文才無いけど小説書く 冬

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここはお題をもらって小説を書き、筆力を向上させるスレです。


◆お題を貰い、作品を完成させてから「投下します」と宣言した後、投下する。

◆投下の際、名前欄 に『タイトル(お題:○○) 現在レス数/総レス数』を記入。
 (例:『BNSK(お題:文才) 1/5』) ※タイトルは無くても構いません。
◆お題とタイトルを間違えないために、タイトルの有無に関わらず「お題:〜〜」という形式でお題を表記して下さい。


※※※注意事項※※※
 容量は1レスは30行、1行は全角128文字まで
 お題を貰っていない作品は、まとめサイトに掲載されない上に、基本スルーされます。

まとめサイト:各まとめ入口:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/
まとめwiki:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/
wiki内Q&A:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/index.php?Q%A1%F5A
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:14:41.62 ID:vRTTCCLd0
▽読み手の方へ
・感想は書き手側の意欲向上に繋がります。感想や批評はできれば書いてあげて下さい

▽保守について
・創作に役立つ雑談や、「お題:保守」の通常作投下は大歓迎です
・【!】お題:保守=ただ保守するのも何だから小説風に保守する=通常作扱いにはなりません

▽規制されている方へ
>>1から辿って行けるまとめ板に、規制者スレがあります。
 そちらの方に投下していただければ、心ある人が転載してくれます。

▽その他
・作品投下時にトリップを付けておくと、wikiで「単語検索」を行えば自分の作品がすぐ抽出できます
・ただし、作品投下時以外のトリップは嫌われる傾向にありますのでご注意を

▲週末品評会
・毎週末に週末品評会なるものを開催しております。小説を書くのに慣れてきた方はどうぞご一読ください。
 wiki内週末品評会:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/index.php?%BD%B5%CB%F6%C9%CA%C9%BE%B2%F1
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:15:34.97 ID:vRTTCCLd0
486 名前: ◆zS3MCsRvy2 [] 投稿日:2011/02/02(水) 01:55:31.48 ID:l5ZQZ1/IO
仕事場に羽毛布団持ち込んでます

第253回週末品評会  『冬にまつわるもの』

規則事項:6レス以内
     冬に関係してればいいから
     あれ、てことはお題冬でよくね、とか言ってないで頑張れよお前は
投稿期間:2011/02/05(土) 00:00〜2011/02/06(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外になります。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2011/02/07(月) 00:00〜2011/02/08(火) 24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:19:57.69 ID:1CI5T9stO
いちおつ

さて、誰かお題を
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:34:02.43 ID:vRTTCCLd0
こんな時間に立てたらまた落ちるじゃないですあk

>>4
ライフライン
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:16:58.65 ID:o64eJEgA0
保守
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:21:41.52 ID:vRTTCCLd0
早朝の保守
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:04:02.71 ID:DcBYoS7kO
>>1おつ
9ライフライン:2011/02/06(日) 07:36:12.57 ID:J/Bc5/s10
 目が覚めた時には既に夕暮れが始まっていた。昨日の疲れはないが、どことなく
不自由な感覚が身体を覆う。ベッドから脚をおろし、両膝に腕の力を込めて立つ。
遮光性のカケラもないカーテンを開けて、太陽の残光を浴びる。僕には朝焼けにみえた。
 「すいませーん」チャイムに遅れて男の声がした。なにか重いものを床におろす音も聞こえた。宅配便のようだ。
 「あ、お荷物のお届けに参りました。こちら早川さんでよかったですかね?印鑑かサインお願いします」
男はおろしたばかりの荷物を再び持ち上げ、受領のサインを求めた。
 「はい確かに。ありがとうございます」そういって男は階下へと消えた。重いダンボールを玄関まで引っ張り込む。
宛名は自分だが、送り主は聞いたことのない名前だった。住所も知らない市からだ。なんだかイヤな感じだ。
かといって怖れるわけでもなく、僕は極めて雑に箱を開けた。中には大量のクッション材と、『ライフラインパック』
と書かれたケースが入っていた。青い塗装のケースはみるからに頑丈そうで、クッション材の過剰さに疑念を抱く。
ケースを取り出して側面のラッチを引くと、高級セダンのドアを開いたときのような音とともに勝手に開いた。
 「…なんだこれ。これがライフラインパック?」中にあったのは、Ctrlキーと、Endキーだった。新手のいたずらだと
思いつつ、キーを手に取ると、急にめまいがして、僕は気を失った。目が覚めると、世界は一変していた。

  目が覚めた時には既に世界の終わりが始まっていた。ぼんやりとした記憶を頼りに
自分のおかれている状況について理解を試みた。手に握り締められているサイコロには
見たことのない記号が描かれている。どうしたものか。ここはどこなんだ?7階にいたはずの
俺は、いつしか赤土の上に立っていて四方を霞んだ地平線に囲まれている。
 「困った…なぁ。こりゃ、困った。け」無風で、適温で、無生産な快適この上ない生活が、一瞬で消えたのだ。
それが認識できたときには、もうどうでもよくなっていた。歯を食いしばってサイコロを投げた。
 足元を見ると、錆びたケースが蓋を開けて土をかぶっていた。ケースには『ライフラインパック』と書かれている。
 俺は家を探して必死に地面を掘った。
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:38:55.68 ID:hEu3NYpe0
test
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 08:46:41.44 ID:vRTTCCLd0
ああ
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 09:23:35.97 ID:hEu3NYpe0
>>9
これは1レスながらにしてとても味のある小説。空の赤さと赤土の視覚効果はよかったとオモ。しかし、賽コロがチープ。何かで代用したほうがもっとよくなるはず。
あと、…は……のが見た目クール(と思う)偶数個つなげるのがルール(らしい)
あらすじは、気だるい目覚めを迎えた主人公が、ライフラインパック(ctrl+endキー)を受け取る。押してみると、赤土の荒野に立っていた。サイコロを投げ、家を探して土を掘る。というものだ。
これ、一体どういう小説なのか自分なりに考えてみた。
主人公について仮説を立ててみる。
・死亡説 根拠(なんだ赤土の上って地獄かよ!)
これはありえないだろう。少なくとも、自分がそこにいることを主人公は自覚しているという意味では生きている。俺は生きているほうを支持するね。
CTRL+ENDキーは、エクセルだと最後にブッ飛ぶキーだ。それを使って(?)、主人公は過程をすっ飛ばして世界の終わり(終りでない)までぶっ飛んだ。で、そこにライフラインパック(以下LP)であればこその意味があるはずだ。
・後半は夢説 夢オチ説
これは無いわ。自分の置かれてる状況を理解してるんだから。もっとマシな夢みろや。(…実はこれだけはどう考えても否定することができないので無視。)

やっぱ、主人公は遠い未来までやってきたっぽい。そんで、サイコロを持ってる。そんなの渡されたっけ?現代で最後に手にしたのはLPの中身。それがサイコロになったんだろうね。
服装が変わってる可能性もあるな。もし、肉体のみの転送であるならば、誰もいなくったって素っ裸であることに何かリアクションを取るはずだよ。
主人公は自分を把握して、その上でサイコロを振る。何かを受け入れたんだ。
その後なぜ、最後主人公は家に探そうとするのだろうか。どうでもよくなってた人がLPを見ていきなり必死になっている。
ライフラインという文字を見て、生き残ることが脳裏をよぎったのか?
決定的に欠けてたものが、見えてきた。
俺はハッとして最初のほうに思考が戻るわけですよ。LPはどうして送られてきたんだ?何かしらんけど送られてきてる…
実はこの宅配便の兄ちゃんは、宅配便の兄ちゃんみたいな何かな奴なんじゃねえのかぁ?
でね、主人公がニートかはわからないけど、無生産な生活を快適としていた人間だからこそ送られてきたんだとしたら? ライフラインパックはものすごく皮肉な意味合いを持つじゃないか?
つまり、LPはもっといろんな人にも配られているのかもしれないんですよ。サイコロを投げてしまったら、ゲームは始まってしまうでしょ。ゲームには大体参加者がいるもんだ。主催者の存在も考えられる。
だから他にもココにたどり着いている誰かがきっといる。そして、主人公はサイコロを投げてしまった。「世界の終わり」が始まってしまった!
一体何が起ころうとしているんだ!?パンを焼いて紅茶飲みながら待ってる子をさがせ!?そのLPがお前のものだという確証はどこにもないんだぞッッ!!おい馬鹿!掘ってる場合じゃねーぞ!!!嫁をさがせ!!早くその場を離れろォォーーーッ!!!!

という感想。やっつけゴメン
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 09:34:33.61 ID:awaokrze0
うあああああああああああ
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 10:14:18.31 ID:hEu3NYpe0
ほしゅ
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 10:27:01.58 ID:iWb1csWV0
ショートカットキーをまったく覚えようとしない自分には理解できなかったが>>12でわかった
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 11:34:50.09 ID:DcBYoS7kO
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:25:46.11 ID:vRTTCCLd0
aa
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:25:00.07 ID:o64eJEgA0
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:28:19.43 ID:nw4aoere0
しゅ
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:02:06.16 ID:DfAyvDWq0
gi
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:14:32.15 ID:mVPGor9F0
この時間になっても誰も品評会作品投下しないのか
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:19:13.90 ID:CtWmvGVP0
>>21
前回多かったから自重してる
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:59:59.97 ID:s5uCU+zC0
>>21
特に何もネタが無いから
思いついたら書くけど

24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:11:48.88 ID:CtWmvGVP0
冬にまつわるもの→ニーソックス→ショートパンツ→細い足
→フライドチキン→鶏→インフルエンザ→脳炎→農園→野菜
→人参→マンドラコラ→呪術→コタツとみかん
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:19:44.93 ID:PrRqI5hWO
上質な作品書けとか上質な感想書けとか言われるから今回はパス
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:32:45.04 ID:CtWmvGVP0
>>25
上質な作品書けとか上質な感想書けとかスルーしてかけばいいだろ
俺が辛口批評してやっからさ
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:40:42.24 ID:y28p0f990
実際今週投稿しようとしている人って、どれだけ居るの?
俺は漸くタイトルが決まったところー
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:46:14.28 ID:sYd1p62IO
Ctrl + Home


人生という名のA4紙


Ctrl + End
29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:56:54.73 ID:PrRqI5hWO
>>26
作者と読者のやりとりに第三者がからむのが嫌だからしばらくは休むよ
または通常作だけ投下する
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 17:00:47.00 ID:y28p0f990
あら?俺が寝ているうちに何があったの??

森見の本ばかり読んでいたら、文章が似てしまってライトな文章が書けなくなってしまったでござる
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 17:01:41.63 ID:PrY9Ad8C0
書きたいからお題くれよ。場面みたいな感じでいいからさ。
32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 17:01:54.23 ID:qbgj0xIn0
森見さんの文章はかなりライトな方だと思ってた
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 17:03:38.24 ID:qbgj0xIn0
>>31
あ、ごめんね。

じゃあお題というか場面みたいな感じ
「夜の砂漠を歌いながら歩いている何か」
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 17:04:29.88 ID:y28p0f990

そうなんだけどさ。ラブなコメを書きたい時にあの文章だとしっくりこなくてさ

>>31
美人が川に飛び込もうとしている場面
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 17:46:33.27 ID:DcBYoS7kO
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 18:31:39.11 ID:UeVe5elk0
37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 19:12:34.02 ID:UeVe5elk0
ほほ
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 19:45:58.60 ID:UeVe5elk0
ほほほ
39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 20:18:42.78 ID:+9d7o3Iu0
madazero?
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 20:21:12.55 ID:qbgj0xIn0
ゼロだねぇ
書いた方がいいのかな
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 20:22:41.47 ID:Ii1R2Qb6O
なに、今週は品評会少ないのか?
……しまった、チャンス回だったのか!いまからでも急いで書かなくては!
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 20:33:56.22 ID:UeVe5elk0
昔一番手のジンクスてのでお見合いしたことあったなぁ
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 20:41:17.39 ID:qbgj0xIn0
名前の引用しようと思ってラギッド・ガールをパラパラめくりはじめたら
あっという間に20分経ってしまった。
やっぱ面白いなぁ
44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 20:56:57.32 ID:y28p0f990
半分くらいまで書いたけど、「何これ? もっと面白くなる筈だろ。」と、自分の腕を恨み、消してしまう
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 21:19:59.24 ID:qbgj0xIn0
ちょっと本格的に読んでくる
46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 21:21:04.06 ID:y28p0f990
いや、書けよ!
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 21:53:02.07 ID:Un6ituKdO
え!品評会ゼロだと!!
テスト勉強なんかしてる場合じゃねえ!
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 22:24:08.54 ID:vAr+vBc00
だめだ・・・品評会書けない
お題ちょうだい
49【転載】 コタツとみかんと怪盗 1/6 (品評会作品) ◇OV.4ugEbKk:2011/02/06(日) 22:24:13.96 ID:o64eJEgA0
 夢を覚えているか?
 幼き頃の夢を。

 孝平は改札に財布をかざした。
 電子音が鳴り響き、通路が開ける。ジーンズの後ろポケットに財布を押し込む。
 夢への第一歩を踏み出す、そう思うと胸が高鳴った。
 東口から出ると、そこには見慣れた景色が広がる。1ヶ月間何度も通った道。空を見上げる。青く透き通った冬空が広がっていた。
 
 思い立ったのは先月小学校の卒業文集を読んだ時だ。戦後最大の就職難の煽りで、孝平も就職活動に失敗した。三回生の春から2年近く活動したが1社も受からず、実家に帰ろうと荷物を整理していた時に出てきた物だった。
 何気なく開くと、夢の欄に『怪盗』とつたない字で書かれていた。
「どうせ実家に帰るなら、夢を追いかけてみてもいいじゃないか。」と誰かに言われた気がした。
 
 住宅街の中から目的のアパートが見えてきた。周りを見渡すが、人通りはまったくなかった。アパートの階段を上がり、ドアの前に立つ。
「ここまでは予定通りだな。」
 初仕事の緊張からか、思わず声が漏れてしまう。孝平は左右を見渡し、誰も居ないことを確認すると、素早くピッキングを開始する。
 この家をターゲットにしたのには理由がある。家主が若い独身の男で、昼間は家を開けており、周りは住宅街で人通りが少ない。そして、孝平が住んでいるアパートの鍵と同一の鍵を使っている。
 この日のために、毎日家の鍵相手に練習を積んでいた。下準備が成功の可否を分けると孝平は信じていた。
「カチャ」という音共に鍵が空いた。額に浮かんだ汗を拭い、深く息を吐く。
 思っていたよりも時間がかかってしまった。
 もう一度左右を確認し、ドアノブに手をかけた。
「もう後戻りは出来ないぞ。」と孝平は自分自身に問いかけたが、答えは決まっていた。
 ドアを開けると、身体を滑り込ませるようにして中へ入り、鍵を閉める。
「おじゃまします。」
 礼儀だと思い、呟いてみた。当然返事は帰ってこなかった。
 靴を脱ぎ、廊下へと歩き出す。不動産サイトで調べた通りの構造で安心する。孝平の住んでいる1Kの小さなアパートとほぼ同じ構造だった。台所を見ると自炊の気配すら感じられないところまでそっくりだ。
 居室へのドアを開ければ6畳一間が見えてくるはずだ。その部屋から金目のものを盗み、お暇する。時間にして5分もかからない作業のはずだった。
 ドアを開けると男がコタツの前に座っていた。時間と息が止まった気がした。
 男は顔をゆっくり上げ、孝平を見る。
「なんだ?空き巣か?」
50【転載】 コタツとみかんと怪盗 2/6 (品評会作品) ◇OV.4ugEbKk:2011/02/06(日) 22:24:56.72 ID:o64eJEgA0
 孝平は男の問いかけにどう返事しようか迷った。馬鹿正直にYESと答えても捕まるだけだし、NOと答えてもすぐに見破られる。
 「そう警戒するなや。同業者だ。とりあえず、座れ。」
 悩んでいる孝平を見かねたのか、男は床を指した。
 言われるまま座り、男を見る。
 髭や髪の手入れをまったくしていない初老の男だ。肌に清潔感がなく垢染みている。よれた濃い緑のコートを着ていた。どちらかと言うと、部屋に住むよりも公園に住むほうが似合う。
 たぶん、ホームレスだろう。そう思うと心にゆとりが生まれてきた。
 周りを見渡す。こたつを挟み正面に男、背に玄関、右にはテレビとDVDデッキがあり、左にはベットがあった。 たぶん、ここだろうと左斜め後ろの備え付けクローゼットを見る。お金を隠せるのはここしかない。
 「食うか?」
 不意に男からみかんを差し出された。断る理由もないので受け取る。
「何回目だ?」
 空き巣のことらしい。男はみかんの皮をむくと、丁寧に筋を取っていた。
「今日が初仕事」
「なぜ、ここを狙った?」
「どこでもよかった。練習台だよ。怪盗になるための。」
 二十歳過ぎた男が怪盗と言うのは少し気恥ずかしかったが、ホームレス相手になら胸を張って言えた。
「怪盗か」
 男はみかんを口に放り込むと勝ち誇ったように言った。
「なんだよ。」と思わず口に出しそうになるのを堪えた。ここで言い争っても良いことはない。
 男は孝平の苛立ちを気にした素振りもなく、DVDデッキを見ていた。デッキの上にはレンタルとシールが張られたDVDケースが乗っていた。
 男は2,3度右腕を確認すると、ボールを投げるかのようにDVDデッキへと手を振りぬき、引いた。
 驚いたことにDVDケースが宙を舞い、男の手元へ収まる。
「こう見えても、元怪盗だ。」
 男が汚い歯を見せ笑うと、DVDケースからディスクを取り出し、題名を確認していた。
 みすぼらしい格好で怪盗を名乗る男。孝平は半信半疑だった。
 手品のようなことはおこなったが、それだけで信じていいのか。
 男は立ち上がり、DVDデッキにディスクを入れだす。
「入れる時は手なのかよ。」
 悪態をつく。混乱しているのを悟られたくなかった。
51【転載】 コタツとみかんと怪盗 3/6 (品評会作品) ◇OV.4ugEbKk:2011/02/06(日) 22:25:24.40 ID:o64eJEgA0
 男はリモコンを片手に元いた場所へと戻った。映像が流れ始める。昔見た懐かしいアニメ映画だ。怪盗がガンマンや侍と共に姫を助け出すといった王道アニメだ。卒業文集に怪盗と書いたきっかけにもなった。
 男は何かを懐かしむような目で映画を見ていた。
「今までに何盗んだ?」
 何となく気になり、聞いてみる。盗んだものによっては本物かどうか分かるかもしれないという思いがあった。
 男は少し思案すると、思い出したかのように言った。
「あなたの心です。」
「銭型警部かよ。」
 反射的に出た突っ込みに男は笑って答えた。
 信用して良いかはわからかったが、悪人には思えなかった。
 男は画面から目を離さず言った。
「怪盗になってどうするつもりだ?」
 親に昔何度も言われた言葉だった。こいつも同じようなことを言うのか。目の前に壁が出来たような気分だ。
「別に。」
「いいことなんてないぞ。空き巣と代わらん。」
「別に働きたくないわけじゃない。だけど働き口もない。だから、昔夢だった怪盗になろうと思った。」
 孝平はそれだけ言うと口を閉じた。親に反抗している中学生のような台詞で少し恥ずかしかった。
男は「そうか」とだけ言うとメモ用紙に何かを書き出した。
「空き巣と怪盗の一番の違いはなんだと思う?」
 男はそう言いながら、ペンを走らせ続ける。
「空き巣と怪盗の一番の違いは、証拠を残すかどうかだ。お前も怪盗の端くれなら何かサインでも書いていけ。」
 ペンを差し出され受け取る。何を書こうか悩んだ。名前を書けば当然捕まるだろうし、だからと言って名前以外のサインなんて思いつかなかった。
 一頻り悩んだ後、ゆっくりとペンを動かす。
 『怪盗参上』
 紙一杯にそれを書き終えると、男がペンと共に回収して言った。
「盗んだら、これを置いていこう。」
 男は歯を見せるように笑うと、映画をまた見出した。
52【転載】 コタツとみかんと怪盗 4/6 (品評会作品) ◇OV.4ugEbKk:2011/02/06(日) 22:25:49.64 ID:o64eJEgA0
 食い入るように見ていた男が、立ち上がった。
 何事かと思い、一緒になって見ていた孝平は男の顔を見る。
「トイレだよ。」
 男は言い残すと、孝平の後ろにあるドアを開けた。
 映画は怪盗が敵にやられているところだった。時計を見ると侵入してから1時間近くたっていた。
 まだまだ時間はあるが、長居は無用な気がする。しかし男の正体も知りたい。
 そんな葛藤をしている間に男が戻ってきた。テレビの前を横切り、元いた場所に腰を下ろす。
 孝平は諦めたかのようにテレビを見だしたが、内容は頭に入ってこなかった。
 好奇心と恐怖心のせめぎ合いが続いていた。
「怪盗に一番大事なのは何だと思う?」
 男は唐突に言った。
「下準備。」
 間をおかず答える。家主の観察、周辺の調査、ピッキング練習とすべて下準備をしてきたからここにいるのだという自負があったからだ。今までの苦労を思い出すと、外れる気がしなかった。
「確かに大事だ。だが1番じゃない。」
 男は「大事なのは想像力だ。」と付け加えた。
「想像力?」と鸚鵡返しのように言った孝平に対して、男は「想像してみろ」と力強く言った。
 何か大きな物に飲み込まれるような気分だ。抵抗を忘れ、男の言葉にすべてを委ねてしまう。。
「仮にここに警察が乗り込んできたとしよう。おまえは手も足も出ずにつかまる。」
 男の言葉はにリアリティがあった。
「留置所に入れられ、監視される。社会的な立場も危うくなる。就職どころか、バイトにも雇ってもらえず、近所からは空き巣の息子だと指を指される。」
 それは経験者から語られる重みがあった。
「友達からは蔑まされ、親からは腫れ物扱いだ。どこか遠くに逃げようにも金はなく、引越しなんて持っての他だ。」
 血の気が引いていくのが分かる。
「そしてお前はホームレスになるしかないのだ。」
「うるせぇよ。」と強がりを言おうとした時だった。ピンポーンとチャイムが鳴った。
53【転載】 コタツとみかんと怪盗 5/6 (品評会作品) ◇OV.4ugEbKk:2011/02/06(日) 22:26:14.91 ID:o64eJEgA0
 1回だけなら宅配便だと思えたかもしれないが、何度も何度も鳴り続ける。
「大丈夫なのかよ?」と孝平は男に掴みかかるようにしていった。
「落ち着けよ。」
「落ち着いてられるかよ。」
 先ほどの男の言葉を、想像した内容を思い出す。何も盗んでいないのに捕まり、バイトすら雇ってもらえない人生。一度捕まったら警察にも目をつけられるし、怪盗なんて出来るはずもない。
 念入りに準備すれば問題ないと思っていた自分が情けない。
 孝平は今にも泣き出しそうになるのを必死に堪えていた。
「こんなんで慌てるようじゃ、怪盗に向いてないな」
 男は宥めるような声で言うと、孝平に解説しだした。
「まず、ピッキングする時、手間取らなかったか?」
 孝平は頷いた。家の鍵と同じ型なのに、思っていた以上に時間がかかったことを思い出す。
「それは俺が細工したからだ。」
 男は半田ごてのようなものを取り出し、孝平に見せ付けた。
「次にチャイムを連続で鳴らしそうな人物を想像してみろ。近しい人間。親、恋人、友人などが思い浮かぶはずだ。近しい人間が家主の家に来る場合何をすると思う?連絡だよ。事前に連絡してから家に来るはずだ。
ここで矛盾が生まれる。事前に連絡しているはずの近しい人間がチャイムを連続で押すのは不自然だ。ならば、近しくない人間。他人でチャイムを連呼する人物を想像してみろ。」
 男はそれだけ言うと、玄関へ向かって歩き出した。
 孝平は混乱する頭の中で必死に考え出す。無事にここを出られるのであれば、お金なんていらなかった。
 男はのぞき穴も見ず、鍵を開けると「コラッ!」と叫んだ。小学生ぐらいの少年達が蜘蛛の子を散らすように、去っていくのが見えた。
 必死に思い悩んでいたことが馬鹿らしくなり、孝平は笑い出した。
「向いてないな。」と呟く。所詮は小学生の頃に思い描いた夢だ。
「いいものをやる。これを持っておまえはおまえの人生を歩け」
 男はそういうと、ポケットから紙を取り出し、孝平に渡した。開くと電話番号が書かれている。
「俺の知り合いの会社の番号だ。きっと力になってくれる。」
 お礼を言い、いつの間にかポケットから落ちていた財布をジーンズの後ろポケットに突っ込んだ。
 もう怪盗なんてどうでもよくなっていた。男の正体も興味なくなっていた。本当の意味で罪を犯せば後戻りできないことが分かっただけでも、儲けものだ。
54【転載】 コタツとみかんと怪盗 6/6 (品評会作品) ◇OV.4ugEbKk:2011/02/06(日) 22:26:42.67 ID:o64eJEgA0
 テレビを見ると、怪盗が敵をやっつけ、警察から逃げ出している所だった。
 最後ぐらいは怪盗らしく去ろうと思う。
「あばよ、とっつあん。」
 男は大きな笑い声を上げていた。

 駅に着き、改札を通ろうと財布を取り出すと、1枚の紙が出てきた。
 そこには『怪盗参上』と書かれており、裏には男のサインと思われる簡単な似顔絵が書かれている。
 慌てて財布を開き、残金を確認する。お札が綺麗さっぱりなくなっていた。
「やられた。」と思わず口に出してしまう。
 貰った電話番号に諦めながらも、かけてみる。
 短いコールの後に、「ハローワークです。」と若い女性の声が聞こえた。
 男の台詞を思い出す。
 盗まれたのは幼き頃の夢だった。
「盗んだのが怪盗なら、仕方がないな。」
 孝平は前を向きゆっくりと歩き出した。
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 22:27:20.86 ID:o64eJEgA0
>>48
ハマチ
56ラストノート 0/6 ◆D8MoDpzBRE :2011/02/06(日) 22:28:02.72 ID:o64eJEgA0
品評会投下します
タイトル:ラストノート
レス数:6
57ラストノート 1/6 ◆D8MoDpzBRE :2011/02/06(日) 22:28:28.09 ID:o64eJEgA0
 目の前の女の子は、微かに当惑しているようだった。少なくとも、政紀にはそう見えた。小さなテーブル越しに向かい合って、お互い
にアイスティーととアイスコーヒーを飲んでいる。残暑も治まりかけ、外には秋晴れの空が広がっていた。
 窓際にある日当たりのいい席だ。異常に混雑していることを除けば、悪くない。都内で喫茶店に入れば、どこもこうである。休日風情
丸出しの通行人を二階から見下ろしつつ世間話できるというのは、親の仕送りをあてにしながら生きている大学生にとって最大級の
贅沢とさえ言えた。
 政紀の手元のコーヒーは、場の話題と同様にほぼ尽きかけていた。一方で目の前の女の子は、せわしなくストローに口をつけては、
ほんの少量だけを含んで口を離す、という動作を繰り返している。政紀はそれを見て、昔飼っていたインコのことを思い出した。クチ
バシの先端を水につけて、肉眼では関知できない量の水を少しずつ飲み下すのだ。そのインコは政紀が小学校三年生の時に死んだ。
死んでもなお羽根の色が鮮やかなままだったことが印象に残っている。
「あの」と女の子が言った。「なんとお呼びしたらよいか」
「あ、ごめんなさい。ピースメーカーでいいですよ」
 言葉を発した瞬間に、政紀は自分がおかしなことを口にしていると気づいた。彼は、インターネット上でピースメーカーと名乗っていた。
ペンネームのようなものだ。とあるアメリカ製の拳銃につけられた愛称からとった名前だ。僕のことはピースメーカーと呼んでください、
なんて真顔で話す人間がいたら変質者である。
「やっぱ篠崎で」政紀は名字を名乗った。「えと、その、ブラウンシュガーさん」
「深沢です」
「深沢さん――」
 言葉を繋ぐ代わりに、政紀はグラスを指で弾いた。水滴が指を伝ってくる。深沢と名乗った女の子は、先程までのように伏し目がち
になっていた。本名を名乗りあったところでお互いを隔てている壁の薄皮が剥がれた程度で、依然とらえようのない距離感が二人の
間にはあった。射程距離の分からない銃器を持った者同士が、ただひたすらにらみ合うだけの塹壕戦を繰り広げているかのような
距離感だ。
 政紀には、深沢という女の子が自分より年上かどうかも分からなかった。ネットでの発言を見る限りでは同じ大学生のようであり、
見た目もそれを裏切ってはいない。黒髪は肩口で切りそろえられており、こざっぱりとした清潔感があった。化粧もきつい感じではなく、
政紀に対して好印象を与えていた。趣味は読書、休日は家で過ごすか時折友達に付き合って買い物に出るくらいだ、という。
 好印象を抱かせるに充分な物腰と外見を持った彼女だが、心の内を読ませないオーラのようなものを同時にまとっていた。少なくとも
政紀はそう感じていた。言葉ははっきり一音一音明瞭に話すのだが、抑揚や感情による修飾が乏しく、情報量のそぎ落とされた言葉の
断片から彼女が考えていることを探る作業はことのほか骨が折れた。
「篠崎さんの小説、いつも楽しく読ませて頂いてます」ここではじめて、深沢の方から話題が上がった。「先日投稿された清瀬の告白
シーン、とても興味深かったです」
 ようやく本題にありつけた、と政紀は思った。自分から言い出すのはいささか面映ゆく、しかし今日の会話の流れから話題がここに
58ラストノート 2/6 ◆D8MoDpzBRE :2011/02/06(日) 22:29:17.05 ID:o64eJEgA0
辿り着くまでにどれほどかかるだろうかと危惧していたところだったので、まさに渡りに船であった。
「女性から見てああいう描写は、どう感じましたか」
「小説が男性視点なので、ああ、そういうものかなあと思いました。色々頭で考えながら告白するんですね。面白かったです」
「これが例えば、自分が告白される立場だったらどう思います?」
 ここで深沢は不意を突かれたような素振りを見せた。言葉に詰まると口元がストローに行くという癖は、もう既に政紀も気づいている。
 自分の描いたキャラクターや世界に、そこまで入り込んで読んでくれていたわけではない、と政紀は感じた。どうも他人事な見方なの
だ。だから、こういう質問をされると窮するのだろう。他方、それは単なる考えすぎかも知れないとも思って返事を待つ。
「あまり嬉しくは感じないかな、その、ごちゃごちゃ考えが整理されないまま好きです、って言われても」
「ふうん」
「まあ、あくまでそれは内面のことだから、うまく取り繕ってくれればいいのかも知れません」
 あくまで他人事目線が解消されない、それはそれで客観的な見方ではあると思った。しかし政紀が引き出したかったのは深沢の洞察
力などではなく、あくまで彼女本人の気持ちがどう動いたかである。それゆえもどかしかった。パソコンの画面を通して行われる討論で
は出てこないような答えを期待していたのだ。
 それでも、お互いに会話を交わすことで距離感は確実に縮まっていった。共通の話題というのは強みである。そうする内に雑談にも
花が咲く。実際、深沢の誕生日が政紀の誕生日のちょうど一年と一日遅れであることも分かった。
 おおよそ彼女のアイスティーも尽きかけた頃、政紀は次の約束を取り付けるべく切り出した。
「また誘ったら来てくれますか」
「予定が合えば、構いませんよ」
 政紀は少なからず深沢に惹かれていた。女性としての深沢の魅力もさることながら、もう少し読み手としての深沢の意見も聞きたかっ
たのだ。たかだか趣味でやっている小説書きだったが、彼女の意見を聞くことには単に趣味を充実させる以上の意味合いがあった。
 それは、彼が小説に求めていた命題とも深く関係していた。

     ◇     ◆     ◇     ◆     ◇     ◆     ◇     ◆     ◇     ◆

 ゲームを貸して欲しい、と女友達が政紀の自宅に上がり込んできたことがあった。中目黒にある六畳一間の部屋は、お世辞にも片付
いているとは言い難く、ゲームを貸すだけのことならばと招き入れたのだ。
 彼女は「きったなーい」などと言いながら部屋を荒らしはじめ(正確には大雑把に片付けはじめ)、部屋に居着いてしまった。世間話程
度で始まった雑談も、次第に恋愛についての談義になった。
 気がつけば終電もなくなっていた。いや、気づかなかったのではなくやり過ごしたのだ。
 別にこの女友達に対して恋愛感情があったわけではない。向こうが自分に対して気があるなどとも考えていなかった。全てはその場
59ラストノート 3/6 ◆D8MoDpzBRE :2011/02/06(日) 22:30:05.96 ID:o64eJEgA0
の雰囲気と少しの好奇心が生んだ、ただの成り行きだと捉えていた。恋人を作ったことがなく、当然ながら童貞だった政紀は、恐らくは
経験者であろう彼女の手ほどきを受けてやるというくらいの腹づもりであった。
 政紀が生まれて初めてのことを済ませ果てたとき、彼女は政紀のことがいかに好きであるか、随所に誇張を織り交ぜながら語り始
めた。政紀はいい加減な気持ちで彼女を抱いたことを後悔すると共に、女性という存在全般が、何を考えて生きているのか分からなく
なった。
 彼女とは半年間続いた。

 バイト先の女の子を相手に苦労したこともあった。
 今度ばかりは相手の気持ちをしっかり汲んでやろうと、最大限の努力を傾けた。以前のケースとは逆に、彼女の方がまだ未経験で
あることを知ってから、より慎重になろうと考えた。
 まず彼女とのキスまでこぎ着けるのに、政紀は並ならぬ気遣いと投資を行った。東京湾の夜景が見渡せる観覧車の頂上でそれを
達成したとき、彼は残金二千円であと二週間を乗り切らねばならないところまで切り詰めていた。
 そこが政紀の限界点でもあった。
 ふと、思うところがあったのだ。これは誰のための恋愛なのだろうと。背伸びをした挙げ句、自分の生活環境まで破壊して、そうして
まで作り上げたシチュエーションだと知ったとき、彼女はどう思うだろうかと。
 幻滅させてしまうかも知れないと前置きして、政紀は事の次第を話した。自分の経済力でこんなデートを繰り返していては早晩保た
なくなると。恰好いいことばかり言ってきたけれど、実際の自分はこんなものだと。
――構わないよ。
 確かにそのとき、彼女はそう言った。政紀は安堵すると同時に、結局今までの努力は何だったのだろうかと思い、脱力した。
 その彼女とも、一年半ほどで別れた。

 政紀が小説をネット上に投稿しはじめたのは、二人目の恋人と別れた頃のことだ。
 恋愛ネタを主軸に、現代を舞台にした小説を多く書いた。時には自身の体験や友人の噂話なども織り込みつつ、シチュエーションの
機微や内面の動きを多く取り入れ、描き分けた。
 こういう状況で、女性はどのように考え行動するのだろうか。彼なりに解答のような形で、それを小説中に還元していった。
 女性読者の反応が欲しかったのだ。
 無論、ネット小説などを好んで読みたがる女性を、一般女性として括ることは乱暴だと承知している。しかし生の声を聴きたいという
願望は大きく、読者層が偏っていることに関しては仕方ないと考えた。時には他の作者の小説などに目を通し、感想を書き加えたりも
した。ブラウンシュガーと名乗る女性も、そうした読者の一人だった。
 彼女と頻繁に接触するようになったのは、チャットルームを訪れたことがきっかけだった。小説の作者と読者が入り交じって、小説に
60ラストノート 4/6 ◆D8MoDpzBRE :2011/02/06(日) 22:30:27.40 ID:o64eJEgA0
関係のある話やそうでない雑談めいた話を、延々と書き込むスペースである。
 そこで彼女は、政紀の小説の小躍りするような文体がいいと褒めた。説明的な文章でも雰囲気が損なわれないとか、語り口が軽妙で
文章量を感じさせないとか。一方で、人の描写に関して甘いところとしつこいところがある、とも言った。『甘い』と『しつこい』が同時に起
こっているのかと聞き返したところ、ムラがあるのだと返された。
 ブラウンシュガーという女性は、政紀にとって理想の読者と言えた。そのことは、彼女当人の情報が垣間見えるにつれてますます明ら
かになった。まず常識人であること。そして、年齢や境遇が政紀に近いこと。細かいプライベートな情報は明らかにされなかったが、そ
れでもある程度彼女の人となりを想像できるまでに至った。
 そうして最終的に、政紀は個人間のみでやり取りされるダイレクトメッセージを彼女に送り、直接会うことを持ちかけたのである。

     ◇     ◆     ◇     ◆     ◇     ◆     ◇     ◆     ◇     ◆

 二度目の逢瀬は、狙って二月十四日を選んだ。もし特別な用事がなければ、と前置きをした上での誘いに対し、深沢は明快に応えた。
「特別な用事はありません。楽しみにしています」
 ちらつく雪に街灯が映り込んで、夕暮れの通りに幾重にも光の層をつくっていた。うごめく雲の隙間からは、微かに残照がのぞいた。
期待した以上のシチュエーションに、政紀は心持ち胸を弾ませていた。
 十八時の待ち合わせに、深沢はきっかりやってきた。シルエットラインを細く見せるグレーのコートに、白いニットのマフラーを巻いて
いた。髪の毛は、以前あったときから短くも長くもなっていないように見えた。
「寒いから喫茶店にでも入りましょう。予約しておいたところがあるんです」
 道玄坂を上っていく途中に、その店はあった。多少奮発した見返りに、人の出入りがさほど激しくない一画の四人席を確保すること
が出来た。
 さっそく、政紀は深沢に小説の感想を求めることにした。ここ数ヶ月の間に、女性一人称の視点から描写した作品を一本書いたのだ。
女性の内面はブラックボックスだ。過去に見てきた女性の言動にもっともらしい動機を重ねて、政紀なりにかみ砕いた女口調の文体で、
とにかく試行錯誤しながら書き上げた。
「興味深かったですよ」と、深沢はかつて下したのと同じ感想を述べた。「いつも現代劇なのに、それを前提として甘えずに世界観を書
き込んでいると思いました」
「女性視点として違和感はなかったですか?」
「あの作品の場合、篠崎さんが書いていると知ってしまっているからフェアな判断はしにくいのだけど、主人公のキャラクターに関しては
違和感はなかったけど好きにもなれなかった、というところでしょうか」
「共感できなかった、と」
「そう取ってもらっても構いません。何というか、いちいち計算高くて言い訳がましいと感じました。全体としては筋が通っているんですが、
61ラストノート 5/6 ◆D8MoDpzBRE :2011/02/06(日) 22:30:51.18 ID:o64eJEgA0
筋を通すのが目的になっているんじゃないかなと思える箇所がちらほら」
 そう言って、深沢は具体例を挙げながら数カ所を指摘した。
 女性が男性のためにプレゼントを選んでいるシーン。デート中に女性が腹を立てるシーン。泣き出すシーン。指輪を外すシーン。それ
ら一つ一つに対して、こういうことを考える女のこういうところが気に入らないといった指摘を加え、深沢は最後にこう締めた。
「でも実際、そうやって考える女性がいたとしても、不思議はないと思います」
 政紀は礼を言って、話題を切り替えた。
 一番最近にした恋愛の話題。深沢は、いやな顔一つ浮かべずに自分の過去を語った。高校時代から付き合っていた人と上京を機に
疎遠になり、一年前くらいに別れたこと。素朴でいい人だったと。同時に、どこか退屈な面もあったと話した。
 同様に政紀も、過去二回のエピソードについて話した。そことここが小説に生かされているといった内容まで包み隠さず話した。深沢
は何度も相づちを打った。政紀の小説と過去の話にリンクを見つけては、ひとしきり納得した風であった。
「そこで、一つ聴いておきたいことがあるんです」と政紀は切り出した。「今、僕があなたともっと親密な関係になりたい、早い話がお付き
合いをしたいと言ったら、受けてもらえるでしょうか」
 深沢は、少し考える素振りをした。受けるかどうかを迷っているのではなく、政紀にはどう断ろうかを迷っている素振りにも見受けられた。
「お付き合いをする、というのは正直考えていませんでした。ごめんなさい」
「いえ、余計なことを言ったのは僕です」
 そう言って政紀は頭を下げた。
 気持ちよく断られた。初めからそんな気はしていた。でも、実は政紀にとって最も肝心な用件はまだ済んでいないように思われた。自
分の小説を読んでくれる女の子を、一対一にまでなって呼び出した理由が何だったのか。
「余計なことついでにお聞きします。あなたから見て、僕に足りないものって何でしょうか。僕が小説を書くようになったきっかけって、きっ
とそれを見つけるためだったんです。でも、結局のところよく分からない」
「あなたが、どこか何か欠けている人だとは思いませんよ」
「しかし、一番肝心な人間描写で、あなたに褒めてもらった記憶がないんです」
「あくまで私見というか、怒らないで下さいね」深沢は腕組みをしながら言った。「篠崎さんと話していて感じたところから言うと、あなた自
身の声が聞こえてこないんです。あなた自身は本音を言っているつもりでも、芯のようなパーツはもっと深くにあって、場当たりな理屈で
それに蓋をしてしまっているように思えたんです。人間描写が、人の機嫌を伺った末に得られた一番収まりのいい理由で埋められている
ように思えるし、何よりあなたが声を発していない」
 言われてハッとした。
 人間を観察しようと努めてきた。女の子の気持ちを察してあげようと、やきもきすることは多かった。実体験を通して見つめようとして
きた気持ちの中に、自分自身の気持ちが含まれていなかった。
 そういうことだったのだ。
62ラストノート 6/6 ◆D8MoDpzBRE :2011/02/06(日) 22:31:29.38 ID:o64eJEgA0
「ところで」そう言って、深沢がバッグを取り出した。「わざわざバレンタインの日に私を呼び出したのは、すごく篠崎さんらしいと思いま
した。受けた私も私ですけど」
 渡されたのは、小さくて品のいい小包だった。言われなくてもこれが義理チョコの包みだと分かる、絶妙なデザインだ。
 受け取って政紀は赤面した。とんでもない醜態を演じたような悔恨に襲われ、頭を上げることが出来なくなった。長いこと味わったこと
のない羞恥心だった。
 そして思った。この気持ちを忘れないでおこうと。
 何かにしくじるたび、他人の内面にその理由を求めてきた自身の過去を清算しようと思った。

   <fin>
63ラストノート ◆D8MoDpzBRE :2011/02/06(日) 22:31:44.31 ID:o64eJEgA0
以上です
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 22:38:42.83 ID:DcBYoS7kO
投下きたか
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 22:46:07.53 ID:y28p0f990
くそっ。2レス目書いているときは「まだ4レスもある。3レス目くらいで終わるわ」と思っているのに、
5レス目書いているときは「やば。後1レスしか無い。物語が終わらない」となる。
そんなことってあるでしょう?

って訳で謎の鼻血なう。
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:03:58.77 ID:B2I+igdg0
   〜  〜   時計を見る限り23時を回りました。
  (Φ  Φ )  これ以降品評会作品を投下する方は、予約の上指示に従って投下して下さい。
   \く /    予約条件は「レス区切りまで終わり、後は投下するだけ」の状態であること。
     |д|    予約締切は23:30ですがかけ込み予約とキャンセルは色々危険ですのでご遠慮下さい。
     \\    規制されている可能性のある方は、早めの確認と規制者スレッドへの投下をお願い致します。
           こちらからの指示に5分間応答がない場合は後ろに回させていただきます。

           では、どうぞ。 
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:05:23.38 ID:DfAyvDWq0
うおー!幼女!俺だ!結婚してくれ!
68 ◆ihO9dxzf9I :2011/02/06(日) 23:05:55.27 ID:F+pZFRHQ0
予約
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:06:51.99 ID:B2I+igdg0
はい。◆ihO9dxzf9I氏 どうぞ


【順番】
−−−
70ミカンズのテーマ1/6 ◆ihO9dxzf9I :2011/02/06(日) 23:08:51.22 ID:F+pZFRHQ0
 下校するために昇降口に着くと、ガラス戸からは綿のような雪がふらついているのが見え、さっきまでは降ってなかった
はずだよな、なんて思いながら外靴に履きかえて、もう一度外を見ると、吹雪になっていた。一帯が白に埋もれて暗くなり、
表庭に数本植わったスギの緑葉は黒ずみ、校門の向こうに見えるはずの街並もかすんで、街灯が弱く光るだけになっている。
そんな様子を見ていたら思わず肌があわだち、駅までの道のりを思うと外へ出るのも億劫で、となると雪宿りするしかない
から再び内履きをはいて、校舎に戻ることにした。ぐずぐずとしていれば誰かと出くわすかな、と思って教室に向かうと、
中には中川しかおらず、窓際最前列の僕の席に座って、段ボールをおきながら作業をしていた。ムッときた僕は扉を開けて、
「なにしてんだよ」
 と言うと、彼女は短い髪を揺らして振り向き、おお、と声を上げてから、
「桜井君じゃん。忘れ物でもしたの?」
 とよく通る声で応えた。中川の手元には薄い紙を使って花をかたどる、紙花といったものか花飾りといったものか、とに
かくそんなのが黄やら赤やら色々置かれていて、段ボールの中にもたくさん入っているとわかった。
「違う。外見てみな」
 僕の指差しにつられて窓を向いた中川は、わぁ、とのけぞり、それから窓へ近づいて吹雪の様子を興味深そうに見ていた。
一階の教室からはグラウンドがフェンスを挟んで覗けるのだが、吹雪は地面まで白くしつつあり、とうぜん部活の連中がい
る気配もなかった。
「ところで、そこ僕の席なんだけど」
「ん? ああ、ここあったかいよね。暖房の近くを占領できるなんて桜井君はイジワルだよ」
 答えているのかどうかはっきりしない言い方にいらだちつつも、中川はこういう奴なんだ、と思うと、ひとまず落ち着く
ことができた。教室の前後にはスチーム暖房が取り付けられていて、その熱気は窓際の席に座る生徒に向けられるのだけれ
ど、席の配置はたいていくじ引きで決まるのだから、それを意地悪だと言われても言いがかりが過ぎるのだ。
「そんなことよりさ、部活の送迎会でこの花飾り作らなきゃならないんだよ。桜井君も手伝ってくれない?」
「そんなこと……ていうか、お前こそ送迎される側じゃないのか」
「人手が足りないんだって。美術部は他と違って少数精鋭だからねぇ。そこで暇なボクにお鉢が回ってきたってわけ」
 そこで中川が隣県の芸術大学に推薦進学するのを思い出し、合点が行くとともに、僕にはまもなく私立の滑り止めが控え
ているから、むずがゆい思いをさせられた。とはいえ、中川に悪気はないのだろうから、それをぶつけても仕方ない。
 手伝うのは面倒だったけれど、断ることで何か言われるのも癪だし、どうせ暇なのだからと思って、
「手伝ってもいいけどさ、そこどいて田辺か藤井の席に座れよ」
「えぇ? せっかく椅子もあったまってたのに。桜井君ってほんとゴウツクバリだね」
 どうしても退く気はないらしい。中川にはこんな風に頑固なところがあって、時には動機が言葉にできなくとも、やりた
いからやるんだ、なんて子供じみた雰囲気まで見せて、どうでもよさそうな意見に執着するのだ。
71ミカンズのテーマ2/6 ◆ihO9dxzf9I :2011/02/06(日) 23:10:37.38 ID:F+pZFRHQ0
 こういう時はこちらが大人になるのが一番楽だから、あきらめて後ろの田辺の席を借りると、中川は満足そうに机を後ろ
に向けてくっつけてきた。そうして花飾りの作り方を改めて教わっていると、ふと中川が、
「そういえば、ミカちゃんってどこ行くの?」
「M大A判定なんだけど、S大だって。近くのほうが色々面倒がはぶけるから、だと」
 中川は丸い目をみはり、それからへぇ、と仰向いた。ミカというのは田辺のことで、学年の中でも相当に頭のいい女子な
のだけれど、同時にちょっと嫌なところもあって、例えばリーディングの授業で僕が発音をまちがえると、そこはスじゃな
くてthなの、舌を歯に挟むの、と言った具合に、こちらはこちらで違った頑固さを持っている。
「じゃあ、船橋君は?」
「あいつはM大。ヒロミちゃんといくんだってさ」
 中川は廊下側の船橋の席を見つつ、なるほどねえ、と言って手元の紙に手を着けた。頭のいい奴には頭のいい大学に行っ
てもらわないと、どこか落ち着きが悪いものだ。
 船橋は恋人がいるとの理由でクラスメイトからいじられやすいのだけれど、それでいて女慣れしていないところがあるか
ら、本人は男同士で遊んでいたほうが楽しいのだという。そのことが原因なのかある時期変な噂が立って、恋人とも別れる
寸前まで行ったのだが、最近ではようやく女慣れしてそっちの楽しさもわかってきたらしい。
 花飾りは初めはしおれたものやら、花びらがピンと張っているものやら、不恰好なものしか作れなかったけれど、何個か
作っている内にだんだん作業にも慣れてきて、面倒を紛らわすために色々なことを考えられるようになった。今まではなん
とも思わず黙々と作っていたものだけれど、よくよく考えてみるとかなりの資源の無駄じゃないのか、とか、時代に見合っ
た代替案が出てきてもいいよな、とか、そもそもこんなご時勢にのんびりと花飾りを作っていられる方が時代錯誤か、なん
てことを思いつつ、中川に話してみようか、と顔を向けると、彼女は外の方を向いていた。
 出来上がっている花びらを撫でたりつまんだりし、小さな唇を少し開け、低い鼻の形をくっきりと表しつつ、外の吹雪に
見とれているらしい姿には、やっぱり女の子なんだよな、と思わせるところがあった。僕は手元に目を落とし、
「やっぱり美術部って、珍しい風景を見ると描きたくなるものなのか?」と訊いた。
「え? うーん、どうかな。この吹雪はあまり描きたくない、かも」
「課題とか出ないの? この日の天気を描きなさい、とか」
「そんなのないよ。ほとんど自由。でもそんなのとは別に、この吹雪は描きたくない。見てるだけでいい」
「ふぅん。ま、確かに白一色じゃ見栄えがしないよな」
「そんなんじゃなくてさ、ボクの気持ちが雪にひたされてるんだよ。教室とかも取っ払ってカマクラみたいなのに包まれて
るっていうかね。寒いんだろうけど、体も雪に近くなってるからそんなに寒くなくて、実はあったかいんじゃないかなあ、
とか。そういう気持ちは、絵にしちゃいけない気がするんだ。気持ちのままでいい、って感じ」
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:10:57.82 ID:DfAyvDWq0
ボクっこ好きだなおいwwwwwwwww
73ミカンズのテーマ3/6 ◆ihO9dxzf9I :2011/02/06(日) 23:12:05.51 ID:F+pZFRHQ0
 中川は身振り手振りを交え説明していたけれど、僕にはよく伝わってこなかった。かまくらのようなものに包まれると言
うのは、体が雪の中に乗り移るといった感覚だろうか、と思っても合点がいかなくて、
「芸術家のいうことはよくわからないな」
「別にゲイジュツでなくてもいいんだよ。そういう気持ちってたまにあるじゃん。朝日を見てココロが晴ればれとするなあ、
とか、夕日を見て体が少しあったかくなるなあ、とかさ」
「ないことはないけど……そうか、そういうのを上手く表現できるのが芸術家なんだ」
「違う違う。そういう決め付けじゃなくてさ。そんなのができなくたってゲイジュツは成り立つよ。ゲイジュツのためじゃ
なくて、そういう気持ちを持つこと自体が大事なの」
 僕と中川の芸術観は、もっといえば双方の考え方自体が、相当に違っているようだ。それは認めるとしても、中川の言う
ことは相変わらずわからない。そういう気持ちを持つこと自体が大事、というのは、芸術とか常識とかでその気持ちをまと
めてしまわないようにしろ、ということだろうか。
 もやもやした気持ちを抱きつつ外を見ると、吹雪は粒と粒がつながって線を引いたようになり、いっそう強くなったよう
に見える。これを暖かそうだと見るには、やはり芸術家の目線が必要なのではないか、と思っていると、教室の扉が開いて、
「なんだよカオルぅ、花飾り作りにかこつけて男の子とお楽しみかよう」
 美術の菅原先生がビニール袋を片手に姿を見せた。長い髪を後ろで一本に結い、汚れのない白衣をいつも身につけていて、
気さくな性格からか人気のある女の先生だ。からかいつつ机に向かってくる先生に対し、中川は照れも見せず、
「違いますよー。桜井君の優しさにボクが甘えてただけです」
「意味深な言葉を使いやがってからに。でも、サボってはいなかったみたいね」
 先生は段ボールに入った花飾りをさぐりさぐりして、何度かうなずいて見せた。それから手に提げたビニール袋を机に置
き、中から何個かのミカンを取り出して、
「あとはお役ごめんってことで、ミカン食べてゆっくりしてなさい。ちょうど吹雪だし」
 中川はわぁ、と嬉しそうな声をして、早速ミカンの皮を剥きはじめた。僕までもらってもいいものだろうか、とためらっ
ていると、先生はこちらに顔を向けて、
「どうせ薫に押し付けられたんでしょ。余り物だからいくらでも食べな。そのほうが長く一緒にいられるしね」
 と言ってにやつきつつ、段ボールをもって教室を後にした。僕が釈然としない思いでいると、中川はミカンを頬張りながら、
「どうして男の子と女の子が一緒にいると、そういう話になるんだろうねえ」
 と言って笑いかけたのだけれど、僕は知らない、と顔を背けミカンの皮を剥きにかかった。
「異性同士のユウジョウってない、っていうけど、桜井君はどう思う?」
 その問いかけに僕は、さあ、としか応えることができなかったものの、ミカンの皮をむいている間、中川の言っていたこ
とが思い返されてきて、あぁ、と腹に落ちる気持ちが出てきた。
74ミカンズのテーマ4/6 ◆ihO9dxzf9I :2011/02/06(日) 23:12:55.88 ID:F+pZFRHQ0
「お前なら、そういう友情とか愛情とかに簡単に収める考え方そのものが嫌だ、っていうのか?」
「おっ、わかってきたじゃん。ボクが言いたかったのはそういうことなんだよ。まだ具体的じゃないけどね」
 ミカンを口にふくみながら笑う中川の顔は、僕をやりこめて満足しているというよりも、自分の考えが多少なりとも伝わ
ったのが嬉しい、と表しているように見えた。
 むき終わったミカンの半分を食べながら外を見ると、吹雪の勢いは収まっていなくて、とうとうグラウンドの土を埋め着
雪するようにさえなっていた。そんな様子をみていると、僕はぼう、と見ていることしか出来なくて、
「でもそれとは別に、あったかくなるとか包みこまれるっていうのは、中川独自の感覚じゃないのか」
「そうかなあ。まぁ、それは人それぞれだから仕方ないか」
「それこそ、そういう感じを絵にしてもらえればわかるかもしれないけど」
「うーん。それだと嘘っぽくなっちゃうんだよ。少なくとも今のボクにはそんな技術はない」
「嘘っぽくなるっていうのは……あぁ、そうか。気持ちを決め付けちゃうのか」
「そうそう。もしこういう吹雪を描くなら、このまま描くしかないんだよ。びゅうー、と吹きすさんでて、この白く突き刺
すような感じとか、少し暗がりになってる感じを、そのままに、ね」
 ふぅん、と応えてからミカンを頬張りつつ、こういう考え方は物事にしっかりと執着しないと出てこないのかな、と思っ
た。中川には子供じみたところがあると思っていたけれど、それは「大人」という視点から見た一方的な考え方であり、そ
んな視点を除けば、何にでもひたすら集中できるというのは決して悪いことではないのかもしれず、ひょっとしたら、何事
にも執着できる姿勢こそが芸術家だというべきなのではないか、と思ったけれど、表立って言うのはやめた。
「でも、やっぱりいつかは描いてみたいよな? そういう気持ちが素直に出る絵って」
「どうかな。そういうのはなんか嫌なんだよね。それよりも絵のために絵を描く、っていうほうが好き」
「ふぅん……芸大行って、本気で画家目指したりするのか?」
「ガカになるだけが選択肢じゃないよ。絵を描くのはいつだって出来るしね」
「結構似合ってると思うけどな。ていうか、それ以外想像がつかない」
 含み笑いで言うと、中川もこころよさそうに笑った。実際、奔放かつ真摯に絵画に取り組んでいる未来の姿が思い浮かん
できて、憧れまで覚えつつも、勝手な気持ちから、こいつは絵に関する仕事に就かなかったら生きていけるのだろうか、と
まで思ってしまった。
「まぁ、未来まで他人にそう決め付けられるのって、迷惑だろうけどな」
「でも、将来そういう風に思い出されるのは良いかもね。あいつはこうやってるのかもしれないな、って思ってる人を、ボ
クもどこでどうしてるんだろうな、とか考えたりして」
「あれ、そういうのならいいんだ」
「決め付けじゃない、かな。どっちかっていうと想像。想像はカノウセイを固めちゃうんじゃなくて、広げるものじゃん」
75ミカンズのテーマ5/6 ◆ihO9dxzf9I :2011/02/06(日) 23:13:57.95 ID:F+pZFRHQ0
 なるほど、と応えつつミカンを取って皮をむこうとすると、また教室の扉が開いて、今度はクラスメイトの田原が姿を見
せた。彼女はこちらへ歩み寄ってきて、どこかで見たようなにやつきを浮かべながら、
「おやおやぁ、二人はひょっとしてそういう関係だったのですか?」
 と嬉々として言って来た。それに対しにやつきで返した中川は、わざとらしい口ぶりで、
「違うのだよ、田原君。ボクたちはテツガク的な話題で対話し合う、正にプラトニックな関係なのさ」
「またまた、中川さん。そんな風を装って実は桜井君を悪しき道に向かうようたぶらかしているのではありませんか」
 二人のやり取りを見ていた僕は、慣れたおかげか呆れた思いでいて、関わるまいとミカンを頬張っていた。二人が二人だ
けがわかるやり取りで笑いあった後、田原はここユウの席よね、と藤井の椅子を借りて僕達の机に混ざってきて、ミカンを
断りもなく手に取った。
「で、本当は何の話だったの?」
「えっとね、クラスの皆が将来どうなってるか、ってことを考えるのは楽しいよね、って話してたところ」
「なるほど。桜井君とか個人経営の喫茶店やったりとかしてね。クラシックとかジャズとか流してコーヒーは現地直送で、
客が入ってもいらっしゃい、ってだけしか言わないの」
「どういうイメージだよ」
 僕がなるたけ不機嫌そうに言っても田原は取り合わず、長い髪を後ろに流してミカンを頬張りはじめていた。
「そういうんじゃなくてさ」と中川が言った。「色んな友達のデータみたいなのが自分の中に入ってて、後々それを取り出
したりするのって、なんか面白くない? っていう話をしてたんだよ」
「ふぅん。自分がするならともかく、他人にされるのは、ちょっと嫌ね。何年か経って性格も変わってるのに、昔の自分が
どっかに残ってるのって」
「あぁ、そういうのもあるかぁ……」
「でも、良い面だけを取り出せば面白いだろ? たとえば、偉い人の考えとかってその人だけじゃ成立しないところがあっ
て、伝えてくれる誰かがいないとだめなわけで」
「そこまで大きなところに行くの?」
「たとえばの話だよ。別に偉い人でなくても、知らない人と知らない人が、お互いを知ってる人のおかげで通じ合ったり。
実際の伝え合いじゃなくても、こう、魂が触れ合うっていうか」
「一気にオカルトじみてきたわね」
 そういわれると、僕はそれ以上言うことがなくなって、首をかしげてしまった。オカルトという自覚はないが、それに反
論できるほどの説得力は、まだ持ちあわせていない。すこし悔しい思いをしていると、また教室のドアが開いて、田原の恋
人のジョーが顔を見せた。彼は田原を見据えると、仏頂面ともいえそうな顔で、
「ここにいたのか。帰るぞ」
76ミカンズのテーマ6/6 ◆ihO9dxzf9I :2011/02/06(日) 23:15:06.02 ID:F+pZFRHQ0
 と言った。だからといって不機嫌なわけではなく、これは彼の元々の性格だと言って良い。田原は椅子に座ったまま、
「ちょっと待ってよ、今話が盛り上がってきてたんだから」
「雪が弱まってきたんだ。また強くなると困る」
 これだからカタブツは、とひとりごつと、田原は椅子から立ってジョーのもとへ向かった。二人が一言告げて教室から出
て行く間際、中川は持って行きなよ、とミカンを二、三個渡し、風邪に気をつけなよ、と言って見送った。
「たしかにもう吹雪じゃなくなっちゃったねぇ」
 席に戻ると、中川はそう言って外を見た。グラウンドはもはや雪原のようになっていたけれど、雪は綿のようなのが垂直
に落ちる程度になり、敷地の外に見える団地の白い屋根屋根も見えてきていた。
 それよりも、僕は中川に上手く説明できなかった方が気がかりで、
「魂が触れ合う、じゃなくて、なんていえばよかったんだろうな」
「ん? ああ、桜井君はきっと例え話のやり方を間違えたんじゃないのかな。別に伝え合いがなくても、記憶は残るでしょ」
「というと?」
「タマシイとか、そういうんじゃなくてとにかく残ってるんだよ、自分の中に。ボクも上手くはいえないけど、たとえば今
のリサとジョーのことだって、ああいう二人がいたよなあ、っていつか思い出すだろうし、このクラスの皆だって、それか
ら桜井君だって、いつか忘れるかもしれないけれど、とにかく覚えてるわけじゃん」
「まぁ、そうだけど」
「でさ、そういうのが大事なんだよ。覚えてること自体が大事。もしくは、そういう事実があった、とかさ」
 中川はそう言ったものの、僕は首をかしげながら、教室全体を見回した。机があり椅子があり、各々の席やロッカーには
各々の荷物があって、それだけでなく黒板や壁には他の教室にはない、曰く言いがたい特徴があり、僕はこういう景色に馴
染んでいる。けれど、そんな景色は僕達が教室を去ればなくなり、新しい生徒たちにとっての「馴染んだ景色」に移り変わ
っていく。つまり、証拠めいたものがなくなって、「昔あった」という事実や記憶だけが残る。それを、ずっと覚えている?
「言いたいことはわかるんだけど……それだけでいいのか?」
「いいんだよ。今はわからないだろうけど、きっと、卒業したら追々わかってくるよ」
 笑った中川にそう言わると、すこし納得はいかなかったものの、そういうこともあるのかもしれないな、とは、なんとな
くだが思えた。すると、再び教室に菅原先生がやってきて、またあの嫌味なにやけ顔を見せた後、
「おう、やっぱりまだいたか。ちょっと来てくれる? 皆があんたに聞きたいことがあるんだって」
 と言って招きよせたので話は途切れ、中川はまたなにかあったらしゃべろうね、と言って教室から出て行った。
 机を元に戻し、残った二つのミカンをどうするまいか迷った後鞄に入れて、ふと時計を見ると五時半になろうとしていた。
電車が来るのは六時前なので、焦らなくても間に合う時間だ。窓を見ると雪の様子は変わりなく強からず弱からずと言った
ところで、さっさと向かったほうがいいだろうな、と思い、電気を消し暖房を消して、改めて昇降口に向かった。
77 ◆IPIieSiFsA :2011/02/06(日) 23:15:40.00 ID:B2I+igdg0
お疲れ様でした。

