1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
連作短編を元にした長編作品。
まとめは、ブーン文丸新聞さん、くるくるくーるさんです。
タイトル戻してみました。
本日は七話後半修正版と八話前半です。
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 19:50:13.34 ID:oGK59FVb0
〜オープニング代わりのキャラ紹介〜
(#゚;;-゚)「こんばんは。でぃです」
(#゚;;-゚)「作者の家周辺では随分と涼しくなってきたのですが、皆さんはどうでしょう?」
(#^;;-^)「では、本日はこの方です」
【秀才ロリ巨乳僕っ娘饒舌キャラ・シュール】
lw;´‐ _‐ノv「ロリ巨乳……。ロリ巨乳って、おい……」
(#゚;;-゚)「Eは一般的には大きい方だと思いますが」
lw;´‐ _‐ノv「そうだろうけどさ……。しかも、昨日計ったらまた大きくなってたけどさ……」
(#^;;-^)「フサさんが大喜びですね」
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 19:54:11.98 ID:oGK59FVb0
(#゚;;-゚)「『限定僕っ娘』という新たな属性を持つシュールさん」
(#゚;;-゚)「どうして、フサさんの前でだけ一人称が“僕”なのですか?」
lw´‐ _‐ノv「どうしてって……そんな深い意味はないけど」
lw´‐ _‐ノv「フサが言ったこと、だし……」
(#゚;;-゚)「えっと、オラニャン的な感じでしょうか?」
lw;´‐ _‐ノv「…………あってるけど、発言が君のキャラに合ってない気がする……」
(#゚;;-゚)「私も日々勉強しています」
lw´‐ _‐ノv「ふぅん……」
lw´‐ _‐ノv「(まあ、見聞が広くなるってことについてはいいことだよね)」
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 19:59:10.77 ID:oGK59FVb0
(#゚;;-゚)「続いての質問です」
(#゚;;-゚)「端々に不健康で不道徳ないやらしさがあるのが見所のこのお話ですが、」
(#^;;-^)「シュールさんは、姉妹で何かなされていましたか?」
lw´‐ _‐ノv「いや別に」
lw´‐ _‐ノv「私は人に身体触られるの苦手だし、クーちゃんも実はウブだから……」
(#゚;;-゚)「やはり、そうでしたか」
lw´‐ _‐ノv「? クーちゃんのこと?」
(#^;;-^)「はい。そういった人は気配で分かります。あの方は、多分……相当に純粋で真面目な方です」
lw´‐ _‐ノv「まぁね」
lw´‐ _‐ノv「……実際問題、君がいくら可愛いからって襲ったりはしないと思う」
(#^;;-^)「わかっています。クーお姉様も、優しいです」
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:02:33.89 ID:oGK59FVb0
(#゚;;-゚)「次の質問です」
(#゚;;-゚)「幼馴染であるフサさんとは、いつまで一緒にお風呂に入っていましたか?」
lw´‐ _‐ノv「……………………正直に答えた方がいい?」
(#゚;;-゚)「無論です」
lw´‐ _‐ノv「昔は家が近くて、よく遊んでた。だから、大体、中がっ[ピ――――」
<フザケンナボケ,ジョウシキテキニカンガエテ シャレニナッテネェゾ!
<ダマレロリコンヘンタイヤロウ! ウラヤマシイ!!
lw´‐ _‐ノv「…………」
(#^;;-^)「……モララーさんも向こうで大変そうですね。では、次です」
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:05:26.56 ID:oGK59FVb0
(#゚;;-゚)「好きなものと嫌いなものを教えて下さい」
lw´‐ _‐ノv「好きなもの……は、SF。さいえんす・ふぃくしょん」
lw´‐ _‐ノv「嫌いなのは、人に身体を触られることと、人混み」
(#゚;;-゚)「フサさんも、駄目ですか?」
lw´‐ _‐ノv「ううん」
lw´‐ _‐ノv「フサやモララーは大丈夫……かな」
(#゚;;-゚)「ドクオさんは、どうでしょう」
lw´‐ _‐ノv「一方的に触るのだけだったら、頑張る。普段は話すのも、ちょっと辛い」
lw´‐ _‐ノv「黒魔術部も一人でいる為に作ったから……」
(#^;;-^)「世の中には色々な人がいますね」
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:09:31.21 ID:oGK59FVb0
(#゚;;-゚)「最後に一言お願いします」
lw;´‐ _‐ノv「そういうの……一番苦手なんだけどなぁ……」
lw´‐ _‐ノv「――おそらく、僕の出番はそんなにはない。もう完成されちゃったキャラなのでね」
lw´‐ _‐ノv「フサについても同じことが言えるな。僕達の数少ないファンにこの場を借りて謝っておきます。ごめんね」
lw´‐ _‐ノv「番外編ではちょっとだけ主役の話があるから、それで我慢してくれ」
(#^;;-^)「シュールさん、ありがとうございました」
lw´‐ _‐ノv「お安い御用……だけど、次回は誰にするつもりなの?」
(#゚;;-゚)「…………さぁ?」
(#^;;-^)「明日できることは明日やる、のがモットーです。……では、本編スタートです」
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:15:32.43 ID:oGK59FVb0
7‐Call on the line
li イ*゚ -゚ノl|「夢に夢見た夢語り。夢心地は夢浮橋で……」
……すたーとっ
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:18:57.64 ID:oGK59FVb0
【――数分後、雨霧荘11号室】
(; Д)「……ほら、二人共。挨拶しろ……」
(ノリ*゚ -゚ノリゝ「ちっこいお兄ちゃんなんでげっそりしてるの?」
(; Д)「大学生は大変なんだよ……」
li イ*゚ー゚ノl|「おー。オトナな発言ですなー」
(; Д)「いいからやれ馬鹿姉妹……」
川 ゚ -゚)「……どのぐらいだ?」
( -∀-)「属性は双子妹、当然のことながら美少女、『お兄ちゃん』呼び標準装備……。中々レベルが高いな」
('A`)「どうでもいいけどなんか滅茶苦茶肋骨痛いんだけど。折れてるんじゃね?コレ」
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:21:30.41 ID:OTRxKxIa0
コールアウター!?
