「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここは
都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたり
そんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりするスレです

「まとめwiki」 ttp://www29.atwiki.jp/legends/

まとめ(途中まで) ttp://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html

避難所は↓だよ!規制中やスレが落ちている間はこっちでゆっくりしていようね!
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13199/

2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 13:22:46.77 ID:5YsBvbEG0
よくある質問



 このスレってジャンプの某読みきりと関係あるの?



始めにこのスレを立てた>>1が何を考えて、スレを立てたのか
今となっては、その真相はわからない
ただ、ここに集まった者たちは、各自思い思いに妄想をぶちまけていき、今のこのスレの形となっていった


まぁ、結果としては関係あるかどうかとか、どうでもよくね?
ぶっちゃけ、ほぼ関係ない内容だし
3お昼時の町角で ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/22(月) 13:24:32.76 ID:5YsBvbEG0
「ありあたっしたー」
やる気の無い店員の声と共に、コンビニから出てくる星
そんな星に首の後ろ、首が絞まらないように襟より少し下の部分を掴まれて、ぷらぷらと揺れながら連れ出されるニーナ
「募金は週に一回、買い物のお釣りだけ。必要以上にお釣りが出ないように考えて支払いもする事」
「ですがですがしかし! あの寄付で世界中の恵まれない子供達の生活が僅かにでも改善されるのなら!」
呆れ顔の星に、くわっとテンションを上げて叫ぶニーナ
「その心構えは立派だけどな。それで俺達が飢えて死んだら寄付はそれで終わりだろ」
「む」
「今苦しんでいる子供達だけを助けて終わり? 後々で生まれてくる子供達はどうでもいいの?」
「うぐ」
「例えば、医者が身体を壊すほどに働いて患者を助けるのは立派だけど、それで結果として医者が死んでしまったら誰が患者を助けるんだ?」
「はうっ」
「ここ一番に奮発するのは大事だけど、もっとそれ以外に自分ができる事、やらなきゃいけない事を考えなきゃ駄目だろ」
手塚星、これでも中身は小学生である
元々両親が共働きなせいで大人びた思考をしていたのだが、『組織』に所属してからは周囲にいる駄目な大人を色々と見てきたせいもある
「この町で何か探してるんだろ? 俺と出会った時みたいに腹減ってふらふらしてたら、それもできないだろ」
「そっ、それは、その……神が与えたもうた試練で」
「空腹を我慢するのは試練かもしれないけど、空腹になった原因は違うだろ、さっきのを見てたら。自分の失敗を神様のせいにするのは駄目だろ」
「うぅ……」
流石に少々打ちのめされて、しょんぼりとしてしまうニーナ
「まあ、良い事をしようとしてたのは神様も見てくれてるさ。今日からもっと上手くやればいいんだって」
子供をあやすように、ニーナのきゅっと抱き締めて頭を優しく撫でてやる星
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 13:25:22.17 ID:hnwnNAzwO
つまんない
5お昼時の町角で ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/22(月) 13:26:36.85 ID:5YsBvbEG0
「ニーナが色々話してくれた人達だって、お前が倒れたりしちゃったら心配するだろ。お前が幸せになるのも、誰かの幸せに繋がるんだぜ?」
「そ、そうデスね! 『教会』の皆に心配を掛けるわけにはいきません!」
「おう、その意気だ」
抱き締めたまま背中を軽くぽんぽんと叩き
「んじゃ、いつもの公園でお昼にするか。その後はまた町の見回りだ」
身を離すついでに、ニーナの髪の毛をくしゃくしゃと掻き回してやる
「ああもうっ、身嗜みの乱れは風紀の乱れなんですよ!」
乱れた髪を手櫛で直しながら、頬を膨らませて抗議するニーナ
「ははっ、ごめんごめん。つい、な」
昔、よく落ち込んでいた佳奈美を元気付けるために、わざと子供っぽい悪戯で怒らせていた
それはいつしか、彼女の気を引くための手段に変わっていたのだが
「なあ、ニーナ」
「はい、なんデスか?」
「頑張れよ」
「勿論デス!」
本当に「頑張るぞ」という気持ちが満ち満ちて溢れ出さんばかりの顔で、ぐっと答えるニーナを見ていると
何やら妹でも出来たような気分になって、しっかり面倒を見てやらなければと思ってしまう
ニーナが探す悪魔
ニーナを探すオカマ
どちらが厄介な存在にしても、ニーナの傍にいればいずれ遭遇するはずである
「さて、一体どんなのが出てくる事やら」
意気揚揚と歩くニーナの背中を眺めながら、星は軽く溜息を吐きながらも
微かな笑顔を浮かべていた
6虎と飴と ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/22(月) 13:28:36.71 ID:5YsBvbEG0
9月・・・2学期も始まり何日か過ぎました
町では愛も変わらず慌しい事や物騒な事や血生臭い事なんかがあったりで騒がしくも平和です
そう、道端で衆人環視の中女子中学生がバラバラになったり
ゲーム中に意識をなくす人が大量に出たりしてますが少なくともこの学校はまだ平和です・・・
そんな事を考えながら廊下を歩いていると見慣れた背中が
「先輩!!」
「・・・・・・」
・・・呼んだのに反応がありません
珍しい
「・・・先輩?」
「・・・なんだ、雨村か」
前に回りこんでやっと反応がありました・・・
「大丈夫ですか?」
「・・・何が?」
何時もより眠そうだし擦り傷が増えてる
それに反応も薄いし・・・まるで・・・
「・・・じゃぁ、俺は教室に戻るぞ」
「あっ」
私を押しのけて行こうとする先輩に、思わず抱きついた


7虎と飴と ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/22(月) 13:30:35.53 ID:5YsBvbEG0
「・・・・・・・・・・・・」
暖かい・・・けど反応が無い
何時もならすぐにツッコミが入るのに・・・
「・・・・・・何をしてるんだ?」
「いや・・・何となく」
違う
「何となくで女がこう言う事をするなと言ってるだろうが」
違う、何となくなんかじゃない
何時もより気だるげで、反応の薄いから・・・
まるで先輩の存在自体が希薄に感じて、このまま居なくなってしまうんじゃないかと思ったから・・・
また、大切な人を失いそうで怖かったから・・・
「・・・俺は教室に戻るからお前も戻れ」
「あっ・・・」
先輩は行ってしまった
「・・・後で花子さんに聞くべきでしょうか」
彼女なら恐らく知っている筈だ


8虎と飴と ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/22(月) 13:32:34.44 ID:5YsBvbEG0
「・・・先輩、私は先輩と盃を交わしました」
それは先輩の部下に、先輩の物になる道を選んだと言う事
海造君が言っていた
「その命ある限り。その生涯を若にささげる。全ては若の為に……」
私には何も無い
過去が無い、記憶も思い出もない
この身一つしか持ち合わせていない
だからこそ
「私はこの身を生涯を貴方に捧げたんだ」
役に立てるとは思わない
力になれるとも思わない
だけどせめて
「支える位の事はさせてください・・・」
私の呟きは恐らく、誰の耳にも届かなかっただろう



そして、その一部始終を
廊下の角から委員長さんが見ていた事など
この時の私には知る由も無かったのだ

続く?
9今後を思う  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 13:35:31.88 ID:5YsBvbEG0
 将門公との話を終えて、天倉達が寝ている部屋に戻る
 部屋に戻ると、二人共、目を覚ましていたようだった

「…目を覚ましたか」
「あ…獄門寺君」

 みー、と、花子さんが俺に駆け寄ってくる
 花子さんを撫でてやりながら、俺は天倉達に視線をやった
 …見た限り、翼さんが言った通り、怪我の痕は残っていない
 紗奈の右目も、問題なく見えているようだ

「……二人共、怪我は、大丈夫か?」

 他に、言うべき事があるはずなのだが
 まず、口に出せたのは、それだった
 …どう、切り出せばいいのか……わからない

「あ、うん…大丈夫」
「私達は……大丈夫、だけど…」

 二人の視線が、沈む
 …恐らく、だが
 あの場にあった死体は、この二人の、両親なのだろう
 天倉達は………両親を、失った事になる
 これから、二人がどうやって生活していくのか
 これからのことも、考えていかなければならない

「……ほら、今日は、まずは休んでろ」

 ぽふ、と
10今後を思う  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 13:37:51.16 ID:5YsBvbEG0
 翼さんが、天倉達の頭をなでた
 二人に、気遣うような視線を向けている

「ぁ…でも、私達…」
「「首塚」は、「組織」に害された者の味方だ。このまま、ここに泊まって行けばいい」

 翼さんはそう言うが、二人共不安そうだ
 …それは、そうだろう
 見ず知らずの場所だ、警戒しない方がおかしい

 だが、翼さんの言う通り、二人は今夜はここ、「首塚」の本拠地に泊まった方がいいだろう
 正直、帰りにくいだろうし………「組織」の、天倉達を害した黒服の息がかかった追っ手がないとも、限らない

「…花子さん」
「みー?」
「…天倉達が不安にならないように、傍にいてやってくれないか?」

 花子さんが傍にいれば、その不安も少しはマシになるかもしれない
 そう考えて、花子さんに頼んでみた
 みー、と花子さんは頷いてくる

「わかったの、でも、それだとけーやくしゃ、お家に帰るのどうするの?」

 ………
 そう言えば、ここ、「首塚」の本拠地は異界……
 …………
 いや、まぁ
 花子さんのトイレワープを使わなくとも、現実とも重なっている部分があるし、帰れない訳じゃない

「あぁ、龍一なら、フィラちゃんに頼んで送ってもらうから、大丈夫だ」
11今後を思う  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 13:40:20.91 ID:5YsBvbEG0
「………すみません」

 翼さんの言葉に、小さく頭を下げる
 いや、頭を下げるべきは、「フィラデルフィア計画」の契約者である、あの女性だとわかってはいるのだが

 …と
 花子さんが、俺を心配そうに見上げてきている事に気付いた
 大丈夫だ、というように頭を撫でて落ち着かせてやる

 ……さぁ
 明日から、忙しくなるな
 翼さんが「フィラデルフィア計画」の契約者を呼びに行く後姿を見送りながら、俺はぼんやりと、そう考えた



 家に帰った時、家の者達は既に眠っていたようで、家の中は静まり返っていた
 起こさないよう、そっと歩く

「………」

 自分の部屋に、入る前に
 童子切安綱の様子が何となく、気になって
 先に、安綱を安置している部屋に、向かった

 静かに、襖を開ける
 …部屋には、既に先客がいた

「…ぬら、来ていたのか」
「よぅ、龍。帰ってきたか」
12今後を思う  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 13:42:40.49 ID:5YsBvbEG0
 くるり、振り返ってくるぬらりひょん
 ……こいつはまた、酒を勝手に持ち出して
 まぁ、いつもの事だが

 小さくため息をつきながら、部屋に入る
 …安綱は、いつも通りだ
 静かに、そこにある

「………龍?何か、あったのか?」

 笑っていたぬらだったが…俺の様子に、表情が、変わった
 …ぬら相手に隠し事をして、隠しとおせた試しはない
 正直に、答える

「…………クラスメイトが、都市伝説絡みの厄介事に、巻き込まれた………命は、助かったが………俺は、また、失敗した」

 脳裏を過ぎるのは
 赤い光景と、倒れている花子さんと、「ハナ」の悲鳴
 血塗れた俺をお化けと言って、怖がって泣いて逃げて出した「ハナ」の後姿

 また、俺は失敗した
 天倉達は、辛うじて助かった
 だが、彼女達の両親は助けられなかった
 それに、後一歩、遅かったら………

 これ以上、失敗を重ねる訳にはいかない
 俺は、もっと強くならなければならない

「…ぬら、俺に話があるんだろう?」
13今後を思う  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 13:45:09.48 ID:5YsBvbEG0
 ぬらを、真っ直ぐに見詰める
 以前、俺を訪ねてきた時、本当は話があるようだった
 あれ以来、伸ばし伸ばしになっている、それを改めて尋ねる

「あぁ……だが、お前さんに、今、それを聞かせるには…」
「………悪い話なら、まとめて聞いた方がいい」

 俺の、言葉に
 ぬらは、視線を彷徨わせた後……観念したように、口を開く

「………お前が、安綱で斬った相手、覚えてるか?」
「…鬼動丸の事か?」
「そうだ……かつて、酒呑が束ね、次にそいつが束ねていた鬼共が………また、集まりだしている」

 酒呑童子の息子と言われている、鬼動丸が束ねていた、鬼の群れ
 俺が鬼動丸を斬った後、それは散り散りになっていたらしいのだが…

「…どう言う事だ?」
「……茨木童子辺りが、何か企んでいるのかもしれねぇ」

 ぐい、と酒を飲み干すぬら
 真剣な表情で続けてくる

「…もし、あいつが来たならば、狙いは安綱と」

 つ、と童子切安綱を指差す
 そして、その指先は……そのまま、俺に向けられた

「お前だ、龍(りゅう)。酒呑童子を斬った龍(たつ)の血を引き、そして、酒呑の息子の鬼動丸を斬ったお前。それが目的だろう」
「…………そうか」
14今後を思う  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 13:48:14.11 ID:5YsBvbEG0
 小さくため息をつく
 童子切安綱に、視線を向けた
 安綱は、何も答えず、そこに在るだけだ

「…なら、俺は。余計に、強くならなければならない」
「龍…?」
「………ぬら。昔のように、俺に稽古をつけてくれ。実戦形式の、戦い方を」

 俺の、言葉に
 ぬらは、一瞬驚いたような表情をした
 …だが、すぐに頷いてくる

「…わかった。昔と一緒で、手加減しねぇぞ」
「……手加減をされては困る」


 もっと先へ
 もっと上へ

 安綱に、真に認められる程に、強くならなければ

 八代目様のように
 俺は、強くならなければならないのだ




to be … ?
15「13使徒」小ネタ  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 13:50:51.01 ID:5YsBvbEG0
リュリュ「あ、ジョルディだー」
マドレーヌ「チキンハートのジョルディだー」

リュリュ「退屈だし、声かけてみようか」
マドレーヌ「そうね、遊んでもらいましょ」

リュリュ&マドレーヌ「「ジョルディ、遊んでー!!」
ジョルディ「………っ!!??」

ジョルディ「いやぁああああああああああああああああああっ!!??向こうから声かけてきて遊んでとか言っておいて、いざ偉い人が来たら「お兄さんに変な事されたの」って言われるパターンだぁあああああああ!!??」
イザーク「…お前ら、ジョルディに話し掛ける時は、驚かさないよう細心の注意を払えっ!?」
リュリュ「あれー?」
マドレーヌ「あれれー??」


リュリュ「ジョルディ、ごめんねー」
マドレーヌ「びっくりさせてごめんなさーい」
ジョルディ「…い、いや、大丈夫…」(びくびくおどおど

リュリュ「改めて遊んでー」
マドレーヌ「退屈ー」
ジョルディ「いいよ、何して遊ぶ?」

リュリュ「どうしよっか?」
マドレーヌ「おままごとー!」
ジョルディ「……!!」

ジョルディ「いやあああああああああああ!!??浮気したでしょと包丁持ち出してナイスボートぉおおおおおお!!??」
イザーク「……すまん、ちょっと落ち着かせるから少し待て」(剣を構えながら
16ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 13:51:37.75 ID:5YsBvbEG0
【上田明也の探偵倶楽部after.act3〜戦闘はやる気の問題〜】

久しぶりに実家に帰ってきた。
俺たち女中の杏奈さんに案内されるまでもなく親父が普段から居る和室に向かった。
ふすまを開けるとサムライポニーテールの大男が茶を飲んでいた。

「と、まあそう言う訳で只今父さん。」
「お邪魔いたします。」
「おお、来たか嬢ちゃん。この前は見苦しいところを見せてしまったから気にしてたんだぜ?」
 そして息子よ、……お前に言うことは特にない。
 いやー、それにしても彼女美人さんだなあ。
 俺ももうちょい若ければ……、なんてな。冗談冗談、あはは。
 母さんの若い頃よりずっと可愛いわ。お前が俺に似て美形で良かったぜ。
 母さんに似られたらどうしようかなあと……」
「自分の妻に対して今とんでもない事言ったよね?
 ていうか母さんを不細工扱いしたら罰当たるよね絶対。」
「気にするなよ。不細工だのなんだのは関係ない。
 結局は気に入るか否かだ。俺としてはああいうタイプ好みじゃないんだよね。
 隙がなさ過ぎてつまらないっていうか。」
「明也さんのお母様ってどのような方なんですか?」
「一般人。」
「え?」
「ちなみに弟も居る。」
「えええ!?」
「一般人。俺に似てでかくなったんだが顔は母親似だ。
 アメフトの選手としてアメリカで活躍してる。」
「ええええええ!?」
「茜さん、何に対する『ええええええ!?』かな。」

これではまるで俺の家が人外魔境みたいじゃないか。
17ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 13:52:33.52 ID:5YsBvbEG0
「いや、明也さんの育った環境なんだからきっと人外魔境に違いないと……。」

おお、予想通りの返事。
少しばかりため息を吐く。
もう少し涙がタンクに溜まっていたら溢れていたところだ。

「こいつは環境が悪くてこうなったんじゃない。
 根っこから駄目な奴だったからこんな面白可笑しい奴になったんだ。
 そもそもあの二人には非日常を追い求めるモチベーションがない。
 本当に一般人、故に都市伝説を扱う才能がない。
 モチベーションとは即ち才能だからな。
 こいつが自分で格闘技とかやらないのに近いものがある。
 身体は並以上なんだけどなあ?
 やる気さえあれば俺が少し鍛えても良い程度には良い体だ。
 まあ堕落しきってるのは生まれつきだけどなー。」

父親にまでこの言われようだ。
泣ける、今の俺ならば部屋の隅で三角座りで泣ける。
人を罵るのがそんなに楽しいかこの人非人共め。

「成る程成る程、確かに環境如きで左右されるような人に思えないですしね。」
「解ってるじゃないか、流石我が息子の嫁だけはある。」

どうやら楽しいようである。
今なら満ちる悲しみを昨日の世界にすら届けられる気がする。
18ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 13:53:31.59 ID:5YsBvbEG0
「あと俺を仇と付け狙っていた奴も我が息子の嫁がトドメを刺したらしいな。」
「え?」
「アレ実は俺が呼んでたんだよね、お前らが勝手に仕留めちゃうとか残念。
 駄目だぜ馬鹿息子〜、身重の妻に戦わせるとかお前は鬼か悪魔か両方か?」
「成り行きだよ成り行き。ていうかなんで茜さんがトドメ差したって解ったんだよ?」
「いやそれは血の臭いがだなあ……練り切り?」
「それはお菓子だ。成り行きね。」
「そういえば昔からカクレンジャーごっことか好きだったよねおまえ。」
「それはなりきりだ。」
「バイトが忙しいんだよなあ〜。」
「それはキリ丸だ!……キリしか合って無いじゃねえか!
 だから成り行き!」
「そうキリキリするなよ。」
「キリキリなんて言わないから!俺は今ピリピリしてるの!」
「この場合ピリピリどころかイライラじゃないでしょうか。」
「……そうかな。」
「そうです。」
「まあそれはそれとしてだ。なんでお前らは急に訪ねてくるんだよ。
 一言言っておけば幾らでも準備なんてできるのに。」

そう、そういえば俺たちは何も言わずいきなり遊びに来たのだ。
まあ親子なんだから許して欲しい。

「良いんだよ、ちょっと近くを通りかかっただけだから。」
「ったく……、まあ良いや、話したいことあったし。おい杏奈!お茶淹れろお茶!」
「そんな良いですよ、どうぞお構いなく……。」
「承りました旦那様。」

