誰得って言うなら 俺得って返すよ
そんな感じで立ったら投下します。
律「澪、部室行くぞー!」
今日最後の授業を終えた先生が教室の扉を閉めるなり、律の声が飛び込んできた。
手にした教科書とノートを宙に浮かせたまま、少し眉を寄せて顔を上げる。
澪「そう急ぐなよ、すぐ片付けるから」
早く早くと律に急かされながら荷物をカバンに詰める。
3 :
にわか:2011/01/17(月) 16:49:18.24 ID:ep+BBLrR0
?
律「ほら早く!」
立ち上がるやいなや腕をグイと引っ張られて脚がもつれ、
肩に掛けたカバンが滑り落ちそうになった。
とっさに空いたほうの手でショルダー部分を掴む。……セーフ。
澪「ちょ、律、急に引っ張るな!落としたらどうするんだよ!」
律「あーゴメンゴメン」
澪「……ったく」
律「たのもー!」
走ってきた勢いそのままに、律が部室の扉を力一杯開いた。
部室は、1階のいちばん奥にある理科室……の隣の理科準備室。
紬「ふふ、りっちゃん、今日も元気ね」
窓際の流し台に立っていたムギが振り返って笑った。
色素の薄い柔らかな髪が、逆光の中ふわっと広がる。
その時
「まーかして!」と中指をたてながら鳥頭先輩登場!
律「あちゃームギが1番乗りだったかー。ったく、澪がぐずぐずしてるからだぞ」
澪「律だけ先にくれば良かっただろ」
律「だって置いてったら澪しゃん泣いちゃうじゃん」
澪「そんなことで泣くか!」
ぼかっ、と律の頭にゲンコツを落とす。
律の悲鳴と、クスクス笑うムギの声が部室に響いた。
部室の真ん中に机を集めた、作業台兼ティータイムスペースに揃って座る。
私の前に律、右隣にムギ。
澪「ああもう、律が急かすからカバンの中ぐちゃぐちゃ……」
律を軽く睨んで、カバンの中身を順に机に出していく。
教科書、ノート、ペンケース、お弁当箱、それから……
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/17(月) 17:05:09.67 ID:7jN2Q1rC0
>>8 「やかましい!」と背中にRを担いで間接を極める鳥頭先輩!
紬「あっ、澪ちゃんそれ、昨日買った……?」
澪「うん、売れずにちゃんと待っててくれたよ、この子」
緩衝ケースを兼ねたポーチからゆっくりと取り出す。
中学生の時からずっと欲しかったLeica CL 。
お小遣いとお年玉をちょっとずつ貯金してやっと手に入れた。
長く使いたいから状態にはこだわりたくて、結局自分じゃボディしか買えなかったけど、
レンズは誕生日祝いってことでパパが買ってくれた。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/17(月) 17:08:09.31 ID:XYxoqPNjO
理科準備室でティータイムはやだなー
カップはビーカーか
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/17(月) 17:08:56.07 ID:8jbVR3K10
うーん…
物書きとしてゆるせないんだが
何この幼稚な文章
紬「わぁー、よかったね。見せてもらっていい?」
澪「もちろん、はい」
ポーチから出したCLをひと撫でして、ムギに手渡す。
緊張した面持ちで受け取るもんだから、ちょっと笑ってしまった。
澪「そんなおそるおそる扱わなくても大丈夫だよ」
紬「だって、澪ちゃんの大切なカメラだもん……。あ、可愛い」
ムギはニコニコしながらファインダーを覗き、ピントリングをくるくる回して
ひととおり楽しんでから、ありがとう、と私の前に差し出した。
受け取ろうとした次の瞬間、ひょいと横から手が伸びて、私の手は空を切った。
澪「ちょ、律!」
律「ほんと、ちっちゃくて可愛いよなー。澪は可愛いものが好きだからなー」
澪「もう、落とすなよ?」
片手でボディを掴んでアチコチ見回す律にハラハラしてつい声が大きくなった。
口を尖らせた律が、抗議の目を向けてくる。
律「なんだよー、ムギの時と違うじゃん」
澪「律だからだよ」
律「さいですか」
唯「たのもー!」