本物なら支援
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:22:12.67 ID:oGK59FVb0
(ノリ*-ー-ノリゝ「――兄がお世話になっております。妹の冰刃です」
li イ*^ー^ノl|「その妹の雪吹だよー。幾久しくー」
( ・∀・)「ご丁寧にどうもお嬢さん方。お兄さんの先輩のモララーです」
(ノリ*゚ -゚ノリゝ「…イケメンだねー」
li イ*゚ー゚ノl|「…ねー」
( -∀-)「ははっ。俺がいくらイケメンだからって惚れるなよ? お嬢さん方」
(;・∀・)っ「……いやマジで。命が大事なんだったらマジで惚れちゃダメだからな?」
(ノリ;゚ -゚ノリゝ「ネタじゃなくて真面目な忠告ですか?」
(;・∀・)「お兄さんとの約束だぞ。俺には惚れないこと、オッケー?」
li イ*^ー^ノl|「わかったー。約束ねー」
12 :
>>10 偽者がいるんですか?:2010/09/25(土) 20:25:33.08 ID:oGK59FVb0
('A`)「……俺は大丈夫だよな」
(ノリ*゚ -゚ノリゝ「ドクオさん!」
li イ*゚ー゚ノl|「前に写真撮ってくれたドクオさんだ!」
( ^Д^)「…………写真?」
(;'∀`)「いやぁなんでもないよ。本当に。はははは……」
( ^Д^)「……まぁいいか。んで、この人が――」
川 ゚ー゚)「いやぁ、お会いできて光栄だな。私がこの町の保安官のロバートだ」
(;^Д^)「――ってアンタは新喜劇の身長150もないちっちゃいおっさんな大ベテランかなんかですか!!」
川 ゚ -゚)「私は専ら日曜笑●場派だな」
(;^Д^)「日曜の昼間からまったりと喜劇見たりしないで下さい! 本当に華の女子大生かアンタ!?」
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:29:30.01 ID:oGK59FVb0
( ・∀・)「あぁ? テメェ、今全国の吉本ファンを敵に回したぞ」
(^Д^;)「……すいません。モラ先輩も吉本ファンでしたか」
( ・∀・)「いや、好きなのは松●芸能だけど。安田大サー●ス大好き」
(;^Д^)「よりにもよってそんな色物系!?」
(ノリ*^ -^ノリゝ「私はシャンプー●ットが好きだな。ホップ、ステップ、」
li イ*゚ー゚ノl|「しゃんぷー!!」
(;^Д^)「話がややこしくなるから口を挟むな!!」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:30:30.62 ID:OTRxKxIa0
いや
居たら嫌だなと思っただけで
スイマセン
もう一度支援
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:33:44.27 ID:oGK59FVb0
('A`)「……ところで、遠くの友達と『このへん!!ト●ベラー』の話すると噛み合わないこと多いよな」
(;^Д^)「“ところで”っつっといて全然話題が転換できてねぇ!!」
(ノリ*゚ー゚ノリゝ「旅行先で見るのが楽しいんだよねー」
li イ*^ー^ノl|「ねー」
(;^Д^)「ちくしょう、ボケが多い! 助けてブーンさん、ビロ先輩!!」
( ・∀・)「(ほーら、やっぱりサブカル以外のネタは不得手だった)」
川 ゚ -゚)「(やれやれ……手のかかる後輩だ)」
( -∀-)「……ふむ。この話題も飽きたし別のやつにいくか」
(;^Д^)「へ?」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:37:13.93 ID:oGK59FVb0
( ・∀・)「――ところで冰刃ちゃんの方はCないぐらいか。アホ毛で変な髪形、すっきりとした夢二式」
(ノリ;゚ -゚ノリゝ「(しー? 胸のこと?) へ、あ……美人だなんて、ありがとうございます」
( -∀-)「教養もあるらしいしな。……本当、スゲェきれーな目だな」
(ノリ*^ -^ノリゝ「やだなー、照れちゃいますよう」
(ノリ*゚ー゚ノリゝ「私も、この目は気に入ってるんです」
川*゚ -゚)「雪吹ちゃんは……Bか。おっとりとした喋り方といい、猫といい。天然っぽいな。良い意味で馬鹿キャラ」
li イ;゚ー゚ノl|「(……馬鹿?) ありがとう……えっと、クーおねーちゃん」
川* -)「そしてこの無垢な感じがまたそそる……。あぁ……」
川*゚ -゚)「――お嬢さん。今度、一緒にドライブでも?」
li イ*^ー^ノl|「どらいぶ? いいよー」
川* -)「(あぁ……この穢れを知らない感じ、堪らないな……)」
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:38:01.54 ID:HG0avL44Q
おお!来たかー
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:40:18.68 ID:oGK59FVb0
川*-ー-)「――これで二人共『巫女』ときている。ゾクゾクするねぇ」
( -∀-)「萌えレベルは7。ポイントは……ふっ、測定不能か」
(;^Д^)「“ふっ”じゃねぇ! “ところで”で話が転換された方向が最悪だ! 人の妹をそういう変な目で見るな!!」
('A`)「安心しろ、手は出さないって。写真見て……想像するだけだ」
(^Д^# )「想像? 何をですか!? 答えによっちゃあブチ殺しますよ!!? つーか写真ってなんだよ!!」
( ・∀・)「うるせぇ、このシスコン馬鹿が」
(;^Д^)「だっ――誰がシスコンですか!!」
( -∀-)「シスコンで馬鹿だろーがよ。ほら、よく見てみろ」
( ^Д^)「え……アレ?」
( ^Д^)「……………………でぃ?」
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:44:12.52 ID:oGK59FVb0
【――その頃・市街地】
(#゚;;-゚)「……、」
(#゚;;-゚)「…………」
(# ;;-)「……………………はぁ」
――なんで、あんな風に振舞ってしまったんだろう。
挙句飛び出して……子供みたいだ。
家族の仲が良いのは、当たり前のはずなのに。
とても、良いことのはずなのに。
(# ;;-)「みっともないです……」
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:48:15.36 ID:oGK59FVb0
なんだろう……この、心の中に靄がかかったような感覚は。
揺らめいて、騒めいてる。
舌が回らない。言葉を、上手く使えない。
言うことを聞かない身体。
聞き分けのない子。
(# ;;-)「あっ……ぅ……」
――ああ、そうか。
初めてだから分からなかった。
これが、そうなのか。
私は……嫉妬しているのか。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:52:53.84 ID:oGK59FVb0
大事なモノを取られたように感じて。
身の程も弁えず、こんな感情を抱いている。
良い御身分。
何様のつもり?
