从 ゚∀从夕やけ空のようです

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
^U^<スレ立て規制はこのVIPを壊そうとしました。いわば代理です
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 19:20:26.15 ID:69hdXVUhO
なぜかゲド戦記思い出した
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 19:22:03.57 ID:xCEAGWU50
スレを立てて思ったけど中々偉そうなセリフだよねこれって支援
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 19:23:21.01 ID:AWj2uKoo0
               _, ‐ ' ゙ ゙̄ヽ,
  。 ゚,        , '゙          )
    。     ,ノ!,'         ◎/
  ゚ ゚,,.. --─- ノ゙!,/            ,'                  _
  て   ゙̄'i;  ノ゙!,!゙         ゙i, ノ               ,:; 'v⌒ヾ〉_,.   ' ‐ .,_
  てて 。 ゙'゙ ,!V         ,゙゙ :,   。            ゙'f99ia._)^~         ゙)
 !.  ,゙      !!.,i         ノ゙,  .'.,   。            )⌒ヾ_.       ,.. ‐'゙
   .|      ! !_!_     ,'゙  i.,_ ゙,              .,_ノ .^フb'-'=y-‐ ' ゙
 i i |.       ! .!_!    ,゙   ゜ ゙!i,'              !゙k,\(
   .!.       i .i'i   ,゙                   ,べ,ヘへべ,_
 i  .i.      ゙, ',   !       。            Y(   〉 ヾ\
  ! i ',      '!,',   !,        。           〉 ヘ       ゞ\
 ヘ  ' ,      ' ,   ',                   (     ゝ Y   〉
    ヘ \.      \  ' ,        。゜        .ゝ 〉       ゞへ
 \ へ   \.       \,. ゙' ,      。 ゜。 。 ゜    「゙Y   く /   へ入
  へ  \ \        ゙ ' ‐゙ '_‐:,_   ゚)\ノヽ  _,, 〆、 ゝ゜ 。゚ヘ く  ヘ 〉、
     へ    ' .,          '! !  ゚ノ)\)\λ  \\\))\ル))\「    〉入
          へ   ' , へ ノ(ノ( '.,_' ノ )\λ )\ ) ) .) ) )) \∠~く  へ べ\
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 19:24:32.98 ID:xCEAGWU50
>>4
(腹パン)
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 19:25:47.07 ID:UJnn8vvXO
死ねばいい
7乗っ取り:2011/02/05(土) 20:12:09.50 ID:mHJGgEbOO
从 ゚∀从「俺さー、思うんだけどさ」

爪'ー`)y-・「ん?」

从 ゚∀从「夕焼けってなんであんなどぎつい色してんのかねー」

爪'ー`)y-・「いや、知らんわ」




从 ゚∀从夕やけ空のようです

8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 20:17:30.50 ID:mHJGgEbOO
从 ゚∀从「だっておかしくね? 太陽って夕方以外のいつ見ても、あんな赤くねーじゃん」

从 ゚∀从「なんで毎日毎日毎日毎日、ある一定の時間になったら色が変わるんだよ」

爪'ー`)y-・「……それは小学生の時にする質問だな」

从 ゚∀从「じゃあお前、なんであんなに夕焼けが赤いのか説明できんのか?」

爪'ー`)y-・「無理。俺にそんな学はない」

从 ゚∀从「ほらな。てめぇでも説明出来ないのに人をバカにすんなよ」

爪'ー`)y-・「大人ってのは、色々訳わからんことを割り切って生きるもんなんだよ」

从 ゚∀从「へー。そんなもんかねぇ」
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 20:19:41.27 ID:xCEAGWU50
支援
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 20:20:21.20 ID:u0mOPKGJ0
なんか始まっとる
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 20:25:27.66 ID:mHJGgEbOO
爪'ー`)y-・「何、ハイン。お前夕日が嫌いなの?」

从 ゚∀从「好かんねぇ」

爪'ー`)y-・「なんで?」

从 ゚∀从「そもそも赤って色が好かねーし」

爪'ー`)y-・「だからって、夕焼け色にいちゃもんつける奴初めて見たわ」

从 ゚∀从「別にいちゃもんつけちゃねーけど。分かんないかなーお前にも」

爪'ー`)y-・「分からん。てゆーか、夕日の色のことなんざどうでもいいわ」

爪#'ー`)y-・「ハインてめぇ、何人のことお前呼ばわりしてんだよ」

爪#'ー`)y-・「お前仮にも俺は実の兄なんだから、名前か敬称つけやがれ」

从 ゚∀从「あーはいはい兄貴兄貴。相変わらずこまけぇとこうっせぇんだから」

爪'ー`)y-・「細かくねーよ」
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 20:35:45.40 ID:mHJGgEbOO
爪'ー`)y-・「……で、何の話だったっけ?」

从;゚∀从「忘れんのはぇーな。夕日はなんで赤いのかって話だったろ?」

爪'ー`)y-・「おぅ、そうだそうだ」

爪'ー`)y-・「あれだよ、夕日が赤いのは」

从 ゚∀从

爪'ー`)y-・

从 ゚∀从「なんだよ、そこで止めんなよ」

爪'ー`)y-・「なんか上手いこと言おうとしたけど失敗した」

从 ゚∀从「いやいやいや、別に上手いこと言わなくていいから理由教えてくれよ」

爪'ー`)y-・「あのな、俺これでも文学部卒だから。なんか詩的で上手い
      喩えでも浮かんだらカッコいいじゃんよ」

从 ゚∀从「結局失敗してるじゃねーか」

爪'ー`)y-・「まぁ、そうだけど」
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 20:37:00.05 ID:8SjTuWv90
これは期待
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 20:42:11.63 ID:mHJGgEbOO
从 ゚∀从「結局なんで夕日が赤いのかはよく分かんなかったな」

