1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
――夢――
その日見た夢は奇妙な、倒錯した夢だった。
――律が私にキスしてる……
夢独特のぼんやりとした薄暗い世界で、目の前には幼馴染の顔。律は眼を閉じている。
明るい茶色に染めた髪と下ろした前髪。唇が触れている。柔らかい。
「律……?」
夢の中の私が呟いた。お互いの唇が、柔らかくと押し合う感触。
すると律がビクンと震えて、顔を離した。どことなく怯えた感じの目で私を見下ろす。
「りつ……?」
再びそう呟いた、その次の瞬間だった。
「――え?」
夢じゃない。
突如、これが現実であるという感覚がはっきりと私を飲み込んだ。
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:50:16.88 ID:XtlLcL7C0
___
'"´ .::.::.::.::.::.::.::.:`丶、
/.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::..::.::.::.::.::\
. / .::.:: /.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.∧.::.::.::ヽ
,'.::.::.: /.::.::::.::.::.:: /!.:/.::./ ::.|.::.::.:'. _ -, -──‐-、
! :.::.::.|.::.::.::.::://メ、.:: / j:ハ::.::.::ト、 / /: : : : : : : : : \. | _|_ |_L /
|.::.::.::.|.::.::. j/仗≧ミ/ イ∧l ::|. / ' ___: : : : : : : : : ヽ | _|  ̄| _ノ (
|.::.:/^|.::.::.:.| .込_ソ f仞゙Y.::.リ/ /:::::::::::::, '´ ゙̄ヽ: : : : : '. レ(__ノ\ | \
|.::.{i |.::.::.:.l 、ー' / '´ |::::::::::::::{:::::::::::::::}: : : : : :|
|.:: 丶|.::.::.:.| _r‐'了 |:::::::::::::: 、::::::::::ノ: : : : : :| ,―┴┐ −/─ ─┼─ | ヽ
|.::.::.:::|.::.::.:.l、 /´ |::::::| ∨:::::::: '´ ̄: : : : : : : :/ ヽ| 三l_ / __| ヽ ゝ | |
|.::.::.:::|.::.::.:.|. 丶、 `ー ヘ_::::\__ \'´ : : : : : : : : : : / ノ| '又 ' (___ノ\ ヽ_ ヽ/
|.::.::.:::|.::.::.:.|,_ >r‐'´::! ̄::>ヘ、 ̄¨''¬ー- 、 _____, '´
/.:___|.::.::.:.| `>rh ::::::!.::./ .二\
/⌒\. |.::.::.::| /,不∧_::::|.:/ -‐、∨
. / ヽ |.::.::.::ト、./〃{{ヘ/ `ヽ{ ィヽソ|
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:50:47.83 ID:sPicJTpsO
チェ・サンジュ×田中律
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:50:59.91 ID:XtlLcL7C0
秋山 澪(あきやまみお)
日本名:秋山 澪(あきやま みお)。韓国名:秋 山澪(チュ サンジュ)
漫画・アニメ「けいおん!」に出てくる登場人物。同作品において唯一の外国人キャラクターである。
国籍は韓国(不法入国の在日3世)。暴力的で、自分の考えに賛同しないものに対してすぐにキレてしまう。
また、寝顔を撮られただけで首を締め上げるなど、突然常軌を逸した行動をとることがある。
これは、韓国人特有の病気である火病(ファビョン)からくるもので、抑えようが無い。
作品中ではたびたびこういった描写が出てくるため、一部では「作者が在日についての問題提議を行っている」とも言われている。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:51:14.74 ID:XtlLcL7C0
・サービス業すら満足にこなせないコミュニケーション障害
・合宿の提案しておいて場所や予算は紬任せ、なのに俄然仕切りだす
・みんなが海に行こうと言っているのに一人練習練習と言って聞かないKYぶり
・でも遊びだしたら一番はしゃぐ
・コミュニケーション障害のくせに心許した律にはすぐ暴力で訴える
・「痛いのは嫌い、怖い」と言っているのに律にはすぐ暴力で訴える
・寝顔を撮られたというだけで律の首を締め上げた
・ぶりっこ炸裂の歌詞を書いておいて不評だったら泣き落としで通す
・みんな学園祭の当番で忙しいのに練習練習と言って
聞かないKYぶり(澪は当番を任せられないほど人望がない)
・忙しい合間を抜けてきて「一人にしてごめんね」と言った三人に「遅いぞ!」
・大観衆に下着を見せて媚びる
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:51:30.11 ID:XtlLcL7C0
. ,′::::::!:::::::,!:::/,l:! !::ト!、:::lヽ::::::l::::::::l:::::::!
i::::::!::::|:::::ムイ| l:::!l::::`..トi::::::l::::::::!::::::|
l:::::|:::::|::,′!_;! ! ヽ!ヽr_、!_ヽ_:|:::::::|::::::|
|:::::!:::::|::i‐r=ミ、 ,ィ==rァ}:::::::}、:::!
lハf、:::::!::!弋zぅ} cヒz.ぅ' /:::, イ !::::| テギュン!テソ!ファイティンーー!!
l:::`丶! //// . ////ィ::::::|ノ:::::l セヨ〜〜〜!
|i:::::::ハ __ !:::::::|::::::::l
ハ:::::::::丶 i/´ ヽ /l::::::::l、:::::l
i, ヘ::_:::__l` 、 ` ー ' ,/ / _:::::!:.丶 l
,.イ:.:.// )_):.| i. ー--‐ ブ i久 ヽ!:.:.:.:.:丶、
!:.:!:.〈 ′/ ,ノY! 丶 / (^ヽ 〉:.:.:.:/:.:i
l:.:ヽ:.ヽ ′{:l. × ( ` /:.:., ':.:.:.:.:.|
秋山澪(チュ・サンジュ)さん(17)
人気アニメ「けいおん!!」の登場人物。在日韓国人3世。
作中バンド、『放課後ティータイム』のベース担当。
歴史認識の点で同じバンドのドラム担当・律とよく喧嘩になる。
火病を起こして暴力をふるうこともしばしば。
在日韓国人という設定は当初から明らかにされていたものではなかったが、
韓国の女性に多い通称”お姫様カット”の髪型や同作品の登場人物としては
珍しい釣り目などの容姿や、その気質から韓国のファンからも「同胞ではないか」との声も上がっていた。
――「本当の意味での日韓交流が未だなされていないと感じていた」
原作者のかきふらい(本名・飯島茂)氏は学生時代に朝鮮史を専攻。
”音楽に国境はない”という言葉に魅せられ、作品の題材にバンドを選んだという。
若者の右傾化が世界規模で起こっている中、若者文化からこうした作品が出てくるのは大変興味深いところ。
この春、アニメ「けいおん!!」に注目だ。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:51:41.78 ID:XtlLcL7C0
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:51:42.81 ID:AiH7jJau0
「えっ!?」
驚きを隠さないまま、自分を覗き込んでいる律を押しのける。
飛び起きて、ふわふわしている自分の意識をたたき起こす。
深夜、電気の消えた自分の家、ベッドの上。
今日の記憶――大学の食堂で一緒にご飯を食べた後、私の家で飲むことになって、女の子の後輩に告白された話を律にして。
自分は先に寝て、あとから律がベッドに入ってきて――。そして、さっきの唇の感触。
すべて現実の感覚だった。
唇に残った生暖かい感触に――鳥肌がたった。
「何してるの律!?」
私の中の性の価値観が一斉に拒否反応を起こした。
ごしごしと唇をぬぐいながら呆然とする。
律の強張った顔を、暗がりの中で凝視する。
「み……みお……その……」
「馬鹿じゃないか!? 何なんだよもう!」
唇に残る律の感触が、私にヒステリックな悲鳴を上げさせた。ぬぐってもぬぐっても、後から後から嫌悪感がわいてくる。
何が起こっているのか、まったく理解できない。
私はベッドから飛び出して、乱暴に蛍光灯のスイッチを入れた。
暗がりの部屋に、目障りな眩しい光が広がる。
私はベッドの上の律を睨んだ。
律は体を縮こませて、俯いている。その肩が小さく震えていた。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:51:52.75 ID:XtlLcL7C0
, ─┐_ノ ̄\
イ  ̄〉_____厂 ̄\__
厂ヽ/,二二、二二、`\ //\
へ、// . : : : : : : : : . \ヽ \ /ヽ
〈_∠厂. : : : :/ : :/|: : : : : . \丶\厂〉 、
/ 厂/. : : : : :/ | :/ |;ハ : : : : : . \乂 〈⌒〉
乂_,ノ: : : :_;∠ l/ 丿__ト.: : : .厂ヘ l ノ\
〈⌒イ: : l: :厂 ` ´ 〉: : .\人〉 ノ
パ 乂_ 〉: :l:│,= 、 , =、⌒|: : |\〉イ
リ / |: : :|/ , -、ヽ ´, -、 \|: : |: : | :l うめー!!
ポ /′ ; : :八 イ_,ハl l_,ハリ 〉 : |ヘ.:| :|
リ /:/ l/⌒ `ー ' `ー' '⌒|丿l :|
/:/ l: :l : :l /// ' /// ,'|: : : : : :.\
イ / ,l: : | : :ト、 ー--ヘ / |: : :l : : : : .\
/⌒ヽ |/l /|: :│: : : .丶、 o イ |: : :|: : .\ : .\
,' . : .:l |/l / :l: :/|: : :| '⌒> 、_, イ⌒ |: : :l : : : : \ ⌒
V^,ハ、;ノ ∨ 厶.:≦ミ|: : :|三人 ̄\_厂 ̄人三|: : :|三≧、: : \
/ / / / =三三|: : :|三三\三三三/三三|: : :| 三三 \: : \
, / 广ハ. , ' _=三三三|: : :|三三.冫⌒厂⌒< 三三|: : :| 三三三 ヽ: : . ヽ
| l l l / =三三三三|: : :|三 / 人_人 \ 三|: : :| 三三三三 \: : .ヽ
\ ∨ 三三三三三|: : :|三人_/厂\_人三|: : :| 三三三三三. \
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:52:03.91 ID:XtlLcL7C0
__
,....:::::::::::::::::::::::::....、
/::::/::::/::∧::::::、::::::::::\
/:::::::::::::;イ::.:;' ハ:::::::ハ::ヽ:::::::ヽ
. /:/::::/:::/-:::/ ハ:|‐::ハ::::|:::、:::ハ
l::::::::::|::::| |/ | ヾ::N:::::|:::::| 설렘 니다
|:::|::::lレ'≦、 ,,≧、|::::l:::|::!
|:::|::::|〈{.んハ 代ハ }〉::l:::l::| 중요한 당신에게 가무사하무니다
|:::|::ハ Vソ Vソ´リノ:::|::l
|:(lヾヘ ,,,, ' ,,,, ム:イ:::! 고츄쟌 에 김치 찌개
|::::|::::ハ 、_ _,. ノ::::::|:::|
| ̄ ̄ ― -- .、 ,. -- ―  ̄ ̄ 7 윳케비빈바탓코무탄
. V `|´ l
l l 당신을 위해서 가무사하무니다
| /
V | , 나의 하트도 가무사하무니다
r― ― .、 | __ . ---- /
/ハ | /ハ 아주 조금 눌어붙어도
. / ハ __ __ / .l
| / ヽ | / \ ! 당신의 불기운으로 가루비촌마루마싯타!
| 〈 ー―¬.j _ | _,r'―‐‐ .〉 |
|/ ( ――x.!  ̄ |  ̄ ├―‐ ) 、|
/ | ――} | ├― .| |
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:52:57.56 ID:G+3lXfV60
澪律だわーいわーい
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:52:58.37 ID:KKaxX21M0
〜秋山澪 (ミオ・アキヤモフ)まとめ〜
・西側帝国主義者へのサービスを断固拒否する鋼の精神
・ブルジョアジーである琴吹に損失を与えるため、合宿を提案。偉大なる指導者として、他のプロレタリアートを仕切る
・他の労働者が資本家に唆され労働を怠る中、一人練習を推奨する勤勉ぶり
・空気を読み、仲間内で楽しい雰囲気を作ろうと努力
・労働を怠る律には鋼の意思で制裁を加える
・「痛いのは嫌い、怖い」と自らを戒め、労働を怠る律には鋼の意思で制裁を加える
・勝手に他人の寝顔を撮るという、人間として最低な行動を取った律の首を鋼の意思で締め上げた
・可愛さ炸裂の歌詞を書き、鋼の意思で通す
・学園祭直前に練習を推奨する勤勉ぶり
・労働を放棄して「一人にしてごめんね」とご機嫌取りに走った三人に叱咤
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:53:03.64 ID:3w/ZQw790
律澪か〜
ていうかなんか凄いことになっとるな
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:53:42.32 ID:KKaxX21M0
. ,′::::::!:::::::,!:::/,l:! !::ト!、:::lヽ::::::l::::::::l:::::::!
i::::::!::::|:::::ムイ| l:::!l::::`..トi::::::l::::::::!::::::|
l:::::|:::::|::,′!_;! ! ヽ!ヽr_、!_ヽ_:|:::::::|::::::|
|:::::!:::::|::i‐r=ミ、 ,ィ==rァ}:::::::}、:::!
lハf、:::::!::!弋zぅ} cヒz.ぅ' /:::, イ !::::| Ленин!Сталин!Ура!
l:::`丶! //// . ////ィ::::::|ノ:::::l Ураааааааа!