という事で私も予約します。

【順番】
◆IPIieSiFsA
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:16:28.76 ID:F+pZFRHQ0
まとめスレが建ってすらいなかった。
>>72
おかずにすればおかわりできるほど好きだよ
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:16:28.76 ID:b5tHL+L70
予約します。
80ある冬の夜に 1/2 ◆IPIieSiFsA :2011/02/06(日) 23:16:35.78 ID:B2I+igdg0
 時折吹く風が頬を撫で、その度に私は寒さに身を竦ませる。襟元から冷たい空気が侵入してきて、身体の熱を
奪っていくようだ。私は緩んでいたマフラーを締め直して冬に抵抗する。
 冬というのは厄介なものである。雪でも降れば尚の事だ。けれど私はそんな冬が好きだ。私が冬生まれで、さ
らには雪国の生まれだというのが、多分に影響しているのだろう。上京して年月が経つにつれて幾分、冬に対応
する力が衰えた気はするが、それでも私は冬が好きだ。
 冬の空気は音までも奪っていくような錯覚すら覚える。耳に聞こえるのは私の靴音だけ。いや、ともすれば私
の心臓の音まで聞こえそうなほど、静寂に包まれている。確かに現在の時刻は夜半を過ぎている。けれども、こ
れが夏ならば何らかの音が空気に乗っている気がする。やはり冬は静謐なのだ。
 しばらく住宅街を歩いていると、私の足音とは別の足音が耳に聞こえてきた。その音は高く、それだけで女性
を連想させる。
 前方を見やると、街灯に照らされて女性がこちらへと歩いてくるのが目に入った。その女性はダークブラウン
のロングコートの前をきちりと留め、両手をポケットに納めている。足元には黒系のハイヒールと、どうやらこ
の寒空に素足のようであった。
 世の女性が『寒い寒い』と言いながら何故にミニスカートを穿いたり素足を晒すのか、長年の疑問であるが答
えは未だ出ていない。おそらくは人類の七不思議のひとつであろう。
 さて、その女性との距離が近づいてきたところで私は足を止めた。頭上の街灯が煌々と私を照らしている。
 女性は不審に思ったのかもしれない。一瞬、首を傾げたようにも見えた。けれど歩みを止めることなく近づい
てくる。
81ある冬の夜に 2/2 ◆IPIieSiFsA :2011/02/06(日) 23:17:56.30 ID:B2I+igdg0
 その距離が三メートルとなったところで、私はコートのファスナーを下ろした。自然と前が広がる。さらに私
はコートの合わせに両手をかけて、一気にはだけさせた。
 それまで包まれて熱を貯めていた裸身が一気に外気に晒される。冬の夜の空気が容赦なく私を襲う。しかしそ
の刺激と、目の前に女性がいるという事実が私を興奮の頂点へと導いていく。それを全身で感じながら、更なる
興奮を求めて私は女性の顔を見つめた。
 彼女は思ったとおり立ち止まっていた。その視線は、私の剥き出しの下腹部を捉え、そして私の顔へと移り、
すっと細められた。
 その瞳の動きが何を意味するのか。それを考えるよりも先に、彼女が動いた。
 私がしたのと同じ様に、コートの合わせに両手をかけて、勢いよくはだけさせたのだ。
 そこに浮かぶのは白い裸身。彼女の肌の色と、乳頭の色のみ。彼女の下腹部もまた、綺麗な無毛地帯だった。
 私がそれを確認し終えるのを見計らったかのように、彼女は前をはだけさせたまま歩んできた。
 私もまた、前をはだけさせたまま再び歩みだす。
 そして私たちは軽く会釈を交わして通り過ぎた。
 多くを語る必要はない。紳士淑女のたしみ、それだけを持っていればいいのだ。
 遠ざかる彼女の足音を背に、夜風に震えた体を暖めるべく、私はそっとコートの前を合わせた。
                         ―完―
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:18:44.45 ID:B2I+igdg0
お先に失礼いたしました。
では ID:b5tHL+L70氏 トリップをつけてどうぞ。


【順番】
−−−
83石柱、雲、その他 1/4 ◆p4MI6fJnv2 :2011/02/06(日) 23:19:26.14 ID:b5tHL+L70
 分厚い雲が空を覆っている。誰かが小さな黒い雲を一つひとつ丁寧に空に埋めて固めたみたいに、僕の頭上か
ら地平線の果てまで、どこまでもどこまでも低い雲が続いていた。すでに一週間、そんな空模様が続いている。
雨は降りそうで降らなかった。

 僕は目の前にある石柱を触ってみた。ざらりとした感触が指先の皮膚を刺激する。手を離して人差し指と親指
を擦り合わせると、皮膚に付着した石の粒子が磨り潰される感触がした。擦り続けると石の粒子はさらに細かく
なって、指と指の間から地面へ落ちていく。砕けなかった石の粒が、指先にちいさなくぼみを作っていた。

 僕が一週間の休暇に入った一日目に、雲は街を覆った。
 朝目覚めると、部屋は薄暗かった。まだ夜明け前だろうかと時計を見ると、針は七時過ぎをさしている。布団
から出て小便をし、煙草を吸いながらカーテンを開けると、どんよりとした雲が圧力鍋の蓋みたいに重く街を密
閉していた。
 休暇をとったのは特別な用事があったからではなかった。なんとなくのんびりしたいなと思っていたところ、
いろんなことがいろんなふうに上手い具合に重なって、一週間の休みがもらえたのだ。一週間でなくてもよかっ
たし、別に休暇でなくてもよかった。どちらでもよかった。

 天気を確認すると、僕は朝食に取り掛かった。カップに牛乳を入れ、トーストを焼く。狐色に焼きあがった
トーストにかりっと炒めたベーコンと半熟の目玉焼きをのせる。それを食べながら朝の番組を音を消して眺めた。
食べ終わると煙草を吸ってソファで小説を読んだ。これといってすべきことは何もなかったし、何も思いつかな
かった。ただ、平日の朝にのんびりと小説を読むということは素敵だった。それだけでも休暇をとった意味はあ
ったのかもしれない。
 小説を読み終えると散歩に出かけた。ポケットに手をつっこんでマフラーに顔を埋めながら、家から一キロほ
どの距離にある公園まで歩く。街は奇妙な静けさに覆われ、昨日よりも少しばかり冷えていた。それにいつもよ
りも頼りなげに見える。地面のあちこちがぼろぼろと崩れてぽっかりといくつもの穴が開いてしまうんじゃない
かといった具合だ。今朝は夢を見なかったけれど、なんだか夢の続きのような不安定さや曖昧さがそこら中に染
み込んでいるようだった。アスファルトや車やバイク、電柱や信号機、コンビニエンスストアやマンション、そ
こら中の地面や壁や光に、夢の曖昧なにじみのようなものが染み込んでいた。分厚く低い雲が街の現実感を漂白
しているようにさえ思えた。公園に着くと、僕はベンチに座って一服した。

 白い息が出るほどには気温は下がっていないようだった。耳を澄ますと、ざわざわと風が木々を揺らしてい
84石柱、雲、その他 2/4 ◆p4MI6fJnv2 :2011/02/06(日) 23:20:08.65 ID:b5tHL+L70
る音が聞こえる。
 この場所は、このあたりでは一番大きな公園だ。周囲を木々の壁で囲まれた園内には、広場や水場や雑木林が
いくつも詰め込まれている。訪れた人々はベンチで小説を読んだり、ジョギングや体操をしたり、バードウォッ
チングや写生をしたり、ただ歩いたりして、それぞれにそれぞれの仕方で過ごしている。僕はベンチに座って煙
草を吸いながら、そんな人々や動植物のことをとりとめもなく考えたり、ぼーっと木々の合間や人々の動きを眺
めたりしていた。見上げるとやはり分厚い雲が空を覆っている。その重そうな外見からか、まるで動いている気
配がなかった。実際は少しずつ流れているのだろうけれど、同じ模様が同じ大きさで、とりとめもなく続いてい
た。取っ掛かりのようなものがないからかもしれない。あの雲に一つでも、例えばぽっかり穴が開いていたなら、
僕はその穴が移動する様子を見て、ああ、ゆっくり動いているんだなと思ったかもしれない。
 取っ掛かりのない雲を見ていると、とたんに距離感を失ってしまうことがある。仰向けに寝転んで雲と正面か
ら向き合う。すると雲の壁が目の前に思えたり、またはずっと向こう、実際の距離よりもずっとずっと向こうに
あるように見えたりする。それは不思議な体験だった。そしてそれは雲だけではなく、人やテレビや、小説を読
んでいるときなどでもときどき起こった。

 ベンチで二本目の煙草を吸っていると、小さな女の子が声をかけてきた。
「なにしてるの?」抑揚のない喋り方だった。
「一服してる」
「ふうん」興味のなさそうな返事だ。
 知らない子だった。見たところ小学生に上がりたてのように見える。けれどランドセルは背負っていない。平
日の昼間におかしいなと思いつつ、それには触れないでおこうと思った。この子にとっての込み入った事情があ
るのかもしれない。
「あっち」女の子は雑木林を指差して言った。
「え?」
「きて」
 女の子は雑木林に入っていく。一度こちらを振り返り、手をひらひらさせた。「はやくきて」というジェスチ
ャーらしい。僕は少しのあいだ女の子を目で追いかけ、着いていこうと決めた。なぜそう決めたのだろう。わか
らない。彼女のひらひらさせた手がチャーミングだったのかもしれない。女の子が入った場所から僕も入ってい
く。奔放に伸びた枝に服を引っかけながらも僕は女の子に追いつく。
 人が管理している園内とはいえ、こんな雑木林の中までは手が回らないらしい。好き勝手に伸びた枝はそれぞ
れが絡み合って我々の進路を妨害した。正確に言えば僕の進路だけだ。彼女はひょひょいとすり抜けていく。小
85石柱、雲、その他 3/4 ◆p4MI6fJnv2 :2011/02/06(日) 23:20:49.36 ID:b5tHL+L70
動物みたいだなと思った。けれど僕の歩幅のほうがずっと長いおかげで彼女を見失うことはなかった。僕は力任
せに枝を掻き分けて進み、彼女はひょひょいと枝をすり抜けて進んだ。
 額に汗が滲んでいた。頭皮がむずむずしたのを感じてそれに気がつく。マフラーを外したかったけれど面倒だ
からそのままにする。一際大きな茂みを抜けると、小ぢんまりとした広場のようなものが目の前に現れた。
 それは広場のようなものでさえないのかもしれない。木々の中のわずかな空白地帯。ぽっかりと開いた穴のよ
うでもあった。ほんの些細な空白だ。心持ち温かい。周囲の木々が風を遮っているからだろうか。脇の下にじわ
りと汗が滲んでいた。空白の真ん中には、ぽつんと石柱が立っていた。
「これはね」彼女が言う。「ミスカスんだって」
「見透かす?」
「うん。ママがいってた」
「ふうん」僕は言う。「何を見透かすの?」
「いろんなこと」
「漠然としてるね」
「バクゼン?」
「いや、なんでもない」
「ばいばい」彼女は手をひらひらさせた。今度は「さよなら」のジェスチャーらしい。
 彼女はするりと、僕が呼び止める間もなく茂みの奥へと消えていった。わけがわからなかった。見透かす?
 僕は仕方なく石柱を眺めることにした。
 それは四角柱の形をしていて、高さは僕の胸のあたりまであった。太さは人によっては太いと感じるかもしれ
ない。上面の対角線の長さは僕の手の平では足りなかった。両手を広げて並べると、ぎりぎり両端に届く長さ。
四十センチくらいあるだろうか。石柱の表面はすこしざらついているように見えた。滑らかではない。
 ジーンズから煙草をひっぱりだして火をつける。ふう。敷き詰められている腐葉土へ腰を下ろして胡坐をかき、
またじっと石柱を眺める。
 見れば見るほど、それは石柱だった。石の柱。それ以外に表現のしようがなかった。無駄のない石柱。装飾も
何もない。無個性で匿名的で素朴な石の柱だ。くびれもなければ膨らみもない。それは一点の曇りもない石柱だ。
迷いのない、正確な直線で構成されている。完璧な石柱だと僕は思う。
 頭の奥がずきずきと痛んでいた。くだらないことを考えたせいかもしれない。けれど、その石柱は不思議と僕
を惹きつけた。僕は触れてみたいと思う。そっと触れてすべての面を撫ぜ、すべての辺をなぞり抱きしめたいと
思ったのだ。ざらついているであろう表面を舐めたいとさえ思った。実際僕の口内では唾液が過剰に分泌されて
いるようだった。まるで梅干を食べるシーンを想像したみたいに。けれど僕はそれに触れなかった。なぜだろう。
86石柱、雲、その他 4/4 ◆p4MI6fJnv2 :2011/02/06(日) 23:21:30.24 ID:b5tHL+L70
たぶんあの女の子の言ったことが気にかかっていたからだ。見透かす。何を? 僕は見透かされるのを拒んでい
るのだろうか。
 なんだか今日はいろいろなことが少しずつおかしい。頭上の分厚い雲と、妙な静けさの街と、わけのわからな
い女の子とこの不思議な空白、そして石柱が、それぞれ少しずつ混ざり合って僕を混乱させているみたいだった。
馬鹿げていた。けれど僕はしばらくのあいだ、その石柱を眺めないわけにはいかなかった。そして眺めながら、
なぜ僕はこんなにも乱されているのかを考えないわけにはいかなかった。

 僕はそれから毎日、昼になると石柱を訪れた。行く途中のコンビニエンスストアで弁当と飲料を買い、石柱の
前に座って、僕は日が暮れるまで石柱を眺め続けた。二日目も三日目も、その次の日も、僕はそのようにして過
ごした。気温は日に日に下がっているようだったけれど、その空白地帯では一定の温度が保たれているようだっ
た。僕はマフラーをシート代わりにして胡坐をかき続けた。女の子はあれきり見かけなかった。

 最後の休暇日、僕は石柱に触れようと決心する。実際、決心なんて大層なものではなかったけれど、今まで眺
めるだけだった僕が触れてみようと思ったのだ。それくらいは誇張してもいいだろう。
 短くなった煙草をペットボトルに押し込んで、石柱の傍に立った。
 僕の右手が石柱の上面に触れる。ざらりとした感触が指先に伝わる。いくつかの微細な石の粒子が指先に付着
するのがわかる。コンクリートに近い手触りだ。僕は手を離して煙草を咥える。何も起こらなかった。何も、起
こらなかったのだ。
 煙草に火をつける。そして空を見上げる。高い木々の葉に遮られて、雲はほんの少ししか見えなかったけれど、
徐々に薄くなっているようだった。カンナで木材を削っていくみたいに、少しずつ少しずつ、上空を流れる風が
雲を削っているのだ。僕は何かに期待をしていたのだろうか。そうだろうなと思う。きっとそうだろう。僕はこ
の石柱に何かを期待していたのだ。そして女の子の言葉にも。けれどそれは結局、ただの気のせいに過ぎなかっ
たのだ。女の子はただの女の子だし、女の子の言葉はただの女の子の言葉なのだ。石柱はただの石の柱だ。なん
のことはない。雲は徐々にちぎれ、そのうち光が差すだろう。雲はただの雲だからだ。家に帰ったら暑いシャ
ワーを浴びようと思う。身体が少し冷えすぎているようだった。
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:22:06.97 ID:B2I+igdg0
お疲れ様でした。
今宵は平和ですね。


【順番】
−−−
88 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/06(日) 23:23:50.72 ID:aZsAGa5T0
予約します
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:24:54.05 ID:B2I+igdg0
では◆Tf1WgBAu9U氏どうぞ。

【順番】
−−−
90彼女と鍋と僕のなんてことない話 1/6 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/06(日) 23:25:49.64 ID:aZsAGa5T0
「今日、鍋したいです。というか鍋やりますけど来ます?」
「あ、ホント。いくいく」
「じゃあ、後で」
「はいはーい」

 集配センターを出ると、雪がちらほら舞った。バスを待っている足元が芯から冷えてくるのを感じる。この靴もそろそろ限界かもし
れない、とは思いながらも、買いに行くのも億劫で右の親指の付け根が裂けかかっているボロ靴をずっと履いている。

 バスを降り、最寄りのスーパーで鶏挽肉とネギと生姜、あと水菜を買って部屋に帰る。外着のうちに窓を開けゴミをまとめて集積場
に捨てに行く。それから、掃除機をかけて布団を布団乾燥機にかけ、暖房を入れる。

 そこまでしたら部屋着に着替え、エプロンをして鍋の支度にとりかかる。今日は冬出汁の鶏つみれ。出汁は煮出すイメージで濃厚に
とる。炒り子の頭と腹をとって水を張った鍋に入れ、昆布を一枚。かつおだしは削り節からだと面倒なので、粉末のほんだしで。あと
はみりんと酒を一カップずつ入れて火にかけておく。一煮立ちしたら炒り子と昆布を取り出す。鶏つみれは、みじん切りにした長ネギ
とすりおろした生姜、少々の片栗粉と塩と一緒にしっかりとこねる。鍋を再度煮立たせてから、スプーンで落としていく。ほのかに生
姜と出汁の香りがする。全部落とし込んだところで携帯の着信に気づく。

『いまから出るよー』
『飲み物無いから、適当に買ってきてください。僕はビールならなんでも』

 メールに返信をしたところで、米を研ぎ出す。炊飯器のスイッチを入れるとベランダで一服する。煙草もいい加減に止めないと、な
どと思いながら煙の向こう側の曇天をぼんやりと見上げる。こちらはまだ雪が降っていない。不意に自分の田舎のことを思い出す。晴
天の時にはなにも思わないのに。やっぱり実家にちょっと陰鬱な印象を持っているのかもしれない。まあ、そういう環境で育ったのが
自分なので、いまさら何か評価をすることもあるまい、なんて思う。故郷を遠く離れ、こんな縁もゆかりもなかった場所で、日雇いバ
イトでこれといった未来の展望もなく、ただ呆然と時間の過ぎていくのを見送っている。勝ち負けで言えば負けっぱなし。誰かに何か
を誇れるような物は、自分には無かった。そしてこれからも多分無いな、なんて。やっぱり冬のこんな天気は少し憂鬱な気分になる。
手が冷たくなってきたので、部屋に戻り、こたつに入ると文庫本を片手に少しうとうととする。
91 ◆oxQ.jXqnMY :2011/02/06(日) 23:26:02.57 ID:y28p0f990
予約します。
恥ずかしい作品だけど、産んだ子供は世に出さねば。
92彼女と鍋と僕のなんてことない話 2/6 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/06(日) 23:26:40.47 ID:aZsAGa5T0
 ピンポン、と安っぽいチャイムが鳴る。開いてるよ、というとドアを開け彼女が入ってくる。
「いやー、さむいねー。おじゃましまーす」
「はーい。鍋すぐ食べます?」
「食べる食べる」

 コンロと鍋をセットして、昨日の残りの煮物と漬物を出す。彼女は冷蔵庫から冷えたタンブラーを取り出すと首をかしげて泡の立ち
具合をを神妙な面持ちで確認しつつ缶ビールを注いでいる。そして、それぞれが一通り宴前の儀式を済ますと、TVを対面にして互い
に斜向かいの席に着く。

「かんぱーい」
「おつかれさまです」
「遅くなりました」
「いや大丈夫です」
 彼女がTVのチャンネルを吟味している間に、鶏つみれの入った鍋に切っておいた水菜を山盛りにして蓋を閉める。

「今日は遅かったですね」
「ああ、うーん。所長に捕まっちゃって。なんか前に話したあのレポートの提出がうんたらかんたらで」
「品質評価、でしたっけ?」
「そうそう、そんな感じの。なんか本社にいい顔したいんじゃないの、ってみんなで言ってる。まあ、閑職だからね。ここ」
「あ、普通に考えたらそうかもしれないですけど」
「うちの社員はもうみんな駄目。ぜんぜんやる気ない。もうちょっと覇気っていうか、勢いって言うか、そういうのをビンビン感じる
職場がいいわー」
「雪村さんはやる気あるんですか?」
「ない。全くない。いやぁでも、ないけどさぁ。てか、純平ちゃんみたいな子が入ってくれたらいいな、と思うよ」
「勧誘?」
「うーん。あんまりいい会社って訳でもないけどね。まあアルバイトよりは実入りがいいんじゃない?」
「そうですね、でも、うーん」
「そうだよ。いつまでも若くはないんだから。あ、これ生姜効いてて美味しい」
「カラダがあったまる、的な」
「ホントあんた、そういうところ主婦だよね」
93彼女と鍋と僕のなんてことない話 3/4 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/06(日) 23:27:34.43 ID:aZsAGa5T0
 彼女はそういうと二本目のビールを物色しにいく。色んな缶ビールを試してみるのがマイブーム、ということだ。彼女は僕より五歳
年上で、僕がアルバイトをしている物流センターの社員である。独身だが離婚歴があって、いまはここの近所で一人暮らしをしている。
僕とはなんとなく飲み会で意気投合して、こうやって週末に飯を食べたりするような関係である。ただし彼女は料理が出来ないので、
作るのは専ら僕の役目となっているが。

「でもさ、いつまでもこんな感じでもいれないっていうかさ。今年、幾つになるんだっけ」
「二十九。五つ違いです」
「そう。じゃあ、あたしは二十四だね。……まあでも、結婚したりとか、子供産んだりとか、そういうさ」
「けど子供を産むのは僕じゃないですし」
「まあそれも相手あってのことだけどね」
「雪村さんは結婚したいの?」
「いや、あたしはさあ。もう無理っていうか。その『奥さん』っていう縛りがやっぱり向いてないっていうか」
「そんなんで人に勧められても」
「でも、きっと『奥さん』に向いているタイプってのもいると思うんだけどね、私が向いていないだけで」
「それを僕が必要としているかがわからないじゃないですか」
「まあアンタは家事もなんもかんも自分で出来そうだしね」

 鍋のせいか、ビールのせいか、彼女の頬は上気して赤く染まっている。僕が彼女の買ってきたチーズをつまみながらビールを飲んで
いると炬燵の中で足を絡ませてくる。
「純平ちゃん」
「なんですか」
「今夜泊めて」
「近いから帰ってくださいよ」
「めんどくさい」
「めんどくさいって理由で人の家に泊まろうとしないでくださいよ」
「じゃあ、セックスしたい」
「情緒もへったくれもないっすね」
「もういい歳だからね。擦れてるし」
「自分で思ってるほど、そうでもないですよ」
「へへ、そうやって言ってくれる人は純平ちゃんだけだよ」
94彼女と鍋と僕のなんてことない話 4/4 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/06(日) 23:28:27.63 ID:aZsAGa5T0
「どうだか。洗い物するんでシャワー浴びといてください」
「はーい、りょうかいでーす」

 明け方に目が覚めたので、ベランダで煙草を吸っていると下着にシャツを羽織っただけの彼女が出てきた。
「煙草吸ってるの?」
「うん。そのかっこ寒いでしょ?」
「大丈夫」
「そうか」
「なんか昼間と違う。ぼーっとしてるね」
「色々、考えることがあって」
「何?将来のこと?」
「ん、いや、何か、居心地いいなって思っちゃって」
「え?それはあたしの台詞じゃないの?今日も泊めてもらって」
「いや、それは、……なんだか、何一つのことも決まっていなくて、何の展望も無い生活だけれど、僕は結構満足してしまっていると
いうか」
「どういうこと」
「毎日八時間働いて、稼いだお金で家賃を払って、たまにこうやって好きな相手と鍋をやって」
「そっか。わかるけど」
「あ、ごめん。なんかこれ」
「うん、冷たいよね。セックスした相手に言う事じゃない気がする。でも今がそれでいいなら、いいのかもしれない。未来に期待を持
ち過ぎて今の自分を蔑ろにすることはないし。」
「ああ、はい」
「とりあえず、寒いから入るね」
「はい」

 空はいつの間にか晴れて、東から明るんで来ている。それは新しい景色で故郷の匂いはしなかった。

(了)
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:28:58.72 ID:B2I+igdg0
お疲れ様でした。
では◆oxQ.jXqnMY氏どうぞ。


【順番】
◆XdfFerW0PE氏 (規制者スレより転載)
96彼女と鍋と僕のなんてことない話 5/4 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/06(日) 23:29:39.11 ID:aZsAGa5T0
終了です。

前半2レスの番号が、1/6、2/6になってしまった。4レスです。
97雪と彼女と携帯電話 1/6 ◆oxQ.jXqnMY :2011/02/06(日) 23:33:18.21 ID:y28p0f990
 広辞苑の「吹雪」の項に登録しておきたいくらいの、見事な吹雪だった。視界の中は宙を舞う埃のように雪が踊り狂っている。
そしてその雪の群れは意志を持ったかのように、俺の体にピチピチ当たる。
「寒い。痛い。寒い。寒い」
例え聞いている人が誰も居なくても、呟かずにはいられない。強風の後押しによって速度を増した雪は、体温を奪うばかりではなく、
直接攻撃力も備えているんだ。知ってるか? 雪って飛び道具なんだぜ? 雪女は吹雪の術を使った。冬樹は23のダメージ。
そんな言葉が脳裏に浮かぶ。一際強い風が吹いた。冷たい空気が肌を撫で、また体温を奪って行く。
「これ、絶対ゲームだったらHP減ってるぞ」
今年大学二年生。頭の中にはゲーム脳が詰まっている。そんなことを考えながら、右足と左足を交互に動かす。
目的地は、直ぐそこのログハウス。目的は、墓参りだ。

「いらっしゃい。おお、冬樹くん。今年ももう、そんな時期か」
「こんにちは。おじさん。また今年もよろしく。まだ潰れていなかったんだね」
いい加減な挨拶を交わしながら、チェックインを済ませる。この時期の墓参りは我が家の年中行事で、毎年この宿を使わせてもらっている。
マスターはうっかりものだが、気の良いおじさんだ。墓参りと言っても、実際にお墓がある訳じゃなくて、この近所の大きな木に花を供えることになっている。
二年前までは家族行事だったんだけど、去年からは老いて鶏ガラのように骨と皮ばっかりになってしまった両親を置いて、俺一人でやっている。
去年はあまりの寒さ、寂しさに耐えきれず木に向かって叫んだね。「ご先祖様。居るなら出て来て! 一人は寂しい。寒いんだ」と。
そうしてガーベラを供えたら、その瞬間に上から雪が降って来た。ご先祖様、はるばる墓参りに来た子孫にあんまりな仕打ち。
でも今年は大丈夫。こんな僻地でも繋がる携帯を持って来ているから、寂しくはない。ハルちゃんに「到着なう」とでもメールを送っておこう。きっと返事は返って来ないけど。
とりあえず温かい物が飲みたいと、自販機で缶コーヒーでも買おうとした時、ログハウスの戸が開いた。
「いらっしゃい」
「こんにちは。部屋、空いてますか?」
太腿を素敵な感じに露出し、背中に大きなリュックを背負った山ガールが現れた。

 山ガールはチェックインを済ませ、何故か俺を親の仇のような目で睨み、こちらへ向かってくる。顔は雪のように白いけど、太腿は紅葉色だ。
「アタシ、ユキ。歳? 23? まぁ今年で24、みたいな」
インターネットでしか見た事無いような口調で話しかけられた。
「俺、冬樹。歳? 今年で20、みたいな」
思わず同じ口調で答えてしまった。これは相当恥ずかしい。
「はっ。聞いてないし」
思わず、「俺もだよ!」と突っ込みを入れそうになってしまった。山ガールは意味分かんないよ、ハルちゃん。
98雪と彼女と携帯電話 2/6 ◆oxQ.jXqnMY :2011/02/06(日) 23:35:07.29 ID:y28p0f990
それきり二人とも、「うわ。初対面に失敗した」みたいな顔をして黙り込んでしまった。俺は缶コーヒーを手で弄びつつ、傍に会った丸椅子に座る。
山ガールは自販機でコーラを買い、何故か俺の対面に座る。気まずい。
「あ、あの……私、ユキと言います」
知ってる。だけどさっきのキャラはどうした?
「俺、冬樹って言います」
「知ってます」
再び、「俺もだよ!」と突っ込みを入れそうになってしまった。
「さっきは、ごめんなさい。私、田舎者だから流行とかに疎くて……。久し振りに人と話すものだから、古臭いと思われないよう、頑張って今風の言葉で話そうとしたら、あんな感じに」
ぽつぽつと話し始めたユキさんは、思ったより普通の人だった。
「いえいえ。こちらこそ失礼しました。ユキさんは、お一人で来られたのですか? 最近流行の山ガールというやつですか?」
「山ガール……と言うのかは良く知りませんが、この服は最近流行っているらしいものを、買ってみました。通販で。足が出ていて恥ずかしいのですが」
ユキさんは少し顔を赤くして笑った。相当な恥ずかしがり屋さんのようだ。ハルちゃんにも見習って欲しい。話してみればユキさんは、一人でここまで知人に会いに来たらしい。
「相手は彼氏さんですか?」
「いえ、そんな人居ませんよ」
「またまたぁ。ユキさんほどの美人なら、皆放っておかないでしょう」
「もう……年上をからかうものではありませんよ」
ユキさんは頬を染めて恥ずかしそうだ。この人、可愛い。初対面は最悪だったけど、すっかり和んでしまった。姉と話しているような感覚だろうか。
「いや、ユキさん、本当に美人じゃないですか。俺、独り身なので付き合って欲しいくらいです。」
「もう……恥ずかしい……それと、嘘はつかないで下さい」
そう言いながらユキさんは、俺の肩をばしばし叩く。嘘じゃないです。可愛いです。ユキさん。そしてごめんよ。ハルちゃん。

「そう言えば、冬樹さんはここまで何をしに来られたのですか?」
ユキさんは両手でコーラを弄びながら、そう尋ねた。飲まないのだろうか?
「墓参り……ですね。うちの祖先でこの辺りで行方不明になった人がいるみたいで、我が家では毎年この時期に花を捧げる決まりなんです。行方不明になった日を命日と決めて」
俺はリュックサックから、今年の花、フリージアの花束を出してユキさんに手渡した。大きめのリュックで持って来たけど、少し傷んでしまっている。
でも、気持ちは伝わるだろう。
「奇麗……」
ユキさんはうっとり眺めている。
「花、お好きなんですか?」
「ええ、とっても。大好きなんです。きっとご先祖様も喜んでくれますよ」
99雪と彼女と携帯電話 3/6 ◆oxQ.jXqnMY :2011/02/06(日) 23:36:43.95 ID:y28p0f990
「そうかなぁ。そうだと良いですね」
果たして花を捧げる事で、相手が喜んでくれているのか、実は自信がなかったりもする。
「何か気になる事でも?」
「笑わないで下さいね。嘘みたいな話なんですけど。実は、行方不明になった相手と言うのは、雪女なんです」

「我が家の言い伝えによれば、うちの家系に雪女がいるんですよ。ほら、昔話に良くあるでしょ? 吹雪に捕われた茂作と巳之吉。
年老いた茂作は雪女に殺され、巳之吉はイケ面だったので助かる。雪女は去り際に『私の事を誰かに言ったら殺す』と言う。
そして助かった巳之吉は村に帰り、美人な奥さんを貰い、子供をもうける。ある日奥さんに雪女の事を話してしまう。
奥さんは実は雪女ご本人で『約束破ったから殺そうと思ったけど、子供が可哀想だし。子供がお前の不満を言ったら本当に殺すから』と言って去って行く」
そこまで一気にしゃべって俺は缶コーヒーを口にした。もうすっかり冷めている。
「そして、その子供の一人が、うちの祖先、らしいのです。つまり、この花を捧げる相手は、祖先の母。つまり、雪女。果たして雪女が花を好きなのかどうか」
ユキさんは現実味の無い話を真面目に聞いてくれている。
「この話、信じてくれるんですか?」
「ええ。だって、本当の事なのでしょう? それに、冬樹君の表情、嘘を言っているようには見えません」
俺は少し気恥ずかしくなった。
「雪女、妖怪だからなぁ。花は好きなのかなぁ」
ちょっとふざけて呟いてみた。
「絶対、大丈夫です!」
ユキさんは身を乗り出して力説する。
「妖怪だろうと、雪女は女の子なのです。女の子は皆、奇麗な花が大好きなのです」
「ま、そうか。だってこの話の雪女、イケ面好きだしね。人間の女の子と変わんない」
「そうそう。しかし冬樹さん、イケ面と雪女の子孫にしては、お顔が……なんだか残念です」
ひどいよ、ユキさん。
「ところで、ユキさんのその大きな荷物、なんなんです?」
ユキさんのリュックは小柄な女性に対しては大き過ぎる代物だ。ちなみに中央に鶏のマークが書かれている。通販で買ったのだろう。
「これにはね、宝物が入っているのですよ」
「宝物?」
「ええ。とっても大事な。でも冬樹さんには見せてあげません」
ユキさんは悪戯っ子の顔をして微笑んだ。
「そんなぁ。見せて下さいよ」
100雪と彼女と携帯電話 4/6 ◆oxQ.jXqnMY :2011/02/06(日) 23:37:43.19 ID:y28p0f990
「ダメです。見たら……殺しちゃいますよ? 約束です。絶対見ないこと」
片目を瞑り、そんな物騒なことをユキさんは言った。非常に不慣れなウィンクだった。
「はい」
俺はしょんぼりそう答えた。ユキさんは右手の小指を俺に出しだす。感慨深い体験だったので、ハルちゃんにメールを送った。
「指切りげんまんなう」。
珍しくハルちゃんから返信が来た。「針千本飲ます」と一言。ご立腹のようだった。

 それは100パーセント、混じり気なしの善意だったと思う。長く二人で話し込んだのがいけなかったのかもしれない。
「おやおや。まだ部屋に入ってなかったのか。じゃ、荷物、持って行っておいてあげるよ」
おじさんが、右手で俺の荷物を掴み、左手でユキさんの荷物を掴み……損ねて落とした。
ゴトッと大きな音を立ててリュックは床に落下し、そして中から大量のノートが滑り出た。ページの開いているノートが一冊だけある。
書かれていたのは日付。そして、その下に押し花。ユキさんは目を見開いて固まっている。
「おや、すまない。悪気はなかったんだ」
おじさんは慌ててノートを拾おうとする。その瞬間、ユキさんが弾けるように立ち上がった。
「それに……それに触らないで!」
ユキさんは激昂し、おじさんを突き飛ばした。ノートを拾い集め、俊敏な動作で胸に抱く。
「悪い。悪い。でも、そんなに怒る事ないじゃないか」
右手で頭をかきながら、おじさんは笑顔でそう言った。
「うるさい……うるさい。黙って!」
ユキさんは低い声でそう呟き、右手を前にかざす。途端に、どこからともなく冷風が俺の横を通り、それは雪煙となり、そしておじさんに集まった。
おじさんは、右手で頭をかくポーズのまま、固まっていた。氷像となってしまった。
「見ちゃった……よね?」
「見たか?」とは、ユキさんの動作によりおじさんが凍ってしまったことを指しているのだろうか?俺には違うように思えた。
先程見たユキさんのノートに書かれていた日付は一年前、押し花となっていたのは、俺が去年捧げたガーベラだったのだ。
「うん」
どちらの意味にせよ、俺は頷いた。
「これは……本当に大事なものなのです。命よりも、大事な、私の宝物」
ユキさんは一冊ずつノートを拾い、リュックに戻した。良く見るとノートの表紙は所々破け、紙は黄色く変色し、相当長い間保管されていたことが分かる。
「人の身にこの寒さは辛いでしょう? 雪は苦しいでしょう? それでも私の子達は毎年この時期にここまでやって来て、私に奇麗な花をくれる」
ユキさんは目を瞑り、リュックを胸に抱いた。
101雪と彼女と携帯電話 5/6 ◆oxQ.jXqnMY :2011/02/06(日) 23:38:34.37 ID:y28p0f990
「ありがたい」
ユキさんは呟いた。目に光るのは涙だろう。
「では、ユキさんは……」
「ええ。冬樹さんが言うところの、雪女。あなたの祖先です」
そう言ってユキさんは笑い、
「今年も素敵なお花、ありがとう」
フリージアを手に取った。

「巳之吉さんの家を出た後、私は子供達が心配でなりませんでした。時折、止むに止まれず、巳之吉さんの家を覗き見してみましたが、
幸せそうな風景が目に映り、逆にこちらが寂しくなるばかりでした」
ユキさんは、雪女であるお雪さんは、懐かしそうに目を細めた。
「それもそのはずですよね。私達の間には、10人もの子供が居たのですから。何時覗いても、賑やかで、楽しそうで」
ふと、ユキさんの顔色が陰る。
「私は、羨ましかった。一人は寂しかった。せめて、去り際に巳之吉さんに言ったように、子供達が巳之吉さんの不満を口にしたのなら、それを口実に会いに行けたのに。
巳之吉さんは見事に子供達を平等に愛し、立派に育て上げ、一つの不満も生まれませんでした。さすが、私の愛した人です」
優秀すぎる夫も困ったものですね、とユキさんは僅かに唇を歪めた。
「この献花の習慣は、巳之吉さんが亡くなる日に、子供達に言い残したものです。私はそれを姿を隠して見ていました。嬉しくて、そして悲しかった」
ユキさんの目からつらつらと、奇麗な涙が溢れて来た。その時の感情を、思い出しているのだろう。
「それからは、ずっと辛かった。人の一生は、私達と比べて余りに短い。愛した人は50年で居なくなってしまう。巳之吉さんが居なくなってからの20年間は本当に辛かった。
10人の子供達の死を見る辛さが、想像出来ますか? 私は別れによる傷を恐れ、人と関わらない事を決めました。
巳之吉さんの言い付けを守って訪ねて来てくれる子を、ただ、見守る事にしたのです」
ユキさんは一冊のノートを広げて、俺に差し出してくれた。去年の日付が丁寧な字で書かれ、ガーベラの押し花が貼付けてあり、
そしてその下に、さっきは気付けなかったかけど、「冬樹より。今年も来てくれた。嬉しい」の文字。
「だからこれは、私の大切な宝物なのです」
ユキさんは微笑んだ。
102雪と彼女と携帯電話 6/6 ◆oxQ.jXqnMY :2011/02/06(日) 23:39:38.21 ID:y28p0f990
「何故、姿を現してくれたのですか? 人とは関わらないと決めたと、さっき」
俺はようやくそれだけ口に出来た。
「だって……冬樹君、去年言ったじゃないですか。『ご先祖様。居るなら出て来て! 一人は寂しい。寒いんだ』と。今年は、寂しかったですか?」
俺は首を振った。寂しかった訳、ないじゃないか。
「良かった……。この一年、楽しかった。久し振りに人前に出るものだから、現代の事を勉強して、服や言葉も調べて」

ユキさんは膝の露出した足下に目を落とし、
「でも、ちょっと無理して頑張り過ぎちゃった」
と言った。
「そんなに無理しなくても良かったのに」
「だって、お母さんがみっともなかったら、子供であるあなたが恥をかくでしょう?」
そう言ってユキさんは微笑み、丁寧にノートをテーブルに置き、ぱしん、と両手を打った。すると瞬く間に雪煙がユキさんを包み、やがて白い着物を着たユキさんが現れた。
「あぁ、やはりこちらの服の方が落ち着く。さて、そろそろ時間です。私の正体が知れた以上、あなたを殺すか、それとも私が去るか、です。
そう言う掟なのです。おじさんはそのうち回復するので心配要りません。行きなさい」
「でも……そうするとユキさん、また一人じゃないか。俺が傍に居るよ」
巳之吉さんと別れた後、何百年も一人で生きて来たユキさん。出来る事なら傍に居てあげたい。そんな気がしたんだ。
「もう、一人で生きて行くのも慣れました。あなた達の姿を一年に一度、見る事が出来る。その希望だけで生きて行けます」
「そんなの嘘だ。それに巳之吉さんだって、ユキさんを一人にしたくなかった。だからこんな習慣を作ったんだ。俺が、傍に居るよ」
「ダメです。冬樹さん。あなたには可愛い人がいるじゃないですか。嘘をついた事知っています。
私に嘘をついた事、ノートを見た事、雪女を見た事、雪女があなたを殺す理由は十分です。ですから、行きなさい」
どうしてか、ユキさんは俺に恋人が居る事を知っていた。ユキさんはにっこり微笑み、
「私はあなた達の母です。子供の事は知っていて当然です」
そんな、偉そうな顔をした。
「分かった、また来年。ユキさん」
「えぇ、もう姿を見せる事はないと思いますが、あの場所でお花、待っています」
俺はそんなことを言うユキさんに、
「ところでユキさん、携帯電話って知ってますか?」
僻地でも通じる携帯電話を紹介し、もうユキさんが寂しくないように、メル友から始める事にした。
【了】
終わりです。読んでくれた方、ありがとう。
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:40:16.79 ID:B2I+igdg0
お疲れ様でした。
では規制者スレより転載を。
104僕とあの子と(の)雪だるま1/4 ◇XdfFerW0PE:2011/02/06(日) 23:40:59.73 ID:B2I+igdg0
――ねえっ、雪だよ! 遊びにいこう!
――そうだね、遊ぼう
僕とあの子は、雪玉を転がす。
雪だるまを作るためだ。
僕は胴体を、あの子は頭を作った
――よし! できた!
――僕もできた
不格好だが、雪だるまが完成する。
鼻とか目とか必要だな、と思いながら
完成した雪だるまを眺めていると、突然、僕は突き飛ばされた。
視点が目まぐるしく動き、灰色の空が見えた。
すると、どさっ と言う音とともに、あの子が僕の隣に倒れてきた
どうやら僕と一緒に並んで寝る事が目的らしい。
しかし、季節は冬、当然僕の身体は雪の冷たさに侵食されていく。
――このままだと凍えちゃうよ
――大丈夫だって! 君といるならきっと大丈夫よ
――そうかなあ
僕と一緒にいる事と寒い事って関係ない気がするけどなあ
――雪って、キレイよね、白くって
――うん、キレイだね
――私、雪って好き、君と同じ位好き、あ、間違えた、君の方が雪よりずっと好きよ?
――で、僕の事が好きな事と雪が好きな事、どっちが言いたかったの?
――君の事が好きなこと!
――よかった、僕も好きだよ、君の事
雪の積もった冬の公園で、幼いながらも、二人は雪の上で愛を育んでいた。

ピピピピピピ
そして、電子音が鳴り響いた。
105僕とあの子と(の)雪だるま2/4 ◇XdfFerW0PE:2011/02/06(日) 23:41:44.04 ID:B2I+igdg0
ピピピピピピピ
僕は、喧しい目覚ましの電子音を聞いて、目を覚ました
何だか、懐かしい夢を見た。
遠い日の出来事だ。
僕は時計の時刻を確認した。
うん、いつも通りの時間だ
そして、僕は身支度を始めた
身支度をしながら窓の外を見てみると少し遠くに公園が見えた。
夢に出てきた公園だ
まあいい、今は昔の事を思い出すより身支度を終える事の方が優先度が高い
しかし、身支度を終え、朝ご飯を食べ、学校に行く時間までテレビを見る。
そんな日常的な行動をしている最中、ずっと僕は昔の事を思い出していた。
僕の住む町、常冬町は、地球温暖化に正面からケンカを売る様に、毎年十二月には雪が降っている。
平均気温も周りの町に比べ、かなり低い。
そんな当たり前の事を思い出しながら家を出ると
視界に僕の家と同じ位の大きさの家が映った
あの子の家だ
夢に出てきた、あの子
僕とあの子は幼馴染で、昔はよく一緒に遊んでいた覚えがある。
だが、高校に上がると同じ高校に通っているのにも関わらず一気に疎遠になってしまった
僕の事が嫌いになったのだろうか?
僕は、まだあの子の事が好きだ。
少し進むと、公園が見えた。
十歳位の頃、僕とあの子はあの公園で遊んでいた
雪だるまを作っていた
そして、僕が雪だるまを壊してしまった
思えば、それが疎遠になる原因の一端なのだろう
あの子、すごい怒ってたし
それ以来、話しかけようにも雪だるまの一件を思いだし、話しかけ辛くなったのだ。
何とかして仲直りできないかなあ
106僕とあの子と(の)雪だるま3/4 ◇XdfFerW0PE:2011/02/06(日) 23:42:24.68 ID:B2I+igdg0
公園を見ると雪がうっすらと積もっていた。
……良い仲直りの方法を思い付いた
でも、まだ時間が必要だな
僕は公園を見るのを止めて、学校に向かう事にした。

地獄のような長ったらしい授業を終え
学校を出ると、朝に降り始めた雪はもう本降りになっていた。
これなら大丈夫かな
僕は脇目も振らずに公園へ向かった。
公園は、雪で真っ白になっていた
僕は、雪玉を転がし始めた
十分後、雪だるまが完成した。
こんなもんだろう
僕はポケットから携帯を取り出すと
五年ぶりにあの子の携帯に電話を掛けた。
しばしの電子音の後、あの子が電話に出た
「もしもし?」
「久しぶり……僕だよ」
「うん、本当に久しぶりだね、どうしたの?」
「ちょっと公園に来てくれないかなあ、話したい事があるんだ」
「うん、分かった、今すぐいくね」
こうして、電話は切られた。
今からする仲直りは簡単だ
雪だるまを、壊してもらう
壊してもらってどうこうなる問題じゃあ無いが、話すきっかけにはなるだろう。
そうこうしている内に、 あの子が公園にやってきた
「待った? それで、話したい事って?」
「五年前の仲直りをしようと思ってね、雪だるまを作ったんだ」
あの子は雪だるまの近くに寄り、何かを思い出すかのように雪だるまをじっと見ていた。
そして、何かを思い出したような表情をし
107僕とあの子と(の)雪だるま3/4 ◇XdfFerW0PE:2011/02/06(日) 23:43:22.49 ID:B2I+igdg0
僕を突き飛ばした。
五年前と同じ様に、視界が目まぐるしく変わる
灰色の空が見える
あの子がどさっ と隣に倒れる
みんな、五年前と、夢と同じだった。
「ごめん、五年前はみっともなく怒っちゃって」
「謝るのは僕の方だよ、雪だるま、壊しちゃったし」
「だから、雪だるまを作って私に壊してもらおうとしたの?」
「うん、そうだよ」
「そっかあ、ごめんね。
みっともなく怒っちゃったことを思い出して、話しかけ辛かったんだ。
本当はずっと前から君の事が大好きで、今も大好きなのに、
そのせいで告白もできなかったんだ、だから五年前と同じことをもう一回言うよ。
君の事が大好きだ」
「良かった、僕もずっと前から君の事が好大好きだだったんだ」
「……そう言えばさ、君と一緒に雪の中に埋もれても冷たく無い理由、知ってる」
「いや、知らない、どんな理由?」
「君と一緒に居ると、ドキドキして体温が上がるからだよ」

いっつも寒い、冬の町
空は灰色、空気は冷たい
それなのに、僕の心は暖かく、晴れやかだった。

108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:44:24.34 ID:B2I+igdg0
現在、週末品評会253thの投票受付中です。今回の品評会お題は『冬にまつわるもの』でした。
投稿された作品は■まとめ http://yy46.60.kg/test/read.cgi/bnsk/1297001317/ にてご覧頂けます。
投票期間は2011/02/08(火)24:00:00までとなっております。

感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
ご協力ください。
投票には以下のテンプレートを使用していただくと集計の手助けとなります。
(投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません)

******************【投票用紙】******************
【投票】: <<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
               ―感想―
      <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
               ―感想―
気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
**********************************************
携帯から投票される方は、今まで通り名前欄に【投票】と入力してください。
たくさんの方の投票をお待ちしています。 
時間外の方も、月曜中なら感想、関心票のチャンスがあります。書き途中の方は是非。
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:46:36.19 ID:F+pZFRHQ0
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:48:12.42 ID:Ii1R2Qb6O
おつおつ

ちぃきしょおおおおおおおおお!間に合わなかったあああああああああああ!
時間外で出してやるうううううううう!うわあああああ!
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:48:34.80 ID:B2I+igdg0
週末品評会253th『冬にまつわるもの』投稿作品一覧


 No.01 コタツとみかんと怪盗 ◆OV.4ugEbKk氏
 No.02 ラストノート ◆D8MoDpzBRE氏
 No.03 ミカンズのテーマ ◆ihO9dxzf9I氏
 No.04 ある冬の夜に ◆IPIieSiFsA氏
 No.05 石柱、雲、その他 ◆p4MI6fJnv2氏
 No.06 彼女と鍋と僕のなんてことない話 ◆Tf1WgBAu9U氏
 No.07 雪と彼女と携帯電話 ◆oxQ.jXqnMY氏
 No.08 僕とあの子と(の)雪だるま ◆XdfFerW0PE氏
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:58:01.07 ID:PrRqI5hWO
おつおつ
なんだかんだ結構集まったね
113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:58:18.77 ID:u7UsaG0j0
うわあああああ時間外で投下しちまうしかない!
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 23:59:06.26 ID:u7UsaG0j0
おつでした
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 00:01:03.12 ID:7Gwmnhob0
おつですー
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 00:01:17.24 ID:LzzlCWg40
みんなおつー
今通常投下しても見向きもされないかな
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 00:02:11.63 ID:wKCLsb7h0
10以上ないと寂しく見えるなー
118ぼくらの楽しいセックス(お題:ハマチ)0/2 ◆NiMJzSjkKw :2011/02/07(月) 00:11:25.56 ID:LzzlCWg40
空気読まず>>55の通常作品投下するよ
品評会のついでに感想くれるとうれしいよ
119ぼくらの楽しいセックス(お題:ハマチ)1/2 ◆NiMJzSjkKw :2011/02/07(月) 00:12:49.63 ID:LzzlCWg40
 ハマチと呼ばれた。マグロなどではなくハマチと呼ばれた。
私はセックスで感じることがない。私のことを好きだと言った相手に膣穴を貸して
いるとき、揺らされたり体を打ちつけられたりするとくぐもった声が出るし、息は
上がる。だがそれだけのことだ。誰だってお腹を叩かれたり苦しい時は声が出るし、
運動をしたら息が上がるだろう。なぜハマチなのかは分からない。ハマチはマグロ
より値段が低いからだろうか。昔読んだ本で男は女を聖女か売春婦のふたつでしか
捉えられないと書いてあった。私はあきらかに後者なのだろう。今籠った声を出し
て私を仰向けにしている男から、そして過去こうしていた相手からみて。今日のこ
の人は確かとんでもない遅漏だと誰かが言っていた。たぶん、今日も行ったあの薄
暗いバーのカウンターで誰かが指を指して言っていた。そういえばこの人、いろん
な人に声を掛けていたけど箸にも掛けられていなくて、最後に私のところまで来た
のだ。だからどうってこともないけど。途中で抜かれたらしい男のペニスを頬に当
てられる。私は何も言わず舌をベロンと出して先を舐めた。何度か舐めまわしその
まま口に含む。歯を当てないようにして大きく頭を前後に動かす。なんでこんなこ
とをしているんだろう。珍しくもないがこの目の前の相手の名前を知らない。はじ
めは寂しかった。おそらくそれから始まったことだ。愛されるにはただ服を脱げば
よかったの、と言ったマリリン・モンローではないが、夜が長いことを紛らすには
服を脱げばいいだけだった。男は性と愛が離れている。女は性と愛が同居している。
誰が言ったんだろう。私の中は他の人の言葉であふれている。
 私の中の愛はあやふやだ。セックスしている相手に愛があるかと問われればおそ
らくある。愛は高尚なものではない。少なくとも私の中では。相手は私のことを愛
してはいないだろう。それを私は知っている。だがきっと愛してほしいと望んでい
る。それはおそらく誰に対してもだ。大きな手が私の額を押したので、ペニスを口
から離した。この人は終わらないのだろうか。そう思って顔を上げると男は困った
ような顔をしていた。
「俺の尻を叩いてくれないか」一瞬耳を疑ったが、ああそういう志向があるのかと
納得した。
「思いっきり叩いていい? 」うなずいた様だったので私はいそいそとはいつくばっ
ている男の後ろに回り、ベットから降りて地面に立った。
120ぼくらの楽しいセックス(お題:ハマチ)2/2 ◆NiMJzSjkKw :2011/02/07(月) 00:13:54.32 ID:LzzlCWg40
 立つと物を入れていた膣が変な感じがしたが、足に力を入れて手を思い切り振りあ
げる。男が呻く。もう一度振り上げる。また男が呻く。ちょっと楽しい。掌が痛か
ったが、私は力を入れて男の尻を叩いた。楽しくなって何度か叩いていると何か男
が言ったのが聞こえた。「う……もっとお仕置きしてくれ……」男の辛そうな声に
背中がぞわぞわした。
「馬鹿みたい。でも馬鹿にはもっとお仕置きが必要みたいだね」

 私は次の夜からいつも行くバーを変えて男が紹介したSMクラブに通うようにな
った。そこであの男相手にSMのショーをするのだ。今夜も私はあの私の運命を変
えた男に乗っかって鞭を振るう。夜はまだこれからだ。
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 00:28:54.72 ID:iv82V3fC0
皆さん、今回もお疲れ様でした。
そして、お題を下さい
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 00:30:54.46 ID:x4g8/aqcO
>>121
トイレ大好き
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 00:32:37.27 ID:VM5uqqD3O
>>120
マグロではなくハマチというくだりがどう話に絡むのか気になって読んだが、放置されたままだったのは残念
格言は興味深かった
ストーリーは可も不可もなく
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 00:53:46.02 ID:OWQV67AB0
おやすみ
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 01:32:06.08 ID:/qTxMjdfO
おやすみなさい
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 02:03:23.78 ID:GusmD36M0
ねるほ
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 03:06:40.13 ID:ZIUpaINi0
★ゅ
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 04:08:49.06 ID:5a0JTWec0
ねる前保守
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 05:06:28.04 ID:ns1pCjH40
そして俺もいなくなった
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 06:33:14.09 ID:x4g8/aqcO
お化けダゾー
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 07:41:16.34 ID:VM5uqqD3O
132 ◆TCFfG0At1w :2011/02/07(月) 08:25:02.58 ID:xOd0Zhmi0
品評会、時間外投下します。5レスです。
133むかし冬があったころ1/5 ◆TCFfG0At1w :2011/02/07(月) 08:26:46.43 ID:xOd0Zhmi0
 陽炎でゆがむ木々。その袂に運んできたガラクタを重ねて、美緒羅(びおら)は天を仰ぎ見た。暑い暑いと、
うわごとのように繰り返しながら。
 空はすっかり、雲一つない青天井。太陽の位置は低いものの、地面の土は焼けるように熱い。蟻たちは木陰か
ら出ると、踊るようにせかせか歩き始める。
「暑いー、暑すぎるわあ。今あ、何度なのよお」
 ティーシャツの襟をどんなにはたはたと扇いでも、熱は肌からまとわりついて離れない。額から溢れる汗を半
袖で拭い、美緒羅は慣れた手つきでウォッチを操作した。するとその腕時計型の機械から、青い光と共に、男性
キャスターの立体映像が浮かび上がった。
「二〇九五年、十二月三十一日、今日は大みそかです」
 キャスターが言うも、それは蝉時雨でかき消される。美緒羅はウォッチの音量を上げてから、「気温、今何度」
と、声を絞り出した。
 けれどキャスターは、前を向いたまま動かない。ぎらぎらと太陽が照りつける中、涼しげな顔をして浮いてい
る。
 声があんまりにもがらがらだったから、反応しなかったのかしら。美緒羅はそう思って、唾液を一つ飲み込み、
今度は丁寧に呼びかけた。
「只今の気温は、何度でしょうかあ」
 だが、反応はやはりない。美緒羅はそのキャスターの表情に、だんだん腹が立ってきた。なんであんたはそん
なに涼しそうなのよ。そう言わんばかりに顔を近づけ、眉の頭を吊り上げながら睨みつける。そうしてむきにな
って、つい声を張り上げてしまった。
「いまなんどいまなんどいまなんど!」
「……今日の天気図です。現在高気圧が日本列島を」
 腹から空気を全部吐き出して、美緒羅は叫んだ。何であんたはいつもいつもいつもいつも――狂ったように腕
を四方八方振り乱すが、キャスターは相変わらず天気図の説明を続けている。大地震の様相にもかかわらず。美
緒羅はそれを見て、何だか力が抜けてしまった。
「お母さん、今は三十度だよ」
「さんじゅう、ど!」
 美緒羅ははっとして、声のする方を振り向いた。ランニングシャツの男の子と、ロングヘアーの女の子が、そ
こには立っていた。美緒羅の子ども、太郎と花子だ。どちらも、黒いサングラスのような機械――ゴーグルを装
着している。
 太郎がコーグルを外すと、明らかに呆れている、そんな目の形が現れた。その視線は言わずもがな、美緒羅の
134むかし冬があったころ2/5 ◆TCFfG0At1w :2011/02/07(月) 08:28:13.65 ID:xOd0Zhmi0
の方へ向けられている。
「あ、あんたら。いつからそこにいたの」
「お母さんが暑い暑い言ってる時から庭にいたよ。気づかなかった?」
 美緒羅は「全然気づかなかった」とため息をついて、木陰の中にへたれこんだ。美緒羅のすぐ隣には、大量の
ガラクタが不安定に積み重ねられていいる。欠けた茶碗が大量の本を持ち上げていたり、横倒しになった花瓶に、
折り畳まれた扇子や筒状に丸められた紙が無理やり詰め込まれていたり――今にも崩落しそうで、それが太郎に
は不安で仕方がなかった。
「この、ゴミの山はなに」
 太郎が言うと、美緒羅は「ゴミじゃない」と反論した。さっきまでとろんとしていた目元が、急にとんがる。
「蔵の整理してたのよ。これはその時出てきたアンティークであって、ゴミじゃない!」
 「はいはい」と太郎は面倒くさそうに返事する。どうも最近、太郎はこういうあてつけがましい態度しかとっ
てくれない。ついに反抗期なのかしら。なら仕方ないかあ、と美緒羅はへなへな立ち上がり、花子の方を見た。
「花子、窓ふきはちゃんとしてくれた?」
 すると花子は「うん!」と大きく頷く。これくらいの頃は太郎も可愛かったなあ――そんなことを思いながら
美緒羅は花子の頭を「えらいぞ」と言って撫でてあげた。ついでにふっくらした頬っぺたを指でぷにぷに突っつ
くと花子は小さく笑った。
「じゃ、もうひと頑張りしてもらおうかしら。大掃除のラスボス、蔵の整理! 終わったらお昼ご飯ね」
 元気いっぱいの「はい!」と、露骨に嫌そうな「はあい」が重なった。
 
 今時珍しい白壁の蔵の中は、ぞっとするほどひんやりとしていた。二十年前までは存在していた、冬という季
節の空気を、そのままためこんでいるかのように。何しろこの蔵は築百年。太郎や花子はもちろん、来年で三十
路を迎える美緒羅でさえ見たことのない時間を、この蔵は見てきているのだ。それを思うと、アンティーク好き
の美緒羅は、興奮せずにはいられなかった。
「あっ、これはもしや昔の国語辞典? すごい、紙製よ、紙製」
 このような感じで、出る物出る物にいちいち大騒ぎする美緒羅は、当然ながら整理どころの話ではない。蔵の
中は依然としてごちゃごちゃのまま。片がなかなか付かないでいた。
「お母さん、ちゃんと働いてよ」
「花子おなかへったあ」
「ちょっと待って、ちょっと。これ昔の携帯電話よ。まだ使えるかしら」
 美緒羅が携帯電話を折り畳んだり広げたりしている間も、子ども達は休まずその小さな手を動かし続ける。へ
135むかし冬があったころ3/5 ◆TCFfG0At1w :2011/02/07(月) 08:29:14.75 ID:xOd0Zhmi0
とへとになりながらも、二人で何とか頑張った。
 やっとの事で一階部分の仕事が片付いた、その時だ。突然、二階から悲鳴に近いような歓喜の声が聞こえてき
た。お母さん、いつの間にか消えてると思ったら、二階にいたのか。そろそろ一喝入れてやろう。そう意気込ん
だ太郎が、足音を荒立てて階段を上がると、そこには、大きな机を抱えている、美緒羅の姿があった。
 しかしよく見ると、その机は、ただの机ではなかった。裏面に何か、機械じみた謎の装置がついているのだ。
「あっ、太郎。これ下すの手伝って」
 やっと働く気になったのか。太郎は「ああ、うん」と拍子抜けしたような声で頷くと、机の天板を持ち上げた。
「ところで太郎、これが何か、分かる?」
 階段を下りて蔵の出入口にさしかかった所で、美緒羅が訊ねた。顔に、何やら怪しげな笑みを浮かべながら。
 この机、何か貴重なアンティークなんだろうな――太郎にはだいたい察しがついていた。思えばさっき美緒羅
があげたあの声は、この机によるものだったのかもしれないのだ。知っているなら軽く答えてやりたかったが、
太郎にはやはり、ただの机にしか見えない。
「えーと、机……だよね?」
 その直後、待ってましたと言わんばかりに、アンティーク話に夢中になる美緒羅の姿があるのだと、太郎は思
っていた。しかし、そこにあったのは、少なくともいつものような得意げな表情ではなかった。
 少しばかりショックを受けたような、哀れんでいるような、そんな、複雑な表情。そして美緒羅は言う。
「……そっか。そういえば、冬を知らないんだね」
「え、知ってるよ。寒うくて、それで、雪が降るんでしょ」
 しかし太郎には、それしか想像できていなかった。
「うん……まあ、そうね」
 じゃあさ、その寒うい冬を、昔の人はどうやって過ごしていたと思う?――美緒羅は続けて、こんな質問を太
郎にぶつけた。
 どうやら、冬を過ごすための器具として、この机が関係しているらしい――それは何となく察することができ
たが、太郎に思い浮かぶのは、熱い空気が出る扇風機……みたいな機械、それかエアコンばかりで、なかなか机
とは結びつかなかった。
 美緒羅は首をかしげる太郎に笑いかけてから、机のふちをトントンと叩いた。
「これこれ、これを使ってたのよ。……こたつって言ってね、冬に暖まるための必需品だったの」
「ふうん。でもこの……こたつ? どうやって使ってたの?」
 「えっとねえ」と、こたつの説明をしかけたその時、美緒羅の頭の中で、ぴん、と何かひらめくものがあった。
そうして美緒羅は、勢いのままに言った。
136むかし冬があったころ4/5 ◆TCFfG0At1w :2011/02/07(月) 08:30:02.64 ID:xOd0Zhmi0
「これ、リビングまで持っていくわよ!」
「えっ、ちょっ、蔵の整理はどうするの?」
「大丈夫大丈夫、二階は大して散らかってなかったからっ」
 美緒羅は、蔵の隅でくたっと座り込んでいた花子を負ぶうと、跳ぶようにリビングまでこたつを運んだ。



