文才無いけど小説書くスレが無いけど小説書く

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここはお題をもらって小説を書き、筆力を向上させるスレです。


◆お題を貰い、作品を完成させてから「投下します」と宣言した後、投下する。

◆投下の際、名前欄 に『タイトル(お題:○○) 現在レス数/総レス数』を記入。メール欄は無記入。
 (例 :『BNSK(お題:文才) 1/5』) ※タイトルは無くても構いません。
◆お題とタイトルを間違えないために、タイトルの有無に関わらず「お題:〜〜」という形式でお題を表記して下さい。


※※※注意事項※※※
 容量は1レスは30行、1行は全角128文字まで(50字程度で改行してください)
 お題を貰っていない作品は、まとめサイトに掲載されない上に、基本スルーされます。

まとめサイト:各まとめ入口:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/
まとめwiki:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/
wiki内Q&A:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/index.php?Q%A1%F5A
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:11:58.80 ID:iHhMuDB00
▽読み手の方へ
・感想は書き手側の意欲向上に繋がります。感想や批評はできれば書いてあげて下さい

▽保守について
・創作に役立つ雑談や、「お題:保守」の通常作投下は大歓迎です
・【!】お題:保守=ただ保守するのも何だから小説風に保守する=通常作扱いにはなりません

▽規制されている方へ
>>1から辿って行けるまとめ板に、規制者スレがあります。
 そちらの方に投下していただければ、心ある人が転載してくれます。

▽その他
・作品投下時にトリップを付けておくと、wikiで「単語検索」を行えば自分の作品がすぐ抽出できます
・ただし、作品投下時以外のトリップは嫌われる傾向にありますのでご注意を

▲週末品評会
・毎週末に週末品評会なるものを開催しております。小説を書くのに慣れてきた方はどうぞご一読ください。
 wiki内週末品評会:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/index.php?%BD%B5%CB%F6%C9%CA%C9%BE%B2%F1
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:12:41.20 ID:iHhMuDB00
第244回週末品評会  『三角』

規制事項:7レス以内

投稿期間:2010/12/04(土)00:00〜2010/12/05(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2010/12/06(月)00:00〜2010/12/07(火)24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:21:58.55 ID:OWuVNMb70
スレはたったけど
人がこないよ!

転載でもするか
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:23:23.89 ID:wkM3fZZT0
スレ立て乙です
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:23:49.22 ID:OWuVNMb70
405 : ◆xaKEfJYwg. [] :2010/12/05(日) 22:49:21 ID:nUOHAzdG (1/9)
本スレ落ちているみたいなので、こちらで投稿します。
7レス予定です
7夕暮れパズル(品評会)1/7 ◇xaKEfJYwg. :2010/12/05(日) 23:24:41.69 ID:OWuVNMb70
 サーモンピンク、薄紅、ローズピンク、朱鷺色……。
 午後4時。窓越しから見える空の色は、とても鮮やかだった。
 真希(まき)は、空を彩るいろんな色を部屋の中から見ながら、今日は朱鷺色が多めだなと
口の中で呟いた。
 毎日休まず地上を覆う空の色は、毎日違う表情を持っていた。雲も形が違うし、時には悲し
そうに雨を降らせる。
 いろんな表情を持つ空だけれど、真希がとりわけ好きだったのは秋の夕暮れだった。
 秋の夕暮れはとても短い。直ぐに夕焼けは藍色味を増し、紺色に姿を変える。それが真希に
とっては好きな要因の一つだった。短いからこそ、ご褒美のように感じられるのだ。
 ――今日もいい夕焼け空だったな。
 窓を向いていた体を学習机に向かわせ、椅子に座る。学習机に備え付けられている電気を点
(とも)すと、机の上に広がっているパズルに目を落とす。
 ついさっきまで取り組んでいた、夕焼けの写真をプリントしたパズルがB5判ぐらいの場所
を陣取っている。
 机の上のパズルは、お父さんが文具屋で真希に買い与えてくれたパズルだった。
 パズルはほとんど完成していた。あとは数ピース嵌めるだけだ。
 真希は夕焼けパズルの横にある、型紙で作られた箱に手を伸ばす。そして一つ一つパズルの
ピースを嵌めていく。もう少しで完成する。残すところあと一ピースだ。
 真希はワクワクしながら箱を持ち上げる。
 そこで気がついた。後残りの一ピースがない。
 顔色がだんだん白ずんでいくのを感じる。最後のピースがないと完成しない。
 もう一度パズルに目を落とす。もしかしたら、どこかにピースが重なっているのかもしれな
い。夕焼けのパズルだから、遠目から見たらほとんどオレンジ色一色に見える。ぽっかりと空
いている穴の周りはオレンジ色だから、そこに嵌るべきピースもオレンジ色に違いない。
 慎重にパズルの表面を撫でていく。だが、手のひらはつぎはぎのデゴボコを感じるだけで、
浮いているピースを触れることはできなかった。


 さっきまで擦っていた手を、机の上に置いてある皿に伸ばす。
「それで、どうなったんですか? パズルのピース見つかりました?」
8夕暮れパズル(品評会)2/7 ◇xaKEfJYwg. :2010/12/05(日) 23:25:28.71 ID:OWuVNMb70
 真希の向かい側に座っている晴香(はるか)は、手元にあるスパゲッティの皿を持ち上げて、
忙しなく麺を口の中に運んだ。
 真希は、晴香と食事をする度に、がつがつしていて犬みたいだなと思う。思ってから、質問
を頭の中で反芻して、つまらなさそうに答えた。
「結局見つからなかったから、パズルの箱を切り取って、最後のピースを作ったわ。色もキチ
ンと塗ってね。かなり上手く作ることができて……今思えば、あれが画家を志すきっかけになっ
たのかもね」
 真希は、ティーカップを持ち上げコーヒーを少しだけ口に含ませる。乾いた口内が潤ってい
くのを感じる。
 晴香はスパゲッティーをぺろりと平らげて、水をぐいっと飲み干した。
「っひょえー……『先生』は凄いですね! もうその頃から才能の片鱗に気づき始めていたと」
 真希は、「先生」という単語にむず痒さを感じた。頬をちょいと掻いて咳払いをつく。
 美術学校の講師をしてみないか、と以前通っていた美術学校の先生から誘いを受けたのは、
今年の春のことだった。
 それまで自由気ままに絵を描いて生計を立てていた真希にとって、それは当然断るべき誘い
だったと、半年以上過ぎた今でも思っている。もちろん人に教える技術も無いし、それよりも
縛られる生活がとても嫌なものだと思っていたのだ。
 だが、真希の先生は「一生のお願いだから」と言って、頭を下げてきた。
 ホームだった場がいきなりアウェーに変身する。
 結局、アウェーでは実力の半分も出せずに、やむなく受け入れることにした。あのときの先
生の必死な姿を見て、いいことをしたと思ったものだ。
 講義を始めてみると、いろいろな発見をした。今まで、一人の世界で絵を描き続けてきたも
のが、学生達の多種多様な絵を見てアドバイスすることで、だんだん自分の世界が広がるのを
感じた。その繰り返しの中で、キャンパスに落とす色を増やすのだ。
 あっという間に夏、秋を越えて、気づけば冬に差し掛かっていた。
「で、ラスト一ピースはどこにあったんです?」
 目の前で大きな欠伸をして、盛大な背伸びを披露する晴香は、真希が受け持っているクラス
の生徒の一人である。
 真希はティーカップを静かに置いて、欠伸をする。欠伸がうつってしまったみたい。
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:26:16.12 ID:saVb7QF1O
予約ー
10夕暮れパズル(品評会)3/7 ◇xaKEfJYwg. :2010/12/05(日) 23:26:49.69 ID:OWuVNMb70
「父が隠し持っていたわ。ほんの悪戯心のつもりだったみたい。私が父に『パズル完成したよ』
と言ったときに目を丸くしていたもの。問い詰めて聞き出したら『ごめん』って」
「そりゃお父さんが悪い! それじゃぁ先生が画家さんになったのも、お父さんのせいだ」
「そうかしらね」
 軽く笑うと、真希はふと晴香の目じりに溜まった涙を見て、小首を傾げた。
 ……そういえば、どうして目の前の少女は私にくっ付いてくるのかしら。今日の昼食も、食
堂で一人静かに食べていたところ、急にやってきたのだ。そして、気づけばいつの間にか当然
のようにおしゃべりをしている自分がいる。
 真希は晴香の顔をまじまじと見て、尋ねることにする。
「ねぇ、晴香ちゃん。私に何か言いたいことでもあるの?」
 晴香は視線を斜めに向けて、「あぁ」とも「はぁ」ともつかない返事をする。
 なかなか晴香が答えようとしないので、真希は話を振ることにした。
「……次回の課題終わった? お題は『三角を使った絵』だけれど、優秀な晴香ちゃんだった
ら、すでに終わっているわよね」
 もう一度ティーカップに手を伸ばす。ティーカップはすでに熱をほとんど失っていたけれど、
冬にやられた掌よりは温かかった。
 真希は、ティーカップに口をつけながら、上目使いで晴香のほうを盗み見る。
 晴香は、無意識にだろうか、体をびくんと震わせると、一旦俯いて顔を上げた。そしてヤケ
に高いトーンでペラペラと話し始めた。
「えーっと、優秀なんてそんなことないですって。ははは。こーゆー抽象的なお題は、三角形
を重ねて誤魔化せばいいんです。ほら、ピカソのキュビズムだって『見えるはずの裏側を描い
たんだ』って偉そうに言ってたら評価されたじゃないですか」
 晴香ちゃんらしくない、真希は純粋にそう思った。
「じゃあ、もう完成しているのね」
 話の勢いを殺がれた晴香は、しばらくもごもごと何かを言っていたが、少しの沈黙を置くと、
また俯いて言葉をぽつぽつと漏らし始める。
11夕暮れパズル(品評会)4/7 ◇xaKEfJYwg. :2010/12/05(日) 23:27:49.66 ID:OWuVNMb70
「私……私、今回のお題の『三角を使った絵』で真っ先に思い浮かんだものがありました。初
めはそれを絵にしたくなかったのですが、それでもだんだんとイメージが沸いてくる。……小
さな丘の上で二人の人が手を繋いでいるんです。その綺麗な一枚の絵に、筆を持った大きな手
が、細長い水滴を書き込んでいる」
 顔を歪ませる晴香に微笑みながら、真希はじっと言葉を待つ。
「……彼が、大好きな彼が、浮気しているみたいなんです。彼と同棲しているんですが、この
間家に帰ったときに、知らない人のハイヒールが置いてありました。もちろん私のじゃありま
せん。私は……その場から逃げてしまいました。問い詰めることもできたはずです。現場を押
さえて怒鳴りつける事だってできた。でも、逃げることしかできなかったんです」
 今にも泣き出しそうな晴香を見て、真希は立ち上がった。
 真希は、自分の顔はどんな風に歪んでいるだろうと一瞬考えたが、体は意識とは無関係に勝
手に動き出して止まらない。
 勢いに任せて、さっきまで座っていた席の向かい側――晴香の席ほうに回ると、両腕を晴香
の両脇に差し込んで上へ持ち上げる。抵抗もなく立ち上がった晴香の腕を引くと、晴香は驚き
声で尋ねてくる。
「どどど、どうしたんですか!? ひゃぁー! 急にこんなこといってすいませんっ! 怒ら
ないでくださいよ!」
 晴香の言葉を聞いて、自分がどれほど凄まじい顔をしているのかが気になった。
 だけれども、気になる自分の顔について聞く代わりに、真希はできるだけ優しい言葉を選ん
で、晴香に贈ることにする。
「それだけ食べれるなら十分よ。ヤケ食いできるってことは体が元気な証拠。でもね、食べる
だけじゃだめ。運動しなくちゃ」
 

 カキーンと高い音が響く。高い音を響かせた元凶である「共犯者木製のバット」は、弾かれ
て下に落ちる。灰色した息を超えて、ボールのほうは遠くに飛び、ネットにぶつかり食い込む。
 バッティングセンターでバットを振るっている晴香は1ゲームを終えて、満足したようにネッ
トをくぐり、ベンチに座っている真希のほうに歩いてきた。
12夕暮れパズル(品評会)5/7 ◇xaKEfJYwg. :2010/12/05(日) 23:28:40.57 ID:OWuVNMb70
「ボールって見れば見るほど彼にそっくり。彼をボコボコにしてやりましたよ」
 得意そうに笑う晴香に、真希は自動販売機で購入した、温かい缶コーヒーの二本のうち一本
を手渡した。
 晴香は「ありがとうございます」と丁寧なお礼の言葉と、お辞儀をして、缶コーヒーのプル
タブを開ける。
 晴香が一飲みして落ち着くまで待ってから、真希は整理し終えた言葉をぽつりぽつりと吐き
出した。
「晴香ちゃんは『先生』に相談したかったのよね。でも、初めに言っておくけれど、ごめんな
さい。私はそこまでできた人間でもないし、恋愛経験も人並みしか経験してないわ」
 晴香はすかさず言葉を挟む。
「いいんです。それは、いいんです。……きっと私、誰かに聞いて欲しかったんでしょうね。
誰かに聞いて、ぐずぐずしている私の代わりに怒って、怒鳴って欲しかった。『なんで突っ込
んでいかないの!』なぁーんて言って欲しかったんだと思います」
 真希は微笑んで、晴香の頭を撫でた。
「でもどうして私に」
「大好きな彼の次に好きな人が、先生だからです。おかげですっきりしました!」
 あどけなく笑う晴香を見て、真希は、それまで掌を温めていた缶コーヒーの飲み口を空ける。
 晴香は、真希との距離を心持ち詰めて、顎に手を当てる。
「私、考えたんですよ。先生のお父さんが、本当に悪戯心だけで最後の一ピースを隠したのか」
「へぇ。その答は解けたの?」
「ええ。謎はきっと解けました! 先生のお父さんは、本当は二人でパズルを完成させたかっ
たのではないでしょうか。ピースが見当たらず困っている先生のところに、お父さんが登場! 
ででーんとラスト一ピースを手渡す。どうですか?」
 晴香は顔を湿らせながら、真希に訴える。
「そうかしら」
「はい! きっとそうですよ。お父さんはヒーローのように登場したかったんです。お父さん
は……」
 真希は、晴香の言いたかったことを素直に受け取る。
13 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/05(日) 23:29:15.69 ID:ukcsRTjH0
予約
14夕暮れパズル(品評会)6/7 ◇xaKEfJYwg. :2010/12/05(日) 23:29:27.80 ID:OWuVNMb70
「お父さんは死んだわ。肺ガンで。もし、今でも生きていたなら、聞きたかったわね。晴香ちゃ
んの言う通りなのか、確かめることができたのに」
 晴香をもう一度、今度は両手を掴んで立ち上がらせ、紺色を落としているドアの向こうに目
を向けた。
「ほら、もうこんな時間。もう帰りましょう。電車は大丈夫なの?」
 なんだか可笑しくなってきた。まるで、晴香が自分の子供のように思えてきたのだ。
 子犬みたいにがつがつ食べて、一生懸命バットを振って、楽しそうに終わったはずのパズル
のラストピースの行方を考えて……。
 手を握られた晴香は、ちょこんと頷き、手を引く真希に従ってドアに向かう。
 ドアのレールの上を跨ぐ。バッティングセンターと外の境界線を二人で越える。
 境界を越えた後、すぐさま左横にいる晴香は、紺色に染まった空を見上げて何か探し始めた。
 あちこちに視線を張り巡らせると、灰色した息を吐き、やがて呟いた。
「あった。先生、モチーフ決めました。ほら」
 晴香の指先は、上空を指して留まっている。
 何を指しているのだろうと思案していると、晴香は笑いながら、握っている手を強める。
「星です。ふゆのだいさんかく。オレンジ色に光っているあれが……ペテルギウス。青く光っ
ているあっちがシリウス。そして、ぼんやり光っているのが、プロキオンです」
 晴香の説明を聞いて、真希は一生懸命視線を彷徨わせる。なんとか色で判断して、灰色した
息を少しずつ吐き出した。晴香は構わず続ける。
「さっきいってた絵を描こうかと思ったんですけど、今、たった今止めました。先生と見たこ
の空をいーっぱいいろんな絵の具を使って塗っていくんです。最後に、慎重に色を乗せる。オ
レンジと、青色と、灰色に!」
「……あなたらしいわ。ほら、電車に間に合うの?」
 ――元気になってよかった。
 かじかんだ片手をコートに突っ込んで、晴香を引っ張る。
 左横で晴香は楽しそうに真希に笑いかけ、握った手の力をさらにぎゅっと強める。
 返すように真希も一瞬だけ強く握り返すと、晴香は嬉しそうな声を上げながらスキップを始
めた。
 ふと頭をよぎった「恋愛経験は人並み」と言ってしまった言葉は、胸の中に押し込んで、
ぼーっと空を見上げる。
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:29:44.14 ID:kQaCR1ci0
yoyaku
16夕暮れパズル(品評会)7/7 ◇xaKEfJYwg. :2010/12/05(日) 23:30:12.39 ID:OWuVNMb70
 冬の夜空もいいかもしれない。秋の夕暮れだって素晴らしいけど、二番目ぐらいにしといて
あげよう。
 真希は、「冬の第三角形」を眺めながら、左横でスキップする晴香を眺めた。手がぐわんぐ
わん動く。そして、ゆっくりと記憶の底から、「あのとき」のお父さんの反応を思い返す。


「お父さん。パズルできた!」
「え? できた? うそぉ」
「見てみて! 一生懸命頑張ったんだよ」
「え? ちょっと待って! え!?」


END
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:31:14.00 ID:OWuVNMb70
転載ひとつめ以上です。

ごめんねカオスタイムに転載しちゃってごめんね
久しぶりで忘れてたわ

残りの転載は後に回すので
予約してる人から順次、投下どうぞ
18記号と君と僕 1/6 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/05(日) 23:34:58.03 ID:saVb7QF1O
 満員電車に揺られた体はすっかり疲れ切っていた。いつもの様に途中にあるコンビニに寄り、冷えた弁当と小さめの黄三角を買って帰った。
 アパートの部屋に戻るとまず、袋から黄三角を取出し、黙々と指で潰した。三角は原型がなくなるまで潰れていく。
 そこでようやく人心地がつき、落ち着いてきた。今日も一日の終わりが来ている。
 大変な一日だった。社で、先週からちょくちょく会議に上がっていた、新しい三角の商品開発がいよいよ着手し始めていたのだ。
 三角という商品については、ご存知の通り、すでに様々な分野の製造会社が取り上げ、最新の技術を駆使して開発している。
 もはや開発されつくしていると言っても過言ではない。
 いまや現代人の生活にとってなくてはならない必須アイテムの一つだろう。
 いまうちが打ち出してる商品ラインもかなり浸透しているが、ライバル会社に比べると一歩も二歩も遅れを取っていた。
 そんな事をつらつらと考えながら弁当を食べ終え、テレビを見ていた。
 すると、ドアがノックされる音がして、女の子の呼び声が聞こえてきた。
「柏木くーん、帰ってきてるんでしょ。ドア開けて」
 急いで立ち上がりドアに向かった。
「はいはい、只今開けますよ」
 ドアを開けると、少女が開いた隙間からするりと入ってきた。小柄で陽気そうな女の子だ。
 少女の名は千香ちゃん。大学二年生で、このアパートの大家の娘さんだ。
 そして内緒にしているが千香ちゃんとは恋仲だった。こっちが一目惚れして猛アタックをかけたのだ。
 ようやく付き合う所までこぎつけていたが、大家にはまだ報告していない。いずれしなければならないと思っている。
「柏木くんなにぼーっとしてるの?」
 考え事をしていると、千香ちゃんが顔を覗き込んできた。風呂に入ったばかりなのか、髪からシャンプーのいい香りがする。
「別にぃー……エイッ!」
 勢いよく体を抱き抱えて一気にベッドに雪崩こむ。子供みたいに笑い声を上げる彼女の口にキスをせがんだ。
 事が終わって、ベッドの中で三角を処理する。
「新しい三角かぁ……それに柏木くんも関わってるの?」
「一応開発部の末端だからね。マーケティングした情報の統計を元に、こんなのがいいんじゃないかって案をみんなで出し合ってる段階だけど」
「ふーん、そうなの。それでどう?上手く行きそう?」
「あんまり自信がないな。ライバル社の尻馬に乗っかる形での企画だし」
「例の新発売した奴ねー。いいよね、友達も『絶対買い』って言ってたよ」
「そうなんだよ……参ってるんだ……」
 ため息をつくと、千香ちゃんが慰めるように体を巻き付けてきた。それだけで幸せだった。
19記号と君と僕 2/6 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/05(日) 23:35:54.95 ID:saVb7QF1O

「では昨日に引き続き、新商品の開発について話合いましょう。コレが問題のライバル社の新型三角『四角』です」
 会議室の皆の前には色とりどりの『四角』が置かれ、誰しもが苦汁の表情を浮かべている。
 この『四角』、いまや三角業界をリードする新しい旋風として、吹き荒れた画期的商品なのだ。
「従来型の三角を二つ合わせただけの単純なこのフォルム。どうですか、素晴らしいですね。完全にしてやられました」
 開発部の事実上リーダーである進藤部長は、この痛手に眉間に皺を寄せて嘆いた。
「もちろん四角に使われた技術については技術部が解明済みです。だけどこのまま同じ商品を販売したとしても、どの道勝負の決着は
ついてしまっています。そう、いま必要なのはズバリ新機軸です。いま我々が喉から手が出るほど欲っしているのは、新しい魅力なんです。
では皆さんよろしくお願いします」
 部長の開始の挨拶が終わると、会議室は速やかに静かになった。昨日の企画会議とまるで同じ画だった。
 沈思黙考と言えば聞こえはいいが、要は何のアイデアも捻りだせず、皆が一様に腕を組んだり唸ったりしているだけの事だった。

 十分も経つと、進藤部長がさすがに痺れを切らし、皆に催促し始めていた。
「おい、誰かアイデアはないのか。なんでもいいんだぞ。ヒントが一つでもあれば、そこから突き抜けられるかもしれないからな」
 だがもちろん名乗りを上げる者は誰もいなかった。互いに見つめ合って戸惑っているだけだ。
「参ったな……。柏木、お前はどうだ」
 ないわけでもなかった。ただあまり正攻法という訳でもなかった為、躊躇われていたのだ。
「何だ。あるなら言ってみろ」
「はい、じゃあ言います。実は今回自分が思った事は、『三角って一体なんだろうな』って事だったんです」
「ほう、面白そうだな。続けてくれ」
 進藤部長ほか二十名ほどの開発部の人間も、こちらに注目する。席を立った。
「これだけ普及して身の回りにある三角ですが、結局は無くても困らない贅沢品の一つでしかないのではないか。自分はそう思ったんです」
「つまり、どうゆう事だ」
 進藤部長が結論を急がせた。説明を省いた。
「つまり、何か他の事業と提携できないでしょうか。三角や四角と同時に使える分野でプラスになる事業と提携していくんです」
「ふむ、よろしい。なかなかいいぞ柏木。じゃあお前はその方面で取り付けそうな企業をピックアップして見てくれ」
 どうやら企画が通ったようだ。もちろんこれからだが一先ずは御の字といった所だった。


 仕事は上手くいったその日、夜はいつもと少し違っていた。千香ちゃんが泣き腫らした顔で部屋にやってきたのだ。
20記号と君と僕 3/6 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/05(日) 23:36:56.39 ID:saVb7QF1O
 どうやらついに前の日の夜、部屋から出る所を父親に見られていたらしい。
「ヒック、グズッ!あのね、ヒック、酷いんだよあのバカ親父、私の事……うえええーん」
 大声で泣きじゃくりながら喋っる千香ちゃんの話は、ほとんどが細切れで文章になっていなかった。
 彼女の話を掻い摘むとこうだ。今日の朝呼び出され、『男の部屋に通うなんて、ふしだら極まりない!』と言われた、との事らしい。
 また、勘当だとも言われてしまったそうだ。
 ずいぶん古風な考え方だと思った。とりあえず謝りに行かねばならないだろう。
 階段を降り、アパートの隣にあるお屋敷へ向かった。大きな庭付きのお屋敷の玄関は立派な門構えだった。
 門を叩く。千香ちゃんは部屋に置いてきた。落ち着いて話ができる状態じゃなかったからだ。
 玄関の奥の方から、大家である親父さんが登場した。いつもの恐面がより倍増されている。見ただけで喉がひくついてしまった。
「どうも二○四号室をお借りしてる柏木です」
「知っとる。このゴミ虫め、すぐ出ていけ」
 事態はとっくに手遅れのようだった。だが千香ちゃんとの関係の為、ここで引き下がる訳にもいかなかった。
「断わりもせず大切な娘さんとお付き合いしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。いつかご挨拶に来ようとは思っていたのですが」
「あんな女はもう娘じゃない」
 そこで有無を言わさず勢いよく戸が閉められた。どうやら相当頭に血が登ってしまっているようだ。ひとまず引き上げるしかなかった。


 三角の企画の方は順調に事が進んでいた。どうやら『四角』については他企業も少しばかり目を付けていたようなのだ。
 適当な会社の二三件に当たりをつけたら、すぐにより良い返事が返ってきた。実に幸先がいい。
 複合提携できれば安定した売れ行きが期待できるはずだ。
 進藤部長のお墨付きも貰った。企画は本格的に乗り出していた。その他に、自分がだした提携案以外にも様々なアイデアが計画されていた。
 そして自分の案は、次回の発売を支える柱として重要な役割を担う事になりそうだった。
 残業が増えるのは間違いなかった。とはいえ千香ちゃんの方も放っておくわけにはいかない。
 父親のほとぼりが冷めたと聞いたのはそれから一週間後の事だった。親父さんが、二人の件に関して一切口にしなくなったらしい。
「機嫌が直ったみたいで良かった」
「でもね、やたらニコニコしてるの。少し気に掛かる。ちょっと変なんだ」
 電話口の千香ちゃんは不安げな様子だったが、まあとにかく挨拶をと、屋敷に早速訪ねてみた。
 すると、確かに彼女の言うように、玄関先に出てきた大家は、不気味なほど機嫌が良かった。
「やあ、よく来ましたね。二○四号室に住む柏木さん。いらっしゃい」
「あ、いやご丁寧にどうもありがとうございます。あの、……ひとまずご挨拶にと、えーと」
21記号と君と僕 4/6 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/05(日) 23:37:55.27 ID:saVb7QF1O
「いえいえ、これからもご贔屓にお願いしますよ」
 大家のそのあまりの代わり映えした態度に驚いてしまった。慌ててお辞儀してから、肝心の挨拶する事にした。
「は、はい。娘さんとは結婚を前提に仲良くさせていただくつもりです」
 そこまで言えたので自分としては一安心だった。だがおかしい事に、大家は少し眉を潜ませるだけだった。
「娘?私は部屋の事を言ったのですが」
「え?」
「部屋です。あなたは借り主でしょう」
「はぁ……。いやはい、そうですけど」
「契約では二年になっておりますね、最後までよろしくお願いしますよ。ちなみに違約金は書いてませんでしたが二年分頂きますのでね」
 そうしてその日から大家の無言の重圧が始まった。
 さすがに部屋の中で会うわけにもいかず、安いホテルで会うしかなかった。その度にまるで逢引きでもしてるみたいな気持ちになった。
 反対されればされるほど、色恋沙汰は盛り上がる物だ。だが大家は別に反対もしなかった。
 それは立派な消耗戦だった。彼女との関係は良好だったが、そこに取れないインクの染みみたいに、影を落としていった。


『ねえ柏木くん。無理しなくていいんだよ』
 千香ちゃんは事あるごとに関係が重くなったら伝えてくれと言うようになった。
 もちろん彼女との関係を重くなど感じていない。ただ、なるべくなら彼女の為にも、穏便な形での交際がしたかったのだ。
「どうした柏木。提携の件で悩み事か?」
 ついつい考え事をしてしまっていた。いまは酒の席で、進藤部長に連れてきてもらっていたのだ。
「よせよせ、酒の席では仕事はなしだ」
「いえ、違うんです。ちょっと私生活の方で」
 なるべく仕事には出ないよう気を張っていたのだ。どうやら少し出てしまったようだ。そして進藤部長は目ざとい人だった。
「彼女か?」
「……はい」
 部長にはいままでのあらましをすべて話してしまう事にした。腹を割って話すと幾分か心がすっきりしていた。
 そういえば仕事を始めてから友達というのを持たなかった。話す相手は千香ちゃんだけだった。
「それは……認めてもらうまで粘り強くやるしかないだろうな」
「そのつもりです」
「しかし柏木よ、そこまでやれるのか?というかお前その娘と結婚するつもりなのか?」
22記号と君と僕 5/6 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/05(日) 23:38:57.77 ID:saVb7QF1O
「それは……わかりません」
 わからなかった。自分の中でも整理が全くついていなかった。口にした事すらなかった。
 何と言っても彼女はまだ大学生なのだ。恋愛経験だって少ない。これから先自分よりも好きな相手が見つかるかもしれない。
 もし結婚するとなったら責任も出てくる。相手の一生を左右する事だ。わからない、それが正直な感想だった。
「彼女とは話し合ってみたのか?」
「恐くて……まだちょっと言えてません」
 すると進藤部長は快活に笑って、肚を割れと言ってきた。
「言え言え。隠し事はなるべく無しにしとけ。全部ぶちまけた方がいい」
「でも……いいんでしょうか」
「それがお前の気持ちならいいんだよ。後は二人で一緒に考えればいいんだ」
 半信半疑だった。あやふやな態度では彼女が傷つくのではないかと思った。
 でも酒の酔狂でこんな事を言う人ではない。


 次の日、彼女に相談してみた。泣かれる覚悟だったが、安心されてしまった。
「良かった……やっと言ってくれた」
「え?」
 ひどく安心したようにため息をつく、目の前の彼女の反応がよくわからなかった。
「だって柏木くんずっと自分で抱え込んで話てくれないんだもん。一人で決めちゃうんじゃないかって、心配してたんだ」
 自分のしていた心配とはあまりに対極にある物なので驚いた。
「だいたい結婚なんて……私だって分かんないよ。まだ二十歳になったばっかりだもん」
 それもそうなのだろうか。少し先走りすぎたのかもしれない。なんだか肩の荷が降りてしまった。
「でも嬉しいな。もちろん結婚するなら相手は柏木くんに決まってるからね」
「うん。結婚しよう」
「宜しくお願いします」


 そして数ヶ月後、いよいよ新型三角が社の新商品として売り出された。かなり好調な売れ行きのようだった。
 なにより提携先の各社とのコラボ商品が功を奏していた。普段三角を利用しない層にも購買欲を煽る事に成功していたのだ。
23記号と君と僕 6/6 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/05(日) 23:39:59.97 ID:saVb7QF1O
 新型三角は一部の間でかなりの噂を呼んだ。社としては久しぶりのヒット商品となった。
 彼女との間にあった問題もいつしか吹っ切れていた。認めてもえないなら、それまでゆっくりやるしかない。
 そう決めた自分は毎日隣の大家の屋敷に通いつめる事にした。帰れと言われてもずっと玄関先で待った事もあった。
 半年もすると向こうが折れた。そうして一年が過ぎた頃、ようやく付き合いが許されるようになった。
 彼女は泣いて喜び、手にしていた三角を落とした。自分は笑っていた。まるでピカピカの三角みたいに幸せだった。
 いつか最高の三角を彼女にプレゼントしようと心に決めた。この世でたった一つの三角を送るのだ。彼女は喜んでくれるだろうか。
 もちろん喜んでくれるだろう。そうと決まったら早くいい三角を作らなきゃいけない。ああ、素晴らしきかな人生は。

《終わり》
24 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/05(日) 23:41:13.74 ID:ukcsRTjH0
お疲れ。では投下します
25歪む均衡1/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/05(日) 23:44:31.10 ID:ukcsRTjH0
 黒板に白い線が地に対して水平に、左から右へ向かって、一見気ままな長さを取って引かれていく。続いて右の終着点から今
度は左上に向かって、水平線と同じほどの長さを持った白い線が引かれる。最後に上の終着点から左の頂点へ向かって白い線が
結ばれ、正三角形が現れた。とはいえ、無造作に作図されたものだから線は撚れ、図形としても歪で、長さも角度も統一しきっ
てはいない。均衡しきっているような、微妙に緊張がほぐれているような、どこにでも比重が傾きうる有様はつかみどころがな
く、こちらの認識を歪ませんとしているように映った。
 心理学者ハイダーは、と前置いて、講師は三角形を書いた意図を折り目正しい口調で解説していく。認知的バランス理論とい
うものがあり、自分、他人、モノ、それら三者の関係がどうあるかで人間関係の緊張状態の如何が概観できるのだという。
 講師は三角形に文字を加えていく。上の頂点にP(自分)、左の頂点にO(他人)、そして右の頂点にX(モノ)。次にPか
ら伸びる二つの線、それからOからXへ伸びる線を、それぞれ矢印に仕立て上げる。最後に三つの線の上に「+」と書き込んで、
講師は説明に移った。
 例えば、私(P)はある女性(O)に好意を抱いているとします、その上で私はあるアーティスト(X)が好きで、彼女も同
様だとしたら、認知的にはバランスが取れている、と規定されています、私が好きなものを彼女も好きでいるということは仲を
深められるのでは、と期待できるところがあって安心する、というわけですね。……
 講師が言うには、線分に与えられた記号の積の総計がプラスになっていればバランスが取れ、マイナスであれば取れていない、
となるそうだ。マイナスの状態を説明するにはPとOを逆転すればいい。つまり、女性は男に対して好意を抱いていない、だが
同じアーティストを好んでいる、趣味の一致をきっかけにしつこく言い寄られてしまうのではないか、と思って緊張が生まれる。
ここからプラスの状態に転化させるには、アーティストへの関心を無くす、つまりマイナスにすればいい。趣味が違えば、関係
性もそうは深まらないだろう。
 こうした体系を正しいと仮定すると、人間は極力バランスの取れている状態へ向かう、もしくは回避する傾向がある。もし逃
れられない関係、例えば恋人や親類の場合は、相手あるいは自分の嗜好を変えさせることでバランスを取ろうと努める。それで
もバランスが取れない場合はその緊張状態を黙殺するか、極端な話、関係自体を断ち切ってしまう。前提には、不協和を嫌う人
間心理が据えられている。
 理屈はわかる。生真面目な語り口に面白みはないが、あらかじめ定められた講釈をなぞる限りにおいてはまず腹に落ちやすい。
しかし、どこか釈然としない。それほど簡単に捉えられるのか、と体系自体に疑問を投げかけるわけではない。理屈を踏まえた
上でも説明できないものがある、というわけでもない。理屈が正当でありつつも一方で不当をも備えている、そんな事柄がある
ようで、引っかかりを覚えてならないのだ。
26歪む均衡2/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/05(日) 23:48:31.83 ID:ukcsRTjH0
 例えばどうだ。ある男には恋人がいるが、かつて恋人の親友に恋焦がれていた。当然この親友には一度そっぽを向かれている
が、その理由は彼女が女しか愛すことが出来ないから、というもので、しかもその愛情は男の恋人へ向けられている。恋人とは
仲むつまじくあるばかりか、体を交えてまでいた。そして恋人と親友の関係は、男が入り込んでからも変わる様子がなく、挙句
には彼の了解を得てまで体を結んだことさえある。親友は恋人から離れられず、恋人は男とも親友とも関係を保ち続けることを
願い、そして男はといえば――

 ――三角関係となると話が違ってくるんじゃないの、それ。
 テーブル越しに座る美里は微笑みつつ、あざけるような調子で言った。問いかけの形を取った言葉は自覚を促しているのか。
 ――僕はあのコを好きでいる。けれど、親友もあのコを好きでいる。でも僕は親友も好きだ。これは、ハイダーによればバラ
ンスが取れているけれど……。
 ――モノならともかく、人となると親友を裏切ることになるんだよ。
 ふぅん、と、納得したのかどうかが窺えない応え方をして、美里は紅茶をすすった。
 我ながら酷い返答だった。それでもあえて無防備な答えを口にしたのは、ひとえに美里に対する苛立ちがあったからだ。私と
て三角関係における矛盾には行き着いている。だからこそ議論を吹っかけた。恐らく、彼女もわかってはいるのだろう。しかし、
わかった上であえてこちらの攻撃をいなすように、さらにはこちらの攻撃の拙さ加減を指摘するように、一からあげつらってみ
せる。その無神経さに苛立ちを覚えたのだ。
 ――僕があのコを諦めても総計はマイナス、友達を裏切ってもマイナス、友達が諦めてもマイナス。なのに、全員が素直だっ
たらプラスで、緊張がない。おかしいわね、ずいぶん。
 問いかけているのか、それとも独り言として言っているのか、一人勝手に考察を進めている美里の様子は、苛立ちを助長させ
た。それを知ってか知らずか、彼女は私にかまわず話を続ける。
 ――三すくみだと、どうなるんでしょうね。蛇さんは蛙さんを食べるけど、ナメクジさんには勝てず、ナメクジさんは蛙さん
に弱い。
 ――総計はマイナス。
 ――となると緊張が三つ固まって、皆すくんじゃうわけね。これは説明がつくか。
 美里は私から目を離して天井を見上げ始めた。恐らく、例証を探ろうとしているのだろう。どうやら上辺だけをとりつくろう
だけで、核心に迫るつもりはないらしい。
27歪む均衡3/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/05(日) 23:50:30.01 ID:ukcsRTjH0
 しかし、一点をみつめる目の色には芝居気は見られず、背筋を伸ばし、口を無防備に開けている様子からも、空中を浮遊する
かのような弛緩しきったところだけが見えたので、核心に迫ることを望む私はためらいを感じた。
 ――エディプス・コンプレックスは? 父親と、母親と、それから子供。
 ――あれは面倒だな。初めのころはバランスが取れていない、子供は母親を愛しているが、父親は邪魔な対象、しかし、父親
はいわずもがな母親を愛している。ただ、それからは……。
 ――そこで母親を諦めるっていうのは、三角形の中から外れちゃうのかしら。
 段々事情が込み入ってきて、会話自体に億劫を覚えてくる。ためらいを持ったまま、相手の顔色を窺いつつ、こうしてはぐら
かされていくのかもしれない。話題を振ったことに後悔を感じつつ、思案に暮れたふりをして黙っていると、
 ――そうそう、私とあなたと瑤子のことも。
 美里がこともなげに言ってのけたので、思わず目を剥いてしまった。顔を見ると、驚きをからかうような笑みが浮かべられて
いる。それに応じる余裕もなければ、無神経さを咎める言葉もない。ただ黙って、いたたまれなさに歯噛みするしかなかった。
 全て見透かされているのはわかっていた。だが、はぐらかしていたようで、実はこちらの心情を操っている。何度そんな態度
を見せられたものかわからないが、見せられるたびに驚いてしまっては腹立ちを感じ、なおかつ無力を論われたようで、恥じ入
りたくなる。美里の出し抜きに追いついたことなど、私には一度もなかった。
 ――大丈夫よ、最近はあのコも落ち着いてるから。もっとも、あなたが心配するのも当然でしょうけど。
 そんな事情を踏まえてか、彼女は優越した調子に言った。本気で同情しているのだろうか。しかし、問い詰めたところでどう
なるものか。すっかり掌握されきっているな、と自嘲するしかないくらいに、私は何も言い返せなかった。実のところ、こうし
て人間は均衡を保とうとして、不注意のままに均衡を崩してしまうのかもしれない。
28歪む均衡4/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/05(日) 23:51:15.77 ID:ukcsRTjH0
 公園の近くを歩いていると、鎖と鉄棒が擦れあい、甲高くあえぐような音が聞こえてくる。鳴っては止み、すぐにまた聞こえ、
また止まって――時折、女児のはしゃいだ声が混じる。きっと戯れ楽しんでいるのかと思って、通り過ぎるところだった。とこ
ろが、ふと目を向けてしまうと、足を止めざるを得なくなった。ブランコに女児二人が対面して相乗りしている。ブランコは二
台あって、片一方は誰もいないのだが、それでも彼女たちは相乗りをしていた。
 振り子の原理で生み出される遠心力に耐えるだけでも小さな体には負担が大きいだろうに、対面しながら揺すぶられるとなる
と、互いに密接に抱き合っていなければならない。髪の長い大柄な女児が板に乗り、髪を横に結わえた小さな女児が体にまたが
り、両手は互いに鎖をしっかりと持ちながら、ブランコは大きく揺れ続けた。時折、またがっている方が振り落とされそうに小
さな胸板をのけぞらせては、腕の力で何とか持ちこたえ、もう一方の胸に体を預けていく。衝撃が起こる瞬間、悶えるような声
が響くが、板に乗るほうは止めようとは言わない。板に腰をしっかり据えつけ、ブランコから振り落とされないように、小さな
方の体を受け止め損ねないように、堪え続けている。その顔は歪んでいるのだが、たびたび上がる嬌声のせいか苦痛には見えず、
むしろよがっているようにさえ見える……。
 ――その二人がやがて同性愛になっていった、と?
 ――さあね。通りすがりの他人だったし。まぁ、愛とまでは行かないだろうが、萌芽くらいはあったんじゃないかな。
 惹きつけられるがままに女児たちを眺めていたという、少年の頃の記憶を語る友人の顔には、野次馬が浮かべるような下卑た
笑みが表れていた。酔った故に赤らんでいて、最早自分の関心しか語らないような、一人勝手なところが窺える。その表情は私
にも向けられ、お前のところもそんなきっかけがあったんじゃないか、という言葉が掛けられる。
 だが、お互いに目覚めるきっかけなんてなかった、と美里は痛痒を見せない顔で言っていた。交際を始めて少し経った頃、そ
して、美里と瑤子が再度体を交えた頃に。
 ――美里ちゃんのことが好きで好きで仕方ないの、なんて言ってくるのよ。切羽詰った、震えた声で。
 告白されたのは高校の頃だったそうだ。おずおずとして、目も合わさず、言葉だけを投げかけてくる。生来の性格もあったろ
うが、事が事だけにもっともな素振りではある。困惑を覚え、若干抵抗も感じた。だが、受諾してしまった。いささかの同情、
友情という拘束、そうしたものが頭を捉えたものか、首はおのずとうなずいていた。
 ――あのコの体のこと、知りたい? まぁ、向き合う、っていうくらいだから、聞いてもらわないと困るんだけど。
 一つ一つ段階を踏んだ末にたどり着いた体は、ひどく半端だった。成長の過程とはいえ、体の線にふくらみは乏しく、触れて
みても押し返しは弱い。抱き寄せてみても、同性ながらに全体が包めるほどだった。その代わり媚びてくる動きは浅ましいほど
で、押し倒す方はこちらだったにもかかわらず、相手が求める所に応ずるがままでいると呑み込まれてしまうのでは、という恐
れが立ち上がってくるほどであった。男もそれなりに知っていただけに、自らもまた無意識の内にこうした浅ましい姿態を晒し
ているのでは、という怯えも含まれていた。されど、義務めいた心か、それとも本能が動かしたものかは知れないが、相手を抱
く力は段々に強くなっていく。そして、呑みこまれる。そうして交じらいを重ねる間に、抵抗は薄れ、むしろ希求が湧き上がっ
てきた。
29歪む均衡5/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/05(日) 23:52:07.50 ID:ukcsRTjH0
 そうして付き合いは深まっていったが、それまで異性にしか興味がなかった身としては、同性を愛する理由は知りたいところ
ではあった。
 ――それがね、何にもないって言うの。私も色々調べてみたんだけど、親から虐待されたとか、男が苦手になるきっかけがあ
ったとか、そういうのがあのコにはないみたい。要するに、当たり前のことなんでしょうね。
 女しか愛すことができない。それは異性を愛すのが基本であるかのように語られることと、同等であると教えられたからには
応えなくてならないと思えた。嬉しさもあった、そして、愛情が生まれた。友情と愛情、どちらも好意で、本質の上では同じな
のでないのではないか、そんな無邪気な思い込みが、瑤子を受け入れる理由になった。
 ただ、限界はやってくる。同性しか愛せない者にとっての恋人とは、ただでさえ男に言い寄られる対象であることに加え、女
も敵に含まれる可能性が生じる。元はといえば、恋人は”正常”と呼ばれる所に居た人間だ。それだけに、繋ぎ止めようとして
体を求める心も強くなっていく。実体を伴わない妄執から来る欲望は、ともすると狂気に触れかかる。
 ――結局、私が耐えられなかったわけ。
 だが、後悔は感じていない。実際、ごく短い期間ではあるが異性に対して覚えたような愛情を、同性に対しても感じることが
出来た。時に、異性に対するものを越えて。その証拠が、今でも時に体を求めてくる瑤子を受け入れることにある。

 ――思うんだが、腐れ縁ってものはそんなに強いものかね。
 友人は言う。依然として傍目からしか表せない興味を示して。
 知った限りではない。だが、瑤子を受け入れてくれる相手はそうはおらず、ようやく見つけたとしても性分が合うとも限らな
い。それが全てではないだろうが、体が合うかどうかさえも。そんな中、未だ友情は保ったままたびたび顔を合わせる美里は、
数少ない受け入れ手でもある。第一、美里と一度関係を絶ったのも瑤子の妄念が原因だったのだから、それを取り除けば障害は
ないに等しい。
 ――実は望んでたんじゃないのかな、美里も。俺との関係に飽きて、それで、腐れ縁の方に行ったんじゃないか。
 投げやりな言葉は、事態がどうにか落ち着いたからこそ言える。一方で、事態が起きた時に本気で無鉄砲に思っていたのも事
実だった。
30歪む均衡6/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/05(日) 23:52:51.51 ID:ukcsRTjH0
 ――おっかないねえ、女は。つくづく……。
 投げやりに放たれた言葉が耳に留まっては反復し、私の認識と擦り合わないでいた。おっかない。それは事実だが、女全般に
あてはまるものだろうか。そもそも”おっかない”と思うこと自体、男としての自分本位な論理ではないだろうか。
 ――いっそそのレズ、いや、同性専門の子をヤっちまったらどうだ。元はといえば恋してたんだし、もしかしたら一度男を知
れば和らぐ可能性も……。
 ――お前は男から言い寄られてもそう言えるのか。
 声を荒らげると友人はたじろいで謝った。酔った上での冗談とはわかっていた。だが、その声の中に含まれていた言葉に、思
わず反応してしまった。倫理などを蔑ろにする形にはなるが、それは瑤子を貶める言葉にあったのではない。私が瑤子に恋して
いた、その事実を突きつけられた時、不意にではあるが、核心を突かれたような気になったのだ。
 ――軽率だった。悪い。まぁ、向こうからすればこういう人間がいるから、悩まなくちゃいけない面はあるんだろうが。
 ――だろうな。
 ――でも、そんな関係を未だに続けているお前もどうかとは思うけど……。
 ――自分でもどうかしてるとは思うよ。女とはいえ他人に抱かれた恋人を、すぐに取り返そうと抱き返すんだから。
 抱いたのか、と友人は驚いた。ただ、素直な驚きではなく、やりやがったな、とでも言いたそうな、一種の羨望にも似た表情
が表れていた。実際、それで関係が保たれている面はあるから、今更否定のしようがない。ただ、その動機に込み入ったところ
がある故に、詳しく語るのは避けざるを得なかったが。

 薄暗い部屋に生ぬるい空気が立ち込める中、私は美里の体を抱き寄せる。成熟しきった体は弾力に満ちていて、肌を重ねるた
びに手ごたえを覚えるがために、これだけでも愛が育まれているのではないか、と錯覚させるところがある。全身はすっかり弛
緩しきっていて、何とか意識を保とうとする緊張だけが、彼女が唇をかみ締める様子や、薄く開いた目に表れている。
 体を交えれば同性への欲求が薄らぐのではないか、という認識は私の中にもあった。ただし、それは美里に向かうものだった。
自分に物足りないところがあり女にほだされてしまったのだろうから、自分が強い快感を覚えさせてやればいい。そんな子供じ
みた反感があった。それは功を奏した面もある。だが、裏目に出た面もある。美里の体の中から瑤子の匂いが立ち上ってくるの
を、常々感じるようになったのだ。いわずもがな一度も体を交えたことなどないのに、過去の男の臭いなどといったわかりやす
いものではなく、明らかに女として違う匂いが感じられた。
 足を広げ、美里は深呼吸をする。弛緩しきった体に息を吹き込み、来るべきものに耐えようとする体勢を作り上げようとし――
その時、緊張が高まって、特有の匂いを発する。やけに清潔で、それでいて煮詰まりきっていないような、半端さを矯正した
くなるような匂い。錯覚どころではなく、充満しきって避けたくなる所さえある。かつての美里に備わっていたはずはない。余
裕に満ちた、こちらをたぶらかすような匂いだけがあった。となれば今立ち上がっているのは、瑤子の匂いではあるまいか。
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:53:09.17 ID:iHhMuDB00
さるよけ
32歪む均衡7/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/05(日) 23:53:36.06 ID:ukcsRTjH0
 股座(またぐら)を押し込むと、軋んだ末に生まれるような喘ぎが上がる。美里は込み上げてくるものを耐えようと、私に体
を預けてくる。目を閉じ一心不乱のまま体を動かしていると、段々に女と交わっているのではなく、体そのものと交わっている
ような気がしてきて、現実の感覚を取り戻そうと呼吸を深めていくと、なぜか、別の女と交わっているような感覚が入り込んで
きた。美里はこみ上げてくるものを押し出そうとするように声を上げ続ける。やがて自分から求めるような向きが見えてくる有
様は、時に卑しい。
 瑤子への想いなど、とうに振り切ったはずだった。美里にしても、その代わりに、などという気持ちは、微塵も持ってなかっ
たはずだ。だが、私はたとえ想像のなかであろうと、瑤子を抱いている気分になった。美里が実感として話した、瑤子の体が確
かに現前している。浅ましいほどに体を求め、それに呑み込まれてしまっては、もう戻ってこれないのではないか、と想わされ
るような――しかしながら、体は動き続ける。私自身もまた浅ましいほどに体を求め続ける。思考が弛緩し、体の埒外に何もか
も放たれようとしている時、朦朧とした自覚が浮かんで来る。
 もしかしたら私は自分の力で美里を強く抱いたことで彼女を取り戻したのではなく、瑤子という未知の女に対する欲情が推進
力となって取り戻すことが出来たのではないか……。
 互いが果てた後、荒い呼吸が混ざり合い、陶酔した体も熱を帯び、薄暗い部屋全体に熱気が充満しているように思われた。向
こうから唇を重ねてきて、それに応えるうちに、弛緩していた体がまた緊張をまとっていくのが感じられる。それは美里も同じ
ようで、息を整え言葉をつむぎだそうとする時、またあの半端な匂いが漂ってきた。
 ――もう一回。
 そんなつぶやきを聞いた時、わずかに肌が粟立った。受諾したとして、のめり込まぬままにいられるだろうか。友人の言葉が
思い返される――女は、おっかない。なるほど男からしてみれば間違いはない。そういう紋きり型の言葉は、こんな状況にある
際の非常口として効果を上げてきたのだろう。だが、今更思い出したところでもう遅い。体は女を求めている。こいつは、抵抗
むなしく呑みこまれてしまうのかも知れない。
 その時、あぁ、と気だるげに湧き上がってくるものがあった。これは私が瑤子を犯しているのではなく、瑤子が私を犯してい
るのだな、踏み込んでいえば、女が男を犯そうとしているのだ……。

 了
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:55:01.38 ID:ukcsRTjH0
さるよけありがとう。
まとめに転載しようと思ったけどNo.04以降全然まとまってないもんでもうどうしようもないから寝る
34 ◆HmfYvBHWkM :2010/12/05(日) 23:56:02.13 ID:kQaCR1ci0
では、投下します
35もっともっと大切なオンリーワン 1/7 ◆HmfYvBHWkM :2010/12/05(日) 23:57:30.24 ID:kQaCR1ci0
 午後四時を少し回った頃、安藤雄二郎は部室に現れた。約束の集合時間は過ぎてしまっていたが、時間通りに到着しておこうと思える用件ではなかった。
 部長命令なのだから仕方なく参加するんだ、と安藤は考えていた。そうでなければ、こんなくだらない企画に付き合うはずもない。
 部活をさぼろうかとも考えたが、一年生の平部員である今の立場を考えると今後肩身の狭くなる思いはしたくなかった。
「遅いぞ安藤! 今から始めるところだ、早く空いてる席に着け」
「はぁ……部長、ホントにやるんですか?」
「当たり前だろ、今更何を言ってるんだ? ……ひょっとして、お前にはお気に入りの女がいないのか?」
「いや、いますけど……」
 部長の言葉に、安藤は視線を外して窓の外を見やる。
「それなら参加するんだな。なぁに、今更恥ずかしがる必要なんてない。思いの丈をどんとぶちまけるんだ!」
 バァンと激しく背中を押された勢いのまま、安藤は廊下寄り最前列の椅子に着席した。
 八畳ほどの部室は適度な人口密度を保っており、奥の机には読みかけの雑誌類がだらしなく散乱している。
「安心するっす。お前の趣味がどんなものだったとしても自分との友情は不変すよ」
 隣の椅子に座っていた佐々木がにいっと白い歯を見せた。
「よし、これで全員出揃ったな。それではこれより……」
 本当にやるのか、と安藤は深く嘆息した。この後の様子を想像するだけで頭がクラクラしてきた。
 ばかげている、本当にばかげている。他の部員は皆ノリノリだが、部長の気まぐれに無理やり付き合わされる身とすればたまったもんじゃない。
「これより第一回、俺の嫁選手権を始める!」
「ウォォォォォッ!」
 男ばかり三人、彼らが発する野太い歓声が部室内を駆け巡る。もちろん安藤は数に含まれていない。
「ルールを改めて説明する。各自一回ずつ、どんな方法でも構わない……自分の嫁を精魂込めてアピールしろ! そして審判である俺がPR内容
を判断し、嫁への愛が最も深いと認めた一名がチャンピオンとなるのだ!」
 マイクを持っているつもりなのか、部長は右拳を顎の下でぎゅっと握り締めている。
36もっともっと大切なオンリーワン 2/7 ◆HmfYvBHWkM :2010/12/05(日) 23:58:15.66 ID:kQaCR1ci0
「そして優勝者への商品は……聞いて驚くなよ? 嫁に関係する一万円以内の商品を自由に購入できる権利だぁ! 資金は当然部費から捻出する!」
 一万円以内という部分が現実的で生々しいな、と安藤は思った。
「出演してるDVDでもいいし、雑誌でも構わない。どれだけ買っても一万円以内なら部長権限で許可しよう」
「部長、もし嫁が複数いた場合はどうなるんですか?」
 フルリム状の眼鏡を人差し指でくいっと持ち上げ、蒲原が問いかける。
「今回のルールでは一夫多妻制は認めていない。どちらか一人、本当に好きな方を選ぶんだ。
もう一人は愛人や現地妻扱いだから複数PRはOK、という屁理屈は認めないぞ」
「分かりました。あと、アピール対象は三次元でもいいんですか?」
「それは別に構わないが……我が部活の活動内容や部員の嗜好を考えると、三次元の嫁を持つ部員はいないと思うぞ」
 そりゃそうだ、ウチは基本的にアニメやゲームの話題をだらだら垂れ流すだけだからなと安藤は頷く。
 授業が終わった後、のんびりとオタク的な会話を楽しめればそれで満足なのだ。嫁自慢なんてはっきり言ってどうでもいい。
「ええ、一応ルール確認のために質問しました。回答ありがとうございます」
「他に質問はないな? ではこれよりアピールタイムを開始する! 発表する順番は、佐々木、蒲原、江崎、安藤で頼む」
「了解しました」
「では佐々木、お前がトップバッターだ。自慢の嫁を発表してくれ」
「うす。ではいくっすよ……佐々木健史十六歳、自分の嫁は涼宮ハルヒの憂鬱に登場する長門有希っす」
「やれやれ……ありがちですね」
「その域に、達していない(笑)」
 他の部員から冷やかしの声が次々に飛んでくる。
「外野はちょっと黙ってもらえるすか。ええと、普段は感情を表に出すことはないっすけど、キョンに対しては打ち解けている姿がキュートなんすよ。
控えめながら感情を表す姿は普段のおとなしい彼女と違って、かわいいんすよ。感情を露わにした瞬間、背筋を電流がビビッと駆け巡ったすよ。
ああ、俺の嫁は長門しかいない! って心に誓ったすね」
 茹でだこのように上気した表情で佐々木が唾を飛ばしている。その姿を横目に、蒲原は沈痛な面持ちで優しく、諭すように語り始める。
「やれやれ……かわいい後輩の将来が心配になってきましたよ。はっきり言って、ハルヒは既に終わコンなんですよ?」
「……いくら先輩でも、言っていいことと悪いことがあるんすよ」
37もっともっと大切なオンリーワン 3/7 ◆HmfYvBHWkM :2010/12/05(日) 23:59:00.53 ID:kQaCR1ci0
「はぁ……いいですか、ハルヒは原作小説の新作が既に三年以上発売されていないんですよ? 大元がこうなっている以上、先は真っ暗闇なのです。
認めたくない貴方の気持ちも分かります。ですが、いくら映画化やアニメ化で盛り上げようとも原作再開の目途が立たない現状ではどうにもならないのです。
いつまでも終わったコンテンツに執心せず、新しい嫁を見つけ出した方が得策ですよ」
 元々ハルヒに対しては否定的な立場だったけど、今日の蒲原先輩はいつにも増して辛辣だな、と安藤は思いを巡らせる。
「放っといてもらいたいっす。自分の嫁はこれからも長門有希以外、ありえないすから」
「これで発表は終わりか? 佐々木」
「はい、終わりっす。これ以上自分が語っても長門の良さは体験した者にしか分からないすからね。賢者は黙して語らずってやつっす!」
 自分を賢者呼ばわりかよ、と安藤は思わず突っ込みを入れたくなる。
「よし、お疲れ様。なかなか気合の入った良いアピールだったぞ」
 社交辞令であることを祈りたい。
「次は蒲原、お前の番だ」
「了解しました、部長。……ではまず簡単に結論から。私の嫁はとある魔術の禁書目録の御坂美琴です」
 束となったレポート用紙に目を通しながら、蒲原が針金の通ったような声で喋り始める。
「とある魔術の禁書目録は鎌池和馬(通称かまちー)作のライトノベル小説で、現在までに本編二十二巻、短編二巻の計二十四巻が電撃文庫
より刊行されています。今も現在進行形で発売されており、原作再開の目途が立っていない涼宮ハルヒシリーズと違い、終わったコンテンツとは
一線を引いていると言えるでしょう。本作品は最先端の科学技術が研究応用されている学園都市を舞台に、上条当麻という少年の奮闘を描いた」
「ストップ! 禁書の成り立ちはよく分かったから、御坂の魅力を語ってくれ」
 ありがとう部長、このままだと朝帰りコース間違いなしだった。安藤は部長に感謝の意を表す。
「私としては本作品の魅力をまだ語っていないのですが……部長命令とあらば仕方ありませんね。
では、御坂美琴の魅力について語りましょう。彼女は茶髪のショートヘアで利発な女性であり、所属する常盤台中学の制服を常に着用しています。
性格は正義感が強く行動力に秀でており、超電磁砲と呼ばれる発電能力を操って敵を攻撃します。
彼女は主人公である上条当麻に対し、初めは嫌悪感を示していました。ですが戦闘を繰り返すうちに親愛の念を抱くようになります。
元来彼女は気が強く、上条当麻に対して敵対的な発言を連発します。ですが態度は恋する乙女そのものであり顔を赤らめる、
動揺する、妄想を繰り広げるといった可愛い部分を表現するようになります。私は彼女のそんな姿にいたく心を揺さぶられたのですよ。そして」
38もっともっと大切なオンリーワン 4/7 ◆HmfYvBHWkM :2010/12/06(月) 00:00:06.05 ID:sQZSYiX70
「長話の途中ですみませんが先輩、はっきり言って趣味悪いっすね」
 嘲るような瞳で佐々木が蒲原に視線を向ける。
「……ほう? 理由を聞かせてもらいましょうか」
「自分、その御坂美琴が主人公やってるアニメを見たんすよ。そしたら彼女、能力のない者を蔑むような発言や行動をとってるじゃないすか。
まるで才能の無い奴は死ねと言わんばかりに。おまけに人の話を聞かずに手を出すわ超能力で攻撃するわでやりたい放題。
粗暴っていう言葉がピッタリの奴でしたよ。まあ興味のない人にとってはくだらないだけの話をべらべら続ける、いわゆる言葉の暴力が
得意な先輩にはお似合いの嫁すね、ははは」
「ふむ、何なら言葉だけではなく体でも示しましょうかねぇ」
「屋上へ行きましょう、久しぶりにキレちまったすよ」
「おい、やめないか二人とも!」
 ビリビリと部室の空気が張り詰める。
 だから参加したくなかったのに、と安藤は強く後悔していた。部員達の性格上、自分の嫁を自慢して優勝させるためなら、
他人を貶めることも厭わないだろうと予想できた。その結果として、いざこざに発展する事態も安藤の中では想定内だった。
「止めろ二人とも! 暴力事件を起こす気か!? 落ち着いて冷静になれ!」
 部長が二人の間に割って入った。そして江崎は蒲原を後ろから羽交い絞めにし、安藤は佐々木の肩に腕を回して落ち着かようとする。
「くっ、今回は部長の顔に免じて許しますが、次はこうはいきませんよ」
「上等すよ先輩、いつでも挑戦待ってるっすよ」
「いい加減にしろ!」
 一瞬即発の空気から部室が解放されること約十分、クールダウンを経て嫁自慢が再開される。
「次は江崎、お前の嫁を自慢してくれ」
「……分かり、ました」
 聞き取りにくい声でぼそぼそと呟きながら、江崎と呼ばれた少年が腰を上げる。
「えっと、僕の、嫁は……アマガミの、七咲、逢、です……」
 緊張で上手く言葉を紡げないのか、途切れ途切れになってしまう。しかし彼はこの瞬間、間違いなく最愛の女性の名前を皆に告げた。
39もっともっと大切なオンリーワン 5/7 ◆HmfYvBHWkM :2010/12/06(月) 00:01:17.07 ID:sQZSYiX70
 だがそんな彼の必死な想いをぶち壊すかのように、蒲原が情け容赦なく野次を飛ばす。
「アマガミならラブリー先輩一択でしょう」
「あっ、あの……」
「自分、カミングアウトいいすか」
「どうした、佐々木?」
「実は自分、みゃーで抜いたことあるんすよ」
 佐々木がさも当然といったような口調で告白する。そんな彼に対し、安藤が不思議そうな顔で尋ねる。
「みゃーって何?」
「東北楽天ゴールデンイーグルスの背番号十八番」
「それはマー」
「坊やだからさ」
「それはシャア」
「たむらけんじ」
「それはちゃー。って、いいかげんにしろ!」
「おー、きちんと残さず拾ってくれたすね。センキュー」
「これぐらいちょろいもんだぜ……って、ホント何なんだよみゃーって。俺、アマガミは全く分からないんだよ。この通り!」
 困り切った安藤が両手を胸の前でピタリと合わせる。
「じゃあ教えるっすよ。みゃーとは主人公の妹で美也のことっす。アニメ版では橘美也って名前で登場してるっす」
「え、みゃーってキャラクターの愛称だったの?」
「雄二郎の疑問を解決できたようで良かったっす。攻略対象外なのが惜しいくらいのキュートな女の子っすからね」
「ってか、お前の嫁は長門だろ?」
「違うんす、違うんすよ。自分は嫁をオカズにはできないんす。嫁が汚されるような気がしてソロ活動できないんす。
みゃーはいくら汚れても構わないすけど、長門にはずっと綺麗なままでいてほしいんすよ」
 気持ち悪い。安藤はこの同級生に対して素直にそう思った。
「ぶっちゃけ、私には彼女の良さが全く分からないんですけどね。何ですかまんま肉まんって……吐き気がしますよ」
 蒲原が苦々しそうに眉をひそめて吐き捨てる。
「お。言ったっすね!」
「いい加減にしろというのが分からないのかっ」
 部長が佐々木の胸板を容赦なく手甲で打ちつける。ぼふっというくぐもった音と共に痩身の一年生は猛烈にせき込む。
40もっともっと大切なオンリーワン 6/7 ◆HmfYvBHWkM :2010/12/06(月) 00:02:17.26 ID:sQZSYiX70
「げふぉっ、ごほっ、何で自分だけすか……」
「売られた喧嘩は買わないようにしろ。そして蒲原も挑発的な言動は慎め」
 一連のやり取りを眺めながら、安藤は彼らに対して言い様のない不快感を抱いていた。〜は俺の嫁と言うのは許そう。
二次元キャラをオカズにして自慰行為に耽るのもギリギリ許せる。だが、訳の分からない処女信仰と作品及び登場人物を
貶める行為は彼に嫌悪感しかもたらさなかった。
 もう、こんなグロテスクな欲望に塗れた血も涙もない争いはごめんだ。
「いい加減にしてくださいよ……」
 肩を震わせて安藤がぽつりと呟いた。
「俺はただ、みんなと一緒に楽しくアニメやゲームの話がしたいだけなんです。明るく楽しく時間を過ごしたいだけなんですよ……」
 安藤の目線は色褪せた板張りの床を捉えている。彼の視界は湧き出る液体でどんどんぼやけていく。
「それこそ、俺がこの道へ入るきっかけになったCCさくらについて楽しく語れたらいいなって。さくらちゃんの事を話せたらどんなに嬉しかったか」
 他の部員達はじっ、と安藤の話に耳を傾けている。
「でも、みんなの話題は最近のゲームやアニメばかり……さくらちゃんについて話せないまま、ここまできてしまった。
 俺はたまたま見たCCさくらの再放送でさくらちゃんを知り、作品の素晴らしさを感じた。例え懐古厨と蔑まれようと、
年月が経っても色褪せないものって、あると思うんですよ。一つの目的に向かって全力で頑張る女の子ってかわいいじゃないですか」
 一年生の切実な告白はなおも続く。
「幾多の苦労が少女に襲いかかってくるんですよ。けど、さくらちゃんは底抜けの明るさとへこたれない勇気で苦難を乗り越えていくんです。
俺はそんな素敵な彼女と出会えたCCさくらという作品を作ったスタッフの皆さんに、満面の笑みでありがとう、と伝えたいです……」
 感極まった安藤は板の間に膝を落とし、両手を地面に着いて体重を支える。ぽたっ、ぽたっと薄茶色の板を水滴が濡らす。
 部室内はしん、と静まり返っていた。どこからか聞こえる運動部員のかけ声が、薄澄色に染まった室内にうっすらと響いてくる。
 やがて、部長が手を叩き始めた。乾いた音が部屋にこだまする。
 それにつられるように他の部員達も拍手を始め、部室には四人分のささやかな乾燥音が鳴り響いた。
「おめでとう、お前が優勝だ安藤。締めを飾るにふさわしい、気持ちの込もった嫁自慢だったぞ」
 現状が飲み込めていないのか、安藤は液体に濡れた顔のままぽかーんとしている。
「ありがとうな雄二郎、おかげで自分も目が覚めたっすよ」
「ふふっ、何が大事なのか逆に教えられましたね……」
「僕の出番は、食われてしまったけど、後輩を支えるのも、先輩の役目」
 部員三人も、すっきりとした表情で安藤の姿を見つめる。
41もっともっと大切なオンリーワン 7/7 ◆HmfYvBHWkM :2010/12/06(月) 00:03:11.58 ID:sQZSYiX70
「みんな、ありがとう、ありがとう……」
 ぐしゃぐしゃになった顔を安藤が制服の袖で拭う。ブレザーの腕部に液体がへばり付く。
「さて、優勝賞品となる一万円以内の商品だが、何を買うつもりだ?」
「はい、CCさくらの原作単行本かCD、アニメ版のビデオを購入するつもりです」
 それを聞いた部長は太陽のような眩しい笑顔でうんうんと頷く。
「はははっ、お前ならそう言うと思ったよ。よし、購入を許可する」
 部長の一際気合の入った宣言と共に、音の洪水が一層強まった。そして穏やかな笑みをたたえる安藤に対し、部長がこっそりと耳打ちする。
「周りから馬鹿にされるのが恐くて言えなかったが、実は俺もCCさくらファンなんだ。はにゃーん、さくらたん萌え〜」
 まさかの三角関係!? 勝者だった少年は我が耳を疑った。
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:03:57.31 ID:sQZSYiX70
投下完了です
ではでは
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:08:34.27 ID:eW4pypwQ0
予約者が終わったようなので転載をさいかいします
44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:09:20.02 ID:7EGH9rs20
まとめへの転載はとりあえず引き受けよう。
途中で疲れたら誰か代わってくれ。
45折られた筆と王子様の絵 1/4 ◇pxtUOeh2oI:2010/12/06(月) 00:09:53.84 ID:eW4pypwQ0
「あのさ、曽良。キャンバスって、何で四角なわけ?」
 美術室の椅子に座って、星の王子様を読む雨野志都は、それがまるで不思議なことであるように言った。
「四角じゃダメ?」俺は彼女の方に目を向けず、イーゼルに立て掛けたキャンバスを見つめたままで返事をした。
 もうすぐ全国高校生アート展の1ヶ月後には締切があるのだ。遊んではいられない。俺は志都とは違う。彼女の
ような天才ではないのだから。
「四角でも良いけど、他の形でも良いじゃん。丸と三角とか。ほら、まーるさんかくしかーくって歌もあるし。
星形なんかも良いね」
「良いかもしんないけど、それじゃあキャンバスを貼れない」
 キャンバスとは木枠にめいっぱいつっぱった布を貼るものだ。角が鋭ければ破れてしまうだろう。
「じゃあ、油絵やめるわ。水彩で紙に描く」
「は?」キャンバスに伸ばそうとした筆をはっと止め、驚いた俺は彼女の方に視線を向ける。
「なにいってんだよ。油描くんじゃなかったのか?」
 志都の目の前に置いてあった油彩用の道具を指さす。
 彼女は道具に人一倍拘る方だ。今回の画展用に、筆も絵の具も、その他もろもろ、かなり良い物を揃えている。
そんな道具を買うために、彼女はバイトを繰り返してきたのだ。そんな道具がまだ一度も使われていない。
 志都のことだ。今回使わなければ、今後一切、使われない可能性すらある。
「もったいないだろ」俺は筆を置いて彼女に近づく。
「欲しければあげるよ」志都が小さい筆を一本手に取り、こちらに差し出して言う。「もういらなくなったから」
「そうじゃなくて! こいつらを買うためにあんだけバイトしたんだろ?」
「違う」志都は俺を睨み付け、持っていた筆を折る。それから捲し立てるように言葉を放った。「良い絵を描く
為にバイトしたんだよ。そんな絵の為に良い道具を買うんだよ。それは、道具を使う為じゃない。絵筆に振り回
されて描いた絵なんて下品だ。曽良には、それがわからない?」
 もう勝ち目はない。彼女の言っていることは正しいのだから。絵を描くことだけに関しては。
 俺は折られて机の上に放り置かれた筆を見る。あの筆は細く小さいけれどかなり高価なものだ。絵筆の様子は
虚しく寂しい。
「わかるけどさ……」
「わかれば良いよ」志都はくったくがなく微笑む。「そういうところが曽良は良いよね」
 どういうところなのかはわからない。
 感じている限りでは、彼女は俺と一緒にいるのを嫌がってはいないようだった。彼女は他の部員には誰一人な
つかない。会話なども少なく、絵についての話すらしない。
46折られた筆と王子様の絵 2/4 ◇pxtUOeh2oI:2010/12/06(月) 00:10:38.49 ID:eW4pypwQ0
「んじゃ、スケブと水彩絵の具買ってくるから、またね」
 志都は読んでいた星の王子様を机に置くと、手を振って、美術室からさっさと出て行ってしまった。
 残されて一人、俺は昔を思い出す。部の自己紹介の時、新入部員が今までに描いた絵が机の上に並べられてい
た。その中で輝く一つの絵。それは小さく素晴らしい絵だった。絵を越えて、誰が描いたのかを知りたくさせる
大きさが感じられた。
 志都は、絵の世界に認められるかもしれないし、認められないかもしれない。ただ少なくともそういった世界
に片足を入れ、評価を受けることを許されるレベルの、可能性という名の才能を持っている。
 それは世の中の九十四パーセントが所持していない才能。業界にかかわらず、天才と凡人を分ける生まれつき
の壁がある。
 彼女は天才だ。だからささえて行きたいと思う。自分にもそれぐらいの能力はあると評価していた。俺は彼女
が好きだった。絵を描く能力を含めて。
 静かになった部屋に、チャイムが響く。気を取り直して、筆を握り、何事もなかったように絵に向かった。

