「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここは
都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたり
そんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりするスレです

「まとめwiki」 ttp://www29.atwiki.jp/legends/

まとめ(途中まで) ttp://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html

避難所は↓だよ!規制中やスレが落ちている間はこっちでゆっくりしていようね!
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13199/
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 12:49:48.61 ID:xF+SnZqu0
よくある質問



 このスレってジャンプの某読みきりと関係あるの?



始めにこのスレを立てた>>1が何を考えて、スレを立てたのか
今となっては、その真相はわからない
ただ、ここに集まった者たちは、各自思い思いに妄想をぶちまけていき、今のこのスレの形となっていった


まぁ、結果としては関係あるかどうかとか、どうでもよくね?
ぶっちゃけ、ほぼ関係ない内容だし
3ソニータイマー (代理):2010/11/11(木) 12:50:42.67 ID:xF+SnZqu0
「不幸の一日」
今日はこの作品一、不幸な青年月梨不幸の一日を紹介しよう
不幸「ふぁ…。もう朝か…」
まず彼の一日は、目を覚まし…
不幸「起きようk…ってGKBR!?」
天文学的確率で、彼の口めがけて落ちてきたGKBRを…
不幸「危なっ…!」
避けるところから始まる
不幸「とりあえず朝食だね…」
今現在家にいるのは不幸だけだ。それには深刻な理由があったり、ただ出かけているだけだったりするのだが、そういう重い話はまたの機会に
不幸「さて、パンでも焼くかな…。消費期限は…切れてるし!」
見るとパンの消費期限は切れていた
不幸「仕方ない、買いに行こう…」
そう言って着替え近くのコンビニまで向かう不幸
不幸「あー本当運が悪いな…」
不幸が歩いていると頭上を一羽の鳩が飛んでいた。その鳩が…
不幸の頭に向かって糞を落とした!
不幸「おっと!」
それを避ける不幸
4ソニータイマー (代理):2010/11/11(木) 12:51:36.19 ID:xF+SnZqu0
不幸「全く…。あの鳩僕に恨みでもあるのかな…」
そして不幸はコンビニ前の廃ビルまでたどり着く
不幸「ここいろいろ危ないから近づきたくないんだよね…。と、言ってもここ通らないとコンビニに行けないし…」
仕方なく廃ビルの横を通る不幸。すると…
…ガタガタ
ビルの上にあった鉄骨が物凄い勢いで、不幸の頭に向かって崩れ落ちてきた。当たれば確実に死ぬだろう
不幸「うわっ!?」
それをひらりと避ける不幸
不幸「今のは洒落になんないレベルだよ…。何か取り憑いてるのか…?」
そんなこんなで無事(?)にコンビニに到着する不幸。とりあえずメロンパンを買って帰ることにした
不幸「財布は…大丈夫だ。ちゃんとある。前回は落として大変だったから、今回はしっかりしまっておいたしね…」
会計を済まし、帰路につく不幸
不幸「今度こそ無事に帰れたら良いな…。…!?」
ドンッ!
不幸が何かにぶつかった
不幸「危ないな…。今度はいったいなんなんd……! …で、ですか?」
不幸はそこでやってしまった、僕って本当不運だな、と感じていた
「おい、てめぇ…。ぶつかっておいて何だとは何だ?」
「責任取れんのかよ、おい」
「絶対折れたな、こりゃ。治療費いくらだろうな?」
5ソニータイマー (代理):2010/11/11(木) 12:52:38.54 ID:xF+SnZqu0
不幸は三人グループの不良…2ch風に言うならばDQN…のリーダーらしき人にぶつかってしまったのだ
不幸「すみませんでした…。お腹が減っていたものでつい…。ごめんなさい、許してください」
一応謝ってみる不幸だったが…
「てめぇなぁ…。『ごめん』や『すみません』で済むなら警察はいらねーんだよ」
「出せるんだよな、治療費。あんな生意気な口きいたんだからな」
やはり無駄だった。そして、袋小路まで連れて行かれてしまった
不幸「…はは、本当アンラッキーだな…」
「今すぐ金払えや。それとも殴られなきゃわかんねーか?」
不良の一人が不幸の胸倉を掴み、言う
不幸「本当すみません。先程朝食を購入したばかりでして。殆どお金が残っていないのです」
「やはり殴られねーと分からないみたいだな」
そういって胸倉を掴んでいた不良が不幸に殴りかかる。が…
不幸「…」
それをいとも簡単に避けてしまった
「てめっ…! 避けんじゃねぇ!」
もう一度殴りかかるが、避けてしまう。何回やっても当たらない
「くそっ! 生意気な! おい、こいつ押さえとけ!」
「おう」
指示され、グループの中で一番がたいのいい男が不幸を羽負い締めにし、先程の胸倉男が殴りかかる!
不幸「危な…ッ!」
だが、不幸はそれすらも避けてしまう
「てめぇ、避けんじゃねえって言ってんだろ! 第一てめぇは羽負い締めにされていた! 避けられるはずが無いだろ!」
不幸「すみません…。僕、何かと不運でして。町を歩くたびにあらゆる災難が僕に降り注ぐんです。
だから、攻撃がどの方向に向かうか、どのタイミングで避ければいいか、避け方はどうか…とか、そういうのが脊髄に染み付いてるんです…」
6ソニータイマー (代理):2010/11/11(木) 12:53:50.13 ID:xF+SnZqu0
「わけわかんねぇこと言ってんじゃねぇ!」
そう言って思い切り殴りかかるが、やはり避けてしまう。さらにその拳は勢い余って羽負い締めしてた大男に当たった
「っ…ぁ…てめぇ、誰殴ってやがる…」
「し、仕方ねぇだろ! こいつが避けたんだから!」
不幸への羽負い締めは解け、大男と胸倉男が仲間割れを始める
「てめぇら落ち着け。こいつはこう言ってるが、そんなのハッタリに決まってる。さすがに俺のコイツは避けれねぇだろ」
そういった不良グループのリーダーの手からは何か不思議なエネルギーが溢れていた
不幸「いったい何をする気です?」
「こうするのさ!」
リーダーの手から謎のエネルギーが大量に発射され、不幸が砂煙に包まれる
不幸「うわぁあぁぁああああああ!!!」
「こいつが俺の契約都市伝説、『波動』だ。これだけの波動を受けて唯で済んだやつはいねえ。終わったな」
リーダーがそう言い、勝利を確信する。が、砂煙が晴れると…
不幸「ふ、フフフフフフ…」
無傷の不幸が立っていた
「「「!!?」」」
7ソニータイマー (代理):2010/11/11(木) 12:55:05.90 ID:xF+SnZqu0
「てめぇ、何で無傷なんだ! あれは見えねぇ攻撃だぞ! 避けれるはずない!」
不幸「フフフ…駄目じゃないですか…“僕の死体も確認してないのに勝利を確信した”ら…。
それは僕の『生存フラグ』であると同時に、貴方達の『負けフラグ』でもあるんですから…フフフ」
「何訳のわかんねぇことを…! まさかてめぇも!?」
「そう、そのまさかですよ。今のは僕の『一級フラグ建設士』の能力です…。ところで、さっきも言いましたが僕って最高に不幸でしてね…
世界中を探せばもしかしたら僕より不幸な人も居るかも知れませんが…。学校町では5位以内に入れるほどの不幸を自負しているんです。
だって、僕の不幸は…」
袋小路の上のベニヤ板達が倒壊し始める
「てめぇ、何言って…」
複数のベニヤ板が不幸に向かって降り注ぐ。それを不幸がひらりと避ける
「! まにあわねぇ!」
「うわっ!」
「がはっ…」
不幸の傍にいた不良たちは、複数のベニヤ板の下敷きになった
不幸「自分だけでなく、他人も…敵味方問わず。大切な人も、赤の他人も、大好きな人も、大嫌いな人も。近くにいるだけで、巻き込んでしまうんですから…」
そのままさっさと家に向かう不幸。もちろんその間も不幸が降り注ぎ、それを避け続けていった
不幸の不運はまだまだ続く。寝ていても、起きていても。立っていても、座っていても。動いていても、止まっていても…



             続く…
8彷徨うみさき ◇caHoDnkdag (代理):2010/11/11(木) 12:56:23.44 ID:xF+SnZqu0
部屋を出てからロビーに来るまで、美咲は違和感を感じていた。
今まで、1人にも出会わず気配も感じなかったのだ。
それほど長くない距離だったので、偶然と言う可能性もあっただろう。
だが、とっくに日が昇っているのにフロントに誰も居ないと言う状況は異常だろう。

「やはりこれは、都市伝説の影響なのでしょうか?」
「断言するのは早いと思うけど、多分そうだろうね」
「んで、どうすんだ? いつまでもこーしてる訳には、いかねぇだろ」
「けどさ〜。何がどーなってるのかも、分かんないしさ。動き様も無いよ〜」

リリリリリリリィ!!!!!

据え置きの電話が鳴った。

このタイミングで鳴るなんて、怪しい。どう考えても怪しすぎる。
だけれども、今は1つでも多くの情報を得る必要があるのだ。
本当に都市伝説なのか、何と言う都市伝説なのか、偶然なのか必然なのか。
そのどれもが、分からないのだから。
そう結論した美咲達は、電話を取った。
着信に「NO BODY」と表示された、その電話を。

「もしもし」
『《七人みさき》だな? もしも、違っていたのなら謝ろう』
「都市伝説の名前をピンポイントに言って来るって事は、始めから私が狙いですか。
 その通り、確かに私は《七人みさき》ですよ。それで、貴方は何者ですか?」
『なに。J-No.0等と言う大仰な立場を与えられた、しがない「組織」の一員だよ。
 もっとも、今回は単なる私用だがね』
9彷徨うみさき ◇caHoDnkdag (代理):2010/11/11(木) 12:57:06.08 ID:xF+SnZqu0
質問したとは言え、答えが返って来る可能性は、ゼロに近いと思っていた美咲の言葉が止まった。
思った以上にあっさりと喋られた上、相手はかなり大物の様だったから。

「……何か普通に喋ったけど、良かったの。こう言う場合って、答えないのが基本な気がするんだけど」
『何の基本かは知らないが、君にさとるくん≠ェ付いているのは知って居るんだ。
 ならば、隠し事はあまり意味がないだろう。違うか?』
「……………!」

契約した都市伝説だけでは無く、取り込んでいる都市伝説まで知られている。
その事に美咲は驚き、警戒を深めた。
他にも自分の情報が知られている可能性が有ると。

「そ、其処まで知ってるんなら、貴方の方もお、教えて下さいよぅ」
『ふむ、……良いだろう。言った所で特に問題はないからな。私はタダのおっさんだよ。
 そう《時空のおっさん》と言うな。……あぁそうだ、危ないぞ』
「え? ……なッ」

いきなりのJ-No.0の忠告に困惑した美咲は、何かの気配が近づいて来るのを不意に感じた。
今まで何も感じなかったというのに、その気配は突如現れ、猛スピードで向かって来る。
その気配のした方角を見た美咲の眼に映ったもの、それは自分に突撃して来る1頭のサイだった。
何時の間にと言う驚愕と、何故気付かなかったのかと言う困惑から美咲の体は硬直し、
サイがガラス張りの壁を、突き破ったガシャンという音によって再起動した。

(やば、……間に合)

けれど、その一瞬の停止が不味かった。迫り来る巨体に、美咲の理性は諦めかけ。
10彷徨うみさき ◇caHoDnkdag (代理):2010/11/11(木) 12:58:11.45 ID:xF+SnZqu0
しかし、生を望む本能の部分が、ギリギリの所で回避を間に合わせた。
半ば転げるように、華麗とは程遠い様子で美咲はサイを避けた。
美咲を掠める様に突進したサイは、壁に衝突しホテルを軽く揺らしながら気を失う。

『――驚いたか? 言い忘れていたが、仲間を連れて来させて貰った。それは、その内の1人の仕業だ』

ブツン。
美咲の手から離れ、ぶらりとコードで吊るされている受話器からJ-No.0がそう言ったのを最後に通話は切れた。
緊急回避によって乱れた息を整えながら、美咲達はその言葉の意味を考える。

「ゼェ、ハァ……」
(その内の1人と言う事は)
(少なくとも、敵は3人いるってワケか)
(それにしても、サイの都市伝説なんてあったっけ?)
(ごめん、なさい。私には、さっぱり)
(同じく)
(ともあれ、やる事は何時もと同じだよ)
(Let's 殲滅〜♪)
「結局そうなりますか」

結論がついた所で美咲は立ち上がって、転がった際に付いた埃を払い。
何処かに居るであろう敵を探す為に、ホテルの外に出る事にした。
ちょうど壁にサイの開けた穴がある事だし、そこから出ようと歩きだす。
本来の出入り口よりも、こちらから出る方が近いのだ。
11彷徨うみさき ◇caHoDnkdag (代理):2010/11/11(木) 12:59:16.40 ID:xF+SnZqu0
(っと、出た途端に襲われると面倒ですね)
「……赤マント=v

念の為、と外に出る直前で美咲は赤マント≠呼び出し先行させた。
早い話が壁である。
ついでに周囲の気配に意識を向けると、子猫や子犬ほどの小さな気配が点在しているのに気が付いた。
小さかったので、今まで気付かなかったらしい。
そんな気配が何だと思うかもしれないが、ここはJ-No.0が用意した舞台だ。
何の意味も無いなんて、ある筈がない。
それでも、一番近い気配もこの場所からは多少の距離は有る。
意を決して、赤マント≠ニ美咲は外に飛び出す。


【ずいずいずっころばし ゴマ味噌ずい 茶壺に追われて トッピンシャン】


――――それを見計らったかの様に、街中のスピーカーからその唄は流れた。



続く
12笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 13:03:17.25 ID:xF+SnZqu0
【上田明也の探偵倶楽部46〜友よ〜】

「……ガフッ。」

上田明久は戦士である。
誰よりも戦うと言うことに真摯な男だった。
強者と戦い弱者と戦い親と戦い子と戦い、
目の前に立ちふさがる物は
一切合切全部全体全般万般万端万事何もかもことごとくなべて
悉皆残らず余すところ無く漏れなく逐一すっかりそっくり洗いざらい一から十まで
戦士として打ち倒して、あるいは打ち倒されながらもここまで生きてきた。
負けることとて一度や二度ではなかった。
その度になんとか生き延びて強くなっていたのだ。
負けが彼を強くしていたと言っても過言ではない。

「息子やらの前で意地張ってたけど……。」

荒く息をする。
彼は生まれつき人より代謝速度が速い。
体内で代謝速度を上げることにより単体や無機化合物の毒以外ならほとんどの場合彼が死ぬ前に体内で分解することも可能なのだ。
更に言えば体内のエネルギー生産速度をあげたりすることで人間の限界を超えた動きさえも出来る。

「今回は流石に無理か……?」

つまらない死に方だな、と明久は笑った。
13笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 13:06:02.68 ID:xF+SnZqu0
まあ戦いに明け暮れていた人生だ。
息子の女に毒を盛られて死ぬのも道理だろう。
そうは思ったが彼にはまだこの世に未練があった。

「まだ戦いたい奴が居るんだけどなあ……。
 そうだな、まだ死ぬ訳にはいかないか。
 それじゃあ、奇跡起こして生き返るとするか!」
「ふむ、で、どんな奇跡を起こすのか詳しく聞かせてください。」

明久が毒に苛まされる身体をおして立ち上がる。
それは奇跡なのだろうか、何時の間にか彼の目の前に医者が一人立っていた。

「…………もう起きたよ。解毒剤寄越しやがれサンジェルマン。」
「解りました、どーぞこれです。」
「えっ、注射タイプ?」
「熱喉鼻にすぐ効くタイプですよ?」
「風邪薬かよ。」
「名前はサンジェルル。」
「寒いネーミングセンスだ。」

明久はそれを迷い無く打ち込んだ。
彼の呼吸が一気に落ち着く。
ぼやけていた視界がまるで目から鱗でも落ちたかのように開いていった。
14笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 13:08:37.57 ID:xF+SnZqu0
「おぉー、キリストもびっくりの奇跡だよ。」
「はっはっは、褒めてませんよそれ?」
「あっそう、それで?なんでわざわざ来たんだ。
 こんな珍妙な出来事が起きてるってことはお前の話していた聖杯を息子が手に入れたんだろ?」
 お前はそっちの用事で忙しいはずだ。」
「はっ……、笑わせないでくださいよ。友達を助けるのに理由なんて有りませんよ。」
「ふふ、全くだな、今はお前の言うことに全面的に同意してやろう。」
「でまあ用件なんですが。」
「おう、なんか助けられることがあるなら…………って お・い・こ・ら!」
「なんです?」
「理由要らないって言ったじゃん!理由無しで来たんじゃないの!?」
「理由はないけど用件はある。」
「無茶苦茶じゃねえか!」

忘れられがちだが上田明久は突っ込み属性持ちである。
しかもノリ突っ込み、誘い受け。
惚けっぱなしジャーマンスープレックスの彼の息子とは違うのだ。

「まあまあ落ち着いてください。
 どうしても教えて欲しいことがあってですね。」
「なんだよ。」
「……どうしてあの赤い部屋を見逃したんですか?」
「見てたのかよ。」
「最後の最後だけですけどね。久しぶりに貴方がぶち切れるところみました。」

それを聞いて明久はやれやれといった感じで首を振った。
15笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 13:11:52.71 ID:xF+SnZqu0
「俺ってば人を愛することは罪って言ったじゃん?」
「ええ、言いましたね。」
「それは間違いない真理だと思う訳よ。
 でもそれを裁ける程俺は偉い人間ではない。
 だから俺の息子への愛故に俺を殺そうとしたあの茜とかいう外見年齢高校生くらいのピチピチギャルを殺す気にはなれなかった。
 あとあいつ優しいんだもん、あんな優しい奴殺したら良心の呵責で毎晩うなされるわ。」
「ピチピチギャルってなんですか。
 表現が古いですよ、十年以上前ですよ。
 っていうか彼女普段から赤いドレスですからギャルっておかしいですよ。」
「あとはあれかな。
 長年実戦を積み重ねてきた俺の観察眼が彼女は息子のパートナーにふさわしいと。」
「あー、拝戸君の劣化バージョンですね?」
「俺が元祖だからね!?」
「いえいえ、努力で至れる領域なぞ才能や異常には及ばない。」
「ハイハイ解りましたよ。お前の持論はもう充分だ。」
「まったくもう……それでなんですけどね。」
「ん?」
「彼女を見逃した本当の理由を教えてください。
 貴方の如き剣鬼がその程度の理由で彼女を見逃しはしないでしょう?」

その言葉を聞いた明久は小さくため息を吐く。
その場であぐらをかいて頭を抱え込んでしまった。
16笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 13:14:50.93 ID:xF+SnZqu0
「……貴方は昔から嘘を吐くのが下手だ。
 下手な嘘つかない方が良いですよ?」
「努力してる。」
「いや勿論無料で教えろとは言いませんから。」
「解ったよ、教える。その前にお前の今回の目的を教えろ。
 前回の聖杯探求で俺たちに語った目的がメインなのは知っている。
 でも、おまけ程度の感覚でもう一つあるだろ?」
「まったく、貴方にだけは嘘を吐けませんね。」
「下手な嘘吐きに見破られる嘘なんてつくなよ。」
「嘘憑くのが下手なだけじゃないですか貴方。」
「そりゃあ、戦闘においては敵の嘘見破らないと死ぬからなあ。」
「敵を騙す為に嘘を吐く必要だって有るじゃないですか。」
「最強たるこの俺にそのような手は要らぬ。」

シニカルに笑う明久。
サンジェルマンは苦笑いである。

「その表情、本当に明也さんとそっくりですよね。」
「そりゃあお前血を分けた愛する息子だから。」

そう言った時のわずかな表情の変化をサンジェルマンは見逃さない。


17笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 13:18:04.78 ID:xF+SnZqu0
「ねえ明久さん。」
「なんだ?」
「貴方、明也さんを殺す気無かったでしょ。」
「馬鹿野郎、勝負の結果だったらたとえ息子であっても……。」
「あっても?」
「あっても……、適当に痛い目みさせて……。」
「結局私の所に連れ込んだんじゃないですか?」
「う、うるせー。父親を切った俺が言うのもあれだけどよ。
 俺の美学では子が親を手にかけるのは許すが親が子を手にかけるのは……。
 嫌いなんだ、美しくない。勝負の末、明也が俺にトドメを刺すなら俺は喜んだ。涙したかも知れない。」
「それさえ聞ければ十分ですよ。貴方の秘密は推測できました。」
「にゃろう!ずるいぞ!」

明久はサンジェルマンを持ち上げるとユサユサ揺する。

「わっ、やめてゆすらないで!貴方力すごいんですから!」
「じゃあさっさとお前の聖杯にかける願いをはきやがれ!」
「解りました!
 じつはですね、私の契約者を確保しようと思ってたんですうううううう!」

その言葉を聞いた明久はサンジェルマンを地面におろした。
サンジェルマンは目を回したらしくフラフラしてる。


18笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 13:20:55.36 ID:xF+SnZqu0

「……お前を受け止めきれる容量を持った人間ってことか?」
「ええ、地球上には居ません。
 というか組織の0クラスの都市伝説と契約できる人間なんて居る訳がない。」
「でも聖杯に願うのはお前の恋人の蘇生……。
 あ、今お前地球上には居ないと言ったよな?」
「ええ、地球上に居ないなら呼び出せばいい。
 データとして出てるんですよ、古代の人間の方が現在の人間より容量が大きい。」
「そいつの“心の器”がお前と適合すると?」
「ええ、完璧です。私と彼女の相性はもう本当に完璧。
 契約者無しで私はこれだけの力を持っていますからね。
 契約者さえ居れば私は神ならぬ身にして天上の意志に拮抗するだけの力を手に入れられますよ。」
「っていうか女だったんだ。」
「えっ、何それ失礼。私はノーマルですよ。
 ただほら、彼女居ない間に別の女性を愛するのも、ね。
 男ならノーカン!」
「いやっ、そんな親指突き立てて言われても困るから。
 それにしてもサブとメインが一つになってたか……合理的だね。」
「サムズアップ!」
「あと男ならノーカンについては勢いでごまかせると思うなよ?」

サンジェルマンはやれやれとでも言わんばかりに肩をすくめる。


19笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 13:24:18.63 ID:xF+SnZqu0
「ところで、貴方が茜さんを見逃した理由は解りましたけど……。
 私にお願いって?」
「うん、それがだなあ……。」

話を変えたサンジェルマンに明久は何も言わない。
明久としてもそっちの方が話の本筋なのだ。
彼はサンジェルマンに何かを耳打ちする。

「え……。」
「だってお前そろそろ組織抜けるんだろう?
 信用できねーよ。『組織』と不可侵条約結んでた太宰をぶっ殺した件もあるし信用できないだろ。」
「ええええええ!?
 いやそうですけど!そう言われると反論できませんけど!」
「嫌って言ったら殴るぞ、恋人の元にちょっと早く送り込んでやるぞ。」
「……解りました。そこらへんはなんとかします。」
「はっはっは、すまんなあ。」
「じゃあ用件も済みましたし、貴方を元の次元に戻しますよ?」
「応、頼むぞ友よ。」
「友ねえ……、やれやれだ。」

またもシニカルに笑う上田明久。
苦笑いのサンジェルマン。
20笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 13:26:50.41 ID:xF+SnZqu0
「ところでサンジェルマン。お前力を手に入れて何するのよ?」
「そんなの簡単……、彼女を幸せにします。この世界で、今度こそ。」
「そうか、勿論それも愛故の行動だよな?でもその為にお前も色々犠牲にしたよなあ?。」
「ええ、でも構わない。彼女を愛してるので。」
「良い答えだ。それじゃあ愛の名の下に存分に罪を犯せ。
 愛する者を守る為、存分に傷つけ、血を流せ、明日の為に戦い抜け。」
「胸にひとひらの痛みだけは忘れないで生きていきたいと思いますけどね。」
「餞別だ、貸してやる。」

一陣の熱い風が吹く。
それは雲を吹き払い、朝焼けの光を聖杯世界に届けた。
明久は茜の手によって使用を妨げられた刀をサンジェルマンに投げ渡す。
それは曇り一つ無い白塗りの鞘に収まったとてつもなく巨大な剣だった。

「俺の持つ中でも最強の剣だ、受け取れ友よ。ただし返せ。」
「ありがとうございます、……それじゃあ行きますね。」
「行ってこい。」

サンジェルマンが指を鳴らすと明久はあっという間に聖杯空間から現実に送り返されていった。
それを見届けたサンジェルマンは覚悟を決めたように残月を仰ぐ。

「さて、次は明也さんの所だ。奥の手の準備も出来たばかりですしね。
 “彼女”の復活……、それと茜さんの保護も最重要課題ですね。」

そう言うや否やサンジェルマンの姿もまた煙のようにその場から消えていった。
【上田明也の探偵倶楽部46〜友よ〜fin】
21赤い幼星 † 電脳世界の鎮魂歌  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/11(木) 13:30:26.65 ID:xF+SnZqu0
『COA』内部―――


『だ・・・だずげ・・・ぁ゙』


―――無惨に太陽が照りつける乾いた大地に


『グア・・・ァ・・・』


―――無様に伏して重なる血塗れになった戦士達の成れの果て


『ギャアアアァァァァァァ!!』


―――そして


『実に不愉快だ・・・この程度か貴様等?』


―――――――無慈悲に笑う、白髪の少女



R-No.4―――レクイエム・リッケンバッカー
22赤い幼星 † 電脳世界の鎮魂歌  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/11(木) 13:32:40.23 ID:xF+SnZqu0
(レクイエム>貴様等・・・私を捕らえて何かするつもりじゃなかったのか?

彼女は、冷たく笑いながら、
先程まで従えていた20人の仲間を5分も経たずに10人にされ、
動揺の色を隠せない、大きな剣を持ったリーダー格の剣士に問う

彼等はプレイヤーキラーの集団だった
今日もこの砂漠地帯で、いつものように弱ったPCを狙って一仕事やろうと集った所、
目の前に突然少女が現れたので、奴隷市場に売り飛ばすべく彼女を捕らえようとした―――のだが、

(剣士>な・・・ふ、ふざけんなよ・・・こんなの在り得るか!
    相手はたった1人だぞ!?特別な武器も持っちゃいねぇ!なのに何でこんな・・・!?
(レクイエム>その様子では・・・勝機がない、か

ふぅ、と溜息をついた彼女は

(レクイエム>残念だ

瞬く間に、彼の背後に回った

(剣士>い、いつの間に―――
(レクイエム>消えろ

レクイエムが剣士に向けて、構えた右手をぶつけようとした

が、
赤々と燃える炎が現れ、彼女を吹き飛ばし、間一髪で剣士を救った
魔術師と思しきローブを羽織った男が、慌てて剣士に駆け寄る

(魔術師>だ、大丈夫か!?
23赤い幼星 † 電脳世界の鎮魂歌  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/11(木) 13:34:37.99 ID:xF+SnZqu0
(剣士>あ、あぁ
(レクイエム>・・・なんだ、やればできるじゃないか

レクイエムは、焼け焦げた右腕を押さえながら、ゆっくりと立ち上がった
ぽたぽたと、血が滴り落ちては、乾いた大地に染み込んでゆく

(剣士>・・・ハッ、片腕だけじゃもう何もできねぇだろ!
    殺られた仲間の恨み、晴らさせてもらうぞ!

剣士は、身の丈程の剣を軽々と振り上げ、レクイエムに切りかかった

(剣士>貰ったぁ!!
(レクイエム>――――――何を、だ?

ピタッ、と白い刃がその動きを止める

(剣士>ぐ・・・ぬぬ・・・!
(レクイエム>どうした? 晴らすのだろう?仲間の恨みを
(剣士>何で・・・何で呪文詠唱もしてねぇのに・・・右手が治ってんだぁ!?

そう、レクイエムが今、彼の剣を抑えているのは、先程業火によって焼かれた筈の右腕
その右腕は既に、何事も無かったかのように怪我が完治していた

(レクイエム>詠唱?・・・そうか、この世界には魔法というものがあるのだったな
       ならば、これはどうだ?

彼女は胸元から、水の入った小ビンを取り出し、蓋を開ける
24赤い幼星 † 電脳世界の鎮魂歌  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/11(木) 13:37:01.36 ID:xF+SnZqu0
―――――“我早已換過花的香氣”

他のメンバーが、剣士を助けるべく、レクイエムに各々の武器を向ける

―――――“為何融釀記憶汚染自己”

しかしそれも束の間、彼等の足は止まってしまった

―――――“祝我”

この灼熱と旱魃が支配する地に、一陣の風が吹いた

―――――“和誰走到下世紀”

背筋が凍るような、冷たい風

―――――“從頭能頌讚”

その空気の流れは、戦士達の間を通り抜け、

―――――“人的優美、為自己”

彼女の周りで大きく、激しくうねり、

(レクイエム>――――――――“別再憎恨里”
25赤い幼星 † 電脳世界の鎮魂歌  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/11(木) 13:40:54.23 ID:xF+SnZqu0
彼女が詠唱し終えると、風は止み、沈黙だけが残った

(魔術師>・・・何か、起きたのか?
(剣士>き、気を抜くな! もう何が起こっても不思議じゃない―――

(レクイエム>「お憑かれ様」

小ビンに入った水を、辺りにばら撒く
飛び散った雫から、無数の霊魂が現れて、
剣士を除いた9人は、断末魔をあげながら、霊達によって貪られた
残された剣士は、何が起きたのか理解できず、ただ声にならないような声をあげ続けている

(レクイエム>何をそんなに怯えている?所詮ゲームだろう?

冷めた笑みを浮かべながら、レクイエムは剣士に歩み寄る
叫びながら、無我夢中で剣を振るう剣士
作られた生傷は、すぐに完治してゆく

(レクイエム>尤も、ゲームの中ではなく、実際に何かに襲われていたとしたら・・・滑稽だがな?

成す術も無く、頭部を鷲掴みにされた剣士
もう、声も出ていない
26赤い幼星 † 電脳世界の鎮魂歌  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/11(木) 13:42:42.02 ID:xF+SnZqu0
(レクイエム>とんだ茶番劇だった・・・さっさと逝け、貴様の下らん仲間の元へ

鈍い音が響き、脳漿が飛び散った
どさ、と落ちた骸に、先程の霊が群がる
気がつけば、一帯の死体は全て消えていた
遺されたものといえば、霊の内1匹が、たった今彼女に渡したもの

(レクイエム>ん、奴等の金か? 私には必要ないが・・・念の為貰っておくとしよう

空になった小ビンと共に、霊が持ってきた金の詰まった小袋を、胸元に忍ばせようとするが・・・

(レクイエム>・・・少し窮屈だな・・・それにしてもやけに暑い・・・
       いい加減、黒スーツ以外も認めて欲しいものだな

と、ぶつぶつ文句を言いながら、彼女は上着を脱ぐ

(レクイエム>まずは水の補充だな

そして、水を求めて砂漠中を飛び周ったそうだ


ちなみにこの時彼女はノーブラワイシャツ状態だったというのはどうでもいい話である

   ...END
27はないちもんめ ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/11(木) 13:44:41.06 ID:xF+SnZqu0
逃げる 逃げる 逃げるッ!
飛んでくるのは無数の腕、足、顔
足を止めちゃいけない
止まったら・・・殺されるッ
「逃げちゃ、ダメ」
「あっ」
俺の行く手に一人の少女が立ち塞がる
歳は・・・10歳程か?
黒と白・・・俗に言うゴスロリを着た・・・
「逃げたら、壊せないじゃない」
「え?」
気付くと、私の手足に頭を無数の人形の腕が掴んでいる
「待っ」
「良い声で鳴いてね?」



メキャッ


「ぎぃ・・・アぁアァァアァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア ゴキンッ


「・・・あんまり良い音じゃなかったわね」 
少女は周囲に浮く無数の人形のパーツを突付きながら
人であったモノを見下ろす
「もっと、面白くする方法無いかなー、殺すにしてもマンネリ化は避けたいよね」
そして少し考え
「そーだ♪」
28はないちもんめ ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/11(木) 13:46:44.74 ID:xF+SnZqu0
翌朝
「何の・・・冗談ですか?」
朝早くに部下に呼び出された広瀬美緒は、目の前の惨状に言葉を失った
本来ならば爽やかであろう朝の公園のど真ん中に放置されているのは・・・死体
右足だったであろう場所から生えている首
顔があるべき場所に付いている右腕
背から腹を貫通している足
凡そ人の死に方ではない・・・そして恐らく都市伝説の仕業でもない
都市伝説の仕業にしては異常性が薄い
人の仕業にしては異常過ぎる猟奇殺人
「良くありませんね」
「影守さん?!」
組織に所属する契約者・・・影守蔵人
美緒にしてみればプライベートでも関わりのある相手だが・・・何故ここに?
「これの犯人は、5年程前から同じタイプの殺人を定期的に犯しています」
「・・・どう言う事です?」
「余りにも猟奇的だったのと、人目に付きにくい場所で行われていた事
 そして恐らくは契約者の犯行だった事から組織の方で処理され表沙汰になって居なかった」
・・・なら、何故今になって?
「まさか・・・」
「人目に付く方が面白い
 目立たない場所でやるのに飽きた・・・
 理由としてはそんな所でしょう
 寧ろ問題なのは・・・」

一般人への被害
29はないちもんめ ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/11(木) 13:49:29.06 ID:xF+SnZqu0
「5年間組織が追い掛け、逃がし続けてる相手だ
 あの禿を投入しても逃げ切られています
 それが表立って事件を起こす様になった」
「このまま放っておいたら・・・」
どれ程の被害者が出る事になるんだろうか・・・



「大人ばっかりってのも飽きてきたんだよね
 今度は子供が良いなぁ・・・それも沢山沢山の・・・貴方達はどう思う?」
少女・・・門真希の周囲に浮くキューピーが静かにケタケタと笑った

続く?
30再び、目覚めの時  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 13:50:37.47 ID:xF+SnZqu0
 闇に沈んでいた意識が、ゆっくりと覚醒する

「ん………」

 ぼんやりと、瞼を開ける繰
 自分は………どうなったの、だっけ?
 状況を把握しようとした、その時

「ぁ………く、繰ちゃん。目が、さめたんだね?」

 聴こえてきた、その声に
 色んな記憶が、一気に蘇った
 トラウマな意味じゃなくて思い出したくない記憶も一緒に、全部

 全てを思い出した繰がとった行動は………全速力での、逃亡
 跳ね上がるように起き上がり、逃げ出そうとして

「あぅぅ……ま、待って!」

 がし!
 あっさりと、ディランに捕まった
 細身の体つきのディランが、正体は淫魔である
 繰一人捕まえて、逃走を阻止するくらい、簡単だ

「に、逃げてもいいけど………あ、あの子を置いていっちゃ、駄目だよ」

 ……あの子?
 言われて視線を彷徨わせると、硝子ケースに入った、菊花の姿が
 ぺちぺちぺち!!と硝子を叩き、脱出を試みている
31再び、目覚めの時  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 13:51:37.56 ID:xF+SnZqu0
「菊花!」

 その姿に、慌てて硝子ケースに駆け寄る繰
 ケースに張られた妙な札をはがして菊花をケースから出してやろうとして…

「……え?」

 …札、に
 触れられない…?

「契約者でも駄目なのか、本当に厄介だな」

 いつの間にか部屋にいた…否、最初からいたのだが、単に繰が気付いていなかっただけだ…ザンが、硝子ケースを見つめて呟く
 しばし考え込んだ様子を見せた後

「ディランちゃん、確か、団と結婚した女、契約者じゃなかったよな?」
「…繭浬ちゃんの事…?う、うん……彼女は、今でも契約者じゃなかったはずだけど……」
「よし、じゃあ、ちょっと呼んでくるわ。団に話しつけちゃ、来てくれるだろ」

 そう言って、ザンは周囲の空間を歪ませると、姿を消してしまった
 待った
 この状態で置いていくな!?
 抗議したい繰だが、相手がいない以上、抗議もできやしない

「え、えっと……繰、ちゃん。もう、体、大丈夫…?」

 そして
 プチパニック状態の繰の顔を、ディランが覗き込んできた
 ……ディランに悪気は、一切ない
 繰を心配しての行動だ
32再び、目覚めの時  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 13:52:35.35 ID:xF+SnZqu0
 繰を刺激するつもりなど、一切合財存在しない
 ………天然とは、時として罪である

「だ、大丈夫!」

 赤くなりながらも、何とか答えた繰はよく頑張った
 繰が赤くなっている様子に気付かず、ディランはほっとした様子を浮かべて
 そして

「……御免ね」

 と
 申し訳なさそうに、謝罪してきた

「え…」
「…僕が、きちんと能力を制御できなかったから………橋本さんが、都市伝説に憑かれているのに気付いて、すぐに対処出来なかったから………繰ちゃんを、巻き込んで。そのせいで、もっと危険な事に巻き込ませてしまって…本当に、ごめんね」

 …確かに
 未冬が女郎蜘蛛にとり憑かれている事に気付いた後、すぐにディランが対処できなかったのは事実だろう
 毒を受けたあと、一時的に能力を制御できなくなったのも、また、事実
 そして、繰がディランの催淫の芳香の影響を受けたのも事実であり、「ブティックの消える客」に誘拐されるに至った経緯も…まぁ、元をたどればディランのせいと言えなくも無い
 だが、そこまでディランが責任を感じる必要性など、ない
 ディラン一人が悪い訳ではないのだ

 ………ふと、繰が思い出したのは、「自分はいつ、いなくなるかわからない」と言う趣旨の、ディランの発言
 あれは、やとわれの臨時講師だから、と言う意味ではない
33再び、目覚めの時  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 13:53:47.17 ID:xF+SnZqu0
 …己は、都市伝説だから、と言う意味
 いつ、正体を知られて、そこにいられなくなるか
 いつ…………都市伝説同士の、契約者との戦いに巻き込まれて、死んでしまうかわからない
 その意味だったのだ、と繰はこの時、はっきりと気付いた

「…………………い」
「繰ちゃん?」
「先生は………悪く、ない」

 ディランのせいではない
 必死に、それだけを伝えようとする繰


 もし
 ディランが、今回の件を、どこまでも自分自身の責任にしてしまったら

 ……ディランが、中央高校から、いなくなってしまうのではないだろうか

 そんな、予感を
 繰は、はっきりと感じたのだった





to be … ?
34気遣うバカ、気付かないバカ ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/11(木) 13:54:36.09 ID:xF+SnZqu0
「先生は……悪く、ない」
悪くないのは判っている
だがそれをどう伝えれば良いのか
どういう言葉にすれば良いのか
それを伝える言葉が浮かばなかった
繰は必死で考える
考えて、考えて、考え抜いて
ものの数十秒であっさりオーバーヒートする
元来、繰は考えるのが苦手な人間であり
そして何より、考えるより先に手が出る人間である
ごづんという鈍い音と共に手に伝わる衝撃
気が付けばディランの頭を思い切り拳でぶん殴っていた
「い、痛いよ繰ちゃん」
「先生は悪くないっつってんでしょうが!?」
「殴られるぐらいは当然かもしれないけど……な、何か言ってる事とやってる事がちょっと違わないかな?」
「違ってないわよ! そもそもあんたが、自分が悪い自分が悪いってしつこいからでしょ!」
見事なまでの逆切れである
「ていうか、その理屈なら今回の件は補習なんか受ける羽目になった私の頭の悪さが原因じゃない!」
「そ、そんな事は無いよ?」
「んなわけないでしょ! 今回の補習が無ければ、先生は学校に行ってないし蜘蛛に憑かれたあの子とも遭遇してないし! 私を気遣わずに戦えたかもしれないし、他に助けてくれる人と一緒にいたかもしれない! 全部バカな私が悪いでしょ!」
「繰ちゃんはバカなんかじゃないよ、たまたま英語に興味が無かっただけで……補習だって逃げずに来てくれたんだし」
「あんたが、たまたま能力を制御するのが苦手だから悪くない、って言われたら納得する?」
「それは……」
35気遣うバカ、気付かないバカ ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/11(木) 13:55:39.24 ID:xF+SnZqu0
「あんたが何て言おうと私はバカよ。そして今回の一件は私のせい」
「でもそれは、補習を受けて不得手な面を直そうとした結果だし」
「じゃあ、あんたも補習」
「……え?」
「あんた、私が補習受けるの決まった時に言ったわよね? 苦手だからって避けてばっかりいたら苦手なままだって。だったらあんたもばんばん能力使って制御できるよう訓練しなさい。私が付き合ってあげるから」
「僕の能力は、そういう訓練をするのには向いてないというか……」
「じゃあ何? あの言葉は補習を受けさせるための方便? 私を騙したの?」
「そ、そういうわけじゃ……」
「じゃあ決まり。大体ね、暴発してあの程度ならちゃんとやる気になればどうにかなるわよ」
「あの程度って……繰ちゃん、僕の能力ちゃんと判ってる?」
「なんか熱っぽくなって身体がむずむずする程度でしょ? 死にゃしないんならどうにでもなるわよ」
判ってない
ディランは即座にそう理解できた
「何よ、判ってないって言うのならちゃんと説明しなさいよ」
「説明って言われても……その……繰ちゃんは、好きな男の人とかいる?」
「……へ? な、何よ突然」
「好きな男の人ができたら、自然と判る事だと思うんだ。だから、僕が教えるのは、その、違うんじゃないかなって」
何かこう、もの凄く微妙な沈黙が二人の間に満ちる
「……できたって、全然判んないわよ」
「え、今何か言った?」
「言ってないわよ! とにかく、夏休み終わるぐらいまでにはちょっとぐらいは制御できるようにするわよ!」
「いや、その、そんなに張り切られても……僕はまだやるって決めたわけじゃ」
ディランは助けを求めるように硝子箱に閉じ込められた菊花を見るが、小さく首を横に振るだけであった
36提供  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 13:56:35.77 ID:xF+SnZqu0
 ガクブル
 ガクガクブルブルガクガクブルブル

「どうした、ですか?ふるえる、ですか?」
「モトアルジサマコワイモトアルジサマコワイモトアルジサマコワイモトアルジサマコワイイヌモコワイ」

 店の奥隅で隠れて震えている沙々耶
 その様子に、メイが首をかしげる
 ……ゲルマニアに、訪れていた、客
 それが、沙々耶に見事すぎるがまでに恐怖を与えていた

 灰色のコートに、金色に変わってしまった目を隠すサングラス
 ……朝比奈 秀雄
 沙々耶が都市伝説「悪魔の囁き」だった頃の、契約者
 その存在は、彼女にとって結構なトラウマである
 彼が姿を見せただけで、これだ
 震え続ける沙々耶の姿に、メイは首を傾げつつ、その頭を撫でていた



「………」

 …一方
 沙々耶の正体が元・悪魔の囁きである事知らない秀雄は、見知らぬ少女相手に、姿を見せた途端盛大に悲鳴をあげて逃げられた為、若干、落ち込んでいたのだが
 それは、どうでもいい事である
 秀雄の足元では、クールトーがごろん、と腹を見せて横になっていた
 普段のクールトーの様子からすれば、信じられない姿である

「…どうかしたかね?」
「………いいや、何も」
37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 13:58:06.25 ID:TxzXjAtIO
101番目の百物語読め
自分が百物語の主人公になって都市伝説たちを倒していく話だから
メリーさんvs魔女喰いの魔女とか面白かった
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 13:58:43.55 ID:9G2/mQQj0
どうでもいいんだけどさ
このスレタイの語呂の悪さどうにかならないの?

39提供  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 13:58:46.50 ID:xF+SnZqu0
 店主である、「第三帝国」総統に声をかけられ、秀雄は小さく、首を左右に振った
 改めて、話を持ちかける
 …とある、戦力の提供を

「……戦闘に特化している、とは言い難い。だが、ある程度の戦闘能力は保有している」
「しかし、クールトーに続いて、それまでこちらに提供しては、そちらの戦力が落ちるのではないかね?」
「…問題ない。これと同性能の能力を保有したものが、あと4体いる」

総統と話す秀雄の背後には、一人の少女の姿があった
 …少女、に、見える者の、姿が

「んー、ペットショップってこんな感じなのかー…雄どれかな」

 きょろきょろと、好奇心一杯に、店内を見回す様子は微笑ましい
 可愛らしい大き目の瞳が、輝いている

「…失礼」
「?」

 と
 近づいてきた総統に、少女は首をかしげた
 …もっとも、その視線は、若干熱いものに思えたが、総統はそれに気付かなかったふりをする

「その姿、「薔薇十字団」提供の特殊な道具によるものと聞いているが?」
「そうだよ、脱いで見る?」

 少女の言葉に、総統は店の入り口に「準備中」の札を、改めて掲げてきた
 店の外から、中をのぞけない状態にする

 それを確認して……少女は、ずるり、と
40提供  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 13:59:53.35 ID:xF+SnZqu0
 「皮」を、脱いだ

 姿を現したのは、水のかたまり
 ゼリーのような半固形のそれが、ぷるぷると震えている

『あー、窮屈だった』

 …夏休み時期、プールで大暴れした変態
 そのうちの、一体である
 水そのものの肉体は、外を出歩く事にむかない
 その姿を隠していたのが、たった今脱ぎ捨てた「皮」だ
 「薔薇十字団」が作り上げたそれは、この変態のように人間の姿を取れない都市伝説が、人間社会に紛れ込む為に使うものだ
 秀雄が「どんな姿でも構わない」と注文したものが、たまたま少女の姿のものだったらしい

「なるほど、着脱は自在か」
『練習させられたから、どっちも30秒以内には』
「…本来ならば、もっと素早いべきなのだがな」
『ごめんなさい、もっと罵ってください』

 変態の変態発言は、秀雄も総統もスルーして
 ふむ、と総統は考え込んでいる

「能力は、水を多少操れる事と、引き寄せる事だったか。それと、水中での高速泳法」
「そうなるな……もっとも、この「皮」を纏っていても、人間らしい食事は一切とれん。水分を補給する程度はできるようだが」

 …ミネラルウォーターやら水道水やら以外、色がついた飲み物だと、若干、その体の色がにごるから嫌なようだが
41提供  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 14:00:43.19 ID:xF+SnZqu0
 それに、弱点はそれ以外にも、一日一回は全身を水に漬ける必要性がある
 ある程度の弱点を含んでいるのが、問題といえば問題だ
 テリトリー外では本領発揮できないのは、都市伝説らしいといえばらしいので、弱点に含まないでおくが…

「…そちらが必要としないならば、こちらが適当に使う。返事はいつでも構わない。使うにしても、不要になったらこちらに返却してくれればいい」
『完全に物扱い……っでも、それもいい……っ!』

 …若干、変態度がパワーアップしているような気がしないでもない変態

 その口を塞がせる方法を考えておくべきだった
 秀雄はこっそりと、ため息をついたのだった




終われ
42笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 14:02:39.81 ID:xF+SnZqu0
【上田明也の探偵倶楽部47〜無可知・無価値・夢価知〜】

「……今度は何処だよ。」
「私にも解りません。」
「やあやあやあ!おめでとう!
 ここに来た人間は久しぶりだよ!」
「猫だ!」
「あ、ユティさんじゃないですか!」
「ユティ?違う違ーう、私は聖杯そのものだ。
 今は彼女の姿を借りているだけだよ。」

何時の間にか俺と茜さんはステンドグラスで天井を覆われたドームの中に立っていた。
これもまた聖杯の力なのだろうか?

「まあ、あれだ。とにもかくにも聖杯の試練突破、おめでとう。」
「聖杯の試練?」
「そうだよ、さっきまで受けていたのは聖杯の試練って奴さ。」
「俺の場合は親父との戦闘だったとでも言うのか?あれは俺の願いじゃなかったのか。」
「そうだね。まあとりあえず試練をクリアしたから此処にいるんだし、好きな願いを願えばいい。」
「願い、ねぇ……。」

俺は悩む。
俺に願うべきことなんてないのだ。
43笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 14:04:34.36 ID:xF+SnZqu0
そもそも、俺は恵まれた人間だ。
努力すれば欲しい物は大抵手に入る。
そんな俺がわざわざ聖杯に望んでまで欲しいものはない。

「ねぇ、願い事って幾つまで?」
「えーっと……特に決まってないかな。」
「ああ、そう。じゃあまずはサンジェルマンって奴の彼女だかを生き返らせてくれない?」
「名前は?」
「知らん!そこらへんは融通効かせろ!」
「無茶苦茶な……、とりあえずやってみるよ。」

猫耳姿の聖杯を名乗る少女はパチンと指を鳴らす。
この程度で本当に願いが叶ったというのだろうか。

「これで多分大丈夫、願いは叶った。」
「じゃあ次いってみるか次、茜さんなんか有る?」
「えー、私は特にないんですけどねえ……。」
「欲のない人間が聖杯を手に入れるのはいつものことだけど……今回はひどいな。」
「なんだよユティもどき、語尾ににゃんも付けなければ関西弁も喋らないって詐欺を働いた上で文句を言う気か?」
「いや、いいんだけどさ……。」
「俺には願いが無いんだ!仕方ないだろうが!」

その言葉を聞いた瞬間、聖杯の表情が変わる。
44笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 14:06:36.41 ID:xF+SnZqu0
「それは嘘だね、君の願いを受けてもう聖杯は動き始めている。」
「……どういうこと?」
「君自身が言っていたじゃないか。
 願いが解らないから聖杯に願いを叶えさせて自分の願いを確かめると。
 聖杯の試練には自らの願いを自覚させる働きもあるそうだが……。
 君だって気付いてるんじゃないか?君の願いごと。」
「俺の……、俺の願い事か。」
「幼い子供を愛して、妹を愛して、人外を愛して、愛して愛して愛されたくて。
 誰をも理解して愛せるが、誰からも理解されず一人寂しく生き続ける。
 君だって不公平だとは思っていたはずだ。
 そんな幼い怒りが、絶望が、君の中には渦巻いていてそれを発散させる時を待っている。」
「…………勝手なことを言うな。」
「君の父でさえ、君の大量殺戮を君自身の怒りの感情の発露ではなく、
 一時的に都市伝説に自我を浸食されたからだと思っていたんだぜ?
 君は全く持って自分の意志で罪もない人々を殺しまくってたのにさあ。
 ここまで誤解されてるって悲しいと思わなかった?」
「まあ、親父はメルが俺をそそのかしたと思ってたな。
 でも、誤解なんて今に始まったことじゃない。」
「明也さん、そこの失礼な奴の言うことなんて聞く必要ないと思いますよ。」
「まあまあ、話だけは聞く価値がある。必要は無いけどな。」
「やれやれだな。私に感謝こそすれそこまで酷いこと言う人間は居なかったぞ?」
「気にするなよ、どうせ人間の戯れ言だぜ。
 ところで俺の願いを受けて聖杯は何をしようとしてるんだ?」
「ああ、その話を忘れていた。」

聖杯は少し困ったような顔で笑った。
45笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 14:08:50.78 ID:xF+SnZqu0
「君は、君の無意識が望んでいる願いは……破滅だ。
 こんな自分無くなってしまえ、って感じの。」
「でも明也さんはすごく前向きですよ?」
「彼の自己肯定はそれに対する反動形成。
 無意識に今の自分を否定し続けるからこそ勤勉でも居られるしね。」
「ああー、俺の勤勉さのルーツはそこにあったのか。」
「で、君の無意識は世界に変革を求めている。
 誰も傷つかない世界へとね。」
「聞く限りでは良いことに聞こえますね。」
「俺も同意だよ茜さん、でも変革には痛みが付きものだ。
 なんせ変わるって事は自分を殺すことだからね。」
「そう、聖杯はこの世界を殺そうとしてるんだよ。」
「えっ。」
「嘘……。」
『その子の言うことは本当だよ、大変だネー明也ちゃん。』
『でも私は君みたいな環境のせいで歪んでしまったけど本当は善良な人間が大好きだから、君の幸せを心から応援してるんだ。』
『さてさて、自分のせいで世界が滅びかけている気分ってのはどんなもんなんだい?』
『できれば後学の為に教えて欲しい物だね』
「――――誰だあんた!?」
『私の名前は……秘密、Fさんって呼んでくれれば良いや。』
『都市伝説「サンジェルマン伯爵」の契約者だ。以後よしなに』

シンデレラのような青いドレスを着た女性が何時の間にか俺たちの後ろに立っていた。
女性、とは言ったがそれはドレスを着ているからそう判断しただけだ。
中性的な顔つきなので晒しを巻いて男装でもされたら見分けが付かない。
46笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 14:10:43.22 ID:xF+SnZqu0
『さて、今回私がここに来たのは君に説教をする為だ。明也ちゃん。』
『先ほどから私の都市伝説が聖杯から出て行こうとする化け物を食い止めているんだが……、そいつらがまったく止まらない。』
『だから元から断つ必要があると思ってね。といっても殺しはしないよ?』
『君が死んでも君の願いは生き続ける。』
『君が、君自身の願いを完全に殺さなければ、聖杯から出てくるあの化け物は消えないだろうね。』
「聖杯から出てきている化け物?」
『ああ、サンジェルマンは空亡とか呼んでいたよ。太陽を司る化け物だとか。』
『まあ彼も化け物だけどね。』

恐らく彼女がサンジェルマンの恋人なのだろう。
だが……、それならサンジェルマンを化け物呼ばわりするというのも変な気がする。

『あひゃひゃひゃ、化け物は化け物じゃーん。』
『何勘違いしてんの?明也ちゃんはほんとおばかさーん。』
『受け入れろよ、都市伝説は化け物だ。』
『ねぇ、そこの赤い女の子。』
「…………そうですけど、でも。」
『でもなんだい?』
「おい、Fだかなんだか知らないけど失礼な奴だな。」
『君こそ何か勘違いしてるよ。君は化け物を悪い物か何かのように思ってないか?』
「いや、別に……。」

そう言われてみると、そんな気もする。
47笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 14:12:41.77 ID:xF+SnZqu0
『受け入れろよ、化け物でもそこの赤い少女は心優しい存在だ。』
『解らないなりに君を受け入れようとしている。』
『そんな善良な生き物を人間じゃないからって受け入れないつもりは無いだろ?』
『そう、明也ちゃんは心優しい人間だ。私は知っている。』
「そうか……?俺なんて人殺しだぜ。」
『なら君みたいな人殺しを愛してくれる存在が居るだけで充分じゃないか。
『私みたいな屑でもサンジェルマンが居てくれるように、君みたいな人でなしでも茜ちゃんが居る。』
『そう、君は幸せなんだ。』
『どんな存在であれ、愛してくれるならばそれを無条件に受け入れるべきなんだよ。』

どんな存在でも愛してくれるなら受け入れよう。
それ以外何も期待しない。
それは優しさに聞こえるが……、結局相手になんの望みも懐いていないってことで。
相手に絶望してるって事で……。

『なんでこんな雑談してるのかって言うとサンジェルマンからの私へのお願いでね。』
『明也ちゃんのその青臭い絶望そのものを私が絶望させて空亡だかを元から断つんだって。』
『ほら、世界を滅びろって無意識に思ってるならこの世界は素晴らしいって思えばその願いも終わるでしょ?』
『で、明也ちゃんにそう思わせるには私の「下から目線性悪説」が有効らしいから。』
『さぁ、明也ちゃん。そして茜ちゃんも。』
『その巫山戯た絶望を私の異常で非情にぶち殺してあげる。』
『思いっきりへこんでいってね!』

決めポーズまで決めて朗らかに笑うその女性は死んだ魚を見る死にかけた蛸の中の寄生虫のような
どす黒くて薄暗くてグロテスクなくらいに淀んだ暗い目をしていた。
【上田明也の探偵倶楽部47〜無可知・無価値・夢価知〜fin】
48蜘蛛と少女と無垢  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 14:14:35.62 ID:xF+SnZqu0
 森の中を、巨大な蜘蛛…ウンゴリアントが進んでいく
 その背中に、イクトミと暦の姿があった
 自分達の足で歩いて進むよりも、ウンゴリアントの背に乗って移動した方が早いのだ

「……なぁ」
「んー、なぁに?」

 「支配の首輪」でもないと、こんなのの背中乗れないよなー
 ってか、持ってても、こんな高レベルモンスターに使うなんてそうとう無茶だよなー、とのんきな考え事をしていた暦
 そんな暦に、イクトミが声をかける

「…あいつから受け取ったもん、とっと捨てた方がいいぞ」
「……?この、パレットナイフとペインティングナイフ?」

 サイレスから手渡された、「レアード複葉機」の木片と金属から作られたパレットナイフとペインティングナイフ
 それを手に暦が首をかしげると、そうだ、とイクトミが頷いてくる

 ……刹那
 イクトミに見えていた、「色」が……かすかに、変わったような、錯覚
 陽気な嘘の色の下地、人を超越したものに流れる薄墨色が……濃くなったように、暦は感じた

「それは、確実にお前を危険に巻き込む。お前だけじゃない、お前に関わる者、全て。家族も友人も何もかも、全て巻き込む危険性がある」
「…そこまで、危ない感じはしないけどなー。むしろ、しっくり手になじむし」
「馴染んでるのが問題なんだよ」

 小さくため息をつくイクトミ
 それにシンクロしたように、ウンゴリアントもため息をついたのか、その背中が揺れた

「それと、できりゃあ、あいつから聞いた話…異常(アブノーマル)の話も、都市伝説の話も、何もかも、忘れた方が幸せだ」
「いやいや、そう簡単に忘れられるもんじゃないと思うけどー」
49蜘蛛と少女と無垢  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 14:17:48.66 ID:xF+SnZqu0
「望むなら、完全に忘れさせる事くらいはできるさ、俺達は」
「わーい、メン・イン・ブラックの記憶消去みたーい。体に金属片は埋められたくないなー」
「それはグレイだろ。グレイ製メン・イン・ブラックだろ。何も埋め込まないっつの」

 緊張感の一切ない暦の言葉
 …それに、わずかにイクトミは救われる
 この緊張感のなさのおかげで、イクトミの抱える「神」の側面が、完全には浮き上がらずにすんでいた
 己の「神」としての側面を見られる事は、イクトミにとって苦痛であるから

「…もっとも、お前が、舞台の背景じゃなくて………物語の舞台に。血塗られた、いつ、悲劇を強要されるかわからない。惨劇と悲劇に満ちた喜劇の舞台の登場人物になりたいって言うんなら…
 …それを止める権利は、俺にはない。いつ、周囲の人間が巻き込まれて傷つくか、殺されるかわからない………そのリスクを背負う覚悟が、本当にあるなら、な」
「惨劇と悲劇は、喜劇じゃないんじゃないかなー?」
「………喜劇なんだよ、連中にとっちゃ」

 天を見上げ、小さく悪態をついたイクトミ
 何かへの憎悪が、一瞬だけ、溢れ出す

「お前らだって、喜劇とかコントの舞台で、不幸を笑う事はあるだろ?」
「あー、まぁね。バナナの皮で滑って転んだりとか、そう言う不幸を笑ったりするねー」
「今時そこまでベッタベタなギャグはアメリカのギャグと大阪のギャグくらいだと思うんだがそれはさておき。そう言う可愛いレベルの悲劇じゃねぇよ……
 …血塗られた、欝欝しい、俺達やお前らにとっちゃ笑い事にならねぇ惨劇と悲劇をも……あいつらは喜劇と捕え、笑って見下ろしてくるんだよ。そして、その舞台監督は、嬉々としてその舞台を作りやがるのさ」
「…流石に、それは嫌かなぁー」

 小さく苦笑する暦
 パレットナイフとペインティングナイフを、じっと見つめる

「まぁ、捨てる気になったら言いな、いつでも処分してやる。忘れたくなったら、いつでも忘れさせてやる」
「んー………まぁ、考えておくよ」

 がさがさ、がさがさ、進み続けるウンゴリアント
50蜘蛛と少女と無垢  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 14:20:05.29 ID:xF+SnZqu0
 …やがて、視界が開けた
 森の中の、広場のような空間
 …その、中央に
 暦達が乗ってきたのと同じ、ウンゴリアントが数体、集まっていて
 ………その群れの、中央に
 一人の、女性の姿が見えた
 黒く長い髪に、黒い瞳、黒いスーツ姿の、女性
 無表情で座り込んでいるその様子は、人形のようにも見える

 …女性が、暦達に気づいたようだ
 静かに、顔を上げる

「エーちゃん、お待たせ」

 そう言って、イクトミがウンゴリアントから飛び降りた
 エーちゃん、と呼ばれたその女性はイクトミの言葉に静かに答える

「…問題ありません。あなたは、指定した時刻通りに、戻ってきましたから」

 男性のような、女性のような、年齢すら不詳の、はっきりとしない声
 感情が一切伴っていないその声は、まるで機械での合成音のようにも聞こえる

「……彼女は?」
『U-No.13が接触を計った相手だ。こっちの世界に取り込まれた被害者でもある。保護してきた』
「………そうですか」

 「組織」の暗号言語での言葉に、女性は頷く
 暗号言語故、暦にはその内容が理解できず、小さく首をかしげていた

「とりあえず、エーテルが作ったエリアまで、彼女を送りたい。あそこは安全地点だからな」
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 14:42:55.26 ID:GMHmNG/kO
うにうに
52蜘蛛と少女と無垢  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 15:00:05.62 ID:xF+SnZqu0
「…そうですね……しかし、イクトミ。S-No.444が、あなたに報告する事がある、と、あなたを探していました。あなたは、先にそちらに向かうべきでしょう」
「は?………アンサーの餓鬼が、俺に?報告書あげりゃいい話だろ」
「…直接話したいと、そう言っていました」

 でもなぁ、と、イクトミはウンゴリアントに乗ったままの暦を見上げる
 暦は、相変わらずの緊張感のない様子で、イクトミに告げる

「大丈夫だよー、そっちの女の人に送ってもらえばいいんでしょー?何て言うか、おさわりとかセクハラの危険性はなくなるだろうし」
「え、俺、そこまで信用0?」
「それにさー、話相手になってほしい人って、きっとその人でしょー?送ってもらいながら、その話相手になればちょうどいいんじゃないかなー?」

 暦の言葉に、イクトミは暦と女性を交互に見つめ…
 ……仕方ない、と言った様子で、小さくため息をついた

「…それじゃあ、悪い、エーちゃん。彼女を頼む。何かあったら、すぐに駆けつけるから」
「わかりました。責任を持って、彼女を送り届けます」

 悪い、と小さく呟いて
 イクトミの姿は、小さな蜘蛛に変わって、消えた

 女性が、暦が乗っているウンゴリアントに近づく
 ウンゴリアントはその身をかがめて、彼女が背中に乗りやすいようにした
 背に乗り、女性が暦の隣に並ぶ

「……はじめまして。「組織」A-No.0、オール・アクロイドです。あなたを、エーテル・エリオット管轄下の安全地点まで、送り届けます」
「うん、よろしくー」

 黒尽くめの格好だけど、まっさらだなぁ、と
 そんな事を考えながら、暦は女性…オール・アクロイドの言葉に、頷いたのだった
to be … ?
53やる気なさそうな人〜COAその2 (代理):2010/11/11(木) 15:02:54.61 ID:xF+SnZqu0
「…葉さま?」

ゲームをしているはずの葉の様子を見に行った三尾、しかしそこに葉は居なかった。
呼び掛けに応えるのは付けっぱなしのゲームの音だけ。
葉が装着していたと思われるゴーグルは床に落ちており、コントローラーは机の上に無造作に置かれていた。
そしてコントローラーの横には、ペンとメモ用紙があった。
三尾はメモを手に取って書いてあること読んだ。

『 探さないでください 』

「……家出?!」

そういえば昨日、三尾は葉に寝るな起きろとか仕事しろとかいった事で怒っていた。
しかしそんな事で家出など……しないとも言いきれない。
むしろ何も起きてなくても(何も起きないから)、ふらふらとどこかへ出掛けてしまうこともあるのだが。








「まぁそんな訳ないですよねっと」

そもそも葉に説教したとしても真面目に聞いてること自体少ないのだ。
三尾はメモ用紙をくるりと裏返した。
54やる気なさそうな人〜COAその2 (代理):2010/11/11(木) 15:08:33.43 ID:xF+SnZqu0

『COAに呼ばれた 
  助けて欲しいらしい
  中に入っ   』

乱雑な文字で箇条書きにされたメモはそこで途切れていた。
書かれていたことから察するに、COAの中から助けを求められ、それに応じた事は分かった。
ただ、誰が助けを求めたのか、何から助けて欲しいのか、肝心のそういった内容が抜けていた。
余計な事を書いていなければ、その内容も書けていたのかもしれない。

「えっと……つまりCOAに自分から取り込まれた…? 身体ごと…?」

三尾は葉が座って居たであろう場所を見る。
そこに座っていたはずの人物に向けて問い掛ける。

「え〜……調査に行ったんですよね、遊びに行ったんじゃないですよね…?」

答は闇の中、COAの中。


「あっそうだ、No.0が行方不明になるのはまずいですよね、報告はしないと。
  ……『COAで遊んでいたら取り込まれた』って……報告しづらいです。
  ……うん、こういう時はエーテルさんに相談しましょうそうしましょう」


続いたらいい
55やる気なさそうな人〜COAその2 (代理):2010/11/11(木) 15:14:14.68 ID:xF+SnZqu0
パァンッパァンッ
「助けッ ターンッ
「誰か!誰kパァンッ
目の前に広がる死体(動かなくなったPC達)
「まるで鴨撃ち・・・いや、それ以下か」
COAに取り込まれてどれだけの時間が過ぎたのか判らんが・・・
あの時家には友美が居た・・・アイツは馬鹿だが頭は回る
私が以前口走った「仕事関係」からこれも都市伝説がらみと気付くだろう
ならば、まず大門大樹か望に連絡を取った筈
そして連絡を受けたあの二人なら・・・恐らくこちらに乗り込んで来るだろう
詩織なり大樹の知り合いなり異空間系能力者はいる
なら、私がすべき事は・・・
「あいつ等が一秒でも早く私を見つける様にする事」
その為には・・・
「貴様等には犠牲になってもらうぞ」
私は迷わず銃の引き金を引き
再び眼前のPC達を吹き飛ばし進みだした

続く
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 15:15:58.29 ID:xF+SnZqu0
ぎゃあタイトルミスorz
上は「はないちもんめ ◆YdAUTYI0AY (代理)」となります
57組織編序章 ◇vQFK74H.x2 (代理):2010/11/11(木) 15:20:01.64 ID:xF+SnZqu0
「お母さん、お父さん、ちょっと出かけてくるねー」
「いってらっしゃい。気を付けるのよー」
「知らない人に付いていくんじゃないぞー」
「もう、お父さんは心配しすぎだよ…」

担当の黒服から言われた、任務当日。
紗江と紗奈は、指定された場所に向かうため家を出た。

そうして姉妹の姿が完全に見えなくなった頃、玄関のチャイムが鳴った。
インターホンに映し出されたのは、黒いスーツとサングラスをかけた男性。
「はい、どちら様ですか?」
『私、****の相場と申します。本日は担当の者の代理で伺いました』
「ご苦労様です、今開けますね」
相場と名乗った男性は、夫妻が加入している保険会社の担当の代理で来たらしい。
母親が玄関を開けた、次の瞬間
黒いスーツの男がテレビドラマで見るような拳銃を構えていて―サイレンサーが付いている為、静かな銃声と共に放たれた弾丸が心臓を貫いた。
どさり、と玄関口に崩れ落ちる母親。しばらくビクビクと痙攣していたが、すぐに動かなくなった。
「…?どうかしたのかー?」
居間から出てきた父親も、状況を把握させる間も与えずに同様に射殺した。

「…対象の回収が済みました。今から戻ります…

…現場の後処理は任せましたよ?
学校町(ここ)の人間は、都市伝説等の異常は無視しても、犯罪は見過ごせないらしいですからねぇ…」
拳銃をしまい、施設内に残っている研究員に電話をかけ終えたA-No.666が、天倉夫妻の死体を車のトランクに積み終えた黒服に告げる。
58組織編序章 ◇vQFK74H.x2 (代理):2010/11/11(木) 15:27:33.18 ID:xF+SnZqu0
「分かりました……所で、私はどうやって戻れば…」
「歩いて戻って来てくださいね?」
当然だろう、と圧力をかけつつ、自らは車に乗り込み、天倉姉妹の向かっている廃棄された製薬会社―自らの使っている実験施設へと戻って行った。



――
徹とユキは商店街を歩いていた。
ふと、ユキが立ち止まる。
「ユキ、どうした?」
「今、都市伝説の気配が…」
「近くにいるのか?」
周囲を警戒する徹に、ユキが首を振る。
「いえ…移動しているみたいです」
ユキが目を向けた方向――西区の方角に、つられるように視線を向けた。

続く…?
59「13使徒」  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 15:32:28.54 ID:xF+SnZqu0
 何が、起きた?
 それは、理解が出来なかった

 何者かが、自分達のアジトに侵入してきた
 ……それだけは、はっきりと理解できた
 次の瞬間……視界が、真っ白に染まった気がして

 気付いた時、それの体は……体のど真ん中を、何者かにぶち破られていた
 自分と同じように、仲間達が倒れていく様子を
 そして、アジトの真ん中に立つ、黒い帽子を目深に被った、黒尽くめの服装の男の姿を、最後に、見て
 都市伝説契約者達による人攫い組織は………その瞬間、壊滅した



「流石ですね、「トライ・ミニッツ・ライトニング」」

 かけられた声に、黒尽くめの男……「トライ・ミニッツ・ライトニング」は、顔をあげた
 長身の男が、誘拐組織のアジトの中の惨状を見て、笑っている

「二つ名に偽りなーし!」
「だいぎゃくさーつ!すってきすてきぃ」

 ひょこひょこ、と
 男の背後から顔を出したのは、少年と少女
 瓜二つの顔をした、双子だ
 現状を怖がることなく、むしろ、楽しんでいる

「「教会」最強戦力が、僕らの味方ー!」
「こっころづよーい!」
「僕ら「13使徒」に加わってくれて、本当に嬉しいよ!」
60「13使徒」  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 15:37:22.41 ID:xF+SnZqu0
「ヴァレンタインなんかとはちがーう!ほんとにつっよーい!」

 きゃいきゃいきゃいきゃい
 楽しげな双子の様子に、しかし、「トライ・ミニッツ・ライトニング」は無表情だ
 すたすたと、男と双子の横を通り過ぎて、アジトから出ようとする

「おや、もっと誇っても良いのですよ?人を売買すると言う悪党共を、一人残らず地獄へと送ったのですから」
「…余計なおしゃべりをするつもりはない」

 男の言葉に、「トライ・ミニッツ・ライトニング」は短く答える
 目深に被った帽子のせいで、その表情は見えない

「かたっくっるしー!」
「さいきょーさまはストイックー?」
「それとも、殺しすぎて感覚麻痺しちゃったー?」
「一杯一杯殺してるもんねー、「教会」の為に!」

 くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす
 双子は、邪悪さすらにじませて、笑う

「「教会」に、代々仕えし契約者!」
「その実体は、異教徒や悪魔を殺す為に全てを捧げた戦闘マシーン!」
「元捨て子な僕らとは、格が違いますー、ってー?」
「お高くとまってるーぅ!ちょーっとむかつくなーぁ」

 少年の右手に、炎が
 少女の左手に、冷気が生まれる

 その様子を見て、男が双子を嗜める
61「13使徒」  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 15:44:31.14 ID:xF+SnZqu0
「こらこら、駄目ですよ?味方を殺してはいけません。殺していいのは、異教徒と悪魔と、「教会」に………エイブラハム様に逆らう、愚か者だけです」
「「はーーーい」」

 男の言葉に、双子は正直に能力の行使をやめた
 男は満足して笑い、この場を離れようとしている「トライ・ミニッツ・ライトニング」に声をかける

「あぁ、そうそう、次の任務は、日本でですよ」
「……日本?」
「そう、学校町。そこに巣くう悪魔を、皆殺しにするのです。しっかり準備してくださいね?」
「……………了解した」

 男の言葉に短く答え…「トライ・ミニッツ・ライトニング」は、一瞬の光と共に姿を消した
 双子が、男を見上げる

「ねー、あいつ、なっまいきー!」
「「教会」さいきょーで、白兵戦におけてほぼ無敵なのはわかるけどーぉ」
「ムカつくー」
「腹たつー」
「まぁまぁ、もうちょっと、長い目で見てあげましょうね。彼は、つい最近、われらの同士となってくれたばかりなのですから」

 ……とは、言え
 警戒するに越した事はないか、と男は考える
 もし、あの男が、我らが主の目的の障害となるならば…

 ………
 …………
 ……………

「…まぁ、あれと敵対したら、我々じゃ勝ち目ありませんけどねぇ。あの攻撃を避けるのは無理ですし、うん」
「どうしたのー?」
62「13使徒」  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 16:00:45.35 ID:xF+SnZqu0
「独り言ー?」
「えぇ、独り言ですよ」

 双子の頭をなで、男は双子を連れて、アジトを出た
 充分に離れたところで……ぱちん、と指を鳴らす

 直後
 アジトだった建物に………真っ赤に燃え盛る炭が、無数に降り注いで
 建物が、燃やし尽くされていく


「…全ては、我らが主の為に」


 神の子として生まれ
 神の座へと返り咲こうとしている


 我らが主、エイブラハム様の、為に





to be … ?
63惨劇阻止への動き  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 16:07:56.66 ID:xF+SnZqu0
 ……携帯が、着信を告げる

「はい……あぁ、辰也か?どうした?」

 それは、不吉の予兆

「ん?あぁ、龍一には連絡取れるけど…」

 せめて、最悪へと転がらぬ為の

「……………え?」

 わずかばかりの、慈悲のような



 いつものように、何気なく刀を前にしていたら………マナーモードにしていたままだった携帯が、着信を告げてきた
 画面に映し出された名前を見て…少し、驚く

「はい……翼さん、どうしましたか?」

 あの人が、俺になど何の用だろうか?
 何かあれば、すぐに駆けつけるつもりではあるが…

「…天倉達が?……………………っ!!」

 …ガタン、と
 俺が立ち上がった音に、驚いたのだろうか
 み!?と、花子さんが驚いたように体を跳ねらせた
64惨劇阻止への動き  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 16:13:38.05 ID:xF+SnZqu0
「……すぐに、向かいます!」

 やや乱暴に、通話を切る
 にじにじと花子さんは立ち上がり、俺を見つめてきた

「行くの?」
「あぁ………付いて来てくれ」
「み!けーやくしゃが行くところなら、どこでもついていくの!」
「……ありがとう」

 花子さんと一緒に、刀を安置している部屋を出る

 ……カタン、と

 背後で、かすかに刀が……童子切安綱が、音を立てたような気がしたが
 ……俺は気付かないふりをして、振り返らずに、花子さんと一緒に、部屋を出た



 いつも通り、「組織」からの仕事が来ず、部屋でだらだらとしていたら、電話がきた

「直希か?何かあったのか?」

 今、あいつはCOAやら何やら、色々と抱えている最中だ
 いい加減、無理して倒れないといいんだが
 「光輝の書」との契約で命を保ってるようなもんだし、それでも体力ない奴なんだから…

「……ん?あぁ、覚えてるよ。A-No.666が担当になっちまった二人だろ?一応、こっちでも調べられる範囲で調べて……………え?」

 直希が告げてきた、その内容に
65惨劇阻止への動き  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 16:19:25.75 ID:xF+SnZqu0
 すぅ……と、血の気が弾いていくのを、自覚する

「…っわかった、俺も行く!ついでに、C-No.572にも、連絡しておく。強行派や過激派の余計なちょっかいをこれ以上出させねぇ!」

 携帯を持ったまま家を飛び出し、直希との通話を切って、すぐに自分の担当黒服に電話する

『…お前の上司、G-No.1に、緊急連絡!西区A-8エリアに一般人が入らないよう、結界封鎖!それと、そこに過激派と強行派の連中が近づかないよう、牽制を!………A-No.666が、禁止されている類の実験を強行しようとしているとの情報あり、今から止めに行く!!』

 一般人に聞かれても問題ないよう暗号言語でC-No.572に指示を出し、とにかく、問題の現場に向かう
 ……いざとなれば、その建物毎、そのA-No.666を始末する

 …俺や辰也のような、被害者なんざ、もう、「組織」に生み出させたくない
 そう、考えながら





 惨劇を阻止せんと、彼らは動き始め
 されど、悪魔の脚本は止まる事なく
 脚本家は、演出家は、彼らを嘲笑い

 ………されど
 舞台役者は、最悪の結末を決して認める事はなく
 最悪の結末だけは回避しようと、反抗す




to be … ?
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 16:21:25.17 ID:xF+SnZqu0
代理投下途中だけど、ちょいと出かけてくる
夜帰ってきた時、残りが全部投下され終えていれば幸せだ!!
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 17:01:33.13 ID:GMHmNG/kO
むにむに
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 17:41:32.24 ID:GMHmNG/kO
くにくに
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 18:25:24.57 ID:GMHmNG/kO
ふにふに
70ふあんていなこころ ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/11(木) 19:15:03.01 ID:GYksxNB40
ホルマリンが湛えられた広いプール
そこに沈む数多の死体
それは今まで、この能力者が沈めてきた者達
老若男女、人畜妖魔問わずに保存されたそれらが、浮いてこないように棒で突き沈めているのは、かつて死体をこのプールに沈めていた張本人達
都市伝説『死体洗いのアルバイト』に呑み込まれた契約者達である
そんな呑み込まれた契約者達が、じっとこっちを見ている
表情も声も動作も無いのに、まるで新しい人員を歓迎するかのような雰囲気だけは感じられる
「呑まれた方が、確かにずっと一緒に居られるんだろうけどな」
折り重なって水底に沈む死体達の中に、片手が無く胸に矢傷のある彼女の姿が見えた
眠っているようだとはお世辞にも言えない、保存された死体としか言いようの無い姿
「本当に……お前はそれで良かったのか?」
死体は何も答えない
「何でそう簡単に生きる事を諦められたんだ?」
死体は何も答えない
「俺は」
死体は何も答えない
「諦められない」
死体が
「自分の命も」
何か
答えるように
「何より、お前の事を」
ごぼりと
口から
泡が漏れ
水面に
ぷかりと
弾けて
消えた
71ふあんていなこころ ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/11(木) 19:18:28.30 ID:GYksxNB40
―――

カーテン越しに差し込む朝日と雀の鳴き声
時計を見れば、朝の6時といった頃合だった
傍らには布団の中で腕にしがみつき丸くなっているコンスタンツェの姿
「私と一緒に寝てると落ち着かないみたいです。しばらく預かって下さい」
と、深夜にデリアが押し付けてきたのである
有羽がアンネローゼと死別した折、この姉妹も大変だったらしい
『アメリカ政府の陰謀論』に操作されたデリアを、姉妹合意の上で殺すところだったという話を聞いた時は流石に驚いた
殺される側だったデリアは割と飄々としていたものの、殺す側だったコンスタンツェは相当に思い詰めていたようで
寝ている間も悪い夢を見ていたのか、抱き枕にされた腕は涙で湿っていた
「……こんな調子じゃ、出ていくのはしばらく無理そうだな」
都市伝説を人間にするという無茶すらやってのけたドクターだが、死者の蘇生については触れようともした事はないらしい
「古今東西、死者を蘇らせる話は得てして悪い結果を招く。都市伝説が関わる以上、既にある伝承の影響は免れないものだしな」
そんな事を言った後に、ドクターは付け加えるように語る
「あとこれはボクの個人的な感覚だがね。死者を容易に蘇らせる事ができる世界は、生きている価値を貶めるものだと思うのだよ。
 コンピューターゲームを例にすれば、数分の戦闘で稼ぎ出せる金銭で蘇る命と、イベントで失われて還らない命。より避けたいのはどちらか……といったところかな」
言いたい事はなんとなく理解できる
だからといって諦められる訳でもない
様々な神話や御伽噺で、恋人を黄泉の国から取り戻そうと画策した者達がどういう末路を辿ったかぐらいは知っている
例えどんな悲惨な末路が待っていようとも、手段があるならば試さなければ気が済まない
そして、それがドクターの思想に相反するものである以上、この診療所に居たままでは為す事はできないと考えていた
「頃合を見て、か」
少なくとも、腕にしがみつき震えながら眠るこの少女が立ち直るぐらいまでは
恋人を蘇らせる手段を探す事も、それが見つからなかった時に復讐の戦いへ身を投じる事も、先延ばしにしておこうと
己の能力の中に封じた恋人に胸中でそっと告げた

『ゆーくんのあほー、蘇りとか復讐とかそういうのはいーらーなーいー。死ぬ前に言ったでしょー、私はゆーくんが幸せに長生きしてくれればそれでいいのー』

弾けた泡から微かに聞こえたかのようなそれは、ざぶりざぶりとホルマリンが波立つ音に紛れて届く事は無かった
72エーテルの忙しいCOA ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/11(木) 19:22:02.23 ID:GYksxNB40
世界が滅びるなら滅びてしまえばいいっす。
知ってるっすか?ボコノン教徒は自殺するときに
「良し、世界を滅ぼしてやる」って言うそうっす。
……世界が滅びた後全部1からやり直すのも
それはそれでおもしろいっす。

U-No.13―Silence

AFサーバー・世界樹の街・ユグドラシル・ルート
――組織調査課COA対策本部――
エーテルはそこの執務室で忙しく働いていた。
部下に命令を出して情報を収集させ
突然ゲームに引き込まれた未帰還者を手厚く保護する。
一般人達に大きなパニックも混乱も起こっていないのはひとえに彼の手腕によるところが大きい。
「くそっ……情報がぐちゃぐちゃだな……
後手後手に回っている」
頭を書いて部下からあがってきた報告書と格闘していると通信が入ってきた。
「……見ない番号だが誰だろう……はいもしもし」
「おう!エーテルの兄ちゃんか?俺だ俺!明久だよ!
どうだ、あれからちったあ腕を上げたか?」
COAの事件が始まる前、手合わせをした上田明久には
エーテルは一応連絡先を残していた。
73エーテルの忙しいCOA ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/11(木) 19:25:46.04 ID:GYksxNB40

力で解決できない、都市伝説関連でトラブルがあったときに連絡するように、と。
「あ、その節はお世話に……どうしました?
明久さんが掛けて来たという事は力で解決できない都市伝説関連のトラブルが起きたと思うんですが……」
「おう……腕っ節じゃどうにもならないことだからな……
兄ちゃん都市伝説の戸籍を取るにはどうしたらいいか知ってるか?
組織の幹部のあんたならそういうの詳しそうだ」
明久からそんな事を尋ねられた。
「詳しい……というよりは通常業務です。受け付けてますよ、都市伝説に人間としての戸籍を与えるの。
都市伝説の隠蔽も調査課の任務に含まれてますからね。戸籍の偽造はお手の物です。
人化は出来ますよね?それなら話は早いです。
とりあえず登録したい氏名と性別、都市伝説は誕生日は分からないんで外見年齢を。
はい……暮地茜……女性で……年齢は16歳くらいと……
写真とか資料も送ってもらえると助かります。
本当は戸籍を与えて大丈夫か細かい審査があるんですが……
明久さんには手合わせをしてもらった恩も有りますからね。
細かいところの辻褄あわせはこちらでやっておきます。
大丈夫ですよ、代議士も弁護士も受け付ける学校町の市役所も抱きこんでますから。
えーと、そちらから資料が届き次第二〜三週間くらい後には戸籍が届けられると思います。
はい、それでは……」
74エーテルの忙しいCOA ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/11(木) 19:30:00.54 ID:GYksxNB40

明久からの通信が終わった後、
天井から小さな蜘蛛が降りてきた。
その蜘蛛から声がする。
イクトミの蜘蛛を介在したテレパシーだ。
「ようエーテル、忙しいところ悪いんだが……ちょっと聞きたい事があってな。
レアード複葉機って都市伝説知ってるか?お前なら知ってると思ったんだが」
「イクトミか……レアード複葉機……?
ああ、時間跳躍した飛行機の……あれの年代化学鑑定を行ったのはFBIだぞ?
アメリカ政府の陰謀論の所有する都市伝説だったはずだ」
エーテルは滔々と説明を始めた。
「時間系のレアな都市伝説でな。タイムスリップの稀有な実証例だ。
その分契約できるものが居なくて厳重に保管されていたそうだが……
数年前に盗み出されたきり所在不明だ。
盗み出された……というよりは強奪された。
何重もの結界や封印からなる防衛機構を無力化し
警備に当たっていた武装し訓練を受けた契約者三十人余りが殺害されている。
犯人がどんな奴で使用都市伝説も不明。
今だ逃げおおせているあたり相当の手練だな」
「……そうか、ありがとよ」
「また何か掴んだら伝えてくれると助かる。
なんにしても情報が足りない」
そういうと、イクトミからのテレパシーが切れたのか蜘蛛はこそこそと逃げ出した


75エーテルの忙しいCOA ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/11(木) 19:34:33.64 ID:GYksxNB40

「……コレだけふざけず事務的なイクトミも珍しいな……
相当にやばい事態が起こってるんじゃないか……?」
今起こっている事態はU-No.過激派が発端となった。
だが今現実に起きている未帰還者はその聖杯を手に入れ、冥界とネットを支配する計画とはまるで関連性がないように見える。
ダレンが襲撃される直前に会ったのも……U-No.13
これは何かの奇妙な符号なのだろうか?
しかしそれならば計画を自分から内部告発して潰す意味が分からない。
何か見落としているような……
そんな歯に物が挟まったような違和感を覚えた時
また新たな通信が入ってきた。
「……もしもし」
「あ、エーテルさんですか。私ですY-No.13の三尾です」
「三尾ちゃんか……」
「大変なんですよ。葉さまがCOAに入っちゃったみたいで」
「マジか……このクソ忙しい時になにやってるんだあの人は……」
エーテルは頭痛に眉間を押さえた。
「探さないでくださいって置手紙と、COAに呼ばれた 
助けて欲しいらしい ってメモが……」
「……助けを求められた?そういえばそんな情報が……
分かった。トラブルに巻き込まれたならこちらで保護する。
そうじゃなくて単独調査をするつもりなら部下にサポートと情報提供をするよう通達しておく」
「何から何まですみません。よろしくお願いします」


76エーテルの忙しいCOA ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/11(木) 19:37:44.13 ID:GYksxNB40

そういって通信は終了した。
「マクスウェル……葉さんを見かけたら事情を聞いて
迷子なら保護、単独調査ならサポートするように
COAにINしているE−ナンバーに通達を……
……ってマクスウェル!寝るな!寝ないでくれ!」
あまりの激務にマクスウェルは栄養ドリンクの散乱するPCの前で突っ伏していた。
「げ、限界だよう……ご………後五分だけ……五分だけ眠らせて……」
「俺も栄養ドリンクや回復系都市伝説で無理やり誤魔化して仕事をするのはもう嫌だ……」
エーテルの表情もかなりやつれている。
他の課にも情報を求める声が多く寄せられ
ネットゲームに疎い人の為に細かく説明しなければならない
只でさえ考えなければならない事が多いのに。
それに加えて……
「現実の任務が無くなる訳じゃないんだよな……COAと現実の都市伝説対策で業務が通常の三倍に……
『教会』が不穏な動きをしてるって聞くしよー!そろそろ休ませて……」

to be……?
77保護された頭のあったかい子  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 19:40:56.58 ID:GYksxNB40
 ニーナを保護して、数日がたった

「お帰りなさい」
「うん、ただいま」

 星が、借りた物件に帰ると、ニーナが出迎えてくれるようになった
 部屋はきちんと掃除されているし、夕食の準備もちゃんとしてくれている
 どうやら、星が帰る時間に合わせて、家事をしてくれているらしい
 探し物は、日中行っているようだ

「お風呂も沸かしていマスが、食事とどちらを先にしマスか?」
「ん〜…お腹すいてるし、食事が先かな」
「では、用意してきマスね」

 てちてちと、キッチンに向かうニーナ
 その後姿を見送りながら

「………意識してないんだろうなぁ」

 と
 星は小さく、苦笑した


「それにしても、ずいぶんと家事が手馴れてるね」

 夕食も終わり、風呂も済ませた後
 何気なく、星はニーナにそう言ってみた
 教会での奉仕活動を思い出すと言っていたから、単に慣れているのだろうか
 そう考えると
78保護された頭のあったかい子  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 19:42:52.52 ID:GYksxNB40
「はい。カイン司祭の下で、家事は完璧に覚えました」

 と、返事が返ってくる

「カイン司祭?」
「そうデス。私に、戦闘技術を初めとして、たくさんの事を教えてくださった方デス」

 戦闘技術、と、やや引っかかる言葉は出たものの
 どうやら、その人を尊敬しているようだ

「へぇ、じゃあ、家事もその人から?」
「いいえ」

 ふるふる
 はっきりと、ニーナは首を左右に振った

「…カイン司祭は、尊敬できる方なのデスが……ご自分の私生活は…と、言うか、家事はまったく出来ないお方でした。料理をすれば怪我をし、食器を洗ったり掃除をすれば食器や家具を壊し…」
「………それは酷い」

 なるほど
 単に、覚えらざるをえなかっただけか

「そ、それでも!尊敬できるお方なのデス。エイブラハム司祭様の次に尊敬しているのデス」

 カインという人物をフォローするように、そう言うニーナ
 必死な様子が、微笑ましい

「そうか、尊敬できる人の下につけたことは、幸運だよね」
「はい!」
79保護された頭のあったかい子  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 19:44:43.41 ID:GYksxNB40
 どこか誇らしげに、微笑むニーナ
 その様子は、歳相応の少女そのものだ

 その胸元で揺れる木で作られたロザリオを、星は何気なく見つめた

(これが、都市伝説っぽいんだよなぁ…それっぽい気配がするし)

 一緒に生活し始めてわかったが、能力を使わなくとも、何となくそれが感じ取れるのだ
 実際、使っているところでも見ない限り、何の都市伝説かはわからないが…

(契約者、なんだよなぁ……何か変なオカマに探されてるって言うし、おかしな事に巻き込まれないといいんだけど)
「??どうかしましたか?」
「ううん、何でもないよ」

 首をかしげるニーナの様子に、星は適当に誤魔化してみせた
 ……この少女が、おかしな事に巻き込まれなければいい
 そうは、思うのだが

(……多分、もう巻き込まれているんだろうね)

 もしくは
 この少女事態が、何かの事件の引き金となってしまうのか
 どちらかなのだろう、と
 そう、感じ取れてしまうのだった





to be … ?
80笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:00:43.89 ID:GYksxNB40
【上田明也の探偵倶楽部48〜夢〜】

「さて、あとは明也さんを探すだけですね。
 聖杯がまだ動き出してないと良いのですが……。」

ステンドグラスに天井を覆われた廊下を一人で歩き続ける男。
「組織」のF-0、サンジェルマン伯爵である。
彼は「組織」に偽りの報告をしながら自らの戦力を使い聖杯の確保に動いていた。
それは全て自らが聖杯を使用する為である。
数千年の時を老いず病まず生きてきた彼の願いは至ってシンプル。
まるで初恋をした少年のように単純。
愛する人の蘇生。
それが実験と探求の名の下に数多の人間の人生を狂わせてきた男の願い。

「――――――――!」

腰から素早く『オーパーツ』の内の一つである銃を抜き取って撃つ。
黒くてドロドロしたその塊は見事に空中で凍結、爆散した。

「さっきからずっとこれだ。聖杯にとって私は異物なんですかね?」

その通り、聖杯は今の持ち主である上田明也を守るべくサンジェルマンの進入を阻んでいるのだ。
81笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:04:27.59 ID:GYksxNB40
「しかしね、空亡か。小さいから良いですけど厄介ですねえ。
 私みたいな都市伝説は触れたら一発でお了いじゃないですか。」

サンジェルマンは不意の攻撃から身を守る為に緋色のローブを羽織っている。
これも元はと言えば名のある都市伝説だ。
だが空亡にそんな防御は通用しない。
空亡、闇を切り裂いて空に現れ全ての怪異を打ち払う太陽と月を司る妖怪である。
特性は都市伝説などの怪異に対する攻撃力補正だ。
防御するまもなく焼き払い、削り取られる。
契約した瞬間に契約者すらも怪異と見なし自動的になぎ払うので今まで契約した人間が発見されてないそうだ。
何故こんな物が聖杯内部にはびこっているのかは解らない。
だが何度か聖杯の内部に潜入したことのあるサンジェルマンにはその理由の見当がついていた。

「明也さんを守る為に、日と月の光を操る怪異が現れたというなら……。
 出来すぎていますね。ひどく出来すぎている。
 やはり聖杯はもう明也さんの願いを叶える為に動いているのか。」
『だとしたら急がなくてはいけない。違うか?』
「―――――!」

突然、後ろから響く聞き慣れた声。
驚いて距離を開けてその方向を確認する。
声の正体を確認した瞬間、サンジェルマンの目から涙が落ちる。
82笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:08:38.22 ID:GYksxNB40
『やぁ、久しぶりだね。』
『元気してた?』
『なんの間違いだか知らないけれど、私生き返っちゃった。』
『いやーあれだよね、武道館満員にして引退したアイドルが』
『三ヶ月後くらいに復活しちゃうレベルの恥ずかしさだよねー』
『私やっぱり此処が自分の居場所だと思うからー、なんつってー。』
『あひゃひゃひゃひゃ、そんなびっくりするなよー。』
「貴方は……、貴方は、やっと会えたのですね?」
『そう、私の名前はフェリシア。君の愛する女だよ。』
『涙拭いて喜べよ、また来る別れのために。』
「ああ……間違いなく貴方だ。会いたかったですよ。」
『はっはっは、そんな顔してちゃせっかくのイケメンも台無しだねえ。』
『嘘だけど。』

【嘘だけど】
それが彼女の口癖である。
それを聞いてサンジェルマンはまた涙を流す。
彼はフェリシアに向けて駆け寄って、彼女を抱きしめた。


83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:10:42.13 ID:mPyAfZzD0
しえんー
84笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:11:57.98 ID:GYksxNB40
「変わりませんね、貴方は。」
『君はすっかり変わったね、目が濁ってしまった。』
『それに手も血まみれだ。本当に救いようがないね。』
『だから、私が一緒に居てあげる。』
「本当ですか?」
『これは、これだけは【本当】だよ。』
「もう二度と貴方を放しません。」
『そうしていただけるとありがたいんだけどね。』
『でも早速手を放してもらわないと行けないようだよ。』

フェリシアは廊下の奥を指さす。
そこには空亡が大量に蠢いていた。

「知ってますよ、そんなこと。」

サンジェルマンの視界にも、つまりフェリシアの後ろの方の廊下にも空亡が湧き出ていた。
既に彼は戦闘態勢に入っている。
サンジェルマンはフェリシアに一枚の紙切れを渡す。

『なぁにこれ?』
「こちらでは契約書と呼ばれています。“契約”が簡単に行えるアイテムですよ。」
『へぇー、便利な時代だね。昔はもっと契約が面倒で重要だったのに。』

一応古代人であるフェリシアは技術の進歩に驚いている。
だが彼女が本当に驚いているのは別のことだった。
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:13:07.18 ID:mPyAfZzD0
えんー
86笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:15:29.42 ID:GYksxNB40
『これで“昔とはすっかり変わってしまった君”と契約すればいいのかい?』
「話が早くて有りがたいですね。」
『しかし私との相性は大丈夫なのかい?』
『蘇ってすぐに飲み込まれるとかギャグにもならないよ。』
『まあ、大丈夫か。』
『君ったら私と相性の良い都市伝説になるために随分自分の身体を弄ったみたいだしね。』
「すいませんね、目の色まで変わって……濁ってしまった。
 貴方が好きだと言ってくれていたのに。」
『構わないさ。』
『私のために存分に汚れてくれ、罪にまみれてくれ。』
『私にはなんのお返しも出来ないけど、傍に居てあげるくらいはできる。』
「それで充分十二分です。」

フェリシアは契約書に現代の物とは違う文字で名前を書く。
彼女が自らの名前を書き終わった瞬間に契約書は黄金色に輝いた。

「―――――――――契約完了。」
『これで良いのかい?』
「ええ。」

何時の間にか持っていた剣を振り下ろすサンジェルマン。
すると空間が歪んで大きな穴が生まれる。
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:15:45.33 ID:mPyAfZzD0
んー
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:18:56.60 ID:mPyAfZzD0
しえしえ
89笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:20:09.78 ID:GYksxNB40
「それでは見ていてください。
 貴方と私の思い出、世界中に散った超古代文明の遺産達!
 我が都市伝説【オーパーツ】の全力を!」

巨大な穴の中から次々に出てくる武器武装兵器銃器火器。
それは槍であり戟であり矛であり剣であり刀であり刃でありスティレットでありハルバードであり
金剛杵でありナイフであり鎖であり鎖鎌であり直刀であり曲刀であり多節鞭であり
流星錘でありミサイルでありロケットであり暗器であり弓であり矢であり
後には救国の聖剣として称えられ
後には亡国の魔剣として恐れられ
後には帝王の愛刀として名を刻み
後には聖人の処刑道具として忌み嫌われ
しかしながら悉く同じ出自を持つ武器達防具達
そう、それは全て人ならざる手によって創られたとされるもの
そう、それはなべて古代より伝わる伝説の品と謳われた物

『うわー、こりゃあすごいやー。私でも美術館とかでしか見たことがないよ。』
「貴方が言うとなんか残念なので止めてください。」
『酷い事言うね。』
「だって本当なんですもの。」

今の人々はそれを【オーパーツ】と呼ぶ。
サンジェルマンの生み出した亜空間から射出されたそれは一瞬で空亡を塵に変えた。
90笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:23:35.86 ID:GYksxNB40
「ふむ、契約によって力が跳ね上がってますね。
 身体に負担はありませんでしたか?」
『いや、まったく、けろりんぱ』
「そりゃあ良かった。ならば遠慮無く力を使って良いようですね。」
『ねえねえ、契約したんだから私も君の力使えるんだよね?』
「ええ、そうですけど……。」
『なら私に何が出来るのか教えてくれよ。』
「貴方は変化系……、だから貴方に出来ることはシンプルでしてね。」
『なんだいなんだい?』
「……黄金錬成。私の能力の中でも一番シンプルですね。」
『ああ、私達の故郷を一瞬で壊滅させたあれかい。』
「今では制御できますからね。」
『おおー、そいつはえらい。』
「ここで私からのお願いなんですがあなたの黄金錬成でやって欲しいことがあります。」
『なぁに?』
「この先に上田明也という男が居ます。
 彼がこの世界を嫌うのを止めるように説得して欲しい。」
『あはは、お話が全く見えないや。』

サンジェルマンは頭をかく。
彼が脳裏に浮かべるのは今までの失敗に終わった聖杯探求の記憶。
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:27:06.84 ID:mPyAfZzD0
しぇーん
92笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:28:11.21 ID:OUlp6+XD0
「そもそも、聖杯は聖杯を求めない人間を選ぶ傾向があります。
 聖杯を求めない人間は基本的にこれといった自らの願いを持ちません。
 だから聖杯が暴走して聖杯を手に入れた人間の願いを無理矢理叶えようとするんですよ。
 たとえば僅かでも厭世的な傾向があれば世界を破壊するとか。
 他にも僅かでも健康な生活を好むだけで欲しくもない不老不死を与えるとか。
 で、願いの邪魔をしようとする外部の人間を排除しようとして聖杯は都市伝説を内部に生み出します。」
『ほうほう』
「どうも今回の願いは世界の破滅らしい。
 そして現れた都市伝説はお誂え向きの『空亡』。
 今回聖杯を手に入れた彼の名前には太陽と月を意味する文字が入っていましてね。
 その人の影響を受けたのかも知れません。」
『で?』
「まあ何度か暴走した聖杯を止めた経験があるんですけどその時は仲間がいましてね。
 今回はどうにも私一人で暴走を止めなくては行けない。
 しかし一人でまともに空亡と闘い続ければ私の方が限界を迎えます。
 そこで貴方にはこの先に居る上田明也を説得して欲しいのです。」
『ぶっ殺せば良いじゃん。その上田明也とかいうの。』
「昔一度今回のことと似たようなことがあってやりましたが聖杯は止まりませんでした。」
『私が説得するしかないのね。この世界に生まれて良かった!とか言わせればいいのね。』
「ええ。彼はもう近くに居るはずです。貴方の黄金錬成で道を造っていってください。」
『解ったよ、じゃあ行くしかないね。』
「あと、上田明也を説得する際の切り札を教えておきます。
 どうにもならなさそうだったら使ってください。」

サンジェルマンはフェリシアに耳打ちする。
それを聞いたフェリシアは少し驚いてから嬉しそうに笑った。
93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:30:36.41 ID:mPyAfZzD0
しえんー
94笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:31:10.20 ID:OUlp6+XD0
『そいつはおめでたいね!』
「でしょう?多分この話聞いたら彼も世界を嫌うとか青臭いこと言わなくなりますよ。」
『あひゃひゃひゃ、その表情が楽しみだ!』
『いやー、そんな彼をぶっ殺すなんて言っちゃ駄目だったね。』
『反省するよ。』
「そう言う訳でお願いします。」
『俺に構うな先に行け、ってか。』
「そんなところです。」
『くー、男前!愛してるぜ!』
「……俺もだよ。」
『…………こんな時だけ昔の口調に戻りやがって、死ぬなよ。』

サンジェルマンは静かに彼女にキスをする。

「この思い出さえ胸に抱いていれば……、もう後悔は無い。」
『おいおい、死ぬなよ?』
「曲がりなりにも医者たる俺が死者蘇生を成功させてしまったんだぜ?
 どの面下げて生きていろって言うんだよ。」
『何を言っているんだ、やめろよ……。』
「――――――嘘だよ、始めて騙されたな。」
『ったく、随分嘘を吐くのが上手くなったね。』
「早く行ってください、この先を、壁を貫いてまっすぐ行けばすぐだ。」

フェリシアは都市伝説の力で聖杯の中心部と今居る廊下の間に黄金の橋を架けた。
彼女は振り返らずにその橋を真っ直ぐに駆けていく。
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:33:21.61 ID:mPyAfZzD0
しええん
96笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:34:29.08 ID:OUlp6+XD0
「さて、俺も腹くくるとしますか。」

緋色のローブを脱ぎ捨てる。
サンジェルマンは白鳥の翼の如く彼の長い腕を伸ばした。
彼は上半身裸だった。
傷一つ無い美しい身体。
科学技術の粋をこらして作りあげられた完璧な肉体。
『組織』の膨大な実験データに基づいた完璧な投薬によってその身体は作られていた。
万を超える屍の上に築き上げられた、“完成された肉体”
それが都市伝説だけではない彼の真の武器でもあった。
さらに万を越える年月の間に鍛錬し続けた彼の武技も決して侮れはしない。
才能が無くても、努力だけで至れる限界まで練り上げられている。

「たとえどんなに罪深いことをしたとしても、この手でまた彼女を抱けた。
 そうだ、この胸に残る記憶さえ有れば……、また人として生きていける。」

背中から光の粒子があふれ出して蝶の羽のような形を作る。
それが開くと同時にサンジェルマンはステンドグラスを割って聖杯空間と現実空間の間の空間に飛翔した。
下を見下ろすと聖杯空間のドームの天辺には黒い太陽のような物が鎮座している。
そこから何体もの小さな空亡が今正に現実の空に昇らんとしていた。

「人外と成り果て、人外を研究し、人外の研鑽の果てに極めた人間の限界、見せてやる。」
97笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:38:50.51 ID:OUlp6+XD0
「テンプル騎士団創設者、サンジェルマン伯爵、不死の賢者、フェリックス・フランクリン!
 誰のためでもなく俺自身と愛する女性の為に!
 ただ一人を愛するが故に世界を壊し、世界を繋ごう!」

サンジェルマンの浮かぶ空間が歪んで弓矢が出てくる。
小型の空亡を二三体射落とすと、沢山居た空亡がすべてサンジェルマンの方に向かってきた。
サンジェルマン、否、人間“フェリックス・フランクリン”は不敵に微笑むとその中に突っ込む。

「黄金錬成! 出てこい、黄金スペースシャトル!」

フェリックスの掌から大量の黄金スペースシャトルが発生する。
契約によって能力が凶暴化しているそれはフェリックスの周囲を衛星のように飛び回る。
そしてそれらはまるで意志があるかのような動きで空亡に突撃し、その度に空亡を撃墜していった。
勿論、空亡の力でシャトルは破壊されているがそれを上回るスピードでフェリックスは黄金を錬成していた。
それによってサンジェルマンに向かってくる空亡がすべて射落とされる。
空亡が出てくる元になっている黒い太陽からまた何体もの空亡我出てきた。
フェリックスは地面に降りたって複数の黄金シャトルを連結させる。
それはあっという間に大砲のような姿をとって空亡達に方向を向ける。

「連結、収束、―――――射出!」

黄金の光の束が黒い太陽をなぎ払う。
フェリックスに向かってきた敵は影も形も無くなった。
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:43:01.97 ID:mPyAfZzD0
しえんー
99笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:45:44.90 ID:OUlp6+XD0
だが空亡は真後ろからも回り込んできていた。
それに気付いたフェリックスは両手を合わせて静かに呟く。

「黄金錬成、生命の樹。」

合わせた両手を開いてそのまま地面に叩き付けた。
彼を中心に地面が一瞬で金に変換されていく。

「生命の樹、知識、基礎、知恵、理解」

フェリックスを守るように純金の樹が展開される。

「峻厳、王国、王冠、……そして」

純金の壁から大量の棘が生えて近づく空亡を刺し貫く。
そして動かなくなった空亡を貫いたままに高々と掲げる。

「―――――――――勝利、美を。」

ドロドロに溶け始めた空亡が黄金に変化していく。

「死体になれば非生物、俺の能力で黄金に変えられる。」

そして空亡だった液状の黄金から再び黄金の樹が生える。
100笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:48:39.62 ID:OUlp6+XD0
「ふむ、この程度なら世界を破滅させるとか言う怪異も大したことがないな。」

フェリックスは黄金の樹で出来た森の中心で黄金の玉座に腰掛ける。
錬金術師が夢見る到達点、黄金錬成。
これを極めた最強の錬金術師“サンジェルマン伯爵”が全力以上に力を使ったからこその風景だ。
黒い太陽の中心から唸るような吠えるようなくぐもった声が聞こえる。

「――――ハッ、そうか。そこまで生きたいか。
 持ち主の願いを曲解して生まれた泥風情がおこがましい……。
 どうせ私を倒してここから出ても、お前らは本当に簡単に押しつぶされるというのに。
 世界がお前のような願望器程度の暴走で終わるほど脆弱だとでも思うのか?
 現に今、俺のような戦士ですらない男一人にここまで押されているじゃないか。
 まったく、出来の悪い芝居だ。だからせめて……」

黄金の玉座からゆっくりと手を挙げる。

「―――――――死に物狂いで、謡え雑念!」

黄金で出来た森が移動を始めた。
それはまるで本物の樹木のように空亡の本体と思しき黒い球体に根を張って浸食する。

「ハハハハハハハハハ!脆い!空亡がゴミのようだ!」

フェリックスがそう叫んだ瞬間、黄金の森が動きを止めた。
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:50:58.64 ID:mPyAfZzD0
しえーんー
102笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:52:18.50 ID:OUlp6+XD0
「……あれ?」

この感覚は覚えがある。
都市伝説の使いすぎで上手く動かなくなった時のそれだ。
もしかして……調子に乗りすぎたかな?
と、フェリックスは後悔する。

「動け!動け!……目をつぶって三秒数えると、はい動いた!」

動く訳がない、巨大な森は沈黙している。
契約によるつながりで契約者が無事だとは解るのだが……。
攻撃の手段が無くなってしまった。
よりによって相手の目の前で。

「うわあああああああああああああ!!!」

フェリックスは叫んでみた、だがどうしようもない。
元々戦士ではない彼の精神は戦闘中のちょっとしたトラブルで脆くもバランスを崩すのだ。
そんな彼の隙を突いて空亡の触手が彼を襲う。
とっさに身をひねって躱したがそれでも触手は彼の肩を貫通した。
肩の傷から黒く熱い泥のような物が注ぎ込まれる。
103笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:53:53.18 ID:OUlp6+XD0
「ちっ!」

薬で調整しているために痛みはない。
居たいと言うことは認識できるがそれ以上の意味は無い。
サンジェルマン伯爵として彼は自らの身体にも投薬と改造手術を繰り返しているのだからこの程度は当然。
問題は痛みの広がっている速度。
全身が空亡によって浸食、破壊されようとしている。
『オーパーツ』の発動も上手くできない。
だがフィリックスは自分の死を半ば受け入れていた。
死者蘇生という許されざる事をした自分はこういう目に遭うのが相応しいと思っていた。

「だがまあ良い……、お前は連れて行くぞ。」

そう言ってフィリックスは自らのベルトに組み込んでいた自爆装置に手をかける。
それは単なる爆弾ではなく空間に作用する機械なので空間ごと確実に空亡を消し去ることが出来るのだ。
人間“フィリックス”はこれが罰だとあっさり自らの命に見切りを付けようとしていた。
だが次の瞬間、彼の視界に白と黒の光を帯びた影が走る。


104笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:56:04.83 ID:OUlp6+XD0
「うぉおおおおおおお!」

極彩色の光の中でそこだけが明らかに異質だった。
サンジェルマンを貫いた触手を切り裂くモノクロの閃光。
彼の耳に聞こえたのは確かにこの聖杯を手にした男の声だった。
空亡に風穴を開けたその男は脇に二人の女性を抱えていた。

「おい、大丈夫……じゃなさそうだな。」
「ええそうですね、来るのが少し遅い。そしてなんですかその両手に花。」
「両手に花は気にするな、手遅れじゃなかったんだから良いだろうが。」

彼を中心に円の軌道で飛び回る一対の日本刀。
そこから発せられる引力と斥力で無重力状態を作り出しているらしい。
先ほどまで空亡の本体が鎮座していた建物の中からこの男は飛び出てきたのだ。

「とまあそう言う訳で、お前の彼女は任せるぜ。」

上田明也はフェリシアと茜をサンジェルマンの所に降ろす。
そして再び空亡に向けて突撃していった、

『只今フェリックス!』
「なんでそんなノリノリなんですか、人が死にかけてたのに。」
『細かいことは気にするなよ〜』
「……成功したんですね。」
『うん、今の彼は聖杯の補助も受けて最高に漲ってるよ。』
『二度と世界なんて滅びちまえとか思わないだろうね。』
「ああ、良かった。」

どうやら自分は死ななくて済むらしいと都市伝説“サンジェルマン伯爵”は胸をなで下ろした。
105笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 20:58:24.39 ID:OUlp6+XD0
上田が縦横無尽に空中を駆け回り空亡と戦っている。
彼は聖杯の支援のせいか普段の彼からは感じられないほどの強い力を発揮していた。