爪'ー`)y-・「うん。すまんかった」

从 ゚∀从「ま、いいけど。理由が分かったところで嫌いなもんは嫌いだし?」

爪'ー`)y-・「俺は好きだけどな。タバコの火ぃみたいで」

从 ゚∀从「出たよ、愛煙家の戯れ言が」

爪'ー`)y-・「他の何が止められても、これは止められんからな」

从 ゚∀从「……向こうでも、タバコ吸ってんのか?」

爪'ー`)y-・「あぁ。幸い向こうは禁煙じゃなかったみたいだからな」

从 ゚∀从「……そっか」
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 20:52:45.26 ID:mHJGgEbOO
从 ゚∀从「ついでに言っとくと俺はタバコも嫌いだぞ」

爪'ー`)y-・「ははは、そりゃ悪いな。さっきから副流煙バンバンそっちに行ってるだろ」

从 ゚∀从「分かってるなら消せよ」

爪'ー`)y-・「だが断る。せっかくのタバコが勿体ない」

从 ゚∀从「……兄貴の好きなもんは、ことごとく嫌いになるな。俺」

爪'ー`)y-・「試しに一本吸ってみたらどうだ? 案外簡単に心変わりしちまうもんかもよ」

从 ゚∀从「……兄貴が帰ったらやってみる」

爪'ー`)y-・「……そうか」

16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 20:59:34.91 ID:8SjTuWv90
支援
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 21:00:47.60 ID:mHJGgEbOO
爪'ー`)y-・「……仕事、どうなんだ。順調にやってっか?」

从 ゚∀从「ん……相変わらずつまらん雑誌の低俗コラム書いてるよ」

爪'ー`)y-・「先月が『都内某所、怪しい宗教団体の真実に迫る』だっけか」

从 ゚∀从「読んでんじゃねーよ。俺だって、好きでそんなヤらせ記事書いてる訳じゃねーんだから」

爪'ー`)y-・「小説は、もう書いてないのか?」

从 ゚∀从「書いて送ってるよ。一次選考で落ちてばっかだけど」

爪'ー`)y-・「今度読ませろよ。文学部卒のお兄ちゃんが優しく添削してやっからさ」

从 ゚∀从「うるせー。俺だって文学部出とるわ」

从 ゚∀从「センスの欠片もない兄貴に見せるくらいなら、ヤギに食わせた方がマシだね」

爪;'ー`)y-・「ひでぇ言い様だな」
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 21:01:49.98 ID:5fmhtj7E0
ふむふむ、支援だな
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 21:12:04.48 ID:mHJGgEbOO
爪'ー`)y-・「ま、そうへこむな。続けてさえいればいずれ出る芽もある」

从 ゚∀从「へこんでなんかねっての」

爪'ー`)y-・「そうか? お前が俺んとこ来るの、いつもそんな時ばっかだろ」

从 ゚∀从「……兄貴にゃなんでもお見通しってか?」

爪'ー`)y-・「まぁな」

从 ゚∀从「ハァー…そりゃへこみもするって」

从 ゚∀从「三度続けて一次選考落選じゃあ、自分の才能を疑りたくもなるっての」

爪'ー`)y-・「三度もか」

从 ゚∀从「うん」

爪'ー`)y-・「そりゃすごいな。俺なら一度落選しただけで諦めるぞ」

从 ゚∀从「変な励まし方すんな」
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 21:20:52.31 ID:mHJGgEbOO
爪'ー`)y-・「知ってるか? 新人小説で一番つまらないのは、三次選考に落ちた作品なんだと」

从 ゚∀从「なんだそりゃ」

爪'ー`)y-・「一次二次で落ちた小説、これは落ちて当たり前な習作だ」

爪'ー`)y-・「逆に四次やそれ以降まで残る作品はそれなりに期待が出来る」

爪'ー`)y-・「三次選考で落ちるのは一番無難な作品ってこと。無難は伸びない」

从 ゚∀从「へぇ〜」

爪'ー`)y-・「文壇ではよく言われてる喩え話だよ」

从 ゚∀从「じゃあ、俺の小説が三次選考に落ちたら、どうやって立ち直りゃいいんだよ」

爪'ー`)y-・「知るかよ。そん時ゃスッパリ諦めな」

从 ゚∀从「兄貴も大概だな。励ましてたんじゃないのかよ」

爪'ー`)y-・「今言ったばっかだろ。無難は伸びない、誉めるにしろ貶すにしろな」

从 ゚∀从「極論だな」

爪'ー`)y-・「正論だよ」

从 ゚∀从「……ま、そういうことにして励まされといてやっかね」

爪'ー`)y-・「そうしろそうしろ、小難しく悩むなんざお前らしくねぇぞ」
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 21:30:21.53 ID:8SjTuWv90
支援
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 21:57:38.72 ID:HyQQINrY0
寝落ち?
俺も乗っ取りしたかったんだが
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:00:56.93 ID:mHJGgEbOO
すまん、ラストまで一気に書き上げたかったけど体力が尽きた

乗っ取るならどうか頼む
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:01:56.33 ID:HyQQINrY0
じゃあぜろからいくお
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:05:21.73 ID:HyQQINrY0

私はどこかずれてしまっていた。
運動神経の悪い人が何をやっても人並みに出来ないように。
暗記が苦手な人が何度単語をノートに写しても覚えられないように。
私はどこかずれてしまっていたのだ。


( ^ω^)

