というか娘がやばいときに何をしてんだ平沢両親は
302 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 16:36:02.23 ID:PQd0Hpx1O
誰とも話せないまま、ひとりぼっちの教室で黙々と鉛筆を動かしていると、自分がどこにいるのか分からなくなります。
あたかも私とほかのみんなの間は見えないガラスで隔てられている気がして、ひどい孤立感にさいなまれるのでした。
教室の中を泳ぐように行き来するクラスメイトたちも、屈折したガラスのこちら側からは別の生き物のようです。
ときどき窓の向こうから耳鳴りのように響いては私を傷つける言葉から身を守るように、ますます勉強へと逃避していきました。
中学の学年末テストの季節になると、和ちゃんがいつもうちに来てお姉ちゃんに勉強を教えていました。
和ちゃんは私に会う度に「勉強がんばったらいいことあるわよ」と励ましてくれました。
そんな和ちゃんの前で学校でうまくいかなくなった話をするのは、勉強のせいにしているみたいで申し訳なかったんです。
そういえば、塾の先生も同じようなことを言っていたのを思い出します。
先生たちは私たち生徒にはちまきを渡して、喉をからすまでかけ声を上げさせ、受験に合格すればすべて良い方向に向かうと説きました。
純「……なんかさ、もう宗教だよね。これ」
塾の夏合宿の休み時間、純ちゃんはうんざりしたような顔ではちまきを握って私に耳打ちしました。
もうなにが正しいのかよく分からなかったのですが、とにかく私は懸命に泳ぎ続けようとしたのです。
303 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 16:56:40.31 ID:gtGVzL3jO
迷宮壁ラビリンスウォール
304 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 16:59:46.61 ID:PQd0Hpx1O
私が夜遅くまで勉強するようになると、お隣のとみおばあちゃんがうちに来て晩ごはんを作ってくれるようになりました。
小さい頃から会社の仕事で海外を飛び回る両親はよくとみおばあちゃんに私たち姉妹を預けていたので、家族以上に家族のような関係でした。
そういえば私が小学五年の冬、誕生日になってブリュッセルから高級なお菓子が送られてきたことがありました。
お菓子に付いていた封筒を開くと「今年は受験生です。頑張ってください 父より」という手紙と三万円が入っていました。
お父さんもお父さんなりの形で応援してくれている。
私はそう思いたかったのですが、お姉ちゃんは私以上にその手紙に怒っていました。
私たちが家に引きこもるようになったときも、お姉ちゃんはこう言っていました。
唯「あの人たちはお金だけ出す係なんだよ。家族は憂一人で十分だよ」
いけないことだとは知りつつも、そんなお姉ちゃんが一瞬お父さんのように頼もしく感じてしまったのは事実です。
もしかしたら、私たちは夫婦のような関係を演じてたのかもしれません。
305 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 17:26:22.13 ID:gtGVzL3jO
ほっほっほしゅ
306 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 17:43:02.51 ID:U45wbSri0
純ちゃんがふいに中学受験をやめたのは、十月ごろのことでした。
いつだか塾の先生に成績が伸び悩んでいることを指摘された日に、しばらく欠席の続いていた純ちゃんのことにを尋ねてみました。
すると先生は口をにごし、憂ちゃんはがんばって成功をつかみ取るようにと肩を叩かれました。
気になってもう一度問い直すと、鈴木さんは合わなくてやめてしまったと聞かされました。
あわてて純ちゃんの携帯に電話すると、今までと変わらない眠そうな声が聞こえたのでとても安心したのを覚えています。
どうやら純ちゃんの家でもお父さんとお母さんで受験するかどうかを言い争っていたようでした。
なんども話し合った結果、純ちゃんの意思で桜ヶ丘中学に通うことに決めたそうです。
純「憂も無理しないでよー? 憂ってほら、人にほめられるとがんばりすぎて自分のこと忘れるタイプだし」
笑い声交じりに、だけど後半はまじめな口調で純ちゃんはそう言いました。
純ちゃんとはその後もたまに電話をかけたり仲良くしていたのですが、小学校は違ったので普段話す機会もなくなりました。
私は学校でも塾でも話し相手を見つけられず、ただただ問題集と格闘する日々を続けます。
自然と高くそびえ立ってしまった透明な壁の中で、ひとり深海に潜りこむように勉強を続けたのです。
307 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 17:49:22.57 ID:gtGVzL3jO
誰?
308 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 17:56:02.16 ID:u8yhj7Zo0
携帯からか?
>>306は一旦家戻れたからパソコン点け直して投下したらID変わってた
310 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 18:04:05.57 ID:gtGVzL3jO
把握
過去話の過去話か
312 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 18:51:19.81 ID:6i1FTpXQ0
ほっほ
313 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 19:10:28.12 ID:gtGVzL3jO
ほっほ
314 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 19:30:04.32 ID:eSrNiCgn0
ほ
315 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 19:47:33.26 ID:gtGVzL3jO
ガンランス
316 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 20:04:01.51 ID:goWAaitP0
さて
317 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 20:19:17.80 ID:7EcInmsvO
と
318 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 20:24:29.17 ID:gtGVzL3jO
これか
319 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 20:38:54.14 ID:wHsFKKBF0
h
320 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 20:56:27.30 ID:gtGVzL3jO
保守☆
321 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 21:09:57.82 ID:gtGVzL3jO
☆
てす
ID:qax+8Q1Z0で再開します
324 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 21:30:06.24 ID:6i1FTpXQ0
了解
超期待
325 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 21:30:31.81 ID:qax+8Q1Z0
過呼吸やけいれんといった症状が最初に起きたのはその年の冬辺りでした。
十一月末の理科の授業中、私は教室でふいに息が出来なくなりました。
息を吸い込もうとすればするほど苦しくなって、まるで水が喉に入ったかのようにむせてしまうんです。
暗い曇り空のために窓際の席にいた私の姿がガラス窓に映りこんだのが、今もはっきり目に焼きついて残っています。
私が発作を引き起こした時、クラスメイトたちはどうするでもなくただビデオを見続けていました。
ちょうどその時は地球の構造に関するビデオを見ていた時で、教科担任の先生も職員室で作業をしていたようです。
自分でも分からない急な呼吸困難に陥った私は誰にも助けを求められないまま、喉をおさえて呼吸を取り戻そうとします。
326 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 21:31:22.54 ID:qax+8Q1Z0
『深海は水圧がとても高く、普通の魚は生きていけない世界です。』
――ビデオの音声が頭に反響して吐き気をもよおします。
涙が勝手にあふれてここがどこにいるのかさえ分からなくなってきます。
めまいがあまりに酷くて、足元の床が崩れていくような錯覚さえ覚えました。
『また、水圧の高い深海から急浮上すると、急な圧力の変化で「潜水病」を引き起こしてしまいます。』
めまいのせいで、ビデオに映る奇怪な深海魚と私を不安げに見やるクラスメイトの顔とが交錯します。
身体が内側からおかしな圧力で壊れていきそうで、このまま死んでしまうとさえ思いました。
私はそこに居もしないお姉ちゃんに心の中で助けを求めました。
職員室から戻ってきた先生が私を保健室に連れて行く間も、ずっとずっとお姉ちゃんの名前だけを唱えていたのです。
こんな時、本当につらい時に助けを求められるのはお姉ちゃんしかいないと決め込んでいたんです。
そしてそれは、今だってあまり変わっていないと思います。
327 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 21:51:55.30 ID:gtGVzL3jO
☆ゅ
328 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 22:06:09.23 ID:lreU028lO
☆
329 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 22:06:11.17 ID:qax+8Q1Z0
発作を起こした日、保健室の白いベッドの中で小さいころの夢を見ました。
夢の中で私はお姉ちゃんと二人で手をつないで家の近くの公園まで散歩しました。
錆び付いたジャングルジムや、揺れるたびにきいきいと音の鳴るブランコ。
数年前まで和ちゃんを入れた三人でよく遊びに行っていた、あの公園です。
唯「ねぇうい、あっちいこうよ」
お姉ちゃんが指差したのは足元に鮮やかな木陰が揺れる小さなベンチでした。
そういえば私とお姉ちゃんが二人で公園に来たときは、いつもこのベンチで遊んだものです。
おままごとをしたり、カスタネットを叩いたり、アルプス一万尺の速さを競ったり……どれも懐かしい思い出でした。
ベンチに腰掛けたお姉ちゃんは手をぎゅっとにぎって、もう片方の腕でそっと私を抱きしめました。
それから何かをささやいた気がしたのですが、うまく聞き取れなかったです。
つないだ手の感触はやがてリアルなものへと変わっていき――私は目を覚まします。
そこには手をにぎったままベッドで眠るお姉ちゃんがいました。
子どものような寝顔をよく見ると、まぶたが赤くはれているようです。
唯「あ…ういー。げんきになった……?」
ついさっきまで泣き顔だったような真っ赤な目を細めて、お姉ちゃんは安心したようにほほえみました。
こらえきれなくなって、その日は私からお姉ちゃんに抱きついてしまいました。
帰ってきたらアンチ扱いされててびっくりしたわ
まあまあ気にするな
俺もたまにあるから
332 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 22:40:20.69 ID:iGVi7mS4O
支援
333 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 22:55:25.39 ID:gtGVzL3jO
支援☆
334 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 23:12:59.37 ID:2UxLl52wP
がんばれみてる
こんな力作を落とすわけにはいかないな
頑張れ
336 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 23:38:03.21 ID:gtGVzL3jO
うわぁ 頭痛くなってきた
明日テストなのに…
337 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 23:39:53.10 ID:ZYIumBix0
俺のIDには憂が宿っている
唯憂(笑)とかもうやめろ
早く澪憂書け
341 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 23:46:31.17 ID:6Ip4gCggP
342 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 23:48:06.13 ID:gtGVzL3jO
このSS>頭痛>テスト
だが もうむりぽ こんな良作だが…
また明日dat落ちかまとめサイトで会おう
343 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 23:50:00.30 ID:ZOqyMkli0
なんか他のスレで荒らし依頼があって来たんですが良スレなので支援します。
345 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 23:54:21.38 ID:IhvCccl00
取り敢えずバファリン飲んで寝ろ
>>342 あなたにはほんと申し訳ないと思ってる
すげえ煮詰まってるけど朝まではできる限り進める
早く澪憂書け糞が
348 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 23:56:26.70 ID:6cM7Ry490
任せとけ
349 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 00:27:22.43 ID:5vSUW6rx0
進んでるようなら安心した。期待&支援
ほ
351 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 00:34:43.00 ID:IrLHzrAB0
支援!
みんな保守するのやめてみたら
>>1もこのスレが落ちそうになったら書けるでしょ
そうだな
プレッシャーかけてやれ
354 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 00:46:52.91 ID:CG6j8elD0
つーか書き手が書き手だし1回落ちてるスレだし
355 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 00:49:01.55 ID:wAgR11rC0
支援
俺は続きが見たいしみんなも見たいだろ
というわけで1時間と30分くらい放置しよ
まあ落ちたら立て直せばいいし
357 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 01:06:28.96 ID:Ko0NG+Qf0
それからこのような発作は入試の当日までたびたび起きてしまいます。
授業中に起きたのは一番重かったあの一度きりでしたが、休み時間や登下校中や塾の授業前などで軽い過呼吸は何度もわずらいました。
発作が起こるたびに「このままだと私は死んじゃうのかもしれない」としか思えなくなります。
いつしか私は、一度発作が起きた場所を無意識に遠ざけるようになってしまいました。
登下校でもわざと最短の市道を避けたり、塾のエレベーターを使わずに階段で移動したり。
そうやって発作の起きた場所を避けていくたびに行動範囲が狭まると、見えない網に閉じ込められていく気がしてとても怖かったです。
お姉ちゃんは学校や保健室の先生、それに和ちゃんから教えてもらったパソコンを使って私の発作のことを真剣に考えてくれました。
過呼吸は紙袋を使って呼吸を整えるのがいいとか、この発作だけで死ぬことは絶対にないとか、私はお姉ちゃんからいろいろなことを聞きました。
唯「いつでもういのそばに居られるわけじゃないから、できることは一緒のときにしておきたいんだよね」
私が気づかうと、お姉ちゃんはいつもそんな言葉で安心させてくれます。
発作のこと以外でも、勉強している私の代わりに朝のごみ捨てに行ってくれて、トーストを焼いてくれてといろいろしてくれました。
お姉ちゃんのために、受験はがんばらなきゃいけない。
受験に合格したらお姉ちゃんが喜んでくれるんだ。
――けれども、そう思えば思うほど入試会場で発作を起こしそうな気がしてしまったのです。
358 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 01:21:15.38 ID:YTYe1bEDO
いいね
だからレスしちゃダメだよ
また書かなくなるから
360 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 01:24:50.24 ID:5vSUW6rx0
361 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 01:24:55.07 ID:rm5nijep0
362 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 01:25:01.33 ID:Ko0NG+Qf0
予感はいつも、悪い方ばかり当たってきたような気がします。
当日、私は入試会場に一時間前に着いて自分の席で持ち物を確認していました。
鉛筆は六本削ってとがらせましたし、消しゴムも新品に両面テープをしっかり貼っておきました。
ティッシュペーパー、塾でもらったお守り、お弁当、紙袋……それから、大事なお財布。
私は財布のカード入れのところから、プリクラ写真を一枚取り出しました。
年明けに私とお姉ちゃんで撮ったものです。
あの日お姉ちゃんはふざけてキスしようとして、思わずよけようとしてしまいました。
けれどもお姉ちゃんは私をつかまえて、唇はあきらめてもほっぺにとキスをしてしまいました。
『ゆい&うい』 『としこし!』 『ずっといっしょだよ』
できあがったのは、ハートマークの背景にお姉ちゃんが書いたそんな言葉が並ぶプリクラです。
そんなプリクラなのでちょっと誰かに見られるのは恥ずかしいのですが、やっぱり一番のお守りでした。
私はそれをお財布にしまって、社会の年表を開きなおしました。
やがて試験時間になって、受験票の照合が始まり机の上を片付けることになりました。
寸前に私はカバンの中でお財布を探し、プリクラに触れてから試験を受けようとしたのです。
予感はいつも、悪いほうばかり当たってきました。
私たちがこの半年間、未来のことを考えるのから逃げ続けてきたのも、たぶんそのせいです。
憂「あれ、入ってない……?」
363 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 01:36:38.70 ID:N9sytKO40
支援
前スレは糞みたいな保守スレ
懲りずにゴミが立て直したと思ったらまた書きため無しの保守スレ、アホか。これ落ちたらどうせまた立て直すんだろ
長い間vipにスレ置いときたいってのが見え見えでうざすぎ
365 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 01:44:25.74 ID:Ko0NG+Qf0
後になって家に着いてカバンの中を調べた時に、奥の方で折れ曲がったプリクラが見つかりました。
だからたまたま何かに引っかかって財布から落ちてしまっただけなのでしょう。
けれどもそれは、緊張していた私の心をバラバラにするのに十分すぎるほどでした。
憂「……はぁっ…かはっ……あがっ…ふぅっ……」
問題用紙が配られる頃には、私の喉はまた呼吸の仕方を忘れてしまいました。
試験開始前、静まり返った会場に自分の呼吸音がうるさく響きます。
ダメだ。
大丈夫にしなくちゃ。
これは病気なんかじゃない、ちょっと息がおかしいだけなんだ。
……そう言い聞かせても呼吸が戻るはずもなく、おさえようとするほどかえって悪化していきます。
開始二分前、私の席に試験監督の先生が駆け寄って来ました。
私はなんとか試験を受けたくて、だいじょうぶです、と言おうとします。
けれども言葉の代わりに出たのは気管支まで響くようなくぐもったせきだけでした。
それでも試験だけは受けようとしたので、解答用紙を腕で守ろうとします。
その時、試験監督の人に腕をつかまれて椅子から倒れてしまいました。
転げ落ちた足元から会場の教室を見上げたとき。
私の視界に、着席した深海魚の群れが飛び込んで来ました。
『アクシデントのため、この教室の国語試験は五分遅延します』
副監督の先生が響かせた声を遠く聞きながら、私の意識は薄れていきました。
>>364 しゃあない
この作者かなり自演してるみたいだし
頼むから携帯でアホみたいなレスするのやめてくれ
無理なら今だけでいいから
368 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 02:15:37.27 ID:Ko0NG+Qf0
それから次の年の四月、私が桜ヶ丘中学に進学するまでのことはよく思い出せません。
受験勉強からの反動で無気力状態に陥り、卒業式の練習で学校に行く以外はずっと自分の部屋にいました。
ベッドの上でいらない参考書を読み返したり、純ちゃんから借りたマンガ本をぱらぱらめくってみますが、何が書かれているのかもよくわかりません。
文字が文字としてしか映らず、主人公の表情もただの絵にしか思えなくなっていたんです。
そんな状態の私を気づかってか、お姉ちゃんは私の手を引いて買い物やアイスクリーム屋さんへと連れて行ってくれました。
唯「うい、おいしい?」
三段重ねのアイスクリームをおいしそうになめながら、お姉ちゃんが聞きます。
私はそのころ、本当は食べ物の味すらもよく分からなくなっていました。
けれどもなんだか楽しそうなお姉ちゃんを見ていると、私の緑色のアイスがとてもおいしいような気がしました。
憂「……うん、おいしいよ!」
お姉ちゃんはやわらかく笑って、私のアイスを一口かぷりと食べちゃいました。
唇に緑色のアイスをつけたお姉ちゃんがなんだか子どもっぽくて、吹きだしてしまいます。
たぶん私を笑わせる方法を、世界で一番知っているのはお姉ちゃんなんだと思います。
なんで書きためなくて落とした前スレをまた書きため無しで建てたの?
370 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 02:30:34.05 ID:Ko0NG+Qf0
一年前の四月から、私は桜ヶ丘中学に進学しました。
お父さんが私立に行った方がいいのではと手紙で提案しましたが、お姉ちゃんと同じ中学校を選びました。
どこか知らない中学に通ってお姉ちゃんと離れ離れになる方が不安が大きかったからです。
唯「えへへ、ういとおそろいの制服だね!」
春休みじゅう、ずっとお姉ちゃんが一緒にいてくれたおかげで私もいくぶんか元気になりました。
そのころ、受験中にいろいろお世話をしてくれた恩返しとして私は毎日お姉ちゃんにごはんを作ってあげることに決めました。
それは春休みを過ぎてもずっとずっと続き、いつしか私の家のご飯はぜんぶ私が作ることになっていました。
ずっと前からとみおばあちゃんと一緒に料理を作るのが好きだったのもあります。
けれどもそれ以上に、恩返しはぬきにしたってお姉ちゃんを毎日喜ばせてあげたかったんです。
困ったときにはずっとそばにいてくれて、つらいときにすぐ駆けつけてくれる。
そんなお姉ちゃんを笑顔にすることだけが、私の生きがいになっていました。
唯「ういの作るごはんがおいしいから、生きるのが楽しいよ!」
食べ終わった食器を片付ける時、お姉ちゃんはおどけたそぶりでそんなことを言いました。
あの言葉が冗談だと分かっていたとしても、私の胸は音を立てそうなほど高鳴ったのです。
あの頃から、私はお姉ちゃんに恋していたんだと思います。
371 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 02:37:08.36 ID:PUrkTe+i0
まぁ好きになるわな
372 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 02:38:55.09 ID:IrLHzrAB0
恋しちゃったんだ多分気付いてないでしょ?
373 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 03:03:57.44 ID:Ko0NG+Qf0
中学校での生活ははじめ、それほど楽しいとはいえなかったです。
クラスメイトは小学校の時とほとんど変わらなかったので、わだかまりを残したまま進学してしまったからです。
教室に入るとその頃のクラスメイトと顔をあわせるのが怖くて、なんとなく避けてしまいます。
そういう態度をとってしまうせいで、ますます私は他の子たちとも話が出来なくなってしまう一方でした。
それでも学区の区分けが変わって、純ちゃんと同じ学校になったのはうれしかったです。
一年次のクラス分けでは別になってしまいましたが、休み時間のたびにちょっとずつ純ちゃんやその友達と仲良くなることができました。
とはいえ……自分の教室に戻ると、誰とも話が出来ないまま本を読むような日々が続いていました。
やっぱりこのままではいけません。
こんな気持ちで通学していたらいずれはお姉ちゃんを悲しませてしまいます。
そう思って私は和ちゃんに頼んで、生徒会のお仕事を手伝わせてもらうことにしました。
374 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 03:18:58.57 ID:Ko0NG+Qf0
純「ふーん……やっぱぞっこんなんだね、憂」
純ちゃんと一緒にいつものハンバーガーショップでお話していた時のことです。
私とお姉ちゃんの話をしていたら、いたずらするみたいににやにやと口を挟まれました。
憂「え……そうかな。私はお姉ちゃんっ子なだけだよ」
純「ええー? それぜったいラブの域いってるって!」
お姉ちゃんと、ラブの関係……。
恥ずかしくて顔が熱くなってしまう私は気にせず、純ちゃんのテンションは上がります。
こんな風に恋の話で盛り上がっていると、私も女子中学生なんだなって変に納得してしまいます。
純「じゃあもうコクっちゃいなよ! お姉ちゃん、すきです!って」
憂「あはは……うん、お姉ちゃんのことは、好きだけどね……うん」
純「憂、めっちゃ照れてるじゃん。いいなー私も恋したいなあっ」
あの時どのくらい本気で純ちゃんが私の恋を応援していたのかは分かりません。
普通に考えたら、自分の家族に恋愛感情を抱く時点でいろいろ間違っているはずです。
純ちゃんは私といる時も学校と同じようにおどけてくれます。
その言葉が冗談だとしても純ちゃんが私を元気付けようとしているのは伝わったので、なんだかほっこりした気分でした。
375 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 03:35:47.30 ID:Ko0NG+Qf0
純「じゃあ、選挙終わったらデート行って告白しなよ」
とんでもない提案をされてしまいました。
憂「えっ……ええっ! そんな、そんなことしたら…うちで気まずくなっちゃうよぉ…」
純「なにさ、憂だってコクったあとのことリアルに想像してんじゃん」
こういう時だけ勘がするどい純ちゃんが怖いです……。
そのとき私は六月に和ちゃんが会長に立候補する次期生徒会役員選挙で選挙管理委員となっていました。
書類整理など生徒会の仕事をいろいろ任されるうちに他の生徒会員のみなさんからも信用がある、そう和ちゃんは言っていました。
生徒会役員選挙は和ちゃんだけでなく、私にとっても正念場となる催しでした。
だから……これは失敗するわけには行きません。
純「まったくもー。憂はがんばりすぎなんだよ、お姉ちゃんとデートの一つでも行ってくりゃいいじゃん」
憂「はい、はい……うん。じゃあ、選挙終わったらどこか出かけてみるね」
そう考えると、純ちゃんのおかげで選挙の日が楽しみになってきました。
376 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 03:36:53.81 ID:yjUXfY9a0
とりあえず全部親が悪いということは分かった
377 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 04:13:19.92 ID:N9sytKO40
☆
378 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 05:22:45.73 ID:Ls89ryb8O
ほ
379 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 06:15:35.45 ID:Ls89ryb8O
し
し
普段小説とか読まないからよくわからないけど、描写?が素人にもわかりやすいようになってる上に
けいおんキャラだからすんなり楽しめてる気がする保守
気に障る人がいたらごめんよ
382 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 07:02:05.50 ID:xzv+tq0aO
昨日頭痛に負けたが
まだ終わってないだと…
383 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 07:14:29.91 ID:Ls89ryb8O
の
寝てしまった
顔洗ってまた続き書いてく
385 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 07:49:11.08 ID:WjDNSP2Y0
おう、早くかけ
いい加減にしろ
387 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 08:15:01.53 ID:xzv+tq0aO
もう学校に着く
388 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 08:15:35.84 ID:Ko0NG+Qf0
デートプランは純ちゃんが考えてくれるらしいので、私は選管の仕事に専念しました。
投票方法を公示したり、立候補者のスピーチを録ってお昼の時間に流したりと実は選挙以外にも大忙しです。
けれども生徒会や同じ選管の先輩がたに助けられながらの仕事は、楽しくてやりがいがありました。
純ちゃんにはよく言われることですが、誰かが自分のおかげで笑顔になってくれることが一番うれしいんです。
中でも一番好きな笑顔は……お姉ちゃんの、花が開くようにふわっとした顔なのですが。
和「無理しないでよ、憂は自分ひとりで抱え込みすぎるんだから」
憂「ありがとう、和ちゃん。でもだいじょうぶだよ」
和ちゃんは心配そうに言いますが、生徒会や同じ選管の人に信用されたことが強い自信につながっていました。
それに小学校の頃から和ちゃんには迷惑をかけどおしだったので、恩返しもしたかったのです。
あとは……選挙が無事に終わったら、お姉ちゃんとデート。どきどきします。
いろんな人のために、私は中学校で初めての選挙管理委員をまっとうしました。
そうして、本番を迎えました。
綿密な準備の上での本番は、たぶん成功だったのでしょう。
体育館での選挙演説で和ちゃんは部活の活動時間を増やすマニフェストを掲げて、見事トップ当選しました。
集計作業のとき、他でもない「真鍋和」の名前が丸で囲まれているのを見るたびに温かいものを感じたのです。
けれども……次の週の月曜日、登校したときでした。
同じクラスの子たちが集まってなにかうわさ話をしていました。
そうして登校してきた私を見つけると、ちらちらと私の方に冷たい視線を向けるのです。
389 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 08:29:42.61 ID:xzv+tq0aO
もう諦めるぽ
390 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 08:31:33.20 ID:Ko0NG+Qf0
私の方を見てはひそひそとささやきあうクラスの子たち。
何を話しているのかはよく分からなかったですが、よくない話に繋がっていることは伝わりました。
そんな彼女たちを見て、小学校の教室が一瞬、頭に浮かんで息を詰まらせます。
――ダメだ、そんなことないよ。お姉ちゃんに心配掛けちゃダメ。
心の中でそう言い聞かせながら通学カバンを置くと、純ちゃんが教室に駆け込んできました。
純「ちょっと憂、時間ある?」
どこか様子のおかしい純ちゃんに引っ張られるようにして階段を少し早足で上り、私たちは四階の社会準備室に入りました。
授業用の世界地図や地球儀なんかが置かれたその部屋は普段入る人が居ないため、純ちゃんや私はそこでお弁当を食べることが多々あったのです。
そこにお姉ちゃんや和ちゃんを交えることもあって、社会準備室は私たちの秘密の隠れ家のような場所でした。
純「……あのさ、私は憂のこと信じてっからね? だから、落ち着いて聞いてほしいんだけど」
その口ぶりがいつもと違って重くて、何が純ちゃんをそうさせているかと思うと怖くなります。
純ちゃんは私の左手にそっと手を乗せると、制服のポケットから携帯電話を取り出しました。
純「土日辺りから変なうわさ流れてるっぽいんだよ。和先輩の当選が、不正だったんじゃないかって」
――それから、その不正に関わっていたのが和ちゃんと仲のいい選挙管理委員の、平沢憂なんじゃないかって。
胸の奥が変な風に響きだして、自分の息遣いが良くない方向へ強まるのを感じました。
391 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 09:01:41.00 ID:kNeFeM1+0
支援
がんばれー
393 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 09:06:48.56 ID:Ko0NG+Qf0
純「――憂、大丈夫?」
繋いだ手を思わず強く握ってしまうと、心配した純ちゃんが背中に手を置いて心配そうに声をかけました。
憂「ごめん、大丈夫……。でも、不正って、どういうことなの?」
純「うーん……いいや、私が話すよ」
一瞬、携帯電話に目をやって悩んだそぶりの純ちゃんは、やがてそれをカバンに投げ込んで話始めました。
昨日あたりに、純ちゃんの携帯にとあるサイトのアドレスがチェーンメールで送られてきたそうです。
それは桜ヶ丘中学の裏サイトというもので、生徒や先生のうわさについて書き込みする掲示板みたいなものだったみたいです。
純ちゃんが言うには、開票と和ちゃんの当選が決まった日の夜に掲示板へ「得票数がおかしい」という内容が書き込まれていたそうです。
憂「……その裏サイトっていうの、今も見られるの?」
純「ごめん、見せたくない。ひどいことしか書かれてないもん」
そう言ってカバンを遠ざけようとした純ちゃんの腕を握って、見せてくれるように頼みました。
いつしか、自分の声が涙交じりになっていたのに気づきました。
394 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 09:19:32.19 ID:Ko0NG+Qf0
『名無しさん:×ナベの一年の票が多すぎるけどこれ絶対票数いじってるよね?ワラ』
『名無しさん:バスケ部のヨコタニ先パイが落ちるとかマジでない ×ナベってやつ裏でなんかしただろ』
『名無しさん:あのガリベン!って感じのメガネのやつ?(^ω^;)』
『名無しさん:前も生徒会にいたよなあの女 長い間生徒会に居座って内申書良くしてほしいってのが見え見え』
『名無しさん:ってか票数工作したんじゃね?ww グルなんだろ』
『りお☆:↑今年の選挙が自作自演だったってコトですか??』
『名無しさん:俺1年だけど、×鍋の友達のH沢ってやつがアヤしいと思います コネで選管入ってたって先輩言ってたし』
『真・バスケ狂:H沢って誰?』
『平行世界に住む男:ところで昨日UFO見ました スーパーのカップ麺売り場で』
『名無しさん:ユーウツの鬱って字書く子でしょ? 同じクラス』
『通りすがりの桜中生:実名出すなよ つか根拠ないのに変なこと言うな』
『名無しさん:↑↑鬱じゃないよwww』
『名無しさん:↑↑↑知ってる 小学校でいじめられてたって友達から聞いた』
395 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 09:48:08.10 ID:dpx/rUYNP
支援
し
397 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/12(火) 10:48:40.83 ID:WmO8wOT/0
支援
もうラストまで全部纏めてから投下しろよ
「夜までには終わる予定」とか昨日言ってただろ確か
なにこれいつまで続けてんの
続きはtxtでいいよもう
たしかにtxtであげたほうがいいな。それか製速いけ