(　＾ω＾)ブーンは釣るようです

釣り針。

釣竿。

釣糸。

釣った魚を入れるためのバケツはないし、クーラーボックスもない。それでも、彼は間違いなく釣りをしている。

(　＾ω＾)「…………」

小太りな男である。髪は黒。眼は細く優しげ。肌は褐色。ルックスに関しては、早い話“どこにでもいるピザ”

服装は、青い着物。

年は、不明。

まだ若いと言われればそうかも知れないし、だいぶ歳がいっていると言われればそう見えなくもない。

とにかく、解るのは「小太りな男」ということだけ。

小太りな男は、安っぽい竹の釣竿を、目の前の川に垂らしているのだった。

理由は、誰にもわからない。

(　＾ω＾)ブーンは釣るようです



.

期待

(,,ﾟДﾟ)「なあ、あんた」

何故その男に声をかけたのか。それは自身でもよく解らない。

とりあえず、なんとなく声をかけてしまったのだ。

義古(ﾖｼﾌﾙ)ギコは、夏真っ盛りの七月の日曜日、青い着物の男に声をかけた。

ｆｍ

しーえん

東京都ニチャン市ニュー速町。その中心に流れるからニュー速川。なんとも安易なネーミングだと、ギコは常々思っている。

このところ仕事が忙しい中での、貴重な貴重な日曜日。その数少ない休日を、何故か彼は安易なネーミングの川のほとりを歩くことに浪費してみようと思い立った。

別に、日課とかではない、本当になんとなくの思い付き。

日頃は肌身離さない名刺入れとパソコン、ケータイを机に置き、サンダルを引っ掻けて外に出る。日曜日という名称に合わせたわけではないのだろうけれど、外は快晴であった。

どっかにまとめられたら読むしえん

雰囲気よさげ支援

こいつ避難所あがりだな
VIPでは空白行に.がいらないんだが？

避難所臭いので、三十点

(,,ﾟДﾟ)「………」

財布も置いてきたから、家を出た時点での彼の全財産は七百二十円。途中の(店員の態度がすこぶる悪いことで評判な)全国チェーンのコンビニでおにぎりとお茶を買ったから、今はきっかし五百円だ。

(,,ﾟДﾟ)(本当は缶ビールとかの方が似合うんだろうがな)

特に小説では、登場人物は河原に出掛ける時必ずといっていいほど缶ビールを買う。稀に発泡酒の場合もあるが、ギコにとってはどっちも酒であり、加えて言うならどちらも飲料不可物だが。

ゲコのギコ。同僚たちからは宴会の都度バカにされる。

外見がプロレスラーと張り合えるほどゴツいのでよく大酒豪と間違われるが、彼はワイングラス半分で酔いつぶれるほど酒に弱い。仕事に関しては社内一と誉れ高いギコの、数少ないウィークポイントである。

忠告なんだが名前欄やめたまえ

(,,ﾟДﾟ)「お茶うめえな。あと紀州梅にぎりは正義だ」

ペットボトルに口をつけ、にぎり飯のビニールを剥いでかじりながら(ゴミはしっかりとポケットに入れた)思わず独り言を漏らす。日光に照らされた河原は、人影はないものの故にのどかで、頬を撫でる風が心地よい。夏にしては気温が高くないことも散歩には好条件。

自分でもよくわからない思い付きだったが、いざ実行してみると意外にも名案だったようだ。土手の草が風に流されざわめく音を聞きながら、ギコはのんびりと歩を進めていく。

と、

(,,ﾟДﾟ)「ん？」

視界の端、直線距離にして二十メートルほど先。

そこに、彼はいた。

(　＾ω＾)／

小太りな、青い着物を着た男。バケツやクーラーボックスもないし、網もない。しかしながら先に糸をついた竹竿を持っているのだし、間違いなく釣り人だ。

(,,ﾟДﾟ)「…………」

ギコは、何故かその男から目を離さぬままに歩み寄る。男は反応を示さないが、お構いなしに横に立つ。

(,,ﾟДﾟ)「なああんた」

そしてギコは、その日二度目の気まぐれを起こしてみたのである。

>>12
了解した。次から原稿外でレスを返す。

>>14
うむ、そうしたほうがいいだろうな
でも俺ならばわざわざ原稿外と表現せずにそのまま返す
その方が自然だよ

支援

支援へのお礼は投下終わってからにした方が良いよー支援

支援

(,,ﾟДﾟ)「釣れてるかい？」

男の横に立ちながら、釣りをしている人間に対して発する言葉としては最も基本的な台詞。初対面でありながら挨拶は無しだが、ギコはそもそも仕事の時でさえまともな挨拶を滅多にしない男だ。

これで営業成績はトップと来ているので、同僚たちも首を捻りざるを得ない。

(　＾ω＾)「さっぱりですお」

独特の語尾で発せられた返事。顔はこちらに向かない。視線は相変わらず釣糸の先から微動だにしなかった。

まあ釣りとは本来かなり集中力を必要とするものだから、返事があっただけマシだが。

(,,ﾟДﾟ)(………)

ペットボトルを再び口に持っていきながら、横目で男を観察する。

(,,ﾟДﾟ)(語尾もだが、変な目の奴だな)

否、表現としては変な、というより不思議な、というべきか。

肉の厚い瞼の奥に見える、その瞳。

それは、まるで少年のように純粋な光を宿していた。

それは、まるで老人のように穏やかな光を宿していた。

少年のようであり、老人のよう。

そんな矛盾した二つの光を、彼の瞳は持っていた。

>>15>>16>>17
支援＆アドバイス感謝m(__)m

ジュニシニ支援

(,,ﾟДﾟ)「ボウズってことかい。何時間ぐらいだ？」

(　＾ω＾)「おーん……」

男は、少し考え込んでから答える。

(　＾ω＾)「十一時間くらいですお」

(;,,ﾟДﾟ)「ガハッ！」

お茶吹いた。

ギコが家を出たのが十時。逆算すると男は前日二十三時より釣りを開始し、ボウズのままで今に至るということになる。

(;,,ﾟДﾟ)「おまっ、根気の良さだけでギネス狙えるぞ！」

動揺から意味不明のツッコミに走ったギコの様子を感じたか、肩を揺すりながら男は言う。横顔しか見えないからよくわからないが、どうやら笑っているらしい。

(,,ﾟДﾟ)「………初対面の人間をのせるとはいい性格だな」

初対面のくせに挨拶すっ飛ばした人間に言われたくないのが普通の感性だが、釣り人は気を悪くするでもない。素直に「すみませんお」と(おそらく)笑顔のまま謝罪した。

(,,ﾟДﾟ)「で、本当は何時間だ？」

(　＾ω＾)「十時間ですお」

(,,ﾟДﾟ)「ガハッ！」

またお茶吹いた。

どした？

失礼入れ違いだった

>>21>>24
短時間での多数支援感謝。

ちょっと別サイトのも書くので次投下まで時間あきます。

支援にお礼はいらんと思われ
テンポ落ちるからさっさと終わらせてからにしなよ

どっちかに集中しないと、どちらの読者にも迷惑だろ……
あといちいち投下中に支援に反応するな
こちとら早く続きが読みたいんだよっ！

他の作者さんとかだと、投下が終わってから、一々アンカー出さずに「みんな支援ありがと」って言うような感じだよ。
ま、最後まで投下すんならどっちでもいーけどね、
支援。

