梓「また、一緒にギターを弾いて下さい! ○○先輩!」
1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
1章
――4月 けいおん部部室
律「いやー、今日も練習したなー」
唯「熱血だったね!」
澪「どこがだ。最後の30分にちょこっとパート別に練習してただけだろ」
梓「そうです! 今日もずっとティータイムばっかりで……もっとやる気を出してほしいです!」
唯「あずにゃん厳し〜。ほらほら、怒るとほっぺた落ちちゃうよー」
梓「むにゃ! ほっぺたつままないで下さい!」
唯「やーらかーいなー」むにむに
紬「眼福だわー」
ねずみ先輩だったとは・・・
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:00:36.91 ID:TfyHAR6h0
全85章あります!
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:02:32.01 ID:lCfrk6C3P
紬「梓ちゃんは2年生に進級して、やる気満々ね〜」
澪「いつ後輩ができてもいいように心構えしてるんだろうな。真面目なんだよ、梓は」
律「まあ、ぜんっぜん入部希望者出てこないけどなー」
梓「はぁ……」ガックシ
唯「おやあ? あずにゃん、落ち込んでるー」
梓「落ち込みもしますよ……」
紬「どうして誰も入ってくれないのかしらね」
律「さあな。女子高だと『バンド組んで演奏だー!』っていう気合入った奴はなかなかいないんじゃね?」
唯「じゃあ私は気合入った女の子なんだ!」
澪「お前は軽音を『軽い音楽』と勘違いしてただけだろ」
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:04:23.42 ID:lCfrk6C3P
――帰り道
テクテク
律「そういえばさ、最近学校に幽霊が出るっていう話、知ってるか?」
澪「うっ!」ビクリ!
唯「なにそれー。聞いたことないよ」
梓「本当の話なんですか?」
紬「あ、私、聞いたことあるかも。放課後の幽霊よね?」
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:06:16.39 ID:lCfrk6C3P
律「そうそう。なんでもな、夜の6時か7時ぐらいになると学校の中を幽霊が徘徊してるらしい」
澪「うぅ……」
律「職員室から出てきたと思って追いかけてみると、曲がり角でいきなり消えちゃってな」
唯「どんな幽霊なのー?」
律「んー、髪の長い女の子だったり、小さな男の子だったり、学生服着た男の子だったり」
梓「ようは正体不明、ってことですね」
澪「何も聞こえない何も聞こえない何も聞こえない」ガクブル
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:08:28.45 ID:lCfrk6C3P
唯「けど、夜7時だなんて、幽霊さんもすごく早い時間に出るんだねー」
律「だなー。普通深夜とかに出るよなー」
紬「その時間って生徒はいなくても、先生方はまだ残ってらっしゃるんじゃないかしら」
律「そう思ってさわちゃんに幽霊のこと聞いてみたけど、『見たことない』だってさ」
梓「だったらただの噂話なんですよ。よくある怪談です、きっと」
律「けどなー。もし今日みたいに一緒に帰ったりする時にだな」
澪「何も聞こえない何も聞こえない何も聞こえない」ガクブル
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:10:34.72 ID:lCfrk6C3P
律「澪が忘れ物に気付き、『あ、私忘れ物したから取ってくる。皆は先に帰っててくれ』と言って、1人で学校に戻ったとする」
澪「何も聞こえない何も聞こえない」
律「夕方から夜に変わる学校。なぜか先生も守衛さんもいなくて、澪は薄暗い校舎の中を1人でひたひたと歩く」
澪「何も聞こえない何も聞こえない」
律「鍵を借りるために職員室に行くと、ふと、職員室から出てくる白い影が……」
唯「どきどき」
律「『あれ? 先生いたのかな?』。そう思って追いかける……けどその白い影は歩くのが早くて追いつかない」
紬「どきどき」
律「『先生!』。叫ぶようにして呼び止めると、白い影は立ち止まる。そしてゆっくりとこちらを振り向いたその顔は……!」
梓「……」
澪「何も……聞こえない……!」ガクブルガクブルガクブル
律「すぅ」
律「真っ白っけっけー!」
澪「わああああああ!」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:11:57.89 ID:lCfrk6C3P
唯「うわ! 驚いた!」
紬「澪ちゃんの叫び声に驚いちゃったわー」
梓「澪先輩、落ち着いてください!」
律「澪は必死になって逃げるけれども、真っ白な顔の怪物は澪を追いかけてくるのだー!」
澪「きゃああ! きゃあああ!」ダダダダ!
律「ありゃ。走ってっちゃったよ」
唯「澪ちゃーん、そんなに走ったら転んじゃうよー」
梓「律先輩、やりすぎです……」
律「なはははー」
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:13:34.89 ID:lCfrk6C3P
――翌日 学校 昼休み
純「ああ、その話なら私も知ってるよ」
憂「私も聞いたことある」
梓「へえー。結構広まってるんだ」
純「けどさあ、夜7時とか中途半端な時間に出るよね」
憂「あはは、そうだね。早起きな幽霊さんなんだよ、きっと」
梓「幽霊って寝たりするの?」
純「案外3大欲求持ってたりするんじゃない?」
梓「ご飯食べる幽霊とか、なんだかロマンがないなあ」
憂「そういうアニメ、昔あったよねー。頭に毛が3本生えてるやつ」
純「うわっ、ふるっ」
梓「私達が生まれる前のアニメでしょ、それ」
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:15:05.50 ID:lCfrk6C3P
純「けど、その噂話も中身が安定しないよね。特に外見」
梓「男か女かも分からないんだっけ」
純「唯一分かってるのは、色白だってことだけらしいよ。服装は見る人によってばらばら」
憂「私はロケット砲持ってるって話も聞いたことあるなー」
梓「ろ、ロケット?」
純「こわっ。なんで幽霊がロケット?」
憂「きっと兵隊さんの幽霊だったりするんだよ」
純「じゃあ、出会いがしらにロケット撃たれるんだ。どばーんって」
梓「それって幽霊じゃなかったとしても怖いよ」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:16:58.20 ID:lCfrk6C3P
――放課後 けいおん部部室
律「あー、今日も練習したなー」
唯「疲れたー」
澪「いやいや、今日も最後にセッションしただけだって」
梓「皆で弾けただけ、まだマシですが……」
紬「ふふふ、じゃあ、最後に冷たい紅茶を飲んで帰りましょうか。用意するわね」
唯「あずにゃーん」ダキッ
梓「あう。いきなり抱きつかないでください!」
唯「あずにゃん分補給だよー」
梓「後片付けの最中ですからやめてください」
唯「あずにゃんのけちー。ほっぺたぎゅってしてやるー」むにゅ
梓「にゅ! もう! 唯先輩!」
唯「あはは! あずにゃん怒っちゃやだよー」
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:18:40.77 ID:lCfrk6C3P
――帰り道
律「ふぅ。明日は金曜日かー。もうすぐ休みだ休みだ」
澪「律は土日、何か用事ある?」
律「んー、弟を映画に連れていく予定だな。なんかあるのか?」
澪「ちょっとライブハウスに行こうかと思ってたんだけど……いいや、また今度にする」
律「おいおい。私と一緒じゃないと行けないのか?」
澪「1人であの中に入るのはちょっと……」
紬「ライブハウスって独特な空気があるものね」
唯「そうかなー。私はなんだか楽しいよ」
律「そりゃあ、お前は強面さんでも仲良くなれるからな」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:19:47.07 ID:THVBpvpqO
しえーん
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:20:51.20 ID:lCfrk6C3P
梓「あっ」
律「ん? どうした、梓」
梓「スコア、部室に忘れたかも……です」
澪「今日練習してたやつか?」
梓「はい……後片付けの時に鞄に入れたと思ってたんですけど……入ってない」
律「あー、唯とじゃれあってたからな。入れ忘れたんだろ」
梓「どうしよう……家に帰ってからも練習するつもりだったのに」
紬「1度戻る? 今からならまだそんなに離れてないわ」
梓「いえ、先輩たちにまで迷惑をかけられません。仕方ないので……私1人で取ってきます!」
唯「大丈夫? もうすぐ暗くなるよー?」
梓「ちょっと行って取ってくるだけなので、大丈夫です。先輩たちは先に帰っててください。それでは!」
タタタタ
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:22:14.88 ID:lCfrk6C3P
律「……あれ? なんかデジャブった」
唯「でじゃぶ? しゃぶしゃぶの仲間?」
紬「デジャブっていうのは、『何か経験したことあるなあ』っていう感覚のことよ」
唯「へー。りっちゃん、そんな難しい言葉知ってるなんて、すごいなー」
律「まあなー。うーん……けど、よく分からん。思いだせん」
唯「じゃあ、気にしないでいいんだよー」
律「そだなー」
澪「……」ガクブル
澪(梓! ふがいない先輩を許してくれ……!)
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:24:03.08 ID:lCfrk6C3P
――夜7時前 学校
梓「うー、暗いなあ。夜の学校ってどうしてこんなに怖いんだろ」
梓(校門はまだ開いてたからよかったけど……あれ? 職員室もまだ明るい。誰か先生いるのかな)
タタタタ
ガラッ
梓「失礼します」
梓「あれ? 誰もいない……職員室の電気だけついてるなんて、おかしいなあ」
梓(仕方ない。守衛さんは守衛室にいなかったら、見回りかな。事情を話して鍵を開けてもらおう)
梓(……)
タタタタタ
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:25:22.39 ID:lCfrk6C3P
梓(そう言えば、今って夜7時に近いんだっけ……)
梓(噂の幽霊って、今の時間帯に出るんだよね)
梓(……)
律『鍵を借りるために職員室に行くと、ふと、職員室から出てくる白い影が……』
梓(……そんなわけないよね)
梓(守衛さんを探そう)
タタタタタ
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:27:04.64 ID:lCfrk6C3P
タタタタ
梓(いないなあ。2階も全部回ったのに)
梓(はあ……もう一度職員室に戻ろうかな)
ふっ
梓(!)
梓(今、何か白い影が見えたような)
梓(……)
梓(あ、あはは……そ、そんなわけないよね)
タタタ
梓(白い影は階段を昇ってったように見えた)
梓(この上は……音楽準備室。私たちの部室)
梓(……まさか、ね)
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:28:16.04 ID:lCfrk6C3P
タン タン タン
梓(なんで私、白い影なんか追いかけてるんだろ)
梓(けど、もし本当に幽霊がいたとしたら……)
梓(ううん、そんなわけない。ただの見間違い。見回りをしてる守衛さんかもしれないし)
梓(そうだよね。で、私は守衛さんを探してるから追いかけてるだけ)
梓(決して幽霊みたさに……あれ? 何か音が聞こえる)
ジャン♪ ジャカ♪ ジャン♪
梓(ギターの音?)
梓(そんな。だって、どこのクラブもこの時間まで部活やってるはずないし……)
梓(……けいおん部の部室から聞こえる)
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:28:18.34 ID:Ww9vCxeYP
ふむふむ
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:29:59.19 ID:lCfrk6C3P
ジャン♪ ジャカ♪ ジャン♪
梓(……)
梓(ドアを開けて、み、見てみればいいんだよね)
梓(そうだよ。もしかしたら、守衛さんがギターを弾いてるのかも)
梓(『いつも君達の演奏聞いてて、私も弾きたくなってねー』って)
梓(……)
梓(そんなわけないか)
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:31:21.31 ID:lCfrk6C3P
ジャン♪ ジャカ♪ ジャン♪
梓(よし!)
梓(扉をちょっとだけ開けて……ほんとにちょっと。ちょっとだけ……)
キィ
ジャン♪ ジャカ♪ ジャン♪
梓(暗くてよく見えないけど……ギターの音はよく聞こえる)
梓(これ、何の曲だったっけ。洋楽の何かだったと思う)
梓(もうちょっと明るければ弾いてる人の姿も……って、あれ? 人の腕が)
ジャン♪ ジャカ♪ ジャ、
ゴホッ! ゴホッ!
……
ジャン♪
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:33:00.56 ID:lCfrk6C3P
梓(白い肌……え? すごく肌が白い人って、まさか噂の幽霊?)
梓(え? え? ゆ、幽霊さんがギターを弾いてる??)
ゴホッゴホッ!
梓(けど、足はちゃんとあるように見えるんだけど……それに、これって咳の音?)
梓(YシャツとGパン……なんか普通の格好。顔は後ろ向いてて見えない)
梓(これが……幽霊?)
ジャン♪ ジャカ♪……ピタ
??「誰かいる?」
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:34:55.64 ID:lCfrk6C3P
ビクリ!
梓「――!!!」
梓(に、逃げなきゃ!)
ダダダダダダ!
ダダダダダ!
梓「はあ、はあ」
梓(勢い余って、校舎の外まで逃げちゃった)
梓(まさか幽霊に声をかけられるなんて……嘘みたい)
梓(あれ? けど幽霊って話しかけてくるものなのかな)
梓(それに、普通に考えて幽霊がギターを弾くないし……)
梓(……)
梓「もしかして、ただの人間?」
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:36:26.55 ID:lCfrk6C3P
――翌日 放課後 けいおん部部室
律「幽霊を見た〜?」
梓「はい! いえ、正確には幽霊じゃありません! 不審人物です!」
紬「それって、昨日忘れ物を取りに行った時に?」
梓「はい。あ、それを見たせいで結局スコアは取りに行けませんでしたが……」
唯「あはは、あずにゃんおっちょこちょいだねー」
律「いやいや、今はそういう話じゃないだろ」
澪「何も聞こえない何も聞こえない」ガクブル
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:38:05.63 ID:lCfrk6C3P
紬「それで、どんな幽霊さんだったの?」
梓「いえ、幽霊ではなく不審人物です。だって、足はちゃんとありましたから」
律「幽霊だからって足がないって決め付けるのはどうかと思うぜ」
唯「だよねー。Qちゃんも足あるもんねー」
紬「外見は?」
梓「白いYシャツと紺色のGパンで、肌はすごく白くて髪は黒くて……ギターを弾いてました!」
律「はあ?」
唯「すごいね! 幽霊さんってギター弾けるんだ!」
梓「あとは……咳もしてました!」
律「よくわかんないなあ」
唯「ねえねえ、幽霊さん、ギター上手だった?」
澪「何も聞こえない何も聞こえない」ガクブル
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:39:39.70 ID:lCfrk6C3P
梓「聞いてる限りでは、なかなか上手でしたよ」
唯「すごいなあ。身体が透けるのにどうやってギター弾いてるんだろ」
律「で、その不審人物さんはどこで見たんだ?」
梓「この部室です」
ピタ
律「……」
紬「……」
唯「おー」
澪「きゃあああああ!」
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:41:18.17 ID:lCfrk6C3P
律「澪が狂った!」
澪「わ、私、幽霊がいるところに座ってたのか!? そうなのか!?」
梓「み、澪先輩落ち着いて」
澪「ふと触ったところが水で濡れてたり、指に髪の毛がべったりくっついてたり、そんなことが起きるのか!?」
唯「そういえば、最近お風呂場の排水溝が詰まっちゃって、フタを開けてみたら髪の毛がびっしりで驚いたよー」
澪「私は呪われたんだー!」
律「落ち着け、澪! 梓によると正体は人間らしいぞ!」
ピタ
澪「……そうなのか?」
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:43:06.69 ID:lCfrk6C3P
梓「まだそうだと確定したわけではありませんが……その可能性が高いと思います」
紬「けど、夜の校舎って生徒は原則入れないはずよ」
律「だなー。教師ってわけじゃなさそうだし」
梓「大人にしては身体の線が細かったです。声はちょっと男っぽかったかも」
澪「うぅ……梓は幽霊と話をしたのか?」
律「幽霊だったら話なんかできないだろ、普通」
唯「あずにゃん、霊感あったんだー」
梓「唯先輩、話ずれてますって……このまま放っておくのはまずいかもしれません。もしかしたら、不法侵入者かもしれませんし」
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:44:33.70 ID:lCfrk6C3P
律「けどなー。わざわざ夜の学校に忍び込んで、やることがここでギターを弾くことなのか?」
澪「どこか腑に落ちない……やっぱり幽霊で、音楽に未練を残してるとか……」ビクビク
梓「けど、あれは人間でした。間違いありません」
紬「うーん、だとしたら守衛さんが先に見つけてるはずだけど……」
唯「もしかして、私たちの情報を盗むために忍び込んできたスパイ!?」
梓「それはないです」
澪「私たちの何の情報を盗むんだ」
律「澪の3サイズとか」
澪「ばか」ポカ
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:45:42.67 ID:lCfrk6C3P
律「よし! こうなったら私たちで正体を突き止めようではないか!」
紬「というと?」
律「夜の校舎に忍び込んで、不審人物を待ち伏せだー!」
澪「な、何を言ってるんだ律は。そんなことできるわけないだろ」
紬「そうね。忍び込むのは難しいと思うわ」
澪「そうそう。ムギも反対だよな」
紬「むしろ、夜になるまで校舎のどこかで隠れていればいいのよ」
律「なるほど! ムギは頭いいなー」
澪「……うぅ、仲間がいない」ビクビク
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:46:44.15 ID:lCfrk6C3P
唯「じゃあ、今日は学校にお泊りだね!」
梓「え? 本当にやるんですか?」
律「私たちの部室を勝手に使われてるとあっちゃあ、見逃すわけにいかないからな!」
紬「私、夜の学校を探検するのが夢だったのー」
澪「いやだ、絶対にいやだ!」
律「観念しろ、澪。これはけいおん部の活動なんだ」
澪「いやだー!」
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:47:59.36 ID:lCfrk6C3P
――夜 学校
キィ
律「音楽室の倉庫に隠れてるだけで見つからないもんなんだな」
紬「守衛さんも、鍵のかかった部屋の中までは確認しないものよ」
唯「すごいねー。夜の学校ってこんなに静かなんだねー」
澪「……」ガクブル
梓「あの、澪先輩が今にも気絶しそうになってるんですが」
律「いつものことだ。ほっとけ」
紬「これからどうする?」
唯「探検しよう、探検!」
律「そうだな。こんな機会はなかなかないし、ちょっと探検してみるかー」
梓(……律先輩たちは怖くないのかなあ)
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:49:32.32 ID:lCfrk6C3P
澪「何も見えない何も見えない」
梓「澪先輩、目を瞑って歩いてたら危ないですよ」
澪「目を開けたら目の前に幽霊がいるんだきっとそうだ」
律「仕方ない奴だなー。私が手を引いてってやるよ」キュッ
澪「うぅ……」
唯「非常灯の光ってなんだかほんわかするね」
紬「ドキドキワクワク」
梓「ムギ先輩は楽しそうですね……」
紬「怖いけど楽しいの。そこの教室からいきなりゾンビが出てきたらどうしようかとか考えてると、なんだかもう身体が震えてきちゃって」
澪「ゾンビ怖いゾンビ怖い」
唯「ばいおはざぁどだね!」
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:51:10.26 ID:lCfrk6C3P
――数十分後
唯「何もなかったね」
律「拍子抜けだな。1度部室に戻るか」
澪「ふぅふぅ」
紬「澪ちゃん、深呼吸深呼吸」
タタタタ
梓「あれ? 部室の扉って閉めましたよね」
紬「うん。私が最後にちゃんと閉めたはずだけど……」
律「おいおい、開いてるじゃないか」
澪「うぅ……ま、まさか」
唯「幽霊さん?」
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:52:29.88 ID:lCfrk6C3P
律「よし、ぬきあしさしあし忍び足で扉に近づくぞ」
紬「ドキドキ、ワクワク」
澪「わ、私は嫌だぞ、絶対に近づかないからな」
律「私の手を離せるって言うんなら、ここで待機しててもいいぞ」
澪「い、嫌だ。手は離さないでよぉ」
唯「女は度胸だよ、澪ちゃん!」
梓(……昨日みたいにギターの音は聞こえない)
「そこにいるのは誰!」
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:54:02.34 ID:lCfrk6C3P
澪「きゃああああ!」
律「うわっ!」
唯「わわっ!」
紬「きゃっ!」
梓「……!!」
さわ子「ちょ、ちょっと、いきなり大きな声出さないでよ」
律「さ、さわちゃん?」
さわ子「りっちゃん? それにみんなも……あなたたち、こんな時間に何してるの」
律「あ、あはは、な、なんだ。幽霊かと思った」
唯「びっくりしたー」
澪「……きゅー」
紬「あ、大変、澪ちゃんが」
梓「気を確かに、澪先輩!」
さわ子「本当に何してるの、あなたたちは……」ハァ
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:55:38.58 ID:lCfrk6C3P
さわ子「幽霊を見に来た?」
律「そうでーす! 梓が昨日、部室で見たっていうから」
梓「はい、見ました!」
澪「私は反対したんですが……」
唯「でね、閉まっていたはずの部室の扉が開いてたから、もしかしたら今いるかもしれないんだよ!」
さわ子「……」
さわ子「そんなわけないでしょ。風で開いただけよ」
紬「けど、窓も開いてませんし……」
さわ子「気になるのなら、実際に見てみればいいわ」
キィ
さわ子「ほら、誰もいないでしょう?」
唯「ほんとだー。ひとっこひとりいないよー」
律「あれー? おっかしいなー」
梓「……」
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:57:16.12 ID:lCfrk6C3P
さわ子「ほら、早く帰りなさい。今日は見逃してあげるから」
梓「さわ子先生は帰らないんですか?」
さわ子「私はまだ仕事が残ってるのよ。もう少しして戸締りの確認をした後、帰るわ」
唯「一緒に帰ろうよー」
さわ子「だーめ。ほら、帰った帰った。早くしないと明日反省文書かせるわよー」
律「反省文は嫌だ」
澪「は、ははは早く帰ろう」
唯「お腹空いたー」
律「しゃーない。帰るか」
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:58:34.88 ID:lCfrk6C3P
紬「先生、さようならー」
唯「さよならー」
さわ子「はい、さようなら。あら? 梓ちゃんは行かないの?」
梓「……」
梓「あの、さわ子先生は昨日も学校に残っていらしたんですか?」
さわ子「そうよ? それがどうかした?」
梓「……いえ、さようなら!」
さわ子「さようなら」
ツカレターオナカスイタヨー
ミオーアルクノハヤイー
ガヤガヤ
さわ子「……」
さわ子「……ふぅ。まったく、世話が焼けるわね」
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:00:14.48 ID:lCfrk6C3P
――校門前
澪「まったく、もう絶対にこんなことしないからな」
律「つーかもうできないだろ。さわちゃんに見つかったのにまたやったら、反省文どころじゃ済まないぞ」
紬「けど楽しかった。いい思い出になったわ」
唯「探検ごっこは楽しいね!」
梓「……」
梓(さわ子先生、昨日も学校にいたって言ってたけど、職員室には誰もいなかったはず)
梓(だったら見回りをしてた? ううん、それは守衛さんがやる仕事のはずだし……)
梓(そもそも今日だって、どうしてさわ子先生、部室に来たんだろ)
梓(3階には他に部屋がない。だったら部室に用があった? どうして?)
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:01:34.87 ID:lCfrk6C3P
律「どうした、梓? さっきから考え事か?」
梓「あ、いえ……」
梓(どこか……どこかおかしい気がする)
梓(そうだ。今日は職員室の灯りすら点いてなかった。なのに『仕事』?)
梓(……さわ子先生、嘘ついている?)
梓(やっぱり気になる!)
梓「あ、あの!」
唯「んー? あずにゃん、どしたのー?」
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:02:58.45 ID:lCfrk6C3P
梓「ぶ、部室に忘れ物をしました? 取りに行ってきます!」
律「おいおい、またか?」
紬「今度は何を忘れたの?」
唯「皆で取りにいこうかー?」
澪「うっ」ビクッ
梓「いえ、ちょっとしたものですので、私1人で行きます! 先輩たちは先に帰っててもらって結構です! では!」
ダダダダ!
律「お、おい! って、行っちまった」
紬「さわ子先生もいらっしゃるんだし、大丈夫よ〜」
唯「いいなあ、あずにゃん。また学校探検できるんだー」
澪「うぅ、また私は後輩だけを危険な場所に行かせてしまった……ごめん、梓! けど怖いんだ!」
律「ここに罪の意識と闘っている少女がいたのだった、か」
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:02:58.96 ID:gM9yHzo+O
さるよけ
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:04:27.73 ID:lCfrk6C3P
――夜 学校の中
梓(職員室の電気は点いてない)
梓(さわ子先生もどこにもない)
梓(……やっぱり部室なのかな)
タタタタ
梓(部室……)
ジャン♪
梓(! またギターの音がする!)
梓(部室の中からは人の気配がするし)
梓(誰かいるんだ!)
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:05:31.33 ID:lCfrk6C3P
キィ……
梓(扉を少しだけ開けてっと)
ジャン♪ ジャカ♪
梓(あっ)
梓(昨日と同じ曲……それに、同じ感じの人が立ってる)
ジャン♪ ジャカ♪
梓(……やっぱり上手いなあ)
ジャン♪ ジャカ♪
梓(けっこう好きかも、この演奏)
ジャン♪
……ゴホッゴホッ!
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:07:00.20 ID:lCfrk6C3P
「大丈夫?」
梓(この声はさわ子先生?)
さわ子「少し休憩したら?」
??「そうですね。キリもいいですし」
さわ子「はい、お茶よ。ペットボトルで悪いけど」
??「いえ、ありがとうございます」
梓(さわ子先生としゃべってるって事は、やっぱり幽霊なんかじゃないんだ)
梓(男の人の声……どうしてさわ子先生もここに?)
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:08:37.26 ID:THVBpvpqO
ふむ
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:08:55.25 ID:lCfrk6C3P
さわ子「そういえば、あなたの事、校内で噂になってるのよ」
??「え? どんな噂ですか?」
さわ子「夜7時に現れる幽霊ですって。何度か生徒に目撃されてるみたいね」
??「うーん、下校時間の後に入ってきてるんですが……」
さわ子「部活で遅くなる子もいるのよ。もう少し用心なさい。今日だって危なかったんだから」
??「すみません。今日はほんとに助かりました。先生の声がなければ隠れきれませんでしたから」
梓(さわ子先生とこの男の人、知り合いなのかな)
梓(肌が白い……昨日見た人に間違いないよね)
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:10:12.20 ID:Xfzk/FfZ0
支援
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:11:38.44 ID:lCfrk6C3P
さわ子「昨日も、けいおん部の子に姿を見られてたみたいね」
??「あー、じゃあやっぱりあれは見間違いじゃなかったんだ」
さわ子「どういうこと?」
??「昨日、扉から物音がしたんで誰かいるのかと思って声をかけたんです。
けど、扉を開けると誰もいなくて……窓から外を見ると、校門付近に女の子がいました。黒髪のツインテールでしたね」
さわ子「けいおん部の子ね。その子に見られたのよ」
梓(私のことだ……)
さわ子「そんなことがあったなら報告してくれないと」
??「見られたっていう確証がなかったので……すみません」
さわ子「今日はひやひやしたわ。危ない橋を渡らせないでちょうだい」
??「すみません」
さわ子「そもそも、私が校内を見回るまで練習しちゃ駄目って言ったでしょうに」
??「どうしても待ちきれなかったので……すみません」
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:13:03.89 ID:lCfrk6C3P
梓(……どういうことだろう。さわ子先生が不審者を手引きしてたのかな)
梓(声が遠くてよく分かんないなあ。もう少し扉を開ければ……)
ギィ
さわ子「なに!?」
梓(あ、まずい! 逃げなきゃ、って、あっ!)
ガタン、バタ!
梓「いたたた……こんな所で転んじゃうなんて……」
さわ子「梓ちゃん!?」
梓「あ……」
??「あー」
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:14:26.02 ID:lCfrk6C3P
――けいおん部部室
さわ子「どうしてまた戻ってきたの……」
梓「さわ子先生は嘘をついてると思って、その、気になってしまって……」
??「ははは、さわ子先生、生徒からの信頼がないんですね」
さわ子「うるさいわよ」ギロ
??「あう、すみません」
梓(人間……で間違いないよね。幽霊なんかじゃない)
梓(ちょっと細めで、色白な男の人)
梓(部室に男の人がいるって、なんだか変な感じだなあ……)
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:15:57.37 ID:lCfrk6C3P
さわ子「はあ、どうしたものか……」ガクリ
梓「あの、先生」
さわ子「なに?」
梓「その方はいったい……」
??「あ、自己紹介が遅れちゃいましたね」
??「俺の名前は○○と言います。この近くの××高校の3年生です」
梓「3年生? だったら年上なんですね……」
○○「あ、そうなんですか」
梓(あんまり年上って感じはしないなあ……線が細いからかな)
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:17:52.84 ID:lCfrk6C3P
○○「あなたはここのけいおん部の方ですよね?」
梓「はい。中野梓と言います。2年生です」
○○「はじめまして、中野さん。そしてすみません。けいおん部の部室を皆さんに無断で使ってしまって……」
梓「あ、いえ……そうだ、先生。どうしてこの方――○○さんは、ここでギターを弾いてるんですか? しかもこんな夜に」
さわ子「あー、うん、これには色々と深い事情があるのよ」
○○「俺から説明しましょうか?」
さわ子「いえ、私が説明するわ。生徒からの信頼を回復させたいし」
梓(けっこう気にしてるんだ)
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:19:03.57 ID:lCfrk6C3P
さわ子「この○○君はね、私の友達の後輩で、ギターを弾いてるんだけど」
さわ子「普段の練習場所に困ってるのよ」
梓「練習場所に困る?」
さわ子「家庭の事情、学校の事情があってね。家や学校ではギターが弾けないの」
さわ子「けど、彼はギターを弾きたがってる。練習する場所が欲しい」
さわ子「今年の新学期に入った頃になって、友達のツテで私にそんな相談が持ちかけられて」
さわ子「このけいおん部の部室を貸してあげてたってわけよ」
梓「はあ……そうなんですか」
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:20:40.40 ID:lCfrk6C3P
さわ子「もちろん、この学校に部外者は原則立ち入り禁止」
さわ子「だから、放課後、生徒がみんな帰って他の先生方も早上がりした時、私が裏の入り口を密かに開けて入れてあげてる」
さわ子「それから私が帰る夜7時半か8時ぐらいまで練習する、ってわけ」
梓「それって……いいんですか? ばれたら大変なことになるんじゃ」
さわ子「もちろん。まあ軽くて減給よ、ほんと」
さわ子「幸い、守衛さんはこの部室まで見回りに来ないから、ばれなかったんだけど……」
さわ子「今日、ついにばれちゃったわ。はぁ……」
○○「すみません、先生」
さわ子「いいのよ。私も迂闊だったわ。彼女たちが帰ったのをちゃんと確認すればよかった」
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:22:22.41 ID:lCfrk6C3P
○○「もう、ここは使えませんね」
さわ子「ばれちゃった以上はね。あなたには気の毒だけど……」
○○「いえ、そもそも許されないことですし」
○○「それに女子高に潜入するのって、気が引けてたんですよ。ははっ」
梓「……」
梓「その……ちょっと、質問いいですか?」
○○「どうぞ」
さわ子「なに?」
梓「練習って、ここじゃなきゃ駄目なんですか?」
○○「というと?」
梓「家や学校でできないなら、友達の家でやるとか、スタジオを借りてやるとか……」
○○「あー、うん、そうなんですけどね」
さわ子「色々事情があるのよ、彼にも」
梓「はぁ」
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:24:13.14 ID:lCfrk6C3P
○○「ここが使えない日は、スタジオを借りてやってますよ。けど、お金がかかって仕方ないじゃないですか」
梓「確かに。そうですね」
○○「友達は……んー、まあ、俺には友達はいないと思ってもらって結構です」
梓(友達がいないって……そんなこと言うのは悲しくて辛いことなのに)
○○「あはは、俺、友達作るの苦手なんですよ」
梓(すごく明るい笑顔を浮かべてる)
さわ子「また新しい場所見つけないといけないわね」
○○「さわ子先生には迷惑かけられませんから、自分でなんとかしてみます」
梓(けど、その笑顔、なんだか嘘くさい)
さわ子「何言ってるの。そう簡単には見つからないでしょうに」
○○「大丈夫ですよ。大丈夫……」ギュッ
梓(この人……心の中ではすごく悲しんでる)
梓(きっと、ギターを練習する場所がなくなっちゃったから……)
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:25:29.45 ID:lCfrk6C3P
梓「あの!」
○○「はい?」
梓「私、黙ってます! 今日のこと!」
○○「え、けど」
梓「○○さんは、ギターの練習がしたいんですよね? 他に何も悪いことするつもりはないんですよね?」
○○「う、うん」
梓「私もギターを弾いてるんです。練習したいっていう気持ちはすごく分かります」
梓「今日のことは誰にも言いません! けいおん部の先輩たちにもです!」
梓「だから、ここで練習してもらっても、いい、ですよ」
さわ子「梓ちゃん……」
○○「……」
○○「駄目だよ、中野さん」
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:27:23.31 ID:lCfrk6C3P
梓「え?」
○○「こんな初対面の男をいきなり信用しちゃ駄目だ」
○○「人間、何考えてるか分からないもんなんだ。男は特に下心がたくさんある」
○○「中野さんみたいなかわいい人は、なおさら男に気をつけなくちゃいけない」
梓「か、かわっ!」
さわ子(さらりと言うわねえ、彼)
○○「あっと、ごめん。いきなりタメ口きいちゃって、先輩風ふかしちゃまずいですね」
○○「ごめんなさい、中野さん」
○○「というわけで、先生」
さわ子「ん?」
○○「今までありがとうございました。練習場所はなんとか見つけてみます。だから、」
梓「好きなんです!」バンッ!
○○「え?」
さわ子「あら?」
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:29:01.39 ID:lCfrk6C3P
○○「す、好きって、何が?」
梓「演奏です!」
梓「扉の前で○○さんの演奏を聞いてて、惚れ惚れしたんです」
梓「うまく言えないけど……けいおん部の先輩達の演奏に近いものを感じました」
梓「上手だし、それに、なんだか優しい感じがして」
梓「あんな演奏をする人に悪い人はいません!」
梓「だから」
梓「またここでギターを弾いてください! 先輩!」
64 :
a ◆.7FhrQ4rjk :2010/08/27(金) 02:30:55.47 ID:umuyOaeR0
しえん
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:31:26.33 ID:lCfrk6C3P
○○「……」
さわ子「あらあら。答えてあげなさいよ、『先輩』」
○○「あ、その……」
梓「……」ジーッ
○○「……うん」
○○「ありがとう」
○○「許してくれるのなら、喜んで」
○○「ここで練習させてもらいます」ペコリ
梓「はい!」パァ
1章 おわり
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:33:23.82 ID:lCfrk6C3P
さわ子「許すって言っても、学校の許可は取ってないことには変わりないけどね」ヤレヤレ
梓「私の決死の言葉に水を差さないでください」
○○「ははは」
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:34:32.32 ID:lCfrk6C3P
全10章。書き溜め終わってるけど、思ったより書き込みに時間かかったので今は寝ます。
朝にでも残ってたらここに投下、なかったら立て直します。
読んでくれてありがとう
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:51:43.81 ID:Ww9vCxeYP
全10章とは楽しみだ乙
hosyu
ほ
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 06:04:02.67 ID:Ww9vCxeYP
す
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 08:54:36.70 ID:heLqTiFs0
ろ
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 09:58:17.52 ID:lCfrk6C3P
ほ
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:06:57.10 ID:lCfrk6C3P
残っててびっくり。慌てて自分でも保守してしまった。
2章いきます。時間が許せば3章も
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:08:12.06 ID:lCfrk6C3P
2章
――月曜日 放課後 学校
律「いやー、今日のケーキもおいしかったな」
唯「なんて名前だっけ、あのケーキ」
紬「ミルクレープね。フランス語で『1000枚のクレープ』って意味なのよ」
唯「おお! あの中にはクレープが1000枚も……!」
澪「本当に1000枚重ねてたらすごい高さになるだろ」
梓「1枚5ミリとして……5メートルですか」
律「いいねえ。5メートルのケーキとか1度でもいいから食べてみたいな」
澪「お前は3口食べたら飽きたって言うだろ」
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:11:11.68 ID:lCfrk6C3P
梓「はっ、こんなことしてる場合じゃありません、練習しましょう、練習!」
唯「おー、あずにゃんがいつになくやる気だ」
律「どした? ティータイム中に練習って言い出すなんて珍しいじゃないか」
梓「……世の中には練習したくてもできない人がいるんです!」
唯「おー、それは悲しいねえ」
律「なんだか食べ残しして叱られてるみたいだな」
澪「ま、確かにそろそろ練習しようか」
ガチャ
さわ子「みんないるー?」
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:15:39.20 ID:lCfrk6C3P
唯「さわちゃん、どうしたのー?」
さわ子「ちょっと紅茶を飲みたくなっちゃって。淹れてくれる?」
紬「あ、はーい」
コポコポ
紬「はい、どうぞー」
さわ子「ありがと。あー、やっぱりこの紅茶が一番だわあ」
澪「仕事は終わったんですか?」
さわ子「休憩よ休憩。今日も夜遅くまで残らなきゃいけないのよねえ」
梓(!)
梓(もしかして……)
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:18:36.86 ID:lCfrk6C3P
――回想 金曜日
梓『○○さんは毎日ここに来るんですか?』
○○『いや、平日の放課後限定で、さわ子先生から『来ていい』っていうメールが着た時だけだよ』
さわ子『他の先生がいない時じゃないと、呼べないから』
梓『そうなんですか……』
――回想終わり
梓(今日も呼ぶつもりなのかな……)チラチラ
さわ子「……ふふ」
律「さわちゃん、何笑ってんだー?」
さわ子「あら? 笑ってたかしら」
律「ああ。梓の顔見ながら笑ってたぞ」
さわ子「んー、梓ちゃん可愛いから」
唯「うんうん、あずにゃんはかわいいよねえ」
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:21:01.10 ID:lCfrk6C3P
――下校時刻
澪「じゃ、そろそろ帰るか」
唯「今日はそんなに練習できなかったねー」
律「さわちゃんの愚痴ばっかり聞いてたからな」
紬「私は大人の愚痴も面白いと思うけれど」
梓「……」
さわ子「ふぅ、じゃあ私は職員室に戻ろうかしら」
梓「……」チラチラ
さわ子「あ、そうだわ。梓ちゃん、ちょっといいかしら。お話があるの」
梓「は、はい!」
トテトテ
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:22:48.08 ID:lCfrk6C3P
唯「あずにゃんが連れてかれた〜」
律「おやー? 梓が叱られるなんて珍しいな」
澪「梓はお前と違って叱られることなんてないだろ」
律「うわ、ひっでー。私がいつも叱られてるみたいじゃんか」
澪「部長としての仕事を滅多にしなくて、いつも怒られてるだろうが」
――部室の外
梓「あの、お話って何でしょうか」
さわ子「あら? 梓ちゃんの方が私に聞きたいことがあると思って呼んだんだけど?」
梓「あっ……」
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:23:43.98 ID:lCfrk6C3P
さわ子「ないの? あるの?」ニヤニヤ
梓「……その、あります」
さわ子「うむ、言ってごらんなさい」
梓「あの……」
梓「今日もあの人を呼ぶつもりなんですか?」
さわ子「やっぱりー。そんなに彼が気になるの?」
梓「そりゃあ気になります。この部室を使う人なんですし……」
さわ子「そっかー。梓ちゃんもお年頃かー」
梓「ど、どうしてそういう話になるんですか!」
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:25:51.50 ID:lCfrk6C3P
さわ子「ふふ。そうねー、呼ぼうかどうか迷ってる、ってところね。先週ばれたばっかりだから」
梓「私は誰にも話してません!」
さわ子「それは信じてるわ。ただ、幽霊の噂話も消えてないから、先日のあなた達みたいな子が出ないとも限らないでしょう?」
梓「むー、それは確かにです」
さわ子「ばれて減給は勘弁して欲しいのよね〜。最近服を買ったせいでカードの支払いがきつくて……」
梓「け、けど、ここが使えないとあの人は練習できないんですよね」
さわ子「そうね。最近金欠だって言ってたから、スタジオもそうそう借りられないでしょうし」
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:31:15.19 ID:lCfrk6C3P
梓(練習ができない辛さはよく分かる……)
梓(私はティータイムも楽しいから、練習が少なくても耐えられるけど)
梓(もしそういうのもなくて、学校でも家でも練習できないなんてことになったら)
梓(私、耐えられないかも)
梓「……」
梓「あの、先生」
さわ子「なあに?」
梓「私も、協力しましょうか?」
さわ子「協力?」
梓「はい、協力です。○○さんをここに呼ぶための、協力」
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:32:00.32 ID:lCfrk6C3P
梓「学校の中に生徒が残ってないかどうかの見回りとか、見張りとか……やれることはたくさんあります」
さわ子「けど、あなた自身が守衛さんに見つかったりすると、面倒よ?」
梓「その時は部活で遅くなったとか、適当に言い訳をします」
梓「あっ、そうだ、もしさわ子先生や○○さんが他の生徒に見つかっても、私がいれば『部活の一環』っていう言い訳のしようもあると思いますよ」
さわ子「うーん」
梓「大丈夫ですよ。うまくやりますから」
さわ子「あらあら、いつもは真面目な梓ちゃんが、いつからこんな悪い子になったのかしら」
梓「多分、ここの先輩たちのせいですよ。特に律先輩や唯先輩」
――部室の中
律「べーっくしゅん!」
唯「へっくしゅん!」
澪「汚いぞ、律、唯」
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:33:21.90 ID:lCfrk6C3P
――部室の外
さわ子「んー、本当は生徒を巻き込みたくはないんだけど……」
梓「……」ジーッ
さわ子「負けたわ。梓ちゃんのその熱心な視線にね」
梓「それじゃあ!」パァ!
さわ子「ええ。手伝ってもらいましょう。あとで職員室にでも来てちょうだい」
梓「はい!」
さわ子「じゃあ、彼にもメールを送っておくわ。また後でね」
梓「よろしくお願いします!」
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:35:42.15 ID:lCfrk6C3P
――部室の中
ガチャ
梓「すみません、お待たせしました」
唯「あれ? あずにゃーん、なんか嬉しそうだね」
梓「え? そうですか?」ニコニコ
唯「うん、ニコニコしてるよ」
律「なんかいいことでもあったのか?」
梓「いえ、特にはないですよ、はい!」
澪「な、なんか本当に嬉しそうだな」
紬「きらきらしてるわね」
梓「そ、そんなことは」カァ
唯「あずにゃーん、かわいいー」
律(うっわ、赤い顔した梓ってかわいいなあ)
澪(な、撫でたくなる)
紬(うふふふふ)
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:37:31.70 ID:lCfrk6C3P
律「よーし、梓も戻ってきたし、帰るか」
唯「帰りに肉まん買って帰りたいなー」
澪「春になっても肉まんって売ってるのか?」
紬「わあ、私はピザまんっていうのを食べてみたい」
梓「あ、あの!」
律「どした?」
梓「私、さわ子先生とのお話がまだ済んでなくて、今から職員室に行かなくちゃいけないんです」
澪「お話って……もうすぐ下校時間だぞ?」
梓「先生がついてるからそれは気にしなくていいらしいです」
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:38:51.83 ID:lCfrk6C3P
唯「あずにゃん、叱られてるのー?」
梓「違いますよ。その……音楽活動に関するお話みたいなものです」
澪「だったら私たちにも関係あるんじゃないのか?」
梓「い、いえ。これは私個人の話ですので」
律「ふーん、音楽活動ねえ。CDデビューでもするのか?」
唯「すごいねあずにゃん! オリコン1位狙うの?」
梓「そういうのじゃなくて、練習関係のお話です!」
紬「だったらなおさら私たちもいた方がいいんじゃない?」
梓「あう……だ、大丈夫ですから! 先輩たちは先に帰っていただいて結構です!」
ダダダダダ!
唯「ありゃ、行っちゃった」
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:40:13.38 ID:lCfrk6C3P
――帰り道
律「梓の奴、なーんか変だったな」
澪「挙動不審だった」
紬「何か隠し事かしら」
唯「えー、あずにゃんが? あずにゃんはそんな悪い子じゃありません!」
律「いやいや、案外私たちと別れた後、どっかで男と待ち合わせしてたりとか」
澪「それはさすがに……」
紬「あるのかしら?」
唯「あずにゃんの浮気者ー」
律「まあ、梓って男慣れしてない感じだからな。男と待ち合わせって線は薄いな」
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:40:54.32 ID:lCfrk6C3P
――学校
梓(ちょっと強引すぎたかな……もう少しうまい言い訳を考えておかないといけないなあ)
ガラ
梓「さわ子先生、来ましたよ」
さわ子「あ、ちょうど良かったわ。もうすぐ彼も到着するらしいから、梓ちゃんは校内を1度見回ってくれる?」
梓「はい、分かりました」
さわ子「終わったら部室に直接来てちょうだい」
91 :
さるさんがきついなあ:2010/08/27(金) 11:01:05.87 ID:lCfrk6C3P
――校舎内 廊下
梓(うぅ、やっぱり夜の学校ってちょっと怖いなあ)
梓(今はまだ太陽が沈みきってないからいいけど)
梓(あんまり帰りは1人になりたくないなあ)
タタタタ
梓(うん、校舎の中には誰もいないかな)
梓(守衛さんの見回りはもう少し後らしいし)
梓(体育館は……あ、先生と生徒かな。校門の方に向かってく)
梓(うん、多分校舎の中は大丈夫)
この梓可愛い
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:05:31.40 ID:lCfrk6C3P
――部室
梓(うわ、やっぱりばれないために電気は点けないんだ。暗いよ……)
梓「こ、こんばんはー」
さわ子「あ、来たわね」
○○「こんばんは、中野さん」ペコリ
梓「○○さん、こんばんは。お久しぶりです」ペコリ
○○「と言っても、3日ぐらいしか経ってませんけどね」
梓「そうですね。あ、もうギターを出してたんですか」
梓(○○さんのギター……暗くてよく見えないけど)
梓(多分、リッケンバッカーだ。シリーズまではちょっと分からないかな)
梓(うん、ロゴもあるし、カッタウェイも大きい。間違いない)
梓(絵になってるなあ……身長高いし、黒いボディが映えてる)
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:10:19.24 ID:lCfrk6C3P
○○「よし、チューニングも終わりっと」
さわ子「梓ちゃん、扉はちゃんと閉まってる?」
梓「はい、大丈夫です」
さわ子「じゃ、○○君は適当に練習しときなさい。アンプはなるべくつけないこと。私は梓ちゃんと遊んでおくから」
梓「え、ええ!?」
○○「ははは、ではお言葉に甘えて」
ジャン♪
梓「あっ……」
梓(弾き出しの音がやっぱり優しい……私とも唯先輩とも違う弾き方だなあ)
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:14:56.47 ID:lCfrk6C3P
ジャン♪ ジャカ♪
梓(リッケンバッカーの音って独特……高音がよく出てて)
ジャン♪ ジャカ♪
梓「……」ジーッ
さわ子(梓ちゃん、集中してるわねえ。いじり倒せる雰囲気じゃないわね)
梓「……」ジーッ
さわ子(そんなに彼のこと凝視して……ふふふ、それでもちょっかいかけるのが私なんだけど)
プニュ
梓「うに! さ、さわ子先生?」
さわ子「梓ちゃんのほっぺたは柔らかいわねえ」プニプニ
梓「いきなり何を! わっ!」
ムニムニ
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:18:14.82 ID:lCfrk6C3P
ジャン♪ ジャカ♪
○○「ふぅ……ちょっと休憩。って、何してるんですか?」
さわ子「梓ちゃんと遊んでるの」
梓「先生に遊ばれてるんです」
○○「はあ。仲が良いんですね」
梓「これはただいじめられてるだけです! ほら今もひょうやってひょっへはは」
さわ子「ふふふふ、ほっぺたが伸びるわー」うにょーん
梓「うにゃー!」
○○「先生が楽しそうで何よりです」
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:22:34.23 ID:lCfrk6C3P
梓「と、ところで今○○さんが弾いてた曲って」
○○「これですか? スコア見ます?」
梓「はい、って、○○さん、前から気になってたんですが」
○○「なんでしょうか」
梓「○○さんが先輩なんですから、敬語を使わなくてもいいですよ。というより、年下に敬語って変だと思います」
○○「……そうですか?」
梓「なんだか違和感です」
○○「……そっか。分かった。これでいいかな?」
梓「はい!」
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:25:22.33 ID:lCfrk6C3P
梓「んー、この曲……」
○○「ただの練習曲だよ。オリジナルの」
梓「え? ○○さんって作曲もするんですか?」
○○「いや、これは知り合いの人から貰っただけ。練習に使ってくれってね」
梓「へえ……確かに、運指の練習にはいいかも。難しいコード移行もあるし……」
○○「最初にこれを弾いて指を温めた後、普通の曲を練習するってわけ」
梓「じゃあ、次は何の曲を?」
○○「んー、適当にスコア持ってきたんだけど……」ガサゴソ
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:28:37.92 ID:lCfrk6C3P
梓「色々ありますね。あ、ビートルズ」
さわ子「たまにはバラードもいいんじゃない?」
○○「エレキでバラードですか。まあ、できないこともないですけど」
梓「アコギの方が雰囲気出そうですけどね」
○○「暗い中でバラード弾いてると悲しくなりそうだ、っゴホッ! ゴホッ!」
梓「だ、大丈夫ですか?」
梓(○○さんってよく咳してるけど、風邪かな?)
梓「体調悪いんですか?」
○○「いやー、ちょっと前に風邪引いてね。風邪自体は治ったけど咳だけが止まらなくって」
梓「病院に行って診てもらった方がいいですよ」
○○「……ん、だね」
さわ子「……」
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:31:08.86 ID:lCfrk6C3P
――1時間後
さわ子「そろそろ時間よ。片付けなさい」
○○「あ、はい。ゴホッ! ゴホッ!」
さわ子「ほら、お茶よ」
○○「ありがとうございます」
梓「風邪の後なら喉は乾燥させないようにしましょうね」
○○「ん、ありがと」
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:34:18.27 ID:lCfrk6C3P
――後片付け後
さわ子「もう8時ね。梓ちゃん、車で送っていこうか?」
梓「いえ、大丈夫です。このぐらいの時間なら全然」
さわ子「けど、夜に1人で帰るのもねえ……○○君も車で送ってあげるから、もう1人増えても大丈夫よ?」
梓「え? ○○さんもですか?」
さわ子「ええ。大人として当然の義務ですから」
梓「……」
梓「分かりました。お願いします」
○○「準備できました」
さわ子「じゃ、いきましょう」
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:45:44.78 ID:tcDIAhG40
追いついた支援
筒井康隆を感じるぜ
頑張れ
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:49:54.94 ID:xzNKWlU70
またさるってる? さるよけ支援
104 :
さるさん働きすぎ:2010/08/27(金) 12:01:11.86 ID:lCfrk6C3P
――さわ子の車の中
さわ子「シートベルトは締めた?」
○○「はい」
梓「はい」
さわ子「じゃ、出発ね。まずは梓ちゃんの家に行きましょう」
ブロロロー
○○「……」
梓「……」
梓(さわ子先生に無理やり後ろの席に座らされたけど……○○さんも後ろだなんて)
梓(距離が近い……)
梓(それに話ができないなあ。何を話せばいいんだろ)
梓(練習中は話せるんだけど……)
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:02:51.49 ID:xzNKWlU70
きたか 支援
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:07:05.05 ID:lCfrk6C3P
○○「あの、中野さん」
梓「は、はい!」
○○「今日はありがとう。手助けしてくれたんだよね」
梓「い、いえ。そんな……」
○○「最近は他に練習する場所が確保できなくって、困ってたんだ。あそこを使わせてもらって、本当にありがたい」
梓「……普段はスタジオを借りてるんですよね。あ、前にも聞きましたね、これ」
○○「うん、だね。スタジオって高いから、1人で借りるのはきついんだよねえ」
梓「普通はバンドメンバーみんなで借りるものですし」
○○「スタジオで1人練習してると、なんだか寂しいしね。今日はさわ子先生と中野さんがいてくれて、本当に楽しかったよ」
梓「い、いえ、私は何もやってませんし……」
○○「聴いてくれてるだけでも結構違うから」
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:10:07.02 ID:xzNKWlU70
4
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:11:25.85 ID:lCfrk6C3P
梓「次に部室が使えるのはいつなんでしょうか」
○○「それはさわ子先生次第だね。どうなんですか、先生?」
さわ子「んー、今週はもう無理かも。明日から連日、放課後に会議があって、長引きそうだから」
梓「そうなんですか……」
○○「じゃあ仕方ないですね」
さわ子「ごめんね。また来週になるわ」
○○「いえいえ」
梓「残念ですね」
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:15:25.58 ID:lCfrk6C3P
――梓の家の前
梓「ありがとうございました、先生」
さわ子「いえいえ。また明日ね」
梓「はい。○○さんも……私、またお手伝いしますね!」
○○「ありがとう」
さわ子「じゃあねー」
ブロロロロー
梓「……」
梓(楽しかった、かな)
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:17:25.06 ID:xzNKWlU70
4
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:19:58.13 ID:lCfrk6C3P
――さわ子の車の中
さわ子「……」
○○「……」
さわ子「楽しかった?」
○○「……はい」
さわ子「あの子、多分これからも来てくれるでしょうね」
○○「はい」
さわ子「……色々と言わなくてもいいの?」
○○「余計な心配はかけたくありません」
さわ子「あら、私にはいいの?」
○○「先生は先生ですから」
さわ子「……ま、そうね。先生と友達じゃ、色々と距離感が違うもんね」
○○「はい」
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:23:13.49 ID:lCfrk6C3P
――火曜日 放課後 部室
梓「唯先輩! 練習です練習!」
唯「あーうー、あずにゃんが厳しいよー」
律「梓の奴、どうしたんだ? すっげーやる気だな」
澪「いいことじゃないか……と言いたいけど、ちょっと焦りすぎてるな」
紬「何かあったのかしら」
唯「あれ? この楽譜、なんだろー」
ペラ
唯「びーとるず?」
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:23:47.79 ID:xzNKWlU70
4
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:25:38.06 ID:lCfrk6C3P
澪「ビートルズの『カム・トゥゲザー』か」
律「ギター用のスコアだな」
梓(あ、それって昨日の……○○さん、忘れていったんだ)
唯「誰のー?」
澪「知らないな」
律「私でもないぞ」
紬「私も」
梓「あ、私のです。たまにはこういう曲もいいかなって……」
VIPじゃあんま無いけど
他所のSSサイトとかこういうオリ男とけいおんメンバーのSSみたいなの多くてマジでウンザリする
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:26:54.73 ID:xzNKWlU70
4
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:28:31.71 ID:lCfrk6C3P
唯「へー。どういう曲なのー?」
梓「リズムが独特で……ゆったりしてるけど、そのゆったり感を出すのが肝の曲ですね」
唯「おもしろそうだね。んー、ちょっと弾いてみようかなあ」
梓「あ、じゃあ私もお手伝いします」
律「私らは一緒にできないか」
澪「ギタースコアだけじゃあなあ」
紬「今度楽器店に行った時にバンドスコアも買ってみましょうか」
律「いいねー」
澪「ビートルズか。私たち、あんまり弾いたことないな」
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:41:18.52 ID:lCfrk6C3P
ジャカジャカ♪
唯「んー、こんな感じ?」
梓「は、はい。唯先輩、初見でこれだけ弾けるんですね……」
唯「あずにゃんのおかげだよー。私1人じゃ楽譜全部読めないもん」
梓(すごいなあ、唯先輩。ちゃんと練習すればすごく上手になるのに)
梓(もったいない……)
唯「けど、リズムが取りづらい感じだね」
梓「ドラムとベースがあればもう少し楽ですよ」
梓(そういえば○○さんはドラムなしなのにリズム取り完璧だったなあ)
梓(けど、所々コードミスもあったし)
梓(1度の練習だけじゃ、○○さんの実力よくわかんないや)
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:44:41.23 ID:lCfrk6C3P
唯「あずにゃん、考え事?」
梓「え? あ、すみません。次ですね」
唯「何考えてたの? 今日のおやつ?」
梓「違います。ギターについてですよ」
唯「おー、あずにゃん、今日はほんとにやる気満々だねー」
梓「いつもそうですよ」
唯「いやいやー、あずにゃんも成長したんだねえ」ナデナデ
梓「……頭を撫でないでください」
律「そだぞー、成長が止まるからな」
梓「そんなことありません!」
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:47:33.99 ID:tcDIAhG40
しえんぬ
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:48:02.22 ID:xzNKWlU70
4
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:51:34.73 ID:xzNKWlU70
4
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:00:37.18 ID:lCfrk6C3P
――皆でセッション中
ジャジャジャ、ジャン!
律「ふぅー、今のは良い感じだったな」
澪「ああ。梓と唯のギターが引っ張ってくれたな」
紬「弾きやすかったわあ」
唯「えへへー」
梓「ど、どうもです」
律「んじゃま、今日はこのぐらいにして帰るかー」
澪「もうすぐ下校時間か……うぅ、早く帰ろう」
紬「あらあら、澪ちゃん、まだ幽霊のこと引きずってるの?」
澪「引きずるなって言う方が無理だ……」
唯「あずにゃん、忘れ物しちゃ駄目だよ?」
梓「大丈夫です、今日は取りに戻ることなんてありえませんから……」
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:01:11.87 ID:xzNKWlU70
4
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:02:52.09 ID:xzNKWlU70
4
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:05:15.96 ID:lCfrk6C3P
――夜 梓の自室
梓「よっと。そろそろ寝ようかな」
梓「わー……ベッド気持ちいい……」
梓(今日はいっぱい練習できたなあ)
梓(普段からあれぐらいしてくれたらいいのに)
ゴロゴロ
梓(……○○さんは練習できてるのかな)
梓(そう簡単にスタジオは借りられないだろうし、できてないのかも)
梓(それに、ずっと1人で練習してて……私みたいにバンドで合わせたりもできない)
梓(……)
梓(なんとかしてあげたいなあ)
梓(……)
梓(あれ?)
梓(私って世話焼きだったのかな)
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:06:04.86 ID:xzNKWlU70
4
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:07:40.16 ID:xzNKWlU70
4
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:09:49.04 ID:lCfrk6C3P
――水曜日 昼休み 学校
純「梓、考え事?」
梓「へ?」
純「なんか今日はぼんやりしてるよ」
憂「だね。話しかけても上の空だし」
梓「そ、そうかな?」
純「なんかあったなら、私たちに話してみ?」
憂「力になるよー」
梓「う、うーん」
梓(そんなに考え事してたかな……うん、してたかも)
梓(ちょっと相談してみるかな)
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:10:44.40 ID:xzNKWlU70
4
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:15:49.12 ID:lCfrk6C3P
梓「あのね」
純「ん?」
梓「もし家や学校でギターの練習ができなかったとして、他の練習場所って思いつく?」
憂「練習場所? 梓ちゃん、練習場所がないの?」
純「それはないでしょ。いっつも放課後はけいおん部に行ってるのに」
梓「ただの例え! うん、例え話!」
純「ふーん。そうだなあ……家と学校以外なら、スタジオとか公園とか? 音のこと気になるなら都会じゃなかなかねえ」
憂「あれ? けどエレキギターってヘッドフォンつけての練習もできるよね」
純「んー、梓の言うギターってエレキだよね?」
梓「うん」
純「だったら自分の部屋使って練習もできるはずだけど……そもそも家でも学校でも練習できないって、どういう理由?」
梓「さ、さあ?」
純「さあって……梓の考えた例え話でしょ?」
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:20:11.57 ID:lCfrk6C3P
梓「そこまで深く考えてなかったから……」
純「なんだそりゃ」
憂「あ! カラオケボックスとかどう?」
梓「……それって店の人許してくれるのかな」
憂「どうだろー」
純「結局、楽器って練習場所に困るもんだよねえ」
梓「まあ、音が出るものだし……」
純「トランペットとか、防音設備ないとちゃんと音出せないからね。ジャズ研の子も外で練習できないって困ってたなー」
憂「お姉ちゃんは家でできるから安心だね」
梓(なかなか場所ってないなあ……けど、カラオケボックスは今度提案してみようかな)
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:26:33.18 ID:lCfrk6C3P
――放課後 部室
律「っしゃー! 勝ったー!」
唯「あうー、私のケーキがー」
澪「お前のじゃなくて、余ったケーキだろ」
紬「りっちゃん、じゃんけん強いのねえ」
梓「……はぁ」
律「ん? どした梓? そんなにケーキが食べたかったのか?」
梓「いえ……」
紬「今日の梓ちゃんはちょっとアンニュイね」
唯「あんにゅい? それっておいしいの?」
澪「違う。憂鬱って意味だよ」
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:30:54.29 ID:lCfrk6C3P
梓「いえ……なんだか私、恵まれてるなあ、っと思っただけです」
唯「恵まれてるー?」
律「それって紅茶とかケーキのことか?」
梓「それもありますが……ギターが弾けて、先輩たちがいて……こういう日常が過ごせるのはすごいことなんだな、と」
律「なんだなんだ? 今になって私らの尊さが分かったってことか?」
澪「どうしたんだ梓。何か嫌なことでもあったのか?」
紬「何でも相談してね」
梓「いえ、ちょっと思っただけです。ありがとうございます」
梓(はあ……どうして私、こんなに気になってるんだろ)
梓(やっぱり世話焼きなのかなあ)
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:35:23.69 ID:lCfrk6C3P
梓(……せめて、○○さんがここで練習できる時は、有意義に練習できたらいいんだけど)
梓(1人でやるだけじゃなくて、バンドを……ううん、せめて誰かとセッションできたらいいのに)
梓(……)
梓(あ、そっか)
梓(私が一緒に練習すればいいんだ)
ガチャ
さわ子「ごめーん、ちょっといい?」
律「さわちゃん、どしたの?」
さわ子「梓ちゃん借りていっていい? ちょっと運び物があるのよ」
梓「私?」
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:38:12.79 ID:xzNKWlU70
展開遅い。切るわ
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:38:53.09 ID:lCfrk6C3P
律「おいおい、梓じゃちっこすぎて役に立たないだろ」
梓「むぅ」
梓「そんなことはありません! こう見えて私は力持ちです!」
律「じゃあ、ムギと腕相撲してみ」
梓「やってやるです!」
――数分後
梓「腕痛いです……」
紬「ご、ごめんね梓ちゃん。力加減できなくって」
唯「すごいねー。こう……ぐわっ! ごつん! って感じだったよー」
さわ子「もういい? 梓ちゃん、行くわよ」
梓「はい……」
139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:43:59.20 ID:hhK+E03s0
じゃあ俺も切ろう
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:45:19.84 ID:lCfrk6C3P
――部室の外
梓「それで先生、非力な私は何を運べば……」
さわ子「やあねえ。本当に荷物運びだと思ったの?」
梓「え?」
さわ子「いい事を教えてあげにきたの。今日、予定されていた職員会議がなくなったわ」
梓「あっ……それじゃあ」
さわ子「先生方はどうも放課後に飲み会に行くらしくてね。多分校舎の戸締りは私の係になるわ」
梓「……先生、誘われなかったんですか?」
さわ子「何か言った?」ギロリ
梓「い、いえ、何も」
141 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:00:19.15 ID:lCfrk6C3P
さわ子「ならいいわ。彼にはもうメールを送ってある。来るって言ってるわよ」
梓「あっ」
梓(良かった……練習できるんだ)
さわ子「で、梓ちゃんはどうする? また手伝う? このまま帰る?」
梓「……」
梓(よ、よし、まだちょっと決意が固まってないけど……!)
梓「手伝います!」
さわ子「良かった。じゃあ、部活が終わったらまた職員室に来てちょうだい」
梓「はい!」
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:05:22.36 ID:lCfrk6C3P
――放課後 下校時
唯「今日はあんまん食べたい気分だねー」
澪「また買い食いか……ほどほどにしろよ」
律「澪だってまんざらじゃないくせに」
紬「私、またピザまんにしたい!」
梓「あ、あの!」
澪「ん? どうした梓」
梓「わ、私、またさわ子先生に呼ばれてまして……」
唯「もしかしてまだ荷物運び終わってなかったの?」
梓「そ、そんな感じです」
律「うっし、だったら私たちも手伝ってやるよ」
澪「お、律が意外なことを」
梓「いえ! あと少しで終わる仕事なので……先輩たちは先に帰っててください! それでは!」
ダダダダダ!
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:09:12.82 ID:lCfrk6C3P
律「なーんか最近の梓は変だ」
澪「だな」
唯「もしや……もしかしたら、さわちゃんにいじめられてるのかも!」
紬「い、いじめって、どんな風に……?」
唯「新作の衣装の着せ替え人形にさせられてたりとか!」
紬「……」ポワワーン
澪「はいはい、変な妄想はいいから、早く帰ろう。ムギも呆けてないで」
紬「私、着せ替え人形が欲しいと思ってたのー」
律「うお! いきなり意外な趣味をカミングアウトしたな」
澪「なんだか危険な言葉だ……」
唯「どしてー?」
律「お前にはまだ早いよ」
支援
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:16:33.04 ID:lCfrk6C3P
――夜7時頃 部室
梓「どうも○○さん、こんばんは」
○○「こんばんは、中野さん」
梓「これ、昨日忘れてたみたいですよ、スコア」
○○「あっと、ごめん。ありがとう」
さわ子「ちょっとー、あんまりそういう忘れ物はしないでよね。ばれたらどうするの」
梓「私がフォローするので大丈夫ですよ」
○○「いやはや、ありがとう、中野さん」
梓「いえいえ」
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:18:08.76 ID:lCfrk6C3P
さわ子「じゃ、適当に練習してなさい。私は今日も梓ちゃんで遊んでるわ」
梓「『と』じゃなくて『で』になってますよ!」
さわ子「ふふふふー」ワキワキ
梓「だ、駄目です! ○○さん! 今日は私も一緒に練習します!」
○○「え?」
さわ子「あら」
梓「その……1人でやるより2人でやった方が効率がいいかと思って……」
梓「セッションしたり、苦手なところを教えあったりすれば上達も早まりますし」
梓「あ、私が先輩である○○さんに教えるなんて、そんな失礼なことはもちろんしませんが!」
さわ子「いつも唯ちゃんに教えてるじゃない」
梓「あう」
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:25:38.00 ID:lCfrk6C3P
梓「と、とにかく、私も練習に加えていただけませんか……?」おずおず
○○「……」
○○「うん、ありがとう、中野さん」
○○「中野さんがよければ、喜んで。むしろお願いしたいぐらいだよ」
梓「は、はい!」パァアア!
さわ子(うわあ、梓ちゃんかわいい顔するわねえ)
梓「じゃ、じゃあ今から用意しますね!」
○○「うん、ありがとう」
さわ子(彼も嬉しそうだし……あらあら、もしかしたら瓢箪から駒が出るのかしら)
148 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:29:49.48 ID:lCfrk6C3P
○○「中野さんのギターは……なんか本格的だね」
梓「そ、そうでしょうか。○○先輩の方が独特でエレキっぽいと思いますが」
○○「んー、中野さんのこれって名前なんだったかなー……マスタング?」
梓「それは原音読みですね。日本ではムスタングと言う方が一般的かな」
○○「中野さんには大きくない?」
梓「そんなことは」
さわ子「梓ちゃんは、その小さな身体で大きなギターを持っているのがいいんじゃないの」
○○「なるほど」クスクス
梓「私はそこまで小さくありませんー!」
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:33:05.52 ID:lCfrk6C3P
梓「○○先輩のギター、リッケンバッカーですよね」
○○「ああ、うん、そだね……ですよね、先生?」
梓(自分のギターのことを知らない?)
さわ子「そうよ。リッケンバッカーの360ね」
さわ子「ビートルズのジョージ・ハリスンなんかが使っていたことで有名よ。あっちは12弦だったけど」
梓「へえー」
○○「へー」
梓「って、先輩、知らなかったんですか!?」
○○「楽器屋で一目惚れして買ったから、あんまりこのギター自体には詳しくなくって」
梓(唯先輩みたいな人だなあ)
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:40:10.74 ID:lCfrk6C3P
うーん、さるを怖がると全然進まないか。まだ2章も半分ぐらいだってのに。
これから0時過ぎまで出かけます。7時ぐらいでも時間が空けば1時間ほど投下できるかも。
ひっそりとやっていきたいですが、後々さる対策でP2と通常ID使い分けてみようかと思います。
読んでくれる人がいてたら、ありがとう。残ってたらまた会いましょう。
読んでるぞ
乙
0時過ぎまで予定が詰ってるVIPPERなんていなかったのにな・・・
時代は変わったもんだ。とりあえず保守
☆彡
155 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 17:46:34.28 ID:Ww9vCxeYP
ほ
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 17:51:01.44 ID:UpzBOlCo0
流れ保守
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 18:15:12.51 ID:0HTkgUNh0
保守
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 18:16:20.41 ID:Xfzk/FfZ0
ちゃんと読んでるぞ!
だから最後まで書けよー?
保守
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:20:22.75 ID:xpb1E7340
ほ
160 :
1:2010/08/27(金) 19:24:00.01 ID:lCfrk6C3P
>>153 ただのバイトですよん。
今から休憩なので8時ぐらいまで投下します
161 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:28:33.83 ID:lCfrk6C3P
梓「先輩、それじゃあどの曲を弾きましょうか」
○○「まずはいつもの練習曲を……そういえば、中野さん」
梓「はい?」
○○「いつの間にか『先輩』って呼ぶようになってるけど……」
梓「え?……あ、ほんとだ」
○○「いや、まあ別にいいんだけど、部活の先輩でもないのにいいのかなって」
梓「な、なんだか一緒に練習するとなると先輩ってつけなきゃいけないような、そんな感じがしまして……」
さわ子「いいんじゃない? ○○君も先輩って呼ばれるとドキドキするでしょ?」
梓「そ、そうなんですか?」
○○「……あはははー。まあ、いいんじゃないかな」
さわ子(するんだ)
梓(するのかな……)
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:31:54.33 ID:lCfrk6C3P
――練習中
○○「ふ、ふぅ。ちょ、ちょっと休憩」
梓「あ、はい」
○○「はぁー、ふぅー」
さわ子「……」
○○「中野さん上手いね。俺なんかより全然」
梓「そ、そうですか? 先輩の方が上手だと思いますよ」
○○「いやいや、ここのコードとか押し間違えたし」
梓「だったら、私もこの辺りのリズム狂っちゃいましたよ」
○○「……」
梓「……」
○○「はは」
梓「ふふふ」
○○「お互い様、か」
梓「ですね」
163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:37:18.27 ID:lCfrk6C3P
梓「このコードに移るのは難しいですけど、指の力をきちんと抜けば無理なく動かせますよ」
○○「んー、じゃあこういう感じか」
ジャン♪ ジャカ♪
梓「そうですそうです。力がちゃんと抜けてるとトリルにも難なく移れます」
○○「ほうほう」
チャラリラチャラリラ♪
梓(あ、トリルはすごく上手い……)
梓(んー、なんだろ。演奏技術はすごいのに、基礎的なコード、いや、違う。人に教えられないと分からない部分をミスしてる)
梓(……なんというか、歪みのある不安定な土台の上でトランプタワーしてるみたいな感じで)
梓(不思議な人だなあ。唯先輩並に不思議だ)
○○「あ、上手くできた」
梓「じゃあ、次は」
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:41:15.69 ID:lCfrk6C3P
――セッション中
ジャンジャカジャンジャ♪
梓(あ、すごい。今、ぴったりと音が合った)
梓(教えた歪みが全部修正されてる)
梓(……こんなに気持ちよくセッションできてるの初めてだ)
ジャンジャk♪
梓(! しまった! 音が走っちゃった!)
梓(しゅ、修正しないと……! 駄目だ! 1度崩れるとそのまま……!)
ジャンカジャカ♪
梓(あ)
梓(先輩、リズム変えた……いや、私に合わせたんだ)
○○「……」ニコッ
梓(引っ張られる……先輩に引っ張られて、自然と音が直ってく)
梓(……すごいなあ)
梓(このままずっと弾けたら、いいな)
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:45:59.80 ID:lCfrk6C3P
――1時間後
ジャンジャカジャン♪
さわ子「はーい、そろそろ帰るわよー」
梓「え? もうそんな時間?」
○○「はぁはぁ……集中してたから、早いねえ。ゴホッゴホッ!」
さわ子「はい、お茶」
○○「ど、どうも」
梓「先輩、まだ風邪治りきってないんじゃないですか?」
○○「ごくごく……ふぅ、そ、そうかもね」
梓(同じくらいの時間演奏してたのに、先輩だけ息切れしてる)
梓(そんなに激しい曲じゃなかったんだけど……)
梓(先輩、風邪なのに無理してここにきたのかな)
166 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:50:10.76 ID:lCfrk6C3P
――さわ子の車の中
さわ子「シートベルト締めたわね。じゃ、行くわよー」
ブロロロー
梓「先輩、風邪が長引いてるならちゃんと病院に行きましょうね」
○○「うん、分かってるよ。心配してくれてありがとう」
梓「し、心配じゃなくて、その……」
さわ子「ふふふ、梓ちゃんも彼と一緒に練習したいのよね」
梓「そんな感じです! 無理して倒れられたら、あんな良い練習できなくなります! それはヤです!」
○○「分かった。中野さんのためにも体調には気をつけるよ」
梓「約束ですよ!」
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:58:33.82 ID:lCfrk6C3P
――梓の家
梓「では、また練習しましょうね」
○○「うん、楽しみにしてる。今日言われたところは全部直してくれるから」
梓「私ももっと精進します!」
さわ子「じゃ、出すわねー」
○○「ばいばい」フリフリ
梓「あ、はい、さようなら!」フリフリ
ブロロロロー
梓「……」
梓(すっごく楽しかったなあ)
梓(けいおん部の先輩たちと演奏してるみたいだった)
梓(……)
梓(今度はいつ練習できるのかな)
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:02:29.65 ID:lCfrk6C3P
――さわ子の車の中
さわ子「……」
○○「……」
さわ子「無理しちゃ駄目よ」
○○「……はい」
さわ子「そりゃあ、梓ちゃんがいたから張り切るのは分かるけど」
○○「すみません」
さわ子「……面倒なことになるのは嫌だからね」
○○「……はい」
さわ子(ふぅ……大丈夫かしら)
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:06:40.41 ID:lCfrk6C3P
今はここまで。また0時半に再開します。
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:33:26.51 ID:NnUkNEzp0
ほっしゅ
171 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:34:42.26 ID:Ww9vCxeYP
ほしゅしゅ
172 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:04:13.40 ID:xpb1E7340
ほ
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 22:01:25.82 ID:xw+TULRv0
hrs
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 22:19:37.75 ID:lD19Vfxn0
ほ
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 22:55:16.66 ID:xpb1E7340
う
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 23:44:58.93 ID:xpb1E7340
か
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:00:39.28 ID:fKivUt5Y0
い
ま
あと22分
あと1分ちょい
-2分
182 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 00:37:48.62 ID:9lsrPM6h0
なんかやってんの?
183 :
1:2010/08/28(土) 00:44:45.01 ID:ref/d9fdP
すみません。ちょっと遅れてしまいました。今から始めます。
さる避けのためにふたつのID使って投下するので、トリップつけていこうと思います。
スレ残してくれて感謝。
184 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 00:48:01.32 ID:ref/d9fdP
――木曜日 放課後 部室
梓「……」ソワソワ
律「梓ー? 何そわそわしてるんだ?」
梓「え、え? そうですか?」
澪「うん、さっきから扉の方をチラチラ見てるし」
紬「お茶とケーキにも手をつけてないわ」
唯「誰か待ってるのー?」
梓「そんなことは……」
ガチャ
梓「っ!」くるり
和「部活中にごめんなさい、ちょっといいかしら」
梓「……」ずーん
律「ありゃま」
和「な、何。私、何かした?」
185 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 00:49:38.67 ID:AL8oboNZ0
唯「和ちゃんはどうしたのー?」
和「他校からこんなチラシが送られたのだけど、けいおん部は興味があるかなと思って」
ペラ
律「合同音楽フェスティバル?」
和「ええ。この付近の高校の音楽部が一緒になってコンサートを開く催し物よ」
澪「こんなのやってたんだ」
和「今年から始まったらしいわ。生徒会や地元商店街も参加する、かなり大きなイベントよ」
唯「おー、なんか色んな高校が参加してるんだねー」
紬「全部この辺りの高校ね。△△学園、□□高校、××高校……」
梓(××高校? どこかで聞いたような……)
和「桜高からもジャズ研が出る予定なんだけど、けいおん部はどうする?」
梓(うーんうーん)
186 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 00:51:46.48 ID:ref/d9fdP
律「んー8月下旬開催かー」
澪「まだ4ヶ月以上あるな」
紬「けど、2学期は文化祭もあるし、日程的に辛いかも」
和「応募の締め切りはまだ先だから、ゆっくり考えてもらっていいわよ」
梓(うーん……あっ!)
梓「××高校!」
律「うお!」
澪「ひゃあ!」
紬「わっ」
唯「あ、あずにゃん、びっくりしたよ!」
梓「あ……すみません」カァ!
187 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 00:54:02.85 ID:AL8oboNZ0
律「どうしたんだ? ××高校が何かあるのか?」
梓「い、いえ。なんでもないです、はい、なんでも」
澪「知り合いがそこにいるとか?」
梓「そうです! 中学の時の友達がそこに行ってて、それを思い出したんです!」
澪「そ、そうか。まあ、もう少し小さな声で思い出してくれ」
梓「すみません……」
梓(××高校……○○先輩が行ってる学校だ)
梓(こんな所でこの名前を聞くなんて)
188 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 00:55:42.87 ID:ref/d9fdP
和「じゃあ、参加するかは保留ってことでいいのね」
律「だな。余裕があったら参加することにするよ」
澪「受験勉強もあるし、あんまり余裕ないかもな」
紬「私は出てみたいわあ」
唯「私も私も! おっきい舞台でギターをぎゅわああん! って弾いてみたい!」
澪「大きい舞台だったらやだな……」
梓「……」
唯「あずにゃんはー?」
梓「え?」
唯「これ、出たい?」ペラ
梓「あ……そうですね。ちょっと興味あります」
唯「だよねだよね」
律「ま、夏休みが始まる前に決めたらいいらしいし、もう少し考えてみるか」
189 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 00:56:23.31 ID:AL8oboNZ0
――帰り道
梓(結局今日はさわ子先生、部室まで来なかったな……)
梓(今日は練習なし、か)
律「おっ! メロンパン売ってるぞ!」
唯「ほんとだー! 私買ってくるー! あずにゃんも行こう!」
梓「わわっ!」
紬「あれって車よね? 車でメロンパン売ってるの?」
澪「ああ。あの中でメロンパン焼いてるらしい」
アリガトゴザマシター
唯「もふもふだねー。もふもふー」
紬「すごいわすごいわ! メロンパンよ! 熱々よ!」
律「ムギの奴、えらく興奮してるなー」モキュモキュ
澪「初めて見たらしいからな」
唯「あずにゃんおいしいねー」
梓「は、はい!」
190 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 00:57:09.21 ID:ref/d9fdP
――梓の自室
梓「ふぅ、今日の宿題は終わり、っと」
梓「……ちょっとギター弾こうかな」
梓「ヘッドフォンつけて、と」
ジャンジャカ♪
梓「ふんふーん……うん、いい感じ」
梓(けど、指がちょっと動きづらいかな)
梓(前に○○先輩に見せてもらった練習曲、どんなだっけ。あれ、いい指の運動になるんだけど)
梓(……はぁ)
梓(やっぱり気になるなあ)
梓(次はいつ一緒に練習できるんだろ)
191 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 00:58:18.79 ID:AL8oboNZ0
――金曜 昼休み 廊下
梓(ちょっと飲み物買ってこようかな)
トテトテ
さわ子「中野さーん」
梓「あ、さわ子先生」
さわ子「ちょっといいかしら。こっちに」
梓「は、はあ。なんでしょうか」
さわ子「実はね……今日なんだけど」
梓(!)
梓(まさか)
梓(今日は○○先輩が……!)
さわ子「あのね」
梓「ごくり」
さわ子「……無性にケーキが食べたいから、けいおん部で用意しておいてほしいのよー」
梓「あう」がくり
192 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 00:59:00.48 ID:ref/d9fdP
梓「そういうことはムギ先輩に言ってください!」ぷんすか
さわ子「それもそうね。あ、それともう1つあったわ」
梓「なんですか!」
さわ子「今日の夜も、やるから」
梓「……え?」キョトン
さわ子「会議は昨日で終わったから、今日は、ね?」
さわ子「もうメールはしておいたわ」
梓「あ……」
梓「は、はい!」ぱあああ
193 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 00:59:40.68 ID:AL8oboNZ0
――放課後 部室
梓「ふんふふーん」
唯「あずにゃん、ご機嫌だねー」
梓「そうですか? ふふふ、そうかもしれません」
律「なんかいいことあったのかー?」
澪「テストの点数が良かったとか?」
紬「欲しい服が買えたとか」
唯「ケーキがおいしかったとか!」
梓「違いまーす。ふふーん」
律「練習しろって言わない梓も珍しいよなあ」
澪「だな」
194 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:01:25.78 ID:ref/d9fdP
――校門
梓「あ、今日もまたさわ子先生に呼ばれてるので、先に帰っててください! では!」
ダダダダダ!
律「行っちゃった」
澪「なんなんだろな」
唯「も、もしや、あずにゃんはさわちゃんに……!」
律「それはもういいから」ペシ
唯「あうち」
195 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:02:56.10 ID:AL8oboNZ0
紬「けど、今の梓ちゃんってなんだか恋する女の子みたいねー」
律「ははは、まさか。そもそもここは女子高で、梓もさわちゃんに会いに行ってるだけだぞ?」
澪「……」
紬「……」
唯「おー」
律「あれ?」
澪「ま、まさか」
律「梓はさわちゃんを……?」
唯「えー! あずにゃんがさわちゃんに恋してるの!?」
紬「あらあらまあまあ」
196 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:04:55.41 ID:ref/d9fdP
――夜 部室
梓「こんばんは、○○先輩! 今日もよろしくお願いします!」ペコリ
○○「はい、よろしく」ペコリ
さわ子「ふふふ、仲良くなってきたわね」
○○「中野さんは本当に良い練習相手ですからね。ありがたいことです」
梓「は、はい! 私も有意義です!」
さわ子「ふふふ。じゃあ、今日は2人で練習しておいてくれる? 私、まだ仕事が残ってるのよ」
○○「分かりました」
さわ子「気をつけなさいよ」ボソッ
○○「はい、分かってます」ボソッ
梓「どうかしました?」
さわ子「ううん。じゃ、お2人ともごゆっくり〜」
ガチャン
197 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:06:00.06 ID:AL8oboNZ0
○○「じゃ、始めようか」
梓「はい!」
――練習中
ジャンジャンジャカジャン♪
○○「ゴホッ、ふぅ、こんな所かな」
梓「そうですね。前に言った部分、ちゃんと直ってますね」
○○「努力したから」
梓「ふふふ、練習できてたんですね」
○○「まあね。ただし今月のお小遣いはもう0だけど」
梓「あ、やっぱりスタジオだったんですか……そうだ。良い練習場所がありますよ」
○○「ん、どこかな」
198 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:08:57.41 ID:ref/d9fdP
○○「なるほど、カラオケボックスか」
梓「はい。あ、けどまずは店員さんに楽器の持ち込みをしていいか聞かないといけませんね」
○○「カラオケに楽器を持ち込むってのも、なんだか恥ずかしいけどね」
梓「それは我慢してもらうしかないです」
○○「もしできたら、かなり安上がりになるなあ」
梓「ですね。あ、けど何人も入れないかも……2人ぐらいが限界じゃないでしょうか」
○○「んー、まあそれは気にしなくていいよ」
梓「そう、ですか」
梓(……やっぱり先輩は、ずっと1人で練習するのかな)
199 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:12:22.74 ID:AL8oboNZ0
梓「そういえば先輩は、歌は歌わないんですか?」
○○「え?」
梓「歌曲でもギターパートばっかりやってますけど」
○○「あー、うん。俺、歌は下手だからね。ギターで十分だよ」
梓「じゃあ、誰かにボーカルを頼むとか」
○○「そんな気はないかな」
梓「そうですか……けど、もったいないですね」
○○「もったない?」
梓「これだけ上手に引けるなら、バンドを組んで弾いたらすごく良くなると思います」
○○「ん……そうかな」
梓「はい」
○○「……」
梓(……あっ)
梓「ご、ごめんなさい。何か気に障りましたか?」
200 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:15:07.43 ID:ref/d9fdP
○○「いやいや、違うよ。中野さんの言う通りだなあ、って思ってね」
○○「うん、また機会があったら、メンバーも探してみるかな」
梓(先輩……またあのすごく悲しそうな笑顔を浮かべてる)
梓(きっと何か事情があるんだ。家や学校で練習できないのと同じで……)
梓(駄目だな、私。すぐ人の心に乗り込んでいっちゃう)
梓(けいおん部に入りたての頃も、そうやってトラブル起こしちゃうし……)
○○「中野さん?」
梓「あ、いえ……メンバーを探す時は、私もお手伝いしますね」
○○「うん、ありがと」
梓「じゃ、じゃあ練習しましょう!」
○○「ん」
201 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:18:33.81 ID:AL8oboNZ0
――30分後
ジャンジャカジャンジャカ♪
梓(すごい。やっぱり音が合う)
梓(私と先輩のギター、息がぴったり)
梓(よし、このままこの曲の最後まで突っ走ろう!)
ジャンジャカジャンジャン♪
ジャン!
梓(良い感じに終わった!)
梓「ふぅ、今の、すごく良かったですね!」
○○「はぁはぁ……」ふらふら
梓「先輩?」
○○「あ、うん、そだね、すごく良かった……はぁはぁ、ゴホッゴホッ!」
梓「せ、先輩?」
202 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:20:42.64 ID:ref/d9fdP
○○「だ、大丈夫。風邪がちょっとね。うん」
梓「水飲みますか?」
○○「もらうよ……はぁ、はぁ、ゴホッゴホッ!」
梓「やっぱり病院に行った方がいいですよ。風邪って言っても、もう1週間以上……」
○○「ゴホッゴホッ! ヒュー、ゴホッ!」
びちゃあ!
梓「わ! 水が……先輩!?」
○○「ゴホッゴホッ! ヒュー、ゲホッ!」
梓「ど、どうしたんですか!? 大丈夫ですか!?」
○○「ゴホッゴホッゲホッ!」ドタッ
梓(先輩が倒れ……ど、どうしたら)
梓「先輩! 先輩!」
○○「だ、だいじょ、ゴホッゴホッ! ちょっと気管に、ゴホッ、入って、ゴホッゴホッ!」
梓「そんな風には見えません! どこか悪いんですか!? 痛いんですか!?」
203 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 01:21:59.54 ID:fKivUt5Y0
イケメンは気に食わないが○○さんはなんか許せるな
しえん
204 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:22:37.16 ID:AL8oboNZ0
バタン!
さわ子「どうしたの!」
梓「せ、先生! ○○先輩がっ!」
○○「ゴホッゴホッ!」
さわ子「まずいわ、発作ね。○○君の鞄は……!」
梓「これです! この鞄です!」
さわ子「薬と……吸入器! これね! ほら、飲みなさい!」
○○「だいじょ、ゴホッヒューゴホッ! まだそんな……」
さわ子「何言ってるの! 早くなさい! もう梓ちゃんに隠すのは無理よ!」
梓(私に……隠す?)
205 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:24:58.22 ID:ref/d9fdP
シューコーシューコー
梓(なんだろ、あれ……スプレー缶みたいなのから伸びてるチューブを口に入れてる)
梓(吸入器って言ってたっけ……そうだ。マラソン番組でよく見る奴に似てる。酸素を吸うやつ……)
梓(先輩、何かひどい病気なんじゃ……)
シューコーシューコー
さわ子「もう大丈夫ね」
○○「……はい」
さわ子「胸の痛みは? 腕は?」
○○「そっちは大丈夫です。苦しいのは呼吸だけだったので……」
さわ子「そう、よかった」ホッ
さわ子「……○○君」キリ
○○「……」
さわ子「無理しちゃ駄目って言ったでしょ」
○○「すみません」
206 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:26:40.20 ID:AL8oboNZ0
さわ子「ふぅ、休憩なしで演奏してたわね?」
○○「……はい」
さわ子「まったく。ここを使用する上での条件、覚えてるわね」
○○「『自分の身体は自分で管理する』」
さわ子「そう。あなたはこれを破った。もうここを使わせるわけにはいかない」
梓(!)
○○「……」
さわ子「残念だけど、ここでの練習は今日限りで、」
梓「あ、あの!」
さわ子「え? 梓ちゃん……?」
207 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:28:50.61 ID:ref/d9fdP
梓「私が悪いんです! 私が調子に乗ってずっと演奏してたから、先輩も止められなくなって……」
さわ子「梓ちゃん……」
○○「中野さん……」
梓「だからそんな、ここを使わせないなんて、い、言わないで下さい!」
さわ子「……」
○○「……中野さん」
梓「は、はい!」
○○「ありがとう。だけど、これは俺の責任なんだ」
梓「ち、ちが」
○○「元々は俺のわがままで始めたことだから。自分で約束を破った以上、もうここは使えない」
梓「そんな……!」
208 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:30:36.65 ID:AL8oboNZ0
○○「ごめんね。今まで、俺の身体のこと隠してた。俺は……ゴホッ!」
さわ子「長く喋るのはやめなさい。私から説明するわ」
○○「すみません……お願いします」
梓「先生。○○先輩は何かの病気なんですか?」
さわ子「梓ちゃん……そうね。彼には、生まれつき心臓に障害があるのよ」
梓「しょう、がい?」
さわ子「血液を送り出す機能が十分じゃなくて、そのために肺も衰えてしまっていて」
さわ子「心室――えーと、○○君、なんだったっけ」
○○「心室中隔欠損と肺高血圧症、です」
さわ子「そういう名前。これのせいで、彼の心臓と肺の機能はとても低下している」
梓「……」
209 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:32:24.54 ID:ref/d9fdP
さわ子「彼は激しい運動ができない。おそらく50メートルも走れば倒れてしまう」
梓「ご、50メートル……」
さわ子「楽器の演奏も同じこと。ギターは吹奏楽器じゃないとは言え、本気で演奏するとどうしても体力を消耗するわ」
さわ子「それに演奏は集中力が必要。過度な集中はストレスとなって、心臓に悪影響を及ぼす」
さわ子「身体を鍛えることもできないから、筋肉もついていない」
さわ子「だから長く演奏するとばててしまうし、悪くすれば今みたいに発作が起きてしまうの」
さわ子「それでも彼はギターを、」
○○「先生、そこからは俺が説明します。大事なことなので……」
梓「先輩……」
さわ子「そう……疲れたらすぐに言いなさい」
○○「はい」
○○「中野さん、改めてごめん。こんな大事なことを隠したりして」
梓「いえ……」
○○「ほんと、俺のわがままから始めたことなんだ、これは」
210 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:35:11.88 ID:AL8oboNZ0
○○「今年の3月まで、俺はここじゃなくて他の土地に住んでた」
○○「もう少し山に近くて田舎っぽいところにね」
○○「そこが俺の生まれた場所で……小学生ぐらいだったかな、今の病気が発覚したのは」
○○「発覚した時にはもう手術がほぼできない状態になっちゃってね。完治はほとんど不可能」
○○「まあけど、薬を飲んでれば日常生活には問題ないんだ」
○○「ただ、激しい運動はもちろん、長い距離も歩けない」
○○「簡単に言うと、ものすごく体力のない身体でね」
○○「さっきみたいな息切れもそうだけど、少しの運動で手足はすぐにだるくなっちゃう」
○○「だから、病気が発覚して運動制限がかけられた後は、友達と遊びに行くこともままならなかった」
○○「いつも、楽しそうに遊んでる人たちを遠巻きに見てた」
○○「もちろん、中学生になってもまともに部活動なんてできない」
○○「それも仕方ないって、諦めてたんだけど……」
梓「……」
211 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:36:49.48 ID:ref/d9fdP
○○「2年前ぐらいかな、昔からの友人に音楽ライブへ連れてってもらったんだ」
○○「外国のアーティストのライブでね。後ろの方の、比較的人が少ない場所で見てたんだけど」
○○「すごかった」
○○「1つ1つの音に観客が反応してた。感動してた」
○○「もちろん俺も」
○○「音が胸を揺らすなんて経験は初めてだった」
○○「それまでCDやテレビでしか音楽は聴いたことなかったけど、実際のコンサートに行くとこんなにも違うものかと驚いた」
○○「ギターは、人の心に心を伝えられる楽器なんだって思った」
梓「……」
212 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:38:42.81 ID:AL8oboNZ0
○○「それから、自分でも弾きたい、音を人に伝えたいと思って」
○○「貯金を使ってこのギターを買った。かなり高かったけど、一目惚れした楽器だから後悔はしなかった」ポンポン
○○「最初は1日10分だけ。自分の部屋で弾いてた」
○○「あ、もちろんコードを押さえたり指を動かしたりするだけなら身体に負担なくできるから、ずっとやってたよ」
○○「ただ、腕を動かして実際に弾くのはけっこう体力と集中力を消耗するもんでね」
○○「実際に曲を弾けるようになってきたのは、半年経ってからかな。身体に負担をかけずに演奏するのに慣れてきて」
○○「以前の学校の軽音部にもちょこちょこ顔を出せるようになって」
○○「今は、こんなにも弾けるようになりました、ってね」
梓「……」
213 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:40:58.75 ID:ref/d9fdP
○○「けど、1度演奏中に発作が起きて……その、ちょっと死にかけたことがあって」
梓「しに……」
○○「それ以来、親にはギターを禁止されてるんだ。学校にも連絡がいって、軽音部にも入れなくなった」
○○「親の目があるから家ではギターが弾けない。学校だと先生の目があるからできない」
○○「で、今みたいに練習場所に困る1人の体力不足ギタリストができあがった、ってわけだよ」
○○「あ、この街に来たのは今年の4月でね。都会のもっと良いお医者さんがいる病院に通うために引っ越してきたんだ」
○○「このお医者さんのおかげで、少し長いくらいの距離なら歩けるようになったし、発作が起きることも少なくなった」
○○「今日はちょっと調子が悪かったけど……いつもはあれぐらいの時間弾いてても、なんともないんだよ?」
214 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 01:41:39.19 ID:QTrh9BGt0
支援
215 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:43:24.00 ID:AL8oboNZ0
梓「……」
○○「こういうわけで」
○○「ごめん、隠してて」
○○「あんまり心配をかけたくなくって……ほら、演奏中に俺の身体のことが気になって、手元が狂っちゃ駄目だろ?」
○○「いや……それだけじゃないか。あんまり、中野さんには悲しそうな顔はしてほしくなかったのかもしれない」
梓「……?」
○○「ここで俺がギターを弾いて、中野さんがそこで笑顔で見てくれてて」
○○「なんというか、すごく楽しかった。演奏しがいがあった」
○○「身体のことを教えたら、はらはらした顔で見られるのかと思うと……言いたくなかった」
○○「ははは、これもやっぱり俺のわがままだね」
216 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:45:44.17 ID:ref/d9fdP
○○「……」
梓「……」
○○「ごめん、ね」
梓「!」
梓「……」
梓「……うぅ」ポロポロ
○○「う、うわ! ご、ごめん、泣かせるつもりなんて全然!」
梓「先輩は!」
○○「は、はい」
梓「先輩は、もっと人を信じるべきです!」
○○「……!」
217 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:47:54.92 ID:AL8oboNZ0
梓「私は!」ポロポロ
梓「先輩の身体のことを知っていたら、それ相応の練習方法を取ります!」ポロポロ
梓「演奏だけを聴いてほしいというなら、一生懸命音だけを聴きます!」ポロポロ
梓「病気のことを知ってたなら……ひっく、今みたいなことが起きても、助けられます!」ゴシゴシ
○○「……」
梓「先輩がそこまで真剣に音楽に取り組むなら……私はそれをお手伝いします」
梓「自分ひとりで背負い込まないでください」
梓「私に心配をさせてください」
梓「何も知らずに先輩が倒れてるのを見る方が……よっぽど悲しいです!」
○○「中野さん……」
218 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:49:45.85 ID:ref/d9fdP
梓「それでも自分のワガママでここを使うのに気が引けるというなら」
梓「こうしたらいいんです」
○○「……」
梓「私たちは、一緒にギターを弾きました」
○○「うん」
梓「……もう、先輩とはギター友達だって、私は思ってます」
○○「うん」
梓「だから、これは友達としての、お誘いです」キッ
梓「また、ここで一緒にギターを弾きましょう、先輩」
○○「……うん」
219 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:50:35.18 ID:AL8oboNZ0
――さわ子の車の中
ブロロロロ
○○「……」
梓「……」
さわ子(なーんか、微妙な空気ねー。息が詰まりそうだわ)
○○「……」
梓「……」
さわ子(結局、私も梓ちゃんに押し切られる形で、これからも部室の使用を許可した)
さわ子(これでいいのか悪いのか)
さわ子(面倒なことになって減給になったら……いえ、○○君の親御さんから責任問題を問われたら、どうしよう)
梓「……あの、先輩」
○○「ん?」
220 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:51:52.83 ID:ref/d9fdP
梓「すみませんでした、生意気な口を利いて」
○○「いや、いいよ。中野さんの言う通りだったから。俺、色々怖がってただけなんだ」
梓「……先輩」
○○「これからは少し、中野さんを頼ることになるかもしれない」
○○「色々迷惑もかけるだろうけど」
梓「いいんです」
梓「私と先輩は、その、お、お友達ですから」
梓「友達は、持ちつ持たれつ、です」
○○「ん、ありがとう。俺も、できる限り中野さんの手助けするよ」
○○「ギターのことぐらいしか、助けられないだろうけどね」
梓「はい!」
221 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:52:55.73 ID:AL8oboNZ0
さわ子(はぁ、あの2人を見てると、面倒だなんだって思う気もなくすわね)
さわ子(仕方ないわね、若者を良い方向へ導くのも教師の役目)
さわ子(たとえ常識的には駄目でも、あの2人にとって必要なら、私は後押ししてあげましょう)
さわ子(覚悟を決めるのよ、さわ子!)
ブロロロロー
2章 終わり
乙
223 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:53:58.29 ID:ref/d9fdP
おまけの1レス
――部室
律「梓」
梓「はい、なんでしょうか」
律「辛い恋をしているんだな」ポンポン
梓「は?」
律「何か相談があったら私たちに言ってくれ!」
澪「恋は他人に相談するのが1番なんだ!」
紬「教師と生徒の禁断の恋、梓ちゃんが本気なら応援するわ!」
唯「がんばれー」
梓「……」
梓「えっ?」
律澪紬唯「え?」
224 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:55:04.52 ID:AL8oboNZ0
2章終了。3章も眠気の限界までいきます。
225 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:55:50.73 ID:ref/d9fdP
3章
――5月下旬 木曜夜 学校
ジャカジャンジャカ♪
ジャン!
○○「ふう……どう、かな」
梓「はい! すっごい良い感じでした!」
さわ子「この1カ月でえらく上手くなったものねえ」
226 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:57:51.65 ID:AL8oboNZ0
○○「そっか、あれから1カ月か」
梓「私が先輩の身体のことを知ってから、ですね」
○○「なんだかんだ言って、もう何度もここ使ってるね」
さわ子「相変わらず幽霊の噂は消えないけどね。あー、頭が痛いわー」
○○「す、すみません」
梓「大丈夫ですよ! ここ最近は『幽霊はさわ子先生なのでは?』っていう噂もありますから」
さわ子「へ?」
さわ子「ど、どういうこと?」
梓「さわ子先生が度々学校に残ってるのをどこかの生徒が知って、噂したんじゃないでしょうか」
○○「あー、練習の度に学校の戸締りを引き受けてますもんね」
さわ子「……まずいわね」
梓「そうですか? むしろこのまま幽霊の噂が消えてくれた方が、興味本位で校舎に残る人も少なくなると思いますが」
さわ子「そりゃそうでしょうけど、今度は私が学校に残って何してるか、が問題になるでしょ」
○○「まあ、そうですね」
さわ子「教頭先生あたりに知られたら……うぅ、まずいわあ」
227 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 01:59:56.11 ID:ref/d9fdP
さわ子「そろそろ噂を消す時期に来たわ」
○○「え? ということは」
さわ子「当分、この部室は使用禁止ね。だいたい2週間ぐらい」
梓「え、えー!」
○○「あらら」
さわ子「仕方ないわ。この2週間は大人しくしておいて、噂が消えるのを待ちましょう」
梓「け、けどそれだと先輩の練習場所が……」
○○「いや、中野さん、それはいいよ」
梓「先輩! けど!」
○○「さわ子先生に甘えすぎるのも駄目だよ。これまでずっと助けてもらったんだし、文句は言えない」
梓「……先輩がそう言うなら」
さわ子(あらま、素直になっちゃって)
228 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:02:08.55 ID:AL8oboNZ0
梓「だったら練習場所はどうするんですか? 毎日でも練習したいって言ったのは、先輩ですよ」
○○「前に聞いたカラオケボックスとか」
梓「駄目です。カラオケボックスって空気が淀んでます。煙草の煙もーもーです!
空気が悪いところも身体に悪いって、先輩言ってたじゃないですか!」
○○「いや、個室なら大丈夫じゃ」
梓「先輩の前のお客が煙草を吸ってたっていう可能性がないわけじゃありません。
ああいうところのエアコンは空気清浄機能もないですし、絶対駄目です」
○○「……はい」
さわ子(梓ちゃん、年下なのに妙に世話焼きよね。性格なのかしら)
さわ子(というより、彼が尻に敷かれるタイプなのね、きっと)
229 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:04:31.46 ID:ref/d9fdP
○○「んー、だったらまたスタジオ借りるかなあ……」
梓「でも、新しいシールド買ったからお金ないんじゃ」
○○「そうなんだよね。仕方ない。自分の部屋でこそこそ運指の確認だけしとくよ」
梓「……」
梓「……」
さわ子「さあ、そろそろ帰るわよ」
○○「はーい」
梓「あの、先輩!」
○○「はい?」
梓「て、提案があります!」
230 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:06:51.49 ID:AL8oboNZ0
○○「はあ、提案」
梓「はい!」
○○「何かな」
梓「その、ですね……」
梓「先輩がよければなんですけど……」
梓「その……」モジモジ
梓「わ、私の家で練習しませんか!」
○○「……家?」ポカン
さわ子(わお、大胆)
231 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:09:11.31 ID:ref/d9fdP
梓「私の家は音楽一家でして、家の中の防音設備もちゃんとしているんです」ワタワタ
梓「あ、いえ、実際に演奏しなくても、エレキにヘッドフォン繋げればいいわけですし」ワタワタ
梓「先輩は自宅では絶対にギターを弾けないみたいですし、それなら私の家でやった方がまだマシというか」ワタワタ
梓「私の両親はいますけど、お、お友達として紹介すれば全然OKなので!」ワタワタ
○○「……」
○○「……家か。けど、迷惑じゃないかな?」
梓「友達が家に遊びに来て迷惑なわけありません!」
○○「うん、そっか」
○○「ご両親もいらっしゃるなら変な誤解も受けないだろうし……」
○○「分かった。じゃあ、土曜日にでもお邪魔していいかな?」
梓「はい! ぜひ!」
232 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:10:54.14 ID:AL8oboNZ0
――さわ子の車の中
ブロロロ
さわ子「○○君が梓ちゃんの家にねえ」
梓「ただの練習ですから!」
○○「うん、そうですよ。だから安心してください、さわ子先生」
さわ子「ま、別に心配しちゃいないわよ。ただ、面白いことになってるなってね」
○○「面白いこと?」
梓「練習が面白いんですよね!」アセアセ
さわ子「ふふふ、そういうことにしてあげるわ」
梓「うぅ」
○○「?」
233 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:14:05.89 ID:ref/d9fdP
○○「そうだ。中野さんの家までの道順だけど……」
梓「あ、電車で来ますか? 確か1駅離れてるだけでしたよね。私、駅まで迎えに行きますよ」
○○「いやいや、それはさすがに気が引けるよ。道だけ教えてもらえればいいから」
梓「けど……」
○○「大丈夫大丈夫。桜高までだって1人で来てるんだし。最近は身体の調子もいいから」
梓「……」
梓「……」
梓「あ、あの、また提案があるんですが」
○○「ん? 提案?」
梓「はい」
○○「どうぞ」
梓「その……携帯のメルアドを交換しませんか?」モジモジ
さわ子(かー、甘酸っぱいわー)
234 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:14:59.79 ID:AL8oboNZ0
梓「できればでいいんですよ?」ワタワタ
梓「もし迷ってもすぐに連絡つけられますし、私も居場所が分かりますし」ワタワタ
梓「これからもこういう機会があった場合にですね、便利だと……その」ワタワタ
○○「そうだね。というか、まだ教えてなかったんだっけ」
梓「は、はい」
○○「せっかくの友達に教えてないだなんて、ごめんね。はい、赤外線やるね」
梓「ちょっと待ってください。今用意して……」
ぴろりん
○○「はい、送ったよ」
梓「じゃあ次は私のを」
ぴろりん
○○「ん、ありがと」
235 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:15:42.72 ID:ref/d9fdP
――梓の家の前
梓「では先輩、また土曜日のことはメールします」
○○「うん、楽しみにしてるよ」
さわ子「うふふ」ニヤニヤ
梓「さ、さわ子先生は何をにやにやしてるんですか」
さわ子「いーえ、別にー」
梓「早く帰ってください!」
さわ子「はいはい。じゃあね、梓ちゃん」
○○「ばいばい」フリフリ
梓「はい、さようなら!」フリフリ
ブロロロー
梓「……」
梓「め、メルアド交換しちゃった」
236 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:16:41.80 ID:AL8oboNZ0
――梓の部屋
梓(うぅ、なんだろ。すごく携帯が気になる)パカパカ
梓(どうしてこう、何度も開いたり閉じたりしてるんだろ)
梓(……先輩のメルアドがあるからかな)
梓(い、1度送ってみようかな)
梓(……何を書けばいいんだろ)
梓(もう夜も遅いし、失礼だよね……)
梓(けど土曜日のことは早めに決めておいた方が)
梓(うー)
ぴろぴろりん♪
梓「うひゃあ!」
梓「め、メール?」
ぱかっ
237 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:17:47.39 ID:ref/d9fdP
from 唯センパイ
件名 眠いよー
あずにゃん、目を覚ましてよー
梓「唯先輩……? どういう意味なんだろう、これは」
梓「無駄に添付写真がついてるし」
梓「これはギー太?」
梓「なんでギー太の写真を送ってきたんだろ」
梓「分からない……意味が分からない」
238 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:18:39.25 ID:AL8oboNZ0
梓「『さっさと寝てください』っと」
ぴろりん
梓(それにしてもびっくりしたー)
梓(一瞬、○○先輩からのメールかと思っちゃった)
梓(あはは、そんなわけないよね)
梓(……)ゴロリン
梓(……)ゴロゴロ
梓(1カ月一緒に練習したから、よく分かる)
梓(○○先輩は、すごく優しい人だ)
梓(本当に自分より他人を大事にしてる)
239 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:20:27.89 ID:ref/d9fdP
梓(だから自分の身体のことで人に迷惑をかけたがらない)
梓(たとえ相手が家族や友人でも、心配をかけさせたくないんだ)
梓(けど、そうすると○○先輩自身に辛いことがたくさん圧し掛かってくる)
梓(……いつか潰れちゃわないか心配だ)
梓(……?)
梓(私、どうしてこんなに先輩のこと考えてるんだろ)
ぴろぴろりん
梓「あ、メール……」
ぱかっ
梓「あ」
240 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:21:20.04 ID:AL8oboNZ0
from ○○先輩
件名 こんな夜遅くにごめんなさい
せっかくなので1度メールを送ってみました。ちゃんと届いてますか。寝ていたらごめんなさい。
土曜日のこと、ありがとうございました。本当に嬉しかったです。
お土産に何か持っていきたいと思うので、良ければ好きなお菓子を教えてください。
梓「ぷっ」
梓「あははは」
梓(先輩、メールの中だとまた敬語になってる)
梓(癖なんだろうなあ。先輩らしいなあ)
梓「『大丈夫です、まだ起きてましたよ。先輩はもうすぐ寝るんですか。
私はチョコレートケーキとフルーツケーキが好きです』っと」
梓「ふふふ」
241 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:22:40.57 ID:ref/d9fdP
――金曜日 放課後 部室
紬「今日はチョコレートケーキよ〜」
梓「え、チョコレートケーキ?」
紬「ええ、そうよ。どうかした?」
律「今、梓がチョコケーキって聞いた瞬間、顔歪めたぞー」
唯「あれー? あずにゃん、チョコケーキ大好きだったよね?」
梓「は、はい。好きです……」
澪「そのわりには落胆してるな」
梓「そんなことないです! いただきます!」
紬「はい、召し上がれ」
242 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:24:43.06 ID:AL8oboNZ0
梓「そういえば唯先輩、昨日のメールなんですが」
唯「メール? ああ、あずにゃんの返事が冷たかったやつだー」
梓「あんな変なメールを送られたら返事に困ります。あのメール、どうしてギー太の写真を一緒に送ってきたんですか?」
唯「だって、ギー太がかわいかったから……」モジモジ
梓「?」
唯「メールを打った後に、急に自慢したくなっちゃって」
梓「はぁ、彼氏を自慢する女の子みたいですね」
唯「そんな彼氏だなんて。ギー太とは健全なお付き合いをしていてね」テレテレ
243 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:25:45.05 ID:ref/d9fdP
――ティータイム後
梓「今日はパートごとに練習ですか」
澪「唯が梓と練習したいって言うからな」
唯「あずにゃーん、教えてー。ここがよくわからなくってー」
梓「仕方ないですね唯先輩は。あっちでやりましょう」
トトト
律「梓の奴、元に戻ったな」
澪「思えば、さわ子先生に恋してるだなんて誰が言ったんだ?」
律「誰だっけ?」
紬「さあ〜?」
律「ま、いつも通りならそれでいいさ」
澪「んー、けど微妙に違う感じが……」
244 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:26:48.60 ID:AL8oboNZ0
律「違う?」
澪「前が全力疾走で走ってる梓だとしたら、今はジャンプするためにかがんでる梓、みたいな感じ」
紬「どっちもかわいいわねえ〜」
律「そういう話か? で、澪のその例え話は結局どういう意味なんだ?」
澪「私にもよくわかんないけど……近い内に何か起こるんじゃないかってことかな」
律「はあ、何かねー」
梓「違います! ここの指はこうで、そのままチョーキングです!」
唯「あうー、あずにゃんが厳しいよー」
245 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:27:29.58 ID:ref/d9fdP
――帰り道
律「じゃ、また来週なー」
澪「気をつけて帰るんだぞ」
唯「あずにゃんばいばーい」
紬「またね〜」
梓「さようならです!」
トコトコトコ
梓(今日は唯先輩、ちゃんと練習してくれたな……珍しい)
梓(いつもこれぐらいやってくれたらいいのに)
梓(……熱血なけいおん部も、それはそれでなにか違和感があるけど)
梓(はあ、私もけいおん部に毒されてるのかなあ)
梓(そりゃあ、1年間ここにいたらそうなるよね)
246 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:28:34.87 ID:AL8oboNZ0
トコトコ
梓(けど、ああいう場所も嫌いじゃない)
梓(練習はもちろんしてほしいけど……なんだろ、皆で集まって楽しむことも大切なんだと思う)
梓(演奏技術だけが大事なんじゃない。皆で弾くことも大事)
梓(楽しく弾くことが大事)
梓(……それが、唯先輩たちと一緒に演奏することの魅力の1つなんだろうなあ)
梓(1人で弾いてるだけじゃ、絶対に分からない感覚)
トコトコトコ
梓(……)
梓(○○先輩は、バンドで演奏したことあるのかな)
247 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:29:18.27 ID:ref/d9fdP
――梓の自室
梓「えーと、メールメール」
to ○○先輩
件名 明日のことですが
こんばんは、中野です。
明日は何時ぐらいに来られますか? 両親に話したところ、丸1日使ってもOKとのことです。
朝から晩までみっちり練習しても大丈夫ですよ。
梓「送信、っと」
ぴろりん
梓「あ、けど先輩の身体じゃそんなに長く練習できないか」
梓「しまったなあ……」
ぴろぴろりん
梓「あ、返信きた」
248 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 02:43:27.84 ID:0+SY1jmqQ
支援
249 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:45:16.37 ID:AL8oboNZ0
from ○○先輩
件名 Re:明日のことですが
では、昼の13時頃にお邪魔しようと思います。
晩までみっちり、というのはちょっと難しいですが、きちんと休憩を取れば、多分4,5時間ぐらい練習できます。
そんなに長く練習するのは久しぶりなので、とても楽しみです。
お土産のケーキもちゃんと持っていきますね。
梓「そっか、休憩を取れば大丈夫なんだ。よかった」
梓(ケーキか……楽しみだなあ)
梓(チョコケーキかな。今日も食べちゃったけど……うん、好きなものなんだから、食べられるはず)
梓(よし! 今日は早く寝て、明日の朝は迎える準備しなくちゃ!)
250 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 02:46:57.06 ID:ref/d9fdP
2つのID使ってもさるさんになるのか……
中途半端だけどここで一旦切ります。また明日の朝にでも続きを。
251 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 02:51:34.27 ID:QTrh9BGt0
定期保守
252 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 03:00:05.28 ID:B7AL6uNzP
おもしれー
わりとストーリーがしっかりしているな
254 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 03:12:30.47 ID:MhlwLQ3L0
保守
まさかとは思うがこれは鬱エンドなのか?
気になって「肺高血圧」を同期の医大生に聞いてみたんだが・・・
256 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 03:28:53.78 ID:QTrh9BGt0
定期保守
これで一旦寝るので誰か保守をよろしくお願いします。
ほ
258 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 05:02:33.96 ID:IMatHEwa0
寝るまえホス 後は任せた…
259 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 05:52:15.86 ID:xTFXKV1B0
久しぶりの良スレ
ほ
261 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 08:13:07.99 ID:7YKLXkV60
ほ
262 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 08:19:43.96 ID:1SVceSD50
普通に良スレ
期待保守
263 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 09:01:02.39 ID:0l84AcxiP
うんうん保守
264 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 09:59:44.09 ID:ref/d9fdP
おはようございます。保守ありがとう。
続きいきます。
265 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:00:46.87 ID:AL8oboNZ0
――土曜 朝 梓の家のリビング
ガチャ
梓「ふぅ……おはよー」ムニャムニャ
梓「あれ? お母さんがいない……お父さんも?」
梓「どこに行ったんだろ」
梓「あ、書置きがある」
『実家のおばあちゃんがぎっくり腰になったので、お見舞いとお手伝いに行ってきます。
お友達が来たら、冷蔵庫の中にあるジュースとお菓子を出すこと。夜には帰ります。母より』
梓「……う、嘘。どうしてそんな、いきなりぎっくり腰に?」
梓「あ! じゃあ、今日は私、先輩と2人きり?」
梓「……だ、大丈夫だよね」
梓「そうだ! 部屋の掃除! 埃取っとかないと!」
266 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:02:47.83 ID:ref/d9fdP
――掃除後
梓「これぐらいでいいかな」
梓「今日はちょっと暑いみたいだからエアコンつけないと」ピッ
梓「……私の部屋で練習かあ」
梓「ま、まあいっか。練習するだけだもんね、うん」
梓(……男の人を部屋に入れるのって、お父さん以外じゃ初めてだ)
梓(そりゃあ、練習するだけだけど……ん、んー、ちょっと恥ずかしいなあ)
梓(リビングで練習した方が……いや、今から掃除してたら間に合わない)
梓「もう12時半……」
梓「あ、私お昼ご飯食べてないや」
267 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:06:40.00 ID:AL8oboNZ0
梓「パンだけでいっか。先輩がケーキ持ってきてくれるし」もぐもぐ
ぴろぴろりん
梓「あ、メール」
from ○○先輩
件名 もうすぐ着きます
今、駅に到着しました。多分あと10分ほどで着くと思います。
約束の1時には少し早いですが、大丈夫ですか?
梓「もうすぐ着くんだ……」
梓「……あっ」
梓(しまった! 私、掃除するためのラフな格好なままだ!)
梓「ど、どうしよう! 髪もセットしない!」ワタワタ
梓「どうしようどうしよう!」
梓(先輩には少し待ってもらって……駄目! 外で立ちっぱなしにさせるなんて!)
梓(と、とりあえず服だけでも……髪はポニテでまとめればなんとか!)
268 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:09:29.90 ID:ref/d9fdP
――10分後
ぴんぽーん
梓「は、はーい! 少々お待ちを!」
梓(ギターの練習なんだし、このぐらいの軽い感じの服でいいよね)
梓(うん、大丈夫。髪も鏡でチェック……OK!)
ドタドタドタ
ガチャ
梓「お待たせしました!」
○○「こんにちは、中野さん」
梓「はい、こんにちは! 今日はよろしくお願いします!」ペコリ
○○「お願いします」ペコリ
269 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:12:42.81 ID:AL8oboNZ0
○○「ご両親はいらっしゃるのかな。一応挨拶しておきたいんだけど」
梓「いえ、実は今日の朝になって突然、2人共実家に帰ってしまって」
○○「え?」
梓「許可は取ってるから大丈夫です。だから先輩が気後れすることありません」
○○「けど、いいのかな。中野さんと2人だと、色々問題が……」
梓「問題なんかありません! ギターの練習ですから!」
○○「わ、分かった。じゃあ、お邪魔します」
梓「どうぞ!」
梓(うわーうわー、先輩が私の家にいる!)
270 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:14:52.75 ID:ref/d9fdP
トコトコ
○○「あれ? 今日は髪型違うね」
梓「あ、これは……こっちの方が気楽でして」
梓(セットする時間がなかっただなんて言えない……)
○○「ツインテールよりポニテの方が楽なんだ」
梓「まあ、ひとまとめにできますから。あ、ここが私の部屋です、どうぞ」
○○「お邪魔します」
ガチャリ
梓「ギターケースはその辺りに置いてください」
○○「どうも。あ、これお土産のケーキ」
梓「ありがとうございます……ちょっと開けてみていいですか?」
○○「どうぞ」
271 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:17:46.78 ID:AL8oboNZ0
パカッ
梓「あ、フルーツケーキだ」
○○「今日はちょっと暑いから、こういう爽やかな奴がいいかと思って」
梓「ありがとうございます。じゃあ、お皿とジュース用意しますので、ちょっと待っててください」
○○「ありがとう」
ガチャ
トタタタタ
梓(うわー、先輩が私の部屋にいるよ、うわー)
梓(な、なんだか緊張してきちゃった)ドキドキ
梓(こういう時は深呼吸して……)
梓「すーはー」
梓「よし!」
272 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:20:06.19 ID:ref/d9fdP
ガチャ
梓「お待たせしました……先輩、何見てるんですか?」
○○「あっと、ごめん。棚のレコードをちょっとね」
梓「ジャズ系のレコードがほとんどですから、先輩が知らないのも多いと思いますけど」
○○「だね。けど、この『ウェザー・リポート』とか『ウディ・ハーマン』とかは知ってるかな」
梓「あれ? 先輩ってジャズも聴くんですか?」
○○「色々聴くよ。邦楽洋楽、ロック、クラシック、パンク、ジャズ、ポップス……最近はアニメとかゲーム音楽も」
梓「はぁ、雑食なんですね」
○○「家にいると音楽聴くか本を読むかしか、やることないから」
梓「あ、ジュースどうぞ」
○○「ありがとう」
273 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:23:21.74 ID:AL8oboNZ0
梓「アニメとかゲームも良い曲あるんですか?」
○○「結構あなどれないよ。テレビ番組で時々BGMとして使用されるぐらいだし。
先入観なしで聴いてみると、案外気に入ったりするかもね」
梓「じゃあ、先輩のおススメを今度聴かせてくださいね」
○○「そう言われるとなんだかプレッシャーかかるなあ。
自信ある曲なのに中野さんから『えーこんなの無理ー』なんて評されたら、泣いちゃうかも」
梓「そんな意地悪っぽい話し方はしませんよー!」
梓「あ、ケーキとフォークもどうぞ」
○○「ありがとう。けど、最初の一口は中野さんからどうぞ」
梓「はい、いただきます」
274 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:27:38.87 ID:ref/d9fdP
パクリ
梓「おいしいです!」
○○「それは良かった」
梓「結構高かったんじゃないですか? 金欠なのに、すみません」
○○「いやいや、これでも安い方だよ。それに、そんな嬉しそうな顔で食べるのを見てると、持ってきて良かったと思う」
梓「あぅ、そんな顔してました?」
○○「うん。中野さん、甘いもの好き?」
梓「わ、わりと」カァ
○○「じゃあ、今度学校で練習する時も持ってきてみようかな」
梓「それはなんだか駄目な感じです」
○○「どして?」
梓「普段の部活と変わらなくなるかもなので……」
275 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:31:44.67 ID:AL8oboNZ0
○○「そう言えば、けいおん部ではどんな練習してる?」
梓「練習……練習は……はぁ」
○○「あれ? なんか落ち込むようなこと言ったかな」
梓「いえ、そういうわけではないのですが……んー、けいおん部ももちろん練習します。セッションも、バンドでの音合わせも」
梓「けど、それ以上にお茶会とかお喋りとかが多くって……」
○○「へー。ちょっとサボり気味ってことかな」
梓「い、いえ、皆さん、自分の家で練習もしてますよ。唯先輩――あ、ギター担当の先輩なんですけど、唯先輩は家で暇があったら練習してるらしいですし」
○○「ほうほう」
梓「部活の時間のティータイムは、サボりじゃなく」
梓「技術を高めるといだけでもなく」
梓「えーとえーと……楽しく演奏して親睦を深める時間ってことです!」
○○「なるほど」
梓「……先輩はバンドに所属していたこと、あるんですか?」
○○「んー、ないよ」
276 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:34:50.98 ID:ref/d9fdP
○○「前の学校で、友達の紹介で練習に参加させてもらったことはあるよ」
○○「けど、本格的にバンドを組んだことは1度もない。今はそもそもギターのことを周囲の皆に隠してるし……」
○○「まあ、体力つけてちゃんと演奏できるようになってからでないと、メンバーに迷惑かけるからね」
梓「……そうですか」
梓(こればっかりは……どうしようもないのかな)
○○「そろそろ練習しようか」
梓「はい。ギターの用意しますね」
ゴソゴソ
277 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:39:53.31 ID:AL8oboNZ0
○○「じゃあ、まずはいつもの練習曲を」
梓「この曲、何度も弾いてるとほんと指が動くようになりますね」
○○「うん。友達の渾身の一作だからね。これ以上の練習曲はないと思う」
梓「この曲を作った方は、以前の学校の友達ですか?」
○○「そだよ。ほら、俺をライブに連れてってくれた人のこと」
梓「じゃあ、その人も何か楽器を?」
○○「キーボードを。作曲もやってて、俺がギターを始めたって言ったら、この曲をくれたんだ」
梓「へえ……こんな曲作れるなんてすごい人なんですね」
○○「あいつは変な奴だけど、真剣になると良い曲書くんだ」
278 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:42:20.00 ID:ref/d9fdP
ジャンジャカジャン♪
○○「よし、準備運動は完了」
梓「少し休憩します?」
○○「いやいや、準備運動だからまだ大丈夫だって。じゃあ、今日は何の曲を練習したい?」
梓「んー……そうだ、先輩が一番好きな曲とか、ありますか?」
○○「好きな曲? あー……そうだなあ。好きな曲っていうより、思い出の曲がある」
梓「じゃあそれを1度お願いします」
○○「うん。それならスコアもあるから、ちょっと待って」
ガサゴソ
○○「ふー……よし」
チャララ、チャラララララ、ラララ!
梓(! かっこいいイントロ!)
梓(曲調は典型的なロックだけど、なんだろ……このイントロ、聴いたことある。すごく有名な曲だったはず)
梓(えーと、えーと)
279 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:45:51.73 ID:AL8oboNZ0
ジャンジャカ♪
――曲の半分が終わって
○○「ふ、ふぅ。ちょっと休憩」
梓「大丈夫ですか?」
○○「うん。まだ1曲丸々は弾けないか……」
梓「そりゃあ、こんなに激しい曲は疲れますよ……これってロックですし」
○○「あ、もしかして中野さん、この曲知ってる?」
梓「はい。思い出しました」
梓「チャック・ベリーの『Johnny B.Goode』ですよね!」
○○「おー、さすが」
280 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 10:46:51.92 ID:aTs80MJi0
しえん
281 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:48:33.15 ID:ref/d9fdP
梓「すごく有名な曲じゃないですか。ロックンロールの元祖みたいなものですよ」
○○「だね」
梓「これが思い出の曲なんですか?」
○○「まあね」
○○「音楽をするきっかけになったライブで、出演アーティストがこれをカヴァーしててね」
○○「他の曲と比べて、この曲が1番印象に残った」
○○「で、チャック・ベリーのオリジナルを聴いてますます好きになって」
○○「この歌詞の中にさ、『鈴を鳴らすようにギターを弾く』っていうフレーズがあって」
○○「それがなんだか大好きなんだ」
282 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:51:50.30 ID:ref/d9fdP
○○「いつかはあのアーティストみたいに、この曲を舞台で気持ちよく弾けたらいいなと思ってる」
○○「やっぱり、音楽って楽しく弾けるのが大事だから」
梓「……できますよ、きっと」
○○「ん、だから練習しなきゃだね」
梓「はい!」
ジャンジャカジャン♪
梓(もう3時間も経ってる……休憩しながらなら、けっこう長く練習できるんだ)
梓(けど、連続しての演奏はそう長くできない……)
梓(うーん、確かにバンドを組んでも、なかなか上手くいかないのかもかなあ)
ジャンジャカジャン♪
梓「あ、待ってください」
○○「っと、どこかミスってた?」
283 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:53:10.15 ID:AL8oboNZ0
梓「ミスじゃないんですが、ちょっと気になることがあって」
梓「先輩って、曲を独自にアレンジすることが多いですけど」
梓「今の所、リズムが変化しすぎてて、もし実際にバンドで演奏するとなるとドラムとベースにすごい負担がかかるんです」
梓「かなり練習しないと難しいので……あまりここはアレンジしない方が。1人で弾くならそれでもいいんですけど……」
○○「そっか……んー、こっちの方が良い感じに音が出ると思ったんだけどなあ」
梓(こういうところで、先輩がバンドを1度も組んだことないのが分かる)
梓(先輩は高度な演奏テクニックも難なくこなせるけど、それが走りすぎてる。周りに合わせることを知らない)
梓(他のパートがいれば指摘してくれるような歪みを、そのまま持ち続けてしまってる)
梓(……)
梓(……なんとかしてあげたいなあ)
284 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:55:23.16 ID:ref/d9fdP
――夜
○○「あ、もう6時か」
梓「ほんとだ。時間経つの速いですね」
○○「今日はなんか1週間分練習した気分だよ。腕がつりそうだ」
梓「普段は1時間しかできませんもんね。あ、気分が悪いとかは」
○○「それは大丈夫。ただの疲れだから」
梓「よかったぁ」
○○「ふぅ……じゃあ、そろそろ帰るかなあ」
梓「そうですか? けど、この曲のアレンジがまだ終わってませんが」
○○「それは確かに心残りなんだけど……」
梓「うちはまだ大丈夫ですよ?」
○○「けど、そろそろ晩御飯の時間だし、親御さんも帰ってくるんじゃ?」
梓「どうでしょうか。メールはまだ来てないんですが……」
ぴろぴろりん
梓「あ、メールが来た」
285 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:56:04.14 ID:AL8oboNZ0
from 母
件名 ごめん!
ちょっと遅くなりそうだから、晩御飯は外で食べるか買うかしてください。
お金は後で返すので、好きなものを食べてください。母より。
梓「……はぁ」
○○「どしたの?」
梓「晩御飯は1人になりそうです……外で何か買ってこいって」
○○「あらら」
梓「どうしよう。今から買ってきて料理しても遅いし……何か食べに行こうかなあ」
286 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:58:13.63 ID:AL8oboNZ0
○○「んー……」
梓「うーん」
○○「中野さん」
梓「あ、はい」
○○「実はね、俺も親から『晩御飯は適当に外で食べてこい』って言われててね」
梓「え? 先輩のご両親もお出かけですか?」
○○「うん、前の家の契約がどうのこうのあるらしくて。今日は晩、1人なんだ」
梓「……そ、それじゃあ」
○○「中野さんが良ければなんだけど」
○○「一緒に何か食べに行く?」
梓「……あ、い、一緒に、ですか?」
○○「駄目なら全然構わないんだけど」
梓「い、行きます! 行きましょう!」
287 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:58:59.75 ID:ref/d9fdP
――駅前
梓(勢いで了承してしまったけど、まさか一緒に食事なんて……)
梓(緊張することないよね。ただ一緒にご飯食べるだけだし)
梓「どこの店にしましょうか」
○○「んー、何か食べたいものとかある?」
梓「いえ、特には……何でもいいですよ?」
○○「あー、そっか……」
梓(あ、先輩が困った顔してる)
梓(そう言えば聞いたことあるなあ。女の人に『なんでもいい』って言われると、男の人は困るって)
梓(ど、どうしよう。どこかの店を……あ、あれだ!)
梓「先輩、あそこにしましょう!」ビシッ!
○○「あそこって……牛丼屋?」
梓「え?」
梓「あ」カァア
288 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 10:59:37.38 ID:AL8oboNZ0
○○「はは、本当に何でもいいんだ」
梓「ちっ違います! これは不可抗力というか、慌てて間違えてしまっただけで、決して牛丼好きの女などでは」
○○「じゃあ豚丼好き?」
梓「どちらも違います! 私が指差したのは隣のレストランで……」
○○「ああ、あれか。いいね。オシャレな感じで。パスタメインの店か」
梓「はい。結構おいしいですよ」
○○「じゃあ、中野さんのおススメを信じてあそこにしよう」
梓「あう、そう言われるとなんだかプレッシャーです」
○○「さっきの俺と一緒だね」
梓「あ、ほんとですね。あはは」
289 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:00:33.34 ID:ref/d9fdP
――レストラン
店員「いらっしゃいいませー。お2人様ですかー?」
○○「はい」
店員「禁煙席と喫煙席がございますがー」
梓「禁煙でお願いします!」
店員「ではこちらへどうぞー」
――テーブル席
梓「うーん、クリームパスタにしようかなあ……」
○○「よし、あさりと春野菜のパスタにしよう」
梓「え、もう決めちゃったんですか? すみません、早く私も」
○○「いやいや、ゆっくり選んでくれていいよ」
290 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:01:58.44 ID:AL8oboNZ0
――食事中
カチャカチャ
○○「おー、美味しい」
梓「ふっふー、私の勝ちですね」
○○「勝負だったんだ。恐れ入りました」
梓「私の家族がお気に入りで、よく来るんですよ、ここ」
○○「うん、俺もお気に入りになりそうだ」
梓(良かった……)
カチャカチャ
○○「へえー、部室のあの水槽にいるのは亀じゃなくてすっぽんもどきなんだ」
梓「トンちゃんって言うんです。声をかけたらこっちを見てくれるんです。かわいいかどうかは……」
○○「微妙?」
梓「唯先輩はかわいいって言ってるんですけどね」
291 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:04:27.73 ID:ref/d9fdP
カチャカチャ
梓「これから夏になると日焼けが辛くって……」
○○「日焼け止めは? へえ、効かないんだ。そりゃきついなあ」
カチャカチャ
○○「ははは、それがネット通販の罠って奴だね」
梓「買う時は『絶対に必要だ!』と思ってしまうんです。ほんと、広告って怖いです」
カチャカチャ
○○「ごちそうさまでした」
梓「ごちそうさまでした」
292 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:07:16.02 ID:AL8oboNZ0
○○「いやー、美味しかった美味しかった」
梓「ご満足いただけて何よりです」
○○「中野さんと一緒っていうのも大きかったかもね」
梓「な、何を」
○○「1人で食べるよりは2人の方がやっぱり楽しいし」
梓「そ、そうですね……」モジモジ
梓「うぅ、すみません! お手洗いに行ってきます!」
○○「どうぞー」
タタタタ
○○「……」
○○「店員さん、すみません。水をもらえますか」
293 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:10:58.08 ID:ref/d9fdP
――女子トイレ 洗面台前
梓(先輩ってさらりと恥ずかしいこと言ってくるなあ)
梓(……はぁ)
梓(ああいうこと言われると慌てちゃうの、なんでだろ)
梓(やっぱり私、男の人に免疫ないのかなあ)
梓(……よし、顔が赤いのも治ったし、戻ろう)
タタタタ
梓「先輩、お待たせしました」
○○「あ、お、おかえり」ささっ
梓「? 先輩、今何か隠しました?」
294 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:13:41.84 ID:AL8oboNZ0
○○「い、いや、何もないよ、うん」
梓「……あっ」
梓(鞄の口から見えてるあれは……薬の袋?)
梓(そっか。薬を飲んでたんだ)
梓(そうだよね。飲んでるって前にも言ってたし)
梓(……先輩はそういう、直接病気を悟らせる場面を見せたがらないから、こっそり飲むつもりだったのかな)
梓「……」
梓「私、もう一度お手洗いに行った方がいいですか?」
○○「あっ……」
○○「いや、大丈夫」
○○「終わった、から」
梓「……はい」
295 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:15:03.63 ID:ref/d9fdP
――駅前
○○「じゃあ、そろそろ帰るね」
梓「今度はまた学校の部室で、ですね」
○○「だね。さわ子先生が許可してくれるまで1、2週間かかりそうだけど」
梓「また私の家が使える日があったら、連絡します」
○○「そんな何度も使っちゃ、」梓「迷惑じゃないですよ?」
○○「……ありがとう」
梓「いえいえ、私もいい練習になりますから」
296 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:17:55.86 ID:AL8oboNZ0
――梓達から少し離れた音楽ショップ
律「おーい、澪ー。そろそろ帰ろうぜー」
澪「もうちょっとー!」
律「ったく、レフティフェアやってる店にわざわざ来るとか、澪も物好きなやつ……」
律「……ふぅ、先に出とこ」
ウィーン
律「うお、もうこんなに暗いのか」
律「早く帰りてー……つーか腹減った。何か買うか」キョロキョロ
律「うん?」
律「あれって、梓じゃないか?」
297 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:19:42.36 ID:ref/d9fdP
――駅改札前
○○「じゃあ、ここで」
梓「はい、お疲れ様でした」
○○「今度会う時はチョコレートケーキ持ってくるから」
梓「それはとても楽しみです!」パァア
○○「ははは、中野さんはほんとに甘いもの好きなんだ」
梓「い、いいじゃないですか……好きなものは好きなんです」
○○「女の子らしくていいと思うよ」
梓「!」
梓「ど、どうも……」カァ
298 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:21:34.32 ID:AL8oboNZ0
――少し離れた場所
律「……梓で間違いないよな。ポニテだけど、ありゃ梓だ」
律「一緒にいるのは……うん、やっぱり男だ。誰だありゃ」
律「梓の奴、えらく楽しそうだな。ものすんごい良い笑顔じゃないか」
律「おっ、赤くなった」
律「ははは、かわいい奴」
律「うん? 待てよ」
律「梓にあんな顔させられるなんて……あの男は、ま、まさか」
律「梓の彼氏!?」
299 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:23:22.46 ID:ref/d9fdP
澪「律ー、お待たせー」
律「お、おおお! 澪か!」
澪「ごめん、レフティフェアなんてなかなかなくて……どうした? なんか挙動不審だけど」
律「な、なんでもない! うん、なんでもない!」
澪「何かあるって顔だろ、それは」
律「ほんとになんでもないってば!」
律(梓たちは……あ、いつの間にかいなくなってる)
律(ど、どこに行ったんだ? 帰ったのか?)キョロキョロ
律(まさかこれから2人して夜の街に繰り出すとか……?)ハラハラ
律(そんな! 梓、まだお前には早い! 早いぞ!)ドンッ
澪「律が百面相してる……」
300 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:25:36.34 ID:AL8oboNZ0
――夜 梓の自室
梓(今日は色々あったなあ)
梓(私の家で一緒に練習して、一緒にケーキ食べて、一緒にご飯も食べて)
梓(……お話もいっぱいできた)
梓(楽しかったなあ。またできないかなあ)
梓(……平日に誘ってみようかな)
梓(ううん、部活もあるし、さすがに無理だよね)
梓(よし! この1週間はけいおん部の練習に打ち込もう!)
梓(そうして上手くなった私のギターを○○先輩に見てもらおう!)
梓「えいえいおー」
301 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:28:52.74 ID:ref/d9fdP
――月曜 昼休み 教室
純「梓ってさ、最近イキイキしてるよねー」
梓「え?」
純「なんか生活にハリがあるっていうかさ。充実してるっていうか」
憂「あ、それは私も思った」
梓「そ、そうかな」
憂「うん。梓ちゃん、最近すごくかわいいもん」
梓「か、かわっ」びくっ
純「何かあったのかな? 梓ちゃーん?」
憂「部活で良いことあったとか?」
梓「けいおん部はいつも通りだけど……」
302 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:29:40.97 ID:AL8oboNZ0
純「けいおん部『では』何もない。だったら他に何かあると見た!」
梓「ええー、何もないってば」
純「ほら吐けー。新しいケーキ屋でも見つけたかー、澪先輩に頭でも撫でてもらったかー」
梓「純はそれでウキウキするんだ……」
憂「私はお姉ちゃんに撫でてもらったら1カ月はウキウキだよ?」
梓「……あはは」
梓(唯先輩に1日1回は撫でられてることは、黙っておこう)
303 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:31:32.72 ID:ref/d9fdP
――放課後 部室
紬「今日はチーズケーキなのー」
唯「おー、チーズの香りがすごいよ!」
澪「これはいいな」
梓「……おいしい」もぐもぐ
律「……」じーっ
梓「……」もぐもぐ
律「……」じーっ
紬「りっちゃん、食べないの?」
律「え?」
304 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:32:52.89 ID:AL8oboNZ0
澪「律が食べないなんて珍しいな」
律「い、いや、食べる食べる。うん」ばくばく
梓「……」もぐもぐ
律「……」ばく……じーっ
梓「……」もぐもぐ
律「……」じーっ
澪「……律」
律「んあ?」
澪「どうして梓を睨んでるんだ?」
305 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 11:34:06.52 ID:FiP7Wyw0P
学園祭前夜にメールしてた相手はこいつか
306 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:34:18.75 ID:ref/d9fdP
梓「え?」
澪「親の仇みたいに睨んでるぞ」
律「そ、そうか?」
梓「え? え?」
唯「りっちゃんがあずにゃんを嫌いになっちゃった?」
紬「それは大変ねー」
律「そういうわけじゃなくてだな……あーもう! 練習しようぜ!」
澪(誤魔化した)
唯(誤魔化したんだね)
紬(あらあら〜)
梓(私、律先輩に何かしたのかな……)
307 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:36:23.21 ID:AL8oboNZ0
――練習後
唯「良い感じだったねー」
律「だなー」
澪「梓、ギター上手くなった?」
紬「あ、それ私も思った。前よりずっと良い音が出てるわ」
梓「そ、そうですか?」
澪「ああ。家ですごく練習してるんだな」
紬「最近やる気いっぱいだったものね。何かやる気になる素があるのかしら」
律「!」
律「……うーん」
308 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:38:30.53 ID:ref/d9fdP
梓(上手くなった……素直に嬉しい)
梓(多分、○○先輩と練習したから、かな)
梓(……ううん、それだけじゃない。やっぱりこのバンドで演奏することが楽しいから)
梓(その楽しさが原動力になってくれているから)
梓(もっと上手になろうと思える)
梓(○○先輩もこういう楽しさを知ってくれたら……)
梓(……)
梓(……あ)
梓(いや、けど)
梓(うーん)
梓(○○先輩とけいおん部の先輩たちが一緒に練習だなんて……そんな)
梓(できるのかなあ……そもそもどうやって先輩たちと会わせればいいか……うーん)
この梓は良いな
支援
311 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:45:00.85 ID:AL8oboNZ0
梓「うーんうーん」
律「……」じーっ
澪「律」
律「んあ?」
澪「どうしたんだよ。やっぱり梓を睨んでるぞ」
律「……なぁー、澪ー」
澪「うん?」
律「なんていうかさ……後輩に先を越されるのって、悔しいよな」
澪「はぁ?」
律「そんな感じなのだよ」
律(まさか5人の中で梓が最初に彼氏を作るだなんて)
律(いまだに信じられん)
律(男っ気なんて全然なかったのになあ)
312 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:46:09.32 ID:ref/d9fdP
律(……梓に聞いてみたいな、彼氏のこと)
律(いや、私たちにも話さないってことは、隠さなきゃいけない関係だったりして)
律(おー、すごく乙女っぽいじゃないか、梓)
律(しかし、私は誰かに話したい……黙っていられないぞ、こんな面白い話)うずうず
澪「おい律、いったいどうしたんだってば」
律「澪! ちょっちこっち来い!」グイッ
澪「お、おい、引っ張るなよ!」
律「あのな――」ヒソヒソ
澪「え? 梓に――」ヒソヒソ
梓「はぁ……」
3章 おわり
313 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 11:55:51.86 ID:AL8oboNZ0
3章おわり。1つ支援がつくと劇的にさるになりにくくなるので、支援に感謝!
ちょっとレス
>>254 鬱エンドは個人的に好みません
>>255 医大生の人がなんて言ったかだいたい想像つくけど、まあ、フィクションということでお願いします
>>305 今録画したの見返してみたら、確かにメールしてた。細かいところ覚えてるんだなー
VIPだとこの手のSSは拒絶されるかと思ってたので、読んでくれてる人がいて本当に嬉しい。
これからまたバイトなので、4章はまた夜に。何度も中断して申し訳ない。だいたい夜10時か11時には戻ります。
314 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 12:10:47.68 ID:9AjpHJ5r0
保守
315 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 12:48:24.00 ID:5NdthSEqO
ほしゅ
とっても面白い。保守
>>313 「VIPだと」って事は他所でなんか書いてる人?
318 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 13:16:37.76 ID:WkP2U0us0
保守
捕手
320 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 14:17:38.84 ID:hLk+9jBQ0
けいおんはよくしらないけどおもしろいな
保守
321 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 14:54:41.97 ID:ZxOEyzuX0
ほ
322 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 15:00:43.59 ID:ZBKt7nlr0
保守
323 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 15:41:44.28 ID:FiP7Wyw0P
ほ
324 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 16:17:03.88 ID:7YKLXkV60
ほ
325 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 17:11:10.11 ID:aTs80MJi0
え
326 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 17:32:06.48 ID:q1svoc8+0
327 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 18:11:26.16 ID:xTFXKV1B0
ho
328 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 18:18:09.23 ID:ZBKt7nlr0
syu
329 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 18:29:18.02 ID:ZBKt7nlr0
保守
330 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 18:56:09.26 ID:S6+VJmCx0
ほし
331 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 19:01:58.64 ID:QTrh9BGt0
定期保守
332 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 19:56:47.86 ID:QTrh9BGt0
定期保守
保守
334 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 20:07:35.58 ID:QTrh9BGt0
定期保守
まだ後7章分もあるのか。
336 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 20:52:57.49 ID:QTrh9BGt0
定期保守に上がりました。
337 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 21:26:00.01 ID:QTrh9BGt0
保守しようぜ
338 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 21:44:08.70 ID:x4r6/nl50
保守
339 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 22:05:21.43 ID:ref/d9fdP
すみません。帰るのがちょっと遅れそうです。
11時頃再開でお願いします。
340 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 22:06:14.63 ID:QTrh9BGt0
定期保守
ho
342 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 22:48:54.41 ID:QTrh9BGt0
定期保守
343 :
マジレス1IX91w ◆MAJI1IX91w :2010/08/28(土) 22:59:01.19 ID:Hmup8Hv70
けいおん終わってほしくないよーやだよーうわああ
ちなみに、もうすぐ最終回だから、梓嫌いを克服したよっ!
みんなかわいい!大好き!
嫌いなキャラをつくっちゃうなんてバカみたい
自らその作品をちょっとでも嫌いになる理由つくるなんてやめなさい
344 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:21:15.91 ID:ref/d9fdP
戻りました。遅くなり申しわけありません。
>>317 2chではない、外部のサイトで少々。ひっそりした場所でやってました。
4章いきます。
345 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:22:04.43 ID:ref/d9fdP
4章
――2週間後 6月上旬
――水曜日 昼休み 教室
純「あー、じめじめするー」
憂「もう梅雨に入ったらしいから、雨ばっかり降るね」
梓「こういう日って髪の毛がじめじめするから嫌だなあ」
純「あんたはまだいいでしょ、さらっさらの黒髪ストレートなんだから。私なんか……はぁ」
憂「私もこの時期の朝は鏡の前で格闘だよー」
梓「私だって似たようなものだって。お風呂上りなんて湿気のせいで髪の毛が乾きにくいし」
346 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:23:35.80 ID:AL8oboNZ0
純「そうだ、梓、今週の土曜日、あんたの家に行ってもいい?」
梓「え? どうしたまた」
純「んー、なんとなく。遊びたいなあ、と」
梓「思いつきにもほどがあるでしょ……今週は駄目。用事があるから」
純「あー、そっか、梓はかれ、っおっと」
梓「カレー?」
純「ううん、なんでもない、なんでもないよ」ニヤニヤ
梓「?」
347 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:25:23.27 ID:ref/d9fdP
――廊下
梓(最近、どうも周りの様子がおかしい)
梓(純と憂はやけに優しいし……教室にいると周りから見られてるような感じがする)
梓(それに……)
クラスメイトA「中野さん! 頑張ってね!」
クラスメイトB「応援してるから!」
梓「あ、ありがと」
梓(特に仲の良くなかったクラスメイトに声をかけられることも多くなった)
梓(みんな、私を応援しているらしい)
梓(……なんでだろ?)
348 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 23:27:59.54 ID:QTrh9BGt0
支援
349 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:28:56.67 ID:AL8oboNZ0
――昼休み 3−2
律「でだ、梓の奴、そこでいきなり顔を赤くしてな!」
姫子「おー、初々しい〜」
エリ「いいなあ」
慶子「後輩さんかわいいー」
潮「だねー」
律「私は思ったねえ。この2人の関係は普通じゃないって!」
澪「……律の奴、思いっきり言いふらしてるな」
紬「この話、もう全校生徒に行き渡ったんじゃないかしら」
和「生徒会でも話題にあがってたわよ。かわいい後輩が秘密で禁断な恋をしてるって」
350 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:30:02.84 ID:ref/d9fdP
紬「幽霊のお話なんてもう消えちゃったわね」
澪「ひっ!」ビクリ
和「ああ、そんな噂もあったわね。結局、嘘だったのかしら」
澪「何も聞こえない何も聞こえない」ガクブル
紬「1度梓ちゃんが目撃して、『不法侵入者かもしれない!』って言ってたんだけど……」
和「ああ、それなら唯にも聞いたわ。夜の学校を探検したって、嬉しそうに言ってたから」
紬「ふふふ、けどそれも、うやむやな内にみんな忘れていっちゃったわ」
和「女子高の噂なんて、とてもじゃなけど75日もたないものね」
351 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:33:04.69 ID:AL8oboNZ0
唯「むにゃむにゃ……もう食べられないよう」zzzz
紬「あら」
和「ベタな寝言を……」
紬「いいなあ。私もこういう寝言を言ってみたい……」
和「へ、変な趣味ね……それにしても、律が話している中野さんの話も、本当のことなのかしら?」
紬「というと?」
和「だって、あなたたちけいおん部のメンバーも、中野さんの彼氏をちゃんと見たわけではないんでしょう?」
紬「そうね。りっちゃんの目撃話が嘘だとは思えないけど……」
澪「何も聞こえない何も聞こえない」ガクブル
352 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:36:15.35 ID:ref/d9fdP
紬「あ、けど、梓ちゃんの様子が変だっていうのは本当なの」
和「どんな風に?」
紬「平日の放課後、時々1人だけ早く帰ったり、一緒に帰ってても『寄る所がある』と言ってすぐに別れたり」
紬「休日も、みんなで遊ぼうっていう話になっても、梓ちゃん1人だけ断ることもあったわ」
紬「付き合いが悪いというわけじゃないけど……ちょっと変わったところはある」
和「なるほどね。じゃあ、噂されてる『貴族の子息との禁断の恋』とか『ふらりと現れた旅人との衝撃的な出会い』なんていうどうなの?」
紬「それは噂に尾ひれがついてしまっただけではないかしら」
和「そうなんだ」
紬「確定している事実は『男の人と一緒にいる梓ちゃんをりっちゃんが見た』っていうことだけだから」
和「あとは全部噂する人間の妄想、ってわけね」
353 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:37:39.93 ID:AL8oboNZ0
和「こんな風に噂話ばかりしてないで、あなた達が本人に直接聞いてみればいいのに」
紬「それが、唯ちゃんがね」
唯『あずにゃんが私たちに話してくれるのを待とうよ!』
紬「って」
和「じゃあ、誰も中野さんに直接恋人のことを尋ねないのは
紬「……多分、全校生徒がそう考えているのではないかしら」
和「それで噂だけが広がり、当の本人だけがそのことを知らない、という状況が生まれたわけか」
紬「もう梓ちゃんは全校生徒の妹みたいなものねえ」
和「何事もなければいいのだけど」
354 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:39:25.10 ID:ref/d9fdP
――放課後 廊下
梓(やっぱり視線を感じる……どうしてだろ)
梓(特に声をかけられるわけじゃないんだけど)
梓(何かこう……影から見られているような)
梓(……)
梓(そういえば、澪先輩もこんな風に視線を感じてたことがあったっけ)
梓(澪先輩の場合は、ファンクラブの人たちが正体だったけど)
梓(……)
梓(いやいや、私は澪先輩みたいにかわいくなんかないから、ありえないありえない)
355 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:41:02.69 ID:AL8oboNZ0
ぴろぴろりん
梓「あ、メールだ」
梓「……○○先輩からだ!」
from ○○先輩
件名 以前話した楽譜
今、楽器店にいるんだけど、中野さんが探してたジャズ特集の楽譜、見つけたよ。
良ければ買っておこうか?
梓「『お願いします。今度の練習日にお金も渡します』っと」
梓「やった。欲しかった楽譜だ!」
梓(○○先輩、最近はメールでも敬語使わなくなったなあ)
梓(良い傾向だよね。敬語だと他人行儀だし)
梓(幽霊の噂も消えてきて、学校での練習も再開できる。いいことづくめだよ)
356 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:43:25.43 ID:ref/d9fdP
トコトコトコ
梓(ここ2週間、何度かスタジオや私の家で○○先輩と一緒に練習してきたけど)
梓(やっぱり思った。先輩は1度、バンドで練習した方がいいって)
梓(他の楽器とのセッションも経験した方が、もっと良い音が出せるようになるはず)
梓(……けど、先輩はそれを嫌がってる節がある)
梓(きっと自分の身体のことで、他人に迷惑をかけたくないからだ)
梓(私にも色々と遠慮する人だもん)
梓(きっと『バンドメンバーを集めてみたらどうですか』と言っても、乗り気にはならない)
357 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:45:08.58 ID:AL8oboNZ0
梓(……けど、けいおん部の先輩たちなら)
梓(あの人たちとなら、きっと上手くいく……そんな気がする)
梓(だって、○○先輩も唯先輩たちも、音楽を楽しんでるから)
梓(楽しく楽器を弾けることを1番大事にしてるから)
梓(だから、最初に顔を会わせた時に仲良くなれさえしたら、きっと意気投合して……)
ガラリ
梓「あ、皆さん、もう来ていたんですね」
唯「あずにゃんだー」
358 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:47:20.75 ID:ref/d9fdP
澪「今日は遅かったんだな」
梓「掃除当番だったので」
紬「今日はティラミスよ〜」
唯「おお! なんか茶色いよ!」ワクワク
律「めちゃくちゃ綺麗な形だなー上にかかってるのってココアパウダーだったよな?」
紬「ええ。いっぱい食べてね」
唯「いただきまーす!」
律「いただきます!」
澪「いただきます、と」
梓「……いただきます」
支援
360 :
◆.f0/3588.c :2010/08/28(土) 23:59:31.98 ID:AL8oboNZ0
梓(○○先輩と唯先輩たちを引き合わせるにしても……)もぐもぐ
梓(どうやって先輩たちに話を切り出せばいいか……)もぐもぐ
梓「うーん」
律「!」キラリン
律「3年生は端っこに集合ー」
澪「は?」
律「ほら、こっちに来い来い」
唯「なになにー?」
紬「どうかしたの?」
梓「何してるんですか?」
律「梓はきちゃ駄目ー。そこで大人しくケーキ食っとけい」
梓「は、はあ」
361 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:00:34.09 ID:ref/d9fdP
澪「で、なんだよ、律」
律「こほん、梓の奴元気ないと思わないか?」
澪「ああ、確かにな。って、それを話し合うためにわざわざ集めたのか……」
律「だって気になるじゃーん。あんな悩ましい顔されたらさー」
澪「まあ……何かあったのかな」
唯「ティラミスが嫌いだったとか?」
紬「ええ! だったら他のケーキを」
362 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:06:53.91 ID:AL8oboNZ0
梓「はあ……」
律「いや、違うな。あのため息……ずばり、恋の悩みだ!」
澪「また根拠もなく……」
唯「あずにゃんが失恋だなんてかわいそうだよ」
紬「まだ失恋と決まったわけじゃないのでは?」
律「けど、恋で悩んでる顔だ!」
澪「悩みを抱えてるっぽいのは同意できるけど……」
梓「先輩たち、どうして隅っこでお話してるんだろ」もぐもぐ
363 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:07:58.13 ID:btQNXBBQP
澪「そもそも律、そんな風に言えるほど恋愛経験ないだろ」
律「なっ、澪だってそんなの同じだろ! 男の前だと緊張して話もできないくせに!」
唯「そうなんだー」
澪「だ、だって男の人ってちょっと怖いし……」
唯「そうかなー? 男の子も女の子も変わらないと思うよー?」
律「唯は誰が相手でも緊張なんてしないだろ」
澪「男の人怖い……うぅ」ガクブル
紬「ふふふ、澪ちゃんはかわいいわー」
梓「……1人でケーキを食べるのは寂しいです」もぐもぐ
364 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:10:40.18 ID:nbMsnar10
律「ふむ……ここは梓に事情を聞いてみるか」
澪「けど梓が話してくれるまでは聞かないって」
律「確かにそう言ったけどなあ」
唯「あずにゃん、1人で悩んで苦しんでるかもしれないよ?」
紬「そうね。辛い恋なのかもしれないし」
律「梓の先輩として、このまま放っておいていいわけない!」
唯「そうだそうだー」
紬「そうだそうだー」
澪「はぁ……まあ、私も心配なのは同じだし、聞いてみるか」
トコトコ
梓「あ、先輩たちが戻ってきた」
365 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:13:15.21 ID:btQNXBBQP
律「梓」キリッ
梓「はい?」
律「何か私たちに話したいことがあるんじゃないか?」キラキラ
唯「1人で抱え込まなくていいんだよ?」
澪「私たちじゃ頼りにならないかもしれないけど」
紬「精一杯助けるから」
梓「??」
梓「あの、先輩たちはいったい何を……」
366 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:16:16.34 ID:nbMsnar10
律「いいんだ! もう隠さなくていいんだぞ、梓!」
律「お前の考えてることは分かってる。私たちに心配をかけたくなかったんだろ? そうだろ?」キリッ
梓「あのー」
澪(律の奴、ノリノリだな……)
律「さあ、話してみるんだ、梓」
律「私たちに紹介しなければいけない人が、いるんじゃないのか?」キリッ
梓「……え?」
梓「え? え?」
梓「ええ!?」
367 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:19:25.29 ID:btQNXBBQP
梓「ど、どうして分かるんですか!?」
律「そりゃあ、私たちはお前の先輩だからな!」
唯「あずにゃんのことはまるっとお見通し!」
澪「悩んだ顔してたし」
紬「最近は様子が変だったのよ?」
梓「そ、そうだったんですか……自分で気付かないなんて」
律「さあ、話してみろ。お前の悩みを。そして私たちが華麗に解決してやるんだぜ!」キリッ
澪(熱入りすぎだろ、律)
梓「はい! ありがとうございます!」
368 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:22:51.41 ID:nbMsnar10
梓(○○先輩に話を持ちかける前だけど……うん、先に先輩たちに言っておこう)
梓(○○先輩と一緒に練習してください、って)
梓(先輩たちならきっと了承してくれるはず!)
梓「で、では、話します!」
律「来い!」
梓「実は!」
唯「あずにゃんの彼氏かー。どんな人なんだろー」
梓「……」ピタ
梓「……」
梓「……」
梓「……え?」
369 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:26:45.17 ID:btQNXBBQP
梓「彼……氏?」
律「こら、唯。話の腰を折るな。どんな奴かは話しただろ。色白で細っこい男だ」
唯「あ、そっかー、あずにゃんより背が高いんだったね」
紬「ギターケース背負ってたって、りっちゃん言ってたわよね」
澪「で、2人して夜の街に消えていったと……ちょっと破廉恥だ」
梓「……」
梓「え?」
梓「え?」
370 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:31:04.91 ID:DUsXVD5S0
し
371 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:31:40.99 ID:vFWPs/p20
え?
372 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:31:59.63 ID:nbMsnar10
梓「そ、それはもしかして○○先輩のこと……!」
律「お、○○って言うのか」
紬「先輩ということは、私たちと同級生か、もっと年上?」
唯「あずにゃんは年上好きなんだー」
梓「かかかかか彼氏って、どういうことですか!」
律「隠さなくていいんだ。2週間前の土曜、駅前でお前とその○○先輩ってのが一緒にいる所、私見ちゃったんだからさ」キリッ
梓「……」ぽかーん
梓「……」ぽかーん
梓「はっ!」
梓「ちちちち違いますー!!」
ん
374 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:32:37.04 ID:vFWPs/p20
( ゚Д゚)ポカーン
375 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:35:51.13 ID:btQNXBBQP
梓「あの人はただのギター友達というだけで、そんな色恋沙汰が芽生えるような関係でもなく!」
梓「メールでの話題はもっぱら音楽関係で、後は好きな食べ物や、その日起こった面白い出来事を話したりするだけで!」
梓「私の家に来た時もギターの練習に打ち込んでいて、そんなドラマ的展開が起こるわけでもありませんし!」
梓「一緒にご飯を食べたりもしますが、本当にただお喋りしながら食事を共にするだけで、食べたらすぐにお別れです!」
梓「だから!」
梓「そんな特別な関係ではありません!」
律「メールしてるんだ」
澪「家に招待したんだ」
唯「一緒にご飯食べたんだー」
紬「とても仲が良いのね〜」
梓「あ……」
梓「ち、違います」カァ
376 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:40:20.91 ID:YyZb/wmI0
支援
377 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:40:31.03 ID:nbMsnar10
律「まあ、分かった。つまる所、梓の片思いなわけだ」
唯「彼氏じゃなかったんだー」
紬「でも、恋の悩みなのは当たってたわ。すごいわ、りっちゃん!」
律「あははー、もっと褒め称えろー」
梓「だから、そういう関係ではなく、もっとすがすがしい友達関係でして!」
澪「まあ、待て、梓」ポンポン
梓「み、澪先輩?」
澪「とりあえず落ち着こう。慌ててばかりじゃ何も話せない」
澪「ほら、みんなも茶化してばかりいないで、梓の話を聞いてやろう」
律「ほーい」
唯「わくわく、どきどき」
紬「どきどき、わくわく」
378 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:43:53.66 ID:btQNXBBQP
梓(うぅ、こんな、間違った期待をされながら○○先輩のことを話すだなんて……仕方ない、か)
梓(話そう。ただ……)
梓(どうしよう。○○先輩の身体ことも話すべきなのかな)
梓(人のプライベートを簡単に話しちゃいけない)
梓(けど、もし一緒に練習することになった時に○○先輩の身体のことを知っておかないと……)
梓(……)
梓(……)
梓(よし)
澪「梓、話してくれないか?」
梓「はい」
梓「まず、4月の下旬に広まってた、幽霊が出るという噂ですが――」
379 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:46:36.08 ID:vFWPs/p20
しえん
380 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:47:10.10 ID:nbMsnar10
――数十分後
律「なるほど、な」
澪「……」
唯「すごい人だねー。努力家なんだねー」
紬「ええ、素直に驚いてしまうわ」
梓「……はい。あの人はいつも音楽を楽しむために頑張ってます」
澪「……」ポロポロ
律「うわっ! 澪、何泣いてんだよ!」
澪「だ、だって……練習がしたいのにできないなんて、自分がそうだったら、って考えたらすごく悲しくて」ポロポロ
律「ったく、よしよし、泣くな泣くな」ナデナデ
澪「うぅー」
紬「だけど、どうして家でも学校でも練習できないのかしらね」
梓「さ、さあ、その理由は……聞いていません」
381 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:47:41.47 ID:btQNXBBQP
梓(やっぱり話せなかった……先輩の身体のこと)
梓(話していいかどうかなんて、私の独断じゃ決められない)
梓(○○先輩は身体のことを知られるのを嫌がるかもだし)
梓(知り合った後からでも話せるよね)
梓(……また先輩と相談して決めよう)
382 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:52:41.00 ID:nbMsnar10
律「で、私たちの練習にその男も参加させて欲しい、ってわけか」
梓「はい。メンバーに入れるとまでは言いません。ただ、一緒に練習するだけで……」
梓「それだけで、○○先輩に掴めるものが出てくるはずですから」
律「そっか……よーし、みんなー、どうするー?」
唯「私はいいよー?」
律「んな簡単に決めるなよ」
唯「だって面白そうだもん」
律「ったく、唯は賛成、と。澪は?」
澪「私は……実際にどんな人か会ってみないと、なんとも」
383 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:53:15.60 ID:btQNXBBQP
律「ふーん、澪は男が怖いだけじゃないのかー?」
澪「ばっ、違う! そりゃあ、ちょっと怖いけど……自分の目でどういう人か見ないと、分からないから」
律「ま、少しは男と接触しようって思うだけ、まだマシか。ムギは?」
紬「私も澪ちゃんと同意見」
紬「嫌ではないのだけど、バンドってやっぱりフィーリングが合わないことにはやっていけないから」
紬「少しの間の練習でも、それは同じだと思う」
唯「音楽の方向性の違い、って奴だね!」
紬「ふふふ、そんな感じよ」
律「なるほどな。ちなみに私は、そいつが良い奴っぽいならやってもいいぜ」
梓「先輩は良い人です!」
律「はいはい、惚気いただきましたー」
梓「へう」カァ
384 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:55:11.10 ID:nbMsnar10
律「というわけで決まりだな」
律「今夜、ここでその○○ってのと会ってみようー!」
唯「おー!」
紬「おー」
澪「お、おー」
ガチャリ
さわ子「ま、いつかはこうなると思ってたわ」
梓「さわ子先生!」
さわ子「梓ちゃん、そんな気軽に話しちゃ駄目でしょ。ようやく噂も消えてくれたのに」
梓「あう……すみません」
さわ子「まあ、悪い方向にはいってないから、いいわ」
385 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:56:25.42 ID:btQNXBBQP
律「さわちゃんも1枚噛んでたとはなー」
唯「騙したのね! ずるい! こうなったら、あなたを殺して私も死ぬ!」
澪「唯は何やってんだ」
紬「きっと昼ドラごっこね〜」
さわ子「下手したら私のクビが飛ぶかもしれないのだから、そりゃ秘密にするわよ」
さわ子「けどこうなった以上、仕方ないわ」
さわ子「私も、○○君は1度バンドで練習した方がいいと思ってたし」
さわ子「ただ、今日は無理よ。他の先生方が残るらしいから」
さわ子「だから……そうね、明日にでもどこかのスタジオを借りて、放課後に集まってみたら?」
386 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 00:57:49.22 ID:nbMsnar10
律「それでいくか」
澪「ど、どきどきしてきた」
唯「澪ちゃんは緊張しすぎだよー。リラックスリラックス」
紬「何かお茶菓子も必要かしら」
さわ子「私は行けないから、適当に楽しんでらっしゃい」
梓「……」
梓「みなさん」
律「ん?」
澪「どうした、梓」
梓「ありがとうございます」ペコリ
387 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:01:50.13 ID:btQNXBBQP
梓「私の変なお願いを聞いてくださって」
梓「すごく……すごく嬉しいです」
唯「あずにゃんは後輩! 先輩は後輩のお願いを聞くものなんだよ!」
紬「そうよー、だから気にしないで。私たちも結構楽しみなんだから」
梓「……はい!」
さわ子「あ、他の子にここでの練習のことを話しちゃ駄目よ。けいおん部だけの秘密ね」
全員「はーい」
唯「憂にもー?」
さわ子「だーめ。できれば○○君のことも話さないように」
唯「……秘密めいた私かっこいい!」
澪「何言ってんだ……」
388 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:03:33.00 ID:nbMsnar10
律「そういえば、結局梓と○○ってのはどういう関係なんだ?」
梓「で、ですからただのギター友達で……!」
律「本当かあ? 実際そうだとして、梓は何も意識してないのか?」
梓「わ、私が……?」
梓(意識? ○○先輩を?)
梓(……)
梓(そ、そんなこと……!)
梓「はふー」ボフン!
律「ありゃ? 爆発した」
澪「律、からかいすぎだぞ」
389 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:06:46.64 ID:btQNXBBQP
澪「梓の話聞いてただろ。健全な友達関係じゃないか。どうしてそんな色恋沙汰に持っていきたがるんだ」
律「いやー、うん、分かってる。だからかなり冗談だったんだけど……こりゃ意外や意外、って所かな」
唯「あずにゃんをそこまで夢中にさせるとは……やるな、○○君!」
紬「あらあら〜」
梓「ち、違いますー!!」
唯「けど、これじゃあ噂と、ふぐっ!」
律「ま、待て唯! こっちにお菓子あるぞ!」グイッグイッ
梓「噂?」
律「なんでもないなんでもない!」
律(やべー。今広まってる噂が梓の耳に入ったら……)
澪「お前が広めたってばれたら、先輩としての信頼を完全になくすな」ボソッ
律「!」ビクッ
律(な、なんとか誤魔化していかないと!)
390 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:10:20.53 ID:nbMsnar10
――夜 梓の部屋
梓(……)ゴロゴロ
梓(ベッド柔らかい……)ゴロゴロ
梓(……)ゴロゴロ ピタ
梓(……大丈夫、だよね)
梓(うん)
梓(大丈夫)
梓(先輩にメールを送ろう)
391 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:13:46.37 ID:btQNXBBQP
to ○○先輩
件名 明日の放課後ですが
こんばんは、中野です。
明日の放課後、良ければスタジオで練習しませんか?
学校近くに『PAC』っていうスタジオがあります。
私は部活もないので、5時にそこでどうでしょうか?
梓(……先輩たちもいるって書きたいのに)
梓(律先輩はどうしてあんなことを)
392 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:14:57.13 ID:YyZb/wmI0
支援
393 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:15:57.86 ID:nbMsnar10
――数時間前 部室
律『あ、その○○っていう男には私たちがいることを内緒にしとけよ!』
梓『はあ、どうしてですか?』
律『びっくりさせたいじゃないか!』
唯『おー、いいねー、サプライズだねー』
梓『そんな理由で……』
律『それにさ、そいつってあんまりバンドで練習したがらない奴なんだろ? 本当のこと言ったら来ないかもしれないぞ?』
梓『……けど』
律『決まりだ決まり! 明日はサプライズだー!」
唯『だー!』
澪『律の悪ノリがまた始まった』
紬『ふふふ、けど楽しそう』
394 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:16:34.18 ID:btQNXBBQP
梓(はあ、○○先輩に嘘なんてつきたくないのに)
梓(こんな、騙しちゃうだなんて……)
梓(けど、確かに本当のことを言うと○○先輩、来ないかも)
梓(……)
梓(騙した、って怒られたら、どうしよう)
梓(先輩が怒ってるところなんて見たことないけど……それでも)
ぴろぴろりん
梓「あ、返信……」
395 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:19:46.06 ID:nbMsnar10
from ○○先輩
件名 分かった
部活がないだなんて珍しいね。何かあった?
明日の5時なら大丈夫なので、行かせてもらいます。
一緒に弾けるのは久しぶりなので、とても楽しみだよ。
梓「……」
梓(……ちょっとだけ。ちょっとだけヒントみたいなのを出しても、いいよね)
to ○○先輩
件名 明日は
少しオシャレをしてきた方がいいかもしれません。
梓「……伝わる、かな」
396 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:23:04.80 ID:btQNXBBQP
――翌日 学校 昼休み
純「でさー、私の布団に入って寝ちゃったんだよねー」
梓「かわいいなー、いいなー、猫ー」
憂「……はぁ」
純「ん? 憂、どうしたの?」
梓「なんか今日は元気ないね」
憂「うん……ちょっとね」
純「なんだなんだー? 梓に続いて憂もかー?」
梓「私に続いて?」
純「いんや、なんでもないよー」
憂「それがね、昨日、お姉ちゃんが……」
397 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:24:31.81 ID:nbMsnar10
――憂の回想
唯『ふんふーん』
憂『お姉ちゃん、ご機嫌だね』
唯『ふっふー、明日はサプライズイベントがあるからね! 楽しみなんだよ!』
憂『サプライズ? 誰を驚かすの?』
唯『それはねー、あずにゃ――あっと、これは秘密だった!』
憂『え? 私にも話しちゃ駄目なの?』
唯『秘密秘密!』
憂『けど、今梓ちゃんの名前……』
唯『憂には絶対話さない!』
憂『そ、そんな……お姉ちゃんが私に隠し事だなんて……』ガーン
398 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:30:14.88 ID:btQNXBBQP
憂「こういうことがあって……」ガクリ
純「へー」
梓「……」
憂「お姉ちゃんがあそこまで頑なに口にチャックするなんて、初めてで……」
憂「秘密だって言うなら、私は絶対に人に話したりしないのに」
憂「……私、お姉ちゃんに信用されてないのかなあ」ショボン
梓「そ、そんな深刻に考えなくても、ただ単に口止めされてるだけかもだし」
梓(というか唯先輩、そこまで口を固くしなくても……学校で練習してたことだけを秘密にすればいいのに)
憂「そう? お姉ちゃん、私を嫌ってないかな?」
純「憂を嫌うなんて、相当難しいんじゃない? とってもいい子だもん」
梓「きっとサプライズっていうのが終わったら、話してくれるよ」
憂「うん……」
399 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:30:34.79 ID:0XfBxMfU0
支援
400 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:30:55.54 ID:nbMsnar10
ぴろぴろりん
梓「あ、メール……」
純「誰から? まさかまさかのー?」ニヤニヤ
梓「何でそんなににんまりしてるの……あ、唯先輩からだ」
憂「お姉ちゃん? なんて?」
from 唯センパイ
件名 無題
クラッカーとか持っていた方がいいかな?
梓「……どうでもいいことだったよ」
憂「そう?」
梓(『そういうことはやめましょう』って後で送っておかないと)
401 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:34:39.43 ID:btQNXBBQP
――放課後 校門前
律「よっしゃ、じゃあスタジオに行くかー」
澪「外で練習なんて久しぶりだな」
唯「ギー太〜、お出かけだよ〜」
紬「私のキーボードもお出かけ〜」
律「……なんか私だけ仲間外れだ!」
梓「ドラムは重いですし、仕方ないですよ。スタジオで借りないと」
402 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:36:29.24 ID:nbMsnar10
スタスタスタ
律「○○ってのは何時ごろ来るんだ?」
梓「5時には着くって言ってました」
澪「じゃあ私たちは先にスタジオに入っておくか」
唯「で、その人が入ってきたら、『わー、びっくり!』だね!」
律「『かわいい子ばっかりで驚いたー』とかな!」
紬「男の人ってよく食べるみたいだけど、お菓子これだけで足りるかしら?」
梓「あ、着きましたよ」
403 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:37:17.81 ID:btQNXBBQP
――貸しスタジオ
店員「では、こちらの部屋になります。3時間経つと天井のランプが光るので、その時はまたカウンターで退出手続きをお願いします」
律「はいはーい」
唯「わー……狭いね」
澪「安い部屋だしな、こんなもんだよ」
紬「あ、コンセント見つけた。今からお茶を淹れるわね」
唯「お構いなくー」
梓「あ、けどスタジオって飲食禁止……」
404 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:37:29.56 ID:nbMsnar10
ガチャリ
店員「あのー、スタジオ内での飲食はちょっと……」
紬「あ、ご、ごめんなさい」
梓「やっぱり……」
唯「じゃあ、外でお茶だけ飲もうよ!」
澪「けど、もうすぐ5時だぞ。○○さんも来るんじゃないか?」
律「ん? なんで澪は同級生相手にさん付けなんだ?」
澪「え、だって知らない人だし、男の人相手に呼び捨てなんてできないし……」
唯「私は何て読んだらいいかな? ○○ちゃん? ○○っぺ?」
梓「普通に君付けでいいのでは……」
405 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:40:24.27 ID:btQNXBBQP
ぴろぴろりん
梓「あ、メール……」
from ○○先輩
件名 迷った
どうにも貸しスタジオが見つからない……
多分近くに来てると思うんだけど、何か目印とかないかな?
406 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:42:18.90 ID:nbMsnar10
梓「○○先輩、近くまで来てるけど道に迷ってるみたいです」
澪「ちょっと小さい店だから、地元の人じゃないと見つけづらいかもな」
梓「私、迎えに行ってきます!」
律「おー、頑張れよー」
ガチャ、タタタタタ
律「……さて、練習するか」
唯「サプライズイベントはー?」
澪「部屋に入ったら、知らないバンドが演奏してるっていうだけでサプライズじゃないか?」
紬「なんだか楽しくなってきちゃった」
律「よっしゃー! やるぞ!」
407 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:44:32.34 ID:btQNXBBQP
――店の外
タタタタ
梓「あ、いた! ○○先輩!」
○○「あ、中野さん、こんにちは」ペコリ
梓「こんにちは」ペコリ
梓「けっこう近くにいたんですね。よかった」
○○「まあ、道には迷わなかったから」
梓「え?」
○○「それより」
○○「どうかな、俺、オシャレできてる?」
408 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:45:43.04 ID:YyZb/wmI0
支援
409 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:47:15.73 ID:nbMsnar10
梓「え? えーと……はい、シンプルな格好でいいかと」
○○「そっか。オシャレなんて言われて、昨日は慌てたよ」
梓(白の長袖YシャツにGパン……オシャレ?)
梓「あ」
梓「せ、先輩、ギターはどうしたんですか?」
梓「今日は練習するはずですが……」
○○「ああ」
○○「んー……今日は必要ないかと思ってね」
410 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:48:47.68 ID:6WRNR17rP
ざわ…ざわ…
411 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:49:50.79 ID:cjIJABay0
ほう
412 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:50:45.95 ID:btQNXBBQP
梓「必要ないって……」
○○「あれ? そうじゃなかった?」
梓「え、あの……」
○○「だってさ」
○○「貸しスタジオってなかなか狭いし」
○○「ギターが多すぎると演奏のバランスが崩れるだろうし」
○○「そもそも、新参者がいきなり演奏に加われるはずもない」
梓「あ……せ、先輩、もしかして全部分かって」
413 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:52:12.41 ID:nbMsnar10
○○「っと、やっぱりそっちなんだ」
梓「そっち?」
○○「あの『オシャレした方がいい』っていうメールを読んでさ、中野さんが暗に言いたいことを予想して2つにまで絞ってみたんだよ」
○○「1つは『誰か中野さんの知り合い、多分けいおん部の先輩たちを紹介してもらえる』」
○○「もう1つは『中野さんがデートに誘ってくれてる』だったんだけど」
○○「うん、2つ目じゃなかったか。ちょっと残念」
梓「で、デートだなんて……」ワタワタ
○○「まあ、中野さんは真面目だから多分練習の方だと思ってたけど」
梓(デート……○○先輩とでーと……)
律『梓は何も意識してないのか?』
梓(わっ! 私、どうしてこんな時に律先輩の言葉を思い出すの!?)ドキドキ
414 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:54:26.10 ID:btQNXBBQP
○○「中野さん?」
梓「ひゃい!」
○○「どうかした?」
梓「なななななんでもありません!」
梓(意識しちゃだめ意識しちゃだめ!)
○○「そう。スタジオってあれだよね? じゃ、行こうか」
梓「は、はい!」
梓(あれ? スタジオが見つけられなくて迷ってたんじゃ)
梓(……あ)
梓(そうか。迷ってなかったんだ)
梓(私とだけ先に会っておいて、今日スタジオに呼び出された理由を確かめるつもりだったんだ)
梓(……なんだか先輩、すごいなあ)
415 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:55:18.21 ID:nbMsnar10
――貸しスタジオ
梓「ここが借りたお部屋です」
○○「ではお邪魔します、っと」
ジャララ♪ ジャンジャン♪
梓(わ、練習中だったんだ)
梓(これは……『ふわふわ時間』だ。それも中盤)
ちらっ
梓(あ、先輩たちが気付いた。みんな、こっちを見てる)
梓(けど演奏は止めない……)
梓(これが先輩たちなりのサプライズ?)
416 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:57:40.10 ID:btQNXBBQP
ジャララ♪ ジャラ♪
唯「ふわふわたーいむ♪ ふわふわたーいむ♪」
梓(すごく良い演奏……私も混ざりたいぐらい)
梓(○○先輩は……)ちらり
○○「……」ぽー
梓(驚いてる、のかな。それとも聞き入ってる?)
梓(悪い印象はないみたいだけど……)
じゃん、じゃん、じゃーん!
梓(演奏が終わった……)
417 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:58:19.98 ID:nbMsnar10
パチパチパチパチ
○○「良い曲ですね、本当に。こんなに楽しそうに弾いてるのを聴くのは初めてです」
律「あれ? 思ったより驚いてねーぞ」
唯「もっと『どひゃー!』っていうリアクションを期待してたのにー」
○○「いや、驚きましたよ? 部屋に入ったらいきなり爆音がしたんですから」
梓(先輩、笑ってる……良かった)ほっ
律「それでもなあ、なんか落ち着き払ってるし……あずさー? もしかして先になんか言ったのか?」
梓「い、言ってません!」
唯「ほんとー?」
梓「ほんとです!」
澪「……」プルプル
紬「ふふふ」
418 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:58:24.56 ID:0XfBxMfU0
支援
419 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 01:58:49.75 ID:btQNXBBQP
律「やっぱり、クラッカーまみれの方が良かったかね」
唯「だって、あずにゃんがクラッカーは駄目って言ったんだもん」
澪「……」プルプル
紬「澪ちゃん、そんな隅っこにいないで、こっちに来ましょう?」
澪「け、けどなんだか身体が勝手に震えて……」プルプル
唯「大丈夫だよ澪ちゃん! 男の人はいきなり噛んだりしないって!」
澪「か、噛むぅ!?」
律「じゃあ私が噛むぞー!」
澪「うわあ!」
梓(……)
梓(初めて会う人の前なんだから、もう少し落ち着いてほしいよ……はぁ)
420 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:59:13.64 ID:YyZb/wmI0
支援
421 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 02:00:47.78 ID:uoEEzd5Y0
馬鹿な!?イケメンでスタイルよくて性格よくて頭も切れて空気も読めるだと?
こいつは化物か!?
422 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:01:16.56 ID:nbMsnar10
○○「あのー、すみません」
澪「!」びくっ ばたばた
律「おっと澪、逃げるなって」がし
律「はいはい、なんですかいな?」
○○「もう皆さんは俺のことを知っておられるようですが、一応自己紹介だけしておこうかと思いまして」
律「お、聞かせろ聞かせろー」
唯「ひゅーひゅー」
澪「……うう」びくびく
紬「ごめんなさい、私たち、こんな慌しくしてしまって」ペコリ
○○「いえいえ」ペコリ
423 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:03:48.33 ID:btQNXBBQP
○○「それでは俺の名前ですが、○○と言います。えー、おそらくもうすでに事情は知っておられると思うのですが」
唯「夜のけいおん部の部室で練習してたんだよねー」
○○「はい。勝手にすみませんでした」
律「幽霊の正体なんだろ?」
○○「みたいですね。足はちゃんとあるんですが」
紬「あと、練習する場所に困ってるって聞いてます」
○○「ですね。だからさわ子先生にはすごく感謝しています」
澪「……うぅ」びくびく
○○「あの……どうかしました?」
澪「ひぅ!」びくぅ!
梓(澪先輩はいったい何をそんなに怖がってるんだろう。○○先輩優しいのに……)
オリキャラとかひくわー
425 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:06:06.31 ID:nbMsnar10
○○「じゃあ、だいたいは知ってるみたいですね。あと、大事なことは……」ちらり
梓(!)
梓(先輩がこっちを見た)
梓(『大事なこと』……きっと、身体のことを話したか確かめてるんだ)
梓(……)
梓「……」フルフル
○○「……よし、大事なことを話さなくちゃいけません」
律「何だー?」
唯「実は女だったとか!」
律「ないない」
○○「俺の身体は少々特殊でして……体質的に体力がほとんどありません」
梓「!!」
426 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:08:35.96 ID:btQNXBBQP
律「体質的?」
紬「それは、お身体がどこか悪いということでしょうか?」
澪「……」ぽかーん
○○「そうですね。心臓を少し……けれども命がどうのこうのというものではありません」
○○「ただ、人より体力が極端に少ないだけです。息切れもしやすい」
唯「ギターは大丈夫なのー?」
○○「はい。ギターを弾くのも大丈夫です。ただし、すぐに疲れてしまいますが……」
梓(先輩が……)
梓(先輩が自分から身体のことを話してる!)
427 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:10:06.54 ID:nbMsnar10
○○「おそらく、今日俺をここに呼んでいただいたのは、俺も一緒に練習させて下さるつもりだったと思われますが」
唯「そだよー。あずにゃんから頼まれて!」
梓「あっ」
○○「中野さんに? そうだったんですか」
梓(うぅ……先輩、幻滅しちゃったかな。勝手にこんなことしちゃって……)
○○「えーと……こんな身体で迷惑をかけるのも悪いですし」
○○「それに初めて会ったばかりで戸惑っている方もいらっしゃいますし」
澪「あっ」ぴく
○○「今日は見学だけさせてもらって、もっとお互いのことを知った後に、練習に参加させていただこうと思います」
○○「なので今日は皆さんの演奏をたっぷり聴かせてもらいますね」ぺこり
428 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:10:52.22 ID:btQNXBBQP
律・澪・紬「……」ぽかーん
唯「おー。そだ! 私も自己紹介するよ!」
ジャン♪
唯「ギター担当の平沢唯です! よろしく!」
○○「平沢さんですね、よろしくお願いします」
唯「よろしくしくー!」
律「はっ。呆けてる場合じゃないな。私たちも自己紹介すっぞ、澪、ムギ」
澪「あ、ああ」
紬「そ、そうね」
ダカダン
律「ドラム担当、そしてけいおん部部長の田井中律! よろしくぅ!」
○○「田井中さん、ですね。元気なドラムで、聞いてて心が弾みました」
律「ははー、それほどでもー」
429 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:11:39.81 ID:nbMsnar10
チャララン♪
紬「キーボード担当の琴吹紬です。どうぞよろしくお願いします」
○○「琴吹さんはとても綺麗に鍵盤を弾いてますね。軽音にはなかなかない指使いです」
紬「ありがとうございます。クラシックを少々やっていたものですから」
ベーン
澪「え、えと……」
律「ほら、澪も自己紹介しろYO!」
澪「分かってるよ……ベース担当、秋山澪です。よ、よろしく……します」
○○「秋山さん、ですか。控えめですけど、みんなの音を支えるベースでした」
澪「あ、う……」
澪「あ、ありがとう……ます」
430 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:13:48.49 ID:btQNXBBQP
唯「ねえねえ、○○君」
○○「あ、はい。なんですか、平沢さん」
唯「そんな『平沢さん』なんて呼び方しなくていいよう。変な言葉遣いもしなくていいから。身体がかゆくなっちゃう」
○○「あー……うん、分かった。何て呼べばいいかな?」
唯「唯でいいよー」
○○「じゃあ唯さんで」
梓(! 唯先輩、打ち解けてるの早い!)
澪(どうしてあんなに男の人に近づけるんだろ……)
唯「でね、私はー? 私のギターの感想は何かないの?」
○○「もちろん。平沢さんは」
唯「ゆ、い!」
○○「ああ、唯さんは」
431 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 02:14:26.60 ID:YyZb/wmI0
支援
432 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:16:03.89 ID:nbMsnar10
○○「もちろん演奏も上手だったけど……それ以上に、楽しさっていうが伝わってきたかな」
○○「もっと聞きたい、一緒に弾きたいって思わせる力があると思う」
唯「えへへー」
梓(うん、だから私も新歓ライブでけいおん部に入ろうと思った)
梓(唯先輩の音はそういう力がある)
○○「では、俺はそこで見学させてもらいますね」
唯「えー、○○君もギター弾けるよね?」
○○「まあ弾けるけど……」
唯「だったら一緒に弾こうよー」
433 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:17:37.15 ID:btQNXBBQP
律「おいおい、唯。一緒に弾くったって、○○はギター持ってきてないだろ」
梓(いきなり呼び捨て! さすが律先輩……)
唯「うぅ……じゃあ、ギター教えて! あずにゃんに聞いたよ! 上手いって!」
○○「はあ。そんな教えられるほど上手くはないけど……中野さんに教えてもらった方が」
梓「そんなことはありません! 先輩は私なんかよりずっと上手です!」
○○「ありゃ……」
律澪紬「……おー」
梓「はっ! す、すみません、いきなり大声なんて出して……」
唯「あずにゃんもこう言ってるし、教えてよー」
○○「あー、じゃあ、教えられる範囲なら」
唯「やった!」
434 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 02:17:49.74 ID:6WRNR17rP
支援
435 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:18:58.32 ID:nbMsnar10
○○「コホッ……えーでは、ちょっと待ってくださいね。喉渇いちゃって……外で水飲んできます」
梓「あ、私も行きます。外は暑かったので……」
ガチャン
律「……どう思った?」
澪「どうって?」
紬「私は良い人だと思ったけど」
唯「ギター教えてくれる良い人だね!」
律「はいはい、唯は気楽でいいねえ」
澪「律はどう思った?」
律「間近で見ると思ったより普通な男だったなあ。ちょっとなよってしてて、頼りない奴だけど……」
436 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:21:21.00 ID:btQNXBBQP
律「まあ、悪い感じはしない。しっかし、身体が悪いとはねえ」
澪「じゃあ、家や学校で練習できない理由ってそれに関係あるのかな?」
紬「お医者様に止められてるとか?」
澪「だったら本当は練習もしない方がいいんじゃ……」
律「それは大丈夫だろ。梓とやってるらしいんだし」
紬「そういえば、梓ちゃんは○○さんの身体のことを知っていたのかしら?」
澪「驚いてなかったし、多分知ってたんだろうな。勝手に話しちゃいけないとでも思ってたんじゃないかな?」
律「ま、今日はあいつの言う通り、私たちの練習も見てもらうだけでいいか。それで様子見だ」
唯「楽しみだなー。教えてもらうのー」
437 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:22:50.91 ID:nbMsnar10
――スタジオ外
ごくごく
○○「ふぅ」
梓「ぷはぁ」
梓「あの、先輩」
○○「ん?」
梓「すみませんでした。こんな騙すみたいな形で連れてきてしまって」
○○「いやいや、いいよ」
○○「俺もさ、変わらなきゃいけないって思ってたから」
梓「……じゃあ、身体のことを話したのは」
○○「……中野さんに言われたからね」
○○「『もっと人を信じろ』って」
438 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:25:10.28 ID:btQNXBBQP
○○「あの人たちは中野さんの先輩でバンド仲間」
○○「きっと一番に信じられる人たち、だろ?」
○○「だから俺も信じてみたいって、そう思った」
○○「いきなり呼び捨てにされたり、名前で呼べって言われたりで、ちょっと驚いたけどね」
梓「すみません……あの人たちはどこか遠慮がないんです」
○○「いやいや、楽しい人たちだよ」
○○「あとは……俺がどれだけ頑張れるか、だね」
梓(先輩……)
梓「わ、私もお手伝いします!」
○○「ありがとう」
439 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:26:16.22 ID:nbMsnar10
――1時間後 スタジオ内
○○「ここでのハーモニクスをピッキングでできるようなれば、もう少し音に幅が出せる」
唯「はーもみっくす? おいしそうだね」
梓「ハーモニクスです。唯先輩、そろそろ本気で音楽用語覚えましょうよ……」
唯「あうー」
律「あいつら仲良くなったなー」
澪「まあ、同じギター奏者だしな」
紬「仲が良いのはいいことだわ」
440 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 02:28:08.75 ID:YyZb/wmI0
支援
441 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:29:00.81 ID:btQNXBBQP
○○「ギターの弦を左手で押さえてると、ある場所だけ物凄く高い音が出たりするよね?」
唯「うんうん」
○○「それがハーモニクス。さっきの演奏でもちゃんとできてたよ?」
唯「あー、あれかー」
○○「で、それをピッキング、えー、右手で弦を弾いただけでできるテクニックがあるんだ」
唯「?? よくわかんないよー。実際にやってみせて!」
○○「え? だけどギターないし……」
梓「先輩、私のギター使います?」
唯「おー、見せて見せてー」
○○「んー、じゃあ、少しだけ」
442 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:30:34.67 ID:nbMsnar10
キュイーン
梓(!)
○○「ほら、ここにピックを当てると、音が高くなる」
唯「ほんとだー」
梓(初めてのギターなのに、1発で1弦の倍音を出すなんて……先輩、やっぱりすごい)
○○「ピッキングで高い音が出せたら、左手はフリーになるからビブラートもチョーキングもかけられる」
○○「だから音の幅がすごく広がるんだ。こんな感じで」
キュイイーイイン
唯「おー」
梓(かっこいい音だなあ……)
澪「すごいなー」
唯「あれ?」
梓「澪先輩?」
澪「あ」アタフタ
443 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 02:31:53.73 ID:kBdu2Nj10
444 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:32:16.36 ID:btQNXBBQP
澪「いや、その、ピッキングハーモニクスはベースも使えるから、ちょっと興味あって……」
○○「どうぞ、秋山さんぐらいの人には基礎的なことかもしれませんが、よければ一緒に」
澪「ははははい! では失礼しましゅ!」
唯「噛んだ」
梓(噛んだ……)
澪(か、噛んでしまった)
律「澪があっちに行ってしまった……」
紬「私たちは見物しておきましょうかー」
445 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:33:50.90 ID:nbMsnar10
――20分後
澪「ここの親指を当てる場所が……」
○○「もう少し爪の部分で触れた方が……そうです、そのまま人差し指で弦を」
ギュラーン
澪「出た!」
○○「後は反復練習ですぐに使いこなせますよ」
澪「できるもんなんだ……」
○○「教えてすぐに理解しちゃうなんて、すごいですね、澪さんは」
澪「い、いや、○○さんの教え方が上手だから!」
梓「……」じーっ
446 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:35:01.71 ID:btQNXBBQP
キュイーン
唯「おお! はーもみっくす、できたよ! あずにゃん!」
梓(澪先輩、もう恥ずかしがったりしてない……)
唯「あずにゃーん」
梓(それどころかギターのテクニックを教えあって、仲良くなってる)
唯「あずにゃーん?」
梓(○○先輩もいつの間にか澪先輩のこと下の名前で読んでるし……)
唯「おーい」
梓(うー……私も下の名前で呼ばれるとか……『梓ちゃん』って)
唯「返事してよー」
梓(あ! 何考えてるんだろ。そんなこと考えるなんて、意識してるようなもので……)
梓(律先輩のあの言葉のせいで、なんだか落ち着かないよ……)
唯「あーずにゃん!」だきっ
梓「ひゃあ!」
しえんた
448 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:36:53.92 ID:nbMsnar10
梓「ゆ、唯先輩、なんですか?」
唯「あずにゃんが声かけても返事してくれないんだもん」
梓「そ、それはすみません……どうしたんですか?」
唯「暇だから抱きついただけー」
梓「暇って……練習しましょうよ」
唯「だって新しい弾き方教えてもらったから、もういっぱいいっぱいだよー」
澪「それはよく分かる」
○○「だね。新しいこと覚えると、それでいっぱいになるから」
梓「澪先輩、○○先輩」
449 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:38:21.36 ID:btQNXBBQP
○○「にしても、唯さんは中野さんのこと、特徴的なあだ名で読んでるんだね」
唯「あずにゃんはあずにゃんだもーん」
澪「唯は変なあだ名をつけるのが得意だからな」
唯「○○君もあずにゃんって呼んでみたらいいんだよー」
梓「ええ!?」
○○「ははは、あずにゃん、って?」
梓「はう!」
梓(先輩にあずにゃんて呼ばれた先輩にあずにゃんて呼ばれた先輩にあずにゃんって――)カァ
梓「きゅー」バタン
律「おお! 梓選手が倒れてしまったぞ! 救護班! 救護班!」
紬「救護班来ましたー」
○○「熱中症かな、大丈夫?」
450 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:39:28.99 ID:nbMsnar10
律「私たちもそろそろ暇だぞー」
紬「だぞー」
澪「じゃあ、通しで1度弾いてみるか」
唯「けど、あずにゃん、まだ回復しないよー?」
梓「先輩に先輩に――」ブツブツ
律「じゃあ……代わりに○○に入ってもらおう!」
澪「ええ!」
○○「え……」
紬「○○さんにとっては初めての曲だけど、大丈夫かしら?」
律「初見で弾けるだろー。別に完璧を求めてるわけじゃないしさ」
451 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:41:25.36 ID:btQNXBBQP
○○「えーと……」
律「というわけで、○○は梓のギターで弾くこと! 澪! 楽譜見せてやれ!」
澪「え、私が?」
○○「け、けど……」
澪「えと……○○さん、これが『ふわふわ時間』の楽譜で、タイミングとかも一応教えておくから」
○○「ど、どうも」
○○「仕方ないか……」ボソッ
梓「先輩に先輩に――」ブツブツ
452 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:43:17.53 ID:nbMsnar10
律「じゃあ行くぞー。1、2、3、4!」
ジャララン ジャッジャララ♪
梓「はっ!」
梓(あ、あれ? いつの間に皆さんが演奏を……)
梓(ああ! ○○先輩がギターを弾いてる……!)
梓(『ふわふわ時間』のリズムギターやってるんだ……私の代わりかな?)
ジャラン♪ ジャン♪
梓(いい音……特に唯先輩、音が伸びやかになってる)
梓(澪先輩はベースの音がしっかりしてて)
梓(律先輩とムギ先輩もそれに引っ張られて)
梓(○○先輩は……初めての曲とは思えないほどしっかり合わせてる)
453 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:45:11.07 ID:btQNXBBQP
梓(やっぱり、誘ってよかった)
梓(みんなと一緒に弾いてるからか、先輩の歪みも直っていってる)
梓(先輩、バンドで弾いても大丈夫ですよ……)
ジャラン♪ じゃk♪
梓(!)
梓(今、ギターの音が乱れた)
梓(音がどんどんと遅れてて……おかしい!)
梓「○○先輩!」
○○「……はぁ、はぁ、ごほっ!」
454 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:46:40.35 ID:nbMsnar10
ピタ
律「どした?」
唯「○○君?」
○○「ゴホッ! ゴホッ!」
梓「せ、先輩! そ、そうだ、先輩の鞄……!」
○○「だ、大丈夫。止まったのは腕が痺れたせいだから……」
澪「○○さん……?」
紬「か、身体ですか? 大丈夫ですか?」
○○「は、ははは、さっきまで長く練習してきたし、腕が疲れてたのかも」
梓「先輩……」
455 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 02:47:38.39 ID:2vpAho0C0
鬱展開やめてえええええええええええええ
しえん
456 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:48:27.53 ID:btQNXBBQP
○○「ごめん、演奏を途中で止めちゃって」
律「い、いや、それはいいんだけど」
梓「せ、先輩、水です」
○○「ごめん、ありがとう……そうだ、ギター、勝手に借りてごめんね。返すよ」
梓「は、はい」ぽん
○○「えーと、とりあえず俺のことは気にしないで、中野さんを加えて練習を再開してもらえれば」
ピカンピカン
律「あ」
澪「もう退出時間……か」
457 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:50:34.73 ID:nbMsnar10
――スタジオ外
○○「すみませんでした、なんだか練習の邪魔したみたいで」
唯「そんなことないよー。私、ギターいっぱい教えてもらったもん!」
澪「私も……ありがとう、○○さん」
律「けっこう楽しかったぜい!」
紬「また一緒に練習しましょうね」
○○「はい……もっと俺がギターを弾けるようになったら、ということで。ははは」
梓(○○先輩……)
梓(あの笑顔は……本当の笑顔じゃない)
梓(最初に見た時と同じ、悲しいのを隠してる笑顔だ)
458 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:50:59.27 ID:btQNXBBQP
○○「では、俺は電車で帰るので」
律「じゃあ、ここでお別れかー」
唯「またねー」
梓「……私、駅前に用事があるので、途中まで○○先輩にご一緒しますね」
○○「あ……うん」
○○「それでは、皆さん、さようなら」
459 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:53:41.17 ID:nbMsnar10
――駅前
テクテク
○○「……」
梓「……」
○○「……」
梓「……先輩、暑くないですか?」
○○「いや、大丈夫」
梓「そう、ですか……」
○○「……」
梓「……」
○○「中野さん、用事は?」
梓「……忘れました」
○○「そっか……」
460 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:55:39.39 ID:btQNXBBQP
テクテク
○○「やっぱり、駄目なのかな」
梓「え……?」
○○「最近は身体の調子も、演奏の出来もよかったから、いけると思ったんだけどね」
○○「やっぱり、駄目だ。期待されて弾かせてもらったのに、結局あんなことになって……」
○○「バンドで練習なんて……ステージに立つだなんて、結局無理な話なのかな」
梓「そ、そんなことないです!」
○○「けど、あんなことあった後だと、あの人たちも幻滅したかもだし……」
○○「こんなんじゃ、ただの邪魔者で」
○○「迷惑なだけだよ」
梓「違います!」
461 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:57:58.12 ID:nbMsnar10
梓「誰も迷惑だなんて思ってません!」
梓「○○先輩には、今まで積み重ねた努力があるじゃないですか!」
梓「先輩のその思いの強さは、みんな分かってくれてます!」
梓「だから」
梓「だからもう少し私たちを信じてください!」
ザッ!
律「そのとーり!」
唯「だよ!」
澪「うん」
紬「はい!」
○○「あ……」
梓「みなさん……!」
462 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 02:59:00.36 ID:btQNXBBQP
梓「どうしてここに……!」
律「だって、あんな悲しそうに笑われたら、なあ?」
澪「気になってしょうがなくなる」
紬「一緒に演奏すれば、お友達、ですもの」
唯「励ましに来たんだよ!」
梓「みなさん……」
梓「……○○先輩!」
○○「え、け、けど」
○○「こんな1曲通して弾き切れない身体じゃ、迷惑で、何の役にも立たないし」
唯「えー、そうかなあ? ○○君はすごいと思うよ?」
463 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 03:00:00.18 ID:nbMsnar10
○○「すごい……?」
唯「だって、私にはできないことがたくさんできるもん」
○○「できないこと……」
梓「……そうです、○○先輩」
梓「みんな、できることとできないことがあるんです」
○○「……」
唯「そうだねー。私は楽譜は読めないし、音楽の知識はないしで、いやー、お恥ずかしい」
澪「私は恥ずかしがり屋で怖がり屋なせいでみんなに迷惑かけてて」
律「私はドラムが走りがちになるのが欠点かな」
澪「律は何事にも不真面目なのが欠点だろ」コツン
律「なにをー!」ウガーッ
464 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 03:00:46.20 ID:btQNXBBQP
紬「私はどうも一般常識に疎くって」
梓「私は……」
梓「負けず嫌いで素直じゃなくて、変に真面目だからすぐに空気を悪くしてしまって」
梓「それにギターもまだまだ下手くそで」
澪「そ、そこまで自分を悪く言わなくても」
唯「あずにゃんが下手だったら私立場ないよー」
梓「……そして、○○先輩は」
梓唯澪律紬「体力がない!」
○○「……みんな」
465 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 03:02:24.86 ID:nbMsnar10
梓「みんな、そういう自分を受け入れて、なんとか努力して前へ進んで、時には人に頼ってます」
梓「先輩も同じです! 身体のことを受け入れて、なおギターを弾くために努力してます!」
梓「練習場所を探したり、体調を管理しながら演奏したり」
梓「私たちはそんな先輩を知ってるからこそ、一緒に演奏したいと思う。迷惑なんかじゃありません!……ですよね、みなさん!」
唯「うんうん、さっきは一緒に弾いてて楽しかったもん」
律「ま、悪い奴じゃないってことだけは分かったしな。頼りないけど」
澪「わ、私はまだ恥ずかしいけど……演奏は、楽しかったから」
紬「男の子のギターって力強いから、私は好きですよ?」
466 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 03:02:31.19 ID:MbLf8kH2P
遅くまでご苦労様しえん
467 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 03:02:59.55 ID:btQNXBBQP
梓「だから」
梓「また、みんなで一緒に演奏しましょう! 先輩!」
○○「……」
○○「あ……」
○○「ありがとう……」ぽろ
○○「本当に、ありがとう」ぽろぽろ
468 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 03:03:45.22 ID:nbMsnar10
梓(先輩……先輩が泣いてるところ、初めて見た)
梓(いつも笑ってるか驚いているか、真剣な顔でギターを弾いてるかだったから……)
梓(怒ったりとか泣いたりとか、そういう感情の爆発っていうのを見たことがなかった)
梓(きっとそれは、他人に心配をかけさせないため)
梓(周囲に身体のことで心配をかけてる分、せめて表情だけでも人に安心させるように生きてきたんだ)
梓(けど、それって本人にとってはとても辛いことのはず)
梓(感情を押さえ込んでるようなものだから)
梓(……その辛さを和らげてあげたい)
梓(そのためには私たちと先輩がお互いに信頼しあわなきゃいけないけど)
梓(先輩の涙は、その1歩のような気がする)
4章 おわり
乙
470 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 03:06:52.42 ID:nbMsnar10
4章おわりです。遅くまでありがとうございました。支援ありがたいです。
1度寝て、また明日の朝に5章にいこうと思います。
それではまた。
471 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 03:09:27.05 ID:MbLf8kH2P
乙
472 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 03:09:50.89 ID:cjIJABay0
おつ。面白い
乙です
おつー
475 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 03:12:07.86 ID:2vpAho0C0
おつかれさま
展開が読めそうで読めないな
476 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 03:12:24.16 ID:uoEEzd5Y0
いい感じだ
乙
乙
しかしまだ半分も行ってないのかすげーな
このスレで終わるのだろうか
>>344 なろうとか携帯サイトみたいな所かな?
あの辺りはこういうのすげえ多いよね
480 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 04:06:04.51 ID:QgxtZgNu0
乙
感動した
がんばれ!
481 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 04:14:49.19 ID:4v8EtHhK0
ファイトー
482 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 04:26:37.98 ID:QgxtZgNu0
ほしゅー
483 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 04:49:19.52 ID:QgxtZgNu0
小まめほしゅ
484 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 05:09:02.59 ID:QgxtZgNu0
暇だなぁ
ふぅー
気長に待つか
485 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 05:25:13.09 ID:MbLf8kH2P
○○ちゃんは俺の中で最高にかわいい女の子で再生されています
ほす
486 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 05:28:13.22 ID:QgxtZgNu0
〇○は男でしょ?
487 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 05:42:48.36 ID:wodNoLl60
____ r っ ________ _ __
| .__ | __| |__ |____ ,____| ,! / | l´ く`ヽ ___| ̄|__ r‐―― ̄└‐――┐
| | | | | __ __ | r┐ ___| |___ r┐ / / | | /\ ヽ冫L_ _ | | ┌─────┐ |
| |_| | _| |_| |_| |_ | | | r┐ r┐ | | | / | | レ'´ / く`ヽ,__| |_| |_ !┘| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|‐┘
| r┐| |___ __|. | | | 二 二 | | |く_/l | | , ‐'´ ∨|__ ___| r‐、 ̄| | ̄ ̄
| |_.| | / ヽ | | | |__| |__| | | | | | | | __ /`〉 / \ │ | |  ̄ ̄|
| | / /\ \. | |└------┘| | | | | |__| | / / / /\ `- 、_ 丿 \| | ̄ ̄
 ̄ ̄ く_/ \ `フ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | | |____丿く / <´ / `- 、_// ノ\ `ー―--┐
`´ `‐' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`‐'  ̄ ` `´ `ー' `ー───-′
488 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 07:24:35.93 ID:9/JWMLCF0
澪は俺の嫁
ほs
490 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 10:15:37.28 ID:h6xvdNpo0
ほ
491 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 11:02:31.06 ID:61IpLa6M0
ho
492 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 11:57:27.56 ID:h6xvdNpo0
し
493 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 12:12:00.05 ID:MUEK8gPv0
乙
494 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 12:31:33.02 ID:MUEK8gPv0
保守
495 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 12:42:49.00 ID:btQNXBBQP
こんにちは。ちょっと寝すぎてしまいました。
今日は1日空いてるので、一気に進めていきたいと思います。
5章いきます。
496 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 12:44:17.07 ID:nbMsnar10
5章
――1ヵ月後 7月中旬 水曜日
――夜 梓の自室
梓(……)ごろごろ
梓(……)ごろごろ ぴた
梓(明後日が、けいおん部のみんなと○○先輩が一緒に練習できる日かあ)
梓(1週間に1度、金曜日に合同練習をする。うん、これぐらいがちょうどいい)
梓(良かった、本当に。良かった。○○先輩が一緒に練習できるようになって)
497 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 12:45:47.85 ID:btQNXBBQP
梓(……)ごろごろ
梓(暇だし、ちょっと○○先輩にメールを送ってみようかな)
to ○○先輩
件名 夜遅くすみません
あさっての合同練習日ですが、何か練習したい曲とかありませんか?
よければスコアを用意しておきます。
梓(送信、っと)
498 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 12:48:08.83 ID:nbMsnar10
梓(……)ごろごろ
梓(……)ごろごろ ぴた
梓(返信が来ない……)
梓(もう1時間も経ってる)
梓(寝てるのかな)
梓(それとも夜遅くにメールしたから鬱陶しがって)
ぴろぴろりん
梓「きた!」バッ
パカッ
499 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 12:49:00.06 ID:61IpLa6M0
俺っていつから体弱くなったんだろ
500 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 12:50:40.01 ID:btQNXBBQP
from ○○先輩
件名 ごめん、音楽聴いてた
音楽聴いててメールに気付かなかった、ごめん。
やりたい曲なら、以前けいおん部オリジナルの曲がいいかな。
梓「よかった。メールが嫌だったわけじゃないんだ」
梓「えーと、返信は……『どんな音楽を聴いていたんですか?』っと」
梓「あ、そういえば先輩のおススメのゲーム曲、聞いてないや」
梓「それも教えてもらおっと」
501 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 12:51:38.84 ID:MUEK8gPv0
支援
502 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 12:52:08.97 ID:5kswNu8uP
おもしれーよこのやろー
503 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 12:52:55.91 ID:nbMsnar10
――翌日 昼休み 教室
純「それで臭くってさー」
梓「あはは」
憂「面白い人だねー」
純「そういえば、梓は最近どうなの? けいおん部」
梓「え?」
純「なんか毎日が楽しそうって顔してるしさ」
憂「お姉ちゃんも楽しそうだよー」
梓「ふふ」
梓「うん、すっごく楽しいよ」パァ
純「おふ、なんて良い笑顔」
憂「充実してるんだね!」
504 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 12:54:38.54 ID:btQNXBBQP
――放課後 部室
さわ子「今日は○○君を呼ぶつもりなんだけどー」
唯「おお!」
律「ひっさしぶりだなー」
紬「合同練習日以来かしら?」
澪「今日の夜かあ」
さわ子「で、いつも通り梓ちゃんと……あと1人はどうする?」
唯「じゃんけんだね!」
律「よーし、やるぞー」
澪「ま、前の続きがしたい……!」
紬「じゃーんけーん」
ポン!
505 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 12:56:47.62 ID:nbMsnar10
澪「やった! 勝った!」
唯「まーけーたー」
律「ちぇー。リズムの調整したかったのになあ」
紬「残念だわー」
梓(……)
梓(いつの間にこんなことになっちゃったんだろう)
梓(いや、さわ子先生が『夜の学校で練習できるのは3人までが限界』って言ったからだけど)
梓(そりゃあ、6人もいるとばれる可能性高くなるから、3人ていうのはなんとなく分かる)
唯「次は負けないもんねー」
律「しゃーない、明日は合同練習だし、よしとするか」
梓(……みんな、先輩と練習するのを楽しみにするようになったんだなあ)
506 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 12:58:49.26 ID:btQNXBBQP
梓(けど、どうして私は最初から夜まで残ることが確定してるんだろ)
さわ子「梓ちゃん、どうしたの?」
梓「あ、その……私はどうして最初からメンバーに入ってるのかなあ、と」
さわ子「んー、嫌だった?」
梓「嫌ではないです、むしろありがたいです、はい」
さわ子「じゃあ、いいじゃない」
さわ子「みんな、察してくれてるのよ」
梓「……?」
507 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:01:57.03 ID:nbMsnar10
――夜 部室
澪「うぅ……」びくびく
○○「澪さん、大丈夫? 暗い所が駄目なら、せめて窓際で」
澪「だ、大丈夫! 練習を始めれば集中できる……はず」
さわ子「じゃあ、好きに練習しときなさい。私は例によって仕事があるから」
梓「先生、最近仕事溜めすぎなような気がしますが……」
さわ子「3年生を担任に持つと色々苦労するのよ。じゃあねー」
ガチャン
澪「……」びくびく
○○「じゃ、練習しよっか」
梓「はい!」
508 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 13:03:19.66 ID:H9Io6a6k0
しえん
509 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:05:41.66 ID:btQNXBBQP
――30分後
澪「この時のリズム取りが……」
○○「身体に叩き込むしかないかなあ。澪さんならいくらかずれても修正できるかと」
べんべーん♪
梓(……なんだか)
梓(澪先輩と○○先輩、すごく仲が良くなってる)
梓(ギターとベースで、お互いに話してて新鮮だからだろうけど)
梓(……)
梓(ちょっと寂しい)
510 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:07:21.02 ID:nbMsnar10
○○「中野さん? どうかした?」
澪「疲れた?」
梓「い、いえ、なんでもありません」
○○「そう? じゃあ、1度3人で合わせてみようか」
澪「あ、まだ14小節目の音について話したい……」
○○「んー、前後を通してみると、案外自分で見えてくるものがあるかもだし」
澪「……分かった。○○さんがそう言うなら」
梓(やっぱり仲が良い)じーっ
○○「中野さん? 始めるけど、大丈夫?」
梓「あ、はい」
511 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:10:06.64 ID:btQNXBBQP
○○「1、2、3、4」
ジャンジャカジャン♪
梓(ん、いい感じ。やっぱりベースが入ると音に厚みが出るなあ)
梓(○○先輩にとっても良い練習になるはず)
ジャン!
○○「ふぅ……こほっ、こんなもんかな」
澪「だ、大丈夫? なんだか疲れてるけど……」
○○「これくらいなら問題ないよ。ありがと」
澪「い、いえ、どういたしまして」
梓(むー……)
512 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:13:07.86 ID:nbMsnar10
コツコツ
梓「あ、先輩、誰か来ます!」
○○「さわ子先生?」
梓「いえ、この足音は……先生じゃないです、多分」
澪「守衛さんか! か、隠れなきゃ!」
○○「けどどこに」
梓「物置に!」
ガチャ
ドタドタ
513 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:16:00.26 ID:btQNXBBQP
――物置内
○○「も、物置って狭いね」ヒソヒソ
澪「この前片付けて少しはマシになったんだけど……また物が増えてる」ヒソヒソ
梓「整理整頓しないからです。うー、せ、狭いです」ヒソヒソ
梓(これじゃあ、みんな身体がぶつかっちゃう……)
梓(一応○○先輩が1番前に立って、距離は空けてくれてるけど)
梓(ち、近いよう)
ガチャ
○○「誰か入ってきた! 静かに」ヒソヒソ
514 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:19:08.86 ID:nbMsnar10
トタトタトタ
守衛「んー? なんか音が聞こえたと思ったけどな……気のせいか」
守衛「異常なし、かね」
守勢「ん? この鞄は……忘れ物か?」
○○「鞄?」ヒソヒソ
澪「あ! 私の鞄! 持ってくるの忘れてた!」ガタガタ
梓「み、澪先輩、動いちゃ駄目です。こけちゃいます!」
ガタガタ
澪「わ!」
梓「きゃ!」
○○「っと!」
ポスン
515 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 13:20:12.79 ID:h6xvdNpo0
にゃんと!
516 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:21:23.99 ID:btQNXBBQP
守衛「ん? 何か音がしたか?」
○○「静かに」
澪「う、うん」
梓(澪先輩! ○○先輩に抱きとめられて!)
澪「うぅ」
○○「ごめん、嫌かもしれないけど、今は動けないから我慢して」ボソッ
澪「は、はいぃ」
梓「……」ムカッ
梓(……胸が苦しい。何これ)
517 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:23:33.58 ID:nbMsnar10
守衛「……気のせいか。よし、戻るかね」
ガチャン バタン
ドタドタドタ
○○「……もう大丈夫かな」
澪「あ、あの」
○○「あっと、ごめん。ドアを開けるから、そのまま外に」
澪「は、はい」
梓「……」
518 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 13:24:41.65 ID:MUEK8gPv0
支援
519 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:25:44.47 ID:btQNXBBQP
○○「ふぅ、なんとかなったか」
澪「危ない所だった……」
梓「……」
○○「ごめんね、いきなりあんなことになっちゃって」
澪「い、いや、私のせいだから……気にしないでいいよ」
○○「澪さん、男の人苦手みたいだから、悲鳴あげられたらどうしようかと思ったよ」
澪「私だって状況は分かってたし、それに……そこまで嫌じゃなかったから」
○○「良かった。あれ? 中野さん、ギター片付けて、もう帰るの?」
梓「あんなことがあった後ですし、もう今日は帰った方がいいと思いますっ」ぷいっ
○○「あ、うん、それもそうか……」
520 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:27:54.28 ID:nbMsnar10
――職員室前
さわ子「そうだったの。じゃあ今日はこれで終わりね」
○○「はい、少し早いですが、用心して、ということで」
さわ子「そうね。帰りましょう……で、梓ちゃんは何をそんなにぷりぷりしてるの?」
梓「ぷりぷりなんかしてません!」ぷいっ
さわ子「な、何かあったの? ○○君、澪ちゃん」
○○「さ、さあ?」
澪「特に何も……」
梓「……ふん!」
さわ子「変な梓ちゃんね……とにかく3人とも私の車で送ってあげるわ」
521 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:29:43.57 ID:btQNXBBQP
――車の中
○○「……」
梓「……」
澪「……」
さわ子(く、空気が重いわ。特に後ろの○○君と梓ちゃん)
さわ子(明らかに何かあったんでしょうけど、○○君は何がなんだか分からないみたいね)
さわ子(ま、こういうのは当人同士で解決するものだし、静観しときますか)
522 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:32:07.33 ID:nbMsnar10
○○「……あの、中野さん」
梓「なんですか?」とげとげ
さわ子(うっわ、声ひくっ)
○○「な、何か怒ってる? もしかして十分に練習できなかったのが……」
梓「アクシデントで中止になったのに、どうして○○さんに怒るんですか?」
さわ子(しかも『さん』付けになってる。怖いわあ)
○○「えーと……」
梓「○○さんは別に何も悪くありせんから、気にしないください」
○○「は、はあ」
梓「先輩なんか、フルーツケーキになっちゃえばいいんです」ぷいっ
○○「フルーツケーキ?」
さわ子(怒りすぎて自分でも何を言ってるのか分かってないのかしら)
523 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:41:08.06 ID:btQNXBBQP
――梓の家の前
梓「さわ子先生、今日もありがとうございました」
さわ子「ええ、またね」
澪「梓、また明日」
○○「中野さん、また」ふりふり
梓「……はい、また」
スタスタスタ ガチャン
○○「……」
さわ子「手を振り返しもしないか。なかなか重症ね」ボソッ
澪「はい? 先生、何か言いました?」
さわ子「いいえ。さ、帰りましょう」
524 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:41:53.41 ID:nbMsnar10
――梓の自室
梓(……)ごろごろ
梓(……)ごろごろ
梓(私、何に怒ってたんだろ)
梓(あんな態度取っちゃって……どうして?)
梓(先輩が澪先輩を抱きとめてるのを見てから、胸がもやもやする)
梓(けど、あの状況だと、ああするのが当たり前だし、最善だった)
梓(だから○○先輩は何も悪くない)
525 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:43:37.17 ID:btQNXBBQP
梓(悪いのは私だ)
梓(無闇に怒ったり、手を振り返さなかったり)
梓(あんなことするつもりはなかったのに、気持ちが高ぶって……)
律『梓は何も意識してないのか?』
梓(1カ月前の律先輩の言葉が、まだ私の中で残ってる)
梓(……そういうことなのかな)
526 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:45:26.02 ID:nbMsnar10
――翌日 昼休み 教室
純「今日はメロンパン買ってみた」
憂「純ちゃん、チョコパンじゃないんだ」
純「たまにはね。あっ、梓、このジュース飲む? フルーツジュース」
梓「んー……じゃ、貰う」
純「どぞどぞ」
梓「……」ちゅー
527 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 13:46:02.92 ID:QeDj1H+d0
支援
528 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:47:22.39 ID:btQNXBBQP
純「ねえ、梓。今日は昨日とうってかわって元気ないじゃん。何かお悩みかい?」
梓「にゃひゃみ?」ちゅー ちゅぽん
純「人間関係で悩んでる、とかさ」
梓「人間関係……」
憂「じゅ、純ちゃん! そんな直接聞いちゃ……」ヒソヒソ
純「だって気になるじゃん! 友達の私たちにも隠す恋なんて、辛いに決まってるしさ」ヒソヒソ
梓「2人とも、どうかした?」
純「なんでもないなんでもない!」
憂「うん、気にしないで? それで、どうかな、梓ちゃん。悩みがあるの?」
529 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:49:25.16 ID:nbMsnar10
梓「……えーとね、人間関係っていうより、自分のことの方がわかんないかな」
純「どゆこと?」
梓「うーん、説明が難しいんだけど……例えば、純の好きな食べ物って何?」
純「え? そうだなあ、ドーナツとか?」
梓「じゃあ、それっていつ頃から好きだったか覚えてる? どうして好きになったのかも」
純「んなの覚えてないよ」
梓「だよねえ……」
憂「いったいどういうことで悩んでるの?」
梓「何かを好きになるのって、きっかけとか理由とかがあるものなのかな、と」
憂「な、なんだか難しいこと考えてるんだね」
530 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 13:51:55.46 ID:MUEK8gPv0
支援
531 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:52:10.04 ID:btQNXBBQP
梓(『恋に落ちる』なんて言うけど、どうなったら『落ちた』ことになるのか、全然わかんない)
梓(○○先輩のことは嫌いじゃない……むしろ好きだけど、それはけいおん部の先輩たちに抱いている好意と変わらない気がする)
梓(けれど、○○先輩に対してだけは、昨日みたいに胸が痛くなったり、ドキドキしたりもする)
梓(……そんな風になるのが『落ちた』ってこと?)
梓(それとも、これはただの友達としての好意?)
梓(はあ……恋愛の経験なんて全然ないから分からないよ)
梓「うーん」
純「梓が悩んでる……」
憂「やっぱり辛い恋してるんだよ、うん」
純「見守るだけでいいのかなあ。手助けしてあげたいけど」
憂「機会があったら、ね!」
532 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:55:35.30 ID:nbMsnar10
――放課後 校門前
律「今日はスタジオで合同練習か」
紬「1週間ぶりね。楽しみだわあ」
澪「昨日の続きできたらいいな……」
唯「よーし、今日は○○君に勝つぞー!」
澪「唯はそもそもなにで勝負してるんだ?」
律「ギターの演奏技術ならボロ負けだろ」
唯「あー、ひどーい。最近は『上手くなった』ってあずにゃんにも言われるもん! ね、あずにゃん!」
梓「……え、はぁ、そうですね」
梓「あ、私お茶買ってきますから、ちょっと待っててください」
タタタタ
533 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:58:28.56 ID:btQNXBBQP
律「おい、あからさまに梓の元気がないぞ」
紬「何かあったのかしら。昨日までは元気だったのに」
澪「……」そー
唯「あ、澪ちゃん、今顔を背けたー」
澪「へ? い、いや」
律「澪は何か知ってるな? 吐け吐けー」
澪「な、何もないって! 昨日は決して何もなかった! うん!」
紬「○○さんと何かあったの?」
澪「うっ!」ボン!
唯「わっ! 湯気が出た!」
534 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 13:59:02.40 ID:nbMsnar10
律「おいおいー。まさか澪、お前まで……」
澪「ち、違う! あんなことされたのは、は、初めてだったから……その、恥ずかしくて」
紬「あんなこと……?」
律「なにー? あんのやろー! 澪に何したー!」
唯「何されたのー? キスー?」
澪「とととととんでもない! その、守衛さんから隠れるために、倉庫で……」
紬「倉庫で?」ドキドキ
澪「わ、私が不注意でこけそうになった所を抱きとめてくれて……」
律「あー」
紬「なるほどー」
唯「えー、キスじゃないんだー」
535 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:01:49.92 ID:btQNXBBQP
律「つーことは、梓はそれを見て嫉妬したわけか」
唯「あなたを殺して私も死ぬー!」
澪「だからそれは昼ドラ過ぎるだろ……」
紬「ふふふ、梓ちゃんかわいい」
律「んー、解決するにはどうしたもんかねえ」
澪「私のせいかもしれないんだな……だったら、私が梓に話して」
律「それで解決はするだろうけど、問題はもっと深いところにあるような」
澪「深いところ?」
律「梓はさ、自分の気持ちに素直になってない気がする」
唯「おー、りっちゃん、恋愛マスターだね!」
律「任せとけって!」
澪「……お前、彼氏いたことないだろ」
536 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 14:02:10.23 ID:D5OylnIoO
(∵)ホウホウ…
537 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:05:12.37 ID:nbMsnar10
紬「梓ちゃんは自分の気持ちが恋かどうかが分からないんじゃないかしら」
律「なるほど。素直じゃないというより、理解できないわけか」
唯「ムギちゃんすごーい、恋愛マスターだね!」
紬「ふふ、任せておいて」
澪「……ムギの場合、本当にマスターしてそうだからなあ」
律「けど、どうする? こういうのって本人が自覚しないとどうしようもないだろ」
澪「少女マンガなら、デートとかしてみると気付いたりするけど……」
紬「澪ちゃん、少女マンガ読むのねー」
律「こいつはどこまでも乙女だからなー」
澪「わ、悪いか!」
538 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:08:43.83 ID:btQNXBBQP
唯「分かった! 一緒にご飯を食べればいいんだよ!」
律「はあ?」
唯「たとえ喧嘩しても、おいしいご飯食べれば、はい仲直り! だよ!」
澪「いや、そう単純じゃないだろ……」
紬「ううん、いいかも」
澪「へ?」
紬「心理学的にも証明されてるわ。食事は緊張が緩むから、お互いリラックスしてお話ができる、って」
律「へー」
紬「だから仲良くなるための第1歩は食事から、なの」
澪「なるほど。梓も○○さんとの距離が縮まれば自分の気持ちに気付くかも、か」
539 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 14:15:50.65 ID:H9Io6a6k0
ふむふむ
540 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:22:30.80 ID:nbMsnar10
唯「じゃあ私の家で食べよう! 今日はお母さんたちいないから、みんなで鍋だ!」
澪「いやいや、もう夏だぞ? さすがに夏に鍋は……」
律「けど、みんなで食べるってのはいいかもな。あの2人も誘いやすいし」
紬「じゃあ、今日の夜は唯ちゃんの家でお食事会ね」
唯「明日は土曜だし、いっぱい騒げるよー」
律「決まりだな。食事は各自色々持ち寄る、ってことで」
澪「分かった」
紬「分かったわ」
唯「憂に連絡しとくねー。お食事、お食事」ウキウキ
541 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:24:20.65 ID:btQNXBBQP
――貸しスタジオ
律「ちーす」
○○「ども。皆さん、お久しぶりです。一部お久しぶりじゃないけど」
紬「私なんかは1週間ぶりね」
唯「私もだよー」
○○「はい。どうもです。中野さんも……こんにちは」
梓「……こんにちは」ぷいっ
律(うわー、あからさまに目を背けてるよ)
542 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:25:08.14 ID:nbMsnar10
律「じゃあ今日もまず、パートごとに別れて練習した後、最後にセッションってことで」
唯「はーい」
紬「よーし、今日も頑張るぞー」
澪「あの、○○さん、昨日の続きなんだけど……」
○○「はいはい?」
梓「……むぅ」じーっ
律「ちょ、澪! ちょっと待て!」ガシ
澪「うわあ!」ズサササ
ガチャン バタバタ
543 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:27:54.96 ID:btQNXBBQP
――スタジオの外
律「何考えてんだよ! 梓と○○との仲をこれ以上こじらせる気か!?」
澪「え? だけど、練習中なんだから話しかけるのは当たり前だし……」
律「くはー、これだから漫画でしか恋愛を知らない奴は困る」
澪「り、律だって!」
律「あー、今はそんなことどうでもいい。とにかく、今日は○○と梓の距離を縮めるために、2人で練習させるんだよ!」
澪「分かったよ……じゃあ、話すのはちょっとだけにする」
律「そうしてくれ。じゃ、戻るぞ」
544 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:29:42.45 ID:nbMsnar10
がちゃ
律「ありゃ?」
唯「○○君! ここをどれだけ上手く弾けるか勝負だよ!」
○○「は、はあ。まあ、いいけど」
梓「唯先輩、普通に練習しましょうよ……」
律「……はぁ、唯の奴」
澪「あいつは何も考えてないから……」
律「まあ、梓も一緒になって練習してるし、いいか」
545 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:32:29.58 ID:btQNXBBQP
――30分後
唯「ぎゅいぎゅいーん!」
○○「おー」
梓「う、ウインドミル奏法」
唯「どうどう? すごい?」
○○「すごいね。これはできないや」
唯「やった! じゃあ私の勝ちだね!」
○○「うん、そうだね」
梓「いったいどういう勝負だったんですか……」
546 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:35:01.62 ID:nbMsnar10
唯「じゃあ次にこれ! ぎゅういーん!」
○○「逆ウインドミル奏法!?」
梓(○○先輩、楽しそう……)
梓(そりゃそうだよね。みんなで練習できるのは楽しいから)
梓(私が手助けしなくても、先輩はやっていける。距離は縮まった)
梓(敬語で話すことも少なくなってきたのが、その証拠)
梓(もう私は必要ないかも)
梓(……って何考えてるんだろ、私。バカだなあ)
梓(今は練習練習!)
547 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:36:49.28 ID:btQNXBBQP
――2時間後
ジャジャン ジャン!
律「うーし、終わりー」
唯「○○君、今のどうだった!?」
○○「良かったよ。みんな、かなり息が合った演奏だったと思う」
律「みんなレベル上がったからなー。なんかやりやすくなったよ」
澪「だな」
梓「はい! 私も弾いてて気持ちよかったです!」
紬「これなら文化祭ライブもばっちりね」
548 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:38:24.67 ID:nbMsnar10
唯「後は○○君だねー」
○○「あー、はい」
律「どんな曲も最後まで弾けるようになる、ってのが当面の目標だな」
澪「やっぱり、難しい?」
○○「んー、ゆったりした曲なら大丈夫だけどね。激しい曲はどうも……」
梓「それに、舞台に立つと体力の消耗度合いが違うと思います」
○○「だね。その辺りは1度経験してみないことにはなんとも」
唯「じゃー、○○君もライブに出て経験してみたらいいんだよー。私たちと一緒に!」
549 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 14:40:04.91 ID:h6xvdNpo0
紫煙
550 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:40:20.78 ID:btQNXBBQP
○○「それは……」
律「いやー、無理だろ。学園祭ライブに他校の生徒が出演できるわけがない」
紬「じゃあ、一般のライブはどうかしら?」
澪「夏のこの時期になると、この近辺のライブハウスってどこも一杯になるしなあ」
唯「ええー、じゃあ他の街に行くとか?」
律「んー、難しいような」
○○「そこまで無理してもらわなくてもいいですよ」
梓(ライブ……)
梓「あ!」
梓「そうだ! 合同音楽フェスティバルですよ!」
梓「あれなら、他校の生徒でも出れます!」
551 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 14:41:51.85 ID:QeDj1H+d0
しえん
552 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:42:16.14 ID:nbMsnar10
律「あー、そういやそんなのあったなー」
○○「なんですか、それ」
紬「付近の高校の生徒が、一緒になってコンサートを開くのよ」
律「夏フェスの地元版みたいなもんだ」
澪「○○さんは××高校だったっけ? そこも参加校の1つだったはず」
律「んー、申込書には確か……『他校の生徒と合同で出演してもOK』って書いてたな」
唯「おおー。だったら大丈夫だー」
梓「応募の締め切りはいつでしたか? 律先輩!」
律「あー、覚えてねーなー。なにせ2ヶ月以上前に聞いた話だし……」ぽりぽり
澪「和からチラシもらったろ? どこにやったんだよ」
律「んー、私の記憶が確かなら、部室の机の引き出しに入れたはず……」
梓「相変わらず律先輩は整理整頓ができてないですね……」
553 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:43:42.84 ID:btQNXBBQP
澪「また学校に行った時に見てみよう」
律「間に合うようだったら、和に応募頼んでみるか」
唯「やったね、○○君! 舞台だよ! 本番だよ!」
○○「あ、ああ……」
律「なんだよー、あんまり嬉しくなさそうだな」
○○「いや……本当にいいの? 俺、すごく迷惑かけると思うんだけど」
○○「そんな、無理して一緒に出てくれなくても……」
554 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:46:21.62 ID:nbMsnar10
澪「○○さんは出たくない?」
○○「……」
梓「先輩……」
○○「本音を言えば、出たい。けど」
律「『けど』はなしだ!」
紬「私たちも一緒に出てみたいんだし」
澪「○○さんはきっと良い演奏してくれると思ってる」
唯「大丈夫! 私たちは無敵だよ!」
梓「そういうわけで、先輩が出たいならお手伝いします」
○○「……あー、また泣きそうだ」
梓「ふふ、泣いてもいいですよ?」
○○「そうそうカッコワルイところは見せられないよ……ありがとう、みんな」
555 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:48:08.90 ID:btQNXBBQP
唯「よーし、私も頑張るよー。ぎゅわああんって!」
紬「私もー。たらたらたらーん、って」
律「じゃあ私はドカドカバキンだ!」
澪「その効果音だと何か割ってるぞ」
梓「……ぎゅいーん」ボソッ
○○「そういうのは大声で言った方が、いっそすがすがしいよ?」
梓(はぅ! 聞かれた!)カァ
556 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 14:48:27.17 ID:cYbJbw9S0
支援
557 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:49:38.22 ID:nbMsnar10
――スタジオ練習後 外
律「あー、疲れた」
唯「ねえねえ、私の家でご飯食べていかない?」
梓「え? 今からですか? すごく急な話ですね」
唯「私の家、今日は親がいなくってさ。なんだか寂しいんだよね」
律「お、おー、そうかー。だったら私たちが行ってやるかー」
紬「そ、そうねー。私も行こうかなー」
澪(なんて棒読み)
澪「うん、私も行っていいぞ」
唯「○○君とあずにゃんはどうするー?」
558 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:51:18.07 ID:btQNXBBQP
梓「私は……えーと」
○○「男は俺1人だけど……いいのかな?」
唯「そんなの今更気にしないって」
○○「んー、分かった。家に晩御飯用意されてるかもだから、ちょっと電話して聞いてみる」
タタタ
ピポパ
○○「母さん? 俺。今日の晩御飯なんだけど……うん」
唯「あずにゃーん、来ようよー」
梓「ど、どうしようかな……」チラチラ
律(めっさ○○のこと見てるよ。分っかりやすい奴)
559 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:53:45.34 ID:nbMsnar10
○○「ん、分かった。気をつけて帰るよ。それじゃ」
パタン
○○「お待たせ。大丈夫。俺も行くよ」
梓「では、私も行きます!」
律(即答かよ)
澪(これだけやっておいて自分の気持ちに気付かないって……)
紬(梓ちゃん、かわいいわ〜)
唯「よーし、私の家まで出発しんこー!」
全員「おー」
560 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 14:54:37.09 ID:cYbJbw9S0
しえん
561 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:55:26.58 ID:btQNXBBQP
――唯の家
唯「ただいまー。ういー、帰ったよー」
憂「おかえりー、お姉ちゃん、待ってたよー」
澪「どうも、憂ちゃん。お邪魔するね」
律「お邪魔しまーす」
憂「どうぞどうぞー……あれ? そちらの方は?」
○○「どうも。えーと他校の者でして、けいおん部の皆さんと一緒に練習させていただいてます、○○と言います」ペコリ
憂「ど、どうも。平沢唯の妹の憂です」ペコリ
562 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:57:00.46 ID:nbMsnar10
憂「お、お姉ちゃん、いつの間に男の人が?」
唯「あれ? 話さなかったっけー?」
憂「聞いてないよー」
唯「そうだっけ? まあ、とにかくみんな上がってー」
○○「お邪魔します」
梓「お邪魔するね、憂」
憂「うん。あ、荷物はそちらにどうぞー」
563 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 14:58:23.54 ID:btQNXBBQP
――リビング
唯「おー、料理がいっぱいだ」
梓「憂、気合入ってるね」
憂「うん、久しぶりに皆さんが来たので、張り切っちゃいました!」
律「おーし、じゃんじゃん食べるぞー」
澪「お前は少しは遠慮しろ」
紬「私、ケーキ持ってきたから後で食べましょうね」
律「私は飲み物だ! ジュースいっぱいあるぞー」
澪「私はクッキーを……これもケーキと一緒に食べような」
梓(急に決まったお食事会なのに、皆、用意がいいなあ)
唯「あ、○○君とあずにゃんはこっちね!」
○○「あ、はあ」
梓「席決まってるんですか?」
唯「私はあずにゃんの横ー」
憂「じゃあ私はお姉ちゃんの横!」
律「私は澪の横だ! ○○も隣だけど」
○○「すみません」
澪「謝ることないよ、○○さん」
紬「私は澪ちゃんと憂ちゃんの間ー」
梓「円卓ですね」
全員「いただきまーす」
――10分後
憂「え? 前にお姉ちゃんが言ってたサプライズの相手って、○○さんだったんだ」
唯「そだよー」
梓「あー、私も隠しちゃってた、ごめんね、憂」
憂「ううん、それはいいんだけど……」
憂(う、うーん……なんだろう。気になる)
梓「○○先輩、これも食べます?」
○○「ありがとう、貰うよ」
憂「うーん?」
566 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:04:39.80 ID:nbMsnar10
憂「ねえねえ、お姉ちゃん。○○さんと梓ちゃんって……もしかするの?」ヒソヒソ
唯「もしかする?」ヒソヒソ
憂「その……今校内で噂になってる、あれ」ヒソヒソ
唯「あー、あずにゃんの……」
紬「そうよー」ヒソヒソ
憂「わっ」
紬「多分、憂ちゃんの思ってることは当たってるわよー」ニコニコ
憂「そ、そうなんですか……」
憂(あれが噂の彼氏さん……けど、秘密の関係じゃなかったのかな? どうしてお姉ちゃんたちと……?)
567 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:06:44.84 ID:btQNXBBQP
澪「律! 食べすぎ!」
律「いいだろー。私は腹が減ってるんだー」
唯「私も負けないよー」
梓「唯先輩、もっと綺麗に食べてください!」
憂「お姉ちゃん、口にソースついてるよ。拭いてあげるね」フキフキ
紬「あらあらー」
○○「……」
○○「はは」
○○「楽しい人たちだなあ」
568 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:08:40.36 ID:nbMsnar10
――食事後
憂「へー。あの合同フェス、お姉ちゃんたちも出るんだ」
唯「そだよー。○○君も一緒にねー」
憂「え? ろ、6人で出るんですか?」
憂(ひ、秘密の関係なのに、ライブに出てもいいのかな? わけがわかんなくなってきた)
澪「曲、何にしようか」
律「またおいおい決めたらいいだろ」
紬「曲を決めたら練習たくさんしないと」
唯「じゃあ合宿だね!」
569 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:11:36.83 ID:btQNXBBQP
澪「いや、さすがに夏季講習もあるし、無理だろ……」
唯「えー、2日ぐらいなら大丈夫だよー。息抜き息抜きー」
律「んー、確かに合宿で一気にレベルアップもいいな」
澪「けど、フェスは6人で出るわけで、つまり練習するなら○○さんも来るわけで……」ビクビク
梓「……私も合宿したいです」ボソッ
唯「ほらー、あずにゃんもこう言ってるしー」
律「よっしゃ! 各自空いてる日を提出するように!」
○○「え? 俺も?」
律「当たり前!」
570 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 15:12:16.74 ID:KGML3Vgi0
追いついたっ!
早いですね^^
571 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:14:14.97 ID:nbMsnar10
――10分後
ぺちゃくちゃ エームギチャンユメオチナンダー
○○「……っと、ごめん、唯さん、トイレ借りていいかな?」
唯「どぞー。廊下出て左だよー」
○○「どうも」ガサ
梓(あれ? 先輩、ビニール袋なんか持ってトイレ?)
梓(いや、あの袋は確か……そうだ、薬の袋!)
梓(けど、水ないのにどうやって飲むんだろ……まさか、トイレの水を使うとか?)
梓(そ、それは駄目なような……よし!)
572 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:15:36.98 ID:btQNXBBQP
梓「あ、あー、私、電話かかってきたー、ちょっと席外しますねー」
ガシ
タタタタ
律「……梓の奴、水なんて持ってどこ行くんだ?」
澪「すごい棒読みだったな、今の」
唯「携帯も鳴ってなかったのにねー」
紬「うふふ」
573 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:16:57.32 ID:nbMsnar10
――平沢家 廊下
○○「ふう、どうしたものか。トイレの水はさすがに……」
梓「先輩!」
○○「あれ? 中野さん」
梓「これ、お水です! どうぞ!」
○○「あー……もしかして、分かっちゃった?」
梓「はい! 付き合いも長くなったんですし、これぐらいは察します!」
○○「ははは、ありがと。助かったよ」
○○「やっぱり中野さんがいないと、俺駄目だね」
梓「そ、そうですか? 最近は私がいなくても皆さんと練習できてますし……」
○○「そんなことないって」
574 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:19:51.95 ID:btQNXBBQP
○○「けいおん部のみんなも、俺が中野さんと仲が良いからこそ、こうやって気兼ねなく付き合ってくれてるんだよ」
○○「でなくちゃ、こんな女の子ばっかりな所に入れてくれないはず」
○○「中野さん、ありがとう」
梓「ど、どうも、です」カァ
梓「じゃあ、私、先に戻ってますから!」
○○「ん、ほんとにありがと」
タタタタ
○○「……優しい子だな、ほんと」
575 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:21:21.88 ID:nbMsnar10
――2時間後
澪「あ、もうこんな時間じゃないか」
律「おお! けど、明日は土曜日!」
唯「何時だろうと、かんけーない!」
紬「じゃあ、お泊りかしら?」
○○「あー、ごめん。俺、今日は家に帰らないといけないんだ。明日は用事があって」
梓「私も……すみません」
唯「ええー。もっと遊ぼうよー」
律「むっ!」キラン
576 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:23:51.80 ID:btQNXBBQP
律「いや! 用事があるんだったら、仕方ない! な、澪!」
澪「え? そうだな。ここは帰ってもらって」
紬「夜も遅いし、○○君と梓ちゃん2人で帰らないとね」
憂「梓ちゃん、大丈夫? 自転車で送ろうか?」
梓「ううん、大丈夫。歩いて帰れるよ」
唯「○○くーん、もっとギターのことおせーてー」
○○「また今度の練習日にね」
577 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:24:51.57 ID:nbMsnar10
――平沢家 玄関
○○「では、また次の練習日に」
梓「お邪魔しました。先輩たちも、また来週に」
唯「じゃーねー」
律「またなー」
澪「○○さん、またライブのことで相談するから」
紬「梓ちゃん、気をつけてねー」
憂「2人共、さようなら」
がちゃん
律「さーて、どうなるかなー」
唯「尾行? 尾行する?」
澪「なんだ、だから2人だけで帰らせたのか。やめとけ。ばれるのがオチだ」
紬「私たちは私たちで楽しみましょう〜」
憂(○○さんか……結局、梓ちゃんとどういう関係なのか、詳しく聞けなかったなあ)
578 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:26:07.27 ID:btQNXBBQP
――外
テクテク
テクテク
○○「……」
梓「……」
○○「あ、月が出てるね」
梓「ほんとだ。綺麗ですね」
○○「月を見ると少し涼しく感じない?」
梓「少しは、ですけどね。最近は夏のじめじめが近づいてきてる感じがします」
○○「確かに、夏の足音って奴かな」
579 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:27:51.96 ID:nbMsnar10
○○「あのさ、中野さん。さっきの続きなんだけど」
梓「はい? さっき、ですか?」
○○「トイレの前で話してた時の」
梓「あ、はい」
○○「……中野さんには本当に、感謝してるんだ」
580 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 15:28:07.33 ID:83couU+FO
しえん!!
581 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:29:35.99 ID:btQNXBBQP
○○「中野さんは俺の世界を変えてくれた」
梓「そんな、大げさです!」
○○「いや、本当にそうなんだ」
○○「ずっと1人でギターを弾くことしかできなかった俺を、あんな楽しい仲間の輪に入れてくれた」
○○「おかげで色々と変われたよ」
○○「感謝してもしきれない」
梓「そんな、私はただ一緒に弾きたいと思っただけで……」
○○「それに、中野さんと仲良くなれたことも、嬉しいしね」
梓「あ……」
梓(先輩……)
梓(先輩、先輩!)ドキドキ
梓(……)ドキドキ
582 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 15:30:41.28 ID:MUEK8gPv0
支援
クライマックスかな?
583 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:30:49.18 ID:nbMsnar10
○○「また来週もみんなと一緒に音楽ができると思ったら、楽しみで」
○○「夏の間も、夏が過ぎても、ギターが弾ける」
○○「こんなに満ち満ちた人生を送れるなんて、想像すらしてなかった」
○○「中野さんには、何かお礼がしたくて仕方ないよ」
どっくん
梓「お礼……」
梓「じゃ、じゃあ」
梓「1つだけ! いいですか!?」
○○「どうぞ?」
584 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:32:12.32 ID:btQNXBBQP
どっくん
梓「その……」
梓「これからは」
どっくん
梓「私のこと、下の名前で呼んでください!」
どっくん
585 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:33:29.49 ID:nbMsnar10
○○「下の名前……か」
どっくん
梓「は、はい」
どっくん
○○「分かった」
どっくんどっくん
○○「じゃあ」
○○「梓ちゃん」
どくんどくんどくん
○○「これからも、一緒にギターを弾いてくれますか?」
……すとん
梓(あ……)
586 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:35:25.42 ID:btQNXBBQP
梓(今、分かった)
梓(そうだったんだ)
梓(私、先輩と一緒にギターを弾きたかった)
梓(一緒におしゃべりしたかった)
梓(一緒に帰りたかった、ご飯も食べたかった、メールもしたかった、もっと近くにいたかった)
梓(自覚してなかったけど、それが私の気持ちで)
梓(……これからもそういう時間を過ごしたい。一緒にいたい)
梓(思い出と未来を共にしたい)
梓(あはは。なんだあ)
梓(私……)
梓(今、『落ちちゃった』)
587 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:37:35.94 ID:nbMsnar10
○○「梓ちゃん?」
梓「はい」
梓「もちろん」
梓「これからも一緒に弾きましょう、先輩」
588 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:38:05.64 ID:btQNXBBQP
――月曜日 昼休み 教室
梓「……」ぽー
純「でさー、やっぱり臭くってさ」
憂「あはは、面白い人だねー」
梓「……」ぽー
純「あれ? 梓ー? 梓ー?」ぷに
梓「ひゃ! な、なに!?」
純「なにって……またぼーっとしてたよ」
憂「梓ちゃん、今日は変だよ? 授業中もずっと窓の外見つめてて」
梓「うん……ちょっとね」ぽー
589 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 15:40:51.61 ID:MUEK8gPv0
支援。面白くなってきたぞ
590 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 15:40:58.41 ID:cYbJbw9S0
支援
591 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 15:43:08.91 ID:83couU+FO
そろそろネタバラシしていいんじゃないか?
〇〇=俺だってこと
592 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:46:41.48 ID:nbMsnar10
純「やっぱり変だよね、梓」ヒソヒソ
憂「うん。悩んでるというより、呆けてる」ヒソヒソ
純「やっぱり彼氏関係だと見た」ヒソヒソ
憂「あ、彼氏と言えば、先週の金曜に、それっぽい人がね」ヒソヒソ
梓(○○先輩……何してるのかな)ぽー
梓(授業受けてるのかな。体育だったら見学かな)ぽーっ
梓(メールしたいなあ……しようかなあ)ぽーっ
593 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:48:39.25 ID:btQNXBBQP
――放課後 部室
律「今日はだな、合宿の日程を決めたいと思います!」
唯「どんどん、ぱふぱふー」
澪「本気でやるのか……受験だぞ? 大丈夫なのか?」
律「大丈夫だって。2日ぐらい遊んでもさ」
澪「遊ぶんじゃなくて合宿だろ……ハァ」
紬「もう別荘は抑えておいたから、安心してね」
梓「……」ぽー
594 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:50:08.64 ID:nbMsnar10
律「あ、ちなみに合同フェスの申し込みはしといたんで」
澪「お、律にしては早いじゃないか」
律「締め切りギリギリだったからなー。和に頼もうと思ったけど、自分でやっといた」
唯「和ちゃん、生徒会長になってから忙しそうだもんねー」
律「締め切りまであと3日だったからな。危なかったぜい」
紬「楽しみだわー」
梓「……」ぽー
595 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:51:52.15 ID:btQNXBBQP
律「……なんか梓の様子が変なんだが」
澪「ここ2、3ヶ月で何度その台詞言ったか分からないな」
唯「それだけあずにゃんにドラマが訪れてるんだよー」
紬「遠くを見たままため息ついたりしてるわね。ほら、今も」
梓「……はぁ」
律「んー、金曜、唯の家に行った後、何かあったな、こりゃ」
澪「何かって?」
律「それは分からん」
澪「律はやっぱり適当だ……」
紬「今の梓ちゃん、とっても恋してる顔だわ〜」
596 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:53:12.22 ID:nbMsnar10
唯「あずにゃーん」ダキッ
梓「ひゃ、唯せんぱい、抱きつかないでくださいー」ジタバタ
唯「久しぶりにあずにゃん分を補給だよ!」
梓「あうー」
紬「こっちもいいわ〜」キラキラ
律「……あはは」
澪「ムギは相変わらずだな」
597 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:54:52.35 ID:btQNXBBQP
律「えーと、合宿の日程を決めるためには、○○の予定も聞かなくちゃだな」
梓「え? じゃあ今から○○先輩を呼ぶんですか? って、唯先輩は早く離れてください」ぐいっ
唯「あーうー」ペタン
澪「いきなり呼び出したら迷惑じゃないか? 練習もしないんだし、悪いだろ」
唯「私、ポテト食べたい!」
律「唯はまた唐突に……」
紬「じゃあファーストフード店でお話しましょうか」
律「ふぅ、だな。じゃ、こっちから○○の所に行って合流するかー」
梓「……」ぽかーん
梓「え?」
598 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 15:55:43.88 ID:MUEK8gPv0
支援
599 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:56:03.26 ID:nbMsnar10
――××高校 校門前
律「あいつの高校に来てみました!」バンッ!
梓「え? え?」
澪「ぽかーん」
唯「へー、普通の高校だねー」
律「逆に普通じゃない高校はどんなだ」
唯「揉め事を決闘で解決する学校とか?」
律「それはこええ」
紬「こういう普通の学校も憧れるわー」
梓(先輩……この学校に通ってるんだ……)
600 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:57:49.56 ID:btQNXBBQP
梓「ここで、○○先輩を待つんですか?」
澪「校門前……私たちだけ違う制服で、なんだか恥ずかしい……」
律「まあ、多分通るだろ。適当に待ってようぜ」
唯「あずにゃん、メールしてみたー?」
梓「あ……い、いえ、なんだかメールしづらくって……」
律「おいおい、あいつのメルアド知ってるの梓だけなんだから、ちゃんと送ってもらわないとだな」
601 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 15:59:05.82 ID:nbMsnar10
ざわざわ
澪「な、なあ、なんだか私たち、見られてないか?」
紬「そうねー、行き交う人みんなに見られてるわ」
ざわざわ
「あの子たち、かわいくね?」
「他校の生徒かな」
「あの制服は桜高じゃん」
澪「や、やっぱり見られてる」
律「ほっとけ。他校の生徒が珍しいんだろ」
602 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:00:49.13 ID:btQNXBBQP
ざわざわ
「かわいい〜。特にあの長い黒髪の子ー」
「ギターケース背負ってるね。バンド組んでるのかな」
「俺、あの金髪の子が好みだなー。ほわほわしてて」
ざわざわ
「私はカチューシャしてる子がかっこいいかも……」
「あ、あんたその気があったんだ」
「黒髪ロングはぁはぁ。黒髪ツインテはぁはぁ」
梓「い、居心地悪いですね」
紬「男女問わず見られてるみたい。人も増えてきたわ」
唯「いぇーい、みんな元気ー?」ふりふり
律「手を振るなって」
澪「は、恥ずかしい……」
603 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:02:30.82 ID:nbMsnar10
ザッザッ
男1「ねえねえ、ちょっといいかな?」
梓「はい?」
男2「ひゅー、近くで見るとますますかわいい!」
男3「やっぱり桜高の子だwww」
律「なんだこいつら」
唯「なーにー?」
澪「茶髪の男の人が3人も……」ガクブル
紬「何か御用でしょうか?」
男1「いや、俺たちここの学校の生徒なんだけどさ」
男2「君たち、誰か出てくるの待ってんの? もしかして俺だったり?」
男3「ねえよバカwww」
604 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:05:13.91 ID:btQNXBBQP
梓「あの、私たちは他の人を待ってて」
男1「へー、けどさあ。よかったら俺たちと遊ばない?」
男2「君、その髪型かわいいねー。何年生? 年下かな?」
梓「え? いや、その」
澪「こ、怖い……」ぶるぶる
男1「ちょーとゲーセンとかに行ったりとかさ。カラオケでもいいよ? バンドやってんしょ?」
男2「じゃあ俺、この年下の子と一緒に行こうかな」ぽん
男3「ロリコンきめぇww いきなり肩に手とかぱねえwww」
梓「や、やめてください!」
事件のおかん
606 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:07:30.15 ID:nbMsnar10
バシッ!
律「はいはーい、残念だけどこの子はもう予約済みなんだよね」
男2「いてっ!」
男1「へ? 予約?」
律「ちなみに私たちもあんたらみたいなのについていくほど、安くないからさ」
唯「私たちはお高い女なの、おっほっほ」
澪「ゆ、唯、あんまり刺激すると……」びくびく
紬「あまり強引な殿方は嫌われますよ?」
607 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:10:08.21 ID:btQNXBBQP
男1「な、なんだよ、せっかく俺たちが声かけてやったのに」
律「あんた達がどこの誰だから知らないけど、早くけえったけえった」
男2「俺、この子と遊びたいだけだぜ? 邪魔すんな」
男3「だからロリコンきめえってwww」
澪「怖いぃ……」ガクブル
律「ったく、さっさとどっか行けってのに……」
梓「うぅ」
「あれ? 梓ちゃん?」
608 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:12:31.09 ID:nbMsnar10
梓「あ! ○○先輩!」
ダダダダ ぎゅ
○○「っと。どうしてここに? けいおん部のみんなも」
梓「この人たちが」ぎゅ
○○「?」
??「お、おい、○○。お前こんなかわいい子にシャツの端掴まれるって……何やった? なあ、何やった?」
男1「なんだぁ、てめえら……って、うお!」
男2「3組のもやしっ子に……友さん!?」
男3「やべえwwwwwww」
律「○○の隣にいるの、誰だ?」
澪「さ、さあ。友達じゃないか? 金髪でちょっと怖そう……」
紬「身体つきが強そうだわ〜」
唯「あ! 変な3人組がぺこぺこしてるよ!」
609 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:13:59.94 ID:btQNXBBQP
友「おら、てめえら。女の子引っ掛けるのに脅し使うんじゃねえよ」
男1「すいませんすいません」ぺこぺこ
男2「まさか友さんの知り合いとは知らず……」ぺこぺこ
男3「さーせんwww」ぺこぺこ
友「ま、俺の知り合いじゃなく、○○の知り合いだけどな……ほら、帰れ帰れ!」
男達「さーせんしたっ!!」ダダダダダ!
610 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:15:37.20 ID:nbMsnar10
○○「梓ちゃん、大丈夫?」
梓「は、はい。ありがとうございました」
○○「いやいや、俺は何もしてないって、情けないことにね。お礼なら友に」
梓「はい、友……さん、ありがとうございました」ペコリ
友「いやー! こんなかわいい子にお礼言われるなら、俺も本望だ!」
○○「ちなみにこいつは変人だから」
梓「は、はあ」
友「何を言う!」
611 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:16:42.19 ID:btQNXBBQP
律「よっ、○○」
○○「ああ、律さん。どうも。みんなも大丈夫だった?」
澪「う、うん、大丈夫」
紬「助かりました〜」
唯「あの人たち、遊びたいなら前もって約束してくれないとねー」
梓「そういう問題じゃないと思いますが……」
○○「今日はどうしてここに?」
612 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 16:17:08.51 ID:MUEK8gPv0
支援
613 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 16:17:20.86 ID:DUsXVD5S0
支援
614 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:18:07.59 ID:nbMsnar10
律「合宿の……ああっと、ここじゃ駄目か」
○○「ああ、友ですか? こいつは大丈夫。俺が音楽やってるのを知ってるから」
友「ども! 友でーす! 彼女なしの18歳! 独身! 彼女募集中! ちなみに君たちみたいなかわいい子は大歓迎!」
澪「うわ……」
律「どんだけ彼女欲しいんだよ」
○○「ちなみにこいつは変人なんで、無視してもらっても結構です」
紬「は〜い」
唯「変態さんなんだー」
友「ひでえ! 少しぐらいこの子たちを紹介してくれよう!」
615 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 16:18:16.99 ID:QeDj1H+d0
私怨
616 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:19:37.23 ID:btQNXBBQP
――事情説明後
友「なるほど。お前、どこで練習してるかと思ったら、こんなかわいい子たちの中で……」ぷるぷる
○○「ん?」
友「うらやましい! うらやましい!」ドン!
○○「……はぁ」
友「ねえ! 俺もキーボードやってるんだけど、良かったら一緒に」
梓(キーボード?)
○○「さーて、そろそろ移動しよう。友はここでお別れだな」
友「ひでえ! 俺の恋活を邪魔しないでくれよう!」
唯「れんかつ?」
梓「恋愛活動の略じゃないでしょうか……初めて聞きましたけど」
梓(それにしても、キーボードやってる友達って、どこかで聞いたような)
617 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:21:25.30 ID:nbMsnar10
律「ごめんな。今日は○○1人に用があるんだ。一緒に練習とかはまたの機会に」
澪「た、助けてもらってありがとうございました……」
紬「またお会いしましょう〜」
唯「じゃーねー、変態さーん」
友「それは仕方ないですな。デートはまたの機会ということで」
○○「じゃあな、変態」
友「お前に言われたくねえ! ったく、○○、あとでメールしろよ」
○○「なんで?」
友「それ。なんだそのうらやましい状況は」ビシッ
○○「それ? あっ」
梓「あっ」さっ
梓(ず、ずっとシャツの裾、掴んじゃってた……)
友「まったく、根掘り葉掘り聞かせもらうからな! それでは皆さん、さようならー」
618 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:23:37.54 ID:btQNXBBQP
○○「すみません、なんだかうるさい奴で」
紬「いえいえ、楽しい方でした。助けてもらいましたし」
唯「だねー。私、本物の変態さんって初めて見たよー」
律「唯、あまり言ってやるな」
澪「金髪だけど良い人だったんだな……」
梓「また改めてお礼を言いたいです」
○○「じゃあ、また今度紹介するよ。それより何か話をするために来たんだよね、行こっか」
唯「ポテトだポテトー」
619 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:25:18.74 ID:nbMsnar10
――道路
テクテク
「お、○○じゃん。じゃあなー」
「また明日なー」
○○「ん。またなー」
梓(○○先輩、学校にもお友達たくさんいるんだなあ。さっきから結構声かけられてる)
梓(さっきの友さんもそうだったけど、先輩ってお友達の前だと雰囲気が全然違う……)
梓(新たな一面、って奴かな。ちょっと男っぽくて)
梓(ああいう先輩もいいかも……)
620 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:26:59.68 ID:btQNXBBQP
テクテク
梓「先輩、ギターは学校に持っていってないんですね」
○○「学校で弾いてるのが先生に見られると、すぐ親に連絡がいくようになってるからね」
○○「ギターは近くの楽器店に置かしてもらってるんだ」
○○「時々さっきの友の家にも置いてる」
律「○○って今年からこっちに来たんだよな? あれはこっちでできた友達か?」
紬「それにしてはすごく仲がよさそうだったけれど」
○○「あー、あいつは前の学校にいた時からの友達で」
621 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:28:12.53 ID:nbMsnar10
澪「え? じゃあどうして同じ学校に? 一緒に転校してきたとか?」
○○「俺が転校してきたのは4月、あいつは6月なんだ」
紬「じゃあ、あの方が後でやってこられたわけね」
○○「うん。本人曰く『大学はこっちの街のを受けるから、先に1人暮らしに慣れたい』から来たらしい」
梓「……それって手間がかかるだけのような」
律「普通は合格してから引っ越すもんだよな」
○○「だから変人なんだ」
唯「変態変態〜」
622 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 16:29:17.89 ID:MUEK8gPv0
支援
623 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:30:14.17 ID:btQNXBBQP
梓「あの、もしかして先ほどのお友達って、前に話してくれた人では?」
○○「よく覚えてるね。その通り。俺が音楽をやるきっかけを作ってくれた奴だよ」
○○「あいつはあいつでバンドを組んでて、今日も練習に行ってるはずだ」
○○「最近は、他に練習場所がない時、やむを得ずあいつの部屋を貸してもらってる」
○○「お金取られるんだけどね。スタジオよりは安いけど」
梓「そうだったんですか……」
唯「良いお友達なんだねー」
○○「まあ、悪い奴じゃないかな。変人だけど」
624 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:32:19.97 ID:nbMsnar10
――ファーストフード店
律「では! 合宿の日程を決めたいと思います!」
澪「えーと、各自、夏休みの間で空いてる日を言っていこう」
唯「私はこの辺り全部空いてるよー」
紬「私はこの付近しか……夏は忙しくて、ごめんなさい」
梓「私は大抵暇ですし、予定も変更できるのでいつでも構いません」
○○「えーと……合宿って、ほんとにやるんだ」
律「何を今更」
唯「海だよ海ー」
○○「だけど、一応俺も男で、君たちは女の子なわけで……問題あったりしない?」
律「問題起こすつもりなのか?」
○○「そんなことはないけど……」
澪「へ、部屋は別々だから」
紬「セキュリティは万全ですので」
唯「問題ってどういう問題?」
625 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:34:16.00 ID:btQNXBBQP
○○「そりゃ、色々と……本当に大丈夫なのかな」
梓「大丈夫です。○○先輩を信じてるんですよ」
梓「あとはさわ子先生にさえばれなければ、全然大丈夫です!」
律「おーおー、梓が『ばれなければ』なんて言葉使うとはなあ」
唯「あずにゃん……汚れちゃったんだね、およよ」
澪「主に律と唯のせいだろうけどな」
○○「……そっか。ありがとう」
○○「じゃあ、俺はこの辺りなら空いてるよ」
626 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:35:37.25 ID:nbMsnar10
――話し合いの後
澪「8月の10日あたりがちょうどいいかな」
梓「フェスは下旬だから、まだ余裕はありますね……この合宿でレベルアップです!」
律「フェスで何の曲を弾くかも決めなきゃなー」
唯「かっこいい曲がいいね!」
澪「ギターが3人になったから、曲作りが難しそうだ」
○○「ギター3人は結構変則的だね。ないわけじゃないけど」
紬「私、作曲頑張る!」
律「曲はおいおい決めてこうぜー」
627 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:36:59.25 ID:btQNXBBQP
――帰り道
テクテク
梓「○○先輩は、夏休みに入った後は忙しいですか?」
○○「まあ、一応受験はするつもりだから、夏期講習とかあるよ」
律「お、○○も進学組か」
唯「どういう所に行くつもりなのー?」
○○「まだそこまで詳しくは決めてないかな」
唯「私と一緒だね!」
澪「唯も最近になってようやく進学って決めたからな」
紬「早めに決めておいた方が、勉強もはかどるわよ〜」
628 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:37:42.74 ID:nbMsnar10
梓(そっか。先輩たちはみんな来年にはいなくなっちゃうんだ)
梓(○○先輩も大学に行っちゃう……)
梓(永遠の別れってわけじゃないだろうけど)
梓(別の場所に行っちゃうって、なんだか寂しい)
梓(……私、耐えられるのかな)
梓(先輩たちがいなくなった日常……全てが色あせてしまいそうで)
629 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:38:56.13 ID:btQNXBBQP
唯「○○君はここで電車に乗るんだよね。じゃあねー」ぶんぶん
○○「はい、皆さん、また練習で」ふりふり
律「金曜にまたスタジオでなー」
澪「夏休み中も、部室使える時があったら、つ、使おうね」
紬「さよーならー」
梓「先輩……さようなら」ふりふり
梓(……はぁ)
梓(まずは8月のフェスに集中しよう)
梓(色々と考えるのはその後! うん、そうだよね)
630 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 16:39:43.25 ID:QeDj1H+d0
紫煙
631 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:39:43.88 ID:nbMsnar10
――道路
○○「……」
○○「合宿か……」
○○「楽しくなれたらいいな」
prrrrr prrrr
○○「電話? 母さん?」
ピッ
○○「はい、もしもし」
○○「うん……今帰るところ」
○○「え?」
○○「いや、その話は……ちょっと待ってって。落ち着いて」
632 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:40:35.44 ID:btQNXBBQP
○○「もう無理だってことになったんだろ?」
○○「見つかった? けどそんな急に……」
○○「うん、そりゃあ、分かってるけど」
○○「また家に帰ったら詳しく話そう、うん」
○○「切るよ、じゃ」
ピッ
○○「……」
○○「はぁ……そっか」
○○「……梓ちゃん」ボソッ
5章 おわり
633 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 16:42:48.04 ID:btQNXBBQP
5章終わり。支援ありがとうございました。
少し休憩を取ろうかと思います。
また8時頃に再開します。スレ足りなくなったらどうしよう……
乙ー
635 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 16:58:49.78 ID:cjIJABay0
おつ
楽しみに待ってる
636 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 17:20:32.58 ID:MUEK8gPv0
定期保守
乙
楽しみにしてる
638 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 17:43:19.77 ID:cYbJbw9S0
乙
639 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 17:55:45.44 ID:MUEK8gPv0
定期保守
640 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 18:26:40.94 ID:MUEK8gPv0
保守しようぜ
この○に田中を入れてくれ
642 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 18:53:12.45 ID:MUEK8gPv0
>>641 お前の苗字か?俺も入れてもらたい限りだよ
643 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 19:12:37.66 ID:ZwFWQNyF0
ほ
644 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 19:19:29.51 ID:4SkaAu1M0
やっと追い付いた 保守
645 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 19:24:06.97 ID:61IpLa6M0
ここでネタバレ
先輩は俺
646 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 19:30:56.10 ID:cYbJbw9S0
ほ
647 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 19:44:06.13 ID:swO/EtSF0
定期保守
やっと半分か
649 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 19:56:49.11 ID:swO/EtSF0
定期保守
650 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:18:07.19 ID:btQNXBBQP
こんばんは。始めようかと思います。
>>641>>642 そんな君達に「メモ帳にコピペ」と「置換」の魔法を授けよう
6章、いきます
651 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:18:44.75 ID:nbMsnar10
6章
――7月後半 体育館 終業式
校長「高校生としての節度を持って――」クドクド
梓(眠い……)
梓(校長先生のお話ってどうしてこんなに長いんだろう)
梓(「羽目を外しすぎないように遊びなさい!」の一言で済むのに)
梓(はぁ……昨日は夜遅くまで練習してたから余計に眠い)
梓「ふわぁ……」
おかえり!
653 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:23:03.31 ID:btQNXBBQP
「ねえねえ、聞いた? 噂の中野さんなんだけど」ヒソヒソ
「えー、ほんとー? あの音楽フェスに彼氏さんも?」ヒソヒソ
「そうそう、出るらしいよ。あー、私1度見てみたいなあ」ヒソヒソ
「恋人同士が同じステージに立つなんて、なんか素敵〜」ヒソヒソ
梓(なんだか今日はヒソヒソ話をしてる人が多いなあ)
梓(まあ、校長先生のお話はつまらないし、仕方ないか)
梓(……また見られてるような気がするけど、気のせいだよね)
654 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:27:40.62 ID:nbMsnar10
――昼 部室
律「あー、1学期も終わったなあ」
澪「夏休みの宿題、そんなに出なかったな」
紬「もう受験の年だから、先生方も配慮してくださったのかしら」
唯「これなら一杯遊べるね!」
澪「いや、勉強……」
律「勉強もだけど、フェスと学園祭のライブに向けての練習も、たくさんしなきゃだな」
紬「それに関してなんだけど、学園祭の曲はだいたいできてきたの。ただ、フェスはまだ手をつけてなくって……」
澪「ギター3つは変則的だし、曲も複雑になるよね。新しく作るより、既存の曲を編曲した方がかもだな」
655 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:32:42.10 ID:btQNXBBQP
律「そういえば梓はまだ来てないのか」
紬「1年はまだホームルーム中みたいね」
澪「終わったらすぐ来るだろ。終業式後も練習するって言ったのは梓だし、来ないはずがない」
律「梓も真面目だねえ。練習魔だな、もう」
澪「それだけ2つのライブに集中してるんだよ」
唯「夏休みもこの部室って使えるのかなー」
律「確かさわちゃんの許可が取れたら使えたはずだ」
紬「○○さんもここに呼べたら、練習もはかどりそうなのだけど」
澪「んー、夏休み中とは言え他の生徒もいるし、難しいんじゃないかな」
唯「……女装してもらうとか!」
律「いや、ばれるだろ」
656 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:36:47.05 ID:nbMsnar10
律「しっかし、梓と○○はいったいどうなってんだろうな」
唯「どうなってるって? 2人はとっても仲が良いよ?」
律「そんなこたあ分かってるよ。私が知りたいのはもっと深いところでな、例えば愛の告白をしたー、とか」
澪「こ、告白!?」
唯「なるほどー、そっちかあ」
紬「素敵ねえ。梓ちゃんから告白しそうだわ〜」
澪「確かに……○○さんはあんまりそういうこと言うイメージがない」
律「いつの間にか○○は梓のこと下の名前で呼ぶようになってるしさ、いったいどうなってるのやら」
唯「気になるんだったら、直接あずにゃんに聞いてみたらいいのに」
657 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:38:58.74 ID:btQNXBBQP
律「……ふむ、なるほど、それもそうだ」
澪「お、おい。無理やり聞き出すような真似はしちゃ駄目だぞ」
律「それは相手次第ですなー」ニマニマ
紬「いざとなったらこれで……!」すっ
唯「あー! ケーキだ! しかも高そう!」
律「ふふふ、買収とは、ムギ、お主も悪よのお」
紬「りっちゃん将軍にはおよびませんともー……これで合ってるかしら?」
澪「時代劇でも見たのか、律とムギは……」
658 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:42:15.94 ID:nbMsnar10
――10分後
ガチャ
梓「すみません、遅れましたー」
律「来た! 皆の者! 机を所定の位置に!」
唯「いいですとも!」
紬「よいさー」
澪「はぁ……」
ガタガタガタ
梓「あ、あの、机を動かしていったい何を……」
律「えー、中野梓! 前へ!」
梓「は、はい!」
梓「って、ノリで答えちゃいましたけど、これなんですか?」
唯「しょうにんかんもんだよ!」
659 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:45:05.78 ID:btQNXBBQP
梓「証人喚問? って、国会とかでやってるやつですか?」
律「私が議長で!」
唯「私が副議長!」
紬「私が質問役の議員なのー」
梓「……澪先輩、これはいったい」
澪「ごめんな。こいつらの気が済むまで付き合ってやってくれ。ちなみに私は記録係だ」
律「ではこれより、中野梓への尋問を始める!」
梓「……こんなことしてないで練習しましょうよ」
律「証人は静粛に!」
唯「ばんばん! だよ!」バンバン!
澪「唯、机を叩くなって。裁判じゃないんだからさ」
660 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 20:45:59.28 ID:cYbJbw9S0
支援
661 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:47:02.25 ID:nbMsnar10
律「ではムギ君、尋問をどうぞ!」
紬「はい!」
紬「えー、中野梓ちゃん、あなたは今年の4月下旬、○○さんと出会い、現在まで非常に懇意にしていますね?」
梓「はあ……そうですね」
紬「一緒にギターを弾くだけでなく、家にも呼び、食事も共にし」
紬「今では彼に下の名前で呼ばれるほど仲が良くなり、毎日メール交換もしている、というのは間違いないですか?」
梓「……」カァ
律「証人は答えること!」
梓「うぅ、はい、しています……」
紬「うふふ」
澪「……いいなあ、恋って」
662 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:48:58.91 ID:nbMsnar10
紬「梓ちゃんは、今まで恋人を作った経験もなく、男の子とそんなに仲良くなったのも初めてですね?」
梓「は、はい」
紬「ではお聞きします。私が見る限り間違いなくそうだと思っていますが」
紬「梓ちゃんは今、初恋の真っ最中ですね?」
梓「……」
梓「……」
梓「……」
律「しょうにんは、」
澪「律、待ってやれ」
律「ん」
663 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:50:42.27 ID:btQNXBBQP
梓「……答えなきゃ駄目ですか?」
澪「梓が嫌じゃないなら、でいいよ」
梓「……」
梓「……」カァ
梓「……」コクン
律「おーっ」
唯「あずにゃん、顔真っ赤ー、かわいいー」
澪「初恋かー、甘酸っぱいなー」
紬「ふふ、恋する女の子は素敵だわ〜」
梓「うぅ……」
664 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 20:53:51.42 ID:swO/EtSF0
定期保守
665 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:56:17.05 ID:nbMsnar10
唯「ねえねえ、どういう所が好きになったの?」
梓「え、ええ? そんなことまで言わなくちゃいけないんですか?」
律「もう観念しろしろー」
澪「私もちょっと聞いてみたい……」
梓「澪先輩まで!?」
唯「教えてよう」
梓「うー……えーと、や、優しくて思いやりがあって、周囲に気を配れるところとか……」
梓「私の話なんかも楽しそうに聞いてくれて、ギターの知識もいっぱい持ってて教え方も上手で」
梓「けど、時々無茶することもあるから、ほっとけなくって……」
紬「ふむふむ、しっかり者だけど甘えん坊な梓ちゃんにはぴったりな相手だったのね」
律(半分のろけだろ、これ)
澪(聞いてて逆に恥ずかしくなってきた)
666 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 20:58:27.62 ID:btQNXBBQP
梓「あと、意外に私と同じで甘いものが」
律「あ、あー、もういいぞー、梓ー」
澪「お腹いっぱいだ」
唯「ええー、もっと聞きたいよー」
律「後で2人っきりで話しとけ。えーとだな……そんだけ好きだったら、もちろん告白したよな?」
梓「こ、告白ですか……?」
紬「まだしていないの?」
梓「そんなことできません!」
667 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:00:20.01 ID:nbMsnar10
律「すればいいじゃん。多分あっちも即OKしてくれるって」
紬「梓ちゃんはかわいいんだもの〜」
梓「かわいくなんかないですよ……」
澪「けれど、○○さんもけっこう梓のこと気に入ってると思う」
唯「へー、そうなんだー。わかんなかったなあ」
律「唯は鈍感すぎる」
梓「け、けど今はライブ前ですし、練習の方が大事です!」
紬「いーえ、恋も部活も、どちらも大事なのよ」
律「だって女子高校生ですもの!」
澪「無駄にかわいく言うな」ペシ
律「あうち!」
668 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:02:06.00 ID:btQNXBBQP
律「そうだ。次の合宿の時にでも告白したらどうだ?」
梓「え、ええ!?」
紬「それはいいわね〜」
梓「無理! 絶対に無理です!」
律「まあそう言うなよ。想像してみな? 夜の海岸、月明かりに照らされて、梓と○○が浜辺に立つ」
紬「まぁ、素敵な場面ね」
澪「ロマンチックだなー」
669 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:03:46.97 ID:nbMsnar10
唯「『待った? 梓ちゃん?』」
律「『いえ、今来たところです、先輩』」
唯「『それで、話って何かな?』」
律「『先輩……私、先輩のことが好きです!』」
唯「『梓ちゃん、俺もだよ。俺も大好きだ!』」
律「『先輩!』」
唯「『梓ちゃん!』」
律「てな感じで」
唯「どうかな?」
紬「素敵ー」
澪「即興でそこまで合わせられるお前たちに感動するよ」
670 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 21:09:08.70 ID:swO/EtSF0
支援
671 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:10:00.33 ID:btQNXBBQP
梓「そ、そんなこと……」
律「無理か?」
唯「いやできる! あずにゃんなら!」
律「そうだ!」
唯「というわけで」
律「合宿で告白に決まりだ! 私たちもフォローしてやるぞー!」
唯「おー!」
紬「おー」
梓「み、澪先輩〜」
澪「まあ、ちょっとは考えてみたらどうだ? 告白」
梓「そんなあ」
672 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:14:27.46 ID:nbMsnar10
梓(そりゃあ、先輩とそういう関係になれたらな、とは思うけど)
梓(合宿でなんて……)
梓(それに断られたら……ううん、きっと私なんかじゃ)
梓(や、やっぱり無理)
梓(そんなことして、○○先輩の練習の邪魔しちゃ駄目だもんね)
梓(先輩たちには適当に誤魔化して、この話はうやむやにしてしまおう)
梓(うん、そうしよう)
梓(そんなことより夏休みの練習が大事)
梓(練習が大事……そう、そのはず)
梓(……明日から夏休み、か)
673 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:22:45.71 ID:btQNXBBQP
――夏休みが始まり
――月日はどんどん過ぎていく
――7月23日
――梓の携帯
to ○○先輩
件名 夏休み
夏休みが始まりましたが、先輩はどうお過ごしですか?
私は家でトンちゃんのお世話をして過ごしています。水の中にいるトンちゃんが涼しそうで羨ましいです。
けいおん部の練習は週2、3回の予定になっています。最近は皆さん、真面目に練習に打ち込むようになってくれたので嬉しいです。
連日暑い日が続いていますが、体調に気をつけてください。
674 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:23:12.76 ID:nbMsnar10
――7月24日
from ○○先輩
件名 虹
こんにちは。こっちではさっきまで夕立だったんだけど、そっちも雨は降ったかな。
雨上がりに見えた虹が綺麗だったので写真を送ってみたけど、届いた?
今日はギターを弾けなかったけれど、良い1日になったと思う。
675 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:26:59.50 ID:btQNXBBQP
――7月25日
to ○○先輩
件名 今日は練習!
今日はけいおん部の部室で練習でした!
ですけど、文化祭ライブはまだ先なので皆のやる気がなかなか上がらず、ティータイムで時間を潰してしまいました。
たまには1日中練習漬けになってみたいものです。以前先輩と私の家で練習した時みたいに。
8月の合同フェスで演奏する曲はまだ決まりません。
1度○○先輩と相談しよう、ということになりました。
――7月26日
to ○○先輩
件名 7拍子
今日、自宅での練習で7拍子が入った曲を弾いてみたのですが、どうにも上手くいきませんでした。
先輩は曲の途中で拍子が変化したり、特殊なリズムを取る曲でもなんなく弾けてますが、何かコツのようなものはあるんですか?
良ければ教えていただけるとありがたいです。
676 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 21:27:23.96 ID:8u1zvAgo0
しえん
677 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:28:06.64 ID:nbMsnar10
――7月27日 金曜日 合同練習日
――貸しスタジオ
律「おーす、○○」
澪「久しぶりです」
○○「ども。皆さん、お元気そうで」
唯「暑いよー。暑いよー」バタン
○○「ないのが約1名、いらっしゃるようで」
紬「唯ちゃん、はい、冷たいお茶よ。ペットボトルだけど」
唯「わー、ありがとー」ごくごく
678 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 21:29:56.42 ID:7ib5EXD00
梓「また、一緒におっぱいを弾いて下さい! ○○先輩!」
に見えた
679 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:30:06.84 ID:btQNXBBQP
律「今日も個別の後セッションってことで」
唯「○○君! 何か面白い曲ない!?」
○○「おお、唯さんがやる気だ」
梓「最近色々な曲を弾くようになって、もっと弾いてみたいと思うようになったらしいです」
澪「唯も熱心になったなあ」
○○「じゃあ、この楽譜を見せてあげよう」ペラ
唯「おー、さんくーす」
○○「そうだ、梓ちゃん」
梓「はい、なんでしょうか」
○○「昨日、変拍子のコツが聞きたいって言ってたけど……」
梓「そうですね。変な拍子だと混乱してしまって」
○○「ちょっと練習してみよっか」
梓「はい!」
これで○○君いけめんなんだろうなあ
681 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:34:02.44 ID:nbMsnar10
○○「4拍子と3拍子を頭の中で組み合わせる感じで……」
梓「1、2、3、4……」
律「おーおー、さっそく2人の世界を作りやがって」
澪「私も教えてもらいたいな……」
唯「あははは!」
紬「唯ちゃん、何見てるの?」
唯「さっき○○君に貰った楽譜だよー。数字が一杯で面白いよー」
澪「楽譜が読めないのに面白いって……ドリーム・シアターの『Dance of Eternity』?」
律「……この曲はドラムに死ねとおっしゃってるようだ」
682 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:36:30.57 ID:btQNXBBQP
○○「アロエリーナの曲って知ってる? 昔、テレビでやってたCMなんだけど」
梓「聞いてアロエリーナ、という歌ですか?」
○○「そうそう。あれも短い曲だけど拍子が途中で変わっててね」
律「……ほんと、梓は告白したらいいのに」
澪「良い雰囲気作ってるな……」
唯「ぎゅいーん、ぎゅいーん。あはは」
澪「唯はさっきの楽譜を見てまだ笑ってるし」
紬「この曲、すごい独創的だわ。次の新曲の参考にしようかしら」
律「や、やめてねー、ムギさーん」
683 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:37:56.20 ID:nbMsnar10
――1時間後
ジャジャンジャン!
○○「おー、見事な演奏でした」パチパチ
澪「ふわふわ時間はもう大丈夫だな」
紬「あとは新曲だけど……ごめんなさい、まだ完成していないの」
律「大丈夫だって。文化祭ライブまでまだ先だしさ」
梓「けれど、その前の音楽フェスが……そろそろ弾く曲を決めておかないと」
澪「ムギに新曲を2つ作れっていうのは酷だと思う」
律「だなー」
684 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:40:18.07 ID:btQNXBBQP
梓「では、やっぱり既存の曲を弾くか、少しアレンジするかですね」
唯「これにしようよー」ペラ
律「やめてくれ唯。私が死んでしまう」
澪「私もその曲はやだ……なんだか怖いし」
唯「えー、カッコいいのにー」
○○「その曲はネタとして持ってきたんだけど……歌がないからけいおん部向きじゃないんじゃないかな」
唯「むー」
梓「……あ! ○○先輩! あの曲にしましょう!」
685 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:41:51.17 ID:nbMsnar10
○○「あの曲?」
梓「ほら、思い出の曲です!」
○○「……『Johnny B.Goode』?」
梓「はい!」
唯「何それー」
律「お、私は知ってるぞ。映画に使われた奴じゃね?」
澪「チャック・ベリーか……」
梓「先輩、楽譜持ってきてますよね?」
○○「あ、ああ、うん」ペラ
686 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:43:24.84 ID:btQNXBBQP
梓「どうですか?」
律「私はいいと思うぜ。かっこいいじゃん」
澪「私も、たまにはこういうロックを弾いてみてもいいかな」
紬「楽しそうな曲だわ〜」
唯「私は楽譜が読めませんっ!」
梓「では、これで決定ということで」
○○「え……」
○○「ほ、本当に?」
687 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:46:34.95 ID:nbMsnar10
梓「○○先輩は嫌ですか?」
○○「すごく嬉しいけど……」
梓「だったらいいじゃないですか。決定です!」
唯「あずにゃんが私の意見を聞いてくれないよー」メソメソ
梓「もう、唯先輩。これが弾けて歌えたらすごくかっこいいですよ」
唯「おお! だったらやるよ!」
澪「現金な奴……」
律「んじゃま、ムギにはこの曲をけいおん部用に編曲してもらうってことで」
紬「うん、私がんばる!」
688 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 21:47:44.95 ID:WlorOdud0
7拍子とか正気か。素直に8ビート刻んでりゃいいじゃねーか
689 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:49:02.16 ID:btQNXBBQP
○○「……」
梓「○○先輩? どうかしました?」
○○「いや……感無量というか、感動しているというか……はは、なんだか胸がいっぱいで言葉が出ないや」
梓「感動している暇はありませんよ? 先輩にはこの曲をステージで弾けるようになってもらわないと!」
○○「ああ、もちろん。頑張るよ」
梓(先輩……いい笑顔だなあ)
梓(うっ、なんだか胸がドキドキしてきた)
梓(駄目駄目! 見とれてる暇なんてない。今は練習に集中!)
690 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:53:08.53 ID:nbMsnar10
唯「ああー!!」
澪「な、なんだ唯。びっくりさせるなよ」
唯「こ、この曲、歌詞が英語だよ!」
○○「そりゃあ、外国の曲だからね」
唯「私、英語の歌なんて無理だよー! 予備校の英語の小テストで0点取っちゃったのに!」
梓「唯先輩、受験生なのに……」
澪「けど、英語0点の奴に英語の歌詞は無理があるんじゃ」
律「おいおい、唯が歌えないとなると、他に歌えるのは……」
691 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:55:39.47 ID:btQNXBBQP
澪「わ、私は無理だからな! 他の学校の人の前で歌うなんて絶対無理!」
○○「いやー、さすがに弾きながら歌はちょっと」
紬「私は作曲と編曲で手一杯で……」
梓「先輩たちを差し置いて私がボーカルなんて、できません」
律「で、私はドラムやりながら歌うなんて器用な真似はできない、っと」
澪「じゃあ残るはやっぱり唯だけか」
唯「ええー? あずにゃんだけ理由になってないような……」
692 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:57:44.36 ID:nbMsnar10
紬「あのー」
律「どしたムギ」
紬「この曲ね、どう編曲してもギター3本の曲にするのは難しいの」
紬「私自身、そんな経験はないし、新曲で手一杯だし……」
紬「ギター2本の楽譜にするのが精一杯で」
律「ふむ、だとしたら2人ギターで1人はボーカルに専念することになるな」
澪「つまり唯がボーカルか」
唯「ええー! 私もギター弾きたいよー!」ジタバタ
梓「唯先輩……」
693 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 21:58:56.90 ID:btQNXBBQP
梓(せっかくのステージなのに、ギターを弾けないのは確かにちょっとかわいそう……)
梓(私は来年も出るチャンスがあるんだし)
梓(ここはやっぱり私がボーカルになるべきなのかな……自信ないなあ)
梓「あのお、やっぱり私が」
律「まあ待て、唯。ちょっと耳貸せ」
唯「へ?」
694 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:01:04.89 ID:nbMsnar10
律「あのな、あの2人を同じギターパートにしておけば、関係が進展するきっかけにもなるだろ」ヒソヒソ
唯「……ふむふむ」
律「それにさ、梓に好きな人と同じ舞台でギターを弾かせてやれよ」ヒソヒソ
唯「けど、私もギターを……」
律「文化祭ライブで弾けるだろ? 先輩なんだから、後輩に思い出を作らせてやろうぜ」ヒソヒソ
唯「うーんうーん」
紬「今ボーカルを引き受けたら、ケーキバイキングにご招待〜」ヒソヒソ
律「ムギ!?」
唯「ほんとに!」
紬「ほんとよ〜」
唯「私、ボーカル頑張るよ!」
梓「あ、あれー? せっかく決意したのに」
律「あ、あれー? せっかく説得してたのに」
695 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:02:34.87 ID:btQNXBBQP
澪「唯は英語の歌詞を歌えるように特訓だぞ」
唯「分かっております、澪隊員! ケーキのためならば!」
紬「私も編曲、がんばる!」
律「っしゃー! 気合入れるぞー! 再来週は合宿だー!」
唯「おー!」
梓「お、おー!」
○○「おー」
696 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:04:52.01 ID:nbMsnar10
――月日はどんどん過ぎていき
――私たちの夏は形作られていく
――練習とティータイムと勉強と、少しのお出かけと
――梓の携帯
――8月2日
to ○○先輩
件名 昨日の
昨日見た映画で使われていたBGMの作曲者って分かりますか?
先輩はパンフレットを買っていたので、そこに載っていると思うのですが。
697 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:07:13.88 ID:btQNXBBQP
――8月4日
from 律センパイ
件名 緊急!
今すぐ近くの神社まで出てこーい。夏祭りに行くぞ。
あ、○○も呼んでいいからな。梓が責任を持って面倒見ること!
――8月5日
from ○○先輩
件名 ヨーヨー
昨日の夏祭りは楽しかったね。久々にカキ氷を食べて頭が痛くなったよ。
ところで、昨日の金魚すくいで取った水風船のヨーヨーだけど、帰りに割ってしまった。
けっこうショックで、ネットで水風船の作り方を勉強中です。
できあがったら梓ちゃんにも1個あげるので、派手に割ってストレス発散にでも使ってね。
698 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:07:58.11 ID:nbMsnar10
――8月6日
from 唯センパイ
件名 英語
あずにゃーん、英語教えてー
to 唯センパイ
件名 先輩……
後輩に教えてもらうなんてどこかおかしいですよ。
澪先輩かムギ先輩、○○先輩に教えてもらってください。
to ○○先輩
件名 唯先輩ですが
英語で相当悩んでるようです。
良ければ今日の合同練習で、唯先輩の相談に乗ってあげていただけませんか?
699 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 22:08:28.61 ID:swO/EtSF0
支援
700 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:08:54.66 ID:btQNXBBQP
――8月9日
from 唯センパイ
件名 がっしゅく!
あずにゃん、明日は服の下に水着着ていかなきゃだめだよ?
from ○○先輩
件名 明日だけど
明日はついに合宿だけど、本当に男1人混じっていいのかな。
紬さんは『セキュリティは万全だから大丈夫』って言ってたけど……
701 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:10:38.86 ID:nbMsnar10
to ○○先輩
件名 先輩は
問題を起こすつもりなんですか?
from ○○先輩
件名 いやいや
そんなつもりはないんだけど、皆は嫌じゃないのかなと
to ○○先輩
件名 大丈夫です
だったら大丈夫ですよ。皆分かった上で楽しんでますから。
いざとなったら先輩をロープで縛っちゃいますよー
from ○○先輩
件名 おおっ
梓ちゃん、けっこう過激なこと言うね。
to ○○先輩
件名 Re:おおっ
すみません冗談です忘れてくださいお願いします
ノリで言ってしまっただけなんです! どうか先輩たちには言わないでください!
702 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 22:23:43.72 ID:/qItqwYn0
ほ
703 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:24:12.77 ID:btQNXBBQP
――8月10日
――合宿 海
律「海だー!」
唯「広いなー!」
律唯「大きいなー!」
ダダダダダ
澪「あーあ、2人共走ってったぞ」
紬「ふふ、喜んでもらえてよかったわ」
○○「なんともまあ大きな別荘……」
梓「去年より大きいです」
704 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:28:45.82 ID:nbMsnar10
――別荘の中
○○「中もまた広い……」
紬「部屋は各自1部屋ずつあるのだけど……やっぱりみんな一緒の方が楽しいと思うから、大部屋に荷物を置いてね」」
○○「え゛」
紬「あ、○○さんにはもちろん別の部屋を用意してあるから、安心して」
律「○○ー? 何か良からぬことでも考えたか?」
○○「あー、いや……そんなことはないですよー」
唯「あはは、○○君面白い顔ー」
705 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:30:29.39 ID:btQNXBBQP
律「では、田井中隊員、これより海に突貫します!」
唯「幸運を祈る!」
律「田井中律、いきまーす!」
ダダダダ ズバーン!
澪「おい! まずは練習を……って、もう海に入ってるし」
梓「律先輩、服着たままなのにいいんですかね……」
唯「甘いよ、あずにゃん! 私とりっちゃんはこの服の下に水着を着ているのだ!」スパン!
梓「わっ! ここで脱がないでください!」
唯「平沢唯! いきまーす!」
ダダダダダ ズボーン!
706 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:31:38.21 ID:nbMsnar10
澪「ああ、もう、あの2人は荷物もほったらかして!」
紬「私たちも着替えて行きましょうか〜」
○○「……あはは、まずは海で遊ぶってことか」
梓「すいません。去年もこうで……2人とも、遊んでからじゃないと練習してくれなくって」
○○「いやいや、いいよ。楽しそうで何より。梓ちゃんも行ってきたら?」
梓「え、け、けど……」
梓(それはつまり○○先輩の前で水着姿になるということで……)
梓(と、とても恥ずかしいし、それに私は……!)
707 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:33:34.17 ID:btQNXBBQP
○○「行っといで。俺はここで晩御飯の食材の整理でもしとくよ」
梓「え? 先輩は行かないんですか?」
○○「日差しの強い場所はちょっとね……それに、水泳も苦手で」
梓(あ……そ、そっか。先輩は)
梓「じゃ、じゃあ私も残ります!」
○○「けど、唯さんがこっちに来るよ? あれは迎えに来たんじゃ」
梓「え?」
唯「あずにゃーん!」
ダダダダダ
梓「ゆ、唯先輩!?」
唯「あずにゃん、早くきなよ!」グイ
708 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:35:01.79 ID:nbMsnar10
梓「け、けど私は」
唯「あずにゃんも下に水着着てるでしょ? 昨日、メールで言っといたもんねー」グイグイ
梓「着てません!」
唯「ほらほらー、遊ばないと損だよー? 水鉄砲をくらえー!」
ビュー バシャ
梓「きゃ!」
唯「あり? ほんとに着てこなかったの?」
梓「当たり前です! 私はここに練習をしに!」
澪「あ、梓ー、服が……」
梓「え?」
709 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:36:36.43 ID:btQNXBBQP
梓「!」
唯「おー、あずにゃんスケスケだねっ!」
梓「あ、あう」
梓(薄着にしてきたせいで水で透けて……下着が!)
梓(先輩に、先輩に見られて)ワナワナ
梓「にゃああああ!」ダダダダ バタン
唯「あずにゃんが部屋に引っ込んじゃった」
○○「ははは……」
710 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:37:41.64 ID:nbMsnar10
唯「もー。せっかく海にきたのに遊ばないなんて損だよ!」
紬「まあまあ、私は着替えて合流するわ。澪ちゃんは着替えないの?」
澪「え、いや、その……」チラチラ
○○「? 澪さん、どうかしました?」
澪「なななな、なんでもない!」カァ
澪「な、なあムギ、私はここに残るよ。ちょっと体調悪いし、梓も心配だし」
紬「んー、分かったわ。じゃあ、私はお先にー」
澪「ふぅ……」
澪(男の人の前で水着になんてなれない……どうして唯たちは全然気にしてないんだろ)
711 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:38:50.16 ID:btQNXBBQP
○○「さてと、俺は荷物の整理でもするかな」
澪「あ、手伝う」
○○「ありがと。だけど、本当に遊びに行かなくていいのかな?」
澪「た、体調悪いし……それに、○○さんも整理が終わったら、練習するんでしょ?」
○○「その通り。よく分かったね」
澪「もう2ヶ月近く一緒に練習してたら、さすがにね」
○○「ははは。じゃ、外で元気に遊んでる女の子たちのために、お食事の下ごしらえでもしようか。澪さん、教えてくれる?」
澪「わ、私でよければ」
712 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:41:19.15 ID:nbMsnar10
――1時間後
○○「まあこのぐらいにして、あとはみんなが帰ってきてからでいっか」
澪「かな。○○さん、本当に料理初めて?」
○○「デザート作りならまだできるけど、本格的な料理は、男の雑な手料理の範疇を超えてないよ」
澪「デザートは作れる……だから手際が良かったんだ」
○○「いやー、照れるな」ぽりぽり
澪「○○さんが照れてる顔って初めて見た」クスクス
澪(さすが梓が好きになる人……なんだか男の人に感じる怖さがないなあ)
澪(って、そういえば私、今男の人と2人きりだったんだ)
澪(あ、あれ? どうして今まで気付かなかったんだ?……気付いても怖くならないし)
713 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:43:06.74 ID:btQNXBBQP
○○「澪さん?」
澪「は、はいぃ!」
○○「ど、どうかした?」
澪「なんでもないなんでもない! さっ、練習しようか!」
○○「は、はあ。そうだね」
澪(な、なんで私が○○さんのこと意識してるんだ?)
澪(○○さんは梓と良い仲なんだし……)
澪(……そう考えるとちょっと梓が羨ましくなる)
澪(って、また私変なこと考えてる!)
澪「わ、私ちょっと梓の様子見てくるから!」
○○「あ、どうぞー。元気そうだったら一緒に練習しようって誘ってみてください」
タタタタタ
○○「……」
714 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:44:08.00 ID:nbMsnar10
prrrr
○○「携帯……また母さんか」
ピッ
○○「もしもし?」
○○「今? 海についたところ。旅館にいるよ」
○○「もちろん泳いだりしないって。大丈夫」
○○「友達? 今は泳ぎに行ったり、部屋でくつろいだり色々」
715 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:45:26.04 ID:btQNXBBQP
○○「うん……」
○○「いや」
○○「またその話? 分かってる……分かってるって」
○○「もう覚悟は決めてるから……うん、そう。今更行かないなんて言わない」
○○「友達には今日か明日にでも話すよ」
○○「うん……また帰る時に連絡する。それじゃ」
ピッ
○○「……」
○○「せめて梓ちゃんにだけでも、話さなきゃ……」
716 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 22:47:23.80 ID:cYbJbw9S0
支援
717 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 22:48:02.07 ID:Cz2Wlf1A0
正直こういうのはVIPでやってほしくなかったぜ
住み分けしてるんだから…
718 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:48:31.84 ID:nbMsnar10
――大部屋
梓「……」ズーン
澪「なあ、梓、元気出しなよ。大丈夫、○○さんは見てないって言ってたじゃないか」
梓「見られたに決まってるじゃないですか……もう駄目です。お嫁にいけません」
澪「何言ってるんだ。好きな人がいるんだろ? その人のお嫁にいきたいと思うぐらいじゃなきゃ」
梓「……私なんかじゃ」ボソッ
澪「梓?」
梓「……私、自信がないんです」
719 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:49:45.50 ID:btQNXBBQP
梓「私はこの通り、見た目もちっこいし、身体は平坦で、しかも口うるさいし……」
梓「到底男の人が好きになるような女の子じゃありません」
梓「水着になりたくなかったのは、恥ずかしさももちろんありましたが……」
梓「こんな貧相な身体を先輩の前に出したくなかったんです」
澪「梓……」
梓「告白も同じです。告白のことが頭によぎるたびに、『今は練習に打ち込みたい』と自分に言い訳してきましたが、私は」
梓「自分に自信がありません……」
梓「せめて、澪先輩みたいに綺麗だったら、自信も持てたのかな」
720 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:50:42.52 ID:nbMsnar10
澪「そんな風に考えるのはやめた方がいいぞ、梓」
梓「……でも」
澪「○○さんと仲良くなったのは今の梓じゃないか。もっと自信を持っていいんだ」
梓「……無理ですよ」
梓「私、考えたんです」
梓「もし○○先輩に告白して、断られたらどうなるかって」
梓「気まずくなって、もう2度と一緒にギターを弾いてはくれないかもしれない」」
梓「一緒にご飯も食べてくれないかもしれない」
梓「それは……とても怖いです」
721 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 22:51:03.99 ID:swO/EtSF0
支援
722 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:51:58.84 ID:btQNXBBQP
梓「だから、思ったんです」
梓「一緒にいられるなら、このままの関係で……先輩後輩の関係でもいいかなって」
梓「私みたいな子供じゃ告白しても断られる可能性が高いから、告白しない方がマシです」
澪「梓……」
梓「臆病者ですね、私。けど、○○先輩と一緒なら、臆病者のままでもいいかなって」
澪(知らなかった。梓がこんなにも○○さんを好きだなんて)
澪(私がさっき感じた、ちょっといいなって思うようなレベルじゃない)
澪(梓は心の全部を賭けられるほどの恋をしてるんだ)
澪(私たちはその気持ちを軽く見てた)
澪(……けど、その気持ちが重いからこそ、きっと梓は)
支援
支援
725 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:53:00.10 ID:nbMsnar10
澪「なあ、梓」
梓「はい」
澪「梓が先輩後輩の関係のままでいい、って言うなら、私は反対しない」
澪「だけど」
澪「いつか、自分の気持ちを抑えられない時が来ると思うんだ」
梓「抑えられない……?」
澪「好きだって言う気持ちで一杯になって、溢れるような……私はそこまでの恋をしたことがないから、上手く言い表せないけど」
澪「自分の気持ちを相手に伝えたくてしょうがなくなる時が、きっと来る」
澪「その時は自分に素直になってやってほしい」
澪「じゃないと、梓の心の中の気持ちが、かわいそうだから」
726 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:54:15.10 ID:btQNXBBQP
梓「……分かりました」
澪「よし! じゃ、行こうか。○○さんが一緒に練習しようって誘ってくれてたぞ?」
梓「先輩が!? 今すぐ行きます!」ダッ!
澪「ちょ、梓! ギター! ギター忘れてる!」
727 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:55:54.38 ID:nbMsnar10
――練習部屋
○○「あ、2人とも来たか。遅かったね」
梓「ど、どうもです」
澪「あれ? 唯たちもいるのか。海はどうしたんだ?」
唯「だってー、3人だけで遊んでてもなんだか楽しくないんだもん」
律「お前たちが来ないからだー!」
紬「私1人で遊んでても仕方ないから」
澪「で、水着のまま楽器持ってる理由は?」
唯「動きやすいんだもーん」
律「それに○○にサービスサービスゥ」
○○「どう反応したらいいものか」
梓「むぅ、○○先輩! アイマスクしてください!」
○○「え、楽譜見えなくなるよ?」
728 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 22:56:41.43 ID:cYbJbw9S0
支援
729 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:57:19.61 ID:btQNXBBQP
紬「フェスで弾く曲、完成したの〜」
唯「おお!」
律「ついにきたあ!」
澪「へえ……面白く編曲したんだな」
紬「なんだか○○さんと梓ちゃんのことを考えて作ってたら、大胆なアレンジになっちゃったの」
○○「これは……ツインリード編成……」
梓「ほんとだ。ソロパートが2人にありますね」
紬「○○さんのテクニックならソロがないともったいないけど、ずっとリードをやるのも体力的に不安かな、って思って」
紬「だったら梓ちゃんと、リードとリズムを交代でやっていけば、負担も減るんじゃないかと思ったの」
紬「どこか変だったかしら?」
730 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 22:59:00.16 ID:nbMsnar10
○○「いえ……ありがたいですし、紬さんが独力でツインリードに編曲しなおしたことに驚きます」
○○「ありがとうございます。一生懸命弾かせてもらいます」ペコ
紬「これはご丁寧に。どういたしまして」ペコ
梓「○○先輩。さっそく取り掛かりましょう! 時間がもったいないです!」
○○「よし、やる気が出てきた! まずはいつもの指ならしの曲だ!」
梓「はい!」
澪「唯は英語の特訓な」
唯「もー英語はいやだよー!」
さすがおれのむぎちゃん
732 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:00:42.49 ID:btQNXBBQP
――30分後
○○「つ、疲れる」ドタッ
梓「これ、相当音の数が増えてますね。原曲の倍にも感じられます」
○○「それにギターソロの所は早弾きがあって……この部分なんかクラシックの対位法も入ってる」
梓「ムギ先輩、クラシック畑の人だから……」
○○「うーん、梓ちゃんとのコンビネーションが重要になるなあ」
梓「先輩と私なら大丈夫です! 多分!」
○○「え、『多分』を強調されるとすんごく不安なんだけど」
梓「冗談ですよ」クスクス
733 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:02:53.32 ID:nbMsnar10
○○「そういえば、これって歌詞もこのままなのかな……」
澪「その点は私に任せて」
梓「わっ、澪先輩」
○○「えーと、任せてとは?」
澪「私がこの歌詞をけいおん部用に少し変える。本当に少しだけど」
○○「え? 今から?」
澪「今から。唯の発音特訓も進んでるしね。大筋は変えないから、十分間に合うはず」
梓「す、すごいですね、澪先輩。英語の歌詞作りだなんて」
澪「私はまあ英語も得意な方だし……そうだ、梓は『lovely cat』と『fluffy cute sheep』だったらどっちがいい?」
梓「ロ、ロックの歌詞にしてはかわいい感じですね」
律(澪、スランプなのかー)
734 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:04:35.23 ID:btQNXBBQP
――1時間後
○○「あ」
梓「先輩?」
○○「指つった。いたたたた」
梓「た、大変! 氷を!」
紬「いえ、梓ちゃん、筋肉がつった時はむしろ温めないと。はい、お湯を」
○○「あつつ、紬さん、すみません」
唯「ムギぢゃ〜ん、私も治じで〜」バタバタ
梓「ゆ、唯先輩? どうしたんですか?」
唯「発音れんじゅうでじだがんだー」
紬「あらあら、薬持ってくるから、ちょっと待っててね。梓ちゃん、○○さんの指をマッサージしてあげてね」
梓「ええっ!?」
紬「治りを早くするためよ。ふふ、お願いねー」スタスタ
735 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:06:04.10 ID:nbMsnar10
○○「えーと……」
梓「ま、マッサージ……しますね」
○○「お、お願いします」
梓「では」モミモミ
○○「……」
梓「……指、どうですか?」モミモミ
○○「うん、痛みはマシになったし、気持ちいいよ」
梓「よかったです……」モミモミ
○○「……」
梓「……」モミモミ
律「なんだあの空間は」
澪「入りこめない」
唯「いだいよ〜」
736 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:07:40.21 ID:btQNXBBQP
――さらに1時間後
律「腹減ったー!」
澪「もう夜か」
紬「そろそろご飯にしましょう」
唯「舌がひりひりして食べられないよー」
○○「何か柔らかいものでも作ろうか?」
唯「じゃあ、ましゅまろ!」
梓「ましゅまろをここで作れというのですか、唯先輩は」
律「じゃあ、私はプリンで」
○○「あ、プリンは作れる。しかもけっこう得意。材料さえあれば作るよ」
梓「え!?」
梓(私も食べてみたい!)
律「いいねえ、じゃあ、今度絶対に作ってもらうからな! 絶対だぞ!」
737 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:09:10.73 ID:nbMsnar10
――別荘の庭
律「ではみなさんご一緒に!」
全員「いただきます!」
じゅーじゅー
澪「外で焼肉パーティっていうのもいいもんだな」
唯「うー、私は柔らかいのしか食べられない」
紬「唯ちゃん、このお肉なら大丈夫よ。あーん」
唯「あーん、んー! おいしい!」
738 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:11:01.70 ID:btQNXBBQP
律「うお! 私のソーセージ食べたの誰だ! 焼けるの待ってたのに!」
唯「あ、ごめーん。私食べちゃったー」
紬「りっちゃん、私のをあげるわ。あーん」
律「あーん……おお! 旨い!」
澪「律、口の周りソースだらけだぞ。まったく、仕方ない奴だな」フキフキ
律「べらんぼうめ! 外での焼肉ってのはどれだけ煙とソースまみれになれるかが大事なんだ!」
澪「そんなわけないだろ……それにしても」チラリ
梓「先輩。このお肉食べます?」
○○「うん、あ、自分で取るよ」
梓「いえ、先輩は指を安静にしてください! 私が取ります。それとお箸じゃなくフォークを使いましょう」
○○「んー……分かった」
739 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 23:11:33.87 ID:cYbJbw9S0
澪と梓の戦いがみたい
740 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:12:08.43 ID:nbMsnar10
律「もう恋人同士ってことでいいんじゃないか? つーか夫婦?」
澪「……ノーコメント」
紬「そうだ! いいことを思いついたわ!」
唯「このお肉生臭いよ」
律「そりゃまだ焼けてないぞ。こっち食べろ。で、ムギは何を思いついたんだ?」
紬「ふふふ、後でのお楽しみよ♪」
741 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:14:43.41 ID:btQNXBBQP
――夜 大広間
唯「お腹いっぱいだよー」
律「うっぷ、ちょっと食べ過ぎたか」
紬「胃腸薬もあるけれど、飲む?」
唯「ちょうだーい」
律「正○丸か……私、この匂い嫌いなんだよな」
唯「私は好きだよ? なんだか癖になる匂いだもん」
梓(○○先輩、トイレに行ったまま帰ってこない……あ、そうか、薬も飲んでるのかも)
梓(大丈夫かな。様子見に行った方がいいかな)うずうず
742 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:15:55.98 ID:nbMsnar10
ガチャ
○○「お、この雑草を塗り固めたかのような匂いは、○露丸?」
唯「○○君が戻ってきたー」
律「トイレ長かったなー。食べすぎでげりぴーか?」
澪「こら、律。女の子がそんな言葉使うんじゃない」
律「へいへい」
○○「はは、そんなところかな」
紬「○○君も正露○飲む?」
○○「いえいえ、もう大丈夫だから。それで、食後に何かゲームをするって言ってたけど」
律「ふふふ、よくぞ聞いてくれた」
743 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:18:18.01 ID:btQNXBBQP
律「これだけの人数が集まれば、やることは1つ!」
バンッ!
律「ポーカーで勝負だ!」
唯「ここからは真剣勝負だよ!」
紬「ふふふ」ニコニコ
梓「ポーカー? 珍しいですね。いつもババ抜きとか7並べとかだったのに」
澪「ま、いつもの如く、律の思いつきだよ」
梓「なるほど」
律「私の名前を出したら納得するって、なんだか悲しい!」
唯「ところでポーカーってどんなゲーム?」
梓「え? そこからですか?」
744 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:21:41.72 ID:nbMsnar10
――30分後
律「スリーカード! ふははは! 私の勝ちだ、」
澪「フルハウス」
唯「ふらーっしゅ!」
紬「ストレート♪」
律「だー! また私の負けかよ!」
梓(降りてよかった。私ツーペアだった)
○○「みんな運がいいなー。俺なんか全然揃わなかったよ」
745 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:24:23.41 ID:btQNXBBQP
紬「そろそろ夜も更けてきたことだし、次で最後にしましょうか」
澪「だな。お風呂にも入らないと」
律「もちろん○○は私達の後に入ってもらうからな?」
○○「いや、それは分かってるって」
唯「えー、皆で入ろうよー」
梓「ゆ、唯先輩、少しは羞恥心を持ちましょうよ……」
紬「でね、提案があるのだけど、次の勝負は『降り』をなしにしたら面白いと思うの」
律「絶対に勝負しなくちゃならないってわけか」
紬「そう。そして、次の勝負の最下位とブービーの人には罰ゲーム♪」
746 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:26:00.27 ID:nbMsnar10
律「面白い……やってやろうじゃないか!」
唯「勝つよ、勝ってやるよ!」
澪「まったく……まあ、最後ぐらいはいいか」
紬「ちなみに罰ゲームの内容は1位の人が決めるということで、ね」
梓「なんだか嫌な予感がするんですが……」
唯「あれー? あずにゃん、負けるのが怖いの?」
律「臆病者ー」
梓「なっ! いいでしょう! やってやるです!」
○○(梓ちゃんってこういう所が負けず嫌いなんだなあ)
747 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:27:44.25 ID:btQNXBBQP
――10分後
梓(きた!)
梓「フォーカード! これなら勝ったはず!」
唯「すとれーとふらーっしゅ」
澪「ストレートフラッシュ」
紬「ストレートフラッシュね」
律「ストレートフラッシュだ!」
梓「……」
梓「はい?」
○○「あ、ワンペアだった」
748 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:30:53.27 ID:nbMsnar10
梓「あ、ありえません! ストレートフラッシュができる確率は7万分の1ですよ! 4人ともだなんて!」
唯「だってねー」
律「できちまったもんは仕方ない」
澪「私も驚いたなー」
紬「ふふふ、罰ゲームは梓ちゃんと○○さんで決定ね」
梓「くっ、イカサマです! 絶対そうです!」
律「梓、イカサマってのはやられた時に見破れなきゃ、通るもんなんだぞ?」
唯「梓ちゃんの負けだよ!」
梓「そ、そんなー」
澪(ムギのイカサマ、プロ並だな。事前にやるって聞いてたのに、どこでイカサマしたか分からなかった)
律(ムギとはカードゲームしないようにしよう)
紬「うふふ」
749 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:32:57.96 ID:btQNXBBQP
律「というわけで罰ゲームは梓と○○に決定ー」
唯「どんどんぱふぱふー」
澪「お気の毒様」
紬「さあ、お風呂ね。バスタオルはもう用意してあるから、このまま大浴場に行きましょう」
梓「納得できません! 断固として不正を糾弾します!」
律「はいはい、ゲームはもう終わりだぞ。さっさと風呂に入ろうぜ」ぐいっ
梓「ううー! 内部告発はもはや意味をなさないと言うのですか!」ズルズル
梓「○○先輩! 先輩も一緒に不正と戦いましょう!」ズルズル
○○「いってらっしゃーい」
澪「遠まわしに断られたな」
梓「せんぱーい!」ズルズル
750 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:34:01.29 ID:nbMsnar10
――大浴場
唯「やっほーい! 広い!」
律「泳げるぜー!」
澪「おい! まったく、落ち着いて風呂にも入れないのか」
紬「楽しんでもらえて何よりだわ〜」
梓「はぁ……先輩たちはお気楽ですよね、ほんと」
律「んぎも゛ぢい゛い゛〜」ばしゃん
唯「あはは! りっちゃん、おじさんみたいな声出してるー」ケラケラ
751 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 23:35:44.13 ID:swO/EtSF0
支援
752 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:35:55.92 ID:btQNXBBQP
――大広間
○○「……」カチカチ
○○「……」カチカチ」
○○「ん……よし。メールはこれぐらいにしてっと」
○○(友の奴、合宿に来てるって言ったら、えらく驚いて……まあ、俺もこの状況は現実離れしてると思うけど)
○○(女性陣はまだお風呂か。ギターの練習でもしておくかな)
○○(いや、1人でやってると梓ちゃんに怒られるかも……『また指をつったらどうするんですか』って)
○○(いやいや、梓ちゃんもそこまでお節介じゃないか)
○○(……)
ジャン♪
○○(このギターって、今だったら何円ぐらいで売れるかな……)
753 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:38:14.75 ID:nbMsnar10
――1時間後 大広間
律「よし、○○も風呂に入って、みんな寝る準備は整ったな!」
澪「もういい時間だし、そろそろ寝るか」
唯「ふふふー、今夜は寝かせないぜ、あずにゃん」
梓「何を言ってるんですか唯先輩は……」
○○(女の子のパジャマ姿って、なんか目のやり所に困るな……)
紬「はい、みんな注目してー」
○○「うん?」
梓「どうしたんですか、ムギ先輩」
紬「ここで先ほどポーカーで負けてしまった○○さんと梓ちゃんへの罰ゲームを発表しまーす」
紬「罰ゲームは……」
紬「2人だけ、別の寝室で寝てもらいまーす♪」
754 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:40:30.33 ID:btQNXBBQP
梓「はい? それって」
○○「俺と梓ちゃんが一緒の部屋で寝ると……?」
唯「そのとーり!」
律「深夜のお喋りタイムから外されるという、それはそれはきつい罰ゲームなのだ!」
澪(……これって本当にいいんだろうか)
梓「だ、駄目ですよ! そんな、一緒の部屋だなんて……!」
○○「あー、これはさすがにまずいと思うよ? 梓ちゃんも年頃の女の子なわけだしさ」
梓「そ、そうです! ○○先輩の言う通りです!」
755 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:42:03.35 ID:nbMsnar10
律「大丈夫大丈夫。私たちは隣の部屋にいるから、何かあったらすぐ分かるし」
紬「○○さんも、ここで問題を起こすような真似はしないでしょう?」
○○「そりゃあ……」
唯「『先生にばれなきゃいい』ってあずにゃん言ってたもんね!」
梓「それとこれとは話が別で……というか、これって明らかに罰ゲームじゃないですよね? ただ先輩たちが楽しんでるだけですよね?」
律「四の五の言わずに入った入った!」
グイグイ
756 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:44:18.64 ID:btQNXBBQP
梓「ちょ、ちょっと、押さないでください!」
○○「わっ!」
ドン
ガチャン
律「よし、オッケーだな。撤収ー!」
紬「りょーかい!」
唯「あずにゃん、幸運を祈る!」
澪「○○さん、何も起こさないって信じてるから……」
タタタタ
757 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 23:45:11.15 ID:K5PXGtRu0
しえん
758 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 23:46:53.04 ID:1gIbXBXy0
悪い
○○に軽い殺意が湧いた
759 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:46:59.46 ID:nbMsnar10
――寝室
梓「と、閉じ込められてしまった……」
○○「どうしたものか……ベッドは1つか。ダブルベッドだから広いっちゃ広いけど」
梓(これぐらいなら2人でも余裕の広さかな)
○○「んー……俺はソファで寝ようか」
梓「だ、駄目です! そんな所で寝ても疲れは取れませんし、悪くすれば身体のどこかを痛めるかもです!」
○○「いやいや、一晩ぐらいなら大丈夫だって。えーと、薄い掛け布団の1つでもあれば……どこかにないかな」
梓「先輩!」ぎゅっ
○○「っと、どうかした?」
梓「あ……えと」
梓(勢いで先輩の服の裾を掴んでしまった)
梓(どうしよう)
760 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:48:26.51 ID:btQNXBBQP
○○「梓ちゃん?」
梓「……」
梓「2人共ベッドの両端で寝れば、十分距離が開きます」
梓「私は寝相も悪くない方なので、寝てる間に近づくこともありません」
梓「だから……その、先輩もベッドに……どうぞ」
○○「あー……」
梓(わ、私何言ってるんだろ。男の人と一緒のベッドなんて)
梓(けど、こうするしか……)
○○「分かった。だけど梓ちゃんが嫌になったら、すぐに言ってね」
梓「はい」
梓(そんなこと、ありえませんよ、先輩)
梓(恥ずかしくはあっても、嫌になることなんてないですから)
761 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 23:48:53.73 ID:cYbJbw9S0
支援
762 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:49:45.62 ID:nbMsnar10
○○「じゃあ電気消すね」カチ
梓「わ、私は右端で……」ガサゴソ
○○「俺は左端で」ガサゴソ
梓「……」
○○「……おやすみー」
梓「おやすみなさい」
○○「……」
梓「……」
梓(眠れない。眠れるはずがない)
763 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:50:33.25 ID:btQNXBBQP
――隣の寝室
唯「りっちゃん、何か聞こえるー?」
律「いや、何も聞こえん。本当に寝ちまったか?」
紬「何かときめきなお話すると思ってたのに……」
澪(壁にコップって……どこの時代のデバガメだ、こいつらは)
764 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:52:10.39 ID:nbMsnar10
――○○達の寝室
○○「……」
梓「……」
○○「……」
梓「先輩、起きてますか?」
○○「……どうかした? やっぱり嫌になった?」
梓「違います。先輩こそ……嫌じゃないんですか?」
○○「俺?」
梓「はい。ムギ先輩たちにはめられて、無理やり私と2人きりにされて」
梓「きっと、あの先輩たちは隣の部屋で聞き耳でも立ててます」
梓「こんな、いじられるような扱い、嫌ですよね……」
○○「……嫌じゃないよ」
765 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:53:13.32 ID:btQNXBBQP
○○「むしろ嬉しいかな」
○○「こんな風に友達と遊びに出たことなかったし、お泊りなんてありえなかった」
○○「今日1日全部が新しい経験で、楽しかったんだ」
○○「それに……」
○○「梓ちゃんと一緒に寝るのなら、悪くいはずないよ」
梓「っ!」カァ
梓「そ、そういうことをさらりと女の子に言っちゃ駄目です」
梓「普通は警戒しちゃいますよっ」アセアセ
○○「んー……不安ならロープで縛る?」
梓「それは忘れてくださいと言ったはずです」ギロ
○○「ご、ごめん」
766 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:53:56.00 ID:nbMsnar10
――隣の寝室
律「ちょっと聞こえてきた!」
唯「おー、何話してる?」
紬「きっと甘酸っぱいお話ね」
澪(……ちょっと興味あるなあ)
律「静かに! 聞こえないからな……えーと」
『ロープで縛る?』
律「『ロープで縛る』って、ええっ!?」
澪「ぶほっ」
唯「ロープ?」
紬「あらあらまあまあ」
767 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:55:06.17 ID:btQNXBBQP
律「あーうー……よし、寝るか!」
澪「そうだな!」
律「きっと疲れてたんだ。だからあんな変な言葉が聞こえてきたんだ!」
唯「ねえねえ、ロープを使って何か遊ぶの?」
紬「唯ちゃん、遊ぶっていうのは間違ってないけどね、」
律「だーっ! ムギは何教えるつもりんだよ! さっさと寝るぞ! 布団に入れ!」
紬「ここからが面白いのよー?」
澪「電気消すから!」カチ
768 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:56:19.86 ID:nbMsnar10
――○○たちの寝室
梓「……すー」
梓「はっ!」
梓(私寝てた? 嘘、ドキドキして絶対に寝られないって思ってたのに)
梓(えっと今は……午前2時? 真夜中だ……)
梓(先輩は……)
梓(あれ?)キョロキョロ
梓「いない」
梓(ど、どうして? トイレかな、それとも別の所で寝てるとか……)
梓(……)
梓(ちょっと待ってみよう)
769 :
◆.f0/3588.c :2010/08/29(日) 23:59:40.97 ID:btQNXBBQP
――10分後
梓(戻ってこない……)
梓(先輩、大丈夫かな)
梓(まさかどこかで倒れたりなんか……)
梓(……)
梓(探しに行こう)ムクッ
ガチャ タタタタ
梓(廊下は暗いなあ)
梓(あれ? あっちの扉が開いてる……あれは外に出る裏口……)
梓(確か、最後の戸締りで閉めておいたはず)
梓(先輩、まさか外に出た?)
770 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 23:59:46.29 ID:swO/EtSF0
支援
771 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:00:23.75 ID:iug/WKta0
――海辺の砂浜
梓(足跡がある……海に向かってるよね、これ)
梓(どうしてこんな夜遅くに外を……)
梓(プライベートビーチだから人はいない)
梓(潮風が穏やか……クーラーの効いた部屋ばかりにいたから、ちょっと気持ちいいかも)
梓(暗いけど、星明りのおかけで下が見えないわけじゃないし)
梓(波の音……風は強くないのに、波の音は大きく聞こえる)
梓(先輩はどこ……?)
梓(足跡はまだ続いてる……あっ! あれだ!)
梓「先輩!」
サクサクサク
772 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:01:33.62 ID:TkF7WefzP
○○「あれ? 梓ちゃん、起きちゃったんだ」
梓「こんなところで何をしてるんですか?」
○○「んー、考え事かな。ちょっと眠れなくって」
梓「考え事ですか……」
○○「波打ち際に立ってると、風が気持ちいいよ」
梓「ほんとだ……」
○○「……海って、広いね」
梓「暗いですね」
○○「ちょっと怖いね」
梓「けど、静かですね」
773 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:02:17.10 ID:iug/WKta0
梓「隣、失礼します」
○○「ん」
ひゅうう
梓「先輩、眠れないってことは、あれからずっと起きてたんですか?」
○○「まあね」
梓(寝顔見られたかな……)
梓(わ、私変な顔して寝てたかも)
梓(うわー、どうしよう。先輩、幻滅したりしてないかな……)
774 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:02:58.67 ID:TkF7WefzP
○○「……」
梓「……」
ひゅうう
梓「……」
梓(先輩何を考えてるのかな)チラ
梓「あっ」
○○「あっ」
梓(め、目が合った)
梓「えっと」
○○「えー、あのさ、梓ちゃん」
梓「は、はい?」
○○「俺さ、梓ちゃんと出会えてよかったよ」
775 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:04:33.80 ID:iug/WKta0
梓「はあ。いきなりどうしたんですか?」
○○「なんだか言いたくなったんだ」
○○「夜の学校で初めて会った時は、こんなことになるなんて思いもしなかった」
○○「あの時、あそこに来てくれくちゃ、俺は何も変われなかったと思う」」
○○「だから、会えてよかった」
梓「そんな……大げさですよ」
○○「大げさなんかじゃないよ」
○○「出会えて変わったからこそ……俺は色々と覚悟できるんだから、さ」
梓(覚悟?)
○○「ありがとう、梓ちゃん」
○○「俺と出会ってくれて、ありがとう」
どくん
776 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:05:24.97 ID:btQNXBBQP
どくんどくん
梓(あ……)
梓(すごい)
梓(私、頭真っ白だ)
梓(その真っ白な中に一杯の感情が溢れてきて)
澪『自分の気持ちを相手に伝えたくてしょうがなくなる時が、きっと来る』
梓(澪先輩の言ったとおりだ。すごいなあ、澪先輩は。物知りだ)
どくんどくんどくん
梓(私、駄目だ)
梓(言わなくちゃ、耐えられない)
梓(言おう)
梓(好きだって)
777 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:07:25.24 ID:iug/WKta0
梓「せんぱ、」
○○「梓ちゃん」
梓「は、はい」
○○「俺、梓ちゃんに話さなくちゃいけないことがあるんだ」
梓「はあ」
梓(うう、出鼻を挫かれちゃった)
梓(でも、先輩の話が終わったら、きちんと言おう、うん)
○○「……」
梓(? 先輩……いつになく真剣な表情だ)
梓(すごく大事な話なのかな?)
778 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:08:48.73 ID:TkF7WefzP
ひゅううう
○○「……」
梓(……先輩?)
梓「あの、話って、なんですか?」
○○「……」
○○「俺、さ」
○○「……」
○○「夏休みが終わったら、外国に行くんだ」
779 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:09:52.24 ID:iug/WKta0
梓「がい、こく?」
梓「え?」
梓「それは、あの、旅行ですか?」
○○「……」
○○「アメリカで手術をする」
○○「いや、正確に言えば、手術する予定なんだ」
○○「あっちでドナーが見つかり次第」
○○「移植手術を受ける」
梓「……しゅじゅつ?」
780 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:11:41.87 ID:TkF7WefzP
梓「え? え?」
梓「そ、そんな急に」
梓「身体の具合が悪くなったんですか? そんな風に見えないですし、それに最近は調子がいいって」
○○「うん……」
○○「確かに今は命に関わるほど重くはないし、調子もいい」
○○「けどね、この病気はいつ悪化するかが分からないんだ」
○○「肺の高血圧が進んで、アイゼンメンゲル化すれば……つまり、今より病状が悪化すれば」
○○「歩くこともできなくなって、寝たきりになる」
○○「それが1年後になるのか10年後になるのかは、分からない。薬で抑え込んでいても、悪化する時は悪化してしまう」
○○「ただ、遅くても20年後には、今みたいに立って歩くことはできなくなってるのは確実なんだ」
○○「……そして、このまま治さずにいたら、俺が生きられるのは長くて40代まで」
梓「そんな……」
781 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:12:50.53 ID:iug/WKta0
○○「実を言うとね、手術の話自体は前にも出てたんだ」
○○「けど、この病気は手術がものすごく難しい」
○○「心臓と肺を同時に移植する手術だから。日本だとまだ1つか2つしか手術例がない」
○○「成功する確率も当然低い……移植しても、長く生きられる保証はない」
○○「だから、手術なんて無理、このまま生きていくしかなかった……はずだった」
梓「……」
○○「けどね、お医者さんのツテというか……まあ、人伝で俺のことを知ったアメリカにいるお医者さんがいてね」
○○「心肺同時移植の新しい手法を確立したとかで、すごい人らしくって」
○○「その人が最近になって連絡してきたんだ。『手術を受けてみないか』って」
○○「『比較的病状が軽度な内の方が、まだ成功率が高い』んだってさ」
○○「その人の新しい手法なら、今までよりも格段に成功率が上がる」
○○「研究段階だけど、その分色々と特例扱いを受けられるから悪い話じゃない」
782 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:14:05.83 ID:TkF7WefzP
○○「……もしその手術が成功すれば、俺は普通の人と変わりなく生活できるようになる」
○○「ギターだって自由に弾けるし、この海を泳ぐこともできる」
○○「寝たきりにもならず、寿命だってもっと伸びて」
○○「……命を賭けるだけの価値はある」
○○「このまま何もせず悪化するのを待つぐらいなら」
梓「危険ではあっても、治る道を選ぶ……ですか?」
梓「それが、さっき言った『覚悟』の意味ですか?」
○○「……そうだよ」
783 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:14:48.46 ID:iug/WKta0
○○「決めたよ」
○○「9月になったらアメリカに行ってくる」
○○「そして適合するドナーが出てきてくれたら、移植手術を受ける」
○○「……だから」
○○「今月の合同フェスを最後に、しばらく音楽もやめる」
○○「ギターも手術費用の足しにするために売ろうと思う」
梓「ギターを……そんな……」
○○「外国で移植となるとかなりお金がかかるしね。仕方ないんだ」
784 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:15:34.98 ID:TkF7WefzP
○○「……梓ちゃんとも、けいおん部の皆とも一旦お別れするよ」
○○「いつになるか分からないけど、また戻ってこれたら」
○○「こんな風に一緒に遊んでくれたら、嬉しいかな、はは」
梓「あっ……」
梓(先輩、あの悲しそうな笑顔してる)
梓(……)
梓(そうか)
梓(私には移植手術のことなんて全然分からないけど)
梓(きっとその手術はとても難しくて、成功するかどうかは分からないんだ)
梓(だから先輩は『覚悟』してる。笑顔の下に決意がある)
梓(もう戻ってこれないかもしれないけれど、それでも行こうとしてるんだ)
785 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:16:23.49 ID:iug/WKta0
梓(私は)
梓(私は……)
梓(その『覚悟』を邪魔しちゃいけない)
梓(だから)
梓(今から言う言葉は私の精一杯の、)
梓「先輩」
ざざっー
○○「ん?」
梓「……また、一緒にギターを弾いて下さい、○○先輩」
○○「……できたら、ね」
6章 おわり
786 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 00:16:25.20 ID:W/ZEgSew0
支援
来年の24時間テレビのドラマは決まったな
788 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 00:18:48.72 ID:TEBl06Vw0
ひとまず乙
789 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 00:19:27.54 ID:uiuOp/zp0
おつ・・後4章?
どうなるんだ
790 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:20:37.05 ID:TkF7WefzP
6章おわり。投下しながら読み直してると、内容がかなりぐだぐだになってるなあ、と反省。
時間があるうちに7章を修正していきたいと思うので、次回は明日の夜でお願いします。
あと4章。9と10はそんなに長くないので、7、8を過ぎれば後は一気に終わりまでいけるはず。
落ちるか1000いくかしたらパー速に移った方がいいのかな……
では、また。ありがとうございました。
791 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 00:20:50.34 ID:EI+NY9V+0
後4章もあると思うと期待で眠れなくなっちまう
792 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 00:23:24.76 ID:W/ZEgSew0
とうとうスレタイのセリフが来たな、ドキドキしてきた
794 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 00:26:34.84 ID:TkF7WefzP
>>792 VIPで次スレってどうなのかと悩んでるところです
なんとか1スレで終わらせたかったんですけどね……予想以上に量が多かったようで。
今はちょっと眠気で頭が回らないので、また明日に決めたいと思います。
795 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 00:29:18.61 ID:W/ZEgSew0
>>794 そうか、ここ以外に次スレを立てるのであれば
その場所のURLを貼ってね。
796 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 00:41:56.77 ID:W/ZEgSew0
定期保守
パー速が良いと思う
798 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 00:51:00.44 ID:W/ZEgSew0
パー速でやるならスレのURLは貼るべきだな
せっかくの良スレを見落としたら困るし
799 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 00:53:07.27 ID:M63NCVyY0
たのしみです
800 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 01:01:42.53 ID:CM2OWq560
801 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 01:08:10.27 ID:9quh41le0
とても面白いです
スレたてお願いできますか
唯「ドッキリ大成功のプレートは?」
803 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 01:12:57.26 ID:W/ZEgSew0
定期保守
804 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 01:25:18.01 ID:W/ZEgSew0
定期保守しましょう
805 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 01:28:18.98 ID:+kYVDnHU0
ほしゆ
ほ
807 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 01:56:22.14 ID:V3hYOXr50
>>794 まぁ制速は支援も保守もいらないから、孤独との戦いになる。そしてその戦いに勝ってちゃんと完結させられる奴はそうそういない。
>>67の通り書き溜め終わってるならVIPでもいんじゃね?
808 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 02:01:03.32 ID:Fr6I5SA60
ほっしゅほゅ!
809 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 02:01:52.78 ID:UaqEV36y0
保守、っと
810 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 02:06:11.17 ID:V3hYOXr50
ヽ /i i
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i ヽ \ ./:i∧ i
(( i ヾヽ \ ..:..:...:....:. ./:/ ア i
i < ヽ ...:.:.:..:..:...:....:...:..:.:.:. :.... ゞ i
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V .. ..:.:/:...:...i.:.::.. .. . .:i:...:.:..:..... ..:..:... ヽ
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′.. ..:/′..:...| |.::.. ....:.:i: ::..:.| |.:.:... ...:.:.:.. '.i
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/..:. :人:..:.:.:.:|:/ムL 、 {...i {:...i, i::.:...:i.:::il::: i:.:.: i
. /..:..::./ l ..!:!:..:..〃 テミ、 {| iiイテミヾ i::::::.:::i,'.i i::.:.:. i ))
| /..:..:/ |::::.::.:.ト{. | ii } | ii } i |::::::::::i{i i::::.:.:..i. 保守
| .′..i !..:.::::::{ ゝ.ノ ゝ.ノ }:::::::..:} i:::.:.:...i.
| /..:.:::i |..:.:.:::::i i:.:... . ! i :::::.:.:.l
| .: .:.::i′ l...:.:.:.:人 i::.:.:.....′ i :::::.:.:.l
| .i .:::::i |..:.:.:. | > . へ イ ノイ:...} i :::::.:.:.l
|| j ..:::::| i..:. .:. V ,r|> __ . iチ、 }リ:../′ i :::::.:.::.l |
|| i..:.:::: { ヽ从 {,ィ´/ \_ __ノ }\/:.ノ i::i:::::::.::. ! |
811 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 02:10:04.11 ID:PcP/cT7JQ
保守間隔短すぎんだろ、埋まるぞ
保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 40分以内
02:00-04:00 90分以内
04:00-09:00 180分以内
09:00-16:00 80分以内
16:00-19:00 60分以内
19:00-00:00 30分以内
保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 60分以内
02:00-04:00 120分以内
04:00-09:00 210分以内
09:00-16:00 120分以内
16:00-19:00 60分以内
19:00-00:00 30分以内
これは久しぶりに良SS
キャラクター捉えてて良い感じすぎる
813 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 02:12:16.72 ID:W/ZEgSew0
定期保守
俺はこれで寝るので埋まらない程度に誰か保守してください
814 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 02:13:11.95 ID:V3hYOXr50
澪と梓と○○の三角関係が見たい
815 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 02:14:06.85 ID:V3hYOXr50
>>811 まぁいんじゃね? どうせ次スレは避けられないんだし
816 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 02:27:15.36 ID:lp+wv3rB0
俺・・・アメリカに行く
817 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 03:23:11.70 ID:o2+le7Bx0
ほちゅ
うあみ
819 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 05:24:53.96 ID:rYSHaHJJ0
820 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 06:01:43.06 ID:P4USHfYL0
おいついたしえん
821 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 07:27:08.20 ID:p6YOutWg0
ほっ
支援
823 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 07:29:56.99 ID:i+4ftOkV0
はい論破。
824 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 07:39:19.74 ID:CpNivbysQ
ほんとけいおんスレってこんなんばっかし
しかも面白みも全くってほど感じられねえ
ゆとりはこれだからきめえんだよ早く死んどけ
825 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 08:04:50.89 ID:Fr6I5SA60
縦読みのキワミ、アッー
827 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 08:12:00.04 ID:Fr6I5SA60
保守
828 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 09:12:33.47 ID:j4mghoXt0
定期保守
829 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 10:38:48.39 ID:Ueasuxpd0
1時間に1保守程度で十分だね。
次は11時半過ぎによろ。
830 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 10:51:28.21 ID:WUde1sXo0
831 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 11:54:38.10 ID:hVSPMtMSP
あ
832 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 11:55:11.32 ID:Pk9LFQI90
い
833 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 11:55:44.41 ID:GTGUTE9T0
いい加減臭いスレ立てんなよカスとその信者共
834 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 12:02:32.06 ID:V3hYOXr50
谷
835 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 12:17:13.50 ID:W/ZEgSew0
おいおい起きてみたらすげぇ荒れてるじゃねぇか
>>1は気にせず書き続けろ。
vipでけいおんスレ立てればこんな奴は必ず出てくるもんだ。
ここで折れてパー速なんかに行くなよ。せめてここ終わらせてからにしろよ
というわけで保守
836 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 12:21:47.05 ID:V3hYOXr50
別に荒れてないだろ
837 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 12:28:01.71 ID:W/ZEgSew0
>>836 普通に「保守」とかだけで埋まってると思ったんだもん
838 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 13:09:10.04 ID:V3hYOXr50
保守は保守さ
839 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 13:27:36.01 ID:W/ZEgSew0
病院に行くので
その間誰か保守をお願いします。
840 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 13:37:18.04 ID:V3hYOXr50
おい
841 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 14:33:11.84 ID:Ueasuxpd0
はす
842 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:13:01.85 ID:V3hYOXr50
ほ
843 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:18:51.83 ID:V3hYOXr50
減速してる?
844 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:02:17.93 ID:o2+le7Bx0
ほ
845 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:30:54.36 ID:W/ZEgSew0
定期保守
ほ
847 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:07:57.57 ID:W/ZEgSew0
保守
848 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:28:21.05 ID:XA9hSFE70
補修
☆
850 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:32:28.38 ID:l3R2UaiK0
宝箱に詰めてたアレコレ小さい保守
851 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:54:44.47 ID:7NqG3Ie00
ほ
852 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:11:22.35 ID:V3hYOXr50
まだ?
853 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:15:42.76 ID:V3hYOXr50
保守は任せたぞ!
854 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:34:15.16 ID:W/ZEgSew0
定期保守に上がりました。
855 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:01:57.84 ID:CM2OWq560
澪をお迎えに上がりました
お引き取りください
857 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:21:37.21 ID:W/ZEgSew0
定期保守
858 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:41:13.10 ID:W/ZEgSew0
再開まだかね?
859 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:11:56.29 ID:CrEVs1de0
は
860 :
マジレス1IX91w ◆MAJI1IX91w :2010/08/30(月) 21:17:52.94 ID:CveN4yGB0
びっくりするな
861 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 21:34:35.30 ID:TkF7WefzP
こんばんは。保守ありがとうございます。
もうスレも終盤ですね。次もVIPに立てられたら立てます。
7章、はじめます。
862 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 21:35:51.24 ID:iug/WKta0
7章
――8月12日
――駅前
純「梓、遅いね」
憂「さっき家を出たってメールが来たから、そろそろじゃないかな」
タタタタ
梓「ごめーん! 遅くなっちゃった!」
純「あー、きたきた……って、誰?」
憂「誰?」
梓「ひどい! ちょっと日焼けしただけなのに!」ガーン
863 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:36:03.54 ID:z1LUiYpG0
ktkr
864 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 21:40:33.00 ID:TkF7WefzP
――喫茶店
純「へえ、今年もけいおん部で合宿したんだ」
憂「楽しかったんだってね。今年は男の人もいたからいつもと違った感じがしたって、お姉ちゃんが言ってたよ」
純「男の人!?」
梓「ん、まあね。今年は練習もたくさんできたし、有意義だったかな」
純「ちょっと待って。男の人って、どういうこと?」
梓「あ、それは」
憂「純ちゃーん、ちょっとこっちに」
こそこそ
865 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 21:43:08.94 ID:iug/WKta0
憂「あのね、実は――」ごにょごにょ
純「え! 梓の彼氏さんが!? じゃあ梓はついに大人の女に!?」ごにょごにょ
憂「ええと、合宿だったからさすがにそこまでは……」ごにょごにょ
梓「……」
ちゅー
梓「……はぁ」
梓「憂が事情を説明してくれてるのかな……」
梓「オレンジジュースがおいしい……」ちゅー
866 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 21:44:28.51 ID:TkF7WefzP
純「けど、今日の梓、元気なくない?」ごにょごにょ
憂「そうだね。昨日まで合宿だったんだし、疲れてるのかな?」ごにょごにょ
梓「……はぁ」
純(うっ)ドキッ
憂(わっ)ドキッ
純「い、今の梓の顔、見た?」ごにょごにょ
憂「うん、見た。憂鬱そうだったけど、それがすごく大人っぽかった」ごにょごにょ
純「女の私をここまでドキリとさせるとは。梓ってば、やっぱり大人の女に」
憂「だからそれはないってば……多分」
867 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 21:51:31.14 ID:iug/WKta0
純「梓たちって、今月の30日にある合同フェスに出るんだよね?」
梓「うん、出るよ。今はそれでやる曲の練習ばっかりしてる」
唯「お姉ちゃん、家でも英語の練習してるよ?」
梓「あ、ちゃんとやってるんだ」
純「え? 今回は洋楽?」
梓「そうだよ」
純「へー、チャレンジャーだね。こりゃジャズ研も負けてらんないなあ」
梓「ジャズ研は何やるの?」
純「今回はピアノ主体にやろうかと思ってる。後輩に上手い子がいるんだよねえ」
梓「へー」
憂(なんだろ……梓ちゃん、楽しそうだけど楽しくなさそう)
憂(って、自分で言っててよくわかんないな。うーん……)
868 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 21:53:55.94 ID:TkF7WefzP
――楽器店
純「あっ、あった! よかったー」
梓「決まった弦しか使わないって、純も意外と神経質なんだ」
憂「お姉ちゃんなんて店で目についた弦を適当に買ってつけてるのに」
純「なーんかこの弦じゃないと指に合わないんだよね。梓もそういうのあるでしょ?」
梓「まあ、ないわけじゃないけど」
純「じゃ、買ってくる。ちょっと待ってて」
タタタター
憂「私もギター始めようかなー」
梓「いいんじゃない? 前に弾いてくれた時はけっこう上手だったよ」
憂「けど、ギターってけっこう高いよね」
梓「安いのもあるよ。音がちょっとアレだからおススメはできないけど。ちょっと見てみようか」
869 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:54:06.71 ID:idvEf6DR0
そういえば何故あずにゃんだけ日焼けするの(´・ω・`)?
870 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 21:57:15.64 ID:iug/WKta0
テクテク
憂「ほんとだ。安いのもあるね」
梓「中古で安いのだったら、趣味で始めるのにもちょうどいいかな。こだわるようになったら、もっと高いのにしたらいいよ」
憂「あ、お姉ちゃんのギターだ。梓ちゃんのもあるよ」
梓「レスポールとムスタングだね」
憂「高いね〜」
梓「この辺りになると音楽を本格的にやりたい人用になるかなあ」
憂「へー。あ、これ格好いいね」
梓「それは……あっ」
憂「えーと……リッケンバッカー?」
871 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 21:58:30.16 ID:TkF7WefzP
梓「……」
憂「おっきいね。すごく尖ってる」
梓「……」
憂「ねえ、梓ちゃん、この尖ってるのって何か意味が……梓ちゃん?」
梓「……」
憂「梓ちゃんっ!」
梓「あ、な、なに?」
憂「どうかした? ぼーっとしてたけど。このギターに何かあるの?」
梓「う、ううん。何もないよ。知り合いが同じメーカーのを持ってたのを思い出して……シリーズは違うけど」
憂「そうなんだ。その人はすごくこだわってるんだね。これ、40万もするよ」
梓「……うん、こだわってるよ。とっても」
872 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 21:59:41.59 ID:iug/WKta0
純「お待たせー。何見てんの?」
憂「私もちょっとギターに興味出てきたから、見て回ってたの」
純「へー、憂もかー。3人でセッションとかできたらいいね」
憂「うん、また買う決心がついたら、ということで」
純「楽しみにしてるよ」
梓「……」
純「梓? 行くよ?」
梓「あ、うん」
憂「このギター気に入ったの?」
梓「ううん、ちょっと……考え事してただけ」
憂(あ、また憂鬱そうな顔してる)
憂(気になるなあ。お姉ちゃんに話しておこうっと)
873 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:01:08.59 ID:TkF7WefzP
――梓の携帯
from ○○先輩
件名 明日の合同練習
少し集合時間に遅れそうです。皆さんにも言っておいてください。
to ○○先輩
件名 Re:明日の合同練習
了解しました。
874 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:02:53.45 ID:W/ZEgSew0
支援
875 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:03:37.49 ID:iug/WKta0
――8月13日
――貸しスタジオ
唯「おーまい、ばっとざっと、りとるかんとりー」
澪「駄目だ駄目だ。もっと流れるように発音しないと。少し変えたとは言え、まだまだ早口の必要な歌詞なんだから」
唯「うー、難しいよー」
律「唯は苦戦中だな。ムギは大丈夫なのか?」
紬「こっちの曲のことなら大丈夫。むしろ次の文化祭ライブの新曲が……はぁ」
律「進まないわけか。ムギも苦戦中っと。梓は……」
ぎゅいぎゅいーん
梓「ふぅ。もう少しチョーキングを滑らかに……やっぱり1音1音がはっきりとしないと」ぶつぶつ
876 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:06:42.75 ID:TkF7WefzP
律「……なんつーか」
澪「鬼気迫る、って感じだな」
唯「今日のあずにゃんはなんだか怖いね」
紬「どうしたのかしら……」
律「んー、合宿の2日目から様子がおかしくなかったか?」
澪「そうだったな。なんか、心ここにあらずみたいな」
唯「ちょっと海で遊んだらすぐ家に引っ込んじゃったもんね」
紬「あの時は○○さんも砂浜にいたのに、1人だけ別荘に戻ってしまって……」
律「で、1人でずっとギターを練習してたと。あいつ、なんか焦ってるなー」
じゃららじゃん♪
梓「もっと上手く……絶対に成功させなきゃ」ぶつぶつ
澪「梓……」
877 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:09:13.36 ID:iug/WKta0
ガチャ
○○「すみません、遅れました」
律「おっ、来たか」
○○「さっそく今から加わるので」
澪「○○さん、歌詞の相談が」
○○「あ、はいはい」
梓「……」
律(梓? どうしたんだ、いつもなら真っ先に○○に話しかけるのに)
唯「ねえねえ、○○くん、あずにゃんが演奏で悩んでるみたいだから、教えてあげてよー」
○○「え?」
律(ちょ、唯!? 無駄に気を回すなよ!)
878 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:12:06.26 ID:TkF7WefzP
○○「えーと、今は澪さんの相談に乗ってるところだし、梓ちゃんはまた後で、ということで」
唯「ええー、そんなー」
梓「……いえ、それで構いません」
○○「うん、ごめんね。で、澪さん、歌詞の相談って」
澪「……」ぼーぜん
○○「澪さん?」
澪「あっ、うん、この部分を変えると韻が踏めなくなるから、代わりの良い単語がないかなって」
澪(梓の奴、どうしたんだろう。○○さんを避けてるような……)
澪(それに○○さんも何かおかしい。丁寧に断ってはいたけど、なんだか言葉の端々に距離感が見え隠れしていた)
澪(……仲の良かった2人の間に、今は壁が見える)
澪(何があったんだ?)
879 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:13:39.35 ID:iug/WKta0
――30分後
じゃじゃん、じゃん!
律「……あー、うん」
澪「……」
紬「ええと」
梓「……」
○○「ふうふう、はぁ、はぁ」
唯「なんだか変な感じな演奏だったね」
880 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:15:23.16 ID:TkF7WefzP
律「そだな」
澪「ちょっとな」
○○「ごめん、俺が途中でバテテ遅れ気味になったから」
梓「違います。私が走りすぎたから……すみません」
紬「ま、まあ、ちょっと合わなかっただけだから、2人共気にしないで」
唯「もう1度Bパートだけいこっか?」
梓「ですね」
○○「あ、ええと」
澪「おいおい、○○さんが1度休憩取らなきゃだろ」
梓「あ……」
○○「みんな、ごめん。5分ぐらいでいいから」
881 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:16:29.21 ID:iug/WKta0
――2時間後
ピカンピカン
唯「あ、もう終わりだね」
律「……んー、今日はそんなに進まなかったな」
澪「こういう日もあるさ。練習自体はやっていて悪いことじゃない」
紬「また来週は頑張ろう、ということね」
○○「すみません」
梓「……」
882 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:18:00.18 ID:TkF7WefzP
――商店街
唯「あっ! アイスクリーム売ってるよ!」
○○「へー、自転車販売のアイスか。珍しい」
澪「昔はよく売ってたみたいだけど、今は全然見ないからなあ」
紬「私、買ってみたい!」パァ
律「よーし、私が全員分を奢ってやろう!」
梓「え? それこそ本当に珍しいですね」
唯「おーっ! りっちゃん太っ腹!」
澪「どういう風の吹き回しだ? 律が奢るだなんて」
律「小遣い入ったばかりで気がでかくなってるのだよ! おっちゃーん、アイス6つー」
おっちゃん「はいよー。まいどあり」
883 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:19:06.90 ID:iug/WKta0
唯「ちべたーい」シャリシャリ
紬「アイスというよりシャーベットに近いわ」
澪「自転車の看板にはアイスクリンって書いてたけど、クリームとはまた違うみたいだな」
○○「アイスクリンかー。確か高知県あたりのが有名だったような」
唯「へー、そうなんだー」シャリシャリ
梓「あ、○○先輩、溶けたのが服についてますよ、今とり……いえ、ハンカチをお貸ししますね」
○○「あっ……と、ありがとう」
梓「いえ」
884 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:20:56.55 ID:TkF7WefzP
テクテク
唯「ねえねえ、あずにゃん。あさってどっかに遊びに行こうよー」
梓「唯先輩、受験生なんですから勉強しましょうよ……」
澪(梓が○○さんの横を歩かないなんて珍しいな……合同練習の帰りはいっつも2人並んで世界作ってたのに)
○○「アイスクリンは高知県ぐらいしか広まってないから、高知県の人が他の県に行くと売ってないことに驚いたりするらしいよ」
律「県民の秘密って奴か?」
紬「じゃあ、これが噂のB級グルメというもの!?」
○○「んー、なんかそんな感じだけどそうじゃないような」
澪(○○さんは○○さんで、律やムギと話してばかり。梓とは積極的に会話しない)
澪(それに2人共、時々難しい顔をして考え事してるし)
澪(……喧嘩? んー、そんな雰囲気でもないような)
885 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:21:38.34 ID:W/ZEgSew0
支援
886 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:23:18.54 ID:iug/WKta0
○○「じゃあ、皆さん、また」
梓「あ、先輩、途中まで一緒に行きます。駅前の本屋さんに行くので」
律(おっ)
澪(何か話でもするのかな)
唯「じゃあ私も行こうかなー」
紬「唯ちゃん、今日はメロンパンを買って帰るって言ってなかった?」
唯「え? そうだったっけ? けど、メロンパンもいいなあ。よっし、買って帰る!」
律(ムギナイス)
澪(ここは無理にでも2人で帰ってもらった方がいいからな)
887 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:24:58.56 ID:TkF7WefzP
律「じゃ、またなー」
○○「はい、では」
梓「また」
トコトコトコトコ
律「……困ったもんだ」
澪「ああ。仲直りしてくれたら……って感じじゃないな。距離感が変な感じで、なにか違う」
紬「今まで仲がよかったからそう見えるだけかしら」
唯「? ○○君とあずにゃんのこと? いつもと変わらなかったと思うよ?」
律「唯は鈍感だからなあ」
唯「そうかなあ。絶対2人は変わってないよ。あっ、けど憂があずにゃん元気ないって言ってたかな」
律「やっぱり唯は鈍感だ」
唯「そんなことないもん!」
澪(……多分2人は大きな問題を抱えてる)
澪(それも簡単に解決しないようなレベルの)
澪(……私にできることはないかな)
888 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:26:25.52 ID:iug/WKta0
――駅前
トコトコトコ
○○「……」
梓「……外国に行くこと、先輩たちには話さないんですか?」
○○「うん。フェスが終わってから話そうと思う。今は無闇に話して、演奏に変な支障が出ると駄目だし」
梓「じゃあ、私に話してくれたのは何故ですか?」
○○「それは……」
梓「……すみません、今のはナシにしてください」
梓「私にだけ話してくれたのは、1番仲のいい友達だったからだって、思ってますから」
○○「ごめんね」
トコトコトコ
889 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:27:15.52 ID:TkF7WefzP
――8月15日
――梓の携帯
from 唯センパイ
件名 集合!
今から駅前に集合!
to 唯センパイ
件名 まさか
本当に遊びに行くつもりなんですか? 勉強はいいんですか?
890 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:28:59.18 ID:iug/WKta0
from 唯センパイ
件名 息抜き!
勉強ばっかじゃ疲れるよ〜。というわけで、プールに行くよ!
to 唯センパイ
件名 まったく
しょうがない人ですね、先輩は。
今から行きます。
891 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:29:59.62 ID:TkF7WefzP
――昼 プール
梓「で、澪先輩たちも来てるというわけですか」
律「あははは」
澪「まあ、息抜きだな、うん」
紬「あれがウォータースライダー? へぇー、乗ってみたいわー」
唯「みんな、誘ったらすぐ来てくれたよ?」
梓「……まあ、いいですけど。みんなで遊んだ方が楽しいですもんね」
唯「あ、だったら○○君も呼ぼうよ!」
律「!」
澪(唯、なんて無遠慮な!)
892 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:33:59.54 ID:iug/WKta0
唯「みんながいれば楽しいなら、○○君がいても楽しいよね!」
梓「……」
澪(あ、梓はなんて答えるのか……)
梓「……駄目ですよ、唯先輩」
梓「○○先輩は泳げないって言ってたじゃないですか」
梓「海とは違って泳ぐ以外に遊べるところもないですし」
梓「○○先輩だって忙しいかもしれないし、今日はやめておきましょう」
唯「えー、そっかー。残念だなー」
律(残念がるより先に空気も読もうぜ、唯……心臓に悪い)
澪(……)
893 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:36:35.53 ID:TkF7WefzP
――市民プール
律「夏だ!」
唯「プールだ!」
紬「ウォータースライダーだー」
律「きゃっほーい!」ザパーン
澪「こら、律! 飛び込むんじゃない!」
梓「10日に海に行ったばかりなのに、元気な人たちですね」クスッ
唯「あずにゃん、あそこまで競争だよ!」
梓「いいでしょう、受けてたちますよ」
ざぱーん
澪「ああもう、梓まで……1度スイッチが入るととことん楽しむんだな、梓は」
894 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:37:14.70 ID:V3hYOXr50
支援
895 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:37:31.47 ID:iug/WKta0
澪(けどだ)
澪(まだ梓はおかしい)
澪(特に、唯から『○○君も呼ぼう』って言われた時の、あの梓の答え)
澪(今までの梓なら、最初は反対するけど、結局○○さんに来てほしいって言うはず)
澪(なのに、今の梓は違う)
澪(求めるわけでも拒絶するわけでもない。ただひたすら、○○さんと『距離を置いてる』んだ)
澪(……どうして? 梓はあんなに好きになってたのに)
澪(やっぱり直接話を聞くべきか……?)
896 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:40:18.18 ID:TkF7WefzP
――夕方 駅前
律「んじゃ、今日はここで解散だな」
唯「あー、楽しかったー。指がふにゃふにゃだよー」
紬「私はなんだか耳に水が入ってるせいで、変な音が……」
梓「そういう時は、とんとんってジャンプしたら取れますよ。後は綿棒を使うとか」
紬「そうなのー。あ、それじゃあ私はここから電車に乗るわね」
律「おう、お疲れー」
唯「またねー」
梓「お疲れ様です、ムギ先輩」
897 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:43:26.26 ID:iug/WKta0
トコトコトコトコ
律「私と澪はここでお別れだな」
澪「あ、ごめん。私、ちょっと梓に用があるんだ」
梓「私にですか?」
澪「ああ、ちょっとライブのことで相談が」
律「ん? だったら私も行こうか?」
澪「いや、ちょっと話をするだけだから、律まで来ることないよ」
律「ふーん?」
898 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:44:33.74 ID:TkF7WefzP
唯「私はー?」
澪「いいって。2人だけで話したいからさ。たいしたことない用事だし」
律(たいしたことないなら、そこまで頑なに断らないだろうに)
律(ま、澪には澪の考えがあるわけか)
律(私もなんか計画立てるかねえ。梓が元に戻れるように)
梓「えと……澪先輩、すみません。今日は帰ってから親と食事に行く予定があって」
澪「そうか。じゃあ、明日はどうかな」
梓「明日なら、まあ……」
899 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:45:52.96 ID:iug/WKta0
澪「よし、明日の夕方4時、駅前のいつもの所で」
梓「はい、分かりました」
唯「私も行くね!」
律「唯は明日予備校だったろ? 私と同じ授業取ってたじゃないか」
唯「あ、忘れてた」
澪「おい受験生……」
900 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:48:41.94 ID:TkF7WefzP
――8月16日
――梓の携帯
from 澪センパイ
件名 今日の待ち合わせ
夕方4時にいつもの所って言ったけど、よく考えたらあの辺りは喫茶店が少なかった。
だから少し移動することになりそうなので、歩き安い格好で来て。
to 澪先輩
件名 はい
了解しました
from 唯センパイ
件名 あずにゃん
あずにゃんはケーキとプリンだったらどっちが好き?
to 唯センパイ
件名 どちらかというと
フルーツケーキです
901 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:49:22.78 ID:W/ZEgSew0
支援
902 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:50:16.79 ID:iug/WKta0
――夕方 駅前
梓「お待たせしました、澪先輩」
澪「ん、大丈夫。私も今来たところだし」
梓「では、どこに行きましょうか。楽器店にでも行きますか?」
澪「いや、話をするんだから、喫茶店がいいな。あそこに入ろう」
梓「話、ですか……」
澪「……嫌か?」
梓「いえ、行きます。なんとなく、何を聞かれるかは見当がついているので」
澪「そうか。じゃ、行こう」
903 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:51:26.46 ID:TkF7WefzP
――喫茶店
店員「いっらしゃいませ。お2人様ですね。こちらの席へどうぞ」
ガタン トスン
店員「ご注文はいかがされますか?」
澪「私はアップルティーで」
梓「……オレンジジュースを」
店員「かしこまりました。お待ちください」
スタスタ
澪「静かで良い店だろ? 歌詞を書く時によく来るんだ」
梓「はい、そうですね」
澪「店員さんがあっちから声をかけてくることも少ないし、過ごしやすい店なんだ」
904 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:53:36.33 ID:iug/WKta0
澪「で、聞きたいことなんだけど」
梓「……私のことでしょうか。○○先輩のことでしょうか」
澪「どっちも」
梓「……」
澪「最近、どこかおかしいぞ? 合宿の時とは全然違うじゃないか」
梓「おかしい、とはどんなところがですか?」
澪「○○さんと距離を置こうとしてる。違う?」
梓「……」
905 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:55:31.07 ID:TkF7WefzP
澪「私だけじゃない。律もムギも分かってる。梓の様子が変だってな」
梓「……不自然に見えないようにしていたつもりなのに」
澪「不自然なところだらけだったよ」
澪「だって梓は○○さん大好き人間なんだから」
澪「あんな風に素っ気無くしてたら、唯以外はすぐに分かる」
梓「……」
梓「……」
店員「お待たせしました、アップルティーとオレンジジュースです」カタン
906 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:57:48.11 ID:iug/WKta0
澪「……」ちゅー
梓「……」ちゅー
澪「ふぅ、なあ、梓」
梓「……はい」
澪「合宿の時に聞いた梓の言葉、嘘じゃないって分かってる」
澪「けど、もう一度だけ聞いておきたい」
梓「……」
澪「梓は、○○さんのことが好きなんだろ?」
梓「……」コクン
907 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 22:59:51.45 ID:TkF7WefzP
澪「じゃあ、どうして」
梓「……私がどう思っていようと、○○先輩と私は、ただの友達です。ギター仲間です」
梓「それ以上でもそれ以下でもありません。友達です」
梓「私はそれでいい、です」
澪「それは嘘だ」
梓「嘘じゃないです」
澪「嘘」
梓「違います」
澪「じゃあ、どうしてそんなに泣きそうな顔してるんだ?」
梓「っ!」ホロリ
908 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:00:43.43 ID:W/ZEgSew0
支援
909 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:03:49.91 ID:9taYKr3h0
支援
910 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:04:17.42 ID:iug/WKta0
澪「どうしてそう、距離を置こうとするんだ?」
澪「何か理由があるのか?」
梓「ないです。何も、ない」
澪「だったら、どうして」
梓「……」
澪「梓、やっぱり○○さんのことは好きじゃないんだな?」
梓「……違います」
澪「友達同士でいいんだろう? そこまで好きじゃなかったってことなんだ」
梓「違う……!」
澪「梓」
梓「大好きです! けど……けど!」
911 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:05:08.64 ID:TkF7WefzP
梓「……だって」ボロ
梓「だって!」ボロボロ
梓「このまま近くにいたら!」
梓「告白なんかしちゃったら!」
梓「手術なんて受けないでって、言っちゃいそうだから……!」
912 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:08:13.95 ID:iug/WKta0
澪「しゅじゅつ……?」
梓「あっ」ガタン
梓「い、今のは……!」
澪「なぁ、今のはいったい」
梓「う……うぅ!」ダッ
バタバタバタバタ
澪「梓!」
店員「お客様? きゃっ!」
梓「……!」
ガチャン、バタバタバタバタ……
913 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:10:21.25 ID:TkF7WefzP
澪「あずさ……」
店員「あ、あの、お客様。今のは」
澪「す、すみません。あの子、何か急用があったみたいで……」
澪「もう出ますね。お金、置いておきます。すみませんでした!」
タタタタタ
ガチャン
澪「梓は……走っていったのか。もう見えなくなってる」キョロキョロ
澪「……手術って、いったいどういうことなんだ」
澪「……」
914 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:12:04.17 ID:iug/WKta0
澪「さわ子先生、学校にいるかな」
澪「先生なら、多分連絡先もしってるはず」
澪「うん、行ってみよう。いなかったら、他の先生にさわ子先生の電話番号聞いて……」
澪「よし」
澪「○○さんに話を聞こう!」
915 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:14:25.10 ID:TkF7WefzP
――繁華街
ダダダダダ
ダダダ
ダダ……タタタ……テクテク
梓「はぁ、はぁ……」
梓(わ、私、なんであんなことを言っちゃったんだろ)
梓(○○先輩のことで頭の中が一杯になって、それで、澪先輩の質問にも答えなきゃと思って……)
梓「はぁ、はぁ」
梓(私……駄目な子だなあ)
梓(何してるんだろ)
梓(バカだよ、私)
916 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:17:35.55 ID:iug/WKta0
ふらふら
梓(この辺りって夕方ぐらいからすごく人が増える……居酒屋とかが多いからかな)
梓(変な店も多くって……ああ、そういえばこの辺りにはあまり近づくなって、学校で言われたっけ)
梓(駅はどっちだろう。無茶苦茶に走ってきたからよくわかんない)
梓(……なんでもいいや)
梓(なんだかもう、家に帰る気力もない……)
梓(私、いったい何がしたいんだろう)
梓(私、いったい何なんだろう)
ふらふら
917 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:20:13.76 ID:W/ZEgSew0
支援
918 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:22:01.80 ID:TkF7WefzP
ナンパ男「ねえねえ、そこの君」
梓「……はい?」
ナンパ男「大丈夫? なんだかふらついてるけど」
梓「はぁ……大丈夫です」
ナンパ男「どっかで休もっか。そうだなー、今からクラブに行くんだけどさ。そこならおいしい飲み物いっぱいあるよ」
ナンパ男「君、中学生? かわいいね。俺の仲間も歓迎するはずだし、どうかな?」
梓「……」
ナンパ男「大丈夫大丈夫、私服だからばれないって。俺、奢っちゃうよ?」
梓「……」じーっ
ナンパ男「おっ、乗り気? いいねいいねー、ノリの良い子は好きだよ。かわいい子はもっと好き、なんちゃって」
919 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:24:08.52 ID:iug/WKta0
梓(どうしてこういう男の人って、こんなにも粗野で言葉が軽いんだろう)じーっ
ナンパ男「なになに? 俺の顔、そんなにかっこいい?」
梓(全然好きになれそうにない人だ)
梓(先輩なら)
梓(先輩なら、もっと穏やかで、ふわふわと優しくて、だけど芯のある言葉をくれる)
ナンパ男「ふふん」キラーン
梓(……こんな変な顔もしない)
梓(先輩……○○先輩)
梓(もっと一緒にいたいです)ポロポロ
920 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:25:23.66 ID:TkF7WefzP
ナンパ男「うお! どうしたの? どっか痛いの?」そろり
梓「ひっく、触らないでください!」バシ
ナンパ男「いてっ! ちょ、何なの!」
梓「ぐすっ……私は駄目です。諦めてください」
ナンパ男「はぁ? 意味がわかんないだけど」
梓「分からないならどっかに行ってください」ゴシゴシ
ナンパ男「ちょ、それはさすがにむかつくんだけどー。あのさあ、優しくしてあげられるのも最初だけだぞ?」
??「ん、あれは……」
テクテク
友「おーい、そっこの君♪」
921 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:25:51.54 ID:QSV8Y5Eg0
このサンジュはなかなか…
支援
922 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:27:15.80 ID:iug/WKta0
梓「あっ……あなたは」
友「やっほ。おひさー。夏休み前以来かな」
梓「○○先輩のお友達さん……」
ナンパ男「ちょっと、あんた何」
友「この女の子の知り合いみたいな感じ。んー、見たところ……デートってわけじゃなさそうだねえ」
梓「知らない人です。それに私は○○先輩以外の人とデートなんかしません」
友「ほうほう、なるほどね。強引なナンパをされてたわけか。君、かわいいからねえ」
ナンパ男「邪魔しないでくんない? 俺は今この子と」
友「ここに取り出しますは何の変哲もない500円玉」
923 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:28:27.57 ID:TkF7WefzP
ナンパ男「はぁ?」
友「これを俺の親指と人差し指で挟みます。すると、あら不思議」
ぐにっ
ナンパ男「なっ!」
友「見事2つに折れましたとさ」
ナンパ男「ひ、ひぃ」
友「さあ、見物料はいらないからさっさと失せな。次はあんたの大事な所でやるよん」
ナンパ男「ひゃああ!」ダダダダ
924 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:30:16.39 ID:NF/7l6IW0
友KAKKEEEEEEEEEEEEEE
925 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:30:25.46 ID:iug/WKta0
友「ふん、キーボーディストの握力舐めんな」
梓「……」
友「さて、中野ちゃんだったっけか。こんな時間にここ歩いてちゃ危ないよ?」
梓「……ありがとうございました、友さん」
友「分かればよし。んじゃ、駅まで送ってあげよ〜」
梓「……」じーっ
友「あれ? 行かないのかな? あー、○○のエスコートじゃなくてご不満かね。こればっかりはねー」
梓「……帰りたくないです」
友「はい?」
梓「友さん」
梓「どこかもやもやが晴れる所に連れて行ってください」
926 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:31:25.43 ID:1IGIrLub0
この友になら掘られてもいい
927 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:32:27.72 ID:TkF7WefzP
――桜高 校門前
テクテク
○○「さわ子先生、いきなり高校まで来いって、どうしたんだろ」
○○「えーと、校門前で待っとけだったか。この辺り……先生はまだ来てない、か」
○○「はてさて、いったいどうして呼び出されたのやら」
○○(まさか、桜高の部室で練習するのかな。ギターは一応持ってきたけど……)
○○(けど、まだ夜ってわけじゃないし、夏休み中は警備も強化されてるから入り込みづらいって言ってたのに)
○○(……梓ちゃんも、来てるのかな)
○○(梓ちゃん、か)
○○(今は……これでいいはず)
928 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:34:52.65 ID:iug/WKta0
さわ子「お、いたいた。○○君、待たせたわね」
○○「あ、先生、どうも。今日は……あれ? 澪さん?」
澪「こ、こんばんは、○○さん」
○○「こんばんは……今日は、澪さんだけ、ですか」
さわ子「梓ちゃんがいなくてがっかりした?」
○○「そんなことは……」
さわ子「ま、今日は練習ってわけじゃなくて、澪ちゃんに頼まれてあなたを呼び出したんだけどね」
○○「澪さんが?」
澪「……とりあえず、喫茶店にでも行こう」
929 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:36:23.44 ID:TkF7WefzP
――カラオケ店
店員「お名前をお呼びしますので少々お待ちくださーい」
友「どもー」
梓「……」
友「あのさ」
梓「はい」
友「○○以外とはデートしないんじゃないの?」
梓「デートじゃありません。遊びに来ただけです。ストレス発散です」
友「そうですかい」
店員「2名でお待ちの友様ー。友様ー」
友「はいはーい」
店員「こちらの部屋へどうぞー」
930 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:38:08.43 ID:iug/WKta0
――個室
友「よっしゃー、歌うぞー」
梓「……」ぴぽぱぽ
友「ちょっ! 早っ! もう曲入れてるし!」
梓「今日は徹底的に歌います」
梓(喉が枯れてもいい)
梓(がらがら声になってもいい。私はボーカルじゃないから)
梓(このもやもやを晴らすために)
梓(無茶苦茶してやるもん)
931 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:39:25.93 ID:TkF7WefzP
――ファーストフード店
ガヤガヤ
澪「この辺りにはこんな店しかない……」
○○「はは、ちょっとうるさいけど、仕方ないね」
澪「……逆に話が周りに聞かれないから、いっか」
○○「えーと、じゃあ俺、ジュースだけでも買ってくるね。澪さんは何がいい?」
澪「あっ、私が……」
○○「いいよ。俺が行く」
澪「じゃあ、レモンティーで……」
○○「了解。ちょっと待ってて」
932 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:41:43.30 ID:iug/WKta0
○○「お待たせー。はい、レモンティー」
澪「どうも」
○○「シロップは必要だった?」
澪「私はこのままでいいよ」
○○「ん」
澪「……」チュー
○○「それで、今日はどうかした? 演奏の相談かな」
澪「……」チュー コトン
澪「今日、梓と話をしたんだ」
933 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:42:59.75 ID:TkF7WefzP
○○「梓ちゃんと?」
澪「うん、ちょっとだけ、話をして」
澪「それで、○○さんに聞きたいんだけど」
澪「○○さんは……これから、遠い所に行ったり、するのかな?」
○○「……」
○○「そっか」
○○「聞いちゃったんだ」
934 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:44:17.72 ID:Pk9LFQI90
レナ「○○さんは……これから、遠い所に行ったり、するのかな?かな?」
935 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:44:22.76 ID:iug/WKta0
――カラオケボックス
――1時間後
友「はひ、はひ……もう声出ない。そういえば俺ボーカルじゃねえよ」
ズンズンズン♪
梓「〜〜♪」
友「この子はよく声が続くな。もう10曲近く歌ってるってのに」
友「ったく、あー、俺休憩」
梓「〜〜♪」
ズズン ヂャン!
梓「ふぅ……」
オリキャラで敬遠してたけどやたら伸びてるから覗いてみたらまた新たなオリキャラが頑張ってた
937 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:48:45.66 ID:TkF7WefzP
友「どう? 少しは気が晴れた?」
梓「まだです……まだ」ふらっ
友「おいおい、なんか危うい感じだぞ」
梓「はふ……」
梓「今日は、体力が、尽きて……なんだか、もう…………眠い」ドサッ
友「ありゃ」
梓「すぅすぅ」
友「寝ちまった。よほど気疲れしてたのかね」
梓「すぅすぅ」
友「んー」
友「ま、いっか。寝かしとこう」
友「俺はチョコパフェでも食べとくか」
938 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:53:03.12 ID:iug/WKta0
――ファーストフード店
澪「そんな……外国にだなんて」
○○「……」
澪「もう、それは決定してること?」
○○「はい」
○○「渡航の用意も、入院の準備も、全部整ってる」
○○「後は俺が9月にあっちに行くだけ」
澪「……そう、なんだ」
939 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:54:34.76 ID:TkF7WefzP
澪(梓が言っていたのはこのことだったんだ)
澪(失敗すれば命を落としてしまう手術……)
澪(梓にとって、○○さんがいなくなる恐怖は耐えがたいものに違いない)
澪(それでも梓は○○さんの決意を邪魔したくなくて……)
澪(だから、梓は泣くことしかできなかったんだ)
澪(そして……)
澪(○○さんも)
940 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:55:37.84 ID:iug/WKta0
――カラオケボックス
梓「すぅすぅ」
友「……」
梓「すぅすぅ」
友「……」
梓「すぅすぅ……んー」
友「ん?」
梓「……先輩」
友「……」
梓「すぅすぅ」
友「……はぁ」
友「ったく、無防備すぎんだろ」
941 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:57:13.66 ID:TkF7WefzP
友「○○のお相手じゃなきゃ、手ぇ出してるかわいさだぞ、これ」
梓「すぅすぅ」
友「……いや、ここは手を出すべきなんじゃないだろうか」スッ
梓「すぅすぅ」
友「なーんてな、友さんはそこまで人でなしではないのですよ」パッ
梓「すぅすぅ」
友「……1人で喋ってると虚しい」
ガチャ
店員「チョコレートパフェお待たせしました」
友「あ、どもー。ついでに店員さんの携帯番号とか注文オッケーっすか?」
942 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:58:11.81 ID:iug/WKta0
――ファーストフード店
○○「せっかく仲良くなれて、一緒に演奏もしてくれるようになったのに、こんなことになってごめん」
○○「せめてライブだけは必ず成功させられるよう、頑張るから」
澪「……梓にはいつこのことを?」
○○「合宿の1日目の夜に」
澪「一緒の部屋になった時か……」
澪「……」
澪(それから、2人はあんなことに……)
澪「……」
澪(やっぱり駄目だ、このままじゃ)
澪(2人がこのまま離れ離れになるなんて、絶対に駄目だ)
澪「○○さん」
○○「うん?」
澪「○○さんは」キッ
澪「梓のことを気にかけ過ぎてるんだ」
943 :
◆.f0/3588.c :2010/08/30(月) 23:59:25.32 ID:TkF7WefzP
――カラオケボックス
梓「……ん、んぅ」
友「あ、起きた?」
梓「あれ、私……」
友「いやー、カラオケマイクも手放さずに寝るとは、音楽家の鑑ですな」
梓「あ……す、すみません。私ったら、ずっと寝ちゃって」
友「まあ、疲れてたならしょうがないって。おかまいなくー」
梓「……えーと、このパフェの容器の山はいったい」
友「暇だから食べてた。んー、そんなことよりもさ」ぐいっ
梓「え? ちょ、顔が近い、です」アセアセ
944 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:01:01.05 ID:M+dxvlkq0
友「……」じーっ
梓「……」
友「うん、もやもやは少しマシになったっぽいね」
梓「あ、はい」
友「んじゃま、そろそろお話をしましょっか」
梓「お話?」
友「○○のこと。中野ちゃんのもやもやの原因て、それだろ〜?」
梓「……」アゼン
945 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:02:02.46 ID:rbUhS4NzP
梓「あの、どうしてそんな」
友「○○は、手術を受けに外国に行く、だろ?」
梓「あ……」
友「で、中野ちゃんはそれで悩んでると見た」
梓「……」
友「違う?」
梓「……違わない、です」コクン
友「ふむ、やっぱりそうか。あいつめ、こんな子に想われるなんて……マジでボコボコにしてやりてえ」
梓「駄目です」ギロ
友「は、はい!」ビクッ
946 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:03:12.14 ID:ccXvCCd+0
友「え、えーと、だな。よし、ちょっとした昔話をしてやろう」
梓「昔話?」
友「むかしむかし、ある所に心臓に障害を持った少年がいたとさ」
梓「……それは」
友「彼は病気に苦しんでいたが、それ以上に自分のせいで、他人に心配をかけることが心苦しくて仕方なかった」
梓「……」
友「身内も友達も先生も、皆が自分の身体のことを心配してくれる。けどそれは皆に気苦労をかけているだけでしかない」
友「彼は他人に迷惑ばかりかける自分が、段々と大嫌いになっていった」
友「『こんな自分が他人と関わっちゃいけない』」
友「やがてはそう考えるようになり、ついに彼は必要以上に他人と関わろうとしなくなってしまった」
947 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:04:52.30 ID:rbUhS4NzP
友「病気のことは親しい人間以外にはひた隠し」
友「部活にも入らず、友達も多く作らず」
友「できる限りひっそりと生きていこうとしていた」
梓「……○○先輩」
友「彼は、自分の身体や人生を諦めてるっていうか、達観していた」
友「これがまたそこらの中坊にはただの変人にしか見えない」
友「身体のこともあったせいで、どんどんと周囲の人間は彼を腫れ物扱いしていったとさ」
友「……これが、あいつが地元の中学に通ってた時の話」
梓「……」ギュっ
948 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:06:23.04 ID:ccXvCCd+0
友「俺も最初はそこらの奴と同じだったよ。○○は絡みづらい奴だと思った」
友「まあ、ちょっとずつ話していく内に面白い奴だってことが分かってきたんだけどな」
友「物知りだし、なかなか鋭いツッコミもしてくれるしで」
友「中学卒業頃には、音楽コンサートに一緒に行くぐらいには仲良くなった」
梓「……聞きました。そこで先輩は音楽をやろうと思ったって」
友「音楽コンサートに連れてってやったのは、何か趣味になれるようなものを見つけてくれたらと思ったからだけど」
友「まさか、ギターを始めるとは思わなかったねえ」
友「リッケンバッカーを即買いした時、俺も驚いた」
友「だけど……もっと驚いたことが、最近あった」
梓「もっと驚いたこと?」
949 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 00:06:59.98 ID:W/ZEgSew0
支援
950 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:08:44.53 ID:rbUhS4NzP
友「俺がこっちの学校に来たのはさ、もちろん1人暮らしに慣れるためってのもあったけど」
友「人との関わり合いを避けてた○○が心配だった、ってのもあったんだ」
友「ずっと1人でギター弾き続けて、友達の1人もできてないんじゃないか、心配でなあ」
友「俺って友達甲斐のある奴だろー?」
梓「そうですね、優しいです」
友「ふふー……けどなあ、違った。転校してきて○○に会って、驚いた」
友「あいつ、クラスメイトどころか下の学年にも顔見知り作って」
友「休み時間なんかはそこらで談笑するぐらい、えらく社交的になってやがったんだ」
友「時にはあいつの身体のことをからかう大馬鹿もいるけど、まあ大抵の奴とは仲良くやっててな」
友「度肝抜かれたよ。まさかあの○○が、って」
951 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:09:43.64 ID:ccXvCCd+0
友「で、聞いてみたんだ。『いったい何があったんだ』ってな」
友「そしたらあいつはこう答えた」
友「『もっと他人を信じるべきだって、ある女の子から叱られたから』」
梓「……あっ」
梓(それは……私?)
友「……」ニヤ
友「ま、その女の子が誰か、なんてのは言わないでおくけどさ」
友「○○が変わったのは明らかにその女の子のおかげだろうな」
952 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:11:27.66 ID:rbUhS4NzP
梓(○○先輩……)
友「でさ、中野ちゃんに聞きたいんだけど」
梓「はい……?」
友「あいつがワガママを言ったことって、どれだけ見たことがある?」
梓「ワガママ?」
梓(○○先輩がワガママを? そんなの……言うイメージが全然ない)
梓(いつも周りのことを気にかける人だもん)
梓(あ、けど出会った最初の頃に……)
友「どう?」
梓「……1度だけ」
953 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:13:21.39 ID:ccXvCCd+0
梓「先輩が、桜高のけいおん部の部室で練習するようになったこと」
梓「あれは『俺のワガママだから』って、先輩が言ってました」
梓「……多分、その時だけです」
友「なるほど。やっぱり音楽関係か」
梓「やっぱり?」
友「俺は2回だけある」
友「1回目は音楽関係。親にも反対されたのに、ギターの練習を続けていたこと」
友「あれはほんとに珍しかったな。親にギターを捨てろって言われた時は、柄にもなく怒ったりして」
友「それからも、音楽関係のことになるとちょっと強引になる」
友「そんだけギターのことが好きだったんだろうな」
梓「……はい」
954 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:15:34.02 ID:rbUhS4NzP
友「そしてもう1つのワガママ。それはだねえ」
梓「……」
友「中野ちゃん、君に関係してる」
梓「……私?」
友「そう」
友「○○がアメリカに行くことは、俺もおとといになって聞いた」
友「メールでそのことを聞いた時は速攻で折り返し電話した。あまりにも突然の事だったからな」
友「だけどまあ、あいつにとっては突然でもなんでもなく、以前からあった話が実現しそうになっただけ、ってことだったらしいけどな」
友「詳しく話を聞いていく内に、あいつはふとこんなことを言った」
友「『本当は日本で手術を受けたかったんだけど』ってな」
955 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:16:05.66 ID:ccXvCCd+0
梓「日本で……? それは、旅費とか環境の問題とか、そういう意味でですか?」
友「違うね」
友「いや、まあ、あいつは『その方が時間もお金もかからないから』って言ってたけど」
友「実際は違う。絶対に違う。長年付き合ってきた俺が言うんだから間違いない」
友「あいつはだな」
友「中野ちゃんと離れたくないから、日本で手術を受けたがってたんだ」
956 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:18:31.76 ID:rbUhS4NzP
――ファーストフード店
○○「梓ちゃんのことを気にかけてるって、そりゃあ、そうだけど……」
澪「梓も○○さんも、お互いがお互いを」
澪「心配しすぎてる」
○○「……どういうこと?」
澪「……最近、○○さんと梓は疎遠になってる。いや、というよりも、一定の距離感を無理やり保とうとしてる」
澪「友達としての距離感をね」
○○「……」
澪「違う?」
○○「いや……」
957 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:20:32.47 ID:ccXvCCd+0
澪「さっき私は梓に会ってきて、話を聞いてきた」
○○「……」
澪「梓が何を言ったのかは、私の口からは言えないけど……」
澪「ただ1つ言えるのは、梓は○○さんの決意を邪魔したくないから、ギター友達として振舞って、○○さんを見送ろうとしてる」
○○「……」
澪「……そして、○○さん、あなたもきっと」
澪「梓に負担をかけたくないからって、この距離感を保とうとしてる。でしょう?」
958 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:21:11.66 ID:rbUhS4NzP
○○「……」
澪「きっと、近くにいると日本を離れたくなくなるからとかで」
○○「それもあるよ」
澪「やっぱり!」
○○「けど、それは理由の1つでしかない」
澪「1つ? じゃあもっと他の理由が?」
○○「……」
○○「俺と関係を深めたって、さ」
○○「結局、俺はもうここに戻って来られないかもしれない」
○○「親しい人に何か不幸があった時の悲しみって……辛いんだ。自分の両親のことを見てると、よく分かる」
○○「せめて日本で手術を受けられれば、まだしばらくは一緒にいれたけど」
○○「外国に行く以上、これ以上梓ちゃんに近づくのはよくない」
○○「梓ちゃんには、あんまり泣いてほしくないから」
959 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:22:14.34 ID:ccXvCCd+0
澪「○○さんは梓を悲しませたくないから、距離をあけたって、そういうこと?」
○○「……」コクン
澪「……やっぱり、2人はお互いのことを気にかけすぎてる」
澪「梓は、○○さんの邪魔をしたくないから」
澪「○○さんは、梓を悲しませたくないから」
澪「……けど、こんなの辛いだけだ」
澪「互いが互いに配慮して、もっと大事なことを忘れてる」
960 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 00:22:43.12 ID:uUpDWKHM0
やべぇ、○○さんがめっちゃいい人になった一方通行さんで再生される
961 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:23:13.27 ID:rbUhS4NzP
○○「……大事なこと?」
澪「梓と、○○さん、2人の気持ち」
澪「手術も大事だろうけど、2人の気持ちだって大事なはず!」
澪「○○さんは、梓が好きなはず!」
○○「……」
澪「梓と一緒にいたいって、思わない?」
○○「……」
○○「……俺は」
○○「ワガママなんだ」
○○「好きな子と一緒にいたいと思うぐらいには、ね」
962 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:24:10.01 ID:ccXvCCd+0
――カラオケボックス
梓「……そんな、私から離れたくないからだなんて」
友「ありえないか? あいつは親や医者とも最後の最後まで相談したみたいなんだよ。なんとか日本で手術を受けられないかって」
友「結局、あっちの医者の都合で無理だって結論がついたみたいだけど」
友「それでもなあ、不自然なんだよ」
友「ただ単に時間やお金の問題だけだったら、あいつがそこまで強く主張するはずがない。ほとんどワガママに近いことを親に言うはずがない」
友「十中八九、別の理由がある。で、何事にもあまり執着しないあいつが唯一気にかけていたのは、『音楽』と『中野ちゃん』だ」
友「音楽はどこでもやれる。日本から離れて失うのは……君だ、中野ちゃん」
963 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:25:17.01 ID:rbUhS4NzP
梓「……けど、私とは限らないんじゃ。他の誰かと離れたくないからとか」
友「君以外にいるわけないでしょ。何を今更」
梓「……」
友「あいつの気持ちが分からないほど鈍感じゃないだろうに」
梓「……分かりません。そんなの、言ってもらったことがないから」
友「ふーん。態度は時に言葉以上に物を言うよ? だってさ、中野ちゃんと一緒にいたいから、あいつは日本で、手術……を……」ピクリ
友「あっ!」ハッ
梓「な、なんですか、いきなり」
友「いや、待てよ」
友「……まさか」
964 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:26:26.47 ID:ccXvCCd+0
梓「どうかしましたか?」
友「ちょっと待って。そうか、中野ちゃんと一緒にいたいってことがあいつの全てなわけだ」ブツブツ
友「だとしたら今回の手術は……」ブツブツ
友「……はは」
友「なるほどなるほど」
梓「な、何を1人を納得してるんですか」
友「いやいや、んー、そうか」
友「つまりだな」
友「あいつはどこまでも一途だってことだな」
梓「……? いったい何を」
965 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 00:27:41.70 ID:L4Qab/PM0
支援
966 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:28:15.77 ID:rbUhS4NzP
友「へへーん、今、○○の3つ目のワガママを見つけたぞ。こりゃ楽しい」
友「ん、いや、これはワガママっていうより決意か」
梓「決意?」
友「中野ちゃん、心して聞きなさい」
梓「はあ」
友「○○が外国に行ってまで手術を受けようとしてるのはだね」
友「病気を治したい、皆にこれ以上の心配をさせたくない、っていうのも、もちろんあるけど」
友「それ以上に!」
友「中野ちゃん、君とこれからもずっと一緒にいたいから、あいつは手術を受ける決意をしたんだよ!」
梓「……え?」
967 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:29:26.54 ID:ccXvCCd+0
――ファーストフード店
澪「梓と一緒にいたい……?」
○○「俺はさ、長生きなんてできない身体なんだ」
○○「それどころか、30歳ぐらいになれば、もう寝たきりの生活が待ってる」
○○「けど……」
○○「やっぱり好きな人とはずっと一緒にいたい」
○○「ずっと一緒にギターを弾いていたい」
○○「そうするためには……身体を治すしかない」
澪「じゃあ、手術を受けるのは、梓とずっと一緒にいたいから?」
○○「……」コクン
968 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:30:41.49 ID:rbUhS4NzP
――カラオケボックス
梓「……」
友「今までのあいつなら、甘んじて自分の身体を受け入れて、辛くても誰とも関わり合いにならない生き方をしてただろうな」
友「だーが、今は違う。あいつは身体を治して、中野ちゃんと生きていく道を選んだんだ」
梓「……」
友「今は疎遠になっても、手術を成功させて日本に戻ってきたら、さっそく君にアプローチでもかけるつもりなんだろうねえ」
友「たとえ君に嫌われていたとしても、あいつはなんとか自分の思いを伝えようとする」
梓「……」
友「一途っちゅーか、一直線っちゅーか。ある種の馬鹿?」
梓「……」ギュっ
友「ふむ。もう、もやもやも晴れたんじゃない?」
969 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:31:37.67 ID:ccXvCCd+0
梓「はい」
友「君のもやもやが何なのかはよく分からんけど、多分、○○との関係をどうすればいいか悩んでたんじゃないかな」
梓「その通りです」
友「じゃ、1つだけアドバイス」
友「時には自分の気持ちのおもむくままに走るのも、悪くない」
梓「その通りです。私、臆病だったんです」
梓「自分の気持ちを無闇に否定していました」
梓「けどそれは、自分の気持ちも先輩の気持ちも裏切るだけでしかなかった」
970 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:32:25.73 ID:rbUhS4NzP
梓「友さんの言うことが真実なのだとしたら」
友「いや、真実だって。俺、かなり○○のこと理解してるもん」
梓「あはは……はい、真実ですね」
梓「だったら、私は先輩の気持ちにちゃんと応えなきゃ」
梓「先輩の決意を支えなきゃ、です」
梓「今すぐ、○○先輩に会いたい」
友「んじゃま、さっそく俺がメールしてやるよん」
971 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:33:13.07 ID:ccXvCCd+0
――ファーストフード店
澪「だったら、その気持ちをもっと梓に言ってやらなきゃ!」
○○「……でも」
澪「相手のことを思いやれるのは○○さんの良いところだけど!」
澪「今はそんなの必要ない!」
○○「澪さん……」
澪「梓が悲しむって、そりゃあ、○○さんと離れれば悲しむし、いなくなれば泣いちゃうかもだけど」
澪「梓がそれに耐えられないわけじゃない!」
澪「だって、恋する女の子はすごく強いんだから……!」
澪「むしろ、このまま距離が空いたままの方が、後で絶対に後悔する!」
972 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:34:19.91 ID:rbUhS4NzP
○○「あの……澪さん」
澪「なにっ!?」
○○「周りの人が……大声だったから」
ジーッ
澪「へ? あっ……」カァ
澪「あ、あう」ヘナヘナ
○○「だ、大丈夫?」
澪「は、恥ずかしい」カァ
○○「ははは……けど、ありがとう」
そろそろ埋めるか
PCとP2からカキコとかまじきもい
975 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:36:02.41 ID:ccXvCCd+0
○○「女の子に叱られたのは2回目だ」
澪「2回目?」
○○「俺ってほんと駄目だなあ。考えてるつもりが、ただ単に逃げてるだけだったりしてる」
○○「……今からでもなんとかなるかな?」
澪「なるよ。絶対なる」
澪「梓はきっと待ってるから」
○○「うん。なんとか梓ちゃんと会わないと」
ピロン♪
○○「ん? メール……」
976 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 00:36:14.45 ID:49qgCarw0
応援してるよ
977 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 00:36:23.21 ID:L4Qab/PM0
支援
次スレ立てるときはそこのURL貼るのをよろしくね
978 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 00:36:59.89 ID:RiJwv4SP0
盛り上がってまいりました!!
あ
980 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:37:25.73 ID:rbUhS4NzP
from 友
件名 さっさと行け
駅前近くの△公園だ。お前を待ってる奴がいるから、行ってこい。
○○「……」
澪「○○さん?」
○○「俺、行かなきゃいけないところができた」
澪「……梓?」
○○「うん。待ってくれてる」
981 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 00:37:30.85 ID:AwzESCnZ0
がんばってね
応援してます
983 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:40:01.11 ID:ccXvCCd+0
○○「澪さん、ありがとう」
○○「澪さんが俺を変えてくれた2人目の人だよ」
澪「……うん」
澪「頑張れ!」
○○「じゃあ、また練習で!」
タタタタタ
澪「……」
澪「……」
澪「○○さんが走っていくなんて」
澪「そんなに想われてる梓が……やっぱり羨ましい、な」
test
な?もしもしだろ?
トリップでもテストするか
987 :
◆.f0/3588.c :2010/08/31(火) 00:43:49.71 ID:rbUhS4NzP
はい!もしもしです!
乙です
990 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 00:45:58.33 ID:49qgCarw0
乙です
991 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 00:56:17.99 ID:qIHrj5RE0
いけないんだが
992 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 01:01:04.93 ID:RiJwv4SP0
993 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 01:02:22.07 ID:qIHrj5RE0
なんという大作…
伸びるな、これは
995 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 01:05:39.27 ID:qIHrj5RE0
996 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 01:07:00.76 ID:qIHrj5RE0
何を言っているのかわからない。
いちゃもんつけてるクズがいるからこっちは埋めちゃうぞ。
う
め
た
1001 :
1001:
16歳♀暇だから全レスします☆ こちらスネーク 1990年生まれ集まれ〜☆ 安価でお絵描き
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き 今のVIPが嫌ならVIPから出てけww A雑 大阪VIPPER集まれ!!☆ ま
た 工作員 18歳♀が16歳♂に安価メール VIPでMMO ネタにマジレスの嵐 す
く 隠れオタ skype パートスレ Skype mp3垂れ流し
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い 空気読め リア充 ニコニコ動画
>>1 そっヵ、残念やわ(´・ω・`)
お 付き合ってくだしあ>< 今から元カノに痛メする
>>3 ウチは高校生だぉ☆
>>9 うはwwこれがVIPクオリティw
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>>2 自重しろwwwww Be
ハ (7ヌ) (/ /
>>7 ブラウザゲーやらないか?
ル / / ∧_∧ || モリタポ
ヒ / / ∧_∧ ∧_∧ _( ゚ω゚ ) ∧_∧ || 埼
>>5 2chって有料なんですか?
\ \( ゚ω゚ )―--( ゚ω゚ ) ̄ ⌒ヽ( ゚ω゚ ) // 玉
>>6 え?俺マジ貧乏なんだけど
\ /⌒ ⌒ ̄ヽ ゆとり /~⌒ ⌒ / O
>>8 お母さんに何て言えば
| |ー、 / ̄| //`i構って女/ F 安価で絵描くお
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