しばらくすると先ほどの女中さんがお茶を運んでくる。
絶妙な温度だ、旨い。
19ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 13:54:29.97 ID:5YsBvbEG0
「さて、今日お前らを呼んだのは他でも無い。
 上田家もちょいと特殊な事情を抱えていてなあ。
 放逐された身とはいえその長男の伴侶となる以上茜さんにもその事情を……。」
「確かさっきまで『なんでお前らは急に訪ねてくるんだよ』とか言ってたよね?
 そしてなに?今更何?
 俺ってば元々『一般人出身で意味不明の巨大容量持ち+天性の都市伝説の戦いに対する才能』ってキャラだったんだけど?」
「良いんだよ、これから重要な話するんだから、雰囲気出るだろ?
 あとキャラ立てなんて下らないこと気にするな。どうせもう最終回も終わったんだ。」
「最終回?まあ良いや、その家の特殊な事情ってなんだよ。
 俺なんてサンジェルマンから聞くまで自分の家は普通の家だと思ってたんだけどな。」
「いやあ、お前さ。
 父親が会社社長という職についてるわりには日曜日とか家でゴロゴロしすぎじゃね?
 って思わなかったか?」
「いや、母さんが実務は全部仕切ってるし、どうせお飾りなんだろうとばかり。
 ていうか逆タマ?お爺ちゃんには気に入られてたみたいだし。
 あっ、そういえばお爺ちゃんには会ってないなあ……。最近元気してる?」
「お前も親父に向けて逆タマとか結構良い根性してるよな。
 表出るか?やるか?
 手抜かり無く手抜いてやるから殴らせろよ。」
「二人とも喧嘩はやめてくださいよ?」

茜さんがこっそりスカートの中に手を忍ばせる。
だが彼女の様子がおかしい。みるみるうちに表情が青くなっていく。

「奥様、あまり危険な物を持ち込みやがらないでくださいませ。」

女中の杏奈さんが茜さんのナイフを持っている。
どうやら何時の間にかスリ取っていたらしい。
20ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 13:55:25.14 ID:5YsBvbEG0
「いや、俺がスカートの中に手突っ込むとセクハラじゃん?」
「問題そこ?」
「お返しいたしますね奥様。」
「ていうかワタシ奥様?」
「旦那様のご子息の奥様でしたら奥様だと杏奈はプログラミングされております。」
「私が……奥様。」

茜さんがニヤニヤしている。
嬉しいらしい。

「でだ、上田家についてこってり話すぞ。ED後の裏話みたいなもんだから適当に聞き流せ。
 この前俺が負けたら話すって言っていた話とも関わりがあるし。」
「おう、それじゃあ聞くぞ。
 杏奈さん、カルピスのよく練った奴を頼む。
 レモンありありの水マシマシに氷を刻んだ奴をたっぷり入れてくれ。」
「良く練った……カルピス?」
「カルピスって練るもんだろ?」
「おいおいどうしたんだ杏奈、まさか今まで俺に出したカルピスは練ってなかったのか!?
 サンジェルマンの馬鹿め!プログラミングが不完全じゃねえか!」
「杏奈さん駄目ですよ、カルピスは練らないと。」
「……あ、杏奈はカルピスを練る事くらい知ってますよ!」

杏奈さんは頬を赤らめたまま台所に行ってしまった。

「おい馬鹿息子、カルピスを練るってなんだよ。」
「明也さん、私もそんなの聞いたことないですよ。」
「寡聞にして俺も知らないのだなあ。」

口から出任せを言ったら二人が乗ってくれるとは思わなかったのだ。
遠くから杏奈さんが台所の壁に頭を打ち付ける音が聞こえた。
21ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 13:56:34.53 ID:5YsBvbEG0
さて数分後。

「そもそも上田家ってのはこの学校町とは縁もゆかりもない家だ。
 戦国時代より前から続く普通の武家の家柄でこそあれ都市伝説の力とも関係はない。
 一子相伝の剣術とかも伝わってるけど大したことないしお前には教えないから安心しろ。」
「なんだよそれ。大したことないのかよ。」
「大したことないってのは嘘。飛天御剣流ほどじゃないけどすごい。
 お前には教えないが……そいつに教える。」

父が茜さんのお腹を指さす。
ああ、だからこの馬鹿親父は孫が出来て喜んでるのか。

「長男は性格ひん曲がってるし次男は優しすぎるし。
 教えてもしょうがないじゃないか。」
「まあ…………。」
「で、俺は若い頃に武者修行してまわってたんだけどウダウダの間に親父が死んでな。
 日本に帰ってきたのよ。この間にサンジェルマンと出会って都市伝説の力を知ったんだ。」
「ほっほう。」
「その後明也さんのお母様に出会ったのですか?」
「その通り、ところがそのお母様の実家が厄介でな。」
「川白家って……普通の家だったような気がするけどなあ。」
「川白っていうのがまずそもそも違ってなあ。
 あれ本当は河伯って書くんだよ。」
「え?」
「ご存じなんですか明也さん。」
「いや知ってるも何も…………。」

この町で探偵をしている以上、知ってるも何も無い。
学校町の五大旧家の端に名を連ねる家じゃないか。
22ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 13:57:44.31 ID:5YsBvbEG0
「そう、五大旧家の一つの長女、河伯葵。俺はあいつの外見じゃなく中身に惚れたんだ。
 何処までもノーマル、普通、並、なんの間違いもなく凡人。
 外見こそちょっと人目を引くらしいがそんなのこの世の享楽を全て知った俺に言わせれば下らん。
 あいつは最高だ。普通であるが故に、な。」
「ちょっと待て親父。じゃあ癸酉の奴の赤い髪は病気じゃなくて……。
 それに俺の所に一度獄門寺の奴が依頼を持ち込んできたこともそれ関係か?」
「あれは河伯の“血が濃い奴ら”の特徴だ。
 久しぶりに出たらしいからあの爺さん喜んでたっけか。
 獄門寺の関係は知らない、癸酉の奴が紹介した可能性は有る。
 とにかく俺は刀一本で娘を頂きに来たぞぉ!って殴り込んだ訳よ。
 で、あの爺さんや癸巳叔父さんを相撲で張り倒してゆうゆう葵を掠ってきたと……。」
「聞いてねえぞ……。」
「その頃にはすでにお前が葵の腹の中に……」
「だらしなさは遺伝ですか……。」
「旦那様も旦那様のご子息もその辺りグダッグダですね。
 女性の敵じゃないですか。」
「おい馬鹿親父、お前のせいでこのざまだぞ。」
「いや、俺は悪くない。悪いのは美しすぎる世の女性達だ。」
「やめろそれ以上口を開くな、どんどん俺たちの駄目駄目な所が世間様に発覚する。」
「おいおい、人気投票とかあったら順位ダダ下がりじゃねえの?」
「勿論だろ?女性票は期待するな。」
「まあ良いや、ちなみに河伯の家の異能は完全に父系遺伝だからお前にはまったく影響を与えてない。」
「そうなのか。」
「そうなのさ。で、話したいことはもう一つ。」

コホンと咳払いしてから親父は緑茶を飲み干す。
23ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 13:58:55.52 ID:5YsBvbEG0
「ぶっちゃけ俺も修行の名の下にわりと好き放題してるからさ。
 結構いろんな人から恨み買ってるのよ。」
「さっきの訳もわからないまま割烹着着たお姉さんに銃殺されたお兄さんとか?」
「ああ〜、顔見てないから解らないけど……、その鋏ってそいつが持ってた奴?」
「そうそう、ついでに奪ってきた。」
「なら昔果たし合いで倒した武術家の弟子の類かな……。」
「恨みが俺に行くかもしれないって?」
「いや、お前は大丈夫だろ。
 お前の息子については気をつけた方が良いと言っているんだ。」
「ああ、そういうことか。」
「まあ俺の孫を守る為の策ぐらい俺だって既に巡らせている。」
「俺の時見たくサンジェルマンに任せればどうとでも……。」
「駄目だ、そいつがお前の“異常”に準ずる性質を持っているとは限らない。
 そういう特殊な性質がないとF-bフ濃いメンバーとはやっていけねえよ。」
「そう言われてみればそうか。」
「おう、エーテルとかって奴が組織に居てな。
 そいつが茜さんの戸籍を用意しておいてくれたんだが、そいつの所属するE-bノ俺の孫は預けさせたい。
 まだ話してないけど頼めばなんとかしてくれる気がする。」
「あの戸籍ってエーテルさんが用意してくれたんですか?」
「おう、言わなかったっけ?」
「おかげでパスポートとれたから嬉しかったぜ。
 エーテルが準備してくれたってのは聞いてなかったなあ。
 今度お礼言いついでに遊びに行こう。」
「待て馬鹿息子、お前一応組織から警戒対象にされてるんだからな?」
「良いよ、パソコンからにゅるっと出てくるから。あいつのメルアド知ってるし。」
「え、お前ら仲良いの?」
「マブダチ。」
「どこまで信じれば良いんだ……。」

結構真面目に親父は頭を抱えていた。
24ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 14:00:46.95 ID:5YsBvbEG0
「待ってください、勝手に話を進められると困ります。」
「その通りだぞ、俺と茜さんの子供のことを親父が勝手に決めるな。」
「くそっ、俺はお前らのことを思って行動したつもりだったけど確かにお節介だったな!」
「聞き分け良いな!?」
「そりゃあもう、自分が悪かったらすぐに反省するよ。俺は。」
「とにかく、この子のことは私たちで決めます。」
「そうだそうだ!」
「お前茜さんの尻馬に乗ってるだけじゃねえか。」
「そりゃあ毎晩……。」
「言わせねえよ!?」
「言わせませんよ!?」
「安易な下ネタは良くないような気がします。」
「あらやだ俺ってばフルボッコじゃないすか。」
「まああれだぜ息子よ、何が言いたいかっていうとだ。
 親の因果は概ね子供に行くから注意しろよってことさ。」
「……解ったよ。」

出来ればそうなって欲しくはないなあ。
なんて自分らしくもないことを考える。
COAの事件の後でどうやら自分もすっかりぬるくなってしまったようだ。
まああんなもん見せられたら少しは考え方も変わるか。


25ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 14:05:00.74 ID:5YsBvbEG0
「そういやお前結構強くなったよな。」
「馬鹿言うな、俺はデチューンしたんだぜ。弱くなってるはずだ。」
「いいや、今の方が強い。なんなら試してみるか?」
「んなこと……。」

目の前の男はシニカルに笑う。
身体から殺気がほとばしっていた。
このままだと茜さんが危ない。
自然に右手が動いてテーブルの向こうの父を殴り飛ばしていた。
思い切りのけぞって床に頭を打ち付ける父。

「ほら見ろ、反応速度が段違いだ。」
「いやいやいや、なにやってんだよ親父。」
「お前に強さのなんたるかを理解しておいてほしくてな。
 戦闘における勝利とは即ちモチベーションの勝利だ。
 そう言う意味で守るものを手に入れたお前は弱くなったと同時に最強にもなった。
 ってことを理解して欲しかったのよ。」
「……そっかい。」
「ああ、一見すると昔の触れれば切れる鋭さは見えなくなったが……。
 お前は今の方が強い、お前の本来持つ静かな強さっつうの?それが出てるよね。
 俺みたいな派手なタイプとは違う強さだよな、レアなんだから大事にしろよ。
 解りやすい強さと違って勝負が成立するってのは良いことだ。
 俺みたいな解りやすい強さは相手が逃げ出しちまう。」
「よく知らないけどそうなのか?」
「そうだ、久しぶりに空手ごっこやろうぜ。
 昔は駄目だったけど今のお前のモチベーションならすぐに帯くれてやれる程度にはなるよ。」

強さに価値など無いと思う自分としては甚だどうでも良い話だ。
だが父が起き上がって空手の構えを取り始めた以上、俺には少しだけ親孝行する必要が出来たらしい。
【上田明也の探偵倶楽部after.act3〜戦闘はやる気の問題〜fin】
26旧家の血を思う  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 14:12:29.81 ID:C8Oh3rTj0
「将門様」
「うん?どうした、翼」

 フィラデルフィア計画の契約者に頼んで、龍一を家まで送ってもらった後
 将門に、声をかけた翼
 新たな酒を取ろうとしていた将門だったが、手を止め、翼に視線を向ける

 翼は、やや抗議するような視線を将門に向けていた

「…龍一に、何したんすか」
「ん?……あぁ、あれの事か」

 翼が、抗議しているのは
 将門が、龍一に…あの、独特の威圧感を、向けた事

 将門の纏う、霊圧とも呼べるそれ
 それを、真正面から龍一に叩き付けたであろう事を、自分達がいた部屋まで漏れ出したその霊気の強さで、あの圧迫感で、翼は感じ取ったのだ

 翼の抗議にも、将門は小さく笑うだけだ

「何、確認したかったのでな………あれが、その素質を持って生まれたかどうか」
「……素質?」

 首をかしげている翼

 …日景の家の血を引きながら、日景の家の事を詳しくは知らない翼
 だから、余計にわからぬだろう
 学校街の、旧家の血筋の事も
 その中に眠る、幾多の才能の事も
 己の中に流れる血が、どのような可能性をもっているのか
27旧家の血を思う  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 14:14:38.84 ID:C8Oh3rTj0
 それすらも、翼は知らず、気付かぬままだ

「獄門寺の家の血は、当人が望む望まざるに関わらず、覇者の才が流れている。龍一のそれがどこまで強いか、確認させてもらったまでよ」
「…血、ですか」

 やや俯いた翼
 どうしたのか、とでも言うように、将門は翼を見つめる
 …その視線に、翼は小さく首を振って答える

「…龍一は、それを、必要以上に重く受け止めてる気がするんで…」
「ほぅ?」
「……あいつの親は。家の事とかあまり気にしないで、龍一には自由に生きていてほしいみたいだけど………龍一自身は、「獄門寺の家」の人間である事を、すげぇ強く自覚しちまってるから」

 獄門寺の家の、その役目を
 龍一は、どこまでも強く意識している
 他の旧家の事も学び、獄門寺家の役目を、その重要性について学び続け
 ……その役割を、自分は背負わねばならぬと
 幼い時から、ずっとそう考え続けていたらしい
 旧家云々の知識がほとんどない翼でもわかるレベルで、龍一は重い責任を自ら背負い込んでいて

 …それを、まだ、完全には背負い込みきれず
 かすかに、潰されそうな気配すら、ある

「龍一は、俺に仕える、とか言ってくれたけど。そう言う重要な相手は焦らないで、もっと慎重に決めた方がいいと思うんすけど」
「…くくくっ!お前は、あれでは不満か?」
「いえ、違います」

 龍一のような者が、自分に仕える、と言ってくれたのは嬉しいが
 だが
28旧家の血を思う  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 14:16:45.24 ID:C8Oh3rTj0
「……あいつは、俺なんかには、もったいないですから」

 真面目すぎて、立派過ぎて
 …自分なんかには、もったいない
 翼は、そう考える

 翼の、その答えに
 将門は、小さく苦笑した

「………自覚がないところは、あの女によく似ておる」
「へ?」
「あぁ、いや、何でもない」

 誤魔化すように笑い、将門は翼の腕を掴み、引き寄せた
 突然の事に翼はバランスを崩し、将門に抱き寄せられる

「龍一がお前に仕える事を決め、お前がそれを許したのならば。龍一がその責任に潰されそうになったならば、お前が支えてやればいい」
「……はい」
「…お前が。それを支える責任に潰されそうになったならば…我が、支えてやろう。我は、神。祟り神だが、神である事に変わりはない。人の子を支える事は、当たり前だからなぁ?」

 俯いてしまった翼の顎を掴み、自分の方を向かせる将門
 …将門の言葉に、小さく笑う、翼


 その、笑顔に
 将門は、かつての己の契約者の影と
29旧家の血を思う  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 14:18:42.10 ID:C8Oh3rTj0
 …それが、心底惚れこみ、しかし、手に入れる事がなかった女の影を、見た


(…あぁ、そうか、心鬼。瞳が言った通りに……最終的に、お前は願いを叶えたのか)

 幾百年を得て
 一度は混じりあう事を諦めた、その血筋は
 こうやって、混ざり合ったのか

 それを確認し、将門はどこか満足したように、笑ったのだった













to be … ?
30大王CoA―竜人の進撃 ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/22(月) 14:20:44.10 ID:C8Oh3rTj0
正義「ぇ、『ココカラ立チ去レ』?」 勇弥「は・・・?」
???「・・・!」ガサッ!

突如、どこかから物音が聞こえたかと思うと、どこかからまた別の怪物が現れる。

楓「なんだあれは!?」
奈海「え?!十文字さんが知らないの!?」
勇弥「調べが足りないぜ十文字さん、こいつは『ドラゴニュート』。ゲームの序盤には出てこないような怪物さ!」
コイン「えぇぇ!?もしかして強いの?!」
ドラゴニュート「「グウォオオ!!」」

様子を見ていたドラゴニュートが突然動き出す。数は5体。質はどう考えてもゴブリンより上。だがこちらには勇弥が。

勇弥「よし、もう一丁・・・、しまった!」
正義「勇弥くんどうしたの?!」
勇弥「・・・MP切れだ!乱用しすぎたな、次に使えるようになるまでには時間がかかる!しかもそろそろ」

とたん、正義達の力が抜ける。同時に、不安が込み上げる。

楓「まさか、時間切れか?」
勇弥「正解。この世界に入った時にそう分別されたらしい。つまり・・・。」
奈海「ゴブリンに苦戦するレベルの力で、あれと、ってきゃあぁぁ!」
ドラゴニュート「ガワァ!」

ドラゴニュートが奈海に斧を振り下ろす。しかし運が良かったか、奇跡的な動きで回避に成功する。

奈海「ぅう、どうするのよ!」
正義「このまま戦うしかないよ!とりあえずまずは1体に集中攻撃」

気が付くと、全てのドラゴニュートは、既に目標を定めていた。
31大王CoA―竜人の進撃 ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/22(月) 14:22:36.01 ID:C8Oh3rTj0
大王「残念だったな少年、あちらの方も頭が良いようだ。」
ドラゴニュート「「グウォオォォ!!」」

ドラゴニュートが散らばる。
剣を持ったドラゴニュートは正義に斬りかかり、
棍棒を持ったドラゴニュートは大王に殴りかかり
斧を持ったドラゴニュートは奈海に追撃し、
弓を持ったドラゴニュートは楓に狙いを定め、
鎚を持ったドラゴニュートは勇弥に振りかぶる。

正義「分散された・・・。」
楓「く、黄昏!MPは時間で回復する!作戦を時間稼ぎに変更だ!」
大王「なるほど、妥当な発想だ。」
奈海「でもそれって!今の私達で、あいつらと戦えって事で、きゃあ!」
コイン「愚痴ってる暇は無いわよぉ!もう始まっちゃったのよ!」
勇弥「皆、すまない・・・、うわっ!」

正義はドラゴニュートの剣に応戦する。決して強すぎる訳でなく、互角に戦えるレベルである。

正義「くぅ。(何故だ?ボクの相手ならもっと高い攻撃力で攻めてもいいはず。斧も鎚もいるのに・・・?)」
ドラゴニュート「ギャ、ギャ、ギャ、ギャギャ、ギャア!」カンカンカァン、キンッ!