あ

>>26>>27>>28
アドバイスどもー。

というわけでこれを最後にこっから完成まで突っ走ります。頑張るんで今後とも支援よろ

(　＾ω＾)「今度のは嘘じゃないですお」

(,,ﾟДﾟ)「…………やっぱりギネス級だな。眠くないのか？」

(　＾ω＾)「途中で船頭をさせて貰いましたお」

舟を漕いだ───つまりは居眠りということか。外面に似合わずなかなか洒落た言い回しをする。

沈黙、約五分。ペットボトルをまた傾ける。豆だらけの指にかかる負荷が大分小さくなった。三百五十ミリリットルのボトルはもうほとんど空っぽ。もう少しデカめにして良かったかと後悔したが後の祭りである。

(,,ﾟДﾟ)「………つまんなくならんか？」

ペットボトルをビニール袋にしまいながら尋ねる。丸々十時間も座りっぱなしで釣糸を眺める。自分なら途中で発狂確定だ。

(　＾ω＾)「全然。むしろなかなか楽しいもんですお」

いよいよもって変人の評価が固まる。この物騒な世の中で河原で居眠りができるその図太い神経一つとっても普通の人間の枠組みには入れ難い。

支援

しえん

支援だ

(,,ﾟДﾟ)「変な奴だな」

今度は口に出して言ってしまう。元々考えるよりまず行動の型の人間だ。

(　＾ω＾)「自分でもそう思いますお」

(,,ﾟДﾟ)「自覚あるのか」

(　＾ω＾)「おっ」

ギコのツッコミに男は頷く。

また、しばらく沈黙。川面のウキは風に揺られるが、水面下に沈む様子は見られない。というか近辺に魚影自体見当たらない。

普通はポイントを変えるが、男は座り込んだままだ。

(,,ﾟДﾟ)「俺は義古ギコだ。あんた、名前は？」

(　＾ω＾)「内藤ホライゾンですお」

ホライゾン。和訳、地平線。親はどういうつもりでつけたのかと激しく疑問に思ったが、自分のギコもあまり偉そうなことは言えないのでツッコミはお預けにしておく。

シエンタ

しえ

シエンタで思い出したが今アルファ何してんの

(,,ﾟДﾟ)「で、だ。内藤ほ、ホラ」

(　＾ω＾)「呼びにくいならブーンで構いませんお。これまで知り合った人は皆そう呼んでますお」

(,,ﾟДﾟ)「じゃ、遠慮なく。ブーンさん、あんた場所とか変えないのかい？」

川面のウキはやはり風に揺られているだけだ。このままだともう十時間待ったところでボウズ記録が更新されて終わりだろう。

(,,ﾟДﾟ)「釣りは根気だってのはよく言われてるけどよ、ここだとどれだけ根気つぎ込んでも無駄だと思うぞ俺は」

(　＾ω＾)「親切な忠告どーもだお」

そう言いながらも内藤─────ブーンは腰をあげない。目は釣糸を見たままだ。

(　＾ω＾)「でも大丈夫ですお。釣りを抜きにしてもここはいい場所だしそれに」

はじめてブーンがギコの方を見た。例の不思議な瞳に見上げられ、不覚にもわずかにたじろぐ。

(　＾ω＾)「ちょうどお喋りの相手ができましたお」

いい空気だ

しえしえ

(,,ﾟДﾟ)「…………」

ブーンの隣に腰を下ろし、横にビニール袋を置く。澄んだ水の匂いが鼻腔をつき、肺を満たした。

今までじっくり眺めたことは無かったが、綺麗な川だ。曲がりなりにも都内を流れる川にはとても見えない。

(　＾ω＾)「ギコさんは、どうしてここに来たんですかお？」

今度はブーンの方から先に口を開いた。着物の袖から菓子を取りだし、それを口に運んでいるため少しくぐもった声。食べている菓子が金平糖というのが面白い。

(,,ﾟДﾟ)「ま、暇潰しだな。本当なら日曜日はこの時間帯くらいまで寝てるんだが、今日に限って何故か早く起きたもんでね。無性に歩きたかったんで出てきた」

(　＾ω＾)「そして、たまたま僕に会って声をかけたと」

(,,ﾟДﾟ)「そういうこった」

がらにないことでもたまにはやって見るものだ。心の底からそう思う。

し

しえ

支援

(,,ﾟДﾟ)「たまには力抜くのも良いもんだな」

日は、少しだけ頭上に移動していた。夏にしては柔らかい光が水面で反射しキラキラと輝く。

日頃ディスプレイの光しか浴びない眼にとって、それはなんともいえない癒しの光。

(　＾ω＾)「仕事、忙しいんですかお？」

(,,ﾟДﾟ)「現在を生きる人間で忙しくない奴は、第一線から身ぃ引いたジジイとガキくらいのもんだろ。もしくは自宅警備員」

(　＾ω＾)「そんなもんですかお？」

(,,ﾟДﾟ)「そんなもんだ」

休みなく動き続けなければ生きていけない。一瞬でも立ち止まれば世の中から置いていかれ、やがて淘汰される。

マグロのような人生だと、時折自嘲の念が胸を過ることがある。泳ぐのをやめれば心臓が停止してしまうので、食事をするときも寝るときもひたすらに泳ぎ続けるマグロ。

休日以外で寝るときは電車に揺られながら。食事はファストフードを片手に歩きながら。

マグロのようなとは言い得て妙だと、我ながら思う。

支援

しえー

(　＾ω＾)「大変そうですお」

(,,ﾟДﾟ)「ああ」

ギコの声に、明確な嫌悪が表れる。

(,,ﾟДﾟ)「大変で、クソつまらん」

機械のように流れていく日々。乗る電車は毎日小田急線。乗る車両は三号車。同じような仕事を毎日繰り返し、大量生産されたハンバーガーを口にする。数少ない休日は基本的に睡眠で消える。

