1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:15:28.72 ID:GeYM6mu70
[(-_-)と天使のようです/三話目]
(-_-)「んー……」
目の前に出されたトランプの手札を、じっくりと眺めてから一枚取る。
太陽が沈み、辺りが暗くなった頃。
ヒッキーは自分の部屋で、ドクオと向かい合い、ジジ抜きをしていた。
二人とも巧妙にトランプを隠していく。そのため、なかなか一組が揃わない。
眉間にしわを寄せて何分も悩む様子は、真剣勝負そのもの。
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:18:19.18 ID:GeYM6mu70
(-_-)「揃った」
(;'A`)「何!?」
揃った手札を、中心に作られた札置き場へと捨てる。
それを見たドクオは、悔しそうにヒッキーの札を睨む。
('A`)「当たれッ…当たれッ…!」
意味も無く念じてみる。
が、
('A`)「……あれ?」
外れた。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:19:07.59 ID:FKfQzGFB0
まってたYO
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:20:59.94 ID:GeYM6mu70
(-_-)「ふふふ……僕はこういうゲーム類は得意だからね。手加減しないよ」
('A`)「お…俺は手加減してやってるんだ!だからヒッキーも手加減しろって」
(;-_-)「分かりやすい…」
その後もヒッキーの調子は上がっていき、その分ドクオを動揺させることが出来た。
ドクオが動揺していくと同時に、ヒッキーは次々と二枚一組のペアを作り、
札置き場へとトランプを投げていく。
あれよあれよの間に、ヒッキーの手札最後の一枚になり、
ドクオは、ヒッキーの手札がペアにならないよう、しっかりとシャッフルした。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:22:44.45 ID:FKfQzGFB0
2人ババ抜きだとすると、ババ以外だと絶対揃っちゃうが
一体何のゲームだ……
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:23:14.24 ID:GeYM6mu70
つもりだった。
(*-_-)「あーがり」
(;'A`)「ぐぬおおおおおッ!!」
ヒッキーは、止まらぬ勢いで上がった。
ドクオは勝負に負けてしまった。
('A`)「ハァー…負けちまった…」
ドクオの手札に残ったカードは、ピエロの絵の描かれたジョーカー。
('A`)「ジョーカーがジジだったんだな」
(-_-)「そうみたいだね」
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:25:19.02 ID:GeYM6mu70
一枚、裏のままで置かれたカードを表に返し、それが本当にジョーカーか確認する。
ドクオの手札とは違うピエロの絵だが、はっきりとジョーカーと描かれていた。
('A`)「ジョーカーは使い方次第で、切り札にも、邪魔者にもなる…か」
(-_-)「?」
('A`)「いや、何でもない」
二人とも長い間トランプと睨み合ったため、相当疲れていた。
ヒッキーの方は、眠気が襲ってきたようで、重たい目を擦りながらベッドに潜る。
(-_-)「じゃあ僕は寝るね。おやすみー」
('A`)「ああ、おやすみ」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:27:27.00 ID:GeYM6mu70
ヒッキーはすぐに眠りについた様子だったので、また暇になるぞと、
ドクオは一人寂しくトランプタワーを作り始めた。
('A`)「ジョーカーなんて、誰が作ったんだよ…」
沢山のトランプを掻き集め、慎重にトランプを積み上げていく。
けれど、その集中力もいつかは途切れ、
('A`)「あ」
トランプタワーはぐしゃりと崩れていった。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:29:27.63 ID:GeYM6mu70
――
僕は、小さい頃から何度も間近で死を見てきた。
自分に近い人たちが、次々と僕の周りで死んでいくんだ。
(-_-)「初めは、小学生のときだったかなあ」
小学生の頃、僕をいじめていた六人が突然死んだ。
そのいじめはかなり過激だったから、喜ぶ反面、複雑な気持ちがあった。
('A`)「その魂、きっと天使が運んだんだろうな」
(-_-)「…そうだね…」
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:31:30.91 ID:GeYM6mu70