「いやぁ……それにしても強いですね、今の彼。聖杯の支援だけじゃないでしょう。」
『ああ、貴方から教えて貰った「切り札」使ったからね。気合いも入るさ。』
「あの、お二人とも……。」
『ん?どうしたんだい茜ちゃん。』
「一体全体どうして明也さんがあそこまでやる気に?」
「ああ〜、それについては此処を出てから説明しましょう。」
『願いを受けていない以上、あの空亡にもう力は残っていないからね。』
『さっさと倒してここから出て、ゆっくり説明を受けた方が良いと思うよ?』
『君にとっても大きなニュースだ。』

遠くから大量のスカイフィッシュが殺到してくる。
圧倒的な量。
上田の契約する全てのスカイフィッシュがここに集っていた。

「サンジェルマン!手伝え!これだけじゃあまだ倒しきれない!」
「解りましたよ!」
「お前が決めろ、俺が合わせる!」

サンジェルマンが抜き放つのは上田明久が彼に貸した聖剣。
名前は無い。
強いて名指せば十束剣。
日本の神話に於いて神々の扱った聖剣達の総称。
スカイフィッシュに気をとられて空亡は動きが鈍っている。
その隙を突いて彼の身にすら余る極大の剣をサンジェルマンは真っ直ぐに振り下ろす。
次の瞬間、剣から溢れる白い光が空亡を包み込んだ。
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 21:02:09.10 ID:mPyAfZzD0
しえええん
107笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 21:02:16.79 ID:OUlp6+XD0
地面に降り立った上田がサンジェルマンの持ってる刀を見て驚いた表情をする。

「おや、その剣見覚え有るな。
 ……まさかあの馬鹿親父、息子に対してこんな物使う気だったのか。」
「テンションあがると後先考えませんからね、あの人。」
「茜さん、お前の選択は正しかったんだ。あの時馬鹿親父を殺す勢いで攻撃してくれてありがとう。」
「えっ!?いやお礼を言われるってなんかこう……。」

空亡の姿は跡形もなく消え去っていた。
そして役目を終えた聖杯世界が崩壊を始める。

『なーなー皆、そろそろ帰らないとやばくない?』
「それには同意ですね。皆さん、帰りますよ。」
『れっつごーだね!』
「じゃあ……。」

サンジェルマンはコホンと咳払いをする。

「目的達成を以て今回の第五百二十二次聖杯探求を終了とします。
 明也さん、貴方のお父上にも貴方にも大変お世話になりました。
 この恩はかならずお返しします。」
「良いから帰ろうぜ。」
「……そうですね。」

サンジェルマンが指を弾くと風景が一瞬で変わる。
そこはもう上田明也にとって見慣れた探偵事務所の前の風景だった
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 21:03:38.86 ID:mPyAfZzD0
しえーん
109笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 21:05:39.76 ID:OUlp6+XD0
「ところで明也さん、私事務所の中に行って良いんですか?
 あんまり事務所の皆さんと面識有りませんし……迷惑かも。」
「良いんだよ、これからは茜さんともっとずっといっしょに居なくちゃいけないからな。」
「うー、でも……。」
「言ったじゃねえかよ、結婚しようって。」
「でもあれ冗談じゃ?」
「馬鹿だなあ、俺みたいな正直な男が嘘なんて吐く訳無いだろ?」
『わー、フェリックスー、大嘘つきがここに居るよ!』
「それは貴方のことですか?それとも彼?」
『あひゃひゃひゃ、そんなの知らないね。』
「あ!茜お姉ちゃんだ!お寿司いっしょに食べよう!」
「あ、穀雨ちゃん……。」

外が騒がしくなったのに気付いて穀雨が扉から出てくる。
上田は寿司という言葉に反応を示す。

「お兄ちゃんも帰ってきたの?今お寿司が有るから食べてたんだよ!」
「はっはっは、それは楽しみだなあ!
 そうだ、そういえば穀雨ちゃんもお姉ちゃんにな……
 ――――――おい、寿司って……なんだ。しかももう食べてたって……。」

上田はゆっくりとサンジェルマンの方を振り返る。
頬が引きつっていた。
後から出てきた彼方と橙がしまった、という表情を浮かべている。
110笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 21:11:39.57 ID:OUlp6+XD0
「おう、笛吹さん。帰ってきたか!」
「所長、……そこの女の人誰ですか。」
「……気にするな!
 そして友じゃねえか、どうしたんだよ。」
「依頼があってきたんだよ、COA関係でねえ。」

メルと友も後から続いて出てきた。
メルは茜さんの姿を確認した瞬間、苦々しい表情をする。

「オッケー、じゃあ俺が居ない間に何故か注文されていた寿司を食ってからにしようじゃないか。
 とりあえずお前らがどこから金を出したのかゆっくり聞いてからだけどな!」

そう言って、おどけるように笑って、茜さんの肩を抱き、
上田明也は堂々と笛吹探偵事務所の中に入る。

「それよりも何か言い忘れてないですか明也さん。」
『そうだね、彼の言うとおりだよ明也ちゃん。』
「おっと、そうだな。家に帰ってきたらまずこれだ。」

上田は少し恥ずかしそうにしながらその言葉を発する。

「ただいま。」
【上田明也の探偵倶楽部48〜夢〜fin】
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 21:13:29.54 ID:mPyAfZzD0
えーん
112せんせいのへや  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 21:14:27.46 ID:OUlp6+XD0
 にゃー
 ぺちぺち
 にゃーにゃー
 ぺちぺちぺちぺち

 ……何とも、ほのぼのな光景が、部屋の隅で繰り広げられている
 ガラスケースに閉じ込められたままの菊花
 そのガラスケースを、デ……大柄な猫、ダミアが、ぺちぺちと猫パンチし
 それに答えるように、菊花が、内側からガラスケースを叩く
 それに、また猫がにゃーにゃーぺちぺち答える
 ………何を考えているのかいまいちよくわからないが、当人達は楽しんでいるようだ

 結局、ディランの部屋に泊まる事になった繰
 菊花がガラスケースから脱出できない以上、都市伝説能力が扱えない状態が続いている
 …それが、少々不安なのだ
 一応、菊花をガラスケースから脱出させる手段は、ディランの知り合いらしいザンと言う男が見つけ出すようなので…そちらが来るまで、と言う事だ
 すぐ戻るっぽい事を言っておきながら、一行に戻ってくる気配がないが

 今、ディランはキッチンで料理を作っている
 泊まらせて貰うのだから、繰が作ろうかとも思っていたのだが、疲れているだろうから、と押し止められてしまった
 ………まさか、料理ができない、とでも思われているのだろうか
 そうだとしたら心外だ
 せめて、明日の朝食は自分が作ってやろう

 そんな事を考えながら、繰は何気なく、部屋の中を見回した
 …繰が住んでいるのと、同じマンション
 部屋番号を聞いたところ、隣の部屋だった事に盛大に驚いた事はさておき
 部屋の中は、必要最低限の家具しか置いていなかった
 余計な装飾などは、一切ない
 シンプルな部屋
113せんせいのへや  ◇nBXmJajMvU (転載):2010/11/11(木) 21:19:02.64 ID:OUlp6+XD0
 ……唯一、目に付く物、と言えば、写真立てくらいだ
 それも、小さな子供が作ったような……木の実などを乾燥させた物をつけた、手作りの写真立て
 少し気になって、飾られている写真に近づいて、見てみる
 写真に写っていたのは、老人と少女
 どちらも、西洋系の外国人のようだ
 老人に抱き上げられた少女が、無邪気に笑っている
 少女を抱き上げている老人も、暖かで、明るい笑顔を浮かべている
 この二人が何者なのか、繰にはわからない
 ただ、こうやって、写真を飾っているくらいだ
 ディランとは、きっと親しい相手なのだろう

 ……にゃあ、と
 何時の間にか、菊花が入ったガラスケースから離れたダミアが、繰の足元まで来ていた
 ちょこん、と座って、繰を見上げてきている

「………あんたは、この写真の相手、知ってるの?」
「にゃー」

 返事は返ってくるが、何を言っているのかわからない
 そもそも、繰の言葉が通じているかどうかすら不明だ
 何せ、相手は猫なのだから

 ……繰は、写真をじっと見つめる
 無機質な部屋の、唯一の装飾と呼んでも良いであろう、その写真立て
 ………何故だろうか
 この写真に写っている、相手を見ていると

 酷く不吉な、胸騒ぎを覚える、のは

to be … ?
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 21:21:08.78 ID:OUlp6+XD0
なーぅ、代理投下終了ー
もったりとネタ構想していくんだぜ
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 21:22:29.60 ID:mPyAfZzD0
おっと、代理乙でしたー
116はないちもんめ ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/11(木) 21:37:52.68 ID:OUlp6+XD0
数日前
「俺が・・・ですか?」
「うむ、この件は我々で処理する事となった」
K-1の言葉に首を傾げる
「我々・・・K-bセけで?」
「K-0の強い意向でな・・・あの男が何を考えてるのかは知らぬが、確かに捨て置ける問題でもないのは確かだ」
未だに姿すら確認されていない連続猟奇殺人事件の犯人
その処理が俺の次の任務・・・か
「今回、白面金毛は二人とも別件の任務があるので援護に付けないが大丈夫か?」
「問題ありません
 では、俺も独自に調査始めますんで過去の調査に関するデータと報告書の纏めおねがいします」
「・・・ワシに書類仕事をさせるな」
「それ位やれよ、糞爺」

現在 公園
「・・・と、言う事がありまして」
「成る程、それで影守さんがここに」
「犯人の始末は俺が、調査は組織が担当しますので情報規制の方を頼めますか?
 この手の噂は拡大させない方が良い」
「わかっています」
この類の噂は広がるだけで新たな都市伝説を発生させかねない
「お取り込み中すまねェがな、ご両人
 厄介な事になったぞ・・・」
「どうかしましたか?」
美緒さんが部下の警官から渡された無線を受け取る
「・・・・・・なんですって?」
117はないちもんめ ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/11(木) 21:41:04.73 ID:OUlp6+XD0
学校町 東区
「・・・これは」
「惨いな・・・」
小さな商店街の真ん中に咲いた赤い華
その中心にあるのは黒い塊
「この制服は・・・近くの中学の生徒ですね」
「あぁ、登校中に殺られたらしいな」
「目撃者は?」
「この時間だぜ?
 登校中の生徒で溢れかえってた
 目撃者にゃ事欠かねぇよ」
警官が指差した先には同じ中学校の生徒であろう少女が座っている
「彼女は何と?」
「突然飛んできた人形の手足があの子をバラバラに引き裂いた・・・だ、そうだ
 心当たりあるか?」
人形の手足・・・バラバラ・・・
「バラバラキューピー・・・?」
118はないちもんめ ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/11(木) 21:43:16.04 ID:OUlp6+XD0
東区 裏路地
「あはっあっはっはははははははははははっは!!」
お腹を掲げて笑う
何て無様
何て醜い
何て素敵な断絶魔だったんだろう
「子供の方が素直で良いね
 見た?あのもう一人の子の顔!
 あんなに脅えちゃって可愛いったらありゃしない・・・あぁ言う子は早死にするわ
 生き残れないもん
 貴方達もそう思うでしょう?」
「キャハハハハハハハ」               「クケケケケケケケケケ」

          「キヒヒヒヒヒヒヒヒ」

   「ヒャッハッハハハハハハ」     「イヒヒヒッヒヒヒヒヒヒヒイヒイヒ」


周囲に浮く無数のキューピーの首が賑やかに笑う
「さぁ、次はどうしよう?
 人はもう飽きた?
 都市伝説にする?
 それとも契約者?」
一拍置いてゴスロリの少女はくるりとまわる
「次は誰の悲鳴を聞きに行く?」

続く・・・?
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 21:48:05.74 ID:OUlp6+XD0
再び代理投下終了ー
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 22:04:55.15 ID:OUlp6+XD0
121「13使徒」  ◆nBXmJajMvU :2010/11/11(木) 22:22:32.68 ID:OUlp6+XD0
 ーーーーばしっ
 ばしっ、と
 その空間に、音が響く

「そう言えば、聞いたぁン?」
「……何を?」

 どこか甘ったるさの混じった声に、鳥に餌をやっていた少女は顔をあげた
 声の主は、楽しげに続ける

「次の任務先ぃ、日本らしいわぁン」
「………そう」

 少女の反応は薄い
 改めて、鳥達に餌やりを続ける

「あはぁん……っ、あなた、知らないのねぇン?その反応だとぉ」
「………?」

 日本に、あんなちっぽけな島国に、何かあるとでも言うのだろうか?
 少女は、怪訝な表情を浮かべてみせる

「『顔無し(フェイスレス)』『名前無し(ネームレス)』『終わり無し(エンドレス)』の『トライレス』はぁ……今、日本にいるのよぉン」

 ぴくりっ
 少女が、顔をあげた

「本当ですかっ!?」
「本当よぉン。日本の学校街、って場所。そこが、次の任務先なのよぉン」
122「13使徒」  ◆nBXmJajMvU :2010/11/11(木) 22:24:15.42 ID:OUlp6+XD0
 …女の言葉を
 少女は、もはやほとんど聞いていない

 その顔に浮かぶのは……歓喜

「くす……………くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすあははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

 突然、高らかと笑い出した少女
 鳥達が、その笑い声に驚いてめちゃくちゃに飛び回る

「そうですか、そうですか!!あの魔女めは、そんな場所にいるのですね!!そして、次の任務先はそこ!!」

 くるり、少女は回る
 その顔に、狂気交じりの笑顔を浮かべて

「素晴らしい!神の思し召しに違いありません!!私に、先祖の仇をとれとの、神のメッセージに違いありませんわ!!」
「そうよぉン、神の…エイブラハム様の、メッセージよぉン」

 ばしぃっ!!と
 女は、鞭を振るう
 鞭を叩きつけられた相手は………ぴくりとも、動かない
 何度も鞭打たれた顔は、もはや原型は残っておらず
 …それは、もはや人というよりは、ただの肉塊だ

「そうですよねそうですわよね!あぁ、やはり、エイブラハム様は素晴らしい!!私達の救世主!」

 けらけらと、少女は笑う
 その傍らでは、鳥達に体を啄ばまれ貪り食われた人間が、無残な姿に変わっていたのだった

to be … ?
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 22:25:30.39 ID:OUlp6+XD0
他に書くべきネタがあるってのに、なぜか書いたネタ
伏線ってか「教会」編敵の顔見せ
VS裂邪用と、VSトライレスさん用です
124笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 22:27:43.13 ID:OUlp6+XD0
【上田明也の探偵倶楽部47.5〜夢の合間〜】

『なんでこんな雑談してるのかって言うとサンジェルマンからの私へのお願いでね。』
『明也ちゃんのその青臭い絶望そのものを私が絶望させて空亡だかを元から断つんだって。』
『ほら、世界を滅びろって無意識に思ってるならこの世界は素晴らしいって思えばその願いも終わるでしょ?』
『で、明也ちゃんにそう思わせるには私の「下から目線性悪説」が有効らしいから。』
『さぁ、明也ちゃん。そして茜ちゃんも。』
『その巫山戯た絶望を私の異常で非情にぶち殺してあげる。』
『思いっきりへこんでいってね!』

決めポーズまで決めて朗らかに笑うその女性は死んだ魚を見る死にかけた蛸の中の寄生虫のような
どす黒くて薄暗くてグロテスクなくらいに淀んだ暗い目をしていた。

「いや、何を勝手な事言っているのかと。」
「そうですよ、サンジェルマンの契約者だか知らないけど信用できませんって。」
「聖杯としては貴方が異物である以上許可が出次第早急に排除したいのですが。」
『うわっ、ひどいや。完全アウェイじゃないか。』
『良いのかな?』
『そんなこと言っていて?』
『このまま貴重な願いを浪費し続けたらそこの女の子が死んじゃうよ。』

Fを名乗る女は茜さんの方を向いて笑う。

『サンジェルマンに言われていたでしょう?』
『明也ちゃんによる無理な拡大解釈のせいで君の体はボドボド……ボロボロだって。』
「大事なところで噛んだ!?」
『気にしないでよ』

突っ込むといきなり恥じらい始めた。
ミステリアスなキャラのイメージが台無しだ。
125笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 22:32:06.38 ID:OUlp6+XD0
「本当か茜さん?」
「う、……あんまり心配かけたくなかったんですけど。」
「言ってくれよ……。ネコモドキ、そこらへんなんとかできる?」
「願いを受けた以上、とりあえずそこらへんも直しておくね。」
「あ、ありがとうねネコモドキ。」
「ネコモドキ言うな!偶々保管してた奴の姿をずっと見てたからこうなっただけだ!」
『……ほらね?』
『とりあえず彼と茜ちゃんしか知らない話を知っている時点で』
『私と彼の関係に関しては信じてくれるよね?』
「……まぁ、良いだろう。」

コホン、と咳払いをしてFは話を始める。

『まぁ、まず君は無意識以上積極的以下に世界を滅ぼしたい程度の厭世観に悩んでると。』
「……そうらしいな。」
『別に私はそれでも構わんと思うよ。』
『死に向かいたがるのは人間の性さ。』
「まあエロスとタナトスってところか。」
『私理系だからそういうめんどいの知らん。』
「……何こいつ妙に腹立つ。」
『でも、死にたいって欲望と同時に生きたいって欲望も君にはある筈なんだ。』
「俺にはそれが欠けていると?』
『うん、典型的な厨二病の症状だね。』
「ナニコイツムカツク、おいネコモドキ、こいつを……」
『わわわわわ!?待って!ストップ!最後まで話を聞け!』
「……仕方ないなあ。」

最初は偉そうだったのに今ではすっかり駄目駄目である。
なんだろう、この生まれつき全ての人間に負けているような駄目人間のオーラ。
126笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 22:35:48.22 ID:OUlp6+XD0
『サンジェルマンが死んでも良いんじゃね?みたいな顔するなよ』
『流石に怒るぞ』
「ナチュラルに人の心を読むな。
 サンジェルマンに死なれたくなかったら俺をさっさと説得しろ!」
『くっそぉ……、じゃあ耳貸せよ。』
「良いぜ、耳の一つや二つ。」

俺はFとかいう女の口の側に耳を寄せる。

『実はね……。』
「実は?」
『……君の契約してる都市伝説、赤い部屋の茜ちゃんだったよね。』
「うん。あいつがどうした。」
『どうやらお腹に赤ちゃんが居ます。無論、明也ちゃんの……』

彼女の口元から耳を放す。よし決めた、俺は世界を救うぞ。

「あれ、世界を破滅させたいとか言う願いが無くなった?」
「よし、ここから出るぞ。ネコモドキ、最後の願いだ。
 少しの間だけで良い、俺にあの空亡とか言うのを倒す力を寄越せ。」
「へ?リョウカイ。」
「あ、明也さんの目が輝いている!?
 これじゃあまるで最後の戦いを目の前にして全ての悩みを振り切った主人公みたいじゃないですか!
 愛とか希望とか勇気とか平気で言い放つような目をしてますよ!?」
「当たり前だ、俺は世界を救う男だぞ。」

奇跡が起きた、俺の身体の中に今までにないほどの力が漲ってくる。
そして頭の中には新しい正宗と村正の力の使い方が流れ込んできたのだ。
俺はそれに従って二本の刀を抜き放つ。
それは衛星のように俺の身体の周りを巡って引力と斥力を操り擬似的な無重力状態を作り出す。
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 22:36:51.13 ID:mPyAfZzD0
再び代理投下乙ですー
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 22:38:11.73 ID:mPyAfZzD0
あっれー?どうやらスレ情報をうまく取得できてなかったらしい
しえんだー
129笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/11(木) 22:39:02.51 ID:OUlp6+XD0
「二人とも、俺の手を取れ。」
『ヒュー、両手に花だねー。』
「明也さん、一体何が……?」

ふわり、と地面から足が離れる。
スカイフィッシュで空を飛ぶ時のような抵抗はない。
制御は難しいがスカイフィッシュの時と違ってより少ない反動で空を飛べるらしい。

「ここで教えるのもちょっとあれだからなあ……。
 あとで教えてあげよう、絶対喜ぶぞ。
 じゃあなネコモドキ、聖杯の力には感謝するぜ。」
「おう、もう二度と来るな。」
「おっけー。」

ふわふわと中に登っていく俺と女性二名。
正直まだるっこしい。
二人を脇に抱えると俺は村正と正宗の出力をあげた。
ステンドグラスを蹴破って破片ごと宙に浮かぶとサンジェルマンが触手に肩を貫かれている。
刀だけを遠隔操作して触手を叩き斬ると俺はサンジェルマンの前に降り立った。

「おい、大丈夫……じゃなさそうだな。」
「ええそうですね、来るのが少し遅い。そしてなんですかその両手に花。」
「両手に花は気にするな、手遅れじゃなかったんだから良いだろうが。」

あれが俺の戦う敵か。
他ならぬ俺自身のために、俺の絶望と戦うなんて最高に格好良いじゃないか。
俺の絶望程度、俺の希望ですぐに打ち砕いてやる。
女性二名をサンジェルマンの所に置いていくと俺は空亡に向けて真っ直ぐに突っ込んでいった。
【上田明也の探偵倶楽部47.5〜夢の合間〜fin】
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 22:40:45.49 ID:OUlp6+XD0
代理投下しゅうりょー

流石に今夜中に三本目は無理かなー
もさもさ構想は続けるが
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 22:57:35.97 ID:OUlp6+XD0
132単発ネタ:2010/11/11(木) 22:58:55.61 ID:NcT19woHO
王隠堂ぼたんには悩みがある。
二、三日前から変な電話がかかってくるのだ。
prrrrrr prrrrrr prrrrr
「はい、もしもし」
「私メリーさん、今」ガチャン
これだ。
意味も意図も分からない悪戯電話。夜中にもかかってきたため、ぼたんは寝不足である。
それ自体は携帯電話の電源を切ることで解決したのだが、電源を入れればすぐに携帯が鳴りだす。
これでは友達と連絡もとれない。
prrrrrr prrrrrr prrrrr
「……はい、もしもし」
何度目かの着信にぼたんはうんざりしながら、携帯を耳にあてる。
ぼたんは、そろそろきっぱりと言ってやらなければなるまい、と考えていた。
「私メリーさん、今あなたの後ろn」
「貴女ね、迷惑って言葉知ってます?」
「えっ」
「昼も夜も電話してきて、こっちにも都合があるんですよ?だいたいこの電話番号どこで知ったんですか?ストーカーですか?警察呼びますよ?
 貴女、声からしてまだ子供でしょう?電話は玩具じゃないの。こんな事したら、お母さんやお父さんが悲しみますよ。夜中に意味も無く起こされたら、
貴女だって嫌でしょう?だいたい」
「うっっさいわあああぁぁぁ!!」
133単発ネタ:2010/11/11(木) 23:00:03.75 ID:NcT19woHO
「後ろにいるって言ってんだから振り向きなさいよ!何なのよ!?いつまでもくどくどと!!」
喚く少女の声にぼたんは渋々という風に、後ろを見る。
蜂蜜色の髪を腰まで揺らせながら、白いワンピースの少女が若干涙目になっていた。
「ハァ……。
 それでですね。もし夜中に電話すr」
「まだ続くの!!?」
ぼたんの話は長いとは、彼女の家族の談である。
「だいたい、どうして貴女そんな上から目線なんですか?『うっさい』とか『後ろ向け』とか」
「あなた、私が怖くないの……?」
「何ですか、話を逸らさないでください。」
「私メリーさんよ!?都市伝説よ!?もっとこう、何かあるでしょ!?」
「貴女が都市伝説な事は今は重要ではありません。今は貴女の常識はずれな行動について話をs」

「足は、いらんかねぇ?」

「はい?」「え!?」
二人の会話に介入してきた声の方を向く。
にこやかなお婆さんが大きな風呂敷を背負いながら立っていた。
都市伝説「足売り婆」
すぐにソレだと分かったメリーさんは、すぐに逃げる準備を始めた。
(これ以上この女の長話なんか聞いてらんないわ。婆が襲ってる間におさらばよ。)
「足はいらんかね、お嬢さん達。」
「…………達?」
メリーさんも襲う対象であった。
134単発ネタ:2010/11/11(木) 23:00:58.52 ID:NcT19woHO
足売り婆、足はいるかと尋ねてくる都市伝説。
いらないと答えれば足を取られ、いると答えれば、無理矢理足を付けられる。
マイナーなのか、口裂け女のべっ甲飴やポマード、赤い紙青い紙に別の色で答えるような有名な対処法が存在しない都市伝説。
「ちょっと!なんで私にも聞いてんのよ!?同じ都市伝説同士でしょう!?」
「足はいらんかね?」
「私の方を向きながら言うな!!」
「落ち着いてください、メリーさん。こういう場合は契約です。」
「そ、そうね………………て、違うわぁ!!」
「あれ?何か間違いました?」
「契約ってのは都市伝説から人間に持ち掛けるのが話のセオリーでしょ!?なんであなたから契約の話してんのよ!!」
「そういうメタな発言はちょっと……」
「知るかああああ!!」
二人は完全に足売り婆を無視していた。
「足いらんかねぇ…………」
135単発ネタ:2010/11/11(木) 23:02:05.44 ID:NcT19woHO
「このままじゃ埒が明かないわ。さっさと契約して終わらせましょう。」
いろいろと諦めてメリーさんはついに投げ出した。
「じゃあ契約ですね。」「ええ、力を貸してもらうわ。」
長い言い争いの果てに、やっと二人は契約した。
「それで、貴女は何ができるの?」
「敵の後ろに瞬間移動できるわ。」
「ありきたりですね。しかも敵を目の前に能力をばらすなんて……」
「あんたが聞いたんでしょうがあぁぁぁぁ!!」
言い争いは終わっていなかったが。
「じゃあ、とりあえず足売り婆の後ろに移動してくださいな。」
「いや、なんでよ!?待ち伏せされるじゃん!!」
「能力をしゃべってしまったのは貴女の責任ですよ?」
「あれ、私のせい!?」
「ほら早く能力使ってください。ほらほら。」
「だー、もー、やけくそだー!!『私メリーさん、今足売り婆の後ろにいるの』!」
突然、メリーさんの姿が消える。ソレと同時に足売り婆は後ろを向き、
「足はいらんかね。」
瞬間移動したメリーさんの足を掴む。
「うわぁ!やっぱ待ち伏せされ」

ドガンッ

136単発ネタ:2010/11/11(木) 23:03:04.93 ID:NcT19woHO
「足、いら……」ズガンッ
「貴女、押し売りって知ってます?」ズガッ「迷惑なんですよ」グリッ「いらないっていったら?」グチャッ「取る?」グチ
「日本語って難しいと思いますよ?」ズチャ「でも、それだったら」ガンッ「いるって言った時は何もしない」ニチョ「そういうものでしょう?」
「ス、ス、ススス、ストォォォォォップ!!」
「何ですか、メリーさん」
「何、やってんの……?」
「何って、」
ぼたんの手には、高校生ぐらいの女の子の手より、工具箱の中が似合いそうな、金槌。
足売り婆がメリーさんを襲う為に振り向いた瞬間、ぼたんはソレを足売り婆の頭に振り下ろした。
何度も何度も。足売り婆が死に、光となり消えるまで。
「な、なんで、そんな物持ってんのよ……」
「二、三日前からかかってくる悪戯電話にいらいらしていたから。つい♪」
「あ…………………………そう」
「あ、そうだメリーさん」
「ハ、ハイ!?」
「契約したのですから、これからよろしくお願いしますね?」
「え、えぇ、よろしく……」
自分に使われていたかもしれない金槌を見つめながら、複雑そうにメリーさんは呟いた。

137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 23:04:45.30 ID:NcT19woHO
久しぶりなんで
最近の状況産業
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 23:06:57.80 ID:OUlp6+XD0
おっつー!!

COA編本格化
同時に、俺が夏休み中のディランと繰のネタと、COA編後の「教会」編に向けての伏線はり中
新たな作者様の予感
139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 23:28:55.47 ID:NcT19woHO
なるほど
どもっす
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 23:38:49.14 ID:OUlp6+XD0
お腹痛い力尽きるお休み
明日も本スレが残っていますように
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 00:02:29.73 ID:mPyAfZzD0
ねるほ
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 00:02:55.06 ID:6IWLvzlTO
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 00:40:49.70 ID:VzUffLw8O
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 01:07:38.95 ID:VzUffLw8O
145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 01:55:57.48 ID:VzUffLw8O
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 02:30:02.33 ID:VzUffLw8O
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 03:06:15.69 ID:bWkywKnE0
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 04:53:18.62 ID:GV82HMJbP
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 06:47:40.64 ID:6IWLvzlTO
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 07:42:39.64 ID:6IWLvzlTO
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 09:35:26.83 ID:8wJ5w5w90
152(代理):2010/11/12(金) 09:37:46.35 ID:8wJ5w5w90
 彼と知り合ったのは今から十四年前、互いに中学生の時だった。
 たまたま同じクラスで、たまたま隣同士の席で、たまたま視線が良く合って。
 卒業式の日、照れで顔を真っ赤にした彼に告白されて。
 同じ高校に行き、それなりに仲睦まじく、それなりに健全な付き合いで――高校一年の冬、ようやく結ばれて。
 たまに喧嘩はして。周囲からも微笑ましいふたりだと温かく見守られて。
 大学と短大と進路こそ別れたものの、互いの両親も同棲を認めてくれて。
 社会人二年目を迎えようとしていた春、彼と同じ姓を名乗ることになって。

 あの時の出会いから十四年。
 互いに三十路も近くなろうという矢先。
 収入も安定し、そろそろ子供でも、なんて話をしていた矢先。

 彼の葬儀はわけもわからずあっという間に過ぎ去った。
 悲しむ暇もなく、現状を把握することすらできず。何が起きたか理解することすら許されず。
 それぞれの両親が葬儀を取り仕切り、呆然とする間もなく彼は小さな骨箱の中に入ってしまった。
 全てが終わっていた頃にようやく、彼がいなくなってしまったということのみ、理解できた。

 そして――夫の初七日を迎える前に、彼女は行方をくらませた。


153(代理):2010/11/12(金) 09:41:14.35 ID:8wJ5w5w90
 その日、彼は一仕事終えて帰路についていた。
 時間は深夜二時過ぎ。とても仕事帰りとはいえない時間ではあるが。
 胸元の黒のネクタイを緩め、煙草を吸いながら疲れた足取りで自宅である安アパートへ向かっていた。
 声がかけられたのは家についたら着替えて即寝て、明朝に熱いシャワーでも浴びてから出社だな――などと考えていた矢先のことである。

「ねえ……」

 突如かけられた女の声。深夜二時過ぎという時間を考えればありえる話ではない。
 だが、彼に動じた様子がないのは今までにも何度か深夜に声をかけられたことがあるからだ。
 鎌を片手にマスクをしている女だったり、真っ赤なマントを羽織った男だったり、ブーメランパンツ一丁のマッスルだったりと、この町では深夜でも人が活動することを彼は知っていた。
 だからこそ、かけられた声に無視を決め込んだのだ。

「ねえ……知らない……?」

 街灯によって照らされたのは女の姿。
 そこにいたのはエプロン姿のごく平凡な、深夜二時過ぎという時間を考えれば異様ともいえる女だった。
 女も彼の姿を認識できたのだろう、彼の姿を見てふと歩みが止まる。

「あなた、その黒い服……ああ、また来たの? 私の邪魔をするの?」

 彼の服装に何かを得心が行ったらしい女に対し、彼の表情が変わる。――明らかに嫌そうな顔に。

「良く間違えられるが俺は〈組織〉とは無関係な一般市民だ」
「嘘。嘘つカないで。――ああソう、アなたがあの人ヲ隠したのね。ダから何度も何度も私を狙ウのね」

 女の目は彼を映してはいない。
 彼が身に着けている黒いスーツのみを映していた。
154(代理):2010/11/12(金) 09:44:38.75 ID:8wJ5w5w90
「あノ人はハドこに行っタの? ネえ、どこ? どコにいルノ?」

 ――取り憑かれている。
 話の噛み合わぬ支離滅裂な会話だけではない、生気のない眼だけではない。
 女の言う「あの人」への異常な執着心。
 そこに何かが取り憑いた。

「鉄道模型を捨テたダケなの、アの人はどこにいるの? 衣装ケーすがなイノ、アの人ガいなクナッて私はどうスレばいイの」
「鉄道模型? 何の話だ?」
「返しテ! カえして! アのひトヲ返してよ!」

 何度も歯を打ち鳴らし、ぐるりと女の目が反転すると同時に、ざわりと頬を生温い風が吹き抜ける。
 どこからか聞こえてくる列車の疾走音。
 レールの上を走らない列車は静穏な夜の住宅街を疾走――というよりは爆走――して、背後から突っ込んできた。

「……チッ!」

 黒服を飲み込んだ暴走列車は、女の目の前で今まで存在すらしていなかったように幻のように消え去った。
 また徘徊を始めるべく動き始めた女の足が止まる。
 わずかに感じる違和感。
 嗅覚ではない感覚で嗅いでいたヒトの臭いがない。
 今まで轢殺してきた黒服にすら存在していた死の香り。それが感じられない。

 もし、女が取り憑かれていなければ気づいたであろう。
 列車に轢き殺されたのであれば必ずある死体。
 原形を留めることすら許されぬほどにちぎれて飛び散っているはずの死体と大量の血。
 考えもしなかったのは取り憑かれ、狂っていたからに他ならない。
 そしてわずかに感じた違和感――それは、狂っていたからこそのまともな感覚。
 その感覚が告げる。
 男は背後にいる、と。
155(代理):2010/11/12(金) 09:47:19.34 ID:8wJ5w5w90
「あんた、今年の頭に事故で旦那を亡くした、――さんだな?」

 彼の告げた名前。
 それこそが十四年も前から想い続けてきた男の姓であり、齢二十四の頃から名乗ってきた女の姓であった。

「どウシてアなたがワたしのなマえをしッているノネえアナたがあのひトヲかクシテいるのねあノヒとをかえしテドうしてどコニつれていったのあのひトハドこにいルの」

 一切抑揚のない声。
  ただ、淡々と頭の中にある言葉をただ口に出しているだけだ。
 対して、彼もただ淡々と事実のみを口にした。

「あんたの旦那は事故で死んだ」
「……?」
「大雨暴風警報が発令されていた晩、単身事故を起こして死亡。――あくまで俺が聞いた話だがな」

 理解しているのかいないのか、生気の無い目には何の感情も感じ取れない。
 ――が、不意に女の顔が笑顔に変わる。頬の筋肉で形成された偽物の笑顔。

「アノひとハイえをでるときいっタノよいッテきますってイったのよヘヤガひろくナっタのヨイシょうケーすふタつにおさマっタのヨ」
156(代理):2010/11/12(金) 09:50:36.13 ID:8wJ5w5w90
 二〇〇六年三月、「便所の落書き」と呼ばれる某巨大掲示板にて、ある書き込みがされる。


802 名前:おさかなくわえた名無しさん 投稿日:2006/03/10(金) 17:32:24 ID:s2RHsW2o
上にコレクションについての話がありましたけど
私は夫のコレクションを捨ててしまって後悔した立場でした
鉄道模型でしたけど

かなり古い模型がまさに大量(線路も敷いてて一部屋使っていた)という感じでした
結婚2年目ぐらいから「こんなにあるんだから売り払ってよ」と夫に言い続けたのですが
毎回全然行動してくれずに言葉を濁す夫にキレてしまい
留守中に業者を呼んで引き取ってもらえるものは引き取ってもらいました

帰ってきた夫は「売り払ったお金は好きにしていい」「今まで迷惑かけててごめん」と謝ってくれました
残っていた模型も全部処分してくれたのですごく嬉しかったです

でもその後夫は蔵書をはじめ自分のもの全てを捨て始めてしまいました
会社で着るスーツとワイシャツや下着以外は服すらまともに持たなくなり
今では夫のものは全部含めても衣装ケース二つに納まるだけになってしまって

あまりにも行きすぎていて心配になり色々なものを買っていいと言うのですが
夫は服などの消耗品以外絶対に買わなくなってしまい
かえって私が苦しくなってしまいました

これだけ夫のものがないと夫がふらっといなくなってしまいそうですごく恐いのです
こういう場合ってどうしたらいいんでしょう
157(代理):2010/11/12(金) 09:53:04.20 ID:8wJ5w5w90

 事実かどうかもわからないこの書き込みは、あちこちにコピペされることによりいつしかネットロアへと昇華した。
『鉄道模型を捨ててから、夫の様子がおかしい』という名の都市伝説が、いつ、どこで彼女に取り憑いたのかはわからない。
 ただ、彼女の現状を見るに、精神の奥深くまで侵蝕してしまっている。
 都市伝説と契約を交わした契約者が良く使う表現をするならば「飲まれて」いる。

 女に契約を解除させれば助かるかもしれない。
 だが、それは不可能だと男は考える。
 第一に、彼女と都市伝説の関係は契約ではなく憑依。
 彼女が暴走列車を召喚した時に彼女の目が反転して意識が途絶えたのは、自己を守ろうとする本能によるものだ。
 契約による拡大解釈以上の能力の発揮ではなく、憑依することによる強制的な拡大解釈。
 第二に、彼女が都市伝説と出会う前から狂っていた可能性が高い。
 少しずつ侵蝕されていたならば
 第三に、都市伝説の侵蝕率が八割を越えている。
 いつ完全に飲まれてしまってもおかしくはない。
 辛うじて引き止めているのは、支離滅裂な言動の中で一貫して出てくる「あの人」こと彼女の夫のことが気になっているからだ。
 そして決定的な事項――彼には都市伝説を強制解除する手段がない。


158(代理):2010/11/12(金) 09:55:55.07 ID:8wJ5w5w90
「あノヒとはどこにいくノドこにいッタのかくさないでねエキイてルあのヒとをかエシてはやくはやくはやく」

 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく
 かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
159(代理):2010/11/12(金) 09:59:32.89 ID:8wJ5w5w90
 女の目がぐるりと一回転すると同時に再び音が聞こえてくる。
 レールも何もない住宅街を列車が暴走する音が。

 ――同時に、彼は動いていた。
 女の髪を掴み、右に引くことで上体を倒れかけさせ、右手で髪ごと頭部を、左手で顎を固定し、そのまま半回転。

 ごきり。

 不気味な、それでいて単純な音が聞こえた。
 暴走列車は不意に消え、女は力なく崩れ落ちた。

「……『ひとりで勝手に死んだこと後悔させてやる』って葬儀終わった時に言ったのはあんただろうが。
 なんで自分見失って化物に憑かれてんだよ。」

 数ヶ月前の葬儀で呆然自失となっていた彼女は葬儀が終わった翌々日、葬儀担当者だった彼が集金に訪れると笑顔を見せた。
 夫の身に何が起きたのかを理解した上で、彼女はようやく涙を見せ、そして最後に笑ったのだ。――泣きながら、哀しげに。
 彼女が何を考えていたのかはわからない。
 もしかすると、その時からすでに――全ては彼の想像の中でしかない。

「こういう仕事こそ〈組織〉の連中がやれよ」

 誰に聞かれることなく呟くと、その場を後にした。
 立ち去る直前、仲睦まじい夫婦の気配を感じたような気がしたが、無視を決め込んだ。
 明日もまた、葬儀屋の仕事が残っているのだ。


160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 10:28:00.60 ID:8wJ5w5w90
161単発ネタ:2010/11/12(金) 11:21:31.28 ID:6IWLvzlTO
いくら竹刀を振ったとて、真剣で戦えるかは分からない。
しかし、何もしないよりは良いだろうと、俺は剣道を始めた。
俺の家は、それなりに由緒ある家系である。家は広いし、金もある。
そして、親父の部屋にある刀。
刀それ自体はたいした物じゃない。ってか模造刀だし。重要なのはその刀には都市伝説がついている事。
祖父の持ち帰ったソレは親父の物となり、そして次期当主(予定)の俺の物となる。
だから、

だから……

「だから、」
「ここで死ぬわけにはいかないんだよおおおぉぉぉぉ!!!」

俺の横にはイタチのような生物。こいつは、まあいい。
問題なのは、俺を追いかけてくる男だ。
都市伝説「ベッドの下の殺人鬼」…………たぶん。
「待てやこらぁ!」
「待ったは殺すだろが!」
「だから、わいが助けたるゆうとるやんか」
待てと言ったのは当然、ベッドの下の殺人鬼。断ったのは俺。そして最後が、俺の隣を飛んでいるイタチ。
都市伝説と戦うなら都市伝説と契約を。都市伝説を知る者なら(一部を除いて)常識だ。持っている竹刀で応戦などできはしない。
だが、だ。
162単発ネタ:2010/11/12(金) 11:22:45.60 ID:6IWLvzlTO
「断る!契約はしない!」
「なんでやねん!?このままやと殺されるで!!」
「お前と契約したら、他と契約できなくなるじゃないか!」
そう、契約には容量が必要だ。そして俺の容量は、親父のあの刀とぎりぎり契約できる程度らしい。
あの刀を俺が受け継ぐ為には、契約などできない!
「今死んだら意味無いやんか!」
「俺はどうすればあああぁぁぁぁ!!?」
「さっさと契約せんかアホ!!」

「ハッハッハッ!そんな逃げるしかできない腰抜け、契約したところで役に立つか!」
追いかけてくるベッドの下の殺人鬼が、何か言って、
何か言って
何か……言って、
「おい、イタチ、契約するぞ……」
「い、イタチ?ええけど、何やいきなり?あんな嫌がっとったのに。」
奴と戦う為、それ以外に契約するのにどんな理由があろう。俺は今、戦わなければならない。
「バカだアホだとはよく言われる。愚図だ間抜けだと言われようと気にしゃしない。負け犬だと後ろ指さされても構わない。
 だが!この王隠堂竹光、臆病者だと思われるのは我慢ならん!!」
俺は振り返り、持っていた布袋から竹刀を取り出し、殺人鬼に向ける。
163単発ネタ:2010/11/12(金) 11:23:58.35 ID:6IWLvzlTO
「行くぞ!」
そう言って俺は、殺人鬼「のいる方向」に竹刀を振るう。
竹刀の先から出る、漫画のような飛ぶ斬撃。風の刃。
「グギャ」
変な言葉をはいて、殺人鬼の首が飛ぶ。
「二度と俺を腰抜けと呼ぶな!」
「もう死んどるがな」
俺が今契約したイタチの正体は鎌鼬。鎌鼬だからってイタチの姿なのは安直すぎやしないだろうか。
いや、そんな事は今はどうでもいい!
「おいイタチ!今すぐ契約解除だ!」
「嫌や。何でせっかく見つけた契約者逃がさなあかんねん。」
「お前の都合なんか知るか!解約しろ!」
「わいかてあんさんの都合なんか知らんがな。」
「契約破棄だ!」
「いーややー」

俺が親父からあの刀を貰うまでに、このイタチをどうにかできるだろうか

164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 12:39:02.57 ID:L9dHdDHD0
乙でしたー
何という自分勝手な契約者wwwwwwwwww

こっちの龍一なんて、花子さんと契約したから、家に伝わる刀と契約する容量残ってないのになwwwwwwww
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 13:02:20.22 ID:L9dHdDHD0
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 13:26:00.46 ID:L9dHdDHD0
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 13:43:25.86 ID:L9dHdDHD0
168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 13:59:39.79 ID:L9dHdDHD0
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 14:17:06.76 ID:L9dHdDHD0
170予期せぬ遭遇  ◆nBXmJajMvU :2010/11/12(金) 14:27:42.72 ID:L9dHdDHD0
 …ふらふら
 ふらふらよたよたふらふら

 ややふらつきながら、夕暮れの街中を歩いている少女が一人
 名前は、マクスウェル
 COAでの騒動もあり、激務が続いている最中
 しかし、それでも、食事をとらなければ生きていけない、いかに都市伝説とは言え、だ
 …いや、中には食事をとらなくとも生存可能な都市伝説も存在するが、マクスウェルは食事を必要とする
 そして、買い置きが無くなれば、買ってこなければならなくなるのも当然だ
 忙しいさなか、部下に任せても良いのだが………E-No全体が激務の最中である
 部下の大半が瀕死状態だった為、辛うじて体力が残っていたマクスウェルが買出しに出たのである
 ………買った物の大半が、栄養ドリンクなのが悲しい現実だ

(でも……エーテルは、もっと辛いんだから……)

 そう、彼女の契約者たるエーテルは、彼女達以上に働いている最中であり……正直、某過労死候補生並に過労死が心配される現状になってしまっている
 せめて、COAの騒動が終わったら、ゆっくり休んで欲しい
 マクスウェルは、心からそう考える
 そして、自分に出来ることは、エーテルの負担が少しでも減るように、サポートする事だ
 倒れている場合ではない

 ……そうは、言っても
 ふらふらふらり
 体力という物は、有限である
 決して、無限ではない
 それに、栄養ドリンクという奴は、纏め買いすると重たい、正直重たい
 マクスウェルのような少女が持つには、相当な荷物である
 ただでさえ体力が無い状態では、きつい
 それでも、マクスウェルは、何とか帰路に着こうとして…
171予期せぬ遭遇  ◆nBXmJajMvU :2010/11/12(金) 14:30:15.70 ID:L9dHdDHD0
「………ぁ」

 足が、もつれた
 転びそうになり、顔からのダイブだけは防ごうと、手をつこうとして…

 ……っぽん、と
 その体を、抱きとめられた

「…え」
「大丈夫か?」

 どうやら、親切な誰かが、受け止めてくれたらしい
 ほっとして、マクスウェルは、顔をあげて…

「…大丈夫……ありが、と……………っ!?」

 ……その、人物を、見て
 いや、正確には
 その首元に下げられたロザリオを見て……固まる

(「教会」………っ!?)

 その銀のロザリオは、「教会」所属の証
 学校町には不介入の立場をとっているはずの「教会」所属の人間が、何故ここに…っ

「……?」

 慌てて体を離したマクスウェルの様子に、その青年は首をかしげた
 …西洋系の顔立ち、西洋の男性にしては、若干、身長が低めだろうか
 翡翠色の瞳が、マクスウェルを見つめてくる
172予期せぬ遭遇  ◆nBXmJajMvU :2010/11/12(金) 14:32:51.33 ID:L9dHdDHD0
「……大丈夫か?やつれているように、見えるが…」
「………っ」

 悪魔であるマクスウェルにとって、「教会」は宿敵である
 その「教会」の者から手を伸ばされ、マクスウェルは、逃げようにも体力の限界から、まともに体が動かず…

 青年の手が、マクスウェルに掲げられる
 何らかの攻撃を受けることを、マクスウェルは覚悟して

 しかし
 マクスウェルを包み込んだのは、どこか暖かで、優しい光

「ぇ………」

 体の、疲労感が
 嘘のように引いていく
 寝不足による倦怠感その他も、全てが
 まるで、初めからなかったかのように、消えていく

 何らかの、癒しの力を使われているのだと、理解する
 マクスウェルはきょとん、とその翡翠色の瞳の青年を見つめた

「………大丈夫か?」

 改めて、青年が尋ねてくる
 …何者かも、わからぬ相手に
 迷うことなく、癒しの力を使ってきた、青年
 ………ある意味では、「教会」の教えに、忠実といえる
 苦しむ者に手を差し伸べることを、当たり前として認識している、そのように思えた
173予期せぬ遭遇  ◆nBXmJajMvU :2010/11/12(金) 14:36:44.89 ID:L9dHdDHD0
「…だ、大丈夫……ありがとう」

 ぺこり、頭を下げて、青年に礼を告げるマクスウェル
 ……疲労を癒してくれたのは、ありがたい
 だが、この青年……確実に、マクスウェルの正体には気付いていない
 気付いていたら、流石に、こうやって癒してくる事はないだろう、多分
 ……正体を知られる前に、この青年から離れるべきだ

「そ、それじゃあ……急ぐ、から……」
「あ……」

 栄養ドリンクが半分以上の買い物袋を抱え、逃げるように立ち去ったマクスウェル

 ……本当に
 どうして、「教会」のメンバー……それも、貴重であるが為、あまり本国を離れないはずの治癒能力持ちが、学校町に……?

 今以上に、厄介な事が起きるのではないか
 その嫌な予感を感じながら、マクスウェルは駆け足で帰路に着いた






「………」
174予期せぬ遭遇  ◆nBXmJajMvU :2010/11/12(金) 14:38:46.83 ID:L9dHdDHD0
 ぱたぱたと、小鳥が青年…カインの、肩に降りてきた
 首を傾げてくるその小鳥に、カインは小さく微笑んでみせる

「ん、何でもない…………どうして、怖がらせる事しかできないんだろうな、俺は…」

 目つきの悪さのせいか、それとも、言葉使いのせいか
 なるべく、優しく声をかけるようにしているのだが……どうにも、子供には怖がられてばかりのような気がする
 先ほどの少女にも、怯えられていたようだし
 ……人に、安心感を与えるべき職につきながら、これとは
 自分は、聖職者には向いていないのだろうか…?

「ずいぶんと重たそうな荷物だったし、手伝ってやりたかったんだがな…」

 己の未熟さに、小さくため息をつくカイン
 ニーナも見つからないし……なかなか、うまくいかないものだ

 夕暮れの道を、肩に小鳥を乗せたまま歩いていくカイン
 肩の小鳥は、少女…マクスウェルが走り去った方向を、じっと見つめていたが…

 ………やがて、興味を失ったように、カインに擦り寄っていた


 ……マクスウェルが走り去った方向を見つめていた、その瞬間
 小鳥の目が金色に輝いていた事に、カインは気付いていなかった





to be … ?
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 14:40:30.89 ID:L9dHdDHD0
八尺様の人に焼き土下座orz
体力限界のマクスウェルを見たら放っておけなかった
カっとなって書いた
反省しているが後悔はしていない
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 14:59:09.18 ID:L9dHdDHD0
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 15:15:50.17 ID:L9dHdDHD0
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 15:36:22.98 ID:L9dHdDHD0
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 15:54:57.76 ID:L9dHdDHD0
180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 16:11:46.61 ID:L9dHdDHD0
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 16:29:43.92 ID:L9dHdDHD0
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 16:46:19.90 ID:L9dHdDHD0
183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 16:52:16.71 ID:L9dHdDHD0
ィ                               夕食後もスレが残っていますように
184以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 17:48:32.20 ID:Yf7HDgtB0
保守
185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 18:37:46.68 ID:GV82HMJbP
186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 19:03:23.72 ID:GV82HMJbP
187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 19:21:59.24 ID:I/I9cl370
ごちそうさまほ
188夢幻泡影 † デザートフェスタ終了後  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/12(金) 19:32:11.94 ID:I/I9cl370
さぁて覚えてるか?俺はミナワとローゼちゃんと日天ちゃんと4人でデザートフェスタに行ってたんだ
 ・・・まぁ、途中で色々とイベントもあった訳だが
そんな楽しい時間も過ぎて、俺はローゼちゃん達と別れ、2人で帰路についていた

(裂邪>どうだ?沢山食えたか?
(ミナワ>はい、もうお腹一杯です♪
(裂邪>ウヒヒヒヒ、そりゃよかった。今度翼の兄ちゃんにあったら、礼言おうな

互いに笑みを浮かべる
あぁ、やっぱり俺はこいつの笑顔が好きだ
俺の為に涙を零してくれるミナワより、
俺の為に笑顔を零してくれるミナワが好きだ
俺は、この笑顔を守らなきゃならないんだ
もう、泣かせる訳にはいかないんだ・・・
改めて、そう思う

(ミナワ>ご主人様?
(裂邪>ん、あぁすまん、何でもないよ
(ミナワ>?・・・また、行きたいですね
(裂邪>そうだな、今度はもっと沢山食わねぇと―――
(ミナワ>でも

ぎゅっ、とミナワが俺の腕を抱きしめた

(裂邪>・・・ミナワ?
(ミナワ>・・・今度は・・・2人っきりで行きたいです・・・

釘を刺されてしまったorz

   ...END
189赤い幼星 † デザートフェスタの後  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/12(金) 19:39:28.80 ID:I/I9cl370
流石は噂に聞く「デザートフェスタ」・・・
ここまで素晴らしいデザートを食べたのは生まれて初めてだ・・・

(日天>生きていて良かった・・・ま、まぁ、アイツにも感謝してやらんでもないが・・・
(ローゼ>どうかしましたの?
(日天>え、いや、別に・・・
(ローゼ>お土産も買いましたし、帰って皆で召し上がりましょうね♪
(日天>・・・あ、あぁ

この人まだ食う気か? そしてまだ紅茶飲む気か?
とはいっても、オレもその気なのだが

(日天>・・・そういえば、一つだけ聞いていいか?
(ローゼ>何ですの?
(日天>以前発見した“枝”のような物体・・・あれの正体はまだ掴めてないのか?
(ローゼ>ん〜、蓮華ちゃんも自分の研究と並行して調査してるらしいけど・・・
     どうやら難航しているらしいですわ
(日天>そう、か・・・

数ヶ月前、北方での任務中に偶然手に入れた、黄金色に輝く“枝”
蓮華さんは「蓬莱の玉の枝」と予想していたが、違ったのか?
一応、都市伝説であることには、間違いないらしい
190赤い幼星 † デザートフェスタの後  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/12(金) 19:42:46.11 ID:I/I9cl370
(日天>危険なものでなければいいのだが・・・
(ローゼ>そうねぇ・・・安全であることを祈るばかりですわ

と、その時
オレ達のすぐ側にあるマンホールの蓋が、ガタンと開いた
中から、いやに露出度の高い服を着た茶髪の少女―――R-No.6、ロビィことロベルタが飛び出す

(ローゼ>あらぁロビィちゃん、ごきげんよぉ〜♪
(ロベルタ>やっと見つけた! ローゼさんに日天ちゃん!今すぐ来て!!
(ローゼ>? 今すぐ、ですの?
(ロベルタ>そぉそぉ今すぐ今すぐ!
      R-No.875とR-No.821が、「鼻毛と綿毛、どっちが強いか」って喧嘩始めちゃったの!!
(日天>そいつらは凛々の管轄だろ?
(ロベルタ>それが・・・凛々ちゃんが喧嘩の発端で;
(日天>・・・あのバカが
(ローゼ>元気があっていいですわぁ、おほほほほほ♪
(日天>笑ってる場合か!?早く帰るぞ!

ハァ、また面倒事か・・・だが今日は何故か清々しい
苦痛ではあるが、どうやら本当にアイツに感謝しなければならないらしい・・・

   ...END
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 19:59:04.29 ID:I/I9cl370
ネタ構想中ほ
192以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 20:19:34.94 ID:I/I9cl370
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 20:38:03.69 ID:I/I9cl370
194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 20:46:27.80 ID:TOmyCEBq0
代理乙ですー
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 21:03:35.96 ID:I/I9cl370
ほかほかぬぎたてパンティ成功ならず
196以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 21:12:57.78 ID:TOmyCEBq0
うわぁい、へんたいだー
>>176-183といい、貴方は何を狙ってるんだwwww
197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 21:18:19.92 ID:I/I9cl370
>>196
一言保守もつまんないから遊んでるだけじゃないかwwwwww
198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 21:35:25.61 ID:zGymSzwU0
これはつまり…

ほくほくパンティやほかほかぬぎたてパンティを題材にして何か書けという
隠されてないメッセージだったんだよ!
199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 21:43:56.24 ID:I/I9cl370
>>198
な、何
200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 21:47:38.15 ID:1c2sYKMU0
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 22:03:29.17 ID:I/I9cl370
202赤い幼星 † SS-緑の幼芽  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/12(金) 22:04:57.26 ID:I/I9cl370
【大改革だヨ!蓮華ちゃん】
(日天>R-No.1、折り入って頼みがあるんだが
(蓮華>・・・そんなに改まってどうかしたんですか?