|i:::::::ハ __ !:::::::|::::::::l
ハ:::::::::丶 i/´ ヽ /l::::::::l、:::::l
i, ヘ::_:::__l` 、 ` ー ' ,/ / _:::::!:.丶 l
,.イ:.:.// )_):.| i. ー--‐ ブ i久 ヽ!:.:.:.:.:丶、
!:.:!:.〈 ′/ ,ノY! 丶 / (^ヽ 〉:.:.:.:/:.:i
l:.:ヽ:.ヽ ′{:l. × ( ` /:.:., ':.:.:.:.:.|
秋山澪(мио・Акиямов)さん(17)
人気アニメ「けいおん!!」の登場人物。在日ロシア人3世。
作中バンド、『放課後ティータイム』のベース担当。
砲兵運用の点で同じバンドのドラム担当・律とよく喧嘩になる。
ヲッカが足りなくなると暴力をふるうこともしばしば。
在日ロシア人という設定は当初から明らかにされていたものではなかったが、
美しく白い肌、日本人女性としては高めの身長、この作品の登場人物としては珍しい
労働に対する勤勉な姿勢、そして極めて赤軍的な気質から、
ロシアのファンからも「同志ではないか」という声が挙がっていた。
――「本当の意味での日露交流が未だなされていないと感じていた」
原作者のかきふらい(本名・飯島茂)氏は学生時代にマルクスの「資本論」を研究。
”音楽に階級はない”という言葉に魅せられ、作品の題材にバンドを選んだという。
若者の右傾化が世界規模で起こっている中、若者文化からこうした作品が出てくるのは大変興味深いところ。
この春、アニメ「けいおん!!」に注目だ。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:00:41.86 ID:AiH7jJau0
「説明してくれよ津! なぁ? どういうこと!?」
怖い。気持ち悪い。理解できない。同性に本気でキスされたという現実が受け入れられない。
目の前にいる律が、知らない誰かに思えてゾッとした。
「なんでこんな気持ち悪い事するの!?」
叩きつけるような私の怒声に、律は小さく呟いた。
それは、消えてしまいそうな、震える声だった。私が知っている凛とした律の影はもはやどこにも無かった。
「そ、の……寝ぼけて……つい……」
それが真実だったならいい、と私は思った。だけど私と律の深い仲が、律は嘘をいっていると見破らせてしまう。
「そんなふうじゃないだろ……!?」
嫌悪と非難が、私の心にあふれた。律はそれを感じて怯えるように、ただ頭をたれて、顔を青くしている。
「……ごめん……」
律のかすれた呟きが、私に非情な現実を突きつけた。
「本気で私に……してたの……?」
律の行為をキスと呼ぶことさえ私の心には耐えがたかった。もっとおぞましい、別の何かだった。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:04:24.43 ID:AiH7jJau0
「なんで……? なんで律が私に、するの……? 意味わかんない……なんだよそれ……」
考えたくない可能性が、私の頭の中にはあった。だから声が震えた。体も震えた。
親友との絆が、震えていた。この現実から逃げ出したかった。
「律。帰って。私どうしていいかわからない」
「み、お」
重たい沈黙。
蛍光灯の音が、ジージーと虫の羽音のようで耳障りだった。
「出て行って」
「……」
律は傷を負った小動物のような動きで、ようやく体を引きずってベットから降りた。
鞄と、服を手にとって、寝まきのまま、よろよろと玄関に向かった。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:16:42.57 ID:AiH7jJau0
私は時計を見た。午前四時前。……この時間に女の子を一人で帰らせるわけにはいかない。まだ外は真っ暗だった。
ためらった後、私は玄関に向かう律にかすれた声をかけた。感情の無い声だったと思う。
「……待って律。ソファーで寝て」
私はそれだけ言って、すぐに電気を消して、ベッドに逃げ込んだ。律用の枕を床につき落として、ベッドの真ん中で身を埋めた。頭まで毛布をかぶって、ソファーには背を向けた。
それでも、律が動く音からは逃げられなかった。よろよろとしたその足音は玄関からまっすぐにソファーに向かって、律がソファーに倒れこむ音が聞こえた後は、何も聞こえなくなった。
ただ小さな泣き声で、
「ごめんなさい」
とだけ聞こえた。
音がなくなって、闇の世界で私は強い混乱に襲われた。
律に、友人に、キスをされた。その現実をどう処理すべきか、私にはわからなかった。
友人との楽しい日々が、これからの未来が、突然何もかも真っ暗になってしまったようだった。
悲しみか、苦しみか、叫びだしたくなるような負の衝動が、心の中で渦巻いた。
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。
体感で三十分ほども苦しみ続けた後、私は毛布から頭を出して囁いた。暗がりになれた瞳に、ぼんやりとソファーが見える。その上に横たわる、律の姿も。
「……律はレズなの?」
暗い部屋に、囁きが広がる。
暗闇の奥から、切なげな返事が投げ返されてきた。
「私ずっと、澪。澪の事が好きだった。……ごめん」
その言葉はカナヅチで頭を殴られたような衝撃で。今までにうけた告白のどれよりも、私の心を脅かした。
私はまた頭まで毛布を被った。親友がいるこの部屋のベッドの上で、私は一人ぼっちになった。
ふいに涙が一筋こぼれて頬と枕を濡らした。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:18:00.16 ID:tCyonlA+0
澪ちゃんに言われたい台詞の五指に入る
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:19:56.07 ID:hV5dLUqcI
あまりにお粗末な荒らしだね
まず、SSスレを潰そうと思ったらPCと携帯で書き込める状態でなければ話にならない加えてスマホも使えれば完璧コンディション
さらに注意したいのが、SSの内容とクオリティだ
内容が過激なものであるほうが荒れやすいし、クオリティが高ければ荒らしに反応する連中が増える
荒らしが一人いたところで、スレを潰すことなど出来ないのが現実だ重要なのは状況と己の根気だ
では、前置きはこのくらいにして、実際にどうやって荒らしたらより効果的なのか教えてあげよう
まずはPCで黙々と長文を投下し続けよう内容は自由だが、出来るだけ意味不明でキチガイじみたものにした方がよい
タワーを建造してもよいのだが面白みに欠けるし、何よりこちらの手の内が透けて見えるので推奨はしない文章に周期性や共通性を持たせたりするのも面白い
と言うのも、この動作の意味は容量落ちにあるのでは無く、いかにageてオーディエンスを呼び込むかにあるからだ
読者を増やしてどうするというのだと思うだろうが、それは早合点である
大勢の人間にスレを見てもらうことにより、スレは更に荒れやすくなる荒らしに構う人間や、無駄な議論を発生させることに意味があるのだ
こうなると携帯で争いを誘発することも容易くなるそれまでは静かに待機して刃風を立てぬように書き込むべきだ下手な自演はNG、スマホがあるならそれもよいがあくまで慎重に
あとはほっといてもスレは荒れ、
>>1の敗北宣言も時間の問題となる敗北宣言時には、PCで
>>1への労いの言葉を忘れぬように
この瞬間に代えがたいカタルシスが巻き起こる荒らしの醍醐味はここにあるといってもいい
以上の点を踏まえ、もう少し計画性のある荒らしをしてもらいたいものだ
荒らしは、荒らしを楽しまなければならないのだ
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:30:16.07 ID:AiH7jJau0
朝日がカーテンを照らす頃、律はそっと帰っていった。私はそれに気づいていたけど、声をかけることができなかった。
酷いことを言ってしまったという後悔はあったし、それを謝りたい気持ちもあった。けれど心に、律を拒否する気持ちが粘りついてしまっている。
律の足音が遠くに消えて、私はベッドから降りて、洗面台で顔を洗う。鏡に映っているのは、一睡もしていない酷い顔。
部屋にもどって、律が眠っていたソファーに目を向ける。律が枕代わりにつかったであろうクッションに、大きな染みができていた。
涙だろうか。涙だとしたら、私と比べ物にならないくらいに、律は泣いたのだ。
友人の気持ちを考えると胸が痛んだ。でも、唇に残るキスの感触はどうしようもなく不快で、その友情をもかき消そうとする。
「律……」
カーテンを開ける。
朝日眩しく、空は青い。だが、そんな陽の光も心までは照らしてくれなかった。
今日は大学休もうか、とさえ考えてしまう。けれど、気持ちになんとか活を入れて、大学へ行った。家にいたら、泣いてしまいそうだった。
講義は何一つ頭に入らず、講師の声は耳から耳へと素通りしてゆく。頭の中にあるのは律の事だけだった。正確には、律とのこれからの関係、というべきか。
――律はレズで、そして私の事が好き? ……どうしたらいいの?
律は得がたい大親友であり、小さい頃からずっと音楽を共有してきた仲間なのだ。簡単に縁を切って、はいそれでお終い、なんて事は私自身も望んでいない。
けれども、律が同性愛者であるという事実は、軽くない。いや、ただ同性愛者であるだけなら、まだよかった。
性癖はどうあれ、律の人格は信じている。でも……その思いが自分に向いているとなると。
答えが、でない。
その日、大学で律と会う事はなかった。あるいは不可抗力で律とすれ違えるかもしれないと思っていたのだけど。
帰宅して、味気のない晩御飯を食べる。ふとカレンダーに目がとまって、明日が週半ばの祝日である事を思い出した。明日は、放課後ティータイムの活動予定だった。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:49:36.11 ID:Z96emsFh0
>>1 いつまでこんなスレ立て続けるの?
文才もないし、つまらない。
何よりすごく恥ずかしいよ。
唯「 」 禿「 」 眉毛「 」
ってやればウケると思ってるの?
大して面白くないから死ねよ
もう一度自分の書いた文章読み直してみろ
気持ち悪いって
やってみwww
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 18:20:10.28 ID:JBwBMmRO0
ういうい
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 18:28:39.06 ID:kQ9CUldzO
律澪うふふ
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 19:20:27.51 ID:uIPts2NJ0
早くしろよください
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 20:13:14.28 ID:z/ptRJS00
ハッピーエンドでお願いします
律「女同士で恋愛とかwwwねーよwww」とか律「一番大切なもの」とか
律は作中ではっきりノンケ描写あったから俺の澪を悲しませるポジなことが多かったが
ついに今までの報いを受ける時が来たかざまあ……
とか思えねえぇぇぇぇ!ハッピーで頼むわ
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 21:24:08.34 ID:AiH7jJau0
「……どうしよう」
一度電話してみようか、と思う。けれど、躊躇ってしまう。
「ああもう……私はどうしたいんだよ……!」
苛立って、テーブルに拳を振り下ろす。ガシャンと、空になっていた茶碗が跳ねた。
結局、電話することは出来なかった。そしてまた、律から電話が来る事も無かった。
翌朝、私は一人で目覚め、一人でご飯を食べた。そして、一人でバンドのメンバーと合流した。
その日の放課後ティータイムは、一人が欠席した4人で久しぶりの活動を開始することになった。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 21:24:20.54 ID:PVg8Gg7iO
ほ
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 21:30:03.72 ID:kQ9CUldzO
ktkr
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 21:32:01.83 ID:hNpKZKiA0
syuu
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 21:43:05.01 ID:AiH7jJau0
空気が震えている。スピーカーから弾けるように響くエレキの音色と、キーボードの鮮やかなグラデーション。
そこへ私のベースの低音が交じり、私達だけの音楽ができあがる。
私の大好きな音楽がほんの一時だけ心の淀みを忘れさせた。
視線を横に流せば仲間がいる。けれどそこには、リズムだけじゃない、明らかに足りないものがあった。
「もー、ドラムが無断欠席なんて聞いたことないです!」
「じゃあちょっと休憩して、お茶にする?」
「するー!」
いつもの放課後ティータイムだ、と少しだけ安堵する。みんなは私と律にあったことを知らないようだった。
律が言えるはずもないし、当たり前のことなのだが。
「りっちゃん、どうしたんだろうね」
「電話も通じないし、ちょっと心配ですよね」
「澪ちゃんは何か聞いてない?りっちゃんから」
私は。
「う、うん。風邪でも引いて病院にでもいるんじゃないかな」
(私は……)
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 22:02:04.95 ID:hNpKZKiA0
ハッピーエンドはどこ?
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 22:11:10.80 ID:AiH7jJau0
律が私に音楽を教えた。根暗で人見知りで友達もいなかった私が、あの日からはよく笑うようになった。
律に電話が通じないと知ったとき、私はどうしようも無い孤独感に襲われた。仲間が隣にいるのにもかかわらず、だ。
律にそこまで依存しているなどという事があるはずがない。人見知りは相変わらずだけど、私だってそこまで孤独ではないつもりだ。
一昨日あんなことがあったから、少し感情的になっているんだと自分に言いきかせた。
――私にとって律は、何?
あの夜から、ずっとそのことばかり考えていた。
律がきっかけで音楽を好きになり、バンドを組みたくて高校では軽音楽部をつくった。
自分の居場所を作りたかった。そして、その願いは叶ったはずだった。
自分を受け止めてくれる友人を、一緒に笑い合える友達をこうしてたくさん、私は得たのだ。そのはずだった。
「……っ」
突然は私は怖くなった。何か得たいの知れない感情が体内に噴出してきて、これ以上律のことを考えるとおかしくなってしまいそうだった。
だから私はいつもより激しく、音楽に没頭しようとした。ドラムのいないバンド演奏で、私の低音がいつもより響いた。
そして私の頭の中から、律が消えることはなかった。
ああ、なんてことだ。
私は泣き出したくなるほど、淋しかった。
そしていつもなら、律がこの淋しさを癒してくれるのに……!