一方、大王も棍棒のドラゴニュートと戦っていた。

大王「たぁっ!威力は充分か。・・・なら、俺には能力がある事を教えてやる!」
ドラゴニュート「ギャワ?」

既にドラゴニュートの頭上には黒雲が広がっていた。

大王「当たるまで撃ち続けるぞ!喰らえ!」
32大王CoA―竜人の進撃 ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/22(月) 14:26:14.64 ID:C8Oh3rTj0
黒雲にスパークが走る。そうとも知らずにか、ドラゴニュートは棍棒を振り上げる。
黒雲から大量の雷が、棍棒をめがけて降ってくる。直撃だ。

大王「・・・どうだ?俺も、やれば・・・。」はぁ、はぁ・・・
ドラゴニュート「ギャワ?ギャワワ?」

そこには平然としたドラゴニュートがいた。いやむしろ、手に持つ棍棒が雷を纏っている事に喜んでいるようにさえ見えた。

ドラゴニュート「ギャワワ、ワァ!」
大王「なんの、ッ!?」

大王は剣で、ドラゴニュートが持つ棍棒を止めた。その瞬間、棍棒に溜まった電撃が大王に流れる。

ドラゴニュート「ギャワワ?ギャワワワワ!」
大王「雷を、俺に返した、という事なのか・・・?」

一方、奈海もコインシューターで斧を持つドラゴニュートと戦っていた。

奈海「えいっ!えぇい!」ピン、ピィン
ドラゴニュート「ガワァッ!」カンカンッ
コイン「“ダメ!少しずつなんかじゃ当たらないよぉ!”」
奈海「なら、量ね。出し惜しみ無しよ!」ピンピンピンピンピンピィンッ

一方、楓は弓を持つドラゴニュートに防戦一方だった。

楓「く、近寄れない。(何故よりによって弓相手なんだ?)」
ドラゴニュート「・・・・・・ギャッ!」
楓「(来た!)1!」

楓は【数秒ルール】の効果で矢を止める。止まっている隙に横へ転がる。
33大王CoA―竜人の進撃 ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/22(月) 14:29:01.78 ID:C8Oh3rTj0
ドラゴニュート「ギャ・・・?・・・。」
楓「(負けそうではない。だが私もMPが切れたら・・・?)さて、どうやって攻めるか・・・?」

一方、勇弥はドラゴニュートの鎚を避けるので精一杯だった。

勇弥「く。(能力さえ使えたら・・・。)」
ドラゴニュート「・・・グワァ!グアァァ!」
勇弥「(ダメだ、今使う訳には行かない。使うならせめて正義にだろ!)どうやって戦えってんだ・・・。」

正義「(よく見たら奈海ちゃ、と十文字さんの敵は逆でもいいと思える半面、決して相性が悪い訳ではない。)
   (じゃあなんでボクの相手はこいつなんだ?考える時間が欲しい・・・。)」
ドラゴニュート「ギャ、ギャギャギャ、ギャ、ギャギャ、ギャア!」カンカンカァン、キンッ!
正義「く、くぅ、あ!?(時間が、無い・・・奴らの作戦は、ボクに考える時間を与えさせない事?!)」

正義はドラゴニュートとの間合いを取り直し素早いスピードでドラゴニュートの懐へ飛び込む。

正義「なら、まずはキミから片付ける!(早くしないと、取り返しのつかない事に)」
ドラゴニュート「ギャ?ギャア!」

突然、ドラゴニュートの口から炎が出る。

正義「えっ!?しまっ、熱ッ!」
ドラゴニュート「ギャギャギャ、ギャアァ!」ブゥン!
正義「(しまった、これは牽制用?!)」

ドラゴニュート「ギャッワワッワワァ!」
大王「調子に乗るな、これならどうだ!」

ドラゴニュートの周りに雨が降り注ぐ。と思った次の瞬間に火の粉がチラチラと降ってくる。
その火の粉がドラゴニュートに触れた瞬間―――引火。
34大王CoA―竜人の進撃 ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/22(月) 14:31:39.13 ID:C8Oh3rTj0
ドラゴニュート「ギャワアァァァア!」
大王「ふ、どうだ!さっきのように笑って見たらどうだ?!」
ドラゴニュート「ギャワアァァァア!ワワッ♪」
大王「何だと?!」

喰らった、と思いきや、棍棒によってまたもや吸収されていたようだ。炎を纏った棍棒で攻撃を仕掛ける。

大王「・・・ふざけるな・・・。」

奈海「えぇぇぇい!」ピンピンピンピンピンピィンッ
ドラゴニュート「ガ、ガワッ!?」

奈海は見事にコインを当て、ドラゴニュートに呪いをかけた。どうやら動きが遅くなったようだ。

コイン「“やったじゃない!どんどん行くわよぉ!”」
奈海「もちろん!次はどんな、呪い・・・。」
コイン「“・・・どうしたの?早く入れてよ。”」
奈海「コインが、もう無い・・・。」
ドラゴニュート「ガ、ガワワァ・・・。」ニィ

ドラゴニュート「・・・ギャ!」
楓「(3本同時?だが。)1!」

楓は3本の矢を止めた瞬間、弓のドラゴニュートへと駆けて行く。

楓「(3本同時に、正確に射るにはかなり集中するはず。ロスタイムぐらい有るだろう?)2!」
ドラゴニュート「・・・。」
楓「3!これで決める!」
ドラゴニュート「・・・ギャ。」シュッ
楓「(しまった、投げナイフ!?)」
35大王CoA―竜人の進撃 ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/22(月) 14:33:36.31 ID:C8Oh3rTj0
気が付けば、正義は剣を弾かれ、大王は攻撃を全て返され、奈海は弾切れとなり、楓も攻撃を喰らっていた。
しかも、まだ勇弥の回復は終わっていない。

勇弥「皆、大丈夫か!?」
楓「そ、そうくるとは・・・。なかなか頭が良いらしいな。」
奈海「どど、どうしたらいいのよ!きゃあ!」
ドラゴニュート「「・・・ガギャギャギャハハハワワワ!」」
正義「まさか、こうなるなんて・・・。」

正義の後ろで、ドラゴニュートが剣を振りかぶっていた。

ドラゴニュート「ギャッギャッギャッ、ギャア!」
正義「く・・・。」
大王「はっきり言っておくぞ、少年。」


―――この勝負、俺達の負けだ―――


舞い降りた大王CoA編第2話「竜人の進撃」―完―
36流れ人  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 14:35:48.95 ID:C8Oh3rTj0
 …がさがさ
 がさごそがさ

 ゴミ箱をあさる影
 それは、野良犬に見えた
 …そこに近づく人間
 犬に見えるそれは、己を生み出した噂に従い、動く

「あぁ?何見てんだよ」

 くるり、振り返った顔は、うだつの上がらない中年の男
 …それに、犬耳が生えた姿
 不気味である
 ひたすら不気味である

 都市伝説に語られる「人面犬」
 それは、ただ、伝わる通りの行動をとった
 それだけだった

「………せ」
「あん?」

 …人面犬は、気付かなかった
 自分を見てきていた、人間が
 …酷く、飢えた瞳を、している事に

「−−−−食い物よこせぇええええええええええええええ!!!!!!!!」
「ぎゃいんっ!!??」

 どごすっ!!!
37流れ人  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 14:38:23.43 ID:C8Oh3rTj0
 人面犬は、あっさりと突き飛ばされて
 人面犬を突き飛ばした人間は、がさがさと勢いでゴミ箱をあさり、食い物を探し出した
 …その様子に、人面犬は、きょとんとする

「っちぃ、ロクなもんがありゃしねぇ…」

 くるり
 中身が微妙に残ったマヨネーズの容器を咥えながら、その人間は人面犬に振り返った
 その眼光に、人面犬はびくりと震える

「……食用なのは、ちゃうちゃうだったか…………雑種は食えるかな?」

 っちょ、おま!?
 やばい
 こいつはやばい!?
 きゃいんきゃいん!と人面犬は逃げ出した!

「…食い物」

 しかし!
 回りこまれた!!!

「俺の食料となれぇえええええええええええ!!!!」
「ぎぃやあああああああああああああああああああああ!!!???」

 ぎゃわんぎゃわんぎゃわん!!??
38流れ人  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 14:41:20.75 ID:C8Oh3rTj0
 学校街に、響く悲鳴
 都市伝説が…それも、食物関係でもない都市伝説が、人間に食料として狙われる
 まさしく、前代未聞の光景が繰り広げられていたのだった



「…あー、くそ、逃げられた」

 ふらふら
 人面犬に逃げられた人間
 ふらふら、街を彷徨う

「……腹減った。くっそ、馬鹿弟子め。学校街で生活してるらしいが、どこに住んでいやがる…」

 …人間の名前は、禰門 樹
 勝つためには手段選ばぬ、外道の格闘技の使い手である

 ……しかし
 いかなる熟練の、都市伝説相手に互角以上で戦える格闘家であろうとも
 空腹という敵を前には、なすすべもないのだった



続くかどうかわからない
39夢幻泡影 † “原罪”  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/22(月) 14:43:42.01 ID:C8Oh3rTj0
(裂邪>いや、お前らはここで待ってくr
(メリー>あんたバカじゃないの!?こんな状況で帰ったら気分悪いわよ!
(レイ>わたしもお手伝いしたい!

俺としては、友達を危険な事に巻き込みたくないんだけど
でも、2人の目を見てると・・・かぁいい
違う違う違う
この2人の真っ直ぐな目を見てると、はっきりと「ダメだ」って言えなくなってしまう
ハァ、いつから俺はこうなっちまったんだろう

(裂邪>・・・分かった、分かったから、絶対に無茶しないでくれよ?
    一応、ゲームの中だと死なないらしいけど、もしもって時があるから
(レイ>はーい!
(メリー>フン、言われなくても分かってるわよ!

と、口々に言ってメリーさんとレイちゃんは俺の影の中に入っていった

(裂邪>よし、じゃあ・・・また、戦ってくれるか?
(ウィル>てやんでい!あっしはいつでも旦那についていくぜい!
(理夢>ったく、本当にテメェは疫病神かよ・・・働いてやっから有難く思え!
(ミナワ>必ず助け出しましょう、ご主人様の弟さんを!
(裂邪>・・・ウヒヒヒ、あぁ、必ずな!

3人も、影の中に入る。あとは

(シェイド>裂邪ヨ
(裂邪>ん?
40夢幻泡影 † “原罪”  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/22(月) 14:46:11.39 ID:C8Oh3rTj0
(シェイド>予メ、言ッテオクガ・・・ナルベク、無茶ハスルナ
      デナイト、ミナワノ心臓ガ持タンゾ
(裂邪>何だよ「なるべく」って
    それじゃ俺が「絶対すんな」って言ってもやっちゃうような悪い子みたいじゃん
(シェイド>違ッタカ?
(裂邪>大正解ですが何か
(シェイド>ダロウナ・・・生キテ帰ルゾ、我ガ半身
(裂邪>ったりめーだ、相棒

影は閉ざされた。あとは彼女の到着を待つだけd

(ローゼ>遅れて申し訳ありませんわ!

グッドタイミング
俺は声のする方へ振り向いた・・・
ローゼちゃんの目は、あの時と同じ
ミナワが融解された時と同じ、燃えるような赤い眼だった
ということは、彼女は真剣だということだ
でもさ
俺の机の引き出しから出てくるってどうなのかしら
それはともかく

(裂邪>すまないローゼちゃん。それに・・・ライサちゃん?
(ライサ>怪我してる人がいるかもしれないから、私も行く!
(ローゼ>と言って聞きませんの。
(裂邪>いや、助かる。ゲームとは言え、死を体験するのはあいつらにゃ早過ぎるし

ライサちゃんを抱えながら、ローゼちゃんは引き出しから出てきた
41夢幻泡影 † “原罪”  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/22(月) 14:48:37.02 ID:C8Oh3rTj0
(裂邪>じゃあ、頼んだ
(ローゼ>えぇ・・・『アセンション』!

俺達を赤い光が包み込む
背景は、俺の部屋から見知らぬ土地へ移り変わる―――その前に
バチッ!
という音が響く
光が何かを弾いたらしい
ようやく見えたのは、剣を持ったトカゲ人間・・・我が仇であるドラゴニュートだった
その姿を確認してから1秒も経っていないだろうその瞬間に、俺は『シャドーサイス』を持ち、
赤い刃を右手に携えたローゼちゃんと共にドラゴニュートに切りかかった

―――漆黒が包む黄昏に

―――深紅の薔薇が咲き誇る

(裂+0>『ローズ・オブ・ダスク』!

決まった
打ち合わせもアイコンタクトもしてないのに決まった
どうやら俺はロリとの相性抜群らしい
んなこと言ってる場合じゃねぇ
血飛沫を飛び散らせながら、ドラゴニュートは倒れた
あぁ、ギャラリーがライサちゃんだけなのが惜しいところ
それより、正義を探さないと

(少年>お兄ちゃん!どうしてこんな所に!?

振り返ると、ライサちゃんの後ろに見覚えのあるガキの姿
偶然にしちゃ出来過ぎているが、探しに行く手間が省けた
42夢幻泡影 † “原罪”  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/22(月) 14:50:34.99 ID:C8Oh3rTj0
(ローゼ>裂邪さん、彼が・・・
(裂邪>あぁ、黄昏正義。俺の弟だ
    正義ィ! お前こそ何でこの中に入っちまってんだ!?
(正義>そ、それは・・・

正義の表情が曇る
この隙に、俺は辺りを見渡した
正義の友人が3人―――1人は知らないな―――と、正義と友人1人の契約都市伝説が1人ずつ、
そしてゴブリンの死体が数体、か
俺の直感だと
例の『都市研』の集まりで、この『COA』を調査しに来たのだろう
そして吸い込まれ、ゴブリンとの戦いで体力を消耗し、そこをドラゴニュートに狙われた、ってところか
しかし見ればここも初級ステージ
今といい、俺の時といい、何故こんな所にドラゴニュートが・・・まぁいいさ
俺は飛び掛ってきた、斧を持ったドラゴニュートを弾き飛ばす

(裂邪>なぁ、俺は別にお前らが何しようが怒りゃしねぇよ
    ぶっちゃけお前らも余計なお世話だとか思ってるだろうし
    でもさ、他人に心配かけちゃいかんと思うんよ

俺は影の扉を開いた
赤マント、注射男、白ワニ、そしてパーカーの男と女子校生、何故かメリーさんとレイちゃんも飛び出す

(パーカー>少年殿!助太刀に来た!
(女子校生>少年くん!もう大丈夫だからね!
(正義>「ベッド下の男」! 「テケトコ」!
(裂邪>お前ら喋れるんじゃねぇか!! あ、メリーさんにレイちゃん、この『回復薬』をあいつらに
(メリー>わかったわ!
(ローゼ>ライサ、貴方もあの子達をお願いできる?
(ライサ>任せてお姉様!
43夢幻泡影 † “原罪”  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/22(月) 14:51:52.44 ID:C8Oh3rTj0
ライサちゃんはまず正義の治療に、メリーさん達は他のメンバーに向かってくれた
どうやらドラゴニュートは新勢力の制圧に集中したいらしい
剣を持った奴もまた立ち上がった。やはりしぶといなこいつら
ドラゴニュートは・・・剣、弓、斧、ハンマー、棍棒の5匹か
ハンマーと棍棒は正義の愉快な仲間達に任せるとして

(裂邪>ローゼちゃん、あの弓使いを頼めないかな?
(ローゼ>え? でもそれだと裂邪さんが・・・
(裂邪>俺達は1回、あいつらを3匹相手にしたんだ
    剣使いは死にかけてるし
    それに、ちょっと考えがある
(ローゼ>・・・分かりましたわ。死ぬ事のありませんように
(裂邪>あぁ、あんたもな

ローゼちゃんが弓使いの方に向かった後、俺は指を鳴らした
俺の影から、ミナワ、理夢、火の鳥となったウィル、そしてシェイドが現れる
目の前には血塗れになった剣使いと、未だピンピンしている斧使い
まとめて片付けてやる

(裂邪>さぁ、行くぞお前ら!

再び、俺は指を鳴らした
44夢幻泡影 † “原罪”  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/22(月) 14:53:05.19 ID:C8Oh3rTj0
――――――右腕ヲ頭上ニ高ラカニ上ゲ、

(シェイド>了解シタ

――――――肘の角度は180度!

(ミナワ>はい、ご主人様!

――――――て事ぁ、俺様達がすべき技は、

(理夢>ククク、OKィ!

――――――間違いなく、“あの技”でい!

(ウィル>がってんでい!

迫り来る2匹のドラゴニュート
俺は、その小さな頭を鷲づかみした
黒い爪で
既に俺は『シャドーズ・アスガルド』を発動していた
この姿になれば、こちらの勝利は目前だ
まずは斧使いを蹴り飛ばし、剣使いは傷を抉るように掻いてから同じく蹴りをいれた
竜人、とは言えど、傷口を弄られるのは応えるらしい
苦しそうな鳴き声をあげながら、ジタバタしている剣使い
元気な斧使いはすぐさま起き上がり、その巨大な斧を構えて俺に襲い掛かる

可哀想に
俺は「囮」なのに

(理夢>夢でも見てろ!
45夢幻泡影 † “原罪”  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/22(月) 14:54:28.82 ID:C8Oh3rTj0
長い鼻の先から煙のようなものがのび、2匹を包む
ピタリ、と動かなくなるドラゴニュート
どんな夢を見ているんだろうな
一生見てろ馬鹿共
俺は小さくなったリムを背に、ミナワが作ってくれたシャボン玉を、
トランポリンのような感覚で、階段のように上へ上へと飛んでいく
一番上のシャボン玉に辿りついた時、俺の真上には太陽の如く燃える鳥

(裂邪>やれ!ウィル!
(ウィル>がってん! ハァァァァァァァァァァァァア!!

真下にいるのは夢を見ている竜人共
俺は今、光源と最も近い位置にいる
足場は透明なシャボン玉
忘れがちだが、『シャドーズ・アスガルド』発動中は常に影の扉が開きっぱなしだ
“夢”、“幻”、“泡”、“影”
【無】の要素が全て揃った

(裂邪>犯した罪は償えないし、今更償おうとも思わない
    だからせめて、俺はあいつらを守りたい
    俺みたいな歪んだ奴になって欲しくないから
    そうさせたのは、俺があの日犯した“原罪”―――『エルプズユンデ』!