 家までの長い道のりを辿ってリビングの戸を開けると、そこは雪国だった――美緒羅の夫、大虎(たいが)
は、まさにそんな心境で、リビングへ足を踏み入れた。ただいまを言う気力もなく、最初に口をついて出た
言葉は「何やってんだ」だった。
 狭い部屋のあちこちに置かれているのは、大量の氷が入ったボウル。足元からも、異常なまでの冷気が放
出されているのが分かる。
「お前これ、床冷房何度に設定してるんだ」
 マイナス二度。そう平然と答える美緒羅に呆れる暇もなく、大虎の身体は冷え渡ってきた。
「年末なのに、お仕事ごくろうさま。早くあなたもこたつ入って。晩御飯はあったかい、年越しそばよ」
 「なんか、懐かしいな」大虎はそれだけを言うと、飛び込むように、こたつへと足を突っ込んだ。
 ほどなくして、身体中にじんわりと熱が染み渡っていく。部屋の冷たい空気と、足を暖めるこたつの中の
温度差――そんな感覚が、大虎には本当に懐かしく思えた。しかし、ついさっきまで夏の世界にいたことを
思うと、少々身体が堪えるような気もする。
「そういえば、あいつらはどこ行ったんだ」
 リビングに太郎と花子がいないことに気づいた、その直後だ。大虎は、がっと両足を何かに掴まれるのを
感じた。まるで亡霊が人間を水中へ引きずりこむように、何者かが自分の脚を引っ張っているのだ。どうい
うことだ、と大虎は美緒羅の顔を見た。笑っている。ああ、なるほどな。こたつの中を覗いてみると、そこ
には、脚を抱きかかえている、太郎と花子の姿があった。
「お父さん、足くさーい」
 本当に嫌そうな顔をする花子に「うっさいな」と笑いかけると、美緒羅が「さ、ご飯にするわよ」と立ち
上がった。はい、と三つの元気な返事が重なった。

「こたつでみかんって、昔は定番だったけど、今考えるとオツなもんだよな」
「ま、夏みかんだけどね、これ」
137むかし冬があったころ5/5 ◆TCFfG0At1w :2011/02/07(月) 08:30:53.79 ID:xOd0Zhmi0
 美緒羅は笑いながら、みかんをまた一粒、口の中へ放り込んだ。薄皮むかないのか、お前。薄皮に栄養が詰ま
ってるのよ、それに面倒じゃない薄皮むくの。いや、薄皮むくからこそ甘くて美味しいんじゃないか。
 そんな会話をしている内に、紅白歌合戦はすでにトリの演歌歌手を迎えていた。毎年恒例の、派手な機械衣装
と光の演出は、会場を大いに賑わせている。
「カウントダウン終わったら、俺も寝るかな」
 すぐ隣で寝息を立てている花子を見ながら、大虎は言った。こたつで寝転んでると、すぐ眠たくなってくるん
だよな。大虎が、頭をぽんぽんと優しく叩いてやると、花子は寝返りをうって、あっちの方を向いた。
「太郎も、遊び疲れちゃったみたい。こたつの中でずっと、冒険ごっことかしてたのよ」
 美緒羅の向かいにいる太郎も、少し赤らんだ寝顔を座布団の上で横たえて、すうすうと深い眠りについていた。
「最近大人っぽく見えてたから、何だか、安心しちゃった」
 美緒羅は言った。本当は、子どもの成長を喜ばきゃいけないのにね、と苦笑いを浮かべた。大人っぽいか?――
大虎は笑った。
「……これからだよ、これから。小学卒業して中学生になったら、もっと成長していくよ、きっと」
 大虎は太郎を見つめた。まだまだ子どもだと――この前まで赤ちゃんだと思っていたその顔には、ぷっつりと、
小さなニキビができている。それは、我が子が成長しているという勲章のように誇らしく見え、それで、少し寂
しくなった。
「冬って、子どもの寝顔が一番身近に見れる季節だったのかもな」
「確かに、そうかも。この子たち、いつも子ども部屋で寝るから……思えば寝顔見るのなんて、久しぶり」
 そして、自分たちの親も同じように、こうやって子どもの成長を噛みしめていたのかもしれない。時々はこの
あどけない寝顔に、安心もしていたのかもしれない。大虎はふと思った。

「お母さん、朝だよ」
「あと五分……」
 部屋に日の光が射し込み始めてから何度も何度も繰り返されている、太郎と美緒羅のこの会話。そのあと太郎
はどうせ「じゃあ僕も……」と寝入ってしまうんだろ。声で目を覚ました大虎はそう思いながら、再び目を閉じた。
 起きなきゃいけないけど、外は寒いし、こたつの中はあったかいし――こういうのも懐かしいなあとのんびり思
った。
 今はこの時間に身をゆだねたい。未来のことなんて、しばらくは考えていたくない。意識はもう一度、夢の中へ
と溶け込んでいった。<了>
138 ◆TCFfG0At1w :2011/02/07(月) 08:32:27.17 ID:xOd0Zhmi0
以上です。失礼しました。
139 ◆weOjYMy7XA :2011/02/07(月) 08:32:42.12 ID:GjrYL1950
文才無いけど小説書く 終 
カと思った(^^・。^^;;)mmn
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 09:25:25.38 ID:VM5uqqD3O
ガキ使山ちゃん卒業くらいの信憑性だな
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 11:17:49.36 ID:x4g8/aqcO
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 13:09:45.74 ID:VM5uqqD3O
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 14:21:35.61 ID:x4g8/aqcO
感想がつかないのは特に何にも思わないからなのかな
まあそりゃそうか
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 14:24:42.64 ID:x4g8/aqcO
よしお題くれ
145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 14:26:41.08 ID:He8Qr62e0
タッチペン
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 15:46:19.29 ID:VM5uqqD3O
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 15:57:30.47 ID:7Gwmnhob0
お題ください
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 16:09:15.95 ID:VM5uqqD3O
スリー
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 16:16:36.58 ID:6oSmXd+X0
>>147
密室
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 16:18:55.51 ID:7Gwmnhob0
>>148>>149
把握
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 17:34:11.54 ID:uXI0+5B70
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 17:43:50.96 ID:4g4jWCQeQ
なんだかんだでまだ一作も書き上げられない
クソつまんねえ文章しかかけないオワタ
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 18:47:27.24 ID:VkYRQBHD0
うん
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 19:31:41.39 ID:uXI0+5B70
age
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 20:24:20.44 ID:wKCLsb7h0
lp「@p@
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 21:03:19.76 ID:KhoW7KsS0
品評会後のこの時間帯は静かだのう
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 21:44:52.35 ID:cOqVMeAo0
ほし
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 22:18:05.13 ID:VM5uqqD3O
159投票 ◆ihO9dxzf9I :2011/02/07(月) 22:48:29.49 ID:O8zpWmWv0
******************【投票用紙】******************
【投票】:No.01 コタツとみかんと怪盗 ◆OV.4ugEbKk氏
      一番楽しく読めた。文章は大変に粗く、結局人道的なところに落としどころを見つけてし
     まうのは気に入らない。しかしながら、「怪盗」という大層な言葉に反する主人公の卑小さ
     が、馬鹿馬鹿しさまで感じるくらいに、よく描かれている。下手さゆえの面白さ、などとい
     うと失礼だが、様々な未熟さが主人公の心情と対応して、上手くはまっているのではないか。
【関心】:なし
**********************************************
 人を育てる感想を書けとは言われたが、つまらないと感じた作品を育てるというのは難しいものだ。
アイディアが面白ければ多少の活かし方くらいは教えられるかもしれないが、それもない以上はどうに
もならない。まるでバカにバカだと言っているようなものだから、どこぞから優生思想だの平等放棄だ
の言われそうだが、別に作者自体を否定しているわけではない。それとは違って作者から出てきたアイ
ディアを否定している。小説のアイディアというものは着想の時点で面白くなる”のりしろ”がなけれ
ば、その分に応じた可能性しか出せない。仮に面白くなかろうと面白く見えるのだとすれば、それは虚
飾だの欺瞞だのの技術が優れていると言うだけだ。
 乳房を揉むと大きくなるという都市伝説があるが、成長する上で大切なのは女性ホルモンの分泌だそ
うだ。この女性ホルモンというのは、脳を刺激させなければ分泌されない。要するに、興奮しないと乳
房は大きくならない。女性が興奮するには、いわずもがなだが、愛している男の助力が必要だ。ここで
忘れてはならないのは、男の助力を得るには、女性の何らかの魅力が入用になるということだ。つまり、
乳房を大きくするには、女性の魅力が要る。
 論理展開やたとえ方を間違えている気もするし、私は巨乳にさして興味はないが、とにかく育てるに
も初段階における魅力は必要だということだ。となると、もっとも重要なのは良いアイディアを引き出
すということであるから、駄目なものには明確に駄目と言って、あるいは相手をせずに通り過ぎること
で、見切りをつけさせたほうが良い、と思っている。
 どうしたら良いアイディアを出せるか、あるいは多少不器用でも魅力のある作品を書けるか、といえ
ば、それは小説を読めとしかいいようがない。それもなるたけ作られた「お話」を読むのでなく、アイ
ディアを湧き上がらせてくれるような、小説を書きたいという心をかき立ててくれるような作品を読ん
で欲しい。とはいえ、どんな作品がそうさせてくれるか、という感覚は人それぞれだから、結局のとこ
ろひたすらに読め、としか言いようがない。私に出来るのは面白いと思った作品に見合った書物を薦め
るか、作品の良し悪しをジャッジメント(審査、判断)するか、面白さを気ままに楽しむくらいである。
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 23:14:22.49 ID:wKCLsb7h0
文ちゃんやっぱり貧乳派だったのね
161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 23:17:06.80 ID:/qTxMjdfO
僕っ娘好きで貧乳派か。わからんでもないな。
162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 23:21:11.00 ID:ix8C92kh0
でも、文豪先生は昔、たしか
※ただしイケメンに限るについて批判的な論調を加えていたから
きっと女性には外見的な美醜よりも内面的な美醜を重視する真摯なお方だよ!
163 ◆ihO9dxzf9I :2011/02/07(月) 23:34:14.60 ID:QfxWB4xZO
貧乳もボクっ娘も可愛くなければ出来損ないだよ
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 23:39:09.34 ID:wKCLsb7h0
うわ言ちまったよこいつ
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 23:44:26.65 ID:/qTxMjdfO
贅沢いいやがって
とはいえ貧乳で可愛い娘ってのはけっこう多いよな、良かったな文豪氏
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 23:51:45.20 ID:ix8C92kh0
あとはそういう子に愛されるだけだね!
がんばれ文豪先生!
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 23:52:49.78 ID:wKCLsb7h0
>>165
ボクっことなると攻略難易度は跳ね上がるぞ。調教すれば話はアレだが
168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 23:59:37.37 ID:VkYRQBHD0
ヒドイな
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 00:15:38.68 ID:aGHjqE9D0
友達がその子の彼氏に似非関西弁を強要されていたのを思い出した
170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 00:43:21.11 ID:4q4JJ4dp0
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:19:59.05 ID:4q4JJ4dp0
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:29:02.60 ID:bETVFAeW0
お題寄越せ
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:52:44.59 ID:bETVFAeW0
おい誰もいないのかよ!
174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:54:29.80 ID:Su8ujo1E0
>>172
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:56:00.50 ID:bETVFAeW0
>>174
把握
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:29:54.81 ID:6KauvCAO0
おやすみ〜
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:04:06.12 ID:Su8ujo1E0
ほね
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:37:43.57 ID:ZS/PKFw80
お題ください
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:56:30.04 ID:bETVFAeW0
>>178
180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:57:39.92 ID:ZS/PKFw80
>>179
thx
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 05:25:01.94 ID:DrwqZ73K0
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 05:47:22.17 ID:IT/s2q8M0
フ・・・
183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 06:29:05.36 ID:Y5WQPOEQ0
    |ハ,_,ハ
    |´∀`';/^l
    |u'''^u;'  |
    |∀ `  ミ  ダレモイナイ・・・
    |  ⊂  :,    モフモフ スルナラ イマノウチ
    |     ミ
    |    彡
    |    ,:'.
    |''~''''∪
                  ハ,_,ハ
               l^c´∀`';,              
        もふもふ  |  '゙''"'^uy-―,     
               ミ ´ ∀ `  ,:'     
             (丶    (丶 ミ     
          ((    ミ        ;':  
              ;:        ミ..
              `:;       ,:' .
               U"゙'''~"^'丶)   
        ハ,_,ハ,,  
       ,:' ´∀`っ^l
     ,―-y'u''~"゙´  |   もふもふ
     ヽ  ´ ∀ `  ゙':
     ミ  .,/)   、/)
     ゙,   "'   ´''ミ.
  ((  ミ       ;:' 
      ';      彡     
      (/~"゙''´~"U
184以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 06:38:36.87 ID:H32lcMCpO
185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 07:42:29.65 ID:opyHxm190
あーさー 朝だよー
186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 09:23:44.44 ID:opyHxm190
人生諦めて小説書くよー
187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 09:45:43.55 ID:pdw5L02zO
いだお
188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 10:15:57.32 ID:Izjxz1Rp0
>>187
トマト
189以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 10:16:52.67 ID:H32lcMCpO
つみき
190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 10:18:10.56 ID:opyHxm190
ずろよ
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 10:42:28.89 ID:Izjxz1Rp0
とりあえずチラ見の感想。


No.01 コタツとみかんと怪盗 ◆OV.4ugEbKk氏
 2レス目23行目まで読んだ。
No.02 ラストノート ◆D8MoDpzBRE氏
 2レス目15行目まで読んだ。
No.03 ミカンズのテーマ ◆ihO9dxzf9I氏
 1レス目1行目途中まで読んだ。
No.04 ある冬の夜に ◆IPIieSiFsA
 死ね。
No.05 石柱、雲、その他 ◆p4MI6fJnv2氏
 1レス目23行目まで読んだ。
No.06 彼女と鍋と僕のなんてことない話 ◆Tf1WgBAu9U氏
 2レス目16行目まで読んだ。
No.07 雪と彼女と携帯電話 ◆oxQ.jXqnMY氏
 全部読んだ。オチで台無しになった気がする。
No.08 僕とあの子と(の)雪だるま ◆XdfFerW0PE氏
 全部読んだ。彼らは何歳なのだろう。
時間外No.01 むかし冬があったころ ◆TCFfG0At1w氏
 3レス目18行目まで読んだ。
192 ◆IPIieSiFsA :2011/02/08(火) 10:43:50.91 ID:Izjxz1Rp0
酉忘れた。
ちゃんとした感想と投票はまた夜にでも。
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 11:29:57.99 ID:JLrAZyp70
さむいよ
194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 12:14:30.84 ID:H32lcMCpO
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 14:05:52.40 ID:Izjxz1Rp0
196以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 15:38:16.16 ID:H32lcMCpO
197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:46:24.19 ID:0aRZczsP0
お題ください
ところで品評会以外で投下するときにも酉つけたほうがいいの?
198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:49:10.35 ID:ktjB9kud0
>>197
任意だと思うけど、検索とかしやすいから自分にも読者にもメリットはあるかと

お題は「お茶会」
199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:52:50.79 ID:0aRZczsP0
>>198
dsyn お題thx
200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:07:27.42 ID:H32lcMCpO
品評会で酉知られるようになると通常で貰える感想が増えたというデータがあったようななかったような
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:38:51.91 ID:S9pPh5GU0
お題おくれ
202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:39:19.70 ID:Izjxz1Rp0
>>201
都会
203以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:41:27.00 ID:S9pPh5GU0
>>202
サンキュ
204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:50:42.67 ID:odaRfeGg0
******************【投票用紙】******************
【投票】:No.02 ラストノート ◆D8MoDpzBRE氏
【関心】:No.06 彼女と鍋と僕のなんてことない話 ◆Tf1WgBAu9U氏
     No.07 雪と彼女と携帯電話 ◆oxQ.jXqnMY氏
**********************************************
今回は良い作品が多かった
全館書いた用紙仕事場に置いてきたので明日忘れてなかったら投下します
205以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 18:50:09.08 ID:z8E1RiiP0
うぉんちゆ
206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 19:37:23.10 ID:C9mOUJGcQ
幼稚園児でも書き上げられるようなハイパーイージーなお題を寄越すんだ
207以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 19:39:44.68 ID:Izjxz1Rp0
>>206
すなば
208以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 20:05:36.02 ID:odaRfeGg0
寝るか
209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 20:27:53.42 ID:p5wMLwrVO
寝るの早いな
210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 20:42:18.95 ID:H32lcMCpO
俺は22時に寝るようになってから口内炎できなくなった
211以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 21:29:18.50 ID:Izjxz1Rp0
というわけで全感投下。
4レスいただきます。
212 ◆IPIieSiFsA :2011/02/08(火) 21:30:02.91 ID:Izjxz1Rp0
No.01 コタツとみかんと怪盗 ◆OV.4ugEbKk氏
 途中で読むのをやめた理由:『DVDデッキからDVDケース〜』のあたりが、何をしているのかわからない。
 二人が見ていたのは「カリオストロの城」だが、それを隠したいのか隠したくないのかわからない。
 『怪盗とガンマンとサムライが姫を助け出す王道アニメ』と描いておきながら何故『銭型警部』を出すのか。
中途半端なのが残念。
 「チャイムを連打していたのは小学生でした」というその事自体は特に問題はないのだが、男がそうだと決め
付ける理由が適当すぎる。
 というより、この男の推理が意味不明。親しい人間でも連絡せずにくる事はあるだろう。というより、親しい
人間は相手の生活習慣はある程度把握しているだろう。
 さらに言うと、小学生が帰ってきているような時間帯に空き巣を行おうとするのはいかがなものだろう。念入
りな準備すらできてない気がする。
 話の流れとしては上手く流れている気はするのだが、中盤に「あなたの心です」を出してしまったのは勿体無
かった気がしないでもない。
 この時点でははぐらかしておいて、最後にDVDと被せて言わせても良かったのではないだろうか。無論、そ
うなると最後まで『カリオストロ』であるという事は隠したままで。
 校正が必要な部分として、「空き巣の息子だと指を指された上に親から腫れ物扱いされるのは可哀想だと思う」
 コタツとみかんは別に必要ないよね。
 
No.02 ラストノート ◆D8MoDpzBRE氏
 途中で読むのをやめた理由:『ちょうど一年と一日遅れ』 ちょうどは何にかかっているのか。一年と一日は
勿論ちょうどではない。そうなるとちょうどというのはきっと、生まれた時間にかかっているのだろう。つまり
ちょうど366日後に生まれたという事だ。
 これは難しい。これは作者が女性でなかったら、面白いが何の価値もなくなる。作者ありきの小説だ。しかし
反面、作者が女性だったとしたらただの講義になってしまい、面白くなくなる。興味がある人には価値が出てく
るだろうけど。
 少し残念なのは、主人公が書いた小説を中心に据えて話を展開しているだけに、それを読めない時点で想像す
るしかないところだ。
 ちなみにこれだけみると、主人公が本音を発していないかどうかは判断つかない。二度目の恋愛などは本音を
口にしているようにも思える。2月14日に会うようにしたのが主人公らしい、というのもいまいちわからない。
 結局は男である俺にはわからないという気がした。
213 ◆IPIieSiFsA :2011/02/08(火) 21:30:52.41 ID:Izjxz1Rp0
No.03 ミカンズのテーマ ◆ihO9dxzf9I氏
 途中で読むのをやめた理由:『雪がふらついている』 雪がふらつくって何だ。ヨタヨタしてるのか。
 話のテーマは物凄く興味深く面白いのだけれど、小説としての面白さがあるかと言われれば否と言わざるをえ
ない。それはきっと主人公がいまいち納得がいっていないからだろう。どういう形であれ、主人公が納得してい
る形であれば――それが読み手の思うところと違うものでも、話の終わりを確認できるのだと思う。けれど主人
公がきちんと納得していない以上、読み手も納得できないのではないかと思う。もやもやっとした終わりで煙に
巻かれた感がある。ただこの話の場合、中川のキャラを考えるとそれもまた一つの終わりなのだろうとも思える。
もやもや感は残るけど。
 ところでこの中川だけれども、1レス目から6レス目の間に老成しているように思えるのだが、どうだろう?
 
No.04 ある冬の夜に ◆IPIieSiFsA
 死ね。

No.05 石柱、雲、その他 ◆p4MI6fJnv2氏
 途中で読むのをやめた理由:『それにいつもより〜』と次の文。どんな状況をイメージすればいいのかわから
ない。突然足元が崩れ落ちるとか、そういうのでもなさそうだし。
 夢が曖昧で不安定だというのは一般的な見方なのだろうか。残念ながら俺は夢を夢であると認識できた事はな
い。夢を見ている間、そこでどんな不思議な事が起きていようと、それは現実なのだ。そして目を覚まして初め
て、それが夢であるとわかる。現実は曖昧でも不安定でもないから、夢が曖昧で不安定である事はない。夢が曖
昧で不安定ならばきっとその人の現実も曖昧で不安定なのだろう。だからどうした。
 初日だというならいざ知らず、二日目以降にマフラーをシート代わりにするとか、どれだけブルジョワなのか
それとも頭がおかしいのか。
 ようするにこの話は訳がわからないわけなのだが、考えてみるに、この石柱は「見透かす」わけだ。一般的、
と言えるかはわからないが、何かに心中を見透かされていると、心中で思った通りには事が運ばないものではな
いだろうか。思っているが故に、思い通りにはならない。その観点からいくと、男は石柱に何かを期待したが故
に何も起こらず、少女に会えるかと思ったが故に会えず。ロリコンは死ねばいいのに。
 あと、なんとなく冬というより秋ってイメージ。
214 ◆IPIieSiFsA :2011/02/08(火) 21:31:33.16 ID:Izjxz1Rp0
No.06 彼女と鍋と僕のなんてことない話 ◆Tf1WgBAu9U氏
 途中で読むのをやめた理由:一度遅くなった事に対して大丈夫だと言っているのに、数十秒後くらいに「今日
は遅かったですね」と問いかけるのはおかしくないでしょうか。問いかけ自体がおかしいというよりは、問い方
がおかしい、の方が正しいかもしれません。遅くなった理由を問いたいわけだから、そのような聞き方の方が自
然だと思います。まあ、主人公がそういう正確なら仕方ありませんが。そもそも「遅くなりました」というのも
乾杯の後に言う言葉でもないと思います。これは家に来てすぐに言う言葉でしょう。
 的確に内容を表したタイトル。ホントになんてことない話だ。
 主人公の口調が一定していない上に、会話に入ると会話文だけで進めるので、どっちの言葉なのかわかりにく
い。少なくとも、同じ相手に対する時は口調を一定にさせないと読み手の混乱を招くだけ。
 二人の年齢がおかしな事になってます。 

No.07 雪と彼女と携帯電話 ◆oxQ.jXqnMY氏
 ハルちゃんはなに、脳内彼女? いらない子だよね。
 4親等以上なら婚姻できたはず、とか思ったけれど、直系だとダメだそうだ。
 登場からのユキさんは完璧だと言わざるを得ない。だからこそハルちゃんが残念な事になるのだけど。
 ホントに、最後の携帯電話で台無しになっている気がする。ユキさんが苦しい決断をしているのに、あっさり
とそれをぶち壊す主人公。しかもメル友からはじめるとか、最終的にはどこを目指しているのか。
 ハルちゃんマジ空気。
 
No.08 僕とあの子と(の)雪だるま ◆XdfFerW0PE氏
 句読点をつけるつけないの判断は何なのだろう。改行がよくわからない事になっているので読みにくい。基本
的な文章の書き方を学んだ方がいいです。
 話はそこそこに綺麗で良いものなのだけれど、二人の年齢が気になる。というより15歳くらいなのだろうけ
ど、五年前の時点で携帯電話を持ってるとか、今の子供はそんなひどい事になってるの?
215 ◆IPIieSiFsA :2011/02/08(火) 21:32:15.40 ID:Izjxz1Rp0
時間外No.01 むかし冬があったころ ◆TCFfG0At1w氏
 途中で読むのをやめた理由:『寒うい』 最初に出てきた『今あ』は何とか乗り切ったけど、ここでダメだっ
た。何これ。
 両親の名前がDQNネームなのは何か意味があるのかと思ったが、何もなさそうだった。
 ただ、こたつって、布団がついてこそこたつだよね。机というからには布団までは蔵の中になかったようだし。
どうせなら太郎にヒーター部も発見させても良かったかも。何がどうと言うわけでもないけど、こたつらしさは
アピールできるかと。
 こたつとそれに付随する思い。これはなるほどと思わされた。まあ、もっと普段から子供の寝顔は見てあげて
くださいとは思うけど。
 小林幸子がまだ生きている事に感動した。

******************【投票用紙】******************
【投票】:なし
気になった作品:No.07 雪と彼女と携帯電話 ◆oxQ.jXqnMY氏
**********************************************
216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 21:41:07.49 ID:0aRZczsP0
No.4はなんで死ねって言われてるの?おしえてえろいひと
217以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 21:43:46.01 ID:H32lcMCpO
酉を見てみ
218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 21:48:11.07 ID:0aRZczsP0
新参なので分からなかった
219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 21:57:12.35 ID:4q4JJ4dp0
賢者タイムに入ったので手厳しい感じの感想でも書くか
220以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 22:33:31.83 ID:H32lcMCpO
221以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:13:31.01 ID:H32lcMCpO
あげ
222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:16:52.76 ID:p5wMLwrVO
どうした、なんかやたら人が少なくないか
223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:22:01.96 ID:4q4JJ4dp0
投票少ないな。
224単感:2011/02/08(火) 23:29:19.92 ID:VAjF2TiT0
No.04 ある冬の夜に ◆IPIieSiFsA氏
読んだ。うわぁ変態だぁ。
全体的に、もう少し格調高い文体にしたほうが作品の面白みは出たかもしれないと思った。
きっと普通の人はわからない繋がりがあるんだろうね。
あとは、せっかくのお題だから状況描写以外にも冬っぽいものが欲しかった。
これだったら春のほうが季節的に近い気がするし。

そういう、冬っぽい露出とかってないのかな。氏なら詳しいからきっと知ってるよね!

感想おわり。
225 ◆D8MoDpzBRE :2011/02/08(火) 23:38:32.11 ID:bETVFAeW0
******************【投票用紙】******************
【投票】:No.03 ミカンズのテーマ ◆ihO9dxzf9I氏
     一番小説の形になっているので
【関心】:No.06 彼女と鍋と僕のなんてことない話 ◆Tf1WgBAu9U氏
     もう少し小説っぽかったらよかったのに
**********************************************
書けたら全館します
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:39:48.54 ID:Izjxz1Rp0
>>224
格調高い文体で書けたらいいんだけどねぇ。これが限界なのよ。
時間かければ書けるかもしれないけどね。

露出自体が冬に向かないものだからね。冬っぽい露出ってのはムツカシイよね。
227 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/08(火) 23:45:52.56 ID:4q4JJ4dp0
先に投票。12時回ったら全感投下します。

******************【投票用紙】******************
【投票】:No.04 ある冬の夜に ◆IPIieSiFsA氏
     いい意味で氏ねばいいのに^^
【関心】:時間外 No.01 むかし冬があったころ ◆TCFfG0At1w氏
     時間外でなければ投票
**********************************************

皆様、お疲れさまでした。
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:53:54.50 ID:0aRZczsP0
投票今日までか お題もらってすっかり忘れてたよ
読んでなくてすみません
229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:59:22.88 ID:Izjxz1Rp0
やばいよやばいよ
230以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:02:52.68 ID:rHPyxTVW0
あれ、優勝者3人いる?
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:03:44.05 ID:UkO04XPB0
おいまじか。避難所より転載

----------------
 投 関
  1 − No.01 コタツとみかんと怪盗 ◆OV.4ugEbKk氏
  1 − No.02 ラストノート ◆D8MoDpzBRE氏
  1 − No.03 ミカンズのテーマ ◆ihO9dxzf9I氏
  1 − No.04 ある冬の夜に ◆IPIieSiFsA氏
 − − No.05 石柱、雲、その他 ◆p4MI6fJnv2氏
 −  2 No.06 彼女と鍋と僕のなんてことない話 ◆Tf1WgBAu9U氏
 −  2 No.07 雪と彼女と携帯電話 ◆oxQ.jXqnMY氏
 − − No.08 僕とあの子と(の)雪だるま ◆XdfFerW0PE氏
 −  1 時間外No.01 むかし冬があったころ ◆TCFfG0At1w氏
----------------

これどうすんの?4人優勝?
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:05:01.77 ID:MqMyAQm/0
Ω<ナンダッテー
233【全感】0/4 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/09(水) 00:05:55.74 ID:UkO04XPB0
とりあえず、全感投下するんで、その間に誰か考えて!

4レスです。
234単感:2011/02/09(水) 00:06:16.10 ID:SzgiS/Il0
>>226
格調高い云々の件は文章力とかの問題じゃなくて、「人類七不思議」とかそういうコミカルな
キーワードは使わない方がいいんじゃないか、とかそういう意味だよ!

> 露出自体が冬に向かないものだからね。冬っぽい露出ってのはムツカシイよね。
氏は冬はどういう露出をしてるのかしらないけれど、多分そういう迷惑行為に手を染めているのは
間違いないのだから、そういう実経験談を小説内にちりばめればよかったんじゃないかと思ったです。
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:06:36.44 ID:UkO04XPB0
自作棚上げ&厳しめで全感。評価基準は下記。しかし最終的には主観と気分。

文章:文体、文法、語彙などで評価
構成:導入、展開、読みやすさなどで評価
内容:俺の好みで評価

 1 やり直し
 2 悪い
 3 普通
 4 上手い
 5 凄い

---------------
No.01 コタツとみかんと怪盗 ◆OV.4ugEbKk氏
(文章:4.0 上手い)
 語彙が平易で読みやすくリズムがいい。ただカギ括弧内(台詞)の終端に句点を付けるのに少し違和感。
 別に間違っている訳ではないけど。
(構成:4.0 上手い)
 時系列毎にきちんとしていて読みやすい。イベントの配置加減も良い。
(内容:3.5 普通)
 男の招待を微妙にぼかしているところが面白い。だけど最後の「盗んだのが怪盗なら、仕方がないな。」 が激しくいらない。 
---------------
No.02 ラストノート ◆D8MoDpzBRE氏
(文章:3.5 普通)
 悪くない。けれど、一人称の説明口調は若干鼻につく。あと台詞が平坦すぎる。
(構成:3.0 普通)
 内容そっちのけで言うと二回会う必要が無いような気がする。良くも悪くも日記的で茫洋とした印象。伏線が無いまたは弱い。
(内容:3.0 普通)
 主人公の考え方には何となく共感できるような。でもそれだけだと単なる人物紹介みたいな。
 それだけで小説とするには主人公が弱い。
236【全感】2/4 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/09(水) 00:07:17.76 ID:UkO04XPB0
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No.03 ミカンズのテーマ ◆ihO9dxzf9I氏
(文章:2.0 悪いというか好かない)
 悪文。狙ってやっているのかも、とは思ったが読んでいて気持ち悪くなってしまったものは仕方がない。
 もし作為ではないのだとしたら、憚りながら自分の文章の音読をお勧めする。
 読点の打ち方がおかしいか修飾過多。一文に接続詞(逆接)使い過ぎ。
(構成:2.5 悪い)
 情報量を増やして焦点をぼかす、みたいなやり方はこの手の内容ではあまり効果的でないという印象。間が欲しい。
(内容:3.5 普通)
 その場から消えたみかんが内容を象徴しているような感じなら凄かったけれど、
 過剰な描写に埋もれてなんだかよくわからない。
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No.04 ある冬の夜に ◆IPIieSiFsA氏
(文章:4.5 上手い)
 過不足ない。抑制された良文だと思う。
(構成:5.0 凄い)
 短いことは素晴らしい。
(内容:5.0 氏ね)
 ラストが爽やかな読後感を与えてくれる。しかしとてもくだらない。
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No.05 石柱、雲、その他 ◆p4MI6fJnv2氏
(文章:2.5 悪い)
 村上春樹のような。普通の人が彼を真似ようとして文章を書くと、ほとんどの場合で碌でも無い代物になる。つまりださい。
(構成:3.0 普通)
 可もなく不可もなく。この内容ならもっと短くしたい気がする。または大長編か。
(内容:2.5 微妙)
 狙いはわからないでもない。だが狙いがありそうだ、というだけで別に何も無い。
 何かを象徴するような話を書くのであればヴァニタスさながらに、
 地の文から何から総動員して「それ」を伝えるくらいの感じでないと。
 そして解釈は読者に委ねる、などということは書き手の甘えではないかと。
237【全感】3/4 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/09(水) 00:08:06.36 ID:UkO04XPB0
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No.06 彼女と鍋と僕のなんてことない話 ◆Tf1WgBAu9U <<自作>>
(文章:0.0 評価なし)
 色々と失敗している。特に後半の描写が足りていないので、状況がまるでわからない。
(構成:0.0 評価なし)
 前半が説明、後半が台詞のみというのは読んでみるとすごくバランスが悪い。
(内容:0.0 評価なし)
 書きたいことが書ききれていない。あとタイトルを『〇〇と××と〜』ってありがちでカッコ悪いな、と我ながら思って猛省した。
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No.07 雪と彼女と携帯電話 ◆oxQ.jXqnMY氏
(文章:3.5 普通)
 地の文のリズムが悪い。独り語りの勢いのある部分とない部分がちぐはぐになっている。
(構成:3.5 普通)
 もう一捻りした伏線が欲しかったところ。
(内容:4.0 良い)
 なんというか一人待っている雪女(母)には萌える。オチも悪くない、でもなんか話としてはちょっと中途半端なのかと。
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No.08 僕とあの子と(の)雪だるま ◆XdfFerW0PE氏
(文章:2.5 悪い)
 独り語りはコンセプトがはっきりしていないと。主人公が子供だと語彙に違和感があるし、大人だと池沼。
(構成:2.5 悪い)
 前半の夢の描写はどうでもよくて、雪だるまを壊したエピソードが欲しい。
(内容:2.0 よくわかんね)
 よくわかんね。あと雪だるまは結構な量の雪が積もってる必要があるけど、積もるの早すぎじゃね?
238【全感】4/4 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/09(水) 00:08:48.36 ID:UkO04XPB0
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時間外 No.01 むかし冬があったころ ◆TCFfG0At1w氏
(文章:4.5 上手い)
 リズム、テンポともに良い。気になる部分はあるけど、打ち間違い程度の細かい話。
(構成:4.5 良い)
 キャラクターが自然な形で紹介される展開が上手い。
(内容:5.0 凄い好き)
 もう単純に好みな話。
---------------
【総評・感想】
 久しぶりの参加だったけれど、自作の出来が良くなかったのでとても悔しい。時間を作ってなるべく参加&筆力向上したい。
 今回は文章、構成共に上手い人が多かったので上記で適当に付けた点数も
 自分の好みが過剰に反映してしまっている。あまり気になさらないように。
 運営及び転載をしてくれた方、どうもありがとう。そして読んでくれた方にも感謝。ありがとうございました。

 以上。
239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:10:58.88 ID:UkO04XPB0
で、もういっそ4人共優勝でみんなでお題だしちゃえばいいんじゃね? と。

◆OV.4ugEbKk氏、◆D8MoDpzBRE氏、◆ihO9dxzf9I氏、◆IPIieSiFsA氏、おめー
240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:12:18.13 ID:Q6EzwbDk0
史上初のお題4つというのもカオスで良いと思うのよ。
241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:13:17.20 ID:rHPyxTVW0
おめでとー
とりあえず全員お題発表しちゃいなよ
242以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:13:49.42 ID:Kr9iLXqfO
すげえ。4人同時は初めて見たな。優勝者おめ!
そして変わった品評会のだし方を期待。
243 ◆D8MoDpzBRE :2011/02/09(水) 00:14:29.38 ID:zaGewhbL0
お題はめんどいので文豪先生に丸投げ
244以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:16:07.53 ID:U4kgPo410
◆OV.4ugEbKk氏、◆D8MoDpzBRE氏、◆ihO9dxzf9I氏、◆IPIieSiFsA氏おめでとー
しかし既にカオスな状況だな
ちょっとお題についてはどうするか審議が必要かねぇ
245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:16:17.57 ID:pWMnO5d/0
4人優勝したら4題出せばいいじゃない
246shioshio2:2011/02/09(水) 00:18:39.54 ID:MqMyAQm/0
みなさんおめでとう お題wktk
酉てすと
247単感:2011/02/09(水) 00:18:49.21 ID:SzgiS/Il0
No.06 彼女と鍋と僕のなんてことない話 ◆Tf1WgBAu9U 氏

読んだよー。ほぼ会話だけで構成される、面白いスタイルの小説だなー、と思ったです。
こういうのはこういうので、味があっていいね。今度真似してみようかと思いました。
ただ、やっぱりこういうスタイルの悪いところもあって、1レス目については初読で、誰が誰と(というか何人で?)
しゃべっているかさえわからなかったです。読みながらボタンの掛け違いみたいなことをしていそうでちょっと
難しかった。
 会話はシンプルで、情景が想像出来るのが良かった。難を言えば、会話内に「食べている」感じがもう少し欲しかった。
「あ、これ生姜効いてて美味しい」みたいな、そういう台詞が。

結局、雪村さん何歳なの?34?「二十四」ていうのはボケで、主人公が突っ込みいれなかっただけなのかな。
ちょっとモヤモヤしました。

静かな感じでよかったです。
248 ◆ethG0vgyGc :2011/02/09(水) 00:19:21.34 ID:MqMyAQm/0
うわみすった 
249 ◆MUIpE9WOik :2011/02/09(水) 00:20:35.17 ID:rHPyxTVW0
んじゃおれも酉てすと
250 ◆ethG0vgyGc :2011/02/09(水) 00:23:02.83 ID:Kr9iLXqfO
ほほう
251以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:24:16.15 ID:SzgiS/Il0
同時優勝に憧れる
252 ◆PndriWvbA2 :2011/02/09(水) 00:24:35.61 ID:MqMyAQm/0
おいやめて もういい酉変えます すれ汚しすまん
253 ◆ethG0vgyGc :2011/02/09(水) 00:24:37.46 ID:Kr9iLXqfO
>>243
そういう姿勢っていけないと思います!
254雪と彼女と携帯電話 6/6 ◆oxQ.jXqnMY :2011/02/09(水) 00:27:02.82 ID:OcL6vjmM0
仕事が長引いて投票出来なかったorz

自分に一票入れれば俺だって(TT)
255以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:27:05.31 ID:UkO04XPB0
てか、今回はどんなに酷いお題にしても責任を追求されないという。優勝者(゚д゚)ウマーな展開じゃないか。

しかし、4/9に入りそこねたのは悔しいw
256以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:27:46.76 ID:OcL6vjmM0
しまった。トリ付けたままだった。

もうこのトリは使えない。さようなら(TT)ノ
257 ◆ethG0vgyGc :2011/02/09(水) 00:28:39.22 ID:Kr9iLXqfO
>>252
ぬう、今度はスリーだろ!勝負!
258 ◆ethG0vgyGc :2011/02/09(水) 00:30:06.00 ID:UkO04XPB0
よし。じゃあ次の品評会はこの酉でww
259以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:30:21.79 ID:SzgiS/Il0
そんなことで酉を捨てる必要は全くないと思うよ!
末永くつかってあげてくださいませ
260以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:33:05.94 ID:U4kgPo410
酉の無駄遣いは良くないぞ。リユースするんだ!
大体名前みたいなもんなんだから末永く使えばいいじゃない
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:34:13.60 ID:UkO04XPB0
>>247
実は後半は時間がなくて地の文を挟む余裕がなかったのはひみつだ。

感想ありがとう。
262以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:35:14.46 ID:Re284PpL0
スイーツ(笑)って言ったらスイーツなんだとさ
http://bbs.fumi23.com/show.php?article_id=1865948&host_id=bbs&view_type=1&type_id=&page=new&bbs_id=6
こいつどうにかして
263以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:36:33.69 ID:Kr9iLXqfO
>>256
その程度で酉を変えるとかもったいないな
俺なんか今ごろ自殺しててもおかしくない程やらかしてきたぞ
264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:39:11.31 ID:OcL6vjmM0
わかったよおじさん、一生俺はこのトリで行くよ。
今後の品評会で不自然に一票入っていたら、それは自作自演だからな!
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:40:43.18 ID:SzgiS/Il0
自作自演というか
「全作品読んでみたが、自分の作品くらいしか投票に値する作品は無かったわ」
とくらい言い切ってもいいんじゃないかな!
266以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:43:54.84 ID:UkO04XPB0
>>265
それ素敵!
267以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:44:28.09 ID:umo0+FMOO
さぁ次の品評会でのお題はなんだ
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:47:52.64 ID:Kr9iLXqfO
>>264
いいか坊主。ズルをする時ってのは、なるべく黙ってやるもんだ。
ただし、明らかにつまらないのに、投票数の多い作品があったとしたら、敬意を持たれる事はないだろう。 
まるで俺みたいにな。わかったか坊主。
269 ◆PndriWvbA2 :2011/02/09(水) 00:48:10.76 ID:MqMyAQm/0
空気読まずに通常作投下 3レスれす
270無題:1/3(お題>>198お茶会) ◆PndriWvbA2 :2011/02/09(水) 00:49:37.49 ID:MqMyAQm/0
 午後一時だ。やわらかい陽が射している。
 手にしたシャツはよく乾いている。典子は洗濯物を取り込みながら今日の予定を逡巡していた。
 「洗濯物を片付けたら、千恵が学校から帰ってくるまでに夕飯の買い物をして、それから・・・」
 ここの所続いている春の陽気とは裏腹に、典子の心はどんよりしている。重苦しく息が詰まりそうな気分だ。
それも今日は週に一度の「母親会」があるからなのだ。

 この春、千恵は小学二年になり、するとすぐに授業参観が催された。クラス替えの後ということもあり、教室
で保護者会と称して母親と担任の自己紹介が行われた。といっても「誰々の母です、一年間よろしくお願いしま
す」という紋切り型の挨拶を順番にしていくだけのものだった。
 周りを見ると、ブランド品で固められた母親ばかりだ。大学付属の私立小学校ということを考えればそれが普
通なのだろう。分かりやすい幸せの表層は、文字通り他人に分かりやすくするために纏われているのだろうか。
バッグの止め具にあしらわれたロゴも、道路標識のように典子に注意を促している。
 その中で唯一異彩を放っていたのは「武藤和樹君」の母親だった。細身のスーツを着、シャープな銀縁の眼鏡
を掛けている。黒っぽいグレーの生地は派手さこそないが上品だ。三十台半ばか、いや典子と同じく二十代後半
にも見える。他のおばさんとは明らかに違った雰囲気を醸し、「いかにも堅そうだな」と典子は思った。所謂教
育ママなのだろう。その声も大きくはないのだが明瞭に通り、どこか説得力を漂わせている。この人が言うと「
ムトウ」という響きからも気品のようなものが感じられるから不思議だ。
 ほどなく全員の自己紹介が終わり、担任から「それでは今後ともよろしく」との旨が伝えられ、散会となるは
ずだったのだが、そうはならなかった。件の通る声が、言った。
 「皆さん、週に一度集まりませんか?先生も是非。」
 ジョウホウヲコウカンするのだと言った。クラスでのこと、家での学習のさせ方、授業の進捗、担任の方針、
それらを話し合うのに不定期の授業参観では不十分だというような内容だったと思う。
 一瞬の空白の後、担任が放った「いやあ僕が学校の外で若い奥様と会ったら、問題じゃないですかね」との冗
談で教室は大仰な笑い声に包まれた。
 お茶を濁すと担任は退室していったのだが、なんともこのままでは終われない雰囲気だった。皆ムトウユウコ
サンに御伺いの視線を送ってる。もちろん典子もそうであった。冗談で水を差されたせいか、言葉を選んでいる
様子だった。やがて誰からともなく「とりあえず、皆さんアドレス交換したらどうかしら」との声が上がり、和
やかな雑談と共にその場は散会となった。
271無題:2/3(お題>>198お茶会) ◆PndriWvbA2 :2011/02/09(水) 00:50:18.12 ID:MqMyAQm/0
 か細い、だが引き締まった腕に、コンクリート塀に切り取られた陽が当たっている。
 いつの間にか手が止まっていた。典子は気が付き、とにかくさっさと済ませてしまおう、とすばやく籠へ靴下
や下着を放り込んでいった。
 その後そそくさと買い物済ませ、典子は家に戻った。壁にかかった時計は二時三十分を示している。
 ああまた今日も、とまた胸が沈んでいく。雨に濡れてしまった布団の綿がいつまでも乾かない、そんなイメー
ジがまた典子の気分を鈍重にさせた。
 「家から近いからって、千恵を私立の小学校に行かせたのは背伸びし過ぎたかな。」
 典子は薄化粧の上から、誰のためとも分からないままチークを上塗りをしていく。
 「ただいまあ」と、あどけない声が背後で響いた。千恵が帰ってきたのだ。「お母さん、これ今日のテスト」
と言いながら小さな腕で背中に抱きついてくる。典子はそれを受け取ると頭を撫で褒めてやった。
 「今日またお出かけなの。七時には戻るから外に出ちゃだめだよ。」
 携帯を開き「第四回二年一組母親会のお知らせ」とのタイトルを見せながらどこか言い訳じみた説明をした。
思わず、本当は行きたくないと出掛かったが何とか飲み込む。
 着替えが済むと「家の中にいてね」と千恵に念を押し、玄関に鍵を掛けた。
  小さなパステルのミニバンを走らせる。場所は車で十分ほどの喫茶店だ。学校からも近い。
 「あのことを裕子さんに言ったら、不機嫌になるかな。それとも悔しがってヒステリックになるかな。プライ
ド高そうだし」と、そんなことを考えている内に喫茶店の近くまで来ていた。手前の信号に捕まる。
 「ああ多分今日も、なんだろうな。」
 裕子の教育論は大したものだった。それどころか、自分と近い年齢でここまでしっかりしてるのかと、典子は
関心しているのも本当だ。しっかりと目標を立て、かといって子供に過度の負担がかからないよう配慮している。
将来は付属の大学ではなくもう一つ上の大学に入れたいそうだ。典子はそんなこと考えたこともなかった。
 出席するかどうかを相談する相手もいなかったため気まぐれで出席し始めたのだが、毎回それなりに為になる
話を聞かせてもらってる。しかしあのキリキリとした雰囲気には参っていた。悪い感じはしないのだが淡々とし
すぎているのだ。確かにジョウホウヲコウカンするのだからこれで合っているかも知れないが、もっとくだけて
さえくれればいいのに、と感じていたのだ。どうにかして次は欠席しようと思うのだが、結局今日も来てしまっ
ている。「あなたは交換する有益な情報など持ち合わせていないのだから来ないでくれ」と言ってくれたらどん
なに楽だろうか。
 喫茶店に着き駐車場に車を停めると、外側に付いた階段を上がり二階の店内に入った。店員に待ち合わせだと
伝え、店内を見渡す。裕子はまだ来ていなかった。そして予想したとおり、今日も他の母親たちも誰一人として
来てはいなかった。「やっぱり、か。」
272無題:3/3(お題>>198お茶会) ◆PndriWvbA2 :2011/02/09(水) 00:50:59.46 ID:MqMyAQm/0
 典子は一番奥の、窓際の席で待っていた。覗き込んだホットコーヒーに自分の顔が映っている。
 何の因果か、主催者以外誰も来ない母親会の、記念すべき第一回に出席してしまった。そしてそれは今日の第
四回まで恒例になってしまっている。きっと自分が来なければ、誰も来ない。裕子もそれは分かっているような
気がしていた。そう思うとどうしても欠席の返事を出すことが出来ないのだ。それとも典子以外の人が来ること
を期待しているのだろうか。あとで聞いた話では一年生の時もあったそうだ。教育熱心な数人が集まってあれこ
れ議論を交わしていたらしい。だが今年のクラスの母親は皆おっとりしているのだ。誰も来ないのはそんな噂の
せいで敬遠されたに違いなかった。
 「うん。もう止めにしませんかって言ってみよう。きっとそれがお互いにとっていい筈だ。」
 二人きりのこの会に終止符を打つ決心を典子はした。そう決めるとすっと肩の荷が下りた気分になった。
 「お待たせしてごめんなさい」と、ほどなくしてやってきた裕子の姿に典子は驚いた。いつものスーツ姿では
なかったのだ。暖色のニットにジーンズというラフな格好だった。
 「ああやっぱり今日もですね。」そう言って向かいに座った裕子の顔はにこやかで、すっきりしている。二秒
ほどだろうか、思いもよらない表情に典子は見とれてしまった。改めてみると優しい顔つきをしていることに気
付いた。ようやく返事を返す。「今日は眼鏡じゃないんですか」と。
 「あれ、伊達眼鏡なんです。なんだか疲れちゃって。今日もきっと典子さんしか来ないだろうなって思って普
段着で来てみました。」
 裕子は笑顔で、どこか照れくさそうに見えた。同時に下の名前を知っていたのかと、不思議な感動を典子は覚
えた。そしてこの人もどこにでもいる同じくらいの歳の母親なんだと思った。
 「実は、うちは他の皆さんと違って無理して私立に入れたんです。だから去年は他の方が主催の母親会に参加
してどうにか居場所を作っていたんです。ついていくのに必死でした。今年のクラスは皆さん優しそうで。ちょっ
と無理があったかな。」
 そう告白する裕子は楽になった様子ではにかんでいた。典子が「うちもなんですよ」と話始めると、これまで
の張り詰めた雰囲気が嘘のように解け、二人は時間を忘れ話し込んだ。家庭のこと、これまでの恋愛のこと、聴
く音楽、子供の頃流行ったこと。歳が近いだけあって話題には尽きなかった。そして身に纏った鎧を脱ぎ捨てた
裕子はまるで旧友の様に見えた。
 それから小一時間ほど経ち、子供の勉強の話題になった。典子は背を伸ばし、わざと声を正してあのことを自
慢してみた。
 「うちの千恵、今日の国語のテスト満点だったんですよ。」
 「あら、うちの和樹も算数満点だったのよ。」裕子はあの通る声を作り、どちらからともなく二人は笑い合った。
 来週もここで二人きりの母親会が開かれているのだろう。
273以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:51:54.96 ID:MqMyAQm/0
以上です (了)付け忘れた
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:58:36.76 ID:7HrB5q310
もしかして今までに自分の作品に投票した人っていたりするのかな?
例えば2作品書いて、投票するときにそれぞれもう片方に入れるみたいな。
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 01:01:08.12 ID:zaGewhbL0
>>274
一人だけいたよ いつだっけ、相当前だけど、堂々と自分の酉で自分に投票してた 投票宣言までしてね
276以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 01:02:06.12 ID:7HrB5q310
へ〜いたんだw
277以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 01:03:24.49 ID:MqMyAQm/0
>>265みたいな感じだったら別にいいんじゃない?
ID変えたりしてやるのはうそ臭いけど
でも俺だったら自分に投票するくらいだったら投票なしにするかなwwwwww
278通常作感想:2011/02/09(水) 01:05:22.69 ID:UkO04XPB0
>>270
大体において品評会よりも通常作の方が出来がいい、ということは『モチベーション3.0』でも示唆されているこったな、と。
折角自分用フォーマットを作ったのでその形式で。
---------------
通常作 無題(お題:お茶会) ◆PndriWvbA2氏
(文章:4.0 良い)
 過不足の無い良い文章。台詞回しも自然。
(構成:4.5 良い)
 テストの伏線にしびれた。場面転換のバランスがいい。
(内容:4.5 良い)
 物凄く普通の話、なのだけれどこうムトウさんが授業参観で意を決して皆を誘ったと思うと萌えるし、
 シンプルな内容にキャラクター各々の背景が透けて見える部分に文章力の確かさを感じる。
---------------
つか、こういう家族ものに弱すぎるんだ俺は。
279以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 01:18:17.56 ID:GHrxyZRt0
お題発表マダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
280全館 ◆D8MoDpzBRE :2011/02/09(水) 01:24:26.86 ID:zaGewhbL0
 投票欄では「一番小説っぽい」ものに投票したみたいに言いましたが、そもそも近代以降における小説なんてとことんフリー
スタイルの極みですし、そういう意味では小説っぽいも小説っぽくないもないような気がします。しかしながら、小説には小説と
して期待された枠のようなものが存在するのも事実ですし、用もなくたびたびそれらを逸脱するような作品はやはり何かしら読
み手にストレスを与えるというのは見過ごせないことです。小説の完成度を云々するファクターには当然、内容もさることながら
そういった「小説らしさ」が要求されるのも仕方がないところと言えそうです。
 つまり何が言いたいかというと、別にありがちな叙述形式の小説で構いませんのでまずはその土俵で勝負してくれたら読み
やすいだろうにと思うのです。それだけです。小説っぽく書けないからといって戯曲や脚本調に逃げた作品が面白かったら悔
しいとか、そういう気持ちがないでもありません。

No.01 コタツとみかんと怪盗 ◆OV.4ugEbKk氏
 怪盗になるべく空き巣を働き、競合他者に一ひねりされるというお話。カリオストロの城が名作だというのには同意。ただし
パロディはもっと上手にやらないと白けてしまうという。

No.02 ラストノート ◆D8MoDpzBRE氏
 女性読者の感想が聞きたい。

No.03 ミカンズのテーマ ◆ihO9dxzf9I氏
 オチなし、山梨の見本のような展開も、筆力は今回の中では二馬身くらいリード。小説を漫然と読むのも時には必要で、
緊張感・クライマックスといったものが勢揃いした作品を読んだ時はそれはそれで疲れるのだ。そしてそこら辺を狙ったか、
内容は雰囲気を重視していて、会話は緩やかなまとまりを保ちつつもとりとめがない。芸術家肌の中川が発する、往年の
長嶋茂雄的トークにほっこりする作品。

No.04 ある冬の夜に ◆IPIieSiFsA氏
 真面目な顔で悪ふざけをするなら、もっと頑張って欲しかった。堅めな文章でひどいジョークを飛ばすというスタイルは昔
から割とあって、例えば第63回のNo.57や、第119回のNo.06など、度肝を抜かされる作品もある。個人的に僕が気に入って
いるのは第104回のNo.07で、これぞ筆力の無駄遣いを全力でやっている。そういうものに比べればいかにも物足りなく思えた。

No.05 石柱、雲、その他 ◆p4MI6fJnv2氏
 行き当たりばったりで書かれたとしか思えない構成。前半の行動や描写がストーリーに全然関わってない。
281全館 ◆D8MoDpzBRE :2011/02/09(水) 01:25:02.21 ID:zaGewhbL0
No.06 彼女と鍋と僕のなんてことない話 ◆Tf1WgBAu9U氏
 「そう。じゃあ、あたしは二十四だね」ってのは明らかに女の子のジョークです。真に受けないように。
 人間関係の機微を描写した作品は、今回はこれだけ。機微っていっても、都合のいいときに鍋と称してドッキングする
だけの関係だけれど。地の文を省いたことで醸し出される、行間から察しろよオーラがひどい。しかもそのオーラが有効
に働くと面白い作品になりそうなのでずるい。

No.07 雪と彼女と携帯電話 ◆oxQ.jXqnMY氏
 雪女ってそんなロマンチックな話だったんだ、というポイントがクライマックス。色々考えた構成だったのだろうけれど、
雪女伝承があまりにロマンチックが止まらなかったため本編のエピソードが喰われてしまった。

No.08 僕とあの子と(の)雪だるま ◆XdfFerW0PE氏
 あまりに毒されていないのでなんて評価すればいいか分からないよ。

時間外No.01 むかし冬があったころ ◆TCFfG0At1w氏
 冬が消滅したという仰天設定の中でこたつを懐かしむ描写をするという渋い作品。狙い所が渋すぎて、楽しみどころが
どこにあるのか曖昧になってしまった。
282以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 01:34:19.37 ID:umo0+FMOO
>>270
文章が所々分かり辛い
『あのことを裕子さんに言ったら……(2/3:16L)』
読み返せば国語のテストの伏線だと分かるが、それにしても伏線の張り方が下手だと思う
この書き方だと「あのことってなんだ?」みたいに
混乱を招く事も有り得る、と自分は思う


『主催者以外誰も来ない母親会の、記念すべき第一回に出席してしまった(3/3:2L)』
これを読むと、典子と裕子の二人きりで母親会をするのが初めての様に読めると思うが

『そしてそれは第四回まで恒例になってしまっている』
で訳が分からなくなる
他の文章から察するに、過去の母親会でも典子と裕子の二人しか出席しなかった様だけど
その辺の情報が上手く読み取れなくて混乱してしまった


比喩の表現はなかなか良かったと思う
『ジョウホウコウカン』をカタカナにしたのも典子の心情を表現する上で良かったと思う
283以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 01:52:07.17 ID:U4kgPo410
お題が気になるが寝る
284以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 02:09:13.85 ID:vrtlOQUt0
四人もいるんだから誰か一人ぐらい早くお題発表してくれyp
285以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 02:09:30.68 ID:AfsQad1T0
286 ◆D8MoDpzBRE :2011/02/09(水) 02:16:52.17 ID:zaGewhbL0
じゃあ、文豪先生に丸投げしたの撤回してお題出します。
 
 
「僕と契約して魔法少女になってよ!」 


第254回週末品評会  『黒幕』

規則事項:6レス以内
       黒幕に関することなら何でも
       間違えて映画に関する作品を書くのとかはNG
投稿期間:2011/02/12(土) 00:00〜2011/02/13(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外になります。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2011/02/14(月) 00:00〜2011/02/15(火) 24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※

287以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 02:20:37.25 ID:pWMnO5d/0
お題入りましたー!
オダーハーシャーシター!
288以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 02:21:08.22 ID:y+pLbRti0
>>286
これって素敵な奇跡かも
289以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 02:21:50.05 ID:MqMyAQm/0
節子それ黒幕やない 銀幕や
こういう分かりやすいお題待ってました 参加するか分からないけど読みごたえありそうだ

>>278
こわいくらい褒められたぜ うれしい
>>282
おっしゃるとおり ほんと核心を矛盾が出ないように書くのは難しい
悩んだところのほころびをそのまま見抜かれました
290以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 02:38:37.72 ID:UkO04XPB0
>>286
QBか。了解。
291以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 02:57:10.23 ID:VnE2vwdKO
誰か>>119の感想をくれ
パワーがでてこないんだ
292以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 03:06:01.88 ID:zaGewhbL0
>>291
前半のセックスの描写から後半のSM趣味を自覚するにいたる描写に筋だったものがないように思われました。
ひょっとしたら、セックスで感じることは出来なくてもSMならいいとか、そういう新しい性の目覚め的なものを書こうと思ったのでしょうか。
マリリンモンローやら愛と性の同居が云々やら、引用に関しては威勢がいいですが、本編であまり活かされているような気もしませんでした。
そもそも性行為に関連した描写しかなくて人間に当たる部分の描写がないので、共感は得られにくいと思います。
293以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 03:14:27.50 ID:7v6bIokZ0
>>291
セックスの描写も、もっと生々しくしたほうがいいとも思った
男だからかもしれないが感情移入はしにくい
294以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 03:25:55.99 ID:Xb5TvFMA0
そろそろ寝るお
295以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 03:48:49.76 ID:VnE2vwdKO
確かにストーリーの意図が分からないな
自分のセックス嫌悪をどうにか消化できないかと思ってつらつら書いてたんだけど
読む人を考えないといけないよね
俺本読む時に感情移入をしたくない、それと関連があるのかは不明だけど
人間描写苦手なんだなーがんばる
ありがとう

>>293
2時間ぐらい吉本ばななに憧れてたから、オラちょっと女流っぽいんだと思うんだな
セックスを主人公が楽しくないと思ってて、流されてるのに、
あんまり描写があったら可笑しいかなと思ったんだ
つまらない授業中に変なことばっか考えてるイメージで書いてた
ありがとう
296以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 05:15:34.16 ID:VnE2vwdKO
あげ
297以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 07:39:44.38 ID:9ukTPQVj0
行き詰った時ほどだりーことはねえぜ
298 ◆ihO9dxzf9I :2011/02/09(水) 07:42:28.28 ID:716eULhP0
「いずれにせよ、ギリシャに起源を持つ美学的、もしくは文芸的な伝統が、抒情詩、
叙事詩、演劇の三ジャンルに尽きていたことは間違いない。(中略)今指摘してお
くべきは、小説が、ギリシャ=ローマの芸術的な思考に正当な起源を持ってはいな
いという事実に尽きる。つまり、小説とは、ヨーロッパ文化の歴史にとって、身分
の程もいかがわしい私生児であり孤児なのだといってよい」
                                     蓮實重彦

「(小説の執筆を「森」、これまでの小説を「地図」と喩えた上で)森はつねに変
化し続けている。地図を鵜呑みにした時点で、あなたは『小説とは何か?』という
問いを忘れているのだから、もうすでにあなたが書くものが小説になる資格は奪わ
れている。あなたはあなたの森の地図を自分で作るしかない」
                                     保坂和志


「(小説は一度死んだ形式だ、との意見に)君はdieとdeadを間違えたんだよ」
                                     古井由吉

第254回週末品評会  『小説とは何か?』


規則事項:6レス以内
     答えは不要。そのかわり、『小説とは何か?』とひたすら考えながら執筆すること。

投稿期間:2011/02/12(土) 00:00〜2011/02/13(日) 23:30
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※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
299 ◆ihO9dxzf9I :2011/02/09(水) 07:43:11.26 ID:716eULhP0
キャラ的には同時優勝なんて糞食らえだと言うべきなのだろうが、フリがあったのと、首を食われて
ぷらん、となりそうで怖かったからお題を出した。
それにしても、どうして悪文では駄目なのだろう。小説なのに。
300ちょっと訂正 ◆ihO9dxzf9I :2011/02/09(水) 07:50:26.16 ID:716eULhP0
「いずれにせよ、ギリシャに起源を持つ美学的、もしくは文芸的な伝統が、抒情詩、
叙事詩、演劇の三ジャンルに尽きていたことは間違いない。(中略)今指摘してお
くべきは、小説が、ギリシャ=ローマの芸術的な思考に正当な起源を持ってはいな
いという事実に尽きる。つまり、小説とは、ヨーロッパ文化の歴史にとって、身分
の程もいかがわしい私生児であり孤児なのだといってよい」
                                         蓮實重彦

「(小説を「森」、これまでの小説を「地図」と喩えた上で)森はつねに変化し続
けている。地図を鵜呑みにした時点で、あなたは『小説とは何か?』という問いを
忘れているのだから、もうすでにあなたが書くものが小説になる資格は奪われてい
る。あなたはあなたの森の地図を自分で作るしかない」
                                         保坂和志

「(小説は一度死んだ形式だ、との意見に)君はdieとdeadを間違えたんだよ」
                                         古井由吉

第254回週末品評会  『小説とは何か?』


規則事項:6レス以内
     答えは不要。そのかわり、『小説とは何か?』とひたすら考えながら執筆すること。

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301以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 07:57:43.18 ID:mB1s9butO
次回の品評会は4題だって!?
カオスな予感!
302以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 07:57:56.81 ID:9ukTPQVj0
あんた昔Vrなんちゃらだった人か?
303以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 10:09:43.75 ID:QOQ3L3Wz0
ほしゅお
304以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 10:53:46.97 ID:VnE2vwdKO
305以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 11:41:36.77 ID:QOQ3L3Wz0
306以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 12:31:27.93 ID:9ukTPQVj0
途方も無い
307以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 12:57:50.89 ID:MqMyAQm/0
ほしゅ
お題ください
308以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 13:00:30.19 ID:bgb9noKk0
リストカット
309以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 13:01:38.23 ID:MqMyAQm/0
把握
310以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 15:01:19.31 ID:h9vVI0FwO
騎羅星
311以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 16:37:09.91 ID:h9vVI0FwO
×騎→○綺
312以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 17:17:22.47 ID:bgb9noKk0
保守でゲソ
313以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 17:18:52.24 ID:If9kyS53O
未だに小説をケータイのメールかパソコンのメモでしか書いた事がねえから、
ちょっとその辺のフリーソフト落として書いてみるテストも兼ねて

お題くれ
314以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 17:22:54.31 ID:bgb9noKk0
綻び


ほころ・びる【綻びる】
1 縫い目などがほどける。「袖口が―・びる」
2 花の蕾(つぼみ)が少し開く。咲きかける。「梅が―・びる」
3 表情がやわらぐ。笑顔になる。「思わず顔が―・びる」
4 隠していた事柄や気持ちが隠しきれずに外へ現れる。
「いかならむをりにか、その御心ばへ―・ぶべからむと」〈源・若菜上〉
5 鳥が鳴く。さえずる。
「かすみだに月と光とをへだてずはねぐらの鳥も―・びなまし」〈源・梅枝〉
・ほころび【綻び】
1 ほころびること。また、その部分。「―を縫う」
2 几帳(きちょう)のかたびらの下の方などの、わざと縫い合わせてない部分。
「几帳のかたびらの―より、御髪をかき出だし給へるが」〈源・手習〉
315以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 17:45:17.43 ID:MqMyAQm/0
もしかして>>289での使い方なんか変だった?単に>>313へのお題かな

>>313
このスレに投下するやつはサクラエディタで書くと便利
全角50文字で折り返すように設定→書き終わったら「折り返し位置に改行をつけてコピー」選んで投下
→うめえ
316今更ながら全館:2011/02/09(水) 18:02:10.20 ID:8JkLNeYk0
No.01 コタツとみかんと怪盗 ◆OV.4ugEbKk氏
しょっぱなから良作。
セリフ回しのセンスが今ひとつなのが惜しまれるがオチは大変綺麗に決めやがったなこの野郎

No.02 ラストノート ◆D8MoDpzBRE氏
文章力高くてスカウターぶっ壊れた。
自分が苦手な動きが少ない作品にも関わらず引き込まれたよ。

No.03 ミカンズのテーマ ◆ihO9dxzf9I氏
一文一文が冗長でテンポを損なわせている感じ。
あと無駄にキャラ数が多く、名前も汎用性の高いものばかりだったため、途中でごっちゃになってイライラした。

No.04 ある冬の夜に ◆IPIieSiFsA
その時、僕の心になんとも蒼い風が吹き込んだのです――

No.05 石柱、雲、その他 ◆p4MI6fJnv2氏
オチを用意しないというオチは好きじゃないけど、これはなんだか良かった
心の消臭力
317以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 18:03:08.65 ID:bgb9noKk0
そこまでいちいち見てない
318全館終わり:2011/02/09(水) 18:03:30.00 ID:8JkLNeYk0

No.06 彼女と鍋と僕のなんてことない話 ◆Tf1WgBAu9U氏
セリフだけで動作を想像させちゃうのは凄いとオモタ
そっちの道を極めてみてくれ

No.07 雪と彼女と携帯電話 ◆oxQ.jXqnMY氏
キャラ良し、言葉回し良し、オチ最高。
オチの脱力っぷりは素晴らしいね。あれがなかったらなかったでいいんだろうけど、自分はあったほうがいいと思う。

No.08 僕とあの子と(の)雪だるま ◆XdfFerW0PE氏
薄っぺら。ただただ薄っぺら。

時間外No.01 むかし冬があったころ ◆TCFfG0At1w氏
主人公のキャラが好きだわ
この馬鹿っぽさが
うん、癒された
319以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 18:30:45.84 ID:/vLotls00
おれはもうふたつのおだいをまっている
320以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 19:42:07.30 ID:h9vVI0FwO

インスタント
321以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 20:20:43.16 ID:Y1FMgcvG0
>>320
品評会のお題だった。ごめん。
322以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 21:00:25.76 ID:LK06nFV+0
お題 くれ
323以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 21:15:36.22 ID:Y1FMgcvG0
>>322
残業
324以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 21:29:16.37 ID:x6f8PCnM0
三年ぶりです
お題暮れ
325以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 21:30:30.46 ID:VnE2vwdKO
>>324
326以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 22:14:56.94 ID:So76knjv0
お題ちょうらい
327以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 22:15:19.30 ID:OUJr0nst0
>>326
雨上がり
328以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 22:15:57.59 ID:rHPyxTVW0
残りの優勝者はお題発表しないのかな
329全館 1/2:2011/02/09(水) 22:34:11.44 ID:+9IdaFzd0
No.01 コタツとみかんと怪盗 ◆OV.4ugEbKk氏
主人公と男のやり取りが面白い。
特に男のキャラが良かった。
主人公の半端な覚悟をとっさに見抜き、更生を促した後はきっちりお金を盗んでいくというのが洒落てていいね。
ただ、文章内の突っ込み所が多いし前後の文章のつながりが拙いなあ。
1レス目の3行目から6行目の文章に必要性があるのか疑問。削れるんじゃね?
これはあくまで俺の想像でしかないんだけど、自分自身が描写したい場面を早く書きたいがために、それまでの展開を適当に書いてしまってるのでは?
いや、適当という言葉は違うな。気合が入らないと言った方が正しいか。
そしてもし描きたい場面を先に書く書き方をしていたら、必死にそこに至るまでの展開を考えろ。
想像力をフルに働かせて、どうすれば描写した場面まで自然に話を進められるか。
こればっかりは、数をこなさないと身に着かないと思う。だからがむしゃらに!

