ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/24(日) 17:31:00.80 ID:kpZC9gQtO
>>1 感謝です!
ただ、まだ投下の準備が整ってないので…遅くとも7時からは始めようと思ってます。
じゃあ、ここで前座というかなんというか
ちと投下しようかなと思っているのですが宜しいでしょうか
これは脱出ゲームか、サバイバルゲームか。
そんなことはどうでもいい。
早くここから出して欲しい。
第2周期 VISION
鉄。
機関銃という名称をもつ鉄。
一瞬でヒトを屍というモノに変えてしまうことのできる鉄。
恐ろしい鉄の塊を、僕は両手で大事に抱えていた。
こんな恐ろしい武器を、僕は心の拠り所としていたのだ。
とてつもない殺傷力が、僕を守ってくれる唯一のものだとさえ思っていた。
軽機関銃の部類なのだろうけれども、ずっしりと重たい鉄の塊であることには変わりはない。
そんな重たいものを持っているため、歩くペースは遅くなっている。
患者服を着て機関銃を持つという何とも奇妙な姿で、見た目は病院である謎の施設の中をさまよっていた。
ここはどこなのか。一体ここで何が起こっているのか。僕には何も分からなかった。
『分からない』。今の僕に分かることはそれだけだった。
何が幻で何が現実なのか。あまりにも日常とはかけ離れた現象に取り囲まれて、今眼の前にある光景が果たして本当のものなのかも疑ってしまいそうだ。
もしかすると、全てが偽りなのではないかという恐怖さえ覚えた。
これさえも夢の中であるのか。
どうやったら夢から覚めるのか。
目覚めたら僕は僕なのか。
その時どうなっているのか。
「……やめよう」
こんなことを考えていたら、自我を失ってしまいそうだ。
先程襲いかかってきたあの人型のモンスターが、まさに自我を失った人間だ。
自分が二足歩行であることすら忘れ、目の前にいた僕を狩ろうとした。
過程は知らないけれども、もしあのモンスターが幻覚やそれに類する偽の情報でないなら、あれも元々は人間だったんだと思う。何かが起こって人間というものを失ったのではないだろうか。
要因についてはこれ以上考えても無駄だろう。僕はそれを防ぐつもりはない。あのモンスターから逃れられるだけで十分だ。
今僕がすべきことはただ一つ。この施設から出ること、それだけ。
その為には手段は問わない。向こうがあらゆる手を使って始末しようとしてくるのであれば、こちらも同様にして逃れるだけだ。
あの謎の生命体の襲撃から数十分が経過していた。周りを警戒しながらゆっくりと進んでいるせいで、まだこの施設の脱出までは遠い道のりになりそうだ。
裸足であったために歩くたびにぺたぺたという音がする。そのせいでゆっくり歩かざるをえないというのも、移動に時間がかかる原因となっていた。
患者服が湿っている。これ一枚しか身にまとっていないのに、汗が止まらないのだ。
「報告」
声が聞こえてくる。たった一言だけしか聞こえなかったので方向はわからないが、どこかにさっきの兵士がいるのだ。僕はとっさに最も近い部屋に身を隠した。通路から見えない位置にしゃがみ、片手で銃を抱き、片手で口を押さえるようにして息を潜めた。
「一名を発見し、直ちに射殺しました。まだ一名この付近にいるようです。引き続き捜索を行います」
僕は息を潜めるどころか息を止めていたことに気づいた。射殺されたのは、あの子だ。そして、捜索しているのは僕だ。やはり狙われているのだ。推測していたことが確定し、改めて自分の生命の危機を感じていたのだ。
心臓の鼓動さえ、兵士に聞き取られてしまうのではないかという恐怖感に襲われていた。実際、僕に聞こえるのは兵士の声と自分の心臓の鼓動だけだったから。
無線での報告が終わったらしい。声は聞こえなくなり、辺りはまた静かになった。でも、兵士がまだ近くにいるので、僕はまだ動けない。
遠くに離れていったら移動を始めよう、そう思ってじっとしていたけれども、足音さえ聞こえてこない。ただ聞こえないだけなのかも知れないが、声が聞こえていたのに足音が聞こえないはずがない。
こちらを捜索しているのではなかったのだろうかと不思議に思いながらも、早くここから脱出しなければならないという思いも捨てきれずに部屋を出た。最悪の事態に備えて銃を構えられるようにしていたが、私を探しているという兵士の姿は見られなかった。
「方向音痴なのかな」
そんなとぼけたことを言ってしまうほど、今は落ち着いていられた。兵士もいなければ、あの四足の人型モンスターもいない。
一人で廃墟のような建物を歩きまわるのは趣味ではないけれども、襲ってくるものがいないだけましであった。
自分の足音以外が聞こえないことが、緊張感とか恐怖感よりも安心感を与えてしまいそうな、上手く説明できない空気に包まれていた。
それからは少し移動速度を早めることにした。早くここから出たいという思いもあったし、兵士やモンスターに見つかってしまうのではないかという恐怖感もあったが、今はそれとは別の事情もあった。
「………はぁ……」
生きている以上は仕方ないことだ。……何のことかはあんまりはっきりとは言わせないで貰いたいのだけどね。手洗い場だよ。
個室に籠っている間も、機関銃を手放すことはなかった。あの悪夢のようなことが再び起こりはしないだろうか、そんな恐怖に怯えていた。
無防備になっている間に襲撃はなかったのは有難い。
水道は機能しているらしかったが、大きな音が出ると困るのでそのままにしてきてしまった。命がかかっているんだ、恥ずかしさなんて二の次さ。
共感できないだろうね、僕もそう思うよ、同じ状況なんてまず起こりえないだろうからね。
汗でべったりとして気持ちの悪かったので手は洗うことにした。蛇口をゆっくりとひねり、流れ出る冷たく綺麗な水で手をすすぐ。
「…………」
ふと目の前の鏡に意識が行ってしまった。鏡に写る僕は、だいぶ疲れた表情をしている。当たり前だ、いきなりこんな状況の中に放り込まれてハツラツとしている方がおかしい。
暗闇でかつ恐怖感がつきまとう時に鏡を見るというのは、何となく嫌な予感がしてしまう。だけど背後に誰かが立っているということもなかった。
一つ異変があったといえば、ちょっと目眩がしたということくらいであった。どれくらいだったのかは覚えていない。でも10秒と経っていないはずだった。
また鏡を見る。別に何も代わりはしない。見えるのは少し血色の悪い自分の顔だけだった。ついでに顔を洗って気分の一新を図った。どれだけ効果があるのかは自分次第。
「よし」
タオルはないので服の袖で荒っぽく水気をふき取ると、機関銃を手にして手洗い場を出た。
そこで地獄を見ることとなった。早々にして出鼻をくじかれたという訳だ。
「え……?」
予想外のところで僕に精神的にダメージを与える出来事が起こっていく。あまり予想はあてにならないらしい。
死屍累々とはまさにこれを言うのだろう。
文字通り、死体が折り重なっている。言葉にすれば簡単だろうけども、それがどういう状況なのか見たことないから人にどういったものなのか説明しよにも無理そうだ。
最初に見た時には誰もいなかったのに。どうして全く気づかなかったのだろう。これはまた幻覚なのだろうか? だとしても、このやや湿っぽく、よどんでいるこの空気を吸うことには耐えられなかった。
「うっ………ぇぇぇ………」
充満していた鉄の臭いが肺に満たされた瞬間、強烈な吐き気に襲われた。嘔吐しないように口を押さえていたが、結局何も吐き出せなかった。それでも胃の痙攣は収まらない。
呼吸さえ阻んでしまうような吐き気は、やがて嗚咽に変わっていた。吐瀉物が出ない代わりに涙が止まらなくなっていた。
ハードなのが続くなw
「むぐっ………ぅぅぅぅ」
涙で歪んだ視界の中で、血溜まりから一刻も早く抜けだそうとようやく一歩を踏み出した。
しかし、どこをどう歩こうと、二歩目からはその血溜まりに入らざるを得なかった。恐る恐る、赤い水たまりに足を伸ばす。そして、一気に前進を試みる。
「う、わ、……」
一歩踏み出すたびにぺちゃぺちゃという音がいやでも耳に入り、やや粘性のある生暖かい液体が足の裏を湿らせる。
思わず足を止めそうになるが、そうしたところで何も楽になることはなかった。
僕は、何か悪いことをしたのか?
何でこんなことをしなければならないんだ?
吐瀉物もしくは嗚咽を漏らさぬよう、ぐっと噛み締めてさらに手で口を押さえながら、ゆっくりと足の裏を過剰に刺激しないようにして進んでいく。
パニックになっていた僕は、もう兵士がいるかも知れないという警戒心は忘れてしまっていた。最後の一歩から僕は我慢できずに走り出したのだ。
一刻も早く血溜まりを抜け出し、もうそれが目に入らないところまで行きたかった。
赤い足痕を残しながら、半ば発狂して走りだす。逃げるように通路の角を曲がったところで崩れるように座り込んだ。
壁の冷たい感触が、心地良く感じる。胸に手を当てると、心臓は飛び出してしまいそうに激しく脈打っていた。
「はぁっ、はぁっ」
肺に沈殿するよどんだ空気を吐き出して比較的綺麗なものに入れ換え、ようやく吐き気がおさまった。汗を吸い込んだ患者服は肌にべっとりと張り付いていた。
脈拍が安定し始めた頃、あれは一体なんだったのかと考えてしまっていた。もうあんなこと思い出さない方がいいのだろうけども、あまりにも不可思議すぎてついあれこれと推測してしまうのだった。
あの死体は、僕やあの時助けられなかった女の子が着ている服ではなかった。よく見てはいなかったが、黒かったと記憶している。それは、僕を探している兵士の服装に近い。
犠牲になっているのは僕らのような患者服を着ている人だけではないのか。
あのモンスターに襲われたのだろうか。いや、まさか銃を扱うプロが丸腰の相手にああも大勢がやられてしまうものなのだろうか。
僕を探しているあの兵士たちとは別の第三の勢力がいるのかもしれない。それが敵か味方かは知らないけれども、兵士を標的にしている何かがきっといるのだ。
もうそういうことにして早く進もうという考えのもとではあったけれども、妙に納得してしまっていた。
謎が解けるのではなく、謎が増える。なんて不親切な謎解きだろう。もう僕には解く気はないよ。
支援
落ち着いたといえども、精神的なショックは大きかった。だからしばらくは壁伝いに歩いていくしかなかった。
遅かった移動ペースはさらに下がってしまったが、ようやく、通路の突き当たりに辿りついた。ここからはまた別の通路が左右に伸びている。
どちらに進むべきか、考えるまでもなかった。一方はもう棚などで塞がれていたのだ。
あんな重たいもの、とてもじゃないが一人では動かせそうになかった。
兵士たちによって囲い込まれているのか、誘導されているのかに違いないだろうけども、だからといって引き返すつもりもなかった。
そうやって一本道になってしまっている迷路を進んでいく。
途上に、明かりの消えた部屋があった。見るからに嫌な雰囲気が漂っている。
しかも、通路はここでまた塞がれていて、どうあがこうとこの部屋を通っていくしかないのだ。
まだ血溜まりになっていないだけましだ。あの経験をまさか励ましに使うことになるとは思わなかったけれども、前進するためだ。
別に水の中にもぐるわけではないのだけれども、一つ大きく息を吸い込んでから暗闇に足を踏み入れた。
先程までと同じ無人だというのに、ここの静寂だけは嫌いだった。電灯が発する唸るような音が狭い空間に響いているのが僕の心臓を押し潰そうとしていた。
「いたぞ!」
「あっ……」
遂に兵に見つかってしまった。
僕はああしまったと思っているだけで、手にしていた機関銃を向けることすらしていなかった。敵うわけがない、そういう思いが抵抗すらさせなくしていた。
兵士が姿を表し、銃をこちらに向けた。
その瞬間
───────
「うぐっ……」
チャンネルを合わせていないテレビのようなノイズが耳になだれ込んでくる。そして、高周波のキーンという音が頭の中を突き刺すように響いている。
その音のせいでひどく頭が痛い。それまで大事に持っていた銃を落とし、座り込んでしまった。
目の前に居る兵士も、僕と同様に激しい頭痛に見舞われているらしく頭を抑えてふらふらとしているのが見えた。
だけど、その兵士に襲いかかったのは頭痛だけではなかった。
突然、その男は爆風でも受けたかのように吹き飛ばされてきた。しゃがんでいた僕の頭上を物凄い勢いで通り過ぎていく。壁に衝突したらしく、背後でごつんという嫌な音がした。
未だに続く痛みをこらえながら振り返って見る。すると怪現象はまだ続いていた。
兵士は壁に衝突した後落下することなく、壁から天井へと張り付きくようにして転がってゆた。呻き声を上げながら天井を転がっていく様はどこかの古い映画のシーンようであった。
「どうなっているんだ?」
思わずそう口にしてしまったはずだったが、耳鳴りが酷くそれさえ聞こえなかった。
目の前で起こっていることが、まるで作り物の映像にしか見えず、信じられなかった。あまりに不可思議だったので無意識的にそう感じさせているのかも知れない。
そうかと思えば、落下するよりも早い速度で床に叩き付けられた。まるで僕に見せ付けるように目の前に落下してきたそれは、またごつっという音を立てて頭と四肢が跳ね返った。
打ちどころが悪かったのだろう。もう反応することはなかった。
ぐったりとしている兵士は、そのまま前方へと引きずられていき、暗闇へと飲まれていった。
気付けば、頭痛がする程のあのノイズもないくなっていた。
「……何だ」
何が起こったのだろう。いや、一部始終は見ていたけどもそれでも分からない。この時ばかりは恐怖よりも興味に駆られていた。
機関銃を拾うと、引きずられて行った後を躊躇なくたどっていった。
兵士の姿が見えなくなったちょうどそこに、焦げたような赤黒い跡だけが残っていた。
異臭がする。肉が焼けたような臭い、といっても食欲をそそるようなものじゃない、その逆だ。
「うぅ……えええええええええええええええ」
こういうのを見るのは二度目だから平気、な訳ではなかった。むしろ悪化させるものでしかなかった。凄惨さではあの時の方が桁違いに酷かったけれども、人が一瞬にして死んでしまったのを見たのだ。
胃袋が空になっているせいで嘔吐には至らないものの、食道が異様な動きをしていて唾液を呑み込むことさえ拒んでいた。飲み込もうとした唾液が逆流し、それを口内にとどめておくことも出来なかった。
「げはっ…………ぇぐ…………」
喉の奥に張り付いた粘液を排除しようとしているのか、食道が裏返り呼吸も出来なかった。しばらくの間、うずくまって涙と唾液をぽたぽたとだらしなく床に垂らしていた。
やや酸味の残る唾液を思い切り飲み込んで立ち上がる。兵士がここに来たということはまだその仲間がいるはずだ、ここにずっといる訳にはいかない。
今目の前で起こったこと、それは何を意味しているのか。人を簡単に殺してしまうような怪現象が起こったのは分かっている。
でも、一つおかしいと思わないかい? 確かに物理やその他いろいろな法則を無視した減少ではあったけれども、今僕が言いたいのはそれじゃない。
どうして僕は何とも無いんだろうか。勿論、精神的にはそれはもう酷いダメージを受けているのだけれども、肉体的には全くと言っていいほどダメージが無い。
人を一瞬で殺してしまうその怪現象が、なぜ僕を標的としないのか。兵士を標的としている謎の力は、僕の味方をしてくれているのだろうか。
でも、あまり期待はできそうもない。わざわざ殺戮を目の前で見せてくれるのだから、そう親切でもなさそうだ。はめられているだけかも知れないという疑いも残っている。
薄暗い部屋から出る。また通路を進んでいくことになるらしい。これがどれだけ続くのか。
この施設の広さに驚くばかりである。相当大きな病院でないと、ここまで迷いそうなくらいの通路の長さにはなるまい。表向きは病院だったという説がますます濃厚になってきた。
またそれまでどおりに歩いていると、何か硬いものを踏んでしまった。
「うわっ」
反射的な動きで後ろに下がったが、よく見れば踏んだのはライトだった。
「びっくりした……」
まだ便利な道具だったから良かったものの、もしこれがガラス片だったら今頃大変なことになっていただろう。今僕は裸足なのだからね。
ライトを拾い、つけてみる。結構な明るさだ、これならもう暗闇でも足元が見えるようになる。使っているいる間は機関銃が使えないけれども、それは仕方ない。
明るさを確認するためにあちこちを照らしていると、辺りにはライト以外にも落ちているのが分かった。機関銃を見つけた時と同様に、どうしてこんな所に落ちているのだろうと思えるものだ。
見つけたのは、なんと手榴弾だった。それだけではない、辺りを調べると、僕が今持っている機関銃よりも更に高火力だろうと思える武器も見つけてしまった。
そして最も驚いたのは、壁際に置かれていた重たいキャリーケースだ。中を開けてみると、とんでもない大きさの重火器が入っていたのだ。
兵器についてはあまり詳しくないのでどちらがより頼れるのかは分からないけれども、僕は一つ持つので精一杯だ。
なので今持っている機関銃のままで進むことに決めていたが、どうしてわざわざこんな爆弾や重火器まで持ち込んでいるのだろうとも思った。
余程僕たちを消し去りたいのだろうか。それとも、あの怪現象を恐れてのことだろうか。
前方にエレベーターを見つけた。こんな強力な武器を兵士に使われても困る。移動するのも兼ねてここにこの武器を隠してしまおう。
そう思ってキャリーケースを引きずりながらエレベーターの前に立つと、そこにフロアマップがあった。現在地が示すのは、地下だった。
「地下……?」
まさか、病院に地下なんてあるものだろうか。いや、もう既にここが普通の施設じゃないという証拠は十二分に揃っているのでもういい。迷わず上のボタンを押す。とにかく地上に出ないことには始まらない。
すぐそこに止まっていたらしく、すぐに扉が開く。
中に死体があったとか、血溜まりがあったとか、あのモンスターがいたとか、そういうことは一切なかった。ごく普通だ、でもいちいち身構えているので疲れてしまう。
中に入って押したボタンは勿論1階。早く日の光を浴びたいものだ。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/24(日) 17:57:17.25 ID:kpZC9gQtO
誰か来る前にと、すぐに扉を締める。エレベーターはどこにも異常はなく普通に上昇を始める。
「ふう……」
ここで一段落できる。ここなら誰にも攻め込まれることなんて無いだろうからね。
今までずっと張り詰めていた警戒心をほどき、目を閉じて深呼吸した。壁にもたれて、できるだけ体を休める。
よくも今まで無事でいられたものだよ。身につけているのは薄い服一枚だけで裸足。それでも怪我はなし。
もうきっと将来も経験しないであろう酷い目にも遭ったが、こうして身体的には全く問題ないのだから、まあ良しとしよう。
まるでゲームのような世界だ。道筋は限られていて、アイテムが落ちていて、イベントがある、やり直しは効かないだろうけど。
エレベーターが1階に近付いて減速し始めた瞬間、爆発音がして激しく揺れた。
揺れでバランスを崩したというよりも、吹き飛ばされたといったほうがいいかもしれない。それくらいの勢いで身体が浮き上がり、思い切り壁に衝突して倒れた。起き上がろうにも激しい揺れは続き、床を転がるばかりだった。
ようやく揺れがおさまると、恐らくここまでで初めての負傷であろう全身打撲の痛みをこらえながらゆっくりと立ち上がった。
何が爆発したのか、知る由もないけれども、エレベーターにいたお陰で破片などによる直接的な被害は免れたのだろう。
再び静かになった。
「え?」
ちょっとそれはおかしくないか。今僕がいるのはエレベーターだから、機械音がしているはずなのだけれども……。
エレベーターは停止していた。でも扉は開かない。
「閉じ込められた……?」
このまま出られない……? そう思うと、急に背筋が冷たくなった。
慌ててボタンを滅茶苦茶に押したがどれも反応はない。
扉をこじ開けようにも、手を入れる隙間さえなかった。どうにかして隙間を作ろうとしたけれども、それすらかなわなかった。
「まさか、こんな所で……。どうすればいいんだい」
しえん
シエン
ぽた。
ぽたり。
「ん」
天井から落ちてきたのは、赤い液体。
見上げると、血が天井の隙間から落ちてきている。本当なら、ここで怯えるのが当然なのだろうけれども、今はそれどころじゃない、ここから出たいんだ。
「なるほど」
まさかこんなのに導かれるなんてね。僕は運が良いのか悪いのか。ちょうど大きなキャリーケースがあるし、天井裏によじ登ることはできそうだ。
天井の板を一枚、機関銃の先端で何度も突いて壊す。重たい機関銃を自分の頭よりも上の位置へ持ち上げてのことだから、それはもう大変だったよ。
腕が痛くなってきた頃、ようやく板が外れて落ちてきた。
どすん
「ひぁ!」
板と一緒に、死体が落ちてきた。言葉にすればそれだけのこと。でも心臓が潰れるかと思ったよ。
血をこちらに落としてきたのは彼のようだ。感謝すべきか恨むべきか。
「まったく……」
し
ひょー!
驚いたときに出る言葉なんて、そんなものだろう。
空けた穴に機関銃を投げ上げると、キャリーケースを踏み台にしてよじ登った。穴をあけるのに疲れてしまったのでなかなか腕に力が入らず時間がかかったが、なんとか上がることが出来た。
言うまでもなく、そこは血でべとべとだった訳だけど、文句は言えない。
ちょうどエレベーターの箱の上に、建物側の扉があった。こちらは半開きになっている。壊れて歪んでいるようにも見えないし、これなら開けることはできそうだ。
僅かな隙間から機関銃を先に行かせ、両手に思い切り力を入れて、扉を開ける。これもまた結構時間がかかってしまった。僕だってそんなに力があるとは思えないからね。
通れるくらいに開いたところで、ゆっくりと通り抜けると、転がるようにしてエレベーターから脱出した。
「やれやれ……」
達成感のある疲労で、床に大の字になって体を休ませた。ひどく疲れていたが、眠気は全くなかった。
ここで眠っていたら殺されてしまうであろうことも確かだったし、あんな恐怖を体験してすぐにぐっすり眠れるわけがなかった。
横たわったまま周囲を見回していると、これから通るかも知れない道筋はこれまでよりもっと疲れるであろう事がわかった。
横になっているので目の前の光景は90度回転しているが、僕に見えたのは明かりがなく真っ暗な通路と、暗闇のずっと向こうで点滅している蛍光灯の光だった。
「おいおい、勘弁してくれないか」
らしくもない独り言が多くなる。みんなこの不都合のせいだ。
(`・ω・´)ゴクリ…
今回はここまでです。短かすぎました。
前座及び場つなぎになりませんでした。さるさんを警戒して連騰してみた結果g(ry
まじすいませんでした
といいますか、このタイトルは…作品名にDIR EN GREYの曲名が入ってる方ですよね?
自分かなりのDIR好きなんで前々から気にはなってました。今度全部読ませていただきます。
>>24 申し訳ありませんが、人違いのようです。
−Distorted pain−の人とは別人です。
似たタイトルつけてしまって申s(ry
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/24(日) 18:15:02.61 ID:CZxmGb/30
>>25 あ、そうなんですね。こちらこそ勘違いしてしまいすみません。
しかし時間があるときには読もうと思います。
しえ…終わってた
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/24(日) 18:42:50.90 ID:CWdUR+Lp0
アゲ待機
「はぁ…はあ…、くっ…!」
俺は走っていた 息を切らしていた
……
ああ…やっぱみんな揃ってやがる…
……
…疲れた
「キョン…遅い!!罰金ッ!!」
高々に罰金宣告を放つ団長様。
「…俺がいつも最下位っていうロジックは変わらないわけだな…、」
「遅れてくるあんたが悪いんでしょ!?」
「まあまあ涼宮さん。彼も疲れてるようですし、このへんにしておきましょう。」
「そ、そうですよぉ。キョン君息まで切らしてるみたいですし…。」
古泉と朝比奈さんが仲介に入ってくれる。
「ふん、頑張ってきたことを認めたって、あんたがビリなことには変わりないんだからね!」
「…そんなことわかってるぜ。別に事実を否定しようとは思わん。だから、早く中へと入らして休ませろ…。」
そんなこんなで、俺たちは喫茶店へと入る。
椅子へと座る。
……
ふう… やっと一息つけたぜ。
「やはり、昨日の疲れはまだとれませんか?」
口を開く古泉。ハルヒはというと、長門や朝比奈さんと一緒にメニューを眺めている。
「当たり前だろう…そういうお前こそどうなんだ?内心はかなりきつかったりするんじゃないのか?」
「…確かに、きつくないと言ってしまえばウソになります。ですが、その疲労もあなたと比べれば
大したことありませんよ。あそこに残り、最後まで涼宮さんと一緒に戦い続けた…あなたと比べればね。」
「さ、あたしたちのは決まったわよ!男性陣もとっとと決めちゃいなさい!」
そう言ってメニュー表を渡すハルヒ。
「何に決めたんだ?あんま高価なもんは勘弁してくれよ、払うのは俺なんだからな。」
罰金とは即ち、全員分の食事をおごること…SOS団内ではそういうことになっている。
もっとも、それを毎回支払うのは俺なんだが…。
「あのね、あたしだってそこまで鬼じゃないわ。せめてもの慈悲として、一応1000円は
超えないようにしているもの。あたしが頼むのはね、そこに載ってる…これよこれ!」
「…このチョコレートパフェ、値段が800円なんだが…」
「つべこべ言わない!そんくらい払いなさい!そもそも、遅れてくるあんたが悪いんだから!」
何が、あたしは鬼じゃない…だよ…。それどころか、棍棒を装備した鬼といえる。
「…キョン君、財布が苦しいようでしたら、いつでも相談してきてください。
機関でそのへんはいくらでも工面できますから…。」
ハルヒに聞こえないよう小さく耳打ちする古泉…って、マジか!?それは非常に助かる…
「いつもいつも払ってもらってゴメンねキョン君…なるべく私安いのを頼むから…!」
そう言って朝比奈さんが指したのは…この店で最も安い120円のオレンジジュースであった。
「私も…朝比奈みくるに同じ。」
「奇遇ですね。僕もそれを頼もうと思ってたところなんですよ。」
長門、古泉が言う。
…つくづく、俺は良き仲間に恵まれたと思う。なんだかんだで3人とも俺に気を使ってくれている。
まったく、どこぞの天上天下女に… 一回みんなの爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ。
「え、えぇ!?みんなオレンジジュースにするわけ!?」
動揺するハルヒ。
「みたいだな。ちなみに、俺自身もそれを頼もうと思ってる。」
「あんたの注文なんか聞いてないわ!!」
そうですか…
「だってみんなオレンジジュースな中、あたしだけデザートっていうのもバカらしいじゃない!?
しかも結構でかいから食べ終わるのに時間かかるし…!!あぁ…もう!!じゃあ、
あたしもオレンジジュースでいいわよ!!良かったわねキョン?みんな安い物選んでくれてさ!」
これは驚いた。なんと、俺たちは意図的ではないにしろ、あの涼宮ハルヒ自らの決断を…
覆してしまった!! 歴史的瞬間とはこのことか!こんなの今までなかったことだぜ…?
…なるほどなぁ、ようやくハルヒも人の痛みがわかる道徳人間へ進化したってわけだ。
「何ボケっとしてんの!?そうと決まれば、早くみんなの分注文しなさい!」
前言撤回。俺の勘違いだったらしい。
……
「じゃ、いつものクジ引いてもらうわよ!」
SOS団恒例のクジ引きである。不思議探索にて二手に分かれる際、
その人員采配として、この手法が導入されている。
……
皆、それぞれハルヒからクジを引く。
「おや、僕のには印はないようです。」
「私にもないです。」
「ん?俺もだな。」
ということは…
「え…!?じゃあ、あたしと有希!?」
「そういうこと。印があったのは私とあなただけ。」
…珍しいこともあるもんだ。まさか、組み合わせが俺・古泉・朝比奈さんとハルヒ・長門に分かれるとは。
「有希と二人っきりなんて、なかなか無い機会よね〜今日はよろしくね有希!」
「こちらこそ。」
……
ジュースを飲み干し、会計を済ませた俺たち。そういうわけで俺たち5人は…不思議探索とやらに励むのであった。
「いつも通り、5時に駅前集合ね!」
そう言って、長門とともに商店街のほうへと歩いていくハルヒ。
「なるほど、涼宮さんたちはあちらに向かわれたようですね。我々はどうしましょうか?」
「そうだな、とりあえず俺は…落ち着いて話ができる場所に行きたいな。
朝比奈さんはどこか行きたいところはありますか?」
「いえ…特にないですよ。お二人の好きなところで結構です♪」
「そうですね…では、図書館にでも行きませんか?あそこでしたら静かに話をするには悪くない上、
暖房も聞いていますし…ちょうどいいのではないかと。さすがに、また喫茶店やファミレス等に入るのも…
あなたたちには分が悪いでしょう?」
「いや、俺は別に…それでも構わんが。」
「でも、さっき私たちジュース飲んだばかりですよね。昼食だって家で既にとってますから…、お店に入っても、
特に進んで何かを頼む…というわけではないんですよね?でしたら、私も図書館がいいと思います。
話してばかりで何も頼まないようでしたら、お店の人に迷惑がかかるかもしれませんし…。」
…確かにその通りだ。朝比奈さんの指摘もなかなか鋭い。
「決まりですね。では、図書館へ向かうとしましょう。」
俺たちは歩き出した。
「それにしたってなぁ…ハルヒのやつも、今日くらいは集合かけんでよかったのにな…
いくら今日が日曜で不思議探索の日だからって…。ついさっき、12時間くらい前か?
俺たち…この世界の危機に立ち会ってたんだぜ!?」
「仕方ないですよ。涼宮さんは…神に纏わる一切のことを忘れてしまったのですから。
昨夜の一連の記憶がないんです…二日前から今日にかけての日々は涼宮さんの中で
【いつも通りの日常】として補完されているはず、つまり【無かった】ことにされているんです。
であれば、日曜恒例の不思議探索を、彼女が見逃すはずはありません。」
「…まあ、それもそうだよな…あいつ、覚えてないんだよな…。」
……
「それにしたって、今朝お前に…家まで車で送ってもらったことに関しては、本当に感謝してるぜ。
脱力しきって動く気すらなかったからな…とても家まで自力じゃ帰れなかった。
それと…朝比奈さんもいろいろとありがとうございました。」
「感謝なんてとんでもない。当然のことをしたまでです。」
「そうですよ…私たちなんか、キョン君と涼宮さんが闘ってる間、何もできなかったんですから…
むしろ、今か今かと二人を助ける時を待ってたくらいなんですから!」
「古泉…。朝比奈さん…。」
…古泉・朝比奈さん、そして長門の三人にしてみれば、これほど歯痒い思いもなかったかもしれない。
できることなら、神を消し去るそのときまで…俺やハルヒと一緒に闘い続けたかったはずだ。
「…それにしても、三人ともよく俺とハルヒが倒れてる場所がわかったな。」
「前例がありましたのでね、推測は容易かったです。」
「前例?」
「以前、あなたが涼宮さんと二人で閉鎖空間を彷徨われたことがありましたよね。
あそこから帰ってきたとき…気付けば、あなたはどこにいましたか?」
「どこにって…自分の部屋のベッドだな。お前にも前にそう話したはずだぜ。」
「そうですね。で、そのあなたの部屋とは…即ち、涼宮さんによって
閉鎖空間に呼ばれた際、あなたが現実世界にて最後にいた場所というわけです。」
「まあ…そういうことになるな。ベッドに入りこんで眠った直後、俺は閉鎖空間にいたわけだからな。」
「その理屈を今回の事例にも当てはめた…ただそれだけのことです。」
「…なんとなくわかったぜ。」
「今回涼宮さんが閉鎖空間を形成するに至った契機となったのは…長門さんが隣家を爆破した、
あの瞬間です。とは言っても、あくまでそれはキッカケにすぎません。決定打となったのは…
朝比奈さんが涼宮さんをかばい、敵からの攻撃を被弾した…あのときでしょうね。」
「わ…私ですか…?」
…血まみれになった朝比奈さんを思い出す。
……
確かに、精神的ストレスとしては十分なものだったかもしれない。
「その時点での涼宮さん、及びあなたの立ち位置はどこでしたか?
