1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:28:30.56 ID:KOuWO1vG0
( <●><●>) 「順番が狂ったか……。まあいい」
弟者の体から剣が抜かれる。
支えを失った体は力なく地面に崩れ落ちた。
地面に赤い水溜りができていく。
( ´_ゝ`)「この……」
男を睨みつけ、手を伸ばす。
( ´_ゝ`)「ドクオ、弟者を頼む」
どこかで聞いた台詞だった。
( ´_ゝ`)「我意思により、彼者を浮かせよ」
こちらへ足を踏み出していた男の体が宙へ浮く。
足を動かしてみるも、体は前へ進まず、上へ上へと上がっていく。
( <●><●>) 「降ろせ!」
( ´_ゝ`)「降ろしてやろうか」
('A`)「兄者!」
兄者のしようとしていることに気づいたドクオが声を上げる。
しかし、その声が届いている様子はない。
( ´_ゝ`)「消えろ」
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:31:15.71 ID:KOuWO1vG0
魔法の力が消える。
男の体は重力に従い、下へ落ちていく。
( <●><●>) 「あ……」
落ちる途中で男は気づいた。
彼の体はもうずいぶん高くまで上がっていたのだ。このまま落ちれば待っているのは死のみだ。
助けてくれという言葉はでなかった。
( <●><●>) 「わあああああああ」
出てきたのは悲鳴だけだ。
助けを請うという思考さえできない。
兄者はその様子を冷たい目で見ていたが、死の瞬間を見る必要もないと思い、弟者の方へ視線を向ける。
途中、いるはずのない人物が、いてはいけない場所にいることに気づいた。
( ^ω^)
( ´_ゝ`)「ブーン?」
腰を低くし、手を前へ伸ばしているその姿は何かを受け止めようとしているようだった。
( ^ω^)「絶対に、死なせないお!」
落ちてくる男へ向かって叫ぶ。
彼はあの高さから落ちてくる男を受けとめようというのだ。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:34:14.89 ID:KOuWO1vG0
無理だ。
兄者はそう思った。
男は助かるかもしれないが、下にいるブーンは助からないだろう。
上手くいったとしても骨は折れる。魔法が使えなくなるかもしれない。
( ;´_ゝ`)「やめろ!」
叫ぶがブーンはその場を動かない。
( ;´_ゝ`)「ちっ! 我意思により彼者を浮かせよ!」
男がブーンの上に落ちる直前、兄者が呪文を唱えた。
再び宙へ浮いた男の体はどこにも落ちることなく、生きてまだそこにある。
( ;^ω^)「……し、死ぬかと思ったお」
その場に腰を降ろす。
よほど怖かったのだろう。
( ´_ゝ`)「思ったじゃない。死ぬところだった」
駆け寄ってきた兄者は静かに言う。
浮いている男は、自分の命がまだあることに安堵しているようで、何も話さない。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:37:18.20 ID:KOuWO1vG0
( ^ω^)「殺さなくてよかったお」
ブーンは立ち上がり、浮いている男と向き合う。
( <●><●>) 「あ、ありが――」
礼を述べようとした男の口に拳がぶつかる。
突然の痛みに、男は手にしていた剣を離す。
歯が何本か折れてしまったようだ。
( ^ω^)「お礼なんていらないお」
口を抑え、ブーンを見ている男に告げる。
穏やかそうな顔をしていながらも、心の内はかなり荒れているらしい。
( ^ω^)「とっとと消えうせてくれお」
怯えた目で何度も頷く。
それを確認した兄者は魔法を解いた。
地面に落ちた男は這うようにしてその場から去って行く。
兄者の殺意とブーンの怒気を浴びて、死を間近に感じてしまったのだろう。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:40:19.17 ID:KOuWO1vG0
哀れな男の姿が消えると、兄者は真っ先に弟者のもとへと向かう。
流れる血を止めようと、ドクオが傷口にローブをあてているが、それがどれほどの効果を持っているのかわからない。
回復系の魔法を身に宿している弟者は傷がふさがるのは早い。
だが、傷はあまりにも深かった。
溢れる血にドクオの顔が青ざめている。
かすかに上下に動く胸と、時折聞こえるうめき声だけが弟者の生を感じさせる。
( ´_ゝ`)「何で、オレなんかを」
隣に膝をつき、弟者の手をとる。
血が足りていないのか、心なしか冷たくなっていた。
( ´_ゝ`)「大丈夫だからな」
小さく微笑んだ。
('A`)「兄者?」
その表情を見たドクオはふと、兄者が城へ行く前に見せた色を思い出した。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:42:56.26 ID:bC7uAD+l0
まってた
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:43:43.01 ID:KOuWO1vG0
弟者は夢を見ていた。
幼い時の夢だ。
(・<・ *)「火よ燃えろー」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「おお、弟者はお父さんに似て、魔法が上手だねぇ」
∬´_ゝ`)「本当。上手ねー」
母は格闘家であり、父は魔術師だった。
姉は母の血を色濃く受け継いだのか魔法は使えなかった。
(・<・ *)「すごいでしょー」
(*・ゝ・)「……すごいねー」
兄者はまだ魔法が使えなかった。
どちらかと言えば、母の血を色濃く受け継いでいるのだ。その証拠に、兄者は他の子供達よりも少し体が丈夫で、力もあった。
双子の弟にできることが自分にはできない。
それは小さな劣等感を持たせた。
(・<・ *)「兄者ができないことはオレがやってあげるね」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:46:33.11 ID:EWYx1rTDO
激しく支援
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:48:44.34 ID:sakRLBsk0
支援
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:49:11.12 ID:KOuWO1vG0
お互いを補いあうことができるのは素晴らしいことだった。
(*・ゝ・)「うん……」
だが、補いあうということを認めるには、兄者の兄としてのプライドが邪魔だった。
魔法は才能だ。けれど、体力や力は努力しだいでどうにでもなる。
兄者は焦燥感を感じた。
(・<・ *)「ほらー。氷も出せるんだ」
これでかき氷が食べ放題だと笑う。
(*・ゝ・)「すごいなぁ」
(・<・ *)「ほらほら、もっと見て!」
(*・ゝ・)「見てるってば」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「二人は仲いいねぇ」
(・<・ *)「当たり前だよ。ね?」
(*・ゝ・)「……そうだな」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:49:22.83 ID:GTQmy2MeO
支援
弟者……どうしてああなった支援
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:52:07.39 ID:KOuWO1vG0
(・<・ *)「兄者! 遊びに行こう!」
自分の力を友人に見せたくてたまらないのだろう。
弟者は目を輝かせている。
(*・ゝ・)「うん」
気は進まなかったが頷いて弟者の隣に立つ。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「あ、あんたら森には近づかないようにね」
(・<・ *)「えー」
近くにある森は子供達の遊び場だった。
危険な動物も少なく、毒のある植物も生息していない。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「危険な魔物の影が報告されてるんだよ」
少し離れたところに住んでいた魔物が移り住んできたらしい。
二人は元気に返事をした。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:55:15.65 ID:KOuWO1vG0
(・<・ *)「怖いね」
(*・ゝ・)「怖いな」
二人で公園への道を歩いて行く。
道中も、弟者は弱い魔法を出して楽しんでいる。
(・<・ *)「すごいだろー」
自慢気に笑う弟者が憎かった。
小さなプライドがささくれ立つ。
(*・ゝ・)「…………」
(・<・ *)「兄者?」
足を止めた兄者を弟者が見る。
(・<・ *)「早く公園行こうよ」
手を取り、体を引っ張る。
けれど兄者は動こうとしない。
(・<・ *)「どうしたの?」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 20:58:19.06 ID:KOuWO1vG0
兄者は必死に頭を働かせていた。