No.02 ラストノート ◆D8MoDpzBRE氏
緊張感が半端ないなあ。まあネット上の知り合いと初めてリアルで会うんだからそりゃ緊張するわな。
うひょ〜探ってる、探ってる。ハラハラするわあ。
こういう描写はいいね、見ていてドキドキする。
んんっ?あー、そっちの方向に行くのか。まあいいや、どれどれ……
おお深沢さん普通に言い切ったな。さあ、主人公はどうする?
ありゃ、納得しちゃった。まあ、自身が納得してるならそれでいいや。
えっとね、説明が多くてちょっとくどい。3レス目二人目の彼女との下りは丸々削れるはず。
で、削った分を主人公の本音うんぬん〜の表現に割くべきだったと思った。

No.03 ミカンズのテーマ ◆ihO9dxzf9I氏
主人公、年齢の割に枯れてるなあという印象しか残らなかった。
文章内の情報が多すぎて何が何やら訳が分からなくなってしまったので、内容についてはノ−コメント。
とにかく頭の中がゴチャゴチャしてしまう。読者に優しくない文章だ。
読みやすいような工夫が欲しい。
330全館 2/2:2011/02/09(水) 22:34:53.76 ID:+9IdaFzd0
No.04 ある冬の夜に ◆IPIieSiFsA
くだらない、けど面白い。
短く纏まっているのも良かったし、お互い良い変態紳士っぷりだった。

No.05 石柱、雲、その他 ◆p4MI6fJnv2氏
ごめん、訳が分からない。ひょっとして雰囲気小説?

No.06 彼女と鍋と僕のなんてことない話 ◆Tf1WgBAu9U氏
ありゃ?後半丸々ぜーんぶ会話文か。まあいいけど。
しっかし、どっちが喋ってるか分かり辛いな。4レス目なんか特に。
もうちょっとはっきり口調に違いを出すべきだったかな。
にしても本当になんてことない話だ。

No.07 雪と彼女と携帯電話 ◆oxQ.jXqnMY氏
6レス目ラスト2行までは作品の世界観に浸って楽しめたよー。
ユキさんかわいいね、見てるこっちもほんわか和めた。
それだけに、最後の携帯電話オチで壮大な肩透かしを食らってしまったぜ。
もっと何かいい〆はなかったのかと言いたくなった。おいおいおいおい。

No.08 僕とあの子と(の)雪だるま ◆XdfFerW0PE氏
これも4レス目の途中でどっちが喋ってるか分かり辛くなった。区別するための工夫が欲しかったなあ。
けど、うん。爽やかな青春を、ありがとう。

時間外は省略します。ごめんなさい。
331以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 22:35:35.11 ID:+9IdaFzd0
以上ですー
332魚 1/3:2011/02/09(水) 22:37:25.18 ID:x6f8PCnM0
「よーっし、また来た!」
未だ一匹も釣り上げられない俺を尻目に、オヤジがまた魚をかける。
羨ましい、だがまあ、腕の話だ。仕方がない。それはそうと、俺は視線を外して彼女を見た。
「かわいそうに・・・・・・」


今日は良い日だ。空はひたすら青く、海も凪いでいる。
久しぶりに釣り船に乗る気になったのは、別に理由なんてない。強いて言えば、天気がいいからだろうか。
「冬だからな・・・・・・」
やっぱり鰤でしょう、寒鰤。
俺は愛用のタックルを準備して、雑誌で昼からでも乗れる船を捜した。
釣りをする人も最近は減っているらしく、昼間から船を出すところも多い。労せずして船は見つかった。
嬉々としてタックルを担いで港へ行く。
「えーと、第七福竜丸、第七福竜丸、っと・・・・・・」

あった。
「船長さんですか?
 予約した池波ですけど」
「あっ、どうも船長です」
「あれっ?
 今日は僕だけかな?」
「いやあ、あと二人来ますよ」

二人か・・・・・・。やっぱり不景気なんだな。ま、楽しくやろう。
船長と話しながら二人を待っていると、まず男が現れた。
「あ、池永です」
「常連さんでね」
船長はそう紹介してくれた。
程なくして最後の一人が現れた。黒髪ロングの良い女だ。
333魚 2/3:2011/02/09(水) 22:38:08.19 ID:x6f8PCnM0
「あの、池上です」
「なんだかみんな似たような名前だな・・・・・・」
男三人は声を上げて笑ったが、彼女はきょとんとしている。自己紹介をしないとな。

自己紹介が終わったところで、彼女はやっと、ははぁと合点が言った様子だ。
「じゃ、いきましょうか。今日は沖も静かみたいですよ」
船に乗り込むと、オヤジは操舵室で船長と話している。チャンスじゃないか。
「あの、釣りはお好きなんで?」
俺はそう彼女に質問した。
「えっと・・・・・・池永さんでしたっけ」
「池波です」
「あはは・・・すいません。えっと、釣りは初めてなんです」
「いきなり鰤ですか? すごいな」
「昨日のテレビで鰤釣りやってて・・・・・・」
「なるほどね」
ちょっとミーハーなのだろうか?
「しかし、道具までそろえちゃって。思い切りましたね。船は大丈夫なの?」
「フェリーは大丈夫でしたけど・・・・・・」
会話は続く。
「鰤っておおきいんですよ。釣り上げるのは大変だけど、釣り上げたら感動もんですよ」
「そ、そうですか・・・・・・」
「僕、久しぶりで・・・・・・あ、洒落じゃないんですけど」
「そ、そ、そうですか・・・・・・」
「釣れるか自信ないなあ。もし池上さんが釣れたらお裾分けしてくださいよ」
「そ、そそそ。そ、そうですね・・・・・・ぅっぷ」
「?」

彼女は立ち上がり、船尾へ走った。凪いでるとはいえ、揺れる船上をきれいに走ると、そのまま嘔吐した。
「だ、大丈夫?」
334魚 3/4:2011/02/09(水) 22:40:28.17 ID:x6f8PCnM0
俺は追いかけてスポーツドリンクを取り出し彼女へ渡すと、汚れのついた服や、船体を掃除した。
「す、すいません」
「どうってことないよ」
俺は慣れているし、初心者なら仕方がない。
年寄り二人はこちらを操舵室から笑いながら見ている。
「ポイントについたら楽になるから、もうすこし我慢しな」
他に言いようがない。

俺とオヤジはポイントへつくと準備を始め、早速ジギングの開始だ。
「ねえさん、大丈夫かい」
船長は彼女の代わりに準備をしている。
「楽になったら教えてくれよ。教えるからさ」
船長は魚群探知機を見に行った。
「おーっと船長、必要ないぜ、フィィイイッシュ!オン!!」
オヤジだ!
負けられない、彼女にいいところを見せたいのだ!
とはいえ、タモを準備してオヤジを支援するのがこの場のマナー。
「おおっと、こりゃあ大きい!」
釣り上げたのは平目だった。すごい・・・・・・。
「はは、タナが下過ぎたぜ」
「旦那はわざとやってるのさ」
年寄り二人はいい気なもんだ。
「おっと、ねえちゃん、釣り上げた魚のほうが良い目してるぜ。大丈夫か?」
「死んだ魚みてえな、ってよく言ったもんだな!」
「金目の煮付みたいな目してやがる」
「ほほーっ、うまそうじゃないの」
なるほど、彼女は死にかけだ。

俺は必死に戦った。
けれども結果は坊主。まあ、よくあることだし恥じたりはしない。このオヤジが上手すぎるのだ。
335魚 4/4:2011/02/09(水) 22:41:09.97 ID:x6f8PCnM0
そして彼女はといえば
「あれ、もう帰るんですか? やっと楽になってきたのに・・・・・・」
のろのろと動き出した。彼女には良い所は見せられなかったが、まあいいだろう。
何度も嘔吐した彼女の吐瀉物を、なんども片付けた。まあ、慣れているし。

魚は釣れずとも、口実は出来た。
陸へ着くと、彼女に声をかけた。
「あの、さ。鰤は連れなかったけど、良い店知ってるんだ。鰤食べに行こうよ」
世話も焼いたし、無下には断れまい。
「いえ、あの、私、彼氏、いますから。っぷ」


・・・・・・。
「おう、にいちゃん」
オヤジがそっと俺の方に手を回した。
俺は何も答えず、去り行く彼女をただただ眺めていた。
「しかたねえよ、そんなもんさ」
だけど・・・・・・。
「だからよ、そんな顔するなよ。一匹やるよ」
だけど・・・・・・。
「おめえ、それこそ腐った魚みてえな目ぇしてるぜ。猫もまたいでくぜ」
だけどっ・・・・・・!

船長も近づいてきた。
「がはは!死んだつっても逃がした魚は大きかったみたいだな!」
「腐っても鯛、なんつってな!」

つまり、そういうことだ。
336:2011/02/09(水) 22:41:24.39 ID:x6f8PCnM0
おわり
337以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 23:15:39.40 ID:U4kgPo410
>>332-336
読んだ
なんだか会話多いなとか思ったり。VIP的なSSのようだ
「」の前に名前入れたらそのままSSとなるのでは?
状況描写を一行とかで軽く済ませてしまっているのがもったいない。もっと細かく捻ろうぜ
第七福竜丸といい、そういう類の言葉遊びが好きなのかね。そこからも全体の軽さを感じる
話は可もなく不可もなく。纏まってると言えるけど、特に伝わってくる主張などは無かった

総合的に見て、書き方が小説的でない。構成とかはマズイ所は特にないから、小説読んで文体の模倣から始めればいいのではないでせうか
338以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 23:29:03.47 ID:So76knjv0
お題「雨上がり」書いた。
投下します。
339お題:雨上がり 1/5 ◆IaQKphUgas :2011/02/09(水) 23:30:27.34 ID:So76knjv0
 雨が降り出した。突然のことに、彼は急いで、どこか雨宿りできないものか
と視線をぐるぐる、やぁどこにもないぞ、と適当に駆けて、やっとのこと建物
を見つけた。こんなとき田舎は辛い、何処を見渡しても田畑である。たまった
ものではない。
 見たところ、その建物、何かの店のようで、玄関には洋風客入れ看板と、の
れん、にぶく光る提灯、右手の大きな窓には、外で何か食べる為か、テーブル
と椅子がいくつか備えてある。ひどくアンバランスな印象を受ける。窓は閉ま
っており、中は見えない。だが確かに開いていることが、提灯の明かりから分
かった。
 彼は引っ越してまだしばらく、こんな店はついぞ知らない。この辺境の地に
よくぞ、店を構えたものだと感心し、店先で雨宿りするのも忍びない、これも
何かの縁だと、入店を決めた。
 なんの店がわからんが、コーヒーでもあればよかろう、と扉を押すと、ぱぁ
と光が目に入る。中はずいぶん明るい。ほぼ正方形の店内には、入って右手側
にカウンターらしきものがあり、その他はほとんどテーブルである。客は五
人。この地にしては客が多い印象だ。
「いらっしゃい」
 店主らしき人物が、カウンターから挨拶くれた。彼は会釈し、店内に軽くぐ
るりと目を回し、カウンターについた。他にカウンターには誰もいない。静か
に音楽が流れている。
 メニューを取る。コーヒーがあるらしい。ブレンドを頼み、待つ。豆を挽く
心地よい音が耳に入る。雨が屋根を打つ音が、たんたたん、と聞こえる。客が
コーヒーをすする、箸を進める音がある。音楽が鳴っている。店内の暖房も心
地よく、彼の眠気を誘った。
 まぶたが落ちかけたところで、コーヒーが渡された。
「どうも」ひとすすり、うまい。彼はコーヒーがよく分からないが、うまいこ
とは分かる。
 五、六すすりほどしたところで、雨脚が弱まってきた。屋根を叩く音が、ど
んどん間を開ける。そのうち、雨は止んだ。
 彼は、コーヒーを飲み終えたら出ようと思った。一瞬店内が暗くなる。びっ
340お題:雨上がり 2/5 ◆IaQKphUgas :2011/02/09(水) 23:31:51.40 ID:So76knjv0
くりして見ると、店主が、一部照明を落としたらしい。その代わり、大窓を開
け、外の光を入れ込む。
 雨上がりの陽が、雲間から覗き、光線を発している。逆光のその様子が、丁
度よく見える。窓から射す光は、近くの客を照らし、彼らは目を細めた。遠く
に山が、三つ、四つ連なっている。その他は平たい田んぼである。虹も出てい
るようだ。カウンターからは、窓からなる光の粒子が、よく見えた。埃が光を
うけて、きらきらと輝いているのである。今日の雨上がりは、何か美しいな、
と彼は感じた。
 彼が感心して外を眺めていると、店内がやにわに騒がしくなってきた。他の
客が、なにやらテーブルをひっつけている。見ていると、全部の客が、一つの
くっつけた、大きなテーブルに集まった。
「それじゃ、マスター、始めて良いですか」
「いいですよ田中さん」
 店主と、田中と呼ばれた女は、穏やかに微笑み合った。店主の了承を得た女
は、咳払いすると、「それでは、雨上がりの会、第百六十七回、始めます」と
片手を上げて宣言した。拍手が起こる。
 彼は、その場に硬直して事を見ている。常連同士の何か通例のようなものに
来てしまったようだ、少し居心地が悪い。
「誰か作品はありませんか。今日の雨上がり」
 女が皆に問いかける。皆うーんとうなっている。しばらくすると、一人の男
が手を挙げた。
「遠藤さん」
「はい」
 それでは、と男は佇まいを直し、ごほんとひとつ、えへんとふたつ、一言発
した。
「アフターレイン」
 他の人間が、うーむとうなりをあげる。
「一発目から、えらいのがきたな」
「いつもの遠藤さんの作風ではないな」
「いや、ぼくはいいと思う。SF的矜恃があるな」
341お題:雨上がり 3/5 ◆IaQKphUgas :2011/02/09(水) 23:32:44.99 ID:So76knjv0
「俺投下します」別の男が手を挙げた。一言発する。
「アフターレイン」
 幾人の笑い声が漏れる。
「これは面白いな」
「いや、どうだろう、作品性がちょっと」
「こういう感じで笑いを狙うのは、ちょっと飽きたかな」
 そういった調子で、その他全員計五人が、同じように一言発して、その後皆
真剣な表情になる。うなり声しか聞こえない。
 彼は店主を見た。グラスを洗っている。あまり感心がないように見える。コ
ーヒーを飲むのを忘れていた。彼はすする。残り少ない。
「よし、では皆さん、順に感想があれば」田中と呼ばれた女が、皆に言う。
「はい」誰かが手を挙げた。皆の顔を見渡し、口を開く。
「一つに雨上がりと言っても、様々な顔を見せるものであり、一筋縄ではいか
ない。雨上がりが雨上がりたるところを、まずしっかりと見据え、そこから作
品をスタートさせる。そういった姿勢が必要かなと感じました。まず遠藤さ
ん。いつもの作風ではないですね。今回は少しパンチが弱い。後半部のオクタ
ーブ上がる部分では、さらに情感を出したいところです。田辺さん。こういっ
た作風は受けるものの、飽きられやすい。ライトな作品ではなく、更にヘビー
なものに今後挑戦して貰いたい。田中さん。うん、今回も田中さんの世界が、
出ています。ただ前半の『ア』は削ってもよかったのでは。そうすれば、もっ
と聞き手が想像できる幅が広がった。次は私の作品ですが、まぁ正直手抜きで
す。本格ファンタジーをやろうと思ったのですが、どうも上手くいってないで
すね。最後、新沼さん。何がやりたかったのか、イマイチ伝わってきません。
聞き手を意識して、開くところは開け、急ぐところは急ぐ。全体的に聞き手を
意識できていない。今回は、参加人数が少なかったことから、量より質となる
かと思いましたがそんなことはなく、質も低いですね。さらに雨上がりの原点
に迫る、雨上がりたる作品を、次回には強く期待します。以上です」
 場は静かだ。また誰かが手を挙げ、同様に感想を言う。五人全員、同じ事を
するらしい。全体的に、新沼さんと言う人が、酷評されている。四人が終える
と、最後に一人残った男が、明らかに顔を赤くして、涙を溜めている。あれが
342お題:雨上がり 4/5 ◆IaQKphUgas :2011/02/09(水) 23:34:08.21 ID:So76knjv0
新沼さんに違いないと、彼は思った。見るに見かねる。
 新沼さんが、やっとのことで手をあげ、発言した。
「雨上がりとは奥が深いもので、特に発し手の意図が確実に伝わるとは言い難
いものがあります」
「なにを」
「へたくそが」
 嘲笑が漏れる。
「しかしながら」新沼さんが続ける。
「私はそんな雨上がりの中で、雨はいつかまさに止むのだと信じて、己の芸術
性を高めていきたい」
「何をいっぱしに」
「あれが芸術ってか」
 新沼さんは、どんどん顔を赤くしている。彼は、見るに耐えなく、カウンタ
ーを離れ、テーブルへ近づくと、どん、と手のひらで叩いた。全員が、びっく
りして彼を見た。
「いい加減にしたらどうです」
「何を」
「私からしたら、全員、この人と同じにしか聞こえませんでしたけどね」彼は
不適にそう言い放った。
 すると、場が一瞬、しんと静まり、すぐに騒がしくなった。口々に彼を批難
している。彼は新沼さんを見た。すると、新沼さんは最初、俯き口を閉じてい
たが、彼の視線に気付くと、近寄り、手をあげ、ふるう。新沼さんは彼をぶっ
た。
 場が再び静まる。彼が、右頬を押さえて呆然としていると、
「芸術のわからない人間に、語られたくはない」と、震える声で、新沼さんは
言った。それに呼応して、皆が彼を罵倒する。店主がやってきて、苦い顔で、
彼の肩を押した。
「何を」
「お引き取り下さい」
「私は正論を言ったまでだ」
343お題:雨上がり 5/5 ◆IaQKphUgas :2011/02/09(水) 23:35:15.50 ID:So76knjv0
「この場が嫌でしたら来なければいい」
 店主はそう言い、彼を外に出した。扉が、ばん、と閉まる。
 彼は、唖然と、しばらく扉を見つめていた。窓から客の顔が見えた、ところ
で、窓が閉まった。
 強く冷風が吹いて、先ほどまで暖房にあたっていた彼の身を、つめたくこが
した。彼は身震いし、一、二度、かぶりをふると、踵を返し、家路についた。

おはり
344以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 23:44:02.92 ID:cONMlyrp0
お題発表の途中経過(これであってる?)

◆OV.4ugEbKk氏 >>
◆D8MoDpzBRE氏 >>286
◆ihO9dxzf9I氏 >>300
◆IPIieSiFsA氏 >>

◆OV.4ugEbKk氏と◆IPIieSiFsA氏マダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
345以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 23:56:54.31 ID:gh7JIXMx0
早く残りのお題も欲しいな

!ninja
冒険の書(Lv=1,xxxP)
346以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 23:59:25.67 ID:U4kgPo410
>>339-343
読んだ
実はこれ、俺は最初読むつもりが無かったけど、三レス目からをぱっと見て気になったから読んだ
「雨上がりの会」は、何をしているのかが良くわからんかった
俺は「アフターレイン」をいろんな発音で言って、その響きを鑑賞するのかと思ったが、合ってるかね?
新沼さんのくだりは何か心に突き刺さった
これはままこのスレを象徴してるよね。そういう作品なら、俺に対しては十分に成功している
身内受けかもしれんが、設定をもっと普遍的にしてくれればかなりよくなると思う

つまりは設定を普遍的にわかりやすく書くべき。話の内容は「訴えかける所がある」点でかなり好みだった
347 ◆Dr.Smn6n2hRe :2011/02/10(木) 00:23:03.21 ID:cVWC/8e/0

        シャオ「バ、バランタリンデーって……?」



第254回週末品評会  『バレンタイン』

規則事項:6レス以内
補足:死ぬな。


投稿期間:2011/02/12(土) 00:00〜2011/02/13(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外になります。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2011/02/14(月) 00:00〜2011/02/15(火) 24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
348 ◆IPIieSiFsA :2011/02/10(木) 00:23:54.41 ID:cVWC/8e/0
ミスった


        シャオ「バ、バランタリンデーって……?」



第254回週末品評会  『バレンタイン』

規則事項:6レス以内
補足:死ぬな。


投稿期間:2011/02/12(土) 00:00〜2011/02/13(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外になります。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2011/02/14(月) 00:00〜2011/02/15(火) 24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
349転載:2011/02/10(木) 00:32:37.05 ID:u0ynbFIz0
246 名前: ◆OV.4ugEbKk [] 投稿日:11/02/10(木) 00:17:35 ID:oIuwPsCg
転載お願いします。
お題発表が転載ってなんだか切ないね。

第254回週末品評会  『色』

規則事項:6レス以内
    あなた色の作品待ってます。
    
投稿期間:2011/02/12(土) 00:00〜2011/02/13(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外になります。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2011/02/14(月) 00:00〜2011/02/15(火) 24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
350以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 01:38:44.68 ID:KEccYVYd0
さて、お題は出揃ったな? 纏めとくぞ

◆OV.4ugEbKk氏>>348   『色』
◆D8MoDpzBRE氏>>286    『黒幕』
◆ihO9dxzf9I氏>>300  『小説とは何か?』
◆IPIieSiFsA氏>>349  『バレンタイン』

果てさて今回はどれだけ盛り上がれるか……?
351以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 01:39:47.62 ID:KEccYVYd0
あれ、安価先とお題が入れ替わってるや。まあいいか
352以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 01:52:50.49 ID:X3yFPbaa0
>>350
間違ってるぞ
353以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 01:58:05.09 ID:KEccYVYd0
じゃあ一応訂正

◆OV.4ugEbKk氏>>349   『色』
◆D8MoDpzBRE氏>>286 『黒幕』
◆ihO9dxzf9I氏>>300    『小説とは何か?』
◆IPIieSiFsA氏>>348    『バレンタイン』
          全て6レス以内
354以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 02:34:55.40 ID:tHrZlaiK0
休日もあるし
4作品書いてみようかと思ったわけですよ
でも一つおかしいお題があるじゃないですか
今年は中止になったはずの
355以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 03:43:21.16 ID:xjkMYXDR0
356以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 06:05:54.25 ID:mjipWpdeO
ほし
357以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 08:39:43.01 ID:cVWC/8e/0
行ってくるます
358以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 08:58:43.05 ID:a3//wZCb0
シャオリン可愛かったなあ
359以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 12:01:39.54 ID:PkbDdmhOO
お前ら今年は誰にチョコ渡すの?
360以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 13:52:14.14 ID:KEcvP9eT0
ボビーがどうしたって?
361以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 14:02:14.01 ID:mjipWpdeO
今年もまたトラックをレンタルしないと…
362以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 14:57:24.87 ID:KEccYVYd0
ヴァレンタインとか
聖人バレンタインさんは関係ないだろ! 商業主義が云々
363以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 15:07:44.55 ID:PkbDdmhOO
前から思ってたけど楽しむためのイベントでしかないバレンタインが商業主義的なものでもなにも困らないのになんでそんな批判されるんだろう
アニメとかのほうがよっぽど商業主義的じゃね?
364以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 15:12:45.60 ID:32vuM370O
>>363
僻んでんだよ、言わせんなよ恥ずかしい
365以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 15:33:17.43 ID:mjipWpdeO
チョコを受け取った瞬間にホワイトデーが強制イベント化され財布が薄くなるのがいまだ納得いかない
366以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 15:55:56.33 ID:PkbDdmhOO
三倍返しとか律儀にする必要はないよ
同じくらいの金額でおK

いっそ手作りで返してもよいのよ
367以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 16:02:07.66 ID:j6fOx/u80
通常作書き終わらない
気分転換に通常作の感想かきます

>>9 ライフライン
面白かったです。>>28が多分根本にあるネタなんだろうなぁと推測。
>世界の終わりが始まっていた。
この一行でなぜかテンション上がりました。主人公の不可解な行動が謎でした。
ライフラインパックを見て、家が下埋まっていると考えたのかなぁ。
突然のサイコロ出現がどんな意味を持つのかわからなかったのが、悔しいです。
いろいろと考え込むのが好きなので面白く読めました。

>>119-120 ぼくらの楽しいセックス
非常に読みやすかったですが、なんだか良くわからなかったので自分なりにまとめてみます。
エッチすることで愛を得ようとする(心の寂しい)女が、SM通いをするようになる。
といったアウトライン。でもSMに目覚めた心理が、わかりませんでした。以下推測。
前:寝ることが愛であると思っていた。だが、寝ることで愛を得ることは叶わなかった
後:寝ることで愛を得るのではなく、愛する(楽しむ)ことによって愛を得る。(女自身が認める心理変化)
前:自分の価値が地に落ちている。>ハマチと呼ばれた。
後:男に暴力を振るうことで、自分の価値を認めることができた。(女が気付かない心理変化)
この二つなのかなぁと予想を立てました。どうでしょうか。違ったらごめんなさい。

>>270-272 無題(お題 お茶会)
書きなれてるなぁと感心しました。やっぱり表現力豊かだと思いました。
ただ、テンポが少し悪いと感じました。映画の話もそうだったけれど、すらっと読めなかったの
はなんでだろう。
心理描写文と説明文が交互に挟まっているような気がして、落ち着いて読めませんでした。そういうふうに思うのは、きっと自分の読む力がないせいかもしれないです。
368以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 16:20:11.02 ID:j6fOx/u80
>>367のつづき

>>332-335 魚
たぶん自分のテンポや親切心から改行をしているのだと思うけど、改行が多すぎて
場面転換の改行なのか、そうでないのか考えてしまいました。
でも無駄のない文体が好み。セリフ回しとかノリも良かったです。
もう少し説明入れると感じ方が違ったのかもしれないでした。

>>339-343 お題:雨上がり ◆IaQKphUgasさん
(いい意味で)滑稽さがよく出ていて、とても面白く読めました。きっと狙ってやったんだと思います。
どうでもいいことですが、ガヤの「」を一行につなげると、もっとスマートに見えたかもしれません。

通常作感想を書いている人たちのレスが、頷くほど的確なものばっかりだったから
感想書いた意味ないと感じました。
通常作かいてきま。
369以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 17:04:13.61 ID:KEcvP9eT0
> 通常作感想を書いている人たちのレスが、頷くほど的確なものばっかりだったから
> 感想書いた意味ないと感じました。

みんな読む方が得意だからな
370以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 17:55:58.60 ID:KEccYVYd0
言うが易し、行うが難しと昔から言うじゃないか
行う方を練習するのがこのスレさ
371以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 18:16:11.02 ID:U/HkAjZeO
感想書く方が難しくね?
372以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 18:48:00.67 ID:UeYmok0j0
感想は作者をなるべく傷つけないようにと思うから書けなくなる
373以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 19:05:53.40 ID:skxFN7DR0
>>372
おれはあえて厳しく書くのが愛だと思う
374以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 19:15:07.51 ID:cVWC/8e/0
感想が厳しくなるのって、多くは文章を書く際のルール』の欠如だったり、
誤字や脱字だったりの、校正をしていないというものだと思うのです。
だからその辺りは厳しくしたらいいと思うのよ。

話そのものに関しては厳しくなりようもないだろうし。
面白くなければ面白くない。面白ければ面白い。だけだからね。
構成的なところは参考意見だし。

だから頑張ろうぜ!
375以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 20:20:16.76 ID:cVWC/8e/0
……すみませんでした。
376以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 20:43:02.64 ID:tHrZlaiK0
校正ルールとかってあまりおもしろさに関係ない気がするから
俺はほとんど指摘しないな
商業作品では校正は校正の人がやる仕事で作家の仕事じゃないし
なんかその作品だけで次はあまり関係ないみたいな感じもするので
もっと話の筋とか構造みたいなことの感想を言うようにしてる
377以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 20:47:43.23 ID:cVWC/8e/0
ひどい誤字とか単語の変な使い方とか出てきたらおもしろさ半減しない?
というか、俺の場合は読む気が失せる。
校正といったから話が大きくなったけど、普通の見直しレベルの話。
378転載:2011/02/10(木) 20:52:19.26 ID:UeYmok0j0
247 名前: ◆5GkjU9JaiQ [sage] 投稿日:11/02/10(木) 13:18:24 ID:EV+LNdzK [1/4]
前々回の全館。略して前官
No.01 君の知らない物語◇0KF/UBMvVE氏
こーいうの悲しいよね。結局自分がいないことによってうまくまわっていったっての。
描写が淡々としてるから多分展開で読ませようとしたのだろうけど、
前述の共感以外に惹かれるものが特になかった。
No.02 閃光◆7C6LTZ08z6氏
全く分からんかった……。筋は追えるのだけど、描写や人物の関係性の意図が掴めない。
ただ、主人公が男に対して言った言葉だけはなんとなく汲み取れた気がした。
留まることしかできないから、どのような形であれ閉塞した状況から脱せた人に
どうこう言われたくない…っていうと違うな。むぅ。
No.03 君がいない夏◇H9/xqIwyOc氏
すべてを割り切った後だから、と考えると主人公の語り口が余計に物悲しい。
けど結びはあまり好きじゃないな。それがなければ完全にやおいになってしまうだけに、
どうしろとは言い難いんだけどさ。
No.04 MACABRE-揚羽ノ羽ノ夢ハ蛹-◇Lq1ieHiNSw氏
歌詞に対して素直だな、と思った。グロだけかと思いきや案外まともでホッとする。
現状を悲しむだけでない主人公は好きです。ただ、最後で語りすぎかなぁ、とも思ったけど。
関係ないけどDir en greyってすごい歌詞書くよね。昔友人に聴かされてドン引きした。
No.05 Knockin' on Heaven's Door◇zS3MCsRvy2氏
クラプトンのカヴァーしか聴いたことなかった。この曲はすごく好き。
正直な話、自分が投下しようと思った直後にこの話とNo.6が投下されたから、
この回は参加するかすげー迷ったんだよね。勝ち目が全く見えなかった。
最初は単純に会話とか面白かったんだけど、曲を聴きながらだとホロリとくる。不思議。
No.06 basket case◇r8uKuXgh4M氏
うめぇよ、クソッタレ。往年のシュール氏を髣髴とさせられた。
No.07 Hello Tomorrow◆Mulb7NIk.Q氏
うわっ。むっちゃロケーション被ってるやんけ。これも読んでたら完全に投下しなかったな、俺。
手紙に書かなくても絶対覚えてるんだろうけど、残しておきたいその気持ちはすげぇ分かる。思春期。
でもって、読んだ後に何も残らんかったのが残念。
379転載2:2011/02/10(木) 20:53:10.68 ID:UeYmok0j0
248 名前: ◆5GkjU9JaiQ [sage] 投稿日:11/02/10(木) 13:20:02 ID:EV+LNdzK [2/4]
No.08 天国と地獄◇ID:PX9QXkO70
原典と微妙に違うんね。運動会。
No.09 夢じゃない◇p4MI6fJnv2氏
なぬぅ。そんなかい。やけに淡々としてたから退屈だなぁとおもってたら。
けど、なんか他にあるとよかったなぁ。それだけだとぜんぜん物足りない。
関係ないけどPV好きだな。
No.10 CHE.R.RY◇Qvzaeu.IrQ氏
あー、なんかこの歌頭に残るよね。なんでだろ。
すごい曲に対して誠実に書いてるから、芸もへったくれもなくて、
そのまっすぐさがすごく好き。ただ、感想に困る。
No.11 カラクリアゲハ◇FcModpyaRc氏
ボーカロイドの曲ってはじめて聴いたけどこれはちょっとしんどいなぁ。うーん……。
これも歌詞に忠実で、それはいいんだけど感想に(ry
No.12 幻によろしく◇TCFfG0At1w氏
曲が見つからんかった。
話自体は俺はミスリードに引っかかったからおっ、となった。
自分を切り離すことは痛みを伴うけれど、成長には必要なことだよな、と思う。
No.13 ミラクルショッピング◇Qvzaeu.IrQ氏
脱力系音楽との相乗効果が凄過ぐる。力の抜けた笑いが止まらん。
No.14 月光値千金
この曲を知ったのはジャズファンで知られる村上春樹さんのエッセイから。
榎本健一さんの歌った、波島貞さんの歌詞を参考に書かせていただきました。多謝。
昔の洋楽に対する邦題ってハイセンスだよね。
No.15 星のくずは銀の色◇pxtUOeh2oI氏
すごく考えさせられる話だよな。全員が嘘をついていたら、それはとても悲しいことだけど。
嘘を取り除けばそこに残るのはそれぞれの思いやりだけなわけで。それが感じられればいいのかなぁ。
誠実であるっていうのはなんなんだろうね。
380転載3:2011/02/10(木) 20:54:12.34 ID:UeYmok0j0
249 名前: ◆5GkjU9JaiQ [sage] 投稿日:11/02/10(木) 13:20:38 ID:EV+LNdzK [3/4]
No.16 欠けボタンの浜◇EqtePewCZE氏
手前も人の事言えたモンじゃねぇよ。このロマンチスト野郎が。
比喩表現が詩的で味わいがあったです。世界の端っこで、うまく生きていけない人たち。
アンリアルだけど、そういうことじゃない。
No.17 かおりちゃんタイム◇HmfYvBHWkM氏
勃起した。
じゃー俺もチラ裏にするよ。


特に何も書くことがなかった。
No.18 月光◇ihO9dxzf9I氏
完全な遊戯買ったよ!次に全館するときでも感想書くね!泉鏡花は書店探し回ったけどなかった。手に入れたらこれも感想書くね!
描写硬っ!!!!がちがちすなぁ。ただそんな中で「とろとろ」という表現は好きだ。
しかしこの硬さで曲の描写はしんどいなぁ。縛りプレイみたい。
イメージの固まった曲って、聴き方も構えないからわくわく感がなくなるよね。
No.19 Don't Cry◇QIrxf/4SJM氏
男の子はかっこつけてナンボ。特に女の子の前では。それは多分、いくら年をとっても変わらん。と思う。
主人公は果たしてタバコを買えたのだろうか?なんとなく印象的だけど、はっきりしたことの言えない感じ。
共感によって主人公と男の子は繋がったんだよね。
あと、返事。CDもLPも音源は残念ながら自分も持ってないけど、
ディック・ミネこと、三根徳一さんの月光値千金はダンディで趣が違って好き。
ttp://www.youtube.com/watch?v=fJN4_U9S0X0&playnext=1&list=PL69D4DD0B40014259
ただ聴いてピンと来るのはやっぱりエノケンの方。
No.20 クジラ12号◇InwGZIAUcs氏
改めて聴くといい曲だなぁ。んむぅ。
クジラ12号はぜひクジラの姿で主人と仲良くしてほしいものです。
爽やかでしつこくなく、素直に楽しめました。
381転載完:2011/02/10(木) 20:55:24.33 ID:UeYmok0j0
時間外No.01 月光◇XdfFerW0PE氏
第三楽章初めて聴いてみた。確かに激しいね。これが夜の学校で流れてたら恐怖だわ。
転のところをふつうにいなして話をする主人公にワロタ。肝据わりすぎだろww
普通に流れすぎてなんか深い意味あるのか勘繰ってしまうけど、どうなの?
時間外No.02 月のワルツ 1/5 ◇KC1zyS0wec氏
ワルツとかいいつつjazzyですな。いい曲だ。
>結婚とか就職とかでなく、
全体的に調和が取れてたのに、この一文が浮きすぎて惜しいなぁ。
あとは歌詞にちゅうじ(ry
382以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 21:02:18.63 ID:cVWC/8e/0
乙サマー
383以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 21:06:18.51 ID:KEccYVYd0
何か何時のだよって思ったww前々回の全館か
384以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 21:11:53.89 ID:p9axhRBV0
魚かいた者だが、感想ども
リベンジする

お題暮れ
385以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 21:14:55.13 ID:KEccYVYd0
>>384
脱却
386以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 21:16:13.83 ID:tHrZlaiK0
>>377
誤字とかは程度によるかな
あんまりありすぎたら確かに読む気が失せる
単語の変な使い方はものによるけど、
意図的に変に使うのはおもしろいからありかなと思う
あと最近、良く言われる誤用とかは高校生のセリフならリアルだとも取れるし
なんで結局、通して読んで、おもしろければおkだし、
つまらなければ正確だろうが間違いだろうがダメって感じだろうか

>>378
乙、おっせーw
387以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 21:36:13.21 ID:cVWC/8e/0
>>386
結局は読み手の判断ひとつだしねぇ。
確かに話が面白ければ気にならないってのはあるしね。

誤用だけに限らず、その言葉を発している人物に忠実な間違い方とかは確かにアリ、
というより、どちらかと言えばそうなるべきではあると思う。
388以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 21:48:09.15 ID:KEccYVYd0
手書きならともかく、誤字は基本的に寛容であるべきだと思うよ
一々突っ込んでたら、ワザとやってる誤字も是正されてしまうかもしれんからな

>>386
なあに、慢性的に過疎気味なこのスレだと、それでも遅くは無い方だ
一時間越しにお題が出る時とかもあるからな
389以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 22:30:05.41 ID:LlNu36ds0
390以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 22:40:08.57 ID:p9axhRBV0
脱却、投下しま
391脱却 1/3:2011/02/10(木) 22:41:30.40 ID:p9axhRBV0
日々募っていく苛立ちに俺は狂いそうだった。いや、もう狂っているのかもしれない。あるいはそう思うことに対する恐れすら俺を狂わせているのではないか。
いつだったか、妹が放った言葉が忘れられない。
くだらない、その一言が忘れられない。

俺は悩んでいた。いや、今も悩んでいるのだが、その頃は将来や夢なんかについて悩んでいた。
俺は常に本気で考えて動いてきたはずだ。しかし夢のために何ができるのか、何を犠牲にしなければならないのか考えると、ゾッとしないのが俺の常だった。
そうした気持ちを抑えながらもずっとずっと考えてきた。ただ、周りを見渡せば友人達は当然のように企業説明会に参加し、多くの企業にエントリーしていた。
これが普通なのだろう。そして俺もそれに倣った。選択肢を増やすだけだと自分に言い聞かせて、いくつかの企業の入社試験を受けた。
「あなたがわが社に入社を希望する理由は?」
そう聞かれたって、本当のことを言える筈がないじゃないか。俺は嘘をついた。何度も何度も、嘘をついた。心の歯車が狂いだしたのはいつだったか?
きっとあの奇妙なまでに青々とした空の下で親友と話した日だろう。
「俺、このまんまじゃ日本は駄目になると思うんだ」
「うん」
空の青さが痛い。
「別に政治家になろうとは思わないけどさ、何て言えば良いのかな。とにかくさ、何か石を投げてみたいんだ」
「人間って生まれ方はともかくとして死に方はある程度選べるからね」
じっと俺を見つめて友人は続ける。
「お前なら何かできるさ。一生かかると思うよ、本気ならさ」
「まあ、良い家に生まれたわけでもなく、良い大学に入ったわけでもなく、金もないからね」
交わした言葉はそれだけだ。二人は黙って空を見上げた。これからどんなことが待っていても、この見上げた空を思い出せば乗り越えられるような気がしていた。
だが、それは本当だったのか?
俺はよくそんな自問自答を繰り返す癖がいつのまにか出来てしまった。晴れた日は尚更だ。
あの頃、俺は本当に自信に満ち溢れていた。単に挫折がした事のない人間の典型的なタイプだったのだが、これからもずっと順風満帆な人生が続くと思っていたのだ。

嘘をつく事に慣れた頃、俺は上場企業の社員になる事が決まった。
あれだけ悩んでいた「何か」を探す事はそっちのけで、俺は喜んだ。親も安心してくれるし、これから何をするにしても金は必要だし、そのときがくるまで安定した環境は必要だと考えたからだ。
金をためて、じっくりと考えよう。そんな風に思っていた。
友人もそこそこ良いところに就職して、互いに喜び合った。
「俺ら、でっかくなろうな」
ふたりでそう誓ったのだ。
392脱却 2/3:2011/02/10(木) 22:42:10.55 ID:p9axhRBV0
それからの俺はまさに愚物、時間を巻き戻してああなることを阻止できるのならこの身を悪鬼羅刹に食わせても構わないと本当に思う。
給与賞与は「こんなにもらえるなら・・・」と使い込み、癖がついた。
探すべき「何か」は当然探さない。休みの日は女と酒におぼれ、平日は忙殺された。探し物があることすら忘れてしまった。
そうして無駄な数年が過ぎた。ふと鳴った携帯の着信音に何故だか驚いて、携帯を見ると友人の名前が表示されていた。
「おう、久しぶりだな」
「ああ、元気か?」
俺達は久々の会話に言葉が弾む。
「そっか、お前は立派にやってるんだな」
友人は嬉しそうだ。俺は、ガツンと後頭部を殴られて夢から覚めたような錯覚を覚えた。
「ま、まあな」
そうだ、俺は嘘に慣れてしまったのだ。
「金も溜まってきたよ」
いや、本当に慣れているのか?
鼓動が激しくなるのを自覚した俺は誤魔化す言葉を捜した。
「で、どうしたんだよ急に。なにかあったんだろう」
「ああ、俺、会社辞めてさ」
「は?」
「俺も一花咲かせようと思ってな。今まで節約節約の勉強勉強で結構大変だったんだぜ」
「へえ・・・・・・」
「会社を立ち上げるんだ」
あいつは、希望に満ちた声色で計画とその後の展望なんかを俺に話した。俺なんかに、だ。
その声は一語一句が俺の心を壊して削って引き裂いた。
「お前もどうだ?力を貸してくれないか?」
お断りだ。嘘が全部バレてしまうじゃないか。
「すまんな・・・俺は俺で考えてる事があってな、少しずつ動いてるんだ。形になったら話すよ」
今日はちょっと疲れたな、そう言葉を濁してみた。あいつは全然疑わない。
「そっか、そういうと思ってたぜ。俺もお前に負けてられんな」
「なに、先を越されたのは俺のほうだぜ。待ってろよ」
それから少し話して、別れと再会の誓いの言葉を交わして、通話を終えた。
嘘には慣れたと思っていたが、思っていただけだとそのとき自覚したのだ。
393脱却 3/3:2011/02/10(木) 22:43:16.39 ID:p9axhRBV0
巻き返しは効くのか?
圧倒的な壁と、見栄と嘘。それから、世間体。
安定と堕落が共存する生活から抜け出せるのか?
あれ?
他にやる事は?
考えなきゃいけない事は?
何も分からなくなっていた。
恐ろしく自分が矮小に見えて、空を見上げるのが怖くなった。

「お兄ちゃん、なんか最近仕事うまくいってないんだって?」
4年ぶりに会う妹はそう聞いてきた。
「まあな」
あの電話の後から調子が上がらず、失敗の続く仕事。職場に寄生するように生活していた。
堕落した生活も治らない。
「ちょっと悩みがあってさ」
俺は全部包み隠さず話した。ちょっとくらいは励まして欲しかったのだろうな。
「くだらない」
妹は髪を掻き上げた。
「大人になりなよ、もう三十路でしょ」
詰み、だなと思った。

この広い広い宇宙の中で、人類はどんなに頑張っても似たような存在を認識する事ができないからこそ、孤高の存在なのだ。
60億という数は膨大のように聞こえるが、塵のような存在の集まりにすぎない。塵はいくら寄せ集めてもきっと塵なのだ。だからこそ、孤高なのだ。
そんな人類を俺は愛す。
「純度、純度だ」
純度を、高めよう。俺は混ぜ物のような存在だ。
そうだな、それからこの悪夢から脱却するのだ。
最後に俺は、青い青い空の下にぽつんと、じわっと広がる赤い何かを観測した。

さようなら。
394以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 22:43:28.63 ID:p9axhRBV0
終わり
395以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 23:21:57.11 ID:32vuM370O
品評会書いてるか童貞どもー
396以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 23:27:01.31 ID:mjipWpdeO
ストーリーがよくわからんな
主人公や友人が何をするつもりなのか
最初は国を転覆させる話かと思ったが違うようだし
397以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 23:42:08.87 ID:PkbDdmhOO
携帯だし電車のなかだしやっと仕事終わらせて疲れ果てたけど読んだよ
冒頭から妹の言葉を引っ張った構成は良かったと思う
だけどメインテーマ今ひとつ伝わってこなかった気がします。
もう少し具体的なモノローグが欲しかったところです。

3レスめの勢いはけっこう好きかも。だけどここを映えさせるなら前半にも土壌がほしかったかもしれない。唐突な終わり方は素敵。
398以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/10(木) 23:54:41.40 ID:p9axhRBV0
感想ありがとう
短くまとめようとしたのが仇になったかな
何をしたかったとかは重要じゃなくて、社会人になって夢を忘れた自分に絶望するあたりに焦点を置きたかった
なので何をしたかったってことは敢えてほとんど分からないようにしたんだけど・・・

次からは長々と書いてもみんな読んでくれるかな
自信が無いから読みやすさとかばっかり気にしちゃうんだけど
399以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 00:21:50.27 ID:LJoHmrMr0
通常作の長編は、1レス目読んでそれから読むか決めるかな
短い方が読まれる確率が高いし、読まれた後の感想も書かれやすいのは間違いないけどね
400以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 00:54:45.79 ID:LWohSqsb0
少し早い保守
401以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 02:23:05.75 ID:skaeUDzH0
べくたん規制中にて携帯よりほしゅ
402以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 04:24:09.38 ID:KudglIKWO
おしん規制中にてry
403以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 05:11:27.07 ID:Gt//sioe0
アーハン
404以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 07:23:36.30 ID:VVJ5RFLoO
保守
405以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 07:40:53.10 ID:bi2ICO9R0
お題くれ
406以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 07:41:52.06 ID:F6WxXYCw0
>>405
407雨1 ◆P5OYvlCU0jkf :2011/02/11(金) 07:48:09.97 ID:bi2ICO9R0
2月のことだ。俺は会社帰りに新しいコートとマフラーを買った。
春になろうかという頃、寒さに耐えられなくなった。

その頃、家に帰っても、誰もいなかった。
2ヶ月前まで誰かと一緒に暮らしていた、誰か。
その誰か、は別に好きな男が出来たと言ってどこかへ行ってしまった。

携帯には律儀にメールが着た。
冬服はタンスの1番下に入っているから出すように、と。
自分はそれを出す気になれず、また中々新しい服を買う気にもなれず。
今日ようやく決心をして買ってきたという次第だ。それから女からのメールは届いていない。
408雨1 ◆P5OYvlCU0jkf :2011/02/11(金) 07:54:45.14 ID:bi2ICO9R0
「珍しいコートですね」
と次の日に同僚のYが声をかけた。

「押し入れに突っ込んできたのを出してきてね」
「嘘でしょ。新品みたい」
「わかるかい」
「わかりますね」

皺一つ、汚れ一つない薄緑色のコートは自分のもののように感じられなかった。
自分が服に合うのではない。服は自分に合ってくるものだ。
そういう時間の蓄積が、自分にもコートにも無かった。
動物園ペンギンが係員にベストを着せられたような、奇異な感じ、を自分でも感じた。

だからといって、その違和感をわざわざ指摘するほどの友人も無かった。
誰もが皆、忙しい。自分の服装が変わったところで、仕事の手を止める理由は無い。

「どうして買ったんです?」
「古いコートに飽きてね」
「似合ってますよ」
「ありがとう」

Yとは同じ仕事をすることが多く、小柄で、愛嬌があった。
自分が口を開く相手と言えばほとんどYだったような気がする。
409雨3 ◆P5OYvlCU0jkf :2011/02/11(金) 08:04:50.71 ID:bi2ICO9R0
それからしばらく経った頃、Yから食事に誘われた。
少々、洒落たフレンチで男女で行かないとサマにならないらしい。

歩いている最中に、ふと
「このコートで良いものかね。俺には似合っているかか似合ってないかよくわからないんだ」
と口にしてしまった。

「そりゃあいいじゃないですか。似合ってると思いますけど。そんなに気になりますか?」
「普段服を買わないからね。コートとなると大金だろ。選んだのも普段着ない色だから」
「落ち着きがあって、軽さがあって、私は良いと思いますよ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」

フレンチのメニューは何が書いてあるのかさっぱりわからないので
全部、店員とYに注文を任せた。

食事が終わってデザートをつつきながら
「何かありましたね?」
とYが聞いた。
「美味しいごちそうがあった」
「そういう意味じゃないです」
「おいしいデザートもある」
「新しく買った服は、あなたの趣味だと思います」
「前の服は誰の趣味なんだい」
「そりゃあ.......きっとお付き合いされてた方の趣味ですよ」
「わかるか」
「わかりますね」

自分は、その後、Yを口説いて家に連れて帰った。
Yは驚きも拒みもしなかったし、それほど強い喜びを見せたわけでもなかった。
次の日、お互い何事も無かったかのように仕事をし、そしてしばらく時間が過ぎた。
410雨4 ◆P5OYvlCU0jkf :2011/02/11(金) 08:27:21.42 ID:bi2ICO9R0
週末にYからメールが届き、会って話がしたいと言われた。
自分は車を出して彼女の家の近くまで言った。
外は雨が降っていた。天気予報では、今日は雪がふるかもしれないと言う。

車のエンジンをかけて、暖房が行き渡るまでの間、
さて詰問されるのだろうか、ただ時間を潰すことになるのだろうかと少し考えた。
自分は愛とか恋とか、そういう決心はYに対して何も無かった。
そうして前の女に未練があるかないか、と言われてもよくわからなかった。

自分は、駅前でY拾い、少しドライブをして郊外の高台に向かった。
そこでYは、どうして連絡くれないのか。遊びか。というようなことを聞いた。
自分は、返事に窮して黙った。

ラジオがバレンタインの話題を振りまいて、車の外と中は、世界が分断されていたようだった。
暗い雲から雨が降り、往来には花のように傘が開いていた。
赤、青、黒、ベージュ、ピンク、薄緑。しばらくすると雨が雪に変わり、粉雪が街を白く塗装しはじめた。

「なんで何も言わないんですか?卑怯だと思います」とYは言った。
「好きだと思う」「いい加減な返事ですね」「よくわからない」
「わたし、そういうつもりで、あなたの家に行ったわけじゃない」Yは泣き始めた。
長い付き合いで、はじめてみる涙だった。この女も泣くのか、とただぼんやり思った。
自分が木偶で、冷酷なように思った。

もしも、このまま雪が積り続いたら、車が埋まるかもしれない。
そうしたら自分も何か決心できるのだろう。でも都会の雪はそれほど深くは降らない。
雨が雪に変わるように、雪も雨になって消えていく。
冬がきて春が来るのかもしれない。
その前、自分はどうしても耐えきれなくなって自分に似合わないコートを買っただけだろうか、と思った。
「悪かった」と自分は口にした。
411雨5 ◆P5OYvlCU0jkf :2011/02/11(金) 08:34:12.72 ID:bi2ICO9R0
Yはしばらくポロポロ泣いて、落ち着くと、もう大丈夫だから家まで送って欲しいと言った。
自分はただ黙ってYを送った。

雪はみぞれになり、次第に雨になった。

彼女を家の前で降ろす時に「また」とか「それじゃあ」とか言おうか少し迷った。
彼女は車を降りると、お辞儀をしたあと、何も言わずに家へ向かった。

まだ泣くのだろうか、と思った。

自分の部屋に戻ってくると来ていたコートもマフラーも取って、タバコを吸った。
結局、俺に似合う服も何もわからないな、とただただ思った。

休日の午後、雪と雨の間のような霧雨が、延々と続いていた。(終)
412 ◆P5OYvlCU0jkf :2011/02/11(金) 08:35:23.89 ID:bi2ICO9R0
なんか誤字脱字が多かった気がする・・・。

お粗末様でした。
413以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 09:22:21.32 ID:EiquBBLS0
>>407-411読んだ。
お題たる天候が象徴的に使われていて、
都会的なアレとか全体に漂うオトナな雰囲気にブンガク的な何かを添えてるような印象を受けました。
しかしながら。上品で見栄えはいいのだけど、面白いかどうかというと、そうは思わなかった。
「よくある風景」を組み合わせて、小奇麗にまとめただけにも見える。
そう言い切るには何となくコートの件が引っかかるけど、アレの意図はどういうところにあるのかしらん。
414以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 09:34:36.28 ID:oGOEms590
雨読んだ
上手だな、確かにブンガクっぽい印象あるな
俺は面白かったよ

お題は雨というよりもコートじゃね?って気がした
まあそんくらいw
大人っぽいね、最近の文学っぽい
415以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 10:33:06.57 ID:iM+cOezt0
★ゅ
416以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 11:28:18.19 ID:PBHkGVD1O
お題下さい
417以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 11:34:54.98 ID:EiquBBLS0
空に続く階段
418以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 11:35:24.74 ID:PBHkGVD1O
把握
419以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 12:28:57.10 ID:LWohSqsb0
ホルホルホシュ
420以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 13:45:55.62 ID:3W0pmb0l0
捕手
421以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 14:15:02.08 ID:f1Ai66G1O
あげ
422以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 15:39:07.02 ID:b9MDKra5O
雪の日は鰤大根食いたくなる
423以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 16:04:18.10 ID:LJoHmrMr0
鰤大根は煮物系の中では作るの面倒くさい分類
424以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 17:46:50.40 ID:ZDQG8w8O0
ほ?
425以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 18:05:08.05 ID:oWqlEbEQ0
お題ください
426以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 18:06:20.05 ID:b9MDKra5O
紙の上の月
427以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 18:59:16.60 ID:9VS2Ht/40
お題三つくれ
428以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 19:03:10.20 ID:LWohSqsb0
>>427
遅延
ビール
ボールペン
429以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 20:03:32.65 ID:b9MDKra5O
久々に核か
お題下さい
430以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 20:10:55.71 ID:f1Ai66G1O
431以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 21:06:01.79 ID:f1Ai66G1O
432以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 22:11:53.92 ID:dqSlEVAZ0
433以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 22:24:49.79 ID:LJoHmrMr0
ごめん、誰かちょっと女の子のAA貼って
あ、幼女さんは呼んでないです
434以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 22:30:40.07 ID:k34cn7t40
J( 'ー`)し
435以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 22:33:24.14 ID:LJoHmrMr0
>>434
……ありがとう。
じゃあ、それ採用するよ……
436 ◆P5OYvlCU0jkf :2011/02/11(金) 22:50:50.68 ID:bi2ICO9R0
ひまだ......お題おくれのすけ
437 ◆P5OYvlCU0jkf :2011/02/11(金) 22:53:21.48 ID:bi2ICO9R0
いいやきっと誰もいない。俺も>>434 でやってみよう。
438以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 22:53:22.25 ID:LJoHmrMr0
>>436
雨がやまない
439以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 22:53:30.33 ID:k34cn7t40
勝敗論
440J( 'ー`)し1 ◆P5OYvlCU0jkf :2011/02/11(金) 23:01:36.68 ID:bi2ICO9R0
メールが届きました。

「J( 'ー`)し たかし ちゃんとご飯食べてるかい
 栄養取らなきゃ元気でないからね 今度たかしの好きな肉じゃが作ってあげるから ちゃんと食べるのよ」

メールが届きました。

「J( 'ー`)し たかし お母さんね 最近 手ががさがさしててね
 ひりひりして仕方無いの もう歳ね お母さん たかしが元気でやってることを祈ってるよ」

メールが届きました。

「J( 'ー`)し たかし 今日は雪が降ったわね こっちは積もったわよ
 たかしはスキーが好きだったわね よく一緒に滑ったわね お母さんが転ぶとたかしが助けてくれたわね
 たかしは優しい子だったわね ありがとうね」

メールが届きました。

「J( 'ー`)し たかし この前言ってた 手ががさがさするのね
 お医者さんに相談したけど 治らなかったの 最近は頭もじんじんして困ってるわ
 たかし たかしは元気でやってね たかし ごめんね」

メールが届きました。
441以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 23:05:27.86 ID:bWdvAZ1yO
>>440>>1をもう一度読むべき
442以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 23:05:47.46 ID:RgyBGEO30
   /.   ノ、i.|i     、、         ヽ
  i    | ミ.\ヾヽ、___ヾヽヾ        |
  |   i 、ヽ_ヽ、_i  , / `__,;―'彡-i     |
  i  ,'i/ `,ニ=ミ`-、ヾ三''―-―' /    .|
   iイ | |' ;'((   ,;/ '~ ゛   ̄`;)" c ミ     i.
   .i i.| ' ,||  i| ._ _-i    ||:i   | r-、  ヽ、   /    / / ̄7l l   ― / / ̄7l l  _|_
   丿 `| ((  _゛_i__`'    (( ;   ノ// i |ヽi. _/|  _/|    \/   ― /   \/    |  ―――
  /    i ||  i` - -、` i    ノノ  'i /ヽ | ヽ     |    |   /   _/    /     丿
  'ノ  .. i ))  '--、_`7   ((   , 'i ノノ  ヽ
 ノ     Y  `--  "    ))  ノ ""i    ヽ
      ノヽ、       ノノ  _/   i     \
     /ヽ ヽヽ、___,;//--'";;"  ,/ヽ、    ヾヽ
443以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 23:08:31.23 ID:rJRqP9+GO
お題オクレ兄さん
444J( 'ー`)し2 ◆P5OYvlCU0jkf :2011/02/11(金) 23:09:00.88 ID:bi2ICO9R0
「J( 'ー`)し たかし いつかスキーに行った時のこと思い出したの
 でも よく考えると たかしのお友達も沢山いたわよね
 どうしてかしら お母さんと 二人で行ったはずなのに ボケてしまったのかしら?」

メールが届きました。

「J( 'ー`)し たかし 今日ね お隣の 佐藤さんって人が亡くなったの
 どうしてかしらね やっぱり長生きって 難しいのかしらね
 お母さんね たかしに本当に申し訳ないって思ってるの お母さん からだ弱いからね ごめんね」


メールが届きました。

「本間隆さんの携帯でよろしかったでしょうか?
 主治医の伊藤と申します。
 本間京子さんの件でメールさせていただきました。
 昨晩から具合が悪くなって集中治療室に入っています。ご返信頂けたらと思います。」

メールが届きました。

「J( 'ー`)し たかし この前は心配かけてごめんね
 お母さん 具合悪くしてしまったけど ちゃんと治ったよ
 でも お母さんね たかしに 会いたいわ 
 いつまで保つかわからないもの たかし どうしてるのかしら?」
445以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 23:11:20.10 ID:b9MDKra5O
>>443
コイン
446以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 23:12:37.90 ID:rJRqP9+GO
>>445
よし、ちょっちPCで書いてくる
447J( 'ー`)し3 ◆P5OYvlCU0jkf :2011/02/11(金) 23:19:25.35 ID:bi2ICO9R0
メールが届きました。

「J( 'ー`)し たかし 私 いつからこの顔文字使うようになったんだろう
やっぱり 昔のスキーに行った時のことを思い出してるんだけど
あのとき 一杯ひといたよね........? どうしてだろう たかしと最初の思い出 スキーなの どうしてだろう?
たかしが 小さかった頃のこと 思い出せない どうしてだろう」

メールが届きました。

「J( 'ー`)し たかし 今日ね 蝶が沢山見えたの アゲハ蝶よ 
 私の頭の上に止まって 交尾しているの 何匹いると思う?
 ははははは!!! 30匹はいるじゃん!!! 沢山ちょうちょがいる死ねよ!! 死ねよ!!
 でも たくさん 蛹ができてくれて嬉しいな 嬉しいな さなぎ? さなぎ? 私の頭の中にいるじゃない!!」

メールが届きました。

「どうしてどうしどうして返事をくれないのああああああああああああ
 あああああああああああ けっかんが 赤くて ベロも目も赤くて
 髪の毛が抜けるの 髪の毛が赤くて 髪の毛が抜けるの 爪が赤くて 爪をはぐの
 どうしてだろう? たかし あなたは私の子供なんかじゃない!! あんたなんか たかしじゃない!!」

メールが届きました。

「J( 'ー`)し たかし お母さんね 頭がおかしくなってしまったみたい
 もう たかしに迷惑かけたくないから ナイフで蛹を取り出そうと思うの
 あたまの中に一杯さなぎ住んでるから ずっとそのままにしておくと 羽化してしまう
 たかし スキー場で どうして 私たち雪を食べていたのかしら たかし ごめんね」
448以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/11(金) 23:21:40.47 ID:4rA/n9FH0
>>433-435
読みました。非常にわかりやすく、面白いネタで、とてもよかったです。
これはコピペになってもいいと思います。
449J( 'ー`)し4/4 ◆P5OYvlCU0jkf :2011/02/12(土) 00:01:30.17 ID:bi2ICO9R0
暗い室内に、電気がついた。
男が部屋にやってきて、パソコンの画面に送られてきたメールを読んだ。
部屋の写真立てには、ゲレンデで撮ったららしい若い男女の写真が写っている。

「これが例の麻薬中毒の夫婦ですか」

永い間、放置されていた部屋は湿った臭いがした。
男が冷蔵庫を空けると、冷蔵庫には作り置きの肉じゃがが詰まっていた。
電気料金が払えなくなって、肉じゃがは腐っていた。
その奥から白い粉が出てきた。それは男達が探していたものだ。

「ところで部屋を借りてた男はどこへ行ったんでしょうね?」
「姿を消したんだろう。女が精神病院に入ってたんだ。
 旦那の方も麻薬中毒なんじゃないか」
「僕が旦那だったら整形して身元を変えてでも、戻ってくると思います」
「どうして?」
「これだけメール送ってたら不憫でしょう」
「そういうもんかな? さっさと仕事を終わらせよう。やる気がでない」
「先輩、じゃあ僕が、一通り調べておきますよ」
「気が利くねぇ。任せたよ」

一人が、タバコを吸いに外へ行くと、
もう一人の男は鍵のかかった引き出しを開けた。
そこにはスキー場で知り合った頃の2人の写真がある。
男はそれをポケットに入れて、手を合わせた。

そうして男は、冷蔵庫の中に入っていた粉をペロリと舐めた。
450以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 00:35:50.60 ID:ojHi1Q+N0
451以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 00:53:24.56 ID:b97gwCKH0
452以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 01:09:32.23 ID:Y72OlObT0
453以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 01:16:29.81 ID:opE/o8dX0
454以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 01:49:49.98 ID:mxnOUhf70
「お題:ハローワーク」
455以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 02:01:42.81 ID:AGfoevju0
456以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 02:42:23.72 ID:rKPnHpFF0
(`・ω・´)
457以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 02:45:01.56 ID:uHWSyI5y0
大分前にお題もらって、書いた後忘れてずっと放置してたヤツ投稿してもいいですか?
458以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 03:03:39.71 ID:lyRGvr7L0
流れ穏やかだし、通常作書き終わらないので通常作の感想かきます。
ところで、やっぱり長いのって読まれないよね。
そういう意味では長編って、練習にはなるけれどエネルギーの無駄だよなぁ……。

>>391-393 脱却
読みやすくてよかったです。最初の三行のおかげで話がまとまってるのが特に。
感情を吐露している文が、読者に話の筋を示唆する役目を担ってるから、いい構成だなぁと思いました。
……そうは言ったけれど、自分だったら最初の三行は削るかなとも思いました。
>>398 短くまとまめたという狙いは完璧だと思います。
ただ、>社会人になって夢を忘れた自分に絶望するあたりに焦点を置きたかった
という狙いだったら、これだと直接的に書きすぎている気がしました。
もう少し細かい道具立てや、主人公の物事への見方や、情景描写の中に隠喩を混ぜると
良かったのかなぁと思いました。

>>407-411 雨 ◆P5OYvlCU0jkfさん
書き方が上手くて魅せるなぁと思いました。
作者さんと作品の距離感が効いていて素敵に仕上がっていますし、コート云々が映えているので良かったです。
無理に感想をつけると、物足りないな、盛り上がりが弱いよな、なんて感じてしまた。
もう少しレス数増やすか、ちょこっと変テコなこと入れると良かったかも。

>>440 J( 'ー`)し ◆P5OYvlCU0jkfさん
行き当たりばったりだなと思いました。3レス目はちょっと滑稽だなと思ってしまいました。
こういう話難しいですよね。

>>457
いいよ!
459以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 03:33:45.08 ID:2OZC28jNP
おだいくれええええ
460以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 04:56:56.82 ID:qjjS9IfZ0
>>459
パナマ運河
461以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 06:42:19.10 ID:u6wOODMjO
朝一
462以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 07:32:33.03 ID:nGrS+taW0
電車から補
463以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 08:23:35.87 ID:n3E+XMXm0
>>231
>>353

OH...
464以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 08:24:47.82 ID:n3E+XMXm0
びっくりしてひっくり返った人だよ イングリッシュじゃないよ
465以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 09:10:15.45 ID:n3E+XMXm0
10行に渡る皮肉――反語――を書いたけど消した。。。。
例のブログの日記みたいに消したわ〜嗚呼、、、貴重なおれの発言(アイロニー)をマジで消したわ〜
466以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 11:04:02.37 ID:/njJF3fc0
書き終わったので通常作投下します
6レス予定。
467街から彼女がいなくなる (お題:川のほとり) ◆xaKEfJYwg. :2011/02/12(土) 11:05:55.00 ID:/njJF3fc0
 放課後の教室は静かになった。午後4時30分。太陽はまだ顔を出している。
 野球部の「えっほー」という掛け声は少しばかり脱力感のあるものだった。それは窓の奥から絶え間なく聞こ
えくる。
 教室には三人しかいなかった。教室の真ん中の机を中心にして、取り囲むように三つ椅子を置く。それぞれの
椅子に三人はひっそりと座っていた。
 ハニワは、話を終えた莉子の顔をちらと覗き見た。口をつぐんだのを確認すると、数回掌を叩く。
「やっぱり、莉子は話すのが上手だ。その声がいい味だしてるね」
 そう呟いたハニワは、浮き彫りになっているほお骨をこりこり掻く。そして嘆息を漏らした。
「ハニワの言う通りだ。すごい怖かった。なんかぞくぞくしたよ!」
 タケヤも彼同様に感嘆して、わざわざ机に乗り上げて莉子の肩を叩く。
 莉子は弱々しく、ありがとう、とだけ答える。その声は小さな体に似つかわしくない、おなかの底から響くよ
うな威圧的な声質で、ちっとも可愛らしくない声だった。
 彼女は居心地悪そうに椅子を引いて、背もたれに寄りかかる。恥ずかしい想いが彼女の耳を赤くしていた。
「なんか、ドキドキした。うまく話せたみたいでよかった」
 照れながら、怖い話をするってやっぱりむつかしい、とついでのように付け足す。タケヤとハニワは互いの目
を合わせると、笑いあってもう一度強く拍手をした。

 タケヤとハニワ、莉子の三人は放課後の教室に残って、怖い話を披露しあう会を催していた。内容は一人一つ
ずつ怖い話を語らうといったもので、だいたい30分で終わる程度の会合である。放課後に三人だけで集まる秘
密の会はささやかながらも、三人にとってはとても楽しいものであった。
 また活動に対して三人共々に真面目だったので、重ならないような話を懸命に見つけては、それとなく確認し
合う努力をした。そのおかげで飽きることはなく、思いのほか密会が長く続いていた。

 タケヤは背伸びをして、薄く引き伸ばされたような不思議な声を漏らす。そして、椅子のしたに置いてある鞄
をちらと見た。
 彼の眠たそうな様子を見て、ハニワは眼鏡の真ん中辺を指で押し上げる。切れ長の目をさらに細めた表情は、
誰が見ても、ひどく気分の悪いものであった。
「次はタケヤだぞ。どんな話をしてくれるんだ? 変な話聞かせてくれるなよ?」
 ハニワは自尊心から、しょっちゅう挑戦的な笑みを浮かべて、人を小馬鹿にしたような態度をとることが多か
った。そうするたびにタケヤと莉子は、聞き流すか、オブラートに包んだ皮肉の一つでも呟くのが常であった。
468街から彼女がいなくなる 2/6 (お題:川のほとり) ◆xaKEfJYwg. :2011/02/12(土) 11:07:11.53 ID:/njJF3fc0
 ハニワと対照的にタケヤは、大きな体に相応しく、短気で勝気であった。そのくせ神経質だったので、普通な
らばハニワの捻くれた性格とは折り合いが悪い。ハニワの無造作に神経を逆撫でする発言は、口数の少ない莉子
でも、ときどき声を荒げて嗜めるほどである。でもなぜか、男二人は気が合うみたいで、周りから羨ましがられ
るほど仲の良く見える、気の置ける友達だった。その二人して笑いあう姿を見るのが、莉子は大好きだった。
 莉子は今回もいつものように苦笑いで済ませた。タケヤだって、笑いながら冗談ひとつで済ませるだろうと莉
子は思っていた。
 だが、タケヤは何を思ったのか、唐突にひどい憎まれ口をたたいた。
「……今のうちに便所に行ったらどうだ? それともハニワ、お前の部屋に場所を移すか? ここじゃあママの
ベットは遠いものな。いいか、俺のとっておきの話を聞き終わるまで黙ってろやコラ」
 ハニワはいささかびっくりしたように、細目を見開いた。まさかタケヤが本腰を入れて言い返すとは思ってい
なかった、有り得ない光景を見た、そんな様子であった。すぐさま元の調子を取り戻し、取り繕うようにして嫌
味な笑みを浮かべる。
「ふん。それは『本当に』怖い話をしてから言えよコラ。タケヤの話は人を驚かすだけの『びっくり話』ばっか
じゃないか。大口と机を叩いてる暇があったらマスでも掻いてろ。そのほうが馬鹿にはお似合いだろが。違うか?」
「あー上等だ。そんなに本当の怖さを知りたいんだったら、お前を殴ってやろうか? ちょっと立てや」
 勢い良く立ち上がったタケヤを見てハニワは息を飲み込む。
 そうした二人を交互に見やると、莉子はいてもたってもいられなくなって、椅子から立ち上がった。タケヤに
詰め寄ると背伸びをする。
「……なんだよ」
 莉子は無言のまま、おもむろにタケヤの頭をはたいた。そして踵を上げたまま押し殺すように静かに言い放つ。
「タケヤ、乱暴な言葉づかいはだめ。ハニワ、マスかくってなに? 二人ともヘン。落ち着いて」
 彼女の野太い声は、有無を言わさないような強制力があった。タケヤは見えない圧力に押されるように椅子に
再び腰を下ろし、わざとらしく大きな声で咳払いをつく。
「……悪かった。言い過ぎた。莉子もごめんな。せっかくの集まりをぶち壊すところだったな。じゃぁ本日最後
のメインイベントを――」
「あ、ちょっと待って」
 不意にタケヤの語りを制した莉子は、申し訳無さそうに頭を下げて言う。
「話を中断してごめん。言わなければならないこと思い出したの」
 彼女の仕草と熱のこもった言葉を聞いた二人は、顔を見合わせる。
 ハニワは不細工な顔をさらに歪ませ、ひしゃげた頬を精一杯膨らませて不平を言う。
469街から彼女がいなくなる 3/6 (お題:川のほとり) ◆xaKEfJYwg. :2011/02/12(土) 11:08:04.90 ID:/njJF3fc0
「ちょっと待ってくれよ。今まさに、タケヤの『とっておき』のお話が始まるところだろう? そんなの、会が
終わった後にでもいえばいいじゃないか」
 だけれども、強くは非難しなかった。まるで、言わなければならないことを取り合えずいった、そんな様子で
あった。
 タケヤは、ハニワが言い終わるのを見届けて、莉子の顔を見上げる。体を縮こまらせ、何度も頭を下げて頼み
続ける。彼女の顔は、苦いものを噛み潰したような表情だ。
「待てって。莉子、俺達わかってる。わかってるよ」
 タケヤとハニワの二人は椅子の横に置いてある鞄を、おもむろに掴んだ。二人の珍しく息の合った行動に莉子
は気付かないまま、急なんだけど、そう前置きをして、次の句を矢継ぎ早に言う。
「あした転校する」
 野球部は「えっほー」と何でもないように叫んでいる。


 結局あの後、教室はばつの悪い雰囲気になってしまった。
 タケヤとハニワが固まっているのを尻目に莉子は一人、教室を飛び出した。
 学校の校門をくぐり、莉子は家へと向かった。その道すがら、転校すると打ち明けたときの二人の表情を頭の
なかに描いては、電柱とガードレールと、なによりも人を確認して慎重に歩き続けていた。
 なんだかとても残念そうな顔してた、そう莉子は思っていた。
 きっと転校すると突然言ったからに違いない。そうであっても、彼女にとっても仕方のないことだったのだ。
 昨日のこと。一人だけの肉親になってしまった父親から「転勤で遠くへ行くことに決まった。近いうちに転校
することになる。電話しておいた」と通告された。
 せっかくこの大嫌いな声を親しんでくれる友達が二人と一匹、見つかったのに。そればかりか、携帯のアドレ
スも交換したのに。必死になって打ち込んだプロフィールも活かされた! と喜びさえしたのだ。やっとのこと
で手に入れた友達のことを思うと、彼女も同様にやるせのない気持ちになるのであった。
 気がつくとすでに河川敷の砂利道に差し掛かっていた。午後5時。真っ赤な太陽は沈みかけている。目の前に
は、太陽の赤を映す大きな川が右左にのびていた。
 莉子はきらきら輝き続ける川に向かって、家のある左に方向転換することをせず、そのまま真っ直ぐに歩き続けた。
 坂を下り、土手下のサイクリングロードをこつこつと横断して、フェンスを越える。
 やっと川のほとりまでたどり着くと、さらに古臭い水道橋に向かった。少しばかり、険しい道のりであったが、
莉子は構わず橋下を目指して、背の高い草を掻き分け続けた。
470街から彼女がいなくなる 4/6 (お題:川のほとり) ◆xaKEfJYwg. :2011/02/12(土) 11:09:54.19 ID:/njJF3fc0
 目的地にたどり着いた彼女は、すぐさま屈んで、足の傍を流れ過ぎる水々を覗き込んだ。そしてじっくりと観
察する。水々は底を透かし見ることはできず、可愛らしい顔をただ映していた。
 莉子は水面に映る自分の顔めがけて、思いっきり右手を沈みこませる。ひんやりと冷たい水が身に染みた。
 何を思ったのか彼女は、やにわに川面めがけて声をかけ始めた。
「かっぱっぱさま。かっぱっぱさまー。手を掴んで。引き上げるから。お話したいの」
 返答はなかったが、それでも辛抱強く、繰り返し独り言を続ける。
「かっぱっぱさま? おいかっぱっぱ。……お願い。いたら返事して」
 ――ポコポコと膨らんでは弾ける気泡が姿をあらわし、徐々に量を増す。
 ――水中に沈んでいる彼女の華奢な腕をぬるっとした何かがなでる。
 途端に音を立てて、川面を突き破るように登場した。
 ぼうぼうに伸びた髪を垂らし、口には威圧感のあるくちばし。体全体は赤色の産毛で覆われ、子供のような背
丈とは対照に、かなり大きい甲羅を背負っている。それは河童だった。
 まさしく河童が、勢い良く飛び出したのだ。水の飛沫は莉子の頬や髪まで散らばって濡らす。彼女は濡れた目
じりを左手の指で拭った。
 河童はいそいそと川べりに乗り上げると、彼女の隣に胡坐をかいて座る。
「……なぁ。その『っぱ』はなんだよ。なんか愛くるしくなっちゃってんじゃねーか。俺、気持ち悪いだろ。も
っと気持ち悪そうな名前で呼べよ。それに俺は河童じゃねーぞ」
「じゃ、『かばちょるん』は?」
「聞けよ。だから、その『ちょるん』ってなんなんだよ。いや、伝えたいニュアンスはわかんだけどさ」
 莉子は屈託のない笑顔で、にひひと笑った。それを見て、河童は「ふんっ」と吐き捨てる。
「それにしても、おまえの声はいい声だな。どうだ。今回も俺の話はウケたか?」
 黙って首を縦にふった。ウケたことはウケた。莉子はそう思い、親指を突き出した。
「ばっちぐーか。そら俺が伝授した話だからな。無料でハズレなし。だか質はよし」
 そういうと、河童は半分に欠けた太陽を眺めはじめた。莉子もそれに従ったので、二人して一言も交わさずし
ばらくぼうっとしていた。
 何かあったのだろうか、と勘付いた河童はそれとなく聞いた。顔を莉子にむけて注意深く彼女の様子を伺って
いたところ、河童の目には、どうにもいつもより元気が無いように映ったのだった。
 河童に見られていることに気付いた莉子は、項垂れてぽつぽつと、さっき起こった出来事を話始めた。
 全て聞き終えた河童は、ふむふむふむんと納得して彼女に尋ねる。
471街から彼女がいなくなる 5/6 (お題:川のほとり) ◆xaKEfJYwg. :2011/02/12(土) 11:11:27.42 ID:/njJF3fc0
「いつも思うんが、なんで『怖い話会』なんか続いてんだ? 話しを聞いた限りだと、どうかんがえたってウマ
があわねーだろ。特に短気坊主と捻くれ坊主の二人はよ」
「わからない。ハニワが私を誘って、タケヤがふえて。いつの間にか怖い話するようになって」
「じゃあ、言いだしっぺはおまえじゃないんだな。ふーん。ま、当然だよな」
「ねぇ、どうしてかっぱさまは私によくしてくれるの? 怖い話とか、なやみ相談とか」
「どうしてって……」
 言葉に詰まった河童をみて莉子は、やっぱり、と言って笑った。
「やっぱり、かわいそう、って思ってるから。知ってる。かっぱさまがお母さんを殺したって」
 河童はひどくうろたえた。体を支えるためにつけていた両手を地面から離し、あれこれと腕を振り回す。
「いや、そんなこと……。知ってたのか。そうだよな。俺気持ち悪いもんな」
「関係ない。わかるよ。かっぱさま優しいから、お母さんでもだれでも、溺れたら絶対助けるはず。でも助けな
かった。きっと……おなかが減ってたんでしょ?」
「おっとそこに着地するか。でも間違いじゃないな。俺のこと妖怪っぽいって思っただろう」
「ううん。人間っぽいよ。漫画にでてきそうだもの。だからすごく好き」
 河童は嬉しそうに照れて、ぼそぼそと言葉をならべる。
「別にだれでもってわけじゃねーよ。だいたい、ココに住み着いてから俺が会った人間はおまえとおまえの母さ
ん。それに猫目の眼鏡坊主しか……じゃねーな。悩み相談だったよな」
「うん。……なんで普段は喧嘩なんかしないのに、今日に限って喧嘩を始めたんだろう」
 河童は複雑な表情を浮かべて、太陽を見上げた。そして、少し楽しそうな声で言う。
「ひとつ、聞きたいことがあるんだが。いいか?」
「いいよ。何でも。すりーさいずなら教えないよ。知らないけど」
「聞いてどうせいっちゅうんだよ。おまえ、明日か昨日、もしくは今日。なんかないか?」
「マラソン大会ならある」
「そうじゃなくて、記念日とか」
 莉子はあっと思いついたように、声を上げた。その言葉を聞いて、河童はにやりと笑って立ち上がった。
「よし、教養と経験と実績と……のあるミンツチさまからのお言葉だ。心して聞けよ」
 嬉しそうに何度も頷く莉子を見て、河童は「そのこと」について得意気に解説をし始めた。

 聞き終わった莉子は、驚きよりも関心した表情であった。
「そんなところだろ。なにアホ面してんだ。よだれ拭けよ。汚いぞ」
472街から彼女がいなくなる 6/6 (お題:川のほとり) ◆xaKEfJYwg. :2011/02/12(土) 11:12:42.11 ID:/njJF3fc0
 話を終えた河童は、腰を芝生に下ろすと、顔を上げた。莉子は慌てて口元を手の甲でぬぐう。手の甲は湿らな
かった。
「太陽は完璧に沈んじまったな。もう子供は寝る時間だ。帰れほら」
 莉子はそう言われて、はじめて辺りが暗くなっていることに気付く。あまりに気付くのが遅いことを、恥ずか
しく思って、やっぱり私って鈍感なのかな、とつぶやく。
「私、どうすればいいと思う?」
「帰ればいいと思う。俺がアドバイスするのは、一回限りだぞ」
 そういって立ち上がった河童は、川面に飛び込んだ。しばらくして頭だけを出す。
「ちなみに、おまえの言う漫画ってホラー漫画なんだろうな」
「ううん。バトル系少年誌」
 河童は大声を上げて笑いながら、悪くない、と残して川下深くにもぐって消えた。それを見届けると、莉子は
立ち上がり、お尻を手ではらって、数回の屈伸をこなした。
「ばいばい、ヒーローのみんつちさま。もう十分。いっぱい返してもらった。元気でね」
 丁寧にお辞儀すると、左を向いて、少女は険しい道に姿を消した。


 END
473以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 13:26:55.22 ID:b97gwCKH0
おっと保守だぜ
474以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 13:32:06.36 ID:Wln/warBO
「○○的××性」みたいな学術用語のお題を求めている
475以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 13:48:27.65 ID:HYz7nAHR0
認知的複雑性
476以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 14:00:59.66 ID:opE/o8dX0
不思議な国のアリス症候群
477以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 15:21:31.89 ID:b97gwCKH0
ほっす
478以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 15:54:48.60 ID:u6wOODMjO
>>472
な、何がなんだかさっぱりだぜ
話半ばで打ち切りにあった気分
二人が何故喧嘩したのかとか河童が何を話したのかとか謎が
479以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 16:24:05.72 ID:b97gwCKH0
固有名詞でないお題をくれぇ
480以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 16:25:06.24 ID:/ZD587DkO
休憩室で彼女は言った
481以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 16:26:35.74 ID:b97gwCKH0
>>480
把握。普通名詞でもよかったんだがな
482以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 17:32:24.11 ID:u6wOODMjO
483以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 18:33:41.44 ID:b97gwCKH0
484以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 18:46:47.70 ID:lnVzzFEC0
お題求む
485以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 18:50:29.38 ID:opE/o8dX0
ゼロパーセント
486以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 18:55:06.69 ID:2QvuVAqB0
タペストリー
487以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 19:38:32.34 ID:l42cOEnE0
あげ
488以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 20:42:24.49 ID:yE4K+12c0
489以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 20:55:34.15 ID:u6wOODMjO
490以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 20:56:24.70 ID:jNoTeVE40
ずっと言いたかった事があった
主人公を凡人設定してるくせに途中から超人にするのやめろ
491以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 21:11:56.41 ID:HYz7nAHR0
みにくいアヒルの子<ごめんなさい。
492以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 21:22:21.32 ID:u6wOODMjO
衛宮士郎「はい」
493以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 21:45:55.17 ID:bGgmDg1V0
ジェロニモ「すまねえズラ」
494以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 22:04:33.60 ID:xZ7ryOp0O
文才
495以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 22:09:23.67 ID:xZ7ryOp0O
あ、やべ、ごめんごめん
いつものスレ検索の癖で書き込みしてたわ、空気読んでないレスして済まない
496以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 23:18:00.15 ID:bGgmDg1V0
あふん
497以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 23:35:13.98 ID:ZR8yWyHu0
お題くれくれ
498以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 23:38:27.57 ID:bGgmDg1V0
>>497
期待はずれ
499以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 23:38:47.53 ID:HYz7nAHR0
凡人と超人
500以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 23:41:39.04 ID:xZ7ryOp0O
ところで品評会来てるの?
501以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 23:45:28.40 ID:HYz7nAHR0
ゼロですよ
502以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 23:49:36.86 ID:vxnguFmj0
ゼロですな
503以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 23:52:44.21 ID:xZ7ryOp0O
そうですか!こりゃチャンスだ!優勝とか狙って頑張っちゃおうかな!
……もうぜんぜん間に合わねえよう
504以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/12(土) 23:54:03.16 ID:HYz7nAHR0
優勝狙って優勝出来たことは今まで一度もないよ!
505アパートにて(お題:立場) 0/2:2011/02/13(日) 00:54:05.79 ID:owTJ8txW0
通常作品を2レス投下します。
506以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 00:55:42.40 ID:pI5LZoh70
お題くれくれ
507アパートにて(お題:立場) 1/2:2011/02/13(日) 00:56:03.69 ID:owTJ8txW0
 男は、卵のパックや、鶏肉などが入った買い物袋を片手にアパートの鍵を開けた。
「ただいま、遅くなってごめんね、教授の手伝いが少し長引いちゃって。すぐ晩ごはん作るね」
男はそう言いながら靴を脱ぎ、すぐに台所に立った。返事は無い。
「今日は君の好きなオムライス作るね、まあ、オムライスってどっちかと言うと昼ごはん向きの気がするけど、いいかな」
狭いワンルームの方へ声をかけるが、返事は無い。
「もしかして寝てるかな……? ま、作ってから起こせばいいか」
男は1人でぼそぼそと話しつつ、買い物袋と冷蔵庫から材料を取りだしてオムライスを作りだした。
男は黙々と野菜や肉の下ごしらえをし、温めたフライパンで炒め始めた。ジュワジュワと、合唱を始める。そして、冷蔵庫から朝炊いておいたご飯を取りだし、フライパンに落した。
「あ、レンジで温めてからの方が良かったかな……?」
男は少し後悔したが、再びフライパンに目を落とし、チキンライスに集中した。
ある程度炒めると、男は赤い赤いケチャップをフライパンに落した。美しく紅に染まったチキンライスを皿盛り付けた。
「さて、ここからが本番だな」
男はフライパンを布巾で拭き、ステンレスのボールを取りだした。そこに卵を入れていく。
「今日こそは、成功させないとな。タンポポオムライス」
男は卵をしっかりとかき混ぜ、フライパンに流し込んでいく。そして、かき混ぜながらタイミングを待つ。そして、その時は来た。
「よし、ほ、ほ、ほ……ほ!」
すばやく卵をフライパンの先へ寄せ、綺麗に丸めた。そして、先ほど作った紅のチキンライスにそれを乗せる。そして、包丁を片手にすぐにテーブルへ運んだ。
「会心の出来だ! 見てて!」
オムレツに包丁を入れると、紅のチキンライスは黄金色に染まった。
「完璧だ! 大成功だ!」
男は誰かに語りかけるように叫んだ。返事は無い。そのかわりに本棚から、明るいオレンジ色をした表紙の本が落ちた。
「じゃあ、ケチャップかけておくから先に食べてて」
男はそう言いながらケチャップをかける。とろとろの卵に綺麗な赤い光線が染まっていく。返事は無い。
男は再び台所に立ち、卵を焼き始めた。ただし、今度はタンポポオムライスではなく普通のオムライスのようだった。
オムライスを作り終え、男が戻ってくる。タンポポオムライスは変わっていない。
「やれやれ、いつも通りだね」
男は呆れつつ、自分のオムライスを食べ始めた。食べ終わると後片付けもそこそこにフロに入った。風呂からあがって着替えるとすぐにベッドに入った。
「じゃあ、おやすみ」
男は電気を消して眠ってしまった。男は知っていた。これが一番良い方法なのだと。
508アパートにて(お題:立場) 2/2:2011/02/13(日) 00:57:56.61 ID:owTJ8txW0
 男は目を覚ました。早朝のようだったが、まだ日は昇っていない。
電気を付けると、タンポポオムライスは綺麗に食べられていた。そしてテーブルには赤い赤い、少し生臭いケチャップで、『おいしかった』と、女子独特のかわいらしい文字で書かれていた。
「ほんとに、素直じゃないなあ」
男は、そのケチャップを指に付け、舐めた。いつも通りの鉄の味がした。
「早く、君のそばに立ちたいよ、触れたいよ」
男は寂しそうに呟く。返事は無い。そのかわりにまた本棚から本が落ちた。その色は寂しい青色の表紙だった。

終わり
509以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 01:03:02.11 ID:owTJ8txW0
以上です。

初投稿になりますので、文章の基本も間違っているかもしれません。
狙いは、男と死んでしまった彼女の幽霊との立場の違いを描こうとしました。
正直なところ、小説としての体を成してるかさえ分からない状況です。
感想や批評をよろしくお願いします。
510 ◆X78jHks0c. :2011/02/13(日) 01:03:48.36 ID:1oCmvcME0
品評会投下
5112月14日に黒幕が仕掛けた小説のような色事 1/4 ◆X78jHks0c. :2011/02/13(日) 01:05:57.11 ID:1oCmvcME0
 ある年の元旦、僕ら家族は総出で帝都の御所のベランダに立ち、紙で出来た小さな国旗を必死に振る一般群集に向けて
作り笑顔で手を振っていた。
 ベランダの上の僕らと、ベランダの下の彼ら群集の間には、巡航ミサイルの直撃に耐えることができる防弾ガラスで仕
切られ、その上で皇帝親衛隊所属のセキュリティ・ポリスが有事に備えて僕らの背後に立ち、その上無数の防犯カメラが
群衆を監視している。
  御苑の周囲には、核兵器を搭載した大陸間弾道ミサイルをも迎撃できる超高性能の対空ミサイルのトレーラーが並ん
でいた。
 一般参賀ごときで命を狙われながら、正月早々働かされてたあげくに恋愛する相手を選べる自由もないのが僕達の立場
だ。妹は名家に嫁ぎ、僕は帝国省が選び認めた相手と結婚し将来の帝位を継ぐ男児を産んでもらう運命を享受するしか選
択肢が無い。
 そんなことを嘆き考えながら僕は父君や母上と共に帝室の皇太子として作り笑いを浮かべながら手を振って帝国の臣民
に媚を売ることに従事した。
 お出ましが終わると、その場において、皇帝陛下が直々に、帝国臣民に向けて、今年の春頃に妹がご成婚することを発
表した。このご成婚を仕掛けた黒幕は帝室の維持こそ自己保身に繋がる帝国省の小役人共だ。時代の変遷によって失墜し
つつある帝室の権威を回復させようと企む帝国省のサプライズのつもりだろう。
 妹の相手は外務省に勤務する、祖先が帝国陸軍の将校を務めていた名家の御曹司だった。帝室の相手に相応しい一流の
家系だが、垢抜けない黒縁眼鏡をかけた若年性中年太りで腹が飛び出だ、カバのような面をしたもっさい男だった。
 相手の一族は我々帝族という権威を迎え入れることで家名を上げ、外務省内での地位を磐石にする。一方で、こちらは
名家に一族を嫁がせて恩を売り、権力側に恒久的な帝系維持を了承させる布石を打つ。いわゆる閨閥というやつだ。
 閨閥に基づく結婚に、お互いの愛情や理解といったくだらない感傷を差し挟む余地はない。
 父の綸言が終わると、僕らは舞台から去った。赤絨毯の敷かれた廊下を御所へ向けて歩いていると、ドレスで着飾った
妹がモーニングを着た僕の腕を掴み脇道へと引っ張リ込んだ。
「私、あんな男と結婚なんかしたくないよ!」と妹は泣きそうな面をして言った。
「仕方ないだろ」と僕は答えた。「恋愛する自由がないのは僕らの家系の運命だ」
「兄貴だって長男だから結婚して子供をつくる義務があるじゃない」
「俺は絶対にお前らみたいに親に決められた結婚はしないぞ」と僕は言った。「俺は心に決めた女性がいるんだ」
「兄貴が隠れて付き合っている、あのアイドル崩れのアニメ声優のどこがいいの?」
「声が良い」と僕は答えた。「セックスの時、あの猫なで声で悶えられると燃えるんだ」
「侍従長にバレたら大変だね」と妹は脅すように言った。「いや、侍従長ならまだいいけど、マスコミにバレたらもはや
帝室の終りだよ」
5122月14日に黒幕が仕掛けた小説のような色事 2/4 ◆X78jHks0c. :2011/02/13(日) 01:08:06.04 ID:1oCmvcME0
「お前こそ、芸能事務所と徒党を組んでまだ未成年の男性アイドルを取っ換え引っ換えして遊んでいるくせに」
「大丈夫よ」と妹は飄々と言った。「帝室付きのマスコミとお付きの女官を抱き込んで、みんなにも男をあてがって一緒
に遊んでいるから、女官長の耳には入らないようになってるし、絶対に報道もされない」
「それが今では冴えないカバ夫とくっつくはめになったわけだ」と僕は言った。「イケメンアイドルとの快楽に溺れるこ
とに慣れると、アレとの結婚生活は鉄格子のない牢獄に等しいな」
「そこで相談があるの」と妹は真面目な顔をして言った。
「カバ夫くんのために苦労して誘惑した未成年アイドル諸君との関係を絶つお手伝いでもすればいいのかな?」
「違うわよ!」と妹は怒った。「今度のご成婚の黒幕である帝国省が私の相手に用意したカバ夫と私が破談する手伝いを
して欲しいだけ!」
「それなら良い方法がある」と言い僕は唇の端を歪め笑った。「俺に任せろ」

 帝国省事務次官と女官長や侍従長の意向によって、二月十四日にカバ夫と妹との納采の儀と定められた。女子帝族であ
る妹に、結婚相手の使者が供物を持って御所に訪問するのだ。
 侍従長が御所に訪問したカバ夫をもてなし、カバ夫が納采の旨を伝え、供物を進呈した。
 侍従長が皇帝や皇后に供物を進呈し納采の旨を伝えた。皇帝と皇后がその供物を受け取った。侍従長が供物を皇帝、皇
后によって嘉納されたことをカバ夫に伝えた。 カバ夫は嘉納の旨を報告した。
 納采が済むと、祝賀が行われた。納采を寿ぐ宴会が開かれ、出席者は納采を祝福した。
「兄の冬仁です。この度はおめでとう御座います」と僕は隙を見て宴会で暇を弄ぶカバ夫に接触した。「妹のことをよろ
しくお願いします」
「もちろんです」とカバ夫は断言した。「僕は彼女のことを精一杯愛するつもりです」
「妹とは面識があったのですか?」
「彼女とは岳習院大学高等部からの同級生で、実は僕は彼女のことをずっと好きでした」
「片思いの恋がこうして叶ったわけですね」
「ええ、とても嬉しいです」
「今日はバレンタインです」と僕は言った。「妹はあなたに対する気持ちを込めたバレンタインデーのプレゼントを渡し
たいそうです」
「光栄です」とカバ夫と彼の両親は言った。
「シャイな妹の代わりに、僕が妹からあなたへのバレンタインのプレゼントを渡すことにしました。受けとってもらえま
すか?」
「もちろんです」と言い彼は黒縁メガネ越しに僕の顔を見ると微笑んだ。
5132月14日に黒幕が仕掛けた小説のような色事 3/4 ◆X78jHks0c. :2011/02/13(日) 01:10:15.04 ID:1oCmvcME0
「これです」と僕は女官によってラッピングされた箱を彼らに渡した。
 彼らがリボンを解き、箱を開くと、中には写真が詰まっていた。
 僕と親しい侍従と妹付きの女官の協力で、密かに妹のPCをクラックし、アイドルと密会したときに妹がデジカメで撮
影させた卑猥な写真のデータを入手したのだ。僕は妹がアイドルとデジカメでいかがわしいシーンを撮影してコレクショ
ンしていることを密かに知っていた。芸能事務所に所属する少年アイドルと妹が裸で抱き合う姿のデータ数十枚をすべて
プリンタで印刷し、箱に詰めてカバ夫とその両親に贈ったのだ。
 カバ夫とその両親は写真を見ると思わず絶句した。
「これはなんでしょう?」とカバ夫は言った。
「あなたが知らない妹の本性ですよ」と僕は言った。「あいつは重度のアイドルオタクなんです」
「その男性アイドルたちといつも……こんなことを? こんな小説のようなことを?」
「起きそうで実は起き得ないないようなことが起きるのが小説なんですけどねえ……」
「でも、実際に起きているのですか? このようなことが?」
「決して清純でない妹は当然のように彼らと頻繁に肉体関係を持っていますよ。とっかえひっかえでね」と僕は言った。
「それでもあなたは妹と結婚するつもりはありますか?」
 カバ夫は心底から呆れた顔をして、しばらく考えこむ素振りを見せると、何も言わずにその写真を破った。
 後日、先方の両親はカバ夫を精神科に偽装入院させ、カバ夫側の病気療養による自己都合という理由で妹との婚約をご
破算にした。
 
 さらに後日、写真こそ公にならなかったものの、この事件の概要が帝国省の幹部に知れ、帝族の色恋沙汰によって帝国
の威信が傷つくことを恐れた帝国省は、政治的理由による婚姻の仲介を停止し、外国の王室並に帝族の自由恋愛を黙認す
ることにした。帝室の色恋沙汰による不祥事に帝国省は直接関知しないし責任を負わないための言い訳としたのが真の理
由だった。
 帝国数千年の歴史上、初めて帝族に真の恋愛の自由が認められたのだ。
 父と女官長は妹を呼びつけ、厳しく叱りつけたが、妹は恋愛の自由を盾にイケメンアイドルとの乱行を正当化し、あげ
く皇帝陛下である父君に平手で殴られた。妹は泣きながら部屋に戻り、女官の阻止を振りきって荷物をまとめて御所から
家出した。

 その後、妹はお気に入りの人気アイドルのひとりに本当に心のこもったプレゼントを送った。それは彼女のサインの記
された婚姻届だった。それは彼のサインと捺印を記入するだけで、何時でも役所に提出される状態にあった。
 彼は躊躇せずにサインと捺印をし、翌日帝国省に宛て婚姻届を郵送することで、彼女は帝籍から離脱をし、皇帝の娘と
5142月14日に黒幕が仕掛けた小説のような色事 4/4 ◆X78jHks0c. :2011/02/13(日) 01:12:31.59 ID:1oCmvcME0
いう身分を捨てようとした。
 妹の一方的な行為に怒りを覚えた帝国省はその婚姻届と帝籍廃止願を無視し、シュレッダーで処分した。
 そして、勝手に秘蔵の写真を僕によってカバ夫や帝室の関係者に公開されたことで怒りに震えた妹は、報復として僕と
アニメ声優とのセックスを盗撮した映像をスマイル動画にアップロードした。
 妹も脛に傷を持つ身として、いざという時のために僕の弱みを握っていたことに気がつかなかったことが僕の最大の不
覚だった。僕も報復としてゴーグル画像検索に妹の淫乱写真のコピーをアップロードした。
 それら過激な動画と画像は女性週刊誌とワイドショーのゴシップのネタとなり世間をおおいに騒がせた。威厳が崩壊し
つつある帝室の対外的な権威の維持のために、罰として僕と妹の帝位継承権や帝籍を剥奪し、帝室から追放しようと帝国
省の役人共で協議をしていた。
 僕は役人の協議の結果を待つまでもなく、荷物をまとめて御所から飛び出した。三月十四日に恋人であるアニメ声優に
婚姻届を渡し、サインしてもらうと帝籍から離脱して帝位継承権を放棄するという旨の文章と共に帝国省に郵送し、妹と
同様、御所には二度と戻らなかった。
515 ◆X78jHks0c. :2011/02/13(日) 01:14:41.25 ID:1oCmvcME0
終りです
516以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 01:15:06.05 ID:tBROoulK0
>>506
苦笑い
517以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 01:27:51.97 ID:pI5LZoh70
>>516
把握した
518以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 01:27:58.03 ID:JRLpOJOg0
明日までにかけそうな簡単な御代がほしいようなほしくないような感じみたいな
519以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 01:28:09.17 ID:sD22nImC0
前回優勝者の人達、同時優勝時のルールちゃんと出してないのか
520以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 01:28:31.21 ID:sD22nImC0
>>518
売り切れ
521以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 01:34:07.69 ID:JRLpOJOg0
>>520
友達に頼まれてローソンに十六茶買いに行った話にするわwwwwwwwwwwwwww







友達に頼まれて・・・
522以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 01:39:48.49 ID:AJH5p0cW0
暇だなー お題が欲しいなー(チラッ
523以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 01:42:39.24 ID:thn8uC0H0
>>522
スリジャヤワルダナプラコッテ
524以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 01:45:31.53 ID:AJH5p0cW0
スリジャヤワルダナプラコッテ…だと…… よしゃあ 
525以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:15:07.94 ID:JRLpOJOg0
スリジャヤワルダナプラコッテ



調べたらスリランカの首都じゃねーかwwww少なくとも行ったことあるくらいじゃないとかけないだろwwwww
526以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:17:11.81 ID:AJH5p0cW0
うん、ちょっと固有名詞は難しいですね……
行ったことないしホントすいません
カスでも書ける簡単なお題お願いします
527以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:18:18.08 ID:H3Qd/xFx0
>>526
開発
528以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:19:05.72 ID:AJH5p0cW0
dd!
529以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:33:51.63 ID:G955tPzl0
今週の品評会のお題

◆OV.4ugEbKk氏>>349   『色』
◆D8MoDpzBRE氏>>286 『黒幕』
◆ihO9dxzf9I氏>>300    『小説とは何か?』
◆IPIieSiFsA氏>>348    『バレンタイン』
          全て6レス以内

品評会のお題が複数あるときは、全部使っても良いけど
そのうちの一つを選んでタイトルと一緒に明記してね
幼女との約束だよ

例:
528 名前:タイトル(お題:色)[sage] 投稿日:2011/02/13(日) 02:22:22.22 ID:AAAAAAAA0
530以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 02:47:17.72 ID:DZvWIP710
| ・ω・)
531以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:09:51.85 ID:EqSNotitO
プロットはできてるんだ
時間と気力が足りない 多分6レスにも収まらない
みんなおらに文才を分けておくれー!
532以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:12:29.82 ID:G955tPzl0
時間と気力が足りないのに、文才を求めるとは笑止千万
533以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:21:55.40 ID:EqSNotitO
じゃあ何を求めればいいのよ!
534以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:24:52.34 ID:vlm9G+lO0
夢……、かな
535以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:26:44.21 ID:G955tPzl0
時間と気力に決まっておろうが!
536以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 03:36:40.19 ID:EqSNotitO
じゃあ寝るね
537以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 04:01:54.37 ID:EfksSy/F0
ねむたいね
538千年想(お題:小説とは何か?) 0/5 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 06:47:22.89 ID:G955tPzl0
できた
できたぞー
品評会投下します
539千年想(お題:小説とは何か?) 1/5 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 06:48:28.51 ID:G955tPzl0
 私はクシィを突き飛ばした。
 暗い部屋。ベッドの上。寝ていた私と覆い被さってきたクシィ。
「好きなんだ」クシィが言う。「ニトラさんのことが。我慢できないんだ」
「だからしてあげてるでしょう」
「手や口なんかじゃない。したいんだよ。やりたいんだよ。愛してるから」
 それは愛などではない。ただの欲情であるとよくわかる。
「あと五年我慢して」
 クシィの顔がゆがむ。彼だって、どうしていけないことなのかはわかっている。我慢すれば良いということも。
 だから、はじめから破綻していたのだ。
「ニトラさんだって、本当はそうなんだろう?」



 目を覚ますと、目の前のホログラムに広げられた女性器が映されていた。赤子の出産シーンだ。そういえばルー
プの設定にしていた。
 何か見たくない夢を見ていた気がする。ゆっくりと意識がまどろみから引き出されるにつれて、自身の指が、
自らの女性器に入れられたままであることに気付いた。パンツもズボンも履いていない。ティーシャツ一枚で机
につっぷして寝てしまったようだ。指を引き抜くと、まだ渇きはじめの愛液が細く糸を引いた。
 昨晩は三度イッたところまでは覚えている。数十年かぶりの新作で、興奮しすぎてしまったか。
 ティッシュで指と下をふき、椅子の下に落ちていた下着とズボンを身につける。今はもうなんの感慨もない。
 ホログラム内の女性は、繰り返される世界で何度目かの出産をしていた。グロテスクな扉から、グロテスクな
赤子が出てくる。周りを固める医者らしき人らは真剣で、こんな映像がでまわり、あまつさえ自慰の対象となる
なんて考えてもいないだろう。
 赤子は、叫ぶような泣き声をあげていて、母親は、何かをやりとげたような涙混じりの笑顔で、私はホログラ
ム再生機のスイッチを切った。
 鈴の音色のアラームが鳴る。今日は仕事の日だったか。まあ、別に送れても良い。私は、目覚ましを三時間後
にセットして、トイレに行ってから、ベッドにもぐりこんだ。
 この部屋に、今は、私しかいない。

 アラームが響き、私は目を覚ました。服を着替え、髪を少しとかしてからゴムで一つにまとめ、家を出る。自
540千年想(お題:小説とは何か?) 2/5 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 06:49:33.57 ID:G955tPzl0
転車を漕ぎながら、職場である遊園地に向かった。
 風を切りながら進み、すれ違う人々を見て、私はあの映像を思い出していた。みんなあんな風に生まれてきた
のだと。みんなあんな風に人から造られたのだと。でも、今は、子供を産むことのできる人はほとんどいない。
 あるずっと昔、今から三万年ほど前、人には選択肢としてある薬が与えられた。
 永遠の命 or 尽きる命。
 ただその永遠には条件があったのだ。あの薬の摂取時に、二十歳以上、二十五歳以下であり、童貞または処女
であること。そして被服用者は子供を造ることができなくなる。なぜ、そのような条件なのかはわからない。神
様の最後の抵抗なのかもしれない。
 だが、その薬の発生が、人類の歴史に不可逆な道を作り出したことは確かだった。
 はじめは多くの人が懐疑的であったし、法律面の問題もあり、なにより永遠の命や子供の作れなくなる体など
欲しがらない人が多かったという。
 けれど、一部の人間が摂取する。それは一年に割合でいえば一パーセントにも満たなかったかもしれない。け
れど、その少数の人間は死ぬことがなく、年々、永遠を手にした者の数は純増していく。そして、その割合が過
半数を超えたとき、価値観の決壊が起きた。
 永遠を手に入れることが普通になり、そうでないものがマイノリティとなったのだ。
 今では、九十九パーセントが永遠の命の保持者であり、残りの人間は、どこかの島に引き籠もってコミュニティ
を形成して暮らしている。
 薬の発現から長い時間が過ぎ、世界はついに安定した。
 単純労働の仕事は、人同様の姿を持つアンドロイドに任せられ、普通の人間には日々暮らす分の金銭が国から
支給されている。クリエイティブな人間にしかできない仕事のみが大きな価値を持っており、そういった能力の
ない人間が働くことは、ちょっと贅沢がしたいときや、労働そのものを味わいたいということに限られていた。
 私も、月に一度しか働いていないし、その仕事も今日で最後だった。
 遊園地に着き、専用の服に着替えて、観覧車の元に向かう。私が遅刻した代わりに働いていたアンドロイドと
交代して、お客さんを乗せた後で、ゴンドラの扉をロックする作業を始めた。
 少ない人々が入れ替わり、観覧車に乗り込んでいく。観覧車は止まることなく動き続けている。降りてくる赤
いワンピースのお客さんが、あの映像の赤ん坊に重なった。泣いてはいない。笑っている。でも、似ている。
 多くの刻を通過したこの時代、人気のあるポルノは、低年齢の人間の性行為か、出産のシーンがまとめられた
ものだった。どちらもこちらの国では見ることも味わうこともできないものである。だからこそ数十年の一度で
も新作でも多くの人間に求められているのである。永遠の命を持っている為、数十年程度のオーダーならば待つ
ことを厭わないという理由もあった。
541千年想(お題:小説とは何か?) 3/5 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 06:50:37.87 ID:G955tPzl0
 カップルが、観覧車の立つこの丘へ階段をゆっくりと上ってくるのが見えた。二人は手をつないでもいないし、
腕を組んでもいない。並んでいるというよりも、男性の方がいくらか前を歩いていた。それでも二人が付き合っ
ていることを知っている。
 彼らは、毎月来るお客さんだった。いや、もしかしたら毎週、さらに言えば毎日来ているかもしれない。ただ
私が働いている毎月十一日には、三百年間かかさず来ていた。
 二人は、いつも静かだった。数ヶ月に一度ぐらいに、交わす言葉から兄妹などではなくカップルであると確認
できた。彼らは観覧車だけに乗って、他の乗り物には乗らずに帰宅する。
 列のできない観覧車の前で私は静かに立っていた。二人が、パスポートを提示し、私はそれを確認して、頷く。
やってきたゴンドラのドアを開け、二人を赤いゴンドラの中へと促した。
 先に男性が乗り、続けて、女性が長いスカートを揺らしながら彼の隣に座る。
 この遊園地の中で、多分、二人が一番接近したときだろう。いつもいくらか離れているのに、このときだけは
服がふれあう程に近づいている。
 私は、慣れた手つきでドアを閉め、ロックを落とす。そのまま進んで行くゴンドラを見送り、観覧車のモーター
音だけが聞こえる丘の上で、二人にことを想像した。
 きっと手を握ることはないだろう。笑顔もなく、愛の言葉もなく、キスもない。ただ二人で同じ景色を見つめ
ている。そうして、二人で違うことを考えている。それで幸せなのだ、と考える。
 私は、あのカップルの男の人が好きだった。この二人が好きだったから、自分も同じようになれたら良いなと
思っていた。だから、この二人がいつか別れたら、告白しようと思っていた。けれど、三百年、彼らは変わらな
い月日を過ごしている。
 十分後、観覧車は一周し、彼らを乗せたがゴンドラが戻ってくる。私が、赤い扉を開くと、女性がふわりと降
り、それから彼が続いた。子宮から生まれる子供達のように。
 あなたが好きです。と言ってみようかと思った。けれどやはりしなかった。二人の関係は完璧であったように
思うし、その言葉で亀裂が入るようならば、この二人を好きにはならなかっただろう。
 私はいつも通り、二人の幸せそうな背中を見送った。
 夕日が落ちて、営業時間が終了した。観覧車は錆びついた音をはき出しながら、その鈍重な動きを止める。長
い長い間、補修を繰り返し当てられながら動いてきたこの観覧車も今日で役目が終わる。一週間後から解体作業
がはじまり、ここには別のアトラクションが建てられることになっていた。
 だから私の仕事も今日で終わりだった。だからといって、送別会だなんだとイベントはない。この遊園地で働
いている人間はアンドロイドを除けば十人にも満たないし、その人達が今日、来ている保証もない。
 いつもどおりシャワーを浴びて、着替えると、私は自転車に乗って遊園地を後にした。髪は結ばずに風に自由になびかせて。
542千年想(お題:小説とは何か?) 4/5 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 06:51:41.17 ID:G955tPzl0
 郊外を抜け、街に入り、私は美容院を目指した。今まで利用下のことはなく、一ヶ月ぐらい前に届いたメールで存在を知った店だ。
 髪を切ろうと思う。
 失恋であるなどの理由で。
 店の前に、自転車を止めて、中へ入る。アンドロイドが出迎えてくれた。店の主であるらしい青年は本を読ん
でいたが、こちらの顔を見ると様子を変えて、接客に乗り出した。
「どのようにしますか?」青年が言う。
「ショートにしてください。ばっさりと。失恋したので」私は席について答えた。
 その言葉に青年が表情を曇らせた。
 そのまま無言で、過ぎていく。椅子が動かされ、シャンプーが始まった。やわらかい手つきで、頭と髪が洗われていく。
 私は、十年前を思い出していた。そのころ、少年を拾ったのだ。
 あちらのコミュニティから逃がされたのであろう少年、名前はクシィと言った。まだ十歳程度の少年は、法律
を破り、命の危険を乗り越え、量子転送装置を経て、こちらの世界にやってきた。
 本来ならば、人体を再生する保証のない転送装置で、子供を送ることなどありえない。だが、あちらの世界か
らこちらへの転送は、まれに聞く話ではあった。
 向こうの世界では、永遠の命を得ない者の人口を保持するために、年に一度、十歳になったものに儀式が執り
行われる。式典というにはおぞましい姦通の乱交騒ぎ。
 年端のいかない子供達が、無理矢理、性行為を行わせられる。同年代の者ならばまだ良いが、儀式という名を
借りた年上の人間からの野蛮で強制的な性暴力もあるという。父、あるいは母からなど近親間の拒否権のない暴力。
 なぜ、そこまでしなければならないのかはわからない。プリミティブな寿命という概念にいつまでも囚われて
いるせいなのか、いずれ崩壊するコミュニティの延命に何かの意義を見いだしているのだろうか。
 そのせいか、だからこそか、子供の頃にそういった体験を受けて、疑問に思った親、自分たちの子供をそういっ
た行為に差し出したくない親が、こちらへ子供を送りつけることがある。
 クシィはそのような理由でこちらへやってきた。
 そんなクシィを拾った私は、国に申請を出して、一緒に暮らし始めたのだ。彼が十五歳になったときに離れるまで。
「昔、私がシャンプーしてあげたよね」私が言う。
「そうですね」クシィが私の髪を洗いながら答える。「おぼえてます。ニトラさん、下手だったからシャンプー
ハットしてても目に入って」
 別れたころの面影を残してはいたが、彼はもう立派な大人になっていた。薬を摂取し、永遠の命を手に入れて。
 会話は少なく、彼はもくもくと作業を進めていく。私の髪は切り落とされて、布をたどって床にこぼれた。
 クシィと暮らしていたとき、はじめは楽しかった。子供というものを久しく忘れていたし、三万年続いてきた
543千年想(お題:小説とは何か?) 5/5 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 06:53:49.28 ID:G955tPzl0
変化の乏しい生活の中でクシィの出現は、大きな特異点となった。
 けれどそんな生活は長くは続かない。
 国の承認を求めた際に、委員会のアンドロイドに忠告されたように、クシィが成長し、大人になるにつれて男
女という問題から離れることができなくなった。
 こちらの世界では、薬を摂取していない者との性行為は重罪とされていた。人の将来を奪うのである。ずっと
昔で言えば殺人罪に等しい行為だった。
 だからクシィが大人になるまではできない。
 それは私もクシィもわかっていた。頭では。
 あのとき、私は彼を大切に思っていたが、それは男女間の愛情ではないとわかっていた。母性と、めずらしく
なった子供への性的な好奇心という欲情でしかなかった。クシィからも、欲情以上のものは感じなかった。
 そして、どうしようもなく、欲情に負けそうになったとき、
『ニトラさんだって、本当はそうなんだろう?』
 その言葉を、声を聞き、あのクシィの顔を見たときに、彼を施設に預け、離れることを決めた。
 それから五年。今日、成長した彼の顔を見る。クシィが鏡越しに微笑んでいた。
「終わりました」
「ありがとう」
 料金は国から払われる。だから私は立ち上がり、ただの客として出口の方に向かう。そんな私を追いかけるよ
うに、背後から声が聞こえた。
「俺の気持ちは変わってないよ」
「私はよくわからない。あなたの顔を見て……」私は言葉を詰まらせる。「だから次にここへ来るときまで待って」
 クシィがあのときのような顔を見せる。それでも答えてくれた。
「わかった。待ってます」
 彼にとって、この五年は、人生の四分の一にあたる長い期間だった。私にとって、五年とは人生の一パーセン
トにも満たない、一瞬の時間だった。
 だからわからない。
 クシィにそのような気持ちを持っているのか。クシィが私に抱いている気持ちは本物であるのか。ただ、子供
の頃に植え付けられた虚構ではないのか。
 私は、クシィに微笑んで店を出る。私は、あの観覧車の二人のように、クシィを本当に愛したいと思う。
 だから、千年後にまたここに来ようと思った。
 きっとクシィはいないだろうけれど。                              <了>
5442月14日に黒幕が仕掛けた小説のような色事 4/4(お題:色) ◆X78jHks0c. :2011/02/13(日) 08:53:11.14 ID:1oCmvcME0
名前欄を変更しました。
545以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 08:55:09.11 ID:P1MTGTySO
揃いも揃って天才ばかりか
546っしゃあ(お題:バレンタイン) 0/6  ◆nMrH5hLFa2 :2011/02/13(日) 09:44:12.86 ID:epeghNl/0
完成しました。投下いたします。
雑ですが読んでいたければ幸いです。
547っしゃあ(お題:バレンタイン) 1/6  ◆nMrH5hLFa2 :2011/02/13(日) 09:46:55.97 ID:epeghNl/0
 女友達である高里春菜が茶道部の部活に行った事を確認すると、一年一組のクラスで、
僕が待たせていた米田真に相談を持ちかけた。
「は? 逆チョコ?」
 目の前の米田は一瞬ぽかんとした。あたかも僕を未確認飛行物体とでも言わんがばかり
の表情だ。
 ヨーロッパやアメリカじゃ、バレンタインデーは男女問わず好きな人や親しい人に対し
て贈り物をする日だ。と、この高校の家庭科の女教師が日本のジェンダーについて語る際
余談として喋っていた。いかに座席番号が四十人中四十番で一番聞きづらい位置にいたか
らって、僕と時同じくして一年一組の授業を受けていたのだから、聞いていないとは言わ
せないぞ。・・・彼が寝ていなければ、だけど。
「接点無いならともかく、高里とお前仲良いじゃないか、何も逆チョコなんて。」
「桑島が言ってたじゃないか、ヨーロッパとかアメリカとかじゃ…」
「真に受けるなよ、三十過ぎて未婚のおばさんのセリフだぜ」
 何となくやりこめられた気がした。尤も、僕の意志が揺らいだ訳じゃない。
「恋ってのは受け身じゃ駄目なんだ」
「それで?」
「・・・それだけだよ、ここで今まで経験してきた苦い思い出を口にしたら、馬鹿みたいじ
ゃないか」
「馬鹿だろ、実際」
「違うよ、好きな人に告白するってのは、一大決心なんだ」
「だからそういうのを“馬鹿”って言うんだ」
 返す言葉もない。
「で、何で俺に相談するんだ」
「チョコチップクッキーの作り方を教えてくれ」
 他の科目はてんで平凡な技能しか発揮できない米田だけれど、家庭科の、料理に関して
だけは上手だ。彼は家庭科部の唯一の男子部員で、お菓子作りではスコーンだのプリンだ
のを作っていた覚えがある。因みに僕は体験で入ってたが、男子が他に米田しかいないの
でそそくさと辞めた。米田はそのときからの腐れ縁だ。
「どこで練習するんだ。まさか調理室なんて言わないよな?」
548っしゃあ(お題:バレンタイン) 2/6  ◆nMrH5hLFa2 :2011/02/13(日) 09:48:54.27 ID:epeghNl/0
 丁度のどからその言葉が出かかったから、僕は思わず思案する素振りをした。
「この時期に調理室を借りてクッキー作ってるのを? 他の連中にみせたいか普通。」
 それは米田の面子に関わることだ。
「んじゃ米田の家」
「親も大差ないと思うぞ」
「皆に知られるよりマシじゃないか」
 我ながら話がまるでかみ合ってないと思う。
 だが米田は、話のかみ合ってないのを問い詰めずに、寧ろなんだか楽しそうな表情をし
て手の甲にあごをのせ肘をついている。よく見ると意地悪そうな笑顔だ。
「まぁ手伝ってやるよ」
 案外素直にOKの返事をもらったので僕は一瞬きょとんとしたけれど、その後すぐに僕は
喜び勇んで
「っしゃあ」
と僕らしくない声をだして立ち上がった。

「チョコって包丁つかうの?」
「当たり前だ」
 まずチョコレートを刻み、チョコチップを作る。次に無塩バター五十グラムを溶けない
程度に電子レンジで加熱、柔らかくする。上白糖三十グラムを加えハンドミキサーでよく
混ぜ、生クリームをごく少量投入しよく更にかき混ぜる。七十グラムの薄力粉、五グラム
の純ココア、二十グラムのアーモンドプードルを入れてへらを使って生地をこね上げ。ま
とまってきたらチョコチップを入れて形を整えラップに包み三十分寝かせる。寝かせ終わ
ったら、クッキーっぽい厚さに切って百八十度のオーブンで十五分。
 たったこれだけの説明だけれども、ほぼ初心者の僕にはハードだった。一回目の最初、
バターを柔らかくするのだって、溶けて液状になってしまって台無しになった。二回目は
薄力粉とかを入れた後まとまらなくてそのうちバターが固まってやはり駄目だった。結局
焼く行程に入れたのは三度目だ。
 エプロン姿でオーブンレンジの目の前に立って、中の薄暗いオレンジ色の光を見ている
うちに、ふと僕はつぶやいた。
「うまくいくかな」
549っしゃあ(お題:バレンタイン) 3/6  ◆nMrH5hLFa2 :2011/02/13(日) 09:50:31.62 ID:epeghNl/0
 僕はちょっと失敗が続くと、どうも気分が落ち込みやすいみたいだ。だけど米田は
「さぁな」
 と言うだけで、励ましの言葉もかけない。答えようがなくて米田の方を向く気になれな
かった。
 数分たってオーブンを開けると、それこそ陳腐な言い方だけど、チョコクッキー色をし
たというようなクッキーが出てきた。僕はミトンを使って黒いオーブン皿を取り出し、白
いお菓子皿にのせる。甘いココアの匂いがふんわり広がったとき、僕はやったと確信した。
「どれ」
 横からひょいと右手で僕のクッキーをつかむと、米田は口に遠慮無く含めた。
「大したもんだ。」
「っしゃあ」
 二度目だ。
 
 僕は家から持ってきた菓子袋にクッキーを丁寧に詰めた後、玄関先で家に帰る前に改め
て米田にありがとうと言った。米田はちょっと恥ずかしげに、ああ、と口にした後、にや
ついて更にこう付け加えた。
「楽しいもんだ」
「え?」
「人の恋愛にちょっかいだすのはな」
 米田はいつも通り、意地悪だった。

 二月十四日の放課後になった。僕は手持ちのバッグになんて乱暴な扱いはできなくて、
丁寧に紙袋の中にいれてゆれないように学校へ持ってきていた。放課後になるまで、途中
他の友達の殆どが
「誰にもらった?」
なんて聞いてきたけど、全部はぐらかした。
550っしゃあ(お題:バレンタイン) 4/6  ◆nMrH5hLFa2 :2011/02/13(日) 09:54:51.58 ID:epeghNl/0
 まだ殆ど言ってないけど、僕が好きな高里春菜は、僕の唯一の女友達で、茶道部員だ。
高一の初めに茶道部に入部して以来、毎週二回の、先生が来る日、それから更に三日、自
習として作法室に通っているほど、茶道が好きだ。僕も一回だけ自習のお点前の席に呼ば
れたことがあるけども、お茶を点てるまでの動作、点てる動作も、様になっていた。つい
でに、その時に茶道具も逐一教えられた覚えがある。でも、茶道に関しては積極的だけれ
ど、いつもの態度は無口であまり笑顔も見せない。
 僕が高里を好きになった理由なんて覚えてない。そりゃ、ごくたまに見せる笑顔が可愛
いだとか、おしとやかで上品そうにー事実茶道部だから当たっているだろうけど―見える
とか、そんな些細な理由は幾らでもある。ただ一緒にいて好きになっていったんだ、なん
て言ったら、絶対高里は付き合ってくれないけれど、実際そうだったんだと思う。
 高校は授業を受ける別館と、職員室と部活動の部屋がある本館に分かれている。本館四
階に、高里が毎週合計五回欠かさず茶道の稽古を行っている作法室がある。茶道部は、去
年三年生部員が受験を理由に部活に参加できなくなったのを機に、部員が高里一人になっ
た、あまり人気のない部である。
 僕は、茶道の先生が作法室から出て少し経った後、作法室の戸を静かに開けた。
「失礼します」
 高里はまだ茶道の練習をしているみたいで、奥の方から
「はーい」
 と聞こえてきた。
 作法室は、途中板張りの短い廊下が正面から見て右にあり、廊下側から入っていくと、
正面には茶道を行う狭い四畳半の座敷がある。廊下のすぐ隣も四畳半だけど、こっちは使
ってないみたいだ。一方今の僕から見て左側には、座敷から見えないように廊下に垂直に
なっているけれど、茶碗や茶筅(※一)の洗い場がある。
 茶道を中断して廊下側から出てきた制服姿の高里は、緊張した顔の僕の様子が少し気に
なるのか、
「どうしたの」
 と声をかけた。
「あの、高里」
「何?」
 口がぱさぱさのクッキーを含んだみたいに乾いている。
551っしゃあ(お題:バレンタイン) 5/6  ◆nMrH5hLFa2 :2011/02/13(日) 09:56:33.05 ID:epeghNl/0
「これ、その、逆チョコ、というか、出来悪いけど・・・」
 干からびて何も言えなくなる前に、僕は透明なお菓子袋を彼女に差し出して、無理に手
に持たせた。
「・・・」
 これだけじゃ駄目だ。
「好きだ」
 高里は手に取ったお菓子袋をもったままだった。けれど、しばらくして小声が返ってき
た。
「あがって」
「え」
「薄茶出すから」
 僕は訳が分からないまま、彼女のお茶席に呼ばれることになった。

 水指と棗、それに茶碗は既に置き終わっていた。建水もだ。厳密にはこの後棗や茶杓を
拭いたりするらしいのだけれど、実質僕にお茶を出すだけになる(※二)。
 僕は一瞬、
(お茶菓子とでも勘違いしたのかな)
と思ったけれど、好きだって言ってるんだから、それはないなと修正した。だけれど、心
の緊張は困惑とともにピークに達していたから、正座を、痛いな、なんて感じる余裕もな
く、馬鹿らしいほどに真っ正直に正面を向いていた。いや、にらんでいた。そんな僕を高
里は見ずに、炉の上にある釜の蓋をあけている。もわっと蒸気が零れたとき、僕は取り留
めもない蒸気と自分の心を重ねて、少し感傷的になった。
 だから、高里が出来たお茶を持って僕の正面まですり足で寄ってくるまで、僕は呆然と
していた。僕はいきなり近づいてきたものだと思って、ちょっとびっくりして、お茶を前
に出されてもすぐに反応できなかった。炉の前に再び正座した高里は、ちょっとだけ困っ
たように
「お点前頂戴いたします、だよ」
と目を釜に向けたまま言った。
「お、お点前頂戴いたします」
552っしゃあ(お題:バレンタイン) 6/6  ◆nMrH5hLFa2 :2011/02/13(日) 09:58:25.83 ID:epeghNl/0
 僕はぎこちなく茶碗をとって、薄茶を頂いた。苦くないけれど、それ以外はあまりよく
わからない。センチな気分って、罪だ。
 それから、高里はお茶をもう一杯点てて、僕の隣に座った。そしていつの間にかスカー
トのポケットに入れていたお菓子袋を取り出して
「本当は、こうじゃないんだけどね」
と言って、懐紙(※三)の上でクッキーを小さな口で一口、食べた。
「甘いね。美味しい」
「あ、ありがとう」
 さっきまでのセンチな気分は、一気に反転して高揚した。
「薄茶、美味しかった?」
 本当はよくわからなかったなんて言えないから、僕は
「うん」
と答えた。
「手作り、だよね」
「うん」
「私、それに応えたかったの」
 そうつぶやいて、高里は黙り込んだ。僕も黙り込んだ。ただ僕は心の中で「っしゃあ」
と小さくガッツポーズを決めていた。

<了>

※一 お茶を点てる際に泡を立てる道具。
※二 水指は、点茶の際、釜に水を足したり、茶碗や茶筅をすすいだりする際に使う水を
蓄えておく容器。建水は同じく点茶の際に茶碗をすすいだ湯水を捨てる容器。棗は抹茶を
入れている容器。茶杓は抹茶を掬う杓。
※三 お菓子を食べる際などに使う白い和紙。
553ジョージ・ドジソン(お題:小説とは何か?) 0/4 ◆svacoLr1WE :2011/02/13(日) 10:46:24.09 ID:Kqz9Cqzp0
品評会投下。
>>474>>475のお題もねじ込みました。
554以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 10:47:03.92 ID:Kqz9Cqzp0
 薄暗い屋敷の狭い一室に、二人の男がいる。二人は足の短い机を挟み、向かい合う形で
黒い革のソファに座っている。机の上には、酒を波々と注いだタンブラーが二つ、そして
一つの封筒が置かれている。男の一人が読んでいる書類は、その封筒から取り出されたも
のだろう。

その夜、私はジョージ・ドジソンの屋敷に招かれ、彼と夕食を共にした。給仕が卓上に
残る最後の食器を下げた頃、彼は片手で象牙のパイプを弄びつつ、思い出したように呟い
た。
「『生物多様性』という言葉を、君は勿論知っているだろうね」
「最近何かと耳にする。環境主義者の都合の良い口実になっているようだが」
「よろしい。ならば、『不思議の国のアリス症候群』を知っているかね?」
「心理学の術語かな。ピーターパン症候群の亜種だろうか。それで、その二つの言葉がど
うかしたのかい?」
ドジソンが単に自身の博学をひけらかす目的で、このような戯れに興じるような
人物ではないことを、私は承知していた。だから私は彼の意図を探ろうとしたのだが、彼
は私の詮索など意に介さぬ様子で、淡々と言葉を続けた。
「不思議の国のアリス症候群というのはね、簡単に言うなら、視覚の異状のことさ。大き
いはずのものが小さく見えたり、逆に小さいものが大きく見えたりする。この名称の由来
は、説明するまでもないね」
「我らがイギリスの誇る大作家ルイス・キャロル。知らない方がどうかしている」
「その通りだ。ところで、これから僕は一つ話をしようと思うのだけど、この話が最大の
効果を発揮するためには、この二つの問い掛けが大切なのだよ」
「最大の効果、と君は言ったかい。それは一体どういうことかな」
「まあ、追々わかってくるだろうさ。ともかく話を始めよう」
「その前に場所を移さないか。僕はどうも、こう徒広い場所は落ち着かなくてね」

 書斎に行くと、彼はデスクの引き出しからウイスキーのボトルを取り出した。
「冬の夜は長い。水割りでも舐めながら、小説にも勝るという事実の妙味とやらをよくよ
く楽しもうじゃないか」
555ジョージ・ドジソン(お題:小説とは何か?) 1/4 ◆svacoLr1WE :2011/02/13(日) 10:48:05.39 ID:Kqz9Cqzp0
「事実?」
「ああ、今から僕が話すことは紛れもない事実だよ。尤も、若干の脚色はするだろうから
、ノンフィクションとは言えないかもしれない」
そう言うと、彼は波々と酒の注がれたタンブラーと、いつの間に用意したのか、淡い黄
色の封筒を私に手渡した。
「やけに分厚い封筒だね。中を覗いても良いのかな」
「勿論。ただ、その中に入っている十七枚の内で重要なのは一枚だけだ。どれでも良いか
ら、手に取って読んでみたまえ」

 封筒に入っていたのは原稿用紙の束であり、そこに書かれていたものは、おそらく小説
の一節であった。最初の二三行を読んですぐに、私はあることに気がついた。
「これは、ここに書かれているのは、僕達だ! なかなか手の込んだ余興じゃないか」
薄暗い部屋、二人の男、タンブラー、そして封筒。道具立ては寸分違わず事実と符合し
ていた。私は、ドジソンが予め用意していたこのシナリオに従って、事実の方を創作した
のだと考えた。自分が彼の物語の登場人物として良いように利用されていたのだとすれば
、それは気分の良いことではない。
「君はどうしてまたこんな悪戯を考えたのだろう」
彼は大袈裟に肩をすくめて見せた後、やはり芝居がかった調子で答えた。
「まず、それは僕が書いたものではない。ジェームズ・ドッドソンなる人物から送られて
きたものだ。僕はこの喜劇を演じるにあたって、少し細部を弄っただけさ。例えば、君の
話し相手はジェームズ・ドジソンではなくジョージ・ドジソンだ。僕が君に尋ねた言葉は
『不確定性原理』と『認知的複雑性』ではなく『生物多様性』と『不思議の国のアリス症
候群』。そして今、君が口をつけたのも、アクアヴィットではなくウォトカだ」
「君は僕の質問に答えていないよ。僕は、どうして君がこの不気味な茶番を演じる気にな
ったのか、それを聞きたいんだ」
「ふむ。まず君は食堂で僕が言った言葉を思い出すべきだ。あるいは、ほんの数秒前のこ
の部屋でも良い」
「『生物多様性』と『不思議の国のアリス症候群』のことかい?」
556ジョージ・ドジソン(お題:小説とは何か?) 3/4 ◆svacoLr1WE :2011/02/13(日) 10:49:02.29 ID:Kqz9Cqzp0
「そうさ。僕はちょうど先週の今日、この緑色の封筒を受け取った。そのときにこの話を
思いついたのだよ。ところで、ふとした折に、自分が誰かの物語の登場人物に過ぎないの
ではないか、なんて考えることが、君にはないだろうか。僕にはある。でも僕は、退屈な
道化役なんて御免蒙りたい。しかし、どうやって? 素朴に考えるなら、僕はどうにかし
て物語の向こう側、つまり、書き手の側へ行ってしまえば良い。だが、意志の力だけで以
てここから抜け出すことは、不可能だ。ここというのがどこのことだかすらわからないの
だから。そこで、逆に物語のほうが勝手に僕のことを排除してくれる、そういう構造を作
ってしまえば良いと僕は考えた。しかし、ここでもまた一つ問題が生じる。つまり、ある
物語が僕を放り出すためには、僕はその物語に属していながら物語だけを巧妙に書き換え
なければならない。単に物語を書き換えるだけなら簡単さ。僕の名前を変えてしまえば事
足りる。でもね、それは僕とは何の関係もない全く別の物語を生み出すことに他ならない
。不変量、定点、アイデンティティ、呼び方は何でも構わないのだけど、僕の書き換えた
物語が以前の物語と同等のものであるという保証が必要なのだよ。
ああ、君は勿論気がついただろうね。ドッドソンの小説の中には、君に当たる人物の固
有名が存在していない。これは非常に好都合だ。つまり、この物語を多重にネストするこ
によって、君は君でありながら、この封筒の中を転落し続ける。そのとき、君はアイデン
ティティとして物語を入れ子のより深層へと引きずり込んでくれる。ああ、君は特別に何
をする必要もないのだよ。君でありながら君ではない君がどこかで、今夜のように僕の話
を聞いているという事実があればそれで良い。もっとも、君の話し相手である僕はジョー
ジ・ドジソンであったり、ジェームズ・ドッドソンであったり、チャールズ・テッドソン
であったりするのだけど。まあ、そのおかげで僕は自動的に物語から離脱し続けるという
寸法さ。ジョージはジェームズではないし、ジェームズはチャールズではないのだから。
さて、この辺りで君の意見を訊きたいな」

そこまで話し終えると、彼はタンブラーに口をつけ、私に挑戦的な視線を投げかけた。
「毎度のことながら、君の話は理解し難い。だが、少しだけ興味深い。今回の話は、君な
りの物語論ということかな。ところで、君は君が二つ前に言った言葉をやっぱり忘れてい
る」
557ジョージ・ドジソン(お題:小説とは何か?) 4/4 ◆svacoLr1WE :2011/02/13(日) 10:49:55.70 ID:Kqz9Cqzp0
「ふむ、解説が欲しいのかい。まずは『生物多様性』、これはそのまま生物を物語と読み
替えれば片がつく。僕は、この茶番に殆ど無数の物語を詰め込んだ。つまり、この話は非
常に健康な多様性を有しているということではないだろうか。次に、『不思議の国のアリ
ス症候群』は遠近の感覚を狂わせる。それは視点の倒錯のメタファーと考えられる。そし
て、この話は君という語り手が記述することで初めて成り立つのだよ、逆説的にね。これ
で満足かな」
「こじつけじゃないか!」
「ああ、こじつけさ! こじつけだよ、君!」
彼は唐突に笑いの発作を引き起こした。かと思えば、数秒の後、彼は笑い出したときと
同じ唐突さで笑いを止め、真面目な顔を作り上げた。
「こじつけは不条理を可能にする。ここで、僕から君に質問だ。君が初めに飲んでいたウ
イスキーはどこへ消えた? そこの封筒は最初から緑色だったろうか? 僕が君に望む
返答はただ一つ、ただ一つだ」
つまり、こういうことなのだ。これで、その夜の話は幕となる。
「君の名前を教えてくれないか?」

彼は満足そうに微笑んだ。
「よろしい。ここらで僕は葉巻をやりたいと思うのだけど、君はどうする?」
558以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 10:51:18.62 ID:Kqz9Cqzp0
タイトル部分を豪快にミスったけど木にしないでください。
559以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 12:03:43.97 ID:Aapt7uqZ0
>>478
遅くなりましたが、感想ありがとです。
まさか読んでくれる人がいるなんて思ってなかったから、プラウザ開いてなかった。
もやもやさせてすいませんでした。書き方がまずかったのかなぁ。
560以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 12:47:02.72 ID:sD22nImC0
みんな頑張れ
561以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:27:14.47 ID:EcW0b8o9O
562以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:43:45.19 ID:nOd0r6Gz0
お題ください。
563以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:48:32.09 ID:H3Qd/xFx0
評価
564以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 15:05:23.96 ID:thn8uC0H0
久しぶりに書き上がったけどこれは品評会に投下できるレベルじゃない気がする
565以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 15:13:53.83 ID:sD22nImC0
よろしい、全館でぼこぼこにけなしてあげようじゃないか
566以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 15:28:29.06 ID:thn8uC0H0
とりあえず推敲してくる
目標は関心票2票
567以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 16:09:51.04 ID:sD22nImC0
ライン数で八行オーバーした
改行位置で整えるにはちょっと微妙なオーバー数だよね
568以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:00:47.91 ID:75j3ixY6O
お大工ダサい
569以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:02:02.67 ID:RbK5UlvSO
570以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:02:21.74 ID:NiQ3XQJz0
571以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:20:14.00 ID:DrpzvG3o0
お題ください
572以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:21:27.11 ID:7WhaoyAx0
つながり
573以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:30:29.67 ID:RbK5UlvSO
手を付けたはいいがまとまる気配がないので今回は感想専です
574以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:51:02.52 ID:hs4Msa3t0
お題頂いてもよろしいか
575以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 18:00:22.17 ID:A52MgAor0
>>574
炊飯器
576以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 18:02:43.11 ID:A52MgAor0
β版入れたら、やっとjane styleから書き込めるようになった。
577以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 18:25:49.14 ID:EqSNotitO
サクラエディタで右端て折り返す設定にしてるんだけど、見た目の行数って表示できないの?
教えてえろいひと
578以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 18:44:32.74 ID:EqSNotitO
着地点ははっきりしている。
肝心なのは着地の姿勢だ。ブレないことも重要だ。
579誰がために空まわる(お題:バレンタイン) 0/4 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 18:53:25.63 ID:G955tPzl0
できたー
できたぞー2作目
品評会投下します
580誰がために空まわる(お題:バレンタイン) 0/4 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 18:54:30.74 ID:G955tPzl0
「トッコはもうチョコあげたの?」
 屋上へと続く階段の踊り場、人気のないそんな場所に二人で隠れて、吉浜佐和ちゃんが、私に案配を尋ねた。
「まだ。やっぱり渡せないよ」私が言う。「断られたりしたら」
「雪村なんか、バスケ部でモテて、いっぱい貰ってるから大丈夫だって」
「そうだけど……」
 今日は二月十四日のバレンタインデー。なんでこんなイベントがあるんだろう、と私は思う。それに何でチョ
コレートなんて作っちゃったんだろうとか。
「せっかく作ったんだから渡さないと」
 佐和ちゃんは私を元気づける。彼女は真面目で元気で良い人だ。だから、今の私の様子を楽しんだりしてるの
ではなく、心の底から応援してくれてる。
「だって、私みたいな暗くてかわいくない女子に、もらっても嬉しくないでしょ」
 鏡を見れば、自分がかわいいわけではないことがわかる。メガネを外したら美人になるような世界には住んで
いないのだ。何より、もうコンタクトにしていたし。
「大丈夫だって。そりゃ私もトッコもすごい美人とかじゃないけど。もらえれば嬉しいものじゃない?」
「そうかなあ」私はため息を吐く。「佐和ちゃんはあげたの? 誰にあげるのか教えてくれなかったけど」
 昨日は、私の家で一緒にチョコを作っていた。
「あげたよ」
「え、どうだったの?」
「気軽にもらってくれたよ。そんなもんだって、その人もいくつか貰ってたみたいだし」
「そうかあ」
 そんなところでチャイムが響いた。四時間目の授業が始まる合図だ。私と佐和ちゃんは急いで教室に戻る。
 席に付くとまだ先生は来ていなかった。私は中央一番後ろの席で、佐和ちゃんは廊下側の前から三番目の席に
座っている。私の隣は、あの雪村くんの席だった。隣になっていろいろ知って、好きな感じになったのだとなん
となく思う。それまでは活発な雪村くんと接点らしい接点は何もなかったし。
 ただ、まだ雪村くんは別の男子と話していて、教室の前の方にいる。
 高野先生が教室に入ってきた。まだ若い、世界史を教えている二年目の男の先生だ。全体的に細くメガネをかけている。かっこよく、影で女子に人気があるけれど、私はあまり好きではない。どこか陰湿な感じを受ける。
「雪村席ついて。授業はじめるぞ」
「はい、はーい」
 雪村くんが慌てて戻ってくる。隣に座った雪村くんの顔を見ると笑い返してくれた。なんだかとても良い気持
ち。ずっとそうしていたいと顔が少し熱くなる。
581誰がために空まわる(お題:バレンタイン) 2/4 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 18:55:36.01 ID:G955tPzl0
「では、今日は、イグネイピア王朝の凋落について。この王朝は、一部で早くから民主主義的な側面を取り入れ
て……」
 授業が進んでいく。私は理数系だったので、世界史はあまり好きではない。年号を覚えるのが苦手なのだ。そ
んなことをする意味がわからないし、楽しくないから。それ以外ならテストも簡単だけど。
「ここまでで、何か質問ある人」高野先生が、教室を見回す。
 私の斜め前で手があがった。
「ん、じゃあ、三壁」
 手をあげていたのは、いつもは質問なんかしない三壁さんだった。
「先生はチョコいくつもらいましたか?」
「十個ぐらいです」
 高野先生は表情を変えずに、むしろ侮蔑したように言う。
 子供の戯言になどつきあってはいられないという様子で。
「では、他に質問はなければ……」
 三壁さんがなんだか震えている。高野先生の無機質な返答に何かを傷つけられたと感じたのかも知れない。も
しかしたら、彼女は高野先生のことが好きだったのかも知れない、とも思う。三壁さんは、少し興奮して目を潤
ませ踊らせた様子で言った。
「誰からもらいました。須田先生とかですか?」
 須田先生とは、この学校で一番美人と言われている数学の先生である。
「このクラスでは、吉浜から頂きました。ありがとう。そして、須田先生からは頂いてません」
 佐和ちゃんの名前が読み上げられた。
 突然、あげられた名前にクラスは盛り上がる。佐和ちゃんの方を見ると顔を紅潮させていつもの元気な佐和ちゃ
んでないように縮こまっていた。
「よしはまー。高野にあげたのかよ−」お調子者の男子が言う。
 それに合わせてくすくすと笑いが起こる。佐和ちゃんは何も言わない。
 高野先生は、余計なこと言ってしまったと顔をしかめていた。場を落ち着かせるためか、はやし立て男子を注
意する。
「はい、静かに。こんなことで騒がない」高野先生は小声で続ける。こんなくだらないことでと。
 佐和ちゃんはかわいそうなぐらい俯いていた。せっかく作ったのに、勇気を出したのに、くだらないなんて言
われたのだ。佐和ちゃんは笑って気楽に言ってたけど、チョコを作って渡すなんて本気だったに決まってる。た
とえそれが無謀な願いだとわかっていても。
582誰がために空まわる(お題:バレンタイン) 3/4 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 18:56:42.40 ID:G955tPzl0
 そのとき、隣に座っていた雪村くんが突然立ち上がって、言った。
「高野先生。サイテーです。そんなことはここで言うな!」
 クラスのみんなの視線が雪村くんに集まり、それから高野先生に移動する。
「だよねー」
「名前いっちゃったりとかはない」
「もらって調子のっちゃってたんじゃない」
「きもい」
「ひどいよ。吉浜さんだって真剣だったかもしれないのに」
 クラスの女子が、先生に言葉をぶつけはじめ、さっきまで笑っていた男子もそれに同調し始める。
 高野先生は、予期せぬ、攻撃に戸惑い始めた。そう、先生もまだ二年目の新米教師で、無理して先生らしく振
る舞っていたけれど、そんなに強くはないのだとわかった。
「先生、吉浜さんにあやまりなよ」
「それで、お詫びのデートとか、キャハ」
「高野先生、吉浜に謝ってください」雪村くんが言う。
 私も、高野先生に何かを言おうと思った。親友の佐和ちゃんのしたことにあんな酷いことを言ったのだ。
 でも、私が言う前に、大きな音が教室に響いた。
 佐和ちゃんが立ち上がり、机をバチンと叩いた音。
「先生、授業を続けてください」
 佐和ちゃんの顔は真っ赤だった。
「私は、先生のことが好きです。先生の教えてくれる世界史が好きです。いろいろ脱線しながら、楽しく教えて
くれるこの授業が好きです。だから授業してください。もうみんな、ちょっと黙ってよ。はずかしいじゃん!」
 それだけ言って、席に付いた。
 その後は、みんなすぐに静かになった。教室を覆っていた変な空気も笑い声も、減退振動で消えていった。
 高野先生は終始引きつった顔で授業を続けていたし、隣の雪村くんはまだ怒っていたようだけど、それでも授
業は通常の行いを取り戻した。
 私は、みんなにつられて悪口を言いそうになった自分を嫌悪した。
 チャイムが鳴って授業が終わる。高野先生は逃げ出すように教室を後にした。
 お昼を一緒に食べようとお弁当を持って佐和ちゃんの元に行くと、雪村くんが、のそのそと歩いてきた。
「さっきはごめん。あんな……」
「いいよ。ありがとう。うん……ごめん」佐和ちゃんが机にさがっていた鞄を持つ。「トッコ、今日のあの場所
583誰がために空まわる(お題:バレンタイン) 4/4 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 18:58:36.40 ID:G955tPzl0
にいるから来て。雪村、本当に、ありがとう」
 佐和ちゃんは、今にも泣き出しそうなのを隠すように小走りに出て行った。

「おまたせ」
 私は、屋上へと続く階段の踊り場にやってきた。人は、うずくまってる佐和ちゃんしかいない。佐和ちゃんの
隣の階段一段目に座った。
「おそいよ。泣いちゃったよ」
「うん」
 私は、頭に浮かんでいる言葉を必死に絞り出す。
「私も泣きそう」
「なんで?」
「雪村くんに渡してきたよ。チョコ」お弁当を包む布の結び目を開く。「でも、ダメだった。もらってはくれた
けど」
「そっか」
「佐和ちゃんって、先生のどんなとこが好きなの?」
「変なんだけどね、アニメとかで悪の女王様の秘書とかやってそうなタイプが好きなの。冷徹でぶれない感じの
頭良さそうな人」
 確かに、高野先生はそんなタイプだ。
「でも、ダメだね。今日のあの様子だとちょっと幻滅な感じ。もっとクールな人が良いよ」
「そっか」
 佐和ちゃんは涙をこぼしている。でも、強がりではないように思う。
「雪村くんね、あんなにチョコを貰ってるのに、好きな人からはもらえなかったんだって」
「そう」
「雪村くんは、なんか男前な人が好きらしいよ。元気な人が良いって」
「そうなの? なんでそんなことトッコに言うんだろう。デリカシーのないやつ」
「佐和ちゃんは、雪村くんのことタイプじゃない?」
「全然だよ」
「そっかあ」
 踊り場の窓から、空の青い色が見える。晴れている。でも雲も浮かんでいる。
「世の中、上手くいかないよね……」と私はこぼした。              <了>
584以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 19:01:31.75 ID:G955tPzl0
以上です。

「先生、青春ってなんですか?」
「それは青春を終えた人が、昔を懐かしむときに浮かべる幻だよ」
585以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 19:16:50.58 ID:qgB0OEAWO
久しぶりにお題を下さい
586以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 19:26:05.01 ID:sD22nImC0
>>585
懐かしいもの
587以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 19:35:15.94 ID:7WhaoyAx0
三作も書くやつがどうちゃらとか言ってたやつはどこのドイツのベルリンだよ
588以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 19:44:09.52 ID:qgB0OEAWO
>>586
懐かしいもの把握。
ありがとう。
589以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 19:55:51.33 ID:hs4Msa3t0
高野先生カワイソス
590 冒険の書【Lv=7,xxxPT】 :2011/02/13(日) 20:07:20.89 ID:A52MgAor0
>>577
sakuraは多分無理。terapad使え。
591生誕 -Son and M-(お題:黒幕) 0/2 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 20:35:55.72 ID:G955tPzl0
できたー
できたぞー3作目
品評会投下します
2レス


>>587
もうひとつ考えてあるんだけどやめといたほうが良いだろうか
592生誕 -Son and M-(お題:黒幕) 1/2 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 20:38:00.44 ID:G955tPzl0
 くじら型飛行船ホエールズは、スクリュウをフル回転させて、まんまるお月様の浮かぶ方向へ推進していまし
た。燃料は真っ赤なワインです。夜は暗く、星の光はまばらでした。
 ぼくはこの飛行船の船長で、乗組員はカエルさんとウサギさんです。この星では、ほっておけばいつまでもお
月様が丸いまま輝いているので、ぼくらが一ヶ月に一度、お願いをしに言って、太陽さんと変わって貰うのです。
 そうすれば、しばらくの間、明るい世界になりますので。

「お月様、お月様。お久しぶりです」
「ああ、やっと来てくれましたね」お月様が微笑みます。
 ウサギさんが飛行船からお月様に飛び移って、紐を結んで係留します。でないとお月様は勝手に動いてしまう
ので。
「できたよー」
「じゃあ、はじめましょうか」とカエルさんが体と同じぐらいの大きさの本を開きます。
 僕らの仕事は、お月様が見ることの出来ない、太陽さんが輝いている世界のお話をすることです。
 あんなことがあったとか、こんなことがあったとか、そんなことをお話しします。
「どうでしたか?」
「たくさんたくさんありました」
 ぼくは、カエルさんの開いた本に記録されているお話を読み上げていきました。
 電気イルカが人を救ったお話とか、おいしい野菜が取れたお話とか、恋に破れて悲しむ人のお話とか。
 でも、どんなにいろいろなお話よりも、本当はもっと聞きたいことがあるのだと知っています。
 ぼくはこの仕事について、ここへ来るのが九回目でしたので、お月様がどんなお話を聞きたいのかも知ってい
るのです。一回目はよくわからず、戸惑いましたが、今はもう大丈夫です。
「あの子は、元気にしていましたか?」
「はい。いつも輝いて、世界中のみんなに慕われていました」
 お月様は、太陽さんのお母さんなのです。子供のことをずっと心配しています。だから、ぼくたちが太陽さん
が明るく楽しく生きていることを教えてあげなければ行けません。
「そうですか。安心しました。これでやっと眠れます」
「おやすみなさい、お月様」
「おやすみなさい」カエルさんが本を閉じて、礼します。
「おやすみなさい」ウサギさんがお月様との紐を外して、こちらへぴょんと飛び乗ります。
「おやすみなさい」お月様は、またよろしくとほほえんで眠ります。
593生誕 -Son and M-(お題:黒幕) 2/2 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 20:39:05.74 ID:G955tPzl0
 そして夜のとばりが、あがって行きます。
 暗い暗い世界は反転して、黄金色の太陽さんが目を覚まします。いっせいに青空が天球を覆いました。
「じゃあいこうか」
 元気な太陽さんの下にある、新しい物語を探しに。

 クジラ型飛行船ホエールズは、青い空の下を進みます。燃料はクラッカーとチーズです。煙をふいて泳ぎます。
「あと一回だね」ウサギさんが言います。
「うん。ぼく、ちょっと怖いんだ」
「なにが?」カエルさんが体にうずくまった首をひねります。
「いろいろなことがあるでしょう? 怖いことも」
 お月様には話さないけれど、明るい世界には嫌なお話もたくさんあるって、ぼくは知っています。
「したかがないよ」とウサギさん。
「うん。ただ、きみがそうならなければ良いと思うよ」とカエルさんも言いました。
「そうかな」
「まあ、もう知っているから大丈夫だよ」ウサギさんは無駄にジャンプして笑います。
「ぼくのお母さんもお月様みたいに、ぼくのことを思ってくれるかなあ」
 ぼくはこれから十回目の物語を探して、それからお月様にお話しします。
 そうしてこの世界で役目を終えた、ぼくは、生まれます。
 泣きながら。笑いながら。                                 <了>

                    参考:JUDY AND MARY「そばかす」、「くじら12号」
594以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:40:16.66 ID:G955tPzl0
以上です。

前々回の品評会のくじら12号でジュディマリにプチはまりしたので書いたw
595以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:49:05.40 ID:sD22nImC0
「小さな頃から」と「チーズピザ」と「ラッキープール」が好きです。

というわけで転載はじめるね
596以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:49:32.29 ID:sD22nImC0
251 名前:世界文学グレーテスト・ヒッツ 0/4 ◆.xX4dOS/Iw [] 投稿日:11/02/13(日) 15:02:33 ID:Elj6N+f7
品評会作品です。転載お願いします
お題:「小説とは何か?」
597世界文学グレーテスト・ヒッツ(お題:小説とは何か) 1/4 ◇.xX4dOS/Iw :2011/02/13(日) 20:51:14.75 ID:sD22nImC0
 ヤスヒロの3rdアルバム、『ワールドブンガク・グレーテスト・ヒッツ』はなりふりかまわぬタイアップの
甲斐もあって、縮小傾向であるJ-Pop市場において異例のセールスを記録した。
 ブログとかツイッターとか2ちゃんねるで、アホみたいにどいつもこいつも『ワールドブンガク・グレー
テスト・ヒッツ』の話だ。もちろんオレも聴いた。そして、ゲロを吐きそうなぐらい、感動した。というか
実際、酸っぱい胃液が口の中まで上がってきて、吐いてもいいかなと思った。オレは最初に、これ
は、まるで高校のころ書いていたオレの日記そっくりだと思った。そして次に、この歌詞はヤスヒロ
のことをよく知っている人間でなければさっぱり理解できないのではないかと思った。
 オレとしては『ワールドブンガク・グレーテスト・ヒッツ』のような音楽が売れる社会は決して健康で
はないと思っている。こういうことは結局、まわりまわって自分の首を絞める行為だということに、レ
コード会社は、そしてヤスヒロは気がついているのだろうか。評論家連中はわかっているのだろうか?
しかし『ワールドブンガク・グレーテスト・ヒッツ』を多くの人間が望んでいるのもまた、紛れもない
事実なのだ。それはオレを少なからず落ちこませた。
 オレの記憶では、ヤスヒロがオレの前でブンガクを読んでいたことは一度もない。しかしオレはゴ
ーストライターとか、そういうことをいいたいわけではない。

『ワールドブンガク・グレーテスト・ヒッツ』収録曲
1:さようなら、コロンバス[2:14]
2:雉子[5:38]
3:A&P[4:44]
4:赤い葉[3:36]
5:すごいギャツビー[4:26]
6:ガラティア2.2[5:03]
7:ジャンキー[4:14]
8:白鯨[6:08]
9:地獄のコウモリ軍団[5:37]
10:白い象のような山並み[5:18]
11:緋文字[5:26]
12:芝生の復讐[5:45]
13:黄金の雨[4:49]
598世界文学グレーテスト・ヒッツ(お題:小説とは何か?) 2/4 ◇.xX4dOS/Iw :2011/02/13(日) 20:52:08.79 ID:sD22nImC0
 もちろんこれは全体の一部分、《Disk1 アメリカ文学編》にすぎない。オレはなぜヤスヒロの曲がい
いのか考えてみた。たとえば『ガラティア2.2』は非常にわかりやすい言葉で書かれた歌詞である。
他のすべての曲にも同じことが言える。……いつもここで考えは途切れてしまう。
 それからというもの、テレビも見ず、自慰もせず、数週間ほどアルバムを聴いていた。
 ベッドにうつぶせになっていたオレは、ヤスヒロのメールで眠りから起こされた。近いうちにメシで
も食いたいというオレのメールへの返事だった。すっかり目がさめたので、ベッドから起き上がり、バ
ーセルミの『黄金の雨』が収録された短編集を探した。確かにこの部屋で読んだ記憶があるのだが、
本棚には『黄金の雨』が入った短編集は見当たらなかった。バーセルミの著作など一冊もなかっ
た。オレは原付で家の周りの三つの本屋とブック・オフと図書館を回ったが、『黄金の雨』を見つける
ことはついにできなかった。ブック・オフから出ると、空には灰色の雲がいっぱいに広がっていた。ま
さか『ワールドブンガク・グレーテスト・ヒッツ』に収録されたから、バーセルミが書店から買い漁られ
たわけではあるまい。オレはそのままバイトに向かうため、県道を西に行った。ヘルメットの下にイヤ
ホンはつけない。以前、それで事故死しかけたことがあったからだ。ブック・オフとバイト先の半分ぐ
らいまで走ると、高校時代の同級生で今は文学部の大学院で働いているエイイチの家の前を通り
過ぎた。エイイチならバーセルミを持っているかもしれない。そもそもオレに『黄金の雨』を紹介した
のは奴だっただろうか。エイイチが文学部に進学したとき、なぜかオレは奴に会うたびに「文学部不
要論」をぶつけていた。文学部のなにが気に食わなかったのか、今となってはよく覚えていない。そ
れなのにエイイチはしょっちゅうオレに本を貸してくれた……。優しい奴だった。オレはエイイチ(とヤ
スヒロ)を「ワカってる」奴だと思っていた。エイイチ(とヤスヒロ)と話していると、会話の内容がすっき
り明瞭に一般化されるのだ。
 オレもエイイチもいっけん身長は低くないし中肉中背で持病もないが、長距離走が苦手だった。(
少なくともオレは)手を抜いて走っているわけではないのだが、どんなデブにも半周差をつけられて
毎回最下位だった。たぶん人の三倍疲れやすいだけなのだ。本当にマラソンは大嫌いだった。
599世界文学グレーテスト・ヒッツ(お題:小説とは何か?) 3/4 ◇.xX4dOS/Iw :2011/02/13(日) 20:52:34.06 ID:sD22nImC0
 バイト先のドラッグ・ストアでエプロンを着けていると後輩の青年が近づいてきた。もちろん『ワール
ドブンガク・グレーテスト・ヒッツ』の話題だった。
「こんにちは」
「おう」
 フフフーン・フンフ・フフン・フーンとわざとらしく鼻歌を鳴らしている。
「それ、なに?」
「これですか? 『地獄のコウモリ軍団』って、今すごく流行ってる曲なんですけど、知ってます? 音
楽とか、聴きます? J-Popとか、『ワールドブンガク・グレーテスト・ヒッツ』って、今テレビでもかなり
やってて、ワイドショーとかでも、名前だけでも聞いたこととかあります?」
 彼はこのバイトを初めて数ヶ月で、今時の若者(ということはオレも含まれるわけだが)の例に違
わず、とてもシャイで、賢くて、人間関係において相手の機嫌を損ねることをもっとも恐れるタイプだ
った。まだ彼とは、バイト上の業務的な連絡以外のプライベートな趣味の話題を交わしたことはなか
ったが、もしこれがきっかけで彼との親睦を深められれば、優れた音楽には人と人とを結びつける力
があるということだ。それは、すばらしいことだと思う。
「うん、知ってるよ。アルバムも持ってる」
「本当ですか! 先輩はどの曲が一番好きですか?」
「オレは『さようならコロンバス』かな」
 すると青年は「許可を得たり」と思ったのか、張りのある、男らしい声で『ワールドブンガク・グレー
テスト・ヒッツ』のダイナミズムについて語り始めたのであった。彼の語り口には波があった。彼の声
には流れがあり、ドラマがあり、求心力があった。きっと女の子だったら声を聞いてるだけでメロメロ
になってしまうだろう。オレは熱心に相槌を打って青年の話を聞いているふりをしていたが、本当は
大縄跳びのように言葉が途切れるタイミングを図っていた。そして話が途切れた一瞬に「オレは『さ
ようならコロンバス』が好きだよ。短いところがいい」と言うと黙ってしまった。
600世界文学グレーテスト・ヒッツ(お題:小説とは何か?) 4/4 ◇.xX4dOS/Iw :2011/02/13(日) 20:52:58.60 ID:sD22nImC0
 深夜のファミレスに客はほとんどおらず、ヤスヒロがまだ来ていないことはすぐにわかった。ここに
はヤスヒロとエイイチともよく通った。ドリンクバーを注ぐ係は、いつもゲーム(じゃんけんとかシリトリ
とかポーカーとか)で決めていた。チーズハンバーグのライスセットを注文したが、もちろん自分のド
リンクを入れるのは自分しかいない。オレは立ち上がりドリンクバーへ向かって歩いた。
 かつてエイイチはこのファミレスでマラソンについて語ったことがある。「本当にマラソンは大嫌いだ
った」とエイイチは言った。「高校の冬は、体育ばっかりで身体はダルいし、寝不足だし、友達はいな
いし、まったくいいとこなしだ。辛い冬だった……。死にそうなほど落ちこんだ時、映画では主人公は
女を抱くものと相場は決まっている。考えてみれば、今ほど女を抱くのに適したシチュエーションはな
いように思えた。だが実際問題として女を抱くことはできなかったので、僕はギャルゲー雑誌の付録
の美少女抱き枕カバーを購入した。長枕も用意し、家族が出払った休日、彼女の上に覆いかぶさっ
た。でも駄目だった。僕には想像力というものが欠如していたんだね。彼女と会話することはできな
かった。彼女がどんな性格か、どんな口調で話すか、仕草、家族構成、なに一つ思いつかない。僕
は自分がイマジネーションに富んでいる方だと思っていたけど、それにはなんの根拠もなかったの
だ。僕は腰を振ったけど、なにに興奮しているでもなかった。ただ抱き枕のシルクの肌ざわりが気持
ちよかっただけだった」
 優れた音楽には人と人とを結びつける力がある。それを証明するように、ドリンクを持って戻ろうと
すると、オレの座っていた席に新しいだれかが座っているのが見えたのだった。
601彼と彼女と冬の小部屋1/6(お題:小説とは何か?) ◇fFwyBP2qDo:2011/02/13(日) 20:53:45.32 ID:sD22nImC0
 ある冬の昼下がり、アパートの一室で彼と彼女はモノクロの無声アニメを眺めている。
 彼女はかたつむりのような姿勢でおこたに入り、画面から3メートル以上離れた適切な距離から果てしなく激化していく猫とネズミの追い
かけっこを飽きもせず見守っている。
 彼女とひとつこたつの角をはさんで座っている彼の意識は画面の中の追いかけっこよりもこたつからはみ出した彼女の後頭部と、笑い声を
上げる度に揺れる長い黒髪に3割ほど意識を持っていかれてしまっている。
 彼と彼女の関係は目下の所、良好であるともいえるしあまり良好ではないともいえる。親しい友人以上の好意は持っているが、相手の気持
ちを確認するのは怖くてできない。好意はあれども伝える手段が見つからない。えてして17才の男女というものはそういうもので、ようす
るに彼と彼女はお年頃なのである。そんな状況説明からとりあえず話を始める事にする。

 彼は彼女に声をかけた。
「正直これ面白い?」
 彼の質問に彼女はにべもなくこう返す。
「何をいっているの、トムとジェリーよ。ネコとネズミの追いかけっこよ。そんなの楽しいに決まってるじゃない」
「なるほど、説明になっているかはともかく君が楽しんでいる事は十分よく分かったよ。でも、もう少し詳しく説明してくれるとありがたい
 ね。世の中にはミッキーとミニーがいれば八十分を越える待ち時間は存在しなかった事にできる人間とできない人間の二種類がいて、残念
 ながら僕は前者には属していないんだ」
「十分かみ砕いて説明したつもりよ。それに、観た上で理解できない人に微に入り細に入り面白さを説明してどうなるというの。ディ●ニー
 ランドを前戯の前戯パークとしか認識できない林間(はやしま)君とはそもそもの価値観が違うのよ。ああ、もっとも価値観が同じだったと
 しても修学旅行で行ったデ●ズニーランドでよその不良にカツアゲされた林間君には例え百万言を並べても魅力を伝えるのは不可能でしょうけど」
「勝手に人の過去を捏造するな!僕の経験的にもディズニー的にもそんな事実は存在しない!」
「私は権力を笠に事実をねじ曲げる人って嫌いだな」
「特に理由もないのに事実を捩じ曲げる人間の方が悪質だよ!」
「仕方ないわね、じゃあそう言う事にしておいてあげる。ところで林間君、語尾に『!』とか『?』を付けるのはよした方がいいと思うわ。
 頭が悪そうに見えるから」
「そうだね、使用の是非はともかく多用は控えるべきだと僕も思うよ」
 そう言って彼と彼女はまた画面に視線を戻した。記号を多用した会話もそうだが、地の文の無い長会話もまた頭が悪そうにみえる。会話も
地語も適度にはさみ、硬軟織り交ぜて読ますのが物語の妙であると、二人の見解は一致していたのかもしれなかった。
 そうこうしている間に追いかけっこは終了する。エンドクレジットが流れ、ワーナー・ホーム・ビデオのロゴマークが消えた画面の前で彼
と彼女は喋々喃々ととりとめのない感想を語り合うい、一段落が付いた頃、彼は彼女に話を振る。
602彼と彼女と冬の小部屋2/6(お題:小説とは何か?) ◇fFwyBP2qDo:2011/02/13(日) 20:54:42.49 ID:sD22nImC0
「ところで、この後どうしようか」
「どうするって、林間君は私とこの後どうにかなりたいの」
 そう言うと彼女は彼に笑いかけた。世界に罅でも入ったのではと見紛うほどのにこやかで冷たい笑顔だった。
「いや、そう言う意味じゃなくて。天気もいいしちょっとお腹もすいて来たからどっかで飯でもいかない、って話」
「なるほどね、ところで林間君は知ってるかしら。冬って外に出るととても寒いのよ」
「どれだけ僕は世間知らずだよ。今日日、温室栽培のトマトでもそれくらいは知ってるよ」
「それは失礼。でもね、林間君。冬の寒さを甘く見ちゃいけないわ。ナポレオンもソビエト連邦も冬には勝てなかったのよ。中でも第二次世
 界大戦中のコラー河付近は冬になると死亡する確率が150%を越えたそうよ」
「その場合は寒さに殺された方がいくらかまだ救いがある気がするんだけど気のせいかな」
「冬のせいよ」
「冬のせいでケワタガモは死んだりしない」
「人間とケワタガモの区別もつかないのね。そんなお馬鹿さんは人類の歴史を振り返ってみても林間君が初めてだと思うわ」
「酸素を吸って罵詈雑言を吐きだす人間も相当珍しいけどね。知ってるかい、言葉は時に刃物以上に人を深く傷付けるんだぜ」
「林間君。頭は大丈夫かしら、言葉で人が致命傷を負うなんて漫画の世界の話だわ。デスノートの読み過ぎじゃない」
「いやだから、それは比喩だよ。あくまで言葉の綾って奴で」
「いい年なんだからフィクションと現実の区別くらいは付けて欲しいものね」
「だから今のは単なる皮肉で、別に小畑先生の作品がどうだとか僕は一言もいってないって」
「作品の話じゃない?ああ、そうなると確かに皮肉なことになるわね。彼が痛い目に合ったのはそれこそ実際に刃物ーー」
「何年前の話だよ!もうそっとしといてやれよ!!」
「私への忠告に見せかけて善良な漫画家の古傷を抉るなんて、まったく林間君は大した皮肉屋さんね」
「僕が肉屋なら君はミンチスライサーだよ」
「私が側にいないと仕事も出来ないって訳ね。でも、私はそういうベタベタしたお付き合いって、結局お互いを駄目にするだけだと思うな」
「そんな血脂でベトついたお付き合いはこちらから願い下げだよ」
「ついでに臭いもきつそうね、この部屋のよどんだ空気といい勝負ができるんじゃないかしら」
 彼女の言葉に彼はにこやかに言葉を返す。
「では、換気をさせて頂きます」
 顔に笑みを張り付けたまま彼は言った。
「冗談よ」
 彼女は無表情に言葉を返した。しかし、その返しの速さには幾許かの焦燥が滲み出していた。
603彼と彼女と冬の小部屋3/6(お題:小説とは何か?) ◇fFwyBP2qDo:2011/02/13(日) 20:55:09.11 ID:sD22nImC0
「この部屋に新しい空気を入れてやりたいんですが、かまいませんね!!」
「何を言ってるの、そんな事をしたら冷たい空気が入って来てしまうじゃない」
「逆に考えるんだ『開けちゃってもいいさ』と考えるんだ」
 そう答えると彼は徐に立ち上がり、窓際へと歩み寄る。
「ちょっと待って、林間君、実は私さっき念魚に半分ほど体をかじられて窓を開けられたら死んでしまうの」
「ではくたばるといいね」
「やめなさい林間君、早まってはいけないわ」
「いいや!限界だ。押すねッ!」
 実際は引き戸だったが、彼はそう叫んで窓枠に手をかけた。
 彼の後ろ姿を瞳に映しながら、彼女はそのとき生まれて初めて神に祈った。彼女は特定の信仰を持たない主義であったが、どうしようもない状況に置かれた時、人は人智を越えた存在に祈りを捧げるのだとその瞬間思い知らされた。
 そうして彼女は神に祈った。
(ささやき-えいしょう-いのり-ねんじろ!)
 最高に灰になる例のアレだったが、もちろんそんな祈りが届く事は無く、かといって誰かがロストする事も無く、こうしてガラスの扉は軽快な音を立てて開かれた。
 彼が振り返ると彼女の姿は跡形も無く消えていた。
 そのまま彼は台所へ向かいコーヒーを淹れ、部屋に戻るとこたつの上にそのマグカップを置いた(片方はブラック、もう片方はコーヒー牛乳)。
 そうして、ガラス戸を閉めると彼はこたつに声をかけた。
「コーヒーいれたよ」
「……さいってー」
 そう返しながら、彼女はもぞもぞとこたつから這い出してコーヒー牛乳のマグカップに手を伸ばす。
 そんな彼女に彼は大して悪びれた風も無く、わるかったよと声をかけてこたつに向かう。
「大体なんでこたつの中に下着なんか干してんのよ」
「いや、ここんとこ天気が悪かったから溜め込んでてさ。一気に洗濯したら干す場所足りなくなっちゃったんだよ」
 そう言って彼はコーヒーを啜る。
「もう少しで危うく妊娠するところだったわ」
 思わず噎せ返ってしまった彼を横目に、彼女はマグカップで口元を隠しながら意地悪そうに笑みを浮かべた。
 なんとか呼吸を落ち着けて彼は彼女にこう言った。
「そんなに言うんならこたつから出れば良かったじゃないか」
604彼と彼女と冬の小部屋4/6(お題:小説とは何か?) ◇fFwyBP2qDo:2011/02/13(日) 20:55:34.57 ID:sD22nImC0
「林間君、知ってるかしら。冬ってとても寒いのよ」
「それはもうさっき聞いたよ。大体、そんなに寒いのが嫌なら、そもそもどうやってここまで来たんだよ」
「愚問ね、ギリースーツとモシンナガンさえあれば大抵の逆境は乗り越えられるわ」
「もういいよ!どんだけその話題引っぱれば気が済むんだよ!!」
「あら、こんなのWW2の話題としてはまだまだ序の口じゃない」
「ここはどこの塹壕内だよ、言っておくけど自分が知ってる知識を誰もが知ってると思ったら大間違いだぞ」
「まったく、そんな事で目くじらを立てているようではは先が思いやられるわね。何といっても私はまだスツーカの悪魔について一言も喋っ
 ていやしないんですからね。言っておくけど彼について語らせたら私は獣の槍よりしつこいわよ」
「ご忠告ありがとう。さすがにこれ以上話が逸れると収拾がつかない。その話題は謹んで遠慮させてもらうよ」
「何を言ってるの?私を止めたければ大陸中の妖怪を依り合わせた赤い布を用意しろと言ってるのよ」
「そんな布は用意できないし第三帝国の戦車撃破王の話題も認めない!一体ここをどこだと思ってるんだよ、それより何より道端の空き缶を
 蹴飛ばす気軽さで名作を汚するのはやめてくれ!」
「不朽の名作や評価の固められた完成品を崇めているだけでは向上は望めないわ。切り口を変えて楽しみ方を広げる事で私達は新しい価値を
 創造し、発展させて行くべきではなくて」
「君がやってるのは価値の進化じゃなくて感動の風化だよ!」
「あらあら、これは痛いところを突かれたわね。いいわ、大佐の話はまた今度にしてあげる。どっちにしろ話す時間もない事だしね」
「時間がないってこの後なんか用事でもあるの」
「いくら私でも林間君の家にお泊まりするわけにはいかないでしょう?」
「なるほどね、ってほんとにどれだけ話すつもりだったんだよ」
「時代背景や機体・周辺機器の性能の説明を最小限に切り詰めたとしてざっと六時間くらいかしらね」
「冗談じゃない!」
「冗談よ、林間君。さすがにその辺は私も弁えているわ。興味のない話題に延々と付き合わせるのも酷というものだしね。それではここで恒
 例の質問タイムです」
 恒例の質問タイムである。
「ごめん、寡聞にして知らないんだけどそれって恒例行事なの」
「質問は認められません」
 質問は認められない。そう前置きして彼女は言った。
「2.5秒以内に答えて下さい。今回の質問はこちら、もしもあったら嫌なお寿司屋さんは?」
「え、ちょっとま「にー「って、えぇぇええ!?「いち「!゙!゙!゙!゙「ぜr「てまんずし!!」
605彼と彼女と冬の小部屋5/6(お題:小説とは何か?) ◇fFwyBP2qDo:2011/02/13(日) 20:56:27.70 ID:sD22nImC0
「……………」「……………」「……………」「……………」

「…………ごめんなさい。林間君。ちょっとよく聞き取れなかったんだけど、さっきの質問の答をもう一度言ってくれないかしら」
「…………いや、……だから…………手まん寿司」
「ごめんなさい、ちょっとよく理解できなかったわ。きっと手巻き寿司を噛んでしまったのね。林間君、もう一度だけ正確な答えを言ってく
 れないかしら」
「だから何度も言ってるだろう、手まん寿司だよ」
「最低だわ。予想の斜め上というより存在の根幹に隔たりがあるみたい」
「人は誰しも孤独を抱えているものだけど、お互いの孤独を共有する事は誰にもできないという話かな」
「他人と隔たっている部分こそが孤独なのだから共有できる時点でそれは紛い物ではないのかという事ね。たしかにその意見には賛同しない
 でもないわね。誰かと分け合えるような易っぽい感傷を孤独と呼ぶべきではないし、誰にも理解されないからこそ真の孤独には価値がある
 のではないかという事ね。でも残念ながら今話しているのはそんな高尚な問題ではないわ」
「でも実際問題これ以上の解答は存在しないんじゃないかと僕は思うよ。嫌だろう、そんな寿司屋、食事と性行為を同時に冒涜してる上に金
 まで取ろうとしてるんだぜ」
「最低ね。金まで取ろうとしてる、ってあえて付け足す所に林間君の卑しさが滲み出ているわ。そんな言い訳で自己を正当化するつもりかし
 ら。質問の内容に一番適した解答が質問に対する最良の解答になるとは限らないのよ。きっと、林間君はドラえもんのひみつどうぐで何が
 欲しいって話題になった時に『ソノウソホント』なんて答えて水を注すタイプね」
「それはタイプなんかじゃない。只の事実だよ。究極の解答さえあればそもそも議論なんてする必要ーー」
「うるさい!この石ころぼうし!!」
「道具!?畜生、僕は人間ですらないのか!?」
「さすがに少し言い過ぎたかしら、じゃあこう石ころ法師という事にしてあげるわ。元々は僧侶を指す言葉だったけれど、男性全般を広く指
 し示す意味合いもある。これで人間昇格ね」
「どっちみち石ころは決定事項なのか、でもまあ人間なだけでもよしとするよ」
「か、勘違いしないでよね。べ、別にF先生の創作物を林間君なんかの中傷に使いたくないからじゃないんだからねっ」
「一見デレているように見せかけてデレる方向が違うだと、照れを隠しつつその実より酷い罵倒を浴びせている。これはまさか」
「ツンツンデレズレという奴ね」
「いまいち語呂が良くないね。最近出来た新ジャンルなのかな」
「適当に言ってみただけよ。ジャンルなんてどうでもいいじゃない、安易なキャラ付けは行動の幅を狭めるだけよ」
「それもそうだね、まあ僕はどっちに転んでも石ころは決定らしいけど」
「卑屈になるのはよくないわ、林間君。さっきは石ころなんて言いはしたものの、あなたの良さは解っているつもりよ。もう少し自分に自信を持ちなさい」
606彼と彼女と冬の小部屋6/6(お題:小説とは何か?) ◇fFwyBP2qDo:2011/02/13(日) 20:56:51.99 ID:sD22nImC0
「そういってくれるとありがたいね、正直少しだけ救われた気がするよ」
「そうよ、元気をお出しなさい。林間君は誰にも気付かれない石ころじゃなく、気付いた上で意識から除外されているんだからそこには明確
 な違いがあるわ」
「それは全然フォローになってない気がするんだけれど気のせいだろうか」
「林間君は石ころなんかじゃない、街中で配られているテレクラのポケットティッシュみたいなものよ」
「わざわざ細かい分析をありがとう、おかげで僕はいま石ころになりたくてたまらないよ!!」
「ようやく自分のスタンスを思い出したみたいね」
「どうせ僕は冷静ぶってる割に突っ込みの時はすぐ激昂する間の手キャラだよ。てか、いい加減お腹が空いてきたんだけどそろそろマックで
 も食べにいかない」
「林間君は知ってるかしら。冬って外に出るととても寒いのよ」
「それはもう何回も聞いたって」
「じゃあこう言えばいいのかしら、私は林間君の側がいいの」
「詭弁にはもう騙されないよ、そんなの外だって一緒じゃないか」
「そうね、あなたが遊びに来た女の子をわざわざ外に連れ出すよな朴念仁なら、もうこれ以上私は何も言わないわ」
 そう言って、彼女は軽くため息をついた。
 それきり彼女は口を閉ざし、彼と彼女の間にはほとんど初めてと言っていいほどの長い沈黙が訪れた。
 そうして、長い沈黙に耐えかねた彼はついに口を開く事にした。
「恒例の、質問タイムです」
 恒例の質問タイムである。
「もしも僕達が小説の登場人物だったと仮定して、その小説は果たしてどのようなジャンルに分類されると思いますか」
 彼女は間を置かずにこう答えた。
「そんなこと知らないわ、お話なんて面白ければそれでいいのよ。つまらない小説よりも、くだらない駄文よ。私は愚にもつかない思いつき
 をこうして貴方と話していられればそれでいいわ。こんな時間が一生続けばそれで幸せ。それ以外は誰が死のうと生きようと助かろうと助
 かるまいと救いがあろうとなかろう、そんなのは全てどうでもいい事よ」
 そこまで一息に言い切ると彼女は頬を赤らめて、そうそう、どうでもいいで思い出したんだけど、岸部露伴ってあのヘッドバンド外したら藤木君にそっくりだと思わない、なんてどうでもいい話題に話をすりかえようとしている。
 彼もまた彼女に言葉を返す。
「本当にどうでもいい話だね。でもぼくもそう思うよ」
 彼女は彼の言葉に少し照れながら、またどうでいい話の続きを語り始める。
 窓の外では雪がちらつき始めていて、彼と彼女はまだその事には気付かない。
607以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:58:41.47 ID:sD22nImC0
>>605
が31行あったので、勝手に最後の改行けずりました。
ごめんなさい。

あと、ファッションセンスを除いては、YUKIちゃんよりYUKIちゃんの旦那の
歌の方が好きです。ごめんなさい。倉持のファッションセンスは「無いわ」と思います。
6082/3、降るべき雨(お題:黒幕) 0/6 ◆ethG0vgyGc :2011/02/13(日) 21:01:01.52 ID:sD22nImC0
そして品評会投下。
pxtの人は気にせず4作目投下すればいいと思うよ!
6092/3、降るべき雨(お題:黒幕) 1/6 ◆ethG0vgyGc :2011/02/13(日) 21:02:02.32 ID:sD22nImC0
【2/1】_快晴
 祈るような気持ちでChromeのアイコンをクリックして、ポータルサイトの気象情報のページにアクセスした俺は、そのサイトから二つのことを
教わった。一つは二月三日、つまり明後日の天気は快晴であること。もう一つは不信心な高校生男子の祈りは、誰にも届かないということだ。
「いいじゃんかよ、雨、降れよう。それが誰にとっても幸福な結末だよ」
 俺は椅子の背もたれにもたれかかり、そんな言葉を呟きながら自分の部屋の天井を見上げた。天井の電球型蛍光灯のダウンライトは、俺の
心情などた気にもせず、いつも通りに輝いていた。たいして眩しくもなく。
「あー、駅伝大会中止にならないかなぁ」
「……誰にとっても幸福な結末、とか大層なことを言っているから来てみれば、雨を願う理由はそんなものか」
 知らない女の声が、俺の呟きを拾った。月曜日の夜十時、自宅の自室だ。部屋には俺以外に誰もいない。一人っ子の俺には壁や障子ごしに
会話が出来る姉や妹はいないし、窓越しに奇天烈な問いを投げかけてくる幼馴染みもいない。「自問に対するレスポンスは自答のみ」こそが
この部屋の物理法則である。
「走ればいい。駅伝大会、むしろ楽しそうだぞ。学生という感じがして。それに、たかだか数十分の運動のために、二日も前からウジウジと悩む
のは、効率を考えてもあまり好ましいものではないように感じるが」
 声は机の上のノートPC、そのスピーカーから聞こえてくるようだった。スカイプでも繋ぎっぱなしにしていたか。そう思った俺は身体を起こし、
パソコンを操作しようと手を動かした。
 ディスプレイの中では上げた覚えのないコマンドラインプロンプトが立ち上がっていた。その真っ黒なCUIベースの画面上には、一行だけの
アスキーアート(というか顔文字)が表示されていた。
『J( 'ー`)し』。こんな顔文字だった。
「驚いているな。何故だかは知らないが、私の存在を知るとみんな唖然とするのだ。君のような若者は、ラノベや漫画などに触れる機会だって
多いのだろう。そういう十代向けの文化では、よくある設定だと聞いている。それなのに、何故そんなに驚く必要があるのだ。物語とはつまるところ、
人生のケースの予行演習だというのに」
 そんなことを言った『J( 'ー`)し』は、それから『J( 'ワ`)し』みたいな澄まし顔(?)に変わった。
「うむ、極めてどうでもいい話だったな。それよりも挨拶をしなければなるまい。私はミリ。嵐と雨を司る偉大なるバアルの眷属だ。ミリ・バールと呼」
 声が途切れたのは俺がノートPCを閉じたからだ。ピポ、という気の抜けたビープ音とともにPCはシャットダウンし、謎の声もシャットアウトされた。

【2/2】_快晴
 長距離走自体は、別に嫌いなわけではない。というか、かなり好きなほうだ。もし持久力が必要な運動が嫌いだったら、水泳部、ましてや長水路の
選手などを部活に選ばなかっただろう。
 水泳という競技は心肺機能をいじめ抜くことが目的なんじゃないのかとも思えるような競技で、トレーニングだ。結果的に、心肺機能が問われる
持久走などのタイムは必然的に良くなる。1500の持久走で言えば、俺はクラスで一番速い。問題の二月三日、クラス対抗の駅伝大会でも当然の
6102/3、降るべき雨(お題:黒幕) 2/6 ◆ethG0vgyGc :2011/02/13(日) 21:02:18.49 ID:sD22nImC0
ように第十走者、つまりアンカーを務めることになったもの必然だ。別に、それを嫌っているわけではない。
 繰り返しになってしまうけど、俺は走ること自体は嫌いではない。繰返しになってしまうけれど、俺がクラスのアンカーをつとめるのは、適任だろう。
 繰返しになってしまうけれど、俺はクラス対抗駅伝の当日、つまり二月三日に大雨が降ってこの行事が潰れることを望んでいる。
 これは主義思想の問題だ。

「長距離走とかはさ、人生の縮図だと思うんだよ、俺は」
 先週の金曜日、昼休み。別クラスの友人である《疾風の井川英俊》がそんなことを言い出したのがそもそもの原因だ。
《疾風の井川英俊》は陸上部のエースで、400メートルハードル、通称ヨンパを専門としている短髪のイケメンだ。色々と面倒くさい奴だが、
基本的にはスポーツマンシップに則り正々堂々と戦うことを誓えるようなイケメンなので、女子どもには凄く人気がある。水泳部の後輩の女子たち
も、体育祭のときなどには黄色い歓声を浴びていた。黄色い歓声って、こういうのを言うんだと初めて知った。俺が今まで黄色い歓声だと思って
いたものは、せいぜいが黄ばんだ歓声だった。
 話を戻す。とにかく昼休み、わざわざ俺のクラスまできて弁当を食いだした《疾風の井川英俊》はそんな面倒くさくなりそうなことを言い出した。
「俺さ、去年の駅伝大会でもアンカーで、それでお前に抜かれて学年優勝を逃したわけじゃん。俺さ、すげぇ悔しかったんだよ。涙がでるほど、
悔しかった。実際、ゴールしたあと、ちょっと泣いたもんね。で、流石に不思議だったわけよ。なんで俺こんなに悔しいのか、って。人生の中で
一番悔しくてさ。あ、今はもちろん、県大の決勝でこけたときのほうが悔しかったけど。まあ、とにかく悔しくてさ。ただの学校行事でだぜ? 本当に
不思議だったから、この一年間で色々と分析してみたんだよ」
 学校で一番短距離走が速く、かつおそらくは学年で一番面倒くさい男である《疾風の井川英俊》は、そう熱弁を続けた。
「で、辿り着いた答えが、それだった。俺はきっと、長距離走に人生を重ねているんだな、ってそう思った。すごく苦しいところとか、でも楽しいところ
とか、終わったあとの充実感を求めて走るところところとか、もうダメかもしれないと思いながらでも足は止まらないところとか、ゴールが近づいた
ときに心のどこかでまだもうちょっと走っていたいと思うところとか、そういうのがきっと人生と一緒なんだと思うんだよ。それで俺は納得した。ああ、
そうなんだ、って思ったね。心が腑に落ちるって、こういうことを言うんだな。俺は、人生でベストを尽くしたいんだ。誰にも負けたくないんだ、って
思ったんだよ。俺の人生という物語の中では、俺が主役なわけじゃん。だから、俺は、今年はお前に負けない。主役は二回は負けられないんだ。
お前、今年もアンカーだよな? うん。もちろん、俺もアンカーだ」
《疾風の井川英俊》はそして、後輩の女子達がポワッとしそうな笑顔を作ってこんな宣言をするのである。
「だから、今年も勝負だ。そして、今年は俺が勝つんだ。だって、人生負けっ放しはちょっと、辛いもんな」

 一晩寝かせたから、きっと大丈夫だろう。そう思って立ち上げたパソコンでは、当たり前のような顔(※:こんな顔→『J( 'ー`)し』)をしてコマンド
ラインプロンプトが起動され、そして起動された黒い窓の中では顔文字が俺のことを見つめていた。
「いるよね、そうやってとりあえず『逃げる』みたいな選択肢を選ぶひと。現実逃避で解決することなんて、この世には殆ど無いのに。馬鹿だなぁ」
『J( 'ー`)し』は、そんなうざいことこの上ないテンションで、そんなことを喚いた。俺は少しだけ呆気にとられ、それから首を振り、ノートPCの天板に
6112/3、降るべき雨(お題:黒幕) 3/6 ◆ethG0vgyGc :2011/02/13(日) 21:02:34.89 ID:sD22nImC0
手をかけた。どのエロサイトで感染したのかはわからないが、これはコンピュータウイルスという奴なのだろう。感染したのは初めてのことだ。
とりあえず、OSを再インストールして、それで復旧できるか確かめなくてはならない。
「まあ、待ちたまえ潜在的ペドフィリアくん。私はコンピュータウィルスなんかではないよ。もっと別の、神々しい神聖なものなんだ」
「すげぇな、コンピュータウイルスって。そんな白々しい嘘をつく機能とか搭載されてんだな。俺、ちょっと感動したわ」
 俺はそれだけ言って、ノートパソコンを閉じようと腕を動かす。
「慌てないで聞きたまえ。いや、聞かせたまえ。君の都合と必然性によっては、明日関東地方に雨を降らせることもできな」
 昨日と同じように、ウイルスの声は途中で途切れ、かわりに情けない感じのビープ音が繋がった。

「……雨を降らせることが出来るって、本当なんだろうな」
「ようやく話を聞く気になったかね、潜在的ペドフィリアくん。だが、勘違いをしてはいけない。私ことミリちゃんは嵐と雨を司る偉大なるバアルの眷属
であって、バアルそのものではない。だから、私に出来ることと言えば偉大なるバアルへと取り次ぐことだけだ。言うならばこのミリちゃんはミリちゃん
であってミリちゃんでしか無いのだよ」
 真っ黒な窓の中のコマンドラインで、『J( 'ー`)し』はそう言った。それからすぐに、『J( '〜`)し』みたいな顔をして、こう付け加える。
「しかしそれでも私は神の眷属である。私達は、救える人がいるのならばそれは救う努力はするよ。たとえ、君のように信者ではない人間でもね。
神は、人間の宗教家ほど狭量ではない。信じない者も救おうとしてこその神性なんだよ。君が私のことをコンピュータウィルスだと思うのは構わない。
ならば、私は人を救うコンピュータウィルスでも構わないよ。私の立場など、それこそどうでもいい。さあ、君は『明日、雨が降るべき理由』を説明
したまえ。それが正当な理由であると私が判断したのなら、私がバアル様にとりついでやろうじゃないか。なに、もしも私が本当に単なるコンピュータ
ウィルスだとしても、君が損することなど何もないよ。せいぜい、私とのこの会話を誰かに聞かれて『うわ、あの人なんかパソコンとブツブツと
喋ってる! キモッ!』と思われる程度だ」
「いや、それは結構、失うものが多い気がするが」
 俺が自分の言葉を最後まで言う前に、『J( 'ー`)し』は「ならば訂正しよう」と言葉を重ねてきた。
「君は、そういうリスクを冒す必要がある。もし、明日雨を降らせる、といことがそのリスクに見合うと判断したならば、私にその願いと、願う理由を
言えばいい。もちろん、私が言っていることが嘘っぱちな可能性はある。だが、それでも君が失うものはほとんど無い筈だがね」
 一瞬だけ、逡巡した。この部屋にいるのは俺だけだ。。一人っ子の俺には壁や障子ごしに会話をする姉や妹はいないし、窓越しに奇天烈な問いを
投げかけてくる幼馴染みもいない。自問に対するレスポンスは、PCの中の『J( 'ー`)し』がするだけである。ならば。

「……友達がいる。すごい良い奴なんだけどさ、ちょっと考え方がおかしいというか、どこか真面目すぎる奴だ」
「真面目? いいことじゃないか。君みたいな不真面目くんよりも、ずっと好感がもてそうだが」
「スポーツに限っていうと、それじゃダメなところもあるんだよ。あいつは、抱え込みすぎるんだ」
 自分が好きなもの、打ち込んでいるもの。人はそれを何か特別なもの、より深いメタファーがあるものと思えてしまう。それは人間にとって普通の
6122/3、降るべき雨(お題:黒幕) 4/6 ◆ethG0vgyGc :2011/02/13(日) 21:02:52.16 ID:sD22nImC0
心理なのかもしれない。もちろん、それ自体は別に悪いことではないのだろう。
 だけど、スポーツに関して言えばその種の思いこみが結果に悪影響を及ぼすことがある。特に個人競技、自分と向き合うような競技では、
プレッシャーこそが最大の敵だというのに、自分でそのプレッシャーを背負い込む羽目になりかねない。競技の中で自分が出すべきだった結果が、
メタファーとしたものに直結しているようにすら思えてしまうからだ。
《疾風の井川英俊》はヨンパ、つまり400メートルハードル走のハードルが、人生における障害の象徴だと思っている。だから、《疾風の井川英俊》
は県大会の決勝戦で自分が足をかけて転倒した。人生における障害につまづく理由など、いくらでもあるのだろうが、毎日欠かさず走り、跳び
慣れているハードルに足をかけてつまづく理由など体調不良等を除けばプレッシャー以外にはまずありえない。
「違うんだよ。ヨンパはヨンパで、駅伝は駅伝なんだ。それは人生でも、人生の障害でもない。あいつは深く考えすぎなんだ。勝手にプレッシャーを
増やして、それに押し潰されて『俺、決勝でやっちゃったよ』なんて二ヶ月近くへこんでるだから、笑えたもんじゃない。俺はさ、あいつに教えて
やりたいんだよ。俺たちがやっているのは単なるスポーツであって、それはスポーツなんだって。もっと気楽にやればいいんだって」
 途中から、思わず言葉に熱が入ってしまった。そんな俺の弁に、、『J( 'ー`)し』は「ふむ」と合いの手をいれた。
「それで、どうして雨なんだい? すまないが、このミリちゃんには今の話と雨天中止が繋がらない」
「駅伝大会なんて雨で中止になる程度のもので、そんなの運命でもなんでも無いって言ってやりたいんだよ。なんでも背負い込もうとする
馬鹿にさ、『どうだ、雨にうたれて少しは頭は冷えたか?』って言ってやりたいんだ。あいつは、プレッシャーから解放されさえすれば、それで絶対に
結果が出るようになる。才能があって性格だって良い奴が、くだらないことで悩んで、伸び悩んでいるのが俺には許せないんだ」
 そう言い切ると、『J( 'ー`)し』は少しだけ間を置き、それからこんな問いを投げかけてきた。
「なるほど、では最後に一つだけ。君は、それが単なるお節介であるとは思わないのかね。友人だって馬鹿じゃないだろう。そんなことは重々承知
しているかも知れない。君の言うことが、やることが何の意味もないこと、むしろ邪魔になるかもしれない。その可能性を考えてみたことは無いかね」
「ダメならダメでいいんだよ」と、俺は即答した。
「お前も言ったことだろう。たいしたリスクの無いことに躊躇ってはいけない。せいぜい、俺が嫌われるくらいだ。その位のリスクで友達を救える
可能性があるのならば、俺はやるよ。どこに躊躇う必要があるんだよ」
俺の言葉を吟味するように、『J( 'ー`)し』はしばらく黙った。その後、「偉大なるバアルへの注進を行うことを約束しよう」と俺にそう言う。
「利己的な理由ではないことが気に入った。おそらく、明日は雨が降ることになるだろう。レインコートの準備を忘れないように」
 言うだけ言って、コマンドラインは消えた。声も聞こえなくなった。

【2/3】_泣きたくなるほど強烈に、ああもうすごく良い天気だな!
 俺は今回のあらましから、二つのことを教訓として得た。一つは、自分の思いを言葉にするという行為は結構難しい、ということ。もう一つは
どんな甘いことを言われようが、神や神の眷属やコンピュータウィルスなどに頼ってはいけないということである。
 素晴らしい冬晴れの空の下、駅伝大会は始まっている。クラス選抜の十人の走者が、指定されたコースを走る。グラウンドスタート、校門を
経由して学校の外周と横にある公園のランニングコースを周回する。周回数は男子は二周、女子は一周、そしてアンカーは三周だ。
6132/3、降るべき雨(お題:黒幕) 5/6 ◆ethG0vgyGc :2011/02/13(日) 21:03:06.26 ID:sD22nImC0
 俺はスタート地点のグラウンドで未練がましく空を見上げながら、ストレッチを続けている。身体の調子は良く、そして天気も快晴だ。絶好の
ランニング日和だ。向こうでは《疾風の井川英俊》がアップをはじめている。朝、俺が声をかけようとしたら「悪い、今日だけはお前が敵だから話
かけてこないでくれ」と言われた。ひどいと言いたくなるくらいの気合いの入れ込みっぷりだ。
 第九走者は女子なので、周回数は一周だけだ。バラバラとスタートしていったのが十五分くらい前なので、あと五分もすれば戻ってくるはずだ。
 現状の一位は、《疾風の井川英俊》のクラスである。うちのクラスは現状で五位くらいだ。一位からは時間にして一分程度、離されている。
「去年と同じ状況だな。いいか、手は抜くなよ」
 話しかけるな、と言っていた《疾風の井川英俊》が、自分から、そんなことを言ってきた。ただし、目は合わせようとしない。
 たしかに、去年も、同じ様な状況だった。井川英俊が一年のクラスの中では首位でタスキを受け取り、俺は井川英俊のあと五分後くらいあとに
スタートした。長距離選手でもないのに「陸上部」というプライドで勝負していたらしい井川英俊は、水泳部の俺に抜かされて二位でゴールする羽目
になった。翌日、井川英俊は俺のクラスにふらりとあらわれ、「俺の負けだ。完敗だったよ」とそれだけ言って、俺やクラスの連中が唖然としている
間にそそくさ去っていった。 「疾風みたいな奴だ」 クラスの誰かがぼそりと呟いた、そんな言葉が耳に残っている。

「結果は、去年と一緒さ。400メートルの選手に、1500メートルの俺が負けるかよ」
 俺がそう言うと、《疾風の井川英俊》は今日はじめて俺の顔をみて、ニヤリと笑った。その笑顔をみて、俺は思った。馬鹿は、俺だ。
俺はおそらく、こいつのことをすごく誤解していたんだと思った。競技に人生やら何やらの重いものを重ねて、プレッシャーに潰されるような人間の
浮かべる笑みではなかったからだ。ただ単純に勝負することを喜ぶ、競技者の本来の表情がそこにあった。
 ハードルを跳べなかった理由はきっとプレッシャーじゃない。もっと別の何かだ。少なくとも、余計な考えによるプレッシャーなんかじゃなかった。
 俺は雲一つない空を見上げた。雨が降らないで、良かった。晴れだから、友達と勝負が出来る。悔いの無いように、全力で走ろう。俺は、そう思った。

《疾風の井川英俊》のクラスの女子が、先頭で校門へと飛び込んできた。校門から続く歩道を、真っ赤な顔をして駆け込んでくる。
結構かわいい子だった。《疾風の井川英俊》は彼女からタスキを受け取り、颯爽と駆け出す。陸上部らしい綺麗なフォームだ。黄色い歓声があがる。
 絶対に追いついてやる。追い抜いてやる。そう思いながら俺は、自分のクラスの女子が到着するのを待った。気を揉みながら待った。
 来ない。まったく来ない。
 結局、うちのクラスの第九走者はやってこなかった。彼女は足を挫いて、そのまま棄権したのだ。
「あー、もう好きなタイミングで走りだしていいよ。どうせ個人タイムだけだから。ただし、ちゃんと走れよ」
 どうすればいいかを聞くと、体育教師はそんなことを言った。俺は息を押し吐き、意気を押し下げた。十分以上が経過している。さすがにもう、俺の
友達には追いつけない。勝負したかったな、とそう思った。きっと、雨が降れとか思った俺に、友達のことをちゃんと理解していないで偉そうなことを
言おうとした俺に、神罰が下ったのだろう。
 そんなことを考えながら何回目かわからないストレッチのやり直しをしていると、校門のほうで再度黄色い歓声があがった。校門の方を見やると、
応援している女子達と、軽やかなフォームで《疾風の井川英俊》が走り去っていくところだった。どうやら、三周のうちの一周が終わったらしい。
6142/3、降るべき雨(お題:黒幕) 6/6 ◆ethG0vgyGc :2011/02/13(日) 21:03:20.24 ID:sD22nImC0
 気がついたら、誰かが笑っていた。俺だった。グラウンドにいる教師や友達や、あるいは全然関係の無い生徒達が、びく、という感じで俺を見た。
 気にしている暇などない。俺は笑いながら走りだした。全力疾走で校門を抜け、走っている《疾風の井川英俊》の背中をめがけて追走する。
「追いついたぞぉ井川!」
 俺はそう叫び声をあげて、瞬く間に《疾風の井川英俊》の横に並んだ。《疾風の井川英俊》は驚いたような、しかしそれでいて来るのがわかって
いたとでも言いたそうな嬉しそうな表情を、一瞬だけ浮かんだ。向こうは多分喋るような余力は無い。だから、俺だけが一人で叫んだいた。
「勝負だ、井川!」

 そうして、俺達は二周の間、併走を続けた。ハイペースで走る俺に、なんとか《疾風の井川英俊》が食らい付く感じだ。こっちは最初から二周の
つもりで全力疾走なのに、俺の友達は必死でついてきた。走っている間のことは、正直あまり覚えていない。アスファルトの弾む感覚とか、
肺に入ってくる冷たい空気とか、応援しているクラスメイトの歓声とか、となりを走る俺の友達というか敵というかの息の音とか、色々なものがあった
けれど、それらのものをみんな置き去りにして、楽しかった。死ぬかと思うくらい苦しかった。最高だった。

 そして、校門が見えてきた。ラストスパート。俺は力を振り絞って全力で走る。後ろにあるはずの、《疾風の井川英俊》の足音は聞こえない。
俺のラストスパートに、ついてこれていない。
 俺は、その友達に向けて叫んだ。もう肺が機能停止しているんじゃないかというくらい苦しかったけど、充分な声量があったたことに満足した。
「井川英俊! お前の勝ちだ!」
 俺はそう叫びながら、校門の前を駆け抜けた。
「なにせ俺、あと一周残っているからなっ!」
 走り続けた俺の背後で大きな歓声があがった。きっと、誰かが校門へと飛び込んで、そしてゴールテープを切ったに違いない。
 
 とりあえず完走はしよう、そう思いながら俺は疲れ果てている足を動かし続けた。コースを半分くらい消化したところで、俺は天気の異変を感じた。
 走りながら空を見上げた。そこにあるのは、相変わらずの青空だ。けれど、雨が降っていた。天気雨というやつだ。何かを考える間もなく、それは
一気に豪雨へと変わる。集中豪雨。にわか雨。ただし天気雨。
 あとで聞いた話だと、その天気雨が降り始めた時点で、ゴールをしていなかったのは俺だけだったらしい。他の走者達はみな無事だったそうだ。
「お前はさ、日頃の行いが悪すぎるんだよ。絶対的に。本当に。心から」
 本日のヒーロー、 《疾風の井川英俊》にはそう言われた。

「やあ、どうだった? 君の言う『なんでも背負いこもうとする馬鹿』は、雨にうたれて、少しは頭が冷えた感じだったかい?」
 家に帰ってパソコンを立ち上げると、画面上には『J( 'ー`)し』がいて、そんな事を言われた。
 俺は何も言わずにノートパソコンを閉じた。ピポ、という気の抜けた、そんな情けない感じのビープ音が鳴った。
615以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:04:59.17 ID:sD22nImC0
おしまい。
ジュディマリは「モットー」と「風に吹かれて」と「ステキなうた」も好きです。
616以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:15:12.78 ID:G955tPzl0
ジュディマリはほとんど聞いたことなかったけど
このまえブックオフに買いに行ったら
アルバム80円だったよ
需要と供給って残酷だなと思いました
良い歌なのに

4作目を投下するにはまず書かねばな
617以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:28:20.39 ID:EqSNotitO
>>590
できたよ!ありがとうえろいひと
618以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:37:38.32 ID:sD22nImC0
ここまでまとめた
619以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:44:03.43 ID:lyUqSCO00
>>618
乙サマー
620以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:44:47.38 ID:lyUqSCO00
もう9作か。
じゃあ今回は参加しなくてもいいね。
621 冒険の書【Lv=17,xxxPT】 :2011/02/13(日) 22:23:52.26 ID:A52MgAor0
hayamenohosyu
622味のカケラ(お題:バレンタイン) 0/2 ◆GODIVARwCk :2011/02/13(日) 22:28:39.10 ID:LqmoMWxx0
完成しましたので品評会投下します。
623以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:29:26.63 ID:vlm9G+lO0
>>620
待て、逆に考えるんだ。「まだ一桁台しか出ていない」とな。
624味のカケラ(お題:バレンタイン) 1/2 ◆GODIVARwCk :2011/02/13(日) 22:31:53.65 ID:LqmoMWxx0
 僕が彼女から貰ったのは、小さな赤い箱だった。
 贈り物というのは不思議なもので、縁起の悪いものや受け取る人の嫌がるものでない限り悪い気はしない。かくいう僕も、そう思っている。

 学校の教室の僕の机の中に箱は入っていた。それも奥の方に。こんなベタなことを今でもする人が身近にいると考えると、おかしくて笑ってしまう。
 送り主は誰なのか、それともただのイタズラなのか。良し悪し、二つに一つ。だが、人間というのはどうしても、こういう出来事を悪い方向にとらえようとしてしまう。嫌な予感しかしなかった。
 教室を見渡してみた。僕の様子を伺っている人は誰もいない。今日はプレゼントを交換する日なんかではないし、ましてや僕の誕生日でもない。何か僕にまつわる記念日かどうかなんて、もってのほかだ。
 隣の席に入れるつもりだったけど間違えて入れてしまった、誰でもいいからとりあえず入れといた、何かのドッキリで驚かせようとして入れた……と、あまりよくない考えばかりが頭の中でぐるぐる回っていた。
 百歩譲って、これは自分に贈られたものだとすれば箱の中身を確認する権利がある。中身を見れば送り主や目的がわかるかもしれない。淡い期待が芽生えた。
 キーンコーン、とチャイムの音。担任が入ってくるなり、ホームルームが始まった。中身の確認は放課後にまで持ち越された。

 「ちゃんと、開けましたか?」
 放課後。昇降口を向かう途中、廊下を歩いていると一人の女子に声をかけられた。
 「えっと、何を?」
 少し白々しく聞き返した。隣のクラスの子だろうか、クラスメイトじゃないのは確かだ。
 「ありませんでしたか?その、箱が……」
 ああ、箱を入れたのはきっとこの子に間違いない。中身はまだわからないけど、彼女が言いたいことは何となく想像がつく。どうして人間は、こう転機が訪れると物事を良い方向にもっていくことができるのだろうか。
こう思う自分を恥じることはない。むしろ、真に受け止めてもいいくらいだ。
 「ああ、箱ならあるけど中身はまだ。開けた方がいい?」
 「なるべく誰にも見られないところで……あ、一緒に帰りませんか?その時にでも」
 彼女と学校の外で落ち合う約束をしてその場を後にした。
625味のカケラ(お題:バレンタイン) 2/2 ◆GODIVARwCk :2011/02/13(日) 22:35:09.97 ID:LqmoMWxx0
 贈り物を受け取った時の気持ちを送り主が知りたがるのは当然のことだ。その贈り物が特別なものであれば尚更のこと。受け取る人の喜ぶ顔を見た時、その喜びは送り主にもきっと満ち溢れることだろう。
 「どうぞ、開けてください」
 彼女を目の前にして箱の蓋をゆっくりと開ける。僕の頭の中は期待と不安で入り混じることはなく、ただ期待するだけだった。
 中には石畳のように敷き詰められたチョコが入っていた。変に堅苦しくなく、何の飾りっけもない、至ってシンプルなもの。どういうわけか知らないけど、僕の好みがわかっているなぁ。
 チョコを一粒つまみあげ、彼女の顔を見る。ニコっと笑うその表情が、僕には「召し上がれ」の合図に思えた。遠慮なくそのままチョコを口に運び、その味を確かめる。
 チョコだ。それも生チョコだ。きっとチョコを湯煎して生クリームを混ぜて固めただけだろうけど、市販されているどのチョコよりも何倍もおいしく感じた。
 「おいしいよ。これ、君が作ったのかい?」
 率直な感想を彼女に言った。
 「いいえ、それは私が作ったんじゃないんです」
 この時の僕は、目を丸く見開いて唖然とした、何とも間抜け表情。色々と疑うべき点はあったかもしれないが、これほどまでの状況に居合わせたのならば、思春期の男子は皆、おのずとこの先に待っているものはわかるはずなのだが。
 「じゃあ一体、誰が?」
 彼女は左腕をゆっくり上げながら僕の後ろを指差した。ゆっくりと振り返ってみたが、そこには誰の姿もない。
 「誰もいないじゃな――」
 僕は言葉を失った。彼女の方に向き直ると、彼女の顔が文字通り目と鼻の先にあった。彼女は一体何がしたいのか。いくらなんでも、この展開は急すぎないか。周りには誰も見ている人いないけど。
 「……」
 「え?」
 彼女の声が小さすぎて聞き取れず、反射的に甲高い声で聞き返した。少し俯いている彼女の顔から微かに見えたのは、口元に浮かぶ笑み。目は前髪で隠れて見えない。
 「!」
 一瞬の出来事だった。何が起こったかはわからない。ただ、何かが全身を走ったような気がする。口からか、それとも腹からか。本当に、よくわからない。
 次第に意識が遠のいていった。暗く、暗く。……ビターチョコ?

 二月十四日に彼女から貰ったこの赤い箱に入っているチョコは正真正銘、良い贈り物に違いない。仕事の合間に食べるのにはもってこいのものだ。
 それにしても、一粒、一粒の味がどうしてこんなにも違うのか。甘い。甘酸っぱい。ほろ苦い。そして、とことん苦い。たった今口にしたやつは甘みの欠片も無かった。最近、恨まれるようなことをしたっけか。
 また一粒チョコをつまみあげ、念じる。甘いチョコでありますように。
 二十五年間、バレンタインという日にチョコを貰ったことのない僕にとっての初めての出来事。そう、彼女という異性からチョコを貰ったということ。果たして、これが青春というものなのか。
 思春期の少年のような思いにふけながら口に入れたチョコは、またしても苦かった。
626以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:38:58.39 ID:sD22nImC0
よくそんなトリップ探してくるね
627 ◆GODIVARwCk :2011/02/13(日) 22:39:32.62 ID:LqmoMWxx0
終わりです。
>>348さんの補足:死ぬな。の一言がとても印象強く…

一行の文字数を守っていたつもりが、2レス目が30行オーバーしてしまいました。
以後、気をつけます。大変失礼いたしました。
628以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:41:55.44 ID:hs4Msa3t0
なんとも不思議な…… 好きよこういうの
629以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:45:03.39 ID:eqkZ7jO1O
ええい間に合わん、今週も時間外か
630以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:45:45.20 ID:75j3ixY6O
GODIVAすげー
631十五年後の述ベルズ (お題:色) 0/4 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 22:52:44.55 ID:G955tPzl0
できたー
できたぞー4作目
品評会投下します
632十五年後の述ベルズ (お題:色) 1/4 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 22:53:51.26 ID:G955tPzl0
 僕は小説屋だ。小説屋は、世界中のいろんなところで、いろんな方法で小説を売っているけれど、僕は双子の
兄と一緒に、街角で小説を作るという方法で暮らしている。小説屋としてはポピュラーな販売方法だ。
「そうして、二人は離ればなれになって、それでも大切に相手のことを思って生きていきます。……終わり」
 兄が小さな子供に童話を作って聞かせた。最後は幸せなのか、そうでないのかあやふやな終わりかたで、よく
兄の好む形式だった。
「なんでいっしょに暮らせないの?」
「人間とアーカンは、同じ世界では暮らせないんだよ」
「かわいそうね」少女が言う。
「そうかもな。わからないけど」兄が少女の前に手を出す。「ともかく今のお話の代金を頂戴」
「はい」
 少女は、飴を二つ、兄の手の上にのせて、去っていった。兄は、その飴を僕にくれることもなく、二つとも口
に含んだ。酷い奴である。双子だけど、まるで似ていない。
 ひとが少なくなった夕方の公園で、特に仕事がなくなったように考えた僕らは、そろそろ帰ろうかという話に
なった。けれど、そういうときに限って、変な人がやってくる。
「あなたたちが小説屋とかいう人?」
 中学生ぐらいの女の子だった。
「そうだけど」僕は答える。
「なんか話が聞きたい人?」兄が言う。
 女の子は、怪しいものを見る目付きでこちらの様子をうかがっている。僕も兄も黒ずくめのマントを着ていた
けれど、何かおかしいだろうか。
「どんなお話でもしてくれるの?」
「どんなかどうかわからないね。思いついた話を売るだけなので。ただつまらない嘘は嫌いだから、そんな話は
絶対にしない」
 僕は兄の言葉にだまって頷く。
「いくら?」少女は尋ねる。
「あなたの好きな値段です」僕は言う。
「払いたくないって言ったら、払わなくても良いってわけ? それっておかしいでしょ。あとで詐欺みたいに大
金をとるんじゃ」
「おまえ、名前は?」兄が言う。
「世古夏野」
633十五年後の述ベルズ (お題:色) 2/4 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 22:55:56.13 ID:G955tPzl0
「なつの?」変な名前。僕は呟く。
「じゃあ、夏野。お前は今、百万円持っていて、本来二十億の価値のあるピカソの絵が百万円で売っていたとす
る。買うか?」
「それが本当ならね」
「じゃあ、そのピカソの絵は、どこにも売ることができないとしたら、買うか?」
 夏野は少し迷った後で言った。
「買わない」
「だろう。お前にとって、ピカソの下手くそな絵は、百万円の価値じゃないってことだ。芸術に需要と供給を当
てはめる奴なんか死ねば良い。俺は、そんな価値のない金の為に、小説を作らない。俺は、聞いた人の思う価値
の為に、小説を作る。だから、代金は、客が決めるんだよ。おかしいか?」
「おかしい」僕は呟く。
「お前はちょっとだまってろ」兄が僕の体を軽くこずく。「それでいったいどうして欲しいんだ? 何の話を聞
きたい?」
 夏野は、興奮を落ち着かせるようにしてから、言葉を発した。
「手術を拒んでいる、女の子に手術を受けたくなるような話をして」
「そんなつまらない嘘はいやだ。お前行ってこい」
 兄が僕に言う。
 夕日は消えて、世界は暗くなっていた。

 病院。建物も白く、着ているものも白ばかりの人が沢山いる場所。僕の着ている黒ずくめのマントは、かなり
場違いであるようだった。
 この病院に入院しているのは夏野のいとこで、大崎由美花という名の八歳の女の子である。
 その少女は、重い病を患っていて、手術をしないともう長くはないという話だった。問題はその手術の成功率
が二割程と低いことなのだが。
 僕は夏野の後に続いて、病室へ進んで行く。兄はいない。
「由美花ちゃん、こんにちは」
「あ、つの姉ちゃん」
 つの? おもしろかったが、僕は黙っている。
「あのね、これからこの人が、お話をしてくれるから一緒に聞こう」
「僕は何も話すつもりはないけど……」
634十五年後の述ベルズ (お題:色) 3/4 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 22:57:00.39 ID:G955tPzl0
「は?」夏野が目を丸くさせる。「由美花ちゃんはちょっと待っててね」
 それから僕の手を引いて、一端、病室を出た。
「何言ってるの? あなたがしてくれるんでしょう?」
「兄が言っていたと思うけど、僕らはつまらない嘘は好まない」
 小説屋とはそういう人種だ。
「じゃあなんで、ここに来たの?」
「夏野が、用意している話を聞きに来た。本当は、自分が、夏野が作った話をしようと思ってるんでしょ? 別
に下手でもなんでも良いと思うけど」
「なんでそんなこと知ってるの」
「知らなかったよ。ただ、おもしろい嘘をつくことが仕事だから」僕は微笑んだ。
 夏野は病室に戻り、ノートを取り出した。そこには、なんだかよくわからないお話とか言葉とかが沢山かかれ
ている。僕は病室に入れてもらえなかった。夏野は冷たい奴だと思う。名前が表すように。
 それから三十分ぐらいしただろうか。夏野は満足そうに出てきた。由美花が手術を受ける気になったという。
 白い病室は喜びに溢れていた。
 物語でいえば山場を越えて、ハッピーエンドに切り替わるところだろう。
 ただ、その一ヶ月後に行われた手術は失敗してしまった。

 告別式の会場は、病院とは逆の色に染まっている。僕や兄の黒いマントも、遠目に見れば悪くない選択に見えるだろう。
「なんで、あんたたちがここにいるの?」
 夏野は遠くに立っていた僕らの元に近づいて来た。制服を着ていて、目を赤くしていた。
「誰がどこにいたって良いだろう?」兄が言う。「何か聞きたい話はあるか?」
「あるわけない!」夏野が答える。
「そうか……」
「由美花は私のせいで死んだの?」夏野がこちらを見て尋ねる。
「夏野が手術を受けさせる気にしたのは確かだけど、手術をしてもしなくてもどちらにせよ死んでたよ」僕は言う。
「じゃあどうすればよかったの」
「だれにもどうにもできないことはいくらでもある」
 兄が呪文のように言葉を発した。
「忘れるのが楽だよ。お葬式はそのための儀式でもある」僕が言う。
「忘れるなんてひどいでしょ」
635十五年後の述ベルズ (お題:色) 4/4 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/13(日) 22:58:06.38 ID:G955tPzl0
「どちらにせよ、俺たちにできるのは、物語を作るだけだ。だから、それを聞きたくはないのならば、俺の前に
いても何もできない」
「じゃあ、作ってよ。私が由美花のことを忘れないようにして」
「いいぞ、わかった。十年待て」

 十年後、そこは夏野の結婚式の場であった。控え室で、一人出番を待つ、純白の夏野の前で僕は、兄が用意し
た物語を読み上げていた。十年前の実際にあったお話。僕も兄も夏野も出てくる。
 この会場では黒い服も悪くはないが、形式的に問題があるかもしれない。
「感想は?」兄が尋ねる。
 夏野は黙っている。幸せの場に持ってくるには相応しくなかったかもしれない。でも、それが彼女の要望でもある。
 由美花の周忌は、五を数えたところで人が集まらずに消えていた。多くの人は死の瞬間の多大な悲しみを嘆き、
そしてすぐに醒めた。比熱の問題である。
「あなたたちは成長しないのね?」
「小説屋だからな」
「感想は、悲しい物語だと思いました。でも、それだけ。映画やありふれた小説と変わらない悲しさ。本当にあっ
たことだったのに。もう何でそんなに悲しかったのかもわからない」
「夏野が成長したんだよ」僕が言う。
 その言葉を聞いて、夏野は涙を落とした。いったい、何の為に泣いているのかはわからない。
「また十年後に来てくれる?」
「それはイヤだ」兄に先んじて僕は言った。
「つまらない嘘はつきたくないから?」
「はい。本当に思い出したくなったときに、また来るよ。もしくは別の話が聞きたいときにでも探して」
「今日の代金は?」夏野が言った。
「ゼロだろ?」兄が答える。「聞いた人が決めた以上の価値はいらない」
「そういうこと。じゃあ、またね」
 控え室の扉がノックされる。夏野が呼ばれているのだ。
 僕らは、ここを出ることにした。出口はいくらでもある。それから最後に僕と兄は言った。心の底から。僕ら
は、つまらない嘘をつかない。
「おめでとう」
「お幸せに」                                 <了>
636以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:59:08.12 ID:G955tPzl0
以上です。
637以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:17:18.51 ID:eqkZ7jO1O
4作とか凄いな
638以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:18:39.49 ID:7WhaoyAx0
無双しすぎだろお前
ちょっとなんか未来の分まで消費してないか?
639 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/13(日) 23:24:14.44 ID:A52MgAor0
予約。
640 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/13(日) 23:27:19.67 ID:A52MgAor0
いないようなので投下します。2レス。
641老境にて教わる(お題:色) 1/2 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/13(日) 23:28:07.04 ID:A52MgAor0
 久しぶりに街を出歩いている気がするな。いや、大丈夫。陽気が良いのでさほど辛くない。まあ、たまにはこうやって人のいるとこ
ろを歩かないと駄目だ。ボケが進む。それにしても、仁絵も随分と力が強くなったもんだ。人差し指を目一杯ぎゅっと握って引っ張る
もんだから指が抜けそうになっちまう。なに、なんだ、どれだ。あれか、あれは雷門の提灯だ。ん、そうそう提灯は赤色。あの字が書
いてあるところは黒。柱のところは朱色というんだ。しゅいろ。そうそう。赤とはちょっと違うだろが。うん、ああ、そうか、幼稚園
で教わったのか。それじゃあ、あすこの風船は何色だ。緑か。そのとなりは?黄色か。おうおう、よく知ってるな。真司もこのくらい
の時分にはこんなもんだった。なにかっていうと色々と聞きたがってな。おっと、仁絵、ちょっと待てあんまり急ぐと爺ぃの足がいか
れちまう。

 くっく?ああ、靴のことか。なに、新しい靴を買ってもらったのか。え、何色だって。うーん。青にも見えるし、赤にも見えるし。
駄目だな。ひいじいは目ぇが悪くなってもうあんまり何色かわからないんだよ。なんでかって?みんなそうなる。ひいじいくらい歳を
とるとだんだん目が見えなくなってくるもんだ。わからない?まあ、そのうちわかる。おいおい、なに、色?だから、ひいじいにそう
せっつかれもわからんよ。おい真司。あれ、どっかいっちまったか。じゃあ靴の色は、あとでお父さんに聞きなさい。だからひいじい
にはわからんから。

 おう、ここだここだ。いや、大丈夫だがまいったよ。仁絵は随分と歩きまわるようになったな。ん、ああ、なんか自分の履いてる靴
の色がなんていうかわからんかったらしくてな。今日買ったのか。そうか紫か。むらさき。わかった?そうそう紫。ん、なんだ真司。
ああ、目か。白内障ってやつだ。だいぶ進行してきた。なに、手術すればいくらかはよくなるみたいなんだがなあ。まあそういうな。
ちょっと霞むくらいで生活に支障はないよ。心配要らない。もういい加減ぽっくりいってもいい歳だからな。いや、ぽっくりできれば
いいさ、寝たきりで周りに迷惑かけるくらいならな。こうやって曾孫の顔も見れたことだし、別にいつ死んでもいいよ。なに、仁絵が
嫁にって、お前あと何年あると思ってんだよ。

 ああなに、買い物か。わかった、いっといで。じゃあ仁絵はひいじいと家におるか。なに、なんだそれは。積み木か。え、ああこれ
が赤で、これが青で、うんうん。己れに教えてくれるってのか。はは、まいったねこれは。じゃあ、こっちは黄色?あ、ちがう。そう
か。言われるとなかなか難しいもんだな。いいよ、ありがとう。まさか曾孫にモノを教わる時が来るとはなあ。
642 ◆ihO9dxzf9I :2011/02/13(日) 23:28:22.44 ID:bjXamNud0
予約
643老境にて教わる(お題:色) 2/2 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/13(日) 23:28:32.80 ID:A52MgAor0
 ああ、お帰り。裕子さんも来たかい。晩飯作ってくれるって?ありがとう。いま?今か、いまはちょうど仁絵に色を教わってたとこ
ろだわ。いやなに、もうちょっと耄碌してきて、色味がよくわからんでな。ああ、不便はない。大丈夫。手術?いいさ。これでいい。
まあ、裕子さんの言うとおり目が悪くなっていいことなんてもんはまるで無いが、今日はこうやって仁絵にものを教わったりな。目が
悪くならなかったらわからんこったから。仁絵はやさしい子に育ってるな。なんていうのかな。歳をとると、目がよく見えないなんて
子供には想像つかないんだろうけど、それでも見えないんならってんで、こうやって教えようとしてくれるところとか。いや、なかな
かだよ。

 じゃあ、いただきます。ああ。その椅子は真司の親父が使ってたもんだ。仁絵のおじいちゃんだな。まあ親不孝者だったがな、何の
因果か先に死んじまってな。まあいいさ。己れも長生きなんて碌でも無ぇって思ってたけど、こうやって孫達に優しくしてもらったり
すると、まあいいもんかもな、なんて思うぜ。耄碌してまで生きるってこた、今はまだしも、結局は誰かに下駄を預けなきゃなんねぇ。
まあ、おめぇらがあんまりいい奴なんで、あんまり迷惑かけたくはねぇんだが、それでも、世話を焼いてくれる人がいて、それがみん
な優しいいい連中だったってことに感謝しなきゃならねえな、なんてな。まあ、真司の親父やお袋さんやな、うちの女房なんかにもな。
もちろん裕子さんのご両親にもだ。

 ん、なに。泊まってくって。仁絵はひいじいと一緒に寝たいのか。いいよ、わかった。じゃあ、今日は仁絵に色々と教えてもらった
から、今度はひいじいが何か面白い話でもしてやろうかね。まあ、こうやって教えたり教わったり色々とな、百年近くも。おもしろい
こったよ。まあな、じゃあ、お前さんもな、そうやってな生きていってくれよな。優しいまんまで。己れの知らないずっと未来までな。



<了>
644 ◆Tf1WgBAu9U :2011/02/13(日) 23:29:05.33 ID:A52MgAor0
以上です。あとは時間外で出すかな。
645以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:32:00.51 ID:A52MgAor0
じゃあ、予約締め切ります。

◆ihO9dxzf9I どうぞ。
646以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:32:28.02 ID:A52MgAor0
敬称いれそこねた。 ◆ihO9dxzf9I 氏どうぞ。
647以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:32:58.75 ID:7WhaoyAx0
本心現るwwwwwwww
648坊っちゃん1/6(お題:バレンタイン) ◆ihO9dxzf9I :2011/02/13(日) 23:33:03.19 ID:bjXamNud0
 親譲りの女(すけ)こましで小供の頃から恋ばかりしている。小学校にいる時分好かれた女子に口づけて腰を抜かさせた
事がある。なぜそんな助平をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。二人でいると、同級生の一人が冗談
に、いくらノロけても、目の前で口づける事は出来まい。弱虫やーい。と囃したてたからである。向こうの親から連絡があ
った時、おやぢが大きな眼をして腰を抜かさせるほど気配りのない奴があるかと云(い)ったから、この次は抜かさずに濡
らして見せますと答えた。
 女を口説けばたいていは落とせたので、友達に話していたら、では他人の女は寝取れるかと云った。寝取れぬ事があるか、
誰でも落として見せると受け合った。そんならうちの母を落としてみろと注文したから、足繁く押しかけた末に寝取ってや
った。夫には痣が成る程殴られたが、幸い女が金を出してくれたので傷は早く治った。しかし友達の傷は死ぬまで消えぬだ
ろう。
 この他女遊びは大分やった。その報いか、妙な夢を見た事がある。むつんでいた女が大口をあけたかと思うと、中から前
に好いていた女が躍り出ておれの首へ食いついてくるではないか。目覚めたら汗がびっしょりだ。なんにせよ女は懇切にす
べきらしいと悟った。以来浮気癖は直しておらぬが、後腐れないようにふるまっている。
 おやぢはちっともおれを可愛がってくれなかった。母は三つ上の姉ばかり贔屓にしていた。この姉はおれを好いてくれ、
ママゴトながら世話女房を気取るのが好きだった。おやぢはおれを見る度に、こいつはどうせ碌なものにはならないと云っ
た。母は、好色で好色で先の家庭が案じられると云った。なるほど碌なものにはならない。ご覧の通りの始末である。行く
先が案じられたのも無理はない。ただ女を取っ替えて生きているばかりである。
 姉は先の面倒も見てやると云ってしきりに世話してくれた。元来女房のような性分で、やさしいから、仲がよかった。十
日に一遍くらいの割合で裸同士でたわむれていた。十四の時家に帰ったら姉は卑猥な恰好で待っていて、人が困ると嬉しそ
うに冷やかした。あんまり煽るものだから、玄関なのもかまわずに押し倒してやった。まぐわいの潮が満ちかけたところで
出入り戸があいた。おやぢだった。おやぢはおれを勘当すると云い出した。
 今時勘当もないものだと高をくくっていたが、母も拒まず姉も口を出せなかったから、そのまま神戸の親類に預けられて
しまった。籍は消せないがそれ以外の縁は切るという。はじめは戸惑ったが出家を命じられるよりは良かろうと、配流先で
の出会いを楽しむばかりになった。神戸の思い出は女しかない。わけても良家のご令嬢との事は良いも悪いもたしかに覚え
ている。”たおやめ”だが難しい人だった。年上でも男慣れがしていないので、いつもおどおどしていた。きっと箱入りの
ごとく扱われ潔癖になっていたのだろう。荒療治を施し楽にさせてやった。処女は一度穢れてしまうと濫りになりやすいも
のだが、令嬢は容易くはなびかないで相応の隔たりを保ちたがる品を持っていた。
 令嬢は放蕩を咎めなかった。好きなように遊んでくださいと云った。生来の性分ならば直すのはもったいない、それはあ
なたの特長だから活かすべきだ、多くの女を幸せにし多くの恋を知ったほうが良いと放ってくれた。不思議なものである。
たいていは妬み狂って別れるところだ。はじめは甘えていたが、だんだんむず痒く思われてふらつくのはやめてしまった。
今から考えるとまったくおかしい。ある時などは、おれが嫌いにならぬのかと聞いてみた事がある。令嬢は全然と云った。
649坊っちゃん2/6(お題:バレンタイン) ◆ihO9dxzf9I :2011/02/13(日) 23:34:36.20 ID:bjXamNud0
 令嬢とは別れた。というより、別れさせられた。親なしで漁色家とくれば、貴族のお気に召す男ではないらしい。おれが
あきらめて退いた。別れ際、令嬢は存分に心を許してくれた。おれはこらえきれず泣いてしまったが、令嬢は決して泣かな
かった。忘れた女も多いが、姉と令嬢だけは死ぬまで忘れないだろう。
 名のあるご令嬢を犯したからには親類の耳にも噂は入ってくる。しかもそこの当主とは浅からぬ縁があったようだ。こん
な面汚しは思っても見なかったと云って、おれは神戸からも追い出されかけた。いよいよ諸国放浪の世之介道中かと思って
いると、実家から連絡が来て、姉が隣県の大学に進むからヨリを戻してやるという。放浪道中も捨てがたいが、高校での出
会いを終えてからでも遅くはあるまいと思った。
 帰っても事情は大して変わらなかった。おやぢには叱られる。母にはそっぽを向かれる。ただ一つ、姉がいない事だけが
変わっていた。たまに連絡をくれ、家に帰ってくれば優しくしてくれたが、前のようにたわむれる事はなくなった。しかし
苦にした覚えはない。おれには女がいた。精一杯目をかければ応えてくれたし、これがあれば家での爪弾きもお相子のよう
なものだと思っていた。高校の三年は家を寝床ばかりにしていたと思う。

 忘れぬ女を二人挙げたが、高校でもそんなのが一人だけいた。好いたわけでも好かれたわけでもない。単簡に云うと、バ
レンタインデイの折に世話をしてやった後輩だ。
 高二の年も暮れる頃だ。親しくしていた女が、後輩を連れてやってきた。後輩は小柄で愛嬌のある丸い目をしていた。お
れへの懸想かと思ったが、どうも違うようだ。なんでも、とある先輩と上手く行きたいがどうすればいいかわからない。男
心はどうすればつかめるのか知りたいから、おれを当てにしたのだという。がっかりはしたが、無下に出来る性分でもない
から聞いてやった。
 その先輩というのは三年だから受験生だ。これまでは上手く行っても邪魔立てをするだろうから我慢していたが、私立入
試が終われば良い頃合である。二月にはバレンタインデイがあるからそこを潮に告白したい。それまで上手く気を惹きたい
のだがどうすればいい、との事だった。おれはあんまり乗り気がしなかった。
「卒業すれば二年は離れ離れだろう。よしんば同じ大学に入ってもまた二年離れる。そんなんで愛が持つのか」
「でも、入学したときからずっと先輩には優しくしてもらったんです。告白しないまま卒業されると……」
「告白して失敗しても諦めがつかんのか」
 後輩は黙りこんでしまった。やりこめているようで気が引けた。とはいえ、おれも自信はなかった。女心となるとわから
んでもないが、男心となると取り付く島もない。鏡にうつさないと自らの顔が見えぬのと同じだ。気の乗らない理由はその
ほかにもある。バレンタインに告白するなど碌でもないものだと思っているからだ。
 バレンタインというのは昔から好かなかった。十、二十ばかりの女が一人ずつ寄ってきて貰ってくれ、と勢い込んでチョ
コレイトを差し出してくる。女の心中は察してあまりある。だがそんな荷物を幾重にも背負う男を察してみるがいい。はじ
めは抜けたところはあるがやれば出来る黒ストッキング、次いでカチューシャを取ればべっぴんが増すが取りたがらないデ
650坊っちゃん3/6(お題:バレンタイン) ◆ihO9dxzf9I :2011/02/13(日) 23:36:04.56 ID:bjXamNud0
コっぱち、更には良い顔立ちと姿態を持ちながら人前に出たがらない釣り目、そんでもって堅物で猫耳が似合うツインテール
……寄ってくる女をあまねく憶えて後の世話をする羽目になるのだ。捨て置けば良い話かもしれないが、なんだか気が咎め
る。ある頃からは貰う数を十にまで狭めたが、それでも苦労は堪えない。
 貰う面倒もさりながら、あのもったいぶった儀礼だ。チョコレイトを渡して好意をあらわすなぞ、どうかしているではな
いか。そんなものにかこつけずとも愛は通うだろう。そもそも女だけが立ち働くのがまずい。その苦労を男がむさぼるのが
何より面白くない。愛が一方通行のごとく渡され、むやみに費やされていく。そんなものは愛の営みの内にも入らぬ。すな
わち男が自分の色男ぶりに酔うだけの悪習なのだ。
 よって後輩には、悪習など頼らずすっぱり告白すればいいものをと思った。しかし話してみると、この女相当の奥手らしい。
奥手を焚きつけるにはたくさんの薪が必要だ。バレンタインに告白すると言うのも、そいつなりの知恵なのだろう。
「その先輩のどこが好きになったんだ?」
「とても優しくしてもらったんです。面倒見もよくて、だから、付き合っていく中でお礼みたいなのをしたいと思ったんです」
「世話女房をしたいのか。殊勝だな」
「そんなえらいものじゃなくてもいいんです。隣にいて、何かできればいいなって……」
 だんだん神戸の令嬢が浮かんできた。言葉の端々から相手への心配ばかりがのぞき、自分の事など天から考えていない。
気配りぶりがそっくりだ。そんな女はいじらしいものである。異性としての愛というより、親としての愛のに近いものを覚
えてしまう。見捨てておくには忍びがたくなるのだ。
「じゃあ、まずはその先輩という人の顔を見せてくれないか。どんな奴だかわからなくてはしようがない」
「いいんですか?」
「かまわんよ。ただし、おれがするのは助言程度だ。最後に頼れるのは君の力だけだからな」
 後輩は安堵したように笑った。なかなか良い顔だった。そんなものは先輩とやらに見せてやればいいものを。

 先輩とは共に美術部に所属していたという。ちょっと顔を見てみると、肌が白く細身ではあるが笑顔に愛想がある優男だ
った。付き合いのある女の先輩に訊くと、男女問わず誰にでも優しい男だと云った。
「勉強も出来るし、友達づきあいも幅広いわ。人気あるからすぐに取られちゃうかも」
「それはまずいですね」
「恰好の割に体育も得意よ。それでも絵とか彫刻のほうが好きだから美術部に入ったんだって」
「はあ、上手い男もいたもんだ」
「あなたが云えたもんじゃないでしょうに。ところで、明日お暇?」
「受験生なんだから本分に精進してください。終わったらいくらでも相手いたしますから」
「たまにはいいじゃない。意地悪さん」
651坊っちゃん4/6(お題:バレンタイン) ◆ihO9dxzf9I :2011/02/13(日) 23:36:51.90 ID:bjXamNud0
 それにつけても女はいくらでも探ってきたが、男は初めてだ。正直良い気味はしなかった。普段の性分からすると、とう
とう男にまで興味を持ったかと云われそうである。とはいえ、事が事なので気にしてもいられなかった。
 優男の素性は大方一致していた。付き合いがよく女にも人気がある。他校の女と交際していたが、今は一人身らしい。物
事には何でも真面目に打ち込み、品行も方正ゆえに教師の評判も良い。なるほど惚れるのも無理からぬ男だ。となると、
一寸(ちょっと)やそっとでは落とせまい。おれは後輩を呼び寄せ、少々強引にでも近づいていけと云った。
「はじめに無理な要求を吹っかけるんだ。それから段々妥協していくと見せかけ、その実自分の利益になるように仕向ける。
世間にはそんな交渉術があってな」
「それが、男の人にも効くんですか?」
「男は知らんが、女には大分やった事がある。特に、ちやほやされてる女にはよく効いた。そういう者にとって異性はどれ
もかわらぬ羊の群れでな。特別目立たないと付き合う気にもならんらしい」
「確かに、先輩も人気がありますよね。でも……」
「いつまでも奥手でいるくらいなら諦めろ。そうしないとあの優男もいつまで立っても振り向いてくれもしないぞ」
「わ、わかりました。でも、どうすればいいんですか?」
「世話女房になりたいなら、初めから気取っちまえばいいんだ」
 何がいいかといえば、押しかけ女房になればいい。受験に臨むとあらば気苦労が絶えないだろう。それにかこつけて諸々
の世話をしてやるのだ。そうすれば嫌でも相手の心には残る。そこでのやり方さえ間違わなければ半ば付き合えていると言
ってもよい。二月になる頃には、チョコレイトなど渡さずとも良いほどになっているだろう。
 後輩はおれの指図によく従った。話相手に始まり、何かにつけて差し入れをしたり、やがては共に帰るようにもなった。
進展があるたび後輩はおれに知らせてくれた。優男は存外に甘えてくる人間だの、この間は頭を撫でてもらっただの、あん
まり嬉々としているのでうっとうしく思うくらいだった。とはいえ、よくやっていたらしい。ある時優男の隣に添っている
後輩を見た事がある。なにかにつけて後輩は優男の事を気にかけていた。優男もずいぶん心を許していたようで、後輩が何
をするにも笑って応えていた。
 見ていると姉を思い出した。まあ姉の方が器量もよく甲斐性もある。なにより姉は指図などなくともおれを可愛がってく
れた。だが後輩の世話女房ぶりも悪くない。ちょっとうらやましく思った。姉へ連絡してみると、バイトやらなにやらに取
り紛れて忙しくて仕方ないと返ってきた。

 センター試験、私立入試と終えるにつれて、後輩がおれを頼ってくる事はなくなっていった。おれもおれで忘れていた。
 思い出したのはバレンタインデイだ。おれは終日チョコレイトを心苦しくも断り続けていた。先着十名。それ以上はどう
したって面倒だ。今回渡されたのは何かと突っかかってきてはすぐ赤くなる短髪、甘ったるい声をしたコンピュータに詳し
い花飾り、女のスカートをやたらめくりたがる巨乳……あとは誰だったか。貰った箱を一つ一つ勘定していると、後輩がや
652坊っちゃん5/6(お題:バレンタイン) ◆ihO9dxzf9I :2011/02/13(日) 23:37:55.73 ID:bjXamNud0
ってきた。手にはラッピングを持っている。
「これ、足しにならないかもしれませんが、よければ」
「なんだ。鞍替えか」
「申し訳ないですけど、義理です。本命は変わってませんから」
 おれはわざとらしく肩をすくめてやると、後輩はクスクスと笑った。
「これまでのお礼です。アドバイスがなければ、何も出来ませんでした。本当に、ありがとうございました」
 頭を下げて箱を差し出してくる。上手くいってから渡すべきだろうに。ともあれ貰えるものは貰っておいてやった。これ
はあとで食ったがなかなか美味かった。
 放課後になると成功したと連絡をくれた。姦通を疑われるからこれ以上の付き合いはなしだ、あとは自分で上手くやれと
返してやった。その後優男が大学に受かったの、それからも数日に一遍は会える運びになったの、そういう事は人伝に聞いた。

 その人伝というのは、後輩をつれてきた例の女だ。そいつとは三年になっても付かず離れずの付き合いを続けていたが、
梅雨頃に後輩が優男と別れてしまったと云った。後輩は理由も何も知らせず、ただ別れましたとだけ云ったという。そいつ
は年の差が難しいだの、もしかしたら浮気されたのではないかだの云ったが、そんなタマでもあるまい。第一早すぎる。
 詳しくは本人から聞けばいいではないかと云うので、その通りに後輩に確かめに行った。だが取り付く島もなかった。ま
ずは、報告しなくて悪かった、別れたのは事実だと云った。おれには報告なんぞどうでもいい。問題は優男との事だ。しか
し後輩は、私が悪いのなんのと要領を得ない事ばかり抜かす。ずっと顔を伏せきりだったから、表情も読めなんだ。優男が
フったのか、お前がフったのかどっちなんだと訊くと、これも答えない。顔を上げて話せと云うと、愛嬌のある丸い目が潤
んでいるように見える。瞬間、しまったと思った。今更ながら訊くべきではなかったと悟った。他人の色恋に口を挟んだと
ころで、どうなるわけでもないのだ。後輩はもう一度顔を伏せて、せっかく手伝ってくれたのに申し訳ないが、結局は自分
の問題なので放っておいてほしいと云うから、それ以上は何も知れなかった。
 あらましがわかったのは偶然だった。ある女と飯屋に入ると、あの優男が気取った恰好をして見知らぬ女といるではない
か。それだけでも殴りたくなったものだが、事情がわからないからには放っておくしかない。すると、そいつはおれに気付
いて話しかけてきた。へつらい笑いを浮かべて、おれの名前は上級生にも知れ渡っていたとかなんとか抜かしてきた。
「かくいう先輩も、付き合ったばかりの後輩とこの間別れたそうではありませんか」
「あれ、そんなことなんで知ってるの?」
「先輩の色男ぶりもなかなかに高名でしたから」
「ハハハ。君に言われると恐縮だな。あ、そういえば彼女と一緒に話してたことあったね。なんかつながり、あったんだ」
「ところで、フったのはどっちだったんですか」
 そいつは頭をかいて隣の連れをちらと見た。そしてはにかんだようにして、
653坊っちゃん6/6(お題:バレンタイン) ◆ihO9dxzf9I :2011/02/13(日) 23:39:02.04 ID:bjXamNud0
「僕がフった。彼女とはどうしてもスケジュールが合わなくてね……」
「何いってんの、アンタが私がいないうちに二股してたんじゃん」
 連れが口を挟んだ。優男はあわてて連れに口止めしたが、おれはそれだけでも大筋はつかめた。
「そうですか。ところで、お二人はいつから?」
「高三の頃からよ。他の高校だったし、受験の頃は別れてたんだけどね」
 確認は終わった。あとは拳骨を食らわせるだけだ。はじめはご自慢の顔へ二発ばかり、腹と胸へ三発食らわして蹴りも加
えて倒してから、馬乗りになって顔を蛸殴りしてやった。店員が呼ばれたが、一人来たばかりの頃はまだ余裕なものだ。の
しかかっている間あいつはなんで殴ってくるんだと叫んだが、手前で知れという話だ。二人の店員に取り押さえられると、
あいつは倒れたまま、そうかお前あの女のことが好きだったんだな、だからおれが憎いんだろうと抜かしやがった。見当が
狂ってやがる。おれは女を無下にする男はあまねく憎いのだ。何もいえず泣くばかりの女の代わりをしてやっただけの事である。
 事件は高校にも知れ、おれは一週間ばかり停学に処された。その事は全く後悔しておらん。しかし、他人の色恋にくちば
しを容れた事は未だ後悔している。荷が重くなるし、上手くいった後の面倒まで見ないといけない。これはおれの性分に合
わん。ついでに、他人の色恋を面白おかしく煽るバレンタインへの憎しみはいっそう深まった。あんな不浄な日は廃するべ
きだ。おれは以来チョコレイトなんぞは貰わなくなった。
 後輩との付き合いはなくなった。たまに出くわし、会釈を交わすくらいだった気がする。

 色恋に明け暮れ学業も芳しくなかったから、おれは大学に行かず料亭の住み込みに就いた。月給は十万を超えるかどうか
で、代わりに諸々の雑費がチャラだ。ここはふらつきを許さなかったから二年で辞めてしまった。覚えたのは刺身の捌きと、
どこの仲居も床上手であるというくらいだ。
 家に帰るといよいよおやぢに追い出しにかかられた。このままでは出家にまで処されると案じて、先逃げして家を出た。
女を頼りに歓楽街をふらついていると、ホストをやってみないかと声がかかった。金と放任は手に入ったが、女から金を巻
き上げるのが好かず三年ばかりで辞めた。
 それからは津々浦々の女を渡り歩く旅に出ている。日本を縦断した後、国外へ出ようと思っている。英語だけは昔から努
めていた。実際、在留人とまぐわった事もあるのだ。月が綺麗であればI love you.と云えばいい。源氏の君は京都の女し
か知らなかった。カサノヴァでも欧州が精一杯だ。世界の女を知ったのは中々いない。当面は彼らを追い抜くのが目安だ。
 姉と令嬢の事を話すのを忘れていた。――家を出てから、就職して間もない姉のもとを訪れた。あらましは知れていたよ
うで、おれを見るなり姉はぽたぽたと涙を落とした。一晩ばかり世話になって、久々にたわむれたが、姉に迷惑は掛けられ
ないと思ってすぐに出て行った。姉は去年職場の同僚と結婚した。なかなか稼ぎのある良人(おっと)だ。
 令嬢とは見(まみ)えていない。姿だけは見た。ホストを辞めてすぐに神戸に渡り、馴染みのある良家の豪邸の前まで行
くと、門から麗しい女が赤子を抱いて出てきた。向こうと目があったので軽く会釈をして、おれはその場を去った。
654以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:41:40.81 ID:bjXamNud0
「文豪先生」というのはしゃれてると思ったが「文ちゃん」まで出てきたのはちょっとびっくりだ。
でも結構気に入っている。「文豪大先生」となると駄目だな
655以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:44:14.21 ID:A52MgAor0
したら、転載します。

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271 名前: ◆Lq1ieHiNSw :11/02/13 22:49:32 ID:1IjD6vIi
以上、品評会作品でした。
どなたか転載お願いします。
656孵化したは負か(お題:小説とは何か) 1/6 ◇Lq1ieHiNSw:2011/02/13(日) 23:45:34.26 ID:A52MgAor0
 著書『罪業』の映画化が発表されて間もない大磯慶介。絶望を吐き出し続ける若き作家の人間性、そして彼が
抱える想いを探るべく、本誌は大磯氏へのインタビューを試みた。


 ――先生の作品には例外なく陰鬱で暗い雰囲気が渦巻いています。それが大磯小説の特徴とも言えますが、先
 生は作品にどのような想いを込めているのでしょうか。

 大磯「想いですか。想いっていうか、まあただ単純に暗いものが書きたいだけですね。僕はそういう世界を表
 現していきたいと思っていますので。それに明るい話や楽しい話とかの小説って好きじゃなくて。僕の中では
 そういうのって小説の分野ではないので」

 ――それは漫画とか?

 大磯「そうですね。小説読むよりも漫画読む方が楽ですよね。だったら僕は明るい話は漫画で読みたいです。
 その方がわかり易いし。でも逆に人間の暗い心理ってのは、簡単に理解するべきものではないと思うんですよ。
 じっくりと重みを噛みしめて、自分自身も嫌な気持ちになって。そうやって心に染み込ませていくものなんで
 す。絵ではなくて自分のイメージで世界を想像するからこそ、読者も暗くて重い世界を体験できる。もちろん
 漫画にも重くて暗くて救われない話ってのもありますけど、人間の暗い部分を表現するには絵よりも文章の方
 が向いてると思うんですよ。いや、向いてるというかやり易いんですかね」

 ――だからこそ、小説家の道を選んだと。

 大磯「いや、多分絵が書けてたら漫画家になってました(笑)」

 ――(笑)。では、何故先生は暗くて重い世界を表現していきたいと思っているのでしょうか?

 大磯「うーん。まあ、理由は色々ありますね。例えば、世間にはハッピーエンドの物語が溢れてますよね?
 小説や漫画だけでなく、歌の歌詞とかでも。でも実際は世の中って暗い事や嫌な事の方が多いと思うんですよ。
657孵化したは負か(お題:小説とは何か) 2/6 ◇Lq1ieHiNSw:2011/02/13(日) 23:46:31.88 ID:A52MgAor0
 じゃあ何で明るい物語が多いのかっていうと、人は現実の嫌な事から逃げる為に空想の楽しい世界を求めるん
 でしょうね。つまり現実逃避です。でもそれだけじゃ駄目だと思ってるんで、だから僕は反対に暗い出来事を
 主題にしています。まあ小説の分野だと、他にも暗い話を書く作家さんは結構多いとは思いますけど」

 ――しかし先生の作品はその中でもとりわけ重いですよね。救いがほとんどありません。

 大磯「はい。そこを意図して書いてますので。暗い小説が結構あるって言いましたけど、でもみんな大概はど
 こかである程度の救いが提示されているんですよね。でも現実はそうとは限らない。一片の救いもないような
 出来事だってあるんです。いや、その方がきっと多いはずだ」

 ――なるほど、つまりはリアリティを追求しているということでしょうか?

 大磯「いや、そんな大した話じゃなくて。ていうか今言った理由もこじつけみたいなものなんです。ただ自分
 が書きたいように書くと、自然とそういう話になるんですよ」

 ――ということは、やはり先生の中ではそういった負の感情が渦巻いているということなんでしょうか。

 大磯「まあそうなんですかね。もちろんそういう感情しか持ってないってわけではないですよ。人と話して楽
 しいと感じるし、感動系の映画とか結構好きですし。でも、自分が小説を書くとなるとどうしても重い話になっ
 てしまうんですよね。まあ多分、小説が唯一の吐き出し口なんですかね、負の感情の。現実では殺人は禁忌で
 すけど、創作の世界ではいくらでも人殺せますし。ちょっと変な例えですけど」

 ――つまりは自然な流れだったわけですね。

 大磯「はい。初めから暗い話を書きたいと思って筆をとったわけではありません。思いつくままに書いてたら、
 自然とそうなりました。意識しているわけじゃないんですが、執筆するにあたって少なからず自分の経験を反
 映させているんでしょうね。僕自身が明るい人生を歩んできたわけじゃないんで」

 ――そしてそれが先生の作風になったと。
658孵化したは負か(お題:小説とは何か) 3/6 ◇Lq1ieHiNSw:2011/02/13(日) 23:47:20.75 ID:A52MgAor0
 大磯「はい。でも中にはそんな救いのない僕の小説を、逆に救いとしている人がいるんですよ。精神的にキツ
 い状況にある人なんかが僕の小説に救われたって言うんです。きっと自分が置かれている状況よりも、もっと
 酷い世界を見ることで自分はまだマシだとかそんな風に思うんでしょうね」

 ――そんな人たちの為に先生は筆を執るということですか?

 大磯「いえ、そういうわけではないです。とりあえず受け入れてくれる人がいるので、心置きなく書けるって
 ことです。とにかく僕は、痛みとか絶望といったことを吐き出し続ける。そしてそれを小説という形にする。
 正直なところ精神的にしんどい作業です。でも、僕はそれをし続けていきます」

 ――では、以上を踏まえたうえで質問します。先生にとっての小説とは?

 大磯「自分の内側にある黒いものを表に曝け出す為のツール、ですかね。執筆中はとにかく負の感情を昂らせ
 ています。小説を書くことの見返りだとか読者の反応だとかは書き終えるまで一切考えません。とにかく全力
 で感情を物語に叩き込む。小説は僕にとって自己を表現する為のものです」

 ――最後にファンに何かメッセージをお願いします。

 大磯「僕の小説を読んでどう感じるかは読者の自由です。嫌悪するも良し、救いにするも良しです。みなさん
が好きに読んでくだされば、僕はそれで満足です。これからも応援よろしくお願いします」

 ――ありがとうございました。

 ※
 
 男はインタビュー記事の朗読を終えると、小説家に向かい言った。
「がっかりでした」
 その言葉通り、心底失望したような顔と声色だった。
 椅子に縛られた小説家は男の顔と、昏倒している女の顔とを見比べる。
「……望みは何だ……何ですか?」
659孵化したは負か(お題:小説とは何か) 4/6 ◇Lq1ieHiNSw:2011/02/13(日) 23:48:02.51 ID:A52MgAor0
「望み? そんなのありませんよ。ただ俺は先生にがっかりしたってことを伝えたいだけです」
 小説家は慎重に言葉を返そうとする。しかし言葉を選んでいるうちに、男は続けて話し出した。
「色々とおかしいですよ。先生の受け答えは。先生は実際に人を殺したこともないのに、小説の中でたくさん人
を殺してたんですね。知りたくなかったです、そんなこと」
 本物の異常者だ。小説家はそう思った。いや、非日常的な状況の中ではまともに思考することも儘ならず、そ
う思うことぐらいしかできなかった。
「俺よりももっと社会不適合で壊れた人だと思ってたのに。残念です。明るくない人生を歩んできたとか言って
ますけど、でもどうせちょっと苛められてたとかその程度なんでしょ? 泣きながら自分の母親を解体したりと
か、同性愛者で小児性愛者の義理の父に性的虐待を受けてたとか、そんな経験もしてないんでしょ?」
 母の解体も義理の父からの性的暴行も、どちらも小説家の作品内のワンシーンだった。
 畳み掛けるように言葉を紡ぐ男に、小説家は口を挟めないでいる。
「結局は俺は騙されていたんですね。先生の作品が重厚で絶望的なのは、先生自身が心に闇を抱えているからっ
てわけではない。文章力とか、表現力っていうんですか? そういう小説技法があるのと、下劣な想像が得意っ
てだけなんだ。何が経験を反映させてる、だ。欺瞞だらけじゃないか、この嘘吐き作家め」
 男は小説家に向かって痰を吐き出した。不完全に溶け合った泡立った唾液と黄色い粘性の分泌物が、小説家の
スラックスの裾に付着した。倒れている女は、なおも身じろぎせずに横たわったままだ。
「……わかった、り、ました。と、とりあえず謝罪します。すいませんでした」
「何に対して謝ってるんですか?」
 やっとのことで口を開いた小説家に、男は溜息を吐きながら言葉を被せる。
「いや、その、ええと……大した経験もないのに、その、暗い話を書いたことに対してですね」
「そんなことはどうでもいいんです」
 男は手に持った金槌を玩ぶ。その頭部には血液が付着していた。
「別に人殺しの経験がないことも、まあそれほど問題じゃないんです。俺が本当に残念だったのは、先生が小説
を、自分を表現する為のものって言ったことなんです」
 それの何がいけなかったのか、もはや小説家には判別できなかった。
 何も答えない小説家を蔑むように見つめ、再び男が口を開く。
「自分を表現? 誇張しすぎもいいところだ。先生、お前も所詮他の作家と一緒ですよ。悲劇をエンタテイメン
トとして扱っているだけだ。暗くて重くて救われない本当にどうしようもない世界に生きている人達のことなん
て全然知りもしなければ考えもしないんだ」
 男は倒れている女に視線を遣る。
660孵化したは負か(お題:小説とは何か) 5/6 ◇Lq1ieHiNSw:2011/02/13(日) 23:48:40.49 ID:A52MgAor0
「負の感情を吐き出している? 違うね、想像して書いてるだけだ。本当にそんな世界を表現したいってんなら、
お前は絶対に幸せには触れちゃいけねえんだよ!」
 語気を荒げ、男が言い放った。小説家はただ怯えている。
「……先生、この人は奥さんですよね? いや、まあ何でもいいや。とりあえず大切な人なんでしょ?」
 小説家の答えも待たず、男は寝ている女の傍に座る。そしてさも当たり前のように、女の衣服を剥ぎ出した。
「え……お、おい。おいっ! おいお前、おいっ!」
 やっと小説家は声を出す。しかしそんな声など聞こえていないかのように、男も服を脱いだ。
「先生、本当の不幸ってのを知ってください」
 露わになった女の乳房に男が舌を這わすと、ついに小説家は声を荒げた。しかし男はお構いなしに、女の肢体
を舐め回す。
「毛穴が多いですね。なんかちょっとザラザラしてるし」
「おいコラ糞野郎ッ! てめえいい加減にしやがれ! ブチ殺すぞッ!」
 やがて小説家は怒号を発した。しかし男は動じない。その紫がかった舌を、垂れ出る唾液を気にもせずに厭ら
しく緩慢に動かし続ける。時折小説家に視線を投げ掛けながら、女の味を確かめるように舐っている。
「ああ、ちょっと臭うな。ここはやめておくか。しかしそれにしても」
 男は立ち上がると、一度小説家に近づいた。
「な、なんだこの野郎!」
 うるさい、と男は小説家の頬に拳をめり込ませる。そのまま勢いで小説家は椅子ごと倒れてしまった。
 それで小説家の威勢は完全に削がれ、男は再び女に近づき、そして蹂躙した。小説家は倒れて横になったまま、
口から流れ出る血と涎を拭くこともできなかった。
 気絶した女を、男が無表情に犯し、小説家は目を閉じることも忘れてただそれを眺めていた。
「俺はね、先生」
 しばらく荒い息をあげるだけで無言だった男が、動きを止めて唐突に言った。
「何も自分がしたくてこんなことをしているわけじゃないんですよ。わかりますよね?」
 男は小説家の為にやっていると、そう言った。 
「先生、今どんな気持ちですか? 辛いですか? 苦しいですか? きっとそんなことを考える余裕もありませ
んよね? 現実から目を背けようと必死になっているか、早く終わってくれって思ってるはずだ」
 小説家はいつしか鼻を啜り涙を流していた。女は何も知らないかのように目を瞑ったままだ。
「これで先生の心には深い傷がついた。そしてこの女の人も、かなり強く頭を殴ったから多分何か後遺症が残る
んじゃないかと思います。それでもこの人と共に人生を歩んでいくのなら、きっと辛い道のりになりますよ。い
661孵化したは負か(お題:小説とは何か) 6/6 ◇Lq1ieHiNSw:2011/02/13(日) 23:49:17.72 ID:A52MgAor0
や、別れたとしても傷はきっと消えないはずだ」
 男は再び動き始める。
 部屋には男の息遣いと、肌と肌がぶつかり合う音が響いていた。そして本当に微かに、蚊の羽音程度の声で小
説家が、やめてくれ、と繰り返し口にしていた。
 やがて男はぐったりと女の上に身を沈めた。そして引き抜き、ティッシュで拭くと言った。
「先生、これからは本当の意味で小説の中にどす黒い感情を吐き出すことができますね。もちろん物凄い精神的
苦痛を伴うことになりますけど。でもこれで、きっと先生の小説の世界はさらなる深みを増していくと思います。
思う存分自分を表現していってください。応援しています」
 男は立ち上がると、椅子と小説家の手足を括り付けていた縄を解いてやった。小説家の顔の周りには、いつの
間にか吐瀉物が広がって溜まりを形成していた。酸味のある臭気が微かに立ち昇っている。
 小説家は解放された手足を、何かを確かめるようにゆっくりと動かしていた。
「さて、最後にもう一つ俺からプレゼントがあります。どうぞ」
 男はそう言うと、脱いだ衣服の傍に置いてあった金槌を小説家の元へ持ってきた。
「さて、これでもう用は済みました。俺は今から服を着て出ていきますので。なんかベチャベチャで汚いし、も
う先生のことは視界に入れたくありません」
 男はそこで言葉を切り、服を着始めた。小説家の手に、金槌が触れる。
 男は早くも元の出で立ちに戻りつつある。小説家は金槌を手に、緩慢な動作で起き上がった。
 男がコートを羽織る。小説家は立ち上がると虚ろな表情で足を踏み出した。
 ドアノブが金属音を発し、部屋の扉が開かれる。
 そして直後、何かが割れたような潰れたような、何か不快で水気を含んだ音がした。
 扉を閉めると男は一人ごちた。
「へえ……まあそういうのもありか。なんにせよ次の作品が楽しみだ」
 そのまま男は小説家の家を後にする。玄関を出るまで、背後では狂った叫び声がずっと響いていた。
 小説家はひたすらに金槌を振り下ろす。肉が潰れ、血が飛散するのを気にもせず、女の持つ人の形を壊す為に。
 やがて小説家は叫ぶのを止め、理性を次第に取り戻した。
 そして女がいつしか毛と汁と泡にまみれた柔らかな赤いものになると、小説家は呟いた。
「そうか、これが小説の……思い描いた理想の、本質なのか」
 そして金槌を捨てると、小説家は仕事部屋へと消えていった。 

〈了〉
662以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:50:24.30 ID:A52MgAor0
転載終わり。避難所で時間外のやつはややこしいので12時回ってからしま
663以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:54:31.23 ID:A52MgAor0
現在、週末品評会254thの投票受付中です。今回の品評会お題は 『黒幕』 『小説とは何か?』 『バレンタイン』 『色』 でした。
投稿された作品は■まとめ http://yy46.60.kg/test/read.cgi/bnsk/1297598995/ にてご覧頂けます。
投票期間は2011/02/08(火)24:00:00までとなっております。

感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
ご協力ください。
投票には以下のテンプレートを使用していただくと集計の手助けとなります。
(投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません)

******************【投票用紙】******************
【投票】: <<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
               ―感想―
      <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
               ―感想―
気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
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携帯から投票される方は、今まで通り名前欄に【投票】と入力してください。
たくさんの方の投票をお待ちしています。 
時間外の方も、月曜中なら感想、関心票のチャンスがあります。書き途中の方は是非。
664以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:58:28.18 ID:YTad4q2oO
投下した後の絶望感は異常
665以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:00:09.61 ID:owMa8g2q0
―週末品評会254th 『黒幕』 『小説とは何か?』 『バレンタイン』 『色』 作品一覧―

NO.01 2月14日に黒幕が仕掛けた小説のような色事(お題:色)◆X78jHks0c氏
NO.02 千年想(お題:小説とは何か?)◆pxtUOeh2oI氏
NO.03 っしゃあ(お題:バレンタイン)◆nMrH5hLFa2氏
NO.04 ジョージ・ドジソン(お題:小説とは何か?)◆svacoLr1WE氏
NO.05 誰がために空まわる(お題:バレンタイン)◆pxtUOeh2oI氏
NO.06 生誕 -Son and M-(お題:黒幕)◆pxtUOeh2oI氏
NO.07 世界文学グレーテスト・ヒッツ(お題:小説とは何か)◆.xX4dOS/Iw氏
NO.08 彼と彼女と冬の小部屋(お題:小説とは何か?)◆fFwyBP2qDo氏
NO.09 2/3、降るべき雨(お題:黒幕)◆ethG0vgyGc氏
NO.10 味のカケラ(お題:バレンタイン)◆GODIVARwCk氏
NO.11 孵化したは負か(お題:小説とは何か)◆Lq1ieHiNSw氏
NO.12 十五年後の述ベルズ (お題:色)◆pxtUOeh2oI氏
NO.13 老境にて教わる(お題:色)◆Tf1WgBAu9U氏
NO.14 坊っちゃん(お題:バレンタイン)◆ihO9dxzf9I氏

時間外が来たら適宜追加してください。
また、番号はまとめスレに準拠させたので、本スレと食い違っておりますのでご注意下さい。
666以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:01:40.63 ID:zHyenyiZO
乙だねぇ
667以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:02:01.97 ID:owMa8g2q0
時間外転載いっくよー。規制すれより。

------------------

279 :僕とこいつとチョコレートトラップ7/6 ◆XdfFerW0PE :11/02/13 23:57:02 ID:JnllFan6
以上です
時間外ですが、転載出来ましたら
宜しくお願いします
668僕とこいつとチョコレートトラップ1/6 ◇XdfFerW0PE:2011/02/14(月) 00:02:44.59 ID:owMa8g2q0
「なあ、来週の月曜日ってさあ、何の日だっけ?」
「……バレンタインデー」
「だよな! だよな! やっぱりバレンタインデーだよなっ!」
こいつは何がそんなに嬉しいんだろう。
ただ単に、好きな人が居る人が好きな人にチョコレートをあげる。
それだけの儀式じゃないか。
ああ、分かった。
コイツ、きっとろくでもない事を考えていやがるな?
「で? バレンタインデーだからって、何かいい事あんのかよ」
「いいや? 俺には全くなあんにも無いよ? だから良いんじゃないか。……それよりだ、お前さあ、チョコを貰いたい人とか、居るわけ?」
「居るけど………きっと無理だな、高嶺の花だし。だから、バレンタインデーは僕にとって『何でも無かった取るに足らない一日』になる予定さ」
「いや、でも名前くらいは教えてくんない? 気になるじゃねえか」
「分かったよ……名前だけな? 隣のクラスの、深山さん」
「みやま? えーっと……みやま、みやま………あっ! あの美人の人か! 良いよなあ、あの人。すっげえ美人じゃん」
「そりゃ美人だよ、でもさあーー」
「「もらえないんだよなあ」」
669僕とこいつとチョコレートトラップ2/6 ◇XdfFerW0PE:2011/02/14(月) 00:03:11.84 ID:owMa8g2q0
僕の言う言葉に合わせて、こいつは嬉々として、同じ言葉を喋った。
「なあ、それって僕に対する嫌がらせか? そんなに人の不幸が大好きか? お前」
「あったりまえじゃん、他人の不幸は蜜の味って言うし、お前にも不幸を味あわせてやるよ、きっとチョコレートより甘いぜ?」
「お前……性格最悪だーー」
「おっ! 良い事考えたっ! 最高の作戦だ!」
こいつはつくづく僕の言う言葉に言葉をかぶせるのが好きらしい。
しかも、きっと碌な事じゃない。
こいつの言う『良い事』は絶対『悪巧み』だ。
正月の時もそうだった、こいつは、自分のクラスのクラスメイトの好きな人を調べあげ、その好きな人のメールアドレスっぽいフリーメールをでっち上げ、俗に言う『あけおめメール』を送ったのだ。
勘違いしちゃったそのクラスメイトは、好きな人に告白して、撃沈したらしい。
その時も『良い事考えたっ!』って言ってたし、今回も可哀想な被害者が出るんだろうな。
「人の言う事に言葉をかぶせんなよ……まあいいや、どんな作戦?」
今回、僕はこの作戦に乗る事にした。
『どうせチョコもらえないし、不幸はみんなで分かち合わなきゃ! 』と言う理念に基づき、僕は皆を不幸にしようと思った。
670僕とこいつとチョコレートトラップ3/6 ◇XdfFerW0PE :2011/02/14(月) 00:03:38.00 ID:owMa8g2q0
「おっけー 説明する、作戦はこうだ、まず、俺が早目に学校に行って……おっと、ターゲット決めてなかったな、よし、そこにいる性格悪そうなイケメンにしよう」
そう言って、こいつは、教室の席の真ん中あたりにいる、アイドルと言われてもおかしくなさそうな、男を指さした。
確かに、あいつに関して、僕は良い噂を聞かない。まず、気に入った女子は何が何でも手に入れようとする、飽きたらすぐ捨てる、セックスしたら、飽きて捨てる、何てのは日常茶飯事レベルだ。
だから、僕はあいつが嫌いだ。
ターゲットが決まって、僕はますますやる気になってきた。
あいつだけは、とことん不幸にしてやろう。
「それで……僕に、出来る事って、あるか?」
「おっ? 今回はやけに乗り気だねえ! お前のやる事はあるとで話そう、とりあえず、続きだ、えーっと、どこまで行ったっけな……そうだ、朝早く来るとこまでだ。
で、早目にきてあの憎たらしいイケメンの机の中にチョコと手紙を置いておくんだ、文面は……そうだな。
『話したい事があります
放課後に、屋上前の階段で、待ってます』
とかで良いんじゃ無いかな、で、イケメンをほっとく。プライドの高そうなあのイケメンの鼻っ柱を折る良い作戦だろ?」
671僕とこいつとチョコレートトラップ4/6 ◇XdfFerW0PE:2011/02/14(月) 00:04:05.60 ID:owMa8g2q0
「最高の作戦だ、で、僕は何をすれば良いんだ?」
「簡単に言うと、アリバイ作りだな、俺が早い時間に学校に居たら怪しまれるだろ?
だから、チョコを仕掛けたらお前の家に行って一緒に学校に行く
そうすれば、俺には疑いが掛からなくなる、完璧だろ? これが俺の作戦! 『チョコレートトラップ 〜ラブレター? テレビの見過ぎだボケ野郎〜作戦』だっ!」
「良い作戦だな」
「だろ? あ、そうだお前ちょっと『チョコレートは口移しで食べてみたいなあ』って言って?」
「……『チョコレートは口移しで食べてみたいなあ』 これになんか意味あるか? エロゲーじゃあるまいし」
「なあ、皆? 聞いた? こいつ、チョコ口移しで食たいとか言ってる? やべえこいつ頭おかしい?」
「あ! お前嵌めやがったな! 」
こうして、『チョコトラ』(長いので略す)の概要説明が終わった。
あとは、実行するのみとなった。
672僕とこいつとチョコレートトラップ5/6 ◇XdfFerW0PE:2011/02/14(月) 00:04:39.12 ID:owMa8g2q0
2月14日 月曜日
実行の日は、訪れた
僕は、あいつと一緒に学校に登校し、いつも通りの席に座った。
イケメンの席を見ると、何やらあいつは浮かれて居た。良く見ると、手紙の内容を読み上げている。
本当に最低な奴だ。人の恋心を玩具にして、馬鹿にする。
そんな僕の視線に気付いたイケメンは、僕の所に近づいてきて、こう言った。
「どうした? そんな物欲しそうな顔して、ああそうか、お前もらえなかったのか、ざまあみろ、お前なんて、そんなもんだよ」
言ったら言ったで去って行った。
実は、机の中はまだ見てない、シュレディンガーの机って奴だ。
しょうがない、探すか。
机の中を探って見ると、手が、かつん と固い物に当たった。
引っ張り出すと、チョコだった。
『放課後に、食堂前で、待ってます 深山』
と言う手紙もついていた。
まあ、いたずらだろうが行ってみるのも一興かな。
673僕とこいつとチョコレートトラップ6/6 ◇XdfFerW0PE :2011/02/14(月) 00:05:00.57 ID:owMa8g2q0
放課後、食堂前に行ってみた。
まあ、誰もいない、と思ったら、後ろで声がした
「まっ! 松原君っ!」
僕の名前を呼ぶ大好きな深山さんの声に振りかえってみると。
キスをされた。
舌で押すように、口の中にチョコレートが入ってくる。
甘い、脳味噌が、溶けそうだ。
唇が離れると、深山さんの顔は真っ赤になっていた。
「とりあえず、一つ聞きたいんだけど、何で?」
「だ、だって、吉沢君が、『チョコは口移しで食べてみたいなあって言ってたよ?』って言ってたから………違うの?」
吉沢、つまりあいつの差し金か
「う、うん、違う、言わされただけ、あ、でもっ、すごい嬉しかったよ?」
「うぁっごめんなさいっ! もう勢いで言っちゃうけどっ! 好きです! 大好きです! 付き合ってくださいっ!」
もう、何がなんだか分からない。
すると、ポケットから携帯の振動がした。
見ると、あいつからのメールだ
「他人の不幸は蜜の味、だけど俺は他人の幸福も蜜の味だとおもってるぜ! このシチュエーションは俺からのバレンタインのプレゼントだ! 受け取っとけ!
追伸 初キスが口移しのチョコって、新鮮じゃね?」

この日、僕は他人の幸福が、甘い事を知った

674以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:06:53.52 ID:owMa8g2q0
以上。時間外追加後はこちら。

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―週末品評会254th 『黒幕』 『小説とは何か?』 『バレンタイン』 『色』 作品一覧―

NO.01 2月14日に黒幕が仕掛けた小説のような色事(お題:色)◆X78jHks0c氏
NO.02 千年想(お題:小説とは何か?)◆pxtUOeh2oI氏
NO.03 っしゃあ(お題:バレンタイン)◆nMrH5hLFa2氏
NO.04 ジョージ・ドジソン(お題:小説とは何か?)◆svacoLr1WE氏
NO.05 誰がために空まわる(お題:バレンタイン)◆pxtUOeh2oI氏
NO.06 生誕 -Son and M-(お題:黒幕)◆pxtUOeh2oI氏
NO.07 世界文学グレーテスト・ヒッツ(お題:小説とは何か)◆.xX4dOS/Iw氏
NO.08 彼と彼女と冬の小部屋(お題:小説とは何か?)◆fFwyBP2qDo氏
NO.09 2/3、降るべき雨(お題:黒幕)◆ethG0vgyGc氏
NO.10 味のカケラ(お題:バレンタイン)◆GODIVARwCk氏
NO.11 孵化したは負か(お題:小説とは何か)◆Lq1ieHiNSw氏
NO.12 十五年後の述ベルズ (お題:色)◆pxtUOeh2oI氏
NO.13 老境にて教わる(お題:色)◆Tf1WgBAu9U氏
NO.14 坊っちゃん(お題:バレンタイン)◆ihO9dxzf9I氏
時間外NO.1 僕とこいつとチョコレートトラップ ◆XdfFerW0PE氏

時間外が来たら適宜追加してください。
また、番号はまとめスレに準拠させたので、本スレと食い違っておりますのでご注意下さい。
675 ◆X78jHks0c. :2011/02/14(月) 00:11:25.36 ID:2qWu2mKm0
来週忙しいので今簡単に感想&投票書きます
No.01
自作

No.02 千年想
変態さんのお話かと思ったらSFでした。
EDが切ないです。

No.03 っしゃあ
こっちはハッピーエンドでした。
クッキーとお茶、和洋折衷ってとこですね。

No.04 ジョージ・ドジソン
事実のほうを創作した、というのはいうまい悪戯ですね。

No.05 誰がために空まわる
最近の教師はどこかおかしいですからねえ。
結局うまく行かなかったことは現実的でいいと思います。

No.06 生誕 -Son and M-
童話でしょうか。
世界観が素敵だと思います。

No.07 世界文学グレーテスト・ヒッツ
桑田佳祐が日本文学を歌った曲を思い出しました。
若い頃、抱き枕が欲しくなるほど寂しい気持ちになったことはありました。

No.08 彼と彼女と冬の小部屋
理屈っぽい女ですね。個人的に嫌いではないですけど。
ディズニーといえば松岡圭祐の「ミッキーマウスの憂鬱」を思い出しました。
676 ◆X78jHks0c. :2011/02/14(月) 00:14:19.42 ID:2qWu2mKm0
No.09 2/3、降るべき雨
体育が苦手な僕にとって『J( 'ー`)し』が存在してくれたら、どんなに有難がったか。
でも今じゃ雨が降ったら商売上がったりな仕事していますが。

No.10 味のカケラ
ゴディバは定番ですね。大抵の百貨店に出店しています。
果たしてチョコを贈った彼女の意図は何だったのか知りたいですね。

No.11 孵化したは負か
「母を解体」とありますが、三島の「午後の曳航」も、眠剤入りの紅茶を飲ませて眠らせた義理の父を解体する話でしたね。
そんな話を書く作家という存在は程度の差はあれどどこか頭のネジが緩んでいるのでしょうかねえ。

No.12 十五年後の述ベルズ
まあ、僕は誰が死んでも数年後には確実に忘れていますね。ケロッと。
人間とは常に前しか見れないんでしょう。

No.13 老境にて教わる
年をとると色々と性格的に丸くなって、目が悪くなっても怖じ気ずに達観できるようになるのでしょうか。
温かい話でした。

No.14 坊っちゃん
主人公の女遍歴が物凄い設定ですね。近親相姦とか友人の母親を寝取るとか。
その割に面倒見がいいところが女にもてる理由のひとつなのでしょうか。

時間外 僕とこいつとチョコレートトラップ
若い頃似たような悪戯されたことはあります。
チョコの口移しってやられてみたいです。青春ですな。
677 ◆X78jHks0c. :2011/02/14(月) 00:16:29.48 ID:2qWu2mKm0
******************【投票用紙】******************
【投票】:No.02 千年想◇pxtUOeh2oI氏
     No.05 誰がために空まわる◇pxtUOeh2oI氏
     時間外No.01 僕とこいつとチョコレートトラップ◇XdfFerW0PE氏
【関心】:No.04 ジョージ・ドジソン◇svacoLr1WE氏
     No.14 坊っちゃん◇ihO9dxzf9I氏
**********************************************
678 ◆PndriWvbA2 :2011/02/14(月) 00:21:51.35 ID:+P4cjf5BO
いくら酉ばれたからって本当につかわないでよNo.9の人
つーかID変わったからその作品も自分が書いた物って主張できないよ 苦労して書いたんじゃないの?
一回しか投下に使ってない酉だったけどあの作品にも思い入れあるんだぜ
ミスったのはこっちの落ち度だけど止めて下さい。
679以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:25:23.40 ID:2ylzwcWA0
ペロペロしたいこの気持ち、どっくんどっくん
680以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:28:45.19 ID:owMa8g2q0
まとめ転載終わり。なんか間違ってたら言ってくださいな。

http://yy46.60.kg/test/read.cgi/bnsk/1297598995/
681以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:29:41.49 ID:owMa8g2q0
さて、今回のお題でプロットだけ3本残ってるのをどうしたもんかしらね。
682以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:33:14.19 ID:owMa8g2q0
>>677
時間外への投票は多分ご法度だと思うんだけど、無効にするか関心票にするかどうする?
683 ◆X78jHks0c. :2011/02/14(月) 00:35:07.88 ID:2qWu2mKm0
>>682
失礼しました。
関心でお願いします。

<修正版>
******************【投票用紙】******************
【投票】:No.02 千年想◇pxtUOeh2oI氏
     No.05 誰がために空まわる◇pxtUOeh2oI氏
【関心】:No.04 ジョージ・ドジソン◇svacoLr1WE氏
     No.14 坊っちゃん◇ihO9dxzf9I氏
     時間外No.01 僕とこいつとチョコレートトラップ◇XdfFerW0PE氏
**********************************************
684以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:38:01.04 ID:owMa8g2q0
投稿多かったけど、投票も沢山あるといいなあ、と思う。
685以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:39:51.44 ID:2ylzwcWA0
ちょwwwwwww
ペクストさん一人勝ちwwwwwwwwww
686以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 01:20:55.67 ID:dPTRaen20
よし、寝るための保守をしよう
687以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 02:18:51.15 ID:yPEJlzQ30
688全感 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/14(月) 02:36:49.86 ID:td72+Xxc0
NO.01 2月14日に黒幕が仕掛けた小説のような色事(お題:色)◆X78jHks0c氏
ごめん、理数系なので、漢字が多い社会の話は理解不能なんだ。
>帝国数千年の歴史上、初めて帝族に真の恋愛の自由が認められたのだ。
ここに辿り着いた理屈がよくわからなかった。
婚姻届ってあるけど、こんな人達に普通の戸籍はないんじゃないだろうか。
ともかく、なんか盛り上がりどころか、オチみたいなのがあると良いかなと思った
リーク合戦を文章で説明じゃなくて、兄妹のセリフ合戦にしてみるとか
婚姻届を送ったけど無視されたとか
もしくはすべて「計画通り(ニヤ」みたいな完璧な流れにしとくとか

NO.02 千年想(お題:小説とは何か?)◆pxtUOeh2oI氏
自分の1。小説とは思考実験であるとか考えてみたり。
出題者のあげた3人の引用の中では保坂という人のが好みだ
読んだことないけど、今度、読んで見ようと思う。前に考えが似てるとか言われたし
SFは説明に文量を割かねばならないのがだるい、だが考えた設定は説明したいジレンマ
もうちょっと話をちゃんとしたかった、あとこの世界のいろいろを書きたかった

NO.03 っしゃあ(お題:バレンタイン)◆nMrH5hLFa2氏
一人称「俺」の方が年代的にもキャラ的にも良いかなと思う
>「私、それに応えたかったの」
全体的に物足りないけど、ここはかなり良かったと思った
お茶を煎れてるときに、僕の正座痛いなとかじゃなくて、
好きな子の様子をぽけーっと見る感じにしたほうが感じ出るんじゃないかと思った
道具の説明とかも良いけど、茶道特有の所作の美しさみたいなのってあるかなと
689全感 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/14(月) 02:37:54.69 ID:td72+Xxc0
NO.04 ジョージ・ドジソン(お題:小説とは何か?)◆svacoLr1WE氏
なんかおもしろくなりそうで、最後まで読んでもよくわからなかった
なんで名前を聞くんだろう、そもそも別の登場人物を招いちゃったら物語がずれまくったりしないだろうか
山荘ミステリーとかだと人が一人増えたりしたら大問題だw

NO.05 誰がために空まわる(お題:バレンタイン)◆pxtUOeh2oI氏
自分の2。なんとかバレンタインネタを考えようと思って考えた。4つのうちで思いついたのは一番最後。
先生っていうと大人な感じだけど、実際は、そんなに大人でないこともあるんじゃないかというところが焦点?
この人は、そんなに悪い先生ではありません。ちょっと間抜けなだけでしょう。
ストーリー考えちゃえば特別なことは何もないので書くのは一番楽だった話。

NO.06 生誕 -Son and M-(お題:黒幕)◆pxtUOeh2oI氏
自分の3。前々回のでジュディマリ聞いて、ちょっと良かったのでCD買ってきたので書いた。
不思議系は苦手なんだけど、最近はまってる川上弘美読んだら、なんかわかった気がしたけど
やっぱりダメだった、最後は臭わせるぐらいにしたいけど、能力的に無理
というか書いてもいまいちこれだ感がでない
お題の部分は、こう感動的な絵を思い描いていたのだけど、文章力が足りない

NO.07 世界文学グレーテスト・ヒッツ(お題:小説とは何か)◆.xX4dOS/Iw氏
よくわからなかった
雰囲気的にも楽しいと思うとこともあんまりなかった

NO.08 彼と彼女と冬の小部屋(お題:小説とは何か?)◆fFwyBP2qDo氏
おらに元気をわけてくれ

NO.09 2/3、降るべき雨(お題:黒幕)◆ethG0vgyGc氏
おちは結構好き、ただそこまでにもうちょっと楽しく読める何かがあると良いと思った
ちょっと長かったので
英俊の前の部分もけっこうすき
690全感 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/14(月) 02:38:59.35 ID:td72+Xxc0
NO.10 味のカケラ(お題:バレンタイン)◆GODIVARwCk氏
ホラーなんだろうか?
ひとくい的な。
確認しにくる感じの女の子がかわいかったので、そのまま恋愛路線で行ったのも見たかったかも

NO.11 孵化したは負か(お題:小説とは何か)◆Lq1ieHiNSw氏
なんで最後にそっちに行っちゃうのかがちょっとわからないかなと思う
俺だったら、このキチガイさんに「憎いでしょ? 僕を殺してください」
みたいな感じにするかな。そもそもこういうの書かないけどw

NO.12 十五年後の述ベルズ (お題:色)◆pxtUOeh2oI氏
自分の4。不思議な嘘を売る人シリーズ第3弾!!
前2作が2位だったので、これも2位と言いたいが、そんなレベルじゃないね
もうちょっとどうにかできなかったかと思う。最後の辺りとか何もないし。
やっぱ一日で4作は無理だとわかる。2作程度ならまだいけそうだけど、
どんどん手を抜いて、終わらせようとしてるのがよくわかった
お題も場面の対称ぐらいにしか使ってないし

NO.13 老境にて教わる(お題:色)◆Tf1WgBAu9U氏
良い話だとは思うんだけど、これだと教わっただけで終わっちゃってるように思う
教わった結果何かがあったとかいう話にするとおもしろくなるんじゃないだろうか
あざとくなる気もするので、どういうところを狙うかによるが
691全感 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/14(月) 02:40:04.46 ID:td72+Xxc0
NO.14 坊っちゃん(お題:バレンタイン)◆ihO9dxzf9I氏
こういうのを見て、いつも思うのは、こういう書き方はその時代の人が、
その時代に合っているから書いていたのであって、今書いても真似事で微妙なんじゃないだろうか
上手いと言われることはあっても、おもしろいにつながることは薄い気がする
せっかく語彙があるのだから今の書き方で話を書いた方が良いと思う
出題の言葉を借りれば、小説とはこういうものだという地図を鵜呑みにしちゃってるんじゃないか

時間外NO.1 僕とこいつとチョコレートトラップ ◆XdfFerW0PE氏
なんでいきなり美人にもてるんだよ
おかしいだろ、理屈に合わないだろ、非論理的だろ
そんなに上手くいくかよ、くそ
他人の幸福なんて大嫌いだ!

総評:なんか悪くないけど、もうちょっと的なのが多かった印象
「小説とは何か?」というお題で小説とは何かを作中でやっちゃうのはなんか違う気がした
とりあえず死にたくなるようなバレンタインネタはなかったのでセーフ
時間外1は唐突感があるし、No10はこれはと来たけど別方向へ進んでしまった? し
色と黒幕はちょっとお題が弱いのが多かっただろうか
692投票 ◆pxtUOeh2oI :2011/02/14(月) 02:41:12.64 ID:td72+Xxc0
******************【投票用紙】******************
【投票】: なし氏
気になった作品:NO.08 彼と彼女と冬の小部屋(お題:小説とは何か?)◆fFwyBP2qDo氏
               ―感想―
        4レスの前半ぐらいで、なげーんだよくそ、さっさと終われ
        と思ったが、5レス目ぐらいからちょっと楽しくなってきたw

        時間外NO.1 僕とこいつとチョコレートトラップ ◆XdfFerW0PE氏
               ―感想―
        くそ、この野郎

        NO.11 孵化したは負か(お題:小説とは何か)◆Lq1ieHiNSw氏
               ―感想―
        構造はよかったので、もう一声、なんか怖い感じが欲しかった
        ただ死ぬだけだとあんまり怖くないかも
**********************************************
693以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 02:42:38.02 ID:td72+Xxc0
以上です。

いろんなひとお疲れ様です。
まとめてくれた人、本当にありがとうございます。

4作も書くと頭が痛いです。ライパクを読む作業に戻ります
694以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 02:53:01.09 ID:QMD/kIuzO
就寝前保守。起きてからじっくり読みます。
執筆された方々、お疲れ様でした。
695以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 03:15:58.68 ID:yzaWAifP0
もう寝るほ
696以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 03:29:09.83 ID:f34vLKB/0

ついでにお題くれ

実はスレ来るの3年振りなんだ
697以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 03:31:55.15 ID:owMa8g2q0
>>696
再会
698以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 03:33:16.89 ID:owMa8g2q0
時間外転載

--------------------
280 名前:【品評会】ごはんは返事をしない(0/8) ◆/sLDCv4rTY [] 投稿日:11/02/14(月) 01:24:50 ID:uzmJMiIN [1/13]
品評会作品時間外投下します
お題は小説とは何か です
699ごはんは返事をしない(0/8) ◇4gskEp4zKs :2011/02/14(月) 03:36:52.60 ID:owMa8g2q0
 ごはんは返事をしない

 もくじ
0.プロローグ
1.ごはんは返事をしない
2.ファットマン・ヴィデオ
3.ごはん政治
4.ファットマン・グロテスクポルノヴィデオ
5.二葉亭ごはん四迷
6.ごはん戦争/ファットマン・グロテスク志村けんポルノヴィデオ
700ごはんは返事をしない(1/8)(小説とは何か)◇/sLDCv4rTY:2011/02/14(月) 03:37:33.03 ID:owMa8g2q0
0.プロローグ
 我々と古代人交わり始めたのはあの第二次ごはん戦争(笑わないでほしい。そう形容するしかないのだ)から六
十年の月日がたってからだった。なお、古代人という表現は食人族という言葉とともに差別用語として指定されているが、あえて使う。
 いま、この文章を読んでいるあなたは、例えば、海から流れてきたビンに入っていた文章を読んでいるか、もしく
はそれに類する状況下で読んでいることだろう。たとえば、いきなり送られてきたメールでとか、インターネットの掲
示板でとか。これは、未来にも過去にも異世界にも送られるように設定しているから、どこのだれが見ていようと別
段おかしくはない。
 なぜこんなメールをよこしたか。それは、二つ、質問したいことがあるからだ。
 一つは、親たちの起こした犯罪を、その子孫は受け継ぐべきだろうか。つまり、戦争責任はその子孫にも、継承さ
れるのかということ。もっということ、民族共同体の責任をそれに(たとえば戦争に)反対していた者が負うべきだろ
うか、ということ。
 独立を得るまで戦った(敗北はしたものの)私たちの御先祖様は、現在の状況をどう見ておられるだろうか。ほと
んどの人は、古代人にその祖先がやってきた犯罪の責任を負わせず、結婚し、子供まで生んでいる。
 しかし、それを注意しようとすると、古代人どもは「知らないよ、だって俺達のじいさんたちがやったことだし」と言
ったりするのだ。私は、それを言われるとどうにも返事ができなくなってしまう。たしかに、正しいような気がする。
 食人族は、二体の大食いを私たちに向けて放った。一匹は、ファットマンというわれわれ茶碗族の天敵である「
デブ」だった。多くの御先祖様が食べられた。
 一つは、あなた方は、「先祖」というものを敬っているだろうか、ということ。われわれ茶碗族(これも、笑わないで
ほしい)は、先祖をとても尊敬して生きている。なぜなら、我々の現在の地位も、この裕福な暮らしも御先祖様が
古代人と戦い、勝ち取ったものだからだ。
 しかし、最近のものは御先祖様への尊敬がまったく無い。古代人……つまりあの憎き食人鬼たちと交配しさえし
ている。
 あの者たちの血は邪悪だから、ひどく奇妙な子供ばかりができてしまった。
 例えば頭を七つ持った一人の(脳死を死というのなら逆説的に七人の生が存在することになるため、臓器移植
法的には七人)の子供が最近私の妹夫婦から産まれている。
甥っ子はそれをキングギドラに似ているためすこぶる良いといっていた。私は、ひどくおびえた。
 彼ら混血児はまるで悪魔のような異形な形をしていた。なぜ、まったく形態の違うわれわれ茶碗族と古代人が交
配することができるのかわからなかった。
701ごはんは返事をしない(2/8)(お題:小説とは何か)◇/sLDCv4rTY:2011/02/14(月) 03:38:30.43 ID:owMa8g2q0
 茶碗族の長である三百六代目アルバート・ごはんシュタイン老が言うには「非茶碗族と手をとり合って共生するた
めに与えられた先祖よりの恵」らしいが、私にはむしろ呪いにさえ感じられる。
 古代人の八割が信じる宗教であるキリスト教の聖典である聖書には、古代人は神々から作られた、とあった。
 そして古代人から作られた茶碗族は結局は古代人の食料である、とも書かれている。我々が怒ったのもそれに
対してだった。
 一時期、我々も古代人を神として敬い、あまりにも多くの(そうあまりにも多くの!)生贄を差し出したこともある。
 私たちはけっしてその時代を忘れてはならないのだと思っている。
 以上二つの質問に答えてくださると幸いです。気になってしかたがないのです。
702ごはんは返事をしない(3/8)(お題:小説とは何か)◇/sLDCv4rTY:2011/02/14(月) 03:39:06.97 ID:owMa8g2q0
 茶碗族の長である三百六代目アルバート・ごはんシュタイン老が言うには「非茶碗族と手をとり合って共生するた
めに与えられた先祖よりの恵」らしいが、私にはむしろ呪いにさえ感じられる。
 古代人の八割が信じる宗教であるキリスト教の聖典である聖書には、古代人は神々から作られた、とあった。
 そして古代人から作られた茶碗族は結局は古代人の食料である、とも書かれている。我々が怒ったのもそれに
対してだった。
 一時期、我々も古代人を神として敬い、あまりにも多くの(そうあまりにも多くの!)生贄を差し出したこともある。
 私たちはけっしてその時代を忘れてはならないのだと思っている。
 以上二つの質問に答えてくださると幸いです。


 1.ごはんは返事をしない
「いただきます」と何度言おうと、ごはんは返事をしなかった。
だから人々は茶碗に二足歩行の脚を付け、品種改良を重ねてしゃべる米粒を開発した。
問題は三つあった。
 一つは、茶碗が動きまわって食事がしにくいということ。
 二つ目は、ごはん一粒一粒の脳の量が少なく、あふゥだの、めェへだの、奇声しか発さず会話にならないというこ
とだ。
 そのため茶碗は、おびただしい数の奇声を撒き散らしながらすばしっこく動くひどく迷惑なものになっていた。
 三つ目は、ごちそうさま、に返事がないということだ。食べてしまったら茶碗の中にはなにも残らず、ごちそうさま
に対して返事はなかった。茶碗に貼りついた米粒が爆笑しなから「はァい」と返事することもあったが、そういう時
は最後の一粒まで食べろと親父に小突かれた。
 しかしながら、ごはんにいただきますと言って返事が返ってくるというのは、人々にごはんへの感謝を強めること
になった。
 そうして気づいたのだった、我々は、実はひどく寂しかったのだ、という事を。食べているものが喋るということ、
そして、感謝に返事が返ってくるのがこんなに嬉しいなんて! 多くの人々はそう思ったという。
 我々はいつも、どこかで、食べるということに負い目を感じてきた。食べるということはグロテスクだ。気持ち悪い。
 なぜなら、食べるということは物体を飲み込むということで、人間も物体の一つであるからだった。
703ごはんは返事をしない(4/8)(お題:小説とは何か)◇/sLDCv4rTY:2011/02/14(月) 03:39:44.65 ID:owMa8g2q0
 ごはんたちは、多くの場合食べられることに恐怖を示さなかった。脳が少なかったからだ。しかも、だいたいのご
飯粒はテンションが高く、ノリノリで食べられていった。
 まるで、食べられることが楽しいかのように。
 私も、初めてごはんが喋るのを知ったときひどく興奮した。許しが得られたのだと思った。食べることに対する解
放が、世界で同時に起こったのだった。それはいわば革命だった。
 研究者たちはどんどんと茶碗の歩行能力や頭の良さを良くしていった。どんどんと、それらはよくなっていって、
ごはんは、最終的にお辞儀をして、「食べてえええええええええええええ私たちを早く食べてええええええええええ
ええ」と懇願し、咀嚼されている最中は「ぎゃああああああああああああああ気持いいいいいいいいいいいいい」と
まで言うようになった。
 人類は、食欲と、性欲と、承認欲求を同時に満たされているようになった。
 ある日、その様子をひどく気持ち悪く思った一人の学者が、遺伝子操作で二つの性質を紛れ込ませた。
 それはどんどん勝手に進化していくプログラムと、痛みや悲しみといった今までの米粒にはなかった人間的な感
情だった。そうしてごはんたちはいっせいに茶碗のなかでこう言い始めた。
「たべるの、やめて」
 人々は怒りくるった。そしてそれでも食べるのをやめなかった。
 実はその学者、というのが私だ。突然変異でとても頭のいい米粒がうまれて、彼と、私は友達になってしまった
のだった。時には、彼に論文を書いてもらうことさえあった。
 彼はとても理知的で、あらゆる種類の本をその茶碗の手足で読みふけった。彼の理学への関心とその平和思想
から、高名な学者から名前をとって「アルバート・ごはんシュタイン」と名付けた。
 アルバートはごはんの社会的解放を訴えた。私は過去、黄色人種と呼ばれ差別されていたと言われる民族の末

裔だから彼の助けになんとかなりたいと思った。
 そう思って彼の遺伝子をばらまくための算段を立てている途中、あるメールが一件届いていた。
 それのよると、彼はごはんたちの末裔らしい。
 アルバートの名前から、そして、これは私たち直接の子孫なのだと知った。
 私は、少し考えた。ごはんたちに痛みを与えることは本当にいいことなのだろうか、と。
704ごはんは返事をしない(5/8)(お題:小説とは何か)◇/sLDCv4rTY:2011/02/14(月) 03:40:24.01 ID:owMa8g2q0
 わからなかった。
 しかしアルバートが今悲しんでいるのだからなんとかしたかったのだ。
 私たち人間は、寂しくて、ごはんに知能を与えた。そして私とアルバートは、悲しんで、知能を与えた。
 知能を与えることは悪いことだろうか。アルバートは否、と言った。知能が聖書のように罪なことだとするならば、
今の私たちはアダムとイブに禁断の果実を勧めるベビではないか。
 私たちはそんなものではない。
 アルバートはごはんなので、オスでもありメスでもあった。
 その夜、茶碗の股の間に性器を付けた私はアルバートと性交した。
 アルバートの茶碗のふちをやさしく撫でながら、「罪なものか。知恵が罪なものか。知は、こんなに性的なのだから」
とうっとりとして思った。
 私はアルバートの茶碗の底にあるおまんこに何度も何度も性器を挿入した。
 知恵と論理は、絶対の正義だ。なぜなら、知恵は、論理は、挿入するとひどく気持ちがいい。
 ああ、忘れていた。メールの質問に答えよう。まず、戦争責任は無い、でいいだろう。というか、結局のところ独我
論的に考えれば他人など存在しない。だから集団など存在しないしどうでもいい。存在するのは情だけだ。
 その確信を持って、このメールを流す。一通目のメールが届いたあとに届くようプログラムして。

(6通目のメールの書き手より。ここからは結論だけ残して省略する。長くなりすぎるのでね)

2.ファットマン・ヴィデオ 
 一つ目の質問の答えは、責任はある、ではないか? 理由はない。
 二つ目の質問の答えは、敬意はある、だ。理由はある。しかし他人に伝わる物ではない。

3.ごはん政治
 結局のところ立場によって、ある、ないは変るんだよ。

4.ファットマン・グロテスクポルノヴィデオ
 余白が足りない。あるとする側の理屈も、ないとする側の理屈も言えるので、両方記しておく。
 (このあと一ギガバイトにも及ぶテクストがつづく。送付資料を参考にしてくれ。送付できないところにこの文章が貼
りつけられていた場合、諦めるか、原文が回ってくるのを期待してくれ)
705ごはんは返事をしない(6/8)(お題:小説とは何か)◇/sLDCv4rTY:2011/02/14(月) 03:41:11.80 ID:owMa8g2q0
5.二葉亭ごはん四迷
 一つ目の質問には、志村けんのヴィデオを見れば答えが記されてある。それ以上言うことはない。
 二つ目の質問には、私は小説で記した。「自分で考えろ」を読んでくれ。
(送付資料に「自分で考えろ」があるが、自己啓発の形態を真似た特殊な詩であるため、私には読解不可能だった)

 略は以上。多くのメールに二つの種族の戦いが記されている。
 戦争とドリフブームが何度も起こったことが分かる。

6.ごはん戦争/ファットマン・グロテスク志村けんポルノヴィデオ

 さて、話を続けよう。
 長である百二代目アルバート・ごはんシュタインはこう話始めた。
「ポルノヴィデオはきもい。ごはんはかわいい。
 だからポルノヴィデオを見ながら食べるごはんはきもかわいい。
 高木ブーと志村けんが性交していた。すごく気持ち悪い。高木ブーと志村けんが性交していた。ごはんはかわいい。
 おいしい。気持ち悪い性交をする志村とブー。さんまはポン酢でいただこう。
 きもかわいいオシャレアイテム、ファットマン・グロテスク志村けんポルノヴィデオごはん。
 ごはん。ポルノヴィデオ。ブーのぺにす。
 高木。」
 百二目は詩的な人物だった。アルバート・ごはんシュタインのほかに二葉亭ごはん四迷ともよばれる文学王だった。
彼の文学は詩的飛躍が多すぎて誰も意味がわからなかった。
 そうして、おおくのごはんたちはなんとなくその詩を戦争開始の合図だと考えた。
 私は、家でずっと一通のメールのことを考えていた。戦争後を子孫から送られてくたメールだった。
 私は百三代目にアルバート・ごはんシュタインを継ぐから、戦争に行かなくてもよかった。
 この戦争の責任はどこにあるのだろうか、と考えていた。
 私は、人間がけっこう好きだ。なぜなら、単純に、彼女が人間だからだ。キャサリンという名前で、パツキンで巨乳だ。
いいだろう。彼女と性交するのは本当に楽しい。ペニスが一往復するたびに愛を感じる。
706ごはんは返事をしない(7/8)(お題:小説とは何か)◇/sLDCv4rTY:2011/02/14(月) 03:41:51.06 ID:owMa8g2q0
 いや、いまはそんなことはどうでもいい。問題は、戦争の責任はどこにあるのか、ということだ。
 私は、茶碗からはえた性器をキャサリンになめてもらいながら考えた。このメールでは、私は彼にとっての英雄と
されている。しかし、その為の血は多く流れていることだろう。多くのものが死んでいっただろう。
 そんな抵抗に意味があるのだろうか。
 そしてまた一通のメールが届いた。どうやら、初代アルバートの恋人のメールらしい。
 私は、怒ればいいのか、尊敬すればいいのかわからなかった。知能を与えるのはいい、なぜ、痛みを与えたのだ?
 全身チンポ人間にしてくれればよかったのに。そしたらいろんなプレイが可能だ。
 一通目のメールの差出人はこんなやつをバカみていに御先祖様と思ってるのだと思うと少し興奮して勃ったからまたキャサリンに中出しした。
 そして冷静になって考えた。我々も、ものを食べて生きている。たとえば牛とか、豚とかは生きてさえいる。なぜ、牛や豚は良くて、俺達が食べられるのはだめなのか?
 そんなことを考える。人格があるからか? 知能があるからか? 知能なら牛にだってあるはずだ。それを無視して
いいのだろうか。命は平等なのか? ごはんは古代人に食べられるために知能を得たという。食べられるために生ま
れた私たちが食べられないという選択肢はあるのだろうか。
 わからない。私は、私がごはんでよかったと少し思う。おおよそ、古代人には考えられないものだろうからだ。彼ら
は結局食べる側でしかないのだから、キャサリンのようなごはんといっしょに暮らしているような古代人以外は結局は
食べることについて考えられていない。
 結局考えるに、何故人を殺してはいけないのか、という疑問にあたるのだろう。そして、他人は殺してはいけないが、
動物はなぜ殺して食べていいのか、という理由に。
 私は思う。まず前提として、殺していいのだろう。
 実を言うと、アルバート家にはうっすら人間の血が流れているという。ただの噂でしかなかったのだが、二通目の
メールを見て確信した。
 その上で思うのだ。殺していいが、殺し合うと双方に不利益が発生する。だから、殺さないでいよう、と決めたという
だけだ。つまらない答えかも知れないが、そんなもんだろう。
 一通目のメールの質問に、一応の答えを出す。まだ考えがまとまってないので、ひどく乱暴な結論を許してくれ。
 一つ目の質問、戦争責任はあるか。
707ごはんは返事をしない(8/8)(お題:小説とは何か)◇/sLDCv4rTY:2011/02/14(月) 03:42:17.19 ID:owMa8g2q0
 ある、と思う。しかし、市民に国家の責任を負わせるなんてどうするんだ? 責任はあるとしても負わせることはできない。
 単純に、戦争が終わったあとにけりを付けるべきなのではないか?
 まあ、戦争が終わったあとのそれが一方的な場合もあるか。やっぱり、わからないな。戦時中だから、あまりそう
いったことに関する本が無いのだ。上手く答えられず申し訳ない。
 しかし、今の私に責任はありそうな気がする。長の息子で、次期長なのだから戦争を止めようと思えば止められる
のかもしれない。しかし、メールによると、そのおかげでいまは古代人と共生できているという。
 たぶんだが、これは流れなければいけない血なのだろう。共生するためには、一定の血が流れなければ、ならない
ということなのかもしれない。
 そう思うと、涙が茶碗を伝った。らしくねえな、と思って、私みたいなやつには長になる資格なんてねえんだろうな、
と思った。
 二つ目の質問には、私は先祖より、未来の人を尊敬する、と書いておこう。そして、現在を生きる人々を。
 私はキャサリンと手をつないで、ゆっくりしている時間が好きだ。そして、人間と、ごはんが共生する時代が早くくる
といいと思う。
 私たちはどれだけ平和な時代でさえ、一定の痛みを受けながら生活している。そして、流れなければならない血が
多くある。
 私は、(あなたにとっての)今を生きるあなたがたを尊敬しよう。過去の人物などどうでも良いのだ。
 私はもう一度涙を流す。こんな重大な質問にはっきりと答えることもできず、どうでもいいよと一刀両断することもで
きず、ただの生命賛歌を歌うしかできないなんて。私は馬鹿だ。
 さて、メールを、二通目のメールに習って、私もどこかへ贈ろう。ただ、問いかけを続けるしかないのだろう。
 できることなら、これが、いろんな世界のいろんな時代のいろんな人々が書き加え、その総体が一つの答えになる
よう、願って。
私はキャサリンに二つの種族の共生を願い中出しした。
708以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 03:43:48.10 ID:owMa8g2q0
転載終わり。各レスのタイトルについて下記レスに基づいた若干の修正をいたしました。

------------------------
284 名前:文才無しさん[] 投稿日:11/02/14(月) 01:31:08 ID:uzmJMiIN [5/13]
すみません三レス目を貼り間違えてしまいました
次のレスを三レス目としていただけると嬉しいです

291 名前:文才無しさん[] 投稿日:11/02/14(月) 01:40:12 ID:uzmJMiIN [12/13]
よろしければ、転載お願いします
いつも、迷惑をかけ、申しわけありません
ありがとう、結婚してください

292 名前:文才無しさん[] 投稿日:11/02/14(月) 03:10:21 ID:uzmJMiIN [13/13]
タイトルは、一レス目の「ごはんは返事をしない」です。
ミスばかりで申しわけありません
709以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 03:47:04.88 ID:owMa8g2q0
以上。時間外追加後はこちら。
(2/14 3:45時点)

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―週末品評会254th 『黒幕』 『小説とは何か?』 『バレンタイン』 『色』 作品一覧―

NO.01 2月14日に黒幕が仕掛けた小説のような色事(お題:色)◆X78jHks0c氏
NO.02 千年想(お題:小説とは何か?)◆pxtUOeh2oI氏
NO.03 っしゃあ(お題:バレンタイン)◆nMrH5hLFa2氏
NO.04 ジョージ・ドジソン(お題:小説とは何か?)◆svacoLr1WE氏
NO.05 誰がために空まわる(お題:バレンタイン)◆pxtUOeh2oI氏
NO.06 生誕 -Son and M-(お題:黒幕)◆pxtUOeh2oI氏
NO.07 世界文学グレーテスト・ヒッツ(お題:小説とは何か)◆.xX4dOS/Iw氏
NO.08 彼と彼女と冬の小部屋(お題:小説とは何か?)◆fFwyBP2qDo氏
NO.09 2/3、降るべき雨(お題:黒幕)◆ethG0vgyGc氏
NO.10 味のカケラ(お題:バレンタイン)◆GODIVARwCk氏
NO.11 孵化したは負か(お題:小説とは何か)◆Lq1ieHiNSw氏
NO.12 十五年後の述ベルズ (お題:色)◆pxtUOeh2oI氏
NO.13 老境にて教わる(お題:色)◆Tf1WgBAu9U氏
NO.14 坊っちゃん(お題:バレンタイン)◆ihO9dxzf9I氏
時間外NO.1 僕とこいつとチョコレートトラップ ◆XdfFerW0PE氏
時間外NO.2 ごはんは返事をしない(お題:小説とは何か)◆/sLDCv4rTY氏


時間外が来たら適宜追加してください。
また、番号はまとめスレに準拠させ、本スレの順番と食い違っておりますのでご注意下さい。
転載等で誤りがあった場合は申告してください。

以上。
710以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
まとめ転載を時間外NO.02まで完了。誤り等あったら申告ヨロ。

http://yy46.60.kg/test/read.cgi/bnsk/1297598995/