俺の黒い足元には、もう何も残っていない
赤い血も
白い骨さえも
俺は青い空を仰ぎながら
爆音が響く黄金色の草原に、ゆっくりと落下した

   ...To be Continued
46子供の頃の話  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 14:56:25.06 ID:C8Oh3rTj0
 静寂が好きだった
 騒がしい事は、あまり得意ではなかった
 同年代の子供達のようにうまく遊べなかったから、不快な思いをさせたくなくて、あまりそちらに関わろうとしなかった
 その結果、孤独になったとしても、さほど気にはならなかった

 その日も、休日、いつも通り家にいた
 家に伝わる古い刀の前で静かにしている
 …刀の前にいると、落ち着く
 そうやって、しばし、ぼんやりしていると

「……あぁ、龍一、そこにいたのね」

 からり
 襖が開き、母が顔を出した
 顔をあげて、そちらを向く

「…母さん?何か、あったか?」
「あのね、今、河伯家の人達が来てるんだけど…ちょっと、大人同士でお話があるから。河伯家のお子さんの、お相手しててくれる?」
「……わかった」

 改めて、襖に向き直る
 良かった、と母がほっとしたように笑った

「河伯さん、龍一、大丈夫ですって」

 襖の向こう側で、母が誰かに声をかけている
 母よりは、少し年上な感じの声がして…誰かが、こちらに向かっているらしかった
 多分、河伯の家の子供だろう
 確か、聞いた話によれば、自分よりは年上だったような
 …からり
47子供の頃の話  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 15:00:29.36 ID:C8Oh3rTj0
 襖が、更に開けられる
 その先に、居たのは

「おねーさん、付き合ってください!!」
「あ、ごめんねー、私、組長みたいな男臭い人が好きだからー」
「マイガッ!!」

 ………
 卯月さんに告白し、0.3秒で振られている、自分よりは年上な子供の姿が見えたので
 ひとまず、礼儀として見ないふりをしたのだった



「えーと…獄門川 隆三君、だっけ?」
「……獄門寺 龍一です。よろしくおねがいします、河伯 癸酉さん」

 改めて
 深々と、一礼する

「あー、いいよ、癸酉でいいよ、三郎君」
「……龍一です」
「敬語も使わなくていいよー、堅苦しいし」
「……河伯家の方に、失礼があってはいけませんから」

 最低限、礼儀を尽くそうと努力する
 だが、癸酉さんは明るく笑って、こちらを制してくる

「いいってば、竜吉君、まだ5歳なんだろ?堅苦しい事は考えなくていいってば」
「…お……自分は、獄門寺 龍一。獄門寺家に生まれた人間ですから。五大旧家が一つ、商売に長け、学校街に恵みを与えている河伯家の方に、失礼をする訳にはいきません」
48子供の頃の話  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/22(月) 15:02:56.69 ID:C8Oh3rTj0
 こちらの言葉に、癸酉さんは、んー、と難しそうな顔をしてきた

「…堅苦しいというか、難しい事言ってくるなぁ。僕らはまだそんな、難しい事は考えなくていいんだよ」
「………五大旧家に生まれたからには、その役目を全うしなければなりませんから」

 それが、当たり前だと考えていた
 幼い頃から、その役目を自覚し、学ぶべきであると
 それが、当たり前だと思っていたのだが

「何?親にそう言われてるの?龍三郎君は?」
「…龍一です………いえ、親は、何も言ってきません。ですが、自覚し、学ぶべきだと考えています」

 んんー、と、癸酉さんはますます難しそうな顔をしてきた
 …自分は、おかしな事を言っただろうか
 当たり前の事だと考えていたのだが

「…んー、まぁ、いいや。考え方人それぞれ、って事で。健一君は、真面目な考え方だ、って事で。それより、遊ぼうよー。仮面ライダーゴッコとか」
「……龍一です………すみません、自分は、仮面ライダーを知りませんので」
「え!?それくらいの年代で仮面ライダー見てないとか嘘だろう!?テレビとか何見るってのさ?!」
「…火曜サスペンス劇場と、さすらい刑事とはぐれ刑事が好きです」
「何その子供らしくないチョイス!?」


 …騒がしいけれど
 明るくて、元気な人だな

 あの明るさは、自分には、絶対に到達できない
 ……眩しい人だな、と
 癸酉さんに、そんな印象を抱いたのだった
                                                                              終
49ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 15:04:34.71 ID:C8Oh3rTj0
【上田明也の探偵倶楽部after.act4〜こぼれた砂の最後の一粒〜】

聖杯を巡る戦いの間にメルは俺の側を離れていっていた。
まあ今の俺はもう冷酷な殺人鬼なんかじゃない以上、俺と居るメリットも無いか。
俺はあいつに獲物を与え、あいつは俺の怒りを発散させる力を与え。
乾いた物を互いに満たし合う、ギブアンドテークなだけの関係。
結局その程度だったのかもしれない。
ちなみに拝戸がメルと契約するしないで現在は揉めているそうだ。

「で、回想終わり。」
「何を言っているんだお前?」
「ちょっと感傷に浸っていたんだよ、その間に逃げれば良かったのに。
 突き出されるのは警察、それとも組織、どっちが良い?」
「ますますお前が何言っているのか解らないなあ。」
「証拠は挙がっている。お前が宝石店から大量の宝石を盗んだこそ泥だろう?
 “牛の首”契約者さんよ。
 正体不明の特性を使えば足が着かないとでも思ったのか?」
「…………ばれてたのか。」
「お前みたいな子供まで契約犯罪なんてね、世も末だ。」

目の前に立っているのは高校生くらいの男性。
外見は真面目そうだがこれでも“牛の首”の契約者である。
正体不明に加えて人食いや怪力の特性を持っている厄介な敵である。
契約者さえ一級品ならば、だが。
50ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 15:07:56.74 ID:C8Oh3rTj0
「だがおっさん!あんたに何が出来るって言うんだ!
 この牛の首は俺の声を聞かせるだけで相手が恐怖にかられて何も出来なくなる能力もあるんだぜ!?」
「おっさん、ねえ。まあ許そうか。もう妻子持ちな訳だし。」

俺はそのままスタスタと少年に歩み寄る。
どうみても只の子供なのだ。
何を恐れる必要があるというのだ。

「って……おい、なんで近づいてこれるんだよ?」
「いや、だって怖くないし。」
「来るんじゃねえよ!」
「いや、行くよ。捕まえるから。」
「何と契約してるんだよ!?おかしいだろうが!
 牛の首の話を聞いても恐怖で精神を乱さないようになる都市伝説って――――!」
「いや、違うんだよね。俺頭おかしいから。別に精神攻撃なんて怖くないの。
 契約している都市伝説は赤い部屋。
 被害者の居た部屋が血で赤く染まっていたという逸話から相手を流血させたりできてね。
 契約の副作用から少々力が強くなっているが……。
 まあそれは所詮その程度のことだろ?」

愛する茜さんの顔だけを脳裏に浮かべる。
そうすることで都市伝説【赤い部屋】単体の力を極限まで引き出す。
この状態だと瞳が赤く染まって見えるそうだ。

「う、うわぁぁぁああ!」

牛の首の契約者は恐怖にかられて俺に飛びかかってくる。
だがまるで素人の動きなので見切って躱すことは容易い。
すれ違いざまに彼の足を指でなぞる。
そこから真っ赤な血が噴き出した。
51ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 15:11:42.28 ID:C8Oh3rTj0
「さぁ少年、このまま赤くなりたいか?」
「…………あ、う。」
「立てないならば良い、盗んだ宝石はもう勝手に回収したから君に拷問をするつもりはないしね。」

腰を抜かした少年に手をさしのべる。
駄目だ、子供ができると思ってからと言う物子供に甘くなってしまった。
自分の子供の頃を思い出せば子供だからと言って戦闘時に優しくする必要が無いことは解るはずなのに。
最近では子供相手に欲情する罪悪感でコミックLOの定期購読までやめてしまったのだ。
俺がさしのべる手を掴むこともなく少年はやぶれかぶれで殴りかかってきた。
それを咄嗟にパソコンで受け止める。
そのパソコンの形はとても奇妙だ。
液晶に浮かぶ赤い部屋のポップアップ。
キーボードがあるはずの場所にはYesと書かれた巨大なボタンが一つだけ。
まるで盾みたいなデザインだ。

「ふむ、まだやる気があったのか。」
「こんなところで捕まってたまるかよ!」
「いいや、捕まっておけ。今ならまだ取り返しがつくんだから。
 そんな台詞は取り返しがつかなくなってから吐くものだよ。」

赤い部屋のポップアップが消え去る。
それと同時に液晶画面から真っ赤な手が大量に出てきた。

「な、なんだよこれ!?」
「赤い部屋だろ、お前がイエスを押すから悪いんだ。まあ少し中で反省してな。」

逃げようともがく暇もなく、牛の首の契約者はパソコンの中に引きずり込まれてしまった。
このまま真っ赤にしても良いのだがそうすると依頼成功にならない。
こいつはパソコンの赤い部屋に閉じ込めたまま持ち運びして組織に引き渡して、
依頼人にはこいつの盗んだ宝石を返して、それで依頼は終了だ。
52ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 15:15:21.35 ID:C8Oh3rTj0
「さて、今日の仕事は終わりっと。」

パソコンを懐にしまって歩き始める。
探偵の仕事はビルの経営より地道で稼ぎも少ないが中々どうして充実感がある。
警察よりも自由に、組織よりも勝手に、都市伝説の事件に関与できるというのは中々悪くないものだ。
多重契約より単一契約の方が都市伝説の力を引き出しやすい。
当然のことである。
そもそもほとんどの人間が単一契約しかできないのだ。
そして多重契約できる人間がたった一つに契約を絞った時、
通常では考えられないレベルでの都市伝説との同調が可能になるらしい。
それが今の俺、とサンジェルマンは言っていた。
多重契約のハイパワーさは無い代わりにたった一つの都市伝説の力を極限にまで引き出している。
ある意味俺の特化した才能にぴったり合っている状態なのだそうだ。
この眼が赤くなるのだけは少し恥ずかしいのだが……まあそれはそれか。

「帰りはラーメンでも喰っていくか……な!?」
「飯……、腹減った……。」

ボソボソと聞こえるつぶやき。
チラッと路地裏を眺める。
男とも女ともとれる外見の人間らしき何者かがそこで倒れていた。
間違いない、新手の都市伝説だ。気配はないがそうに違いない。

「おい、あんた大丈夫か?」
「腹減った……。」
「解ったよ、ついてこい。なじみの店が有るんだ。」

厄介ごとが飯の種である探偵稼業。
俺は迷わずそいつを助けることにした。
53ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 15:20:51.24 ID:C8Oh3rTj0
ラーメン屋の暖簾をくぐると店主がいつも通り暇そうに座っていた。

「おおっ!?笛吹さんどうしたんだい?」
「いや、厄介事(メシ)の種がそこらへんに転がっていたんで……。」
「…………。」
「この人には味噌大盛り細切れチャーシュー葱マシマシの背脂アリアリで頼む。
 俺は魚介醤油メンマ多めな。」
「あいよっ!」
「それとビールと餃子、先にお願いできるかな?」
「よしきた、ちょっと待っててな。」

さて数分後、俺の餃子とビールは出てくると同時にすべて奪われていた。
何時の間にか俺の魚介醤油まで喰われており、結局俺は同じラーメンを三度頼まねばならなくなった。
一体どれほどの間こいつは物を喰ってなかったのだろうか。

「おいあんた、俺は私立探偵の笛吹丁っていうんだけどさ。
 あ、ちなみにこれ名刺ね。……名前を教えてくれないか?」
「ん……あれ、あんた誰だ。今までの記憶がすっぽり抜けてて……。」
「笛吹丁、探偵だ。」
「おー名刺だ。成る程成る程、それで、なんで俺は探偵さんと飯喰ってるんだ?」
「空腹で倒れていたから俺がラーメン屋さんに連れてきた。」
「そうだったのか!そりゃあありがたい!」
「それで名前を……。」
「ああ、俺の名前は禰門樹、格闘家だ!」

格闘家、また妙な身分の相手と知り合った物だ。
まあ私立探偵を名乗る自分も人のことは言えないが。
こうなれば乗りかかった船だ、最後まで助けることにしよう。
とりあえずこいつに今晩宿の当ては有るのだろうか、と本人も気にしていないようなことを俺は真剣に悩み始めたのである。
【上田明也の探偵倶楽部after.act4〜こぼれた砂の最後の一粒〜fin】
54ケモノツキ ◇kemono..Qk (代理):2010/11/22(月) 15:24:18.77 ID:C8Oh3rTj0
【ケモノツキ_11話_公園のベンチにて】


「…ならば、悠司。俺に、この国の都市伝説を、教えてくれないか?」
「え…僕が、ですか?」
「あぁ。迷惑でなければ、だが。」

 公園のベンチに並んで腰掛ける、カインと悠司。
 カインの瞳が、悠司をじっと見つめる。

 悠司は一瞬悩む。
 僕なんかが人にものを教えるなんてできるのか、と。
 目を伏せながら、カインに言葉を返す。

「迷惑だなんて…むしろ、嬉しいです。」

 だが、一瞬で改める。
 カインさんは、僕を頼ってくれた。
 なら僕は、その気持ちに精一杯答えよう。
 悠司は顔を上げ、カインの瞳を見つめながら、言葉をつむぐ。

「僕に出来ることなら、なんでもします。」
「…ありがとう、悠司。」

 お礼の言葉と共に、カインは悠司に微笑む。
 その微笑につられるように、悠司もまた、微笑んだ。

   ・
   ・
   ・
55ケモノツキ ◇kemono..Qk (代理):2010/11/22(月) 15:28:56.89 ID:C8Oh3rTj0

「えっと…まずは何から説明したらいいのか…。」
『んなもん適当でいいんだよ。』
『それでも問題ないとは思いますが、危険度や知名度が高いものから…が妥当でしょうか。』
『んーっと、町中で遭遇する奴で危険度No.1っていえば…兄貴?』
『……否定できませんね。』

 あれは色々な意味で危険だ。色々な意味で危険だ。
 悠司自身は「色々な意味」については理解していないが、危険な都市伝説だということは把握している。

「じゃあまずは、危険度が高くて遭遇しやすい、「兄貴」という都市伝説を。」
「アニキ?Brotherのアニキか?」
「名前のいわれはちょっと僕にはわからないです…。ただ、そう呼ばれているので。」
「いや、気にする必要はない。その「アニキ」は、何が危険なんだ?」
「えっと、まず、筋力がとても強いです。それと、ピンクのオーラみたいなものを出してパワーアップする…とも聞いています。」
「ピンクのオーラ…東洋に語られる”気”のようなものか。」
「詳しくはわかってないんですが、似たようなものらしいです。」
「なるほど、気をつけるとしよう。その「アニキ」はどのような姿をしてるんだ?」
「あ、すみません。見た目は体の大きいボディービルダーで…服を脱いでることが、多いです。」
「…この町では、ピンクに光るボディービルダーが裸で町中を歩いているのか?」
「え、えっと、アレは特例というかなんというか…。」

 どう説明したものかと、しどろもどろになる悠司。
 このままでは、学校町に対して間違った印象を持たれかねない。
 ――――あながち間違っているともいえないが。
56ケモノツキ ◇kemono..Qk (代理):2010/11/22(月) 15:32:41.21 ID:C8Oh3rTj0

『あいつらは変態だから仕方ないよねー。』
「あいつらは変態なので仕方な……あっ。」
「ヘンタイ?それはどういうものだ、悠司?」
「あ、う…えーっと……。」

 再びしどろもどろになる悠司。

『主、話題を変えましょう。他の情報を。』
「そ、それより、危険な理由がもう一つあって!主に…というか9割以上、男性しか襲わないらしいです。なので、本当に気をつけてください。」
「なるほど、男しか襲わない裸のボディービルダーで、ヘンタイか…。」
「最後のは忘れてくださいっ!?」
『おい、お前のせいで変な言葉覚えてんぞ。』
『ま、まぁいいじゃない。いぶんかこーりゅーって大事よ?』
『変態を文化としてとらえるのはどうかと思いますが…。』
「凄く…やっちゃいけないことをしてしまったような気が…。」

 うなだれて頭を抱える悠司を、不思議そうに見つめるカイン。

「…落ち込んでるようだが、俺が何かしたのだろうか?」
「い、いえ!カインさんは何も!僕が迂闊だったといいますか…事故といいますか…。」
「そうか…。何があったのか知らないが、俺は何も気にしてないぞ。」

 むしろ気にされたら申し訳なさすぎます!
 と心の中で叫びつつ、変態という言葉を忘れてくれるよう全力で祈る悠司。
57ケモノツキ ◇kemono..Qk (代理):2010/11/22(月) 16:01:01.55 ID:C8Oh3rTj0

「…それより、この町には他にも多くの都市伝説がいるのだろう?続けてくれると、ありがたいのだが…。」
「は、はい!すみません!」

 そうだ、当初の目的を忘れちゃいけない。
 たとえ変態という言葉を覚えてしまったとしても、それで警戒心が強まるなら、なんら問題はないのだ。
 と、自分を無理矢理納得させ、顔を上げて再びカインに向き直る。

「えっと、有名で目撃件数が多いものから…で、いいですか?」
「ああ、悠司のやりやすい方法でかまわない。」
「ありがとうございます。じゃあ、一番目撃件数が多い「口裂け女」という都市伝説から…。見た目は赤い服で……」

   ・
   ・
   ・

 公園のベンチに並んで語り合う、カインと悠司。
 その光景を、金の瞳をした小鳥が近くの木の上からじっと見つめていたが、
 悠司がその視線に気付くことは、なかった。


【ケモノツキ_11話_公園のベンチにて】    終
58後悔は消えず、罪も消えず ◇vQFK74H.x2 (代理):2010/11/22(月) 16:03:26.02 ID:C8Oh3rTj0
金髪の男性の厚意により、今日はここに泊まる事になった。


紗江は、徹に連絡するため携帯のアドレス帳を開いて彼の携帯番号を表示させた。
――そこで、手が止まった。
両親が亡くなったのだから、連絡しない訳にはいかない。
だが…あんな酷い死に方をした両親の事を、何て説明すればいいのだろう。
考えて、考えて……しかし、言うべき言葉が見つからないまま携帯を閉じた。

都市伝説と契約して、戦う力を得れば、紗奈や、両親を護れると思っていた。
なのに……自分は両親を守れなかった。紗奈にも酷い怪我をさせた。
無関係であるはずの獄門寺を巻き込んで手を汚させてしまった。

自分は何も出来なかった。

今回は、途中で助けが入ったから紗奈も助かった。
だが、次も大丈夫だという保証などどこにもない。

血に染まった紗奈を見た時、彼女を失うかも知れない耐えがたい恐怖に襲われた。
あの地下室で、黒服の頭蓋を叩き割った嫌な手ごたえは今も手に残っている。
本当は怖くて堪らない。だが、もうあんな思いはしたくない。
犬神もすぐに動かせない時もあるかもしれないし、アンサーだって質問から能力発動までラグがある。
そういう状況の時に紗奈を護る為にも、慣れなければならない。
何より、紗奈を害するものは殺すと誓ったし、実際に一人、殺しているのだ…今更揺らぐ事も、戻る事も出来ない。

なのに

「くぅーん…?」
59後悔は消えず、罪も消えず ◇vQFK74H.x2 (代理):2010/11/22(月) 16:05:56.58 ID:C8Oh3rTj0
「おねーちゃん、どうしたの?どこか痛いの?」
「………え?」
傍にいた犬神と花子さんが心配そうに見上げてきていた。
泣いているという自覚は無かった。涙が、勝手に流れていた。
どうして自分は泣いているのだろう。自分には無く資格なんか無いのに。
「……大丈夫、どこも痛くないよ」
涙を拭い、笑みを作ると犬神と花子さんを安心させるようにぽふぽふと頭を撫でた。

―――

両親が死んでしまった。
巻き込んで、殺してしまった。
身近な、護りたい人すら護れない無力な自分が恨めしかった。

…これから、どう生活していけばいいのだろう?
高校も、これまで通りに通えるかどうか分からない。
徹には、あまり迷惑を掛けたくはないし………従兄とはいえ、年頃の男女が一つ屋根の上、という状況は少々よろしくないと思う。

花子さんには紗江の傍に居て貰っているが……あまり、一人にしてはおけない。
紗江達の居る部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、スーツを着た女性が障子の隙間から部屋を覗いている姿が目に入った。女性の隣には、中学生くらいの少女の生首が浮かんでいたが……少女の生首は、ガクガクブルブルと何かに怯えていた。
ふと、女性がこちらに気づき、にっこり微笑んで体をずらした。見てもいい、という事らしいと判断し、厚意に甘えて女性の邪魔にならない様に覗かせて貰う事にする。

見知らぬ男性(声からして、獄門寺と話していた男性だろうか?)と翼の姿が見えた。
男性が……翼の腕を掴み、抱き寄せていた。
「龍一がお前に仕える事を決め、お前がそれを許したのならば。龍一がその責任に潰されそうになったならば、お前が支えてやればいい」
「……はい」
60後悔は消えず、罪も消えず ◇vQFK74H.x2 (代理):2010/11/22(月) 16:08:38.67 ID:C8Oh3rTj0
「…お前が。それを支える責任に潰されそうになったならば…我が、支えてやろう。我は、神。祟り神だが、神である事に変わりはない。人の子を支える事は、当たり前だからなぁ?」
俯いてしまった翼の顎を掴み、自分の方を向かせる男性。
男性の言葉に、翼が小さく笑みを浮かべた。


(獄翼前提での男性×翼!?翼さん受けだと色々なCPが成立するなぁ…w)
ふと、スーツの女性と目が合った。背後からオーラを立ち上らせながら、良い笑顔を浮かべている。
……彼女の場合、貴腐人、と呼ぶべきなのだろうか。
貴腐人と腐女子のオーラに、少女の生首がガタガタブルブルと怯えていた。

続く…?
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 16:12:18.60 ID:C8Oh3rTj0
代理投下終了ー、ちょっとくらジャンプ求めて出かけてくる
夕飯終わった後もスレ残っていれば幸せだ
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 17:10:08.36 ID:Jkm3fjqmO
代理乙ですー
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 18:43:12.40 ID:wKzGKeKU0
ho
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 19:27:28.74 ID:Hl78OjyY0
雷怖かったほ
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 19:43:26.28 ID:Hl78OjyY0
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 20:01:18.28 ID:Hl78OjyY0
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 20:15:54.44 ID:Hl78OjyY0
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 20:17:59.43 ID:WCYUieRk0
69どっち?  ◆nBXmJajMvU :2010/11/22(月) 20:27:43.58 ID:Hl78OjyY0
「さて、と」

 食べるだけ食べて満足した禰門 樹
 さて、と上田に向き直る

「飯食わせてもらったからにゃあ、礼をしないとな」
「いや、礼なんて…」

 本心はどうか不明だが、そう言う上田
 だが、樹はにやりと笑い、続ける

「命の恩人相手に、礼もできないなんて武術家の恥さ。せめて、技の一つや二つ、伝授させな」
「技ってのは、そんなに簡単に伝授していいものなのか」
「なぁに、危険性の低い、簡単な技なら問題ねぇよ」

 ひとまず、支払いを済ませて店を後にした二人
 樹は、上田を頭の天辺からつま先までじっくり観察しつつ、考える

「さぁて、あんたなら、どんな技がいいかねぇ……猛虎落地勢か、魔犬慟哭波か……どっちがいい?」

 にやにやと笑っている樹
 うむ、と上田は答える

「俺の勘なんだが」
「うん?」
「それ、土下座と負け犬の遠吠えの事だろ」

 …何故だろう
 そんな予感がしたのだ
 いかにも凄そうなネーミングではあるが、とどのつまり、ただそれだけの事
70どっち?  ◆nBXmJajMvU :2010/11/22(月) 20:30:10.13 ID:Hl78OjyY0
 そんな予感がしたのである

 上田のその言葉に、樹はますます、笑って見せた

「あっはっはっはっは!!勘がいいじゃあねぇか、笛吹さんよ」
「ビンゴかいっ!?」

 思わず突っ込む上田
 まっさかなー、とか思ってたらその通りだったらしい
 けらけら、樹は笑い続けている

「なぁに、これも立派な技だぜ?相手を傷つけずに勝てるんだかよ」
「いやいやいや、勝ててない、勝ててないから。思いっきり負けてるから」

 突っ込まずにはいられない
 何だろう
 この人、怖いくらいのボケ属性で固められている気がする

「勝ちゃあ、何やってもいいんだよ、何やっても。どんな手段を使ってでも勝つ。それが、俺が伝える無差別格闘技・禰門流さ」
「…無差別格闘技、ねぇ。そんなもん、聞いた事ないんだが」
「そりゃそうさ。外法の流派とか言われて、表沙汰にはなってねぇから」

 あっさりと、そう言ってのける樹
 自分が、外法の技の使い手であると、堂々名乗っているようなものだ

「んー、とりあえず、あれだ。猛虎落地勢と魔犬慟哭波が駄目なら、徒手孝行乱打とか、胸囲掌握鷹爪拳とか……」
「俺の勘が告げている。前者はただの肩叩きで、後者は女性の胸を掴むだけだろ」
71どっち?  ◆nBXmJajMvU :2010/11/22(月) 20:32:31.76 ID:Hl78OjyY0
「笛吹さんは、本当、勘がいいねぇ」
「またもやビンゴ!?もうやだこの人っ!!??」

 軽く頭を抱える上田
 どうしよう、この人
 格闘家じゃなくて、本当はただの変人なんじゃないだろうか
 そんな予感が、こっそりよぎる

「ま、そんな顔すんなや。あんたが素晴らしい勘の持ち主だってのは、よくわかった……そう言う男、嫌いじゃあないぜ」

 中性的な顔立ちに、凶悪な笑みを浮かべる樹
 ふらり、目に入った空き地に入り込む
 誰が持ち込んだやら、大きな岩が放置されている
 …いや、持ち込んだのではなくて、整備する際に土中からでも出てきたものだろうか

「一週間飲まず食わずの飢餓から救ってくれた礼だしな。あんたを、俺の弟子にしてもいい」
「弟子、ねぇ…」
「あっはっはっはっは!!まぁ、胡散臭そうな顔すんなよ。これでも、俺ぁ、二人しか弟子を取った事ないんだぜ?」

 けらけらけら、楽しげに笑っている樹
 翡翠色の瞳が、じっと上田を見つめてくる

「…一人目の弟子は、才能はあったんだが、何分優しすぎたし真面目すぎた。俺の流派が性格的に向いてなかった。二人目は、才能があったし、何分、強さに対して貪欲だった。俺の全てを持っていこうとしやがったから、教えられるだけ教え込んでやったよ」

 …っとん、と
 樹の細い指先が、岩に触れた
72どっち?  ◆nBXmJajMvU :2010/11/22(月) 20:34:37.57 ID:Hl78OjyY0
 直後
 岩が、粉々に砕け散る

(都市伝説能力…じゃ、ないな。こいつは都市伝説ではないし……都市伝説契約者、でも、ない)

 目の前の岩が粉々になった様子に、流石に若干驚きつつも上田は目の前の樹と言う人間を分析する
 …見た目は20代から30代くらいに見えるが、見た目通りの年齢でもない
 自分の父親と同じくらいではあるんじゃないだろうか?と考える

「…さぁて、笛吹さんは、俺の三番目の弟子になってくれるかな?真正面から力づくでぶち破るのと、背後からの奇襲。お好みはどっち?」

 指一本で、岩を粉々に粉砕してみせた、その人物は
 そんな事なんて事でない、とでも言うように
 飄々とした様子で、上田の前で笑っていたのだった








続くかどうかわからない
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 20:36:54.16 ID:Hl78OjyY0
笛の人に焼き土下座orz
昨夜のネタの続きっす
お返事とかは任せるよ!!



ちなみに、技の名前の元ネタとか、岩を粉々にしたそれとかは、らんま1/2参照の事
あれは良い漫画だ
74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 20:52:37.11 ID:Hl78OjyY0
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 21:09:54.19 ID:Hl78OjyY0
76噛み合わない歯車 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/22(月) 21:13:53.77 ID:Hl78OjyY0
何か物音がしたような気がして、壱岐大はふと目が覚ます
「……まぐろ?」
いつも隣で寝ているはずのまぐろの姿が無い
本来睡眠は必要無いはずのまぐろだが、大が寝ている時はいつも隣に潜り込んでいたし、大が目を覚ます頃には枕によだれを垂らして眠りこけていたはずである
目が覚めたのも契約により繋がりを得ているせいか
湧き上がる奇妙な不安感に、大はすぐに着替えてまぐろを探すために部屋を後にした

―――

ぷかり、ぷかりと
風船が浮かぶ
人々が寝静まった深夜の町で
ぷかり、ぷかりと
風船が浮かぶ
空の彼方へ飛んでいく事なく
ぷかり、ぷかりと
風船が浮かぶ
子供達の手にその紐を絡ませて
一つ、また一つと町のあちこちから
風船を手にした子供が現れる
その数はさほど多くは無い
一度に大量に姿を消すと、どうしても話が大きくなり過ぎる
目立たないようにこっそりと
人目を避けてこっそりと
一人、二人、三人の少年が
一人、二人、三人の少女が
虚ろな目付きで町外れの空き地に設営された、巨大なテントに向かって歩いてくる
『誘拐結社』の一員である『人攫いサーカス』
その団長は、サーカスのテントに向かってくる風船を持った人影を見て、粘ついたような笑みを浮かべる
組織の仲間達は、この町を避ける傾向にあったが彼は違う
77噛み合わない歯車 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/22(月) 21:15:46.93 ID:Hl78OjyY0
この町の住人、特に若い少年少女は都市伝説ととても馴染む
契約者としても、取り込み力を増すための餌としても
既に五十人近い大所帯となっているこのサーカスだが、更に大きくなれば暖簾分けをして更に勢力を拡大する事もできる
何か強力な都市伝説が動くのに合わせて、ほんの少しずつこの町の住民を食らってじわじわと大きくなってきたのだ
大きな事件の余韻に紛れて、ほっとしたその隙を突くように
逃げ隠れが得意な『誘拐結社』の面々の中でも、彼はそんな流れを読む事に非常に長けていたのだ
だが彼の誤算はただ一つ
今この町に潜む化物は
彼よりも逃げ隠れが上手かったのだ

―――

動物でも閉じ込めるような檻の中
六人の少年少女がそれぞれ個別に閉じ込められていた
それぞれが風船の紐を握り締め、ぷかぷかと浮かぶ風船のように虚ろに揺れる表情で
「……お?」
そんな中、ぼんやりとした思考の中でまぐろは自分の置かれている状況に気が付いた
思考がはっきりしないのだが、いつも割とぽややんとしていたのが幸いしてかぶれ幅が小さかったのだ
だがそれでもまともな思考能力は奪われており、ここがいつもの大の部屋ではないという事ぐらいしか理解できず、それすらもさほど疑問に思わなかった

―――

音門金融の社長室に響く、苦悶混じりの嬌声
部屋に入った途端にそんなものが耳に飛び込んできて、梨々は胡散臭げな目を向ける
「社長、朝っぱらからエロ動画っスか?」
「まあそういう事になるな」
モニタを見詰める元締めの苦々しい表情と、何か聞き覚えのある声に首を傾げる
「AVかなんか紹介した客とかでしたっけ、この声?」
「阿呆、ついこの間話してただろうが」
煙草のフィルターをきりと噛み締めながら、元締めはモニタを見詰めている
78噛み合わない歯車 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/22(月) 21:17:53.40 ID:Hl78OjyY0
そこには、目隠しをされ拘束されたまま嬲られ続ける一人の女性の姿
《という訳でぇ、なんか俺らの事を探っちゃってる、オッサンの雇った女は美味しくいただいてまーす》
《まー俺らが入る前の事らしいけど、そっちから追い出しといてまた腹探ってくるなんて酷くね? ってな感じで》
《電脳存在をイジりたいって物好きもたまにいるから、飽きたら売り飛ばすので頑張って探してねー》
《あ、雇われの女一人ぐらいどうでもいいっつーんならそれでもいいけどね?》
《アレだよアレ、今はあんたンとことと関わるような仕事は……してないよな?》
《してなかったっけ?》
《別に連絡取り合ってないからなぁ、リーダーとかと》
《まあいいや、どっちにしろ俺らにあんま構わないどいてねー? ホラ、どっちも悪い商売なんだからさー》
《そういうわけで、よーろしーくねー》
《孤高なる深淵の探求者、『闇プログラマー』と》
《頂の神に近しき冒険者、『スーパーハカー』でした》
二人の下品な笑い声と共に映像は途切れる
「うわちゃー、あゆみっちゃん捕まっちゃったんスか……つーかすっげぇ頭悪そうな奴らっスね」
何をやるにも割と自己責任な裏業界暮らしが長いせいか、さほど同情や憐憫といった感情は見せない梨々
そんな彼女の反応を他所に、椅子から立ち上がってコートに袖を通す元締め
「お出掛けっスか社長」
「ああ」
口数がやたらと少ない時は、大体怒っている
心は読まなくてもそれぐらいは把握できる程度の付き合いの長さがある
だが流石にどこに怒りポイントがあったのかまでは判らない
「珍しいっスね、社長が怒ってるのも」
わざわざ口に出して確認するのは、心を読んではいないという彼女なりの意思表示である
それを知っている元締めは、心は読まないが本心は知りたいという意味を察して語る
「うちは取立ては無茶するがあくまで契約に基づいた貸し借りが仕事だ。合意も契約もへったくれも無ぇ人攫いと一緒にされちゃ先代に申し訳が立たねぇだろ」
「……それだけっスか?」
「社会と人様を舐め切ったガキ連中には、教育が必要だしな」
「……もう一声」
「お前、もう心読んでやがるだろ」
「いや、マジで勘と経験っスよ。『組織』に居た頃から一緒じゃないっスか」
79噛み合わない歯車 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/22(月) 21:20:15.59 ID:Hl78OjyY0
にへらと笑う梨々に、元締めは苦虫を噛み潰したような顔で呟いた
「あいつら、俺をオッサン呼ばわりしやがった」
そう言い残して、扉を蹴破るように開けて社長室を出ていく元締め
「素直じゃねっスねぇ、知り合いがあんな目に遭ってたら怒るのが当たり前でしょうに。もうちょい私情を表に出しても誰も咎めねっスよ?」
本人がこの場に居れば「金貸しが私情なんて表に出してたら仕事になるか」と凄まれていただろう
「ま、実行できてなきゃ一緒っスけどね。あっしに比べりゃ社長もまだまだ若造ってこってすなぁ。そこが良いから付いてってるんスけどね」

―――

道端で屈み込み、マンホールの奥深くを覗き込む黒服の青年と黒服の少女
「まずいね、下水道は盲点だった」
「ぶらいんどすぽっとー」
「ただの下水道ならローラー作戦で一発だけど……この町の下水道は、まずい」
「でんじゃらすー」
「まずは下水道のデータ集めか、しんどいなぁ」
「まっぴんぐー」
「あいつらが住み着いてるなら、とっくに人は攫って食ってる。奴らの伝承通り、他の奴らを犯人に仕立て上げながら」
「すけーぷごーとー」
「急ごう、奴らの居場所を突き止めて、今の人数を把握しないと。例えどんな強さでも、あいつらは数で劣る相手には絶対負けないから」
「はりーあっぷー」
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 21:31:46.39 ID:Hl78OjyY0
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 21:36:38.86 ID:WCYUieRk0
乙です!
あゆみちゃん……
彼女救出されるかなー? このままぽいっ、はなかなかキツイぜ

そして行為はしっかりと書いてくれると俺は信じてる!
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 21:48:14.74 ID:Hl78OjyY0
ネタ構想しつつほ
83ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 22:09:23.85 ID:Hl78OjyY0
【拝戸直の人殺し 第十二話「死神の遺産」】

「おいメルとやら。」
「あ゛ー、なんですかぁ?」
「いや、サンジェルマンにはお前と契約しろって言われたんだけどさ。」
「はい。まあその、あれですよね。」
「うん、そうなんだよ。」
「「別に契約する必要ないんじゃね?」」
「なんだ、解ってるなら話は早い。俺は周囲の人間の記憶から消失するとか言う愉快なリスクを背負いたくないんだよ。」
「私としても私の弟妹達が世界中で暴れているんで契約の必要に迫られてないですからね。」
「ぶっちゃけどうするんですか?」
「そりゃあお前、とりあえず素材は確保したいからお前の能力は貸して貰う。
 でも契約はしない!」
「都合良いなおい!?」

みぃちゃんが肉片にされてしまった後、俺はサンジェルマンの治療を受けてなんとか命を取り留めていた。
まだ肉片が残っているなら治せるとサンジェルマンは言っていたがそれも時間がかかるそうだ。

「もう……、困ったなあ。」

目の前で紅茶をすする少女。
俺が都市伝説を失っている間に護衛として貸与されたハーメルンの笛吹きである。
本来は学校町を恐怖に陥れた殺人鬼の所有する都市伝説なのだが、
その殺人鬼が出来ちゃった婚を決めて無事に寿引退となった為に俺の所にやってきたのだ。
84ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 22:12:40.82 ID:Hl78OjyY0
「とりあえず番屋町に帰りませんか?」
「まあ、それもそうか。家事手伝いは丁度一人欲しかったし。
 あと亀も一匹居るからお世話お願い。俺嫌いなんだけどね。
 俺の作品が気に入ってたからさ。」
「作品?」
「うん、俺の殺人は全て芸術だからな。
 殺した奴には全部作品名とか付けている訳よ。」
「自分の作品が自分の作品を破壊してたら世話無いですよね。」
「……お前ムカツク奴だな。」
「こりゃあ失礼しました。
 家で契約者の帰り待ってたら私の契約無視して聖遺物に触れて死の危険にさらされた上、
 知らない女連れ帰って来て『俺、こいつと結婚するよ!』とか言われて結構腹立ってましてね。」
「…………まぁ、あれだ。お前も大変なんだな。」
「解って頂けて何よりです。」

まああくまで直感で直観で感性に基づいた適当な観想じゃなくて感想なのだが。
こいつは都市伝説として致命的な欠点がある。
それはこいつが自分と相性の良い契約者に恵まれないと言うことだ。
上田明也という最強クラスの契約者を得てなおこの程度なのだ。
俺と契約したところでそれほど力を発揮できるとは思えない。
野良で好き勝手暴れている方がまだマシってところだ。

「とりあえずじゃあ番屋町に帰るか?」
「ええ、そうしましょう。なんか今はちょっと旅したい気分です。」

俺たちはとりあえず立ち寄っていた喫茶店を出ると車に乗り込んだ。
85ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 22:14:49.13 ID:Hl78OjyY0
「……煙草吸わないんですね。」
「医大生が煙草なんぞ吸う訳無いだろう。上田さんは吸うのか?
 だとしたら良くないな、できれば禁煙して欲しい物だ。」
「吸うって言っても電子煙草ですよ?
 しかもストロゥベリィ。」
「苺味なの!?」
「ええ、苺味の電子煙草をことのほか好んでましたね。」
「うわぁ……。」
「わわわわわ!?
 よそ見しないで前向いて前!」
「おっと、失礼失礼。」

とかなんとか言っていたら、おもいきり壁に激突した。
シートベルトを締めていなかったので思い切り頭をぶつける。

「わわわわわわわ!?なにやってんですか!」
「…………死ぬ、痛みでマジ死ぬ。」
「あーもう!私ちょっと助け呼んできますよ!」
「頼むわ。」

なんとか無事だったらしいメルが車を抜け出して助けを呼びに行く。
するとそれと入れ違いになるかのように救急車がやってきた。
あれ?
このパターンはとてもまずい気がする。
意識が薄れていって俺は静かに目を閉じた。
86ふえ ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/22(月) 22:17:06.55 ID:Hl78OjyY0
「―――――――んあ」

白い天井の建物の中で俺は目を覚ました。
どうやら俺は病院に運び込まれていたらしい。

「お、直兄ちゃん目が覚めたの?」
「げげぇ、純じゃねえか!」
「あのー直さん?」
「こ、今度は誰だ!?俺はこんなイケメ……、あ゛」
「お久しぶりです拝戸直さん。」
「え〜っと、俺が能力手に入れた時にぶっ殺しそうでぶっ殺さなかった男装少女。
 上田さんの妹だったっけか?もしかして俺を殺しに来た感じでしょうか。」
「いや、違うよ。純ちゃんと一緒に遊びに来てただけ。」
「おお、ちょっと安心したぜ。」
「全治二週間で入院確定らしいよ。まあサンジェルマンがこっそり直しに来てくれるから……。
 三日もすれば出れるよ、頑張ってね!あとこれ着替え。」
「…………解った。ありがとう。」

枕の裏に違和感。
俺はベッドから身体を起こす。
枕の下から髑髏の仮面が出てきた。

「ところでこれはなんだ?」

二人とも驚いた顔をしている。
表情から察するに何も知らないのだろう。
さて、それならこれは一体何なんだろうか?
俺は面白そうなのでとりあえずそれを着替えの中に入れておくことにした。
【拝戸直の人殺し 第十二話「死神の遺産」fin】
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 22:29:07.95 ID:Hl78OjyY0
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 22:39:53.41 ID:Hl78OjyY0
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 22:53:01.98 ID:Hl78OjyY0
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 23:04:38.50 ID:Hl78OjyY0
91少年と異国の司祭  ◆nBXmJajMvU :2010/11/22(月) 23:10:27.64 ID:Hl78OjyY0
 悠司が、カインに日本の都市伝説の説明を、粗方終えた頃
 …ぱたぱた
 一羽の小鳥が、ゆっくりと舞い降りてきた
 種類はよくわからないが、日本ではあまり見ない種類だ
 悠司は、それが以前、カインが肩に乗せていた小鳥だと思い出す

 ぱたぱたぱた
 小鳥は、ゆっくりと旋回しながら降りてきて…

 ………っこつ!!

「痛っ!?」
「ゆ、悠司!?」

 突然、悠司を突付いてきた
 コツコツコツ!!
 容赦なく突付いてくる小鳥から、自分の頭を庇う悠司
 カインが、慌てて小鳥を優しく捕まえ、暴挙を止める

「だ、大丈夫か?」
「は、はい」

 相手は小鳥
 嘴が特別鋭い訳でもなく、たいしたダメージも受けていない

 ばさささささ!!!
 カインの手の中で、小鳥は暴れ続けている

「どうしたんだ、普段は大人しいのに…」
92少年と異国の司祭  ◆nBXmJajMvU :2010/11/22(月) 23:13:50.15 ID:Hl78OjyY0
 困ったように、小鳥を見つめるカイン
 ぢゅいー!!と、小鳥は不機嫌そうな声をあげた
 今にも、悠司に襲い掛かりそうだ

 いつもと様子の違う小鳥に戸惑いながら、カインは小鳥を落ち着かせようとする
 しかし、なかなか落ち着いてくれない
 …仕方ない

「すまない、悠司。少し、こいつを落ち着かせる」
「え、あ、は、はい」

 敵意を見せてくる小鳥に、戸惑っている悠司に、カインはそう優しく告げて


 …すぅ、と
 小さく、息を吸い込み
 そして、静かに歌いだした


 それは、聖歌か、それとも、親が子供に聞かせる子守唄か
 優しい、優しい歌声
 異国の言語で歌われるその歌詞の意味は、悠司にはわからない
 ただ…聴いていると、心が安らぐ、そんな歌声
 さほど大きな声で歌っている訳でもないのに、その歌声は、不思議と響き渡る

 …小鳥が
 落ち着きを、取り戻した
93少年と異国の司祭  ◆nBXmJajMvU :2010/11/22(月) 23:16:52.47 ID:Hl78OjyY0
 じっと、カインの歌に聞き惚れているように見える

 ………と
 自分達の周りに、気配が集まって居る事に気付いた悠司
 慌てて、辺りを見回して

「……え」

 その光景に、驚く


 鳩が、烏が、雀が、他にも、様々な鳥達が
 犬が、猫が、他にも鼠の姿も見える
 様々な動物達が、悠司とカインの周囲に集まっていたのだ
 まるで、カインの歌を聴きに来たかのように


「凄い…」

 恐らく、自然豊かな森の中でうたえば、小鳥や小鹿でも寄ってきていそうな、そんな光景
 幻想的な空間に、取り込まれたような錯覚を覚える

(これも、都市伝説か何かの能力…なのかな?)

 一瞬そう考えたが、違うような気がする
 カインが、都市伝説能力を使ったような気配は感じない
94少年と異国の司祭  ◆nBXmJajMvU :2010/11/22(月) 23:19:40.25 ID:Hl78OjyY0
 …これは、カインの才能によるものではないか、と直感的に感じる

 危険はない
 そう、判断して
 悠司は静かに、カインの歌に聞き入る事にしたのだった







fin
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 23:23:00.71 ID:Hl78OjyY0
ケモノツキの人に焼き土下座orz
昨夜のネタの後のシーンの電波が来たんで書いてみた
まぁ、カインの特技披露です
無駄に美声だよ、あいつ

ついでに、小鳥にヤキモチ焼かせてみた
一応、一旦落ち着かせたよ!
またいつ突付きに行くかわからんが
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 23:27:35.61 ID:QiNSRDyo0
投下乙ですー
これはユニコーンをなだめられる唯一の男性の予感www
97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 23:28:31.55 ID:Hl78OjyY0
>>96
あ、歌ってる時ならなだめられるよ、こいつ
だからこそ、余計にヘンリーの友人できるんだし
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 23:45:58.59 ID:Hl78OjyY0
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/22(月) 23:54:54.71 ID:Hl78OjyY0
力尽きるお休み
明日もスレが残っていますように
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 00:36:41.57 ID:q2IxmFAmO
ほし
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 01:09:16.94 ID:PIRetxmz0
保守
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 02:03:39.53 ID:ry5Q6RdQ0
守保
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 03:59:23.99 ID:ry5Q6RdQ0
保守
104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 04:24:38.81 ID:vRv02SjS0
初めて見るスレだけど好きかも
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 07:07:37.87 ID:q2IxmFAmO
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 07:42:14.72 ID:hjpAIavN0
昨日からまとめwikiで読み始めたが字が小さくて目が疲れた
黒背景に白文字だから余計読みにくい
できれば直してもらえると読みやすい

保守代わりに身勝手なwikiの要望を書き込んで寝る
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 08:36:13.99 ID:q2IxmFAmO
つ目薬
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 09:37:34.05 ID:q2IxmFAmO
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 10:01:10.37 ID:gZtL+2lh0
おはようほ
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 10:25:34.74 ID:gZtL+2lh0
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 10:43:18.93 ID:gZtL+2lh0
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 10:58:45.52 ID:gZtL+2lh0
113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 11:11:35.46 ID:gZtL+2lh0
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 11:28:45.39 ID:gZtL+2lh0
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 11:46:12.69 ID:gZtL+2lh0
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 12:00:22.71 ID:gZtL+2lh0
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 12:18:55.15 ID:gZtL+2lh0
118解除と今後について  ◆nBXmJajMvU :2010/11/23(火) 12:28:21.18 ID:gZtL+2lh0
 …惨劇の、翌日
 再び、「首塚」本拠地を訪ねてきた辰也
 紗江と紗奈に簡単な質問をいくつか繰り返し…

 …小さくため息をつき、首を左右に振った

「……駄目だな。よほど強い暗示だったのか、まだ解けてない」
「そうか…」

 辰也の言葉に、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる天地

 …本来、「組織」所属の天地は、「首塚」本拠地に侵入できる存在ではない
 しかし、今回は状況が状況なので、特別に許可されたのだ
 空間転移能力保持者の能力で瞬間的に転移させられてきた為、進入方法は当然、わからない

 ……とまれ
 今回、ここに辰也に天地…そして、直希までもが集まった目的は、天倉姉妹にかけられた「「組織」を離れるな」と言う暗示が、まだかかっているかどうかの確認
 そして、まだその暗示が解けていないならば…それを解除する、と言うものだ

 辰也が行ったメンタルチェックの結果……あれだけの体験をしながら、まだ、暗示は解けていなかった
 かなり強いレベルで暗示をかけられた証拠だ

「暗示なんて、かけられていたんですか?私達」
「そんな感じは、しないんですけど…」
「かけられた自覚があったら、暗示の意味がないだろ」

 姉妹の言葉に、そう返す辰也
 …正直、その通りである
 暗示をかけられていた、と言う事実に、二人共、多かれ少なかれ、ショックを受けているようだ
119解除と今後について  ◆nBXmJajMvU :2010/11/23(火) 12:31:24.21 ID:gZtL+2lh0
「……解除、できますか?」

 検査に立ち会っていた龍一が、辰也に尋ねる
 長い前髪のせいで表情は見えないが…姉妹に、暗示をかけた存在
 すなわち、龍一がその手で切り殺した、A-No.666に対する怒りが、改めて込み上げているようにも見える

「こんだけ強い暗示となると…いや、やってみる」

 ………自分に、できるか?
 一瞬、自信の無さを感じつつも、やるしかないと、天地は紗江と紗奈に近づこうとした

「…あぁ、待て、天地」

 が
 それを、直希が制した
 「光輝の書」を手に、立ち上がる

「僕がやろう」
「直希。でもよ…」
「君は「組織」内にて、今後の彼女達の身の振り方や………今回の件の後処理に、動いてくれている。何も出来ていないのは僕だ。僕にやらせてくれ」

 直希にこう言われて、天地は断る事が出来ない
 …直希とて、何もできていない訳ではない
 辰也に連絡をとる事を躊躇した天地の変わりに辰也に連絡を取り、A-No.666の動きを警戒するよう言ってくれたのは直希なのだ
 それがなければ…自分達は、もっと、動くのが遅れていただろうから

 しかし、直希は「自分は何も出来ていない」と感じている
 今回の件で、責任を感じてしまっている
 …ならば
 ここで、直希に、姉妹の暗示を解かせる事で、「何も出来ていない」と言う認識を、覆させるべきだ
120解除と今後について  ◆nBXmJajMvU :2010/11/23(火) 12:34:13.99 ID:gZtL+2lh0
 すたすたと、直希は姉妹に近づいた
 座っていた二人に視線を合わせるように、屈む

「…今から、君達にかけられている暗示を解除する。構わないだろうか?」
「あ、は、はい」
「………お願いします」

 直希の言葉に、頷く紗江と紗奈
 では…と、直希は「光輝の書」を、開いた

「……見通せ、ラジエル」

 直希の言葉に……「光輝の書」が、ひとりでにページをめくり始めた
 しかし、天使の姿は現れない
 まだ、ラジエルと呼ばれる天使を呼び出すには……直希の力が、足りないのだ

 だが、その力を行使する事はできる
 「光輝の書」が輝き、その力が行使される

「………深層にて、異物を確認………切除開始…………」

 ぱらぱら、ぱらぱらと
 めくれ続けるページ
 ラジエルの力により、紗江と紗奈の精神内部に埋め込まれた暗示を直希は見つけ出し、切除する
 二人の精神に傷をつけないよう、慎重に、慎重に
 目に見える作業ではない
 だが、直希には「見えて」いる

「…切除完了……異物を排除………」
121解除と今後について  ◆nBXmJajMvU :2010/11/23(火) 12:38:37.32 ID:gZtL+2lh0
 …ぱたん、と
 本が、閉じられた

 その、瞬間
 紗江と紗奈の心から……今まであった「「組織」から離れないようにしよう」と言う気持ちが、消滅した
 何故、今まで、「組織」から離れようと言う気持ちが湧き上がらなかったのか
 暗示のせいだったのだ…と、改めて認識し、わずかに恐怖すら生まれ始める

「…むぅ。なるべく、関係のない部分には触れずに、暗示のみを切除したつもりだが……大丈夫か?」
「…は、はい」
「大丈夫…だと、思います」
「……そうか、良かった」

 姉妹の答えに、直希はかすかに、ほっとしたように、笑い

 ……ぐらり
 そのまま、体がよろけ、倒れそうになる

「直希っ!?」

 慌てて、直希を抱きとめる天地
 むぅ、と直希が小さく声をあげる

「…あぁ、すまない。大丈夫だ」
「嘘付け、真っ青だろうが」

 天地の言葉通り、直希は酷く顔色が悪くなっていた
 …いまだ召喚できない天使の力を、半ば無理矢理引き出して使った反動だ

「だ、大丈夫ですか!?」
122解除と今後について  ◆nBXmJajMvU :2010/11/23(火) 12:41:03.66 ID:gZtL+2lh0
「…問題ない……少し、休めば、治る…」

 紗奈の言葉にも、直希は小さく、そう答えた
 自分で立っていられない程度まで疲労している状態の人間のセリフではないのだが…心配をさせたくない、と言う気持ちからなのだろう
 説得力は皆無だが

「……休ませてきましょうか?」
「あぁ…獄門寺、だったか、頼む」
「…むぅ」

 立ち上がった龍一が、直希の体を支えた
 そのまま、隣の部屋まで連れて行っている

 ……さて
 まずは、一番の目的を果たした
 次は…今度こそ、自分の役目だ

 天地は、紗江と紗奈に向き直る

「…お前達の、両親のことだが」
「………っ」

 二人の顔が、強張った
 それに気付かないふりをして……できる限り事務的な口調にするよう心がけながら、天地は続ける

「……申し訳ないが、死体を少し「修復」した。都市伝説事件に巻き込まれて死んだのではなく…「通常の殺人事件」に巻き込まれて死んだ。そのような処置をした」
「…通常の…です、か?」
「あぁ。葬儀の手続きも、こちらで行おう」

 ……両親は、死んだのだ、と
123解除と今後について  ◆nBXmJajMvU :2010/11/23(火) 12:43:36.48 ID:gZtL+2lh0
 もう、この世に居ないのだ、と
 改めて、それを認識した姉妹
 ………物心ついた頃には、両親が既に亡く……いや、正確には父親は存命していたが、未だに彼を父親とは認識しきれない……、両親の愛情というものに縁のなかった天地に、その悲しみは完全には理解できない
 だが、それでも、姉妹の悲しみと絶望が深い事だけは、辛うじて、理解できる

「…暗示は、解除した。お前達が「組織」から離れたいなら、そのように手続きする」
「……いいん、ですか?」
「お前達は被害者だ。無理に引き止めるような事はしない」

 …少なくとも、穏健派は
 今回の件は、また、強行派が叩かれる事となった事件だ
 事件の後処理関係は、全て穏健派が手綱を握っている
 紗江と紗奈が「組織」を離れる事を望むならば、それを引き止めるつもりはない

「…「組織」の事を、忘れたいならば、忘れさせる事もできる。これ以上都市伝説に関わりたくないならば…そこも含め、全て忘れさせる事もできる」
「全て…?」
「あぁ。その場合、都市伝説とも契約を解除する事になるけどな。少なくとも…今回のような事には、巻き込まれなくなるだろうよ」


 …だが、それは
 都市伝説の事も、全て忘れる、と言う選択肢は
 それが縁で知り合った者との縁も、それが縁で親しくなった者とも縁も、切れると言う事

 ……今、姉妹の目の前にいる、天地とも
 先ほど、隣の部屋まで連れて行かれた直希との縁も、切れる
 龍一とも、ただ、「同じクラスの生徒」「妹と同じクラスの生徒」と言うだけの関係になり、花子さんの事も忘れてしまう
 ……いとこの衛が契約しているユキの事だって、忘れてしまう


 自分の事も忘れられる
124解除と今後について  ◆nBXmJajMvU :2010/11/23(火) 12:46:14.25 ID:gZtL+2lh0
 それをわかっていて、天地は「忘れる」と言う選択肢を提示した
 「組織」の人間の務めであると同時に……己が、姉妹を助けられなかった、その罪滅ぼしであるかのように

 突き出された選択肢を、前に
 姉妹は、互いに顔を見合わせたのだった









to be … ?
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 12:47:59.33 ID:gZtL+2lh0
犬神憑きとアンサーの人に焼き土下座orz
ひとまず、姉妹の暗示、解除しました
中途半端なところで投げ出して申し訳ない

途中から辰也が空気ですが、まぁ、天地の仕事っぷりを見てると思います
出来る限り事務的に話そうとしてる天地ですが…まぁ、私情と言うか、その辺は透けてると思う
姉妹に対して、だいぶ気を使ってる感じとかが


ところで、ふらついた直希を隣の部屋に運ぶのは本来翼で、しかも横抱きで連れて行くと言う構想があったんだが、うまくつなげずボツってこうなりました
ごめんね紗奈ちゃん
君へのサービスシーンが減っちゃって御免ね(待て



そんじゃ、一時待ち合わせの約束があるんで出かけてくらぁ
夜、帰ってきた時もスレが残っていますように
そして、待ち合わせに間に合いますように!!!!
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 13:39:26.19 ID:S+DIjrO00
投下乙ですー

10分か…間に合ってるといいなぁ…
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 14:07:42.47 ID:PIRetxmz0
投下乙ですほ
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 14:55:47.08 ID:PIRetxmz0
保守
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 15:51:03.41 ID:PIRetxmz0
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 16:37:19.12 ID:PIRetxmz0
ほし
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 16:39:07.80 ID:iMJVbsY40
132笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/11/23(火) 17:05:36.23 ID:iMJVbsY40
【上田明也の麻婆豆腐〜神聖皇帝マボントウニスT世、豆板醤もマシマシだ〜】

「―――――めよ」
「―――――――――ざめよ。」
「―――――――――――――目覚めよ!」

頭の中に響く声で俺は眼を覚ました。
時刻は朝の八時。
どうやら少し寝過ぎていたらしい。
都合の良いことに俺はセルフ目覚まし機能を手に入れていたようだ。

「そんな訳あるか!」
「うぉっ!?」

普通に見知らぬ老人が目の前で正座していた。
さっきまで添い寝していたメルが居なくなっている。

「お前は麻婆仮面になって戦う運命を秘めている。」
「し、知らないぞそんなこと!?」
「良いからこれを食え!」

老人はいきなり持っていた皿を俺の顔面に叩き付けた。
目に麻婆豆腐が入る。
眼を火箸でくりぬかれたような激痛に思わず蹲る。
だが、それと同時に俺の口にも入った麻婆豆腐は俺の口腔内に肉と豆腐の楽園をつくりあげていた。
脳裏に浮かぶ幾つもの幸福なイメージ。
なんだというのだこの麻婆豆腐は!?
133笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/11/23(火) 17:07:03.09 ID:iMJVbsY40
「くっそ!なにしやがる!」

顔にかかった麻婆豆腐を拭き取ると俺は辺りを見回す。
老人の姿は消えていた。
後に残ったのは麻婆豆腐だけ。
再び口に含んでみる。
…………うまい。

「うまちょびれ……。」

あまりのおいしさに感嘆の声が漏れていた。

「いや、うまちょびれなんてもんじゃない。
 ウマチョビラータだ、このうまさはうまちょびらーただ!」

もはや自分でも何言っているのかよくわからない。
だが、この麻婆豆腐の作り方は解る。
何故かは解らないが、一口食べただけで作り方が理解出来てしまったのだ。
いや待てよ、作り方という表現が妥当なのだろうか?
これはまるで俺の心のありよう全てを辛さに還元し、旨味に消化させたような麻婆豆腐。
ならばこの場合作り方という表現は正しくない。
何故ならこれは俺の心そのものなのだから。

「そう、今なら全て理解出来る。
 この俺の都市伝説との契約の為に出来てるような身体が!
 本来何の奇跡を起こすために作られた肉体なのかを!」

心の有り様を現世に映し出す奇跡。
即ち麻婆世界で現世を塗りつぶす。
そう念じるだけでこの麻婆豆腐はもう、既に俺の手の中に有る。
134笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/11/23(火) 17:08:03.29 ID:iMJVbsY40
「見せてやる、麻婆豆腐を生み出すことだけに特化した俺の魔術を!」
「上田さんどうしたんですか?
 いきなり朝から……。」

寝室のドアが開いて彼方が顔を出す。

「マ゛アァァァァアア!ボオオオオオゥウゥゥウウ!」

ドベチャアン!
手から生み出した麻婆豆腐を彼方にぶつける。
ふふふ、良いぞ……。
思った通りに麻婆豆腐を扱える。
これが俺の真の力か……。
これさえ有れば世界最強の麻婆豆腐ラーになれる!
人間の食べ物としての限界を超えた辛さとその先にある醤の旨味で、
彼方はとても幸せそうな顔をしていた。
少し痙攣しているがきっと問題無い。

「大丈夫か彼方ブッ!?」

次に橙がやってくる。
こいつにも麻婆豆腐だ。
今度は上手に口の中にたたき込んでやった。
食べた瞬間に意識すら保てなくなって気絶したがまあ問題有るまい。
135笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/11/23(火) 17:09:19.91 ID:iMJVbsY40
「お兄ちゃんどうしたの……?」
「ンマアアアアアアアアアアアボオオオオオウウウ!」
「んぅ!」

吉静ちゃんまで騒ぎを聞きつけてこっちに来てしまった。
彼女にも迷わず麻婆豆腐を食わせた。
だが……、倒れない。

「これ美味しい!お兄ちゃんの麻婆豆腐いつもより美味しいね!」
「はっはっは!そうか、じゃあお兄ちゃんの熱くてドロドロしたのをたっぷり飲み干してくれよ!」
「こ、こんなのだめだよぅ!」

手から無限に麻婆を垂れ流す俺。
それを素早く飲み干す吉静ちゃん。
勝負は一進一退、俺が全ての麻婆を絞り取られるか。
吉静ちゃんが俺の麻婆でお腹パンパンにさせられるか。
決着は意外と簡単に着いた。

「お兄ちゃん、もう無理だよ!入らないぃ!」
「まだだ、まだだぞ吉静ちゃん!お兄ちゃんの勢いはこんなもんじゃあ止まらない!」
「らめえ!麻婆豆腐美味しすぎておかしくなっちゃうううう!」
「はっはっは!……それでも、良いんだよ?」

吉静ちゃんも無事陥落した。
俺は気絶した三人を放って町に出ることにした。
136笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/11/23(火) 17:10:11.37 ID:iMJVbsY40
「マーボゥ!豆腐!」

まずは出会い頭に通行人に麻婆豆腐をぶっかける。
あまりの辛さに悶絶し……気絶、したかに見えた。
通行人は起き上がり高らかに叫ぶ。

「ハイル!マーボゥ!」

なんてことだ、俺の麻婆豆腐が進化してる!?
まあ都合が良い。
このまま麻婆で世界を征服してやろう。
俺は道行く人々に麻婆豆腐をぶっかけたりつっこんだりしながら町を悠然と進んでいった。

「居たぞっ!」
「第二のマ神だ!」
「逃すなよ、確実に仕留めろ!」

黒服に囲まれた。おのれ、組織の犬共め。

「はあああああああああああ!」

俺は心の中により強く麻婆豆腐をイメージする。
そしてそれが作られる鍋。
俺の心の炎が麻婆豆腐をより美味しく調理するカギだ。

「麻婆開眼!豆腐三昧!」
「ぬわああああああああ!」
「ぎゃあああ!?」
「おいしいよおおおお!」
137笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/11/23(火) 17:10:57.37 ID:iMJVbsY40
俺が麻婆豆腐で出来た津波を叩き付けると黒服達も簡単に麻婆豆腐派と化した。
ふん、これならば俺が神聖麻婆皇帝チャイナリウス・トーフT世として君臨する日も遠くないな。

「待て、上田明也!」
「ん邪魔だ!」
「あひゅん!」
「あ、アスマ!?」
「どけぃ女ァ!」
「クヤシイケドオイシイビクンビクン」

俺の目の前に現れた明日弟&恋路に麻婆豆腐を叩き付ける。
二人とも一瞬でトリップ状態になってしまった。
どうやらこいつらもこの辛さに耐えられなくなったらしい。

「明也さん、そこまでです。」
「…………お前は!?」
「我が名は組織F-0、サンジェルマン伯爵!
 組織の名の下に貴方をマ神と認定し、排除することを決定しました。」
『そしてその契約者たるフェリシアお姉さんだ。』
『今日は私も異常を使って良いと言われて居るから……』
「麻婆ビーム!」
「ぎゃああああああああ!?」
『あれ、異常が発動しないよおおおおおおおお!?」

ベシャアン!
ふん、この程度か。
他愛もないな。
138笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/11/23(火) 17:13:12.44 ID:iMJVbsY40
「やぁの!やぁの!!こっち来ないでぇぇぇぇぇ!!!」
「へっへっへ、お嬢ちゃぁん。
 そんなに怖がるなよ…………?
 お兄ちゃん悲しいなあ、涙が出ちゃうなあ……。
 ほら、美味しい麻婆豆腐だよぉ?
 なぁ、食えよ……。食えって言っているだろうが!」
「いやああぁぁぁァァァッ!」

とりあえずそこら辺に居た少女に麻婆を食わせてみた。
豆板醤が血しぶきのように散る。
まだ子供のようだがこのマーボリウス五世に手加減なんて無い。

「辛いの!いやあなの!もうやめてよおおお!」
「マダだなあ、吉静ちゃんだってこの十倍は食べてから倒れたんだ。」
「…………。」

限界を迎えたか。
他愛ない。
俺は同じように麻婆を食べて気絶した人々の中に彼女を捨てた。
139笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/11/23(火) 17:14:11.77 ID:iMJVbsY40
「ふぅ……つまらんな、俺の麻婆を食える物はこの地上にいないのか?」
「待てよ。」
「む?貴様は何者だ?」
「そんなことどうだって良い。
 只お前は、俺の大切な人を傷つけた。」

目の前の男は刀を抜きはなって俺に向けて構える。
どうやら俺に何かの恨みがあるようだ。

「はっはっは!あの女のことか!
 青い、青いなあ少年!
 情によって動くとは本当に青い!
 ならば……、我が麻婆豆腐で紅より赤く染まれ。」

戦いは三日三晩続いた。
俺の麻婆とその男の剣は拮抗し続けたが、ついに人のみを捨てきれなかった彼の身体に限界が来た。

「また、守れなかった……!」
「ふん、非麻婆豆腐ラーでありながら良く練り上げた。
 誰が忘れようと貴様の勇姿は余が胸に刻もう。」

静かに目をつぶった男の亡骸に、余は黙って麻婆豆腐をぶっかけた。
140笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/11/23(火) 17:15:06.70 ID:iMJVbsY40

「ふ、結局のところ、余に並び立てる者などおらぬのか……。」

もはや一人称がおかしくなっていたが気にしない。
余はわずかな孤独を胸に抱えて一人小高い丘の上に立っていた。
今頃世界は麻婆につつまれているだろう。
我が麻婆豆腐十二使徒ならばその程度容易いことだ。

「ああ、……これが王の孤独。
 しかしこれもまた悪くは……。」

次の瞬間、南の方角から雄臭いオーラが流入してくる。
向こうは麻婆十二使徒が向かった筈の土地だ。
一体何が有ったというのだ?

「神聖麻婆豆腐皇帝マーボナスV世……、いいえ、上田明也。貴方を倒しに来た。」
「貴様は……禿の黒服!」
「兄貴帝国と麻婆帝国、臣民を傷つけるのは貴方の本意では無い筈だ。」
「ふっ、まさか余と同じ、いやそれ以上の王気を纏えるものがいようとはな!」
「私たちの一対一の決闘で決着をつけましょう。」
「ふむ、良かろう。王は王に敬意を払うものだ。」

そういって余は禿の黒服と正面から対峙する。
兄貴の♂と余の麻婆が交差する刹那、世界は光に包まれた。

……俺は何故か自宅の寝室にいた。
どうやら夢だったらしい。
この後彼方とレモンが俺に対してやたら警戒を強めていたが、それはまた別の話である。
【上田明也の麻婆豆腐〜神聖皇帝マボントウニスT世、豆板醤もマシマシだ〜fin】
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 17:19:01.91 ID:iMJVbsY40
以上、代理でした
ふと思ったが、このネタをご新規さんが見たら、このスレに対してあらぬ誤解を受けそうだwwww

都市伝説スレのモットーは、「狂気とカオスと時々日常」です
ごめんなさい嘘です
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 17:58:47.73 ID:iMJVbsY40
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 18:33:40.32 ID:iMJVbsY40
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 19:14:22.31 ID:iMJVbsY40
145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 19:20:29.72 ID:8Hwf6nLC0
ただいま、笛の人と代理の人乙ー
どこに突っ込んだらいいのかわかんねぇえええええええwwwwwwwwwwwww
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 19:39:00.77 ID:8Hwf6nLC0
147笛(土下座EX) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/23(火) 19:49:02.80 ID:8Hwf6nLC0
【上田明也の奇想曲33〜美味しい麻婆豆腐の食べ方〜】

「命ってなんなんですかね探偵さん。」
「俺には解りませんよ看護婦さん。」
「ていうか名前で呼んでくれないんですか探偵さん。」
「そっちこそ名前で呼んでくれないんですか看護婦さん。」
「そっちが名前で呼ぶまでは呼びませんよ。」
「だって貴方の名前って偽名じゃないですか。」
「ありゃりゃ、ばれていたか。」
「探偵ですから関わった相手のことくらい少しは調べますよ。」
「ってことは我が家の家庭事情とかもバレバレだったり?」
「まあ貴方が友人に話している程度には調べています。」

顔をつきあわせて四方山話に興じる二人の男女。
一人は臙脂色のネクタイに紺色のスーツを合わせた鷹のような眼をした男。
もう一人はタートルネックのセーターに黒い革のコートを合わせた背の高い女性。
遠くから見ているとまるで映画に出てきそうな二人である。
しかも話している場所が探偵事務所ともなれば尚のことだ。

「えー、素直に聞いてくれれば良いのに。」
「だって貴方ウソツキじゃないですか。」
「私だって探偵さんに聞かれたら本当のことくらい言いますよぅ。
 なんせ命の恩人ですからねぇ。」
「嘘くさいなあ……。」

上田明也とこの女性は何度か会っていたがその中で彼は一つの発見をしていた。
この女性――看護婦さん――は嘘吐きなのだ。
148笛(土下座EX) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/23(火) 19:50:38.28 ID:8Hwf6nLC0
上田明也は彼女との二度目の遭遇後、色々と彼女の身辺調査をしていたのだが、
どうにもこうにも彼女の言っていることと彼女の周囲の環境の辻褄が合わないのだ。
看護婦ということは合っていたが別にゲームに嵌っている形跡も無いし、
彼氏も居るような雰囲気だし、
ならば何故彼と会い続けるのかも解らないし、
あと父親の正体がよくわからなかったりするし、
その割に家は裕福そうだし、
でもそれ故に上田明也の興味を惹いているとも言える訳で。

「流石に彼氏が居る女性を口説く趣味は俺にはないんだけどなぁ?」

小さい女の子的な何かにランドセルを背負わせてアレする趣味はあるけど。
あと小さな女の子の小さなお口に熱くてドロドロした麻婆豆腐を流し込む趣味もあるけど。

「どうしたんですか探偵さん?」
「いや、なんでもないよ。」
「なら良いんです。」
「今日はどんな用で呼んだんですか?」
「いや、この前教えられた通りにしたら口裂け女倒せたので今度はテケテケ辺りとやってみようかなあ……と。」
「え?」
「何驚いているんですか。準備して慌てずにやれば誰でも倒せるって言ってたじゃないですか。」
「いやいや、言いましたけど……。」

本当にやるとは思っていなかったのだ。

「それよりも、ご褒美にこの前約束していたアレ、食べさせてくださいね?」
「ああ……麻婆豆腐ですか。」
「はい!」

心底嬉しそうに彼女は返事をした。
149笛(土下座EX) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/23(火) 19:51:54.79 ID:8Hwf6nLC0
「貴方の熱くてドロッとした麻婆豆腐食べてみたかったんですよね。」
「やめようね!?今日番外編でそのネタやったばかりだから!」
「うにゅ?」
「まあ良いや、少し待っててください。」

上田は台所にたって麻婆豆腐を作り始める。

「まずは材料を切る!
 長ネギ豆腐唐辛子葉大蒜!
 それぞれ食べやすいサイズに!特に唐辛子は原型無くなるまで刻む!
 そして次にタレだ!
 熱した鍋に油を引いて挽肉をパリパリになりすぎない程度に炒める!
 ここに大蒜!豆鼓醤四川豆板醤四川辣椒粉甜面醤XO醤穀醤草醤魚醤肉醤!
 さらに上田家伝来!食べるラー油!」
「上田?探偵さんってば笛吹って名字じゃ……」
「次に豆腐をゆでる!
 南イタリア産の岩塩をひとつまみ入れておくことにより味わいが爽やかになる!
 これでたれの味が引き立つぜ!」
「探偵さ〜ん?」
「豆腐がぷるぷる震え始めたら優しくすくい上げてやれ!」
「探偵さ〜ん!?」
「さあこのまま豆腐をぶち込むぞ!」
「駄目だ、トランス状態になっている……。」
「名字は気にするな!」
「あ、聞いてたんだ。でも上田って……まあ良くある名字だし良いか。」

彼女は小首をかしげて何か悩むような素振りをするが、
割とすぐに忘れてしまった。
150笛(土下座EX) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/23(火) 19:52:42.34 ID:8Hwf6nLC0
「この鍋に!俺が作り置きしている鶏ガラスープをたたき込む!
 魚介だしを僅かにまぜることで味に深みが増しているぜ!
 使用している鳥は出汁専用に特化した老鶏だから美味いぞお!」
「そういえば探偵さん?」
「さあ火力を最大にしろ!少し煮えたら紹興酒をたたき込め!
 塩や醤油で味を調えることはしない!
 俺が使うのはこれだ!」
「それは!さっき使っていたXO醤!」
「違うぜ看護婦さん!」

それにしてもこの看護婦、ノリノリである。

「真の料理人たるもの状況に合わせて様々なXO醤を作っておくのが当たり前さ!」
「まあ、すごいわ!」
「俺のは……濃いぜ?」

上田が仕上げ用と書かれた瓶に入った真紅のXO醤――諸悪の根源――をたたき込む。
これが入った瞬間、鍋の中が完全に赤く染まった。

「で、最後に水溶き片栗粉をタぁアァァアップリ!混ぜて、……できあがり。」
「わぁ、とってもおいしそう!でもこれってカロリー……」
「食えば全部消費するから大丈夫。」
「いくらでも食べられるわね!」
「まかせてくれ!」

上田は皿にたっぷり麻婆豆腐を盛って看護婦さんに出した。
151笛(土下座EX) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/23(火) 19:53:31.77 ID:8Hwf6nLC0
「でわでわ……、頂きます!」
「召し上がれ!」

赤黒いソレが看護婦さんの柔らかい唇の間に入り込み、彼女の味覚を蹂躙する。

「んっ……、はぁぅ……。
 なに、これえ……?すっごく辛くて、でも……。」
「これでも自信があるんだけど、どうだい?」
「うふふ、……すっっごくイイです。」

看護婦さんの額にじっとりと汗がにじむ。
あまりの激しさに早くも体力を消費し始めているようだ。

「そう言ってくれると嬉しいね。」
「こういう刺激的なのって、大好きなんですよ。」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないの、それじゃあ……。
 と こ と ん 喜ばせてあげないとなあ!」
「きゃっ、怖いわぁ、……なんてね。」

上田は特製物食うってレベルじゃないラー油を取り出して彼女に差し出した。

「これをかければ……、もっと熱くなれるぞ?」
「まぁ素敵…………!」

彼女は迷わずにそれを手に取る。
なんの遠慮も容赦もなく、彼女はそれを麻婆豆腐にぶっかけた。
152笛(土下座EX) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/23(火) 19:54:56.89 ID:8Hwf6nLC0
「こんなに出しちゃうなんて随分と随分じゃないか、イケナイ看護婦さんだ……。」
「あらぁ、怖いんですか探偵さん?自分から始めたくせに。」
「怖いさ。」
「え?」
「怖いけど……。」

上田は自分の分の麻婆にもラー油をだくだくとかけ始める。
そしてスプーンでぐちゃぐちゃにかき混ぜてから一口、二口。

「でもそれが最高に……そそるんだよな。」
「―――――まぁ、悪い子。お姉さんそう言うのは許さないぞ?」
「ソレを言ったら二人とも悪ガキだよね?」
「そのまま大人になっちゃった。」
「ふふっ」
「あはは……」

それにしても、自分に姉が居たらこんな感じなんだろうか。
いつも悪戯をしようとしたら見つかって、でも笑顔で一緒にしてくれる姉が欲しかった。
親父にもそんな我が儘言ったっけか。
……正月の親族一同集まってた所で。
ごめんね父さん母さん。
まあそれは過去のことだ、俺が見つめるべきは今。
今目の前にある麻婆豆腐。

「じゃあ、」
「改めて、」
「「頂きますっ!!」」

そんなことを思いながら上田は看護婦さんと麻婆豆腐をむさぼり始めたのだ。
【上田明也の奇想曲33〜美味しい麻婆豆腐の食べ方〜】
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 20:09:54.83 ID:8Hwf6nLC0
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 20:17:45.70 ID:8Hwf6nLC0
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 20:32:28.30 ID:8Hwf6nLC0
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 20:47:19.62 ID:8Hwf6nLC0
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 21:07:58.29 ID:8Hwf6nLC0
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 21:23:01.65 ID:8Hwf6nLC0
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 21:32:19.58 ID:8Hwf6nLC0
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 21:40:30.73 ID:8Hwf6nLC0
161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 22:03:11.73 ID:8Hwf6nLC0
162赤い幼星 † とある組織の荷電粒子砲  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/23(火) 22:29:56.21 ID:8Hwf6nLC0
パタン、と携帯電話を閉じるローゼ
裂邪からの電話―――彼の弟が『COA』に吸い込まれたという連絡を受け、
彼女は再び、『COA』に侵入する事を決めた

(ローゼ>もう一度、行ってまいりますわ
     皆さんはここで待機していてください
(日天>なっ・・・1人で行く気か!?
(ローゼ>大丈夫ですわ、裂邪さんもいらっしゃることですし
(ロール>アンタはここ最近で能力使いまくってるじゃん!
     これ以上負担かけたらマジやばいって!
(日天>あぁ! せめて、オレ達だけでも―――

スッ、と彼女を止めるように蓮華が手を伸ばす

(日天>れ、蓮華さん・・・!
(蓮華>この人がやる気になったら、誰も止められないのはご存知でしょう?
(ローゼ>R-No.1・・・あとは、宜しくお願いしますわ
(蓮華>死にに行くみたいな言い方しないでください
    書きかけの報告書がまだ残ってますからね。書き終えてから逝って下さい

苦笑する、と思いきや、思いっきり笑ってしまったローゼ
蓮華がジョークを飛ばすのは、竹の花を見かけるよりも稀なのだ
一頻り笑った後、彼女はロベルタに小さなメモを渡す

(ローゼ>R-No.6? もう1度だけ、ここにお願いできる?
(ロベルタ>う〜ん・・・オッケー、何とか、行ける、よっと!

疲れきった表情で、ガラッ、と勢いよく引き出しを開ける
その中は、我々の知る引き出しの中身ではなかった
163赤い幼星 † とある組織の荷電粒子砲  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/23(火) 22:32:14.93 ID:8Hwf6nLC0
(ローゼ>ありがとう。では―――
(ライサ>待ってお姉様!

がしっ、と強くローゼに飛びつくライサ

(ローゼ>ら、ライサ・・・貴方も、ここで皆さんと一緒に
(ライサ>やだ! 私もお姉様と行く! 向こうで、怪我をしてる人がいるかもしれないから!
     ゲームの中でも、痛いのは嫌なことだから、癒してあげたいの!

涙目になりながら訴える
ローゼは少し迷って・・・ぽん、とライサの頭に手をやり、優しく微笑んだ

(ローゼ>分かりましたわ。でも、無茶だけはなさらないでね?
(ライサ>うん!

ローゼは彼女を抱き上げると、他のメンバーに小さく手を振り、
底の無い引き出しの中へと飛び込んだ
光はすぐに見えた
彼女はその「向こう側の引き出し」から顔を出し、

(ローゼ>遅れて申し訳ありませんわ!

部屋には、依頼主―――黄昏 裂邪ただ一人
恐らく「シャドーマン」の作り出した異空間にいるのだろう
それにしても、何故この少年は少し驚いているのだろうか
そんなことを考えていると、彼が口を開いた

(裂邪>すまないローゼちゃん。それに・・・ライサちゃん?
(ライサ>怪我してる人がいるかもしれないから、私も行く!
(ローゼ>と言って聞きませんの
164赤い幼星 † とある組織の荷電粒子砲  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/23(火) 22:37:28.30 ID:8Hwf6nLC0
(裂邪>いや、助かる。ゲームとは言え、死を体験するのはあいつらにゃ早過ぎるし

彼の言うとおり
彼もそうだが、彼の弟も、まだ子供
子供に、そのような恐ろしい体験をさせるわけにはいかない
彼女はライサを抱きながら、引き出しから出る

(裂邪>じゃあ、頼んだ
(ローゼ>えぇ・・・『アセンション』!

パチン!と指を鳴らすと、3人を赤いオーロラのようなものが包み込む
瞬時に背景は、平凡な住宅の一室から、青空の広がる草原へと―――
バチッ!
何かが、電磁波の壁に触れたらしい
オーロラが晴れると、目の前にいたのは、
背中に翼が生え、全身が鱗で覆われた、剣を持つ人の形をした化け物―――ドラゴニュート
彼女はそれを見た事が無かったが、敵である事に違いはないと判断した
ライサを庇うように己の背後に降ろし、ジッとしてるように無言で指示して、
右腕に『フォトンエッジ』を生成し、黒い鎌を持った裂邪と共に切りかかった

―――漆黒が包む黄昏に

―――深紅の薔薇が咲き誇る

(裂+0>『ローズ・オブ・ダスク』!

赤い刃と黒い鎌がクロスを描き、ドラゴニュートの腹部に血の十字架が出来た
どさり、とその場に倒れるドラゴニュート
まだ息はあるようだが、今は一刻を争う時
すぐにでも、裂邪の弟を探し出さねば
165赤い幼星 † とある組織の荷電粒子砲  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/23(火) 22:42:55.31 ID:8Hwf6nLC0
(少年>お兄ちゃん!どうしてこんな所に!?

背後から、そんな声が聞こえた
振り向くと、今まで気がつかなかったが、丁度ライサの真後ろに少年がいた
ちらと様子を見ると、裂邪は何やら安心した表情をしている
もしや、と彼女は思い、

(ローゼ>裂邪さん、彼が・・・
(裂邪>あぁ、黄昏正義。俺の弟だ

よかった、どうやら無事だったようだ
彼女もほっとするが、状況が状況である
周辺には、正義という少年の友人と思しき子供達が3人、
そして、「こっくりさん」と正体不明の都市伝説――正義少年と契約関係らしい――の姿
さらに、先程斬ったものと同タイプの化け物が、他にも4体いる
武器はそれぞれ違うらしく、斧、弓、ハンマー、棍棒、
剣と合わせて5体いたようだ
様子から、少年達が劣勢・・・間に合ったと考えるべきか、もう少し早ければと嘆くべきか
不意に、斧を持ったドラゴニュートが裂邪に襲い掛かる
彼女は守ろうとしたが、その前に裂邪自身が弾き飛ばした

(裂邪>なぁ、俺は別にお前らが何しようが怒りゃしねぇよ
    ぶっちゃけお前らも余計なお世話だとか思ってるだろうし
    でもさ、他人に心配かけちゃいかんと思うんよ
166赤い幼星 † とある組織の荷電粒子砲  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/23(火) 22:45:53.79 ID:8Hwf6nLC0
彼の影が、一層黒くなる
その瞬間、影の中から7体、いや8体の都市伝説が飛び出した
「赤マント」、「注射男」、「下水道に棲む白いワニ」、「ベッドの下の殺人鬼」、
何故か合体している「テケテケ」と「トコトコ」、「メリーさんの電話」、そして「幽霊」
どれも契約状態ではない
それに、本来ならどれも討伐対象になり得る都市伝説ばかりである
しかし彼女は裂邪を信じた
否、信じざるを得なかった

(パーカー>少年殿!助太刀に来た!
(女子校生>少年くん!もう大丈夫だからね!
(正義>「ベッド下の男」! 「テケトコ」!

どうやら、正義少年の味方であるらしい
友達、といったところだろうか
思わず、笑ってしまったローゼ
こんな関係を持てる人が、この世に沢山いてくれたら・・・

(裂邪>メリーさんにレイちゃん、この『回復薬』をあいつらに
(メリー>わかったわ!
(ローゼ>ライサ、貴方もあの子達をお願いできる?
(ライサ>任せてお姉様!
167赤い幼星 † とある組織の荷電粒子砲  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/23(火) 22:48:19.05 ID:8Hwf6nLC0
子供達の治癒は、彼女達に任せよう
先程斬った、剣を持ったドラゴニュートも起き上がり、5体の目線がローゼ達に向けられる
ハンマーと棍棒は「ベッドの下の殺人鬼」達に任せるとして、残りの3体をどうするか

(裂邪>ローゼちゃん、あの弓使いを頼めないかな?
(ローゼ>え? でもそれだと裂邪さんが・・・
(裂邪>俺達は1回、あいつらを3匹相手にしたんだ
    剣使いは死にかけてるし
    それに、ちょっと考えがある
(ローゼ>・・・分かりましたわ。死ぬ事のありませんように
(裂邪>あぁ、あんたもな

ローゼは遺伝子の構造を変化させて脚力をあげ、
弓を持ったドラゴニュートに飛び掛ると同時に蹴りを入れた
後方に飛ばされる弓使いだが、飛ばされながらも矢を3本射る

(ローゼ>『フォトン・ヴェール』!

すぐさま張られた赤いカーテンのような壁
バチバチと音を立てながら、矢は弾き返される
即座に『フォトン・エッジ』で弓使いに切りかかる
弓使いもその名の通り、弓を使って防御しながら攻撃を入れようとする
大柄な体躯故に、小さな身体であるローゼには当たらないのだが、どちらも防戦一方だ

(弓使い>ギャッ! ギャァッ!!
(ローゼ>(くぅ・・・これでは持久戦になってしまいますわ・・・
      少しでも動きを止められれば・・・)
168赤い幼星 † とある組織の荷電粒子砲  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/23(火) 22:53:00.36 ID:8Hwf6nLC0
―――私、メリー。今貴方の後ろにいるの

後頭部に蹴りを受け、よろめくドラゴニュート
それより、少しドラゴニュートの動きが鈍くなったように見えた
再び状況を確認すると、裂邪と一緒にいた、ピンクのドレスを着た少女と、白い着物を着た少女がいた

(ローゼ>貴方達は・・・えっと、メリーさんに、レイちゃん、だったかしら
(メリー>手伝ったわけじゃないんだからね、ただ見てるだけじゃつまらないから!
(レイ>おねーちゃん、私達も戦うよ!
    私は、そんなに力は無いけど・・・相手の邪魔をするくらいならできるの!

都市伝説とはいえ、子供に手を借りるというのは、「組織」としても胸が痛むが・・・
今は、彼女達の力を借りるしかない

(ローゼ>1分・・・いえ、30秒だけでいいですの
     あれの動きを止めていてください!

大きく頷くと、レイは両手をドラゴニュートに向ける
彼女は「交通事故で死んだ子供の幽霊」だ
故に「子供を道連れにする」ような能力を使えるのだが、何分契約状態にないので、
十分な力を発揮できず、完全に操ることは出来ない
だが動きさえ鈍れば、メリーが瞬間移動しつつ攻撃することが容易になる
実は彼女達は、普段からこの方法で悪い都市伝説を撃退していたのだ
169赤い幼星 † とある組織の荷電粒子砲  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/23(火) 22:54:19.33 ID:8Hwf6nLC0
その間に、ローゼは両腕を広げ、掌に赤い光を集中させる

(ローゼ>「幼気」解放・・・フォトンを、極限まで加速させます

そのまま彼女は、例えるなら「ファイナルフラッシュ」のような構えをとる
周囲の空気が僅かに振動し、それが徐々に大きくなっていく

(ローゼ>フォトンは質量が0に近い、だから運動エネルギーも無いに等しいけれど・・・それを「幼気」で補えば!
     メリーさん!レイちゃん!お退きになって!

時間稼ぎをしていたメリーとレイは、ドラゴニュートから早々に離れた
ドラゴニュートが最後に見たものは、光か、それとも

(ローゼ>終わりですわ・・・『フォトン・ストリーム』!!

ローゼの両掌からのびる赤い光条は、
大地を抉り、空を震わせ、
ドラゴニュートを跡形も無く消滅させた
しかし真に恐ろしいのは、それほどのことをやってのけて尚、息も切らしていないローゼだろうか

(メリー>・・・こ、ここまでする必要あったの?
(ローゼ>ん〜・・・ちょっとやりすぎちゃったかしら? おほほほほ♪

後ろから、「わ、わっ!」と慌てる声が聞こえた
見ると、どうやらミナワが空から落ちてきた裂邪をキャッチしたらしい
「ベッドの下の殺人鬼」達も、なんとかやってくれたようだ

(ローゼ>任務完了、ですわ♪

   ...To be Continued
170やる気なさそうな人 ◇HdHJ3cJJ7Q (代理):2010/11/23(火) 23:05:58.03 ID:6yWNQFdh0
COA内、宿屋

トンットンットンッ、と女が階段を軽やかに降りてくる。
脚の動きに合わせ、柔らかく薄く透けている生地を重ね合わせたギャザースカートが風になびく。
スカート丈は足首まであり、裾は緩く広がっていた。
スリットが入っているため、スカートが踊れば、すき間から脚が垣間見える。
腰骨の位置にはスカーフを巻き長く垂らしているため、動きに合わせて揺れ、動きを強調していた。

「さて、これからどうしようかな」

胸を覆うビキニタイプの衣装からは腹部に垂れるように、下の部分からビーズ飾りを垂らしている。
その上に、半袖で丈が短く、薄いレース生地で作られたブラウスを羽織っていた。
首元や腕には銀色の装飾品を着けており、きらびやかな光を放っている。

階段を降りきった女は、その場でクルリと回った。
ヒラヒラとした布が柔らかく舞う。

「うん、やっぱりファンタジーはこうじゃないと」

踊り子の衣装を纏った女、葉は満足気に笑った。
171やる気なさそうな人 ◇HdHJ3cJJ7Q (代理):2010/11/23(火) 23:09:58.08 ID:6yWNQFdh0
「ご利用ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」

降りてきた葉に対して、宿屋の主人であるNPCが定型文のお礼を述べた。
それを通り過ぎ、葉は宿屋の1階にある酒場兼食堂でサンドイッチを注文した。
出て来たものを受け取り、席に着いてモキュモキュと食べていると、テーブルの向かいに男が現れた。

「ここの席、開いてますか」
「空いてるよ」

男はその席にとても疲れているように座った。
じっと葉の顔を見ている。

「何?」
「あなたが食べ終わるのを待ってるんです」

男は黙って水を飲んでいる。
葉がサンドイッチを咀嚼し飲み込み、指についたソースを舐めていると、話し掛けてきた。

「私は、Y-No.0さん、あなたがCOAに侵入したという報告を調査課で受けました。
  あなたを発見したら保護、調査をするようであれば情報提供などサポートするように言われてます」
「ほうほう、それで」
172やる気なさそうな人 ◇HdHJ3cJJ7Q (代理):2010/11/23(火) 23:13:04.11 ID:6yWNQFdh0
「ですが保護の必要も調査する気も無いようなので私はこれで帰ります。
  無事であるという報告をしに帰ります。調査課は忙しいんです」
「まぁまぁそんなに急ぐなよ、とりあえずお金ちょうだい」
「離してください。そんな装備揃えれるなら必要ないでしょう」
「もうモンスター素材で稼いだお金無くなっちゃったんだよう」
「なら、その装備着てるんですから踊ってお捻り貰えばいいでしょう、あなたならかなり稼げますよ」
「はっ、そうか! それを見たいがためにこんな態度を。エッチー、 スケベー!」
「もうやだこの人」
「さぁ…大人しく渡すか身ぐるみ剥がされるか、選んで?」
「耳元で囁かないでください」
「ふふふっ、ゾクッとした? サービス料金として…」
「資金は渡すので離れてください」

葉はお金と一緒に突き放された。

「今、どさくさに紛れて」
「何もしてません。忙しいんですから、これで失礼します」
「チッ、ノリの悪い。あ、そーだ」
「まだ何か?」
「ちょ、そんな心底めんどくさそうな顔するなよ」
「めんどくさそうじゃなくてめんどうなんです。することいっぱいあって疲れてるんです」
「まぁそれは置いといて、私さ、COAに入るとき、ナース服なドレス着た女に会ったんだけど、そいつ都市伝説っぽいんだよね」
「へえ」
「冤罪吹っ掛けて憲兵に突き出すぞ」
「情報提供ありがとうございます。あらゆる情報は調査課で厳正に調査致します」

葉は自分がそのドレスの女から聞いたことについて話し出した。
ちなみにこの話で主にしたかったことは情報提供である。
葉がふざけたりしなければもっとコンパクトに収まったのである。
 続いたらいい
173警官と契約者と殺人鬼 ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/23(火) 23:15:37.70 ID:6yWNQFdh0
学校町 警察署 広瀬美緒
「どうだ?警部補殿」
「どうもこうもありませんよ・・・頭が痛くなるばかりです」
目の前に広がる大量の書類・・・
「公園での一件目、商店街での二件目・・・そして」
下校中の小学生女子が犠牲になった三件目
買い物中の老婆が犠牲となった四件目
組織の契約者の一人が犠牲となった五件目
「徐々に、着実に、人目に付きやすい場所へ移っています」
「最後の組織の契約者が犠牲になった奴だけは成り行きっぽいな・・・」
部下の言葉に静かに頷く
「影守さん・・・無事だと良いのですが」
「何だ?やっぱりあの兄ちゃんが気になんのか?」
「彼は我々に協力的な組織の契約者です、身を案じるのは当然でしょう」
「へぇぇぇぇぇぇ」
「何ですかその邪悪かつ不愉快な笑みは、訴えますよ?勝ちますよ?
 始末書書かせますよ?」
「全力でお断りします!!」
174警官と契約者と殺人鬼 ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/23(火) 23:17:41.06 ID:6yWNQFdh0

学校町 東区 影守蔵人
「ダメか・・・」
事件現場を順番に回り奴の次の行動を予測・・・しようとしたがダメだ
被害者も場所もバラバラ
人目に付きやすそうな場所と時間と言う以外には共通点も無し
「・・・チッ」
何時もなら組織がこういう下調べは全て済ませてくれるのだが・・・
K-bフ上層部と組織の上層部の折り合いが悪いとK-1は語っていた
アイツもK-bフ上層部だろうに
「敵を見つける所から始めるのがこうも面倒だったとはな・・・」
K-bフ上層部・・・か
K-bヘ元々組織の暗部だ・・・いや、暗部と言うのもおかしいか?
恥かしすぎて世間体に出せないってのが理由だからな
流石に筋肉馬鹿とホモの集団は・・・なぁ
「・・・そろそろ決めるべきなのか?」
K-1は言っていた
何時までもK-bノ居る事は無い、さっさと他所の部署に移れと
K-0が何かを企んでいる・・・お前までそれに巻き込まれる事は無いと
「・・・って言ってもな」


175警官と契約者と殺人鬼 ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/23(火) 23:18:38.29 ID:6yWNQFdh0
最近、ハクの個別行動が増えた
K-232も姿を見せない
K-1も妙にピリピリしている
恐らく、K-0の企みとやらが佳境なのだろう・・・そして組織の上層部もそれに気付いている
「どうするのが正しいか・・・」
K-bフ仲間を見捨てるか?
K-bノついて組織を敵に回すか?

こんな時あのお人よしやエロ魔人ならどうするのだろうか
『………………美緒を、頼んだ』
何時だったかエロ魔人もとい広瀬宏也に言われた言葉を思い出す
「そうだな・・・」
K-bェどうなるのか
組織がどうなるのか
先のことは全くわからないが・・・
「取り合えず、彼女位は守ってみせるさ」
さぁ、次の現場へ向かおう
176警官と契約者と殺人鬼 ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/23(火) 23:21:35.37 ID:6yWNQFdh0

学校町 裏路地 門真希
「あー、もう!!」
前回殺した奴の事を思い出す
組織からの追手・・・意外と仕事が速い
「倒せる相手だから良かったけど・・・けど!!」
気に食わない!
本当に気に食わない!!
私の邪魔をするなんて!!
「違う」
今はそんな事考えてる場合じゃない
少し隠れよう
派手にやりすぎた
「次の狩りは・・・しばらくお預けね」
そして・・・少女の周囲に浮く人形達は静かに姿を消した

続く?
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 23:41:46.15 ID:Ben14NFG0
178後戻りなどできない  ◆nBXmJajMvU :2010/11/24(水) 00:02:56.96 ID:Bi9nfZwf0
 忘れ去ったはずの、その記憶は
 悪夢という形となって、時折、こいつを苦しめる


「あ、ぅ………あ………あぁああああああああああああっ!!??」
「…っジョルディ、落ち着け!」

 悪夢に怯え、暴れるこいつを何とかなだめようとする
 錯乱状態でうっかりと能力を発動させられては、洒落にならないし…
 …何より、こいつの苦しんでいる姿など、見たくもない

「や、だ、やだやだやだやだやだやだやだやだやだっ!!??ボク、何もしてないよ、お願いやめて、死にたくないっ!!??」

 悪夢で見た光景が
 忘れ去ったはずの記憶を、引きずり出してしまっている

 こいつの、綺麗だった赤い髪が
 この、白い髪へと変わってしまった、その出来事が
 忘れ去ったはずの、忘れさせてもらったはずの、おぞましい記憶が
 こいつの精神を、蝕む

「やだ、嫌だよぉ……怖いよやめて殺さないでお願いやめて痛いよこのままじゃ死んじゃうよ……っ」
「ジョルディ!」

 このままでは、まずい
 その体を揺さぶるが、その眼差しは虚空を見つめたままだ
179後戻りなどできない  ◆nBXmJajMvU :2010/11/24(水) 00:04:32.65 ID:Bi9nfZwf0
「…け、て、助けて………怖いよイザーク、助けて……っ!!」
「………ッジョルディ!!」

 やや強く、名前を呼ぶ
 びくり、と、その体が震えて

「…イザー…ク…?」

 ようやく、その赤茶色の目が、こちらを捕える
 見る見る内にその瞳に涙が浮かびだして

「……っうわぁああああああああああああああああんん!!!!イザークゥ!!!」

 がしりと、力任せに抱きついてきた
 …やはり、無意識に能力を発動してしまっているのか、かなり力強い
 背骨を折られないようにするので必死だ

「怖かったよぉお………夢だよね?ボク生きてるよね?死んでないよね?」
「……あぁ、生きている、お前はココにいる」

 こちらの言葉に、ようやく安心したのか
 しゃっくりあげつつも、とりあえず落ち着いてきた
 …その背中を、ゆっくりと撫でてやる

「…お前は死なせない。俺が護ってやる」
180後戻りなどできない  ◆nBXmJajMvU :2010/11/24(水) 00:06:28.79 ID:Bi9nfZwf0


 たとえ
 その為ならば、この身を幾多もの罪で汚しても、構わない
 どうせ、自分は元から罪人だ
 これ以上罪に汚れようとも、何の問題もないのだ

 …そう、たとえ
 こいつを護る為だけに
 罪なき者を踏みにじり、邪悪の手先になろうとも


 …もう、俺達には引き返すことなど、できないのだ







to be … ?
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/24(水) 00:08:38.22 ID:Bi9nfZwf0
「13使徒」の幼馴染組二人ですた
何、この腐女子への餌、ふざけてるのか俺
だが、設定固めていったらこうなったんだから仕方ない


そして寝る
おやすみー、スレ残ってますように
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします