64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:43:52.50 ID:72OjFIsvO
火の手が、ショボンのしっぽの先を焦がします。
熱さに耐え兼ねて、ショボンは破れた翼を必死に震わせました。
本能が知っているように、翼を何度もばたつかせます。
何度も、何度も。
(´;ω;`) うう
ですが、
こんな翼じゃ、飛べません。
身体は地面から離れず、ばさばさと羽ばたく翼は、炎を煽るばかり。
勢いを増した炎によって、
ショボンはどんどん塔の端へ追いやられていきました。
固い鱗で覆われた脚が、塔の石壁を踏み外します。
(;´・ω・`) あっ……!!
バランスを崩した竜の身体は、塔の上から真っ逆さまに落ちていきました。
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:45:05.80 ID:kKmOgPTbO
支援!
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:46:40.92 ID:72OjFIsvO
‐5‐
(´メω;`) ……うう
転落し、色んな所に身体をぶつけたショボンは、
傷だらけの身体を起こしました。
鱗は剥がれ、脚は変な方向に折れ曲がり、
澄んだ眼には、瓦礫の破片が食い込んでいます。
ですが、それでもなんとか、ショボンは生きていました。
(´メω;`) うう、ううううう
_
( ゚∀゚) やぁ、君がヴィップ王の『息子』―――ショボンくんだね
痛みをこらえるショボンの前に現れたのは、ニューソクの長。
ジョルジュ王でした。
その横には、ショボンも見覚えのある女の人が立っています。
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:48:07.38 ID:kKmOgPTbO
ジョルジュ、ゲスだな
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:48:08.36 ID:72OjFIsvO
_
( ゚∀゚) 思えば、こうやって竜を間近で見るのは初めてだな
_
( ゚∀゚) 長い間、よくやってくれたな。―――クー
川 ゚ -゚) 祖国の繁栄の為ならば、これくらいどうという事はありません
(´メω;`) ……メイド、さん……?
川 ゚ -゚) どうも。ショボン様
_
( ゚∀゚) おう、竜よ
_
( ゚∀゚) こんな国で死ぬのは嫌だろう
_
( ゚∀゚) 俺と一緒に、ニューソクに来い
_
( ゚∀゚) 腕のいい医者がいるから、その翼も治せる
_
( ゚∀゚) そしたら、空も飛べるようになるはずだ
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:49:23.62 ID:kKmOgPTbO
クー!
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:49:26.37 ID:72OjFIsvO
川 ゚ -゚) ニューソクの広大な土地に、屈強な兵
川 ゚ -゚) そして、この国から奪った、豊富な資源
川 ゚ -゚) 我が国は、未来永劫の幸福を約束されたも同然
川 ゚ -゚) ショボン様。……あなたの幸せは、この地にはありません
(´メω;`) うう、うぅ
(´メω;`) 何で、なんで……?!
川 ゚ -゚) ……これは人間たちの問題
川 ゚ -゚) 竜であるあなたには、関係のない事です
(´メω;`) そんな……
_
( ゚∀゚) 竜、空を自由に飛びたいだろう?
_
( ゚∀゚) 俺らと一緒に来いよ
(´メω;`) やだ……いやだよ
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:50:33.83 ID:kKmOgPTbO
支援が足りない!
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:50:34.33 ID:72OjFIsvO
なぜヴィップのお城に仕えていたはずのメイドさんが、
ニューソク国の王さまと一緒にいるのか―――
そんなことは、ショボンにとってどうでもいいことでした。
折れ曲がった脚よりも、潰れた片目よりも、
ただ、ただ、こころがひどく痛みました。
(´メω;`) いやだよ……
_
( ゚∀゚) 俺はお前の為を思って言ってるんだぞ?
(´メω;`) ……うう……
_
(#゚∀゚) このままだとお前も死んじまうんだぞ!! いいから来いっつーんだよ!
(´メω;`) いやだ!
