1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
ふりーだむっ!
2 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:29:23.84 ID:OyaHFYQv0
3 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:31:53.06 ID:OyaHFYQv0
気がつけば見知らぬ場所にいた。
薄暗く無駄に広い。
('A`)「カビくせぇ」
警戒しつつ、足を踏み出す。
階段にしかけられた罠にひかかってしまったことはわかっている。
( ^ω^)「ここどこだお?」
('A`)「わかんね。でも、出口ないと不味いよな」
もしも、出口がない場所に送られたのだとすれば、二人はここで餓死するしかない。
ある程度の死は覚悟していたものの、餓死などという最期は想定の範囲外すぎる。
とりあえず壁際に近寄り、部屋を一周する。
人骨も気味の悪い文字もない。あるのは湿気った空気とカビ臭い匂いだけだ。
( ^ω^)「アレ扉じゃないかお?」
('A`)「んー?」
暗い部屋の中で目を凝らす。
('A`)「お、本当だ」
そろそろ来る頃だと思ってたぜ!
5 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:33:53.63 ID:OyaHFYQv0
早足で扉に近づいていく。
('A`)「……どう思う」
( ^ω^)「早く開けてみればいいお」
ドクオに尋ねられた意味がわからないのか、首を傾げながらブーンが言う。
('A`)「……罠って可能性もあるだろ」
( ^ω^)ハッ!
('A`)「……はあ」
ため息をついてみるが、この扉に罠がしかけられているかをしる術はない。
何か陣が刻まれていないかを確認してみるが、特に何かが刻まれている様子はない。
('A`)「腹括るか」
手を伸ばす。
ドクオの手がノブを手に取る前に、それが右に回転した。
( ^ω^)「誰かくるお!」
伸ばしていた手を引き、後ろへ下がる。
こんなところにくる人物が味方であるなどという、楽観的な考え方は到底できない。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 18:35:10.41 ID:bTQ/00Db0
久しぶりですね
支援!
7 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:36:02.88 ID:OyaHFYQv0
川д川「はじめまして」
暗闇の中から現れたのは髪の長い女だった。
川д川「あら、二人? 本当は四人とも殺すつもりだったのだけれど」
ため息を一つ。
髪に隠れて見えぬ目が光る。
川д川「まあ良いわ。死んでくださいね」
女の手が上げられる。
魔法を警戒し、二人が反撃の呪文を唱える準備をする。
川д川 「行きなさい。でぃ」
手が振り降ろされるのと同時に、何かが二人の前に現れる。
(#゚;;-゚)
ボロボロの顔をした女だった。
感情のない瞳を二人に向け、腰にある剣を手にとる。
髪の長い女はその様子を満足気に見て、扉の向こうへと去って行く。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 18:36:21.46 ID:bTQ/00Db0
支援
sie
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 18:37:16.44 ID:ckt2aFtZO
支援
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 18:37:38.70 ID:bTQ/00Db0
でぃたんはぁはぁ
12 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:38:17.09 ID:OyaHFYQv0
('A`)「くるぞ!」
でぃと呼ばれていた女が剣を振る。
女の華奢な腕が振るっているとは思えないほどの早さで剣がドクオの頬を掠めた。
薄く流れる血に、体中の血の気が引く。
('A`)「距離を取って、魔法で牽制するか」
足の速さには自信がないが、精一杯の早さで後ろへと足を動かす。
(#゚;;-゚)「……風よ、斬撃になれ」
聞こえてきた呪文に目を見開く。
風が空気を切り、見えぬ斬撃がドクオに向かう。
(;'A`)「氷よ、そびえたて!」
ドクオの前に氷の壁が作られる。
氷がドクオの背の高さになったとき、削れるような音が響いた。
厚い氷が削られ、でぃの姿が見える。
('A`)「冗談、だろ?」
魔法剣士という者が存在しているのは知っている。
ただ魔法を剣に纏わせるという単純なことをするだけならばドクオにもできる。
問題は、魔法と剣術を同時にここまで極めるのは難しいということだ。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 18:38:29.20 ID:bTQ/00Db0
でぃたんはぁはぁ
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 18:40:18.22 ID:bTQ/00Db0
魔法剣士かっこよす
15 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:40:29.78 ID:OyaHFYQv0
('A`)「あんた何であんな奴の言うこと聞いてんだよ!」
人に従うような実力ではない。あの髪の長い女にはそれ以上の力があるとでもいうのだろうか。
(#゚;;-゚)
でぃは答えない。
腰を低くしてドクオのもとへと駆ける。
(#゚;;-゚)「炎よ剣に纏え」
小さく呪文を呟き、炎の剣を生み出す。
弟者を突き刺した男が生み出していたようなちんけなものではない。
炎を集中させ、剣の形に沿うように纏わせている。
あの熱気と力ならばドクオの作り出す氷など一瞬で溶かしてしまうだろう。
風で吹き消せないかと考えるが、あの炎を消せるほどの風を生み出せる気がしない。
('A`)「とにかく……氷よ厚い壁になれ」
気休め程度でないと知っていても、こうするしか他になかった。
身体能力も相手の方が上で、魔法の力も上。勝機が見当たらない。
ふと、ブーンのことを思い出した。
先ほどから声が聞こえていないが、どうしたのだろうかと横を見る。
その一瞬後に、厚い氷が溶かされていく音が聞こえた。
しえん
17 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:42:43.98 ID:OyaHFYQv0
('A`)「ブーン!」
せめて逃げてくれ。
そんな気持ちをこめて叫ぶように声を上げた。
(#゚;;-゚)
無機質な目と視線があう。
最期に見るのがこんなにも冷たいものだとは思いたくなかった。
( A )(あー。死んだ。絶対、死んだ)
目を閉じ、死を迎える。
炎の熱を感じる。
( ^ω^)「させないお」
(#゚;;-゚)「いつの間に……!」
でぃがドクオの氷を裂いている間に、ブーンが真後ろに迫っていた。
剣を引こうとするが、氷がそれを邪魔する。
( ^ω^)「土よ彼者の足を取れ!」
18 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:44:57.87 ID:OyaHFYQv0
コンクリートの床を破り、土がでぃの足を固めていく。
('A`)「ブーン!」
( ^ω^)「ドクオ、彼女はボクに任せてほしいお」
('A`)「何言ってんだ。二人で戦うべきだ。あいつの強さは尋常じゃない!」
( ^ω^)「ドクオ」
でぃが土から抜け出す。
(#゚;;-゚)「二人ともまとめて相手する。こい」
冷たい声が耳に届く。
振られた剣は相変わらず熱い炎を纏っている。
('A`)「オレとお前で協力して戦う。じゃなけりゃ勝てねぇよ」
低い声で言う。
ブーンは静かに首を振った。
(#゚;;-゚)「私が逃がすとでも?」
でぃが剣を振り上げる。
ブーンがドクオを突き飛ばし、でぃの剣から互いに逃れる。
19 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:46:51.70 ID:OyaHFYQv0
(#゚;;-゚)「ここから本気」
呪文を唱え、風を呼び出す。
( ^ω^)「っ!」
ブーンの頬を風が刺す。
これ以上の攻撃を許さないために、ブーンも呪文を唱えでぃの魔法を吸い込む。
('A`)「風よ彼者を閉じ込めろ」
魔法が効かぬならと、足を動かすでぃを風の中に閉じ込める。
(#゚;;-゚)「鬱陶しい」
でぃが剣を振る。
ドクオの作り出した風はあっさりと払われ、でぃは腰を低くしてブーンを狙う。
( ^ω^)「吸収されし斬撃よ再び舞え」
(#゚;;-゚)「風よ私を守れ」
風を纏い、見えぬ斬撃から身を守る。
剣が届く距離にくると、下から振りあげるように剣が線を描く。
20 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:48:37.46 ID:OyaHFYQv0
( ^ω^)「セーフ、だお……」
でぃの剣は空気を切っただけだった。
一歩下がっていたブーンはでぃの顔に向かって拳を振るう。
('A`)「ブーン?」
ブーンの拳はでぃの顔に叩きつけられることがなかった。
(#゚;;-゚)「女の顔は殴れない? 甘い」
剣が再び横に振られる。
それは確実にブーンの胴体を真っ二つにしようとしていた。
('A`)「土よ二人の間にそび、えろ……」
一瞬、呪文を唱える声が詰まる。
大きなものを短時間でいくつも作ったので、体が魔力の放出をやめるように叫んでいる。
その声に耳を傾けている暇はなかった。
(#゚;;-゚)「風よ、斬撃となれ」
(;'A`)「うおっ」
体を低くする。
斬撃をどうにか避け、顔を上げるとそこには傷だらけの顔があった。
(#゚;;-゚)「終わり?」
血の気が引くのは何度目だろうか。
21 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:50:43.48 ID:OyaHFYQv0
( ^ω^)「おりゃっ」
でぃの足をブーンが払う。
彼女が体勢を崩している間に、ドクオも立ち上がり距離を取る。
( ^ω^)「ドクオ、やっぱりボクに任せてくれないかお」
('A`)「だから何でそんなことを」
先ほどのブーンを見ていると余計に一人にはできない。
女だからといって攻撃の手を緩めるような人間に、でぃの相手は務まらない。
あっさりと負けてしまうのが目に見えていた。
( ^ω^)「……ボクには彼女を倒せないお」
('A`)「なら」
( ^ω^)「でも、ドクオが彼女を倒すのも許せないお」
でぃが足を進めながら呪文を唱える。
風が二人を閉じ込めようと渦巻く。
( ^ω^)「土よ風を押しつぶせ!」
下から高く土が噴出し、二人の周りに落ちる。
('A`)「うわっ。口に土が入った」
( ^ω^)「ドクオ」
22 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:52:39.09 ID:OyaHFYQv0
土が降り注ぐ中、でぃの足が遅くなる。
ブーンは腰を低くし、彼女を迎え撃つ準備をした。
その瞳は真剣そのものだったが、やはり彼女を倒す気はないようだった。
('A`)「いい加減にしろよ!」
殺されるとわかっているのに、ブーンを置いていくことなどできない。
(#゚;;-゚)「剣に纏いし炎よその身を増せ」
炎がわずかに大きくなる。
剣が届く範囲が広がり、熱気が二人の頬を掠める。
(#゚;;-゚)「風よ彼者達を押しつぶせ」
( ^ω^)「魔法よ、我が身へ吸収されよ」
ブーンを押しつぶそうとしていた風が吸収される。
( ^ω^)「彼者にかかる魔法よ我が身へ吸収されよ」
自由の身になったブーンは素早くドクオを押しつぶしている風を吸収する。
(#゚;;-゚)「その魔法、面倒だ」
でぃは先にブーンを片付けることに決めたらしい。
剣をブーンに向かって振る。
( ^ω^)「今のうちに逃げるお」
23 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:54:55.52 ID:OyaHFYQv0
何を言っているんだとドクオは叫ぶ。
でぃの剣撃を避けながらブーンは笑った。
( ^ω^)「ただの兄弟喧嘩だお」
('A`)「……兄弟?」
( ^ω^)「早く行ってくれお」
目はでぃの方を向いている。
対する彼女は相変わらず無感情だ。
( ^ω^)「姉ちゃんがこうなったのにはきっと何か原因があるお」
放たれる魔法を吸い込み、足払いをする。
決定的なダメージを与えるのではなく、あくまでも自分の身を守るための攻撃をする。
( ^ω^)「ドクオならきっと見つけられるお」
('A`)「付き合いが長いわけでもないオレを信じていいのか?」
もちろんだとブーンは言った。
(#゚;;-゚)「逃がさな――」
( ^ω^)「姉ちゃんの相手はボクだお」
背を向け、あの扉へ向かうドクオ。それを追うでぃをブーンが引き止める。
しえんた
25 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:56:12.43 ID:OyaHFYQv0
(#゚;;-゚)「私はお前の姉とやらではないぞ」
( ^ω^)「姉ちゃんだお。顔が傷だらけになっててもわかるお」
風が舞い、剣が振られる。
(#゚;;-゚)「私はでぃだ。あの方に名づけてもらった」
( ^ω^)「しぃ姉ちゃん」
(#゚;;-゚)「誰だそれは」
( ^ω^)「姉ちゃんの名前だお」
(#゚;;-゚)「知らん」
でぃは何度かドクオを追いかけようとしたが、その度にブーンがそれを防ぐ。
同じことを繰りかえしているうちに、先にブーンを倒した方が効率がいいと気づいたでぃは彼だけをその目に入れた。
(#゚;;-゚)「風よ――」
( ^ω^)「吸収させてもらうお!」
しえん
27 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 18:58:38.71 ID:OyaHFYQv0
二人がぶつかり合う。
彼女が風を出すならば、ブーンはそれを吸収し、また吐き出す。
(#゚;;-゚)「面倒」
剣を振るうが、素早いブーンには中々当たらない。
それでなくとも、土を操るブーンにより、炎が消されてしまうというのだ。
( ^ω^)「姉ちゃん。もうやめるお」
吸収した風を放出しながら言う。
けれどでぃは答えない。
炎をまとわぬ剣でブーンを狙う。
剣が空を切る。
ブーンは背をそらし、剣筋を避けると背を戻す反動ででぃを後ろに突き飛ばす。
予想もしていなかった反撃に、でぃは思わず地面に背をつけることとなった。
( ^ω^)「土よ、彼女の動きを封じよ」
(#゚;;-゚)「くっ」
土砂がでぃの腕や足にのしかかる。
いくら彼女でも、その重さから逃れることは簡単ではない。
暴れるでぃを見下ろし、ブーンは一息つく。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 18:59:52.88 ID:TIoAXdhLO
支援
何だこの熱い展開
しえん
31 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:01:10.95 ID:OyaHFYQv0
殺されるのは嫌だが、殺すのも嫌だ。
気絶させるのが一番なのだろうが、そんな器用なことをブーンはできない。
弟者のように気絶させれたら格好良かっただろうとは思う。
(#゚;;-゚)「本当に馬鹿」
( ^ω^)「……お?」
体勢を立て直し、膝を地につけていたでぃがバネのように飛んだ。
(#゚;;-゚)「これで、どう」
上から串刺しにしようというのだろうか。
黙って受けるはずがない。ブーンも横に避けようと足を動かす。
(#゚;;-゚)「風よ彼者を閉じ込めよ」
( ^ω^)「魔法よ、我が身へ吸収されよ!」
