代理
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:21:07.39 ID:7BM7OEF9O
>>1 ありがとうございます!
*今日は短いけど、一応続く予定。
*投下します
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:24:13.74 ID:7BM7OEF9O
「―――あぁ、今日もお天道さまはご機嫌ななめだな……」
「そっか……。毎日まいにち雨じゃあ、こっちの気も滅入っちまうってもんだよ」
「……そうだな」
「……死ぬ前に……お天道様の光を、めいっぱい浴びたかったなぁ」
「…………」
「『空女』サマは…今日も泣いてンだねぇ……」
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:25:09.46 ID:7BM7OEF9O
川 ゚ -゚)天気は彼女に左右されるようです
‐1‐『雨天』
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:28:04.55 ID:7BM7OEF9O
('A`)「―――最近いろんな所で聞くが、『空女』ってのは一体何なんだ?」
(*゚ー゚)「あら、ご存知ないので?」
(*゚ー゚)「『女が笑えば、お天道様が顔を出す。女が泣けば、天が泣く』と、巷で噂の娘でございますよ」
(*゚ー゚)「髪は烏の濡れ羽色、肌は雪の如き白さ。その美しさたるや、この世のものではないとか」
(*゚ー゚)「ですが、人を喰らう、恐ろしい鬼女だとも聞きますねェ」
(;'A`)「何だィ、そりゃあ。まるで意味が分からないぞ」
(*゚ー゚)「所詮は噂ですからね……。噂なんて、でたらめなものですよ」
('A`)「ほう。ま、話半分に聞いとけってこったな」
(*゚ー゚)「はい。嘘か真かは、わたくしも知りませんし、多分、この村の全員に聞いてみたって、答えは分からぬままでしょう」
(*゚ー゚)「ですが」
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:29:54.25 ID:7BM7OEF9O
(*゚ー゚)「もしその噂が真であれば、その『空女』様」
(*゚ー゚)「ずいぶん長いこと、泣いていらっしゃるようでございますね」
('A`)「そうだなァ……。……なるほど。ありがとうな、しぃ」
(*゚ー゚)「ふふ、今度は噂じゃなく、何か買ってくださると嬉しいんですけれどねぇ」
(;'A`)「ああ、悪いな。また今度、客として来るよ」
―――これは、昔むかしの話でね。
呉服屋の看板娘が云った、『空女』の噂の真偽は、今となっちゃあ、誰も知らないんだ。
('A`)「じゃあ、そろそろおいとまするよ」
(*゚ー゚)「今日もぬかるんでいます。足元にお気をつけて」
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:32:36.92 ID:7BM7OEF9O
それは、ある雨の昼下がり。
呉服屋の店先から出てきたる長身の男がいてね。
姓を鬱谷、名を独男と云うんだが、こいつがまた、不細工で
世界中の不幸を一身に背負った、みてぇなツラをしてるのよ。
そんなんだから、女にゃ滅法もてなかった。
一部の男にゃ妙な人気があったそうだけども、
まぁそれはどうでもいい事さね。
('A`)「……『空女』」
『女が笑えば、お天道様が顔を出す。女が泣けば、天も泣く』
胡散臭い話だろう?
普通ならこんな、意味の分からない話は『噂』として片付けるべきなんだがねェ。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:34:19.06 ID:7BM7OEF9O
('A`)「ちょいと捜してみるかね」
独男は、信じるしかなかったのさ。
藁だろうと、蜘蛛の糸だろうと、縋りたい理由があったんだ。
噂の上でしかない『空女』がいると信じ、それを捜すために、
苦労する覚悟すら厭わないくらいの理由があった。
('A`)「しぃの話によりゃあ、『空女』は絶世の美人だと云う」
('A`)「そんな娘がいたなら、この村で噂にならない筈がねェ。だから、この村にゃいないンだろう」
('A`)「よし、こんな時は―――アイツに話を聞きに行くとするかね」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:35:33.38 ID:7BM7OEF9O
独男が向かった先は、とあるお屋敷だ。
庭にゃ大層ご立派な松。
池にゃ大きく成長した鯉がいてね。
こう言うのもなんだが、独男なんかが足を運んで良い場所じゃあない。
だが、独男は構わずに屋敷へ入って、叫んだんだ。
('A`)「おぉい、いるかい内藤!!」
( ^ω^)「おぉ、独男じゃないかお! 遊びに来たのかお?」
独男が呼んだ男は、ここらじゃ名の知れた地主さんで。
村民や、どこぞの殿様からは、『内藤の旦那』、と、親しまれているとかいないとか。
('A`)「いんや、今日はちょいと聞きたい事があってな」
( ^ω^)「?」
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:35:37.94 ID:RPqub5imO
支援でございまーす
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:37:44.14 ID:7BM7OEF9O
('A`)「おめェさん、『空女』ってのを聞いたことはあるか?」
( ^ω^)「『空女』……」
( ^ω^)「あァ、あるお、あるお」
( ^ω^)「ひとに馴染めず、人ならざるものにも成れなかった、哀れな娘だと聞いた覚えがあるお」
('A`)「人でもなく、人じゃないものでもない?」
('A`)「じゃあ、その空女ってのァ一体何なんだ?」
( ^ω^)「『死ぬことも叶わず、老いることも出来ず、迫害されるだけの娘だ』と」
( ^ω^)「深い業を背負い、地獄よりも辛い思いを、未来永劫味わい続ける、哀れな娘だと聞いたお」
(;'A`)「何でまた、そんな恐ろしい事をしちまったのかね……」
(;'A`)「なんとも可哀相な話だな……。じゃあ、……その『空女』が、どこにいるかは知らないか?」
( ^ω^)「さすがに、場所までは僕も知らないお」
('A`)「だよなァ……」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:39:06.30 ID:7BM7OEF9O
( ^ω^)「―――ただ、『空女』に関係するかしないかは分からんが、ちょいと耳寄りの情報があるお」
内藤の旦那は、悪戯っ子のように笑いながら独男に顔を寄せ、言った。
「この村から東へ三里ほど行った山に、女が啜り泣く声が聞こえる場所がある」
「それが鬼女か幽霊か、はたまたお前が捜す『空女』かは、だァれも知らない」
「だけど、捜しに行く理由としては上々だろう?」
「―――『空女』にゃ笑ってもらわないと、僕もお前も困るンだから」
*****
*****
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:39:09.40 ID:RPqub5imO
好きな雰囲気ですよ
期待しえ
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:41:05.59 ID:7BM7OEF9O
('A`)「えぇと、内藤が云ってた山ってのァこれでいいのかね?」
内藤の旦那から話を聞いた独男は、早速東へ向かった。
ゆっくりと山を登りはじめたはいいが、
何分、独男はひょろいばかりで体力が無いもんだから、直ぐにへばっちまってね。
『啜り泣く声』ってのも聞こえないし、途方に暮れて、座り込んじまったのさ。
(;'A`)「ふう、ふう、疲れた。慣れねぇ事はするもんじゃあねェな」
(;'A`)「しっかし、後先考えずに山を登って来たけど、本当に『啜り泣く声』なんて聞こえるのかねェ?」
(;'A`)「もう少し調べるべきだったか……」
ごろりと寝転んだ独男は、疲れきっててね。
いけねェいけねェと思いつつ、でも、誰だって睡魔にゃ逆らえんわな。
山のど真ン中で、高鼾をかいて、眠りはじめちまった。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:43:24.00 ID:7BM7OEF9O
(ぅA`)「…………」
(;゚A゚)そ「いっけねェ! 寝ちまった!!」
結局、独男が目を覚ましたのは、お月さんが昇りきった頃だ。
こりゃ大変だと独男は飛び起きて、来た道を戻ろうとしたんだが、
(;'A`)「あれ、こんな場所、来るときに見てないぞ」
どうやら、完璧に迷っちまったようでね。
明かりもなく、近くにゃ民家もなく、独男はとにかく慌ててねぇ。
同じ場所を行きつ戻りつしていたら、聞こえてきたのさ。
「……ヒック……」
「ック……ヒック……」
女の、『啜り泣く声』が。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:44:59.16 ID:RPqub5imO
しえしえ
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:45:05.45 ID:7BM7OEF9O
その声は、ひどく幽かなものだった。
きっと、この声のことを、内藤の旦那は云っていたんだろうねぇ。
(;'A`)「どこだ? どこにいる?」
声を捜して、夜闇の中を歩いて行くと、
岩肌の途中に洞穴があって、声は、そっから聞こえて来る。
女の、悲しげな嗚咽が、聞こえて来るんだ。
(;'A`)「……もし、誰かいるか?」
独男は洞穴の奥へ、話し掛けた。
啜り泣く声が、ぴったりと止まったが、
そこに潜むのが『空女』かどうかは知れぬまま。
もしも鬼女ならば、独男が逃げ切る術はなし。
一種の博打のようであるけれども、
それでも独男は、洞穴の奥へ進んだのさ。
wktkしえん
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:46:37.57 ID:RPqub5imO
鬼女か美女か
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:46:53.84 ID:7BM7OEF9O
「―――誰、か、いる?」
返ってきた声は、鈴の音のような、美しいものでさァ。
やはりここに潜むは『空女』だと、独男も安心したんだ。
('A`)「あァ、『空女』に用があって、来た」
('A`)「お前さんが『空女』で、いいンだよな?」
「……そう、呼ばれるのも、久しい……」
「どこの人かは知らないけども……アンタがここまでやって来た理由は、……解る」
「―――私に泣き止めと……。笑えと、……そう言いに来たのだろ?」
('A`)「察しがいいねェ。昔っから、俺みたいな理由でアンタを訪ねてくる奴がいたのかい?」
「……ああ……」
('A`)「そうか……」
('A`)「……でも、用件が分かっているのなら話が早い」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:48:14.10 ID:7BM7OEF9O
('A`)「今直ぐに、アンタに笑って欲しいんだ。笑ってくれなきゃ困るンだ」
「……それは、出来ないんだ……」
('A`)「出来ない? 何でまた」
「無理やりに笑おうとしても、涙が止まらないんだ。私は、もう、笑えない」
そう答えた空女は、またぐずぐずと泣きはじめちまった。
こりゃあ根が深いと、独男も少し困ったよ。
女を慰める方法なんざ、とんと思い付かないからねぇ。
でも、何かかけてやれる言葉はあるはずさ。
('A`)「えーと……」
('A`)「そう慌てずとも、ゆっくり笑えるようになりゃあいい」
('A`)「とりあえず、明日また来るよ。アンタの名を教えてくれないか?」
「……空(くう)」
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:49:41.00 ID:RPqub5imO
シェーン
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:50:47.61 ID:7BM7OEF9O
('A`)「くう、か。いい名じゃあないか。俺は独男だ」
('A`)「また明日、昼のうちに、来るからさ」
('A`)「アンタの話、聞かせてくれな」
「…………」
『空女』こと空(くう)は、押し黙ったまんま。
独男は結局、『空女』のお姿を見ないまんま、
えっちらおっちら山を下りていった。
その細い後ろ姿を、洞穴から遠巻きに見ていた空(くう)は、
そっと着物の袖口で、涙を拭ったそうだ。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:52:15.34 ID:7BM7OEF9O
―――独男が『空女』と会った、その日は、
―――珍しく雨が降らなかったそうな。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:53:06.40 ID:7BM7OEF9O
川 ゚ -゚)世界の天気は彼女に左右されるようです
‐1‐『雨天』
終了
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:55:24.15 ID:7BM7OEF9O
せっかくスレを立ててもらったのにっ……!!
本当に短くてすいませんッ……!!
支援ありがとうございました!
多分、この話は2、3話で終わりです。
多分。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:56:39.43 ID:7BM7OEF9O
>>26修正
×川 ゚ -゚)世界の〜
〇川 ゚ -゚)天気は〜
チクショウめ
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:56:55.30 ID:RPqub5imO
乙!!
おつおつ、続き楽しみにしてる!
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 22:00:10.14 ID:qb1Ms75W0
出来損ないの雰囲気ものだな
背伸びして無理やり書くとこうなる
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
乙。面白いな