1 :
代理で投下:
2 :
妖犬 ◆youkenkF9Y :2010/12/03(金) 21:29:19.49 ID:+tPffd160
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 21:30:44.38 ID:DUToKtPRO
まとめみるまえに支援しとく
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 21:31:51.93 ID:NFXWWs1H0
背の高い建物の立ち並ぶ街中。
その建物の壁面をぴょんぴょんと飛び移り、疾走するひとつの影があった。
〔(β)〕 ……ここまでくれば大丈夫か
影の正体は、老人介護用であることを表す、緑色のボディをした一体のTASIRO。
彼は一人の”狩人”から逃げていた。
壁面にその一対の手足ではりついたTASIROは、用心深くあたりを見回すと、安心したようにほっと一息ついた。
ちなみに彼はTASIROであるため、呼吸はしていない。
だから正確には、そういう音声を発しただけである。
〔(β)〕 ―――!!
ふいに彼の体から数センチほど離れた場所に煙があがる。
この煙は、彼が逃げている”狩人”の『銃口』がまだこちらに向いていることをあらわすものだ。
〔(β)〕 ちぃッ!! しつけーんだよ、この!!
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 21:34:42.88 ID:NFXWWs1H0
ベータという名前のその緑のTASIROは、
自分が狙う”狩人”が隠れていそうな物影に向けて、その大きな”目”から赤い光の弾を発射する。
〔(β)〕 やったか……?
その目に内蔵されたカメラのレンズを絞り、
自分の打った物影をズームアップするが、そこには自分の狙った”彼女”の姿はなかった。
〔(β)〕 くっそ……どに隠れてやがる!! 卑怯だぞ、出てきやがれ!!!
あたりに向かって彼が叫ぶと
川 ゚ -゚) 私は別に、逃げも隠れもしてないが?
―――ふいに、しかも自分のすぐ側から聞こえる”狩人”の声。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 21:35:28.12 ID:wb1jdyDi0
とりあえず支援して呼んでくる
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 21:37:29.37 ID:O203j1ul0
支援
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 21:37:44.99 ID:NFXWWs1H0
〔(β)〕 上!!?
声のする方向、自分の頭上を見上げるベータ。
彼のカメラが捕らえたのは、頭上から拳を振り上げ降ってくる、
腹部に赤い光のベルトで黒い携帯電話を装着させた黒髪の美少女の姿。
〔(β)〕 ぐ……ッ!!!
上から降ってきた少女の拳が顔面にヒットし、ベータは張り付いていた建物の壁面から引き剥がされる。
川 ゚ -゚) まったくあたりかまわず打ちまくりおって……無関係の人にあたったらどうするつもりだ!!
叫びながら、建物の壁面を”走ってくる”少女。
そのまわし蹴りが腹に入り、ベータはそのまま地面に叩きつけられる。
〔(β)〕 がが……ッ!!
音声を発するマイクが、一瞬誤作動を起こし、妙な音を発する。
そんな彼の目の前にひらりと降り立つのは、美しい黒髪の”狩人”。
―Form Change:「Sword」―
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 21:40:58.13 ID:NFXWWs1H0
川 ゚ -゚) 卑怯者はどっちだ、ちょこまかと逃げ回りおって
こちらに剣の切っ先を向ける少女の言葉は、どこか不遜で、なぜかとても偉そうだった。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 21:41:42.06 ID:0LtwjZnbO
( ^ω^)オモスー
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 21:43:59.90 ID:NFXWWs1H0
( ^ω^)彼らは携帯電話を武器に戦うようです
第九話「戦護」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 21:47:53.93 ID:NFXWWs1H0
〔(β)〕 くッ……なんでだよ!!? 何で上から降ってくるんだ!!!
地べたに座り込んだまま、こちらを指差してくる生意気なTASIRO。
クーはその指先をその手に持つ、赤い光の刀で凪ぐ。
「ひぃ」という声を上げて手を引っ込める彼を見ながら、クーは得意げに笑ってみせた。
川 ゚ -゚) ふん、お前のような軽薄そうなヤツの行動パターンなど、
この私の天才的な頭脳にかかればすぐに行動パターンが分かってしまうのだよ
「だから先回りしていたのだ、わかったかゴミムシ野郎」と言いながら、
クーは剣を持っていないほうの手で、目の前のTASIROを「ビシッ」と指差した。
まさに「ビシッ」という擬音が聞こえそうなくらい、「ビシッ」とした指さばきだった。
〔(β)〕 だって、『弾』が!! あの『弾』は間違いなく前方から来たぞ!!?
川#゚ -゚) 女の子の前でたまたまいうなッ!!!
容赦なく振り下ろされる剣。とっさにベータは体を捻ってそれをかわす。
理不尽である。
川 ゚ -゚) ふん、アリとかカマキリなみの脳みそしかもっていない可愛そうなお前のために教えてやろうか、とかちょっと考えたが……
〔(β)〕 「が」……?
川 ゚ -゚) まずはお前を潰してからだな
理不尽である。
13 :
訂正:2010/12/03(金) 21:52:29.36 ID:NFXWWs1H0
〔(β)〕 くッ……なんでだよ!!? 何で上から降ってくるんだ!!!