慌てて壁を吸収する。
だが時間は多くない。
(#゚;;-゚)「無駄」
( ^ω^)「大丈夫、だお」
32 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:03:38.82 ID:OyaHFYQv0
壁を吸収しきったわけではなかったが、ずいぶんと薄くはなった。
ブーンは風を破壊するつもりで体を食い込ませる。
舞う風が体に当たり、小さな切り傷がいくつもできる。
(#゚;;-゚)「なっ」
それでもブーンは壁を抜けた。
的を失くしたでぃの剣は地面にぶつかる。
先ほどから使われている土系の魔法により、いくぶんか衝撃は緩和された。
( ^ω^)「痛かったお」
小さな傷口からはわずかに血がにじみ出ている。
(#゚;;-゚)「あのままなら、一瞬で楽になれた」
( ^ω^)「死にたくはないお」
(#゚;;-゚)「なら私を殺してみる?」
( ^ω^)「それも却下の方向でお願いしたいお」
(#゚;;-゚)「ダメ」
しえん
34 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:05:59.44 ID:OyaHFYQv0
でぃは剣に風をまとわせた。
風はうねり、先ほどブーンが味わった風の鋭さよりも数段上の鋭さがある。
( ^ω^)「土よ壁になれ」
(#゚;;-゚)「風よ圧力となり壁を崩せ」
壁が崩れ、向こう側にでぃの姿が見えた。
新たに呪文を紡ぐだけの時間はなかった。
魔法が使えないのならば、体を動かして避ければいい。
屈むか、横へ行くか。
一瞬考える。
( ^ω^)「横だお!」
屈めばブーンを串刺しにしそうだ。
先ほどの攻撃を見た後なので余計にそう感じる。
剣が左から右へと振られるので、左後ろへと足を置く。
(#゚;;-゚)「動かないで」
剣はブーンの服を少し切り裂いただけだ。
血も出ていない。
35 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:07:36.58 ID:OyaHFYQv0
( ^ω^)「……」
ブーンには一つ懸念していることがあった。
自分の中にある魔力が尽きてしまいそうになっている。
吸収や放出にもわずかながら魔力が必要だ。
戦い始めたばかりのでぃはまだ魔力に余裕があるだろう。
だが、ブーンは移動用の魔力を合成、放出もしている。
(#゚;;-゚)「魔力もうすぐなくなる?」
( ^ω^)「よくご存知で」
(#゚;;-゚)「死ぬ?」
( ^ω^)「死なないお」
でぃがブーンに向かって突っ込む。
少しでも魔力を温存しようと、ブーンは剣を避ける。
彼女が剣を振ると、ブーンは避ける。
壁際に追い詰められないように、適度に左右へ足を進める。
36 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:09:48.26 ID:OyaHFYQv0
(#゚;;-゚)「しつこい」
( ^ω^)「姉ちゃん」
(#゚;;-゚)「その呼び方嫌い」
無表情だった顔が少しだけ怒りを帯びる。
眉間に寄ったしわを見て、ブーンは昔を思い出した。
( ^ω^)「姉ちゃんは相変わらず怒りっぽいお」
剣を避け、少し微笑む。
(#゚;;-゚)「呼ぶなと言ったはず」
再び左から右へと振られた剣を後ろへ飛び退き避ける。
かかったな。と、でぃの声が耳に届いた。
まだ壁際ではないはず。と、ブーンは地に足をつける前に思う。
空を切る音が聞こえた。
とっさに首を傾ける。
(#゚;;-゚)「勘のいい奴め」
( ;^ω^)「剣から風の斬撃?」
しーえん
38 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:11:37.84 ID:OyaHFYQv0
ブーンが真後ろに飛ぶのを待っていたのだろう。
かすってしまった頬から一筋の血が流れた。
( ^ω^)「あと少しで死ぬところだったお」
(#゚;;-゚)「死んで欲しかった」
淡白な声と一緒に足音が響く。
真後ろに飛ぶまで待っていたということは、風の斬撃を飛ばせる方向は決まっているのだろう。
もう後ろには飛べない。だがでぃもただ剣を振り回すだけではない。
魔力を惜しみなく使い始めた。
ブーンが右へ避けるのならば、右に壁を作る。
左に避けるのならば左に壁を作る。
体力までもが底をつき始める。
息を荒くし、疲れでぼやけ始めた目ででぃを映す。
(#゚;;-゚)「そろそろ死ぬね」
( ;^ω^)「かも、しれないお」
これが現実だ。
奇跡なんて起こりはしない。殺らなければ殺られる。
嫌なものが見えてくる。
39 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:14:22.15 ID:OyaHFYQv0
( ^ω^)「なら、言っておきたいことがあるお」
(#゚;;-゚)「聞きたいことはない」
ブーンの言葉を聞こうともしない。
剣が振り下ろされる。
( ^ω^)「姉ちゃん」
右手に剣がわずかに食い込む。
血が流れるが、それ以上は食い込まない。
(#゚;;-゚)「離して」
( ^ω^)「ヤダお」
ボロボロになっているでぃの腕をしっかりと掴む。
剣は抜くことも刺すこともできない。
こうして近い距離で向かい合い、ブーンは姉の身長を抜いたのはいつだっただろうかと考える。
幼いころは強くて、大きな姉だった。
身長を抜いてもそれは変わらなかったはずだ。
( ^ω^)「小さいお」
(#゚;;-゚)「うるさい」
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 19:15:08.24 ID:/z6nPHK30
読むのに夢中になって支援忘れてた
支援
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 19:16:41.93 ID:0N1eYVIS0
切ない
支援
42 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:16:52.87 ID:OyaHFYQv0
目の前にいる姉の何と小さいことか。
抱き締めれば粉々になってしまうのではないか。
( ^ω^)「姉ちゃん」
(#゚;;-゚)「呼ぶなと……」
( ^ω^)「姉ちゃん」
言いたいことがあった。
( ^ω^)「ここにきて、この政策のことを知って、ボクはとてもショックだったお。
騙されたとか、死んでしまうとか、もちろんそれも怖かったけど、
それよりももっと怖いことがあったんだお」
温和な表情が悲しみに彩られていく。
殺しあいを強要されたときを思う。
( ^ω^)「もう、姉ちゃんには二度と会えないんだって、思ったお」
でぃの腕を握る力が強くなる。
(#゚;;-゚)「痛い」
( ^ω^)「いつか、いつか言おうって。
結婚式のスピーチとかで言おうって」
( ;ω;)「先延ばしに、しちゃって……」
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 19:17:20.95 ID:f+EzH7HsO
支援
44 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:18:38.86 ID:OyaHFYQv0
涙が零れ落ちる。
姉は将来を約束した恋人とここへ来た。
彼女が生きているということは、つまり彼は。
( ;ω;)「きっと生きて帰っても辛いお。
でも、ボクは姉ちゃんが生きててくれて、本当に、嬉しかったお」
(#゚;;-゚)「泣くな。離せ」
( ;ω;)「ボクが死ぬにしても、姉ちゃんが死ぬにしても、
一つだけ言っておきたいことがあるんだお」
涙をこぼしながらも口元をあげ、笑みを作る。
( ;ω;)「あの時はありがとう。ごめんね」
(#゚;;-゚)「あの時? 知らない」
( ;ω;)「覚えてないかお。ボクが小さいころ、魔法を使い始めたばかりのときだお」
静かにブーンは言葉を紡いでいく。
今度は切ないだと……?
