1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
――名前は平沢唯。職業は無職。
今の私を語るとしたらこの二言だけで片付いてしまう。
年齢は……無職になってから数えていない。数えることに意義が見出せない。
学歴? 大学は中退したから高卒扱いだろう。
職にも就かず何をやっているかといわれると、行き当たりばったりでやりたいことをやっている、と答える。
古本屋で立ち読みだけで一日を過ごすとか。ネットカフェで24時間過ごすとか。公園や駅前でギターを弾いてみたりとか。
行くアテもないのに寝る場所が欲しいだけの理由で夜行列車に乗ったこともある。自転車で日本一周とかも考えたが隣県で諦めた。さすがに体力が落ちすぎていた。
いろいろやって、結局のところダラダラとギターをかき鳴らしているのが性に合っていることに気づけたのは大きい。
定期的にお金をせびりに実家に戻る。実際定期的かどうかは曜日の感覚もなくなってから久しい私には正確にはわからなかったが、今回実家に戻ったところを玄関前でかつての仲間達に取り押さえられて今に至るのだから案外正確だったのだろう。
――これは、私達の未来に光も闇も無かった世界のお話。
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 22:14:16.41 ID:JtdkE03MO
和「天和」
唯って本当金に汚いというかだらしないよね
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 22:17:08.03 ID:sXV2oaqY0
律「――よう、駄目人間」
唯「照れますなぁ、イケメンさんに言われると」
澪「……さすがにツッコミづらいな、この歳になってもそんなこと言ってると」
唯「澪ちゃんは美人さんになったね。オトナの女って感じ?」
紬「……唯ちゃん…」
梓「………」
唯「ムギちゃん梓ちゃん、最近どう? まぁ二人の名前は無職の私でもそこそこ聞くけどね」
梓「っ………」
ムギちゃんの家はあんなんだし、仮に職種『家業手伝い』でも将来は約束されたようなものだ。もちろん実際はちゃんと就職してるけど。
あずにゃんはサラブレッドのギタリスト。親のツテやコネもあり、それ以上にあずにゃん自身の実力もあり、音楽業界では一流ギタリストとして名を馳せかけている。
……かけている、というのはやはり若さから来る古参のやっかみからか。ともあれ、雲の上の存在となったあずにゃんを、私みたいな無職があだ名で呼ぶことは最早許されない。
うーん…
物書きとしてゆるせないんだが
何この幼稚な文章
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 22:23:00.76 ID:sXV2oaqY0
唯「憂が出版社に就職したらしくてね。二人はよく話題になるよ」
律「その憂ちゃんが困ってるって言うから、私達は集まったんだぞ」
唯「それは黙っておくべきだったよ、りっちゃん。聞いちゃったからには私は明日、憂を問い詰めなきゃいけない」
澪「……あまり憂ちゃんに迷惑をかけるな、唯」
唯「それも含めて、だよ。迷惑なら迷惑って私に直接言えばいいのに」
どうして私ではなくみんなに言ったのか。
おそらく憂はただの相談のつもりだったんだろう。ただ相談した相手が悪かった。
相談相手は、憂のことも、またその憂の悩みのタネである私のことまでも心配するくらい優しい。優しすぎる。優しすぎて、感情的で、直情的すぎる。
……この時代、この世界では、もはや絶滅危惧種といっても過言ではないくらい、純粋だ――
――街行く人々は、隣に誰が歩いているのか知ろうともしない。ふらりふらりと、自分のことだけを考えて歩き、他の人のことにはそ知らぬ顔。
たまに他人のことを考えてみたら、その人からいかにして美味しい蜜を吸えるか。そんなことしか考えない。
口を開けば他人を貶し、陥れ、傷つけて。
口を閉じれば他人の欠点を探し、弱い者には喰らいつき、強い者にはつけ入ろうと跳ねまわる。
そして、いずれは人の上に立ち、弱者も強者も見下せる立場になることを夢見る。
そんなことに一生を使う人間達。彼らを、貴方達は何と表現する?