(日天>R-No.0を・・・止めてくれ  (蓮華>は?

(日天>頼む!あの人、自分の書類仕事全部E-No.0の所に持っていって・・・これ以上E-No.0の苦しむ姿を見たくないんだ!!(半泣
(蓮華>・・・よ、よくわかりませんが、頭を上げてください

R-No.上位緊急招集
(蓮華>今後、書類は全て自分で書いて私に提出してください。他人の手を借りるような素振りを見せた場合はそれなりの処置を取ります
(ラピーナ>えー!?  (凛々>急にどしたんや?  (ローゼ>あらぁ・・・;
(日天>(ありがとう、ありがとう蓮華さん・・・)

――――――――

【スパルタだヨ!蓮華ちゃん】
(蓮華>また盗んだのですかR-No.7・・・5時間後に始末書を提出してください
(ラピーナ>5時間後!?

(ラピーナ>やだよー!そんなめんどくさいことしたくないんだよー!!
(蓮華>文句を言わずに早く書いてください

(蓮華>・・・なら、「書かない」という手もありますが?
(ラピーナ>ホント? じゃあラピーナそうするー!

数分後
(ラピーナ>凛々ちゃん助けてぇ!!蓮華さんがラピーナをいじめるぅ!!!(号泣(体中に痣
(蓮華>R-No.8、速やかにR-No.7をこちらに引き渡してください・・・クスクスクス(両手に蔓
(凛々>・・・ウチどないしたらえぇん?
203赤い幼星 † SS-緑の幼芽  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/12(金) 22:09:47.17 ID:I/I9cl370
【ナイス判断だヨ!蓮華ちゃん】
(蓮華>R-No.2、例の書類は書き終わりましたか?
(ロール>マジだるいっつーか書く気起きないっつーか・・・

(蓮華>こちらに来てください
(ロール>(キャッホゥ♪ラピーナみたいに痛めつけられるぅ♪)

(蓮華>ギュッ(ロールの手足を縛る
(ロール>(んひゃあ・・・縛られるだけでゾクゾクするってカンジィ♪)

(蓮華>では、この“何も無い部屋”で5時間大人しくしていてください
(ロール>ハァ!? 放置プレイって嫌いなんだけどマジで!?

――――――――

【皆平等だヨ!蓮華ちゃん】
(蓮華>皆さん、あと30分で締め切りますよ?
(0+2+7+8>はぁーい

(ロール>・・・ねぇR-No.1、R-No.4はどうなってるワケ?
(ローゼ>そういえば見てませんわねぇ
(蓮華>あぁ、彼女はもういいです

(ラピーナ>あー!それってエコヒイキなんだよー!!
(凛々>買収や!蓮華はんがレクイエムはんに買収されたんや!
(蓮華>違います

(蓮華>彼女はとっくに提出済みです
(一同>意外に律儀だった!?
                       ...fin
204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 22:26:53.75 ID:I/I9cl370
205保護された頭のあったかい子  ◆nBXmJajMvU :2010/11/12(金) 22:35:28.82 ID:I/I9cl370
「ねぇ、ちょっと、聞いてみてもいいかな?」
「何でしょうか?」

 ニーナを保護してから、数日後
 星は、何気なく、ニーナに聞いてみる事にした

「ニーナの尊敬している、エイブラハム、って人の話、聞いてみてもいい?」

 何気ない会話の端々から、彼女がその人物を酷く尊敬しているのがわかる
 ……しかし
 しかし、だ
 何故だろうか、星は、どうにもその人物が胡散臭い気がしてならないのだ

「エイブラハム司祭様の事デスか?構いませんよ」

 ぱぁ、と笑顔を浮かべてきたニーナ
 なるほど、尊敬する人の話をするのは嫌ではない、と言う事か

「エイブラハム司祭様は、素晴らしい方なのデス、私のような、身寄りの無い子供を保護し、生きる道を教えてくださっているのデス」

 …身寄りの無い子供を、か
 「組織」でも、身寄りの無い子供を保護するパターンはあるが……そのまま、契約者として子飼いに、というパターンがない訳でもない
 それと、同じようなパターンの可能性もある

「それに、エイブラハム司祭様は、奇跡の力を使う事ができるのデス。「教会」では、我らが主が使わした救世主の候補の一人とされていマス」
「…奇跡?救世主?」

 また、胡散臭いキーワードが…

「そうデス。水をぶどう酒に変えたり、石をパンに変えたり……一つのパンを、百人に分け与える事もできるのデス」
206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 22:36:47.64 ID:ZSx6oYOVO
止めなイカ!!!!!!!!!
207保護された頭のあったかい子  ◆nBXmJajMvU :2010/11/12(金) 22:37:25.34 ID:I/I9cl370
「ニーナは、それを見た事があるの?」
「はい!」

 少し誇らしげに頷くニーナ
 なるほど…彼女も、その「奇跡」の目撃者なのか

「なるほど、凄いね」
「そうでしょう!」

 自分のことでもないのに、嬉しそうなニーナ
 尊敬している人を褒められるのは、嬉しいのだろう
 そのせいか、さらに話してくれる

「それと……私は、見た事がないのデスが……死者を、蘇らせる事も、できるのだそうデス」
「……死者を?」
「はい…………いつか、その力で、お爺ちゃんと会わせてくれる、と、約束してくださっているのデス」

 ほんの一瞬、寂しそうな顔をしたニーナ
 しかし、すぐに名誉であるのだ、とでも言うような表情に変わる

 ………本当に、胡散臭い情報しか出てこない
 確実に、都市伝説能力だとは思うのだが、最後だけは嘘っぽい
 真実なのだとしたら……ヤバすぎる

「?どうかなさったのデスか?」
「ううん、何でもないよ」

 ……もしかしたら
 この子が尊敬している相手は、大変とヤバイ存在なのではないだろうか
 星は、それを強く、感じ取ってしまったのだった                                          to be … ?
208以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 22:38:34.04 ID:I/I9cl370
三面鏡の人に焼き土下座orz
ニーナがぼろぼろ口を滑らせています
一応、エイブラハムを飲み込んだ都市伝説5つの内の一部のヒントなつもり
209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 22:56:22.46 ID:I/I9cl370
にゅ
210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 23:01:18.37 ID:TOmyCEBq0
投下乙ですー

もしかしてエイブラハムって、死んだら暫くしてから生き返るんじゃなかろうか
211以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 23:02:38.30 ID:I/I9cl370
>>210
んー、むしろ、あいつ死なないんだよなぁ…
212以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 23:22:57.82 ID:I/I9cl370
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/12(金) 23:43:06.66 ID:I/I9cl370
おやすみー
明日もスレが残っていますように
214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 00:17:29.34 ID:tLBE4Zth0
215以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 00:37:41.32 ID:uc+3ZWkg0
216単発ネタ:2010/11/13(土) 00:52:13.55 ID:VrxX5exSO
目の前の液体を手ですくい、飲んでみる。
まずい。鉄っぽい味がする。喉に絡んで気持ち悪い。
殺人鬼の中にはコレを飲んでいた人間もいたらしいが、よくもまあこんな物を飲めたものだ。
さて、目の前に横たわるこの死体。どうしようか。

学校帰りに近道に通った路地裏で見つけた女性。
ん?下半身が切り裂かれてるな。
「強姦の証拠隠滅か、趣味で持ち帰ったのか……」
「それはそういうモノなんだよ」
背後から声をかけられた。
振り返るとコート姿の外国人。手にナイフ。返り血。
「なんだ、切り裂きジャックか。」
「なんだ、とは失礼だねぇ。と、言うより君は怖く無いのかい?」
「何が?」
「何が、って……私はその女性を殺した犯人で、都市伝説だよ?」
「あぁ、そんな事ですか。そういう血筋なんで」
「……?」

「な、何してんだお前ら!?」

「んぅ?」「おや?」
217単発ネタ:2010/11/13(土) 00:53:09.90 ID:VrxX5exSO
声の方を向くと、ふむ、中学生ぐらい、僕と同じぐらいの男の子。それと手を繋いでいる小学生ぐらいの女の子、あれは花子さんだな、たぶん。
「そ、そこの男、都市伝説だな!お前らがその人を殺したのか!?」
少年が死体の女性を指差しながら叫ぶ。
んー。んー?
「あれ?お前ら、って事は僕も犯人扱い?なんで?」
「……先程から気になっていたのだが、何故君の口のまわりは血まみれなんだい?」
ジャックが話しかけてくる。
「さっき血を飲んだから。」
「……何故」
「どんな味か試してみたくて」
「理解に苦しむ」
切り裂きジャックにそんな事言われるとは思わなかった。純粋な探究心なんだから、こっちの方が断然健全だと思うんだが。
でも確かに、手も血まみれだし、学ランにも血ついてるし。ジャックと並んだら仲間と思われるか。
「お前らが殺したのかって聞いてんだよ!!」
んー、さっきから「あなたさっきから五月蝿いですね。」
おや、ジャックと意見が一致した。
不意にジャックが走りだす。
「え?うわっ!?」
少年を蹴り飛ばすジャック。都市伝説の力で蹴られた少年は数メートル地面を転がり、うめく。
その間にジャックは都市伝説の方、花子さんを一瞬で地面に捩伏せ、
その首に、朱く煌めくナイフを振り下ろ
「ストップ、ジャック!!」
218単発ネタ:2010/11/13(土) 00:54:14.03 ID:VrxX5exSO
花子さんの首にナイフが刺さる寸前でジャックの手が止まる。
「何ですか?君は私の契約者ではないんですから、命令する権利はありませんよ。」
「ちょっと試したい事があって。その子を殺せなかったら僕を殺して良いから。」
「…………数分だけ待ちましょう。」
「ありがと。さて少年」
ジャックの蹴りの痛みがやっとひいたのか、起き上がりだした男の子に声をかける。
「花子さんを殺した後、君は死ぬ。」
「な!」
男の子が驚いたような声をだす。
「でも、チャンスをあげよう。」
「チ、チャンス?」
男の子から目を逸らさず鞄から手探りでアレを取り出す。
「ここに拳銃がある。」
黒光りするソレを男の子に向ける。
「僕が五秒数える。そして撃つ。その五秒の間に君に与えられた選択肢は二つ。
 逃げるか、撃たれるか。」
男の子が怪訝な顔をする。ふむ、まだ理解できていないらしい。できの悪い子だ。
「つまり、そこの君が契約している花子さんを見捨てて逃げるか。僕に一発撃たれる覚悟でこの銃を取りにくるかって事だよ。
 僕から銃を奪えば、そこの花子さんを押さえ付けている都市伝説を撃てばいい。都市伝説だって撃たれたら無事じゃすまないだろう。隙をついて花子さんと逃げればいい。
 僕は君の心臓を狙うから、君は死ぬかもしれないけどね。」
219単発ネタ:2010/11/13(土) 00:55:07.56 ID:VrxX5exSO
逃げれば、確実に花子さんは死に、自分は助かる。
逃げなければ、高確率で自分は死に、花子さんが絶対に助かる保証はない。が、もしかすると、二人とも助かる可能性もある。
「さて、君はどうするかな?」
男の子が震えながら、花子さんの方を見る。
「おに……ちゃ、たすけ……」
男の子の視線に気づき花子さんが助けを求める。
花子さん、あんなに涙目になって…………
まるで本当に生きているみたいじゃないか。
「ああ、そうだ少年。」
僕の呼びかけに男の子がこちらに顔をむける。
「君は漫画でしか見た事ないだろうけど、本物の銃で撃たれたら、さっきの蹴りの数倍は痛いよ?」
僕の言葉に、ジャックの蹴りを思いだしたのか、男の子の顔が青くなる。
「さて少年、心は決まったかな?」
そして、五秒を数えた。

「私は君と契約しようと思うのだが。君、名前は?」
切り裂きジャックが口を開く。
「契約?また突然だね。下の彼女はほっといて良いの?浮気はダメだよ?」
ジャックの下には花子さん。
少年は、逃げた。
「予想より早く逃げたな。まさか二秒目数えるより早いとは……」
手にした黒光りするモノを見つめる。
パンッ
と、気まぐれに花子さんの顔の近くで発砲。手に伝わる軽い感触。響く安っぽい音。放たれたプラスチックの玉。
220単発ネタ:2010/11/13(土) 00:56:04.78 ID:VrxX5exSO
「一般人が本物の拳銃なんか持ってるはず無いのにねぇ。」
目に涙を溜め、しゃくり上げる花子さんに話しかける。
「ごめ、なさ……たす、ヒック……たすけ……て、ヒック、エグ」
あ、人の話聞いてない。
「助けを求めているぞ?マスター」
どうやらジャックの中では、契約は決定事項らしい。マスターて。
「……助けて欲しいの?」
花子さんに問う。
「ヒック……うん、グスッ」
「んふふ、じゃあジャック、『好きにして良いよ』」
「では、好きなように殺そう」
おやー、助けても良かったのにー、ジャックが殺したいなら仕方ないなー
契約する都市伝説の意見は大切にしないといけないしなー、うんー、仕方ない仕方ないー。
さて、そろそろ帰るか。
「マスター、まだ君の名前を聞いていない」
「んぁ、そだっけ?王隠堂すみれ。よろしく」
「よろしく、マスター。…………すみれ?」
ジャックが花子さんを解体しながら首をかしげる。
「あぁ、この学ランは趣味だよ」
僕は正真正銘、女である。

221以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 01:57:01.60 ID:VIRHa3YpO
ねたほ
222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 02:30:02.72 ID:8zTHDzjBO
223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 05:25:12.70 ID:VS/kr4AOP
224以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 07:07:25.89 ID:VrxX5exSO
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 08:52:20.25 ID:VIRHa3YpO
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 09:24:12.15 ID:VrxX5exSO
227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 09:38:34.19 ID:b5WSqBOM0
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 10:05:17.02 ID:b5WSqBOM0
229『スナッフフィルム』 ◇vQFK74H.x2 (代理):2010/11/13(土) 10:10:25.08 ID:b5WSqBOM0
西区にほど近い、廃棄された製薬会社。
黒服に指定されたその場所に着いた。
錆びついた看板や窓枠の外された外観が不気味な印象を与えてくる。

「なんだか、嫌な雰囲気の場所だね…」
「そう、だね…
でも、紗江ちゃんは私が護るから!」
『都市伝説の気配が致すな…お二人共、用心下され』
アンサーが呟いた。

「お待ちしていましたよ」
建物の入り口から、担当の黒服が姿を現した。
「「…黒服さん?」」
「おや、私が現場にいる事がそんなに不思議ですか…?契約者を担当している黒服も、現場に出る事はありますよ…こちらです」
黒服について、建物内部に入る。
階段を下りて、地下室の、同じような作りの部屋がいくつも並ぶ長い廊下を歩きながら黒服が話す。
「今回の任務ですが…とある都市伝説を救って頂きたいのです」
「都市伝説を…救う?」
「ええ。都市伝説は、忘れられると消滅します。存在を保つには、一人でも多くの人間に存在を知ってもらわなければなりません…貴女方には、この場所にいる都市伝説の存在を保つための手伝いをしていただきたいのです」
どうやら今回の任務はとある都市伝説を救う事らしいが…担当の黒服の不穏な情報の事もあり、その言葉を信じきる事が出来ないでいた。

「……あの、黒服さん…以前お伺いした件なんですが…」
ここで聴き逃したらチャンスが無いような気がして、意を決して、紗江が尋ねる。
廊下の突き当たりの扉を開けながら黒服が呟いた。
「ああ…担当の黒服を変えられるか、という話ですね。その件でしたら、特殊な事情があれば変えられますよ」
230『スナッフフィルム』 ◇vQFK74H.x2 (代理):2010/11/13(土) 10:15:20.92 ID:b5WSqBOM0
あっさりと返ってきた肯定を、喜ぶべきか迷った。

促されて、部屋に入った姉妹。黒服は自分も部屋に入った後、扉を閉めた。
広めの部屋には、二人の黒服がいた。一人は、部屋の中心にビデオカメラを設置している。
もう一人はビデオカメラの近くの床の上に、鉈、鋸、鋏、金属バット等を置いている。
「ぅ…………!」
明らかに異様な光景。そして、部屋の中には猛烈な血の匂いが充満していた。思わず、口元を押さえる。
ふと、部屋の隅に無造作に転がっているものが目に入った。
―家を出るまで生きて話をしていた、姉妹の、両親の死体だった。
「――――――!!」
「ぁ……うあ……!」
悲鳴を上げたはずだったのに、口からは途切れ途切れの言葉しか出てこなかった。

紗江が、紗奈に死体を見せないように、庇うように前に出た。
両親の死体は、巨大な獣にでも食われたかのように所々食い荒らされていて、腹部に至ってはその中身がこぼれ出ていた。本来は射殺されているのだが、その傷口のあった周辺も食われていた。

「ああ…救って頂きたい都市伝説は『スナッフフィルム』といいます。娯楽用に流通させる目的で行われた、実際には存在しないといわれている殺人ビデオの事です。
 なにしろ、存在しないといわれているだけあって、個体数がなかなか確認できていないので…
『スナッフフィルム』が学校町中に広まれば、面白い事になるでしょうからねぇ…
ご両親ですが…娘が死ぬのに、親だけ残しては可哀そうですからねぇ…先にあちらに送って差し上げました」

姉妹の前に立って、笑みを浮かべながら話す、A-No.666。
…それは、ある意味で実験材料と呼べるものだったのかもしれない。

―そんなことの為に、両親を殺したのか
「――貴方っ…!」
言葉が途切れた。いつのまにか傍に来ていた、凶器を並べていた黒服に髪を掴まれて横倒しにされ、仰向けに転がされた。紗江ちゃん!と自分の名を呼ぶ紗奈の声と、
床と擦れる背に感じる痛みにも似た摩擦熱と、髪を引っ張られる痛みを感じながら、そのまま部屋の奥までずるずると引きずられていく。
231『スナッフフィルム』 ◇vQFK74H.x2 (代理):2010/11/13(土) 10:18:47.10 ID:b5WSqBOM0
紗江が引きずられていくのを見て、助けようと反射的に上着のポケットから携帯を取り出した。
直後、担当の黒服に携帯を奪い取られた。
「全く…助けを求めるにしろ、都市伝説の能力を使うにしろ、私を忘れてもらっては困りますねぇ…」
そういいながら、無造作に携帯を開くと、ばきり、と真ん中から二つにへし折った。
携帯の残骸を床に落とし、紗奈の腕を掴むと、部屋の真ん中―ビデオカメラの前に引きずって行き、勢いよく突き飛ばした。

ビデオカメラを設置していた黒服が、カメラを回し始める。

――

部屋の奥まで引きずられ、ようやく黒服が止まった。
起き上がろうとしたら、三、四回ほど顔を殴られた。
黒服が、懐から何かを取り出した。カチャリ、という金属音。パン、という乾いた音と、脚に激痛を感じた。
思わず目を向けると、脚が赤く染まっていた。
黒服が手にしている拳銃から、硝煙が上がっていた。
黒服は拳銃をしまうと傍にあった金属バットを、紗江の左腕に叩きつけた。
二の腕が赤黒く変色し、曲がるべきではない方向に曲がった。
「……………!!」
声も出ないほどの激痛とおぞましい感覚に、額に嫌な汗が浮かんだ。
そうして、首を絞められた。
ぎりぎりと爪が食い込んで、痛い。息が出来ない。苦しい。
少しずつ周囲の音が遠くなっていく中、紗奈の悲鳴が聞こえた。
(紗奈ちゃん……!?)
もがいた右手に、何かが触れた。
それ――小振りの斧を掴んで、黒服の頭に思い切り叩きつけた。生暖かい返り血を浴びた。
首を絞めていた手が外れ、血をまき散らし、斧を頭から生やしたまま、黒服が真横に倒れこんで、動かなくなった。
232『スナッフフィルム』 ◇vQFK74H.x2 (代理):2010/11/13(土) 10:23:06.96 ID:b5WSqBOM0
げほげほと咳き込み、激痛に堪えながら壁を支えにして上体を起こす。
(紗奈ちゃんは―――!?)
視界に、血塗れの紗奈にのしかかった担当の黒服の姿と、三つ首の大きな獣の首の一つが紗奈の脇腹に食らいついているのが見えた。
あの獣が、どこから出てきたかなんてどうでもいい。両親と最愛の妹を害した。それだけ分かれば十分だ。早く殺して、紗奈が手遅れになる前に救急車を呼ばないと。
一人になりたくない、紗奈を失いたくない。
紗江の憎悪に引きずられて犬神が徐々に数を増していくが、その姿は蜃気楼のように揺らいでいて、酷く不安定だった。
紗江は、犬神の数が増える度に、自分が自分で無くなっていくのを感じていた。
(………私はどうなってもいい。紗奈ちゃんだけは、絶対に助ける)
担当の黒服を睨みながら、行って、と犬神達に指示を出す。どうにか形を保っている二十から三十匹ほどの犬神の群れが担当の黒服と、その後ろでビデオを回している黒服に向かっていく。

―――
両親が無残な姿になっていた。巻き込まれて、死んでしまった。
携帯電話を壊された。
一応、アンサーとの繋がりは感じ取れるものの、都市伝説の能力も使えないし、天地達に助けを求める事も出来ない。
(――どうしよう…どうしよう…!)
腕を掴まれてビデオカメラの前まで連れて行かれ、突き飛ばされた。焦りと恐怖と混乱で半ばパニックになっていた紗奈の視界に、担当の黒服の姿が映った。
――担当の黒服がサバイバルナイフを振り上げていて、がつっ、と左の掌を貫通して床に突き刺さった。
「――うぁ……!?」
黒服は、床に置いてある凶器の中から小刀を選ぶと、紗奈にのしかかり、右目に小刀を近付けて――ぶつ、と上瞼に突き刺した。
「――あああああああああああああああああああああああああああ!」
――痛い!痛い!
絶叫を上げた。視界が真っ赤に染まった。
233『スナッフフィルム』 ◇vQFK74H.x2 (代理):2010/11/13(土) 10:26:53.82 ID:b5WSqBOM0
刃ががりがりと瞼の肉を削ぎ、眼窩の骨を削り、神経を寸断しながら何度も何度も抜き差しを繰り返して右目を蹂躙して行く。
自由になっている右手で必死になって小刀を持った腕を引き剥がそうとするも、少女の力では引き剥がせず、ただ縫いとめられた左手の傷を広げていくだけだった。
右目が痛みの坩堝と化していた。涙なのか血液なのかも分からない、熱い液体が頬を濡らしていく。



永遠のようにも、一瞬にも感じた蹂躙が終わりを告げた。
やがて、ごぼ、と濡れた音をさせて、眼球が掘り出された。瞼の裏に、空気が入り込んだ。頬を伝い、眼球は、血の跡を引きながら床に転がり落ちて行った。
朦朧とする意識のなか、涙でぼやけた左目の視界に大きな獣の姿が映った。
直後、脇腹に熱さと苦痛を感じて、一瞬、息が止まった。

呼吸をする度に、脇腹の傷が、絞られる様に痛む。
(…紗江ちゃん、ごめんね…護るっていったのに……)
溢れ出る血液が、体温を奪っていく。
(私…紗江ちゃんに…何にも言えてない……ちゃんと…伝えておけば、良かった…)
紗江への想いを自覚したものの、嫌われたくなくて伝えられなかった事を後悔しながら意識を失った。
閉じられた左目から、一条の涙が零れ落ちた。

「おや…この程度で気を失うとは情けない。もっと楽しませて貰いたかったのですが…
ケルベロス、出てきてしまったんですか。仕方ありませんねぇ…」
A-No.666は、血の匂いに反応して出てきたケルベロスに、やれやれ、と肩をすくめた。
首の一つは、紗奈の脇腹に食らいついている。
(都市伝説の存在を一般人に知らせる訳にも行きませんし……このテープは、過激派への土産にでもしましょうか)
「次は……ハラワタでも、引きずり出してみましょうかねぇ」

『グルァァ!』
犬の咆哮が聞こえ、目を向けると二十から三十匹ほどの犬神が、群れとなってこちらに向かってきていた。
234『スナッフフィルム』 ◇vQFK74H.x2 (代理):2010/11/13(土) 10:29:24.62 ID:b5WSqBOM0
「ひっ………!」
後ろでビデオを回している黒服が、引き攣った声を上げた。
だが、A-No.666に焦りは無い。
直後、ケルベロスの二つの頭が、ごう、と口から炎を吐いて、こちらに向かってきていた犬神の群れを一掃した。
『ギャッ!』と、犬神の断末魔が上がり、灰も残さず消滅した。
炎が消えた後、残ったのは床の焦げ跡と、血に染まり、荒い息を吐きながらこちらを睨み据えている紗江の姿だった。彼女の周囲に何十匹もの犬神がいたが、それらは蜃気楼のように揺らいでいて、酷く不安定だった。
能力に、器の方が追い付いていないだろうことは一目で分かった。
都市伝説に、飲まれかけている状態。放っておいても勝手に自滅する。
何より、ケルベロスの炎に耐えられるものなどいない。
己の絶対な優位を疑わず、A-No.666は笑みを浮かべた。

続く…?
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 10:47:37.47 ID:b5WSqBOM0
戻ってきた時スレが残っていますように
236単発ネタ:2010/11/13(土) 11:27:16.00 ID:VrxX5exSO
誰の馬だろう。
それが王隠堂ひまわりが始めに思った事だ。
ひまわりの家は広い。西洋好きの祖父と日本好きの父親の増改築により、洋室と和室が斑になった奇妙な家である。
ひまわりも、全ての部屋を見た事が無い。とは言え、庭に真っ黒な馬がいれば知っているはずである。
馬は首が無くても大丈夫なんだろうか。
それが次に考えた事だ。
「何あれ……?」
大丈夫なわけがない。小学校高学年程度の知識しか持たないひまわりでも、それぐらいわかる。
ガチャリと、重々しい金属同士が当たる音。
何の音かと見れば、時代錯誤甚だしい西洋の鎧の騎士。
そして、その騎士にも、首が無い。
「二歩下がりな」
「え?」
どこからか声が聞こえた。目の前の騎士ではない。しわがれた女の声。
声につられ、ひまわりが下がった瞬間、目の前を何かが通った。
壁に刺さった剣。その剣の持ち主は目の前の騎士。下がらなければ、頭が切れていただろうその攻撃をしたのは、
都市伝説「デュラハン」
「逃げた方がいいかな……?」
デュラハンが明らかな殺意を持って攻撃してきた事を認識し、ひまわりは駆け出した。
237単発ネタ:2010/11/13(土) 11:28:22.46 ID:VrxX5exSO
「どこに逃げる……?」
ひまわりの足はそれほど速くない。
逃げるなら、誰かに助けを求めたいが、今、ひまわりの家には誰もいない。
兄は大学へ、大きい姉は図書館へ行った。小さい姉は昨日ふらふらと出て行ったきり。
母も父も、家にいる事の方が少ない。今日にかぎってハウスキーパーは休みだ。
ガチャリ、ガチャリと金属の音が屋敷に響く。走るひまわりから離れずについてくる。
「そこを右に曲がりな」
「誰?」
先程の年老いた女の声が聞こえる。
「助かりたいだろう。なら言う通りにしな」
声に従い、迷路のような屋敷を右へ左へと駆け回る。そして、少しずつ少しずつ、デュラハンの鎧の音が遠ざかる。
「そこの部屋に入りな」
その部屋は和室。
そして、部屋の中央にふわふわと浮かぶ、半透明の老女。
「おばあさん、誰?」
「ふん、浮いてんのと、半透明なのは無視かい。ま、アレの孫に私らへの恐怖心なんか期待しとらんかったがね。
 わたしは都市伝説だよ。」
「都市伝説?」
「詳しい説明は父親にしてもらいな。今はあの首無しを何とかしないといかんだろ。」
そう言うと老女はふわふわと漂うように部屋の隅に移動する。そこには、
「これ、使いな」
黒い鞘におさめられた、奇麗な日本刀。
「契約と行こうじゃないか」
238単発ネタ:2010/11/13(土) 11:29:30.45 ID:VrxX5exSO
反りと鎬をもつ湾刀。光に揺らめく銀色の刃先。その怪しい光とは裏腹に、切れ味など無い、模造刀。
子供が持つには長すぎるその刀を、ひまわりはよろよろとふらつきながら構える。
「首無しが来たら思いっきり切り付けな。私が許可する」
「分かりました……?」
いまだ状況が飲み込めていないながらも、力強く頷く。
ガチャガチャと騒がしく金属の音が近づいてくる。
そしてついにデュラハンが部屋の前に姿を現す。
「っ、やあっ!!」
その姿を確認すると、すぐさまひまわりは駆け出し、刀を振り下ろす。
キンッ
が、それはあっさりとデュラハンの持つ剣に受け止められる。そして、
「ひゃっ!?」
そのまま剣を横に振るえば、ひまわりの軽い身体はあっさりと吹っ飛ぶ。
「い、たい……?」
気がつけば、握っていたはずの刀が無い。吹っ飛ばされた拍子に離してしまったらしい。
刀を捜そうと起き上がろうとしたひまわりの前にデュラハンが立つ。
「あ……」
死ぬかもしれない。ひまわりはそう思った。
239単発ネタ:2010/11/13(土) 11:30:20.63 ID:VrxX5exSO
「首無し、あんた刀に『触れた』ね?」
突如、老女が口を開く。
「そのうえ、振り下ろされてた刀を弾いて、強引に『動かした』ね?」
その口から漏れるのは、憎しみ、怒り、悲しみ。憎悪の、怨嗟の、そして、呪いの言葉。
「死者を弔う刀に何すんだい。」
周囲に満ちる、滝の音、赤ん坊の泣き声。
「「「「「『死ね』」」」」」
ガチャンッ、とデュラハンが倒れる。

都市伝説「滝不動」。正確には「滝不動明王」。山形最凶と名高い心霊スポット。
奉納された剣に触れてはいけない、動かしてはいけない。死者を蔑ろにする者に呪いあれ。

「大丈夫かい?」
老女がひまわりに尋ねる。
「あ、はい。大丈夫で、す……?」
結局、何が何だか分からぬまま、ひまわりは答えた。
「それなら、さっさと起きな。これから忙しくなるよ。
 都市伝説について、契約について、私の事、戦い方、いろいろ教える事が多そうだ」
何故か楽しそうな老女を見ながら、ひまわりは自分の人生が大きく変わっていくような感じがした。

240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 12:38:03.36 ID:Wxqhe8MY0
ho
241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 13:32:24.02 ID:VS/kr4AOP
shi
242以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 14:20:12.89 ID:Ud+qRFLt0
投下乙ですー
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 14:49:32.63 ID:DCtGp0Hi0
ただいま
投下乙ー
244旧家の血は覚醒す  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 15:07:35.24 ID:DCtGp0Hi0
 ……扉を、半ば破壊しながら、そこに飛び込む
 花子さんは、翼さんと一緒に、隣の部屋で俺達を足止めしようとしてきた連中の相手をしてくれている
 …花子さんとの距離が離れれば離れるほど、花子さんの能力で作った水の武器を保つのが難しくなる
 だが、この程度で根をあげる訳にはいかない
 俺は、この世の全ての人を護れるような正義の味方ではない
 それでも、せめて、クラスメイトだけでも、護りたいのだ

 ………そう、考えていた

 部屋の中に充満した、血の匂いに
 赤い、光景に
 三つ首の犬に喰らいつかれ、片目を失った紗奈の姿に
 傷つき、それでも紗奈を救おうとしている紗江の姿に

 俺の意識は、赤く染まった



「何者です?」

 侵入者に、A-No.666は、やや煩わしそうに視線を向けた
 これから、楽しいところだというのに

 侵入者は、少年一人
 己の都市伝説の敵ではない
 A-No.666はそう考えた
 どうせなら、この少年も一緒に、スナッフフィルムにその最期を収めて…

「………………ろ」
「…?」
245旧家の血は覚醒す  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 15:09:59.45 ID:DCtGp0Hi0
 小さく、呟かれた声
 少年の、長い前髪で隠された………その歳には似合わぬ、鋭い眼光が
 A-No.666を、ケルベロスを、ビデオカメラをまわしている黒服を、睨みつけた

「−−−−−−−天倉から、離れろっ!!!」

 鋭い怒声が、少年の口から叫ばれた、その瞬間
 A-No.666は、一瞬、己の意識が遠のくのを感じた
 ギリギリのところで意識を保つも、どさり……と、ビデオカメラを回していた黒服が、泡を吹いて倒れた姿が、視界に映り
 ケルベロスですらも、威圧され、それに押し負けたかのように、獲物から牙を離し

 直後
 少年が、床を蹴った
 その手にもっていた……水で出来た、銃の形が、変わっていって

 ぎゃぃん!!??と
 悲鳴が、響く

「な……!?」

 ……ケルベロスの、首、が
 一つ…ない
 ごろん、と床に落ちて、その形を保てずに消え去ろうとしている

 首が、切り落とされたのだ
 血が、辺りに撒き散らされる

「……獄門寺……君……?」

 朦朧とした声で、紗江がその名前を呼ぶ
246旧家の血は覚醒す  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 15:12:35.16 ID:DCtGp0Hi0
 獄門寺と呼ばれた、その少年は……その身に、ケルベロスの血を浴びて、立っていた
 手にもつのは、銃ではなく……刀
 水で作られたそれは、ケルベロスの血が混じり、やや赤くなっている

 ケルベロスが、獄門寺に炎を浴びせようとした
 だが、もう遅い
 その口元に炎が生まれた瞬間には、既に彼はケルベロスのそばまで接近していて

 一閃

 ケルベロスの胴体が、真っ二つに切り裂かれた
 獄門寺の体が、更に血で染め上げられていく

 ケルベロスが、たかが人間の……それの、少年相手に、遅れをとって、倒されるなど!?
 にわかには信じられぬ、しかし、真実そのものの光景を、A-No.666は目の当たりにする

 ………ケルベロスが遅れをとった理由は、わかっている
 先ほどから、この少年が発し続けている、威圧感
 気を抜けば、意識を失いかねないそれが、ケルベロスの動きを鈍らせたのだ
 それは、まるで、選ばれた者だけが、纏うことを許されたような、威圧感
 人の上にたち、人を支配すべき者がもつような、それ
 20にも届かぬ年齢の少年が、それを纏っている

(……待て、よ)

 獄門寺、と
 紗江が、そう、口にした
 その家は、確か…

「………天倉、紗江……………動くな、何も、しなくていい」
247旧家の血は覚醒す  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 15:16:18.84 ID:DCtGp0Hi0
「え………」
「……………………俺が、終わらせる」

 静かに
 静かに、獄門寺は、紗江にそう告げた
 感情が、押し殺された、声

 その下に隠された感情は
 地中奥深く、マグマのように煮えたぎる…………怒り
 それを孕んだ視線が、A-No.666に、向けられた

「−−−−っ舐めるな!」

 獄門寺に、銃を向けるA-No.666
 サイレンサー付きのそれから銃弾が放たれる
 真っ直ぐに、獄門寺の急所を狙い打とうとした、それは………一振りで、防がれた
 銃弾は、彼に届かない

 銃弾を
 水の刀の一振りで、切り落としたのだ

「……な」

 獄門寺が、床を蹴る
 血に塗れた、その姿で
 A-No.666の、その命を、刈り取る為に

 死そのものが、己に向かってきている錯覚
 今まで他人に与えた来たものが、まっすぐに、容赦なく、逃げ場も与えられず、向かってきている錯覚
248旧家の血は覚醒す  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 15:20:23.04 ID:DCtGp0Hi0
 襲いくる死に立ち向かおうと、A-No.666は発砲を繰り返す
 何度も
 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も
 その悉くを切捨て、獄門寺はA-No.666に向かってくる

 ……が

「−−−っ!?」

 一発の銃弾を、防ぎきれず
 それが、左肩に命中した
 わずか、動きが鈍る

 そのわずかな隙を逃すことなく
 A-No.666は、さらに銃弾を叩き込もうとして

 ……かちり

「え」

 玉切れ
 最悪のタイミングでの、それ

 次の、瞬間
 獄門寺は、A-No.666の真正面まで、接近していて

「−−−−−−ぁ」

 己の、首が
 胴体から、切り離されたのを……切り飛ばされた己の首で、確認する
249旧家の血は覚醒す  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 15:23:36.31 ID:DCtGp0Hi0
 どす、と
 その、胴体の心臓が……水の刀で、貫かれた様子を
 そのまま、横なぎに、刀が胴体を切り裂いた様子を、はっきりと、見て

 そして
 血塗れた姿で、無表情の中、しかし、その鋭すぎる眼光に、激しい怒りをともした獄門寺の姿を、見て

「……剣……………鬼…………」


 ……あれは、人ではない
 喩えるならば、剣鬼
 容赦なく命を刈り取る死神そのもの
 その眼差しに捕えられた自分が…………生きられるはずなど、なかったのだ

 獄門寺家
 その名を思い出す
 どのナンバーだったか、その名前を口にしていた
 学校街の、旧家の一つ
 学校街五大旧家が一つ
 日景の家に仕えし、修羅の家系

 獄門寺 龍一
 修羅の家系の、直系の息子
 修羅の血を、最も濃く受け継いだ存在


 死の間際、今更ながら、それを確認して
 A-No.666の意識は、そのまま二度と浮かび上がる事のできぬ、血塗れた闇の中に沈んでいった
250旧家の血は覚醒す  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 15:26:35.09 ID:DCtGp0Hi0

「−−−ッ龍一!」
「けーやくしゃ!!」

 粗方、向かってきていた黒服達を蹴散らし終えた翼と花子さんは、龍一が飛び込んだ部屋の中へと侵入した

 ……まず感じたのは、濃い、血の匂い

「……龍一?」

 部屋の中央に立っている………血塗れの、龍一
 肩から血を流し、全身には、頭からどっぷりと返り血を浴びている
 手に持っていた水の銃は消えうせ、変わりに、持っているのは……水の、刀

「………、ちゃん、紗奈ちゃん……っ!」

 部屋の中に響く、悲痛な声
 打ち抜かれた足を引きずりながら、紗江は意識を失っている紗奈にすがり寄る
 意識を失っているその体にすがりつき、涙を流す

「紗奈ちゃん……や、だ、嫌だ、よぅ………死んじゃ、いやぁ……っ、お願い、死なないで、お願い、私を……置いていかないで………っ」

 遠目から見ても、重傷を負っている二人
 早く治療しないと、手遅れになる

 ざっと、部屋の中を見渡す翼
 ……夫婦と思われる、大人二人の死体
 あれは……もう、無理だ
 泡を吹いて倒れている黒服、それはどうでもいい
251旧家の血は覚醒す  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 15:29:41.87 ID:DCtGp0Hi0
「ッ龍一、来い!」

 叫びながら、翼は急いで姉妹に駆け寄る
 びくり、と紗江が怯えたように見えたが……それどころではない

「龍一っ!」

 動かぬ龍一に、もう一度声をかける翼
 花子さんが慌てて龍一に駆け寄る

「けーやくしゃ!」
「………」

 花子さんにぐいぐいと手を引っ張られ、ようやく近づいてきた龍一
 俯いたその様子から、表情は伺えない

 翼は、懐から携帯電話を取り出し、急いで「首塚」の味方に連絡する

「フィラちゃんっ!瀕死の重傷の奴が二人、怪我人一人!!すぐに治療したい、こっち来てくれ!!」

 翼の言葉に、怯えていた紗江が……小さく、反応した

「……治療……?……助けて、くれる……?………紗奈ちゃん、が……死なずに、すむ……?」
「………必ず助ける、「首塚」の名にかけて!!」

 はっきりと、断言した翼
 その言葉に、安心したのだろうか
 ………限界だったのだろう
 紗江は、意識を失って……紗奈の体に重ねるように、倒れこんだ
252旧家の血は覚醒す  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 15:32:32.68 ID:DCtGp0Hi0
 直後、光が現れる
 駆けつけた「フィラデルフィア計画」の契約者が翼達5人を、まとめて包み込み、「首塚」へと移動させる

 ………その、直前


「…………………また、失敗した」


 と
 龍一が、小さく、小さく………呟いたのだが

 その呟きは、誰の耳にも、届く事は、なかった










to be … ?
253以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 15:33:56.07 ID:DCtGp0Hi0
犬神憑きとアンサーの人に焼き土下座orz
容赦なく、A-No.666の命、奪わせていただきました

…朝起きた後、読んだあの話を見たら、我慢なんてできなかった
外道は容赦なくその命を終えさせろとお告げが来た
筆が止まらなかったんだ


この後、姉妹を治癒した後のシーンとかも書かせていただきたいですー
ので、続き少々お待ちくださいませ
254処理現場  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 16:00:37.17 ID:DCtGp0Hi0
 現場の、建物周辺にいた過激派所属の黒服達を始末し
 屋内に入り込んだ時には、もう、全て終わっていた

 直希からの連絡で、「首塚」所属の者と、あの少女二人のクラスメイトで契約者だという少年が、契約都市伝説と共に内部に進入して居る事は聞いていた
 …それらによって、全ては終わらされていた

 A-No.666と、彼を飲み込んだケルベロスは、死体が消え行こうとしている
 残されたのは、死亡している、あの姉妹の両親と
 泡を吹いて倒れている、黒服
 その手元に落ちていたビデオカメラを、天地は拾い上げた
 中に収められていた映像に、それを叩き壊したい衝動に駆られたが、抑える

 ……これは、重要な証拠になる
 この連中が犯していた、罪の証拠に

「っが!?」

 意識を失っていた黒服の胸元を、踏みつけた
 その衝撃で、黒服は意識を取り戻し……天地の姿に、小さく悲鳴をあげる

「……っし、始末屋……!?何故、貴様が………ぐ、がっ!?」
「…煩い、喋るな」

 冷たく黒服を見下ろす天地
 現場に、穏健派の黒服達が入り込んでくる
255処理現場  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 16:03:07.35 ID:DCtGp0Hi0
「…てめぇは、重要な証人だ。A-No.666が行っていたその行為、全てのな…………楽に尋問が終わると思うなよ。その頭かち割って、脳の中身を覗いてでも、全ての情報を引き出させてもらうからな」

 天地の発言に、黒服の顔が見る見る青ざめていく
 現場に駆けつけてきた穏健派が、その黒服を回収していった

「……この、夫婦と思われる男女の死体は……」
「…処分、はするな………適当な犯人をでっち上げて、「通常の殺人事件」として、処理をしろ。普通に葬儀を行わせる」

 黒服に指示を出す天地
 一部からは煙たがられているとは言え、幼少期から「組織」に所属し続けていたが故、このような時の対処には慣れている
 ヘタな新人の黒服よりもその指示は正確であり、現場の黒服達もそれに従う

 ……もっとも
 今回の、天地の「死体を処分するな」以下の指示は、少々例外的なものではある
 …通常ならば、ここまでされた死体は「処分」され、行方不明扱いにするのが通常だからだ

 ………だが、今回、天地はそれを許さなかった
 まるで、姉妹を助けられなかった事を、悔やんでいるように
 せめて、その両親の死体を、「通常の殺人事件」の被害者と言う事にして……その死を、隠さずに、通常の葬儀を行えるように
 せめて、その墓だけは、存在させられるように
 まるで、姉妹に、気を使ったかの、ような

「…………畜生が…………!」

 小さく、吐き捨てる
256処理現場  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 16:05:50.78 ID:DCtGp0Hi0


 結局、自分には、誰かを救うなんてできないのか
 ………あいつのようには、できないのか


 己の至らなさに、無力さに、苛立ちを感じたように
 天地は、自身への怒りを、そして、A-No.666への怒りを
 決して、隠そうとしないのだった






to be … ?
257以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 16:08:09.49 ID:DCtGp0Hi0
引き続き、犬神憑きとアンサーの人に焼き土下座orz
運良く(?)生き延びたビデオカメラまわしていた黒服は、これからゆっくりじっくり尋問タイムのようです
A-No.666の情報を、じっくり全部吐き出していってね!!

とまれ、助けられなかった天地の後悔
直希も、同様の後悔を抱える事になります
258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 16:26:59.95 ID:DCtGp0Hi0
259以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 16:34:02.21 ID:DCtGp0Hi0
夕食後もスレが残っていますように
それだけが、俺の望みです
260以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 17:50:07.45 ID:VrxX5exSO
ほし
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 18:06:55.54 ID:LGqzgyNX0
保守
262以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 18:30:30.65 ID:vK7lpPj80
やー
263以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 18:48:18.12 ID:LGqzgyNX0
264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 19:05:22.59 ID:LGqzgyNX0
保守
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 19:22:30.16 ID:gmCZ6LII0
ごちそうさまほ
266笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 19:27:52.75 ID:gmCZ6LII0
【上田明也の探偵倶楽部49〜エピローグ1〜】

「ところで上田さん、何故僕が買い物に付き合わされてるんですか?
 本屋への買い物って……、他にもする仕事がたくさんあるじゃないですか。」
「うん、そうは思うんだがレモンがお前を護衛を付けて行けと煩くてね。
 都市伝説の力が思うように使えなくて……。」
「聖杯を手に入れようとした時の戦いですか?」
「うん、まあしばらくごろごろしてれば治るだろ。
 友から聞いた愛美さんの話も気になるしさっさと治さないとな。」

俺と彼方は本屋にいた。
『た○ごクラブ』を買いに来ていたのである。
俺は本来一人で行くつもりだったのだが、レモンがどうしても彼方を連れて行けと煩いので彼方を連れて行くことにした。
前回の戦いで都市伝説能力行使の為の回路が焼き切れそうになったらしく、今の俺に戦闘力はほとんど無い。
護身用に銃は持ってきているが……、今の俺は彼方より弱いかも知れない。

「ところでサンジェルマンさんは?」
「なんか茜さんを見てハンニバルの研究を人道的な形で生かせるんじゃないかってはしゃいでた。
 安倍晴明の母の伝承がどうたらとか人型の都市伝説を母体にすればどうたらとか。
 正直よくわからないね。俺文系だし。」
「そうなんですか……。」
「ああー、そうだ。お前俺の子供の名前付けろよ彼方。
 どうせ笛吹探偵事務所はお前とレモンにくれてやるつもりなんだからその代わりにこれくらい無茶言ってもいいだろ?」
「ええええ!?」

突然の申し出に驚く彼方。
いやぁ……、正直すまない彼方君。
無茶ぶりするほど君は輝いてくれるからつい……。
267笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 19:30:01.83 ID:gmCZ6LII0
「うぅうん……。」
「まあそんなに悩むなよ、この上田明也の子供であるからして明の一文字さえ入っていれば概ね問題有るまい。」
「そうなんですか?」
「ああ、ちなみに俺の親父はお前も知る通り明久、じいちゃんは明幸、ひいじいちゃんは明慧……だったかな。」
「最後の方適当ですね。」
「良いんだよ、とにかく日と月が名前に入って明るい感じが出ているのが大切なんだ。」
「そうなんですか……。」
「そうなのだ!」

二人でぺちゃくちゃと喋りながらた○ごクラブの会計を済ませる。
俺と彼方は書店を出てまっすぐ駐車場の車に向かう。
無論、俺が契約者になった頃からのお気に入りで最近修理が終わったポルシェである。

「それにしてもぶっちゃけ印象どうよ、茜さん。」
「吉静があそこまで懐いているのに正直驚いてます。
 なんていうか本当に……親子みたいって言うか。」
「俺がアメリカに行っていた頃に穀雨をあいつに預けていてな。
 上手く行っているんなら良いんだよ。」
「まあ橙とはまだギクシャクしてるみたいですけどね。」
「あいつはメルと仲良いからなあ、複雑なんだろそこら辺。」
「ですねぇ……。」
「母親が居ないなら奴のことをお母さんと呼んでも良いのだぞ。」
「笛吹探偵事務所にはお母さんポジション居ませんでしたからね。」
「うむ、優秀な俺を中心に兄弟みたいな感じで色々集まってる感がぬぐえぬ。」
「上田さんはお父さんと呼ぶにはあまりにも無責任というか……」
「……まあそこも直していくさ。」

車に乗り込んだ俺と彼方は帰りに少し寄り道していくことにした。
行き先はフォーチュンピエロ、彼方の好きな牛すじカレーを食べることにした。
268笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 19:33:09.70 ID:gmCZ6LII0
三十分後。
ちょっと早い夕食を食べ終わった俺たちはさっさと車に乗り込む。

「彼方お前さぁ、結構小食だよな。」
「そうですかぁ?上田さんは結構食べますよね。」
「だって目の前に旨そうなものあったらどれも喰いたいだろ。」
「う〜ん、食べ過ぎると動けないじゃないですか。
 戦闘にも支障が出ますよ。」
「そっか……、存分に寝て喰って女を抱いて戦って、というのが自然だと思ってたぜ。」
「不健康ですねえ……。」
「うむ、欲望のままにしか生きてこなかったからな。」
「そんなことしてると……。」

彼方が急に振り向く。
俺はその視線の方向に向けて発砲した。

「いや、腹一杯でも急な戦闘には対応出来る。」
「生まれながらに戦士ですね。」
「おう、人は皆戦士だ。」

物陰から俺に向けて真っ直ぐ突っ込んでくる男。
男の放つ炎を彼方が剣を使ってなぎ払った。

「あ、お前かよ。面倒だから帰れ。」
「そうはいかない、やっとお前が事務所から離れたんだからな。」

その男の名前は国中佑介。
俺に妹を殺されて俺を仇と付け狙う男である。
269笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 19:36:30.79 ID:gmCZ6LII0
「まったく、幸せなエンディングにとことん水を差す奴だな……。」
「なんだと?」
「なんでもないよ、こっちの……」

国中は俺が喋っている途中にまた炎を出して攻撃を仕掛けてくる。
とことん下品な奴め。
俺は戦えないので彼方が代わりにそれを防御する。

「上田さん、ここは僕に任せてください。一応護衛ですから。」
「良いだろう、一般の人が来ると行けないからさっさとすませておけ。
 人払いは俺がやっておく。」

サンジェルマンから貰った「組織」の人払い装置を作動させる。
これで契約者以外はこの辺りに近寄れない筈だ。
俺が装置を使ってすぐに顔を上げると勝負は大体付いていた。
戦闘開始後すぐに剣を仕舞って二丁の拳銃を持ち出した彼方。
彼は銃弾によって相手の動きを制限しながら近づいて容赦無く国中を拳銃で殴りつける。

「く、くそっ!」
「これでお了いです!」

銃口で国中の顎にアッパーを食らわせる彼方。
顎骨を砕くように引き金に手をかけて、撃つ。
予想以上にあっさりと国中は敗北した。
所詮ホムンクルスといえど一般人、生まれた時から鍛え抜かれた彼方に勝てる訳がない。
本質からして本性からして違うのだ。

「おい、もういいぞ彼方。トドメは俺が刺す。人を殺すのは俺だけで充分だ。」

そう言うと俺は服の内側から村正を取り出した。
270笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 19:39:25.36 ID:gmCZ6LII0
「待ってください上田さん。」

彼方が拳銃で国中の両手両足の関節を撃ち抜く。
成る程、良い判断だ。

「ふむ、気が効くね彼方。」
「くそっ!こんなに簡単にやられてたまるかよ!」

 お前が邪魔くさいのは、まあ俺にとって問題では無い。
 お前が俺を仇と付け狙うのも俺にとって問題では無い。
 お前の持つ、俺にとっての問題は実のところたった一つだよ。
 ――――お前は俺の敵たり得るほどの能力が無い。
 俺の敵たり得るほどのキャラクター性がない。
 其処の彼方君でさえ初登場時にはもっとキャラ濃かったのに。」

そう言って俺が刀を振り上げた瞬間、どこからか風が吹いてくる。

「ふむ、じゃあ私なら敵になるかい?委員長よ。」
「晶か、最近随分出番が無かったじゃないか。」

風がやむ、俺と国中の間に、一人の女が立っていた。

「お前が俺の最後の敵か、明日晶。」
「どうにもそうらしい、上田明也。」
「其処をどけ、後顧の憂いを断たねばならない。」
「嫌だね、私もやっと見つけた普通の幸せなんだ。」
「お前の如き人外が普通の幸せ?諦めろよ。」
「良いだろ、普通に結婚して主婦になったって。」
「はっ、お前が弟ほどに無能だったらそれも簡単だった物を。」
「まったくだね。」
271笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 19:42:57.71 ID:gmCZ6LII0
「……つーか、話してる内にどけよ。」
「どかないって最初に言ったじゃないか。」
「晶、なんでおまえが……?」
「佑介くん、黙ってて悪かった。私も契約をしていてね。」
「そんな馬鹿な……。」
「なんだ、旦那には言っていなかったのか?」
「そりゃあ普通に生きていくつもりだったからね。」

国中の表情が絶望に染まる。
彼もまた化け物なりに普通の幸せを求めていたのだろう。
復讐のために自らの身体を改造して普通の幸せも何も無いと思うのだが……まあ良い。

「くそっ、都市伝説一つのために俺の人生がどんどん狂っていく……。」
「そういえば晶、お前に俺たちの居場所を教えたのは橙か?」
「…………さぁ。」
「できるだけ誰も傷つかない選択肢、か。無駄だけどあいつらしい。彼方、そこで寝転んでる男が妙な動きをしないように見張っておけ。」
「解りました。」
「そういえば聖杯とか言う死者を蘇らせるアイテムを手に入れたそうじゃないか。」
「ああー、そういえばな。橙の馬鹿、聖杯のことまでもらしてたのか?」
「それで委員長が今まで殺した人を蘇らせてみろよ。そうすればこの場は丸く収まるぜ。」
「おいおい、あんな物で蘇った人間なんて存在する価値ねえよ。
 死者の蘇生は過去を否定する行為だ。
 たとえどんな嫌な過去でも未来を拒絶できないが如く過去も否定できない。
 俺が幾ら気まぐれに人を殺したとてその逆をやってはいけない。俺は人間であるが故。」
「お前の勝手な都合で俺の妹を理不尽に殺しておいてその言いぐさは……!」
「ならごたごた言ってないでお前が聖杯手に入れろよ。化け物。」

ため息を一つ吐いてから国中に向けて言い放つ。

「まあお前にその力があればだけど。」
272笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 19:45:57.77 ID:gmCZ6LII0
「……つーか、話してる内にどけよ。」
「どかないって最初に言ったじゃないか。」
「晶、なんでおまえが……?」
「佑介くん、黙ってて悪かった。私も契約をしていてね。」
「そんな馬鹿な……。」
「なんだ、旦那には言っていなかったのか?」
「そりゃあ普通に生きていくつもりだったからね。」

国中の表情が絶望に染まる。
彼もまた化け物なりに普通の幸せを求めていたのだろう。
復讐のために自らの身体を改造して普通の幸せも何も無いと思うのだが……まあ良い。

「くそっ、都市伝説一つのために俺の人生がどんどん狂っていく……。」
「そういえば晶、お前に俺たちの居場所を教えたのは橙か?」
「…………さぁ。」
「できるだけ誰も傷つかない選択肢、か。無駄だけどあいつらしい。彼方、そこで寝転んでる男が妙な動きをしないように見張っておけ。」
「解りました。」
「そういえば聖杯とか言う死者を蘇らせるアイテムを手に入れたそうじゃないか。」
「ああー、そういえばな。橙の馬鹿、聖杯のことまでもらしてたのか?」
「それで委員長が今まで殺した人を蘇らせてみろよ。そうすればこの場は丸く収まるぜ。」
「おいおい、あんな物で蘇った人間なんて存在する価値ねえよ。
 死者の蘇生は過去を否定する行為だ。
 たとえどんな嫌な過去でも未来を拒絶できないが如く過去も否定できない。
 俺が幾ら気まぐれに人を殺したとてその逆をやってはいけない。俺は人間であるが故。」
「お前の勝手な都合で俺の妹を理不尽に殺しておいてその言いぐさは……!」
「ならごたごた言ってないでお前が聖杯手に入れろよ。化け物。」

ため息を一つ吐いてから国中に向けて言い放つ。

「まあお前にその力があればだけど。」
273笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 19:48:15.46 ID:gmCZ6LII0
その瞬間、国中の中で何かが切れたようだ。
ようだ、と言ったのはその瞬間だったのかよくわからないから。
まるで時間が飛び飛びになったかのように一瞬で俺の胸が貫かれた。
本能的に身を躱していたようだが……結構痛い。
でもそれ以上に心が痛む、貫かれたのは俺の胸だけではないのだ。

「え、なんで?」

キョトン、とした顔の明日晶。
狂ったように笑う国中佑介。

「はは、はははは、あははははははは、ひゃははははは!」

彼方がとっさに銃弾を国中に撃ち込む。
それは国中を貫いて彼の身体から抵抗する力を奪う。
そしてその隙に俺は今度こそ村正で国中の身体を十六分割した。
今の俺ではこの程度が精一杯だ。

「心臓貫かれてまだ平気で動けるなんて……。
 お前こそ化け物じゃねえのかよ?」
「とっさに回避したし大丈夫、俺は意志の力で闘い続けるすげえ人間だ。
 貴様の如き薄汚い三流の化け物と一緒にしないで貰おうか。」

残った国中の生首を踏みつぶす。
胸からこぼれる暖かい血液。
失血死する前になんとか治さなくては……。
274笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 19:50:46.41 ID:gmCZ6LII0
その時、突然辺りに金色の光が満ちる。
俺のピンチに都合良く現れるのはまたしてもあの錬金術師だった。

「お困りのようですね、上田さん。」
「サンジェルマンさん!」
「彼方君、ありがとうございます。貴方が居てくれたおかげで最悪の事態は免れました。」
「都合良く現れてくれたな、治せ。」
「昔の組織を悩ませた其処の彼女もですか?」
「それについては俺も共犯だ。俺を治すならあいつも一緒に。」
「良いでしょう。」

薬を一滴零すだけで俺の胸の穴はみるみる塞がっていく。
晶の身体も同じように治っていった。

「F-bフ科学力・医療技術は世界一!応急処置はこれでオッケー。」
「いや、お前の科学力・医療技術であって共有されてない以上F-bフ物ではないから。」
「おお、明也さんは突っ込みが出来る程度には回復しましたか。
 晶さんは、気絶してますね。まあ婚約者に後ろから攻撃されればショックで気絶もしますよね。
 国中さんも本当は決して悪い人じゃなかったのに……。
 唯一の不運は上田さんと関わってしまったことでしょうね。
 復讐が明らかに彼をおかしくした。」
「いやいや、お前がこいつを改造人間にしたんじゃねえか。」

もはや肉片でしかない国中佑介をさらに踏みつける。
気付くと血だまりの中にUSBメモリのようなものが転がっていた。


275笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 20:00:13.92 ID:gmCZ6LII0
「ああー、これこれ。私これを回収したかったんですよ。」
「うん?なにそれ。」
「新型の契約書の試作品です。結構良いデータが取れたので組織で共有させるべきか考えています。」
「データの入手方法は隠して、か?」
「いえいえ、隠しはしませんよ。
 私は何もしていない、力を与えただけ。
 古くはアレクサンダー、最近で言えば“都市伝説ではない”ナチスドイツ、今ならば貴方。
 力を与え、人間のすることを観測する、私がやっていることは結局それだけですよ。」

サンジェルマンは血まみれのUSBメモリを回収してほくそ笑む。

「あの……上田さん。」
「今のは吉静に言わないでくれよ、泣かせたくない。」
「……解りました。それと、」
「解ってる。明日姉はお前とサンジェルマンに任せるから一旦帰ってくれ。
 俺には此処に残ってやらなくてはいけないことがある。」

俺は二人に背を見せて言った。
俺と姉の姿を見て立ち尽くす少年。

「明日晶は正義に徹しきれなかった。
 国中佑介は生まれながらの弱者でしかなかった。
 さぁ、お前は何者だ。
 ―――――――――――明日真。」
「俺は……、多分おまえにとってのラスボスだよ。」

自信なさげに、でも俺の眼をしっかり見据えて、正義の味方はそう答えた。
明日真、俺が唯二人だけこの世に認めた正義の味方である。
276笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 20:04:29.17 ID:gmCZ6LII0
「……ほう、また会いましたね少年。」
「F-0……。今のことも太宰さんのことも言いたいことは色々有るが……。」

姉さんを頼む。
と言って明日は頭を下げた。

「格好良いじゃないか、明日真。」
「恩人の仇に頭を下げて姉の治療を頼む男の何処が格好良いんだ?
 偶然通りかかったフォーチュンピエロでこうなるなんて思わなかったよ。
 とんでもない状況の一部始終を目撃しちまった。」
「それに気付かないのが、また格好良いな。
 憧れはするが俺はそうなることができない。」
「そうかよ。」
「で、どうするんだ?俺に言いたいこととか一杯あるだろう。」
「ああ。」
「でもその前に一つだけ良いか?」
「なんだよ。」
「お前の友達のことだ、あれは過剰防衛だった。どうみてもやり過ぎだ。
 ……本当に済まなかった。」

そう言って、俺は明日に深く頭を下げた。


277笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 20:10:09.61 ID:gmCZ6LII0
「……いや、あれは殺し合いだったからさ。もう気にしないようにしてる。
 やらなきゃやられるって状況じゃ善も悪もないよ。」
「そうか、それでお前の言いたいことって?」
「でもやっぱあんたのことが腹立つ。殴らせろ。」
「そうか、うん、それでいいんだ。
 本当の勇気というのは腕力が強いとか弱いとかじゃない
 心の底から許せないものに対して、イヤだと叫ぶ事なんだ。
 やっぱり良いよお前、解ってる。
 この殴り合いが終わったら飯でも食いに行こう。俺がおごる。」
「のんきだな……。悪役を自称して正義の味方を飯に誘うって……。
 ていうか台詞だけだとお前が正義の味方で俺が茂君みたいじゃないか。」
「正義の味方と悪役なんて互いに持ちつ持たれつさ。
 そう言う意味では相棒とも言える。」
「……ところで殴った後に殴り返しても良いんだぜ。」
「殴り返さないと思ったか?」
「……………ですよね。」
「お前みたいな心底正しい人間に殴られなきゃ気分が晴れないんだよな。
 お前みたいな正しい人間に負けなきゃまだ悪人で居ることに未練が残るんだよ。
 だから……。」

喋っている途中なのに腹に掌底が入る。
良い一撃だ。

「ご託は良い。さっさと行くぞ、上田明也。」
「それでこそだ。全力で来いよ、明日真。」

恨みも何も無い。
ただ言葉で足りない何かを埋めるための殴り合いが始まった。
生まれて初めての経験に俺は心から満足していた。
【上田明也の探偵倶楽部49〜エピローグ1〜fin】
278夢幻泡影 † 脱出  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/13(土) 20:14:04.63 ID:gmCZ6LII0
(裂邪>えっと・・・その「兄気」ってのh
(蓮華>「幼気」です
(裂邪>あぁごめん。その「幼気」ってのが若干超能力じみてるってのは理解した
(蓮華>とは言っても、できないものはできません
    例えば、シャボン玉が炎をあげて爆発したことはありますか?
(ミナワ>あ・・・そういえば、空気の破裂だけだった気がします
(蓮華>どうやら、ギミックやエフェクトを超越するような歪曲は認められないようなのです
(裂邪>ほぅほぅ

俺は額に流れる血――さっきミナワに殴られたから――を拭いながら、蓮華ちゃんの話を聞いていた
しかし世界ってのは捨てたもんじゃないな
都市伝説というものが実在する、って時点で大層驚いたもんだが、
「兄気」だの「幼気」だのという訳分からん力まで存在するらしい
生まれつき好奇心が強い俺からすれば、俗に言う『wktkが止まらない』って奴だ
 ・・・ってか、「幼気」ってかなり危険じゃね?

(裂邪>ねぇねぇ、「幼気」って女の子なら皆持ってるんだろ?
    それって世界が滅茶苦茶になったりしないの?
(蓮華>大丈夫です、その殆どはあくまで『持っている』だけに留まります
    「幼気」は使えなければ意味がありません
    それに、我々のように意図して使える者はほんの一握りです
(ミナワ>そ、そうですよね・・・

ふと、横に目をやった
何やら騒がしい
279夢幻泡影 † 脱出  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/13(土) 20:18:14.73 ID:gmCZ6LII0
(ロール>キャハハハ♪ 何コイツ、マジ可愛い♪
(リム>バクゥ〜!やめるバク苦しいバク!!
(ローゼ>ロールちゃん、次はワタクシも〜
(ライサ>あーん、私も私もー!
(ウィル>大人気ですぜ?リムの旦那
(シェイド>ソモソモ、ミナワ以外ノ女性ト会ッタ事ガナイカラナ
      特ニアノ姿デ外ヲ出歩ク事モ今マデナカッタシ

ちょ・・・リムの奴・・・ウラヤマシッ

(日天>そういえば

突然、日天ちゃんが口を開く

(日天>お前、ライサとどうやって出会ったんだ?
(裂邪>あぁ、それがホント偶然でさ
    俺がこのゲームに吸い込まれた時に居た森の中で寝ちゃってたのを見つけて
(ミナワ>それにしても、本当に感謝してもしきれません
     ライサちゃんには、危ないところを助けていただきましたから
(日天>・・・さっきも助けられたと言っていたな、何かあったのか?
(リム>主が死にかけてたところを、そのライサって子に治してもらったんだバクよ
(ウィル>もう少しで旦那は・・・旦那は・・・

青い炎に変わるウィル
しかし何でかなぁ、複雑そうな顔をするローゼちゃん達

(裂邪>・・・どうかした?
280夢幻泡影 † 脱出  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/13(土) 20:21:05.32 ID:gmCZ6LII0
(ローゼ>あの・・・とても申し上げにくいのだけど・・・普通に生き返りますのよ?
(裂+シェ+ミ+リ+ウィ+10>え゙!?
(日天>オレ達も、最初は驚いたよ・・・ロールがモンスターに殺られた時は
(ロール>てゆーかさぁ、死ぬ寸前ってマジでゾクッってくるんだけどー♪
(蓮華>この変態の言動は放っておいて・・・
    そうですね、少しは慣れた方がいいのかも知れません―――大丈夫ですか?

あぁ、今の俺達は、彼女達の目にどう映っているだろうか
あの時の光景が、言葉が、感情が
覚めてしまった夢のように
消えてしまった幻のように
弾けてしまった泡のように
霞んでしまった影のように
儚く、そして空しく・・・崩れ落ちた

(ライサ>・・・えっと・・・その・・・ごめんなさい
(裂邪>い、いや、ライサちゃんは悪くないよ・・・むしろ俺が皆に謝るべきだt
(ミナワ>よかった・・・

目を擦りながら、ミナワは笑顔で呟いた

(ミナワ>ご主人様は、もう死んじゃったりしないんですね?
     もう、1人だけで逝こうとか、言い出せないんですね?
(裂邪>ミナワ・・・
(シェイド>マァ、我々モソノ方ガ好都合ダ・・・貴様ガ1度死ンデモ、契約ハ切レンダロウシナ
(ウィル>その前に、もう二度と旦那を死なせねぇ!
(リム>契約者に先立たれるなんて都市伝説の恥だバク、もう二度と御免バクよ
(裂邪>・・・ウヒヒヒヒ、あんな湿っぽい展開、俺だって真っ平だ!
    生き残ってやるさ!そしてお前ら1人残らず生かしてやる!
    1人も欠けることなく元の世界に戻ttあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!??
281夢幻泡影 † 脱出  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/13(土) 20:23:44.26 ID:gmCZ6LII0
俺は思わず叫んだ。今更気がついてしまった

(ライサ>ッ!!どどどどうしたのお兄ちゃん!?
(日天>突然何だ!?ライサが怯えてるじゃないか!
(裂邪>・・・シェイド、俺がこれからやろうとしていた事は何だ?
(シェイド>ム? コノゲームカラ脱出――――アァ、ソウイウコトカ
(裂邪>ローゼちゃん、君等はこのゲームの中にどうやって入ったの?
(ローゼ>え? ワタクシの能力で、ですわ
(蓮華>あ、R-No.10も発見したので、そろそろ我々も戻りませんと
(裂邪>ついでに俺達も外に連れていってくれ!

横でミナワも声じゃない声をあげている・・・デジャヴュ?
リムとウィルは事態を飲み込めてないようだ。あとで教えてやらねば
と、その時だった。何も無い空間から、扉のようなものが観音開きのように開いた
すぐに見えたのは茶髪のロリっ子。
その背後には、ツインテールロリとポニーテールロリ、メガネロリとサムライ風ロリが見える

(茶髪>ゼェ、ゼェ・・・や、やっと開いたぁ〜
(ツイン>ご苦労様なんだよー
(ポニー>ローゼはん!
(ローゼ>あら凛々ちゃん!それにラピーナちゃんにロビィちゃん!
     レジーヌちゃんに羅奈ちゃんもいらっしゃるの?

ローゼちゃんの目の動き―――確認
視線の先にいたロリっ子―――記憶
ロリっ子の見た目と名前―――照合完了

(茶髪>へ?
(裂邪>初めましてロビィちゃん、僕は黄昏裂邪。
282夢幻泡影 † 脱出  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/13(土) 20:25:58.49 ID:gmCZ6LII0
また知らぬ間に、俺はロビィちゃんの手を握っていた

(裂邪>凛々ちゃんもラピーナちゃんも、奥にいるレジーヌちゃんも羅奈ちゃんもよろしk

ここで設計ミスに気がついた
『バブロッド』の先端の環、あれがどうやら大きすぎたらしい
俺の頭がすっぽり入ってしまった
このまま引っ張られたら、俺どうなるのかなぁ

(ミナワ>・・・ご主人様ぁ?
(裂邪>コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ

潔く、俺は両手を挙げてロビィちゃん達から離れた

(ラピーナ>・・・誰、あれ
(日天>・・・あとで説明する・・・ところで、何だ?
(凛々>ライサちゃんは見つかったんか!?
(ライサ>凛々お姉様!私はここにいるよ!
(羅奈>おぉ、無事で何よりでござるよ!
(ローゼ>丁度いい所でしたわ♪ 皆さん?お先に元の世界に戻ってくださいませんこと?
     ワタクシは裂邪さん達を学校町に送り届けてから戻りますわ〜
(ロール>りょぉーかい!
(日天>ライサ、行くぞ
(ライサ>はぁーい☆
(蓮華>・・・少しお待ちを

そういうと、蓮華ちゃんは小走りで俺の方に近づいてきた

(裂邪>・・・な、何?
283夢幻泡影 † 脱出  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/13(土) 20:32:05.61 ID:gmCZ6LII0
(蓮華>携帯、ありますか?
(裂邪>へ?いや、あるけど

吸い込まれる時にポケットに入れっぱなしだった携帯電話を取り出すと、
蓮華ちゃんはスッ、とそれを取り上げ、何かを手早く入力し、画面を俺に見せた

(蓮華>私の携帯への電話番号です。「幼気」について何かあれば、いつでもかけてください
(R-No's>ハァ!!??

蓮華ちゃんの後ろで、ロリっ子達が驚愕している・・・またデジャヴュか

(裂邪>お、おう、ありがとう
(蓮華>勘違いしないでください。借りを返しただけです

マンドラゴラの種が入った袋をちらつかせながら、彼女は日天ちゃん達と一緒に扉の向こうへ出て行った
そういや、あのマンドラゴラ・・・都市伝説の気配がしてたんだが、大丈夫かな?
あ、あの時の商人さん元気かなぁ? めちゃくちゃ高いけど良い素材ばっかり揃ってたんだよねぇ

(ローゼ>それでは、参りますよ!
(裂邪>待った!! シェイド、この携帯影の中に閉まっといて
(シェイド>了解シタ
(リム>影の中に?どうしてバクか?
(ローゼ>『アセンション』!

赤いオーロラのようなものが俺達を包み込む
それは、俺達の短い冒険の終わりを告げていた
しかし漫画風に言うならば、
これは、まだほんの序章に過ぎなかったんだ

   ...To be Continued
284以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 20:35:55.76 ID:gmCZ6LII0
代理投下終了ー
285蝕まれる世界 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/13(土) 21:02:17.67 ID:gmCZ6LII0
「ふむ、そちらの方は進展があったかの?」
「昨日の今日であるわけ無いっス。そんでもって、無いからこっちから聞きにきてんだこのエロ爺」
相変わらずにやにやと助平な笑みを浮かべた老人を、羞恥と敵意の混ざった視線で睨み付ける梨々
もっともそういうリアクションがこの老人を喜ばせているのだが
ちなみに本日の支給品は伸縮タイプの包帯が二本だけだった
「まあこちらも昨日の今日だしの。さほど情報は入ってきとらん」
「恥ずかし損かいあっしは!?」
「まあ待て、さほどと言うたろ」
老人は助平な笑みをやや押さえて、口頭で数人の女性の名前を羅列する
「知っとる名はあったかの?」
「……いや、無いっスね」
「今回の商品リストは子供が中心じゃて、やはり関わりは薄いと思っとったがまあそんなとこかの」
その言葉に、梨々はすうっと目を細める
「爺さん、子供は買わねっスか?」
「稚児趣味は無いのでな。エロい事ができんもん買ってどうするんじゃ」
「いや、自分好みに育てて〜みたいな昔のエロ貴族みたいな真似とかしてるかと思ったんスけど」
「一度やってみたんじゃが、ありゃダメじゃ。娘とか孫とかに対するみたいな感情が湧いてぶっちゃけ勃たん。まあついでに建てた全寮制の学校はまだ運営しとるがの」
「ついでで建つもんなんスか、学校……売られてる女の子、全部買い付けて助けれるんじゃないっスか?」
「そこまでできるわけなかろうが。儂に出来るのは精々趣味の範囲内じゃて。分け隔て無い救いなんて、神様とかにでも任せときゃええ」
相変わらずこの老人の基準がいまいち判らないし、判りたくもない
梨々は老人の言葉が本心である事を読み取りながら、呆れたように溜息を吐いていた

―――

都市伝説の扱う異空間は、概ね独立した位相のものが多い
だがこの空間は近似した能力を持つものが様々なラインを通じてアクセスが可能な、ある意味ではもう一つの世界、『電脳空間』である
ネットロアや情報体、通信に関わる都市伝説が飛び交うこの世界で、一人の少女が小さな事務机に向かっている
机の上の小さなパソコンがあり、使い込まれたキーボードの上を細く白い指が踊る度にこの世界中から様々な情報が集まってくる
ちなみに、この机もパソコンも実際に存在しているわけでなく、存在や行動、能力を表したアバターの一部に過ぎない
「『誘拐結社』は相変わらずだけど、今回の件に関してはシロかな……音門さんの言っていた女性は売買リストにも入ってないみたいだし
286蝕まれる世界 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/13(土) 21:05:16.06 ID:gmCZ6LII0
通常空間では文字か音声でしか存在していない、都市伝説『犯人探しのチェーンメール』のアバターである橘あゆみ
本来のチェーンメールでは殺害された被害者の名前であるが、個として存在するために都市伝説内の固有名として強く結びついているのである
「携帯電話の方は通話できない状態ね。電池が切れるほどの時間は経ってないそうだし、壊れてる可能性が高いかも」
パソコンに併設された『PAmw-B38』と刻印された機械から吐き出された無数のメール情報が、モニタ上を滝のように流れていく
「しょうがない、無理矢理やってみよう」
対象の携帯電話が中継局に最後にアクセスしたであろう位置を割り出し、そこから周辺にある壊れているであろう基盤に無理矢理『力』を捻じ込んでメールを送信する
「場所は……下水道? 電話だけ捨てられたのかな」
あゆみがそう呟いた時
壊れたはずの携帯電話がメールを受信した事に近くに居た何者かが反応したのだろうか
携帯電話が完全に破壊された衝撃と共に送り込んだメール情報が霧散する
「……っ! これは、つまり……ターゲットの女性は、下水道のこのポイントに」
机に置かれたモニタの向こう側、広い空間に映し出された日本地図がどんどん一点に向かって拡大し、学校町の全景を映し出す
「反応があったポイントがここ……下水道の配管図は」
電脳空間にある様々なデータが引き出され、立体的な図面となって浮かび上がる
学校町の下水道は通常の配管の他に、一般人は踏み込めない都市伝説的な巨大地下迷宮としての一面もあり迂闊に踏み込める場所ではない
「助けるのは難しそうですし、音門さんに連絡はしておいた方が良さそうですね」
あゆみが通信端末に手を伸ばした、その瞬間
その手首が虚空から現れた軟体の触手に絡め取られた
「ひっ!?」
「あれ、このデータうちに関係ないじゃん。うちの腹探っといて関係無い事してるとか馬鹿なの? 死ぬの?」
送信のために圧縮中だった下水道の図面を眺めながら、二人の少年があゆみに語り掛ける
「たかだかチェーンメールに腹探られてるとか、うちの連中もどんだけズボラだよ。こんなんだから俺らがゲームに集中できねーんだっつーの」
「そりゃ俺ら以上の電脳空間のプロは、うちの組織にゃいないけどさぁ。昨日なんか二時間しか寝てねーのによー、二時間しかー」
「あ、あなた達、一体」
震える声でそう問い掛けるのが精一杯のあゆみの腕を、ずるりずるりと触手が這いずり締め上げていく
「電脳空間で俺ら知らないとかどんなモグリよ」
「『誘拐結社』の事探っといてその体たらく? ないわー、マジないわー」
虚空に浮かぶキーボードを軽やかな手捌きで弾き、振り上げた手でターンと軽快な音を立ててエンターキーを叩く
一本だった触手は四本に増え、絡め取られた腕を引き剥がそうと必死だったあゆみの四肢に更に絡みつく
「電脳世界の漆黒の闇天使、『闇プログラマー』と」
287蝕まれる世界 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/13(土) 21:08:26.71 ID:gmCZ6LII0
「神の左手と悪魔の右手を持つ神域の魔人、『スーパーハカー』さ」
一瞬、彼らが敵である事も自分が拘束されてしまっている事も忘れて「あ痛たたたた……」という気持ちが胸一杯に溢れ出す
だがそれすらも彼らの『本気を出す気力を削ぐ』という能力である事は、あゆみは勿論の事だが当の二人すら自覚は無い
しかしそのような能力が無くとも、この電脳空間においては無敵に近い存在である
「さて、どうしようかこいつ。『チェーンメール』とか割とたくさん居るから売れないしな」
「殺しても消えるだけだしつまんないし」
「とりあえず、さぁ……複数の男に強姦され、下腹部をメッタ刺しにされて殺されたんだっけ、『橘あゆみ』って?」
「その前に、妊娠三ヶ月だったはずだね」
げらげらと声を上げて笑う二人に、あゆみの顔から血の気が引いていく
「殺さないよ、安心しな」
「俺らに逆らう奴がどうなるか、見せしめにしなきゃなんないから」
「知名度もまだ足りてないって解ったしな」
「って、そういや前に表立って知名度上げるなってリーダーに怒られなかったっけ」
「『誘拐結社』のじゃねぇもん、『闇プログラマー』と『スーパーハカー』のだし何ら問題ナッシング」
二人の少年はくるりと振り返り
「というわけで、これから始まるのはそれなんてエロゲ? って展開になりまーす」
「エロゲだから有料ね? タダ見や邪魔はノーサンキュー」
具現化した障壁が轟音と共に三人のいる空間を電脳空間の全てから隔絶していく
視界も音もアクセスも全てを遮った後、世界は何事も無かったかのようにただ沈黙していた

―――

滑り止めの小さな重りがついた紐を、くいくいと引っ張るまぐろ
それに合わせて赤い風船がぷかぷかと揺れる
「飽きないな、風船」
「うんっ」
眼球の無い不気味な、しかし無邪気な笑顔で頷くまぐろに、大は僅かに苦笑を浮かべる
契約して一緒に暮らすようになってからは、様々なものに興味を持ち色々な事を覚えていくまぐろ
そんな彼女に色々な事を教え日々の面倒を見ていると、まるで娘を育てているような気分にもなってくる
そしてふと思い出すのは、自分を命をあっさり売り飛ばそうとした父親の顔
288蝕まれる世界 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/13(土) 21:12:34.47 ID:gmCZ6LII0
酒と女と博打で身を持ち崩し、妻と息子に多大なる迷惑を掛けた上に死体も残さず何処かで野垂れ死んだ厄介者
彼にとって自分はどんな存在だったのか、そんな事を考えてしまう
「大、どうしたの?」
ふと気が付くと、まぐろのぽっかりと空いた眼窩が自分の顔を覗き込んでいた
「ああ、ちょっと考え事をな」
「風船、楽しいよ?」
少し不安げに、風船の紐を握らせようとしてくるまぐろ
雰囲気に出していたつもりは無いのだが、内心を察したように元気付けようとしてくれているようだ
「それはまぐろが貰った風船だろ? 俺は大丈夫」
父親の事を脳裏から追い払い、いつもの落ち着いた顔でまぐろを抱き締め頭を撫でてやる大
この子がいるから自分は『大丈夫』なのかもしれない
「ねー」
「どうした?」
「お風呂ー」
「一人で入れるようになりなさい」
「やだー、契約者なんだからいつも一緒がいいー」
精神レベルは小学生の低学年ぐらいだが、なんだかんだで体は割と発育の良い高校生ぐらいの造形である
いくら娘や妹のように面倒を見てるからとはいえ、健康な二十代男子である大は流石に目のやり場に困るのだ
「水着つけるからー」
「それじゃ身体がちゃんと洗えないだろ」
「じゃあ水着なしで一緒に入るー」
「それじゃ結局変わってないだろ」
それからどたばたとじゃれあう事数分
結局、湯船の中で明後日の方向に視線を向けている大と、なにやら首を捻りながら頭を洗っているまぐろの姿があった
「頭洗ってー」
「自分で出来るようになりなさい」
「むずかし、いひゃ!? めー、めにあわがー」
「……今度、水泳用のゴーグルでも買ってくるか」
そんな、主にまぐろの声で賑やかな浴室の外で
ぷかりと浮いて天井に身を預けた赤い風船が、サーカスのロゴを見せるようにくるりくるりと回っていた。
289笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 21:28:00.81 ID:gmCZ6LII0
【上田明也の探偵倶楽部50〜エピローグ2〜】
戦闘を始めると同時に少し早い雪が降り始める。
風も強い、どうやら今夜は寒くなりそうだ。
夕暮れの光の差す向こう側に気の早い月が高く昇っていた。
遠慮無く明日真の顔面に正拳突きを決める。
拳に痛みが走る。
明日はとっさに俺の拳を何かで受け止めたらしい。

「おいおい、なんだそれ?」
「俺の尊敬してた人の形見だ!」

見覚えの有る髑髏の仮面、壊れかけだ。
人知れず戦う正義の象徴。
悪への無慈悲の象徴。
あれは恐らく
それを明日真は顔に装着した。

「今から俺は正義の味方だ!」
「成る程な、良いセンスだ。」

俺は車のカギを開けて中から赤いコートを取り出す。
メルと一緒に欲望のママに暴れていただけの頃、こいつの友達を殺した時に着ていたコート。

「じゃあ俺は悪の変人だ!」

風を受けて翻る赤いコート。
都市伝説と契約してからはこれを着て闘い続けていた。
相手も解らぬままがむしゃらに。
290笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 21:33:51.10 ID:gmCZ6LII0
「今度はこっちからだ、いくぞ!」
「おう!」

俺はコートの中から銃を取り出す。
無論、殺す気で撃った。
だがそれが明日に一瞬先の行動を予測することを許してしまう。
彼は銃弾の軌道を先読みして俺の動きを躱した。
都市伝説による肉体強化で明日は俺との距離を一気に詰める。
俺の腕に突き刺さる掌底。
喰らった後から肉体の内側が痛み始める攻撃だ。

「強くなったな、明日真!また今度バイトに来いよ!」
「お前が悪人止めて、ちゃんと反省したらな!」

俺は銃を捨てて明日の腹に膝蹴りを決めた。
明日はそれをあえて受け止めて俺を真上に投げ飛ばす。
成る程、親父の言うとおり強化系のセンスも中々有るようだ。
俺は村正の能力で地面と自分の間に強力な引力を発生させる。
そしてそれに身を任せてかかと落としを明日に放った。
しかし彼はそれを平手で受け止めて受け流す。
今度は正宗の力を使って明日との間に斥力を発生させる。
俺があえて吹っ飛んだ直後、俺のいた場所に鋭い手刀が打ち込まれた。

「危ないなあ、おい。」
「ハーメルンの笛吹きの能力は使わないのかよ?」
「ああ、あれか?あの能力は色々トラブルがあったから捨てたよ。」
「はぁ?」
「そもそも人間を操るなんて偉大な俺にはそぐわんからな。」

俺は天を指さして高らかに叫ぶ。
291笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 21:38:01.18 ID:gmCZ6LII0
「そもそも、この世界にすげぇ!って思える奴なんてそんなに沢山居ないじゃん。
 そしてすごくもない奴操っても全然楽しくないんだよな。
 でさ、すげぇ!って奴操っても全然楽しくないんだよな。
 結論として他人を操作するなんて面白くないんだよ。
 自分を操作するのはやりがいがあるけどな。」
「そっか、訳解らん!」
「構わん!」

刀を抜けばその隙に攻撃される、それに何よりこれはあくまで殴り合いだ。
さっき銃を使った人間が言うのもあれだが武器なんて不要だ。
俺は地面を蹴る度に斥力を発生させて明日に詰め寄る。
都市伝説の能力で重力を無視しての大ジャンプ。
俺自身を操るとは即ち、俺が本当に思うままであるということ。
重力からすらもフリーであるということ。
赤いコートが雪と共に学校町の空で揺れる。
カウンター気味に俺の突っ込んでくる予定だった位置に蹴りを入れた明日が驚いた顔でこっちを見ている。

「どうだ、これが自らを操る、自由であるということだ。」
「いや、都市伝説の力で飛んだだけじゃねえか。」
「その程度のことすら人間は自力でできないんだよ!」

明日に向けて急降下気味に跳び蹴りを当てた。

「そう言えば……、昔飛行機のパイロットになりたかったんだっけ?」
「ああ、お前の姉に奪われた夢だ、でもそのことを後悔はしていない!

明日はそれを受けても尚その場に踏みとどまる。
それどころか逆に俺の足にも掌底を喰らわせてきた。
292笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 21:42:50.55 ID:gmCZ6LII0
「過去を取り戻そうとか、やり直したいとか思わないのか?」
「ああ、思わないな。」

地面に降り立った俺と明日はまたも単純な殴り合いを始める。
明日は平手で手刀で、俺は握り拳で。

「なんでさ?そんなにお前は幸せなのか?」
「俺は今まで常に全力を尽くしてきた。
 だから過去の俺も全力で生きている。
 それを俺は否定したいとは思わない。
 だからこそ過去の俺の行ったことへの責任はとろう。
 それが自らに対する誠意という物だ。」
「他人のことは……?」
「知らん、俺は俺という人間一人に向き合うことが精一杯だ!人間皆そうだろ?」
「でもお前はもっと他人と向き合え!」

明日の手刀が額に直撃する。ちょっと視界がぐらついた。

「解った、そうする!でも過去を変えるのは間違ってるだろ?
 今の人間の感情で過去を変えるなんて許されない。
 それは秩序を乱すことだ。」
「よし、そうしろ!まあ過去を変えるのは間違いだけどな!
 そう思う人間の弱い心までお前が勝手に否定するんじゃねえ!」
「解った!否定はしない、でも行動したら邪魔するからな!」
「それは勝手にしろ!」
「オッケィ!」

俺の右ストレートが明日の鳩尾を捉える。
捉えたのに明日は顔色一つ変えずに俺と殴り合いを続けている。
293笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 21:46:04.89 ID:gmCZ6LII0
拳と掌がぶつかる。
裏拳と掌がぶつかる。
俺の攻撃一つ一つを明日は柔らかく受け止める。

「はぁっ……、はぁっ……!」
「バテてきたかこの野郎め。」
「お前と違って俺は身体鍛えたことがないんだよ。」
「ちょっとは鍛えろよ。」
「その間に俺は別の物を鍛えていたからな。」
「なんだよ。」
「秘密。」

実はない。
適当にグータラ過ごしてきただけだ。
運動は俺は嫌いなのだ。
でも、俺は生まれながらに強い人間だ。
だから目の前のこいつに負ける気はない。
明日の攻撃できしみ始めた身体が憎い。
もっと鍛えていれば父のように筋肉の鎧でこの攻撃を防げたのか?
あるいは彼方のようにすばやく身を躱したりできていたのか?
単純に肉体的な面では俺は弱いのだ。
でも、その程度のことで俺の心はひるまない。

「うおおおおおおおおおお!」

親父が一度だけやって見せたように全身の力を使って体当たりを決める。
明日がもの凄い勢いで吹き飛んで俺の車にぶつかった。
修理代が高くなりそうだ。
294笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 21:49:19.45 ID:gmCZ6LII0

「結局、契約者の戦闘とは精神の問題だ。
 他ならぬ俺自身の俺自身を信じる心が最強の武器。
 この俺の精神が負けないと吼えている以上、この俺に負けはない。」

仁王立ちで啖呵を切る。

「でも正義は勝つっていうぜ。だったら俺の勝ちだ。」

明日は静かに立ち上がる。
そう、奴は何度だって立ち上がる。

「いいや、俺こそが正義なんだよ。」

夕暮れの太陽と月の光を背に受けて、俺はハッキリと言い放つ。
一点の迷いもなく、曇りもなく。
俺を後ろから照らす二つの光のように俺は正しい。
俺こそが光だ。
だから常に負けずに輝き続ける。
それが俺の人生だ。
俺は全力で走って明日にまた真っ直ぐ拳を打ち込む。
躱された。

「今度はこっちの番だ!」

明日が俺に肘打ちを決めた。
俺は思わず膝をつく。
295笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 22:00:24.52 ID:gmCZ6LII0
起き上がりざまにアッパーで明日を吹き飛ばす。
拳が割れるように痛い。

「そういえばさぁ。俺なんか子供できるらしいんだよね!」
「へぇ、そりゃ良かったな!
 皮肉なことに誰かさんの姉はついさっき婚約者に殺されかけたのにな!」
「ああ、本当に皮肉だよな!」

斥力操作で明日と距離をとる。
呼吸を整えて腰を深く落とす。

「でも、姉ちゃんのあれは自業自得だ。
 あいつだって子供じゃないんだからもうちょっと男を見る眼があっても良いと思うわ。」
「辛辣だな。」
「仲悪いから。」
「そうだったな。」

何故こんな事をしているのかは解らない。
だが俺が明け日に向けて真っ直ぐ拳を突き出すと遠くにいたはずの明日が吹き飛んだ。
そうか、正宗の力で直接あいつを弾き飛ばしたのか。

「良いお父さんになれよ!多分無理だけど!」
「言ったなこの野郎、俺は周囲の期待と信頼を裏切り続けることで有名なんだぞ!」

明日がマイクロ波を放つ。
コートでそれを防いでいる間に明日がまた近づいてきた。
296笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 22:08:15.29 ID:gmCZ6LII0
「一人の子供として言うけど言っておくけど親が傍に居ないと子供って寂しいもんなんだぜ!」
「ああ、そういえばお前の家って両親がなかなか帰って来ないんだってな。」

それにしても殴り合いの最中に何を話しているんだろう。
これでは相当親密な友人みたいじゃないか。

「そうだよ!」
「でもそれって親はなくとも子は育つってことじゃね?」
「なんでだよ、俺はすっげえ寂しかったんだ!」
「だってほら、お前は立派に育ってるじゃねえか。」

明日の掌が俺の頬を捉える。
俺の拳が明日の頬を捉える。
その一撃で互いによろめいて、倒れる。

「…………。」

まずい。身体が動かない。
これでは負けを認めたみたいじゃないか。

「…………。」

あれ?
明日も動いてないな。
これは先に立った方が勝ちなのか?
それならばと、俺は全力で立ち上がる。
だがそれと同時に明日も立ち上がる。
良いぞ、それでこそ明日真、正義の味方。
297笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 22:12:12.55 ID:gmCZ6LII0
「なあ上田明也、俺はお前がよくわからん。」
「俺は……悪人だ。」
「さっきまで自分を正義って言っていたじゃねえかよ。」
「ほら、人間って相反する二つの面を持つっていうじゃん。」
「ったく…………。」

俺が正宗と村正に残る全ての力を注ぎ込むと駐車場の車が宙に浮かんだ。
明日は全身にオーロラのような物を身に纏ってふわりとジャンプした。

「――――決めるか。」
「――――悪くない。」

明日は落下の勢いを利用した跳び蹴りで七色の光とおびただしい熱を放ちながら俺を真っ直ぐに狙う。
間に幾つもの車を挟んで蹴りの勢いを弱めるがそれでも奴はまだ止まらない。
俺が正宗を抜いて俺と明日の間に斥力を発生させてもまだ止まらない。

ああ、正義の味方ってやっぱりいるんだ。

これだけ熱いのに顔がにやけているのが解る。
そう思って、俺の意識は潰えていった。
298笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/13(土) 22:16:01.90 ID:gmCZ6LII0
目がさめると茜さんが俺の顔を心配そうに覗き込んでいた。

「…………ああ、良かった。」
「おいおい、ここはどこだよ?それと、服は?」

いや、聞くまでもない。
ここは赤い部屋だ。そして俺の服はさっきの攻撃で……。

「急に部屋に落ちてくるからびっくりしたんですよ!
 あと服は燃え尽きてましたよ。」
「そうだったの?」

限界を悟って無意識に赤い部屋に逃げ込んだのか……。
そんなことできるなんて改めて思うけど俺すごいな。

「何してきたのか知らないですけど無茶はもうしないでくださいね?」
「ん、解った。」
「解れば良いんです。」
「あーしまった、車取りに行かないとな。」
「どこで戦ったのか知らないですけど身体ボロボロですよ?」
「ちょっとね、悪の変人として正義の味方に倒されてきた。」
「ちゃんと倒されましたか?」
「おう、これからは心を入れ替えて真面目に生きていくよ。」
「…………良かった。」

そうだ、本当に良かった。
これから先は正義という物を信じて生きていける。
明日をありがとう、明日真。
【上田明也の探偵倶楽部50〜エピローグ2〜fin】
【上田明也の人生〜To be continued】
299以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:33:34.06 ID:gmCZ6LII0
ネタ執筆中ほ
300以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:38:19.64 ID:+ISMvxMf0
ここってどれぐらいの人が動いてんの?
301以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:39:23.48 ID:gmCZ6LII0
>>300
常に動いてるのは、5,6人くらい?
どうしても忙しくて、書きたくても書けない方もいらっしゃるだろうし
302以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:57:09.01 ID:gmCZ6LII0
今夜中に猛一本間に合うかなほ
303以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 23:14:36.59 ID:gmCZ6LII0
もうちょっとほ
304「首塚」本部にて  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 23:32:25.38 ID:gmCZ6LII0
 …すぅ、と
 聴こえてくる、二組の穏やかな寝息
 俺と花子さんと翼さんがそこに来た時には、もう、天倉達の治療は終わったようだった

「……右目の傷が、脳に達していなかったのは、不幸中の幸いだ。そこまで傷ついているようだったら、ジャッカロープでも難しいからな」
「………そうですか」
「サンキュ、辰也」

 治療の為に、翼さんが呼んでくれたんだろう
 ジャッカロープを抱いた広瀬さんが、そう言ってくれた
 ……元「組織」だというこの人は、ある程度治療の技術がある
 それと…

「…天倉達、ですが」
「……A-No.666に、薬物投与とか精神関係の実験とか、されてたかどうかについては、後でもっとしっかり検査しないとわからないな。とりあえず、命に関わるような状態ではない」
「………ありがとうございます」

 静かに、頭を下げる
 ……この人が、過去にどう言う経験をしてきたのかは、俺にはわからない
 だが、人体実験に関わる知識を叩き込まれてしまっているのは、事実らしい
 正直、辛い記憶を思い出させるようで申し訳ないが…今回は、助かった

「んじゃあ、俺は戻るぞ。後でそいつらを改めて検査するって言うんなら、その時に呼べ」
「わかった。じゃあな」

 ひらひらと手を振って、ジャッカロープを連れて帰っていく広瀬さん
 花子さんと一緒に、広瀬さんに頭を下げて見送って
 ……俺は、天倉達の傍に腰を下ろした
 み、と花子さんも俺にならうように、腰をおろす
305「首塚」本部にて  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 23:35:42.44 ID:gmCZ6LII0
 …静かな寝息
 恐らく、傷一つ残らぬよう、治療されている事だろう
 もう、痕すら残っていない、撃ちぬかれた俺の左肩のように

「みー…おねーちゃん達、大丈夫なの?」
「蝦蟇の油とジャッカロープ使っての治癒だ。後遺症も残らねぇよ」

 花子さんの言葉に、そう答えてくれる唾さん
 み!と、花子さんがほっとしたような声をあげる

 ……あぁ、そうだ
 後で、あの人に連絡しなければ、と考える
 天倉達のいとこだと言う、白峰 徹さんに
 ……あの場所にあった、男女の死体
 恐らく、あぁ言う状況であった死体である事から察するに…天倉達の、両親だろう

 …二人が、目を覚ました時
 どんな言葉をかけてやればいいのか……わからない
 答えの見つからぬ自分の至らなさが、情けない


 もっと
 もっと早く、駆けつけられなかったのか
 二人が、あそこまで傷つけられるよりも前に、何故、到着できなかったのか
 いや、それよりも、早く
 危険に気付き、あの二人の両親を助けられなかったのか?

 また、失敗してしまった
 もう二度と、失敗するつもりなどなかったと言うのに
 やはり、俺は力不足だ
306「首塚」本部にて  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 23:40:31.26 ID:gmCZ6LII0
 過剰な力はいらないと、そう考えてきたが
 …過剰ではない力すら、俺には足りない

 もっと
 もっと、強くなるべきだ
 もっと
 もっと、より広く、情報を手に入れられるようになるべきだ

 そうしなければ、護れない
 また、失敗してしまう
 ………もう、失敗する訳には、いかない


「ねぇ、ちょっといい?」

 から、と
 障子を開けて、キャリアウーマン風の女性が顔を見せてきた
 その背後には、ふわふわと…女子中学生くらいの生首が、浮いている

「ん、どうした?」
「将門様がねぇ、その子に話があるんですってぇ」

 そういって
 つ、と女性が指差してきたのは……俺だ

「将門様が、龍一に?どうして?」
「知らなぁい」

 肩をすくめてくる女性
 詳しい話は、聞いていないのだろう
307「首塚」本部にて  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 23:44:01.36 ID:gmCZ6LII0
 翼さんが、怪訝な表情浮かべる

「………わかりました」

 立ち上がる
 みー?と、ついてこようとした花子さんを、俺は制した

「…花子さんは、天倉達の傍にいてやってくれ」
「み?……わかったの」

 ぺとん、とあげかけた腰をおろす花子さん
 翼さんが、俺を心配そうに見てきた

「…龍一、疲れてるだろうし、無理するなよ?何なら、俺が将門様に言って、後日改めてって事に…」
「……大丈夫です……俺も、将門公に、お話がありますから」

 俺の答えに、翼さんが首をかしげた

 …軽く、首を左右に振って、雑念を払う
 キャリアウーマン風の女性に連れられて、俺は、天倉達が寝ている部屋とは、障子二枚、部屋一つを挟んだそこに到着する

「では、将門様。私達は、これでぇ」
「うむ、ごくろうだった」

 ……広い部屋の、奥に
 日本最強の祟り神の姿が、ある
 一瞬でも気を抜けば、押しつぶされそうな威圧感
 ゆっくりと近づき、用意された座布団の上に腰を下ろす

「ふむ、ごーるでんうぃーく、とやらの花見の時以来か」
308「首塚」本部にて  ◆nBXmJajMvU :2010/11/13(土) 23:48:53.47 ID:gmCZ6LII0
「……そうなります」

 自然と、背筋が伸びる
 祟り神の、どこか楽しげな視線が、俺に突き刺さった

「くく……っ、改めてその名、聞いても良いか?」
「……はい」

 静かに、俺は頭を下げ、名乗る

「………獄門寺家 十三代目 獄門寺 龍一。八代目様の代より、貴公より授けられし「童子切安綱」を継承し続けております」
「くくくっ、龍彦以降、扱えた者は居らぬようだがなぁ?」
「……恥ずかしながら」

 楽しげに、楽しげに笑う祟り神
 向けられるその視線を……俺は、真正面から、受け止めた



to be … ?
309以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 23:52:07.85 ID:gmCZ6LII0
本日三度目の、犬神憑きとアンサーの人に焼き土下座orz
姉妹の怪我、傷跡も残さず完治させていただきました
女の子に傷跡なんて残させられるかい
傷物はエリカとマドカで充分じゃ


…で、紗奈ちゃん
大変、シリアスな空気の中、申し訳ないんだが…
この状況で目を覚ますと、腐女子的に萌えな会話が聞けるかもしれません(やめれ
310以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 00:06:44.95 ID:Q5C1KSuI0
力尽きるお休み
明日もスレが残っていますようn
311以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:01:30.89 ID:Sxgq7PCq0
312以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:56:38.99 ID:yhj/HgXfO
313以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 02:30:34.26 ID:aEhKAmcN0
314以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 03:08:57.24 ID:bzlNvt5V0
315以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 03:52:23.92 ID:bzlNvt5V0
316以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 05:22:36.85 ID:5X0HQrO7P
317以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 06:48:45.22 ID:+WgYaRy4O
318以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 08:16:14.19 ID:+WgYaRy4O
319以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 09:15:57.11 ID:rB+7kvNe0
320単発ネタ:2010/11/14(日) 11:27:11.46 ID:+WgYaRy4O
夜の公園を二人の男が走る。
片方は神父のような恰好をした人の良さそうな中年の男。
もう一人は、対照的にダラけてた服装の、目つきの悪いずる賢そうな若い男。
突然、二人の足が止まる。
目の前には、大きな池。昼間なら小船を漕いだりできるが、さすがに夜にそんな事をしている人はいないようだ。
「やぁっと追いついたぜぇ」
二人の後ろから、若い男が現れる。その傍らには、白い鰐。
都市伝説「下水道の白いワニ」の契約者である。
神父風の男が振り返り、口を開く。
「何なんですか、あなたは。急に襲い掛かって来て。危ないでしょう」
「うるせぇ!お前らが母ちゃんから取った二百万!返して貰うぞ!」
「取ったって……アレは貰ったんだぞ?」
目つきの悪い男が言う。
「そうです。アレは寄付ですよ?」
神父風の男が同意する。
「何が寄付だ詐欺師ども!お前らが契約者なのは分かってんだ!
 何と契約してるか知らねえが!その能力を奇跡とか言って宗教やってるらしいじゃねえか!このペテン師ども!」
男は二人に怒鳴る。
その言葉に、二人は黙ったまま何も言わない。それを見て、男は言い訳もできないらしいと判断した。
「金を返すなら見逃してやる。返さないなら、ワニの餌だ!!」
男の言葉とともに、鰐の口が大きく開かれる。
321単発ネタ:2010/11/14(日) 11:28:13.57 ID:+WgYaRy4O
「あなたは、何か思い違いをしているようですね」
神父風の男が静かに口を開く。
「確かに、私達は契約者です。しかし、私達はやっぱりあなたのお母様を騙してなどいない」
「この野郎、そんなにワニの餌になりてぇか……」
「まあ見なさい」
神父風の男は、地面に落ちている石を拾った。はずだったが、それが男の胸の高さまで来た時、その手にはパンが握られていた。
「……は?」
「分けてあげますね」
神父風の男はそう言うと、石だったはずのパンをちぎって男に投げた。
何かの罠かと、男は受けとらず、パンは地面に落ちる。
「何を……」
「もう一つあげます」
神父風の男はまたパンをちぎる。
ちぎっては男に投げる。何度も繰り返し、いつしか、男の足元には大きなちぎられたパンの山ができていた。
しかし、神父風の男の手にはいまだにパンが一つ。
「ま、さか……」
「ご理解いただけたようですね。
 私は石をパンに変える事ができます。この池の水をワインに変える事ができます。
 水の上を歩く事も、死人を生き返らせる事もできます。」
そして、神父風の男は言った。
「私が契約しているのは、『キリスト』です」
322単発ネタ:2010/11/14(日) 11:29:13.29 ID:+WgYaRy4O
「そ、そんな馬鹿な……」
「まだ信じられませんか?水をワインに変えて見せましょうか?」
神父風の男はにこやかに言う。
「だから言ったろう。あれは寄付だって」
ずっと黙っていた、目つきの悪い男が口を開く。
「確かにこいつは契約者だけどな、キリストの契約者だ。人を救う力を持つ。何も問題は無いはずだ。
 それでもまだ文句があるっつうなら、そのワニで、戦ってみるか?神の子と」
男は迷っていた。「キリスト」の契約者、そんなモノに勝てるのか。人を救う能力を持つモノを殺して良いのか。
「お前は、何の契約者なんだ……?」
男は、目つきの悪い男に尋ねた。この男も契約者だったはずだ。この男が人に害をなすなら、こちらだけでも。
そう考えた。
「俺か?俺はこれさ……」
そう言うと目つきの悪い男は、公園の池の方を向き、手をあげる。
その瞬間、池が割れた。
「これが俺の都市伝説、『モーゼ』だ」
男が呆然と立ち尽くすのを尻目に二人は割れた池を歩いて去っていった。
323単発ネタ:2010/11/14(日) 11:31:23.60 ID:+WgYaRy4O
「なーんかさあ、この辺り都市伝説と契約者多くね?」
「そうですね。早めに別の町に移った方が良いかもしれませんね」
夜の公園の池、小船から二人の男がおりる。
「コップや洗面器以外の水を割って『見せる』なんて久しぶりだぜ」
「私はいつもやって『見せて』いる事をしただけですけどね」
二人は公園の外に停めていた高級な車に乗り、話し合う。
「いくら稼いだよ」
「この辺りではまだ、一千万と少しですね。まだ他の町の半分です」
「んー、どーすっかなぁ。ここ金持ち多いけど、契約者も多いし。俺らの都市伝説がばれる事は無いとは思うが……」
「ばれるだなんて、何言ってるんです。私たちの都市伝説は『キリスト』と『モーゼ』でしょう?」
神父風の男が人の良さそうな顔を崩し、ニヤリと笑いながら言う。
「おおっと、そうだったな」
それに合わせるように目つきの悪い男も笑うのだった。

この二人の都市伝説が「青森のキリストの墓」と「石川県のモーゼの墓」であり、
その能力はそれぞれの人物の行った事を「見せる」事だと。その幻影を見せる能力だと、
ただの聖人の真似事をしているだけだと、気づけたモノは誰もいない。

324以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 12:29:37.59 ID:mra3MNd20
乙です

人が悪ぃww
詐欺師とはまた世知辛いなぁww
325以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 12:33:22.06 ID:hhT6Nhnx0
投下乙なのですよー
326以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 13:35:28.77 ID:LhizXLix0
ただいまー
投下乙でした
ひでぇ詐欺師だwwwwwwww
327笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/14(日) 13:42:29.64 ID:LhizXLix0
【上田明也の探偵倶楽部after.act1〜再突入〜】

笛吹探偵事務所での寿司祭りの翌日。

「と言う訳で、母さんを捜して欲しいんだよね。」
「愛美さんか?別にそれくらい良いけど……。」
「いや、笛吹さん以外に彼女を捜している人は居るんだけどさ。
 一応各方面に保険をかけておいて損はないかと思ったのさ。」

COAから帰ってきた俺の元に一件の依頼が舞い込んできた。
依頼人は俺の友人である新島友美。
依頼内容はCOA世界で失踪した彼女の母の捜索だ。

「成る程な、まあ保険をかけることは良いことだ。
 だがどれが本命かハッキリさせておかないと時々大変なことになるぜ。」
「なになに?笛吹さん保険扱いされてちょっとムッとしてる?」
「俺は優秀だからな、保険扱いだったとしても本命以上に働くのだ。」
「ムッとしてるんじゃないか。」

俺は真っ赤なパソコンを開いて友美の前に置く。
そこには某掲示板のCOA関係のスレが表示されていた。

「ここのところ不眠不休で暴れ続けているPKが居るらしい。
 ……お前の母親じゃないかと思うんだよ。」
「おお……、確かに怪しいと思ってたんだ。」
「このPKの存在が報告された場所の一番新しい情報はここに書いてある。
 俺は今から赤い部屋の能力でそこに行ってくるとするよ。」

友が満足げな顔をする。
俺がこういう反応を示すと解っていてこういう話の進め方をしたに違いない。
328笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/14(日) 13:45:16.10 ID:LhizXLix0
そう、友にだって彼女の居場所はつかめている筈なのだ。
しかし俺にこの話を持ってきたということは即ち“愛美さんと直接であって戦うのが大変だ”ということ。
ならば彼女と戦闘した経験もあり、そこそこに強い俺が彼女を消耗させてから、本命の人間達が愛美に接触する方が安全である。
彼女は元気だと誰彼構わず勝負を仕掛けるところがあるように思えるから酷い推理だとは言わないで欲しい。

いや、そこまで意味は無くて単に急いで探してるだけかもしれないんだけど。

「あと報酬のことなんだけど……。」
「ああ、それならさ。新島家に余ってるベビー用品で頼む。」
「はぁ?」
「いや、俺子供できたんだよねー。」
「なん……、だと?
 それは最近【肛虐の監禁病棟〜産婦人科編〜】で腹ボテファックがマイブームの私に!
 この私に言ってしまうなんて!
 誘っているのかい!?
 私を誘っているのかい!?」
「うーん、あと二ヶ月くらい待ってからだったら考えてやるよ。」
「しかも良いの!?」
「茜さんは都市伝説だから丈夫だと思うし、本人が嫌がらなきゃ……。」
「ありがとう笛吹さん!それでこそだね!」
「ハッハッハ、褒めよ!称えよ!」

謎のハイテンション。
それはさておきさっさと依頼を完遂して仕舞わなくてはならない。
329笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/14(日) 13:47:47.24 ID:LhizXLix0
「所長、お茶淹れましたよ。」
「おう彼方、ちょっくら依頼を達成してくるからその間お客様を丁重にもてなしておけ。」
「え?解りました。」
「良いよ笛吹さん、今日は一旦帰ろうと思ってたから。」
「多分あと一時間くらいで愛美さん連れてくる予定だったんだけど……。」
「甘いね笛吹さん。」
「まあな、邪魔も入るか。んまあ翌朝までにはなんとかしよう。」
「それじゃあそういうことで。」
「おう、ベビー用品探しておけよ。」

友は任せておけと胸を張って帰って行った。
俺は赤い部屋の能力でCOA世界に再び転移する。
転移先は決まっている。
彼女とCOAで始めて出会った場所、そして彼女が現在居るらしい場所。
砂漠だ。
パソコンの画面に俺の身体が吸い込まれる。
視界が一瞬で赤く染まったかと思うと何時の間にか俺は再びCOAの砂漠の世界に着いていた。


330笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/14(日) 13:49:54.42 ID:LhizXLix0
「……着いた、が。」