このままじゃダメになると思うのだが、どうにもできる気がしない。
何を言ったところで、この弟は自分よりもできがいいのだ。
(*・ゝ・)「オレが兄なのに」
(・<・ *)「え? 聞こえなかったよ?」
呟きは弟者には届いていなかった。
再び兄者は口を閉じる。
頭の中はどうすればいいのかばかりを考えている。
このままではダメだ。自分が兄であるためには何をしたらいいのだろうか。
(*・ゝ・)「……森に行こう」
考えた結果が、これだった。
(・<・ *)「えー。母さんが……」
(*・ゝ・)「でもさ、みんなができないことができるとかすごいじゃん」
決まりだと言い、兄者は森へ向かって歩き出す。
弟者はその場に立ちつくし、兄の後姿を見る。
母の言いつけを破るのは気が引けたが、兄の言っていることもわからなくはない。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:01:21.91 ID:KOuWO1vG0
友人達から尊敬のまなざしで見られたいとは思っている。
ここで森に行き、何か証拠でも持っていけば、英雄扱いは間違いない。
何より、兄を一人で行かせるのは嫌だった。
(・<・ *)「待って」
小さくなってしまった兄の背中を追いかける。
(*・ゝ・)「早くしろよ」
強い兄を上手く演出できたと、兄者は小さく笑う。
魔物が出てきたら、弟者の手を引いて逃げてやろう。いや、いっそのこと魔物を倒してみてはどうだろうか。
(・<・ *)「怒られないかな?」
(*・ゝ・)「大人には内緒にしていればいいさ」
(・<・ *)「そうだね!」
弟者は兄者の言うことをよく聞いた。
同じ日に生まれたとはいえ、兄者は紛れもない兄として今まで弟者の前に立っていた。
(・<・ *)「オレと兄者がいれば無敵だよね」
(*・ゝ・)「ああ、その通りだ」
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:03:27.35 ID:oVKRe+EUO
sien
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:03:27.85 ID:XYDNI5+80
おお、待ってた
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:04:06.10 ID:KOuWO1vG0
二人いれば無敵だ。
兄は弟を守らなくてはいけないのだから、普段よりも強くなれる。
無敵になるのは当然なのだ。
兄者と弟者は並んで森の前に立つ。
木々は深く、森の中は薄暗い。見知った場所であるはずなのに、魔物がいると聞くと恐ろしい場所に見えてくる。
(*・ゝ・)「……行くぞ」
(・<・ *)「うん」
二人は拳を握って森へ入っていく。
未来に見える仲間内のヒーローという希望と、魔物と出くわすという不安に心臓がうるさいほど鳴る。
(*・ゝ・)「遅いぞ弟者」
(・<・ *)「ねえ、やっぱり帰ろうよ」
(*・ゝ・)「何言ってんだよ」
異様な雰囲気に包まれている森に弟者は怯えた。
歩みは遅くなり、兄者との距離は離れるばかりだ。
(*・ゝ・)「もう! 早くこいよ!」
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:06:05.48 ID:Wq1wJBQbO
待ってた
これから読むわ支援
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:07:37.46 ID:KOuWO1vG0
後ろにいる弟者のもとまで早足でつめよると、手を掴み再び森の奥へ進んで行く。
(・<・ *)「ねえ、どこまで行くの?」
魔物に会いたいわけではない。
自分が魔物を倒し、ヒーローになったときを想像するのは楽しい。だが、それは所詮想像の産物だ。
現実に出会えば恐怖の対象でしかない。間違いなく命を絶たれる結果となるだろう。
(・<・ *)「もう帰ろうよ」
森へきた証拠なら、その辺りに生えている草花を摘めばいい。
何もこれほど奥にくる必要はないはずだと弟者は不安げに考える。
(*・ゝ・)「大丈夫だって。もう少しだけ、な?」
対する兄者は、弟者が怯えれば怯えるほど自分の存在を確立した。
兄として前を歩き、手を引いてやっているという現状に満足していた。
幼いながらに、自分の思考回路に吐き気がする。
(・<・ *)「うん……」
(*・ゝ・)「オレら二人がいれば大丈夫だって」
不安気な弟者に優しく言葉をかける。
静かに頷いたのを見て、兄者は再び奥へと進んで行く。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:10:13.82 ID:KOuWO1vG0
気がつけば、普段は踏み入れない場所にまできていた。
(・<・ *)「そろそろ帰る?」
(*・ゝ・)「うーん。そうだなぁ」
始めてくる場所に、二人の気分は高揚していた。
魔物がいるという話は頭から抜け落ち、始めてみる植物に目を輝かせていた。
これらを持って帰ればと、二人の手には草花が握られている。
(*・ゝ・)「そろそろ戻らないと、夕方になっちゃうしな」
鬱蒼と茂る木々に、空の色はわずかにしか見えない。
それでも、家を出た時間とここまでくる時間を考えると、そろそろ戻らなければならない頃合いだろう。
(・<・ *)「たくさん見つけたね」
(*・ゝ・)「だな!」
肩を並べ、森からでるための道を歩いて行く。
(・<・ *)「競争しようよ! よーい、どん!」
(*・ゝ・)「ちょっwww 卑怯だぞwww」
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:11:24.23 ID:XYDNI5+80
支援
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:13:32.64 ID:KOuWO1vG0
足が速い兄者と真っ向から勝負する気はないのか、弟者は先制をとって走り出した。
弟者が走った後には花びらが何枚か落ちている。
(*・ゝ・)「待てよ!」
(・<・ *)「やだよ!」
二人の子供がパタパタを足を動かして走る。
走るのが得意な兄者とはいえ、圧倒的な速さを持っているわけではない。
あけられた距離を縮めるのは難しいことだった。
(・<・ *)「やーい、兄者のノロマー」
(*・ゝ・)「お前、追いついたら殴るからな!」
他愛もない言い合いをしながらひたすらに走る。
後ろにいるであろう兄者を見ようと、弟者が少しだけ視線を向けた。
(・<・ *)「あ……」
目を見開き、小さく呟く。
(*・ゝ・)「待てよー」
笑う兄者の後ろに、何かがいた。
黒く、大きな生き物だった。
(゚(エ)゚)
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:16:21.13 ID:KOuWO1vG0
(・<・ *)「兄者! 後ろ!」
(*・ゝ・)「え?」
兄者が後ろを見る。
もう目の前にまで魔物が迫っていた。
(*・ゝ・)
魔物の腕が振り上げられる。
あとはそれを降ろすだけだ。それだけで兄者の体は引き裂かれるだろう。
引き裂かれたら、その肉を食べられてしまうのだろう。
兄者の脳内には過去のことと、未来のことが混ぜこぜになってかけ巡っていた。
(*・ゝ・)(オレ、馬鹿だよな)
始めから、弟者の言うとおりこんなところにこなければよかった。
そうすれば、今頃は友人達と楽しく遊んでいたはずだ。
(*‐ゝ-)(あいつ、足遅いからなぁ)
痛みに耐えるため、目を閉じる。
せめて、自分に意識が向いている間に弟者が逃げれればいい。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:18:12.44 ID:XYDNI5+80
支援
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:19:21.14 ID:KOuWO1vG0
強固な爪が風を切る。その音を耳で聞き、痛みを待つ。
(*・ゝ-)「あれ?」
一瞬の時間が長く感じた。
いつまで経っても痛みがこない。そっと片目を開けてみる。
( < *)
(*・ゝ・)「……弟者」
そこにあったのは、信じたくもないような光景だった。
唯一無二の存在がそこで血を流していた。
魔物も思わぬ者の介入に驚いているのか、動こうとしない。
(*・ゝ・)「普段は足遅いくせに、なんでこんなときだけ早いんだよ」
目から涙が零れ落ちる。
泣いている場合ではないとわかっているのに、涙を止めることはできない。
倒れている弟者を瞳に映した後、兄者は魔物へと視線を向ける。
(゚(エ)゚)
血の匂いがする弟者を狙っているのか、まだ生きている兄者を狙っているのか計りかねる。
けれど兄者にとって、そんなことはどうでもよかった。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:20:31.21 ID:1pr8guhUO
待ってた支援
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:22:33.92 ID:KOuWO1vG0
(* ゝ )「いかづちよ、はじけろ」