私なら……それこそが『ひと』なのだと、それ以上の言及はしないだろう――
澪「――わかった。いい機会だ、憂ちゃんも一緒に話をしよう。家にいるんだろ?」
唯「さぁ? 憂の予定なんて知らないよ、いなかったら夜にまた来るし。それよりみんな、よく集まれたね?」
律「…今日は日曜だぞ」
唯「あぁ、そうなんだ。じゃあ憂もいるんじゃない?」
紬「唯ちゃん…曜日もわからないような生活してるの?」
唯「知りたくなったら調べるよ? あらかじめ知っておく必要はない生活だけどね」
嘘だ。ただ単に、お嬢様育ちのムギちゃんにショックを与えたいから大袈裟に言っただけだ。
食べ物が安い日を知っておけば食費は浮くし、読みたい本ややりたいゲームが出る曜日は覚えている。
特に何もない一週間も稀にあるので、全てが嘘というわけでもないが。
ショックを与えたい、とは言ったが、ムギちゃんを嫌いなわけではない。こうして心配してくれるだけで充分すぎるほどありがたい存在だ。
ただ、無職の私と社会人の皆の間には目に見えない大きな溝がある。無職というのはそれだけで蔑まれる存在なのだ。就職しようとは思わないが、蔑みの視線は素直に受け入れようと思う。
働くことは義務であり、義務を果たさない人間は劣っている存在。
仕方ないのだ、そういう社会であり、みんながそういう教育を受けて育ったのだから。
しかし、そんな劣っている私に蔑みの視線ではなく心配の視線を向けてくれる人もまだいる。それは何物にも代えがたい幸せであると、それくらいは自覚している。
ただし、無職である以上、その幸せに何を返せばいいのか見当もつかない。普通なら就職することと言うのだろうが、私はその道を選ぶ気は無い。
だから、ショックを与えたり、心配をかけることしか出来ない。いつかみんなが愛想を尽かす、その時まで。
紬「……唯ちゃん、変わったね。笑わなくなった」
唯「そうかな?」
紬「ううん、笑うけど…笑顔度が足りない。6割くらいの笑顔」
とぼけたが、自覚はある。
というより、毎日のように蔑みの目線を向けられて笑顔でいられる人間がいるわけがない。ムギちゃんにはわからない世界だろうから、責めるつもりはないが。
……責めるつもりはないんだが、無神経な言葉は私の胸を抉る。私は全てを受け入れ、この道を選んだはずなのに、多少無理してでも皆と同じ道を歩むべきだったのか、という気持ちになる。
自分の意思というものを殺し、全てを諦め、皆に歩みを合わせるだけの人形として生きるべきだった、と。
もっとも、無職の私からすれば社会人というのは皆、心を殺しているようにしか見えない。
心を殺された。
それは果たして、どちらなのか。
律「――憂ちゃん、呼んでいいか?」
唯「いいけど……個人的には、ムギちゃんと梓ちゃんには帰って欲しいかな」
ムギちゃんとあずにゃんが青ざめた顔で息を呑む。私の拒絶と取ったのだろうか?
よく考えたらあずにゃんは私と会ってから一言も喋ってない。まぁ、そっちのほうが私には好都合だが。
紬「……ど、どうして?」
震える声でムギちゃんが私に問う。そういうつもりじゃなかったのだが。
唯「ムギちゃんは知らないほうがいい世界だよ」
澪「唯なりの善意だ、と言いたいのか? 心配する友人に帰れと言う事が」
唯「そうだよ。ムギちゃんは下なんて見てないで、もっと上を目指さないと」
無職の友人がいる、というだけでお嬢様的には汚点だろう。欲を言うなら、もう私の事など忘れて生きて欲しい。
口にすると、澪ちゃんかりっちゃんのどちらかから平手が飛んでくるだろうが。
紬「……私は、唯ちゃんを下に見たことなんてない」
唯「同格に見てくれてれば、そもそも心配なんてしないよ。久しぶりだねーって言いながらご飯でも食べに行って、世間話をして解散。それが正しい同格相手の接し方」
紬「そう…なの?」
律「安心しろ唯、私はちゃんと唯を下に見てる。引き上げるのは上にいる者の役目だ」
唯「開き直られても居心地悪いけどね……まぁ、だからりっちゃんと澪ちゃんには逆らわないよ」
梓「………私は、なぜですか」
ようやく口を開くあずにゃん。久しぶりに聞いた声は、あの頃と変わりなく。
そういえばあずにゃんは、テレビとかで見てもギターは弾いてるけど歌は歌わない。何故だろう?
まぁ、今となっては些細な疑問だ。私とあずにゃんにこれほどの差がついた今では。
唯「ムギちゃんには善意だったけど、梓ちゃんには私のワガママ。先輩として振舞ってた時期もあるんだし、カッコ悪いところ見せたくないだけ」
梓「……どうして、そんな過去のように話すんですか…」
唯「……実際過去じゃん?」
梓「違います! 私の中ではいつまでも『唯先輩』です! いつまでも!!」
唯「そうやって気にかけてくれてたのは嬉しいけどね…」
……はて、どうしたものか。誰一人として怒らせずに、この場を納めるのは意外と難しそうだ。
心配してくれていた皆に『心配するだけで行動してくれなかったくせに』と逆ギレするのも手だが、さすがにそれはこの後も話が続くりっちゃんと澪ちゃんに気まずい。
ならば『実は梓ちゃんのこと大嫌いなんだ』と個人攻撃するか……いや、結局気まずくなる気がするし、その一言であずにゃんを傷つけ、将来を奪ってしまう可能性もある。
『貴様の知っている唯先輩は死んだ』とジョークを混ぜながら言うのもいいが、ジョークが通じるかどうかは非常に分が悪い賭けだ。
ならば結局のところ、行き着くのはムギちゃん達と同じところ。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 22:41:00.95 ID:OYh3d41sO
ムギを苦しめるんじゃねえ!
ニート唯め!
さっさと目を覚まして元気になれよ!