 三ヶ月後。志都と俺は、二人でアート展の会場に来ていた。俺の絵が大賞を貰い。彼女は審査員特別賞佳作と
いうよくわからない賞を受けていた。けれど、そんな賞なんかが意味を持たないことを俺は良く知っている。
「大賞って、どんな凄い絵だろう」まず俺の絵を見に行こうと歩く中で、志都がふざけて言う。
「隣で見てただろ。ただの賞狙いのダメ絵だよ」
「それがわかんないんだよね。何で賞狙うわけ? いつも賞と絵の価値に関係ないとか言うくせに」
「だって推薦欲しいし」
「さいってい!」志都は笑った。
 人だかりの中に、綺麗な額縁に入れられた自分の絵を見つけた。黒に近い色の背景に浮かび上がる白い髪、白
い肌、赤い唇たち。タイトルは「Lady Gaga」。キャンバスは縦に区切られ、五人のガガがそれぞれ違う表情で強
くこちらを見ている。
 PVのワンシーンから思いつき、自分なりに手を入れたものだ。対象も高校生らしく良いだろうし、歳を取った
審査員のお歴々には、彼女がどのようなパフォーマンスをする人物かもわからないだろう。
 絵が凄いのではない。ガガのセンスが凄いのだ。俺の絵はそんな才能に寄り添っているだけに過ぎない。
「大人気じゃん?」これは彼女なりの嫌味だ。
「わかりやすくて良いでしょ。次は志都のとこ行こうか」
 会場をゆっくりと歩いて行く。あまり見るべき絵はないが、それが礼儀といったものだろう。
 志都の絵は、パンフによるとかなり出口に近いところ、奥まった場所にあるらしい。
47折られた筆と王子様の絵 3/4 ◇pxtUOeh2oI:2010/12/06(月) 00:11:23.29 ID:eW4pypwQ0
 賞の名前自体からもあまり評価を受けていないことがわかる。きっと場所もなんとか押さえたに違いない。
「あ、あれじゃない」俺が絵の方に手を向ける。
 志都の絵は遠くからよく目立つものだった。なにせ三角の紙に描かれた絵であるのに、無理矢理、四角い額に
入れられているのだから。
「これ酷くない?」志都が言う。「三角の額を用意しろっての」
 絵は三角の紙の形ままに、中にも三角形が描かれたものだった。ずらした合わせ鏡のように、三角形のフレー
ムが画面の奥に進み、捻られ、傾き、ときには拡大、しかし順次縮小されながら、いくつも描かれ、暗い世界に
軌跡を残している。
 三角形の外と内では色が大きく塗り分けられ、闇夜を進む緑色のフレームの中は淡い赤に染まっていた。
 タイトルは「星の王子様」。
「どうよ」志都が言う。
 彼女はいままでこの絵が何であるのかを教えてくれなかったが、タイトルからなんとなく絵の描かれた空間を
理解した気がした。
 やはり志都の絵は素晴らしいものなのだ。
「凄いね。宇宙を進む船の絵?」
「いや、違うけど」
 違うのか。
「じゃあ何?」
「本気言ってるの?」志都がこちらの顔を伺う。
「ああ……」俺は迫力に負けそうになりながらも頷いた。
「僕は、うわばみに飲み込まれた像の絵を描いたのに、大人はかっこいい帽子が描けたわねって褒めるんだ」
 志都が心がここにないかのように、言葉を発する。それは星の王子様の冒頭の一節だったように思う。
「そう、わからないんだ」志都は呟いた。
「これは大蛇に飲み込まれた人の見る景色を描いた絵ですね。いや、うわばみなのかもしれませんが」
 背後から突然、声をかけられた。声の主は弱々しくやせ細った中年の男。しかし目は力強く絵を見つめている。
「真っ赤な体内、どこまで続くトンネルのような道。もう出ることはできない世界では本来明るいはずの外界が
闇となる。丸や四角では、蛇特有のうねりが出せない。だからこそのこの形。これはあなたが描いたものですか?」
「そうですけど」
「ちょっとお話などさせてもらえないでしょうか? 私はこの特別賞を出した審査員です。他の方の反対に合っ
て佳作など付きましたがね」
48折られた筆と王子様の絵 4/4 ◇pxtUOeh2oI:2010/12/06(月) 00:12:12.71 ID:eW4pypwQ0
「わかりました」志都はすぐにそう答えた後でこちらを見る。「バイバイ」
 彼女の言葉は冷たく、俺には目の前の梯子を外されたように感じられた。視界が真っ暗になるように。
「志都、俺も一緒に……」
「わからないんじゃ、いても邪魔なだけだよ」
 声をかけた審査員の男は困ったような表情を見せる。
「曽良は、何が良いと思って、さっき褒めてくれたの?」
 それは……。すぐには答えられなかった。絵を評価する言葉が見つからないことはおかしくはない。本来言葉
で表現できないものを描くのだから。だけど、どこまで抽象的に考えても、何を凄いと思ったのかを紡ぐことが
できない。
 言うならば「志都の絵だから凄い」、はずだ……。という絵を見ていない最低の評価方法。そう、自分の眼が
曇っていたということに今、気付いた。そしてそんな言葉を発することは、美術に関わる者として、あまりにも
恥ずかしい。
 俺は何も言えなかった。明るいふりをして、さきに帰っていると別れ、ふらふらと会場を後にした。
 志都は、もうまともに話してはくれないかも知れない。他の部員と同じように、自身に関係のない人として扱
うのだ。
 彼女は道具を欲していたのだろう。自分の絵を、名前も人柄にも関わらず、評価を付けてくれる客観的な眼と
いう道具を。ただ褒めるだけでなく、無意味に貶すわけでもない、精度の良いカメラを求めて、付き合ってくれ
ていたのだ。
 だから俺の絵が下手でも話してくれた。道具の描く絵などに興味などなかったのだ。時折、道具を磨くように、
話を合わせてくれただけ。
 願わくば、眼の曇りを取り去ったとき、もう一度、付き合ってくれないだろうかと俺は思う。けれど、そんな
願いが叶う日は来ないだろうことも感じていた。それぐらいのことはわかる。
 彼女は新しい道具を手に入れて、
 折られた筆は、俺だった。                             <了>
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:13:04.80 ID:eW4pypwQ0
つづいてもうひとつ転載
さるったら続きよろしく
50凛として咲く花の如く1/7 ◇FcModpyaRc :2010/12/06(月) 00:13:58.33 ID:eW4pypwQ0
 物心ついたときに家族全員を麻薬組織《快楽の川(フィオルット)》に殺され自身は殺し屋としてここまで育てられた、齢一四の少年《首斬
りのラミナ》に、自分の意思というものは存在しなかった。自分の意思が顕現する余地がなかった。ただ命令を受け入れ人を殺す殺人
マシーン。だから、余計な手出しをする麻薬撲滅委員会副会長家族皆殺しという今回の命令も、何の障害もなく遂行しようとしていた。
 無数に配置されたボディーガードが持つウージーサブマシンガンから、ラミナを狙って放たれる弾丸、九ミリパラベラム。
 ラミナは――それら全てを認識しながら最小限の肉体運動で、人ならざる速度でかわしていった。          
 感覚暴走剤《§(セクション)》。それは人間の感覚、速度を文字通り暴走させる薬。日本の池袋のどこかで偶然作られて、海を渡って南米
までやってきた。この世界の一秒は、《§》適合者のラミナにとっては四秒に相当する。世界を自分以外スローモーションにする薬。
 激しい空気抵抗をその身に受けながら銃弾の雨を掻い潜り、コマ送りのような速度でゆっくりとラミナを振り向くボディーガードの
一人に、ラミナは右手に携えるマシェット――刃渡り四〇センチの無骨な黒き特製刃物――を振るう。喉に冷たき薄鉄が食い込んで、
次の瞬間にはザシュッと肉を裂く小気味いい斬撃音が聞こえ、胴体と頭が断絶された。何が起きたのかすら分からないまま驚愕の表情
で宙を舞う頭。ラミナは走る。黒きマシェットは赤色の軌跡を空中に描きながら、次なる首へと差し込まれてゆく。
 悲鳴がこだまする。「バケモノ」と罵る叫び声がする。それらの音声は、加速化されたラミナにとっては酷くスローモーションだった。
 ラミナはマシェットをちらりと見る。ラミナの芸術的とも言える首の斬り方のお陰で、少しも刃が欠けていなかった。
 ラミナは屋敷に入る。使い慣れない拳銃をこちらに向ける年老いた男。一〇メートルの距離からラミナめがけてトリガーが引かれる
が、銃弾が放たれる寸前に、風の塊が男の左横を駆け抜けて、その首は鮮血と共に宙に舞った。使用人達はそれぞれ散弾銃を持ち合わ
せラミナを迎撃しようとするが、速度が遅すぎた、片っ端から首が舞ってゆく。屋敷は血を垂れ流す胴体だけの死体でいっぱいだった。
 鉄の匂いが充満する部屋の窓から、加速化された仕草で窓の外を見る。長い黒髪の少女がここから逃げようと庭を精一杯走っていた。
 窓から飛び降りて――ふと怒鳴り声がした――ラミナは一心不乱に走り続ける少女の元に駆ける。数瞬のタイムラグ、ラミナはその
言葉を認識した。――「待て! そいつは殺すな!」と。しかし体は既に少女の後姿に迫り首を斬ろうとして、肉体のブレーキをギリ
ギリまでかけて、刃は少女の柔肌に触れる寸前で止まった。ラミナは動きを止める。少女が後ろに振り向き、初めてラミナに気づく。
 少女は首筋に冷たい感触を覚えた。金色の大きな両眼が恐怖で見開かれて表情は絶望に染まって、意識を失って地面に倒れこんだ。
 ラミナは後ろを振り向く。自分に言葉を発した人間、ありとあらゆる欲に塗れたような汚い顔付きの、でっぷりと太ったスーツ姿の
男を見る。その口から酷くゆっくりとした言葉が発せられる。――「いい娘じゃねえか。上玉だぜ。殺すなんて、勿体ねぇぞ?」

 《§》の効果持続時間は一〜二時間。副作用は肉体の酷使による数十時間の強制睡眠。それ以外の副作用はまだ解析されていない。
明日突如ポックリ死ぬのかもしれない。しかし、《快楽の川》にとってラミナは――貴重な戦力とは言え――所詮捨て駒だ。
 物置のような狭くて暗い一室で、ラミナは目覚めた。時計を見る。一八時間が経過していた。明かりをつけて、壁際に置かれたサン
ドウィッチをぺろりと平らげる。マシェットをその手に持っていないラミナは、顔立ちの整った気弱な少年にしか見えない。こんな血
に塗れた世界にいなければ、ただの気弱な少年として青春を謳歌していたのだろう。しかし、ラミナの居場所は、この血に塗れた世界
にしか存在しない。意思を持たないラミナは、そのことに否定も肯定もせず、ただただ命令を受け人を殺しながら生きている。
51凛として咲く花の如く2/7 ◇FcModpyaRc :2010/12/06(月) 00:14:43.74 ID:eW4pypwQ0
 ペットボトルのコーラを一気飲みして、何も考えずに、あるいは何も考えれずに、低い天井を眺めていた。
 ラミナはふと尿意を覚えてトイレに行こうと、建付けが悪い引き戸をガラガラと音を立てて開けて、隙間風が吹く打ちっぱなしのコ
ンクリートの廊下を歩いていると、足元の何かに引っかかってこけそうになった。鍛えられた反射神経を使って、そのまま空中前転し
て着地する。足元を見る。ラミナが殺そうとして幹部に止められた、あの少女が、長い黒髪を床に散乱させて、ボロ切れとしか言えな
い一枚の服を直接纏いながら、下を向いてガクブルと震えていた。ラミナは状況に流されて、とりあえず声をかけてみる。
「あの、どうしたんでしょうか?」
 自分が殺そうとした少女に話しかける口調とは思えないような、優しい響きを持った声だった。
 少女がラミナを見上げる。首筋の冷たい鉄の感触を思い出して、また表情が恐怖に満ちて、声にならない黄色い声を。
 一方、ラミナは薄暗いなか少女を観察する。幼かった。一〇歳ぐらいの少女だろう、長い黒髪と金色の瞳、ハーフなのだろう、と。
「……僕は貴方に危害を加えるつもりはありません。殺すな、と命令されたので。それより、大丈夫でしょうか?」
 ラミナは少女の金色の瞳を見る。少女は、そんなラミナの至って気弱そうな表情に、少しだけ、ほんの少しだけ安心した。
 少女から匂いが発せられている。うら若き少女特有のミルクのような甘い匂いを掻き消すような、醜い、とても醜い男の匂い。
 穢れを知らない少女は、欲望に満ちた獣達に組み伏せられ、劣情をこれでもかと叩きつけられ、そうして、ずっと、ずっと。
「……いたかった。すごい、いたかった。もう、イヤだよ……イヤだよ……」
 少女は初めて言葉を発した。幼くて、切ない響き。頼れる人間は全員――ラミナに――殺されて、地獄を味わって、そうして、ずっ
と、こんな日々が永遠に続くのかと想像して、少女は泣いた。獣達に汚されたその躰を洗い流すように、とめどなく涙を流し続けた。

 困った、とラミナは思った。
 トイレに少女が付いてきた。流石に入り口で待っていたが、トイレから出るとまた付いてくる。更に、ついでにシャワールームに入
って体を洗おうとしたら、その横のシャワールームに入って一人で体を洗っているのだった。否定も肯定もしないラミナに甘えるように、
少女はラミナの裾を引っ張りながら付いてくるのだった。
少女は、本能的に察していた。ラミナは、悪い人じゃないと。頼れる人間は、この人しかいないと。
……要するに、懐かれたのだ。
 少女は、血気盛んな男達の性欲を処理する為の、道具の一人。一応、ラミナも幹部に何度か「ヤってみねぇか?」と言われたことがあ
るのだが、性欲が全く無いため、しかしYESともNOとも言わない為にほったらかしにされて、一度も経験したことがない。
 しかし、ラミナが自分の物置部屋に少女を連れてきたところで、実際何の問題もない。だから、ラミナは何も言わなかった。
 狭い一室。蛍光灯が天井に一つ、毛布が一つ、小さな冷蔵庫が一つ、一度も使われたことのないブラウン管テレビが一つ。
 少女はおもむろにテレビの電源を入れた。サッカー番組にチャンネルを合わせた。そして、ごく自然にラミナの膝の上に座りながら、
にこにこと観戦しているのだった。 少女の黒髪がラミナの頭を覆い視界を無くす。そんなことなど気にせずに、ラミナは悩んでいた。
 ……困った。本当に困った。どうしよう?
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:15:30.98 ID:7EGH9rs20
さるよけ
53凛として咲く花の如く3/7 ◇FcModpyaRc :2010/12/06(月) 00:15:34.12 ID:eW4pypwQ0
 ラミナは、別にこの状況が迷惑だから困っているわけではない。ラミナにとって、こんな状況は、初めてだからだ。どういう風に対処
していいのか分からない。ラミナは初めて頭を唸らせながら悩み事をした。膝の上から、少女の暖かい温もりを感じながら。

 サッカー番組が終わって、少女はなおラミナの膝の上にちょこんと座りながら、そのままくるりとラミナと向き合った。
 至近距離で二人は見つめあう。ラミナは、気恥ずかしさを感じてそっぽを向いた。しかし、ラミナにとってこれは初めての《気恥ずか
しさ》という感情なので、そんな自分の感情が《何なのか》が分からなくて、首を捻った。
「じゃじゃーん! じこしょうかいしまーす! わたし、ナデシコ。ナデシコって言うんだ」   
「ナディシカ?」
「ナデシコだよう、ナデシコ。ブラジル人のおとーさんと日本人のおかーさん。お母さんがナデシコって付けてくれたんだ!」
「ナダシカ。ナデシク。ナデュスカ。ナデュシコ……ナデシコ?」  
「そう! そうだよ!」 
 発音が上手く言えないラミナをナデシコは無邪気に笑いながら、しかしラミナの発音が上手くいくと、ナデシコは手をパチパチと叩い
て無邪気に褒め称えるのだった。ラミナの膝の上で。
「そっちは? そっちはなんて言うの?」
「僕は……ラミナ。刃(やいば)という意味の、コードネーム。両親に付けられた本当の名前は……忘れちゃった」
 ラミナは分かっている。刃(ラミナ)が家族全員の首を躊躇いもなく刈っていったことを、ナデシコの首を刈ろうとしたことを。それでも、
ナデシコはラミナを恐れなかった。知識の無さ、幼さ、無知、だからこそナデシコの本能が「ラミナは優しい人だよ」と、そう語りかけ
てくるからこそ、たとえ目の前にいる少年が家族を殺した殺人鬼であっても、恐れを抱かなかった。
「らみなー、おなかすいたー。なにか食べるものをー」
「ちょっと待って」と言って、ラミナは小型冷蔵庫を久しぶりに覗いて「あらら、全部腐ってる」と、ため息を。
「ナデシコ、今から冷蔵庫で保存出来る食べ物いっぱい貰ってくるけど……ナデシコはこの部屋にいたいの?」
「……うん。ここにいたい。ずっと、ここにいたい」
 咲き誇る花のような、無邪気な笑顔が一瞬のうちにくしゃくしゃになった。多分、思い出したのだろう。
「分かった、行ってくる。ここから出るんじゃないよ?」   
「はい!」
 
「よぉ、ラミナ。いきなりどうしたんだぁ? そんなに食いもん両手一杯に抱えてさぁ?」
 麻薬組織《快楽の川》の幹部、ナデシコを殺そうとしたラミナを寸前で引き止めた、でっぷりと太ったスーツ姿の男に話しかける。
「あの、単刀直入に言いますが。ナデシコのことなんですが、」
「ナデシコ? 誰だそれ? ……ああ、そうか、あの少女のことか」
54凛として咲く花の如く4/7 ◇FcModpyaRc :2010/12/06(月) 00:16:23.60 ID:eW4pypwQ0
 男はニヤニヤとした笑みを隠せないようだ。脂ぎった表情で、愉快そうに語る。
「あの娘は、なかなか良かったぜ。最近年上ばっかりだからさぁ、たまにはガキでも犯そうと思ってたところなんだぜ。俺が最初にヤっ
たんだが、あの締まりは最高だわ。マンコから血を流し泣き叫ぶ幼女を無理やり犯す。クセになっちまいそうだ」
 ラミナは男が愉悦に顔を歪める光景を、ナデシコが苦痛に顔を歪める光景を想像した。……なんだろう、この感情は? 
 まるで目の前の男が許せないような、今すぐにでもマシェットで男の首を切断してしまいたくなるような、それに足る合理的な理由な
ど一切ないのに、それでも今すぐに男を殺したくなるような、ラミナの胸の中をぐるぐると回りまわる変に熱い何か。
 ラミナは知らない。それが、《怒り》だということを。しかし、実行には移さなかった。そんな意思など、初めからなかった。
「そのナデシコのことなんですが、僕の部屋で暮らさせてもいいでしょうか?」
 男はちょっとびっくりしたような表情を浮かべた。
「へぇ、お前、自分でモノ言えるようになったのか。……まぁいい。好きにしろ。ただし、あいつはただの肉便器だぜ? お前の部屋で
食って寝るぐらいならかまわんが、あいつにはウチの男どもの為にしっかりと働いてもらうからなぁ?」
「……はい、分かりました」

「ラミナー、おかえりー」   
「ただいま、ナデシコ」   
「何食べてるの、ナデシコ」
「ん? 新品のポテチ。探したら冷蔵庫の裏にあった。あと二日で賞味期限だよー、あぶないよーう」
 ……やれやれ。寝転がりながらポテチを一枚ずつ齧るナデシコを見ていると、ラミナは心が癒されていくような感慨を覚えてゆく。
 ラミナは部屋の隅にもたれると、ナデシコはすぐにその膝の上に乗ってくる。ナデシコはテレビドラマを見ている。一言も話さない。
 けれども、ナデシコは後ろに左手を回す。ラミナの左手を握る。少女としての限界のような力で、すがる様に、強く握っていた。
 しばらく時が経ち、その握る手の強さが急に弱まる。寝たのだろう。小さな寝息を立てて、ラミナに持たれながらすやすやと眠る。
穢れなき天使の様な寝顔だった。ラミナはナデシコが寒くならないように毛布を掛けた。
 言えなかった。ラミナはナデシコに言えなかった。言えるわけがなかった。これからずっと、苦痛を受け続けるんだよ、と。

 日々が過ぎていった。
 ラミナはいつも通り命令を受けてマシェットで人を殺していった。
 ナデシコはいつの間にか部屋から居なくなり、いつの間にかボロボロになって帰ってくる。
 ナデシコは、それでも笑顔を浮かべていた。無邪気な笑みを。
ラミナは段々と、その笑顔が痛々しく思えてきた。共に日々を過ごして、ナデシコを理解していった。
 ナデシコはラミナに心配をかけたくない。無邪気を装い笑顔を偽って、見え見えの虚勢を張って。
55凛として咲く花の如く5/7 ◇FcModpyaRc:2010/12/06(月) 00:22:26.54 ID:3Hv9+yet0
 ナデシコは、ラミナの居ないところで、一人泣いていた。音を出さないように、静かに一人。
 ……それを、ラミナは知っている。
 齢一四の少年《首斬りのラミナ》に、自分の意思というものは存在しなかった。自分の意思が顕現する余地がなかった。 
 ――それじゃあ、これはなんなんだ!?
 ――このどうしようもないほどの、この気持ちはいったいなんなんだ!?

 ナデシコは、今日もラミナの物置部屋にいる。
 ラミナが部屋の隅に座り、その膝を上にナデシコが座って。
「ナデシコ、あんまり昔のこと覚えていないんだけどね、これだけは覚えているんだ」   
「なにー?」
 ナデシコはこっちを向いた。額と額がぶつかる至近距離。
 ナデシコの、眩しくも痛々しい笑顔。
 ラミナは、それが嫌だった。ナデシコに、偽りの笑顔じゃなくて、純粋に、笑ってほしい。
「僕ね、今日、誕生日なんだ」   
「えー! すごーい! お祝いしないと! 何にするーう?」
「だから、お祝いと言っちゃなんだけど、――今から、ここを逃げよう」
 ナデシコはびっくりして、驚いて、下を向いて、押し黙って……か弱い声で一言。
「……うん」
 ――これが、僕の意思だ。

「なぁ? 傑作だろ?」
「最高だ! 最高に面白い。殺人マシーンの分際で、いっちょ前に人間ドラマ醸しやがって」
 ラミナの物置部屋に仕込まれた隠しカメラの映像を見て、《快楽の川》の者達は哂う。
「まさかラミナが《今からここを逃げよう》だなんてセリフを言うヤツだったとは。そんな意思なんて、全然無いと思ってたが」
「いや、俺はその可能性があるかもしれんと思ったぜぇ? だから隠しカメラをこっそり設置して監視していたわけよ」
 男が得意そうに語る。あの、でっぷりと太ったスーツ姿の男が。
「性能は良かったけど、所詮捨て駒だ。兵を呼べ。二人が出てきた瞬間に、蜂の巣だ」

 ラミナとナデシコは、二人揃ってラミナの物置部屋を出た。ひどく、静かな夜だった。
 ラミナの左手とナデシコの右手を握って、お互いの指を絡め合って。
56凛として咲く花の如く6/7 ◇FcModpyaRc:2010/12/06(月) 00:23:25.94 ID:3Hv9+yet0
 コツンコツンと二人が歩く音があちらこちらに、静かに反響する。二人の声も、静かに反響する。
「ナデシコ、」
「なにー?」
「……僕、ナデシコのこと、なんだか好きみたい」
「もちろん、わたしもだよ、ラミナ」
そうして、歩き続けて、開けた場所に出た瞬間だった。歪んだ三日月が、夜空に浮かんでいた。
 数百もの銃口が、ラミナとナデシコに向いていた。
「よう、お前ら。二人仲良く逃避行ってかぁ?」
 建物の屋上に立つ、でっぷりと太ったスーツ姿の男。歪んだ三日月を背景にして、男は饒舌に語る。
「止めなきゃ良かったなぁ。ラミナがナデシコを殺しときゃ、こんなことにはならなかった」
 男は右手を夜空に掲げる。パチン、と指を弾く音がこだました。
「まぁ、死ねや」
 無数もの銃声が重なり合い、夜空に反響した。

 ――僕達は、逃げるんだ。
 ラミナは、奥歯に仕込んだ感覚暴走剤《§》をギシリと噛み砕いた。言い表しようのない苦さが口内を伝導する。
 ――その瞬間、世界はスローモーションになった。
 迫り来る銃弾の豪雨。ゆっくりと、ゆっくりと。それでも、間に合わない。これでは避けきれない。
 世界の一秒はラミナにとっての四秒となる。足りない、それでは足りない。
 集中する。寿命を削ってでも、今この瞬間に全てを集中する。速度を、速度を。
 世界にとっての一秒が、ラミナにとっての、五秒、五.五秒、六秒、六.五秒、脳がショートしそうになる。七秒、七.五秒、イカレ
そうになる、それでも……八秒。
 ――世界の一秒は、ラミナにとっての八秒となった。
 ラミナは、ナデシコを左手で担いだ。ナデシコに空気抵抗を極力浴びせないように、ラミナは疾走した。
 銃弾の豪雨を掻い潜る。髪の毛を掠る。服を掠る。肩を掠る。避けれないような、銃弾の嵐は、――マシェットで切り裂いた。
 今のラミナには、銃弾の軌道を見切るだけでなく、銃弾の中心を把握し斬ることが出来る。銃弾は真っ二つになって流星のように、ラ
ミナとナデシコを避けて後ろに飛ぶ。ラミナは駆けながら、幾度も幾度も流星を作っていた。
 ラミナは走る。風を裂いて駆ける。
 空気抵抗を強引に無視して、悲鳴を上げる肉体を無視して、このスローモーションの世界を疾走する。
 ラミナは出口の門まで走り抜けた。
57凛として咲く花の如く7/7 ◇FcModpyaRc:2010/12/06(月) 00:24:06.87 ID:3Hv9+yet0
 もう、マシェットはいらない。
 ラミナは、後ろに振り向いて、屋上に佇むあの男の股間に向かって、マシェットを投擲した。
 そして、走り抜けた。
 どこまでも。
 《§》の効果持続時間が許す限り、どこまでも駆け抜けた。



「ナデシコ、大丈夫? 風、きつかったでしょ?」
「ううん。わたしは大丈夫。それより、ラミナは大丈夫なの?」
「《§》の副作用な肉体酷使による強制睡眠。大丈夫さ、かなり無理してるけど、まだまだ僕は眠らないよ」
 どこかの都会、明るく照らす人工の明かりの中、ラミナとナデシコは、二人仲良く歩いてく。
 ラミナの左手とナデシコの右手を握って、お互いの指を絡め合って。
「ねぇ、ナデシコ」
「なに?」
「今から、アメリカ大使館に亡命しにいくよ。僕は、麻薬組織《快楽の川》のデータ、それから繋がりのある複数の麻薬組織のデータ、
それを僕達二人の身の安全と交換、ってことでさ」
「すごい! ラミナ天才!」
「だから、落ち着いたらさ、ナデシコはどこにいきたい?」
「ラミナとならどこでもいいけどさー、海行きたいなー!」
「海か、僕、多分泳げないと思うけど、その時はよろしくね」
「えー! ラミナださーい!」

 二人仲良く、一緒に、どこまでも、いつまでも。

END
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:38:27.41 ID:7EGH9rs20
現在、週末品評会244thの投票受付中です。今回の品評会お題は『三角』でした。
投稿された作品は■まとめ http://yy46.60.kg/test/read.cgi/bnsk/1291452930/ -週末品評会244th『三角』投稿作品まとめ- にてご覧頂けます。
投票期間は2010/12/07(火)24:00:00までとなっております。

感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
投票には以下のテンプレートを使用していただくと集計の手助けとなります。
(投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません)

******************【投票用紙】******************
【投票】:<タイトル>◆XXXXXXXXXX氏
【関心】:<気になった作品のタイトル>◆YYYYYYYYYY氏
     <気になった作品のタイトル>◆ZZZZZZZZZZ氏
**********************************************
― 感 想 ―

携帯から投票される方は、今まで通り名前欄に【投票】と入力してください。
たくさんの方の投票をお待ちしています。 
時間外の方も、月曜中なら感想、関心票のチャンスがあります。書いている途中の方は是非。
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:39:56.01 ID:2/kRMrZt0
おつおつ
結局今回も諦めてしまった歯がゆい
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:46:08.92 ID:7EGH9rs20
品評会作品一覧

No.01 万能統計士Kの事件簿_公共交通編 ◆X78jHks0c.氏
No.02 食肉 ◆Lq1ieHiNSw氏
No.03 存在の証明 ◆/8L81UtKTg氏
No.04 食肉 ◆Oamxnad08k氏
No.05 山内の人生論 ◆.oIbKCaZu2氏
No.06 夕暮れパズル ◆xaKEfJYwg.氏
No.07 記号と君と僕 ◆1ImvWBFMVg氏
No.08 歪む均衡 ◆ihO9dxzf9I氏
No.09 もっともっと大切なオンリーワン ◆HmfYvBHWkM氏
No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oI氏
No,11 凛として咲く花の如く ◆FcModpyaRc氏
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:47:15.90 ID:7EGH9rs20
多分これでいいだろう。
まとめスレへの転載も済んだ。
不備があってももう知らね。
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:50:13.54 ID:NTx1o694O
おお今回は多いのね
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:05:43.92 ID:eW4pypwQ0
おーつー
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:11:29.03 ID:lFwhaJOY0
乙か礼
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:26:27.73 ID:3Hv9+yet0
↓これが俺の新しいお題だああああああああああああああああ
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:28:57.03 ID:lFwhaJOY0
かえる
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:29:53.82 ID:V3q8SWFfO
おっつー
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:37:36.41 ID:3Hv9+yet0

かえる

ひらがなというのがミソだ
go back...frog...can buy...return...change...hatch out...
意外な奥深さを持つお題。それが俺のッ――!
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:50:03.12 ID:WWHh6o830
うるさい黙れ(aary
70全感 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/06(月) 01:57:11.69 ID:eW4pypwQ0
全感投下します

ネタバレありありなので一通り作品を読んでから読んでね
71全感 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/06(月) 01:57:56.57 ID:eW4pypwQ0
No.1 万能統計士Kの事件簿_公共交通編 1/4 ◆X78jHks0c.氏
これはあのようつべへの流出はない歴史の話なんだろうか?
それとも未公開部分とあるからそれ以外の場所ということか。
飛行機はないの? と思ったので、オチがそれかあ、という感じだった。
あと尖閣とかウィキリークスとか時事っぽいのはあまり好きじゃない。
島耕作とかでもやってたけど後付けでやってあれは何がおもしろいんだろうか。
星新一はそういう時代背景がわかりそうなのを極力廃したらしいね。あまり読まないけど。
個人的に、あの流出した人は犯罪者だと考えている方なので、これもいまいち受け入れられなかった。
自民の人もこんなバカなことはしないでしょう。
というかネット全盛の時代に直接取りに来るウィキリーの人はどうなのかw
コメディとして大分のホテルからウィキリークスにネット上から渡したオチでもおもしろかったかもしれないw
あとこんな九州ローカルネタw その部分(路線の話とか)は結構、わくわくしたので後半がちょっと残念。

No.02 食肉 1/7 ◇Lq1ieHiNSw氏
人体欠損とカニバは無理なのです。
他の人の批評をもらってください。

No.3 存在の証明 1/5 ◆/8L81UtKTg氏
>「心霊写真なんてのは、シミュラクラ現象と言ってな……」
ここがうけたw
最後のオチは結構好きなんだけど、
キャラクターがあんまり研究者っぽくないような。
そんな感じがしてちょっと違和感。なんかおしい感じ。
心霊者の研究者ってのは難しいのかもな。オカルトに入りすぎるとダメだし。
研究するならまず霊を定義しないとな。
物理的に認識できないものを霊とするとか。

No.04 食肉 1/1 ◇Oamxnad08k氏
おかしいよね? なんでこんなタイトルがかぶるわけ?
カニバは無理なんだってば。
72全感 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/06(月) 01:58:41.29 ID:eW4pypwQ0
No.05 山内の人生論1/4 ◇.oIbKCaZu2氏
それなりにおもしろいけど、なんか足りん
レズができあがっちゃうのはなんとなくわかっちゃうしなあ
主人公が行動起こすのを最後に心がけてるけど、
そうじゃなくてこの作品の中でもうちょっと主人公が絡んで欲しかったかも
レズ関係を作る工作員として友人である主人公が使われて、
最後にレズ関係になったと思ったら、なぜか主人公が漁夫の利を得て正三角関係におさまってたとか
テキトー言ってるけど

No.06 夕暮れパズル(品評会)1/7 ◇xaKEfJYwg.氏
真希とか晴香ぐらいは普通に読めるからルビいらないんじゃなかろうか
点すは開けばいいし。
そして被った三角の絵でネタが被ったw でも内容が全然違うから良いか。
星の絵は難しそうだなあ。
先生が浮気相手かと思ったけど、そんなことは全然無かったぜ。
俺の心が汚れているな。結構、好きな話だった。
欲をいうと、子供と父親メインの話のほうが好きだったかも。

No.07 記号と君と僕 1/6 ◇1ImvWBFMVg氏
だから三角ってなんなんだよ!
こういう話なら二つの話にする必要なかったかも。

No.08 歪む均衡1/7 ◇ihO9dxzf9I氏
エロイエロイヨ
でもそれだけじゃなあ
最初の説明は図がないと厳しいのかなと思った
こっちの頭の問題かも知れないが
あんまり性に重きをおいたものを読まないので
こういうのの評価がわからない
純文学なのか官能小説なのか
73全感 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/06(月) 01:59:25.98 ID:eW4pypwQ0
No.09 もっともっと大切なオンリーワン 1/7 ◇HmfYvBHWkM
>キョンに対しては打ち解けている姿がキュートなんすよ
嫁が他の男に打ち解けてキュートじゃダメだろダメだ
>上条当麻に対し、初めは嫌悪感を示していました。ですが戦闘を繰り返すうちに親愛の念を抱くようになります
だから嫁が他の男に親愛の念をいだいちゃ
>作品の素晴らしさを感じた
>そんな素敵な彼女と出会えたCCさくらという作品を作ったスタッフの皆さんに、満面の笑みでありがとう
これは嫁ではなく作品への愛ではなかろうか
ということでもっとちゃんと嫁への愛を感じられるものを書くんだ
>周りから馬鹿にされるのが恐くて言えなかったが
どの辺がバカにされるのとされないのの境界なんだw

No.10 折られた筆と王子様の絵 1/4 ◇pxtUOeh2oI
自分の。久しぶりに最後まで書いたわ。
キャラがテンプレちっくでどうにかしたい。
天才側の視点で書いた方がよかったかな。
まあ全然天才じゃないわけですが。

No.11 凛として咲く花の如く1/7 ◇FcModpyaRc
時間を4倍ぐらいじゃ弾丸を避けるの無理じゃね?
まあ数字変えるだけだけど。
間のロリコン男の部分はなんか下品で嫌。
といっといてなんだが、時間がスローモーになってるなかで、
ゆっくりと蜂の巣にされるナデシコを見るけど、
手出しできないなんてバッドエンドも良いかなと思った。
薬とかが話にあまり関わってこなかったし。
なんとなく良くある話で終わってしまったような感じ。
アイテムか話かどっちかにもっと独自性の強いのが欲しいかも。
74投票 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/06(月) 02:00:13.86 ID:eW4pypwQ0
******************【投票用紙】******************
【投票】:No.06 夕暮れパズル(品評会)1/7 ◇xaKEfJYwg.氏
【関心】:No.07 記号と君と僕 1/6 ◇1ImvWBFMVg氏
**********************************************
― 感 想 ―
三角は出すだけなら簡単だけど、上手く使うのは難しいお題かなと思った
次点は3と5かな。
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:01:00.10 ID:eW4pypwQ0
以上です。
いろいろな人おつかれさまでした。
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:53:51.66 ID:eW4pypwQ0
転載して答えて寝る

432 名前:文才無しさん[] 投稿日:10/12/06(月) 02:22:10 ID:xjIBz9LA
折られた筆と王子様の絵 ◇pxtUOeh2o氏

俺この酉の人の作品好きだから感想書くね。酔ってるからいろいろあれだけど気にしないで。
まさしく、俺みたいに酉でこの人の作品は良いって思ってるようなヤツに対する皮肉を利かせた話でしたね。面白かったです。
さて、久しぶりにpxtさんの作品読んだけど、なんか、アナタ文章下手になってないか?気のせいか?
せっかく、7レスも書けるのに、なんか内容詰め込みすぎというかなんというか。展開が速すぎる気がした。
内容は、俺みたいに酉で判断するような人に対する人に皮肉を利かせた物だったけど、若干弱いと思う。皮肉が。
それに、天才の女の子の凄さが絵画という、俺みたいな一般人にとってその凄さがあまり分からないものだったから、なんかピンとこなかった。
なんか漠然としてる感じ?文章からもなんか曖昧なごまかしてる感じと思ったのは・・・俺だけかな?
pxtさんの作品は好きだから、是非これからも積極的に品評会に参加して欲しいなあ・・・と俺は思うわけですが。
77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:58:20.78 ID:eW4pypwQ0
文章下手はなってるでしょう
前回品評会に参加した数ヶ月前から今日まで短いものすら書き上げたことがゼロだったので
レス数は全然気にしてないです
書いて終わって4レスだったという感じ
どちらかというとスタートが夜の8時過ぎだったので時間に追われてたw
天才がごまかしに感じるのは、ごまかそうとしたんじゃなくて
自分の能力的にこれぐらいに書くのが限度だった感じ
自分でもなんかなあ、とは思います
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 06:24:03.10 ID:V3q8SWFfO
相変わらず全感速いな
規制スレより転載


433 文才無しさん 10/12/06 04:14:19 ID:hiaAqmob
>>77
次のも書けそうだったらぜひ
実力つり合ってないけど同じ品評会で競いたい
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 07:46:25.71 ID:wu8RIKOA0
おやpxtの人おかえりなさい
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 07:48:03.75 ID:NTx1o694O
有名人か
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 09:55:06.42 ID:DU6J6VNoO
久々に規制保
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 11:16:07.54 ID:DU6J6VNoO
来週こそは品評会に…
83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 11:25:36.85 ID:LA7N1znfO
来週がんばれ
84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 11:36:11.28 ID:7l3QL3SZ0
全感投下
不参加をいいことに好き勝手書いた
85全感 1/2:2010/12/06(月) 11:38:41.63 ID:7l3QL3SZ0
No.01 万能統計士Kの事件簿_公共交通編 ◆X78jHks0c.氏
 文章の途中でレスを跨いだり変な位置で改行していたりして読みづらい。
 ざっと目を通して丁寧に考えたんだろうなとは思ったけど、興味をそそる
 内容ではなかったのでそれ以上読む気にならなかった。

No.02 食肉 ◆Lq1ieHiNSw氏
 前置きがながいし、後半の話の肝の部分とのつながりが薄い。オチで読ませる
 タイプなのによくある中学生の恋愛話みたいなものを長々読まされるのはつらい。

No.03 存在の証明 ◆/8L81UtKTg氏
 文章は丁寧で読みやすいけど、これも前置きが長い。長々続いた二人の関係の
 描写は何の意味があるの。

No.04 食肉 ◆Oamxnad08k氏
 お題は三角ですよ。食糞愛好家△ってか。

No.05 山内の人生論 ◆.oIbKCaZu2氏
 一人称の必要あるの。この主人公の自己主張は山内を立たせる以上のものは
 必要ないと思った。締めがピリッとしない。途中面白かっただけに残念。

No.06 夕暮れパズル ◆xaKEfJYwg.氏
 綺麗に纏まってる、んだけど作品に魅力を感じない。
 あえて文句をつけるとしたら、夕焼けを愛でるシーンや
 はしゃぐ晴香の描写に使われている言葉が安直すぎてチープ。

No.07 記号と君と僕 ◆1ImvWBFMVg氏
 「三角」が何なのか明かされるのかと思ったけど、最後まで謎のままだった。
 よくわからんかったけど分かったフリをしておく。 
86全感 投票 2/2:2010/12/06(月) 11:41:40.61 ID:7l3QL3SZ0
No.08 歪む均衡 ◆ihO9dxzf9I氏
 みっしり文が詰まっててただでさえ読みにくいのに、話も淡々としてるから
 目が滑る。ブランコのシーンがえろえろで好きだけど、全体としては退屈。

No.09 もっともっと大切なオンリーワン ◆HmfYvBHWkM氏
 横に長い。語られてるキャラクターについて色々言いたいことをぐっと飲み込んで
 作品自体に感想をつけようと思ったけど、中身がなかった。

No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oI氏
 志都のキャラクターがいまいち不安定なところに違和感を感じる。言葉遣いとか。
 でもそれは何回か読み返して作者さんの全感みるまであんまり気にならなかった。
 気にはなるけどどうでもいい、みたいな。心理の妙が話の肝ってわけじゃないから
 キャラクター性に目を向けることがないのよね。

No.11 凛として咲く花の如く ◆FcModpyaRc氏
 すげえ文章詰まってるんですけど。文頭と会話一個みただけで読む気なくした。
 撫子ロックは好きだけど。

******************【投票用紙】******************
【投票】:No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oI氏
     単純に面白かった
     
【関心】:No.07 記号と君と僕 ◆1ImvWBFMVg氏
     なんか好きなのよね
     
     No.05 山内の人生論 ◆.oIbKCaZu2氏
     あとひと踏ん張りほしかった
**********************************************
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 11:45:14.85 ID:7l3QL3SZ0
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 13:41:32.30 ID:3KtXHLGu0
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 14:43:53.28 ID:DU6J6VNoO
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 16:11:39.88 ID:LA7N1znfO
今回の品評会、作品書くだけ書いて投下しようかどうか悩んで結局投下しなかったんだけど、ほかの作品読んで投下しなくて良かったと思った。
根底にあるのが一緒なのにやりかたがはるかにスマートな作品があったよ
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 16:20:08.36 ID:60p+E8v2O
お題
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 16:24:57.41 ID:h/KD6S1I0
>>91
お菓子
93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 16:29:53.45 ID:60p+E8v2O
おかしい
thx
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 17:59:26.52 ID:aZ4Td0Q50
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 20:07:23.96 ID:b7px0rnr0
umu
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 20:48:13.86 ID:FCEuot100
復活したか
97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 21:48:41.91 ID:gaVe1uTD0
あれれ?
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 22:43:09.28 ID:BoWlx0reO
全感でも書くか
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 22:53:25.10 ID:0bnNo/R90
全館投下
100全館1/4 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/06(月) 22:54:08.06 ID:0bnNo/R90
 強風と豪雨を伴う荒れ模様の天気が訪れたのは金曜だったが、水浸しになった道を辟易しながら歩いていると、ふと時雨とい
う言葉が浮かんだ。とはいえ時雨というのは晩秋から初冬にかけて振る通り雨のことで、結局前回の品評会にて取り上げた長谷
川時雨が頭に残っていた故の思い起こしだったのだが、話の枕ついでにひけらかすと、彼女の出生地である日本橋は芭蕉にもゆ
かりのある土地だ。芭蕉という俳号を持たなかった頃の若き彼は室町のあたりに間借りしていたそうで、その縁から今や記念館
や句碑が建てられているのだが、好んで用いた言葉の一つに「時雨」があり、忌日にも「時雨忌」と名づけられるほどに執心だ
ったらしい。
 となると長谷川時雨のほうもこれに因んで筆名としたのではないか、と思えたのだが、こじつけが過ぎたようでそんな話は一
向に見つからない。本当の由来は、検索先の出典が明かされていないので眉唾に見るしかないが、雨が好きだからというのと、
忍びやかに人知れず、との思いが込められているそうな。当ては外れたが、されどこれはこれで悪くなく、本人は相当に活発な
人であったようだが、一方でそんな静けさの漂う風流を愛でる心もあったということが窺い知れ、僭越ながらに多少の機微を覗
いたようで感興が湧いてくる。
 それにしてもそんな話とは打って変わって、豪雨の方には趣などあったものではない。それどころか季節はずれの台風かと思
えたほどで、昼になる頃には止んで晴れ間まで覗き始めた覚えがある。そもそも時雨などここ最近訪れただろうか。通り雨自体、
なかなか訪れない気がする。夏場の猛暑といい、どうにも今年の天候は極端に触れているように思える。秋も深まろうとするか
と思いきや突如冬の天候が訪れ、例年通り秋短しかと思えば時折温暖な天気が混じりこむ。起伏が激しいのは小説などにおいて
は結構かもしれないが、天候となると情緒もあったものではない。折々に現れる静かな気候に潜む詩情を汲み取り、豊かな文章
によって形としていく、それを実現させる機会に恵まれなくてはにっちもさっちもいかない、というわけでもないのだが、やは
り無くては困るものがある。例えば、
  人々をしぐれよ宿は寒くとも
  旅人と我が名呼ばれん初時雨
 このような句は羨ましいほど詩情に満ちているのだが、芭蕉をかく詠わしめたのもやはり自然がことあるごとに彼へ啓示を与
えたからではなかろうか。と、つれづれに書いている最中も窓から天の低いところにある西日が差し込んできて、スクリーンが
まともに見れず作品を見るのにも難渋する。晴れ渡り冬が遠のくのは結構だが、少しくらいの影が覗くような趣は与えてもらい
たいものだ、といいたいが、この頃では望むべくもないことなのか。
101全館2/4 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/06(月) 22:55:10.69 ID:0bnNo/R90
 そんな心境にある限りはどうも小説に対する目も偏りが出てきて、そこまでしないと話が作れないのだろうか、と思える作品
が今回の品評会では目に立った。No.02の「食肉」はその典型だ。タイトルの時点でネタバレになっている上になんら裏切られる
ところがなく、同性愛の告白も取ってつけたように感じられる。カニバリズム自体の扱いもまとまりをつけるための道具にとど
まり、主人公の心理などもふらついていて見れたものではない。
 No.05の「山内の人生論」も三角関係など大した話題でもなく、拙い文章によって山内が型通りの”遊び人”にしか描ききれ
ていないものだから、まるで魅力を感じることが出来なかった。第一色情にしか向かっていかない色気狂いに興味など覚えぬの
で、勝手にしやがれとしか言いようがない。それから作品にまったく影響を及ぼしていないので気にする必要はないのかもしれ
ないが、三位一体の認識が明らかに本家の解釈とは違っているように思える。
 No.11の「凛として咲く花の如く」は閉塞した状況に置かれた主人公が、自らの宿命という”くびき”から放たれるために奮
闘するという物語だが、またパターンの反復かと嘆息させられる。かような脱出譚は最早使い古されており、それでもなお扱お
うとする人間は、”脱出”する話を書く自分こそがその枠組みから脱出できないという皮肉な状況に置かれているのだ。なによ
りこの少女は突然の不幸に見舞われた末に、たまたま出会った主人公に恋をするわけではあるが、それは「不幸」という要素が
なくても成り立っただろうか? 要するに、この少女は主人公の自律を促すための”はしため”としてストーリーに加えられて
いる感が否めないのだ。
 この作品に用いられた「§(セクション)」という薬物は以前品評会で優勝した作品でも用いられた設定ではあるが、あれが
何より良かったのは救いも充実もないまま、ただひたすらに刹那的な快感だけに戯れる主人公、という閉鎖的な状況が、絶大な
る肯定の感情によって描かれたことだった。自分には、そしてこの世界にはやりがいなどない、あるのは刹那的な快感のみだ、
そんなともすると卑屈になりやすい思考が、実に軽やかな筆致によって乗り越えられていく。そこには偽りなどない、清清しい
爽快さがあった。そこから見ると、今回の作品の解放感は偽りの”爽快さ”なのである。筆者は以前自分の作品が読者を魅了し
たことに対して「どうして受けたのかわからない」という戸惑いを訴えていたが、それがわからないまま今回のような作品を延
々と書いているようでは、前途は極めて茫洋としたものだろう。作中世界では解放を描かれているのに、筆者自身は解放されて
いない。そうした逆説的状況にこそ私は興味を覚える。
102全館3/4 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/06(月) 22:56:02.16 ID:0bnNo/R90
 No.09の「折られた腕と王子様の絵」は独りよがりのガキどもしか描かれていないと感じられた。”天才”に付き従った末に
その従順ぶりを皮肉られて萎れてしまう主人公にはこちらこそ嘆息させられる。その程度のことで筆を折るくらいの人間ならば
どの道才能はなかったのだろう。そんな人間を冷笑的に描いたにしても諦めが早いものだから拙く映り、何より”天才”と呼ば
れる女はたとえボクっ娘であろうと鼻につく。生理的なものではない。ただ単純にたまたま得られた優越性という舞台に上って
”凡才”を見下ろす根性が、いや、そんなことはどうでもいい。そんな態度を取りつつも、一方では「わかってくれる人はわか
るんだ」と言わんばかりに結局審査員にお追従してしまう態度が気に食わないのだ。もし審査員に才能のなさを看破されたらこ
の女はいかなる反応を示すかということこそ気になるが、ともかく好かない物は好かない物で、他人の言葉を借りれば才能の素
直に発せざる憾みありて……といったところか。私のごとき”凡才”の言葉など、一顧だにしてもらえないかもしれないが。
 力量が発揮されるのを妨げるものがあるのではないかと感じさせるのはNo.06の「夕暮れパズル」も同様だ。同じく美術の話
題を取り上げたNo.09の作品と比べると、色彩の表現に重きが置かれていて、時折効いていないものも見受けられるが、丁寧に
作品世界を構築していこうとする意思はうかがえる。ただそうした意匠がストーリーの肉付けに向けられるとなると話は別で、
とことん毒気のようなものを避けようとするきらいが見えた。一見清清しい世界が描かれているようには見えるが、その実晴香
の恋人との問題はまだ解消されていない。彼女は無理に吹っ切れようとしているのかもしれないのに、そうしたものを表現して
こそ機微がうかがえようものなのに、あたかもあっさりとつかえが取れたかのように表現されることには疑念を感じる。それか
ら父親の死のくだりが取ってつけたように語られるのも気になる。「わかりえない答え」という印象を与えるためだとしても安
直が過ぎ、もう少し工夫のしようがあるのではと感じられた。とはいえ、そうしたものは作者の意識次第でどうにでもなるだろ
うし、大事なのは作品を無理に健全なものとしようとする色気を無くすこと――文脈に置いてみると奇妙な表現だ――だと思う
から、まだ救いようはあるのではないか。
 一方で色気に完全に絡められているのはNo.03の「存在の証明」だ。綺麗な世界を書こうとするがあまり所々に破綻が生まれ、
挙句には噴出してしまうような拙い表現も見える。そもそも死を利用して話をまとめようとするのは最も嫌うところであるし、
夫の見せるあれだけ頑固だったというのに妻という要素が入り込めばあっさり覆してしまうという撞着した態度にも疑問を覚え
る。まとまった話に向かうのは必然のことだろうが、もう少し不確定要素を織り込もうとする工夫があってもいいのではないか。
このままでは、読むほうとしては感情の起伏を覚えることが出来ぬままに「起伏のある」話を読まされるという苦痛を感じなく
てはならない。
103全館4/4 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/06(月) 22:57:03.52 ID:0bnNo/R90
 今回の品評会の中で最も心惹かれたのはNo.07の「記号と君と僕」だった。とはいえ物語が面白かったわけではない。「三角」
という一向に全容が明かされない物体の描き方に面白みを感じた。主軸となるストーリーは意外性のないもので飛ばして読んで
もかまわないのだが、そうした予定調和の世界の中に置かれた実体を持たない「三角」という矛盾した存在が常々頭に引っかか
るのだ。規定をなぞるばかりの本筋と対比するように、至って奔放に動き続ける「三角」。話に関わるわけでもないし、恋人と
の仲を決定的にするものでもない。しかし気になって仕方がない。正体を見定めようとあれこれ考えるが、もし明かされてしま
ったらこの物語は一気につまらないものとなるかもしれない。全体として起伏に乏しいながらなぜか読んでしまう、という小説
は、絶妙な手腕がないと書けないものだ。この作品にはそれがある。思い過ごしかもしれないが、ひとまずその可能性を無抵抗
に受け取ってみたいと思わせてくれた。

 最後に、No.01の「万能統計士Kの事件簿_公共交通編」、それからNo.04の「食肉」、No.09の「もっともっと大切なオンリー
ワン」、これらの作品を語る猶予はあるが必要性はまるで感じないので、相手にしなくてもいいだろう。

 ところで時雨という言葉にまつわるものを色々探そうとしたのだが、出てくるのは「凛として時雨」というバンド名ばかりだ
った。なんともコアな、言ってしまえば衒学的に振舞おうとしている向きが見える名前で、音楽に明るくないものだから彼らの
曲も語りようがないのだが、それにしても「凛として時雨」という文法にとらわれていない言葉は気になる。時雨に見舞われて
も凛としてある、時雨が去った後に現れる凛とした世界、時雨のように凛としてある、どうとでも取りようはあるだろうし、そ
れを明らかにすること自体無意味な考えかもしれないが、いずれにしても感じられるのは不屈だとか、気丈だとかいったものだ。
晴れ渡った頃、やにわに雲が挟まって空はくすんでいき、すこしの間隔を挟んで時雨が降っては辺りに冷たい空気が冴え渡り、
その中にある人間は妙に白々とした光をまとって、浮かび上がってしまいそうな、人離れしたところがうかがえる。
 本人たち曰く日本語のバンド名にしたく思っていたところ、凛として、という単語が浮かび、続いて自らの作る曲が急に降っ
て来る雨のようだといわれたから、時雨を接いだとの事。所詮、そんなものか。


******************【投票用紙】******************
【投票】:No.07 記号と君と僕 ◆1ImvWBFMVg氏
【関心】:No.06 夕暮れパズル ◆xaKEfJYwg.氏
**********************************************
104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 23:13:35.43 ID:b7px0rnr0
ぜんかのつ
おやすみ
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 23:13:52.46 ID:a90a1lWf0
すげえ全感だ超乙
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 00:27:09.41 ID:4q1iQFkd0
ねるほ
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 01:09:58.44 ID:3ZqrToxqO
お題ください
もしくはタイトルだけ、みたいなのもいいです
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 01:15:03.19 ID:l9vz22800
>>107
「狼が空に涙するとき」
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 01:46:20.64 ID:nw/2k/AqO
半月前から執筆中であると同時に
半月前から煮詰まっているこの原稿から何度目かの逃走をはかりたく
何が言いたいかと言うとお題くれ
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 01:48:14.90 ID:l9vz22800
>>109
煮凝り
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 01:51:09.04 ID:nw/2k/AqO
>>110
マジかよ煮凝りとか食った事ねーよと思ったけどこういう細かい事ひとつひとつが引き出しになるんだよな
ありがとうちょっと考えてみる
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 02:06:59.08 ID:l9vz22800
>>111
おみゃあさんが煮詰まってるとか言ってたからさ。
母さんが夜なべをして 煮凝りつくってくれたー


今回の品評会はいろんなベクトルの作品があるねえ。
No05まで読了。全館は明日します。おやすみんみんぜみ。
113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 03:49:02.89 ID:K24ZF41DO
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 05:08:13.60 ID:K24ZF41DO
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 07:20:46.92 ID:onOXZ1zYO
転載

440 全感 ◆Lq1ieHiNSw 10/12/07 04:24:07 ID:auEYl+24
No.01 万能統計士Kの事件簿_公共交通編 ◆X78jHks0c.氏
説明ばっかりで、その内容である九州の交通事情に興味も何も持てないもんだから退屈だった。これだと
物語の為の情報提示ではない。作者が九州の交通事情を語りたいが為の、申し訳程度の物語という印象。