(´メω;`) 王さまとやくそくしたんだ! 王さまとお妃さまを乗せて飛ぶんだって!
(´メω;`) お日さまに会いに行くんだって! 雲の上でお昼寝するんだって!
(´メω;`) やくそくしたんだ!
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:50:57.28 ID:UmUH74zO0
ショボン…
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:51:55.48 ID:72OjFIsvO
川 ゚ -゚) ……
川 ゚ -゚) ジョルジュ様、そろそろここも危険です
川 ゚ -゚) この竜は空を飛べず、幼いゆえに火を吐くことも出来ません
川 ゚ -゚) 竜としては、なんの価値もない生き物です
川 ゚ -゚) この傷では、自力で炎の海を突破することも不可能
川 ゚ -゚) このまま放っておいても、そのうち炎に巻かれて焼け死ぬだけです
_
( ゚∀゚) ……
川 ゚ -゚) 父と呼ぶほど敬い、愛していたヴィップ王と同じ地で死ねるならば、彼も本望でしょう
川 ゚ -゚) ジョルジュ様、ニューソク国へ帰りましょう
_
( ゚∀゚) ……
_
( -∀-) ……ああ、そうだな。分かった
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:52:03.28 ID:kKmOgPTbO
言ってることはあれでもやってる事がカスだなジョルジュ
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:53:02.69 ID:72OjFIsvO
ジョルジュ王は、メイドさんを連れ、
ショボンの前から去って行きました。
がらりがらりとお城は崩れ行き、炎はすでに国中に燃え広がっています。
もう、誰の悲鳴も聞こえません。
(´メω・`) ……
潰れた目でお城を見上げ、
折れ曲がった脚で、お城の中へと入りました。
王さまが褒めてくれた鬣やお髭を、炎は容赦なく焼いていきます。
とても熱くて苦しいけれど、
ショボンは、どんどんお城の奥へと進んでいきました。
落ちてくる瓦礫が、ショボンの尻尾や背中に当たって、新しい傷を作ります。
お城の中のありえない場所から、お空が見えました。
(´メω・`)
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:53:39.25 ID:kKmOgPTbO
支援
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:54:02.07 ID:ryULcs7y0
切ねえ
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:54:05.69 ID:72OjFIsvO
一際大きな扉を壊して進むと、黒く焦げた人が、誰かを庇うかのように、
うずくまっているのが見えました。
王さまと、お妃さまです。
(´メω・`) ……
(´メω・`) 『父さん』『母さん』
(´メω・`) …………
(´メω;`) ……
返事のない『両親』を見下ろし、ショボンは涙を零します。
天井が崩れ、出入口は完全に封鎖されました。
(´メω;`) 父さん……
崩れた天井からは、ガラス玉をちりばめたような夜空が見えます。
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:54:21.07 ID:UmUH74zO0
皆殺しかよ…
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:54:55.79 ID:72OjFIsvO
ショボンは、『両親』の身体をそっと抱え、
もうほとんど使い物にならない翼を揺らしました。
熱さも、痛みも、もう何も感じません。
ただ、あのお空だけを見て、
ただ、父との約束だけを思って―――
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:57:15.52 ID:72OjFIsvO
傷だらけの『息子』は、空へと舞い上がりました。
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:57:33.18 ID:kKmOgPTbO
救いはないのか
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:58:11.00 ID:UmUH74zO0
約束か…
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:58:19.20 ID:72OjFIsvO
(´メω;`) ―――
(´メω;`) 父さん、母さん
(´メω;`) 飛べたよ
(´メω;`) こんな翼でも、飛べたんだ
(´メω;`) やくそく……守ったよ……
両親を抱えたショボンは、お城の真上へと飛び上がり―――
そのまま、炎の踊るヴィップ城へ、ゆっくりと落ちていきました。
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:59:10.26 ID:72OjFIsvO
‐終幕‐
―――北の果ての国が滅び、何百年も月日が経ちました。
北風は国があった場所一面に生えたお花を優しく揺らし、
城跡はすっかり朽ちて、土に還りつつありました。
ノハ ゚听) おーい、シュー姉っ! みつかった?!
lw´‐ _‐ノv みつかったよ
ノハ ゚听) どれどれっ?!