地べたに座り込んだまま、こちらを指差してくる生意気なTASIRO。
クーはその指先をその手に持つ、赤い光の刀で凪ぐ。
「ひぃ」という声を上げて手を引っ込める彼を見ながら、クーは得意げに笑ってみせた。
川 ゚ -゚) ふん、お前のような軽薄そうなヤツの行動パターンなど、
この私の天才的な頭脳にかかればすぐに分かってしまうのだよ
「だから先回りしていたのだ、わかったかゴミムシ野郎」と言いながら、
クーは剣を持っていないほうの手で、目の前のTASIROを「ビシッ」と指差した。
まさに「ビシッ」という擬音が聞こえそうなくらい、「ビシッ」とした指さばきだった。
〔(β)〕 だって、『弾』が!! あの『弾』は間違いなく前方から来たぞ!!?
川#゚ -゚) 女の子の前でたまたまいうなッ!!!
容赦なく振り下ろされる剣。とっさにベータは体を捻ってそれをかわす。
理不尽である。
川 ゚ -゚) ふん、アリとかカマキリなみの脳みそしかもっていない可愛そうなお前のために教えてやろうか、とかちょっと考えたが……
〔(β)〕 「が」……?
川 ゚ -゚) まずはお前を潰してからだな
理不尽である。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 21:55:08.78 ID:NFXWWs1H0
斬りかかるクー、ベータはそれをかわしながら、構えを取る。
〔(β)〕 あんまりなめんじゃねえ、よ!!!
放たれる右拳、クーはその拳を刀で受け流しながらほう、と感心する。
川 ゚ -゚) なんだ、お前みたいなヘタレでも戦う勇気はあったのか
〔(β)〕 当たり前だ!
俺様はこれでも、多くの”俺たち”の宿ったTASIROたちに勝って来たんだからな!!!
放たれる右足、刀を盾にしながら間合いを詰め、
その攻撃を潰すと、そのままの勢いでクーは体当たりで彼を吹き飛ばす。
後ろに飛ぶベータの目に向けて突きを放つクー。そのとき、ふいにベータの目が赤く輝く。
〔(β)〕 このベータ様を……!!
川;゚ -゚) !!
〔(β)〕 舐めるなってつってんだろうがよお!!!
ベータの目から発射される光弾。
クーはとっさにそれを刀で弾くが、それと同時に目の前にあったベータの姿を見失ってしまった。
川 ゚ -゚) なんだ、またおにごっこか?
あたりを見回しながら、挑発するクー。
それに答えるように、上からベータの声が聞こえ始める。
〔(β)〕 俺様がお前ごときから、なんで逃げ続けてたと思う?
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 21:58:48.82 ID:NFXWWs1H0
―Form Change:「Shot」―
川 ゚ -゚) そんなのは決まっている、お前がどうしようもない弱虫でドヘタレだからだ
すばやくセキラの形態を切り替えると、クーは声の聞こえるほうに向かってセキラの弾を乱射する。
川;゚ -゚) ―――?
しかし見上げた先に、ベータの姿は無かった。
「ちがうな」
どこからともなく聞こえる声。
川 ゚ -゚)(どこだ……?)
「お前はここに”誘い込まれた”のさ」
川;゚ -゚)(後ろ!!?)
〔(β)〕 オラァ!!!
川 - ) ―――ッ!!
とっさに振り向いたときにはもう遅かった。肩に被弾するセキラの光弾。
衝撃と熱、そしてじわじわと広がる痛み。
肩を押さえ、クーはその場に膝を付く。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:01:23.44 ID:NFXWWs1H0
〔(β)〕 あたりどころがよかったか? はん、運のいい女だぜ
見ればビルに張り付いたベータが、けらけらと笑いながらこちらを見ていた。
川; - ) さっきから気になっていたんだが
〔(β)〕 あん?
肩を押さえうずくまったまま、クーはベータのほうを見上げることもしない。
川; - ) お前の”デバイス”はなんだ?
〔(β)〕 ”デバイス”? ああ、”俺たち”が宿ってるもんのことか
川; - ) そうだ、さっきからお前は手足で壁に張り付いたまま目からセキラの弾を発射したりしているが、
ならお前の”デバイス”はどこだ? 目か、それとも手なのか?
相変わらず肩を押さえたままうずくまっているクーをみながら、ベータはけらけらと笑う。
〔(β)〕 そうだな、しいて言うなら”全身”だ
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:02:13.02 ID:iOjXgh0f0
しえん
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:04:11.08 ID:NFXWWs1H0
川;゚ -゚) ”全身”……だと?