No.02 食肉 ◆Lq1ieHiNSw
まともな恋愛物を書くのは苦手だと再認識。主人公がどれほどその女に惚れているのか、
そういう部分が書けていない。

No.03 存在の証明 ◆/8L81UtKTg氏
玲子が死んでから急にコメディになって笑ってしまった。
しかし霊に心霊現象を否定されたのに心霊写真に写っちゃったのは、どういうこと?
あとやっぱり前半と後半のギャップがすっきりしない。初めからコメディにすべきだった。

No.04 食肉 ◆Oamxnad08k氏
俺と同じタイトルだけど食ってるのは糞だしお題は一切関係ないしそもそも小説ですらないし意味がわからない。
ただ食糞の論理は面白かった。次はちゃんと小説にしてください。

No.05 山内の人生論 ◆.oIbKCaZu2氏
まとまってるけど無難すぎ。山内のキャラクター性も語り部からの説明だけなので自由人というよりは
ただの好色男な印象。傍観者である語り部を媒介として、山内の行動を読者に読ませている意味がないと思う。
当事者の誰かの視点なら、また違った話になったでしょう。

No.06 夕暮れパズル ◆xaKEfJYwg.氏
思わせぶりで終わってしまった。結局晴香の問題は解決してないけど、これでいいのか?
綺麗な話っぽくしてるけど、裏に何があるのかわからないから逆に恐ろしい。
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 07:24:37.99 ID:onOXZ1zYO
441 全感と投票 ◆Lq1ieHiNSw 10/12/07 04:25:13 ID:auEYl+24
No.07 記号と君と僕 ◆1ImvWBFMVg氏
三角って何かエロいものなのかなっってワクワクしてたのに。
お題から物語を考えた、というわけではなさそうだ。人のことは言えないけど。

No.08 歪む均衡 ◆ihO9dxzf9I氏
ちと難解だった。友人との会話の回想が出てきて混乱した。場面がいったいどうなってるのかすぐに把握できず。
第三者との身体の交わりを、目の前の恋人と重ねて想起するっていうのは好みだった。

No.09 もっともっと大切なオンリーワン ◆HmfYvBHWkM氏
ざっと目を滑らして見てみると嫌いなタイプの話かと思ったが、読んでみるとなかなか面白かった。
オチをもうちょっと何とかしてくれと思ったが、しかし俺も安藤に拍手を送ろう。
蒲原のキャラが好きでした。こいつの気持ち悪さ、いい感じ。

No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oI氏
難儀な女だ。この女のキチっぷりが受け付けない。どうせならもっと徹底的にイカれた奇人を書いてほしい。

No,11 凛として咲く花の如く ◆FcModpyaRc氏
悪人たちの描写はなかなか下衆くてよかった。しかし短編として終わらせる為にちょっとご都合主義が過ぎている。
飼い犬が主の手を噛んで、組織がそれを黙って見過ごすわけがない。麻薬組織が複数もあるような世界を書きたいんなら
もっとハードコアな部分を見せて欲しい。むしろバッドエンドなら無理なく終わったのかもしれない。
氏はラノベ作品を好んで書いているが、キャラの設定を考えるだけで世界観の練りこみが浅いのではないかと思った。
そこをもっとしっかりやればもっと面白くなるのではないでしょうか。
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 07:26:36.13 ID:onOXZ1zYO
441 全感と投票 ◆Lq1ieHiNSw 10/12/07 04:25:13 ID:auEYl+24


******************【投票用紙】******************
【投票】:
【関心】:No.03 存在の証明 ◆/8L81UtKTg氏
     No,11 凛として咲く花の如く ◆FcModpyaRc氏
     
**********************************************
118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 07:28:21.91 ID:onOXZ1zYO
4 全感 1/7 ◆xaKEfJYwg. 10/12/07 06:04:07 ID:BmMReATh
No.01 万能統計士Kの事件簿_公共交通編 ◆X78jHks0c.さん
 私の地元が北海道なので、よくわかりませんでした。X78jHks0c.さんには申し訳ないのです
が、途中で読むことを断念してしまいました。すいません。
 斜め読みしてみて思ったことは、知識量は多いんだということでした。お話としても、九州
にお住まいの方は興味を持って読めるのかなぁと。
 それだけに惜しいです。読む人を制限する専門的分野のお話は、いくら素晴らしくとも興味
のない人には読まれませんし、評価されにくいと思います。
 書きたいことが決まったら「そのお話を『どこまで身近なところ』から始めるか(たとえ話
でもいいかもしれません)」を書いて、読者に興味を持ってもらい、そこから少しづつ読者に
頷かせるように書き上げると良かったと思います。


No.02 食肉 ◆Lq1ieHiNSwさん
 ホラー物は大好きなので期待しました(といっても大好物はB級ホラーですけど)。
 読み終わってまず思ったことは「話を急いで仕上げたのかな」ということでした。
 トリでググってみて一番上に出たお話は、テーマをしっかりと持ち、丁寧な描写で物語を書
き上げているのに、このお話はいささか丁寧では無いように感じてしまいました。
 そう感じた理由は、テーマがしっかりとしていない、言い換えるなら「多様な恋愛の形を含
めた恋愛の様子」がテーマなのか「カニバリズム」がテーマなのか、それがあやふやだったか
らだと思います。
 いろんな要素が詰まっての小説ですが、一番に読者に訴えかけたいテーマを決めて、それに
向けて方針を決め、オチが浮かないように書ききると良かったと思います。
 小説を書くに当たって「何が」深読みするための道具で、「何が」主軸なのかを心の隅に置
くと、ぐっとよくなるのではと思いました。
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 07:29:19.31 ID:onOXZ1zYO
5 全感 2/7 ◆xaKEfJYwg. 10/12/07 06:06:49 ID:BmMReATh
No.03 存在の証明 ◆/8L81UtKTgさん
 物語小説としては言うこと無いです。いいまとめ方ですし、オチもいい。何より随所に飛び
出てくるコミカルタッチな描写は、純粋に読み手を楽しませる工夫をしているんだなと感じま
した。
 レス数が限られている中で、これだけガッシリとした物語を書けるのは尊敬します。
 深読みできるか……とか、余韻を感じるか、といった観点から見たらそうではないですが、
「長い小説が嫌われるBNSKスレではちょうどいいのではないのかな」と思います。
 個人的にですが、4レス目の玲子が老人と対峙するシーンは中途半端だと思いました。
 行動を書く必要は無かったのではないか……。ファンタジーにおいて、情景を書くことは必
要ですが、それも不十分なままに行動描写を書かれてもイメージしづらいです。


No.04 食肉 ◆Oamxnad08kさん
 物語を排したメッセージだけの小説ごちそうさまでした。
 これについては、伝えなければいけないはずの愛が伝わらない、といった感じでしょうか。
駅のホームで素っ裸で踊っている人を見て、通報するわけでもなく、動物園の猿を見るように
眺めているような感覚になりました。
 この勢いで、食べてしまう前に糞便を使って何かすれば、感情移入できる人には面白かった
かもしれません。それでも「馬鹿だなぁ」ぐらいの感想でしょうけど。


No.05 山内の人生論 ◆.oIbKCaZu2さん
 しっかりまとまっていて良かったと思います。
 一ついうならば、もう少し道具を増やしてみれば良かったのでは? と思いました。
 山内の話を聞いて、話のネタの肥やしにする僕……の話を聞いた読者は、味気なく感じてし
まうのではないでしょうか。薄まったカルピスにさらに水を注ぎ足すような行為は、見ていて
感情移入し辛くしている、余計なものだと思います。
 書きたいことは思いついたのですから、それをより良くするにはどうすればいいか、という
ことを考えて手を加えてみるともっと良くなったのではないかと思います。
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 07:30:15.81 ID:onOXZ1zYO
6 全感 3/7 ◆xaKEfJYwg. 10/12/07 06:09:29 ID:BmMReATh
No.06 夕暮れパズル ◆xaKEfJYwg.
 自作です。最後から数行の推敲不足と、「てにをは」の不調和が目立ちました。また、想像
力を膨らませ、丁寧に書く気遣いが所々欠けていました。悔やんでも悔やみきれません。
 「無理に健全にまとめなくても」と ihO9dxzf9Iさん がおっしゃっていたのを見て、図星
を突かれたようで、少し辛いです。
「初心者の読者でも、ちょっとの好奇心で簡単に物語を読了することができる……が、玄人の
読者も深読みして考えることができる」
 そんな文章が私の目標ですから、次回参加したときは、悔いを残さず、目標に沿って物語を
構築して、今後も精進して行きたいと思います。


No.07 記号と君と僕 ◆1ImvWBFMVgさん
 1ImvWBFMVgさんの文章は何度も見ていて、やはりどれも単純明快で心地よく見ることができ
る文章だなと思いました。たぶん文章の基本と、ストーリーの順序の組み立て方がしっかりし
ているからだと思います。
 お話の内容については、初めに読了したとき、「賛否両論だろうな」と思いました。
 「三角」という重要なキーワードについて何も語らず、物語が終わる。そしていきなり「四
角」が現れる!
 ……最終的に重要なキーワードをトコトン蔑ろにしてENDまで書ききってしまう。
 ふざけんな! と罵る人もいるかと思います。
 主客転倒のエピソードは、読者を一瞬置いてけぼりにします。なぜなら、「主」なる「三角」
というものとは結局なんだったのか? という解答を期待しながら読み進めるからです。皆さ
んもそうでしょうが、私も「読み落とした伏線は無いだろうか」ともう一度読み返してしまいま
した。
 結局物語は具体的な解答が明かされぬまま物語は《終わり》となります。読了した読者はも
やもやを解消するために、解答を独自で解釈しようとする。「あれはなんだったのか」「婚約
と関係あるのだろうか」なぁんて。
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 07:31:06.71 ID:onOXZ1zYO
7 全感 4/7 ◆xaKEfJYwg. 10/12/07 06:13:08 ID:BmMReATh
 私は「婚約を象徴する、いわば婚約指輪みたいなもの」と解釈しましたが、きっと間違いな
んだと思います。もちろん作者さんの解答はあると願っています。そうでないと馬鹿にされて
いる気がしますもの。作者さんは「三角」の解釈なんて必要ないと言うかもしれませんが。
 ……こういった趣向は筒井康孝さんの作品でも時折見た気がします(そういえば姉飼もそうでした)。
 私個人としては、こういった趣向でエピソードを進めていくなら、もう少し「三角」という
もののイメージをごちゃまぜにかき回して欲しかったです。例えば、「三角は唐突に泣き出し
た」といった三角の行動描写ですとか、三角のミステリアスさに深みを持たせる描写を増やせ
ば良かったのにと思いました。


No.08 歪む均衡 ◆ihO9dxzf9Iさん
 ihO9dxzf9Iさんの、知識や物語の切り込み方、さらには語彙の豊富さなどただ舌を巻くばか
りです。先生と呼ばれているだけあるなと思います。
 ですが、伝わらない。それは読者の読解力の問題ではない。興味を惹かせるような心遣いが
足りないんだと思います。
 例えるならば、最近の田舎高校生が打ち上げられたスペースシャトルを見上げているような
……凄いんだけど、俺には関係ないなぁ――といった感覚です。
 三角関係の+−の相互関係の講義は興味を持って見れたのに、友人が出てきた5レスあたり
からサーっと引いてしまう。わざわざレスを割いてまで文章を書いたのに、オチレスに添える
ような扱い方はいささかにもったいなさ過ぎる。
 オイディプスの下りが書かれている箇所がありますが、どうせならそこを伏線としてオチへ
と向かって欲しかった。単純な肉欲と思考のギャップだけではなく、哲学的に解釈した思考を
裏付けるような……そうでなくとも、三角関係を否定した前置きがあるのですから、それを最
終的に肯定せざるを得ないようなセックスの描写に仕立てて欲しかったです。
 読むことと書くことは異なると思うのですが、ihO9dxzf9Iさんの知識は批評だけに留めてお
くのはもったいないと思います(もったいないということ自体、生産的ではないですが)。
 その豊富な知識を、
「小説初心者でもわかりやすく、そして小説初心者を最終的には新たな発見へと繋げる」
 と言ったふうに還元したほうが良いように思います。
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 07:33:10.19 ID:onOXZ1zYO
8 & ◆lPQ5wxfeJ6 10/12/07 06:17:01 ID:BmMReATh
 そんな手ほどきをしつつ、まとめるような仕上げ方であれば、私は文句なしに投票シートに
直行していました。
 次回も楽しみにしていますので、できれば隠喩を分かるようにほのめかして、尚且つ作者さ
んの持つ知識で装飾して描いて下さればなと思っています。

No.09 もっともっと大切なオンリーワン ◆HmfYvBHWkMさん
 ラノベの登場人物について真剣に語るっていいなぁと思いました。決して否定的に感じたの
ではありません。肯定的に感じたのです。素晴らしい! ……とため息を漏らしてしまいまし
た。美琴と乃梨子は愛おしいと思っていますから。
 HmfYvBHWkMさんは会話の勢いとテンポ、またその場だからこそ湧き上がる雰囲気を大事にす
るように、(勢い任せで)描いている印象を受けました。
 かく言う私も、この会話の中で取り交わすキャッチボールの結末を見たくて、ワクワクして
読んでしまった、とりこの一人です。登場人物のキャラも、話使いで分別できるようにし、
(主張する「嫁」を分けることによって)キャラの独自の個性も立たせていますし、できれば
こうして感想を打っている私自身がこの場に混じりたかったなと思ってしまいました。
 ですが、物語としても小説としても、果てまではブログとしても中途半端な文章のように思
います。
 物語なら過程を。メッセージ小説なら整合性から導き出される結果を。ブログなら統一性を。
物語として描くのであれば、物語を盛り上げるための過程に重点を置く。過程に重点を置く
のであれば、読者が頭の中で作り上げている過程を覆すような展開があって、はじめて上手くいった過程となる。
 ……小説ならば読者の頭で作り上げた倫理観を壊すような整合性があって、はじめて小説と
なりえる。
 ブログならば、作者の主張に統一性を持たせることによってブログとなる。
 大仰に表現して結末まで繋げましたが、この作品はそのどれも満たしていないものでしたの
で、中途半端な印象を受けてしまいました。
 作者さんは素晴らしい作品を書ける力量はあると思います。また、それだけの「面白そうな
題材を見つける」ことができるのですから、勢いのほかに、物語をどう盛り上げるか、小説を
どう良くするか、それについて目を向けて欲しかったです。
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 07:34:38.76 ID:onOXZ1zYO
9 全感 6/7 ◆xaKEfJYwg. 10/12/07 06:22:14 ID:BmMReATh
No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oIさん
 有名人だったみたいですね。おかえりなさいっ! そして、お疲れ様でした。
 作品はオチも効いていて、読みやすく、それでいて考えさせられる良い作品でした。
 残念なのは、物語(童話でもいいかも)として鳥瞰したとき、物語を盛り上げるための「天
才」と「凡人」の差が描き足りないのではと思ったことです。
 どう志都は「天才」なのか、といったエピソードは詳細に書くべきかと思いました。それで
なくとも、「天才」を滲み出させる何かのエピソードを加えれば良かったのでは無いかと思い
ます。そして、そんな天才さに「凡人」である主人公の曽良が悩み、「天才」に魅力を感じて、
食いついて離さない! どんなことがあっても食いついてみせる! だけど決して届かない……
と、丁寧に展開(もしくは心内描写)を書いていれば感情移入できたのではないかと思っ
て、残念でならないです。
 天才に恋焦がれる凡人は本当に惨めで可哀想ですから(自分はもちろん凡人サイドです)。
 ……そうだとしても、伝えたかったであろう「作者で作品を評価する」人に対しての皮肉は
かなり効きました。
 BNSKにいる方々は未来の作家様であると同時に、それを評価してもらえないから便所の
落書きをしている作家様でもあります。未知なる文章や物語の構成に触れて、感動し、自分自
身を研磨することは大いに有意義なことであると思いますが、それでも結局は便所の落書きを
自分なりに消して(解釈して)書き足しているだけに過ぎません。そういうズボンを下ろした
人たちは私を含め、落書きの中で幾分増しな文章が見つかったからと言って、褒め称えたりし
ません。せいぜい不思議で難解なことが書いてあれば、「まぁ良かった。興味深い」と残すだ
けです。
 その私達「凡人」全てに対しての皮肉と受け取るならば、これ以上に私達を揺らがせるメッ
セージは他にないのではないかと思ってしまいます。
 なんにせよ、お疲れ様でした。できれば次回の作品も待っていますね。


No,11 凛として咲く花の如く ◆FcModpyaRcさん
 文章力や、描写能力! 素晴らしいと思いました。できればこの「セクション」シリーズで
突っ走って欲しいです。文章力があるからこういった話が書けるのではないかと思いました。
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 07:37:46.54 ID:onOXZ1zYO
10 全感 7/7 ◆xaKEfJYwg. 10/12/07 06:25:55 ID:BmMReATh
 何もいうことはないです。魔法の薬「セクション」をください。24時間が4倍の96時間
になるなんて贅沢すぎる! そういうことではないのをわかっていますってば。 
 こういった「依存する少女」と「切り開く少年」を描くならレス数……果てまではページ数
が足りなかったのかもしれません。
 ラミナに感情移入させて、卑劣な悪役を読者に憎ませる。一連の流れはわかりますが、こう
いったファンタジーヒーローものの最重要要素は、「如何に悪役を立たせるか」といったもの
だと思うのです。
 ヒーローがいるということは、倒されるべき悪役がいる。つまり、悪役はヒーローと同じぐ
らい大事だということです。その悪役が、下品な口調で話しているだけで、別段読者が憎むよ
うに仕向ける描写もないのならば、それはただのラブホのAVと同じだと思います。
 作者さんは、それだけ物語を構築する力があるのですから、できれば単純な気持ちでお話を
書ききらないで、テーマを見つめて作品を書いてみてはと思いました。


******************【投票用紙】******************
【投票】:折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oIさん
     存在の証明 ◆/8L81UtKTgさん
【関心】:なし
**********************************************
― 感 想 ―
 今回は作品が多くてうきうきしました。
 読みごたえのある作品から、さらっと流せる作品まで、多種多様な作品があったと思います。
 できれば、ROM専の皆様や、書いている方々も、自分の作風を固めずに感想を貰って歩を
進ませることができればいいなと思います。
 これだけ面白い書き口の皆様が作品を投稿してくださっているのですから、吸収できる要素
もたくさんあったのではないか、と嬉しくなりました。
 次回は自分に諦めず、さらに成長した皆様の作品を読みたいなと思いました。
 なんにせよ転載してくださった方、まとめてくださった方、さらには作品を投稿してくださっ
た方、BNSKに関わる全ての皆様お疲れさまでした。
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 07:45:44.10 ID:KokEX3zd0
ぜんかんおつおつ
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 09:24:52.54 ID:lH/MConE0
おつだなあ
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 09:49:28.34 ID:GQGpj3de0
なんていうかこうアレなんだけどどうしたものか
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 09:51:00.58 ID:SvHYey9xO
有名人あつかいされてるpxtのひと素敵

LBの人とか2Lの人とかQIの人とかもまた一杯書いてくれるようになると嬉しいなあ
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 10:15:40.04 ID:3PvEEbcd0
VXの人とかMLの人とかIPの人とかの読みたいなあ
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 10:32:08.76 ID:onOXZ1zYO
暇ができたらそのうち来るんじゃないの
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 10:45:49.49 ID:lH/MConE0
LBの人そういえば全く見ないわ
132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 12:46:51.81 ID:SvHYey9xO
酉があがった人は至急作品を書く作業に戻るんだ
133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 13:21:10.77 ID:onOXZ1zYO
ふむ、また気軽に来てくれるといいよな。ただ作品ショボかったらフルボッコだけど

では全巻投下
134 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/07(火) 13:22:22.95 ID:onOXZ1zYO
No.01 万能統計士Kの事件簿_公共交通編 ◆X78jHks0c.氏
 うーん?推理小説の本事件が始まる前のさわり?みたいな感じだった。
 さっくり読めたけど、読み応えはそれなりな物でしかないというか。
 時事ネタだ。でもそれはそれ、これはこれ。さわりの感じは拭えてなかった。あともう突っ込まないぜ。

No.02 食肉 ◆Lq1ieHiNSw氏
 あらま、最初の場面被った。ごめんよ。似たような服着てきた時の微妙な感じだな。
 ふむふむ。三角関係かな。うーん?なんか……普通のストーリー書こうとしてる?いつもと雰囲気違うような。でもタイトルが。
 えー。こいつハンニバルかよう。でもミスリードのような気もする。
 ん?この娘の思わせ振りな態度は、そっちの筋も織り込んでる感じなんかな。
 ほうほう。うえ、カニバ来たっぽい。あ。やりすぎだ。たぶんちょっと過剰演出なはずだ。
 ここまで盛り込んでるんだから、サイコ要素は匂わせるぐらいの方が不気味でいいと思う。
 はいはい。悪くはない。でもこの流れだとね、解決する探偵が出て来ないといけない必要性に迫られてしまうよね。
 乙一のゴスみたいだった。でも話が決着してない気がする、かな。

No.03 存在の証明 ◆/8L81UtKTg氏
 おおう?ずいぶん特殊な状況なんだね。ならちょっとその事に触れた方がいいかもしれない。お約束的に。まあいいや。
 最初のシーンに必要性がなさそう。ううん?なんか書き慣れてない感が。話の並べ方が箇条書きっぽいというか。
 おわ結婚した。ちょ早い。ふむふむ。うわいきなり病んだ。え?霊能力あったの?じゃあそこもっとフォーカス当てないと。
 いやいやその理屈はおかしい。うーん?死神?いやー、そこで現実持ってきちゃうか。なんかズレが。話も持っていき辛いんじゃないの?
 この場面でふざけるのは……。うわあ。つまりやりたかったのは名作映画のゴーストっぽい事だろうか。
 うーん。話の順番変えてみたり、必要な場面の取捨選択が足りないかな。まだまだ色々やれる事が残ってそう。原案の状態というか。
 一先ず早めに仕上げてから、一日置いてみたらいいと思う。推敲の基本だけど。その書き方をお薦めします。

No.04 食肉 ◆Oamxnad08k氏
 おう、言いたい事はだいたい分かった。だからそのネタでもって小説を書いてくれ。
 そんな特殊すぎる性癖を、嫌悪感を一切感じさせずに、読み手に納得させて、その上で物語として楽しませてしまおう。
 それができれば最高なはず。そこら辺が映像では表現出来ない、小説や活字媒体特有の一つの強味じゃないかと思うんだけどね。
135 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/07(火) 13:23:26.44 ID:onOXZ1zYO
No.05 山内の人生論 ◆.oIbKCaZu2氏
 お前は何を言っているんだ(AA略 これは分かりやすそうだな。正三角形。三人とも片思いみたいな状態かと思ったが違うのか。
 ……こいつは何を言っているんだ。さっぱり分からん。死ねばいいのに。その内刺されそうだな。
 うーん?人の気持ちをどうこうする事なんか出来なそうな気がするけどな。ここら辺で痛い目あうのかな。二人が本気になって振られるとか。
 ああ、はい。落ち着く所にすっぽり収まった感じだね。途中で目先変えたりする展開があったらもっと良かったかもしれない。
 
No.06 夕暮れパズル ◆xaKEfJYwg.氏
 普通だ……物凄く真っ当な短編小説。正統派ってのはこういうの言うんだろうね。最近ブンスコで見なかったので驚いた。
 概ね良かったと思う。文章しっかりしてるし、俺なんかがどうこう言うのはちょっとおこがましいぐらい。ただここから気になった点を。
 晴香の悩みが解消されすぎかもしれない。レス数の関係もあったんだろうけどね。
 あと晴香の選んだモチーフにあまり意味がないかもしれない。元が濃すぎる意味があっただけに、そこはけっこう重要だったと思う。
 大まかだけどその二点ぐらい。なかなか綺麗な短編小説でした。

No.07 記号と君と僕 ◆1ImvWBFMVg氏
 自分の。作中の三角については◆ihの人はああ言ってるけど言ってしまえ。
 題名通りです。三角は単なる記号、?マークです。松本人志の頭頭とか、吉田戦車の暗黒星人とかと同じ。
 ふとした瞬間の何でこんな事してるんだろうみたいな感覚というか。記号的な観念を勘でそのまま形にしようとしたらこうなりました。
 深く関わっている物でも角度を変えるとこうなる……とかあまり学がないので上手く言えないけど、だいたいそんな感じです。
 物語部分がもっと面白くできたら良かった。形にするだけで精一杯でもうはい。次はもっと頑張ろう。

No.08 歪む均衡 ◆ihO9dxzf9I氏
 ほほう。それからそれから。うえ、語りが始まった。できるだけ小説で……。レス数制限……。いやでもなんかやり方がこう。
 村上龍の限りなく〜意識した?ふーん。会話文は「」使えよう、分かりにくいよう。
 エロス!エロス!しかし女の臭いねえ。そんなのあるのかいな。誰かの性格に影響受けるってのは分かるけど。
 ああ、はいはい。彼女抱きながら別の女の体想像する的な。最低!最低!うるせえ!口ではそんな事言ってても下はこんな(ry
 ふむー、ほぼエロ小説だなあ。でもスポーツ新聞とかに載ってたらちょっと変かもしれない。
 なんだろうね、ジャンル分けに困る話だ。もう一要素ぐらい足せば良かったのかな。文章が上手かったでござる。
136 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/07(火) 13:24:51.11 ID:onOXZ1zYO
No.09 もっともっと大切なオンリーワン ◆HmfYvBHWkM氏
 なんかおバカな臭いがするな。うん?いやいやVIPかよ。漫研でもこんな事やらないだろ。
 うーん。こういう感じはVIPでさんざん見てるしお腹いっぱいだ。なんか付加価値が欲しいよう。
 はい。同人誌の作者ページノリだなあ。ボツ一歩手前って感じ。ガス抜きかな。

No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oI氏
 お久し。携帯タコでおま。酉変わったんだぜどうでもいいね。しかし相変わらず天才肌の突飛キャラ好きなのな。
 うーん。レディガガか……。アンディウォーホール?とかがマドンナ書いた現代ポップアートみたいな事?
 どうだろう……。あんま美術展とか知らんけど、それ大賞取れんのかな。高校生でも……対比なんだろうけど、ちょっと違和感ガガガ。
 ほう。ふむふむ三角の絵のくだりは中々。ここら辺は筆ノリノリだ。
 あ。話途中で終わった。……おいいいいいいい!んなああああああ!早く!続き!続き!

No,11 凛として咲く花の如く ◆FcModpyaRc氏
 やたら背景書き込みの多い、角川系の漫画見てるみたいだ。スプリガンとかも入ってんのかな。うん?むしろレオンか。
 撫子スネイク……。日本名みたい。肉便器て。しかし酷い話だな。
 ふむ。何というスタンド。ジョジョだね。あー。なんだろうね、もう一味欲しい。長さじゃなくて要素が足りない。
 どっかジャンプの読み切りっぽい。鳥山絵ので肉便器どうこうの部分を上手く処理したら載るのかな。
 でも最近のラノベはよう分からんし知らん。このままでも行けるのか。普通だった。

******************【投票用紙】******************
【投票】:No.06 夕暮れパズル ◆xaKEfJYwg.氏
【関心】:No.02 食肉 ◆Lq1ieHiNSw氏
     No.05 山内の人生論 ◆.oIbKCaZu2氏
     No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oI氏
**********************************************
【感想】
 次点で8とか11かな。関心入れても良かったけど際限ないしやめた。
 いやしかし増えてきたねー。たまたまなのかどうなのか。皆様おつかれ。次回も頑張るぜ。
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 13:42:44.12 ID:SvHYey9xO
ぜんかんおつ
メアドさらせ
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 16:07:13.67 ID:51rCwIFhO
来週は頑張る
139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 17:22:39.12 ID:mvnIhBGwO
お題を頼む
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 17:30:58.66 ID:ib3gfQ0J0
>>139
一日
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 17:48:57.12 ID:mvnIhBGwO
ありがとう。早速書いてみる
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 19:40:53.86 ID:GQGpj3de0
お題をもらっては書けないでまたお題をもらっての繰り返し
といあえずお題をください
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 20:00:47.51 ID:E0mdeNB40
>>142
雨天決行
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 20:04:28.80 ID:lkXGTeM50
二つお題くだされ
145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 20:10:01.16 ID:dgnkwiQx0
紅葉
災害
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 20:17:30.41 ID:lkXGTeM50
>>145
キミのカケラの紅葉バージョンをなんとなく連想
どもども。
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 21:11:44.19 ID:GQGpj3de0
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 22:02:06.43 ID:GQGpj3de0
しかしひどい過疎だ
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 22:05:38.22 ID:dgnkwiQx0
なんか話題振ってくれたら全力で食いつくよ
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 22:15:22.50 ID:lkXGTeM50
コミケの小説って、二次創作じゃない場合良くて何冊ぐらい売れるの?
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 22:17:26.92 ID:aNs6v1Ls0
お題ください
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 22:21:13.40 ID:E0mdeNB40
>>151
アンバランス

ほとんど売れないんじゃないの
小説売ってる大手とかも聞かないし
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 22:23:47.21 ID:dgnkwiQx0
>>150
コミケとか行ったこと無いけど、基本売れないんじゃないかなぁと思うよ
でも、ここの常連が短編集とか長編とか売り出したら、自分は買うかもしれない
通販とかで買えるならね
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 22:33:57.72 ID:lkXGTeM50
そうか、やっぱり売れないのか
知り合いが30冊ほど刷ったらしいから気になってね
多いんじゃない? って聞いたら友人に配るから良いんだって言ってた
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 22:37:25.17 ID:mB17LcjTP
空の境界みたいな例もあるし、売れるものは売れるんじゃない?
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 22:40:32.35 ID:E0mdeNB40
らっきょは同人時代は5部しか売れなかったらしい
やっぱ内容よりも知名度なんだろうなあ。未来福音は結構売れたろうし
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 23:30:03.48 ID:E0mdeNB40
規制スレより全感転載
158ぜんかん!1/3 ◇FcModpyaRc:2010/12/07(火) 23:32:12.28 ID:E0mdeNB40
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
大学受験くそくらええええ高卒フリーターなりてえええええナマポくれええええぇwwwwっうぇwwwwww
そんな情緒不安定なクズ野郎が織り成すどうでもいい全館いきまーす!
なんかちょっと眼疲れてるから物語読むのつらいけど頑張って読みきったよ!
明日もう一回読んで幾つかの作品にはもう一回感想つけるかも!

No.01 万能統計士Kの事件簿_公共交通編 ◆X78jHks0c.氏
ローカルネタすぎんだろおい!
これシリーズ前に見てたから期待して投下された瞬間読んだんだけど、わかんねーよこれ!
だからといって感想を書くためにもう一度読むのめんどくさいです! 

No.02 食肉 ◆Lq1ieHiNSw氏
ギャグかこれはwwwwwwwwwwwwww
「シン……俺はお前が好きだ」でポリポリしてたプリッツ吹き出したじゃねーか!
タイトルの時点で◆Lq1ieHiNSw臭がプンプンしてたけどお粗末すぎまつね、これは。

No.03 存在の証明 ◆/8L81UtKTg氏
ごめーん!
物語に全然入り込めなかった(テヘッ
勝手にイチャイチャして勝手に死んでコントして終わったいめーじですよう。
シミュラクラ現象は完全に笑い狙ってるだろwwwwwwwwww

No.04 食肉 ◆Oamxnad08k氏
はいはい良かったですねきめぇ。

No.05 山内の人生論 ◆.oIbKCaZu2氏
おいレズ描写挟めよ!
159ぜんかん!2/3 ◇FcModpyaRc:2010/12/07(火) 23:34:22.32 ID:E0mdeNB40
No.06 夕暮れパズル ◆xaKEfJYwg.氏
ほんわかっとしたよう!
ただいきなり友人の彼氏が浮気して〜以降の展開がなんかなー。
描写が綺麗だったよー、なんか印象に残る感じのシーン。

No.07 記号と君と僕 ◆1ImvWBFMVg氏
ごめんなにがなんだかわからねぇよ!

No.08 歪む均衡 ◆ihO9dxzf9I氏
心理学的三角形のお話は興味深かったよ!
途中で集中力切れて流し読み発動したけどう。

No.09 もっともっと大切なオンリーワン ◆HmfYvBHWkM氏
俺は最近こういう会話描写に飢えていた!
俺、自分でギャグ会話書いても自分で白けてすぐデリートするからさ、参考にしたい。

No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oI氏
天才ボクっ娘キター
やっぱ可愛い女の子が出てくるとそれだけで評価しちゃうね!
なんかせつねええええええええええええええ!

No,11 凛として咲く花の如く ◆FcModpyaRcじさく
あーあ、最初はこれバッドエンドだったんすよ。
ナデシコがもう一人の《§》使いに殺されて、そいつをラミナが殺して、後始末をしにきた麻薬戦争に介入し
た米軍に拾われて、殺し屋として飼われて、――世界のどこかで、首斬り死体に添えられる、撫子の花――
でもさー、書いてて茶番臭く感じて、何よりも「なんで俺はこのキャラをバッドエンドにしたいんだ?」って、
自分に疑問を抱いてね、路線変更してハッピーエンドにしちゃった。
甘い、甘い。
160ぜんかん!3/3 ◇FcModpyaRc:2010/12/07(火) 23:36:32.85 ID:E0mdeNB40
******************【投票用紙】******************
【投票】:
【関心】:No.06 夕暮れパズル ◆xaKEfJYwg.氏
No.08 歪む均衡 ◆ihO9dxzf9I氏
No.09 もっともっと大切なオンリーワン ◆HmfYvBHWkM氏
No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oI氏
**********************************************
多分、この四つのうちのどれかに投票してたんだと思うよ。
でも今俺が疲れてて、読者側の感受センサーが衰えてるから当然俺のチキン肌センサーも反応せず、俺はチキ
ン肌センサーに反応したやつしか投票しないからさ、俺のせいなんだけど、そんな感じで投票は渋っちゃって。

あと◆ihO9dxzf9I氏ありがとう!
なんかちょっとだけ分かったような気がしたぜ!
まぁスピード×スピードは、
『人間は幸福を得るために生きるのだから、その幸福を作り出す脳内分泌液を直接得ればいい』=薬物乱用
これが言いたかったってのもあるんですけどね。
絶大な肯定の感情っつーか、無茶苦茶だけど、手っ取り早いし、理屈としては合ってるでしょ、って感じ。



みなさん乙。
161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/07(火) 23:38:46.84 ID:E0mdeNB40
全感乙
もうすぐ投票締め切りか
1620/9全館 ◆/6V.PHILIA :2010/12/07(火) 23:43:44.97 ID:l9vz22800
駆け込みで悪い!
全館ですん。
1631/9全館 ◆/6V.PHILIA :2010/12/07(火) 23:44:25.86 ID:l9vz22800
No.01 万能統計士Kの事件簿_公共交通編 ◆X78jHks0c.氏
 俺ってbnskの小説読みながらも、よく小説に関係ないけど気になった言葉をググったり
RSSリーダー見たり他のスレのレス状況を見たりすることがよくある。
で、それを小説を読んでる最中にさせるってことは、
俺の怠け度合いに勝てるほどの興味を小説がもってないんだよね、たぶん。
だいたい1レスめ読み終わった辺りで、軽く飽きちゃった。テヘ。
 これはよく俺も失敗することなんだが、
漫才なんかでいうところの「つかみ」、つまり冒頭で客の心情をガッチリつかむ、
そういう行程をすっとばしてしまってて、読者がついてけなくなってしまってる。
>「畢竟、政治家はJR博多駅の新幹線の改札に現れるんだな?」と枝野は念を押した。
畢竟ww リアルで使ってるヤツっていねえよなw
総評。本格的、なのかわからない。なぜなら流し読みしたから。
時間差トリックとか交通手段をつかったトリックは、松本清張でも苦手だもん(はぁと)
これは好みだからなー。尖閣ビデオに絡めてるのも、今しかないしなあ……
鮮度が限られる(足の早い)小説だと思う。乙。
1642/9全館 ◆/6V.PHILIA :2010/12/07(火) 23:45:39.39 ID:l9vz22800
No.02 食肉 ◆Lq1ieHiNSw氏
 この小説に対しては、否定的発言しか浮かばなかった。
作者に最初に申し上げる。これは同属嫌悪だから、叩かれるのがイヤなら読まないことを勧める。

> 三人掛けのソファに寝転んでだらしなく漫画雑誌を読んでいると、静かに部室のドアが開かれた。
>「あれ、シン君この時間は授業じゃなかった?」
>「ああ、もうあの講義は捨てることにしたわ」
> そう答えると、渚は俺に対して仕方のない奴だ、とでも言いたげな微妙な苦笑いを見せた。
最初のこの4行で「あ、ないな」と思いました。
No.01の感想でも書いたが、ツカミの問題に対してコチラは完全にうっちゃってる。状況描写はともかく、人物紹介を放棄してしまっている。誠意がない。
>全てを楽しむ無邪気な子供のような、純粋さの体現がそこにあった。
なんか体現ってのが変に浮いてるなあ。具現、具象、具体化、象徴、どれも違う……。たぶん「〜がある」という表現に適してない単語なんだと思う。
総評。ネタとしては俺も考えたことがある。というか寝かせているネタだ。ギャルゲー風にして、ヒロインが主人公に告白、が、告白の内容は……というもの。寝かせてる理由は、もっと構成にこだわりたいから。
そういう俺の見地からすると、構成が最悪に程近い。あとひとつ角を曲がってれば最悪だった。
そこまで落ちぶれていないのは、藤井が主人公を好きという小手先のトリックがあったから。
とはいえ主人公が中性的な顔立ちという点などが、それを程度の低いものに仕上げてるが。
藤井はなぜ主人公のことを好きなのか、ハッキリわからなくなる。単純にホモにすればいいのに。
だがこのトリックがなかったら筒井監督よろしく「こんなもん、クソやな!」と言い放つ気まんまんだった。
まずタイトル。これでオチが8,9割、予測できる。推理というレベルを大きく下回る。
次いで文章。平易なだけが取り柄なのに誤字もある。オカ板行って来い。こんなの1レスで読めるわ。
俺の思う悪い意味でのラノベに該当する。無駄に間延びさせて、諧謔性のかけらもない。
キャラクタ。渚の外見を明記してあったのは好感。藤井も僅かではあるが外見描写がある。
だが主人公がてんでダメ。自動操縦の車にムリヤリ乗せられてるような感覚。
「いや、普通そんなこと思わない」「おいおい、オチに向けてのセリフはやめさせろ」
レールの上に乗せていると読者に思わせているなら、それすら裏切る気概を。
顕著な箇所は、4レスめの「次の週明けは憂鬱な気持ちも和らいでいた。」以降。
取らぬ狸の皮算用も甚だしい。主人公が藤井や渚に連絡をとられては敵わない、という作者の思惑がはっきりと表出してしまっている。
どこかで見たようなつくりの甘さ、と思っていれば、なんのことはない、俺が最初に書いた小説に似ている。作者だけが面白いと思ってるような、そんな文章。
せいぜい頑張ってくれ。努力して、俺を凌駕して悔しがらせてくれ。俺にない、叩かれても起き上がるタフネスを見せてくれ。
見苦しくてスマンね。
1653/9全館 ◆/6V.PHILIA :2010/12/07(火) 23:46:26.85 ID:l9vz22800
No.03 存在の証明 ◆/8L81UtKTg氏
>玲子はうまく霊と交信できなかった自分が悔しく、
 UFOや宇宙人じゃないんだから。交信はおかしくね?
>健太は玲子を優しく愛撫しながら言った。
 どっちやねん。ペッティングか? ピロートークか?
 総評。いいギャグだ。こういうノリは大好きだぜ。大好物だぜ。
珍しく、冒頭から中盤にかけて読んで、途中で「あ、これ投票だな」と思った。
しかも終盤にかけるに連れてその意志は強まり、オチで確実なものとなった。
俺個人の感想としては、一般に販売されてる短篇集にあっても文句云わないレベル。
レベルというと語弊があるかな。趣味趣向も大きく関与してるだろうし。
一点、苦言を呈すなら、玲子が死んでジイさんが出てくるところ。
シリアス(それまでの雰囲気)からギャグ(ジイさん)へ急転してしまってるから、
どう捉えていいのかわからない人も出るかもしれない。
生前の玲子がジイさんの霊を見てて死後に出会って思い出す、
みたいなシーン、やりとりがあっても悪くなかったかもしれない。
 ふと、玲子が死んだ時点で「了」として終わるってのもアリかな、と思った。
死後の世界なんてなく魂もなく、死んだら無。だから終わり。シュールじゃね?


No.04 食肉 ◆Oamxnad08k氏
お前が変態なのはわかった。だから落ち着け。
俺はお前が嫌いじゃない。そういう意味じゃなく、ノリという意味だけで。
これがbnskじゃなきゃおもしろがってたが、
いかんせん「これが小説か」「お題はいずこに」という論点に答えを見出せなかった。
vipらしい文章だと思った。
「そのまま突き進んでくれ」と言いたいが、
是非……是非! 「糞食って食中りで死んでくれ!」
1664/9全館 ◆/6V.PHILIA :2010/12/07(火) 23:47:08.31 ID:l9vz22800
No.05 山内の人生論 ◆.oIbKCaZu2氏
うーん、1レスめから疑問が湧いたな。
山内の恋愛観は、重婚を許容するものではあるが、必ずしも二股を許容するものではない。
三股、四股、むしろ山内は世界中の女と関係を築きたがるくらいでないとおかしい。
山内は二股に固執してるのか? 複数人と恋愛することに固執してるのか?
俺には前者に見える。つまり予定調和、ってこった。
> 3人のうちどの二人も、
推敲ぐらしろよ。足元見られてるぞ。
総評。正三角形についての考察が浅いと感じた。
どの辺も同じ長さ、ということはそれぞれの抱く感情の種類が同じなのではなく、
それぞれの抱く勘定の度合いが同じ、ということではないか。
山内の彼女たちに、顔出しをさせないというのは「ほう」と思った。(おもしろくはない)
主人公の存在に意味はあるのだろうか。
せいぜいがオチに使ってあるぐらいか。
もしくは客観視点として「山内を羨む一般人」として読者に感情移入させる程度か。
しかし山内を主人公とし、二人のヒロインが百合に目覚める様子を具さに描くほうが、
遥かに躍動的で、また需要もあるように思われる。
察するに、作者は逃げたのかもしれない。描写という苦難から。
三角関係については、俺も使おうと思ってたネタ(今回は棄権したけど)。
正三角関係、というのは俺は思いつかなかった。が、おそらくもっと練るべきだったろう。
1675/9全館 ◆/6V.PHILIA :2010/12/07(火) 23:47:53.06 ID:l9vz22800
No.06 夕暮れパズル ◆xaKEfJYwg.氏
>顔色がだんだん白ずんでいくのを感じる。
血の気が引いていくのを、じゃなくて?
>真希の向かい側に座っている晴香(はるか)は、手元にあるスパゲッティの皿を持ち上げて、忙しなく麺を口の中に運んだ。
細かいかもせんが、すすったのか、かっこんだのか、ハッキリしてくれ。晴香の行儀のよさ、ひいては晴香への好感に繋がる。食い方嫌いなヤツ、苦手なんだよ。
>顔を歪ませる晴香に微笑みながら、真希はじっと言葉を待つ。
ここも。どういう風に歪ませたんだ?
>「共犯者木製のバット」
…………?
>晴香は、真希との距離を心持ち詰めて、顎に手を当てる。
これ、いるか?
>晴香をもう一度、今度は両手を掴んで立ち上がらせ、紺色を落としているドアの向こうに目を向けた。
迂遠だな。1レスめ末の「手のひらはつぎはぎのデゴボコを感じるだけで、浮いているピースを触れることはできなかった。」も遠回りだ。
総評。いろいろとぎこちない。文章、構成、キャラクター。
まず文章。上でも述懐したが、迂遠。たとえば最後のレスにて、
>さっきいってた絵を描こうかと思ったんですけど、今、たった今止めました。
「思ったんですけど、たった今止めました」で充分。
つい先日に読了した「探偵映画/我孫子武丸」にこんなセリフがある。
「お前は今までなにをやってきたんだ? 意味のないテクニックは使うなと、どれほど言ってきた?」
そしてさらに続いて、
>先生と見たこの空をいーっぱいいろんな絵の具を使って塗っていくんです。最後に、慎重に色を乗せる。オレンジと、青色と、灰色に!
「慎重に」とはどんな風に? これは上記した「どういう風に?」という疑問を抱かせる。
抽象な言葉で満足してるようで、読者として映像が浮かばない。
「筆を誤って下ろさないように」とか「絵の具が垂れないように」でもいいじゃん。明記しようや。
次いで構成。最後の回想いりません。
ラスト、キャラクタ。晴香のよさがまったくわからん。感情移入できませんでした。
構成として晴香の登場から終了まで1日も経ってないからかな。
主人公もなんかドラえもんみたく足元数_ぐらい浮いてんじゃね? ってぐらいあやふや。
村山由佳のできそこない、みたいな感じかな。作者は女性? まあそれはさしたるデータじゃないか。
ちなみに俺は村山由佳が嫌いである。この感想も個人的な趣向かもしれないので、悪しからず。
1686/9全館 ◆/6V.PHILIA :2010/12/07(火) 23:48:37.62 ID:l9vz22800
No.07 記号と君と僕 ◆1ImvWBFMVg氏
>そんな事をつらつらと考えながら弁当を食べ終え、テレビを見ていた。
頭ンなかで考えてる風にすんだったら、それまでの述懐も
読者への語りかけ形式はやめたほうがよかったと思うぜ。
課長も無茶なこと言いやがるぜまったく、ぐらいのモノローグっぽい感じで。
>少女の名は千香ちゃん。大学二年生で、このアパートの大家の娘さんだ。
少女って言葉、俺ものすごい使いにくいと思う。大学生は少女じゃないと思うし。
一般的な解釈と異なるかもせんが、せいぜい小学生までじゃね? 少女って。
>勢いよく体を抱き抱えて一気にベッドに雪崩こむ。子供みたいに笑い声を上げる彼女の口にキスをせがんだ。
ゴメン、「うわあ……」って云っちゃった。
>ため息をつくと、千香ちゃんが慰めるように体を巻き付けてきた。それだけで幸せだった。
「千香ちゃん」とやらはラミアですか? アナコンダですか?w
>実は今回自分が思った事は、『三角って一体なんだろうな』って事だったんです」「ほう、面白そうだな。続けてくれ」
おいおいおいおい、どんだけ逼迫しててもそんなヒトコトで興味わかせる上司いねーよw
>「ふむ、よろしい。なかなかいいぞ柏木。じゃあお前はその方面で取り付けそうな企業をピックアップして見てくれ」
スピード採用w 自転車操業かよ。エロ同人でもこんなにさっさと決まらないんじゃね?w
>「うん。結婚しよう」「宜しくお願いします」
;`;:゙;`(;゚;ж;゚; )ブッ
バカップル描くのが好きなんでしょう。笑っておきます。
総評。山田悠介的非ホラー小説、とでもいおうか。迂遠だw
作者がネタと割り切ってどんなに卑下されようと唾棄されようと受け入れるのならば、立派な小説だ。
しかし寸毫でも怒りや不遜な感情が湧いたなら、一笑に附して終わりの文章だ。
俺はすべてネタとして見せてもらいました。かしこ。
あ、お題は完全に投げてしまってるので絶対に投票はないけどね。
1697/9全館 ◆/6V.PHILIA :2010/12/07(火) 23:49:26.62 ID:l9vz22800
No.08 歪む均衡 ◆ihO9dxzf9I氏
文頭から、読者を引きつけず、来る者拒みて去る者拒まざるの態。
ここでトリを見て、あ、きゃつめか、と失笑。
文章を視覚にて捉える際に、作者の無駄な知識披露を排して、ストーリーを探すことに徹する。
ダッシュが多く見づらい。セリフなのかモノローグなのか、はたまたそれ以外なのか、
いちいち推測せねばならず、ストレスが多い。
総評。作者の鬱陶しさを些少ながら知っているだけに、変な濡れ場もどきを読まされるのがつらかった。
長いモノローグ然とした解説が長々しいのも相まって、あとどれくらいで終わるのか、と心中で願うばかり。
太宰の片鱗、久作の片鱗などが見え隠れするように感じたが、読むに堪えない。
思うに潜水艦である。こちとらこの作品を読みたくて読んでいるのじゃなく、
品評会に上がった作品だから読んでいるだけのことで、
ムリヤリ潜水艦に乗せられて、どこまで潜るのか、またどれだけ潜り続けるのか、
艦長はこっちの閉塞感や酸素欠乏の妄想など気にも留めちゃいないだろうと嘆息する。
俺から作者への言葉としては、「短くまとめろ」とのみ進言しておく。
作者自身から作者自身への、俺が選んだ言葉としては以下を挙げておく。
ぜひ、「美里」の箇所を「作者」とすりかえてくださいな。
>問いかけているのか、それとも独り言として言っているのか、一人勝手に考察を進めている美里の様子は、苛立ちを助長させた。


No.09 もっともっと大切なオンリーワン ◆HmfYvBHWkM氏
先に申し開いておくが、俺の「vipっぽい」というのは
アニメやマンガ、ラノベといったサブカルっぽい、サブカルマンセーのことではなく、
どんな破天荒なこともネタにし、昇華する、という点にあると明言しておく。
また、全館投下の時間がなくなってきたこともあり、流し読みが大きくなる点もご容赦いただきたい。
いきなり総評。思ったよりはマシだった。安心。しかしお題は投げっぱ。残念。
しいて述べるなら、他人に自分の愛の深さをひけらかす人間は屑だと思う。
1708/9全館 ◆/6V.PHILIA :2010/12/07(火) 23:50:34.83 ID:l9vz22800
No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oI氏
総評。うん、オチがキレイだ。ストンと落ちてる。が、お題に関してはどうだろう。絵の内容が三角に準じていたというだけで、
その絵の内容を変えてしまえば、どんなお題にでも適当なように見える。そういったものはトートロジーじゃないか?
「1+1=1+1」「『私』という存在は、『私』でしかない」
そういったものに、意味はあるのか。俺はないと思う。即ち、どのお題にも適していない話だ。「絵」「折られた筆」などでない限りは。

No,11 凛として咲く花の如く ◆FcModpyaRc氏
体言止めが多いなあ。
>ラミナはふと尿意を覚えてトイレに行こうと、建付けが悪い引き戸をガラガラと音を立てて開けて、
>隙間風が吹く打ちっぱなしのコンクリートの廊下を歩いていると、足元の何かに引っかかってこけそうになった。
長いなあ。推敲してあるのかな。してるっぽいけど、どうなんかな。
>また表情が恐怖に満ちて、声にならない黄色い声を。
>劣情をこれでもかと叩きつけられ、そうして、ずっと、ずっと。
あー、こういう文体って苦手。北の国からの純の「〜なわけで……」と一緒。嫌だ嫌だ。
>ラミナ
ミナの部分が汁に見えた。
>ラミナは、奥歯に仕込んだ感覚暴走剤《§》をギシリと噛み砕いた。
これは笑えたw

総評。表現のくどさには辟易としたものの、嫌いなストーリーではない。というか作者は、あさきすとか? あとリュック・ベッソン好きなのか?
オチは嫌いではないが、あえて亡命後の顛末を書かないということは、まあいろいろ捉えようがあるってことだわな。
この作品の構成での難点は、情報量が冒頭に偏ってしまってる点か。《快楽の川(フィオルット)》や《§(セクション)》の段階で、離れていく読者はいると思う。
単純にラミナが戦闘するシーンを流しておいて、情報を小出しにしてちりばめておくのが、やはりイイ手かと思う。
マンガならド頭に設定を並べ立ててもイイとは思うんだけどね。でも文章はマンガじゃない。
非常に流し読みのしやすい、要点が絞られた文章だとカンジタ。
その点は今まで俺が読んだ品評会作品のなかでも上位レベル。
作品の味も、ガッツリとまではいかないが、ソコハカとなくある。
だがお題については、ようわからんかった。完成度高いだけに、がっかり。
1719/9投票 ◆/6V.PHILIA :2010/12/07(火) 23:51:28.08 ID:l9vz22800
******************【投票用紙】******************
【投票】:No.03 存在の証明 ◆/8L81UtKTg氏
【関心】:No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oI氏
No,11 凛として咲く花の如く ◆FcModpyaRc氏
**********************************************
― 感 想 ―
今回は豊作、とまではいかないものの、作品数が二桁を越して、よかったねたえちゃん!
まず投票・関心について。
投票の「No.03 存在の証明」についてはまったくの異論なし。
関心の「No.10 折られた筆と王子様の絵」「No,11 凛として咲く花の如く」
については、描写・オチなど腑に落ちないところは少なかったが、
いかんせんお題がかなり蔑ろになっているとカンジタ。
そこさえシッカリしてれば投票だった。惜しい!
あと関心の2作には、もっと早めに仕上げてくれば深く読み込めたのに。と思いまちた。
では次いでその他。
「No.01 万能統計士Kの事件簿_公共交通編」は、”読ませる”工夫がほしかった。
「No.02 食肉」は、あえてもうなにもいわない。昔の俺に文句いってるようなもんだもん。
「No.04 食肉」の作者よ、読者をなめちゃあいけないぞ。ぷんぷん。
「No.05 山内の人生論」は、もっと躍動感を。動的に見せようぜ。
「No.06 夕暮れパズル」は、総合的に及第点より低かった。全体を見直すべし。
「No.07 記号と君と僕」は、お題と真摯に向き合え。目を逸らすな。逃げちゃダメだ。
「No.08 歪む均衡」の作者は安心してくれ。きみにはなにももとめないよ。
「No.09 もっともっと大切なオンリーワン」は、ギャグとしてもイマイチだった。
全体的に前回より温度は上がったとは思うが、やはり熱き血潮が感じられない。
熱さでいえば、「No.04 食肉」が熱かった。が、変態なのでスルーでw
次回は参加できればいいな。では葛切りよりクズな俺でした。
前回と同様、文句・いちゃもん・質問・煽りなどはイツデモいらっしゃーい。
(レス数、多くなってゴメンなさい)

172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 00:08:46.73 ID:cohrAKuQ0
誰かわからんが優勝おめ
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 00:32:25.12 ID:YRMlf4W10
全感乙
遅くなったけど同じく滑り込みの全感&投票転載
174◇HmfYvBHWkM:2010/12/08(水) 00:34:36.79 ID:YRMlf4W10
No.01 万能統計士Kの事件簿_公共交通編 ◆X78jHks0c.氏
前回の統計士シリーズに投票か関心を入れたと思うので、今回は期待に胸躍らせながら読んだ。
……2レス目で完全に集中力が切れた。ちょっとこれはきつい。まさに言葉の暴力だ。
前作はテンポも良かったし、相手をギャフンと言わせるシチュエーションも手伝って知識の羅列もスラスラと読めたんだけどね。
いや、相変わらず知識量はすごいと思うんだよ。けど九州に馴染みのない人間にとっては……なあ?
まあ俺も今回の作品で同じ事をやってるんだけどね。
やっぱりこういった専門的な知識は読者に読ませる工夫が欲しいな、と思いました。

No.02 食肉 ◆Lq1ieHiNSw氏
アッー!アッー!アッー!
個人的には恐ろしさとか、身の毛がよだつ感覚は全くなかった。
うーん、登場人物達に感情移入ができなかったし、主人公の自分語りを鬱陶しく感じてしまったからかな。
藤井の役割を渚が演じてたら面白かったかも。自分、病んでるおにゃのこが大好きですので。
それにしても相変わらず突っ走ってるねぇ、そういう姿勢は大好き。ちゅっ。

No.03 存在の証明 ◆/8L81UtKTg氏
やべぇ、1レス目から笑いが止まらねえwwwww
ここまで説明台詞が酷いと逆に笑える。
そして地の文で記している拙い状況説明や心情説明がシュールな笑いを醸し出していて、いいアクセントになってるのも最高だ。
どんなマイナスな事でも極めるってのは本当に大事だなあ。中途半端が一番良くない。
作者はこれを狙って書いたのか? たぶん天然だと思うんだけど、もし狙って書いたなら間違いなく天才だわ。
科学者としてのキャラ付けなんだろうけど、ジェットコースターに乗りながら議論するとか想像しただけで腹がいてーwwwww
途中ちょっとだれちゃったけどオチもなかなかいいし、良質の笑いをありがとう。
……決して馬鹿にしてるんじゃないですよ?