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 22:18:09.42 ID:O5SypuTd0
よしそのまま1分に5レスぐらい投下してくれ
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 22:23:03.16 ID:AiH7jJau0
その日のバンド活動は、メンバーが一人抜けていたということもあり、いつもより早く解散した。
家に帰ってから、夕食を食べているときも、シャワーを浴びているときも、ベッドに入ってからも、私の心が休まることは一瞬たりともなかった。
「律……」
律。律。律。
閉じた瞼に律の顔ばかりが浮かんだ。
律。律。律。
自分はいつの間にこんなに弱くなってしまったのだろうか。そんな事を考える余裕さえ、もはや私にはなかった。
錯乱といってもいい。私から拒絶した律をもとめて、心が喘いだ。
私はすがるように震える手で携帯を取り出した。親指を痙攣させ電話帳を検索する。
『田井中律』
ディスプレイに浮かぶ無機質なその文字さえもが、私には、いとおしかった。
大げさではなかった。同じこの空の下に、律という人間が今も確かに生きているのだと思うと、とりとめのない恍惚があふれた。
と、同時にそんな相手と離れ離れになっているこの現実がどうしようもなく悲しかった。それで私はもう我慢ならなくなって――
――唐突に、あの晩の律のキスを、私は理解できたような気がした。
求めてやまない人が自分の側にいて、でも気持ちを伝える事ができなくて。それはどんなに辛い事なのか。律を渇望する今の私には、それが痛いほど理解できた。
律はそんな気持ちをずっと抱えて。ずっとずっと耐えて、そしてとうとう我慢できなくなったのだろう。あのキスはあふれ出した想いそのもの だったに違いない。
「律」
律の気持ちに心が重なって、私の目から涙がこぼれた。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 22:26:09.28 ID:AiH7jJau0
「ごめんね律。好きになってあげられなくて」
自分にとって律は誰よりも求めて止まない相手なのに、その気持ちにこたえてあげることができないなんて、自分は何と歪んだ人間なのだろう。
私は己の身勝手な精神を嫌悪した。
本能的な寂しさが律を強く求めているのに、本能的な性の価値観が律を頑なに拒んでもいる。
いっそ自分もレズビアンだったなら全てのすれ違いは解決できるのに、とそんな事さえ考えた。
私は自分の脳みそをぐちゃぐちゃにかき混ぜてしまいたかった。
「律と話さなきゃ。私、一方的に……あんな酷い事を」
後悔と同時に、心は決まった。
さよならなんてしたくないと、律に伝えなくてはならない。
「今まで通りの友達でいてほしいって……ああ、それじゃだめだ、友達じゃあ……」
一昨日律に言われた、「デリカシーの無いやつ」、の言葉を思い出す。
(……そうか、あれはつい数日前の事だった……)
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 22:32:41.16 ID:AiH7jJau0
早くなった秋の夕刻。私が大学の講義室でレポートの作成を行っていると、背後で、ガチャリと部屋のドアのノブが鳴った。
誰か来たかな、と一瞬顔を向ける。が、いっこうにドアは開かれる気配がない。んん? と片眉をあげ、手を止めて今度は肩ごと向けて注視する。
(気のせい……?)
と私が思い始めた頃に、ようやくドアは開いた。いや、開き始めた、と言うか。
ドアは、まるでホラー映画のようなもったいぶり方で、ゆっくりと押し開けられていくのだ。
(な、何だよ)
若干警戒しながら眉をひそめる。まさか大学構内で泥棒や変質者、ましてやおばけに出くわしたりはしないだろうが……。
ドアの隙間が、人間一人がギリギリ横歩きで通り抜けられるかな、というくらいになった時だ。
見覚えのある顔がヒョイッと現れた。
「お?」
ゼミの後輩である。特別親しい仲ではないけれど、何度か一緒に調べ物をしたり食堂で一緒にご飯を食べた事がある。
でもそれはさておき、私は首をかしげた。彼女はこの階の教室には関係ない学生のはずだった。
「どうしたんだ?」
後輩がその呼びかけに気づいて、私と目が合う。
「あ! せ、先輩!」
後輩はぎょっとした顔をして、それから、ささっと講義室に入ってきて、バンッ!とやかましい音でドアをしめた。
後輩は室内をきょろきょろと見回して、他に誰もいないのを確認したようだった。それから、トトトトと早足で私のそばにやってくる。
どうも様子がおかしい。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 22:35:39.99 ID:AiH7jJau0
「秋山先輩。お、お話があります。ちょっと、い、い、いいですか!?」
あからさまに声は裏返って、顔は真っ赤に強張って、おまけに両の拳をギュッとにぎっちゃったりなんかして。
いつもはどちらかというと物静かな性格の後輩だ。その緊張っぷりは何かの喜劇のようだった。
とにかく必死な感じはよく伝わってきて、ちょっと気おされてしまう。
「え、あ、うん。私を探してたの?」
「はい。こ、こここ、ここではなんなので、場所を変えませんかっ」
「う、うん。いいけど……」
後輩は一瞬ほっとしたような顔をした。けれど、すぐにまた固い顔になって「では」とだけ言って私を連れ出した。
一緒にならんで廊下を歩く。後輩は、歩く姿までガチガチに緊張していた。適当に話かけても、「はい」、とか、「ええ」、とか口数の少ない返事だけ。
(あー……これはもしかして)
この時にはもう、私はおおむね後輩の用件に察しがついていたのだった。相手は違うが、これまでにも似たような事があった。
(やれやれ。またかぁ)
と、内心で溜め息を吐きつつ、連れてこられたのは夕焼けの差し込む空き教室だった。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 22:37:44.27 ID:AiH7jJau0
「それで、何の話?」
なるべく、優しく声をかける。
二人でこっそりと講義室に忍び込んでから、後輩はまだ一言も口を開いていない。
ただ、組んだ両の手のひらをもじもじとさせながら俯いている。 夕日に染まる幻想的な沈黙の空間。
時折どこか遠くの廊下から足音や会話のこだまが届いてくる。もちろん教室には二人きり。多分、悪くないムードなのだろう。
けれど私の心内は冷め切っていた。後輩には悪いとは思うのだが。
「あ、あのっ」
後輩はいよいよ覚悟を決めたようで、握りこぶしに力をこめて、心を吐き出したのだった。
そしてそれは、おおむね私の想像通りの話だった。
「私、先輩には打ち明けます。先輩なら……きっと聞いてくれるって……今日こそは絶対言おうって……」
一度深呼吸をしてから、後輩は打ち明けた。
「あの、私……ビアン、なんです!」
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 22:44:05.76 ID:AiH7jJau0
(あぁ先にそれを伝えるパターンか)
相当に勇気をふりしぼっているであろう彼女には悪いと思うが、私は特に驚きもせずくだらない分析をしていた。
(まぁ、まずはワンクッションあったほうが、聞くほうも理解しやすいよな)
単刀直入に、好きです、とだけ言ってくる子も過去にはいた。たしかはじめての被同性告白経験の時もそうだった。
その時は初めての事でさすがに動揺して、つい相手に奇異の目を向けてしまって、あの時は悪いことしたなぁ、と今でも後悔している。
「えっ?」
と、私は一応は驚いたふりをした。相手も驚かれることを想定しているだろうから、その想定どおりに動いてあげるほうがいいのだ。
私は場慣れしてしまっている自分に、苦笑いをする。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 22:48:04.18 ID:186wvo7EO
続けてかまいません
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 22:50:09.68 ID:AiH7jJau0
「それで、私……先輩の事が好きなんです!」
「ええっ……!!」
衝撃の告白がはじけて、一瞬、教室は音の真空状態になった。……のだろう、彼女にとっては。
しかし、その告白を受けたとうの私は……。
(うー……何で私ってこう……レズの人に好かれるんだろう)
運動場から聞こえてくる、カキーンというどこか間の抜けた音に耳を澄ましながら、どうしたものかなぁ……なんて考えていた。
百合の花影も薔薇の香りも、心中には一切ない。今年にはいって三度目の経験に、ただうんざりしていた。
(やっぱ律か? 律と普段よく一緒にいるし、休みも結構一緒に行動してるし、そういう話を他の友達にしてるし……なんか、そういう趣味だとおもわれるのか?)
(いやけど、ここ女子大だし……高校の時は…ファンとかだったし…うーん……)
「友達、からでもいいです! 私と付き合ってくださいっ」
私は結構本気で悩んでいたために、半ば自己世界に埋没してしまっていた。それで、後輩の気合のこもった声に、驚く。
「……ハッ! あ、ああ、ええと……うーん……」
見ると、後輩は腰を前方に45度曲げたお願いしますポーズで私に頭をさげている。
私は逃げ場を求めて、窓の夕焼けに目をやった。
(うー……助けて律−)
赤い空に、律の他人事な笑みが浮かんでいた。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 22:59:25.32 ID:AiH7jJau0
「――なんて事があってさ。まいっちゃった。何で助けてくれなかったんだよ律」
私は占領したソファーにうつ伏せになりながら律に愚痴った。
大学から近い、ワンルームマンション。
律は、大学の帰りが遅くなった日などは自分の部屋に帰らず私の部屋に泊まる。その日の晩御飯と食後のデザートが宿代だ。
今夜のメニューは近所のスーパーの惣菜とケーキ。それに加えて私が炊いた米である。すでに二人とも晩を食べ終わって、ケーキをつついている。
「さぁ。私がでしゃばって、勘違いされて修羅場になるのが嫌だったのかもね」
律は適当に話をあわせて私をあしらった。カーペットに座りソファーを背もたれにしてテレビを見ている。
きっと、私の話よりもテレビに意識が向いているのだろう。
「あー……まぁそんな風になっちゃうかもしれないなぁ」
「それでー? 返事は?」
律の片手間な質問が、私はちょっと気に入らない。まぁ、愚痴を聞いてもらっているのだから我慢するのだけど。
「そりゃ、ごめんなさいって言ったに決まってるだろ」
「あら、かわいそ」
律はひょいと肩をすくめただけで、テレビから目を離さなかった。
私はその投げやりな態度に、むぅ、と頬を膨らませる。私は律に相手をしてほしいのだ。
私の丁度目の前に、律の後頭部がある。私は、短く整った綺麗な茶髪をひょいと一房、握った。
親指と人差し指の腹で髪をこすると、細くて柔い繊細な感触が伝わってくる。染めた髪がよく手入れされている。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:14:13.90 ID:AiH7jJau0
「ねぇ律、私ってなんかそういう、レズっぽい雰囲気あるのかな? 引き寄せてるのかなぁ」
「んー」
律は一言、気の無い返事をよこしただけだった。
「……むぅっ!」
私はすねて、くぃっくぃっと少し強めに律の髪を引っ張った。
「ちょっと! 痛い!痛いって!」
と、さすがに律が振り向いた。
私はその律に鼻を突き合わせる。
「だって。律が話を聞いてくれないんだもん」
「聞いてるよっ。澪の言った事を考えてたの!」
「……ふん、それならごめんなさい」
私は悪びれもせず唇をピルピルさせた。
「ったく! ……澪って、可愛いくせにどこか男っぽいと言うか、口調もそうだけど、美人な割に女々しくないっていうのか?ビアンの娘達にとっては、それが頼もしく思えるのかもな。
女性でありながら、男性的な魅力を持ち合わせてるって感じかな? それに、面倒見もいいし。……実際の澪は結構、かまってちゃんなのにな。まったく、枝毛になっちゃうだろ」
律は、引っ張られた髪を迷惑そうに整えながら言った。
「男っぽいのは律の方だと思うけどな。…まあ、そうだな、なるほど。けどイヤに詳しいよな、律。……まさか律も私のこと!」
私がふざけると、律の表情がゴキブリの交尾を見てしまったような顔になった。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:22:45.67 ID:AiH7jJau0
「やめてくださいまし。それに詳しくて当たり前だろ。なんせ私ら女子高上がりの女子大生ですから」
律の嫌そうな顔は、まさに私の期待通りの反応で、私は楽しくなってケタケタと笑う。
「ははっ。けど、そっか……私も罪作りな女だなぁ」
私の演技の入りすぎた芝居に律は、馬鹿だな、というような顔をしてまたテレビの方を向いてしまった。
私はそんな律の後頭部を眺めながら、とりとめもない思考に走った。
「彼女、大丈夫かなぁ……。私が断ったら、あの子、泣き出しちゃったんだよ」
「あら」
「泣きながら言うんだ。どうか自分がレズだって事は誰にも言わないでくださいって。もう見ててかわいそうでならなかった」
「まぁ、澪なら言いふらしたり蔑んだりはしないはず、とは考えてたと思うけどな。でなきゃカミングアウトしないだろ」
「そりゃもちろんそんな事はしないさ。けど、慰めるのに必死だったんだから。これからも仲良くしような、これからも友達でいような、って」
と、それまでテレビに目を向けていた律が、振り向いた。そして私を非難した。
「おいおい……澪お前、そんな事言ったのか?」
「え……な、なんだよ。いけなかったか?」
律は、大きな溜め息をついた。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:35:53.47 ID:186wvo7EO
ええいまだか
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:36:06.55 ID:AiH7jJau0
「あのなぁ、考えてみろよ。ふった相手に、仲の良い友達でいようねー、なんてわざわざ伝えて、それって追い討ちだろ」
「え、ええー……?」
半ばこんがらがった頭で私は弁解する。
「ち、違う。私は、貴方がレズでも一切気にしないよって言いたかっただけで……。これからも友達だよって……」
「はぁ……だからその言葉が余計でしょ……」
律に白い目で見られて、私はうぐっと声を詰まらせる。それからソファーに顔を埋めて、足をばたつかせた。
「あーもう、ややこしいなぁー!」
「デリカシーの無いやつ……」
呆れた言葉を言い捨てて、律はまたテレビに戻ってしまった。
罰が悪くて、しばらくは私も黙って、一緒にテレビを眺める。
それでも少し、後輩の事が気になってしまう。次会った時、あの娘はいつもの笑顔を見せてくれるのだろうか、なんて考えて。
でもそれもすぐに頭から消えて、テレビを見終わってからも少し飲んで、いつもと同じ夜を、律と過ごした。
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:42:36.81 ID:hNpKZKiA0
明日の朝まで頑張ってくれ
ハッピーエンド期待して今夜もおやすみ
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:44:40.85 ID:DgH9/UjrO
変に文章凝りすぎ
シンプルに行こうや
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:47:04.98 ID:AiH7jJau0
あれから二日しかたっていないのに、随分と昔の事に思える。
「あの時間に戻りたい、律とさよならなんてしたくない……そう、それが私の伝えたい事」
律ならきっとその願いに応えてくれる。私はその希望にしがみついた。自分にだけ都合のいい話なのかもしれない。けれど私には他にどうすることもできないのだ。
ベッドの上に立ち上がって、深く息を吸って、吐いた。私は思い切って律に電話をかけた。
トゥルルル、トゥルルル……
コール音に、緊張が高まる。でも……
『……お客様は、ただいま電話に出ることができません……』
無機質な声が、私を拒絶した。
「……律……」
さけられているのだろうかと嫌な考えが浮かんで、顔をしかめる。ともあれ私は伝言を残した。
『律。できたら今日、会いたい。会って話をしたい。電話で話すだけでも、いいから……。私、この間は酷い事言った。ごめんなさい。会って謝りたいんだ。許してほしい』
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:49:17.45 ID:FtqSIfXf0
ハッピーエンドを期待しつつ支援
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:50:29.41 ID:PVg8Gg7iO
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:15:30.67 ID:o2veoh510
支援
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:49:18.95 ID:VM6lKtzuO
ハッピーエンド期待
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:56:40.01 ID:CAT/pwDWO
>>50 澪「好きだ!」
律「嬉しい!抱いて!」
これで我慢しろ
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 01:03:36.86 ID:LeJKY2m8O
「!? い、今、ねーちゃんのパンツ嗅いでただろ………!