体の底からわきあがってくるような力を言葉に変える。
刹那の閃光と、何かがはじけた音が響く。
(゚(エ)゚)そ
目の前でそれらが起こり、魔物は森の奥へと走って行く。
小さな目くらましではあったが、効果は思いのほかあったようだ。
(* ゝ )「弟者」
( < *)
弟者は口を開かない。
手を握ると、体温がなくなっていくのがわかった。
(* ゝ )「冷たいな」
握る手に力をこめた。
それでも弟者は何も言わない。
(*・ゝ・)「大丈夫だからな」
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:25:39.90 ID:iiSjoDZ+O
あれ……兄者? 支援
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:26:42.02 ID:KOuWO1vG0
兄者は小さく笑った。
(*・ゝ・)「オレが絶対に助けてやる」
弟者を助けることができるのは、兄である自分だけだから。
お互い助け合うと言っていたのは弟者だから。
こんな事態をどうにかするのは兄者の役目だった。
(*・ゝ・)「絶対に、助けてやる」
まるで自分に言い聞かせるようだった。
(*・ゝ・)「オレが死んだって、お前だけは助けてやる」
さらに強く手を握る。
再び、体の底から力がわきあがってきた。
今度はそれを言葉にするのでなく、弟者の方へと流し込む。
川の水が海へ流れるように、それは自然と行われた。
つくられた天才、か
支援
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:29:26.54 ID:1pr8guhUO
しえしえ
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:30:07.39 ID:KOuWO1vG0
(´<_` )「……ん」
('A`)「あ、起きた」
目を開けると、ドクオが弟者の顔を覗きこんでいた。
気だるい体を起こす。
( ^ω^)「良かったお。心配してたんだお!」
(´<_` )「何があったんだ? 記憶が軽く飛んでるんだが」
ブーンが近づいてくる。
心配そうな表情を見ても、何も思い出すことができない。
心なしか腹に痛みを感じたが、何故痛みを感じるのかすらわからない。
一人で首を傾げていると、横になっている兄者の姿を見つけた。
(´<_` )「兄者?」
血の気が引く。
おぼろげな夢が形を作っていった。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:33:16.14 ID:KOuWO1vG0
(´<_`; )「兄者!」
(;'A`)「落ち着け。疲れてるだけだ」
兄者の方へ手を伸ばした弟者を慌てて止める。
命を狙う者が二人も現れたのだから、疲れていてもおかしくはない。
この面子の中で最も体力がないのは兄者なのだ。しかも、実の弟が目の前で刺されたのだから、精神的に
も疲労したのだろう。
(´<_` )「……で、何があったんだ?」
深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。
('A`)「マジで覚えてねーの?」
怪訝そうな表情をされても、覚えていないものはしかたがない。
弟者は顔をしかめつつ頷いた。
( ^ω^)「弟者は兄者を庇って刺されたんだお」
(´<_` )「は? 刺された?」
とっさに腹を抑える。
じくじくとした痛みが残っているような気がした。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:35:28.07 ID:1pr8guhUO
支援支援
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:36:08.81 ID:iiSjoDZ+O
支援
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:36:15.80 ID:KOuWO1vG0
(´<_` )「しかも、兄者を庇って?」
('A`)「うわ。マジで記憶飛んでるのかよ」
頭を抑えて記憶を探ってみるが、その時の光景を思い出すことができない。
(´<_` )「オレが回復系の魔力を持ってるっていっても、刺されたらひとたまりもないだろ」
( ^ω^)「ボクが治したお」
(´<_` )「お前が?」
ブーンが回復系の魔法を使えるとは聞いていない。
( ^ω^)「回復系の魔法を吸収させてもらってたんだお」
('A`)「爆発しろ」
( ;^ω^)「ちょっww」
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:36:38.01 ID:veTlEoz5O
支援
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:36:59.14 ID:5dUUmMqd0
支援しえん
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:39:18.58 ID:KOuWO1vG0
話を聞くと、ブーンが思いを寄せている女がここへくる前にくれた魔法だという。
ドクオから言わせてみれば、それは片思いではなく両思いだ。
兄者と弟者が眠っている間、ブーンは彼女について語っていたらしく、ドクオはうんざりした顔をしている。
(´<_` )「そうか。ありがとう」
( ^ω^)「助け合うのは普通だお」
案外、弟者は感謝の言葉をさらりと言える。
命を助けてもらっているのだから、当然のことなのかもしれない。
('A`)「とりあえず、兄者が起きるまで待つか」
( ^ω^)「そういえば、弟者夢でも見てたのかお?」
(´<_` )「何で」
聞き返すと、ブーンはうなされていたと返す。
確かに弟者は夢を見ていた。いい夢ではなかったことは覚えているが、具体的なものは何も覚えていない。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:41:15.75 ID:O1lCGQdf0
支援
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:42:23.24 ID:KOuWO1vG0
( ´_ゝ`)「あー」
('A`)「起きたぞ」
( ^ω^)「おはようだお」
( ´_ゝ`)「おはよ。どれくらい寝てた?」
まだ半分眠っているのか、まぶたをこすりながら尋ねてくる。
(´<_` )「時間の感覚はよくわからんが、かなり寝てたことは確かだな」
苛立ったような声だった。
兄者の目が覚めるのを待つしかないというのが、どうにも我慢できなかったらしい。
( ´_ゝ`)「……あ、弟者」
弟者の姿を視界に入れると、眠気も吹き飛んだのか立ち上がる。
向き合うような形をとる。傍からみたその姿は鏡そのものだ。
( ´_ゝ`)「マジでふざけんなよ」
(´<_` )「は?」
( ´_ゝ`)「もう二度とするな」
(´<_` )「何の話だよ」
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:44:47.15 ID:5dUUmMqd0
なんか今日ブーン系多いな
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:45:39.10 ID:KOuWO1vG0
( #´_ゝ`)「何でまたオレを庇ったのかって話だよ!」
('A`)「兄者、弟者は覚えてないらしいぞ」
冷静な声に止められる。
( ´_ゝ`)「……マジで?」
(´<_` )「おう」
頷くのを見ると、あからさまに舌打ちをする。
普段は落ち着いた雰囲気の兄者ではあるが、こういった面はやはり弟者とよく似ている。
( ^ω^)「とりあえず、合成するお?」
( ´_ゝ`)「ああ、そうだな」
呆れて怒りも収まったのか、兄者はブーンに手をむける。
寝起きでも大丈夫なのかと問うブーンに、兄者は柔らかい笑みを浮かべて大丈夫だと返す。
(´<_` )「おい」
兄者の集中を崩したのは、隣にいた弟者だった。
怒ったような声色だった。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:46:26.98 ID:1pr8guhUO
しえーん
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:48:44.11 ID:KOuWO1vG0
( ´_ゝ`)「何だよ」
(´<_` )「『また』って何だよ」
沈黙の後、兄者が目をそらす。
弟者は兄者の肩を掴み、無理矢理に視線をあわせる。
(´<_` )「答えろよ」
頭の中では夢の欠片が渦巻いていた。
形になりそこねたものたちが集まってくる。
('A`)「弟者?」
( ^ω^)「どうしたんだお」
すっかり蚊帳の外になってしまった二人が声をかける。
(´<_` )「あの時、何があった」
('A`)「あの時?」
頭を抑えながら、弟者は一人呟く。
少しずつ夢が形になっていく。
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:50:51.16 ID:sHwlecHn0
やっと来たか!