支援
唯「ねぇ『あずにゃん』、年収いくらくらいなの?」
梓「……へ? 急になんですか…?」
唯「ん〜? 別に? 聞いてみたいだけだよ?」
梓「え、えっと…」
唯「テレビに出てるくらいだし、儲かるんだろうね〜? すごいねー『あずにゃん』」
澪「」イラッ
律「……もういい、行くぞ唯。梓は帰れ」
りっちゃんに思いっきり腕を掴まれる。少しわざとらしすぎたか。
っていうか痛い。結構本気で痛い。むしろ皆を同じところに行き着かせてしまったかもしれない。
梓「えっ? ちょっと律先輩、どうしたんですか?」
そして肝心のあずにゃんには通じてなかった。
律「澪、言っておけ。私と唯は先に行く」
澪「ああ」
紬「わ、私は?」
律「ムギも帰れ。唯の言うとおり、聞かないほうがいい」
納得いかなそうな様子のムギちゃんに、私はこれ以上言葉をかけることは出来なかった。
単にりっちゃんに引きずられ、家に放り込まれたからなのだが。
唯「いたたた…」
憂「お、お姉ちゃん!? ……と、律さん」
律「よ。元気にしてる?」
憂「は、はい、まぁ。っていうか、もしかして」
律「ああ、そこで捕まえた」
唯「ひどいなー、人を虫みたいに」
律「虫のほうがまだ立派に生きてるよ」
唯「私も虫も、やりたいことだけやって生きてるから違いはないと思うんだけどなぁ」
律「じゃあ虫扱いでいいな」
唯「……あれ?」
ハメられた。誘導尋問というやつか、これが。
憂「あの、とりあえず、あがってください」
律「あー、うん、ごめんな、お邪魔します」
憂に促されるまま居間に足を運び、腰を下ろして一息。
するとすぐに澪ちゃんも姿を現した。
律「……梓は?」
澪「腹を立てて帰っていったよ。『そういう目で見るなんて信じられない』だとさ」
唯「そっか」
どうにか上手くいったようだ。澪ちゃんには感謝しなければ。
これでもう二度と、あずにゃんに会うことはないだろう。
……物悲しさは否めないが、致し方ない。住む世界が違うのだから。
ただし、物悲しさを顔に出してはいけない。これがお互いにとって最善の方法なのだから。
憂「…お姉ちゃん、まさか梓ちゃんにお金を…」
澪「あー、ちょっと待って。その話はまだ――」
澪ちゃんが何故か憂を制止しようとする。その声と同時に背後に人の気配。
紬「……ごめん、澪ちゃん。聞いちゃった」
……ムギちゃん、帰らなかったのか。これは困った。厄介なことになる。
紬「唯ちゃん、お金に困ってるのなら相談してくれれば――」
律「そうやって――」
憂「そうやって甘やかしてもお姉ちゃんのためになりません!」
律「お、おおぅ…そうですよね」
澪「……でも、普段唯に金を渡してるのは憂ちゃんだろ?」
憂「……はい、そうです。でもそれは――」
澪「家族だから仕方ない、か? それも甘えだよ、気づいてるだろ?」
憂「…………」
ああ、面倒だ。ムギちゃんが来なければこうして憂が責められる事もなく、この無意味な会話もなかったのに。
ムギちゃんに悪意がないことはみんな知っている。でも、この場にムギちゃんはどう考えても不釣合いで、不要だろう。どうして澪ちゃんは帰らせなかった?
唯「……ムギちゃん、帰ってって言ったよね?」
紬「っ…!」
再びムギちゃんの顔が蒼白になる。言い方が悪かった? 何かに怯えているようだが、そんなに怖い顔なんてした覚えはないのだが。
唯「…聞かないほうがムギちゃんのためなんだってば。ね? りっちゃん?」
律「そうだな……どっちにしろ、聞かないほうがいい」
紬「どっち、って?」
律「唯を哀れむ結果になろうと、唯に失望する結果になろうと、だ」
私は後者を望んでいる。あずにゃんのように、早々に見限って、私のことなど忘れて社会で大成してほしい。
誰よりも何よりも大切な友達だから、幸せになってほしい。
唯「っていうか、未来のある人、あるいは今が幸せだと思ってる人には聞いて欲しくない。ムギちゃんは前者に当てはまる。りっちゃんや澪ちゃんも後者に当てはまるなら帰って欲しい」
律「別に私はどっちでもないな。レベル低い職場だし」
澪「律のところよりはレベル高いけど、幸せってほどではないな」
唯「そう? 澪ちゃんはなんか色気出てきたから、彼氏でも出来たのかなーと思ったんだけど」
澪「茶化すな。彼氏より友達を優先するぞ、私は」
唯「あれ、否定しなかったよ。実際どうなの? りっちゃん」
律「澪は唯を優先してる。それだけが事実だろ」
唯「ちぇー」
……真実はわからないが、澪ちゃんと縁を切る――否、澪ちゃんに縁を切られるべき時も、そう遠くはないだろう。
むしろ彼氏できて結婚までしてくれれば、私に構ってる時間もなくなるだろうが。
律「で、そこまで言われてもムギは帰らないのか?」
紬「唯ちゃんは…悩んでるんでしょ? 苦しんでるんでしょ? 私だって力になってあげたい…」