ね、ねーちゃんには秘密にしといてやるから、お、お、おっぱい見せろ!!」
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 01:10:26.20 ID:o2veoh510
おーい
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 01:37:27.40 ID:o2veoh510
寝る前に保守
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 01:55:40.97 ID:NA7BhZPQ0
素晴らしい
超支援
ちゃんと終わらせてね
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 02:21:31.93 ID:9mso2ZPd0
このパターンは珍しいな
澪ちゃんは女の子だよ
少なくとも男っぽくはないよ
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 02:35:23.44 ID:ecoBpacrP
, ─┐_ノ ̄\
イ  ̄〉_____厂 ̄\__
厂ヽ/,二二、二二、`\ //\
へ、// . : : : : : : : : . \ヽ \ /ヽ
〈_∠厂. : : : :/ : :/|: : : : : . \丶\厂〉 、
/ 厂/. : : : : :/ | :/ |;ハ : : : : : . \乂 〈⌒〉
乂_,ノ: : : :_;∠ l/ 丿__ト.: : : .厂ヘ l ノ\
〈⌒イ: : l: :厂 ` ´ 〉: : .\人〉 ノ
パ 乂_ 〉: :l:│,= 、 , =、⌒|: : |\〉イ
リ / |: : :|/ , -、ヽ ´, -、 \|: : |: : | :l
>>2-7 しね
ポ /′ ; : :八 イ_,ハl l_,ハリ 〉 : |ヘ.:| :|
リ /:/ l/⌒ `ー ' `ー' '⌒|丿l :|
/:/ l: :l : :l /// ' /// ,'|: : : : : :.\
イ / ,l: : | : :ト、 ー--ヘ / |: : :l : : : : .\
/⌒ヽ |/l /|: :│: : : .丶、 o イ |: : :|: : .\ : .\
,' . : .:l |/l / :l: :/|: : :| '⌒> 、_, イ⌒ |: : :l : : : : \ ⌒
V^,ハ、;ノ ∨ 厶.:≦ミ|: : :|三人 ̄\_厂 ̄人三|: : :|三≧、: : \
/ / / / =三三|: : :|三三\三三三/三三|: : :| 三三 \: : \
, / 广ハ. , ' _=三三三|: : :|三三.冫⌒厂⌒< 三三|: : :| 三三三 ヽ: : . ヽ
| l l l / =三三三三|: : :|三 / 人_人 \ 三|: : :| 三三三三 \: : .ヽ
\ ∨ 三三三三三|: : :|三人_/厂\_人三|: : :| 三三三三三. \
でも演奏したり歌ったりしてる時は
かわいいというよりかっこいいよ
_
. '´. ヽ
i L|_!リハリ!_|
|!(!|`~ ‐~ノ!|
>>2は間違えたごめん
|i!/jリ芥リ、|
''(_く/_j|,ゝ.)
ヒヒ!
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 02:56:29.50 ID:w5tG1OXuO
支援
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 03:46:54.72 ID:44RchSaRO
ほ
律→澪か
shien
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 04:47:00.45 ID:u0KLzG1/0
ほす
保守リーナ
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 06:25:07.01 ID:2KtQjBavO
寝るほ
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 06:47:03.52 ID:m29duTXO0
ほしゅうう
あずにゃんにゃん
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 08:19:27.18 ID:UPXf9lCG0
気になるな
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 09:20:51.11 ID:VM6lKtzuO
な
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 10:20:56.44 ID:Fk7GQ96vO
か
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 11:02:29.30 ID:Own2kKak0
の
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 11:10:35.69 ID:VM6lKtzuO
さ
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 11:16:29.56 ID:g2P2zuf4O
ん
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 11:28:35.58 ID:cjHDOyDeO
ぷ
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 11:41:35.78 ID:TLAUrJMb0
律はもう自殺してるかなー
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 11:47:53.49 ID:cjHDOyDeO
りっちゃんなら俺の隣でドラム叩いてるよ
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 11:55:47.86 ID:TLAUrJMb0
なるほど確かにぽんぽこ音がするわ
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 12:25:26.60 ID:sB5RcruGO
まぁーだかな?
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 12:47:16.28 ID:TLAUrJMb0
まぁーだじゃない?
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 12:57:46.84 ID:VM6lKtzuO
今なんじゃない?
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 13:01:04.50 ID:o2veoh510
まだか
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 14:08:22.94 ID:SOVl/Yma0
律澪
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 14:25:07.60 ID:cjHDOyDeO
ハッピーエンドはどこにあるの
産業で
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 14:29:04.38 ID:nkTep8P6O
心の中に…
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 15:03:44.74 ID:o2veoh510
おーい
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 16:16:36.80 ID:g2P2zuf4O
まだかな
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 16:38:28.15 ID:lMOe12560
律から電話がかかってきたのは、日付が変ろうとする頃だった。
その時私は枕に突っ伏してもんもんとしていた。
律専用の着信メロディがなって、私はまさに飛び上がった。枕元に転がる携帯をあわてて手にとり、二つ折を開く。
画面には、間違いなく田井中律の表記があった。
携帯を手にとるのは素早かったのに、画面を確認してから通話ボタンを押すまでは、倍以上の時間がかかった。
「……もしもし。律?」
『……澪』
お互いに、不安を隠そうとして隠しきれていない、そんな低く沈んだ声だった。
私は、たった二日会っていないだけなのに、律の声が懐かしくてたまらなかった。
二人ともに相手の出方を伺っているのか、少しの間、会話は無かった。
「……律。本当にごめん。私、あんな事言っちゃいけなかった。すごく後悔してる」
私は普通に話そうとしているのに、どうしても、声に暗さが残った。
僅かに緊張を感じさせる律の声が返ってきた。
『……ううん。いいよ』
「よくないよ」
『私のほうこそ。ごめん』
何に対しての『ごめん』なのかという疑問と、やっと律と話せた安心と、慎重に話をしなきゃという意識が、私に冷や汗を浮かべさせる。
しえん
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 16:41:30.02 ID:74Q9Lq6j0
支援
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 16:47:10.99 ID:lMOe12560
「……ねぇ、聞いて。私はこれからも律と一緒にいたい。二人で話し合って……なんとかできないかな」
少し、律の返事には間があった。
嫌な予感がして、私は表情を強張らせた。
『……ありがとう。私も澪と一緒にいたい』
「よかった……」
私はほっと頬を緩ませた。
でも、続く律の言葉が再び私の顔を凍りつかせた。
『でも、今は一人にしてほしい』
「え……」
『澪といると辛いんだ。声を聞くのも……』
「律。で、でも」
『私にキス、してくれる?』
私には律のその言葉が不協和音の塊のように響く。私の常識とは相容れない感覚なのだ。
「……それは……」
『気持ち悪い?』
「……っ」
私は何も答えられなかった。
それなのに、沈黙の言葉が、私の明確な意志を律に伝えてしまう。
私の顔が精神の苦痛に歪む。
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 16:51:13.38 ID:lMOe12560
「ごめんっ……」
『気にしないで。しかたないって。それに私のはただの失恋の痛手だから。しばらくしたら……きっと平気になる』
律は無理に笑っている。それが痛々しくて、私の心を切り刻む。
「律。私達、友達でいられるよな」
言ってはいけないと思いつつ、聞いてしまう。
少し間をおいて戻ってきた返事は、ひどくたよりなかった。
『…うん。きっと』
「きっとじゃ嫌だ律!」
『だって私、まだ澪の事が好きだもん』
私は眉を寄せて唇を噛んだ。友人が自分を好きだといってくれた事は嬉しい。けれど、律の好きと私の好きは違うのだ。
律はセクシュアリティな感情を込めて私を想っている。そのすれ違いが私には耐え難い。
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 16:54:53.97 ID:lMOe12560
『じゃあ、もう切るよ。また……気持ちが整理できたら連絡するから』
「待って!」
反射的に呼び止めた。それから口にでた言葉は、紛れも無い真心だろう。
『何?』
「律は誰よりも大切な人だから。連絡、私、本当に待ってるから」
電話の向こうで、律の小さな深呼吸が聞こえた。
『ありがと。澪』
そして、通話は切れた。途絶えてしまった携帯電話を見つめながら、私は立ち尽くした。律が遠くへ行ってしまったようで寂しかった。
「はぁ……」
友達、という言葉はやっぱり律を傷つけたのかもしれない。律の最後の声はどこか寂しげだった。
「馬鹿馬鹿……私の馬鹿……」
どうしてあの晩、自分はもっと落着いて律に接する事が出来なかったのだろう。
もっと落着いてちゃんと親友の気持ちを聞いてあげられていたなら、きっとこんな事にはならなかったのに。
痛みをともなった後悔が胸にたまって、ズシンと私を押しつぶした。
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 17:04:00.82 ID:nkTep8P6O
重い
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 17:04:03.00 ID:NA7BhZPQ0
いいね
支援
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 17:28:35.51 ID:lMOe12560
ようやく待ちに待った連絡が来たのは、最後に電話で話してから一週間後の夜だった。私にとっては長い長い一週間だった。
ほとんど毎日学校で律を見かけた。そのたびに駆け寄りたくなるのを我慢した。友人達には、律と喧嘩をしているのだと言ってごまかした。
「一番辛いのは律なんだから」
そう自分に言い聞かせて、耐えた。
そして今日、私が丁度お風呂からあがってバスルームから片足を踏み出した時。部屋の奥の机の上で携帯が鳴っているのに気づいた。
律からの着信だった。私はバスタオルもまとわず慌ててドタドタと部屋を走って、雫があたりに飛び散るのも構わず携帯に掴みかかった。
ディスプレイには、間違いなく『田井中律』と表示されていた。
ごくりと唾を飲んで、私は携帯を耳にあてた。
何と声をかけようか迷って、結局妙な挨拶が押し出されてしまった。
「お……おっす」
電話口の向こうで、律の吹き出す音が聞こえた。
『なんだよそれ』
久しぶりに聞いた、律の声。笑っていた。少し不自然なくらいに、暗さが無かった。きっと意識して明るく振舞っているのだろう。つい、こちらも力んでしまう。
「あ、いや、お風呂から飛び出して慌てちゃってさ。あはは。まだ体も拭いてないんだ。カーペットが濡れちゃった』
『え、裸? …そんなに慌てなくていいのに。じゃあいったん切るから、澪がかけなおして。寒いのに風邪ひくぞー』
「あ、う、うん。じゃ」
電話はきれた。
久々の会話は奇妙に滑らかで、しかし十数秒とたたずに終った。それがなんだかまぬけで、気が抜けた。あるいはそれが二人の日常の帰還を表しているようにも思えて、私は可笑しかった。
とは言え、私はバスタオルで体を拭きながら、「律は今頃私の裸を想像しているのかな」、なんて邪推してしまって、どうしてもやはり、少し変ってしまった二人の関係を感じてしまう。
それでも律が再び連絡をくれたという事が何よりも嬉しくて、私は数分も経たないうちに電話をかけなおした。いつもなら肌の手入れで十分二十分は時間をとられるのだけど、全部すっとばした。
バッドエンドだったとしても最後まで見るお
SSの澪のサンジュ率の高さは異常
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 17:44:48.57 ID:lMOe12560
「律」
『澪』
「……」
『……』
さっきとは違って、何を話すべきか、聞くべきか、戸惑いが沈黙を生んだ。
もちろん律の想いを聞きたい。でも、デリケートな会話なのに相手の顔を見て話せないというのが、どうにもやりにくい。
「……明日の夜、家にこないか? ゆっくり二人でご飯食べながらさ。律とお喋りしたい」
『え……うん。そうだな。じゃあ晩御飯、買ってくよ』
律があっさりと了承してくれて、ほっとする。
「ご飯とお味噌汁は用意しとくから、いつもみたいに、適当に惣菜をお願いな」
『ん。いつもどおりに』
いつもみたいに、いつもどおりに――なんでもないその言葉が、今の私達にとっては何か特別な魔法の文言のようだった。
きっと私達二人の願いが込められた希望の言葉なのだ。
『……澪。元気だった?』
「ん……元気だけど寂しかった。ずっと律の連絡を待ってたんだからな。何度こっちから電話しそうになったか」
『……』
律は一言、二言、言葉にならない音を口から漏らしたようだった。私はその吐息に、律の安心を感じたような気がした。
『……そっか。ありがと。じゃあ、また明日な』
「うん。また明日……」
静かに、何か厳かな儀式のように、私は携帯を耳から離す。
電話を終えて、私はしばらくじっとディスプレイに目を落とした。画面の向こうから、律が同じようにこちらを覗き見ているような気がした。
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 17:47:11.90 ID:lMOe12560
「話し合えば、きっと何とかなる」
私は、自分が律をどれだけ大切に思っているか、律がいないと自分がどれだけ寂しいか、伝えなければならないと思った。
あるいはそれは律に辛い思いをさせることなのかもしれない。
けれどちゃんとそれを律に伝えなければ、これからの二人の未来はくだらない嘘の触れ合いになるに違いなかった。
二人のすれ違いは何も解決していない。話合いはまだまだこれからなのだ。
けれど自分と律なら必ず理解しあえると、私は心から信じていた。
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 17:50:00.83 ID:cbYm8MCK0
むう
翌日。目が覚めた時から、私はずうっと緊張しっぱなしだった。
律に何をどう話そうかと考えているとあっという間に日が過ぎて、夜。
私はご飯を炊いた後、意味も無く部屋を片づけたり、鏡を見て髪の乱れを気にしたりして、そわそわと律を待った。
手持ちぶさたにテレビのチャンネルをちょいちょいと回していると、呼び鈴が鳴った。
「来たっ」
私は玄関に飛んでいった。
玄関の戸を、開ける。
「……こんばんわ」
律が惣菜屋の買い物袋を片手にさげて、少し瞳を大きくしながら、現れた私をみつめていた。
私は曖昧な態度を一切取らず、にっこりと笑った。
「やっとだな律。お腹がすいたぞ」
律は二度瞬きをした後、微笑んで、買い物袋を持ち上げた。
「澪の好きそうなのを選んでたんだよ」
持ち上げた袋からは、胃袋を刺激するいい匂いがした。
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 18:29:46.32 ID:g2P2zuf4O
んん?
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 18:30:03.36 ID:IWt0Qc/iO
紬「おっそー!」
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 18:37:13.08 ID:74Q9Lq6j0
速さより質です
俺はいつまでも待ち続けます
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 19:16:50.62 ID:TLAUrJMb0
まだっすか
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 19:31:54.54 ID:o2veoh510
書き溜め中ですね
保守
カーペットに小さなテーブルを広げて、二人でご飯をつつきながら、たわいも無い話をおかずにする。
一週間分の話題が溜まっていたのだから余計に会話がはずんだ。
お互い腹にイチモツを抱えていると分かっていてもごく自然にそんな世間話を楽しめてしまうのが私と律の仲なのだ。
私は自分と律の相性の良さを、心から嬉しく感じるのだった。
「ふぅ。ごちそうさま。おいしかったし、ふふ、楽しかった」
少しはにかみながら茶碗に箸を寝かせる。ほとんど同時に律も茶碗を空にした。うさぎ柄とくま柄の、二人の茶碗。
「さて……と」
後ろ手を付きながら、どこを見るでもなく呟く。
それに呼応して律も小さく息をつく。
「ん……」
場の空気の味が、暖かくて甘いホットミルクティーから渋みのある冷緑茶に変わったのを感じながら、私は口端を上げた。
「恥ずかしい事言うけどさ。私、律と一緒にいる時間が最高に大好きだ」
それを口火にして、互いに避けていた話題に、私達はそろそろと踏み込んでいった。
「律がレズだからって、それは変わらない」
「……ありがと」
俯いて微笑んだ律の顔は、けれどどこか寂しさの影があって、そう単純な感情ではないのだと私に感じさせた。
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 19:40:40.28 ID:cbYm8MCK0
みゃだかにぇ
面白いんだけどなあ…
やっぱりヘテロ明言されてる律がレズなのは違和感ある…
それと俺が澪と付き合ってないのも違和感ある
「黙っててごめんな。仲よかった従姉妹が、私がビアンだって告白したせいでうまくつきあえなくなった事があったから……怖くて」
「そっか……。その従姉妹の事も、その……好き、だったのか?」
自分自身、意図のはっきりしない質問だった。一歩踏み込んでみたというところだろうか。律は一呼吸してから答えた。
「いや。その人の事は違う。ただ私を理解してほしかったんだ。その人ならわかってくれると思った。本当の自分を知ってくれる人がほしかった……」
私は頷きながら、自分がしばしばうなされる悪夢の事を思い出していた。
「律のその気持ち、全然違うんだけどさ、少しだけわかる。私も、誰にも言ったことないけど、ずっと悩んでることがあった。もし律がいなかったら、私って友達がいないんじゃないかって」
「…え?」
「……夢を見るんだ。私の隣から律がいなくなって、友達がみんな私の事を無視するようになる夢。私は律と友達だけど、お前とは友達じゃない、って」
「……」
夢を話すのは、初めての事だ。律は静かな瞳でじっと、時折頷きながら、私の話に耳を傾けていた。
「でも、そんな時必ず律が戻ってきて助けてくれるんだ」
「私が?」
「泣いている私の肩に律が手を触れて、笑いかけてくれるんだ。……ぅ。なんか照れるなこんな夢の話。……でも、だから分かる」
「もし律がいなかったら、私を孤独から助けてくれる人は誰もいないんだ。律がいないと、寂しい。唯やムギ、梓も友達だし仲間だけど、律とは違う」
「みんながいても律がその場にいないとき、あの夢を思い出して、すごく不安になる。だから、ちょっとだけ、臆病になるのも、本当に自分をわかってくれる人を作りたいっていうことも、共感できる」
律は言葉少なげにうつむいて、顔を少し歪ませた。瞼の間から伺える黒い瞳が僅かに潤んでいるように見える。
「知らなかった。澪がそんなふうに思ってたなんて」
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 19:57:27.45 ID:cbYm8MCK0
うむ
「でも……」
どれだけ律を大切に思っても、どうしても覆せないただ一つの気持ちがある。それだけははっきりと伝えなければならなかった。
それはこれからの二人の関係の大前提なのだ。
私は律が顔をあげるのを待った。
律が私の沈黙に気づいて、上目使いに視線を送って、二人の視線が交わって。
お互いに十分に気持ちが整ってから、私は告げた。
「私は恋人にはなれない」
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 19:59:45.62 ID:cbYm8MCK0
ソッカー
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 20:01:24.20 ID:iGtkSsy60
せやろか
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 20:03:21.23 ID:o2veoh510
気持ちは変わっていくもんだからな
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 20:04:02.78 ID:IWt0Qc/iO
とりあえず修三
同性の友達にゲイだって言われるより
お前が好きだって言われる方が逃げたくなるな
律の瞳はそれまでの潤いを捨て、一瞬鋭く揺れる。それから何かをこらえる様な眼をして、私の瞳を覗く。
私は息をするのも忘れて律の反応を待った。
「……私、この一週間ずっと悩んだ。やっぱ澪とさよならするべきなのかもって」
私は冷たい手で両の肺をわしづかみにされた心地だった。けれど、じっと我慢して律の言葉に耳を傾ける。
「澪が私と変わらず親友でいてくれる事はすごく嬉しい。私がビアンだっていう事実を受け止めてくれたんだから。だから、後は私が自分の気持ちに踏ん切りをつければ、それで良いんだって思った。でも……」
律は私に微笑みかけた。ただの笑みではなかった。泣き顔かとも思える、律の心のうちがそのまま現れたかのような顔だった。
「でも駄目だった」
私は自分の血管の一本一本が言い知れぬ不安に冷えていくのを感じている。
「だって、私と澪はどこまでいってもただの友達。じゃあ私は、もしいつか澪に彼氏ができた時、笑っておめでとうを言わなきゃいけないのか? ……言えるわけない……ごめん。全部私の我がままだ」
「律が謝る必要なんてない」
「いいや。せっかく澪が私と友達でいたいって言ってくれるのに……私はそれだけじゃ嫌なんだ。自分勝手だ」
「そんな事無い。律の気持ちは当然だと思う。……自分勝手なのは私だ。私、律がこれからも友達でいてくれるってかってに考えて、律にたよりきってた。自分の事しか考えてなかった……」
律が気持ちを忘れられないと言ったら、どうしよう? 私もそれを考えなかったわけではない。けれど、深く考える事をさけていた。その先にチラつく結論が、怖かったからだ。
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 20:24:09.46 ID:NA7BhZPQ0
うむ…
澪たんは俺と付き合ってるから
仕方ないよね
「いつか澪が私の事を迷惑に感じるようになる……それを思うと怖いんだ。今だって澪と一緒にいて楽しいはずなのに、不安でしかたないんだ」
「待って、待ってくれよ……じゃあ律は本当に、私とはもう一緒にいられないって言うのか……?」
でも律は、首をふった。
「私は澪と友達でいたいと思ってる。でも、それで本当にいいのか分からない。……だから澪に会いに来たんだ」
「え……?」
「一人で考えてもどうしようもないって気づいたから。澪と話して決めようって」
律の心には今、不安定に揺れる天秤があるのだと気づかされて、私の背筋に冷たい緊張が走る。
この瞬間の一言一言が、二人の未来を分けるのだ。
私は、すくんでしまっている自分に気づいて、己の心で尻を叩いた。
「……二人とも一緒にいたいと思ってるんだ。なら一緒にいようよ」
もちろん律は簡単には納得しない。
「一緒にいたいと思っても、そこから先が全く違う。私は……私は澪と恋人になりたい。でも澪にとって私はただの友達――」
「ただの友達なんかじゃないっ」
私は律の言葉を遮って、立ち上がった。自分で自分の尻を叩いたおかげで、気持ちが発奮している。
「澪?」
机を回り込んで律の隣に膝をつく。
驚いている律の手をとって、私は睨み付けんばかりに律と顔を付き合わせる。
「私がどれだけ律の事を大切に思っているか、律はちっとも分かってない」
律はつながれた手に少し眼を落として、口を尖らせた。
「澪はあんまりそういう事を言ってくれないじゃんか」
「これから話すから、ちゃんと聞いて」
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 20:48:21.85 ID:bjqxSd8yO
ハイ
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 20:50:08.89 ID:nkTep8P6O
どうなるの
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 20:51:48.94 ID:g2P2zuf4O
なんかADVやってる気分だ
私は切々と語った。
自分にとって律がどれだけ特別な存在か。会えない間、会えなくなるかもと思った時、どれだけ辛かったか。昔喧嘩したときに家で一人泣いた事も、正直に明かした。
律は時々恥ずかしそうに頬を緩めたり、私の本音に少し驚いたりしながら、話を聞いていた。
私は話し終わってホゥと息をつく。
律は少し顔を赤らめながら、どう受け止めたらいいのか戸惑っているようだった。
「澪は……」
か細い声で、律が言った。
「私の事どう思ってるの? 今のだけ聞くと、まるで告白されてるみたいなんだけど……」
「その……私も自分の気持ちがよくわからないんだ」
「……」
「律とキスしたいとかそんな風には思えないけど、律とは絶対に離れたくない。……誰にもわたしたくない、なんて風にも思う」
「それって友情? それとも……愛情?」
「分からない。 愛情とか好きとかじゃないと思うけど……あぅ、ごめんな……でも絶対、この気持ちはただの友情なんかじゃないとも思う」
互いに、私自身どう理解していいのか分からず、手を握ったまま無言で見つめ合う。
「はは……私もいっそレズだったらいいのにな」
「…澪はこれだから……やっぱりデリカシーがない」
「え?」
「だって、そんな風に言われたらよけい澪を好きになっちゃう…。ビアンじゃないくせに……」
そう言いながら、瞼の端を人差し指の背でこすった。律の瞳は濡れていた。
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 21:08:36.52 ID:H3yOrX4e0
C
自分の気持ちが少しは律に届いたのだろうか、と私は思う。
「実際、澪はどう思う?」
「え? どうって、それは今言ったよ」
「いや。私が澪を好きなことについて、どう感じる? やっぱり、気持ち悪い?」
「それは……」
「気を使わずに正直に言ってほしい。必要な事なんだ。お互いの違いを理解し合いたいから」
「……それって、これからも私と一緒にいてくれるって事?」
「私だって、できるなら澪と一緒にいたいから。そのためにはっきりと澪の気持ちを知っておきたい」
「う、うん。……ええとな、よく、分からないって感じ……かな。同性に恋愛をするってどんな気分なんだろうって。理解できないから、律が私に向ける気持ちが少し怖くもある。律が私にキスしたいと思う気持ち
少しは想像できる。けどやっぱり自分がその感情を抱く事はないと思うし、その……本当にごめんだけど、考えると、どうしてもちょっと気持ち悪いって感じてしまう」
私がたどたどしく話して、律はぎこちなく微笑んだ。
「……ちゃんと話してくれて、ありがとう澪」
律は気丈にそう笑ったけれど、心にある失望を隠し切る事はできないようだった。気配のふしぶしにそれが現れているのだ。
そして私はそんな律を慰めずにはいられない。
「なぁ律。私は律の事を世界一大切な友達だと思ってるし、もし私が男だったら、け、結婚しちゃってもいいってくらいだぞ。あはは……。それなのに、キス、とか、抱き合うとか考えるとやっぱり気持ち悪いって思ってしまう。私おかしいのかな」
律はまたいくらか瞳をうるませながら、笑った。
「馬鹿だな澪は。おかしいのは私だ。私が……ビアンだから……」
とても一言では表せないような、複雑な思念を感じる律の表情だった。笑っているのか、泣いているのか、困っているのか、喜んでいるのか、呆れているのか、私には分からなかった。
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 21:33:50.65 ID:bjqxSd8yO
しえん
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 22:03:36.26 ID:wLjqfHkxO
マダー
138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 22:11:30.61 ID:nkTep8P6O
どうなるか全く想像出来ない
嫌な予感はするな
「私……あの薬を手にいれて使おうかって考えた」
大学の授業で、レズやゲイを「治療」する薬があるということを聞いた。
私が後輩に告白されたことを律に話したとき、その薬の話もした。
律が言う『薬』とは、この同性愛を「治す」薬のことに違いない。
「あの薬って……律……」
「私だって、それくらい悩んだんだぞ」
「私に言う資格はないかもしれないけど……今までの律を殺すなんて事、してほしくない」
「私だってしたくない。でも」
「もし、私のせいで律が望まずにそんな事をしなきゃいけないなら……私……私は律と一緒にいられない」
「……私がビアンじゃなければ、普通の親友でいられるんだぞ」
「律」
私は律を握る手にギュッと力を込めた。
「レズビアンは律の生き方なんだろう。それを否定することなんてない。私は今の律のすべてが大切なんだ。律が私のせいで自分を殺してしまうなんて耐えられない」
律は俯いて瞳を隠した。涙が一つ、カーペットを濡らした。
「澪は我がまますぎるよ。ビアンじゃなくなれば、私はこんなに悩まなくてすむのに。私にビアンでいろだなんて」
「もちろん、律が本当にそうしたいなら、私はもちろん受け入れる。けど律はそんな事したくないんだろう。だったら……お互いに少しづつ歩み寄って、ありのままの二人で一緒にいようよ。そのために、二人で話しあってるんだろう?」
「……澪は、じゃあ、私にどう歩み寄ってくれるの?」
一寸、私は考えた。それから、律の瞳をまっすぐに見て、はっきりと言った。
「彼氏とかつくらないし、そうだな、結婚もしない。律がずっと私の一番」
私の言葉を聴いて、律がぽかぁんと呆れたような顔になった。
私だって馬鹿な事を言っていると自分で思う。けれど嘘をついているとは思わなかった。私の胸にはそれほど強い想いがある。
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 22:31:55.59 ID:o2veoh510
苦しいよ
「ずっとって、いつまでだよ」
「ずっとは、ずっとだ」
「大学を卒業しても? 三十路になっても?」
「もちろん」
また二、三粒、俯いた律の瞳から涙が落ちた。
「嘘つき……!」
律は泣きながら小さく怒鳴った。
「そんな先の事分からないだろ。気持ちは変わるんだからっ」
「未来の事を恐れて、今の自分の気持ちに背をむけないで。私はそれくらい律が大切。それは絶対だ。ね、律、顔をあげて」
「……嫌だ。恥ずかしい」
「お願い。律の顔を見せて」
少しためらってから、律はしぶしぶ恥ずかしそうに顔を上げた。眉は弱って、瞳は赤く潤んで、唇はキュッと結ばれて、頬は紅潮し。
私は律のそんな表情をはじめて見た。
頬に流れる二筋の涙が、私をドキリとさせた。涙とは、それ自体に人の感情が流れているように思えた。
「ジロジロ見んなよっ」
少し顔を背けながら、律が鼻声で呻いた。
「……律の泣き顔、可愛いなぁって」
「馬鹿っ」
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 22:37:28.64 ID:nkTep8P6O
チューしちゃえよ
男にも女にも性的な欲求がないって
逆に澪の方がどこか障害があるんじゃないの?
