36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:43:23.68 ID:B47P0TkZ0
sien
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:45:14.33 ID:xkD7i7nK0
('A`)(俺だったら気が狂うかもな)
ドクオは思う。
内藤は普通に生活し、仕事をして生きている。
案外、内藤はタフなのかもしれない。
('A`)「いつか会える時が来るといいね」
ξ゚听)ξ「……うん」
J( 'ー`)し「そうねぇ」
ドクオが外を見ると、相変わらず静かな光景が広がっていた。
さんさんと降り注ぐ日差し、風にそよぐ蜜柑畑。
まるで、光と風しかそこにないかのような静寂が内藤家の庭を覆っている。
J( 'ー`)し「それにしてもいいお天気ねぇ」
ξ--)ξ「ほんとに」
……そこで音をたてているのは、死者だけだった。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:48:05.29 ID:xkD7i7nK0
―――――――――
―――――
――
…
('A`)「じゃあ、そろそろ俺帰ります」
J( 'ー`)し「もう一晩、って訳にも行かないか。
もう社会人だものね……じゃあ気をつけて」
ξ゚听)ξ「あれ?七輪、昨日から出しっぱだけどいいの?」
(;'A`)「あっやべ、忘れてた。
ごめんなさい今かたします」
帰り際、ツンが出しっ放しになっている七輪を見つけてくれた。
危うく忘れていくところだ。
ドクオは慌てて庭に出て、網も洗わずに助手席の上に放りだした。
('A`)「ふーっあぶないあぶない」
これがあるといろいろ重宝する。磯で取った貝をそのまま焼いてみたり、
冬に釣りに出かけたときには暖を取ったり、ドクオは多彩な用途にこの七輪を使っている。
誰も載せる人がいないので、いつも助手席がこの七輪の定位置だ。
__
{ー_-‐.'} 「……」
('A`)(エンジンかけとくか)
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:50:36.44 ID:jvqFb94qO
支援
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:51:29.67 ID:xkD7i7nK0
ドアのポケットから鍵を取り出すとエンジンを掛ける。
こんな田舎だと、盗難の心配はほぼ無い。
いや、全くないとさえ言っていい。
次にダッシュボードの携帯のことを思い出したドクオは、
そこから携帯を取り出すとろくすっぽ確認もせずにポケットに突っ込んだ。
どうせ、スパムか広告メールくらいしか来てないからだ。
('A`)「うー」
しばらくエンジンが暖まるまで暫く待つ。
田舎ベンツといえど粗略な扱いはしない。
ドクオは変なところで真面目な男だった。
('A`)(あ、そういやロマネスクさんに挨拶すんの忘れてたな。
でもまだ寝てたりして……まあやめとこう)
十分に時間をかけてから、車を出した。
ここから街に出るまでかなり急な下り坂が続く。
二日酔いの余韻と満腹感から来る眠気に苛まれながらも、ドクオは気を引き締める。
そしてすぐさま、庭から出たところの物陰から飛び出してきた何かをはねた。
((;゚A゚))「うひぇえええ!」キキーッ!
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:52:44.89 ID:B47P0TkZ0
シエナ
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:54:24.87 ID:xkD7i7nK0
なにか白いものが飛び出してきたとしか分からなかったドクオは、ブレーキを思い切り踏み込む。
鹿にしては小さい、猪にしては大きく白いその何か。
そのくらいのものにぶつかればえらいことになるが、なぜだか衝撃はこない。
せいぜい七輪が急ブレーキのせいでひっくり返ったくらいだ。
ζ(゚ー゚*ζ
混乱しているドクオの目が次に捉えたのは、
車の前から悠然と歩き去っていく女の子の後ろ姿だった。
(;'A`)「なんだよ…」
間違いなくさっき外に出て行くのを見た女の子、デレだった。
彼女が無事なのにほっと安堵すると同時に、怒りが湧いてくる。
('A`)「しつけがなってねえな、ったく」
死んでいようが死んでいまいが関係ない。
叱ってやる、子供は地域で育てるものだ。
と、ドクオは怒りに任せてお題目を心のなかで振り回す。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:56:36.74 ID:xkD7i7nK0
('A`)「ねえ!内藤デレちゃん!」
ζ(゚ー゚*ζ
(#'A`)「すみませーん、デレさん?
あぶないでしょ!?」
ζ(゚ー゚*ζ
('A`)…ムシカヨコノヤロウ
デレはドクオのことがみえていないような様子で、
山の急な斜面に向かって歩いて行く。
よくみると彼女はうっすら笑っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「〜♪」
(;'A`)「おいおい…」
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:57:32.44 ID:B47P0TkZ0
しえしえ
45 :
◆MsdInw62ztuy :2011/01/02(日) 00:01:00.57 ID:rlt7WuYZ0
なにやら鼻歌を歌いながら少女はどんどん山に入っていく。
どうも様子が変だった。声が聞こえないわけではないはずなのだが。
(;'A`)「こらっもう戻ってきなさい!それ以上は危ないから!」
ドクオは急いで後を追って手を掴もうとするが、あえなくすり抜ける。
ああ、でもよく考えたら幽霊にあぶねえも糞もないか。
(;'A`)(なんつーか俺の存在ごと無視されてるみたいで、すごくむかつくなこれ)
落ち葉で滑る足場だったが、何とかデレの前に出ることが出来た。
ドクオは試しに進路に立ちふさがってみたが、デレはドクオの体をすり抜けて先に進んでいく。
('A`)… ...ζ*゚)〜♪
('A`)「……」
('A`)「いま一瞬俺の下半身を女の子が通過しました。
つまり、彼女の体内におれのち〜中略〜これは脱童貞とは言えないだろうか」
やけくそになって最低なシモネタを飛ばしてみるが、反応は全くない。
しかし、放っておくことも出来ない。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:02:38.63 ID:+FjYI8sA0
支援
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:04:24.13 ID:rlt7WuYZ0
('A`)(しゃあねえ、ちょっと後に着いてってみるか…その前に)
ドクオは携帯を取り出すと内藤家の電話にかける。
とりあえず誰かに応援に来てもらわないとどうしようも無い。
二回のコールで、ロマネスクが出てくれた。
( ФωФ)『はいもしもし、内藤ですが』
('A`)「あ、おじさん?いま帰るところなんだけど、
なんかデレちゃんが山の方に行っちゃって…」
(;ФωФ)『なに!?山に?どのへんだ?』
山という単語を聞き、ロマネスクの声がにわかに緊張を帯びる。
(;'A`)「道路に出るところの脇です。
でも、結構来ちゃったな…20メートルくらい奥にいます」
(;ФωФ)『マズイな…デレのようすは?』
('A`)「……俺のことは完全無視です」
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:07:35.93 ID:rlt7WuYZ0
(;ФωФ)『分かったすぐ行く!
すまんがなるべく大きな声で声を掛け続けてくれ!
とりあえず遅らせられるだろう…』
('A`)「え…?」
(;ФωФ)『なんでもない!
ドクオくん!とにかく大声でしゃべり続けるんだ』
('A`)「わかりましたけど、なに(ry
そこで電話が切られた。ロマネスクはかなり焦っている。
もしかして相当やばいのか、これは?
――――ドクオは次第に不安になったきた。
とにかく、言われるままデレに声を掛け続ける。
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:10:03.39 ID:rlt7WuYZ0
(;'A`)「で、デレちゃん可愛いね!」
ζ(゚ー゚*ζ
(;'A`)「おうちに帰らないとお母さんが心配するよ!」
ζ(゚ー゚*ζ
(;'A`)「ちんこちんこ!おまんちーん!」
. _, ,_
ζ(゚ー゚*ζ
(;'A`)(お!)
デレの足取りが少し重くなる。
子供はシモネタが好きというドクオのアイデアは、見事に功を奏した。
彼女の反応は予想とは違ったが。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:13:13.47 ID:dhj0Y420O
おいwww
支援
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:13:59.78 ID:+FjYI8sA0
うむ
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:16:03.18 ID:rlt7WuYZ0
('A`)(だが、止まっちゃくれねえか……じゃあもっとどぎついのを)
秘蔵のシモを解き放とうとしたドクオだったが、結局何も言えなかった。
ふと気がつくと、目の前に白い壁のようなものが立ちはだかっている。
('A`)「なんだあれ?」
古い漆喰のような質感の壁だった。
その壁の前で、デレはピタリと動きを止める。
よくみると、周囲には古い生活用品が散らばっている。
('A`)「家かなんかの跡かな?」
ζ(゚ー゚*ζ
デレに質問してみるが、答えは帰ってこない。
その場を、木々がざわめく音が支配する。
あれ、こんなに風吹いてたっけか?
ドクオは上を見て、風の強さを確認しようとした。
('A`)「…あ」
そこに木々などなかった。あったのは、顔、顔、顔。
何かの模様のような、舌の表面の突起を思わせる、無数の顔だった。
いつの間にか、その顔の群れがドクオ達の周りをドーム状に取り囲んでいる。
(;゚A゚)「――うわ」
ぞくり、全身に鳥肌がたつのを感じる。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:18:19.83 ID:dhj0Y420O
うわ、こえぇ…
支援
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:19:54.06 ID:rlt7WuYZ0
(;゚A゚)「な……なんだよこれは」
木々のさざめきは、聞いたことのない音に取って変わられ、
頬に生暖かい吐息が吹きつけてくる。
それを感じた瞬間、全身の毛という毛が逆だった。
状況はよくわからなかったが、恐怖がドクオの全身を支配した。
顔の一つに目がいく。
その顔は口を半開きにし歯を周期的に鳴らしていた。
カツン、カツン、カツン……と。
(;'A`)「!」
さっきからしている妙な音の正体に気が付き、ドクオは無意識に耳を塞ぐ。
(;'A`)(……デレちゃん!)
デレの方を見る。
さっきと変わらず、壁の前に立って微動だにしない。
何かを待っているみたいにじっと壁の一点を見つめている。
(;'A`)「やべ、詰んだ」
逃げようにも周りは隙間なく顔に覆われている。
攻撃を仕掛けるという考えがちらりと頭をかすめるが、それらに触れることを想像してやめた。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:22:11.41 ID:jmnDQ5uv0
しえん
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:23:13.22 ID:rlt7WuYZ0
(;'A`)「くそ…どうすりゃいいんだ」
いくら考えても脱出するすべはないように思えた。
360度上下左右はすべて、人間の顔に覆われている。
じゃあ、穴でも掘るか。
ともおもったが地面の中にもあいつらがいないとも限らない。
……ロマネスクはすでにこちらに向かっているから、なんとかなるかもしれない。
携帯を取り出して時間を確認する。
14:56。ロマネスクに連絡してから五分ほど経っていた。
いつもの休日なら家でけだるくミヤネ屋でも見ている時間だ。
(;'A`)「なんでこんなとこ来たんだお前は……」
ζ(゚ー゚*ζ
デレはドクオの足元で、いまだ壁を見つめ続けている。
まったく、なんだっていうんだ。
ドクオは彼女の横顔を見て小さく溜息をつく。
可愛い幼女といっしょだけど全然嬉しくない。
(;'A`)「……そうだ」
ドクオはまた携帯をひらくとカメラを起動した。
顔の群れに向かって、撮影ボタンを押すとその写真のプレビューを見る。
案の定、何も写っていない。
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:24:14.74 ID:+FjYI8sA0
支援だ
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:25:28.25 ID:rlt7WuYZ0
('A`)「……おお」
目の前の光景は、携帯には普通の山に見えるらしい。
だからといって、目の前で蠢いているものを突破して帰る勇気はなかった。
('A`)「……とりあえずvipでも見てるか」
すこし精神の安定を取り戻したドクオは、ネットに繋いでみる。
画面にグロ画像が広がるとか、画面から貞子が飛び出してくるとかいうこともない。
ごくごく穏便に行きつけの掲示板が表示された。
ざまあ見ろ、これが文明の利器ってやつだ。
そう思って一番に近くにあった顔の一つに笑いかけてやる。
( ゚д゚ )
('A`)「やっぱこっちみんなキメエ」
若い男の顔だった。目がカッと見開かれているのを見てまた気分が悪くなる。
精悍な顔立ちとも言えなくはないが、
上下を老女の顔に、横を子どもの顔にはさまれたその顔は不気味でしか無い。
( ゚д゚ )ぐごぎぎ
('A`)「……なんだ?」
急に男の顔が歯ぎしりを始める。
それに反応して、男の顔を中心に歯ぎしりが群れ全体に広がる。
ギリギリギリギリギリギリ、とまるで大量のセミが鳴いているような轟音だった。
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:27:38.62 ID:+FjYI8sA0
ふむ…
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:28:45.03 ID:rlt7WuYZ0
(;'A`)「……う」
驟雨のように歯をこすり合わせる音があらゆる方向から降り注ぐ。
ドクオは男の顔から目を離さず、ゆっくりと後ずさった。
これはなにかよくないことの兆候としか思えない。
( ゚д゚ )ぎぎごぎぎ
(;'A`)「ちくしょー!いいかげんにしろ!
もう俺はちびるぞ!頼むからやめろ!」
( ゚/ /д゚ )ギッ!
(;'A`)「うおっ!」
ドクオの声に反応するように、目の前で男の顔がまっぷたつに裂けそこから腕が一本突き出される。
分断された男の頭だったものがドームの内側に叩き落されると、そこに開いた穴からしゃがれた男の声がした。
「おい!ドクオくん!無事か!?」
(;'A`)「おじさん!」
声の主はロマネスクだった。
さっきまで男の顔があった位置から彼の顔が覗いている。
( ФωФ)「おそくなってすまん!」
そういった彼は、見覚えのあるナイフを手近にあった顔に叩きつけた。
刃渡り5センチほどのナイフだったが、刃が触れた途端にその顔は唐竹割りにされる。
たぶん、さっき仏間で見せられたロマネスクが「マヨイガ」で手に入れた品だろう。
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:31:32.96 ID:dhj0Y420O
おお、ロマがいるだけでこの安心感
支援
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:31:48.13 ID:rlt7WuYZ0
(#ФωФ)「邪魔だ!どかんか!」
そうして隙間を作ったロマネスクはものの30秒ほどでドームの中に入ってきた。
ロマネスクをここまで頼もしく感じるのは久しぶりだった。
ドクオは安心感でめまいを起こしながらも、ロマネスクの元に歩み寄る。
(;'A`)「おじさん……これは一体なんなんです?」
( ФωФ)「デレは?」
(;'A`)「え?あの壁のところに」
( ФωФ)「分かった!そこにいてくれ」
ロマネスクはデレのもとに駆け寄ると、様子を調べ始めた。
デレの頭のところに触れると、ロマネスクはぎょっとして手を引っ込めた。
(;'A`)「大丈夫ですか!?」
( ФωФ)「……いや大したことはない」
短くそう言うとロマネスクはデレの頭に手を伸ばし、
髪の毛を一本つまんで引っ張った。
デレのクセッ毛とは似ても似つかないまっすぐで太い毛。
大量の顔に隙間なく囲まれたために生まれた薄闇の中、
それがぼんやりと光を帯びているのが分かる。
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:33:59.69 ID:rlt7WuYZ0
( ФωФ)「ふっ!」
気合をこめロマネスクがその毛を断ち切ると、
デレが糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちる。
だが、そのデレをロマネスクは見もしない。
( ФωФ)「!」
右手に持った髪の毛を軽く引っ張ると、どこかに向かって歩き出す。
どこかにその一筋の髪の毛が繋がっているようなふうだった。
(;'A`)「なにしてるんです?もう切ったでしょ?」
( ФωФ)「これはデレから生えてたんじゃない」
(;'A`)「じゃあなにから……」
( ФωФ)「そこか!」
ロマネスクが思い切り右手を引くと、
地面に放置されていた味噌桶か何かがひっくり返り、なにかが飛び出してくる。
いや、正確にはロマネスクに引っ張られているのだ。
( ФωФ)「うむ…」
(;'A`)「なんだよこれ…」
ロマネスクの足元に、こぶし大くらいの黒い毛の塊のようなものが転がり出てくる。
一瞬、ゴミか何かかとも思ったが、キイキイと猿のような鳴き声を発している。
そしてよくみると、生えている毛の全てがうぞうぞと蠢いていた。
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:35:14.65 ID:+FjYI8sA0
ぞくっとした
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:36:46.11 ID:jmnDQ5uv0
支援
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:37:03.77 ID:dhj0Y420O
ぎょえぇ…
支援
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:38:02.08 ID:rlt7WuYZ0
( ФωФ)「狸めが…うちの孫を化かしおって」
(;'A`)「……」
ドクオはまじまじとその謎の物体を観察した。
毛の隙間から見える、茶色がかった光沢のある黒い目。
それがいくつも丸い体に不規則に並び、ぎょろぎょろと周りを見渡していた。
突然、その何かは一点を凝視する。
そして……。
(#ФωФ)「消えろ!」
「―――――――――!!!!!」
ロマネスクは何のためらいもなく、思い切り足で黒い何かを踏みつけた。
女とも、男とも、子供ともつかないけたたましい悲鳴が響き渡る。
ドクオが次に感じたのは猛烈な悪臭、動物の死体が腐ったような甘ったるい匂いだった。
――黒いものの死に呼応するように、ドクオたちを取り囲んでいる顔という顔があんぐりと口を開けた。
そして顔たちはグルグルと回転しながら浮かび上がり、渦をまいてどこへともなく飛んでいく。
ドクオはその様子を呆けたように見ていた。
(;'A`)「…」
( ФωФ)「……ふう」
しばらく、誰も何も言わなかった。
三人の真上で鳶が鳴く。
それを聞いたドクオはようやく現実に帰ってきたと実感する。
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:38:08.56 ID:kz9XyVQJO
けうけげんか?
私怨じゃ
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:41:21.55 ID:rlt7WuYZ0
ζ(--*ζ
( ФωФ)「……さ、帰ろう」
('A`)「……はい」
潰れた何かに枯葉を被せたあとで、
ロマネスクはデレを抱き抱えてどっこいしょと立ち上がる。
なんでおじさんはすり抜けないのか、麻痺したようなドクオの頭に疑問が浮かぶ。
( ФωФ)「その前に、これに触ってくれ」
ロマネスクは手を出すといままで握っていたものを出した。
家でドクオが見た、錆びた一本の釘だった。
もう、なぜそうするのべきなのか聞く余裕はドクオにない。
人差し指の先で軽く釘の頭に触れた。
ζ(--*ζ
ζ(--:;.:...
:;....::;.:. :::;.. .....
('A`)「……おお」
目の前でデレの姿が消えていく。
その姿は次第に薄くなり、数秒で完全に見えなくなる。
なるほど、『見える』状態を解除するにはもう一回触ればいいわけか。
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:44:17.35 ID:rlt7WuYZ0
( ФωФ)「どうだ?」
(;'A`)「もう見えなくなりました」
( ФωФ)「よし、じゃあ行こうか」
透明なデレを抱え、二人は山を降りていく。
ロマネスクは足腰が弱っている割に、
かなりの勢いで歩くのでドクオはついていくのがやっとだった。
(;'A`)「おじさん、あれは何だったんです?」
( ФωФ)「あれとは?」
(;'A`)「あれ全部ですよ!顔とか!黒い毛の塊みたいなのとか!」
落ち着いた様子のロマネスクに苛立ったドクオは声を荒げる。
ドクオには、なぜ彼がそんなに落ち着いていられるのか理解できなかった。
( ФωФ)「……君にはそう見えたのか?」
('A`)「え?」
ロマネスクの言葉に、肌が粟立つのを感じた。
じゃあ他の何に見えたっていうんだ。
凍りつくドクオをよそに、ロマネスクは続ける。
( ФωФ)「あれは悪いものだ。それもかなりたちが悪い。」
( ФωФ)「狸とか狐みたいなもんだよ」
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:47:11.71 ID:rlt7WuYZ0
('A`)「狐って……獣っぽい要素ほとんど無かったですけど」
狐というと狐娘とか、不純なものしかドクオには思い浮かばない。
( ФωФ)「そうだな、あえて言うなら妖怪だな。あいつらは」
そう言うとロマネスクはデレを抱え直す。
と言っても、ドクオにはパントマイムのようにしか見えないが。
( ФωФ)「いつもあいつらは山にいる。
人間の霊魂を吸いとってどんどんでかくなるんだ。
近くに来た人間を取り殺したり、浮遊霊を取り込んだりして」
( ФωФ)「まあしかし山からは出てこれないようだがね」
とりあえず、今日の夜あらためて襲われる心配はなさそうだ。
ドクオはとにかくほっとした。
( ФωФ)「取り込まれたら最後、あれの仲間になる。
もう不幸はたくさんだ、この子にもツンちゃんにも」
( ФωФ)「それから私にもな」
内藤もひどい目に会ってきたが、ロマネスクもまた辛かったはずだ。
初孫と嫁に先立たれ、そのすぐ後に妻を亡くしたのだ。
彼らの存在を身近に感じられるだけ彼は幸運なのかもしれない。
('A`)(でも、目の前の人たちは死んでるんだって感じるたびに……)
ドクオはロマネスクを見る。前を歩く彼の表情を伺うことはできない。
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:49:45.02 ID:rlt7WuYZ0
その時、さっと視界が開ける。
さっきデレが登っていた斜面の上に出たようだった。
眼下にはドクオの軽トラが降りたときそのままになっているのが見える。
( ФωФ)「じゃあ、気をつけてな。
迷惑を掛けてすまなかった」
('A`)「いえ……じゃあまた今度」
( ФωФ)「うむ」
それだけ言うと、ロマネスクは母屋に向かって歩いて行く。
その姿を、ドクオはトラックの荷台に寄りかかって見ていた。
('A`)「……」
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:50:13.55 ID:ratMdnQ6O
シエンヌ
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:51:14.58 ID:rlt7WuYZ0
庭の中ほどまできたロマネスクが、腕の中を見て微笑むのが見える。
たぶん、デレが起きたのだろう。
……それを見届けたドクオは、運転席に座ってエンジンをかけ直す。
(*ФωФ)
彼は、きっと幸せなのだ。
家族に囲まれて。
('A`)(ちくしょう…車の中が灰だらけだ)
ひっくり返った七輪を元に戻すと、小さく溜息をつく。
解決すべき問題はあるが、とにかく今は日常に帰ろう。
ドクオはそっとアクセルを踏むと、街に向かって車を走らせた。
……今度は何も飛び出してはこない。
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:51:34.40 ID:+FjYI8sA0
しえーん
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:51:55.86 ID:rlt7WuYZ0
第七話 おわり
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:56:31.13 ID:+FjYI8sA0
乙!
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:57:56.32 ID:rlt7WuYZ0
支援ありがとうございました。
なにかあればお寄せいただければ幸いです。
>>68 山の中にいる狐狸の一種ですね。
ていうかけうけげんでググった画像が怖かった…。
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 01:01:18.01 ID:TFgQ3flmO
おつんつん
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 01:01:18.92 ID:iZGnWLJr0
おつ!
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 01:03:26.10 ID:UP/NoWuXO
おつですゆ
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 01:09:17.37 ID:rlt7WuYZ0
あ、そうだ。
876 名前: 【吉】 [] 投稿日:2011/01/01(土) 00:47:02.36 ID:xkD7i7nK0 [2/9]
よーし俺も便乗
吉以上なら今日現行投下
これで約束は果たしたぜ!
それでは皆様おやすみなさい…
乙
元旦から好きな作品が読めて幸せだ
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
おお来てたか乙