1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
つまり、これは呪いの話だ。
呪うこと。
呪われること。
人を呪わば穴二つのこと。
人間はどこまでいっても一人ぼっちだ。
しかし誰かと繋がらないと生きていけない、というのもまた、呪いなんじゃないだろうか。
だから、これは呪いの話。
さて。
おとぎ話てはどういう意味だろう。
昔そんなことを思って、調べてみたことがある。
そうすると、『子供に聞かせる伝説・昔話など』という他にもう一つ、『現実離れした空想的な話』というのがあった。
つまりは、現実に置いて限りなく有り得ない、または起こらない出来事こそ、おとぎ話といえるのではないかと僕は思う。
だから、これはおとぎ話。
僕に運命は視えない。
だからそんな詳しいことだなんてわからない。
例えばこれが砂漠に落ちているほんの数粒程の可能性だったとして、僕に知る術はない。
けれど、思えば僕らの存在自体そういうものだ。数億分の一の確率の異分子だ。
だからつまり、これは――そう、呪いの話。
でも、それじゃあ締まらない。だから僕はこの未来を開くのにもう一つの言葉を使おう。
曰く、『おとぎ話』を。
――さあ、おとぎ話をはじめよう。
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 19:42:14.90 ID:YWDalG/H0
――あなたは、スカートです。
そう言ったのは死んだ母さん。
お前はスカートになるのだ……なんて無体を命じられたわけでなく、普通にスカートを履きなさいというだけの話。
勿論昔は恨まない日はなかった。
なにせ僕は『オトコノコ』なのだから、なんでそんなものを、と不条理な命令に対して怒りのぶつけどころに迷ったりもした。
けれど今はそのお陰でしっかりと卑屈なお姉様に育ったのだから結果オーライだと思う……多分。
それでもどうにも好きになれない。
足下が落ち着かないから。
それともう一つ。
視線を感じる。すれ違う人がこちらを振り返る。
口笛が背中をくすぐる。
これだから好きになれない。
繊細で幸薄層で麗しいご令嬢、そんなものに僕はなりたいんじゃない。
別に同姓にもてたいからってこんな格好をしているんじゃない。
僕は男なんだ!
……なんて、いえたらどれだけいいことか。
これも生きるため、はたまた言いつけだから仕方がない。
目的地、たまり場その2に向かって歩きながらそう思う放課後だった。
……思わない日は殆どないけれど。
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 19:48:05.81 ID:YWDalG/H0
事の発端はこよりちゃんの発言だった。
こより「そいえばセンパイ方!鳴滝の学校では最近都市伝説が流行っているのですよ」
智「都市伝説」
都市伝説――怪談話ともまた違う、独特の雰囲気の物語。
有名所で言えばメリーさん、口裂け女、人面犬。あとはハンバーガーの肉にミミズが使われてる、なんてのも聞いたことがある。
殆どは事実無根の虚偽話。どこにでもあるような嘘。
勿論そんな中でも本当の話はある。
例えば僕らの住む街にある都市伝説。『バイクに乗った黒い王子様が夜な夜な美少女を攫う』だとか。
何を隠そう、我らが同盟一のプライドの持ち主、花城花鶏がその張本人だからだ。
視線で花鶏を追うと、僕の考えていることがわかったのかその銀髪(本人曰く『プラティナブロンド』)を手で靡かせる。
花鶏「ふっ、遂に私もこよりちゃんみたいな可愛い子達に噂され、誘われる日が来たのね」
茜子「セクハラーの脳内は今日も蛆が湧いてますね」
茜子の毒舌も花鶏の耳には入らないらしい。
視線が明後日の方向に向き、げへへへへと涎を垂らしていた。乙女に有るまじき姿。
……見なかったことにしよう。
こより「たはは……勿論花鶏センパイの話とか……『無敗のフードファイター』とかの話もあったッスよ」
伊代「『無敗のフードファイター』って……」
るい「はぐはぐはぐ……んぁ?」
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 19:49:23.61 ID:rp3LlcYe0
あずまんがかと
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 19:53:02.54 ID:YWDalG/H0
るいはここに来る前に買ってきたお菓子を只管に食べていた。
これだけ食べても太らない、というのは少したけ羨ましくもある。
るい「……ごくん、なになに、どーしたの?」
智「いや、なんでもないからるいは食べてていいよ」
るい「そお?じゃ遠慮なく」
僕がよしをすると、再び食べ始める。
本当、犬っぽい。
そう思いながらこよりに視線を戻すと、今度は茜子が真ん中に立っていた。
茜子「そういえば都市伝説といえば茜子さんも知ってますよ」
茜子「ラーメンの中に入っているメンマ、あれは実は割り箸を汁につけて作っているのです」
こより「嘘だっ!」
茜子「本当です、本当。清純派乙女智なら知ってますよね?」
智「うん、確かスープの中に割り箸を落ちたのを知らないで、数日後に見つけて食べてみると美味しかったっていう話だよね」
こより「そんなぁ〜、鳴滝、具の中でメンマが一番好きだったのに〜」
茜子「いつも真実とは非情なものなのです」
こより「ひーん」
茜子の言葉を尻目に、こよりはさんざめく。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 19:55:06.74 ID:YWDalG/H0
>>4 さーせん、るい智×コミュです。
やばい、人こなす……展開安価予定なのに……
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 19:58:37.46 ID:YWDalG/H0
伊代「こらこら、嘘言わないの。メンマはシナチクって言って、筍の一種でしょ」
茜子「ちっ、空気よめデカ胸」
伊代「え、何よそれ。私、間違ってないわよね、ね?」
こより「いやいや、元々都市伝説の話なんですから、初めから話半分ッス。騙されてナンボッスよ」
フォローした筈なのにされた人からも責められる伊代。やはりイケてない。
その空気のよめなささえなければ……いや、なかったら伊代が伊代じゃないか。
智「……伊代、これからも伊代は伊代のままでいてね」
伊代「うぅ……なんだかよくわからないけど、ありがとう……」
閑話休題。
ようやくこよりに主導権が戻る。
るいも食べ終わり、花鶏も現実に戻ってくる。
こより「実はですね、高倉市の都市伝説なんですけど……」
るい「あ、それ私も聞いたことある!」
こよりが話し始めると、るいも声をあげた。
二人の話の内容をつなげ合わせると、こうだ。
智「『少女Aに連れられて怪物が現れる』?」
伊代「纏めると、そういうことよね」
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 20:04:43.85 ID:YWDalG/H0
こよりの話は怪物の話だった。
人の二〜三倍の大きさ(怪獣レベルの大きさでないぶんリアリティがある)の怪物が最近高倉市には出現するらしい。
例えば大きな人間の形、例えば竜の形。
目撃証言は多数あるが、友達の友達の話、だとかどれも確信を得ない。故の都市伝説、といったところ。
一方、るいの話はそれにちょっとしたアクセントが加わったものだ。
そういった怪物達を連れているのは数年前から現れた幽霊ともわからない少女――便宜上『少女A』という名を与えられた少女が彼女を見た人を連れていき、怪物にするらしい。
これもよくあるものだ。知らない人についていったら怪物になる、と。
天狗についていった子供が天狗になる、なんていう話も聞くし、亜種なのかもしれない。
るいの話からこよりの話が独立した、というような感じ。
智「さて、皆様。如何ほど?」
茜子「茜子さんは猫の形がいいです。巨大な猫を従えて茜子さんはアカネコ・オブ・キャットクイーンとなり世界を征服します」
花鶏「誰もんなこときいてないっての。……っていうか、その話高倉市限定なの?」
こより「はいッス!鳴滝も気になってネットで調べてみたら、全部高倉市でした!」
高倉市は、僕らの住む田松市から電車で四つ向こうで着く街だ。
ここら付近よりももっと発展していて、しかしその分不良な人たちも多い、らしい。
そんな街限定の話。手を伸ばせば届く分、少しばかり興味をひかれる。
伊代「でも、全部都市伝説なんでしょ?だったら、やっぱりないことなんじゃないの?非現実的だし」
伊代の言うことはもっともだ。都市伝説だから本当じゃない。
けれど、それが全てに当てはまらない、ということは証明されている。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 20:11:16.36 ID:YWDalG/H0
そもそも、だ。
非現実的だなんだのというけれど。
茜子「私たちの存在自体、非現実的です」
茜子の言葉が一閃、僕らを引き裂く。
そう。
僕らは皆呪われている。身体のどこかに同じ痣がある。
皆元るいは未来を約束できない。
鳴滝こよりは通ったことのないドアを開けられない。
白鞘伊代は固有名詞を呼ぶことができない。
茅場茜子は人と触れることができない。
花城花鶏は……わからないけど、同じように呪いを背負ってるはずだ。
そして僕、和久津智は――本当の性別を知られてはならない。だからこうしてスカートをはいておんなのこをしているのだ。
そんな僕らが都市伝説について非現実的だだの科学的ではないだの語れるわけがない。
花鶏「それはそうだけど。少女Aはまだしも、怪物は流石に現実離れし過ぎじゃないかしら」
伊代「そうよね、人間の数倍の大きさの怪物って……ちょっとね」
こより「そこで、鳴滝から提案があるのです!」
ローラースケートを履いたこよりはついーっ、と皆の前に躍り出た。
二つに括られた長いツーテールが揺れる。
こより「皆で調べに行きましょう!」
器用に跳ねる。うさぎちゃん可愛い。
……じゃなくて。調べにいく?何を?
無論、都市伝説を。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 20:21:18.86 ID:YWDalG/H0
るい「はいはーい!るいねーさんは賛成―っ!!」
同じようにるいも手を上げて跳ねる。
るい「話聞いた時から思ってたんだよねー!なんかこうさ、バキューン、ドカーンッ!って感じでさ、実際にあったらかっこよさそうじゃん!」
花鶏「また頭悪そうな擬音を。……私はどっちでもいいわ。まぁ暇つぶしにはなるかもね」
花鶏は本当にどちらでもよさそうだ。
多分多数決で多いほうに賛同するのだろう。
茜子「茜子さんは賛成です。猫型があるなら茜子さんは」
伊代「それはもういいから!……あなたはどうするの?」
伊代は自分の意見は言わず、僕に話を振ってくる。
多分伊代は反対派だけど、今は賛成3棄権1だから僕が賛成したら賛成、反対したら反対にするのだろう。
……僕はどうしようか。
>>11 1 賛成する
2 反対する
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 20:29:28.08 ID:YWDalG/H0
思ったとおり誰もいないぜ……
しかし物語を作った以上書ききらなきゃね
そんなわけで続行。
→賛成
智「うーん……僕は賛成かな。少しだけ気になるし」
茜子「さぁ、後は巨乳眼鏡だけですぞ」
茜子には人の心が視える。
視えるといっても細かく、何がどうとかではなくて、漠然とYESとNO、隠し事をしている、ぐらいの程度だ。
つまり伊代以外は賛成だ、ということだろう。
伊代「……はぁ、わかった、私も付き合うわ」
るいとこよりがわーい、と騒ぐ。
そんな中伊代は僕を見詰めて呟いた。
伊代「……あなたが反対しなかったから」
智「えーっと……なんで僕?」
伊代「あの大食いの子も、ちっちゃい子も、あなたの口先三寸で説得できたでしょ?」
まぁ、確かに。
るいもこよりも大した理論がなくとも僕のいうことは大抵信じてくれるし。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 20:35:35.86 ID:YWDalG/H0
智「でも、確かめる程度ならいいじゃない。伊代だって賛成してくれたでしょ?」
伊代「それはあなたが……ああ、いいわ。賛成したことにはかわりないもの」
伊代も説得成功。
しかし、ぽそりと。
伊代「姑息」
智「うっ」
常識人(だけどイケてない)の伊代に言われると、ぐさっとくる。
花鶏はそんなやりとりを見て鼻で笑っていた。
早々に棄権したくせに。
こより「そりでは、善は急げッス!日が暮れる前にいきましょう!」
るい「おーっ!」
茜子「姑息貧乳とプラナリアは殿をお願いしますね」
花鶏「ちょっと!誰がプラナリアよ!!晩ご飯セロリだけにするわよ!」
そんなこんなで、僕らは高倉市へ向かうのだった。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 20:45:11.31 ID:qIwRKfnb0
智ちんが三宅にアナルフィストファックされて強制アヘ顔射精という展開を想像していたのに…
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 20:46:17.36 ID:P5HdeZzG0
こんなにwktkするSS久しぶり
うちもたまに携帯小説書くから、参考にさせてもらうね
へんな人達が湧いたとしても
いっしゅんだから気にしないで(^-^)/
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 20:48:17.39 ID:YWDalG/H0
茜子が電車内で他の人に触れないようかばいつつ、到着。
まず思ったのは、人の出入りが多い。
一応僕らの街も人の入りは多いほうだけど、流石『新都心』と呼ばれるだけはある。
こより「鳴滝、新都心は初めてきたッス!」
好奇心旺盛なうさぎちゃんは人ごみの間を器用にスケートで抜けていく。
るいもテンションが上がっているのか、人目をはばからないで豪快に走っていった。
花鶏「全く、野蛮人が。もう少し大人しくはできないのかしら。こよりちゃんはあとでベッドに縛っておきましょう」
智「全く関係ないよね!?」
きっと花鶏は目を離したらそれを実行する。怖い。
いや、僕も貞操と命がかかってるから怖いけども!
茜子「ここのどこかに、我々が探す巨大猫が眠っているのだ。茜子探検隊がその地に一歩踏み出す!」
伊代「いや、それを探してるのはあなただけだから!私たちの目的はもう散策も同義でしょう?」
まぁ、確かに。
こよりの都市伝説探しというのはいわば口実で、庭を広げたかっただけだ。
遊び場は単調じゃつまらない。たまには外にも出たくなる。
るい「トモ――――ッ!みんな――――っ!置いておくぞ――――!!」
るいの声がした。
僕らは少しだけ顔を見合わせて、彼女を追いかける。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 20:56:54.58 ID:YWDalG/H0
るい「うわぁ、たっけぇ――――!」
立ち並ぶビルは全て高層。
田松市とは違って空いているビルは殆ど無いようだった。
伊代「本当、いつ見てもすごいわね」
こより「伊代センパイは来たことがあるですか?」
伊代「ええ、一応ね。お母さんに頼まれた物があって」
それにしても、発展が速い、と伊代は言う。
口ぶりから来たのは最近ではないけれどそんな昔でもない、といった感じだ。
花鶏「ほんと、五年前にテロがあったなんて思えないわね」
こより「そうですねぇー、鳴滝は小さかったからよく知りませんけど」
智「……テロ?」
茜子「ええ、五年前にあったそうです。確か丘のほうだとかなんとか」
なんとなく、変な感じがした。
五年前。五年前。五年前。
唱えてみても、思い当たることはない。
両方好きだけど間違いなくこれは伸びない
るい智は好きだけどコミュはなんか合わなかったな
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 21:04:26.83 ID:YWDalG/H0
>>17 うん、実は立ててから後悔した
こより「それでは!ピンクポッチーズ探索隊、捜索開始ッス!!」
智「なにそれ」
こより「チーム命ですよう!こういうのは形からッス!!」
伊代「何よその卑猥な名前!やめてよね!」
てんやわんや。
街が変わってもどうやら僕らは何もかわらないらしい。
歩道橋を渡る。奇妙な六人組を見た。
伊代「わ、メイドさんだ」
こより「すごいッスねぇ……なんというか、そういう服で街中をあるける度胸が」
花鶏「あら、着たいなら私の家にあるけど?」
こより「いやいや、ご遠慮……」
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 21:11:44.83 ID:YWDalG/H0
他にも、なんだかイケてないを擬人化したようなファッションのちみっこや、目付きの悪い女の子や。
あと上から下まで真っ黒な女の人。制服だし同学年なのかな。
茜子「…………」
智「茜子、どうかしたの?」
茜子「いえ、なんでもないです。貧乳ブルマは前を向いて歩いてください」
智「うん……ってなんで僕がブルマ履いてる事知ってるの!?」
茜子「茜子さんにわからないことはないのです」
両手を上げて、ゆーらゆーらと揺れる茜子。
そこに花鶏が僕の後ろから抱きついてきて――
智「ぎゃわ!?」
花鶏「へぇ、智ちゃんブルマ履いてるんだ?その下はなに?もしかして履いてないの!?」
そう言ってスカートの下に花鶏の手が潜り込む。
太ももをつつつー、と辿り、そこに……
智「やぁの!それやぁの!!」
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 21:17:34.49 ID:YWDalG/H0
花鶏「大丈夫、私に全部任せてくれれば、天国に連れて行ってあげるわ!」
智「別に連れていってほしくないよ!!」
助けて!助けて!!
こより「智センパイがピンチです!!るいセンパイ!」
るい「バッキュン!!」
僕のピンチに気付いたるいが花鶏を思いっきり(手加減はしているだろうけど)殴る。
花鶏「ぷぎゅる」
花鶏はカエルの潰れたような悲鳴を上げて倒れた。
……僕の貞操は守られた!
智「るい、ありがとう、本当にありがとう……!」
るい「いいっていいって。トモは私の嫁だからね!」
男だけどね。
るいの胸の中で汚れた乙女のように泣いていると、伊代が慌てたように肩を叩いてきた。
伊代「ねぇ、あなた達、ちょっと……」
智「え?」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 21:21:46.57 ID:YWDalG/H0
伊代「周り、周り」
こより「まわり……」
こよりが周りを一瞥する。僕もるいも同じく。
ほとんどの人の視線が僕らに向いていた。
勿論、さっきみた男一人女五人の六人組も。
茜子「……ピンク色ですね」
茜子がそう言うのは空気ではなく、色。
周りの人の感情の色。
つまり、それが指すのは……僕らの今の行動が、一部始終視られていた、ということだ。
智「るい、花鶏持って!」
るい「う、うん!」
智「お騒がせしました!」
僕らは慌てて歩道橋を離脱するのだった。
……もうお嫁にいけない。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 21:31:10.86 ID:YWDalG/H0
日も暮れて、街灯の灯りと月明かりが夜の道を照らす頃。
僕らはようやく田松市の駅に到着していた。
茜子「結局、何も見つかりませんでした。がっかり」
茜子はどこにいたのか、真っ黒い猫――確かガギノドン――を抱き、肩を落とした。
こよりも自分から提案しただけに少しばかりバツが悪そうな顔をした。
こより「面目ないッス……」
花鶏「そもそも私たちが一度行っただけで見つかるなら、とっくに見つかってるっての。だからこよりちゃんは悪くないわ」
こより「ありがとうございます、花鶏センパイ」
花鶏「お礼なんていいのよ。……こよりちゃんが身体で支払ってくれれば」
こより「ひええ、ともセンパイ――っ!!」
花鶏に脅されたこよりは僕の後ろに回りこんで盾にする。
花鶏「さっきは脳筋に邪魔されたし、智でもいいのよー?いっそのこと二人とも――」
るい「あとりぃっ!!」
すごい音がした。
昼間と同じように、僕らは抱き合って感激を示す。
ありそうでなかった組み合わせだね
どっちも面白かったし応援してる
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 21:35:25.66 ID:YWDalG/H0
伊代「はいはい、あなた達そこまでにしなさい。……もう夜も遅いし、解散でいいわよね?」
茜子「茜子さんは異論ありません。この後は第二十七回猫々議会があるので出席しなければなりませんし」
智「議席あるんだ?」
茜子「名誉議席です」
茜子の腕の中でそれに答えるように猫が鳴く。
こより「では、解散ですね!」
花鶏「それじゃあね」
るい「よっし、じゃあ――」
智「また、明日」
るい以外のまた明日、が駅に響く。
さて、僕も帰ろう。学園の宿題もあるんだ。
何度が振り返りつつ、僕らは僕らの家へと帰ってゆく。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 21:41:20.10 ID:YWDalG/H0
智「はっやく、はっやく」
皆と別れた後素早く買い物を済ませ、軽い駆け足で帰路へ着く。
現時刻八時。結構時間がない。
タンタンタン、と一定のリズムを刻む足音を聞きながら、ふと月を見上げた。
そこに、影が過る。
少女『――――――――――――』
智「――――」
思わず足を止めた。
高倉市の新都心で露天をしてる人とかに都市伝説を訊いてみた。
曰く、少女Aは選ばれた人の前に姿を現す。
曰く、少女Aは何も答えない。
曰く――――少女Aは唄ってる。
つまり、だ。
僕が見ている、民家の屋根に腰をおろし、何かを語りかけるように唄っている彼女こそが。
智「少女、A――――」
呪われた、おとぎ話の始まりだった。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 21:42:55.10 ID:YWDalG/H0
さて、風呂はいるか……
落ちてる可能性大だけどね!
ほ
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 22:24:47.52 ID:YWDalG/H0
だった。の使用が多いなぁ……
>>26修正&加筆。
呪われた、おとぎ話の始まりだった。
↓
これが。
僕らの、呪われたおとぎ話の始まり。
>>24 ありがとうございます!
出来る限りは頑張ります
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 22:33:02.07 ID:YWDalG/H0
夢をみた。
どこか遠い日の夢…………
僕は見知らぬ丘に立っていた。
そこには僕を含めて五人が揃っていた。
全く見ず知らずの人たち。共通点などあろうはずもない人たち。
そして、僕らは――
「……つさま……和久津さま」
呼ぶ声が聞こえる。
夢の残響を引きずりながら目を開けると。
智「うわぁっ!?」
宮和の顔がドアップで映った。
学校だ。
僕は何時の間にやら寝ていたらしい。
宮和「優等生の和久津さまが寝ていらっしゃるとは珍しいことですね」
智「うん……最近唄が、ね」
宮和「歌?」
智「ううん、なんでもないよ」
都市伝説を探りに行ったら幽霊にとりつかれた――だなんて。笑い話にもならない。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 22:40:05.38 ID:YWDalG/H0
宮和「そうですなのですか?顔色が少しばかり悪いようですし、これが必要なら……」
そう言って宮和は自らの鞄を探り、『それ』を出す。
智「持ってますから!」
宮和「残念でございます」
その言葉通り、心底残念そうにそれを戻した。
……いや、僕はブルーデイに御用達のものなんてもってないけど。
宮和「では、和久津さまは最近どうなされたのですか?また哀れなお犬様をお拾いになられたのですか?」
智「いや、拾ってないよ」
宮和「そうですか。なら今度宮が拾って和久津さまの元へもってゆくことにします」
智「引き取らないよ!?」
宮和「残念でございます」
色々思考がズレているのが冬篠宮和だ。
『天才』さんならぬ『天災』さん……同時に、『最強の和久津さまストーカー』……最大の危険因子だ。
でも頭の回転も早く色々とフォローもしてくれるから邪険にできない。
身体測定の日なんて、何度助けられたか……
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 22:41:53.40 ID:eoqxRM/V0
智ちん!智ちんじゃあないか!
流石にここには搬送人も来れまい
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 22:46:28.62 ID:YWDalG/H0
宮和「……お疲れのようですのにズルズルなさらない和久津さまは流石でございます」
智「……何そのズルズルって。ずる休みのこと?」
宮和「はい。こう、ずるずると」
奇妙な動きをする。
のんびりとした動きで、足を引きずり左右に動く。
……なんだか前にも同じようなやりとりをした覚えがある。
宮和「意外にこれが心地良く。和久津さまもいかがでしょう?」
智「遠慮しとく」
宮和「そうですか……ズルズル」
最ブーム化したらしい、宮和は帰りのHRが始まるまでずっとズルズルしていた。
……本当、誰が教えたんだろう。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 22:52:45.49 ID:YWDalG/H0
×最
○再
智「せかせか……」
心持ち早く、下駄箱へと向かう。
それでも、気品は忘れず。スカートが翻るのははしたない、というのがこの学校だ。
下級生1「和久津先輩、さようならー」
下級生2「さようならー」
智「ごきげんよう」
営業スマイルで挨拶。
きゃあきゃあという黄色い声が後ろに去る。
あの子達いつも一緒だなぁ……仲いいのかな?
そう思いながら下駄箱をあける。
見慣れた手紙が今日は……
宮和「五通、ですね」
智「わっ!?」
影もなく後ろから宮和が現れて、僕を驚かせる。
本日二度目。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 22:57:25.90 ID:XarrENC+0
圧倒的に知名度が低いから人が来ない気がする
茜子可愛いよ茜子
そもそもるいともはそんなメジャーなのか?
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 23:00:25.25 ID:YWDalG/H0
宮和「今日は急いでらっしゃるようで、追うのが大変でした」
智「そ、そう……そんなつもりはなかったんだけどね」
そう言って、僕らは(僕は下駄箱の手紙をゴミ箱に捨ててから)昇降口を出る。
すっかり長くなった日が燦々と僕らを照らした。
思わず手で影を作る。宮和をみると、全く平然とした様子で隣を歩いていた。
これが本物と偽者の差か……
宮和「和久津さま、途中までご一緒してもよろしいでしょうか?」
智「あ、うん、別にかまわな――」
宮和のほうを見るために回り込みながら返事をしようとして。
つまりそれは学校の方を見ることで。
そのヘリに――
少女A『――――――――』
また、彼女はいる。
宮和「和久津さま?」
黙り立ち止まった僕を宮和は怪訝に思い、名を呼ぶ。
しかし、それも遠い。
少女は今日も唄ってる。
少女は今日も答えない。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 23:02:12.45 ID:YWDalG/H0
>>35-36 そんなにメジャーじゃないけど、それなりにいるとは思ってたんですよ……FDもそこそこ人気だったし……
その結果がこれだよ!
VIPだと住人の年齢的にメジャーじゃないってことなのかな
と夜勤で暇なおっさんが支援
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 23:08:40.19 ID:YWDalG/H0
――けれど。
今日の唄は、少し違った。
呼んでいるような気がした。僕を。僕らを。
宮和「わく……」
智「ごめん宮。用事を思い出しちゃった」
申し訳なさそうにいう。
それでも宮和はいつもの微笑を湛えたままに答えた。
宮和「構いません。どうぞ和久津さまの用事を済ませてくださいませ」
智「本当にごめんね」
宮和「いえいえ。今度デートに付き合ってもらえさえすれば」
智「それは……機会が合えば、ね」
宮和「承知いたしました」
ゆっくりと、優雅に頭を下げる宮和は本当にお嬢様だ。
そんな彼女に本当に申し訳なく思いつつも、僕は玄関で宮和と別れた。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 23:10:18.17 ID:YWDalG/H0
さて。
たまり場には……どうしよう。
>>42 1 行く
2 行かない
一応用意していた選択肢だし、出しておく。
順当に1かな
しかし人いないなw
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 23:19:20.65 ID:YWDalG/H0
本当にねwwww
この選択肢……コミュのメンバー決めるためのものなんだぜ……
→行く
唄は今までと違って、ずっと鳴り響いている。
けれど、やはり僕の場所はあそこだ。
たまり場に行こう。
るい「おー智ー!今日は遅かったねー!」
智「ごめんごめん、少し先生に呼び出されてね」
茜子「遂に姑息貧乳の罪が暴かれたか―!」
智「違うからね」
先生の話からあやめ先生の話をしてみる。
国語の教師で、とても面白い先生だということ。
文章に感情移入をしすぎて、よく授業が脱線してしまうこと。
……僕を少し変な目でみることは言わないでおいたけど。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 23:28:16.86 ID:YWDalG/H0
花鶏「ふうん、面白い先生もいるのね」
伊代「でも授業から脱線して進まなかったら本末転倒じゃない。先生ならもっとちゃんと……」
茜子「クドクドうるさい。委員長か」
伊代「なっ……!」
伊代の説教に茜子がちゃちゃをいれて追いかけっこが始まる。
文系二人だ、どちらかの体力がすぐ切れて終わる。
こより「ともセンパイ、ともセンパイ!実はですね、耳寄りな情報があるッスよ!」
智「なぁに、こよりちゃん。何かあった?」
こより「実はですね、繁華街の奥のほうの眼鏡屋のところがスイーツ店になってたんですよぅ!今度皆で食べに行きましょう!」
智「へぇ。うん、いいかも」
たまには女の子らしいこともしなくちゃね。
普通に面白いな
でもまだるいルートしか終わってないからネタバレないといいけど
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 23:35:20.90 ID:YWDalG/H0
そこにるいが唇を突き出し、少し納得いかなさそうにいう。
るい「甘いものきらーい」
花鶏「はっ、じゃあアンタだけお留守番してれば皆元。私は智とこよりちゃん、あとおっぱいを連れて食べにいくから。その後はデザートに……」
その言いかけで、るいは花鶏に掴みかかる。
るい「―――――――!」
花鶏「―――――――!」
閑話休題。
智「そういえばさー、前に高倉市に都市伝説探しに行ったじゃない?」
こより「あー、そんなこともありましたねー」
智「アレから皆、何か変わったこととかない?」
皆口をそろえて言う。別に何も無い、と。
僕は茜子じゃないし、嘘か本当か本当の区別はつかないけれど、嘘ではないと思う。
――皆が変わらない中、僕が呼ばれた。
僕だけが。
奇しくも、〈才能〉がない僕だけが。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 23:37:25.57 ID:YWDalG/H0
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 23:43:20.07 ID:YWDalG/H0
伊代「……あなた、どうかしたの?」
智「……ううん、なんでもないよ」
僕らの間で〈呪い〉や〈才能〉の話は滅多にしない。
話すときは初めからそういうことを話しますよ、という前提で話す。
だから真相はわからないけど、きっとそうだ。
るいが人並み外れた力を持っているように。
茜子が人の心を見透かせるように。
花鶏にもこよりにも伊代にも、きっと〈才能〉はあるのだ。
なのに。
僕だけがない。
唯一男で。唯一〈才能〉がない。そして唯一、『少女A』に呼ばれた。
なにかの意図を感じずにはいられない。
まるで、僕だけを外そうとしているような――
茜子「智さん」
智「っ」
ぴと、と少しだけの冷たさが頬に伝わる。
茜子の手が、僕に触れていた。
皆の驚いた顔が眼に入る。
茜子「落ち着いてください。誰も智さんを疎ましく思ったりなんかしてません」
智「茜、子……」
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/07(金) 23:49:41.44 ID:YWDalG/H0
茜子が触れて、普通に名前を呼んだ。
それは相当に勇気がいることだっただろう。
もし手袋のどこかが破けていたとしたら、茜子は〈呪い〉を踏み、死んでいたかもしれないのだから。
智「……うん、ありがとう茜子」
茜子「いえ」
茜子はぷい、とその身を翻す。
茜子「人を疑い喋らなくなる姑息僕っ子など、姑息僕っ子ではありませんから」
思わず、笑みが出てしまう。
皆もようやく理解が追いついてきたのか、フリーズした表情が解ける。
るい「そ……そうだよ、智ー私は智がいなきゃ死んじゃうよ!」
こより「鳴滝もですよぅー、ともセンパイがいなくなったら鳴滝、どうすればいいかわからなくなりますよう〜」
智「あはは、ごめんね。でももう何ともないから」
皆、温かい。
そうだ。例え誰かが僕だけを引き離そうとしていても、そんなのは問題ない。
なにせ僕らは類で友なのだから。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 00:04:56.13 ID:3WMSXr190
紅蓮に太陽が輝く。時刻は既に夕方。僕はやはり廃ビルにいた。
たまり場の廃ビルじゃない、僕の家からは随分と離れた廃ビルだ。
今にも崩れ落ちそうな、ところどころ錆びて剥げている階段を登る。
唄が強くなる。
屋上についた。この扉の向こうに、いる。
『少女A』が。
ドアノブを捻る。少しだけ力をいれる。錆びているのか、重く嫌な音が鳴る。
僕はそれらを全て振り切り、ドアをこじ開けた。
涼しい風が舞い込み、赤い逆光が射す。
眩しさに目を細めながらも、僕はその場へと踏み出した。
その場には既に揃っていた。 僕を含めて五人。即ち、四人が。
「あ、女の子だ」
「あーや。そんなに注視しないの」
「これで4−1。男の子少ないね」
三者三様の台詞。
しかし、最後の一人には見覚えがあった。
「君は……」
あちらも勿論、こちらに覚えがある、いや、なきゃおかしい。
なにせ、パルクールレースで一緒に戦って、何も言わないで消えた――
才野原惠だったから。
さすがに今の時期にクロスなしのるい智じゃきついよなあ
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 00:19:07.15 ID:3WMSXr190
惠「やっぱり、智かい?」
智「惠!?どうしてこんなところに……」
奇遇すぎる再会。
他の三人には全く見覚えがないだけに、惠がいるだけで随分と変な感じがする。
「へ、あれ?知り合い?」
「そうみたいだねぇ、繰莉ちゃんびっくり。でもまぁ、こっちだって知り合いなんだしお互い様じゃない?」
「あーやだけ私たち二人ぶんの知り合いだね」
「いやいや、偶然ですよ偶然!」
女子三人揃えば姦しいとは言うけれど、確かにその通りだった。特に一人、こよりんと同じような香りがする。
僕と惠は顔を合わせて、二人して三人に近づく。
智「あのー」
「あやややっ、く、繰莉ちゃん先輩、よろしくお願いしますっ!」
繰莉ちゃん先輩、と呼ばれたウェーブのかかった長い髪をもつ女の子がふむ、と口を釣り上げる。
繰莉「よろしい。この繰莉ちゃんにお任せなさい」
そういって、僕らの前に出た。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 00:27:17.06 ID:3WMSXr190
一度こほん、と咳払いして。
繰莉「偏平足の香山裕司さんがこういった。かやー」
智「………………」
何なのこの人?
繰莉「あれ、繰莉ちゃん外しちゃった?外しちゃった?」
惠「……いや、外してないよ」
智「惠!?」
惠が彼女に対して微笑みかける。
惠「君は素晴らしいね。僕のも一つ聞いてくれないかな」
繰莉「どうぞどうぞ。お手並み拝見」
惠「では失礼して。ロンドンに住むカナダ人はこう言った。ここに住むのは彼方の人であると」
多分『カナダ』と『かなた』がかかってるんだろうけど、笑えない。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 00:36:38.91 ID:3WMSXr190
繰莉「………………」
惠「………………」
次の瞬間、ガシッ、と二人は握手をしていた。
何かが通じ合ったらしい。
智「…………諦めた」
「あややっ!?」
僕の嘆息に反応するのは繰莉ちゃん先輩と呼んだ少女。
こよりん臭が僅かにする子だ。
智「僕は和久津智。君は?」
ニコッ、と優等生お姉様の笑みを浮かべて自己紹介。
「あ、えっと……あややは阿弥谷縁と申しますです。こちらは友達のよっしーこと芳守南堵ちゃん」
芳守「……ども」
人見知りをする子なのか、僕を警戒しつつ軽く頭を下げる。
よろしく、と握手を求めるととりあえずは握手してくれた。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 00:44:22.91 ID:WBPGzYFZ0
個人的には大歓迎だけど、絶対vipじゃ需要ないだろww
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 00:45:46.71 ID:4t3Lz+Pj0
???「さあ、復讐劇を始めようか」
メルヒェンかと思ったわ
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 00:45:46.95 ID:3WMSXr190
繰莉「いやぁー、めぐちゃん面白いねー繰莉ちゃんここまで波長が合うなんて思ってなかったよ」
惠「僕も君が気に入ったよ。今度一緒に鼻で蕎麦を食べないかい?」
――なんてことをいいながら二人して僕ら三人に近づいてきた。
Q、変人二人。一般人三人。どちらが上か。
A、和解すれば問題なし。
智「そんなわけで何卒よろしくお願いします」
繰莉「何事?」
わからないようで繰莉ちゃん先輩は隣に立っていたアヤヤに問いかける。
えっと、と一呼吸置いてからアヤヤは答える。
アヤヤ「こちらは和久津智さんといいますですよ、繰莉ちゃん先輩」
繰莉「へぇ、どうも。私は蝉丸繰莉ちゃん。超探偵だよ」
智「探偵?」
繰莉「のんのんのん。『超』探偵。超、超大事。忘れるな」
……変人確定。というか蝉丸?
胡散臭い『騙り屋』が脳裏をよぎった。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 00:54:15.91 ID:3WMSXr190
>>55 もうそんなの今更ッスよセンパイwww
繰莉「ふむ。じゃあともちゃんね」
智「……うん、別にいいや」
思考放棄。
あややや、という声が聞こえる。
惠も改めて芳守さんとアヤヤに自己紹介して、ようやく進む。
繰莉「さて、皆の衆。少女Aという存在を知っているかな?」
繰莉が突然に語り出す。
ますます騙り屋っぽい。
繰莉「高倉市内の都市伝説で噂になる少女A。彼女の姿を見る者は多くとも、しかし現実に観測されたことはない」
繰莉「なぜなら、そこには一つのトリックがあったから」
智「……超探偵さんはそれを明かしてくれるの?」
繰莉「いいや。探偵はまとめるだけ。ヒントを拾って集めて眺めてまとめる。推理するのは警察の仕事だよ」
ああもう、あなたは騙り屋さんと一緒にコンビ組んでればいいよ。
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 01:01:45.93 ID:3WMSXr190
繰莉「こほん。……そして今、我々は観測するのさ」
繰莉「ほら――もう、いるよ」
それを合図にしたように唄が強くなる。
僕も、アヤヤも、芳守さんも、惠も弾かれたように顔をあげた。
まるで拘束されているような服。ベルトのようなものが何重に積み重なっている。
首輪と腕輪がチェーンで繋がれてそれでもなんともなさそうにする。
そして髪は白い、白い、白い。羽織っているマントも白く、帽子も白い。殊更に何者にも染まらない無垢な少女を象徴しているように。
彼女は今日も唄ってる。
彼女は今日も答えない。
そして、彼女は僕らを呼んでいた。
智「少女、A」
少女Aと名付けられた少女は。
ただ只管に歌い続けていた。
外界の僕らを全く見やることもなく。
ただ只管に――――
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 01:03:30.15 ID:BW4oH8/t0
おおお暁SSか
人いるのかよwww
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 01:12:49.85 ID:3WMSXr190
Chapter
1 呪いの話とおとぎ話
2 溜まり場にて
3 都市伝説を捜そう!
→???
4 少女Aが呼んでいる
5 僕の居場所
→???
6 邂逅
7 ???←次ここ
セーブします。
明日起きてあったら続けます。
多分ないと思うけどね!こんちくしょう!なんでこんなに知名度ないんだよ!
……ではでは。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 02:13:27.49 ID:WBPGzYFZ0
保守
落ちてても新しくスレ立てて続けて欲しいな
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 02:29:16.74 ID:MzNv7VJ90
同じく
ともちんSSなんかそうないからな
元ネタわからん コミュってなんなの?
真雪と智でアイドルユニット結成か
見た感じ、全体のプロットは作ってあるのか?
こうなると未読エピソードが気になるな
というか、需要ありまくりなんで落ちても制速で続けて欲しいんだが
出来いいんだもんよ
皆まじありがとう、今起きたわ。本当に落ちてると思った。
でもごめんね、起きたら書くって書いたけど、ありゃ嘘だった。
朝は諸用事で出かけるんだ……昼頃には帰る予定。
マジごめん。
>>64 コミュ―黒い竜と優しい王国―の略称。
るいは智を呼ぶと同じく暁Worksより出ているタイトルです。
>>66 あい、大まかな道筋は練ってあります。
もう一番大きな選択肢は過ぎたから言うけど、央輝ルートと惠ルートで、央輝は『機関』寄り、惠は『呪い』寄りのエピソードの予定。
ほ
し
ゅ
ほ
し
ゅ
保守
/_/ . . -‐‐- . .
/ ∠:: /⌒>,, `ヽ
く は
>>1 7__ /ニ、{{∠∠二、 li ハ
れ や / /. -‐…'''⌒ヽ ij _」
| く | / 、__ ,'{ r‐…''⌒ヽーi .<⌒ヽ
| き | {/ヽ) ! iヽ.).:.:.:.:.:.:.:xこ| |i ト、 !i
| て | >''´} ', ',.:.:.:/⌒し':::::::| ij )ノ リ
| | >イ ', V^)⌒V⌒/7 >こノ
| ! ! ! ! >ノ 丶ヽ.__ー__彡' /
っ \ーァ'⌒ヽ.._ \  ̄ {x‐/.:.
! ! ! ! r‐一.:.:.:.:.:/.:.:`ヽ/ ノ __//.:.:.:.:
///l/ ̄`ヽ∧j:.:.〈.:/.:.:.:.:.:.∠二 { ∠´/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 13:35:53.95 ID:3WMSXr190
あい、きました。
昼ごはんも食べたので、再開します。
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 13:36:41.72 ID:MzNv7VJ90
なんて落ち着きのあるスレだ
これがるいともコミュファンの民度が・・・
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 13:45:27.59 ID:3WMSXr190
紅の光が消える。
電気すら通っていないビルは闇に覆われる。
けれど、僕らはそんなことを気にせずただ目の前で唄う少女を見ていた。
しかし、そんな唄だけの静寂も一瞬。
僕たちだけしかいない屋上に――青白い光が渦巻く。
まるで、何かを産み落とそうとしているかのように。
都市伝説を思い出す。
『少女Aに連れられて怪物が現れる』
都市伝説はやはり都市伝説らしい。この少女Aを視たのは僕ら五人だけだ。
そして僕らが初めて集まって、コレが現れる。
だからつまり。
僕らが、怪物を呼んだ。
けれど。
智「――違う」
僕らが呼んだのはこれじゃない。
本能じゃない、何かがそれを告げる。
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 13:53:33.03 ID:3WMSXr190
――現れるのは紅い腕。
今まさに何かに手を染めてきたかのような紅い腕。
――現れるのは蒼い足。
地獄で色を忘れて、血を通わせていないような蒼い足。
――現れるのは赤蒼の槍。
ツートンカラーで彩られるそれは正しくジャベリンの形。
血に染まった紅い腕でそれは振るわれる。
そして、どれも鋼、鋼、鋼――――
――現れたのは、朱と蒼の混ざりあった『怪物』。
人の数倍の大きさのそれは、例えるならば『騎士』のような形をしていた。
声が出ない。
手も動かない。
足が凍りつく。
人が異質な、そして想定外なものに出会ったとしての始めの反応は驚きでも恐怖でもなく、思考の停止だ。
何が起こったか理解できず、それを現実から遠ざける。
故に、人は動かない。これを現実と認識しないが為に。
しかし――その異質の怪物は動く。
僕らを、そしてその後ろの少女Aを狙わんとして。
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 14:03:33.24 ID:3WMSXr190
■■■■■■■■――――!