支援
47 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:20:38.77 ID:OyaHFYQv0
( ;ω;)「ボクはよくみんなから虐められてたお」
他人の魔法を吸収し、放出するブーンは他人の力を使う卑怯者と言われていた。
よく虐められては涙を流し、剣士としての鍛錬をしていた姉に泣きついた。
( ;ω;)「そのたびに姉ちゃんはボクのことを叱ったお」
男のくせに弱虫だと言われた。
その言葉にブーンはまた泣き、姉はまた怒る。
繰りかえされる毎日の中で、ブーンは悲しみでいっぱいになった。
( ;ω;)「でも、だんだんボクのことを悪く言う人は減っていったんだお」
ブーンはその理由を知らなかった。
知らないフリをしていた。
( ;ω;)「本当は、何で減っていったか知ってるんだお」
(#゚;;-゚)「……何、を」
( ;ω;)「姉ちゃんが影でボクを助けてくれてたって」
でぃの腕からわずかに力が抜けた。
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 19:21:43.79 ID:/z6nPHK30
支援
49 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:22:31.77 ID:OyaHFYQv0
( ;ω;)「時々、怪我をして帰ってくるから変だとは思ってたんだお」
いつも彼女は特訓の成果だと笑っていたが、それにしては怪我のしかたがおかしかった。
幼いながらにも疑問に思ったブーンは、ある日影から姉を見ていた。
「うちの弟を虐めてるのは誰よ!」
そんな風に叫んでいるのを聞いた。
強い姉ではあったが、所詮は女の子だ。複数の男子に囲まれれば無傷ではいられない。
彼らが泣き帰るころには姉の体は傷だらけだった。
( ;ω;)「みんなのお母さんやお父さんが怒ってうちに来たとき、姉ちゃんはボクを追い払ったお。
全部、全部姉ちゃんの優しさだったお」
ありがとう、と素直に言えなかったのは、幼い男の子のプライドだった。
姉ちゃんも隠したがっていると自分に言い分けもした。
そうして大きくなってきた。いつか言ってやろうと心の端に感情を寄せていた。
(#゚;;-゚)「……黙れ」
( ;ω;)「ありがとう。本当に、姉ちゃん」
(# ;;- )「うるさい!」
でぃが剣を離し、ブーンを突き飛ばす。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 19:22:41.66 ID:BSnxZ7T30
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51 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:24:46.84 ID:OyaHFYQv0
(#゚;;-゚)「……お前は何を言っている?」
( ^ω^)「姉ちゃん」
(#゚;;-゚)「私の何を知っている?」
( ^ω^)「姉ちゃんは優しいままだお」
(#゚;;-゚)「死の恐怖と孤独の冷たさ」
( ^ω^)「だって、さっきも」
(#゚;;-゚)「目の前でただの肉になっていく人々」
( ^ω^)「ボクに魔法を使わなかったお」
(#゚;;-゚)
魔法は片手が使えれば放つことができる。
ブーンに腕を抑えられているとは言っても、片方だけだ。風を使い、ブーンを突き放すこともできた。
なのにでぃはブーンの話を聞いてくれた。
懺悔と感謝の吐露を聞いてくれた。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 19:25:12.46 ID:ClN/D2PPO
牧、ありがとう( ´_ゝ`)
53 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:26:35.59 ID:OyaHFYQv0
( ^ω^)「大好きだお。しぃ姉ちゃん」
一歩前へ進み、でぃへ近づく。
でぃは一歩退いた。
何か恐ろしいものでも見ているかのようにゆっくりと首を左右に振る。
(#゚;;-゚)「……こないで」
( ^ω^)「姉ちゃん」
(#゚;;-゚)「どうしてくるの」
その手にもう剣はない。
彼女に先ほどまでの威圧感はない。
目の前にいるのは弱々しい女の子だ。
( ^ω^)「ボクも覚悟するお」
死ぬ覚悟か、殺す覚悟か。
(#゚;;-゚)
小さな口が開かれる。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 19:28:20.89 ID:/z6nPHK30
支援
55 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:29:04.09 ID:OyaHFYQv0
(#゚;;-゚)「ブーン」
優しい声だ。
昔と少しも変わらない声だった。
( ^ω^)「ね、姉ちゃん!」
(#゚;;-゚)「その名前は覚えておく」
声とは裏腹に冷たい目がブーンを射抜く。
一瞬ひるみ、退いたところにでぃが駆ける。
固く握られた拳を鳩尾に叩きこむ。
( ゚ω゚)そ
腹を抑え、地面に膝をつく。
その横ででぃは自分の剣を手にしていた。
(#゚;;-゚)「殺してあげる」
剣が振られる。
ブーンは転がるようにそれを避ける。
追いかけるようにでぃが剣を上から下へと刺していく。
( ^ω^)「ごほっ……あ、危ないお」
(#゚;;-゚)「死んでほしいから」
56 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:31:55.66 ID:OyaHFYQv0
( ^ω^)「……姉ちゃん」
地面に手をついたままでぃを見上げる。
(#゚;;-゚)「さようなら」
( ^ω^)「……さようなら」
別れを告げる。
でぃは剣を振り下ろし、ブーンは呪文を唱えた。
剣がブーンを貫こうとする。
魔力を受けた土が鋭く尖りでぃを狙う。
二つが交差した。
支援
58 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:34:05.85 ID:OyaHFYQv0
( ω )
(# ;;- )
ドサリ、と倒れる音がした。
赤い血が流れていく。
後に残ったのは一瞬の静寂と、小さな嗚咽だった。
頬を伝う涙が下へ落ち、シミを作っていく。
一つ、また一つとシミが増えていく。
同時に嗚咽が大きくなっていった。
愛していた兄弟を手にかけてしまった。
許されることではない。どのように罪を償えばいいのかもわからない。
一人頭を抱えるしかできない。
進む時間の中、孤独と戦っていると、嗚咽が響く部屋の中にあるもう一つの音に気づいた。
それは呼吸だった。
生きようとする行為だった。
慌てて倒れている体に耳を寄せる。
確かに音はそこから出ていた。
よく見れば胸も上下に動いている。
59 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:37:11.73 ID:OyaHFYQv0
(#゚;;-゚)「ブーン、あなたは私が守るから」
涙を拭い、しぃは弟の腕を肩に回し立ち上がらせる。
幸い、この場所についての記憶はよく残っている。
階段を登れば城の庭に通じている。
外にさえ出ることができれば医者に会うこともできるだろう。
ブーンには剣が未だ刺さっている。
抜いてやりたい気持ちはあるが、それによりさらなる出血をもたらすのではとでぃは触れられない。
傷口に気をつかいながら一歩ずつ慎重に歩みを進める。
(#゚;;-゚)「本当、あんたも大きくなって……」
(#゚;;-゚)「あんたに泣かされる日がくるなんて、思ってもみなかったわよ」
ありがとうもごめんなさいもしぃの心に深く染み込んだ。
呪いの檻の中でしぃは泣いていた。早く殺してくれと叫んでいた。
(#゚;;-゚)「こっちこそありがとう」
ブーンはでぃの胸に鋭い土が刺さる直前、魔法を解除したのだ。
覚悟が足りなかったのか、元々殺されるつもりだったのかは計りかねる。
(#゚;;-゚)「早く家に帰りたいね」
第九話 完
60 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 19:38:10.78 ID:OyaHFYQv0
以上で九話終了です。
ちょっとお風呂に入ってきてから十話を投下したいと思います。
乙ー。
いってらー
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 19:43:29.91 ID:/z6nPHK30
おうふ・・・ブーンが・・・
待ってるぜ保
おつです
支援!
