1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
中学時代。
僕はいじられキャラ。
自虐ネタで笑いをとる。
大勢の中では人気者。
2人っきりだと避けられる。
このジレンマから抜け出したかった。
ちんちんシュッシュッ!!
乙、いい話だった
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:01:14.36 ID:EO7g49HD0
僕には好きな人がいた。
◆陸上部
◆顔は普通
◆黒いブラ
特筆すべきは声。“一聞惚れ”。
人と話すのは苦手だけど、
頑張ってみることにした。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:02:48.81 ID:EO7g49HD0
彼女とはそこそこ仲良くなれた。
楽しく会話もできるようになった……けど、
2人っきりだと続かない。
会話が途切れて脳内からっぽ ((((;゜Д゜)))ア..ア...ア
沈黙パニック。何を話せば喜ぶの……?
なんとも気まずい雰囲気。
このままだと彼女は去ってしまう。
なんとしても引き止めなきゃ!!
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:03:44.01 ID:eTh14r4e0
きもすぎる
マジで別の板でやってくれ
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:04:17.33 ID:EO7g49HD0
僕は話題作りのため、ネタを捏造した。
「オ、オレ1000円払って9000円お釣りもらったことあるんだw」
「へぇ、そうなんだ……ちょっとごめんね」ガタン
彼女は楽しそうな別のグループへ行った。
大失敗。嘘つくとか最低。内容も最低。
何でいつもこうなるんだよ……。
彼女とはそこそこ仲良くはなれた。
3人以上いれば彼女はそばにいてくれる……けど、
2人っきりだと避けられる。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:05:40.00 ID:EO7g49HD0
ある日。
僕の恋が友達にバレた。
バレたというかバラした。
友達が“つまらなそう”だったから
友達を引き止めるために
イジられるのを覚悟で
僕は自分の恋をネタにした。
孤独だけは嫌だから……。
友達は新鮮なネタに喜んだ。
……友達って何なんだ。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:07:52.65 ID:EO7g49HD0
次の日、背黒板には
≪〇〇は△△が好き≫
みたいな事が書かれていた。
友達は僕の反応を楽しみにしてる。
背黒板とはいえ、サイテーな奴ら。
だが僕の仕事は笑いをとること。
友達を退屈させてはいけない。
黒板消しで“それ”を消すなんて論外。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:09:06.89 ID:EO7g49HD0
「うぉおおおおおいwww」
……と、大声でつっこむ。
クラスのみんなが背黒板に振り向く。
その中には“あの子”もいた。
友達は手を叩いて笑う。
「ハハッwww 大声出したらバレるってwww」
馬鹿。これでいいんだ。
僕はピエロとしての仕事をしただけ。
僕は身を削ってでも笑いをとるんだ。
明るく振舞えばそれは“イジリ”。
俯いてしまえばそれは“イジメ”。
“いじめられっ子”にはなりたくなかった。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:10:37.57 ID:EO7g49HD0
さぁ、自虐ネタを加速しようか。
僕は自分の不幸さをネタに置き換え、
次々と新しいテイストで表現していく。
男子全員、愉快そうに笑っていた。
笑いをとると気持ちいい。
泣きたい気持ちが中和され、
「これでいいんだ」って思えてくる。
一方、“あの子”は耳を赤くして見て見ぬふり。
多分、僕のこと嫌いになったと思う。
僕は恋愛を捨て、友情をとったのだ。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:11:38.25 ID:EO7g49HD0
恋愛自虐ネタのバイタリティは強い。
おかげでハブられることなく、
“卒業式”を迎えることができた。
好きな子を傷つけてでも集団に縋りたかった。
それは孤独が嫌だっただけ。
だから奴らは友達でも何でもない。
僕は高校で“真の友達”を見つけると誓った。
……さて、“最後の仕事”に取り掛かろうか。
悪夢の中学生活から抜け出すために。
◆要求されたミッション◆
“あの子”に告れ。
尚、告白時はケータイを通話状態にすること。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:13:16.05 ID:EO7g49HD0
僕はまだ“あの子”のことが好きだった。
だから告白するのは別に構わない……
でもさ、
ケータイの件は納得いかないだろ。
『告白した証明』のためらしいけど、
何でお前らに証明しなきゃならねんだよ。
……でも、僕はピエロ。
客のリクエストにはお応えするよ。
客に見捨てられたくないから。
孤独なステージは嫌だから。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:14:46.50 ID:EO7g49HD0
携帯電話のマイク感度をMAXにして、
僕は“あの子”に声を掛けた。
「ちょっと話いい?」
最後のピエロ・オン・ステージは緊張するぜ。
“あの子”に告白というだけで緊張するのに……。
心臓が爆発しそうで息苦しい。
この場合の“最高のパフォーマンス”とは
【斬新な告白】⇒【大成功】⇒【友達とのハイタッチ】
のシナリオと僕は確信していた。
僕的にも、ピエロ的にも。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:16:16.56 ID:EO7g49HD0
「3年間ずっと好きだった。オレと付き合って欲しい」
あぁ……なんてこったい。
僕は極めて“普通”の告白をしてしまった。
あまりの緊張にピエロを演じる余裕がなかったのだ。
そして彼女は冷静に答える。
「ごめん」
マジで3文字。僕はショックを隠せず口走った。
「あ…やっぱそうだよねwww 実はコレって命令なんだwww」
あの瞬間、僕は地球上で最もカッコ悪い男だったに違いない。
彼女は何も言わず、その場を後にした。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:18:03.77 ID:EO7g49HD0
ふと、自分の立場を思い出す。
ピエロとしてステージに立っていることを。
僕は様々な感情をこらえて、
「やべぇふられたwwww」
と携帯電話のマイクに叫ぶ。
… … … … …。
携帯のディスプレイには止まった通話時間。
ピエロのスベりっぷりに客は帰ったのだ。
会場には化粧の剥がれたピエロが一人だけ。
その正体は、唯の仮性コミュ障害者だった。
恐れていた孤独が一気に押し寄せる。
僕は目を潤わせながら、早歩きで帰宅した。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:19:37.80 ID:EO7g49HD0
家に到着。叫んだ。号泣した。
奴らからメールが届いていた。
「ドンマイ(^_^;)」
「フラれたからって俺らのせいにすんなよなw」
「残念、次は期待してるぞ!」
「まあ人生辛いこともあるさ」
↑こんな感じのメール。
携帯投げつけて、壁殴って、果てるまで泣き続けた。
集団と孤独、どちらが正解だったのかな。
最初から孤独を選んどけば幸せだったのかな。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:21:25.34 ID:EO7g49HD0
高校時代。
知ってる奴のいない高校。
ちょっと遠めの工業高校。
ここから新しい人生が始まるんだ。
でも…僕は気づいていた。
知ってる奴がいないから、
自分から友達を作らなきゃならんわけで。
つまりコミュニケーション能力がうんたらで。
だけど僕は相変わらずの、
人と話すのが嫌い、その上孤独も嫌いという、ワガママ人間だった。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:23:00.22 ID:EO7g49HD0
僕のクラスには大きく分けて2種類の人間がいた。
≪オタク≫ or ≪リア充≫
それぞれがグループを作り、楽しそうだった。
で、僕はどちらに分類されるかというと、
≪どちらでもなかった≫
アニメは大好きだけど、リアルでオタ扱いはされたくない。
リア充の会話にはついていけるけど、受動的&愛想笑い。
非常に中途半端な人間。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:24:51.86 ID:EO7g49HD0
僕は“リア充”と友達になろうとした。
しかし他人以上、友達未満の関係が延々と続く。
どうしても友達になって欲しいから、
自宅で明日何を話すか考えたりしてた。
でもやっぱり
2人っきりだと続かない。
2人っきりだと避けられる。
日々ネガティブが悪化するばかり。
やがて2人っきり以外でも発言力を失って、
集団に金魚の糞のようにくっついていく。
リア充達にとって僕の存在はウンコ以下。
靴紐を結び直す間、誰も僕を待ってくれない。
そして限界は早くも訪れた。
Ready。僕は“孤独”を選んだ。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:28:43.94 ID:EO7g49HD0
リア充A「メシ食いに行こうぜー」
リア充B「おう。今日の定食なんだろなw」
リア充C「やっべぇ。金忘れたッ」
リア充D「しゃーねぇな。貸してやんよ――」
僕「…」
この日、僕は集団に付いて行かなかった。
しかし奴らは至っていつも通りだった。
僕なんか居ても居なくても同じだから。
寧ろいない方が楽しめるんじゃない?
僕は一人で昼食をとった。
初めて自分のペースで食べた。
そして“便所飯”の素晴らしさに感動する。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:31:18.32 ID:EO7g49HD0
僕は学校で全く喋らなくなっていた。
一人最高、気楽すぎワロタ。
でも休み時間になると苦しくなる。
リア充の雑談は耳障りで吐きそうだしwww
オタどもの会話もニワカで笑い方キメェしwww
一方、僕は寝たり、寝る格好したりする疲労者っぷり。
5分前には教科書とノートを机の上に用意する優等生っぷり。
毎回ロッカーを整理整頓する几帳面っぷり。
必ずトイレに行って用を足す神経質っぷり。
戻ると僕の席にリア充が座ってたりする大人気っぷり。
自分が座れなくても待っててあげる超寛容っぷり。
そして授業が始まると苦しみは和らぐんだ。
別に寂しくなんかないよ。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:33:28.31 ID:EO7g49HD0
「2人組作ってください」←「死ね」
「隣の人と相談してください」←「死ね」
「リア充なりてー。リア充爆発しろ」←「死ね」
「研修旅行の班は自由で構いません」←「死ね」
「友達とか彼女、家に連れてきていいのよ」←「死ね」
こんな世界嫌だ。
僕が何をしたっていうんだ。
コミュ障とかいうなら生活保護よこせ。
僕が“生(せい)”を感じる時間は≪ゴールデンタイム≫、
夜9時から夜中2時までの“アニメ”、“ネット”の時間だけだ。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:35:53.31 ID:EO7g49HD0
アニメは現実逃避にうってつけ。
アニメの世界は非現実的で興味深く、
目と耳さえあれば誰でも行けるのだ。
口は要らないから喋らなくても生きていける。
そして何よりこの世界では僕が絶対的な神。
電源を切るか切らないかは僕次第。
キャラは常に僕の掌上で生活している。
だから孤独なんてものも感じない。
インターネットも同じである。
用途を限れば口の要らない、目と手だけの世界。
だからコミュニケートも苦ではない。
この2つの世界を徘徊する≪ゴールデンタイム≫。
これがないと僕は死ぬ。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:38:11.08 ID:EO7g49HD0
≪ゴールデンタイム≫が5時間に対して、
≪リアルタイム≫は12時間もある。
学校での孤独感と嘔吐感は日々増すばかりで、
僕は現実に殺されてしまいそうだった。
そんなある日のこと。
VIPが僕を救ってくれた。
とあるスレにて、
『妄想楽し過ぎ』
…と。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:39:19.05 ID:0lDtoUef0
俺もアニメは見るがこの考え方はなかったわwww
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:41:01.74 ID:EO7g49HD0
僕は17才のイケメン高校2年生。不定期通学。
学校生活を味わってみたいという理由で変則編入。
教会育ち。過去にトラウマ有り。
Google、Facebook他の創設者。
数えきれないほどの特許をもつ。
世界一の歌唱力。演奏力。絵画力。料理腕。プログラマー。etc。
数学における予想問題を次々とQ.E.D.。
長者番付、2位に1700億ドル差。
00年以降の神曲と呼ばれるアニソンの6割を作詞作曲。
また、自身もパンクバンドを組んでおり空前絶後の大ヒット。
特技は声帯完全模写。コピーバンドも結成。声優の代替役も。
16リンガル。
如何なる場にも完璧に対応する笑いのセンス。
隔月刊雑誌にて漫画を連載中。空前絶後。
莫大な資産の使い道は、
バーチャル世界創世の研究。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:43:25.16 ID:EO7g49HD0
翌日から電車通学中、授業中、休み時間……
ほとんどの≪リアルタイム≫で妄想した。
妄想の世界は想像力だけのロジックワールド。
目を閉じるだけで凄まじい設定の自分がいる。
常に誰かが自分を求めている世界。
皆々僕を尊敬する世界。
でも、0℃の世界。
目を開けると必ず冷たい涙がこぼれてくる。
だけど妄想はやめない。
やめたら死ぬ。
俺も一歩間違えばこうなってたかもしれない
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:46:09.82 ID:EO7g49HD0
大学時代。
僕は隣県の工業大学に進学した。
もちろん妄想癖は続いていた。
言うまでもなく友達は諦めている。
アニメ、ネット、音楽鑑賞で十分。
“孤独”も現代文明の前じゃ怖くねーぜw
そう、怖くない……はずだった。
だが突然あの日、何かが僕を襲ったのだ。
そして僕の日常は劇的に変化する。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:49:03.24 ID:EO7g49HD0
◆大学2年。2010年12月17日(金)◆
その日は恐ろしい夢から始まった。
『声が出なくなる夢』
まあこんな生活してたら
そんな夢をみてもおかしくはないけれど。
苦しいけど誰にも伝えられず、
絶望の果てに声を失い、
結局は殺される。
そんな夢をみた。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:51:36.73 ID:EO7g49HD0
僕は仄暗い蝋燭部屋で仰向けに横たわっていた。
『“顎”“舌”“喉”以外』の神経は麻痺しており、死体のごとく動けない。
そして周囲には何本ものクリスマスツリーが飾ってあった。
どこからか、「jingle bell. jingle bell. jingle bell...」と複数の囁きが聞こえてくる。
すると突然、ツリーが次々と光り、目の死んだ異国人達がうっすら現れた。
その正体は異常な雰囲気を漂わせる、イカれたサンタクロース集団だった。
彼らはボソボソと、「jingle bell. jingle bell...」と唱えながら、
僕の眼球や鼻、陰茎、指、内蔵、腎臓をえグリ削ぎ、絶え間なく僕に喰わせてくる。
『“顎”“舌”“喉”以外』は痛みを感じないので、ショック死することもできない。
僕は助けを乞うために、ひたすら自分を味わい、喰らい続けるしかない。
喰い尽くせば、口が解放され、声を出せるから……そして僕は完食した。
だが叫ぼうと“喉”を開いたそのとき、奴らは僕の“のどちんこ”をブチ抜いた。
「ガァァアアアアアアアアアアアアアッッッッ……!!」
僕は“声”を失った。……「jingle bell」とはそういう意味だった。
サンタ達は終焉のベルに満足し、僕の心臓を引きちぎり靴下に放り込んだ。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:53:17.61 ID:EO7g49HD0
「ウァァアアアアアアアアアアッッ……!!」
僕は目を覚ました。
そして次の瞬間、“金縛り”に襲われた。
冷や汗が止まらない…。怖い……。
すかさず目を閉じ、「助けて」と声をあげようとする。
しかし声にはならず、すかさず口も閉じた。
ああ……金縛りってやつはどうして
誰かががそこにいるような気がするんだろう。
ソイツはサンタクロースかもしれない。
目を開けたら殺されるかもしれない。
口を開けたら喰わされるかもしれない。
早く、朝になってくれ……。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:56:24.48 ID:EO7g49HD0
■12月17日(金)AM7:10 - 起床■
あぁ…喉がカラカラだ。
気分も悪い。
食欲なんてあるわけない。
今日は講義をサボろう。
でも親には大学へ行く素振りを見せないとダメ。
つまりは外出必須なのだ。
どこへ行こうか。
僕は水をがぶ飲みし、家を出た。
母さんはいつも通り僕を見送る。
毎日、毎日、うぜぇんだよ。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:59:57.47 ID:EO7g49HD0
本日の天気、雪。
とりあえず電車に乗ることにする。
寝不足で、一刻も早く寝たいからだ。
電車ほど快適なベッドルームはないからな。
そこそこ田舎なので通勤ラッシュの心配もないし。
ある駅を越えると、もはや貸切状態になるし。
……にしても、今日は一段と寒いなぁ。
付加装備に、「ニット」「ヘッドホン」「マフラー」「ダウン」「グローブ」。
モコモコすぎてダサい? まぁオシャレなんてどうでもいいけどね。
とにかく防寒対策は完璧。どこか遠くにでも行こうか。
10分程で駅に到着。
今日はやけに人が多いな。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:02:25.51 ID:EO7g49HD0
「本日は電車が遅れてしまい、誠にご迷惑をお掛けしております」
マジかよ。電車で座れなかったらどうすんだ?