……ダメだ、最初から勘違いしている、このお嬢様は。
というか、それほどまでに想像のつかない境遇なのだろうか? 無職は。
唯「あのー、別に悩みとかないから、帰っていいよ」
紬「悩みがなくても、苦しんでるでしょ!? だって唯ちゃん、笑わないもの!」
その二度目の言葉に息を呑んだのは、一回目にその場にいなかった憂。
憂「お姉ちゃん…やっぱり一度、ちゃんと話そうよ。『あの時』のことから、私は聞きたいよ…」
唯「『あの時』? なんかあったっけ?」
律「…お前が大学を辞めた時だろ。私でさえ何事もなく卒業したのに」
唯「あー……」
唐突に大学を辞め、実家に戻り、自分のお金をかき集めて『遊びに言ってくる』とだけ言い残し、私はしばらく帰らなかった。
警察とか呼ばれても面倒なので、憂からの着信を無視するようなことはしなかったけど。とにかく、その時から確かに私は変わってしまったとは言える。いや、周囲の目にはそうとしか映らないだろう。
澪「誰一人として、お前が辞めた理由を知らない。誰一人として理解できていない。なぁ唯、何故なんだ?」
紬「何故、何の相談もしてくれなかったの?」
律「何かされたのか? 何かあったのか?」
そう怒涛の質問をされても、答えられるほど大きな理由はない。
かといって『疲れたから』とか答えても納得してはくれないだろう。
『気づいてしまった』とかなら少しカッコイイだろうか。
唯「まぁ、先のことを考えるのが馬鹿らしくなったっていうのはあるよね。無職やってるくらいだから気づいてるとは思うけど」
律「だから、何故そう思ったんだ? みんなそれが知りたいんだよ」
澪「大学でも…人気者だっただろ、お前」
唯「自分で言うのも何だけど、人気者だったからだよ。いろいろ見えちゃうんだよ」
紬「………!」
『ひと』というものは、汚く、狡賢く。狡猾で、残虐にして残酷。
他人を傷つける事を何とも思わず、むしろ傷つける事を正当化する理由を欲している。
大学で、大学程度でその事実に打ちのめされた私には、社会人として生きる道など選べるはずも無かった。
>>19 ごめん
唯「まぁそんなワケだよ。それより憂、お金ちょーだい?」
律「そんなワケって…おい」
憂「そんな説明だけで…納得できないよ…!」
憂が苛立っている。まぁ仕方ないだろう、やっと姉が真実を語ってくれるかと思ったところにこの肩透かしだから。
私としては語る必要もないような事だと判断しただけだったのだが、苛立ってくれるなら好都合だ。
憂にも、早く私を見限ってほしかったから。両親のように、いないものとして扱って欲しかったから。
唯「語ったところでどうしようもないよ。何も変わらない。それよりも憂、今週いろいろあるんだよね〜」
律「…いろいろってなんだよ」
唯「パチンコの新台入れ替えでしょ〜? あと競馬も競輪も競艇もどれも大穴っぽい選手が出るんだよねぇ〜。新作ゲームも出るし、あ、タバコも値上げが近いって聞いたから買い溜めしとかないとね」
憂「ッ……! ふざけないで! 何も教えてくれないくせに、お金ばっかり求めないで!」
唯「お金以外求めてないよ? なるべく憂に迷惑かけないように家にも戻らないようにしてるのに」
憂「違うよ! お金せびってる時点で迷惑なんだから、いっそ全部教えてよ! 姉妹でしょ!? それともお姉ちゃん、私じゃ頼りにならない!?」
……こんな献身的な言葉を吐かれて、心揺らがない人がいるだろうか。
私とて揺らぐ。やはり、優しさには甘えていたくなる。だが、それでは駄目だ。
憂ももう社会人。私という荷物など忘れて、幸せになるべきなんだ。優しい妹だからこそ。
唯「……もういいよ、憂」
憂「…え?」
唯「もういいって言ったの。私の世話しなくても」
憂「……まさか、出ていくの?」
唯「うん。お金くれないなら、もう戻ってくる事も無いよ」
律「おい唯、そんな言い方――」
憂「いいよ、出て行けば」
澪「憂ちゃん!?」
唯「じゃあね、憂」
立ち上がり、背を向ける。憂も同じように背を向けて、台所のほうに引っ込んでしまった。
……これで一番厄介な縁も切れた。私を縛るものはもう、ほとんどない。
律「おい、待て二人とも、落ち着け! なぁ唯――」
唯「りっちゃんはさ、社会人やってて、辛い事や苦しい事ってないの?」
律「は? なんだよ急に…」
唯「憂がいなくなったから、聞いておきたいんだ。澪ちゃんも、どう?」
澪「そりゃ……ないわけないだろ。学生時代だってあったさ」
唯「じゃあ、楽しい事は?」
律「まぁ、あまりないな。けど社会人ってそういうもんだろ?」
そうだ、そういうものなのだ。
そういうものだ、と全てを諦めるのが、社会人の思考なのだ。
私は逃げた。恐れ、逃げ出した。
逃げる事と諦める事、どちらが優れ、どちらが劣っている?
