(*゚∀゚)は花を育てるようです

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61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:01:16.77 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「んう?」


しっかりと前を見据えてみる。
何も見えない。
薄目になってみる。
何も……。



いや、何か……。


(*゚∀゚)「おいお前! 双眼鏡は持っているか!!」

「え? どうしたんですか急に……」


突然のつーの大声に驚き、目を見開いている兵。


(*゚∀゚)「持っているかと聞いているんだっ!!」

「は、はい! えっと、えー、ここに……」


更に音量が跳ね上がった彼女の声に、半ば混乱しつつも彼はポーチから双眼鏡を取り出した。
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:03:15.31 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「貸せ!」


それをひったくるように取ると、もう一度先程の場所を目を皿にして見る。



その方向は暮れ行く太陽を背に向けた方角。








つまり―――『東』。
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:05:28.99 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「……畜生!」


『確認』すると、彼女は双眼鏡を放り投げ、
未だ呆然としている見張りの兵に怒鳴るように指示を出す。


(*゚∀゚)「おいっ! 今すぐ全員を集めて至急、東に向かわせろ!!」

「……ま、まさか!?」


ここにきてようやく、彼も緊急事態に気付いたらしい。


(*゚∀゚)「敵だっ……! 帝国兵がいるぞ!!」

「!!」

(*゚∀゚)「早く兵を集めろっ! アタシは先行する!!」

それだけを早口でまくし立てると、彼女は全速力で自分のテントに向かう。


「先行って……、一人でですかっ!? ちょっ、隊長!!」


彼の言葉は、もう彼女には届いていなかった。
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:07:22.10 ID:rsNApiHmO
体当たりをするかのような勢いでテントに入り込み、兜を手に取る。
彼女の赤い髪が銀色の金属に覆われる。



その時、目に映った一つの小鉢。

彼から預かった、小さな芽が出た小鉢。



ギリ、と奥歯を噛み締め、つーはテントの裏に置いていた自分の馬に跨り、平野を東に駆けた。


(*゚∀゚)「あの馬鹿っ……。死亡フラグにまんま乗っかりやがって……。
     面白すぎて逆にツマラナイだろうがっ……!」


前方に長く伸びる自分の影を、ただひたすらに踏み潰していった。
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:08:03.72 ID:wkVfloCS0
しぇ
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:09:41.96 ID:rsNApiHmO
馬を全力で走らせてどれくらい経っただろうか。
辺りに『有るモノ』が目立ち始めた。



そう。『人の死体』だ。

帝国兵の鎧を着た死体。
それと、つーと同じ鎧を着た死体も。


(*゚∀゚)「…………」


馬の速度を少しだけ落とし、周りを見回しながら進む。
やがてついた先には、廃れた家が数件並んだ小さな村があった。


その辺りは一際両国の兵の死体が散乱していた。
家も幾つか燃え尽きている。
どうやらこの村が主な戦地となったようだ。
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:10:50.22 ID:jUsMlGoq0
フラグに忠実すぎだろ……フサ……
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:12:21.19 ID:rsNApiHmO
つーは土の上に転がる死体を見て考える。


(*゚∀゚)(……おかしい。敵兵の数が多すぎる)


革命軍が皇帝を暗殺して以降、つー達は幾度となく帝国の残党を倒していったが、
彼ら一つ一つの集団は、精々30〜70人程度の徒党だった。

無論100人、200人を越す大所帯のところもあるにはあったが、
それくらいの大群となると事前に情報が入るので、さほど問題は無い。


(*゚∀゚)(だけど今回は……。少なく見積もっても300はいる。実際には400近い?)


今現在、帝国の残党は全部で1200人であるという情報がある。
つまりこの場には、全体の約1/3が集まっていた事になる。

これは、今回のつーとフサギコ達の兵数とほぼ同数だった。
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:14:38.33 ID:rsNApiHmO
(;*゚∀゚)(くっ……。まさかこれほどの人数の軍が今まで存在を知られていなかったなんて……)


身に起きたイレギュラーな事態に目を伏せるつー。
だが何らかの気配を感じ取り、すぐさま顔を上げる。


(*゚∀゚)「!」


その直後、彼女が乗っていた馬が甲高い悲鳴を上げた。
見ると、馬の左前足に一本の矢が刺さっていた。


(*゚∀゚)「チッ!」


暴れる馬から振り下ろされるように地面に落ちたつーは、
しかししっかりと受け身を取り、近くの物陰に隠れた。

物陰からそっと顔を出し、弓が来た方向を確認する。
そこには、こちらへ向かってくる十人余りの帝国兵がいた。


(*゚∀゚)「フン、ただ数にモノを言わせて真っ直ぐ突っ込んでくるだけで
     アタシを仕留められると思うなよ……!」


つーは弓を手に持ち、矢の数を触って確かめ、その場を離れた。
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:16:33.16 ID:rsNApiHmO
.


(*゚∀゚)「ったく、キリ無いね」


つーは素早い動きと、その小柄な体を利用した死角からの攻撃で、
次々と帝国兵を仕留めていった。

辺りに他の敵兵はいないか注意深く目を凝らす。


(*゚∀゚)「……む」


いた。しかもアレは……。

思うところがあったつーは、その敵兵の眼前へと躍り出た。
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:18:16.41 ID:rsNApiHmO
そこにいたのは全身を重厚な鎧で包んだ大柄の帝国兵。
手には球状の頭部に複数の棘がついているメイス―――『モーニングスター』を所持していた。

お互いの距離が五メートル程の所まで来たところで、つーは足を止めた。
敵兵はつーの姿を見つけた時点で足を止め、注意深く彼女を見ていた。

しばし無言で対面する。
その場だけ温度が下がったような感覚をつーは受けていた。


(*゚∀゚)「やあ。アンタが大将かい?」


沈黙を破り、つーが話しかける。
その内容はフランクだが、声質は重く、低い。


「いかにも。貴君の鎧の装飾……。そちらも現場の最高司令官とお見受けする」


その敵兵―――声の低さからいって男だろう―――は、騎士らしい、堅い物言いで返答する。
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:20:28.32 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「まあね。……さて、色々言いたい事はあるが、まどろっこしいのは抜きにしよう」


つーは兜の奥側から、獣のような鋭い眼光を光らせる。


(*゚∀゚)「降伏する気は無いか?」


降伏勧告。
それを聞いた男は。


「笑止。我を止められると思っているのか。
 貴君の身長、声の高さから、どうやら貴君―――いや、貴女は女であろう。
 女の身でありながら、我を殺せると思い上がるか?」


つーを蔑むように言った。
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:22:43.41 ID:rsNApiHmO
しかしつーは呆れたように首を振る。


(*゚∀゚)「おいおい、そうじゃないだろう。例えここでアンタが、
     アタシやアタシの部隊を全滅させたとしても、次は国の本軍が来る。
     兵力差は象と蟻どころじゃないよ。アンタ達に勝ち目なんて万に一つもない。
     アンタだって判っているだろう?」


それを聞いた男は無言になる。
理解したか、とつーが内心で胸をなで下ろす。

が、男の口から出たのは、


「それがどうした? 勝てぬ戦いだから、剣を収めよと?
 そんな事が許される筈がない。我が体は皇帝陛下の物であり、
 我が魂は帝国の物であるのだ。退ける訳が無いのだよ」


拒絶。
男は最後まで戦う意志を見せていた。
74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:23:46.73 ID:jUsMlGoq0
〜〜のくせに 的な発言もフラグだよね
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:24:17.32 ID:rsNApiHmO
(#*゚∀゚)「馬鹿がっ……! 皇帝は死んだ! 帝国も間もなく消滅する! それでも戦うのか!?」

「陛下がお亡くなりになってもその思想は我らが兵に宿っている。
 それに、帝国は消えない。我らが戦う限り、帝国は消えないのだ」

(#*゚∀゚)「そんな形の無いモノに自分の命を懸けるというのか!?」

「……もう良いだろう。所詮は女。我らが崇高な意志など理解できぬのも当然」


男はモーニングスターを高く振り上げる。
夕日で紅く染まった彼は、さながら鬼のようだった。


「ならば貴女はここで倒れ、我が帝国の礎となるがよい!」


地を蹴り、男が襲いかかる。
重い鎧を着ているとは思えない程の俊敏さだ。


(*゚∀゚)「チィッ、これだから堅物は苦手なんだ。相手の言葉に耳を貸しやしない!」


つーは悪態を付きながら横に回り、懐の剣を抜いた。
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:25:48.64 ID:UA3nTuUA0
支援
77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:26:38.96 ID:rsNApiHmO
モーニングスターの風を砕く音が鳴り響く。
直撃すれば鎧など意味を持たずに体ごと破壊されるだろう。


(*゚∀゚)「チッ、ブンブン振り回しちゃって、危ないだろっ!!」


つーは持ち前の素早い動きを生かして、相手の攻撃の僅かな隙間をつき、
モーニングスターを持つ右腕へと剣を飛ばす。
だがその斬撃は厚い甲冑に阻まれる。
男はそんな攻撃など全く意に介せずに、続けて武器を振り回した。


(*゚∀゚)「ハッ、衝撃を与えてその危なっかしいモノを落としてやろうと思ったのに。
     なんて分厚い鎧と馬鹿げた筋肉してるんだよ」

「貴女の速さには目を見張るものがあるが……。
 そんな武器では我に傷一つ負わせる事は出来ぬぞ!」
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:29:01.97 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「それはどうかねぇ?」


つーは先程と同じ様に間隙を縫って剣を走らせる。
すると―――


「ぬううっ!!?」


男の驚愕の声。
彼の右肘から鎧の繋ぎ目を通って、決して少なくない量の血が流れていた。


(*゚∀゚)「傷、負っちゃったねえ?」

「貴様、何を……!」

(*゚∀゚)「この剣、特注品でさ」


つーは剣の切っ先を男に見せるように突き立てる。


(*゚∀゚)「先端部分の厚みを限りなく薄くしてあるんだ。硬度を最低限保たせてね。
     そのお陰で鎧の僅かな隙間にも入り込む事が出来る」


つーは切っ先を向けたまま近寄り、相手の目の前まで来る。
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:31:12.72 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「さあ、どうする? まだ降伏の申し込みは受け付けるよ?」


男はじっと黙って、彼女を正面から見ていたが、やがて口を開いた。


「無論、断る」


その言葉と同時に、横薙ぎのモーニングスターが彼女の体を狙う。


(;*゚∀゚)「うわっ!!」


間一髪で身を引いてそれを躱す。つーの鎧、横一直線に傷跡が浮かび上がった。


(;*゚∀゚)「そんな……。肘に傷を負って何故武器を振れる!? そう浅くない傷のハズだよ!」

「鍛え方が違う!!」


男は左腕を後ろに回す。
するとその手には、右手に持っているモーニングスターと全く同じモノが握られていた。
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:32:54.16 ID:SFmPsii60
寝れない・・・
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:33:13.43 ID:rsNApiHmO
(;*゚∀゚)「も、もう一つあったの?」

「これで、仕留める!!」


二本の獲物を掲げて男が襲い来る。
先程まで僅かにあった攻撃後の隙が、完全に無くなった。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


雄叫びと共に武器を振り回し続けるその姿は、さながら竜巻のようだ。


(;*゚∀゚)「クソおっ!!」


振り回しながら前へ、前へ出てくる男の攻撃を間一髪で躱し続けるつー。
その顔に、先程まであった余裕は無い。
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:34:59.59 ID:rsNApiHmO
(;*゚∀゚)「なんで! なんでだ! なんで判ってくれない!?
      なんで無駄に命を散らそうとする!?」

「それが誇りというものだからだ!
 先人達が造り上げてきたモノを、我らが壊す訳にはいかないっ!」

(;*゚∀゚)「先人だぁ!? フザケるな! そんな昔の人間に縛られて、それでいいのか!
      アンタは今! 生きているんだろうが!」

「違う! 俺は国によって生かされている!
 その恩に報いるためにも俺は命を賭して国を護らねばならない!」

(;*゚∀゚)「違わないっ! アンタにだって家族や友人、愛する人がいるはずだ!
      その人達の為に明日を生きるべきなんじゃないのか!!」

「そんな俺の勝手な都合で国を滅ぼしてたまるか!」

(;*゚∀゚)「その国が無くなると言っているんだ!」

「無くならない!! 俺が無くさせないんだ!!!」

(;*゚∀゚)「こっの……」



(#*゚∀゚)「わからずやがああああああああああああああああああ!!!!!」


男の右手のモーニングスターがつーの顔に襲いかかると同時に、
つーは男の顔目掛けて剣を突き刺そうとする。
83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:36:58.89 ID:rsNApiHmO
.









つーの兜が、宙を舞った。









.
84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:39:13.78 ID:rsNApiHmO
ガシャン、と、兜が地面に落ちる。

それと同時に男の二本のモーニングスターが地に置かれ、次いで男が両膝を着いた。

つーの剣が、男の兜の隙間を縫って、彼の左目に突き刺さっていた。

つーは兜を吹き飛ばされただけで、本人には大した傷は無いようだった。



決着が、着いた。




「……我の……、負けか……」

(*゚∀゚)「…………」


つーは男を見つめている。
彼女の紅い髪が風で揺れる。
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:40:58.70 ID:EzCjNzgd0
ふむ、支援
86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:41:09.28 ID:rsNApiHmO
「……その紅髪……、そうか……、貴女が『紅豹』であったか……。
 ふ、ふふ……。あ、あの名高い『紅豹』が……、まさかこんな小さな女だったとは……」

(*゚∀゚)「……止めろよ、その名前。恥ずかしいんだから」

「ふ、ふふふ……」

(*゚∀゚)「…………」

「……なあ、『紅豹』よ……。我を、どう思う……」

(*゚∀゚)「大馬鹿野郎」

「ふ……、だろうな……。だが……、我に……、悔いはない……」

(*゚∀゚)「…………」

「これで……、我も陛下の元へ行ける……。
 主よ……、我を導いてくれ……。そ、そして……、帝国の……、永久なる繁栄、を……」


そこで、男は倒れた。
もう口を開く事はなかった。


(*゚∀゚)「大馬鹿野郎」


つーはボソリと、男に向かって呟いた。
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:42:36.70 ID:jUsMlGoq0
むなしいな……
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:43:20.24 ID:rsNApiHmO
「隊長! 無事でしたか!」


一人の兵がつーの元に駆けつけた。男はあの時の見張りの兵だった。


(*゚∀゚)「ああ、無事だよ」

「あ、安心しました。敵陣に一人で突っ込むとか自殺行為ですよ。
 いくら隊長が強いっていっても」

(*゚∀゚)「ああ、悪いね」

「……隊長、指示を。味方の生き残りを捜しますか?」

(*゚∀゚)「……いや、敵兵の残りを捕まえるのを第一にしろ」

「……判りました。全軍に伝えます」


男はつーの元を去った。

つーはしばらくその場に佇んでいたが、やがて、どこへ向かうでもなしに歩き始めた。
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:45:16.87 ID:rsNApiHmO
.


つーがあの時、味方を捜すのではなく、敵を捕らえるように見張りの男に言ったのは、
恐らく味方は全滅しているだろうと思ったからである。





そう。

今、つーの目の前で倒れている男のように。




ミ,, Д 彡



(*゚∀゚)「…………」


男―――フサギコは既に事切れていた。
喉の辺りから血を流し、家の壁に寄りかかって倒れていた。
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:48:42.94 ID:rsNApiHmO
つーが周りを見渡すと、子供が一人、死んでいた。
小さな、五、六歳くらいの男の子だった。

その男の子の近くに、小振りのナイフが落ちていた。
その刃は血で塗れていた。

つーは推測した。
多分、フサギコはこの子供に殺されたのだ。



フサギコは子供をここの村に住むものだと思ったのだろう。
そして、助けようとして近付いた。
しかし実際は、あの子供は帝国の子供だった。

帝国の兵は残り少なかった。
だから、あんな何も判らないような子供まで戦場に駆り立てられたのだろう。



『金獅子』と呼ばれ、恐れられた屈強な兵士は、訓練も受けてないであろう子供に殺されたのだ。
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:50:21.92 ID:rsNApiHmO
.


あの日から数日後。
つーは墓地の片隅にある一つの墓の前に立っていた。
その墓標に刻まれている名前はフサギコ。彼の墓だ。

つーはあの時、フサギコから預かった小鉢を持っていた。


(*゚∀゚)「本当なら、この花をアンタの墓に捧げるのがいいんだろうけどね。
     ま、もうちょっと待ちなよ」


小鉢に盛られた土の上には、小さな芽が一つ出ていた。
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:52:59.54 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「なあ、フサギコ」


つーは墓前に語りかける。


(*゚∀゚)「やっぱアンタ保父さん向いてないよ。だってアンタ、子供叱れないだろ?」


つーは意地悪そうな顔で墓を見ている。


(*゚∀゚)「悪いことをした子供はちゃんと叱ってやらなきゃ。そうだろ?」


コンコン、と軽く墓を叩く。
「ちゃんと判っているのか?」と、確認するかのように。


(*゚∀゚)「まあいいさ」


つーは墓に背を向け、歩き出す。


(*゚∀゚)「もうそんなんじゃ子供を育てるなんて事は出来ないだろう。
     だからアタシがアタシなりの方法でアンタの夢を引き継いでやるさ」


墓地の出口に向かうつーは、彼の墓から彼女が見えるように、右腕を上げた。
93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:55:02.11 ID:jUsMlGoq0
フサギコも大馬鹿野郎だな……
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:55:02.30 ID:rsNApiHmO
.









(*゚∀゚)「だってアタシは、アンタの友人だからね」





それから一年後。

Z.A 192年。

実に七十七年も続いたこの戦争は、幕を閉じた。
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 01:57:57.33 ID:rsNApiHmO
.


Z.A 207年。

あの『七十七年戦争』が終わってから十五年。

VIP・シベリア連合国の城下町の片隅に、一軒の店があった。

その店の名前は『赤猫』。
色とりどりの花が咲き誇る、フラワーショップだ。


(*゚∀゚)「うーい、ギコー。これを運んでねー」


そこにはつーの姿があった。
彼女はこの店を経営していた。


(,,゚Д゚)「うーっす。どこに運ぶんスか?」


青年の名前はギコ。
このショップの唯一の店員だ。
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 02:00:50.70 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「あの三丁目の肉屋の向かい側にある孤児院だよ」

(,,゚Д゚)「あー、あそこ……。ってアレ? あそこから注文来てましたっけ?」

(*゚∀゚)「うんにゃ。来てないよん」

(,,゚Д゚)「……いやいや、じゃあ何で持って行くんですか」

(*゚∀゚)「いーんだよ。あそこの院長にはタダであげるって言ってあるから」

(;゚Д゚)「はあ!? タダで!? 何考えてるんスか!?」

(*゚∀゚)「だいじょぶだいじょぶ。元々この店だって趣味でやってる訳だし」

(;゚Д゚)「お、俺の給料は……?」

(*゚∀゚)「歩合制」

(#゚Д゚)「やってられるか―――!!!」

(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ!」


ギコの怒鳴り声とつーの笑い声が店中に広がる。
これが、この店のいつもの光景であった。
97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 02:03:27.95 ID:rsNApiHmO
(,,゚Д゚)「まったく……。しかし何でタダなんスか? いくら趣味っていっても……」

(*゚∀゚)「それはね、アタシも子供が好きだからさ」

(,,゚Д゚)「『アタシも』? 俺はそこまで子供好きって訳じゃ無いスよ。別に嫌いでもないけど」

(*゚∀゚)「別にアンタの事言った訳じゃないよ♪」

(,,゚Д゚)「はぁ、ワケ判んないっス……。それと、送るこの花って……」

(*゚∀゚)「『ジニア』。別名『百日草』とも言うね」

(,,゚Д゚)「そう、そのジニア。そのジニアなんスけど……」


ギコは改めて店の中を見渡す。


(,,゚Д゚)「今更なんスけど、なんでこの店の花、半分以上がジニアなんスか?」


店内には様々な色のジニアがこれでもかと場所を占拠している。
他の花は申し訳程度に数種類あるだけだ。
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 02:05:26.19 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「ふふん。今更だけど、よくぞ聞いてくれました。
     この花は我が友との友情の証なのだよ!
     アタシがこの店を開いているのはその為だと言ってもいいね!」

(,,゚Д゚)「はあ、友人さんの……」

(*゚∀゚)「だからギコ。アンタはアタシとその友人との架け橋となるべく、キリキリと働きなさい。
     さあ配達に行った行った!」

(;゚Д゚)「うわ! ちょっ! 押さないで店長! 行く! 行くっスから!」


つーからニコニコ顔で押されたギコは渋々花を荷台に載せて二輪車に跨る。
年代物のエンジンが不規則な音を立て、黒い排気ガスを撒き散らしながら、
ギコは街の坂道を下っていった。
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 02:07:27.15 ID:rsNApiHmO
(,,゚Д゚)「はぁー。ウチの店長はホント変人だよなぁー」


ギコは二輪車を運転しながら、つーに振り回される日々に疲れの声を上げた。


(,,゚Д゚)「確か店長って昔、そこそこ名の知れた兵士で、
     前の大戦でも活躍したって話だよなぁ……」


ふと、ギコは以前つーから聞いた話を思い出した。


【(*゚∀゚)「ああ、『赤猫』の名前の由来?
      実はさー、アタシは戦時中『紅豹』って言われてたんだけどさ、恥ずかしい事に。
      んで、今はもう戦争もない平和な世の中な訳じゃん?
      だから豹の牙とか爪とかはもう必要ない訳じゃん。
      だから猫。赤猫。アンダスタン?」】

(,,゚Д゚)「って事を言っていたなー。でもそこまでの兵士が何で今、
     フラワーショップとかやってんだ?」


やっぱり、さっきの話に出ていた店長の友人さんが理由なのかな、とギコは考える。

一体、店長と友人の間に昔何があったのだろうか―――?
気になってきたギコは、配達から帰ったら聞いてみようと思った。
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 02:08:59.01 ID:rsNApiHmO
(,,゚Д゚)「おっとと。考え事をしてたら通り過ぎるところだった」


ギコは慌てて急ブレーキを踏み、何時の間にか到着していた孤児院の敷地に入っていった。


二輪車から降り、積み荷を下ろす際に、ギコはふと思った。


そう言えば、ジニアの花言葉は何だっただろうか。


確か、そう。


ジニアの花言葉は―――



.
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 02:10:58.80 ID:rsNApiHmO
.









―――『別れた友への思い』。








(*゚∀゚)は花を育てるようです   おしまい
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 02:12:52.58 ID:QZjjwSst0
駄作乙
103 ◆Uxfj98URO6 :2010/09/06(月) 02:12:58.18 ID:rsNApiHmO
以上で投下終了です

遅くまでご苦労様でしたー
104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 02:14:48.44 ID:jUsMlGoq0
おつ
予定調和な話なんだけどなんか引き込まれた
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 02:20:58.59 ID:Lw0v5RjL0

きれいにまとまってて読みやすかった
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 02:27:05.86 ID:LKB9RberP
乙ー
投下もさくさくしててかなりいい感じだったと思いますよ!
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 03:59:55.49 ID:UA3nTuUA0
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 07:09:40.42 ID:Zia67Pa20
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 11:10:40.76 ID:5t12IhZR0 BE:2002287694-BRZ(10050)

110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
乙ー