巨大な騎士は鋼の身体で吼える。
八対と四本の歯がギラリと光る。
光源などないにもかかわらず。
それは踏み出した。
響くのは予想以上に軽い地鳴り。
芳守「っ……!」
芳守さんが唾を飲む。
そして同時、騎士が駆け出した。
それに宿るのは――敵意、悪意。そして、殺意。
幻想ではない意思が僕らを討たんと狙う。
惠「智っ!!」
その進路上――
誰よりも速く、才野原惠が躍り出た。
惠「逃げたほうがいい!ここは僕が――!」
言うが速いか。
振り上げられた槍は惠を真横に引き裂いた。
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 14:10:29.26 ID:3WMSXr190
智「めぐっ……!!?」
僕が見えたのは悲痛に顔を歪ませる惠の顔。
そして同時に舞う鮮血。
アヤヤ「ぃっ――――」
悲鳴。
騎士は留まらない。刃に次なる獲物の血を吸わせんと淡く輝く瞳が光る。
繰莉「ヤバイよともちゃん!」
飄々としていた繰莉から焦った声が飛ぶ。
そんなこと僕だって分かっている。
僕は――――
>>82 1 惠の安否を確かめなきゃ!
2 なんとか切り抜けなくちゃ……
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 14:11:22.70 ID:2SXSX6nI0
めぐむ
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 14:20:28.14 ID:3WMSXr190
→惠の安否を確かめなきゃ!
――そうだ!惠は!
さっきみた惠の顔は苦痛に歪んでいた。
だけど、ただそれだけだ。
あの血だって、大きく舞っているように見えただけで実際の怪我は大したことないかもしれない。
智「めぐ」
繰莉「ともちゃん!前!!」
前。
僕は顔を上げる。
そこには影があった。
大きな影。真上に振り上げた槍は天を突き刺すようだ。
時が止まる。
死ぬ。
直感して思った。
僕は死ぬ。
繰莉も死ぬ。アヤヤも、芳守も。皆、皆死んでしまう。
どうしようもない――袋小路。
智「っあぁあああああああああああああああああああっっっ!!!」
そして時は再び刻み始めて。
その槍が振り下ろされる――――
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 14:21:21.51 ID:3WMSXr190
『――――本当にこれでいいの?』
そうだ、否定しなければ。
余計な事は考えないで。
ただ皆と一緒にいるために。
ああ――――こんなものは―――――――
智「やり直しを要求する!!!!」
望まない――――
これでは駄目だ。
こんな道は棄却せよ。
さあ、もう一度。
――――よりよき結末を探しにいこう。
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 14:23:03.11 ID:3WMSXr190
真雪「教える、真雪先生のコーナー!」
真雪「いやぁやってしまいましたね。初めてのバッドエンドです」
真雪「このコーナーは悲しいエンドを迎えた人や馬鹿な選択肢を踏んだ人のためのコーナーです」
真雪「そんなあなたのために、この柚花真雪先生が次なるヒントや豆知識をレクチャーしちゃいます」
真雪「ここで言えることは一つだけ。行動の意味を理解してあげようということです」
真雪「惠さんだって何の算段もなく盾になったわけではありません」
真雪「るい智本編を知っている人はわかってますよね?」
真雪「じゃ、今回はこのへんで。真雪先生との約束です。選択肢は正しく――」
ブツンッ
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 14:25:56.79 ID:3WMSXr190
バッドエンド
直前のデータをロードします、暫くお待ち下さい……
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 14:31:16.80 ID:MzNv7VJ90
再現度ワロタ
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 14:34:45.58 ID:3WMSXr190
→なんとか切り抜けなくちゃ……
惠が作ってくれた一瞬だけの時間。
僕らはこれでなんとか切り抜けなきゃいけない。
惠は逃げろといった。しかし、逃げ場などどこにもない。
あるにはあるが、あの騎士の真横を通り抜けるなど正気の沙汰とは思えない。
――唄が聞こえる。
少女Aは目の前の惨状にもかかわらず、ただ唄う。
何かを求めるように。
僕らを呼んだ時とはまた違う。
都市伝説。
少女Aに連れられて現れる怪物。
実際には違う。五人集まった僕らがつれてくるのだ。
だから、僕らにもある。
これと、同じようなモノが――――!
智「――こい」
僕は、ただそう意志を持って告げる。
騎士が僕の前に立ちはだかる。
そして、その槍を振り上げた。
僕はそれから目を逸らさない。最後の最後までただ、視る。
風斬音と共に。
無比の刃が振り下ろされる。
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 14:45:56.91 ID:3WMSXr190
ギィン!と。
成り立ての夜の静寂を打ち破る金属音。
唄は何時の間にやら止んでいた。
けれどそんなものは関係ない。
芳守「あ……」
繰莉「ほう……」
芳守さんは呆然として。
繰莉は感心したように声を上げる。
朱の腕が見えた。
手の先は騎士のような五本指でない、三本の鉤爪。
人間でいう肘と手の間の場所にはトンファーをそのまま取り付けたかのようにくねった刃が伸びていた。
振るわれる鞭のような尻尾が視界の隅を過る。
アヤヤ「り……竜…………?」
その声に僕も振り向き、見上げる。
僕の後ろに出現したその姿は――竜。
騎士よりも一回り大きい朱い竜だった。
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 14:55:18.80 ID:3WMSXr190
■■■■■■■■――――――!!
誕生を祝う咆哮。
同時に脳裏に描かれるのは朱い銃身と弾倉。
それは全て朱い竜。
一、二、三、四、五――――
装填されるのは無論弾丸。
その役割を担うのは僕、惠、繰莉、アヤヤ、芳守さん。
一つでも動かすのは十二分。
それが五つ。十分にもほどがある。
やれるか?やれる。問うまでもない。
今しがた、あの断罪の槍を弾いたように。
あの英雄気取りの騎士を――返り討ちにせよ。
朱い竜は――応じる。
僕らの国を、王国を守るために。
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 15:05:55.99 ID:3WMSXr190
紅い竜が地を蹴る。
ただ命令を下した僕らを置き去りにして主へと攻撃を下した騎士へ飛び込む。
驚きに慄く騎士に、鉄槌の一撃を。
轟音が轟いた。
竜の爪は軽々と騎士の表面装甲を引き剥がす。
連撃。
左腕につけられた刃が引き剥がされた装甲の下を切り裂く。
火花が飛び散る。
雷でも落ちたような重音。
まるで身体が置き去りになったかのように感じた。
そこまでされてようやく騎士は持ち直し、素早く飛び去り朱い竜と距離を置く。
■■■■■■■■――――!
その声は怒り。
生まれたての退治されるべき竜が人間様へ噛み付いたことに対する怒号。
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 15:18:39.45 ID:3WMSXr190
それでも、竜は臆さない。
竜はどの世界においても最強と称される生物だ。
それがどんなに子供であろうと、引く理由がない。
騎士は竜へと槍の切っ先を向け、腰に構え、駆ける。
大きく、数歩。たったそれだけで距離は縮まる。
人間には大きい屋上というフィールド。数倍の大きさの生物には狭すぎる。
騎士が振るうのは槍、そして拳。
竜と、そして繋がる僕はそれを迎え撃つ。
轟音轟音、また轟音。
連続して振るわれる拳は捌くのが精一杯だった。
竜の体が重い。どうしようもないほどに。
相手が何をしてくるか、どんな動きをするかすらハッキリと視えているのに身体が追いつかない。
形勢は――変わらない。
智「ぐっ!?」
竜の腕のガードが真下から弾かれる。
捉えられた。
思うが同時、騎士がせせら嗤う。
表情すらないのに嗤ったのを理解した。
やられる――
るい智の地の文がどうしても好きになれない
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 15:31:13.45 ID:3WMSXr190
次の瞬間、竜が掻き消えた。
否。
竜は騎士の真後ろに回りこんだのだ。
繰莉「ともちゃん一人じゃつらそうだからね」
智「……助かる、探偵さん」
繰莉「のんのんのん。『超』探偵。超、超大事」
訂正を心地良く聞きながら、見失った竜に戸惑う騎士に、尾でその巨体を薙ぎ払う。
備え付けられているフェンスに激突し、それがひしゃげる。
そのまま崩れ落ちなかったのは単純にその質量が意外にも軽いからだろう。
同じように、騎士に致命傷にも至らない。
手をついて起き上がるが未だに何が起きたか理解していないと思う。
それは――引力、いや『磁力』。
回り込めたのは真横に磁力で自らの身体を飛ばし、続いて斜方向に引き寄せて後ろに回りこんだ瞬間に解除したからだ。
それを一瞬でやってのけたのは繰莉。
流石変人、伊達じゃない。
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 15:45:48.96 ID:3WMSXr190
繰莉「いっくよ」
智「おっ、け!」
グンッ、と竜の身体が引き摺られる。
それでも問題はない。少しぐらいタイミングがずれたところで繰莉がフォローしてくれる。
先程までとは段違いの速さに騎士は動揺し、しかしジャンプして飛び越えるようにそれを回避する。
繰莉「逃がすかっ!」
グルン、と180度回転し、フェンスに足をかけて『反発』で騎士を追いかける。
騎士よりも更に速く飛越し、真上から尻尾で真下へと弾き落とす。
丁度屋上の真ん中に騎士は落ち、コンクリートが砕けて砂埃が舞う。
まだ、倒れない。
智「止め――!」
騎士の身体から磁力を発させる。
朱い竜は真上。
そのまま重力と磁力、そして竜自体の力で決める――――!
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 15:53:33.85 ID:3WMSXr190
ズン、と。
騎士が槍を地面に突き立てた。
無論、柄を下に、刃を上にして。
繰莉はそんなのを気にせずに、磁力を最大限まで発揮して竜の身体を騎士へと引き寄せる。
同時。
突き立てられた槍に、電撃が走る。
そして、それを推進力に、朱い竜へと槍が突き進む――
繰莉「やっ」
繰莉が慌てた声を走らせる。
だけどもう間に合わない。
僕は攻撃に集中して身体の制御に回れない。
繰莉は磁力を最大限にしたために他の方向に磁力を割けない。
万事休す。
――――それでも。
それでも、と。
拒絶するのならば――
僕は、『視』る。
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 16:00:38.34 ID:3WMSXr190
風を切り、空気を切り、音を切り。
全てを切り裂いた槍は。
グォン、と。
ただ、朱き竜の横を紙一重で避けていった。
勿論、それは僕や繰莉がなにかをしたからじゃない。
最初から槍が外れる軌道上に入っていたからでもない。
ただ、単純。
アヤヤ「あ……アヤヤだって、やるときはやるんです!」
この場には、五人がいた。それだけの話。
『反発』の壁。
相対速度で時速数十キロを超えるスピードの中、紙一重で交わすのが精一杯だった。
だけれども、それで十分。
竜の夕焼けよりも朱い腕節が、紅と蒼を上下に分断した。
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 16:06:26.63 ID:3WMSXr190
Chapter
1 呪いの話とおとぎ話
2 溜まり場にて
3 都市伝説を捜そう!
→ ???
4 少女Aが呼んでいる
5 僕の居場所
→ ???
6 邂逅
7 最初の戦闘T
8 最初の戦闘U
→ バッドエンドT
とりあえず第一区切りは終了。
少しばかり休憩します。
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 16:07:57.47 ID:wfpBV+RR0
アバター経由でイェンフェイの力使ったらどうなるんだ
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 16:25:10.27 ID:3WMSXr190
>>99 能力的には『自分の目が合った者』だからアバター経由では使えない設定。
央輝が相手のアバターの目を見た場合はあり。けれど相手はアバターだしてるし気が大きくなるだけのような気が……
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 16:31:03.09 ID:wfpBV+RR0
>>100 なるほど
テンション上がりすぎてたら暴走するなwww
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 16:36:37.15 ID:3WMSXr190
敵コミュ1「なんだかテンションあがってきたぜー!」
敵コミュ2「ひゃっはー!!」
ノービス達「きゃー、わー」
央輝「どうしてこうなった」
ですね、わかります><
さて、再開するか
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 16:47:57.01 ID:3WMSXr190
こより「あ、センパイセンパーイ!」
智「お、こよりん二等兵」
こより「はいっ!まだまだ成長期の鳴滝二等兵であります!何れは伊代センパイみたいにボンッとなりたい所存です!」
こよりはこよりで需要はあると思うけど。
学校ではラブレターを貰ったとか聞いた覚えがあるし、昔王子様と結婚する約束をしたとかなんとか。
こより「センパイおねーさまはいつものところへ行くのですか?なら鳴滝もご一緒します!」
智「ごめんね、今日はちょっと用事があって」
こより「えぇ〜っ!もしかして彼氏ですかぁ!?」
智「いやいやいやいや」
もしそんなものができたら嫌だ。想像するだけでも嫌だ。
智「少しだけ、ね。明日はいくよ」
こより「はいっ、わかりました!じゃあセンパイ方に伝えておきますね!」
智「うん、よろしくね」
頭を撫でてあげて、こよりと別れる。
『あの日』から数日。
僕は繰莉とアヤヤ、あと芳守の知り合いに会いに行くことになった。
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 16:57:19.85 ID:3WMSXr190
静寂が戻った屋上。
変わったところといえば、上から下にポッカリと穴が出来たことぐらいだろうか。
アヤヤ「き、緊張したよぅ……!」
芳守「あーや、頑張ったね。私は何もできなかったのに」
よしよし、と泣きかけのアヤヤを芳守さんが宥める。
穴を覗いている繰莉を見て、そこでようやく思い出した。
智「――惠は!?」
見渡すと、ひしゃげたフェンスとは真逆の方向に惠がうつ伏せに転がっていた。
血溜まりが出来ている。
僕は急いで身体をひっくり返し、惠の身体を揺さぶった。
智「惠、惠!」
僕に告白してきた変人――あと身長高くて羨ましい――でも血を出して倒れていたら助けないわけにはいかない。
目を閉じていた惠はゆっくりと瞼を開いて、僕は少しだけほっとした。
惠「智……僕は大丈夫だよ……」
掠れた声で惠は言う。
その様子と、顔が青さから全く大丈夫そうにはみえなかった。
智「そんなわけないでしょ!こんなに、血がでて!」
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 16:58:24.52 ID:bON+dLT80
智ちんに釣られてきてしまった
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 16:59:22.46 ID:ZIOTsZAQ0
あずまんがかと思った
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 17:07:47.43 ID:3WMSXr190
惠は僕のそんな様子に、笑った。
安心させる様とかそんなのではなく、純粋な笑み。
惠「なら――見てみるかい?」
惠はそう言うと――そっと、傷口を覆っていた腕をよける。
僕はそこに生々しい抉れた跡があると、そう思っていた。
智「……え」
唖然とする。
アレは紛れもなく致命傷だったはずだ。
生きているのも奇跡といえるレベルの傷だったはずだ。
なのに。
どうして、もうこれほどに傷が塞がり始めているのか。
繰莉「なにこれ、どっきり?」
後ろから聞こえた声に振り返ると、繰莉も覗いていた。
呆れと驚きを含んだように。
惠はゆっくりと上半身だけを持ち上げて、飄々とした表情で僕らに言う。
惠「どうだい、随分とよくなっているだろう?」
証明するように、破けたその白い襟詰をまくり上げる。
繰莉「うわぁ、綺麗サッパリ、ないね。実はめぐちゃん超能力者?」
惠「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 17:08:44.05 ID:bON+dLT80
追いついた
人少ないけどこれは期待
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 17:18:26.75 ID:3WMSXr190
繰莉と惠の話す声が遠くに聞こえる。
いや、確かにあんな大きいと思った傷がふさがっていることには驚くことだ。
だけど、僕にとってはそれよりも重大な事実があった。
智「め、めぐっ……こ、この痣……!」
惠の、左腰。
そこには、僕が、るい達がもつものと寸分違わない『痣』があった。
まだ僕らの他にもこの痣を持つ人がいたなんて……!
同時に納得する。
惠の〈才能〉は自分の傷を回復する力なのだろう。だから致死のダメージを受けても死なない。
惠「おや、智はこの痣を知っているのかい?」
といって、惠は痣を抑える。
智「も、もうちょっとよく見せて!」
惠「とは言っても、だ。僕も同姓とはいえ身体をじりじろ見られるのには恥ずかしさを感じるんだけど」
智「なにいって……ん?」
……同姓?
視線を少しだけ上に上げる。
そこには、男にはない膨らみが僅かながらも存在した。
智「ぎにゃ――――――――っ!!」
混乱した。
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 17:29:41.01 ID:3WMSXr190
惠「僕は一言も男だといった覚えはないんだけどね」
智「そんな詰襟きていきなり僕に告白してきたら誰だって勘違いするよ!?」
惠「そうか。だけど自己紹介をするときわざわざ自分の性別を言う人はいないと思うんだが」
智「それっ、は、そう、だけどっ!」
ああなんかもう混乱する。
隣で繰莉がくっくっくっ、と笑っていた。
繰莉「いやぁー、繰莉ちゃん驚いた。めぐちゃん本当に面白いね」
惠「そう言ってもらえると光栄だよ」
パン、と一拍。
空気を入れ替えるように、繰莉は猫のように伸びる。
繰莉「とりあえずさ、出てどこか気の休まるところにいこうよ。さっきの騒ぎ、下にバレてるかもしれないしね」
智「……そうだね。あまり警察のお世話にはなりたくないし」
繰莉「おんやぁ?ともちゃん本当は悪い子?」
智「僕の人生の目標は植物のように静かな人生なんだ」
なるほどね、と繰莉。
アヤヤを宥めながらこちらの様子を伺っていた芳守さんにも下にいくと告げて、皆で降りる。
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 17:32:22.91 ID:bON+dLT80
そうか、まだ惠のことは知らないのか
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 17:52:15.92 ID:3WMSXr190
途中にあった自動販売機で飲み物を買う。
高倉市内にある大きな自然公園についたときには月も真上、だけど人は少なくなかった。
アヤヤ「ところで、ともちゃんのその制服、南聡学園のですよね?」
智「あ、知ってるんだ?」
アヤヤ「偏差値も高いですし、有名ですから。お嬢様学校なんですよね?漫画みたいにオネエサマとかいたりするのかなぁ、なんて」
智「いるには……いるかな」
……僕のことだ。
アヤヤ「そうなんですか!いやぁ本当に漫画みたいなのってあるんですね!」
アヤヤ「アヤヤ、実際に二次元に行くならアクセプターがいいなぁ、こう、『阿弥谷縁は改造人間である』とかそんな感じで!」
よくわからないことを口走っているような。
……気にしないでおこう。
芳守「あそこらへんがいいんじゃないかな」
繰莉「じゃ、あそこにしようか」
四人がけのベンチに端から惠、僕、アヤヤ、芳守さんの順に座り、まるで舞台上の役者のように繰莉は目の前に立つ。
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 18:00:18.59 ID:3WMSXr190
繰莉「そんじゃ、改めて自己紹介でもする?」
智「……そうだね、あんなことになっちゃったし。じゃあ僕から――」
再び、順に自己紹介。
今度は全員女の子だとわかっただけに先程よりスムーズだった。
アヤヤの反応は面白く、
アヤヤ「惠ちゃんは女の子だったんですかー」
だとか、
アヤヤ「えっ!?ともちゃんって先輩だったんですか!?あやや……申し訳……」
だとか。
小動物っぽい子だ。キャラはつかめた気がする。
繰莉ちゃんは相変わらず。だけど、ちゃん付けを強要された。
……わからない世界だ。
そうして、全員分の自己紹介が終わり。
芳守さんが呟く。
芳守「それにしても……なんだったのかな、アレ」
沈黙が落ちる。
それには誰も明確な答えを持っていない。
普通とはズレている僕と惠も、よくわからない。
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 18:11:42.99 ID:3WMSXr190
繰莉「アバターだよ」
予想外の方向から答えが飛んできた。
繰莉「少女Aが選んだ五人を一つのアバターに装填するの。それ以外の五人は装填できないし、欠けても補充できない」
アヤヤ「く、繰莉ちゃん先輩……?」
アヤヤの問いかけも聞かず、繰莉ちゃんは続ける。
繰莉「今あるアバターの数は……十二十じゃ聞かないんじゃないかな、百は優に越しているはずだよ。その中の大半がラウンドって呼ばれるカバル――うーん、ギルドみたいなモノに入ってる」
繰莉「ちなみに襲いかかってきたアバターはBK、ビギナーキラーと呼ばれるアバターね。強くなるために生まれたてのアバターを破壊しようとする悪い子達」
繰莉「ラウンドもそう言うのをとりしまれないから今力が弱くなって――」
智「ちょ、ちょっとまって繰莉ちゃん」
繰莉「んゆ、なにともちゃん」
智「……それ、何の話?」
繰莉「だから、あの朱い竜と紅蒼騎士の話だよ?」
繰莉ちゃんは当たり前のように言う。
僕らの知らない情報を当然のようにもっていた。
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 18:22:44.14 ID:WBPGzYFZ0
支援
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 18:25:04.36 ID:/IGcGE3H0
茜子は僕のだからな!
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 18:27:08.46 ID:3WMSXr190
繰莉「ともちゃん、探偵の仕事はどういうことか覚えてる?」
智「……ヒントを集めて、まとめる」
繰莉「そう。んで、探偵は事件が始まってからそうするの。それを始まる前にするから『超探偵』」
つまり、繰莉ちゃんが言いたいことは事件(朱い竜が出現する)前にその情報を纏めていた、ということ。
なるほど、超探偵だ。
智「……つまり、僕らが出したり、倒したりしたあれが『アバター』って呼ばれてて、それを纏める組織が『ラウンド』っていうこと?」
繰莉「あーん、探偵の仕事は説明することなんだけどにゃー」
纏めるのはどこいった。
やれやれ、と呆れたように繰莉ちゃんは首を振る。
繰莉「まぁ、つまりー、『アバター』が都市伝説、夜な夜な飛び交うスカイフィッシュの正体ってワケね」
アヤヤ「なるほど……あれ、ってことは……五年前に爆心地に見えた巨大な人の影って、もしかして!?」
繰莉「可能性が高い……けど、掴んだ情報によると最古のアバターは二年前らしいよ?繰莉ちゃん的には五年前から既にっていうのは面白そうだけどね」
アヤヤ「そうですかー」
五年前――心当たりがないはずなのになんかこう、もにょる。
少しだけ、イライラする。
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 18:43:03.69 ID:3WMSXr190
芳守「そういえば」
今まで会話に参加しなかった芳守がいきなり言う。
注目が集まった。
芳守「確か、私の昔の彼が竜にやられたって……」
アヤヤ「昔の彼氏っていうと……例のアレ?」
芳守「うん、あーやが助けてくれたときの……彼。あの時はクスリのキメ過ぎで厳格でも見たんじゃないかって思ったけど……」
智「……竜」
脳裏に浮かぶのは、先ほど僕らが出した朱い竜。
『アバター』にどんな種類があるのかはわからないけれど、噂でも竜を見た、というのは聞いた。
つまり、僕らの他にも竜はいるわけだ。
アヤヤ「っていうと……つまり……瑞和先輩が?」
芳守「うん。あくまで、可能性だけど……」
瑞和先輩、というのがその竜の使い手である確率が高いのだろう。
繰莉ちゃんの情報を聞いてみるのもいいけど……そっちの、アバター使いの先輩の話を聞いてみるほうが確実かもしれない。
繰莉「へぇ、あきちゃんがねぇ……こりゃ面白くなってきた」
智「繰莉ちゃんも知ってるの?」
繰莉「知ってるも何も、屋上で不可侵条約を結んでいる後輩さ」
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 18:47:29.56 ID:5PwWzmYU0
__
/:'⌒⌒ヽ\
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∠ィ ∧ マ六7入: :\
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≪∠iししi_≫
ト-「 ト┤
└'' `┘
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 18:49:02.85 ID:T3IAzpw20
るい智は好きだけど、コミュは主人公がうざかった
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 18:51:48.95 ID:5PwWzmYU0
FDの機能使えば紙芝居みたいなのとか出来そうだ
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 18:54:03.29 ID:3WMSXr190
×厳格
○幻覚
不可侵条約っていうのがいまいちわからないけど、知り合い以上の関係であるのはわかった。
アヤヤの先輩で繰莉ちゃんの後輩。
つまり僕と同学年ってことだ。
智「ダメで元々、話を聞きに行くことって出来ない?」
繰莉「どう思う、後輩ちゃん」
アヤヤ「あやややっ、アヤヤですか!?えっと、智先輩とかは綺麗なのでご遠慮したいところだったり……」
……何の話をしているのかわからない。
そんな顔をしていると
惠「話からすると、その瑞和先輩とやらは男の人らしい。それで、アヤヤがその彼にお熱、ということじゃないかな?」
智「ああ、なるほど」
つまり余計な虫は寄ってほしくないと。
アヤヤ「うー、うー……」
アヤヤは唸り、悩む。
僕はなんとなく微笑ましくなる。
僕にはこの呪いがある限り、一生恋や恋愛なんてできないから。
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 18:58:43.09 ID:3WMSXr190
うっは、文章途中で切れてるッス!
『
……何の話をしているのかわからない。
そんな顔をしていると、惠が肘で啄いてきて秘密話をするように小声で言う。
』
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 19:07:01.61 ID:3WMSXr190
だからアヤヤの肩に手をおいて、微笑む。
学園の人に見せたらきゃーきゃー言われること間違い無しのスマイルだ。
智「大丈夫、僕はアヤヤのことを応援する。僕は今は恋愛に興味ないから」
アヤヤ「智先輩……うっー!」
最後に唸ったかと思うと、バッ、とアヤヤは両手を上げて立ち上がる。
そして振り切ったように叫ぶ。
アヤヤ「決めました!皆で行きましょう!それでアッキー先輩に全部言ってもらいましょう!!」
芳守「あーや、声、声」
アヤヤ「あ、あやややや〜」
注意され、しょぼんとした表情で再びベンチに着く。本当に微笑ましい。
智「じゃあ……僕もそろそろ帰らなきゃいけないし……今度駅前で集合ってことでいい?」
繰莉「おーけー、迎えにいくよ」
アヤヤ「アヤヤも問題ないです!……あ、惠先輩はどうしますか?」
惠「僕かい?僕は遠慮しておこう。これでもそれなりに忙しい身なんだ」
アヤヤ「そうですかー、残念です……」
しょぼーん、としたアヤヤの頭をなんとなく撫でる。
あややや、と照れるのが印象的だった。
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 19:18:56.58 ID:3WMSXr190
そして、メールアドレスを交換して帰路についた……のが数日前、あの日の夜。
ちなみに帰り道、僕も惠と同じ痣を持っていることと、そしてあの時の皆も痣を持っていることを明かした。
惠『痣を持っている人が、そんなに?』
と驚いた表情が印象的だった。
今度皆のところに招待するよ、ともいってみたけれど、『気が向いたらいくよ』とのらりくらりとしたものだった。
まぁそれが惠らしいとも言えるのかもしれない。
パルクールレースを手伝ってくれた惠が実は同じ呪い持ちの仲間で、それも女の子だったと知ったら皆驚くだろうな。
――っと、今はそれよりも、だ。
向こう……繰莉ちゃんより連絡がきて、『本日集合』とのことだった。
そんなわけで僕は電車に揺られて再び『新都心』まで、というわけだ。
今日は私服で、ガードはバッチリ。
『次は――高倉駅、高倉駅』
駅のアナウンスが鳴る。
目の前の電車の窓に僕の姿が映る。
……うん、今日も女の子。
智「じゃあ、行こうか」
今日も今日とて、バレないように。
僕は『新都心』へ一歩をまた踏み出した。
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 19:20:47.57 ID:3WMSXr190
Chapter
9 戦いの後
10 ???←次ここ
ご飯とお風呂行ってきます
予想以上に9が長くなった……
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 19:45:56.30 ID:5PwWzmYU0
。 。
, -'―'-、
/i\(::(・ω・)<いってらっしゃい
⌒'⌒/レ::::::::レ
.しー-J
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 20:09:54.82 ID:5PwWzmYU0
ほす
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 20:24:39.16 ID:bON+dLT80
>>121 いいアイデアだ
コミュキャラとコラボできないのが残念だが
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 20:40:09.73 ID:WBPGzYFZ0
支援
なんて俺得
今から読む
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 20:43:58.29 ID:3WMSXr190
FDの機能を使った紙芝居のような物語なら一人でやってるんだぜ……
というか皆やるよね?ね!?
では、のんびりと。
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 20:50:15.65 ID:3WMSXr190
こんにちは!鳴滝こよりッス!
実は最近悩んでることがありますです。
それは鳴滝のセンパイおねーさまことともセンパイの様子がおかしいことです。
皆といるときはそうでもないのですが……なんというか、少し引いたような感じなのであります。
そして今日、鳴滝は溜まり場にいく途中にともセンパイと会いました。
こより「あ、センパイセンパーイ!」
ともセンパイを見るととても嬉しくなります。
何故でしょう?優しいから?
うーん……わかんないッス……
智「お、こよりん二等兵」
こより「はいっ!まだまだ成長期の鳴滝二等兵であります!何れは伊代センパイみたいにボンッとなりたい所存です!」
どーやったらあのスイカやメロンみたいな大きさにできるのか……
未来への宿題ッスね。
そんな鳴滝をセンパイは生暖かい目で見ているのでした。
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 20:56:28.51 ID:3WMSXr190
こより「センパイおねーさまはいつものところへ行くのですか?なら鳴滝もご一緒します!」
えへへ、ともセンパイと二人っきりーと幸せに浸るのも束の間。
ともセンパイの返事でそれは淡くも崩れ去るのです。
智「ごめんね、今日はちょっと用事があって」
ズガン、と脳天にトンカチを貰ったかのような一言。
心なしかお星様が見たような気がしました。
ともセンパイが今までこうして直接いうようなことはあまりありません。
だから鳴滝はセンパイに……その……大事なひとが出来たのかと思ったわけでして…………
こより「えぇ〜っ!もしかして彼氏ですかぁ!?」
智「いやいやいやいや」
センパイは苦笑いしながら否定をしましたが、鳴滝の目は誤魔化せません。
これは……ともセンパイの貞操の危機が!
まさか花鶏センパイ以外にともセンパイを狙っている人がいるなんて!
……ともセンパイは鳴滝からみてもとても魅力的な人です。ですから男子から見たらもっともっとかもしれません……
あうぅ……
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 21:01:31.52 ID:3WMSXr190
智「少しだけ、ね。明日はいくよ」
ともセンパイは鳴滝を励ますためか、微笑みながらそんなことを言ってくれました。
やっぱりともセンパイは優しいです。
……ですので!鳴滝はどこの馬の骨ともしれない男性の方にともセンパイを任すわけにはいかないのです!
気づいたら騙されて傷物、なんて……
……ぶるぶるぶる。
こより「はいっ、わかりました!じゃあセンパイ方に伝えておきますね!」
嘘です。
茜子センパイがいたら真顔でそう言われちゃいますね……
智「うん、よろしくね」
センパイはおねーさまスマイルを浮かべて鳴滝の頭を撫でてくれました。
すると途端に罪悪感が募ります。
うぅ……センパイ、鳴滝は悪い子です……センパイのお願いを聞けませんでした…………
そんな心持ちのまま、鳴滝は人ごみへと消えていくともセンパイをこっそりと追いかけるのです。
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 21:09:47.10 ID:3WMSXr190
こっそりと追いかけているうち、ともセンパイがどこに向かっているか気づきました。
駅です。或いはその向こうかもしれませんが、そちらはともセンパイの家の方面なので、それならわざわざこちらまで来ないと思うわけです。
しかし……
こより「鳴滝には……危険ッス…………」
駅には改札というものがあります。
アレは切符やパスを通して……『開く』ものです。
いえ、勿論いくつかは通ったことがあります。
しかしともセンパイの行く先が私の知らない場所だったら……
……どうしよう。
いえ、解決方法も勿論あるのです。改札の扉が閉まらないうちに切符やパスを通し、開いたまま通ることです。
しかし、誰もいなかったら……?
こより「早くしないと……ともセンパイがいっちゃう」
騙されて傷物にされちゃいますよう!
誰か……誰か!
神様仏様、どうか、どうか鳴滝を助けて下さい……!
そんな真摯な鳴滝の願いが届いたのか。
神様は本当に奇跡を起こしてくれました。
るい「……こよちん、なにしてんの?」
声がして、振り向いたら……センパイ方がいらっしゃったのです。
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 21:13:55.19 ID:3WMSXr190
花鶏「こよりちゃんがまだこんなところにいるなんて珍しいわね……何かあったの?」
鳴滝は嬉しくて嬉しくて、涙がこぼれてきました。
呪われたこの世界にも、奇跡ってあるんですね……
伊代「ちょっ、あなたどうしたの!?」
茜子「ちびちびうさぎが茜子さんたちを見ただけで泣くとは……ただごとではありませんね」
るい「……こより、何かあったの?るいねーさんに話して?」
皆さんの温かい言葉が身に染みます。
センパイ方に助けを求めましょう。
そして一緒に……
こより「――ともセンパイを、助けて下さい!」
138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 21:17:42.09 ID:8nnQvm/C0
ひどい誤解だwwwww
こよりん、いろいろと言葉が足りない!
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 21:27:32.02 ID:3WMSXr190
今更だったけど、高倉駅じゃなくて新高倉駅だった……
僕が駅についたとき、時計台の下には既に超探偵が立っていた。
……結構目を引く。けれど性格は残念。
がっかり美人だ。
繰莉「あ、きたきた」
小帰宅ラッシュの人ごみの中に僕を見つけ、大きく手を振る。
僕はスカートが翻らないように小走りで駆けて、その場所へと向かう。
繰莉「少し遅かったね?あ、よっしーと後輩ちゃんはもう向かってるよ」
智「そうなの?じゃあ案内してもらえる?」
繰莉「合点承知」
チェシャ猫のように口の端を吊り上げる。
やはりこの先輩は化猫という言葉がよく似合いそうだ。
「……あれが、……の待ち合わせ相手?女の子じゃ…………」
「……えいえ、わかりませんよ。人畜無害そうな風を装って、……センパイを……に落とそうとしているのかも……!」
たしかに繰莉ちゃんは油断ならねえがwww
考えてみれば繰莉、智、恵だから詐欺師コミュなんだな
るいともは大好きなんだけどコミュはやった事無いな 興味は少しあるんだけどにやけ目が気になってしまって落ち着かない FDも面白さ半減 気付かなきゃ良かった
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 21:34:50.35 ID:3WMSXr190
智「……?」
人ごみを振り返る。
だれもいない。
繰莉「どーしたのともちゃん?」
智「ううん、なんでもない」
なんだか聞き覚えのあるような声が聞こえたような気がしたんだけど……
あと、感じたことのある気配……
…………気のせいかな。
智「……あれ、そっちは公園じゃないの?」
繰莉「今しがたメールが来てね。あきちゃんたち、今は公園で話してるっぽいよ」
アウトドアな人なのかな。
まぁアヤヤが惚れてるっていうぐらいだし、多分いい人な気がする。
通るビルのウィンドウに映る自分の顔。笑顔を浮かべて練習する。
……うん、問題なし。
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 21:42:07.41 ID:f0bC+DCo0
コミュ知らないけどるい智好きだからwktk
わくてか
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 21:43:57.87 ID:3WMSXr190
着くまでの暇つぶしと同時に、情報収集。
智「そういえば、その瑞和って人ってどんな人なの?」
繰莉「あきちゃん?あきちゃんは……後輩ちゃんを男の子にしてもっとフェミニストにした感じだね。悪く言えば偽善者ってやつかな」
智「偽善者」
偽善者といえば僕もだ。
呪いを踏んでしまうことを恐れて人と一線を引くくせに、どこまでも厳しく出来ない。
泥沼に潜り込んだ人がいたら見過ごせない。
植物のような人生が信条のくせして。事なかれ人生を目指しているくせして。
智「……気が合いそう」
繰莉「そお?あ、みえてきたよ」
道が開き、緑の自然が豊かになる。
真ん中には噴水があり、その場所付近に最近知り合った二人の姿。
そしてその他にいるのは……六人。
……あれ、どこかで見たことがあるような…………?
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 21:50:52.29 ID:3WMSXr190
「あ、先輩」
唯一いる少年がこちらに気付く。
惠の予想では確か瑞和は男だから……恐らく彼がそうなのだろう。
……ふむ、確かに人畜無害そうで人生の切り抜け方も上手そうだ。
「見て見て!あの男、沢山女の子つれてるわ!くそ、羨ましい…………!」
「もしかして、あの子達みんな……?」
「と、……センパイも食べられちゃうんですかぁ!?」
「もしそうなったら……ガルルルル…………」
「どうどう。落ち着いてください。様子を見てからでも遅くはないはずです」
…………気のせい、だよね?
なんだか本当にものすごーく、聞き覚えのある声が聞こえた気がしたんだけど。というか聞こえたんだけど。
……気づかない振りをしよう、そうしよう。
「あ、繰莉さんお久しぶりです」
繰莉「べにちゃんおひさー元気してる?」
「ええ、そりゃあもう!」
僕らが近づいて、アヤヤと芳守さんも僕らの側に回った。
さて、ここからだ。
148 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 21:51:18.32 ID:WBPGzYFZ0
支援
明日まで残っててくれー
ともちん!
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 22:04:14.17 ID:3WMSXr190
いるのは六人。
瑞和。べにちゃんと呼ばれた子。アチャーファッションのちまい子。
メイド服の女の人。耳にピアスをして目付きの悪い子。
そして――黒い黒い、黒い女の人。
智「――――」
いつか見た夢。
僕の知らない記憶。
丘の上で集まった僕を含めた五人。
その中の一人に――彼女が――――
次の瞬間。
背筋に悪寒が走った。
「……化猫。その女は誰だ?」
繰莉「まぁまぁ、そんな殺気だたないで。単純にアキちゃん――あとべにちゃんたちかな、聞きたいこと――ってあれ、いーちゃん?」
繰莉ちゃんの視線が目付きの悪い子で固定される。
チッ、と舌打ちされた。どうやら知り合いみたいだ。
151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 22:13:33.81 ID:3WMSXr190
「……てめぇ、どうして……それに瑞和の知り合いだと?ふざけろ」
瑞和「あれ、先輩知り合い?」
繰莉「うん、繰莉ちゃんが今お世話になってるおねいさん達。いーちゃんの縄張りだから」
「……クッ、伊沢、だからいーちゃんか」
チッ、と伊沢と呼ばれた女の子は再び舌打ちをする。
縄張りとか物騒な単語が聞こえたけど……まぁ央輝もあれで縄張りとか部下とかもってるから……
「……それで、その人はどこのどなたなんですか?なんだか物凄く接点ありそうにはみえませんけど……訳ありですか?」
カエル帽をかぶった眼鏡ちみっ子がズレた軌道を修正する。
瑞和「……確かに。先輩、紹介と説明お願いできる?」
繰莉「もちのろん。そもそもそのつもりだったしね。こちら――」
繰莉ちゃんが言いかけたところに待ったをかける。
黒い女の人の目が細くなった。すごい怖い。
繰莉「……どうしたの?」
智「……自分で言うから」
繰莉「そう?ならお願い」
繰莉ちゃんはあっさりと引いた。
そして僕が代わりに前に出て、視線をその身に受け止める。
しえん
wktk
154 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 22:20:56.84 ID:3WMSXr190
視線で人が死ぬなら僕は既に死んでいるだろう。
……恨まれる覚えもないのに、一番強そうな人から殺気が出てるし。
智「えっと……僕は、和久津智。南聡学園の二年生、です」
「南聡!?うわぁ、お嬢様じゃない!」
「……ふん」
「僕っ子ですか。ぷらすお嬢様。ステータス高いですね」
「……それで、お嬢ちゃんはなんのようできたの?」
三者三様に反応を示した後、メイド服の女性が質問をしてくる。
直球で言うべきか否か、少し迷う。繰莉ちゃん、アヤヤ、芳守さんと視線を交わす。
皆言え、と言っているように思えた。
……しょうがない。
こうして僕はいつもハズレくじを引くんだ。
智「実は……目覚め、まして」
瑞和「……何に?」
智「……アバター?」
何故に疑問形、とは思いつつもいう。
ぞわり、と空気が一変したかのように感じた。
155 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 22:23:09.04 ID:B5dSjeHg0
しえんしえん
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 22:28:49.02 ID:3WMSXr190
ガタン、と立ち上がるのは伊沢さん。
伊沢「テメェ、それをどうして俺達にいう必要があるんだ、それともなにか、俺達を倒して名をあげようとか企んでんのか、あぁ!?」
「ちょっ、伊沢!落ち着いて!」
伊沢「うるせぇ!板胸は黙ってろ!」
「板……っ!?」
禁句だったのかなんなのか、べにちゃんはそれで言葉につまる。
伊沢さんは僕を威圧しながら近づいてくる。
伊沢「さぁ答えろ。テメェは一体なんの為に……ッ!?」
伊沢さんが奇妙な動作をとった。
まるで何かを某女するかのような――
同時。
砲弾が飛んできた。
るい「るいちゃんきーっくっ!!!」
手加減無用のるいちゃん砲弾。
防御したとはいえ直撃した伊沢さんは数メートル、『飛んだ』。
――って、るい!?
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 22:34:14.20 ID:3WMSXr190
某女ってなんだよ……防御だろ…………
「智に手を出す奴には容赦しないぞ!!」
吹き飛んで動かない伊沢さんに向かってるいはいう。
僕は呆然とする。繰莉ちゃんたちも唖然とする。
「ほう」
黒い女の人が感心したように呟く。
それはきっと賞賛だ。
防がれたのにあれほどに理不尽な力に対しての。
「え、え、え!?」
「な、何が起こったんですか!?」
べにちゃんとカエルの子は未だに理解が追いついていない。
当たり前だ、いきなり飛んできた爆弾に対処できる方がおかしい。
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 22:42:07.95 ID:3WMSXr190
花鶏「全く、飛び出すなら飛び出すっていえっての」
智「あ、花鶏!?」
花鶏「やっほともちゃん。助けに来たわよ」
別に呼んでないよ!?
こより「センパイ!無事ですか!?」
伊代「どうやらまだ無事みたいね」
茜子「にゃーたちも助太刀しますぞ」
智「こより!?伊代と茜子まで!?」
どうして皆こんなところにいるの!?
るい「ガルルルルルルルル…………」
智「るいも戦闘態勢やめてよ!?」
なにこれ!?なにこれ!?
混乱する僕の視界の奥で、るいの一撃を食らった伊沢さんがゆっくりと立ち上がる。
……うそだぁ
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 22:48:10.82 ID:3WMSXr190
伊沢「クソやろうが……バカみたいな力もちやがって、それがテメェのコミュか……」
るい「コミュだかカミュだかしらんけど、智に手ぇだすやつは私が許さんからね!」
伊沢「そうかよ……なら」
伊沢さんは胸の中に手を突っ込み――それを僕らに向けた。
銀色に輝くそれは、平和な公園ないでは只管に浮く。
――拳銃。
伊沢「一緒に死ね」
瑞和「ばっ、やめろ伊沢!」
その彼女の反応に瑞和が即座に対応する。
るいの盾になるように、立ちはだかった。
伊沢「うるせぇ瑞和!テメェも一緒にぶち抜くぞ!!」
暴走して我を亡くしている。
駄目だ、このままだと――
「――ほう、ならやってみるがいい」
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 22:53:12.82 ID:3WMSXr190
伊沢「ぬ」
それが、彼女の断末魔。
次の瞬間には地に沈んでいた。
「ふん、他愛もない」
瑞和「……流石カゴメさん、お見事です」
カゴメ「暁人。お前も私のパートナーなら私の手を煩わせないようにしろ。でなければまずはお前から殺す」
暁人「なんでだよ!」
るいも花鶏も唖然とする。
るいの一撃でも倒れなかった彼女を、彼女――カゴメさんは一瞬で地に伏したのだ。
まるで、魔法でも使ったかのように。
茜子「――魔女」
茜子がボヤく。
茜子に言わせるとは相当だ。
しかし、それ以上にどんな言葉も似合わないことも事実。
――彼女は、魔女だった。
そして、伊沢さんは最後に何を言おうとしていたのだろう……?
