぁぁぁぁ」
妹のボルテージは最高潮になりつつあった。少しオウム返しをし過ぎたか?
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:20:43.27 ID:xgsQkYhe0
「付き合えっていってんのよ!私の予定に!!」
「…んだよ。なら最初からそう言えよ」
「…え」
一転、きょとんとする妹。
「なんかあるんだろ?付き合ってほしいところとかが。いいよ。いってやるよ」
本当、突っつき回してやらないと言いたいことも言えないのな、こいつは。
罵りの数々ならいくらでも出てくるのに。
「いいの?…そう、なんだ」
「なんだよ。不満か?」
「う、ううん。…べつに。
まあ、わたしの仕事はこれだけ、だから」
「…何の話だよ」
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:22:46.87 ID:xgsQkYhe0
「いいのっ!とにかく!
来週14日は学校終わったらすぐに駅まで行くわよ!いいわね!?」
部活は私も休むから、と妹。
「へえへえ。わかったよ。
って、どこ行くのかまだ聞いてないぞ」
「それを聞くの?まあ、いいけど」
聞いてほしくなかったんかい。
「横浜。みなとみらいまでね」
「ふうん …
って横浜!?ずいぶん遠くないか?」
電車で…1時間半ってところか?
4時に乗ったとしても、着くのは5時半か。ずいぶん遅い時間になるじゃないか。
「何よ。文句あるの?私だってべつに…」
べつに…からよく聞き取れなかった。
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:22:55.11 ID:xgsQkYhe0
「いや、文句はないけど。横浜で何かあんのか」
「別に無いけど。とにかく、そういうことだから。質問は受け付けないから」
じゃ私は寝るからと、暗に“出て行け”と促される俺。
ほとんど何も情報を得られないままただ “来い” と告げられ、話は終わった。
…俺は抗議声明を出してもいいんじゃないだろうか。
「…でもまあ、人生相談というからには、なんかあるんだろうな」
「何か言った?質問タイムは無いって言ったでしょ」
「いいや別に。わかったよ、付いていけばわかるんだろ」
まあ、そーゆーこと、と機嫌も少し直ったような様子で答える妹。
こいつもこいつで話したいことを話せて、すっきりしたんだろうなあ。心の中でひとりのほほんとしてしまう。
「んじゃ、俺も寝るわあ。おやすみ」
妹におやすみなんて言ったの、久しぶりな気がする。
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:23:15.48 ID:xgsQkYhe0
挨拶をして廊下に出たとき、妹は思い出したように言った。
「…あ、それと。あやせも一緒だから」
「へ?そうなんだ」
てっきり俺は妹と二人で行くのかと思ってたけど、3人になるのか。
ますます俺が横浜に行く理由がわからないような…。
「前も言ったけど、変な色目つかったらマジ殺す!」
「…しねえって。まあ、わかったよ」
そう言って今度こそ俺は自室に戻る。
…あやせ、か。
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:27:31.60 ID:xgsQkYhe0
そのまま寝ようかとも思ったけれど、
月曜日の天気でも見ておこうか、と何気ないことを思いつきパソコンを立ち上げる。
Skypeが自動的に起動するなり、チャット画面が開く。
“桐乃、こんばんは。お兄さんのほうどうだった?♪”
チャットをくれたのはいつもの友達。あやせだった。
“予定ないから来るってさ
あやせが一緒だってことも伝えたよ”
“そう!!がんばったね、桐乃!!”
ラッパのマークやクラッカーが弾けるマークなどがたくさん画面に表示される。
うーん、あやせがいまどんな顔してるか、わかる気がする。
“ねえ、ちょっとだけ通話大丈夫?もう寝ちゃうかな?”
私はチャットで大丈夫だよと返事をしようとして…止めた。
トゥルルルルルル
トゥルルルルルル
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:35:19.23 ID:M8kl+inG0
支援
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:53:52.75 ID:loTs/Izv0
qv
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 22:57:39.64 ID:nqmmuHHx0
連投規制に掛かってしまいました。
その上、緊急の仕事が入ってしまいました。3時間後に戻ることになります。
すみません。
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 23:09:04.69 ID:P+jnFQ1vO
ほ
80 :
忍法帖【Lv=13,xxxPT】 :2011/04/02(土) 23:09:22.62 ID:YIsyTHhU0
ほ
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/02(土) 23:33:47.13 ID:oC1i9c3m0
ほ
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
ほ