私が茶化すと律はまた俯いてしまった。
感情の高ぶりが律の震える肩に現れている。すがるような声で、律は求めた。
「私のためにそこまで言ってくれるなら恋人になってよ……。なんで駄目なんだ? 私とずっと一緒にいてくれるんだろ? それって愛情じゃないのか? 私の恋人になってよ澪……」
それはきっと、律が理性で押さえ込んでいた恋の欲望そのものの声なのだ。
なのに、やっぱり私は
「律……ごめん。許して」
俯いていた律の頭が、また少しうなだれたように思えた。
「何を許せばいいのか分からないよ」
「歪な私の心を、だよ。……律の事が誰よりも大切なのに、私の頭にはくだらない価値観がこびりついてもいる。私も……こんな自分が嫌だ」
誰よりも大切な目の前の女性の、その心からの願いを叶えて上げられない自分を私は殺してしまいたかった。
「……じゃあその代わりに抱きしめて」
律は、震える声で呟いた。
「え?」
「外国じゃ友人どうしでも親愛の意味でハグするだろ?うちの留学生だってよくやってる。 ……それでいいから抱いて」
「……分かった」
映画で見るような、男同士や女同士の親友が抱き合うシーン。それを想像すると、いくらかは、抱き合うことへの違和感も薄れた。
――でもきっと律は……
少し考えて私は頭を振った。なんだっていいじゃないか。律がどんな気持ちで自分と抱き合うか、そんな事にまで自分が口出しできるはずがない。
「じゃ、じゃあ律……するから」
「ん」
ずっと膝立ちだった私は、カーペットにお尻を据えて乙女座りになる。それからおずおずと律の肩に手をかけた。
向い合って座る律は少し前かがみになって、そのまま、私の鎖骨の辺りに顔を埋めた。
私の鼻頭に律の髪が触れる。律の香りがいっそうはっきりと鼻腔に流れてくる。
良い匂いだとは思う。それでもどこか、私の頭にこびりついた男女観がその香りをわずかに拒否するのだった。
律が私の背中に手を回して、ぎゅっと二人の体を密着させる。ここまでするのってやっぱり親友同士のハグじゃないよな、などと考えつつも私は律にならって手を回す。
律の腰は、抱き心地自体はとても気持ちよいのだが。やはり気持ちがどこか、抵抗した。
それから壁かけ時計の秒針が三回転して、律はまだ無言で私にすがっていた。
「……律、あの、いつまでこうしてるんだ?」
「私が良いって言うまで、このままでいて」
「は、はい」
鎖骨に律の暖かい吐息を感じながら、私も黙した。
時折窓の外から聞こえてくる夜の世界の音や、無音の中にのみうまれる静かな耳鳴りを聴きながら、私は、律が今どんな気持ちでいるのかと想像した。
――そしてふと、悲しくなった。
二人は心から互いを求めてやまない。なのに、私と律の間には地平の果てまで続く巨大で分厚いガラスの壁があって、それが二人を隔てている。
そのガラスには小さな穴が開いていて、そこから手を伸ばせばお互いの手を握り合うことはできるし、話もできる。
でもけして、心からお互いの体を抱きしめあう事はできないのだ。ガラス越しに体を触れ合わせる真似事をするだけで。
私の感情が荒れ、流れそうになる涙を必死でこらえた。
「律。さよならなんて言わないで」
律の頬が小さく頷いて、私の肌を優しく撫でた。
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 23:07:50.48 ID:iGtkSsy60
しえn
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 23:15:33.13 ID:VSR2iSPUO
しえん
148 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 23:24:26.83 ID:lsgBpPs50
気持ち悪いって感情は理解できるけど
それでも一緒にいたいって思う澪の行動は理解できない
なんか、明らかにお涙頂戴を誘ってるのが丸見え
そんなのこのssに限らずみんなそうだろ
151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 23:39:07.29 ID:DwXAqPZSO
しえ
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 23:46:36.05 ID:lWiw0ifp0
律がかわいそうだな
153 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 00:00:18.07 ID:h31vbRx6O
あー
154 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 00:09:18.85 ID:TgDveVv1O
ほしゆ
遅すぎ
>>145 宇多田さんのFinal Distanceが浮かんだ
Distanceも抱きしめられるようになるのは
この場合澪か律か…
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 00:52:28.73 ID:JqIig+izP
支援
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 00:52:29.08 ID:nZhAejTsO
保守
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 00:55:19.48 ID:/Byli08n0
なにしてんの?
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 01:05:47.02 ID:xDXuQiw1O
161 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 01:08:29.82 ID:nZhAejTsO
平日だし寝たんだろ。明日まで保守か
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 01:10:58.88 ID:tIX68gAc0
紬「wktk」
163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 01:20:55.91 ID:ctdwaKgC0
結末がまったく予想できん
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 02:19:09.73 ID:YfadAm6+O
どうなった
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 02:38:54.23 ID:AvveHVK40
ここから澪がりっちゃんを段々性の対象として意識しだして、りっちゃんは気持ちを押し殺してす決意をしてお互いの気持ちがすれ違いながらもなんだかんだあって結ばれる展開希望
166 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 03:06:17.16 ID:dM+aMUrnP
ま だ か / ̄\
| |
\_/
|
/  ̄  ̄ \
/ ::\:::/:: \
/ .<●>::::::<●> \
| (__人__) U |
\ ` ⌒´ /
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
| ワ ゴ ン |
うう
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 06:07:07.21 ID:nZhAejTsO
最近VIPがなんJ化してる気がする
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 06:10:48.84 ID:mBceIMH3O
昨日、澪が、虐められた復讐に律の弁当にうんこしたSS見た俺には
カルチャーショックだわ
171 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 07:39:35.86 ID:kMbVG7cp0
はやくくっつけ
172 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 08:05:07.30 ID:h31vbRx6O
まーだ?
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 09:10:30.37 ID:nZhAejTsO
ほ
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 09:50:44.33 ID:M/ek/NhY0
補修
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 10:08:25.33 ID:YCM/SRifO
ちょうどU&Iの想いよ、届けの部分が流れてリンクした
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 11:09:36.04 ID:666ft48GO
か
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 11:34:14.74 ID:TgDveVv1O
俺が不幸になってもいから、この二人には幸せになってほしい
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 11:35:08.12 ID:3FWSSxi10
tst
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 12:11:40.37 ID:BjHMaK+9O
支援
はやいとこ頼むよ
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 13:45:40.61 ID:YfadAm6+O
うーん
182 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 14:07:23.82 ID:LjDBTuCX0
遅すぎ
足で書いてんのか?
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 15:25:12.12 ID:iwxYMxPW0
律澪「たぶん、ずっと」
>>1ってこのSS書いた人か?
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 15:27:54.55 ID:jL/H6FF60
おいいいいいいいいい
185 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 16:09:39.62 ID:Zggt5eJIO
携帯からほ
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 16:43:39.95 ID:h31vbRx6O
待ってる
187 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 16:49:15.36 ID:BZWxWjCEO
保守します
188 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 17:36:30.14 ID:YfadAm6+O
ほし
189 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 18:22:06.82 ID:TgDveVv1O
しゅ
翌朝。
眼を覚ました私は、隣にいたはずの律の姿が消えているのに気づいて、飛び起きて叫んだ。
「律!?」
部屋を見回す。
律は、いない。
「律……どこだよ……?」
心臓がものすごい速さで脈打って、背筋のあたりに嫌なものがザァっと広がった。
――昨晩。二人で10分近くも無言で抱き合った。
律はときどき腕にきゅっと力を入れなおしたり、胸を押し合わせたり、頬で私の胸をさすったり、まるで、私の感触を肌に刻み込もうとしているようだった。
いやきっとそうなのだろう。私も何も言わずにただ律の体を抱き寄せていた。自分がこれほどに律を抱きしめてあげられることは、多分、そうそう無いのだ、と思う申し訳なさがそうさせた。
逢瀬の終わりは唐突だった。律は前触れなくふっと私から体を離し、
「握手しよ」
と、まだいくらか潤んでいる目で笑ったのだ。
私が戸惑いながらそれに応じると、
「今日からまた私達は友達」
と微笑んだのだ。
私はあっけにとられながらもなんとか、
「す、末永くよろしく」
とおかしな返事をかえした。
それから私達は、どこかむずがゆい空気の中、食べ終わった食器を一緒に片付け、順番に風呂に入り、眠るまでの時間をくつろいだのだった。
二人はそうやってこれからも一緒にいるのだと思ったのに。
律は違ったのだろうか……?