うっかり砂漠装備を忘れていた。
このままでは直射日光で死ぬ気がする。
その時、真後ろでドアが開く音がする。
赤い部屋が出現したらしい。

「明也さん、こっちに来るなら来るでちゃんと言ってください。」
「済まないな茜さん。」
「そんな装備じゃ危ないでしょう?」
「ああ、一番良いのを頼む。」

茜さんがその中から現れて俺に砂漠用の装備を渡す。
マント、帽子、ゴーグル。
どれも最高の装備だ。
さすがネトゲ廃人といった所か。

「それじゃあ行ってくるよ。」
「はい、行ってらっしゃい。」
「夜までには帰ってくる、夕飯は彼方にでも作らせておいてくれ。」
「実は私料理得意なんですよ、契約のおかげで明也さんの料理の知識が伝わってきてて。」
「…………そうだったんだ。じゃあ麻婆豆腐作っておいて。」
「はい!」

茜さんは元気よく返事すると赤い部屋の中に消えていく。
331笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/14(日) 13:52:09.24 ID:LhizXLix0
「さて、この辺りなんだがなあ?」
「わー!」
「助けてー!」
「鬼じゃあ!鬼が居る!」
「虎牢関には呂布がいるぞおおおおお!」

遠くで悲鳴が聞こえる。
人が吹き飛ばされているのが見える。
悲鳴が聞こえる方向に俺は歩き始めた。
まず間違いなく彼女は向こう側にいる。
丘を一つ越えると俺の推理通り彼女は其処にいた。

「この霊圧は…………、でかいのが来る!」
「霊圧じゃないですよ愛美さん。王気です。」
「って、なんだお前か探偵。探偵のくせに王気を纏うとは不遜な。」
「私の戦闘力は53万です。」

愛美さんはなんの前触れもなく俺に向けて銃を撃つ。

「っていきなりなにやってんのぉ!?」

当然軌道を先読みして躱す。
まったく、早速死ぬところだったぜ。

「お前銃弾効かないじゃん。
 それよりもこの前はよくも私のキャラから銃を奪い取ってくれたなあ?」
「え?」

…………そういえば身に覚えがある。
332笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/14(日) 13:54:22.52 ID:LhizXLix0
「あれ、あの時のプレイヤーって……。」
「私だよ!」

思いっきり撃たれまくる。
正宗の力で弾丸をそらしてそのまま肉弾戦の間合いまで持ち込む。

「ごめんなさい!」

村正を抜いて彼女に斬りかかる。
どう考えても謝る人間の態度ではない。
愛美さんはナイフを抜いてそれを止める。
只のナイフなのに都市伝説を受け止めるって相当だよな。

「悪いと思ってるならもう一回ちゃんと私と戦え!」
「……やっぱりそうなるのね。」

仕方ない。
ここで時間を稼いで誰かが来るのを待つとしよう。


333笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/14(日) 13:57:13.95 ID:LhizXLix0
斥力操作で砂粒を巻き上げる。
それを目くらましにして一旦距離をとった後に俺はふわりと宙に浮かび上がった。
愛美さんの真上をとった後で引力を発生させて村正を振り下ろす。
完全によそ見している。
この一撃は確実に当てられると俺は確信した。

「そこぉっ!」

愛美さんは見もしないで俺の斬撃を躱す。
そしてカウンターのようにして膝蹴りを俺の腹に打ち込んだ。
膝と腹の間にとっさに斥力を発生させてダメージを軽減する。

「ん?手応えが軽いな……。さっきの砂粒といい、また何か新しい力を手に入れたのか?」
「今回もお楽しみいただければ幸いです。」
「さしずめ操作系能力のハイエンド、自然界への干渉能力か。
 電磁気力、重力、核……は無いな。核だけはない。」
「核なんて出したら世界がヤバイです。」
「まったくだ。仮に重力操作ってことにしておこうか。」

さくっと当てられた。
正確に言うと引力と斥力なんだけどまあ良いや。
俺文系だからそこら辺解らないし。


334笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/14(日) 13:59:05.73 ID:LhizXLix0
「まあそれならそれでだ。」
「なんです?」
「もっと全力を出してこい!」
「……解りました。まだ慣れないから制御できないんですけど……。」

拳から斥力を発生させる。
それで思い切り愛美さんを殴り飛ばした。
威力はたいしたこと無いが奇襲に驚いて彼女が少し蹌踉めく。
次は少し体勢を崩した愛美さんを引力で引きずり寄せる。
……と見せかけて、更に吹き飛ばす。
追い打ちを予想していた彼女はそこで完全にバランスを崩す。
少しだけ身体を浮かせて俺を愛美さんの方に引きずり寄せた。

「制御できてるんじゃないか!」

銃弾が真っ直ぐに飛んでくる。
もう躱しきれない、この際だから左腕は捨てる。
刀を収めてから空いた右手で愛美さんを思い切り殴った。

「まだまだぁ!」
「体術で勝負する気か?」

愛美さんの回し蹴りがまともに足に当たる。
骨に響く鈍い痛み。
俺は地面に尻餅をつく寸前で地面との間に斥力を発生させて地面との激突を避ける。
まあ砂場だから当たっても大丈夫だろうが……、そのあとマウントポジションをとられるのが怖い。
335笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/14(日) 14:01:01.39 ID:LhizXLix0
「体術で勝てると……うわっ、と!」
「まだ躱すのかよ!」

鞘に収めていた刀を指と都市伝説の力で弾き飛ばした。
だが彼女はそれも躱す。
その隙に俺は彼女の鳩尾に肘打ちを決める。
防がない、ということは解っているらしい。
彼女の後ろからブーメランのように飛んできた正宗と村正を彼女はキャッチして見せた。

「もーらったと。」
「まだまだ、それで吹き飛べ!」

愛美さんの手の中の正宗が白く発光する。
それに対応するように村正も黒紫色の光を灯す。
突然、彼女の手の中で二つの刀が呼応して力を発動し始める。
力の奔流が俺と愛美さんを吹き飛ばした。
愛美さんは空中で器用に回転して受け身をとる。
―――――速い!
着地した彼女はあっという間に俺の目の前まで近寄って刀をキャッチした俺を蹴り倒す。
この一瞬の隙を突いてくるとは思わなかった。
そのまま俺はマウントポジションを取られる。


336笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/14(日) 14:03:12.10 ID:LhizXLix0
「おお、このアングル……エロイ。」
「…………。」
「ゴフッ!」

殴られた。
酷い。

「愛美さんのような美人に馬乗りになられたら誰だって……アウ!」

また殴られた。
刀ごと両腕を踏まれているのが痛い。
これでは抵抗が出来ない。
あと引力や斥力を発生させるほど集中する前に殴られるのも不味い。
まだある程度集中しないと能力を発動できないのだ。

「これで終わりか笛吹!」
「うへへへへ……」

なんかちょっと幸せになってきた。

「うわっ気持ち悪ッ!」

トドメと思しき一撃が俺の顔に振り下ろされる。
――――――――かかったな。
337笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/14(日) 14:05:38.50 ID:LhizXLix0
ゴスッ、と愛美さんの拳が灰色の板に直撃する。

「ところで愛美さん、赤い部屋ってご存じですか?」
「……おいおい、お前何をした。」
「最初俺が彼女と契約した時は転移にも一々パソコンのマウスでYESをクリックしなきゃいけなかったんです。」

彼女の拳はその灰色の板のYESと書かれた部分を殴りつけていた。

「でも何時の間にか念じるだけでパソコンさえ有れば転移できるようになりました。
 そして同意さえあれば他人もワープさせられたりね。」
「おい、何をしたと聞いているんだ探偵。」
「やっぱり、“同意”って大切ですよねえ。うん。」
「何をしたと聞いているんだ!答えろ探偵!」
「貴方も同意したんですよ、赤い部屋にね。
 赤い部屋の裏技、ポップアップバリアとでも名付けようか。」

赤い部屋は本来【赤い部屋は好きですか】と書かれたポップアップから生まれた都市伝説。
ならばその契約者たる俺は電脳世界内部でならそのポップアップを出せてもおかしくない。

「さて、赤い部屋相手にYESと答えたんだ。
 今回は俺の……」

空間が歪んで辺りから大量の赤い手が出てくる。
それは愛美さんを捕まえようと彼女へと襲いかかる。

「一度発動してしまえば条件発動型の都市伝説の威力はでかい、俺の勝ちだ!」
「くそっ!」

俺が勝利を確信したその時だった。
338笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/14(日) 14:07:31.75 ID:LhizXLix0
「……何やっているんですか。」
「あ゛」
「う゛」
「愛美さん、と……ハーメルンの笛吹きじゃない!」
「よう、宝石男+はないちもんめの少女。」
「二人ともやっと来たか。」

どうやらこの勝負はお終いらしい。
赤い部屋の力で召喚された手の動きを止める。
目の前には見覚えの有る二人。
宝石男とはないちもんめの少女、望だったかだ。

「私は貴方たちに何をやっているのかと聞いているんです。」
「いやあ、デートの最中に盛り上がっちゃって……。」

俺の額に銃口が突きつけられる。

「ゴメンナサイウソデスチョウシニノッテスイマ……」

撃たれた。
赤い部屋の能力で体内に転移用の空間を作り銃弾をその異空間に送り込む。

「スイマセンデシタ」
「解ればよろしい。」
「なんで愛美さんだけじゃなくてあんたまで居るのよ!」
「それには深い訳があってだな……ゆっくり説明するとしようか。」

俺はポケットから電子煙草(ストロベリー)を取り出すと友美からの依頼やら今までの経緯についての説明を始めた。

【上田明也の探偵倶楽部after.act1〜再突入〜to be continued】
339以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 14:31:20.61 ID:UaKgLYRmO
代理乙ですー
340以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 14:34:40.49 ID:mra3MNd20
乙でしたー

上田が通常運行で変態だwww
やってる事はすげえのにww
341以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 14:54:41.07 ID:LhizXLix0
342赤い幼星 † 束の間  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/14(日) 15:18:48.87 ID:LhizXLix0
「組織」本部にて―――
「タンスで瞬間移動」の能力で、『COA』世界に繋がったクローゼットは、
最後に蓮華が部屋に入ってきた瞬間に閉ざされた

(蓮華>ふぅ、皆さんご苦労様でし・・・た?

ジーッ
18個の瞳が、彼女に向けられている

(蓮華>・・・どうかしましたか?
(日天>ローゼさんといい、あんたといい・・・何で素性を晒そうとするんだ!?
(蓮華>は?
(凛々>「は?」やあらへん!今の男誰やねん!?
(蓮華>あぁ、黄昏 裂邪のことですか? 以前R-No.0が話していた
(凛々>番号教えた訳は!?
(蓮華>あの少年、なかなか飲み込みが早くてですね・・・話してて飽きませんでしたので
    R-No.0が気に入った理由を僅かながら理解できた気がします

淡々と答える蓮華
その態度を見て、日天も凛々も流石に呆れてしまい、ただただ溜め息をつくしかなかった

(ライサ>ねーねー、蓮華お姉様は何も悪いことしてないよ?
(ロール>ら、ライサ・・・
(ラピーナ>でも驚いたよー? あの頭の硬い蓮華さんが―――
(蓮華>忘れるところでした。R-No.2、R-No.10を一旦別室へ
(ロール>へ?・・・あ、りょぉーかい

ロールはそそくさと、ライサを連れていく
ライサはハテナマークを浮かべながら、不気味な笑みを浮かべる蓮華を見ることなく部屋を出た
343赤い幼星 † 束の間  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/14(日) 15:20:54.41 ID:LhizXLix0
ばたん、という音と共に、能力も発動していないのに凛々が小さく震えた
蓮華が睨んでいる
視線の先は明らかに、自分

(凛々>な・・・ど、どないしたん?
(蓮華>とぼけても無駄です

口で言うより先に、凛々の首にはアサガオの蔓が巻きついていた
冷や汗がたらたらと流れる

(羅奈>あぁ・・・とうとうバレたでござるか凛々殿・・・
    あれほど忠告し申したでござるに・・・
(凛々>いや、あれは―――ち、ちゃう、なななな何の話や?
(蓮華>R-No.7、私の質問に正直に答えてくだされば貴方の身の安全は保障します
    R-No.8は私の事を陰で何と呼んでいますか?
(ラピーナ>「ココナッツ頭」だよー
(凛々>なっ、ラピーナ裏切るやなんて!? ちゅぅか蓮華はん、それ完全に脅迫やん!!

部屋に響く無気味な笑い声
ますます青ざめていく凛々は、助けを求めるべくアイコンタクトを試みた
344赤い幼星 † 束の間  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/14(日) 15:23:55.40 ID:LhizXLix0
日天は静かに首を横に振り、ロベルタは能力を使った所為で半ばグロッキー気味、
ラピーナは口笛を吹き、羅奈は念仏を唱え、レジーヌは先程から大人しく本を読み続けている

(凛々>な、なは、なははは・・・
(蓮華>クスクスクスクス・・・安心してください、貴方の血と肉は私の愛する植物達の肥料にしますので
(凛々>ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
(ローゼ>・・・どうなさったの?

声のする方向を見る
そこには、やや引きつった表情で蓮華達を見ているローゼの姿が

(蓮華>お帰りなさいR-No.0。少々遅かったですね
(ローゼ>それよりこれは・・・
(凛々>たっ、助けてぇなローゼはん!!

涙目になって懇願する凛々を哀れみ、ローゼは蓮華に指示して彼女を解放した
瞬時にローゼの後ろに隠れる凛々

(日天>・・・っと、それで遅くなったのは?
(ローゼ>えぇ、ついでに裂邪さんの住所も教えていただきましたの〜
(日天>あ・・・あんたは一体あいつと何がしたんだ!?
(ローゼ>? お友達と情報を共有するのは当然の事だと思いますのよ?
(日天>〜〜〜〜〜〜〜っ!!・・・ハァ、もういい・・・好きにしてくれ・・・
(ローゼ>ん〜?・・・ところでライサちゃんは?
(羅奈>彼女はロール殿と別室にござるよ
345赤い幼星 † 束の間  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/14(日) 15:25:54.09 ID:LhizXLix0
(ロベルタ>蓮華さんが拷問タイム始めよーとしてたからね〜・・・
(ローゼ>あらそうですの?
     あぁそれと、ワタクシの携帯電話はどこかご存じなくて?
(レジーヌ>ここに
(ローゼ>ありがとうございますわ〜
     えっと、電源を入れて・・・
(日天>わざわざ切ってるのか;
(ローゼ>あら、お電話はありませんでしたのね
     それじゃ報告書を書き上げますわ〜
(蓮華>自分で書いてくださいね、自分で
(ローゼ>もぉ〜、それくらい分かってますのy

ピリリリリリリ ピリリリリリリ
ローゼの電話が鳴り響く

(ローゼ>・・・あらぁ? 先程別れたばかりですのに・・・

ピッ

(ローゼ>どうなさいましたの?・・・・・・・・・・えぇ!?

彼女に届いた一報は、
再び彼女達を戦場に赴かせる

   ...To be Continued
346以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 15:36:03.87 ID:mra3MNd20
乙でしたー
次に彼女らが向かうのは現実かCOAか
それはそれとしてがーるずとーくだぜまーべらすだぜ
347八尺様の人 ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/14(日) 15:43:51.85 ID:LhizXLix0
COA――仕様外エリア「夜の殿堂」
中世ヨーロッパ風ファンタジーのCOAの雰囲気にはそぐわぬ場所。
そこは、小さなお堂だった。
そこに、サイレスは一人たたずんでいた。
厚く闇がわだかまり、小さな蝋燭だけが
密教の梵字が円蓋に刻まれる室内を照らしている。
「……ああ、本当に、本当に長い事待ったっす」
サイレスはそう呟いた。
「『寺院』の禁忌を破り、転生の秘法に手を出してから百四十年
此処で俺らが出会ったのは、いかなる因縁っすかね……」
サイレスは手に持った資料に目を落とした。
家系図だ。学校町で五大旧家や御三家といわれる特別な家系に付いての詳細な系統が記されている。

348八尺様の人 ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/14(日) 15:47:10.97 ID:LhizXLix0
「………………ようやく、探し物が見つかったっす。
プラン・COAは今の所素晴らしい成果を挙げてるっす。
計画の副産物とはいえ聖杯の奇跡と言う良いものも見せてもらったっす。
ひかるへの干渉はもういいっすね。あれはあれで逸材っすけど……
組織の目を俺の動きから逸らすデコイとしては十二分に……
後は本人の自由意志、そして事件を解決しようとする連中に任せるっす」
彼は闇の中で策を練る。
「プランに置いて、未帰還者は組織への囮。聖杯の方は観察できればそれで良しっす。
問題は本命……っすか。イクトミに警戒されているのが痛すぎっす。
……今は。息を潜めて待つっすか……次こそ、成功させてみせるっす」

to be……

349以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 15:50:01.31 ID:mra3MNd20
乙でした

サイレスはこれで離脱かな?
どう話が流れるのだろうかと期待しとります
350神様の歓迎会  ◆nBXmJajMvU :2010/11/14(日) 16:09:17.75 ID:LhizXLix0
 ふと、気がついた瞬間、自分が見知らぬ場所にいる事を、サンジェルマンは自覚した

「ここは…?」

 暗い、暗い、真っ暗な空間
 上も下もはっきりしない、未知の空間

 ……何かの、都市伝説の攻撃でも受けたか?
 サンジェルマンが、警戒し始めた瞬間

「か〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っらからからからからからからからからからからからからからからからぁ!!!」

 空間に響く、笑い声
 古びた燕尾服を纏い、山高帽を被った、葉巻を咥えた男が、いつの間にか姿を現していた
 くるり、ステッキをまわしてくる

「よぉ〜〜〜〜〜〜っこそ!神々の交差点、「神の領域」に!!」
「…神の、領域?」
「そう言うこった」

 聞き覚えのある声
 振り返ると…そこにいたのはイクトミだった
 虚空に、そこに椅子でもあるかのように、当たり前のように座っている

「あーぁ、来ちまったか、お前も」
「……………いっそ、こんなところ、知らない方がずっと幸せなのにねぇ?」

 足元からの、陰鬱な声
 すぐ傍らに、小さな少年がしゃがみこんでいる
 サンジェルマンに背を向けていて、その顔は見えない
351神様の歓迎会  ◆nBXmJajMvU :2010/11/14(日) 16:11:52.40 ID:LhizXLix0
「イクトミ……ここは、一体?神の領域とは…」
「…言葉通りの意味だよ?そんな事もわからないの?」

 イクトミの代わりに、足元の少年が答えてきた
 馬鹿にしているような、突き放しているような、そんな声

 あー、とイクトミが、やや面倒くさそうに声をあげる

「まぁ、そいつの言う通り、そのまんまだよ。本来ならば、「神」と呼ばれる存在だけが、入り込める場所。神の精神が、ほんの少し上位から世界を見下ろす場所。神々の精神が行き交う、神々の交差点」
「か〜〜〜っらからからからから!小難しい事はさておき、ここは観客席であり、物語の脚本家達ともしかしたら遭遇できるVIPルームであり、色んな神様との交流場所なのであるよ!!」

 やけにテンションの高い燕尾服の男が笑う
 この姿……ハイチの死神、ゲデか
 確か、「薔薇十字団」に所属している個体だったはず

「なるほど、神々の、ですか…では、この少年も?」
「…………僕は、違うよ………………僕はおじさんと同じ、神様でもないのに、こんな場所に来る権利を手に入れてしまっただけの、ただの人間さ」

 サンジェルマンの言葉に、少年は吐き捨てるように答えた
 …見れば、少年は先ほどから、ずっと、小石でも掴んで水面に落としているかのような動作を繰り返している 
 その度、空間に波紋が広がり続ける

「…ここは、そこの死神が言うとおり、観客席。登場人物の悲劇を嘲笑う脚本家と観客達の気配をかじる事が出来る、さいっていの場所だよ」
「慣れれば、脚本家に石投げてぶつけるくらいはできるけどな」
「からからからからからから、我輩達が味わう苦痛を、素敵な悪夢の中で味あわせるのであるよ!!」

 少年一人と神二人の言葉に、ふむ、とサンジェルマンは辺りを見回す
 暗い空間
 そこに、つい、と手を伸ばす
 ……掴んだのは、小さなカケラ
352神様の歓迎会  ◆nBXmJajMvU :2010/11/14(日) 16:14:15.51 ID:LhizXLix0
「………へぇ?もう見つけたんだ?……良かったね、才能あるんじゃないの?」
「あ、サンジェルマン、それは…」

 イクトミが、止めるよりも前に
 そのカケラを覗き込み、サンジェルマンは苦笑する

「……なるほど、これが、本来私に訪れるはずだった「結末」ですか」

 ……そのカケラは、脚本
 用意されていたけれど、その結末に至らず、打ち捨てられたもの
 あったかもしれない現実の、到達しなかったカケラだ

 そのカケラの中身は……悲劇と惨劇
 上田という青年に関わった者達、その事如くが死に絶え、不幸になっていく
 残酷で残忍で残虐で、救いなんてこれっぽっちもない世界
 その脚本では、サンジェルマンはレモンの「ラプラスの悪魔」の予知通りの結末を迎えていた

「…………ここには、その手のカケラは一杯あるよ?もっと探してみる?………見れば見るほど胸糞悪くなるのは確実だけどね」
「でしょうね。この辺でやめておきましょう」

 ぽい、とカケラを放り投げるサンジェルマン
 カケラは暗闇の中に、吸い込まれるように消えていく

「ここは、来る気になればいつだって入り込める………ここに入り込めるのは、精神だけだから…好き好んで、こんなロクでもない場所に来るかどうかは別だけどね」
「現実世界とは、時間の流れも違うしな」
「ゆっくりじっくりお茶会しても、現実ではほんの数秒しか時間がたってないとかざらなのであるよ。か〜〜〜っらからからからからからから!!」
「なるほど、ある意味で、ゆっくり思考をめぐらせるには最適な場所かもしれませんね」

 暗い空間
 陰鬱な空間であるかもしれないが、むしろ、自分達の話し言葉さえなければ、無音の空間でもある
353神様の歓迎会  ◆nBXmJajMvU :2010/11/14(日) 16:17:02.41 ID:LhizXLix0
 余計なものとて、あのカケラのように意識しなければ視界に入ってくる事もないのだろう
 ある意味で、思考にふけるには最高の空間かもしれない

「……へぇ……………おじさんは、また、ここに来る気があるんだ?」
「神の領域なんて、本来、入り込めない場所に入り込めたんですしねぇ…それに」

 少年を見下ろすサンジェルマン
 少年は、サンジェルマンを見ようともしない
 ただ、空間に波紋を作り続けている

「あなたも、この場所を憎んでいながら、こうやって入り込んでいるのでしょう?お互い様ですよ」
「………僕は、危機回避に利用しているだけさ。残酷で残忍で残虐な舞台を好む、残酷で残忍で残虐な創造者達の好き勝手にされるなんて、御免だからね。それに波紋を作って台無しにしたい、ただ、それだけ」

 その気になれば、ここはいくらでも未来を知る事ができる
 絶望的な未来を突きつけられる可能性と隣り合わせ、とも言えるだろう
 ……この少年はそれを否定し続ける為に、ここにいるのだろう
 サンジェルマンは、そう理解した

「……さて、イクトミ、ここは、来る気になればいつでも来れるし。脱出する気になればいつでも脱出できますよね?」
「まぁな。お前らみたいな人間とか元人間の身でここに来た奴ぁ、たいてい二度と来ないんだけどな…そこの餓鬼みたいな例外はさておき」
「か〜〜〜〜っらからからからからからから!!かの「カラミティ・ルーン」も、一度来たきり二度とやってきていないであるよ!「こんなしみったれた空間俺様にふさわしくない」とか言ってたであるな!!」
「…うっわぁ、あれも来た事あったんですか、ここ…」

 一度だけ遭遇した、そして、出来る事ならば二度と関わりあいたくない存在の名前を聞いて、サンジェルマンは苦笑した
 …間違っても、ここで顔をあわせたくないものだ
 ゲデの言う通り、ここに姿を見せていないなら、問題ないかもしれないが

「からから、とりあえず、サンちゃんがまたここに来るというのならば!!サンちゃんも、ここの住人の仲間入りなのであるよ!!レェッツ!歓迎会!!!」
「待ってください。サンちゃんって何ですか、私のことですか?」
「からからからからからからからからから!!ここに出入りするからには、同じ釜の飯食った仲間!!フレンドリーに行くである!!」
354神様の歓迎会  ◆nBXmJajMvU :2010/11/14(日) 16:19:52.86 ID:LhizXLix0
 サンジェルマンの言葉を無視して、ゲデがハイテンションにくるくる回る
 周りに、椅子とテーブル、ティーセットなどが具現化してきた
 恐らくは、ここに出入りできる者が望めば、こう言う物はすぐに具現化するのだろう
 サンジェルマンが軽くイメージしてみると、なるほど、彼の手元にお茶菓子が現れた

「…へぇ、本当に才能あるんだ………良かったね?その調子だったら、すぐに創造者とかとも遭遇できるかもよ……?僕らを不幸にして楽しがる、意地の悪い連中と、さ。きひひひひひひひひひ」
「お前な。もうちょい、ガッカリさせない言葉選んどけよ。一応、俺がなれない気をつかってやってるのに」

 後ろ向きな発言しかしない少年に、イクトミは小さく苦笑して
 サンジェルマンを見て、肩をすくめる

「……さぁて、サンジェルマン?お前の歓迎会と行こうか。お前の「組織」での扱いとか、残留についてとかも話したいしな」
「おや、私が「組織」に残ってもいいのですか?」
「お前次第だけどな。俺としちゃあ、お前に抜けられたら面倒臭いし」

 酒飲めなくなるのヤだし、と自分勝手な事を言ってくるイクトミ
 このトリックスターめ、と苦笑しながら、サンジェルマンはゲデが出現させた椅子に腰掛けた




 さぁ、かみさまのおちゃかいがはじまるよ?
 すてきなはなしあいといこうじゃないか?
 ちぬれたぶたいをみおろせる、さいていでさいこうでさいあくのかんきゃくせき
 ひとのこが、しょうきをたもちつづけることができるかな?




fin
355以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 16:21:22.11 ID:LhizXLix0
笛の人に焼き土下座orz
先に優先すべきネタは一杯あったが、主に龍一と将門の会話がうまくいかず、カっとなって書いた
グダグダすぎる内容に後悔しているが反省はしていない


そして、夕食準備してくる
夕食後のお風呂上りにもスレが残っていますように
356以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 17:15:34.97 ID:H0h+qr5e0
投下乙ですー
357以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 17:51:59.91 ID:EFzVt1RY0
358以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 18:38:55.76 ID:EFzVt1RY0
359以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 19:14:17.98 ID:EFzVt1RY0
360以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 19:27:10.30 ID:Z9tCwGdq0
ただいまほ
361以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 19:46:08.23 ID:Z9tCwGdq0
362以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 20:05:07.59 ID:Z9tCwGdq0
363以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 20:23:33.40 ID:Z9tCwGdq0
364以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 20:40:29.55 ID:Z9tCwGdq0
365以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:00:37.50 ID:Z9tCwGdq0
366以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:18:32.28 ID:4LHqNUrU0
367以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:35:05.86 ID:4LHqNUrU0
368以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 21:53:26.06 ID:4LHqNUrU0
369以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 22:10:56.82 ID:4LHqNUrU0
370以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 22:21:39.27 ID:LbuPBq4k0
371以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 22:40:08.13 ID:4LHqNUrU0
372以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 22:58:02.89 ID:4LHqNUrU0
373以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 23:11:28.25 ID:TI0Q2Mo50
374祟り神と向き合う  ◆nBXmJajMvU :2010/11/14(日) 23:20:08.23 ID:4LHqNUrU0
「13代目、か………龍彦の代から、もうそんなに経つのか」
「はい」

 とぷり
 髑髏の盃を満たす酒を口にしながらの将門公の言葉に、俺は頷く
 ……八代目様は、この将門公との交流があった
 だからこそ、この方から「童子切安綱」を与えられたのだ
 八代目様は、ぬらと「童子切安綱」の多重契約をしていたと言う
 ………最終的には、「童子切安綱」に「飲まれた」のだと、ぬらが以前、話してくれた

「くくっ、そして………お前は、龍彦以降、久々に獄門寺の家に出た契約者、か」
「…そうなります。八代目様以降、俺の家では、都市伝説の契約者は現れなかったようですから」
「龍彦が、最期まで我ら異質な存在を家族に伝えんかったからだろう。心鬼もそうだった」

 どこか懐かしそうに、そう言ってきた将門公
 遠くを見ていたかのような眼差しは、しかし、すぐに俺へと向けられる

「お前は、龍彦によく似ているな。姿形だけでなく、性格までも」
「…ぬらからも、言われます」
「くくくっ!そうか、もうぬらりひょんとも顔をあわせていたか。龍彦の子孫を酷く気にかけていたからな」

 将門公の持っていた盃が、空になる
 それを床において…将門公は、軽く、俺を睨んだ

 直後、息苦しさに襲われる
 目の前の、圧倒的な存在
 それに、押しつぶされそうになる錯覚
 一瞬でも気を抜けば、意識を失ってしまいそうな威圧感

 歯を食いしばり、それに耐える
375祟り神と向き合う  ◆nBXmJajMvU :2010/11/14(日) 23:23:28.30 ID:4LHqNUrU0
 ……俺は、今
 将門公に、試されている
 それを、実感する
 ここで、意識を失うような無様な姿を見せては……いけない

「くっくく………くっかかかかかかかかかかかかか!!!」

 心の底から、楽しげに笑う将門公
 威圧感が、消える

「そうか、耐えたか!やはり、お前も持って生まれたか!!」

 何のことか、よくわからない
 ただ、どうやら…「合格」である、らしい

「くくくく………っ!この代になって、あの時代の血が、一斉に騒ぎ出したか。これが瞳の言っていた「繰り返す」と言う事か」

 将門公が、立ち上がった
 俺に近づいて、腰をおろし……俺の顎を掴み、半ば無理矢理上を向かされる
 俺の目つきを隠す長い前髪を払いながら……将門公は、笑った

「…獄門寺の家の者、龍彦の血を、もっとも濃く受け継いだ、剣鬼と修羅の素質を持って生まれた者よ………どうだ?我の部下(もの)にならぬか?」

 誘いの言葉
 日本最強の祟り神が、俺などに部下になれという

「………何の冗談ですか?」

 冗談に、決まっている
 そうでなければ、俺など求めても、意味はない
376祟り神と向き合う  ◆nBXmJajMvU :2010/11/14(日) 23:29:25.10 ID:4LHqNUrU0
「冗談に聴こえるか?」

 楽しげに笑って、俺を見下ろしてくる将門公
 笑ってはいるが……その目は、本気だった
 冗談だったら、どれだけ楽だっただろうか

 …最も
 答えなど、一つしかない

「………お断りします」

 短く、簡潔に、そう答える

「ほぅ?何故だ?」
「…俺には、もう、剣を捧げた相手がいますから」

 もう
 仕えるべき主君は、決めたから

「剣を捧げる主君は、生涯、ただ一人と決めています………俺の剣は、翼さんに捧げました。俺の主は、あの人、ただ一人です」

 淡々と答える、俺の答えを、将門公は楽しげに聞いている
 …きっと、俺の答えを予測していたのだろう
 わかっていて、わざと、あんな言い方をしてきたのだ
 ……意地の悪い方だ
 ぬらから聞いた通りだ

「まぁ、良いわ。翼は我の部下(もの)だ。間接的に、お前は我の部下(もの)よ」

 …そう言う認識でいいのだろうか
377祟り神と向き合う  ◆nBXmJajMvU :2010/11/14(日) 23:30:56.67 ID:4LHqNUrU0
 まぁ、別に構わないが

「…お話とは、この事でしたか?」
「あぁ。そうだが?」
「……そちらのお話が終わったのならば、こちらからも、お話が」

 ほぉ?と興味深そうな表情を浮かべてきた将門公
 顎を捕まれた状態のまま、俺は続ける

「…俺には、情報網が足りません。都市伝説関連の、情報網が。だから、学校町で、誰かが何かを企んでいても…把握に、遅れてしまう」
「ふむ?」
「……ですから。俺は、貴方方「首塚」の情報網が、欲しい」

 はっきりと、単刀直入に、そう告げる
 …明らかに、俺には情報網が足りない
 だから、「首塚」の持つ情報網は、俺には魅力的だ
 その力を、借りる事が出来るならば…!

「我の部下になる訳でもなく、その力を欲するか?」
「…手段は選んでいられませんから……もう、天倉達のような被害者を、俺の周りから出さない為にも」

 もう、二度と
 失敗しない為にも

「…「組織」の、あんな事をする連中相手に、遅れをとりたくありませんから」
「くくく………っ!そうか、お前も、「組織」を嫌ったか」
「……大門 大樹さんや、広瀬 宏也さんのような人が居る事も、わかっています。けれど……好きには、なれそうにないです」

 俺の、その答えに
 将門公が、満足げに笑った
378祟り神と向き合う  ◆nBXmJajMvU :2010/11/14(日) 23:33:32.87 ID:4LHqNUrU0
「いいだろう!翼の部下ならば、我の部下も同然。そして、「組織」と敵対するならば、我らが同士よ!!我らが得し情報、お前も存分に活用するが良い!」
「……ありがとうございます」

 ようやく、顎から手を離されて
 俺は、将門公に、深く、頭を下げた

「…すみませんが、それと、もう一つ」
「ほう?何だ?」
「……剣の、相手になっていただきたいのです………実戦形式の剣技を、習いたい」

 かつて、ぬらが教えてくれたような、剣を
 ぬらも、今でも頼めば教えてくれるだろう
 だが、相手は多いほうがいい
 様々なパターンの戦闘方法に、対処できるようになりたい

「くくくくくっ!!いいだろう、相手になってやる。お前が持って生まれたその力の使い方も含め、全て教えてやろう!!」
「…感謝いたします」

 改めて、頭を下げる

 もっと
 強くならなければ
 花子さんに、負担をかけない為にも
 もう二度と、失敗しない為にも

 天倉達のような、被害者を

 ……彼女のような、被害者を

 もう、二度と生み出さない、為にも                                                    to be … ?
379以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 23:35:15.06 ID:4LHqNUrU0
龍一のシーン続き
将門様、部下と書いて「もの」と読むのはやめてください
貴腐人大喜びですから、ハンガーの女幽霊(名前未定)がガクブルするレベルで

紗奈ちゃん、いくらでも覗き見たり盗み聞きしてていいのよ(やめろ
380以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 23:55:59.09 ID:4LHqNUrU0
おやすみ
明日もスレが残っていますように
381以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 23:59:28.96 ID:Oavo0TTJ0
投下乙ですー
是非とも紗奈ちゃんには襖の隙間から覗き見していただきたい
将門様の威圧が漏れて彼女に届いたとかで目覚めれば、タイミング的にもばっちり
382以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 00:27:20.07 ID:tJKLXzHW0
ねるほ
383以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 00:33:40.02 ID:waY75lHH0
384以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 01:31:46.69 ID:8qlQN+qAO
>>361-371
強そうだけど雑魚っぽい名だな
385以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 02:31:56.19 ID:fFvtGWFc0
386以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 04:29:33.37 ID:1MUxgGZ5P
387以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 06:01:22.22 ID:1MUxgGZ5P
388以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 07:03:57.17 ID:54FZOjJgO
389社長 題未定 (代理):2010/11/15(月) 09:24:54.48 ID:tc9CjYo50
寓話

白いスーツの紳士は一つのボタンを備えた箱を持って、やって来た
彼はある男の元へ訪れ、伝える

 貴方がこのボタンを押すと、貴方の知らない、しかし、この世界に生きる人が誰か死ぬ
 もし貴方がボタンを押せば、貴方に100万ドルを現金で差し上げよう

紳士は男に鞄を開いて見せた。――中には大金が詰め込まれている
彼は、一夜明けたらその箱を回収に来るのでそれまでに決断して欲しい、と告げると男の元を後にした

男は躊躇し、逡巡し、苦悶し、
日は落ち、やがて、夜が明けた

白スーツの紳士は昨日のように男の元へ現れ、問う
ボタンを押さないのか、と

その時が来るまで悩み抜いた男は、紳士に待ってくれと一言応え、
意を決したように、箱に手をかけた

銃声が響いたのは、その時だった
390社長 題未定 (代理):2010/11/15(月) 09:28:40.26 ID:tc9CjYo50
いつの間にか、紳士はうつ伏せとなって倒れていた
彼の背中の一点から、鮮やかな赤が広がっていく
紳士の白衣を自身の血が染めていく

一瞬の出来事に呆然とした男は、紳士の立っていた、すぐ後ろに
黒いスーツを来た男が立っている事を見止めた
黒服は、素早く男へと近づき、ボタンを備えた箱を取り上げ、
地へと捨て、踏み潰した。箱は呆気なく壊れた

 貴方は運がいい
 貴方は、もう少しで、悪魔に魂を売る所だった

黒服は、男へ告げる
男は、ようやく事態を把握したのか、

 私は、運が、いい、だと?

そう応えた。男は言い淀み、唇を震わせる
391社長 題未定 (代理):2010/11/15(月) 09:31:22.68 ID:tc9CjYo50
男は、口を開いた

 私は、運がいい、だと?
 悪魔に魂を、売る所だった?

 私は、私の名は、嫌われている
 力は無い。名誉も、金もだ
 私には、病に侵された母が居る
 医者は、母を見捨てた
 だが、医者が見捨てたのは、母の病が手遅れだからでは、無い
 私が、金を持っていないからだ

 確かに、私は、この紳士に、魂を売るような真似をしたかも知れぬ
 紳士の言うように、罪なき人を、一人殺そうとしたのかも知れぬ
 しかし、それは
 それは、母を救うためだった
 たとえ、私が、人を殺した罪を着ようとも、母には生きて欲しい
 だのに、だのに

男は、言いよどんだ
392社長 題未定 (代理):2010/11/15(月) 09:35:35.16 ID:tc9CjYo50
黒服は、男へ静かに告げた

 たとえ、貴方が、自身の事情で
 悪魔に魂を売るのだともしても、だ
 私は、悪魔を殺した
 何故なら、私はその為に存在するのだから
 気の毒だが、貴方の事情は、私にとって知った事では無いのだ

黒服は、男に背を向け、去って行った
男は黒服の後ろ姿を見詰め、倒れた白服の紳士に目を落とし、

やがて、地へと膝をついて、倒れ込んだ


男の母を侵した病は、やがて男を侵し、死へと誘うだろう

男の行為は、善か悪か?
このような問いこそ、愚問というものだろうが



――寓話はここで終わる
393社長 題未定 (代理):2010/11/15(月) 09:39:01.05 ID:tc9CjYo50
学校町 西区付近 河川敷か? (夕方の時分)

「友達って何ですか…?」
緑の上に仰向けに転がっている人が2人いる
唐突に、一方に声をかけたのは、もう一方の、男子だった
着ている制服からして、西区、工業高校の生徒のようだ

「え、いきなり何を言い出すんですか?」
同じく寝そべっているもう一方、全身を黒で包んだ男が
首を男子の方へと向ける

ひときわ強い風が吹き抜ける
彼ら2人の寝ている緑が音をあげた
男子の方は暫く黙っていたが、やがて身体を起こし
片膝を立てるように座った

「確かに、友達って素晴らしいものかもしれませんね
 例えば銃撃戦に巻き込まれた時に、自分の盾になってくれるんですよ
 そんな人が簡単に得られるんだ」
「例えが特殊過ぎですよ…」
黒服の男は困惑した表情で、男子と同じように身体を起こす

「そして、知らず知らずの内に利用し合えるのが、友達、です
 利用して、利用されて…フフフ、互いの私欲の為に
 動いてくれる人間って、有難いですよね」
「あのう…何時にも増して暗過ぎですよ?
 何か学校で嫌な事でもありましたか?」
394社長 題未定 (代理):2010/11/15(月) 09:42:31.13 ID:tc9CjYo50
「ハハハ、俺は友達が居ないんで、人間関係で悩む事は皆無ですよ」
黒服の言葉に、男子は笑って返す
勿論、その目は笑っていない
一瞬で、男子は笑顔から真顔に戻った
「ところで…そもそも友達って、本当に友達なんでしょうか?」
男子の次の質問に
「あの、意味がよく分からないんですけど」
黒服は、困惑した表情のままだ

「要するにこういう事です
 俺と貴方は友達でしょうか?」
「そう…だと信じていたんですけど」
「しかし、貴方は俺の考えている事が分からないでしょう?
 もし、俺が、貴方の事を友達でもなんでもないと思っていたら、どうするんですか?」
「それは…あの、本当に、そう、思っている、ん、ですか?」

男子は答えずに、顔を逸らした
溜息を吐く音が聞こえる
黒服はどんどん居心地が悪くなってきていた

「黒服さん、友達居ますか?」
「へ、私、ですか? あ、あの…貴方とは、友達だと、そう、思って、思っていたんですよ…?」
黒服はベソをかき始めている
目は潤み、今にも体液を垂れ流しそうだ
男子は、彼の顔を見ないまま
「俺以外にですよ。例えば、『組織』の人とか」
そんな事を言ってきた
「そ!! それは、あの、
 貴方は、私の事、友達だと思ってくれているんですね!!
 そうですね!!! やだなぁ、ビックリしちゃったじゃないですか!!!!」
395社長 題未定 (代理):2010/11/15(月) 09:45:23.77 ID:tc9CjYo50
黒服は懐からハンケチを引き抜くと、盛大に鼻をかむ
そして、未だ潤んだ目のまま、顎に手をやり、思案顔になった
「そうですねえ…『組織』の人だと」
「先輩格とか、ただの同僚とか、そういうのは無しですよ」
「そ、そうですか? ムム」
男子はおもむろに顔を黒服へと向ける
「そうです。いますか? 貴方の変質的に捻くれた妄想を共有できる、友人というヤツが」
「あの…すいません、いませんです、ハイ」
男子はまたも溜息をつく

「そうなると、俺達には友達がそれぞれ1人しかいない、という事になります」
「そうなりますね」
「しかし、俺達の関係を友達と呼んでいいのでしょうか?
 もしかしたら、友達とは違った関係かもしれないんですよ?」
「そうなんですか?」
「そうなんです。そして、俺達は知る必要があるんですよ
 友達とかいうヤツが一体何なのかを確かめないといけない」
「でも…どうやって?」
「聞き込むんですよ、友達とか言う連中に。それ位しか思いつきませんが
 それとも貴方に、何か案がありますか?」
「え? 案? 無いですよ」
「じゃあ行きますよ」
男子は立ちあがった
その表情は暗く、黒いものを含んでいた

「え、行くって?」
「聞き込みにですよ」
座ったままの黒服をみやりながら、さも当然というように答える
396社長 題未定 (代理):2010/11/15(月) 09:48:49.13 ID:tc9CjYo50
男子は辺りを見回した
「例えばああいうのは論外です」
黒服は立ちあがって、男子の指差す先を見遣った
女子高生と白い服の男が歩いている
女子の方は制服から察するに、恐らく東区の高校だろう
男はと言えば、何処となく古風な雰囲気を醸している

「あれって旧軍の制服じゃあ…」
「あれは恋人というもので、リア充というヤツです
 友達という関係ではありません。聞かなくても分かります
 所謂、もげろ、とか言うアレの典型例ですよ」
黒服の呟きを無視し、男子は何処か暗い声で呻る

「いや…でもアレ、どちらかが都市伝説っぽいですよ?
 もしかしたら、恋人でなくて契約関係なんじゃ…」
「都市伝説と人間との間にも、ロマンスはあったりするでしょう!
 許せないッッ!! ジェラスッッ!! きぃぃぃぃぃぃぃぃッッッ!!」
「おおお落ち着いて下さい!」
前触れ無く興奮しだした男子を、黒服が必死で止めに入る

「何やってるんですか?! 離して下さい!!
 学校町にいる都市伝説契約者は、サーチ&デストロイ!
 サーチ&デストロイが基本でしょうが!!」
「止めて下さい! そんな過激派が言っちゃう事言わないで下さいよ!!
 『組織』全体のイメージダウンですよ!!!」
「離せッッ!! うおおおおおおおッッ!!」
「ダメですッッ!!」
「うおおおおおおゥ!! って、あれ? あの2人は?」
「良かった…ゼイ…何処かに行ってくれたみたいですね…ゼイ」
「チッ」
397社長 題未定 (代理):2010/11/15(月) 09:53:05.52 ID:tc9CjYo50
男子は抑え込んできた黒服を物凄い形相で睨み付ける
「貴方が止めなければ、リアルもげろが出来たものを…」
「止めて下さいよ、ハァ、そんな簡単に、敵を作っちゃ駄目ですって…ハァ」
黒服は抑え込むのに必死だったようで息も絶え絶えといった体だ

「あ、向こうから、男子の2人組がこっちへ来ますよ
 聞いてみたらどうですか?」
黒服の見る方向、河川敷傍の歩道を男子高生2人がこちらへと歩いてくる

「丁度いいな。あの人達に聞いてみましょう」
男子は暗い表情に戻ると、速足で2人組へと近づいていく
ひとまず男子の関心を別に逸れた事を良しとしよう
黒服は彼の後を追う

「ちょっと、そこの貴方達」
こちらへと近づいてくる男子と黒服に警戒したのか
男子が声をかけた時、2人組の表情は強張った
両方とも東区高校の制服を着ている
一方は部活生なのか、大きなショルダーバッグで頭髪を短く刈り込んでいる
もう一方はショートヘアの男子で、線の細さや同年齢の標準より低い背、
中性的な顔立ちから、女子のようにも見える
黒服はチラリと、この人は女装したら案外似合うかもしれない、などと場違いな事を考えた

「ちょっと、そこの貴方達」
「な、なんですか」
男子の呼びかけに反応したのは、頭髪を刈り込んだ方だった
背の低い方は、部活生のような男子の後ろに隠れるようにしている
398社長 題未定 (代理):2010/11/15(月) 09:56:51.19 ID:tc9CjYo50
「貴方達は、友達ですか?」
「…は?」
いきなりそう尋ねられても困惑するしかないだろう
黒服は部活生男子に心の中でお詫びするしか無かった

「俺と、この人――そう言って黒服を指差す――は友達がいないんです
 ぶっちゃけ、友達って感覚が分からないんですよ
 貴方達は、友達ですかぁ? ねえ、そうなんでしょう?
 教えて下さいよぉ、友達って何なんでしょうかねぇぇ?」
(ちょ、ちょっと! 初対面の人に何を凄んでるんですか?!)
黒服のサイレント突っ込みを無視し、
男子は部活生男子の方へと詰め寄った
「友達、なんでしょ? え、違う、違うの?
 じゃあ何ですか? 彼は貴方の身代わり?
 それとも、利用し合える仲?
 どんなきっかけで知り合って、なんで関係が継続してるんですかぁ?
 ねえ、何か喋って下さいよぉ」
最早男子は黒いオーラを全開で部活生男子にメンチ切ってる
流石にこれはまずい、どうやって止めるか、と黒服が男子に声をかけようとした

その時

「お、俺は」

部活生男子は口を開いた
399社長 題未定 (代理):2010/11/15(月) 10:01:12.40 ID:tc9CjYo50
「俺は…」
部活生男子は、繰り返す
彼の後ろに隠れている背の低い男子は
部活生の腕にしがみ付いている
ブルブル震えているのは、
ブラックオーラをフルスロットルな男子に怯えているからだろうか?

「んん? よく聞こえないなぁ?
 貴方は、その後ろに隠れてる彼と、友達なんですかぁ?
 そうじゃあないのぉ?」

「こ、こいつは」
部活生男子は一瞬詰まった
左手をゆっくりと持ち上げる
その手は、固く、握り締められている
思わず黒服は唾を飲み込んだ
これ以上いけない、男子が殴られる
黒服がブラック男子をどつこうとした、瞬間


部活生男子は小指を立てた
「こいつは、俺の、コレ、です」
そう言い放った彼の顔には、怒りと緊張と不安と恐怖が綯い交ぜになった表情があった


黒服は言葉を失った。これこそまさに、パーフェクトな絶句
首を無理やり脇の男子に捻り回す

「へ?」
彼は間の抜けた声を出して硬直していた
400社長 題未定 (代理):2010/11/15(月) 10:04:55.52 ID:tc9CjYo50
一拍間をおいて
「ごヴぃえんなひゃいッッッ!!!」
黒服はその場に身を投げ、魂の土下座をかます

河川敷脇の歩道
男子、黒服、そして、彼らとは無関係の東区男子高校生2人組


ひときわ強い風が吹き抜ける
河川敷の緑が音を上げた


彼らの間には、気まずい沈黙が訪れていた





世間的には『夢の国』の事件が収束し、
組織は『マッドガッサー』と『コークロア』の対処に追われているのだが
彼らには、そのような事は、本当にどうでも良かった

〈くそみそ〉
401社長 題未定 (代理):2010/11/15(月) 10:08:28.14 ID:tc9CjYo50
黒服
 『組織』所属
 一応、過激派に身を置いている
 男子の担当であるのか、詳細は不明
 かつて契約関係にあったのは「寄生バエ」
 その性癖は「変質的に捻くれている」らしい

男子
 西区の工業高校の制服を着ているが詳細は不明
 友達はいないらしい
 都市伝説と契約しているらしいが細かい事は未定
 かなりショボいのであってほしい

以上
402以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 10:31:29.85 ID:tc9CjYo50
403以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 11:55:01.00 ID:8qlQN+qAO
404以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 12:50:03.52 ID:O9BzZypG0
405以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 13:09:29.74 ID:O9BzZypG0
406以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 13:28:36.54 ID:O9BzZypG0
407以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 13:47:14.49 ID:O9BzZypG0
408以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 14:11:32.82 ID:O9BzZypG0
409以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 14:32:42.64 ID:O9BzZypG0
410以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 14:52:08.97 ID:O9BzZypG0
411以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 15:09:59.47 ID:O9BzZypG0
412以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 15:28:17.98 ID:O9BzZypG0
413以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 15:40:21.94 ID:O9BzZypG0
414仲介者の責任  ◆nBXmJajMvU :2010/11/15(月) 15:49:19.98 ID:O9BzZypG0
 撃つ
 ひたすら、撃つ、撃つ、撃つ
 騒ぎを大きくして、自分を発見させる為に
 その為だけに、ひたすらPKを(ついでにPKK)を繰り返す愛美
 目の前に現れたそいつに、銃撃して

 …その、弾は
 盾によって、はじかれた

「………むぅ。何という問答無用。BBS大炎上の原因になるのもうっかり納得」

 ………
 おや??