左手を目一杯伸ばして律からCLを取り返したのと同時に
バターン!と大きな音がして部室の扉が開いた。
ひっ!と短く悲鳴が漏れ、CLを落っことしそうになる。
なんとかボディを掴み直し、落下は免れた。
律「唯ー、今日も最後だぞー」
唯「えーっまたぁ?!みんな早過ぎるよぉ」
律「じゃ、今日の暗室はムギ、あたし、澪、唯の順だな」
唯「ちぇっ」
紬「ふふ。唯ちゃんも来たし、お茶入れるね。今日はレモンタルトよ」
ムギは再び流し台に向かい、律と唯は子供のように歓声をあげた。
私たちが入るまでの数年間は部員ゼロで、実質廃部状態だった桜高写真部。
理科準備室の奥にはドアの内側と窓を暗幕で覆われた小さな部屋があって、
カラーとモノクロの両方を手焼きプリントできる暗室になっている。
引き伸ばし機の他にドライマウントプレス機やカラーペーパー用のプロセッサが並び、
空調も暗室作業に最適な20℃に保てる。
こんないい暗室が何年も放置されていたなんて、ほんとうに勿体ない。
よかった、また使ってあげられて。
ニッチすぎるうえに稚拙すぎるのは自覚してるので許して。
唯「わあ、澪ちゃんついに買ったんだね!ちっちゃくて可愛いねぇ」
律の隣に座った唯が、私の手元にあるCLをめざとく見つけた。
澪「うん。昨日の夜は嬉しくてずっと触ってたから、ちょっと寝不足」
唯「分かるよ澪ちゃん!私もハセ郎を買った時、思わず添い寝しちゃったよ。」
律「寝返り打ってカメラ壊すなよ」
今もだけどね!と鼻息を荒くした唯に、律が冷静に突っ込む。
私は苦笑いを浮かべ、ムギが淹れてくれたミルクティーを口に運んだ。
唯「それで、澪ちゃん、その子にはどのフィルムを詰めたの?」
澪「ちょっと迷ったけど、カラーはLomoで撮ってるから、Tri-Xにしてみたよ」
唯「おお!澪ちゃんもモノクロに挑戦だね、どんな写真を撮るのか楽しみだねぇ」
唯に満面の笑みを向けられ、私もつられて笑顔になる。
正面からバション、とシャッターを切る音がした。
律「あんまりいい笑顔なので、思わず撮ってしまいました!」
相棒のPen-FTを掲げて、律が敬礼のポーズでおどける。
唯「あーっ!りっちゃんずるい、私も撮りたいよ!」
そう言うと唯はアタフタとカバンに手を突っ込んで
”ハセ郎”ーーHasselblad 500C/Mを引っ張り出した。
ストラップを首に掛け、ファインダーを起こして手早く露出を合わせる。
お辞儀する格好で私にカメラを向けたまま、
行儀悪く後ろ足でガタガタと椅子を鳴らして立ち上がった。
唯「さあ澪ちゃん、ニコッと!ニコッ!ヴィーナスの微笑みだよ!」
澪「ゆ、唯、急にカメラ向けるのやめてくれ!恥ずかしい!」
イヤイヤするように顔の前で手を振る私に構わず、
ウェストレベルファインダーを覗いたままグイグイ迫ってきた唯は
一瞬キュッと呼吸を止めてシャッターを切った。
パコンッと小気味良い音が部室内に響く。
澪「あ、ああ……」
唯「恥ずかしがってる澪ちゃんも、それはそれで」
律「可愛いですなあ……」
唯「ですなあ……」
澪「お、お前らなあ……」
口に手を添えニマニマ笑う二人を睨んで、私は赤くなった頬を両手で隠した。
唯「でもいいなー澪ちゃんのカメラちっちゃくて。ハセ郎重くて時々くじけそうになるよ」
巻き上げノブをくるりと回しながら再びに椅子に腰かけて、唯が溜息をつく。
律「カメラ買いに行ったとき、ハッセルがいいって聞かなかったの唯だろ」
唯「てへ」
律「ていうか何度も言うけどハセ郎って名前微妙じゃね?」
唯「えー可愛いじゃん、ねーハセ郎」
Hasselbladを愛おしそうに撫でる唯に、私と律は顔を見合わせて苦笑いする。
唯「澪ちゃんはもうその子に名前付けたの?」
澪「えっ?いや、普通にシーエルかな」
唯「えー、もっと可愛い名前付けてあげなよー。んー、レイカちゃんとか」
律「Leicaをローマ字読みって、またベタだな」
笑い声が揃ったところで、暗室入口の上に灯っていた使用中のランプが消えた。
エプロンを付けたムギが印画紙とネガを抱えてドアを開ける。
唯「ムギちゃんおつかれさまー!どう?いい写真あった?」
紬「うん、何枚か候補に出来そうなのが焼けたわ」