そこで初めてクーは顔を上げ、ベータを見上げた。
〔(β)〕 このTASIROっていうのは便利な依り代でな、
全身の制御のためにあらゆる場所に演算装置が装備されてる。
”俺たち”が宿るのにも、行動するのにももってこいの体ってわけだ
ベータはクーの前方のビルの壁面に垂直に立ち、両手を広げた雄弁な動作で語る。
あらためてまわりを見回すと、ここは背の高い建物に囲まれている。
なるほど、誘い込まれたというのはそういうことか、とクーは納得した。
〔(β)〕 事実上は俺という意識がメインになってこの体を動かしていることになるが、
まあ”デバイス”ってのが”俺たち”が宿ってるもんって意味なら、”全身”のあらゆる所にそれがあることになるな
川;゚ -゚) ふん、ずいぶんと馬鹿丁寧に説明してくれたものだな
その言葉を聞いて、ベータの声の調子が変わる。
〔(β)〕 ……冥土の土産ってやつさ
それはとてもいやらしい、クーでなくとも誰が聞いても不快感を覚えるであろうにやけた声。
〔(β)〕 お前はここで、俺様に殺されるんだからよォ!!!
叫び声とともに、ベータの目から無数のセキラの弾が降り注いだ。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:06:54.03 ID:wb1jdyDi0
追いつき支援
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:07:20.09 ID:NFXWWs1H0
川;゚ -゚) ちィッ!!!
クーは一瞬、それを刀で弾こうと思ったが、しかしさっきやられた右肩が痺れてうまく動いてくれない。
しかたがないのでそのまま物陰まで走り、この弾幕をやり過ごすことにした。
〔(β)〕 逃がさねえよ!!!
川;゚ -゚) 何!!?
ベータの弾撃に対し、横向きに走るクー。
しかし、彼女の目の前のビルには、すでにその驚異的な跳躍力で隣の建物から飛び移ったベータの姿があった。
〔(β)〕 オラオラァ!!!
川;゚ -゚) このッ!!
再び前方から打ち出される光弾を、左手で持つ光の刀で咄嗟に弾き、後退する。
すると、ふいに目の前のビルに張り付いていたベータの姿が消えた。
川;゚ -゚) な……?
〔(β)〕 こっちだよッ!!
ふいに自分のすぐ後ろから聞こえる声。
気がつけば、クーは前方に前のめりに吹き飛ばされていた。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:12:10.02 ID:wb1jdyDi0
しえん
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:15:27.87 ID:NFXWWs1H0
川 - ) か……は……
肺から空気が、うまく吐き出せない。
受けた衝撃と、そのあとに来る鈍い痛みから、背中を殴られたのだろうと推測できる。
〔(β)〕 ははっ、人間ってのはよえーな。
やっぱ”俺ら”の依り代は人間の持つ情報機器なんかじゃなく、”俺ら”が動かすこのTASIROこそふさわしいぜ!
あっはっはという笑い声が、地べたにうつぶせにはいつくばる彼女の耳に届いた。
その声は彼女の神経を著しく刺激する。
川 - ) ……に……るな……
〔(β)〕 あん?
川#゚ -゚) 図に乗るなと言っているんだ!! このオケラ野郎!!!
〔(β)〕 ―――ッ!!
クーの立ち上がりざまの斬撃を、ベータはその驚異的な跳躍力で後ろに飛び、後方の建造物の壁に張り付いた。
川#゚ -゚) ちっ、オケラじゃなくてバッタだったか。
いや、その四本足で壁に張り付く様はあの忌まわしいゴキブリを連想させるな……
〔(β)〕 はん、威勢がいいのは結構だかよぉ!!
壁に張り付くベータの目が赤く輝く。
〔(β)〕 自分の置かれてる状況を忘れるんじゃねえ!!
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:18:31.74 ID:NFXWWs1H0
それとともに発射される、無数の赤い光弾。
川 ゚ -゚) 私の置かれている状況だと?
―Form Change:「Shot」―
川 ゚ -゚) なるほど、かなり面倒臭いことになっていたな
クーの携帯からカメラのシャッター音が響く。
しかし光の弾は発射されない。その代わりに画面に表示されるのは、緑色のTASIROの画像。
川 ゚ー゚) 目の前を飛び回る、このうっとおしいゴキブリを駆除しなければいけないのだから!!
にやりと微笑むと、クーは後ろへ飛んだ。それを追いかけるように、
地面から光弾があたっていることを示す煙が連続してあがる。
〔(β)〕 避けるだけ無駄だって、まだわかんねえのかよ!!!
叫びながら、ベータが飛ぶ、それと同時にクーの携帯の画面に表示されるメール。
From:ミセリ
押してだめなら、だよ
川 ー ) わかってるさ
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:21:20.72 ID:NFXWWs1H0
こちらに向かって放たれる光弾。
クーは右肩の痺れが弱くなったのを確認し、
刀を両手で握ると、そのまま迷いなく光弾が飛んでくる方向に直進する。
〔(β)〕 なッ!!?
川#゚ -゚) はああああああああああ!!!!
クーの刀は向かってくる光弾を切り裂き、彼女の体はどんどんベータに向かって接近していく。
振りかぶられる刀。これはまずいと、ベータが壁を蹴り、逆側の壁に向かって飛ぶ。
それを見たクーはにやりと微笑んだ。
川 ゚ー゚) バカめ、お前の行動パターンなどお見通しだといっているだろう!