唯「――ねぇ、みんなは今、幸せ?」
律「…別に幸せではないな。さっきも言ったろ?」
澪「まぁ、な」
唯「…私は、社会の苦しみから逃げた。大学での経験から、社会の苦しみを想像するだけで耐えられなかった」
紬「………」
唯「幸せでもないのに、私の耐えられなかった苦しみに耐えてるみんなは、素直にすごいと思うよ」
少なくとも私には出来ないことであるし。
唯「でもね、覚えておくといいよ」
そして、私には理解できないことでもある。
唯「これからもっともっと長い時間、いつもいつでも、その苦しみはみんなを蝕む。気づいた時には遅い。もう戻れない」
――それは、心を蝕む炎。例えるならば――
唯「――神火はいつでも、みんなの背中を焼いてるんだから」
どこで会話してるのかわからんのだが。
なんだ脳がやられた障害者か
※紬
ぐらり、と。
眩暈がした。
天が、地が、ひっくり返るような。
唯ちゃんが途中でやめた話。あの先を聞けば、きっと私は共感できる。
私は気づけた。それはまだ、かろうじて幸せだったのかもしれない。
――私も悩みがあった。ずっと悩んでいた。いつか、みんなに会えたら打ち明けようと思っていた。
そして今日、みんなに会えた。打ち明けるチャンスだった。
でもそれよりも、笑顔を失った唯ちゃんを助けてあげたかった。自分の事より、大切な仲間を助けたかった。
だから、私はりっちゃん達の側に立って、唯ちゃんの話を聞いていた。
でも違った。
断片的にだけど唯ちゃんの話を聞いて、確信した。
私は、唯ちゃんの側だ。
私は、唯ちゃんが受け入れたのと同じ悩みを今、抱えている。
律「――ムギ、どうした?」
紬「え? あ、いえ、それより、憂ちゃんは?」
律「今、澪がついてるはずだ。見に行くか」
何故、そこで憂ちゃんの名を呼んだのか。
それは、きっと私のこれから起こすかもしれない行動の結果を、似たような人で見てみたかったから。
澪「――憂ちゃん、本当に良かったのか?」
憂「……いいんです、あれくらい強く言わないとわからないんですよ。甘やかしすぎたんです、澪さん達の言うとおり」
澪「でも、唯はきっと本気だったぞ」
憂「お姉ちゃんの本気なんて、たかが知れてますよ。一人で生きていけるわけない、そのうち帰ってきますよ……」
――なんだ、結局は自分に言い聞かせているだけなのか。
私には、いや、きっとここにいるみんなはわかっているはずだ。唯ちゃんはもう、二度と戻らない。
唯ちゃん自身が、追い出される事を望んでいたから。私達との間に出来た溝は、もう埋められないと思ってしまったから。
……実際、私も溝を感じている。
でもそれは唯ちゃんにではなく、りっちゃんと澪ちゃんに。
二人とも、唯ちゃんの最後の言葉に、何も感じなかったのだろうか? 私はあんなに衝撃を受けたのに。ずっと仲間だと思っていた二人との、心の距離はこんなにも遠かったのか。
唯ちゃんが出て行ってなお、あんな自己暗示を続けている憂ちゃんは問題外だ。
律「……やっぱり、追いかけよう。唯は、きっと――」
紬「私が行くわ」
律「ムギ?」
紬「私が行くから、みんなは待ってて」
澪「あ、ああ……頼む」
ほら、やっぱりね。
りっちゃんも澪ちゃんも、心配しているのは表面だけ。
……あるいは、私のことを信頼してくれてるのかもしれないけど、そうだとしても、私の表情に宿る決意に気づいてくれないのなら同じ事。私の事も、表面しか見ていない。
……そう思い知った時、私は、迷子になった。
紬「――唯ちゃん!!!」
唯「……ムギちゃん?」
唯ちゃんは悠々と歩いていた。誰も追いかけてこない事を悟っていたのだろう。今なら私にもわかる。
わかってしまった私は、きっと唯ちゃんと同じように、6割くらいの笑顔でしか笑えない。
……そんなの今更か。就職とは名ばかりの父親のコネで入社した時から、ずっとそうだ。
唯「どうしたの? 引き止めにでも来たの?」
唯ちゃんはすごく底意地の悪い笑顔を見せる。まさに、最初っから期待なんてしていない顔。
そんな顔も出来たんだね。それとも、私の知らない間に手に入れたの?