昔教師は言った。大人になるに従い、失うものもあるがそれ以上に得るものがあると。

(,,ﾟДﾟ)「嘘っぱちだ」

川面を眺めながら、吐き捨てる。

失ったものは確かに山ほどあるが、得たものなど何もない。

強いて言うなら、この先得るものなど何もないという虚しい確信。

マグロよりタチの悪い生き方だ。マグロは疑問を持たないが、ギコは疑問を持っているのだ。

疑問を持っているのに、その生き方を変えられないのだ。

うわ、これ俺大好きだわ
もしもしからで大変だと思うが頑張ってくれ

ふむ

少しだけ、風が強く吹いた。
少しだけ、川面が大きく揺れた。
少しだけ、ウキが水面下に沈んだ。

(　＾ω＾)「疑問、持ってるんですかお？」

(,,ﾟДﾟ)「ああ」

(　＾ω＾)「生き方、変えたいんですかお？」

(,, Д )「………あぁ」

返事なのかため息なのか。それはギコにもわからない。どちらでもあるような気もしたし、どちらでもないような気もした。

ただ、ブーンの言っていることは正しかった。

(　＾ω＾)「変えないんですかお？」

(,,ﾟДﾟ)「…………変えられないんだよ」

変えられるなら、変えている。でも、変わらないのだ。

どんなに願おうと、どんなにもがこうと、変わらなかった。

(,,ﾟДﾟ)(…………)

今更ながら後悔がわく。

あそこでああしていれば。あそこでこうしていれば。そんな意味のない思考が何度も何度も繰り返される。

くだらない。自分の思考も。自分の人生も。

(,,ﾟДﾟ)「あんたは、何を釣るためにここにいるんだ？」

嫌な思考の無限ループに入りかけ、話題を変える。かなり無理矢理な方向てんかんだったが、ブーンも察するものがあったのか深くは追及しない。

(　＾ω＾)「笑われるかもしれないけど」

ブーンはこちらを向き、苦笑いとともに答えた。


(　＾ω＾)「クマーを釣りたいんですお」
(,,ﾟДﾟ)「よーし歯ぁ食い縛れ」

ギコは、この日はじめて目の前の小太りの男に純粋な怒りを感じた。

Σ(ﾟдﾟ )ｴｰ!

支援

(　＾ω＾)「冗談ですお」

格闘家も裸足で逃げ出すような体格の男に凄まれても、ブーンは柳に風で受け流す。格の違いを見せつけられているようで少し悔しい。

(,,ﾟДﾟ)「で、本当は何を？」

(　＾ω＾)「人を釣りに来てますお」

淡々とした口調で、静かな声で、しかしはっきりと。ブーンは言った。

人を釣りたいと。

(,,ﾟДﾟ)「VIP的な意味でなら今度こそ本気の拳フルコースだが」

(　＾ω＾)「いやいや、真面目な話ですお」

(,,ﾟДﾟ)「…………だろうな」

人生経験は若造ながらもそれなりに積んできたつもりだ。本気か冗談かの区別くらいはだいたい見当をつけられる。

あえてこう呼ぼう。

彼は、内藤ホライゾンは、本気で人を釣りたいのだ。

こんな時間だけにホラーな絵が浮かんでしまった

(,,ﾟДﾟ)「人魚的な意味か？それともこう………死体的な？」

(　＾ω＾)「違いますおっお」

首を振りながら、ブーンはその肩を細かく震わせる。ギコの問いかけがツボに入ったようだ。

まあ、筋骨隆々のリーマンがクソ真面目な顔つきで問いかける内容でないことは確かだが。

(,,ﾟДﾟ)「だろうな。そうなるとやっぱり、俺みたいな物好きが気まぐれで話しかけてくるのを待ってるってわけかい」

からかい口調で言いながらもニヤリと笑う。

(,,ﾟДﾟ)「そりゃボウズ続きなわけだ」

(　＾ω＾)「いえいえ、こう見えても結構人は来るもんですお」

ポチャン。音が鳴り、ウキが沈む。

波に飲まれたそれではない。明らかに、何かに下からひきずりこまれた。

(　＾ω＾)「……………っ！」

絶妙のタイミングで竿が引かれる。糸の先が川面から飛沫を上げて飛び出す。

糸の先には、手のひらに収まる程度の名前もわからない小魚が一匹食らいついている。

支援

しーえん

これは楽しみだ。支援。

>>1
携帯での自演乙
みてて痛いだけ

遅いな

し

(　＾ω＾)「ほら」

ピチピチと活きのいい小魚を糸につけたまま見せ、素早い手際で外し川に戻す。

満面の笑みだ。

(　＾ω＾)「これで両方ボウズじゃなくなりましたお」

(,,ﾟДﾟ)「確かに」

つられて笑う。掴み所がない男だ。

(,,ﾟДﾟ)「釣果としては上出来だな」

(　＾ω＾)「おーん…………」

本当にわずかに、しかし確実に。

ブーンの表情が、はじめて歪んだ。

(　＾ω＾)「そうは、ならないんですお」

ふむ？

しばらく外します。残りは朝方投稿になる確率あり。すんません

了解
っても俺は保守できないけど

了。
自分も朝早いから、保守できない…

＿＿＿＿＿　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　 O
　　　　　　　o
　　　　 J('ｰ` )し　ﾒﾃﾞﾀｼﾒﾃﾞﾀｼ…
───φヽ　ヽ）/
　　　　　　「「/~/

　　　　　　　　　ｿｳｳﾀﾞﾈ
　　　　 J( 'ｰ`)し
───φヽ　ヽ）/　　ヽ('∀`)ノ　ｶｰﾁｬﾝｵﾔﾂﾆｼﾖｰ
　　　　　　「「/~/　　　　 (_ _ )

　　　　　　　ﾜｰｲｹｰｷﾀﾞｰ
　　　　　　　　　　　　　　　 _、_
　　　　 J( 'ｰ`)し('∀`)ノ　( ｰ` )　ｷｮｳﾉｵﾔﾂﾊｹｰｷﾀﾞｿﾞ!
　　　　　/っ旦o──、　　△ノ)
　　　　 (´　　　　　　　 )　　〈〈
　　　　　[i＝=====＝i]