161 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 22:57:55.84 ID:3WMSXr190
Chapter
9 戦いの後
10 迷探偵こより!
11 第一次遭遇
12 ???←次ここ
すこしだけ休憩挟みます
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 22:58:12.80 ID:B5dSjeHg0
ぬ?
伊沢はコミュの癒しだな
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:02:25.55 ID:3WMSXr190
ちなみにコミュ陣の呼び名が色々と間違ってた……
繰莉→アヤヤ
後輩ちゃん→あやちん、あーちん
アヤヤ→繰莉
繰莉ちゃん先輩→繰莉先輩ちゃん
申し訳……
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:04:21.70 ID:B5dSjeHg0
wktk
がんばれ
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:21:00.77 ID:tydwrCna0
ほすすs
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:28:49.58 ID:3WMSXr190
うし30分、再開!
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:30:45.51 ID:B5dSjeHg0
キター
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:41:17.90 ID:3WMSXr190
落ち着いたところで、僕らは場所を移した。
公園のど真ん中から、森の奥。
ここならよっぽどなことをしない限りバレないだろう。
繰莉「それで、ともちゃん。彼女たちは?」
繰莉ちゃんは早速それを聞いてきた。
るいと花鶏は周り皆を警戒し、こより、伊代は借りてきた猫のように大人しく、茜子はただカエル帽の子を眺めていた。
……茜子はなにしてるんだろう。いや、いつもやってることはわからないけど。
智「うーんと……友達。この赤髪のがるい。銀髪のが花鶏。うさぎちゃんがこより。眼鏡が伊代。それで、茜子」
るい「ガルルルル……」
智「るい」
るい「しゅーん……」
ピシッ、と軽く叩くと瞬く間に縮こまる。
全く……別に何もないのに……
171 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:51:36.83 ID:3WMSXr190
花鶏「ねぇ智。次は私たちの番よ。順番に紹介して頂戴」
花鶏が急かす。
まぁ確かに順番的にはそうなんだけど……僕もまだまともに知らない人たちが六人いるし……
そう思い戸惑っていると、アヤヤがビシッ、と手をあげた。
アヤヤ「阿弥谷縁です!気軽にアヤヤって呼んでください!」
それを皮切りに、僕の知り合い側は流れるように名乗る。
芳守「芳守南堵。よろしく」
繰莉「繰莉ちゃんは蝉丸繰莉。調べ物があるときにはこの超探偵にお任せだよ」
花鶏「蝉丸?あの胡散臭い詐欺師の知り合い?」
流石花鶏。僕も聞けなかったことをズバッと聞く。
ん?と繰莉ちゃんは目を丸くした後に考える素振りをみせた。
繰莉「……あ、もしかしていづるっちのことかな」
るい「え、知ってるの!?」
るいがいち早く反応する。
そりゃあそうか。何があったかわからないけど、るいにとっては恩人らしいから。
繰莉「あれは繰莉ちゃんの遠いとおーい親戚。一応血はつながってるってレベルだけど、親族の中じゃ一番仲いいかもね」
そりゃそうでしょうね、と花鶏。
やはり彼女も変人だと見抜いていたようだ。
172 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 00:02:31.09 ID:iV1S0FAa0
暁人「……そろそろ俺もいいかな?」
アヤヤ「ど、どうぞ瑞和先輩!」
瑞和が少し呆れの入ったように言うと、アヤヤは慌てて許可をだす。
彼はあはは、と少しだけ笑い、咳払いを一度。
暁人「俺は瑞和暁人。一応このコミュのリーダーをやってる」
花鶏「……コミュ?コミュニティ――グループのこと?」
花鶏はなんのことかわからず、首を傾げて自分のもつ知識から引き摺り出す。
しかしそれでも正解からは程遠い。
暁人「あれ、知らないのか?俺はてっきり……」
繰莉「アキちゃん、アキちゃん」
繰莉ちゃんに呼ばれ、瑞和は言葉を中断させて振り向く。
暁人「ん?」
繰莉「ともちゃんのコミュは、繰莉ちゃんたち。そっちの子達は全く関係ないの」
暁人「なん……」
しまった、といったような表情をした。
目覚めた、といってから伏兵のように登場したから、勘違いしても仕方が無いとはおもうけれど。
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 00:09:08.24 ID:O1jNVXZ40
しえん
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 00:13:14.68 ID:iV1S0FAa0
カゴメ「だから暁人は馬鹿なんだ。ちゃんと確信も持たないままそうやって不用意に口走るから」
暁人「うるせー、じゃあお前はわかってたのかよ」
カゴメ「無論だ。そもそもその化猫が連れてきた時点でなんらかの関係があると思うのが普通だろう」
ぐっ、と瑞和は押し黙る。
多分何度も口喧嘩で負けているんだろうな、となんとなくおもった。
カゴメ「……比奈織カゴメだ。好きな言葉は暴力と恐怖。好きな事は暁人をいじめることだ」
暁人「さらっと変な事いってんじゃねぇよ!」
……比奈織カゴメ。
さっきの瞬殺コンボといい、今の台詞といい……とても敵には回したくない。
あと……勘も鋭そう。ぼろを出さないように気をつけなきゃ……
暁人「えーっと……このちまいのは」
「待ってください暁人さん。自己紹介ぐらい自分で出来ます」
そう言うのはカエル帽に眼鏡をかけたあちゃーファッションの女の子。
年齢は……こよりぐらい?
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 00:22:51.88 ID:iV1S0FAa0
「柚花真雪です。ちなみにこのファッションは世を忍ぶため。この帽子と眼鏡をはずすとアイドル並の美貌に変身します」
伊代「え、それ本当?」
真雪「はい、嘘ですが」
伊代「………………」
伊代がなんだか複雑そうな表情をした。
いいたいことはよくわかる。とてもわかる。
ではお春さん、と真雪はメイドさんにハイタッチでバトンを受け渡す。
春「私は春日部春。気軽にお春さんってよんでもらって構わないからね」
ぼよん、とその胸の物体が揺れる。
……もしかしたら、伊代以上かもしれない。
花鶏もそれが気になるようで、バレないように伊代のと見比べていた。
春「んで、この子は伊沢っち。ちょっと問題ある子だけどいいこだよ」
伊沢「うるせぇ、さわんな」
お春さんが伸ばした手を伊沢が弾く。
チッ、ともう何度目かになる舌打ちをした後、不機嫌そうに名乗る。
伊沢「……伊沢萩だ。女だとかぶっこいたら殺す」
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 00:30:17.91 ID:iV1S0FAa0
物騒な……え?
危うく聞き逃すところだったけど……『女だと言ったら殺す』って言ったんだよね?
つまり……今の発言からすると……
こより「お、男の方だったんですね……」
僕もずっと女の子だと思ってた。
ナチュラルに間違われるとかすごい。
僕もそれなら、普通にパンツルックとかでもよかったのに……
伊沢「ほら、最後はテメェだ」
「え、あ、う、うん……」
最後の子は、べにちゃんと呼ばれていた女の子。
ちらちらと、僕の隣の花鶏を気にしている様子だった。
「あ……う……た、竹河、紅緒……です」
紅緒、故にべにちゃん。なるほど、理解した。
それでも――初め会ったときはもっとアクティブな子かと思ってたのに。
名乗り終わったあとも、ちらちらと花鶏のことを気にしていた。
暁人「……紅緒、どうかしたのか?」
紅緒「ふぇ!?い、いやなんでもないなんでもない!!」
なんでもあることありありだ。
一体なんなのか……
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 00:37:22.25 ID:iV1S0FAa0
花鶏「……ああ、なるほど。紅緒ちゃんか」
隣から納得の言ったような声が聞こえた。
えっと……花鶏さん?その口ぶりだと、何か知っているような……
花鶏は微笑を湛え、そして髪を掻き上げる。
花鶏「……久しぶりね、紅緒ちゃん?」
ビクッ、と紅緒の身体が震えた。
紅緒「お……お久しぶりです、花鶏さん……」
すぐ横にいる瑞和も何か怪訝な顔をしていたが、次の瞬間に何かに思い当たったような表情をした。
暁人「紅緒……もしかして、前に言ってたファーストキスを奪われた年上のかっこいいタイプのハーフやらクォーターやらの女の人って……」
紅緒「いやぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!いーわーなーいーで―――――っ!!!」
……なるほど、合点がいった。
花鶏がやったのか。
こより「なむなむです……」
伊代「可哀想に……」
智「元気だしてね……」
花鶏「ちょっと!どうして私が悪者よ!!」
同盟被害者の会は竹河紅緒さんに心から同情した。
FDシナリオ応募当選した俺が支援
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 00:55:06.42 ID:iV1S0FAa0
るい「……それでさー智、結局なんなのこの人達」
なんなの、と言われても返答に困る。というか君たちは本当なんできたんだ。
こより「たはは……ともセンパイが悪い人に騙されて傷物になっちゃうかと思って……」
智「ならないよ!!」
だって傷物なる以前に死んじゃうし!
花鶏「でも智……本当にどういうこと?」
花鶏の口調は、少しばかり僕のことを攻めていた。
その理由は――思い当たる。
智「え、えっと……偶然であった知り合いで……」
けれど、僕はお茶を濁して逃げようとする。
しかしながら、相手は花鶏だ。頭の回転が速い彼女に口論では勝てない。
花鶏「偶然程度で、こんなに人と繋がるつもり?」
花鶏は攻めている。
迂闊に人の手を求めた僕を。
人とは違うくせに、人を求めようとした僕を。
花鶏「わかってるの、智?私達は――」
『呪われて』いるのよ。
言外に花鶏はそう告げた。
180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 00:55:39.92 ID:Dodt6R0i0
あなるふぃすとまだー??
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 01:05:58.56 ID:iV1S0FAa0
――分かっている。
呪われていることぐらい、わかってる。
普通の人が僕らを受け入れないことぐらい、わかっている。
僕らは僕らの同類にしか受け入れられない。
人は、異質を排除するから。
だから花鶏は僕を攻めている。
そんな態々傷つくような真似をして、と僕のことを思って攻めている。
智「……ごめん」
僕は知っている。
僕の居場所はあの高架下だ。
一階と二階以外に何も入っていないテナントビルの屋上だ。
呪われた同類の、皆がいる場所だ。
わかってる。
それなのに、花鶏は僕が謝っただけじゃ怒りが収まらないのか、口にしてはいけないことを口にしようとしかける。
花鶏「そもそも智、あなたは自分の呪いすら――」
暁人「ごめん、ちょっといいか」
花鶏が完全に壊そうとする前に。
空気を呼んだ瑞和が僕らに割り込んできた。
花鶏「……何、アンタ。邪魔しないで頂戴」
暁人「いや……花鶏っていったっけ、少し話を」
花鶏「名前を気安く呼ばないで。私は男が嫌いなの」
182 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 01:17:14.31 ID:iV1S0FAa0
ピシャリと取り付く島を見せない花鶏に暁人は一瞬だまり、花鶏はその隙を逃さない。
花鶏「話は終わり?ならどいて。私の話はまだ終わってないから」
暁人「……いや、だから聞いてくれ。多分、その智がどうして君らじゃなくて俺達のところにきたのかって理由を。聞いてからでも遅くないだろ?」
花鶏「遅いわ、遅すぎる。聞く価値なんてない。どうしてもどかないっていうなら――」
力づくで。
そう、花鶏が瑞和に手を伸ばすより速く。
花鶏が宙を舞った。
ふわり、と漆黒の黒髪が舞う。
――魔女。
花鶏とはまるで真逆の色が、彼女を侵食した。
ドサッ、と
るい「あ――――花鶏ぃっ!!?」
誰よりも速く名前を呼んだのは、仲間思いのるいだった。
暁人「か、カゴメ!」
カゴメ「パートナー、手出しは無用だ」
暁人「無用も何も、あれじゃ」
カゴメ「攻撃の軌道が読まれて防がれたのは、始めてだ」
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 01:26:08.62 ID:iV1S0FAa0
もぞり、と。
宙に浮かされて地面に叩きつけられた花鶏が動いた。
花鶏「いっ、たいわね」
喋るだけ、まだ余裕がある。
るい「花鶏!大丈夫!?」
るいが急いで駆け寄って、花鶏の怪我の様子を伺った。
大きな怪我はないと判断しほっとするのも束の間、同時にるいの怒りに火がつく。
るい「あの――ヤロウ」
今にも飛びかかろうとする
花鶏「皆元。やめときなさい。猪突猛進のアンタじゃ勝てないわ」
るい「でもっ!!」
花鶏「無論私も勝てない。今のだって攻撃を急所から外すので精一杯だったもの」
花鶏は極めて冷静に判断していた。
しかし、内心ではプライドの炎がたぎっていることだろう。
花鶏はプライドに理由付けて立ち向かうメリットよりも、負けて失うモノのほうが大きいと判断したのだ。
つまり、それほどまでに魔女は圧倒的だった、というわけだ。
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 01:35:26.72 ID:O1jNVXZ40
かごめすげえな
185 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 01:39:26.79 ID:iV1S0FAa0
カゴメ「良い判断だ。暁人に届く前だったから今ので許してやろう。ちなみに触れていたら三度やるところだった」
花鶏は顔を僅かに歪めた。
多分その口の中では歯が欠けるほどにかみしめているはずだ。
花鶏のプライドの高さは、同盟一だから。
そのプライドを捨てるには、花鶏自信にも相当の勇気が必要だったはずだ。
そこまできて、ようやく僕らも花鶏の元へと駆け寄った。
智「花鶏、大丈夫……?」
そんな僕の言葉に、花鶏は睨むように僕を見た。
花鶏「……まだ智を許したわけじゃないわ。話を聞いて納得できなかったら、さっきの続きよ」
花鶏の言葉に僕は押し黙る。
……果たして僕は、あの言葉を付きつけられて平然といられるだろうか。
カゴメさんは僕らのやりとりを見ていたかと思うと、興味をなくしたように身を翻す。
カゴメ「ふん。……暁人、早く説明してやれ。そんなだからノロマといわれるんだ」
暁人「別に言われてねぇよ」
黒い魔女に言われ、瑞和はまた反抗的な口調で返す。
そして瑞和が僕らの前に立った。
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 01:44:19.87 ID:iV1S0FAa0
伊代「……本当に、納得がいくの?」
伊代が問いかける。
伊代は優しい。だからここまでされた上に皆がバラバラになるのは耐え切れない。
そんな彼女の問いに、瑞和は静かに頷く。
暁人「ああ、多分」
茜子「……私には嘘がわかります。ですのでそのつもりで」
茜子の言葉を本当か嘘かどうか受け取ったのかはわからないが、瑞和は神妙な顔で頷く。
そして、僕らだけではなく繰莉ちゃんたちにも聞こえるように話しだす。
何を?決まってる。
コミュの、アバターの説明を。
187 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 01:49:13.95 ID:iV1S0FAa0
Chapter
9 戦いの後
10 迷探偵こより!
11 第一次遭遇
12 改めまして
13 WITCH AND PRIDE
14 ???←次ここ
今日は限界です……寝ます
188 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 01:52:53.65 ID:O1jNVXZ40
乙
冷静になって考えた。
13 WITCH AND PRIDE(
>>179-186) がなんだか暴走しすぎた感が否めない。
いやね、確かにカゴメは強いよ。央輝相手にるい花鶏のコンビで苦戦してる時点でカゴメには多分勝てないよ。
でもまぁ……これはないわ、うん。
ごめん、本当にごめん。
――やり直しを要求する!!!!
明日まだあったら書き直しますorz
何、問題ない
191 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 03:12:47.02 ID:O1jNVXZ40
おkおk
支援
193 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 04:06:01.79 ID:O1jNVXZ40
そろそろ保守
194 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 04:26:20.96 ID:fiYBovnL0
ほし
195 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 04:47:03.82 ID:MdruaiVu0
保守を要するスレはUNCO!
196 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 05:09:45.58 ID:O1jNVXZ40
そういえばどっちにも出てる声優いるからクロス商品出せないんだよな
197 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 06:22:13.49 ID:O1jNVXZ40
コミュ側って時系列的にどのあたりなのかしら
るいともスレとは珍しい
保守
200 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 08:51:17.20 ID:O1jNVXZ40
コミュの画像張ろうかと思ったけど、データ消したの忘れてた
そんな保守
コミュは全く知らんが期待
Chapter
9 戦いの後
10 迷探偵こより!
11 第一次遭遇
12 改めまして
13 ???←ここから再開
動かしづらい。15人とか人数多すぎワロタ
203 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 09:35:48.71 ID:QftSozSD0
オカエリ
204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 09:36:05.61 ID:O1jNVXZ40
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ぞろぞろ・・・・・
| キタ━(゚∀゚)━ !!! | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
|__| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|(゚∀゚)━ !!!! |
. . .∧| キタ━(゚∀゚)━ !!! |____.| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ぞろぞろ・・・・・
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/ づΦ∧∧ || ( ゚д゚)|| . . |_______|ぞろぞろ・・・・・
.. ( ゚д゚)|| / づΦ ∧∧.||
 ̄ ̄ ̄| / づΦ ぞろぞろ・・・・・ .( ゚д゚)|| .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
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__| キタ━(゚∀゚)━ !!! | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. |_______|
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( ゚д゚)|| . ∧∧ || . / づΦ
/ づΦ ( ゚д゚)||
ぞろぞろ・・・・・ ./ づΦ
205 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 09:44:09.08 ID:iV1S0FAa0
伊代「それであなた。この子が感じていた挙動不審といい、今日のを休んでまで来たことといい……説明してもらえるんでしょうね?」
こよりが後ろで手を組んで申し訳なさそうにこちらを見る。
……なるほど、こよりんが僕の様子に気付いてこっちに来ていたのか。
元々話がまとまれば何れは皆にも話すつもりだったけど……少し迂闊だったな。
繰莉「説明ならこの繰莉ちゃんにおまかせあれ」
智「わっ!?」
にょきっ!と繰莉ちゃんが突然生えてきた。
きっと神出鬼没スキルでも持っているんじゃないだろうか……?
花鶏「ふぅん……アンタが納得のいく説明ができるっていうのね?」
少しばかりいぶかしむ花鶏に自信満々に返す。
繰莉「もっちろん。アキちゃん達に聞こうとしたこともこれについてだから、よく聞いていてね」
超探偵・説明モードだ。
中々仲間以外は信用しない花鶏は茜子に能力の発動を強制することも忘れない。
206 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 09:58:05.24 ID:iV1S0FAa0
繰莉「この高倉市には幽霊が住んでいる――数年前からまことしやかに囁かれている都市伝説」
繰莉「その名は少女A。彼女は今日も唄ってる。彼女は今日も答えない」
こより「あ、それ鳴滝も聞いたことがありますよう」
伊代「というか、二週間ぐらい前にその噂さがしでここに来たばかりよね。……それで、それが何か関係あるの?」
繰莉「まぁまぁ落ち着いて。探偵の話は安楽椅子にでも座ってのんびり聞くことをオススメ」
にまにまとチェシャ猫がわらう。
繰莉「……それで今回の事の発端は丁度その二週間前。少女Aが繰莉ちゃん達にもみえた、っていうのが始まり」
花鶏「……その達っていうのは、そいつらのこと?」
ピッ、と瑞和達六人を指さす。
繰莉はいんや、といって自らを含めた五人の名を呼びながら指折り数えた。
繰莉「繰莉ちゃん。あやたん。なんちゃん、ともちゃん。あと今日は居ないけどめぐちゃん。この五人だよ」
智「……あ、めぐちゃんっていうのはあの惠のことね」
こより「ってぇと……ともセンパイとか茜子センパイとかが売られそうになったあのレースを手伝ってくれた方ですか!?」
伊代「あの子まで関係してるの……?というかあなた、何かあったような素振りは全然見せなかったじゃない」
伊代は言外に僕を少しだけ攻めていた。
何かあったら言ってくれ、と。
207 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 10:02:41.60 ID:O1jNVXZ40
しえん
208 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 10:04:40.80 ID:+CoGKnQr0
ないわ、呼んでないけどないわ
しえん
209 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 10:13:46.01 ID:iV1S0FAa0
僕は短く、ごめん、とだけ言った。
もう一つ惠の痣のこともまだ隠している。言おうとしても、今は言えないけど。
あちら側にいる紅緒が『売られそうになった?』等とこよりの漏らした物騒な言葉に若干の反応を示す。
こうしてどんどん誤解が広がっていく。
ああ、やっぱりこの世界はどうしようもなく呪われている……
花鶏「……それで?智やアンタ達が少女Aとやらを見たって言うのはわかったわ。……嘘も言っていないようだし」
茜子が黙っていることが何よりの証拠。
繰莉「ふむ、信じてもらえてなにより。……今のは原因、そして今が結果。だから次は過程についてのお話し」
繰莉ちゃんの独壇場はまだ続く。
繰莉「少女Aは今日も唄ってる。少女Aは今日も答えない――そんなへんてこな幽霊ちゃんが加わっただけの日常が続いたある日、つまり四日前」
繰莉「少女Aはかくかたりき――曰く、『どこにいきたい?』、ってね」
繰莉「そして、繰莉ちゃんは集まった。少女Aの唄に乗り、少女Aの元に集わされ――そして、生み出した。丁度夕焼けの色のような、朱い、朱い竜をね」
暁人「朱い竜」
紅緒「それっ、て……」
瑞和が鸚鵡返しに呟き、紅緒が僅かに慄く。
心当たりが――あるのだろう、恐らくは。
さっきの紹介の時もコミュだとか何だとかいってたし、やっぱり間違っていなかったようだ。
これは面白いssを見つけた。
支援せざるを得ない。
支援
残っててよかったー
212 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 10:22:54.28 ID:FvtLWIM60
おはよー支援
残ってて安心した
213 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 10:26:12.23 ID:O1jNVXZ40
しえんしえん
214 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 10:28:04.83 ID:iV1S0FAa0
繰莉「……だけど生み出る前に上半身は紅、下半身は蒼のツートンカラーの騎士が現れてさぁ大変」
繰莉「めぐちゃんが死にかけたり、危うく繰莉ちゃんも死んじゃってたかも」
伊沢「……ってことは」
春「倒したんだね、そいつを」
真雪「……そう、なんですか、アヤヤさん?」
アヤヤ「え、は、はい……智先輩と繰莉先輩ちゃん、後アヤヤも最後に少しだけ……」
導きだされた事実とアヤヤの肯定に、にわかに場がザワつく。
瑞和は、何か思うところがあるのか神妙な表情をしていたが。
繰莉「話を続けるよ。それで一応はその場を離脱した繰莉ちゃん達。その後落ち着くまで話して――なんちゃんがあることに気付いたの」
芳守「……瑞和が、あの時後始末してくれて……あの時の奴が竜を見たとか言ってて……それで、もしかしたらって」
何があったのかはわからない。クスリをきめてたとか言ってたしまともじゃないには違いない。きっと、因果応報。
瑞和はアチャー、と言ったような顔をしてもう一人の男の子を見る。
暁人「……全部、伊沢が悪い」
伊沢「あぁ?テメェがその女から目を離したのが悪いんだろうが」
つまり実行したのは伊沢、というわけだ。
215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 10:31:48.46 ID:O1jNVXZ40
伊沢は萌えキャラ
216 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 10:36:44.93 ID:iV1S0FAa0
繰莉「それで、僅かな可能性を胸に秘めてアキちゃんにともちゃんを連れて話を聞きにきたってわけ。それをいーちゃんが先走って絡むから」
伊沢「……うるせーよ。勘違いさせるほうが悪い」
真雪「どう考えても伊沢さんのせいです」
紅緒「だよねー」
カゴメ「だ、そうだぞチンピラ。謝ったらどうだ」
ぐっ、と味方側からも責められて屈辱そうな顔をする。
またもや舌打ち。しかしそれでも僕の前に一歩踏み出して、口にする。
伊沢「……すいませんでした」
キレっぽく喧嘩っ早い。
だけどちゃんと理にはかなっていないことはしないで……素直だ。
認定。伊沢萩、いい子。
智「ううん、こちらこそ誤解をまねくようなことをいって……さっきの、大丈夫?」
一般人の領域をはるかに超えたるいちゃんきっくとか。
カゴメさんの見えない攻撃とか、色々。
伊沢「あんなん大した事ねーよ。……それより、ちゃんと言ったからな」
ぷい、とそっぽを向き、あちらへと帰る。
そして見るからに不機嫌そうに、チンピラ座りをした。
更に認定。ツンデレちゃん。
217 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 10:49:06.85 ID:iV1S0FAa0
伊代「……ねぇあなた。さっきの話、本当なの?」
伊代が黙っている茜子に問う。
対して茜子は即答。
茜子「はい、嘘は言っていません。恐らくは全部本当です」
こより「……だからかぁ、ともセンパイが少しだけおかしかったのは」
茜子の言葉を受けて、こよりはようやく納得したように漏らす。
そこで今まで黙ってたるいが頭から煙を出しそうな勢いで考えつつ、言う。
るい「るいねーさん馬鹿だからわかんないけど……聞いた都市伝説が本当にあって、それにトモが巻き込まれたってこと?」
花鶏「まぁ受動ならその解釈で間違いはないわね。……でも言ってくれても良かったじゃない?」
私たちに比べたらよっぽどマシよ。
花鶏の語尾にはきっとこの言葉が着くだろう。
そうだ、僕らは呪われている。それを踏んだら理不尽に殺される。
それなら、まだ人が操っている竜だとかなんだとかの方がいい。
智「……みんな、ごめん。あと、ありがとう。本当は、今日の情報を纏めてから話そうと思ってたんだ」
伊代「ってことは……私たちもあなたも、互いを信じる力が足りてなかったってことね。……うん、これでお相子。綺麗サッパリに忘れましょう」
茜子「……反吐がでるほどの綺麗事です」
茜子の毒舌も、今は気持ちいい。
皆もまた、僕の為を思ってしてくれた行動だったから。
218 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 10:57:03.26 ID:iV1S0FAa0
カゴメ「……なるほどな、それよりも私からも聞きたいことがあるのだが」
黒い魔女が僕らの前へと出る。
ただそこにいるだけで萎縮しそうだ。
カゴメ「その赤髪の女の力。おかしくないか?」
ぎくり、とした。
全く見えなかったところから一直線に飛んできて、防御されたにもかかわらず数メートル飛ばす。
スピードはスプリンターとか言えばなんとかなるかもしれないが、吹き飛ばした方はそうはいかない。
納得のいく理由を……
カゴメ「そっちの青いチビも人が言うことが嘘か本当かわかるようだな」
聡い。
ただべらぼうに強いわけじゃない。
伊代「ちょっ……どうするのあなた」
花鶏「智」
伊代が、花鶏が僕を呼ぶ。
僕は――――
219 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 10:59:25.07 ID:iV1S0FAa0
Chapter
9 戦いの後
10 迷探偵こより!
11 第一次遭遇
12 改めまして
13 誤解の解き方
14 ???
→ ???(どちらか)
実は起きたのは書き込み始めた時間でご飯まだ食べてないんだ……
というわけで飯。
>>220 1 本当のことを言う
2 なんとかして誤魔化す
220 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 11:03:51.75 ID:O1jNVXZ40
1
嘘ついたら針千本のまされそうだし
221 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 11:20:25.58 ID:+ZZ7GmfU0
起きた支援
今北産業
223 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 11:31:33.30 ID:O1jNVXZ40
正直1でよかったのかと少し後悔してる
224 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 11:50:59.23 ID:iV1S0FAa0
>>223 問題ない。
なぜならバッドエンドになるとやり直しを要求されるから!
ついでに真雪先生の出番も増えるから!
→本当のことを言う
――駄目だ、言い訳が思いつかない。
だってこの人、皆の能力を余裕で複合したスペックをもってそうだもの。
なら、もういっそのこと……話したほうがいいかもしれない。
皆を一瞥して、カゴメさんに僕が対応する。
皆の前にいた繰莉は何時の間にやら避難していた。
一度大きく深呼吸をして、覚悟を決める。
智「実はですね……皆、人にはない、特別な能力を持ってるんです」
直球勝負。
これで信じてもらえなかったら誤魔化す方法でいこう。
カゴメ「ほう……」
伊代「あなた……いいの?」
智「仕方が無いよ。変に言い訳するよりはいいでしょ?」
伊代もカゴメさんの怖さに気づいているのか、しかし複雑そうな顔をした。
よかった残ってた
226 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 12:06:06.43 ID:iV1S0FAa0
智「さっき見たとおり、るいは身体能力の一時的な強化、茜子は人の心を読むことができるの」
るい「バイクなげるのだって余裕余裕!」
茜子「茜子さんに嘘はお見通しです。つくときは気をつけてください」
るいは胸をはり、茜子は意地の悪そうな顔をして笑う。
暁人「まゆまゆの天敵だな」
真雪「そうですね、気をつけるようにしなくては……あと、まゆまゆではありません、真雪です。」
さっきの自己紹介程度の嘘なら茜子もあまり突っ込まないと思うけど。
続いてふぅ、と花鶏が溜息を吐いた。
花鶏「……私のは思考の加速よ」
智「そうだったんだ」
花鶏の頭の回転が異常に速いと思ってたのは、それか。
あと初めて会った時にるいのラリアットを回避したのも……
カゴメ「なるほど、一瞬で多数のことを考える能力か。愚鈍の暁人にほしい能力だ」
暁人「お前はどんな状況でも俺をとぼしめなきゃ気が済まないのか!?」
いつもこんな感じなんだろうか。
227 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 12:10:52.63 ID:FvtLWIM60
バッドエンドでもまゆまゆが出ると思うと、それもいいかなと思っちゃう
228 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 12:20:04.75 ID:iV1S0FAa0
伊代「……はぁ、わかった。私も言うわ」
伊代も諦めたように言う。
既にバレたるいと茜子はともかく、花鶏も言ったから仕方がないと思ったのだろう。
伊代「私の力は……その、なんていえばいいのかしら。知恵の輪とか、ナンバーロックとかが解けたり……パソコンとかの使い方がわかったり……」
伊代の説明は要点を得ない。
わかることはわかるのだが、なんといえばいいのか説明がつかないのだ。
見かねて僕も助け舟を出す。
智「『道具を使いこなす能力』?」
伊代「そう、それ!だからパソコンとか使用用途の広いものだとかなりなんでもできるの。気持ち悪いからあまり使ってないけどね」
追記するには、船とか飛行機とかの動かし方もわかるとか。
でも本人の力量次第なので伊代では車を運転するのが精一杯らしい。
こより「そりでは続いて鳴滝こよりであります!」
ぴょん、と元気に跳ねる。
こよりは人懐っこいし、あまり人を恐れない。だからここまで元気なのだろう。
こより「鳴滝の能力は『運動の再現』です!このインラインスケートも、道でうまい人がやってるのを見て覚えたんですよう!」
そうだったんだ。
意外なところで納得する。インラインスケートとか今やってる人はあまりいないだろうし、やってる人はきっと、とても上手な人だろう。
じゃあさっきのカゴメさんの動きとか真似できるの?と聞いてみると、見えませんでした……とシュンとした言葉が返ってきた。
どうやら自分で見て覚えるのが前提らしい。
229 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 12:28:35.52 ID:DFvtqNTB0
支援
230 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 12:31:51.27 ID:iV1S0FAa0
全部を聞き終わり、カゴメさんはふん、と息を吐いた。
カゴメ「……で?」
智「え?」
カゴメ「和久津。お前の能力はなんなんだ」
そうだ。
こんな皆と仲間になってるんだから、僕にもそれがあると思われて当然だ。
けれど、ない。
でも僕らには僕が仲間だと証明するものがあるけれど、それは言えない。
死に関わってしまうから。
智「僕には……ないの」
カゴメ「何?」
智「僕には、そういう〈才能〉がないの」
花鶏「そうなの?てっきり智にもあるものかと……」
花鶏も驚いたように言う。
でも誰がなんと言おうと、僕に〈才能〉はない。
……〈呪い〉なら、人一倍厄介なものがあるのにいいことなしだ。
231 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 12:34:57.15 ID:LEbVTBzu0
るい智SSとか俺得
232 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 12:41:19.49 ID:iV1S0FAa0
るい「はいはーい!トモちんは料理上手だよ!」
茜子「それ才能ちゃいますやん」
智「一応学園では優等生だけど……そんな才能はやだなぁ」
そもそも皆、人とはかけ離れた能力だし、きっとそういうものなのだろう。
それならやはり、僕にはない。
こより「大丈夫です!ともセンパイは鳴滝たちを纏めてくれてる参謀殿ですから!」
智「ありがと、こよりん」
こより「うにゃにゃにゃにゃーっ」
思いっきり撫でてあげる。
気持よさそうに頭を寄せてきた。
カゴメ「……まあいい、大体わかった。それで化猫、何が聞きたい?」
繰莉「んにゃ、繰莉ちゃん?えーっとねぇ……アバターとかそこら辺のところ詳しくかな。贔屓にしてくれてる人がよく依頼してくるから少しは知ってるけど、詳しいところはしらないし」
暁人「先輩……」
瑞和は呆れたように息を吐いた。
233 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 12:59:21.46 ID:DFvtqNTB0
支援
234 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 13:05:30.91 ID:iV1S0FAa0
真雪「では、私の出番ですね」
暁人「任せた」
真雪の指で押し上げられた眼鏡がきらりと光る。
本日の、教える、真雪先生のコーナー!だ。
真雪「アバターと接続者は八六式と呼ばれる方法で分類されます。ちなみに巷で有名なスカイフィッシュをアバター、それを操る人を接続者と呼びます」
真雪「先に接続者のことから。接続者は五人のみ、それ以上でもそれ以下でもありません。また、その五人のチームをコミュといいます」
真雪「コミュ内のアバターに対する権限は全て等しく、意見がぶつかったときは多数決にて決定します。つまり、味方を作っておいたほうが特、というわけですね」
真雪「アバターは接続者一人から召喚できますが、その分とても重くなります。五人で繋いだ時とは雲泥の差です。バトる時には召喚時に一撃で決めるか、または三人以上がお勧めですね」
真雪「アバターは基本六種類に分類されます。『騎士型』『巨人型』『魔弾型』『魔犬型』『器物型』、そして『竜型』。繰莉さんたちのは朱い竜と言ってましたし、恐らく『竜型』でしょう」
アヤヤ「うわぉ、カッコイー!」
真雪「『竜型』は稀少価値が高いレアなアバターで、特殊能力も強力です。その分使いづらいので気をつけてください。ちなみに基本的にはアバターの力は初期から変わりません」
真雪「あとは……BKのことですね」
アヤヤ「あ、それは繰莉先輩ちゃんから聞きました。確か、ビギナーキラーっていうんですよね?」
真雪「ええ、まぁ……はい。先ほど基本的にアバターの力は変わらないと言いましたが、例外があって、アバターを倒すとレベルアップして強くなるんです」
るい「……それならガンガン倒せばいいんじゃないの?どんどん強くなって、どかーん、バキーンッ!って」
真雪「それが……そうもいかなくて…………」
235 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 13:16:14.75 ID:iV1S0FAa0
芳守「……どういうこと?」
真雪「……話を戻しますけど、ビギナーキラーは初心者を倒し、レベルアップを目的としたコミュです。コレを念頭に置いて、話を聞いてください」
真雪は戸惑ってるような表情を見せた。
けれど言わなきゃいけないと判断したのか顔を上げる。
真雪「アバターはコミュの象徴で――命。アバターが破壊されたとき、そのコミュもまた、滅びます」
繰莉「……なるほどね」
繰莉ちゃんがほぅ、と息を吐く。
真雪「知っていますか?最近、高倉市では外傷なしの集団死が多発してます」
こより「な、鳴滝ニュースで見ました。お母さんが怖いねって…………」
花鶏「……つまり、全部そのアバターとやらが壊された結果、ということ?」
真雪「も、勿論、中には普通に死んでる人もいるでしょうけど……そういうことになります」
アバター……つまり僕たちの場合はあの朱い竜が破壊されたとき、コミュ……僕らもまた、滅びる。
……随分と、厄介なものを僕は背負ってしまったみたいだ。
智「……呪われてる」
全く、救いようがないくらいに。
自らの呪いだけで精一杯だというのに、これにまだ追加する。
本当に、この世界は呪われている。
236 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 13:24:14.75 ID:iV1S0FAa0
アヤヤ「……ち、ちょっとまってください、び、ビギナーキラーも、コミュなんですよね!?」
アヤヤが何かに気づいたように瑞和へ、真雪へと問いかける。
真雪も彼女が何をいわんとしてるか気が付いた。
僕は、まだわからない。
真雪「……そうです」
アヤヤ「ってことは……アヤヤ達が倒したアバターは…………」
僕もようやく気が付いた。
ビギナーキラーも、アバターでコミュだ。
つまり、僕らが倒したあの騎士のコミュは。
暁人「……真雪、俺が言おうか?」
真雪「……いえ、いいです。私は引き受けましたから」
やはり、真雪は覚悟を決めて。
真実を突きつける。
真雪「……コミュに、例外はありません」
アヤヤ「う、あ……」
アヤヤが呻く。
アヤヤは優しい人だろう。短い間しか付き合ってなくとも、なんとなくは理解できる。
だから、ショックなのだ。
知らなかったとはいえ、人を壊してしまったことが。
237 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 13:33:31.72 ID:iV1S0FAa0
こより「ってことは……ともセンパイは……」
こよりも、震える。
不可抗力だったとはいえ、僕もそれをしたんだ。
否定はできない。
繰莉「因果応報だね」
そんななか、冷徹に、凛とした声が響く。
繰莉「元々BKだってウチらを殺そうとしていたんだよ。殺されても文句は言えないっしょ。寧ろ人を殺すんだから逆に殺される覚悟も持っていないとね」
花鶏「……同感ね。人を傷つけるなら自分もそうされるかもしれないということを考えなければいけないわ」
繰莉の意見に花鶏が賛同する。
伊代「で、でもっ!人を殺すのは、やっぱりいけないことだと思うわ!だって、そんな、そんな……」
るい「……他人を傷つける奴は、そこで死んだほうがいい。じゃなかったら、未来にもっともっと多くの人を傷つけたかもしれない」
……僕も、るいに同感だった。
理性では人を殺してはいけないと理解していても、もっと多くの人がそれで助かるのなら僕はやってしまうかもしれない。
……そんなことをする未来が、あったかもしれない。
一触即発の空気。
紅緒「まっ、待って!喧嘩しないで!!」
そこに慌てて飛び込んできたのは紅緒だった。
238 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 13:39:08.04 ID:2HTLFiV5P
三宅のことか…三宅のことかーーーっ!!!
239 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 13:40:42.36 ID:wp5sI/nw0
るい智もコミュも大好きな俺歓喜スレ
240 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 13:43:15.04 ID:O1jNVXZ40
起きたときに落ちてなければいいんだけど
支援
241 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 13:49:17.13 ID:J7Oj06sN0
>>238 そういえば
智ちんって三宅殺すのにえらく躊躇してたような
今回はあっさりだね
242 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 13:52:20.90 ID:O1jNVXZ40
>>241 智たちからしたらアバター壊しただけだから、やっぱ殺した感が弱いんじゃない?
コミュはるい智と比べるとけっこう命が軽く扱われがちだったし
243 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 13:54:43.70 ID:iV1S0FAa0
アヤヤ「紅緒、ちゃん…………」
紅緒「アヤヤちゃん、芳守ちゃんも。聞いて。私は――私達は、ビギナーキラーを……そして、一般人やコミュを多く破壊したジャックを殺したわ」
一般人やコミュを多く殺したジャック?
そういえば、前にニュースで見た記憶がある。
通り魔のような仕業で、凶器もわからない、人間をバラバラに引き裂いた事件が相次いであって……犯人はジャック・ザ・リッパーと呼ばれていた。
そうか……アレもアバターの仕業だったんだ……
芳守「紅緒、が?」
紅緒「うん。最初のBKはやっぱり私も知らなくて、殺したんだって気付いた時には何日もご飯が喉を通らなかった……すごく、罪悪感に苛まれた」
紅緒「アイツは悪いヤツだったんだ、今まで何人も人を殺したんだって思っても、やっぱり駄目だった」
紅緒「けど、二度目のジャックは望んで引き金を引いたの。これ以上の犠牲を増やさないようにって」
紅緒「つまり何が言いたいかというと……あーわけわかんなくなってきた!」
僕もわからない。
カゴメ「板胸が。胸だけでなく脳も足りなくなったか」
紅緒「い、板……っ!?」
また紅緒が凍りつく。
さっきの伊沢さんが言ったときにも固まったし、やっぱり禁句なんだろう。
少しだけ、空気が和んだ。
244 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 14:06:10.94 ID:J7Oj06sN0
>>242 確かに「ハッピーバースデイ、僕!」 と比べると実感がないね
245 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 14:09:06.21 ID:iV1S0FAa0
紅緒は足りなくないもん……ちゃんとあるもん……と呟きながらうつむく。
伊沢「それにしても、チビ。テメェは意外と余裕なんだな」
繰莉「繰莉ちゃんは結構な修羅場を見てきてるからね。死にも慣れる事が探偵の仕事なのだよ」
暁人「それにしては一度本当に死んだかと思ったけどな」
繰莉「にひひ、アキちゃんもあの時は――」
繰莉ちゃんの言葉が唐突に止まる。
同時に、光った。
身体を何かが突き抜ける。
自分の意志ではなく、他の何かによって。
るい「……トモ?どうかしたの?」
智「え……いや、だって……」
今光ったのは、四人。
僕と、繰莉ちゃんと、アヤヤと、芳守さん。
そして、それは皆にはみえていない――?
アヤヤ「今……」
芳守「光っ……た?」
その言葉に反応したのは、瑞和だった。ただ、短く。
暁人「アバターの……起動信号?」
246 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 14:16:54.11 ID:FvtLWIM60
やぁのやぁのそれやぁの!
が可愛すぎてもうね・・・
247 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 14:22:34.50 ID:iV1S0FAa0
アバターの起動信号。よくわからない。
けれど、何か不吉なカンジがするのはよくわかった。
智「ねぇ!それどういうこと!?」
カゴメ「そのままの意味だ。アバターが召喚されたとき、そのコミュの人達はそれぞれにしかわからない光を発する、らしい」
らしい、というのはカゴメさんがアバターを持っていないから?
しかし今はそんなことはどうでもいい。
今ここにアバターは召喚されていない。
だから召喚したのは残る一人――
智「惠だ!」
携帯を取り出して、コールする。
心臓が高鳴る。
もしかしたら、とは思ったけれど数コールで出た。
惠『はい』
智「惠!?」
惠『そんなに必死に……何かあったのかい?』
智「い、いや……竜の召喚があったから、何かあったのかと……」
惠『……なるほど、これの召喚は智たちにも伝わるのか』
と、惠は言う。
やっぱり召喚したのは惠だったようだ。
249 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 14:29:44.60 ID:5TxZP3wj0
智ちんハアハア
250 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 14:36:58.91 ID:iV1S0FAa0
惠『それで、何かあったのか、だったね……僕にはこれといって何も無いよ』
智「それじゃあ……どうして」
惠『ただ願ったら出せるのか、と思っただけだったんだ。すまないね、騒がせて』
心からほっとした。
惠は田松市の裏事情にも多少通じている。
もしかしたら惠の身自体にも何かあったのかと思ったのだ。
壊されて死ぬことを恐れなかったわけじゃないけれど、コレは本当のことだ。
智「そうだ、ついでに今さっき貰った情報を話しておくね」
コミュとアバターのルール。
アバターが滅べばコミュも滅ぶということ。
惠『なんだって……そんなルールがあったのか……』
智「うん、そうらしいよ」
惠『なんだって……神は、どこまでも…………』
呟きが聞こえた。
ほんの、小さな声だったけど。
智「……惠?」
惠『……いや、なんでもないよ智。情報ありがとう』
智「うん、それじゃあ今度連絡してね」
251 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 14:50:12.91 ID:iV1S0FAa0
そういって携帯を閉じる。安堵の息が漏れた。
本当に、心配した。
アヤヤ「えっと……惠先輩はなんと?」
智「あ、うん。ただ出せるのか実験してみただけだって。本当人騒がせだよね」
……ああそうだ。
ついでに皆にも言っちゃおう。
智「そういえば、惠も『痣』を持ってたよ」
花鶏「は?なにそれ……え、それ本当?」
花鶏は僕がサラッと言ったことに一度スルーしかけて、もう一度問いかけてきた。
皆も一様に驚きの顔を示す。
だから僕はもう一度言う。
智「惠の左腰に痣があった。ちなみに女の子だった。能力は……傷が勝手に治っていったから、自動回復みたいなものだと思う」
花鶏「なんですって……アレが女で、しかも痣持ち……!?よくも私の目を誤魔化してくれたものね……」
伊代「いや、あの子だって好きで隠してたわけじゃないと思うし……あの時は私たちだって言ってなかったじゃない」
あーだこーだと惠について話し合う花鶏達から一歩ひいていた僕の肩に手を書けたのは、瑞和だった。
252 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 14:59:20.19 ID:iV1S0FAa0
暁人「えっと……和久津、だっけ?」
智「あ、え、はい、和久津です」
暁人「痣って何?」
そういえば言ってなかったっけ……?
別にいっても構わないだろう。先程のことと関連付けたら誤魔化すこともできる。
智「僕らは皆違うところにに『痣』があるんだ。それで『痣』がある人は〈才能〉があるはずなんだけど……」
僕にはないんだ、と続ける。
なるほど、と瑞和は二、三度頷く。
暁人「……まぁいいや、ついでにメールアドレスとか教えてもらえる?アヤヤの様子とか、コミュ関係で何かあれば連絡するから」
智「本当?助かるよ」
数日前と同じように、赤外線で交換。
そして、一先ずこの舞台は閉じた。
253 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 15:02:57.88 ID:iV1S0FAa0
Chapter
9 戦いの後
10 迷探偵こより!
11 第一次遭遇
12 改めまして
13 誤解の解き方
14 半分だけの本当
→ ???
15 コミュの代償
16 始まりの終わり
第二幕終了。
少し休憩……休憩じゃすまなくなるかもだけど
254 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 15:24:42.73 ID:DFvtqNTB0
乙
続きも期待してる
255 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 15:29:07.07 ID:J7Oj06sN0
乙!
待ってる
ちょっとだけネタバレ。
多分選択肢はニューゲーム以外変えられないからね……
Chapter
3 都市伝説を捜そう!
→ ??? ←夜子、レギオンフラグ
5 僕の居場所
→ ??? ←メンバーが惠ではなく央輝になる
8 最初の戦闘U
→ バッドエンドT ←実は踏ませるために初めから用意してたんだぜ!
14 半分だけの本当
→ ??? ←るい智メンバー以外に智の呪いがばれるフラグがなくなる
まぁるい智メンバー以外では踏むかそうでないかは選択肢で決まるから問題はないんだぜ、多分。
再開
258 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 15:53:54.07 ID:iV1S0FAa0
今日は学園はお休み。
朝起きて一人暮らしを始めたときに真っ先に買ったトースターでパンをやく。
今朝は洋食で。目玉焼き、ウインナー、ベーコンを素早く焼いて、目玉焼きができたころにパンが飛び出る。
その上に目玉焼きを移して、とりあえず一口。
サクッ、という香ばしい感触と香りが口の中に広がった。
智「ん〜おいしい」
僕が基本的に好きなのはフランス料理だ。おしゃれっぽい。
でもたまに無性に和食が食べたくなることもあるし、こうやって洋食を食べることもある。
まぁつまり気まぐれというわけだ。
淹れたコーヒーを最後に流しこみ、手を合わせてごちそうさま。
歯を磨きながら身だしなみを整えて、いつも普通の髪留めでとめているところを今日は花柄で止める。
嗽とタオルで顔を洗い、最後に櫛をさっ、と通す。
洗面所でくるっ、と一回転。ワンピースが揺れる。
智「うん、今日も女の子女の子」
にぱ、と作り笑い。
僕の名前は和久津智。南聡学園二年生。ごく普通の美少女で、敵もあまりなく、後輩や同級生にラブレターを貰うこともしばしば。
自分のプロフィールを軽く頭で暗唱し、玄関へと向かう。
「気をつけるてね、智」
智「わかってるよ、ねえ……」
振り返る。誰もいない。
なんで僕は今■■■がいると思ったんだろう。
あれ、そもそも、■■■って誰だっけ。
靄がかかったように思い出すことが出来ない。今さっき、口にしかけたはずなのに。
259 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 16:05:00.77 ID:iV1S0FAa0
智「……ま、いいか」
僕は奇妙な違和感を振り払って、家を出た。
「全く……話にならん」
アパートの前にゴミ出しをしている人がいた。
「どの作者も女装っ子が何たるかを全く理解していない。こんなもの付いている女と全く同じじゃないか」
ギクリとした。
思わず足を止めてしまい、そのせいで彼に気づかれる。
「おや和久津さん。おはよう。今日は学園はないんじゃないのかい?」
この方は姚さん。
よく女装男子ものの本を捨てている僕の隣人さん……
背筋に悪寒が走る。
僕に対するジョーカー、史上最悪の敵だ。
智「お、おはようございます。きょ、今日は学園じゃなくて、友達と遊ぶ予定なんですぅ」
姚「そうかい。今日はいい天気だ、気をつけていきなさい」
智「あ、ありがとうございます。じゃあ!」
シュタッ、と逃げるように走る。
今日も生き延びることができました。
またにわかるい智信者の妄想スレかよ
原作レイプも大概にしとけ
まさに最強最悪の敵だよな、お隣さん
あんなキャラだとは思わなかったぜ
262 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 16:15:41.02 ID:J7Oj06sN0
FDまでは名前すらなかったのに
今ではカリスマ持ってるイケメンだから…
263 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 16:21:57.23 ID:iV1S0FAa0
るい「うぃーっす」
智「うぃーっす」
偶然にも道端にいたるいが僕に向かって駆け寄ってきた。
僕も同じように軽く走る。
智&るい「でーん!」
パシンッ!と小気味良い音。
意味もなくハイタッチしたくなるのは青春の真っ只中だからということにしておこう。
そしてそのまま二人ならんで高架下の溜まり場へと向かう。
るい「トモ智〜、そういえば前のあの子達はどうなったの?」
智「え?ああ、アヤヤたちのこと?」
アレからまた数日が過ぎていた。
瑞和からと本人からの連絡では芳守さんは繰莉ちゃんに続いてすぐに立ち直ったらしいが、アヤヤはまだ少し元気が無いらしい。
少しだけ痩せたそうだ。
芳守さんは元気のないアヤヤはアヤヤじゃないと嘆いていた。
智「今のところハッキリとはしないけど……もしかしたら、このまま一生アレを使わないってことで話が終わるかも」
それならいい。僕らは僕らのまま、アヤヤ達はアヤヤ達のまま違う道をすすんでゆくのだ。
過ぎた力は何れ暴走を生むのだから。
るい「それがいいかもね」
智「うん」
264 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 16:30:02.66 ID:iV1S0FAa0
るいも賛同してくれた。
どこかで間違ったのだろう、だからあんなになったのだ。
るい「あ、でもー、もう一回乗ってみたいかも!」
智「危ないからやめときなって」
皆で田松市に帰った後、誰も居ないことを確かめた後でこっそり皆にアバターを見せた。
あの裏事情を知った後でもるいとこよりはカッコイイとはしゃいで背中に載せて軽くだけ動かした。
あれ以来、誰からも起動信号はきていない。
るい「ちぇー……ねぇねぇ、今日はどこいく?」
智「いつもの如く街中闊歩じゃない?」
るい「それだけじゃつまんないじゃん。もっと楽しめることとかさー」
るいが楽しめることといったら。
1 ドンパチ
2 悪者退治
……どちらもいい結果が全く視えないのはどうしてだろう。
智「……まぁ、要相談ということで」
るい「そうだねー」
265 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 16:39:15.81 ID:iV1S0FAa0
伊代「あ、来た」
こより「ともセンパーイ、るいセンパーイ!早く早くーっ!!」
るいは階段を使わないで一息に降り、僕もそれにならう。
智「ってうわ!?」
ガッ、と少し出ていた石段に引っかかる。
ヤバイ、落ちる――!
僕は次に来る衝撃に思わず目を瞑った。
感じたのは、むにっとした感触。
……以前にも一度感じたことがある。
智「とってもやわやわ」
るい「へへへ、危なかったねー」
以前の再現。
あの時も今も、本当にありがたい。
こよりが地面を滑って僕らのすぐ近くまで寄る。
こより「ともセンパイ!大丈夫でしたか!?」
智「うん、るいのお陰でね。ありがと、るい」
るい「えへへ〜たいしたことないよ〜」
るいの頭をよしよしと犬のように撫でてあげる。
カゴメさんなら筋肉の付き方を見て智ちんの呪いを踏ませることが出来るだろう
某社のソムリエとかにもできたんだ、きっと行ける
央輝の方も見てみたかったでござる
268 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 16:51:12.06 ID:iV1S0FAa0
花鶏「私がそこにいたら……智を受け止めてそのまま胸とか腰とかおしりとかいろんなところを撫で回せたのに……!」
茜子「セクハラーの脳内は今日も平和です」
本当にね。
智「それじゃあ、今日はどこ行こう?」
こより「ちょっとお待ちくださいッスともセンパイ!」
ビシッ、とこよりが器用にまっすぐ立つ。
殊更注目をあつめるように。
花鶏「どうしたのこよりちゃん。もしかして私のベッドに入ってくれる気になった?」
こより「そんなことしたら鳴滝死んじゃいますよう!」
花鶏「大丈夫よ、天国に連れて行ってあげるから」
茜子「誰がうまいこといえと」
花鶏の暴走を僕と伊代、るいで押さえてこよりに先を促す。
では!とこよりは捨てられたソファーのすぐ横においてあったダンボール箱を開き、皆に見せる。
こより「鳴滝こよりの、スペシャルプレゼントのコーナーパーット2!」
伊代「って……前と同じ中身じゃない」
その通り、中身は以前と同じスプレー缶だった。
269 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 17:06:36.37 ID:iV1S0FAa0
伊代「もしかして、あなたまた盗んできたんじゃないでしょうね?」
こより「いえいえ、そんなことしませんよう!」
煙は火のないところに立たない。
前科があるから疑われるわけで……
こより「今回はちゃんと、道端に……」
花鶏「捨ててあった?」
こより「捨ててあったトラックの上からとってきたんですよ!」
茜子「それ止めてあっただけ」
智「まぁまぁ、いいじゃない。こよりだって僕らの為を思ってやってくれたんだよね?」
こより「はいっ!前描いたのは少し色あせてしまって……もう一度書き直しませんか?」
僕らはそこを見やる。
『るいは智を呼ぶ』。そう描かれた文字は少しだけ剥げていた。
確かに、もう一度書き直すのもいいかもしれない。
270 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 17:16:25.69 ID:iV1S0FAa0
花鶏「それじゃ、今度は花鶏のハーレムと……」
こより「かきませんからね。それよりピンクポッチーズとかどうでしょう!!」
伊代「だから!卑猥なのはやめてってば!」
茜子「ではにゃー共の名前を全部書いてみましょう」
智「そんなに書く場所ないよ!?」
るい「それじゃっ、おっさきにーっ!!」
皆でゴタゴタしているうちに、るいが先にスプレーを取り、そして壁に向かってふりかけた。
花鶏「あっ、ちょ脳筋!」
智「ははっ、やっぱりこうでなくっちゃ!」
茜子「早い者勝ちですね、わかります」
伊代「じゃあ私も」
こより「ちょっ、センパイ方待ってくださいよぅっ!!」
書いては消され、書いては塗りつぶされ。
そんな楽しい時間を経ながら僕らは進んでいく。
類友な僕らは、そうして行くんだ。
けれど。
そんな凪の日常は、やはり長くは続かないんだ。
271 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 17:17:22.23 ID:iV1S0FAa0
ちょっち急用。
いつ戻るかわからないッス……
272 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 17:25:16.48 ID:FvtLWIM60
いいところで切るなぁ
ゆんゆんがゴロツキにレイプされるSSください
274 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 17:38:15.47 ID:J7Oj06sN0
三 三三
/;:"ゝ 三三 f;:二iュ
三 _ゞ::.ニ! ,..'´ ̄`ヽノン 焼却炉に搬送だ!
/.;: .:}^( <;:::::i:::::::.::: :}:} 三三
〈::::.´ .:;.へに)二/.::i :::::::,.イ ト ヽ__
,へ;:ヾ-、ll__/.:::::、:::::f=ー'==、`ー-="⌒ヽ ←
>>273 . 〈::ミ/;;;iー゙ii====|:::::::.` Y ̄ ̄ ̄,.シ'=llー一'";;;ド'
};;;};;;;;! ̄ll ̄ ̄|:::::::::.ヽ\-‐'"´ ̄ ̄ll
275 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 17:53:10.48 ID:PqUWksWb0
o oノ
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_,,..-―'"⌒"~⌒"~ ゙゙̄"'''ョ ミ
゙~,,,....-=-‐√"゙゙T"~ ̄Y"゙=ミ L_ _ _
>>273 T | l,_,,/\ ,,/l | ゚ ゚
,.-r '"l\,,j / |/ L,,,/
,,/|,/\,/ _,|\_,i_,,,/ /
_V\ ,,/\,| ,,∧,,|_/
276 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 18:26:14.51 ID:Cgg+IwsS0
支援
277 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 18:54:00.57 ID:Cgg+IwsS0
支援
278 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 19:21:10.83 ID:Cgg+IwsS0
支援
279 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 19:22:20.27 ID:zleWNDfq0
るいは智を呼ぶのSSなんて初めて見た
待つ!!!!1
はう・・・男児、男児
相変わらず暁スタッフのるい智にかける情熱は半端ないなw
むしろこの作品以外はパッとせんともいえるが
283 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 20:34:11.53 ID:FvtLWIM60
智ちん可愛い
284 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 20:34:59.97 ID:I6gJiC/w0
智ちんとアナルセックスしたい
勿論、俺は掘られる方だ
285 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 20:36:31.13 ID:Dodt6R0i0
じゃあ俺ともちんにアナルフィストファックするから
丁度良い
俺が「間違いなく伸びない」と言ったスレは必ず伸びるジンクス
287 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 20:46:48.59 ID:DLHAAtJz0
物理的最強種のカゴメさん
オカルト最強種の真耶さん
ロマンがあるな
そして可愛さ最強の智さんですね
でさ、このスレに貼られているAAを本スレで何度か見たことあるんだけどお前らもしかして巣から出てきた?
>>289 本スレってどこだよって思って検索したらすぐに出てきた。
途中で誰かが搬送人もこれまいとか言ってた気がするし多分そうなんじゃないかな?
長らくお待たせ……書き始めでこんな展開になると誰が予想しただろうか。これが智ちんの力か……
再開します。
用事中考えてたけど未来が全く視えなかった……でも負けない!
291 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 21:22:40.75 ID:iV1S0FAa0
唐突にポケットが震えた。
思わず飛び跳ねてしまう。
るい「智、どうかしたの?」
智「携帯が……」
ストラップを引っ張って取り出してみる。
それでも携帯がまだ震えていた。電話らしい。
ひらいて、名前を見る。
智「あ……」
花鶏「どうかしたの?」
智「ちょっとね」
花鶏に軽く答えて、電話に出る。
智「もしもし?」
電話の向こうで答えたのは、僕と繋がった女の子。
数日前にも一度話したきりで、少しだけ今回の用事に期待している。
惠『もしもし、智かい?すぐに出てくれなかったから、もしやもう永久に会うことの出来ない運命にあると思ったよ』
智「あははっ、惠は大袈裟だなぁ」
殊更に惠の名前を強調して、皆にも相手が彼女であると知らせる。
292 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 21:32:04.16 ID:iV1S0FAa0
智「それで惠、どうかしたの?」
惠『前に智が痣を持っている仲間に合わせてくれると言っただろう?だからそれについてね』
智「あ、もしかして会えるの?」
心なしか言葉が跳ねたような気がする。
それほどに皆と新しい仲間を会わせる事を僕は楽しみにしていたんだろう。
今でも楽しい日々がもっと楽しい日々になることに。
惠『ご名答。それで、皆を僕の家に招待しようと思ってね』
智「惠の家?いいの?」
惠『ああ。別に智が心配するようなことはないさ。ついでにいうと、客人をもてなす準備をしているからきてくれるとありがたい』
智「そっか。……それじゃあ、お言葉に甘えようかな」
惠『ありがとう、智。待ち合わせ場所を決めよう。余り手が離せないからこちらの近くがいい。場所は――』
惠が指定したのは、郊外にある大貫という人の屋敷だった。
郊外だから他に目立つ場所がないのかな?
その屋敷までの道筋を大まかに聞き、そこでようやく携帯を閉じる。
こより「ともセンパイ、惠センパイはなんて?」
智「皆と会いたいって。歓迎するから家に来てって言ってた。だから皆でいこうよ」
反対の声は、全くなかった。
帰ってきたー
294 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 21:46:22.77 ID:iV1S0FAa0
ピンクポッチーズ(こより命名)は反対方向の場所へ行くのに街中を闊歩する。
奇しくもるいに言ったとおりになってしまったというわけだ。
目的は街中を歩くことじゃないけれど。
智「そういえば花鶏。大貫って屋敷聞いたことある?」
花鶏「……ないわね。どうせ私の家には遠く及ばないものの普通よりは大きいからって理由で屋敷と言っているのでしょうね」
花鶏の屋敷はとても大きい。確かにアレより大きい家はそれほど無いだろう。
伊代「けど、本当にいいのかしら……準備してるってことはいいんでしょうけど、あの時きり私達は会っていないんだし、いきなり行くのもどうかと思わない?
そういうのは今までの私たちみたいに何度も遊んで、親睦や信頼を深め、本当に友達や仲間になってから行くのが私はいいと思うのよ。
そもそも貴方達は同じ痣持ちってだけでずごくな」
茜子「長い。長すぎて蕁麻疹が出ます」
伊代「出ないわよ!」
それにしても本当に長かった。
やっぱり伊代は、イケテない。
こより「一体どんな場所なんでしょうねぇ、惠センパイの家!」
智「さあ、どんなのなんだろうね。僕も少しだけ楽しみ」
本当は少しだけ、どころじゃなくてとっても、なんだけどね。
295 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 21:47:32.56 ID:DLHAAtJz0
おお、きたかしえん
伊代ほんとなげーなw
愛すべきイケテなさ
297 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 21:55:11.54 ID:iV1S0FAa0
街中を抜けて、廃墟に出る。
……合ってるはず、だよね?
伊代「……本当にこっちなの?」
智「……うん、合ってるはず、なんだけど……」
進めば進むほどあたりは廃れていく。
鉄骨だけが積み重なっている塔や、多分誰も住んでいないようなビル。
間違えたんじゃないかと疑いたくなる。
こより「と、ともセンパぁイ……なんだか幽霊でも出そうなふんい」
「……君たち、ちょっといいかな?」
こより「きゃーっ!!お助け〜〜〜〜〜〜!!」
こよりが悲鳴を上げて、僕らの後ろへと回りこむ。
るいと花鶏はその声を駆けてきた人を睨みつけて警戒する。
「ああいや、まいったなぁ。驚かすつもりはなかったんだ」
それは勿論幽霊などではなく――男の人だった。
猫背、痩せ型、筋肉質でない。
声は頼りない。
風貌は窓際にでもいそうな中年サラリーマン、といったところ。
花鶏「……アンタ誰よ」
「ああ、申し遅れた。俺は三宅。しがない記者をやっているんだ」
時報wwww
三宅ーキ入刀フラグだな
300 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 22:05:20.85 ID:iV1S0FAa0
男――三宅さんはそう名乗った。
しがない記者?確かにしがなさそうだ。
智「その記者さんが……なんの御用ですか?」
三宅「いやぁ、俺は見た目通り三流でね。仕事をもらえたはいいんだが、こういう廃ビルの記事をかかなきゃいけなくてさ」
伊代「……廃ビルの記事、ですか?」
三宅「そう。なんでも幽霊の目撃証言があるとか何とか。知らないかな、最近黒い怪物が廃ビルに入った人を殺す――とか」
三宅「死に方も様々でね。ロープで首を釣っていたり、何かが胸に刺さった後があったり……まるで呪いみたいだって噂だよ」
――――呪い。
僕はその言葉になんとなく目を細めた。
怪しく……はない。多分今のも言葉の綾で使っただけだと判断できる。
でも、逆にそれが怪しい。
五感ではない、本能でもない何かが警戒しろと叫んでいた。
花鶏「それで、その三流記者さんが私たちに何の用なの?」
三宅「ああ、つまりそれで廃ビルの記事を書いているんだけどね。内容が少ない少ない」
三宅「どうしようかと迷っているところにきたのが、幽霊が出そうだと話していた君たちってわけだ!」
三宅「ほら、よくあるだろう?ここについてどう思いますか、とか一般の人に聞いている部分が。そういうのにうってつけだと俺の記者の勘が叫んだんだよ」
三宅「そんなわけで――少し話させてもらえないかな?」
301 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 22:12:43.83 ID:iV1S0FAa0
どうしようか、と思う。
未だに脳の奥で警鐘がなっているけれど、その程度なら受けてもいいかもしれない。
――と、思ったところで茜子が僕も服を引っ張った。
茜子「………………」
茜子は何もしゃべらない。
けれど何か――僕に警告しているような気がした。
僕の中でずっと鳴り続けている何かと同じように。
智「……すいません、今急いでるので遠慮します」
一瞬、三宅さんはえっ、と表情が固まった。
智「いこう、皆」
そう言って、僕らは彼の横を抜ける。
その後数秒した後に、彼はまだ僕らを追ってくる。
三宅「ちょ、ちょっと待ってくれ!頼むよ、記事が足りないんだ」
三宅「終わったらファミレスでご飯ぐらいおごるからさ!お願いだよ!」
ファミレス、という言葉にるいが僅かに反応した。
302 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 22:15:31.04 ID:Cgg+IwsS0
三宅さん出すのかww
303 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 22:19:41.63 ID:QftSozSD0
1upキノコktkr
304 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 22:23:25.58 ID:iV1S0FAa0
僕はそのるいを押しとどめるように言う。
智「友達が僕らをもてなすって待っているので、結構です。ほら、るいも行こう」
るい「……うん」
少しだけ未練を感じるのか、間が僅かにあった。
数秒でも遅かったら危なかったかもしれない。
そこで割り込むのは、伊代。
伊代「……ねぇあなた。こんなに頼んでるんだし、少しぐらいならいいんじゃないかしら?」
しまった。伊代の空気のよめなさ具合を呼んでなかった……!
その伊代の発言を聞いて、生き返ったみたいに三宅さんが元気になる。
三宅「そう、そうだよ!ほんのすこし、十分程度でいいんだ。だから、ね、ね!」
そういって、一番三宅さんに近かった茜子の手を掴もうとして。
ついっ、と三宅さんの手が空を掴む。
花鶏が、茜子のもう一方の手を掴んで引っ張ったからだ。
……危なかった。
もうこうなったら仕方がない、あまり使いたくない手だったけど……
智「いい加減にしてください!しつこいと警察呼びますよ!!」
怒鳴る。
三宅さんは明らかに驚き、後ずさる。
僕らはその隙をついて、顔を合わせ、走り去った。
……怪しいにも、ほどがある。
伊代ーーーー!
306 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 22:34:30.19 ID:LEbVTBzu0
いつの間にか更新きてた
307 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 22:35:14.29 ID:iV1S0FAa0
ようやくまともな舗装されている道に出てそうそう、茜子が言う。
茜子「ファインプレーです、貧乳ブルマ。今度から貧乳ブルマ僕っ娘に昇格してさしあげます」
智「別にしなくていいよ!?」
というかそれは昇格しているのか。
寧ろ悪口の度合いが上がっているように思うのは僕の気のせい?
花鶏「それにしても……しつこい男だったわね。これだから男は嫌いなのよ。伊代ちゃんも、あんな男に甘い言葉をかける必要はないわ」
伊代「え、で、でも……もし純粋にインタビューしたい人だったら……そんな危なさそうな人には見えなかったし……最後は、少しあれだったけど」
茜子「あの男の心は、悪意と欺瞞で覆いつくされていました。見た茜子さんが具合悪くなります」
なるほど、茜子がさっき向けてきた視線はそういうことだったのか。
どうやら僕は正解を選んだらしい。
るい「だったらトモ流石だよ!流石私の嫁!」
こより「本当ですよう!グッジョブッス!」
るいとこよりが二人して僕に抱きついてくる。
それを笑いで誤魔化しながら、周りをキョロキョロと見渡した。
智「……それにしても……ここどこだろう」
見る限り、塀がずっと伸びているようにしかみえない。
近くには入り口の檻のような扉があり――って……もしかして。
308 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 22:45:16.55 ID:iV1S0FAa0
花鶏「嘘……これ、全部家の領地……?」
花鶏も唖然とする。
これは、花鶏ん家よりも格段に広い。
花鶏「クソ!なんてやつなの、名前を確かめてやるわ!」
茜子「大貫。……どうやらここが終着駅だったようですね」
茜子は壁をすっ、と指差す。
そこには蔦にまみれて表札が下げられていた。
曰く、『大貫』と。
智「ここが、そうだったんだ……」
そう呟いて、見上げる。
とても大きい屋敷だ。庭もとても広そう。
と、その時何の扉が開く。
そこにいたのは、白い詰襟を来た一見美少年にみえる少女。
智「惠!?」
惠「待っていたよ。我が家へようこそ、歓迎するよ」
待ち合わせ場所とはそういうていで……僕らは惠の家に向かっていたってこと……!?
Chapter
17 平凡な日常
18 怪しい記者
19 ???←次ここ
やばい、なんか超疲れた……
少しだけ休憩させてもらいます
あ、ちなみにこの第三幕はバッドエンドがありますので気をつけてくださいね
310 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 22:55:47.01 ID:J7Oj06sN0
超乙!
BADENDか…三宅関係か惠関係か
311 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 23:18:44.83 ID:Dodt6R0i0
やっとおれののぞむてんかいがきそうだな
312 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 23:22:42.48 ID:iV1S0FAa0
惠の屋敷は、とても大きかった。
まず入り口の扉からして違うし、入ったらエントランスとでもいうのかな、とても広い玄関が僕らを迎えてくれた。
そして一人のメイドさんが僕らの傍へ駆け寄ってくる。
……メイド!?
「惠さん、おかえりなさい。そちらが今日行っていたお客さんですね?」
惠「ああ。歓迎してあげてくれ。みんな、彼女の名前は佐知子。この家で住み込みで働いているんだ」
佐知子「佐知子です。皆さんどうぞ自分の家と思いくつろいでいってくださいね」
スカートを軽く上げて、優雅にお辞儀をする。
前に見たメイドのお春さんとは大違いだ。
こより「ほへぇ〜、本物のメイドさんだぁ〜!」
茜子「どこかのエセお金持ちとは大違いですね」
るい「んだんだ」
花鶏「……茅場、皆元。あんたら後で死なす」
続いて今度は惠が佐知子さんに向き直る。
惠「彼女が智。そちらの元気な子がるいとこより。銀髪の子が花鶏。眼鏡の子が伊代で、大人しめの子が茜子だ」
智「今日はよろしくお願いします」
佐知子「いえ、こちらこそ。ではご案内します」
313 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 23:28:33.46 ID:iV1S0FAa0
通る廊下も、広い広い。
花鶏のも相当だったけど、やっぱりこの屋敷はそれ以上だ。
花鶏が少しだけ悔しそうに歯噛みする。
花鶏「……これ、燃えないかしら」
伊代「物騒なことをいうんじゃありません」
るい「同じドアがたくさんだぁ、すごいなぁ」
惠「そうでもないよ。例えばそこの部屋を開けてご覧」
るい「これ?」
惠が指差すドアをるいは何の疑いもなく開ける。
すると、途端にホコリが舞った。
るい「けほっ、けほっ!」
伊代「うわ……埃だらけ……」
惠「使えない部屋ばかりで、別にすごいわけじゃない。真にすごいというのは全て万全の状態になっていることだと思うがどうだろう」
確かにその通りかもしれない。
惠の言う事には一理ある。
こより「お手伝いさんがいるのに、埃だらけなんですか?」
314 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 23:35:05.91 ID:iV1S0FAa0
惠「この屋敷で働いているのはこの佐知子と、あと料理長の浜江だけだ」
惠「佐知子は洗濯や買出し、掃除を全て一人でやっている。だから不必要なところの掃除はしないように言ってあるのさ」
智「なるほど……」
確かに掃除を一人でやっているなら確かに合理的だ。
佐知子「惠さんがいうなら、私はいつでも全部の場所を掃除しますよ」
惠「そんなことをして佐知子が身体を壊してしまったら大変だ」
佐知子「ありがとうございます、惠さん」
見ていて微笑ましくなるぐらいの関係。
惠と佐知子さんは強い信頼関係で結ばれているらしい。
智「……あれ、ってことは、この大きな屋敷に三人だけなの?」
惠「ああ、そうだよ」
こより「なんだか……寂しいですね」
惠「そうでもないさ」
こよりの言葉に惠はすぐ返す。
とびきりの笑顔で。
惠「今日は、みんなが盛り上げてくれるんだろう?」
315 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 23:47:21.70 ID:iV1S0FAa0
広間も、それは広かった。
僕ら全員が入っても余裕で人がまだ入るぐらいの大きさ。
この部屋一つで僕の住むアパート一つ分はあるかもしれない。
……羨ましい。
惠「さて。みんな昼食は食べたかな?」
それに答えるようにるいのお腹が鳴った。
それを聞いて惠は笑う。
惠「あはは、ならすぐに用意させよう。佐知子」
佐知子「はい、すぐにお持ちしますね」
佐知子さんがすぐに出て行く。
僕らは適当に会話しながら待つことにした。
茜子「今更ですが、あの人賭けレースの時はありがとうございました。お陰で助かりました」
惠「大した事はしていない。僕は僕に出来ることをやっただけさ」
るい「……お腹すいたー」
伊代「ところで、あなたも痣をもってるのよね?一応見せてもらっても構わないかしら」
惠「好きにするといい」
こより「では遠慮なく……うはぁっ、本当にありますよぅ!」
316 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 23:49:50.96 ID:FvtLWIM60
キャラの再現度が高くていい
自然にセリフが再生されるわ
317 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 23:55:11.68 ID:iV1S0FAa0
花鶏「本当ね……痣はあと幾つあるのかしら。全く、著作権法の侵害だっての」
るい「お腹すいた〜」
智「そういえば、今日の昼食はなんなの?和食?」
惠「ついてからのお楽しみさ。けれど味は保証するよ。浜江の料理は絶品なんだ」
るい「お腹すいたぁ〜〜〜っ!!」
花鶏「皆元うるさい」
るいが暴れだしそうなほどに時間が経った後(実際には十分も待っていない)、佐知子さんが料理を持ってきた。
佐知子「お待たせしました。沢山食べてくださいね」
花鶏「……いい香りね」
花鶏も公認だ。
るいは今か今かとそれがテーブルの上に置かれるのを見て、全部が置かれた瞬間に箸を持つ。
るい「いっただっきまー……」
智「待て」
ピタッ、と。
面白いようにるいは止まった。
そのまま、五秒経過、十秒経過……
るいが目の前にご飯を置かれたままおわずけされている犬のような鳴き声をあげる。
318 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 00:01:06.29 ID:tc6DFhcc0
るい「……きゅーん」
心なしか下がった尻尾と垂れた耳が見えそうだ。
智「……よし」
るい「わんっ!」
承認が出ると同時に、るいは一心不乱に食べつく。
その食べ方は見ていてこちらがスカッとするぐらいだ。
伊代「こら!もうちょっと丁寧に食べられないの!?食事にもね、マナーってものが……」
惠「気にしないさ。その人がそれでいいと思えばそれがマナーなんじゃないかな」
茜子「家主もそういっていることですし、では茜子さんも頂きましょう」
智「頂きます」
並べられた料理は、見ると和だけならず洋、中華と様々なものがあった。
僕も一口食べて、あまりの美味しさに口を押さえてしまった。
るい「う〜〜〜〜ま〜〜〜〜〜い〜〜〜〜〜〜〜ぞ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」
るいが代わりに代弁してくれる。
それほどまでに、美味しい昼食だった。
319 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 00:09:57.09 ID:tc6DFhcc0
>>316 そう言われると超嬉しい。
ありがとう
昼食を食べ終わって、僕らはただひたすらに駄弁った。
意外に真面目かと思われた惠だったが、意外に変人キャラらしい笑いを何度もとる。
久しぶりにあったのに、皆にすっかりと受け入れられていた。
気がつけば、時計がボーン、と鳴る。
伊代「……あら、もうこんな時間なの?大変、もう帰らなくちゃ」
こより「あ……鳴滝ですね」
時刻は既に八時を回っている。
掃除を終えて戻ってきた佐知子さんが帰る準備を始めている僕らをみて驚いたように言う。
佐知子「皆さんお帰りになるんですか?もう晩ご飯も皆さんの分をご用意させていただいたのに……」
るい「!」
るいの耳がピコンと立つ。
るい「食べる!ハマさんだっけ、その人の料理超おいしーもん!花鶏のセロリ丼とは大違い!」
花鶏「ちょっと、セロリ馬鹿にしてんじゃないわよ!」
……ちょっと今信じられない丼の名前をきいた気がするけど、気のせいだよね。
320 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 00:16:19.79 ID:cIseQK7v0
支援
321 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 00:17:17.28 ID:tc6DFhcc0
茜子「いえ、本当です。三食あれば一回は出てきます」
こより「うぇ……苦そう…………」
子供舌のこよりには想像するだけでも辛い世界だろう。
興味があるのか、伊代は訊ねる。
伊代「……美味しいの?」
茜子「暴食王の満腹度、それの百倍ぐらいのおいしさです」
つまり美味しくないってことだね。
花鶏「何言ってるのよ!美味しいにきまってるじゃない!それにダイエットにもいいのよ!」
その言語に伊代の耳がピクリと動く。
伊代「……試してみようかしら、セロリ丼」
ダイエットという言葉にはとことん弱い伊代だった。
そうこうしているうちに、佐知子さんと随分と年のいっている眼光の鋭いお婆さんが食膳をもって入ってきた。
そのお婆さんに惠は声をかける。
惠「浜江。少々遅れたが彼女たちが今日もお客さんだ。昼食も美味しい美味しいと食べていたよ」
浜江「…………(ギロリ)」
ビクッ、と蛇に睨まれた帰るように縮こまる。
怖い、怖いよこの人!
322 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 00:23:00.21 ID:tc6DFhcc0
そうやって怯える僕に、惠は諭すように話しかけてくる。
惠「……智。浜江は元々こういう顔つきなんだ。美味しいと言ってもらえて、心中ではとても喜んでいるはずだよ」
智「……そうなの?」
惠「そうだろう、浜江」
浜江「………………(ギロリ)」
ひぃいいいい、また睨んだよぅ!
浜江さんは少し沈黙した後、低い声で答える。
浜江「その通りでございます、惠さま」
惠「ほら、ね?」
智「う……うん…………」
佐知子さんがクスリと笑う。
恐らくは佐知子さんも惠と同じことを思っているのだろう。
そうしてテーブルに並べられた夕食は、どれも昼食と見比べても遜色ない物ばかりだったのだが……
浜江「………………(ギロリ)」
智「ひーん」
浜江さんがこちらをジッと見てくるお陰で、味のわからない晩ご飯となった。
ぺろぺろ
324 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 00:30:59.05 ID:tc6DFhcc0
そうして夕食も食べ終わった頃には、九時を過ぎていた。
急いで帰らなくちゃ。
伊代「それじゃあ、ご飯ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
伊代は実家暮らしで、家族と住んでいる。
だからここまで遅いと心配されるのだろう、急いでいた。
佐知子「そんな急がなくても。ゆっくりされて行かれてはいかがです?」
伊代「もう夜も遅いので……」
惠「……それなら、泊まっていくといい」
夜も遅い、という理由で断る伊代に、惠はそんな言葉を送った。
惠「智、るい、花鶏、こより、茜子。君たちもどうだい?」
智「え……僕は構わないけど…………」
特に問題はない……筈だ。
花鶏「私もいいわ。皆元、茅場もそれでいいわよね?」
るい「明日の朝もハマさんのご飯食べれる!?」
るいのがっつきように、佐知子さんはやはり笑って頷く。
なら泊まる――!と元気よく宣言するるいに当てられたのか、こよりも許可をとってきます!と部屋を出て行った。
325 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 00:39:21.29 ID:tc6DFhcc0
茜子「さて。大巨乳イケテナイザーはどうしますか?」
伊代「え、えっと……部屋は埃だらけなんじゃ……」
昼間にきて、昼食と夕食をごちそうになり更に泊まるのは気がひけるのか、伊代は懸命に言い訳を探す。
しかしそれも僅かな時間稼ぎ。
惠「こういうこともあろうかと、昼間の間、佐知子に掃除をさせておいたんだ」
伊代「あ、う……そ、それなら……許可が出たら……」
そういい、伊代はその場で携帯を操作し、部屋の隅へと行く。
お母さん、という声から始まり、ぼそぼそと二言三言言った後に閉じる。
どうやら終わったようだ。
伊代は照れたような表情で僕らに告げる。
伊代「許可……でちゃった」
惠はそれを微笑で迎え入れる。
そこに丁度こよりが戻ってくる。
智「こよりん、どうだった?」
こより「電話に出ませんでした……一応留守電には入れておいたので、鳴滝も皆さんとお泊りするッス!」
惠「決まりだ」
そうして僕らの同盟は惠邸にお泊りすることとなったのだった。
326 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 00:46:42.90 ID:tc6DFhcc0
惠は言っていた。部屋を用意させた、と。
だから僕も呪いを踏む心配がないと思っていた。
なのに。
用意している部屋が、一部屋だったなんて思ってもみなかった。
やばい、これはヤバイ!
危機だ、貞操じゃなくて命の危機だ!
どうにかして、切り抜けなければ……そうだ、クローゼッ……
茜子「では茜子さんはクローゼットの中を頂きます」
智「盗られたっ!!」
入るなりベッドの上は花鶏が占領し、それに対抗して最終兵器るいちゃんが共にベッドを使っている。
残りの四人は雑魚寝……せめて端はとらなくちゃ……!
と、思って普通にとれた。
これがいつもの行動の結果ってやつかな。
327 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 00:56:11.04 ID:tc6DFhcc0
惠「……智、まだ起きてるかい?」
壁の方を向いていると、突然後ろから声がかかった。
どうやら隣は、惠だったらしい。
方向転換して、真正面から向き合う。
智「……どうしたの、惠」
惠「いや、特に理由はないんだ。友達というのは意味もなく呼び合うものなのだろう?」
智「……そうだね」
ふふっ、と互いに小さな声で笑いあう。
なんだか内緒話をしているようで心地いい。
惠「ところで智。君は命について考えたことがあるかな?」
智「……なぁに、急に」
惠「……あのアバターというモノの話さ」
アバター。
僕らが繋がっている、朱い竜を思い出した。
惠「……僕らは意図せずとも、命を摘みとってしまった。そのことについて、智なりの答えを聞かせて欲しいんだ」
智「あれは…………」
どう答えればいいのか、迷う。
328 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 00:58:54.34 ID:M2rTfSry0
やっぱり気になるよなぁ…惠なら
329 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 01:07:11.33 ID:tc6DFhcc0
前に、瑞和達と会ったときに思ったのは、繰莉ちゃん達と同じ意見だった。
因果応報。人を呪わば穴二つ。
そういった言葉を突きつけたかった。
けれど、一日経って、二日経って。
やはり違うと思う。
銃を持った相手が目の前に立って――もし殺意を持って僕に発砲して、その後に僕が彼ないしは彼女の命を取れる状況になったとして。
僕はきっと、なにもしない。もうこんなことはするなと、厳重に脅しをかけるだけできっと殺さない。
それはつまり、どんなものであれ人間の命は失われてはならないものだと思っているのだろう。
僕は惠に――
>>330 1 因果応報だ、と答える
2 やっぱりいけないことだ、と答える
1
331 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 01:10:51.20 ID:M2rTfSry0
332 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 01:18:28.80 ID:tc6DFhcc0
先に言うけど、『ハッピーバースディー、僕!!』はないぜ?