ノハ;゚听) ……なぁんだ、ずいぶん分かりにくいお墓だなぁ!
lw´‐ _‐ノv そんなお墓をみつけた私、すごくない?
ノハ;゚听) あ、うん、そうだね……
lw´‐ _‐ノv さぁ、さっさとお参りして、かえろうよ
ノハ ゚听) うんっ!
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:59:14.76 ID:kKmOgPTbO
支援
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:59:33.77 ID:yr34FGuSO
支援
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:59:43.99 ID:UmUH74zO0
お…?
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:00:02.09 ID:72OjFIsvO
お花畑の真ん中で、そっと手を合わせる二人の少女。
彼女たちの前には、花に埋もれかけた『お墓』がありました。
ノハ ゚听) シュー姉っ、このお墓は、誰のお墓なんだ?!
lw´‐ _‐ノv 母さんは、『おとぎばなし』の王さまのお墓だって言ってたよ
ノハ ゚听) おとぎばなし?
lw´‐ _‐ノv うん
lw´‐ _‐ノv 昔、ここにあった国には、やさしい王さまと、よわむしな竜がいたんだって―――
―――それは、昔むかしの物語。
北の果てには、小さな王国がありました。
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:00:52.32 ID:72OjFIsvO
その国には、ちょっと弱気だけれど、優しく、
いつも微笑んでいた王さまがいて―――
( ^ω^)
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:02:42.87 ID:72OjFIsvO
言葉は厳しいけれど、心の奥底では、民を大切に思っていたお妃さまがいて―――
ξ ゚听)ξ
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:03:53.69 ID:kKmOgPTbO
やばい読みふけって支援忘れてた支援
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:03:55.85 ID:72OjFIsvO
そんな『両親』を誰よりも愛した、
(´・ω・`)
空を飛べない竜がいました。
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:05:08.99 ID:Xh3VEsK+O
しえ
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:05:09.49 ID:kKmOgPTbO
支援
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:05:09.94 ID:72OjFIsvO
―――これは、北風の国と竜の物語。
滅んだ国は美しい花畑を育み、北風は周りの国に、お伽話を運びます。
どんなに月日が経とうとも、北風が吹く限り、
そのお伽話は人々の間で語り継がれていくのです。
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:06:14.68 ID:72OjFIsvO
北風と竜のようです(´・ω・`)
おしまい
乙
乙
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:08:15.49 ID:72OjFIsvO
ごめん、ほんっとにごめん、そして支援ありがとう!
ハイスピードで投下できたのも、支援のお陰です
こんな時間までありがとうございました!!!!!!
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:08:16.33 ID:ITeVv3QmO
だれかアニメ化してくれ………
うるうるきち
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:08:23.32 ID:7sHzTz+T0
目から汗が 乙
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:08:31.88 ID:yr34FGuSO
乙!
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:09:45.03 ID:kKmOgPTbO
乙!
悲劇だけど良い締め方。
なんかじんわりくる。
しかしこの速度で投下を終えるのは凄い!
とにかく乙!
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:09:49.95 ID:UmUH74zO0
乙!
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:10:11.91 ID:mmMR8fiWO
乙
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:11:57.09 ID:p7UTEI0a0
乙、何だかモニターが滲んだ
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:12:38.99 ID:NR0Avnq30
乙
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:13:04.79 ID:kKmOgPTbO
ていうか作者、これをあの速度で投下中に、しれっと総合の短編を支援してるw
大物だw
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 03:15:58.65 ID:72OjFIsvO
>>111 総合の作品、ほのぼので可愛かったんだッ……!
それにしても、こんな時間にこんな支援乙いただけるとは思わなかった!
ほんっとにありがとうございました!
ええー
最後は復讐して欲しかった