ｱﾅﾀ ｹﾞﾝｺｳｱｶﾞｯﾀﾜﾖ

　　　　 J( 'ｰ`)し('∀`) ._、_
　　　　　/っ旦o─△、( ｰ` )　ｿｳｶ ｼﾞｬｱｵﾔﾂﾀﾍﾞｵﾜｯﾀﾗ
　　　　 (´△　　　　　　△ノ)　ｲﾝｻﾂｼﾞｮﾆﾓｯﾃｲｸﾖ ｵﾂｶﾚｻﾏ
　　　　　[i＝=====＝i] ─

早いけどほす
あとは頼んだ

(,,ﾟДﾟ)「ハハッ、俺じゃ不満か？」

自嘲ぎみなギコの言葉に、ブーンは静かに首を振る。

困ったようなに悲しそうなが付属する。

(　＾ω＾)「ギコさんと話していてると楽しいですお。不満なんかないですお」

でも。そう彼の口は動く。

声は、聞こえなかった。

(　＾ω＾)「僕が本当に釣り上げたいのは、たった一人なんですお。その人を釣り上げるまでは、何万人とお話しても、何十万匹のお魚を釣り上げても、絶対僕は満足できないんですお」

(,,ﾟДﾟ)「それは、親友か？」

ブーンの首が、横に揺れた。

(,,ﾟДﾟ)「恋人か？」

ブーンの首が、縦に揺れた。

ほ

最初から読み直したがこんなに読み入るSSは
久しぶりだ

ほ

ブーンが竿を振る。水面に波紋。

赤いウキが、プカプカと漂う。

(　＾ω＾)「僕が好きだった女の子も、釣りが好きでしたお」

ポツリとブーンは言う。

(,,ﾟДﾟ)「両思いじゃなかったのか？」

(　＾ω＾)「少なくとも僕は好きでしたお。向こうはどうかよくわからなかったけど」

一応人並みには仲が良かった。そんなことを口の中でモゴモゴと呟く。

(　＾ω＾)「でも、僕は大好きでしたお。ツンのことが」

(,,ﾟДﾟ)「ほぉ……」

ツンとは恐らくブーンが好きだった少女の名だろう。

(,,ﾟДﾟ)「想いを伝えたくて、釣りを？」

(　＾ω＾)「おーん……」

肯定とも否定ともつかぬ声が喉から盛れる。

ウキが沈む。素早く引く。

今度は何もかかっていなかった。

おはよう支援

おはほ

おはよう

引きこまれる

ほしぇ

つまんねえスレだな
死ねや

期待age

おはよう保守

なかなかいい
読み飽きない

こういう雰囲気の作品はかなり久しぶりに見る気がする

おはよう

いいね。
面白い。

まだか

おはよう
まだ来ないのか

おはよう

やあ申し訳ない。15分後より投稿再開します

待ってる

ktkr

(　＾ω＾)「違う………………と思いますお」

魚がかかっていないことはわかっているはずだ。

なのにブーンは、今度は針の先を川に戻さなかった。何かを思うようにじっと鉤針の先端部を見つめている。

餌はついていなかった。

(,,ﾟДﾟ)「違う、と思います？」

いかにも「よくわからない」という感情が表れたギコの問い。眉間に皺が寄り、泣く子も黙ると評判の強面の苦悩の表情が形成された。

うわ、つまんねーな

ただのオナニーじゃねーか
これは駄作

支援！

自分でもよくわからんのですお、彼はそう言いながら竿を振り、釣り針をニュー束川に投げ入れる。

ウキだけ。餌はつけていない。

(　＾ω＾)「僕自身、よく自分の気持ちがよくわからんのですお。少なくとも会いたいのははっきりしている。けど、会ってどうするんだという段階になるとわかりませんお」

そういう割には、ブーンの台詞は随分淡々としていた。

言葉は迷っている、しかし声は迷っていない。紛れもない矛盾。

(　＾ω＾)「ギコさん」

唐突に、ブーンがこちらを向いた。

(　＾ω＾)「ギコさんは、自分の生き方を後悔してるんですかお？」

支援

支援

おそらく、ギコが話題を変えなければさっきもこのことを問うたのだろう。

ブーンの口から滑り出た台詞には、先のギコのような白々しさはない。

(　＾ω＾)「自分の生き方を、後悔してるんですかお？」

再び尋ねられた。発せられた質問は、少しゆっくりになっている。

(,,ﾟДﾟ)「当たり前だ」

何故か、今度はギコも澱みなく返事ができた。

時間を置いたのがよかったのか。いや、それとは少し違う気がする。

思えばそれは、ギコの本日三度目の気まぐれだったのかもしれない。

(,,ﾟДﾟ)「俺の人生なんてのはな、後悔の塊だよ」

お、来てた支援

昔は、彼にも叶えたい夢はあった。夢のために努力し突っ走れば、どこかで必ず報われると信じていた。

その甘美な幻は、ギコが歳を重ねるにつれて薄れていった。

個性を尊重すると言いながら、個性を出すと率先して迫害を敢行した小学校の担任が最初の失望のはじまり。道徳の授業で「将来の夢」を語らされた際、ギコは当時自分がなりたかった小説家に対する想いを綴り、発表した。

後に陰険豆という渾名がつけられたガリ痩せの担任教諭が苦笑いを浮かべて言い放った台詞は、今なお耳にはっきりと残っている。

「そのジョークからして笑えないのに小説なんかお前に書けるかよ」

教師って糞が多いよね

しえん

そこでギコは知ったのだ。

夢とは、叶えるために存在するのではないと。また、現実から逃避するためのものにすらならないと。

人が幻想を抱いたまま野垂れ死ぬ前に、壊れることで現実を突きつけるために存在するのだと。

(,,ﾟДﾟ)「……………正直、できることならリセットしてえよ、こんな人生」

今でも思う。自分がどこかで仮にあの時の教師の言葉を振り払えたとしたら、自分は今でも夢を追いかけていたのだろうかと。

(,,ﾟДﾟ)「でもな、リセットしたとしても意味がねえんだ、俺の場合」

何万回と繰り返してきた自問。それに対する自答も、何万回と出してきた。

(,,ﾟДﾟ)「たぶん、同じ結果だ。平行世界って言うんだっけか？そこの俺もあんたにあってるかどうかはわからん。だけどな、これだけは言える。

どの世界の俺も、間違いなく歩んでるのはマグロの人生だ」

しえしえ

こんなもん有難がってる知恵遅れがブーン系にいるとかないわー
雰囲気がどうこうとか漠然としたこと言って自分を納得させているようだけど、
はっきりいってゴミレベル、話に面白さがない

このスレは明日になったら忘れられてる、名前も思い出せなくなる作文だよ

>>109
ちょっと黙ってて

>>109
君山田悠介好きそうだな？

つまんね

つまらない

おいまだか
期待してんだから頑張って

くっそツマンネ死ねカス

褒めてんの携帯厨ばっかｗｗｗｗｗｗｗ
作者もお前らみたいなのに認められたってうれしくねぇっつーのｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ

またアンチクライストが湧いてんのか
お前のスレ支援しなくてごめんね

ゆとり世代に賞賛されるよりは上の世代に褒められた方が嬉しいだろうけど図星突きすぎ
ま、ここはニコニコみたいなスレだね
釣られてな

>>116
携帯携帯うるせーから親のPC借りたよ
荒らしを黙らせるには荒らしの裏をとるのが一番だ

荒らしが勝手に支援してくれて本当に楽じゃのうｗ

>>116
ごめんね、土日も働いてる社会の奴隷だから携帯しか使えないの…(´；ω；｀)

顔文字はうざい

ブーン系スレで何を

ブーン系のショボンがうざくないのに語尾のショボンはうざい
ふしぎ！

ごめん…

評論家様の意見はどうでも良いから黙って保守だ

(,,ﾟДﾟ)「何で諦めたのかとかそんな野暮な質問はなしだぞ。嫌でも記憶に残ってるから思い出す、出さないの話はどうでもいいが、流石に口に出すのは御免被りたい」

(　＾ω＾)「それは解ってますお。ただ…………」

少し強く風が吹いた。一瞬、ブーンの体が揺れる。

(　＾ω＾)「そのあと、“もう一度”とは思わなかったんですかお？」

(,,ﾟДﾟ)「残念ながらな」

足元の小石をつかみ、投げる。川の中程で、小さな飛沫が上がった。

(,,ﾟДﾟ)「なんたって、歳を重ねるごとに嫌なもんしか見えなくなっていくのが人間だからな」

中学まで上がると、最早夢は持つこと自体許されなくなっていた。他者と同じ日常を共有することを強要される毎日を叩き込まれ、外れたがために淘汰された友人の背中をいくつも見た。

そうして、彼の二十八年間は過ぎていった。そして、これから先の六十年もたぶん同じ風に過ぎていくだろう。

釣るようですの誤爆かな？
まだ続けてたのか、感心感心

>>128
あ、そうなんだ
てっきり投下だと思って待機してたわｗｗ

総合に誤爆するとは面白い作者だなｗｗｗ

誤爆の話の最中すみませんがお題ください
一つだけでいいです、以後レスせずに即効書きます

>>131
釣り

しかし、昨日と違っては投下が少ないね
夜になれば来るかな？

>>133
昨日あれだけ投下があったから今夜は少ないかも知れん
でも、ニーイチか落ちこぼれは来るかもなｗ

>>133
くると思うけど昨晩よりは減るだろうよ
土日はいっつもそんな感じだ

>>134
そいつらはたしかにくるだろうなｗｗｗ

続きまだかなぁ

総合は今日も平和だお（*＾ω＾）

何が起こってるのか全くわからないんだけど黙って支援するべきか

もう荒らしだと思うことにする

ｗｋｔｋ

(,,ﾟДﾟ)「っと、長居しちまったな」

翳るというほどではないが、日差しはだいぶ弱まっていた。時計がないため時間は不明だが、それでも２時は過ぎているだろうか。

(,,ﾟДﾟ)「そろそろ帰るとするか。邪魔して悪かったな。釣り人さん」

腰をあげ、砂を叩き落としながらギコは言う。

(,,ﾟДﾟ)「結構有意義な時間を過ごせたよ。礼を言うぜ」

片手をあげて、立ち去ろうと踵を返し

(　＾ω＾)「ギコさん」

青い着物に身を包んだ釣り人の静かな声が、その動きを遮った。

(　＾ω＾)「少し、昔話をさせてもらっていいかお？」

再会ｋｔｋｒ

今から昔話だと…

しえ

ﾏﾀﾞｰ？

(,,ﾟДﾟ)「……………長くなるなら帰るぞ。別に俺はあんたの過去知りたいとは思わん」

(　＾ω＾)「おっお。その点は大丈夫ですお。手短に済ませますお」

足止めされて少し不機嫌になったギコが睨んでくるが、ブーンは他者の毒気を抜く満面の笑みで見返す。

視線がぶつかり合うこと数秒、折れたのはギコの方だった。

(,,-Д-)「本当に短いんだろうな？」

ため息をつき、再び横に腰を下ろす。

(　＾ω＾)「もちろんですお。ところでギコさん、貴方はさっき、自分の人生は後悔続きだと言いましたおね？」

(,,ﾟДﾟ)「続き？違うな」

へっ、と忌々しげに喉をならす。

(,,ﾟДﾟ)「言ったろう。塊だよ塊。後悔だけ積み重ねてきたくそったれな人生だ」

支援

いや、いくらもしもしとはいえ時間かかりすぎだろ

(　＾ω＾)「おっおっおー。なかなか壮絶な人生ですおね」

(,,ﾟДﾟ)「おちょくってるんなら帰るぞ。明日からまた仕事なんだ。箱入り娘の門限並みの時間で帰るつもりもないが、だからって貴重な睡眠時間を削る気もさらさらない」

(　＾ω＾)「そんなことしませんお」

いよいよもって機嫌を悪化させていくギコに対し、ブーンが微笑む。




────ゾクリ

ギコの背を、氷を押し付けられたような悪寒が走った。

>>13
ここまで読んだけどお結び買わなきゃいけないからちょっとコンビニ言ってくる

お？

まだやってたのか
面白かったら感想スレに感想書きに来て
読むから

別に怒り狂っているわけでもない、憎悪に満ちた表情に変わったわけでもない。

青い着物は、丸みを帯びた顔立ちは、手にした釣竿は変わらない。

なのに

(　＾ω＾)

(;,,ﾟДﾟ)

その微笑みだけが変わっていた。

その笑みに暖かさはない。
その笑みに穏やかさはない。
その笑みに優しさはない。

(;,,ﾟДﾟ)「お前……」

今までにブーンが見せた笑顔は、どれも彼の「表情」だとよくわかるものだ。満面の笑み、苦笑い、微笑、すべて内藤ホライゾンの「顔」である。

しかし、今の微笑は違う。まるで氷で作られた笑顔のお面をつけているような、そんな違和感。

(　＾ω＾)「ギコさん、僕もあなたと同じ人間だったんですお」

笑顔のお面を貼り付けたまま、ブーンの唇が動く。

(　＾ω＾)「僕の人生も、無数の後悔でできた虚しいものなんですお」

しえん

太公望的な人を釣るだと思ってたけど
こっちも面白そうだな

おむすびうめぇ

ほし

(;,,ﾟДﾟ)「ど、どういうことだ？」

冷や汗が伝い、思わず後ずさる。情けないとは思いつつも、そのワライの圧力に圧されてしまう。

(　＾ω＾)「まんまの意味ですお」

ブーンは相変わらずニコニコと笑っている。顔全体でワラっている。

(　＾ω＾)「僕も、人生ずうっと後悔して生きてきたお。あそこでもがけば何か変わったんじゃないか、あそこで動けばこうはならなかったんじゃないか、いっぱいありますお」

(　＾ω＾)「そう思うと、いつも凄く辛くなりますお、悲しくなりますお。でも」

突然だった。

ブーンの笑みに込められていた負の感情が、消え去ったのは。

おっと支援

支援だ

おいおい寝て起きたのにまだ完結してなかったのか
まぁいいや
雰囲気が好きだから続き期待age

支援

(　＾ω＾)「もがいても変わらなかったものは、後悔しても変わらないんですお」

竿の先を見つめながら、ブーンは静かに言う。その口調は、何かを言い聞かせているように思えた。

言い聞かせる相手がギコなのか、ブーン自身なのか、あるいは他の誰かなのかは定かではない。

(　＾ω＾)「ギコさん、貴方は今までの人生が後悔だらけだって言ってましたお。それは、貴方の今までの生き方が不十分だった証拠だお」

(#,,ﾟДﾟ)「なっ！」

思わず拳を固めるギコ。さっきまでのブーンなら、笑って「冗談ですお」とでも言って丸くおさめる。

(　＾ω＾)「悔いるということは、自分が全力じゃなかったことを認めてるんだお。あなたは後悔して、悔いることを言い訳にしてたんですお」

しかし、今のブーンはそれをしない。笑顔は崩さないが、語気をわずかに強めてギコをさらに追撃する。

支援

支援

ちょっと胸が痛いぜ……

(　＾ω＾)「ギコさん、貴方はさっき、“できるなら生き方を変えたい”と言ってましたお。じゃあ、何でもっと目一杯足掻こうとしないんですかお？」

(#,,ﾟДﾟ)「さっきも言っただろうが！」

ついにギコの怒りが臨界点を越える。地を蹴って立ち上がり、今にも殴りかかりかねない剣幕で捲し立てる。

(#,,ﾟДﾟ)「この世の中な！足掻いてももがいても変わらないようにできてるって俺は知っちまったんだよ！足掻かなかったことを確かに後悔はしてるさ！でもなあ、俺の“言い訳”はお前とは真逆だ！残念ながらな！」

自分はこんな人生を黙って享受したかったわけではない。本当は足掻く機会は何度もあった。ただ、タイミングを掴み損ねただけ。もしかしたらあそこで変わっていたかもしれない。

人生は変わらないと解っている。解っているからこそ、過去にすがりたい。過去の幻想にすがりたい。

“もしかしたら変わっていたのかもしれない”という幻想にすがり付きたいのだ。

しえ

あがくあがくうるせえよ
語彙力のない作者だ、もっと背伸びしてみろ

(#,,ﾟДﾟ)「足掻いて変わるなら俺も足掻きてえよ！本気で夢を追いかけてえよ！」

それでも、夢を持つことは格好悪いと知ってしまったから。

(#,,ﾟДﾟ)「立ち止まりてえよ！こんなレールみてえな人生から外れてえよ！」

それでも、止まればなにも残らないと知ってしまったから。

(#,,;Д;)「後悔なんかしたくねえよ！本当にせずに済むんなら！」

それでも、足掻いたところで何の意味もないと知ってしまったから。

彼は、追いかけられない。
彼は、止まれない。
彼は、足掻けない。

(,,;Д;)「もう、俺だって後悔なんか重ねたくねえんだよ………」

膝をつき、項垂れ、掠れた声で呟く。

その目が、訴えていた。

助けてほしいと。

語彙もそうだが文がハリボテ臭くて無理
どこにでもある誰にでも書けるようなことをベタ塗りすんなよ

また単発が沸いてきたな

支援

しえ

支援ー

ほ

あまりの投下速度に支援でなく保守がｗｗ

まあ流石に遅すぎだわ

考え考え打ってるのは分かるがゆっくりすぎるから保守でいい
たまにはこういうＳＳもいいよね

書き溜めて欲しいと思わんでもない
だが面白いしいいや支援

これ好きだ、支援。

投下速度に文句はないんだがさすがに明日昼間は保守できるかわからん

明日6時からは任せろ
日中は怪しいが

お前らはこういう時だけ団結力が強いな
頑張れよ

(　＾ω＾)「…………」

ブーンは沈黙を守る。ギコの嗚咽のみが川原に響く。

日は、オレンジに染まりつつあった。

(,, Д )

(　＾ω＾)「…………ギコさん」

ブーンに声をかけられても、ギコは俯いたままだ。

ポタリ、ポタリ。頬を伝う涙が、足元の土を小さく削ってゆく。

泣くのなんて何年ぶりだろうか。そんな他人事のように状況を冷静に観察する自分がいる。記憶を辿った結果、小学校で夢をけなされたあの日以来だということを思い出した。

(　＾ω＾)「ギコさんは、何で変わらないと思うんですかお？」

(,, Д )「俺は無限ループは趣味じゃねえ」

泣いているのに、その声は自分でも意外なほど平静だった。

(,, Д )「何度も言ってるだろ、変わんないからだよ」

釣り人は、会った時と同じように再びウキに視線を集中しながら、穏やかな口調で言った。

(　＾ω＾)「本当に、そうですかおね？」

支援！

(,,ﾟДﾟ)「お前、本当にしつこい奴だな。変わりはしないと」

(　＾ω＾)「僕が言ってるのは、貴方の人生のことじゃないお」

ギコの反駁を、例のやんわりとした喋りで遮る。

(　＾ω＾)「ギコさん、貴方自身の事ですお」

(,,ﾟДﾟ)「はぁ？」

言われたことの意味が解らず、思わず間の抜けた声を上げる。

(,,ﾟДﾟ)「何言ってんだ。人生が変わらねえなら俺も変われるはずねえだろ」

(　＾ω＾)「おーん、それは違いますお」

ポイントが悪いと思ったのか、釣り人は竿を振ってウキをわずかに移動させる。そもそも餌もついてないのに食いつくかどうかは疑問だが。

(　＾ω＾)「僕も昔は勘違いしてたけど、ギコさんの人生＝ギコさんじゃありませんお。仮に人生は変わらなくても、ギコさん、貴方は自分自身を変えることができますお」

sie

(,,ﾟДﾟ)?「よぅわからん」

(　＾ω＾)「ここまではっきり言われるといっそ清々しさすら感じますお」

珍しくブーンの方がため息を吐き、それから右手の人差し指が目の前の川を指す。

(　＾ω＾)「例えば今この状況で例えるなら、この川はギコさんの人生で、あのウキがギコさんですお」

(,,ﾟДﾟ)「釣糸と竿は？」

(　＾ω＾)「…………」











(　＾ω＾)「スルーで」

(,,ﾟДﾟ)「えー……」

しえしえ

じとっとした視線のギコにわざとらしく一つ咳払いをし、再び川に視線を戻す。

(　＾ω＾)「あのウキは、川の流れを変えることも、形を変えることもできませんお。水温も、色も同じですお。ウキは、ウキでしかないですお」

でも、と前置きし、竿を引き上げる。何もかかっていない釣り針が夕日を反射し、ギコは一瞬目を細める。

慣れた手つきで赤いウキを外し、代わりに袖から出した白いウキをつけてもう一度川に放る。

(　＾ω＾)「こうやって、色を変えることは簡単にできますお。他にも、形や重さを変えることも」

まあ実際に変えるのは人の手だが、と眉を下げながら付け足す。

投下ペースがｋｓｋしている

支援！

支援

(　＾ω＾)「人も同じですお。人生そのものを変えることはできなくても、個人を、自分を変えることはできますお。もっとも……………」

(,,ﾟДﾟ)「なんだ？」

(　＾ω＾)「性転換とかしたら人生も多分変わりますお」

(,,ﾟДﾟ)「そうかも知れんが色々と ね え よ 」

大真面目なブーンの台詞に盛大に笑う。確かに男が女に、あるいは女が男になれば人生はまるっきり変わる。そもそも人生観自体が理解はできても百パーセント相容れない。

しかし…………

(,,ﾟДﾟ)「結局そうでもしなきゃ人生は変えられんか」

笑顔の中に寂寥感を滲ませながら、天を仰いでギコはぼやく。

(,,ﾟДﾟ)「面白い話だが、人生そのものを変えられないなら俺には意味はないさ。流れに逆らうことで得る傷か、流され続けることで得る傷か。せいぜいそれくらいの違いでしかない」

四円

支援

しえん

(　＾ω＾)「おっ、それは違いますおギコさん」

(,,ﾟДﾟ)「どこがだよ」

珍しくはっきりした否定の意を示すブーンに僅かにたじろぎながらも、すぐに反撃に転じる。

(,,ﾟДﾟ)「性別変えねえ限り、なぞるレールは長さも道のりも丸っきり変わらない。んなもんに何の意味があるんだよ」

ギコの言葉に、ブーンは答えぬまましばしウキを眺めていた。

ウキが、先の小魚の時とは比べ物にならぬほど大きく沈んだ。

(　＾ω＾)「確かに辿るレールは同じかもしれないお」

獲物の引きに対抗すべく中腰になるブーン。

指の関節が白く浮き出て、竹の竿がしなる。

(　＾ω＾)「でも、大きく違うと思いますお」

水面下の敵が力を入れる。持っていかれかけた竿をしっかりと掴み直し、持ち上げる。

水飛沫があがり、釣糸にぶら下がるのは────────ボロボロな長靴。

テンプレートな結末に笑いを噛み殺すギコ。そんなギコの様子にも、長靴にも気を止めず、ブーンは続ける。

(　＾ω＾)「そのレールの上を、俯いて歩くか前を向いて歩くかは、全然違うと思いますお」

支援

ふむふむ

景色……？

保守

.

保守

３つ被ってワロタ

おやｗｗｗ

IDチェック

寝るほ

俺も寝るお

保守

ほ

ほ

あぶない

ほほほ

なん……だと……？

(　＾ω＾)「同じ道を歩くなら、つまんない顔して暗くなって歩くより、胸を張って笑って歩く方が断然いいですお」

(,,ﾟДﾟ)「望まねえ道を歩いてるのにか？」

(　＾ω＾)「だからその道を変える努力をすれば良いんですお」

何を言いやがる、そんなことを口の中で呟く。

変えることができないのなら、それは単に徒労が増えるだけだ。

(　＾ω＾)「おっおー、凄くくたびれる事ではありますお。しかも、自分の進む道が変わる可能性はほぼ０というのもわかりきってるから、余計に躊躇するとは思いますお」

ギコの心を見透かしたかのような、ブーンの言葉。

(　＾ω＾)「でも、少なくとも変わらないことを“納得”できますお」

(　＾ω＾)「ギコさん、貴方が本当に嫌っているのは、どれほどもがいても変わらない人生じゃないですお。変わらないからともがかなかった自分ですお」

(,,ﾟДﾟ)「…………」

先ほどまでとは逆に、沈黙するギコにブーンが語りかける。

その笑顔は、今までのどれよりも暖かい。

(　＾ω＾)「変わらないと解っているから、何もしない。無駄に動いても疲れるだけだから。でも、その割には今のギコさんも疲れてますお」

長靴はそのままに竿を置き、はじめてブーンは立ち上がった。

何となく大柄なイメージがあったが、いざ立ち上がってみるとせいぜい百六十半ば。さっきまでこちらを見上げていた笑顔は、位置を多少高くして相変わらずこちらを見上げていた。

まってたぜ

(　＾ω＾)「変わらないなら疲れるだけだからって何もしなければ、その時は確かに傷はつきませんし疲れませんお。

でも、振り返ってからもっと傷つきますお。疲れますお。現に、ギコさんがそうですお」

風が強くなった。着物の袖に風が入り、膨らむ。ブーンの体が少し大きく見えた。

(　＾ω＾)「ギコさん、貴方にとっての後悔は、未来の自分への言い訳なんですお」

(,,ﾟДﾟ)「っ！」

たじろいだのはなぜか。それは、ブーンの指摘が核心だったからに他ならない。

(　＾ω＾)「あそこで全力を出していれば変わったかもしれない、そう思い込んで無理やり幻を見ても、そんなものいくつ見たってむなしいだけですお。未来の自分に言い訳重ねたって、その時になって自分が苦しんで終わりですお」

(　＾ω＾)「それなら、死ぬ気でもがいてもがいてもがきまくった方がよっぽどすっきりしますお。自分の歩く道が、辿るレールが変わらなくても、その場その場で納得できますお。

何より、未来の自分に、明日の自分に胸を張ってこう言えますお」

そう言って、ブーンは自分の胸をポンポンと叩いた。

(　＾ω＾)「自分は全力を尽くしたって。だから、次はお前が頑張れって」

(,,ﾟДﾟ)

何かが、自分の胸を突いた気がした。

何かが、自分の中で壊れた気がした。

“そのジョークからして笑えないのに”

何度思い出しても辛かった担任の言葉。

“お前に小説なんか書けるかよ”

それが今は、何ともなかった。

(　＾ω＾)「それに、何をしても絶対に変わらないという保証もありませんお」

ギコの変化に気づいていたのだろう。が、ブーンは気づいていないかのように言葉を紡ぐ。

(　＾ω＾)「死に物狂いでやってたら、道を踏み外して落ちた先に新しい道があるかもしれませんお。壊した壁の向こうに実は別の道があるかもしれませんお。ゆっくり行ってみたら、レールに分岐点があるかもしれませんお。

もちろん、結局何も変わらない可能性の方がはるかに高いかもしれませんお。だけど………」

「未来の自分に謝って、過去の自分を罵倒する生き方。

未来の自分に胸を張れて、過去の自分を労える生き方。

ギコさんなら、どっちの生き方を選びますかお？」

(,,ﾟДﾟ)「……………長居しちまったな」

ブーンの問いには答えず、ニュー速川の水面に目をやる。足元に落ちたビニール袋を拾い上げ、踵を返す。

(,,ﾟДﾟ)「そろそろ帰るわ。仕事もあるしな」

(　＾ω＾)「おっお、サヨナラですお」

今度は、ブーンはもう呼び止めなかった。ゆっくりと離れていくギコの背に手を振る。

(,,ﾟДﾟ)「あぁ、忘れてた。サイナラ。そして」

何故なら

(,,ﾟДﾟ)「ありがとさん」

ギコがどちらの生き方を選ぶかは、もう解っていたから。

支援

(,,ﾟДﾟ)

土手を歩きながら、ギコはポケットの中に手をやる。

五百円玉の硬質な感触。

(,,ﾟДﾟ)「未来の自分に、胸を張る、か」

それは、今からでも間に合うのだろうか。

そんな自問をしてみて、すぐさまギコは自答する。

(,,ﾟДﾟ)「間に合う間に合わないじゃなくて、間に合わせる、だよな」

何年後かは解らないが死ぬ間際に、過去の自分を労えるように。

何年後かは解らないが、死ぬ間際の自分に、今の自分が胸を張るために。

まずは、少し足掻いてみよう。

(,,ﾟДﾟ)「とりあえず、コンビニで原稿用紙でも買ってみるか」

今日四度目の気まぐれは、自分でも驚くほど素晴らしいものに思えた。

(,,ﾟДﾟ)「善は急げだな」

僅かに、歩みが速くなる。

もう彼は、振り返らなかった。

ニュー速川の川原に、一本の釣竿が落ちている。

ついているウキは薄汚れ、竿は所々カビている。

近くには、誰もいない。

日が暮れ、暗くなった川のほとり。

竿が一本、ぽつんと置いてある。

それっきり、ギコが釣り人と出会うことは無かった。

乙；；
感動したお；；

完了！

ラストの二ページ要らんがな！ってか過去話手ぇ抜きすぎやがな！

とりあえず反省！

皆様！支援＆保守ありがとうございました！

>>228
手探り書きながら本気出してみたのでそう言ってもらえると嬉しいですｗｗ

できれば続編とか書くかも。シリーズ的にして。

>>1>>2>>4>>7>>11
>>13>>19>>22>>31>>35
>>39>>42>>46>>49>>52
>>53>>56>>58>>65>>72
>>76>>95>>99>>102>>104
>>107>>127>>141>>146>>149
>>153>>157>>162>>166>>169
>>184>>186>>188>>190>>194
>>198>>216>>217>>219>>220
>>221>>222>>223>>225>>226>>227

おお、完結したか
乙！
雰囲気良かったよ
じゃあ読み返してくるわ

>>231はまとめです。全五十ページ。

遅筆のダメ作者を支援や保守、暖かい応援で支えてくださった読者の皆様、辛辣な口調ながらツンデレクオリティで保守・支援に回ってくださったその他の皆様、本当にありがとうございました！

>>232
ありがとうございます！意見等ありましたらぜひお願いしますm(__)m

ん、最後まで読んだ
普遍妥当平凡な終わり方だったが、最初から中盤にかけて釣りしながら会話するシーンの雰囲気が、やっぱ良かった
次あるのか
最後読む限り次は厳しいと思うけど頑張れ
出たら読む

ブーンについてもっと掘り下げてほしいな

あと最後、普通に良い話で終わるのは良いんだが、ちと説教くさかったな
でも最後の最後で釣り竿だけが、ぽつんとあるシーンは凄く良かった
うん
次回期待

>>237>>235
意見ありがとうございます。オチは自分も少し捻りたかったのですが結局思い付かず安易な着地に落ち着いてしまいましたorz
ありがとうございます、次も頑張ります！

>>236
一応いくつか続編も考えてあるので、プランが固まったら書こうかなと思ってます。その時はまた応援よろしくお願いします！

乙！ 無事に終わってマジで良かった！

>>239
ご心配をおかけして申し訳ありませんｗｗｗこれも一重に支援してくださった皆様のおかげです！

おお
完結乙

痛みに耐えてよく頑張った！
感動した！

乙！！！！！

続編期待するわ

ドクオのエピソードとか読みたいかなぁ

>>241>>243
ありがとうございます！
予定ではこのあと|从･∀･ﾉ!ﾘ、('A`)で最後にζ(ﾟーﾟ*ζと続けるつもりです

>>242
ありがとうございました！

馴れ合い厨が死ね殺すぞ

おお、終わったのか
乙！

昔のブーン系っぽくてよかった！乙

ほ

乙

乙乙！　なかなか興味深かったぜ

お、完結してたか乙

今北こっそり乙
とにかく無事終わっててよかった

なんというか、
はじめは微妙なスレと思ってたけど、長く残ってると愛着わくね

乙だぞ

一応こんなもんで保守しとく

今から読むほ

>>247>>248>>249>>251>>252>>253>>254>>250>>246

サンクス！

>>256
続編はここで書く？むしろ書かない？
書くんなら保守するけど

乙ー
別の話をここで書くんなら面白そうだなｗ

おつ