―Form Change:「Shot」―
後ろのほうから、ベータが壁に着地したことを示す音が聞こえたのを確認したクーは、
ベータに背をむけたまま、シャッターを切った。
先程から画面に表示されていたベータの画像が消え、そして響くのは連続したシャッター音。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:22:36.78 ID:wb1jdyDi0
支援
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:24:04.88 ID:NFXWWs1H0
〔(β)〕 ? どこ狙って……!!?
何かにおどろくベータの声。
くるりとクーがベータの方をふりむくと、彼の緑色のボディの数箇所から煙が上がっているのが見えた。
クーの携帯電話の撮影機能は「写真の確認」と「画像の保存」の二段階に分かれている。
そこから彼女が思いついたのは、この世にも恐ろしい”追尾弾”。
「写真の確認」でデバイスに敵の姿を記憶させ、
「画像の保存」で補足した敵に向けて追尾機能付きのセキラ弾を放つ。
〔(β)〕 て……っめえ、なにしやがった……!?
答えず、クーはそのままセキラの形態を剣に変え、ベータに向けて突撃する。
川 ゚ー゚) あいにく私はお前と違って、敵に冥土の土産を送るような優しさは持ち合わせてないのでね
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:26:51.02 ID:NFXWWs1H0
〔(β)〕 ぐ……ぁ………!!?
ベータの正中線上を、縦一閃に斬りつけるクー。
それによってセキラの膜で覆われた彼のボディにかすかに傷が付くが、それで満足するクーではない。
―――追撃、追撃、追撃
ベータの体に斬りつけられるたびに火花が上がり、彼の緑色のボディに傷が増えてゆく。
〔(β)〕 てっめ……いいかげんに……!!
ベータの目が赤く輝くのを確認したクーは、すかさず赤い光の剣を消し、
その折りたたんだ黒い携帯電話を腹部に押し当てる。
―Form Change:「Fighter」―
川 ゚ -゚) ん? 何か言ったか?
〔(β)〕 ―――ッ!!
セキラで包まれたクーの掌が、今まさに光弾を発射しようとしているベータの目を覆う。
それによって引き起こされるのは、暴発。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:29:25.26 ID:NFXWWs1H0
〔(β)〕 が……ぁ……
その大きな目から煙を上げながら、ベータの体がふらつく。
そしてその一瞬を、もちろんクーは見逃さない。
瞬時に足払いを見舞い、倒れたベータにまたがると、その右腕の関節をひねる。
〔(β)〕 はは……はははは、関節技だと!?
残念だったな、あいにく俺様は痛みを感じる人間みたいな弱っちい神経なんかは……
すぐさま関節技を脱しようとするベータ、その上にまたがるクーは、特に感情を込めずに言った。
川 ゚ -゚) そうか、それを聞いて安心した
「心が痛まなくてすむからな」彼女の冷淡な声がその唇から発せられ、そして
〔(β)〕 がッ……ああ!!!?
クーは、極めた関節をそのまま捻り、ベータの右腕を引きちぎった。
しえーん
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:32:16.64 ID:NFXWWs1H0
川 ゚ -゚) どうした? 痛くないのだろう?
〔(β)〕 あ、ああ!! 痛くなんかねえ、システムエラーで妙な音声が出ただけだよ!
それを聞いてクーは彼女にしては珍しく表情を曇らせた。
川 ゚ -゚) そうか……本当に感じないんだな
〔(β)〕 あぁん? なんだよ、その表情は
怪訝そうな声を上げながら、二本の足でクーの間合いから脱するベータ。それに対しクーは相変わらず沈んだ声で返す
川 ゚ -゚) 別に、ただ少し悲しい気がしただけだ……それと、今改めて決めたことがある
〔(β)〕 決めたことだぁ? なんだ唐突に
―Form Change:「Sword」―
彼女は、手に持つ携帯から伸びる赤い光の刃をベータに向けると
川 ゚ -゚) ”お前たち”は、私が全部手に入れて管理する
凛とした声で、そう言い放った。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:34:49.61 ID:NFXWWs1H0
〔(β)〕 はん、なんだよ今さら、それが目的で俺様たちにケンカ売ってんじゃねーのか?
けらけらと笑うベータ。
川 ゚ -゚) 正確には、それは違う
両手で剣を構え、クーは真っ直ぐに目の前のベータを見る。
川 ゚ -゚) 私は別に、お前らが欲しくてお前らと戦ってるわけじゃない
〔(β)〕 ほぉ、じゃあなんだってそんな面倒臭いことやってんだ、
てめえの利益の為じゃねーってんなら、なんでてめえを危険にさらせる?
理解できない、という口調のベータ。それに対し、クーはひとつため息をついた。
川 ゚ -゚) そうだな、しいていうなら「それがお前たちにわからないから」だ
〔(β)〕 あん?
川 ゚ -゚) お前たちには人が感じる”痛み”がわからない、
だから自分たちの目的のために平気で人を傷つけるし、それを迷わない
いまいち理解できないという様子のベータに、クーは構わず言葉を続ける。
川 ゚ -゚) だからこの星で”お前たち”が存在するためには、人間の手で管理されることがもっとも望ましい。
そうすれば少なくともお前たちが、自分の意志で人を傷つけることはないからな
しえしえ
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:37:22.30 ID:NFXWWs1H0
川 ゚ -゚) 私は”痛み”を知る人間だ。どうすれば人が傷つくのか、
傷つくと人はどう痛いのか、悲しいのか、私は知っている
クーはベータの大きな目を見て、そのままはなさない。
〔(β)〕 わかんねえな、てめえは結局何が目的なんだ?
川 ゚ -゚) 私には目的なんて大層なものはない、私はただ、私が求めるままに戦って護るだけだ
クーはベータに向かい、一歩、また一歩と歩き出す。
川 ゚ -゚) ……私のそばにいる人たちの、当たり前の、でも大切な日常を!!
振り下ろされる剣、それを飛んで避けたベータは、三本になった手足で壁に張り付くと叫ぶ
〔(β)〕 へッ、よくわかんねえけど、護りたいなら護ってみせろよ
〔(β)〕―Form Change:「Adhesion」―
〔(β)〕 護れるもんなら、な!!
ベータの目が赤く輝き、そして発射される光弾。
それを刀で受け止めたクーは、先程までとは違う、しかし記憶に新しいその衝撃にたじろぐ。
川;゚ -゚) くっ!!
彼女の持つ赤い光の刀に付着するのは、赤く、どろりとした塊。
粘着質なそれは、べっとりと刀にへばりつき離れない。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:40:01.44 ID:NFXWWs1H0
川 ゚ -゚) こんなもの!!
クーは瞬時に剣を消し、その「どろどろ」を剣から外すがその動作に気を取られた一瞬が命取りだった。
〔(β)〕 そらよッ!!
川;゚ -゚) ちッ……!!
足元に命中する「どろどろ」、それはクーの足と地面を接着させ、クーの動作を著しく制限する。
〔(β)〕―Form Change:「Shot」―
〔(β)〕 そーら、これでゲームオーバーだ!!
クーが完全に身動きできなくなったのを確認したベータは、
叫びながらその強力な跳躍力を駆使し、あたりの建物の壁を蹴り移動する。
壁を蹴って移動する彼がその軌跡に撒き散らすのは、セキラでできた赤い弾丸の雨。
打ち出される位置の違うそれらの弾丸は、しかし全て一様に、下にいるクーの元に降り注ぐ。
川;゚ -゚) くっ……これは!!
とっさに彼女は自分の腹部に携帯電話を押し付け、全身をセキラの膜でつつむことでそれを防御した。
しかし彼女に向かい雨あられと降り注ぐ弾丸は、少しずつ、少しずつ彼女を包むセキラの膜を削っていく。
川;゚ -゚)(このままでは、私の体まで弾丸が到達するのも時間の問題だぞ……)
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:40:58.88 ID:wb1jdyDi0
支援
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:42:49.35 ID:NFXWWs1H0
〔(β)〕 ひゃっはっはっはっは!!!
どーしたよ!! 護るんじゃなかったのか、てめえの周りのやつらの日常ってヤツをよぉ!!
川#゚ -゚) ……!!
目から光弾を乱射しながら、ベータは動けず弾を受けるしかないクーをあざ笑う。
彼女は飛んでくる弾を防御するためにクロスさせた腕の間から、頭上を飛ぶ彼の姿を睨みつけた。
〔(β)〕 けっ、気に食わねぇな、その表情……てめーはこれから俺様に負けるんだぜ?
クーの真上を飛ぶベータの目が一際赤く輝き
〔(β)〕 負け犬は負け犬らしく、恐怖におびえた表情を見せてみろよ!!!
そして先程以上の量の弾丸の雨が、クーに向かって降り注いだ。
降り注いでくる赤い雨を見上げ、その向こうを飛ぶベータの姿を睨みながら、クーはぼそりと呟く。
川# - ) ああ、そうだな。
こんなところでゴキブリなんかのクソ攻撃を受けるしかない私は、
たしかに状況的には負け犬かもしれん―――
「だが」と彼女は続ける。
川#゚ -゚) ―――あいにく私は、心まで負け犬に成り下がるつもりはない!!
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:46:31.16 ID:wb1jdyDi0
支援
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:47:20.48 ID:NFXWWs1H0
どどど、という音を立てて、クーの立っている場所に砂煙が上がる。
〔(β)〕 はん、最後まで口数の減らない女だったぜ……
打てるだけのすべてのセキラを打ち切ったベータは、
さすがにこの数のセキラの弾丸を食らって彼女が生きているはずがないと確信し、彼女の倒れているであろうそこに目を向ける。
〔(β)〕 な……ッ!!?
砂煙の中に、立っている彼女の影が見える。
ばかな、そんなはずはないとベータは思った。あの数のセキラの弾丸を、一体どうやって防御できるというのだ。
砂煙が晴れていく、現れた彼女の姿は
〔(β)〕 !!
―――どうみても、防御したとは言いがたい様相をしていた。
川# - )
着ている服はあちこちが破け、曝け出された素肌には無数の火傷の跡。
しかしベータが一番驚いたのは、彼女のその手に赤い光の刀が握られていたということだった。
〔(β)〕(こいつ、自分に無数の弾丸が向かってくるって状況で、なんで刀なんか……!?)
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:49:59.95 ID:NFXWWs1H0
たしかに全身に薄いセキラの膜を張り巡らせるより、セキラを刀の形態に変化させた方が防御力そのものは高い。
しかし、それは同時に刀に覆われた以外の部位の防御を完全に捨てるということだ。
痛みを感じないTASIROの体ならともかく、自分よりはるかに脆い人間が、
自分の体をどうどうと危険に晒せるという事実が、ベータの思考回路を著しく混乱させた。
〔(β)〕 ”痛み”ってのは大した感覚じゃねえってことか?
いや、俺が調べる限り”痛み”ってのは人間がもっとも恐れる感覚のはず……!!
壁に張り付いたままぼそりと呟いたベータの声を聞いたクーは、にやりと微笑んだ。
川# ー ) ははは……そう…だ……わかるまい……これが、”痛み”を知る人間の強さだからな……!!
〔(β)〕 何!?
皮膚に残る無数の衝撃と痛み、彼女はそれを振り払うため、体を左右に軽く振るうと、
その火傷だらけの両手で頬をぱんぱんと叩き、気合を入れる。
川#゚ー゚) 私は”痛み”を知っている、だから”痛いこと”がとても恐ろしいことだと分かっている……!!
〔(β)〕 なら、なんで自分の身を危険に晒せる!? てめーらは”痛み”ってのが怖えーんだろうが!!
しえーん
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:52:42.51 ID:NFXWWs1H0
川#゚ー゚) そうだ、私たちは”痛み”が恐ろしい。
自分が”痛い”のも、他人が”痛い”のも、ただただ恐ろしい弱い存在、人間だ
クーは自分の携帯から出る赤い光の刀を消すと、畳んだそれを左手に持ち変え、壁に張り付くベータを見上げる。
川#゚ー゚) だからこそ、人間は誰かのことを考える!!
自分がここで痛い思いをしなければ、他の誰かがずっと痛い思いをしなければいけないかもしれない、
そう”恐れる”ことができる!!!
「わかるか?」と彼女はベータを、”痛み”を感じないが故に誰かが傷つくのを”恐れない”TASIROに向かって笑う。
川#゚ー゚) これが”人間”だ、自分の身を切り裂いてでも、他の誰かのためにその身を犠牲にできる!!
続けて、叫ぶ
川#゚ー゚) これが”私”だ、傷つけられる”痛み”を知っているからこそ、
自分の周りの誰かが傷つくのが恐ろしくて仕方がない!!
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:55:18.86 ID:NFXWWs1H0
ベータは混乱していた。
全てが理解できなくて、そして全てが矛盾しきっている気がした。
〔(β)〕(”怖い”から”強い”……なんだそりゃ?)
混乱しているということが面倒くさくてしかたがなかったベータは、
彼の中でもひとつだけ分かっていた事実を彼女に突きつけ、
そしてそれによって矛盾だらけの彼女の”強さ”を破壊することにした。
〔(β)〕 あーくそ、めんどくせぇ! 要するによー、てめえがいくら”痛み”を味わったって……
彼女の足を拘束していた分も含め、
大気中に透明化し飛散していたセキラが自分の体に戻ってくることを確認した彼は、
全身に満ちるそれらを活性化させ、彼女に向かって飛ぶ。
〔(β)〕 てめえの護りたいものも護れず死んだら、意味ねえってことだろーが!!!
宙に舞う彼の目に、文字が表示される。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:56:16.70 ID:wb1jdyDi0
しええん
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 22:58:24.33 ID:NFXWWs1H0
―Assault:「スクリュースナイパー」―
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:01:06.57 ID:NFXWWs1H0
川#゚ -゚) はあああああああああああああああ!!!!
彼女の叫び声と友に、活性化し始める携帯電話の中のセキラ。
ばちばちと放電音を響かせながら、それらは解き放たれるときを今か今かと待ちわびている。
川#゚ -゚) ―――ッ!!!
そっと右手を筒状にし、左腰の携帯に添えた。
向かってくる、赤い光の回転砲弾。彼女はそれを前にして、しかし携帯電話の中のセキラを解き放つことをしない。
川#゚ -゚)(まだだ、もう少し……)
ふいに時間が遅くなるような感覚。
襲い来る砲弾の回転が、穏やかな風の中で舞う風車の回転のようにゆっくりとしたもののように見える。
そして、その砲弾が彼女に触れるかどうかというところで彼女は行動を起こす。
川#゚ -゚)(―――今だ!!)
左手に持つ、折りたたんだ黒い携帯電話を横に倒す。
それが引き金になり、解き放たれるのは携帯電話の中で限界まで活性化させられたセキラ。
添えた右手でそれを誘導し、刃としてそれを振るう。
その姿ははまさに、居合い抜きを行う剣士のそれだった。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:03:12.13 ID:wb1jdyDi0
しえ
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:04:05.64 ID:NFXWWs1H0
川#゚ -゚) 一 閃 ! ! !
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:05:45.58 ID:Y7zSjg3u0
しえん
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:06:56.59 ID:NFXWWs1H0
十秒にも満たない時間の中で行われた行動。
そして、そののちに残ったのは。
右手を振るった状態で止まっている少女と、その後ろに立つ緑色のTASIROの姿。
背中合わせに立つ彼らは微動だにせず、まるで時間が止まったような光景がしばしの間続く。
川; - ) ……ッ
先に動いたのは、少女。
膝からその場に崩れ落ち、両手を地に着く。
それに対し、緑色のTASIROは立ったまま
〔(β)〕 へ、へへへへ……
その場で狂ったように笑い始める
〔(β)〕 は、ははは……ひゃっははっはっはっはっは!!!!
少しの間笑った彼は
〔(β)〕 まいったぜ……これがあんたの言う人間の”強さ”ってヤツか!!
一言そう叫ぶと、再び狂ったように笑いながら、真っ二つになった彼はその場に崩れ落ちた。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:09:01.79 ID:wb1jdyDi0
支援
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:09:55.62 ID:NFXWWs1H0
川;゚ -゚) はぁ、はぁ……思ったより疲れるな、これ
両手を地面につけ、息を切らせるクー。
その左手の下にある携帯電話が、赤く輝いたのを確認し、彼女はほっと一息つく。
ミセ*゚ー゚)リ まあ”私たち”の制御に結構集中力使うしね、しょうがないよ
川 ゚ -゚) ああ、そうだな……
川 ゚ -゚)
ふいに聞こえる、女のような、しかしそれにしてはなにか違和感のある声にクーは応えたあと、しばし沈黙する。
「どしたのー?」と能天気に聞いてくるその声が、
どうやら自分の携帯電話から発せられているということがわかり、彼女は思わず携帯を開いた。
川;゚ -゚) ミセリ……か!?
ミセ*゚ー゚)リ そだよー、クーちゃんの愛らしいふわモテパートナー、ミセリんでっす!!
元気よく答えるその口調が、いつもメールでやりとりする彼女のセキラの口調と一致するのを確認し、
クーはどうやら本当に自分のセキラが喋っているらしいことを確認し、驚愕する。
川;゚ -゚) なんでまた今更喋れるようになったんだ……?
「あーそのことね」とわざとらしい口調で返す彼女のセキラ。
ミセ*゚ー゚)リ さっきあたしの中に、ベータくんが入ってきたじゃん?
ってなんかこの言い方なんかエロい!!
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:12:47.72 ID:NFXWWs1H0
ちょくちょく話を脱線しながらも説明する彼女のセキラの話を要約すると、
さきほど自分の中にとりこんだベータの情報の中に彼の声も含まれていたため、
その声を女性らしく改造した結果、喋れるようになったのだとか
〔(β)〕 ちなみに、俺も話せるぜ?
川;゚ -゚) うわッ、ゴキブリ野郎!!
〔(β)〕 ひゃっひゃっひゃ!! 相変わらず口が悪ぃなー姐さん!
川*゚ -゚) 姐さん……なんだその呼び方、微妙に心地いいな
ゴキブリ野郎をオケラ野郎くらいに昇格させて妥協することにしたクーは、
とりあえずこの携帯電話のなかに先程まで自分と死闘を繰り広げていた相手が宿ったという事実を容認することにした。
「天上天下唯我独尊」この言葉が誰よりも似合う彼女としては、かなり異例の事態である。
〔(β)〕 ミセリだっけ? こいつと同じ依り代に宿って情報を共有してみたんだけどよ、
やっぱなんとなくしかわからねえな、あんたの強さのもとってのは
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:13:52.53 ID:wb1jdyDi0
しし
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:15:57.84 ID:NFXWWs1H0
「だからよ」と彼は続ける
〔(β)〕 とりあえず、俺はあんたの武器になって、あんたと一緒に戦うことにしたぜ?
そうすればわかるかもしれねえからな、あんたの言う”怖いから強い”っていうわけのわからねえ理屈が
「そんなわけだから、よろしく頼むぜ、姐さん」それだけ言って、彼はそれっきり黙ってしまった。
ミセ*゚ー゚)リ 以上、ツンデレベータくんでしたっと
川 ゚ -゚) ……ツンデレ……?
ミセ*゚ー゚)リ あーもうクーちゃんったら、あいかわらず遅れてるぅー!
ツンデレという単語に聞き覚えがなかったクーが首をかしげ、それをミセリが茶化す。
喋れるようになっても、自分とミセリのやりとりは変わらないんだなあと、戦闘で疲れた頭の中でクーはぼーっと考えていた。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:18:36.29 ID:NFXWWs1H0
一方、こちらは日の当たる道路。
普段、少数の人々が行きかうそこで今行われているのは、普段は絶対行われることのない戦闘という異常な行為。
(;・∀・) ……ちッ!!
〔(γ)〕 オラオラァ!! どうしたァ!!
コンクリートの地面を砕くのは、青いTASIRO―――ガンマ―――の巨大な両刃剣。
(;・∀・) ああもう!! 本当に面倒くさいな、キミは!!
簡単に言えば、今モララーは押されていた。
目の前のTASIROの持つセキラの巨剣。
赤く輝く巨大なそれから繰り出される斬撃の威力は予想以上に凄まじく、
その斬撃を受け止めたモララーの剣をも叩き斬ってしまうほどだった。
連続で繰り出されるその攻撃の間を見計らっては反撃するモララーだが、
モララーの剣をも斬る切れ味を誇るガンマの巨剣は防御力も凄まじく……
よってモララーは今、相手に反撃する有効な手段を見出せず、ただ避けることしかできなかった。
( ΦωΦ) モララー殿
(;・∀・) なんだいロマ、見ての通り今ちょっとお喋りしてる余裕ないんだけど?
ふいに持っている剣から聞こえる、彼のセキラの声。
降り注ぐ防御不能の斬撃を避けることに必死な彼は、
自分の意識が相手の攻撃から離れることを懸念しつつもいつものような軽い口調で、ロマの呼びかけに答える。
( ΦωΦ) まだ、やらないのであるか?
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:19:51.09 ID:NFXWWs1H0
(;・∀・) いま”あれ”をやれっての? ちょっと危いんじゃない?
まだ一応”できるかもしれない”って次元の話だよ”あれ”は
危険すぎる、とモララーは思った。
彼がこの戦いで”それ”を試したいと思っていたのは、
目の前のガンマをただの体力勝負のパワーファイターだと侮っていたからにすぎない。
確実に勝てる勝負ならともかく、そんな不確定な”武器”を、
勝てるか勝てないかわからないこの勝負に持ち込むのはあまりに危険すぎる。
自分はまだ、ここで死ぬわけにはいかない。死んでしまっては、自分の「目的」さえかなえられなくなってしまう
( ΦωΦ) モララー殿
(;・∀・) だからなんだいロマ、
ボクのことが耐えられないくらい愛しいってのはわかるけど、名前をささやきたいだけならあとに……
( ΦωΦ) ……らしくないのである
(; ∀ ) !!
ロマの言葉に一瞬気を取られ、振るわれた剣が頬を掠める。
つ、と彼の頬から血が流れるが、彼の頭にはそんな傷など気にならないほどの衝撃が走っていた。
〔(γ)〕 どうしたよ? まさか降参なんて言わねえよなぁ?
急に様子が変わったのを察知したガンマが、モララーにその巨剣の切っ先を向けるが、それに対して彼は無反応。
〔(γ)〕 けっ、マジかよ。少しは骨のあるやつだと思ってたんだけどよぉ……
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:20:25.46 ID:wb1jdyDi0
支援
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:21:08.69 ID:NFXWWs1H0
「まあいいか」と彼は呟く。
〔(γ)〕 テメエがだめなら、他のやつらで遊べばいいだけだからなァ!!!
剣を振り上げ、突撃しようとする彼。
( ∀ ) あははははははは!!!
転瞬、その場にあまりに場違いな笑い声が響いた。
〔(γ)〕 ……あん?
( ・∀・) バカバカしいね、まったくそうだよ、ロマ。
ボクとしたことが、自分の『夢』を失うことの恐怖に、ちょっと自分を見失ってたみたいだ!!
そう叫びながら笑うモララーを、怪訝に思ったガンマは訊ねる。
〔(γ)〕 なんだってんだよ、殺されるかもしれねえってなってついに頭にキちまったのか?
それに彼は答えず、笑う。
( ・∀・) キちゃったんじゃなくて、キてたのさ、どうかしてたんだ、ボクは
携帯電話から出していた剣身をしまい、ボタンに数字を入力するモララー。
( ・∀・) 死と隣あわせの、まさに一世一代の大博打、おもしろい、実におもしろいじゃないか!!
不意に彼は羽織っていたジャケットをめくる。内側に四つある内ポケットのうち三つのなかには、それぞれ一つずつ携帯電話が入っていた。
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:22:31.57 ID:NFXWWs1H0
( ・∀・) さぁ、いくよ? ロマ!!
「了解である」というロマの返答と友に、モララーは左腕に携帯電話を押し付けた。
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:24:12.42 ID:NFXWWs1H0
―Form Change:「Amazing」―
?
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:25:30.89 ID:NFXWWs1H0
( ^ω^)彼らは携帯電話を武器に戦うようです
第九話「戦護」
おわり
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 23:26:52.17 ID:NFXWWs1H0
―次回予告―
〔(α)〕 ”信念”、ですか……
( ∀ ) ははは、なに言ってるのさ、「やれ」って言ったのはキミじゃないか
( ^ω^) それでも、僕らは戦わなくちゃいけなかったんですお
〔(α)〕 私は、ただ怖くてしかたがないのです。
第十話:「理解」
64 :
作者よりあとがき:2010/12/03(金) 23:30:23.43 ID:NFXWWs1H0
随分時間が空いちゃったから覚えてないかもしれないけど、
彼らは携帯電話を武器に戦うようです、でした。
支援くれた人たち、本当にありがとう。
規制がちょっと不安ではあるけど、これから週二回のわりあいで投下しようと思います。
では
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
乙でした