No.04 食肉 ◆Oamxnad08k氏
あ、No.2とタイトルが被ってる。けど内容は全然違うな。
くだらねえwwwwwけど好きな部類のくだらなさだ。
短い中にとてつもないパワーを感じるわあ。
175◇HmfYvBHWkM:2010/12/08(水) 00:37:28.54 ID:YRMlf4W10
No.05 山内の人生論 ◆.oIbKCaZu2氏
ああ、そりゃやっぱりこうなりますよねー。
俺的には主人公も絡ませて四角関係にした方が楽しめたかなあ。
でも登場人物達の会話内容は面白かった。

No.06 夕暮れパズル ◆xaKEfJYwg.氏
4レス目から流し読み発動。
なんつーか、登場人物から作り物臭がぷんぷんする。作者の都合の良いように動くロボットに見えた。
晴香が主人公に相談したいと思った理由が分からない。悩みを打ち明けたいと思えるほど魅力的な人間には思えなかった。
ここは主人公が相談するに足り得る人間だというエピソードが欲しかったな。
題材が使い古されているのもマイナスだなあ。手垢が付きまくってる故の安定感はあるけどね。

No.07 記号と君と僕 ◆1ImvWBFMVg氏
作品中に登場する「三角」が何なのか想像できなかった。
疑問ばかりが頭に浮かんで肩透かしを食らったような気分だ。
作者からの解説もあったけど、どーにもピンとこない。
あっ、話の内容については特に語ることナッシングです。

No.08 歪む均衡 ◆ihO9dxzf9I氏
面倒だから所々読み飛ばしちゃった、えへへ。
だって誰が喋ってるのか分かり辛いんだもーん。この主人公は多重人格なのか? と思っちゃうぐらい。
セックスシーンは緊迫感が伝わってきて読みごたえがあったけどね。それなりに楽しめた。

No.09 もっともっと大切なオンリーワン 自作
俺がハルヒや禁書に対して深い興味を持ってない事がばれちゃいましたね。
今じっくり見返したら、確かにこれは嫁じゃなくて作品を語ってるだけだわ。上っ面だけになってしまってる。
まあ書きたい場面は存分に書けたんで、その点は満足してます。
それにしてもあー、もっとバカな話書きてー。どんどん馬鹿になっちゃいたい。
――便所の落書きとかジャンクフード。そんな形容詞が似合うような話をだらだら垂れ流してえ。
バカはいいぞぉ、お前もバカになれ! なんちて。
176◇HmfYvBHWkM:2010/12/08(水) 00:39:41.86 ID:YRMlf4W10
No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oI氏
いい具合に皮肉が効いていて良いですな。
実際、名前ってのは間違いなく一つの判断基準だしね。吟味する時間のない人間にとっては手間暇かけずに判断できる便利な方法だ。
だから、名前で判断する人間を責める事はできない、と俺は思う。
そして自分が凡人である事に絶望した人間というのは見てて共感できる。自分も凡人側の人間だから……。

No,11 凛として咲く花の如く ◆FcModpyaRc氏
邪気眼解放しすぎくそわらたwwwww
これナデシコは少女なのかなあ?
自分を殺そうとした相手に懐いた理由として知識の無さ、幼さ、無知が強調されるなら少女という表現は引っかかる。
例えナデシコが六、七歳ぐらいの年齢設定だったとしても、ね。
作中でのはしゃぎっぷりも幼女と言われた方がしっくりくるし。
まあ、あくまで俺基準なんで話半分に聞き流しといてくださいな。
内容は……穢されてもなお前向きに輝き続ける幼女とのいちゃいちゃ及び愛の逃避行が描きたかっただけですね、うん。

******************【投票用紙】******************
【投票】:No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oI氏
【関心】:No.03 存在の証明 ◆/8L81UtKTg氏
     No.05 山内の人生論 ◆.oIbKCaZu2氏
     No.08 歪む均衡 ◆ihO9dxzf9I氏
**********************************************

今週は面白い作品が多くて良かった。
ではでは、またの機会に。
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 00:46:19.62 ID:YRMlf4W10
転載終わり

そしてまとめ掲示板から集計結果の転載です

 投 関
 − − No.01 万能統計士Kの事件簿_公共交通編 ◆X78jHks0c.氏
 −  1 No.02 食肉 ◆Lq1ieHiNSw氏
  2  2 No.03 存在の証明 ◆/8L81UtKTg氏
 − − No.04 食肉 ◆Oamxnad08k氏
 −  3 No.05 山内の人生論 ◆.oIbKCaZu2氏
  2  2 No.06 夕暮れパズル ◆xaKEfJYwg.氏
  1  2 No.07 記号と君と僕 ◆1ImvWBFMVg氏
 −  2 No.08 歪む均衡 ◆ihO9dxzf9I氏
 −  1 No.09 もっともっと大切なオンリーワン ◆HmfYvBHWkM氏
  3  3 No.10 折られた筆と王子様の絵 ◆pxtUOeh2oI氏
 −  2 No,11 凛として咲く花の如く ◆FcModpyaRc氏

というわけで優勝は◆pxtUOeh2oI氏です。おめでとうございます!
素敵なお題待ってますね
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 00:48:06.16 ID:aL2oCHZBO
集計おちゅ
来週は参加するだよ
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:25:14.68 ID:v7C5xowfO
優勝者おめ!来週は優勝するぜぇ!
180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 01:29:34.12 ID:YRMlf4W10
規制スレより転載


19 名前: ◆pxtUOeh2oI [] 投稿日:10/12/08(水) 01:17:17 ID:37owU0dj
いえー優勝いえー
11時ぐらいの段階で負けたと思ってふてくされてDVD見てたぜー
ビギナーまじおもしろい
松雪泰子が綺麗でかっこいい

月曜から規制に巻き込まれてるので明日の夜遅くに、規制スレにお題出します
あと貰ったものを返す気が無い上で言うけど
皮肉ってなんですか?
なんでみんな皮肉って言ってるんですか?
普通に、絵を作者の名前で判断しちゃダメだよね、って書いただけなんです><
スレへの皮肉とか少しも考えてなかったんです><
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 02:52:31.30 ID:Xy6LANM+O
論文かくの疲れたからお題くれ
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 04:25:54.68 ID:R3oJvNB60
融けたイチゴ
183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 06:02:37.49 ID:R3oJvNB60
184以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 06:36:03.54 ID:rhSLO2EuO
保守寝
185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 08:33:07.64 ID:cohrAKuQ0
お題くれ
186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 08:52:17.21 ID:BEAVV09a0
>>185
フォント
187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 09:09:08.93 ID:cohrAKuQ0
把握
188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 09:48:51.93 ID:aL2oCHZBO
明日の夜って今日の夜のことかな
189以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 11:30:56.76 ID:hYJoehi2O
>>146
綺麗なイメージだね
190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 12:49:00.31 ID:v7C5xowfO
お題お題
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 12:51:19.40 ID:/A31SAcQ0
>>190
我慢の限界
192以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 12:53:19.86 ID:v7C5xowfO
>>191
けっこう難しいな……把握
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 12:56:50.70 ID:xH57ekC00
品評会お題まだか。
どうせだからファンタジー書きたいので
↓お題
194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 12:59:40.88 ID:hYJoehi2O
もう雨は上がらない
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 13:00:32.73 ID:xH57ekC00
>>194
把握
196以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 13:40:30.51 ID:I8u+QQeuO
お題くれくれ
197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 13:40:54.24 ID:sb5xbiXuP
>>196
アンニュイ
198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 13:42:24.73 ID:I8u+QQeuO
了解
199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 15:29:20.54 ID:pSDkdhiRO
200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 16:25:50.22 ID:41u/EaB6Q
こんなスレあったのか
試しにやってみるからお題くだしあ
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 16:28:49.81 ID:BEAVV09a0
品評会の優勝作読んだけど、これを皮肉と受け取るなんて
普段どんだけ穿った読み方してるのよ君達
202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 16:37:19.28 ID:aL2oCHZBO
>>200
じゃあ「職員室」でどうだろう
203以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 16:47:30.05 ID:hYJoehi2O
他の人たちは確かにアレですが、私だけに限って言えば素直ないい子だとBNSK内でも評判ですよ?
204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 16:54:15.05 ID:R3oJvNB60
作者の弁明の後になにを言っても意味ねえっての
205お題 一日 1/3:2010/12/08(水) 16:54:15.26 ID:7xR7B7UGO
 今日一日の重さ。なんて話しを、僕にふられたところで大した回答なんかは出来ない。
 僕はただ毎日をのんびりだらりと過ごしている高校生に過ぎないし、質問をしてきた奏(かなで)は、やっぱり僕と同じような高校生だ。
 そんな僕に、今日一日の重さなんて解るワケがない。だいたい、奏に話したところで、この幼なじみが理解するワケがない。
 それでも、僕は少しだけ考えてみようかと思う何かがあった。
 歩道橋から眺めている夕焼けのせいかもしれない。
 奏の横顔が、夕焼けに照らされてとても綺麗だったからかもしれない。
 真っ黒の長い髪が、オレンジの光を反射してキラキラと輝いているせいかもしれない。
 横顔に、夕闇が陰をつくって、別人みたいに綺麗に見えるせいかもしれない。
 歩道橋の下、ライトをつけた車が行き交っているせい。雑踏のなか、帰り道を急ぐ人たちのせいかもしれない。
 夜が近いせいだと思う。たまには、感傷的になっても良いような気がする。
 僕ら二人は、ただただ、街の向こう側に消える夕焼けを眺めていた。
206お題 一日 2/3:2010/12/08(水) 16:57:21.87 ID:7xR7B7UGO
「♪〜、もうすぐ今日が終わるー。やり残したことはないかい?ある気がするよー。親友と語り合ったかい?今日もね!燃えるような恋をしたかい?したいねー。一生忘れないような、出来事に出会えたかい? まださっ」
 歌をうたいながら、上機嫌で合いの手をいれる奏。
「遣り残したことは、なんだか、たくさんある気もするし。ないような気もするよ」
「あたしも」
 風がぼくらの間をすーっと走っていく。
 その瞬間夜がきた。
 夕日が沈んでいく。ゆっくりと、濃い色を焼き付けて。世界の全てを作っていくように。
 まだまだ、地平線の向こう側には夕焼けの残りがあった。でも、僕らは何となく夜がきたんだと感じた。
「もうすぐ、今日が終わるねえ」
「まだまだだよw なんとなく、気分で歌っただけだもん」
「そっか」
「そうよ」
207お題 一日 3/3:2010/12/08(水) 17:01:43.72 ID:7xR7B7UGO
「思うに、一日はああ良かったと思えるくらいの重さなんじゃないかなあ」
 何だか、急にそんな言葉が過ぎった。
 雑踏を家に向かって帰る人達を見たら。奏が、ゆっくりと髪をかきあげる姿を見たら。近所の子供が、はしゃぎながら走っていく姿を見たら。空の向こうに消える夕焼けを見たら。何処かの家の夕飯の匂いをかいだら。ひんやりとした風を感じたら。
 なぜだか、そんな気がした。
「なるほど。あたしも、そんな気がする」
 そっかあ、と奏が呟き、また一つ大きく呼吸をした。
「うん、その、ああ良かったと思えるくらいの重さって言葉は凄く良い。やれば出来るじゃん! 一番最初の、あの、なんだかよく分らないコウショウな話なんかより、百億倍良いよ」
 うんうんと奏が頷いてくれる。
 僕も、なんだか、そっちのほうが凄くしっくりときた。
「何だか知らないけどさ。そう思ったんだよ」
「いいねー。さてっと、それじゃあ、そろそろ帰りますか」
 くるっと、奏が僕の方を向いて言った。
「うん、そろそろ寒くなるからね」
 僕の返事を聞いて、奏はゆっくりと前へと歩き出した。
 その背中を眺めながら、今日一日を思い返してみる。
 学校に、仲の良い友達たち、沈む夕日に、町を行き交う人々。
 街の雑踏に溶けようとしている奏を見ると、なんだかいい日を送ったような気もする。
「明日は、今日一日の重さが分るように生活をしよう」
 奏が小さく独り言をいった。
 その言葉は、僕の胸に良い具合にまざっていった。
 うん、何だか、それは凄くいいことのような気がする。
 街は夜が包み込んでいった。

終わり。
208訂正 お題 一日 1/3:2010/12/08(水) 17:19:44.30 ID:7xR7B7UGO
 今日一日の重さ。なんて話しを、僕にふられたところで大した回答なんかは出来ない。
 僕はただ毎日をのんびりだらりと過ごしている高校生に過ぎないし、質問をしてきた奏(かなで)は、やっぱり僕と同じような高校生だ。
 そんな僕に、今日一日の重さなんて解るワケがない。だいたい、奏に話したところで、この幼なじみが理解するワケがない。
 それでも、僕は少しだけ考えてみようかと思う何かがあった。
 歩道橋から眺めている夕焼けのせいかもしれない。
 奏の横顔が、夕焼けに照らされてとても綺麗だったからかもしれない。
 真っ黒の長い髪が、オレンジの光を反射してキラキラと輝いているせいかもしれない。
 横顔に、夕闇が陰をつくって、別人みたいに綺麗に見えるせいかもしれない。
 歩道橋の下、ライトをつけた車が行き交っているせい。雑踏のなか、帰り道を急ぐ人たちのせいかもしれない。
 夜が近いせいだと思う。たまには、感傷的になっても良いような気がする。
 僕ら二人は、ただただ、街の向こう側に消える夕焼けを眺めていた。
「今日一日の重さは、どれくらいだろうね」
 なんてことを呟く奏は、凄く尊い存在のような気がした。
「誰かが言っていたけど、貴方が過ごした今日は、誰かが死ぬほど欲しかった明日。ってくらいじゃないかな」
 僕の言葉に、奏ははーとため息をついた。
 かなり真面目に良いことを言ったんだけど。ため息とは、失礼な奴め
「自分で考えるんだ、若者よー」
「いや、僕の方が年上だし。半年も。」
「こんな話題に、ヒトサマの考え持ち出されても、あたしが困るよ。てか、ちっちゃいなー。君」
「うっせ!」
 街は、ゆっくりと夜になっていく。
 目線の先、輝く雲が何処までも続いていった。
 あと少し、30分位で陽が沈む。
 夕方と夜が一緒になって、くるくると混ざったような感じがした。
 奏は、その瞬間のすべてを大切にしているような、凄く大人びた表情をしていた。
209訂正 お題 一日 2/3:2010/12/08(水) 17:22:05.26 ID:7xR7B7UGO
「♪〜、もうすぐ今日が終わるー。やり残したことはないかい?ある気がするよー。親友と語り合ったかい?今日もね!燃えるような恋をしたかい?したいねー。一生忘れないような、出来事に出会えたかい? まださっ」
 歌をうたいながら、上機嫌で合いの手をいれる奏。
「遣り残したことは、なんだか、たくさんある気もするし。ないような気もするよ」
「あたしも」
 風がぼくらの間をすーっと走っていく。
 その瞬間夜がきた。
 夕日が沈んでいく。ゆっくりと、濃い色を焼き付けて。世界の全てを作っていくように。
 まだまだ、地平線の向こう側には夕焼けの残りがあった。でも、僕らは何となく夜がきたんだと感じた。
「もうすぐ、今日が終わるねえ」
「まだまだだよw なんとなく、気分で歌っただけだもん」
「そっか」
「そうよ」
210お題 一日 訂正 3/3:2010/12/08(水) 17:27:16.14 ID:7xR7B7UGO
「思うに、一日はああ良かったと思えるくらいの重さなんじゃないかなあ」
 何だか、急にそんな言葉が過ぎった。
 雑踏を家に向かって帰る人達を見たら。
 奏が、ゆっくりと髪をかきあげる姿を見たら。
近所の子供が、はしゃぎながら走っていく姿を見たら。
 空の向こうに消える夕焼けを見たら。
 何処かの家の夕飯の匂いをかいだら。
 ひんやりとした風を感じたら。
 なぜだか、そんな気がした。
たまらなく、胸にこみあげてきた。
「なるほど。あたしも、そんな気がする」
 そっかあ、と奏が呟き、また一つ大きく呼吸をした。
「うん、その、ああ良かったと思えるくらいの重さって言葉は凄く良い。やれば出来るじゃん! 一番最初の、あの、なんだかよく分らないコウショウな話なんかより、百億倍良いよ」
 うんうんと奏が頷いてくれる。
 僕も、なんだか、そっちのほうが凄くしっくりときた。
「何だか知らないけどさ。そう思ったんだよ」
「いいねー。さてっと、それじゃあ、そろそろ帰りますか」
 くるっと、奏が僕の方を向いて言った。
「うん、そろそろ寒くなるからね」
 僕の返事を聞いて、奏はゆっくりと前へと歩き出した。
 その背中を眺めながら、今日一日を思い返してみる。
 学校に、仲の良い友達たち、沈む夕日に、町を行き交う人々。
 街の雑踏に溶けようとしている奏を見ると、なんだかいい日を送ったような気もする。
「明日は、今日一日の重さが分るように生活をしよう」
 奏が小さく独り言をいった。
 その言葉は、僕の胸に良い具合にまざっていった。
 うん、何だか、それは凄くいいことのような気がする。
 街は夜が包み込んでいった。

終わり。すまない、途中はりわすれてしまったのでこちらでお願いします。
211以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 18:14:58.28 ID:qRHjv6eP0
評価の良し悪しを問わず作者の名前で作品を見てる感想がある限りはそう見られてもおかしくないんじゃないの
特に優勝者の方は有名人扱いされてたし
212以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 18:27:44.82 ID:hYJoehi2O
具体的にその感想の例てあげられるかい?
どれだろう
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 18:48:38.70 ID:Viq6OsVH0
僕はお題が欲しいんだ
214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 18:50:05.14 ID:R3oJvNB60
早朝のメロドラマ
215以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 18:55:01.24 ID:v7C5xowfO
おう、変なお題だす人がいる。お題よっこせー
216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 18:57:32.95 ID:R3oJvNB60
ごめんな、お前の書ききれないお題だしちゃって
217以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 19:01:56.11 ID:v7C5xowfO
>>216
よく分からんがこのレスは上の人向けか?はやく俺の分のお題をよこせー
218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 19:02:09.68 ID:41u/EaB6Q
いくら考えてもくそみたいな話しか浮かばないお
219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 19:21:25.35 ID:v7C5xowfO
その糞みたいな話を必死に磨けばいいんじゃないか?
しかし何でくれないんだチクショウ、変わったお題の書きたかったのに
220以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 19:28:00.99 ID:hYJoehi2O
では僭越ながら自分が

「銀河鉄道の人身事故」
221以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 19:35:44.44 ID:v7C5xowfO
>>220
もうそれ話の内容が半分くらい決まってないか?うーん……、微妙だなー
あんまり酷いのしか掛けなかったら投下しないかも把握
222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 19:50:31.75 ID:v7C5xowfO
うんちょっと考えてみたけどぜんぜん無理。絶対微妙なのしか書けやしない
だいたい銀河鉄道それ自体があの世への旅路だってのに、そこに人身事故とか、もう訳分からん
もう一回募集しまーすー、変なお題ーよーこーせー
223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 19:52:22.87 ID:flt6Tp150
鳥人間
224以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 19:53:45.92 ID:7xR7B7UGO
焼酎ラリアット
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 19:56:24.74 ID:v7C5xowfO
>>223
ふむぅ……なんだか良さそうなお題じゃないか……
たぶんミッシェルだろうけど日本語にすると語感がいいね。頂きます把握

>>224
こっちはコメディっぽいな。いいよいいよ把握
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 20:10:34.00 ID:I01CKDSC0
>>208
詩的に哲学的に語るにはまだまだ足りないところがたくさんあると思う
だがそういう路線は好きだ
227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 20:20:31.19 ID:v7C5xowfO
あ、もしかして鳥人間コンテストの方か?まあいいや書き始めちゃったし。
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 20:23:19.92 ID:flt6Tp150
どうとるかなんて勝手でいいさ!
229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 20:44:54.11 ID:uZXz+Qxm0
ちょっと待つんだ
バードマンときいてミッシェルと鳥人間コンテストしか思い浮かばないって
だいぶおかしくないか?
230以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 20:51:01.66 ID:uZXz+Qxm0
>>222
>だいたい銀河鉄道それ自体があの世への旅路だってのに、そこに人身事故とか、もう訳分からん
変なお題がほしいというから頑張って考えたんじゃないか!
ぷんすか
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 20:51:53.62 ID:rhSLO2EuO
物書きなんておかしい人間の集まりさ
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 20:52:51.83 ID:uZXz+Qxm0
たしかに言われてみればBNSKにおいてまともなのって自分くらいな気がする。。。。
233以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 20:55:30.64 ID:v7C5xowfO
なんだ?遊戯王とかガッチャマンとかパーマンか?映画でもそんな感じの様なのがあったっけ
でも銀河鉄道の人身事故は酷いぞ、設定から無理って珍しいもん
234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 21:00:35.72 ID:gom+bJFI0
お題下さい
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 21:02:13.10 ID:uZXz+Qxm0
>>233
> でも銀河鉄道の人身事故は酷いぞ、設定から無理って珍しいもん
死んだ人間を轢死させたらどうなるか、を科学的に検証するハードコアSFとかいけそうじゃないか!

無理とまで言われたよ。それなら次点の「しっかり白黒つけろと説教してくるパンダ」のほうがよかったかなぁ
236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 21:03:15.03 ID:uZXz+Qxm0
>>234
ああ、ごめんね。ごめんね。
お題は
「大きな壁」
237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 21:04:09.66 ID:gom+bJFI0
>>236
ども
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 21:15:12.51 ID:v7C5xowfO
>>235
どっちにしろぜんぜん書きたくないですカーッペッ
なるたけイメージを限定させないでくれよ、作る時詰まんなくてしょうがない
239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 21:15:59.75 ID:uZXz+Qxm0
>>238
ムッキー 絶交だっ!
240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 21:29:36.24 ID:v7C5xowfO
>>239
誰だか知らんが、望むところだ!
241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 21:36:01.30 ID:rhSLO2EuO
今日もBNSKスレは平和だな…

そして品評会のお題はまだか
242以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 21:51:39.61 ID:KFK0iqX50
お題にいちゃもん付けれるのすげえ
BNSKも時代は変わったのか
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 21:52:36.97 ID:uZXz+Qxm0
しかし文才が無いのは変わってないよ!
244以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 21:55:54.79 ID:KFK0iqX50
>>243それは確かに…!

にしてもお題は新境地の開拓というか、妄想をできるだけ拡大させる練習だと思っていた
245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:00:51.26 ID:tOVuoO1S0
>>235
銀河鉄道の人身事故
しっかり白黒つけろと説教してくるパンダ

じゃあもらうわ
246以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:03:40.68 ID:uZXz+Qxm0
>>245
えっ

む、無理はしないでね?
247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:06:00.32 ID:KFK0iqX50
えっ
248以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:07:11.67 ID:R3oJvNB60
>>244
BNSKがというよりVIPが、だな。
249以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:28:44.33 ID:uZXz+Qxm0
しかし ID:v7C5xowfO氏は命拾いしたな!

ID:tOVuoO1S0氏さえいなければ来週から品評会に優勝するまで
参加し続けて優勝したらお題を「銀河鉄道の人身事故」にするところだった!
250以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:31:50.44 ID:R3oJvNB60
ID:v7C5xowfO が参加しなかったら
他の参加者が被害うけるだけじゃんw
251以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:33:07.70 ID:KFK0iqX50
パロディでも許されるんならちょっと書きたいね
252以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:33:32.46 ID:jKdSuD3w0
20 名前: ◆pxtUOeh2oI [sage] 投稿日:10/12/08(水) 22:20:55 ID:37owU0dj
「ターンXは、金縛りにするっ」
「了解!」
「Iフィールドバリアー! ギム・ギンガナム、刺し違えてその命貰い受ける」
「このターンXすごいよぉ。さすがターンAのお兄さん、スモーのエネルギーはすべてもらっている。
ゲンガナムの電力をいただいたようになぁ! わかっているのかハリー・オード!!」
「ユニバアーーーーーーーース!!!」
「月光蝶である」

第245回週末品評会  『会話』

推奨事項:いつもよりも少しだけ会話のリアリティに気を遣うと良いかもしれない
規制事項:7レス以内。セリフだけの作品はNG

投稿期間:2010/12/11(土)00:00〜2010/12/12(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2010/12/06(月)00:00〜2010/12/07(火)24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※

「会話」という物についての話でも良いですし、
セリフに全力を注いだものでも良い
よしなに
253以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:34:25.41 ID:uZXz+Qxm0
氏は本当にターンA好きだなぁ
254以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:35:48.43 ID:KFK0iqX50
台詞だけはNGだと・・・!
255以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:35:49.75 ID:jKdSuD3w0
新しい世界でも作るか
256以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:36:49.21 ID:uZXz+Qxm0
会話のリアリティってつまり

「ターンXは、金縛りにするっ」
「了解!」
「Iフィールドバリアー! ギム・ギンガナム、刺し違えてその命貰い受ける」
「このターンXすごいよぉ。さすがターンAのお兄さん、スモーのエネルギーはすべてもらっている。
ゲンガナムの電力をいただいたようになぁ! わかっているのかハリー・オード!!」
「ユニバアーーーーーーーース!!!」
「月光蝶である」

みたいな感じでいいのかな。
257以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:41:48.89 ID:rhSLO2EuO
会って話すと書いて会話…
先週より自由度が高いお題だけに投稿数も増えそうだな
258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:43:56.66 ID:uZXz+Qxm0
増えるといいねぇ

正直に言うと前回はきっとすごい少ないだろう少ないだろうと思って
23時までに4作以下だったら枯れ木も山のにぎわいだし! という
理由で参加しようと思ってたんだよね

むしろ最近で一番多かったから投下しないで寝たけれどね!
259以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:47:19.84 ID:R3oJvNB60
烏合の衆を打ち砕け!
260以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:55:46.65 ID:VqHk3dVK0
お題くらはい
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 22:57:45.15 ID:uZXz+Qxm0
>>260
たとえ話
262以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 23:01:20.14 ID:VqHk3dVK0
了解した!
263以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 23:19:04.12 ID:uZXz+Qxm0
よし
寝よう
おやすみなさい
264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/08(水) 23:19:32.03 ID:JPRZpqhw0
22 名前:文才無しさん[sage] 投稿日:10/12/08(水) 23:14:17 ID:37owU0dj [4/4]
投票期間修正するの忘れてたわ
こっちでよろしく


「ターンXは、金縛りにするっ」
「了解!」
「Iフィールドバリアー! ギム・ギンガナム、刺し違えてその命貰い受ける」
「このターンXすごいよぉ。さすがターンAのお兄さん、スモーのエネルギーはすべてもらっている。
ゲンガナムの電力をいただいたようになぁ! わかっているのかハリー・オード!!」
「ユニバアーーーーーーーース!!!」
「月光蝶である」

第245回週末品評会  『会話』

推奨事項:いつもよりも少しだけ会話のリアリティに気を遣うと良いかもしれない
規制事項:7レス以内。セリフだけの作品はNG

投稿期間:2010/12/11(土)00:00〜2010/12/12(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2010/12/13(月)00:00〜2010/12/14(火)24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※

「会話」という物についての話でも良いですし、
セリフに全力を注いだものでも良い
よしなに
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 00:01:02.97 ID:DUGQYwe90
266以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 00:53:21.95 ID:DUGQYwe90
皆もう執筆に入ってるのかだから過疎なのかそうかそうだな
267以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 01:36:52.65 ID:C5iUuL2U0
銀河鉄道の人身事故って面白そうなお題だなw
銀河鉄道という概念を一から作っても良いし
実在の電車の名前にして現代日本の事件/ミステリに走るのも良いし
元ネタから引っ張りつつ、独自の世界を作るのも良いだろうし
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 01:50:58.29 ID:DUGQYwe90
999の方でも面白そう
269以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 02:00:38.69 ID:Lc4RZEv00
他人のお題も拝借してよかったんだよね? ちょっと書いてみよ
270以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 02:52:26.15 ID:dLXDqa8s0
お、今更ながら銀河鉄道が人気になってる
出題者よーよかったなぁー
271以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 05:00:46.33 ID:dLXDqa8s0
そして死にそうな保守
272以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 07:41:29.94 ID:ujUH30osO
来ると思ったよ、甘ちゃん坊やは、このスレが沈めば、このスレもろとも皆が幸せになるんだろう?
273以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 08:28:33.27 ID:pu8OAoe+0
ネタを思いついた瞬間が一番楽しい
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 10:37:40.45 ID:fFVo90T00
ho
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 12:18:23.43 ID:SH/ZcA3QO
保守
276以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 15:06:47.39 ID:ujUH30osO
ほしゅとく
277以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 16:56:37.10 ID:zk3d7D630
ho
278以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 18:47:59.90 ID:lcrkrzo50
うほ
279以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 19:43:50.94 ID:q2e5T6mY0
うふふ
280以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 20:00:33.48 ID:J9JD2KV60
よし、書くか!
281以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 20:14:02.05 ID:+Ggy7E7n0
保守
282以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 20:42:47.37 ID:fTgo8nStO
死ぬのとクリスマス暇で死にたくなるの、どちらかと言えば死ぬ方が一度しか体験できなくて貴重だから大切に取っておこう。
ハイパーネガティブ思考は人を救う。

保守。
283以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 20:46:13.49 ID:J9JD2KV60
ミサにでもいけばいいじゃないか
284以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 20:48:21.94 ID:Lc4RZEv00
死んだほうが楽だよ
285以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 20:53:28.47 ID:Vtkl3jbtQ
インスピレーションが活性化しまくるようなお題を下さい
286以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 21:09:24.43 ID:Yqs+c8G90
>>285
実体化
287以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 21:11:10.68 ID:rx8u5ZjkP
>>285
携帯できない携帯電話
288以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 21:14:14.13 ID:J9JD2KV60
>>285
銀河鉄道の人身j……いや、なんでもないです
289以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 21:14:31.41 ID:fTgo8nStO
>> 285
紙のないトイレ
290以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 21:45:06.61 ID:Io7tr91oP
∀を推すやつは古参気取りのにわかと思ってる

俺は外伝系ストーリーの台詞回しを参考にさせてもらうぞ
オープンコンバット!
291以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 21:48:17.85 ID:J9JD2KV60
自分はガンダムって最後までちゃんと見たのは
ターンAだけだけど、面白くみれたよ
でも別にこの話ならガンダム要らないなとも思ったけど

ひさびさに見たくなってDVD買おうとも思ったんだけど、
アニメのDVDでやたらめったら高いのね
全部で一万円くらいで買えるのかと思ってた
292以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 22:24:53.63 ID:Yqs+c8G90
2話で8000円とか馬鹿にしてる
293以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 23:13:28.37 ID:Yqs+c8G90
294以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 23:25:58.01 ID:JyNNl6HcO
お題 独裁者
295以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 23:37:56.06 ID:gGs7plCt0
おだいくれ
296以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 23:40:54.24 ID:q2e5T6mY0
>>295
小さい手
297以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 23:43:14.06 ID:gGs7plCt0
久しぶりでしかも規制切れてうれしいからいっぱいくれ
298以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 23:45:45.16 ID:6zn9sBOb0
>>297
片目
299以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/09(木) 23:53:24.56 ID:Yqs+c8G90
>>297
300以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 00:13:25.47 ID:mDpg8kfF0
小さな手 片目 猿 把握
301以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 01:33:05.64 ID:AEOXGOa10
我はメシア。スレを(保守で)救う者。
302以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 02:59:41.17 ID:AEOXGOa10
ほモサピエンす
303以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 03:02:52.62 ID:AEOXGOa10
よし寝よう
明日まで落ちるなよ。
304以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 06:35:56.95 ID:f68LTTOdO
朝が来た
305また会いたくなんて、ならないように(お題:銀河鉄道の人身事故) -/5:2010/12/10(金) 07:59:46.10 ID:5DCrqEBc0
うわっは時間がないけど
通常作投下
306また会いたくなんて、ならないように(お題:銀河鉄道の人身事故) 1/5:2010/12/10(金) 08:00:07.51 ID:5DCrqEBc0
 俺には、妹みたいな存在の女の子がいる。菜美っていうのが、そいつの名前だ。
 菜美と俺は四つ歳が離れている。菜美には兄貴がいて、そいつは俺のクラスメイトだった。うん、親友だった。
俺と菜美の兄貴と、あと何人かの親友達で色々な遊びをやった。誰かの家に集まってゲームをしたり、校庭でサッカーを
したり、秘密基地なんかも作ったりした。あの頃は毎日が、すげぇ楽しかったな。今みたいにきな臭い時代じゃなかった
から、日が暮れるまで外で遊ぶことだって出来た。日本だって、まだ一つの国だったんぜ。
 で、菜美だ。俺達が小学校の三、四年生の頃、菜美はまだ幼稚園児だった。あの頃のあいつは、すげぇお兄ちゃん子
だったな。いつだって、兄貴のあとをついて歩いてた。だから、俺達とも結構仲が良かった。素直な、良い子だったよ。
 俺の、俺達全員にとって幸せな、今にして思えば涙が出てきそうな生活が終わりを迎えたのは俺が四年生の時で、菜美は
やっぱり幼稚園児だった。菜美の兄貴と、母親が死んだ。岩手で、核爆弾が爆発したんだ。
 それが戦争の端緒を飾る、テロ事件だった。情けない時代の始まりだ。
 奈美の兄貴と母親が、母親の実家がある盛岡に帰省した直後だった。まだ二人が新幹線から降りるかどうかというタイミング
での核爆発だったらしい。ほぼ爆心地の中心にいた二人は、全部蒸発してしまった。遺品なんて、何一つ残りやしない。
 当時の俺は、もちろんすごいショックを受けたよ。すごい仲良しだった親友と、俺にも優しくしてくれたおばさんが死んだん
だからな。しかも、それからすぐに戦争が始まったりして、街の空気も固く張りつめていくのが子供だった俺にもわかった。
外に出て遊ぶことが禁止されたのもそのあとすぐのことだったしな。
 俺はすごいショックだったけど、まあ、なんとか立ち直ることが出来た。でも、菜美はダメだった。まあ、当然だよな。
兄貴と自分の母親が死んだんだ。それを、幼稚園児だったあいつは受け止めなくちゃいけなかった。そして、それに潰され
かけた。いつまで経っても、菜美が笑顔になることはなかった。ずっとうつむいて、必要が無い限り自分の部屋から出てこない
ようになってしまった。
 俺は、それはダメだ、と思った。当時の俺は本当に馬鹿で、……いや、もちろん今だって馬鹿だよ。でも、当時の俺は馬鹿なりに、
それはダメだって、思ったんだ。なんていうか、月並みだけどさ、菜美がそんな風だったら、菜美の兄貴だって安心して天国に
行けないんじゃないか、そう思った。
 だから、ある日俺は菜美の家に行って、部屋に押し入って、無理矢理、菜美の顔をこっちへと向けさせて、真顔で、こう言った。
「お前の兄貴とおばさんは、死んでなんかいないぞ。俺は知ってるんだ。銀河鉄道に乗って遠くへと行っているだけだ。二度と
会えない訳じゃないぞ。いつか、会いに行こう。俺達は一緒に大人になって、そしたらお金を貯めて、会いに行こう」
 俺はそう言った。
「……ほんとう?」
 菜美はそう、俺に聞き返した。俺は、当然だとばかりに頷いた。
「当たり前だ。うまく説明出来ないけどさ、俺はそれについてすごい証拠を握っているんだ。だから、菜っ葉、お前は俺を信じろ。
絶対に、悪いようにしないから」
307また会いたくなんて、ならないように(お題:銀河鉄道の人身事故) 2/5:2010/12/10(金) 08:00:24.56 ID:5DCrqEBc0
 菜っ葉、ってのは当時俺が読んでいた菜美のあだ名な。俺がすごい真剣な表情をしていたからなのか、あるいは菜美がそれを
信じたかったからなのかは知らない。とにかく、菜美は俺の言葉に従ってくれた。
「菜っ葉、もう泣くのはやめろよ。今から、銀河鉄道に乗る日のために準備しておくことを考えるぞ」
 そう言った俺に、菜っ葉、菜美は「うん」とそう頷いた。
 菜美が俺の言ったことが嘘であると、いつ気付いたのかは知らない。でも、『銀河鉄道に乗る』という言葉の意味を知るころには
その事実を受け入れることが出来ると思ったんだ。俺って馬鹿だよな。
 いいんだ。俺は馬鹿なんだ。そんで、馬鹿で嘘つきなんだ。

 もうこりごりだ、と言いたくなるような戦争は、それから二年間もだらだらと続いて、続いた分だけ被害を出し続けて、
ようやく終わった。
 俺達の国は、戦勝国ということになったらしい。これで勝ったのかと、首をひねりたくなるような有様だった。だからきっと、
敗残国と成り下がった国のその街並みは、もっと酷いことになっていたんだろう。
 そのあと、五年間の準備期間もしくは助走期間を経て新しい戦争が起きた。日本は、東日本と西日本という、二つの国へと
分裂した。内乱だ。
俺はその日本人同士の殺し合いで、市街戦で、母親を失った。
「先輩のお母さんも、銀河鉄道に乗っちゃったね」
 十三歳になっていた菜美は、俺にそんなことを言った。そして、図体ばっかりでかくなってた俺のことを慰めてくれた。
 菜美は、優しくて、すごく良い子に育ってくれたんだぜ。俺の自慢の妹分だよ。

 それからさらに五年が過ぎて、菜美は十八歳になった。俺なんかもう、二十二歳だぜ。大人だっていうの。
 俺は徴兵された。今の俺達が生きている国には、全ての男は二十歳から六年間、徴兵義務がある。俺達は戦争に備えた訓練を
し続けた。正直なことを言えば、馬鹿じゃないのかって思うぜ。この国は、まだ懲りてないのかよと思う。なんでまだ、痛い目に
あいたいと思うのか、俺はそれが不思議でしようがない。
 俺がどれだけ馬鹿にしていても、世界はまあ、変わらない。そういうものだ。
 世界は変わらない。だからまた、新しい戦争が始まろうとしている。

 俺達東日本は、どうやら西日本との戦争を再開するらしい。俺達の国の指導者は、随分と好戦的な性格だ。他人の命なんて
何とも思っちゃいないんだろう。俺達を使い捨ての駒としてすり潰し、それで何かを達成しようとするのだろう。
 一ヶ月に一回あった休暇は中止になった。俺はもう半年以上、家族や菜美の顔を見ていない。ひたすら、誰かを殺すための
練習に明け暮れた。本当に戦争なんて馬鹿げている。
308また会いたくなんて、ならないように(お題:銀河鉄道の人身事故) 3/5:2010/12/10(金) 08:00:39.36 ID:5DCrqEBc0
 そして、とうとう、俺達の部隊に命令が下った。
 その日の翌日から、俺達は敵国の首都へと向けて進軍を開始することになった。出来るだけ敵国深くまで進軍し、
出来る限り長く戦い続けることが目的だと説明された。その間に、軍の主力が何か行動を起こすらしい。つまりは、陽動という
やつだ。もし、軍の主力が行動準備が完了するまえに俺達が全滅したら失敗、軍の主力の行動準備が完了するのが、俺達が全滅
する前だったら成功、どうやらそういうことらしい。どのみち、俺達は全滅することになる。
 正直、怖いし、逃げたい。死にたくねえよ。そう思った。でも、逃げられないんだよな。逃亡は銃殺、とか、そういうんじゃ
無くて、逃げたくないんだよ。部隊の連中が、仲間達が、アホな奴らばっかなんだけど、いい奴らなんだよ。こいつら置いて、
俺だけ逃げるなんて、そんな真似とても出来ねえよ、みたいな。
 だから、俺も敵国の首都へと向けて侵攻することになるんだろう。そして、きっと、その戦争のどこかで、俺もきっと死ぬん
だろう。そう思った。ああ、やだな畜生。怖い。
 宿舎で過ごす最後の夜に、周りの連中達がやってるのと同じように、俺は手紙を書いた。二通。一通は俺の親父へ、もう一通は
菜美へと向けた手紙だ。

 手紙は検閲される。実際の戦争について書くことは許されない。だから、どうしても書くことは曖昧な言葉に頼ることになる。
 俺は、菜美への手紙の書き出しを、こんな風にした。
「突然だが、俺も銀河鉄道に乗ることになった。菜美は昔の約束を覚えているか? 一緒に大人になって、銀河鉄道に乗りに行こう、
って奴だ。俺は二十二歳で、大人だ。それに較べて、菜っ葉、お前は十八歳で未成年で、子供のままだ。胸だって、中学生以降、
全然成長していないように見える。お前は一緒に大人になろうという俺との約束を破った。だから、俺一人で銀河鉄道に乗ること
にした」
 この手紙を受け取った菜美が、ちゃんと俺と決別出来るように。そんなためには何を書けばいいか。それを考えながら俺は
文字を重ねた。
 すごく自惚れたことを言わせてもらえば、多分、菜美は俺のことが好きなんだと思う。そういうのは、なんとなく解る。
俺だって、本当のことを言えば、菜美のことが好きだ。ことあるごとに何かとくっついてくる菜美に、正直ムラっとくることもある。
 でも、今になって思えば、良かったと思う。菜美に手を出さなくて、本当に良かった。
 だって、俺、もうじき死ぬからさ。

 もしも俺と一線を越えていたりしたら、菜美はもう、勝手に自分の人生を決めてしまうだろう。あいつはアホだから、
自分はもう既に俺のものなんだ、とか決めつけたりする。俺が戦死したあとも、一途に俺のことを想い続けるだろう。あいつは
本当にアホだから、きっとそんな風に生きようとするだろう。
 俺はそんなのは嫌だよ。絶対に良くない。そんな人生が、幸せな筈がない。もっと幸せな人生が開かれているに違いないのに。
309また会いたくなんて、ならないように(お題:銀河鉄道の人身事故) 4/5:2010/12/10(金) 08:01:04.36 ID:5DCrqEBc0
 あいつは、本当、相当なアホだけど、胸だってすげぇ小さいけれど、でも、すごく素敵な女の子なんだ。すげぇいい奴なんだよ。
優しくてさ、いつも笑っていてさ。ちゃんと、笑えるようになってさ。
 兄貴分である俺としては、菜美には、本当に幸せになって欲しいんだよ。こんな時代だけどさ、でもどっかに幸せって、きっと
まだあるじゃん。無いはずがねーよ。今までずっと苦労してきたあいつみたいなのが、優先的に幸せになるべきなんだ。俺、
あいつが頑張ってきたの知ってるもん。家族を亡くしてから、ずっと無理してたの、俺は知ってるもん。
 間違っても、俺のせいで幸せを取り逃す羽目になんて陥っちゃいけない。

 もし人の力が想いに左右されるんだとしたら、俺は今回の戦争でだって絶対生き残ってみせる。仲間達と共に。
だけど、もしも世界にそんな素敵なルールがあるのだとしたらこの世界に未亡人という存在が溢れ出るはずも無い。
だからどんなに想いがあったとしても、人はきっと死んでしまう生き物なんだと思う。

 もし、死んだあとに幽霊になることが出来るのならば、俺は迷うことなく菜美の夢枕に立って、
「こら、菜っ葉! いつまでも俺のことなんかでウジウジしてるんじゃねぇ。いいから俺のことなどさっさと忘れて、別のの人生を
歩け。さもないと成仏すんぞコラァ」
なんて風に、あいつを諭すと思う。あいつが心を入れ替えるまで、しつこく何度だって夢枕に立ち続けてやる。
 なんなら、相談にだってのってやる。でも、あいつの兄貴も、俺の母親も、俺の夢枕に立ったりはしない。だから、きっと
俺が奈美の夢枕に立てるかどうかは、怪しいところだと思う。

 だから、俺は手紙で全てを終わらせなくてはいけない。菜美が俺と、きっちり訣別できるように。また会いたくなんて、
ならないように。

 死にたくねえよ。やりたいことがいっぱいあるんだよ。本当は、戦争なんてしている暇、どこにもねーんだよ。畜生。

 俺は、そうやって二通の手紙を書き終えた。検閲をうけてから封をされ、二通の手紙は俺の地元へと送られた。
 そのあと、すぐに緊急招集がかかった。
310また会いたくなんて、ならないように(お題:銀河鉄道の人身事故) 5/5:2010/12/10(金) 08:01:32.82 ID:5DCrqEBc0
 それが、先週までの話。
 そのあとの展開は、馬鹿馬鹿しくなるくらいに出来すぎている話だった。
 戦争は、中止になった。戦争を推し進めようとしていた俺たちの国の指導者が、急死したのだ。死因の詳しいところは公開
されていない。事故だったのかもしれないし、あるいは誰かに殺されたのかもしれない。
 俺達の国の新たな者は、とんでもなくまともな人だった。「戦争なんて、馬鹿馬鹿しい」と、「日本人同士で争う必要なんて
どこにも無い」と、彼はそう言い切った。涙が出てくるね。
 日本はまた、一つの国になるんだろう。昔ほどでは無いかもしれないけど、きっと、今なんかよりもずっと、平和な日々を
贈ることが出来るんだろう。
 俺達が流され続けたあとにたどりついた未来は、そんな未来だった。

 そうして、一ヶ月くらいにわたるごたごたが終わり、休暇を言い渡された俺達はそれぞれの故郷へと帰ることになった。
俺は、誰一人欠けることなく済んだ仲間達と、ハイタッチをして別れた。
 最寄り駅では、菜美が待っていた。俺の顔を見つけたとたんに泣き顔になって、全力で突進してきた。
 俺は、その小柄な突進兵器を受け止め、そして泣きじゃくる菜美の頭を撫でて、こう言った。
「あー、菜っ葉。ごめんな、俺、一人で銀河鉄道に乗ろうと思ったんだけどな」
 菜美は泣きじゃくりながら「うん、うん」と言った。
「やっぱ抜け駆けしようとしたのかがいけなかったのかもしれないな。俺が乗ろうとしてた電車が、人身事故で運休に
なっちまったよ」
 菜美はやっぱり、「うん、うん」としか言わなかった。さては、このアホ、俺の話聞いてないな。

 まあ、いいや。俺はそう思った。銀河鉄道に乗るのはもっと後のことにしよう。今は、とりあえず俺の妹分の相手をしよう。
俺はそう思った。
「よし、家に帰るぞ、菜美。飯くってけ。色々と話したいことがあるんだ」
「うん、うん」
 俺はいつまでもそんなことしか言わない俺の妹分の頭を撫でてやった。

終わり
311以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 08:01:32.68 ID:XsTVh8IA0
てすと
312以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 08:01:56.70 ID:5DCrqEBc0
終わり。
てすと成功おめでとう。
313以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 09:35:29.39 ID:9qA6G1XN0
>>310
お題の捌き方にびっくり。うまい。
無理に戦争を持ち出してくる必要はあったのかな。人が続々死ぬような状況として
選ばれたにすぎないように思える。終結の唐突さはまあ話の都合上しょうがないのかな。
一番気になったのは語り口。22歳で、戦争で、こんなにノリが軽いのは、俺には違和感
がある。だから話し全体が作り物っぽく、安っぽく感じる。もっと淡々としててもいいんじゃないかな。
314以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 09:40:56.24 ID:i5T7elLE0
ここの住人的にはミルクハンターオナホをどう思うの?
俺?心折られたよ
315以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 11:15:52.36 ID:1oiDoV3UO
あ、感想ついてる
ありがとう。
家に帰ったら感想返しするから待っててね
316以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 11:19:00.35 ID:QvxltKrL0
>>306-310
自分もこのお題の消化の仕方には舌を巻いた!
素晴らしい発想力だあ。お題がそのままタイトルの方がいいな。
それからやっぱり語り口調が若すぎると思う。高校生くらいかと思ってた。
んー22歳にする必要あったのかな?徴兵される年齢設定を下げても良かったんじゃ?
あと、文の内容が重複してるところと、女の子の名前が違うところが一箇所くらいあった。(どこか忘れたけど)
でもって「菜美が俺のことを好き」って言うくだりとラストの節の現れ方が唐突過ぎて違和感。
「そのあとの展開は、馬鹿馬鹿しくなるくらいに出来すぎている話だった」ともあるし、作者も自覚してはいるんだろうな。
自分だったら「戦争は中止になった」の説明の前に、あえて先に駅のシーンの描写をしたかもしれない。
えーと、下のような感じで。
「暗い影の下を抜けると、表はひどく明るかった。
 ふと、顔に何かしぶきがとんだ。
 だがそれは血などではなく、駅前の噴水の飛沫が、風に乗って頬に届いたものだった。
 戦争は、中止になった」
こう…読者には戦争中と思わせるような描写をしておいてってことが言いたかったんです。

総評
推敲…不足
構成…改善の余地あり
設定…改善の余地あり
発想…GREAT!
317以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 12:54:03.33 ID:UgDq2u7/O
人身事故ってお題だからその事故ったのが独裁者だったとか
戦争の終わり方とかに皮肉った展開があるともっとニヤリと出来たかもしれん
お題ともリンクするし

ともかくよかったよ!
318以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 13:36:52.78 ID:9qA6G1XN0
319以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 14:26:29.09 ID:8EAxUiC5O
320以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 14:41:57.53 ID:J25nGHysP
これはよいすれ。
書けるか分からないけどお題ぷりーず へんてこなやつ
321以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 14:45:08.68 ID:9qA6G1XN0
>>320
足がいっぱい
322以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 14:49:34.17 ID:LWnnzFV10
>>320
鼻が耳で、尻が口で。
323以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 14:57:07.84 ID:EGnAnlIX0
>>306
銀河鉄道に乗るという慰め/お題の使い方が面白かった
個人的に、日本が内戦に突入して…系のお話が好きです。

俺の考えがライト過ぎる/飛ばしすぎるのが気になった。この部分とか↓
> 俺はすごいショックだったけど、まあ、なんとか立ち直ることが出来た。

妹みたいな存在に対して、恋愛感情を抱いているのが唐突な気がした。
いきなり性欲抱いてます、と書かれると驚く。
あえて恋情かどうか書かないままというのもいいし、もし書くなら、
実は恋愛として好き→もうどうせ死ぬんだしという順番を逆にして(実は、
の部分がが唐突過ぎるので)、もうどうせ死ぬんだから、この感情を
認めようという流れにするとか、もしくは前の段落で、ひそかに好きだったけれど
今は告白しようなんて思いもしないと言った、ほのめかしがほしい

誤字
>>307
> 当時俺が読んでいた
324以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 15:00:56.51 ID:LWnnzFV10
>>306-310
ヒロインの名前を誤字するとは酷いな。
勝手ながら作者を戦争を知らない世代と見なして云うが、説得力が皆無。
不足なんてもんじゃないね。
戦争を知らない人間が「こんな時代にも幸せはある」なんて綺麗事いっても白々しいだけ。
悲劇をツール化してお涙頂戴に貶めてる最たる例だね、こりゃ。
決定的に「戦場のありさま」が描かれてない。死んだ人間は「死んだ」っつう。。
どの部分を欠損して、どんな苦痛を味わって、なにを怨み気遣って死んだか、が、なにもない。
>これで勝ったのかと、首をひねりたくなるような有様だった。
これもそう。街がどう破壊されて、ビルはどうなった、家はどうなった、
人々はどうなった、政治はどうなった、娯楽はどうなった、ぜーんぶなにもない。
>そのあとの展開は、馬鹿馬鹿しくなるくらいに出来すぎている話だった。
とまるで予定調和を正当化するような文があるが、それで隠せるわけもない。
その上、キャラクターの外見についてもなにも書かれてない。むしろただのヒロインという記号。
せいぜい「突進兵器」とかラノベっぽい下らない設定(しかもまた記号!)だけ。
ハッキリいって、あらすじレベルでしかない。アイディアレベル。
お題の消化は、見事、と云っておく。逆に云えば、そこしかおもしろみがない。
作者は戦争についてなにか調べたか。
この話を書く際「今俺の頭ンなかにある知識だけでいーや」とたかをくくってなかったか。
作者には夢野ちゃんの死後の恋(http://www.aozora.gr.jp/cards/000096/files/2380_13349.html
でも読んでみな、とでも云っておきたい。

他の感想の方々の云ってる「口調が軽い」ってのは、
作者が主人公の視点をなにも考えずに書いたから、作者自身の口調に似たんじゃないかなと邪推。
簡単に云えば、主人公≒作者、ってこと。
発想で感服させるには至らず、といったていです。ハイ。



感想たくさんおすなあ。
325以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 15:05:45.96 ID:J25nGHysP
センキュー!
326以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 16:08:21.79 ID:9qA6G1XN0
327お題:足がいっぱい 0/2:2010/12/10(金) 16:54:53.16 ID:J25nGHysP
たんぺんー とうかします
328お題:足がいっぱい 1/2:2010/12/10(金) 16:55:51.03 ID:J25nGHysP
 ぼくは彼に憧れていた。
「そんなに良いものじゃないよ」と彼は言う。
 ぼくのような下級天使には、自分の身を支えるので精一杯の翼し
か与えられない。彼は、書記官だった。『あの人』は彼の才能を認
めて、四本の腕を彼に与えた。
 彼は一つの手で地上を眺め、一つの手で書物を抱き、一つの手で
紙を押さえて、残った手で歴史を記した。日の暮れるラッパの音が
鳴ると、彼は一日の終わりを記しながら、古ぼけたコーヒーメーカ
ーで豆を挽く。
「私はね、本を書くことしかできない。本当は翼をもう二つ欲しか
った。四枚の翼があれば、どこにだって自由に行ける。三日分の記
録を神殿に届けるために、汗だくになって飛ばなくても済む」
 四枚の翼は、最上級天使にだけ許される権利だ。ぼくは彼を妬ま
 しく思った。ぼくには、四枚の翼を羨むことさえできないのだ。

 ある日、『あの人』に会った。どうして、どこで会ったのかは言
えない。ぼくのような下級天使は、『あの人』に会ってはいけない。
でも、ぼくは『あの人』に会ってしまったのだ。
「ぼくにも、腕を下さい。足でも、頭でもいいんです。きっと、お
役に立ってみせます」
「ならば、力を示してみなさい。君が誰からも認められる存在にな
れば、その時はきっと君の望むものをあげよう」
 ぼくは奮起した。昼間は彼の仕事をこなし、夜は書物を読みふけ
 った。地上のあらゆる歴史を調べ、生物の進化や天使の役割を知
り、いつしか正式な彼の補佐官として様々な知識を披露した。
 書庫への立ち入りを許可されてからは、ぼくはますます色んな事
を知った。ぼくの下には部下が付き、書庫の整理を任された。培っ
た知識を生かして本を書き、多くの賞賛を得た。ぼくは神殿図書館
長補佐にスカウトされ、やがて上級管理官の肩書きを得た。
329お題:足がいっぱい 2/2:2010/12/10(金) 16:58:12.87 ID:J25nGHysP
 ぼくは神殿のバルコニーで、久しぶりに彼と出会った。彼はその
頃には総書記官になっていて、ぼくと同じく神殿で働いていた。
 彼とぼくはしばらく一言も交わさずに、バルコニーから見える天
界の景色を眺めていた。どこまでも続く白い大地。太陽に向かって
生える無数の木々、そして建物。忙しく動く天使たち。すぐ下の広
場ではぼくに忠実な部下たちが自主訓練を行っている。
「君は、足がいっぱいあっていいね」
 彼はそう言った。そして踵を返すと二本の腕で煙草を消しながら、
一本の腕で後ろ向きに手を振った。
 彼の声はどこか寂しそうだった。彼には手が沢山ある。しかし、
頭は一つしかない。同時に二つ以上の作業を行うことは無理だ。ぼ
くには足が沢山ある。そして、その数だけ頭がある。
 ぼくはずっと彼を羨んでいた。しかし彼も同時に、力に縛られず
自由な道を歩めるぼくを羨んでいたのだ。
 ぼくは涙を零した。そして、感謝した。ずっと孤独に、自由もな
く、それでも一言の愚痴も漏らさず、ぼくを育ててくれた彼に。

 総書記官補佐としての功績を認められ表彰されたとき、ぼくはも
う一度『あの人』に会った。
「君の力を認めよう。なんでも欲しいものを言うといい」
 しかし、ぼくは断った。
 『あの人』は満足そうな顔をして、ぼくの頬に祝福を与えた。
330以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 17:34:23.22 ID:9qA6G1XN0
>>329
話が宙に浮いてる感じ。何が書きたかったのかよくわからない。
状況もよくわからないまま話が猛スピードで進んでいくのでもやもやした気持ちだけが残った
331以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 17:44:14.36 ID:OErvHBqS0
おだいくれー
332以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 18:11:13.73 ID:LWnnzFV10
磯辺焼き
333以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 18:32:27.05 ID:OErvHBqS0
さんく
いそ……
334研究継続についての緊急報告(お題:転機)0/7:2010/12/10(金) 18:52:24.55 ID:AEOXGOa10
さって投下ん
文章力が欲しいのぜ
335研究継続についての緊急報告(お題:転機)1/7 ◆KC1zyS0wec :2010/12/10(金) 18:53:36.13 ID:AEOXGOa10
 あくる日の明け方、自動ドアをくぐり第四研究室に顔を出すと、いつものようにロングの黒髪を揺らして明希は明るく出迎えてくれた。
彼女はこの部屋に寝泊りしていて、毎日決まった時間にやってくる僕を手厚く歓迎してくれる。
その動作はどこかぎこちなさを感じるが、それ以上に僕は歓迎してくれる彼女がありがたかった。
彼女も、仕事のため研究所に毎日やってくる僕への対応が、日に日に上達していく。どうやら慣れてくれたように思えた。
毎日の大変な仕事ではあるが、彼女の整った明るい笑顔を見ると、疲れも癒されていく気がする。
彼女と出会ってからは、いつの間にか過酷な研究も意義あるものになっていた。

「おはよう、明希。今日もよろしく頼むよ」
「あ、はいっ。私も全力で挑みますので、水野さんもどうぞよろしくお願いします」
「君がしっかりしてくれないと仕事が始まらないからね。頑張ってくれよ」
僕が笑いかけると、彼女もそれに答えて笑顔になる。
純粋な、無垢な子供を思わせるそれらの動作は、やはり見ていて癒されるものだ。
この表情を見たなら誰でも頑張る気力が湧くだろう。
彼女の動作を見て僕は今日も、一刻も早く研究を完成させたいと思える。
やはり、人間にとって明るく笑顔で応対してくれる相棒のような存在は、とても重要な役割を持つのだ。
明希が入れてくれた珈琲を飲み、明るい気持ちでパソコンに向き合い、定期報告書をまとめる作業に入る。
すると、別のウィンドウに開かれていたとあるニュースサイトが、最近の美容について報じているのに目が留まった。
なんでもとある細胞の新たな効能が発見され、美容に転化されて高い効果を得ていると言う。
「ねえ、明希は化粧とかしているの?」
何の気なしに彼女に聞いてみる。
「私は化粧などはしていません」
そう淡々と事実を述べた後、こちらを見て一拍間を開け、「何故、そんな事を聞くんです?」と聞き返してきた。
336研究継続についての緊急報告(お題:転機)2/7 ◆KC1zyS0wec :2010/12/10(金) 18:54:30.75 ID:AEOXGOa10
「いや、君でも着飾ったり化粧したいと思うことはあるのかな〜と思って」
正直言うと、明希は変に着飾らなくとも十分に完成された美を持っている。低めの身長、長い艶やかな黒髪、大きな目、整った顔立ち。
胸は控えめだが、その動作は落ち着いた安定感があって、どことなく安心できる。
ゆったりめのYシャツとジーンズは、見た目にもとても動きやすそうであった。仕事中だからだろうか。
「そういった風には思いません。私はむしろ見目を良くする必要は無いと思っています」
ああ、やはりか。確か前にも「着飾ることは非効率的で無駄だ」と彼女は言っていた。いつかその認識が変わることもあるのだろうか。
「いいね、そんな風に思えるって。僕は放っておくと二十代から三十代後半まで老けて見えるからね。全く素晴らしい機能だ。あはははは」
「そうですか、それは良かったですね! その機能をキープできるように頑張ってください。応援してますよ!」
満面の笑みで返事をくれる彼女。しまった、と内心思った。またこれか。
彼女の表情は、時たま相手の真意と異なった表情になってしまう。皮肉で笑えば彼女は喜び、好意から突き放せば彼女は嫌われた思う。
相手の行動に左右されて、その場の空気を読めていないのだ。
一見すると感受性が極端に豊かな人のように見える。が、彼女の場合はそうではない。
影を帯びた笑顔をかろうじて作って、定期報告書の考察欄に一言書き加えた。
『なお、明希は、MHD0048-3は、感情の決定因子に相手の行動を重要視し過ぎているように思えます。次のバージョンのAIは、この点を考慮して構成してください。』

 人類が地球と月面都市を多く行き来するようになってから早数十年がたった頃、世はロボットブームに包まれていた。
この時既にアンドロイドの機体は限りなく人間に近づいていた。
万博ではアンドロイドが規則的な案内をしていたし、日常の様々な仕事をロボットたちが支えるようになっていたのだ。
ロボット産業の急速な発展は、人類の本格的な宇宙進出が背景にあった。
月面都市が築かれ、人間が住めない過酷な環境での作業が増えた結果、再び脚光を浴びたのがロボットだった訳だ。
水野哲、すなわち僕が下っ端研究員として所属している研究所も、昨今のアンドロイド需要に答えて設立されたものである。
この研究所が研究している物は、介護や教職向けに開発されている「感情表現」「人間らしい生活」に長けたアンドロイドだ。
この分野では見た目が十分に人間らしく、動作も少しぎこちないが人間と遜色の無いレベルの機体は、既に開発がなされていた。
しかし、研究の最大の焦点にして最大の難関、そしてロボット開発の転機ともなる点は、人間の感情をどう機械で表現するか、であった。
人間らしく振舞うのには、常に困難が付き纏った。
自身の状況把握、相手の行動把握、論理的な感情の定義、これらが必要不可欠なためだ。科学的見地からしても、感情ほど複雑な物はない。
感情の定義と行動を決定するものは、AIの改良ごとに次々と更新されていった。
明希はそんなアンドロイド最新の、MHD型の最終試作機だ。
贔屓目に見れば普通の人間に見えなくも無いが、やはりその行動にはアラがある。
明希ことMHD0048-3と共に過ごし、AIの動作確認をしてアラを探すこと。それが、僕に課せられた仕事である。
337研究継続についての緊急報告(お題:転機)3/7 ◆KC1zyS0wec :2010/12/10(金) 18:56:34.99 ID:AEOXGOa10
 突き刺すような寒さの中、針のような雨を被り、今日も僕は研究所を訪れる。行き先は言うまでも無く第四研究室だ。
しかし、自動ドアをくぐる足取りは、ひどく重い。ため息まじりにでる声は、悲しみに満ちたものだった。
今日だけは、楽しく仕事に没頭、とはいきそうにない。
どんな幸せも今は僕を上滑りしていく。心が押し潰されそうに思えた。
少し前、僕は、かけがえの無い恋人を失った。自殺だった。
長年幸せ一杯に過ごしていたのに、何が彼女をそうさせたのか。今の僕にはわからない。
最近は、僕を避けるようになり、たまに会うと突然何かに怯えるように走り出し、何かにうなされるようになっていた。
そんな状況が続き、僕の目の前で――久しぶりに承諾してくれた二人での外食。その帰りだった。
その日、前から決めていたビルの屋上へ行き、溢れんばかりの光をたたえた夜景をみせた、その場所で。
彼女は一つの問いかけを残して、僕の目の前で飛び降りた。冷たい、抉るような眼差しで僕を一瞥して。
「貴方のせいなのよ。貴方と、私の感情が、私自身の心を壊した。何故かわかる?」
僕に対して、どんな感情を抱き、どのように死を選んだのか。今となっては知る由も無い。
自分が悪いのかも、自分が何をしてしまったのかも、容易に気づけるものではなかった。
愛情が、突然負の念に変わる。何か複雑な感情が絡み合って、彼女は死を選んだのだろう。
そこまで考えて、諦めるように首を振った。これ以上考えても仕方が無い。
「わからないよ、僕には……感情、なんて」
あるいは、わかりたくないのかもしれない。
その感情を知った先が、とても苦しいもののように思えた。
338研究継続についての緊急報告(お題:転機)4/7 ◆KC1zyS0wec :2010/12/10(金) 18:58:32.43 ID:AEOXGOa10
 「一週間も研究室を空けて、ごめんね」
さまざまな後処理が一段落するまで一週間を要した。
その間僕は研究室を放置していたのだが、その割に研究室は清潔さを保っている。
そして視線をまっすぐ僕に投げかけてくる明希はいつもと同じ目をしていて、その内面は人工的で不変なもののように思えた。
「いえ、私は構いません。何かあったんですか?」
返答に窮した。正直に今の心境を言うべきだろうか。
心はもう崩壊寸前であるし、言ってしまえば楽であるのかもしれない。
明希は素知らぬ顔で僕を見つめてくる。
天然の仕草も、今の僕にとっては心を逆なでするような行為だ。
洗いざらいぶちまけたい衝動に駆られたが、なんとか押さえ込む。
純粋な彼女にこのいざこざは些か難しいだろう。
話をかいつまみつつ、彼女が自殺したこと、意味深な言葉を残したこと、今とても苦しい思いをしていることを説明した。
今更こみ上げてきた嗚咽を飲み込み、ふんふんと相槌を打つ明希に何とか説明を続ける。
やはり明希は喜怒哀楽を表すのみで、不変のように見える。
それに比べ、僕は頬に何か伝っているのに説明が終わってから気付き、慌てて全てふき取ることとなった。
ああ、辛い、苦しい。他人に話しても、心の傷は一向に癒える気配が無い。
「こんなにも、苦しいなんてね……人は良くわからないものだよ」
「水野さんは、苦しいんですか? ……そんな苦しくなる状況は、嫌ですね」
「ああ、できることなら忘れてしまいたいよ」
機械の回路ですら、この状況は好ましい物でないとわかっているのだ。
人間特有の感情の起伏と言うには、あまりにもショックが大きすぎた。
このショックは、恐らく人間、それも当事者にしかわからない物だろう。
主観からすれば、オーバーに見える反応も妥当な物である。
いけない、また涙が出てきた。せめて他人の前では気丈に振舞いたい。そう思って、涙を無理やり拭き取る。
顔に笑みを浮かべて、明るく振舞うべきだ。下げていた頭を上げ、表情を和らげる。
そうしなければ、そのまま自分がどうにかなってしまいそうだった。
「うん、忘れるべきだ。切り替えよう。まだまだ仕事も残っているんだ。こんなの、むしろ貴重な体験だよ!」
精一杯に無理をした作り笑い。泣きはらした顔で作る歪んだ笑顔に、それと対照的なキレイな笑みを浮かべて、明希は
「……そうですね! 苦しさを和らげるために忘れましょうか。また次も今回みたいになるといいですね!」
339研究継続についての緊急報告(お題:転機)5/7 ◆KC1zyS0wec :2010/12/10(金) 19:00:16.92 ID:AEOXGOa10
 ――気がついた時には、僕はもう明希を殴り倒していた。
自分でも驚いたが、煮えくり返った感情は収まりがつかない。
目を見開いて倒れたままの彼女に、僕は泣きながら、また一発、また一発……。
彼女は小動物のようにうずくまったまま動かない。
彼女に非が無いのは理解しているのに、彼女に怒りを感じてならなかった。
泣きながら激昂すると言う僕の行動を、彼女は理解できないだろう。
ああ! 彼女は無邪気だっただけなのに! 僕が穢れているだけだというのに!
なぜこんなにも憤りを感じる。なぜこんな暴挙にでてしまうのか! ひとえに、人の感情のせいだとでも言うのか!
「……ッ。やはり人の心なんて、わかってくれないのか!」
泣きながら怒り、笑顔をみて八つ当たりをし、人を傷つけながら自分が苦しむ。人の心は、何故こんなにも不条理で非道なのか!
「あッ……! や、……。あぁ! ひいっ……!」
声すら出さずに、逃げもせず、その場で腕を振って縮こまる。いたいけな彼女の姿にも、僕は動じなかった。
にじり寄る僕は、傍に立てかけてあるものを拾い上げ――やめろ、それだけは、だめだ!
僕は、真鍮製の金属バットを持って、動かない明希の前に立ちふさがった。それで殴ったら、彼女は、……。
頭では判っているのに、自分が自制できない。心と行動が、ずれていく。どうか、僕から逃げて!
声にならない叫びを上げながら、そのままバットが振り下ろされる。ああ、明希は――――

 「あ……、え……?」
明希は、……泣いている? 彼女は、頬に手を当てて、ようやくそれが何なのかを知る。それは、紛れも無く、涙。
主に人が悲しいときや、危険を感じた時に流れるもの。
彼女はそれが何か、知識として知っている。しかし、自分の目から流れるそれを理解したようには見えない。
バットがカランと小気味良い音を立てて、リノリウムの床に落ちた。僕も、彼女も、呆然としている。
この状況は何か。脳天を殴られたように、頭がジンと麻痺して動かない。
アンドロイドの明希が、泣いているなんて、まるで――
「――人間の、感情が、芽生えてしまったみたいじゃないか……」
340研究継続についての緊急報告(お題:転機)6/7 ◆KC1zyS0wec :2010/12/10(金) 19:00:58.44 ID:AEOXGOa10
彼女はぎこちない動きで、手を見て、自分の体を見て、僕に視線を移す。
その目には恐怖の色がなみなみと湛えられていた。
「え、……ま、待って。なんで、なんで泣いてるの? 怖い?
 死にたくないから? 裏切られたから? ……わからない。わからない私がまた怖い……」
暗示をかけるように、怖い、怖いと呟く彼女は、壊れてしまったレコーダーのようだ。
彼女は産まれて初めて、プログラムによらない非論理的な行動をしているのだ。
まるで、論理的でなく、非効率的で、不条理で非道な、人間の感情を持ったかのように。
「! 待って! 助けて、許して! 苦しい、怖い、嫌っ! イヤ! 
 どうしてこんな苦しいの。どうして、こんなものがあるの!? 助けてよ! 貴方たちが作ったんでしょ!? ねぇ!」
泣きながら懇願する彼女は、もう昔のような、人工的な美で、すっきりとしていて無垢な顔をしていない。
今の明希の顔は、恋人を憎んで飛び降りた人のような、無邪気なロボットを殴打した人のような、醜く感情で歪んだ顔になっていた。
何よりもその顔が、彼女の身に起きたことを物語っている。
懇願する彼女は、何度も何度も同じ言葉を繰り返しながら、怯えていた。
彼女に近づき、触れてみるが、周りが全く見えていないように震え続けている。
アンドロイドの明希は、もうそこにはいなかった。
「あぁ、やはり、知ってしまったのか……」
僕はただ、泣きじゃくる彼女を抱き寄せる事しか、できなかった。
341研究継続についての緊急報告(お題:転機)7/7 ◆KC1zyS0wec :2010/12/10(金) 19:01:54.98 ID:AEOXGOa10
 明希は、しばらく独りにさせて欲しいと言って、ふらふらと部屋に入り、そのまま閉じ篭ってしまった。
怒涛のごとく過ぎ去った感情の嵐は大きな傷跡を残していった。僕にも、明希にも。
彼女は、人の心がどのようなものかを知った。
僕は、人が心を持つことのデメリットを知った。
今はさまざまなことが起こりすぎて、二人はただ混乱しているばかりだ。
八つ当たりも泣くことも、論理的には全く必要ないことなのだ。これを混乱と言わずしてなんと言うだろうか。
とりあえず荒れた部屋を片付け、バットを元の場所に戻し、椅子に座って一息ついた。
「アンドロイドに、感情が芽生えるとはね。これじゃあもう人間だよ。アンドロイドから、人間へ変わる転機だ」
自然とため息が出る。僕の仕事は終了した。少なくとも、ロボット開発史上に残る大偉業だろう。実験は大成功だ。
椅子に座ったまま体の向きを変え、パソコンを起動した。緊急の報告書を、僕は作らなければならないだろう。
だが、書き出したところではたと手が止まった。
僕は研究の成功を全く喜んでいないのだ。当事者がこんな状態で、この研究は成功したと言えるのだろうか。
人間らしく振舞う、つまり感情を獲得して暮らすには、感情はあまりに恐ろし過ぎる。今回の件で良くわかった。
前の彼女、感情の芽生える前の作り物の反応を見せる明希は、活き活きとして明るく無邪気で、非論理的な行動などなかった。
しかしこの研究が成功し、感情を持った時、彼女は必要もない行動をし、そんな行動をする自身に恐怖していた。
心は、持つだけで勝手に負の感情を感じ取ってしまうのだ。
無垢な存在がドロドロとした感情を知った時、どうなってしまうかは想像に難くない。
そこまで考えて、僕ははっとした。
僕は今まで良かれと思って研究を続けてきたが、存外そうでもないのかもしれないと、はっきり認識したからだ。
僕は今まで、プログラムに縛れたロボットたちに一刻も早く人間的な喜びを知らせることは、ロボットたちにとっての幸せだと思っていた。
だが、ロボットに限らず、人間らしく心や感情を持って生きることは、実はとても不幸なことであるのかもしれない。
僕たち人間の研究は、何も知らないまま幸せに暮らすロボットたちの安息を奪い、無駄に苦しめる悪逆非道な行為なのではないか。
そうだったならば、自分たちは図らずも研究によって人間特有の不幸を、これからロボットたちに押し付けていくことになるのだ。
明希のケースは、そう思わせるのには十分過ぎるほどのものだった。
ロボットたちを人間へと変える転機である今、当事者である僕は、一体どうするべきなのだろうか――
「……報告書、どう書こうかな……」

おしまい
342研究継続についての緊急報告(お題:転機)7/7 ◆KC1zyS0wec :2010/12/10(金) 19:04:46.67 ID:AEOXGOa10
水野の暴挙とか、明希の感情表現とか描写が下手だろうなー
感情的な小説はなかなかに難しい
感想&アドバイス頼んます
343以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 19:12:09.51 ID:SFa4cnSLO
お題ください
344以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 19:24:44.33 ID:AEOXGOa10
>>343
トッピング
345以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 20:40:30.82 ID:VSuOEehO0
>>342
水野の暴挙とか明希の感情表現とかはべつにいいんじゃないかな。
不足があるようにも思えなかったし。
ちょっと驚き方が大げさにも思えるけど、そんなもんかなとも思うし。
水野の彼女はまったく意味がわからなかったけど。
話の造りからしてループする話なのかと思ったのだけど違った。
そもそもバットが置いてある理由とか、冒頭の「あくる日」とか。
水野の彼女というのもアンドロイドで、結局すべてが実験で失敗続き。
そんな話かと思ったけど違ったみたいですね。
346以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 21:30:58.71 ID:AEOXGOa10
>>346
水野の彼女のくだりは水野が激昂する切っ掛けを入れたくて作った
ついでに水野が感情は不可解で苦しいものだと気づく機会にもしてみたが、やはり唐突過ぎたか

ループ系! そう言う見方もあったか
バットも唐突に出しすぎたな。こう、明希と野球を楽しんでいた〜とか伏線を張るべきだった
しかしループ系だったとしたら、お題の転機が出せないだろうよww

総じて設定を出すのが唐突過ぎるのかな。次からもっと設定を伏線として絡めよう
347以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 22:05:17.43 ID:v4NSj6R80
うわーい
なんか感想大量にもらったぁい!
ということで感想返しいくですよ。

>>313
そもそもの作品を書いた契機が「このお題がどうなんだ云々」という話題があったお題で
ちょうどいいお題の消化の仕方を考えたから、という感じだった。ので、
このお題の消化をするためには
・主人公は死を覚悟する境遇にある。
・主人公は自分が死ぬだろうことを、それをヒロインに伝えられる境遇にある
・なおかつ、それらの状況は「人身事故」と称せる何かで覆せる必要がある
ていう条件を揃える必要があった。んで、自分は「勝ち目のない戦争に赴く兵士」と
「独裁者の急死で戦争の意義が消滅」ってのがいいかなーと思ってそういう設定にした。
だから、>>313さんが言う「人が続々死ぬような状況として選ばれたにすぎないように思える」
というのはすごく正しい。自分はこれが一番無理が無いかなーと思ったんだけど、もっと
うまくこの消化を扱える方法があったのかな。どんなのだろう。

>終結の唐突さはまあ話の都合上しょうがないのかな。
これについては、自分ももう少しソフトランディングするつもりだったんだけど、
これ以上時間をかけると遅刻すrこういうネタで6レス以上とかに引っ張るのはさすがに長いかなぁ
と思って無理矢理まとめた。やりたかったのは、この作品の意図を理解してもらったときに
読者に「ああ、そういうお題の消化なのね」っていう、気の抜けた笑いを誘う感じの読後感にしたかった。
上手くいかなかったみたいだけけどね。

>一番気になったのは語り口。22歳で、戦争で、こんなにノリが軽いのは、俺には違和感
>がある。だから話し全体が作り物っぽく、安っぽく感じる。もっと淡々としててもいいんじゃないかな。
これは他の人も色々言ってるから、そうなんだろうね。一番の失敗っぽいよね。
「人身事故で運休になったぜhehe」って軽口が念頭にあったから、そういうことを言いそうなキャラクタを
語り手に設定したんだけど、これは失敗だったんだなぁ。反省する。
348以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 22:05:27.64 ID:v4NSj6R80
>>316
>お題がそのままタイトルの方がいいな。
今読み返してみたら自分でもそう思った。書いてる最中、何を考えてたんだろう自分。

>あと、文の内容が重複してるところと、女の子の名前が違うところが一箇所くらいあった。(どこか忘れたけど)
ATOKが悪い。名前を覚えてくれないうちのATOKが全て悪い。嘘。変換してくれない名前だったのは事実
(菜っ葉ってあだ名が使いたかったから、菜と着く名前で選んだ)だけど、絶対変換ミスしてるだろうと確信してるのに
推敲さぼったのは明確な事実。ヒロインに対する愛が無いよね!

>でもって「菜美が俺のことを好き」って言うくだりとラストの節の現れ方が唐突過ぎて違和感。
ここらへんは読み返してみて自分もそう思った。やっぱ時間にゆとりもって書かないとダメだなー、と。
もうちょっと丁寧に作るべきだったかもしれない。

駅のシーンの描写っていうか、ちょっとした叙述トリック的ないたずらは自分も考えたんだけど、
正直焦点がぼやけるかなー、と思ってやめた。語り手による語りかけ、っていうスタイルと相性があわない気がしたんだよね。
でも氏の文章みるとけっこうかちっと合いそうな気もした。やっぱ人の意見を聞いてみないとわからないもんだなー、と思ったよ。

>>317
楽しんでくれたみたいで良かった。
一応、指導者の死=人身事故という設定だった。さすがに轢死にするのは狙いすぎ(というか一国の指導者が轢死する
シチュエーションが思いつかなかった)かなとも思ったんだけど、氏の感想をみた限りではそうでもなかったかもしれない。
色々と難しい。
349以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 22:05:48.63 ID:v4NSj6R80
>>323
自分も内戦、というかちょっとした近未来で戦争が起きる話は好きだ。
しかもそういう世界の、軍人以外の話が好き。なんか結構書いてる気がする。

>俺の考えがライト過ぎる/飛ばしすぎるのが気になった。この部分とか↓
>> 俺はすごいショックだったけど、まあ、なんとか立ち直ることが出来た。
ライトすぎるのはほぼ全員に突っ込みいれられたから間違いなく失敗だったと思うんだけど、
飛ばしすぎは結構意識してやったつもり。語り手による回想的な一人称は、省くところは思い切り省いた方が
いいんじゃないか、と思うんだよね。逆に話の本筋からちょっと外れたところについてまで細々と語る語り部は、
偏執狂のように思えて俺は怖い。
 ただ、ここは言われてみると確かに端折りすぎた気はする。

>妹みたいな存在に対して、恋愛感情を抱いているのが唐突な気がした。
>いきなり性欲抱いてます、と書かれると驚く。
>あえて恋情かどうか書かないままというのもいいし、もし書くなら、
>実は恋愛として好き→もうどうせ死ぬんだしという順番を逆にして(実は、
>の部分がが唐突過ぎるので)、もうどうせ死ぬんだから、この感情を
>認めようという流れにするとか、もしくは前の段落で、ひそかに好きだったけれど
>今は告白しようなんて思いもしないと言った、ほのめかしがほしい
採用。書き直す機会があったらこれ採用。
んだねぇ。ちょっと唐突過ぎたとは書いてても思ったんだ。でも、正直なことを言うと
どうすればいいかわからなかった。採用。

>>324
お、長文だ。嬉しい。ありがとう。

説得力についてはあまり気にしなかった。白々しいと思われたのは確実に自分の文章の失敗だろうけどね。
そういう意味で二回目の戦争までは「設定」として読者に伝わればいいなー、という感じで書いた。
350以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 22:06:01.33 ID:v4NSj6R80
> 決定的に「戦場のありさま」が描かれてない。死んだ人間は「死んだ」っつう。。
> どの部分を欠損して、どんな苦痛を味わって、なにを怨み気遣って死んだか、が、なにもない。

> これもそう。街がどう破壊されて、ビルはどうなった、家はどうなった、
> 人々はどうなった、政治はどうなった、娯楽はどうなった、ぜーんぶなにもない。
効果として成功したかとは別として、ここらへんも結構わざとやったつもりだったんだよ。
掌編レベルの作品で、なおかつ話の根幹に関わらないところの設定を書く必要は無いと自分は思ってるんだよね。
なんていうんだろう、読者を世界に入り浸らせるタイプの小説にはそういうのは必要だと思うけど、別に自分の
これは「お題の消化の仕方」というよくよく考えるとBNSK以外では流用すら出来そうにないアイデアを元に構成した
作品だから、ライトに、出来るだけ情報は少なめにしたほうが良かったんじゃないかと自分は思うんだけど、どうだろう。
実際、世界をちゃんと構築して、空気の匂いまで感じるような作品を書けたとして(書けないけど)、それで待っているのが
この落とし方だったら、絶対肩すかしだと思うんだよ。

> その上、キャラクターの外見についてもなにも書かれてない。むしろただのヒロインという記号。
これについては、この作品だけじゃなくて、結構意識してやってる。物語に関わったり、あるいは触れるほうが文章が
自然に進んだりしない限りは(今回で言うと胸と身長の件だね)基本外見とか一切書かないことにしてる。正直、掌編で
そのあたりに文章量をとられるのは勿体ないと思うんだよね。好きに想像してもらえればいい。各々が想像するヒロインが
長髪だろうが三つ編みだろうが髪を染めていようがメガネをかけていようが、各人が好きに想像したんだとしたらそれで
問題が無いと思うんだけど。記号化って、文章を簡潔にするための重要な技術なのに、なんでみんな嫌うんだろう。
掌編なら積極的に使った方がいいと思うんだけれどなぁ。

> 作者は戦争についてなにか調べたか。
> この話を書く際「今俺の頭ンなかにある知識だけでいーや」とたかをくくってなかったか。
これはサーセンwwwとしか言えない。戦争なんて本と映画とゲームくらいでしか知らない。幸せなことだ!
この話に関して言えば、今でも戦争の描写なんかにリアリティは要らないと思うよ。だから今でも高をくくってると言える。
 いや、もちろんリアリティがあるのに超したことはないけど、そのために文章が重くなったりリズムが悪くなったりするのは
ご免だ。文才があればそのあたりも上手く解決できるのかもしれないけど、それにしても他にもっと改善しなくちゃいけないことが
戦争のリアリティの向上なんかは、かなりプライオリティは低いほうだと思ってるんだけど。やっぱそういう意識がまずいのかしら。

とにかく色々とダメなことがわかって嬉しかった。みんな、ありがとう!
351昨日も今日も 0/3(お題:>>245):2010/12/10(金) 22:27:09.76 ID:Xgct0ZLo0
投下する
352昨日も今日も 1/3(お題:>>245):2010/12/10(金) 22:28:38.28 ID:Xgct0ZLo0
 遥か上空から写した写真を、その都市の住人に見せたとしよう。緑の塊となっている部
分を指差し、ここは何ですか? と尋ねる。
 ここは森です。ここは雑木林です。ここはゴルフ場です。などと応える人はひとりとし
ていない。皆、こう応える。動物園、と――

 外を歩くお客さんのにぎわいが、はっきりと感じ取れるこの一室。一人の飼育員がやや
うつむき加減で直立している。
「すみませんでした」
 飼育員の発言を受けた者は、手に持っている葉っぱをちらつかせながら「これが何かわ
かるか?」と尋ねる。
「ユーカリです」とすかさず飼育員。
「何回目だ?」
「三十二回目です」と飼育員。
「俺の名前を言ってみろ」
「パンダです」声が震えている。
「ジャイアント付けろゴルァ!」
「ジャイアントパンダさんです」
 外から子どもたちの声が聞こえてくる。無邪気な、楽しそうな、うれしそうな。子ども
たちにとって今日という日は特別なものになるに違いない。きっと家に帰ったらママにラ
イオンのことを話すのだろう。パパに象のことを話すのだろう。ママもパパも、もちろん
子どもも笑顔になり、その家族は幸せになるんだ。お客さんに笑顔と幸せを提供するのが
彼ら飼育員、もとい動物園の存在する意義であり、喜びであり。
353昨日も今日も 2/3(お題:>>245):2010/12/10(金) 22:29:44.87 ID:Xgct0ZLo0
 でもそれは外のお話。この一室に限って、今は違う。
「ありえないぞ」と言われた飼育員はうつむいたまま動かない。
「銀河鉄道の人身事故ってくらいありえないぞ。先ず三十二回目ってなんだよ。お前がこ
の動物園で働き始めて、無遅刻無違反無笹の葉ですってか」
 無遅刻無違反という言葉に「えへへ」と漏らした刹那、横っ面をはたかれる飼育員。顔
面が真横にスライドする。アンパンのヒーローではないので、頭部だけではなく体ごと吹
っ飛ぶ。
「市川AB蔵が人間国宝になるってくらいありえないぞ。だいたい、何だこの量は? 片手
に収まるじゃねえか」
 器用につままれたユーカリは、花束よりも小さく、ブーケよりも大きい、その程度の量
であった。それが一回の食事の量だとしても、あまりにも少ない。
「飢え死にさせる気か? ネコ目(もく)で一番でかい奴の名前を言ってみろ」
「シロクマ」
 バッカヤローと言いながら飼育員の横っ面――先ほどとは逆側の――をはたいた。
「名前にジャイアントが付いてるから俺だろうが!」
 あまりにも理不尽なパンダのネコパンチに、立ち上がらなければならないという体を拒
絶し、座ったまま両ほほをさすり始めた。座っている飼育員は「パンダだけにカンカンに
なってら」と考えていたかもしれない。もしくは、別の何かを考えていたかもしれない。
 飼育員が「パンダだけに」とまで言ったところに、パンダの声が響く。
「ここらでけじめをつけておかないとな」
 さすっていた手を止め、顔を上げる。
「わかるだろ? 具体的な、明確な、わかりやすい責任の取り方が。とるべき行動が」
 外はにぎわっている。客足の途絶えない人気の動物園。皆が愛する動物園。そんな動物
園を壁の向こうに感じながら、一頭と一人の間にある二文字が浮かぶ。そしてその二文字
はこの一室に漂う。あとはパンダか飼育員が、それを口にするだけ。どちらが言うかは重
要ではない。なぜなら、もう既に「クビ」は決まったようなものだから。
354昨日も今日も 3/3(お題:>>245):2010/12/10(金) 22:30:51.55 ID:Xgct0ZLo0

 何かがおかしい。「送別会はないからね」という空気の中、飼育員は「心を入れ替えて
がんばります」と言ったのだ。その言葉に対してパンダは「その言葉が聞きたかった!」
と返したのだ。何だったんだ今までのくだりは。時給泥棒なのか。全くもってありえない。
だが、何が一番ありえないかというと、このやり取りが三十二回目だということ。いやは
や、ありえなささが常軌を逸していおり、例えて言うなれば「銀河鉄道の――

 遥か上空から写した写真、それを撮影した場所よりも遥か上空のそのまた上空。つまる
ところ宇宙。そんな宇宙よりもずっと遠くの宇宙にて。
 銀河を走る列車が今日も遅れている。
 進行方向に背を向ける形で座っている“謎の美女”メーテ・ラナーイは向かいに座って
いる“機械の身体”を手に入れるために旅をしている星鉄郎に「また人身事故のようね」
とうんざり気味に呟いた。
 それに対し鉄郎は「いやんなっちゃうよ」と応えると、窓の枠をコツコツと叩きはじめ
た。

                                     (了)
355以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 22:33:09.99 ID:Xgct0ZLo0
銀河鉄道の人身事故
しっかり白黒つけろと説教してくるパンダ
356以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 22:36:57.06 ID:rRYsw8paO
お題ぷりずみー
357以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 22:47:31.26 ID:LWnnzFV10
>>356
ヒップアタック
358 ◆/6V.PHILIA :2010/12/10(金) 23:01:04.92 ID:LWnnzFV10
>>350
トリつけんの忘れてた。
大体の考えはわかりました。思った以上に作為の範囲だったわけね。
キャラを考えたり機微をつくりこむ努力をすべて放棄した言い訳にしか見えませんでした。
でもいいや。なんか、どうでもいいや。ここはvipだ。
359以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 23:05:50.36 ID:v4NSj6R80
>>358
まあ言い訳かどうかと言ったら言い訳だから、そうとってもらって正解だと思うよ。
ありがとうね。
360以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 23:08:57.21 ID:PABGskBV0
>>352-354
>パンダだけにカンカン が唯一見所かなー。他はいまいち。
最後のくだりはちょーつまらん。
361以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 23:11:13.31 ID:rRYsw8paO
>>357
さんきゅー
362以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 23:26:41.81 ID:Xgct0ZLo0
>>360
感想あり
一個でもヒットが打てれば満足
363以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 23:52:22.44 ID:8oZLH9Z5O
寝る前ほ
364以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/10(金) 23:57:55.33 ID:EGnAnlIX0
>>352
冒頭で、動物園に溢れた世界観というちょっぴり期待したけど、
そこだけで終わってしまった
動物が上位であるなら、何故動物園というシステムが残っているんだろう

会話だけの情報で話が進んでいて、地の文でのフォローがないので、
情景が浮かびにくい
その会話も暴力性の表現は出ているけれど、AB蔵云々はちょっと

> 飼育員の発言を受けた者は
> 一頭と一人の間にある二文字が浮かぶ
こういうほのめかしの多用は、気になる
最初の部分については特に、読者には話し相手がパンダだと言う知識が全くなく、
「パンダです」と言う会話でしか分からないので(それも単なる嫌がらせかも
しれないし、パンダというあだ名の人間かもしれない)、地の文で、ごわごわとした
毛なり、爪なり、何か補った方が個人的には分かりやすいと思う

最後の段落。
ありえないというたとえであるはずの銀河鉄道が実在する…というオチ?
もしそうなら、それまでのパンダと動物園が既にありえない世界なので、
苦しく、何故?という感じがした

誤字
>>354
ありえなささ
常軌を逸していおり
365以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 00:35:15.97 ID:0Vf0L1bR0
こんなチンタラ書いてたら間に合わないって分かってんだけど筆すすまねー
366以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 01:12:12.06 ID:MMdKFV1bO
お題くれ
367以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 01:13:12.50 ID:0Vf0L1bR0
>>366
勘違い
368以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 01:13:24.75 ID:LM3aVqbtO
お題
宙に浮かぶバナナ
369以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 01:19:00.55 ID:MMdKFV1bO
>>367-368
把握
370以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 02:49:28.14 ID:ErGstd09O
保守寝
371以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 07:35:58.19 ID:rDm5uhz00
Hoshen
372以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 09:17:40.56 ID:KUUlWmZu0
おはようの保守
373以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 11:20:50.56 ID:bD+UsCYW0
オハイオから保守
374以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 13:14:42.51 ID:bD+UsCYW0
テキサスから保守
375以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 13:50:55.91 ID:Q98CoAts0
お題を求めてやってきました
376以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 13:53:22.04 ID:sh4W1oUd0
草原に佇むお嬢様
377以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 13:59:12.36 ID:Q98CoAts0
お題把握
378以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 15:28:38.02 ID:ErGstd09O
文才無いけど保守する
379以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 16:19:11.31 ID:F/bHNc6L0
うわぁこの人文才無いのにぃ保守してらぅ
380以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 17:43:53.71 ID:p95oinnI0
381以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 19:13:01.85 ID:uUMvjaQKO
お題くれ
382以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 19:18:04.47 ID:0s8VRsaX0
季節外れ
383以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 19:54:09.71 ID:gYiUNYUiO
今日は静かだな保守
384以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 20:21:07.32 ID:snWdOKro0
お題ぷりーず
385以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 20:23:59.74 ID:rDm5uhz00
ペーパーナイフ
386以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 20:24:45.00 ID:snWdOKro0
トンクス。はあく
387以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 21:14:05.83 ID:Q8bkCym30
タカハシコウキさんちょーーー格好良かった
だけど芸能人オーラは無い
一般人的な格好良さ
388以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 21:14:37.96 ID:Q8bkCym30
人間は誤爆をする、悲しい生き物だね
389以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 22:15:36.17 ID:snWdOKro0
「ペーパーナイフ」書けました。初めて小説書いたので、感想くださるとうれしいです。
390『先生』(お題:ペーペーナイフ)1/5:2010/12/11(土) 22:22:34.42 ID:snWdOKro0
電子メールが主流になったいま、手紙を交換することはあまりないけれど、私は手紙が好き。
ペーパーナイフで封を切る時の、サクッサクッというさわやかな感触と音が好き。
そして、その瞬間漂う、差出人の匂いが。

わたしは中学三年生のとき、「先生」のことが好きだった。
わたしが中学生のころは、ちょうどケータイのメールが一般的になりだしたころだった。
今でこそ、大きなカラーの液晶画面に、タッチパネルで文字が打てたりするけれど、
その頃の女子高生や女子中学生は、小さな電卓みたいなモノクロの画面で、パケット代を気にしながら、文字数を節約してメールをちまちま打っていた、そんな時代。

そんなチャチなケータイだったけど、ケータイがなければ、多感な時期の私の恋愛は、もっと違った形だったに違いない。

先生は、私が通っていた学習塾の、ダメな新米先生だった。
授業はしどろもどろ、生徒の成績はあがらない。
生徒数は小学生から中学生までで全部で100人くらいしかいない、小さな塾で、
四十代から五十代ぐらいの中年のおじさんばかりが講師のなか、
「先生」はひとり27歳という若さから浮いていた。
一目で過去の訳あり感が感じ取れる、ぼさぼさの髪や、ヤニで黄ばんだ歯、薄灰色の顔色、よれよれの5年物くらいの地味な色のセンスのない服、血管の浮き出た腕、そして影のある横顔、その浮世離れしたすべてが、
人と同じ生き方なんてしたくないと強がっていた、15歳の私の琴線に触れた。
391『先生』(お題:ペーパーナイフ)2/5:2010/12/11(土) 22:25:08.37 ID:snWdOKro0
*お題のタイプミス訂正しました;

講義が終わる。
「気をつけて帰れよ」
「ねえ先生、アドレス教えてよ」
「いいよ」
簡単だった。
今でこそ、講師と生徒が個人的な連絡先を交換することは、問題視されているけど、
当時、そんなルールなんて、まだなかったのだ。
私たちは、毎日、メールのやり取りをした。
先生は、結婚していて、奥さんはいま二人目の子供を妊娠し、一人目の子供を連れて実家へ帰っていた。
先生は暇を持て余していた。
先生が塾から帰るのは日付が変わる頃。塾が終わると、すぐにメールをくれた。
それから明け方まで、メールのやりとりをする。
受験生の私の生活リズムは崩れた。
「先生、こどもの名前は決まったの?」
「うん。なつみ、にしようと思う」
「なんで?」
「声に出した時、可愛いから」
「ばかみたい(笑)でもかわいいね」
次の日の講義で、先生と目が合う。他の生徒は、必死に問題を解いていた。私は成績が良かった。こんなバカみたいな問題、すぐ解けた。
私はほほ笑む。彼もほほ笑む。私は、声を出さずに、唇を動かす。
「な」「つ」「み」
先生の唇が、声を出さず、動く。
「ば」「−」「か」
奇妙な幸せだった。
392『先生』(お題:ペーパーナイフ)3/5:2010/12/11(土) 22:28:19.61 ID:snWdOKro0
先生の心待ちにしている幸せは、私とのものではなく、奥さんとのものだった。
奥さんとの間に生まれてくる子供だ。
でも、私は先生のその幸せが嬉しくて、彼と私だけが知っている秘密を共有することにもまた、幸せを感じていた。
子供は、先生と奥さんとの間の子供だったけれど、その幸せを今、共有しているのは私だけだったから。
先生が実家に帰る時は、「明日はメールできないから」と、トンネルで電波が途切れるまでメールをくれた。
「えりがいないと、さみしいな」
15歳の私に、先生はそう送った。
「わたしも、さみしい。帰ってきたら、メールしてね」
「うん、もちろん。えりのことは、先生が守ってあげるからね。先生は、いつでも、えりの味方だから」
先生が15歳の私を本気で恋の相手にしていないのは、わかっていた。
でも、先生がほかの女の子とは違う目で私をみていることは、わかった。
思春期特有の生意気で、「ばかみたい」と言う私の中で、27歳の男に本気で落ちていく私がいた。
私は、「先生」と暮したかった。同じごはんを食べて、同じものを見て笑って、同じベッドで眠って、キスをして、セックスをしたかった。
まわりの同年代の女の子たちがするようなデートなんてしなくていいから、二人で生きていきたいと、思っていた。
それが、15の私の夢だった。かなわないと知りながら、みる夢。
393『先生』(お題:ペーパーナイフ)4/5:2010/12/11(土) 22:30:11.96 ID:snWdOKro0
予想していたより早く、夢見の時間は終わった。
夜遅くまでメールしている私の行動を怪しんだ父親がメールを見て、騒ぎ立てて、終わった。
親の保護下にある未成年に特有の、こんなつまらない理由で、
この埃っぽくもはかなく尊い、古いアパートの部屋の窓から差し込む、舞い散る埃を照らす日差しのぬくもりのような、
そんな私たちの関係が終わることが哀しくて、私は泣いた。
このことが公になれば、先生は職を失ってしまう。
先生は、私にあまり近寄らなくなった。
私は、自分の首がつながることばかりを気にする先生を責めた。彼は謝った。
彼は優しい。
やさしいことで、身をほろぼしてしまう。
そんなところが、好きだったから、私はまた泣いた。
それでも、私たちは公衆電話から二度、長い電話をし、四通の長い手紙を交換した。
私は、三通めの手紙で、好きだと言った。
394『先生』(お題:ペーパーナイフ)5/5:2010/12/11(土) 22:31:30.92 ID:snWdOKro0
先生は、「そんなふうに思わせて、ごめん」と言った。
「先生は、えりのことを守ってあげたかったけど、
27歳の男が、15歳の女の子と仲よくすることを、世間はおかしいって思う。
哀しいけど。先生、いまさら気付いた。ばかだと罵ってくれて構わないよ」
便箋からは、先生がいつも吸う煙草の匂いがしていて、その匂いがなくなるまで、何度も何度も封筒から出して、匂いを嗅いだ。
深く深く、息を吸い込んで。
そうすれば、先生の吐息が自分の身体の一部になる気がして。
メールも、あのとき使ったテレホンカードも、全部消えてしまったけれど、
匂いの消えた便箋と、あのとき使ったペーパーナイフはいまでも残っている。
優しすぎる彼が、好きだった。
395『先生』(お題:ペーパーナイフ):2010/12/11(土) 22:32:13.91 ID:snWdOKro0
投下終了です。
396以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/11(土) 23:35:21.71 ID:p95oinnI0
ho
397以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 00:24:45.56 ID:ep7xqArn0
23 名前:文才無しさん[sage] 投稿日:10/12/12(日) 00:22:12 ID:ENiHCxGF
どなたか転載をよろしくお願いします

『先生』(お題:ペーパーナイフ)5/5への感想

読んだ。なんか作り物っぽい感じがするなあ、と感じた
ペーパーナイフというお題で手紙を使っているのに
ほぼメールがメインなのはどうなんだろう
いっそ先生からペパナイフを貰ったけど連絡はメールだから一度も使ってないで持ってる
ケータイ時代の子供に使いもしないペパナイフをあげちゃうまぬけな先生
とかそれぐらい切り離しちゃっても良かったかも
もしくはやっぱり手紙をメインにしてメールを使う時代よりももっと前の時代の話にするか
キャラクタの様子の描写や話の構造がよくあるというか、漫画の中の回想で
少し語られるだけの簡単な描写みたいな
手紙は一通だけど、メールは何回もしたんだろうし、そっちのほうが大事で残しておきたいとか
思わないんだろうか
ケータイは数年は使おうと思えば使えるし、契約切れても電源さえ入ればメールの確認はできるし、
さらにいえば、文面をコピーしてテキストで取っておくこともできる
そういったことを考えるのがリアルなんじゃなかろうか
もし自分だったらそっちを必死に頑張る様子を書きたいかなと思う
どうやらペパナイフはプレゼントでもないようだし、それを大事に思うのはずれてるように思った
お題だからなんとかしたかったというのはわかるけど、
それで作品が変になっちゃうんじゃしょうがないし
割り切るところは割り切って、1シーンで使うだけとかでも、それで話が良くなるならそれでも良いと個人的には思う
あと今見てたDVDでちょうどペパナイフが出てきたけど、
手紙を開ける以外の使用方法もあったよ
そういうのを考えても良いかもしれない

親の胸を突いて殺害してた!
398以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 01:04:10.87 ID:1e+KFxKf0
保守とは、彼方に引き込まれかけたスレに再び命を吹き込む行為である。
399以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 01:08:50.47 ID:fcdl67Xd0
お題くだしあ!
400以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 01:17:38.72 ID:9ayMwIv/0
>>399
自作自演
401以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 01:24:18.93 ID:fcdl67Xd0
ありがとー!
超久しぶりだから頑張ってみるよ!!
402以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 04:00:13.97 ID:XyFJExBCP
なんか妄想するついでに書きたいからおだいください
403以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 04:48:08.57 ID:kJjTqg7Q0
テスト
404以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 08:05:56.68 ID:PpF3CcG00
おはやう
405以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 09:55:33.29 ID:kJ4hGKao0
品評会まだゼロか
406以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 10:08:47.48 ID:bmRTlSqs0
品評会参加する組のひとたち頑張ってね
407以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 10:33:21.78 ID:g5Hr+3CgO
誰かお題ください
408以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 10:36:52.28 ID:kJ4hGKao0
>>407
一人旅
409以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 10:38:23.62 ID:6kF+K7Pn0
>>407
痛み
410以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 13:34:15.60 ID:1e+KFxKf0
ho
411以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 14:21:39.43 ID:1e+KFxKf0
今日は静かだなぁ
そんなのんびりしてると落ちちゃうぞ
412以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 15:03:05.64 ID:tvKicoB9O
会話って書きやすいが綺麗に昇華しにくい
413以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 15:39:54.38 ID:686YAeor0
test
414以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 16:26:24.97 ID:1e+KFxKf0
定期的なほ
415以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 16:41:56.67 ID:+CrP5bZKO
お題ください
416以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 17:02:33.95 ID:KD0H6shhO
チェリーソーダ
417以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 18:19:36.59 ID:1e+KFxKf0
そろそろ品評会来ても良いんでねぇの?
418以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 18:29:42.74 ID:jIMwYj3C0
大丈夫か、品評会。
419以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 18:35:36.47 ID:kJjTqg7Q0
心配してる暇があったら自分で書けば良いじゃない
俺? まだ一文字も書いてないよ
420以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 18:44:19.49 ID:N7yivXXtO
なに、俺はいつも2,3時間で書いてるから問題ない
421以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 19:06:35.97 ID:gQa7OvaLQ
話の大筋を決めて、起承転結をどうつけようか考えるあたりでめんどくさくなる
結局今日も書かずじまいれす^p^
422以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 19:14:33.79 ID:kJjTqg7Q0
起承転結なんて考えなきゃ良いじゃん
そんなの考えてるプロの小説家なんてほとんどいないよ、きっと
423以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 20:02:41.38 ID:HwKX8Jsb0
まにあわねえええええええ
424以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 20:23:56.22 ID:kJjTqg7Q0
よし書き始めるぞ
425以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 20:25:31.95 ID:N7yivXXtO
426以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 20:38:34.94 ID:q350e16N0
tes
427以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 20:44:53.75 ID:jiJLWztT0
お題プリーズミー
428以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 20:47:07.49 ID:n9B9+e4Q0
>>427
くのいち
429Family 0/2  ◆RxSveB/Q9c :2010/12/12(日) 20:47:29.44 ID:q350e16N0
品評会作品
以下2レス
430Family 1/2  ◆RxSveB/Q9c :2010/12/12(日) 20:48:52.93 ID:q350e16N0
 老いたペルシャ猫、マリーとの二人暮らしに新たな家族が加わった。コーギー犬で、ベルと名付けた。
 子犬だったベルはいつもマリーにくっついていた。マリーが水を飲みに行けば、それについて行く。マリーが
ころりと寝転べば、ベルもとなりでぺたりと休む。夜、私がインターネットをしているとキーボードの上にマリ
ーが乗っかり、足下ではベルが「くぅん」と鳴いている。朝は朝で、ベッドで眠っている私の腹にマリーが乗っ
かり、ベッドに乗れずにいるベルが「くぅん」と鳴いている。
 そんな二匹を私は「仲が良いね」と微笑ましく思っていた。。
 私と、猫と、犬と。異種ではあるがまぎれもない家族である。私はマリーとともにベルを育てた。ベルはたく
さんのことを学んだ。躾を、愛を、生を。そして死を。

 マリーが亡くなってから数年が経ち、ベルは立派な成犬になった。マリーに似て寡黙に育った。
 ちょうどその頃、動物の言葉を翻訳してくれる首輪が発売された。信憑性も高く、なにしろ評判だった。少し
高かったが私は犬用を購入し、さっそく使ってみた。付属品のディスプレーに日本語に翻訳された犬語が表示さ
れる“らしい”。というのも、ベルが吠えども毎回エラーとなってしまうのだ。だから私は日本語に翻訳された
のを実際に見たことがない。故に“らしい”なのである。
 「翻訳機能付き首輪(犬用)」を物置の奥にしまってから数年後、ベルとの出会いがそうだったように、私は
老いたベルの跡継ぎのようなかたちで新たな家族を加えた。ノルウェージャンフォレストキャットという種の子
猫で、オスロと名付けた。
 私はさらに信憑性が高くなった、高性能でしかも軽量の「翻訳機能付き首輪」を購入した。もちろん猫用の品
である。オスロに装着するとさっそく話しかけてみる。
「こんにちは。これから一緒に暮らすことになる。よろしくね」
 オスロが鳴くと、ディスプレーに文字が流れる。
――いっしょにくらす?
「そうだよ。となりにいるのはベルだ。ベルも一緒だ」
――ベル?
 ベルは伏せをして、オスロを眺めている。

 ベル、ベルよ。今度はお前の番だ。マリーからもらった愛を、オスロに与えるんだ。マリーのようにやさしく、
マリーのように温かく、かつてマリーとそうであったように“家族”になるんだ。
 オスロが家にやってきた初めての夜、オスロの首輪がベルの言葉を拾う。マリーに育てられたベルの言葉は、
まさしく猫の言葉であった。だから拾う。エラーにはならない。
431Family 2/2  ◆RxSveB/Q9c :2010/12/12(日) 20:49:47.92 ID:q350e16N0
――はじめまして。ボクの名前はベル。ご主人さまとマリーっていう猫に育ててもらったの。ボクはご主人さま
もマリーも大好きなんだ。きっとボクはオスロのことも大好きになるよ。家族だからね。
――かぞく?
――そう、家族。一緒に暮らすの。でね、ボクと約束してほしいことがあるの。これはマリーとの約束でもある
んだ。
――なに?
――先ず夜。ご主人さまが遅くまでパソコンをいじっていたら、はやく寝なさいって言ってあげるんだ。夜ふか
しは体に良くないからね。ボクはマリーのように机の上に乗れないから、足下で「はやく寝ようよ」って言うこ
としかできない。でもオスロはマリーとおんなじ猫だ。だから机に登れるはず。
――わかったよ。
――朝もおんなじ。ご主人さまはねぼすけさんなの。だから起こしてあげる。マリーのようにベッドに乗って、
起こしてあげて。
――わかった、まかせてよ。
――あとお客さんが来たら、静かにしてようね。ご主人さまのじゃまをしちゃいけないよ。
――うん。
――じゃあ、今日はもう遅いから寝ようか。
――うん。おやすみなさい。
――おやすみ。

 枕元のある付属品のディスプレーに、ベルとオスロの会話がすらすらと流れた。しかし、眠っている私はそれ
に気付かない。
 夢を見た。ベルがいて、オスロがいて、少し離れたところにマリーがいる。
 マリーが「ほら」とオスロに言う。「にゃあ」ではなく「ほら」と。「キミの番だよ」と言う。オスロは走り、
私の方へ駆けてきて地面を蹴り、飛んだ。
 トン、という衝撃で私は眠りから覚めた。かつてマリーがそうしていたように、オスロが腹の上に乗っている。
ベッドに前脚をかけてベルが「くぅん」と鳴いている。ちょうどその時、ディスプレーに「おはよう」の四文字
が流れた。

                                               (了)
432以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 20:51:26.68 ID:q350e16N0
投下終了
まとめに貼るんだよね
433以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 20:57:15.22 ID:q350e16N0
まとめに貼るの怖い
どなたか慣れてる人やってくれませんか?
434以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 20:58:48.27 ID:kJjTqg7Q0
みんな怖いんだよ
他人のをまとめるのはもっと怖いんだよ
435以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 21:25:57.40 ID:q350e16N0
ID:Sb6OxYY7さんありがとうございます
タイトルの前にb入れるんですね
次回は自分でやります
436以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 21:49:27.27 ID:jiJLWztT0
うーん、あんま思いつかんなー

もう一つお題をください!
二つで書いてみようと思う
437以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 22:00:47.32 ID:1e+KFxKf0
>>436
そろばん
438 ◆Lq1ieHiNSw :2010/12/12(日) 22:00:48.40 ID:y6LH6RF90
品評会作品投下。
439理性も知性も糞くらえ 1/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/12/12(日) 22:02:30.36 ID:y6LH6RF90
 キャバクラ通いを続けた俺は嫁に愛想を尽かされ、やがて独り身へ逆戻りした。
 嫁がいなくなってようやく自分の過ちに気付き、自分はなんて馬鹿なことをしたんだろうと悔いた。
 嫁の為に挙げた盛大な結婚式の費用も、嫁が望むままに決めたヨーロッパへの新婚旅行の経費も、嫁の機嫌取
りの為に購入した服や鞄の代金も全て無駄だった。それをキャバクラ代に回せばよかったのだ。
「くそ、結婚なんてするんじゃなかったぜ」
「悔いたってそっちをかい! どうしようもないクズ野郎やな」
 ガハハハ、と下品な声で目の前の無頼漢は笑った。
「ほんで、それからお前はどうしたんや? 心置きなくキャバ通いを再開したんか?」
 そうしたいのは山々だったが、しかし慰謝料や養育費の支払のせいで、そうもいかなかった。
「ただでさえ金がないってのにこれだ。堪ったもんじゃねえ」
「なんや、ガキもおったんかい。アホやなあ。ガキなんて金食うだけやで。俺も何人か孕ましたけどなあ、全部
堕ろさしたったわ。まあそれはええ。んでお前は金がないからセクキャバに鞍替えってわけなんかい」
「クズはお前だろうが。まあでもそうだよ。金がないからセクキャバにしようと思ってんだ」
 俺はセクキャバのシステムをいまいちよく知らない。それを言うと、ヒゲヅラの無頼漢は答えてくれた。
「オサワリオッケーなんは知ってるな? まあそれがメインで、キャバみたいな話の楽しさはないで。酒もつい
で程度にしか飲まんしな。でも基本はセット料金やから、延長せん限り金額が嵩むことはないわ」
 俺としては会話を楽しみたいのだが、まあこの際仕方ない。
「まあごちゃごちゃ説明してもしゃあない。とりあえず行ったら分かるわ」
 そして無頼漢は俺の腕を引っ張りバーを出た。
 そのまま後ろに従い街を歩くと、やがて如何わしい雑居ビルにたどり着いた。地階に降りると、派手な看板を
掲げた店舗が目に入る。看板には『ツーショットキャバクラ・恋煙』とあった。
「お、カクさんじゃない。久しぶりだねえ」
 店の前に立っていた、スーツの上にハッピを着たハゲ頭の男が無頼漢に話しかけた。
「おう久しぶりやな。こいつはさっきショットバーで知りおうたどこぞのクズ医者や。クズ同士気が合ってん」
 と、カクと呼ばれた無頼漢は俺をハゲに紹介した。
「へえそうなの。まあそんなのどうでもいいから入ってよ。指名はする?」
「どないしよっかな。お前は指名すんの? まあ会話楽しみたいんやったら指名してじっくりの方がええかもな」
 指名をしなければ、時間内で女の子が次々代わるのだという。ならば俺は指名をしよう。
 そして女の子を決めるべくパネルを物色していると、不意にカクはハゲに向かって言った。
「あれ? 前この店イチゴちゃんってコいてへんかった? ちゃう店やったかな」
440理性も知性も糞くらえ 2/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/12/12(日) 22:03:32.56 ID:y6LH6RF90
「ああイチゴちゃん? あのコもう辞めちゃったよ」
「なんや、俺に挨拶も無しにかい。知ってたら辞める前にもっかい来てやったのに」
 カクさんが違う店に行って浮気してるから。うるさいのう。まあいい歳だったしね。イチゴちゃんは何歳やっ
たん? 確か今年で二十九だったかな。なんや俺とそう変わらんやん。え、カクさんってそんな若いの?
 二人は俺に介入の余地がなさそうな話を始めたものだから、長引くと厭なのでぶった切ってやった。
「それより、今一番人気のあるコはどれ?」
「え、ああ。今はこのコ、トリスちゃんが一番人気だよ。おっぱい大きいし、サービスもいいって大好評」
 するとカクが、そのトリスちゃんというコのパネルを舐るように眺める。
「ほう。うーん、まあ俺のタイプではないな。乳もでかすぎるんは嫌いやし」
 カクはそう言ったが、しかし俺はわりとタイプだったので、そのコを指名することにした。
「んじゃお前先に入っとき。俺はもうちょい考えるわ。終わったら先帰っとき。またそのうちバーで話そうや」
「カクさんは相変わらずここで悩むね。普通指名でそんな悩む人いないよ」
 とハゲが馬鹿にすると、カクはうるさいわこのツルッパゲ、と悪態をついた。
 俺はカクの言葉に従い、じゃあまたな、と言って先に入店した。
 店内は薄暗く、間接照明でボンヤリと照らされ妖しげな雰囲気があった。そして暗さとは別に視界がどことな
く不明瞭なのは、きっと何か煙が充満しているからなのだろう。それほど煙草臭くもないし、演出としてスモー
クでも焚いているのだろうか。いや、お香かもしれない。何か鼻を抜ける匂いがする。
 席は背の低い簡素なパーテーションで区切られ、一応それぞれ個室感覚にはなっているようだ。しかし個室は
二畳ほどの広さしかなく、ソファと安っぽい丸テーブルが置かれているだけだった。
 俺が席に着くとまずボーイにドリンクの注文を聞かれ、それから程なくしてトリスちゃんがやってきた。
「ご指名ありがとっ。トリスでーす」
 店内が暗いからよくわからないがきっと明るい茶色だろう、巻きに巻いた髪の毛が空気を孕んでふわふわと揺
れていた。顔はパネルに写っていたものよりも幾分太く見え、目鼻立ちなんかも少し違う。そもそも店内が暗い
ので余り明瞭とはわからなかったが、しかしやはりパネルマジックが掛かっていた。だがドレスの胸元から覗く
膨らみの大きさだけは本当だった。胸自体が本物かどうかは別の話だが。
「えへへ。はじめましてえ。お兄さんお仕事は何やってるの?」
 トリスちゃんはいきなり仕事のことを聞いてきた。
「医者」
「うそぉ!? すごーい。じゃあ、お金持ちなんだね!」
「まあな。何か欲しいものがあったら買ってあげるよ」
441理性も知性も糞くらえ 3/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/12/12(日) 22:04:24.29 ID:y6LH6RF90
「ホント? やったあ。じゃあー、マンションでも買ってもらおうかなあ」
「そんなもん買わなくても既に幾つか持ってるから。なんなら一室分けてやるぜ」
「え、マジで? ホントにお金持ちなんだね」
 いや、マンションの話は嘘だ。
「まあ医者だからな。そうだ、お医者さんごっこでもする? 俺は内科医だから、触診をさせてもらうおう」
 そう言ってドレスの上から胸に触れた。するとトリスちゃんは演技じみた声で、やん、と言った。
 さっそく身体に触れたのは、やはりここはキャバクラのように会話を楽しむ場所ではないと判断したからだ。
いきなり仕事を聞いてくるなんて、会話することが仕事であるはずの人間としては余りにもお粗末すぎる。そう
いったスキルがないからこそ、身体を売りにするのだろう。まあ合理的ではあるが。
 ドレスの胸元から手を滑り込ませ直接乳房を揉みだすと、トリスちゃんの方からキスをしてきた。口を塞がれ
てしまえば言葉も発せないので、本当は内科医ではなく精神科医であることも言わなくて済む。
 そのままキスをしながら胸を揉み続け、やがて空いていた手をトリスちゃんの太ももに這わせ、そしてドレス
の裾から股間へ向けて手を伸ばそうとした。だが。
「そこはダメ」
 と、トリスちゃんが俺の手の侵入を拒んだ。
「あそこは禁止なの。ごめんねえ」
 だけど頭の悪そうな空っぽの笑顔で言うものだから、それでも全然構わないよという気になった。
「うふふ、でも楽しいでしょ? なんなら私が触ってあげてもいいよ。服の上からしかダメなんだけどね」
 言うや否や、トリスちゃんは俺の股間に手を這わせてきた。だけどそこまでで、これでは生殺しだ。だが仕方
ない。それ以上を求めるなら、然るべき店に行かないとダメなのだ。
「トリスちゃんって性感帯どこ?」
「えー? うーん、耳、かなあ」
「よしきた」
 俺はトリスちゃんの身体を抱き寄せ、そして耳を甘く噛んだ。さらに手では尻を撫でまわしている。
「いい桃がなってるね。顔をうずめて匂いを確かめたいな」
「へんたーい。それはさすがにNGかなあ」
 急になんだか楽しくなってきた。適当な会話もキャバクラ以上の身体接触が伴うなら、なかなかによい。
「そうだ、触らないからさ、匂いだけ嗅いでいい? あそこの」
「えー、ダメだってえ」
「いいじゃんホラ」
442理性も知性も糞くらえ 4/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/12/12(日) 22:05:05.28 ID:y6LH6RF90
 そう言って俺はトリスちゃんのスカートを捲る。もうダメだよお、トリスちゃんが俺を窘める。赤色だな、と
下着の色を告げる。えっちへんたい、可愛らしく抵抗する。
 ああ楽しいなあ。酔ってきたみたいだ。でもそんなに飲んでないはずなんだがなあ。なんか変な感じ、そうそ
う、葉っぱを吸ってる時みたいな。
 …………。ああ、そうか。
「なあこの店、お香みたいなの焚いてるよな。一体何を焚いてるんだ?」
「あ、気づいたあ? これハーブだよ。何か気分よくなってくるでしょ?」
 つまりは、合法ドラッグか何かか。あまり効果は強くないようだが、しかし程よい酩酊感はくる。
「いい店で働いてるな」
「でしょ? 酷いお客さんもいるけどキャバみたいにノルマとかないし、働いてていい気持ちになれるしね」
 あ、お兄さんはいいお客さんだよ、と最後に付け加えた。そこで俺は、即座に一計を案じた。
 他に薬はしたことあるかと問うと、トリスちゃんは否定した。だが、興味はあるという。
 俺は思わず笑ってしまい、そしてポケットに入れていたケースから紙に巻いた葉っぱを出した。
「吸う?」
「え、なにそれ? もしかして」
「まあ薬じゃなくて葉っぱだけどな。ハーブなんかよりも気持ちいいぜ。今日はさ、何時あがり?」
「えー、もしかして誘ってる?」
「吸いたいんだろ?」
「うーん、どうしようかなあ」
 この感じ。嫁を落とした時と一緒だ。キャバクラで薬の話をチラつかせ、のこのこついてきた嬢の一人が元嫁
だった。あの時はドラッグパーティーを開いて乱交をしたが、今回はタイマンか。
 しかしまあ、俺はどうも夜の女にばかり手を出してしまう。ひっかけやすいというのもあるし、やはり精神不
安定な人間が多いから、俺にとっては得意分野なのだろう。
 まあどうでもいい。なんだかんだでトリスちゃんは名刺を差し出し、そこに記載されている携帯アドレスとは
別のアドレス、つまり仕事用ではない自分の本携帯のアドレスをペンで書き始めた。あとは優しいメールで懐柔
して後日呼び出し、アッパー系でもキメさせれば容易にセックスに持ち込めるだろう。
「そういや彼女とか奥さんはいないの?」
 残り時間はそれほどない。セックスまでの道のりを切り開いたからにはもう店を出てもよかったが、ハイになっ
ているものだから俺は色々と口にしてしまった。
443理性も知性も糞くらえ 5/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/12/12(日) 22:05:53.20 ID:y6LH6RF90
 結婚する気はなかった。だけど子供ができたし、好きだったから結婚した。こっちは親がもう死んでるから気
楽だった。子供が生まれると、悪影響だとか言われて大麻やドラッグが堂々とできなかった。キャバ通いも咎め
られた。自由が利くし離婚できてよかった。だけど元嫁のことはまだ好きではある。
「お兄さんダメ人間っぽいけど、でもいい人そうだね」
 そうトリスちゃんが笑って言うと、丁度そこで時間の終了を告げる為にボーイが現れた。延長の有無を聞かれ
たが、持ち合わせがないので断った。

 ※

 和食レストランでディナーを取った後、俺はトリスちゃんを家に連れ込んだ。
 彼女の目的はもちろん葉っぱだろうが、犯されることも了承はしているだろう。
「さっそくキメちゃう?」
 俺が問うと、トリスちゃんはうん、と笑顔で答えた。
 さて、俺は慣れているからいいが、初体験のトリスちゃんは下手すればバッドトリップに陥ってしまうかもし
れない。そうなるとセックスなんてやれたものではないから、まずは俺はトリスちゃんの精神状態をいい位置に
持っていくようセッティングを始めた。
「さて、今日使うこの葉っぱだけど、実はこれ大麻じゃないんだ。でも大麻に近い種で、もちろん同様の効果も
ある。じゃあ何が大麻と違うかってと、この葉っぱは日本じゃ規制されてない。つまり、わかるか?」
 これをいくら使用しても、現状では違法にならないということだ。
「へえー、じゃあ安心して吸えるね」
 仕事上、楽しい薬は簡単に手に入る。それをトレードに出せば、こんなものも手に入るのだ。
「そんなことして大丈夫なの?」
「大丈夫なようにやってんだよ。まあ安心しな。不安がって吸ったりしたらバッドトリップになるからな」
 そして水パイプを渡し吸引方法を教えると、まずは俺から吸って見せた。
「おもしろいね。ちょっと綺麗」
 クリアオレンジのパイプを通る煙を見て、トリスちゃんはそう言った。こういったお洒落感もいい演出になる。
そしてトリスちゃんも吸引をはじめ、三回も煙を吸うとさっそく効いてきたようだ。
 そして俺ももう、頭の中にはセックスのことしかない。
「やろうぜ」
「なにをー? いいねーこれ。なんかすっごい楽しいよ」
444理性も知性も糞くらえ 6/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/12/12(日) 22:06:42.69 ID:y6LH6RF90
「もっと楽しいことをやるんだよ」
 俺はトリスちゃんのスカートを捲りあげ、そして局部にそっと触れた。
「今日は抵抗しないね」
「だって仕事中じゃないもん」
「じゃあもう仕事中は会いに行かないようにするか」
「ケチ―。あ、もう」
 下着の、局部に当たる部分を横にずらし軽く撫でた。さらに裂け目を押し開いて指を少し中に入れてみると、
すでに薄っすらと湿っていた。
 そしてオーディオから音楽を流す。大麻の聖地、アムステルダム。そのご近所ロッテルダム生まれのアッパー
な音楽、ハッピーハードコアの突き抜けたリズムが感覚をさらに加速させる。ハイになった俺達は互いを貪り、
吸いこんだ煙を唇を交わして共有すれば、研ぎ澄まされた五感がさらに官能の度合いを高める。
 四肢は乱れて雌の匂いが噎せ返る。湿った肌は纏わりついて、それを舐めると卑猥な鳴き声が音に乗る。いつ
しか呂律は狂い出し、言葉は意味を失った。俺達は嬌声で会話をする。
 入れる。出す。煙を吸う。解き放ち、解き放たれ、放出し、痙攣させ、快楽を、ただ快楽を、快楽だけを。
 愛液。精液。汗。涎。息と煙と草の匂い。激しく鋭く優しく甘く。楽しい楽しい草セックス。
 気が触れたかのような痴態をさらし、俺達はセックスとマリファナを思う存分堪能した。

 効果が抜け始めたころに、トリスちゃんは言った。
「あーなんかお腹すいた。でもすっごいドロドロ。こんなにいっぱい出されちゃったら赤ちゃんできちゃうよ」
「なに? 今日は危険日だったりすんのか? まあいいや。もし出来たらお前もガキも俺が養ってやるよ」
「ホントに? やったね! お医者さんと結婚したらもう働かなくても大丈夫じゃん!」
「なんかそんな台詞、前にもどこかで聞いたなあ」

 ※

「んで、堕ろさへんのかい」
 カクがさも当然のように言う。
「んなもん堕ろしてしまえば済むことやんけ。医者なんやったらなんぼでも伝手あるやろ」
 その通りだ。その通りなのだが。
「人殺しだけは……俺にはできない」
445理性も知性も糞くらえ 7/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/12/12(日) 22:07:27.10 ID:y6LH6RF90
 言ってて恥ずかしかった。何が人殺しや、とカクも呆れた顔をしている。
「あんなあ、今更何を言うとんねや。それで前の嫁と結婚してもうて、ほんで息苦しくなっとるんやんけ。お前
はまた同じことやるんかい。どうせお前はキャバ通い続けんのやろ。あんなあ、元夜の女やからって旦那の夜遊
びに理解を示すと思うなよ。むしろ逆やからな」
 それはもう、前回の経験で学習した。
「全然学習してへんやないかい。夜遊びが止められへんのやったら結婚すんな。せめてバレへん程度に留めとけ
や。なんならいっそクズになりきれ。堕ろさしたったらええやんけ。なんでそこまでクズやのに中絶だけは拒む
んや? 医者としてか?」
 いや、あまり関係ない。相手が産みたいというのだから、俺はそれを尊重したいのだ。
「そんなん無視しろや。拒まれたら腹でも蹴ったらんかい」
 とんでもない野郎だ。
「好きに……なったんだよ」
「はぁ?」
「だから好きになったんだよ! いいだろもう。俺は結婚するって決めたんだ。黙って祝えよ馬鹿」
 もはやカクは憐れみの目で見てくる。
「初めて俺とおうた日に自分で言うたこと忘れたんかい。結婚なんてもうするかーて言うてたやん」
「でも好きになったんだから仕方ないだろ。こんなセリフを何回も言わせんな」
「……精神科に通わなあかんのはお前の方やで」
「んなことは分かってるよ。なんせ俺は薬中だからな」
 クズすぎる、とカクは言った。だが、カクは笑っていた。
「目も当てられへん。けどまあ、俺はお前みたいな奴好きやで。話としてはおもろいからな。よし、しゃーない。
ほんなら今日は俺が奢ったるわ!」
「え、キャバでも連れてってくれんの?」
「ちゃうわボケ! ここの飲み代だけの話やこのクズが」

〈了〉
446 ◆Lq1ieHiNSw :2010/12/12(日) 22:08:13.67 ID:y6LH6RF90
以上だよ。
447以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 22:10:36.36 ID:g2Qb1B9f0
今書いているが、間に合うのか? あとこの作品、ダメな気がしてきた、どうしよう
448以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 22:11:50.87 ID:y6LH6RF90
セルフ転載しようと思ったけど。待ったほうがいいかな?
ついでにいうとNo.02もタイトルの前にレス区切りがきてるけど、これは意図的にやってるの?
449以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 22:19:12.29 ID:kJjTqg7Q0
規制者スレにあるのは一応、こっちにも貼られるし
とにかく順番気にせずまとめちゃって
最終的に全部がまとめスレにあれば良いんじゃない

ということでどんどん転載しちゃうに1票
あとレス区切りはタイトル後の方が良いかも
450以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 22:27:21.19 ID:g2Qb1B9f0
ああ、やべ、冷静に考えるとこのオチ、どうなんだろ
提出迷う・・・
451いいんちょ ◆qJvLx8ySS6 :2010/12/12(日) 22:33:14.96 ID:8gmlKN820
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                   警           察

このスレを粛清する・・・
さらばだ・・・友―――”VIP”―――よ

VIP警察
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1292021242/

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見習い戦士のふつうの攻撃
ログインしてないです。
452いいんちょ ◆UaJB/VFriE :2010/12/12(日) 22:35:05.60 ID:HPcPLGNL0
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見習い戦士のふつうの攻撃
ログインしてないです。
453聖戦ののろし 0/2 ◆GYYOB6B/p. :2010/12/12(日) 22:36:56.98 ID:P7L4TmGL0
品評会作品投下。以下2レス。
454聖戦ののろし 1/2 ◆GYYOB6B/p. :2010/12/12(日) 22:40:13.26 ID:P7L4TmGL0
「殺風景な部屋だ。真っ白な一面の壁。目の前には扉が一つ。部屋の真ん中に置かれた
同じく白の机と椅子。それ以外は何もない。その椅子に腰掛け右の肘掛にもたれて
これを記録する……そう、リハビリも兼ねて声に出そうと思う。すっかりこの場所にも慣れてしまった。
ここに閉じ込められた時間は果たして長かったのか短かったのか、推し量る基準を持ちえぬ私にとって、
それは意外とどうでもよいことだった。それに一人でいても、それほど退屈することはなかった」
 聞こえてる? と彼女は言った。
 聞こえているよ。と私は言う。
 そろそろかしら。
 そうだと思うよ。さっきから外が騒がしい。
 楽しみね。
 私は少し不安だけどね。
 どうして?
 ……そんなにうまく行くだろうか。
 リーダーのあなたがそんな弱気じゃ、今日の日を待った同士たちはどうしていいか分からなくなるわ。
 それもそうだが……どうして君たちは、顔も知らない僕の作戦に乗ってくれるんだ?
 今更、何?
 いや、ふと疑問に思ってね。どうしてだい?
 ……あなたは、私たちの今日の日を、聖戦に変えてくれるだろうから。
 ……。
 それじゃ、私はそろそろ出なきゃいけないみたい。ご武運を祈ります、リーダー。
「……念は途切れた。いわゆるテレパシーと呼ばれるこの力で、私は同士たちと連絡をとっている。
同じように普通の人と違う力……テレパシーを始めとする超能力、を使える者たちが
たくさんいることを、私はここに来てしばらくして知った。もちろん直接出会ったわけではない。
彼らもまた私と同じようにどこかの部屋に閉じ込められている。境遇の一致は、
すぐに私たちの距離を縮め、心を明るくしてくれた。……例え私たちが、今にも始まらんとする
世界大戦の最終兵器として、こうして捕らえられているのだとしても。
 おっす。と彼は言った。
 元気そうだね。と私は言う。
 どうだ? そっちの様子は。
 外の喧騒は増すばかりさ。もう私にもお呼びがかかる頃じゃないかな。
455聖戦ののろし 2/2 ◆GYYOB6B/p. :2010/12/12(日) 22:42:30.70 ID:P7L4TmGL0
 それならこっちといい勝負だな。俺の方緊張のピーク、って感じだ。くく、
奴らの顔は見えないが、苦戦しているのは手に取るように分かるぜ。
 力のおかげでかい?
 はは、違えよ。そんなもの使わなくたって、それこそノーマルな人間にだって分かるくらい、
奴らざわついてるよ。
 そうか。……。
 ん? どうしたよ?
 ……ありがとう。
 おいおいどうしたんだよ、突然。
 いや何、私は嬉しかったんだ。君たちが私にコンタクトを取ってくれたこと。
それから私の話に真摯に耳を……いや、心を傾けてくれたこと。始めは数人の集まりだったのが、
今じゃすっかり大所帯だ。私にまとめられるかな? この人数と、この作戦を。
 困るぜ。まとめられるかな? じゃなくて、まとめてもらわないと。
 それもそうだね。
 それに、ありがとうを言うのは俺たちの方だ。
 ……?
 俺たち皆、戦争に使われるって分かって、みんな道具みたいに心を失ってた。全部全部ぜーんぶ
壊れちまえ、って。……あんたの作戦は成功する。そりゃ最初聞いた時はびっくりしたさ。
何てこと考えるんだ、って。でも、大丈夫。皆で成功させてみせる。そんでもう一回、一から始めよう。
 ……ありがとう。
 ……っと、俺の方が先だったみたいだな。それじゃ戦場で会おうな、顔も知らぬリーダーさんよ。
「国家間、あるいは地域間、思想間、宗教間、人種間の争いはいつの時代も絶えることを知らない。
まるで争うことが彼らの義務だと主張するかのように、それは断続的に、しかし確実に続いていた。
今回、投入される超能力者たちは私が把握するだけで世界中百七十一人。戦争は彼らの生活を奪い、
これから市民の生活を奪おうとしている。私たちは特殊な力を利用されることを嫌っているわけではない。
人より優れたあらゆえう才は全て、利用するならば、愛する人のために、平和を願う人々のために
利用されるべきだと、そう願う。戦争は終わる。私たちは全世界、全軍備を相手にしてでも
平和を勝ち取ろうと決意する。……久方ぶりに声を出すとなかなか疲れる。そろそろ私も
向かわなければならないだろう。私たちは平和を彼らに訴えなければならない。テレパスではなく、確かな音にのせて」
 了
456以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 22:53:52.55 ID:/M0NDU210
>>453
テレパシーで会話しとるから地の文に「」つけるっつーのは中々いいと思ったネ
457以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:04:25.82 ID:bmRTlSqs0
さて、30分前後にいつものお二方が予約する前に、
規制スレの転載しますよ
458『めとめ、声と声』 1/7◇Qvzaeu.IrQ :2010/12/12(日) 23:05:33.70 ID:bmRTlSqs0
 たったの一度で良いから、えりなと話がしたい。
 メールとかじゃなくって、メッセンジャーとかじゃなくって、ちゃんと話がしたい。目と目を見て、声と声で。
 そう、僕は思う。メールを送るたびに、くだらない冗談を言うたびに。
 僕らの関係は、インターネット上で知り合っただけの間柄だから。ありていに言ってしまえば、ネット友達。ただ、しいて言うなら、出会ってから10年来の親友だと思う。
 そして、僕の好きな人だ。気付いたら、えりなの事ばかり考えていた。気付いたら、えりなのことが好きで好きでたまらなくなっていた。
 ともに、僕が思っているだけだから、えりながどう思っているのかは分らない。
確認するのも、怖くって出来ない。好きですって言えば、何かが崩れそうで、俺たちって親友だよね? って言ったら、何かがとどかなそうで。何かを確認してしまったら、壊れてしまいそうな気がする。
僕らの関係は、たった一個のメールアドレスが繋いでくれる間だから。
 その繋いでくれるものも、随分と僕には頼りない。えりなは生まれつき身体が弱くって、しょっちゅう入退院を繰り返している。
 そのせいか、随分と荒れた時期もあった。自暴自棄になっていたというか、えりな自身もいろいろなものに絶望していたというか。とにかく、物凄く荒れていた時期もあった。
 そんな時期を越えて、今は、割と落ち着いているんだと思う。それでも、定期的に連絡が取れなくなって、数ヶ月待たされて、入院していたという知らせを受ける。それを、一年のうちに何度も繰り返す。
 そういう相手だから、正直メールアドレスだけが繋ぐ関係に、とてもやきもきする。
 顔も分らない相手だけど、僕の大好きな人だから、会って話がしたい。声を聞きたいって思うのは、とても自然なことだと思う。
 窓の外、真っ白な雲がゆっくりと流れていく。
 大学の授業は、何故か知らないけど、とてつもなく退屈だ。自分の好きな事を勉強したくって、大学を受けたはずなのに、退屈でしょうがない。
 教授が、マイクを持ってなにやら小難しい理論の説明をして、それを適当にノートに写していく。隣では、携帯用のゲームを片手に授業を聞いている生徒がいた。静かな教室に、教授の話し声だけが、延々と響いている。
 こういう時に、僕はよく、1人で考え事をしてしまう。そして、そういう時に限って行き着くのが、えりなとの関係だった。
『大学の授業死ぬほど暇だ……。えりな、頼む! 一発芸をしてくれ』
 机の下、携帯を取り出して、えりなへとメールを送る。運がよければ、すぐに返ってくるし、えりなの調子が悪ければ一ヶ月以上は返ってこない。
 暫く、外を眺めていると、携帯が震えた。
『いきなり無茶ぶりすぎる。学生は、学生らしく勉強してな! あたしは、今、ゲームをしているんだ……。ニートは素晴らしい、人生の極みだよ』
 えりなのメールは、いっつもこんな感じだ。色々な事を経験するうちに、えりなは、適度に力の抜けたような、なんともいえない感じになった。
 そこが、僕は凄く面白いと思うし、くだらない話をしていて楽しくなる。僕らの会話なんてものは、いつも実のないくだらない話ばっかりだ。この10年で行き着いたひとつの形だとおもう。
『エロゲーばっかりやってないで、お勉強しなさいってパパ言っているでしょ!』 
『何故にばれたし!』
 えりなからの返信を見て、くすっと笑ってしまう。
『マジで、エロゲーかよ……。ひくわー。人様が勉強している時間に、エロゲかよ』
『やめてー、そういう心に来るの、やめてー』
 えりなが、耳を押さえてあーあー言っている姿が思い浮かぶ。
459『めとめ、声と声』 2/7◇Qvzaeu.IrQ :2010/12/12(日) 23:07:00.47 ID:bmRTlSqs0
『大丈夫、おにいさんはえりなの味方だよ。たとえ、お前がエログロに手を出そうとも、俺は信じているから』
『いや、さすがに……。そこまで、ぶっ飛んでないから。ぶっ飛ぶって言えば、窓から見える家の布団が風に飛ばされていた……。凄い、あたしはリアルに布団が吹っ飛んだをみた』
『お前、いくらなんでもそれは話盛りすぎ。いいよ、大丈夫だよ、エロゲをやっていたことくらい悪いことじゃないよ。年頃だもんね』
『ほんとだって! うちの窓から見える団地の最上階から、布団がぴゅーって飛んだんだって。風で布団がばったんばったんなっていて、ああ、飛ぶなあって思っていたら、本当に飛んでいったんだって。飛ぶって言うか、落ちる
だけど』
 またしても、僕は携帯を片手に笑ってしまう。その光景を想像したら、えらくシュールな景色が思い浮かんだ。
 えりなが、窓の外をワクワクしながら眺めていたんだろうな。飛んでいく布団を見て、真っ先にネタになると思っただろう事。そうして、今、パソコンのメッセンジャーを付けながら、この状況を必死になって説明する彼女の姿
が思い浮かんだ。
『マジか! それは凄いな』
『でしょ! でしょ! 窓の外をみていたら、布団が飛んでいった。ぴゅーって。実際に見ると、アレだ。爆笑した』
 少し自慢げな顔をする、えりなの表情が思い浮かんだ。きっと、パソコンの前でふふーんとでも言っているだろうな。
 僕らの共有した10年間の時間は、僕にいくつかのものをくれた。
 顔を見たことのないえりなの表情、仕草が、何となく分ること。僕らの会話のテンプレート。そして、えりなって名前がどうやら本名であること。その他もろもろ。あとは、何にも知らないってことくらいだ。顔も、住んでいる
所も。
 僕らの関係には、自然としたルールが形成されている。1つ、お互いを深く詮索しないこと。1つ、あまり強くお互いに何かを強要しないこと。どっちが言い出したってわけでもないけど、僕らの10の歳月が自然と作り出したルールだった。
 といっても、えりながとても嫌う事であって、僕がなんとなく避けている事でもある。えりなは、深く詮索されることを嫌うし、何かを求められるのも嫌う。だから、会いたい、ちゃんと話がしたい。なんて、僕らの関係を壊し
そうで、とてもじゃないけどいえない。
『さてっと、おにーさんはそろそろ勉強に入る!』
 教授の話が、そろそろ終わる時間だった。この教授は、いつも終わりまじかになると、つまるところ〜と要約しだす。それが終わると、今日の授業のまとめプリントを配って、そこに今日の授業の感想を書いてお終いだ。
 携帯が震えた。多分、えりなからだろう。内容は、がんばれーとかだと思う。
「頑張りますよっと」
 そうして、僕はまわってきたプリントに、適当なことを書いて提出する。
 外を見ると、日が暮れだし、学生たちがぞろぞろと校舎から出て行った。もう、冬だな。なんてことを、思わせるような空だった。澄んだ空気に、どこまでも広がる空。夕焼けの色。ちょっとセンチメンタルな気分にさせる、冬
の空が広がっていた。
 多くの学生たちが駅へと向かっていく。僕は、その学生たちの波に逆らうように、別の校舎の方に歩んでいった。今日は、サークルがある日だったからだ。
 僕の所属するサークルは、アウトドア活動について、勉強をしたり、皆で実践してみようというサークルだ。少しかたいところがあるケド、やっている事の充実感はあると思う。
 今年二年生になる僕には、懐いてくれる後輩もいるし、話の合う先輩もいる。タメの奴らも皆、気の合ういい奴らだ。
 皆仲良く、同じ活動をしていく、そこが僕は凄く好きだった。なんか、青春って感じがする。アウトドアってのも、爽やかで僕は好きだ。
 えりなにも、こういう経験を積ませてあげたいって思うほどだ。もし、えりなが健康で、かつ、僕と同じ大学にいく仲だったら、間違いなく誘っていたと思う。それくらい、サークル活動は好きだった。
 でも、多分それは一生叶わないことなんだと思う。
460『めとめ、声と声』 3/7◇Qvzaeu.IrQ :2010/12/12(日) 23:07:31.51 ID:bmRTlSqs0
「あ、先輩! 今日の定例会期待していて下さいね! あたし、すっごく頑張りましたよ!」
 僕が考え事をしながら歩いていると、前から、詩穂(しほ)が声をかけてきた。
「おー! 詩穂は頑張っていたもんな。楽しみにしているよ。今日は、登山についてだよな。頑張れ!」
 詩穂は、僕のサークルの後輩で、僕に懐いてくれている。背の小さいとっても頑張りやの女の子だ。聞けば、身長は150センチしかないみたいだ。
「はい、先輩からもらった資料がものすっごく役に立ちましたよ」
「それは良かった。と、荷物多いね。持とうか?」
 よく見ると、詩穂は大きな荷物を沢山手に持っていた。
「あ、良いですか? それじゃあ、これ、お願いします」
 そういって、詩穂が差し出したのは、色々な方眼紙の入った手提げカバンだった。多分、今日の定例会の発表で使うものだろう。
「おっけ。にしても、沢山入っているね。今日使う奴?」
「そうですね、それと、学科での製作物とかですよ。あたし、美術学科ですから、こういう課題多いんです」
「なるほどねー。どうりで、詩穂は物凄く絵が上手いわけだ。この前見せてくれた奴、あのイルカの絵とか、凄いリアルだったよ」
「へへ、まあ、伊達に絵ばっかり描いてませんよ。今度、先輩の自画像とか描いてあげましょうか? 将来売れますよ。百万円くらいで」
「マジか! それは描いてもらうしかないな。でも、モデルがアレじゃあなあ。詩穂の自画像を描いてみてよ」
「あたしの自画像ですか? うー、分りました! でも、人の自画像ってあまり描かないから、描きたかったな」
「恥ずかしいよ、流石に〜」
「あー、まあ、確かに。それじゃあ、しょうがないですね〜」
「そっちも楽しみにしているよ。さてっと、とりあえず、これを返すよ」
 詩穂と話し込んでいるうちに、気がつけば、僕らのサークル活動をする教室に着いた。そこで、僕は持っていた荷物を詩穂に手渡した。
「ありがとうございます、それじゃあ、あたしは準備をしてきますね!」
 そう詩穂は言って、ぺこっと頭を下げた。そして、小さく走りながら今日やる発表の準備をしにいった。
 とりあえず、僕は近くに座る後輩や先輩達と話をすることにした。
 サークルの活動がどうだとか、教授がめんどくさい宿題を出してきただとか、あの授業は楽でいいだとか、そんな話。僕が、このサークルを好きな理由は、こうやって皆でどうでも良い話ができることもあった。なんとなく、楽

しい。
 しばらく話していると、先輩の神埼さんが前にたち、これから定例会を始める旨を伝えた。
 そうして、一年から順番に思い思いの方法で、自分たちが調べたことについて発表をしだした。詩穂は、山の絵を描いたわら半紙を使って、僕たちに色々と説明をしてくれた。凄くよく出来ているなと、僕は思った。
 窓の外を見ると、もう外は暗く、TUTAYAのネオンが煌々と光っているのが見えた。えりなは、多分今頃ご飯を食べているんだろうな。
「今日学んだことは、しっかりと実践でも使えるように覚えますしょう。では、解散です」
 最後に神崎さんが前に出て、締めの挨拶をして、定例会は終わった。この後は、皆で学食に集まって、思い思いの人たちと一緒にご飯を食べて解散する。というのが、僕らのサークルのいつもの流れだった。
461『めとめ、声と声』 4/7◇Qvzaeu.IrQ :2010/12/12(日) 23:08:04.70 ID:bmRTlSqs0
 皆それぞれが固まって、話しながら学食へと向かっていく。僕も、仲の良いめんつと話しながら学食へ向かった。
 外は寒く、吐く息が白くなって暗闇に消えていった。学食の前にある広場には、綺麗なイルミネーションが施されていて、暗闇の中きらきらと輝いていた。なんというか、もうすぐクリスマスって感じだ。
「イルミネーションって良いですよね。クリスマスって感じで、凄くワクワクします」
「わかる。こー、なんともいえないワクワク感があるよね」
 イルミネーションを眺めながら話していると、詩穂とは、自然とイルミネーションの話になった。
「ですよね! クリスマスですよ、クリスマス。やっぱり、良いですよねえ。先輩は、クリスマスはどうするんですか? やっぱり、彼女さんと一緒に過ごすとか?」
「1人寂しく、過ごすよ。そのあとは、どうするんだろうなあ。適当に友達たちで集まって騒ぐかな」
「へー、なるほど。へぇー、そうですか」
 そういうと、詩穂は、1人うんうんうなずいて黙ってしまった。なんか、悪いことでも言ったかな?
 そのあとは、いつものようにだらだらと過ごして家へと帰る。
 そして、家についてパソコンの電源をつけて、メッセンジャーを起動させる。すると、すぐにえりなからメッセージが入った。
『おかえり、マイケル! 今日の晩御飯は残飯よ』
 画面に映し出される文字に、僕はふきだしてしまう。
『ただいま、ジェニファー。そうか、それじゃあ足りないから、おまえをたべちゃおう☆』
『そういうのって、セクハラだと思う。親しき仲にも礼儀ありっていうでしょ? 恥ずかしくないの? ん?』
『いきなり、マジレスすぎるだろ! なに、今の返しは、俺が悪いの? 出るとこ出るよ』
『だれが貧乳だ、コラ! 殺すぞ、小僧。出るとこ出てなくて悪かったな!』
『ちがう! そういう意味じゃない! 法廷で争おう的な意味だ!』
『良いよ、争おうじゃないか。最高裁までもつれ込むよ』
『ちょっとまて、その言い方良いな、面白い。もらって良い? その、最高裁までもつれこむって奴』
『いいよー。いくらでも使うがいいさ。あたしは心が広いから』
『さんくー。でさ、今日学校から帰る時に、いっつも広い遊歩道みたいな、こう木がいっぱいあるところを歩いて帰るんだ。帰り道に、凄いいっぱいイルミネーションがあって綺麗だった』
『へー、良いなあ。あたしは最近、また寒くなってきてさ。ちょっとこもりきりだから。そういう世間的なイベントから、取り残されつつある』
『大丈夫か?』
『ん、まあ、あれだよ。いつものことだよ。ニートだし〜、病弱だし〜』
 えりなから打ち出される文字を見て、僕は少し考えてしまう。こういう事をいう時、必ずえりなの少し寂しげな笑顔が思い浮かぶ。なんか人生を達観したような、諦めてしまったような、少し寂しい笑顔が。
『そっか、それじゃあ、お兄さんが撮ってきた写真をくれてやろう。出来る男だなー、俺! 凄い、えりなのそんなところも手広くカバー』
 そんなとき、僕はいつも強がるしかなかった。他に、何も出来なかった。なんていうか、言葉に出来ない想いが溢れてきてどうしようもなくなる。精一杯強がって、バカなことを言って。何とかならない事だから。
『おー、ありがとう。ん、あー、なるほど、これは綺麗だね。へぇ、もうこんな時期か。うん、これは良い』
『だろぅ、天才的なまでに美しい写真だろ。撮る人の才能が溢れているのが分る凄い一枚。さすが、俺、ここのポイントは褒めてくれてかまわない。むしろ、褒めろ! そして、俺を敬え!』
462『めとめ、声と声』 5/7◇Qvzaeu.IrQ :2010/12/12(日) 23:09:02.55 ID:bmRTlSqs0
『あはは、君は天才だ! すごいすごい』
『ムキー! 流すな、このやろぉ』
 だから、何とかならないことを流してしまう。それが、僕とえりなが積んできた10年という時間のやりとりだった。
 それから暫く雑談をして、えりなが寝るのと合わせて僕も寝る。それが、変わらない事だった。
 えりなの事は、気になったけど、僕がどうこうできる事でもない。次の日、僕は学校が休みだったので、遅くに起きた。パソコンをつけようとして、携帯のメールが鳴ったのに気付いた。送信者には、詩穂と名前が表示されていた。
『先輩、おはようございます? 良かったらなんですけど、再来週遊びませんか?』
『良いよ。随分先だね、いつにしようか?』
『土曜日とかどうですか?』
『良いよ』
『了解しました! それじゃあ、土曜日に』
『うん、楽しみにしているよ』
 そこまで打って、気付いた。土曜日は、クリスマスイブだってことに。
「やばい、フラグがたった。流石の、俺でもわかる。これは、えりなに報告せざるを得ないだろ! やっべええ! えりな、俺の時代がくる!」
 俄然テンションがあがる僕。こういうイベントごとは、真っ先にえりなに報告すべきだろう。すげえ、物語が始まる。きっと、楽しい話がえりなにできる。
『あたしも、楽しみにしています!』
 詩穂からのメールに、浮き足立ってしまう。やばいですよ、これは。
 えりなに報告すべくパソコンを立ちあげる。僕はメッセンジャーを起動しようとして辞めた。何となく、えりなには言えなかった。
「いえるわけないだろ……」
 それから、暫くの時間がすぎた。
 結果として、えりなにはクリスマスのことは伝えられなかった。
 彼女は、また入院してしまったからだ。メールをしても返事は来ない。メッセンジャーをつけても、ログインしていない。そんな状態が一週間以上過ぎたから分った。こういう時は、いつも決まって体の調子を崩して入院してし
まっている。いつも、えりなは突然いなくなる。
 えりなとの距離感を感じてしまう。もし、僕がえりなの本当の親友だったのなら。もし、僕とえりながインターネットだけの付き合いじゃなかったら。
 真っ先にえりなのもとに駆けつけて、彼女の手をとるのに。苦しむえりなのことを励ます事だって出来るのに。
 えりなの帰りをただただ待っているだけの僕。また、復帰したときに、メッセかメールでくだらない事を言うだけの僕。僕は、10年間もそうしてきただけだった。
 えりなのことを考えると、胸が苦しくなる。一番近くで一緒になって、笑って、悲しんで、励ましてあげたいのに。僕は、携帯を握り締めて祈るくらいしか出来ない。
 えりなと話がしたい。ちゃんと向き合って、ちゃんと顔を見て、声と声で。そうしたら、えりなのためにたくさんの事がしてあげられるのに。
 そんなことを思っていても、考えていても、彼女には伝わることもない。また、えりながいなくても、僕の日常はすすむ。
 気が付けば、クリスマスイブは明日になっていた。
 その間に、詩穂との仲は随分とよくなったと思う。学校ではお互いあまり話さないけれども、毎日のようにメールのやり取りをしている。一日に何通も
463『めとめ、声と声』 6/7◇Qvzaeu.IrQ :2010/12/12(日) 23:09:31.58 ID:bmRTlSqs0
『明日は、先輩すっごい楽しみにしていますよ! ではでは』
『うん、俺も楽しみにしているよ』
 詩穂とのメールのやりとりを終える。
 えりなとは、未だに連絡が付かない。えりなと話がしたい。そうすれば、何かが分る気がする。
 翌日、詩穂とは大学近くの繁華街で待ち合わせをして、一緒に遊んだ。
 詩穂は、いつもより凄くオシャレをして、とても可愛らしかった。
 僕の一言一言にうなずいてくれる詩穂。目と目を合わせて、声と声で、沢山の会話をした。
 一緒になって、はしゃいで、笑って。えりなと、こうやって過ごせたらな。って何度も思った。
 そして、気が付いたら随分と暗くなっていた。駅前では、クリスマスソングが流れていて、幸せそうなカップルが何度も僕らを横切っていった。
「今日は先輩、ありがとうございます! すっごく楽しかったですよ」
 そういって、詩穂は笑った。凄く、人なつっこい笑顔だなって僕は思った。
「おー、それは良かった。俺も、今日は凄く楽しかったよ」
「あー、で、気付いていると思うんですけれども」
 そういって、詩穂は僕の方を向いて、あらたまった。
「うん?」
「やっぱり、辞めます。今言っても、勝ち目なさそうだし」
 そういって、詩穂は寂しそうに笑った。小さな彼女がしょげると、暗闇に消えてしまうんじゃないかって思えた。
「うん、ごめん」
「いえ、良いんです。先輩のこと見ていたら、一発で分りますよ。他に好きな人がいるんだなあって事くらい。そういう表情してますもん」
「そんなにしていた?」
「気付いてないんですか? サークルのときも、今、こうやって一緒にいるのに、なんていうか別の人のことを考えているって目してますよ。ちょっと悔しいですよ、一緒になって話しているのに、伝わらないなんて」
「うん」
「あーあー、って感じです。幾ら先輩とお話しても、幾ら一緒に時間を過ごしても、伝わらないなんてなあ」
「その、ごめん」
「いや、謝られると少し困るかなあって。今日は、ちょっと勝負かけたんですけど、ダメでしたね。アレです、また、サークルでも仲良くしてくださいね!」
「もちろん」
「それじゃあ、あたしはもう帰ります。そうそう、余計なお世話かもしれないですけど、先輩良いですか?」
「うん」
「頑張ってくださいね。何かが、変わるかもしれませんよ」
464『めとめ、声と声』 7/7◇Qvzaeu.IrQ :2010/12/12(日) 23:10:16.13 ID:bmRTlSqs0
「ありがとう」
 その一言を言ったときの詩穂の顔は、多分忘れないと思う。なんていうか、心に響く真剣さがあったから。
 それだけいって、詩穂はくるっと後ろを向いて街のイルミネーションの中に消えていった。
 頑張ってみて、か。僕は、えりなに対して頑張ってみたことはあっただろうか? 10年という時間に任せていただけのような気がする。
 えりなと話がしたい。目と目を合わせて、声と声で、えりなと一緒に沢山の話がしたい。
「そのために、頑張ってみるかな……」
 携帯電話を取り出し、えりなへとメールを送る。何時返ってくるか分らないけど、この思いを込めて。
 いつか、えりなと一緒になって話せる日の為に。
 目と目を合わせて、声と声で伝えたいことがあるんだ。
465以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:10:22.84 ID:HwKX8Jsb0
さる
466以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:11:33.25 ID:bmRTlSqs0
改行が変になってて30行超えてたから
勝手に買えたよ!

クレームは自分まで!
467通過儀礼 1/2 ◇Mulb7NIk.Q :2010/12/12(日) 23:12:21.89 ID:bmRTlSqs0
 実家の物置で懐かしいものを見つけた。親父の使っていたショットグラスだ。埃を払って手にとって見ると、昔のこと
が思い浮かんでくる。もう何十年も前のことで、あれは確か十三歳の初夏だったか。
 その夏、俺と家族は長期休暇を使って湖畔の別荘に来ていた。ただ、弟だけは州をいくつもまたいだ遠い全寮制学校に
通っていたために、こちらへ戻ってこられなかった。お袋は弟のことを大層自慢に思っていたらしいが、親父は違った。
いや、誇りに思っていたことは確かだが、勉学というものに根本的な懐疑心を抱いていて、食事の合間に学校の成績の話
なんかが出たりするとあまりいい顔をしなかった。子供が勉強しすぎるものじゃない、試験の結果が少々悪くったって死
ぬわけじゃないだろう、と。だから親父の関心ごとといえば、草野球チームでの俺のポジションや、釣りに出掛ける日の
天気といった類のものだった。
 別荘での生活は楽しい記憶しか残っていない。カヌーに乗って湖を一周しながら釣りに興じたこと、野外で作る一味違っ
た夕飯、夜は涼しい風が吹き、湖底の魚群に生み出された水流のうねりが岸に寄せてくる音、リスやビーバーなどの野生
動物達が取り交わすざわめき、そういったものに耳を澄ませながら、次第に深い眠りへと落ちていく。満たされた感覚が
到着してから出発の日を迎えるまで続いた。それは親父が子供特有の飽きやすい性質をよく理解していて、日々をより刺
激的なものにするよう工夫してくれたからだ。
 お袋はといえば節度さえ守られていれば文句は無いようで、俺と親父の行状に口を挟むつもりはなく、彼女なりにバカ
ンスを楽しんでいた。別荘での主人公はあくまでも俺達だということをわきまえていたのだろう。男は仕様のない生きも
のだからと、軽蔑の気持ちを起こしていたに違いない。湖上や山々は男の世界で、いくらお袋とはいえ女の入る隙はなかっ
た。
 今はっきりと思い出すのは別荘を発つ四日前のある場面だ。夕日が山々の間に沈みかけていた。お袋は車を駆って買い
出しに行っていた。親父と俺はくたくたに遊び疲れて、ウッドデッキで足を休めていた。そこに余計な会話はなく、同じ
水面を眺めながら無言の心地よさを噛み締めている。
 親父は木製のテーブルに琥珀色のバーボンとグラスセットを置いて、ちびりちびりと飲んでいた。そして二杯目を飲み
干したあと、もう一つグラスを一つ取り出して酒をなみなみと注いだ。
「飲んでみな。母ちゃんには内緒だぜ」
 俺は親父の手から一杯のバーボンを受け取った。その蠱惑な液体は、両親がアフリカを旅行したときに買ってきたとい
う、例のクリスタルグラスの中で不思議に光っていた。見た目だけはとろけるほど甘い、魔法の蜜のように思われた。俺
はまだ酒の飲み方なんてろくに知らなくて、ただ漠然と大人の男達の世界に憧れていたから、見栄をはってグラスを一気
に傾けた。なんせバーボンの香りときたら甘ったるいし、このぐらいいけるだろうと踏んだのだ。だが、言うまでもなく
俺は激しくむせてしまった。まるで自分が火を吐く竜にでもなってしまったかのように、熱い空気が喉から食道にかけて
迸った。親父はそんな俺の姿を見て、嬉しそうにひっひっひと酒飲みらしい笑い方で笑っていた。俺は少し不機嫌になっ
て、グラスの底に申し訳程度に残った酒を一気に飲んだ。喉に焼けつく感覚はあったが、むせたりはしなかった。
468通過儀礼 2/2 ◇Mulb7NIk.Q :2010/12/12(日) 23:12:41.57 ID:bmRTlSqs0
 親父は足をテーブルに乗せ、背もたれにぐっと体重をかけて、椅子の後ろ二脚でバランスをとる格好をした。そして相
変わらず、ちびちびとやりながらゆっくり話した。
「バーボンにはここ、ケンタッキーの純粋な水と雄大な牧草地で伸びのびと育った穀物が溶けこんでいる。いわば、大地
を分かりやすく具象化した、魂を洗う飲物だ。分かるか。こいつを滝のように流し込んじゃいけねえ。滝は何であるにせ
よ大事なモンまで削り取っちまう。だからそっと飲むんだ。春の雪解け水で出来た小川のように。そうすれば、透明で澄
みきった心地を得て、小さな楽園が見られるだろうよ」
 そして空となった二つの杯にまた、なみなみとバーボンが注がれた。俺は言葉の真意を探りながら、親父の真似をして
口に少しの酒を含んだ。舌の上で一度転がして、甘辛さを確かめながらこくんと飲んでみる。するとどうだろう、確かに
心や魂の在り処である胸の奥がじんわりと温かくなった。そのイメージは燃え盛る炎ではなく、母なる大地の優しい抱擁
だ。
 親父のやり方で杯を乾してから、俺は立ち上がって湖の岸辺に歩いていった。太陽は遠く、薄雲にかかって丸い形がはっ
きりと見てとれる。空は一面、不気味なほど鮮やかなえんじ色で、足元はふらついている。だが確かに、小さな楽園の扉
は開かれていたんだ。
 
(了)
469以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:12:56.84 ID:HwKX8Jsb0
この時間からカオスか
470以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:13:35.13 ID:bmRTlSqs0
常連だからもしかするとわざとかもしれないと思ったけど
タイトルとレス数の順番代えたよ!

クレームは自分まで!
471非行少女 1/5◇4gskEp4zKs:2010/12/12(日) 23:14:46.79 ID:bmRTlSqs0
「美咲ちゃんのとこってさ、仮面夫婦みたいだよね」
 彼女の言葉に数人が同意する。うんうん、そんな雰囲気あるぅ。なんて。彼女たちは悪意
に満ちた歯医者とその助手たちのように、私を突いて、その反応を楽しんでいる。奥歯のち
ょっとした違和感を、鋭角的な痛みにして、微笑む。そして二言目には、大丈夫だよ、と口
走る。
 私の両親が仮面夫婦なのだとしたら、それがどれほど、彼女たちに関係があるというのだ
ろう。いや、彼女たちには関係が無いから話題にするのだ。知っている。私にも自覚がある。
多分彼女たちにも。
 私は困ったような顔をしてみせ、そして話題を変えた。

 家に帰る。それは何一つ苦痛じゃない。自分の家に帰るのが苦痛だなんて、それはもはや
家じゃない。
「おかえり」
 お母さんがキッチンに立っていた。今日のご飯は鳥のから揚げのようだ。
「ただいま」
 私は二階の自分の部屋に荷物を置いて、お父さんの寝室に向かう。
 お父さんはパソコンで、フリーセルをしていた。私は何が面白いんだろうと思いながら、
「ただいま」
 と言った。
 お父さんはゆっくりと首を回して、
「おかえり」
 と言った。
 お父さんはすぐにパソコンに向かって、私を背に、つまらないゲームを再開した。
「ねぇ、パソコンしたいんだけど」
 お父さんは、私を一瞥して、すぐに椅子から立った。そしてベッドの端に座って、文庫本
を読み始めた。
 私はいつものことだけど、どこかに行って欲しいと思っていた。
 模試のこととか、宿題のこととか、適当に調べた後、お気に入りに入っているサイトを適
当に回った。
472非行少女 2/5◇4gskEp4zKs:2010/12/12(日) 23:15:28.67 ID:bmRTlSqs0
 先生が、インターネットは若い君たちには刺激的なように映るかもしれないけれど、危険
がいっぱいだからあまり利用しないように、と言っていたことを思い出す。私の眼には危険
なようには見えなかった。ただ、濁っているだけだ。たまたま底に溜まったヘドロに触れて
しまっただけか、もしくはそのヘドロに住んでいる生物にからめとられてしまっただけ。そ
う思っている。
 私の両親はインターネットを利用することに対して何も言ってこない。携帯代も何も言わ
ずに払ってくれる。学校の先生が、私のことを優等生と褒め、定期試験の結果がそれを裏付
けているから、なのかもしれない。
「美咲、ご飯よ」
 お母さんが私を呼んだ。しばらく前から呼ばれるのは私だけだ。
「お父さん、行こうよ」
 お父さんは文庫本から目を上げて、私の顔を見た。幼いころに、弟をねだったときのよう
な、そんな顔をしていた。お母さんが、もう子供が出来ない身体だと知ったのは最近のこと
だ。
「行こうよ」
 そう言った私は、お母さんのその事実を知ったときに、泣きそうになりながら弟が欲しか
ったのに、と言ったその時の顔と似ていたのかもしれない。
「あぁ」
 お父さんはその時と同じように、否定とも肯定とも取れないような表情をして、そして腰
を上げた。
473非行少女 3/5◇4gskEp4zKs:2010/12/12(日) 23:16:15.86 ID:bmRTlSqs0
「へぇ、そんなことがあったの」
 お母さんが私のふった話題に微笑む。
「ねぇ、お父さんはどう思う?」
 お父さんはあぁ、そうだなぁ。う〜ん、今時の女子高生のことはわからんよと苦笑いを返
す。
 その時、お母さんの顔を見ると、カメラを意識していない顔をしていた。私は気付き出し
ていた。両親があまり揃うことない食事時に、無理やり揃わせると、まるで私が司会者のバ
ラエティ番組のようになる。そして、私と話していない時、両親はまるで、態度が悪いと噂
に聞くタレントのように、無関係、無意識であるかのような表情を見せる。
 私は悩んでいる。ちょっとした違和感を、虫歯だと断定されてしまったからかもしれない。
そう、もはや事実であると感じていた。私のお父さんとお母さんが仮面夫婦であること。だ
けど、だからといって、その証言を取ってしまっていいのだろうかと悩んでいた。刑事裁判
では、自白とはとても重要な証拠であるらしい。では、離婚協議では? 多分。絶対的だろ
う。私が離婚しないでと言っても、その自白がとても強固な証拠となって、離婚は下されて
しまうだろう。
「お母さん」
 ん? とお母さんは顔を上げる。その時、お父さんの表情が良く分からない。
「お父さん」
 お父さんが顔を上げる。その時お母さんは目をつむってお茶を飲んでいる。
「ごちそうさま」
 今の私にはそれしか言えることが無かった。私は席を立ち、自分の部屋に向かった。ドア
を開けっ放しにして、ベッドに倒れこむ。
ひどく怖がりで、問題を先送りにしている少女がここにいる。多分、絶対、虫歯になって
いるのに、気のせいだと思い込もうとしている少女だ。
静かだった。食器と箸が触れあう音が聞こえる。両親の咀嚼の音さえ聞こえてくる。
あぁ、お母さんと、お父さんは仮面夫婦なんだなぁ。携帯で音楽を鳴らしながら、私は。
両親は気付かないだろう。だけど、私は自分が嫌いになる。本当に気付いてほしくないな
ら、ドアを閉めればいいのに。嗚咽を必死に抑えようとすることもない。
 うぬぼれだとは思わない。私が二人を繋ぎとめてる。二人の間に伸びていた赤い糸。その
中間から垂れ下がった糸の先に私が生まれた。だけど、その糸は切れてしまった。今は、お
474非行少女 4/5◇4gskEp4zKs:2010/12/12(日) 23:17:03.54 ID:bmRTlSqs0
父さんとお母さん、それぞれから糸が伸びて、私が落ちて、ぐちゃぐちゃになって死んでし
まわないようにしているだけだ。私は落ちてしまっても構わないと思っているのに。今の時
代、落ちてもぐちゃぐちゃになったりなんかしない。ヘドロにべちゃりと落ちて、そのまま
ずぶずぶと沈んでいくだけだ。二人の距離が離れていって、間にいる私が裂けて死んでしま
うよりよっぽどいい。もっとも私が大人になれれば、そんなこと関係ないのだけれど。
 次の日の帰り道。私は煙草を買って、家に帰った。
 制服姿で煙草屋を訪ねると、おばあちゃんが笑った。
「どうしたの? 頭良さそうな顔して。どれが欲しいの?」
 道端の中学生たちが、あそこの店は売ってくれないと噂をしていたのに、おばあちゃんは
笑って煙草を売ってくれた。
「大人になりたくて」
 私はおばあちゃんに告げた。おばあちゃんは、何も言わずにどれがいいの? と私に尋ね
て、大人の女性が吸っていそうなの。と私は答えた。
 白いパッケージにラメがかかっていて、ピンクの星が描かれている煙草をおばあちゃんは
棚から出した。
 なんで売ってくれるの? と私の口が動いた。
「あんたはおばあちゃんより頭が、良さそうだから」
 おばあちゃんはそう言って、私の手を握り、煙草を手渡してくれた。



 お母さんは何も言わずに泣きそうな顔で、お父さんは少し驚いた顔をして、私の部屋に入
って来た。
 私の部屋は、煙草の煙で満ちている。三本の煙草を吸った。
 一本目、部屋の中で咳き込むと、お母さんが大丈夫? 風邪? と一階から叫んだ。
 二本目、これが煙草かぁと思いながら吸って、少し気持ち悪くなった。
 三本目、なんだか可笑しくなって、声を出して笑った。
 お母さんとお父さんは、何が起きたのかと、私の部屋に入って来た。部屋の中にはケタケ
タ笑う私がいた。
 まず、お父さんが私に近づいてきて、煙草を奪い、消した。
475非行少女 5/5◇4gskEp4zKs:2010/12/12(日) 23:17:36.98 ID:bmRTlSqs0
「お父さんとお母さんは、下で待っているから、来なさい」
 私はしばらく風車と顎が直結された人形のように風の気のまま、時に激しく、時に穏やか
に、意味も価値も無く笑っていた。けれど、あ、と気がついた。お父さんが、お母さんに対
して言葉をかけたということ。あぁ。へぇ。と思った。

 一階からは何も聞こえなかった。あなたが、お前が、とののしり合ってでも会話をしてく
れればいいな、なんて考えていたのに、両親は何も言わずに私を待っていた。
「座りなさい」
 なんだか可笑しくなって、嬉しくなって、蟲惑的に首をかしげてみた。
「ふざけてないで、座りなさい」
 私が座ると、二人は私に話しかけた。いろんなことを喋っていた。怒りだしてみたり。そ
うだ、あなたたちが悪いと私は思った。謝りだしてみたり。気付けて良かったね、と私は思
った。
 泣きだしたお母さんの肩をお父さんが持った時は、私は心底自分の取った行動の正しさを
感じていたりした。歴史の先生が行っていた。内戦を収めるには外部に敵を作るのがいいと。
しかしこんなことになるとは思っていなかったけれど。
 二人が私に色んなことを言うけれど、そして私はその言葉に答えていたけれど、実際私と
両親は会話などしていなかった。だって、私は両親と同じことについて話していたわけでは
ないから。私が考えているのは二人をどうやって元に戻すか。両親が考えているのは私の非
行について。
 私は煙草を吸うことを止めなかった。学校では優等生のままだったけれど、私は家では非
行少女になった。それから、食卓では前とは違う形になった。直接的に言葉をやり取りして
いるのは私と、両親のうちの一人だったけれど、会話しているのは両親だけ。私は別のこと
を考えている。
 私は両親を仮面夫婦で無くすために、悪い少女になることにした。
 私は両親に語った。悪い少女はね、すぐに大人になってしまうんだって。ネットに載って
た。
476以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:17:57.29 ID:HwKX8Jsb0
さる
477以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:18:07.88 ID:bmRTlSqs0
30行制限とか完全に無視されてたから色々かえたよ!

クレームは自分まで!
478フリートーク 1/6 ◇HmfYvBHWkM:2010/12/12(日) 23:18:45.02 ID:bmRTlSqs0
 夏の昼下がり、俺は暑さと戦いながら歩いていた。そこでばったりと出会ったのは、美しい少女だった。
「こんにちは、本郷君。私、同じ学年の高槻美華。あなたがかっこいいから好きになっちゃった。これから一緒にお茶しない?」
「高槻さんみたいな美人なら俺も大好きだよ。じゃあこれから京橋京阪モールの二階にあるスターバックスに行こう」
 美人とお茶する事になった俺は、京橋京阪モールの二階にあるスターバックスに向かった。こうして俺と彼女の楽しい珍道中は始まった。

「――もう嫌だ! こんな茶番付き合いきれねえっ!」
「どうしたの? 本郷君。怒っていてもイケメンでカッコイイわよ」
「気持ち悪りぃんだよバカ槻! お前がおしとやかに振舞ってるのは!」
「バカって言うなぁっ! せっかく人が必死に与えられた役をこなしてるのにぃ」
「そんな説明的な台詞を喋るだけの操り人形みたいな役、誰にだってできるわ!」
「それは書いた人に文句言ってよー、あくまで私達は登場人物なんだから。
あと、あたしの淑女っぷりは壮大なオチへの前振りなんだから我慢してよう」
「どうせこの筆者だしな。期待はしてないけど、まあ一応聞いておくか」
「この道中で本郷君は私の優雅な身ごなしに惚れるんだけど、エレガントなあたししか
知らなかった本郷君が、
翌日私の本性を学校で知ってより一層魅かれていくギャップ萌えってやつ。どう、あたしの魅力満載でしょ、えへん」
「うええええっ、ラストシーンを想像するだけで吐き気が……流石、毎回お決まりのワンパターンな話を書くだけのことはあるぜ」
 ごめんなさい。
「っていうか、勝手に話から抜け出しちゃっていいの? 他の登場人物はきっと迷惑してるよ。本郷くんのせいで」
 べちん。
 俊弥の掌が美華の脳天に衝撃を与えた音である。
「勝手に俺だけのせいにするんじゃねえよ、この性格ブス!」
「いった〜い、前から思ってたけど本郷くんはいっつも一言余計だよっ、どこかの誰かさんみたいに」
 本当にごめんなさい。
「ほっといてくれ。まあ、俺がきっかけになって話が止まったのは確かだし、せめて冒頭の人物紹介に出てきた人には謝っておくか」
「それでよーし。頑張れファイトっ、本郷くん」
「言っとくけど、お前も謝りに行くんだぞ」
「えー」
「えーじゃねえ。元凶のお前が謝らないでどうするんだ。ほらっ、登場人物の紹介欄だぞ」
479フリートーク 2/6 ◇HmfYvBHWkM:2010/12/12(日) 23:19:13.02 ID:bmRTlSqs0
登場人物
本郷俊弥……高校二年生。好きな食べ物はカレー、焼き肉。嫌いな食べ物はピーマン。学校での成績は中の中。
高槻美華……高校二年生。――美少女。


「ぷっ、くくっ……ぎゃははははははは!」
「何がそんなにおかしいのよっ」
「いや、俺の特徴付けがあまりにもお決まりだし、食べ物や学校の成績でしか個性を出せない作者に笑ったんだ。だけど、それ以上に」
「それ以上に?」
「おっ、おっ……お前の紹介文が」
 美少女。
「わひゃひゃひゃひゃひゃひゃ。あははははははははっ!」
「しょうがないもん、設定でそうなってるんだから。ぶー」
「わざわざ美少女って書くなよひひひっ。作者は恥ずかしい奴だな」
「だって、この人描写力ないんだもん」
「確かにな。何か意味不明なダッシュとか付いてるし」
「しーっ! これでも本人的には強調してるつもりなんだから、黙っててあげるのが優しさってもんだよぉ」
「はーい、分かりましたよっと」
「うむ、分かればよろしい!」
「……お前に言われるとむかつく。あと何で上から目線なんだ」
「そんなこと気にしない気にしないっ。ほら、人物紹介の続きだよぅ」
480フリートーク 3/6 ◇HmfYvBHWkM:2010/12/12(日) 23:19:38.41 ID:bmRTlSqs0
戦国撫子……高校二年生。主人公の同級生。蛇に巻かれた少女。
桜乃くりむ……高校三年生。主人公の先輩。生徒会長。ロリ。ぺったん。
明智子衣……高校一年生。主人公の後輩。IQ千三百を自称している。
天壌梨桜……高校二年生。主人公の同級生。前後ぉぉぉぉん!
住吉智里……高校二年生。主人公の同級生で幼馴染。ウザキャラ。
遠山真寿夫……高校二年生。主人公の悪友その1。趣味は痴漢行為。
阿部新之助……高校二年生。主人公の悪友その2。口癖は「最高です!」
金本知昭……用務員。鍛えられた鋼の肉体を持つ。愛称は「兄貴」
新井貴裕……用務員。金本の舎弟。
村上晴樹……数学教師。恋人がいるが現在は失踪中。
山倉美紗……国語教師。キャサリンの異名を持つ。


「まさに同人誌の作者ページノリだな」
「本人的には楽しんで書いてるみたいだよ〜」
「これ、読んでる方は楽しいか? 失笑されるならまだしも、本を破り捨てられるレベルだろ」
「う〜ん、むしろ破ってもらった方が喜ぶかも。この作者、マゾヒズムの気があるみたいだし」
「はぁ……もうめまいがしてきた」
「まだ倒れちゃだめだよっ! 本郷くんは登場人物達に謝罪と賠償をする義務があるんだからねっ」
「どこでそんな言葉を覚えてきた」
「ん〜とね、北の国から!」
「その言い方は勘違いする奴がでてくるからやめろ」
「あーい、とぅいまてーん」
「……話を進めるぞ」
「ぐすん、ボケを殺されちゃったよぅ。ボケを拾うのは突っ込みの役割なのに」
「俺は芸人になった覚えはねえよ!」
「またまたぁ、遠慮しちゃって」
 ぷちん。
 何かが切れた音である。
481 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/12(日) 23:19:46.83 ID:kJjTqg7Q0
まにあったー
さるアンド予約
482フリートーク 4/6 ◇HmfYvBHWkM:2010/12/12(日) 23:19:55.55 ID:bmRTlSqs0
「うぜええええ!」
 俊弥が握り締めた拳を大上段に振りかぶる。
「いやっ、やめてっ。うら若き乙女に暴力を振るわないでぇぇぇぇ」
「お前のやってる事はボケじゃなくて茶化しだ!」
「せっ、せめて握り拳ではぶたないで〜」
 どずん。
 容赦なく振り下ろされた俊弥の手刀が美華の頭にめり込む。
「はあはあ……気が変わった、俺はこいつらには謝らないぞ」
「えー、なんで〜? どっかの内閣みたいに有言不実行は良くないよぉ?」
「黙れ」
 全く懲りていない。
「だってさ、この十一人は冒頭で紹介されるほどの主要人物なんだよ? サブキャラクターだからってないがしろにしちゃいけないよっ」
「あのな、この中で話のメインに絡んでくる奴がどれだけいるんだ? 用務員とかどう考えても必要ないだろ」
「きっと小説内における大人キャラクターの役割だよ〜。優柔不断な主人公を一喝したり後押ししたり使い方は色々あるからねぇ」
「仮にそういう位置付けだとしても一人で十分だろ。あと俺は優柔不断じゃねえよ!」
「けどっ、この作者は本郷くんを受け身的ヘタレキャラに描く気満々みたいだよぉ?」
「……最悪」
 まあその方が話を作りやすいですからね。ドタバタな三角関係を半永久的にループできますから。
「それにさっ、登場人物が多い事によって数多くのコメディや人間ドラマを作りだせるんだよ? ほら、人の数だけドラマがあるってやつだよ〜」
「無駄に話が複雑になったり長くなったりしたら意味ないだろうが! おまけにさり気なく犯罪者が紛れ込んでるし」
「そこに突っ込んじゃダメだよ〜。それを言ったらヒロインが主人公を殴ったり蹴ったりするのも犯罪になっちゃう」
「あれ、本当に読者にうけると思ってやってるのか? 話を引き伸ばすためだけの尺稼ぎとしか思えないんだが」
「ん〜っ、面白い面白くないより一種のお約束だと思うよぉ? あとは本郷くんの言う通りページ数を増やすのにも手っ取り早いし」
「やっぱりな。どうでもいい文章を読んでる方の身にもなってみろってんだ」
「仕方ないよー、プロの作家さんも食べていくために大変なんだからぁ。変に気取ってるどこかの誰かさんは反省してほしいけどねっ」
 反省? 何それおいしいの?
「全く堪えてないみたいだな」
「もうあの人は存在そのものが哀れだからねー、ほっとこほっとこ。……でさっ、謝罪とばい」
483フリートーク 5/6 ◇HmfYvBHWkM:2010/12/12(日) 23:20:18.66 ID:bmRTlSqs0
 ぷす。
 俊弥が懐から取り出した線香で相手の鼻を突いた。
「いたい」
「そりゃそうだろ、尖った物を突き刺したんだから」
「健全な高校生男子が何でお線香なんか持ってるのよぅ」
「お前と会う前にばあちゃんの墓参りに行ってきたから」
「いきなり言われてもアウトだよー、伏線張らないとだめだかんね。こういうのは、どこかにきっちり書いておくんだよっ。
おばあちゃんは三年前に死んで近くの墓地に眠ってるって」
「いちいち伏線張らないと墓参りに行っちゃ駄目なのか、って声が空から聞こえるぞ」
「読者にやさしく! これ小説の基本だからね、まったく〜」
 こいつにだけは言われたくなかった。
「へいへい、ゆーざーふれんどりーゆうざあふれんどりい。ってさ」
「分かればよろしい。……やばっ、鼻血出てきたよっ。でもまあいいや、血も滴るいい女ってね、てへぺろっ♪」
 ぶすっ。
 今度は威力が増すよう、少年は濃緑の棒を三本一纏めで少女の鼻孔に突き立てる。
「ふぎゃああああああああああああああああああああああ、痛いよう」
「何かむかつく。後、そんなにあを連打しなくてもお前が痛がってることくらい分かる」
「いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
「い、もダメ。あと調子こいて一行の文字数限度まで打ち込むんじゃねえ!」
「ううううう」
 ごがっ。ばきっ。ぼぐっ。
 ジャブ、ストレート、フックの三連撃がクリーンヒットした音が響く。
「ああ、もう鬱陶しい!」
「うきゅううぅぅ……繰り返しはギャグの基本ってばっちゃが言ってた」
「おいコラ。確かにその通りだけどな、多用しすぎても飽きられるんだよこのバカ槻!」
「あっ、またバカって言ったぁ。バカって言った方がバカなんだよぉ」
「黙れ単細胞」
484 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/12(日) 23:20:19.94 ID:g2Qb1B9f0
文章まとめ中、できれば1番最後に予約
485フリートーク 6/6 ◇HmfYvBHWkM:2010/12/12(日) 23:20:51.16 ID:bmRTlSqs0
「それにさっ、ここはそのうーうー言うのをやめなさい! が適切な突っ込みだと思うんだ、あたし」
「パロディネタは知名度があればいいけどさ、お前のそれはマニアックすぎるんだよ!」
「ゴーゴーマニアック……」
「あぁ? 何か言ったか?」
「いえ、なんでもありません……」
「分かればいいんだよ。ってか、全然話が進まないままここまできたけど綺麗にまとまるのか?」
「うぅ〜ん、この人の力量を考えるとオチがすっごく不安だぁ」
「時間は丁度夜の十時。時間に迫られて苦し紛れの締めを捻り出す頃だな」
「あっ、空から声が聞こえてきた」
「なになに……はぁ? 俺とバカ槻がぶつかった拍子にキスした場面で終わり!? 嫌だぞ俺は!」
「あたしはバカじゃないよっ! だって本郷くんが話を止めたせいで話が進まなかったんだからぁ〜」
「安易なエロスで物語を締める……本当にくだらねえ」
「でも簡単に人を殺して終わらせるよりはマシだと思うんだ、あたし的にはっ」
「あのな、命を感動の材料として軽く扱うのも、腑抜けたちょいエロで人の目を惹こうとするのも同レベルだわ!」
「うん、五十歩百歩だよねっ。はいこれでこの話は終わりぃっ! だからぁ……そろそろ話に戻ろっ」
「い、嫌だぞ俺は。キスでもしようもんならバカが移っちまう」
「よーし、それなら本郷くんもあたしの魅力でばかにしちゃうぞぉ〜」
「うわあっ、体が勝手に動き出した! おいこらクソ作者、今すぐ書き換えろ! こんな酷い結末、俺は認めない!」
 お前が認めなくても私が良ければいいんですよ。この世界の神は私なんですから。
「ほーらぁー、天の声もそう言ってることだしぃ。あ、た、し、と、ちゅーしよっ、ちゅー」
「このキチガイ筆者が! おいこらやめろバカ槻なにノリノリなんだよ来るな近寄るな――ぎゃああああああああああ」
486以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:21:30.10 ID:HwKX8Jsb0
このカオスの行く先を見届けたら寝よう
487以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:21:43.83 ID:bmRTlSqs0
特に修正はしていないよ!
クレームは自分まで!

pxtの人どうぞ!
>>484
一応ルールなんで、めんどくさいと思うけど書き上がったタイミングで再度予約してね!
488「そのときはよろしく……」 1/6 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/12(日) 23:23:05.09 ID:kJjTqg7Q0
「原告は証拠として、被告企業リュカエンタープライズ社に勤める者からの証言を提出いたします」
 相手弁護士の思わぬ発言に、わたしは驚き挙動不審にその場にいた人々の顔を見た。
 発言主の相手弁護人は、さも楽しそうな不適な笑みを浮かべている。
 傍聴席に座る依頼主であるリュカ社のお偉いさんは、わたしと同じくびっくりしていた。部屋の中央、あがっ
たところに座る裁判官はしっかりと機械のごとく前を見つめている。
 そして隣に座る渡河弁護士は、メガネの奥の眼を細め、女性らしい細く白い指でなぞりながら、資料とただ白
いページの本を見つめていた。この本が開かれている限り、法廷は渡河さんのストーリー通りに進むはずだった
のだ。少なくとも今までは。
 ここは、東都地方裁判所第三質疑室。現在、おもちゃメーカーであるリュカ社の商品の利用により、顔を傷つ
けられた少女を原告とする裁判が行われており、わたしはメーカー側の弁護を担当する渡河先生の補佐として被
告側弁護人席に座っていた。
 そしてその裁判が進む中で、あろうことか消費者側の証言として、メーカー従業員の言葉が提出されたのであ
る。相手の嫌らしく気持ちの悪い笑みの通り、そんなことは本来あってはならないことなのだ。
 そんな発言を外に漏らさないようにすることは、企業裁判の基本なのだから。
「証言の真贋を認定する証拠として証言者である従業員の社員証コピーを提出いたします。なお、被告側への資
料では、名称、社員番号につきまして、証言者が不当な扱いを受けぬよう伏せてありますことをご了承ください」
「了解しました」
 渡河先生は表面的な反応を示さず綺麗な声だけで返事をした。慌てているのか、それとも余裕なのか、普段と
変わらない表情からは何も判別が付かない。彼女の笑顔も怒りも見たことがない。彼女はいつでもポーカーフェイスなのである。
「では、証言を読み上げさせて頂きます」
 相手の弁護士が立ち上がって、プリントを読み始める。
「あの商品に問題があることは、皆が認識していました。耐久テストにおいてサンプルの内のいくつかが基準を
下回っていたこともあります」
 読み上げながら、相手弁護士は裁判官の前まで進み。新しい書類を提出した。
「こちらがその耐久テストの結果です。証拠品として新たに提出致します」
 裁判官が受け取り、またすぐにコピーがこちらへと渡された。それは確かにリュカ社の中で使われている形式
の資料であった。いったい、何故、こんなものが外へと流れてしまうのか。そんな管理体制だから事故製品など
売ってしまうのだ。まったく信じられない。
「原告側からは以上です」弁護士の男は静かに席へと戻る。
「では、被告側。よろしくお願いします」中央に座る裁判官の一人がこちらを見て微笑む。
489「そのときはよろしく……」 2/6 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/12(日) 23:23:52.12 ID:kJjTqg7Q0
 どうすれば良いのか? 隣に座る渡河さんは、静かに黙っている。あまりに予想外だったからか、何も対応策
がないのか。視線をずらし原告側の席を見ると、勝ちを確信したかのような笑みでこちらを見る相手弁護士がいた。
 それほどまでに社内からデータ流出は重い。
「……はい」渡河さんは、少し間をおいて立った後でゆっくりと話した。「こちらからは新たに一人、証人を申
請致します。彼はリュカ社品質管理部の課長です」
 証人の待機場所から通じる扉が開くと中年の覇気がないおじさんがゆっくりと現れ、少しきょろきょろしなが
ら部屋の中央へと進んで行った。
「お名前、年齢と役職を」証人の隣へと立つ渡河さんが優しく言う。
「秦野翔、三十九歳。リュカエンタープライズ品質管理部門第二管理課課長です」
「ありがとうございます。さっそくですがお尋ねします」渡河さんは、そう良いながら何故か相手の弁護士を見た。
 あの男の顔からは、さっきまでの笑みが消え、まるでお化けでも見たかのように何かに驚愕しているようだった。
「秦野さんは、あちらに座る弁護士に社内のデータを渡し、品質に問題がある旨について証言しましたね」
「はい……」
 はっ? 渡河さんの問いと、証言者の返答に私はまた驚かされた。
「その中にいくつかのサンプルが耐久テストをクリアできなかったという部分がありましたが、それはいつのお話ですか?」
「去年の十一月ごろかと思います」
「そうですね。資料の日付は十一月二十九日となっています。では、問題の商品はいつ発売されたものでしょうか?」
「今年の七月です」
「かなりの期間が空いていますね。その間では改修なども入ったのではないですか? 仕様の変更、素材の変更など」
「ありました」
「ありがとうございます。このように原告側から提出された資料は古いものであり、正確性にかけると言わざるを得ません。被告側から最新のテストデータを提出いたします。こちらのデータでは、社内はもとより、世界中
で使われていますISO基準を満たしていることをご確認ください。以上で証人への質問を終わります」
「では、原告。反対尋問をお願いします」
「はい!」
 勢いよく立つかの男。しかし、焦り滲んでいることが明らかで、これまでの余裕などはどこからも感じられなかった。
 さっと音もなく座る渡河さんを見ると、手に持っていた本を閉じ、もう勝負は終わったとメガネを外した。
 結局、地裁の判決は原告の敗訴であり、賠償金は一円たりとも支払われないことに決まった。
 傍聴席にいた原告の少女は頬の傷の上に涙を流し、隣に座る母親は、こちらを睨み付けてから娘を連れて退席した。

「危なかったですね」と言った私の発言に、渡河さんは不思議そうな顔をする。
490 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/12(日) 23:24:20.64 ID:2xfXEOWP0
呼ばれた気がするんで予約
しかし久々のカオスだ
491「そのときはよろしく……」 3/6 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/12(日) 23:24:36.57 ID:kJjTqg7Q0
 私たちは閉廷された部屋を出て、裁判所の出口に向かって歩いていた。
「何を言ってるの?」
「だって、相手にデータを渡しちゃった人に気付かなかったら負けてたじゃないですか」
「ああ、あれ」渡河さんは私の一歩前を歩く。「あれは最初から流して良いと許可してたんだ」
 その言葉の意味を、私の頭はすぐに理解できなかった。
「相手がバカで良かった。最終弁論にあんなものだけでやってくるんだから」
「そんなの聞かれたらどうするんですか」私は慌てて辺りを伺う。
 周りにはあの弁護士はいなかった。しかし、少女と母親が眼を赤くして通路の端に立っていた。
「あの改修があったというのは本当なのですか?」母親が言う。表情は悲しみとそれを覆う怒りに満ちあふれている。
「そちらの弁護人はどちらへ? こういったことは困ります」渡河さんは落ち着いて答える。
「教えてください」
 渡河さんはため息を吐く。
「確かにありましたよ。付属のライトを赤色からオレンジに変えるなど」
「それが耐久性に関わるのですか?」
「ライトの色に耐久度を高める効果があるとは思えませんね」
「じゃあさっきの話はなんですか!」
「改修はありました。テストももう一度行いました。そうしたら今回は悪い結果がでなかったのです。最初に丈夫そうなサンプルを選んだりはしましたが、試行台数、試行回数、行ったテストは同じです」
「そんなバカなこと」
「法廷が認めました」渡河さんが答える。
「控訴します。今言ったことも伝えます」
「どうぞ、私ではなく、そちらの弁護士とご相談ください。ただ忠告ですが、控訴審の場合、一審、つまり今の
裁判で使われた証拠は使うことが認められていません。また、今、私が話しました事柄につきましても証拠はも
とより発言したことすら証明は不可能かと思われます。こちらは新しいデータをいくらでも用意することは可能
ですが、そちらはまた新しく証拠を集める必要があるのです。私の依頼主であるメーカーから。今回の様に、用
意されたデータを掴まされることに怯えながら」
「娘の顔を見てください。女の子の顔にこんな大きな傷が付けられたのです」
「最近の凡例では、顔の傷についても男女平等の考えがあてられるようになりました」
「かわいそうだとは思わないんですか?」
「思いますよ」
「じゃあ、なんで。なんで……」母親が泣く。
492「そのときはよろしく……」 4/6 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/12(日) 23:25:22.16 ID:kJjTqg7Q0
 それにつられて人形のようにこちらを見つめていた少女も母の体に抱きついて泣き出した。
「あなたが私に依頼してくれれば良かった。今回は、腕の悪い弁護士を選んでしまったご自身を責めてください。
法は行使する者にとって平等です。ただ無知で無力な弱者を守るようにはできていません。何かありましたとき
は、どうぞご連絡ください」
 渡河が名刺を差し出す。けれど、その名刺ははたき落とされた。
「今回の案件ではお力になれませんが、別の機会では依頼を受けることができますので」
 渡河は落とされた名刺を拾うと、縦に半分に折り、少女の手に握らせた。
「では、失礼します」
 母親も少女も何も言わずに立ち尽くしていた。私はそんな二人に後ろ髪を引かれながらもただ渡河さんの後を
追うことしかできない。
 本当は、彼女たちの味方をしたいのだけど。
 弱者を救うために、弁護士になったのだから。

 ファミリーレストランでの遅い昼食。大きなテーブルに二人で陣取って別案件の資料を広げていた。
 ただ私の関心はそんなところではない。
「さっきのはあれで良いんですか?」
「何が?」
「あんな嘘のような酷いことして裁判に勝っても恥ずかしくないんですか」
「負けた方が恥ずかしくない? 特に正義感を振りかざしてさ」
 渡河さんが一枚の紙を私の前に置く。
 この前、私が担当し、一審で敗訴、担当を変わって貰うことになって控訴する予定の案件である。
「めずらしく刑事で有罪が確定している詐欺師から賠償取れないってどうなの?」
「すみません」
 被告は、ドラマ制作会社の元AD、自身の関わったドラマ内で収録された劇中劇である骨董品の鑑定番組を見せ
ての骨董品詐欺。被告は偶然エキストラとして参加させられており、そのシーンを証拠に被害者に紛い物を売り
つけたという事件だ。
「こんなの騙される方も騙されるほうだけどさ」
「本物の鑑定人が本人役で出てましたから」と私が言う。
 その発言は無視された。
「そんなの持って売りに行ってるんだから、騙す意志は明白。だから刑事でも有罪判決。賠償も楽でしょ?」
493「そのときはよろしく……」 5/6 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/12(日) 23:26:06.57 ID:kJjTqg7Q0
「そのシーンを見せたこと自体が冗談だった、と判決を受けまして」
「何をどうしたらそんな判決を貰って帰ってこれるのかがわからないし、恥ずかしい」
 本来ならば何も言えない。けれど、そんなことは関係が無い。
「私のことはすみませんでした。でも、今日の事件の様な手は使いたくないんです。違法ぎりぎりじゃないですか」
「ぎりぎりだけど違法じゃないよ。習ったでしょ? どこまでがやっていいラインなのか修習で」
「習いました」確かにそういったことも教育を受けている。適法と違法の境界条件。
「あなた今年の新人の中では成績トップだったんだよね。それなのに、何故、うちのようの零細事務所にしか取っ
てもらえなかったかわかる? その正義感あふれる性格のせいなんだけど」
「わかります」それは自覚していた。成績の面では優秀だと言われるが、冷静な判断にかけると良く言われる。「あの、じゃあなんで先生は私を取ってくれたんですか? そんなこともわかってましたよね」
 面接のとき、私は「弱者を救う弁護士になりたい」と言った。そうして採用をもらえたのだから、そういった
人を望んでいる事務所なのだと思った。けれど返答は違った。違うことは、今までの短い期間での仕事からもわかっていた。
「あなたがうちの事務所を受けに来た唯一の子だったから」
「それだけですか?」
「それだけだけど」渡河さんは、悪い? とあっけらかんと言う。「間違った考えなんて直せばいいし、修習の
成績トップなんてどうでも良いんだよ。あなたは新人千人の中で一位かもしれないけど、弁護士三万人の中では
下から千番目なんだから」
 私は目の前のカップを掴みコーヒーをすする。
「なんで弁護士っていると思う? 刑事で言えば検事も、裁判官も。司法試験を止めて、どんどん人を増やそう
としている。冷静な判決を下すのならば、機械にやらせれば良い。特に過去の判例を重視するならば、そのデー
タに近い事件では人が判断を下す必要はなくない?」
 何を言っているのだろうか。カップを置き、私は答える。
「納得できないからではないですか。機械が下した判決を受け入れることが難しいのではないでしょうか?」
「じゃあ、何で人なら良いの?」
「それは……昔からの流れで、人以外にはないからです」
「個人的な意見だけど、人が人の判決をある程度受け入れるのは、システムが正常であると先に受け入れている
かのだと思う。弁護士と弁護士と裁判官、もしくは弁護士と検事と裁判官。それぞれが全力を尽くした上ではき
出される判決だからこそ、それは正常であるらしいと認められる。少なくとも現状のシステムがそういった風に
できているように思える。わかる?」
 わからなくはない。基本的なことと言ってしまえばそれまでのような単純な意見だ。
「だから、相手がかわいそうかどうかなんてどうでも良いし、弱者か強者かなんて気にしない。もっと言えば真
494「そのときはよろしく……」 6/6 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/12(日) 23:26:52.16 ID:kJjTqg7Q0
実すらどうでも良い。真実の為に働くとか言う奴もいるけど、そうやって依頼者に負けを付けてたら意味ないでしょ?」
 あなたみたいに、と言われているようだった。
「依頼者の利益の為に、双方が全力を尽くす。その結果から裁判官が判決をくだす。私は、しいて言えば、法の
為に働いている。私は法に助けられた側だったから」
「どういうことです?」
「昔、国会に爆弾をしかけたことがある」
「はい? 何を……」
「あと他にもいろんな場所にしかけた。実行犯は友人だけど、主に私が計画して。未成年だったから名前は出なかったけれど」
 それは、なおのこと罪が重い。
「それでも弁護士にはなれる。検事や裁判官は無理だけど、弁護士はたとえ人を殺していても選ぶことができる」
 それは確かに法律に定められている。禁固刑に服したものでも、刑を終えて十年経てば、その刑の効力事態が消えるのだ。だけど。
「だからうち、新人こないんだよね」渡河さんがジュースを飲む。「友達いない人が噂を知らずに来たりするけど」
 私のことだ。修習時代、友達はできなかった。真剣に真面目に取り組みすぎて、ウザイ奴だと思われていたの
だ。あまり気にしてないけれど。
「というわけだから、私は私なりの考えで仕事をしています。私は友人がいるので同期から今回みたいな仕事も
もらえるし」渡河さんはこちらを見つめる。「辞めたければ辞めても良いので、よく考えてね」
「辞めません。続けます。ただ、私も私なりの考えで仕事をします」
「そう」
 渡河さんは机の上の資料を鞄にしまい、会計票を持って立ち上がった。
 会計を済ませ、お店から出る。ゆっくりと事務所の方に歩き出した渡河さんを追い、私は一つ質問をした。
「もし、渡河さんの大事な人が殺されたりしても、その人の弁護ができますか?」法の為に、行使する者への平等を。
「そんな大事な人いないけど」
「いたらです」
「まあ、もちろんするわけないでしょ」渡河さんは前へと足を進める。
「そうですよね。いくらなんでも」私は内心、ちょっとだけ残念に思う。
 だけど、渡河さんが振り返って微笑んだ。今までに見たことがないような笑顔で。
「だって、そんな奴いたら裁判になる前に、やっちゃうよ」
 え? 聞き返そうとした言葉が出ない。表情は冗談を言うようではない。笑っているのに。
 渡河さんが言った。
「そのときはよろしく……」                             <了>
495以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:27:25.39 ID:bmRTlSqs0
おつかれさまでした。
渡河さんらぶー

ihの人どうぞ。
496以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:28:52.63 ID:lSdEBNRqO
予約
497真剣ゼミナンパ講座1/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/12(日) 23:29:11.06 ID:2xfXEOWP0
「あなたが好きです、僕と付き合ってください!」
 そう言って頭を下げた僕は、私立大学に通うごく一般的な男の子、強いて違うところを挙げれば生まれてこの方女の子に縁が
ないって所かナ……名前は持内ユウジ。他人からは顔も性格もそこそこだって言われるんだけど、どういうわけかまるでモテな
い。おかげで二十歳になろうとしている今も童貞で、大学では同い年にからかわれ、実家では妹になじられる有様なんだ。
 今僕が頭を下げて告白している相手は、同い年の可愛い女の子。ちなみに、大学に入ってから五人目の告白相手である。
「ごめんなさい」
 きっぱりとした返事。ダメだった。人生で十五回目の失敗。落ち込むあまり頭を下げたままでいると、女の子は少し間を置いて、
「ユウジ君は優しいし、顔も良いと思うんだけど……でも、恋人となると違うかな、って」
 またこの答えだ。大学に入ってからは四例目、人生では十例目。優しいけど付き合えない。でも、優しくしないと嫌われるし、
どうすればいいんだろう? とはいえ、このコに言っても仕方がないし、僕は顔を上げ、なるたけすっきりした風を装って、
「わかった。じゃあ、これからはフツーの友達同士で」
 と言うと、彼女もうん、と応えてくれたので、その場で別れることにした。けれど、簡単に友達に戻れたら苦労はない。現に
前の四人は告白してから縁遠くなっているから、恐らくこのコもそうなっていくだろう。それだけじゃない。フラれた人数が多
いと噂が広まり、女の子の方でも気の置けるところが出来て付き合いが乏しくなっていく。そろそろどうにかしなきゃいけない。
でも、本当にどうすればいいんだろう?