紬「唯ちゃん、パチンコやるの? 教えて欲しいんだけど」
唯「なんで?」
紬「私、友達とパチンコやるのが夢だったのよ」
唯「……気づいてるんでしょ?」
紬「まぁ、ね。どこまでが嘘だったの?」
唯「ほぼ全部かな。ゲーム以外」
これは期待、心から期待
紬「…私も一緒に行っていい? ゲーム教えて?」
唯「……嬉しいけどダメだよ。ムギちゃんには未来があるよ」
紬「辞表くらい何枚でも書くから、待っててくれる?」
唯「…ダメだよ。待たないし、一緒に行かない」
紬「私がいいところのお嬢様で、約束された未来があるから?」
唯「そうだね、私が言ったことを纏めるとそうなるね」
紬「それじゃあ……これならどう?」
持ってきた手提げカバンをどこか遠くに放り投げる。うーん、我ながらよく飛ぶわぁ。
唯「ちょっ、何してんのムギちゃん!?」
紬「あとは……電話と財布かしら?」
二つは適当に放り投げたらどこかで水没したらしき音がした。好都合。
……唯ちゃんが財布ではなく携帯電話のほうを目で追いかけていたのを見て、少し嬉しくなったのは内緒。
誰か職くれよ。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 23:44:36.92 ID:p8mmEG4g0
こんなことしてもムギには後ろ盾があることには変わりないわけで
紬「さて、ここで唯ちゃんに問題です。私は誰でしょう?」
唯「……琴吹 紬ちゃん」
紬「それを証明する物は?」
唯「何も無いね」
紬「むしろお金も無いわ。本当に何も無い。唯ちゃんにとってはただのお荷物だけど、連れて行ってくれる?」
唯「はぁ…もう、何やってんの。完全に社長令嬢失踪事件だよ、どうするの?」
紬「あとで10円だけ貸してくれる? 一言電話だけ入れとくから」
唯「連れて行くとは言ってないんだけど」
目を逸らしながら言う唯ちゃん。
それは拒絶ではなく、どちらかといえば照れ隠しの仕草に近い。
私の知る唯ちゃんはそういう子だ。私は変わってしまったと言ったが、根本はそんなに変わってなかったようで。
紬「じゃあついて行く」
唯「…いつか絶対後悔するよ」
紬「じゃあ、まず唯ちゃんに何があったのか聞かせて?」
唯「どうして」
紬「私も、きっと同じ悩みを抱えてるの。だから聞きたい」
いきなり駆け落ちする話になってんだけどw
唯「ムギちゃんが? まさかぁ。ムギちゃん何でも出来るしその上家柄もいいんだから」
紬「違うの。家柄がいいから……いろいろ見えちゃうの」
唯「……そっか。ごめんね。知りもしないで勝手な事言った」
唯ちゃんはずいぶんと聡明になったと思う。
高校の時から、誰もが気づかないようなところにこそ気づく子ではあったけれど。さわ子先生のメイクとか。
紬「謝るより、聞かせて欲しいな」
唯ちゃんは頷き、昔話を始める。
例えば、唯ちゃんの人気を気に入らない人がイヤガラセをしてきた時のこと。
落ち込んでる唯ちゃんを見かねたファンが、その犯人を退学まで追い込んだ話。
唯「もう大学生だし、イヤガラセといっても大きなものじゃなかったんだけどね」
でも会社とかでもイヤガラセくらいあるでしょ? イヤになっちゃったんだ、と唯ちゃんは言う。
まさにそうだ、というかそのエピソードのまんま、私も体験した。
社長令嬢だからと私の陰口を叩いていた社員は、いつの間にやらクビになっていた。
――それ以降イヤガラセは無くなったが、今度は唯ちゃんのマネをする人が出てきたらしい。
そんな人達も勿論ファンに叩かれて姿を消したらしいが、半分くらいは互いに足を引っ張り合って自滅したらしい。
……ここも、うちの会社の派閥のエピソードに似ている。
唯「どうして仲良く出来ないのか、私は悩んだ。どうしてだろうね?」
紬「……やっぱり、万人に好かれるなんて無理なのよ。私もそうだった」
唯「…嫌いなら嫌いでいいけど、イヤガラセとかする必要はないよねぇ?」
紬「そうよね……行動に移さず、心の中でだけ思ってればいいのにね」
唯「結局はさ、他人を攻撃したがる生き物なのかな、人間は。そういうものなのかな、『ひと』ってさ」
紬「一応、先に手を出したほうが悪いって言い分もあるけど」
あぁ、私は今、さっきの唯ちゃんみたいな笑顔をしているのだろうか。
肯定的な返事などまるで期待していない、底意地の悪い笑顔を。
唯「同じコトを言ってた子がいたよ。そして、相手が悪いからって嬉々として攻撃してた」
相手の行動を悪といいながら、同じ行動で返していた。相手が先にやったからといって、自分の行動全てを正当化していた。
やっぱり、そうなるよね。
唯「……このへんのこと、学校が違う和ちゃんには相談したんだ」
私達には心配をかけたくなかったらしい。唯ちゃんらしいというか、何と言うか。
紬「そしたら?」
唯「大なり小なりそんなことはあるんだから慣れておけって。社会なんてそういうものだ、ってさ」
紬「…立派ねぇ」
唯「和ちゃんに言われてから、私は周囲をもっとよく観察することにした。和ちゃんの言うとおり、大なり小なり溢れてたよ、そういうコトが」
紬「っ……」
やっぱり、私と同じ悩みを抱えていた。きっと今も、同じような表情をしている――と思ったが、きっと私のほうが辛そうな顔だ。
唯ちゃんは無表情だった。もう、全てを受け入れた唯ちゃんにとってはただの昔話なのだろう。
唯「陰口が一番多かったね。気に入らない同級生、気に入らない教員、気に入らない政治家。攻撃する対象もいろいろだった」
私の会社でも、上司に対する愚痴は絶えない。もちろん、恵まれた立場の私に対する愚痴も。
唯「上下関係の悩みも、みんな持ってたね。サークルの先輩の無茶振りとかに悩んでる子は沢山いた。飲み会のノリとかでもあるらしいね」
よく聞く話だ。ただ、私は立場的に誘われる事はなかったけれど、話を聞く限りでは唯ちゃんもあまり誘われはしなかったみたい。
唯「その子は翌年、同じ事を後輩にやってたけどね」
紬「……あらら」
唯「物を隠したりとか、マンガで見るようなイジメっぽいのはさすがに無かったよ。その時は少しホッとした」
紬「その時『は』?」
唯「うん。大人にもなるともっと取り返しのつかない、それでいて犯人はわからないような陰湿なやり方を選ぶって知っちゃったからね」
いいたいことはわかる。それくらいには大人は狡猾で、残酷なのだ。
唯「とりあえず、和ちゃんから習ったことは、大学であるようなことは社会に出てからも続く、ってこと」
紬「…そうね。大体、私の会社でも同じような事がある。っていうかきっと、どこでも大なり小なり存在する」
唯「…うん。私はね、ホントに悩んだんだよ。大学でもみんな仲良くできると思ってた、高校の私達みたいに。でも違った」
無表情だったはずの唯ちゃんは、苦しそうに、悲しそうに語り出す。
唯「仲良しだと思ってた人との距離がずっと遠い事に気づいた。見えていたと思っていた物が見えなくなった」
紬「唯ちゃん……」
唯「むしろ表面上は仲良く見える分、ずっと辛かった。みんな笑顔の裏で何を考えているのか想像するのが怖かった」
紬「…どこかで私の陰口を叩いてる人がいるんじゃないかって、怖かった」
唯「そんな考えを、社会人は甘えだって言うんだ。臆病すぎるって、逃げてるって言うんだ。逃げてる自覚はあるけどね」
紬「逃げ…なのかしら」
皆と仲良くしたい。唯ちゃんの根本にあった願いはそれなのに、今はただの逃げと称される。
友人として一言、異を唱えたかった。でも、それより先に唯ちゃんが肯定した。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 23:59:07.21 ID:yJR1ZA00O
む
暗いところで待ち合わせを思い出した
唯「逃げだよ。でも、まだ諦めてない。この思いを、願いを諦めて就職しない限りは」
紬「ふふっ、ものは言いようね」
唯「まぁ、半分は冗談だとしても半分は本気。だから、私は最後にみんなに幸せかどうか聞いたんだよ」
みんな『幸せではない』と言っていた。幸せではないと断言しつつ、唯ちゃんのことを認めなかった。
やはり、私達とあの二人には、決定的な溝があった。
でも決して、あの二人が悪、というわけではない。二人は社会に適合した、ただそれだけなのだ。
そして唯ちゃんは、そんな社会に抗った。いや、社会のほうが唯ちゃんを拒否したのか。今となっては、どちらかもわからないけど。
唯「幸せじゃない、けど抗わない。つまり、それは流されてるだけの人生。私はそう思う」
昨日も今日も、過ぎ行く明日も、全てを雲に託し、流されるまま。そんな人生。
それの行き着く先は……ただの静かな滅び。いや、既に心は滅んで久しいのだろう。
唯「心の火も、既に凍み付いてる。そのくせ夢は諦めきれず、『自分は幸せじゃない、けどいつかは』って口だけは達者なんだよ」
紬「歪なものね。歪にゆがんだ結果が、他人への攻撃性なのかしら?」
唯「そうだね。自分が努力して這い上がるより、他人を引きずりおろすほうが楽で、気持ちいいから。りっちゃんや澪ちゃんみたいに、耐え忍ぶことだけで自己満足してればまだ平和なのにね」
紬「それでも、未来はないと思うわ」
唯「言うねぇ、ムギちゃん」
『やりたいこと』が出来なかった人に、未来は無い。今の私なら断言できる。
実際働いてみて、私も幸せなんてものとは程遠いと気づいたから。
そして、夢見る未来というものは、幸せでないといけないから。でないと、人は頑張れないから。
紬「唯ちゃんが同じ悩みを持っていた人だってわかったから、かな」
唯「ごめんね、気づいてあげられなかったばかりか、ムギちゃんを突き放すような事ばかり言っちゃって」
紬「……唯ちゃんからも、りっちゃんからも帰れって言われた時、本当はすごく怖かった。ひとりぼっちになったような気さえした。だから、澪ちゃんに帰らないと告げたの」
唯「…ごめんね」
紬「ううん、いいの。今なら唯ちゃんの気持ちもわかるから」
唯「もう一つ、そんな気持ちをわからせてしまった事にも、ごめんって言いたい。私はダメだったけど、ムギちゃんは耐えてたら、幸せな未来があったかもしれないのに」
紬「……ううん、そんなことない。私は一人じゃ生きていけないから、あのまま帰ってたらきっと――」
他人の汚さ、狡賢さ、狡猾さ。残虐にして残酷な本性に打ちのめされ。
その上、大切な友人にまで拒絶されたら。私は。
唯「……ムギちゃんも、案外弱い子だったんだね」
紬「唯ちゃんは強いの? 一人で生きていける?」
唯「…大学ではいろいろ信じられなくなって、一人ぼっちになったような気がして辞めちゃったけど、無職になってからは心配してくれるみんながいるのが何よりも嬉しかった」
紬「心配してくれる事が嬉しかったの?」
唯「そうじゃないよ。心配自体は要らない。心配してくれる人がいることが大事だった」
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 00:07:39.56 ID:iLXUOcHCO
紬「じゃあ、やっぱり」
唯「うん、一人じゃ生きていけないね」
事実を認め、受け入れる。唯ちゃんは強い子だ、と思った。
でもその強い子が認めた事実は、人は一人では生きていけないということ。
『みんな仲良く』を願う唯ちゃんとしては当然なのだろうけど、私はその時、ようやく気づいた。
一人で生きていける人=強い人、ではないということに。
紬「私じゃダメかしら?」
唯「ダメとは言わないけど、私は自分のことで手一杯だよ。心配なんてしてあげないよ?」
紬「無職に心配なんて要らないわ。それに心配なら、今から私が切り捨てる皆が、表面上だけでも充分やってくれるから」
唯「そっか、じゃあはい、10円」
紬「ありがとう、いつか返すわね」
唯「返さなくていいよ。餞別だよ。ムギちゃんの新しい門出に」
無職への門出って、ヘンなの。しかもたった10円の餞別だなんて。