電光掲示板を見上げると、次の電車は30分後だった。
遅れすぎだろ……。
寒さで眠気は覚め、同時に腹が減ってきた。
コンビニで惣菜パンと缶コーヒーを購入。
空腹を満たし、音楽を聴いて待っていると
電車がノロノロとやってきた。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:04:37.78 ID:EO7g49HD0
ガタンゴトン…ガタンゴトン。
車内は混んでいて、座れなかった。
人が多いのは遅延が原因だろう。
電車も止まりがち運転でイライラするぜ。
僕は揺られながらケータイを弄っていた。
なんとなく受信メールBOXを開く。
メルマガや広告が9割をしめ、
残りの1割が母親という、九死に一生、後遺症って感じ。
ついでに送信メールBOXも開く。
高校の頃のメールが余裕で残ってる。
返信のなかったメール達、疑問形で終了もザラ。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:05:32.32 ID:2x2PYPW00
あは〜ん
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:07:00.31 ID:EO7g49HD0
衝動的に全メールを削除した。
このままどこか遠くへ行きたい。
雪の所為もあり、そんな気分が一層高まる。
今朝の夢は何だったんだろう?
僕から僕への潜在的メッセージだったのかな。
『声が出なくなり』、『助けを乞えず』、『孤独死する』。
……僕にどうしろと。
現実で僕に友達を作れってか?
中学、高校でそれは“不正解”って結論出たろ。
人と接してコミュニケーションとれってか?
もう既に“真性”コミュ障害者だっつーの。
さもないとサンタが“声”を狩りに来るってか?
構わねーよ。いらねんだよ声なんてよ。
僕は今後一切、助けなんて乞わない。
自分が潜在的に“何”を望んでようが、
孤独は僕の背負っていく運命なんだ……。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:09:43.31 ID:EO7g49HD0
「○○。〇〇です。お降りの方は足元に気をつけて――」
いつもこの駅から電車はほぼ貸切になる。
そして今日もリーマン達がゾロゾロと降車していった。
僕は空いた席に座り、外を眺める。
雪って何でこんなに綺麗なんだろ?
汚れを知らない純白、飛び込んだら洗われるかな?
そんなこと考えてる自分に少し酔ったりする。
アニソンを『R-09HR』で再生し、『Edition8』で聴きながら。
僕は大学に入ってから音楽鑑賞の“環境”に興味を持った。
オーディオビギナーとして大学生にしては頑張ってる方だと思うよ♪
プレーヤーとヘッドホン、合わせて20万したんだぜw
※『R-09HR』:プレーヤー(高音質レコーダー)
※『Edition8』:ヘッドホン
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:11:40.16 ID:EO7g49HD0
今聴いてるアルバムは『CLANNAD ORIGINAL SOUNDTRACK』。
先日クリアした『CLANNAD』のサントラだ。
もう涙がボロボロ、感動したよっ……!!
他者とのコミュニケーションを嫌っていた主人公が、
ハンデにも負けず真っ直ぐに生きる女の子に出会い、
次第に影響され、共に歩み、変わっていく過程で
家族や友達の大切さに気づき、実感する、そんな作品。
伝わりすぎて泣いた。
『CLANNADは人生』
僕だって分かってるよ。
本来、人生はそうあるべきなんだ。
僕だって本当は……。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:16:04.75 ID:EO7g49HD0
僕はそっと目を閉じた。
次に目を覚ます時が電車を降りる時。
例え定期範囲外でも、その駅で降りることにしよう。
『何かを見つけるために』
J-POPによくある抽象的代名詞だな。
正直、ちょっとカッコつけたいだけ……でも、
『孤独が運命』って決め込んでるけど、
心のどこかでまだ諦めてないのだろう。
自分を変える“キッカケ”探しの旅。
行き先はダーツに委ねる。
……僕は目を閉じた。
え、リアル話ぽくて怖い
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:20:41.62 ID:EO7g49HD0
ムニャムニャ。
目を覚ますと、窓外には知らない風景が広がっていた。
『まもなく△△駅です』、という電光表示。
聞いたこともない駅名だな。
定期範囲外なのは間違いないみたいだ。
……さぁ、僕の旅は始まった。
「△△。△△です。お降りの方は足元に気をつけて――」
只今9時40分。雪は既に止んでいる。
降車すると、冷たい強風が頬を突き刺した。
風に負け、顔をしからめ、目を細めると、
同時に自分以外にも降車客が“一人”いることに気づく。
そして僕は風の隙間に、
“一人の少女”を見たんだ。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:22:57.92 ID:EO7g49HD0
隣の車両から降りてきた彼女は、
その小さな体で風を受け止めていた。
セミロングの黒髪が靡いている様は
まさに理想を描いたような美しさだった。
年は僕より2、3年下だろうか。
風が通り過ぎ、彼女の顔が浮かんでくると
僕の中で時間が止まった。
“一目惚れ”は初めてだった。
一般的に大絶賛される程の顔ではないと思う。
少なくとも“ミス日本”における“美しさ”からは程遠い。
飾っていない素朴で自然な美しさ。
整った顔立ち、その愛くるしい童顔からは
どこか田舎っぽさ、懐かしさを感じる。
僕にとっては間違いなく、
この世で最も美しく、可愛い女の子だった。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:24:59.50 ID:EO7g49HD0
音楽を止めろ。
冷静に考えろ。
こんな気持ちは何年ぶりだ?
≪リアルタイム≫で心臓の昂りを感じたのは。
彼女は2次元でなく3次元。
未知なる奥行きがあるんだぞ?
何を考える必要があるんだ!?
今後一切、助けを乞わないって誓ったろ!?
いつも通り人と目を合わせるな。
傷つかないよう、隅っこを歩け。
避けられるぐらいなら、避けるのが僕じゃないか。
なのに何でこんなに迷うんだよ……。
『人が迷うのは後悔したくないからである』
そんなのは知ってるって!
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:28:21.23 ID:EO7g49HD0
もしかして、
この僕が女の子に話しかける?
コミュ障害者が
異性と2人っきりで?
できるわけないだろ。
会話が途切れて涙目オチだ。
……でも、僕は何しにココへ来たんだ?
わざわざ遠くまで来た理由は?
まだ知らない何かを探しに来たんだろ?
その“手掛かり”はそこにあるんじゃないのか!?
僕は自分を変えに来たんだろッ!!
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:32:24.33 ID:EO7g49HD0
深呼吸して、何度も咳払いをする。
「あーあーあ…」
良かった、声はまだ出る。
僕は彼女に声をかける!
タイトルを付けるなら、『はじめてのなんぱ』!
孤独が嫌なのは変わってない!
たとえそれが運命なら抗えばいい!!
神を創った人間には、神に逆らう権利があるんだ!!
「あの…!!」
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:37:33.11 ID:EO7g49HD0
女「!」ポカーン
だ、大丈夫。
今の僕なら言える!
僕「ひ、、一目惚れしましたっ!!」
女「……」
僕「僕と……友達になってくださいッ!!」
女「……」
僕「……」
女「……す、すみません」
彼女は動揺したせいか、
トーンのずれた声で僕に謝った。
中学のフラれた記憶が蘇る。
なんともいえない虚無感が僕を包み込む。
その正体は生きることへの絶望。
弛緩した涙腺からは涙が零れた。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:41:27.65 ID:EO7g49HD0
女「私、耳が聴こえないんです」
え…。
彼女は、≪私は 聴覚障害者 です≫
と大きく記されたカードを僕に提示する。
女「お役に立てなくてすみません……」
やはり少し音程の外れた声。
僕の覚悟と勇気は、届いてすらいなかった?
まさか、そんな――。
女「失礼します……」タタタ
ちょっと待ってよ。
こんな形で失敗するのか?
答えを聞くことすらできないのか?
女(……何であの人、泣いてたんだろう?)
女(ヘッドホンにニット帽ってめずらしい人……)
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:44:31.64 ID:0lDtoUef0
なんだ
妄想か
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:46:27.13 ID:EO7g49HD0
「ま……待って…!!」
僕は呼びとめようと叫んだ。
しかし、彼女はどんどん遠ざかる。
聞こえてないのなら当たり前だ。
僕は走って追いかけようと踏み出した。
しかし、“ストーカー”という概念が頭を横切る。
足が急に重くなり、やがて止まった。
嫌われるくらいなら、僕は追いかけない。
……でも、それじゃ昨日までの僕と同じだ。
僕は自分を変えに来たんだろッ!
彼女が遠ざかるにつれ、後悔が近づいてくる。
再び足を動かすと、彼女しか見えなくなった。
走れッ!!
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:49:12.58 ID:Pl/Q9kjIO
悪くない
むしろ良い
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:52:05.58 ID:EO7g49HD0
僕は彼女の肩をポンと叩いた。
女「!」
僕はケータイを取り出して、
文章を打ちこみ、それを彼女に手渡す。
彼女が怪訝そうに受け取ると、
僕はその場から離れた。逃げた。
もう耐えられなかったのだ。
だって女の子を走って追いかけ、
せき止めるという積極的行動に加え、
いきなり自分のケータイを相手に渡すという、
相手にとっては理解不能な出来事だからだ。
……でも、そんなの分かりきってただろ。
その上で行動に移したんだ。自分を変えるために。
なのに僕はギリギリで逃げた。どこまでもヘタレ……。
改札を出ようとすると、“ピーッ”、と警告音が鳴り響く。
同時に僕を逃がすまいと、2枚の板が僕をせき止めた。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:55:34.98 ID:EO7g49HD0
(何で私にケータイなんか渡したんだろ……?)
(これ私の落し物じゃないよ?)
(誰かと勘違いしてるのかな?)
(でも電車からは私と“ニットホン”さんの2人ぐらいしか降りてないし……)
(それより早く学校に行かないと)
(えーっと…今日は大雪警報のせいで10時スタートだから……)
(あと15分か……ん?)
≪ブー、ブー、ブー、ブー≫
ケータイのバイブレーションが突然鳴り響く。
“ニットホン”さんを見ると、改札の方で慌てふためいていた。
ケータイのディスプレイには、
『From:自分 件名:僕の告白、聞いてください!!』
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:59:37.24 ID:EO7g49HD0
(え……? 何かメール来た……)
(送り元が“自分”になってるけど、これって……私に?)
(だから私にこのケータイを渡したの?)
(……告白って何……?)
(私、耳聞こえないって言ったよね……)
(普通、それ聞いたら……避けるもんでしょ……?)
彼女は恐る恐る、メールを開いた。
◆本文◆
初めまして!
一目惚れしました!
思い切って告白しました!
そしたら耳が聞こえないって言われました!
でも、そんなこと一目惚れには関係ないです!
君さえよければ
僕の初めての友達になってください!
根本 優
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:01:28.19 ID:RZGa906Z0
根本wwww
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:01:37.62 ID:EO7g49HD0
(一目……惚れ?)
(私と……友達になりたい?)
(こんな私と……)
改札の方を見ると、彼は乗越精算機の前にいた。
(待ってよ…このケータイ、あなたのでしょ?)
(私なんかと……友達になってくれるんでしょ?)
(じゃあ何で私を置いてっちゃうの?)
(もう……孤独は嫌だよ)
「……根本君ッ!!」
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:04:32.57 ID:EO7g49HD0
僕「…」
機械にお金を入れる手が止まった。
女「こんな私で、君さえ良ければッ…!!」
たかが友達になるという告白のために……。
一時の恥から逃げてしまった僕なんかのために……。
自分に聴こえない声を張り上げてまで……。
女「私と…友達になってくださいッ!!!」
お互いに辛い過去があるのだ。
彼女の叫びで、そう悟った僕は
涙を堪えることができなかった。
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:06:56.81 ID:EO7g49HD0
◆初めまして◆
木下 優 っていいます(・∀・)
名前同じで驚きましたッ!!
友達ができて嬉しいです!
いきなりで申し訳ないんですが
あと7分以内に学校に着かなきゃいけません…(´・ω・`)
◆Re:初めまして◆
すげぇ、ほんと一緒だっ。
僕も木下さんに出会えて本当に良かった!
てか学校やばいね。
雪が積もって危ないから送ってってあげるよ!
道案内してくれる?
◆Re:Re:初めまして◆
ほんとですかっ? ありがとうございます!
じゃあ私がナビしますから、
手、お願いしますねっヽ(*`・ ・)
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:09:03.03 ID:EO7g49HD0
僕は彼女に違和を感じていた。
それが何かはまだ分からないが。
……まぁ今はとりあえず
差し出された彼女の手を、僕が導かなきゃ。
今までの僕なら女の子に触れるなんて論外だった。
だけど、ここに来てからは僕は変わりつつある。
『女の子を学校まで送る』
こんな凄いことをサラッと言えちゃうんだから。
……何でだろう? まあいいや。
ここに来て本当に正解だった。
僕はグローブ越しに彼女の手を握る。
「行こう!」
その声は彼女には届いていない。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:13:11.45 ID:EO7g49HD0
僕は右手に彼女の荷物を、
左手に彼女の右手を握りしめ、銀世界を2人で歩いた。
転ばないように、でも遅刻しないように、若干急ぎ気味で。
「次の角、左です」
「こっちの方が近道ですよ」
「そこ滑りやすいから気をつけてください」
会話は全て一方通行だった。
僕の言葉は彼女には届かない。
それでも僕は、
「了解」
「O.K!」
「木下さんも気をつけて」
と笑顔で言葉を返す。
届かないけど意味はあるはずだ。
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:13:36.64 ID:eOHrxJpY0
3行で
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:17:43.13 ID:EO7g49HD0
どうやら学校に着いたようだ。
『○○市立△△養護学校』
普通の学校じゃないみたい。
まあ当然といえば当然か。
先生A「あら、優ちゃん、おはよう」
僕「おはようございます……あっ」
とっさに挨拶をしてしまった。
自分の名前を呼ばれたと思ったからだ。
……メガネを掛けた、リッチマダムって感じの女性。
50歳くらい。先生だろうか?
先生A「今日は雪、大変だったねぇ……あら?」
先生A「あなたはどちら様で?」
僕「いや、あの、その……」
……僕の悪い癖だ。
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:19:47.98 ID:EO7g49HD0
>>63 コミュ障害者の主人公が
耳の聴こえない女の子に出会うという
おはなし
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:23:27.89 ID:EO7g49HD0
女「A先生、おはようございます」
女「彼は私の友達なんです」
木下さんは耳が聴こえないのに、
僕よりそれらしい回答をした。
先生A「あら、そうなの」
先生A「優ちゃんを送ってくれたのね」
僕「あ…は、はい……」
僕「あ、あの木下さんはここの生徒なんですか?」
先生A「いいえ。違いますよ」
先生A「優ちゃんはここでボランティアしてくれてるんです」
僕「ボランティア…ですか?」
女「わたし、皆のところに行ってますね」
女「根本くん、送ってくれてありがとう」
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:27:55.17 ID:EO7g49HD0
先生A「転ばないように気をつけるのよー」
僕「せ、先生は行かなくても大丈夫なんですか?」
僕「もう10時ですけと……」
先生A「ええ、私は大丈夫よ」
先生A「せっかく優ちゃんのお友達が来てくれたんだもの」
僕「はぁ」
先生A「優ちゃんは、今年で20になったんだけどね……」
え……? 僕と……同い年だ……。
先生A「普通の大学に行けないのは分かるでしょ?」
先生A「だから高校を中退してから、ここに通ってるわ」
僕「高校を……中退ですか?」
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:32:31.54 ID:EO7g49HD0
先生A「耳が聴こえなくなったのが高校2年生の時よ」
先生A「彼女は音声言語獲得後に聴力を失ったの」
先生A「だから読み書き発音は不自由なくできるんだけど……」
僕「どうして……聴こえなくなったんですか?」
先生A「……彼女はここに来るまで、ずっと孤独だったわ……」
先生A「極度のストレスも原因の一つよ……」
先生A「……そしてあの事件……」ボソボソ
僕「あの事件って?」
先生A「何でもないわ」
先生A「せっかくだから中の様子見に来る?」
僕「え? …あ…はい…」
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:35:23.01 ID:EO7g49HD0
清し この夜 星は光り 〜♪
救いの御子は 馬槽の中に 〜♪
眠り給う いと安く 〜♪
僕「あの……これって一体……」
先生A「あぁ、もうすぐクリスマスでしょう?」
先生A「だからクリスマス会に向けて演奏を練習してるの」
先生A「これは“きよしこの夜”よ」
僕は教室の中を覗く。
障害を抱えてる生徒達が
トーンチャイムでそれを演奏し、
メロディーに合わせて先生方が歌詞をのせていた。
そこには木下さんもいた。
※トーンチャイム:
http://www.youtube.com/watch?v=ibKGQizwfRE
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:38:12.75 ID:EO7g49HD0
なんて綺麗な音色なんだろう。
ここまで心に残る音楽は初めてだ。
木下さん……君は何でそんな楽しそうな顔してるの?
君にはこの音色が届いてないんだろ?
聴かせてやりたいよ。
過去に辛いことがあったのなら、尚更。
演奏が終わると僕は一人で大きな拍手をした。
恥ずかしかったけど、精一杯気持ちをこめた賛美を贈った。
先生たちも僕につられて拍手する。
生徒達はとても嬉しそうだった。
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:41:19.26 ID:EO7g49HD0
先生B「では2曲目を練習しましょう」
僕「もう1曲あるんですか?」
先生A「ええ。全部で2曲よ」
僕「楽しみだなぁ!」
僕「!」
昨日までは現実に無関心だった。
でも今はこんな小さなコンサートに大興奮している。
この矛盾は……いや、僕は変わってるのか?
木下優に出会って、僕は一つの壁を乗り越えた。
壁を乗り越え続けたら、いつか どこか に出れるのだろうか。
そこには僕の探していた 何か があるのだろうか。
先生B「……では心を込めて演奏しましょう。“ジングルベル”の歌♪」
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:44:50.10 ID:EO7g49HD0
僕「えっ……」
Oh, jingle bells, jingle bells 〜♪
Jingle all the way 〜♪
Oh, what fun it is to ride 〜♪
In a one horse open sleigh 〜♪
先生A「私は“ジングルベル”の方が好きだわ」
先生A「だって楽しk…
僕は喉を抑え、その場にしゃがみ込んだ。
同じトーンチャイムの音色が今度は不協和音に聴こえる。
僕「やめて……やめて……」
先生A「どうしたの君?」
僕「ぐ、あ……がっ……たすけ……」バタッ
先生A「C先生! この子、保健室に連れて行くの手伝って!」
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:48:10.14 ID:EO7g49HD0
■保健室■
目を覚ますと、ベッドに横たわっていた。
隣で木下さんが僕を心配そうに見ている。
僕はケータイを取り出した。
メールを送信すると、僕は彼女に笑顔をみせた。
◆もう大丈夫◆
ちょっと怖い夢のこと思い出しただけだよ。
あぁ…小学生みたいでカッコ悪いなぁ…(´;ω;`)
傍にいてくれてありがとう
◆Re:もう大丈夫◆
そうなんだ、良かったぁ〜(> <)
でも、しばらく安静にしててくださいよ!
さっきの拍手、ありがとうございましたッ(*^▽^*)
あんな大きな拍手初めて聞きました。
生徒達、みんな喜んでましたよ!
それでは、そろそろ皆のところに戻りますねヾ(。・ω・。)
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:50:11.91 ID:EO7g49HD0
拍手にお礼されるのもなw
ていうか拍手の大きさとか分からんだろうに……。
こんなに優しい所見せられたら、ますます傍に居たくなる。
時計は12時を回っていた。
確かに、腹が減ったな。
でもメシまでお世話になるわけにはいかない。
僕は先生にお礼と用件を伝え、学校を出た。
出たはいいが、ここって田舎驀地だな。
どこかに食処はないのだろうか。
とりあえず雪道を歩いてみることにした。
ざっと1時間程だろうか。僕は一件の古いラーメン屋を見つけた。
【屋号】『うんめーら』
嫌な予感を振り払い、暖簾をくぐった。
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:52:41.58 ID:EO7g49HD0
ガラガラ。
「みらっそい」
いらっしゃい、くらいちゃんと言えよ。
店員は爺さん一人だけか……。
てか、客が誰一人としていない。
お昼時にこの様じゃ閉店も間近だな。
爺「なんそ?」
僕「え? あ…あの…う…兎ラーメンを…一つ」
この店は“兎ガラ”、つまり“うさぎ”のラーメンしかないみたいだ。
客がいない理由に納得。
あぁ、食べたくない……。
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:56:03.31 ID:EO7g49HD0
古い店ということもあり、
『ボンカレー』の看板や、
『吉永小百合』の若かりし頃のポスターがある。
その中で、僕はとある新聞記事を見つけた。
≪夫婦が行方不明≫
張紙の中では、比較的新しいものだった。
日付は2007年8月8日、3年前だ。
僕が高校2年生の頃か。
ってことは木下さんも……。
……まあ関係ないだろう。
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:58:52.51 ID:EO7g49HD0
爺「おまつど」
うわっ、マズそう。
何か邪悪ものを感じる。
僕「うぅ…いただきます……」
ジュル、ジュルルルルル。
をっぅえ。塩辛ぇえ。
ジュル、ジュルルルルルル。
おうぇ。でも麺は意外と好きかも。
ゴクゴクゴク……。
コクがない癖に、あっさりしないスープ。
それに加えて、喉が異常に乾く。
あぁ、不味かった。
僕「ごちそうさまでした!」
……あれ、嘘だろ。自然に挨拶が出た。
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:01:19.84 ID:EO7g49HD0
ゲテモノを食べきった達成感からか?
それともこの場に他の客がいないからか?
でも爺さんが目の前にいるじゃないか。
やはり僕はココに来てから、徐々に変わってる。
潜在的に望んでいた方向へ、少しずつ……。
爺「……創業後40年間でおめぇが初めてじゃ」
僕「え?(普通に喋れるのかよ)」
爺「兎ラーメンを完食した奴はな」
僕(40年間よく潰れなかったもんだ)
爺「まあ兎ラーメンは3年前からのメニューだがのw」
僕(……3年前?)
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:01:23.03 ID:t39pp8Rp0
すばらしい
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:06:04.41 ID:EO7g49HD0
僕「……あ、あの、もし違ってたら申し訳ないんですが……」
僕「“3年前”ってそこの“新聞記事”と関係あるんですか?」
爺「…」
僕「“兎ラーメン”とか……普通じゃないですよ」
僕「しかもメニューがそれだけなんて……」
爺「……それがどうした?」
僕「いえ、なんとなく……」
爺「じゃあ聞くんじゃねぇ」
僕「……すみません」
爺「さっさと金払って帰りな」
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:08:07.66 ID:EO7g49HD0
只今の時刻、2時少し前。
雪は相変わらず溶ける気配はない。
さて、今度は違う道を通って学校へ戻ろう。
……3年前か。
一体何があったんだろう。
僕は帰り道、“普通”のラーメン屋を見つけた。
ちくしょう。
行きしなにこの道を選んどけば、
『兎ラーメン』なんて食わずにすんだのにな。
多分完食できたのは、
今朝の夢の所為ってのもある。
自分の肉を喰うよりかマシだからな。
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:11:16.99 ID:EO7g49HD0
■PM3:00 - 養護学校着■
教室の中を覗くと、保護者も来ており、生徒は帰る準備をしていた。
腕をぶんぶん振りまわす生徒もいれば、
「あうあう」、と奇声を発する生徒もいる。
ギャーギャーと泣き喚く生徒もいれば、
目と口を開けたまま俯いてる生徒もいる。
そして全員が車椅子に縛られていた。
無性にやるせなく、居た堪れない気持ちになった。
≪“自称”コミュニケーション障害者≫、の自分が許せなくなった。
ただ単に、自分から逃げていただけの自分を。
……僕は絶対に変わらなければならない。
そのために、この地へやって来たんだ。
もはや潜在的ではなく、全身全霊、顕在的にそう感じた。
僕は強く再決心し、木下さんの方を見る。
…え? あれ? 何故…?