从 ゚∀从


だけど、もう一度だけでもそこに行きたい。




从 ゚∀从夕やけ空のようです




26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:06:15.24 ID:mHJGgEbOO
よし支援
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:07:06.74 ID:HyQQINrY0

* * *

1、まずほどほどに長いロープを用意します。

2、ロープでわっかを作りましょう。ちょっとした重みで解けたりしないようにしっかりと結びましょう。

3、天井に吊るします。吊った時に足が地面につかないように気をつけましょう。

4、吊ります。糞尿を垂れあがすとかいう噂があるので新聞などを敷いておくとベターかもしれません。

5、首が閉まります、あばばばばばばー

6、死にます、あばばー 



   ||  
   ||
(  )
 | |  |
 ∪ / ノ
  | ||
  ∪∪


指された時間は十月二十六日、十六時十五分。


* * *
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:12:35.48 ID:HyQQINrY0



从 ゚∀从「ブーンは本当にギリギリまで逃げないで、駄目になっちゃうだろうから言っておくけどな? 
     くじけてもいいし、逃げたくなったら逃げてもいいからな?
     情けなくって生きているのが嫌になっても死ぬなんてつまらん理由だからな」

( ^ω^)「はあ?」


遅刻してきたハインが急にそんな事を話し始めた。
走って来たのか息が荒い。

近くのショッピングモールにハインと買い物に行こうとしていた時だった。
僕が大学に落ち、浪人して、今年もまた落第し、
受験ノイローゼになり、欝々しいまでの毎日を送っていたものだからハインがそうして僕を連れ出したのだ。


「なんかおごってあげるくれよ」なんて言って。


呼び出した本人が遅刻したけど……


29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:18:25.49 ID:HyQQINrY0


( ^ω^)「受験の事かお?」


秋口の、緑の薄れてきた道を歩きながらハインにそう聞いてみる。
少し間があってハインが答えた。

从 ゚∀从「そうだな、まあ他にも色々と」

( ^ω^)「よくわからんお」

変な話だ。
逃げてもいい、くじけてもいいなんて僕の二十年ほどの人生で初めて聞いた。
ある種のアイロニーか何かだろうか?

大抵、がんばれ、だの無理しない程度にやれ、なんて言葉しかこない。
なにより数カ月前まで僕に頑張れと言っていたハインがそんな事をいってくるとは全く予想外だった。




30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:24:24.96 ID:HyQQINrY0


「呆れられたのかお?」


自嘲気味に聞いてみた。
たかが、まあ僕にとってはたががではないのだが、受験程度でへこんでいる人間にいら立ったのかもしれない。
少なくとも僕よりも昔から勉強に努力を重ねてきた彼女からすれば僕の悩みなんてちっぽけな物だろう。

从 ゚∀从「……」

( ^ω^)「……」


少しだけハインが悲しそうな顔をする。
僕はそんなハインの顔が少しだけ好きだった。
普段傍若無人な人の寂しげな顔(もっとも僕がそう思っただけだが)というのは中々趣のあることだ。


「どっちかっつーと逆かなあ」


そんな事をハインがぽつりと呟いてその話しは終わった。

道端の木から葉っぱが一枚、はらりと落ちた。

31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:26:18.59 ID:HyQQINrY0

* * *


きぃ、きぃ



* * *



32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:27:26.67 ID:mHJGgEbOO
支援
頑張って
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:32:26.54 ID:HyQQINrY0

* * *

買い物に行った数日後だった。


从 ゚∀从「それじゃあ勉強すっぞー」

(;^ω^)「……」

ばさばさとぶっきらぼうに僕の机に自分の参考書を広げながらハインが言った。
参考書のカバーを外しておくことが常だった故にほぼ白や赤、そんなかたっ苦しさを連想させる僕の机の上が
彼女のカバーがついたままの参考書達によってやたらカラフルな光景になった。
目をぱちくりさせながら聞いてみる。


(;^ω^)「どうしたんだお? 急に」

从 ゚∀从「勉強一人でやってるより二人でやるほうがいくらかはかどるんじゃないかと思ってね」

(;^ω^)「忙しいんじゃなかったのかお?」


そう、彼女は忙しいのだ。
わざわざ勉強で奇声を発しているような僕の元へ最近あったばかりなのに来るような暇は無いはずだ。


34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:36:27.62 ID:eu47zTxv0
いつもの乗っ取りの人?
35>>34ぜんwwwぜんwwww違うwwwっすwwww:2011/02/05(土) 22:38:49.80 ID:HyQQINrY0


ハインは僕と違い現役で合格した。
それについて嫉妬の感情などは無い。彼女が僕以上に努力していたのは当時の僕が一番見ていたから。

そうして彼女は現在大学生である。
世間一般の時間をもてあましているイメージと違い彼女のキャンバスライフは多忙を極めていたようだった。

他人に厳しく! 自分に甘く! というスローガンが服を来ているような外見の彼女だが
そんな見た目と反して授業の出席率は異常と言えるものだったらしい。

もともと学力が高い大学だったせいか、比較的忙しいスケジュールにしないと卒業が出来ない場所だったらしいが、
それが一層彼女の行動が拍車をかけているようだった。

浪人の僕の手前、ひけらかすように言ったことは無かったが、たまに会った時の彼女の疲れた様子や、
僕がたまに精神的に余裕があるときに聞いた彼女の大学の生活の様子から、相当に忙しい事は把握していた。

だからこそ彼女には自分から勉強については聞こうともしなかったし、自分で何とかしようと考えていた。

そんなわけだからこの彼女の行動は僕にとって意外としか言えないものだった。


36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:39:45.87 ID:EIFXm/gk0
しえん
37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:44:50.14 ID:HyQQINrY0