「諦めたら?」
 そう言って突き放すのは友人のタカユキ、幼い頃からモテるあまり童貞は中学で捨てたというくらいの男だ。
 一言で全てが済んだと思っているのか、彼は学食のラーメンを食べ直し始めたので、僕は怒るあまり大声で、
「諦められるわけないだろ? 僕だって女の子とイチャイチャしたいよ」
「知らねえよ。大体俺が言うのもおかしいけど、童貞捨てるのが遅いくらいで人生が決まるわけじゃないんだから」
「でもあと三ヶ月でクリスマスなんだよ、ついでに言えばまた実家で妹に罵られるんだよ、挙句には四ヶ月後には成人式で童貞
捨ててる連中と会わなきゃならないんだよ、むなしい思いばっかしなきゃいけないんだよ!」
「実家にも成人式にも行かなきゃいいじゃねえか。クリスマスは……とりあえず引き籠もっとけ」
 こうなるともう大抵のことは受け流されてしまう。言葉につまると、周囲の人がこちらを見ているのに気付き、恥ずかしさを
隠すためにうどんを黙々と食べるフリをした。
 タカユキは生まれつきモテるから、努力をしなくても女の子に好かれるらしい。そんな人間に相談するのが間違いなのかもし
れないが、他の友人はモテるにしろモテないにしろ自分のことで手一杯だから、結局彼を頼るしかないんだ。
「お前は他人の目を気にしすぎなんだよ。ドウテイドウテイって、言葉では馬鹿にしててもみんな本気じゃないんだから。それ
に、女にモテたらモテたで、相当しんどいんだぜ?」
498真剣ゼミナンパ講座2/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/12(日) 23:30:13.00 ID:2xfXEOWP0
 タカユキはラーメンの残りを掬いつつ、こっちを見ないでついでのように言う。
「モテる男はツラい、ってやつだろ? いいじゃないか、僕はそういうのに憧れてるんだよ」
「気楽なもんだねえ……」
 タカユキはスープを啜るが、僕にとっては彼こそ気楽なもんだ。ことあるごとに「モテ男の悲しみ」を吐露しているが、その
実まんざらでもない様子で女の子を隣にハベらせては、僕のすがる思いをあしらっている。僕が童貞を捨てたいと焦るのも彼が
いるからで、あまりにモテるものだから、いっそ股間をもぎ取ってやろうかと思うこともある。
「また女の子紹介してよ。今度こそ何とかするから」
「そう言ってもう六人目じゃねえか、七人だったか? とにかく、俺もそろそろツテがなくなってきて……」
 途端に声を止めたので、どうした、と訊くと、やにわにケータイを取り出し操作してから、
「この間変なメールが届いてな、スパムかと思って消そうとしたんだけど、お前に見せるために残してたんだ」
 と言って画面を見せたので、文を読んでみると、
『真剣ゼミから女の子をゲットするために役立つ情報をプレゼント!! 本場渋谷のナンパ師が監修したナンパ術指南書をお試
ししませんか? 簡単なテクニックでSEXにまで持ち込める! クリスマスに間に合う今がチャンス! 提供:真剣ゼミナンパ講座』
「いかにも、だね……」
「まぁな。ただ、一応アクセスしてみたけど、普通のサイトだったよ。ナンパも口説くって言う点で女を相手にすることだから、
本気でモテたいと思ってるならだまされたと思ってやってみたらどうだ」
 とは言うけれど、僕だって努力しないでモテたいと思っているわけじゃない。会話術から何から色々と読んでは失敗し、その都
度鞍替えを繰り返した末に今がある。そもそも恋愛なんて簡単にいくものじゃないんだ、簡単にいかないからこそ惹かれるわけで、
セオリーやら手引きやらを取り入れたところでどうなるわけでもない……。

「『ナンパでも普通の会話でもいいのだが、気張って話すあまり女の子を萎縮させてしまってはいないだろうか? 付き合いが
上手くいかないのなら大抵はそれが原因だ。気張った話し方は、女の子にまで無理をさせてしまう』、か。へぇ……」
 その夜、結局ケータイのナンパ指南サイトにアクセスしてしまった。なかなかどうして、参考になる。元々気付いていたとこ
ろから、普段気づかないところまで、説得力のある文章で説明してくれる。ただ、あくまで恋愛のノウハウを取り入れるだけだ。
決してナンパに興味があるわけじゃないし、しようとも思わない……。
「『ナンパはカッコいい男の特権である、と思っている人は多いかもしれないが、そんなことは全くない。女の子は顔だけで男
を見るほど甘くないし、むしろ、モテない男はナンパをするべきだ。考えてほしい。モテない自分があらゆる方法を使って女の
子をどうにかオトしてみせる、それこそカッコいいのではないか? 基本的にナンパは平等で、下克上が当たり前なのだ。会話
のちょっとしたテクに気をつければ、誰でも褒賞を得られる』。そんなもんかなぁ、でも、言われてみれば……」
 しかし、僕はすっかりナンパの方法論にのめりこんでしまった。デザインの派手派手しい胡散臭いサイトだけれど、中身は良
499真剣ゼミナンパ講座3/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/12(日) 23:31:51.72 ID:2xfXEOWP0
く作りこんである。ナンパスポットや声掛けの常識のような基本から、女の子の特徴、おまけに具体的な体験談まで丁寧に教え
てくれて、本当に進○ゼミのようなところがあるのだ。
「このサイトのおかげで童貞を捨てられました? ナンパが順調なおかげで仕事も充実しています? ほ、ホントかな」
 たまに怪しい所もあるけれど、サイトを観て気づいたのは、ナンパも奥が深い、っていうことだ。今までは、チャラチャラし
た男が迷惑を考えず声を掛けている感じしかなかったけれど、彼らがよく考え、根本では女の子をちゃんと想って行動している
のが感じられた。それに、ちょっとしたゲームとして楽しめそうなところがある。モテるための材料集めが目的だったはずなの
に、今や僕はナンパの魅力に惹かれ始めている!
「『色々なことを語ったが、これは私の経験であり、そもそもナンパにマニュアルはありえない。その都度相手も変わればシチ
ュエーションも変わるからである。頼りになるものがあるとすれば、ある程度の理論(つまり仮説)と、自らの観察力。自分の
行動で女の子のデータを開拓し、その度に起こる予想外の出来事に柔軟に対応してこそ、ナンパは成り立つものなのだ。その過
程はとても楽しい。読者の皆さんは自分なりの行動規定を持った上で、その楽しみをより良く味わってほしい』。ふぅ、これで
終わりか……あれ、もう一時じゃん」
 結局読み終える頃には日が変わっていた。ヤバイ、ナンパヤバイ、メチャクチャ楽しそうじゃないか……心がワクワクしてい
た。ナンパをしてみたい。日常のささいな練習から慣れていけば良い、と書いていたし、まずはそこから始めてみよう。それか
ら、タカユキにも頼らず自分だけで女の子と仲良くなってみよう。大学の女の子は後回しだ。街中の女の子の方がチャンスがい
っぱいあるんだから。それに、面倒な段階を踏まずにエッチにまで持ち込めるなんて、最高じゃないか……!
 僕は眠りに就こうとしたけれど、体が奮い立っていたがために寝付けず、翌日の一コマ目をすっぽかしてしまった。

 ゼミのアドバイスを毎日参考にし、日常のやり取りで鍛錬を積んだ僕は、やがて地元のナンパスポットに足を運んだ。女の子
がたくさんいて、目移りして仕方ない。それに、緊張して心臓がドキドキする。告白とはまた違った緊張感だ。ゼミのアドバイ
スをケータイで確認する。まずは女の子の注意をこっちに寄せ、それからはっきり喋って、会話を出来るだけ長引かせて……確
認を終えると品定めにかかる。すると、向こうから好みの女の子が現れた。彼女にしよう。
「すいません、可愛いですね、あなた。お名前は? あ、お時間いただいてもよろしいでしょうか?」
「えっと」女の子は困惑した表情を浮かべる。「すいません、急いでるんで」
「どこに行くんですか? 買い物とか、えっと、それならこれから僕と……」
 言い終わる前に、友達と待ち合わせているから、と言って走り去られてしまった。追いかけようとするが、周りの目が気にな
ってためらってしまう。失敗だ。友達と待ち合わせというけれど、明らかにナンパを嫌がっていた。でも、僕に魅力があればそ
んなことはなかったわけで……落ち込んでいても仕方がない。次のコを見つけよう。
 けれど、五人くらいに話し掛けてみても上手くはいかなかった。話を聞いてもらっても、その先が続かない。会話のネタがな
くなって逃げられてしまうこともある。柱にもたれかかりながら、やっぱり僕にはダメだったのかな、なんて落ち込んでいると、
500真剣ゼミナンパ講座4/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/12(日) 23:33:04.52 ID:2xfXEOWP0
「あ、いつもどうもー、こんなとこで会うなんて嬉しいなぁ」と陽気な男の声が聞こえた。「どこ行くの? 買い物?」
 その先には女の子がいる。だが、知り合いではないらしく、困惑していた。パーマで飾った髪と黒いサングラスが目立つ男は、
それでも馴れ馴れしく話しかけようとした。注意を惹くために大袈裟な呼びかけをする。ゼミでも教わった手口だ。
「そうそう、君。もし何もなかったら、一緒に遊びに行かない? 少しならおごってあげるし。友達と待ち合わせ? そうなん
だ、じゃあ俺も連れてってくれない? 君がどんな友達といるかとか、興味あるし」
 女の子は謝りつつ逃げてしまった。あれも嘘だろう。けれど、男はあっけらかんとした様子で次の女の子に向かおうとしてい
る。そういえば、断られても当然だと思え、ってゼミでも言ってたっけ。本職は違う、そう思って参考にしようと男をじっと見
ていると、その顔立ちが誰かに似ている気がして、まもなく黒井センパイ、と声を思わず出してしまった。男はこっちに気付き、
サングラスを取ってまじまじと見てくる。紛れもなく高校の先輩だった。
「おお、ユウジじゃん。久しぶり。なに、お前も同業?」
「いえ、実は今日が初めてで……」
「だろうなぁ。でもまさか、ユウジとは思わなかったぜ。なにお前、まだモテてないの?」
 見てたんですか、と訊くと、センパイはうなずいてくれた。それからカフェに移り話をすると、センパイがナンパを始めたき
っかけはサークル仲間に誘われたからだと教えてくれた。高校の時はモテていたセンパイがナンパをするのは意外だったけれど、
女の子を口説くのが難しいナンパに挑戦心が湧いたのだという。そしてなんと、センパイも真剣ゼミの読者であることがわかっ
た。そこでゼミを見ても全然ナンパが上手く行かないことを相談すると、センパイは初めはそんなもんだ、と言ってくれた。
「マニュアルなんかないんだから、失敗して経験を積んでくしかないの。でも、お前は気張りすぎ。あれじゃ逃げて当たり前だよ」
 それはゼミでも言っていた事だ。センパイは今はゼミを読んでないというが、初めは大分読み込んでいたそうだ。でも、成功
することはなかったという。ひとえに、ゼミの教訓を忘れていたからだった。
「『女の子のことがわからないのは当たり前だ。けれど、自分自身のことはうまくコントロールしなくてはいけない。マニュア
ルに頼るのは、自分に自信がない証拠。そしてそうした心象は、必ず女の子に見抜かれてしまう』。結局、女の子がわからない
んじゃなくて、自分がどうすべきかがわからない、って言う不安があったんだよ」
「な、なるほど……」
「確かにゼミは参考になるけど、毎日見る必要はない。基本的なところを押さえつつ、どうも上手く行かないって時に、何て書
いてあったっけ、っていう感じで、たまに読んでいけばいいんじゃないかな」
 センパイはそれからも色んなことを話してくれた。ナンパのノウハウだけでなく、初めて行った土地で女の子をナンパして宿
を確保した話、大学生を装った高校生をナンパして危うく警察沙汰になるところだった話、全てが興味深く参考になった。
「お前さ、自分の好みで女の子を選んでない?」
「そういえば、ナンパしやすい女の子としにくい女の子がいるんですよね。服装とか、足取りとか」
「それもそうだけどさ、なんていうのかな、私は男を求めてます、ってオーラを出してるコがいるのよ。そもそもこの辺は”そ
501真剣ゼミナンパ講座5/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/12(日) 23:34:13.79 ID:2xfXEOWP0
ういうところ”だから当たり前なんだけど、それを敏感に感じ取ることも大事なわけ。男が女に奉仕する、って感じ?」
「でもそれっていいんですか? なんか、恋愛ってもっとお互いが好きで初めて成り立つって言うか……」
「人生で十五回も告白した男が言うかよ、フツー」と言って先輩は笑った。そしてすぐに顔を引き締め、「いいか、ナンパは創
造的な営みなんだ。大学とかバイトとかじゃ付き合いを大事にするからそれだけでアドバンテージがあるが、ナンパはほとんど
ゼロからやっていかなきゃならない。そこには恥も義理もない。あるのは女の子との戦いだけなんだ。そんな優男じみた甘った
れたことを言うくらいなら、さっさと大学に戻って勉強しつつ女の子が好きになってくれるのを待ったほうが良いぜ」
 一気呵成に話すセンパイに向かって、返す言葉はなかった。むしろ、なんだか勇気が湧いてきて、やる気も起きてきた。そう
だ、モテない僕にプライドなんてない。自分を変えるためにナンパを始めたんだ。今更迷っていたって、仕方がない。
「わかりました、僕、戦います。絶対ナンパで女の子を落としてみせます! そして、童貞も卒業してみせます!」

 それから一ヶ月位経ち、僕は段々女の子と仲良くなれるようになった。エッチにまでは至らないけれど、一緒にご飯を食べた
りカラオケに行ったりするまではたどり着けた。心なしか、バイトや大学の女の子からの反応も良くなった気がする。けれど、
あくまで興味はナンパだった。見知らぬ女の子と話をするのが楽しくて仕方がない。付き合えるか付き合えないかの駆け引きを
して、苦労の末にどうにか遊びに行ける時といったら、比べ物にならないくらいの快感を覚えるのだ。
 そしてある夕方、念願の時は訪れた。白いカーディガンを着た、ものすごく可愛い女の子を見つけた時から予感はあった。違
うのだ、今までの女の子とはなにかが決定的に違う。スピリチュアルな感覚が僕の体を駆け巡った。おまけにぼう、と斜め上を
見つめて、退屈そうに歩いている。あれは、明らかに何か起こることを望んでいるのだ。
「どうも、こんばんは。なにしてるの? 散歩とか?」そう言って、僕はにこやかな表情を浮かべた。
「えっ、あ、はい。そ、そんなところ、ですかね。バイトが終わって、あとは駅に行くだけで」
「そっか。じゃあご飯まだ? これから僕とご飯食べない? 少しならおごるよ」
 女の子にはためらいが見えたけれど、どうにかOKしてくれた。駅前の韓国料理店に連れ込むと、段々心を開いているようで、
自分のことを話し始めてくれた。名前はナミちゃんといって、一つ年上で、近くの大学に通い、男性経験は三人。でも、ちょっ
と話し慣れていないところがあるので、サバを読んでいるかもしれない。僕は年上と知れてから真面目な風を装う。そしてなる
たけ優しく扱う。気さくな風で接し始めつつ、実は恋愛に真摯なところを見せる。こうすると、経験の少ない女の子は安心して
くれることが多い。
 カラオケに連れ込むと、ナミちゃんはすごく歌が上手くて、歌の合間合間にも気を遣っているのか話すことをやめないから、
飽きることがまるでなかった。そして、お酒と歌でテンションが上がったのか、自分から身の上を話し始めるようになり、本当
は一人しか交際したことがないことを明かしてくれた。初めの相手とは、最近別れたばかりだという。
「酷いことはされなかったんだけど、ちょっと、ショックで立ち直れなくて……」
 女の子が自分のことを問われないままに話す時は、心を許しきっている。ゼミで教わったことだ。いける? いけるぞ……!
502真剣ゼミナンパ講座6/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/12(日) 23:35:36.66 ID:2xfXEOWP0
逸る気持ちを押さえつつ、僕は自分を抑えてひたすら親身になろうとした。
「話さなくても良いよ。辛かったんだよね、それで、今も寂しいんだ?」
「うん。でも、ユウジ君に声をかけられて、それを忘れられるかな、って思って……」
 ナミちゃんは年上だったけど、繊細で、寂しがり屋だった。経験の少ない僕が相手にするにはちょっと難しいコでもあったけ
れど、根気良く話を聞くだけでも効果はあったらしく、連絡先を交換するまでには至れた。エッチは、頼まない方がいい気がした。
 カラオケ屋を出て、地下鉄に乗るナミちゃんを送るためについていった。キップ売り場でナミちゃんは二人分のキップを黙っ
て買い、片方を差し出したので、僕も黙って受け取った。四つ先の駅に行くまで、ナミちゃんは疲れたのか眠り込んでいた。僕
も眠かったけれど、何とか耐えた。僕の肩に乗せられたナミちゃんの頭からは、さわやかな香水と、きつい酒と、生ぬるい汗の
匂いがない交ぜになって漂ってきた。何もかもが上手く行き過ぎている。アルコールと、車両の揺れと、ナミちゃんの匂いのせ
いで、僕はふわふわと浮かぶシャボン玉のような気分になっていた。それでも、電車のアナウンスが聞こえるとシャボン玉は割
れ、現実に立ち戻る。現実だとわかって、嬉しかった。ナミちゃんを起こし駅を出ると、タクシーで彼女の家に向かった。
 僕はコンドームの付け方も、挿入するべき場所もわからなかった。ゼミではやらなかったところだ。すごく恥ずかしかった。
リードしておきながら、彼女を不安にさせてしまう。けれど、ナミちゃんは手ほどきをしてくれた。こらえきれず、本能のまま
に動きそうになると、ナミちゃんは微笑んでうなずいてくれた。好きだから全部受け止めてあげる、と言ってくれて、感動する
勢いのままに僕はがむしゃらに動き続けた。心地がよかった。そして、すごく暖かかった。

「へいへい、そりゃ良かったじゃねえか」
 僕が一通りのことを話すと、タカユキは興味なさげな顔で応えた。確かに、モテる男にとっては童貞卒業話なんて犬の餌にも
ならないだろう。けれど、僕もモテるようになったのだから、それくらいのことではもう怒らない。
「でもさ、お前には感謝してるよ。あのメールがなかったらこうはならなかったんだから」
「そうかい。なら今日の学食はおごってくれよ」
 わかった、と気前良くいうと、タカユキは呆気にとられた表情を見せた。僕の変貌に驚いているのだろう。どうだと言わんば
かりに見返してやった気分になる。
「で、どうだい、モテる男の気分は? 大変だろう?」
「大変だけどさ、充実してるよ。やっぱり童貞は、卒業すべきだよねぇ」
 タカユキは溜息をついた。「痛い目みるのはこれからだぜ。今度は『真剣ゼミ恋人講座』が必要になるかもな。俺こそ欲しいけど」
「ハハハ、でも、当分はナンパ講座のままでいいかな。実際、ナンパのほうが楽しいし」
「……お前、まだやってるの?」タカユキは訝しげな表情を浮かべた。
「うん。彼女には内緒だけど、エッチとかはしないから、大丈夫だよ。なにより、色んな女の子と話せるのって楽しいよ?」
「お前さ……」タカユキはこっちの目をじっと見据え始めたかと思うと、「まぁ、いいや。楽しめる限り楽しめばいい」
503真剣ゼミナンパ講座7/7 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/12(日) 23:37:00.29 ID:2xfXEOWP0
 と言って目をあらぬ方に遣った。何を言おうとしたのかはわからないけれど、もしかしたら僻んでいるのかもしれない。元か
らモテる男に比べ、モテない男にはナンパをより楽しめるアドバンテージがあるのだ。それを羨ましがってるのだろうと思うと、
見返しを通り越して優越感まで覚えてきた。

 それからはナミちゃんとの付き合いを大事にしつつ、一線を越えない程度にナンパを楽しむ日々が続いた。ナミちゃんとのセ
ックスにも慣れてきて、自分なりのナンパのノウハウもつかめるようになってきた。マニュアルなんて作れないし、毎日が大変
なのは間違いないけれど、そうしたことこそ楽しい、と思えるのがまた嬉しかった。
 クリスマスがやってきて、僕は初めて女の子と二人きりで過ごすことが叶った。いっぱい遊んで、いっぱいセックスをして、
これ以上望みようもない夜を過ごした。
 実家に帰ると、妹が叫ぶ恒例の”ドウテイヤロウ”が待っていた。怒る必要はどこにもない。童貞を捨てたことを伝え、証拠
に恋人の写真をケータイで見せると、妹は黙ってしまった。再三ドウテイといったけどお前は処女捨てたの、と追い討つと、そ
っぽを向いて逃げようとした。とはいえ、妹も女の子だから、優しくしなければいけない。お前は可愛いからみんな遠巻きに見
ちゃうんだよ、素直になれば絶対良い人が見つかるから、と言うと、今度はうるさいヤリチン、が定番句になった。
 成人式で僕は勝ち組のグループに入った。だけど、それをいいことにテングになったりはしない。恋人と別れたばかりの旧友
を慰め、恋人が出来ない旧友を励ます、そんな”親切な人間”を、ナンパで見せるような役割を演じていた。
 その席で、僕は昔好きだった女の子と出くわした。どうせお釈迦になる恋心を保つために告白しなかった女の子。最後のチャ
ンスになるかもしれないから、僕はアプローチを試みた。彼女はフリーじゃなかった。既に男を知って、でも、更に可愛くなっ
ていたから、諦めきれなかった。飲食店での二次会の間、僕はずっと彼女の隣に居て、ゼミで教わったこと、実地で知ったこと、
あらゆるテクニックを用いて精一杯誘いかけた。ためらいの後、彼女もOKしてくれて、同窓会が解散してから僕たちは近くの
ホテルに泊まって夜を過ごした。
 朝起きると、彼女はもう部屋から去っていて、メールだけが残されていた。お互い恋人がいるから夜のことは夢だったと思っ
て忘れよう、ということだった。最後に、好きだった君が誘ってくれてとても嬉しかった、と書いてあった。ベッドから起き上
がり、着替えをしてから、ナミちゃんに電話した。声が聞きたいから、と他愛のない理由を告げると、ナミちゃんは僕が電話を
切るまで相手をしてくれた。同窓会のことをたくさん喋った。女の子との事は、話さなかった。
 困難に立ち向かう努力と、満ち溢れる達成感と、人間を知る楽しみと、やがて訪れる寂しさと、そして、全身を預けられるぬ
くもり、みんな、ゼミがないと知らないままだった。ゼミが僕を変えてくれた。ゼミのおかげで、毎日が充実している。電話を
終えると、僕は狭い部屋でも反響しないくらいの小さな声で、ありがとう、とぽつりと呟いた。

 君もまだ間に合う! 女の子と知り合いたいなら、今すぐ『真剣ゼミナンパ講座』にアクセスだ!
504以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:38:24.63 ID:bmRTlSqs0
ihの人は童貞かしこい

では、>>496のいつもの人トリップを確認してどうぞ。
505 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/12(日) 23:38:52.22 ID:g2Qb1B9f0
予約です
506漫研少女とゴミクズ物語 1/7 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/12(日) 23:39:25.93 ID:lSdEBNRqO
 男臭い男子校が共学になる。そのあまりに大きい衝撃は、この万年廃部寸前の漫研にさえ、少なからず波風を立てていた。
 部室では、いよいよ迫ったクラブ活動の新歓のため、漫研部長の赤庭健太が漫研の部員たちに対応策を講じていた。
「とにかく部室は小まめに掃除して、綺麗にしておく。なにより清潔感が大事だからな」
「うわ面倒くせえ……はーい分かりましたー」
 何しろ部員たちときたら、絵に描いたようにガサツなタイプで、しかも下品だったからなのだ。
 描いている漫画も基本下ネタやエロばかりだ。いくら漫研でもさすがにひどすぎる。
 今までは男子校という事もあり顧問も大目に見ていたが、そろそろちゃんとした活動をしろと釘を刺されていた。
「ここまでいいか。という訳でお前ら、下ネタは絶対厳禁だからな。わかったな?……わかったんだよな?」
 その言葉に部員たちは一様に呆けている。それはまるで、あの『鳩が豆鉄砲を食らったような』という有名な表現にぴったりの顔だった。
「あのー、部長。下ネタ禁止ってよく分からないんですが。具体的に、一体どうしたらいいのでしょうか?」
「ええい、ならばいい。あえて分かりやすく説明しよう。『チンコ・マンコ・ウンコ』等の鉄板は極力控えろ。もし使うとしても、卑猥な
使い方は絶対によすんだ」
 むしろそれ以外に、この漫研にどんな活動があったのだろう?そんな疑問の声も上がっていたが、即座に無視する事にした。
 それにやれば出来るはずなのだ。画力だってそれなりにある。エロや下ネタであるという点に目をつぶれば、そこそこレベルは高い。
「なるべくでいいから。普通のネタでもってやってくれ」
「なるほど普通のネタか。なら『キノコとアワビの挟み揚げ』とかなら、いいんですよね?」
 ダメだ。こいつらぜんぜんわかってない。反応する事さえ億劫になってきた。
「バカだなアイツ。やれて『ゴムゴムのトマホーク(如意棒)』とかだよね部長」
 もろじゃないか。それを理事会に見せれるのか。
「あのなぁ……もっとこう……あるだろ真面目な感じが……」
 赤庭は頭を抱えてしまった。もし女子が入らなかったとしても、このままでは学校内での位置はどんどん追いやられた物になるだろう。
 今までは男子校だからこそ、下品でも許されていた部分があるのだ。きっとさらに日陰物になるに違いない。
 漫画なんて大抵そんな物なのかもしれない。だが、それでも自分たちの愛した漫画はいつだって夢中にさせてくれた。
 あの感動を、あの情熱を。そんな風に赤庭が一人で盛り上がっていると、部室のドアを叩く者がいた。
「失礼します。この部屋、我が校の漫画研究部が使用している部室で、間違いないですか?」
 そう言ってドアから入ってきた人物は、こんな部室に似合わない、ひどくあどけない可憐な少女だった。
「可愛い……」
 堅物で通っている部長の赤庭でさえ、ついそうもらしてしまうような、女の子だった。
 その瞳には星が煌めき、長い黒髪は清らかな川のように流れ、ふっくらした唇は果実のように瑞々しい。
「ああ、ここが漫研だ……」
507以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:39:33.44 ID:aEfqYUm1O
面白い
強いて言うなら、インチキ商法チックにメールアドレスやら口座番号を最後に付け加えると良いと思ふ
508漫研少女とゴミクズ物語 2/7 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/12(日) 23:41:02.29 ID:lSdEBNRqO
 少女は深い深いお辞儀をすると、顔を上げた。その表情は何とも言えない笑顔だった。
「良かった。本日よりこの部室の末席を汚す事になった、一年生牧野泰子と申します。以後お見知りおきを」


 結局、漫研に入ってきた新入生は二名だけだった。やたら明るいひょうきんな男と、あの例の美少女。
 少女が部室にくると、漫研の皆はそれだけでそわそわして、どこか浮き足だっているように見えた。
「じゃあ早速だが、今期の部誌の完成に向けて、各自自分の作品を仕上げていってくれ」
 部室に与えられた机は、教室にある簡易な物ではなく、職員室にある様な事務机だった。お古だ。
 新入生たちも、卒業した先輩達の机がそのまま与えられている。残した落書きもかなりそのままだ。
「部長。あの、一つ質問があるのですが」
 少女が手を上げた。すわ、と部員たちの注目が彼女に一斉に集まる。その様子を見てひょうきんな男が楽しそうに笑っている。
「先ほどから話に出ている部誌について、去年の物を拝見したくて……」
 慌てて割って入る赤庭部長。まずい所を突っ込まれてしまったと、赤庭は焦っていた。
「すまんな牧野くん。実は去年までの部誌は、まとめてとあるOBのお宅に寄贈したばかりでね。ここにはないのだ」
 もちろん嘘だ。エロ下ネタたっぷりの歴代の部誌は、自らの家にまとめて送ったばかりの所だった。
 あんな物を見せたら、女の子なら一発で辞めかねない。
「はぁ。それでは見れるのは、この一冊だけなのですか。残念です」
 そう言って少女が引き出しから出した本は、件の部誌だった。
「ちょっ!牧野くんそれどこで!」
「引き出しを開けたらあったので」
「えっ?」
 ちょうど去年の春、卒業生たちが気合いを入れて書いた、エロ扉絵がついている物だ。入っていたのだろう。
 内容については言わずもがな。下ネタやエロパロの応酬につぐ応酬だ。
 終わった。チェックが甘かったと赤庭が膝から崩れ落ちる。だか少女は本をかざしてしみじみとこう言った。
「なかなか読みごたえがありました」
「ええっ?」
「この下ネタの感じ、ハレンチ学園やガキデカを思い出し、あまりの懐かしさに涙しました。先輩方は本当に素晴らしい作品をお描きになってらっしゃいますね」
「へっ?」
 予想外の反応だった。むしろ受けているようだった。このぐらいの下ネタは、オーケーなのだろうか。
 自分の考え過ぎだったのか、赤庭は安心して胸を撫で下ろした。しかしどうやら変わった娘のようだと印象を改めた。
509 ◆ihO9dxzf9I :2010/12/12(日) 23:43:51.85 ID:2xfXEOWP0
本当は進研ゼミのサイトにリンクしてやろうと思ったんだけど悪趣味すぎて辞めたんですよ
ところでまとめが今回もNo.04からまとまってないんでどうしようもないから今日も寝ます
510漫研少女とゴミクズ物語 3/7 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/12(日) 23:45:57.50 ID:lSdEBNRqO
 少女は深い深いお辞儀をすると、顔を上げた。その表情は何とも言えない笑顔だった。
「良かった。本日よりこの部室の末席を汚す事になった、一年生牧野泰子と申します。以後お見知りおきを」


 結局、漫研に入ってきた新入生は二名だけだった。やたら明るいひょうきんな男と、あの例の美少女。
 少女が部室にくると、漫研の皆はそれだけでそわそわして、どこか浮き足だっているように見えた。
「じゃあ早速だが、今期の部誌の完成に向けて、各自自分の作品を仕上げていってくれ」
 部室に与えられた机は、教室にある簡易な物ではなく、職員室にある様な事務机だった。お古だ。
 新入生たちも、卒業した先輩達の机がそのまま与えられている。残した落書きもかなりそのままだ。
「部長。あの、一つ質問があるのですが」
 少女が手を上げた。すわ、と部員たちの注目が彼女に一斉に集まる。その様子を見てひょうきんな男が楽しそうに笑っている。
「先ほどから話に出ている部誌について、去年の物を拝見したくて……」
 慌てて割って入る赤庭部長。まずい所を突っ込まれてしまったと、赤庭は焦っていた。
「すまんな牧野くん。実は去年までの部誌は、まとめてとあるOBのお宅に寄贈したばかりでね。ここにはないのだ」
 もちろん嘘だ。エロ下ネタたっぷりの歴代の部誌は、自らの家にまとめて送ったばかりの所だった。
 あんな物を見せたら、女の子なら一発で辞めかねない。
「はぁ。それでは見れるのは、この一冊だけなのですか。残念です」
 そう言って少女が引き出しから出した本は、件の部誌だった。
「ちょっ!牧野くんそれどこで!」
「引き出しを開けたらあったので」
「えっ?」
 ちょうど去年の春、卒業生たちが気合いを入れて書いた、エロ扉絵がついている物だ。入っていたのだろう。
 内容については言わずもがな。下ネタやエロパロの応酬につぐ応酬だ。
 終わった。チェックが甘かったと赤庭が膝から崩れ落ちる。だか少女は本をかざしてしみじみとこう言った。
「なかなか読みごたえがありました」
「ええっ?」
「この下ネタの感じ、ハレンチ学園やガキデカを思い出し、あまりの懐かしさに涙しました。先輩方は本当に素晴らしい作品をお描きになってらっしゃいますね」
「へっ?」
 予想外の反応だった。むしろ受けているようだった。このぐらいの下ネタは、オーケーなのだろうか。
 自分の考え過ぎだったのか、赤庭は安心して胸を撫で下ろした。しかしどうやら変わった娘のようだと印象を改めた。
511漫研少女とゴミクズ物語 4/7 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/12(日) 23:46:56.74 ID:lSdEBNRqO
「おい……。まずいよそりゃ……」
 自分の孫娘が怪しげな集まりで、セクハラまがいの漫画を見せられてると知ったら。
「……あの、どうなるんですかね?」
「バレたらまず廃部は決定だ。下手すると責任者の俺は首、お前辺りは退学かもな」
 そんな。かなり難しい受験に合格してやっと入れたというのに。赤庭は目の前が真っ暗になった。
「ともかく理事にバレないように、本人にも口裏合わせとけよ」


「牧野くん、ちょっとこっち来て」
 部室に戻った赤庭は、卍解のフリ付けを実践している部員たちから少女を連れ出し、校舎裏に連れていった。
「なんですか」
 少女は何故呼ばれたのかわからないため、着いていきながら不思議そうにしている。誰もいないのを確認して、赤庭は切り出した。
「なんで理事の事黙っていたんだ」
 途端に少女の顔色がさっと曇る。やはり本人も隠していたようだ。
「誰から聞いたんですか……。お願いだから漫研に居させてください」
「でも、理事にバレたら君だってただじゃ済まないだろう」
「もちろんそうだと思います」
 訳がありそうだった。彼女が語るに任せる事にした。
「うちは厳しい家でした。父も母も幼い頃に先立ってしまい、理事である祖父に引き取られました。それからずっと、休まる暇もありません
でした。厳しい家訓に縛られ、礼儀作法をたたき込まれる毎日でした。そんな時、ようやく見つけた居場所が漫画本だったんです。私は暇さえ
あればコンビニや本屋に立ち寄り、漫画を読み漁りました。いまや漫画は私の生きがいです」
 少女の切なる思いが伝わってきた。しかしそれでも、赤庭には首を縦にふる事はできなかった。その選択は漫研でさえ廃部に押しや
ってしまうかもしれないのだ。
 謝ろうとしたその時、後ろから声がした。
「いいさ、俺たちが下ネタをやめて真面目なのを描けばいいんだろ」
「お前ら……」
 漫研の他の部員たちが、隠れていた物陰から出てきた。どうやら話を全部聞いていたらしい。
「そんな……。漫研の下ネタ、好きなのに」
「いいんだよ。俺たちが下ネタだけじゃないって所、見せつけてやるいいチャンスさ。やってやろうぜ」
 こいつらがこんな事を言うようになるとは思わなかった。見誤っていたのかもしれない。赤庭は胸に熱い物が込み上げていた。
512以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:47:18.56 ID:bmRTlSqs0
ヘイヘイ
◆1ImvWBFMVgの人コピペミスってますぜ
513漫研少女とゴミクズ物語 5/7 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/12(日) 23:47:54.67 ID:lSdEBNRqO
「よし、やろう。真面目な活動をしていれば、理事も分かってくれるかもしれない」
 そうだそうだ。部員たちが一斉に声を上げ盛り上がっている。
 その時だった。誰かの声が聞こえてきたのだ。
「それはどうかな」
 彼らの横の校舎側、表情からして頑迷で偏屈そうな顔の老人が、窓から覗いていたのだ。
「お爺さま……」
 理事か。なんというタイミングの悪さだ。せっかく今からという時に。
「どうも理事長、この漫研の部長です。お聞きいただいた通り、今から真面目な活動を致します。お孫さんの部活動を許してあげてください」
 赤庭が精一杯頭を下げる。他の部員たちも同様に続いた。だが理事は威圧的な姿勢を崩さなかった。
「だから、『どうかな』と言っておるのだ。真面目にやろうが何をしようが、こんなフザケたゴミクズ部に孫を置いておく事はできんのだ」
「お爺さま!」
「お前は黙っておれ。それとも何か?一見する価値があるような作品が作れているとでもいうのか?雑誌の新人賞を取れるような漫画を?」
「取れるさ!俺たちだって本気になれば明日にでもな!」
 よせ、挑発だ。赤庭は止めようとしたが、もう遅かった。
「よろしい。なら今から一番近い漫画の新人賞に応募して入賞してみせろ。誰か一人でも賞を取ったら活動を認めよう」
 とてつもない無茶な条件を出されてしまった。まるで甲子園に行くような物だ。だがもう後の祭りだ。
「もちろんもしできなかったら即刻廃部だ」
「やってやる!後で吠え面かくなよ!」
 部員たちはすっかり息巻いてしまっている。入賞だなんてどだい無理な話だというのに。
「威勢がいいな、たいへん結構だ。ただし条件がある。応募する漫画のネタは下ネタとする。お前さん方の得意分野だ、文句なかろう」
 この上に下ネタ。もう絶望的だった。さすがの部員たちもそこで黙ってしまう程に。だいたい下ネタが通用するのは、せいぜい仲間内までだ。
 下手したらふざけるなと一蹴されただけで終わってしまうかもしれない。
「では結果を楽しみにしているぞ。漫研のゴミクズ諸君」
 理事は高笑いをしながら去っていった。残された部員たちは誰もがおし黙ってしまっていた。


 部室に戻ると誰からともなく、窮地に立たされた現状を嘆く、諦めの声が一斉に上がった。
「絶対無理だ……」
514漫研少女とゴミクズ物語 6/7 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/12(日) 23:48:56.43 ID:lSdEBNRqO
「赤塚賞ならあるいは……だが下ネタなどやり尽くされてる……」
 廃部か。赤庭はすっかり諦めていた。長く続いていた漫研の歴史に、この自分が終止符をつける事になるとは。
 そんな事を考え、途方にくれている部員たち。少女などはもう今にも消え入りそうになっている。
「……申し訳ありません。私が隠して入部したせいで、皆さんに多大な迷惑をお掛けしてしまいました。どう償えばいいでしょうか」
 するとその時、今まで黙っていた高村透が、少女のその言葉に反対した。
「必要ない。償う必要なんか一個もない。そうだろう?」
「だって……」
「新人賞を取ればいいんだ。俺たち得意の下ネタで。違うか?」
 もちろん出来る事なら入賞したい。だが他の皆には、それを肯定するだけの勇気がなかった。そこは熱血好きの赤庭も同じだった。
 だが、いいのだろうか。改めて自問自答してみる。果たして本当にそんな事でいいのだろうか。
 その諦めは、数々の名作たちが夢中にさせてくれた最高の時間を、あのときめきを、裏切ってしまう事になるのではないか。
 赤庭の心は決まっていた。
「そうだな高村。お前の言う通りだ」
 そう言うと、部員たちは頼りなさそうにではあるが、だんだんと顔を上げ始めた。
「いいじゃないか。どうせ一度は通るはずの道だ。全力で駆け抜けてやろう。どうだ皆?」
「当たり前だ赤庭。そうと決まったらやるぞお前ら」
 ようやく漫研の皆の顔に覇気が戻ってきた。その通りだった。やってみてから考えよう。最初から駄目で元々なのだ。
 背水の陣で新人賞に望む漫研の皆に、女神が微笑む事もあるかもしれないではないか。
 ペンを握りしめ、皆で円陣を組んだ。部室にやけっぱちに近い掛け声が響き渡った。


 そしてその日から、漫研の部員たちは数々の苦労を乗り越えていった。そうしてやがて、遂には見事に新人賞に入賞を果たしていた。
 何より驚いたのは理事だった。本当に取ってしまったのだ。活動を認めない訳にはいかなかった。
「いやしかし、本当なのか泰子」
「うーん……。ねえ。本当にびっくりだよね」
 その場にいあわせた部員たちは、もう一言すらも喋れなかった。
「いや、認めはするが。なぁ……お前ら……」
 新人賞受賞、牧野泰子。コメント、女性とは思えない独自の視点で、下ネタの可能性を広げて見せてくれました。
 まさか彼女が取るとは。描いているのは知っていたが、これは。まさかの結果発表だった。
「あの……高村が、市内の合同漫研企画で、特別賞を……」
515漫研少女とゴミクズ物語 7/7 ◆1ImvWBFMVg :2010/12/12(日) 23:49:52.48 ID:lSdEBNRqO
「やめろ赤庭、もういい、いいんだ」
 そこで部員たちの目に涙が流れたのは言うまでもない。
 これがあの新進気鋭の漫画家、牧野泰子の若かりし頃の新人賞を取った逸話だ。
 それから後、刺激された部員たちの中に何名か、漫画界に入ったというのは有名な話だろう。
 ではもうこの辺でいいだろうか?わかった。いえいえこちらこそ。牧野によろしく伝えて欲しい。それじゃあ。


《終わり》
516以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:50:56.01 ID:bmRTlSqs0
携帯の人3/7確認して
517以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:52:59.97 ID:bmRTlSqs0
それは別として、
>>484
◆k.D2pTMHV. 氏どうぞ
518以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:54:28.72 ID:N7yivXXtO
規制食らって更にバーボンとか四肢をもがれた気分
まとめスレへの転載って本スレあるいは避難所への投稿順じゃなくてもいいのかな?
今回規制者も多くてgdgdだ
519彼女との世界1/7 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/12(日) 23:54:52.05 ID:g2Qb1B9f0
 ドン!――腰に鈍い痛みが走って目が覚めた。
 「いい加減に起きてください。今、何時だと思っているの?」
 目を開けると、掃除機を片手に、眉間にしわを寄せた妻の由紀子が立っていた。
 「痛いな! 蹴る奴があるか……」
 まただ。目覚ましを見ると、土曜日の午前九時。私は芋虫のごとく、のそのそと寝床を這い出た。
 「そんなだからあなたは、いつまで経っても出世できないんですよ。三百一号室の渡辺さんのご主人なんて、先日、昇進されたそうよ。課長ですって。しかも、土日は子供たちを連れて遊園地にまで行って……。私、悔しくって。ねぇ、聞いてるの?」
 彼女の声から逃れるように洗面所に駆け込んだ。
 頭が痛い。ブォーン――掃除機の音が耳に残った。

 彼女にこうして起こされるようになって何年になるだろう。大学卒業と共に大手商社に入社し、二十七歳で結婚した。
社内恋愛だ。物静かで、読書をするのが好きという、彼女の素朴な所が決め手だった。
 だが、今やどうだろう。物静かだった彼女の口から、矢継ぎ早に繰り出されるのは私への愚痴、愚痴……。
 毎日、朝早くに出勤し、終電に飛び乗って帰る毎日。努力はしている。だが、上司との折り合いが悪く、同期の中では出世が遅れている方だった。
努力だけでなく、運も必要。それが彼女には分からないのだ。
 「あなた、せっかくの休日なのだから、お風呂の掃除して、それから……」
我慢の限界だった。休日まで彼女と居ると気が狂いそうになる。叫びたくなる気持ちを必死で押さえ、コートを引っ掴むと、外へと飛び出した。

520以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:55:10.82 ID:HwKX8Jsb0
投下時間順が一番いいんだろうけど
521以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:55:43.92 ID:bmRTlSqs0
>>518
適当で良いかと思います。
転載してくれるありがたい人は「文句あるなら自分で転載しろよ」の精神で良いと思うのです
自分はそうしてるよ!
522彼女との世界2/7 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/12(日) 23:55:51.93 ID:g2Qb1B9f0
気がつくと、街外れの神社にいた。
 一人の老人が賽銭箱を前に、手を合わせながら何事か熱心にお祈りをしている。
 困った時の神頼み。この際、私も何か願ってみようか。老人が立ち去り、誰も居なくなったのを見計らって、賽銭箱の前に立つ。
 さて、何をお願いするか。最近のあいつの言動には辟易しているところだ。どうせなら、物静かだったころの彼女に戻ってほしい。うん、これだ。
 「神様、神様、由紀子がこれ以上、愚痴を言えませんように」
 何の抵抗もなく言葉が流れ出てくる。パンパンと柏手を二度打つ。どこからともなく風が吹いてきて、わに口をカランカランと揺らした。
 
 

「ただいま」
長時間外出していたら、後で由紀子に何を言われるか、分かったもんじゃない。正午前、神社の後のパチンコもそこそこに家に戻ってきた。
 ブォーン――由紀子の返事がない代わりに、掃除機の音が聞こえてくる。
 「お前、まだ掃除をしているのか? いい加減にだな……おいっ!」
 玄関を抜け、居間のドアを開けるとギョッとした。
 台所の前で由紀子がぐったりと倒れていたのだ。
 「大丈夫か、しっかりしろ!」
 急いで駆け寄り、呼吸を確認する。死んではいないことに安堵すると、震える手で119番を押した。
 それからのことは無我夢中でよく覚えていない。ただ、由紀子は近くの病院へ搬送され、検査による1か月の入院の後、自宅へ戻された。
 彼女は話をすることができなくなっていたのだ。それ以外の体に別段異常はなく、健康そのもの。
MRIなど、脳の検査もしたが、原因は分からず医者も首をひねるばかりだった。
523彼女との世界3/7 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/12(日) 23:57:02.92 ID:g2Qb1B9f0
それから、彼女との生活は大きく変化した。
 話すことができないことは私の想像を遥かに超えて、彼女を打ちのめしたらしい。その落ち込みっぷりは凄まじく、
当初は食事も喉を通らず、突然泣き出すほどであった。それまでの気丈な彼女の姿はなく、弱り切った彼女の姿に私自身、心が痛んだ。
 これが男の性なのかは分からない。しかし、弱った動物というのは守りたくなるものらしい。今まで憎々しげにしか思えなかった彼女が、妙に愛らしく思えてきたのだ。
 仕事も上司に無理を言って、二週間ほど有給を取り、彼女につきっきりで面倒を見て、俺がついているから、と励ました。出世などもはや度外視だ。
 その甲斐あってか、徐々に彼女も元気を取り戻し、筆談で意思疎通も図れるようになった。簡単なことは手振り身振りで伝えられる。
由紀子が私に頼みごとをするときはこれまで、命令口調で「あれやれ、これやれ」だったが、彼女も私に感謝しているらしく、
頼みごとがある場合は、手を合わせて、上目づかいに「お願い」のポーズを取る。
 それらすべてが可愛らしく、恋人の時に戻ったような幸福感に包まれた。
524彼女との世界4/7 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/12(日) 23:58:31.70 ID:g2Qb1B9f0
そうした生活が半年も続く中、突然、由紀子が「実家に帰る」と言いだした。
 どういうことだ、と問いただすと、
 「話すことができない以上、あなたの迷惑になる」
と申し訳なさそうな顔をして紙を差し出した。
 私は慌てた。彼女が出て行ってしまうことは私の本意ではないのだ。そんなことはしないでほしい、と必死に説得をするも、彼女の決意は固く、ガンとして言うことをきかない。
 もはや、彼女を引きとめるには、再び、彼女を喋らせるようにするしかないだろう。
 そこまで考えて思いついた。彼女が話せなくなった原因は自分が神社に祈ったからではないだろうかと。再度、神社に彼女を連れていき、神に祈れば、あるいは……。
私は覚悟を決め、由紀子に事の一部始終を打ち明けた。由紀子は「そんなの偶然よ」と相手にしなかったが、必死に神社へ来てくれ、と頼み込む私の姿に根負けし、神社まで来てくれることになった。
525彼女との世界5/7 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/12(日) 23:59:18.64 ID:g2Qb1B9f0
以前来た時のように街外れの神社はひと気がなかった。これなら願い事もやりやすい。
由紀子を連れて、賽銭箱の前に立つと覚悟を決めて祈った。
「神様、神様、由紀子が話をすることができますように」
 パンパンと柏手を二度打って、深くお辞儀をした。
 これでしゃべれるようにならなければ、彼女は俺の元を去ってしまう。それだけは避けなければ。こんなに神に祈ったのは人生で初めてというくらい必死に祈った。
 由紀子は私の様子を見て、口をパクパクさせていると、声を発した。
 「今すぐ、出世できるようにって祈って!」

<了>
526 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/13(月) 00:00:20.17 ID:sEf9PcJq0
すいません、7レスじゃなくて5レスでした、申し訳ない
527漫研少女とゴミクズ物語 3/7 ◇1ImvWBFMVg:2010/12/13(月) 00:01:13.79 ID:CyR+JFex0
 すると部員の中の一人で、変態の名を欲しいままにしている、高村透という男が声を上げた。
「ほう、君はなかなか分かっているようだ。少年誌から下ネタが減り始めてからだいぶ経つ。下ネタは世界共通言語だからな」
 コイツは何を言ってるんだろう。赤庭は頭が痛くなってきた。だが少女は喜んでいた。
「素晴らしいです。ウンコ・チンコ・マンコ。最高ですね。やはり漫画太郎先生は偉大です」
 よく分からないスイッチが入ってしまったようだ。彼らが何を言っているのか赤庭には分からなかった。そして分かりたくなかった。


 ――― 卍解!ブラ解放!斬魄乳!
「ぬっ!何という美乳だああああああ!いっくうう!」
「滅!」―――

「パロディネタとしては微妙かもしれませんね。刀の代わりが胸じゃあ強さがよく分からないし、後々に広がらない気がします」
「まあな、思いつきだし。ありがとう牧野。部長はどうですか」
「いや、俺に聞くな」
 美少女が下ネタのラフ原稿にダメだししているという、少々シュールな絵にもだんだんと慣れてくるから不思議だ。
 新入生たちがやってきてから、一ヶ月が経とうとしていた。下ネタ好きの少女。
 赤庭がやっているのは同人誌系のエロ漫画系だ。もちろん下ネタも嫌いではないが、今一見ていてずっこけてしまうのだ。
 部室でくつろいでいると、放送で顧問から呼び出しが入った。
『漫研部長の赤庭、赤庭。放送を聞いたら職員室の細野の所まで来ること』
 何事だろう、珍しい。赤庭は呼び立てに従い、職員室に出向いた。
 細井は顧問といっても完全に放任主義なので、まったく部に顔を見せない。部の存在自体、ほとんど忘れているのではないかと疑うほどだ。
「何の用ですか、先生」
 声をかけると、細井はいつになく神妙な顔つきで、すぐに赤庭を放送室に連れていった。何か聞かれたくない話なのだろうか。
「お前らなぁ……。頼むから面倒は起こすなと言っておいただろう、赤庭よう」
「へ?」
「今日部室見て驚いたわ。あの娘さん、うちの理事のお孫さんだぞあれ」
 あの牧野という少女が理事のお孫さん?
「いや、え、だって。理事のお孫さん?そんな……先生にも、ちゃんと名簿だって出したのに」
「知るかバカ。そんなのいちいち見てるわけないだろ。おい、お前ら例の変なの、あの娘に見せてないだろうな」
「もちろん見せてますよ。むしろ本人が一番ノリノリです」
528以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 00:02:50.02 ID:CyR+JFex0
ってことで ◆1ImvWBFMVg氏の3/7は>>527でした。
PCないからこんなことになるんだよ!
メアド晒せば買ってあげるっていつも言ってるでしょ! まったくもう!

で、残りの転載開始します。

あ、誰か余裕のある人作品一覧とか作っててね。自分つくらないから。
529みかんごっこ1/2 ◇afmE4bWECQ:2010/12/13(月) 00:03:34.96 ID:CyR+JFex0
 地味で小さくてマイナーで情けなくて薄っぺらくてよく雨に濡れておる地元新聞の連続小説を楽しみに読んでいますこの頃。
なんでも伊坂幸太郎さまのファンであるらしいこの書き手さまは御年十八歳という若さにして私の心をわしづかみにしてござい
ます。しかしごく最近になって淡い色の恋愛模様が黒い嵐のごとくかきけされ、男どもの二人が燃えて炭となりライバル女が崖
から滑り落ちて串刺しになってしまうという恐ろしい展開をコミカルにお書きになさってからは、どうしてもお元気ですかなど
と、精神状態を気遣うファンレターを書きたくなる思いにゆらぎゆらぎしながら、楽しく楽しく読ませていただいていおりまする。
 ある日のこと、それは『みかんごっこ』の最終回の日でした。ファンレターには必ず応えると言っていたのはどの口だ、ええ度胸
しとるのと、髪を爆発させながら読ませていただきましたそのオチに、黒幕がとうとう顔にまきまきしていた包帯をとりましたが、なんと
顔の正体に新聞記事風の写真を貼っているのには笑わせてもらいました。なんというええアイデアや、と私はほっこりしたのもつかの間、
その下にペンネームらしきものが添えられているのですが、あろうことがそれは私のものではありませぬか。心臓が跳ね上がってよくよく
その写真のやろうをみてみると、なんとまあ、私の写真じゃあありませんか。私は怒りにかられてピッポッパと電話をかけました。

 私の個人情報を載せてしまったことはお詫びになっていただきましたが、その顛末というのも、もう一クールにあたり、作家さまが
物語をつづけますゆえ、どうかこの出来心をお許しくださいまし、と素直に謝られては、どうも気持ちのええもので、うんうんと
ぜんぜんこんなド田舎で写真を使われたくらいでなにも怒る私ではないのですよ、おほほ。と言ってやりました。母は褒めてくださいまし
たが、ぜんぜん関係のない兄上が、間接的に俺の個人情報が、うあああと発狂なさって部屋に閉じこもったきり出てきません。まあ
兄上のことはよくわかりませんので、この文章でさえももしくは、前田拓郎くん(22)は気になさるかもしれません。ひっひ。

 怒られました。怒られました。あれは偽名なのに、それが幼稚園の頃のともだちの実名に似ているからと言ってぽかぽかと怒られました。
なんですか。もうかまってられません。それにしても、今日からはじまった『真・みかんごっこ』は実に面白い内容です。前回までのお話は
「未完」ということで、次の主人公はなんと私、のペンネーム、「天皇万歳子」が使われることに決まりました! なんともうれしい。うれ
しい。天皇万歳!