(# ;;-)「“何様でもない”のが、私でしょうに……」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:55:50.93 ID:oGK59FVb0
「――“何様でもない”? 馬鹿言うな」
(;#゚;;-゚)「……っ!」
( ^Д^)「お前は『でぃ』だろうが。それ以外の、なんなんだよ?」
(#゚;;-゚)「…………」
( ^Д^)「……買い物行くにしても、メニュー決めてるの俺なんだから一人じゃ行けねぇだろうが」
( ^Д^)「全然、一人で大丈夫なんかじゃねぇだろうが……」
( Д)「……お前までどっか行っちゃったら、俺はどうすりゃいいんだよ。それぐらい考えろよ……」
(* ;;-)「……はい」
(#゚;;-゚)「…………胸、貸しましょうか?」
( うД)「……っ。うっせぇ!」
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:59:20.16 ID:oGK59FVb0
【――その後、夕刻・雨霧荘近く】
川 ゚ -゚)「お好み焼きだってな……食べたかったな」
( ・∀・)「ああ」
川 ゚ -゚)「焼きそばもあるだろうなぁ、あの調子だと……」
( -∀-)「……ああ」
川 -)「ご飯をあえて焼きおにぎりにしてだな、熱した鉄板の上に置いて、醤油を上から――」
( #・∀・)「――あ゛あ゛ああ! もう、うるせぇ!!」
( #・∀・)「何だよお前! うっとーしい!!」
川 -)「だって、…………食べたかったんだもん」
( -∀-)「……“だもん”、じゃねーよ馬鹿」
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:03:08.12 ID:oGK59FVb0
( ・∀・)「――そんなに食べたかったんなら食べりゃあ良かっただろ。勧められてたんだし」
川 -)「……甘えられるか。邪魔、できるか……」
( ・∀・)「……あ?」
川 ゚ -゚)「――折角の家族水入らずだぞ。邪魔、できるわけがないだろう……」
( -∀-)「…………はぁ」
( ・∀・)「お前って、昔からそーいうトコだけは気が利くのな」
川 -)「……うるさい」
( -∀-)「……やれやれだ」
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:08:44.74 ID:oGK59FVb0
( -∀・)っ「……ほら」…スッ
――くしゃ
川// -/)「――っ!! いきなり頭を撫でるな! はっ、恥ずかしい!!」
( ・∀・)っ「……帰って、俺の家でやろーぜ。お好み焼き」
川// -/)「わかったから止めろバカ!! 子供扱いするなっ!!」
( ・∀・)っ「しかし、相変わらずサラサラだな。……スゲー気持ち良い手触りだ」
川// -/)「くっ――ふぁっ! 止めろ、止めろ止めろ!!」
( -∀-)っ「頭撫でられて照れるなんて、まだまだ可愛い所残ってんじゃんか。おねーちゃん?」
川// -/)「…べっ、別にお前じゃなかったら……」…ボソッ
( ・∀・)「あ?」
川// -/)「いいから止めろ! 手をどけろバカ!!」
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:13:33.23 ID:oGK59FVb0
【――ほぼ、同じ頃】
(ノリ*゚ -゚ノリゝ「ちっこいお兄ちゃん、相変わらずお好み焼きだけは上手いねー」
li イ*゚ー゚ノl|「お好み焼きだけはねー」
(;^Д^)「……それしか出来ないみたいに言うな。まるで俺がそれ以外てんで駄目みたいに聞こえるぞ」
(ノリ*゚ー゚ノリゝ「そんなことないよ! もんじゃ焼きもキャベツ焼きも美味しいよ!」
li イ*^ー^ノl|「ちゃんちゃん焼きもどんどん焼きもー!!」
(;^Д^)「焼くもんばっかじゃねぇか!!」
(#゚;;-゚)「あの……でも。美味しい、です……」
( *^Д^)「…………おう」
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:15:45.33 ID:n8/89uW8O
し え ん
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:17:12.48 ID:oGK59FVb0
li イ*゚ー゚ノl|「そう言えば、おっきいお兄ちゃんは?」
( ^Д^)「え?」
(ノリ*゚ -゚ノリゝ「威織お兄ちゃん、ずっと会ってないから、会いたいなーって。こないだ電話かかってきて……思っちゃって」
li イ*-ー-ノl|「大学行き始めた辺りから一回も帰って来てないよねー」
( ^Д^)「……そう、だな」
( ^Д^)「俺も……全然会ってねぇし、あの人の考えてることなんか、全然、分かんねぇよ……」
(#゚;;-゚)「…………」
(ノリ*゚ -゚ノリゝ「ふーん……」
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:21:04.04 ID:oGK59FVb0
li イ*゚ー゚ノl|「明日、押しかけちゃおっか。仕事場!」
(ノリ*^−^ノリゝ「雪吹ちゃん行動派ー」
(;^Д^)「ちょっ――ちょい待て。それは駄目だ!!」
(ノリ*゚ -゚ノリゝ「え? なんで?」
(;^Д^)「そりゃあ、その……ああ、えっと……」
(#゚;;-゚)「――ご旅行中だからですよ」
(^Д^;)「!?」
(#゚;;-゚)「プギャーさんのお兄様は、お仕事の為や研究の為……旅に出たそうですから」
(#゚;;-゚)「だから、会えません」
(#゚;;-゚)「貴女方のお兄様には、もう……会えないのですよ」
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:22:17.88 ID:+oLyxPyZ0
支援するぞバーカ
おお、きてたか!!
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:30:32.31 ID:oGK59FVb0
(ノリ*゚ -゚ノリゝ「…………」
li イ*-ー-ノl|「……そっかー。旅行かー」
(ノリ*^ー^ノリゝ「それじゃ、仕方ないねっ。あはは。お兄ちゃんらしいや」
(;^Д^)「……ああ」
(ノリ*^ -^ノリゝ「これからしばらくは、一人お兄ちゃん体制だね。寂しくないよう、沢山遊びに来るから」
li イ*゚ー゚ノl|「毎週だって来るから!」
( Д)「……ああ、」
( Д)「ああ……そうだな。一人お兄ちゃん体制、だ……」
( Д)「俺は、お前等のお兄ちゃんだもんな……」
( つД)「一人でも……しっかりしなきゃ、だな…………」
(#゚;;-゚)「(プギャーさん……)」
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:33:20.47 ID:oGK59FVb0
――……お兄ちゃん、泣いてる?
――久々に妹に会えて嬉し涙ー……とか?
馬鹿言え、カラシつけ過ぎただけだよ
――あははっ。本当にちっこいお兄ちゃんは駄目ですなー。
――お兄ちゃん達と比べるとたよりなーい。
……ああ
俺は……頼りない兄ちゃんだ
二十年付き合った兄貴のことすら分からねぇ、駄目な奴だ……
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:38:41.13 ID:oGK59FVb0
――……そっか。そうかもね。私達にも分かんないもん。
――でもね、お兄ちゃん。
威織お兄ちゃんも、チカちゃんも。きっと……お兄ちゃんを『家族』だと思ってたよ。
……そうか
――たとえ会えなくても、家族は家族でしょ。
――少なくとも、私達はそう思ってるよ。ずっと、ずぅっと前から……ね。
距離ぐらいじゃ切れない繋がりが『家族』なんだから。
積み重ねてきた想いが、『家族』である証明なんだから。
……ああ、そうだな
距離ぐらいじゃ切れないし……過去も、なくならない……
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:43:11.72 ID:oGK59FVb0
家族……
ああ、ちくしょうっ
ちくしょう、ちくしょう……
――……お兄ちゃん?
――お兄ちゃん、大丈夫?
くそっ……ちくしょう……
辛ェ……
ああ……人間って、こんなにも涙出せるんだなー……
できれば、知りたくなかったよ
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:45:20.42 ID:n8/89uW8O
支援
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:48:08.79 ID:oGK59FVb0
……兄貴
自分勝手でお節介で大食らいで地味にインテリで鬱陶しくて馬鹿で――優しかった、俺の兄さん
兄らしいことをして貰った覚えは全然ないけど、
それでもアンタは俺の兄さんだった
“貰った覚え”がないだけで、きっと俺は、沢山貰ってたんだろう
冰刃や雪吹に言われて気づいたよ
今まで悪かったな
馬鹿な弟を許してくれ
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:52:33.66 ID:oGK59FVb0
俺はアンタほど凄くないし、
夢とか願いとか後悔してる過去とか、何もないんだけどさ
これからも精々、頑張ることにするよ
アンタの弟として
アンタの弟だから
……あるいは、アンタの大切な妹達の兄としてな
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:57:38.94 ID:oGK59FVb0
長くなったけど……いや、短いぐらいなのかな
まぁいいや
とりあえず、最後はこれで終わることにするよ
ありきたりでありがちだから、アンタは怒るかもしんないけど
さようなら
あと、ありがとう
今までも、これからも――ありがとう
俺の兄貴
Anything essential is invisible to the eyes.
I'm your familiy. That's what I'm here for. Thanks to you, I'm alive...
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:01:47.93 ID:oGK59FVb0
Call back‐7
(ノリ ーノリゝ「思ひつつ 寝ればや人の 見つらむ 夢と知りせば 覚めざらましを……」
……すたーとっ
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:04:04.90 ID:oGK59FVb0
(ノリ ゚ -゚ノリゝ …パチ
――長針と短針の追いかけっこがリセットされてから、二時間ほど後。
深夜二時過ぎの真夜中に。私は理由なく目を覚ました。
お泊り。
でぃちゃんを含めた私達三人は、お兄ちゃんのベッドを使っていた。
右側に感じる高めの体温。
可愛い妹は雪原のような毛並みの猫を抱え、すやすやと、静かに寝息をたてている。
(ノリ -ー-ノリゝ「……おかしいなぁ。いっつもはよく眠れるのに」
昔から、お兄ちゃん達の布団で寝る時だけはぐっすり眠れた。
安心できたからだろうか。
それとも、そこにいる時が一番幸せだったから?
私は、妹の頭を撫でながら、あるいは“一人お兄ちゃん”の匂いに安心しながら、さっきまで見ていた夢のことを思い出すことにした。
いつの間にかサラサラと砂のように消え去ってしまうのが夢だけど、夢見た直後なら思い出すのは簡単だ。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:07:29.09 ID:oGK59FVb0
――夢の中。
今よりも小さい私達は、夕方、友達と別れて家路を急ぐ。
神社の古めかしい門をくぐればお家はもうすぐ。
玄関は開いたまま。
威織お兄ちゃんが土間で夕涼みをしながら本を読んでいるから。
「おかえり、二人共」
古書から目線を上げて私達を出迎える威織お兄ちゃん。
ああ、懐かしい顔だな。
今のおっきいお兄ちゃんより、ずっといいや。
「お兄ちゃん、ただいま!」
「ただいまー!」
返事を返し、お気に入りの靴を揃えて脱ぐ。
それで、いつも通りランドセルを部屋に置きに行くんだ。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:10:13.43 ID:oGK59FVb0
「ふぁぁ〜あ。……ただいまー」
そうこうするうちに、ちっこいお兄ちゃんが帰ってくる。
……欠伸してるけど顔がちょっと赤い。
今日もデレさんと一緒だったのかな。
「くつくつくつ。ませてるね、最近の子供って」
「な……なんのことだよ。それに“最近の子供”っつったって、兄貴と俺、大して年変わんねーじゃねぇか」
図星だったのか、狼狽えながらも話題を逸らしにかかるお兄ちゃん。
ちっこいお兄ちゃんだけは、本当に全然変わらないなぁ。
と、その時。
「――アレ、もう皆帰ってきたわけ? ご飯はまだだぜ?」
そんなことを言いつつ、奥から着流しのチカちゃんが登場した。
フライパンを持ってるから、言葉通り調理中なんだろう。家庭的なお兄ちゃんだ。
……足元に猫が何匹も纏わりついてて、そこは家庭的じゃないけど。
支援!
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:13:46.42 ID:oGK59FVb0
「おっきいお兄ちゃん、ただいま!!」
雪吹が我先にと抱きつく。
はいはい、と空いている左手を使って頭をくしゃくしゃと撫でる一番上のお兄ちゃん。
先を越された私も慌てて、
「チカちゃん、私もっ! 私もただいまっ!!」
「はいはい。おかえり、冰刃」
同じようにくしゃくしゃと頭を撫でられる。
気分は猫ちゃんだ。
私は目を細め、頬ずり。……うん、すっごく安心する。
本物の猫達がご主人様を取られたと思って鳴いてるけど、知らない。
私達はお兄ちゃんが大好きなんだから。
きっと世界で一番。
世界中で、一番お兄ちゃんが大好きな妹達。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:16:29.57 ID:oGK59FVb0
「あの……私ね、おっきくなったら、チカちゃんと結婚するから!!」
「あっ、冰刃ちゃんズルい! 雪吹もお兄ちゃんがいーいー!!」
私と雪吹は口争いさえ滅多にしない仲の良い姉妹だったけど、この時ばかりは別。
いっつも喧嘩になって、お兄ちゃん達を困らせた。
「くつくつくつ。兄さんは、相変わらず猫と妹にはモテるんだから」
「おいコラ、威織。どういうことだ。俺が猫と妹にしか人気がない的な意味に聞こえるぞ」
「聞こえるっつーか、兄貴はそういう意味で言ったんだと思う」
おっきいお兄ちゃんは摘み食いしながら、ちっこいお兄ちゃんは猫を抱えながら皮肉を言った。
二人共、分かってた。
女の子には人気がなくても、チカちゃんは私達の大事な人だって。
「じゃ、チカちゃん……結婚はしなくていいから、ずっと私達の傍にいてね? いいよね、雪吹ちゃん?」
「……うん。雪吹も、それで……ガマンする」
ああ、
ああ、あぁ――――。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:19:06.00 ID:oGK59FVb0
――私が今日見た夢は、
「ははは……何を言ってるんだか。当たり前だろう?」
お兄ちゃんは皆家にいて、だから私達はお家が大好きで、
ご飯を一緒に食べてテレビも見て宿題も見てもらって、一緒にお風呂に入ってまた頭を撫でてもらって、
最後に甘えてお兄ちゃんの布団で目を閉じて、朝になって次に目を開けた時も皆がちゃんといて、
これからも、いつも通りの日々が流れるような、そんな、そんな、そんな――、
「俺も、威織も卯杖も。ずっと傍にいるさ」
「――なんてったって、俺達はお前等のお兄ちゃんだからな」
――――そんな、嘘だらけの夢だった。
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:22:44.93 ID:oGK59FVb0
(ノリ -ノリゝ「……ねぇ、でぃちゃん」
(#゚;;-゚)「…………はい」
目を――開けた。
月明かりが注ぐ部屋は、紛れもない現実。
「ずっと傍にいる」と言ってくれたチカちゃんは……やっぱりいなかった。
ソファーで寝ているはずのお兄ちゃんも、いない。
外の自販機にお酒でも買いに行ったんだろう。
……止めたはずのタバコも、今日ばかりは吸っているのかもしれない。
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:26:33.63 ID:oGK59FVb0
(ノリ -ノリゝ「……伝説の勇者様が恋人だとしたら、どんな気持ちだと思う?」
(#゚;;-゚)「…………」
トイレから戻ってきたでぃちゃんは私の只ならぬ様子を気取ったのか、それとも単に質問の所為か、眉を曇らす。
対し、私はベッドから立ち上がる。
寝巻きの着流しは、夢の中でチカちゃんが着ていたのと同じもの。
(ノリ -ノリゝ「私はこう思うんだ。『寂しい』、って」
(ノリ -ノリゝ「寂しくて寂しくて寂しくて……死んじゃいそうなぐらいに寂しくて、」
(ノリ ーノリゝ「『そんなのどうでもいいから私の傍にいて』……って、思う……」
自己中だよね、私――と。
自嘲する私を彼女は何も言わず、何も問わず見つめていた。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:29:44.73 ID:oGK59FVb0
一歩にも満たない動き。
左足を前に出す。
(ノリ ーノリゝ「あはは……カッコ悪いよね、私。自分のことしか考えてないんだもん」
右の袖口、手首を返し、榊の感触を確かめるようにして、それを掴む。
彼女はまだ気づいていないらしい。
(ノリ -ノリゝ「……でもね。私は…………私はね?」
(ノリ -ノリゝ「ずっといい子にしてたの。お兄ちゃん達が大好きだから、我が儘言わないで、ずっと……」
目分量。数メートルもない。
……もう、射程範囲だ。
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:32:07.68 ID:oGK59FVb0
(ノリ -ノリゝ「私は、私達は――――!」
(;#゚;;-゚)「――っ!?」
……もう遅い。
右足。安っぽい絨毯に踏み出す。
身体が沈む。
その沈む力を利用して身体を前に倒していく。
踏み締めた右足。上体はまだ起こさない。
代わりに――足先に集中した力を使って、瞬間的に距離を詰めた。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:35:04.81 ID:oGK59FVb0
――『縮地』、と言う動き。
古武術の技の一つ。
でも、でぃちゃんには説明するまでもないことかな。
それよりも。
(;#゚;;-゚)「…………」
私が喉元に突きつけた匕首の意味が……知りたい?
この氷のように澄んだ刃が、
何の為に在るのかを。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:38:04.48 ID:oGK59FVb0
(ノリ -ノリゝ「――でぃちゃん、嘘吐いてくれたよね」
(;#゚;;-゚)「……あ、」
(ノリ -ノリゝ「隠さないでもいいよ。もう分かってるから」
お兄ちゃんがなんで泣いてたのかぐらい、
威織お兄ちゃんがもう帰って来ないことぐらい、
説明されなくても分かるよ。
だって、私達は『家族』――なんだから。
世界中で、一番お兄ちゃんが大好きな妹なんだから。
(ノリ ーノリゝ「ありがとう。気休めにしかならなかったけど……気休めにはなったよ」
(#゚;;-゚)「…………」
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:41:22.26 ID:oGK59FVb0
(ノリ -ノリゝ「――でぃちゃん、嘘吐いてくれたよね」
(;#゚;;-゚)「……あ、」
(ノリ -ノリゝ「隠さないでもいいよ。もう分かってるから」
お兄ちゃんがなんで泣いてたのかぐらい、
威織お兄ちゃんがもう帰って来ないことぐらい、
説明されなくても分かるよ。
だって、私達は『家族』――なんだから。
世界中で、一番お兄ちゃんが大好きな妹なんだから。
(ノリ ーノリゝ「ありがとう。気休めにしかならなかったけど……気休めにはなったよ」
(#゚;;-゚)「…………」
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:45:26.74 ID:oGK59FVb0
(ノリ -ノリゝ「昔から威織お兄ちゃんはそうだったんだ。大事なことは少しも話してくれないの。遠い目をするだけで、全然」
(ノリ ーノリゝ「だから、いつかこうなるってことは、分かってたんだ。通り雨みたいな人だったから」
でも、やっぱり哀しいや。
……私の独白を、でぃちゃんは黙って聞いている。
この状況でも凶器じゃなく私を見るなんて、本当に凄いね。
私なんか。
人殺しの道具を逆手に持ってる左手だって、添えてる右手だって、
みっともなく震えちゃってるのに。
(ノリ -ノリゝ「……チカちゃんの時も、そうだったよ」
震えてるのは人を殺すことに怖気づいてるわけじゃないよ。
勘違いしないでね。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:48:29.44 ID:oGK59FVb0
この両手が、震えているのはね――でぃちゃん。
貴女には分からないかもしれないけど、違う理由なんだよ?
(ノリ -ノリゝ「ちっこいお兄ちゃんと仲良くするのは、いいよ。……でもね、」
(ノリ -ノリゝ「もし……もしだけど、今度も私達のお兄ちゃんを奪ったりしたら……――」
家族を失うってことは。
大切な人がいなくなっちゃうってことは。
……もう、二度と会えないってことは。
(ノリ#゚ー゚ノリゝ「――――絶対に、許さないから」
涙が枯れ果てるぐらいに、身体がズタズタに切り裂かれたみたいに、人を傷つけることへの躊躇を失くさせるぐらいに、
痛くて寂しくて辛いこと――なんだよ?
Call back‐7 END
57 :
話が変わります。:2010/09/25(土) 22:53:11.31 ID:oGK59FVb0
8‐Call Under Repair
( <●><●>)「嘘と弟の頭はゆったことがないですね。当然どちらも嘘ですけど」
……すたーとっ
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:53:16.69 ID:0T9VlKx1O
お疲れー
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:56:15.97 ID:oGK59FVb0
最初に両親が死んだ。
彼等との思い出はなかったから泣くことはできなかった。
次に、好きだった近所のお姉さんが死んだ。
好き……というか、優しくて、家族みたいな人だった。
最後に兄が死んだ。
自殺だった。
……僕は一人になった。
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:57:57.72 ID:FJy4f1lF0
あいかわらずごつごうしゅぎすぎる
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:59:14.71 ID:oGK59FVb0
兄の葬儀には、兄の知り合いだという綺麗な女の人が来た。
金色の髪と口調に尊大な印象を受けた。
「悲しい?」
悲しくない、と答えた。
「……嘘ね」
嘘だった。
本当は悲しかった。
死んでしまいたいぐらい、悲しかった。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:04:28.13 ID:oGK59FVb0
「……でも、貴方は少なくともお兄さんよりは、嘘を吐くのが上手だわ」
兄によく言われたことだった。
悪い所が似た、と兄は言っていたけど、僕は嬉しかった。
それが家族である証明のようで、嬉しかったのだ。
「まぁいいわ。貴方は精々素直に生きなさい」
“どうせ無理だろうけれど”
小さく、そう付け加えて、彼女は帰って行った。
……僕はやっぱり一人だった。
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:07:03.72 ID:oGK59FVb0
一人になって嘘が増えた。
身体中が嘘だらけになった。
本物なんてないと思っていた。本当なんてありえないと思っていた。
真実なんて分からない方がいいと思っていた。
――そんな時に、
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:10:20.65 ID:oGK59FVb0
( ><)「…………実は、一目惚れだったんですよ」
僕は貴女に出会ったようです。
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:13:29.05 ID:oGK59FVb0
【――某日・帝都、南ブロック、執事喫茶『ギャリソン』】
( ^ω^)「……幼馴染に『お茶しに行きましょう!』と誘われて意気揚々と着いて来たら執事喫茶だったなう」
ξ゚听)ξ「え? 何か言った?」
( ω)「なんでもないお……。僕はまだ、ツンのこと、よく分かってなかったみたいだお……」
ξ゚听)ξ「? 変なブーン」
ξ*゚听)ξ「こんなにも素晴らしい状況にいるって言うのに、愉しまなきゃそんじゃない!!」
ξ*^竸)ξ「よくもこんなにイケメンを揃えたもんだわっ! 流石、雷門さん!」
( ω)「……幼馴染は周囲の執事姿のイケメンに見蕩れているので早速アウトオブ眼中になったなう」
( ω)「軽く死にたくなってきた……」
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:17:36.44 ID:oGK59FVb0
<-Д-=>「――楽しんでもらえているのなら何より。何より、ですね」
ξ゚听)ξ「ああ……大河さん」
ξ^竸)ξ「でも、なんだか申し訳ないわ。ここのオーナーがお父さんの知り合いだからって、割引してもらうなんて」
<-Д-=>「というよりは従業員割引が近いです」
( ^ω^)「従業員割引?」
<-Д-=>「はい。稼ぎ頭のご友人ということなので……」
ξ;゚听)ξ「稼ぎ頭って……まさか、」
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:21:00.25 ID:oGK59FVb0
カランカラン
( ><)「――お帰りなさいませ、お嬢様」
川 ゚ -゚)「お席にご案内します。足元に気をつけて……よろしければ、お手を」
(/、//川「はわわわ……」
ξ;゚听)ξ「……あっれー? やっぱり見たことある顔だー?」
<-Д-=>「――素晴らしいです。本当に、素晴らしい」
<-Д-=>「ビロードさんも人気ですが、彼が臨時のバイトとして雇ったクールさん。彼女が凄い」
( ^ω^)「いやおかしくね? アイツ超の付くお嬢様だぜ? なんで雇われてんの?」
ξ;゚听)ξ「ブーン、落ち着いて。キャラキャラ」
(;^ω^)「……おっとっと。想定内でありながら不測の事態過ぎたお」
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:23:18.29 ID:oGK59FVb0
<-Д-=>「執事喫茶であるのに“男”で“メイド服”のビロードさん」
ξ;゚听)ξ「ねぇ、おかしいよね? 何から何まで間違い過ぎよね? 間違いしかないんだけど」
<-Д-=>「そして、“女執事”という新ジャンルを開拓しつつあるクールさん」
(;^ω^)「待てお。基本腐女子向けであるはずのこの場所でなんで男装がまかり通ってるんだお」
<-Д-=>「彼等はこの店のツートップと言えるでしょう」
ξ;゚听)ξ「正統派執事はどうしたの? それでいいの、この店?」
<-Д-=>「俺はバイトなので……」
ξ;゚听)ξ「“詳しいことは分かりません”ってか! 夢のある執事喫茶なのにそんなトコだけお役所気取りか!!」
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:26:03.17 ID:oGK59FVb0
<-Д-=>「――では、私はそろそろ失礼します。どうも、以前の怪我以来右腕の調子が悪い」
(;^ω^)「え、放置? アレにツッコミはなし?」
( ><)「いってらっしゃいませ、お嬢様」←“アレ”=執事喫茶なのに何故かメイド姿の大学生。
川 ゚ -゚)「どうか、お体にお気をつけて」←“アレ”その二=大金持ちの女執事。
<-Д-=>「そう言われましても、私は残業しない派なので……」
ξ;゚听)ξ「それ執事じゃなくて死神の方でしょ!!」
<-Д-=>「――それでは」シュタッ
(;^ω^)「えっ、あっちょっ――……逃げられたお。逃げ足速ぇ」
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:29:03.04 ID:oGK59FVb0
( ><)「――お嬢様。ツッコミなら僕が手を貸させて頂きます」
ξ;--)ξ「私がツッコミたいのはアンタの存在だっつーの……」
ξ゚听)ξ「っていうか、ビロードに『お嬢様』って呼ばれるの随分久しぶりね。高校以来じゃない」
( ><)「僕がお嬢様のハウスメイドガイだった頃以来ですから……確かに久しぶりかもしれませんね」
( ><)「小さかったお嬢様も……」
ξ゚听)ξ「え?」
( ><)+「――少しは、大きくなられたようですし」
ξ#゚ー゚)ξ「……ねぇビロード。私の“どこが”小さくて、“どこが”少し大きくなったって?」
( ><)「胸ですね」
ξう;)ξ「ハッキリ言いやがった! 泣いてやるっ!!」
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:32:45.27 ID:oGK59FVb0
(;^ω^)「まあまあ。大きくなったんだから……」
川 ゚ -゚)「――そうだぞ。胸が大きいとこういう服がキツいんだぞ」
ξう;)ξ「さり気なく自慢するなー!!」
( ><)「モララーさんやプギャーさんは、小さい方がお好きだと聞いていますよ?」
(;^ω^)「(これ以上攻略の難易度上げる気かお? 何処までも僕の敵か、メイドガイ……)」
ξ--)ξ「むむ……」
ξ--)ξ「モララーは女の子に首絞められて喜ぶ変態……後輩は中学生に欲情して同棲してる変態……」
ξ#゚听)ξ「――どっちも変態じゃないっ!! ふざけんな!!」
(;^ω^)「事実なだけに酷ェ!!」
川 ゚ -゚)「(人間の悪評というのはこういう風に広がっていくのか……覚えておこう)」
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:35:04.26 ID:oGK59FVb0
川 -ー-)「――しかし、どうだこの服? エロいだろう」
ξ;゚听)ξ「執事服にエロさを求めるのは腐女子だけだと思うけど……」
川 ゚ -゚)「何を言うか。男用の服を女が着ると、かなりエロい仕様になるんだぞ?」
川 ゚ -゚)「例えば、ジャケットの前のボタンを外す」
川*゚ -゚)「――すると、本来は男性用のシャツなので胸部分がキツくて膨らみがやたらと強調されて即ちエロい!!」
川*゚ー゚)「どうだ、この萌え!! ムラムラするだろう!!?」
( ><)「なるほど。ワイシャツ妹萌えと近いものがありますね」
ξ;--)ξ「知らないわよ、そんなの……」
ξ#゚听)ξ「――それで、ブーン。その鼻を覆ってる手を外して。今すぐ」
(; ω)「いやこれは改めてクーの胸とか意識しちゃって思わずエロい気分になって鼻血が出たとかそういうのじゃなくて……」
ξ#--)ξ「は・ず・せ」
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:38:03.44 ID:oGK59FVb0
【――数分後・店外】
( ><)「……ブーンさんは奥で氷なう、なわけで」
ξ#--)ξ「…まったくブーンは……もうっ、なんなのよなんなのよなんなのよ……」ブツブツ
( ><)「そして、ツンさんはイライラなう、なわけですが、」
( ><)「“主人公がデレデレしてるとヒロインが制裁”ってお決まりの構図は、一体いつ生み出されたのでしょうね?」
川 ゚ -゚)「そりゃアレだろう。漫画の怪物のお得意のパターン」
( ><)「ああ……なるほど。日常ラブコメの大御所ですもんね」
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:41:03.03 ID:oGK59FVb0
( ><)「でも、僕は『うる星●つら』より『めぞ●一刻』派なので、あまりそういうのは……」
川 ゚ -゚)「確かにお淑やかで美人で理想のヒロインだったが、でも管理人さんだってちょくちょくキツく当たってただろう」
( ><)「当たってましたけど大抵勘違いか早とちりだった気がします」