「…玄宗 直希か?」
「あぁ」

 ばさり
 盾を持っていたのは、全身鎧を纏った、天使
 …その、背後から
 分厚い本を抱えた直希が、姿を現した

「……無事で、良かった」

 愛美の様子に、ほんのわずか、ほっとしたような表情を浮かべる直希
 感情表現が乏しいこの青年の感情の動きに、彼がどれだけ、COA世界に取り込まれた愛美を心配していたのかが現れている

「…さて、話したい事は多いが……まずは、場所を移動すべきだな」
「話なら、ここでもできるだろう?」
「…貴方が、サーバーが3台ほど一時的に落ちる勢いでBBSが大炎上するくらい大暴れした故、ここに腕自慢の廃人共が集まりそうな予感がむんむんと。ゆっくりは話せないかと」
415仲介者の責任  ◆nBXmJajMvU :2010/11/15(月) 15:51:05.40 ID:O9BzZypG0
 ……なるほど
 それは、流石に場所を移動しなければならないか

「わかった。では、一旦移動しよう」
「…こちらに」

 愛美を先導して歩き出す直希
 盾を持った天使も、その後をついていく

 しばし、無言のまま歩みを進めていたが

「………申し訳ない」

 と
 そう、謝罪の言葉を口にした

「…突然、何を?」
「……僕の判断ミスで、あなたを、生命の危険性が伴う事態に巻き込んだ…このCOAでの騒ぎを甘く見ていた、僕の判断ミスだ」

 調査、と言う名目で
 ただ、ゲームを楽しんでくれればいいと思っていた
 その判断が、あまりにも甘すぎた

「お前の責任ではない。私が油断しただけだ」
「………僕が提供した仕事で、あなたが危機に晒された。責任は、全面的に僕にある」
416仲介者の責任  ◆nBXmJajMvU :2010/11/15(月) 15:52:26.42 ID:O9BzZypG0
 都市伝説退治のアルバイト
 それは、命の危険と隣り合わせの仕事
 だからこそ、事前の情報収集を完璧にして、適材適所、無理のない仕事を提供しなければならない
 …提供する、相手の命を危険に晒すわけにはいかない
 失わせるわけにはいかない
 その責任を背負うべき存在
 ……それが、「仲介者」なのだ

「…僕は、「仲介者」として…この世界において、これ以上、あなたを危険に晒す訳にはいかない」

 その、声には
 他者の命に関しての、重い、重い責任が、圧し掛かっていた







to be … ?
417以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 15:54:21.53 ID:O9BzZypG0
はないちもんめの人に焼き土下座orz
遅くなって申し訳ありません、COA世界での、直希と愛美さんの合流でした
時期的に天倉姉妹の事件の後なので、直希に一切余裕がないです

何?
その直希の逃げ道をますます塞いでるように見えるって?
気のせいです
そう見えたなら、あなたが心のそこでそう言う展開を望んでいる証拠です
418以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 16:06:35.99 ID:O9BzZypG0
夜帰ってきてもスレが残っていますように
419以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 17:29:27.71 ID:BEk9N5iXO
ほし
420以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 17:35:40.15 ID:8qlQN+qAO
421以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 19:01:01.72 ID:fFvtGWFc0
422はないちもんめ ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/15(月) 19:21:18.29 ID:Doowj2zQ0
「…僕は、「仲介者」として…この世界において、これ以上、あなたを危険に晒す訳にはいかない」
合流した仲介者玄宗直希重い・・・一言で言うと重い
まるで「全部自分の所為」だと言わんばかりだ
「・・・ふざけるな」
「何?」
「仕事を回したのは確かにお前だ
 だがな、この仕事を引き受けたのは私だ
 私が、自分の判断で引き受けた
 それを言うに事欠いて『責任は全面的に僕にある』だ?」
何を言いだすのだコイツは
依頼を受けるも拒否するも最終的な判断を下すのは私だ
それをさも自分が決めた事の様にウジウジと・・・
「今回のコレは完全に私の落ち度だ
 お前が気にする事じゃない」
「しかし」
「何度も言わせるなよ・・・私の気は長く無いぞ」
銃を直希に突きつける・・・イカンイカン
423はないちもんめ ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/15(月) 19:25:53.65 ID:Doowj2zQ0

「しまったな、こんな無駄話をしてる場合じゃなかった
 玄宗、判っていると思うが今回の件・・・確実に都市伝説が絡んでいる
 それも複数のな」
齢重ねし黒き山・・・『ティンタゴン』
奴はゲームのキャラではない
ゲームのキャラにしては動きも、言葉も、全てが異質だった
間違いなく都市伝説だ・・・恐らく契約者付きの
「私の予想だが・・・こっちには他にも契約者が居る筈だ
 そいつらも使って『ゲーム内の敵』は私が何とかする」
だから・・・
「お前は外・・・現実世界の事に当たれ
 私の勘でしかないが、この件・・・裏にある思惑は私の手に余りそうでな」 
ただ、力押しだけで解決できる類の事件ではない
恐らく複数の思惑が入り混じってる
「お前なら、上手くやれるだろ?」

続く?
424以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 19:45:24.77 ID:Doowj2zQ0
425以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 20:03:31.54 ID:Doowj2zQ0
426以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 20:23:15.24 ID:Doowj2zQ0
427以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 20:46:59.26 ID:Doowj2zQ0
428ソニータイマー (代理):2010/11/15(月) 20:50:06.54 ID:Doowj2zQ0
「unluckyHalloween」
今日は10月31日、ハロウィンだ。なので冠帝の豪邸でハロウィンパーティを開くことになった
香々緒「ふっふっふ…。ハロウィンスペシャル、そしてハロウィンと言えばお菓子! ついに僕が活躍する時が来たようだよ…」
グレーテル「どちら様?」
香々緒「香々緒だよ!? 君と契約してる!」
グレーテル「あはは、冗談よ! ちゃんと覚えてるわ。えーと…マカオ?」
香々緒「香々緒だよ」
香々緒とグレーテルがこんなやり取りをする
幽夜「いやー…香々緒君。ハロウィンと言えば西洋妖怪でしょー…。ここは僕が…」
香々緒「ええと、誰君? 新キャラ?」
幽夜「幽夜だよぉー…!? 笛吹幽夜ー…!」
香々緒「ごめん、本当に思い出せない」
幽夜「…」
ゆうやは 500のダメージをうけた!
堂寺「とりあえず始めようよ」
光輝「そうだね」
こうして、ハロウィンパーティを始めることにした
帝「ええ、進行役を努めることになった冠帝だ。と、言っても特にすることはないのだが。
と言うわけで自由行動だ! ただし、あまりにも非常識な行動をした場合我の独断でそれなりの処置をとるぞ」
そんなこんなでハロウィンパーティが始まった
不幸「フフフ…。ハロウィンと言えば黒猫だからね。連れてきたよ、クロ」
『ニャー』
疾風「へぇ、用意周到じゃん不幸君」
不幸の背中から黒猫が出てくる
429ソニータイマー (代理):2010/11/15(月) 20:52:15.52 ID:Doowj2zQ0
香々緒「ねぇ仁次君仁次君」
仁次「何? 」
香々緒が二次元研究部の仁次に話しかける
香々緒「“トリートオアトリート?”」
仁次「お菓子一択!?」
 
堂寺「小奈美、廻女ちゃん。優しいお兄ちゃんがお菓子あげるよ! はい、あーん」
バコッ
光輝&小奈美「黙れ変態(ロリコン)」
光輝と小奈美の攻撃が炸裂する
堂寺「ぼ…僕は変態じゃな…いよ…。ただ子供が異常なほど大好きなだけさ…」
光輝「そういうのを世間では変態(ロリコン)と呼ぶ」
メタモン「あはは、相変わらずだね。堂寺お兄ちゃん」
廻女「ムシャムシャ…。これ美味しい!」
メタモン「聞いてないし…」
堂寺たちがこんなやりとりをする

鍵人「ところで不幸先輩。僕の『萌え擬人化』でその黒猫を擬人化しようと思うんですけど…」
不幸「ん…? 良いけど…?」
鍵人「ありがとうございます! では…」
鍵人の手から光が出て、クロに当たる。光が当たったクロはどんどん人の姿になっていった
そして、擬人化したクロの姿が見えた。ネコ耳美少女だった
堂寺「え? クロって♀だったの!?」
それを見た堂寺が驚く
不幸「え、知らなかったの?」
当たり前のように不幸が答える
430ソニータイマー (代理):2010/11/15(月) 20:54:23.97 ID:Doowj2zQ0
『ご主人様ー!』
擬人化クロが抱きつくように不幸に飛びかかる
みんな、特に疾風というか主に疾風が少し嫉妬心を抱くが…
不幸「おっと!」
それをひらりと避ける不幸
香々緒「あ、避けるんだ!?」
『ちっ…しくじったか…』
光輝「しくじったかって何!? 何狙ってんのこの娘!?」
『でも次は…やってやるんだから! ねぇご主人様ぁ!』
再び飛びかかるクロ。今度は抱きつけた
不幸「うわっ!?」
『ふふふ…。捕まえたわ…あ、ニャ!』
香々緒「言い直した!? 語尾にニャ付け直したよこの娘!?」
疾風「…(ジェラジェラ※…)」
『どうしてやろうかしらねーご主人様、ご主人様、ご主人様ぁ!』
不幸「ちょ…クロ苦しい…! 微妙に首絞めない…で…」
『ふふふ…。あなたを倒して私がレギュラーにな…ニャる! 安心しな…ニャさい。殺しはしない…ニャ!』
光輝「腹黒! 体毛だけでなく腹も真っ黒だよこの娘!」
不幸「う…く…クロ、“おすわり!”」
香々緒「いやいや、犬じゃないんだから…」
『くっ…謀ったわねご主人様!』
クロは不幸の首から手を離し、“おすわり”していた
香々緒「え、効くの!?」
疾風「…(ジェラジェラ※…)」
『ふふふ…。今回はこの辺りで勘弁しといてあげるわ! “おすわり”を解きなさい!』
不幸「いや…今のクロの目…何か企んでる目だからね…どうしようかな…。
まあ、しょうがない…。“よし!”」
431ソニータイマー (代理):2010/11/15(月) 20:56:48.29 ID:Doowj2zQ0
不幸がクロに“よし”をかける。“おすわり”が解かれたため、クロは立ち上がった
「ふふふふ…私がどうするか分かってて“おすわり”を解くなんて…。おろ」疾風「…ねぇ」
今までジェラジェラ※していた疾風が口を開く
疾風「ねぇ…不幸君…。その女…だ れ な の ?」
不幸「え、ちょ、疾風君?」
疾風「随分仲良いんだね…。あ、良いんだよ別に? 君が誰と仲良くしようと勝手だしね…」
不幸「疾風君? なんでちょっとアレな感じになってるの?」
疾風「でもさ…。友達である僕に隠してこんな…酷いなあ…」
不幸「いや、猫だよ?」
疾風「猫ね…猫…。…ふふふ。」
不幸「疾風君…?」
疾風「ふふふふふ…あははははハははハハははは!! 酷い、酷いよ不幸君…
君だけは友達だって…信じてたのに…。裏切るなんて…!」
不幸「疾風君!? そういう誤解を受けかねない発言はやめてくれないかな!?」
小百合「自分の飼い猫と禁断の恋に落ちた不幸…。しかし、それを良く思わない人物が…
それは妬見女疾風。不幸の親友。彼もまた、不幸に禁断の恋をしていた…
禁断の愛が交差する三角関係…」
小百合がブツブツ妄想を垂れ流しはじめる
不幸「ほらぁ! 早速勘違いされてるじゃん!」
疾風「あははははははははは! 妬ましい、妬ましいよ!」
疾風の体から緑色のオーラが出始める
堂寺「あれは…『ジェーラ』!」
光輝「ジェーラ?」
堂寺「うん。優れた人に対して感じる羨望とか、自分の大切な物を奪われたときの悲しさ、他人との間に感じる劣等感…
つまり嫉妬心から生まれるオーラでね、いろいろ秘密があるんだよ」
堂寺が説明を始める
432ソニータイマー (代理):2010/11/15(月) 20:59:07.08 ID:Doowj2zQ0
不幸「…なんか頭痛くなってきた」
疾風「妬ましいっ…! 不幸君もとうとうリア充になっちゃったんだね…! あははは!」
疾風のジェーラがどんどん膨れ上がる
光輝「それで兄さん。そのジェーラってやつには何か特別な力が有ったりするの?」
堂寺「もちろんだよ。まず第一に心の器の拡大。特に嫉妬系都市伝説と契約する場合大幅に器が大きくなるんだ。
これは疾風君が『リア充爆発しろ』、『幸せの人参』、『宇治の橋姫』、『レヴィアタン』とそこそこ沢山の都市伝説と契約してることからも分かるよね」
光輝「うんうん。それで?」
堂寺「それで…ジェーラを使う条件なんだけど…。ジェーラっていうのは本来誰でも持ち得るんだ
たとえば…。バレンタインで貰ったチョコの数が、友人の方が多かった時とかに、嫉妬するでしょ? それがジェーラを出してる状態。ここまでは良い?」
光輝「うん」
堂寺「ここでジェーラの存在を理解していれば、ある程度利用できるんだ。
でも、ジェーラって色々やっかいでね…『ジェーラに飲み込まれる』なんてこともあるんだ。
たとえば…大人しくて、感情を上手く発散できず溜まりすぎて膨らんだジェーラに飲み込まれるとか、
普段快活で、嫉妬とあまり縁がないからこそ、ある日突然感じた嫉妬に耐えきれずに…とか、他にも色々有るんだ
で、ジェーラに飲み込まれると、目のハイライトが消えて理性の蓋が外れて、身体能力が強くなるんだ。これが俗にいうヤンデレって奴だよ
でも疾風君は少し特殊でね…『ジェーラと一体化してる』んだ。」
光輝「ジェーラと一体化?」
堂寺「そう。自分のジェーラと心身を混ぜ合わせて、ジェーラを最大限に生かすことだよ。
でも勿論デメリットがある。ジェーラと一体化すると…決して恋人ができなくなるんだ」
光輝「ああ、納得。…で、兄さん。あれ…止めなくて良いの?」
堂寺「止めた方がいいかも…」
433ソニータイマー (代理):2010/11/15(月) 21:00:48.58 ID:Doowj2zQ0
光輝が指さした先には
疾風「爆発しろ! 爆発しろ! 」
不幸「ちょっ…落ち着いて! 」
不幸の周囲を次々に爆破する疾風と、それを避け続ける不幸の姿が
その時…
ビュン! とフォークが飛んできた
不幸「うわっ!?」
疾風「妬ま…!?」
不幸はぎりぎり避け掠った程度で済んだが、疾風は避けきれず、擦りむいた
帝「貴様ら二人とも…“跪け”」
帝のその言葉で、不幸と疾風の体が勝手に動き、跪いてしまう。『ハリガネムシ』の能力である
不幸「動けない…」
疾風「妬ましい…妬ましい…」
帝「我は最初に言っておいたぞ?『あまりにも非常識な行動をした場合我の独断でそれなりの処置をとる』と。
 にもかかわらず貴様らは暴れすぎた…」
不幸「え、ちょ、僕は悪くな…」
帝「問答無用だ。我の独断でとしっかり言っておいたぞ? よって貴様らには…3時間! 我の屋敷を掃除してもらう! 」
不幸「う…。僕って本当不運だ…」
疾風「妬ましい、妬ましい…」
帝「さぁ…“とっとと始めろ”」
こうして、はしゃぎすぎた(?)疾風と不幸は、3時間、冠帝の豪邸を掃除することとなった…



※嫉妬でイライラするさま。例:クリスマスに出歩くと何だか〜する


                     つづく
434以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 21:05:25.26 ID:4zJlUEIz0
435はないちもんめ ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/15(月) 21:08:10.26 ID:Doowj2zQ0
「さて、全員大体の状況は掴めたな?」
「COAには都市伝説が絡んでいて愛美さんはそれの解決を目標に動いていて
 私達と笛吹きは友の依頼でここに居ると・・・友も余計な事をするわね」
「オイオイ、余計は無いだろう
 お前と宝石男で元気一杯の愛美さんを止められるか?無理だろう?無理だね
 なら俺が愛美さんを消耗させた上でお前等が接触するのが一番安全だろが」
「・・・否定できないわね」
「お前等私を何だと思ってるんだ」
「「バトルマニア」」
「OK、二人ともそこに座れ、修正してやる」
銃に弾を込めて二人を睨みつける
何て失礼な連中だろうか
「あの、こんな話をしてる場合ではないと思うのですが・・・」
「むっ・・・確かにそれもそうだな
 ついでだ、笛吹、望、お前等も手伝え」
「私は良いけど笛吹きも?」
「不満かい?」
「だって、私を見る目が厭らしかったんだもん」
「うぉいっ!流石にそこまで見境無い訳じゃないから!!
 ちゃんと節度まも・・・らないけどそこまで節操無しじゃないから!
 それに俺妻子持ちだし!!」
「え?」
「え?」
「何それ怖い」
「お前の様なのが父親とは・・・子も不憫だが嫁も不憫だな」
「なぁ、俺泣いて良い?
 泣いて良いよな?」
大の男が膝を抱えて半泣き・・・気持ち悪っ
436はないちもんめ ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/15(月) 21:14:21.84 ID:Doowj2zQ0
「まぁ、笛吹は私が見張るから問題ない
 大樹、お前は玄宗直希を手伝ってやってくれ
 アイツ天使の殆ど私の所に置いて行きやがった・・・アイツに何かあったら私が困る」
「・・・で、その直希さんはどちらに?」
「知らん、探せ
 何なら天使に聞いても良い
 アイツから預かった天使はCOA全域に放ってある・・・めぼしい契約者を見つけたらユグドラシルに集める様にもな」
「ユグドラシル?」
聞き慣れない望が首を傾げる
まぁ、望はゲームに慣れてないからな・・・
「ユグドラシルは地名の一つだ
 どんな場所かは気にしなくて良い
 今回私達が戦う相手はCOAの隠しボス・・・生半可なレベルで挑める相手じゃない」
「隠しボスかー、あぁ、そんなの居たな」
笛吹が納得したように頷く
「何か知ってるのか?」
「前にそれっぽいのと戦った事がある・・・確か・・・ヨハルネト=ラハイ」
ヨハネルト・・・違うな
「それは別の固体だな
 私が戦ったのは「ティンタゴン」だ・・・そのどちらにせよ100台では真正面から挑むのは危険
 だからまずユグドラシルでレベルを上げる」
「レベルって事はそこは経験値稼ぎに向いてるの?」
望の意見は最もだな
「あぁ、向いてるぞ・・・シビアだがな
 これで、当座の方針は決まった・・・私達はユグドラシルに向かうぞ」
437はないちもんめ ◇YdAUTYI0AY (代理):2010/11/15(月) 21:17:03.28 ID:Doowj2zQ0
「所で一回帰って貰って良い?
 友美に明日の朝には連れて帰るって言っちゃったんだけど」
「なら頑張るんだな
 頑張れば頑張る分だけ早く帰れるぞ」
「・・・デスヨネー」
続く?
438以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 21:34:49.22 ID:Doowj2zQ0
439以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 21:52:57.75 ID:Doowj2zQ0
440以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 22:13:27.96 ID:Doowj2zQ0
441以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 22:30:01.81 ID:Doowj2zQ0
442以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 22:51:31.96 ID:Doowj2zQ0
443以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 23:10:04.83 ID:Doowj2zQ0
444以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 23:29:13.49 ID:Doowj2zQ0
445以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 23:39:49.08 ID:Doowj2zQ0
446司祭と小鳥  ◆nBXmJajMvU :2010/11/15(月) 23:47:20.62 ID:Doowj2zQ0
 夕暮れの町並みを歩く、一人の青年
 カイン・ディーフェンベーカー
 「教会」所属の契約者である彼は、同じ「教会」所属の契約者であるニーナ・サプスフォードを探して、この学校町にやってきた
 だが…

「まいったな…」

 未だに、ニーナを見つけられていなかった
 それらしい目撃情報はいくつか得られたのだが、肝心のニーナ本人は一行に見つからない
 テント暮らしをしているらしく、住処を点々としているようで…どうにも、すれ違っているようだ

「シスター・ヴァレンタインからも報告がないし…」

 …ヴァレンタインが実際はシスターではなくオカマな事実はさておき
 生真面目であるが故、そして、ニーナの事を本当に心配しているからこそ、カインは悩んでいた
 はやく、ニーナと合流し、彼女を支えてやりたいというのに…

 己の力不足を痛感するカインを気遣うように、肩に乗っていた小鳥が擦り寄る
 大丈夫だ、とでも言うように、小鳥に小さく笑いかけるカイン
 …日頃、目つきの悪さ(鋭さ)で色々と損をしている彼だが、こうやって微笑んでいる表情は優しい
 ……もっとも、同時に、いつ、消えうせてもおかしくない儚さも含んでいるのだが

(…この街の北区に、教会があると聞いたな。明日はそこに顔を見せてみるか…)

 ニーナがそこに立ち寄っている可能性もある
 うまく、情報が手に入るといいのだが…

 カインが、そう考えながら歩いていると

「あ…カインさん?」
447司祭と小鳥  ◆nBXmJajMvU :2010/11/15(月) 23:51:36.08 ID:Doowj2zQ0
 声を、かけられた
 肩の小鳥が、驚いたように飛び立つ

「……悠司?」
「お久しぶりです」

 ぺこり、頭を下げてきた少年…悠司に
 カインも、この国の作法に合わせるように、小さく会釈を返してみせた


「…そうですか。ニーナちゃん、まだ、見つかっていないんですね?」
「あぁ」

 公園に立ち寄った二人
 ベンチに腰掛け、話す

 以前、この国の都市伝説に襲われていたところを助けられ、カインは悠司という少年を信用していた
 助けられた、という事実以外にも…この少年から感じられる人柄を、カインは信用しているのだ

「僕の方も、これといった情報はなくて……すみません、力になる事ができなくて…」
「悠司が謝る事ではない。協力してもらっているだけでありがたいし、心強い」

 謝罪してきた悠司に、そう告げるカイン
 自分とヴァレンタインの二人だけで探さなければならないと思っていた状況、悠司が手助けしてくれるだけで、充分にありがたいのだ

 カインの言葉に、悠司は少し、ほっとしたような表情を浮かべた

「…あ、あの」
「何か?」
「あの、カインさんは、あれ以降、都市伝説に襲われたりしていませんか?」
448司祭と小鳥  ◆nBXmJajMvU :2010/11/15(月) 23:53:20.65 ID:Doowj2zQ0
 どこか、心配そうな悠司の言葉に、カインは小さく、笑って見せる」

「今のところは、大丈夫だ」
「そうですか、良かった…」

 この街は、本当に都市伝説が多いらしい
 だからこそ、悠司もこうやって、心配してくるのだろう

 都市伝説と都市伝説は引かれ合う
 ゆえに、都市伝説契約者は、都市伝説と遭遇しやすい

 カインは都市伝説契約者だが、その能力は癒し、治癒
 戦闘向きの能力ではないのだ
 だから、悠司も余計に心配してくるのだろう

「俺も、一応必要最低限、自分の身を護るくらいは出来る。そこまで気にかけずとも問題ない」

 昔、「教会」に拾われるよりも前、姉と共に孤児院にいた頃、流れ着いた旅人から、格闘技を指南された事がある
 もっとも、「俺の流派は、お前には向いていないらしい」と言われて、一部しか習ってはいないが…それでも、充分に戦える

「でも、この街は本当に都市伝説が多いですから。突然変異の個体とか、時々、恐ろしい戦闘能力を保有している者もいるようですので……」

 それに、と
 悠司はカインを心配そうに見つめ続ける

「カインさん、日本の都市伝説には、詳しくないのでしょう?」
「……まぁ、確かに」

 悠司の指摘通り
 カインは、日本の都市伝説には、詳しくない
449司祭と小鳥  ◆nBXmJajMvU :2010/11/15(月) 23:56:06.16 ID:Doowj2zQ0
 だからこそ、警戒せずにひきこさんに声をかけ、襲われてしまったのだ

 心配し続ける悠司の様子に、カインはふむ、と考えて

「…ならば、悠司。俺に、この国の都市伝説を、教えてくれないか?」
「え…僕が、ですか?」
「あぁ。迷惑でなければ、だが」

 せめて、ニーナの情報を手に入れられず落ち込んでいる悠司に、何か感謝の言葉をかけられる方法を探すように
 そう、尋ねたカイン
 もし、教えてもらえたならば、自分は自国の都市伝説や、天使など、「教会」に関わり深い都市伝説について伝えよう、と考えた



 …二人の様子を、じっと見下ろす小鳥
 そのつぶらな瞳は、金色に輝き続けていた






to be … ?
450以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 23:57:28.17 ID:Doowj2zQ0
間に合った!ケモノツキの人に焼き土下座orz
カインと悠司君、二度目の遭遇でした
ちなみに、カインの肩によくとまってる小鳥は、都市伝説の気配感じられる人なら、バリバリに都市伝説の力の影響を感じられます
451以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 00:06:13.56 ID:0dSYRi2W0
力尽きるお休み
スレが残っていますように
452以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 00:45:02.44 ID:0LrVmC6t0
453以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 01:41:25.98 ID:WgS3Pbww0
454以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 01:48:28.86 ID:7IZtrqiVO
455以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 03:24:46.95 ID:fo1PhPe9P
456以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 03:33:50.82 ID:BrBL4f4P0
457以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 04:50:28.09 ID:fo1PhPe9P
458以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 07:17:20.04 ID:Qn3lzqVSO
459以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 09:05:48.90 ID:fo1PhPe9P
460以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 10:34:14.84 ID:fo1PhPe9P
461以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 11:51:43.35 ID:fo1PhPe9P
462以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 12:54:23.54 ID:BhYMaMJj0
463以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 12:57:00.42 ID:nzNVO4+MO
464以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 13:07:53.35 ID:0eoeewge0
465以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 13:59:40.36 ID:0eoeewge0
466以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 14:18:44.46 ID:0eoeewge0
467以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 14:42:06.19 ID:0eoeewge0
468仲介者と女戦士  ◆nBXmJajMvU :2010/11/16(火) 14:54:51.23 ID:0eoeewge0
 話しながら、場所を移動し
 何とか落ち着けて話せる場所まで到着し、互いの情報交換をする
 …もっとも、互いに目新しい情報がある訳でもない
 唯一、目新しい情報となると、愛美が遭遇した仕様外ボスである「ティンタゴン」の情報くらいだ

「……むぅ。あなたは、再びそれに挑むつもりなのか?」
「当然だ」

 愛美の言葉に、直希はむぅ、と困ったような声を出す
 彼としては、できれば愛美には、これ以上危険に首を突っ込んで欲しくはないのだ
 できる事ならば、「組織」が、COA内に引きずり込まれた被害者達の避難所としている「ユグドラシル」にて、大人しくしていてもらいたい、というのが本音だ

 しかし…愛美の強すぎる意志を、直希は否定することが、跳ね除ける事ができない
 それができるほど、直希の意志はまだ、強くはないのだ

 ……それ故の判断が、判断ミスが、後に彼に致命的な精神的打撃を、与える事になりかねないのだが
 それは、まだ、彼本人にはわからぬ事だ

「……わかった。だが。僕は現実世界に戻るのではなく、こちらでやる事があるのだよ」
「何?」
「…大元かどうか、まだ、はっきりはしない。だが、この事態において、非常に重要であると思われる存在は、確認隅だ。それと、接触しようと思っている」

 淡々と、そう告げる直希
 …とある、一人の少女
 不幸にもか、幸運にもか、都市伝説と…それも、飲まれるか飲まれないか、ギリギリ範囲での多重契約を成し遂げた少女
 彼女が、今回の事件に関わって居る事は、明白だった
 現実世界にて、意識を取り戻さず眠り続けている少女
 少なくとも、COA世界に現実世界の人間達を引き込んでしまっているのは、彼女の契約都市伝説達であると、直希は掴んでいた
 …それが、少女の意志なのか
 そして、少女が、果たして多数の人間を命の危険に晒しているという自覚があるか、どうか
469仲介者と女戦士  ◆nBXmJajMvU :2010/11/16(火) 14:55:39.02 ID:0eoeewge0
 そこまでは、わからない
 だが、どちらにせよ、接触し…もし、事態を把握していないならば、事態を把握させるべきだし
 もし、把握していて、それが邪悪な意思の元、行われているのならば…………自らが手を下そうと、そう考えていた

「…悪のプリンセスか、それとも、何も知らされず、他者に利用されているだけの無垢なる悲劇のプリンセスか。どちらにせよ、現実世界にて眠り続けているその眠り姫と、僕は接触するつもりだ」
「なるほど…だが、現実世界のほうはどうする?」
「幸い、僕は「組織」内に、若干のコネがある……あぁ、大門 大樹とは別に、な。流石に彼にこれ以上負担をかけるのは、彼本人にも翼にも申し訳ない」

 まぁ、それはさておき

「…そちらに、今回の事態では、ある程度協力してもらっている。眠れるプリンセスについての情報を得る事ができたのも、そちらからの協力もあっての事でね」
「……現実世界については、そちらに任せると?」
「完全に任せきりにする訳にもいかないがな。優先事項が片付き次第、僕もそちらに向かう」

 優先事項は、眠り姫との接触だ
 全ては、それが終わってからだ

「…あぁ、そうだ。あなたが、安全地点にて、大人しく事態の集結を待つつもりがないのなら」
「そんなこと、私の性に合わん」
「…むぅ、そう言われる事はわかっていたのだが……とにかく、それならばせめて、僕の天使達を、あなたのサポートに付かせたい。構わないだろうか?」

 直希の言葉に、ふむ、と考える愛美
 翼や望の話によれば、直希は「光輝の書」の契約者であり、多種多様な天使を呼べると聞いていた
 ならば

「天使の中に、情報収集を得意とする者はいるか?」
「情報収集か?ならば、ゾフィエルやナアマなどが向いているとは思うが」

 直希の言葉に、答えるように
 槍を持った天使と、黒い翼に褐色の肌、ギリギリの露出具合という女天使が現れた
470仲介者と女戦士  ◆nBXmJajMvU :2010/11/16(火) 14:57:18.01 ID:0eoeewge0
 …それだけ、ではない
 他にも、愛美の攻撃を防いだ甲冑を纏った天使や、燃え盛る炎の鎖を持った天使、豹の毛皮を纏った青年姿の天使などなど
 合計、12人の天使が、一斉に姿を現した

「幸い、僕はこの世界では、「光輝の書」の力を、現実世界よりもうまく使えるらしい。これだけ同時に召喚し続けていても……問題は、ない。彼らを、あなたのサポートに漬けたい」
「……これだけの数を、か?お前が手薄になるだろう」
「問題はないさ。ザフキエルとヌリエルがいれば、僕は大丈夫だ」

 小さく笑う直希
 …だが、天使達は直希をやや心配そうに見ているように見えた
 ザフキエルとヌリエルとやらの能力を愛美は知らないが……直希が手薄になる事は、間違いないのだろう

「私のところに、ここまで置いていく必要はない。2,3人程度で充分だ」
「……そう言う訳には、いかない。あなたが大人しくしてくれないのならば、僕は彼らをあなたの護衛に、サポートにつける」

 愛美の言葉に、直希は首を振ってそう答える
 …せめて、それが、彼女を危険に巻き込んだ償いであるかのように

「それに、言っただろう?ここでは、僕は「光輝の書」の力を、現実世界よりもうまく使える、と。今まで呼び出せぬ存在も、ここでは呼び出せそうなのだ。問題ないさ」




 …こうして
 「仲介者」 玄宗 直希は、愛美の元に大半の天使を残し、単身、眠り姫の元に向かう

 待ち受ける運命に、まだ気付かぬまま


to be … ?
471以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 14:58:38.85 ID:0eoeewge0
はないちもんめの人に焼き土下座orz
かくて、直希は天使の大半を愛美さんに預け、単身、ひかるちゃんの所に向かったようです
天使達は、愛美さんがゆっくり使ってあげてね!
情報収集に護衛に呪いに家事にと、色んな事に使えるよ!!
472以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 15:16:47.68 ID:0eoeewge0
473以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 15:35:54.09 ID:0eoeewge0
474以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 15:53:27.78 ID:0eoeewge0
475以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 16:11:20.04 ID:0eoeewge0
476以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 16:22:30.57 ID:0eoeewge0
は                     夕食終わってもスレが残ってますように
477以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 17:29:11.93 ID:xSOIGyAPO
478以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 18:29:17.27 ID:xSOIGyAPO
479以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 19:27:37.69 ID:qlm7INqd0
480以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 19:45:43.23 ID:qlm7INqd0
481以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 20:06:45.27 ID:qlm7INqd0
482以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 20:27:48.18 ID:qlm7INqd0
483以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 20:34:58.58 ID:fo1PhPe9P
484以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 20:52:55.04 ID:qlm7INqd0
485オブリビオン ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/16(火) 20:56:11.95 ID:qlm7INqd0

COAが出来る前……冥界に、幾人かの都市伝説達が居た。
それらに語りかけるものが居た。
その男の名は、U-No.13・サイレス。

琥珀色のカッターシャツに漆黒のツーピースのスーツ。
その服装には不釣合いな茶髪にピアス。
頭の軽そうな若者を装っているが……
気が付くものが居れば……
言葉にするのなら、そう、酷く禍々しい。

「人は、己に無いものをほしがるっす」

「都市伝説が望むのは契約者っす。自らにぬくもりを与え
忘れないように語り継いでくれ、魂の、心の力を与える事で
都市伝説に活力を吹き込んでくれるっす」

何体もの都市伝説を前に、軽い口調で提案するように語り掛ける。
親切そうに、親しみやすく。


486オブリビオン ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/16(火) 20:57:28.17 ID:qlm7INqd0

「今から俺が此処に、君たち全員と契約できる心の器を持った
可愛くて優しい女の子を一人、連れてきてあげるっす」

「その子に、自分の契約者になってもらえるよう
頼んでみるといいっす」

「願っても無いことっすよねぇ?」

――真っ黒な波紋が広がる――
―それは、星も月も、明かり一つ無い夜の元で、真っ黒に塗りつぶされた本を捲るような―

一番最初に口を開いたのは。キブだった。

「……その代償は?只でそこまでする道理は有りません。
私達から何を奪おうと言うのですか?」

ナース服を思わせる白いドレスを纏った女性……
その中身は、【痛いの痛いの飛んでいけ】という都市伝説だ。


487オブリビオン ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/16(火) 20:58:51.51 ID:qlm7INqd0

「いやいや、貴方達からな何か奪おうなんて滅相も無いっす。
俺は只君達のためを思って提案したまでっす」

そういって、サイレスはキブたちの服を指差す
「そのアバター……姿も、服も、名も……本当はCOA本社のものなんすけど……
まあそれはいいっす……サービスでごまかしてやるっすよ」
都市伝説たちの表情が強張る。
この冥界にあった、都市伝説の力を拡散させぬための姿や名……形……
『まるで』あつらえたかのように自らに馴染んだが、このゲームの為に作られたのは間違いない。
姿と名を剥ぎ取られれば、自己の意思を保てず、拡散してしまう。
「ああ、心配しなくてもそんな酷い事はしないっすよ。
そうっすねえ……不安ならこうするっす。
姿と名、そして彼女を紹介する代償は……『ひかるのことを組織や、都市伝説、契約者達から積極的に守る』
俺が頼む事はこれだけっす」
キブたちの表情がきょとんとしたものになった。
もっときつい事を頼まれると思ったのだ。


488オブリビオン ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/16(火) 21:01:25.03 ID:qlm7INqd0

「それだけか?」
「それだけっす。ただし、楽な事ではないっすよ?人間の世界には悪意が満ち溢れているっす。
沢山の人間が、多重契約者で、桁外れの心の器を持つ彼女を付け狙うっす。
放って置けば、やがて権力を握ろうとするものに狙われ、利用され、いずれは殺されるっす
研究対象にされちゃうかもしれないっすね」

髑髏に黒衣、手に長剣を持つ死神の姿を取るムングが口を開いた。

「……なるほど、姿と名と契約者を与える代償に、お前はその人間達を排除してもらいたいわけか」
「そのとおりっす。連中は俺にとっては政敵にあたるっすからね
彼女を守るついででいいんすよ?
クリーンで正当な取引だとおもうっすけどねえ。
君たちが彼女を守ることが、俺の敵を倒す事に繋がるんすから」
否定せずサイレスは認めた。
都市伝説は、サイレスに裏があったことを確認した。
都市伝説は、思惑の回答が与えられたことに安心する。

『なるほど……うむ……悪くないかもしれんの……』
『ぼくちんも賛成〜』
『どうせ契約者は全力を挙げて守るんだしね』

キブだけは、反論した。
「……いえ、何かがおかしいです。この人は私達を騙そうとしています」
489オブリビオン ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/16(火) 21:04:36.69 ID:qlm7INqd0


サイレスは悪びれもせず答えた。
「それじゃ、この冥界でまた長いときをまつっすか?
貴方達全員と契約できる心の器を持つものが現れるのは、十年後か、百年後か……っす」
「………」
「その孤独な時間を、存在の喪失の恐怖に耐えながら過ごすのに比べたら
俺の頼みを聞く事くらい楽なもんだとおもうっすけどねえ……」
この位冥界でまた百年、十年を過ごす?
契約者無しでの都市伝説は、時間の経過が恐ろしい。
覚えているもの、信じてくれるもの、語り継いでくれるものが居なければ、都市伝説は存在できない。
「ううっ……」
「いらないと言うのならいいっす
余計な事をしたっすね。すまないっす……じゃあ俺はこれで……」
きびすを返し、サイレスが場を去ろうとする。

「ま、待って!」

キブが引き止めた。
サイレスの顔が、ニヤリと哂った。


490オブリビオン ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/16(火) 21:08:08.15 ID:qlm7INqd0
「契約成立っすね。
そうそう、最期に一言だけ忠告っす。
なぜ、こんなにもこの幻想世界、仮想世界に人が集まるか考えた事が有るっすか?
それは。此処が夢だからっす」

冒険と夢と自由の有るユートピア。
そこには探している完全な自由が有って
僕には名前もなくて、僕は誰かで
コンプレックスともさよなら出来る。
だから、人はネットゲームに、COAに嵌った。
娯楽を、刺激を、自由を。ひと時でも現実を忘れさせてくれるものを求めている。


491オブリビオン ◇DkTJZY1IGo (代理):2010/11/16(火) 21:11:25.68 ID:qlm7INqd0

「……人は夢を見ている時が一番しあわせとも言うっす。
此処は夢。冥界。死の夢。死の眠りの中で冒険の夢を見るっす。
――彼女を辛い現実に向き合わせていいんすかね?
彼女を起こす事が、本当に彼女のためになるんすかね?
起きても彼女の家に両親は多忙で中々帰ってこないっす。
親の居ない家で一人きり。
しかも、目覚めれば学校町。力持つものとして否応なく契約者との戦いに巻き込まれるっす。
そんな不幸がもし回避できたとするっすよ?
……新しいおもちゃを買ってもらった子供は、古い玩具に見向きもしないっす。
――人間は、恋人が出来るとそれまでいた友達の扱いは適当になるっす。
今まで体が弱かった彼女が『現実』や新しい人間の友達、恋人に
魅了されて君たちを忘れない保障は何処にもないっすよねぇ……」

――サイレスは恐れの種を撒く。
それはゆっくりと芽を吹き、蔦を絡ませて神々の心を縛る。
そしてそれは、彼らの有様を縛る。
自らの意志で自発的に、敷かれたレールに乗ってしまう。
運命に囚われし神々の行く末は……

to be……?
492以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 21:29:00.29 ID:qlm7INqd0
493以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 21:46:24.11 ID:qlm7INqd0
494以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 21:49:42.69 ID:4HwAel3o0
代理乙ですー
495以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 22:06:59.61 ID:qlm7INqd0
496以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 22:23:53.76 ID:qlm7INqd0
497以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 22:27:27.77 ID:oIJti8LXO
能力(笑)
498以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 22:46:29.71 ID:qlm7INqd0
499以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 23:05:37.48 ID:qlm7INqd0
500笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/16(火) 23:18:00.63 ID:qlm7INqd0
【上田明也の探偵倶楽部after.act2〜親の因果が子に報い〜】

時間軸は少々未来へ。
COAの事件を片付けた上田明也は父に会いに茜を伴って自らの実家を訪ねようとしていた。

「あの〜、なんていうか、その、大丈夫なんでしょうか?」
「何が?」
「また前回見たくバトル展開になると……。」

茜はスカートの中に仕込んでいる投げナイフを確認する。
確認してからため息を吐く。

「これだけだと確実に見破られる気がして……。」
「いや、バトル展開にはならないから大丈夫。」
「どういうことですか?」
「あいつ弱い相手には興味無いもん。今の強さをデチューンした俺に興味なんて出ないだろ。」
「デチューンって……、なんかしてましたっけ?」
「村正と正宗を封印してるじゃないか。
 都市伝説を扱う才能に依存した戦闘スタイルの俺としては、
 あの二つが無くなるだけで戦闘力を大幅に削られるぜ。」
「ああそういえば、まあ確かに手持ちの銃器だけじゃどう考えても心許ないですね。」
「だからあいつは戦おうとはしない。」
「成る程成る程、それなら安心ですね。」

上田は茜の手を引くと緩やかな坂を上り始める。

「おんぶする?」
「良いですよ。」

茜は恥ずかしそうに笑う。
501笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/16(火) 23:22:43.49 ID:qlm7INqd0
それを見た上田は嬉しそうに笑う。

「全く以て困ったことに可愛いな。」
「無駄に持って回った言い回しにしないでくださいよ。」
「ごめんごめん。そういえばこの坂から見る月はすごく綺麗でなあ……。
 子供の時は家を抜け出して良く月を見に外へ出たよ。」
「そうなんですか?明也さんの子供の頃って気になりますね。」

大きな門のある日本家屋。
そこが上田明也の両親が住む家。

「ん、あれ誰だ?」
「さぁ……、怪しいなあってのは解りますけど。」

家の前に眼帯をした怪しげな男がうろうろしていた。
男は意を決したように門を蹴破ろうとして……
撃たれた。
短機関銃と思しき銃声が日本家屋の内側から響く。
銃弾をまともにくらった男が倒れていると中から割烹着を着て袖からウージーを出している女中さんが現れる。

「明久様に御用向きの際は改めてお越しくださりやがりませ。生きていれば。」

ペコリ、と一礼してからその女中はそそくさと家の中に入っていった。
502笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/16(火) 23:27:16.93 ID:qlm7INqd0
「今の誰ですか?」
「……俺の居た頃はあんなの居なかった。」
「女中さんなんじゃないんですか?」
「いや、ウージーぶっ放す女中さんなんて居なかったぞ。」

上田はとりあえず撃たれて虫の息になっている男の様子をうかがう。
年はまだ若い、放っておいてもあと数分で死にそうだった。

「くそっ……父さんの仇、取れなかった……。」
「おいあんた大丈夫か?」
「ゴホッ!あんた達は……?」
「通りすがりの若夫婦だ、何か助けられることが有ったら……。」
「ああ、じゃあ、……あれ?」
「ん?」

男は彼の顔を見ると急に驚き始める。

「お前は……上田明久!?」

成る程、表情やら今までの文脈から判断するに父親の仇討ちに来たけど返り討ちにされて、
もう死を覚悟してたけれど目の前にいきなり仇にそっくりな男が現れて混乱してるのか。
と、自らの異常性で完全に男の置かれた状況を理解する上田。

「何を言っているんですか?とにかく救急車呼びますね!」
「いやこんな若い男な訳が……まさか息子か!?
 ならばお前も父の仇!」
「うわ馬鹿やめろって!?」

男は上田に巨大な鋏のような物を向けてくる。
茜さんは咄嗟にそれをはたき落として男の頭も胴体から叩き落とした。
503笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/11/16(火) 23:31:54.63 ID:qlm7INqd0
鋏は大きな音を立てて地面に落ちる。
ふむ、刃物マニアの俺も唸るくらい手入れの行き届いた大鋏だ。
などと不謹慎なことを考える上田。

「茜さん、ここまで強かったっけ?」
「明也さんの心の器から大量に力が流れ込んでるから……、基本性能がすごいことになってますね。」
「そうかそうか、まあ偉大なる俺の都市伝説だし当然か。
 そして、この刃物は頂いていこう!」
「何言っているんですか明也さん!前にもそれで失敗したじゃないですか!」
「でも初期の俺は他人の武器奪い取るのがデフォルトだったぜ?」
「そんなの知りません!」

上田が情け無い顔をして嘆いて見せようとした丁度その時、
日本家屋の門が厳かに開く。

「あれ、明久様が二人?」
「うわっ、バイオレンス女中じゃねえか。
 俺は明久の息子、明也だよ。」
「杏奈は杏奈と申します、バイオレンス女中などではございません。」
「どうでも良いけどそこの肉片掃除しておいて。
 俺ってば親父に会わなくちゃいけないから。」
「脳内メモリ検索……、上田明也、発見。
 警戒レベル極低、信用しても大丈夫そうですね。
 どうぞお通りくださりやがりませ。」
「ご苦労。じゃあ行こうか茜さん。」
「って、その鋏持って行くんですかぁ?」

杏奈という女中の横を通り過ぎて上田と茜は実家に堂々の帰還を果たす。
この鋏を持ったせいで上田はまたトラブルに巻き込まれるのだがそれはまた別の話。
【上田明也の探偵倶楽部after.act2〜親の因果が子に報い〜】
504以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 23:54:08.44 ID:qlm7INqd0
力尽きるお休み
明日もスレが残っていますように
505以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 01:01:59.60 ID:0gbQaXy3O
506以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 02:17:54.30 ID:4+CcG4D40
507以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 04:06:44.33 ID:JxSmUTrSO
508以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 06:07:38.14 ID:NcNNNgBaP
509以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 07:50:54.46 ID:NcNNNgBaP
510以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 09:18:49.34 ID:NcNNNgBaP
511以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 09:42:15.06 ID:m9TmcUBn0
512以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 11:18:16.81 ID:0gbQaXy3O
513以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 12:34:45.47 ID:Y7Jmq93t0
514以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 13:00:48.45 ID:Y7Jmq93t0
515以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 13:29:49.91 ID:Y7Jmq93t0
516以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 14:06:42.12 ID:Y7Jmq93t0
517以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 14:29:46.30 ID:Y7Jmq93t0
518以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 14:51:04.13 ID:Y7Jmq93t0
519以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 15:08:50.22 ID:Y7Jmq93t0
520以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 15:25:58.68 ID:Y7Jmq93t0
521COA  ◆nBXmJajMvU :2010/11/17(水) 15:36:21.32 ID:Y7Jmq93t0
 愛美との、情報交換を終えて
 まず、大樹がした事は

「翼。スーパーハカーに頼んで、直希さんの位置を捕捉してもらえないでしょうか?」
『ん、今、やってもらってる』

 現実世界の翼との、ボイスチャットでの会話
 自分達の会話は、全て現実世界でサポートについてくれている翼達にも届いている
 直希が、天使を二体だけ残し、他を全員愛美にたくした、という状況に、翼がやや慌てているようだった

 …直希は、「光輝の書」の契約者
 戦闘能力は、全面的に、それによって召喚する天使達に頼ったものだ
 それは、このCOA世界でも変わらない
 すなわち、今の直希は……戦闘能力が、かなり制限されてしまっている
 かなり、危険な状態だ

「愛美さん。直希さんが、あなたに託さなかった天使が誰なのか、わかりますか?」
「確か、玄宗 直希は、ザフキエルとヌリエル、と言う名前を口にしていたな。姿は見てないから、よくわからん」

 …なるほど、あの二体か
 攻撃面では、ヌリエルがいれば問題はなさそうではあるが…防御能力に優れたゼルエルまで、愛美にたくしているとは
 やはり、直希が危険である事に、変わりはない
 急いで合流すべきだろう、大樹はそう判断する

「望、これを」
「?」
「愛美さんも」
「……イヤリング?」

 大樹は望と愛美に、小さなイヤリングを渡した
522COA  ◆nBXmJajMvU :2010/11/17(水) 15:38:58.97 ID:Y7Jmq93t0
 地味な装飾が施され、淡く光る宝石がつけられている
 二人に渡されたのは、それぞれ一つずつ
 片耳分だけだ

「「通話のイヤリング」、だそうです。このゲーム内での特殊なマジックアイテムだそうで。対となるイヤリングの持ち主と、どれだけ離れていても会話ができるようになるそうです」
「……なるほど、緊急時の連絡用、と言う訳か?」
「はい。お二人に渡した物と対になる物を、私が所有しています。何かありましたら、すぐに連絡してください。私が直に動けずとも、他の誰かを向かわせることもできますから」
「あれ?俺の分は?」

 通話のイヤリングを渡されなかった上田が声をあげる
 えぇと…と、大樹は申し訳なさそうな表情をして

「すみません。「通話のイヤリング」はこの世界でも希少アイテムだそうで。私も、2セットしか用意できませんでしたから…」
「…いや、まぁ、いいんだけどね」

 自分だけのけ者状態が寂しいのか、ちょっぴりいじける上田
 どこまで本気でいじけているかは、いまいち不明だが

「…どうか、お気をつけて。ユグドラシルは、「組織」穏健派のNo.0が管理している場所ですから、大丈夫だとは思いますが……このCOA世界は、未知の部分が多すぎますから」
「えぇ……大樹さんも、気をつけて」

 ぎゅ、と、大樹から渡された通話のイヤリングを握り締め、大樹を心配そうに見上げた望
 その望をできるだけ安心させようと、大樹は優しく微笑みかけた

 都市伝説と、その契約者
 離れていても、その魂を感じあう事はできる
 大まかながら、どのような状況下にあるか、感じ取る事とて、できるのだ
 特に、契約者の状態感知能力を強化させている大樹は、その傾向が強い
 契約者であり、同時に、この世でたった一人、唯一無二の大切な存在である望の身、望の精神に、致命的な危険が訪れようとするならば…大樹は即座に、その元に駆けつけるだろう
523COA  ◆nBXmJajMvU :2010/11/17(水) 15:41:53.95 ID:Y7Jmq93t0


 大樹が、望と会話している間に
 現実世界より、翼がボイスチャットで愛美に声をかける

『愛美さん』
「何だ?翼」
『めぼしい契約者を、ユグドラシルに集めてるんだよな?』
「そうだが、それがどうかしたか?」
『だったら…そこに、獄門寺 龍一、って奴が、来るかもしれない』

 ふむ?…と、翼の言葉に、愛美はやや違和感を覚えた
 翼にしては、若干、声の調子が暗い

「その獄門寺とやらが、どうかしたのか?」
『…最近、ちょっと、事件に巻き込まれて。それ以来、ピリピリしてるんだ。少し、精神状態が不安定かもしれない』
「……不安定、とはどの程度だ?」
『えーと…』

 若干の、思考をめぐらせて居る事による沈黙の、後

『そこにいるハーメルンの笛吹きが、何かやらかしたら即座に切り捨てそうな程度?』
「………理解した」

 なるほど、それは少々危ないかもしれない
 上田と、その獄門寺とか言う契約者は、顔をあわせない方がいいかもしれない

「その獄門寺とか言う契約者の容姿を教えろ。一応、ハーメルンとは接触させないようにはしてみる」
『ん、わかった……あ、それと』
「今度は何だ?」
524COA  ◆nBXmJajMvU :2010/11/17(水) 15:43:41.43 ID:Y7Jmq93t0
『…その、龍一が巻き込まれた事件、直希も、ちょっと引っかかってるんだよ』
「玄宗 直希が、か?」
『あぁ、その事件の事で、直希も責任を感じてかっら………多分。今回の愛美さんの件も、あいつ、必要以上に自分に責任感じてるかもしれない』

 …なるほど
 直希のあの様子は、そう言うことだったのか
 愛美は、それを理解する

 ……あれは、責任を一人で背負い込んでいる様子だった
 必要以上に、責任を背負い込んで…あれでは、いつ、精神的に追い詰められてもおかしくない
 いや、もしかしたら、とっくに手遅れかもしれないが

「………気遣う言葉をかけるなど、柄ではないのだがな」

 せめて、必要以上に背負い込むなと、発破だけはかけてやろうか
 愛美はこっそりと、そう考えたのだった





to be … ?
525以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 15:44:48.32 ID:Y7Jmq93t0
はないちもんめの人と笛の人に焼き土下座orz
はないちもんめの人の、愛美さんと大樹と望が合流した後のシーンですた
一応、緊急連絡アイテム手渡し手渡し
「通話のイヤリング」の元ネタはわかる人だけわかってくだせぇ
まぁ、わりとよくありそうなファンタジーアイテムですが
526以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 16:03:08.98 ID:Y7Jmq93t0
527以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 16:21:00.51 ID:Y7Jmq93t0
528以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 16:34:41.93 ID:Y7Jmq93t0
か                           夕食後もスレが残っていれば幸せだ
529以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 16:38:22.33 ID:rlrAm4+WO
トリックオアトリート(服従か死か)
530以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 17:40:35.11 ID:H44mxSoX0
531以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 18:40:38.91 ID:H44mxSoX0
保守
532以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 19:32:15.26 ID:8YxTlsdb0
ごちそうさまほ
533以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 19:50:32.52 ID:8YxTlsdb0
534以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 20:09:04.84 ID:8YxTlsdb0
535以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 20:26:36.33 ID:8YxTlsdb0
536以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 20:31:36.65 ID:BpbLBH7p0
537以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 20:36:52.36 ID:NcNNNgBaP
538以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 20:53:10.49 ID:8YxTlsdb0
539尋問 ◆vQFK74H.x2 :2010/11/17(水) 20:55:59.44 ID:H44mxSoX0
「組織」のとある一室で、A-No.666の所有していた実験施設で捕縛した黒服の尋問が行われていた。
ドア付近には二名の黒服が立ち、証人が逃げ出さない様に見張っている。

「……では、これらの人体実験は、すべてA-No.666主導の元で行われていたのですね?」
「そ、そうだ…全部あの方がやったんだ……私は何もしていない!」
調書を取りながら尋問をしているのは、十にいくかいかないか、といった年頃の、黒髪のポニーテールが特徴の幼い少女。
机を挟んだ向かい側に、件の黒服が手錠で片手と机の脚を繋がれて椅子に座っている。
「…そうですか。念のために確認しますね?」
手を伸ばして黒服の肩に触れ、己が飲み込まれた「サイコメトリー」の能力を発動させる。
この黒服の関わっていた実験の記憶が、断片的に流れ込んでくる。

――生きたまま解体された少女。
――薬物投与の末、苦しんで苦しんで、苦しみ抜いて死んでいった少年。
――失敗作として、ケルベロスに食い殺された被験者達。

強硬派と過激派への嫌悪感が増す中、今回の件の被害者である少女達が関係している記憶を発見した。
――A-No.666が研究員達に「少女達に『組織から逃げるな』と暗示を掛けた」と話している光景。
――7月末と、今月初めの二回、少女達がこの黒服に薬品を打たれて記憶を消されている光景。
「……貴方、多くの実験に関わっているじゃないですか。嘘はいけませんよ?」
少女は黒服の自由な方の手を取ると、中指をへし折った。
「ぎゃあぁっ!?」
「嘘をつく度に、ランダムに、一本ずつ折りますからね?」
「――――!わかった、話す!」
540尋問 ◆vQFK74H.x2 :2010/11/17(水) 20:57:20.13 ID:H44mxSoX0
「麻痺と毒物を調合した物だ…私も楽しみたかったんだ!
あの方に知られないよう、濃度を調整して、投薬前後の記憶も消しておいた…
 一度目は、効果が見られなかった。二度目に打ってから、そろそろ効果が出る頃なんだ…なのに、モルモットが苦しみもがいて死んでいく姿をこの目で見られないなど…!」
ぶつぶつ呟いている黒服に裏拳を叩きこみ、気絶したのを確認して猿轡を嵌める。
「…C-No.572のおねーちゃんの所に報告に行かないと」
ドア付近に立っていた二人の黒服に後を任せ、少女二人への薬物投与と暗示の記述を加えた調書の束を手に、慕っているC-No.572の元へと向かって行った。

続く…?
541以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 21:00:40.25 ID:8YxTlsdb0
乙でした〜!
麻痺と毒か……ジャッカロープの乳で治癒した段階で、それも治ってそうな予感もするなぁw
ひとまず、後で反応ネタ書いておきますねっと
542以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 21:19:52.63 ID:8YxTlsdb0
543以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 21:41:12.88 ID:8YxTlsdb0
544以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 21:49:44.09 ID:BpbLBH7p0
545以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:05:50.07 ID:8YxTlsdb0
546以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:24:36.56 ID:8YxTlsdb0
547以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:47:35.97 ID:8YxTlsdb0
548以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 23:02:36.29 ID:BpbLBH7p0
549以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 23:19:16.75 ID:8YxTlsdb0
550「13使徒」  ◆nBXmJajMvU :2010/11/17(水) 23:31:42.11 ID:8YxTlsdb0
 こんこん、と部屋の扉をノックする音
 扉は、即座に開かれる

「ジョルディ、話が………ジョルディ?」

 部屋に入ってきたのは、長身で眼鏡をかけた男性
 部屋の主を呼ぶが…返事はない
 姿も見えない
 鍵はかかっていなかったから、部屋にいるはずなのだが…

「ジョルディ?」

 再び、声をかける
 ざっと、部屋を見回して…
 …青年は、膨らんでいるベッドの上の毛布を、ひっぺはがした

 ガクブル
 ガクガクブルブルガクガクブルブル

 ベッドの上で、眼鏡の青年と同じくらいの年齢と思われる青年が、丸まって震えていた
 またか、と眼鏡の青年は小さくため息をつく

「……ジョルディ」

 なるべく、なるべく刺激しないよう、優しく声をかけながら
 眼鏡の青年は、その相手…ジョルディの肩を、ぽん、と叩いて

「少し、話が」
「いやあああああああああああああああああああああっ!!??」
551「13使徒」  ◆nBXmJajMvU :2010/11/17(水) 23:34:43.71 ID:8YxTlsdb0
 …盛大に、悲鳴をあげられた

「…ジョルディ、俺だ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい、ボクが悪かったっ!?」
「……俺だ、お前に危害など」
「ボクは食べても美味しくないですお金もあんまり持ってません遺伝子的にも最悪ですお願い許してっ!!??」

 ………
 まったく、この馬鹿は
 眼鏡の青年は、ため息をつく
 その手に、光り輝く剣が、出現して…

「っせい!!!」

 ごがっ!!

「おばふっ!!??」

 ジョルディを、盛大に剣の柄で殴り飛ばした

「いい加減落ち着け、チキンハート。俺だと言うに」
「え……あ、イ、イザークか……どうしたんです?」

 ようやく落ち着いたジョルディ
 眼鏡の青年…イザークは、静かに告げる
552「13使徒」  ◆nBXmJajMvU :2010/11/17(水) 23:38:12.79 ID:8YxTlsdb0
「次の任務先が決まった。日本だ」
「日本…?」
「その、学校街だ。我ら「13使徒」全員で動…」

 イザークが、説明している
 その、最中

「いやぁああああああああああああああああああああああああっ!!??」

 再び、ジョルディが叫んだ

「日本!?あの日本!?祟り神とか祟り神とか祟り神が普通にいるあの日本!!??」
「…まぁ、そう呼ばれる存在もいるらしいが、それはとにか」
「かのGHQも呪った最強の祟り神がいる日本!?いやああああああああああああああ呪わないで御免なさいボクは悪くないで…」
「…っせい!!」

 ごがっ!!

