(,,゚Д゚)LOVE LETTER FROM HEART BEATのようです

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45 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 21:45:16.03 ID:eR2+uwiI0
(* ー )『でも……でも、わたし好きな人がいるんです』

(;゚Д゚)『えっ!?』

その言葉に、手放しかけていた意識を覚醒させられる。

(* ー )『だから、先輩の気持ちには応えられません。ごめんなさい』

(*゚ー゚)『以上、わたしの返事でした』

少しおちゃらけたようにそう言って、しぃは顔を上げた。

(;゚Д゚)『好きな人いるのか!?』

(*゚ー゚)「ギコくんギコくん、気になるの?」

(;゚Д゚)『ふ、普段そんな話しないから驚いているだけだ!』

思い返せば、それが気になるという事なのに俺は何を言っていたんだろう。

(*^ー^)『いるよ。すごーく優しくて、すごーくかっこいい人なの』

慌てふためく俺で遊ぶかのように、しぃは意地が悪そうに笑った。
46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 21:46:06.47 ID:NYb7KCGu0
支援
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 21:46:15.40 ID:oh/94ogV0
ここでの選択を間違うとギコはバッドエンドに
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 21:47:38.73 ID:oh/94ogV0
よし、もう結末だな
つーか投下早い
どこにレスしてんのかめちゃくちゃ
49 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 21:48:02.04 ID:eR2+uwiI0
(*゚ー゚)『ほら、呆けてないで帰ろうよ』

(,,゚Д゚)『あ、ああ……』

手を引いて促されて、俺は初めて自分が立ち止まっていた事に気付いた。

(,,゚Д゚)『……』

俺の少し前を、しぃは夕日に向かって歩いていく。
細くて茶色い髪が透けて、きらきらと光っていた。

(*゚ー゚)『歩くの遅いよ、置いてっちゃうよ?』

(,,゚Д゚)『悪い……』

さっき、俺は真っ先に目の前の光景を失う事を恐れていた。
ずっとしぃとこうしていたい、という想いの裏返しだろう。

(,,゚Д゚)(じゃあ……どうしたらずっとこうしていられる?)

巡り巡った思考は、ひとつの結論に辿り着いた。
しぃが俺を好きになってくれれば、想いを伝えて恋仲になれれば。
そうすれば、誰かと付き合う事もない。
50 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 21:51:04.07 ID:eR2+uwiI0
(,,゚Д゚)(どうやって伝えよう……)

ふと、脳裏をさっきしぃが見せたラブレターがよぎった。

(,,‐Д‐)(……いいかもな)

俺は自他共に認める口下手な人間だ。
告白なんて、何を言ってるのか分からなくなる事間違い無しだろう。
その点、書いてしまえば言いたい事が上手く伝わらない事もなんてない。

(#゚ー゚)『もー、さっきからずっと上の空! 置いてくからね!』

(;゚Д゚)『あっ……すまん、しぃ! 置いて行かないでくれ!』

この日から俺は、生まれて初めてラブレターという物を書き始めた。

――――――
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 21:51:14.94 ID:sdVMIguQQ
さあっ!ギコ行動だ!
52 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 21:54:03.41 ID:eR2+uwiI0
( "ゞ)「どうも、切符を拝見させていただきます」

扉を開く音に振り向くと、その先には駅員が立っていた。
目元を覆い隠すほど伸びた前髪が、帽子からはみだしている。

(,,゚Д゚)「……はい、どうぞ」

( "ゞ)「どうもありがとうございます。御一人ですか?」

切符を切り終えると、駅員は親しげに話しかけてきた。
都会のVIPではありえない行動に、少し戸惑いながら答える。

(,,゚Д゚)「え……まあ、はい」

( "ゞ)「その様子ですと、シベリアに来るのは初めてのようですね。
     駅員が普通に話しかけてくるなんて、なかなか他じゃないでしょう?」

(,,゚Д゚)「そうですね……少しびっくりしました」
53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 21:54:43.49 ID:J4M/gfdT0
54 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 21:57:03.17 ID:eR2+uwiI0
( "ゞ)「でも、これがこのシベリアでは普通なんです。
     シベリアは訪れた人を誰でも歓迎し、積極的に交流していく。
     極寒の地ですが、人の心はとても暖かい街ですよ」

そう言うと、駅員は柔和な笑みを浮かべた。
その笑顔がシベリアという街をまさしく体現しているように思えた。

( "ゞ)「しかし、見た感じ大分お若いですね。
     ここはお世辞にも若い人が喜ぶような者がある場所ではありません。
     シベリアにはどういった御用件で?」

(,,゚Д゚)「……シベリアに幼馴染がいるんです。
     学校が休みの期間を利用して、会いに行く途中なんです」

俺にしては珍しく、スムーズに会話が進む。
まるで初対面ではなく、何年も付き合ってきたかのようだ。

( "ゞ)「ふむ、幼馴染がいるという事はあなたもシベリア出身ですか?」

(,,゚Д゚)「いえ、実は……」

――――――
55 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:00:01.18 ID:eR2+uwiI0
(;゚Д゚)『僕は……あなたの事が……』

(;゚Д゚)『いや、俺こんなキャラじゃないしな……』

消しゴムで消すも、何度も書き直し過ぎて完全に消えない。
大きなため息を吐いて、緊張の糸を一旦切る。
適当に紙飛行機を作ってゴミ箱へ投げると、綺麗に吸い込まれていった。

(;‐Д‐)『ゴミ箱に綺麗に届いても意味がないんだよ……』

胸に詰まっている想いも、これくらい簡単に届けばいいのに。
それを妨げる文才の無さが憎たらしくて仕方なかった。

(;゚Д゚)『えーと……好きだ。付き合え。
     駄目だ、いくらなんでも無愛想過ぎる』

再び緊張の糸をつなぎ合わせて、鉛筆を走らせる。
こんなに一生懸命に机に向かう事なんて、これが最後だろう。

こうして、学校から帰ったらラブレターを書く日々が延々と続いた。
A4の紙が無くなって、たまたまあったB5の紙に書いたら不思議とすらすら書けた日もあった。
次の日、小遣いを全てB5の紙に変えて少し後悔したりもした。



そして、待ちがクリスマスムードに包まれた頃、ようやくラブレターは書き上がった。
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 22:03:12.67 ID:bujpvKD90
wkwk
57 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:03:14.61 ID:eR2+uwiI0
(,,‐Д゚)『ふあ……』

(*゚ー゚)『ギコくんギコくん、今日も眠たいの?』

マフラーで口元を覆ったしぃの吐く息が、白雪のように宙を舞う。
温暖化だのヒートアイランドだの言われても、登校の時間はさすがに応える寒さだ。

(,,゚Д゚)『まあ、な……あまり寝ていない』

(#゚ー゚)『ダメだよ、ちゃんと寝ないと! 最近よくあくびしてると思ったら、もう!
     まったく……寝ないで何してるんだか』

少し前からずっとあなた宛てのラブレターを書いていました。
そして、それが昨日書き上がりました。
なんて事が言える訳もなく、適当にごまかす。

(;゚Д゚)『お、面白い番組がやっててな……つい夜更かしをしてしまうんだ』

(*^ー^)『ギコくんギコくん、目が泳いでるよ?』

長い付き合い故か、あっさり嘘を見破られる。
ちらりとしぃを見ると、目が笑っていない笑顔が飛び込んできた。
ここで本当の事は言えないが、謝らないと大変な事になる気がした。

(;゚Д゚)『……すまない、今は言えない』

(*゚ー゚)『ふーん……じゃあそのうち言ってくれるんだよね?』

(;゚Д゚)『言う! 必ず言うから……その時まで待っていてくれ』
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 22:05:51.23 ID:bujpvKD90
59 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:06:07.78 ID:eR2+uwiI0
(*゚ー゚)『しょうがないな、約束だよ?』

