憂楽帳:記事にされる側
ttp://mainichi.jp/select/opinion/yuraku/news/20101120k0000e070043000c.html その日に限って、5、6人の見ず知らずの人から握手や記念撮影を求められた。クラスター爆弾禁止条約の
第1回締約国会議の取材で訪れたラオスでのことだ。前日まではなかったことなので戸惑っていると、
私のことが掲載された地元紙を見せられた。
記事には私がブアソン・ブパワン首相に単独インタビューをしたときの様子が掲載されていた。おまけに、
首相と対面する私の写真も載っていた。
ピカピカの首相官邸に入ったときから、予感はあった。国旗の前に置かれた私と首相が座る椅子を遠巻きにして、
数人の記者が、カメラやビデオを構えていたからだ。
報道担当者に取材されるのは困ると伝えても「問題ない」と笑うだけ。居合わせた記者たちに話しかけても、
反応はなかった。
国情が違うとはいえ、記事にされる立場になったのは初めてだ。記事の内容にほとんど間違いはなかったが、
妙な感覚が残った。取材相手の気持ちにもっと敏感でいたい、とも思った。【矢野純一】
毎日新聞 2010年11月20日 12時14分