「あべしっ!!??」
「……いい加減、その極端に臆病な面は直すべきだな」

 まぁ、契約都市伝説能力を発動すれば、問題はなくなるのだが…

 相変わらず、日常生活を送ることすら困難なレベルで臆病な仲間の姿に
 イザークは一人、深々とため息をついたのだった




fin
553以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 23:40:23.50 ID:8YxTlsdb0
VS明日君用と、VSエーテル用の「13使徒」顔見せでした
神の剣を突っ込みに使うなよ、って感じだが気にしてはいけない
554以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 23:50:45.47 ID:8YxTlsdb0
おやすみー
明日もスレが残っていますように
555以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 00:29:39.29 ID:Dda59EkM0
556以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 00:54:22.98 ID:3jNYQpeX0
557以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 01:55:42.42 ID:Kco5DCPH0
558以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 04:04:04.45 ID:AEw7eTDhP
559以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 06:19:57.03 ID:8Ez5o1OvO
560以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 07:07:51.11 ID:seXK6hLGO
561以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 08:37:14.76 ID:AEw7eTDhP
562以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 10:31:43.07 ID:8Ez5o1OvO
563以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 12:04:34.72 ID:AEw7eTDhP
564以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 12:54:26.64 ID:M/7b1nWr0
565やる気なさそうな人COAその3 (代理):2010/11/18(木) 13:02:34.00 ID:M/7b1nWr0

蟲の羽音が響く。
刃をねじ込んで音を消した。
残骸は地面に散らばった。


葉はCOA内の草原と森が点在するフィールドをナイフ片手に進んでいた。
時折、何処からか寄ってくる大きな蚊のような外見のモンスターを倒す以外はずっと歩いている。

「マップからして、街はすぐ近くだと思うんだけどなぁ。遠いなー」

そもそもこんなことになったのは、突如助けを求めてきたナースのようなドレスの女性に出会ったことから始まった。
COA内から助けを求めて来た彼女の話を聞いている途中、モンスターの襲撃を受け、気がついたらもうCOA内に居た。
突然草食獣の群れが突進してきて巻き込まれたのだ。
危害を加えない限り攻撃してこない大人しいモンスターが、何故か襲ってきたのだ。
道中で葉が蹴ったり石を投げつけたりしたモンスターも居たような気がするがそれは気のせいだ。
そんな感じで、もともと居た場所とは少し違う場所に飛ばされたらしい。


566やる気なさそうな人COAその3 (代理):2010/11/18(木) 13:06:44.71 ID:M/7b1nWr0

「何か居心地悪いなぁ、この空間。気になる程じゃないけど…」

 並ぶ木の幹をナイフで傷付けて遊びながら街のある(と思われる)方向へ歩いていく。
 不意に後ろから、蟲の羽音が響いた。
 葉は後ろを振り返った。

「ん? また来た……か?」

 そこには蚊のような外見のモンスターがいた。
 ただ、さっきと違うのは大きさが通常の数倍あったということ。
 それは蚊のようなのモンスターの女王、雑魚に比べずっしりとした貫禄のようなものがあった。

「クイーンじゃん! 何でこんなとこに居るの?」

 言ってる間したにもモンスターが腹部の先端にある針を突き出してきたのを、葉は横に跳んでかわした。
 そのまま横に回り込みすれ違いざまにナイフで切り付け、木の裏に隠れた。

「ふぅ、やっぱりナイフじゃ傷が浅いかぁ。まったくこんな時に限って誰も居ないなんてー」

 今現在、部下が側に居ないのは自業自得である。
 諦めて自分で戦うしかない。


567やる気なさそうな人COAその3 (代理):2010/11/18(木) 13:09:06.49 ID:M/7b1nWr0

 葉が集中すると、手の平の上に紅い靄が発生した。
 それは手の上で本の形になり、そこに葉は手を突っ込んだ。
 そして掴み、引きずり出す

「【夢絵日記】」

 現れたのは長方形の刀身を持つ剣。
 頭の中で想像した夢を現実へと持ってきたものだ。
 もっとも、即興のイメージでは出しても使い物にならないのが欠点だが。

「あれ、いつもより歪んでるかな。 まぁいいや」

 葉を発見したモンスターが針を突き出し突進してくる。
 葉は剣をぶつけ軌道を逸らし、横から切り付けた。
 攻撃を避け側面に回り込んで斬りこむ、このモンスターの基本的なな攻略法を繰り返し、モンスターはようやく動かなくなった。

「はふぅ、思ったより疲れたな。さて、と」

 死骸を漁りだす葉。
 しばらくして、死骸から羽を取り外した。

「よっし、斬羽取れたっと。さぁ行こう」

 キラキラと光を反射する昆虫の羽を眺めながら葉は再び街(のあると思われる方向)へと歩き出した。


続いたらいい
568以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 13:27:07.77 ID:M/7b1nWr0
569以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 13:45:22.70 ID:M/7b1nWr0
570以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 14:09:20.10 ID:M/7b1nWr0
571以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 14:28:05.37 ID:M/7b1nWr0
572後処理  ◆nBXmJajMvU :2010/11/18(木) 14:33:53.31 ID:M/7b1nWr0
 C-No.572と、あの尋問を担当した、C-No.572よりも幼い外見の黒服から、報告を受ける
 本来ならば、C-No.572を通して聞けばいい話だが、一刻も早く、尋問結果を知りたかった

「……麻痺と毒物か」
「そろそろ効果が出るはず、と本人は言ってました」
「治療した際に、ついでにそっちも癒されてる可能性はあるが…とりあえず、伝えておく。暗示に関しちゃ、今回のショックで解けてるか……解けてなくとも、簡単に解除できるだろ」

 小さく、ため息をつく天地
 昨年まで、そこに所属していた人間の言える事ではないが…相変わらず、過激派強行派はろくでもない
 …このように考える事ができるようになったのも、自分が穏健派に所属するようになったからだろうか、とぼんやりと考える
 いや、正確には……ハンニバルの一件の後から、か
 一歩引いて、強行派や過激派の行いを見られるように、なったから

「現場の処置は?」
「あ、えっと…D-No.444さんが担当してます、「立つ鳥後を濁さず」の契約者さんが」

 天地の言葉に、少しつっかえつつ答えるC-No.572
 なるほど、あれが処置したならば、問題あるまい

「ただ、その……まだ、事件の「犯人という事にする」者は、用意できてないそうです。その……死体の損傷具合からして、猟奇殺人犯を用意する必要があるので…」
「……猟奇殺人という事にすると、マスコミが余計に騒ぐ。死体の損傷…特に、獣に食い散らかされた痕を修正して、通常の殺人事件にしておけ」

 戸惑いがちなC-No.572の言葉に、天地は事務的に返す
 …こう言う点では、まだ、C-No.572は、都市伝説事件の処理に、うまく対処ができていない
 昨年の秋…「夢の国」事件の際に黒服化した、まだ、若い黒服
 そろそろ一年が経とうとしているのだから、そろそろ慣れるべきなのだろうが……まぁ、本人の性格的なものもあるのだろう

「あの、私はどうすればいいんですか?」

 報告に来ていた、尋問を担当した少女黒服…確か、「サイコメトリー」に飲まれた存在のはずだ…が、声をあげた
573後処理  ◆nBXmJajMvU :2010/11/18(木) 14:35:45.50 ID:M/7b1nWr0
 天地は、そちらにもやや事務的に告げる

「引き続き、あの黒服から情報を引き出せ。「組織」禁則事項 268に引っかかってる連中の情報を洗い出してまとめろ。A-No.666の息がかかった連中を、一気に縛り上げられるかもしれない」
「わかりました」
「C-No.572は、まずはこれをG-No.1に報告。それと、死体の修正と、「犯人」の用意の手続き、もっと急いでおけ」
「は、はい!」

 ぱたぱたと、サイコメトリーの黒服から受け取った報告書を持ち、駆けていくC-No.572
 …途中で転んで、報告書をぶちまけないといいのだが
 変なところでどんくさいし

「……?どうした?」

 と
 携帯電話を取り出そうとしていた天地は、サイコメトリーの黒服からの視線に気付いた
 少々、むっとしたような表情を向けられる

「…C-No.572のおねーちゃんを、あんまり苛めないでくださいね?」
「苛めてない。「組織」の黒服である以上、これくらいの事にはさっさと慣れるべきだろ」
「そうですけど…」

 …わかっている
 A-No.666の行いの、あまりの卑劣さに、恐ろしさに
 C-No.572が恐怖を、畏怖を感じて、仕事が鈍っている事実が
 ……そのような行いに対し、何も感じるな、というつもりはない
 だが、この程度で仕事が遅れるようでは、「組織」ではやっていけまい

「とにかく、引き続き尋問してこい……それと」
「何です?」
「尋問相手への暴力行為は、気付かれない程度にやれよ。穏健派は、それも禁止してるんだろ?」
574後処理  ◆nBXmJajMvU :2010/11/18(木) 14:37:45.92 ID:M/7b1nWr0
「大丈夫です、証拠は一切残しません」

 なら、いい
 立ち去っていくサイコメトリーの黒服を見送って…天地は、誰もいない手身近な空き部屋に入り込んだ
 携帯を取り出し………やや迷った後、辰也に電話する

『天地か。何かわかったのか?』
「…あの姉妹、麻痺を起こさせる薬物と、毒物を混ぜた物を投与されている。それも、二度。そろそろ、効果が出る頃らしいんだが…」
『あぁ、怪我の具合を見ていた時、P-57とP-958の症状が見えたのはそのせいか。そっちも、ジャッカロープの力で治癒している』
「………そうか」

 辰也の言葉に、安堵の息を吐く天地
 …同時に…症状を見ただけで、投与された薬物の、それも、調合された物の薬品番号すら当てた辰也に、自分はまだ敵わぬと思い知らされる
 ハンニバルの事件以降、天地も、「組織」内において、禁じられた人体実験を行っている者達が扱う薬物については、勉強し始めている
 だが、まだ、辰也のように症状を見ただけで、その種類を判別するまでには………まだ、遠い
 自分が越えようとしていた相手は、まだまだどこまでも先にいるのだ
 改めて……それを、実感した

『他には?』

 辰也の言葉に、正気に戻る
 軽く首を振って、答えた

「…「組織から逃げるな」。そう言う暗示をかけられていたようだ」
『暗示か。今回の精神的ショックで解けてるとは思うが……解けてないようだったら、宏也か、大門 大樹にでも頼んで…』

 辰也の言葉に

「…いや。暗示がまだ続いてるようなら、俺に解かせてくれ」
575後処理  ◆nBXmJajMvU :2010/11/18(木) 14:40:25.34 ID:M/7b1nWr0
 と
 天地が、間に割り込んだ

『お前がか?』
「…一応、「組織」の一部の黒服連中が使う、暗示に対する対処法だって、わかっているつもりだ……今回の件、俺はほとんど何も出来てないんだ、それくらいやらせろ」
『……お前は、「組織」でのこの件に関する処置に動いている。何もしていない訳じゃないだろ』

 辰也はこういってくるが、それでも
 自分は、「何もできなかった」のだ
 …天地には、その後悔が、強いのだ

「…俺にやらせる気がないんなら、せめて、直希にやらせてやってくれ。あいつの天使に、精神関係をどうにかできる奴も、いたはずだから」

 直希も、また
 今回の件で「何も出来なかった」と
 …あの双子の姉妹を、救う事ができなかったのだ、と
 深く、後悔している
 それをわかっているからこそ、天地はそう告げた

 …携帯の向こう側、辰也が小さくため息をついたのが、気配で伝わった

『……わかった。まずは、あの姉妹が目覚めてからだ。後でまた連絡する』
「…あぁ」

 通話を切って、乱暴に携帯をしまいこむ
576後処理  ◆nBXmJajMvU :2010/11/18(木) 14:42:39.34 ID:M/7b1nWr0

 …何も、できなかった
 だが、いつまでも、それを後悔し続けるだけで花いけない

 何も出来なかったのならば
 これからできる事を、していかなければならない
 せめて、少しでも…あの姉妹の傷を、癒す為にも

 部屋を出て、天地は先へと進んでいく



 …自分がこれから、「組織」内でどうあっていくか
 それに、思考をめぐらせながら









to be … ?
577以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 14:44:21.80 ID:M/7b1nWr0
犬神憑きとアンサーの人に焼き土下座orz
サイコメトリーに飲まれたロリ黒服の報告後のシーンでした
ロリ黒服のキャラ間違ってたら御免

とりあえず、天地はこの手の仕事はやれば出来る子
こう言う仕事をやらないで度派手に破壊活動ばっかりやってたから厄介な子扱い
頭良いのに頭悪いから困る
578以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 15:09:17.22 ID:M/7b1nWr0
ちょっと牛乳が足りないので急遽買い物行ってくる
夕食後もスレが残っていますように
579以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 15:56:42.30 ID:3jNYQpeX0
保守
580以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 16:59:56.98 ID:8Ez5o1OvO
ほし
581以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 17:53:06.05 ID:8Ez5o1OvO
ほー
582以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 18:20:32.43 ID:o9361tQ/O
ぬぃー
583以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 19:02:07.03 ID:AEw7eTDhP
584以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 19:19:20.75 ID:LCsufYhF0
ごちそうさまほ
585お泊りの宴 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/18(木) 19:26:34.30 ID:LCsufYhF0
ベッドを勧めるディランと、家主を差し置いて安穏とベッドで寝られるかという繰の変な意地が平行線を辿り
なんだかんだで二人とも夜型生活という事が判明して、二人並んでだらだらとテレビなど見ながら合間に英語の復習などもしていたのだが
既に夜半を回り、テレビは詰まらない深夜の通販番組を垂れ流していた頃
「繰ちゃん、髪の毛」
特にやる事もなくぼんやりとしていた繰の髪の毛に目をやったディランが、何とはなしに呟いた
「そういえば、ちゃんと洗った?」
「え? ああ、うん。まだちょっとべたついてるけど別に平気よ」
学校から逃げる際に軽く水洗いしただけだったせいか、まだどこかべたついた感じが残っており
傍目から見ても変な癖がついているのは明白だった
「変な癖が残ったら大変だし、肌にも良くないかもしれないよ。お風呂使って良いから」
これが一般的な男性の言葉なら、そして繰の感性が一般的な女性なら
なんだかんだで期待なり疑念なりが見え隠れするものなのだが
「そうね、どうせ暇だし」
繰は、ディランに対しては全くと言っていいほど危険性を感じていない
それどころか、自分が傍にいてやらないといけない気すらしているのだ
世間がそういった感情と関係をどう判断するかはさておいて
「部屋の造り、うちの部屋に似てるわね」
バスルーム前の脱衣所で、素肌の上に着ていたジャージを脱ぎながら呟く繰
似てるも何も同じマンションで、しかも隣の部屋だという事は全く知らされていない
「洗濯機もうちの同じメーカーだわ……無駄に良いの使ってるわね、生活感無いくせに」
なんだか普通に自宅で風呂に入るような錯覚に陥りつつ、脱いだジャージをぽいぽいと洗濯機に放り込んで適量の洗剤を入れてスイッチを入れる
そして洗濯機の動作を確認してから、ぺたりとバスルームに踏み込んだ瞬間
586お泊りの宴 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/18(木) 19:30:20.72 ID:LCsufYhF0
「洗ってどうすんのよ私っ!?」
思い切りの良い自分のボケに、自分で大声で突っ込みを入れる
「ど、どうしたの繰ちゃん!?」
「何でもないからこっち来んなっ!?」
リビングで即座に反応しかけたディランの気配を察して、即刻押し留めるべく釘を刺す
「あ、いや、中までは来ないで話は聞いて! くれぐれも脱衣所まで踏み込まずに!」
「う、うん、どうしたの?」
律儀に脱衣所の前で止まり、扉は開けずに程々の声量で訊ねてくるディラン
それでもバスルームの擦りガラスに身を隠しながら、繰は頬を染めて呟いた
「き……着るもの……何か貸して」

―――

上気した湯上り肌を伝い雫となって滴り落ちる湯を、ふんわりとしたバスタオルがもふもふと拭い去っていく
今のところは脱衣所にディランが入ってきた様子も無く衣類は見当たらない
仕方なく、とりあえずはバスタオルを巻いて脱衣所からそっと顔を出す
「せ、先生?」
「あ、繰ちゃん? ちょっと待ってて、できるだけ普通のを探してるから」
「普通のって……あんた、普段何着てるのよ」
訝しげに疑問符を浮かべながら、どうしたものかと思案していると
それまで飽きずに菊花と戯れていたダミアが、すんと鼻を鳴らして顔を向けてくる
その視線の先には、ひらひらと揺れる繰が身体に巻いたバスタオルの端


587お泊りの宴 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/11/18(木) 19:32:54.08 ID:LCsufYhF0
「ん、どうしたの?」
「にゃ」
揺れていたバスタオルの端をたしっとダミアの前足が叩き、その爪が引っ掛かる
「へ?」
「にゃっ!?」
引っ掛かった爪が外れずに、ダミアの体重がバスタオルに掛かる
軽く巻かれていただけのバスタオルはあっさりと引き落とされ、バランスを崩して転がるダミアの身体に巻き取られるように引き剥がされる
「ちょっ、こら!? 何してんのよ!」
ディランがこちらを見ていないため、バスタオル巻きになって転がるダミアを助けようと、裸のまま絡まったバスタオルと格闘を始める繰
「動かないで、ほら爪が引っ掛かってるんだから……よし、大人しくしててね」
毛だらけになったバスタオルを解きながら、ようやく助け出されたダミア
バスタオルが濡れていたせいで、やや毛並がしっとりしてしまった
「よーし、大丈夫だった? 痛いところとか無い?」
んなーと暢気な声で鳴くダミアに、繰は笑顔を向け
「繰ちゃん、遅くなってごめんね」
ひょいと顔を出したディランと、笑顔のまま目が合う
ほのかに湯気の上がる湯上り肌のまま、びしりと空気が凍り付き
暢気に欠伸をしながら何事も無かったかのようにダミアがその場を離れ
悲鳴が上がるまでの時間はおおよそ30秒程も掛かったのであった

ちなみに悲鳴は、何をする暇も無くぶん殴られたディランのものであると補足しておく
588以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 19:50:34.18 ID:LCsufYhF0
589以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 20:08:46.88 ID:LCsufYhF0
590以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 20:26:28.69 ID:AEw7eTDhP
591舞い降りた大王―そしてCoAへ ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/18(木) 20:42:06.06 ID:LCsufYhF0
これはある日の事。彼らはいつも通りに部活をし、いつも通りに都市伝説と戦う、いつも通りの日常となる。そう思っていた。

正義「勇弥くん、こんにちは!」
コイン「で、今日は何をするの?もしかして新しいゲーム?」
奈海「ゲームばかりしないの。とりあえず部活なんだから。」
楓「お邪魔します。では早速始めようか。」
大王「手短に終わらせるぞ。」

正義達は勇弥の家に集合していた。勇弥は全員にあるものを見せる。

奈海「あ!これって今流行りの・・・。」
コイン「『CoA(カップ・オブ・アイオーン)』じゃない!」
正義「高度な戦闘システム、多彩なアバター、装備やアイテムもオリジナルのものが作れる自由度。」
大王「目的は『聖杯を手に入れる事』か。ありがちなようで、原点ともいえるか?」
勇弥「そこだけ並べればまるで楽しいオンラインゲーム、だが・・・。」

突然、楓がこの雰囲気を壊すように語りだす。

楓「このゲームの最大の特徴、それはその専用デバイス。
  ゴーグルとマイクが一体化したもので、圧倒的なグラフィック描画能力と3Dゴーグルによって
  映画以上の臨場感を可能にした。人はそれをこう例えたらしい。」
勇弥&楓「「『本当にゲームの世界に入っている』ようだ、と・・・。」」
コイン「・・・だから?すごいよ、ゲームの世界に入るのは。でもそれはものの例えで」
勇弥「実際に出ているんだよ。このゲームをプレイして意識不明になった人間が。」

勇弥の発言で、コインや正義から笑みが消える。

奈海「え・・・やりすぎで気を失った、とかじゃないの?」
楓「にしては多すぎるぞ?それに未だに被害者が起きてこないのは不自然だろ?」
コイン「そ、そんなのただの噂よ!こんなのが都市伝説な訳」
592舞い降りた大王―そしてCoAへ ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/18(木) 20:44:57.35 ID:LCsufYhF0
大王「その噂が都市伝説となるんだ。現に犠牲者も出ている。仮にそれではないにしろ何かの都市伝説が絡んでいる。」
正義「とにかく解決するしかない。」
勇弥「・・・となると思って、とりあえず人数分だけ用意した。倒すぞ。」
奈海「あ、そんなに簡単に入って大丈夫なの?」
勇弥「大丈夫、とりあえずCoAについては能力で調べた。ちょっとぐらいなら分かる。」
奈海「あ、そう・・・。(どうなったのかしら・・・。)」
正義「プレイしていたら出てくるかもしれないね。(大丈夫だったのかな・・・。)」
大王「では少年、やってみてくれ。(友、お前にはいつも世話になる・・・。)」
楓「よし、調査開始だ。(皆何に驚いているんだ・・・?)」

全員、PCにおもむろに電源を入れる。

楓「ところで、どれぐらい調べたんだ?」
勇弥「いや、本当にこいつのせいだったって事とこのゲームのコツだけだぜ。ゲームが始まったら色々してやるよ。」
奈海「で、これは何処から出てきたの?まさかこのためだけに買ったの?」
勇弥「心配すんなって、俺の使い古しだよ。」「中身は最新だけど。」ボソッ
正義「へぇ、あ。これを押せばいいの?」

正義達がCoAのアイコンをダブルクリックする。

勇弥「もうアバターはほとんど作ってあるから服でも選んでくれ。」
正義「はぁーい。」
奈海「これがいいかしら・・・あ、これいいんじゃない?」
コイン「待って!これはどう?」
楓「確かに『キャラを作るのに丸三日掛かる』という通りだな。だが、私に隙は無い。」

こうして、勇弥→〜→楓→正義→〜〜〜→奈海、という順番でアバターは完成した。

奈海「なんで皆そんなに早いのよ!?」
勇弥「オレはすでに作ってあったから。」
593舞い降りた大王―そしてCoAへ ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/18(木) 20:47:39.93 ID:LCsufYhF0
楓「前から始める時はこれにしようって決めていたんだ。」
正義「検証だけだし、始めても変えれるんでしょ?早くやろうよ。」
大王「もうかれこれ2時間だが・・・?」

アバターが完成した所で、勇弥がゴーグルをかける。

勇弥「ここに挿してから、こうやって掛けるんだ。」
正義「OK。じゃ、スタート!」
奈海「よぉし。」
コイン「あぁ、私もやるぅ。」
楓「では。」

正義達はゴーグルを掛ける。すると、そこには現実のような、いやむしろ夢のような世界が広がっていた。

正義「わぁ、・・・。」
奈海「すごぉい、綺麗ぇ!」
楓「すごい出来だな、確かに現実と思い込んでしまいそうだ。」
コイン「ずるいずるいぃ!私も私もぉ!」
勇弥「始めちまったからもう無理だよ。いつ敵が来るかも分からんからな。」

少しお祭り騒ぎの中、大王が一人。

大王「・・・都市伝説の気配がする。」
勇弥「なに!?もう来たのか?」
大王「分からん。今言える事は微弱だという事だけだ。それほど強くない都市伝説なんだろうが、そのゲームから感じられる。」
奈海「じゃあ心配ないわね。でもどんな都市伝説かしら?」
楓「想像できる範囲内で言えば『画面から手が出る』だろうな。とにかく、油断は出来ないぞ。」
勇弥「よし、じゃあ・・・、正義?」

ふと正義を見ると、何か独り言を言っていた。
594舞い降りた大王―そしてCoAへ ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/18(木) 20:50:36.27 ID:LCsufYhF0
正義「―――うん、分かった。ボク達に任せて。」
勇弥「正義、どうしたんだ?」
正義「よし。皆、行くよ!」
奈海「え?行くって、きゃあああぁぁ!」
勇弥「なんだこりゃ、うわあぁぁぁ・・・!」
楓「こ、これは・・・。」

急に勇弥達が付けていたゴーグルの画面が光りだし、一瞬気を失ったかと思うと、気が付けば見知らぬ所に辿り着いていた。

勇弥「痛ててて・・・。ここは・・・?」
奈海「・・・、何ここ?見た事ないわよ。夢・・・?」
楓「こ、ここはもしかして・・・。」
正義「CoAの世界の中だよ。」

当たり前のように、平然とした正義がそこにあった。

勇弥「な、なに言ってんだよ。ゲームの中に吸い込まれる訳、あ!」
楓「ま、まさか『本当に』ゲームの中に入ったのか?!」
奈海「え?最初からそう言ってたじゃない。」
勇弥「俺はてっきりゲームの中に入ってしまった『様に見せかけた』人攫いに近いものだと思っていたんだ。」
楓「私もだ。あったとして牢屋に飛ばされるぐらいと思っていたが、これは・・・。」

―――ふと。

正義「ッ!?何か来た!」 勇弥「はぁ?!まさかそれって」

正義の反応と同時ぐらいに、何かが姿を現す。そう、『化物』だった。

奈海「なにあれ・・・?」
楓「あれは『ゴブリン』、ゲームの序盤の面に登場する敵だ。本当にゲームの中に入ってしまったのか・・・。」
595舞い降りた大王―そしてCoAへ ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/18(木) 20:51:49.35 ID:LCsufYhF0
楓が言う『ゴブリン』という怪物の軍団が正義達を睨む。

化物「「グルルル・・・!」」
勇弥「ど、どうするんだ!?」
正義「戦うしかないよ。でも、大王は・・・?」
奈海「そういえば、コインちゃんもいない!」
楓「ゲームをしていたのは私達だけだ。おそらく、来れないだろう・・・。」

全員が何も出来ないと諦めていた時。

正義「え、大王?」 楓「え、どこだどこどこどこどこぉ?」
奈海「こ、コインちゃんの声が聞こえたような・・・。」 勇弥「ど、どこからだ?」
正義&奈海「「・・・上!」」

正義と奈海が見上げると、確かに大王とコインが空から降ってきた。

大王「うぉぉおぁぁぁあ!」 コイン「きゃあぁぁぁ・・・!」
楓「あぁ!大王様ぁ!」 正義「大王!」
勇弥「よし、これで全員揃ったか。」 奈海「あぁコインちゃん危ない!」
大王「うぉぉぉよっ、と。」
コイン「きゃあぁぁぁ着地!」

危なっかしく思えたが、正義達の前に無事辿り着いた。

正義「大王!無事だったんだね!」
大王「ふぅ、まずは・・・少年。また安請け合いしたのか?」
奈海「コインちゃん!良かった、心配したのよ!」
コイン「勝手に居なくなっておいて、心配したのはこっちよ!」

しかし、今は大王とコインとの再会を喜んでいる暇では無かった。
596舞い降りた大王―そしてCoAへ ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/18(木) 20:52:40.30 ID:LCsufYhF0
勇弥「オホン、そろそろ危ないですよぉ。」
楓「大王様、お気をつけ下さい!」
大王&コイン「「え?」」
正義&奈海「「あ。」」
ゴブリン「「グワァァァ!」」

ゴブリンの軍団が突然、正義達に飛び掛る。

大王「なんだこの化物は!?」
正義「敵だよ!」
大王「簡潔な説明だ。倒して良いんだな?」
コイン「うぅ、大王!がんばってね!」

正義と大王の前に黒雲が生成され、その中から剣が降ってくる。

大王「事情はこいつらを片付けてからだ!」
正義「分かった!てぇぇぇい!」

正義と大王がゴブリンを切り裂く。いや、切り裂いたはずだった。何故かゴブリンにそれほどのダメージは見えず、態勢を立て直す。
その頃、他のゴブリンが勇弥達の方に向かう。

ゴブリン「グギャア!」
勇弥「く、壁を!うっ!??」

いつも通り手をかざすと、急に勇弥は頭を抱える。無防備になった勇弥にゴブリンが襲い掛かる。

楓「日向!」
ゴブリン「グァ、グギャラッ!」

なんとか楓がゴブリンを投げ飛ばす。
597舞い降りた大王―そしてCoAへ ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/18(木) 20:53:53.64 ID:LCsufYhF0
楓「大丈夫か日向!」
勇弥「うぅ、ぐぐ・・・。」
奈海「なんで・・・?コインちゃん、私達も戦うわよ!」
コイン「え?あ、OK!」

奈海がコインシューターを組み立てる。

奈海「十円玉十円玉・・・、えっ!無い!?」
コイン「えぇぇ!?なんでよぉ?!」
楓「よく探せ!どこかで落としたのか?それとも・・・?」
勇弥「つぅ・・・はぁ、なるほど。そういう事か。」

一方、正義と大王は。

正義「大王、何でこいつら、こんなに強いの?」はぁ、はぁ・・・
大王「分からん、外見はただの雑魚モンスターだというのに。」はぁ、はぁ・・・
ゴブリン「「グワァァァ!」」
正義「うっ!」

飛びかかるゴブリンに対して正義が身構えた瞬間、正義とゴブリンの間の地面がせり上がる。

ゴブリン「グベラッ」「ガビャッ」
正義「え?なにこれ?ボクでも大王でもない、勇弥くん!?」
勇弥「正、解。分かったぜぇ、今がどういう状況か!」

地面が戻った瞬間、勇弥は得意げに正義の前に立つ。

奈海「ちょっと、正義くんや大王でも苦戦しているのよ!危ないじゃない!」
楓「落ち着け日向!今がどういう状況下ぐらいとうに分かっただろ!」
勇弥「違うんです十文字さん。俺が分かったのは。」
598舞い降りた大王―そしてCoAへ ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/18(木) 20:55:21.42 ID:LCsufYhF0
不意にゴブリンが勇弥に襲いかかる。

楓「日向!」
正義「勇弥くん!」
ゴブリン「グワァ!」
勇弥「この世界は、おらぁぁぁ!」

一瞬、勇弥の腕に0と1のヴェールが見えたかと思うと、気が付けばゴブリンが殴り飛ばされていた。

ゴブリン「・・・。」
勇弥「よし、一丁上がりィ。」
一同「「・・・なんで?」」
勇弥「ん?あぁ、『この世界はゲームの世界』なんだ。」
奈海「そんなの分かってるわよぉ!じゃあなんで正義くんが苦戦しててアンタが倒せるのよ!?」
勇弥「その答えは、これを見れば分かる。」

勇弥が指で四角形を描くと、謎の板が現れる。そこには、訳の分からない事が書かれていた。

奈海「・・・なにこれ?『セイギ』、『筋力』?」
勇弥「こっちが正義のステータス、こっちはあのゴブリンのステータスだ。」
大王「どういう事だ、少年の筋力があの敵の耐久とそれほど差が無いぞ?」
楓「もしかして、耐久を上げる魔法を使ったのでは?それで思ったほどダメージが通らなかったんだ。」
コイン「ちょっと待って、ステータスってなによ?ゲームじゃないんだから。」
勇弥「だからここはゲームの世界なんだって」
奈海&コイン「「だから、・・・ごめん、最初から説明して。」」
勇弥「オレ達はゲームの世界に入り込んでしまった。つまりオレ達は今、ゲームのキャラクターになってしまったんだ。
   だからこの世界に入った瞬間に、オレ達の能力はゲーム用に数値化されたんだ。
   そして空気も現実世界とは違うだろ?だからいつもの様にやるには憶えなおす必要があったんだ。」
コイン「へぇ、そんな事が・・・。」
奈海「でも、それと勇弥があの化物を倒した事は関係ないじゃん!」
599舞い降りた大王―そしてCoAへ ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/18(木) 20:57:06.30 ID:LCsufYhF0
勇弥がまたコホンと咳払いをする。

勇弥「前の世界なら、筋肉の増築なんてやると筋肉痛と頭痛で死ぬ所だった。
   だがこの、『数値が支配する』世界なら話が違う!っつう事で、攻撃力の数値をいじっただけさ。」
正義「つまり、現実の数値を変更可能な勇弥くんなら、この世界の数値も変更可能、って事?」
勇弥「そういう事。MPがいるみたいだが、時間が経てば回復する。だからお前達にも使ってやるよ!」

0と1のヴェールが正義達を包む。すると、正義達の体に変化が表れる。

大王「・・・やっと理解したぞ。だがこれで俺達の能力がお前達を上回った。」
ゴブリン「グビィ・・・。」
正義「いくよ、大王!」

正義がゴブリンに向かって一太刀、ゴブリンが真っ二つになる。
大王も一太刀、あんなに苦戦した敵がいとも簡単に切り裂けた。

勇弥「ちなみに。この世界での通貨は、『円』じゃないぜ?」
奈海「え?じゃあ・・・。」

奈海がカバンに手を入れると、見た事も無い硬貨が入っていた。

コイン「うわぁ、綺麗なコイン!よし、じゃあ入りますか。」
奈海「うん、こっくりさんこっくりさん、敵に向かってください。えいっ!」

コインは謎の硬貨の中に入り、奈海は呪文を唱えて硬貨をコインシューターの中へと入れる。そして敵に向かって6発、硬貨を放つ。

ゴブリン「グビャッ!」「グベラァ!」
奈海「わぉ、すごい威力・・・。」
コイン「“さすが勇弥くん!いい仕事してるよねぇ。”」
楓「よし、あとは任せろ!」
600舞い降りた大王―そしてCoAへ ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/18(木) 21:00:49.88 ID:LCsufYhF0
奈海の銃撃を喰らったゴブリンの方へ楓が向かっていく。
ゴブリンはコインの呪い効果によってか動けないようで、そのまま2体のゴブリンは楓に投げ飛ばされる。
投げ飛ばされた先の他のゴブリンに命中し、ノックダウン。そのまま敵を倒していき・・・。

正義「―――ふぅ、終わった?」
大王「その様だな。それらしい気配を感じられん。」
勇弥「よし、じゃあ早速。正義、あの時誰と会話していたんだ?」
奈海「あぁ、そう言えばそうだったわね。」

勇弥の質問のおかげで、はと思い出し、正義はあの時の出来事を話し始める。

正義「あのね、ボクがゴーグルを掛けてすぐに白いドレスの女の人が見えたんだよ。」
楓「女の人?」
正義「それから・・・『助けてください』って言ってた。」
勇弥「助けを・・・?」
正義「だから、『ボク達なら何かの力になれるかも』って言っちゃったんだ。」

奈海と大王が頭を抱える。

奈海「あぁ、やっぱりねぇ。」
大王「そうくるだろうと思った。」
楓「おい、まさか前例があるのか?」
コイン「小学生の時から、困っている人は放っておけない子だったの。まぁそこが良いんでしょうけど。」
奈海「うーるーさぁい!確かに、毎日暇が潰せて良かったと思えたけどね!」
大王「(何故怒っているんだ?)で?その女について少年はどう考える?」
正義「え?」

首をかしげる正義に、大王は言葉を追加する。
601舞い降りた大王―そしてCoAへ ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/18(木) 21:02:51.40 ID:LCsufYhF0
大王「その女は俺達を罠にかけるために少年を騙した、と思えるかだ。
   少年の話ではその女の能力で俺達がこの世界に連れてこられたと踏んで良いだろう?」
コイン「ちょっとぉ!なによなによ!大王には分からないの!?切実に助けを求める乙女の心が!
    彼女も犠牲者かもしれないし或いは好きな人のため・・・とかぁ。」
楓「落ち着けコインちゃん。途中からおかしいぞ?それにそれは全部推測だ。今は大王様の方が正し」
正義「でも!」

楓の言葉を斬るように、正義があの女性に対する弁護を始める。

正義「あの人の『声』、聞こえたんだ。心の底から悲しそうな声で助けを求めているような声が。」
楓「わ、悪い。スピーカーからの声と都市伝説の心の声が一致した、と?」
コイン「ほらぁ、やっぱりただひたすらに助けを求め」

大王「それは、信じていいんだな?」

発言と同時に、大王の目つきが変わり、周りから謎のオーラが漂う。思わず全員硬直してしまう。
しかし、正義は1人、大王の目を見て―――ゆっくりと首を縦に振る。

大王「・・・ふ、そうか。では別に敵がいると考えるべきだな。」

正義を見て考え直したか、大王の顔が笑みに変わり、纏っていたオーラも消え失せた。

コイン「・・・さすが、大王の契約者な事だけはあるねぇ。」
楓「流石大王様!心がお広い!」
奈海「十文字さん、せめて自分の意見ぐらい持ってよ。」
楓「私はただ、大王様に従うだけだ!」
大王「分かったからそうくっつくな。」
602舞い降りた大王―そしてCoAへ ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/18(木) 21:05:00.19 ID:LCsufYhF0
勇弥「で、これからどうする?オレの手では帰れないみたいだが。」
奈海「えぇ!?じゃあ、すぐには帰れないって事?!」
勇弥「オレのワープには座標の入力が必要なんだよ。この世界と現実世界との距離が分かったらなぁ。」
大王「そうか。では会長、まずは脱出法から調べていこう。」
楓「はい!必ず最良の方法を探し出します。」
コイン「でも、どうやって探すの?」

全員が沈黙してから、正義がその沈黙を破る。

正義「大王、なんて言ったっけ?」
大王「ん?いつの話だ?」
正義「この世界に入るより前、このゲームのパッケージを見た時。」
大王「ん・・・、《目的は『聖杯を手に入れる事』か》か?・・・なるほど言いたい事は分かった。」
奈海「ごめん、私もわかったと思う。」
勇弥「ん、何か良い提案でも?」

正義は満面の笑みで、自信満々に答える。

正義「だったら『聖杯』を探そうよ!そうすれば色々情報も集まるんじゃない?」
勇弥「あぁなるほど。その手があったか。」
楓「あぁ。それが妥当だな。」
大王「おい!何故それが妥当になるんだ!?」
奈海「だから!なんでそれが妥当になるのよ!?」
603舞い降りた大王―そしてCoAへ ◇dj8.X64csA (代理):2010/11/18(木) 21:08:26.33 ID:LCsufYhF0
正義「え?だって聖杯手に入れたら、もしかすると願い事が叶うかもしれないよ?『皆を元の世界に〜』とかどうかな?」
コイン「わぁい!じゃあ私、幻の昭和六十四年の十円玉!」
大王「落ち着け!ここは所詮ゲームの世界だ!願いなんて叶う訳」
楓「ここはゲームの世界ですよ?現実世界でこのゲームをプレイして手に入れるのとでは違うはずです。
  それに、ある目的のために行動していけば、自然と情報も集まるのでは?」
大王「・・・会長が言うなら、考えてやろう。考えて見れば、この都市伝説の核がそれだという可能性も否定はできんからな。」
勇弥「じゃあ決まりだな。それでは早速・・・。」

楓「願いが叶うなら『大王様に世界を〜』か?いや、『大王様と私のための世界』?
  (いっそ『大王様をボクに〜』とか?あぁ良いなぁ。)うぅ、どんな願いが良いかなぁ?」

自分の世界に入った人間1人を現実もといCoAの世界に叩き戻し、勇弥が仕切り直す。

勇弥「では改めまして、聖杯を、手に入れるぞぉ!」
正義&楓&コイン「「おぉーぅ!」」
大王&奈海「「・・・ぉー。」」

―――こうして、正義達の聖杯を手に入れるための戦いが―――

正義「ぇ、ココカラ立チ去レ?」
勇弥「は・・・?」

―――今、始まった。

舞い降りた大王CoA編第1話「そしてCoAへ」―完―
604以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 21:25:43.66 ID:LCsufYhF0
605夢幻泡影 † again  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/18(木) 21:35:58.46 ID:LCsufYhF0
気が付くと、俺達は我が家の前に立っていた
どうやら無事に戻ってこられたらしい

(裂邪>おぉ、久々の我が家だ!
(ウィル>数時間しか経ってねぇ気がしやすが;
(ローゼ>おほほほほ、お役に立てて何よりですわ♪
(ミナワ>ありがとうございますローゼさん!
(シェイド>スマンナ、マタ助ケラレテシマッタ
(ローゼ>お礼なんてとんでもないですわ〜
     こちらこそ、ライサちゃんを見つけて下さって、何とお礼を言えばいいか・・・
(リム>ま、困った時はお互い様ってことバクね
(裂邪>ホントにありがとうローゼちゃん
    複雑そうになってるけど、仕事頑張ってくれよ!
    何かあったら、俺達も手ぇ貸すからさ!
(ローゼ>こちらとしては、民間の方に手を借りるようなことにはならないようにしたいのだけど・・・
     その時は、よろしくお願いしますわ♪
(リム>もうオイラはゲームの中なんて懲り懲りバクよ・・・心臓に悪いバク
(ミナワ>あははは・・・;
(裂邪>あ、丁度いいや。ここ、俺ん家なんだけど、お茶でも飲んでく?
(ローゼ>ん〜、でも早く本部に戻りませんと・・・
(裂邪>デスヨネー。じゃあせめて住所だけでも

と、俺は我が家の住所の書かれたメモをローゼちゃんに手渡した

(ローゼ>あらぁ、ありがと〜
     今度会う時は、美味しいお茶を持って参りますわ音譜
(裂邪>おう、楽しみにしてるぜー
    あぁそうだ、シェイド、影の世界の扉開けろ
(シェイド>ム? 何故ダ?
(裂邪>ローゼちゃんの能力って、他の異空間に入らないと移動できないんでしょ?
606夢幻泡影 † again  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/18(木) 21:39:42.17 ID:LCsufYhF0
(ローゼ>・・・あらあら、もしかしてバレてしまいましたの?
(裂邪>いや、もしかしたらアレかなー、って
    でも知らないことにしとくから安心して。ほら、早く戻んないと
(ローゼ>そうですわね。 では皆さん、ごきげんよ〜

ローゼちゃんは赤いカーテンのようなものを作り出し、忽然と消えてしまった

(リム>うぅ〜、ところであのお姉さんって何と契約してるバクか?
    一々体がムズムズするバクけど
(裂邪>ウヒヒヒヒヒ・・・ま、何れわかるって
    んじゃ、そろそろ部屋に戻って『COA』再開としようk

頭頂部に衝撃
先程から殺気を感じていたので、恐らくミナワによる強襲だろう
尤も、この後起こる展開として予測できるのは、
「さっき吸い込まれたばかりなのにまだする気なんですか!?」みたいな怒りの言葉だろう
だがその答えは意外にも

(ミナワ>あれ?

少し間の抜けたような疑問の言葉だった
どうかしたのか?と訊こうとしたが、見るだけで解せた
この世にあってはならないものが、ここにある
ゲームの世界でミナワに渡した『バブロッド』が、しっかりと彼女の手に握られていた

(裂邪>・・・何で?
(ミナワ>さ、さぁ・・・私にもわかりません・・・
(ウィル>ゲームの中のアイテムは現実にも持ってこられるんでやすかねぇ?
(裂邪>それはないと思うぜ?現に俺が持ってたアイテムバッグはここにないし
607夢幻泡影 † again  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/18(木) 21:42:01.31 ID:LCsufYhF0
首を捻りながら、しばらく考える
すると、何かに気づいたのか、ミナワが「あ、」と小さく声をあげる

(ミナワ>こ、これ・・・都市伝説の気配がします
(裂邪>マジで!?何の!?
(リム>いや主が作ったんだバクよね!? 何で作ったかくらい分からないバクか!?
(裂邪>そ、それもそうか・・・作ったってもゲームの中だぜ?
    「ロンギヌスの鉱石」っつってさ・・・「ロンギヌスの槍」の素材になったって奴よ
    超超レアアイテムで、バカみたいな高値で買った奴なの
    さっき蓮華ちゃんにあげたマンドラゴラもその時に――――――あ゛
(ウィル>どうかしたんでい?
(裂邪>そ、そういや、あのマンドラゴラからも都市伝説の気配がしてたような・・・
    もしかして、レアアイテムの中には都市伝説も混じってんのか?
(シェイド>都市伝説ト言エバ、裂邪ヨ、急イデ部屋ニ戻ッタ方ガイイカモ知レンゾ
(裂邪>ハァ?何で―――って早々に都市伝説!?しかも俺の部屋に!?
    シェイド!もう1回『シャドーダイブ』だ!

既に話したと思うが、影の中から行った方が少々早い
俺達は黒い空間を泳ぐように進み、俺の部屋に飛び出した
そこには

(レイ>あ、おにーちゃん!
(メリー>遅い!こいつらが何者か教えなさい!
608以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 21:42:37.53 ID:WDR76WKr0
うわー中二臭い
痒くなる
609夢幻泡影 † again  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/18(木) 21:46:08.00 ID:LCsufYhF0
白い着物を着たロリっ子――レイちゃんと、ピンクのドレスを着たロリっ子――メリーさん
そして・・・マントの男と白衣の男、パーカーを着た男と女子校生と白いワニがいた
マントは「赤マント」、白衣は注射持ってるから「注射男」、
白ワニは以前俺が殺した筈だった「下水道に棲む白いワニ」だろうが、あとの2つが分からない
それよりも、5つもの野良都市伝説が俺の部屋にいたので、思わず腰を抜かしてしまった
暗殺か? 殿でもなければ王でもない、世界征服も遥か昔に諦めたこの俺を今更暗殺か?
速やかに戦闘態勢をとるシェイド達。やはりこいつらは頼りになる
と、「赤マント」らしき男が、口を開いた

(赤マント>君が黄昏裂邪くんか!?
(裂邪>へ?いやそうだけど・・・
(シェイド>何者ダ?
(注射男>君に頼みがある!
(女子高生>・・・・・・・・・・・・!
(パーカー>・・・・・・・・・・・・!
(白ワニ>シャァァァァ! シャァァァァァァァ!!

口々に、俺に訴えかけてる・・・んだと思う
女子高生とパーカーの男と白ワニも、何かを訴えかけているようなのだが・・・

(裂邪>・・・いや何か喋れよ!!
610夢幻泡影 † again  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/18(木) 21:49:05.58 ID:LCsufYhF0
(理夢>【少年くん達がゲームの中に飲み込まれちゃったの!】
    【恐らく『カップ・オブ・アイオーン』の仕業だ!】
    【フレンドを助けたいんだ!手伝ってくれブラザー!!】だそうだ
(メリー>貴方何で分かるの?
(理夢>夢喰ってたら、夢見てた奴の母語とかがわかるんだよ。その影響だろ、多分
(レイ>少年くんってだれー??
(裂邪>・・・その白ワニがあの時の奴なら・・・正義か!
(ミナワ>ご主人様の弟さんも・・・ゲームの中に・・・!?
(ウィル>それも“達”ってぇと・・・何人か巻き添えを喰らってるようでい
(パーカー>・・・・・・・・! ・・・・・・・・・! ・・・・・・・・・!!
(理夢>【彼等は拙者達の恩人なんだ!
     後生の頼み、聞いてくれ! 今は、御主の力が必要なんだ!!】だとよ
(裂邪>恩人・・・ッ!

なるほど
こいつらは、あいつの説教に負けた連中
人を襲って、あるいは殺して過ごしていた日常を、いい意味でぶち壊された連中
それが、こんなに
あいつの勝利の証が、こんなに
あいつの、努力の証・・・

(裂邪>・・・・ハァ
(注射男>頼みを・・・聞いてくれるか?
(裂邪>とりあえず、これだけはわかっといてくれ
    俺は、正義の奴が大ッ嫌いだ

場が、一気に凍りついた

(メリー>ち、ちょっと裂邪!
(ウィル>旦那ァ! 折角こうして旦那を頼って来たんでい!なのにそれは―――
611夢幻泡影 † again  ◇7aVqGFchwM (代理):2010/11/18(木) 22:00:49.43 ID:LCsufYhF0
俺は携帯電話を取り出し、ある人物にかけた
とはいっても、この状況で手を借りれるのは、あの子しかいない・・・また迷惑かけちまうな

(ローゼ>《どうかなさいましたの?》
(裂邪>悪ぃローゼちゃん、俺の弟が『COA』に吸い込まれちまったらしいんだ
(ローゼ>《えぇ!?》
(裂邪>俺はあいつを助けたい。だから、君の能力で俺を送ってくれないかな?
(ローゼ>《・・・分かりましたわ。すぐにそちらに向かいますわ》
(裂邪>ありがとう、恩に着るよ

俺は通話を切った
シェイドとミナワは小さく溜め息をついた
どうやら2人にはバレていたらしい

(パーカー>・・・・・・!!
(裂邪>シェイド!ウィル! 空間開く準備だ!
(シェイド>了解シタ
(ウィル>が、がってんでい! 旦那、さっきはすいやせん!

ウィルが強く輝き、俺の背後に大きな影ができた

(裂邪>さぁ、とっとと入れ。安心しろ、向こうに行ったら出してやる
    確かに、俺は正義が嫌いだ
    けどな、それでもあいつは俺の、たった一人の弟なんだよ!

   ...To be Continued
612以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 22:17:56.99 ID:LCsufYhF0
613以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 22:36:15.54 ID:LCsufYhF0
614以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 22:40:05.50 ID:dPWGLNoT0
――――――――都市伝説、「カメオさんの話」。




なんちゃって。
615以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 23:03:49.95 ID:LCsufYhF0
616「13使徒」 小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/11/18(木) 23:11:08.48 ID:LCsufYhF0
シモネッタ「にっほん日本♪楽しみン♪」
クラリッサ「…シモネッタ、遊びに行くのではないのですよ?」
シモネッタ「わかってるわよン」

シモネッタ「でもでも、楽しみなんですものン。任務でもなきゃ、あんな遠い島国行く機会ないでしょン、私達」
クラリッサ「……それはそうですが」

シモネッタ「あぁ、本当に楽しみン……」

シモネッタ「あの国には、どんな拷問器具があるのかしらン?芸術性が高いらしいから、とっても楽しみなのン♪」
クラリッサ「またコレクションを増やすつもりですか」

VS裂邪用「13使徒」シモネッタさんは、拷問器具マニアです
VSトライレスさん用のクラリッサが、時々鳥さんを貸して拷問をお手伝い
617「13使徒」 小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/11/18(木) 23:14:51.86 ID:LCsufYhF0
カイザー「二人共、日本に行く準備は出来てますか?」
リュリュ「できてるよー!」
マドレーヌ「ばっちぐー!」

リュリュ「楽しみだよね、マドレーヌ」
マドレーヌ「楽しみよね、リュリュ」
リュリュ「日本は、アニメとかゲーム一杯なんだよね?」
マドレーヌ「美味しいお菓子も一杯なのよね?」

カイザー「二人共、誘惑に負けてはいけませんよ?」
リュリュ「はーい!」
マドレーヌ「わかってまーす!」

リュリュ「ちゃんと、お店ではお金を払わないと駄目なんだよね?」
マドレーヌ「買い物の仕方教えてー!」
カイザー「…あぁ、あなた達には、まずそう言う点から教えないと駄目でしたか」(ため息)

VSサンジェルマン用の双子は、常識をお勉強しなきゃいけない子達
VS兄鬼用のカイザーが微妙に保護者属性になっちまいつつある現実
618「13使徒」 小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/11/18(木) 23:17:35.53 ID:LCsufYhF0
イザーク「ジョルディ、日本に行く前に、あの国の都市伝説について学ぶぞ」
ジョルディ「そ、そうですね、備えあれば憂いなし!」

イザーク「…では、まずは「人面犬」だが」
ジョルディ「人面犬…っ!?人の顔の犬!?いやぁああああああああああああああああああキメラっ!!??炎を吐いたり爪で引き裂いてきたりするんだっ!!??」

イザーク「キメラではない、ただ、犬に中年男性の顔がついた生き物で、見ていると「何を見ているんだ」と不機嫌に声をかけてきて…」
ジョルディ「そのまま難解な謎賭けをしてきて、答えられないと食べられるぅうううううううううううう!!??」
イザーク「…っせい!!」
ジョルディ「あだっ!?」(剣の柄で殴られて気絶

イザーク「それは、ギリシャのスフィンクスだろうが……と、言うか、この調子では全て学び終えるまでどれだけかかるのだ」
ジョルディ「……きゅう」(気絶中

…頑張れイザーク
ジョルディのチキンハートは、どう考えても日常生活が困難なレベル
619以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 23:19:35.76 ID:LCsufYhF0
キャラ固めと名前公開をかねた小ネタ
どんどん奇人変人集団になっていってる気がしないでもない「13使徒」
全てはヴァレンタインのキャラに負けないようにしたのが原因って事で


…あ、「トライ・ミニッツ・ライトニング」の出番なかった
ま、いっか
620以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 23:39:38.05 ID:LCsufYhF0
621以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 23:49:32.85 ID:LCsufYhF0
おやすみー
明日もスレが残っていますように
622目覚め ◆vQFK74H.x2 :2010/11/18(木) 23:55:20.84 ID:3jNYQpeX0
目が覚めたら、知らない天井が見えた。
「み、おねーちゃん気がついたの!」
「ん…気がついたか。気分が悪いとか、無いか?」
声を掛けられて目を向けると、花子さんと翼が見えた。
そこで、右目が見えている事に違和感を感じた。
記憶をたぐり、あの地下室で起きた出来事を思い出した。
(――――――!!)
取り乱しそうになるのを抑える。
人前でそんな姿をさらす訳にはいかない。
……あんな事があったのに、「組織」から離れるという選択肢は浮かんでこなかった。

「…大丈夫です……花子さんと翼さんは、どうしてここに…?」
「知り合いから、お前達が危ないって連絡を受けてな…」
「助けて頂いて、ありがとうございます…」

隣に目をやると、紗江が眠っていた。
「蝦蟇の油とジャッカロープで治癒したから、傷跡も後遺症も残らない。直に目覚めると思うぞ」

直後、威圧感を感じた。
圧倒的な存在に押しつぶされるような錯覚。
気を失わないよう、必死に耐えて……しばらくして、威圧感が消えた。
(……何、だったんだろう?)
「…大丈夫か?」
「はい…何とか…ちょっと、様子を見てきますね…」

部屋を出る直前、龍一、と翼が心配そうに呟くのが聞こえた。

廊下に出ると、すぐ近くの部屋から微かな話し声が聞こえてきた。
「……どうだ?我の部下(もの)にならぬか?」
623目覚め ◆vQFK74H.x2 :2010/11/18(木) 23:59:10.24 ID:3jNYQpeX0
「………何の冗談ですか?」
男性の声と、獄門寺の声。

(…獄門寺君が誘われてる……!?我の部下(もの)にならぬか?ってストレートな物言い…でもそこがいいww)
おもわず、腐女子モードのスイッチが入る。
「冗談に聴こえるか?」
「………お断りします」
「ほぅ?何故だ?」
「…俺には、もう、剣を捧げた相手がいますから。
剣を捧げる主君は、生涯、ただ一人と決めています………俺の剣は、翼さんに捧げました。俺の主は、あの人、ただ一人です」
(俺の主はあの人ただ一人……!獄翼は不動……愛の力って凄いww)
「まぁ、良いわ。翼は我の部下(もの)だ。間接的に、お前は我の部下(もの)よ」
(ど、堂々とライバル宣言!?男性の方も翼さんを巡る戦いに参加してたなんて……)

「…お話とは、この事でしたか?」
「あぁ。そうだが?」
624目覚め ◆vQFK74H.x2 :2010/11/19(金) 00:00:04.83 ID:jWE2TkK80
「……そちらのお話が終わったのならば、こちらからも、お話が」
ふと正気に返る。
(お話の邪魔しちゃ悪いし…もう、戻った方がいいよね)

――

目が覚めると、花子さんと、紗奈ちゃんを助ける、と言ってくれた男性の姿が見えた。
「み、わんこのけーやくしゃのおねーちゃんも気がついたの!」
「妹の方は今出てるけど……」
障子が開く音が聞こえた。
「紗江ちゃん…良かった、気がついたんだね」
紗奈が立っていた。酷かった怪我も消えていた。
紗奈が無事だった事に安心して、視界が滲んだ。
「……紗奈ちゃんを助けてくれて…ありがとうございます」
男性に、礼を言った。

続く…?
625以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/19(金) 01:02:36.58 ID:rMvjQVvtP
626以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/19(金) 01:54:35.12 ID:PW9sk/dJ0
ほし
627以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/19(金) 03:44:47.86 ID:rMvjQVvtP
628以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/19(金) 05:50:33.49 ID:rMvjQVvtP
629以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/19(金) 07:18:21.39 ID:LoY499SJO
630以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/19(金) 08:50:34.96 ID:rMvjQVvtP
631以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/19(金) 09:25:27.56 ID:V6/7z0tY0
632以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/19(金) 10:06:53.26 ID:V6/7z0tY0
633以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/19(金) 10:24:25.71 ID:V6/7z0tY0
634以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/19(金) 12:03:02.78 ID:LoY499SJO
635以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします