「話をしよう」
その部屋は窓が無いため暗く、今は閉められている木製の扉のみが外とそこを繋いでいた。
「とうとう僕たちは人を操る力を手に入れた」
むき出しのコンクリート、所々にガタのきているテーブル、それを囲む十の椅子。
「いや、正確に言うと少し違うか、まあいい」
内、使われているのは六脚。
「もうそろそろ動こうか、待っているだけでは退屈だからね」
動くって、どういう風に? 一脚が質問を投げかける。
「他の空持ちを潰すんだ、君の力で。ね、ヒッキー君」
別の一脚、死んだ目つきの青年が静かに頷いた。
( <●><●>)「で、話はそれで終わりですか」
青年の隣で虚空を見つめていた一脚が音を立てる。部屋から出たいようだ。
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 21:23:31.09 ID:8eg0IMGD0
大丈夫だ、問題ない
「どう潰すか、まだ言っていないよ」
( <●><●>)「どうでもいいので。では」
くだらない。そう言いたげな表情で、それは扉の向こうへ消えた。
「……まあいいかな。君達も出て行きたかったらそうしてくれ。これから話すことは、正直君達にとってどうでもいいことだからね」
動く者はいなかった。おしゃべりな彼は満足げに微笑む。
「ヒッキー君の空は他人を操ることができる。それを使って、空持ち同士を戦わせるんだ」
(-_-)「……準備は万端、後は動かすだけ」
死んだ目が僅かに動き、おしゃべり男を捉えた。
「そういうわけで、僕とヒッキー君はそれの暴れ具合を見に行くんだけど、誰か一緒に行かないかい?」
賛成の声は一つも上がらない。おしゃべり男は小さくため息をついた。
「じゃあ僕とヒッキー君で行って来るよ。杉浦君は前無君についていってくれ。残りの人は……好きにしていいよ」
いい加減な指示を残して、おしゃべり男は死んだ目の青年と共に部屋を後にした。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 21:25:49.81 ID:c3IUJt1uO
まとめ無いのか
第四話 燃え滾る闘志
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 21:28:09.39 ID:RdCsW6eJO
し
夕日差す教室、俺はペニサスが日直の仕事を終えるのを待ちながら、
窓際に立ちぼうっと外を眺めていた。
(,,゚Д゚)「まだか」
黒板を執拗に黒板消しで擦るペニサスに問う。
('、`*川「もうちょっと、もうちょっとだから」
ペニサスのもうちょっと全然ちょっとじゃない。
もうちょっとで宿題終わるから待ってて。次の日になっても終わっていない。
もうちょっとしたら返すから。未だに帰ってこない。
もうちょっと食べたい。俺の分が無くなった。このもうちょっとはどれくらい
長くなるんだろうか。
(,,゚Д゚)「日が沈むまでには終わらせてくれよ」
('、`*川「馬鹿にしてる? 怒るわよ」
怒りたいのはこっちだよ。言おうとして、やめた。いつもの事だし、待つのは
嫌いじゃないからな。
(,,゚Д゚)「悪かったよ」
誠意の一切こもっていない謝罪をして、また外へ目を移す。燃え上がらんばかりに
赤い空を見て、俺は一つ嫌なことを思い出した。
ぱちぱちと音を立て爆ぜる炎、怒号のような両親の声、視界を埋め尽くす煙。
泣きじゃくる俺。
全てを飲み込んだ熱を背に、俺は必死で走った。怖くて、情けなくて、許して欲しくて、
救いたくて。そう思ったときにはもう手遅れだった。あの時の俺は無力だったんだ。
('、`*川「終わったよ、帰ろっか」
過去から今へ、意識が戻る。
隣にペニサスが立っていた。小さく返事をしてスポーツバッグを肩にかける。
もうすぐ今日が終わる。この赤色も終わるんだ。
でも、俺は終わらない。父さんと母さんは帰ってこない。
('、`*川「あらま、もう日が沈んじゃう。早く行きましょ」
そうだ、行かなきゃ。前へ、ひたすら前へ。後ろは見ない。進むべき道は、
前にしかないんだから。
暗い路地を二人並んで歩く。ちかちかと存在を必死に主張する街灯は
心もとない。秋に入りかけということもあってか、やけに肌寒い。明日から
学ラン着てこよう。
('、`*川「あんた、今日は何時から走りに行くの?」
(,,゚Д゚)「十一時くらいに行こうかと思ってる」
('、`*川「毎日ご苦労様ね」
(,,゚Д゚)「好きでやってるんだ、苦なんかじゃないさ」
そりゃそうよね。呟いて、ペニサスは少し笑った。
俺の両親は二年前死んだ。
夜中、ふとトイレに行きたくなり目を覚ますと、なにやら焦げ臭い。
両親は俺の横で寝ているから、料理に失敗したとかじゃない。不思議に
思いながら廊下へ出ると、そこは炎で覆われていた。
両親を起こし終えた頃には、炎は俺たちの寝室を侵食し始めていた。
寝室は家の真ん中、窓が無い。この状況では無傷で外に出ることは
不可能だった。
俺たちは火傷覚悟で廊下を突っ切ることにした。
熱かった。怖かった。体を包む熱も、俺たちを焼きつくさんと揺れる炎も、
振り切ろうと走った。
どうにか玄関前へ到着し、ほっと気を緩めたその時、天井が落ちてきた。
俺は助かった。父さんが突き飛ばしてくれたから、天井の下敷きになることはなかった。
そう、俺だけ助かった。父さんと母さんは、天井をどかせようとする俺に
逃げろといった。俺には天井を動かす術が無かった。
だから逃げた。
家の前には野次馬が集まっていた。口々に大丈夫か、と心配した声色で
話かけてきた。まだ人が中に居る、俺の言葉を聞いても、、誰も助けようとは
しなかった。出来なかった、と言ったほうがいいか。そこに居た誰もが、
消防車が来るまで何もせず、ただただ家が焼けるのを呆然と見ていた。。
('、`*川「……どう、強くなった?」
あの日感じた無力。今も俺を縛り付けている。力があれば。
(,,゚Д゚)「さあな」
両親を失った俺は、親戚の家に引き取られた。彼らは慰めの言葉を
一切かけず、普通に俺と接してくれた。割れ物を扱うかのような態度を
葬式で散々とられてうんざりしていたので、彼らの態度は嬉しかった。
('、`*川「まあ、頑張りな。応援するからさ」
(,,゚Д゚)「おう」
自然と笑顔が零れた。
(,,^Д^)「ありがとな」
突然、どこからとも無く悲鳴が発せられた。ペニサスと二人、顔を見合わせる。
('、`*川「……何? 今の」
前方からコンクリートを蹴る音。誰かが近づいてくる。身構えながら闇に
目を凝らすと、それは女だった。うちの学校の制服だ。
爪;゚ー;)「た、助けて……」
見ると、服が裂かれている。出血もしているようだ。この切り口、刃物か?
('、`;川「ど、どうしたの!?」
慌ててペニサスが駆け寄る。
爪;゚ー;)「あっちに、刃物を持った男が」
女生徒はやってきた方向を指差し、へたり込んだ。
('、`;川「ど、どうするギコ? 私達も逃げたほうがいいんじゃ」
(,;゚Д゚)「当たり前だ! この人は俺が背負う、ペニサスは逃げ」
笑い声が俺の言葉を遮った。女生徒が後ろを見て小さく悲鳴を上げた。
視線の先には、包丁を持った男が佇んでいた。
( "ゞ)「待てよ、まだ終わってねえぞ」
一歩、こちらへ踏み出した。まずい。
(,,゚Д゚)「ペニサス、この子連れて逃げろ」
('、`*川「え! ギコはどうすんのよ」
(,,゚Д゚)「食い止める」
('、`*川「そんな! 危ないわよ!」
また一歩、着実に距離を詰めてきている。
(,,゚Д゚)「いいから、早く」
('、`*川「でも」
(,#゚Д゚)「行け!」
その声を合図に、男が一気に動いた。
男は包丁持ち、対する俺は鞄が一つ。素手で立ち向かうのは無理だ。なら、
(,,゚Д゚)「ふっ!」
間合いに入り込んだ男の横っ面に、鞄を叩き込んだ。いける。殴られた衝撃
で横を向いた頭に、もう一発打ち込もうと腕に力をこめた。
腕を振る寸前、男と目が合った。
ちっ。
今のは、舌打ち?
( "ゞ)「やってくれるじゃねえか、おう」
なんだ、体が、動かない。
( "ゞ)「ムカつくなあ、おい。女守ってヒーロー気取り」
ゆらり。男が体を揺らす。
動け、早く、早く!
( "ゞ)「だからさ」
銀の線が飛ぶ。そして、俺の腹に突き刺さった。
( "ゞ)「死んでくれよ」
体が、熱い。炎じゃない。なら何? ああ、そうか。俺、腹刺されたんだ。
('、`;川「ギコ!」
ペニサスの声。何してんだ、逃げろって言ったのに。
( "ゞ)「まだいたのか、ちょうどいいや、お前も殺す」
腹のナイフが捻られ無理矢理引きずり出された。熱さが増す。苦しい。
そのまま俺は前のめりに倒れこんだ。
( "ゞ)「ん? お前もしかして……」
かろうじて顔を上げると、男の足が目の前にあった。
( *"ゞ)「マジかよ! お前も空持ちか!」
よくわからない事を言い出した。
( *"ゞ)「ラッキーだぜ、朝の占い通りだ!」
(,,-Д゚)「……ろ」
( "ゞ)「あ?」
腕を伸ばしていた。男の足を掴むために。
(,,-Д゚)「やめ……ろ」
もう失いたくない。俺は、また失くすのか。大切な人を。力が無いから。
( "ゞ)「うっせえよ」
男は俺の手を軽く解き、足を上げ、
( "ゞ)「死んでろ」
勢いよく、俺の頭を踏みつけた。
鈍い音を最後に、俺の意識は途切れた。
地獄があるとするならば、まさにここのような光景をしているのだろう。
血よりも赤く染まった空に、俺を囲みこむ炎。勢いは絶えることなく、
安全な場所をじわじわと潰していく。
(,,゚Д゚)「どこだ、ここ」
どうも不思議な場所だ。眼前の炎から熱を感じないし、怖くない。
今までなら、マッチ程度の火を見ただけで震えが止まらなかったのに。
「ようこそ、僕の世界へ」
一際大きな火柱が上がったかと思うと、その中から人が現れた。
「初めまして、僕の名は……そうだな、空とでもしておこう。君は誰だい?」
それは人と呼ぶには少し異質だった。
(,,゚Д゚)「ギコだ」
まず、顔が無い。それの顔はのっぺらぼうのように平坦で、凹凸が存在しない。
次に、声がおかしい。まるで頭の中に直接語りかけているかのような……
妙に耳に残る声だ。
そして何より余裕がある。こんな訳のわからない場所なのに。火柱から出てきた
のだってそうだ。何もかもおかしい。
「ふうむ、ギコ。覚えたよ」
何もかもおかしい。この場所もまたしかりだ。
(,,゚Д゚)「ここはどこなんだ?」
「ここ? 僕の世界さ。さっき言わなかったっけ」
(,,゚Д゚)「そうじゃなくて」
「ああ、そういうこと。ここはね、君達の言葉で言うと精神だね。僕の精神を
土台に、君の精神とリンクした場所さ」
ますますおかしなことに。わからない訳ではないけど……。
(,,゚Д゚)「つまり、ここは俺の精神ってことか」
「そんな感じだね。氷のように冷たい人なら吹雪の山、虫に嫌な思い出があるなら
虫かご、とか。人によって違うから、見ていて飽きないよ」
(,,゚Д゚)「あっ、ペニサス!」
そうだ、助けないと。
「ペニサス……ああ、君の後ろに居た」
(,;゚Д゚)「そう! 助けに行かないと! どうやって戻るんだ?」
「まあ、落ち着いて」
(,;゚Д゚)「落ち着いてなんかいられるか! 早く、殺されちまう!」
「待てったら。今の君の状態じゃ、また返り討ちだよ」
(,;゚Д゚)「でも行かなきゃ!」
「その前に。君、気を失う前に強く願ったよね。守りたいって」
空の声色が僅かに変わった。
「僕はね、そんな君にプレゼントを渡しにきたんだ。守るための力をね」
(,,゚Д゚)「守るための力?」
「そう、使い方はすぐわかる。なんたって空の力だから」
(,#゚Д゚)「また訳のわからない事を。いいから早く元の場所に戻せ!」
「わかったよ、今から戻してやるから」
空が指を鳴らすと、炎の一部分が消え、道が出来た。その先には光が見える。
「さあいけ、そして願え」
――空を
空の声を背に、俺は光の中へ飛び込んだ。
まず最初に、強烈な目眩と腹部への痛みが俺を苦しめた。だが、
さっきよりはマシになっている。どうにか立てそうだ。
「こないでよ!」
ペニサスの声。行かなきゃ、守るんだ、大事な人を。
(,,゚Д゚)「待てよ」
震える足に鞭を打ち、俺は立ち上がる。正直辛い。だが、退けない。
( "ゞ)「しぶといなお前」
どうやらあそこで過ごしたのは数秒程度だったらしい。包丁を持った男は近くにいた。
( "ゞ)「そんなに死にてえなら殺してやるよ」
ニヤリと男は笑った。来る。ファイティングポーズをとり、男を視界の真ん中に入れる。
――願え
そこで頭の中に声が響いた。
(,,゚Д゚)「願ってやるさ」
守りたい。強くなりたい。心を埋め尽くす強い思い。それに呼応するかのように、
左目が熱を帯びた。
そして理解した。俺の空を。俺が守れることを。
ポケットからハンカチを取り出し、噛む。マウスピースのように。
瞬間、世界が速度を変えた。まるでコマ送りでもしているかのように、
周りの動きが遅くなった。
俺の空は肉体強化。それだけしか分からないが、それでいい。俺は無力じゃない。
( "ゞ)「……」
遅くて聞き取れない。
いい終わるや否や、男は大股に近づいてきた。ぎらついた目で俺を見ながら。
勝負は一瞬、奴が間合いに入ったところを殴る。先ほどよりリスクは大きいが、
今の俺なら一撃で奴を倒せる。
こい。後三歩で間合い入る距離で、男は舌打ちをした。
(;"ゞ)「……っ?!」
目を瞑る。その行動は、半ば本能的なものだった。しかし、どうやらそれが功を奏した
らしく、動きが止まらない。奴の空を封じた。
(;"ゞ)「……!」
目を開くと、包丁がすぐそこまで迫っていた。が、
(,,゚Д゚)「遅い」
体を右へずらし、突き回避。そしてそのまま相手の腕を沿うように
(,#゚Д゚)「ゴルァ!」
拳を突き出した。
ゆっくりと、男の背中が地面へ向かう。そして。
どさり。
何かが倒れる音。
(,,-Д-)「……」
あれが俺の倒れる音だったのか、それとも男のものだったのか、
はたまた両方だったか、未だにわからない。
電柱の影で、出来損ないの探偵さながらにこの一部始終を見る者が二人居た。
「ふうむ、人格改変まで可能か、使えるね、君の空」
(-_-)「でも、代償が厳しい。視界内でのみ発動というのは……」
「いいんだよ、うまくいけば被害者も装える」
(-_-)「成る程」
おしゃべりな男な帽子を目深に被り、目元を隠している。
「さて、新しい空持ち二名の確認というおまけも出来た。一旦帰ろうか」
死んだ目の青年、ヒッキーは僅かに顎を下げ、肯定の意思を見せた。
「よおし、明日から楽しくなるぞ!」
おしゃべり男は口元を歪めながら闇夜に溶けた。
(-_-)「……」
ぽそりと何か呟くと、ヒッキーもそれに続いた。
了
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 22:21:48.13 ID:lMy16yTv0
乙
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 23:11:08.96 ID:vDuEiDOM0
ちょうおもしれえ!
このスレがまとめないなんてふざけてる!!
花束とか言う新しいまとめはぜひこのスレをまとめるべきだと思う!
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 23:13:52.08 ID:vDuEiDOM0
総合とブーンなようですに宣伝してきました!
改めて作者さま乙でした!!
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 23:16:19.02 ID:RdCsW6eJO
花束が新しい…?
乙
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
花束復活してんのか