おかしくてしょうがないけど、私にはこの上なくピッタリだ。どこの社長令嬢でもない、ただの無職の琴吹 紬には。
やっぱり、唯ちゃんはセンスのある子だ。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 00:10:34.59 ID:dUHZBeMIO
また選考落ちたぜい
この唯達みたいに社会を拒絶できるほど中二ならまだ楽なんだが
――電話ボックスを見つけ、私は立ち止まる。
覚悟はできている。全てから逃げ出す覚悟が。
大丈夫、私は一人じゃないから、それだけでどうにでもなる。ああは言ったけど、この子はきっと私が困っていたら助けてくれる。私も、この子が困っていたら絶対助けるから。
人は助け合うものだ。傷つけ合う社会なんて、私達にはいらない。
傷つける罪と、傷つけた罰。いずれそれらの報いを受け、その身を炎に焼かれるなんて、私達はゴメンだ。
傷の舐めあいで構わない。私は、私以外を大切にして生きていく。
唯「――どうしたの? ムギちゃん。やっぱり怖くなっちゃった?」
だから、唯ちゃん。さっそくで悪いんだけど、助けてくれないかな。
紬「……唯ちゃん、これ、どうやって使うの?」
おわり
>>47 ID確認しろよ
お前は真っ当な職につく権利がある。せいぜい頑張りや
乙
唯とムギの気持ちは分からなくもないけど重く受け止めすぎやしませんかねw
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 00:15:52.13 ID:VWibmbHL0
乙
むぎゅは天使…………なのか?
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 00:16:06.02 ID:nJBvrxohP
乙です。こういう雰囲気も好きだ
序盤スレタイのムギが帰れとか言われててどうしようかと
乙
待って、待って待って
……え、終わり? そうか、うん。
なんか読んでて自分に自信無くした。とにかく乙
拒絶するもなにも、結局生きていくには働かなきゃいけないわけで。
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 00:17:40.54 ID:gWCGvCKX0
乙
駆け落ち編を書くんだ
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 00:18:42.63 ID:dUHZBeMIO
何だかんだでお先真っ暗だよなw
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 00:59:34.02 ID:gYWcPI9r0
嫌いじゃないぜ
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 01:11:07.21 ID:HRwVmtc9O
これは全くの作り物なのか
それともそうじゃないのか
共感できる部分もあったよ乙
自分語りしてる連中はやめろ
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 01:21:41.94 ID:35SZjYUC0
二人は純粋すぎたな
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 01:24:35.54 ID:6DwdV3PJO
麻雀やるのかとおもった
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 01:28:53.06 ID:AvveHVK40
おつおつ
どうやって生きていくんだなんて野暮かな
むぎゅうううううううううう
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 01:38:07.20 ID:ffOKUld00
乙むぎゅうううううううう
てんにわ じゃなくて てんてー にしといたほうがよかったね!
おまいらありがと愛してる!
いろいろ不満はあるけど、乙なんだぜ
次回作があるなら、その先を見てみたい
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 02:05:30.71 ID:vPyZozzyO
閣下のあれ?
前、寄らば大樹の〜とか書いてた人?
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 03:01:30.99 ID:vPyZozzyO
近代絶頂音楽
気持ちは分かるって感じの話だな
/ ̄\
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\_/
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/  ̄  ̄ \
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/ .<●>::::::<●> \ これがいまの
>>1の人生か
| (__人__) | まぁ乙をくれてやる。あとオプーナも
\ ` ⌒´ /
/,,― -ー 、 , -‐ 、
( , -‐ '" )
`;ー" ` ー-ー -ー'
l l
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 09:57:54.79 ID:vPyZozzyO
ほ
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 11:14:14.18 ID:b538EjyJO
唯「それでも私は人を信じるよ!」
こうだろ
天庭 おんなのこ編ですね
次回作楽しみにしてます