川 -ー-)「今で言う『天然キャラ』だからな。普段とのギャップにも萌えるよな」
( ><)「思えば、とてつもない時代の先取りですよね」
川 -ー-)「ああ。その萌え精神は、サンデーの作家に脈々に受け継がれている……」
(;><)「引退したみたいに言わないで下さいよ。今でもバリバリ現役ですよ、あの人。新作連載してますから」
川*゚ -゚)「サンデーの看板みたいなものだからな。『犬●叉』世代の私達にはちょっと寂しい気もするが」
( ><)「確かにそうですね……。一つの時代が終わっちゃった感があります」
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:44:19.59 ID:oGK59FVb0
( ><)「現在のサンデーの萌え看板はなんだと思いますか?」
川* -)「絶チルだろ。美少女、はぁはぁ……」
(;><)「……設定年齢的にガチでマズイですよ……」
川 ゚ -゚)「作者繋がりで、モララーは美神さんだよな」
(;><)「準主役に徐々に主役を奪われる主人公、ということですか? ヤなポジションだなぁ……」
川 -ー-)「まったくな……」
川 -)「――アイツが女じゃなくて良かったよ」
川 ゚ー゚)「後輩と恋仲になっていたかもしれないしな?」
( ><)「おや……へぇ、そうですか……」
川;゚ -゚)「……なんだよ」
( ><)「いえ、別になんでもありませんよ」
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:47:10.74 ID:oGK59FVb0
( ><)「――クールさん」
川 ゚ -゚)「クーでいい」
(;><)「過去に対するネタ潰しですよ、それ……いやまぁ伝わらないでしょうが」
( ><)「それで、クーさん」
川 ゚ -゚)「なんだ。改まって」
( ><)「――“恋をすると辛い”だから“恋をしない”……というのは、乱暴な論法と思いますか?」
川 ゚ -゚)「…………」
( ><)「折角恋愛漫画の話をしたんです。こういう真面目な話も、たまにはいいでしょう?」
川 -ー-)「……ふん」
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:50:04.89 ID:oGK59FVb0
( ><)「……どう思いますか?」
川 ゚ー゚)「……聞くまでもなく、私の答えなんてわかっているんだろう? メイドガイ」
( ><)「……ええ、」
( ><)「酷い嘘吐きの兄を持ったもので、多少は自信はありますよ」
( ><)「……それでも、僕は貴女の口から聞きたいんです」
川 ゚ー゚)「まるで私に告白しているようじゃないか」
( ><)「だとしたら……どうします?」
川 -)「…………それこそ、聞くまでもないことだろうに……」
( ><)「ですよね。……でも今の、割とキメ顔だったんですが」
川 -ー-)「はは。その程度で私が落ちると思っていたのか?」
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:53:21.84 ID:oGK59FVb0
( ><)「それで――どうですか? クーさん」
川 -)「……ふん」
川 ゚ -゚)「恋をして恋を失った方が一度も恋をしなかったよりマシだ。――当たり前だろう、そんなこと」
( ><)「……それが叶わぬ恋だとしても?」
川 ゚ー゚)「叶う・叶わないはこの際関係ないのだ。『人を好きになること』自体が、既に何にも換え難い、尊いことなのだから」
川 ゚ -゚)「告白する必要だって、本来はないのかもしれないな」
( ><)「でも、貴女は告白するでしょう?」
川 -ー-)「当たり前だ」
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:56:05.64 ID:oGK59FVb0
川 ゚ -゚)「口に出して伝えなければ……感謝の気持ちは伝わらない」
( ><)「感謝の、気持ち?」
川 -ー-)「なんだ、そんなことすら分からないのか。恋愛童貞か、お前」
( ><)「まぁ……恥ずかしながら」
川 ゚ -゚)「仕方ない。クーお姉様が懇切丁寧に説明してやろう」
川*-ー-)「それは――“好きにならせてくれて、ありがとう”って気持ちのことだよ」
川* -)「『人を愛する』という素晴らしいことを教えてもらったんだ。せめて……礼ぐらい言わなければ、な」
( ><)「……その想い。その終着点に――どんな結果が待っていても?」
川 ゚ -゚)「どんな結果が待っていようとも、だ。その禁忌は世界よりも重いのだから」
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:59:07.68 ID:oGK59FVb0
( ><)「じゃあ――僕も少し、頑張ってみますか」
川 -ー-)「……ああ。それがいいさ」
ξ#--)ξ「…ブーンの馬鹿ブーンの馬鹿ブーンの馬鹿……」ブツブツ
ガンッ ガンッ ガンッ
(;><)「――ツンさん。うちの店の看板を蹴るのは止めて下さい」
ξ;゚听)ξ「えっ? ああ……ごめん、無意識で……」
(;><)「無意識って……あなた、単なる馬鹿じゃなくて何かしら精神に疾患があるんじゃないですか?」
ξ#゚听)ξ「なんだとー!!」
( ><)「ああっと、からかいに来たんじゃなかった……えっとですね、」
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 00:02:05.01 ID:oGK59FVb0
(;^ω^)「いちち……。ツンは容赦ねぇお……」
川 ゚ -゚)「おお、ブーン。遅かったな」
( ^ω^)「へ?」
( ><)「――ツンさん」
ξ;゚听)ξ「な、なによ、改まって……」
( ><)「今度の日曜日――僕と、デートしてくれませんか?」
( ゚ω゚)
川 -ー-)「本当に、遅かったな……」
――後半へ続く?
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 00:05:06.47 ID:cP92K1lV0
訂正。
>>74 川 -ー-)「ああ。その萌え精神は、サンデーの作家に脈々に受け継がれている……」
→「ああ。その萌え精神は、サンデーの作家達に今も受け継がれている……」
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 00:08:54.50 ID:cP92K1lV0
>>60 ( ・∀・)「……そうかな?」
(;^Д^)「え、いや俺に訊かれても……どうなんスかね?」
( ><)「登場時期が遅い僕に訊かないで下さい。……どうなんですか?」
('A`)「……メインキャラじゃない俺に訊くなよ」
川;゚ -゚)「認めちゃったのか、その事実」
(ノリ*^ -^ノリゝ「……モララーのお兄さんは、実は理由があるんだよね?」
( ・∀・)「ある。けど……回収しない伏線だな」
li イ*^ー^ノl|「このお話で死人出すのもどうかと思うしねー。あはははー!!」
乙だお