65 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:13:45.18 ID:OyaHFYQv0
上がりました。
今から十話投下していきます。
66 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:15:11.28 ID:OyaHFYQv0
ブーンとでぃの会話を聞きながら、ドクオは扉の向こうへと走る。
扉の向こうは暗く細い一本道だった。
後ろの戦いを気にしつつも、ドクオはその道を走った。
('A`)「あ……」
道は二手に別れていた。
片方は階段に。もう片方は閉ざされた扉に繋がっている。
おそらく階段は外に繋がっているのだろう。
ここがどこかはわからないが、外にさえ出ることができれば助けを呼ぶことも可能だろう。
だが、どうしても扉が気になった。
閉ざされた扉の向こう側から異様な空気が流れてくる。
('A`)「あの人、本当にブーンの姉さんなのかな」
小さく呟いた。
あの目は何かを確信していた。ドクオを逃がすための嘘でもないだろうし、間違いでもないだろう。
だとすれば、彼女の様子は明らかにおかしい。
王と別れたときに現れた兵士と同じ目をしていた。
('A`)「…………」
髪の長い女からは異様な雰囲気がかもし出されていた。
これは直感だが、彼女は呪術師だ。
おかえり!
68 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:17:36.16 ID:OyaHFYQv0
('A`)「行くか」
ドクオはドアノブに手をかける。
思った以上に重たい扉が音をたてて開く。
川д川「あら」
わりと広い部屋で、大きな祭壇を見ていた女がゆっくりと振り向く。
長い髪が揺れ、不気味さがより増す。
川д川「でぃから逃げれたの? それにしたって、目の前に階段があったでしょうに」
焦った様子もなく、ただ口元を歪めている。
赤い唇に背筋が粟立つ。
('A`)「あんたの後ろにあるその祭壇」
川д川「ああ、美しいでしょ?」
確かにその祭壇は美しかった。
黒を基調とし、金やオパールが組み込まれており、売り払えば一生楽に暮らせるだろう。
そして、美しさの中には禍々しさがあった。
('A`)「呪いの中心だな」
川д川「よくわかったわね」
('A`)「呪術にはわりと詳しくてね」
69 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:19:52.07 ID:OyaHFYQv0
女は祭壇に乗せられている壺を指差す。
川д川 「なら、この呪いが何かわかる?」
('A`)「『壷毒の呪い』と『孤独の呪い』か」
川д川「正解」
('A`)「誰からの依頼か知らないけど、そんな危険な術をよく使えるな」
川д川「……依頼?」
('A`)「偽の王に依頼されたんだろ? それとも、あんたも騙されたのか?」
川ー川「変なことを言うのね」
女は優しげな声で言う。
あまりにも優しい声に、ドクオは思わず胸が鳴った。
川ー川「これは私の意思。あの人とは互いに協力しあってるだけよ」
思わず息を呑んだ。
つばを飲み込み、震える口で言葉を紡ぐ。
('A`)「本気、か?」
川ー川
静かに頷く。
70 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:21:21.89 ID:OyaHFYQv0
('A`)「それがどういうことを招くかわかってるのか」
川д川「ええ。もちろん」
ドクオも呪術師の家系に生まれた人間だ。
家系のことについては多少の知識がある。
('A`)「私情での呪いを認めるほどこの国は優しくない」
川д川「でも呪術師を見捨てるほど非情でもないわ」
長い年月を呪術と共に生きてきた家系の者達に、今さらそれらをやめろとは言えない。
この国は呪術師に対して、一つの法を与えた。
川д川「でも面倒よね。私達が私情で呪いを使わないように、依頼者のサイン、印鑑、血印」
('A`)「だがそれが呪術師を守る」
川д川「罪に問われるのは呪術師でなく、依頼者」
('A`)「お前は自らその守りを捨てたのか」
川д川「私自身がやらなければ意味がないの」
二人はただ言葉を交わす。
戦う素振りも見せず、冷たい空気を部屋の中に充満させていく。
川д川「これは復讐だもの」
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 20:22:23.33 ID:6THUwIr/O
????
72 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:23:27.09 ID:OyaHFYQv0
川ー川「それに何か気づかない?」
女が笑う。
思い当たることがなくて、ドクオは口を閉ざす。
頭の中で女が指しているであろうことを考える。
(;'A`)「まてよ……」
川ー川「気づいた?」
楽しそうな声だ。
(;'A`)「一年、近く?」
この政策は一年近く前から始まっている。
つまり、女は一年前から呪いをかけ続けているのだ。
(;'A`)「そんな馬鹿な!」
川д川「あら、どうして?」
(;'A`)「呪術師が私情で誰かを呪うか何て、一々調査するわけにもいかない」
だから、とドクオは息をゆっくりと吐き出す。
(;'A`)「国の下で千里家が全ての呪術師を監視している……」
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 20:25:01.19 ID:KwbeqyJZ0
しえん
74 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:25:20.92 ID:OyaHFYQv0
女は笑う。
赤い唇が開かれ、真っ赤な舌が見えた。
川д川「あの目だけが私は怖かった。
私情で人を呪うことは許されていない。もしも、その禁を犯せば」
病的に白い手が壺を撫でる。
冷たい金属が暗い部屋の中で不気味に光る。
川д川「呪いを返され、体が腐る呪いまでかけられる。
死刑の方が軽いとまで思えるわ」
(;'A`)「何で」
川д川「気になるの?」
(;'A`)「何で、あの家が、お前を見逃してるんだよ!」
思わず叫ぶような声を上げた。
あの家がどれほど厳格で、冷たく、己の仕事と家系に誇りを持っているかドクオはよく知っている。
知りたくないほど知っているのだ。そのちっぽけな誇りのためにドクオは捨てられたのだ。
劣等性というレッテルを貼られた。
川д川「誰にだって、どこにだって弱点はあるのよ」
女は祭壇の横にかけられていた鏡を手に取る。
それをドクオの方へ向ける。
鏡は本来の役割を放棄していた。
75 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:27:21.66 ID:OyaHFYQv0
川д川「見て」
(;'A`)「あ……」
そこに映っていたのは女の子の姿だった。
ただ、その女の子は体の半分が石になっている。
川д川「この子は千里家の跡継ぎ」
ドクオは知っている。
自分の妹だ。長い間顔も見ていないが、どこか昔の面影を残したその姿を見間違うはずがない。
川д川「あの家、いつもある程度呪いに態勢がつくまで跡継ぎは家の中に閉じ込めているの。
でも馬鹿なあの子は毎日のように外に出ていた」
(;'A`)「嘘だろ」
川д川「どうして嘘だと思うの?」
答えることはできなかった。
川д川「だって、彼女のお兄さんは家を追い出されたのよ。
妹として、お兄さんのことは気になるでしょ」
('A`)「え」
鏡に映っている女の子の兄は自分だ。
ドクオは今度こそ言葉を失う。
76 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:29:25.77 ID:OyaHFYQv0
川д川「この鏡であの家の弱味を探していたら、偶然あの子を見つけたの。
本当にいい鴨だったわ。あの子をちょっと呪って、千里家を脅すだけでいいんですもの」
( A )「お前が石化の呪いをかけたのか」
川д川「そうよ。私達に逆らえば、彼女を石にする。
あの目は一子相伝らしいじゃない。千里家は頼むから彼女を殺さないでくれって言ってきたわ」
( A )「そうか」
呪文が唱えられる。氷のつぶてが彼女へ向かう。
川д川「祭壇が傷つくじゃない」
女の手から数枚の紙が飛び出す。
呪術師お得意の式神というものだ。
式神はドクオの生み出した氷を受け、地面に落ちる。
('A`)「お前はオレが倒す」
川д川「可哀想な女の子に同情でもした?」
('A`)「ああ、したね。
オレみたいな兄貴を持ったがために、のーはあんな目にあうんだ」
川д川「……オレみたいな?」
ドクオは再び呪文を唱える。
土砂が女に向かって降り注ぐ。
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 20:30:08.05 ID:/z6nPHK30
今度はドクオの過去絡みか
支援しえん
支援
79 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:31:20.49 ID:OyaHFYQv0
川д川「もー。服が汚れちゃう」
紙の束が女を守る。
('A`)「呪いの返しかたを教えてやろうか」
暗い瞳が女を映している。
ゆっくりとドクオが口を動かす。
川д川「あら? 不発かしら」
何も起こらないことに女が笑う。
川д川「さすが千里家の木偶の坊ね」
女は何かに気づいたような声を上げ、背筋を伸ばして頭を下げる。
恭しいその態度はまるで使用人のようだ。
川д川「私、呪音家の貞子と申します。
千里家の一派でございました。以後……はありませんが、お見知りおきを」
再び上げられた顔はやはり大部分が髪で隠れている。
('A`)「……元千里家、ドクオだ。あんたと今日以外会うつもりはない」
部屋の端により、貞子と距離を取る。
先ほどの不発は魔力が不足していたのか、少し休憩することにしたらしい。
川д川「私が休憩なんて許すはずないじゃない」
80 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:33:13.40 ID:OyaHFYQv0
('A`)「だがあんたは魔術師じゃない」
魔術師と呪術師は似ている。
いや、根本的な部分では同じといってもいい。
だが二つを同時に使うことはできない。
魔法を使うか、呪術を使うか。子供は自分でその道を選ぶ。
とは言っても、才能に全てを委ねる魔法と違い、呪術は学ぶことで大きな力を発するものだ。
才能のある魔術師は呪術師にはならない。
('A`)「呪術は発動に時間がかかる。実戦向きじゃないよ」
川д川「そうね」
式神を使うとしても、所詮彼らは紙だ。
氷や土でダメージを与えるだけで元の姿に戻る。
圧倒的にドクオが有利だった。
川д川「でも大丈夫よ」
貞子は壺の蓋を少しだけあける。
('A`)「っ!」
目には見えぬ何かがドクオを圧迫する。
死んだ者達の悲鳴が聞こえたような気がした。
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 20:33:15.44 ID:k4giDRmZO
sien
82 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:34:43.17 ID:OyaHFYQv0
生き物を一つのところに閉じ込め、殺しあいをさせる。
そこに生まれる憎しみや悲しみが呪いの素となる。
今まで集められたそれらが、あの小さな壺の中に溜まっているのだろう。
川д川「ちょっとだけこれを使わせてもらうから」
蓋が閉じられる。
圧迫感は多少マシにはなったものの、貞子からは未だにあの圧迫感が感じられる。
('A`)「術式省略に使っていいのかよ」
強大な力をもって、小さな呪いを発動させやすくしているのだ。
('A`)「それで復讐とやらをするんじゃなかったのか?」
川д川「心配してくれるなんて優しいのね。でも大丈夫よ」
これくらい大したことない量だからと言う。
今感じている圧迫感がほんの少しの呪いだ。あの壺にこめられている呪いはどれほどのものなのだろうか。
('A`)「とんでもない憎しみだこと」
川д川「当然よ」
彼女のポケットから一体のわら人形が取り出される。
83 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:36:28.82 ID:OyaHFYQv0
川д川「古典的だけど、威力は確かでしょ」
('A`)「まったくだ」
貞子の手がわら人形を傷つける前に、ドクオが彼女へ向かって氷のつぶてを放つ。
たった一度の呪文で息が切れる。
だが呆然と立っている暇はない。
式神をつかい、つぶてを避けた貞子のもとへ向かって全速力で駆け抜ける。
女に触れたことなど、生まれてこのかた母親と妹にくらいしかない。
('A`)「色気のない始めてだよなあ!」
彼女がわら人形を刺す前に、ドクオがその細い腰に飛びかかる。
せっかくの柔らかく細い腰にも何の興奮もわかない。
川д川「セクハラで訴えましょうか!」
地面に押し倒された格好で、貞子は叫ぶ。
その手にはしっかりとわら人形が掴まれている。
('A`)「させるかよ」
川д川「大人しく呪われなさい」
頭の上でわら人形に釘を刺そうとする。
ドクオはその腕を掴み、さらに地面へと押し付ける。
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 20:37:18.95 ID:/z6nPHK30
支援
85 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:38:29.09 ID:OyaHFYQv0
('A`)「そういやあ、呪いの返し方。まだ教えてなかったな」
川д川「必要ないわ」
('A`)「そう言うなよ」
貞子の腕をさらに強く握る。
川д川「痛っ」
仮にも相手は女だ。
ひ弱なドクオとはいえ、貞子の力を緩めることはできる。
わら人形を掴んでいた手が緩み、その隙に人形を奪い取る。
('A`)「一つ。呪いを切る道具がいる」
川д川「……それを使おうっていうの?」
('A`)「その通り。
呪力があれば何でもいいからな」
貞子から離れ、わら人形をしっかりと握る。
この戦いに勝つためには、この人形が全てなのだ。
支援!
87 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:40:29.52 ID:OyaHFYQv0
('A`)「二つ。呪いの形を目に映し、それを断ち切る」
川д川「呪いを返すときに一番大事なのはそこ」
ニコリと笑う。
優しくすら見えた。
川ー川「でも、それが一番難しく、準備に時間がかかるのよ」
もう一体わら人形を取り出す。
次こそは仕留めるつもりだ。
対するドクオも笑った。
彼にはとある能力がある。今までの人生で役にたったことなどない忌むべき能力だ。
今、この瞬間だけはその能力に感謝した。
( A )
静かに目を閉じ、深呼吸をする。
今から見る世界はどれほどおぞましいものなのだろうか。
自分の精神は持つのだろうか。
疑問は山のようにある。それでも見ずにはいられなかった。
長い時間会っていない妹のためにも。
88 :
今思い出したけど、ちょっとグロはいるかも ◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:42:16.05 ID:OyaHFYQv0
('A`)
ゆっくりと目を開く。
川д川「さあ、これで終わりよ」
わら人形に釘を刺そうと手を振り上げる。
('A`)「気持ち悪い」
それだけ呟くと、ドクオは手を振り上げ目を閉じる。
上げられた手を勢いよく振り下ろす。その手の中にはわら人形が握られている。
川д川「……あ、ああ」
小さな声を上げ、その場に膝をつく。
手が震え、足には力が入らない。
呆然とした瞳でドクオの姿を映す。
( A )
威圧感など欠片もなく、ドクオはただそこに立っていた。
先ほど開かれた瞳は再び閉じられている。
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 20:42:55.40 ID:I8m5U1BRO
支援
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 20:43:33.49 ID:k4giDRmZO
ふむ
91 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:44:06.89 ID:OyaHFYQv0
川д川「どういう……こと」
('A`)「まだ終わらない」
再度目を開ける。
そして先ほどと同じようにわら人形を振り下ろす。
何かが切れる音が聞こえたような気がした。
川д川「――――」
甲高い悲鳴が部屋に響き、貞子の体は軽い痙攣を起こす。もはや立つことはできないだろう。
( A )「オレだって千里家だ」
目蓋の向こう側にある眼球が貞子を睨んでいる。
恐ろしい。貞子は思わず視線をそらす。
( A )「感情が色で見える。呪いの線も色で見える」
川д川「で、たら、めを」
('A`)「でたらめだと思うか?」
歯を食いしばり、目を開ける。
92 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:46:10.51 ID:OyaHFYQv0
映る世界はひどく醜い。
憎しみや孤独や悲しみ。そんなものが混ざり合い、黒い霧がかかっている。
目に映すたび、それらがドクオの心までも侵食してきそうだ。
そんな世界の中で、嬉々と動く色がある。
黒ではなく、赤でもない。ドクオはあの色をなんと呼ぶのかを知らない。
もしもその色に名をつけることができるのならば『呪い色』とでもいうのだろうか。
('A`)「ほら、また一つ。お前に呪いが返る」
切り裂かれた色は貞子の中へと返る。
行き場を失くした力が彼女の体を蝕む。
('A`)「お前が孤独の呪いで人を操るならば、その体は自由が効かなくなるだろう」
('A`)「お前が命を奪う呪いを扱うのならば、その心臓を徐々に蝕んでいくだろう」
('A`)「お前が壷毒の呪いを溜めるのならば、オレはお前を殺してそれを浄化する」
そうやって苦しみの中で命を奪うだろう。
ブーンがいたのならば、ドクオを止めただろう。
こんな酷い光景がこの世にあるだろうか。
か弱い女を一方的に苦しめるだけ。
支援
94 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:48:16.47 ID:OyaHFYQv0
川д川「わ、たしは……」
ドクオの中に罪悪感がないわけではない。
誰かをこれから殺すのだ。
('A`)「でも、呪術師の家系に生まれた宿命とでも思うよ」
どうせ彼女は罰を受ける運命だ。
妹のために、今まで呪いの糧になってきた者達のために、今ここでそれを下す。
事実を知ってしまった呪術師の責任だ。
川д川「負けない!」
ろくに動かない手が式神を放つ。
先ほどまでの弱いものではない。
( ФωФ)
強い眼光がドクオを睨む。
(;'A`)「どこにそんな力が」
一度呪いを見るのをやめる。
あの深い霧の中ではろくに動くこともできない。
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 20:49:39.71 ID:/z6nPHK30
むう・・・
支援す
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 20:50:15.99 ID:k4giDRmZO
ドクオつぇぇ
97 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:50:25.96 ID:OyaHFYQv0
川д川「この力が、負けるわけない……どんな、人にだって」
唇から血が出ていた。
川д川「そいつを殺して!」
貞子の叫び声に式神が動く。
( ФωФ)
強く握られた拳がドクオに向かって振り下ろされる。
それをどうにか避けるが、背後にあった壁が拳によってわずかに砕かれた。
(;'A`)「おいおい、シャレにならねぇって」
川д川「負けない、わた、しは!」
必死に叫んではいるが、呪いが体の中で暴れているのだろう。
死を招くほどのものではないが、着実に彼女の体を破壊している。
苦しみに耐えてまで式神を放つ彼女がドクオにはわからない。
もはや動くことすらできないはずなのに。
川д川「この力は……!」
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 20:50:59.38 ID:3DfWEWK9O
ひそかに楽しみにしていた支援
99 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:52:22.33 ID:OyaHFYQv0
川#゚д川「ヒッキーの力は誰にも負けない!」
( ФωФ)
怒声にも似た叫びを受け、式神の目が光を持つ。
先ほどよりも早く、強い拳を振りかざす。
('A`)「氷よ壁となれ!」
ドクオを守るようにそびえ立った氷の壁。
式神の拳はそれを容易く打ち砕いた。
(;'A`)「けっこう薄かったけど、それでもそんな簡単に砕けるものじゃねーぞ!」
目の前にいる式神は脅威だ。
けれど先ほど貞子が叫んだ言葉も気になった。
ヒッキーとは誰なのだろうか。
彼の力とはどういう意味なのだろうか。
真っ先に思い出したのは兄者と弟者だった。
彼らは双子故にその力を片割れに送ることができた。
貞子にも双子がいたのだろうか。
熱い展開!
おうふ
102 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:54:36.95 ID:OyaHFYQv0
('A`)「土よ彼者を押しつぶせ!」
ヒッキーとやらも気にはなるが、今はそれどころではない。
土が式神を上から押しつぶす。
( ФωФ)
一息つく暇もなく、式神は土の中から姿を現した。
生きているわけではない彼らは土の中でも窒息することはない。
川д川「まけ、ない。あいつ、らに復讐するまで」
('A`)「何だよ! そこまでして……手から血が出るほど強く握って、意識保って。
それでも復讐したいのかよ!」
川#゚д川「あんたにはわからないでしょうね!」
式神がドクオの腹に拳を叩きこもうとする。
('A`)「つ、土よ壁となれ!」
小さな壁だった。だがそれはドクオの腹に与えられる衝撃をわずかに和らげた。
( A )「ごほっ……うっ」
川#゚д川「大切で、優秀で、愛おしい弟が殺された気持ちなんて!」
103 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:56:46.63 ID:OyaHFYQv0
怒りが溢れている。
( A )「殺され……た?」
川#゚д川「そう、よ。あの子は、とても優秀で、いい子だったのに」
貞子の怒りと同調するかのように、式神の威圧感が増す。
恐怖を植えつけようとしているのか、式神はゆっくりと足を進める。
川#゚д川「くだらない呪術師の誇りに殺された!」
許さないと何度も呟く。
じりじりと近づいてくる式神をドクオは目に映す。
魔力はあとわずかしかない。
たいした魔法も使えないだろう。
手にあるのは呪いを断ち切るためのわら人形。
呪いを断つことはできても、式神を断つことはできない。
( A )
必死に頭の中で考える。
この状況を打開するための何かを得ようとする。
川#゚д川「可哀想なヒッキー。馬鹿なお父様!」
sien
支援っ
106 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 20:58:45.97 ID:OyaHFYQv0
貞子が叫ぶたびに強くなる威圧感。
全てをあの式神に注いでいる証拠だろう。
それでも負けられない。幼い頃、自分を見てニコニコしていたあの子が苦しんでいるのだ。
彼女が弟を愛したように、ドクオも妹を愛している。
('A`)「……よし」
地面に手をつける。
('A`)「土よ彼者の足を止めよ」
土が動き、式神の足を奪う。
大量の土を動かすわけではないので、その分の魔力を使い式神の動きを封じる。
((( ФωФ)))
動こうとしているが、そう簡単に動かれてはドクオも困る。
目の感覚を変え、呪いを見る。形容しがたい色が蠢いていた。
そこへ向かって再びわら人形を振り下ろす。
川д川「ああっ!」
貞子の体が痙攣する。
ドクオの目はそれを映さない。
黒い世界に吐き気がしたが、それでもドクオは一心不乱にわら人形を振り下ろす。
107 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 21:00:16.20 ID:OyaHFYQv0
あの式神が再び動く前に、貞子を倒す。
呪力を使えなくなる程度までには呪いを返す。
胃の中から何かが這い上がってきたが、それを飲み込む。
生きたい。死にたくない。そのためにできることはこれしかない。
('A`)「もう一本」
呪いがまた一つ貞子に返る。
気持ちの悪い世界を見続けるのは辛い。
それでも見続ける。
多くの呪いを切り、見える呪いはわずかになった。
('A`)「……」
霧の世界から抜け、貞子を見る。
式神はすでに紙に戻っていた。
川д川
貞子は地面に突っ伏したまま少しも動かない。
呪い返しの影響で死ぬことは多いが、じわじわと体を蝕むのでまだ死んではいないだろう。
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:01:24.66 ID:k4giDRmZO
おわったか
109 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 21:02:33.94 ID:OyaHFYQv0
川д川「な……ん、で」
口元からは赤い血が流れていた。
川д川「あの、子……ヒッキーの、ちか、ら」
('A`)「弟さんだっけか」
川д川「に、くい」
呪いの言葉が吐かれる。
ドロドロとした汚い色だろう。
川д川「あの、子を殺した人が、げん、いんを作った人が、世界が」
川д川「憎い」
痛みを訴える体を動かす。
手を伸ばし、這いずるように前へ進む。
川д川「ここで、負ける、なら……。死んで、しまうなら……」
顔が上げられる。
ドクオの顔を見上げた顔は苦悶の表情だった。
川;д川「私は何のためにあの子を食べたのよ!」
惨いな
えっ?
112 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 21:04:23.39 ID:OyaHFYQv0
食べた。
その言葉の意味をよく考える。
そのままの意味だとするならば、それこそ異常だ。
川;д川「肉の、髪の一筋までええ……」
ドクオはゆっくりと首を振る。
信じられなかった。兄弟の肉を食べるなど。理由がわからない。
川;д川「ね、え……わたし、なん、で」
力ない手でドクオの足を掴む。
弱々しいその姿は神に許しを乞うているようにも見えた。
('A`)「……オレにはわかんねぇ」
彼女にどのような悲しみが降り注がれたのかはわからない。
だが、人を呪う気持ちも兄弟を食べる気持ちもわからない。
わかるのはただ一つ、これで自分の妹が救われるということだけだ。
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:04:47.13 ID:cm39ZFuIO
うっわ
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:05:37.12 ID:BSnxZ7T30
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:/ !/ ト、 ヽ、ソ!「L___\|\> ( ) .| | |__
ハ ト、`'´ ,l | く__,/ ||| |〉 (^ヽ、ヽ, | | /
:::ゝ、 ヽ  ̄7 / 「二二二二二i ヽ, |. | | /
::::/::::::::>、___二_レ' i緑なたぬき/ i .| └┴┴┬───
::::::::::::〈 / ヽ、二二二/ ノイ.ソ ,.p_. r|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄(:::::::) ̄「 ̄ ̄ ̄ ̄
寝食忘れる面白さ!
ご飯のおともに『VIP列島』
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115 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 21:06:28.54 ID:OyaHFYQv0
ここにいるのが自分だけでよかった。
ドクオは心の底から思った。
今、貞子を見ている目はきっと冷たいだろう。
誰にもこんな姿を見られたくはない。
川;ー川「あなた、も……ひど、い、人、ね」
呪術師らしいと言いたかったのだろう。
人を呪うために人として大切な心をどこかに放ってきた。
('A`)「……そうかもな」
貞子の腕が力なく落ちる。
全ての呪いは彼女の死体へと帰る。
けっして安らかな表情ではなかった。
一抹の罪悪感とともに、歩きだす。
手にするのはあの壺だ。
('A`)「これはオレにはどうしようもねぇな」
実家に持っていくか、それでなくとも実力と信用のある呪術師に頼むしかない。
豪華な壺を撫でると呪力を感じた。
('A`)「……ちょっと、疲れたな」
しえ
117 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 21:08:40.57 ID:OyaHFYQv0
壺を抱きかかえたまま、ドクオはその場に座り込む。
視界の端に貞子の死体が見えたが、気にならなかった。
祭壇に背を預け、静かに目を閉じる。
あまりにも暗いものを見すぎた。
身体的にも精神的にも疲れてしまった。
(-A-)
目を閉じると闇がある。
黒い霧とは違い、穏やかな暗さだ。
何の音も聞こえない静かな部屋でドクオは静かに呼吸をする。
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:09:58.89 ID:MzuMQlz30
今北保守だ!
119 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 21:10:16.54 ID:OyaHFYQv0
(#゚;;-゚)「あ、この人は確か……」
開いていた扉から部屋の中を覗くと、一人の男が眠っていた。
呼吸はしているので生きてはいるようだ。
(#゚;;-゚)「ブーンのお友達、だよね」
(-A-)
見たところ彼は勝ったようだ。
でぃからしてみれば貞子は恐怖の対象でしかない。
呪いという対処不可能なものを使われてはひとたまりないのだ。
自分にかけられていた呪いが解けた時点で、貞子に何かあったことはわかっていた。
(#゚;;-゚)「彼が私を解放してくれたのね」
しぃは少し考える。
自分の体力的にも、ブーンを支えるので精一杯だ。
小柄とはいえ男をもう一人外へ連れて行くのは難しい。
(#゚;;-゚)「見たところ大した怪我もないし」
ここで待っててねとしぃは告げた。
第10話 完
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:10:33.33 ID:cm39ZFuIO
支援
乙。
しぃなのかでぃなのか
122 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 21:11:35.17 ID:OyaHFYQv0
以上で十話終了です。
本当は貞子の過去話とか書くつもりだったんですけど、この先の展開に何の意味もないと気づいてやめました。
123 :
◆UJEaB9eZsVvR :2010/11/14(日) 21:12:17.09 ID:OyaHFYQv0
(#゚;;-゚)は本名しぃ
貞子によって支配されるときの名がでぃとしてました。
わかりづらくてすみません。
乙です
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:12:34.49 ID:cm39ZFuIO
乙ー。貞子の過去編とかグロそうだな
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:12:52.27 ID:+wAaLS2A0
おつ
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:13:54.03 ID:/z6nPHK30
続きがきになるなあ
乙でした
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:17:29.58 ID:k4giDRmZO
魔法2つ使える時点でドクオ全然劣等じゃないじゃんと思ったけど術が弱いのか。納得
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:17:51.10 ID:zlYXsnn70
乙
最近何処でもかっこいいどっくん
過去話は本編終わった後のおまけにでも
個人的には知りたいし
おつ
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:23:03.16 ID:TIoAXdhLO
>>122 気になるから書かないなら言わないでくだしあ><
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:29:05.95 ID:5f20Pqgn0
乙
おつ
面白かった
乙!
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:38:56.98 ID:MzuMQlz30
乙でしたー!
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:54:14.61 ID:r/D7rsIWO
よむほ
忘れていたのですが、次の投下で最後になる予定です。
気力があればその時に貞子の過去話も書けたらなと思います。
139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 22:18:19.85 ID:r/D7rsIWO
読み終わった乙!
乙です。
141 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 00:16:58.53 ID:TBuRtHkHO
いまから読む
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 01:00:00.94 ID:tNYQPaWO0
乙
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:22:27.04 ID:XCxv8xaaO
よむほ
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 08:42:52.20 ID:tAmUJt5mO
よむほ
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 08:43:31.28 ID:fqyXgS1vO
よむほ
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
なにこのゴミ、なんでこんなに人気ないし駄文を平然と公共の場に晒せるんだ?
まずストーリー、よくあるラノベっぽいなにかに萌え(笑)キャラ。
まるでマネキンのような個性のないキャラ。
地の文は文体からしてレベルが低い。
はっきし言ってしまえば俺からして見れば
アマチュアの『ア』の字すらもったいないないゴミ駄作だと思うわ。
小説を語るのもおごがましいんだよ。
小説はな?らくがきとは違うんだよらくがきとは
厨房の妄想じゃないんだよ。高等で至高なんだよわかったか?
クソつまらない駄作を二度と見せんな勘違い野郎が。