その頃から僕は人と触れ合うのが苦手になり、
中学、高校、大学と、何とか進学していったものの、
僕はかなり内気な奴だったから、進学するごとに必ずいじめられた。
(-_-)「どんないじめだったかは覚えてないんだ」
そして、そのいじめる奴らの大半が、何らかの原因で死んでいった。
いじめられていた僕は、当然のように殺人者扱いされ、また必ずいじめる奴らが出てくる。
(-_-)「近い人たちがどんどん遠くなっていくのが、怖くて怖くて仕方なかったよ」
そんな生活が嫌になってきて、自殺を考え始めてきてしまった頃、
僕の両親が死んだ。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:33:24.92 ID:GeYM6mu70
(-_-)「そして、一番身近な人が死んでった」
そして、今まで溜まりに溜まったものが溢れ出てしまって、
僕は家の外へ出なくなってしまった。
(-_-)「……僕は、自分が死んでもいいと思ったんだ…」
('A`)「…だから自殺を?」
(-_-)「そう。もうどうでも良くなってたから」
('A`)「そこに天使が現れちゃって、死ぬに死ねなくなったと。
で、今は死にたいのか?死にたくないのか?」
(-_-)「分からない」
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:35:07.24 ID:GeYM6mu70
(-_-)「僕は、生きていいのかな…」
「残念。お前は死ぬ」
「この、」
「殺人者め」
――
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:35:32.50 ID:FKfQzGFB0
サル怖い
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:37:34.51 ID:GeYM6mu70
(;-_-)「!!」
少し白いモヤが漂う、薄暗い早朝。どうやら夢を見ていたらしい。
ヒッキーは叩き起こされたように目覚め、布団を捲り上げた。
嫌な夢だ。昔のことを沢山思い出してしまう、悪夢。
('A`)「おお、ヒッキー。起きたのか」
ヒッキーが目覚めると、暇そうにしていたドクオは顔を明るくした。
けれどヒッキーは、まず窓の方へと近寄って、外を確認した。
霧ではない何か不気味な白いモヤが、そこら中に漂っている。
(-_-)「何だろう…」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:39:32.28 ID:GeYM6mu70
私服に着替えてから、ヒッキーは何かに吸い込まれるように外に出た。
その後を急いで追うドクオ。確かに、このモヤは少し変だ。
('A`)「……変だな。こんなモヤ、初めて見るぞ」
風は吹かず空気は澱んでいて、涼しいと言うより、少し寒い。
(-_-)「夏なのにこんなに冷えるなんて、珍しいなあ」
歩いているのは二人だけ。地面に足を置く音が、寂しく響く。
奥に歩いてくにつれて、白いモヤが濃くなって来ている気がする。
霧とはまた違って、煙のような、滑らかなものが視界を覆う。
何か胸騒ぎがした。最近の出来事からして、この胸騒ぎは気のせいだとは思えない。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:41:31.90 ID:GeYM6mu70
(-_-)「ドクオ、この白いモヤに心当たりはない?」
('A`)「俺にもさっぱりだ」
この地域一帯には誰も住んでいないかのように、辺りは静まり返っている。
更に歩いて行くと、前が見えないくらいに白いモヤは濃くなって、
ヒッキーもドクオも足を進められない状態になっていた。
足を止めた二人は、とりあえず辺りを見回してみたが、
白いものが視界を遮って何も見えない。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:43:40.42 ID:GeYM6mu70
(-_-)「……さむ」
段々と寒さも増し、身震いをしてしまう。
('A`)「大丈夫か?顔色悪いぞ」
進めど進めど何も無いので、もうそろそろ帰ろうかと思い始めた頃。
白いモヤの中に、黒い人影が見えた。
白いモヤが視界を遮って、誰なのかは全く分からない。
(-_-)「…誰?」
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:45:55.88 ID:GeYM6mu70
恐る恐る声を掛けてみたが、反応は無い。
白いモヤの中で、ゆらゆらと揺らめいているだけ。
と、突然その黒い人影が襲い掛かってきた。
その黒い人影の動きは素早くて、凶悪な武器を持っていた。
両手で支え持つほどの大鎌を、見せ付けんばかりにギラリと構える。
(;-_-)「なっ…!?」
標的はヒッキーのようで、隣にいるドクオには見向きもしなかった。
大鎌を巧みに振り回し、この白いモヤの中だというのに、的確に狙ってくる。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:47:36.09 ID:GeYM6mu70
(;'A`)「な、な、な、なんだぁ!?」
体勢を崩しながらも、鎌を必死に避ける。
そんなヒッキーの様子を、ドクオは見守ることしか出来なかった。
(;'A`)「ヒッキー、逃げろ、とにかく逃げろ!!」
このままではまずいと、ドクオはヒッキーの腕を引っ張り、元来た道を引き返していく。
それでも黒い人影は大きな鎌を振り上げて、二人を追ってくる。
(;-_-)「うわ、追って来る!」
(;'A`)「何で鎌なんて物騒なもの持ってんだよ!」
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:49:51.48 ID:GeYM6mu70
足を休めることなく走って行く。追ってくるものから必死に逃げる。
捕まったら、殺されるような気がしてならなかった。
元来た道を戻るに連れて、白いモヤは薄くなっていく。
今の状態なら、黒い人影の元の姿が見えるかもしれない。
と、ドクオはちらりと後ろを振り向いた。
( ^ω^)
('A`)「……え」
見えた顔は、天界でよく働いていると評判の高い、あの天使の顔だった。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:52:08.04 ID:GeYM6mu70
('A`)「ブー、ン……」
(;-_-)「知り合い?」
('A`)「今俺たちを追ってる奴、俺と同じ天使だぞあいつ」
(;-_-)「え」
隙を衝かれ、鎌に当たりそうになってしまうが、必死に避けきる。
(;-_-)「というか何で僕が狙われてるの…」
(;'A`)「分からないから、とにかく逃げるしかないだろ!」
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:54:39.61 ID:GeYM6mu70
訳も分からず逃げていると、突然ブーンの動きが止まった。
鎌を振ってくる様子も無く、追って来る様子もない。
二人は疑問に思い、思わずその場に足を止めてしまった。
それでも追いかける様子も無く、一定の距離を保ったまま、止まっている。
はてどうしたものかと、ヒッキーは恐る恐るブーンの方へと近づこうとすると、
徐に大きな鎌を地面に立てて、大きな音を鳴らす。思わず体が跳ねた。
( ^ω^)「ドクオもいたのかお。久しぶりだお。
天界の仕事途中だから手っ取り早く済ませるお」
いつもと違って、少し甲高い声。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:56:23.42 ID:GeYM6mu70
('A`)「………ああ」
その声からは、ブーンが今何を思っているのかは察せなかった。
だからこそドクオは、さっきのブーンの行動も考え、警戒心を高める。
( ^ω^)「突然だけど、グリムリーパーの伝説を知っているかお」
('A`)「は?」
突然ブーンがそんなことを言い出すものだから、警戒心が一気に緩んでしまった。
拍子抜けしたその言葉に、ヒッキーも気を緩めてしまう。
(-_-)「グリムリーパーって…死神のこと?」
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:58:13.75 ID:GeYM6mu70
( ^ω^)「だお」
('A`)「そんなの伝説だろ」
(;-_-)「人間にとっては、天使も伝説なんだけどなあ…」
人間からすれば、天使もかなり常人離れしている。
こうして姿を現すまでは、ずっと天使なんていないと思っていただろう。
(-_-)「そう言えば、ドクオはこの前死神なんて神様はいない≠チて言ってたけど、
もしかして死神って、天使にとっても伝説なの?」
('A`)「ああ。かなり物珍しい」
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:00:26.17 ID:zVs9aL7Y0
(-_-)「それにしても、イマイチ天界とかの状況がよく掴めないんだけど」
('A`)「アレだ、簡単に言うと、神様の下に大天使とかがいて、大天使の下に天使、
そして天界以外に悪魔とかの部類がいるんだよ」
( ^ω^)「なにゴチャゴチャ言ってんだお」
ドクオが説明をしていると、ブーンは気を悪くした様子で、会話に割って入った。
( ^ω^)「めんどいからグリムって略すお。グリム童話じゃねえお。
で、天使にすら伝説だと言われているグリムが、本当に存在したらどうするお?」
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:02:39.96 ID:zVs9aL7Y0
('A`)「……どうするよ」
(-_-)「どうするって……ねえ」
('A`)「驚くっつっても、死神が基本的にどんなことをするのか分からないし、
悪魔みたいに仕事内容も分かってたら、そりゃ驚くだろうけどさ」
(-_-)「僕は天使が日常的にいるから慣れちゃったし」
('A`)「どうしようもないね」
(-_-)「ね」
( ^ω^)「どうしようもねぇのはお前らだろ」
ブーンは大鎌を一振りしてから、風を切りヒッキーの方へと進み、目の前で止まる。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:04:28.13 ID:zVs9aL7Y0
( ^ω^)「ブーンはそのグリムだお。天使の中のグリムだお。
だけどヒッキー、お前はこっちの事情で殺させてもらうお」
(-_-)「意味が分からない」
('A`)「ちょっと理解しがたい」
(#^ω^)「……」
いきなり鎌を振り攻撃してきたかと思えば、何を言い出すのやら。
けれど、混乱していたのはヒッキーではなく、ドクオの方だった。
天使で、しかも真面目な善人だと思っていた奴が、まさかヒッキーを殺そうとするなんて。
いつものブーンが頭から離れず、今のブーンと重ね合わせることができない。
それに、グリムとは、死神とは。自分で伝説だと言っていたのに、自分で正体を明かすなんて。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:07:02.10 ID:zVs9aL7Y0
('A`)「なあブーン、さっきから何なんだよ。死神とか何とか訳分からん」
( ^ω^)「…ヒッキーお前、自覚無しかお」
('A`)「ああ無視ですかそうですか」
(;-_-)「自覚…って、何の自覚?」
( ^ω^)「まあ自覚があっても無くてもいいんだけど」
すると、ブーンはとんでもないことを言い放った。
( ^ω^)「だってお前もグリムだし」
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:09:09.27 ID:zVs9aL7Y0
(-_-)「………は?」
僕が、こいつと同じ?
僕が、死神?
('A`)「ヒッキーがグリムって…。冗談もほどほどにしろよ」
( ^ω^)「殺しに冗談もクソもあるかお」
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:11:44.51 ID:zVs9aL7Y0
このブーンという奴と、同じ、グリム?
(-_-)「…グリムって、グリム童話のグリムのことだよね?」
( ^ω^)「さっき死神って言ったばっかりだお。現実から目ぇ逸らしてんじゃねぇお」
('A`)「口悪くなってるなお前」
現実って、まさか、そんなはずはない。
(-_-)「ああそっか、まだ夢なのか……」
('A`)「ヒッキーがグリムだって証拠あんのかよ。それにヒッキーはどう見ても人間だろ」
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:13:56.28 ID:zVs9aL7Y0
( ^ω^)「証拠?」
( ^ω^)「証拠なら、本人が一番知ってるはずだお」
( ^ω^)「僕は同種だから分かるお」
( ^ω^)「でも一番知っているのは自分のはずだお。
異常なほどに周りの人が死んでいったはずだお」
( ^ω^)「僕にも把握しきれてないけど、グリムにはそれぞれ個人の特性があるんですお」
―この、殺人者め
ふと、そんな言葉を思い出した。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:14:00.41 ID:GD5gXDm00
・・・しえんだ
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:15:35.60 ID:zVs9aL7Y0
( ^ω^)「だから僕は、ヒッキーを殺さなきゃならないお」
('A`)「仮にヒッキーがグリムだとしても、何でわざわざ殺さなきゃならないんだ?」
( ^ω^)「言うのめんどい」
(;'A`)「自分で言ったくせに…」
この少ない会話の中で、昔の思い出がフラッシュバックしてしまった。
思い出せない過去が、一気に頭の中に流れ込んでくる。
(;-_-)「うう…」
ヒッキーは頭を抱えてしゃがみ込み、冷や汗をだらだらと流しながら、呻く。
自分の知っている人たちだけが、意味も無く死んでいった。
いじめられていた奴が死んだときは、嬉しい気持ちもあった。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:17:44.72 ID:zVs9aL7Y0
けれど、それ以上に罪悪感が残ったままで、周りの人が死んでいく度
ずっと「自分のせいではない」と暗示をかけながら、ここまで生き延びてきた。
本当に殺していないのに、もし本当に自分が死神だとしたら、
それはすべて自分のせいになってしまう。
(;-_-)「嫌だ……」
そんなこと、認めたくなんか無い。
('A`)「…ヒッキー?」
(;-_-)「全て、僕が殺したの?」
('A`)「おいヒッキー」
昔の記憶が蘇るごとに、言われたことを否定出来なくなっていく。
周りの人が次々と死んでいったのは、紛れも無い事実。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:19:24.63 ID:zVs9aL7Y0
(;-_-)「僕が殺したの?僕が全部悪いの?僕が、生きているから?」
('A`)「ヒッキー、口車に乗せられちゃ駄目だ、逃げるぞ」
隙ありとばかりに、蹲っているヒッキーに鎌を振る。
ドクオがとっさにヒッキーを引っ張りあげ、何とか避けることができた。
( ^ω^)「口車なんかじゃないお。本当のことだお」
追い討ちをかけるように、振った鎌を素早く逆に向け、またヒッキーに振り下ろす。
ドクオは、鎌がヒッキーに当たらないよう、必死に引っ張った。
(;-_-)「僕は、やっぱりあの時自殺すべきだったの?僕は、ぼく、は…」
('A`)「ヒッキー!!」
ドクオの声はびっくりするほど大きくて、また体を竦める。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:21:21.78 ID:zVs9aL7Y0
(;-_-)「!!」
('A`)「とにかく逃げるぞ!」
(;-_-)「…うん」
ドクオはヒッキーを力一杯引っ張り上げて、無我夢中で走り出した。
必死だったから、後ろなんて見る暇なんて無かった。
ブーンはやはり追ってきているようで、鎌で風を切る音が聞こえる。
( ^ω^)「……」
無言で追って来る天使は、自分のことを死神だと名乗った。
そして、ヒッキーも死神だと言った。
どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか、ドクオにもヒッキーにも分からない。
それに、この状況をまだ良く理解していない二人がいた。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:23:19.94 ID:zVs9aL7Y0
('A`)「あいつ、仕事途中だって言ってたから、きっとどこかに仕事用の雲の船があるはずだ。
それ探して、出来るだけこっから離れるぞ」
(-_-)「それってもう家に帰れなくなるってこと?」
('A`)「…そういうことになるかもしれないな。厄介なのに見つかった以上、
ここら辺一帯に家があるってことはバレてるだろうし」
(-_-)「でも……」
(;'A`)「そんなこと心配してる場合じゃない。
今ここで大災害があったと思え。そうじゃなきゃ殺されてお陀仏だぞ」
人の住まなくなった家は、すぐに腐ると言う。
もし本当に帰れなくなって、家を腐らせてしまったりしたら、かなり勿体無い。
本当にここから飛び出さなければいけないのだろうか。
(;-_-)「……」
息絶え絶えに走りながら、ブーンと一緒に来たはずの雲船を捜した。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:25:20.96 ID:zVs9aL7Y0
白いモヤも消え始めた頃。走り続けていた二人の前には、大きな鳥居。
夏祭りの時にお世話になった、あの神社にたどり着いた。
後ろを振り向いてみるが、ブーンの姿は無い。
どうやら何とか撒けたようだ。
こんな朝早くに人がいるはずもなく、辺りは静けさを保っていた。
ドクオはとっさに林の中を進んで行き、澄んだ川へと木々を抜ける。
その後ろを、ヒッキーが息を切らしながらついていく。
('A`)「お、早くも発見」
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:27:13.02 ID:zVs9aL7Y0
ドクオが見つけたものは、ふわふわとした白い雲。ブーンの雲船だろう。
川原でふわふわと浮かび、ブーンの帰りを待っているようだった。
まさかとは思ったが、本当にここに雲船が置いてあったとは。
(-_-)「あれが雲船?」
('A`)「ああ」
急いで雲船に近付き、上に乗り込んだ。後からヒッキーも乗り込む。
すると、ブーンではない人物が乗り込んだことに驚いたのか、
雲船がぽつりと喋り始めた。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:29:25.24 ID:zVs9aL7Y0
lw´‐ _‐ノv「たわしです」
(;-_-)「うわっ、何か喋った」
雲が喋った。けれど、それでもヒッキーはあまり驚けなかった。
それよりもっと怖いことを言われたばかりなのだから。
その第一声を聞いたドクオは、その雲の喋り方に聞き覚えがあった。
('A`)「…シュー雲船だったのかこれ」
(-_-)「……シュー雲船?雲船にも色々あるの?」
('A`)「ああ、他にも色んなタイプの雲船があるんだ。
けどこれは……面倒くさいのに当たったなあ」
lw´‐ _‐ノv「面倒臭いというのはだな、たいそう面倒、いかにも面倒、
わずらわしい、という時に使うものだ。
その言葉は私に相応しくないから撤回してもらおう」
('A`)「……な?面倒くさいだろ?」
(;-_-)「…表現し難いです」
支援
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:31:30.28 ID:zVs9aL7Y0
ドクオはブーンに追われていることを思い出し、シュー雲船に事情を話す。
('A`)「実は、ブーンに追われてるんだ。急いでどこか遠くへ出てくれないか?」
lw´‐ _‐ノv「ほう…。もう片方の翼も引きちぎるなら考えてもいいぞ」
(;'A`)「ごめんなさい、謝るよ謝るから。ごめん、ごめんなさい。
頼むからお願いを聞いてくださいこの世で一番美しいシュール様」
lw´‐ _‐ノv「そう言われて悪い気はしないのが私だ」
ヒッキーとドクオは若干呆れつつ、シュー雲船に頼み込んだ。
初めの内はシュー雲船も気が進まないようだったが、
詳しい事情を話して行くと、シュー雲船は快く引き受けてくれた。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:33:56.13 ID:zVs9aL7Y0
lw´‐ _‐ノv「実は私は音速で走ることが出来る」
('A`)「嘘はやめような」
lw´‐ _‐ノv「その勢いで飛ぶということだ。さあ、飛ばすぞ」
すると、どんどん地面から離れて行き、雲船は木よりも高くなり始めた。
みるみるうちに目が眩むような高さになっていく。
lw´‐ _‐ノv「どっこいしょ。ふう、最近腰痛なんだ」
('A`)「どこに腰があるんだよ…」
二人を乗せた船は、ものすごい速さで神社から離れて行った。
そのあまりの速さに、二人は小さな呻き声をあげてしまう。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:35:41.28 ID:zVs9aL7Y0
lw´‐ _‐ノv「へいお客さん、どちらまで?」
(;'A`)「とりあえず、出来るだけ離れたところへ行ってくれ。
というかお前走るの速すぎだってぐぬおおおおおおおお」
風が痛いほど顔に当たり、息が出来なくなる。
(;-_-)「あれ、何かお星様が見える…」
(;'A`)「ヒッキーの顔がビックリするほど真っ青!」
lw´‐ _‐ノv「じゃあシベリアへ行こうか」
(;'A`)「何で!?ねえ何でなんだよお前嫌がらせだろうわあああぁあぁぁぁ」
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:37:40.34 ID:zVs9aL7Y0
シュールのペースに乗せられつつも、ブーンが追って来ていないのが、唯一の幸いだろう。
それにしてもシュールは、楽しんでいるのか本気なのか、よく分からない。
(-_-)「…ねえドクオ」
('A`)「何だ?」
(-_-)「僕は本当に死神なのかな…。僕のせいで、人が死んだのかな…」
('A`)「俺にも分からん。けど、そういうのは気にしない者勝ちだろ?」
(-_-)「……うん…」
ヒッキーは、ブーンに言われたことが気になって気になって仕方なかった。
もし本当に死神なら…と、底知れぬ恐怖が襲い掛かる。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:40:11.95 ID:zVs9aL7Y0
赤い屋根の一軒家の住人は、雲に乗せられ流れてく。
ここは、VIP国。生まれ育った国。
僕の家のある地域は、変態と名高い日本。
実感なんて、無い。
つづく
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:40:55.64 ID:zVs9aL7Y0
三話目投下完了しました。
支援してくださった方、感想くださった方、まとめてくださった方々に心からの感謝を。
それではまたいつか。
乙
楽しみにしてる
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 01:17:08.05 ID:fd0SelKZQ
おもしろし
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
乙ぅ!!