从 ゚∀从「それなりに余裕が出来んだよ、それに他の人より多めに講義は受けているから仮に少しサボっても問題ないし」

( ^ω^)「なんでまた急に」

从 ゚∀从「まあいいだろ天才ハイン様がカテキョやってやるんだから」

( ^ω^)「……」





从 ゚∀从「何か不満でも」

( :#)"ω^)「なんという高速パンチ……これは世界を狙える」


ここのところ彼女の行動パターンが急激に変わった気がしていた。
ショッピングモールへ行った時みたく、主張していた事も少し変わったりしていた。
一体どうしたのだろう。

38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:48:45.56 ID:HyQQINrY0


まあ友人とはいえ女の子と過ごせるというのは男という生き物にとっては嬉しいものだ。
友情愛情の違いなど関係無く。

いやある意味友人と過ごすのと同じだから性別は関係ないか。


从 ゚∀从「ほらほら、参考書開け」

( ^ω^)「はいはいお」


疑問について考える暇もなく彼女に勉強漬けにされたのだけど。
一人でする勉強よりは中々気が楽な物だった。




39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:51:56.12 ID:HyQQINrY0


* * *


きぃ、きぃ。


从; ∀从「……」


きぃきぃと音がする。



* * *


40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 22:59:40.73 ID:HyQQINrY0


* * *


扉の前に私はいる。

私の前にある部屋の中には縦横無尽様々な時計が置いてある。
置時計のようなものから、デジタル時計、腕時計。

私はあれから毎日のようにそこへと通っていた。
部屋の扉の前では耳に刺さるかのようにチクタクという時計の針が動く音が重なり合って聞こえてくる。

扉の前で一つ深呼吸をして扉を開ける。
先ほどまでのチクタクという音は一つも聞こえなくなっていた。

まるで時間が凍ったみたいに。
部屋の中にある時計達は全て針を動かすのをやめている。

そんな部屋の真ん中に彼はいた。
くたびれたジャケットを羽織り、椅子にゆったりと腰掛けている。


('A`)「今日も来たのか」

从 ゚∀从「ああ」
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:05:18.78 ID:HyQQINrY0


('A`)「今日はそこだ」

从 ゚∀从「……」


そういって彼は一つの時計を指差した。
四角い画面に時間が表示されるデジタル時計だ。
その時計のシルエットだけ他の時計と違いまるで空間が歪んでいるように不鮮明で全体像がつかめない。

だが、指している時間だけはわかる。


十月十五日、十三時十五分。


今度はこの日か、さあどうしたものか。


42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:12:19.28 ID:HyQQINrY0

从 ゚∀从「進むもアレだ戻るもアレだ」

('A`)「……」

从 ゚∀从「かといって止まるなんて私は嫌いだね」

('A`)「毎回聞いているけどさ、いいのかい、何が起きるのかなんてわからないんだぜ
   少なくとも、どんな感じになるかは予想出来るけどさ」

从 ゚∀从「……」

('A`)「まあ俺に止める権利なんてないけれど」

从 ゚∀从「そだな」


私は時計へと手を伸ばし、触れる寸前で止めた。


从 ゚∀从「ちなみに」

('A`)「うん?」

从 ゚∀从「どれを選んでもアレなら私はだな、
      まあお前は知ってる上で私は講釈をたれているのだけど」

('A`)「……」

43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:13:37.43 ID:HyQQINrY0





「前のめり、だ」




私は時計に触れた。



44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:14:13.12 ID:3smio5lY0
支援
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:16:12.55 ID:HyQQINrY0

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46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:21:58.17 ID:HyQQINrY0


* * *



きぃきぃという音がする、




私の目の前には彼がいる。

たくさんの事なんて望んでいないし、

なんでもない毎日がただ恙無く流れていけばよかった。

そうして大人になって、

そうして年老いていく、

そんなことを私はただ漠然と考えていた。

漠然と願っていた

だけれど、


47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:24:23.67 ID:HyQQINrY0




从 ∀从「ブーン……」


そんな夢想は海辺で作った歪な砂の城みたいに簡単に崩れていってしまう。




きぃきぃという音がする。
48修正:2011/02/05(土) 23:25:13.24 ID:HyQQINrY0





从  ∀从「ブーン……」


そんな夢想は海辺で作った歪な砂の城みたいに簡単に崩れていってしまう。




きぃきぃという音がする。



* * *


49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:25:55.38 ID:HyQQINrY0
そしてちょっとトイレ。お腹痛い。
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:33:43.64 ID:3smio5lY0
しえしえ
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:36:28.28 ID:HyQQINrY0
セルフ保守。
落ちそうで怖いな。再開するお。
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:40:37.40 ID:HyQQINrY0