涼宮さんの家の前でしたよね。それさえわかれば、後は何も言うことはないでしょう。」
「俺たちが現れる場所も、つまりはハルヒの家の前だと。」
「そういうことです。」
「…なるほど、簡単な理屈だな。それにしても朝比奈さん、昨日は無事帰れましたか?」
「それはもちろん!森さんがちゃんと私たちを送ってくれましたから!それにしても…
彼女の見事なハンドル捌きにはあこがれちゃいます!私もあんなカッコイイ女性になりたいです…。」
…新川さんの運転もやけに上手かったな。その証拠に、
ハルヒ宅から俺の家に着くまでの時間も…随分短かった気がする。…機関はツワモノ揃いだな。
……
------------------------------------------------------------------------------
……
闇だった
意識を失った俺を待っていたのは
…闇だった
……
俺はどうなるんだろうか?このまま永遠に目を覚まさないのだろうか?
…そんなことがあってたまるか…!俺は…生きてハルヒに会わなきゃいけないんだ…!
……
誰か…助けてくれ…っ!
……
…?
何か声がする…
誰かが俺を呼んでいる
……
古泉…? 長門…? 朝比奈さん…?
……みんな…?
「ッ!!」
……
「こ…ここは…?」
「!?目を覚ましたんですね!!」
「キョン君…!!無事で…何よりです…!」
「…本当に良かった…。」
……
仲間たちの姿が…そこにはあった。
「俺は一体…」
「本当によくやってくれましたよあなたは…涼宮さんと一緒にね。」
「涼宮…。」
……
「そうだ…ハルヒは!?」
すぐに立ち上がり、辺りを見渡す。なんと、横にハルヒが倒れているではないか。
……
ハルヒ…また会えたな…っ!
「おいハルヒ…大丈夫か!?ハル」
言いかけて口を閉じる。
……
『明日にでもなれば…神だの第四世界だのそういうことを一切知らない、
ちょうど三日前の状態のあたしがいる…と思うわ。』
そうだ…。このハルヒは、昨日今日のこのことを覚えていない。神に纏わる全ての記憶を。
『ええ…残念だけど。でも、あたしはそれでいいと思う…
普通の、一人の少女として生きるのであれば、こんな記憶…邪魔以外の何物でもないもの。』
わかってるさ。そのほうが…ハルヒは幸せに生きられるもんな。
…とはいえ、それはそれで悲しいもんだ。もう、【あのハルヒ】には会えない…ってのは。
「涼宮さん、まだ起きないんですよね…。どうしましょう?」
「キョン君も起きたところですしね。呼びかけてみましょうか?」
「!待ってくれ古泉…!ハルヒは…このままにしておいてやれないだろうか?」
俺は…事ある事情を話した。
……
「なるほど…言うなれば、涼宮さんは三日前の状態に戻った…というわけですね?」
「…ああ、そうだ。だから」
「言いたいことはわかりました。涼宮さんはこのままにしておきましょう…
それもそのはず、前後の記憶がないのであれば 今ここで起こすわけにはいきませんからね。
『どうしてあたしはこんな外で寝ていたの?』、このような質問をされてしまっては
不都合なことこの上ないでしょうから。」
…さすが古泉。お前の理解力には脱帽だぜ。
「となれば…。朝比奈さん、長門さん 頼みがあります。」
「な、何でしょう!?」
「これから二人で涼宮さんを背負って…彼女の部屋、できれば寝床まで
連れて行ってもらえないでしょうか?少々きついとは思いますが…。」
「あ、そっか…目を覚ましたときにベッドの上にでもいれば、
涼宮さん自然な状態で起きられますもんね!私…頑張ります!!」
「了解した。涼宮ハルヒはきっと部屋まで連れて行く。」
「お、おい古泉!?ハルヒくらい俺一人で背負って行ってやるぞ!?
何も長門と朝比奈さんに頼まなくても…しかも、長門は未だ能力が使えないだけあって
体は生身の人間なんだ。いくら二人がかりとはいえ…それなりの負担にはなっちまうぞ!」
「だ、大丈夫ですよキョン君!すぐ着く距離ですから!」
…?
……
そういえば
俺は…ここがどこかをよく把握してなかった。起きたばかりで、いささか余裕がなかったせいか?
隣には見慣れた家がある。いや、見慣れたとかそういう次元の問題ではない…か。
そりゃそうだ。なぜなら、それはさっきまで俺たちが一緒にいた家なんだからな。
…つまり、俺たち二人はハルヒの家の前で倒れていた…というわけだ。
「いや…、それでもだな…。」
「今は涼宮ハルヒのことは私たちに任せて、あなたは休息をとるべき。あなたは今、心身ともに衰弱している。」
「何言ってやがる長門?俺はこの通り…」
…どうしたというんだ?足に力が入らない…?気のせいか、体もふらふらする。
「キョン君…私からもお願いします、どうか今は休んでください!
自分では気付いてないのかもしれないけど…すっごく疲れきった顔してるんですから!」
何…!?今の俺の顔はそんなに酷いというのか。
「彼女たちもそう言ってくれてるんです。ここは素直に従ってくれませんか?」
「あ、ああ…わかった。じゃあ、ハルヒをよろしく頼みます…朝比奈さん、長門。」
「はいっ!任せてください!」
「では朝比奈さん、長門さん…涼宮さんを運び終えたら、しばらくの間、彼女の家で
待機してていただけませんか?こんな夜遅くに女性が一人外を出歩くのは…危険ですからね。
長門さんも今は普通の人間なわけですし。というわけで、これから森さんに電話を入れます。
彼女の車がここに来たら、それに乗り…家まで送っていってもらってくださいね。」
「古泉君…ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えます!」
「それと、すでに新川さんには電話を入れてあります。彼にはキョン君を送っていってもらいましょう。」
「古泉…すまんな。」
「いえいえ、こんなときのために機関の面々はいるようなものですから。」
「じゃあ、長門さんはこっちをお願いします!」
「了解した。」
ハルヒの肩を担ぎ、彼女の家へと入ってゆく二人。
「おや、もう来たみたいですね。」
ふと、道の横に黒塗りの車が停まっているのが見える。
「…いつ呼んだんだ?」
「3分前くらいでしょうか。あなたが目を覚ます直前くらいですね。」
…相変わらず仕事が速い新川さんである。
「さて、森さんにも電話を入れました…じきに彼女もココに来るでしょう。では、車に乗るとしましょうか。」
新川さんの車に同乗する俺と古泉。
「今日は本当にお疲れ様でした。帰ってゆっくりとお休みください。」
「…どうもです。新川さんも、夜遅くお勤めご苦労様です。」
「ははは、あなたの偉業と比べれば、私の働きなど足元にも及びませんよ。」
フロント席から俺に話しかける新川さん。
44 :
涼宮ハルヒの天啓 エピローグ1 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/24(日) 19:18:53.78 ID:kpZC9gQtO
……
「古泉…大丈夫か?そういうお前も随分疲れてるように見えるが…。」
「おや、そう見えますか?だとしても、弱音を吐くわけにはいきませんね。
これから僕は一連の事後処理に追われるわけですから。」
「これからって…まさか今からか??」
「ええ、そうです。」
「……」
時計を見る。今は午前の2時である…。
「新川さんの車で本部に帰ったら、ただちに仕事のスタートです。神は一体どうなったのか、
涼宮さんの能力の有無は…、調べるべきことは山ほどありますよ。」
…確かに、それは気になる。何よりも、神がどうなったかということが。
「…僕個人の勝手な推測で言わせてもらうと、神は消滅したのではないか?そう考えてます。現に今、
この世界に何も異変が起こっていない…それがその証拠かと。仮に時間を置いて世界を滅ぼすつもりで
あったとしたら、地震や寒冷化などといった何らかの前兆が観測されてしかるべきはずですからね。」
「…そう信じたいものだな。」
「場所は、ここでよろしいですかな?」
気付けば俺の家の前まで来ていた。
「新川さん…ありがとうございました。そして古泉…大変とは思うが、どうかほどほどにな。」
「はい、心得ておきます。では、お休みなさい。」
「おう、またな。」
…さて、家に入るとするかな。…合いカギもってて助かった。
……
部屋へと戻った俺は…ベッドに倒れ込んだ。…もはや何も考える気がしない。
気付くと俺は寝ていた。
…?
携帯が鳴っている。はて、目覚ましをセットした覚えはないのだが…。
…ああ、なるほど。電話か。窓からは日が射している…起きるには十分な時間帯、というわけか。
とはいえ、昨日あんなことがあったばかりだ…正直言うと、まだ寝ときたい。
…電話?
……
まさか…ハルヒに何か!?
「もしもし、俺だ!」
「こぉ…んの…!!バカキョンッ!!今どこで何やってんのよッ!!?」
「おわ!?」
…驚くのも無理ないだろう…?まさかの本人ですか。
「は、ハルヒ…?何の用だ??」
「はぁ!?まさか忘れたとは言わせないわよ!?今日は不思議探索の日でしょうが!!」
「…今何と言った?不思議探索だと!?なぜ今日するんだ??」
「あんたがそこまでバカだったとはね…今日は日曜でしょう!?」
…確かに今日は日曜日だ。なるほど、いつもこの曜日、
俺たちSOS団は町へと出かけ、不思議探索なるものをしている。…だが
「昨日あんなことがあったばかりだろう?それでも今日するのか??」
「あんなことって何よ??いい加減夢の世界から覚めたらどう!?」
…しまった。そういや、ハルヒはこの三日間のことは…覚えてないんだっけか??
「とにかく!!今すぐ駅前に来ること!!いいわね!?」
「…ちょっと待ってくれ。今すぐだと!?いくらなんでも急すぎやしないか??」
「何言ってんのよ!?今日の3時に駅前に集合ってメールしたじゃない!!」
「そ、そうだったのか??」
「まさかあんた、今起きたとかいうんじゃないでしょうね…?失笑通り越して笑えないわよ…。」
「わかったわかった!!今すぐ行くから!!じゃあな!!」
電話を切る俺。
ス
┃
パ
┃
支
援
タ
イ
ム
57 :
涼宮ハルヒの天啓 エピローグ1 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/24(日) 19:48:07.07 ID:kpZC9gQtO
…マジだ。メールが来てやがる。って、今3時かよ!?こんなに寝てたのか俺!?
……
幸いだったのは、俺が着ているこの服が外出着だったってことか。
もちろん、いつもなら寝間着なんだがな…昨日が昨日なだけにそのまま寝ちまった。
とりあえず、これなら財布・カバン・自転車のカギを身につけ、上着を羽織りゃすぐにでも直行できる。
身支度を終え、部屋を飛び出す俺
「あ、キョン君!やっと起きたんだね!」
廊下にて、妹に見つかる。
「私がどれだけ叫んでも、キョン君ぐっすりだったんだよ?
でも今日は休日だから!さすがにドシンドシンするのは勘弁してあげたの!」
ドシンドシンとは…寝ている俺めがけ、トランポリンのごとくヒップドロップをかます
妹特有非人道的残虐アクションのことである。もっとも、妹にその気はないらしいが…
って、俺は妹の叫び声でも起きなかったのか。どんだけ熟睡してたんだ?
「ちょっと疲れててな…起きるのがすっかり遅くなっちまった。とりあえず、俺は今から出かけてくるぞ。」
「ええー?今からお出かけ?あ、わかった!SOS団の人たちと何かするんだね?」
「…お見通しってわけか。ああ、そうだぜ。」
「行ってらっしゃ〜い。あ、でもキョン君今日まだ何も食べてないじゃない?大丈夫〜?」
しまった。そういや今日…俺はまだ何も食べていない。あれ?デジャヴが?
…あー、昨日もそうだったか。そのせいで俺たちは…あの後マックへと行ったわけだ。
だが、今回はそうもいくまい。なぜなら、不思議探索をやるこの日に限って…しかも昼3時までに
昼食をとっていないなどというのは、ハルヒ的に考えられないからだ…!
まあ、別にいいか。食べてる時間などないし…。それに、昼飯なら探索時にどこかで適当なもん買って
食えばいいだけだろう…。外に出た俺は自転車に跨ると、すぐさま駅へと向かった。…全速力でな。
……
駅前の駐輪場に自転車を置いた俺は、すぐさまハルヒたちのもとへと走るのであった。
------------------------------------------------------------------------------
…ちょっと回想してみたが。ホント、昨日今日と忙しい日々だった…。
……
おお、ちょうどいいところに店が。
「ちょっとコンビニ寄ってもいいか?」
「いいですよ。何か買うんですか?」
「ちょっと飯を…な。今日まだ何も食べてねえんだよ。」
「え、そうだったの!?それなら私、あんなこと言わなかったのに…。」
あんなこと…?ああ、あれか。
『でも、さっき私たちジュース飲んだばかりですよね。昼食だって家で既にとってますから…、お店に入っても、
特に進んで何かを頼む…というわけではないんですよね?でしたら、私も図書館がいいと思います。』
「いえいえ、いいんですよ朝比奈さん。古泉や朝比奈さんが何も頼まない横で俺一人だけ
何か食べるというのも…なんとも心苦しいですから。何より、二人が手持ち無沙汰でしょうしね。」
「別に私…そんなこと気にしませんよ?」
「ありがとうございます。でも、俺は飲食店に入ってまで大それた食事をとるつもりはないんですよ。
だから、軽い食事でOKなんです。」
「な、ならいいんですけど…。」
「では、我々はキョン君が食事をとり終わるまで暇を潰しておくとしましょう。
朝比奈さんは…何かコンビニで買うものはあったりしますか?」
「いえ…特にないですね。」
「なら、雑誌でも見ていきませんか?女性誌やファッション誌、漫画など…
未来から来た朝比奈さんには、この時代の雑誌はなかなか興味深いものと思われますよ。」
「!それもそうですね!面白そうです…!」
「というわけで…私たちは立ち読みでもしときますので、あなたはどうかごゆるりと。」
「すまんな古泉。」
とはいえ…あまりにマイペースすぎても2人に申し訳ないので、一応それなりのスピードで食させてもらうとする。
……
おにぎりと肉まんを買い、外に出た俺。
さて、食べるか…。
「ん?まさかこんなとこであんたと会うとは。」
「こんにちは。あ、それ肉まんですか?私はアンまんのほうが好きですね!」
……
いかん、うっかり手にしていたおにぎり&肉まんを落としそうになった。
「…どうしてお前らがここにいる…!?」
藤原と橘が、そこにいた。
「どうしてって…単にコンビニに飯を買いに来たってだけだ。」
「私も同じく!」
『単にコンビニに飯を買いに来たってだけだ。』
…こう言われては、俺もどうにも言い返せないではないか…
なぜなら、コンビニに飯を買いに来ることはごく自然なことだからだ。当たり前だが。
「そうかよ…ならいいんだがな。それにしたって、俺は忘れたわけじゃねえぞ!
よくも…朝比奈さんを血まみれにしてくれたな!?」
「ああ、あれか。あのことで僕たちに文句言われても困るんだがな…やったのは九曜だし。」
「もっとも、その九曜さんは今ここにはいませんけどね。」
「そういう問題じゃねえだろ!?九曜とか何とか関係ねえ、連帯責任だ!」
「うるさいやつだな…第一、九曜にそうさせたのはどこのどいつだ?」
「あれって言わば正当防衛みたいなものですからね。私たちが非難される所以はどこにも
ありませんよ?誰かさんが家を爆破したりしなきゃ、こんなことにはならなかったんですから。」
…確かに、もとはと言えば、偽朝比奈さんに唆された俺が藤原一味を敵だと思い込んだことが
全ての発端か…そのせいで、長門や古泉は連中に対して先制攻撃に打って出ちまいやがった…。
「ま、どうせ異世界から来た朝比奈みくるにでも騙されてたってとこなんだろ?」
「……」
言い返せない。
「あらら、図星みたいですね。せっかく藤原君があなたに『朝比奈みくるには気を付けろ。』
って忠告したのにもかかわらずね。人の話はちゃんと聞かないとダメですよ?」
「?何のことだ?」
「え?藤原君が言ったの覚えてないんですか??」
…?
「それなんだがな、橘。実はそんときの記憶、こいつから消した。」
「ええーっ!?どうしてそんなことしちゃったんですか??」
「僕や九曜が暗躍してることを知られたらいろいろと面倒だろ?そう思って
消したんだよ。それにこいつ自身、結局僕の忠告に従わなかったしな。」
「そのときは従わなくても、途中で考えが変わったりしたかもしれないじゃないですか!
藤原君のせいで…キョン君が私たちを敵だと思い込んだようなものですよ…!?
結果として、私たちは朝比奈みくるを討てなかった!どうしてくれるんですか!?」
「おいおい落ちつけよ…いずれにしろ、目の前にいるこいつの働きのおかげで
世界は救われたんだから…結果オーライ。それでいいじゃないか。」
「そういう問題じゃないでしょ!?いつまでもそんなルーズな性格だと
またいつか、同じようなミスをしちゃいますよ!?」
「わかったって…わかったから。すまんかった橘…。」
「わかればいいんです。」
さっきからこの二人は… 一体何の話をしてるんだ??…俺にはわからない。
ただ、【怒る橘】と【それに頭を下げる藤原】との対比に驚愕したのは言うまでもない。
「そういうわけで、それじゃキョン君も仕方がないですよね。
今回は双方に落ち度があったと…そういうことにしておきます。」
どうやら、俺にも落ち度とやらがあったらしい。まあ…今となってはどうでもいいが。
「何はともあれ、昨日今日は本当にお疲れ様でした!キョン君。ほら、藤原君も言う!」
「…何で僕がこいつなんかに?今お前が言ったんだから、別にいいだろう。」
「よくないです!こんなときに意地張っちゃってどうするんですか!?だから藤原君は…」
「わかったわかった…言えばいいんだろ?…お疲れ様でした。」
「あ、ああ…。」
「さて、じゃあ私たちは買い物に行くとしましょうか。じゃあねキョン君!」
颯爽とコンビニの中へと入って行く橘と藤原。…まったく、嵐のような二人だったな。
何がどうだったのか…結局よくわからなかった。
…って、これはまずいんじゃないのか??もし…中で立ち読みしてる古泉と朝比奈さんが
あの二人と鉢合わせでもしてしまえば…!!俺と違って事情を知らないだけに…
非常にややこしいことになるのは間違いない!!最悪の場合…喧嘩沙汰になるぞ!?
……
用事を済ませたのか、中から出てくる二人。
「それにしても、最近の藤原君はコンビニ食ばかりですよね…?気持ちはわかりますよ。作る手間が省ける分、
楽ですもんね。でも、それも程々にしておいたほうがいいかなーと。栄養が偏りますし。」
「何でお前なんかに心配されなきゃならない!?関係ないだろ!?」
「関係なくないです。また何か共同作業があったとき、体調でも崩されたらたまったもんじゃありませんから。」
「そういうお前はいいのか??自分だってコンビニで弁当買ってたじゃないか…」
「私は【たまに】だからいいんです。それに、私がコンビニを利用するときって
たいていは雑誌やライブチケットの予約ですからね。今だってほら…予約してきました!」
「…EXILEのライブ…か。この時代の人間じゃない僕にはよくわからん。」
「今すっごく人気のグループなんですよ!?一回藤原君も未来へ帰る前に聴いておくべきです。」
「はぁ…そうかよ。」
……
「あれ?キョン君まだそこにいたんですか?」
「…何やってんだあんた?僕たちが中へ入ってから出て来るまでの間、
おにぎりの一つさえも食ってなかったのか?…呆れるな。」
「そうですね…肉まん冷えますよ?じゃあ、私たちはこれで。またねキョン君!」
「ふん、意味不明なやつ。よくあんたのような人間が世界を救えたもんだ。」
「何言ってんですか!?さっさと行きますよ??」
そう言い残し、去って行く藤原と橘。
……
突っ込みたいことは山ほどあるんだが…今は自重するしかない。とりあえず外から中を眺めていたが…
結局、両者が互いに鉢合わせすることはなかった。運が良かったんだろうな…要因は2つ。
1つは古泉・朝比奈さんが立ち読みに夢中になっていた…ということ。
もう1つは藤原・橘の二人が雑誌コーナーに立ち寄らなかった…ということ。
この2つが掛け合わさり、見事に衝突は回避。めでたしめでたし…というわけだ。
……
いや、全然めでたしじゃない…無駄に時間をロスした分、一刻も早く食事に手をつけねばならない…
「食べ終わったようですね。」
「ああ…おかげ様で、ゆっくりと食べることができたぜ。」
「それはよかったです!私も私で、ゆっくりと雑誌を眺めることができました!」
「何を読んでたんですか?」
「ファッション誌をね。特に、可愛い衣服やアクセサリーなんかは…
見ててほしくなってきちゃいました!この時代の衣料品もなかなか興味深かったです…!」
「気に入ってもらえて嬉しいです。勧めた甲斐があったというものですよ。」
「そういう古泉は何を読んでたんだ?」
「芸能系の雑誌をちょっと。政治の裏金や特定企業・芸能事務所間の癒着及び秘密協定等…
普段なかなかお目にかかれない記事に白熱していた…といったところでしょうか?」
…なるほど。各々の性格を考慮すれば、二人が本に夢中になっていた…というのも頷ける。
「二人とも満足そうで何よりだぜ。」
「そうですね。…では、行くとしましょうか?」
図書館へ向け、再び俺たちは歩き出した。
……
…どうする?朝比奈さんに…あのことを聞いてみるか?
事態が落ち着いた今なら…もしかしたら答えてくれるかもしれん。
「朝比奈さん…ちょっといいですか?」
「?何でしょう?」
「長門から聞いたんですが、昨日朝比奈さんは…時間移動したそうですね?未来へと。」
「!」
「もし差し支えなければそのこと…教えてくれませんか?」
「……」
彼女は答えない。…やはり、何か触れてはいけないことを…俺は聞いてしまったのだろうか?
「あなたが答えないのは禁則事項のせい…というわけではないようですね。」
「…!」
古泉の言葉に…かすかではあるが動揺する朝比奈さん
「もし禁則事項で話せないのであれば、すぐさまあなたは【禁則事項】という名の言葉を口から
発するはずですよ。未来人からすれば、それは永久不可侵に通じる絶対のルールであるはず。
現代の我々から言わせれば、ちょうど犯罪是非の境界線認識に近いものと言ったところでしょうか。
朝比奈さんのような実直誠実なお方がそれを破るとは考えにくい…だから、尚更言えるんです。
あなたが答えないのは…単に個人的な問題によるもの、とね。」
「……」
……
操行してる間に、俺たちは図書館へと着いた。…とりあえず、3人で空いてるソファーに座る。
…空気が重い。
あんな質問、するべきじゃなかったのかもしれない…。俺は後悔の念に打ちひしがれていた。
事態が落ち着いた今なら…世界が救われた今なら答えてくれる…!そう安易に妄信していただけに…
「…話します。」
一瞬、空気が浄化されたような気がした。二度と口を利かない、
そんな雰囲気があっただけに…。彼女のこの一言に、俺は救われた。
「確かに、私はあのとき…未来へと帰っていました。それは事実です。」
……
「…覚えてるかしら?二日前、私たちがファミレスに集まって話したことを。」
「?…はい。」
「私…あのときは本当にびっくりしちゃいました。涼宮さんの誕生が46億年前に遡ること、これまで幾つもの
世界が存在したということ、フォトオンベルトによりこれから世界が滅ぶこと…どれも信じがたい内容ばかりで、
正直長門さんから初めて聞かされたときは耳を疑いました…。そんなときであっても、
あたふたしてる私とは対照的に、古泉君は凄く冷静で…決して取り乱したりはしませんでした。」
68 :
涼宮ハルヒの天啓 エピローグ1 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/24(日) 20:26:53.86 ID:kpZC9gQtO
「…朝比奈さん、それは違います。とても内心穏やかだったとは…言えませんね。
むしろ、発狂したいくらいでした。世界は近年になって構築された…この近年説が覆された。
僕を含む機関の面々がこれまで妄信してきた価値観が…根底からひっくり返された。
長門さんの話を【事実】として受け止めるには…あまりにハードルが高すぎましたよ。その証拠に、
キョン君は知ってるはずです。僕のあのときの…ファミレスでの説明はお世辞にも良いものとはいえなかった、
ということをね。当然です、僕自身混乱していたのですから。」
「…何を言ってるんだお前は??十分上手く説明してたように…俺には思えるぞ?」
「本当にそう思っていただいているのであれば、嬉しい限りですね。ですが、よく思い出せば
わかるはずですよ。僕が…事あるごとに、しょっちゅう長門さんへ助けを求めていたことがね。」
「そりゃ、全体の説明量から言わせれば、長門の方が多かったかもしれんが…。」
「おわかりですか?朝比奈さん。あのときの僕は正常とはほぼかけ離れた状況にあった…ということが。」
「…古泉君の内心がそうだったとしても、それでも古泉君は…外面をちゃんと取り繕ってたじゃないですか!
キョン君が今言ってたように私からしても、とても説明に不備があったようには思えませんでした…!」
?朝比奈さんは…さっきから一体何を言おうとしてるんだ?今話してることが…
未来へと時間移動したこととどういう関係が?…それにしてもこんな会話、俺はどこかで聞いた気が…。
……
------------------------------------------------------------------------------
「ねえキョン君…私って本当にみんなの役に立ってるのかな…?」
…今日の朝比奈さんはどうしたんだ?何か気持ちが滅入るようなことでもあったのだろうか。
まさか、未来のほうで何かあったか??
「そんなことないですよ朝比奈さん。あなたは十分俺たちの役に立ってます…
いや、役に立つ立たないの問題じゃない。いて当然なんですよ。」
「……」
「何かあったんですか?俺でよければ話を聞きますが…。」
「…昨日の晩、私は力になれたかしら…?」
昨日の晩とは…俺たちがファミレスにいた時だ。
「世界が危機に瀕してる…そんなとんでもない状況なのに私は昨日あの席で…
長門さんや古泉君に説明を任せっぱなしで、自分自身は何一つ重要なことはできなかった…。」
・
・
・
「…朝比奈さん。」
「は、はい?」
「あなたには…長門や古泉には無い物があります。俺が二人の難解な説明を聞いて頭を悩ましているとき…
朝比奈さんが投げかけてくれた言葉の数々は、俺の疲れを随分と癒してくれましたよ。もしあなたがいなかったら…
二人の説明を本当に最後まで粘り強く聞けていたかは…、正直自信がありません。ですから、
本当に感謝してます。変に力まずにただ…自然体のままで。それで十分なんですよ。」
「キョン君…。そう言ってくれると嬉しいです…、でも私…」
……
「いや、なんでもないです!…私を励ましてくれてありがとう。」
------------------------------------------------------------------------------
……
おそらく彼女は昨日、ハルヒの家で俺に話したことと…全く同じことを言いたいのかもしれない。
71 :
涼宮ハルヒの天啓 エピローグ1 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/24(日) 20:48:25.28 ID:kpZC9gQtO
「朝比奈さん…まだそんなこと言ってるんですか??昨日も、俺は言ったじゃないですか!?
朝比奈さんがいたからこそ、長門や古泉の説明を最後まで粘って聞くことができたって!」
「そっか…キョン君にはこのこと昨日話したもんね。二度も似たようなこと言っちゃってゴメンね?
そんなつもり私もはなかったんだけど…ただ、【未来へと時間移動した】理由を言うには
今の話はとても欠かせないものだったから…。」
「…そうだったんですね。いえ、自分は全然気にしてませんよ。どうか、話を続けてください。」
「…ありがとうキョン君。」
……
「ここまで遠回しな言い方をしてしまったけど…つまりね、私はみんなの役に立ちたかったの…!
長門さんや古泉君のような…目に見えるような働きを…、私は果たしたかった!
いつも私だけ何もしないのは…もう嫌だったから…!」
「……」
「未来へ時間移動…その行動の契機となったのは、ファミレスで…長門さんが言ってましたよね?
涼宮さんが倒れた今回の騒動には…未来人が関与してるんじゃないかってことを…。」
『あの時間帯にて、私は微量ながら通常の自然条件においては発生し得ないほどの異常波数を伴う波動を
観測した。気になるのは、それが赤外線・可視光線・紫外線・X線・γ(ガンマ)線等、いずれにも属さない
非地球的電磁波だったこと。これら一連の現象が人為的なものであると仮定するならば、現在の科学技術では
到底成し得ない高度な技術を駆使していることに他ならない。』
『…未来技術を応用しているのだとすれば、犯人が未来人であるという可能性は非常に高いと思われる。』
…確かに長門はそう言っていた。
「だから私は思ったの。もし犯人が…私と同じ未来人であるのなら、私にはその犯人の情報を
つかむ義務がある…と。SOS団で唯一時間跳躍ができる人間が私なんです…
もしかしたら、みんなが知りえない情報を私なら…未来で手に入れられるかもしれない!
そしたら、涼宮さんの役にも立てるかもしれない!そんな強い思いが…私に生まれたの。」
……
「だから、朝比奈さんはその情報を得るため、未来へと時間移動したんですね…?」
「…はい、その通りです。」
……
「でも…現実は非情だった。私は…いろんな人に話を聞いた。幾多の幹部の方にも話を伺った。
それでも…私が求める情報を、誰も教えてはくれなかった。まるで…みんな私に何かを
隠してるかのように…ふふっ、こんなふうに考えちゃいけないのにね。私って…ダメだね。」
…いや、朝比奈さんの今の考えは、おそらく当たってる。
なぜなら、犯人の名前そのものが…【朝比奈みくる】その人だったからだ…。
いくら別世界の住人とはいえ、彼女が【朝比奈みくる】なる人物と全くの同じ姿・形・名前をもつ
人間であることは事実…上層部の連中からすれば、これほど躊躇してしまう存在もなかったかもしれない。
ましてや、世界の存亡にかかわる…現代で言う国家最高機密に指定されていてもおかしくない情報を
彼女に話すことなど言語道断 このような認識が幹部たちの間で成立していたとしても、何らおかしくはない。
「でも、私はあきらめなかった。何度も何度も上層部の方とコンタクトを取ろうともしたし、
電話をかけたりもした…そして、ようやく上司からある情報を聞けたの…。」
上司…大人朝比奈さんのことだ。
「その情報っていうのがね…藤原君たちに任せておけば大丈夫、というものだったの…。」
「……」
言葉に詰まる俺。
……
結果的に、ヤツらが【朝比奈みくる】の暗殺に向けて暗躍していたのは…事実だったからだ。
「最初聞いたときは、私には何のことだか訳がわからなかった…それもそうよね?キョン君たちからすれば、
彼らは敵なんだもの…そんな彼らがいくら世界を救うとはいえ、その過程でキョン君や涼宮さんたちを助ける
だなんて…私にはにわかには思えなかった。…結局、私が未来でつかめた情報はこれだけ。だから、
私にはなんとしてもこの情報の真偽を確かめる必要があった…。藤原君がこの世界に来てるということを知って、
ただちにこの時間へと時間遡行したわ。そして、彼に連絡をとった…」
……ッ
ようやく話が繋がった。
『…朝比奈みくるがここの時間軸に戻ってきた午後1時24分以降、
これまでに6回…ある未来人との電話での接触を確認している。』
『パーソナルネームで言うところの、藤原。』
…この長門の言葉はそういうことだったのか。
「でも…彼は私の質問に対して、まともな返答はしてくれなかった…
一応何度か連絡はとってみたんだけど…結局、私は何も情報を聞きださず仕舞いに終わった…。」
……
もしかしたら、藤原のヤツは朝比奈さんの【声】を警戒したのかもしれない。
標的である【朝比奈みくる】と全くの同一の声…彼女を相手にしなかったのはこのせいか…?
「…私がね、昨日涼宮さんの家で元気がなかったのも…さっきキョン君から時間移動のことについて
聞かれた際に沈んでいたのも…そのせいなんです!だって…そうでしょう…っ?
犯人が未来と関係あるっていうのなら…きっと未来で何かしらの情報がつかめると、そう思ってたのに!
今度こそ…みんなの役に立てると思ってたのに…。結局、時間跳躍した意味もなかった。
藤原君からも何も聞き出せなかった。私には…みんなと会わせる顔がなかったの…。」
彼女が涙声になっているのは言うまでもない。もしかしたら、泣いているのかもしれない。
……
まさか、彼女にこんな事情があったなんて…思いもしなかった。
ハルヒや自分のことで精一杯だった俺には…彼女の苦しみなんて気付きようもなかった。
------------------------------------------------------------------------------
「キョ…キョン…!!みくるちゃんが…!!みくるちゃんがあ!!!!」
「しゃべるな!!お前だってケガしてんだろ!!?」
「違う…!!あたしはケガなんてしてない!!…みくるちゃんが…あたしを…あたしをかばって…!!!!」
……
え?
じゃあ、ハルヒの服にべったり付いているこの血は何だ?
……
全部…朝比奈さんの血……
…!?
「う…ぅ、ぅぅ……!」
悲痛な様で喘ぐ…彼女の姿がそこにあった
「朝比奈さん!!!!しっかりしてください!!!!…朝比奈さん!!!!」
「ょ…ょかった…すず…涼宮さんがぁぶ、無事で…!」
「朝比奈さん!!?」
「わた…し…やくにた…てたかな…ぁ…ぁ…!」
理解した
彼女は秒単位という時間の中で自らハルヒの盾となった あのとき奴の一番そばにいた…彼女は
------------------------------------------------------------------------------
尚更、あのときの彼女の心情がわかる。幾度と奔走した挙句、成果を上げられなかった彼女は…
あのとき死す覚悟だった。そこまで彼女は追い詰められていた。
そうでもしないと、自分でも納得のいかない段階まで来てたってのか…!!?
…っ!!
76 :
涼宮ハルヒの天啓 エピローグ1 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/24(日) 21:14:39.23 ID:kpZC9gQtO
「朝比奈さん!すみませんでした…!!」
急に立ち上がり、何事かと思えば…彼女に向け、土下座をする古泉。
もちろん、ここは図書館。館内のあらゆる一般人の視線を…ヤツは浴びることになった。
「ど、どうしたんですか古泉君!?何で…何で私に土下座なんか…!?」
「僕は…正直に、あなたに包み隠さず話さなければならないことがあります…!」
「…??」
「僕は…あなたを、一時的ながらも…疑っていたんですよ…。あなたを、犯人だと!」
「っ!」
「この局面においての未来への時間移動、我々の敵であるはずの藤原氏への電話連絡、未来技術応用による
涼宮さんの卒倒等…いくつもの状況証拠により、あなたを… 一時的にでも犯人だと、僕は疑ってしまった!
朝比奈さんに…そんな重い事情があるとも知らずに僕は…ひどいことを考えてしまった!!
最低ですよ本当に…。深く、深くお詫び申し上げます…。」
「……」
……
「古泉君…顔を…、顔を上げてください…。」
「朝比奈さん…?」
「…確かに、それを聞いたときはショックでした。でも!それを言うなら私にも非があります…!
だって…考えてもみれば、世界がどうなるかもわからないこの局面で…みんなに何の相談もせず、
勝手に時間移動をしてしまった。状況的に疑われても仕方ないことを…私はしてしまいました。
だから、責められるべきは迂闊で軽率な行動をしてしまった…私にあります。古泉君は…涼宮さんのことを、
みんなのことを一生懸命考えてた…!だから、一つでもあらゆる不安要素は潰しておきたかった!
仲間想いの優しい副団長さんだと…私はそう思いますよ…?」
「…許して…くれるんですか?」
「許すも何も…当たり前じゃないですか!私のほうこそ…ゴメンね。」
「朝比奈さん…!ありがとうございます…っ! …そうだ、朝比奈さん。」
「な、何でしょう??」
「僕はですね…その点においては、彼を…キョン君のことを尊敬しているのですよ。」
「お…俺…??」
急に自分の名前を出され、驚く自分。
「彼はですね…僕と長門さんが朝比奈さんの…、一連の状況証拠を並べている時に際してまでも
朝比奈さんの無実を訴えて止まなかった。朝比奈さんが無実だと…信じて止まなかった。それどころか、
そんな問題提起をする僕や長門さんに対して逆上しそうになったくらいでした。…それだけ彼は仲間のことを
心底信じていたというわけですね。ここまで純粋で素朴な人間は…なかなかいないでしょう。」
「キョン君が…私のためにそこまで…?!ありがとう…キョン君…。」
「ま、待ってください朝比奈さん!そんなこと言われる所以、自分にはありません…むしろ、
謝りたいくらいなんですから…。もっと早く、もっと早く朝比奈さんのそういう事情に気付いていれば…
朝比奈さんがここまで精神的に追い詰められることもなかったかもしれない…。だから 謝ります、朝比奈さん。」
「……」
……
「どうしてキョン君にしても古泉君にしても…みんなここまで謙虚なんですかね…?
もうちょっと自分を持ち上げたっていいのに…。ふふっ、なんかおかしくなってきちゃいました♪」
「確かに…ちょっとおかしな状況かもしれませんね。僕も自然と笑いが…。」
「古泉よ、どうおかしいのか?お前の得意分野、解説でぜひ説明してくれ。」
「いやぁ…さすがに、こればかりは僕にも解説不能です。」
俺たちは笑いに包まれた。…さっきまでの重い雰囲気は、一体どこにいったんだろうか。
……
良い仲間に恵まれて、本当に自分は幸せだな…。出過ぎたマネかもしれんが、
おそらく他の2人も似たようなことを考えてるのではないかと…。俺は強くそう感じていた。
いつまでも、こんな時間が続けばいいなと思った。
いや…どうも、そういう問題ではないらしい。さっきから周りの視線が…痛い。
一体どういうことなんだろうな?俺たちは、すっかり忘却してしまっていた…っ!
【ここは図書館だ。】
何でかい声で笑ってんだ…迷惑にも程があるだろう…?
そういうわけで、俺たちは図書館を後にしたのさ。
これでエピローグ1は終わりです。エピローグ2は10時くらいから投下します。
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/24(日) 21:23:46.68 ID:kZtvfAGn0
乙
楽しく読ませてもらってる
俺漏れも
乙!昨日は寝れなかったぜ
今夜も頼む
83 :
涼宮ハルヒの天啓 エピローグ2 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/24(日) 22:16:31.10 ID:kpZC9gQtO
……
「良い時間帯ですね。今から駅に向かえば、ちょうど集合の5時頃には着く算段ですよ。」
古泉の言うとおり、俺たちは駅に向かって歩くことにした。
……
「それにしても…私たちがこうやって今楽しくいられるのも、涼宮さんあってこそのものですよね。」
「…そうですね。奴がいなけりゃ宇宙人・未来人・異世界人・超能力者として、
俺たちはこうやって集うこともなかったわけですし…ハルヒ様様ですよ。」
「それと、特に今回は【涼宮さんを守る】という名目のもと、我々は一心不乱に強くまとまってました。
それも、機関・未来・情報統合思念体の枠を超えた…そう、SOS団としてね。
そのような涼宮さんを中心とした絆が…より我々を強固なものにしたのだと見受けられます。」
…確かに、今の古泉の発言は正しい。
長門・古泉・朝比奈さん…それぞれが今回【SOS団のメンバー】として活躍していたように見える。
特に、顕著だったのが朝比奈さんだ…自らの独断で時間跳躍を行ったと彼女は言っていたが、
本来あのような時間移動というのは上、即ち未来からの許可が必要である。その取得にあたって、
彼女は未来へと申請したか?いや、してはいないだろう。未来へと行き、何も確固とした情報が
得られなかったのがその証拠だ…。意味もなく、彼女に許可を下す理由などないからな。
他にも、長門といい古泉といい…、本当にみんな、よく頑張ってくれたと思う。
……
「ところで…その涼宮さんなんですがね。」
「ハルヒがどうかしたか?」
「…彼女の能力は、一体どうなってしまったんでしょう?」
……
なにげない古泉の一言に、俺はハッとする。
「古泉…その前にまず、教えてくれないか…?神がどうなったかを…。」
「…確かなところはまだわかっていません。なんせ、いくら機関と言えど我々は人間の集まり。
神の消息をつかむなど…普通に考えれば不可能というものですからね。もちろん、調査には努めましたが…。」
「…そうか。」
「長門さんの力をもってすれば…把握も容易かったのでしょうけどね。
残念ながら、未だ彼女の力は回復していません。」
「…すまねえな古泉。俺があのとき死んだりさえしなけりゃ…、」
「何を言うんですか…?あなたの生死は…何物にも代え難い代物のはず。
機関のことなど…この際どうでもいいですよ。それに、長門さんはあなたに施したことを…
決して後悔はしていないはずです。なら、それでいいじゃありませんか?」
「そう言ってくれると、助かるぜ。」
「…まあ、そうは言ってもですね、機関の大部分は神が消えたものだと見なしてます。
神が今もなお存在し力を行使してるとするならば…何やら不自然な点が多すぎるんですよ。」
「だから神はいないってことか?」
「そうです。消去法ってやつですね。…そう考えた際に、ふと思い出したのですよ。
第三世界終焉のあの地で…あなたが涼宮さんから聞いた話をね。」
……
『これから来たる第四世界の創造…とりあえず、それまでは神の意志には従おうと思うけど、
それ以降はあたしは自分の意志で生きようと思う。一人の人間として…ね。』
『それでね…そのときは、これまで自分が神の代行者だったって記憶を、消したいと思ってる。
だって、そんな記憶があったら一人間として楽しく生きられないもんね。』
『転生はできそうなの。でも完全には…いかないみたい、残念だけどね。
今あたしがもってる人間らしからぬ能力も…おそらく一部は受け継がれることになると思う。
それどころか神の操作で、今以上により強大になっている恐れだってある。』
一連のハルヒの言葉が何を指すのか、俺にはわかっていた。
神の消滅…それは同時に、ハルヒの能力消滅をも意味する。
……
ハルヒは普通の人間として生きるべく、自らを第三から第四の世界へと…転生させた。
記憶こそ消せたが、結果として…願望実現という名の能力を持ち合わせるに至った。…神の介入により、
転生が不完全なものとなってしまったせいだ。だが、今回は違う。もし…神がいなくなったとしたら?
『ええ…残念だけど。でも、あたしはそれでいいと思う…
普通の、一人の少女として生きるのであれば、こんな記憶…邪魔以外の何物でもないもの。』
ハルヒの言葉通り、ヤツは神に纏わる一切の記憶を無くし…今日俺たちの前に姿を現した。
いつも通りの元気な姿で。団長、涼宮ハルヒとして。
……
神は消え、記憶も絶たれた。一人間として生きるハルヒに…これ以上能力を引き継がせる理由はない。
「ハルヒの能力は…消えちまったのかもしれねえな。」
「…僕もそう考えています。閉鎖空間が一切見られなくなったのも、その証拠と言えましょうか。
僕の超能力者としての力がなくなっただけ、とも言えるかもしれませんが…そうだとしても、僕たち機関が
涼宮さんの影響下に置かれていないということは即ち、神人退治の必要がなくなったとも言えます。
いずれにせよ、結論は変わらないわけですね。」
「え…えぇー!?涼宮さん、能力無くなっちゃったんですかぁ!?」
「あ、いえ…まだ決まったわけではないですよ。」
「でも…可能性は高いんですよね?」
「…そうですね。」
何やら焦っているように見えるが…どうしたんだ彼女は?
「涼宮さんが普通の人間になった。もし、そういうことがわかった場合
朝比奈さん…あなたはやはり、未来へと帰ってしまわれるのですか?」
「!!」
この言葉に、俺は酷く動揺した。
……
俺たちSOS団は、確かに涼宮ハルヒを核としてまとまっていた。ハルヒが望んだから…!
俺たちは出会うことができた。宇宙人・未来人・異世界人・超能力者を望んだから…!
俺たちは彼女の元に集まることができた。彼女の特異的能力により、俺たちは集まることができた。
そんな能力をもつハルヒを…彼らは、各々の立場から【監視】をする必要があった。
長門は情報統合思念体、古泉は機関の人間、朝比奈さんは…未来の人間として。
…そのハルヒの能力が消えつつある。普通の人間になりつつある。
長門・古泉・朝比奈さんの立場から言わせれば、3人は存在意義をなくしつつある。
そうなった場合、彼らはどうするのか。
古泉は…?転校する前の学校へと戻ってしまうのか??
長門は…?上からの命令で宇宙へと帰ってしまうのか??
朝比奈さんは…?元々の故郷である未来へと帰還してしまうのか??
みんな…離れ離れになっちまうのか…!?
「私は…」
…固唾を飲み、俺は彼女の返答を見守った。
「私は…」
……
「私は…!涼宮さんに能力が無くなったとしても、みんなとお別れする気はありません!!」
「朝比奈さん…っ」
俺は…彼女の言葉に救われた。
「確かに…、未来人である以上、延々とこの時代に居続けることはできないでしょう…
でも、少なくとも高校を卒業するまでは!私は…SOS団の一人であり続けるつもりですっ!」
「…朝比奈さん、俺、嬉しいです…。」
バカだよな俺って…別に自分が褒められたわけでもないのに。
「…朝比奈さんは、涼宮さんに誘われてこのSOS団に入った当初から…そういうお考えだったのですか…?」
古泉が尋ねる。
「…正直言うと、あのときの私ならば…用事が済みしだい未来へと帰っていたかもしれません。
やはり、生きてる時代が違うっていうのは辛かったですし…暮らしにくくもありましたから。
でも、沢山の時間をみんなと接していくうちに私は…この時代のことが好きになっていったんです。
涼宮さん、キョン君、古泉君、長門さん、それに鶴屋さん…今の私には、そんなみんなと離れることが、
むしろ信じられないって思えるくらい…私はみんなと一緒にいたいんです…!」
「…そうでしたか。話してくれてありがとうございます。…自分もね、同じだったんですよ。
…いや、朝比奈さんのそれと一緒にしてしまっては失礼ですね。今だから言えるんですが、
僕は…当初は、涼宮さんのことを恨んでいました。」
「な、なんだって??」
「ある日突然、超能力者という訳の分からない存在へと変貌してしまった僕は…
そりゃもう、ひどく取り乱しました。なぜ自分が…神人倒しなどという、命を懸けたことを
やらねばならないのか!?…と。やがて、その発端が涼宮ハルヒなる人物であることを知ったときは…
正直復讐したいくらいでした。今までの日常を返してくれ…!!とね。」
…まさか、温厚なこの男の口から『復讐』などという禍々しい言葉を聞くとは…夢にも思わなかった。
……
いや、よく考えてみれば、こいつが抱いた憎悪の感情は…人として当然なのかもしれない。
俺がこいつの立場だったとして、いきなり非人間的能力を覚醒させてしまったらどうする…?
しかも、それが死ぬかもしれない大仕事ときた。…正直、やりきれない気持ちだ。
…改めて思い知らされる。俺は、こいつのことを理解しきれていなかった。
古泉の事といい朝比奈さんの事といい…もう少し俺は自分を磨く必要があるのかもしれない。
「ですが…なんとも不思議なものですね。みなさんと一緒にいるうちに、しだいに自分の中に…
仲間意識なるものが芽生えてきたんです。断って言っておきますが、長く一緒にいれば芽生える、
というような簡単なものではありませんよ…仲間意識というのはね。それに僕自身、些細なことで
考え方を変えるような器用人間じゃありませんのでね…尚更です。つまりですね…それだけあなたたちは、
相当たる人格者だったということですよ。こういう友人に囲まれて僕は…幸せでした。
仲間のために頑張ろう、涼宮さんを守るべく頑張ろう…その思いに、全くの偽りはありませんでした。
…もう言うまでもないでしょう。僕も、朝比奈さん同様、涼宮さんの能力の有無にかかわらず
この学校に居続けるつもりですよ。SOS団の一人として…副団長として…ね。」
「古泉…お前…、」
「古泉君…。そこまで私たちのことを想ってくれて、どうもありがとう…!」
「いえいえ、お礼を言われる所以など、どこにもありませんよ。」
…憎しみを乗り越え、お前は俺たちのことを仲間だと…思ってくれるに至ったんだな。
……
そうか…。結局、ハルヒがどうであれ、二人ともここに残ってくれるんだな。俺は…嬉しい。
……
「長門は…どうするんだろうな…、」
「長門さん…ですか。そればかりは本人に聞いてみませんと…わかりませんね。
おそらく、内心は僕らと近いはずです。ただ…彼女は僕や朝比奈さんとは事情が異なります。
本人が望んだとして、果たしてそれを上が許すのかどうかは…我々では判断しかねますから。」
「…そうだな。」
高次元生命体の亜種である情報統合思念体の面々。そんな彼らが
長門個人の事情を酌んでくれるかどうかは…正直わからない。
…まあ、それはそれで、そのときまた考えよう。
今は…朝比奈さんと古泉の気持ちが聞けただけで、俺は幸せだ。
……
話が落ち着いたせいか、ふと思った。
「なあ、古泉。散々言っといてあれだが…やっぱり、ハルヒの能力はまだ消えてないんじゃないか?」
「ほう…どうしてそう思うんです?」
「今日の集合で、いつものごとく俺が最後だったろ?」
「なるほど、涼宮さんが今まで通り、あなたの遅刻を密かに望んでいたというわけですか。
良い指摘とは思いますが、強ちそうとも言い切れませんね。単に偶然だったのかもしれません。」
「まあ、そうかもしれんが…」
…ん?
「今気付いたんだが…、もう一度確認させてくれ。俺は…
異世界人なんだよな?ハルヒの影響は…受けないんだったよな?」
「ええ、その通りですよ。」
「…なら、おかしくないか?どうして俺は不思議探索の集合時…決まって最下位だったんだ?
いくらハルヒがそれを望んだって、俺はその影響を受けないはずなんだろ??」
「…これには落とし穴がありましてね。別にあなたに直接干渉しなくとも、それを成し遂げることは可能なんですよ。」
「どういうことだ?」
「簡単な話です。単に、僕や長門さん、朝比奈さんを涼宮さんが来る時間とほぼ同時刻に
来させればいいだけのことです。おわかりですか?涼宮さん単体があなたより先に来るだけで、
あなたの最下位が決まってしまうというシステムですよ。間接的干渉と申しましょうか。」
……
確かに筋は通ってる…。そんな回りくどいやり方で、いつも俺を貶めてたってのか…。
「…だがな、もしハルヒが俺より遅れて来たら、そんときはどうする?」
「涼宮さんが…あなたより遅れて来ると思いますか?団長として、強固なプライドをお持ちになる涼宮さんが…
果たして、あなたより遅れてやって来るとお思いですか?」
「そこまで言われると悲しくなるが…しかし、その通りだからどうしようもないな。今のは愚問だった、忘れてくれ。」
「そ、そういうことだったんですね…!私、今の今まで全く気が付きませんでした!」
「朝比奈さんだけでなく、僕や長門さんもすっかり騙されていたんですよ?最近まではね。
まさか、キョン君に涼宮さんの力が通用しないなんて…思いもしませんでしたからね。
つい、これまでの集合に関しても彼女がキョン君に直接干渉してるものとばかり…。」
…まあ、そればっかは誰にもわからなかったかもしれねえな…。
92 :
涼宮ハルヒの天啓 エピローグ2 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/24(日) 22:43:43.11 ID:kpZC9gQtO
さて。俺たちは待ち合わせ場所へと着いた。
時刻はちょうど5時…古泉の言ったとおりだったな。前方にはすでに、ハルヒと長門の姿があった。
「あ、みんな!どう?何か不思議は見つかった?」
ハルヒが詰め寄ってくる。
「あ、いや…何もなかったぜ。」
「…怪しいわね。本当に探してたの!?みくるちゃん!どうなの!?」
「え…えぇ?え、ええっと…あ、あう…」
まずい!ハルヒのやつ…故意に朝比奈さんを狙いやがったな!?
彼女が嘘をつけない体質だと知ってのことかッ!
「まあまあ、涼宮さん。ここは僕から説明させてください。」
古泉が割って入る。…ナイス古泉。
「僕たちはですね、先ほどまで図書館にいたのですよ。」
…まあ、それは事実だな。
「図書館に?ふーん…それで、何やってたの?」
「この町のですね、伝奇や歴史書を眺めてたんですよ。ここで言うデンキとは、【怪奇・幻想に富んだ物語】
という意味での伝奇です。過去に、この町で何かしらの不思議事件が起こっていれば…こういった類の書物に
記載されているはずですからね。それを調べ、少しでも多くの不思議に立ち会おうと考えたわけです。」
「さすが古泉君!あたしが副団長に任命しただけのことはあるわ!で、何かわかったの!?」
「いえ、それがですね…膨大な量なだけあって、調べ終えるには時間が足りなかったんです。
そういうわけで、今日はこれといった収穫はありませんでした…すみません涼宮さん。」
「そういうことなら仕方ないわ!いやぁ〜、それにしても本で不思議を探すとはね…
その発想はなかった!ホントもう…キョンとみくるちゃんも、少しは古泉君を見習いなさい!」
そうだな。俺は古泉を見習いたいと思う。とっさに捏造できる知恵と冷静さを…俺は見習いたい!
…古泉。お前、詐欺師の才能があるんじゃねえか?いや、マジメにそう思ったんだが。
……
「そういうお前はどうだったんだ?何か不思議は見つかったのか?」
「あたしね、今日は有希と一緒にデパートの衣料品コーナーにいたの!」
「…え?」
「それでね!いろいろ有希に試着させてみたんだけど…凄いのよ有希!
ドレスとかワンピース姿とかすっごくかわいかったんだから!」
「……」
「特に一番似合ってたのは…そうね、ゴスロリだったかしら!」
うむうむ
「長門、大丈夫だったか?ハルヒに無理やり着せられたりしたんじゃないか?」
「きょ、キョン!?なんてこと言うのよ!!」
「一概にそれを否定できないのは確か。」
「…やっぱりな。」
「ゆ、有希〜!?」
「しかし、多様な服を通じ、様々な自分を確認できたのは事実。とても楽しいひと時だった。」
「ほらほら!やっぱり行ってみて良かったでしょ!?また今度も行こうね有希!」
…こりゃ驚いた。まさか、長門から直々に『楽しい』などという感情形容詞を聞こうとはな…
それほど、長門にとっては納得のいく時間だった…ということか。良かったな…長門。
で、そんな長門さんはゴスロリが一番似合ってたわけか。是非その姿、拝借してみたいものだ。
……
「…待て。今のが不思議とどう関係あるんだ?」
「それはね、有希が予想外にかわいかったってことよ!」
「…全然意味がわからないんだが…。確かに長門はかわいい、俺もそう思う。だが、それのどこが不思議だ??」
「問題はね、服を着せたとき…そのインパクトがみくるちゃん並だったってことよ!!
そんな資質を込めた有希の本質を…今の今まであたしは見抜けなかった!
みくるちゃんは見抜けて有希は見抜けなかった!これが不思議以外の何だって言うのよ!?」
「……」
何て言葉を返したらいい?誰か教えてくれ!!
「それは…単に気付けなかったお前の問題なんじゃないのか?」
「それが普通の人間ならね。でも あ た し は違うわ!普段着からメイドまで、
ありとあらゆる衣服に精通してるあたしが見抜けなかったのよ?これは大事件だわ!
…どうしてかしらね?有希の地味さが先行してたから…?ともかく、これは不思議なの!!」
なるほど、王様理論ですねわかります。自分が不思議だと思い込んだ物は、即ち不思議だと。
…そりゃぁな、単なる主観で言わせるなら、不思議なんかあちこちに転がってるだろうよ…
まあ、かと言って反論する気もさらさらない。こいつ相手にんなことしたって不毛だ…!
「じゃ、そういうわけで今日は解散ね!また明日学校で会いましょ!」
よし、じゃあ今から帰って寝るとすっかなぁ…ハルヒの電話で妨害された分をな…
あ、いや、今寝ると深夜の中頃に目を覚ましてしまうのではないか…?
「そうそうキョン!忘れないでよね!!」
「…ん?何をだ?」
「作曲よ!作曲!!」
……
そういやぁ、そんなもんもあったっけなぁ…ははは、遠い昔のように思える。
昨夜からの大騒動で、そんな宿題すっかり忘却の彼方だったぜ?ハルヒさんよ。
「…あ、ああ、覚えてるぜ…、」
「いつまでに作ってくるつもり?」
!?こいつ、期限を設けるつもりか!?当初はそんなこと言ってなかったじゃねえか!?
「いつまでにとか…何か上限はあるのか?」
「いや、別に〜 ただ、あんたがいつ作って来るのか、その目安が知りたいな〜と思って。」
…なるほど。それなら、特に委縮することもないだろう。余裕をもって作ればいいんだ。
……
とはいえ、さすがに遅すぎるのも考えもの…か。
1年後とか言ったらどうなるんだ?…横から平手打ちがとんでくるかもな。
それにだ…あまり締切が遅いと作業自体もダレてくるよな。人間ってのは大抵そうだ。
ここは自分への戒めのためにも、それなりのラインは引いてたほうがいいだろう…そうだな…、
「じゃあ、今学期中には作ってくるぜ。」
「そう?わかったわ。じゃ、絶対作ってきてよね!また明日〜」
言ってすぐ後悔した。俺のバカ野郎…ッ!!
今日は12月2日。そして、今学期終業式が12月24日。
期 末 試 験 の 真 っ た だ 中 じ ゃ ね え か
しかし、時すでに遅し。ハルヒの姿は見えなくなっていた。
……
ふむ。これはもう、覚悟を決めるしかないようだな。これは大きくため息をついた。
98 :
涼宮ハルヒの天啓 エピローグ2 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/24(日) 23:16:44.76 ID:kpZC9gQtO
「あ、あのぅ…大丈夫ですかぁ?作曲、大変なようでしたら私も力になりますからね?」
…朝比奈さんではないか。みんな帰った中、彼女だけ依然ここに残っていたというのか。
もしかして、俺を気づかって…?やっぱ良い人だ朝比奈さん。
「…ありがとうございます朝比奈さん。でも、気持ちだけで結構ですよ。」
「な、ならいいんですけど…。ところでね、キョン君。渡さなきゃいけないものがあって…。」
そう言って、彼女はカバンから手紙を取りだした。…手紙?
「自分にもよくわかんないんですけど…未来のほうから
『これをキョン君に渡すように。』との指示があったので…とりあえず、渡しておきますね。」
俺は朝比奈さんから手紙を受け取った。
「じゃあ、私はこれで。また明日会いましょうねキョン君♪」
「はい、また明日!」
……
手紙…ねぇ。木曜の放課後、ロッカーにて見つかった手紙のことを思い出す。…またあんな内容じゃあるまいな?
さすがに勘弁してほしいぜ…?まあ、今回は朝比奈さん直々の手渡しがある上、神が消えたとされる可能性が
高い後だ。そこまで悪い内容…というわけでもないだろう。そう信じて、手紙の封を開けてみる。
『今から公園に来てもらえませんか?』
…あまりの内容の薄さに気絶しそうになった。って、本当に何なんだこれは??
そりゃ、言いたいことはわかる。今から公園に行けばいいんだろう?
……
二つ、突っ込もうか。
一つ、せめて差出人の名前くらい書いてくれ…
二つ、公園ってのがどこの公園なのか示唆してくれ…漠然としすぎだぜ…おい。
……
とりあえず、こっから一番近い公園に行ってみるとすっか。違うなら、また他のところを回ればいいだけだ。
一瞬、罠の可能性も疑ったが…まあ、それはないだろう。さっきも言ったが、
朝比奈さん本人が直々に俺に渡してくれたんだ。どこぞの誰が送ったかもわからない
得体の知れない手紙とはわけが違う。これは、信用してもいいということだろう。
駐輪場に停めていた自転車に跨り、俺はペダルを漕ぎ出すのであった。
ウホッ!
近くの公園へと着く。
……
ふと、人影を見つける。俺の姿を確認したのか…こちらへと歩いてくる。
考えるよりも先に体が動いていた
気付いたときには
……
彼女を抱きしめていた。なぜ…そんな行為に及んだのかわからない。今思えば俺は、この人物が本当に
生きている人間なのか?実は幻覚ではないのか?見間違いではないのか?それを確かめたかったんだろうと思う…
「きょ、キョン君!?ダメよ、そんなことし」
「……」
「…ぁ…、」
「……」
「私に…会ったんですね…?」
「…はい」
「私は…死んだんですね…?」
「…はい」
「そっか…じゃ、仕方ないよ…ね。」
肩の力を抜いたのか 俺に身を委ねてくる彼女
……
確かに、この彼女は生きている。肌の暖かさが伝わる。吐息が聞こえる。俺の…錯覚などではない。
……
しばらくして、それを解いたのは俺だった。
「すみません…朝比奈さん。こんなことをしてしまって…。」
「いや、いいのよ。気持ちはわかるもの…。」
「…朝比奈さんは…、俺の知ってる朝比奈さんなんですよね?」
「…そうよ。」
「…あの世界の【朝比奈さん】が死んだのは、俺にだってわかってます…わかってたんですが!
どうしても朝比奈さんを見たとき、それが死んだ【朝比奈さん】だと思わずにはいられなくて…つい。」
「そうね…でも、それも仕方ないわ。中身は違えど、彼女と私は同一人物みたいなものだもの。」
…キョン君。彼女と一体何があったのか、よければ話してくれないかしら?」
「…もちろんですよ。というより、俺はあなたにそれを話す義務がある…そう思ってるんですから。」
俺は…事のあらましを話した。
105 :
涼宮ハルヒの天啓 エピローグ2 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/24(日) 23:47:46.55 ID:kpZC9gQtO
……
「…謝るわ。」
「え?」
「大体そうなんじゃないかとは思ってたけど…まさか、【私】があなたに危害を加えたのみならず…
あろうことにも殺してしまうなんてね…、痛かったでしょう?本当にごめんなさい…、」
「ど、どうして朝比奈さんが頭を下げる必要があるんです!?
あの【朝比奈さん】は…あなたとは全くの別人じゃないですか!!」
「いくら自分とは対の異世界人だとしてもね…、何もかも違うってわけじゃないの。
性格や思考パターンといった、そんな内面的・本質的なものは…基本変わらない…。
唯一大きく異なったもの、それはね…生まれ育った環境の違いよ。」
……
「生まれた当初は似たようなDNA構造でもね、温室育ちの子供とスラム街で生きた子供…
一体どれだけの差異が現れるのか、それはあなたにもわかるはず。…裏を返せばね、
似たような環境・同じ境遇に居合わせれば、きっとその二人は近い行動をとるってこと。…笑えない話よね。
私がキョン君を殺すなんて…絶対ありえないことだってわかってるのに。…でもね、向こうの世界の私は
あなたを刺した。これが…何を意味するのかわかる?もし私が彼女と同じ立場だったとしたら、私も…
私も、それに値する行動をとっていたかもしれない…。だから、キョン君には謝らずにはいられなかった…!」
……
「…万が一そうだったとして、どうして俺が…朝比奈さんを責められますか?」
「…キョン君。」
「彼女も…必死だったんです…!!自分の世界を守るため…命懸けだったんです!!
その純粋な思いは…俺と何ら変わりありませんでしたよ。それだけ彼女は…立派でした。
狂いそうな状況にも…彼女は立ち向かった。決して惨い現実から目を反らしたりも…しなかった。
…こんな言い方は変かもしれませんが、むしろ朝比奈さんは誇りをもって…いいと思いますよ。」
「…ありがとうキョン君。そっか…【私】はそんなにも頑張ってたんだね。そんな彼女を…私は殺して…」
「…朝比奈さん。」
「キョン君も…もう気付いてるんでしょう?彼女の直接の死の原因となった…そう、例の装置のことをね…」
……
『というのも、これは…上司から未来経由で送られてきたものなんです…。』
……
「やはり、あの小型装置を子供朝比奈さんに送ったのは…あなただったんですね。」
「ええ…そうよ。…全ては、異世界の自分の【抹殺】のために…。」
「……」
ああ…そうだな。第四世界死守のためにも…【朝比奈みくる】と【抹殺】には切っても切れない関係があった。
目の前にいる、この朝比奈さんを含めた上層部の人間が…そう考えたのは極めて当然のことだろう…。
「…つらい思いをさせちゃって、ゴメンねキョン君…、」
「いえ…しょうがないですよ。仕方がなかったことです…。」
そう、仕方がなかった。そうでも思わないと…やってられない…っ!
…抹殺?
彼女は…初めからこれを想定していたのか?…疑問が残る。だって、そうだろう?
よく思い出してみろ。【朝比奈さん】の死は、そもそも偶発的なものだったじゃないか…?
レーザー銃を照射されたあの瞬間、もし俺が装置のボタンを押していなかったら…どうなっていた?
言わずもがな、【朝比奈さん】が死ぬことはなかった。…代わりに俺が死んでいたんだろうが。
…なぜ『押していなかったら』などという仮定が成立するのか?
そりゃそうだろう。なにしろ、俺はあの装置の詳細を知らされていなかったのだから。
あの場でボタンを押したのは、本当の偶然にすぎない。
「朝比奈さん…抹殺を確実なものにするのであれば、
どうしてあの装置の用途を…俺に教えてくれなかったんですか?」
「…怒ってるわよね?ゴメンなさい… 一歩間違えれば、あなたが死ぬところだったんだものね…、」
「あ、いや、そういう意味じゃ…っ」
「でもね、敢えてあなたに教えなかったからこそ…、【朝比奈みくる】の死を確実なものにできた。
同時に、あなたも救うことができた。 結果的に私の読みが当たって…本当に良かったと思ってる。」
「……」
「大事なのはね、キョン君を殺そうとした人物が、一体誰だったかってこと。」
…朝比奈さん。
「さっき…私言いましたよね?異世界人とはいえ、内包的な部分まで変わってるわけじゃないって…
私はそこに目をつけたんです。思考パターンが同じなのであれば、逆にそれがキョン君を助けられる
手立てになるんじゃないかって…。もっとも、それを考えるに至って私は苦しんだ…
でも!やってよかったって…そう思ってる。だって、キョン君も世界も救えたんだから!
ただ、同時に自分自身にも恐ろしくもなった。私の読みが当たったってことは、つまり…」
驚愕で声が出なかった…だって、そうだろう?朝比奈さんは想像した…人殺しとしての自分を。
いかにして殺すか、どのように殺すのか、どうやって殺すのか、ありとあらゆるパターンを…彼女は想像した。
絶対にありえないことを彼女は想像した。それも何度も…!誰を?誰を殺す想像をしたんだ?…俺だ…。
もし、俺が…SOS団の誰かを殺害する想像を強いられたら、どうする?
ハルヒ、長門、朝比奈さん、古泉…。ははっ、論外すぎて笑いそうになる。頭がおかしくなりそうになる。
死ぬってこと自体考えられない。いや、考えたくもない。ましてや、よりにもよって、その実行犯が俺…!!?
……
朝比奈さんの苦しみは…想像を絶するものだったんじゃないのか?なんて精神力の強い…っ
109 :
◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 00:15:32.47 ID:ufTRMib2O
ちょっと中断。このエピローグ2は、ばいさるを加味すると2時5分くらいまでかかります。
なるべくならキリのいいところで終わらせたいので、自分はこの時刻まで投下します。
今日起きたのが遅かっただけに自分は大丈夫なんですが…みなさんは各々の事情があると思うので
そういう予定だけは伝えておこうと思います。
じゃあ、今から10連投して支援してやろうか?
でもなんとなく、今日はこれまでにして明日続きでもいいかもね
大長編だしな
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 00:18:51.35 ID:FiYmRSuwP
アッー
「そのあたりのことを…順を追って説明しようと思う。今日は私、このためにキョン君に会いにきた
ようなものだから…。全ての事情を、当事者であるキョン君には知っておいてもらいたかったから。」
…朝比奈さん…、
「その前に、キョン君に言っておかねばならないことがあるわ。未来における、二つの防御システムについて…
もっとも、さっきのキョン君の言い方だと、すでに【私】から説明は受けてるようだけど。」
……
『私の周りに1o膜の重力場を形成させたのよ。この膜に触れたあらゆる物体は
通常ではありえない重力加速度で垂直落下する仕組みになってるわ。』
『重力場なんて使う日が来るとは思わなかったわね。未来では光線兵器が主流だから、
たいていの防御システムと言えば、高次元フォトンを使った光子バリアが当たり前。』
「…重力場と光子バリアのことですね?」
「そうよ。私たちの未来ではね、防御システムと言われればその二つに大別されるの。
実弾に対しては重力場、レーザー兵器に対しては光子バリア…と言った具合にね。逆に言えば、
重力場ではレーザーを防げないし、光子バリアでは実弾は防げない。そのへん、わかってくれたかしら?」
「…はい。」
「じゃあ、話を戻すわね。【あなたが防御装置を持っているか否か?】…私が彼女の立場だったとして、
まず一番に知りたいのはこれね。もちろん武器だって確認しなきゃいけない…けれど、【あなたの殺害】を
第一優先に動いてる私であれば…攻撃が効くか否か?これがまず先行するでしょうね。
思った通り、彼女はそのアクションに出てくれた。」
「…?」
「二度目に会ったとき、彼女…空へ向け、銃を撃ったらしいじゃない?それがそのアクションよ。」
>>110 できるならば、お願いしたいです!
>>111 そうですね。1時くらいまでで止めようと思います。
……
『今の発砲は気にしないでね。ただの威嚇射撃だから。』
「え…??あの行動に、何か意味でもあったんですか??」
「…もし、私があの小型装置についての十分な説明をあなたにしていたとしたら…
キョン君は、あの威嚇射撃で一体どんな反応をしてたかしら…?」
…俺がもっていた装置とは、レーザー光線をはね返す類のもの。例の射撃時に彼女が使っていた小銃は…
実弾を打ちだすもの。俺の装置じゃ…光子バリアでは、実弾は防げない。つまり、俺に彼女の攻撃を
防ぐ手立てはない。それが明確にわかる。防ぐ手立てはない。即ち、自らの死を意味する。それが明確にわかる。
…!
「…かなり慌てると思います。自分が死ぬかもしれないんですから…
最悪の場合、取り乱したりしたかもしれません…、」
「私がその反応を見逃すと思う?」
「え?」
「一瞬で見抜くわね…あなたが重力場形成の装置を持っていないことを。」
っ!!
「それがわかれば、私はあなたを…レーザーではなく、銃で撃っていたでしょうね。
だって、防ぐ手立てがないって判明しちゃったんだから。殺人遂行者としては当然の帰結ね…。」
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 00:22:41.94 ID:3u/lVIDg0
んでは
紫
…ちょっと待ってくれ…!?あの単なる威嚇射撃に…そんな意味が…??あんな発砲…
全く気にも留めてなかったぞ!?…朝比奈さんから装置の説明を受けなかったことが、
何も知らなかったことが、かえって俺の命を救った…!?
「朝比奈さん…まさか、あなたはここまで想定していたんですか??」
「そうよ…だって、私なら絶対そういうことすると思ったんだもの。」
この人は…そこまで考えて…
「で、でも!もし俺があの発砲で動揺したって…単に音に驚いたのかもしれないし、
【朝比奈さん】の出現に慌てたのかもしれないし、これからの戦闘に緊張したのかもしれない。
いくらでも他の理由は思いつくような気がします…。それだけじゃ、俺が重力場を
持ってないっていう明確な判断材料にはならないんじゃないですか…??」
「そうね…その時点ではまだ不明瞭。さらに、あなたが発砲に対し動揺しなかったことで
その見極めはますます難しくなった。そもそも、あの発砲を気に留めていたかすらわからない。
…話は次に移るわ。あなた…彼女に向けて銃を撃ったみたそうね。それも、古泉君直伝の麻酔銃だとか。」
「…はい。」
「で、それを彼女の重力場により無効化された…と。」
「そうですね…あのときは、本当に絶望しました…唯一の攻撃手段が通じなかったわけですから…。」
「ふふっ、やっぱりキョン君って、思ってることがすぐに顔や行動に出るタイプですね。」
「…みたいですね。気を付けたいものです…」
「私は、あなたのそういう特徴も把握済みですよ。それも踏まえて、私はあなたに三つのことをした…。
一つは光子バリア形成装置の譲渡。二つ目はその装置の詳細をあなたに伝えなかったこと。
三つ目は一切の攻撃手段をあなたに持たせなかったこと。」
…三つ目のは初めて聞いたな。って、よくよく考えれば…レーザー銃の一つや二つくらい
送ってくれてもよかったのに、なんて考えてみる。
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 00:24:03.11 ID:3u/lVIDg0
煙
波動砲!
Rタイプの波動砲ってあれエネルギー波だっけ
「三つ目の理由については、後で説明するね。…とにかく、銃が効かないとわかったあなたは
そのときばかりは…ついに取り乱してしまったんですね?」
「はい。さっきも言った通りですよ。…あ、もしかして、そういうことですか…?」
「そういうことです。それを見た彼女は察したと思いますよ…キョン君の攻撃手段が
それしかないってことに。今回ばかりは、さっきの発砲みたいに気に留めた留めなかったの
レベルじゃないわけですから…おそらく、それは確信の域に近かったと思われます。
そして、キョン君の攻撃を封じたと思った彼女は…安心し、次の段階へと進みました。」
「…俺を殺しにかかることですね?」
「そうです。そして…そのとき彼女の手には、威嚇射撃時に使用した小銃があった。
おそらく、それで彼女は最後の見極めをしたんです。あなたが…重力場を持っているのかいないのかを。」
「俺は…そのとき、攻撃が効かなかったこともあってひどく沈んでました…。」
「…それが顔に出たのね。…結果、キョン君は重力場を持っていない…彼女はそう悟った。」
……
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 00:26:09.01 ID:3u/lVIDg0
波動ってなんかヤマトもそうだっけか
4
「ちょ、ちょっと待ってください!なら、その銃で俺を撃てばよかったんじゃないですか…?
どうして最後になって、レーザー銃に持ち替えるようなことを…彼女はしたんですか??」
「…撃てなかったのよ。あなたが、実弾性の銃を所持していたから。」
「??」
「防御システムにはある欠陥があってね。それは、外からのみならず中からの攻撃をも遮断してしまうこと。
だから不可能だったのよ。あの局面で…あなたからの攻撃を防ぎつつ、同時にあなたを銃で撃つって芸当はね。
だって、彼女自身が撃った弾も自身の重力場の膜に触れ、地面へと垂直落下してしまうんだもの。
…かといって、その重力場を解除すればあなたと相撃ちになる可能性もある。…だから、彼女は
レーザー銃に持ち替えた。光線は重力場の影響を受けないから…。そう考えたら無敵よね?
実弾を防ぎつつ、自身はレーザーで相手を攻撃できるんだから。」
…まさか武器や防御にそんな事情があったとは。ここでふと、俺は3つのことに気付いた。
「もしかして、俺が実弾性の銃をもっていたことがレーザー攻撃の決定打だったってことですか??」
「そうね。だから始めのあの威嚇射撃は、実は大した問題ではないわね。だってそうでしょう?
あの威嚇を、彼女は実弾ではなくレーザー銃で撃ってた可能性だってあったわけなんだし。」
確かに…って、それじゃあ、実弾性銃をあの局面で俺にくれた古泉は…命の恩人ということじゃないか!?
「朝比奈さんは…古泉が俺にそれに準じた武器をくれることを読んでいたんですか?」
「彼は機関所属だもの。なら重火器の一つや二つ持っててもおかしくないじゃない?それに彼の性格を考えたら、
閉鎖空間が現れた時点で丸腰のあなたに武器を渡すのは必然ともいっていいくらいよ。」
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 00:27:30.19 ID:3u/lVIDg0
円
頷くしかなかった。言葉通り、古泉の性格を知ってる者からすれば…
この予測はなんら難しいことではないのだろう。古泉も、まさか自分が大人朝比奈さんの計画に
知らぬ間に取り込まれていたとは…夢にも思わなかったろうな。話したら一体どんな顔をするんだろうか?
あのクールフェイスが崩れゆくところは、希少価値的意味でも是非見たいものである。
「それともう1つ気付いたことを…どうしてあの【朝比奈さん】は俺が実弾の銃を持ってるってことを
知ってたんですか?知らなきゃ、俺が撃った時点で重力場の形成なんてしてないですよね?
さっきの朝比奈さんの話だと重力場と光子バリアって同時には使えないみたいですし…つい気になったんです。」
「あら?そんなこと言ったかしら?防御装置として両方稼働させることは可能よ?
その場合、つまり無敵ってことだから安心して向こうが攻撃してくるのを待っていられるわね。」
「え??だってさっき防御システムには欠陥があるって…」
「あれは攻撃に際してのことよ。別に同時展開することは可能だけど、
そうなると自分も相手に攻撃できないものね。」
「ああ…そうでしたね。理解力不足でしたすみません…。」
「構わないわ。むしろ、こんな未来兵器を併用した実戦会話に概要だけでもついていけてるって時点で、
あなたはかなりの頭脳の持ち主だと思う。自分で気が付いていないだけで、実際あなたは想像以上の理解力、
順応力があるとみていいわ。これも涼宮さんに鍛えられたタマモノかしら?ふふっ♪」
実感がわかない…あまりに実感がわかないが。しかし、もしそれが事実だとするならば
俺はハルヒに感謝する必要があるということだろうか…?なんとも複雑な気分になってきたぞおい。
…さて、3つ目も聞いておこう。
「ちょっと細かいことかもしれませんが… 一発目の威嚇発砲やその後の俺の反応で
【朝比奈さん】は、少なくとも俺が重力場装置を持っていないことだけは確信済みだったんですよね?
それなら、どうして彼女は銃で俺を撃たなかったのかと…。防御装置の問題上、相撃ちにはなってしまいますが
その時点じゃ、俺が光子バリアを持ってるかどうかはまだ判別不可だったわけですよね?
不安要素はあったはずなのにわざわざレーザー銃に持ち替えたっていう彼女の心理が…」
「質問攻めね。もちろん、彼女は見極めようとしたわ。でも、それは… 一目瞭然だったかもしれないね。
キョン君、そのレーザー銃で撃たれたところを…思い出してみて。」
……
------------------------------------------------------------------------------
------っ!!!
朝比奈さんは銃の引き金を今にもひこうとしている。
俺は……俺は!どうすりゃいい!!?
この距離では素手で立ち向かう前に撃たれる…かといって、麻酔銃は通用しない…っ!!
どうすりゃいい!!?
「…さようなら。」
ころ…される
殺される
129 :
涼宮ハルヒの天啓 エピローグ2 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 00:32:56.72 ID:ufTRMib2O
「あ…あぁ…うわあああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
------------------------------------------------------------------------------
……
確かに…これでは一目瞭然だろう。光子バリアを持ってるなら、こんなアホみたいな反応するはずがないからだ。
「でも、そこが彼女の命取りだったのよ。厳密に言えば、あなたは装置を持ってたわけじゃない?
…ただ、それを知らなかっただけで。」
ただ、知らなかった
……
ただ、知らなかった。ただ、それだけのことで。ただ、俺がそんな態度をとってしまっただけで。
彼女は、【朝比奈さん】は確信するに至った。俺が対レーザー用の防御壁を保持していないということを。
結果的に知らなかったことで…俺は死を回避した…!?
…先程のいくつかの質問からも窺えるが、彼女はここまで計算してたと…!?
【朝比奈みくる】が倒れる…その瞬間まで、考え抜いてたと!??
一体どれだけの想像を繰り返したんだ…!?どれだけのパターンを予想したんだ…!?なんて人だ…。
…だが、ちょっと待ってくれ…
「あのとき…俺が装置のボタンを押したのは、本当に偶然だったんです!
反射的なものというか…だから、もし押していなかったら、俺は…!」
「…そうね、キョン君は…死んでいたわね…、」
!!
「でも…許してほしいの…私だって、そんなリスクのある方法をとりたくなかった!!
確実に…キョン君が助かる道を!私は見つけたかった!!…けどね」
……
「自分で言うのも変だけど、本気で誰かを殺そうと思ってる【私】は…相手にするには
相当面倒な存在だと思うわ。相手のわずかな隙でさえ窺う、表情の変化だって決して見逃さない。
武器や防御装置にしたってそう…ありとあらゆるケースを想定して、万全の状態で挑んでくる…
確実に、確実に相手を仕留めるためにね。そんな【私】に… 一体どうやってノーリスクで勝てる方法を
見つけろっていうの…?ふふっ、変な話よね。どうして、ここまで自分自身に苦しまなきゃいけないのかしら。
何度も思ったわ…キョン君の敵が【私】じゃなかったら、一体どれだけ楽に攻略できたか…
どうして、どうしてそれがよりにもよって私なのかって…!!」
131 :
◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 01:00:05.70 ID:ufTRMib2O
1時で終わらすと言いましたが、後10分あれば1分刻み投下でエピローグ2終わりそうなんで
とりあえず後10分だけ投下して今日は終わります。ちなみに、最後の言葉は「真剣にそう思った。」。
このレスが来ればエピローグ2完です。この直後に猿になると皆さんに完ってことを伝えられなくなるので…
では、高速で投下します。
「朝比奈さん…。」
「ゴメンなさいキョン君…私のこと、嫌いになっちゃったよね。当然よ…。
いくら、自分の世界を守るっていう大義名分が【私】にはあったってね。仮にも、人殺しに
ここまで本気で、冷静で、完璧主義を求める…残虐非道な人間だったなんてね…。」
「朝比奈さん…もう、それ以上言うのは…」
「だから…あなたに武器は送れなかったの。これはさっき私が言った三つ目の答えだけどね…
もしそんなことをしたら、あなたと【私】は小細工無しの総力戦になるわ…。でも、もともと防御壁にしても
レーザー銃にしても使い慣れてる私。そんな真っ向勝負でもすれば…っ。間違いでも起きない限り、
キョン君は死んでしまう! じゃあ、私を油断させるには…騙すにはどうしたらよかったか…?
考えに考え抜いた。だったらね、もう…キョン君の性格に賭けるしかなかった。
【私】に…キョン君の意志を悟られないようにするならば、要はキョン君が何も知らなければいいと思った。
まったく、呆れるでしょう?極論以外の何物でもないんだもの。でも、私にはもう…それくらいしか
思い浮かばなかった。キョン君の性格なら、この手法でも【私】に通用できるって…私は信じた!
現に、私が彼女の立場だったら絶対騙されるって、そう思ったから…。」
俺の…性格。しかし、実際それで成功させてるのだから、これ以上俺が一体何を言う権利があるというのか??
というか俺にしても古泉にしても【朝比奈さん】にしても、それら人間の行動心理を巧みに見透かしていた時点で
彼女は天才なんじゃないか?平然と話してくれてはいるが、この人は軍師や参謀ならば並大抵でない力を
発揮することだろう…すでに未来でそういう仕事はやっているのかもしれないが。正直俺は朝比奈さんを…
見くびっていたわけではないが、相対的に過小評価しすぎていたのかもしれない。
ということはだ、大人朝比奈さんがこんな様子なのだ…。つまりそれは、今いる子供朝比奈さんの才能も
大変素晴らしくやばいものとなる…はず。現段階ではまだ朝比奈さん小の才能は開花していないみたいだが…
そんな覚醒朝比奈さん小を見てみたいような気もするし、見てみたくないような気もする。
「そして…最後の装置の発動も。キョン君はボタンを押してくれるって、私は信じてた。
もちろん、そんな根拠なんてない…でもね、あなたはこれまで何度も世界を救ってくれた。
涼宮さんの件といい長門さんの件といい…あなたは幾多の修羅場を乗り越えてきた!!
だから、あなたならやってくれる…!そんな強い確信が…私にはあったの。」
…ここまで信頼されてたなんて、むしろ光栄ですよ朝比奈さん。
「確かに、結果的にキョン君は助かったし世界も救われた。だから…この私の思惑も
表向きは成功だったのかもしれない。でも、結局それで…私はキョン君に嫌われてもおかしくな」
い、いかん…ますますもって朝比奈さんは負のスパイラルだ。
「ま、待ってください朝比奈さんッ!まずは落ち着いてください!」
「キョン君…そうね、ごめんなさい。」
「誰も…あなたを責める人なんてどこにもいませんよ!?どうして、そこまでして自分を苦しめるんです!?」
「あなたは…私が怖くないの?」
「どうして…俺が朝比奈さんを怖がったり嫌ったりしなきゃいけないんです!?そんなの、
やれって言われてもやりませんよ。むしろ、あなたには…感謝してもしきれないくらいなんですから!」
「…キョン君。」
「一体…どれだけそのシュミレートに時間をかけたんですか…?たぶん、想像を絶するほどの
時間だったと思います…。その時間の中で、あなたが身を粉にして見つけ出したくれた方法で…
俺は助かることができました。世界だって…救えました。だから俺は…今すぐにでも朝比奈さんに
何かお礼がしたいと思ってる。それだけ、感謝してます…本当にありがとうございました。朝比奈さん…!」
「…そう言ってくれると、私もやってよかったって…素直にそう思えます…。」
俺は…目に涙を浮かべる朝比奈さんと、互いに微笑み合った。
……
しばらくして、ようやく落ち着いたのか…彼女は口を開いた。
「ところで…その世界の【私】は、何か言ってましたか?最後に…何か言ってましたか?」
「……」
「こればかりはね…さすがに推測なんかできないもの。それも死ぬ間際だなんてね…、」
……
「涼宮さんを大切にね…それが彼女の最期の言葉でした。」
「…そう。」
……
「ふふっ、最後の最後で…私と【私】は交わったのね。」
「朝比奈さん…。」
「ちょっと…悲しいかな。立場さえ違わなければ私と彼女、良い友達になれたかもしれないのにね。」
「……」
……
「朝比奈さん…」
「…?」
「厚かましいようですみませんが…1つ、頼みを聞いてはもらえないでしょうか…?」
「…彼女のこと…ね?」
「…はい。」
……
「彼女が生きた第五世界というのが、平和な世界だったということは…ご存じですか?」
「…そうみたいね。実際、その世界へと行ってみたわけじゃないから、
詳しくはわからないけど…少なくとも、学問的な見地からはそう言えるみたい。」
……
「…フォトンベルトに突入したとして、世界はどうなったのか…地球物理学・地球電磁気学・分子生物学・
量子力学等…私も私なりに未来で勉強してみたけど…。なかなか興味深い世界だったように思う。」
「…そうですか。」
……
「…朝比奈さんの世界は…平和ですか?この世界の未来は…平和ですか?」
「……」
……
「そうね…少なくともこの時代、あなたで言うところの現代よりは良くなってると言えるわ。
戦争や紛争を根絶すべく、法・条約・規約の整備、地域・国家間の統廃合など…様々なことが行われた。
多くの人が平和共存に向け、頑張り続けた…それに見合うだけの平和、価値は得られたような気がする。
でもね、世界のあらゆる地域が…全ての人間が平和かと聞かれると、それは否定せざるを得ない。
タイムトラベルができるくらい科学が発達した未来でも…その辺はまだまだのように思うわ。」
「…あの世界の【朝比奈さん】は言ってました。全ての人間が平和に暮らしていると…
全ての人間が暴力主義を放棄し、諍いや揉め事の一切が起こらない世界を象っていると…。」
「…素敵な世界ね。」
……
「確かに、【朝比奈さん】は死にました…けれど、彼女の意志だけは…死なせたくないんです!
彼女が命懸けで守ろうとした世界を… 俺はできる限り再現してみたい!!…そう思ってるんです。」
「彼女の意志…か。じゃあ、私もそれを受け継いでみようかしら。」
「…朝比奈さん。」
「あなたの頼みごとってこれなんでしょ?…ふふっ、言われるまでもないわね。
あの世界の【私】の思いを…私は決して無駄にはしないわ。真に世界に平和が宿るまで…
私はこの思いを忘れない。もっとも、できることは小さいかもしれないけど…それでも、
一緒に頑張りましょうねキョン君!私も、少しでも未来が良くなっていくよう…努力してみるわ…!」
「朝比奈さん…!ありがとうございます!」
……
さて…まだいろいろと彼女と話したかったが。どうやら、彼女の時間も無限ではないらしい…
何やら用事があるとか。…もしかしたら、彼女も追われているのかもしれないと思った。
古泉もそうだったように、神が消えたことによる…事後処理とやらを。
俺は朝比奈さんと別れ、家へと帰ることにした。
『こんにちは!お元気にしていますでしょうか?いきなりこういう突然の手紙をよこしたことをお許しください。
キョン君の身の回りで近いうちに不穏な動きがあります。どうか、未来にはお気をつけください。
では、幸運を祈ってます 朝比奈みくるより』
…後から聞いた話だが、三日前の木曜、ロッカーにて見つけた例の手紙の差出人は
やはり彼女(さっき公園で会った朝比奈さん)だったらしい。
今となっては言うまでもないが、この手紙の『未来にはお気をつけください。』の『未来』とは、
異世界からやって来た【朝比奈みくる】のことだったらしい。…まあ、それにも気付かず、俺は彼女に…直後、
騙されてしまったわけだが。それもそうだ、『未来』などという抽象的単語を使われたって理解しかねる…。
……
かといって、言葉通り『朝比奈みくるにはお気をつけください。』としてしまったところで
意味不明だろう。なんせ、差出人の名前も朝比奈みくるなわけだから。一人コントになっちまう。
なら、『異世界から来た〜』の接頭語を付ければいい話じゃないか?と言われれば、
そういう問題でもない。そもそも、この『異世界』という言葉自体訳がわからないからだ。
なら、その『異世界』とやらを説明すればいい話じゃないか?と言われれば
そういう問題でもない。なんせ、本人(偽)と向き合い、口頭で蹴りをつけたところで
ようやく理解できた言葉なのだ。そんな膨大な分量、手紙に載せられるはずもない。
なら、手紙ではなく、本人(本物)が出向いて直接伝えればいい話じゃないか?と言われれば
そういう問題でもない。これには難解な事情があるらしく…聞くところによると、全くの同一人物が同一世界にて
二人同時に存在し続けることは不可能らしい。一人当たりの空間が飽和を起こし、空間座標軸や時間軸に
歪みが出てしまうからだそうだ。つまり、この時代にすでに偽朝比奈さんが来ていた時点で…
本物の朝比奈さんが入り込む余地はなかったらしい。例えるならば、椅子取りゲームのようなもんか。
ちなみに、朝比奈さん(小)と朝比奈さん(大)の場合は話は別で、二人とも同一世界にて存在可とのこと。
一方が子供、片方が大人ということだけあって厳密に言えば同一人物ではないからだそうだ。
つまりこれらの理由で、朝比奈さんは『未来』などという
漠然とした抽象的単語を使わざるを得なかったわけだ。
ただ、これだけでは何のことかわからない…そう感じたのは彼女も同じで、一度は彼女も、この手紙の発送を
取り止めようとしたらしい。が、【無いよりは有ったほうがマシ。】との考えで、結局送ってきたとのこと。
……
『今から公園に来てもらえませんか?』
先程のこの手紙…特に深い意味はなかったらしい。いや、一応意味は孕んでるな。
要は、今から公園に来いってこった。…つまり、そのまんまだ。ただ、あまりに簡潔すぎがゆえの不満…
というのもあるだろう。公園とはどこの公園なのか?差出人は一体誰なのか?
彼女曰く、疲労が溜まっていて上手く手紙を書けなかったとか…。
なるほど、朝比奈さんらしいと言えば、朝比奈さんらしいのかもしれない。
とはいえ、笑い話にもできない。なぜなら、彼女の疲労とは例の甚大なシュミレートによる
精神的疲弊に他ならないからだ。彼女には疲れを取るためにも…しっかりと休んでもらいたいもんだな。
真剣にそう思った。
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 01:10:08.15 ID:GMbUtLAT0
乙!
141 :
◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 01:10:25.15 ID:ufTRMib2O
これで2は終わりで、次は3へと続きます。
ではみなさんお休みなさい!
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 01:17:27.81 ID:vfg40dyH0
乙!
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 01:29:39.96 ID:FiYmRSuwP
プリンたべたい
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 02:06:33.28 ID:3u/lVIDg0
よし、おれは寝る
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 04:26:29.89 ID:HyYW+Pgi0
乙
乙
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 06:29:34.25 ID:ufTRMib2O
早く起きたので、7時15分くらいまで3の投下をしようと思います。
家に帰る途中、ふと見慣れたマンションを目にする。
あれは…長門の住んでる所だ。そういえば、今日は長門と全然話せなかったな。
昨日のことに関しても…まともに礼も言えてない。ちょっくら挨拶してくるか。
1階の玄関へと入り、インターホンを鳴らすべく3桁の部屋番号を入れる。
…いや、入れようとした。
……
長門の部屋番号…何だったっけか?…忘れた。なんたる不覚!これでは呼び出せないではないか…
とはいえ、このまま帰るのも癪だったので、携帯で長門に番号を聞くことにする。
…ガチャ
ドアが開いた。はて、俺はまだインターホンすら鳴らしていないのだが。
それどころか長門に番号すら聞いていないのだが。これは一体どういう原理だ?
すると、中から顔を覗かせている人物がいる。どうやら、彼女がカギを開けてくれたらしい。
1階に降りてまで、いちいち開けに来てくれたっていうのか?なんともご苦労様なこった。
「…長門!?」
「カギは開けた。これであなたも入れる。」
「そ、それはいいんだが…どうして俺がココに来てるってわかったんだ??」
「部屋の窓から、あなたがマンションの中へと入っていくのが見えたから。」
「そうなのか…それは運が良かったぜ。…ん?」
俺は違和感を覚える。
「そういや…何で1階にまで降りてくる必要があったんだ?
お前の能力を持ってすれば、玄関のロックを遠隔操作で外すことくらい造作な…」
言いかけて気付く。…バカだ俺は。なぜ今になって気付いた…、
こいつは俺のせいで、しばらくの間、情報統合思念体として力を行使できないんだろうが…!
「…すまん長門。」
「いい。それより、入って。」
素直に従い、マンションへと入れさせてもらうことにする。
……
長門の階に着き、部屋へと入る俺。
別に、ちょこっと話す程度だったから、外での立ち話でも全然構わなかったのだが…
とはいえ、今は12月。寒冷化に見舞われる時期の上、時は夕刻だ。中で話そうという
長門さんの判断は正しかったのかもしれない。案の定、暖房がつけてある。…なかなか心地よい。
…相変わらず殺風景な部屋だな。と言おうと思ったが、今回は少し違った。
本棚が置いてあったのだ。もちろん、中には書物が敷き詰められている。
「長門…こんなにも大量の本、一体どこから持ち込んだんだ…??」
「…秘密。」
「……」
そうですか…そうきましたか長門さん。まさかの黙秘権行使というわけだ。
おおよそ例の能力でも使ったんだろうが…。もっとも、本自体を情報連結で作り上げたのか。それとも、
元々これらの書物は部屋にあったということで情報操作されたのか。いずれかは俺の知るよしもない。
テーブル手前の座布団にて、とりあえず座る俺。…お茶を持ってくる長門。
「…どう?」
「……、おお、なかなか美味しい緑茶だな!」
「…そう。」
いや、マジで悪い味はしない。一度、部室でみんなに披露してみたらどうだろう?
朝比奈さんとは違った、また別の良い味を出せるかもしれないぞ。
……
「それで、要件は何?」
「え、ええっとだな…。」
面と向かって聞かれてもな…あ、いや、これが長門のキャラだってのはわかってるぜ。
「今日、お前と全然話せなかったじゃないか?だから、ちょっとしゃべろうと思ってな。」
「…そう。」
「とりあえず長門…、今までどうもお疲れ様。ハルヒが倒れてからというもの…気が気じゃなかっただろう?」
「…あなたこそ、よく頑張ったと思ってる。同じくお疲れ様と言いたい。」
「そして…改めて言わせてもらう。長門、いろいろとありがとな。」
「……」
「お前が与えてくれた情報に、俺は幾度となく助けられた。何より俺の命を救ってくれたもんな。
だから、本当に感謝してる…ありがとう。」
「…いい。むしろ感謝するのは私のほう。あの局面で、世界を救ってくれたあなたは称賛に値する。
重要観察区域である地球の秩序が守られたことで、私を含む情報統合思念体の面々は
あなたに感謝している。と同時に、私はSOS団の一人としても、あなたに感謝したいと思ってる。
涼宮ハルヒを助けてくれて…本当にありがとう。」
「長門…。」
「それともう一つ、あなたに礼を言っておかねばならないことがある。」
「…?」
「今日の不思議探索のときは…ありがとう。」
「??何のことだ?」
「私のことを…あなたはかわいいと言ってくれた。」
!!
「それを聞いたとき私は…嬉しかった。だから、ありがとう。」
……
------------------------------------------------------------------------------
「…待て。今のが不思議とどう関係あるんだ?」
「それはね、有希が予想外にかわいかったってことよ!」
「…全然意味がわからないんだが…。確かに長門はかわいい、俺もそう思う。だが、それのどこが不思議だ??」
------------------------------------------------------------------------------
『確かに長門はかわいい、俺もそう思う。』
『確かに長門はかわいい、俺もそう思う。』
『確かに長門はかわいい、俺もそう思う。』
『確かに長門はかわいい、俺もそう思う。』
全然自覚してなかった… 本人を目の前に、俺はこんな台詞を吐いてたんだな…、
「まあ、その…なんだ、礼を言われる所以はどこにもないぜ。事実、お前はかわいいんだし。」
ッ!
また… 俺は何を言ってるんだ…??
「そう言ってくれると…、嬉しい。」
うーむ…思ったことをすぐ口に出す俺の癖、直したほうがいいかもしれんな。
「…それにしても、今日はどうだった?ハルヒと一緒にいて楽しかったか?」
「楽しかった。いろんな服を着れて…私は凄く満足。」
「そりゃよかったな。」
最近、長門が変わってきてるように見えるのは…決して気のせいではないだろう。
オシャレを気にしたり、『かわいい』という言葉に反応してみたり…なんというか、随分と女の子らしくなった。
それだけじゃない。文化祭が終わってからというもの、彼女はギターに興味津津だ。これまで趣味といえば
読書くらいだった長門…加えて、今じゃ料理までその範疇か。それだけに今の長門は、見てて何か微笑ましい。
「あなたは…今日はどうだった?楽しかった?」
「いや…図書館で調べ物をしていただけに、そんな楽しくはなかったな。」
「…嘘。」
「…え?」
「古泉一樹のあの発言は嘘…本当は調べ物なんかしていない。適当に涼宮ハルヒを繕っただけ。」
「…どうしてわかったんだ?」
「勘。」
「く…ふふっ、あははは!長門には全てお見通しだったってわけだ!」
後で長門には本当のことを話すつもりだったのだが…まさか、第一声で『嘘。』と断じられるとは。
あのとき能力が使えなかった長門ではあるが…そんなのお構いなしだったということかい。さすが長門さん。
「それにしても、勘…ね。いやに漠然としてるじゃないか。」
「涼宮ハルヒと朝比奈みくるの会話に彼が…古泉一樹が割って入ってきた時点で怪しかった。
何か意図があると感じた。古泉一樹の行動が不自然だった。判断材料としては、それで十分。」
……
どうやら長門さんの分析力・洞察力の前では、あの古泉とはいえど歯が立たなかったらしい
ダメじゃないか古泉!そんなことじゃ一流の詐欺師にはなれないぜ!?…何を言ってるんだ俺は。
「今日はな、こんなことがあったんだ。」
俺は、長門に事の全てを話した。
古泉・朝比奈さんと話したこと。藤原・橘に会ったこと。大人朝比奈さんに呼び出されたことetc....
……
「…私は」
「…ん?」
「私は、謝らねばならないことが二つある。」
「な、長門??」
「一つは、藤原一派の件。」
「…!」
「私の勘違いで、私はあなたちを窮地へと追いやってしまった。
不必要な争いをしてしまった…本当に申し訳なく思ってる。」
「長門…、」
------------------------------------------------------------------------------
「そうかよ…ならいいんだがな。それにしたって、俺は忘れたわけじゃねえぞ!
よくも…朝比奈さんを血まみれにしてくれたな!?」
「ああ、あれか。あのことで僕たちに文句言われても困るんだがな。やったのは九曜だし。」
「もっとも、その九曜さんは今ここにはいませんけどね。」
「そういう問題じゃねえだろ!?九曜とか何とか関係ねえ、連帯責任だ!」
「うるさいやつだな…第一、九曜にそうさせたのはどこのどいつだ?」
「あれって言わば正当防衛みたいなものですからね。私たちが非難される所以はどこにも
ありませんよ?誰かさんが家を爆破したりしなきゃ、こんなことにはならなかったんですから。」
------------------------------------------------------------------------------
……
「いや、お前が責められる言われはどこにもないさ。もとはと言えば、偽朝比奈さんに唆されて
藤原たちを犯人だと決めつけてた俺が悪いんだからさ…お前は俺の言葉を信じてくれてたわけだし
むしろ謝るのは俺のほうだ。気にする必要なんか、どこにもないぞ?」
「…優しい人。」
「ん?何か言ったか?」
「…なんでもない。」
……
「もう一つは、一度でも私は朝比奈みくるのことを疑ってしまったこと。
彼女の事情を知ってしまった今となっては、酷くそれを後悔している…。」
「…ありゃ仕方ねえよ。お前だって、朝比奈さんが犯人だなんて思いたくなかったんだろ??
ただ、状況証拠ゆえに…そう思わざるを得ない事態へと追い込まれたんだ。」
「…でも、私は…、」
……
「謝ったとして…彼女は私のことを許してはくれるだろうか?」
「……」
……
「…そこに居合わせた古泉も朝比奈さんに謝ってたんだがな、
彼女は…ヤツに対して、決して酷いことは言わなかったぜ?」
俺は、朝比奈さんが古泉に対し言った言葉を長門に伝えた。
『…確かに、それを聞いたときはショックでした。でも!それを言うなら私にも非があります…!
だって…考えてもみれば、世界がどうなるかもわからないこの局面で…みんなに何の相談もせず、
勝手に時間移動をしてしまった。状況的に疑われても仕方ないことを…私はしてしまいました。
だから、責められるべきは迂闊で軽率な行動をしてしまった…私にあります。古泉君は…涼宮さんのことを、
みんなのことを一生懸命考えてた…!だから、一つでもあらゆる不安要素は潰しておきたかった…!
仲間想いの優しい副団長さんだと…私はそう思いますよ…?』
……
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 06:55:50.37 ID:eY1oBFNRP
さるよけ
「彼女は…そんなことを。」
「ああ…、そんなわけだからな。朝比奈さんは、決してそんなこと気にしちゃいないぞ。」
「……」
「だから、俺は別に謝る必要はないと思うがなぁ…もっとも、
それじゃお前の気が済まないっていうのなら、そのへんは好きにすりゃいいさ。」
「…そう。」
……
「ところで長門…体のほうはどうだ?大丈夫か?」
「…?なぜそんなことを?」
「だってお前…今、能力とやらが使えないんだよな?
そのせいで、何か体に異変でもきたしてないかって心配になったんだよ。」
「…情報の操作と改変における力は基本、身体機能とは独立したもの。
凍結されたところで、この個体に変調をきたしたりはしない。」
「そうか…それならいいんだが。 しかし、一切の能力が使えないっていうのは
いろいろと大変だろう…何かと不便なんじゃないか?」
「…不便かと聞かれれば、否定はしない。」
「だからさ、何か困ったりきついことがあったりしたら
いつでも俺を呼んでくれよな。携帯にはいつも出られるようにしとくからさ!」
「…それではあなたに迷惑がかかる。」
「何言ってんだ…??もとはと言えば、俺のせいでこんなことになってるんだろう!?
なら、お前の能力が戻るまでの間、いろいろと支えてやるのは当然のことだろ?」
「…ありがとう。」
「礼なんかいらねえぜ。…そういうわけだから、能力が回復するまでの間は何かと気をつけろよ。
今のお前は普通の人間なんだから…間違っても、夜遅く一人で出歩いたりするんじゃねーぞ?」
「…わかった、気を付ける。同時に、自身が【広義で言うところの人間】であることも自覚しておく。」
「おう、よろしく頼むぜ。」
……
そういや…能力で思い出した。
「長門…聞きたいことがあるんだ。」
「…何?」
「今回の一件でハルヒの能力が失われつつあることは…、お前は知ってるか?」
「知っている。近いうち、涼宮ハルヒの能力は完全に消滅する。」
「そうか…古泉の言ったとおりだったな。…それでだな。」
……
「もしハルヒの能力がなくなったとしたら、お前はどうすんだ?」
「……」
「やっぱ…宇宙へ帰っちまうのか…?俺たちと一緒には…いられないか?」
「それについては何とも言えない。」
「…わからないってことか?」
「…涼宮ハルヒの能力が消滅、即ち彼女が一般有機生命体としての存在を確立したとき。
それは、彼女が情報統合思念体の観察対象から外れることを意味する。その場合、
有機ヒューマノイドインターフェイスとしての私の役割は終了する。同時に、存在意義もなくなる。
そんな私が地球に留まれる可能性は極めて低い。上からの許可が下るとも、到底思えない。」
「…お前の意志を聞かせてくれ。お前自身は…どうしたい?」
「立場上の制約を無視し、私という個体のみに意見を求めるならば」
……
「私は…あなたたちと一緒にいたい。」
「…長門…!」
「あなたたちは、私にとってかけがえのない人たち。」
「……」
『長門さん…ですか。そればかりは本人に聞いてみませんと…
わかりませんね。おそらく、内心は僕らと近いはずです。』
内心は僕らと近いはずです…か。古泉、やっぱお前の言ったとおりだったよ。
長門も…俺たちSOS団のことを大切に思ってくれている。お前や朝比奈さんみたいにな。
「…もし、上がどうしてもお前の独立を認めなかったとき…そのときはどうする?」
「そのときは、あきらめざるをえない…。」
「…顔が不服そうだぞ?本当は、嫌でも抵抗したいんじゃないか?」
「抵抗など無理。私という個体がそれを感じている。」
「…勝てないと思ってるのか?」
「勝つ勝たないの問題ではない。上と戦うなどという発想自体、私にはない。」
「…何あきらめてんだ!?必死に思いを上連中にぶつけてみたら、万一にもわかってくれるかもしれないぞ。」
「逆らってまでも、自己主張することは許されるの?」
「誰が許さないって決めたんだよ…。お前が決めたんならともかく、そうじゃないなら…
まずは自分の意志を突き通すことから始めようぜ?ダメならダメで、またそのとき考えりゃいいさ。
そんときは俺も助太刀してやる。…もっとも、俺なんかじゃ力にもならんだろうが…
でもな、少なくともお前の背中を押してやれることくらいは、できると思ってるからな。」
「…優しい人。」
「ん?」
「あなたは…以前の世界でも、そうやって涼宮ハルヒを助けだした。…違う?」
「……」
------------------------------------------------------------------------------
「…バカなことを。仮にも神の化身であるあたしが、そんな考えをすることは許されないわ…。」
「誰が許さないって決めたんだよ?」
「え?」
「確かにお前自身は神の意志で生まれてきたのかもしれない。でもな、
別個体で生まれたって時点でもう神だの何だの関係ねーんだよ!!好きに生きりゃいい。」
「あんたは何を言って…それはね、無責任というものよ!?第一、化身である以上
これからもずっと神の意志に束縛されて生きていくのは自明で…。」
「単にお前が勝手に束縛されてると思ってるだけなんじゃねーのか。
自分の意志で生きることを諦めてるようにしか、俺には思えない。」
「……っ!」
「自分がしたいと思えばそれをすればいい、やろうと思えばやれる…お前は十分そういう立場にあるんだからな。
それを忘れるなよ…俺という人間が世界中で俺一人しかいないようにお前もお前でしかねえんだからな。
なら、束縛だの何だの難しいことは忘れて胸張って好きなように生きりゃいいんだよ。」
・
・
・
「じゃあさ…もしあたしが自分の意志で、一人の人間として生きたいと願ったとして、
もしそれを神が妨害してきたら…そのときはどうすんのよ…??」
「そんときは…俺がお前を助けてやる。」
------------------------------------------------------------------------------
……
はははっ…何だこりゃ?あのときと…言ってることが見事に一緒じゃねえか。
何か既視感めいたものを感じると思ったら、そういうことだったんだな。
あの世界の俺とは…思考パターンまで同じだったわけだ。
『いくら自分とは対の異世界人だとしてもね…、何もかも違うってわけじゃないの。
性格や思考パターンといった、そんな内面的・本質的なものは…基本変わらない…。』
自分という例に当てはめ、初めてこの朝比奈さん大の言葉に実感が沸いた。
第三世界の【俺】と第四世界の俺…まあ、厳密に言えば
朝比奈さんの言う『対の異世界人』とは意味が違うんだがな。
「まあ…ハルヒのことは置いといてだ。お前自身は結局どうするんだ?」
「そのときは異議を唱える。あなたに言われ、私はそう決心した。」
「!そうか、決心してくれたんだな…。」
「確かに、何事もやってみなくてはわからない。私はそれを…あなたから教わった。
だからもし、私がそれを躊躇してしまったときは…そのときはあなたにも協力してほしい。」
…あのときの涼宮ハルヒのように。」
「ん?最後何て言ったんだ?」
「…なんでもない。」
「そうか。まあ何はともあれ、お前もこっちの世界に残ってくれるようで安心したぜ!」
本当に良かった。これで…ハルヒの能力が消えるにしろそうでないにしろ、
SOS団は全員続投というわけだ。…改めて、みんなの絆を確認できたような気がする。
……
…もうすぐ6時半か。そろそろ家に帰る…かな。夕飯を家族に待たせでもしたら大変だ。
「長門、今日はお前といろいろ話せてよかったぜ。」
「私も…同じ。」
……
「じゃぁな長門。また明日!」
「また明日。……ぁ…、」
「ど、どうした?」
「曲作り…頑張って。」
「お…おう。頑張らなきゃな!はははは…。」
俺は長門の家を後にした。
……
ホント、作曲どうすんだ俺…
家まで直進するつもりだったが…ちょっと寄り道すっか。ゴメン家族のみんな…
本屋行って、早速そのあたりの本をチェックだ!善は急げ…だな。
本当は楽器店がいいんだろうが…こっからは遠い上、今日はもう遅い。また明日考えるとしよう。
そんな慌ただしい様子で、この日は幕を閉じたのさ。
後で気付いたんだが、今日の不思議探索…何で集合が3時だったんだろうな?
いつものハルヒなら12時や1時を指定していただけに謎だ…
もしかしてあれか?ハルヒも…俺と同じだったのか?そういやメールの発信時刻が2時をすぎてた記憶がある…
なるほど、いくら前後の記憶がなくなってるとはいえ、疲れは健在だったというわけだ。
…あぁ、そういうことか…ッ!駅で会ったとき、いつも以上に俺の遅刻を咎めてるように感じたのは…
気のせいじゃなかった。俺への戒めを隠れ蓑に、強引にも悟られまいと、画策したんだなあいつは!?
自分の寝坊を
……
そんなハルヒも、なかなかカワイイと思った。
それから2週間がすぎた。
今日は12月23日。
……
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 07:39:24.69 ID:ox0b96CC0
ほ
時は夕刻。俺は最寄りの店へと寄っていた。いろんな人形やぬいぐるみを手にとり凝視する俺。
「おいおいキョン、まさかお前にそんな少女趣味があったとはなあ…正直失笑もんだぜ!!」
はてはて、特にこいつは影が薄いキャラ設定でもなかったはずだが…俺はこいつの気配に
今の今まで気づかなかった。ここ最近ハルヒの閉鎖空間云々といった騒ぎに巻き込まれず、
温和な日々が続いていたせいだとでもいうのか?すっかり外的要因を感知する能力が衰えていた。
「外的要因??キョン、そりゃあんまりじゃねーか?俺はお前の親友だろ?」
悪友といったほうが正しいような気もするが。とりあえず、少女趣味云々イミフなことを言うヤツは放置に限る。
「あーあー、さっきのは悪かったって!あれだろ?妹ちゃんにやるクリスマスプレゼント探してたんだろ??」
わかってるんじゃねーか…ったく、別に俺がからかわれるのには構わないんだけどな。
そういうことを鶏が朝一番に鳴くようなレベルの大声で言うなと…
もし側に俺の知人がいたら、こいつはどう責任をとるつもりだったんだ。
「だから悪かったって言ってるだろ… す み ま せ ん で し た ! 」
…わかった。わかったから!とりあえず大声出すのはやめてくれ…頼むから…。
……
「ところで谷口、お前はこんなとこで何やってんだ?」
「あ?単にココア買いにきたってだけだぜ。」
「ココア程度なら外の自販機でいくらでも買えるだろう?なぜ、わざわざこんなデパートに?」
「だって寒いじゃねえか…外。暖房の効いた店に避難して何が悪い?
そのついでにココアも買っちまおうってわけだ。別におかしくもなんともねーだろ?」
なるほど、筋は通ってる。
「はぁ…それにしたって、どうにか暖かくならないもんかねぇ…。」
「おいおい、今は冬至だぞ??そんなバカなことあるか。」
「今って地球温暖化の時代だろ?冬くらい暖かくならねえのかなってさ。」
「そんな都合良くいくかよ…人類だってバカじゃないぜ。日々日々、
温暖化に向けた対策を打ち出してんだからよ。その効果が表れてるのかもな。」
「へいへい…人類は賢いでございますこと。」
地球温暖化…か。
炭素税、クリーン開発メカニズム、国内排出証取引、排出権取引、直接規制によるCO2削減義務、
気候変動枠組条約、京都議定書……数えればきりがない。それくらい、俺たちは現代社会等で
温暖化対策を強く教わってきたし、各国もそれなりの規模で取り組んできた。
こんなにもやってんだ…そりゃぁ、ある程度の効果は出ねえと、泣きたくなるわな…。
「あぁー!今年ばかりは暖かくなると思ったんだけどな俺は!」
「…まだ言ってんのか。懲りねえヤツだな。」
「キョンだって見ただろ!?ちょうど、一か月前くらいのニュースでやってたじゃねえか!
12月は夏みたいな気温になりますってよぉ…。」
「そんだけ天気予報も当てになんねえってこった。文句なら気象庁にでも言うんだな。」
「文句言ったって暖かくなんねーよ!」
そんなバカ話をしながら、俺は妹へのプレゼントを買い終えた。
「それにしても楽しみだよな〜 明日が終われば、ようやく冬休みだぜ!」
…そう。明日は終業式である。
「授業を受けなくていいってのがポイントだよな。いや〜幸せ幸せ。」
「宿題は出るんだろうけどな。」
「そんくらいわかってんだよっ!少しは夢くらい見させろ!」
……
明日で今学期も終わり。
…ああ、わかってるぜ。何か約束あったよな…そういえば。
------------------------------------------------------------------------------
「そうそうキョン!忘れないでよね!!」
「…ん?何をだ?」
「作曲よ!作曲!!」
・
・
・
「じゃあ、今学期中には作ってくるぜ。」
「そう?わかったわ。じゃ、絶対作ってきてよね!また明日〜」
------------------------------------------------------------------------------
その直後、俺は後悔したわけだが。(時期的な意味で)
……
なんとしても、今日中に完成させねえとな…ッ!!
さて、この2週間の中で…1つわかったことがある。
……
それは
世界が救われたということである
……
これでは言葉足らずか
『世界が救われたということ』が【確認できた】と、と訂正しておこう
……
12月2日
俺たちは世界を救った …だが、この時点ではまだ 神の消滅は確認されていない
つまり
世界は一時的に助かっただけで、再び危機に瀕す可能性も考えられたということ
12月13日
この日、ようやく長門の力が回復する
12月14日
長門が 神・フォトンベルト・涼宮ハルヒの能力 この3要素の完全消滅を発表
12月15日
閉鎖空間の観測不可、および超能力者たちの能力消失が 機関から正式に通達される
涼宮ハルヒの能力の消滅が確定
12月21日
機関が以下の内容を発表
・地球磁場の減少停止
・地球気温上昇率の鈍化
・太陽風や宇宙線の観測頻度の低下
・地震頻度の低下
・火山活動の沈静化
・海流の安定化
長門もこれらを確認したことにより、フォトンベルトの消滅が確定 逆算的に神の消滅も確定
…それもそのはずだ 本来、ハルヒの能力無しでは
【フォトンベルト】とかいう空想の産物は実在しえないのだから
『未来の時間軸が安定しました。』
トドメは朝比奈さんのこの一言
当たり前だが、朝比奈さんのいる未来では第四世界の崩壊は確認されていない
つまり…俺たちの世界が危機に晒されることは二度とない
世界は 救われた
……
とか何とか言われても、いまいち実感が沸かねえってのが正直なとこだ…。
だが、確かに俺は聞いたんだ。長門・古泉・朝比奈さんが口を揃えて言ったことを…
『世界は救われた。』ってな。世界の危機に奔走したのは数日間だったが…俺には長く感じた。
…本当に、本当に終わったんだ。
……
長門、古泉、朝比奈さん…そしてハルヒ
どうもありがとう…!!
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 08:09:45.09 ID:ufTRMib2O
3終わりです。次のエピローグ4(終)は夜の7、8時から投下しようと思います。では。
乙彼さま〜
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 09:46:02.89 ID:yCUqjgngO
ほ
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 09:54:43.06 ID:GMbUtLAT0
乙!
180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 11:11:11.98 ID:3u/lVIDg0
ス
おつかれー
182 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 12:08:24.78 ID:TsXpH9vx0
出かける前の
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 12:55:52.02 ID:AJ1C3IMTO
昼休み終わりに保守
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 14:05:19.83 ID:yCUqjgngO
へい
185 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 15:06:21.19 ID:yCUqjgngO
ほい
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 15:38:07.97 ID:UmbPOmvbO
エイ
187 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 16:24:22.39 ID:TBZmISUPO
タイ
188 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 17:09:36.34 ID:ox0b96CC0
ほ
しゅ
190 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 18:17:28.48 ID:ufTRMib2O
合間ぬって保守
191 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 18:43:21.18 ID:WS+AkL8KO
ほ
あ
193 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 18:57:33.19 ID:yCUqjgngO
気づいたときが
PCで書き込みができるようになりました…
これで投下が楽になりそうです。では、今から始めます。最終章です。
「キョン!!作ってきた!?」
「…ん?」
「まさかあんた…忘れてんじゃないでしょうね!?今日で終わりなのよ!?」
「へえへえ、わかっておりますとも。今日で今学期も終了だな。」
「ふーん、ならいいけど!」
……
終業式を済まし、学校を終えた俺たちは家へと帰宅した。
「さぁて、どうすっかなぁ。」
今夜、俺のこの部屋にてパーティーが開かれる。飾り付けは…別にしなくていいか?
「キョン君の部屋って地味だよね〜!今日ここでパーティーするんだよね!?」
地味で悪かったな妹よ!っていうか、ノックもなしに勝手に部屋入ってくるんじゃない!
「ああ、そうだぜ。お前も参加するか?」
「え?いいの?わ〜い!やったやった!有希やハルにゃん、みんなに会えるー!」
……
本当は、去年みたいに部室で行う予定だったんだがな…鍋物を食うにあたって
火器を使用したことが学校側にバレちまった。言っとくが、俺はハルヒにちゃんと忠告したんだぞ?
火器は厳禁だからやめとけ…と。悲しいことに、それで言うことを聞くハルヒじゃなかったわけだが。
結果、クリスマスや祭日での部室利用が禁止になった。当然っちゃ当然の処置だ。
…俺は思ったよ。ただでさえ教師や生徒会連中には目をつけられているのだから(もちろんSOS団がな)、
少しは自重していただきたいものだ…と。
そういうわけで、俺の家(部屋)へと会場が移された。
……
なぜ俺の家なんだ??と聞けば ハルヒ曰く、団長命令だとか。専制君主ここに極まり。
おおよそ、俺のとこなら思いっきり騒ぎ立てられるとでも思ったのだろう。
相変わらず、俺という人間には人権がないんだ。…まあ、別に気にしちゃいねえよ。
なぜなら、それが涼宮ハルヒだから。…うむ、それだけで理由になるのがまた凄い。
「わかったら、部屋から出てってくれんか妹よ…今から寝ようと思うんでな。」
「えぇ〜??昼間から寝ちゃうの?生活リズム狂っちゃうよ〜?」
「…今日はどうせ遅くまで飲んだり遊んだりすんだ。だったら、今から寝とこうと思ったんだよ。」
「あ、そっか!なら遅くまで起きとけるもんね!」
「そういうことだ。じゃ、お休みな。」
「ほ〜い!」
ドアを閉め、去っていく妹。
……
俺がこれから寝るのには、もう一つ理由がある。それは…
単に眠いからだ。
……
いや、だって仕方ないだろう…?徹夜して曲作ってたんだ…。
なんとか間に合って、本当に良かった。じゃ、寝るとするか。
「キョンくーんッ!!」
「うわ!?」
再び妹が部屋へと入ってくる。それも、物凄い勢いで。
「部屋に入るときはノックをしろとあれほど!ってか、今度は何だ??」
「お客さんだよお客さん!」
「え?…お客?」
「ハルにゃんがね、やってきたんだよ!」
「へぇ〜ハルにゃんがねぇ…」
……
今…何と言った?
ハル…にゃん?
「…本当に来てるのか?」
「ホントホント!ハルにゃん来てるよ!」
「…とりあえず、行ってくる。」
ハルヒ…こんな時間に何しに?パーティーは夜からのはずだが…。
すぐさま階段を下りるべく、曲がり角にさしかかった。…瞬間だった。
「きゃっ!!」
「うおっ!?」
……
1階から上ってきた人間と、俺は衝突しそうになったのさ。
「ちょっと!?あぶないじゃないのキョン!?危うくぶつかるところだったじゃない!!」
「…待て待て待て!どうしてお前がココにいる??」
「家に入っただけじゃないの!?悪い!?」
「いや…玄関で待っとけよ!勝手にあがるなんて不法侵入だぜ…。」
「何言ってんのよ!?ちゃんと、妹ちゃんに許可はとったわよ!!」
「え…?そうなのか?妹よ?」
「うん!入ってもいいよ!って言ってあげたの!」
「それを先に言え!!」
「うえぇ〜ん、ハルにゃ〜ん!キョン君がいじめる〜」
「こんな年下のコを責めるなんて…あんた最低ね!」
すっかり悪者にされちまった。…やれやれだぜ。
「とにかく、部屋に入らせてもらうわよ!」
言葉通り、勝手に俺の部屋へと入っていくハルヒ。
……
「じゃ、二人ともごゆっくりね〜!」
外からドアを閉める妹。
「で、一体何の用なんだハルヒ?昼からパーティーを始めるほど、俺は道楽家じゃないぜ?」
「あんたの成果を見せてもらおうと思ってね!」
「…え?」
「ってなわけで、早速パソコン立ち上げて!!」
「??」
「Singer Song Writerを起動させなさい!!」
ま、まさか…
「俺の作ったメロディーを聞くつもりか!?」
「ええ、そうよ!!」
なん…だと!?
「ちょ、ちょっと待ってくれハルヒ!」
「あら、どうして?期限は今日までだったはずでしょ?」
「た、確かにそうだが…。」
「まさか…作ってないんじゃぁ…!?」
「いや、それは違う!!作ってきた!!それは間違いない!!」
「じゃあ、どうして躊躇うのよ!?」
「そ…それは…、」
……
「もしかしてあんた、今日のクリスマスパーティーで披露しようとでも考えてたの?」
「!」
「ふふっ、その顔見ると図星みたいね。なかなかキョンも洒落たことするじゃない。」
「…ああ、そうだよ。だからよ、今はまだ…」
「ま、そんなことだろうとは思ってたわ。でもね、今あたしに聴かせてちょうだい!!」
「いや、しかし」
「あたしにだってね、考えがあるの!何も闇雲に聴こうとしてるわけじゃないわ!」
……
急にハルヒの口調が真剣になった。考え…か?
「…わかった。お前がそこまで言うなら、聴かせてやるよ…特別にな。試聴者第一号様だ。」
「それでこそキョンね!」
「ただし、期待すんじゃねえぞ?俺の出来なんか、たかが知れてるんだからよ。」
「いいからいいから!聴かせなさい!!」
「せっかちなヤツだな…ちょっと待てって…。」
ソフトを起動し終えた俺は…再生のボタンを押した。…音が流れる。俺の作った曲が…メロディーがな。
……
「……」
鳴らし終えたのはいいが…なぜかハルヒは口を開かなかった。
……
あまりの酷さに面喰い、言葉も出ないってか…?
やっぱダメだったのか… 一応、それなりに懸命に作ってきたつもりだったんだがな。
いろいろと工夫もこなし、音域の高低もお前に合わせてきたつもりだったんだが…。
「…キョン。」
ようやく言葉を発するハルヒ。
「…ははっ、どうやらお前のお気に召すロディーは作れな」
「凄いじゃないのよキョンッ!?あんた一体何したのよ!!?」
「え…?」
「正直、舐めてたわ…あんたがまさか、ここまで作り込んでくるなんて。」
「は…ハルヒ?」
「しかもこれ…途中で転調してたでしょ!?少なくとも、2回はしてたわね…。」
「……」
「曲調だって十分明るいし、文句ないわ… なんとも、とんだ誤算ね。
気に入らないとこがあったら、とことんイチャモンつけてやるつもりだったのに…。」
ハルヒが…俺を褒めてる…??
「…キョンさ、以前あたしが言ったこと覚えてる?」
「…?」
「あたしに合った最高のメロディーを考えてくること…それがあたしのあんたへの注文だったわ。
キョンはそれ聞いていろいろと反発してたけど…、その後、あたし言ったじゃない?
『あたしのイメージ像を捉えられたあんたならきっと作れるわよ!』…ってね。」
「……」
「そして、見事にあんたは成し遂げてくれた…。いくらね、団長命令だからといって
キョンがここまで一生懸命作ってきてくれるなんて…思ってもなかったわ。
きっと、凄い時間と労力をかけたと思うの。素人のあんたがここまでやってくれたんだもんねえ。
そのせいで期末とか、納得のいく点取れなかったんじゃないの?」
「え?あ、まぁ…否定はせんが。」
「バカ。そこまでやらなくても良かったのに。」
「おいおいおい、最高のなんちゃらを作ってこいって言ったのは、他ならぬお前だろう?」
「それもそうだったわね。ゴメン、キョン。」
「…お前が謝るなんて。明日にでも空から岩が降ってきたりしてな。」
「どういう意味よそれ!?…ま、いいわ。何にせよ、あんたがここまで作ってくれたの見ると
あたしもやり甲斐があるってものね。そのために今日ココに来たようなもんだし。」
「…?どういうことだ?」
「はい、キョン。」
そう言って、ハルヒは何やらメモ用紙を渡した。これは…アドレス?
「それね、あたしのパソコンのメルアド。早速だけどね、
この曲のデータ…添付して私のとこに送ってもらえないかしら?」
「?別にいいが…」
早速データ登録して送ろうとする。
「…そうね、欲を言えば もう少しロック調だったほうが嬉しかったかしら。
あまりにポップよねこの曲。これなら、あたしのバッキングも必要なさそうだし。」
「…ああ、本当だ。確かにそうだな…すまんなハルヒ。」
「別に気にすることないけど。面白そうならそれでいいわ!!」
……
やっぱり今日のハルヒはどこかおかしい!だってそうだろう?!
いくら今日がパーティーとはいえ、こんなに上機嫌だとさすがに裏があるような気がしてならない!!
…と思うのは、俺がこれまで団長of団長様から受けてきた幾多ものカースト的扱いによるせいか…
ワケを聞こうとも思ったが、変に刺激してこの前のカレー作りの時みたいにヤブヘビになっても嫌だから
とりあえず…文脈から考えて、日常会話における常套句、いわゆる無難of無難に満ちた
この言葉を捧げようではないか!
「そう言ってくれると助かるぜハルヒ。」
「じゃ、あたし帰るわ。夜のパーティーが楽しみね。」
これはこれであっさり終わってしまった。ちと悲しいもんだ…。
「って、えぇ!?ハ、ハルヒ、ちょっと待っ」
……
行っちまいやがった。…まるで嵐のように。
結局、『あたしもやり甲斐があるってものね。』ってのは何だったんだろう?
パソコンに送った俺のデータを…何か改造でもするつもりなんだろうか…?
…考えたってわかんねえな。相手が涼宮ハルヒなだけ…尚更だ。
とりあえず寝るとしよう。パーティーの時間までな。
……
そういやあいつ、俺のこと褒めてくれたんだよな。…素直に嬉しいと思った。
機嫌が良かったってだけかもしれんが…。それでも、頑張った甲斐はあった…かな。
時刻は19時。俺たちはパーティーを楽しんでる最中…って うお!?危ねえッ!!
「あ、キョン君ゴメ〜ン♪」
「妹よ!!狭い部屋で走り回るんじゃないッ!!」
冒頭からいきなりこれですか…満足に状況報告もできやしねえ。
「別にいいんじゃない?元気があるってのは良いことよ!」
206 :
涼宮ハルヒの天啓 エピローグ4(終) ◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 19:14:59.14 ID:ufTRMib2O
いや、ハルヒ並に元気になられても困るが…っていうか、ここ俺の部屋だからな?暴れられでもしたら涙目だぞ?
「もしも今 あなた達二人がぶつかっていれば、後方のケーキが
丸ごと押し潰される事態へと発展したはず。何もなくて良かった。」
うむ、長門の言うとおりだ。
「心配は無用ですよ。ケーキの一つや二つ、機関のほうに連絡すれば、いくらでも調達できますので。」
「いや、古泉、そういう問題じゃな」
「そういう問題じゃないですよ!ケーキだけならともかく、
キョン君や妹さんはどうなるんですか??ケーキで服が汚れちゃいます!」
おお!朝比奈さんが俺の代わりに言ってのけてくれた!?
「おっと、そこは盲点でした。僕としたことが…」
「はっはっは!一樹君も修行が足りないね!」
「あ、あぁー!鶴屋さん!そこ踏んじゃダメ!お、お菓子が〜!」
「!?わ、私としたことが…足元の存在に気付かなかったよ〜注意してくれて助かったよ、みくる!」
「おやおや、どうやら鶴屋さんも僕同様、修行とやらが必要のようですね。」
「くぅ〜!めがっさ悔しいにょろ…!言ったそばから、まさかこんな…」
…っていうか、お菓子の袋が無造作に散らかりすぎなんだ!!
「ハルヒ!どうにかしろ!」
「な、何であたしがどうにかしなきゃいけないのよ!?」
「もとはと言えば、床を歩けないくらい菓子ばらまいたのはお前だろ!片づけるから一緒に手伝え!」
「ったくもう、仕方ないわねえ…祭り会場なんだから、好き勝手やらせてくれたっていいじゃない。」
「だから、ここは俺の部屋だッ!!」
「キョン君!私も手伝うにょろよ〜!」
「わ、私も!」
「ありがとうございます…鶴屋さんに朝比奈さん。」
「大変のご様子で。森さんと新川さんも呼んで、手伝わせましょうか?」
「古泉?お前は俺の部屋をこれ以上のカオスにしたいのか?」
「ははは、冗談に決まってるじゃないですか。」
「笑ってないでお前も手伝え!」
「……」
「ん?長門?」
「情報の操作と改変を使えば、こんな作業私にとっては造作もな」
「いや、長門…こんな些細なことで能力使う必要は全くないから…!」
「…そう?」
「キョン君キョン君!私、メロンのキャンディーがほしい!」
「妹ちゃん!それなら今片づけた中にあったような気がするわよ!」
「本当!?ありがとう〜ハルにゃん!」
「ちょっと待て妹!今片づけたばっかの菓子袋を勝手にあさるんじゃない!!また散らかるだろう!?」
「一々うるさいわねキョンは。今日くらい妹ちゃんの好きにさせてあげなさいよ。」
「そうだよキョン君ー♪今日は祭りなんだから別にいいじゃない!」
「……」
早くもハルヒの考えに毒されている妹を見て、頭痛がしてきたのはたぶん気のせいだ。
「本音言えば、あたしだってもっと騒ぎたいんだから… あ、そうだ!お酒とかあればもっと」
「切実にやめてくれ!」
「……」
「ん?長門?」
「情報の操作と改変を使えば、お酒を作ることなど造作もない。酎ハイに焼酎、日本酒にウイスキ」
「長門…頼むからやめてくれ…、頼むから」
「?どうして?」
「それはですね、この日本という国においては未成年のアルコール摂取は法律で禁止されているからなんですよ。」
「いや、古泉、そういう問題じゃな」
「そういう問題じゃないですよ!万が一、泥酔して倒れちゃったり、
酔ったはずみでキョン君の部屋が散らかったりしたら、どうするんです!?」
おお!また朝比奈さんが言ってのけてくれた!いやぁ…今日の彼女は冴えてるなあ。
「はっはっは!古泉君、また言葉足りずだったようだね〜」
「確かに、鶴屋さんにとっては何も問題ありませんよね。酒豪であるあなたなら。」
しゅ、酒豪!?鶴屋さんが!?
「い、一樹君!?一体何言って…」
「あ、でも鶴屋さん なんかお酒に強そうなイメージ。」
「そ、そんな、ハルにゃんまで… くっ…!!」
あれは…復讐に燃えている目だ… 古泉、鶴屋さんに仕返しでもされないよう注意しとくんだぞ。
って、マジであなた酒豪だったんですか… まあ、性格が仙人のようなお方なだけあって…違和感はないですが。
「ねえねえキョン君、お酒っておいしいの?」
「小学生はまだ知らなくていいです。」
「相変わらず固いわねキョンは。この際パーッといきましょ!?」
お前は俺の部屋を破壊したいのか?それとも単に飲みたいだけか?
「あーもう、しょうがないわね。冗談だってば冗談!半分。」
「半分本気だったんかい。」
「そ の 代 わ り 、キョンにはこのマンネりとした状況を打破してもらうから。」
「…何をするつもりだハルヒ?」
「みんな!!キョンの作った曲、聞いてみたくない!?」
そうきたか。
「キョン君、作曲なんかしてたんだ〜?道理で、夜にいろんな音が鳴ってたんだね!」
なんだ、お前気付いてたのか。
「いや〜、お姉さんそんなこと全然知らなかったにょろよ?こりゃ、楽しみだねッ!」
「…とは言っても、メロディーだけなんですけどね。」
「それでもめがっさ凄いと思うよ!うんうん!」
「キョン君、ついにメロディーが完成されたのですね。ぜひ拝借してみたいものです。」
「わ、私も早く聴いてみたいです!」
「…気になる。」
なんだなんだ?みんなそんなに聴きたいか?…面白さ半分ネタ半分ってやつか。
「わかったよ。今から鳴らしてやる。」
「ちょっと待ったキョン!!」
「?どうしたハルヒ??」
「その前にね…みんなにこれを配っておくわ!」
そう言って、ハルヒは人数分のメモ用紙を皆に渡す。…何か文章が綴ってある。
「はい、キョンにも。」
「お、おう。」
これは…
『なぞなぞーみたいに〜ちきゅうーぎーを(以下略』
正直、第一印象は【意味不明】だった。そうには違いないんだが…どこか精巧に作りこまれてるような気がする。
……
『あたしもやり甲斐があるってものね。』
あの言葉は…こういうことだったのか?
「…ハルヒ。もしかしてこの文章は…歌詞か?」
「そっ!あんたのメロディーにのせた歌詞!」
「お前…まさかあの後、家でずっとメロディー聴きながら、歌詞でも模索してたってのか??」
「ええ…。もっとも、ずっと前から歌詞の題材みたいのは決めてたから、作り込むのに
そう時間はとらなかったけど。所々テンポに合わせたりとか追加削除したりとか、そんな感じ。」
「…そうか。いや、何やらただならぬものを感じてな…なんというか、独特すぎるっていうか…。」
「当然よ。誰が作ったと思ってんの!?」
…ああ、そうだな。この世界観はお前にしか出せないさ。
……
『涼宮さんはあなたが何事にも縛られず、純粋に感じたままのメロディーを
一から作り出してくれることに期待しているのですよ。簡潔に言えば、
涼宮さんは、あなたのメロディーをもとにコードや歌詞を付けたいと思っているわけです。』
以前、古泉にこう言われたことがある。
……
俺が今、一番強く思うこと。それは、どうして【俺】の作るメロディーに
ハルヒはそこまで執着しているのか??ってことだ。なぜ、【俺】ではければならないのか?
もっとも、この理由を尋ねたら、古泉・長門・朝比奈さんの3人に鈍感だの何だの言われてしまったわけだが…。
…まあ、いい。鈍感なら鈍感で、それもいいじゃないか。
「よーし!じゃ、音楽鳴ったらみんなで一緒に歌うわよ!!」
「おー!それは随分と楽しそうにょろ!」
「で、でも涼宮さぁん!私たちまだ一回も聴いてないから、
どういうリズムで歌えばいいのか、よくわからないですよぉ…」
「大丈夫よ、みくるちゃん!!あたしに倣って歌えばいいだけなんだから!」
「何!?ハルヒ、お前はすでにマスターしてんのか??」
「当然!何回も聴きこんだからね。」
「ハルヒ…」
何気ないその一言が、俺には凄く嬉しく思えた。
「みんな紙もったー?じゃ、お願いキョン!」
「あ、ああ。…な、なぁ、再生押すのはいいんだが…俺も歌わなきゃいかんのか?やっぱ?」
「当たり前でしょ!?みんなでって言ったじゃない!?」
「そ、そうか…。古泉、低音同士頑張ろうぜ…。」
「そうですね。当たり障りなく歌いたいものです。」
……
213 :
◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 19:36:23.59 ID:ufTRMib2O
8時にまた投下します。
また目が回りそうなことをw
215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 20:17:33.68 ID:ufTRMib2O
じゃあ、いきます。
…それじゃ、いくかな。
スイッチ …オン
……
…♪(間奏〜2Aメロ)
「いや〜合唱がこんなめがっさ面白いとは、お姉さん思わなかったよ♪」
「みんな!?声が小さいわよ!もっと大きく!!特に、有希とキョン!!」
「……」
「いや、俺はともかく…長門が大声ってのは、ちょっと無理があるんじゃ…?」
「なるべく私も頑張る。だから、あなたは心配しないで。」
「そ、そうか?それならいいんだが…。」
「え、ええっと、次は2番ですよね??」
「そうよ、みくるちゃん!」
…♪(間奏〜3Bメロ)
「あら、みんな なかなか慣れてきたじゃないの?」
「キョン君の作ったメロディー、とても口ずさみやすいです!」
「わー、キョン君 凄い凄い!」
「妹よ、褒めたって何も出ないぞ…」
「長門さん、この間奏でギターソロを入れてみてはいかがでしょうか?カッコイイと思いますよ。」
「…考えておく。」
「にょろおおおおおおおおん!!!!!!!!!!!」
「鶴屋さん!?これはシャウトする曲じゃないですよ!?」
〜♪(アウトロ)
……
ようやく曲と、そして歌が終了する。
「えっと…ってな具合だったんだが、どうだったかな俺の曲は?」
……
……
え…何だこの空気は??まさかダメだったとかいう
「Yeah−−−−−−−−−−−−−−−−−−ッ!!!!!!!!!!!!!!!」
「MEGASSASAIKO−−−−−−−−−−−−−ッ!!!!!!!!!!!!!!!」
「SUGOIDEATH−−−−−−−−−ー−−−−ッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「…unique」
「Wooooooooooooooooooooooooo−−−−−ーッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「Bravo−−−−−−−−−−−−−−−−−ッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
……
時間差? & 何でみんな無駄にテンション高いの?(一人除いて)
「めがーっさ!楽しかったにょろー!!」
「わー、楽しい楽しい!」
「あまりの出来の良さに、私…びっくりしちゃいました!」
「…とても、明るい曲調…」
「あなたにはコンポーザーの才能があるようです。」
why??どうしてこんなにもみんな誉めてくれるんだ??陰謀か!?陰謀なのか!?
大きく持ち上げ、後で落とす作戦なのか!!?いや、朝比奈さんもいるからそれはないだろう…
……
本当にみんながそう思ってくれてるのなら…。いかん、なんか照れるなこういうの。
「みんな気に入ってくれたみたいね!?良かったわね〜キョン!」
「お…おう。」
実感はないけどな。正直、みんな場に酔ってるってのもあるだろう。
それを差し引いても嬉しいことには変わりないが。
「お前こそ、作詞ご苦労だったな。」
「当然よ!むしろあたしの協力があったからこそ、ここまで盛り上がったとも言えるわ!感謝するのね!!」
ここで謙遜したりしないのが、なんともハルヒらしい。
……
しかし、よくよく考えればその通りだ。面白おかしい意図不明の歌詞だったからこそ、
みんな雰囲気に任せてヒートアップしてたとも言える。いや、むしろ比率としてはそっちのがでかいだろう。
「素晴らしいですね。キョン君と涼宮さんの努力の賜物、と言ったところでしょうか?」
「古泉君いいこと言うわねー!ま、共同作業の成果ってやつ?」
実質的にはほとんど個人作業だな。まぁ、ここは合作といったほうが適切なような気もする。
…しかし
共同作業と自ら名をうってるところを見ると、ハルヒ自身は一連のこの盛り上がりを自分一人だけの手柄に
するつもりはないらしい。やっぱり何かおかしいな今日のハルヒは…いつもなら百発百中真逆の行動をとるはずだ。
「それってつまり、キョン君とハルにゃんの愛の結晶ってことだよね♪」
何か変な言葉が聞こえたが、無視する。
「朝比奈さん、音は何を使います?」
「キーボードのことですか?そうですね…やるのであれば、
キラキラしたような音を使ってみたいですね!古泉君はどうするの?」
「僕は…そうですね。基本ハイハットでいきたい感じですね。」
……
「有希!有希!ギターのことなんだけどね…!」
…気付けば、俺の目はハルヒを追っていた。どうしてかはわからないが…何か気になるものがあった。
「みくるちゃん!この曲、キーボードの役割はでかいわよ!!」
「古泉君!ドラムはね、出だしからこう…!」
…ハルヒ。
「え?あの歌詞はどういう意味かって??そんなのあたしだってわかんないわよ!
なんとなく、想像に任せて書いたってだけ!!あははははっ!!♪」
……、
ハルヒ…楽しそうだな。本当に楽しそうだ。幸せそうな顔を見れば…すぐわかる。
……
どうしてだろうな?こういうときに限って、昔のことが思い出されるんだ。
『…バカなことを。仮にも神の化身であるあたしが、そんな考えをすることは許されないわ…。』
『化身である以上、これからもずっと神の意志に束縛されて生きていくのは自明で…。』
あのときのアイツの目は、死んでいた。そんなアイツと、俺は出会った。
『それでね…そのときは、これまで自分が神の代行者だったって記憶を、消したいと思ってる。
だって、そんな記憶があったら一人間として楽しく生きられないもんね。』
『…それいいわね!!ぜひ神に懇願…いや、干渉してみせるわ!あんたと一緒なら何か楽しい感じがするし…!』
楽しく生きたい。ただ、それだけだった。
……
『…あたしね、あんたと会えて本当によかったと思ってる。
だって、あんたがいなきゃ…今のあたしはいなかったんだもんね…。』
ちょうど1か月前だったか…ハルヒからこの言葉を受け取ったのは。…遠い昔に感じる。
ハルヒ…伝えとくよ。記憶をなくしたお前はな…昔のことは何一つ覚えてないけど、
そりゃぁ、楽しく生きてるぜ。現に…今もこうやって笑ってる。
だからさ。どうかそんなハルヒを…いつまでも、温かく見守っててくれよな…。
ハルヒ…。本当に、おめでとう…っ
……
……
……、
…、
「きょ、キョン!?あんた…泣いてんの…?」
……
え…?
俺は…泣いているのか?
「ちょ、ちょっと、大丈夫??」
「キョン君?調子でも悪いの…?」
「あらら、どうしたにょろ?お姉さんハンカチでも貸してあげよっか?」
…なんてザマだ。思い出しただけで涙腺が弛んじまったのか?
弛むくらい、あのときのハルヒを思わざるをえない状況だったってことか??
「いや…なんでもない。気にせんでくれ。」
「気にするなってほうが余計気になるんだけど。何かあったんなら聞くわよ…?」
「ハルヒ…」
「だって…心配じゃないの。」
「……」
「……」
「くっ!はははは!!」
「な、なぁ!?」
「単に目にゴミが入ったってだけなのに…まさかそう来るとはな。ははっ、面白かったぜ。
お前の思い詰めた顔なんか、なかなか見れるもんじゃないからな!」
「…ひ、人が真面目に心配してりゃぁ…!!よくもバカにしてくれたわね!?」
「気付かなかったお前が悪いんだぜ。」
俺は部屋から出て行く。
「あ、こら!?待ちなさいキョンッ!!みくるちゃん!!キョンを捕まえて!!」
「え…?ふぇ、ふぇええ??」
「あっはっは!この展開は想像してなかった!キョン君もなかなかやるねぇ〜」
「あぁ、もういい!!あたしが探しに行く!!」
「まったく…喧嘩するほど仲が良いと言いますか、何というか…。」
「……」
「ねぇねぇ、キョン君とハルにゃんどこ行ったの?」
「え、ええっとね、今ちょっとややこしい状況になってるみたいだから…
妹ちゃんはこっちで遊びましょ?お姉さんね、今日はトランプもってきたの♪」
「わー!みくるちゃん見せて見せて!」
「みくるー!私も混ぜるにょろよ!」
「しかしですね、僕は思うんですよ。」
「……」
「こういう雰囲気こそ、SOS団なのではないか…とね。」
「…私もそう思う。」
はぁ…どうすっかなぁ俺。勢いで外に飛び出したはいいものの。調子に乗りすぎた。やりすぎた。
いくら誤魔化すためとはいえ、あそこまで奴を挑発して一体俺は何がしたかったのか??
次に奴と対面するとき、一体どういう顔をしてればいいのか??お先真っ暗以外に形容の言葉はない。
というわけで、しばらく中へは入れない。入ろうと思えば物理的に入れるが。俺が入りたくない。
…近くの自販機まで歩くか。たまには、夜風に当たりながらの散歩も悪くないさ。
……
近くの塀から、やけに賑やかな声が聞こえてくる。家族でパーティーでも開いてるらしいな。
…誰かの誕生日か?いや、今日に限ってはそれは違うだろう。なぜなら…、などと考えているうちに、
気付けば自販機だった。さて…何を買おう。寒いからHOTコーヒーにでもするか?
……
小銭を出そうとしたところで俺は、意識を奪われた。不意に視界に入った…その白い何かに。
「これは…」
…まあ、時期的に考えて答えは一つしかないわな。もしこれが火山灰や紙吹雪だった日にゃあ、
それは地球の終わりだ。特に後者が一体どういう状況なのか、それはそれで気になるが。
…見たのは1年ぶりってとこか。12月に入って初めての雪だ。それも、まさか今日12月24日に降ろうとは…
なかなか考えさせられる状況には違いない。クリスマスイヴなだけにな。
「…それにしても。」
あまりのタイミングの良さに…つい言葉を詰まらせる。まるで誰かが意図的に降らせたかのごとく…
それはそれは、完璧なまでにホワイトクリスマスだったからだ。
…誰かがって、一体誰が?神様か?ははっ…とんだ洒落た神様だなそりゃ。
……
いや…今の表現は不適切だったかもしれない。その【神】も、今となってはもはやいないのだから。
仮にいたとしても、雪なんて降らせてくれねえよ…あの【神】は。
…神か。まさか…な。
なぜか、あいつの顔が思い浮かんだ。もしかしたら、この雪を降らせたのは【ハルヒ】だったんじゃないか…
一瞬そう思ったが、それもすぐ消えた。だって、あの【ハルヒ】は…もういねえんだからな…。
「あ、キョン!!ようやく見つけたわよ…っ!!」
噂をすれば何とやら…突然の奴の声に、俺の心臓は止まりそうになる。
こいつ…!?まさかここまで追いかけてきたってのか!?いくらなんでもそれは予想外だったわ…
何も準備しないままラスボス戦へと突入する感覚と似ている。しかし、世の中には
『窮鼠猫を噛む。』という言葉がある。こうなってしまった以上、後は全力で奴と対峙するだけだ。
「ハルヒよ…さっきは悪かった。お詫びにジュース一本おごる!だから、それで勘弁してくれないか?」
これが俺の全力だった。
「あたしも安く見られたもんね?そんなんで、あたしが許すとでも思ってんのっ!?」
そして、案の定それで許してくれるハルヒ様ではなかった。
「…っていうのは嘘。こんなイヴの日に降る雪を見てたら…怒る気なんか無くしちゃった。」
……
「とか言いつつ、ちゃっかりおごってもらうんだなお前は…。ほう、俺と同じくコーヒーか。」
「あのね、おごるから許してって言ったのはあんたでしょう?!バカね。そんなこと言わなきゃよかったのに。」
「あぁ…そうだな。そうなんだろうよ。…にしても、よく許してくれる気になったな…?いくら雪が綺麗とはいえ…。」
「…そうね。自分でも不思議な感じ。だってこの光景を見てたら…何て言えばいいの?幻想的?
目に焼き付けとかないと、なんかもったいないって感じがしたの。ホワイトクリスマスとは言ったものね。」
「幻想的…か。わからんこともないな。」
……
…やけにハルヒの様子がしおらしいと思えば、そのせいか。
「ホント、不思議な気分。怒ってたのがどっかいっちゃったから?
今ならあたし、どんなことでも受け入れられそうな感じ。さすがに、悪口や暴言は論外だけど。」
こちらに視線を移すハルヒ。って、そんな恐ろしいこと言えるわけがないだろうッ!?
敢えて自らを滅ぼさんとする愚行、俺は絶対犯さんぞ!?…あ、さっきのはノーカウントな。
「つまり、今のあたしはそれくらい寛大ってことよ!」
「…そうですか。」
人差し指をこっちに向け、やけに強調してきた。とりあえず頷いておいたが… 一つ思った。
『それくらい』ってどこまで??いや…そもそも、こいつは本当に『寛大』といえる状態なのか?
…何か無性に試したくなってきんだが。なるほど、これがよく聞く、かの有名な【悪魔の囁き】ってやつか。
って感心してる場合じゃないッ!これでまた怒らせでもしたら、それこそ俺終了だぞ…?
しかし、そうとわかっていても口にしてしまう。そんな俺なのであった。
「今寛大ってことは、つまり普段のお前は寛大じゃないんだな。」
「何ですって!?…とは言わないわ。さっき、怒らないって言ったもんね。」
「……」
結果として俺は終了しなかった。…マジで?あのハルヒが??こんなこともあるんだな…
「…ハルヒ。さっきの言葉は…本当だと捉えていいんだな?」
「さっきって…」
「……」
「あぁ…受け入れるってやつ?まあ、そうなんじゃないの?よくわからないけど。」
230 :
涼宮ハルヒの天啓 エピローグ4(終) ◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 20:48:12.47 ID:ufTRMib2O
……
…ホント、卑怯だよな…。大事な瞬間ってのは、いつも不意に訪れる。今までだってそうだった。
幾多の困難の末、提示される解決法は…いつだって突然現れた。それも、ただ現れるだけではない。
時間制限というオマケ付きだ。そして、今この瞬間だって…同じことがいえる。もっとも、今回はそれらと違って
俺が実行に移さなかったところで、世界が崩壊したりだとかそういうことにはならない。何も変わりはしない。
…変わりはしない。もしかしたら、これからもずっと奴との関係は変わらないかもしれない。
それはそれで楽しいかもしれない。だが…俺は、あのとき確かに約束した。
『キョン…今の言葉、ハルヒにも…ちゃんと言いなさいよ…?
あたしと…約束しなさい…!これは…団長命令……よ……、』
思い出すつもりが、どこからかそんな声が聞こえた…気がした。なんとなくそんな気がしたんだ。
……
そもそも、この雪が降らなかったら俺は…踏み切る勇気さえ出なかったかもしれない。
あいつが降らせたってのも、あながち間違いじゃないのかもしれんな。
…だから、今伝えるよ。お前に言った言葉を、今こいつに伝える。
今度こそ本当の意味で…俺とハルヒの関係は変わる。だから、後ほんの少しの辛抱だ。
どうかそれまで 雪は絶やさないでくれよな?
「ハルヒ…話があるんだ。大事な…話が。」
天啓(てんけい)とは 天の啓示。天の導き。神の教え。
涼宮ハルヒの天啓 2012年12月24日 第四世界崩壊
本来あったはずの天啓
……
涼宮ハルヒの天啓 2012年12月24日 …雪が降った
本来なかったはずの天啓
【ハルヒ】が雪を降らせた…? 仮にそうだったとして、果たしてそれは『天啓』?
【ハルヒ】が俺たちの成就を望んだ… それこそが天の啓示?天の導き?神の教えだった?
…バーカ。そんなの、もはや天啓ですらねえ。そんな大それた言葉、あいつには必要ない。
昔、俺は奴に言ったんだよ。『誰が何と言おうとお前はれっきとした人間だよ。心に温かみをもつ人だ。』ってな。
なら、この言葉で十分だろう?
応援
…そう。あの日、【ハルヒ】は俺たちの肩を押してくれた。…さりげなくな。
涼宮ハルヒの応援 2012年12月24日 …雪が降った
……
さて、こちらのハルヒさんは応援してくれるだろうか。というのも、カバンの中に爆弾が…
「ハルヒ…ちょっといいか?」
「どうしたのキョン?」
「実は今日提出の宿題があってな…けど、不幸にも今日国木田が来てなくて…。」
「…前にも似たようなことなかったっけ?」
「あったような気がするが…とにかく、そういうわけだからハルヒ!力を貸してくれ!」
「…呆れた。あのね、宿題ってのは自分でやんないと身につかないの!!
人のを見せてもらおうなんて、そんなの言語道断よッ!!…前にもこんなこと言った気がするけど。」
「そこをなんとか…頼む!」
「ダメなものはダメよ。今日までなんでしょ?なら、放課後までまだ時間あるから自力でやりなさい!!」
…やっぱりハルヒは相変わらずハルヒだった。しかも、いちいち言うことが正論だから困る。
「っても、確かあの宿題って結構量があったわよね…
さすがに自力で放課後までは酷か。ねえキョン?昼休み、あたしと図書室に行きましょ。」
「え?」
「わからないとこあったら教えてあげるから。付きっきりで
見てあげるって言ってんの!それなら、放課後までは間に合うはずでしょ?」
「マジか!?そりゃ願ってもないことだが…付きっきりとなると、
昼飯食う時間がなくなるぞ??ましてや俺の理解力しだいじゃ…」
「さすがに抜きってのは勘弁したいけど。でも、要はそうならないよう
あたしが監督してりゃいいんでしょ?何かあったらビシバシ言うから覚悟しときなさい!」
「ビシバシって…図書室だし、あまり騒がしくしたら」
「あんたは自分の身と学校のそんな一規則、どっちが大事なの!?というか、
そんなに図書室が嫌なんなら教室で指導してあげてもいいんだけど。あたしは一向に構わないわよ?」
「いや、やっぱり図書室でいい!」
衆人環視の中、ハルヒとのマンツーマンを見られた日にゃ…顔から火がでるどころの騒ぎじゃない。
……
まぁ紆余曲折あったものの、なんとかハルヒは協力してくれるようだった。…応援ってやつなのかなこれが。
「?何か言った?」
「あ、いや…。面倒かけてすまない、それと、ありがとう… ってのが言いたかったんだ。」
「…素直なのはいいことよ。でも、別に畏まって言うことでもないわ。だって…」
顔を赤らめ、そしてハルヒは言った。
「だって、あたしはあんたの …彼女なんだからっ!」
Fin
236 :
◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 21:02:51.79 ID:ufTRMib2O
ハルヒとキョンの物語、これにて完結です。みなさん、ご声援ありがとうございました…!
237 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 21:03:29.72 ID:cr0mocul0
乙!!!!!
乙!
感動した!
乙!!超乙!!!おもしろかった!!
240 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 21:05:17.55 ID:cr0mocul0
長かったが、最後まで良く書いてくれた
楽しかったぞ
なんかハルヒシリーズ番外編で出せそうだな
支援・保守してくれた方にも本当に感謝です!
さて、番外編を10時頃から投下しようと思います。今日中に終わると思います。
この番外編1、番外編2をもって『涼宮ハルヒの天啓』シリーズは完結です。
それでは、10時にまたお付き合いいただける方は、また会いましょう。
期待!液体!固体!
うおおおおお!超おもしろかった!乙!期待!
244 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 21:31:04.66 ID:f2pl/FDAP
乙!よかった!
245 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 21:39:51.09 ID:vfg40dyH0
乙!番外編も期待!
おつかれー
247 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 21:45:29.29 ID:AJ1C3IMTO
期待してるよん
2012年12月2日…今日というこの日を、俺は一生忘れることはないだろう。多忙的な意味で。
世界を救ったばかりだというのに、昼にはハルヒに叩き起こされ不思議探索。その後、大人朝比奈さんと
長門に会った俺は…今はとある書店の、とある雑誌コーナーの前にて立っていたのさ。カテゴリーは音楽系だ。
ふむ、いろいろ揃ってる。何々…最近話題沸騰のバンド、インディーズからついにメジャーへだと??
気になる…俺はロキノンを手に取りかける。いや、待て、こっちのCD&DLデータも見逃せない…
バンプのインタビューが載ってんだから尚更だな。次にリリースする新曲と近々始まる全国ツアーへの
意気込みに関してか。後で読んでみよう。
一方、SHOXはDIR EN GREY特集…どっかで聞いたことあるバンドだな?
ほお、欧州で人気確立とは。日本のバンドで海外進出ってのも…なかなか珍しい。
オリスタは、ああ、相変わらずアイドルばっかか。そういうのも嫌いじゃないんだがいかんせん興味が沸かない。
ただ、地味にシンガーソングライターの特集もやってるようだから一応読んでみるか。
……
…というわけで結局、主要雑誌には全て目を通した。いやあ、実に有意義な時間だった。そういや、こうして
ゆとり持って音楽誌を眺められたのも随分久しぶりだな。以前はそれなりにチェックしてたはずなんだが…
ハルヒとのSOS団が発足してからというものの、そういう日々もすっかりおざなりになっていた。まあ…もっとも、
今回俺がここのコーナーに立ち寄ったのも『あたしに曲を作って提供することよ!!』っていうハルヒの命令が
契機になってんだけどな。つくづく、俺はあいつに振り回されてんだなあと実感したよ、本当。ん?作曲?
……
なんと、今の今まで俺は作曲の『さ』の字さえ忘れてしまってたらしい。忘れた上で、
俺は好きな歌手のページばかり見てたらしい。当たり前だが、それに比例して時間も潰しちまったらしい。
無意識のうちに現実逃避とは、これまた高等なテクニックを身につけたものだ。
「さて。」
家に電話する。
「今日は晩飯いらないから…ちょっと今友達の家にいてさ。
そこでとろうと思ってんだ。ああ、遅くとも9時までには帰るよ。それじゃあ。」
伝えるべきことをとりあえず伝えておく。なぜかって?とてもではないが、夕食の定刻ともいえる7時まで
帰れそうにないからだ。というか、今がその7時なんだよッ!!さらにここから作曲本に目を通すのだから…
アーユーOK?瞬間移動や情報操作ができる長門でもない限りもはや不可能である。
「じゃ、気を取り直して本来の目的でも遂行しようかね…。」
作曲本は意外と早く見つかった。楽器店ではなく普通の書店だっただけに
オーソドックスなものしか見つからなかったが…まあ、立ち読みする程度だし今の俺にはこれで十分だろう。
とりあえず【作曲入門】だの【初心者のためのコード理論】だのいろいろ読みあさってみる。
……
さて、およそ15分が経過したところだろうか。はっきり言おう。わからん!
メロディーラインだけでいいと言っていたが…それさえも怪しくなってきたぞ。というのも…
わかる人にはすぐわかるはずの基本的音楽用語でさえ、俺には理解しきれてなかったからだ。
つくづくと後悔する。もっと音楽の授業まじめに受けてりゃよかった。…しかし、俺にもプライド
というものがある。一度引き受けたからには成し遂げるつもりだ…そう、ハルヒのためにも。
まあ、そういうわけで今日はこのへんにしておくか。帰って中学時代の音楽の教科書でも
引っ張り出して…それでもわからない用語があるようならネットで調べる等して補足しておこう。
粗方の知識が整った上で、また書店に足を運べばいいよな?できれば…今度は楽器専門店で。
去ろうとして、俺は持ってた本を棚に返そうとしたところ…不意に、背後から聞き覚えのある声がした。
「ククク…キョン、君もついに覚醒してしまったんだね。まさかミュージシャン志望とは思わなかったよ。
いや、作曲家志望だったかな?いずれにしろ音楽業界で生き抜いていくのは難しい…それはそれは、
激動の人生を歩むことになるだろう。聞いた話によると、全国でCDを1万枚以上売り上げるような
バンドでも、その年収はフリーターと大差ないそうじゃないか。日本では特に、レコード会社や
広告代理店の中間搾取がひどいみたいだからね。必ずしも客観的に成功に見える人、あるいは
才能ある人が報われる世界ではないということさ。しかし、それを知ってもなお、そんな
未知の世界への挑戦をあきらめないというならば、僕はそんな君を全力で応援する次第だ。」
…一言、言っていいか?
「それが今日初めて会った人間に投げかける第一声か…!?長いッ!!長すぎるぞッ!?」
「僕がそういう人間だということは、とっくの昔に君は了承済みのはずだ。
別にそんなに驚くこともないだろう?あとね…ここは本屋だ。声の大きさには気をつけておくべきだね。」
お前がそうさせたんだろうが!?っと、いかんいかん。こいつ相手に本気になっても不毛だということを、
俺が誰よりも一番知ってるはずじゃないか…しかし、まさかこのタイミングでお前に出会うとは
想像だにしてなかったぞ…なぁ?そこでニコニコしてる佐々木さんよぉ?
…ホント、今日はいろんな人間と遭う日だ。これも何かの巡り合わせか?
「とはいえ、いきなり話しかけたりしてすまなかったね。久々に君を見てしまったんで、つい…ね。
衝動が抑えきれなかったんだよ。旧友との素晴らしき再会、それに免じて許してはくれないかな?
「それに免じての意味がわからんが、あれこれ考えるのも面倒だからとりあえず許す。」
「そうこなくては。相変わらずノリがいいなぁキョンは。」
お前のノリは特殊すぎて理解不能だけどな。もっとも、相手が女子となると、
途端に口調が普通になるんだから本当…いろんな意味で掴みどころのない人間だお前は。
「まあ、さっきのは冗談としてだ、本当に君は何をしてたんだい?以前からキョンが
趣味としての音楽に熱心なことは知ってたが…ついにその熱意の延長線上として、
作ることさえ趣味の一つとして内包してしまった、といったところなのかな?」
「…そんな大層なもんじゃないぜ。まあ…これには海より深く、空より高い、
それはそれは複雑な事情があってだな…。」
「くっくっく…いや、失敬。君のそのしかめっ面を見て、一発で事情が呑み込めたものでね。
つまりあれだ、また君は涼宮さんたちと面白いことをしてるってわけだ。」
「一発でわかるほどに、俺の顔はひどく単純だったか?」
「おやおや、悲観してはいけないな。それが君の良いところでもあるんだから。おかげで、
僕は退屈することなく、こうやって優雅な時間を君と過ごせてるんだ。むしろ誇るべきじゃないかな?」
なんかもう、もはや喜んでいいのか悲しんでいいのかすら、わからんくなってきた。
しかし、実際のところはどうなんだろうな?思ったことがすぐ表情に出るってのは。それはそれで
円滑なコミュニケーションを…は!いかん!ヤツと本気で対峙してしまった時点で俺の負けだ…っ!
「…まあそんな具合でな、振り回されながらもなんとか生きてんのが俺だ。
そういうお前は何しに来たんだ?」
「それは、君に話さなくてはいけないものなのかい?」
質問を質問で返された。
「おいおい…俺だけ聞いておいてそれはないだろう…
それとも、本当に知られたくない理由でもあるのか?」
「ないけどね。」
「じゃあなぜ話さない??」
「だって、そもそもその理由がないんだから話しようがないだろう?」
ニヤッとした表情を浮かべ、今か今かと俺の反応を待ち望む彼女。
ああ…そういうことですか。なんとなく『理由がない』の意味がわかった。
相変わらず、俺はヤツの詭弁に翻弄された哀れな子羊だったのさ。
「あのなぁ佐々木…それならそれで、始めから『なんとなく来た』って言え!
ホント、紛らわしい言い方をするよなぁお前は…」
「ククク…そう、それだよ、そんな顔が見たかったんだ。」
「はぁ…」
ため息をつかざるをえない。
「まあまあ。たまにはこういう会話のキャッチボールも悪くないだろう?君も満更ではなさそうだしね。」
キャッチボールどころか、お前が投げる球は変化球ばっかだろ!?ちょっとはそれを必死に追いかけまわす
捕手の身にもなってほしいもんだね…というか改めて思ったが、やはり佐々木とハルヒはどこか似てる。
異なるベクトルで双方とも変人なのには違いないが…前者は意味不明の質問を、後者は無理難題な要求を
突き付ける辺り、立ち位置的にはかなり近いものがあるだろう。…古泉の例の憶測も、強ち間違っちゃ
いねーのかもな。まさかこんなしょーもない会話でそれを実感しようとは、人生何が起こるかわからんな。
「ところでキョン。とっくに7時をすぎてるようだが…家のほうは大丈夫なのかい?
いつもこの時間に席を囲ってみんなで食事してるのだろう?」
「ああ、いろいろあって遅くなっちまってな。だから家には連絡しといたよ。どっかで食べてくるってな。
お前こそ大丈夫なのか?門限とかどうなってるんだ?」
「おいおいキョン…中学時代ならともかく、高校生にもなってこの時間で門限云々はないよ。
時刻だってまだ7時をすぎたあたりだ。一応9時までとは決まってるけど。
それで…キョンはこれからどこかで外食でもしていくのかい?」
「ん?そーだな…考えてなかったな。まあ、一人で外食すんのもアレだから、
どっかのコンビニで適当に飯でも買って帰ろうと思ってるが。」
「一人で夜食とは、それはそれは寂しいことこの上ないね。」
はぁ…またそれか。何度も何度もそんな煽りに乗せられる俺ではないぞ。
「ああ、結構結構。寂しくて結構さ。」
「ん?反応を変えてきたね。なるほど、これはこれでまた面白い。くっくっく…」
ダメです先生。佐々木さんがどうしても倒せません。あきらめてしまってよろしいでしょうか?
というか、俺以外であっても佐々木が倒される姿など想像できん。理論武装した古泉ですら
攻略不能なんじゃないか??とりあえず俺は途方に暮れてみた。
「まあ、そんな君にも朗報がある。実を言うと、僕も君と似たような状況下に置かれてるんだ。」
「じゃあ、俺とどっか食事でもいくか?」
「いいね。そうしよう。」
「ちょ、ちょっと待て?!?!」
ありのまま今起こった事を話すぜ。『冗談で言ったつもりが、いつのまにか既成事実と化していた。』
な、何を言ってるのかわからねーと思うが 俺も何をされたのかわからなかった。
頭がどうにかなりそうだった… ふんもっふだとかセカンドレイドだとか、そんなチャチなもんじゃ断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
「似た状況って、お前家の人は??」
「仕事の都合で2人とも今日は帰ってこれないらしい。だから、僕はこうやって外を歩いてたというわけだ。
買い出しに行って自炊するか、弁当でも買って帰るか、あるいはどこかに行って外食でもするか…
結局どれでもよかったから、とりあえずは本屋に行った後で、そのときの気分で決めようと思ってたんだよ。
どうだい?納得したかな?」
大体の事情はわかったものの…納得するって一体何に??お前と一緒に食べに行くことか??
「もしかして、本屋で俺に会ったから外食行く気分になったのか?」
「おいおい、何を言ってるんだい?今は僕の意志は関係ないよ。
そもそも、君が僕を食事に誘ったんじゃないか?」
なんということだ。揚げ足を取られてしまった。調子のったツケが返ってきましたよ、
それも物凄い早い時間でッ!こんなのってあんまりじゃね?
「キョンもなかなか殊勝なことを言うなって、僕は感心してたんだよ。
『一人で食べるよりみんなで食べた方が楽しい。』国語の文章にもよくある常套句だね。
そういう国家公認の美徳を自ら体現しようとしてた君が、僕にはまぶしくすら思えたんだ。」
「安いとこでいいよな?じゃあすき家にでも行くか?こっから近いしな。」
「僕はそれで構わないよ。」
俺は闘うことをあきらめた。っていうか放棄した。『ダメです先生。佐々木さんがどうしても倒せません。』逆襲編、
これにて完結。ちなみに続編の予定はありません。 たぶん。
偶然客が空いてたこともあって、俺と佐々木は難なく席を取ることができた。
「で、佐々木は何を頼む?」
「キョンはもう決めたのかい?」
「いや…まだだが。」
「僕はキョンが食べるのと同じものにするよ。」
「それまたどうして?」
「気分さ。」
「……」
闘わんぞ…?闘わんと決めたんだ俺は!!
「ははは、これでは何とも抽象的すぎる回答だ。いや、何、久々に君と会ったんだ。
仲を確かめ合うためにも、なんとなく君とは違う料理を頼みたくなかったんだよ。
ふむ、説明したところで抽象的なことに変わりはなかった。ま、あまり深く考えないでくれ。」
仲を確かめ合うって、そんな大げさな。けれど、俺にはそういう佐々木の態度が嬉しくもあった。今となっては
俺は塾に通ってないし、ましてや在籍してる学校も互いに異なる2人だが…そんな希薄な関係であっても、
俺とは親友でいようと佐々木は思ってくれているのだ。そこまでされて何とも思わないような奴は、残念ながら
人間的ともいえる基本的感情が欠落してるとしか思えない。もっとも、俺と佐々木は、厳密にいえば無関係
というわけではなかったのだが。雪山での遭難事件以来、藤原・橘・周防といったSOS団の面々と敵対する
連中が現れ始め、そいつらが佐々木の取り巻き(本人はそうは思っていないが)となってしまっていたのだ。
あのときは本当に驚いた…そりゃあな、宇宙人、未来人、超能力者といったとんでも存在ならまだわかる。
まさかつい最近まで親友であり、そしてごくごく普通な一般生徒であったはずの彼女が(性格はともかく)
一体どうして涼宮ハルヒにまつわる事件の当事者になっていると考えられようか??言うまでもなくありえない。
妄想であってもそんなこと考えもしないだろう。ならば、古泉・長門・朝比奈さんたちからすればハルヒの
重要なカギともいえる存在だった…そんな俺が佐々木とは関係ないなどとは、もはや口が裂けても言えない。
言えるとすれば、あまりにそれは無責任で、そして現実逃避そのものとなろう。
……
ここまで考えてふと思った。いや、単なる俺の思いすごしかもしれんが…どうも、『仲を確かめ合う』この言葉が
引っかかった。もちろん聞いて嬉しかったし、佐々木が今このタイミングで言った理由もわかる。客観的に見れば
それで解釈は終了なんだろうが…どうも俺にはそれとは別のニュアンスがあるように思えた。言うなれば、
『これまでの関係が白紙になったとしても、君は僕と親友でいてくれるかい?』こんなふうに…。根拠はない。
妄想かもしれない。しかし、ハルヒの能力が消えたかもしれない今、どうしても勘ぐり深く考えてしまうんだ。
…即ち、【これまでの関係】=【ハルヒを中心とした関係】が終わりつつあるのではないか…
いや、もしかしたら終わってしまったのではないか?そんな予感が俺の中にはあった。
これが指す意味は、つまり佐々木の能力も、ハルヒのそれと同様に…ということである。
古泉の例の推論でいくならば、当然そうなるはずだ。もちろん、そうなった場合本人である佐々木も
そのことに気付いてるはず。そのとき彼女は一体何を思ったのか…現在俺の向かい側にて
静かにメニューを眺めてる、そんな佐々木の表情からは何も推し量ることはできなかった。
257 :
涼宮ハルヒの天啓 番外編1 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 22:04:15.59 ID:ufTRMib2O
しかし、結果的にはこのとき俺が…佐々木のことを必死になって推察する必要はなかったんだよな。
なぜなら数分後、本人の口から直接それを聞くこととなったのだから。
「で、キョン。もうメニューは決まったかい?」
「え…あ、すまん、まだだ。すぐ終わるから待っててくれ。」
「ふーん?おかしなもんだね君も。僕の顔を執拗に
ジロジロ見るもんだから、もうとっくに決めちゃってるのかと思ってたよ。」
「!?」
視線を合わせたりはしてなかったはずなんだが…!?
「そ、それはあれだ、お前は今どんなモノが食べたいのかなーと、表情から伺おうとしてたんだよ!」
「別にそこまで配慮してくれなくていいけどね。基本、僕は何でも食べるから。
君の好きなように選んでくれていいんだよ。」
「そうだよな…ははは。」
「とでも言えば、満足かい?」
ッ??
「くっくっく、キョン、それで隠してるつもりかい?その焦った感じ、適当に場を取り繕った感じ、
傍から見りゃ丸わかりだよ…?それにしても何をそんなに…くっくっ…どうしてくれるんだいキョン?
君のその二転三転する顔のせいで、こっちは笑いが止まら…くっくっくっ」
「……」
佐々木様には全てお見通しというわけですか。というか、今直感で思った。
こいつは将来検察官になるべきだッ!その頭の回転の速さ、そして鋭い洞察力をもってすれば裁判など、
瞬く間に終了だろう。弁護人の反論さえ許さない圧倒的詭弁術に加え、挑む者の気さえ削ぐ巧みな心理術…
佐々木みたいのが何人もいれば、裁判の長期化という国が抱える日本特有の司法問題も
一挙にして解決だろう!?ヤツの判断力ならば、冤罪が生まれる可能性も低いだろう。
もっとも…そんな量産型佐々木は見たくないが。こんなの一人で十分だ…
「とはいえ、こんなにも僕を笑わせてくれたんだ。その敬意に感謝し、
追求は控えておくとするよ。むしろ追求しないほうが面白そうだからね。」
「佐々木っ」
「ん?何だいキョン?」
「オクラ牛丼を頼もうと思うが、これでいいか?」
「いいんじゃない?しかし、そんな『オクラ牛丼』という突飛な名前だけじゃ、
僕の気はそれないんだなこれが。チョイス自体は悪くなかったと思うけどね。」
「そうですか。」
俺は抵抗することをあきらめた。っていうか放棄した。さっきも似たようなことを言った気がするが、
んな昔のことは忘れた。もう知ったこっちゃねーや。
しばらくして店員の方が来てくれた。さすがに前回みたいに機関の人間…
というわけではなかったので、そこは安心した。もしまた森さんだったらマジメにどうしようかと思った。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「ええっと…オクラ牛丼2つで。」
「かしこまりました。サイズはいかがしましょう?」
そういやサイズも選べるんだったな。ちなみに、今の俺には選択肢はこれしかない。
「じゃあ特盛りで。」
「…オクラ牛丼特盛り2つ、以上ですね?しばらくお待ちください。」
厨房へと去っていく彼女。
……
実は今、俺の腹は極限状態だった。皆さんはお気付きだろうか?今日一日の、
今に至るまでの俺の食事情を…!まず、朝食は食ってない。起きたのが昼の3時だったからだ。
で、そこから急いでハルヒたちSOS団と合流して、まずは喫茶店でオレンジジュースを一杯飲んだ。
そして不思議探索中に古泉・朝比奈さんに断って肉まん、おにぎりを腹に入れた。
そこからまた、いろいろ長いプロセスはあったものの…とにかく、その間は何も食していない。
長門のウチでカレーくらい軽くごちそうさせてもらったらよかったかもしれない…後の祭りだが。
つまりである、おわかりだろうか??今日昼に起きて、そして現在夜8時におけるまで…
俺はオレンジジュース、肉まん、おにぎりの3品しか食っていないのである!!
大人朝比奈さんとの話、そしてさっきの作曲本との格闘では、精神的余裕がなかったことが功を成し、
おかげでそれほど顕著な空腹感は覚えなかった。しかし、外食店に入った今となっては限界だ…
意識せざるをえない…!昨日あんなことがあったばかりで、にもかかわらずハルヒに
叩き起こされ、今の今まで奔走してきた俺を一体誰が咎められようか??いや、むしろ褒めてくれッ!!
食事の到着をまだかまだかと心待ちにしながら俺は 切実に、そんなくだらんことを考えていたのさ。
「なんとも…悲惨なくらいに追い詰められた顔をしているね君は。さすがにこの有り様じゃ、
僕でなくとも君の異変には気付くよ。そんなにも腹が減っていたというのかい??」
俺は心なしにそう頷く。気付けばテーブルの上に顔をうつ伏せているではないか…
空腹というのもあるが、何より昨日からの疲労の蓄積というのも大きな原因だろう。
「なあ…佐々木よ。今日って日曜だよな?」
「ほ、本当にどうしたんだいキョン??さっきまで僕の理不尽な質問に
元気よく付き合ってくれてた君は、一体どこへいったというのか??」
ああ…理不尽って自覚はあったんすか佐々木さん。それは何よりです…
「それより…日曜だよな?今日は。」
「そ、そうだよ。日曜だね。」
さすがの佐々木も俺の途方ないマイナスオーラを感じ取ったのか、
すっかり萎縮してしまっている。なんとも、珍しいものが見れたもんだな。
「ってことは…明日はつまり月曜か…」
「きょ、キョン…」
なんということだ…こんな調子で、明日学校だというのか??宿題は??授業は??
いや、そう焦る必要もねえ…要は宿題はやらなきゃいいわけだし、授業中は寝てりゃいいんだ。
なんだ、簡単なことじゃねえか?
……
そうでも思わないと、もはややってられない俺なのであった。
261 :
涼宮ハルヒの天啓 番外編1 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 22:26:26.18 ID:ufTRMib2O
……
「…1日くらい休んだらどうだい?」
「…え?」
今何か佐々木が言ったような気がする。何を言った?
「1日くらい休んだってバチは当たらないということさ。むしろ、今は12月という最も冷え込む時期。
そんな中無理して体をこじらせたら、それこそ本末転倒というものだろう?それに、そんな事情なのなら
涼宮さんだって決して怒ったりはしないよ。それどころか、SOS団の部員を引き連れ団体訪問のごとく、
君のとこにお見舞いに来るんじゃないかな??」
…意外だ。生真面目なこいつのことだから、てっきり説教をくらうとばかり思ってたが。
「それは曲解というものだよキョン。それに、僕はただ合理的な判断をしたまでさ。」
「…ここは、心配してくれてありがとうと言う場面か?」
「当人にそれを確認してどうするんだい…?けど、そう言われて悪い感じはしないかな。」
「じゃあ言ってやろう。佐々木、ありがとよ。」
「どういたしまして。」
……
「まあ、とりあえずはこれから来たる食事を存分に堪能することだね。案外、腹を満たせば君のその不調も
回復するかもしれない。病も気から…と言うから。良くも悪くも人間は単純なようにできてるのさ。」
「お待たせしましたー。」
「噂をすればだね。」
「では、ごゆっくり。」
職務をこなした店員が再び厨房へと戻っていく。つまり、今俺の目の前には…
…ゴクリ
一体どれだけこの時間を待ち望んでいたことか…!?感動のあまり、つい涙腺が弛むのがわかる…!ダメだ…
気を許せばその瞬間食器にかぶりつき、犬食いしてしまいそうな勢い。とりあえず俺は落ち着く必要がある。
「佐々木…ちょっとそこにあるポットでお茶を注いでくれないか?」
「了解だよ。」
俺が差し出したコップに、そっとポットの口を向ける佐々木。
「はい、あなた。お茶ですよ。」
「夫婦か!?」
「なんとも…!正直、今のは死者に鞭を打つようなマネだったから完全スルーも覚悟してたんだが…
なるほど、これが人間の底力ってやつなのかい??」
俺に聞かれても知らんわッ!!というかっ、死者同然だと認識しておき、何ゆえお前は
追い打ちをかけようと思ったのだ??俺にはまずそれが知りたい。切実に知りたい。
死者ってのはな、いたわってやらねえとダメなんだぜ…。
まあ、それとは別にいささか元気が出てきたってのは事実だが。おそらくは目の前に置かれた
オクラ牛丼特盛り…つまり、いつでも食おうと思えば食える。そんな環境下にあるという一種の安心感、
そして優越感…それだけで、俺の疲弊した精神状態に一時の安らぎをもたらすには十分といえた。
さて、もういいだろう?今俺が成すべきことをしようじゃないか。
「いただきます。」
付属されたカツオブシを丼の上に振りかけ、後はそれを食べるだけだった。
……
気付けば容器は空だった。俺ってこんなに食べるの速かったっけ?ましてや特盛りだから量はあったはずだが…
「おいおいキョン…君ってやつは。口にありったけ丼をかきこみ、噛み砕いたか怪しい部分は
お茶で一気に流し込む。それはそれは、普段の君からは想像もできない荒業を披露していたよ。
こんな文字通りの暴飲暴食をできる人もなかなかいないだろうね。」
…そんなに俺はひどい有り様だったのか。ヒドイやつがいたもんだな…。そういや、よく味わった記憶がない。
ただ、美味かった!それだけだ。 『美味かった!』それだけで十分ではないか??シンプルイズベストと
いうだろう??結果的に、俺は腹が膨れる多大なる幸福感にも包まれた。これ以上どう表現せよと言うのだ!?
…ああ、そうだな。最後に言うべき台詞があったよな。俺は手を合わせ、そして言う。
「ごちそうさまでした…!」
農家のみなさん、いつもいつもありがとう…!おかげで日本の食卓は今日も平和です。
「うーむ…さすがに食べきれないか。参ったね。」
などと思ってたところ、不意に佐々木の声がする。
「どうしたんだ?」
「そのままの意味さ。どうやら完食できそうにないんだ。」
「なん…だと…」
ついさっき農家のみなさんに感謝したばかりだというのに…
残してしまっては彼らに申し訳ないじゃないか。というか、今気付いたことなんだが…
「佐々木よ…俺と同じ特盛りとは、一体どういうことだ??」
本当にどういうことなんだ??佐々木が大食いだった記憶はねえし…
ってか、特盛りサイズならそりゃ残しもするだろう?女の子なんだぜ?
「どうしたもこうしたも、君が頼んだんじゃないか。僕はただ、それを素直に受け入れ黙々と食してただけだ。」
俺が頼んだ…?ちょっと待て、あのときは確か
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「かしこまりました。サイズはいかがしましょう?」
そういやサイズも選べるんだったな。ちなみに、今の俺には選択肢はこれしかない。
「じゃあ特盛りで。」
「…オクラ牛丼特盛り2つ、以上ですね?しばらくお待ちください。」
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…しまった。佐々木のことを全く考えてなかった…いや、だって仕方がないだろう…?
ちょうど飢餓感で思考停止してた時間帯だぞ?ああ、御託を並べたところで
どうみても言い訳ですね本当にありがとうございました。
「すまない佐々木…あのときお前のサイズも聞いておくべきだったな。けど、それならそうで
お前も店員に横から注文入れりゃよかったのに。『片方は並でお願いします。』とかさ。」
「その意見は至極妥当だと言える。そしてサイズだって、自分に不釣り合いなのはわかってたよ。」
むしろ釣り合ってたら驚愕ものだ。まあだからといって、それで佐々木を嫌ったりは決してないが。
「それでも今日だけは君と同じ…あ、いや、何でもない。とりあえずさ、食べるの手伝ってくれないかな?
いくら特盛りだったとはいえさっきがさっきだし、君もまだ満腹というわけじゃないんだろう?」
「まあ、実を言うとそうなんだけどな。じゃあ少々いただくとするぞ。」
…というわけで、結局残さず食べることができた。
「ふーっ、満足満足。さすがにこれ以上は食べれないな。」
「お疲れ様キョン。はい、お茶だよ。」
「おう、サンキュ、佐々木。…今度は『あなた』とは言わないんだな。」
「言ってほしかったのかい?まさか君がそういう属性の持ち主とは思わなかったな。」
「違うっつーの。」
そういう属性が何なのか気になったが、聞けば最後ヤツとのイタチごっこ開始である。
即ちそれは俺の負けなんで、とりあえず否定だけしておく。
しかし…結局いただいたのは少々じゃなかったな。半分は収奪してしまったかもしれない。
そうなると、俺と佐々木が同じ値段支払うってのも何か理不尽だ…ここは俺がヤツの半額は出しておくべきか?
いや、そもそもだ。よく考えれば佐々木はまごうことなき女の子だった。断って言っておくが、決してヤツに
女としての魅力がないとかそういうわけではない(むしろ外面だけならかなりのトップレベルのはずだが)
あまりに友達としての距離が近かったせいか?口調のせいもあると思うが、とにかく、
これまで佐々木のことを女だと意識したことはあまりなかった。そういうわけでだ、昨今の男女観的に
女子相手に割り勘ってのはちょっとまずいような…?そんな強迫観念があった。
しかれば、ここはヤツの肩をもつつもりで…などと考えていると
「…何を考えてるか知らないけど、奢りとかそういうのはなしだからね。」
いや、知らないけどとかじゃなくてズバリ当ててるし…というか、なぜまたしても考えてることがわかった??
ここまでくると洞察力云々の問題じゃないような気がするんだが…アレか?こいつには何か
千里眼のような特殊能力でもあるんじゃないのか…?と、漫画みたいなこと考えても虚しいだけなんで
妄想はこのへんにしておく。どうせ、俺がそういう表情をしてたとか、そう言うんだろう?こいつは。
ここまでわかりやすいのもある意味特殊能力だな。俺。
「…その諦観しきった表情見ると、やっぱり図星なんだね。まったく、君ってやつは…
どうしてそう変なとこでマジメになるかな?言っとくけど、僕はそういうの気にしないよ。
というか個人的に言わせてもらうなら、そういう風潮自体あまり好きじゃないんだ。確かに、
表面上は女性が得するようにできてるけどね。逆を言えば、それは暗に女性は男性より経済力がないと
言ってるようなもんだよ。ましてや君と僕は友達の間柄であって、決して特別な関係ではないんだ。
さすがに、そこまで大人の男女観を持ち込むのはね。もしそれを是とするならば、日本の青年諸君は、
きっと満足な青春すら送れなくなること違いない。日々の動作1つでも金銭が絡んでるとなると、
生活しづらいことこの上ないだろう?男はもちろんだが、相手に払わせたくないと思ってる女だって
気が気じゃないさ。そういうわけで君が僕に奢る必要はないんだよ。もちろん、その気持ちは嬉しかったけどね。
そういうのは恋人や夫婦間でのみ成立するものと、個人的にはそう考えてる。」
「そ、そうか…わかった。じゃあそうしよう。」
すっかり俺は佐々木の語るジェンダー論にひれ伏してしまっていた。
なかなか隙のない考えだったように思う。そりゃ男女観ってのが人によって千差万別なのはそうなんだろうが、
とりあえず本人がこう言ってるんだ。なら、敢えてそれに異を唱える道理もないだろう。
しかし…改めて佐々木には感服した。自分の社会的役割や責任というのを、
この歳にしてヤツはすでに自覚してるように思えたからだ。あー、なんというか、つい比べずにはいられない。
どこぞやの団長様に爪の垢で煎じて飲ませたいくらいだな。そう思うと、不意に笑いが込み上げてくる。
「?何やら楽しそうだね。」
「あ、ああ…すまん。なに、あまりにお前とハルヒが対照的だったんでな。つい。
奴なら間違いなくこの局面で俺に奢らせたろうよ。というか、そう命令するに決まってる。
実際問題、俺はこれまで何度も奢らざるをえない境地に立たされたんだからな。」
「それは…あれだろう?君がSOS団の活動時刻に遅れたからとか、確かそういう涼宮さんが決めた
規則によるものじゃなかったかな?彼女自体は男女どうこうとか、そういうことは考えてなさそうだけど。」
「まあ…そうなんだがな。そうなんだが…俺にはどうしてもハルヒが、
あのハルヒが俺と割り勘する姿が想像できねーんだ…」
「ほう…そこまで強く言うとは。ある意味確信の域に近いのかな?」
「そんな感じだ。」
「それはそれは…なんとも羨ましい限りだ。」
「『羨ましい』??お前は、理不尽にも奢らされる俺の身が羨ましいというのか?どういう了見だ…。」
「くっくっく、何を勘違いしてるんだい君は。君じゃなくて涼宮さんのことだよ。」
涼宮?ってことはつまり、お前は…相手に奢ってもらう立場が羨ましいということか??
まあ、ある意味じゃそれは当然か…だとすると
「佐々木…お前、もしかして本当は俺に奢ってほしいんじゃないか?」
当然こういう帰結になる。
268 :
涼宮ハルヒの天啓 番外編1 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 22:50:18.69 ID:ufTRMib2O
「そうきたか…くっくっくっ、相変わらず君という人間は面白いね。残念だけどキョン、またしてもそれは勘違いだよ。」
「……」
一体どういうことなの?
「僕はねキョン、君に行動原理をしっかりと把握されてる、そんな涼宮さんが羨ましいと言ったんだよ。そして、
そんな彼女も君のことを把握してるからこそ、理不尽な要求が通せるんだ。互いが互いのことをわかってる…
なんとも理想的な、仲睦ましい男女じゃないか。」
「ちょっと待て…さすがにそれは飛躍しすぎだろう!?ハルヒはな、別に俺に限らず大体あんな感じだぞ??」
「ほう。じゃあ逆に聞こう。彼女が、涼宮さんが君以外の男子に対し
果たして奢ってくれなどという要求をするかな?」
え…?そりゃあ…するんじゃないか?と一瞬考えて思いとどまった。昔ならともかく、
SOS団の発足から随分の時が経過した今…団員以外のメンツに無理難題を言い渡したりするのだろうか?
特に最近のハルヒはおとなしくなってきてるから尚更だ。あ、ちなみに古泉は論外な。
副団長という階級で優遇されてる上、さらには機関とかいうとんでも組織の協力も得ている。
同じ団員への大号令でも、その質は俺と古泉とでは天と地ほどの差があるのは言うまでもない。
で、結局どうなんだろうな?ふと俺の知らない第三者がハルヒに奢らされてるシーンを想像する。
…胸がムカムカしてきたのはどうしてだろう。食べすぎたか?
「さっき僕は言ったよね?男女における奢るという行為は恋人や夫婦間でのみ成立するって。
もちろん、これは僕個人の勝手な考えだ。ただ、涼宮さんにしたって大きくこの考えから逸脱してるようには
思えないんだ…僕からすればね。彼女がじかにそれを意識してるかどうかは知らないけど、
少なくとも君のことは一人の男性として、特別な価値を置いてると思うよ?」
「あのなぁ…お前は、少々人間というものを過大評価しすぎだ。
世の中にはな、損得勘定だけで奢ってもらおうとする奴だってざらにいるんだぞ。」
「じゃあ聞くけど、キョンは涼宮さんのことをそういう類の人間だと思ってるの?」
「……」
……
「いや…思わない。」
天上天下唯我独尊その人であり、ただひたすら自分の覇道を突き進んでいく…
それが涼宮ハルヒだ。が、言ってしまえばそれだけ。良い意味で…あいつは単純なんだ。
ゆえに権謀術数などとは程遠い所にいる存在…それもまた涼宮ハルヒだ。
……
ところで、ふと思ったのだが…。佐々木が指摘するように、とりあえず俺がハルヒのことを
よく知ってる人間なのは間違いない。だが、ある意味では佐々木のほうが詳しく見えるのは
俺の気のせいか?2人はそこまで面識もなかったはずなのだが…
「どうしたんだい?難しい顔をして。」
「いや…やけにお前がハルヒに詳しいと思ってな。」
「おや、君にはそう見えたのかい?仮にそうだとしたら、さて…それはどうしてなんだろうね。
彼女とはあまり会ったこともないから尚更だ。なぜだか君にはわかるかい?」
いや、わからないからお前に聞いたんだが…!?しかし佐々木よ…またそれか。付き合い長いからわかるが…
あいつは今、決して自分がわからないから俺に聞いてる、というわけではない。敢えて聞いているのだ。
なぜかって?俺の反応を見たいからに決まってるだろう…?
「はぁ…やれやれだな。佐々木さん、わからんからどうか答えてください。」
「随分と早い降参だね。よしんばこの話題を引っ張ろうと思ってたんだけどな。まあ、わからないなら仕方ないか。
答えはね、僕と涼宮さんが似た者同士だから。そのせいかな、なんとなく考えてることがわかるんだ。」
「……」
似た者…同士…??そりゃあな…ある意味では似てるだろうよ。俺に対する立ち位置的意味でな…
実際、さっきそういうこと考えてたからわかる。しかしだ、俺の考えてる【似てる】と佐々木の言う【似てる】は、
果たして一緒の意味なのか??いや、なんとなくだが違うと思う…
「ふむ、どうやら意味をよく呑み込めなかったらしいね。じゃあもっと砕けた表現をしよう。
つまりね、同じ人を好きになった者同士ってことだよ。」
「え?」
こいつ今、さらりと凄いこと言ってのけなかったか?聞き間違いとかそういうオチ?
「すまん…誰が、誰のことを好きだって??」
「僕と、涼宮さんが、キョンのことを。」
「……」
幻聴?俺の耳はついにいかれてしまったのか?この歳で?
いや、だって…ありえないだろ??外食店で、それも平然と言ってのける。
…なんだ、ただの普通の会話か。俺の勘違いか。
271 :
◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 22:54:52.24 ID:ufTRMib2O
番外編1終わりです。では、続けて番外編2へと移ります。
……
とりあえずだ、現実逃避してる場合じゃないぞ。いや、だって、今のってどう見ても告白だったろう??
いつから告白ってのは…こんな日常会話に混じる親近感あふれる代物になったんだ??
…待て待て!とりあえず落ち着け!今は告白の定義などどうでもいいだろう…!?
それよりも佐々木にどう返答するか、それを考えねばならない。改めて佐々木を見る。…かわいい。
いや、第一声がそれってのもどうかと思うが…しかし事実なのだからどうしようもない。フィルターをのけたって、
余裕で平均は超えてるだろう。顔以外にも目を向けてみるが…そのプロポーションの良さだって言うに及ばず。
認識した途端、この状況が物凄く不思議に思えてきた。なぜ俺みたいな平凡野郎がこんな美少女と
談笑できているのかと…慣れってのは恐ろしいもんだな。そう考えるとハルヒもそうか。
あいつにも佐々木同様のことが言えるかもしれない。朝比奈さんや長門にしてもそうだが、
どうしてこう俺の周りにいる女の子はレベル高いコばかりなのか。つくづくそう思った。
「…キョン?さっきからどうしたんだい…?僕の顔や足に何かついてるのかな。」
佐々木が顔を伏せ気味にして、何やら恥ずかしそうに声を発してる。って、え?顔や足?
……
「!す、すまん!」
つい声を張り上げてしまう。そんな俺に、佐々木はキョトンとしていた。
おそらく俺は佐々木の体を…舐めまわすかのごとく見てた…んだと思う。何やってんだ俺…!?
273 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 22:58:45.14 ID:uqR0Ojb8O
乙
ウチのくつくつ笑う嫁さんに脚光をあてていただきどうもありがとう。
「いや、まあ、別にいいんだけどさ。僕も一応女の子だから、殿方に理由もなしに
ジロジロ見られるのは恥ずかしいんだ。そこはわかってほしいな。」
「あ、ああ…すまん。次からは気をつける。」
「というか…何をそんなに動揺してるんだい?まさかとは思うが…『好き』をそういう意味でとった?」
え…?どういうことだ??『そういう意味』って何??『好き』は『好き』でしかないんじゃないのか…!?
「あ、あのねえキョン。さっき言った好きってのは友達としての好き、つまりlikeだよ。
愛してるのloveじゃないんだ。状況的に後者じゃないってことは言わなくてもわかると思ってたけど…」
「……」
あまりの脱力で死にそうになった。何この茶番は?そして、俺のあのドキドキも一体何だったのか。
いろんな意味で涙が出そうになった。とりあえず、心の中だけでいいから一言叫ばせてください。
まぎらわしすぎる…っ!!
「ああぁ…悲しい顔をしないでキョン。こっちも悪かったよ…安易に好きって言ったりしてゴメンね。」
「いや、いいんだ。もうそれについては…」
疲れた。以上。
「ただ、涼宮さんがlikeかどうかはわからないけどね。案外loveだったりするかもしれない。」
「佐々木…この局面でからかうのはやめてくれ…俺をオーバーキルしたって良いこと何もねえぜ…?」
「別に冗談で言ったんじゃないけどなぁ今のは。で、実際のところどうなんだい?彼女は。」
「どうなんだって…俺にそれを聞くか!?どうしたもこうも、相変わらず涼宮ハルヒその人よ。
今日の昼会ったときだって、団長様以外の何者でもなかったさ。」
「今日…ああ、そういえば日曜はSOS団の不思議探索だったか。何にせよ、彼女は元気そうだね。」
「元気すぎて困るくらいだ。」
「くっくっくっ、そのバイタリティー、僕にも分けてほしいものだ。しかし…ふむ、
その様子だと何もかもうまくいったようだね。本屋で会った時点でなんとなくわかってはいたけど。」
「?何の話だ?」
「隠さなくていいよ。昨日何があったかは…橘さんや周防さんから聞いたからね。」
っ!
一瞬びっくりした俺だったが…よく考えれば、佐々木が知っていても別段不自然というわけではない。
昨日の事件に橘や周防たちが介入してきた時点でな。
「…どこまで知ってるんだ?」
「大方の事情は知ってるかな。涼宮さんが何者なのか…いや、何者だったのかという点も含めてね。」
「……」
一昨日ハルヒが卒倒した際、長門が観測した未特定情報の大規模拡散。
もし長門がいなければ俺は…そして古泉や朝比奈さんも今回の事件の核心に迫ることは決してなかったろう。
それほど長門のはたらきは必要不可欠だったわけだが…長門が観測できたということはつまり、
天蓋領域の周防だってそれは可能だったんだろう。ということは、真実を知った奴らが
別世界の朝比奈さん殺害を決定したのも…このときか。時を同じくして俺らは大混乱だったわけだな。
「聞けば、じきに世界が崩壊するらしいとのことじゃないか?それを知った僕は自分も何かできないかと
橘さんたちに打診してみたんだが…ことごとく断られてしまった。そのため彼女たちが何をしたのかも
結局は教えてくれなかったが…まあ、僕は関わるべきではなかったってことなんだろうね。
僕にはキョンたちの無事を祈ることくらいしかできなかった。」
「…そうだったか。」
その一点においてだけは連中に感謝してやろう。佐々木を巻き込んでくれなくて本当によかった…
まあ、連中からすりゃ佐々木は重要な保護対象なんだから当たり前っちゃ当たり前なのかもしれないが。
それと、『僕は関わるべきではなかったってことなんだろうね。』だが…俺からすりゃ、
関わるべきじゃなかったってよりは、知る必要のなかったって表現のがシックリくる。
なんせ、結果として奴らは朝比奈さん殺害を断行したのである。結局未遂に終わりはしたものの…
そんな物騒なこと佐々木に教えられるわけがない。知る必要のないこととは、まさにこのことだ。
「…それにしても涼宮さんの過去には驚かされたよ。
僕が彼女の立場だったら…とてもではないが耐えられないね。おそらく発狂して終わりだ。
そうならなかっただけでも彼女の、その強靭な精神力には目を見張るものがある。
ただ、そんな彼女も…昨日でようやく終わったのだろう?君が…彼女を【解放】した。違うかい?」
「…そうだな。何もかも…全て終わったと思う。」
あくまで『思う』としか言えない。ハルヒの一連の能力も…消えた可能性こそ高いが、まだ断定できた
というわけじゃないからな。とりあえず、古泉曰く閉鎖空間自体は一切見えなくなったとのことらしいが。
そしてここで気付く。ハルヒの能力の、それに至る過程を知っているということはつまり…
「…なあ佐々木。もしかして、お前のそれも消えちまったのか?」
つい代名詞を使ってしまい、しまったと思ったが…
今の話の流れならおそらく『それ』でも佐々木には十分伝わったはずだ。
「察しがいいね。そうだね…消えてしまった。気付いたのは今日の朝かな。
目眩がしたり、どこかが痛かったわけでもないんだが…何かこれまでとは違う強烈な違和感をを覚えたんだ。
具体的に説明できないとこが歯痒いけれど。それで気になって橘さんに電話してみたら…
案の定というわけだよ。」
……
本人がここまで言うということは佐々木の…能力は消滅したとみてもいいんだろう。
となると、逆算的に…ハルヒの能力もなくなってるってことになる。まさかの古泉説当たりか?
『やれやれ』とか言って気だるそうに話聞いて悪かったな古泉。
「…そうか。消えて何か思ったりしたか?」
「いや、特別には。今までが大した能力じゃなかったからね。
そもそも、閉鎖空間が存在してるだけのそれを能力と言えたかどうかも怪しい。
大体そんなところではあるけど。敢えて言うならば、なくなって少し不安だったかな。」
不安?
……
一瞬意味がわからなかった。逆ならすんなり通るんだが…
「…すまない。涼宮さんの気持ちを考えるなら、なくなって不安だとか
そういうことを言うべきじゃなかった。僕ときたら…本当自分勝手な人間だ。」
「いや、別に俺はそんなこと思っちゃいないが…」
逆に俺はその理由が気になっていた。確かに…ハルヒならばありえないだろう。なくなった今、
あいつは幸せなはずだからな。だからこそ、なぜ佐々木がそんな正反対のことを言ったのかが気になるのだ。
「…佐々木。よければその理由教えてくれないか?なに、それで怒るほど俺は卑小な人間じゃない。」
「……」
言うのを躊躇ってたようだが、やがて彼女は決心したのか、静かに口を開く。
「…怖かった。」
「え?」
「怖かった。君との接点がなくなるのが、怖かったんだ。」
「……」
一体何を言い出すのか?と思ったが、なんとなくその意図は伝わった。いや、確かに伝わった。
決して特別なことを佐々木は言ってるわけじゃない。彼女もまた、古泉・長門・朝比奈さんたちと
同じだった、ただそれだけだ。今日の不思議探索時、俺は古泉・朝比奈さんと…ハルヒの能力がなくなっても
SOS団であり続けることを確かめ合った。元々の存在意義を失ってまでも2人は、俺たちと一緒にいてくれることを
選んでくれた。最初はなかったかもしれない繋がり…だが、今ではちょっとやそっとの理由じゃ決して離れない、
そんな強固な絆が確かに俺たちにはあった。だからこその『SOS団であり続ける』という答え。そしてそれは、
後で確認した長門も同様の答えだった。しかし…一方の佐々木はどうだろうか?
俺には、佐々木に対してそこまで露骨な役割意識はもってなかった。が、それでもだ。
SOS団と敵対してたはずの藤原・橘・周防が佐々木に接近、ないしは取り込もうとしていた客観的事実。
それを前にして俺たちと佐々木の能力に、果たして接点がないと言えただろうか?中学の卒業以来、
俺と佐々木が塾という学習環境以外で会うことが多くなったのも、これらの要素が無関係だと果たして
言えただろうか?残念ながら答えはNoだ。一部においては、俺はそれを認めなくてはならない。
佐々木本人も俺たちの関係がそれを前提として成り立ってたことを知っていた。
それは先程の彼女の言葉から明らかである。ならば、ここからが問題だ。
その接点が消えてしまったとき、俺と佐々木は一体どうなるのか?それを考えなくてはならない。
さて、どうなるのだろう。まず古泉や長門、朝比奈さんにはSOS団という明確な繋がりがあった。
だからこそ、ハルヒの能力が消えても俺たちは『俺たち』であり続けられた。しかし、佐々木はどうだ…?
彼女には…SOS団のようなわかりやすい繋がりというのがない。…繋がりがない。
つまり、接点無き今、佐々木とは元の白紙の関係に戻るというわけだ。
……
…ちょっと待て、それはおかしくないか?第一、この論法には俺個人の感情が全く反映されていない。
佐々木の感情だってそう。機械的概念で割り切れるほど、人との付き合いってのは無機質なものだったか??
そんな単純なものだったか??…何か違う気がする。
そこでふと、佐々木との会話を思い出す。今日俺に投げかけてくれた、その一連の数々を。
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「とはいえ、いきなり話しかけたりしてすまなかったね。久々に君を見てしまったんで、つい…ね。
衝動が抑えきれなかったんだよ。旧友との素晴らしき再会、それに免じて許してはくれないかな?
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「僕はキョンが食べるのと同じものにするよ。」」
「それまたどうして?」
「気分さ。」
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「その意見は至極妥当だと言える。そしてサイズだって、自分に不釣り合いなのはわかってたよ。」
むしろ釣り合ってたら驚愕ものだ。まあだからといって、それで佐々木を嫌ったりは決してないが。
「それでも今日だけは君と同じ…あ、いや、何でもない。とりあえずさ、食べるの手伝ってくれないかな?」
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「僕はねキョン、君に行動原理をしっかりと把握されてる、そんな涼宮さんが羨ましいと言ったんだよ。そして、
そんな彼女も君のことを把握してるからこそ、理不尽な要求が通せるんだ。互いが互いのことをわかってる…
なんとも理想的な、仲睦ましい男女じゃないか。」
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------------------------------------------------------------------------------
「あ、あのねえキョン。さっき言った好きってのは友達としての好き、つまりlikeだよ。」
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「…そうか。消えて何か思ったりしたか?」
「いや、特別には。今までが大した能力じゃなかったからね。
そもそも、閉鎖空間が存在してるだけのそれを能力と言えたかどうかも怪しい。
大体そんなところではあるけど。敢えて言うならば、なくなって少し不安だったかな。」
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「怖かった。君との接点がなくなるのが…怖かったんだ。」
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…なるほど。冷静に回想してみて、なんとなくわかった。佐々木が…俺のことをどう考えていてくれたか。
そして、これから俺とどういう関係でいたいのかってのがな。接点が切れてしまった今どうするのか?
その解決法はあまりに単純だった。
「…佐々木。」
俺は思ったことを素直に口に出す。
「なければ…作ればいいんじゃないか?」
「え?」
「接点をだ。」
佐々木はわけがわからないといった顔をしている。まあ、それも当然だろう。俺がお前の立場だったとしても、
そりゃ頭を抱え込むさ。昔、誰かさんとそういうやり取りがあったから尚更そう確信できる。
282 :
涼宮ハルヒの天啓 番外編2 ◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 23:21:05.30 ID:ufTRMib2O
「接点って…どういうことだい??」
「どういうことって…お前が今日、俺に散々言ってたことだろう?…まあ、わからんようならストレートに言ってやる。」
一息つき、俺は言い放った。
「たった今から俺とお前は正式に『親友』とする。一方的なもんじゃなく、互いがそれを認め合う仲だ。
それは…これからもずっとだ。どうだ?これで接点ができただろう?お前が不安がる心配なんか、
どこにもなかったんだよ。」
……
「くっくっ…アッハッハッハ!!」
それまでの重い空気を吹き飛ばすかのごとく、緊張の糸でも切れてしまったのか…佐々木は笑い出した。
「おいおい、何も笑うことはないだろう?」
「いや、この状況で笑うなってほうが無理だよ…!くっくっく…というか、
まさか君が真顔でそんなセリフ言うなんてね…!夢にも思わなかったよ…!」
「……」
俺の真顔というのは、それはそれはシリアスとは程遠いらしい。…地味に傷つきましたよ佐々木さん。
「…で、面白かったのはわかったから、結局お前はどうなんだ?『親友』になるのかならないのか?」
「おお、怖い怖い。まるで『イエスかノーか』で英軍司令官アーサー・パーシバル中将相手に
降伏勧告を迫ったマレーの虎、山下奉文大将そのものだね。いや、マレー作戦時においては
彼の階級はまだ中将だったから、山下中将と呼んだ方が適切なのかな?」
「…ぶっとんだ例えで俺を幻惑するのはやめてください…。」
「くっくっく、ゴメンゴメン、ついノリで。」
ノリであんな例えを即座に思いついたのか!?
「もちろん、答えはYesだよ。正直、キョンに面と向かって言われたのにはびっくりしたけど…
でも、僕はそれを聞けて本当に嬉しかった。冗談じゃなくね。だからキョン、ありがとう。」
「…お、おう。」
こっちこそ、面と向かって礼を言われるとは思わんかったぞ?いかんな…こういう場面は恥ずかしくなる。
などと思ってた矢先
…?
佐々木はいつもと変わらないニコやかな表情をしていた。…気のせいか?
一瞬表情に陰りが生じたように見えたんだが…
「あれ?あんなところに涼宮さんが。」
現実に引き戻された。
「ハ、ハルヒだと!!?」
俺はパニックになった。いや、決して佐々木とやましいことをしてるわけじゃないが、このタイミングで
鉢合わせはいろいろとマズすぎる…!?というか、なぜここにハルヒが!?どうして!?Why!?
佐々木が向けていた視線の先…もはや何も考える気は起きなかった。俺はただただ一目散に振り返った。
……
「なあ、佐々木…」
「何だい?キョン。」
「ハルヒなんてどこにもいないんだが…」
「軽いジョークさ。」
「……」
俺は考えることをやめた。
「ゴメンねキョン。つい魔が差しちゃった。」
「魔が差したってお前…いや、もういい。」
俺はテーブルにうつ伏せた。もはや語ることなど何もない。
というか佐々木よ、まさかこの局面でからかってくるとは、よもや思わなかったぞ…??
俺の心臓はというと、いまだバクバク波を打っていた。お前のその『魔が差した』とかいう
刑事史上最低最悪の動機で、俺がショック死という最低最悪の死を遂げそうだったというこの客観的事実ッ!!
原因と結果のあまりの落差に目眩がしてきた。…マジで、いきなりハルヒの名前を出すような真似は
やめてほしい。切実に、本当に切実にそう思った。寿命が10年は縮まったのは言うまでもない。
ということは、これを後6回くらいやられたら俺は死ぬのだろうか?
佐々木の顔色が一瞬だが悪かったような…とかいう昔のことは、今となってはもはや忘却の彼方だった。
「ところでキョン、話は戻るけど…」
戻るも何もお前がとばしたんだがな…それも1歩どころか別次元へ。
「戻るって…どこまでだ??」
「さっきのお礼の続きからだよ。」
ああ、マジメな話をしてたあの頃か。ひどく懐かしく感じる。
「『ありがとう。』と言ったのはもちろん本心だったんだけど…君にはもう1つ言うべきことがあったんだ。」
「…何だ?言っとくけどな、さっきみたいな不意打ちはもうナシだぜ??」
「大丈夫。もう変なことは言わないよ。」
一息つき、覚悟を決めたかのごとく俺に視線を合わせ、そしてヤツはこう言い放った。
「キョンは…涼宮さんとくっつくべきだ。」
「……」
……
さっき変なことは言わないって言いませんでしたっけ?人間不信に陥りそうなんですが…
「…とりあえず聞いていいか?くっつくってどういうこと?」
「付き合うってことさ。」
さらりと言ってのけた。
……
これが…さっきの話の続き?ちょっと待て。一体どこがどこに繋がってんの??互いを親友だと
確認したまでは覚えてる。それに対し、佐々木が俺に伝えたかったこと…それが『ありがとう。』のお礼、
そしてさっきの『キョンは…涼宮さんとくっつくべきだ。』の台詞。なるほど、よく考えたら繋がってるように…
ダメだどう考えたって見えない
「あのなぁ…前後関係が全く見えないんだが!?どうしてそこでハルヒが出てくる!?」
「…なるほど、君はやっぱり気付いてなかったんだね。キョンが…あの場面で強く『親友』という
ワードを強調したこと。とっさに出てきた言葉が『親友』だったこと…それが全てというわけさ。」
「??」
「親友というのはね、辞書には載ってないだけでもう1つ意味があるんだよ。
まあ、わからないならわからないでいい。君は…知らなくてもいいことさ。」
やはりというか、やはり意味がわからなかった。ちょっと気になるところではあるが…まあ、本人が知らなくても
いいって言ってるなら別段気にする必要もないか、といった具合で俺の中で、それは完結したのである。
……
どこか遠くに視線をずらしたかと思うと、再びこちらに向き直る佐々木。
「…君だって満更じゃないはずだ。涼宮さんのことが…好きなんだろう?」
「……」
……
「…ああ。」
気付けばそう答えてしまっていた。肯定するのは少し恥ずかしかったが…しかし後悔はしてない。
そもそもの自覚は…第三世界終焉の地だったか。その思いを昨日、俺は確かに【ハルヒ】に伝えた。
その思いに偽りはなかった。
「…なるほどね。君の口からそれを聞けてよかった…ともなれば、後はタイミングだ。
涼宮さんも、キョンのことは好きに違いないからね。付き合う前からすでに相思相愛だなんて…
もはや幸せな未来しか見えないな!いやー、実に羨ましい限りだね?キョン。」
「…勝手に決めつけられても困るんだが?なぜそう根拠もなしに
ハルヒが俺のこと好きだって断定できるのか…その自信の在りかを知りたいもんだね。」
「じゃあキョン、君と涼宮さん以外のSOS団のメンバーにそれを聞いてみてごらん?
きっと僕と同じ回答をするだろうからさ。」
「いや、そんなバカな話が…」
あった。
「くっくっくっ、これで当事者を除いて満場一致だね。
そういうわけで、つまりは君たちの仲をみんな応援してるんだよ。
…僕も含めて。だから、後は君が一歩踏み出せばそれでフィナーレということさ。頑張ってねキョン!」
「そんなお前、他人事みたいに…」
……
しかし、応援されてるってのは、少なくとも悪い気分ではない。
みんなが俺たちのことを祝福してくれてる…実感こそなかったが、実はこれって凄く幸せなことなんじゃ…?
と心地よい感傷に浸ってたところに佐々木が一言。
「あ、キョン。後5分で9時だよ。」
…佐々木よ。お前、本当なりふり構わずだな?こんなときまで俺をからかおうってか?
さすがにその手はもう喰わんわ…俺にも一応学習能力はある。で、俺はもう少しこの感傷に浸っていたい。
「信じてないって顔だね…くっくっくっ、まあ、それならそれでいい。
ただ、僕が現代に生きるイソップ物語の体現者になるというだけさ。」
「……」
凄まじく嫌な予感がした俺は、自分の携帯で時刻を確認した。
「8時…56分!?」
「あちゃー、どうやらこうやって話してるうちに1分経っちゃったみたいだね。どうするのキョン?」
「どうするって…帰るに決まってるだろう!?」
そういうわけで、急いで勘定を済ませた俺たちは直ちに店外へ出たというわけさ。
…12月の夜ということもあって肌寒かったのは言うまでもない。こっちの意味でも早く帰る必要がありそうだ。
「で、後3分で9時だけど。」
「あのな…常識的に考えて間に合うわけがないだろう…!?死のカウントダウンのごとく
時を宣告すんのはやめてくれ…それより、お前だって門限は9時なはずじゃなかったか??」
「確かに。けど言ったよね?今日は両親がいないって。だから、今日に限ってはそれは通用しないのさ。」
ああ、そうですか。だからお前は余裕もって笑顔でカウントしてたんだな。納得したよ。
しかし…どうせ間に合わないのなら焦るのもバカらしくなってきた。もちろん、早く帰るに越したことはないが…
「佐々木、帰りは送っていかなくていいか?」
かなり暗くなってたんで、一応気になった。
「いや、心配は無用だよ。明るいところを通って帰るからね。
その好意だけ受け取っておくよ。…それに、今日は1人で帰りたい気分なんだ。」
「…そうか。ま、それならいいんだけどな。」
「ところで…キョン。体のほうは大丈夫なのかい?明日学校行ける?」
「ん?ああ…そうだな。」
いつからだろうか。体の倦怠感はすっかり取れてしまっていた。死に体になってた食事前が
嘘みたいなこの感覚。人間の体はうまい具合にできてると聞いたことあるが、それがまさにこれってやつか。
「いつのまにか回復してたらしい。学校にも行けそうだ。」
「そうか…それはよかった。確かに、今は元気そのものと言っていいくらい生き生きとしてる感はあるよ。」
「これも全てはオクラ牛丼特盛りのおかげだな。食べもんの力は偉大だ。」
「おいおい…ここはお世辞でも『佐々木が一緒にいてくれたおかげだ』って言う場面じゃないかな?」
「ははは、そう呆れなさんなって。今のは冗談だ冗談!もちろん、お前にだって感謝してるんだぜ?」
「…別の意味でまた呆れたよ。随分とまあ、してやったり顔だね。よもや君が僕にそんなことを言うとは…。」
「『親友』…だからな。これくらいの言葉のキャッチボール、お前からすりゃまだ全然遊び足りねーだろ?
これからもいろんな種類、試していけたらいいよな?」
「…キョン。まったくもう、君ってやつは。仕方のない人だ。」
そう言いながらも、そんな佐々木の顔は…とても笑顔に富んでいたように思えた。
俺の他愛ない言葉一つで楽しんでくれるなら…俺はそれで満足だ。
「ちなみに、それはデッドボールも可なのかな?」
そして、笑顔で何を言い出すんだ?このお方は。
「お前の言うデッドボールって、一体…?」
「うーん、暴言とかその類かな。」
「全力で断る!!そんなのハルヒだけで十分だッ!!」
佐々木に『』バカ』とか『死ね』とか言われた日にゃ全力で泣く。いや、マジで。
「ほう…なるほどね。デッドボールは恋人だけの特権というわけだ?
まったく、そこまで涼宮さんを特別視するなんて、君の熱の入れようにはあっぱれだよ。」
ヤツはこれを本気で言ってるのか…
それとも、すでに俺の反応を伺う変化球タイムに突入してしまってるのか…
今の俺には判断のしようもなかった。これからも親友を続けていればいつかは…
こういった差異も見抜けられるようになるのだろうか?ふと、そんなことを思った。
……
「…羨ましいな。」
「?何か言ったか?」
「くっくっく。なぁに、ただの独り言だよ。キョン。」
Fin
292 :
◆i1mmP3RsKA :2010/10/25(月) 23:45:14.88 ID:ufTRMib2O
以上で、『涼宮ハルヒの天啓』完です。みなさんの励ましをいただいて、2年間かけて作った甲斐があったと
素直にそう思えました…。こんな出来なので、2年(失笑)なのはその通りなのですが
それにしても、書いてる途中何回も挫折しそうになりました。そういう意味でも最後まで書けてよかったと、
心からそう思ってます。みなさん、これまで読んでくださり本当にありがとうございました!
書くのもそうだがココまで投下しきるのもすごい労力だったな
本当におつかれさま!
正直今スレのは読む暇なかったから、ゆっくり読ませてもらうよ
294 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 23:52:07.80 ID:EtbBOrBdO
超☆大☆作!!乙
2年とはおどろいた
楽しませていただきました
>>292 乙!
久しぶりに読みごたえあったわ、二年間は伊達じゃないな!
296 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 23:56:36.59 ID:GMbUtLAT0
今までのハルヒssの中でも最高に良かった
作者まじで乙
297 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 00:04:12.32 ID:9knHQQwo0
乙せざるをえない
298 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 00:08:55.44 ID:DN5NvUj7P
乙
で プリンは?
299 :
◆i1mmP3RsKA :2010/10/26(火) 00:16:07.36 ID:jfqvX3W50
温かい言葉ありがとうございます。書けてよかったです。本当に。
>>298 誰かが投下することを考えると、保守はしておいたほうが無難…なんでしょうか。
最近のプリンスレはあまり来たことがなかったので、そのへんの傾向が
どうなってるのかはわかりませんが…もしそうなのであれば、保守します。
300 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 00:17:12.64 ID:up5+4fpTO
乙華麗
今、このタイミングならササッキーを落とせそうな気がする
え?
ササッキーなら俺の横で寝てるけど
はげしく乙!二年分のもんがあったよ
ハルヒssで一番おもしろかった!
303 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 00:35:58.56 ID:rkWZaLezP
乙!よかった!
304 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 00:59:23.66 ID:vEkn62+70
乙すぎる
305 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 01:35:13.23 ID:QLk2TBSc0
二年間もかよ・・・
俺には考えられん。すげえな
とにかく乙!読み応えがあって楽しかった!
306 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 02:23:46.38 ID:m0iB7KXg0
おっと
307 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 02:50:11.09 ID:m0iB7KXg0
よし、寝る
後は任せた
良かったよ、乙
二年間粘り強くやり遂げたことに乾杯!
眠い
まじ乙
311 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 09:34:49.11 ID:rkWZaLezP
支援保守も乙
ohayou
313 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 10:33:51.31 ID:eiLux1xO0
でかける前の
出掛けた先の
乙
315 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 12:22:39.42 ID:177qa/ozO
保守
ただいま
317 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 14:13:14.27 ID:eiLux1xO0
おっと
318 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 15:15:48.28 ID:177qa/ozO
あ
ふんぬらば
320 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 16:24:51.58 ID:Q0Dk/YPt0
あらほいさっさ
おっとと
322 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 17:37:28.54 ID:Q0Dk/YPt0
散歩前の
323 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 18:16:06.10 ID:7am+d1JvO
ほい
324 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 19:00:19.88 ID:DN5NvUj7P
コポォ
325 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 19:35:17.53 ID:Q0Dk/YPt0
カポォ
326 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 20:15:33.00 ID:QOk6pj8b0
てい
よっと
328 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 21:54:17.07 ID:177qa/ozO
あああ
329 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 22:33:36.39 ID:mwCktRjH0
あぶあぶ
330 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 23:16:31.49 ID:nHxdu7liP
あ
やっと
332 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/27(水) 01:08:44.20 ID:WFuAy02N0
うおっと
ほ
334 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/27(水) 03:08:11.21 ID:KE9XOvE90
>>1 つか未だにハルヒネタでスレ立てする君等なんなの?
ライフライナー?
335 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/27(水) 07:03:52.65 ID:vdMeXMYbO
ほ
336 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/27(水) 09:07:25.28 ID:B0/i/V7fO
よ
337 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/27(水) 10:14:16.52 ID:WFuAy02N0
ほ
338 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/27(水) 12:00:54.51 ID:t/gD8r02O
お
339 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/27(水) 14:45:46.70 ID:t/gD8r02O
わ
340 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
に