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:50:53.12 ID:qBkarDt10
支援
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:52:03.75 ID:KOuWO1vG0
(´<_` )「そうだ。二人で森に行ったんだ」
( ´_ゝ`)「行ったな。それで魔物に襲われた。オレとお前は逃げる途中に倒れて、母者に見つけられた」
年号を暗唱しているような言い方だった。
感情もなく、思いいれもない冷たい言葉だ。
(´<_` )「今回と同じように、オレの記憶は欠けてる」
( ´_ゝ`)「どんな結果になったのかはわかってるだろ?」
(´<_` )「何があったのか知りたい」
( ´_ゝ`)「関係ないだろ」
(´<_` )「それはオレが決めることだろ」
殺伐とした声色の応酬が続く。
二人はお互いに睨みあう。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:53:57.31 ID:Wq1wJBQbO
ほんとこの兄弟は殺伐としちゃってんな
支援
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:55:17.94 ID:KOuWO1vG0
( ^ω^)「ボクは話した方がいいと思うお」
二人の間にブーンが割り込んできた。
( ´_ゝ`)「関係ない話をする必要なんてないだろ」
( ^ω^)「兄者、それは本当に関係のない話なのかお?」
真っ直ぐな瞳に少しだけ言葉を詰まらせる。
けれど、兄者も引くことはできない。
( ´_ゝ`)「関係ないね」
('A`)「何でそんなに話すのを嫌がるんだよ」
事情はわからないが、今の兄者は少しおかしい。
ドクオにまで問い詰められ、兄者の形勢は不利になるばかりだ。
( ´_ゝ`)「そんな話は帰ってからでもできる」
(´<_` )「帰れるなんて保障はないのに?」
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:55:26.92 ID:1pr8guhUO
しえんよ
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 21:58:25.87 ID:KOuWO1vG0
( ^ω^)「兄者」
( ´_ゝ`)「何だよ」
強い口調だった。
( ^ω^)「ボクには姉さんがいたお」
( ´_ゝ`)「知ってるよ」
( ^ω^)「言えなかった言葉があるんだお」
その言葉を弟者は知っていた。
ブーンは悲しそうに弟者には同じような思いはして欲しくないと言っていた。
結局、そのような言葉を言いたかったのかまでは聞いていない。
周りは口を閉ざし、ブーンの言葉を待った。
( ^ω^)「ボクは、ただあの時はありがとうって、ごめんねって言いたかっただけなんだお」
目は地面の方を向き、落ち込んだ色を持った声で言った。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:01:05.75 ID:vBlDXjNaO
劣等キター
支援
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:01:25.62 ID:KOuWO1vG0
( ^ω^)「お礼も、謝罪も、責めることも、責められることも、本当のことがわからないとできないんだお」
顔を上げ、兄者を見据える。
どうにも居心地が悪いその視線に、目をそらして見るがその先にはドクオがいる。
左右も前も居心地の悪い視線ばかりだ。
( ^ω^)「このまま兄者が死んだら、弟者はずっと言えないままになるんだお」
( ´_ゝ`)「……言う言葉なんてないだろ」
(´<_` )「あるね」
吐き捨てるような兄者の言葉に弟者が被せてくる。
声の方を見ると、怒ったような表情があった。
(´<_` )「オレが知らないことをあんたが知ってる。しかも、それがオレに関することだ」
('A`)「兄者、言ってやれよ。つかオレも気になる」
内に秘められている言葉は、おそらく昔から見ているあの色に関わるものなのだろう。
ドクオはそれが気になった。
どのような罵倒を浴びせられても、辛い仕打ちをされても、最も大きい色をしていたあの罪悪感はどこからきたのだろうか。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:01:59.47 ID:1pr8guhUO
しえんしえん
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:02:31.14 ID:XYDNI5+80
支援
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:04:43.04 ID:KOuWO1vG0
( ^ω^)「兄者」
口を開いた兄者を止めるように名前を呼ぶ。
ただそれだけのことなのに、兄者は口を閉じた。
( ´_ゝ`)「……森へ行ったら、魔物がいた」
手を強く握り、視線を地面に向けてポツリと言葉を零し始める。
もう逃げられないことを悟ったのだ。
( ´_ゝ`)「弟者はオレを庇って背中に傷を受けた。
血が流れて、死ぬんじゃないかって思った」
過去のことが兄者の頭の中ではっきりとした輪郭を持つ。
当時の絶望感までもが同時に流れこむ。
( ´_ゝ`)「よくわからないが、その時オレは魔法を使ったよ。
一生で一度、浮遊系以外の魔法だった」
魔法の力は弟者へ流れた。
('A`)「魔力は生命力。流し込めば傷も治る。
理論的にはそうかもしれないけど、他人の魔力を与えるなんて……」
(´<_` )「双子、だからだろ」
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:07:49.36 ID:KOuWO1vG0
眉間にしわをよせ、耐えるような表情を浮かべながら言葉を吐く。
('A`)「……波長もあう、か」
(´<_` )「何で言わなかったんだ」
( ´_ゝ`)「言う意味もない。それだけだ」
弟者は夢のことを思い出した。
魔力が流れてくるその瞬間を、弟者は知っていたのだ。
朦朧とする意識の中で、兄者の姿を目は確かに映していた。
次に目を覚ましたとき、それらの記憶はなくなっていたが。
しえん
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:10:30.65 ID:KOuWO1vG0
(*・ゝ・)「帰ろうな」
( < *)
同じ背丈の弟者を背中に担ぎ、一歩ずつ足を進めていく。
いつまでもここにいれば、再びあの魔物がやってくるだろう。
帰りの道はどことなく恐ろしかった。
(*・ゝ・)「大丈夫だぞ」
懸命に声をかけるが言葉は返ってこない。
このまま二度と言葉は返ってこないのではないかとまで思う。
(*・ゝ・)「お、とじゃ……」
だんだんと足の感覚が薄れていく。どこを踏んでいるのか、どこに足を置いているのかがわからない。
それでもただ前へ行く。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「兄者! 弟者!」
∬´_ゝ`)「探したわよ!」
向こうの方から母者と姉者が走ってくるのが見えた。
姿を確認すると、途端に安心してしまい、兄者は意識を飛ばした。
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:11:22.32 ID:XYDNI5+80
支援
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:13:54.79 ID:KOuWO1vG0
(・<・ *)「……おはよ」
∬´_ゝ`)「おはよ。馬鹿弟者」
(・<・ *)「何だよ」
∬´_ゝ`)「森に行っちゃダメって言われたでしょーが」
(・<・ *)「え?」
姉に言われても、森へ行ったという事実を思い出すことができなかった。
呆然としていると、騒がしい音が聞こえてきた。
(*・ゝ・)「目を覚ましたのか!」
(・<・ *)「兄者……」
笑顔の兄者はどこかやつれているように見える。
∬´_ゝ`)「それがさー。弟者のやつ、記憶吹っ飛んじゃってるみたいよ」
(*・ゝ・)「え……」
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:14:06.31 ID:1pr8guhUO
しえん
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:16:21.54 ID:K2N5WPQoO
支援
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:16:29.40 ID:KOuWO1vG0
(・<・ *)「うん。兄者、何があったんだ?」
(*・ゝ・)「…………」
問いかけに兄者は答えなかった。
姉者にどうしたのかと聞かれ、決意したような顔をして弟者を見る。
(*・ゝ・)「オレが無理やり森に連れてったら、魔物にやられた。
ごめんな。本当にごめん」
それだけを言い残し、兄者は背を向けて去っていく。
(・<・ *)「あ、待ってよ」
ベッドから抜けて、兄者の背中を追う。
追いつくのは簡単だった。
(*・ゝ・)「何だよ。まだ寝てたほうがいいぞ」
(・<・ *)「兄者は怪我しなかったの?」
(*・ゝ・)「しなかったよ」
(・<・ *)「そっか」
なら良かったと弟者は笑う。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:17:23.36 ID:L5a1cg9FO
しえ
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:18:19.73 ID:1pr8guhUO
しえんじゃ
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:18:41.95 ID:uFTW2pEv0
待ってましたwwww
支援
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:20:35.23 ID:KOuWO1vG0
(* ゝ )「用はそれだけか」
(・<・ *)「え、うん」
(* ゝ )「ならさっさとベッドに戻ってろよ」
両手で弟者を突き飛ばすと、兄者は玄関から出て行ってしまった。
(・<・ *)「何だよ……」
こんな風に拒絶されたのは始めてだった。
記憶がないので詳しいことはわからなかったが、兄者が自分のことを嫌っているのだろうと弟者は判断した。
もしかすると、生きていたことが不満だったのかもしれない。
考えれば考えるほど心は濁る。
詳しい事情を知らない母者達は何も言わなかった。
兄弟喧嘩もたまにはいいだろう程度にしか考えていなかった。
そして、二人の関係は悪化していくこととなった。
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:21:04.93 ID:sHwlecHn0
SHIEN
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:23:03.97 ID:LfHLbK1S0
落ちこぼれと違って男ばっかりだなこのスレはwwww
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:23:29.00 ID:KOuWO1vG0
(・<・ *)「見てー。オレ、雷だって、風だって出せるんだ」
(=・ω・)「すごいよぅ!」
从*・ー・从「すごーい」
いつの間にか七種もの魔法を弟者は操るようになっていた。
魔法を使えるようになり始めた子供たちは自然と弟者の周りに集まる。
(=・ω・)「足も速いし、力も強い。弟者って本当にすごいよぅ」
気づけば足の早さも兄者を抜かしていた。
全てに置いて兄者を上回ったとき、助け合いの心などどこかに置いた。
(・<・ *)「だろ?」
あの劣等性とは違う。
わけのわからない嫌い方をしてきたあいつよりも、ずっと素晴らしくずっと優れているのだ。
第七話 完
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:25:22.61 ID:KOuWO1vG0
以上で七話終了です。
お風呂に入ってから八話目を投下する予定です。
おそらく30分前後で戻ってくると思います。
たくさんの支援ありがとうございました。
始めに書き忘れたのですが、改行のしかたを少し変えました。
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:27:25.38 ID:1pr8guhUO
一旦乙、待ってるぜ
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:27:56.93 ID:7sLYsMJc0
ほとんど弟者に流れ込んじゃったのか
乙、続きも待ってる
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:33:53.44 ID:iiSjoDZ+O
なに、今日も豪華二本立てだと
支援、待機
とりあえず乙でした
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:35:26.79 ID:K2N5WPQoO
取り敢えず乙!
それであの2人はああなのか…
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:35:39.63 ID:sHwlecHn0
正座して待ってる
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:39:49.46 ID:fMRGeEahO
乙
兄者の体力も弟者に流れ込んでしまったって解釈でいいの?
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:41:39.90 ID:XYDNI5+80
乙だ
流れたのは回復系だけかな?
乙
二本立てか、続きを待ってよっと
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:50:15.86 ID:KOuWO1vG0
ちゃちゃっと入ってきました。
八話目は短めですが、また投下していきたいと思います。
ちなみに、兄者から流れてきた魔法=弟者が苦手な魔法です。
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:51:52.00 ID:KOuWO1vG0
(´<_` )「ああ、思い出した」
弟者は鉄の天井を仰いで呟く。
幼いころの光景も、ついさっき起こった光景も思い出した。
(´<_` )「オレは何であんたを助けたんだろうな」
( ´_ゝ`)「知るか。オレが知りたいわ」
ブーンの言っていた言葉が弟者の脳裏をかすめる。
今のうちに言わなければならない言葉があるのではないだろうか。
口を開くと、兄者にデコピンをされた。
( ´_ゝ`)「貸し借りなしだ。いや、さっき助けてもらった分借りか」
(´<_` )「……そうだな」
はぐらされたような気がしないでもないが、気持ちがストンと落ちる。
どうやら、言わなければならないものはないらしい。
兄者にさっさと浮遊系の魔力をブーンに吸収させろと言い、自分は一歩後ろにさがる。
ブーンとドクオはそれでいいのかと、尋ねたいという表情をしていたが無視をする。
いいのかも何も、他に言う言葉など思いつかないのだからしかたがない。
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:51:51.70 ID:GIL1sfKUO
よむほー
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:53:17.82 ID:qBkarDt10
支援
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:54:25.07 ID:KOuWO1vG0
( ´_ゝ`)「いくぞ」
( ^ω^)「わかったお」
手を伸ばし、ブーンに合図をかける。
( ^ω^)「魔法よ、我が身へ吸収されよ」
目には見えない魔法が吸収される。
吸収している本人であるブーンにはその感覚が伝わっているようで、不思議そうな顔をしている。
( ^ω^)「変な感覚だお」
体が軽くなったような気がすると笑みを浮かべる。
(´<_` )「笑ってる暇があるなら合成しろ」
('A`)「そう急かしてやるなよ」
先ほどまでの緊張感が嘘のように軽い会話が続く。
ブーンも小さく笑い、目を閉じた。
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:54:28.70 ID:sGix1va1O
全米が抜いた
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:56:14.62 ID:1pr8guhUO
おかえり支援
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:57:11.57 ID:KOuWO1vG0
体の中でいくつかの魔法が存在を小さく主張している。
その中でも似た波長を持つ魔力があった。
一つは力強く、一つは軽やかだった。
二つを選択して混ぜ合わせる。魔力同士はわずかに反発したが、すぐに馴染み始めた。
まるで元は一つの魔力だったかのようだ。
( ^ω^)「……できたお」
新しい力を得た魔力は暖かい。
腹の中からその暖かさを感じる。
(´<_` )「んじゃ陣でも作るか。ドクオ、手伝え」
('A`)「何でオレ?」
(´<_` )「兄者は馬鹿だし、ブーンは馬鹿っぽいからだ」
('A`)「……割りと納得だわ」
( ´_ゝ`)「失礼な」
( ^ω^)「ボクは楽できて嬉しいお」
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:59:17.59 ID:iiSjoDZ+O
支援、待った
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:00:16.78 ID:KOuWO1vG0
弟者はドクオに木の枝を渡すと、地面に円を描き始める。
(´<_` )「そっちに今からいう紋様を描いていってくれ」
('A`)「はいはい」
大きな部分は弟者が描き、細かい部分はドクオが仕上げていく。
残された二人は陣が完成していく様子を黙って見ていた。
ブーンの方は兄者に言いたいことがいくつもあったのだが、兄者からかもしだされる雰囲気がそれを許さない。
何も聞くな。何も答えない。
誰にでも聞かれたくないことがある。ブーンはそう結論付けた。
(´<_` )「完成っと」
('A`)「ブーン、ここに魔法を使ってくれ」
( ^ω^)「わかったお」
中心へ手を向ける。
( ^ω^)「移動する魔力よ、陣へと入れ」
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:00:40.21 ID:1pr8guhUO
しえーん
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:00:42.96 ID:K2N5WPQoO
早いな支援
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:01:26.28 ID:7sLYsMJc0
これが終わったら風呂入る支援
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:03:12.24 ID:KOuWO1vG0
魔力は目に見えない。
けれど、陣が薄く光ったのは誰の目にも明らかだった。
( ^ω^)「……点滅してるお」
(;'A`)「やっぱ魔力が不安定だからか」
(´<_` )「さっさと入れ」
( ´_ゝ`)「行くぞ」
光が消える前に四人が陣へ入る。
(´<_` )「発動」
言葉に反応し、陣がさらに大きな光を発する。
その光は四人を包み込む。
(´<_` )「絶対に生きて帰るぞ」
弟者は兄者に告げる。
( ´_ゝ`)「そうだな」
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:06:00.76 ID:K2N5WPQoO
ドキドキ支援
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:06:43.37 ID:KOuWO1vG0
光が晴れると、そこはあの大広間だった。
('A`)「……戻ってこれた」
( ^ω^)「助かったのかお」
あの密室から抜け出せたことに安堵したのか、二人はその場に座り込む。
二人の腕を弟者と兄者が掴んだ。
( ´_ゝ`)「安心してる場合じゃないぞ」
(´<_` )「まだここは城の中なんだからな」
( ^ω^)「そう、だおね」
ドクオとブーンは立ち上がり、四人は扉に近づく。
今はまだ騎士達の姿が見えないが、いつ現れるかわからない。
扉に耳を当ててみるが、物音は聞こえない。
('A`)「変だな」
四人を襲ってきた女は王の命令でやってきた。
つまり、自分達の行動は筒抜けだったということだ。
ならば何故ここに騎士達がいないのだろうか。
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:07:10.56 ID:1pr8guhUO
しえしえ
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:10:07.54 ID:K2N5WPQoO
早く逃げるんだ!支援
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:10:23.31 ID:KOuWO1vG0
(´<_` )「オレ達がここにくる前、あの騎士言ってたな」
この政策について詳しく知っているのは王と、以前やってきた魔術師だけだと。
('A`)「オレ達を捕まえるように命令すれば、全てばれてしまうってわけか」
助かったと言えばいいのか。
そもそも、このような政策がなければよかっただけの話なのだが。
( ´_ゝ`)「まあ、不幸中の幸いってことで」
( ^ω^)「だお」
四人はそっと扉を開ける。
広い廊下のどこを見渡しても人の影はない。
そっと足音をたてないように歩く。
今は命令されていないが、四人のような城に相応しくない不審者の存在が確認されていれば、
王は躊躇なく四人の捜索を命令するだろう。
常に回りに気を配りながら進んで行く。
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:13:17.91 ID:KOuWO1vG0
<ヽ`∀´>「まだ背中が痛いニダ」
( ^Д^)「不審者なら報告しろよww」
<ヽ`∀´>「そんなことしたら、ウリが仕事を忘れてたのまでバレるニダ」
( ^Д^)「メシウマwwプギャーww」
曲がり角の向こう側から声がした。
ここは一本道なので、このままじっとしているわけにもいかない。
( ;´_ゝ`)「隠れるところなんてないぞ」
大きな置物もなく、四人もの人数が隠れられそうな場所はない。
(;'A`)「あっ、ここ開いてる。
中は物置っぽい!」
小さな声で言いあい、四人はなだれ込むように扉へ入って行く。
( ^Д^)「ん? 何か聞こえたか?」
<ヽ`∀´>「聞こえなかったニダ」
( ^Д^)「そっか。ならいいや」
<ヽ`∀´>「歳のせいで耳が馬鹿になったニダww」
( #^Д^)「てめーぶっ殺す」
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:13:25.70 ID:iiSjoDZ+O
逃げ……るか、支援
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:14:48.99 ID:K2N5WPQoO
何だかハラハラするな支援
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:16:03.19 ID:KOuWO1vG0
(´<_` )「……行ったか?」
( ^ω^)「……行ったお」
緊張で固まっていた体の力を抜く。
暗い部屋だが、辺りを見回せば置物や刃の欠けた剣があった。
ゴミを集めているのだろうかと思うほど汚い部屋だ。
('A`)「何だろ」
( ´_ゝ`)「どうしたんだ?」
別の騎士がくる前にと、扉を開けたが、ドクオだけが部屋の中に残っている。
兄者が声をかけるが、ドクオは返事もせずに部屋の中を見ている。
(´<_` )「おい、置いて行くぞ」
('A`)「ここ、何か変だ」
具体的にはわからないが、直感的におかしいと感じた。
ドクオは家柄、直感を大切にしている。
変だと感じたときは調べる。呪いの類に気づくのは案外こうした直感なのだ。
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:18:47.05 ID:EWYx1rTDO
シエンタ
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:19:27.12 ID:KOuWO1vG0
( ^ω^)「早くしないと……」
( ´_ゝ`)「ま、いいんじゃね? ここにいれば安全だし」
隠れる場所は山のようにある。
第一、このような場所を好き好んで訪れる騎士がいるとも思えない。
(´<_` )「ちっ」
不満を隠そうともしない。
単独行動は危険だとわかっているのか、弟者も大人しく扉を閉めて部屋の中に戻った。
('A`)「んー。どこだ?」
見渡すだけではわからなかったのか、あらゆる所を触れて探り始める。
ドクオが動くたびに埃が舞い、ここがいかに使われていないかがわかる。
( ^ω^)「病気になりそうだお……」
(´<_` )「もういいだろ」
('A`)「もうちょっと」
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:21:59.92 ID:KOuWO1vG0
時間を計ることはできなかったが、それでもずいぶんと時間が経ったのはわかる。
そろそろ待つことに飽き飽きし始めた。
今もまだ辺りを探っているドクオの様子を見守っている三人はため息をつく。
('A`)「あ」
小さな、でもはっきりと声が聞こえた。
( ^ω^)「何かあったお?」
('A`)「隠し扉だ」
( ´_ゝ`)「え?」
(´<_` )「んなもんがあったのか」
各々座っていた場所からドクオのいるところへ移動する。
ガラクタがなくなった床には、下へ続く扉が開かれていた。
( ^ω^)「……どうするお?」
この扉がどこに続いているかわからない。
もしかすると、外に続いているかもしれない。一階にあるかもしれない倉庫に続いているかもしれない。
少なくとも、騎士が集まっているような場所にはでないだろう。
(´<_` )「行けばいいんじゃね」
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:22:37.32 ID:f8IoLq0KO
支援
やっと追いついた!
現行ずっと待ってたよ、初支援でっす!
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:23:28.52 ID:iiSjoDZ+O
支援
度胸あるなこいつら支援
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:24:32.44 ID:CM8Lj1gQO
支援
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:24:32.99 ID:KOuWO1vG0
この部屋から出て、城からの脱出を試みるのも、目の前にある階段を下るのもリスクは同じ程度だろう。
('A`)「オレもそれがいいと思う」
きっとこの先には何かがあるとドクオが言う。
ブーンも兄者も二人の意見に賛成した。
弟者が先頭をきり、階段を下りていく。一番後ろはブーンが歩いた。
薄暗く、どこかかび臭い。
( ^ω^)「さっきの部屋よりも環境が悪いお」
( ´_ゝ`)「まあ、文句言ってもしかたがないだろ」
先頭にいる弟者が炎を出しているおかげで、かろうじて足元が見える。
('A`)「それにしても長いな……」
(´<_` )「地下まで続いてるのかもな」
一階はとうに過ぎてしまっているだろう。
それでもまだ階段が続いている。
ゆっくりと下りていると、薄っすらと明かりが見えてきた。
( ´_ゝ`)「明かり?」
('A`)「誰かいるのか?」
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:26:27.96 ID:KOuWO1vG0
下りるスピードを早めると、ひらけた場所に出た。
( ∀ )「誰かいるモナ?」
特徴的な語尾が四人の耳に入る。
驚きと、このままでは不味いという感情が混ざり合う。
( ´∀`)「助けて欲しいモナ……」
弱々しい声と同時に、金属音がする。
鎖が動いた音だ。
よく見てみると、人が壁に繋がれていた。
( ´_ゝ`)「……モナー王がなんでここに」
呟きに答える者は誰もいなかった。
誰も答えを知らなかった。
( ;´∀`)「ど、どうしたモナ?
いつもの人とは違うみたいだけど、もしかして味方じゃないモナ?」
( ^ω^)「どう思うお?」
(´<_` )「こっちの王が本物で、オレらが見たのは偽者ってことか?」
('A`)「ぽいね」
( ´_ゝ`)「それにしても王、普通のおっさんぽいんだが」
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:27:00.51 ID:qBkarDt10
支援
ドキドキするなぁ〜支援
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:27:40.27 ID:1pr8guhUO
支援だ
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:28:15.11 ID:KOuWO1vG0
( ;´∀`)「普通のおっさんで悪かったモナね」
四人の会話を聞いていたモナーが口を挟む。
雑談は置いておいて、とにかくこの鎖を外してくれた頼んだ。
(´<_` )「どうするよ」
( ^ω^)「助けてあげるお」
('A`)「でも罠かもしれないぞ」
( ´_ゝ`)「うーん」
顔を突き合わせて相談をしてみるが、話は一向にまとまらない。
( ´∀`)「慎重なのはいいモナ。でも、急がないとあの子の仲間がきてしまうモナ」
( ´_ゝ`)「あの子?」
( ´∀`)「助けてくれたら話すモナ」
('A`)「交換条件か」
( ^ω^)「もう早く助けてあげるお」
(´<_` )「……しかたないな」
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:30:20.11 ID:1pr8guhUO
しえーん
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:30:41.22 ID:KOuWO1vG0
警戒しながらモナーに近づく。
正面からではなく、横側から近づいて手錠に触れる。
鍵穴があったが、周りの空間を見ても鍵がありそうな場所はない。
(´<_` )「あー。面倒くせぇな」
弟者が鍵穴に手をかざし、呪文を唱える。
細い氷が鍵穴の中に侵入して形を作っていく。
このような精密作業をするためには、術者の集中力と技量が問われる。
( ´_ゝ`)「大丈夫かな」
('A`)「弟者は色々使えるけど、器用貧乏って感じだしな」
(´<_`# )「聞こえてんだよ!」
怒鳴りながらも、視線は鍵穴の方に向けられている。
鍵の形になった氷を弟者が回すと、手錠は心地良い音をてててはずれた。
( ´∀`)「もう片方も頼むモナ!」
(´<_`; )「あー。はい」
疲労の色が見えているが、弟者は再び鍵穴と向き合う。
呪文を唱え、再び細い氷を鍵穴の中へと侵入させる。
しかし、今度は中々上手くいかない。
氷系の魔法は得意な方であるが、先ほどの魔法で集中力をつかいきってしまったかのようだ。
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:31:12.56 ID:qBkarDt10
支援
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:31:15.24 ID:K2N5WPQoO
本人の目の前でおっさん言うなwww支援
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:32:26.50 ID:KOuWO1vG0
しばらくしてようやく両手の手錠がはずれた。
( ´∀`)「ありがとうモナ。本当に感謝してるモナ」
自由になった腕を振る。
嬉しそうに笑っているが、感謝されている弟者は疲労のあまりうつぶせになっている。
('A`)「とりあえず移動しましょう。あの子の仲間とやらが来るのでしょう?」
思い出したかのように敬語を使う。
( ´∀`)「お腹の減り具合からいって、まだまだこないから大丈夫モナ」
( ´_ゝ`)「なん……だと……」
( ^ω^)「騙されたお」
もうすぐ敵がくるかもしれないと思い、弟者を急かしていたというのに、モナーはあっさりと嘘を暴露し
た。
うつぶせになっている弟者が舌打ちをしたのが聞こえる。
('A`)「ま、まあそれならゆっくり話も聞けるし。
弟者には休息が必要だしな」
( ^ω^)「そうだおね」
支援!
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:34:59.39 ID:KOuWO1vG0
弟者を除いた四人は輪になって座る。
モナーの言っていた『あの子』とやらについて聞くためだ。
( ´_ゝ`)「で、あの子っていうのは?」
( ´∀`)「その前に、キミ達はどうやってここにきたモナ?」
('A`)「えっと、優秀な魔術師を城が集めていて、それできました」
詳しく説明すると長くなるので、要点だけをまとめて話す。
集められた魔術師達が殺しあいをさせられ、呪術の一つとなっていることを話すと、モナーは少し悲しげな顔をした。
( ´∀`)「外ではそんなことになってるモナね」
( ^ω^)「王様はいつからここにいたんですかお?」
( ´∀`)「うーん。詳しい時間はわからないけど、ボクはそんな政策考えてもなかったモナ」
('A`)「つまり一年近く?」
よく誰も気づかなかったものだと思う。
一年も本物の王が不在の状態で国が回るとは到底思えない。
( ´∀`)「もうほとんど隠居状態だったからだと思うモナ。
最近は国内も安定してたから、息子にまかせっきりだったモナ。
その息子もしばらく国中を見て回るって言うから、大臣達に丸投げしてたモナ」
(´<_` )「仕事してくださいよ」
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:35:28.17 ID:qBkarDt10
支援
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:36:15.95 ID:K2N5WPQoO
意外と曲者だなしえ
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:36:38.69 ID:KOuWO1vG0
( ´_ゝ`)「あの……。そろそろあの子とやらについて聞きたいんですけど」
( ´∀`)「モナ……。あの子はキミ達と同じ年くらいの男の子モナ」
まさかと思う。
同じ年くらいの人間がこのようなことをできるとは思えない。
('A`)「オレ、殺しあいをさせたいなんて思ったことないぜ」
(´<_` )「オレもだよ」
誰だって、他人の死ぬ姿を見たいとは思わない。
( ´∀`)「あの子も、そうやって生きていくはずだったモナ」
( ^ω^)「何かあったのかお?」
( ´∀`)「あの子は元々隣国で生まれたモナ」
( ´_ゝ`)「え、じゃあ何でここに」
隣国とは友好関係を結んでいる。
だが、国同士の仲が良いとはいえない。
民間でのやりとりはいくつかあるようだが、大きな輸出や輸入はされていない。
一昔前の大戦がまだ両国にくすぶっているのだ。
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:38:14.26 ID:KOuWO1vG0
( ´∀`)「向こうの国で両親と兄弟を殺されて、こっちへ逃げてきたモナ」
('A`)「殺された……」
兄者と弟者はどちらかが死ぬかもしれないという状況に陥っていた。
ブーンは姉をこの政策の中で殺された。
身内が殺されるという感覚をドクオは知らない。
( ´∀`)「あの子の魔法は良い目では見られてなかったみたいモナ」
亡命してきたあの子とやらをモナーは受け入れた。
城にかくまい、外の世界で生きていけるだけの知識を与えていった。
( ´∀`)「でも、ある日……」
モナーの息子が城を出た日、あの子は本性を現したかのようにモナーに襲いかかった。
知らぬうちに仲間を集めていたようで、気がつけばここにいたという。
(´<_` )「王は魔法の方は……」
( ´∀`)「使えないモナ」
多数に無勢。さらに魔法使いと使えない者の差は大きい。
このような状態になってしまったモナーを責めることはできない。
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:40:13.43 ID:qBkarDt10
支援
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:40:15.14 ID:KOuWO1vG0
( ^ω^)「その子はどんな魔法を使うんだお?」
( ´∀`)「『氷系』と『変化系』モナ」
( ´_ゝ`)「変化か」
四人が今まで見てきた王の姿はあの子が変化した姿だったのだろう。
遠目からしか見ていないので、精度のほどはわからないが、一年もの間周りを騙し通しているのだからそ
うとうのものなのだろう。
('A`)「目的って、何だろうね」
(1∵)「知ル必要ハナイ」
(2∵)「オ前ラハココデ死ヌ」
感情のこもらない声に振り返れば無表情の男が数人立っていた。
( ;´∀`)「いつもの人達モナ」
(´<_` )「えっ」
( ^ω^)「さっき、まだしばらくこないって……」
( ;´∀`)「テヘ」
( ´_ゝ`)「ダメだこの王」
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:42:47.49 ID:KOuWO1vG0
( ´∀`)「左側の壁にスイッチがあるモナ。それを押せば最上階への階段が出てくるモナ」
男達がこちらへ足を進めるのと同時に五人は走りだした。
足の遅い兄者よりもモナーは足が遅い。
(´<_` )「ったく!」
弟者がモナーの手を引く。
( ´∀`)「……お願いがあるモナ」
(´<_` )「それって今じゃないとダメですか!」
( ´∀`)「ダメモナ」
息をきらせながらもモナーは言った。
( ´_ゝ`)「どうぞ」
よほど大切なことなのだろうと、兄者は言葉の先を促す。
先頭を走っていたブーンがスイッチを押した。
( ´∀`)「ボクが足止めするモナ。だから、キミ達はあの子を助けてあげて欲しいモナ」
(´<_` )「助ける?」
壁が鈍い音を立てて横へスライドする。
向こう側には階段が見える。
ひどいwwww支援
支援です!
139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:44:04.37 ID:qBkarDt10
死亡フラグ支援
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:44:42.06 ID:KOuWO1vG0
( ´∀`)「悪いことをしたら叱らないとダメモナ」
( ´_ゝ`)「あなたが叱ってやったらどうですか?」
( ´∀`)「ボクじゃまた捕まるのがオチモナ」
偽者が同じ姿をとれるのだ。今さら騎士を招集しても遅いだろう。
(´<_` )「オレらにそんなたいそれたことをしろと?」
( ´∀`)「どうせ、ここから出るには最上階にある王室に行ってからしか出る道はないモナ。
ついでだと思ってくれればいいモナ」
( ´_ゝ`)「でかいついでだこと」
モナーは弟者の手から抜け、男達と向き合う。
( ´∀`)「彼らは魔法が使えないはずモナ」
腰を低くし、拳を男の顔面に叩きつける。
( ´∀`)「護身術ならボクだってできるモナ」
(´<_` )「行くぞ」
('A`)「え、王様は?」
( ´_ゝ`)「いいから!」
141 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:44:44.84 ID:K2N5WPQoO
ダメだなぁwwしえ
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:45:50.44 ID:1pr8guhUO
わくわく支援
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:46:38.10 ID:KOuWO1vG0
ブーンとドクオに早く上れと声をかける。
狭い階段は人が一人通るのがやっとだ。
先頭をブーンが走り、その後にドクオが続く。少し距離が開いて弟者と兄者が走る。
( ;^ω^)「さ、流石に疲れてきた、お……」
(´<_`; )「止まったら追いつかれるぞ」
息を切らせる。
下りてきた階段よりもずっと長い階段だ。それでも止まることは許されない。
(;'A`)「何か嫌な予感」
( ;´_ゝ`)「やめろよ」
ドクオの予感は当たる。
先頭を走っていたブーンの足元が淡く光った。
( ^ω^)「お?」
('A`)「魔法陣か!」
( ´_ゝ`)「ブーン! ドクオ!」
兄者が叫ぶ。
だが返事は返ってこなかった。二人はなす術もなく光にのまれて消えた。
(´<_` )「罠か」
( ´_ゝ`)「……そんな」
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:47:29.48 ID:qBkarDt10
支援
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:48:23.04 ID:KOuWO1vG0
階段にしかけられていた魔法陣は消滅していた。
追うことはできない。
(´<_` )「行くぞ」
( ´_ゝ`)「お前、なんでそんなに冷静なんだよ」
(´<_` )「ぼけーっとしてたってしかたないだろ」
弟者は階段をのぼっていく。
( ´_ゝ`)「……」
消えた二人の姿が脳裏に焼きついて離れない。
(´<_` )「王の言ってたあの子とやらに会えばどうにかできるかもしれんぞ」
( ´_ゝ`)「……そう、だよな」
兄者は名残惜しげにその場を離れる。
一歩ずつ上がっていく足音が狭い階段の中でただ一つの音となった。
二人はただ黙々と足を進めていく。
第八話 完
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:48:24.51 ID:XYDNI5+80
支援
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:49:04.83 ID:1pr8guhUO
しえんしえん
148 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:49:20.96 ID:XYDNI5+80
乙だ
んじゃ俺も風呂入ろーって思ったのが間違いだったか
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:49:49.72 ID:KOuWO1vG0
これにて八話目も終了となります。
たくさんの支援ありがとうございました。
今年中の完結を目指してまた来月辺りに投下する予定です。
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:50:41.20 ID:bC7uAD+l0
乙
やっとフロ入れる
151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:51:02.95 ID:qBkarDt10
乙
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:51:23.66 ID:K2N5WPQoO
乙でした!
これからどうなるんだ…
153 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:51:29.90 ID:fMRGeEahO
乙
154 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:53:52.10 ID:1pr8guhUO
乙!
乙です、これからも楽しみにしてます。
やる事あったのについ張り付いてしまったw
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:54:02.49 ID:iiSjoDZ+O
乙。飯食おう
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:58:11.44 ID:GIL1sfKUO
乙!
何時も楽しみにしてる
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:59:18.00 ID:/KfdhR1/0
今回もよかった。乙!
乙です
また寝不足だが一片の悔いなし!
次も楽しみだ
乙! 次回も楽しみに待ってるぞ。
161 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 00:12:51.25 ID:6xqAZXrV0
乙
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 00:23:26.95 ID:ndTH8oXsO
乙
来てたのか
超乙
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 02:56:07.88 ID:gPZ8F5TrO
よむほ
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 03:56:03.51 ID:EBSDtxY2O
俺も読むわ
`・+。*・ (´・ω・`)
。*゚ 。☆―⊂、 つ
。*゚ : ヽ ⊃
`+。**゚**゚ ∪~
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 07:48:04.41 ID:1Nz4MYCsO
やっぱりおもしろいな
乙!
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 08:40:51.72 ID:NKukPkAdO
ほっしゅ
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 09:33:19.99 ID:DAUAESWgO
今一話から読んできた
乙
次も待ってる
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
よむ