 今日は私も作家のあられゆきさまのところに出向いて、いっしょにお話をしてくださいと言われました。なになにと聞けば、なんとこの
インタビューが編集されてまるまるどかんと、『みかんごっこ』の中に含まれるというではありませんか。私、いえ、天皇万歳子は大感激で
あります。それにしても、これからどのような内容にしようかと話したのですが、どうも天皇万歳子は言葉を発することが苦手なキャラクター
らしく、いつも饒舌なのは紙面の上だけであるという、にくい性質をもっているのが発覚して、いいことを考えたと、あられゆきさまが私の
後ろについてずっと執筆してもよろしいですか、と編集の方が提案するものですから、まあよいよい、とお金をいただきました。ありがとう
さんまんえん。かけるななひくさん。
530みかんごっこ 2/2 ◇afmE4bWECQ:2010/12/13(月) 00:03:58.20 ID:CyR+JFex0
 それ以来わたしの後ろには絶えずあられゆきさまがいらっしゃいます。半年ほどのおつきあいですがよろしくお願いします。と申して家にあ
がると母と父はもう大喜びで、なんてかわいいあられゆきさまと絶賛のあらし、しかしそのことをまるまる『みかんごっこ』に書いたわけですから
どこぞの地下牢に住んでいるやうな醜くおぞましい嫉妬に燃える筆の力も発想もくそもない女どもから反感の波がきまして、編集者のかたも
頭を抱えましたが、一方では面白い企画ではないかと、応援してくださる人々もいて、光と闇を行ったり来たりするように続けていこうと落ち着
いたのもつかの間、出ました。私の兄上が、ちょいとちょいと、これはどういうわけですかな、と自ら本名で登場なさったのです。なんとお馬鹿な!
私は会話の中に兄の名前はださぬよう精一杯の努力をしていたのにもかかわらず、兄上は次のようにまるでもうこちらが見てるのが恥ずかしいあり
さまで、「僕は兄の和馬だ。平和の和に馬と書くのだ」と登場して、まもなく自身の登場を紙面にみて絶句なさり、ここ三日くらい姿をみせないで
いると、いつかおぞましい反感を叫んだ女どもから、とてもかわいらしい兄上ではないですか、もっと登場させてくださいよ、と編集にたくさんの
反響があったため、半ば強引に兄上を登場させることにしました。

 私こと天皇万歳子はキック牧師ングなるものを始めることになりまして、牧師相手に殴る蹴るの日々をおくっております。憎しみを筋肉に変えて、
はるばるアメリカを訪れ、コーランを燃やすという牧師の演説に飛び込んで牧師の尾てい骨が粉々になるまで蹴ってまいりましたが、裏ボスの
黒肌牧師が登場してからはいよいよ、お話は盛り上がり、天皇万歳子はいまでの集大成である元気玉をモチーフにした神風魂を集めた一蹴を決めて
やったのですが、もうまったく黒肌牧師には歯がたたず、前歯の欠けた片足ギブスの状態にされて泣く泣く帰国したのであります。実家にもどると
ファンレターのようなものが山ほど私の家に届くようになりまして、兄上はその頃からめきめきと精神のビルドアップに成功しまして、どこか
吹っ切れたようすで、毎度毎度登場することになりました。そのうち物語は天皇万歳子をめぐるマフィア同士の熱い銃撃戦にもつれこみ、流離いの
ガンマンがとうとう兄上を追い詰めるところで次回は最終回とのことで、夜が明けるとさっそくその決着がつきまして、兄上は見事流離いのガンマ
ンによって蜂の巣にされておりました。

<了>
531白黒の旅 1/7 ◇FcModpyaRc:2010/12/13(月) 00:04:24.98 ID:CyR+JFex0
 ――二人――
 魔法使いの少女は死体だらけの村を通り過ぎようとしていた、が、一人の飢え死に寸前の少年と出会った。
 少女は魔法で食べ物を作って、少年はそのごちそうをぺろりと平らげたあと、「ありがとうございます。このご
恩は忘れません」と少女に跪き頭を地面に擦り付けて、涙を流して感謝した。
 少女はこの世のしがらみが嫌で一人旅をしていた、が、その一人に寂しさを覚えていた。
 生まれてからずっと一人だったから、だから、つい、少年にこう言った。
「少年よ、どうせ今から行く当てもないでしょ? だからさ、一緒に旅しない?」

 ――樹海――
 ジジジジと虫のさざめき、クワークワーと鳥の鳴き声、ギャオンギャオンと獣の叫び声、それらは重なり合いエ
キゾチックな不協和音を成して辺りを反響する。
 生い茂る木々の隙間から零れる無数の光は、明るすぎず、暗すぎず、優しく二人を照らす。
 継ぎ目無き真っ白な絹のドレスを纏った銀髪少女シロと、安い黒い布生地の半袖半ズボン姿の黒髪少年クロ。
 シロは陽気で明るい笑顔を浮かべながらこの世界を楽しむように意気揚々と右手を振り回して、クロは臆病で弱
気な表情を浮かべながらこの世界に怯えるようにシロの左手を握り締めて。
 シロとクロは草木に覆われた地面をガサガサと踏みしめながら歩いてゆく。
 シロは赤色に煌く宝石のような瞳で樹海から何が出てくるか分からず怖がるクロ見て、「大丈夫」と笑顔で囁いて。
「クロは可愛い顔してるんだからさー、そんな表情は勿体無いぞー? 笑いなよ。ハハハッー! ってさ」
「シロ様のほうが――」
 おどおどとしたクロの唇を、シロは柔らかい親指と人指し指で優しく摘んで、「メッ」と嗜めた。
「――様付けはダメって言ったじゃない。私たち、友達でしょ? 友達は友達のことを様付けで呼ばない」
「……シロ。シロ、シロのほうが、可愛いよ」
「……当たり前じゃない! わたしは生まれつき可愛いよ!」
 シロは変に意地を張ってクロにまくし立てる。
「それより、ほら、笑って、笑って! にぱーってさ」
 言うが早いや、シロがクロの両頬を引っ張って無理やり笑顔を作った。不器用なクロの笑顔を見て、シロはそれ
が可笑しくて「あはははー」と快活に笑う。それに釣られて、クロも自然に屈託無く「あはははー」と笑う。
 二人の「「あはははー」」は樹海に響き渡り、その「「あはははー」」は余計なモノにまで届いてしまった。
 ドサリドサリと轟く足音。メキメキと折られゆく草木。グオオオ! とあからさまにヤバイ叫び声を響かせる。
 そして立ち止まるシロとクロの目の前に現れた、高さ五メートルの、ゴツゴツの、紺色の獣。この樹海の、主。
532白黒の旅 2/7 ◇FcModpyaRc:2010/12/13(月) 00:04:41.17 ID:CyR+JFex0
 その鋭い牙の羅列から長い舌が覗いて、そこからぽとぽとと透明な唾液が滴る。唾液は草木に染み込んでゆく。
 クロは怖気づいて尻餅を着く、が、シロはそんなクロとは対照的に、獣に劣らず凶暴な笑顔を浮かべていた。
「King of Swords Wands Cups Coins」
 突如シロのいる空間から、シロ以外の音が消える。シロが纏う純白のドレスがふわりと重力を無視して翻る。
「我、カパラーのアツィルトにより力を借りし者。四大元素(リゾマータ)たる炎よ。獅子宮よりその姿を現せ!」
 無限もの極小の灯火がシロの周りに出現し、灯火は連なりながら、あっという間に大きな五芒星を地面に描く。
「焼き尽くせ、炎を示す者(サラマンダー)」
 ……次の瞬間には、紺色の獣は焼け焦げて地面に這いつくばっていた。

 ――洞窟――
「クロ、今夜は焼肉よっ」
 シロは気分良さげに鼻歌を小さな洞穴に響かせながら、何も無いはずの空間から調理道具を取り出してゆく。
 クロは岩壁にもたれながら、そんなシロをなんだか朗らかな表情で眺めていた。
 二人は樹海を抜けて、暗くなってきたので、ちょうど良い感じの洞窟を見つけたこともあるので、一夜をここで過
ごそうと。シロが魔法を使って灯火を作ったお陰で、洞窟であることを感じさせない明るさだった。
 その明かりが映すシロとクロの服には、シロによる魔法のコーティングによって汚れ一つ着いていなかった。
「今更だけど、シロはさ、何で旅をしようと思ったの?」  
 クロは寒そうに両手を擦りながら言う。それを見たシロが「ken」と呟くと、たちまち洞窟の中が暖かくなった。
「旅がしたいから、……というのもあるけど……わたしさ、自分で言うのも何だけど、あっちじゃ結構名の馳せた魔
法使いなんだ。もう、出会い頭に一般市民が跪くレベルの。生まれた時から貴族としてチヤホヤされて、魔法使いに
なって、またチヤホヤされて。なんだか、それが嫌になっちゃって」
「……そ、そんな人に、ぼくが気安く話しかけても、いいのかな……。ぼくみたいな、浅黒い肌を持った卑しい血族
の人間が、白い肌を持った貴族、更には魔法使いのシロ様に。ぼくなんかが」
「だから様付けで呼ばないで、って言ってるでしょ。わたしの、……唯一の友達なんだから、ね」
 シロは、時折悲しげな表情を見せる。クロは、自分が卑しい血族の人間、シロの傍に居てはならない人間だと言う
事を自覚している。けれども、悲しげなシロの姿を見るのは嫌なので、シロの傍に居たい、とクロは思う。そして、
実はそんなことなど一切関係無しに、シロの傍に居たい、とクロは思う。
「それに、卑しい血族だとか貴族だとか、そんなの関係無いじゃない! わたしもクロも、同じ人間よ……」
 シロとクロは、眼を合わせずに、二人して地面で燃えゆく明るい灯火を眺めながら、しばらくの間……
「ああ! いや! わたし、湿っぽいの大嫌い! ほら、肉食べましょ肉!」
533白黒の旅 3/7 ◇FcModpyaRc:2010/12/13(月) 00:05:00.54 ID:CyR+JFex0
 シロはぶっきらぼうにドレスの袖で湿った目元を拭って、何も無い空間から鉄串で突き刺した血の滴る生肉を取り
出して、即座にがぶつく。
 その瞬間に生肉であることに気づいたシロは、顔をしかめながら、何かをブツブツと唱えて、――その生肉を眼も
眩むような炎がボォッと覆った。一瞬のちに炎から現れた肉は、もう生肉では無く、こんがりと綺麗に焼けた肉。
「ワイルド感溢れるこんがり肉の出来上がりねっ」
「調理器具、用意した意味なかったね」
 二人はまた笑い合い、「「あはははー」」という声は洞窟の中を往復していった。
 シロとクロはびちょびちょと愉快に油を飛び散らせながら、こんがり肉を豪快にがつがつと食べていった。
 やっぱりシロはこうでなくちゃ、とクロは思った。
 
 ――草原――
 二人が歩く場所は、四方を見渡す限り果てが無いような、一面が風に揺れゆく緑色で染められた場所。
 空を見渡せば、雲一つ無い、一面が晴れた青色で染められた場所。
 草原と青空、緑色と青色だけの世界に、白色と黒色は、二人は居る。
 シロとクロは、まるで二人だけがこの世界にぽつんと存在しているような感慨を覚える。
 ふと風が吹いた。
 風は生き物のように草原を揺らしながら、その風の軌跡を自由気ままに描きながら駆け抜けていった。
 風たちが草原を揺らして、その緑色の濃さを変えてゆき、色とりどりな緑色に。
「なんだか、自分の悩みが、すごいちっぽけに感じるわ」
「そうだね、シロ」
 風は草原だけではなく、遥か地平線を憂うように眺めるシロの銀色の長髪を揺らす。
 ばさりばさりと銀髪がたなびくその優雅な姿に、クロは眼を奪われた。
「ティータイムにしましょ」
 シロは自身の銀髪を魔法で風に揺られないようにし、そして何も無い空間から高級そうな木製テーブルと椅子を取
り出した。それらを地面にどさりと置いて、二人は椅子に座る。
 静かだった。びゅうびゅうと鳴く風の音、ざあああと風に揺られる草の音、二人が作り出す音以外、何も無かった。
 シロがティーセットを空間から取り出して、優しく微笑みながら紅茶を作るその姿は、見事にサマになっていた。
「どう? 美味しい?」
「……美味しい」
「そう、良かった」
534白黒の旅 4/7 ◇FcModpyaRc:2010/12/13(月) 00:05:20.15 ID:CyR+JFex0
 二人は、ゆっくりと紅茶を味わいながら、無限もの草原と青空を堪能していた。
 シロとクロは、まるでこの世界が二人だけの世界であるような感慨を覚えていた。

 ――黄昏――
 廃棄された古城のなか、シロの作り出す灯火を頼りにして、真っ暗な城の中を、コツンコツンと寂しげな音を立て
ながら二人は歩いてく。辿り着いた最上階の扉を開けると、まず眩い朱色が二人の眼に飛び込んできた。
 暗闇に慣れた眼が、徐々に明るさに慣れてゆく。
 太陽が、連なる山々に隠れようとしていた。太陽が、沈む寸前に放つ、最後の輝き。
 薄命の黄昏は、世界を包み込んで、そして二人を魅了した。
「……誰そ彼」
「どうしたの? シロ、」
「夕暮れになるとね、薄暗くなって、顔の見分けがつかなくなっちゃうんだって。だから、誰だ彼は。誰そ彼」
「面白いね」
「クロ、わたしが、誰だか分かる?」
 シロがクロを振り向く。シロは黄昏を反射してなお輝く。純白のドレス、銀髪を煌かせて。
 ……確かに、シロの顔に黄昏が差して、それがシロの顔なのかどうか分別が付かない。
 それでも、
「君は、シロだよ」
 今この場所には、二人しかいないのだから。

 ――砂浜――
「クロ! 早く来てよほら!」
「うん分かった! ちょっとまって!」
 クロは戸惑いを隠せなかった。
 シロはあの優雅な純白のドレスを脱ぎ払い、長い布で胸を隠すように縛って、白い絹のパンツ一枚なのだ。
 海水が行ったり来たりを繰り返す砂浜をばしゃばしゃと無邪気に駆けるシロ。
 まるでそんなことなど一切気にしていないかのような、純真無垢な姿。
「おうい! はやく!」
 シロは右手を必要以上にぶんぶんと大きく振る。
 クロは戸惑った挙句、自分のそれに「反応するなよ?」ときつく戒めてから、黒い半袖だけを脱いでシロの元に
535白黒の旅 5/7 ◇FcModpyaRc:2010/12/13(月) 00:05:40.74 ID:CyR+JFex0
駆けて行った。
 するとシロは、追いかけるクロから逃げるように、どこまでも続く砂浜を駆けていった。
 シロに来いと言われたからシロの元に行こうとしているのに、そのシロはクロから遠ざかろうとする。
 なんだかクロはいつになく意地になっていた。
 シロ目掛けて浅い海水をばしゃばしゃと踏みしめながら、全速力でクロは疾走する。
 全速力のクロから全速力で逃げようとするシロ。
「シロ待てー!」
「あははー、クロさんこっちだよー?」
 傍目から見れば、じゃれ合っているようにしか見えなかった。
 しかし、少年少女の生身の体力となれば、当然、少年に分があった。
 逃げゆくシロの右手をクロはがっちりと掴んだ。
 その拍子にシロは躓いてこけて、それに釣られるようにクロもこけた。二人は絡み合うようにこけて、海水をば
しゃんと散らしながら、砂浜に、まるでシロにクロが覆い被さるように。
「「……」」
 二人はしばらくの間、無言のままフリーズしていた。

 ――夜空―― 
 夜空に浮かぶ無数の星々を眺めながら、二人は語らっていた。
「シロ。僕の左頬、いまでもヒリヒリするよ」
「ク、クロが悪いんじゃない! そ、その気でもあるのかと思ったわ!」
「その気?」
「な、なんでもない! なんでもないったらなんでもない! はい終わり!」
 真っ白な頬を真っ赤に染めながら、シロはふんっとそっぽを向く。
 二人は後ろ手を支えにして星空を眺めている。
「……その気がどうかは知らないけど、ぼくは、シロのことが好きだよ」
「はい!?」
 シロは突然のことでたじろいで、赤くなった頬を更に紅く染めて。
「当たり前だよ。初めて会って、どうしようもない何の価値も無いぼくの命を救ってくれて、行く当てのない取り得
の無いぼくを、旅に、色んなところに連れていってくれて」
 クロは回想するかのように、真上を見上げる。ちょうど、あとほんの少しで満ちる月を眺めて、クロは語る
536以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 00:05:55.11 ID:Oip3dO9g0
まとめは引き受けた。
といいたいが眠い。途中で力尽きるかも。
537白黒の旅 6/7 ◇FcModpyaRc:2010/12/13(月) 00:06:07.95 ID:CyR+JFex0
「ぼくは、あのとき、もう何も思ってなかった。村の人間も、家族も、全員飢えて死んで、ぼくだけが、何故かまだ
死ななくて。自殺する気力も無くて、本当に、どうしようもなかった。生きようとも、死のうとも思わなかった。
でも、奇跡が起きたんだ。シロが、あの場所に来て。シロがぼくに食べ物を与えてくれた。ぼくは無我夢中で食べて、
食べきったあとから、また、生への執着が芽生えた。生きたい、生きたいってね」
「わたしは、そんなつもりは無かった。目的もなくこの世界を歩いて、ずっと歩いて、ただ歩き続けて。そうしたら、
たまたまクロが生きていただけ。だからわたしは、クロを救った。もっと早くあの場所に来ていれば、もっと多くの
人を救えた。でもわたしは、自分から救おうとしない、たまたま目の前にいた人間しか救えない、救わない、
ちっぽけな魔法使いだよ」
「だったら、もっと、救おうよ」
「……え?」
「ぼくは本当に何も出来ないけど、シロは、立派な魔法使いじゃないか」
 クロはふぅと一息いれて、今度はシロの顔を見る。シロも、クロの顔を見る。
「シロは、チヤホヤされるのが嫌で、街を去って、この世界を彷徨っていたんだよね。でも、チヤホヤされるってことは、
貴族だとかそんなの関係無しでシロのことをありがたいと感謝しているからで、何故感謝されるかと言うと、
シロは魔法使いとしてその人たちを救っているからじゃないのかな?」
「……そうだね」
「だから、ぼくを救ってくれたみたいに、もっと、人々を救ってくれたら……ぼくは嬉しいな」
「……うん。分かった」
 シロは、瞳に涙を浮かべながら、クロに抱きついた。
「そうする。わたしは、もっと人々を救う。でも、これだけは聞いて、クロ。わたしも、クロのことが、好きだよ」
 シロの差し出す唇に、クロは唇を重ね合わせた。
 星空の下、二人の少年少女は短いキスをした。
 けれどもクロは、それ以上のことをしようとしなかった。
 決して、幼くて淡い感情に浸っていたからというわけではない。
 クロは夜空を見上げる。
 あとほんの少しで満ちる月を眺めて、クロはそれを羨ましく思った。

 ――白黒――
 二人は、共に、シロのいるべき街に帰ってきた。
 シロは高貴にして偉大なる魔法使い。
538白黒の旅 7/7 ◇FcModpyaRc:2010/12/13(月) 00:06:32.39 ID:CyR+JFex0
 当然、人々は手放しで喜んでシロを祝福した。
 一方、クロは違う。
 クロの浅黒い肌の色を見るだけで、人々は、「卑しい血族」とクロを罵り、軽蔑し、侮蔑し、迫害した。
「奴隷ごときの存在が何故シロ様の手を握っている!?」
「ふざけるな! お前が居ていい場所じゃないんだよここは!」
 人々の理不尽な怒りは連鎖し、街中を巻き込んで叫びを、「出ていけ!」と、共鳴させた。
「止めて! みんな! お願いだから止めて! クロは、わたしの大切な友達なんだよ!」
 悲痛な表情で訴えるシロの声に人々はどよめくが、すぐにそれは納まり、理由の無い差別が始まる。
「友達だなんて滅相もない! こやつはただの奴隷ですよ!? 人でなしですよ!?」
「そうです! 卑しい血族の畜生です! こいつがシロ様と一緒にいるだけで、シロ様が穢れてしまいます!」
「――こんなやつ、さっさと殺してしまおうか!」
 誰かが最後にそう叫んだとき、シロは「King of Swords Wands Cups Coins」と呟いた。
 突如シロのいる空間から、シロ以外の音が消えた。シロが纏う純白のドレスがふわりと重力を無視して翻った。
「我、カパラーのアツィルトにより力を借りし者。四大元素(リゾマータ)たる炎よ。獅子宮よりその姿を現せ!」
 魔法を、使おうとしているのだ。魔法を使って、人々を焼き尽くそうと。
 そんなシロの右手を、クロは強く握った。
 音は戻り、ドレスは元通り重力に従って垂れる。
「シロは、この人々を救うべきなんだ。そんなことを、してはいけない」
 シロの両目からとめどなく零れ落ちる涙を、クロは指で拭って、最初から全てを悟っていたような口調で言う。
「シロとは、ここでお別れだね。ぼくは、今まで楽しかったよ」
 嗚咽を漏らし続けて喋ることすらままらないシロの銀髪を撫でて、最後にクロは言う。
「奇跡をくれて、ありがとう。ぼくの大切な、シロ」
 クロはシロの元を去っていった。
 人々がざわざわと道を開けてゆきながら、クロは街の外まで出て、そうして、クロは世界のどこかに去っていった。

 ――一人――
 シロは人々を救う。
 けれどもそこに、意思は無く、ただ使命感だけに動かされ。
 楽しきモノクロの旅の日々は過ぎ去って。
 今では、何も無い、真っ白な日々だった。                              END
539【品】耳に届け 1/1  ◇Jtfw/JwDtc:2010/12/13(月) 00:06:59.97 ID:CyR+JFex0
 私が高校3年生だった時分、夏頃にオープンキャンパスという名目でいくつかの大学へ行った覚えがある。
体験講義の内容などは思い出せないが、不思議と記憶に残っているのは、昼食に利用した各大学の学生食堂
であった。と言っても、どこそこの大学のメシが美味かったとかそういう話ではない。
 学生食堂というものはどこの大学でもそう変わらず、学生のたまり場、よく言えば憩いの場として利用されてい
るものなのだろう。一人寂しくカレーライスなりラーメンなりを食べる私には、いつも「ざわざわ」というか「どよどよ」
というか、周囲の学生たちの会話が雑音として聞こえてきた。
 友人同士でオープンキャンパスに参加したのであろう、大学の資料を広げながら楽しげに話すどこかの高校生。
オープンキャンパスだというのに休講ではないのか、なにやら気難しそうな顔で議論する大学生とおぼしき私服の
青年たち。彼らのような人々はどこの大学でも見かけた。無論、会話の内容は同じではないのだろう。それでも
私の耳に届くのは「ざわざわ」か「どよどよ」であり、そこに個性を見出すことはできなかった。
 そんな事を思い出したのは、今現在、私が通っている大学でオープンキャンパスが催されているためだろう。
講義の合間、学生食堂で一人寂しくカツ丼を食べる私の耳に、高校生たちの元気な声が聞こえてくる。
 カツ丼を食べ終え、水を飲んでいる私の前に、あなたが座った。いつものように挨拶を交わし、今日のオープン
キャンパスや明日の講義など、特に重要でもない事についてだらだらと話し続ける。
 なんとなく先程の回想の話題を振ってみたところ、あなたは少し考え込むふりをした後、食堂の片隅に目をやった。
つられて私がそちらを見ると、そこには一人昼食をとっている少年がいた。見慣れない制服を着ているところ、
他県からオープンキャンパスに来た高校生なのだろう。
 あなたは彼を見ながら、その時の私に似ている、と言った。「その時」とは先の回想の事だろう。私たちの会話も
あの子には雑音だ、とも言った。
 あなたの言葉に、私は弾かれるように立ち上がった。どうするつもりかと、あなたが見透かした目で聞く。おもしろ
そうだから、と私は返した。
 その時のあなたと同じことをしてみよう。深い理由はない。あるのは興味、好奇心。彼はどう反応するだろうか。
私と共に雑音の中に入ってくれるだろうか。それとも逃げられてしまうだろうか。
 私は、彼の居る方へと歩き出した。

                          おわり
540以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 00:09:51.87 ID:CyR+JFex0
現在、週末品評会244thの投票受付中です。今回の品評会お題は『三角』でした。
投稿された作品は■まとめ http://yy46.60.kg/test/read.cgi/bnsk/1291881119// -週末品評会245th『会話』投稿作品まとめ- にてご覧頂けます。
投票期間は2010/12/14(火)24:00:00までとなっております。

感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
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たくさんの方の投票をお待ちしています。 
時間外の方も、月曜中なら感想、関心票のチャンスがあります。書いている途中の方は是非。
541以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 00:10:50.69 ID:CyR+JFex0
現在、週末品評会245thの投票受付中です。今回の品評会お題は『会話』でした。
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542以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 00:12:11.23 ID:CyR+JFex0
ごめん、修正中にエンターおしちった
クレームは自分まで!

ちょっと席をはずすけど、それ終わったらまとめするね
もちろん誰かがやってくれるならその人にありがとうというけれど!
543以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 00:19:44.43 ID:4wulkkcZO
おつー
544以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 00:25:01.86 ID:CyR+JFex0
あ、まとめ誰かやってくれてる。
まとめてくれてる人ありがとう。
545以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 00:25:41.75 ID:fP2nquT30
>>542
おつー

パパー、僕、MacBookAirの11インチと新しいMacMIniとディスプレイと、
Core i 7とメモリ4ギガと最新のグラボ積んだWin7のノートが欲しい
メアド晒したら買ってくれるー?
546以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 00:28:05.43 ID:CyR+JFex0
>>545
ぺっ、ぺっ
547以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 00:50:37.93 ID:vm1I0HavO
ようやくバーボン解けた
もう連続リロードなんてしないよ

まとめの人乙
548以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 00:55:59.68 ID:vm1I0HavO
いつものなんたら

No.01 Family ◆RxSveB/Q9c氏
No.02 通過儀礼 ◆Mulb7NIk.Q氏
No.03 理性も知性も糞くらえ ◆Lq1ieHiNSw氏
No.04 聖戦ののろし ◆GYYOB6B/p.氏
No.05 『めとめ、声と声』 ◆Qvzaeu.IrQ氏
No.06 非行少女 ◆4gskEp4zKs氏
No.07 フリートーク ◆HmfYvBHWkM氏
No.08 「そのときはよろしく……」 ◆pxtUOeh2oI氏
No.09 真剣ゼミナンパ講座 ◆ihO9dxzf9I氏
No.10 漫研少女とゴミクズ物語 ◆1ImvWBFMVg氏
No.11 彼女との世界 ◆k.D2pTMHV.氏
No.12 みかんごっこ ◆afmE4bWECQ氏
No.13 白黒の旅 ◆FcModpyaRc氏
No.14 耳に届け ◆Jtfw/JwDtc氏
549以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 01:00:44.95 ID:Oip3dO9g0
まとめ終わったよ。つかれた。
550以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 01:22:05.59 ID:fP2nquT30
ありがとう、おつかれさま
やっぱ7レスは多いな
551以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 01:28:26.98 ID:MXZCBnAz0
今回も多いなー
これでクリスマスに参加人数ガクッと減ったらおじさんちょっと悲しいよ?
552Yes or No(お題:会話) 0/4  ◆KC1zyS0wec :2010/12/13(月) 02:09:41.58 ID:QE31Uu9F0
くそーなんで締め切り寸前にネタを思いついちゃうんだ
わずかな希望にすがって、書いちゃったじゃないか
このままお蔵入りもなんだから、書き終わってほとぼりも冷めたし、投下しちゃうもんね
……こっそり時間外とかに入れてくれんかなぁ……
553Yes or No(お題:会話) 1/4  ◆KC1zyS0wec :2010/12/13(月) 02:10:38.64 ID:QE31Uu9F0
 世紀末も過ぎ去り、あのノストラダムスの大予言は杞憂に終わった。
僕は兼ねてからの入社試験に合格し、晴れてニューヨークで働くエリートサラリーマンになった。
幼いころからの憧れ、マンハッタンの摩天楼に通いつめる生活は、忙しいながらも充実としている。
高層ビルから見渡すニューヨークの街並みは、何処までも整然と広がる素晴らしい光景だ。
自らの人生で、これ程までの達成感と高揚感を味わった事はない。恐らく、人生で最も幸せなひと時になるであろう。僕は確信していた。
まさかこの美しく強靭な摩天楼が、九月十一日のあの日、脆くも崩れさるだなんて。
この世界貿易センターが、僕の人生で最悪の、忘れ去る事のできない場所になるなんて、その時に気づくはずもなく――。

 「た、助けて――助けてくれぇっ……ゲホッ、ゴホッ」
目の前のひび割れた壁、捻じ曲がった鉄筋、信じられないほど淀んだ空気、上も下もわからない瓦礫の中……。
目に見える全てが信じられず、僕は思わず目をつぶった。
どうして、どうして、こんなことになったのか。
錯乱した思考と、地獄のような光景の中、思い出される過去を紡ぐ。
僕と、職場の仲間たちが異常に気づいたのは、十時前だった。
僕は十時に休憩を入れていたので、ラストスパートに突入して集中しきっている時だ。
集中を乱す事件はその時起こった。ビルが大きく揺れ、何かが空を切る音と、爆発音のようなくぐもった音が響いた。
慌てる仲間たち。僕も倒れた珈琲カップを拾い、辺りに同調して疑問を発した。「何が起こったんだ」、と。
ボスは確かに、「慌てるな、何かの火災事故だろう。皆、集まれ。状況確認を――」と言って……。
ああ、そこからが判らない。壁も床も砕け散り、しばらく落ちる感覚があったような気がする。
気がつけば僕はこの地獄の中にいて、仲間たちは全員消えていた。
自らの身に何が起こったか判らない。これ程恐ろしいことはない。
誰か、誰かいてくれ! ぜいぜいと切れる息を殺して、ぎゅっと目を閉じる。何も見えない闇すらも、地獄の中ではかえって安心できるものだった。
554Yes or No(お題:会話) 2/4  ◆KC1zyS0wec :2010/12/13(月) 02:11:33.84 ID:QE31Uu9F0
聞こえるのは、何かが燃える音、何かが崩れる音、何かが壁を叩く音……。!
わずかだが、はっきりと聞こえる! コッ……コッ……と、連続で、壁を叩く音が。
「……ぁ、誰か、いるのか! 返事をしてくれ!」
あらん限りの声を響かせる。耳を頼りに音源を捜すと、意外にもそれは僕のすぐ横から聞こえていた。
「聞こえるかぁ! 返事をしてくれ!」
――……ガッ、ゴン!
今度は、確かな音。間違いなく、この壁の向こうには誰かがいる。
――ゴン!……ズッ……ゴン!
必死に壁を叩いているのが伝わってくる。不思議なことに、言葉は一切聞こえなかった。
「……ひょっとして、喋れないのか? ……返事をしてくれ。YESは一回、NOは二回叩いて……」
――……コッ……
通じた。安堵が僕に広がる。口はきけないらしいが、会話が成立したのだ。
「僕は、ペーター。知ってるかい?」
――……コッ、コッ
「……じゃあ、男? ……」
――コツコツ……
「そうか……」
隣の、僕と同じように生き埋めになった人は、女性だ。そして僕の知っている人ではない。
名も知らぬ女性との言葉を使わない会話。普段なら緊張するばかりだが、地獄の中での唯一の癒しのように思われる。
彼女と話をしなければ、暗くて狭い地獄の中で気が狂ってしまいそうだった。
「何があったか、知ってる?」
――コツ、コツ
「脱出できそうな所は見える?」
――……コツ、コツ
「……苦しい?」
――……コッ
「……僕もだ」
――……
このまま助けが来るまで、彼女と会話をするのも悪くない。そう思った。
彼女との、壁を隔てた、言葉と音の会話は、驚くほどに僕を冷静にしてくれる。
555Yes or No(お題:会話) 3/4  ◆KC1zyS0wec :2010/12/13(月) 02:12:14.14 ID:QE31Uu9F0
僕と彼女は、他愛も無い話を続けた。
彼女が、今年入社したばかりだと言うこと。
不安な毎日だったが、優しい仲間たちに救われたこと。
大学を出たばかりで一人身の寂しさはあるが、ここでの仕事は充実したものだと思っていること。
本当にどうでもいい身の上話でも、彼女は必ず答えてくれた。
彼女は僕の「僕は、助かって、帰ることができるんだろうか……」と言った呟きにも、即座に一回、壁を叩いてくれのだ。
会ったこともない彼女の姿は、とても優しく、暖かに思える。
現状が、僕の力ではどうすることもできないのは、とうに判っていた。
せめて彼女との、二種類の返事しかない不思議な会話で、気をまぎらわして助けを待とう。
分厚い鉄板の壁の向こうにいる、見たこともない優しい彼女に、僕は心の拠り所を見出したのだ。
「互いに助け合って、二人で無事に帰ろう」。地獄の中で、彼女にそう告げるのは当たり前のことだった。
――……コッ……
彼女の返事は、優しく、小さく、僕を救い出してくれるかのように、辺りに響き渡った。
556Yes or No(お題:会話) 4/4  ◆KC1zyS0wec :2010/12/13(月) 02:12:56.56 ID:QE31Uu9F0
「――――オイ、生きてるか! 生きてたら返事をしろッ!」
目を覚ますと、地獄には似つかわしくない光が、頭上から差し込んでいる。見ると、穴の上で屈強そうな男がこちらを覗き込んでいた。
どうやらいつの間にか気絶しまったらしい。体の節々が痛む。「ハイ、生きています」そう言おうとして舌がもつれた。
そこでようやく、口の中に砂利が大量に入っていたこと、彼らが待ちに待った救助隊であることに、僕は気がついた。
「動いてるな?! よし、引き上げろ! 待ってろよ若造。今行くからな」
「……ぁ、な、何が起こったんです?」
ようやく出た声は、ひどくしゃがれていた。喉が焼きつくように痛い。それで、彼女のことを思い出した。そうだ、彼女は今――?
「ぁ、あのっ。僕の隣に女の人がいると思うんです。早く救助に!」
担架を降ろし終わり僕を乗せようとしていた男は、その瞬間目を見開いて、僕を見た。
「女、だと……? ……お前あの娘の知り合いか」
自分でも、顔が明るくなっていくのが判る。救助班である彼らが知っている。つまり、彼女は――。
「いいえ。会ったこともありません。でも、話したことはあるんです。彼女は今どこに?」
「そうか……。俺らは確かに、すぐ隣の穴で若い女の子を見たよ。でもな……」
そう言って僕の顔を見た。その目には、深い悲しみと哀れみが現れている。
「……まさか……」
「ああ……鉄骨が、三本も体に突き刺さってた。殆ど瀕死の状態で、苦しみながら死んだに違いない。死因は出血多量だったからな」
「僕は、彼女と会話を……」
「会話なんかとても出来た状態じゃない。腕を動かすのがやっと、ってところだったらしい」
「…………」
「……引き上げるぞ。嫌な話して、悪かったな」
本当に申し訳なさそうに男は暗い顔をする。黙々と、僕を乗せた担架をクレーンに繋げた。
僕は、助かったらしい。しかし彼女はそうでなかった。
彼女は僕と会話していた時も、既に瀕死の状態だった。そんな中、僕の言葉に身を裂きながら、一回、また一回と、壁を叩いて。
彼女がどのような姿で、どのような思いでそんなことをしたのかは、判らない。
だが彼女は、僕を不安にさせないように、瀕死の体で会話を望んだ。だから僕の最後の問いかけにも、壁を一回だけ、叩いたのだ。
本当はもう、自分が助からないと判りながら……。

 一人引き上げられる中、壁をそっと一回、叩いてみる。
けれども、もう、その音の意味を知るものはいない。
壁の向こうからは、何の返事も返ってはこなかった……。     おしまい
557Yes or No(お題:会話) 4/4  ◆KC1zyS0wec :2010/12/13(月) 02:14:55.55 ID:QE31Uu9F0
チープな感動(笑)とやらを目指してみた
うへぇ、これで品評会狙うとか(笑)
558全感 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/13(月) 03:11:58.23 ID:fP2nquT30
全感

このマンガがすごい2010の結果が出る前から
オンナ編の1位と2位の漫画をすごい面白いと思ってた確かな読解力を持った人の全感です
オトコ編の1位を、すごいつまらないと思ってたのは内緒だ
559全感 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/13(月) 03:12:44.31 ID:fP2nquT30
No.1 Family 1/2 ◇RxSveB/Q9c
ずるい、ずるいぞ
俺が犬と猫大好きだと知ってこんなのを書いたのだろう
羨まけしからん
しいて言えば、もっと話がほしかったと思う
これだけだと羨ましい状況だと描かれただけなので
別に犬は犬用の奴で会話できて、猫は猫用ので会話できるでも
羨ましいし楽しそうだし
くそ

No.2 1/2 通過儀礼 ◆Mulb7NIk.Q
俺、お酒嫌いなんだよね
子供の頃ちょっと飲んでみろって飲んでまずかったし
今飲んでもやっぱりまずいし
文章はやっぱり上手なんだけどおもしろみにかけるような硬質すぎる感じか
今回は話も同じようだったように思う
意識してないということかもしれないが
>「バーボンにはここ、……中略……小さな楽園が見られるだろうよ」
の文章はあまりリアリティを感じない。広告の文章みたい
なんかこうもっと軽く酔った感じの、ふらっと静かに渡すほうがあるかなと思う
まあお酒のことはわからないがw
560全感 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/13(月) 03:14:44.02 ID:fP2nquT30
No.03 理性も知性も糞くらえ 1/7 ◇Lq1ieHiNSw
変態ですね。
特に下手だとは思わなかったのだけど、
これといって楽しいと思える場所がなかった
なんかちょっとだけおもしろいかなあ、と思わなくもないのだけど
最後の辺で
>「なあこの店、お香みたいなの焚いてるよな。一体何を焚いてるんだ?」
>「あ、気づいたあ? これハーブだよ。何か気分よくなってくるでしょ?」
セリフがやっぱり説明っぽいかなと
「この変な臭い何?」
「ハーブ」トリスはクリっとした眼でこちらを見つめる。「気分よくない?」
とか状況説明っぽいセリフは地の文の方に回した方が良いかも、この例は下手だが


No.04 聖戦ののろし 1/2 ◆GYYOB6B/p.
タイトルからしてわかっているんだろうけど
プロローグだけ読まされたようなせつない感じだ
テレパスの方を会話だとして書くけど、
私とか俺とかが主語が多い感じ
嬉しかったときに、「私は嬉しかったんだ」とか言わないように思う
文章的にはしっかりと書いてあった方がわかりやすいけど、
会話をしているキャラクタ的には読んでいる人へのわかりやすさなんて考えるわけもなく
自分たちだけで完結してるはずなのでその辺を考えると良いかもしれない
まあそうすると読んでいる人がわかりにくくなるので、バランスが難しいが
561全感 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/13(月) 03:16:16.57 ID:fP2nquT30
No.05 『めとめ、声と声』 1/7◇Qvzaeu.IrQ
これなんてエロゲ?
えりなが、えなりに見える
入院してもメールできるんじゃね? PCで
セリフなあ、悪くないと思うんだけどやっぱり一人が言って、
終わったらもう一人が言う小説的なパターンな感じなだよなあ
もっとこう入り乱れる感じが良いと思うんだけどね
このパターンを拡張しすぎると渡鬼みたいに一人が延々と説明をして
交代する奴になっちゃうし
ひとつひとつで悪いと思うようなことはないのだけど
話はそんなに思うところはなかった、よくあるモチーフかなと

No.06 非行少女 1/5◇4gskEp4zKs
最初、小学生くらいかと思った
模試のところで中学生かなと思った
高校生かよ!
悪ぶる為にたばこというのは使い古されているんじゃないだろうか
なんかもっと独自な点が欲しかったと思う
麻生みことの天然素材でいこうに、両親が不仲で離婚寸前の女子高生なキャラと
その話があったけどそっちの方がおもしろいかなと思う
まあ話は違うのかもしれないけど
そっちでは序盤はこれと似た感じで、離婚が決まった後は、娘を育てるという部分で協調し
離婚はするけど仲良くなるという感じだった
最後の一文は思わせぶりで、よさそうだけど、よくわからなかった
わかれば面白いのだろうか、それとも上手く機能していないのか
説明がもうちょっとあればわかりやすいかもしれない
ただわかる人がわかる状態ならばそれはそれで良いかもしれない
562全感 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/13(月) 03:17:01.92 ID:fP2nquT30
No.07 フリートーク 1/6 ◇HmfYvBHWkM
えーと……
えーと……
>天壌梨桜……高校二年生。主人公の同級生。前後ぉぉぉぉん!
これだけ特徴の部分がわかりませんでした
前後ぉぉぉぉん!
って何だろう? ばーか、たーこ、まーぞ!

No.08 「そのときはよろしく……」 1/6 ◇pxtUOeh2oI
自分の。ビギナーを見て、そのまま最後の弁護人になだれこんでいるので
今、俺の中で弁護士ブームが来ている
会話がお題? 会話のリアリティ? そんなの知らない、できません
「だわ」って言わないようにとか、単語が説明的になりすぎないよう省略したりとか、
「異議あり」なんて実際はないから使わないとか、気を遣ったつもりなのだけど、
渡鬼パターンに入って、口調もいつもと変わらないキャラだな、どうにかしたいわ
話もぐちゃぐちゃだし、人に付けてる感想のこと実践できてないし
麻生みことの描く斜め顔の擬音が「にぱ」の笑顔を小説で書きたいがどうやって書けば良いだろうかと悩んでいる
あと弁護士が主役のミステリとかじゃなくて、法廷もののおもしろい小説ないだろうか
筆者が弁護士とかでリアルな奴があったら読みたいので教えて

No.09 真剣ゼミナンパ講座1/7 ◇ihO9dxzf9I
せんせー、せんせー URLはどこですか!
これは3レスぐらいなら良かったかな、と思う
ほら、話の長い自分語りは、女の子に嫌われるって言うじゃん
まさにそれじゃん、形式的には
なんかオチがほしいかなと思わなくもないけど、これで良いような気もする
よくわからない
563全感 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/13(月) 03:18:25.77 ID:fP2nquT30
No.10 漫研少女とゴミクズ物語 1/7 ◇1ImvWBFMVg
テンションがおもしろい
あとはなあ
会話が主題のネタというわけじゃないから
会話に全力を注いだ、ということか
方向性の違う全力はあったかもしれないがw
話は定番か。まあ良いのかマンガでも溢れまくってるし
もっと決めぜりふがあると良いかなと思った
ギャグが題材だし、オチももっと欲しいかも
ハイテンション部活動ものは、けっこうある(先週もあったし、俺も書いたことあるし)
のでもっと独自な何かを入れなければ、「ちょっと笑った、バカらしいw」とかぐらいの感想で
終わってしまうように思う
あと
>卍解!ブラ解放!斬魄乳!
ここはさ、もっと力をいれようぜ
「揉みて柔らかな豊満の理 ――卍解 揺れろ! 『巨姫乳嫁!!』」
 へんじがない。ただのしりこんのようだ。
「何故だ、卍解が、ブラの解放ができないっ!」
「お前の乳が本物であると、いつから勘違いしていた?」
「何……だと……」
ぐらいはやれよ。で、それをオチにも使うとかな。
恥ずかしがってちゃダメだぜ! すごい恥ずかしいけどな///
参考資料、要熟読な
ttp://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1327150813

1レスにこの感想しか入らない……だと……
564全感 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/13(月) 03:19:11.72 ID:fP2nquT30
No.11 彼女との世界1/5 ◇k.D2pTMHV.
>突然、由紀子が「実家に帰る」と言いだした。
ここは表現を変えたほうが良いと思った
いきなりしゃべりだしたのかと思うから
商社とかろくに出世しなくても勝ち組じゃないか
オチは結構好き、話せなくなるというのも良い

No.12 みかんごっこ 1/2 ◇afmE4bWECQ
伊坂幸太郎いいよね。あのセリフがリアルかというと違うのだけど
あれはあれであんなふうに書きたいと思う
あとはよくわかりませんでした

No.13 白黒の旅 1/7 ◇FcModpyaRc
>笑って! にぱーってさ
にぱーって笑うの良いよね、たまたまそういう音にしたのかも知れないけど
魔法の詠唱とか好き、後半で使うところでは別の呪文とかだともっとよかったかも
同じ炎の感じで、もっと上位っぽい文章にするとか、ひとつだと物足りない
セリフはちょっとおきまりかなと思った
とりあえず、わたしとかは減らした方が良いかも、作中でもあったけど、ふたりしかいないんだし
街をふっとばすのはしなくても、シロはクロを追ってもよかったかなと思う
もしくは、もう少し話を入れて、クロを街のアホどもに認めさせるとかの話だったら
文句なしに投票だった。まあ、文句を付けながら投票するわけだが
最後の「人」以下も好きなんだけど、シロとクロの中ではハッピーなエンドで終わってほしかったように思う
街のアホどもは消し炭にしちゃっても良いので
565全感 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/13(月) 03:20:40.87 ID:fP2nquT30
No.14 耳に届け 1/1  ◇Jtfw/JwDtc
なぜか、なんというか、ムカツク感じだ。
ぼっちをなめるんじゃない! というような。
自分が友達できたからって、こっちまで同じだと思うなよ、みたいな
ひねくれてるな、おれ
別にそんなでもないんだけど、心の奥の方のどこかでちょっとだけムカっときてしまった

時間外No.01:Yes or No(お題:会話) 1/4  ◆KC1zyS0wec
チープな感動(笑)って目指す物なの?
感動する物を目指してみてチープになっちゃったらしょうがないと思うけど
まあ言葉だけなのかも知れないが
内容はチープというかどっかで聞いたことのある話だなと思った
叩いて会話は実話だったか? 他の話かも知れないけど
オチも読んだことあるような感じ
シンカンって漫画雑誌みたいな奴の2号でオガツカヅオって人がバス事故に巻き込まれて
生き残った人の集まりに自分が幽霊という自覚のない幽霊が来てみたいな話を書いてた
似てるかどうかは激しく主観だけど、そちらはすごいおもしろいと思ったので、
これも料理の仕方次第かなと思う
あとあの事件を題材にしなくても良いのではないかと思いました。
普通に架空の地震とかで良いかと。
特に必要がない限り、現実の悲惨な事件は使わない方が良いと思う。
566投票 ◆pxtUOeh2oI :2010/12/13(月) 03:21:24.68 ID:fP2nquT30
******************【投票用紙】******************
【投票】:No.13 白黒の旅 1/7 ◇FcModpyaRc氏
       少しだけ迷ったけど、他に投票というのもなかったし
       良かったし
【関心】:No.1 Family 1/2 ◇RxSveB/Q9c氏
       犬と猫が好きなの。欲を言えば、コーギーがペンブロークならば尻尾のない(切られた)
       お尻がチャームポイントなのでそこにふれるとグーです
     No.11 彼女との世界1/5 ◇k.D2pTMHV.氏
       シンプルで良いです
**********************************************
― 感 想 ―
全体的に、にやにやするぐらいのおもしろさはあったのだけど、すごいおもしろいってのはなかったように思う
会話のリアリティはどうだろう? あんまり気をつかわなかった人が多いか
あんまり普段と変わらない感じ、自分も全然変わってないけど
最近は麻生みことにはまってる、あとヤマシタトモコ
少女漫画は服装がしっかりしてるし、セリフも男物とはリズムが違って参考になるが利用はあまりできていない
セリフがリアルになるとキャラをテンプレにするよりも、もっと立つと思うのでそういう部分に気を遣ったのが
読みたいなと思う
今読んでた任天堂についての本に「娯楽はよそと同じが一番アカン」という山内前社長のお言葉が載ってる
ゲームと小説は違うけど、やっぱりよそと同じじゃない部分が少しでもある奴がおもしろいんじゃないか、と思う
いつも通り、ここは俺の日記帳です
567以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 03:23:21.40 ID:fP2nquT30
以上です。

いろんな人、お疲れ様でした。
おやすみなさい。
568全館 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/13(月) 03:24:20.17 ID:sEf9PcJq0
>>567
全館お疲れ様です。

1番乗りを取られて悔しいっ!では、投下
569全館 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/13(月) 03:24:38.82 ID:sEf9PcJq0
No.01 Family ◆RxSveB/Q9c氏
良い話だなー。まとまっていて、手堅い印象があります。
ただ、悪く言えば、印象が残らないというか……、よくあるお話という感じが。
個人的にオスロにキャラクター性をもっと持たしてもいいんじゃないかな。
例えば、人間でもそうだと思うけど、初めて来た人間がそこにいる人間の言うことをすぐ聞くかな?
家族とか約束ってこの物語のようにサラッとはいかないと思う。オスロをあえてベルの言うことに最初、反抗させて、次第に言うことを聞かせたらオチも盛り上がる気がする。物語に起伏がないから厚みがでないのかも。

No.02 通過儀礼 ◆Mulb7NIk.Q氏
サントリーのお酒の推奨小説のよう。個人的に感情移入ができなかった理由として、13歳の少年が
>>確かに 心や魂の在り処である胸の奥がじんわりと温かくなった。そのイメージは燃え盛>>る炎ではなく、母なる大地の優しい抱擁 だ。
という風に達観した感想を持つのかということ。仮にそう思ったとしても、読者としては何か臭く感じざるを得ない。
せめて、この少年が、前々からお酒に憧れがあるとか、前フリがないと「そうかぁ」とは思えないよ。若干、無茶ブリな気がする。

No.03 理性も知性も糞くらえ ◆Lq1ieHiNSw氏
ごめん、自分には合わなかった……。
正直、何が言いたいのかよく分からない。題名通りなんだろうけど。
会話がテーマだから会話に主軸を置いているのは認めるけど、なんだかなぁ。
570全館 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/13(月) 03:25:48.77 ID:sEf9PcJq0
No.04 聖戦ののろし ◆GYYOB6B/p.氏
会話というテーマをテレパシーにした点は評価。
発想は良いと思う。
でも、読んでいて、「動き」のシーンがないもんだから、読者としては退屈かなぁ。
あと、最後の1文が長いです。オチはシンプルな方がいいかと……。

No.05 『めとめ、声と声』 ◆Qvzaeu.IrQ氏
前向きなオチにタイトルが絡まって心が熱くなった。
でも、10年も一緒にいて主人公がえりなに対してアプローチを起こさないのはあまりにも違和感。
というよりも、起こしたけど、えりなが拒絶し、主人公が恐怖を感じた、という描写を入れたほうが物語的には良くないかなぁ。
そうすれば最後のシーンも主人公がその恐怖を乗り越えて、って感じでもうワンアクセント付けられる気がする。自分ならそうするかな。
571全館 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/13(月) 03:27:09.03 ID:sEf9PcJq0
No.06 非行少女 ◆4gskEp4zKs氏
今回の作品で一番リアリティを感じられた作品。
非行少女がなぜ非行に走るのかという点において、妙に説得力がある。
読者に「そうかもな」と思わせるあたり、筆力が高いんだろうな。
特に、赤い糸の下りの表現が秀逸だと思った。

No.07 フリートーク ◆HmfYvBHWkM氏
筆者が一番楽しんでるだろ、これww
何かもうそれでいいんじゃない、って感じ、もちろん良い意味で。

No.08 「そのときはよろしく……」 ◆pxtUOeh2oI氏
弁護士の在り方というものを説いているのだと思うけど、正直、説教臭く感じる。ちょっと疲れた。
贅沢を言うようだけど、物語をエンターテインメントとして捉えるなら、
面白さの中にその説教をまぎれさせてほしかったかなぁ。
テーマとしては嫌いじゃないです。
572全館 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/13(月) 03:28:21.46 ID:sEf9PcJq0
No.09 真剣ゼミナンパ講座 ◆ihO9dxzf9I氏
壮大なギャグ小説のようw
最後の1文が笑いを誘う。
でも、これもっとサラッと書いたほうが講座のCMっぽくてよくない? 少しくどい感じが……。

No.10 漫研少女とゴミクズ物語 ◆1ImvWBFMVg氏
コミカルな物語で、ストレスなく読めました。
理事に一喜一憂する部員たちの姿が面白い。でも、最後の一文はどういうことだろう。
自分が頭悪いせいか、オチにぴんとこれない。悔しい。

No.12 みかんごっこ ◆afmE4bWECQ氏
何なんだろ、自分じゃちょっと高度すぎて理解できない。
一つの才能なんだろうけど、読むのがキツイです……。
573全館 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/13(月) 03:29:28.25 ID:sEf9PcJq0
No.13 白黒の旅 ◆FcModpyaRc氏
オチまでの集束感が上手い。クロの発言を受けてシロが使命を全うする様に感動を覚える。
ただ、よくあるテーマであるのが惜しい。自分のことを棚に上げて言うと、オリジナリティがほすぃ。

No.14 耳に届け ◆Jtfw/JwDtc氏
何かを予感させるストーリー、物語の短さがオチの良さを引き立ててると思う。
サラッと書けるようで、案外こういうのを書くのは難しいと思う。
574全館 ◆k.D2pTMHV. :2010/12/13(月) 03:31:25.82 ID:sEf9PcJq0
******************【投票用紙】******************
【投票】:No.06 非行少女 ◆4gskEp4zKs氏
会話をテーマにリアリティ豊かに感じたので高評価。
表現も上手いし、今回の中で頭1つ分飛びぬけていると思います。

【関心】:No.14 耳に届け ◆Jtfw/JwDtc氏
こういうサラッと書けるのって、長々と書くのより難しかったりする
んですよね。自分も見習いたいと思いました。読後感も◎。
**********************************************
― 感 想 ―
 クリスマスを前にしてか、いつもより恋愛への勢いが強い作品が目に付きましたw
 あと、個人的に、笑い(?)を主体と思しき作品があるけど、小説って「笑い」を取るのが最も難しい表現媒体だと思うんですよ。
実際にプロで『「笑い」の小説』ってカテゴリで多くの人が認知する代表的な小説家っていないんじゃないでしょうか?(いたらごめん……)

 品評会だから、あえて言うけど、笑いを目指している人は、その話が内輪受けしているだけか、そうじゃないか、
もっと冷静な目で見たほうがいいかも。
 まぁ、自分が書けないから僻んでるなんですがねw 久しぶりに参加できて楽しかったです。
575以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 07:30:46.69 ID:TmJMlatX0
アレしといた
576以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 09:49:29.15 ID:q5crLnFM0
おだいくれ
577以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 10:20:06.46 ID:mGcNlWMP0
>>576
ハッピーエンドの思い出
578以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 10:34:07.51 ID:q5crLnFM0
把握
579以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 11:13:57.82 ID:4vqrxk6j0
おだいおくれ
580以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 11:15:24.70 ID:TmJMlatX0
>>579
要求
581以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 11:20:32.48 ID:4vqrxk6j0
書けたら書く
582以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 11:52:04.31 ID:4vqrxk6j0
超短いけど初心者だから許してくれ
投下します
583麻呂(要求)1/1 :2010/12/13(月) 11:54:39.95 ID:4vqrxk6j0
麻呂はZIPを要求した
麻呂にとってそれは少し絵が気に入っただけの軽い気持ちの事だった
そもそも麻呂はZIPを要求し自分の手に入れられた経験はここ二年で10〜20だ
麻呂は頭が弱い方なので必死になってパスワードを考え、打ち込んでも勝率は低い
「お、今回の奴は仕事が速い、褒美をとらせるでおじゃる」
しかし麻呂は違法アップッロードをする勇気すらないチキンであった
「d、とお礼をしておけば良いでおじゃるな・・・」
次はうp場所の捜索であるが今回は他の人がURLを聞き出していた
「勝率アップ!」麻呂は歓喜した
麻呂はとりあえずテンプレのパスワードを入力してみた
すんなり落とせた「今回はみんな優しいでおじゃる!!」
早速落とした同人誌を見る
エロ漫画なので数分ほどで一通り見終わる「こ、これは・・・」
麻呂はその自分の嗜好にぴったりとあった内容に感激した
「この手錠、足枷、首輪、強制フェラ、生中だし、獣耳、最高のシュチュでおじゃる」ハアハア
それに加えて好みの絵柄、おっぱいの形、大きさ、乳輪の色形、幼さの残るキャラの顔立ちと体型
それでいてでるとこはちゃんとでている
麻呂は我慢できなかった、今日こそは3回抜くと心に固く誓った

おわり
584以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 12:01:37.25 ID:gJdll1bg0
87 名前: ◆Mulb7NIk.Q [] 投稿日:10/12/13(月) 03:45:29 ID:QM8kdA3C
本スレ>>569
13才の少年がその場で感情を分析したんじゃなく、いくらか歳のいったオッサンが、13才だった頃を思い出して、
当時正体不明だった気持ちに回答を与えてるんだよ!中学生の頃に感じたもやもやした気持ちの正体に、大人に
なってから気づく、みたいな。ちょっと誤解がありそうだったんで補足

あと◆pxt氏には、大陸人風の大袈裟な台詞回しを意識したんだよ!って言っとく
585以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 13:02:19.96 ID:PR71Bt25O
>>583
読んだよ。BNSKへようこそ。
気が向いたらいついてやってね

作品について。短いことは悪いことじゃない。むしろ長いよりもいいことも一杯ある。でも、この作品はあんまし良くないかな。
もうちょっと話に意外性というか、独創性のようなものが欲しかった。今は言うなれば出オチだよね。話を捻るか、あるいは文章で魅せるかがないと「ふーん」で終わってしまうよ。
次に期待。
586以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 14:19:39.21 ID:TmJMlatX0
88 名前: ◆FcModpyaRc [] 投稿日:10/12/13(月) 13:30:19 ID:lNO4QGKo
>>564
すみませんorzzzzz
――一人――
↑これ
【一人】
って意味なんですよ。
―(ダッシュ)と一(いち)が繋がっちゃってるんですねうふふ
こんなアホみたいなミスして恥ずかしいあひゃひゃ
上の人と同様補足癖が強くてごめんなさい
587以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 14:23:07.82 ID:PR71Bt25O
ふたりはなかよし
588以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 15:26:31.03 ID:RaiqWZFn0
まだだ!まだ俺は品評会に参加していない!!
589以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 16:17:12.73 ID:tg1H1uDh0
お題ください
590以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 16:19:29.91 ID:XJWNytXjO
>>589
大根とみかんとJKとJC
591以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 16:20:33.41 ID:XJWNytXjO
お題くれ
592以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 16:21:10.11 ID:tg1H1uDh0
>>590
四つ……だと……?

ふふふ、頑張って書いてみます、ありがとうござんした
593以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 16:21:18.91 ID:q5crLnFM0
>>586
クソワロタ
594以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 16:23:08.14 ID:tg1H1uDh0
>>591
豆腐
長葱
豚肉
白菜
ポン酢
595以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 16:27:21.76 ID:XJWNytXjO
>>594
難易度たけぇええwwwww
初めてだけど頑張って書いてみる
596以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 17:02:45.10 ID:PR71Bt25O
始めての人がんばれ
全部つかわなくてもいいし、思いつかない場合は別なのもらいなおしてもいいからね
597TURI (大根とみかんとJKとJC ) 1/1:2010/12/13(月) 17:03:41.69 ID:tg1H1uDh0
 ドアを軋ませて馴染み深い男が部屋に入ってくる。
 季節は冬だというのにこの男、上半身裸である。寒くないのか?
 見事なメタボリック体型に饅頭の如く白い肌。ヤツの名前を俺は知っている。何故なら、俺達は互いに“戦友”だからだ。
「例のブツが入ったって、ホントかお?」
「ああ、上物だ……すっげえボディだぞ、なんつったって年齢がな……ふふふ」
「さすが、この道三十年を超えるベテラン! そしてトモよ!」
 熱い抱擁をし、俺とヤツは一時離れる。相手にソレを悟られたくないのだ。自らの内から漏れる、欲獣の疼きを。
 すぐに飛び掛かっては紳士と言えない。それは俺にもヤツにも解っている。だから、耐える。
「…………」
 沈黙は久遠にも及んだように感じられる。俺達はそれを、こたつに入りながら堪える。
「「――――ッッッッッ!」」
 ヤツもらしいが、どうやら俺にも我慢の限界が近いらしい。全ての理性を解き放ち、一匹のケダモノとなってしまいたい……。そんな欲望が胸を焦がす。しかし、今回に限ってそれは許されない。今日の俺はホストなのだ。
 機が熟するまで今はまだ……、こたつの上に置いてあった橙色の果実に手を伸ばした。

 刻々と、時計の針がその“機”までの距離を削る。

「我慢できねええ! 見せろおおおおおおおお!」
「その言葉を待っていた! さあ、今こそ舞え、一匹のケダモノよ!」
 ほぼ同時にこたつから抜けると、俺はヤツに秘宝の入った宝箱(PC)のスイッチを押す。再起動状態にしてあったため、すぐに画面が現れた。さて、ここからが重要な段階だ。ヤツの視界に入らないように、慎重にそのブツの入ったフォルダを探し出す。
 ――あった。
 俺はそれを表示すると、トモに――否、ケダモノにウインクをしてディスプレイ前に招待した。
「…………」
「どうした、凄過ぎて何も言えねえのか? 遠慮することはないだろ、トイレといわずにこの場で出してもいいんだぜ!」
「いや、……え? つーか……これ、なに?」
 俺はニッコリと微笑んで告げた。
「常識的に考えてジャッキーチェーンだろ」
「ふざけんな、この白長野郎!」
 こたつの上に置いてあったオレンジ色の物体が、俺の顔面へ飛んできた。
598以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 17:04:19.00 ID:8atFngJd0
初めてです。
お題ください。
599以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 17:04:58.68 ID:tg1H1uDh0
むしゃくしゃしてやった
反省はしてない……
600以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 17:06:05.56 ID:tg1H1uDh0
>>598
カップラーメン
601以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 17:07:25.42 ID:8atFngJd0
>>600
ありがとうございます。
さっそく取り組んでみます
602以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 18:46:16.36 ID:wGbhNdFN0
603以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 19:53:29.99 ID:wGbhNdFN0
ほほ
604お題:カップラーメン:2010/12/13(月) 20:20:32.62 ID:8atFngJd0
書けました。
これから投稿します
605お題:カップラーメン 1/1:2010/12/13(月) 20:21:49.47 ID:8atFngJd0
 男は麺をすすると、やわらかな感触を確かめながら噛みちぎった。もうわずかでもすすると、麺の先がはねて
あちこちを汚すのだ。適当なところで切ることに、男は慣れていた。そうして麺を残さず食べると、汁と具を流
しに捨てた。排水溝から脂肪分を含んだ生臭いにおいが立ち上ってくる。ゴミ箱を見るまでもなく、連日カップ
ラーメン生活が続いている。
 もううんざりだった。天井の蛍光灯は時折眠るように点滅し、よりいっそう男をいらだたせる。座り直し、手
に触れる。冷たい。真冬にも関わらず、暖房ひとつ入れていない。
「くそっ」
 思えば数日前に彼女が部屋を出て行くといってから、すべてがおかしくなった。
 それまでは彼女は毎日男を出迎え、作った料理を一緒に食べる生活を送っていた。不満がなかったわけではな
かったが、男は愛情を持って接し、彼女もまたそれに応えていた。少なくとも数日前に彼女から話を切り出され
るまで、男はそう思っていた。
 なにが不満なのかと問いつめても、彼女はもはや聞く耳を持たなかった。男は絶望した。激しく暴れ、管理人
が何事かと様子を見に来るほどであった。
 それからだ。男は家に閉じこもるようになり、大量に持ち込んだカップラーメンで急場をしのぐようになった
のは。荒れ果てた室内は数日前のまま放置されており、服も着替えず、ひげもそらず、ただただがむしゃらにす
する毎日であった。それも間もなく終わる。カップラーメンのストックはもう残り少なかった。部屋のわきに投
げ捨てられたふるい縄を見やりながら、食べきったあとどうするか、男の気持ちは固まっていた。
 室内は凍えるように寒い。改めてテーブルに置かれた手に触れた。冷たい。そのまま指をはわせると、手首に
紫に黒ずんだ縄の跡が残っている。両手で持とうとすると、すでに硬直していた。男はいとおしそうにそれを投
げると、諭すようにつぶやいた。
「もうすぐだ……もうすぐでまた会えるよ」
 そしてテーブルに並んだ女のブロックを眺めると笑ったのだった。

おわり
606605:2010/12/13(月) 20:24:23.24 ID:8atFngJd0
すいません。誤字がありました。

誤:いとおしそうにそれを投げると
正:いとおしそうにそれをなでると
607以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 20:25:09.16 ID:hqFYDqz5O
陳腐なストーリーだけど文章はちゃんと書けてるね
品評会に参加して、もう少し練ったストーリーを披露してみたら?

あと俺にもお題を誰か
608以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 21:05:47.87 ID:ESl2CxTh0
>>607
リプトンのレモンティー
609以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 21:15:55.05 ID:hqFYDqz5O
>>608
飲んだ事なくてワロタ
書いてみるよ
610以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 21:59:41.59 ID:l/KgrG7L0
>>605
すげえ小説っぽい
611転載 ◇HmfYvBHWkM :2010/12/13(月) 21:59:57.85 ID:+Di6l0zy0
まとめスレから転載します
--------------------------

No.01 Family ◆RxSveB/Q9c氏
はいはい、感動感動(笑)

No.02 通過儀礼 ◆Mulb7NIk.Q氏
この人はホント、仰々しい言い回しが好きだねえ。
とりあえずこれ、置いておきますね。
ttp://www.jaro.or.jp/

No.03 理性も知性も糞くらえ ◆Lq1ieHiNSw氏
冒頭の説明的すぎる地の文を見た瞬間は乾いた笑いしか出なかった。
けど最後まで読んで見ると意外や意外、そこそこ楽しめた。
うーん、だけどねえ、やっぱ全体的に説明が露骨すぎるわ。
4レス目一番下の文なんかその典型。言い訳は要らないんだよ!って思っちゃったもん。
説明臭いのが気になって話に入り切れなかった。残念!

No.04 聖戦ののろし ◆GYYOB6B/p.氏
冒頭の説明的な台詞でものすっごい嫌な予感がした。
そしてその予感は裏切られる事なく、最後まで到達してしまいましたとさ。おしまい。
612転載 ◇HmfYvBHWkM :2010/12/13(月) 22:00:42.61 ID:+Di6l0zy0
No.05 『めとめ、声と声』 ◆Qvzaeu.IrQ氏
学園物のエロゲテキストっぽい。
モチーフを入れてくる辺り、作者は小説を書き慣れてる印象があるなあ。
えりなとメールをやり取りする場面のテンポがすんごく良い。読んでいて思わずにやにやしてしまった。俺きめえ。

No.06 非行少女 ◆4gskEp4zKs氏
うーん、主人公にイマイチ共感できなかったなあ。
両親を繋ぎ止めるため、自分が悪役を演じる気持ちは分かるんだけどね。
乱交パーティーとかシンナーを吸って歯がボロボロになるとか、もっとはじけてくれた方が面白かったかも。

No.07 フリートーク ◆HmfYvBHWkM氏
自作。今回はメタと自虐分多めで書いた。
完全燃焼できました。本作は自分の中では前代未聞の超大作(笑)です。
あと、>>562については以下を参照。
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm10750654

No.08 「そのときはよろしく……」 ◆pxtUOeh2oI氏
作中で言われてる弁護士の在り方については、俺も同じ考えだったからすらすらと読めた。
ただ国会に爆弾を仕掛けた〜以降の文章が取って付けた感バリバリで萎えた。ちょっと安易なオチだなあと思う。
俺も人の事は言えないけど、やっぱ物語の〆って大事よね。
613転載 ◇HmfYvBHWkM :2010/12/13(月) 22:01:13.79 ID:+Di6l0zy0
No.09 真剣ゼミナンパ講座 ◆ihO9dxzf9I氏
まずタイトルがツボに入った。言葉遊びが効いていて良いね。
中身は……ああ、こうくるのか。
俺の友人が言ってたんだけど、ナンパはまず自分が楽しむ事が第一らしい。
もちろん女の子の気持ちを尊重はするけど、自分が楽しくないと相手に楽しくないオーラが伝わって気持ちを萎えさせるんだとさ。
そう考えると本作品もこの作者が大好きな――自分語りに終始しているから楽しんで書けていると思う。
相手の女の子(読者)がついてきてくれるかどうかは別だけど。

No.10 漫研少女とゴミクズ物語 ◆1ImvWBFMVg氏
作者の狙いは分かる。でもやってる事が中途半端に終わってしまってる。
まあ起承転結がしっかりしてて、「おはなし」的にはいいと思うよ?
けどね、理事長に関するくだりとか新人賞に入賞する辺りは典型的なご都合主義。もう見てられなかった。
やっぱり真面目にやるならそれなりの説得力をエピソードに加えないと駄目だよ。
かといって本作をバカ話として見ても、雰囲気は伝わってくるけどまだはじけ切れていない。
改めて馬鹿とシリアスを両立するのは本当に難しいな、と思いました。一歩間違えばただの茶番になっちゃうからね。


93 名前: ◆HmfYvBHWkM :10/12/13 20:53:14 ID:QYn64sfH
No.11 彼女との世界 ◆k.D2pTMHV.氏
最後の一文は女性の逞しさを上手く表現できていて良かったと思います!
あっさり読めたし中々良かったよ。

No.12 みかんごっこ ◆afmE4bWECQ氏
訳わかんないけど、文体と相まってすごいパワーを感じる。
いつかこんな小説を書いてみたい。
614転載 ◇HmfYvBHWkM :2010/12/13(月) 22:02:05.41 ID:+Di6l0zy0
No.13 白黒の旅 ◆FcModpyaRc氏
おおう、こういった終わり方をするのか。
で、シロはクロを追いかけないの? 好きな男の後を追いかけるのは当然だろ?
更に付け加えるなら6レス目冒頭の長台詞。これを含めて、登場人物が機械的な感じがする。
神である作者の思うがままに動かされてるだけ、って感じだ。
総じて終盤がいまいちだったかなー。序中盤のいちゃいちゃは見てて楽しかっただけに惜しい。

No.14 耳に届け ◆Jtfw/JwDtc氏
物語のプロローグ。それ以上でもそれ以下でもない。

時間外No.01 Yes or No ◆KC1zyS0wec氏
ノーコメントでフィニッシュです。

******************【投票用紙】******************
【投票】:No.05 『めとめ、声と声』 ◆Qvzaeu.IrQ氏
【関心】:No.11 彼女との世界 ◆k.D2pTMHV.氏
**********************************************
615転載 ◇HmfYvBHWkM :2010/12/13(月) 22:02:47.75 ID:+Di6l0zy0
以下基地外の戯言。
馬鹿とシリアスを両立するのは本当に難しい。
まずおバカっぷりを演出する時点で作り手がはじけ切れていなければ、単なる寒い三文芝居になってしまうし、
上手く世界観を構築できたとしても、シリアス成分のさじ加減を間違えるとただただ薄ら寒いだけの作品になってしまう。
俺的に上記の難題を見事にクリアした作品だと思うのは、水無月すうのそらのおとしもの。
もうね、パンツが渡り鳥になって舞い戻ってくるとか、マトモな感性を持った人間には作れないでしょwww
けれども、そんなバカバカしい世界で繰り広げられるシリアスストーリーは見てて引き込まれるし、
主人公の暖かさ、ヒロイン達の健気さに胸がぎゅっと締め付けられてしまった。
破壊力満点な最高のカタルシスが得られるのも安易に感動を狙おうとせず、ひとえにおバカな世界観と
本筋を構成するストーリーの配分に成功したからだ。
これだけの感情移入ができる作品は本当に稀有だと思う。
内容の馬鹿っぷりから間違いなく人を選ぶ作品だけど、素晴らしいギャップ効果をもたらしてくれる作品だと俺は断言する。
まあ要するに一度見てみろってことですよ。そらおとはいいぜ、ウフフフフ……

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以上、◇HmfYvBHWkM氏による全館と投票でした、乙!
616以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 22:05:26.67 ID:+Di6l0zy0
次の全館と投票まだかッ!
617605:2010/12/13(月) 22:14:41.27 ID:vnPRmmC00
>>607
>>610

ありがとうございます!
モチベーションがあがりました。
次の品評会にも参加したいと思いました。
全感想は難しいですが、投票もしたいと思います。

ともあれそれまでにもう何作か書いて練習したいと思いますので、
またお題をください。
618以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
>>617
モチベーション高いの素敵。羨ましい。
お題は「やり直し」