はい、と言って小指を立てた手を差し出してくる。
細く、小さな指が折れてしまわないように、恐る恐る小指を絡めた。

(*゚ー゚)『ゆーびきーりげんまん、うーそついたらはーりせんぼんのーます、ゆーびきった』

(;゚Д゚)『ゆーびきった……と』

(*^ー^)『ちゃんと言ってくれなきゃ、ヤダよ?』

(,,‐Д‐)『……ああ』

もし俺に告白されると知ったら、しぃはどんな顔をするだろうか。
もし俺に告白されたら、しぃはどんな顔をするだろうか。



今みたいに、笑って聞いてくれるだろうか。
60 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:09:04.04 ID:eR2+uwiI0
思案にふけっていると、前方からよし、と小さな声が聞こえた。
前を見るとしぃが眉をキッと上げて俺の方を見ていた。

(*゚ー゚)『そういえばさ……クリスマス、って空いてる?』

(,,゚Д゚)『家で過ごす、ってのが予定に含まれないなら……空いてるぜ』

(*゚ー゚)『そっか……だったらさ、わたしと一緒にお買い物しようよ』

(,,゚Д゚)『……え?』

思いも寄らない提案に言葉が詰まる。
その間にもしぃは会話を続けた。

(*゚ー゚)『駅前でお買い物したり、ついでにご飯食べたり……あ、ツリーも見てみたい』

(,,゚Д゚)『あ、ああ……いいんじゃないかな……』

反射的に口から、内心に正直な返事が漏れる。

(*゚ー゚)『よかったぁ……絶対だからね! 他の約束入れちゃダメだよ!』

(;゚Д゚)『しないしない! 絶対しない!』

(*^ー^)『ははは、ギコくん慌てすぎ』
61 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:12:05.57 ID:eR2+uwiI0
そう言って、笑いながら俺の周りをくるくると回る。
何回か回って、何故か俺の後ろで急にしぃが止まった。
違和感を感じて後ろを向こうとした時、神妙な声で一言だけ呟いた。

『ありがとう……本当にありがとう』

(,,゚Д゚)『どうした? 急にそんな事言いだして』

すぐに俺を追い抜いて、しぃはこちらを振り向いた。
その表情にさっきの声のような暗さはない。

(*゚ー゚)『なんでもないよ、お礼言っただけ。さー、学校へ急ごう!」

(,,゚Д゚)『……変な奴だな』

乾いた空気を裂いて、しぃは駆けていった。
追いつこうと加速するための一歩を踏み出す。
その時、俺の頭の中で電球がつくかのようにある考えが浮かんだ。

(,,゚Д゚)(そうだ、クリスマスに渡そう……これ以上ないってくらいのいいタイミングだ)

渡す時期は決まった、あとはどうやって渡そう。
しぃを追い抜いてしまい、後ろから呼び止められるまで俺はそればかり考えていた。

〜〜〜〜〜〜
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 22:13:45.83 ID:/NXpsx4N0
それってデ、デー…いやなんでもない
63 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:15:04.87 ID:eR2+uwiI0
(,,゚Д゚)『ふう……』

迎えたクリスマス当日の夜。
缶コーヒーを撫でて暖を取りながら、上を見上げた。
夜空に星をちりばめるかのように輝くもみの木が視界を覆った。

(*゚ー゚)『ごめーん、待った?』

(,,゚Д゚)『いや、今来たところだ』

(*゚ー゚)『うっそだー、遠くからずっと座ってるの見えたもん』

(,,゚Д゚)『すまん、本当は15分前には着いていた』

(*゚ー゚)『寒かったでしょ? さ、早くお店の中入って温まろう?』

一直線に俺の元へ走って来たしぃは、あっさり嘘を看破する。
そして、桜色の手袋をはめた手を差し出してきた。

(*゚Д゚)『……ああ』

顔の血流が良くなるのを感じながら、ゆっくりとその手を取る。
小さい頃はこうして手を繋いであちこち行ったものだ。
大きくなった今、この行為はとても特別な事に感じられた。
64 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:18:07.19 ID:eR2+uwiI0
(*^ー^)『あ、顔赤いよ。サンタさんみたい』

(*゚Д゚)『そ、そんな訳ないだろう……』

視界の隅にビラを配るサンタが見えた。
いくらなんでもあそこまでじゃないだろうが、少し心配になる。

(*゚ー゚)『ほーら、鏡だったらお店の中に入ればたくさんあるから。
     早く行こう、わたしも寒くなってきちゃった』

ショーウインドウをチラチラと見ようとする俺の心を読んだのか。
しぃは小さな手に力を込めて、俺を引っ張って歩き出した。

(;゚Д゚)『おわったたたた……』

急に引っ張られたために、少しバランスを崩しながらも付いていく。
心なしか、いつもより歩くのが速めに感じられた。



揺れる栗色の髪から覗く耳は、しぃの言葉を借りるならサンタのように赤かった。

〜〜〜〜〜〜
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 22:18:49.53 ID:dYdLTsSE0
支援
66 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:21:04.35 ID:eR2+uwiI0
(*^ー^)『あー、楽しかった楽しかった』

(;゚Д゚)『ああ、楽しかった……』

(*゚ー゚)『どうしたの、難しい顔して?』

(;゚Д゚)『いや、なんでもない……』

別に楽しくなかった訳じゃない、今までで一番楽しいクリスマスだった。
そして、これからしようとする事が最高を最低に塗り替えるかもしれない。
人ひとりいない住宅街の静寂の中で、自分の鼓動がやけに大きく聞こえた。

(;゚ー゚)『もしかしてあんまり楽しくなかった?』

(;゚Д゚)『そんな事ない! 最高に楽しかった!』

(*^ー^)『そっか、わたしも最高に楽しかった。ありがとうギコくん』

渡すチャンスがあるとしたらしぃの家の前だろう。
一歩、また一歩と踏み出すたびにそこへ近付いて行く。
ポケットの中で拳を強く握ると、こっそり忍ばせておいたラブレターがかさり、と音を立てた。

(* ー )『到着しましたー、今日はありがとうございました』

(;゚Д゚)『……ああ』

ついに家の前に着いて、しぃはぺこりと頭を下げてお礼を言う。
ラブレターを折れないように、そっと握りしめる。
そして、深呼吸を一回。意を決してしぃの名前を呼ぼうとした。
67 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:24:05.39 ID:eR2+uwiI0
(,,゚Д゚)『なぁ、し……』

(* ー )『ギコくんギコくん、ごめん……』

(;゚Д゚)『え?』

ほんの少しだけ早く、しぃが謝罪の言葉を口にした。
俺にはしぃに謝られる覚えなんてなく、事態がさっぱり飲み込めない。
下げられた頭を上げないまま、しぃは続けて口を開く。

(* ー )『ずっと……ずっと言わないと、って思ってた……
     でも、言っちゃったらいつもみたいに話してくれないと思って……』

(;゚Д゚)『な、何を……』

震える体と声で、はっきりと泣いているという事が分かった。
そしてそのまま、俺の疑問に最悪の答えを返してくれた。

(*;ー;)『わたしね……引っ越すんだ。シベリアって知ってるかな……?
     すっごい遠いところなの。地図の端っこにあるんだよ……』

(;゚Д゚)『な……い……いつ!?』

(*;ー;)『明日。秋には決まってて、ほんとはもっと早かったの……でもね。
     最後くらい……ギコくんとクリスマス過ごしたいなぁ、って思って……
     クリスマスまでわたしだけこっちに残って……それで、それで……』
68 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:27:09.27 ID:eR2+uwiI0
しぃの家をよく見てみると、家中の電気が消えていた。
家の中で誰かが生活している気配は、全くない。

(*;ー;)『びっくりさせちゃってごめんね……ごめんね……
     わたしが勇気出なかったから……ギコくんに……迷惑……』

(,,;Д;)『もういい……いいから……っ!』

ラブレターから手を離して、しぃの体を抱き寄せる。
それがスイッチだったのか、脳がようやく事態を理解したのか。
いきなり視界がにじんで何も見えなくなってしまった。

(,,;Д;)『迷惑なんかじゃない……謝る必要なんてない……
     だから……泣くなっ……泣かないでくれ……!!』

(*;ー;)『ギコくんも泣かないでよぉ……悲しくなっちゃう……』

(,,;Д;)『無理だ……っ、そんなの……無理だ』

いなくなってしまう寂しさ。笑顔に出来ない悔しさ。
いろんな感情が混ざり合って、涙となって頬をつたう。

その年のクリスマスは最高に楽しくて、そして悲しかった。

〜〜〜〜〜〜
69 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:30:03.61 ID:eR2+uwiI0
『なぁ、本当に行かないでいいのか……見送り』

『うん、大丈夫。わたしだってひとりで駅くらい行けるもん。
 それに……シベリアに行きたくなくなっちゃいそうだし』

『……そうか』

『ギコくんギコくん』

『なんだ?』

『ありがとう、ギコくんがいたからここでの生活……すごい楽しかった』

『俺も……俺もしぃがいたから、すごく楽しかった』

『もう……行く気無くさせるような事言わないで』

『ごめん……』

『せめて、せめて電車の時間だけでも教えてくれないか?』

『しょうがないなぁ……9時7分だよ。見送り来ちゃダメだよ?』

『……分かった』

『……それじゃあ、おやすみギコくん』

『……おやすみ、しぃ』

『それと……ばいばい、ギコくん』
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 22:31:10.33 ID:TGPf3eaD0
スレタイだけ見て来たんだけどBase Ball Bearとの関係は?
71 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:33:03.45 ID:eR2+uwiI0
(;゚Д゚)『はっ……はっ……』

昨夜の別れ際のやり取りを思い返しながら、階段を駆け上がっていく。
いくら冬とはいえど、体の内側から燃えてしまいそうなほどの熱さを感じる。

(;゚Д゚)『げほっ……くっそ……』

ヴィップの端にある、街全体を見下ろせる小高い丘の頂上。
ここから見送るならしぃだって文句は言わないだろうと思った。

(;゚Д゚)(余裕持って出たつもりだったんだけどな……)

地元ながら今まで行ったことがなく、ここまで急な階段続きだとは知らなかった。
おかげで思っていた以上に時間を食って、走らなければ電車を見送れない事態に陥った。

(#゚Д゚)『ああああああああああああああっ!!!!』

思い切り叫んで腿を叩き喝を入れる。
不思議と足が軽くなったような気がした。
しぃの顔を脳裏に浮かべ、俺は一段飛ばしで再び階段を駆け上がり始めた。
72>>70あんまりないですサーセン ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:36:04.36 ID:eR2+uwiI0
見つめる世界を横切るように動く何かが見えた。
それは一台の電車。静寂に包まれた冬の朝の中で、やけに目立っている。
腕時計に視線を落とすと、9時7分をほんの少しだけ過ぎていた。

(,,゚Д゚)『……あ』

(,,;Д゚)『……ああ』

(,,;Д;)『あああ……』

そうするのが当たり前のように涙が溢れてくる。
せっかくの絶景も台無しになってしまった。
それでも俺はずっと見つめていた、そうしないといけないと思った。

(,,;Д;)

あの時はなんで泣いたのか分からなかった。
だけど、思い返して行きついた考えがある。



フィクションの中で、あの電車だけはリアルだと知っていたから。
目を背けたいほど悲しい事は、嘘なんかじゃないと突き付けられた気がしたから。

――――――
73 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:39:05.02 ID:eR2+uwiI0
( "ゞ)「なるほど……そんな事が」

(,,゚Д゚)「初対面の人にここまで話したのは初めてですよ」

( "ゞ)「私が初めてですか。それは光栄ですね。
     ところで……渡さなかったんですね、ラブレター」

この人、おとなしそうな顔の割になかなか積極的だ。
前髪に隠れている目はきっと、爛々と輝いているのだろう。

(,,‐Д‐)「あいつが困る顔なんて見たくなかったんです。
     結果がどうであれ、あいつの心残りになると思いました」

( "ゞ)「それでも諦めきれず、渡すためにシベリアまで訪れた。
     ここにいる理由はそんなところで合っていますでしょうか?」

(;゚Д゚)「っ!?」

話した覚えがない事を言い当てられ、驚きのあまり体が少し飛び上がる。
一気に大きくなった鼓動は、やがて俺の顔にじんわりと汗をかかせた。
駅員はふふふ、と軽く微笑むとある一点を指差しながら言った。

( "ゞ)「おや、気付いていなかったんですか。
    話をしている間、ずっと大事そうに鞄を撫でていましたよ。
    中に入っている物は、話から大体想像がつきました」
74 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:42:03.14 ID:eR2+uwiI0
見事に言い当てられた俺は、ただ頷いて肯定するしかなかった。
この観察眼は駅員と言う職業柄、数多くの客と接して鍛えられたのだろう。

( "ゞ)「私の青春時代は振り返ると後悔ばかりの日々でした。
    それでも戻りたい、と無性に思う時があります。
    あの頃にしかなかったのに、そこに置いてきてしまったものを取りに帰りたいと」

(,,゚Д゚)「……」

しみじみと話す駅員の声に、そっと耳を傾ける。
俺を見ると駅員は会釈をして、話を続けた。

( "ゞ)「あなたの目に映っているものは、今しか見えないものです。
     もし、ずっとそばにあって欲しいなら……掴んだら離してはいけませんよ」

(,,゚Д゚)「……はい」

( "ゞ)「さて、少し道草を食ってしまいました。ここらで普通の駅員に戻るとしましょう。
    それでは。微力ながらあなたの幸運を祈っています」

(,,゚Д゚)「ありがとうございます、駅員さんも御仕事頑張ってください」

口角を少しつり上げ、駅員は軽く手を振りながら客室から出ていった。
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 22:46:14.18 ID:/NXpsx4N0
支援
76 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:46:26.11 ID:eR2+uwiI0
(,,゚Д゚)「……ふう」

窓の外に視線を戻すと、シベリアの街中には不釣り合いなほど大きな建物が見えた。
そこから俺の乗っている電車まで線路が伸びている。
いつの間にか、終着駅のシベリア中央駅が目前にまで迫っていた。

やがて、到着を告げるアナウンスが聞こえてくる。
すぐに他の客室から出てきた人たちで通路が埋め尽くされた。

(,,゚Д゚)「よっと……」

ゆっくりと立ち上がり、ぐるりと客室を見渡す。
忘れ物はない。初めて見た時と何一つ変わらない。
よし、と呟いてドアを開き、人混みの中へと潜っていった。

(,,゚Д゚)「ん……?」

(*^ω^)ξ*゚听)ξ

流れていく人混みの中で、あのふたりを見つけた。
保護者であろう大人に手を引かれながら電車を降りていく。
空いているもう片方の手を、お互いにがっちりと繋ぎ合っていた。
77 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:48:35.46 ID:eR2+uwiI0
(,,゚ー゚)「……」

傍から見たら誤解されかねないなと思いながらも、つい頬が緩んでしまう。
俺はふたり見えなくなるまで、その光景を見つめていた。

(,,゚Д゚)「俺も降りないとな……」

言い聞かせるようにして呟き、視線を戻す。





( "ゞ)「ありがとうございました、いってらっしゃいませ。いってらっしゃいませ」

その先では、あの勘のいい駅員がひとりひとりに挨拶をしていた。
あの後、ちゃんと全員の切符は切れたようだ。
そんな事を考えているうちに、俺も駅員の前まで辿り着く。

( "ゞ)「ありがとうございました、上手くいく事を祈ってます。いってらっしゃいませ」

確かに俺を見て微笑みながら、駅員は頭を下げた。
返事をしようとするも、人の波に流されてどんどん遠ざかっていく。
ホームに降りてから立ち止まって振り返るも、当然だが車内にいるその姿は見えない。
78 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:51:04.05 ID:eR2+uwiI0
(,,゚Д゚)「……」

どうするべきか少し考えて、俺は改札へと向かう。
祈っていてくれるなら、俺がすべきなのは戻る事ではなく成功させる事。



心よりの恋便りを背中にしまい、しぃに届けるべく改札をくぐった。

〜〜〜〜〜〜








ミ,,゚Д゚彡「……なんだろこれ」
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 22:52:11.97 ID:/NXpsx4N0
80 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:54:02.75 ID:eR2+uwiI0
(;゚Д゚)「フサ! おまっ……それを渡せ!」

ミ,,゚Д゚彡「ねー、なにこれー?」

(;゚Д゚)「い、いいから渡しなさい!」

ミ;゚Д゚彡「あー!」

(#゚ー゚)「朝っぱらから何やってんの、もー!」

ミ;゚Д゚彡「だってとうちゃんいじわるするんだもん!」

(#゚ー゚)「フサは早く幼稚園行く支度しなさい! お母さん怒るよ!?」

ミ,,;Д;彡「……分かった」

(;゚Д゚)「もう怒って……」

(#^ー^)「ギコくんギコくん、会社行く支度しないでフサと何してたのかなー?」

(;゚Д゚)「……すいません」

(*゚ー゚)「あら、それって……」

(;゚Д゚)「机の上に置いてあって、フサが見ようとしててな……」
81 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 22:57:06.44 ID:eR2+uwiI0
(;゚ー゚)「ごめんね、私が出しっぱなしにしてたみたい」

(,,゚Д゚)「そうだったのか……しかし、なんでそんな昔の物を」

(*゚ー゚)「……なんだか急に読みたくなって、ね」

(;゚Д゚)「お、お前読み返してるのか!?」

(*゚ー゚)「結構読み返したりしてるよ?」

(*゚Д゚)「わ、忘れろ! 今思うと赤面必至な事ばかり……」

(*゚ー゚)「お前は俺にとってどんな景色や絵画よりも綺麗に……」

(;゚Д゚)「忘れてくれええええええええ!!!」

(*゚ー゚)「でも、忘れたらわたし達……今みたいになってないかもよ?」

(;゚Д゚)「……」

(;‐Д‐)「……忘れないでください」

(*゚ー゚)「よろしい」

ミ,,゚Д゚彡「かあちゃーん! おきがえできたー!」
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 22:57:44.72 ID:/NXpsx4N0
支援
83 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 23:00:03.12 ID:eR2+uwiI0
(*^ー^)「偉いぞーフサ!」

ミ,,゚Д゚彡「だってもうすぐおにいちゃんだもん!」

(*゚ー゚)「そうだね、いい子いい子。それじゃ次はひとりで靴履いてみよう!」

ミ,,゚Д゚彡「みててみててー! ひとりではく!」

(*゚ー゚)「よーし、お母さん見ててあげる!」

ミ,,゚Д゚彡「ここをねー、こうしてねー……」

(,,゚Д゚)「よし、お父さんも見ておいてやろう」

(*^ー^)「ギk……お父さんはいいから早く支度して」

(;゚Д゚)「……はい」

ミ,,゚Д゚彡「んーとねー、ここをここに通すんだよー!」

(*゚ー゚)「あら、フサすごいじゃない!」

ミ,,゚Д゚彡「すごいでしょー!」

(,,゚Д゚)「……」

(,,‐Д‐)「……」
84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:01:33.23 ID:sdVMIguQQ
可愛いいフサ珍しいなあ 愛の結晶支援
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:02:04.40 ID:/NXpsx4N0
いい家庭だなあ
86 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 23:03:05.43 ID:eR2+uwiI0
(,,゚ー゚)

また、ラブレターを書こうと思った。

今度はふたりに、もうすぐ三人に増える最愛の人に。

心よりの恋便りを届けようと思った。





(,,゚Д゚)LOVE LETTER FROM HEART BEAT のようです

終わり
87 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 23:04:41.58 ID:eR2+uwiI0
以上で終わりです。三国志Z投下作品となっています。
支援したり読んでくださった皆様ありがとうございました。
もっと投下来ますように。
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:08:51.95 ID:/NXpsx4N0
( ;∀;)イイハナシダッタナー
乙!!
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:10:39.35 ID:sdVMIguQQ
乙!超乙!
良かったよ やっぱりギコしぃの組み合わせは好きだなあ
駅を出てから先の展開が気になったかな
いい話をありがとう
90 ◆HIv4.sfA8Y :2010/09/04(土) 23:12:59.36 ID:eR2+uwiI0
>>89
書こうと思ったけど告白なんてからっきしなんでキングクリムゾンしました。
ひとつ言えるのは思い返すと恥ずかしくて仕方ないような言葉で告白したということです。
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:18:13.98 ID:dYdLTsSE0
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 23:18:34.38 ID:sdVMIguQQ
>>90
ギコが後に思い返すとのたうち回る程の告白だったんだろうなー
おk!
93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/05(日) 00:10:30.51 ID:XhHII34M0
みてください
これが今年の三国志のレベルです
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ひゃひゃひゃ