* * *


「あんたどこいってたの!!」


ヒステリックな母の声が聞こえる。
きっと怒っているんだ、私が何かやってしまったんだ。

だけど私が何をやったのか本当にわからなかった。
急に寒気を感じるようになったくらい。
半そでに麦わら帽子の夏の装いの私が凍えそうなくらい寒かった。


从 ゚‐从「ごめんなさい……」


きっと声は震えてしまっていた。
寒さだけじゃない、何か自分がやってしまった悪いことにも怯えて。
母は無言で私を見ていた。

ああ、きっと怒られる、叩かれるかも。

そんなことを考えた。


53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:45:32.50 ID:HyQQINrY0


だけれども私が次に感じのは柔らかな抱擁だった。


「心配したんだから!」

从 ゚‐从「……」


理解が追いつかない、でも、母が泣き出して、
私はこの人に心配をかけたのだと言う事を理解した。


从 ;‐从「ごめんなさい」


もうこの人にこんな思いをさせないようにしよう。

もうこの人を泣かしたりなんかしない。

何が母を泣かせたのかしっかり理解せずに私はそう心に決めた。

私がまだ4歳の時の事だった。

54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:50:39.58 ID:HyQQINrY0


そんな幼少の経験のせいだろう。
私はとにかく努力をした。

親に心配をかけさせまいと考えて行動した。
本当の意味で自立をしようと思った。今思うと明らかに時期の早い考えだが……

別に親の手を一切煩わせない完ぺき超人になろうとしたわけではなく、
もちろん我も出した。むしろ好き勝手やった。
だが抑えるところは押さえておこう。

それが私の行動方針だったのだ。


从 ‐∀从「ふー」


だけれど疲れるものだ。
どこかで私は気張っていた。

55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 23:56:47.88 ID:HyQQINrY0

小学校の時だ。
私はまあガキ大将のようなものだった。

小学校の段階では成長も女子の方が早いもので
女子の中でも背が高い方にまでなった私は力でも負けはしなかった。


从 ゚∀从「さっさとおわらせねえと」


4年生になり、放課後まで学校に残れるようになると私は図書室にこっそりと放課後に行った。
周りに気付かれないように。勉強熱心なのを恥ずかしいと思っていたのかもしれない。
そこで宿題なども終わらせて親の前ではちゃらんぽらんに振る舞っていたのだ。


从 ゚∀从「あーここどうなんだ」


国語の問題で詰まった。
どうにも私は変に問題を深読みして間違えることが多かったのだ。

56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:00:13.83 ID:5Tn38Vf9O
しえんよ
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:00:34.47 ID:d8Zs6+MEO
支援
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:01:16.53 ID:CrvayT0W0


( ^ω^)「そこは ア じゃないかお?」

从 ゚∀从「なるほどーそれかー」

( ^ω^)「いやあ高岡が宿題をやってるなんて僕知らなかったお」

从 ゚∀从「いやーやっとかないと面倒だしさー」

( ^ω^)「へー」

从 ゚∀从

( ^ω^)

从 ゚∀从「」

( ^ω^)+


なぜか同じクラスの内藤がいた。

59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:06:03.52 ID:CrvayT0W0

从;゚∀从「な、なんでいるんだよ!!」

( ^ω^)「いや、ここ学校の図書室だし別にいれもおかしくないお……」


確かにそうだ。
いや! こいつそういうキャラじゃなかった!
むしろいじられてるのかいじめられてるのかよくわからないデブだった!


从;゚∀从「おおおおおおま! お前!」

( ^ω^)「おまwwwwwww焦りすぎwwwwwwwうぇwっうぇwwwww」









从 ゚∀从「うぜえ」

( :#)"ω^)「なんという高速ジャブ……将来が末恐ろしい女よ……」


とりあえず殴った。
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:10:29.30 ID:CrvayT0W0


とりあえず落ち着いて私は内藤に聞いた。
こんなに取り乱したのは本当に久しぶりだった気がする。


从 ゚∀从「なんでまた図書室に」

( ^ω^)「いや、その」

从 ゚∀从「お前そういうキャラじゃないだろう」

( ^ω^)「それを言うなら高岡だって」

从 ゚∀从

( ^ω^)「うん、拳をにぎり閉めないでほしいお」

从 ゚∀从「続けて」

( ^ω^)「あ、うん」




61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:12:55.73 ID:CrvayT0W0


( ^ω^)「いやあその……」


妙に歯切れが悪い。
まるで何か隠しておきたいことがあるようだった。

そこでピーンときた。


从 ゚∀从「押しつけられたか」

( ^ω^)「……」


どうやらビンゴだった。
図書委員とかなんかの面倒な仕事を押し付けられたんだろう。
「どうせだれでもできるから!」なんて言われて。

62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:17:36.16 ID:CrvayT0W0

( ^ω^)「そうだお……」

从 ゚∀从 「やっぱな」


あんまり知られていないが小学校だろうとそういう関係ってのはある。
いや、むしろ無邪気な、何がいいことで悪いことか判断があいまいなそんな年齢の方が多いのかもしれない。
私は流石にそれ以上の事まではわからなかったが。

从 ゚∀从 「お前黙ってろよ」

( ^ω^)「うん」

从 ゚∀从 「代わりと言ったらなんだが」

( ^ω^)「お?」


「力を貸してやろう」


その日私と内藤は友達になった。きっかけなんてそんなもんさ。






63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:22:31.94 ID:CrvayT0W0

そうして仲良くなって私は内藤をいじめてたグループをけちょんけちょんにした。

良くも悪くも私達は小学生だったのだから解決するのは簡単だった。


从 ゚∀从 「へいへい」

( ・∀・)「ん?」

从 ゚∀从 「歯を食いしばりたまえ」

(;・∀・)「は!?」


いきなりそのグループのリーダーに殴りかかったのだ。
先手必勝。相手が涙目になって先生が来て止められて終わった。

あっけないものだ。私はこっぴどく叱られた物の内藤が擁護してくれたおかげで
そこまで面倒なことにはならなかった。

相手も男のプライドがあったのか親に言うなんてことにも発展しなかった。
ラッキーってやつだ。


( ^ω^)「どうもありがとうだお」

从 ゚∀从 「ちゃんと対等な関係を作るんだよ普通は」

64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:25:29.68 ID:CrvayT0W0


从 ゚∀从 「まあ……あれは黙っとけよ」

( ^ω^)「あー勉強n」





从 ゚∀从「いうなよと」

( :#)"ω^)「見えなかった……」


そうして私のちょっとした秘密を知った内藤との友情はそれからも続いていた。
たまたま中学も学区の関係で同じだったしね。


* * *


65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:30:21.17 ID:CrvayT0W0


そうしてやがて私は中学生になった。
中学生にもなれば勉強をたくさんしようとそんなにそれでからかわれたりはしなくなる。

なんせ定期試験でそれの重要性を思い知るわけだから。
そんなんだから私はいくらか気が楽になっていた。
いや、内藤と知り合って自分のそういう部分を変に隠さないで良い状況が出来た時から
気楽になっていたかもしれない。

そんなある日のことだった。


从 ゚∀从 「ん?」


放課後のことだった。
勉強を終え、図書室から出ようとすると変な音が聞こえてきた。


66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:31:31.91 ID:CrvayT0W0

チクタク                          チクタク


          チクタク            チクタク
チクタク

               チクタク            チクタク


    チクタク            チクタク







幾重にも重なり合う、時計の音。



67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:35:53.17 ID:CrvayT0W0


从;゚∀从 「なんだ……?」


ただの時計の音ならば怯える必要もない。
だがこの音は……

数が、音量が、種類が、全てが非凡だった。


从;゚∀从 「一体どこから……」


最初は戸惑っていたものの時間が経つにつれて落ち着いてくる。それでも動揺は隠せないが……
そうして落ち着き、どこからその音が発生しているのか段々とわかってきた。


从;゚∀从 「ここ?」


それは私が開こうとしていた、何の変哲もない図書室の扉だった。

68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:38:41.33 ID:CrvayT0W0


開かないでおくなのかもしれない。

なんとか別の場所から出れば問題ないかもしれない。

だけど、なぜか私は、


从;゚∀从 「……」



がちゃり


私はその扉を開いた。


69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:39:37.19 ID:CrvayT0W0
ちょっと風呂。ねみい。
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:42:22.75 ID:gAVvWULZ0
待ってる支援
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:55:02.05 ID:CrvayT0W0
もどった。
二時までには終わるといいなあ。
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 00:59:33.08 ID:CrvayT0W0


そこには、


('A`)「ん?」


くたびれたジャケットを羽織った男がいた。
部屋は時計だらけでありとあらゆる種類がある。

それはおおよそ校内にある部屋とは思えないような空間だった。


从; ∀从 「な、なんなんだここ……」

('A`)「お、お前さんは」


男が何か言おうとしたが私は聞かずに入って来た扉から出た。


「ああそっちは!」


得体の知れぬ物への恐怖に駆られながら私は駆けた。

73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:03:33.17 ID:CrvayT0W0


気がつくと私は夏空の下にいた。


从 ;゚‐从 「〜〜〜!」


熱い、さっきまで学校にいた時とは全然違う体感気温だった。
ここはどこだ? 駆けながら周りを見渡す。

じわじわと蝉の鳴き声がする、アスファルトからの照り返しが熱い。


从 ;゚‐从(ここは……)


そこで初めて私は体が幼い時のそれに代わっているのに気付いた。


74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:07:57.17 ID:CrvayT0W0


(だから落ち着けって)

从 ;゚‐从「!?」


突然私の頭に声が響いた。
それはさっき出会った男の声とよく似ていた。


(いいか? 落ち着いて話を聞けよ?)

从 ;゚‐从 「うん……」

(じゃあ落ち着いて今来た道を戻るんだ)

从 ;゚‐从「……わ、わかった」


男も得体が知れなかったが、今のこの状況よりはましだ。
そう思えた。



75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:12:19.14 ID:CrvayT0W0


('A`)「簡単にここの説明をしようか?」

从 ゚∀从 「うん……」


不思議だった。
空間に扉が浮いているとしか言えない物が戻った場所にはあった。
そこに入ると私は元の中学生の姿になっていたのだ。


('A`)「俺も細かいことはわからない。ただここに留まっているだけだから」


そうしてぽつぽつと男は語り出した。


76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:17:28.88 ID:CrvayT0W0


从 ゚∀从 「ねじれ?」

('A`)「ああ、そうだね、なんか過去と未来が入り混じってんだよここ」

从 ゚∀从 「いつからこんなところ……」

('A`)「さあ? 俺もそれはさっぱり。うねってる時計とかには触らないようにしなよ、さっきみたくその時間いっちゃうからさ」

从 ゚∀从 「さっきのは私の幼少時代?」

('A`)「おそらくね、そんときの自分にくっつくというかなんというか」

从 ゚∀从 「幽霊みたいな」

('A`)「そうだな、そんな感じ」

从 ゚∀从 「もしかしてさ、なんか影響あったりするの」

('A`)「影響?」

从 ゚∀从 「私に」




77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:19:09.34 ID:gAVvWULZ0
支援
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:21:10.10 ID:CrvayT0W0


('A`)「……ある、と思う。干渉した時間も短いから命がどうたらはならないだろうけど」

从 ゚∀从 「……なんか行方不明なったり?」

('A`)「そういうケースもあるかもなあ……俺もよくわかってないんだ。時間に干渉して、しわ寄せが来るってことぐらい」


昔の謎が少しだけ解けた。
たぶんさっきのアレが私の失踪の原因だろう。
なにがどうしてどうなったのかなんてわからないがおそらくそれで私は行方不明になって発見されたのだ。

自業自得だったわけだ。


从 ゚∀从 「それで……」

('A`)「ん?」

从 ゚∀从 「なんでこんな場所に私は来たんだ?」

79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:25:58.19 ID:CrvayT0W0


('A`)「さあ?」

从;゚∀从 「さあ……って」

('A`)「俺もよくわからないんだよ、ちょっとわけあってここから出ないだけでさ」

从 ゚∀从 「なんでまた……」

('A`)「まあ色々あって……
    ただ、一度来た人は来やすくなるらしい、あと君がよくいく場所からここにつながりやすくなったり」

从 ゚∀从 「そうか……」


それ以上は男から何も聞きださせそうになかった。
彼がどうこうしているわけではなく、なぜか存在している空間らしかった。






80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:32:12.43 ID:CrvayT0W0


('A`)「こっからならたぶん戻れるよ」


そう言って男は古びた時計を指差した。
それが帰る道らしい。


('A`)「もうここは忘れたほうがいい」

从 ゚∀从 「ああ、こんなの夢だと思う事にするよ」

('A`)「ああ、そう、それがいいよ」

从 ゚∀从 「じゃあ、もう会わないとは思うけど」

('A`)「あ、それと」

从 ゚∀从 「ん?」


急に真剣な声のトーンになり男が言った。


('A`)「絶対にここに来たいなんて願っちゃだめだ。滅多にそうなることはないだろうけど」


* * *
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:38:11.97 ID:CrvayT0W0

* * *

(;^ω^)「重いお……」

从 ゚∀从 「ほーらファイトファイトー」


結局ショッピングモールに行って僕はハインにたかられっぱなしだった。
僕の気分転換というよりハインの気分転換じゃないかこれは。


从 ゚∀从 「どうだ、少し気が楽になったか」

( ^ω^)「そうですね、気楽で体が軽いだけじゃなくて財布も軽くなりましたね」


言ってから思った。やられる。このパターンは高速パンチだ。
しかしパンチは飛んでこなかった。


( ^ω^)「お?」

从 ゚∀从 「……」


ハインは西に沈む太陽を見ていた。
どこか寂しげに。

82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:44:28.72 ID:CrvayT0W0


从 ゚∀从 「これをやろう」


そう言って彼女は僕に何かを放り投げた。


( ^ω^)「時計……?」


腕時計だった。
どこか使い古された感じだ。


从 ゚∀从 「……私の受験時に使ってたやつだ。ご利益あるぜ」

( ^ω^)「おお! ありがとうだお!」

从 ゚∀从 「……ああ」

( ^ω^)「?」


何処かハインの様子がおかしかった。
普段とは違う、どこかしおらしさすら感じさせる雰囲気だ。
83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:48:52.21 ID:CrvayT0W0


从 ゚∀从 「そうだな……」

(;^ω^)「お?」

从 ゚∀从 「受験終わったらまた買い物行こう」

( ^ω^)「えーまた僕のおごりかお」

从 ゚∀从 「いや今度は私がおごってやる」

( ^ω^)「マジで?」

从 ゚∀从 「マジマジ」

( ^ω^)「ねーよwwwwww」

从 ゚∀从 「だまろうか」

( :#)"ω^)「タイミングずらしまで使うとは……成長したのう……」

从 ゚∀从 「まあガチでおごってやるよ」

( ^ω^)「お、それは楽しみにしとくお」

从 ゚∀从 「合格祝いにさせろよ」

( ^ω^)「善処するお」
84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:53:26.15 ID:CrvayT0W0

だけれど、それは叶わなかった。


* * *


秋が終わる少し前の事だった。
つるべ落としよりもなお早く、ハインが死んだ。

交通事故だった。
前方不注意などと言うわけのわからぬ理由で彼女の命はあっさりと刈り取られてしまった。

さぞかし無念だったろう、辛かっただろう。
そんな彼女の事を考えると胸が苦しくなってぽたぽたと涙がこぼれた。

なのに、


( ;ω;)「どうして笑っているんだお……」


彼女の死に顔は不思議と安らかだった。
まるで何も悔いはない、とでもいうように。

そんなわけはないだろう。
君の人生はこれからだったのではないか。

どうして笑っているのだ君は!
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:58:30.94 ID:CrvayT0W0




人の感情というのは不思議な物で、重大な決断をするときに限って起伏が無い。
受験ノイローゼからはいくらか脱却していた僕だがこれは中々堪えたらしい。
僕は本当に簡単に決断した。小さい時に好きだった絵本を「邪魔だから」って時が経って捨ててしまうみたいに。

マンネリとした勉強の毎日などにまいっていた僕としては十分すぎる理由だったのだ。


( ^ω^)「死ぬお」


そう、人は簡単に命を捨てることが出来る生き物なのだ。


86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:04:20.48 ID:gAVvWULZ0
見てるぜ支援
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:04:43.70 ID:CrvayT0W0


1、まずほどほどに長いロープを用意します。

2、ロープでわっかを作りましょう。ちょっとした重みで解けたりしないようにしっかりと結びましょう。

3、天井に吊るします。吊った時に足が地面につかないように気をつけましょう。


( ^ω^)「……」


僕の部屋で準備はなんの滞りも無く行われた。
後は階段を上る要領で椅子に乗って、縄を首にかけて椅子を蹴ればいい。

新幹線で東京から大阪へ移動するよりもずっと早くあの世のハインの場所まで行けるだろう。
もしかしたら僕の場合地獄へ行ってしまうかもしれないが……

椅子に足をかけて、僕は右足から椅子に載せるべきか、左足から載せるべきかなんて考えた。
どうしてこんなどうでもいいことを考えるのかなんて思うと苦笑してしまった。

88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:06:37.14 ID:8oQvkV8g0
死んじゃダメだー!
89>>86ありがとう頑張る:2011/02/06(日) 02:10:54.60 ID:CrvayT0W0


( ^ω^)「生きようとでも?」


ここまで来たのだ。もう生きようと思ってるのなら相当なナルシストだ。
それも、恋人が死んで、それで悲劇の中心になったかのような非常に醜い類の。

さあさっさと吊ってしまおう。
そうして僕が縄に手をかけた時に自分の漬けていた腕時計にふと目をやった。


( ^ω^)「ああ、あの時の……」


ショッピングモールに行った時にハインがくれた腕時計だ。
最初サイズの調整を間違えてキツくなりすぎてしまい、手がしびれたりした。

僕はなんとなくじっとそれを見ていた。


( ^ω^)「……」

90恋人じゃねーや友人だ修正:2011/02/06(日) 02:13:22.55 ID:CrvayT0W0


( ^ω^)「生きようとでも?」


ここまで来たのだ。もう生きようと思ってるのなら相当なナルシストだ。
それも、友人が死んで、それで悲劇の中心になったかのような非常に醜い類の。

さあさっさと吊ってしまおう。
そうして僕が縄に手をかけた時に自分の漬けていた腕時計にふと目をやった。


( ^ω^)「ああ、あの時の……」


ショッピングモールに行った時にハインがくれた腕時計だ。
最初サイズの調整を間違えてキツくなりすぎてしまい、手がしびれたりした。

僕はなんとなくじっとそれを見ていた。


( ^ω^)「……」

91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:17:19.29 ID:CrvayT0W0


( ^ω^)「……」

『きっとブーンは……』

( ^ω^)「……」

『本当にギリギリまで逃げないで』

( ^ω^)「……」

『駄目になっちゃうだろうから言っておくけどな?』

92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:19:08.96 ID:CrvayT0W0





『ブーンは本当にギリギリまで逃げないで、駄目になっちゃうだろうから言っておくけどな? 
くじけてもいいし、逃げたくなったら逃げてもいいからな?
情けなくって生きているのが嫌になっても死ぬなんてつまらん理由だからな』

『はあ?』



この卑怯もんめ。



93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:25:25.14 ID:CrvayT0W0

ハイン、君は本当にずるい。

思いだしてしまった。
思いださなければ簡単にあの世に行くことが出来たものを。

最後の最後でひきとめられてしまった。

そうして僕は迷ってしまったのだ。
生きるか死ぬかを。


( ^ω^)

( ;ω^)

( ;ω;)


いっそ何にも考えないくらいになっていれば。


( ;ω;)


こんな気持ちにならなかったろうに。
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:29:08.57 ID:CrvayT0W0


椅子から降りる。
僕は実行しなかった。
忠告通り逃げたのだ、僕は。

その時だった。

95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:30:35.72 ID:CrvayT0W0
チクタク                          チクタク


          チクタク            チクタク
チクタク

               チクタク            チクタク


    チクタク            チクタク







幾重にも重なり合う、時計の音。
僕の部屋の扉の向こうからうるさいくらいのそんな音が聞こえてきた。



96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:34:52.23 ID:CrvayT0W0

特に何も考えがあるわけでもなく機械的に僕は扉を開いた。


('A`)「ん?」


部屋に入るとくたびれたジャケットを着た男がいた。
特別に若いわけでも老けているわけでもない、どこかつかみどころの無い外見をしていた。

異様な部屋だった。
壁にも地面にもありとあらゆる種類の時計があり、すべてが停止している。
まるで時が止まっているかのようだった。


( ^ω^)「どこだお、ここは」

('A`)「うーん、なんなんだろうねえここは」

( ^ω^)「あんたもわからないのかお」

('A`)「いや、わかってはいるけど何とも説明しにくい場所でね、こう色々と時間がねじ曲がっている場所というか……」


そこまで言って彼は僕を見た。
97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:41:26.40 ID:CrvayT0W0


('A`)「ところで、あんた内藤っていう人?」

( ^ω^)「なんで知ってるんだお?」


そう答えると彼は少し嬉しそうな顔をした。


('A`)「ああそうかあ彼女やったんだなあ。そうかあそうだよなあうまくいったんだなあ……」

( ^ω^)「どういう事だお」

('A`)「え? ああ、そうか、うん、なんと言ったらいいのかな、ええと、あのタカビーっぽい子いるだろハインとかいう」

( ^ω^)「ハインかお? ハインの事かお!?」


要領を得ない彼の話し方にイライラし、つい声を荒げてしまう。
なぜ彼がハインを知っているのか。上手くいったっていうのはどういうことか。
洗いざらい話してもらいたかった。

98さる:2011/02/06(日) 03:00:12.71 ID:CrvayT0W0

少しの間があり、ぽつりぽつりと彼は話始めた。

* * *

別れという物は突然に訪れる。
少なくとも私にとってはそうだ。

ブーンが死んだ。
自殺だった。受験ノイローゼだったらしい。

私が久しぶり(といっても一週間程度だが)に彼の家へと顔を出したら彼は部屋で首を吊っていた。
青天の霹靂というのはまさにこのことか。

ただ恙無く流れていくと思っていた毎日はいとも簡単に終わりを告げた。

どうしてもっと彼に注意を払っていなかったのか。
まじめな性格の奴だった。

少なくとも私と同じように現役で合格しても間違いないくらいには勉強していたし、
今年の試験だって万全の準備をして彼は向かって行った。
ただ、運が悪かったのだ。

だけれど彼にとってはそうでない。

あのニコニコとした笑顔の裏にどれだけの苦悩があったのだろう。
私にはもう、知ることはできない。
99 ◆BlmR8y.LxLp7 :2011/02/06(日) 03:02:37.83 ID:CrvayT0W0
そしてねむすぎるので中断。回線の関係でID変わりそうなんでトリ付けとく。
午前中か明日ってか今日の同じ時間くらいに書けたら書く
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:17:10.73 ID:k87jHL8P0
ふざけんなぁああああああああああああ
保守
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
しえほ