目の前の景色が遠くなって、キィンキィンと頭の中で鋭い音がなりはじめ――
来たか
「どうしたの澪?」
「へ?」
突然に律の声が私の耳に飛び込んできた。
声のした方に目を向けると、ベランダ窓のカーテンの端から、律の首がにょっきりと生えていた。
「り、りつ……何してるの」
「天気がいいから。ベランダで朝日を眺めてたんだ」
「あ……ああ……そう」
朝日って。
私はどっと力が抜けて、その場でカクンと首を前に落とした。
律はそんな私の内心を見透かしたのか、ベランダから部屋に戻って、ケケケと笑った。
「心配しなくても黙って出て行ったりしないよ」
「べ、べつにそんなんじゃ」
私は頬を膨らませようとしたけれど、ほっとしてしまった気持ちが遥かに強くて、できなかった。不貞寝するようにまたベッドに横になる。
律がしゃっとカーテンを開いて、薄暗かった部屋を明るい光が照らした。
「まぶしー……」
頭まで毛布にもぐって、私はだらしない声で呻いた。
「起きないと、もう七時だよ」
「んー……」
「今日は朝一の授業なんだろ?」
「そうなんだよなー……」
けれど私はどうにも起きる気になれなかった。というより、大学に行く、という気になれない。
律と気持ちを打ち明けあった昨晩の特別な時間が、まだ私をふわりと宙に浮かせているのだ。
「なぁ律?」
毛布から顔の上半分だけだして、私は律に言った。
「今日さぁ大学、休まないか?」
「うん? 何で?」
「何でって言うかさ……今日は二人で家にいたいなぁ……」
「何だそれ。まるで私達が恋人にでもなったみたいじゃん」
律がまた笑って、私は今度こそ頬を膨らませた。
「ちょっと律。それって私へのあてつけか?」
「まさか。ありのままを言っただけ。私達は仲直りしてまた親友になったんだろ?」
律は私を見下ろしながらにっこりと笑った。
朝日の中でのせいか、律の笑顔が私には飛びきり爽やかに思えた。
195 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 18:53:49.39 ID:6U/AyQ3e0
ああ…こりゃ律死んでるな
「何だよ律……。やけにさっぱりした顔じゃないか」
「澪とはこれからもずっと友達。そう決めたから。あぁ久しぶりに気持ちがいい朝だ。迷いが無いって、いいな」
律は昨日の泣きべそがまるで嘘だったかのように、晴れ晴れと笑っている。
私はそれを毛布の下から恨めしそうな眼で見つめていた。
「そうですかぃ……」
私は今だ律への思いの納め場所に困っているのだ。ただの友情とも言えずさりとて恋心とも言えず、これまでにない感情であって、落としどころを決めかねていた。
でもそれが律だけにしか向けられない特別な気持ちである事に変りはなく、二人で一緒にもっとその感情を愛でていたかったのだけど……。
「さぁさぁ。起きなさい。パンを焼いといてあげるから、さっさと顔を洗って」
律は昨晩の泣き顔なんて無かったかのようにいつもの様子に戻ってしまっていた。気持ちの切り替えが遅い律のわりには早い立ち直りだと思った。
「もぅ、わかったよ……」
私は自分だけが取り残されたような、そんな寂しさを感じていた。
けれど、その寂しさを律に伝えて甘える事は、私にはできなかった。
(まぁ、律が笑ってるならそれでいいよな)
求められても答えてあげられないという負い目。その負い目のために、私は自分の気持ちを押し殺した。
負い目を感じる付き合いというのは健全な関係ではないと思う。けれど、どうしようもない。
本当はその負い目も寂しさも、律に慰めてほしいけれど、それはあまりに自分勝手だろう、と私は思う。それにきっと、慰めてもらった事自体に、また負い目を感じてしまうに違いなかった。
数日たったある夜の事。それまでと変わることなく律は私の家に転がり込み、私もまた表面上は今まで通りそれを歓迎した。そうしてソファーにならんで一緒にテレビを見ていた時だ。
ソファーに一緒にならんで座っていた時、律の手が私の手に、すっと触れた。その瞬間である。
「あっ」
私はほとんど意識せず、熱湯に触れてしまったかの様にシュッと手を引いた。
馬鹿、と私は自分に唾棄する。
この数日、私は律とのスキンシップを極端に避けていた。無造作に腕を絡めたり、突然後ろから抱きついたり、今までは当たり前のように行っていた事も全てやめた。
嫌がっているわけではない。律の恋心に波風をたたせないためだ。
けれど今の反応は、明らかに誤りだった。律が今のをどう思うか。私は想像して、悔やんだ。
横目でチラリと、律の顔色を伺う。律は何にも気づいていない様子で、でも不自然なくらいにただじっと、テレビを見ていた。しかし、今の私の大げさな動きに気づいていないはずがないのだ。
「律……その、ごめん、手を繋ぐのが嫌だったわけじゃないんだ。つい」
「ん? 何?」
律は、一体なんの話?、という顔でそう言った。気を使ってくれているに決まっている。
私は申し訳なくなって、今度は自分から律の手の平を握ろうとした。けれど律はやんわりとその手を引いてしまった。
「いいよ。ありがとう」
こんなくだらない事で律に気を使わせてしまった自分が情けなくて、私はうなだれて自分の太ももと終わりのない睨めっこを始める。
「……澪?」
心底うなだれている私を見かねたのか、律が一度引いた手のひらをかえしてくれる。
私はしっかりとその手を握り返した。よくよく落着いてみればその手は暖かくて心地よい。そこにあるのは純粋な思いやりの気持ちなのに、私は自分の色眼鏡が嫌だった。
「律。私は自分が嫌になる」
「……気にしないでいいよ。あるがままでいようって言っただろ。澪と一緒にいられるのなら私はそれで十分」
大人びた律の笑み。
私は、自分が人よりも臆病な性格のために孤独感にさいなまれていた。けれど律はそんな私の倍、周りと異なる部分を抱えてきたのだ。その差が、笑みに現れるのかもしれない。
「でも、私は……」
――律を全部受け止めてあげたいのに
そう思う心の裏にあるのは、恋にも劣らぬ独占欲なのだと、私自身気づいている。
律を誰にも奪われたくない。ならば律の全てをがっちりとがんじがらめにしておかねばならない。それなのに性的に律を拒んでしまう自分の価値観が、私は許せない。
そんな私の葛藤には気づかず、律がくすくすと笑った。
「な、何だよ」
「だって……こういう時って普通は、ビアンの方が変に気を病んでぐじぐじするのに、ノンケの澪がビアンの私に慰められてるなんて、なんだか可笑しくてさ」
そう言ってまた律は笑った。気取ったところのない、可愛い笑みだった。
「わ、笑うなよっ」
私は文句を言いながら、それでも、どうしようもなく癒されてしまう自分を感じていた。手の平に感じるぬくもりと、律の笑い声が、心を軽くする。
それから日付が変って、深夜。私達は以前と同じように枕を並べて眠る。
電気を消して十分ほど。暗い天井をみつめる私の目は、まだ冴えていた。仰向けのままチラリと横目で隣の律を伺う。目を瞑ってはいるけれど、まだ寝息は立っていなかった。
「律。起きてる?」
「ん……?」
私は横向きになって、メリーと向い合った。
「私が眠ってる時ならさ……キス、してもいいよ」
「……澪。あのな」
律は少し呆れた顔をしながら、よいせと自分も横向きになった。
二人で向かい合って瞳を交わす。律の瞳には少し、私を咎めるような色があった。
メリー?
「気をつかうなって、言ったはずだろ」
「そうじゃないんだ。そうでもしないと……フェアじゃない」
「フェア?」
「だって、律は今でも我慢してるんだろ。私への……その……気持ち。私は律と一緒にいたくて、一緒にいる。そのくせ律の気持ちには応えてあげられないなんて。私って、自分勝手だ。だから……」
「馬鹿。それが変な気をつかってるっていうんだよ」
「そうかな」
「そうだよ。それに……澪がそんな事言うから、余計に私の気持ちを刺激するんだよ」
律は冗談まじりではあるが少し怒った顔をして、私に背中を向けてしまった。
「あ……」
律の背中は黙りこんでしまって、私はハァと自分に溜め息をついて、また仰向けになった。
今律はどんな顔をしているのだろう。律の顔を覗き込んで、身を寄せてあげられればいいのに。
それを出来ない自分が、私はやっぱり嫌いだった。
ぬいぐるみに名前でもつけてるのかと…邪魔したのう
続けて
それからまた幾日か経ったある平日。大学にいた私は次の講義までの時間を、友人と共にキャンパスを適当にぶらついて時間つぶししていた。
友人と話をしながらふと目線を遠くにやると、少し先のベンチに律の姿を見つけた。隣には短髪の、体育会系っぽい女学生がいて、二人で楽しそうに会話をしている。
私は、友達かな、と特に気にとめなかったのだけど、
「あぁ。あの人知ってる」
と、私の視線を追った友人が、ベンチを見てうわずった声を上げた。
「律の隣に座ってる子?」
「そうそう。澪は知らない?」
「うん。なに、有名人なのか?」
友人は噂好きする笑顔を浮かべながら、わざとらしく私の耳元に口をやって、こしょこしょと言った。
「あの人私らの一コ上の先輩なんだけど、自分がレズビアンだって公言してるのよ」
「……へぇ。そーなんだ」
「あら、あんまり驚かないのね」
「そんな事ないけど」
むしろ逆。そうとうにギクリとしたからそれを隠すために平静を装っているのだ。
206 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 19:47:56.61 ID:0ceSpLsAO
支援
「けど、もしかして田井中さんも……そうなの?」
「そうなのって、何が」
「だからさ、レズなの?」
「し、知らないよ」
「あんたらメチャ仲良いじゃん。あやしー。というかじゃあ澪もそうなの……!?」
友人は一歩引いて、私に怯えるようにして我が身を抱いた。
「アホ!」
私は持っていたバインダーで友人の肩を叩いた。そして、楽しげに話をしている律を横目にそそくさとその場を立ち去ったのだった。
(レズビアンである律が、レズを公言している人と、仲よさそうにしている)
何か、もやもやとしたものを胸のうちに抱えてしまう。
心を取り出して観察するとすぐにそのもやもやの正体が分かった。
嫉妬だ。
ただの嫉妬ではない。危機感を伴った、強い嫉妬だ。なぜなら、律と話をしていたあの女学生は、同じ立ち位置にいるのだ。
つまり、異端を共有する仲間。あの女子生徒は律とレズビアンという生き方を共有している。
律にとっての特別な存在が自分以外にもいることが、私は嫌なのだ。律をとられるかも、という子供じみた、けれど本物の恐怖。
その晩、律を家に招いた私はさっそく大人気ない唾付けをはじめた。
「なぁなぁ律」
「なに?」
「今日の昼間。大学で律を見たんだ」
「そっか。毎日会ってる気がしないでもないけどな」
「……そのとき律は友達とすごく仲よさそうにお喋りしてたよな」
「ん?」
晩ご飯のカレーをつつきながら律は不思議そうな返事をした。もっとな反応ではあるのだが、私は自分の言葉にこめた言外の意図に気づいてほしいのだ。
「律と一緒にいた人。あの人もレズなんだってな」
レズ、という単語には律も顔を上げた。そしてすぐにピンときたようだった。
「あぁ、あの時の話か。私も澪に気づいてたよ? でも澪だって友達と話してたろ」
「え、そっちも気づいてたの?」
「うん。歩いてくるのが見えてたし」
「そ、そう」
なら手ぐらいふってよ、とは思ってもさすがに言えない。
「で……あの人は律がレズだって事、知ってるのか?」
「うん。私が告白した」
「え……」
そういう意味ではないと分かっていても、告白、という単語にドキリとしてしまう。
「すごく前向きな人なんだ。自分がビアンだって事を堂々と宣言してて、ぜんぜん引け目に感じなくてさ。それで、私みたいにクローゼットしてる人の話をこっそり聞いてくれたりするんだ
さっぱりした性格で友達の多い人だから、あの人と話してるイコールそくビアンって事にもならないし、こっそり悩み相談する人が結構多いっぽいな。もちろん、それが誰かって、言うような人じゃない」
律の笑顔に、その人に対する特別な尊敬を感じて、私は鬱屈する。一方ではそんな自分がどうしようもなく器の小さい人間に思えて、余計にもんもんとしてしまうのだ。
「律も、その人に何か相談してるのか?」
「私は相談っていうか、ただ話をさせてもらってるだけ。同じビアンの人と話す機会って、無いからな」
「……悪かったな。私は話を聞いて上げられなくて」
内なる陰が声になってしまった。スプーンをくわえながら、もごもごと愚痴る。
「へ?」
と律がきょとんとした顔をした。
少しの間、私の顔色をうかがっていた律だが、突如、目と口が急角度で弧を描いてニヤァといやらしい表情になった。
「えぇー……? 何それ澪もしかしてヤキモチ?」
「ち、違うぞ!」
私は唾を飛ばして、三つの三日月を貼り付けた律の忌々しい顔を睨む。
実際、単純な嫉妬ではない。自分に対する嫌悪、と言った感情の方が強い。だけど律はそれを違った風に受け取ったらしかった。
「澪さんったら意外と安いのね。うふふ」
「だからぁ!!」
かってに決めてかかる律に腹がたって、私は本当の気持ちは説明してあげなかった。
「……時々、澪がビアンじゃないのを忘れそうになる」
律はひとしきりニヤニヤした後、今度は少し寂しそうな顔になってそう言った。私はそこに込められた気持ち全てを把握することはできなかった。
そんな事があって私は律との間にある溝をまた意識してしまった。だから、その日私は律の手の平を握って眠ろうとした。毛布の中でもぞもぞと手を動かして、隣で横になる律の手を握る。
「澪……?」
律はきっと、その手に込められた私の気持ちを分からない。二人の間の、さして幅の無い、だけど深い深い溝。それが以心伝心をどこまでも阻んだ。
211 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 20:19:11.36 ID:BjHMaK+9O
おもしろい
頑張って続けて
その深夜。
私は唇に何かやわらかい感触を得て、目を覚ました。
律の匂いも、している。
何が起こっているのかはすぐに分かった。
律が私にキスしているのだ。
(気をつかうなって言ったくせに)
それでも私は寝たふりをしていた。内から沸く嫌悪感を必死に耐えながら、ただじっと目を瞑る。
律は注意深く、静かに、ゆっくりと優しく、何度も何度もキスをした。唇が触れ合うだけの儚い口づけ。はがゆさを数でおぎなおうとしているのだろうか。
――私が眠ってる時ならキスしてもいいよ
私がそう告げたとき律はその言葉を一蹴した。
なのに、律は結局はその言葉にすがっているのだろうか。私がいたずらに律の気持ちに触れて、高ぶらせてしまったのだろうか。
思えば、私が律の秘めたる思いを知ったあの夜も、私は律の手を握って眠ったように思う。
律にしてみれば好きな人と手を握って一つ同じベッドで眠るのだから、どれだけ心乱された事だろう。
とすれば、律がキスを我慢できなくなったのは結局自分のせいで……。
私は己の不用意さを悔やんだ。
213 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 20:26:28.94 ID:Rava2Hk0O
めっちゃ巧いし面白いんだけどビアンって言い方だけ気になるな…
語源からもレズの方が良いような気がしないでもないようなしかしレズの人たちの間でビアンっていうのが普通ならきにしない
214 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 20:28:21.20 ID:0yWdFKxSO
レズは蔑称だからそれを避けてビアン
215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 20:36:09.93 ID:Rava2Hk0O
>>214 蔑称なのか?
気にしすぎな気もするがまあいいや。
設定大学生だしな
216 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 20:37:06.02 ID:dM+aMUrnP
レズの人たちはビアンって自称するんじゃない
217 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 20:40:49.70 ID:0ceSpLsAO
俺はビアンって今だに言わない澪に違和感があるわ
澪律俺の三人で暮らそう
きっと幸せになれる
いや、絶対幸せにする!
219 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 21:00:28.25 ID:TgDveVv1O
おまえと暮らすなんて
どんな罰ゲだよ
罰ゲじゃない神ゲだ!
澪も律も好きなんだよ!
だからなにが起ころうとも二人は絶対幸せにするんだよ!
221 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 21:18:19.61 ID:YbmQvz9qO
続きまだぁ〜
な、なに言ってんだよ恥ずかしい///
嬉しいけどその気持ちは澪と律のために取っといてくれ
みんなと一緒に二人の幸せを願ってくれ
224 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 21:41:10.59 ID:BjHMaK+9O
このスレもしもし多いいよな俺もだけど
225 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 21:43:24.29 ID:Bub1tN2RP
, ..::::'":::::::::::~:: ̄ ̄::~:::::`........、
,.:::'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
,.::":::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
. /::::::::::::::::::::/::::::::::::/::::::;'::::::::::::!::::i::::::::::::::::::::';::.,
/::::::::::::::::::::/::::::::::::/:::::::∧::::::::::ト;:::|::::::::::ヽ:::::::i!::',
,'::::::::::::::::::::;'::::::::::::/ ::::::/ ';::::::::! !:i!\::::::::!:::::::i!:::',
. i:::::::::::::::::::::i!:::::::::::;':::::::/⌒ヽi!::::::| |/ ';:::::i!:::::::|:::::}
. |:::::::::::::::::::::i::::::::::::レ-' __、L;;;/ " ⌒ヽi!::::/::::::i! 多分澪すれいた人が多いからだと思う
i::::::::::::::::_:::|::::::::::::| ,y'斧示ミ、 ,,__ `~L∧:::::;'
|::::::::::::::::::::j:::::::::::iイ r::ハ ィ斥ミ、 ;:::};;/
. ';:::::::::::::::::::|:::::::::::i!_ 込:リ r:ハ }} ,':::::::|
i:::::::::::::::::::i!::::::::::」 xxxxx ヒ:ノ _''/:::::::::i
. !:::::::::::::::`!::::::::::::| , xxx i`::!:∧!
!::::::::::::::::i:::::::::::::i! _ ノヽ!"
,ノ:::::::::::::::::|:::::::::::::|` 、 ' / ノ|
/::::::::::::::::::/:!::::::::::::i\ _ ` -( ̄' ⌒" /::::i!
. /:::::::::::::::/ヽ!::::::::::::| `ー-yヽ, 〈_::::|
/::::::::::::/:.:.:.:.:.|::::::::::::i\ f~ヽ∠ヽ____Vヘ:|
,':::::::::::/:.:.:⌒:ヽ:!::::::::::::|:.:.:\/ `Yiハ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:'i!
,'::::::::::::{:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!::::::::::::ト:.:.:.:.:\ //| i';.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i!_____
!:::::::::::::|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|::::::::::::!:.:.:.:>.://、! |j';.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`7、
i::::::::::::::';.:.:.:.:.:.:.:.:.:i::::::::::::|:.:.:.:.`ヽし"`し'"ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.}
. !::::::::::::::i:.:.:.:.:.:.:.:.:.|::::::::::::!:.:.:.:.:.:.:.:.:.`r"~ ̄~`ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:/
!::::::::::::::ト;.:.:.:.:.:.:.:.!:::::::::::i!:.:.:.:./~`"ヽ j_):.:.:.:.:.:ノ
|::::::::::::::';.:.:.:.:.:.:.:.:|::::::::::::|.:.;.イ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:Y―"  ̄ ̄
';:::::::::::::::}`:.:.:.::.:.:.i::::::::::::i":.:.':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}
今どの位まで進んだのか分からないけど
このペースじゃ終わる前に8日ルールでスレが落ちそう
227 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 22:11:01.63 ID:pEXrB1ur0
支援するぞ
228 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 22:28:31.89 ID:h31vbRx6O
し
229 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 22:49:38.62 ID:97lkDpJuO
なんかの作品をキャラ名だけ換えて書いてるのか?
230 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 23:10:54.17 ID:BjHMaK+9O
231 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 23:15:42.75 ID:97lkDpJuO
途中から妙な違和感もあったが
それより「律」を「メリー」とは間違わんだろ
232 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 23:30:02.16 ID:BjHMaK+9O
確かに
メリーって夢喰いのメリーかな?
なぜメリー?とはおもったが
233 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 23:32:33.19 ID:dUHZBeMIO
澪スレ発見
ID記念かきこ
パクリってやつ?
235 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 23:39:24.35 ID:0yWdFKxSO
なんだって良いじゃん面白ければ
少なくとも俺は続きが見たい
236 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 00:08:24.54 ID:absA4aWmO
うん
どうでもいいから早く
238 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 00:18:01.17 ID:fSGJeDpi0
別になんでもいいだろ
続き期待
――いつまでこんな関係が続くのだろう?
私はふとそう考えて、そして恐ろしくなった。
律は今でもきっと私の事が好きで、けれどノンケの私を気遣って、その気持ちを押さえ込んでいる。
私はそんな律の気持ちに答えてあげる事はできないのに、そのくせ律と離れ離れになるのは嫌で、自己の歪な心への嫌悪を重ねながら、律を離すまいとしている。
結局、いつまでたっても二人は幸せにはなれないのかも。律もそれを悟って、自分と同じレズであるあの先輩のところに行ってしまうのでは――突然そんな不安が膨れ上がって、私の心をおどかした。
律はあてない思慕を、こうやって深夜にこっそりと一人で処理する以外にしようがなく、そしてそうさせているのは私自身で。律を苦しませている自分が、私はどうしようもなく情けなかった。
(やば……泣いちゃいそう)
そんな自分に何も言わず笑って側にいてくれる律の事を想うと、私はとうとう溢れだす涙を止められなくなってしまった。
悔しさと、見えない未来への恐怖と、感謝と、沢山の感情がない交ぜになった涙だった。
「……ひっ……うっく……っく……すん……」
慌てたのは律だ。眠っていると思った私が突然嗚咽を始めたのだから、無理もない。
「澪!? 起きてたの!? ご、ごめん、ごめんな。嫌だったよな」
律は申し訳なさそうに謝りながら、ベッドから出て行こうとした。
私は起き上がり、律の手を掴んで、涙交じりの声で止めた。
「駄目、行かないで律!」
「で、でも、私、澪を泣かせて」
「違う。律のせいじゃないんだ、私が……ひっく」
と、また嗚咽の発作がきて、私は両腕で顔を覆った。律に泣いているところを見られたくなくて、必死に声を殺す。けれど、小さなしゃっくりみたいに、何度も声がもれた。
「ああどうしよう……」
律は何度か私の肩や腕に手をあてながらも、自分が触ると嫌がられるかもとでも思ったのか、すぐに手を離す。
けれどやっぱり心配でたまらないようで、また私の体に触れて……そんな事をおろおろと繰り返していた。
早く律の勘違いをといてあげなければと思うのに、後から後から涙があふれて、私は歯がゆかった。
一分か二分か、ようやく発作がおさまって、私は涙をぬぐって、鼻をすすりながら、弱々しく笑った。
「えへへ、ごめんな。びっくりさせて」
律はにこりともせず、心配そうな顔で私を見つめている。
「澪。何で泣くの? キスが嫌だったんじゃないの?」
自分を責めている律の内心が私にはありありと感じられた。
ベッドの上で並んで上体を起こしている二人。私はそっと自分の肩を律に触れさせた。互いの肌が触れる感覚は、それだけで少し気持ちを落着かせてくれる。
「キスが嫌で泣いたんじゃないんだ。してあげられない自分が嫌で、泣いたんだ」
「澪……」
律は、二度三度何かを言いかけて、そのまま俯いた。
律の手の平が動いて、触れ合う肩の下で、私の手のひらに重なった。
「澪。お願いだから信じて。私は今のままで十分幸せだよ」
「もちろん信じてるよ」
律がきゅっと私の手を握った。
「なら自分を嫌いだなんて思わないで。私は今の澪が好きなんだ」
「……そうだな」
律が幸せでいてくれるならそれが何よりだと私は思う。けれどどうしても、自分の心の中にいる自分自身への裏切り者が許せない。
「なぁ律」
「何?」
「あのさ……。……やっぱ、なんでもない」
「何だよ。言って」
「……。あの、ありがと」
「……うん」
私が口にしようとしたのは、本当は違う事だった。
けれど、言えば律は怒ると思った。だから話せなかった。
「寝よっか。律」
「う、うん」
「私が眠ったら、またキス、していいからな」
「馬鹿。泣いちゃうくせにそんな事言うなよ」
まだいくらかそわそわとしている律の気配を隣に感じながら、私は閉じた瞼の裏に、今しがた律に言いかけた言葉を反響させていた。
――なぁ律。レズビアンになる薬ってあるのかな?
前半 〜終わり〜
243 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 00:54:39.59 ID:fSGJeDpi0
前半だと……
とりあえずおつおつ!後半はまた後日かな?めっちゃ期待して待ってるよ
244 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 00:55:32.15 ID:/JVGEIw+O
とりあえず乙
すぐ始まるかどうかわからんけど後半めちゃくちゃ楽しみにしてる
おつ
後半も期待
246 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 01:06:35.23 ID:KSYyDKnUO
おつー
247 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 01:10:09.31 ID:A6DEzB9d0
乙
りっちゃん可愛いいいいい
俺と結婚してくれええええ
248 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 01:18:00.70 ID:iLwh9n510
おーつ
後半は量的にもペース的にもダメそうなので、一旦出直してきます。
ストーリー的にはきりがいいので、ここで終わりだと思ってください。
すみません。ありがとうございました。
速度的にVIPでやるには向いてないが、SS速報でならやっていけるんじゃないだろうか
まあ一応今日から3連休だし、行けるとこまで突っ走ってみてくれよ
乙です
252 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 02:05:15.34 ID:8wWVwiG90
ぜひともがんばってくれ
この律のしゃべり方が好き
しゅがのおとなしいモードの声で再生される
254 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 03:09:45.60 ID:b8IcMRiF0
>>1 おもしろかったよ
とりあえずオツ
続き待ってる
255 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 03:16:02.13 ID:nkFFp3awO
乙、続きがすごく気になるわ。
次のスレタイわかりやすくしといてくれー
256 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 03:35:49.85 ID:xEIqz/NUO
面白い
んですっげえ切ないな
俺「純。起きてる?」
俺「俺が眠ってる時ならさ……キス、してもいいよ」
258 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 03:46:19.15 ID:pei/PfQs0
乙
面白いけど切なさがはんぱない
続き待ってるよー
260 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 03:50:17.20 ID:82IZ9AkW0
メリーがなんだったのか気になる
261 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 04:10:42.05 ID:JPJ2wqsH0
りつみおー
262 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 04:15:30.85 ID:txGm9DJ30
ライトノベルでさえ面倒で途中で読むの辞める俺が全部読んだなら誇って良いよ
会話以外の描写が嫌いだが、読み手が読み易い様に表現してるのか読み易い
263 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 04:39:12.76 ID:Hc9HE4r4O
単に律をメリー←可愛い何か に例えただけでしょ
264 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 06:16:19.79 ID:PANSphcfO
ほ
265 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 07:14:47.41 ID:C2IK2aP3O
東方にメリーって名前のビアンキャラがいるけど彼女と間違えたのかな?
266 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 07:20:43.24 ID:xVxlw4Kf0
乙
267 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 07:22:01.53 ID:XW2jayUlO
後半も楽しみた
268 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 08:03:26.93 ID:gVNYnebWO
後半いつから書くのか予告しといてくれ
269 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 08:07:38.99 ID:rFGOyuMc0
いちおつ
NIP行こうぜ
270 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 09:16:11.46 ID:1jZSzHtWO
いつ再開するかくらい言えよ
保守する人間はお前の道具じゃないんだよ
出直すって書いてあるんだから落とせよ
272 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 10:53:51.25 ID:JPJ2wqsH0
ぽ
273 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 13:56:55.96 ID:TFGe0rEJO
今から読むか
274 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 14:52:23.71 ID:q99gvf8F0
ほす
275 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 16:17:30.68 ID:UICbpzH90
ほ
276 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 17:25:41.86 ID:Yt9+Y5n+O
律のキャラが崩壊し過ぎてて感情移入が難しい。
あと薬って何だよ。薬って…w
277 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 17:26:53.50 ID:DFMSpUAnO
り
278 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 18:57:50.97 ID:q99gvf8F0
h
279 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 20:31:41.09 ID:8QkFwv/0O
保守
280 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 20:41:45.67 ID:gVNYnebWO
いつ再開するのか知りたい
281 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 20:43:04.80 ID:y0u199Rji
>>1 いつまでこんなスレ立て続けるの?
文才もないし、つまらない。
何よりすごく恥ずかしいよ。
唯「 」 ハゲ「 」 眉毛「 」
ってやればウケると思ってるの?
大して面白くないから死ねよ
もう一度自分の書いた文章読み直してみろ
気持ち悪いって
やってみwww
こんな意味なく保守するだけのスレとかあるから
SSスレが嫌われるんじゃないの?
283 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 22:19:16.61 ID:sSUkbY1qO
次のスレタイは何にするのか教えてくれ
ある程度書きためてからタイトルつけるだろうから
タイトルはまだ無いだろ いい加減落とせよ
285 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 23:40:48.36 ID:q99gvf8F0
お
286 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
s