律「おおっ!見せて見せて!」
3人でバタバタと机の上を片付け、写真を広げるスペースを作った。
ムギは焼いたばかりの六ツ切印画紙を、1枚ずつ丁寧に並べていく。
ふわっとした優しいカラープリントが机いっぱいに広がった。
澪「はぁー……、ムギの写真はいつも優しくて柔らかくていいな」
紬「うふふ、ありがとう澪ちゃん」
自宅の庭に植えられた色とりどりの花や樹、
可愛いティーカップや花瓶を、窓際の自然光を利用して開放気味で撮ったテーブルフォト。
感嘆の溜息を漏らした私に、ムギが少し照れて笑う。
唯「ムギちゃんらしい写真だよねぇ。ケーキみたいで美味しそうだねぇ」
律「唯の例えはいっつも食べ物ばっかだな」
唯「だってほんとに美味しそうなんだよりっちゃん!」
律「わーったわーった、じゃ、次はあたしねー」
両手で握りこぶしを作って訴える唯をひらひらとあしらい、
律はネガを数本無造作に掴んで暗室に入っていった。
紬「新しい部員、入ってくれるといいわね」
紅茶を淹れ直しているムギが、流し台で振り返る。
澪「うん。そのために、いい写真撮らないとな」
紬「そうね、ふふ。私、後輩と一緒に写真散歩するのが夢なの」
2ヶ月半後、私たちは2年生に進級して、新しい1年生が入学する。
年が明けてから、新入部員獲得のためにみんなで作品づくりを始めた。
最初はおっかなびっくりだった暗室作業もこのごろはみんな手慣れたもので、
ひとり1時間ずつの持ち時間でもそこそこの数を焼けるようになった。
律「ふぃーおわったー!」
暗室のランプが消えて、律が勢いよくドアを開けた。
勢いのつきすぎたドアが壁に当ってビリビリと鳴る。
澪「律!危ないから静かに開けろっていつも言ってるだろ!」
律「わりーわりー、傑作が焼けたから嬉しくてつい」
悪びれる様子も見せず、律は手にしたプリントをどんどん机に並べ始めた。
唯と私は、慌ててティーカップを机から避難させる。
ハーフサイズで撮られたモノクロの、少しざらついたトーンが広がっていく。
澪「ふーん……?!ちょ、律これ!」
律「ん?ああ、よく撮れてるだろ?」
何気ない風景や動物園のスナップに混じって、
教室の机で居眠りしている私の寝顔が縦位置で撮られていた。
窓から降り注ぐ光に包まれ、口元が少し緩んでいる。
澪「いつの間に撮ったんだよ!!」
律「コレのシャッター音でも起きないくらい、よく寝てらしたので」
そう言って、律はたすき掛けにしたPen-FTを手にしてニカッと笑ってみせる。
唯「いい寝顔だねぇ。澪ちゃん幸せそう」
澪「そ、そういう問題じゃ……っ」
反論しようとした私の声と、唯の「あれー?」というのんびりした声が重なる。
唯は私の寝顔写真をしげしげと眺め、それから律を見た。
唯「りっちゃん、これ逆光だよね?でも顔には綺麗に光回ってるね?」
律「おおっ、気付いたか!さすが唯。それはな、レフを当てているのだよ」
唯「あー、そっかぁなるほど。……ん?じゃあ、」
誰かに手伝ってもらったの?と唯が重ねて聞き、やや間があって、一斉に振り返る。
ティーポットを抱えたムギが、逆光の中でふふ、と笑った。
紬「レフ板で光を当てても起きないくらい、よく寝てらしたので〜」
澪「……なんか怒る気が失せた……。で、律この写真はボツな」
律「ええええ!いい写真じゃーん!これ入れる気満々なのに!」
澪「ダメ、絶対。じゃ、次は私の番だな」
ゆるい部活動だけど、私たちの間でルールをふたつ決めている。
ひとつは ”気持ちよく、楽しく撮ること”。
もうひとつは、”本人の許可がないポートレイトは展示しないこと”。
後者は、まあ、ルールっていうか常識の範囲でもあるのだけど。
ねえ澪いいでしょお願い、とすがりつく律のおでこを軽くはたいて、
私はLeica CLで撮ったばかりのモノクロネガーー
部活の時間を待ちきれずに家で現像した1本ーーを持って暗室に入った。
正直、最初は暗くて狭い部屋に一人きりで入るのが怖かった。
カラープリントの時は真っ暗にしないといけないし、
モノクロ用の赤いセーフライトがなんだかおどろおどろしくて。
だから部活を始めて数ヶ月は、いつもムギか唯に一緒に入ってもらった。
律は、あいつは絶対私を怖がらせるにきまってるから除外。
澪「ふぅ、よし」
暗室用のエプロンを付けて、ネガを手にとる。
蛍光灯のスイッチを切ると、部屋は赤い光で満たされた。
引き伸ばし機を置いているテーブルの引き出しを開け、四ツ切の印画紙を1枚取り出す。
印画紙の上にシートごとネガを置いて、上からガラスで押さえつけ、引き伸ばし機で露光。
現像液、と書かれたバットに露光面を下にして静かに浸し、
竹ピンでトントンと印画紙のアチコチを軽く叩いて気泡を取る。
暗室時計で時間を確認しながら静かにゆすり、途中でひっくり返す。
36コマ分のベタ焼きが、現像液の中でゆらゆらと印画紙に浮かび上がる。
停止液、定着液をくぐらせて水洗用バットに移して出来上がり。
澪「んー……、うん、写ってる」
水から揚げたばかりの濡れた印画紙を蛍光灯の下でじっくり見る。
わずかに残った定着液の匂いが鼻先をかすめる。
CLを買ってすぐ試し撮りを始めたので、
購入したお店から自宅までの道のりが写っている。
最初に撮った1枚は、レンズを買ってくれたパパのちょっと恥ずかしそうな笑顔。
夕暮れの斜光に包まれた街、家の近くの公園、ブランコで遊んでいる子供たち、
通りかかった猫、玄関に出迎えてくれたママ、お気に入りのぬいぐるみ。
澪「露出がバラバラだなあ…これなんかすごいアンダー。でも、ふふ、嬉しい」
印画紙をもう一度軽く水洗してプリントドライヤーに通し、再びネガシートを手に取る。
気に入ったコマにダーマトで丸印を入れていく。10枚ちょっと。
1時間で全部焼けるかな。
最初に選んだのは、やっぱり1コマ目。
ネガをシートから抜き出して、ネガキャリアに1コマ目を合わせ、
ブロアーでネガに着いたホコリを飛ばして引き伸ばし機にセット。
焼き損じた印画紙の裏を上にしてイーゼルマスクに挟む。
蛍光灯を消して、引き伸ばし機を常灯にしてヘッドを動かし、ピントノブで適当に調整。
それから脇に置いてあるフォーカススコープを印画紙の上に置いて覗き込み、
ネガの粒がはっきり見えるようにピントを合わせる。
レンズの絞りはf8、露光時間は…とりあえず10秒。これで準備完了。
引き伸ばし機のライトをオフにして焼き損じの印画紙を外し、
引き出しから新しい六ツ切印画紙を取り出して、イーゼルにセット。
澪「……よし、」
ふ、と小さく息を吐いて、フートスイッチを踏む。
カチッと音がして、反転したパパの笑顔が白い紙の上に浮かんだ。
露光時間の調整に手間がかかって、結局上手く焼けたのは6枚だけだった。
エプロンを外して静かにドアを開ける。
律「おっ、終わったか。おつかれー」
唯はムギからテーブルフォトの手ほどきを受けている最中のようで、
いちご柄のティーセットにレンズを向けて真剣な顔をしている。
私に気付いたムギが顔を上げ、澪ちゃんお疲れさま、とにっこり笑った。
律「どうだった?CLの初プリント」
澪「露出がバラバラで、焼くのに時間掛かっちゃったよ」
律「澪、フルマニュアルは初めてだもんな。撮ってるうちに慣れるよ」
澪「うん」
唯とムギが撮影していたティーセットを移動してくれたので、
空いたスペースに焼いたばかりのプリントを並べる。
律「おーっ、結構ちゃんと写ってるじゃん!」
紬「猫ちゃん可愛い。この人は……お父さん?」
最初に焼いたプリントを指さしたムギにうなずいてみせると
素敵な笑顔ね、と褒めてくれた。
澪「そ、そうかな。ありがとう」
なんだか恥ずかしくて、思わず下を向いてしまった。
唯「じゃあ、いよいよ私の番だね!平沢唯、行ってきます!」
律「唯隊員、必ず生きて帰ってこいよ!これは隊長命令だ!」
唯「りっちゃん隊長、了解です!」
律「武運を祈る!」
いつもの小芝居はひととおり終わったようで、後ろで暗室のドアが閉まる音がした。
プリントをじっくり見ていた私に、ムギがすっと新しいティーカップを差し出してくれる。
澪「ありがとう、ムギ」
紬「どういたしまして。澪ちゃん、CLとは仲良くなれそう?」
隣に並んだムギが少し前屈みになって、垂れる髪を耳に掛けながらプリントを覗き込む。
澪「うん、上手くやっていけそうだよ」
紬「そう、よかった」
口にくわえたポッキーを暇そうに揺らしていた律が、
ふと思い出したように、そういえば、とムギを見た。
律「ムギ、カメラの調子どうだった?」
紬「うん……RTS IIIは結局オーバーホールに出して、今はAriaを使っているの」
律「そっかー。早く戻ってくるといいな」
紬「ありがとうりっちゃん」
3日ほど前、常用しているContax RTS IIIを、手を滑らせて落としてしまったらしい。
サブ機にAriaを持っているので撮影には問題ないのだけれど、
使い慣れたカメラじゃないといまいち調子が出なくて、と、ムギは困った顔で笑った。
1時間後、暗室から出てきた唯は律と同じ理由で私に叱られた。
手にはちょうど1ロール分のカラープリントを抱えている。
律「唯はいつも全コマ焼くんだよなあ」
澪「それでいて、いいプリントが多いんだよな」
紬「才能ね、唯ちゃん」
唯「えへへ…照れるよぉ」
テレテレと頬を染めつつ、唯がプリントを並べていく。
律「お?」
澪「へぇ……」
紬「あらあら」
唯「どうでしょうかっ!フンス!」
並べられたスクエアサイズのプリントには、
全て同じ人物ーー唯の妹、憂ちゃんが写っていた。
撮り手と被写体の関係性がよくわかる、キュートなポートレイト。
少しハイキー気味で、ふんわりしたトーンが憂ちゃんの可愛さを引き立てている。
律「あ、これいい笑顔だなぁ」
紬「うふふ、憂ちゃんは唯ちゃん専属のモデルさんね」
唯「えへへ、そうだよー」
澪「うーん……いい写真だけど、憂ちゃん桜高受けるんだろ?」
唯「うん、そだよ」
なんで?と首をかしげた唯と視線が合う。
澪「入学したてで自分の写真貼られてたら、憂ちゃん恥ずかしいんじゃないか?」
唯「憂は展示してもいいって言ってくれたよ?」
澪「そ、そうなのか…それなら、いっか」
律「じゃあ、澪の寝顔も…」
澪「ダメ、絶対。」
律「あーん澪しゃーん」
ジャンケンに負けたムギと律が暗室の片付けを済ませて、部室をあとにした。
すっかり日が暮れた廊下はキンと冷えて、思わず身震いしてしまう。
澪「じゃあ、ひとり5点ずつセレクトってことでいいな」
紬「みんなで20点、展示場所を考えるとちょうどいいわね」
律「あーあ、澪が許可してくんないから、全然まとまんないよ」
澪「しつこいぞ、律。聡の寝顔でも撮ったらどうだ?」
律「やだよ、弟の寝顔なんて、撮っても楽しくない」
唯「えー?憂の寝顔は撮るの楽しいよ?」
律「……それは展示するのやめような?憂ちゃんのためにも」
澪「憂ちゃんの寝顔はダメで、どうして私の寝顔はいいんだ」
律「需要があるからです!」
無言で今日ふたつめのゲンコツをお見舞いする。
律の悲鳴が白く後ろに流れて、唯とムギの笑い声も風にさらわれた。
冷たい風からお互いを守るように、肩を寄せ合って4人で並んで歩く。
信号待ちで立ち止まり、アスファルトに並ぶ4人の影をぼんやりと見つめる。
寄り添った影は混ざり合って、デコボコと不確かな、けれど柔らかな形を作っていた。
コートのポケットからLomoを取り出して、ノーファインダーでシャッターを切る。
4月になったら、この影がいくつに増えるのだろう。
増えるといいな、と思いながら。
ーー小柄な体に不釣り合いな二眼レフを抱えた後輩が入部するのは、もう少し先のお話。
おしまい
駄文失礼しました。それでは。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/17(月) 19:23:07.14 ID:Cz4u0vK5i
お
誰得どころかむしろ損したわ
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/17(月) 19:27:53.56 ID:c6pw1IwiQ
写真部とかキモいwwwwwwwwwwwwww
読んでないけど
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
こういう発想は嫌いじゃない
専門用語多いから読むのが億劫になっちまったがな
まあ乙