彼女は唇を噛み締め、涙目になっていた。
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:14:34.69 ID:EO7g49HD0
保護者と生徒達が帰ると、
木下さんが大泣きしながら僕に飛び込んできた。
「何で急に居なくなっちゃうんですかぁ!」グスン
「私に一言、言ってくれたっていいじゃないですかぁ!!」
「根本君……保健室に行っても居ないからぁ……!」グスン
「私嫌われて……もう帰っちゃったかと思いましたぁ!!」
「…もう……孤独は嫌……」ヒック
その時、彼女に感じた違和の正体が分かった。
彼女も孤独が嫌で、無理な明るさを演じて僕を引きとめようとしていたのだ。
そう、中学の頃の僕みたいに。
誰も抱きしめたことのない僕が、彼女を無意識に抱きしめた。
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:17:47.35 ID:EO7g49HD0
僕は嫌われるのが怖くて、“友達”になりませんか、と告白した。
それ以上の距離を求めれば、遠ざかるような気がしたから。
だけど、彼女を抱きしめてみて思った。
大きさは違えど、孤独の苦痛を経験してきた僕らは、
予想以上に近い距離でこの出会いを待ち続けていたのかな。
運命(笑)な僕だったけど、それ以外の言葉が見つからないです。
僕らには言葉はいらないから、探す必要ないけどね。
……ふぅ、何言ってんだ恥ずかし。
でも、これだけは言える。
今この瞬間、僕と彼女の鼓動はぴったり。
僕はケータイを取り出した。
◆◆
僕が彼氏でよければ、
僕の彼女になってください。
◆Re:◆
はい。
喜んで。
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:21:14.29 ID:EO7g49HD0
■PM4:00 - △△駅待合室■※“〒≪〜≫”:メール内容※
女〒≪“ニットホン”さん改め“ゆーくん”≫
僕〒≪“ニットホン”? ヘッドホンの上にニット被ってるから?≫
女〒≪そうだよ。この辺じゃあんまり見かけないからね≫
僕〒≪…ま、ファッションなんてどーでもいいけど≫
女〒≪だめだよ。今度私がコーディネートしてあげよっか?≫
僕〒≪じゃあ、お願いしようかな。お礼も考えとくよ≫
女〒≪ほんと? 楽しみにしとく♪ それにしても名前も年も同じだったなんてね…≫
僕〒≪運命(笑)?≫
女〒≪ばかにするなぁー! これって凄いことなんだよっ≫
僕〒≪まぁ確かに凄いよね。 でも僕は何て呼べばいい? “優ちゃん”とか?≫
女〒≪ゆーくんには“優”ってよんでほしいな≫
僕〒≪了解≫
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:25:12.76 ID:EO7g49HD0
“彼女を学校まで送る”
何故こんな凄いことがいきなり出来たのか。
彼女と一緒にいるとその答えが分かってきた。
彼女との空間は、僕の得意な“声のいらない世界”。
強制的に“喋り”を要求されることはない。
コミュニケーション手段の殆どが“メール”,“表情”,“ボディータッチ”。
そして何より、この世界はとても暖かい。
まさしく僕が望んでいた世界なのだ。
……でも甘えてばかりはよくない。
僕は変わりに来たのだから。
向上心を失えば探し物は見つからない。
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:30:33.18 ID:EO7g49HD0
僕「 ゆう 」
僕は口を精一杯使って、彼女の名前を表現した。
女〒≪…うん、いい感じ。幸せすぎる…。 …でも、本当にこんな私でいいの?≫
僕〒≪それは言わない約束≫
僕〒≪優は僕にとって初めての友達で、初めての恋人なんだ≫
僕〒≪絶対に代わりの利かない、僕にとって一番大切な人だよ≫
女〒≪本当にありがと…。信じていい?≫
僕〒≪約束する。何があっても僕はどこにもいかない≫
僕〒≪誰かに置いてかれる苦痛は誰よりも分かるから≫
女〒≪…うん、絶対だよ? 昼みたいに急に居なくなったら嫌だからねッ≫
僕〒≪はいはいw そうだ、昼で思い出したけど…≫
僕〒≪『うんめーら』ってとこで僕、『兎ラーメン』食べたんだ…(´・ω・il)≫
女「えっ」
僕「ん?」
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:33:39.47 ID:VaUQd+9W0
支援
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:34:21.01 ID:EO7g49HD0
女〒≪“うんめーら”って私のお爺ちゃんの店だよ……≫
僕「えぇェエ!? うそだろっ!?」
僕〒≪もしかして、そこに住んでるとか?≫
女〒≪うん、3年前から。 ごめんね、私のお爺ちゃん変人だったでしょ?≫
3年前、とある夫婦行方不明。
3年前、優は爺さんの家に住み始めた。
3年前、優は音を失った。
3年前、“兎ラーメン”登場。
とある夫婦が優の両親なのは、恐らく間違いないだろう。
なんてこった。繋がってしまった。
女「ゆーくん?」
僕〒≪あのさ……今日、優の家に寄っていいかな?≫
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:05:20.61 ID:+BIq1Uf6O
古田
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:17:23.84 ID:EO7g49HD0
女「!」
女〒≪そんな、私まだ心の準備ができてないよっ…///≫
僕「ち、違うって! 出会って7時間で、どんだけ急展開だッ!」
女「?」
僕〒≪…優のお爺さんと話したいことがあるんだ≫
女〒≪あ、そうなんだ…。 お爺ちゃんと仲良くなったんだ?≫
僕〒『まあそんな感じw ちょっと切符買いなおしてくるよ』
女〒≪××駅だから320円だからね≫
僕〒≪おk≫
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:21:01.16 ID:EO7g49HD0
■PM4:30 - 木下家門前■
“うんめーら”の隣には小さな一軒家があった。
表札には“木下”って書いてある。
何でさっき気付かなかったんだろう。
“うんめーら”の戸に掛かっている札が
“商い中”から“仕込み中”に変わっている。
どうやら11時から15時までの営業らしい。
つまり、爺さんは今この家に居るってこった。
僕と優が付き合ってることを報告しなきゃ。
そして彼女には聞くに聞けない、
“3年前”のことを教えてもらうんだ。
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:24:31.25 ID:EO7g49HD0
ガラガラ……。
優は横開き扉を開いた。
女「ただいまぁ、お爺ちゃん」
爺「…ん?」
爺「何でおめぇがいるんじゃ?」
僕「あ、あの…」
僕「あ、改めまして根本優と申します!」
僕「優さんとお付き合いさせて頂くことになったので…」
僕「その…挨拶とご報告に参りました!」
爺「おめぇが優と?」
爺「何で昼来たとき言わんかった?」
僕「いえ、そのときはまだ……」
僕「それにお爺さんと優さんの関係もついさっき知ったんです…」
爺「……後悔はしないと誓うか?」
僕「はい! もちろんです!!」
爺「あがれ」
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:26:48.55 ID:EO7g49HD0
■客間■
僕「…」
爺「そんなに緊張せんでもいい」
爺「堅苦しいのもやめてくれ」
僕「あ、はい」
爺「優のこと、どこまで知ってるんじゃ?」
僕「…過去に辛い思いをし、」
僕「3年前に耳が聞こえなくなって」
僕「現在は養護学校でボランティア活動をしている」
僕「そして両親がいない…」
僕「そこまでしか知りません」
爺「…そうか」
爺「優の父親は、優を虐待していた」
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:29:13.49 ID:EO7g49HD0
僕「虐待……」
僕「父親ってお爺さんの子供ですか?」
爺「違う。ワシらの子供は母親の方だ」
爺「そしてその母親も父親に暴力を受けていたんじゃ」
僕「なんて非道い父親だ……」
僕「もちろん離婚したんですよね?」
爺「いや、何度も訴えたんじゃが離婚は認められなかった」
僕「どうしてですか!? 暴力は証拠が残るでしょう!?」
爺「あぁ。現に母親も優も身体はアザだらけじゃったよ」
爺「だが父親は暴力を一向に認めずに…」
爺「自分の家族愛の大きさだけを裁判で力説した」
爺「実際に家族旅行をしたり、プレゼントを与えたりしていたからのう……」
僕「そんなの全く信用できないじゃないですか……!!」
爺「うむ、その通りだ。恐らく賄賂が動いていたんじゃろう」
爺「母親はやがて病気がちになり、行動する気力も無くなっていった」
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:30:55.07 ID:EO7g49HD0
僕「警察もダメだったんですか?」
爺「あぁ。いくら取り合っても無駄でのう」
僕「……父親の役職は?」
爺「一応、大手企業の平社員じゃ」
僕「それほど多額の賄賂を、平社員が賄えるはずないですよ」
僕「……恐らく裏で何者かが糸を引いていたと思います」
僕「父親にもそこまでしてDVをする理由があったはずです」
僕「わざわざ家族旅行等のカムフラージュを施すほどの理由が」
爺「…」
僕「と、ところで優の学校生活はどんな感じだったんですか?」
爺「……優は父親からは暴力を受け続け」
爺「放心状態だった母親には甘えることすらできなかったのじゃ」
爺「優は必然的に無口でネガティブな子に育った」
爺「だから学校では友達ができず、優はいつも“孤独”じゃった……」
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:33:20.98 ID:EO7g49HD0
爺「ワシらに出来たことは“うんめーら”の夜の営業を廃止して」
爺「たまに遊びにくる優との時間を設けてやることぐらいじゃった」
僕「“たまに”ですか……?」
爺「父親が出張の時や、特別に許されたときぐらいじゃ……」
爺「だからワシらは……」
僕「あ、あの!」
爺「……なんじゃ?」
僕「“ワシら”って先刻から仰られてますけど……」
僕「あの、お爺さんの“奥さん”は…?」
爺「…」
爺「記録上では3年前に行方不明になっておる」
僕「えぇェエッ!? お婆さんがですか!?」
爺「あぁ。“記録上”じゃがの」
僕「それってどういう……」
爺「婆さんはずっとこの家にいるよ」
爺「紹介してやるから付いて来な」
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:34:54.43 ID:EO7g49HD0
僕は爺さんに付いて行った。
客間を出て、階段を上る。
2F。
爺さんは突き当たりの押入れを開けて、
奥から何かを取り出そうとしている。
この時僕はアルバムか何かを想像していた。
しかし取り出されたのは大きな箱で、
蓋を開けると砂のようなものがドッサリと詰まっていた。
そして爺さんはその中から
“はちみつ瓶”らしきモノを取り出した。
それを見て僕は口を抑えた。
瓶にはドロドロに液状化した何かが入っている。
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:36:21.47 ID:0RW0cMTD0
しえん
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:39:58.93 ID:EO7g49HD0
爺「コイツがワシの女房じゃ」
爺「こんな姿で申し訳ねぇが、勘弁してくれ」
僕「…あ…あ…ぁ…」ガクガク
爺「どうした?」
僕「狂ってる…」ガクガク
爺「あ?」
僕「どうして普通で居られるんですか…」ガクガク
僕「まさか…お爺さんが…」ガクガク
爺「違うわこのボケがッ!」
爺「…この瓶は3年前の8月に送られてきたんじゃ」
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:42:11.55 ID:EO7g49HD0
僕「差出人は…?」
爺「あるわけないじゃろ」
爺「まあ婆さんを殺した犯人じゃろうけどな」
爺「特殊なバイオ消臭剤にこの瓶を埋めて送ってきたわい」
僕「どうして…それが…お婆さんだと分かったんですか?」
爺「今では液状化してしまってるが」
爺「当時は婆さんの『心臓』と『左手』がハッキリ分かるように封入されてて…」
爺「左手の薬指にワシが婆さんへ贈った『結婚指輪』がハメてあったからの」
爺「…ほら、今でも白骨化した左手の薬指にあるじゃろ?」
僕「…見たくないですッ」
爺「まぁワシだってこんな姿の女房をあまり見せたくないからのう」
爺「だから警察にはこの箱と瓶は見せずに」
爺「捜索願だけ出しておいたんじゃ」
爺「警察なんかに“婆さん”を見せたら“没収される”に決まってるじゃろ?」
僕「でもそれじゃ犯人を見逃すことに……」
爺「ワシは警察を信用しとらん」
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:59:00.60 ID:74DU1/O+0
おもしろくないのにここまで読んでしまった
はやく続き頼む
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 08:00:31.18 ID:EO7g49HD0
僕「お婆さんが最後にココを出たのはいつですか?」
爺「2007年の8月6日だよ」
爺「『ちょっと人に会ってきますね』『遅くても明日には帰るから』」
爺「『心配しないで、お爺さん』…と言い残しての」
僕「それっきり帰って来なかったんですね……」
爺「あぁ。それで夕方に△△養護学校のA先生が来て…」
僕「A先生ですか!?」
爺「知ってるのか?」
僕「えぇ、まぁ。でも何故です?」
爺「その先生が優をこの家に届けてくれたんだ」
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 08:01:53.27 ID:EO7g49HD0
〓〓〓〓〓〓〓〓〓 3年前 8月6日 夜 〓〓〓〓〓〓〓〓〓
先生A「私、△△養護学校のAと申します」
先生A「ご両親からこの子をコチラへ送るように頼まれて…」
爺「そうなんですか。わざわざすみません」
先生A「……優ちゃんをしばらくコチラで預かってほしいそうです」
爺「本当ですか!? やったなぁ、優!!」
爺「……ん、優? 顔色が悪いぞ?」
爺「どうしたんじゃ優!! どうして返事をしないんじゃ!?」
優「…」
先生A「あの…ご両親曰く、優ちゃんは耳が聴こえないそうなんですが…」
先生A「お爺さんはご存知なかったのですか?」
爺「……耳が聴こえない? そんなわけあるかっ」
爺「この前だってちゃんと会話できてたんだぞッ!!」
先生A「私に言われても分かりません……」
先生A「……私はただ、耳の聴こえなくなった優ちゃんをこれから」
先生A「私どもの養護学校に通わせて欲しいと頼まれただけです…」
爺「嘘じゃろ、優? 何があったんじゃ!? 優!! 優!!!」ユサユサ
優「…」
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 08:03:22.64 ID:EO7g49HD0
僕「そうだったんですか……」
爺「あの後、優の家に行ってみたんじゃが……」
爺「既にもぬけの殻じゃったわい」
爺「それで娘のことが心配になって」
爺「捜索願を出したってわけじゃ」
僕「あの“新聞記事”のことですね」
爺「あぁ」
僕「…それで、“お婆さん”が送られてきたのはいつなんです…?」
爺「翌朝…8月7日の朝には家の前に置いてあったよ…」
僕「そして今度はお婆さんの捜索願を出したわけですね…」
爺「そうじゃ。警察に“またお前か…”って顔されたわい」
僕「その日からずっと優と二人暮らしですか?」
爺「あぁ。……じゃけど優は…」
爺「…ショックで半年以上全く喋らなかった」
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 08:06:48.58 ID:EO7g49HD0
爺「本当に辛かった……」
爺「ワシは何もしてやれなくて……」
僕「…」
爺「分かるかッ!? 自分の声すら聞こえないんじゃぞ!?」
爺「ある日突然、世界から音がゴッソリ消えてしまうんじゃ…」
爺「音を知ってる人間にとって、それがどれだけの苦痛か…」
爺「しかも両親も友達も、唯一仲の良かった婆さんも居ない…」
爺「…“孤独”なんてもんじゃねぇよ」
僕「…」
次元が違いすぎた。
勘違いにも程がある。
“孤独”は僕ごときに許される言葉じゃなかった。
爺「だからワシは精一杯の恨みを込めて“兎ラーメン”を作った」
爺「耳の聴こえない優のために、耳をアピールする“その動物”を…」
爺「何者かに騙された婆さんのために、詐欺の代名詞の“その動物”を…」
爺「行方不明になった娘のために、人を異世界へいざなう“その動物”を…」
爺「皮を剥いだ兎を塩スープでグツグツ煮込むんじゃ」
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 08:12:05.66 ID:EO7g49HD0
僕はようやく気づいた。
一見普通に会話ができる爺さんだが、
既に精神がボロボロであることを。
娘と孫が暴力被害。
アザができるまで。
しかし離婚失敗。
警察も役立たず。
暴力は続く。
娘、放心状態。
孫、中途失聴。
妻、殺される。
妻、肉片。
娘、行方不明。
孫、孤独。
……だが、黒幕の目星は付いた。
関係ない第三者の癖に、
爺さんすら知らない情報を
その人物は口走っていたからだ。
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 08:15:17.32 ID:EO7g49HD0
僕「…お爺さん、こういうのはどうです?」
爺「何じゃ?」
僕「兎の代わりに、卵を入れるんですよ!」
僕「“卵”の目玉を取ったらどうなります?」
爺「白身だけ残る」
僕「その通りです」
僕「でも“卵”という漢字にも目玉がありますよ」
僕「人間と同じように2つ…」
爺「…“卯”か」
僕「そうです。いわゆる“うさぎ”のことです」
僕「来年は卯年ですしピッタリだと思いますよ」
爺「なるほどねぇ…」
僕「だから本物の兎を使うのは…もうやめませんか?」
なにげにwktk
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 08:17:53.21 ID:EO7g49HD0
爺「……じゃが“白身だけ”ってのは手間が掛るのう」
爺「それに“目玉”を取るなんてワシにはできん…」
爺「優の手前じゃ縁起が悪いじゃろ…」
僕「じゃあ目玉を取らなきゃいいだけです」
僕「ラーメンにゆで卵をのせるだけでいいんですよw」
爺「……ぷっ」
爺「ハッハッハ!」
爺「テキトーな奴めw」
僕「(*^ ^)ゞ」
僕「だからお爺さんはもう戦わなくていいんです」
僕「じっくり休んで、後は僕に任せてください」
爺「なんか少し気が楽になったよ」
爺「おめぇ頼りになるな」
僕「……初めて言われました」
爺「意外じゃな。ワシがここまで喋ったのも…」
爺「…お前に魅力があるからじゃと思うぞ」
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 08:20:34.55 ID:EO7g49HD0
正直、ここまで自分が喋れると思わなかった。
この僕が、お爺さんといえど、2人っきりで。
≪余計なことを考えなかったから?≫
こう話したら相手がこう言って〜……とか、
何を喋ったら、一番喜んでもらえるか……とか、
僕なんかが喋っても意味がない……とか。
余計なことを考えずに
真剣に相手の話を聞いて、
自分の思いのまま話したから
自然な会話になったんだろうか?
自然な会話は楽しい。
楽しいと自然に会話が続く。
この螺旋こそがリア充への階段なのかもしれない。
もちろん爺さんとの会話の内容は悲惨で許せないものだ。
だから今これに気づくのは少し不謹慎といえる。
でも、今の僕なら“奴”と戦える気がする。
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 08:24:19.73 ID:EO7g49HD0
■只今の時刻PM7:00 - 天気:大雪■
僕「もう7時か…そろそろお暇します」
爺「おい、外は大雪だぞ。金曜だし泊まっていきな」
僕「いいんですか? …あ、でも優に聞いてみないと……」
爺「…そうか。優も大歓迎じゃと思うが」
■優の部屋(ドア前)■
コンコン…。
あ、ノックは意味ないか。
携帯…。
いや、家では充電中かも…。
…ふぅ…。
ごめん、優!
ガチャッ。
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 08:27:37.61 ID:EO7g49HD0
女「zZZ…」
着替えてるパターンかと思ったが、
優は布団でスヤスヤと昼寝をしていた。
ほぼ等身大の抱き枕を抱きしめて。
抱き枕は少し湿っていた。
そっか、僕が爺さんとばかり喋ってたから…。
ごめんね…優。
僕は慣れない手付きで彼女の頭を撫でた。
愛情を込めて、何度も何度も。
しばらくすると
彼女は少し目を開けて、
また何も言わずに目を閉じた。
幸せな夢でも見てるのだろうか?
彼女は少し嬉しそうだ。
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 08:33:36.77 ID:PJ/hptl50
さるよけ
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 08:52:28.75 ID:74DU1/O+0
あと何レスで終わるんですかあああああああああああ
50までは悪くない。
それ以降は作為的すぎていまいち。作風ぶれすぎ
保守
たぶん放置されるな
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 09:51:45.41 ID:2WR8BKZn0
こういう話はどうしても後半つまらなくなるな・・・。
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 10:50:32.37 ID:6s+GApBU0
ほうち・・・だと・・・?
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 10:56:15.53 ID:74DU1/O+0
主ドSだなーwwwwwwうぇうぇwwwwww
>>1 VIPに純文学は早すぎたかwwww
ウェッウッウッ
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 11:24:53.51 ID:B6/G/TMyO
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 11:26:23.53 ID:WoVH/9090
追いついちゃった
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 11:42:42.61 ID:EO7g49HD0
部屋を見渡してみる。
綺麗に片付けてある机。
ぬいぐるみは10体以上。
優と爺さんと…多分婆さんの3人の写真。
もはやインテリアと化したオーディオコンポ。
ラックには数十枚くらいCDがある。
もしかして音楽好きだったのか?
確かに音楽は孤独を紛らわせてくれるけど……。
だとしたら……悲しすぎる…。
……おっと、お目覚めのようだ。
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 11:43:51.10 ID:EO7g49HD0
彼女はニコリと微笑んだ。
僕もそれに応じたが、胸が苦しかった。
どうして君は、笑うことができるの。
10人中9人は自殺するような境遇で。
その強さの糧は一体何なんだ。
教えてくれよ…。
悲壮感が込み上げ、
僕は彼女を抱きしめた。
涙を見せないように。
彼女は僕を心配し、
背中をさすって慰めてくれた。
泣きたいのは彼女の方なのに。
僕が泣いてどうすんだ…。
僕が励まされてどうすんだ…。
>>56の名前が消防のときの友人と同じなんだがまさかな…
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 11:46:13.75 ID:EO7g49HD0
涙を腕で拭って、彼女の肩に手を置く。
「もう大丈夫」、と笑顔を見せた。
そしてメールを送信する。
僕〒≪明日、デートしよっか!≫
女〒≪うん!≫
彼女は満面の笑顔をみせる。
僕〒≪行きたいところある?≫
女〒≪ゆーくんに任せるよ≫
僕〒≪そっか。じゃあ任しといて≫
女〒≪やったー! 楽しみだなぁ〜≫
女〒≪今夜はもう遅いし、泊まってってよ≫
僕〒≪ほんと? じゃあお言葉に甘えるよw≫
女〒≪一緒にお風呂入ろっか≫
僕「え…ええぇえあ、え!?」
女〒≪冗談だよw ゆーくん可愛いなぁ〜≫
優は笑っていた。なんて強い女の子なんだろう。
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 11:47:59.65 ID:EO7g49HD0
僕〒≪明るくなったね、優≫
僕〒≪今朝は無理をしてる感じだったけど≫
僕〒≪今じゃ自然な明るさを感じるよ≫
女〒≪凄いね。…違い、分かるんだ…≫
女〒≪私もゆーくんが初めての友達で…≫
女〒≪最初は“引き止める”ことばかり考えてたの≫
僕〒≪その気持ち、凄く分かる≫
女〒≪でもゆーくんが抱きしめてくれて…≫
女〒≪“傍にいる”って言ってくれて…≫
女〒≪もう、無理しなくていいんだ…って≫
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 11:49:03.55 ID:EO7g49HD0
僕〒≪優は本当に強いね≫
僕〒≪並の人間じゃ、優みたく真っ直ぐ生きられないよ≫
僕〒≪…優が苦境でも頑張れるその理由、知りたいな≫
女〒≪…明日を信じてるからだよ≫
女〒≪今日頑張れば、明日は良い日になるって信じてるから≫
女〒≪明日は仲の良かったお婆ちゃんが帰ってくるかもしれない…≫
女〒≪明日は元気になったお母さんが戻ってくるかもしれない≫
女〒≪明日は養護学校で皆が笑ってくれるかもしれない…≫
女〒≪明日は素敵な出会いがあるかもしれない…≫
女〒≪…そう信じてるから、今日を頑張れるの≫
女〒≪明日には何度も裏切られたげど、≫
女〒≪明日がある限り、私は信じ続けるよ…≫
……馬鹿。そんなこと、普通できるかよ。
お前はどんだけポジティブ思考なんだ……。
それに、優は婆さんが死んだことを知らないみたいだ。
これだけは、真実を知らない方がいい…な。
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 11:50:26.81 ID:EO7g49HD0
僕〒≪一緒にお風呂入ろっか≫
女「!」
彼女は顔を赤らめて、僕を叩いた。
さっきは自分が誘った癖になw
女〒≪さっきのは冗談ッ!≫
僕〒≪えへへ。良い反応ゲットw さっきのお返しだw(∀)w≫
僕〒≪…でも、隣で寝るのはいいかな?≫
女〒≪もうッ! それも嘘でしょ!?≫
僕〒≪いや、これはホント≫
彼女は僕をじぃ〜っと疑う。
女〒≪…何もしない?(-ω- )≫
僕〒≪うん≫
女〒≪…じゃあ、いいよ。私もゆーくんと1秒でも長く居たいからねっ≫
僕〒≪ヤターーーヾ(*ΦωΦ)ノ!!≫
女〒≪…目から理性が感じられないんだけど…≫
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 11:51:11.38 ID:EO7g49HD0
■PM8:00■
あれから3人で夜ご飯を食べた。
いつもは優が作るらしいが、
今日は僕がいたから、
買い物に行けなかったらしい。
だから僕が明日のデート帰りに
一緒に買い物しよう、と提案すると、
優は目をキラキラさせて喜んだ。
どーやらそれが長年の夢だったらしい。
その材料で
優の手料理を食べたいとメールすると、
今度は目をウルウルさせて喜んだ。
『絶対おいしいの作るねッ』と、燃えていた。
食卓は、音に関してはそんなに賑やかではなかったが、
3人の心の中では、大盛況パーティーそのものだった。
爺さんも『メール、頑張って覚えてみるかのう…』とか言ってた。
今夜はその爺さんが作った塩ラーメン。
麺も素晴らしかったが、スープが最高においしかった。
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 11:53:41.27 ID:EO7g49HD0
■PM9:00■
風呂から上がって3人でトランプをした。
トランプは耳が聴こえなくても十分楽しめる。
爺さんは意外にも多種類のトランプゲームを熟知していた。
昔から優と一緒にトランプをしていたらしい。
僕らは2時間近くゲームに熱中した。
自然な笑い、自然な驚き、自然な悔しさ。
ゲームは余計なことを忘れさせてくれる。
だから、盛り上がるのかもしれない。
楽しいは作るものではなく、生まれるもの。
トランプ大会は大成功に終わった。
優の性格は明るいが、あまり発言をしたがらない。
恐らく自分の声が聴こえないのが不安だからだろう。
だから僕のメールにメールで返事をするのだ。
……そんな優が不安定な声でこう言った。
「今度はお婆ちゃんとお母さんも一緒にできたらいいねッ!!」
爺さんは笑顔で頷いた。
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 11:55:21.83 ID:EO7g49HD0
■PM11:00■
母さんにメールしなきゃ。
『今日は友達の家に泊まります』、と。
そして、すぐ返信が来た。
『友達と遊ぶのってめずらしいね』
『お母さん寂しいけど、嬉しいよ』
『またその子のお話聴かせてね』
いつも母さんのメールは流し読みしてたけど、
いつも僕のことを心配してくれてたんだな、と思った。
今までの母さんのメール、消しちゃってごめん…。
でも、このメールは一生大事にするよ。
『いつもありがとう』と、照れくさいが返信した。
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 11:56:28.07 ID:EO7g49HD0
受信メールボックスを開くと、
母さんの今のメールが一通。
そして、残りのメールは全て、優のものだった。
≪…僕と優の“会話”は記録に残ってるんだ…≫
いつでも優の言葉を“再生”できる。
過去の言葉に返事をすることもできる。
アルバムのように2人で楽しむこともできる。
……さぁ、そろそろ優の部屋へ行くか。
■優の部屋(ドア前)■
僕〒≪コンコン♪≫
優〒≪どーぞ♪≫
ガチャ。
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:00:13.62 ID:EO7g49HD0
僕「あれ、布団が1枚しかない…」
女「?」
僕〒≪布団が1枚しかないけど…?≫
女〒≪…うん…布団これ以上無かった≫
女〒≪もしかしたら2階の押入れにあるかもしれないけど≫
女〒≪あそこはお爺ちゃんに近づくなって言われてるから…≫
女〒≪……この布団で一緒に寝よっか≫
僕〒≪えっ、いいの?≫
女〒≪うん。さっき何もしないって約束してくれたしね♪≫
僕〒≪ははw もちろん分かってるよ≫
138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:01:05.35 ID:EO7g49HD0
僕は優と布団に入った。
流石にちょっと狭いけど、どうでもいい。
優は一つしかない枕を譲るかわりに、
僕の腕枕で寝たいと甘えてきた。
◆おやすみ◆
今日は最高の一日だった。
優と出会えて幸せだ。
これからよろしくね。
大好きだよ、優。
◆Re:おやすみ◆
私もゆーくんと出会えて幸せ。
幸せすぎてちょっぴり怖いよw
生きてて本当に良かった。
ありがと、ゆーくん。
大好き。
139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:02:07.99 ID:EO7g49HD0
優はケータイを充電器に戻し、
部屋の電気を薄暗いオレンジ色にした。
そして優は僕の腕枕に横になった。
僕は軽く抱きしめる。
優は本当に幸せそうだった。
彼女が寝たのを確認して、
僕も目を閉じ、眠りについた。
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:03:24.62 ID:EO7g49HD0
■12月18日(土) - 天気:晴れ■
天気は良いが、雪はまだ薄く積もっている。
今日は優との初デートに出かけた。
最初は僕の大学へ。
優は初めて入る大学に、興味深々だった。
休日だが、ちらほらサークルが活動している。
その中に同じ学科のYがいた。
Y「あれ、お前…根本だよな」
僕「うん。同じ学科だよな」
Y「お前、彼女いるんだ。すんげぇ可愛いなw」
僕「昨日出来たんだよ」
Y「マジかよ。死ねよぉ」
僕「超幸せ。んじゃ、デート中っすからw」
Y「今度写メ送れよな」
141 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:04:37.33 ID:EO7g49HD0
女〒≪いまの人、友達?≫
僕〒≪違うよ。初めて喋った≫
女〒≪へぇ。何て言ってたの?≫
僕〒≪優が可愛いだって≫
女〒≪え…お爺ちゃん以外に初めて言われた≫
僕〒≪僕も言ったよ≫
女〒≪絶対、言ってないッ!≫
僕〒≪そうだっけ?≫
彼女はポカッと僕を叩いた。
少しふくれた顔の彼女に、
お詫びにお菓子を奢ると約束する。
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:05:43.59 ID:EO7g49HD0
大学を出て、近くのケーキ屋に行く。
シュークリームとクレープを買って、
噴水の前のベンチで食べた。
彼女はクレープを食べるのが初めてらしい。
目を丸くして、喜んだ。
あまりにも美味しそうに食べるから、
僕のクレープを半分あげた。
それもペロリと完食。
続けてシュークリームもペロリ。
身体を揺らすほど美味しかったみたいだ。
口周りについたクリームを拭いてやると
彼女は顔を赤くしてショボーンとなった。
それを見て、僕が笑う。
噴水の前で写メをとり、ショッピングモールへ。
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:06:34.84 ID:EO7g49HD0
このショッピングモールには、
クロージングストアが結構入っている。
彼女はセンスのない僕に、
一生懸命選んでくれた。
1時間半も服を選ぶなんて僕には考えられない…。
それに服ごときに2万2000円も使ってしまうなんて…。
財布残金は2万6000円。
僕は詳しくないから分からないけど、
彼女は僕の服に満足してるようだ。
まあ、いい買い物だったのかな?
お昼をモール内のイタリアンで済ませ、
僕らは次の場所へ。
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:07:37.23 ID:EO7g49HD0
ビリヤード。
ゲームセンター。
ペットショップ。
ネタ雑貨ストア。
彼女はどこに行っても新鮮な反応を見せる。
一秒一秒が楽しそうで、笑顔が絶えない。
僕も心の底から彼女とのデートを楽しんだ。
楽しい時間はあっという間に流れ、
街のクリスマス雰囲気を味わいつつ、
僕らは帰路についた。
そして途中、地元のスーパーへ立ち寄る。
女〒≪ゆーくんは何が食べたい?≫
僕〒≪優の一番得意な料理が食べたいな♪≫
女〒≪う〜ん…肉じゃがだけど、ちょっと地味かな…?≫
僕〒≪そんなことないよ! 肉じゃが大好きo(≧▽≦)o≫
女〒≪ほんと!? じゃあ肉じゃがに決定〜ッ♪≫
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:08:29.77 ID:EO7g49HD0
■12月18日(土) - PM6:00 - 木下家■
トントントン…と料理する優の背中。
幸せだなぁ、と染み染み感じる。
爺さんも、今日は3人も客が来たと喜んでいた。
早く40年も続いた人気店に戻れるといいな。
そしたら兎ラーメンで居なくなった常連もきっと戻ってくるよ。
食卓に、白米、味噌汁、焼き魚、そして肉じゃがが並ぶ。
女「召し上がれ〜」
僕「いただきまーす♪」
んんッ…うまい…うまい…!!
箸が止まらない。
僕「最高だよッ!! 優!!」
女「(〃⌒ー⌒〃)」
彼女は照れ笑いを見せた。
僕「おかわりッ!!」
最初しか読んでないが
>>1がキモイことは伝わった
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:09:46.66 ID:EO7g49HD0
■PM8:00■
女〒≪今日は本当に楽しかったよ♪≫
僕〒≪僕も。それに優の肉じゃが、本当に美味しかった!≫
女〒≪良かったぁ〜。嬉しいな。また食べてくれる?≫
僕〒≪もちろん。じゃあ…そろそろ帰るね≫
女〒≪本当に泊まっていかないの…?(´・ω・`)≫
僕〒≪うん。でも、ケータイさえあれば会話はできるよ≫
女〒≪……そうだね。今度はいつ会えるかな?≫
僕〒≪大学があるから…次の金曜日かな≫
女〒≪寂しいな…≫
僕〒≪じゃあ今度は二泊していい?≫
彼女は笑顔が戻り、明るくなった。
女〒≪うん!! 楽しみにしてる!≫
148 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:11:22.29 ID:nZaYWgARO
もちろん最後まで書いてあるんだよな?
切ったりしたら許さないぜ
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:23:44.82 ID:+BIq1Uf6O
優ちゃんカワユス
>>148 大丈夫
サルさん5回はくらって心折れそうだけど
スレ立てたからには責任とるぜ
151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:00:48.24 ID:EO7g49HD0
ココに来て、僕は変わった。
コミュニケーションの大切さを本当の意味で理解した。
『何かを探す旅』は大成功に終わったのだ。
僕は帰り道、古い神社の前を通り過ぎる。
すると、どこからか声が聞こえた。
≪何かを見つけたみたいだな≫
僕「え…?」
≪ではどうするべきか、分かるだろう?≫
僕「だ、誰ですか!」
≪お前に『コレ』を授ける≫
僕「『コレ』…って?」
≪『ソレ』をどう使うかは自分で考えろ≫
僕「…『コンナモノ』、信じられない!!」
≪『ソレ』を“信じるか”、“信じないか”は、お前次第だ≫
どんどんアチャーになっていく・・・
153 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:02:54.34 ID:EO7g49HD0
……今のって神の声ってやつか?
『コンナモノ』を信じるとか、ふざけてんのか!!
僕は絶対に信じないからな。
クソッ……。
■PM11:00■
僕が家に帰ると、母さんが迎えてくれた。
「ただいま」と言ったことが嬉しかったみたいだ。
「今まで心配掛けてごめん」と謝る。
母さんは素直になった息子の前で、
声をあげて泣き出した。
前の僕は家族に挨拶などしなかった…。
家族揃っての食卓でも、何も喋らなかった…。
食べ終わると、すぐに自分の部屋に閉じこもってた…。
でもこれからは違う。
154 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:03:41.35 ID:EO7g49HD0
■12月20日(月)■
大学で僕は積極的に人と関わろうとした。
最初は、「え? 何いきなり…」
みたいな反応だったが、気にしない。
2年間の溝がそう簡単に埋まるはずないけど、
火曜日も水曜日も、僕は自分をハッキリ出した。
無理をせず、思ったことを話す。
やがて、向こうも自然に接してくれるようになり、
学校生活が苦ではなくなってきた。
別にリアルでオタ扱いされても構わない。
楽しけりゃ何だって良いや。
オタクでも明るければリア充だ。
最近はそーいう奴も増えてるんだ。
155 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:04:31.55 ID:EO7g49HD0
■12月23日(木) - 休日■
学校は昨日で冬休みに入った。
今日は祝日で休みらしい。
すっかり忘れてた。
優とどこかへ遊びに行こうとメールしたが、
≪もうお店を手伝う約束しちゃったよ〜ヽ(*`д´*)/≫
と、怒った感じで返信がある。
まぁ、楽しみは明日にとっておこう。
……だから今日は“奴”に電話をすることにした。
深呼吸して、受話器を取り上げる。
そして奴の自宅へ電話する。
Prrrrrrrrrr....Prrrrrrrrrrr
先生Aп痰ヘい、もしもし≫
僕п痰アんにちは、木下優の友人の、根本です≫
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:05:20.50 ID:EO7g49HD0
先生Aп痰ら、あの時の。電話番号差し上げてましたっけ?≫
僕п痰「え、すみません。B先生からお聞きしました≫
先生Aп瘁cそうなの。それで何の御用かしら?≫
僕п瘰謳カが仰った“事件”のことをお聞きしたくて≫
僕п痰の時は聞きそびれてしまったので…≫
先生Aп瘁c≫
僕п痰ニぼけるのはダメですよ?≫
先生Aп瘁cいいわよ。明日の夜6時、学校に来てくれる?≫
先生Aп癈チ別に教えてあげるわ≫
僕п痰りがとうございます≫
先生Aп痰なただけ、特別に教えてあげるんだから≫
先生Aп瘉齔lで来てくれるわよね?≫
僕п瘁c…分かりました。では失礼します…≫ガチャ
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:06:34.33 ID:EO7g49HD0
僕「怪しすぎる…」
僕「でも、行くしかない…」
僕の作戦はこうだ。
『R-09HR(
>>40)』には“レコード機能”がある。
実は音楽を聴くより、こっちがメインの機能なんだが…
とにかく、24bit/96kHzという最高音質で録音できるのだ。
奴から“事件”の真相を引き出し、
それを録音して、警察へ突き出す。
警察は相手にしてくれないかもしれない。
……それでもやってやるんだ。
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:07:38.29 ID:EO7g49HD0
■12月24日(金) - PM6:00 - 養護学校、校庭■
先生A「……1人で来たみたいね」
僕「えぇ。クリスマス会の方は大丈夫なんですか?」
先生A「大丈夫よ。クリスマス会は中止にしたから……」
僕「……え?」
僕「生徒達は教室に集まってるじゃないですか」
先生A「ふふっ。“先生達には”、“中止”と伝えたのよ」
僕「……じゃあ優は来てるんですね!?」
先生A「えぇ、教室の奥に縛られてるのが見えるかしら?」
僕「…何ッ…!?」
優は教室でロープに縛られ気絶していた。
僕「クソッ!! やはりお前が優から音を奪った犯人か!!」
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:08:41.06 ID:EO7g49HD0
先生A「フフッw そうだけど?w」
僕「てめぇ…自分が何したか分かってんのかッ!?」
先生A「あらやだ。段々言葉が汚くなってるわよ?w」
僕「黙れッ!!!」
先生A「だってムカツクじゃない?w」
僕「何だとぉ…!?」
先生A「篤弘さんの血を継いでるなんてw」
僕「あ? 誰だよソイツ!?」
先生A「…そう、全ては篤弘さんへの復讐なのよwww」
僕「だから誰なんだッ!?」
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:09:42.06 ID:EO7g49HD0
先生A「“うんめーら”っていうラーメン屋を知ってるわよね?」
僕「あぁ……それがどうした!?」
先生A「あそこの店主の木下篤弘はね、私と結婚するはずだったのよ!!」
僕(あの爺さんとコイツが?)
〓〓〓〓〓〓〓〓〓 40年前、うんめーら開店当初 〓〓〓〓〓〓〓〓〓
篤弘「お嬢ちゃん、いつもありがとね」
A「お兄ちゃんの塩ラーメン、おいしーよ」
篤弘「そうかぁ。でも、お客さんが全然来ないんだよ…ハハ」
A「私がいるじゃん!」
篤弘「ありがと。その通りだ…」
A「私、大きくなったらお兄ちゃんと結婚するの…///」
篤弘「ハハハ…じゃあこの店が人気出たらね」
A「やったーッ!」
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
161 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:11:54.38 ID:EO7g49HD0
先生A「篤弘さんが27才で、私が9才のときの話よ」
僕「…それだけか?」
僕「たったそれだけのことで…」
先生A「何よそれだけって!! 私は本気だった!!!」
僕「……まさか、婆さん…篤弘さんの嫁を殺したのもあんたか?」
先生A「えぇ、そうよwww」
先生A「私の“婚約者”を、たった数ヶ月で奪いやがったからwww」
先生A「孫の手前で殺してやったのよwwww」
僕「……孫って優のことか!?」
先生A「そうよw 優の父親を金で操って殺させたわッ!!」
先生A「自分の父親が、大好きなお婆ちゃんを殺してるのを見て…」
先生A「かなりのショックを受けただろうねwww」
先生A「その時の記憶を失うほどにwww」
僕「こいつ…ッ」
先生A「まずはババアの爪を一枚一枚剥がすのよwww」
先生A「その時のババアの悲鳴といったら快感そのものwww」
先生A「そして次は“忌まわしき指輪”を嵌めた『左手』を削ぎ落としたのwww」
先生A「優はその時の断末魔を聞き、多大な精神ダメージを受けただろうねwww」
先生A「耳が聞こえなくなるほどにwww」
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:14:26.29 ID:Lu408oM10
ID:EO7g49HD0 [1/126]
161レス中126レスが
>>1
163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:15:50.43 ID:B6/G/TMyO
支援
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:16:46.47 ID:DnScbdHF0
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:18:18.44 ID:RZGa906Z0
早くしてくれ
全部読んでるから
166 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:57:25.07 ID:nZaYWgARO
まだー?
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:01:29.75 ID:EO7g49HD0
先生A「そしたら優は何をしたと思う?w」
先生A「自分の父親を“殺した”のよッwww」
僕「…そんな…馬鹿…な…」
先生A「ありゃ傑作、笑わしてもらいましたよwww」
僕「てめぇ…!!!」
先生A「その後、私は精一杯の“皮肉”を瓶に込めて…」
先生A「篤弘さんにババアの“心臓”と指輪を嵌めた“左手”を送ってやったわwww」
僕「優の父親を多額の金で釣って、優やその母親に暴力をさせたのもアンタだな…」
僕「裁判所や警察に賄賂を渡したのも…」
先生A「あら、知ってたのねwww」
先生A「さぁ、今の気分はどうかしら?」
先生A「愛してる人が殺人犯でも、あなたは愛し続けられるかしらッ!?」
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:02:34.97 ID:EO7g49HD0
僕「僕は優を信じてる」
先生A「ッ!!」
僕「彼女の強さを知ってるから」
先生A「アァァアアアアアッ!! 腹が立つッ!!」
先生A「お前がアイツを捨てれば…」
先生A「またアイツを孤独で苦しめられるのよぉッ!」
先生A「それは篤弘さんへの復讐にもなるッ!!」
先生A「何でいつも思い通りにならないのよッ!!!」
僕(狂ってる…)
先生A「アンタ達、パーティーを始めるわよッ!」
僕「え?」
ガンッ!!
僕は後ろから何者かに殴られ、気を失った。
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:04:48.15 ID:EO7g49HD0
僕は仄暗い蝋燭部屋で仰向けに横たわっていた。
「ここは…教室?」
周りがよく見えないが、クリスマスツリーがたくさんある。
これらは生徒達がこの日のために飾り付けしたものだ。
自分の両手両足、胴体、首はロープで縛られていた。
ロープの数は全部で18本、身動きが全く取れない。
さらに、何やらボソボソと声が聞こえてくる。
次の瞬間、ツリーが次々と光だした。
目が正気を逸してる、サンタの格好をした生徒達が浮かび上がる。
そしてロープの先は18人の生徒の車椅子へ繋がっていた。
先生A「お目覚めかい?w」
僕「これは一体…」
先生A「ソイツら池沼どもは既に洗脳されているw」
先生A「頭が足りないから、催眠で簡単に玩具にできるのwww」
僕「クソッ! それが教育者の言うセリフかよッ!!」
先生A「黙りなさいw」
先生A「さぁ、クリスマスパーティーを始めるわよッ!」
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:08:58.57 ID:EO7g49HD0
「jingle bell... jingle bell...」
「jingle bell... jingle bell...」
奴の開始の合図とともに、
普段会話の難しい生徒たちが、
ひたすらに「jingle bell」と呟き始める。
リズムも滑舌も悪く、殆ど聞き取れない。
だが、もはや「jingle bell」がトラウマな僕にとって、それは拷問。
僕「やめろぉおおおおおおおッ」
先生A「アハハハハwwww 何故かあなたは苦手なようね!」
先生A「先生はこの歌、だあいすきよwwwwwwww」
Oh, jingle bells, jingle bells 〜♪
(さぁ、ベルを鳴らせ、鳴らすんだ)
Jingle all the way 〜♪
(永遠に鳴り響かせろ)
Oh, what fun it is to ride 〜♪
(ああ、楽しさいっぱい)
In a one horse open sleigh 〜♪
(一頭立ての馬ソリ遊び)
171 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:12:20.12 ID:EO7g49HD0
奴は僕の爪を一枚一枚剥がす。
僕「ぐあああああああああああああああああああッッ」
僕のベルが教室に鳴り響く。
僕「やめろぉオオオオオオオオオオオオッッ」
僕「がぁああああああああああああッッ」
女「いやあああああああああああッッッ」
教室の角で縛られた優が目を覚ます。
彼女は頭を抱え、叫び続ける。
まさか…記憶が蘇ったのか?
婆さんのときに酷似したこの状況を目の当たりにして…。
サンタ達は「jingle bell」と囁き続けている。
トナカイである僕を車椅子というソリに縛り付けて。
先生A「ひゃははははははwwww」
先生A「ソリ遊びの醍醐味はソリチュードの苦しみを与えることwww」
先生A「イカれたサンタどもに囲まれて、一頭のお前は孤独を味わうのwww」
先生A「終焉のベルを鳴らすまで、ひたすら拷問に苦しめばいいわwww」
172 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:13:15.80 ID:eSj9fP2CO
ズルズルww
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:16:09.44 ID:EO7g49HD0
この前の夢そのものだ。
声は出せるが、その声は誰にも届かない。
耳が聴こえないという障害。
夢で言うと、自分の肉が声の障害になってる状態だ。
でも、この後少しの希望が生まれるはず。
夢でいうと、自分の肉を完食した瞬間だ。
だがその直後、希望は儚くも絶たれるはず。
夢でいうと、“のどちんこ”をブチ抜かれる悲劇……。
―― いや、誰がそんなこと決めた?
あの夢は、過去の僕の夢。
そう、「声なんていらねぇ」と言っていた頃の僕。
だが、僕は変わったんだ!
今の僕はコミュニケーションの大切さに気づいた。
今の僕は声の大切さに気づいたんだ。
そう、優と出会えたから。
今の僕なら、その幻想をぶち殺せるッ!
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:21:05.75 ID:EO7g49HD0
僕「誰かッ!! 助けてくださいッッ!!!!!」
僕「この声が届いたのならッ!!」
僕「この声が聴こえる部屋へ!!」
僕「助けに来てくださいッッッッ!!!!!!」
先生A「ひゃははははははwwww むだむだむだぁwwwww」
ガラガラガラッ!!
警官A「警察だッ、大人しく表へ出ろッ!!!!」
警官B「大丈夫か、君達!!」
先生A「…あら? あなた達、何してるの?w」
先生A「私の夫、○○党の代表なの忘れた?」
先生A「アンタらにどれだけ金払ってるか分かってんの?w」
警官C「何のことだかさっぱり分からないな」
???「あなた3年前に別居してから夫と会ってないみたいね」
???「今朝のニュースを見てないのかしら?」
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:24:16.10 ID:EO7g49HD0
???「警察庁長官が収賄で逮捕されたのよ」
???「そして、あなたの夫も報道に名前が上がったわ」
???「もうあなたを守るものはない」
先生A「!!」
警察A「オラ! 大人しくしろッ!!」
先生A「…何で、何でアンタがいるのよッ!!」
先生A「あの日、ババアを連れて逃げただろうがッ!!」
???「逃げたんじゃないわ、アナタを潰すために動いてたのよ」
???「あれから3年、ようやく収賄の証拠を見つけたわ」
優の母「もう逃げられないわよッ!!」
女「おかあ…さん…?」グスン
母「ゆう…今までごめんね…」
僕「あなたが優さんのお母さん…?」
母「えぇ。優を守ってくれてありがとね」
そして後ろから、左手のないお婆さんが出てきた。
婆「優ちゃん、大きくなったね…」
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:25:59.45 ID:EO7g49HD0
女「お婆ちゃんッ!!」グスン
僕「え…何でお婆さんがッ!?」
婆「アンタは誰だい?」
僕「僕は…根本優っていいます…優の彼女です」
母&婆「まぁ!」
僕「いやそれより、お婆さん生きてたんですか!?」
婆「? 何か勘違いしてるわね?」
僕「だってアイツが…そう言ってたんで…」
僕「それにお爺さんに“心臓”と左手が送られてきたし…」
婆「?」
婆「とりあえず、3年前のこと、教えてあげるわ」
彼女かそうか
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:29:44.01 ID:+BIq1Uf6O
キマシタワー?
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:30:32.32 ID:EO7g49HD0
2007年8月6日。
私と母親、優の3人は父親にある場所へ呼び出されたの。
そこには父親の他に、新しく養護学校の先生になったAがいたわ。
先生とは言っても、学校では金の力で実質トップ。
何せAの夫はあの有名な政治家だったからね。
話を聞くと、Aが父親に娘と孫を虐待させてたそうなの。
父親はその虐待写真をAに送ることにより、多額の報酬を得ていた。
Aの動機は私の夫、篤弘さんを私に取られたから。
私たちが結婚して、
Aはすぐ東京へ転校したらしいわ。
そして例の政治家と結婚して、財力を手に入れた。
その頃、私たちには既に孫がいたわ。
それを知って“虐待”を思いついたらしい。
母親には“欝”を、優には“孤独”を与えることにより、
血の繋がった篤弘さんを復讐として苦しめたの。
なるほど、圧力をかけられているなら離婚が認められないのも納得いくな
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 14:43:25.81 ID:voSAAiHG0
|∧∧
|・ω・`) そ〜〜・・・
|oCo
|―u'
| ∧∧
|(´・ω・`)
|o ヾ
|―u' C <コトッ
| ミ ピャッ!
| C
182 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:00:25.38 ID:EO7g49HD0
そして、私達が呼び出されたその日。
彼女は私に“死”を与えることで、
篤弘さんに最大の復讐をすると言ったわ。
父親はまず、私を苦しめるため私の爪を剥いだ。
本当に痛かったわ、死ぬかと思って叫んだの。
母親は放心状態から目を覚まし、優は泣いていた。
娘達が必死に「やめてッ」と叫ぶ中、彼女は次の命令を下した。
父親は少し迷いながらも、私の左手を切断したわ。
その時の叫びで、優は音を失ったんだと思う。
次に彼女は父親に“殺せ”と命令したのよ。
だけど意外にも父親は「できない」と言った。
何とあの男、血がダメだったのよ。
それに「殺しだけはできない」とかぬかして、私を開放した。
それを見た彼女は発狂したわ。
母親は私を抱えて、
「優、逃げるわよッ!!!」と泣き叫んだ。
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:06:47.85 ID:EO7g49HD0
母親は動転していて、左手のない私に精一杯だったよ。
溢れ出る血をハンカチで止めながら、担いで必死に逃げた。
そして、たまたま近くに救急病院があったお陰で、
4時間の手術の末、私は一命を取り留めることができたの。
でも母親は病院で気を失ってたわ。
もう精神的に限界だったのよ。
だから、優が居ないことに気づけなかった。
気づいたときには遅すぎた。
……でも、優が殺されない根拠だけはあったの。
私達がいなくなった今、
優までいなくなると、篤弘さんへの復讐が終わってしまうから。
だから私達はあえて優を一人にした。
優がAに殺されないように。
そして私達はAを潰すべく動き始めたの。
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:08:16.49 ID:EO7g49HD0
僕(すげぇな…この親子…)
僕(優が強い理由が分かった気がする…)
婆「優の耳が聴こえなくなったと聞いたときは本当に辛かったわ…」
僕「え? 誰に聞いたんですか?」
婆「B先生よ」
母「今日の夜、優達が危ないって知らせてくれたのも彼女よ」
母「Bは私の昔からの親友で…辛い時は何度も励まされたわ」
先生B「明確な理由無しでクリスマス会が中止って言われたからね…」
先生B「でも、本当に“何か”起こるとは思ってなかったよ…」
母「…でもほんと、無事で良かった…」
女「お母さん!! お婆ちゃん!!」グスン
優は目を潤和せて、2人に飛び込んだ。
母「ゆう…本当に会いたかった……」
母「これからはずっと一緒にいようね…」
婆「…今まで寂しい思いさせてごめんね」
3人は涙をこぼし、抱き合った。
185 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:09:05.75 ID:EO7g49HD0
奴は既にパトカーの中に入っている。
警官C「あの、お二人にも事情聴取を受けてもらいたいのですが…」
僕「……すみません、あと10分だけ…9時00分まで待ってもらえますか?」
警官C「……分かりました。我々は車の方で待ってますね」
……僕は優のことが大好きだ。
△△駅で初めて出会った時から、今までずっと。
だからこそ、優には幸せになってもらいたい。
たとえそれが、優を裏切ることになっても。
だから僕は『アレ』を認める。
神様から授かった『コレ』を僕はここで使わせてもらう。
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:12:50.23 ID:EO7g49HD0
僕「B先生、お願いがあります」
先生B「……え!? ……了解。ふふ、任せといて♪」
母&婆「?」
僕は優を教室の真ん中に呼び出す。
優はポカンとした表情を浮かべている。
僕はふぅ〜っと深呼吸をした。
周りは静まり返っている。
そして彼女に最後のメールを送った。
◆僕の告白、聞いてください!!◆
今から、告白をします。
女「え…?///」
187 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:17:27.99 ID:EO7g49HD0
僕は優を抱きしめ、
彼女の唇にキスをした。
彼女は一瞬、驚いた素振りをみせたが、
すぐにリラックスした表情になった。
そして、僕は『ソレ』を使った。
そう。『ソレ』の正体は、『一つだけ願いが叶う魔法』。
その願いは、
『優に音をプレゼントすること』
服を選んでくれたお礼、そしてクリスマスプレゼント。
唇から離れると、僕はこう言った。
「僕と結婚してください」
188 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:19:37.08 ID:EO7g49HD0
彼女には聴こえただろう。
女「え…私…聴こえる…」
女「ゆーくんの声が…」
女「え…?」
清し この夜 星は光り 〜♪
救いの御子は 馬槽の中に 〜♪
眠り給う いと安く 〜♪
綺麗なトーンチャイムの音色が教室に響く。
その音はきっと彼女にも届いたはずだ。
生徒達も笑顔で演奏している。
女「きれい…」
彼女は涙を零した。
189 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:20:40.57 ID:HP1VhwcQO
誰も見てないのは行間のせい・・・
190 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:22:53.60 ID:EO7g49HD0
1分程の演奏が終わり、
彼女は感激のあまり零した涙を拭い、答えた。
「……はい。……喜んで…」
教室にいた全員が拍手を送ってくれた。
……でも、僕は……行かなきゃいけないんだ。
女「…でも何で耳が聴こえるように…?」
僕「…僕は優と出会って、変わることができた」
僕「そしたら神様は僕に……『魔法』が使える力をくれたんだ」
僕「…『一つだけ願いが叶う魔法』を…」
女「…どういうこと?」
191 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:23:25.50 ID:eSj9fP2CO
投下速度のせい
192 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:25:15.78 ID:EO7g49HD0
僕「だから僕は…優の耳を聴こえるように…」グスン
女「何で泣いてるの?」
女「ほら、わたし、耳が聴こえるようになったし…」
女「それにたった今、新たな“根本優”が誕生したんだよ!」
女「あははw 同姓同名の夫婦って凄いよね…!」
女「…ねぇ…何で…泣いてるの?」
僕「…だから魔法を使ってしまったんだ…」
僕「…優を愛してるから…優に幸せになって欲しいから…」グスン
女「わたし幸せだよ? きっと、奇跡が起こったんだって!!」
僕「…僕は魔法の力を借りて、魔法を認めてしまったんだ…」
女「現実でも魔法みたいな奇跡があったっていいじゃない!」
193 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:27:24.77 ID:EO7g49HD0
僕「…現実に…魔法なんて存在しないんだ…」
僕「…存在しちゃいけないんだ…」
僕「…だから…魔法を認めるということは…」
僕「…この世界が…“現実じゃない”と認めることで…」グスン
女「ゆーくんが何言ってるか分からないよッ」グスン
僕「…つまり…」
僕「僕はこの世界の住人じゃなかったんだ…」
女「…え?」
194 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:29:58.26 ID:RZGa906Z0
え?
195 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:31:33.63 ID:GRpaiGW00
Sien
197 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:32:51.60 ID:WoVH/9090
えっ?
198 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:33:11.37 ID:I/DBxLvEO
え?
199 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:34:13.11 ID:GRpaiGW00
,,-‐----‐、 , -'"` ̄ ̄"`''-,__, --‐‐-..,
/ 、゙ヽ、 ‐-'´ ヽ‐- / / ヽ
,/´ .., ヽ,,l_)' zェェェァ' ;rfァt ヽ ,ト/ / ヽ
/ ヽ,r' ,l′ _,,, . __,, ,l゙.-〈__r,'、 ヽ_
_.l ヽ」 ,l .イてソ` l イにj`,/ ゙‐ヽ、_,, /l
,l l| −'´ll ,l rソi" ヽ じ'' f゙l .,//゙l //\ おめぇココおかしいんじゃねえか?
l`l| l|ヽ v'⌒ヽ .,ノ j/ |l // }
l \ l| ,l l_U> r‐--‐ァ ,l |,l // l
/ '\ l|`l ゝ_,´ ゙ヽ__r′ .,.' ___l ヽ // |
,l '\ l| .lヽ__lL..,,, __ ,, _イ___./ | ∨/ ,}
| ヽl | ,| .ヽ \ //ヽ ,| ,l
| l ,l ヽ \// l \ /
ヽ | \. ヽ/ l ヽ /j
\ / ヽ ヽ | l /
゙l\.. / ヽ ヽj | , /
ヾ ヽ ヽ ヽ / ,l
200 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 15:51:27.09 ID:gdUrVXLd0
> だけど妄想はやめない。
>
> やめたら死ぬ。
これはマジである
物語はここで終わっている
202 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:01:01.55 ID:EO7g49HD0
僕「……僕は帰らなきゃならない」
僕「もうすぐ“僕の生きるべき世界”から迎えが来ると思う」
僕「だから……これでお別れだ」
女「何…言ってるの…?」
女「今日と明日は泊まってくれるんじゃないの…?」
女「“5人”でトランプするんじゃないの…?」
女「私と結婚してくれるんじゃないの!?」
女「何があっても、どこにもいかないんじゃないのッ!!?」グスン
僕「ごめん、優には幸せになって欲しかったんだ…」
僕「過去のことなんか忘れてしまうぐらいに……」
僕「だから魔法を使って、耳を聴こえるようにしたんだ…」
僕「でも使っちゃったから、僕は帰らなk…
女「もう聞きあきたよッ!!」グスン
203 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:02:36.62 ID:EO7g49HD0
僕「優のお陰で…僕は変わることができた…本当にありがとう」
女「…そんなの嬉しくないよッ!!」
僕「変わったからこそ、僕はこの世界で甘えてちゃいけないんだ」
僕「ちゃんと“現実”を見つめて、“現実”で生きていかなきゃ」
女「……じゃあ何で結婚しようだなんて……」
僕「この世界は僕の心の中にあるんだ」
僕「だから、離れ離れになるわけじゃないから…」
僕「会えなくても、心の中から僕を支えてて欲しいから…」
女「…置いてかれる……私の身にも…なってよ…」グスン
僕「ごめん。でもお爺さん、お婆さん、お母さんがいる」
僕「それに音も聴こえる。もう優は孤独じゃないんだよ…」
≪…起きて…さい…≫
僕「…迎えが来たようだ」
204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:06:30.71 ID:EO7g49HD0
女「……私のこと…忘れないでね……」グスン
僕「うん…絶対に…忘れない…!」
≪…起きてください…≫
女「……最後にお願いしていい…?」
僕「いいよ…言ってみて……」グスン
≪…お…さ…起きてください…≫
女「…抱きしめて」
僕「…」ギュッ
≪…お客さ…起きてください…≫
女「…ゆーくん…大好き…」グスン
僕「…」
女「…バイバイ…ゆーくん……」
205 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:07:29.48 ID:EO7g49HD0
「お客さん、起きてください!」
僕「…」
「…回送に変わりますので…」
目を開けると冷たい涙が零れてくる。
「あの…大丈夫ですか?」
僕「…はい…大丈夫です」
僕は電車を降りた。
206 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:08:33.81 ID:EO7g49HD0
ケータイの画面には、
2010年12月17日(金)11:30。
4時間近く電車に乗ってたみたい。
僕は受信メールボックスを開いた。
―― 受信メールはありません ――
優との会話の記録は消えていた。
送信メールボックスも。
噴水の前で撮った二人の写真も。
207 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:11:14.24 ID:EO7g49HD0
雪は溶けていた。
そこはかなりの田舎で、
視界には緑溢れる田畑が広がっている。
空気を名一杯吸込み、誰かに届くように叫ぶ。
「俺は変わったぞおおおおッッッ!!!!」
駅に僅かにいた人間が俺の方をみる。
50メートルは離れた人もこっちを見てる。
何だ、大声出せるじゃん、俺。
208 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:12:41.80 ID:EO7g49HD0
俺は反対車線の電車に乗った。
電池の切れた『R-09HR』に新しい電池を入れる。
電源を入れると、“録音時間が3時間”の謎のオーディオトラックがあった。
少し気になって再生してみる。
『ザァアアアアア……』
雑音が響く、いくら早送りしても変わらない。
「間違えて録音したのかな?」
……削除しようと思ったその時、
2時間50分の辺りから何かが聴こえた。
清し この夜 星は光り 〜♪
救いの御子は 馬槽の中に 〜♪
眠り給う いと安く 〜♪
トーンチャイムのメロディーが全身に染み渡る。
209 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:14:47.11 ID:EO7g49HD0
『きよしこの夜』…それは誕生を祝う歌。
俺は今朝の夢を思い返した。
>>32の夢には矛盾がある。
自分は最初、サンタに“眼球”を抉られた。
その時点で失明してるはずだ。
なのに俺はサンタが“心臓”を“靴下”に放り込むところを“見ている”。
声を奪われ死んだ“僕”と、それを見ていた生きてる“俺”。
そう、あの夢には自分が2人いたんだ。
本当の自分はどっちか。それは生きてる“俺”だろう。
そして靴下とはプレゼントを入れる袋だ。
空っぽの存在だった俺に、サンタは“心臓”を入れてくれた。
俺に生命を与えてくれた。
少し早めのクリスマスプレゼントだった。
210 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:17:10.66 ID:EO7g49HD0
2010年12月17日(金)
今日は“俺”の誕生日。
帰ったら、「ただいま」と言おう。
そして家族と団欒をしよう。
大学では友達を作ろう。
そして友達との会話を楽しもう。
俺は窓外の空を見上げた。
眩しい太陽の光が俺を照らす。
「そして僕は生まれ変わった」
〜fin〜
211 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:17:52.73 ID:h92fxqN/0
ふむ
212 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:18:51.18 ID:WoVH/9090
乙
面白かった
少し強引かなあ
214 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:19:28.81 ID:uhzYitgMO
乙!!!!!!
215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:20:41.94 ID:/JMoVBJv0
乙
面白かったぜ
216 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:29:19.34 ID:EO7g49HD0
8回さるった。
でも皆さんのお陰完走できました。
ありがとうございました。
217 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:30:54.97 ID:gdUrVXLd0
後半のとんでも展開と失速ぶりにびっくりした
大層乙であった
218 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:34:14.49 ID:+BIq1Uf6O
無理に夢オチにしなくても良かったんだぜ?
乙
219 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:35:23.44 ID:8+Ol1uj/0
これは乙
220 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:39:51.32 ID:RZGa906Z0
後半が多少強引だったけど
面白かった
とにかく乙
221 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 16:42:57.03 ID:K0tp6rdqO
投下速度も中身もいいSSは久しぶりです
なかなか
乙
223 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 17:02:48.04 ID:EO7g49HD0
書き忘れてた
爺さんに送られてきた心臓は父親のものです
優でなく、A先生に殺されました
A先生は嘘つきです
224 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 17:17:02.97 ID:Y3pzzwg80
乙
これを書こうとしたきっかけは?似たようなことでもあったのかな
225 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 17:32:34.45 ID:nZaYWgARO
乙
完結してよかった
226 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 17:56:27.68 ID:4Ms+4i1r0
熱中した
乙!
227 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 18:09:54.67 ID:mwxnQyQ6O
話に引き込まれたわ 乙
またなんかかいてくれ
228 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 19:22:27.88 ID:B6/G/TMyO
盛大に乙だ〜〜
229 :
>>1:
>>224 オールフィクションです。
何かの役に立てばと思って書きました。
10回目のサルで代行してもらってます。
でも、書ききって良かったです。
隅っこで生きてた僕ですが、
真ん中で生きれるようになりました。
千里の道も一歩から、だと思います。