→因果応報だ、と答える。
智「……因果応報だよ」
惠「……一応聞くけれど、どうして?」
智「あの人達は僕ら以外にもきっと沢山の人を殺してる。自分たちの私利私欲のためだけに……人を殺す痛みを、何も知らないで」
智「そんな人達は……生きている価値がないと思うんだ」
智「惠も、思わない?テレビとかで、巨悪犯罪者が原因はなんであれ死んだときとか……」
智「ざまぁみろとまでとはいかないけど、スカっとしたり、今までの報いだ、とか思ったりすることはあるでしょう?」
智「あれと同じ。きっと僕らがやらなくても、他の誰かがしていた。そしてその誰かがやるまで、彼らは痛みを知らずに繰り返した」
惠「……ああ、その通りだ。智は、ちゃんとした考えをもっていたんだね」
智「うん……でも、こんなことをいうと伊代とかに怒られちゃうから、秘密ね」
惠「ああ――わかった。今日のことは、智と僕だけの秘密だ。それじゃあ、夜も遅い。寝ようか」
智「うん――おやすみ、惠」
そうして、僕らは静かに眠りについた。
333 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 01:32:25.76 ID:tc6DFhcc0
「明日の朝は、鳴滝こよりの携帯電話の着信音で目を覚ます」
「それから、鳴滝こよりの姉、鳴滝小夜里が大怪我をしたことを知る」
僕は虚ろな目付きで、正面を見据えたまま呟いていた。
一ミリすら動くことはせず、口が自然に言葉を紡ぐように続ける。
「鳴滝こよりは大貫邸を飛び出して、病院に行くために昨日通った廃墟を通る」
「嫌な予感がして才野原惠と共に鳴滝こよりの後を追うと、そこには『器物型』のアバターが彼女を襲おうとしていた」
僕は目の前に座る僕をじっと見つめている。
声を掛けることも、身じろぎすら出来ず、ただ見つめている。
「そのアバターは昨日の記者三宅が操るものだった」
「彼は昨日の失敗で契約をしていた企業に首を切られ、腹いせにアバターでその企業を襲ったのだ」
「また、鳴滝こよりを襲った理由も解明。首を切られたのはお前らが断ったからだ、という逆恨み」
ここはどこだろう。
自分がどこにいるのか理解出来ない。
「才野原惠と共に朱い『竜型』のアバターを出し、撃退。しかし破壊までは至らずに逃がしてしまう」
「だが追い払えたことに喜び、鳴滝こよりは姉の見舞いにいくことができた」
初めて、人形のように固まっていた僕が動いた。
瞳が合わさった瞬間、言いようのしれない恐怖が僕を襲った。
そして、僕は――――
334 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 01:35:00.84 ID:tc6DFhcc0
Chapter
17 平凡な日常
18 怪しい記者
19 お休みからおはようまで
20 人を呪わば穴二つ
→ ???
21 不可思議な夢
22 ???←次ここ
本日の講演は終了です。
お疲れさまでしたー
335 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 01:39:14.58 ID:IOCtBd/6P
乙
336 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 01:45:49.02 ID:M2rTfSry0
乙!
やっぱり三宅は三宅だな
337 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 01:48:44.17 ID:cIseQK7v0
おつかれ
(・ω・`)乙 これは乙じゃなくてポニーテールなんだからねっ!
乙。
明日も楽しみにしてます。
支援
ほしゅ
驚きの芹園みや率
343 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 04:03:17.64 ID:i2rTI+y70
保守
344 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 05:37:04.65 ID:8+cudefG0
ほ
345 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 06:33:47.73 ID:1y208ZPx0
保守
346 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 08:01:06.00 ID:8+cudefG0
ほしゅ
347 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 08:58:33.82 ID:scAKwULA0
おはようございますです。
保守どうもありがとうございます。
ご飯食べるまで少し書く。
あれ、ID変わってやがる。
……まぁいいか
349 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 09:11:41.73 ID:scAKwULA0
携帯が鳴っている。
僕のじゃない。僕はこんな着信音じゃない。
ああ――多分、こよりだ。最近とったとか言って聞かされた覚えがある――曲名は……『絆』とか、そんな感じだったはず。
こより「……むにゃむにゃ、はい、鳴滝ですぅ…………」
寝ぼけながらも電話をとったこよりの声が聞こえる。
もうすっかりと目が冴えてしまった。
横一列にかかった毛布を僕の上から取り払い、上半身だけ起こしてグッ、と背伸び。
横を見ると、惠もよこになったままだけれど眼をしっかりと開いていた。
智「おはよう、惠」
惠「ああ、おはよう」
短く挨拶を交わしあい、みんな代わり映えしないかと見渡そうとしたまさにその瞬間。
こより「えっ!?お姉ちゃんが!?」
こよりの驚きと悲痛混じりの声が響いた。
今の大声にるいは何事!?と大きくベッドで動き、花鶏を突き落とす。
伊代も眼を覚まし、茜子も中で何があったのか、クローゼットから頭から落ちてきた。
こよりは仕切りに、うん、うん……とばかり言って、通話を切った。
その手から、力が抜けたように携帯が滑り落ちる。
智「こより!」
伊代「っ、と」
こよりは電話を受けるのに半身だけ身体を起こしていたため、それが倒れかけたのを伊代が受け止めた。
350 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 09:17:25.10 ID:8+cudefG0
おかえりー
351 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 09:22:11.86 ID:D+hqycSb0
おはようの支援
352 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 09:24:05.23 ID:scAKwULA0
花鶏「っつつ……一体何があったの……?」
るい「こより、どうかしたの?」
惠「先程の言葉から推測するに、君の姉君に何かあったのかな」
みんなが心配して、口々に発する。
こよりは震え、伊代に支えられながらもその全てに同時に答える。
こより「私の……私のお姉ちゃんが、働いているビルの倒壊で怪我を負ったって…………」
――怪我。
――誰が。
――倒壊。
るい「こよりって、お姉ちゃんいたんだ」
こより「はい……年が離れたお姉ちゃんがいて……最近は少し疎遠気味だったけど、昔はっ、ひっく……仲、すごく良くて……」
こよりの眼から小粒の雫が垂れ落ちる。
本当に、仲の良い兄弟だったのだろう。
でなければこよりがこんなに動揺するはずがない。
僕は、いつか願った。
――どうか、皆で――――幸せになれますように。
繋がった誰かの不幸なんてまっぴらだ。
だから、こよりの泣き顔なんて、みたくない。
353 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 09:31:31.59 ID:scAKwULA0
智「こより……そのお姉さんは重傷だって言ってたの、重体だっていってたの?」
こより「……?ひっく、ともセンパイ、どうしてそんなこと……」
智「いいから」
こより「……確か、重傷だって…………」
ああ、よかった。
不幸中の幸いというやつだけれど、こよりを励ますくらいの幸せもあれば十分だ。
智「そっか。……なら、大丈夫。命に別状はないよ」
重体と重傷の違いは簡単だ。
前者が死の危険性があり、後者は殆ど無い。
全く、とは言い切れないのは辛いところだけれど、絶対はないのだから仕方がない。
こより「そう……なんですか?お姉ちゃん、助かるんですか!?」
智「うん、多分ね。……だから、泣き止んでこより。僕らはこよりが泣いてるのを見たくないから」
茜子「そうです。テンション凸凹組の凹の方が元気なくては、恐らく凸の方にも影響します」
それでもぽろぽろとこよりは涙を流さずにはいられない。
こうなったら、いっそおもいっきり泣いてしまうのがいいかもしれない。
354 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 09:34:36.59 ID:scAKwULA0
伊代と眼を合わせて、伊代が頷く。珍しく空気よんだ。
伊代はそのまま、自分の胸にこよりを引き寄せた。
こより「ひっぐ……い、伊代センパイ……?」
戸惑うような声。
それでも伊代はやめない。
伊代「……泣きたかったら、思いっきりないていいの。涙は、我慢するために作られたものじゃないんだから」
こより「いっ、伊代センパ……ッ!」
こよりの感情が、決壊する。
こより「うわあぁああああああああ――――――――――――んっっっ!!!」
僕らは揃って、二人を残して部屋を出た。
355 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 09:41:39.72 ID:scAKwULA0
花鶏「……才野原、食堂にあったテレビ、借りていいかしら」
惠「ああ、構わない」
花鶏「……ビルの倒壊っていうなら、ニュースになっていなきゃおかしいわ」
花鶏はそういいのこして、先に行く。
るいと茜子も後を追う。
そして僕らも行こうとした瞬間。
『明日の朝は、鳴滝こよりの携帯電話の着信音で目を覚ます』
『それから、鳴滝こよりの姉、鳴滝小夜里が大怪我をしたことを知る』
――夢を、思い出した。
思わず立ち止まり、惠が怪訝そうに僕を見る。
惠「……智、どうかしたのかい?」
智「惠……」
夢通りだ。
だとすれば、この後は……
『鳴滝こよりは大貫邸を飛び出して、病院に行くために昨日通った廃墟を通る。嫌な予感がして後を追うと――――』
智「こよりが、アバターに襲われるんだ」
356 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 09:51:13.70 ID:scAKwULA0
惠「なんだって?」
聞き返す。今までで一番感情が表にでた反応だった。
智「……惠、信じてもらえないかもしれないけど……話を聞いてもらえる?」
惠「……言ってみるといい」
僕らは食堂に歩きながら、惠に今朝見た夢のことを話す。
僕が淡々と今日の未来を話す僕を見ていること。
その未来が当たったことと、これから起きる未来のこと。
惠「………………」
惠は考えるような素振りを見せる。
僕だってわからない。どうしてあんな夢をみたのか。
今までには、見たことなんてなかったのに。
惠「……智、君は予知夢、というものを信じるかい?」
智「予知夢……?」
惠「ああ。人はピンチになると信じられないような潜在能力を発揮することがあると聞く。今の智のものもそういったものなんじゃないだろうか」
智「……もしかしたら、そうかも」
僕はみんなの幸せを願ってる。
だからそれが脅かされるとなったときにその危機を救う為に僕の眠っていた力が働いた可能性もないことはない。
……いや、正直理由なんてどうでもいいんだ。これが本当であれば――僕らは助けなきゃいけない。こよりを。
357 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 09:57:33.81 ID:scAKwULA0
惠「もし本当なら、こよりはこれからここを出るらしい。少しここで、二人を待つことにしよう」
智「そうだね」
二つ角を曲がったところで立ち止まり、二人横に並んで壁によしかかる。
そういえば、夢ではここのことを『大貫邸』って呼んでいたっけ。
智「ねぇ、惠。夢でここのことを大貫邸っていっていたんだけど、大貫って誰?表札も大貫だったよね」
惠「……………………」
智「……ごめん。無粋だったね」
惠「いや、智ならいいさ。気にしないよ」
惠は僕の質問に、少しだけ答えるのに困った顔をした。
つまり何か色々な家庭事情があったのだろう。
僕は話を逸らすように、あー!と僅かに大きい声を上げる。
智「それにしても遅いね、少し様子を見に行こうか」
惠も頷き、僕らは先程の道を辿る。
そして一つ目の角のところで――
伊代「きゃっ」
智「うわっ」
伊代と、ぶつかった。
こよりの姿は――ない。
358 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 09:57:47.25 ID:8+cudefG0
真雪先生の出番か
支援
359 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 10:02:20.56 ID:scAKwULA0
伊代「あ、あなた達……待っててくれたの?」
智「う、うん……こよりは?」
伊代「ああ、居ても立ってもいられないって……泣き止んだ後すぐに出て行ったわ。病院に行くって皆に伝えておいてくれって」
惠の顔が険しくなる。
そうだ、こよりは病院に良く途中で――!
智「惠っ!」
惠「ああっ!!」
僕らは同時に玄関へと駆け出す。
伊代が驚いたような顔をして、僕らに声をかける。
伊代「ちょっ、あなた達、一体どこにいくの!?」
智「大丈夫!すぐ帰るから食堂で皆とおとなしくしてて!」
言う時間も惜しい。
僕らはすぐに玄関を抜けて、檻の門を開く。
360 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 10:10:17.75 ID:scAKwULA0
惠「智、道は昨日説明した通りで間違いないのかい!?」
智「うん、それで大丈夫!」
駆けながら、短く交わす。
もうすぐ、廃墟だ。
こより「きゃ――――――――――――っっっ!!!」
智「!!」
こよりの悲鳴。
こんな外れなら――普通は、誰にも聞かれなかっただろう。
惠「遅かったか!」
僕らは素早く最後の角を切り返す。
そこには尻餅をついて、まるで小動物のように怯えているこよりがいた。
そして、その向こうには――
こより「いやっ!来ないで、来ないで!!」
三宅「はっ、叫んだって誰もこねぇんだよ!大人しくお前の姉貴と一緒にくたばりやがれ!」
物体――
そうとしか形容の出来ない形のそれが、そこにはあった。
茜子さんは俺の嫁
362 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 10:11:43.15 ID:8+cudefG0
しえん
363 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 10:24:11.58 ID:8+cudefG0
三 三三
/;:"ゝ 三三 f;:二iュ
三 _ゞ::.ニ! ,..'´ ̄`ヽノン 一階で罠踏んで!!
/.;: .:}^( <;:::::i:::::::.::: :}:} 三三
〈::::.´ .:;.へに)二/.::i :::::::,.イ ト ヽ__
,へ;:ヾ-、ll__/.:::::、:::::f=ー'==、`ー-="⌒ヽ ←
>>361 . 〈::ミ/;;;iー゙ii====|:::::::.` Y ̄ ̄ ̄,.シ'=llー一'";;;ド'
};;;};;;;;! ̄ll ̄ ̄|:::::::::.ヽ\-‐'"´ ̄ ̄ll
364 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 10:27:10.71 ID:scAKwULA0
まるで円錐を逆にしたような独創的なフォルム。
幾多の歯車、と幾何学物体で出来ている。
足すら持たず、顔のような部分には女神のように彫刻が彫られていた。
骨だけのような細い腕の先はまるで鉤爪のようになっていて、尾にも同じものがあり合計三つ、垂れている。
惠「アバター……!」
智「こよりっ!!」
僕がこよりの名前を呼び、ようやくそこでこよりと三宅――もうさんをつけるのすらもおぞましい、二人が気付く。
こよりは僕と惠の姿をみて、泣きそうながらも助かった、とでも言いたげな顔を浮かべた。
よかった、まだ何もされていないようだ。
三宅「ハッ、昨日の奴か……テメェらのせいで散々だよ。企業から首を切られるわ、良くない噂を流されるわ……ま、代わりに一撃ぶちこんでやったけどなぁ!!」
――どうして。
どうして、こんな酷い事をそんな簡単にできるんだ。
同じ、人間のはずなのに、どうしてそんな自分勝手なことができるんだ。
三宅「ま、ガキが三人いるところで問題ない……『ソリッド』!!」
三宅の言葉に対応するように、ブンッ!と三本の内一本が振るわれる。
それは僕らを狙ったものではなく、近くの鉄骨の塔を撃ちぬいた。
強大な力で撃たれたそれは、ガラガラと激しい音を立てて崩れてゆく。
365 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 10:33:34.60 ID:scAKwULA0
こより「ひゃぁっ!?」
耳をつんざく轟音にこよりは身を竦ませた。
きっと、動けない。逃げられない。
三宅「どうだ、みたかよ!テメェらにはわかんねぇだろーがな、俺にはテメェらを殺すことなんざ簡単なんだよ!」
三宅「……そうだな。その場で泣いて裸で土下座をするなら許してやってもいいぜぇ?ま、何をするかはわかんねぇけどなぁ!!」
三宅の高笑いが嫌なくらいに耳に響く。
憎悪が、怒りが僕の感情を満たす。
なんだこいつは。とても僕らと同じ人間とは思えない。
三宅「ほらほら、どうした!さっさと裸になれよ!それとも殺されてぇのか!?」
すっ、と僕の掌に冷たい感触が伝わる。
惠だ。
惠が、僕の手を握ったのだ。
惠「……智」
智「……うん」
366 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 10:39:10.28 ID:scAKwULA0
こよりは逃げられない。
こよりを連れて逃げるにしても、恐らくその前にやられる。
ならば、もう残されるべき道は一つしかない。
惠は僕の手を握る。
僕も惠の手を握る。
――僕に運命は視えない。
だから、先のことなんてわからない。
もしかしたら、もうコレはどうしようもない行き止まりの袋小路なのかもしれない。
――――――それでも。
――それでも、と。
その全てを拒否するのなら――――
戦おう。この身の、全身全霊を賭けて。
三宅、お前がそういった、この世の断りでないものを使うというのなら。
その力と同じ力で、お前を打ち破る。
そして――僕は叫ぶ。
そこに、『在れ』と願いを込めて。
智「――――――――――出ろ!!」
367 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 10:41:09.84 ID:scAKwULA0
Chapter
17 平凡な日常
18 怪しい記者
19 お休みからおはようまで
20 人を呪わば穴二つ
→ ???
21 不可思議な夢
22 凶報
23 ???←次ここ
御飯食べてきます。
368 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 10:53:26.61 ID:8+cudefG0
ほしゅ
まさかVIPでるい智とコミュのSSを見るとは思わなかったわ。保守らせていただく
370 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 11:50:45.66 ID:D+hqycSb0
保守だ
名前が気になるな
371 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 12:01:14.32 ID:scAKwULA0
本スレが病気過ぎる件について
再開します
372 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 12:09:05.86 ID:scAKwULA0
三宅「……なっ!?」
――青白い渦。
アバターを操る三宅にはその意味が理解できるだろう。
現れるのは、朱。目の前の水色の無機物に相対するような朱い鋼。
竜を形取る僕らの魂の象徴。
込められる弾丸は、一と二。僕と惠の二つ分。
一つだけでも竜を動かしたる魂が込められ、竜はその身を起こす。
■■■■■■■■―――――――
鬨の声をあげる竜に、水色の無機は動揺するようにたじろぐ。
三宅「竜……!?おいおいなんだよこれ!?きいてねぇぞ!!」
三宅自身の動揺がアバターに伝わっているようだった。
今が――勝機!
ズガン!と朱い竜はこよりを飛び越えて、その奥でアバターを引き裂く。
宙に浮かんでいるそれは軽く、一撃で遙か向こうへと吹き飛ばされた。
373 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 12:09:10.23 ID:8dBW4Csb0
るい智スレはいつもあんな感じだろう
374 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 12:12:39.00 ID:8+cudefG0
いつものごとく焼却されるから問題ない
375 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 12:17:08.54 ID:scAKwULA0
しかし、壊れてはいない。
まだ戦う意思があるのか、ユラリと起き上がりまた宙に浮かぶ。
三宅「くそっ、くそっ、くそっ!?ふざけやがって!ブチころしてやる!!」
――させない!
距離を詰めて、伸びかけた二本の腕を竜がもつ鉤爪で抑えこむ。
三宅「……まだだぁっ!!」
竜の脳天に一撃。
尾と同化している、三本目の腕だ。
惠「ぐっ……!」
朱い竜の特殊能力は、磁力。
磁力とはいっても、あらゆる物体に作用させることができる。
しかしながら、ここでその能力を使うには――些か危険過ぎる。
なにせ、こよりが動けないのだから。
智「――惠、一人でいける!?」
ならば、元々の予定だったこよりを助けることを優先させる。
惠はすぐ横にあった僕の顔をみて、僅かに笑みを浮かべた。
惠「さあ、いけるかもしれないし、いけないかもしれない」
僕はそれを肯定と受け取る。
なぜなら、竜の主導権を惠が全て一身に引き受けてくれたから。
376 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 12:25:59.76 ID:scAKwULA0
ガクン、と処理落ちしたかのように竜の動きが落ちた。
その隙をみすみすと見逃してくれるわけがない。
先程の衝撃で逃れた二本の腕、そして尾の腕の三本が同時に朱い竜へと殺到する。
惠「ふ――――っ!」
そこを―― 一閃。
まるで居合のように放たれたそれは、恐るべき威力で三本のうちの一本を関節から引きちぎった。
残る二本は焦るように竜へ攻撃を入れる。
甲高い金属音が鳴り響く。しかし、竜の朱き装甲はそう簡単には砕けず、剥がれない。
それを見届けて、僕はこよりの元へと走る。
智「こより!大丈夫!?」
こより「と、智センパイ……!な、鳴滝、死んじゃうかと思いましたぁっ…………!腰も、抜けちゃって……」
再び泣き始めるこよりを、僕はよしよし、と胸に抱き寄せる。
そして、膝裏と背中に手を回してお姫様だっこをした。
こより「わわっ!?」
智「少しだけ我慢してね、今はそんなに余裕はないんだ」
みると、朱い竜の腕も一本、弾き飛ばされていた。
僕はこよりを落ちないように胸にだきよせて惠の元へと戻る。
377 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 12:38:33.99 ID:scAKwULA0
惠の元へと戻ってきても、竜はまだ健在だ。
意識を戻すと魔力にはまだまだ残量がある。
惠はどうやら最低限で相手の攻撃を捌いていたらしい。
智「ここからが――本番だ!」
EX――特殊能力の発動。
つい先程までこよりを巻き込む恐れがあるために使えなかったが、今となっては何も制限するものはない。
竜と像が戦っている、こちら側のすぐ後ろ。先ほど、あの水色のアバターが壊した鉄骨。
それらすべてを持ち上げ――自分に向かって『引寄』る!
智「惠!」
惠「――承知した」
惠は一太刀で襲い来る腕を弾き、自らの真下に磁力場を発生させて『反発』する。
ついでに、鉄骨の方の磁力は既に切ってあるが慣性でそんなすぐに止まって地面に落ちるわけじゃない。
竜に向かって引き寄せられた鉄骨は、竜がいなくなると即ちその向こうを射抜く。
つまり――
三宅「――んなっ!?」
ズガガガガン!と水色の像に幾本の鉄骨が突き刺さる。
三宅が生きている、ということはまだ壊れていない証拠だ。
だが、誰がどうみても、戦闘を続行するのは不可能な状況に視える。
三宅はその状況に戦慄く。まさか復讐をしようと思っただけでこのようなことになろうとは、誰が想像しただろうか。
378 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 12:46:09.82 ID:pUoIAfS8P
アバターで殺した場合惠の能力は発動するのだろうか
379 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 12:51:24.54 ID:scAKwULA0
三宅「ふざけ、んな……こんなところで死んでたまるかってんだよッ!!『ソリッド』!立ちやがれ!!」
態勢が崩れかけた相手のアバターは三宅の言葉に答えようとして――崩れる。
同時に青白いゲートが出現した。
――魔力切れ。
単独接続でアソコまで動かせた、ということはEX能力が何か関与していたのだろう。一人で全力を使い過ぎた結果は、すぐに現れる。
三宅「く……くそったれが…………っ!!覚えてやがれっ!!」
三宅はそんな悪役の台詞を吐き捨てて、走り去る。
竜はそれを追おうと動くが、僕が止めた。
惠「……智!」
追撃をかけようとしたのはやはり惠だったらしい。
智「……追う必要はないよ。あの言葉からすると、また来る。次に襲ってきたら、その時に返り討ちにすればいい」
惠「しかし……!」
智「惠。今は何よりも、こよりを助けることを出来たことを喜ぼうよ」
僕に抱き抱えられているこよりをくい、と軽く持ち上げる。
抱かれたペットのように固まった表情で小さくなっているこよりを見て、惠はようやく笑顔を見せた。
惠「ああ――そうかもしれないな」
僕らはその後、こよりを人通りの多いところまで送り、屋敷へと帰った。
380 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 12:53:38.20 ID:scAKwULA0
>>378 そのことについては前の選択肢で逆のほうを選ぶ必要がありました。
381 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 13:00:00.62 ID:8+cudefG0
そういえば智たちのクラスはどんなだろう?
382 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 13:11:31.22 ID:scAKwULA0
その帰り、芳守さんから電話がかかってきた。
芳守『……もしもし』
智「もしもし、どうしたの芳守さん……って、当然か」
聞いてからばかだな、と思う。
そもそも繋がりさえしなければ、僕と芳守さんは全く接点のなかった人種だ。
芳守『やっぱり、今日の起動は和久津だったの?』
智「うん。厳密には、僕と惠。喧嘩吹っかけてきた相手がアバターを出してきて、一人のようだったから二人で押し返した。勿論壊してはないよ」
芳守『……そっか。なら、うん。安心した。和久津も無事みたいで』
どうやら芳守さんもなかなかに人が良い人種らしい。
智「ごめんね、心配させちゃって」
芳守『ううん。あーやも心配してるから、伝えておくね』
智「うん、よろしく芳守さん」
芳守『……ねえ、ところでどうして私だけさん付けなの?あーやはアヤヤで、蝉丸は蝉丸なのに』
智「そういえば……うーん、どうしてだろう?」
なんとなく、としか言いようがない。
〜って呼んで!なんて言われた覚えもないし。
383 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 13:21:06.27 ID:scAKwULA0
智「……嫌なら、芳守か南堵って呼ぶけど……」
芳守『それじゃあ、芳守で』
智「わかった、芳守。それじゃあね」
芳守『うん、それじゃあ』
それで、僕らは会話を終える。
一応僕の言葉を聞いていた惠にも軽く教えていると、すぐに屋敷についた。
……庭の草、伸びっぱなしだなぁ。
智「ねぇ、惠。どうして庭はあんな風なの?」
惠『ああ、佐知子が屋敷の掃除を受け持っていることは話したかな?だから、庭には中々手が回らなくてね』
智「なるほど」
そんなことをしながら、皆がいるはずの食堂へと行く。
扉を開くと、皆が一斉にこちらを向いた。
るい「惠、トモぉっ!!」
花鶏「随分と遅かったわね。何をしていたの」
智「ちょっとね……あれ、まだ御飯食べてなかったの?」
花鶏「当たり前じゃない。あーあ、こんなのなら先に食べておけばよかったわ」
そんなことをいい、花鶏はテレビのほうを向く。
384 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 13:27:26.69 ID:scAKwULA0
伊代「そんなこといって。あなたじゃないの、先に食べようとしたあの子とかを抑えたのは」
花鶏「ちょっ、ばっ!」
茜子「捕食者アトリンにツンデレの称号が与えられました。でれてれ〜ん」
茜子が口でいう効果音に合わせて変な踊りをする。
花鶏が色々慌てているところを見ると、伊代の言うとおりだったのだろう。
今度ツンデレって呼んでやろう。
惠「それはすまないことをした。佐知子はどこだい?」
佐知子「ここにいますよ、惠さん」
惠「では朝食をお願いするよ」
佐知子「かしこまりました」
敬々しく頭を下げて佐知子さんは出て行く。
本当、よく出来たメイドさんだ。
伊代「それで、遅かったけれど……何かあったの?あの時も随分と慌てていたみたいだし……」
智「そのことなんだけど…………」
僕らは廃墟であったことをひと通り話した。
昨日の記者がいた事。アバターを使ってこよりのお姉さんたちを殺そうとしたこと。
あと、逆恨みで僕らを、まずはこよりを殺そうとしていたことまで全部。
385 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 13:37:59.63 ID:scAKwULA0
話を聞き終わるやいなや、るいがバンッ!とテーブルを強く叩いた。
るい「あの野郎!怪しいと思ったらそんなことをしたのか!あー、あの時一発いれてやればよかった!!」
花鶏「同感ね。本当、男には碌なのがいないわ」
……ごめんなさい。
でも、僕でもあそこまでは酷くない。
ただ、生き延びるために嘘をつく程度で。
……それが、一番酷いことなのだけれど。
智「まぁ、今度きてもまた追い払うよ」
惠「ああ。ただみんなは少しばかり注意してくれればいい」
同時に、朝食が運ばれてきた。
今日は純和風。
ごはん、味噌汁、やき魚、つけもの、大根おろしなどなど。
今朝も浜江さんも同じ部屋で食べるらしい。やっぱり少しだけ怖い。
……料理は本当に上手。ご教授してもらいたいほど。
伊代「今日もありがとうね」
惠「なあに、気にすることはないさ。それじゃあいただこうか」
るい「いっただっきまーっす!!」
食前の挨拶の大合唱(主にるい)が響き渡った。
コミュは終わり方が中途半端だったから続編かFD作ってほしい
387 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 13:48:59.76 ID:scAKwULA0
>>386 あれはあそこで終わってるからいいんだよ!私的には!異論は認める!
でもFDで夜子ルートはつくってほしい。
こよりも戻ってきて、今日は惠も加えて街に出ようかという話になったのだが、今日はどうやら用事があるらしかった。
惠「すまないね。僕も出来れば君らの様子を見ていたかったのだけれど」
智「ううん、気にしないで。そうだ、今度は僕らのたまり場においでよ。皆もいいよね?」
皆、返事二つで頷いてくれた。惠はやはり、微笑む。
惠「ありがとう。なら、近くに言ったときに連絡をいれよう。場所を教えてくれるかな?」
智「ええとね、はじめて惠と会った高架下付近と…………」
ビルの方は説明しづらいので目印を言って、見つけたら連絡してくれるように頼んだ。
そうして、僕らはとりあえず別れる。
るい「広かったねー」
こより「また遊びに期待ッスよう!今度はかくれんぼをしてあそびましょう!」
伊代「こら人様の家でそんなことしないの!」
智「…………」
確かに広くて大きかった。
けれど――なんだろう。なんとなく、何かが隠れているような気がしたのは…………
公式チャットでのりりんが「コミュFDを作る場合、キャラ一新して旧キャラはちょこっと顔出しくらいのコミュ2のほうが作りたい」みたいなこと言ってたな
389 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 14:00:00.07 ID:hvjqqfkM0
更新きてた
390 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 14:00:24.91 ID:8+cudefG0
個人的には繰莉を
391 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 14:10:22.08 ID:scAKwULA0
……才野原、惠。
惠の発言には色々とおかしなところが多い、と思った。
例えば、問いかけられたときとか。
『そうかもしれないし、そうでないかもしれない』
や、
『だが○○かもしれない』
などといったように、曖昧な答えを返すことが多かった。
或いは困ったような顔や難しい顔、苦い顔をすることもしばしば。
ここから察されるのは、『本当のことを言えないのではないか』ということ。
しかしながら、佐知子さんの名前や僕らの名前――つまり『本当のこと』と言ったりしている。
何か言えないにも条件があるのかもしれないけれど、それは僕にはわからない。
でも――惠はきっと、その呪いに苦しんでいる。
色々と見る、マイナス面での表情の変化がその証拠だ。
智「あ、もしもし宮?ごめん、今日は腹痛と頭痛と、あと筋肉痛を併発したから休むって適当に先生に伝えておいて」
今日は学園サボって、訊ねにいくことにした。
つまり、ヒント屋――騙り屋さんに。
やぁのやぁの、それやぁの!
393 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 14:25:27.03 ID:scAKwULA0
るいに聞いて、街中のとある一点をうろつく。
いるかどうかは運次第。けれど一日も待ってたらくるだろう。
――と、思っていた矢先に目立つ着物姿を見つけた。
智「よかった、見つかって」
コレならすぐに用事は済みそうだ。
人ごみをくぐって抜けると、彼女は既に他の人と対話をしていた。
本人とは違って、結構なミニマムボディ。
そんな彼女らが同時に僕に気付いた。
いずる「おんやぁ、面倒屋さんじゃないか」
繰莉「おんやぁ、ともちゃんじゃないの」
……この人達は、絶対直接血がつながってると思うの。
すごく遠いーとかじゃなくて、直系で。
繰莉ちゃんの反応に少しだけ驚いたのは、いずるさん。
いずる「あれ、もしかして知り合いかい?」
繰莉「うん、ちょろ〜んとね」
智「……繰莉ちゃんがこっちにいるなんて珍しいね」
繰莉「繰莉ちゃんのお仕事はあっちいったりこっちにいったり大忙しの大繁盛なのだよ」
394 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 14:40:10.64 ID:scAKwULA0
繰莉ちゃんが廻る。
くるりくるり。
いずる「時に面倒屋さん。必要なのはヒントかい?それとも探偵かい?」
繰莉「ともちゃんならアキちゃん並にお安くしとくよ」
残念ながら、繰莉ちゃんじゃ役不足じゃないと思う。
超探偵とはいっても、流石に呪いのことまでは知らないだろうし。
智「……騙り屋さんのほうで」
繰莉「あらま残念。まぁ繰莉ちゃんのほうはともちんに少し用事あるからまたせてもらうけどね」
そういって繰莉ちゃんは近くのガードレールまで移動して、腰掛ける。
どうやらこちらの話は聞く様子はない。
それを確認してからか、いずるさんは本題を切りだす。
いずる「それで、君が来たということは……んー、あれかな。呪いの話」
智「はい」
いずる「嫌にハッキリというねぇ、あの時は眉唾だって信じなかったくせに」
智「今は少し状況が変わりまして。藁でも掴みたい状況なんです。僕に払えるものはなんでも払いますから、お願いできませんか?」
いずる「んー……それじゃあ、命」
びくっ、とした。
ちんぺろ
396 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 14:44:40.45 ID:qfSuAo/V0
面倒屋さん、じゃなくて
面倒屋くんでは?
397 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 14:46:30.67 ID:scAKwULA0
>>396 うっはぁ、最近いずるさんのシーン見てなかったから本気で間違えましたよぅ
さんくすです
いずる「……とかいうと、面白いと思わないかい?」
智「……驚かせないでくださいよ」
僕の反応にいずるさんはケタケタ笑う。
面白い面白いといいながら。僕は全く思えないけど。
いずる「……さて。本当なら君に払えるものはないんだけどね。今ので少しぐらいは語ってあげようじゃないか」
智「ないって……そんな簡単に」
いずる「ないね。はっきり言うよ」
取り付く島もない。
いずる「……さて。呪いの話か。どんなことが聞きたいんだい?」
智「えっと……じゃあ単純に解き方で」
いずる「前にも言ったじゃないか。呪いとは仕組みだって」
智「そうだけど……古今東西、森羅万象ありとあらゆる呪いを解くそんな便利道具とかないの?」
いずる「ないね、ないない。」
398 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 14:58:45.01 ID:scAKwULA0
いずる「そもそもね、そんなものがあったとしたら世の中に必要な人は他にもいるし、それこそ君なんかが買うには額が違いすぎるんだよ」
智「……結局、世の中金か」
せちがたい世の中だ。
いずる「現金の時もあるし、そうでない時もある。私には後者のほうが多いけどね」
智「……そういえば、るいの時も変な人形もらってたよね。なんなのあれ」
いずる「その人の念が詰め込まれたものにこそ価値がある……とかいうとそれっぽくないかい?」
智「なんだかずるい」
いずるさんは再びケタケタ笑う。
話を戻して。
いずる「それじゃあ、ヒントを与えよう。今回もまた、ゲームに例えよう。ゲーム内でよくある呪いの道具……あるね?」
智「大抵装備したらマイナス面があったり外せなくなるけど」
いずる「そうそう。だけどね、モノによってはマイナス面をあまり補うプラス面があるものもあるんだよ」
智「……それって、るいの力とかのこと?」
僕以外に共通する、呪い、痣、女の子の他のみんなの共通点。
いずる「おや、気づいていたのかい。なら話は早い。プラスがあるからマイナスが、つまり〈才能〉があるから〈呪い〉がある」
いずる「そう考えれば話は早いんじゃないかな?」
399 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:08:32.33 ID:scAKwULA0
智「……ちなみに、マイナス面しかない場合はどうすればいい?」
いずる「さあてね。それも(呪い〉だと割り切るしかないんじゃないかい?流石にそこまではサービス対象外だよ、面倒屋くん」
残念。
……少しだけ纏めてみよう。
僕含めて共通するのは、呪いと痣。含めないと更に女の子と才能が該当する。
女の子であることと才能。これがヒントにならないだろうか?
いずる「ま、頑張んなさいね。応援はしてあげるよ」
智「……はい、ありがとうございました」
何の役にも立っていない気がするけども。
いずるさんが離れていき、今度は入れ違いに繰莉ちゃんが近づいてくる。
繰莉「んー?ともちゃん少し暗いけど、どうしたん?」
智「……ううん、なんでもない。それで、超探偵さんの用事っていうのは?」
繰莉「おー、そうだったそうだった」
400 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:16:45.74 ID:scAKwULA0
繰莉「よっしーから聞いたよん。前の起動の話」
智「ああ……お騒がせしちゃった?」
繰莉「いんや?ともちゃんは勝算のない戦いはしなさそうだからね」
繰莉「それより、そのアバター……どんな色と形だった?」
智「……え?」
思わず首を傾げてしまう。
どうして繰莉ちゃんはこんなことを聞くんだろう。
智「えーっと……水色……空色に近い薄い水色で、円錐を逆さにしたような……」
思い出せる限り、あの三宅のアバターについて説明する。
繰莉「ふむふむ……水色の『器物型』のアバターか……はずれかにゃー、色は同じなんだけどね」
智「……もしかして、探偵の仕事?」
繰莉「そーよ?実は近頃、水色の『魔犬型』のアバターが見かけたコミュを手当たり次第に殺ってるって話しでね。ジャックの再来とかコミュネットでいわれてんの」
水色の魔犬。確かに色だけは同じだ。
コミュネットっていうのがなんのことなのかよくわからないけど、名前から察するにコミュ同士のネットワークってところかな。
智「………………」
…………なんだか、変な感じがする。
僕の直感は意外に当たる。だからこれを伝えておくのも悪くないだろう。
401 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:22:38.10 ID:lk8l7ujZ0
しえん
402 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:25:43.17 ID:scAKwULA0
智「……三宅」
繰莉「え?ミケ猫?」
智「ちがくて。三宅。僕らを襲ったフリーの記者の苗字が、三宅っていうの」
偽名の可能性もなきにしもあらずだけれど、それならそれで探偵さんにはわかりやすいだろう。
繰莉「ふむ……で、それが?」
智「繰莉ちゃんの仕事を増やすのは心苦しいんだけど……もしかしたらヒントになるかも。だからそいつの動向の調査をお願いできないかな」
もしかしたら、という可能性だけれど。
荒唐無稽な、鼻で笑われそうな推理だけど。
そうだったとしたら――対策をねらなければならない。
繰莉「ふむ……うい、わかった。他でもないともちゃんの頼みだ、引き受けた。報酬はいつものスイス銀行によろしく」
智「どこの殺し屋よ」
にゃはは、と笑いながら繰莉ちゃんが遠ざかる。
すぐに人ごみに紛れて見えなくなった。
智「…………」
この予感が、外れればいいけれど。
空を見上げると、一雨きそうな天気だった。
403 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:33:44.32 ID:scAKwULA0
さらに数日して、電話が来た。
もしもし、という言葉に答えたのはもしもしではなく、報告。
繰莉『智ちゃんの直感、当たったよ』
その言葉で理解した。
――三宅がコミュを狩っている。
繰莉『アイツのアバターは遠目に見ただけだけど、確かに『器物型』だったよ。けどね、どういうわけか『魔犬型』にも変形できるの』
繰莉『名付けるなら、多変型アバターってとこかな』
他変型アバター。
なるほど、やっぱりそうだった。
僕の直感は当たったのだ。
繰莉『繰莉ちゃんはもうちょい話を煮詰めるから、また今度ね。何かあったら連絡ちょうだい』
智「うん、わかった。ありがとう」
電話をきり、ベランダに出て。
僕は溜息を一度吐く。
あの三宅に殺された複数のアバター。それは一体幾つになるのだろう。
一つにつき、五人。手当たりしだいだから、少なくとも五は倒しているだろう。
智「……僕の、せいだ」
へたれこむ。
404 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:44:48.88 ID:scAKwULA0
そうだ、僕のせいなのだ。
僕があの時、あいつを見逃していなかったら。
僕が初めて会ったとき、警戒を崩さないままも少しでもインタビューを受けていたら。
……また、あの時僕らが負けていたら。
こんなことには、ならなかった。
智「……くそっ」
きっと三宅は、僕らに復讐しにくるはずだ。
そのために他のコミュを狩り、レベルアップを繰り返しているのだ。
あの時は勝てなかった。自力でも『器物型』や『魔犬型』と『竜型』は全く違う。
だからレベルアップして力をつけ、そして復讐することを選んだのだ。
――全ては、僕の責任だ。
あの時アイツを していたら。
あの時アイツを していたら。
あの時アイツを していたら。
こんなことには、ならなかった。
何れ、皆にも危害が及ぶかもしれない。僕と惠を倒すのは難しいと判断して、るいを、花鶏を、こよりを、伊代を、茜子を狙うかもしれない。
そうなったら、死んでも死に切れない。償っても償いきれない!
ならば、僕は――どうする?
一体、どうするべきだ?
>>405 1 アイツを、『ソリッド』を倒す
2 他の強いアバターが倒してくれるようにお願いする
405 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:48:32.95 ID:pUoIAfS8P
1!
406 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:51:02.55 ID:hvjqqfkM0
1
407 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:52:31.49 ID:8+cudefG0
>>405 ナイス
それよりもだんだん智が黒くなってきたなwww
「ハッピーバースデイ、僕!」までいくのかな・・・
素敵に俺得なSS見つけたけど1レスの文章多すぎて追いつく前に終了する予感
支援だけしとく
409 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:56:24.46 ID:scAKwULA0
まゆまゆみたさとどんなバッドか見るために態々バッドを踏む馬鹿は流石にいないか……
→アイツを、『ソリッド』を倒す
……そうだ。
僕が、やらなきゃいけない。
あの時惠にも言った。因果応報だ、と。
前にアイツを見逃さなかった因果が、今僕に帰ってきたのだ。
智「……やろう」
僕が、やる。
この因果を終わらせる。
でも、そのためには僕だけじゃ力不足だ。
レベルアップがどれほどのものかはわからないけれど、恐らく僕と惠だけじゃあ叶わない。
繰莉、芳守、そしてアヤヤ。
残る三人の協力も必要不可欠だ。
それすらも、こころ苦しい。
アヤヤはあのビギナーキラーを殺しただけでとても苦しんでいた。
また、今回の戦いで死ぬ危険性もあるかもしれない。
それでも、僕はやらなきゃいけないんだ。
自らのツケを、払うために。
410 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:07:21.21 ID:scAKwULA0
皆には暫くの間僕と惠はたまり場に行けない、と言っておいた。無論惠にも説明はして、許可はとってある。
そして僕らは、今あの場所に来ている。
少女Aが僕らを誘き寄せて、初めて朱いアバターを使って、他のアバターを殺したところに。
今もまだ、屋上の真ん中にはポッカリと穴が空いていた。
智「……来るかな」
惠「来るさ」
短く交わし合う。
どういう風に説得しようか、という点についても考えなくちゃ行けない。
……大変だ。
と、その時。ドアが開いた。
来た。
一番前は繰莉ちゃん。いつもの通り飄々とした表情だ。
次に芳守。ほんの少しだけ緊張しているのはきっと勘違いじゃない。
そして――最後に、アヤヤ。
どういう風に繰莉ちゃんが説得したのかわからないが、その目には僅かに闘士が宿っている。
そうして、あの時以来、初めて五人が集まった。
繰莉「簡単に説明はしておいたよ。その上で納得させて連れてきた」
そういう繰莉ちゃんに、僕は一度だけ頷いた。
411 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:10:05.55 ID:D+hqycSb0
共闘展開も面白いかもと思った
智ちんペロペロ
412 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:21:09.52 ID:scAKwULA0
智「みんな。話は大体聞いたと思う」
前に出る。
別に僕はリーダーなんかじゃない。ただの一コミュの一員だ。
だから僕に勝手に決める権利はない。他の四人が反対して、僕をコミュから追い出せばそれで終わりだ。
そうしたら、もうどうしようもない。ただ死を待つだけになる。
そんなのは嫌だ。
僕は僕の仲間を――守りたい。
智「……無茶だって言うのはわかってる。僕らの為に命を賭けてくれっていうこともおかしいってわかってる」
聞くと、レベルアップを数回繰り返すと、本当に段違いに強くなるらしい。
一撃だったのが二撃、三撃と、回数も必要になる。
だから一度レベルアップしただけの朱い竜にはとても、いやそれ以上に不利なのだ。
智「でも――僕は皆を守りたいんだ」
るいを――
花鶏をこよりを伊代を茜子を――
それだけじゃない。力を付けすぎたアイツは他の一般人ですら狙う可能性もある。
央輝を宮をあやめ先生を佐知子さんを浜江さんを小夜里さんをいずるさんを――――――
僕の仲間だけじゃない。僕が繋がった人達、全員。
僕は、それを守りたい。皆が幸せであるように、願いたい。
智「だから――みんなの力を貸してほしい。お願いします!」
頭をさげる。
僕は嘘つきだ。そして天邪鬼であり、偽善者だ。
人と繋がりたくないと嘯き。そのくせ困っている人がいると助けようとして。
そんな僕が誠意を見せる方法といえば、これしかないのだ。
413 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:32:08.42 ID:scAKwULA0
重い、深い沈黙。
僕はそんな中、眼を瞑ってただ皆に頭を下げる。
一番に口を開くのは、繰莉ちゃんだ。
繰莉「……繰莉ちゃんはね、理不尽なことがだぁいすき」
繰莉「不思議なことが好き、秘密が好き、謎が好き」
繰莉「でもね……それよりも大好きなことは、そういう理不尽を解き明かし、たたき潰すこと、なんだよね」
繰莉「だから探偵をやる。不思議なこと、秘密のこと、謎のこと。どれもが知らなければ理不尽な事態だからね」
つまり、これは肯定だ。
僕を手伝ってくれる、という。
芳守「……私には」
続いて、芳守が。
芳守「私には、そんな崇高な考えはない。ただ普通に友達と生きて、ただ死んでいく、それだけでいい」
芳守「こっちに来る前はそうでもなかったんだけどね。もっとキラキラな人生を生きて行くんだって息巻いてた」
芳守「だけど、今はもうそれで十分。十分すぎるの」
芳守「もし……もし、そんな普通なことすらも願えないっていうなら。その願いを邪魔する存在があり、それを打ち破る力が私にあるなら――私はそれを赦さず、壊す」
芳守に何があったのかは知らない、わからない。
けれど、彼女にも――譲れないモノは、ある。
これも、肯定。
414 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:44:44.25 ID:scAKwULA0
惠「……智。顔をあげてくれ」
智「惠……?でも」
惠「いいから」
言われ、顔をあげる。
惠、繰莉、芳守。
そして、アヤヤが真っ直ぐにこちらを見詰めていた。
彼女と数秒見つめあい、彼女は視線をそらし、歩いてフェンスぎわまで行く。
アヤヤ「……今も、ここのどこかに人を殺してるコミュがあるんですよね」
智「……うん。何れは、一般人すらも狙うかもしれない、人を殺すことをどうとも思わない怪物が」
アヤヤ「それなら……やらなくちゃ、いけませんね」
くるり、とアヤヤは両手を広げて回転する。
アヤヤ「アヤヤは、ずっと憧れてたんですよこういうの!アクセプターの礼堂要のようなヒーローに!強きを挫き、弱きを護る!そんなヒーローに!」
アヤヤ「それに……前にもこんなことがありました。その時は怯えるだけだったけど、瑞和先輩達が倒したってきいて、すごいと思いました」
アヤヤ「今回、アヤヤもやったら、瑞和先輩みたいになれるかな〜、なんて……」
あはは、というアヤヤの笑い声は、霧散する。
ふぅ、と溜息を吐く。とてもにつかわない。
415 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:52:06.58 ID:scAKwULA0
アヤヤ「……そんな堅苦しい理由なんて、ないんですよ」
ぽつり、と呟く。
アヤヤ「よっしーと同じです。何れは友達が巻き込まれてしまうかもしれない。日常が壊されてしまうかもしれない」
アヤヤ「そして、智先輩とも同じです。……自分の手の届くところにある、みんなを……守りたいんです」
今までは、もっと狭い場所しか守れなかったから、と。
アヤヤ「先輩は自分のことを勝手だ、なんて言いましたけど、それが誰かのためならそれは十分な理由になるんですよ」
アヤヤは僕をみる。
僕もアヤヤをみる。
そして、同時に残りの三人も見た。
アヤヤ「怖くないって言ったら嘘になります。殺人犯でも殺すことにも躊躇いがあります」
アヤヤ「でも、それがもっと多くの人を救うというのなら。アヤヤは、覚悟を決めます」
アヤヤ「この、呪われた世界を打ち破るために。アヤヤは、力を貸します」
呪わた世界をやっつける。
そのフレーズに、思わず笑いがこみ上げてきた。
そして――その言葉は、肯定。
惠も、ここに来ている時点で了承を得ている。
416 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 17:00:29.47 ID:scAKwULA0
智「――僕らはバラバラだ」
惠「――しかしながら、バラバラでは問題には立ち向かえない」
繰莉「――だから、私達は手を組む」
芳守「――互いに力を合わせて、問題を破るために」
アヤヤ「――理不尽な、呪われた世界を倒すために」
僕らは手を重ね合わせた。
本来なら協力するはずもなかった、コミュで繋がれた五人。
ひとりじゃ出来ない。でも皆がいればできる。
僕らは僕らの為に――
そしてまた、皆のために。
こういうのを、なんていうんだっけ。
少年漫画が好きそうな奴。
見えないものに付く名前。
そうだ――同盟だ。
僕は、今再び。
皆を護るための、同盟を結んだのだ。
417 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 17:02:48.91 ID:scAKwULA0
惠「名を決めよう。チーム名で有り象徴となるアバターの名を。名前、というのは些細な物であれども必要なものだ」
不意に、惠が言う。
『ピンクポッチーズ!』……何故かこよりがどこかで叫んだ気がした。
それを振り切り、僕は言う。
智「ここは僕らの王国だ。故に如何なる者の侵入も、侵略も赦さない」
智「だから――『マクベス』。『マクベス』が良い」
『マクベス』。
シェイクスピアの四大悲劇の一つの名でもある。
モデルとなった実在する王のマクベスは自らが王となる為に従兄を殺した。
そして、反対勢力や王位継承の可能性のある者を何がなんでも殺害した。
――自らの王国を守るために。
だから僕はその名を貰い受ける。
繰莉「……いいね、『マクベス』。気に入った」
芳守「『マクベス』……」
アヤヤ「アヤヤも支持します。カックイー名前ですね」
賛成多数により、決まった。
僕らの王国を護る朱い竜――名は、『マクベス』。
智「やろう。僕らと、僕らの王国を護るために――僕らの意志の象徴、朱き竜、『マクベス』で」
そうして、僕ら『マクベス』コミュは屋上を去る。
これからすべきことは沢山ある。それらを成し遂げるために。
418 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 17:06:33.17 ID:scAKwULA0
Chapter
17 平凡な日常
18 怪しい記者
19 お休みからおはようまで
20 人を呪わば穴二つ
→ ???
21 不可思議な夢
22 凶報
23 理不尽の急襲
24 騙り屋さんと超探偵
25 因果のツケ
→ ???
26 僕らの王国
27 ???←つぎここ
419 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 17:07:35.71 ID:scAKwULA0
チャプター名考えるばかりでコメント忘れてどうすんのよ。
少し休憩します。
やっとアバターの名前出せた……
420 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 17:33:10.12 ID:Ss4m54OE0
ああ、やっぱ名前はマクベス様になるのか……
夜子も可愛いけど個人的にコミュではまゆまゆ一押し
422 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 17:42:23.82 ID:scAKwULA0
>>420 そもそも当初は繰莉ちゃんとアヤヤもどちらかにして、西萩、芳守、智、惠or央輝、繰莉orアヤヤのコミュにしようとしてたしね……
というか普通にオリジナルの『竜型』だったら何のご都合主義だよてかレアじゃねぇのかよってことになるし。
よーっし、休憩終わり!
ハッピーバースディー期待してた人、なくてごめんね。
再開します
423 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 17:51:23.29 ID:scAKwULA0
カゴメ「それで……どうして私の部屋にいる?」
暁人「俺の部屋だよ!!」
カゴメ「暁人のものは私のもの。私のものは暁人のものかもしれないがそうでないかもしれない」
暁人「そこはせめて俺のものであって欲しかった!!」
……何故か、僕らは瑞和の部屋にいた。
その理由は解明。
アヤヤ『瑞和先輩の部屋ならパソコンで色々コミュネットについて調べられますよ!』
とのことだった。
別に男の子の部屋に上がるのは問題ない。僕だってこんなナリだけど、一応はそうだし。
……けどね。
カゴメ「……何だ和久津」
智「……いえ、なんでもないです」
なんで夢の裸Yシャツの人がいるのかってことだよ!
パソコンを操作して僕らに向けてくれる真雪(彼女はナビゲーターの真似事が好きらしい)は少しだけ驚く。
真雪「比奈織さんが苗字でも名前を呼ぶなんて暁人さんぐらいなので珍しいですね」
智「そうなの?」
暁人「そういえばそうだ。カゴメは大体自分であだ名をつくってそれで呼ぶからな」
424 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 17:58:37.77 ID:scAKwULA0
当のカゴメさんはふん、と鼻で笑い、
カゴメ「暁人程度が私を分かっているつもりだとは。これは明日にはアバターの雨がふるな」
暁人「幼馴染なのにわかってちゃいけないのか!?」
カゴメ「勿論私は暁人の事を隅から隅まで知っている。そのパソコンの中の奥に眠っている秘蔵画像の容量や好きなジャンル、そしてその枚数など……」
暁人「ぎゃーっ!!」
真雪「……スルーしましょう」
向こう側で騒いでいるカゴメさんと瑞和、そして奥の部屋から出てきて現状に驚く紅緒を全て視界から排除する。
……というか、紅緒もいたんだ。真雪だけだと思ってたのに。
真雪はカチカチ、と素早くインターネットを開き、お気に入りに入っていたものをマルチタブで一気に開く。
真雪「では、前に説明したものの続きから。惠さんは話聞きました?」
智「一応ざっとは話したよ」
真雪「そうですか。なら大丈夫ですね」
教える、真雪先生のコーナー!パート2!だ。
425 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 18:13:20.85 ID:scAKwULA0
真雪「前回はアバターの分類……つまり八六式の六の方を説明しましたよね」
真雪「今回は接続者……コミュのメンバーの分類、八六式の八の方をまずは説明したいと思います」
接続者の分類は八種類のクラスに分かれて、それによって操作の適正があるのだそうだ。
基本クラスのファイター、ローグ、メイジ、プリースト。
ハイクラスのロード、ビショップ、サムライ、ニンジャ。
それがどれか知るためにはこのコミュペディア(コミュの初心者入門の辞書)にあるアンケートと始めて繋がったときのイメージでわかるらしい。
真雪「基本的には正しく基本クラスの四つが揃っていればまずその四人接続であれば問題はありませんが……どうですか?」
繰莉「繰莉ちゃんはメイジ。アバターの足みたいだね」
芳守「私はローグみたい」
紅緒「え、本当!?芳守さん、私と一緒一緒!」
そばで聞き耳を立てていた紅緒が喜ぶ。
なんとなく、仲間がいるのは嬉しい。わからないでもない。
アヤヤ「アヤヤはプリーストみたいですね」
真雪「おぉ〜、私と一緒ですねアヤヤさん」
アヤヤ「まゆっきーと一緒ですかぁ〜!色々教えてくださいね!」
真雪「当然です。この真雪先生が手とり足取り教えて差し上げます」
くくく、と真雪は笑う。
426 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 18:21:59.70 ID:scAKwULA0
さて、僕は、と……
真雪がアヤヤに講義しているので、勝手に動かしてみる。
ビショップ。
ビショップのステータスは、攻撃7、防御7、移動7、索敵7。
器用貧乏、下手の横好き……みたいだ。
智「……はぁ」
惠「へぇ、智のクラスはビショップか」
智「うわぁっ!?」
何時の間にやら惠が横から覗いていた。思わずビックリする。
他の人に見られる前に素早く画面を戻して、訊ねる。
智「ぼ、僕のことはいいから!惠はなんだったの!?」
惠「僕かい?僕はファイターさ」
和久津智。いらない子認定。
……なんでだろう。別に悔しくないのに涙がでちゃう。
惠「大丈夫さ。ビショップは他の人と繋がっているとプラス補正がつくらしい。サポート参謀役の智にはぴったりだ」
智「……うん、ありがとう」
僕は惠の胸の中でないた。
繋がるって
つまりそう言う事か
428 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 18:33:51.55 ID:scAKwULA0
クラスの話題も一段落して。
真雪「さて……とりあえずは役割が決まったところで、標的の二代目ジャック……もとい、ソリッドの情報収集を始めましょう」
真雪がコミュペディアのタブを閉じ、現れるのは2chと同じ形式の掲示板。
上にはコミュネットと名うってある。
真雪「基本的にはここにそれぞれのコミュが持つ情報が集まります。智さん、惠さん。必要ならアドレスなどパソコンに送りますがどうしますか?」
智「あ、じゃあお願いしようかな」
惠「僕は構わない。おそらく智が逐一教えてくれるだろうしね」
真雪「そうですか。では智さん、あとでメールアドレスを教えてくださいね」
そういって真雪はパソコンにもどり、一番上に上がっていたコミュ狩りのページを開く。
673 名無しさま[]:20××/××/××(水)01:34:12
二代目ジャック、またやったってさ
もう何件目?知ってる限りで5いってるんだけど
そこの言葉をみて、怒りと寒気が同時に湧き上がった。
429 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 18:35:19.88 ID:scAKwULA0
すいません、ご飯で離脱します。
がんばれれええええええええええええええええええええええええええ
離脱するなんて、やぁのとかレスしようと思ったけど、
思いの外きもいからやめる
真那様、トランポリンだと思って僕の上でジャンプしてください
なんていう奴がいるんだ何を言ったって問題ないさ
433 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 19:29:37.78 ID:D+hqycSb0
智ちんのために保守
434 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 19:51:44.55 ID:IwG0/Eps0
保守
智ぉおおおお
おでん、麺類ばっかだな、最近
437 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 20:36:27.47 ID:8+cudefG0
ほしゅ
なんでご飯とかいっといてこんなにも放置とかお風呂に入ってたとか別にそんなことはなかったぜ!
再開
439 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 21:10:59.87 ID:h97USBF+0
おかーり
440 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 21:23:16.70 ID:scAKwULA0
その下にも、まだ書き込みが残されている。
深く一度深呼吸して、真雪が開いた掲示板を覗く。
674 名無しさま[]:20××/××/××(水)01:56:29
同じジェヴォーダンって所に何らかの作為を感じる
675 名無しさま[sage]:20××/××/××(水)02:10:43
お前らsageろよ
676 名無しさま[sage]:20××/××/××(水)02:28:37
>>673 多分出てないの入れたら七件あたりじゃない?わかってる中でもやったのが全部二代目ジャックってわけじゃないだろうし
まぁまたバビロン辺りがなんとかしてくれるんじゃないの
ラウンドはまた役立たずか
677 名無しさま[]:20××/××/××(水)02:35:35
もうラウンドに期待するほうが馬鹿だろ
時代は俺達ストライダーだぜ!
678 名無しさま[]:20××/××/××(水)02:37:57
>>675 sage厨Uzeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!
673 名無しさま[sage]:20××/××/××(水)01:34:12
俺さ、二代目ジャックに目の前で友達のアバターやられてさ・・・
見てたんだけど、レベルアップで強くなってるにしては超堅いんだよ
そのくせ打撃だけじゃないみえない攻撃もしてくるしさ・・・
わけわかんねぇ
441 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 21:35:49.35 ID:scAKwULA0
と、真雪がカーソルを673で止める。
真雪「これは大きいヒントですよ」
真雪は673の周りでカーソルをくるくると回しながら言う。
真雪「みえない攻撃、という時点で相手の能力は絞られます。漫画でもおなじみのワイヤー系、気・念動系などですね」
真雪「まぁ私たちが倒したジャックはすごく細い糸のようなものだったのですが、そこまで堅くはありませんでした」
真雪「つまり――ワイヤーは除外。私の考えでは、おそらくは念動系じゃないかと考えています」
繰莉「その理由は?」
真雪「ほら――ここ。すごく堅いって言ってるでしょう?念動力で自らの形を分子レベルで固めてしまえば、ダメージも通さないというわけです」
アヤヤ「そんなことができるんですか!?」
真雪「……レベルアップ前ならそんなことは出来ませんでしたでしょうが、レベルアップして魔力も上がるとそれだけで出来ることも増えます」
真雪「智さん達は実際に一戦交えたんですよね?どうだったんですか?」
真幸の質問に、僕はあの時のことを思い出す。
単独接続にしては、動きが良すぎる気がした。
智「……アレも念動力を移動の補助に使っていたと考えたら通るかも」
念動力を足や手を動かすことなどに利用し、素早さを速くする。
しかし実際にはどうか分からない。
アバターってLVUPすると防御力下がるんだっけ?
扱いがむずくなるだけで、全能力あがると思い込んでた
443 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 21:38:04.62 ID:scAKwULA0
>>442 あーや、ちょいと変な言葉を使ってました。
×レベルアップで強くなってるにしては超堅いんだよ
○レベルアップで強くなってるにしても超堅いんだよ
です。
すいません……
あ、そゆことすね。
さすがにやったの前だし、細かい設定とか記憶してないからなぁ
ちょい前のキャラ同士の呼称なんて、修正入ってもそうなんだーとしかw
445 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 21:54:14.87 ID:scAKwULA0
真雪「……ま、先入観ほど怖いものはありません」
真雪「その可能性が高い、ということだけを脳内にとどめておいて、実戦でローグが見極めることが大切です。ね、紅緒さん」
紅緒「へ?あ、うん。芳守さん頑張って!」
芳守「……なんだか不安」
もし攻撃が念動力だったとしたら、磁力の壁では防げない。
……対策方法を考えなきゃ。
真雪「さて……あとは実戦ですね。智さんと惠さんは三回、繰莉さんアヤヤさん芳守さんは一回ずつしか操作してないんですよね?」
アヤヤ「アヤヤはそれどころじゃありませんでしたからねぇ……」
真雪「そこで!この黒い竜のバビロンが胸を貸そうというわけです!」
暁人「ちょっ、真雪なに勝手に決めてぎゃぁあああぁああああああああっっ!?」
カゴメ「暁人、よそ見している暇があるのか?」
……やっぱり、見なかったことにしよう。
見ても何が起きていたのか、全く理解できなかったし。
真雪「……とはいっても、時間をかけてもあちらがさらにレベルアップしてしまいます。期間は向こうの連絡先を突き止めるまで、ということで」
繰莉「ほぅ。それじゃあ繰莉ちゃんももう少し時間かけないと練習する時間もなくなっちゃうね」
真雪「一週間程度で破壊が5オーバーですから、とりあえず明後日以内には。明日練習しましょう」
446 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:05:01.91 ID:hvjqqfkM0
支援
447 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:07:58.94 ID:scAKwULA0
真雪「……さて!今日はそろそろ止めにしましょう。もう夜も暗いですしね」
そういって、時計を見やる。
既に時間は十時過ぎ。
アヤヤ「すごく遅いです。瑞和先輩、泊めてくれませんか?」
暁人「帰れ」
アヤヤ「あやややや〜」
しゅん、とする。
暁人「……そっちの二人は田松市なんだろ?今日ぐらいなら泊めるけど」
真雪「あ、暁人さん酷いです!私を泊めるときはすごく渋って、アヤヤさんを泊めないくせに新しい知り合いの女の子は泊めるんですか!?」
紅緒「うっわ、さいてー」
カゴメ「天誅が必要だな」
暁人「いや、単純にアヤヤは近くてその二人は遠いからいたいいたいいたいいたいたい!?カゴメおま何してぇぇえええええ!?」
カゴメ「ツボ押しだ」
暁人「いやそれ絶対ツボじゃないぃいいいいいいいいいいいっっっ!!!」
なんだか僕らがきてから瑞和がずっとカゴメさんにいじめられている気がする。
僕らのせいだとしたら、なんとなく申し訳ない。
448 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:12:47.30 ID:scAKwULA0
アヤヤ「どうしますか?もしよろしければ一人ぐらいならアヤヤの家でも大丈夫ですが」
繰莉「そうだねぇ……繰莉ちゃんがお世話になってるところも、一人ぐらいなら工面できるかも」
芳守「私は……ごめん、無理だと思う」
……え、なんで泊まること前提になってるの?
いや、もうこんな暗いしありがたいといえばありがたいんだけど。
僕は……どうする?
>>449 1 瑞和さん家にお世話になる
2 アヤヤの好意に甘える
3 繰莉ちゃんについていく
4 ……他を探そう
1
450 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:16:16.78 ID:8+cudefG0
この選択肢がどう影響するか楽しみだな
支援す
452 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:25:16.68 ID:scAKwULA0
→瑞和さん家にお世話になる
智「うーん……僕は瑞和にお世話になるよ」
紅緒「本当!?それじゃあさ、南聡の話とか聞かせてよ!うちの女子校でもよく耳にするんだ」
誘った当の本人よりも下宿人のほうが喜ぶとはコレ如何に。
……あ、家主は地面に沈んでるあれか。
智「僕のわかる程度ならね。惠はどうする?」
惠「僕は適当に探すことにするよ。それじゃあお先に」
僕が止める間もなく、惠は素早く玄関へと向かって出て行く。
紅緒が僕の横に並んで惠を見送り、呟く。
紅緒「惠ちゃんかっこいいよねぇ……なんだか街中でも女の子からきゃーきゃーいわれそう。あれで女の子なんだもんなぁ……」
智「本当にね」
僕もそう思う。
本物の男の僕より身長高いくせして、男らしいくせして。
本当に嫉妬する。
アヤヤ「それでは、アヤヤも家に帰るとします。では皆さん、また明日!」
芳守「それじゃあ私も。おじゃましました」
繰莉「んじゃアキちゃん達。明日の模擬戦よろしくね。んじゃ」
453 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:34:05.31 ID:scAKwULA0
三人とも口々に言い、部屋を出て行く。
僕も挨拶を返してドアの向こうに消えるまで見送った。
部屋には、僕、カゴメさん、瑞和、紅緒、真雪の五人が残る。
……今更だけど、なんで僕ここに残るって言ったんだろう。おかしいじゃん。どう考えても異分子だよ。
でも、紅緒とか楽しみにしてるし……もう後戻りは出来ない……
過去に戻れたら、この選択肢は選ぶな!ときつくいわなきゃ。
最も、もどる機会があれば……だけど。
紅緒が僕の顔を覗き込んできて、笑顔で尋ねてくる。
紅緒「ねぇ智さん。一緒にお風呂はいらない?」
智「は?」
今、紅緒はなんていった?
お風呂に入らないか?誰に?僕に!?
紅緒「ほら、まゆまゆもまゆまゆも!」
真雪「嫌です!それからまゆまゆではなく真雪です!」
紅緒「えーっ、一緒に入ろうよー智さんも入るよね?肌キレイそうだし、洗いっこしようよ」
え、紅緒ってこんな子だったの!?
僕が女の子でも結構危ない発言してるよ!?
そりゃあ花鶏にもキスされるよ!
地雷選択肢くさいなw
呪いバレは怖いが、三宅に襲われても平気そうってことで選ん……
紅緒が好きなだけなんだ、ごめん
455 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:41:37.26 ID:scAKwULA0
智「いやいや、寝床を借りるだけでもアレなのに、お風呂までもらうわけにはいかないよ!」
紅緒「油断はお肌の大敵だよ?女の子には肌が命なんだから、シャワーぐらいは浴びなきゃ」
駄目だ!逃げ場がない!
助けを求めようと、周りを見渡す。
瑞和は生きているけれど何が起きてるのか、まともに動けていない。
カゴメさんはソファーに座り、僕らをジッとみて様子を窺っている。
まゆま……真雪はとばっちりを食らわないように部屋の隅に移動していた。
……本当に逃げ場ない!
智「い、いや!僕は紅緒とは入らないから!」
紅緒「それじゃあ、誰とはいるの?」
智「え?」
誰と…………
誰と?
>>456 1 やっぱり紅緒と
2 真雪とのほうが大丈夫そう
3 カゴメさん、で……
4 もうやけだ!瑞和とで!
456 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:42:07.33 ID:Ss4m54OE0
3
457 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:47:49.25 ID:scAKwULA0
……っていやいやいや!!
なんでまともに考えてるの僕!?
誰かと一緒に入ったら呪い踏むよ!死んじゃうよ!!
智「誰ともはいらないの!僕は一人で入るの!」
紅緒「えー……」
智「そんなノリ悪いみたいな顔しても駄目なものはだめ!」
折角胸なし仲間ができると思ったのに……といいながら紅緒は部屋に戻った。
……ふぅ、助かった…………
本当、あれは花鶏に食われてもおかしくないレベル。
真雪「……智さん。先に入っちゃってください。紅緒さんが入ろうとしたら私が食い止めますので」
智「え、まゆまゆいいの?」
真雪「ええ。その代わり智さんは私が入ってる時に食い止めてくださいね。……あと、まゆまゆではなく真雪です」
智「うん、わかった。ありがとうまゆまゆ」
真雪「だからまゆまゆではなく真雪だと……」
最後まで聞かずに、バスルームへと向かう。
よくわからないけれど、真雪にも色々と隠したいことがあるのだろう。
……流石に僕レベルではないとおもうけど。
458 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:51:10.03 ID:8+cudefG0
459 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:52:16.58 ID:D+hqycSb0
どれ選んでも結局同じだったのか気になるな
460 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:01:53.61 ID:scAKwULA0
僕のアパートのお風呂に比べたら、随分と広い。
全部脱いでからバスルームに入ろうと考えて、思い直す。
ブルマ見られたらどうしよう。
……うん、やっぱり中に入ってから脱ごう。
風呂は湧いていた。
どうやら結構前に湧いていたものの、誰も入っていなかったらしい。いい感じの温度になっている。
水のあたらない所に使ってもいいと言われたバスタオルにくるんだ下着を置いて、シャワーを浴びる。
智「ふぃー、気持ちいー」
……僕が、甘かったんだ。
一般家庭レベルでも、立派なお風呂に入れるってことで油断していた。
下着を持ち込んでバスタオルにくるんでいなければ。
ちゃんとバスタオルを身体に巻いていたら。
あるいは、椅子に座って浴びていたら。
きっと、或いは。こんなことには――ならなかった。
それは、まるで突然に。
正しく、呪いのようにやってきた。
そりゃあ、真雪も紅緒は止めるといったけど、彼女を止めるなんて言っていなかったし――止められるなんて思わない。
そう――黒い魔女なんて誰に止められるというだろう。
カゴメ「おい和久津、聞きたいことが………………………………………………………」
世にも、珍しい顔を見た。
魔女の、呆然と、唖然とした表情を。
461 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:02:40.91 ID:scAKwULA0
462 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:09:06.22 ID:scAKwULA0
何が起きても動揺しなさそうな彼女の、
すごい珍しいなぁと思いながらシャワーを止めて――そこで、ようやく気付いた。
今僕は―― だ。
…………!
……………………!!
……!!!
っっっっっっっっっ!!
っ………っっっ!!!!
っっ……!!
すごい勢いで全裸……
すごい勢いで全裸……
すごい勢いで全裸……
す ご い 勢 い で 全 裸 … … ! !
智「み……」
智「みぎやぁあああああああああああああああああああああああああああああっっっっっ!!!!!!」
463 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:09:13.94 ID:IwG0/Eps0
準備なしで誰かと入ったらそりゃバレるわww
踏んじゃったか、南無〜
465 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:13:20.46 ID:8+cudefG0
呪い様降臨すかwwww
466 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:13:20.86 ID:scAKwULA0
こんな未来がいい筈がない。
そうだ、否定しよう。
こんな醜悪は正しくない。
故にこの先に道などない。
ああ――――こんなものは――――――
智「やり直しを要求する!!!!」
望まない――――
これでは駄目だ。
こんな道は棄却せよ。
さあ、もう一度。
――――よりよき結末を探しにいこう。
467 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:14:02.13 ID:pUoIAfS8P
おお、コンティニューか!
468 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:21:26.61 ID:scAKwULA0
真雪「教える、真雪先生のコーナー!」
真雪「……智さん、智さん。要求するも何も、現実ですから。現実逃避しないでください」
真雪「ちゃんと見つかりましたから、あなた」
ブツン
ドンドン、と何かを叩くような音がした。
暁人「智、カゴメ!どうかしたのか!?開けるぞ!?」
ガチャン、とノブがひねられたような音がした。
やばい――ただでさえ踏んだのに、これ以上踏んだらもう……!!
カゴメ「チッ」
かごめさんは舌打ちし。
ドアが開く音と同時に、何かがすごい勢いで何かにぶつかったような音がした。
……酷い轟音と共に。
見えなかったけど……きっとカゴメさんが蹴りか何かを瑞和が入ってくると同時に繰り出して、弾きだしたのだろう。
カゴメ「乙女の身体を覗き見ようとする暁人は死ね」
そういってカゴメさんも淡々とバスルーム内に入り、鍵を閉めた。
469 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:26:53.36 ID:pUoIAfS8P
コンティニューじゃあないのか!
470 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:34:01.81 ID:scAKwULA0
カゴメさんは先程の動揺など何もなく、ただ僕を上から下に見下ろす。
そして肩の痣にも眼を止めて、なるほどな、と眼を細めた。
カゴメ「……とりあえず拭いてから服を着ろ。眼のやりどころに困る」
智「え、あ……うん」
……あれ?
僕……生きてる?
下着を履いてから、僕はジッ、とカゴメさんの顔を見た。
カゴメ「どうした和久津」
智「あ、えっと……カゴメ、さん……?僕の身体……みた、よね?」
カゴメ「生えていたな」
……バレてる。
なのに、僕は死んでいない。
一体……どういうことだろう。
カゴメ「……心配しなくても、誰にも言わん。聞いたことがある、呪いとかいうやつだろう」
智「……呪いのこと、知ってるの?」
カゴメ「少し小耳に挟んだことがあるだけだ。内容までは知らん。が……」
カゴメさんは下着の上から僕のそれがある場所を見た。
カゴメ「お前の呪いとやらは、生える呪いか」
471 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:35:47.60 ID:pUoIAfS8P
こんなにかわいい智ちんが男のわけがない
天使です
473 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:41:57.20 ID:scAKwULA0
………………。
え?
なにそれ。
カゴメ「……いや、男性化、か。骨格も男らしい」
智「……え、なにそれ」
カゴメ「前に聞いた。お前達の呪いは女性にしかないのだと偉そうな奴が言っていた」
そうなの?
そうなら男の僕は一体なんなの?
もしかして僕、生まれてから男のせいで気づいていないだけで女の子だったの!?
智「……えっと」
カゴメ「能力の方は……姉、か」
姉……?
カゴメ「聞きたいことは全てわかった。さっさと風呂に入れ」
智「え……うん」
そういうと、カゴメさんは鍵を開けて何事もなかったかのようにでていった。
僕はというと……裸に下着、ブルマだけでただ呆然と立ち尽くすだけだった。
474 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:47:52.98 ID:scAKwULA0
Chapter
17 平凡な日常
18 怪しい記者
19 お休みからおはようまで
20 人を呪わば穴二つ
→ ???
21 不可思議な夢
22 凶報
23 理不尽の急襲
24 騙り屋さんと超探偵
25 因果のツケ
→ ???
26 僕らの王国
27 情報収集
28 暁人ん家
29 ???←次ここ
しばらくシリアスだったからギャグ分多めにしてみた。
カゴメさんのイメージが崩れちゃった気がしないでもない。
ちっとばかし休憩
475 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:48:53.51 ID:scAKwULA0
修正
Chapter
17 平凡な日常
18 怪しい記者
19 お休みからおはようまで
20 人を呪わば穴二つ
→ ???
21 不可思議な夢
22 凶報
23 理不尽の急襲
24 騙り屋さんと超探偵
25 因果のツケ
→ ???
26 僕らの王国
27 情報収集
28 暁人ん家
→ ???
→ ???
→ ???
29 ???←次ここ
476 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:49:37.77 ID:hvjqqfkM0
乙
477 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 23:51:14.95 ID:pUoIAfS8P
乙乙
BADEND多すぎるwwww
478 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 00:17:16.79 ID:edW8cWjA0
…………ふー…………
一体何を書いてたんだ、俺
眠いからって本能のままに書きすぎだろ……馬鹿じゃねーの……なに現実逃避でやり直し要求させてんだよ……
……再開
>>477 ???が全部BADってわけじゃないぜ!?選択肢を???で載せてるだけだぜ!?
479 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 00:28:17.75 ID:edW8cWjA0
智「……チュンチュンが……チュンチュン鳴いてる……」
瑞和がフェミニストだというのは本当だった。
自分の部屋のベッドを僕に貸して、自分はリビングのソファーで寝ている。
けれど、この部屋にも一つだけ問題がある。
カゴメ「………………」
智「………………」
伊代サイズのモノが目の前に佇んでいたせいで、全く眠れませんでした。
カゴメさん自身は昨日言ったとおり――どこでその情報を仕入れたのか、呪いは女性にしかやどらず、故に僕は身体は男でも本当は女だということになっていた。
……運がいいのか、悪いのか。その勘違いのお陰で呪いを踏まずにすんだのだから、万々歳だ。
カゴメさんも、自分の知らないことは全く知らないらしかった。
なんとなく、垣間見た人間味に親しみを覚えた。
智「でも――」
昨日言ってた、姉とは一体なんのことだったのだろう。
……一つだけなら、思い当たることもないこともない。
僕の――死んだ姉さん。
物心付く前に、母さんには事故にあって死んだ、と聞いた。
でもそんなのは僕と一部の親類しか知らないことだ。
もし、カゴメさんがこの姉さんのことを言っていたのだとすれば――どうして、カゴメさんはそれを知っていたのだろう。
疑問は尽きない。
480 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 00:28:32.12 ID:awBmfOsQ0
支援
481 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 00:34:53.47 ID:G9VE0C46P
智ちんが朝チュンだと!?許せんッ!
>>478 オウフッ
勘違いしてた!
482 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 00:44:22.62 ID:edW8cWjA0
そう思って顔を見つめていると、パチッ、とカゴメさんの目が開いた。
身の毛がよだつような思いがした。
僕とカゴメさんは数秒間ベッドの上で黙って見つめ合ったあと、カゴメさんはゆっくりと起き上がる。
カゴメ「……和久津、お前も起きろ。朝食だ」
智「え……うん。でも、まだ早いんじゃ……」
カゴメ「お前が作れ」
智「え」
そんなこんなで。
どういうわけか、僕が朝食を作るハメになったのだった。
僕の家のキッチンとは段違いの機能……!流石高層マンション……と、僕は感動を覚える。
しかしながら、どれもこれも使ってみたい機能ばかりでメニューがまとまらない。
ご飯は既に炊いてあった。きっと予約していたのだろう。助かる。
カゴメさんはここからは見えないところでコーヒーを飲みつつ(裸Yシャツで)テレビを見ながら瑞和が寝るすぐ横に腰を下ろして寛いでいた。
結奈『おはようございまーす、結奈でーす』
テレビ画面から今や朝の顔になりつつある新人地方アイドル、結奈ちゃんの声が聞こえた。
実はこの高倉市出身で、地元の期待の星だと前何かの番組でやっていた。
昨日風呂上りに寝るまで話していたら、紅緒も好きらしい。
……と、そんなことより僕はご飯作らないと。
そうだ、いっそご飯を使ってパエリアとか作ろう。偶然にもパエリア用の鉄鍋があるし。
そう思い立つやいなや、冷蔵庫を開き必要な具材を取り出し始めた。
483 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 00:55:45.61 ID:edW8cWjA0
僕の作ったパエリアの評価は、というと。
紅緒「おいし〜っ!智さんすごい料理上手なんだね!」
智「自炊してるからね、フランス料理とか好きなんだ」
暁人「まゆまゆも勿体無いことしたな……こんなおいしいの食べ逃すなんて」
高評価だった。
カゴメさんの方もちらりとみてみるけれど、ただ黙々と淡々と食べていた。
美味しくなければ食べないよね、ということで脳内保管する。
紅緒「ね〜!あー、おいしい。どんどん食べちゃいそう……あ、でも昨日体重計乗っかったらひどかったしなぁ……うぅ……」
紅緒はどうやら体重を気にしているらしい。
伊代を紹介してあげると喜びそうだ。ダイエット仲間的な意味として。
カゴメ「ダイエットをするとまず胸から減る。……お前に減る胸はあるのか?」
紅緒「あ、あるもん!そのぐらいならあるもん!!」
カゴメ「つまりそれしかない、ということだな。貧相な板胸め」
カゴメの追撃に、紅緒はしょんぼりとする。
あるもん、あるもん……といいながらも、パエリアへの手を止めてスプーンを皿の上においた。
脅し、イクナイと思う。
484 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 01:06:37.46 ID:edW8cWjA0
食事も食べ終わり、アヤヤたちにもメールする。
繰莉ちゃんは調べ物――三宅の生きている連絡先についてとかで午後から合流する。
暁人「じゃあこっちも伊沢とお春さんを呼んで、模擬練習でもするか。まゆまゆにはメールうっておこう」
智「どうもお手柔らかに」
暁人「いやいや、こちらこそ」
丁寧に頭を下げると、瑞和も頭をさげる。
本当、世渡り上手そうだ。
しかし紅緒が目ざとくジト目で言う。
紅緒「……でれでれしちゃって」
暁人「してねぇよ!」
紅緒「してたよ!だって智さん、清楚系でしょ?深窓のお嬢様みたいでしょ??胸は……ないけど、料理も上手いし家庭スキルも私よりも高そうだもの!」
暁人「お前は何の話をしてるんだ!?」
瑞和と紅緒がよくわからない口論をする。
本来ならカゴメさんも間に入って瑞和を虐めそうだが、こちらも調べ物とかでいなかった。
485 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 01:18:55.09 ID:edW8cWjA0
いつか皆と通った歩道橋へと歩く。
突然、あの時の光景がフラッシュバックする。
そうだ、あの時見た六人組は瑞和達だったんだ。
どこかで見たことがあると思ったら、あの時か……
智「………………」
嘗て、僕らが見知らぬ場所でも何も変わらず戯れていたことを想い出す。
あの時都市伝説捜しに来ようなどといわなければ……こんなことにはならなかったのだろうか。
……悔やんでも、仕方がない。
今、僕らは未来の為に進もうとしているんだ。
その歩道橋にて三人で待つこと数分。
一番早いのは、惠だった。
惠「やぁ智。今日も素晴らしい天気だね」
智「おはよう惠。昨日は良く眠れた?」
惠「この世に生を受けてから、ぐっすり眠れた日などないよ」
パシン、と軽いタッチをする。
それだけで意志を交わすには十二分。
僕らは昨日互いに誓い合って、同盟を結んだ。
その意志の堅さを少なくとも明日、明後日まで維持しなければならない。
惠はどうかと思ったけれど……別に大した問題はなかったようだ。
パエリアってスペイン料理だっけ
487 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 01:28:04.04 ID:edW8cWjA0
>>486 うん、スペイン料理。
……智はフランス料理好きっていったけど、別に他の国の料理とか作れてもいいよね!
アヤヤ「オハヨウゴザイマス、先輩方!」
芳守「今日はよろしく」
アヤヤと芳守が来たのは同時だった。
話を聞くと、あの後芳守はアヤヤの家に泊まったらしい。
仲がよろしいことで。
――彼女らも、昨日誓い合った。
自分の仲間を、世界を、王国をその手で護るために。
今日来たことでそれは事実だと、本気だと知ることができる。
それについて紅緒は気を使うように言う。
紅緒「……ねぇアヤヤちゃん、芳守さん。もし嫌なら――やめてもいいんだよ?」
アヤヤ「その代わり、紅緒ちゃんがやるの?」
紅緒「――――――」
紅緒は間髪入れないアヤヤの言葉に押し黙った。
アヤヤの意志も、既に固まっている。
一度犯した過ちを悔やむことで、アヤヤは一回り大きくなったような気がした。
そういうことね。
智ちんはいつゆんゆんを料理するんだぁあっぁぁぁぁあぁぁ!!!!!!!
むしろ智ちんを料理したい
490 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 01:41:10.02 ID:edW8cWjA0
芳守「紅緒。私たちは私たちの意志でやるの」
アヤヤの前に出て、芳守は告げる。
決してイヤイヤではないのだと。
芳守「切欠は、私たちが理由じゃないかもしれない。私たちが手を貸す理由はないかもしれない」
芳守「でも、和久津と、才野原と繋がって……二人とも、もう私たちの世界の一部なの」
芳守「放っておいたら壊れてしまうかもしれない。だから、私達は打って出る」
芳守「……紅緒達が動くのは、万が一、があった時ね」
万が一。
ソリッドにマクベスがやられてしまったとき。
ジャックを倒した経験のあるバビロンならば、倒してレベルアップした後でも連戦続きのソリッドを倒すことができるだろう。
紅緒「そんな、態々一体だけで危険を犯して戦う必要なんてないじゃない……私たちも参加すれば、もっと勝率が――」
智「紅緒、それは違うんだよ」
見かね、僕は口をはさむ。
智「その災の種を運んできた僕がいうのもなんだけど……種を運んできたからこそ、自らの手で摘み取らなきゃいけないと思ったんだ。皆はそれに賛同してくれたんだ」
智「だから――僕の、僕たちの手でそれを止めるんだ」
紅緒「智さん…………」
491 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 01:51:27.25 ID:edW8cWjA0
暁人「紅緒、それぐらいにしておけ」
紅緒「暁人、でもっ!」
暁人「ちょっとこっち」
止めにかかった瑞和にさえ食って掛かる紅緒を、瑞和は軽く引き寄せ、何かをささやく。
きっと紅緒を宥めるような何かだろう、すぐに紅緒はおとなしくなった。
……少しだけ、元気がないけれど。
そんなタイミングを見計らったかのように、お春さんと伊沢が並んで現れた。
春「お待たせ」
伊沢「しちめんどくせェこった……さっさといくぞ」
智「どこへ?」
伊沢「決まってんだろ。練習場だよ。俺の舎弟を自称する奴に用意させた」
伊沢はなんてことなさそうにいう。
……本当、いいやつだ。
伊沢「……言っておくけどな、バビロン並じゃなきゃジャックレベルまでレベルアップした奴には勝てねぇ」
伊沢「それなのに操作を鍛えるなんて焼け付き刃かと思うかもしれねぇが、案外そうでもねぇ」
伊沢「レベルアップした奴は力が強いが、その分重くなり動きが端直になる。だから速い攻撃の先をよんで避ける術を覚えろ。死んでも覚えろ。じゃなきゃ殺す」
結局、死ぬらしかった。
伊沢はほんといいやつだなー
493 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 02:04:57.90 ID:edW8cWjA0
本当に、死ぬかと思った。
バビロンの能力は重力操作――ただの『竜型』よりも遙かに大きいくせにそれより速い。
手加減なし……いや、壊さない程度というのが手加減に含まれないなら、手加減はなかった。
マクベスが一撃を食らい、地面に伏すたびに血走った眼で叫んだ顔は、生涯忘れない。
伊沢「オラオラァ!さっさと立ちやがれ!まだくたばってんじゃねぇぞ!」
心の隅では殺すつもりだったに違いない。
繰莉ちゃん以上に移動を操れない僕には紙一重で交わすのが精一杯だった。
……直撃することもしばしばあったけれど。
その甲斐あってか、繰莉ちゃんが来る頃には芳守は随分と先読みが上手になり、アヤヤのシールド展開のタイミングも様になってきた。
繰莉「やってるねぇ、そろそろ私も混ぜてよ」
フル接続となったマクベスは、コレが二度目。
互いに消耗したままで本当の模擬戦をやってみたけれど、二撃いれただけで全くだった。
しかし、その二撃は腕一本と足一本を奪った。
三宅と対峙したときにやった、居合のような一閃。まるで侍のようだ。
伊沢のバビロンの攻撃がセンスに溢れているように、惠には一撃必殺のセンスが或るらしい。
初心者相手にここまでやられたことが気にくわないのか、終わった後に少し不機嫌だったのも忘れないだろう。
そして最後に――繰莉ちゃんが持ってきた封筒の中の確認を行った。
そこには既に生きている三宅の連絡先が乗っていた……
494 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 02:09:35.59 ID:edW8cWjA0
Chapter
17 平凡な日常
18 怪しい記者
19 お休みからおはようまで
20 人を呪わば穴二つ
→ ???
21 不可思議な夢
22 凶報
23 理不尽の急襲
24 騙り屋さんと超探偵
25 因果のツケ
→ ???
26 僕らの王国
27 情報収集
28 暁人ん家
→ ???
→ ???
→ ???
29 決戦前日
30 ???←次ここ
続く……
どうでもいいけど、今までの合計266KBて。500言ってないのに半分って俺どれだけ書いてるんだよ
とりあえず第三幕は明日で終わる予定。
おもれーな
496 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 02:13:44.26 ID:awBmfOsQ0
おつおつ
497 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 03:08:57.97 ID:6ZusyOpC0
寝る前保守
支援
499 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 04:12:24.80 ID:vl/fOJAd0
ほ
500 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 04:20:57.41 ID:KNHA15TZ0
おつー
惠の本当のクラスはサムライなのか
501 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 05:06:56.19 ID:Od/UWpvc0
うたなかあら
保え〜
おはほしゅ
504 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 08:31:43.63 ID:DyqY43cR0
まゆまゆ違います保守です
保守
おはよう、今日も素晴らしい天気だと思わないかい?
もうすぐ再開
507 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 10:20:13.14 ID:edW8cWjA0
繰莉ちゃんは封筒から一枚の名刺と、何枚かの写真を取り出す。
そこには当然のことながら連絡先、そして三宅が映っていた。
繰莉「一応、これが生きてる連絡先。泊まってるホテルもつきとめた。彼だけを殺すならそこをマクベスなりなんなりで強襲すればすむことなんだけど……」
紅緒「すむことなんだけど?」
繰莉「一人でレベルアップしたアバターを動かすのは限りがあるでしょ?それに、ともちんやめーちんの時には『魔犬型』にはならなかった。そうする余裕がなかっただけかもしれないけどね」
繰莉「つまり。これらから導き出される答えは一つ」
伊沢「共犯者がいる、ってことか」
繰莉「いーちゃん、それ私の台詞。超探偵から探偵の仕事をとったら超しかのこらないよ」
割り込んだ伊沢に、繰莉ちゃんがブーたれる。
しかし軽く横に首を振った後、封筒の底にあった写真を取り出した。
紅緒「……まぁ少なくとも、相手のコミュの内三人以上が敵、ってことよね」
暁人「それにしても、多変型アバターか……厄介だな、そんなものがあるなんて思ってもなかった」
春「そうだねぇ、そんな色んな種類のモノを使い分けられたらお春さん困っちゃう」
伊沢「……俺はつっこまねぇぞ」
バビロンコミュが口々に口にする。
やはりジャック以外にも幾つかのコミュと戦ったことがあるんだろう。
そういう考察は頼りにはなる。
508 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 10:38:23.58 ID:edW8cWjA0
智「……とりあえず、現時点で手に入る情報はコレが限界、か……」
繰莉「そうだね、少なくとも、繰莉ちゃんの手に入る情報ではこれ以上はむり」
……さて。
拠点フェイズ、作戦フェイズと来て次は戦闘フェイズ……に移りたいところなんだけれど。
如何せん、相手の出現位置がわからない。
一応繰莉ちゃんにも連絡先はつきとめてもらったけれど……これを使っても引きずり出せるとは思わない。
僕や惠がしても相手は怪しむだけだし、アヤヤや芳守、繰莉ちゃんがしてもどうしてってことになる。
そんな僕の悩みはよそに、芳守は出なかった情報に関して繰莉ちゃんに聞いていた。
芳守「相手の能力はわからなかった?」
繰莉「うんにゃ、そこまでは」
暁人「使えないな、先輩」
繰莉「アキちゃん。繰莉ちゃんは相手のアバターの認識下に入らないように最高の注意を払ってたんだよ?寧ろ一歩間違ったら死んじゃってたんだから、褒めてほしいぐらい」
……今、なんていった?
智「今、なんていった?」
思わず、そのまま聞いてしまう。
繰莉「え?繰莉ちゃんは相手のアバターの認識下に入らないように最高の注意を払ってた?」
智「違う、その後!」
繰莉「寧ろ一歩間違ったら死んじゃってたんだから、褒めてほしいぐらい。もしかしてともちゃん褒めてくれるの?」
509 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 10:54:05.61 ID:edW8cWjA0
一歩間違ったら、死んでいた。
なにもしない一般人は今は殺さなくとも――自分のことを探る一般人は殺す?
どうして?決まっている。
自分が殺人を犯していると、バレるのが恐ろしいから。
自分が記者だから、それは必要以上に知っていることだろう。
智「これだっ!!」
アヤヤ「あややややっ!?な、ど、どーしたんですかっ!?」
大声を上げて立ち上がり、右隣で資料を見ていたアヤヤが動揺する。
その反対側の惠が眼を細めて訊ねてくる。
惠「もしかして、何かいい方法でも思い浮かんだのかい?」
智「うん、アイツが直接アバターで手を下すことに頼らなかったら、もしかしたら能力が視える可能性があるかも」
智「それにこの作戦だったらアイツはほぼ確実に釣れる。呼び出せる」
暁人「……呼び出すって、電話するだけじゃだめなのか?」
伊沢「……瑞和、馬鹿かテメェは。確かに相手のアバターはこいつらに執心かもしれねぇ」
伊沢「そのために確実に勝つためにレベルアップしてんだぞ。自分たちで満足だと思うまででてくるわけねぇだろうが」
春「それに、もしかしたら戦闘前に能力がわかるかもなんでしょ?だったらこっちの作戦の方がいいんだよね、智ちゃん?」
智「うん。……でもそのためには、繰莉ちゃんにもう一仕事してもらわないといけないかも」
繰莉「へ?」
510 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 11:12:33.48 ID:edW8cWjA0
翌日。
繰莉ちゃんこと私蝉丸繰莉ちゃんは田松市のホテル前で待っていた。
昨日の夕方、ともちゃんの作戦を聞いて実行するためにここにいるの。
結構良い作戦だったと思う。運が良ければ能力がわかるかも、というのも本当。
ただ唯一問題があるとすれば……繰莉ちゃんの命が一番危ういってことかにゃ〜
繰莉「にゃー」
足元に寄ってきた黒い猫がこちらを見上げるので優しい優しい繰莉ちゃんは朝食用に買った肉まんの皮の部分を少しちぎってあげたの。
なぁご、とお礼をいうように一度なく。
それからハグハグと食べる黒猫の頭にそっと手を置いてみた。
「ガギノドンー」
その言語にぴくり、と反応した黒猫はすぐさまその声の方へと走っていった。
おやおや。野良だと思ったのに飼い主がいたのかな。
そう思ってそちらの方向を見ると、一度見た顔があった。
確か、茜子とともちゃんが言っていたような気がする。
茜子「……こんにちは」
繰莉「こんにちにゃ〜」
すこしばかり警戒しているようだけれど構わない。
暇つぶしとばかりに少しだけ話をしよう。
おは支援、昨日は支援でなくて保守であった
512 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 11:28:15.00 ID:edW8cWjA0
茜子「うさんくさいん親戚がこんなところでなにしているんですか?」
うさんくさいんっていうのはいづるっちのことかな?
ともちゃんの知り合いには本当面白いのが多いね。繰莉ちゃん楽しいよ。
繰莉「ちょっと暇潰し。ところでともちゃんは?」
茜子「あの名探偵貧乳ブルマは暫く私たちには会えないといって行方知らずになりました」
すこ〜しだけ不機嫌そうにいうのも束の間。
茜子だから……アカちゃんかな。アカちゃんは繰莉ちゃんに質問してくる。
茜子「今は私たちよりも貴方達のほうが知っているのではないですか?」
うーん、ともちゃんがどこまで話しているのかにもよるにゃあ……
でも質問して来るってことは会えない理由は言ってないってことだから、ここは適当にはぐらかすかな。
繰莉「いんや?繰莉ちゃんは知らないよん」
茜子「……アナタも智さんや惠さん、私と同じ人種ですね」
はぁ、とアカちゃんは溜息を吐く。
……あ、そういえば。この子心読めるんだったっけ。
半信半疑だったからすっかりと忘れてた。
茜子「まぁいいです。あの姑息僕っ子も天然マンレディーも意味なく何かをすることはないでしょうし」
そう言ってアカちゃんは黒猫――ガギノドン?を抱き上げた。
茜子「それでは、また会う日まで」
513 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 11:28:52.51 ID:XQc+Lrrd0
え、あずまんがじゃないの?
514 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 11:30:49.34 ID:DyqY43cR0
さるよけ支援
515 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 11:41:55.44 ID:edW8cWjA0
ふむ……ふっしぎだなぁ。
繰莉ちゃんは謎があると解きたくなる性分なのだよ。
何か隠している気配がプンプンするのよね。
今度こっそり……ともちゃんたちのこと調べちゃおっか。いづるっちも何か知ってそうな感じだったし、そこからアプローチをかけるのもいいかもね。
……っと、危ない危ない……危うく、見逃すところだった。
ホテルから出てきたその男性に駆け寄る。
中年。頼りなさそう。猫背。痩せ型。筋肉質でない。
そういった特徴を持つ、そいつに繰莉ちゃんは用意した写真を握りしめながら話しかける。
繰莉「こんにちにゃ〜」
「え、あ、ああこんにちは……俺に何かようかな?」
繰莉「うん。えー、三宅康博さん、ですよね?」
警察ぶって見る。
ソイツ――三宅は何故名前を知っているのかと名前をしたが、すぐに返してきた。
三宅「ああ、そうだけど……」
繰莉「三宅さん……私はね、掴んだんですよ」
三宅「……何を?」
繰莉「無論、アナタが殺人を起こしている証拠を、ね」
繰莉ちゃんは不敵に、にやり、と笑う。
516 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 12:04:13.18 ID:+kmRBH2L0
支援
517 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 12:04:37.63 ID:edW8cWjA0
僕と芳守は近くのビルの影で繰莉ちゃんの様子を見ていた。
三宅は動揺を隠そうとしているがもう茜子でなくともバレバレだ。
芳守「……蝉丸、大丈夫かな」
智「僕らが頑張ればいいだけだよ」
――僕が提案した作戦は、こうだ。
まず、面が割れていない繰莉ちゃんが一般人(それでも超探偵)を装い、三宅に近づく。
超探偵の繰莉ちゃんは再来ジャックの正体を追っているうちに三宅を多く見かけたことを告げる。
今繰莉ちゃんは証拠を掴んだとはいったけれどまだ完全なる証拠を掴んだわけじゃない。でもほぼ確実だから言質をとっておこうと思ってね、という。
……ちなみに、この理由におかしな点はある。
再来ジャックの調査、とは言ったものの、そもそも三宅は一人もジャックのように殺してはいない。つまり表の世界ではただの外傷なしの集団死として扱われている。
只管にアバターを壊した『魔犬型』としてそうコミュネットで言われているだけだ。
勿論そこに突っ込まれたら知り合いにアバターをもつ人がいてね、といえと伝えてある。
しかしながら、こんなに動揺していてはそのことをいう必要はなかったといえるだろう。
芳守「……あ、蝉丸が離れた」
もし、僕が三宅ならば。
そういう危険因子は、すぐさまに取り除く。
だから――
芳守「アイツも蝉丸を追いかけ始めた」
追いかけて、一人になったところを殺る。
518 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 12:17:42.08 ID:edW8cWjA0
智「フェイズ2に移行する」
芳守「わかった」
手の中で、元々用意しておいたメールその1を皆に送る。
僕は芳守によろしく、と肩を叩いて路地裏から近道する。
一人になったところを殺る、とは言ってもそれを読んでいるのだから一人になるわけがない。
そういうふうに、仕組まない限りは。
そして、アイツが他のメンバーに連絡しないとも限らない。
だから地上の芳守と空――ビルの屋上で待機している惠の二箇所から三宅とその周囲を監視してもらう。
これが、フェイズ2。
ラストのフェイズは三宅、ないし残りの仲間が繰莉ちゃんが一人になったところを攻撃するところで行う。
直接攻撃を仕掛けようとした瞬間、或いは能力攻撃をしようとした瞬間にマクベスで割り込むのだ。
ちなみに舞台にする人気のない場所、というのは本当に人気がない。
瑞和たちが自分の知り合いにそういうのが簡単にできる奴がいる、ということで舞台をつくりあげてもらったのだ。
そして僕らは一箇所に集結し、アイツを破壊する。
路地裏を駆けている途中、着信があった。
惠からだ。
惠『二人に増えた。仲間を呼んだらしい、おそらく少なくとも三人を同時に相手取ることになるだろう』
智「わかった。それは繰莉ちゃんには?」
惠『伝えないと思うのかい?』
それは伝えた、ということだ。
本当、繰莉ちゃんごめん。囮なんかにしちゃって。もう少し頑張って。
519 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 12:27:05.33 ID:bNLOO/0p0
支援
520 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 12:33:48.13 ID:edW8cWjA0
数分後、惠からは三人に増えた、と連絡があった。
僕は先回りした場所でアヤヤと合流し、連絡の後すぐに見張りをうちきった惠とも合流する。
場所は――町外れの使われていない廃れたクラブ場。
瑞和や伊沢曰く、コミュのアバターギグでも使われたことのある会場だという。
そこの全体を見渡せる、しかし相手からは見えにくい司会席のような場所に僕ら三人は集結する。
惠「……芳守は?」
智「最後の人数の確認。確認したら裏口から入るように言ってある」
アヤヤ「私達はとりあえず、よっしーが来るまで耐え切る必要もあるわけですね」
来る前に倒せたらそれはそれで万々歳だけど。
相手はレベルアップしたアバターだ、そんな甘い考えが通じるはずがない。
芳守からメールが入る。
芳守『ポイントよりおよそ百メートル。人数は三人』
智「了解、それじゃあ見つからないように裏口から……と」
さて、後は繰莉ちゃんが場所に入って、相手が殺ったと思う瞬間にアバターを召喚する。
……タイミングよくないと相手も攻撃を中断する可能性もあるし、繰莉ちゃんがやられてしまう危険性もある。
どちらかといえば前者の方が重要度は低い。だから心持ち早く召喚するようにしないと……
それでもグッドタイミングが一番望むものだ。
智「……頼むよ、繰莉ちゃん」
全ては、繰莉ちゃんの手腕にかかっている。
521 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 12:46:48.46 ID:zBh/3ErHi
茜子さんが智とか惠の名前を呼ぶのがちょっと違和感…
あれは茜子さんがデレたとき限定だったような
ともあれ支援
522 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 12:51:26.77 ID:edW8cWjA0
……さて。
ともちゃんにはなるべくはタイミングを見てほしいって頼まれた。
能力の方の攻撃スピードはどうかわからないけれど、『魔犬型』のアバターのスピードは速い。
下手すればやられる。
繰莉ちゃんがやられたらきっと皆もすぐに後を追ってくるだろうなぁ……
ま、ともちゃんたちなら繰莉ちゃん欠いたぐらいでも勝ちそうな気はするけど。
そうしたら繰莉ちゃん一人だけ死んじゃうのか……
それは嫌だな。死ぬつもりはないけれどね。
予め貰っていた鍵で会場のドアを開き、ドアを閉じずに開けっ放しで入る。
距離が必要だ。全力でない程度に距離をとって、振り返る。
すると丁度三人が入ってくるところだった。
ここまでは、ともちゃんの計画通り。
次のタイミングで繰莉ちゃんの運命は決まる。
繰莉「あれぇ、どうしたのミヤさん。そんなに怖い顔して」
三宅「はっ、お前に俺達のことをばらされたら困るからなぁ……今までの奴らと同じ通り、殺させてもらうぜ!侵略しろ、『ソリッド』!!」
青白い、召喚ゲート。
中からは水色の『魔犬型』――――
さて、タイミングはどうしようか?
>>523 1 自身の安全をとって早く出す
2 ギリギリまでタイミングを見極める
523 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 12:55:46.91 ID:+kmRBH2L0
2
524 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 13:07:12.72 ID:edW8cWjA0
→ギリギリまでタイミングを見極める
繰莉「わぁお、なにそれ、なにそれ!もしかしてそれで殺してたの?」
三宅「そんなことを聞いてもいみねぇだろ?なぜならお前はここで死ぬんだからな!やれ!」
少しばかりソリッドの身が沈んだように感じた。
――来る!
繰莉「――マク」
思い、留まる。
ソリッドには動く様子がない。
レベルアップしたアバターは速い。だから足元でためる必要性なんてない。
つまり――能力!
繰莉「……!」
繰莉ちゃんの背後から、何かが頬を撫でる。
腰ぐらいまである長い自慢の髪が揺れる。
ここは室内で、風なんか絶対におきないはずなのに。
三宅の口が、何かの文字を形作る。
――この瞬間。
繰莉ちゃんは最後まで聞くことなく、召喚を命じる――
繰莉「――――――踊るよ、マクベス」
525 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 13:26:53.49 ID:edW8cWjA0
青白い光が出現する。
三宅たちが動揺し、何かは繰莉ちゃんに向かう寸前で止まった。
素早く、そこにある何かに向かって竜、マクベスは爪を振るう!
ズバン!と『何か』を切り裂いたような、ラッパ音だけがした。
腕より遅れて、足が。頭が。胴体が。尾が順番に現れる。
三宅の顔が驚愕に満ちる。繰莉ちゃんはしてやったり顔。
これだから人の裏を読むのはやめられない。
三宅「そ――こいつは、アイツらの――――!?」
一。
訪れるのは感触。
朱い竜へと繋がれる違和感。
二。
装填されるのは五つの意志。
装填されるのは五人の人間。
三。
それはあまりにもシンプル。
人が扱う感情を具現化したもの。
四。
そしてコレは武器。
剣、盾、法、領土、国境。すべてを兼ね備えた物。
五。
全ては私たちの王国を護るために。
私たちの意志で、力で――ソリッドを倒すために!
526 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 13:35:26.23 ID:edW8cWjA0
■■■■■■■■―――――――ッ!
五つの魂を込められた、マクベスの名を与えられし竜は吠える。
犬如きが竜の前に立つのは百年速いと。
「おい三宅!なんだよこいつ、接続者じゃねーか!」
「それに前にお前が言ってた朱い竜だよな!?なんでこいつが持ってんだよ!!」
動揺が三宅のコミュ内に走る。
その隙を見逃さない――!
グンッ、と繰莉ちゃんが竜を先導する。
下からアッパーカットのように繰り出すのはタイミングを見極めためぐちゃんの仕事だ。
大きく振られた、当たれば首をもぎ取るであろうその一撃は、紙一重で空を切る。
三宅「テメェら動揺するな!やらなきゃやられるんだぞ!?」
自分自身も動揺してるくせによく言う……それにしても惜しい。あと少しだったのに。
と、次の瞬間にポケットの中の携帯が震えた。
ともちゃんからの撤退命令。
確かにここにいるのも危ないし、皆のいる司会席に向かうことにする。
527 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 13:38:41.13 ID:edW8cWjA0
Chapter
17 平凡な日常
18 怪しい記者
19 お休みからおはようまで
20 人を呪わば穴二つ
→ ???
21 不可思議な夢
22 凶報
23 理不尽の急襲
24 騙り屋さんと超探偵
25 因果のツケ
→ ???
26 僕らの王国
27 情報収集
28 暁人ん家
→ ???
→ ???
→ ???
29 決戦前日
30 フェイズ、オールグリーン
→ ???
31 ???←次ここ
第三幕終了前最後の休憩。
というか用意していたバッドエンドがパァだよ!
さて、ほんの少しばかりの休憩も終了。
マクベスVSソリッド、開始
529 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 14:02:07.54 ID:edW8cWjA0
智「っ、芳守、今のわかった!?」
芳守「……っ、ごめん…………!」
先程の、みえない攻撃。
繰莉ちゃんが『そこにある』というように引き裂き、破裂音が響いた。
それがなんなのか、芳守に聞いたのだ。
芳守「……柚花がいってたような、念力系統じゃない。それだけは確か」
確かに、見えない力を引き裂いたところでラップ音なんて鳴るはずもない。
だとすれば考えられる力はなんだ?
気体を操る……いや、ない。だとしたら、凄く堅いという情報に説明が付けられない。
一体なんだ、なんだ!?
アヤヤ「っ、智先輩!来ます!!」
智「っ!!」
アヤヤが思考の迷路に入りそうになる僕を現実に戻す。
繰莉ちゃんにはその場は巻き込まれる危険性があり危ないからこっちにこいと連絡した。
だから今移動を司るのは僕の役目なのだ。
磁力――『反発』。
足元の磁力場に対して同じ極の力を生み出し、それを強い力で反発させることにより、バビロンとまではいかないが並の『竜型』より速いスピードを誇る。
前回の戦いではあまりにも少ない接続だったために使わなかったが、これが本当のスピードだ。
しかし、それでも――空色の犬には追いつけない。
530 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 14:05:03.02 ID:DyqY43cR0
バッドエンドなんてパァになるに越した事はない!
やり直しを(ry
531 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 14:16:34.63 ID:edW8cWjA0
僕が反発した方向に一瞬で先回りされる。
振り下ろされる、三本爪。
それすらも前回と比べて大きくスピードを上回っていた。
ギィン!と爪が縦に振られたのに横に、マクベスの装甲に弾かれる。
肩から持って行かれた、と思った攻撃は、思ったより軽傷。
アヤヤ「あ、危なかった……!」
アヤヤの役目はプリースト。マクベスの重要な盾の部位。
磁力の壁。今のはマクベスの肩のまさにその表面に一点集中し、弾いた。
正しく間一髪。
惠「ふっ!」
惠がマクベスの右腕の刃を振るう。
ガギン!と受け止められた。
ギリギリギリ……!となる金属音は、まるで鉄に鋏をいれたときのようにぴくりとも動かない。
そんなバカな。
本当に、これではあまりにも硬すぎる――!
惠「智!避けろ!!」
智「っ!!」
先ほどとは逆の、もう一方の腕が振るわれる。
今度は真横。
移動してもおそらく、間に合わない。
532 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 14:31:20.32 ID:edW8cWjA0
活路は、上か。足先なら犠牲にしてもまだ戦える。
飛ぼうと思い、背筋に悪寒が走る。
あそこは、危ない気がする……!
智(ならば――――!)
咄嗟、閃く。
考えるよりも速く、後ろでも横でも、まして上でもなく、前に!
突進するようにソリッドへと突撃し、無事に横に振られた斬撃は回避、そのまま地面に折り重なって転がる。
次の瞬間、先ほどマクベスがいたところに、ズン!と直径二メートルほどのクレーターが出来た。
――見えない攻撃だ。
先ほど上に飛ばなかったのは正解だ。自分から死に行くところだった。
グオン!と惠はもつれあったままの状況でソリッドの首もとに噛み付かせた。
またしても甲高い金属音。
先ほどとは違い少しだけめり込んだ竜の牙は、しかしそれ以上には食い込まない。
芳守「本当、一体……っ、あーや、胴!!」
アヤヤ「え、えっ!?」
戸惑うアヤヤをよそに、ドゴン、と竜が少しだけ浮いた。
『魔犬型』はもとより攻撃力はそれほどない。しかし過去のジャックや今のソリッドのような酷くレベルアップしたアバターは別だ。
一撃で竜の装甲を引き裂き、二撃で仕留める。
それでも何故浮くだけで、装甲が剥がされなかったのかというとそれは攻撃した部位にあった。
――足。足には攻撃性能はなく、爪は取り付けられていない。
しかしレベルアップした『魔犬型』にはほんの少し浮くだけでも十二分。
覆いかぶさっていた邪魔者がいなくなり、一瞬で移動する。
533 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 14:42:39.24 ID:edW8cWjA0
惠「逃がしたか……!」
噛み付いていた惠は歯噛みをする。
少しだけ食い込んでいた程度ではソリッドを留めるには至らなかった。
そしてまた相手の動きに翻弄される打ち合いが始まる――
と、その時ようやく後ろの扉が開いた。
僕の移動制御が持って行かれる。
繰莉「ヒーローは遅れて登場〜ってね!」
アヤヤ「遅いですよ繰莉先輩ちゃんっ!!」
本当だよ、繰莉ちゃん!
本職が来たことで御用御免になった僕は全体の制御に回る。
繰莉「――本職、なめちゃだめだめだよ」
先ほどより速くなったマクベスが再起動する。
それにソリッドが僅かに動揺するのも一瞬、また、先回りする。
繰莉「なんてね」
マクベスはソリッドの元に付く前に、急激に方向転換。
予め仕掛けておいた磁力場だ。
本来ならまっすぐ突っ込むべきだったところに、斜めに突っ込む。
ソリッドは修正してまた真正面から受けようとするも間に合わない。
惠「――これは餞別だ」
すれ違い際に、尾のビンタを置き土産としてやった。
534 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 14:49:39.62 ID:edW8cWjA0
顔面に食らったソリッドが、揺らぐ。
先ほどとは違ってちゃんと感触があった。
繰莉ちゃんはふむ、と考えるように呟く。
繰莉「ねぇともちゃん、めぐちゃん。前にソリッドと戦ったとき、一人にしては動きがよかった。そういったよね?」
智「え、そ、そうだけどそれがなにか……」
繰莉「黙って答えてちょ。……じゃあ、そのソリッドは……軽かった?」
僕はステータスと竜の視界を見ながら考えを巡らせる。
確かあれは器物型だった。だけど――
智「――確かに軽かった!だって磁力で操った鉄骨で貫けたもの!」
繰莉「やっぱりね……相手の能力の正体がわかったよ」
え?
ローグの芳守でもわからなかったのに……繰莉にわかったの?
ギィン!と竜の爪と犬の爪が交差する。
欠けるのはやはりマクベスの爪で、ソリッドの爪は刃こぼれすらない。
繰莉「アイツの能力は――疎密を操る力。見えない攻撃は空気を密にして打ち出している攻撃」
繰莉ちゃんは開幕の見えない攻撃の時に風が起こった、と言った。
つまりそれは、周りの空気をまとめたからだ、と判断したのだ。
535 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 14:59:07.12 ID:awBmfOsQ0
支援
536 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 15:02:40.49 ID:edW8cWjA0
惠「……なるほど、それなら理論は通る。前の戦いの時は疎で軽くして動きをよくし、今は密で攻撃を通じないようにしているわけだ」
アヤヤ「そんな方法が……繰莉先輩ちゃんすごいです!」
芳守「あーやはちゃんとまえみて!防御には余裕が無いの!」
アヤヤ「あややややや〜っ!!」
アヤヤが眼を回して慌てる。
残念だけれど今は心を鬼にするしかない。少しの油断が命取りだ。
それにしても、戦う時間が――長い。
時間はマクベスにとっては天敵だ。マクベスの磁力を操る力は強力な分、魔力の消費が激しい。
繰莉ちゃんがくるまでにマクベスは攻撃を回避する手段が防御以外なかったために魔力の消費はこれでのこり半分しかない。
相手の能力がわかった今、早急に決めなくてはならない。
智「惠――やれる!?」
先ほど、相手の首にはマクベスの牙が食い込んだ。
それは危なく防御――密にするのが間に合わなくなりかけた、ということだ。
つまり――防御が間に合わなくなるぐらいに速く、攻撃を仕掛ければいい。
智「惠!」
惠「……やるだけやってみよう、できたら拍手喝采だ」
惠は僅かに笑った。
結構なピンチな状況に置いてすらも。
537 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 15:13:37.75 ID:edW8cWjA0
芳守「……!?待って、風の動きがおかしい!」
芳守は相手の見えない攻撃が空気を圧縮したものだと知った今、風の動きを読んでいた。
昨日のバビロンとの模擬戦は立派な役に立っていたようでわかった今は素晴らしいぐらい読みが鋭かった。
しかし、その芳守が慌てたような声を発した。
口の中で小さく数え始める。
一、二、三、四、五、六、七。そこで数字の数は止まる。
つまり、七つの空気弾をソリッドは創り上げた、ということだ。
それらを全て潜りぬけ――ソリッドへ一撃を入れなくてはならない。
智「繰莉ちゃん――!」
繰莉「……あやちん、マクベスの方の磁力操作、任せた!智ちんは移動方向の操作をお願い!繰莉ちゃんは地面の磁力場の設置をやる!」
素早く繰莉ちゃんが判断を下す。
手分けした最適化。ここでアヤヤの盾の出番はないのだから切羽詰っているところに回す以外使いようはない。
それにアヤヤの担当はもとよりマクベスに展開する盾の操作。マクベス自身の極操作も対して代わりはしない。
繰莉「それじゃあ――行くよっ!!」
右前方、真左。
右後方、左後方、まっすぐ。
芳守が言う空気弾の位置情報を元に、マクベスは会場内を縦横無尽に駆け巡り、疾走する!
そのたびにスピードもさらに加速していく!
538 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 15:25:06.58 ID:edW8cWjA0
ソリッドもマクベスの先回りをしようと試みながら、空気弾をドンドン生み出す。
しかし全て種は割れている上に加速していくマクベスにソリッドは追いつけない。
先程まではそんなスピードではなかったのにどうしてそれほどまでに速いのか。
それは、繰莉ちゃんの設置した磁力場にあった。
マクベスの進路方向にあわせ、NSNSNSNSNSNSN……を繰り返す。
アヤヤが操るマクベス自身の極も、単感覚でそれを繰り返している。
つまり――リニアモーターカーの原理だ。
『引力』と『反発力』、その両方を利用した移動の最適化――
そしてスピードもやがてはソリッドの視認すら追いつかなくなり――
青き犬は、朱き竜の位置を一瞬、見失った。
逆に、芳守には超スピードにおいてもソリッドの位置を捉えている。
――昨日のバビロンのスピードで、散々慣らされたのだからコレくらいできなくては。
感覚によって伝えられたモノに、繰莉ちゃんが自身の権利を取り戻す。
スピードはそのままに、ソリッドの背後に――回りこむ!!
智「惠――――――ッ!」
惠「ハァ――――――ッッッ!!!」
ズパン、と。
マクベスの刃が、閃く。
防御するどころか、視認できない袈裟切りにソリッドは――斜めに、右足と三分の二の胴、頭を残して切り落とされた。
539 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 15:33:38.87 ID:edW8cWjA0
ズン、と切り落とされた部位だけでなく、切り離された部位も、地面に沈む。
しかし、これでもまだ生きている。
縦に真一つ切らなかったのは――可能性があったから。
僕らはそれを確かめに行かねばならない。
アヤヤと芳守をその場に残して、僕らは会場へと降りた。
智「三宅」
三宅「ひっ……!」
そこには、マクベスに睨まれて逃げることも戦うこともできない、怯えた三人の男がいた。
そう――三人だけ、なのだ。
三宅「ひ、あ……た、助けてくれ!もうなにもしない!アバターも壊さない!お前らにも手を出さない!」
三宅「金か、金なら払う!言い値でいい!いくらなら見逃してくれる!?」
ああ――なんて、見苦しいことだろう。
今まで散々、いろんな人の命乞いを切り捨てておいて。なんて傲慢な生き物なんだろう。
そんな奴にも一つだけ確かめなきゃいけないことがある。
智「……ひとつだけ、聞かせて」
三宅「な、なんだ。なんだ、俺に答えられることなら、なんでも答えよう!」
智「……残りの二人は、どうしたの?」
ひくっ、と三宅の顔が引きつった。
――もう、確かめるまでもない。
540 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 15:39:49.51 ID:edW8cWjA0
智「お前たちは、許さない」
自分でいい、怒りが込み上げてくる。
人の命を奪っておいて、同じコミュの人の命でさえ奪っておいて――命乞いができるなんて。
まるで自分を特別な何かみたいに思っている奴なんて、絶対に。
許さない。
智「だから――見逃さない」
三宅「あ、ひ……ソ――――ソリッド――――――――――ッッッ!!!!」
倒れていたはずの、ソリッドが動いた。
姿を変えて、まるで生き物とも呼べない形になった。
所々欠けているのは先ほど切り落としたからだろう。
それも、修復されていく。……全体を疎にして、かけたところを補っているのだ、おそらくは。
三宅「い、いけソリッドォッ!こいつらを、ブチ殺せ――――!」
僕らの背後のソリッドから、三本の腕が伸ばされる。
智「惠」
ただ、短く。
僕は惠の名前を呼んだ。
そして、次の瞬間。
マクベスは円を描くように切り裂き、三本の腕を同時に引きちぎった。
541 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 15:47:16.70 ID:edW8cWjA0
ズン、と随分と軽い音がした。
削れた部位はもう、修復されない。
繰莉「……元々の状態で負けてんだから、疎になった状態で繰莉ちゃんたちに叶うわけないじゃん」
三宅「あ……は……ははは…………」
三宅は、ただ乾いた笑みと気持ち悪い薄ら笑いを浮かべることしか出来ない。
そして僕は、マクベスに命じた。
残りの全ての魔力を集結し――その弾を吐きださせた。
電気のようなものを帯びた、その金色に光る円球。
それは徐々にソリッドへと近づいていく。
……本来ならもっと速くやることも可能だ。だけれど、これでいい。
ソリッドに金色の弾が近づくと共に、ソリッドは何の前触れもなく、自壊していく。
バラバラに。風に消えるように。
三宅「な、あ…………」
バラバラになっていく自らのアバターを見て、三宅は顔を青ざめる。
――アバターである限り、金属の節約からは絶対に逃れられない。
マクベスの発した弾は、そのアバターの機体に反応して、機体の素材を原子、分子レベルで反発させてバラバラにさせるものだ。
機体に近づくに連れて、加速度的に速度を増して行く。
542 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 15:51:59.61 ID:edW8cWjA0
三宅は僕の足元にすがりついた。
惨めにも、人間のように。
――化物の、癖に。
三宅「た、助けてくれ!やめてくれ!なんでもする、なんでもするから、どうか命だけは――――っ!!」
智「そういった人たちの命を、アナタは幾つ奪ってきたの?」
三宅の表情が固まった。
僕はその顔に対して、とびっきりの優等生スマイルを浮かべる。
見ると、ソリッドは上部にあった人の形をした像しか残されていない。
僕はそれを見ながら、告げる。
智「――バイバイ、化物。地獄へお還り」
そして、最後の一粒になり、風に消える。
音もなく、そこには三つのモノができあがっていた。
543 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 15:58:54.12 ID:edW8cWjA0
その後のことを、少しだけ話そうと思う。
僕らはあの後口数も少なく、会場を出た。
出るとバビロンコミュ、そして魔女が僕らを迎えてくれた。
紅緒はほっとしたように、お帰り、と言ってくれた。
僕らは小さくただいま、とだけ返した。
その件は――それだけで終わったのだ。
でも、僕らは殺した。
生きていたものを、モノに変えてしまった。
きっとアバターが壊されて目の前で死んだ人を見て、皆それを実感したのだろう。
僕は、きっとそれをこれからも背負っていく。
アイツは人間じゃなかったかもしれない。化物だったかもしれない。
だけど、ソンナヤツを大切にしていた人もどこかにいたのかもしれないから。
僕も、繰莉ちゃんも、アヤヤも、芳守も。
そして、惠も。
これから、あのアバターを壊したことを背負って生きて行くのだ。
――僕らを繋ぐ、朱い竜と共に。
544 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 16:00:25.67 ID:edW8cWjA0
Chapter
17 平凡な日常
18 怪しい記者
19 お休みからおはようまで
20 人を呪わば穴二つ
→ ???
21 不可思議な夢
22 凶報
23 理不尽の急襲
24 騙り屋さんと超探偵
25 因果のツケ
→ ???
26 僕らの王国
27 情報収集
28 暁人ん家
→ ???
→ ???
→ ???
29 決戦前日
30 フェイズ、オールグリーン
→ ???
31 命を奪うこと
第三幕、終わり。
戦闘シーンはコミュのBGM流しながらだと少しだけ臨場感溢れたりする。
少し休憩して、第四幕に入ります。
545 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 16:03:48.22 ID:awBmfOsQ0
乙
546 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 16:16:13.68 ID:zBh/3ErHi
乙
三宅倒して終わりかと思ったらまだ続くのか
容量大丈夫か?
547 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 16:20:15.56 ID:DyqY43cR0
乙乙
548 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 16:43:34.60 ID:cwY7Bw/V0
俺得
549 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 16:52:34.96 ID:+kmRBH2L0
乙
バッドエンドをパーにしてすまんかった
エロゲ経験的に2を選んじまった・・・
550 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 16:59:27.21 ID:edW8cWjA0
ごめん、あと少し待って。
一番納得行くエンド考えてるから
>>546 うん、多分大丈夫だと思う。
駄目だったら……とりあえず続き書いて、残りは……どうしようか
>>549 いやいやいや、間違ってない、間違ってないよ。
バッドエンドを態々ふみに行くほうがおかしいんだから、間違ってないよ!
551 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 17:49:34.74 ID:edW8cWjA0
……時間かかったけど、ようやく視えた。
ちょっと無理矢理だけど、これぐらいしなきゃ呪われた世界はやっつけられないからね。
――さあ、おとぎ話をはじめよう。
552 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 17:59:44.25 ID:edW8cWjA0
こより「あ!ともセンパイだぁ!」
るい「え!?ともちん!?」
少しばかりこよりとるいの懐かしい声を身にうけて、軽く笑いながら皆の輪に入ってゆく。
智「どもども」
あの事件が終わってから、二日。
僕はようやく、家から出ることが出来た。
全部を飲み込むには些か時間がかかりすぎた気もするけれど。
……もちろん、暫く休んでいた学校にも行った。宮にお礼をして……またデートの約束を取り付けられた。
花鶏「本当、随分と時間かかったわね。待たせた分はツケだからね。今すぐ返済しなさい」
智「えーっと……どうやって……?」
花鶏「そりゃあもちろん、智ちゃんのそのスラっとした身体を思う存分撫で回して、○○○とか×××とか〜、うへへへへへ〜」
るい「……トモ、この脳内ピンク色から離れたほうがいいよ」
智「う、うん、そうさせてもらう……」
やっぱり、何時まで経っても皆は変わらないらしい。
僕がいなくてどうなってることかと思ってたけどね。
553 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:07:21.05 ID:edW8cWjA0
伊代「それにしてもあなた、本当に随分と遅かったじゃない。何してたの?」
茜子「茜子さんはその期間中あの如何わしさ三分の一スケールに会いました。あの人たちとあっていたのでは?」
あー……そういえば茜子、繰莉ちゃんと話してたっけ……
そもそも誤魔化しても無駄だし、やっぱり話すべきだよね。
智「うん、コミュ関係でちょっと」
茜子「くっ、姑息なスパイなんぞになりおって。何をしにもどってきたのだ!」
伊代「何行ってるのよ、あなたは。……実は、その件で私たちも少しだけ話しがあるのよ」
その件……流れからいうと、コミュの件で?
皆には殆ど関係の無い話だと思ってたけど…………
こより「実は!鳴滝達も、ともセンパイと同じスーパーパワーに目覚めたのですよ!!」
こよりがそういった。
……スーパーパワー。
…………コミュの話だったよね。それのスーパーパワーっていえば……アバター?
アバターに、目覚めた?
こより達が?
………………………。
智「えぇえええええええええええええええええええええええっっっ!!?」
思わず叫んでしまった。
なにそれなにそれなにそれ!?皆もアバターに目覚めたの!?
っていうか皆ってだれ!?
554 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:16:04.89 ID:edW8cWjA0
茜子「もちろん、ここにいる五人です。皆同じコミュですよ」
智「えっ!?何その偶然、出来すぎじゃない!?」
るい「んなこといってもさー、なっちゃったんだもんよ仕方がないしょ」
るいはそういうけど、けど、けど!
おかしいでしょ?いや、僕らのコミュも互いに一人は知り合いいる時点で随分とおかしいんだけど!
全員が知り合いで、しかも同盟ないって!カゴメさんもびっくりだよ!
智「うわぁ……うわぁ」
花鶏「……どうしたの、ともちゃん。もしかして私の下僕に」
智「それはないから」
花鶏「………………」
ものすごい沈黙が来た。
……なんなんだろう、一体。
変わらないと思ったけど、実は皆中身全部入れ替わったとか?
るい「そういえば、トモが来たのにメグムもまだ来てないよね」
こより「そういえばそうですねぇ」
伊代「それなら、あの屋敷にいくって言うのはどうかしら。前の食事のお泊りの時のお礼もまだだしね」
555 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:33:59.84 ID:edW8cWjA0
惠もまだ出てきてないのか……
平然としているように見えたけど、やっぱりショックが大きかったのかな……?
智「そうだね、皆でいこうか」
茜子「茜子さんはあのお屋敷の庭で猫を飼おうと思います。茜子猫ハーレムの完成です」
こより「そりは流石にやめておいたほうがいい気が……」
こよりが茜子のへんてこな夢に苦言を呈す。
るいはぴょん、と大きくジャンプし、大きく元気な声を出す。
るい「それじゃー、メグムん家に行くぞー!」
こより「お〜っ!」
この同盟はやっぱりこの二人がいないと始まらない。
そして伊代がはしゃぎすぎよ、と呆れながらも楽しそうに呟き、花鶏は本当に呆れる。
茜子は猫を連れながら意味不明な事を言って、そして僕が皆をサポートする。
誰が欠けても始まらない。皆がいなくちゃ意味が無い。
そんな場所だから、僕の居場所なんだ。
茜子「……このブルマパーティ。何をしていますか。置いて行かれますよ」
智「え!?あ、うん、そうだね」
茜子「全く……」
茜子はそれだけ呟くと、前を向いて先に行く。
僕もそれの横に並んで、皆の後を追いかけた。
556 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:45:01.36 ID:edW8cWjA0
惠の家にはたまり場からはやはり遠い。
というかどこからでも遠い。
前に行った時も時間かかったしなぁ……
と、そこで思い出す。
智「……そういえばこよりん」
こより「はいはいなんでござんしょ、ともセンパイ」
智「こよりんのお姉ちゃんの怪我って、大丈夫なの?」
こよりはその質問は想定外だったのか、一瞬驚いたような顔をした。
そしてぴょんぴょんと跳ねる。
こより「はいっ!怪我の治りは順調で、完治してからも家に暫くいるっていってくれたんですよ!」
伊代「へぇ……それはよかったじゃない」
こより「本当ですよう!鳴滝はお姉ちゃん大好きっこですから!勿論センパイ方も大好きですよ!」
花鶏「それなら、どうして私と一緒にベッドに入ってくれないの?」
こより「鳴滝のはライクでありラブではありませんし、それに鳴滝にだって選ぶ権利ぐらいはあるッス!もしそうなら……ともセンパイがいいかなぁ」
智「僕!?」
思わぬとことでとばっちりが来た。
元々こよりのお姉ちゃんの話題をふったのは僕だけどね。
557 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:52:32.85 ID:edW8cWjA0
伊代「そうね……私もこの中で誰かっていわれたら、迷わずあなたを選ぶわね」
智「伊代まで!?」
るい「はいはーい!私も智がいいーっ!!」
花鶏「お……おかしい。私、学校では人気なのよ?きゃーきゃーいわれてるのよ!?なのにどうして!?」
花鶏「確かに智はこの中で私の次に可愛いけれど……どうして……!?」
るい「嫌に自信満々なところと、すぐにセクハラをするところ」
るいが花鶏の自問に即答すると、花鶏はるいにすぐさま掴みかかった。
るい「――――――!」
花鶏「――――――!」
伊代「あ、あなた達、ここは公共の場よ!?ちゃんとそういうところでルールを守っていかないと、後々大変なことに……」
こより「伊代センパイ、ズレてるズレてる」
伊代「へ?」
茜子「眼鏡巨乳イケテナイザーは今日も健在ですね」
やっぱりどこかイケテナイ伊代はやっぱり皆からいじられる運命にあるようだった。
558 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:57:27.57 ID:ytfV73zW0
あずまんがかと思った
559 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:08:45.47 ID:edW8cWjA0
るい「はー、いつ見ても大きいなぁ……」
智「本当にね」
目の前には巨大な屋敷が聳え立つ。
多分家、という部類の中ではこの田松市内で一番大きいんじゃないだろうか。
蔦に隠れた表札の下のインターホンを押す。
普通にピンポーン、ではなく、正しくベル、とでもいうような尊厳ある音が鳴り響いた。
伊代「……すごいわね」
こより「本当ですねぇ……こんなインターホンあるんだ」
そうやって珍しい音のインターホンについて暫く話していると、以前見たメイドさん――佐知子さんが出てきた。
僕たちの顔を見て一瞬驚いた顔をしたが、すぐに親しみやすい笑顔に戻る。
佐知子「いらっしゃいませ、皆さん。惠さんに会いにいらしてくださったんですか?」
るい「そうそう!最近顔出さなかったから、こっちから来ようと思ってね!」
伊代「すいません、こんな大人数で」
るいの僕ら勝手の理由と伊代の真実も佐知子さんは笑顔で流した。
佐知子「いいえ。この屋敷は見ての通り広いですから、三人だけでは寂しくて。皆さんが来てくだされば、それはもう賑やかになります」
佐知子「お入りください。惠さんは今出かけていますが、すぐに戻ると思います」
そう笑顔で言いながら扉を開いた佐知子さんの好意に僕らは甘えることにした。
こうして僕らは屋敷への二度目の訪問をすることに成功したのだった。
Chapter
32 小さな変化
33 ???←次ここ
ご飯です。
561 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:41:24.94 ID:6ZusyOpC0
保守
562 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:57:49.48 ID:kTcDYkkW0
ほss
ただいま。
よーし、今日は寝るまで休憩なしで頑張っちゃうぞー
564 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 20:40:23.00 ID:edW8cWjA0
通されたのは前にも来た大広間。
惠用の席をあけて、僕らは席に着く。
佐知子「では紅茶と茶菓子を持ってきます。それまでごゆっくりしていってください」
流石メイドさん。主君のいないところでもさぼらない。
佐知子さんは首を少しだけ傾げて笑い、部屋の奥に姿を消した。
花鶏「それにしても、惠はどこに出かけているのかしら」
伊代「そうね。まああの子の事だからどこにいても不思議じゃないけれど」
同感。惠は茜子と同じく神出鬼没の才能があると思うの。
本当どこから現れても不思議じゃない。
ほら、例えばそのチェストの中とか……
こより「これですか?」
こよりが近づき、何の警戒もなくパカッと開く。
そこには血まみれになって倒れている惠が!
容疑者はるい、花鶏、こより、伊代、茜子、佐知子さん、浜江さんの七人。
そしてその夜第二の犠牲者が……!
探偵和久津智は無事に真犯人を捕まえることができるのか!?
……なーんてことはなく、ただの普通のチェストでした。
伊代「というか出かけたっていってるのに本当にそんなところにいたらびっくりどころじゃないわよ……」
こより「確かにそうですねぇ」
565 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 20:45:51.65 ID:edW8cWjA0
そして、こよりはそれを閉める。
次の瞬間にはそこが内側から開き、惠が何食わぬ顔で現れた!
……なんてこともなく、佐知子さんが人数分の紅茶を入れて入ってくる。
佐知子「お待たせしました」
花鶏「あら、いい香り」
花鶏の言うとおり、高級そうなカップからはいい香りが漂っていた。
……匂いはバラかな?
佐知子「ありがとうございます。特別に取り寄せた紅茶なんですよ」
茜子「没落貴族が知ったような真似を」
花鶏「なんだと茅場!アンタ今日の夕食はセロリだけにしてやるわよ!」
茜子「どうもこんにちは、愛玩奴隷茜子さんです」
花鶏「いらないわよそんなの。アンタを弄るぐらいなら……智ちゃん、こよりちゃんでもいいわね……いっそ両方とか!?」
僕とこよりは隣同士で身を寄せ合って震える。
このままでは……花鶏に食われる!
566 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 20:54:32.99 ID:edW8cWjA0
智「こより!こうなったら威嚇しよう!」
こより「合点です、ともセンパイ!」
智「わうわう!」
こより「わうわう!」
僕とこよりはわんこポーズで花鶏に吠える。
るい「ともとこより、可愛い〜」
伊代「……それって、逆効果なんじゃないの?」
しかしながら、花鶏に僕たちを襲う様子はなく、うつむいてぷるぷると震える。
顔をあげたかと思うと、ぶばっ!と鼻血が吹き出した。
そして椅子ごと、後ろに倒れる。
花鶏「あばばばばばばば……それ、ずる……萌え………………」
こより「目標、沈黙ー!」
佐知子「だ、大丈夫ですか!?」
茜子「気にしないでください。エロペラーのいつもの病気なので」
慌てて駆け寄る佐知子さんをなだめ、テーブルに飛んだ鼻血を拭く用の雑巾をとってきてもらった。
僕らの紅茶に花鶏の鼻血が入らなかったのは不幸中の幸いだろう。
567 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:01:39.92 ID:edW8cWjA0
数分して蘇った花鶏は女の子に有るまじき姿(鼻にティッシュを詰めている)で紅茶をすする。
花鶏「全く……えらい目にあったわ」
るい「ともとこよりをいじめるからだ、べー」
るいが舌を出していうと、花鶏は憤慨する。
それはるいに馬鹿にされたからではなく、るいの言葉の内容にだ。
花鶏「いじめてないわよ!愛でてるのよ!」
こより「どっちだとしてもご遠慮ですけどねー」
智「ねー」
こよりと顔を見合わせ、笑う。
そんな時、部屋のドアがあいて遂に家主が返ってくる。
惠「おや、智、みんな。来ていたのか」
伊代「お邪魔してます」
惠「いいさ、君たちなら構わない。ここを我が家だと思っていつでも来てくれても、ね」
惠はポケットに手をいれたまま、微笑をたたえる。
それなら、いっそ此処を溜まり場その3にしてもいいかもしれない。
568 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:10:03.73 ID:DyqY43cR0
しえんた
569 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:15:54.24 ID:edW8cWjA0
るい「メグムはどこに行ってたの?」
惠「友達に頼まれてレースに出てきたんだ」
智「へー、僕ら以外にもそんなこと頼む人がいるんだ」
伊代「いるわけないでしょ!そもそもあなたも!そうやってふざけないの!
たしかにそうやって冗談をいいあえるだけの信頼関係は素晴らしいものだけれど、それでも親しき仲にも礼儀ありという言葉があるじゃない
だからちゃんと質問で問われたときにはちゃんとした答えで返すべきだと思うのよ。
そもそもあなた達はいつもふざけているからこうやって新しく入ってきた人もふざけるハメになるの!
みんな少しでいいから常識を持ちなさい、わかった!?」
花鶏「え?ごめん聞いてなかったわ。もう一度いってくれる?」
茜子「茜子さんは三行以上の文章を聞いてはいけない呪いなのです」
伊代「あ……あなた達は…………っ!!」
やっぱり、どこまで言っても伊代は伊代だ。
そんな僕たちの様子を見て、惠は笑う。
惠「あはは、やっぱり面白いね君たちは」
伊代「い、いやそれほどでも……」
惠「いやいや、面白いよ。やっぱり君らがいると屋敷が賑やかになる。そうは思わないかい、佐知子」
佐知子「はい、そうですね惠さん。この屋敷が活気にあふれることは素晴らしいことです」
570 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:36:12.60 ID:edW8cWjA0
惠の言葉に佐知子さんも頷く。
よかった、いきなりでお呼ばれじゃない、招かれざる客かと思ったけれどそう言ってもらえると嬉しい。
こより「……あ、そういえば鳴滝、面白いカードゲーム持ってきたんですよう!」
茜子「そんなフリで出てきたカードがトランプなら……明日金星が爆発する!」
智「何故に金星」
茜子の思考回路は理解不能だった。
伊代「それで、なんなの?」
こより「はい!先ほど言っていた、お姉ちゃんに貰った、会社でつくっているカードらしくて……『USO』と言いますです」
『USO』。
トランプにしても何にしても、カードゲームというのは基本的に心理の読み合い、駆け引きが重要視される。
そんな意味を含んでいるゲームなら、シンプルだがナイスネーミングとも言えるだろう。
るい「へー、どんなのどんなの?」
こより「ちょっと待ってください、今読みますから」
ルールも至ってシンプル。
配られたカードを順番に一枚ずつ出していき、一番早くカードがなくなった人の勝利だ。
カードの色は赤青緑黄の四種類、それぞれ『0〜9』と後述の五種類の特別なカードがある。さらにそれぞれに中世の紋章めいた絵柄が描かれている。
場と色、または数字に即したカードしか出すことはできない。なかったら山札からカードを引く。
一位は勿論カードがなくなった人で、二位以下は残っている手札の点数で決まる。
また、特別なカードとして次の相手に二枚引かせる『女王の陰謀』、次の相手を休ませる『落とし穴』、順番を逆にする『回り道』。
場の色を変える『魔女』、そして、好きな色にした上に次の人に四枚引かせる『賢者』がある。
571 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:37:12.25 ID:dAQER+Ze0
USOってFDの冒頭の奴だっけ?
572 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:45:21.48 ID:edW8cWjA0
>>571 それで合ってますです。
茜子「こういうゲームは茜子さんにうってつけです。うーそつきはどこだぁー」
茜子は妙なポーズでゆらゆらと揺れる。
確かに茜子に圧倒的有利なゲーム。
智「でも、面白そうだね。少しやってみない?」
るい「るいねーさんは賛成!勝って勝って勝ちまくるぞぉっ!」
伊代「たまにはこういうゲームもいいかもね」
おぉ、一番負けそうな正直者の二人も参加表明を示した。
花鶏「……やるからには私は勝ちに行くわよ?」
惠「いいね、皆でやると楽しそうだ。佐知子もやらないかい?」
佐知子「いえ、私はここで見ていますのでお構い無く」
そうして、僕ら七人の参加表明がされた。
そしてこよりが箱から全てのカードをとりだし、ディーラー顔負けのパーフェクトシャッフルを行う。
細い指先で、カードがまるで生きているようにうねる。
智「すごいね、こより。どこで覚えたの?」
こより「てへへ……実はこんなこともあろうかと、ネットの動画で勉強したのです」
573 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:54:45.82 ID:edW8cWjA0
こよりの能力は『運動の再現』だ。
一度見たものは自分のモノのようにすることができる。ラーニング能力のようなものだ。
パッパッパッと全員の前にカードが配られて、試しの第一ゲームが開始になる。
さて……一番の嘘つきは、誰だろう?
……やはり奥が深く、面白いゲームだった。
素直な人が馬鹿をみる。
例えばるいとか、例えば伊代とか。
こよりんも結構素直なほうだけれど……友達とでも似たようなゲームをやったことがあるのか、そこそこに強い。
そして一位をとりあうのは花鶏と茜子、そして惠だ。
花鶏は基本的に頭がよく、茜子と惠はポーカーフェイスで騙し合いに強い。
僕?僕は一位にはならないけれどビリにもならない……といった感じかな。
るい「うがーっ、またまけた〜っ!!」
智「るいは正直でわかりやすいからね」
こより「なんとなく次に何が来るのかわかっちゃうんですよね」
こよりがたはは、と笑う。
テーブルに崩れたるいがガバッ、と起き上がり全員に懇願する。
るい「このまま負けたままでいられるかーっ!もう一ゲーム、お願い!」
花鶏「ふん、私は構わないわ。何度かかってきても返り討ちにしてあげる」
智「じゃあ、最後にもう一ゲームだね……あれ?」
下腹部に、何やら違和感。
574 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:59:45.96 ID:edW8cWjA0
……そういえば、結構時間たってるなぁ。
僕は少し力を入れ、椅子を揺らして立ち上がる。
智「その前に、ちょっとお花詰みに行ってくるよ」
花鶏「なら私は智のお花をゲブッ」
伊代「……下ネタ禁止」
グッジョブ、伊代。
佐知子「案内しますよ」
智「よろしくお願いします」
そうして部屋を出ようとしたところを、惠も立ち上がった。
惠「僕もいこう。ここのトイレは複数あってね。別に問題はないだろう?」
智「うん。じゃあ惠も一緒にいこう」
こより「おはやいお帰りをー」
こよりの声に見送られて、僕らは部屋を出た。
575 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:06:13.72 ID:edW8cWjA0
佐知子さんが先頭を歩き、僕と惠がそれに続く。
惠は僕にこっそりと話しかけてきた。
惠「前に来た時もこんなだったけれど、いつもこんな感じなのかい?」
智「ううん、今日はいつもより盛り上がってるよ。その理由もわかってるけどね」
惠「聞いてもいいかな?」
智「惠がいるから、だよ」
その言葉に惠は面食らった。
しかしすぐにいつものクールな表情になる。
惠「……それはありがたい。僕も仲間だと認めてもらえたということだろう?」
智「それは当然だよ。僕らは同じ痣で繋がっている、類で友なんだからさ」
惠「はは……それは嬉し――――ゴプッッ!?」
笑いあいながら話していると突然惠が血を吐いて、膝をついた。
先程まで全くだった顔色が、血の気が引いて真っ青に染まっている。
智「惠!?」
佐知子「惠さん!!」
佐知子さんはすぐに惠の肩を抱いた。
そして惠の様子を窺う。
576 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:12:08.26 ID:edW8cWjA0
惠「そんな――バカな。周期には、まだ随分速――ッッ!」
智「惠!喋らないで!」
血が!血が!!
どうして!?どうしてこうなったの!?
ついさっきまで、僕と惠は皆と一緒にカードゲームを楽しんでいたはずなのに!!
惠「心配しなくても……大丈夫だ、智。すぐに、収まる……」
智「大丈夫そうに見えないよ!」
佐知子「惠さん、掴まってください!お部屋までお運びします!」
佐知子さんの肩を借りて、立ち上がる惠。
やはり顔面蒼白だ。
そんな中でも、口調は変わらない。
惠「はは……参ったな……智、残念ながら最後のゲームには参加できそうにない……伝えておいてくれないか?」
惠はそれだけ言うと、立ち去る。
その場に残された僕は、ただ血を跡を見下ろして立ち尽くすだけだった。
智「一体……何がどうなって…………」
その血の跡が――まるで、子供の頃に追われた呪いの跡のように思えた。
577 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:28:24.81 ID:edW8cWjA0
惠は、苦しんでいた。
佐知子さんと浜江さんがいうには大丈夫で、明日になったら元通りになるという。
しかし、一日二日でどうにかなるような血の量には思えなかった。
だから伊代もそれを救急車を予防としたが――止められた。
病院は駄目だと。必要ないと。
僕は、それで察した。
――――呪い。
本当に、どこからどこまでも――僕らは呪いから、逃げられない。
皆で広間に戻り、話し合う。
智「……周期とか言ってた。惠はきっと何回もあのレベルの発作か何かで苦しんでると思う」
花鶏「けれど、何らかの呪いのせいで病院に行くことができない、か……」
伊代「あのままじゃ……あの子は死んじゃうかもしれないわ。今日は大丈夫でも、また次かもしれないし、そのまた次かもしれない……」
るい「……こうしちゃ、いられない。惠を助ける方法を、呪いを解く方法を探そうよ!」
こより「ですです!鳴滝も協力します!」
茜子「前に来たときに物色したときに書斎がありました。先ずはそこから当たってみましょう」
僕らは茜子の言うとおりに書斎へと向かった。
そこには、呪いについて沢山の書研があった。
まるで――誰かが呪いの事について集めたかのように。
ID:edW8cWjA0
しね
しえんしえん
580 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:41:00.66 ID:edW8cWjA0
手当たり次第に本を読む。
読む。
読む――――
確かに、ここには今まで読んだどの本よりも僕らの呪いについて詳しい事が記されていた。
けれど。
そんなことは今まで僕らが知っていたことの再確認でしかなくて。
惠を助けるための発見には――至らなかった。
九時を告げるチャイムがなった。
全力で探し続けて疲労した僕らは、ようやく広間に戻る。
そこには佐知子さんが若干つらそうな笑みを浮かべて、立っていた。
佐知子「今日は夕食を食べていってください」
僕らはその言葉をありがたく頂戴して、浜江さんの作った夕食を食べた。
おいしい、おいしいはずなのに……惠が心配で、全く喉を通らなかった…………
そんなしんみりとした夕食が終わった後、るいは決意を表明するように言う。
るい「……今日はここに泊まるつもりでやる」
こより「鳴滝も……ご一緒します。惠センパイが苦しんでるのに、帰って寝ることなんてできません」
佐知子「皆さん……惠さんのことを心配してくれてありがとうございます」
佐知子さんが頭をさげる。
この人も大丈夫とは言っていても、心配で仕方が無いのだろう。
――呪いのせいで。
呪いのせいで、惠は病院にいくことが……できないのだから。
581 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:48:01.99 ID:edW8cWjA0
皆がそうやって泊まろうと言っている中――花鶏は立ち上がる。
花鶏「すまないけれど、私は一度帰るわ。ちょっと用事があるの」
その言葉に、同盟一仲間想いのるいは食ってかかった。
しかし感情論に任せた理論は冷静な花鶏の前ではすぐに破綻する。
だけれど……花鶏らしくない、と思った。
花鶏は一見クールで冷静に考えるように見えても、るいに負けないぐらいの仲間思いでもあるのだから。
そこで、閃く。
花鶏はなにか、ヒントになるようなものを知っているのではないか、と。
それを考えて――記憶にあった、一つの言葉が耳に引っかかった。
『前に聞いた。お前達の呪いは女性にしかないのだと偉そうな奴が言っていた』
これは誰の言葉だっけ。
これは誰の言葉だっけ。
これは誰の言葉だっけ――
そうだ、カゴメだ。
風呂で僕の正体を見て、勘違いして去った、比奈織カゴメだ。
そうと分かれば、こうしてはいられない。
今から駅に行ったら、一つぐらいなら電車はあるだろう。
582 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:52:53.15 ID:edW8cWjA0
智「……ごめん、僕も用事があるんだ」
るい「智も!?なんで、どうして!惠が苦しんでるんだよ!?」
花鶏に言葉で捩じ伏せられたるいは、泣きながら僕に叫ぶ。
それを伊代がなだめた。
伊代「落ち着いて……あなたも、今日ぐらいは……いちゃいけないの?」
伊代の言うことはもっともだ。
しかしながら、こちらもこちらで時間がない。
智「……ごめん、だけど――心当たりがあるんだ」
とても、とても僅かな可能性だけれど。
それに縋らない手はないのだ。
智「だから、行くよ。明日中にはなるべく帰れるようにする」
茜子「……気をつけて、くださいね」
珍しい茜子の心配の言葉だけが、僕を見送った。
583 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:04:17.93 ID:edW8cWjA0
僕は一人で夜の街を駆ける。
商店街には飲み会に出ていた大人たちが多くいた。
僕らはそれらの間を全てすり抜けて、駅まで全力疾走する。
――駅の電車は、止まっていた。
なんだかよくわからない青い巨人が、新高倉駅を急襲したらしい。
青い巨人――アバター。
なんだ、それは。
ふざけているのか。
どこの馬鹿だ、そんなことをしたのは。
こんなに急いでいる時に――――――!
続いて、僕は急いで家に帰る。
パソコンを開いて、コミュネットを開く。
するとすぐに情報が出てきた。
【速報】高速の怪物【駅破壊】
すぐさまそれをクリックした。
情報は、簡単なものだ。
自分は知らなかったが、高倉市の高速道路で青い巨人が暴れたらしい。
その怪物が駅を破壊して回ったらしい。
そして噂ではカエサル――これは知らないけれど――バビロンが仕留めた、という。
……電話して詳しく聞いてみたほうが早いかな。
584 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:09:55.65 ID:edW8cWjA0
電話する。
一、二、三。それから、出た。
智「もしもし!」
瑞和「……智。どうしたんだ」
瑞和は不機嫌そうだった。
しかしそんなことを気にしている余裕はない。
智「カゴメさんいる!?すぐに聞きたいことがあるの!」
瑞和「……少し待て」
小さく、カゴメ、お前当てだという言葉が聞こえた。
どうやらすぐそばにいたらしい。
バシン、という音がして、底冷えするような声がした。
カゴメ「……私だ」
智「あ、えっと……」
カゴメ「さっさと要件をいえ。でなければ次あったときにマクベスごと破壊する」
智「怖いよ!!……前に風呂場で言っていた……『呪いのことを言っていた偉そうな人』に合わせてほしいんだ」
そう、カゴメさん自身は大した情報を持っていない。
けれど、呪いは女の子にしか宿らない、とそういった偉そうな人なら、知っているかもしれないのだ。
僕らのこと、呪いを解く事について。
585 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:18:13.47 ID:awBmfOsQ0
支援
586 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:18:14.63 ID:edW8cWjA0
僅かに長い、沈黙があった。
カゴメさんはカゴメさんなりに、いろいろと考えているのだろう。
カゴメ「……今すぐに高倉市にこい。十二時までだ。そうした会わせてやる」
智「ま、まって!電車止まってるんだ、どうにか出来ない?」
カゴメ「和久津、お前のアバターは飾りか?」
つまりは、そういうことか。
乗ってこい、と。
カゴメ「――待っている」
それだけで、切れた。
……自転車で飛ばしても、間に合わないこともない、かな……
さて、どうする?
>>586 1 アバターで行く
2 自転車で行く
587 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:19:01.36 ID:edW8cWjA0
>>585 ちょwwwおまwwww
一秒差とかwwww
>>588 1 アバターで行く
2 自転車で行く
588 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:24:26.35 ID:dAQER+Ze0
あえての2
589 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:36:09.04 ID:+kmRBH2L0
ふむ・・・バッドエンドでもまゆまゆが見られるからどっちでも俺得
まゆまゆの歌聴きながら戦うシーンは好きだったなぁ
590 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:42:10.00 ID:edW8cWjA0
→自転車で行く
……アバターでいくとなんだか『嫌な予感』がする。
僕の勘は意外と当たる。
それにアバターだと誰かに見られるかもしれない。
さっきコミュネットを見ていたら荒れるに荒れていた。いつ勢力戦争が起こってもおかしくない雰囲気らしい。
だったら――態々そんなことをする必要性などない。
間に合うんだったら、なんだって問題はないはずだ。
なら自転車でいこう。
少し前に花鶏の家の倉庫を調べていたときに見つけたのをもらった。
綺麗にして置いておいたそれはまだアパートの入口に置いてあるはずだ。盗まれていない限り。
そんな杞憂も心配なく、ちゃんと自転車はあった。
空気も十二分に入っている。
――さて、いこう。
智「よっ……と」
スカートで扱ぐのはアレだが、今は着替える時間すらも惜しい。
早くいかなければ。
591 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:54:13.21 ID:edW8cWjA0
一時間後、僕は無事に高倉市に着くことができた。
全力疾走で来たのだ、とてもまともに息ができない。
しかし、それでも―― 一応、電話をしなければ。
息切れ切れで電話をしたら、どうやら迎えに来てくれるらしい。
電話をして、数分で迎えが来た。
黒い魔女と、そのパートナーが。
とりあえず今日は遅いとかで、再び瑞和の家に泊まることになった。
……ごめん、皆。急ぐとか言っておいて。
そこへの帰り道、自転車を押しながらコミュネットで見た情報に関して聞く。
智「……そういえば、高速の怪物……だっけ。バビロンで倒したんだって?」
妙な沈黙が降りた。
どうやら僕は、何かの地雷をふんだらしい。
瑞和「……あいつを、ノーマッドを倒したのは俺でも王様でもない。……スティングだ」
智「スティング?」
――いつか、どこかで聞いたことが或るような気がした。
瑞和「知らないか?コミュネットの伝説。出会ったら人の届かない領域であらゆるものを引き裂く唯一無二の刃」
智「……ううん、しらない」
瑞和「……そっか」
瑞和はそこでスティングの、高速の怪物の会話を打ち切る。
592 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:04:21.04 ID:FAtYKz3K0
瑞和の家に着くと、誰もいなかった。
あの時にいた、紅緒もまゆまゆも。
誰もいなくて――こういうのもおかしいけれど、閑古鳥が鳴いていた。
そのことを聞こうとして、やめた。
瑞和は何やらしんみりとした表情をしていたから。
カゴメ「……会わせてやる、とは言ったが実際に会えるのかどうかはわからん。あの時は二つの事象が混じり合った瞬間だったからアレはいただけだからな」
智「可能性だけでもいい。とにかく、会わせてほしい」
カゴメ「そうか」
短くそういい、僕は一先ずソファーに倒れこんだ。
随分と、疲れているようだ。身体がもう動かない。
堕ちていく意識の中、瑞和とカゴメさんの声が、とても遠くに聞こえた。
……惠は、大丈夫だろうか。
そう思ったら、何故か大丈夫だと言う答えが返ってきたような気がした。
…………変なの。
593 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:11:44.31 ID:FAtYKz3K0
朝起きて。ソファーで寝入ったはずなのに、僕はベッドで寝ていた。
夢をみた……気がする。
僕が僕を見ていた。そして、何かを呟いていた。
今日の予定?明日の予定?それとも未来の話?
……覚えていないのだから、どうしようもないけれど。
見覚えのない部屋を出て居間に入ると、ジュージューなる音と共にいい香りが漂ってきた。
朝御飯だ。
カゴメさんが作っている。
カゴメ「……起きたか」
智「うん……昨日はありがとう」
カゴメ「いや、運んだのは暁人だ。偶然に股間に手をついてしまい、男だと知った」
智「嘘っ!?」
カゴメ「嘘だ」
……朝から、心臓に悪い。
ちらりとだけキッチンを覗く。赤い缶詰と、パスタ、マカロニのパッケージが見えた。
どうやら朝はトマトパスタのようだった。
594 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:13:05.12 ID:h80WdfED0
呼んでいる声さあ目を覚まして くれないと結婚して貰いますよ
,、ァ
,、 '";ィ'
________ /::::::/l:l
─- 、::::;;;;;;;;;`゙゙''‐ 、 __,,,,......,,,,_/:::::::::/: !|
. : : : : : : `゙'ヽ、:::゙ヾ´::::::::::::::::::::::`゙゙゙'''‐'、. l|
、、 . : : : : : : : : r'":::::::::::::::::::::::::,r':ぃ::::ヽ::::::::ヽ! ,、- 、
.ヽ:゙ヽ; : : : : : :ノ:::::::::::::::::::::;;、-、、゙::: rー-:'、 / }¬、
. \::゙、: : : :./::::::::::::::;、-''":::::::::: ,...,:::,::., :::':、 _,,/,, ,、.,/ }
ヽ:ヽ、 /::::::::::::::::::::::::: _ `゙''‐''" __,,',,,,___ /~ ヾ::::ツ,、-/
`ヽ、:::::::::;;;、、--‐‐'''''',,iニ- _| 、-l、,},,  ̄""'''¬-, ' ''‐-、 .,ノ'゙,i';;;;ツ
_,,,、-‐l'''"´:::::::' ,、-'" ,.X,_,,、-v'"''゙''yr-ヽ / ゙゙'ヽ、, ,.' j゙,,, ´ 7
,、-''" .l:::::::::::;、-''" ,.-' ゙、""ヾ'r-;;:l 冫、 ヽ、 / __,,.ノ:::::ヽ. /
l;、-'゙: ,/ ゞ=‐'"~゙゙') ./. \ / '''"/::::;:::;r-''‐ヽ
,、‐゙ ヽ:::::..,.r'゙ ,,. ,r/ ./ ヽ. ,' '、ノ''" ノ
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' //::::::::: {. V /
/ ./::::::::::::: ', / /
595 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:14:06.38 ID:sUS/EGNv0
カゴメさんやけに智ちんに優しいな支援
596 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:21:40.54 ID:FAtYKz3K0
瑞和も起こして食事を取る。
大雑把な味付けだったけれど、美味しかった。
結構前にカゴメさんは瑞和の幼馴染だと言っていたような気がする。
料理スキル持ちの幼馴染。悪く無いだろう。
暁人「本当にな」
呟いていたのか、瑞和が笑いながらそう答えてくれた。
カゴメさんの頬が心なしか、少しだけ赤くなっていたような気がした。
暁人「今日は俺も用事あるから、帰ったらいないかもしれない」
カゴメ「昨日言っていたコミュ狩り、か?」
暁人「ああ。もう昨日のうちから呼び出しておいたんだ。じゃあなカゴメ。絶対にもどってこいよ」
カゴメ「ふん、暁人が私を心配するとは十年早い」
暁人「早くねーだろ。なにせ俺達は、『パートナー』なんだから」
……なんだろう、前に来た時より二人の仲が良くなっているようにおもえる。
人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ、だから態々割りこむような無粋な真似はしないけれど。
瑞和が出るのを見送ってから、カゴメさんはただ言う。
カゴメ「行くぞ」
智「うん。よろしく」
そうして僕らは、カゴメさんがいう『偉そうな人』のところへと向かった。
597 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:35:14.55 ID:FAtYKz3K0
――場所は、ただの路地裏だった。
カゴメ「……喜べ和久津。どうやら当たりだ」
智「……あれが?」
入り口に黒服サングラスの如何にもな人が二人いた。
カゴメがそこを真っ直ぐに通ろうとする。
――が、やはりというかなんというか、行く手を遮った。
「……比奈織さま。ここから先は立ち入り禁止です」
カゴメ「邪魔だ。去ね」
話すら取り合わず、短く告げる。
実際、カゴメさんが本気を出せばこんな人たちなど軽く一捻りだろう。
相手もそれがわかってる。だから力で排除しようとはせず、どうにかして話だけですまないかと思っている。
「しかし……」
ゴキゴキ、とカゴメさんの指の骨が鳴る。
それは威嚇だ。どかないとやるぞ、という。
身を引くが、しかしどかない。根っからの仕事人だ。
故に、やられる。
――そう思ったが……その前に、また違う声が後ろからした。
「やめたまえ、『人類最大』。彼らにも代わりはいるが、今は換えが面倒なことになのだよ」
そこにいたのは、オールバックにロングの髪というおかしな風貌のおじさん、とでも言うべき男。
598 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:45:56.47 ID:FAtYKz3K0
というか……人類最大?なんのことだろう?
そのおじさんはコツコツと足音を鳴らしながら僕たちに近づく。
「君もだ。仕事熱心なのはいいが、無茶なことはしないほうがいい。私という天才が言っているんだ、ちゃんと聞き入れるべきではないかね?」
「ぷ、プロフェッサー架条……しかし」
プロフェッサー……教授?の架条と呼ばれた男は顎を抑えながら言う。
架条「しかしも何も、『人類最大』は名のとおり最強アバター使いだ。そこの彼女もね。君たちの死には時間稼ぎもなく、特に意味はないのだよ。それならばもっと命を大切にしたまえ」
彼の言葉に、黒服は渋々といった様子で引き下がる。
そこをコツコツとまた足音を鳴らして近づき、僕らの目の前で止まった。
架条「初めまして、架条植人だ。プロフェッサーと呼んでくれたまえ」
智「は、はぁ……」
……怪しいおじさんだ。
プロフェッサーはなんとなく嫌なので、架条さんと呼ぶことにする。
架条「さぁ行き給え『人類最大』。天才という私には一刻の時間もないのだが君がそういうのならば私は従うしかないのだからね」
カゴメ「そうか。なら先に行かせてもらおう」
カゴメさんは架条さんの言葉にに対して何の躊躇いもなく横を通り過ぎる。
僕も多少は動揺したけれど、此処を見逃せばどうしようもない。大人しくカゴメさんの後をおった。
599 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:00:09.05 ID:FAtYKz3K0
数カ所の角を曲がって行き着いた場所は、少し大きな広場のようになっていた。
そこに立つのは、茶色のスーツを来た白髪の、これまたオールバックの男性。
年齢は初老、といったところだろうか。
その後ろにだれかいるのか、黒い帽子がみえていた。
「君は……確か、プロフェッサー架条の調査対象ではないか」
調査……対象?
さっきの人類最大といい……何なのこの人達は。
カゴメ「……あの時はまともに挨拶をしなかったな。比奈織カゴメだ。覚えておくといい」
「比奈織君か。覚えておこう。私の事は――」
カゴメ「『常務』、と呼べばいいのだろう?」
常務「その通りだ」
常務、と呼ばれた初老の男性は先回りしたカゴメさんに何の動揺もなく即答する。
その様子にカゴメはふん、と鼻を鳴らした。
常務「それで比奈織君。君は私に何か用事なのかね?」
カゴメ「用事があるのは私じゃない。こっちの女だ」
そこにきて、ようやくこの『常務』とやらがカゴメさんの言っていた偉そうな相手だ、という事に至る。
カゴメさんが避けて、僕が一歩前に出た。
600 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:08:22.62 ID:FAtYKz3K0
常務は僕のことを感情の篭らない眼でジッと凝視した。
……この人が、僕らの呪いのことを知っている?
カゴメさんを調査対象としか認識しない人が?
……どれだけ嫌だとしても、聞かなければいけない……か。
僕は息を吸って、吐き出す。
智「……どうも。和久津智です。実は僕たちの呪いのことを知ってると聞いて――――」
「おい待て!今なんて言った……和久津、だと……!?」
僕の言葉を遮るのは常務の後ろ――黒い帽子をかぶった誰か。
その誰かは僕の姿を見ようと一歩横にずれて。
そして、僕も彼女を見る。
そこには、どうしてここに!と思わざるを得ないような彼女がいた。
智「尹……央輝……!?」
央輝「お前……やはり和久津か…………!」
どうして、どうして尹央輝がここに……!?
パルクールレースで戦った、央輝がどうして!
常務「央輝……知り合いか?」
央輝「は、はい、お義父様。以前に少しレースで勝負したことがありまして」
常務「仕事では常務と呼べと言ったはずだ」
央輝「は、はい!申し訳ありません常務!」
601 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:18:50.01 ID:5VS3jCZc0
ト、
':, '「::::\┐___,,.. -‐ ''"´ ̄ ̄`"'' ー 、., /
':, r-‐'へ::::::::!_'´ __,,,,......,,,,,__ `ヽ. / ゆ ゆ
':, >:、:;::::::>''"´ `"'' ヽ. ,' ん ん
':,└─ァ''"' / ,'´ ヽ. ':, i. .ゆ ゆ
. \ ,' / / ,' ! ; ', ヽ ':, | ん ん
\ / ,' ,'! /! ! ; /! i .!. .!. ! !
∠__,! / !メ、」_,,./| /! / ! ハ! | |. |.
`"'' 、..,,_ ! / ,ァ7´, `iヽ| / |ヽ、」ニイ、 | .| |. |.
i,/レイ i┘ i. レ' 'ア´!_」 ハヽ| | | ∠
─-- / ! ゝ- ' ! ! ! | | `ヽ.
/ 7/l/l/ 、 `'ー‐ '_ノ! | i | ` ' ー---
,. -──-'、 ,人 `i`ァー-- 、 /l/l/l | !. | |
ヽ.ソ `: 、. レ' ', u ,/| | ! |
ゆ ゆ i /ーナ= 、 '、 ノ ,.イ,カ ! | |
ん ん .|ヘ./|/レへ`>-r =ニi´、.,_ | i ハ ! ,'
ゆ ゆ ! _,.イ´ヽ.7 / /:::| /レ' レ'レ'
ん | /7:::::! ○O'´ /::::::レ'ヽ. ___
! ! | / /:::::::レ'/ムヽ. /::::::::/ ヽ. ,. '"´ `ヽ.
! ./ ,':::::::::::!/ ハ:::::`´:::::::::::;' ', / i
602 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:22:51.24 ID:FAtYKz3K0
……なんなんだ、この常務という人は……
あの央輝がこんなに腰を低くしている……信じられない。
それに……お義父様だって!?
色々な情報が一気に入ってきて混乱している僕に、常務は先を促す。
常務「……和久津智君。娘が世話になったようだ。それで、君は何のようで私を尋ねた?」
智「……アナタが、僕らの呪いの情報を持っていると聞きまして」
央輝「待て……僕らの、だと……?あの時お前の痣を見たのは見間違えじゃなかったにしても、お前の他にもいるのか!?」
常務「尹央輝、口を慎め。今彼女は私と話している」
グッ、と央輝は歯をかみしめ、僕を睨みつけるように見る。
常務はさて、と口上を置いた。
常務「君の言う呪いがこの尹央輝と同じものならば……私は確かに、その情報の蒐集、記録、そして保存をしている」
智「……同じかどうかは知りませんけど。それを教えてくれませんか?」
常務「残念だが、我々は今言ったとおり、その情報を蒐集、記録、保存をするだけだ。もし君の呪いが尹央輝と同じ物だとするならば、我々は君に、君らに手を貸すことはない」
智「そん――っ」
そんな、バカな。
折角情報を掴んだと思ったのに。
また――離れていく。
603 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:34:02.74 ID:FAtYKz3K0
常務「我々は情報を収集し、それの結末を見届け、保存し、そして忘れる。それだけだ」
常務「我々は君らに手を貸すこともないし、行動を阻害することもない。ただ君らが行ったことを集めるだけだ」
常務が僕を見る目は、まるで路傍の石を見るような目だ。
そしてその口ぶりは、淡々と説明するためだけのものだ。
きっと僕から眼を話したらこの人は――十秒も経たずに、僕のことを忘れるだろう。
常務「……尹央輝。君は引き続き任務に従事を」
央輝「……はい、常務」
智「……央輝の、任務って…………」
僕が呟いた独り言が聞こえたのか、常務はただ淡々と答える。
常務「尹央輝自身が持っている呪いについて、その手に入れた情報、或いは経過を逐一報告することだ」
常務「呪いについての情報に限り、尹央輝の情報は即ち私の情報でもあり、逆もまた然り」
常務「そして我々は君たちには一切関与しないが、尹央輝は我々の一員であり、観察対象だ。彼女が手を貸すことは禁止はされていない。彼女に聞きたくば聞くがいい」
常務「……残念ながらこれ以上君たちに時間を割いている余裕はない。プロフェッサー架条を呼んできてくれ、比奈織カゴメ君」
そんな常務の言葉に、カゴメさんは苛立ったように眼を細めて何も答えずに去る。
僕もこれ以上は何も得られないと判断し、カゴメさんの後を追った。
604 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:39:26.18 ID:FAtYKz3K0
央輝「おいお前!ちょっとまっ……常務、失礼します。おい待て!!」
央輝が常務に挨拶を済ませてから全力で駆けてくる。
僕は今は酷くそれに答える気になれず、ただ路地裏を抜けて日の当たる場所に行くことだけに集中した。
戻ると、架条が入ったときのままの格好で立っていた。
にやにやとしたような表情がうざったい。
架条「天才の時間をわざわざ減らすほどの、有意義な対話はできたかね?」
智「…………」
僕はただ彼を一瞥して、足を全く止めないカゴメさんの後を追いかける。
……後ろにも黒一色の女の子をつれて。
605 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:43:31.01 ID:FAtYKz3K0
Chapter
32 小さな変化
33 大貫邸での一幕
34 惠のために
→ ???
35 『機関』
36 ???←次ここ
今日は終了です。ちょうねむい……
明日でおわると……いいなぁ……
606 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:59:14.06 ID:mSkiM0n80
乙
ゆんゆん!!!!11ゆんゆん!!!!!!!!!!
608 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 04:54:28.59 ID:fddaVvNV0
ほ
609 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 06:35:25.82 ID:ESKt/ItQ0
ほっしゅ
610 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 07:47:33.95 ID:cEe5LiQk0
ほしゅ
ともちんともちん
ほしゅほしゅ
613 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 10:39:38.52 ID:k48cAjlw0
ほしゅ
614 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 10:44:33.34 ID:sfNGU3Bk0
規制くらった……多分続行不可
まだ需要あるなら製作速報に行くけど、どうする?
615 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 10:56:33.37 ID:k72kpG+50
ぜひともやってくれ
616 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 11:51:25.81 ID:OpNSgSf70
617 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 11:51:58.68 ID:pIebDMPM0
ほしゅ
618 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: