和「やめて!やめて!!やめてぇ!お願い!やめてエエエェェ!」

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
和「っわあああぁぁあっ!!!」バッ

…キョロキョロ

和「うぅ…久々に夢で見てしまったわ…」
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:38:38.92 ID:g+9wgMSR0
ロン
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:38:43.43 ID:RugLphUO0
いちねんまえ!

和「な…なによ…!?」

ギッギィィ

薄暗い倉庫の一室、目が覚めた和は自分が縛られ身動きできない状態である事に気づいた。
自分がなぜかここにいるのか、なぜ縛られているのか、和には状況がまるで理解できなかった。
そして目の前には律、紬、澪、梓、見慣れた軽音部の4人が立っている。

律「睡眠薬入りの紅茶をたらふく飲ませたわりには早いお目覚めだなァ…和……いや―」

律「裏 切 り 者 っ」

和「えっ…」

律「言ってる意味・・・分かるだろ?まぁ〜しょうがないわなっ」

和「待って…律…何をする気…」
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:39:00.86 ID:2Z1T8m180
和「っわあああぁぁあっ!!!」バッ

…キョロキョロ

和「うぅ…久々に夢精してしまったわ…」
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:39:33.05 ID:RugLphUO0
ガコン ガシュ ゴコッ イイイィィイイン

律「オ・ト・シ・マ・エ!」

和「そんなっ…やめて…やめて やめて やめてっ!やめてぇぇ」

ズダダダダダダダ

和「ぎゃっ」

突如、和の右肘から先が吹き飛び、辺りに肉片と鮮血が飛び散った。
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:40:12.82 ID:RugLphUO0
和「うぎゃああぁぁあぁあああ…ああがああ…あぁ…はっあぁ…あああ…ぁ」

紬「の〜どーかちゃんっ♪」

絶叫する和の前に嬉々としながら紬が駆け寄る。

紬「これ握ってっ」

そしておもむろに手榴弾を取り出す紬。

紬「大丈夫よっ琴吹社特製で威力は通常の10%だから!私を信じて♪」

和「はっ…はぁ…はぁ」

紬「私のメロディーには逆らえないでしょ?」
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:40:47.60 ID:RugLphUO0
ポロローン♪

和「やだ…」

紬「握って…」

ポロロロ〜ン♪

和「やめて…」

和は自分の意思とは無関係に紬から手渡された手榴弾を無傷な左手で握ってしまう。

和「いやだ…やめて…」

ピン

和に握らせた手榴弾の安全ピンを紬は躊躇無く引き抜いた。
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:40:56.88 ID:zhQrOB0JP
唯「和ちゃん眼鏡が本体だから」
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:41:35.24 ID:RugLphUO0
和「やめて!やめて!やめてェ!」

カシャ
ドグォンッ!

和「ふぎゃぁぁぁああああああ〜あ…あ〜」

紬「きゃーっ!大成功〜!」パンパン♪

爆発により今度は和の左肘から先が吹き飛んだ。
それを見た紬が拍手を打って大喜びする。

澪「はしゃぎ過ぎだ。まじめにやれ、ムギ」

紬「まじめよ澪ちゃん。私、手榴弾を人に握らせたまま爆発させるのが夢だったの〜♪」
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:42:25.06 ID:RugLphUO0
はしゃぐ紬を尻目に澪は和の上腕しか残っていない右腕を握った。

澪「…和…友人としては見逃してやりたい…」

和「はっ・・・はぁ・・・はぁ」

澪「しかし私も軽音部の一人だ。部を潰させるわけにはいかない」

ギュオオオオオッ!
ブチブチブチ

和「がぁぁぁぁあああぁはぁぁあああぁ」

澪の手により、和の右腕は根元からズタズタにもぎ取られる。
気を失ってはいないものの和の意識は既に混濁としていた。
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:42:49.66 ID:VPVIqPeSO
つまんねえから製作にでも行けよキモオタ
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:43:12.08 ID:RugLphUO0
梓「梓です。見えてますか?私は本気で惚れかけていたんですよ」

今度は梓が和の前まで歩み寄り耳元でそっと呟いてきた。

梓「あなたの生徒会を…会長を…殺してやりたいと思うほどに・・・」

和「曽我部…先…輩…」

梓「心配ですか?腹立たしいですよ」

ヴン!
ズバン

和「っふぎゃぁぁああああぁぁああぁ」

一瞬で和は付け根から左腕を引き裂かれる。
もはや和の両肩から先は何もブラ下がっておらず真っ赤な液体を噴射するのみだった。
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:43:27.33 ID:G/Ga00f8P
デジャブを感じる
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:43:47.89 ID:Opwda8r00
なんかかがみん喰ってる奴らみたいな愛と狂気を感じない
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:43:48.00 ID:Om4Cmo8Y0
マジキチ
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:43:51.56 ID:RugLphUO0
紬「とどめは?」

律「大出血祭りだぜ。このままの方が苦しんで死ぬ」

両肩から止め処なく鮮血を噴射し拷問のショックで和は目も虚ろになっている。そして―

バァンッ!

倉庫の扉が勢いよく開かれ新たな人間が姿を現した。
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:44:36.09 ID:RugLphUO0
唯「みんな何やってるの!!」

和「ゆ、唯ぃ…」

唯「和ちゃぁん!」

和の悲惨な姿を見るやいなや他の軽音部の4人を突き飛ばし唯は瀕死の和の前に駆け寄る。

唯「どいてぇ…!!和ちゃん…あぁ…こんな…うそでしょ…」

両腕を無くし死にかけの和を見て唯は軽音部の4人を睨んだ。
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:45:14.35 ID:RugLphUO0
律「落ち着けよ唯」

澪「私たち4人は共にお前と同じ軽音部…」

梓「逆らう気はないですよ」

唯「…っ…私の心友がこのまま死んだら…ただじゃすまさないよ…!」

和「…唯……私…はもう…ダメ…」

唯「和ちゃん!しっかりしてっ!!」

和「生徒会を…会長…頼…」

唯「なに言うの!会長に会わずに死ぬ気!?しっかりして!死んじゃだめェ!」

和の両肩を掴み、唯は必死に和の上半身を揺さぶる。
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:45:28.86 ID:gPSWJYpZ0
おっきした
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:46:11.57 ID:RugLphUO0
唯「約束したでしょ!!私と一緒に素敵な学校生活を送ろうって!」

和「…私…裏ギ…者…なの…?」

唯「和ちゃん…」

多量の出血により最早ろれつも回らないまま和が問いかけた。

唯「和ちゃんが授業中に開発したナノテクノロジー……それを琴吹社へ提供し楽器へと転用を始めた軽音部…」

和「私は…放っておけ…なかった…ナノテクノロジーは本来・・・そうあるもの・・・じゃ・・・ない・・・」

鮮血を両肩から滴らせ和は必死に口を動かす、いつ事切れてもおかしくはない状態だった。
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:47:01.06 ID:RugLphUO0
和「だから……生徒会として・・・軽音部を・・・罰するしか…ない…って…だから…裏切…者・・・なの・・・」

唯「目を開けて!まだ死なないでっ見せたいものがあるんだよ!?」

事切れる寸前の和に唯は声を荒げ、目を開かせようとする。

唯「琴吹社が手がけてて話題になってた水槽と溶液だよ!完成したの!死体をそのままの状態で半永久的に保存可能にするシステム」ピッ

必死に声をかけながら唯は手に持っていたリモコンを操作する。

唯「生きた人間を放り込めば窒息死するんだけど…死体はまるで剥製みたいに保存できるんだよ」

リモコン操作に合わせ布を被せた巨大な円形状の物体が和の目の前にガラガラと音を立てて移動してきた。
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:47:51.58 ID:Om4Cmo8Y0
冷静だな
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:48:02.24 ID:RugLphUO0
唯「会いたいでしょぉ…?生徒会長にっ」

和「唯…?」

唯「心配ないよ…死に際は私たち五人で看取ったから」

和「うそでしょ…何を言ってるの…唯…嘘でしょォ…!」

唯「誰よりも先に和ちゃんを裏切り者だと感じたのは、この私だよ」

そう言って唯は円形状の物体の前に立つ。

唯「痛みと恐怖だけで死なせやしないよ」

和「やめて…やめてよ…やめて…」

中身を覆い隠す布に唯は手をかける。
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:48:44.70 ID:RugLphUO0
和「やめて!やめて!!やめてぇ!お願い!やめてエエエェェ!」

唯「強いよね生徒会長は…最後まで和ちゃんの事を心配していたよ」バサァッ

唯が布を剥がし円形状の物体の中身を露にする。
それは溶液でいっぱいにまで満たされた水槽であり、そこには既に溺死した生徒会長、曽我部 恵の姿があった。

和「ああぁああああぁぁぁあああああああぁあぁあああぁぁああ」

唯「最高の絶望だよ。胸に抱いて死んで行ってね」

そして軽音部の五人はその場を後にする。
この日、和が胸に抱いたモノは絶望ではなく、怒りと憎しみだった。
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:50:49.23 ID:RugLphUO0
(いちねんまえの)にかげつご!

和「………」

柔らかいベッドの上で和は目覚めた。
軽音部の5人によって執行された地獄の拷問と曽我部会長の死を見せ付けられた記憶が脳裏をよぎる。
両腕をもがれたまま放置された筈の自分がどうして生きているのだろうか?
ひょっとしてあれは夢だったのではないかと思い傍にあった鏡に自分の姿を映す。
両肩には包帯を巻かれ治療された痕跡はあるが、そこから先には何もブラ下がっていない。
あるはずの腕が無い。夢ではなかった。
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:51:43.54 ID:RugLphUO0
男「キャアアアア!ベッケル博士〜!彼女起きました!目が覚めましたわよ〜!」

覚醒した和の姿を見たオカマ口調の男が別室まで行きベッケル博士と呼ぶ老人に慌しく声をかける。

ベッケル博士「んっ!んっ!うそだろォロバート君!」

ロバート「本当ですってば!立って鏡っ!姿!目の前に!」

ベッケル博士「二ヶ月間も昏睡状態にあった者が目覚めてすぐ立ち上がるなど…んっ!ありえんよ!」

和の姿を確認しようとベッケル博士とロバートの二人が和を寝かせていた部屋まで急ぎ足で立ち入った。
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:52:50.64 ID:RugLphUO0
ベッケル博士「なんだこの部屋はぁ!!」

そこに和の姿は無かった。代わりにめちゃくちゃに荒らされたもぬけの部屋があるのみだった。

ロバート「博士!窓がっ!彼女です!彼女が外に!!」

ゴッゴッゴッ!

ベッケル博士「なっなにをしている!!」

和は窓から外に抜け出していた。
あろうことか腕をもぎ取られた肩の傷口をコンクリートの壁に叩きつけていたのだ。
全力で叩きつけているため包帯に包まれている傷口からは血が滲み出している。
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:53:57.79 ID:RugLphUO0
ロバート「ああ!傷口が開いてますっやめて〜〜〜!!」

ベッケル博士「んっ!きっと状況に混乱しているんだろう…錯乱状態だ!!」

ゴッゴッゴッ!
近づいてきた二人に見向きもせず和は自虐行為を繰り返す。

ベッケル博士「落ち着けっ話を聞いてくれ!わしの知り合いが倉庫で倒れていた君をここへ運んできた…」

ゴッゴッガッガスッガッ!

ベッケル博士「んっ!ん!わしは医者で学者で技術者で―オイ!話を聞けエェーーー!!」

和「……」ギロッ

ベッケル博士「…」ゴクリ
29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:54:46.77 ID:RugLphUO0
ゴンッゴスッゴンッ!!
和はベッケル博士の声には耳も貸さず一瞬睨みつけただけで今度は額を壁に打ちつけ始める。

ベッケル博士「…運ばれてきた君は瀕死の状態にあった…んっ!しかし!!」

ゴンッゴンッゴンッ!

ベッケル博士「君は命を繋ぎとめた…その命っ…!捨ててしまう気かァ!!」

和「……っ!」ピタリ

ベッケル博士「やれやれ…」
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:55:23.25 ID:RugLphUO0
和「…」ドサリ

ベッケル博士の声に応じ動きを止めたかと思いきや、
それまでの酷い自傷行為のためか和はその場に崩れ落ちた。

ロバート「キャア〜〜〜っ!!」

ベッケル博士「ん!気絶しよったか!!ロバート君!運べぇ〜〜〜!!」
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:57:14.06 ID:RugLphUO0
―それから一週間後!

あの自虐行為で気を失った和は再び昏睡状態に陥り眠ったまま時は過ぎていた。

ロバート「博士…きっと彼女には無理です」

ベッケル博士「んっ!経験者は語る…かね、ロバート君」

ロバート「私思うんです、彼女が失ったのは腕だけではないんじゃないかって…」

ベッケル博士「…彼女を見つけた倉庫…琴吹社といって最近何者かによって提供されたナノテクノロジーで最先端をゆく企業なんだが」ズズッ
32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:58:34.83 ID:xSgrkyZW0
なんか悲しくなるわ。おもしろいと思って書いてんのかね?この手のスレ。
3ヶ月後に自分で読み返して うわぁぁぁぁぁぁあ ってならないのかね?
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 15:59:32.69 ID:RugLphUO0
ベッケル博士はロバートと二人きりの部屋で、コーヒーに口を付けつつ話を続ける。

ベッケル博士「その倉庫に水槽へ詰め込まれた女子高生の遺体があったらしい…その遺体と彼女が着ていた制服は同じものだ。ひょっとしたら遺体は彼女の…」

和「わあっぁぁああぁぁぁあぁあっ!」

ベッケル博士「んっ!なんだぁ!?」

二人きりの密談中、突如別室に寝かせていた和の絶叫が響き渡った。
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:00:21.53 ID:RugLphUO0
ロバート「彼女の部屋からです!」

ベッケル博士「行くゾ!ロバート君!!」

密談を切り上げ二人は和の部屋まで急ぐ。
部屋の扉を開けると顔をくしゃくしゃに歪めながら大粒の涙を零していた和がいた。

ベッケル博士「二度目の目覚めだっ(錯乱ではない…)」
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:01:20.53 ID:RugLphUO0
―それから再び時は過ぎ…

昏睡状態から和は回復していた。
しかし再び自傷行為に及ぶのを懸念され外出は許されず室内に半ば監禁された状態にあった。

和「…っ!」バンッバンッバンッ!

ストレスからか和は力づくで外に出ようとする。
しかし外側から鍵をかけられているため、扉が開く事はない。
腕が無いため、足蹴にして扉を開けようとするが無駄な事だった。
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:02:41.71 ID:RugLphUO0
ロバート「彼女…まったく食事を取りません。やっぱり彼女には無理です」

外から和を監視していたロバートがベッケル博士に声をかける。

ロバート「見たでしょ2度目の目覚めっ彼女は絶望していますっ」

ベッケル博士「…んっ!ちがうなっ!絶望は扉を開けようとはせん」

ロバート「えっ…」
37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:03:27.80 ID:RugLphUO0
ベッケル博士「わしが見たのは…彼女の怒り!彼女の憎しみ!どうにもならぬイラ立ちっ!」

和に対してロバートとは全く逆の感想をベッケル博士は抱いていた。
その顔に興奮の熱を帯びさせてベッケル博士は続ける。

ベッケル博士「彼女ならゆけるやもしれん!んっ!ロバートくんっ君の先へ!!」
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:04:17.97 ID:Hvyw+XcS0
ダイモンズ?
39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:04:44.04 ID:RugLphUO0
――――――――

和「………」

扉が絶対に開けられない事を悟り和は放心気味の表情で外の景色を眺めていた。

――生徒会にようこそ、私は曽我部 恵よ、これからよろしくね!真鍋さん
――ありがとう、真鍋さんは仕事が早くて助かるわ
――あ、私ファンクラブの会長でもあるの♪
――ねぇねぇ真鍋さん……
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:05:34.51 ID:RugLphUO0
和「…うぅ……グス…」

ギィ…ガチャ

外側から鍵を掛けられた扉が開く音がした。

ベッケル博士「…話…いいかな……」

ベッドの上で涙ぐむ和の前にベッケル博士がそっと近づく。

ベッケル博士「君のポッケには一枚の写真と生徒手帳……んっ!『のどか』くん…でいいのかなっ」
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:07:28.85 ID:RugLphUO0
写真と生徒手帳を手に持ちベッケル博士は話しかける。
腕を失くした和の肩口を見つつベッケル博士は和に問いかけた。

ベッケル博士「何か欲しいモノ…ないかね?オイ!ロバート君!!」

ロバート「ハイっ」

窓越しの外にいるロバートがサッカーボールをリフティングしながら返事をする。

ベッケル博士「彼の両足はね…義足だっ!」
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:08:10.63 ID:RugLphUO0
ポーン、ポーン
リフティングしていたロバートの右足が、生身の足の間接では絶対に曲げられない角度まで楽々と曲がる。

ドシュッ!バァン!
そして和の部屋の窓に強烈なシュートを叩き込んだ。

「とんでもない動きをするだろ?あの琴吹社のテクノロジーを持ってしても到達できぬ可能性を持つ義足…わしの開発したシステムだ」
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:09:04.93 ID:RugLphUO0
その声を聞いた瞬間、和の脳裏にあの時の記憶が、あの場に居た人間の顔が蘇る。
田井中律、琴吹紬、秋山澪、中野梓、平沢唯、その5人によって無残にも殺された曽我部先輩。
―腕さえ、腕さえあれば。

和はベッドから下り、ベッケル博士の前で頭を地べたに擦りつけながら懇願した。

和「私にっ私に腕をください……っ!!」
44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:12:16.84 ID:PkLoVwQ+0
この前のスレか
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:13:00.02 ID:xfUs4Xqz0
このスレ前にも二回くらい見たぞ
完結できねえなら書くなよカス
46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:13:00.26 ID:5Gqw6Whx0
この前のか。見たかったんだ
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:14:01.86 ID:RugLphUO0
――それから数日後!

和「はぁ…はぁ…はぁ…」

博士に義手を懇願して以来、和は再び監禁されていた。
以前のように柔らかいベッドと快適な空調が用意されている部屋ではない。
室温92℃、湿度83%の灼熱のサウナ部屋だった。
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:14:52.49 ID:RugLphUO0
和は脱水症状一歩手前の状態で椅子に座れされそこから動けないよう下半身を拘束されていた。
目の前にはテーブルが有り、ほんの1メートル先には水の入ったコップがテーブル上に置かれている。
腕さえ有れば容易にそのコップを手に取る事ができる状態だった。腕さえ有れば。

「はぁはぁはぁ…(水…水…水ぅ…)」

ベッケル博士「温度を上げろ」

ロバート「ハイ博士」
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:15:15.62 ID:P8A0is+f0
ちなみにタンパク質が破壊されるのは42度
高熱がヤバイのはこのせい
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:15:45.36 ID:RugLphUO0
ロバートが操作パネルからサウナ部屋の温度を上げる。
サウナ部屋の壁からは蒸気が噴き出し、高温の熱気が和の全身を攻め立てる。

和「ぁぁあぁっ…は…ぁぁぁ…っ!」ギィギシッギィ

乾いた喉からはまともな叫び声すら上がらず拘束具を肉に食い込ませながら和はのたうち回る。

和「ぁぁぁっあぁぁ…ぁっ」ガクリ

やがて限界を迎えた和は拘束された状態のまま気を失った。
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:16:44.98 ID:RugLphUO0
ベッケル博士「んっ!寝室に運んでやれ、あー!ロバート君くれぐれも…」

ロバート「必要最低限の点滴のみ与えるように…ですよね博士」

博士に指示されたロバートが気を失った和を丁寧に運び寝室に用意されたベッドに静かに寝かせる。

ロバート「おやすみ、和ちゃん」
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:16:48.71 ID:BFg1cFqj0
原村和かと思った
53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:17:57.74 ID:RugLphUO0
――

和「…うっ…ぅうあぁ…」

和が目を覚ますと、そこは再び灼熱のサウナ部屋だった。
何度この熱気を体験しただろうか?義手を懇願して以来、和は意識がある間は延々と灼熱の拷問を受けていた。
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:18:44.29 ID:RugLphUO0
ベッケル博士「今日で何日目だったかな?」

ロバート「日数を数えるなんて和ちゃんに失礼ですよ。目覚めている間は常にこの悪夢の中にいる。彼女にとって日々の経過なんてなんの意味も無い」

ベッケル博士「んっ!ロバート君…優れた腕を欲していた、あの日の彼女を覚えているかね?」

ロバート「………」

ベッケル博士「仕掛けも何も無いただの人形に付ける様な木の腕を前にして…『ふざけるな』『からかっているのか』と問うのが普通。しかし彼女は…」
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:19:26.49 ID:RugLphUO0
――ねぇ…私は…何をすればいいの…?

ベッケル博士「こんな拷問を受けると知っていても…彼女はああ言ってみせたかね?」

ロバート「…私は言ってみせたと思います」

ベッケル博士「んっ!わしもそう思う」

ロバート「そう…これは拷問です。私はね…博士、私が義足を欲した時、あなたに…」
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:20:38.72 ID:RugLphUO0
ベッケル博士を前にロバートは静かに独白を続ける。

ロバート「殺されるのだと思いました」

――私が欲しいのは義足!
――いったいこれは何のマネですか!?
――こんなサウナのような部屋に私を!?
――何故縛りつけるんです!?
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:21:21.85 ID:RugLphUO0
ロバート「何を叫んでも何度目覚めても続く悪夢、尋常ではない温度と湿度が思考を奪い、口の中からは唾液が消え何度も舌が喉を詰まらせた。目の前に置かれた水、身動きのとれない私にはどうする事も…それでも極限の中、私は……」

――水が欲しい!
――その水をくれ!
――水が飲みたい!
――水に触れたい!
――水水水水水水水水水水水水水水水水水水っっ!!

――…足が…足があれば…容易く届くのに…っ!
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:22:13.42 ID:RugLphUO0
ロバート「その欲求が極限まで高まった瞬間、足元に置かれたコップは一人でに倒れ、私は意識を失った」

独白を終えたロバートにベッケル博士が答える。

ベッケル博士「んっ!君の無い足がコップを倒したのだよ。あの瞬間、君は私の義足を付ける資格を得た。今では君の足は本物よりも良く動く」

ロバート「博士が『ゼスモス』と呼ぶ、目に見えないエネルギーのおかげです」

ベッケル博士「精神が破壊されてしまう寸前…そんな極限において初めてゼスモスは発生し得る」
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:22:56.19 ID:RugLphUO0
二人の会話の最中、サウナ部屋に閉じ込めている和が突如今までにない反応を見せ始めた。

和「ぁあぁぁぁぁあああぁぁぁああっあああぁぁぁぁああっ」ギッギシッブンッブンッ!

激しく首を振り、これ以上ないほどに拘束具を食い込ませている。
まともな発声など叶わない乾ききった喉から恐ろしい雄叫びを上げ始めた。

ベッケル博士「んっ!ついに始まりおったか!!」

和「…あ…あぁぁ………ああぁぁぁああっぁああ!っ!」

ロバート「博士…あれは…っ!」
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:23:06.33 ID:5Gqw6Whx0
ちゅ・・・中二設定・・・なのか?
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:23:47.93 ID:RugLphUO0
和の肩口から透明度が高く煙に近いようなモノが立ち上がる。
なんとも形容し難いそれはじょじょに輪郭を帯びていき、ついには無い筈の腕を形作ろうとしていた。

ベッケル博士「んっ!ゼスモスだっ!」

和のゼスモスが腕を形作りながらコップがある方向に向かっていこうとする。

ベッケル博士「伸びていくのが…」

ロバート「見えます………行けーーーっ!」
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:24:32.06 ID:RugLphUO0
ロバートの掛け声と同時に和のゼスモスは一気に伸び上がる。
ついにはコップにまで『手』が届き…そして通過した。

パリィン!

強烈なゼスモスからかコップは破裂し中に入っていた水がテーブルに溢れる。
和の眼中は溢れた水など一切入れておらず、ただただ前だけを見据えている。
ゼスモスも前方に向かって更に伸び上がっていた。
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:25:15.72 ID:RugLphUO0
ベッケル博士「彼女は水を求めていたのではないのか…?ならば何を!?」

和の腕が、ゼスモスが、前方の蒸気の塊をさまよっている。
ベッケル博士とロバートには和がそれに対して何を求めているのか、そこに何があるのかまるで理解できない光景だった。
しかし和の目にはそれはただの蒸気の塊には映っておらず、ある五人の姿を形作っていた。

和「(田井中律!琴吹紬!中野梓!秋山澪!平沢唯!!)ぁああぁぁぁぁあっああぁぁぁああああぁぁっ!!」
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:26:27.93 ID:RugLphUO0
――

ベッケル博士「体との接合部分はごくごく簡単なものだ」

和が目に見えないエネルギー『ゼスモス』を発生させてから、灼熱の拷問を受ける事は無くなった。
肩の包帯は解かれ、代わりに鉄製のカバー、博士の言う『接合部分』が肩の傷口を包んでいる。

ベッケル博士「木の腕をブラ下げておくには充分っ訓練によって動かせるようになる」カチャカチャ

そう言って博士は和の肩の接合部に木製の腕を取り付ける。
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:27:15.22 ID:RugLphUO0
ベッケル博士「んっ!ついて来たまえ」

和「……」カランカラン

言われるまま和は博士の後を歩く。
肩から先は無くした腕の代わりに木製の腕がブラ下がっている。
和が歩くたび無機質な音を立てて新しい腕が揺れていた。
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:28:14.42 ID:NcNIfw6i0
義手の元ネタは手塚治虫かな
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:28:15.08 ID:RugLphUO0
ベッケル博士「触れずにものを動かす力…失ったモノを繋ぎ止める痛み…それらによって義足 義手を動かす…そのエネルギーをわしは名付けた『ゼスモス』と」

歩きながら博士がゼスモスについて和に説明する。
気がつくとピアノのある部屋にまで案内されていた。

ベッケル博士「また拷問のような目に合わされると思っていたかい?んっ!そんなモノはもう必要ない」

和「これが…訓練…このピアノを弾く事が…?」

ベッケル博士「んっ!君は確実にゼスモスを発生させたのだ。これから大切なのは君の脳がゼスモスを理解する事だ。気長にやろう」

和「……」
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:29:15.58 ID:RugLphUO0
ベッケル博士「何日かかるかなっ」

ロバート「博士こそあせってません?」

和「(曽我部先輩…)」ジャァン♪

ベッケル博士「ブッ!」

ロバート「ええっ!?」

和「…腕が…動いた……っ!」

ベッケル博士「なんと初日にして…んっ!自分でも驚いているようだっ!」
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:30:02.00 ID:RugLphUO0
ロバート「当然です!私は5日もかかりましたけど…ほんの僅かだけど足が動いた時は驚きと感動で涙が止まりませんでした!」

和「………」フルフルフル

和はまだ上手く動かせない腕をピアノから離す。
椅子から立ち上がり不器用な動作で両肘を曲げようとしていた。

ベッケル博士「どうした和君!続けたまえ!」

ロバート「博士待ってくださいっ彼女は…彼女は実感したいんです!顔に触れ手が存在している事を!」
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:30:17.37 ID:5Gqw6Whx0
>>66
エルフェンリートしか思いつかない
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:31:00.64 ID:RugLphUO0
グッググッ

ロバート「えっ?」

その木製の掌で自分の顔の感触を確かめるのかと思いきや、和は握り拳を作り始めた。

ゴッゴトッゴスン

握り拳を振りかざしピアノの鍵盤の上に何回も置く和。
回数を増す毎にそれは置く動作ではなく叩きつける動作へと変わっていた。
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:31:49.52 ID:RugLphUO0
ゴァン!バァン!!ガァァン!

ロバート「博士…彼女は何を…?」

ベッケル博士「(彼女は…)」

ゴァン!ゴォン!ガァン!ゴアアン!!

ロバート「やめて和ちゃん!せっかくの腕が壊れてしまう!!」

ドギャァンッ!!!

ロバート「…っ!」
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:32:13.58 ID:81BVlpJKP
>>66
手塚治虫というかダイモンズだな
74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:32:15.55 ID:NcNIfw6i0
ああ思い出した
鉄の旋律だよたしか
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:32:40.74 ID:RugLphUO0
和が叩きつけていた腕はついには鍵盤を破壊してしまう。
それと同時に木製の腕もズタズタに砕かれ腕としての原型を止めていなかった。

和「日常を取り戻す腕など求めていないわ……」

ベッケル博士「…んっ!」

和「拷問で構わない…もっと丈夫な腕を付けられるようにして」

ベッケル博士「拷問などしても…丈夫な腕は付けられん……接合部分を強化せねばな」

和「出来るのね…もっと頑丈な腕に」

ベッケル博士「んっ!用意はある」
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:33:49.54 ID:RugLphUO0
――

ベッケル博士の研究所から少し離れた森の中。
そこにある巨大な大木の前に和は立っていた。

和「………」ギ ギィ

そこで自らの腕の感触を和は静かに確かめる。
腕を動かすたび無機質な重い音が響く。
その腕は木製ではなく淡く銀に光る鉄製のモノだった。
77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:35:05.69 ID:RugLphUO0
ロバート「ねぇ博士、和ちゃん…一人で大丈夫ですかねぇ?鉄の義手は木製のモノより動かすのが難しいんですよねぇ」ズズッ

研究所の一室、そこで和の帰りを待つようにベッケル博士とロバートがコーヒーを啜りながら談話していた。

ベッケル博士「ん!当然だ。しかしその強度も彼女の求めている破壊力も木製とは比べ物にならんだろう」

ズズゥン!

談話中に外から重い音が鳴り響く。
しかし博士とロバートはまるで動じない。
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:36:10.18 ID:RugLphUO0
ロバート「…和ちゃんですね」

ベッケル博士「んっ!あの鉄の腕に秘められた可能性…それを確かめている最中…といった所だろう」

ロバート「何にしても、あの鉄の腕は彼女の一生の宝物ですね」

ゴッ!グァァァン!ゴキャ!

和「うあぁぁああぁっ!!」

雄叫びを上げながら和は巨木を相手に鉄の腕の感触を確かめていた。
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:37:09.53 ID:RugLphUO0
殴り突き刺し引き裂く。

鉄の腕による一挙手の動作のたび、辺りに轟音が鳴り響く。
和が奏でる轟音により辺りに居た小動物たちは皆逃げ出していた。

和「はぁ…はぁ…はぁ…」

鉄の腕による破壊を止めた後の巨木は幹の半分程が砕かれ根元が地表に露出し大きく傾いていた。
並の人間では重機を用いる事によってようやくここまでの破壊が達成できるだろうか。
少なくとも生身の腕では絶対に成し得ないであろう成果だった。
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:38:30.07 ID:RugLphUO0
「はぁ………っ!」

ゴッ!ゴバッ!グラグラッ ズズッドドドド

和が鉄の腕に成果に満足するのも束の間。
傾きすぎた巨木がついには自身を支えきれなくなり根元に立っていた和を吹き飛ばしつつ倒れ始めた。

和「う……く…っ」グッグッ

巨木が倒れた衝撃で土砂が崩れ巨大な岩盤が和の右腕を下敷きにする。
下敷きになった右腕をなんとか動かそうとして脱出を試みようとするが、
いかな鉄の腕とはいえ、その巨大な岩盤を押し上げるだけの力を和は持っていなかった。
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:39:33.13 ID:RugLphUO0
和「(なんてこと…このままじゃ…)」チラ

和が上を見ると崖の上に巨岩がもう一つあった。
なんとも危ういバランスで立っているため、いつその巨岩が落ちてきてもおかしくはない。

和「く…っこの…っ…この…っ!」ガンガンガンガンガンッ!

右腕に挟まった岩盤を和は自由に動く左腕で殴りつけ必死に砕こうとする。
しかし巨木を砕く事は出来ても、岩盤を砕く事は鉄の腕を持ってしても叶わなかった。

「…くぅ…お願い…なんとか…っ!」ガンガンガンッ!

必死に足掻く和だったが、岩盤はビクともしない。
そして鉄の腕で殴りつける衝撃の影響からか危ういバランスで立っていた崖の上の巨岩がますます危ういバランスになっていく。
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:40:56.44 ID:RugLphUO0
和「この…っこのぉっ!…はっ!!」

そしてその巨岩はついに崖からずれ落ち和の頭上へと降ってきた。

和「うわぁぁああわぁぁああっ!!(私死ぬの!?ヤツらに、あの5人に、怒りも恨みも何一つ伝える事が出来ずにっ!!)」

――オ・ト・シ・マ・エ!
――きゃーっ!大成功〜!
――部を潰させるわけにはいかない
――心配ですか?腹立たしいですよ
――最高の絶望だよ

和「うわぁあああぁぁぁあっ!!」
83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:41:49.19 ID:RugLphUO0
――――

ロバート「遅いですね…和ちゃん何かあったのかも、私ちょっと捜してきます」

ロバートが森に出た和を探しに行こうと研究所の玄関を扉を開ける。
しかし扉を開けたすぐそこには一人の人間が立っていた。

和「………」

ロバート「和ちゃん!!」
84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:42:43.93 ID:RugLphUO0
探しに行こうとしていた人間がすぐそこに居た事でロバートは驚きの声を上げる。
しかしその驚きにはもう一つ別の意味も含まれていた。

ロバート「どうしたの!?その腕ボロボロじゃないの!!なんでそんな…あなたの宝物でしょ!?」

和「木は壊せても…岩は砕けないのね」

ロバート「な…何を言ってるのよ…右腕…右腕は一体!?」

ベッケル博士「……」

和「ええ……捨ててきたわ」
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:42:44.27 ID:NanxyOy6P
紫煙
86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:43:47.02 ID:RugLphUO0
和の右の接合部には何も付いていなかった。
岩盤から脱出するため和は文字通り右腕を捨ててきたのだった。

ロバート「和ちゃん…どうかしちゃってますよ、博士…」

ベッケル博士「…破壊力を存分に試した結果か、痛みを感じないその腕ならではの行為だな」

和「…」

ベッケル博士「例えば火を恐れる事も無ければ凍傷の心配もない。毒を有する生物も無力。細菌が腕を蝕む事もない。そして最大級と言える利点を君は知ったわけだな」
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:44:19.08 ID:1Ljm57fk0
面白い続けろ
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:44:54.34 ID:RugLphUO0
博士が今は何も付いていない和の右腕の接合部を見ながら言った。

ベッケル博士「場合によっては捨てちまえばいい…つまり取り替えがきくと…」

ロバート「博士…」

和「あるのね、次の腕がっ」

ベッケル博士「何本何十本でも作ってやる。より強力な岩をも砕く腕を…!!」
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:46:08.01 ID:RugLphUO0
――――

ロバート「和ちゃん…今日も戻ってきませんでしたね、今回はもう2週間になりますよ」

ベッケル博士「んっ!彼女は今必死だ。彼女の望む腕ならわしがいくらでも造ってやれる…だがな…」

ロバート「…」

ベッケル博士「和くんにはそれ以外に会得せねばならんモノがある。わしにはどうにもならん…しかし!それなくして彼女は人生の目的に近づく事はできん」

ロバート「和ちゃんの…生きる目的…」
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:47:34.39 ID:RugLphUO0
―とある森の中!

ハンター1「へへ…動くなよぉ…子鹿ちゃぁん…一発で楽にしてやるぜぇ…」

1人のハンターが手に持ったライフルで1匹の子鹿を狙い打とうしていた。
ちなみに彼がいるこの森は国によって狩猟禁止区域に指定されている。

子鹿「…!!」ダダダッ

ハンター1「ちっ!気づかれたか!?しかし逃がさねえぜ!!」タッタッタッ
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:48:38.30 ID:RugLphUO0
ハンターの殺気に感づいたのか子鹿は森の奥深くへと走っていく。
それを逃がすまいと子鹿に続き森の奥へハンター1も走る。

バサバサバサァ

ハンター1「…っこの音はっ!?そうか!罠にかかりやがったんだな!へへ…ラッキー!!」

ハンター1にはそんな方向に罠を張った覚えなど無かったが、彼には相棒のハンター2がいる。
きっとそいつが張った罠なのだろう全く頼りになる相棒をもったもんだぜ!
と思いハンター1は音がした方向に歩を進めた。
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:49:43.25 ID:RugLphUO0
ハンター1「お、おい…そんなトコで何やってんだ?」

そこには罠にかかった子鹿など居なかった。
代わりにハンター1にとって頼りになるはずの相棒、ハンター2が木の枝に挟まり宙ぶらりんの状態で動けずにいた。

ハンター2「な…投げられた…」

ハンター1「な、投げって…」

ザザッ

突如、ハンター1の後方に人影が走る。
93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:51:27.78 ID:+UnDHVtV0
C
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:51:42.55 ID:RugLphUO0
ハンター1「なんだぁ!?」

足音を補足したハンター1はすぐさまライフルを構えるものの。

ガッ!

ハンター1「うぉっ!」

補足した足音の持ち主の、その腕によって銃口が捕まれる。
ハンター1が見たそれはただの腕ではなかった。
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:52:20.10 ID:RugLphUO0
ハンター1「鉄の腕…!?」

グギギィ

鉄の腕に捕まれたライフルの銃口はいとも簡単に折れ曲がった。
武器を失ったハンター1は、鉄の腕であっさりと喉仏を摘まれる。

ハンター1「ひっ!!」

ハンター1を完全に降伏状態にさせた後、鉄の腕の持ち主は声を発した。

?「46…」
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:53:06.85 ID:RugLphUO0
――――

男2「…ってぇ話」

男1「ライフルを折る?なんだそりゃ?」

男2「そう聞いたんだよ」

男1「そんなヤツいるわけねえだろが!大体襲った後、45とか46とか数をかぞえるってのはなんだよ」

男2「知らねえけどよ、カウントした後、妙な表情浮かべるらしいぜ、半年程前から他の狩猟部隊が何人も出くわしてるんだってサ」

男1「もうちっとマシなホラ話しろよ。くだらねえ事言ってねえでさっさと仕事済ましちまおうぜ」
97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:54:03.80 ID:RugLphUO0
男2「……こういう話もあるぜ?」

男1「ああ?」

男2「戦車がよ…やられちまったって、砲身を曲げてその場に佇んでよぉ…また妙な表情をするらしいんだ」

男1「砲身を曲げるなんてありえねえだろがっ!!」

男2「歓喜とも怒りとも取れる表情するんだとよ」

男1「…へっ一度お目にかかりたいもんだねっ実在するんならよ!」

隊長「作業急げっ!」

男1「うーっす」
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:55:03.56 ID:RugLphUO0
男2「爆薬設置完了しました!全て23:00時にセットしてあります」

隊長「よぉし…予定通り、この狩猟施設は爆破し放棄する。狩猟禁止区域での狩猟の証拠は残してはならんからな、さぁヘリへ急げ」

男2「あの…隊長は鉄の腕の女の話…ご存知ありませんか?」

男1「まぁた、その話かよ!」

隊長「…ダイモンズ・ノドカ……か」

男2「ダイモンズ・ノドカ?」
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:55:49.68 ID:RugLphUO0
隊長「密猟が激しいこの地が生んだ守り神、襲われた狩猟部隊は二度とその地に近づかず動物達にのどかな平穏が訪れるという」

男1「なんすかそれ…」

隊長「通称、悪魔の平穏、ダイモンズ・ノドカ…そう呼ばれているらしい」

男2「それじゃ・・・その女は・・・本当に・・・」

隊長「実際に確認したわけではない。あくまで噂と考えていい」

男1「ははっですよねっ」
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:56:53.80 ID:RugLphUO0
ゴォン!

隊長「なんだ、今の音は…!?」

ゴォン
ミシッ

音のした方向に隊長が振り向くとそこはコンクリートの壁だった。
しかしよく見るとその壁に亀裂が走っており、その亀裂が段々大きくなっていくのが見える。

ミシミシミシィ
ドゴンッ!!
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:57:59.87 ID:RugLphUO0
男1「ひっ!」

ついにはその亀裂が裂け、壁に大きな穴を開ける。
穴を開け、壁を突き破って出てきたモノの正体は鉄製の腕だった。

男2「ダイモンズ・ノドカぁ!?」

男1「うぉおおおおお!!」ジャキッ

鉄製の腕へ向け男1は銃を構える。

隊長「やめろ!構うな!ヘリへ急げぇ!!」
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:58:43.54 ID:RugLphUO0
和「………」

壁を突き破り和が現れるやいなや、隊長達はヘリに乗り込み急ぎその場を撤収した。

男2「ヤツはここへ何のために!?」

男1「何が欲しかったのか知らねえが、あの施設もろともっ」

ドドォンドドンッ!!

上昇したヘリの機内から男1は地上に見える狩猟施設の爆発を確認する。
男2が仕掛けた爆弾が起動したために起こった爆発だった。
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 16:59:42.05 ID:RugLphUO0
男2「本当にいたとはな・・・」

男1「もォいねえよ!ははっ!悪魔もあっけねぇよなァ!」

隊長「ふぅ」

ダイモンズ・ノドカはもう居ない。
爆発に巻き込まれ消えたのだ。
隊長はそう確信し安堵の息を漏らす。

ベキベキッ

隊長「ん?」

飛行中のヘリのハッチから何かを剥がすような音が聞こえた。
104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:00:28.27 ID:nIAh8k76P
なにこれ面白い
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:02:04.24 ID:RugLphUO0
バキィ!!

男1、男2「「ひぃぃぃぃぃっぃいいぃっ!!」」

ハッチが外側から強引にこじ開けられる。
そこには怒りとも歓喜とも付かない表情の和の姿があった。

隊長「き、機体に張り付いていたのか・・・!?その鉄の腕でっ!!」
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:02:42.21 ID:RugLphUO0
ドッ
男1「げふっ」

和「98…」

ガンッ
男2「ぎゃっ」

和「99…」

機体内に進入した和は一瞬の内に男1と男2を殴り倒す。
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:03:36.28 ID:1Ljm57fk0
っていうか元ネタの漫画があったんだな・・・
すげえ面白いと思ってたら俺が情弱だったわ
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:03:45.51 ID:RugLphUO0
隊長「キ、キサマの目的はなんだ・・・」

ヘリを操縦中の隊長には抗う術が無い。
口を動かす事しかできなかった。

和「……」

隊長の問いに和は何も答えない。
無言のまま近寄り鉄の腕の冷たい感触を隊長の首筋にあてがった。

隊長「……っ」ゴクリ

和「100……」
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:04:45.71 ID:RugLphUO0
隊長の首筋に鉄の腕をあてがっただけでカウントを終えた和はそのままヘリから飛び降りた。
男1、男2も見れば殴り倒されただけで死んではいない。

隊長「あの女がカウントしていたのは、殺した数…いや殺し得た数…狩猟を生業とする我々相手にその数100……」

森の奥深くにヘリから飛び降りた和は着地した。
落下中、鉄の腕を木の枝に絡ませ多重のクッションにする事で衝撃を和らげ高度からの着地に成功していた。

和「軽音部………待っていなさい…っ!」
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:05:44.24 ID:RugLphUO0
――――

…再び時は過ぎ。

和「〜〜♪」シャワーッ

ついに旅立ちの日を迎えた和は出発に備えシャワーを浴びリフレッシュしていた。

ロバート「和ちゃんがここへ来て10ヶ月…いよいよお別れですね」

ベッケル博士「んっ!彼女はゼスモスを完璧に使いこなしている。しかし…ゼスモスを完全に理解しているかと言えば不安がある。そこでわしはシャワー室にちょっと変わった素材の腕を用意しておいた」
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:06:54.55 ID:RugLphUO0
ポロ〜ン♪
ポロロ〜ン♪

音楽室からピアノの音色が鳴り響いてくる。
家の中には博士とロバートと和の三人しかいないため、弾いている人間は1人しか該当しない。

ロバート「あ、和ちゃんシャワーから上がったみたいですね」

ベッケル博士「んっ!どうやらわしが用意した『変わった腕』は使いこなせているようだな」
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:07:41.20 ID:RugLphUO0
博士とロバートが音楽室に入るとピアノを演奏する和が居た。
その腕には鉄でも木でも無いリボン素材の義手が装着されている。
ゼスモスによって腕の輪郭を形成したリボンは実に柔らかなタッチで鍵盤を弾いていた。

ロバート「リボンの腕…!?」

ベッケル博士「んっ!彼女のゼスモスはありとあらゆる素材を腕として操る事が出来る。しかしゼスモスは素材を変質させる事は無い、つまりリボンは」

言いながら鋏を手に持ったベッケル博士は演奏中の和に近づく。

ベッケル博士「しょせんリボンだ」ジョキンッ

和のリボン腕をベッケル博士は躊躇なく鋏で切断する。
113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:08:37.25 ID:RugLphUO0
ロバート「…っ!」

演奏はピタリと止まり、和の腕として機能していたリボンはその形を崩しヒラヒラと床に落ちていった。

ベッケル博士「そして言っておく…君がゼスモスを発生させた時のような状態であれば切られたリボンを繋ぎとめる事もできよう」カチャ

そう言って博士は和のリボン腕を接合部から取り外す。

ベッケル博士「しかし常に精神を極限状態にしておくのは不可能。神経がいかれてしまう、つまり君に動かすことができるのは接合部に繋いであるモノだけだ」ガチャリ

今度は人口皮膚でコーティングした義手をベッケル博士は和に装着させた。
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:10:41.03 ID:RugLphUO0
ベッケル博士「中身は鉄の腕だ。見た目は生身の腕の方が相手も油断するだろう?」

ロバート「相手…」

ベッケル博士「このカバンを持ってゆけ、腕を収納するためのモノだ。とりあえず3セット詰め込んでおいてやろう」

そう言ってベッケル博士は黒塗りの大きなカバンに『腕』を3対詰め込んだ。
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:11:27.07 ID:RugLphUO0
ロバート「和ちゃん、ちょっと来てくれる?」

和「?」

呼び出された和の前に靴が差し出された。
良く見るとその靴には小型のアナログ時計が嵌めこまれており、チクタクと秒針を刻んでいる

ロバート「私が作ったの、履いてみて」

和「…うん」キュッキュッ

ロバート「何故時計が付いていると思う?和ちゃんの義手は強力だけど…外れてしまうモノだからね」

和「……」

ロバート「最後に頼るのは私は腕、和ちゃんは足…そう、生身の部分……大事にしなきゃ」
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:14:50.77 ID:7SWv/pBVP
面白いけど文章がへたすぎる
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:18:39.77 ID:iPH+B7fU0
あら規制かしら
118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 17:34:53.83 ID:1Ljm57fk0
しえん
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 18:00:16.90 ID:RugLphUO0
次にロバートは和用にあつらえた衣服を差し出す。

ロバート「シャツとスカート、そしてその制服にも防弾加工がされてる…ねぇ和ちゃん…」

用意された制服に身を通しながら和はロバートの言葉に耳を傾ける。

ロバート「平穏な日々を生きるのであれば、不自由なく楽しくやれる」

和「……」

ロバート「デスクワークは勿論、今の和ちゃんなら力仕事だって簡単きっとひっぱりダコ!可愛いしアイドルなんかも良いかも♪」

和「…私は……」
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 18:01:36.12 ID:RugLphUO0
ロバート「…貴女は本気で選ぶの?一人きりで戦う人生を…」

和「…っ」

ロバート「それでも…和ちゃんが、どんな人生を歩もうと…離れた場所に1人…友達がいる事、忘れないでね」

和「……律…紬…澪…梓…唯…」

ロバート「…和ちゃん?」

和「みんな…友達だった」

ロバート「でも、私はっ」

ベッケル博士「彼女には友達などいらん!!」
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 18:02:26.78 ID:RugLphUO0
ロバート「博士…?」

ベッケル博士「彼女に必要なのは怒り!憎しみ!それを失えば彼女のゼスモスが消滅する可能性さえあるのだ!怒りと憎しみの上で成り立つ人生!彼女は普通に生きる事などできん!!」

ロバート「……それって人間ですか?…彼女は…人間です!!」

カバンを手に持った和は既にロバートと博士を背にして歩き始めていた。

ロバート「和ちゃん!!」
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 18:03:41.26 ID:RugLphUO0
呼びかけに反応して和は立ち止まる
そしてロバート達に振り返り最後に声をかけた。

和「ロバートさん……ありがとう」ニコッ

ロバート達に初めて、そして最後に笑顔を見せた和は再び歩き始めた。
怒りと憎しみの人生に向かって。
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 18:11:36.98 ID:RugLphUO0
区切りのいいトコで投下一休み、一回目はここで落ちちゃった。
まだテキストのスクロールバー半分もいってないので、途中で途切れたら、また規制くらったと思ってくださいっす

>>49
マジすか。
ちなみに室温92℃、湿度83%ってのは元ネタそのまま、人間ってそんな環境でも生きられるのかどうか疑問だったけどまんま書いた。

>>116
文章下手なのは大目にみてくれ。
元ネタのかっこよさを伝えたくて頑張ってるんだけど難しい。
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 18:13:32.31 ID:RugLphUO0
あと支援してくれた人あざっす
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 18:22:07.91 ID:/zjZSkSL0
元ネタ教えてくれ
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 18:31:15.05 ID:iPH+B7fU0
ほす
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 18:31:30.56 ID:gzu5pNM80
これこないだあったやつ?
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 18:42:42.35 ID:RugLphUO0
――げんざい!

都会の喧騒から少し離れたある荒野、黒いコートに身を包んだ一人の殺し屋がそこに居た。

殺し屋「今回のターゲット、田井中律…ヤツについての噂は二つ…」

その手にはただの一度も標的を撃ち漏らした事の無い自慢のスナイパーライフルが握られている。

殺し屋「…乱打乱撃のドラミング…正確無比のリズムキープ……」チャキッ
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 18:43:55.20 ID:RugLphUO0
殺し屋は静かにライフルを構えた。
スコープ越しの目には一つの空き瓶が移っている。
肉眼では豆粒程の大きさにしか映らない、はるか彼方にある空き瓶だった。
そしてモノ言わぬ標的に向いライフルの引き金を絞る。

パァンッ!
パリィン

ライフルの発射音の刹那、空き瓶の割れる音がかすかに響いた。

殺し屋「真実はどっちだ?」
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 18:44:54.00 ID:Jb1EoQof0
律編か
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 18:45:09.21 ID:RugLphUO0
――――

ガチャ
ギィ

とある深夜のバー。
その入口の扉を開ける一人の女が居た。

律「うぃーっす」

バンド男1「あ!律さん、ちぃーっす!」

バンド男2「律さん、おつかれーっす!」

マスター「いらっしゃい、りっちゃん」

律「マスター、いつものやつねー!」
132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 19:02:17.36 ID:RugLphUO0
マスター「はいはい、りっちゃんはいつもファンタのオレンジだったね」

いつも通りの注文に応えたマスターはキンキンに冷えたファンタのオレンジジュースを律に差し出す。

ゴキュゴキュッゴキュッゴキュン
律「くぁー!これこれっ!ライブの後はやっぱコレだよなぁー!生き返るぅー!」ダンッ

バンド男2「律さぁん、有名なんだし金持ってんだからさぁ…シャレた酒でも飲みましょうよぉ」

律「未成年に酒なんか勧めんなっつの!私はまだ花も恥じらう『ジョシコーセー』なんだぜぇ?」

バンド男1「またまたぁ!あの放課後ティータイムのドラマー、ドラムの神様とまで言われた田井中律が花も恥じらうだなんて冗談キツイっすよ!」
133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 19:04:28.72 ID:RugLphUO0
律「………フンッ」ボグッ

軽口を叩くバンド男1の鳩尾に律はキツーイ一発をお見舞いした。

バンド男1「げふっ…こ、こんなだからあんた……」

律「なんか言ったかぁ?」

バンド男1「な、なんも言ってないっす!」ブンブンッ

マスター「ホントりっちゃんは相変わらずだねぇ」ニコニコ

バンド男2「しっかしまぁ!未だに信じらんねーよなぁ!あの放課後ティータイムのドラマーがウチのバンドに入ってくれるなんてさ!おかげで今日のライブも大成功だったし!」

バンド男1「だよなぁ!俺、放課後ティータイムのメンバー全員に憧れてたもん!みんな可愛くてカッコ良くてさぁ!あの伝説の武道館ライブは思い出すだけで鳥肌が立つぜ!」
134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 19:05:44.23 ID:RugLphUO0
律「………昔の話だって!大体入ったっつっても助っ人としてだからなっ、マスター!オレンジジュースおかわり!」

マスター「はいはい♪」

バンド男2「…昔って、まだ1年も経って無いじゃないですかぁ?」

バンド男1「そーっすよぉ!なんかババ臭いっすよ律さぁん!今日のライブで燃え尽きちまったんすか?まっ白な灰になるまで!?」

律「……あーもう!いちいちうるさいんだよ!お前は!」ボカッ

バンド男1「イ、イデー!イデーっすよ!律さん!!もーいっつも俺ばっかブン殴らないで下さいよぉ」グスッ

律「シャーラップ!昔はあたしの方が殴られ役だったんだ!ブン殴られるのはいつも一言多いせいだってお前を見てて気づいたぜ!」

バンド男1「……」グス
135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 19:07:34.60 ID:RugLphUO0
バンド男2「…そんな事より…やっぱ色んなトコで噂になってますよ。律さんが狙われてるって話」

バンド男1「……グスリ…なんだよそれ?」

バンド男2「もう泣くなって…なんでも律さんの事を殺そうとしている人間がいるらしいんですよ」

律「…ふーん」

バンド男1「おいおい、このご時世に殺し屋でもいるってのか!?寒すぎて笑えねえよ!」

バンド男2「こんなご時世だからこそ殺し屋が居たっておかしくねえよ…何せ俺達パンピーでさえこんな物が簡単に手に入っちまう世の中なんだからな」チャキッ

そう言って男2は懐から黒光りする物体を取り出す。
136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 19:09:19.74 ID:RugLphUO0
バンド男1「ちょっ!おま…っ!それって拳銃……」ブルブル

バンド男2「1年ぐらい前からこの国の治安は悪くなる一方だ…、こんなもんでも持ってなきゃ自分の身が危ねえ」

バンド男1「……ゴクリ」

バンド男2「お前も持っといた方がいいかもな…まぁお前じゃ別の意味で危ねえかもしれねえけど」

バンド男1「…ぅ……ちょっ律さぁん!こいつこんな事言ってますよ!?なんとか言ってくださいよぉ!」

律「…ん…あぁ………まぁあたしは男2には賛成だな」
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 19:10:39.49 ID:RugLphUO0
バンド男1「んな!律さんまでっ!?俺が銃を持ったら見境いなく乱射するキチガイだとでも思ってるんすか!それとも自分で自分の頭を撃っちまうようなアホだとでも思ってるんすかぁ!?」

律「いや違うって、そうじゃなくて、それぐらい自衛しとかなきゃ危ないって事だよ。特にお前なんかすぐやられそうだし銃の一つぐらい持っといた方がいいぞ」

バンド男1「…まぁ…律さんがそう言うなら…でも俺、自分を守るために銃は使わないっす!男は惚れた女を守るために銃を撃つもんっす!」

律「あー、はいはい頑張れ頑張れ」

バンド男2「…まぁともかく気を付けて下さいよ?さっきも言ったけど律さんが狙われてるって話…結構デカイ噂なんですから」
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 19:13:00.37 ID:RugLphUO0
コンッコロコロ…ガコンッ!

律「……」

バンド男2が改めて注意した途端、球の転がり落ちる音が律の耳に届いた。
振り返るとビリヤードをプレイしている男の姿がある。
一回のショットで一つづつ球をポケットに落としていく堅実な男のプレイだった。

殺し屋「…」コンッコロコロ コッ カコンッ

律「………」

バンド男2「…律さん?」

バンド男2を無視し律は席を立ちあがる。
139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 19:14:30.60 ID:RugLphUO0
律「………1つずつじっくり確実に、ですか?」ヒョイッ

殺し屋「…っ!」

律「…ねぇねぇ?それってマイキューでしょぉ?ちょっとあたしにもやらせてよぉ〜♪」

殺し屋の肩から律が顔を覗かし、ややブった態度で話しかける。
一瞬戸惑うものの殺し屋は素直に手に持っていたキューを律に手渡した。

律「よっ!」コッ コロコロ

律「ほっ!」カッ コロコロ
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 19:16:11.77 ID:RugLphUO0
殺し屋からプレイ場所を奪ったものの律がショットする球は一つもポケットに落ちず、
ただコロコロと転がるだけたった。

律「あちゃ〜」

バンド男2「はははっ」

バンド男1「律さ〜ん!まじめにやってくださいよぉ」ニヤニヤ

律「うるせー!仕切り直しだぁ!一つづつじっくりなんて、りっちゃんの性には合わーんっ!!」

殺し屋「…(田井中律……ただのビッチだな)」
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 19:17:54.46 ID:RugLphUO0
律「さぁゲーム開始だ、あたしから弾いてもいいんだろ?」

殺し屋「……」スタスタ

殺し屋は勝手にゲーム開始の宣言をする律を無視してカウンターの方に歩いて行く。
そして勘定を済ませバーを出て行き殺し屋は立ち去っていった。

マスター「ありがとうございました。またいらして下さいね」ニコニコ

バンド男1「あ〜あ、フラれちまいましたね、律さぁん」ニヤニヤ

律「…ふん……」
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 19:53:29.83 ID:iPH+B7fU0
また規制か
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:00:27.12 ID:RugLphUO0
相手が居なくなったのにも構わず律はブレイクショットの態勢に入る。
構える手には通常のキューではなくドラムスティックが握られていた。

律「…(スタイル……生き様が出るんだよ、玉突きってのはさっ)」カッ!

ガコン ゴン ゴコン ガコン ゴン ガコン ゴォン ゴコン ゴトッ

律のドラムスティックでのブレイクショットは、あろうことか手玉以外の球を残さず全てポケットへ落とし切った。

バンド男1、2「「おーーーっ!!」」

律「ヤるなら全部まとめてド派手にだっ!これがドラマーの…あたしのスタイルってもんよ!」
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:03:06.56 ID:4WKpH+gN0
がんば
145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:05:46.39 ID:RugLphUO0
すんませんす、また投下一休みするす。
なんか頻繁に規制くらう。どれぐらい間を空ければ落ち着くんだろう。
まだ書き溜め大量に残ってるのに、規制くらってスレ終了とかぶっちゃけ泣くんで、予告なく途切れてたら支援頂けるとありがたいっす。

>>125
元ネタはダイモンズって漫画、ちなみにそのダイモンズの元ネタは鉄の旋律っていう手塚漫画

>>127
こないだあったやつっす。
途中まで再投下になってるけど、所々修正してる。
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:11:30.49 ID:2Z1T8m180
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:23:49.38 ID:DmszVi8L0
ほしゅ

ちょっと原作買ってくる
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:37:32.08 ID:RugLphUO0
――――

後日、とあるライブハウス。

バンド男1「みんなー!今日は俺達のライブに来てくれてありがとう!愛してるぜ!ベイビーッ!!」

ワー!ワーー!!

観客「きゃー!りっちゃーん!!りつさまー!!マイク持ったブ男どきなさいよ!りっちゃんが見えないでしょー!うおー!!りつーー!!!」

リーツ!リーツ!リーツ!リーツ!リーツ!!
リーツ!リーツ!リーツ!リーツ!リーツ!!

バンド男1「やっぱ目当ては律さんかよ…俺、一応ボーカルなのに……」グス

バンド男2「……」ポンポン
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:39:14.70 ID:RugLphUO0
バンドの顔であるはずのバンド男1が声援を浴びるどころかブ男呼ばわりされる現実にガックリと肩を落とす。
その気持ちを汲み取ったバンド男2が慰めるようにバンド男1の肩を叩いた。

律「だれが目当てか、なんて関係ねえ!あたしたちは来てくれたお客さんのために全力で演奏して応えるだけだ!始めるぜ!!」カンカンッ♪

バンド男1、2「「うっっす!!」」

律の気合の一声からライブは始まった。
ドラムの神とまで言われた律の演奏とカリスマ性から観客は一気にヒートアップする。

キャー!リッチャンステキー!ワー!ワー!

観客の中には律の弟、聡と黒いスーツに身を包んだ男の姿があった。
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:40:31.28 ID:RugLphUO0
聡「姉ちゃん頑張れーっ!!」

殺し屋「……(密集した人ごみと半端な音などかき消してしまう程の騒音…暗殺にこれほど適したシチュエーションも他に無い)」

演奏も佳境に入り観客のテンションは最好調に達する。

リッチャン!カッコヨスギー!
キャー!リツサマー!!

殺し屋「……(狙うは演奏終了間際、ヤツがソロでドラミングを始めるタイミング、ドラムチェアーに座ったまま動かないヤツを撃ち抜くなど容易っ!)」スッ
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:42:03.10 ID:RugLphUO0
律のドラムソロが始まり殺し屋は携帯していたライフルをそっと構える。
他の観客はみな律のソロ演奏により興奮の極みに達し、誰も殺し屋の挙動に気がつかない。

ワー!ワー!
リツー!スキダー!
キャー!キャー!
ケッコンシテクレー!ウオーッ!!
リーツ!リーツ!リーツ!リーツ!リーツ!!

殺し屋「……(私はキサマのようなビッチに対しても入念な下調べを行ってきた。日々の行動から演奏の細かな構成に至るまで…その私が仕損じる筈がない、死ねっ!)」カチャ

殺し屋が今まさにライフルの引き金を絞ろうとした瞬間
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:43:15.04 ID:RugLphUO0
律「…………っ!」ズダダダダダダッ♪ダダダ♪ ヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッ

バァン!
殺し屋「…ぐぁっ…」プシューッ

殺し屋の脳天にドラムスティックの先端が突き刺さる。
律がステージ上から投げつけたドラムスティックだった。
演奏終了直前に投げつけた5本のうち1本のスティックが殺し屋の脳天から血を噴き出させていた。

殺し屋「……(乱打乱撃のドラミング…まぐれあたりに敗北するとは…)」バタリ

殺し屋はライフルの引き金を絞る事なくその場で息絶える。
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:43:51.01 ID:+UnDHVtV0
りっちゃん、逮捕です
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:43:59.91 ID:2Z1T8m180
とんでもねーやろうだ
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:44:51.57 ID:RugLphUO0
バンド男1「律さん!!」

演奏を終えた直後、観客に向かってスティックを投げつけた律に男1が声を上げた。

律「なんでもないって…あたしを殺るのにたったの『5』人…ったく舐められたもんだねぃ」

殺し屋以外に4人の観客の死体があった。
その4人の死体はみな銃を携帯しており、脳天にスティックが突き刺さっている。
全員、律を狙っていた殺し屋だった。
5人の殺し屋たちは演奏終了と共にその命も終えていた。
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:46:27.90 ID:RugLphUO0
――――

ミーハー女1「りっちゃん、おつかれさま〜!」

ミーハー女2「今日もかっこよかったよ♪りっちゃん!」

ミーハー女3「りっちゃんつかれたでしょ?肩もんであげるね♪」モミモミ

ライブ終了後、律とバンドのメンバーはいつものバーで打ち上げを行っていた。
律の周りには親しいファンの女の子たちが集まりライブの労をねぎらっている。
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:48:14.54 ID:RugLphUO0
律「わははは♪くるしゅうない!くるしゅうないぞぉ!」

バンド男1「相変わらず律さんはモテモテっすねぇ。ファンの1人ぐらいくれたって罰は当たらないっすよ?」

ミーハー女に囲まれた律のテーブル席にバンド男1が割って入ってくる。
ファンにチヤホヤされる所か労いの言葉すら掛けてもらえない彼は今までカウンター席で飲んでいた。
それがさすがに寂しくなったのか自分からミーハー女達に声を掛ける。

バンド男1「あ、そうそう君たち!今日の俺のボーカルどうだった?けっこうイけてたと思うんだけどー?」

ミーハー女1「いきなり割って入ってくんじゃないわよ!ブサイクボーカル!!」

ミーハー女2「うざーい!私たちりっちゃんの演奏しか聞こえてなかったんですけどー?」

ミーハー女3「誰か歌ってたのー?っていうかーおまえ洗ってない犬の匂いがすんだよ!」
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 20:48:33.64 ID:faQ/2Jys0
読んで無いけどタイトルで吹いた
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:01:11.85 ID:iPH+B7fU0
和どこいった
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:03:56.14 ID:RugLphUO0
バンド男1「ひ、ひでえ…」グス

バンド男2「だからやめとけって言ったのに…」ポンポン

律「うははは!私が良くても女の子たちが嫌だってよー!でもまぁそんなに言ってやるなよー?こいつにだって良いトコあるんだからさ!」

ミーハー女1「キャ〜!りっちゃんやさしー!」

ミーハー女2「いやーん!またほれなおしちゃう〜!」

ミーハー女3「もっともっとはりきって肩もんじゃうね!!!」モミモミモミモミモミモミモミモミモミモミ!!

バンド男1「はぁ〜あ、ミーハーな女なんてこんなもんだよなぁ、やっぱ俺は律さん以外は…ボソボソ」

バンド男2「分かった分かった。戻って飲み直そうぜ」スタスタ
161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:05:15.19 ID:RugLphUO0
果敢なアタックがものの見事に玉砕したバンド男1は相棒のバンド男2に連れられ元のへのカウンター席へと戻っていった。

ミーハー女3「次は手揉んであげるね〜♪あ、りっちゃん手もキレー!きゃ〜!」

律「キレーなだけじゃないぜー!あたしの手はこんな事もできちゃうんだぜー!!」

ミーハー女2「え〜?なになに〜??」

律「面白いモン見せてやるよ!…っと耳は塞いどけよー?ちょっと危ないからな」

言われた通りミーハー女達は耳を両手で塞ぎ、律は右腕をすぅっと頭上に上げる。

ミーハー女1「ドキドキ♪」

律「……ほっ」ブンッ
162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:07:09.81 ID:RugLphUO0
律が掲げた右腕を宙に振った瞬間、カップに注がれていた液体は大きく波打ち波紋を描いた。
そしてテーブル中央の花瓶に活けてあった花が弾け、その花びらは四散し散っていく。

ミーハー女1「キャー!!りっちゃんすごーい!!!」

ミーハー女2「りっちゃんってこんなこともできちゃうんだー!」

律「ははっ!ビックリ?面白いだろォー!本気出せばまだまだこんなもんじゃないんだぜー!」

ミーハー女3「ねぇ!どうやってやったの!?おしえて!おしえてー!」

律の言葉に従い耳を塞いでいたミーハー女たちは素直に驚嘆の声を上げるだけだったが、
何も知らずに少し離れたカウンター席で飲み直していた男二人はそうはいかなかった。
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:09:24.75 ID:RugLphUO0
バンド男1「み、耳がぁ!耳がぁ〜〜〜!!!」ブクブク

バンド男2「ちょっ!律さぁん!?やるならやるって言ってくださいよっ鼓膜ぶっ飛んだかと思いましたよ!」

バンド男2が頭を押さえカウンターに突っ伏しながらクレームの声を上げる。。
そのバンド男2より律がいるテーブルに近い位置に座っていたバンド男1は泡を吹いてのたうち回っていた。

律「いやーわりーわりー!そこぐらい離れた位置なら大丈夫だと思ってさー!」

バンド男2「ぜんっぜん大丈夫じゃないですよ!ったく」

バンド男1「うー、耳が…」

ミーハー女3「…うーむ、このタトゥがあやしい」

さきほどの芸当のタネを探ろうと、ミーハー女3が律の腕をまじまじと見る。
律の両肘から先には黒い直線が網目模様になったサイバーチックなタトゥが施されていた。
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:11:25.46 ID:RugLphUO0
律「ちょっといい柄だろォ?」

ミーハー女1「うん、前からきれいだなって思ってた」

律「だろォ!あたしは全身に入れてもいいと思ってる!」

ミーハー女2「りっちゃ〜ん!そんなコトよりカラオケ〜〜〜早くいこォよォ」

律「あたしったら今日のライブで張り切りすぎちった!また明日にしましょ」

ミーハー女1「え〜〜っ」

マスター「りっちゃんっ!!大変だ!!!」

今まで店の奥に居たらしいマスターが慌ただしく現れ叫んだ。
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:13:09.22 ID:RugLphUO0
律「どぉしたのマスター?そんな血相変えてぇ」

マスター「聡くんが攫われた…さっきJファイブのエムジェイのヤツから電話があって、弟を預かっているから姉に向かえに来させろ、って…」

律「っ!!」バッ!

バンド男2「…数あつめますか?」

律「いらねぇ!」ダダダッ

マスターからの報告を聞くやいなや律はすぐさま立ち上がり、その場を駈け出して行った。

バンド男1「…調子に乗りすぎたな」

ミーハー女2「……りっちゃん…どうなっちゃうの?殺されちゃうの?」

バンド男1「殺られるのは……相手の方だよ」
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:15:13.67 ID:RugLphUO0
投下一休み一休み
りっちゃんのナノテクは元ネタのジェストの銃とはだいぶちゃいます。

>>147
おもしろかっこいいぜ!

>>159
和ちゃんはもーちょっとしたら出てくるす。
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:19:31.09 ID:+UnDHVtV0
C
168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:32:19.36 ID:RugLphUO0
――――

Jファイブと呼ばれるバンド御用達のライブハウス
そこの最上階に捕らわれの身の聡がいた。

聡「姉ちゃんを呼び出してどうするつもりだ!?」

エムジェイ「なーニ、ちょっと話を聞いて貰いたいだけだヨ。君のお姉さんは僕の事が嫌いらしくてネ、こうでもしないと聞く耳すら持って貰えないのサ」

聡「…どーせロクでもない話なんだろ!姉ちゃんが怖いからこんな手段しか取れないんだろ!?俺だってお前がキライだよ!バーカ!!」

エムジェイ「怖がってなんかないヨ、でも君に嫌われたのは残念だネ。僕としては…とても個人的な理由で君にも興味を持っていたのだけれド……ポゥッ♪♪」

聡「う…(なんだコイツ、なんだか猛烈に嫌な予感が…)」ゾクリ
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:34:14.99 ID:RugLphUO0
バァン!!

エムジェイ「!?」

律「よぉエムジェイ、弟を迎えに来てやったぜ」

最上階の扉が蹴破られ律がその場に姿を現す。
その手には血に塗れたドラムスティックが握られていた。

聡「ね、姉ちゃ〜〜んっ!」

律「……しっかし殺し屋雇った次は誘拐かよ?順序が逆なんじゃねーか!?おい!」

エムジェイ「フフ…さすがだネ、僕が彼らを雇った事は既にお見通しだったワケダ。まぁあの程度の殺し屋連中にやられるようじゃ交渉の価値すら無いと思っただけサ」

律「………」
170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:36:21.59 ID:RugLphUO0
エムジェイ「それに誘拐じゃないヨ。預かっているって伝えただろ?ここは僕の夢の国サ!そこに聡君をご招待しただけだヨ」

律「……いや、完全に誘拐だろ?っつか殺し屋のくだりは否定しないんだな、そこはあっさり認めるのかよ」

エムジェイ「僕は嘘がキライなんだヨ。嘘をつくとロクな大人になれないからネェ」

律「…もう既にいい年したオッサンだろアンタ……しかも充分ロクでもねえ!」

エムジェイ「オッサンだなんて言うナ!!僕はピーターパンなんダッ!オッサンになんかならないんだヨ!」

律「分かった分かった、とりあえず聡返せ」

エムジェイ「それはこれからする僕の話に対しての君の返答次第ダ………しかし不思議だネ」

律「あぁ?」
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:37:44.68 ID:aqHjFpC/0
今北
原村さんじゃないのかよ
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 21:56:29.48 ID:oIO4exjuO
しえぬ
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 22:00:12.11 ID:RugLphUO0
エムジェイ「聡君と二人きりのスウィートな時間を満喫するため、腕利きのガードマン達にあと2〜3時間は君にお待ち頂くよう伝えておいた筈なんだガ?」

聡「……(2〜3時間って…こいつ何するつもりだったんだよっ!?)」

律「めんどくせーから全部ぶっ飛ばしてきた、さっさと聡返せ!」

エムジェイ「OH!さすがは田井中律だネ!オーケー!時間が惜しいようだから単刀直入に言おウ」

律「…」イライラ

エムジェイ「Jファイブに入りたまエ。前にも言った筈だヨ?ドラムをやるなら僕のバンドでやレ、ト」
174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 22:02:28.14 ID:RugLphUO0
律「……私の名前にJはついてないぜ、お前らの兄弟になるなんてゴメンだね」

エムジェイ「ブラザーになるのは、そこにいる聡君だけで充分だヨ。僕はネ…何を差し置いてでも君が欲しいのサ」

律「…今度は愛の告白かい?悪いけど、それもお断りだぜ?」

エムジェイ「違ウ、そういうのは聡君だけで充分だと言っただろ!?おぞましい事を言うナ!………僕は君の腕が欲しいんだヨ」

聡「……(ブラザーってやっぱそういう意味かよっ!)」

エムジェイ「僕のアルバム売上のギネス記録を超えた唯一のバンド、放課後ティータイムのメンバーだっタ田井中律。そのドラマーとしての腕ガッ!」

律「……しつこいぜっエムジェイ!何度聞かれても答えは同じだっ!」
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 22:04:15.61 ID:RugLphUO0
エムジェイ「…なら仕方がないナ、本当に残念だが君にはここで死んでもらうしかなイ……」

律「………っ!」

その言葉を聴いた瞬間、
律はすかさず手に持ったドラムスティックを掲げ構えようとするが、

エムジェイ「オット!妙な動きはするなヨ?君ならもう気付いているだろうガ、聡君の背中には銃口を突き付けていル。それ以上近づけば BANG! ダ」チャキッ

そう警告してエムジェイは律をその場に足止めする。
律からは見えない死角だったが、エムジェイはそれ特有の金属音を鳴らし聡の背中につけつけた拳銃の存在をアピールした。

聡「ひぃっ!」
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 22:05:03.41 ID:GcahMxPe0
じゃあ私、生徒会行くね
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 22:10:11.55 ID:RugLphUO0
エムジェイ「…まずは身に付けているドラムスティックを全て捨てて貰おうカ、君にとってそれが拳銃以上の凶器になるのはもう分かっているんだヨ?それから両手を上に上げろッ」

律「……チッこうなりゃ仕方ないか」ヒョイッバラバラバラバラバラバラ スッ

要求に従い律は手に持ったドラムスティックを投げ捨てる、更には服の中に仕込んでいた隠しスティックも残らず床へと落とす。
足元に数十本に及ぶスティックが転がった後、律はゆっくりと両手を頭上に上げた。

聡「ね、姉ちゃぁん……」

エムジェイ「フフッ可哀想ニ…お姉さんが素直なら君もこんな目に合わずに済んだのにネェ…」グリグリ

歪んだ笑みを浮かべるエムジェイは聡の背筋に銃口を食い込ませる。

聡「ぅうっ…」
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 22:12:16.48 ID:RugLphUO0
エムジェイ「心配しなくていいからネ。お姉さんが死んでも僕が聡君の面倒をちゃぁんと見てあげるヨ…大丈夫、僕はピーターパンなんダ。優しくしてあげるヨ…」

聡「ひ、ひぃぃぃぃっっぃぃっ!姉ちゃぁぁああぁんっ!!!」

耐え切れなくなった聡は半狂乱になって叫び声を上げる。
取り乱す弟に対し姉は微笑みを浮かべながらゆっくりと応える。

律「そんな悲しい顔するなよ聡ぃ…今から仕方なしに」

頭上に上げた律の左腕、そこに彩られた網目模様のタトゥが淡く光った。

律「面白いモン見せてやるからさ」
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 22:14:17.00 ID:lkYCO7Xv0
律の左腕が淡い光を帯びたまま機械的な音を響かせる。
タトゥを中心にその左腕の構造をルービックキューブの如く組み換えだし新たに構築し始めた。

ガコン ガシュ イイイィィイイン

エムジェイ「………」

カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ

聡「………」

カシャカシャカシャ
カシャァン
180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 22:16:22.33 ID:lkYCO7Xv0
構築作業が完了した律の左腕は腕では無くなっていた。
左肘から先は肉感が完全に失われており無機質かつ硬質なモノへと変貌している。
左腕の代わりに誕生したそれは一本のドラムスティックだった。

律「たいして面白くもねえかっ」

エムジェイ「な…なんだい?それは??」

聡「ね、姉ちゃん……?」
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 22:17:53.36 ID:8PEDpEya0
エムジェイってそういうことか、ようやく理解できた
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 22:18:19.42 ID:lkYCO7Xv0
律「……中々上等そうな床だなぁ?良い音で響きそうだぜっ!!」ブンッ

新たに誕生したスティック型の左腕を律は頭上から思い切り床に叩きつける。

ドォン!

エムジェイ「ウワ…ワワ…っ!なんダァ?地震かァっ!?」

聡「ひ、ひぃっ」

律がそのスティック腕を叩きつけた瞬間、落雷のような轟音がとどろいた。
揺れを感じたエムジェイと聡は足元を掬われバランスを崩す。
結果、聡の拘束状態が一瞬解放された。
183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/01(日) 22:18:34.37 ID:YyWF++MQ0
じゃあ私、生徒会いくね。
184以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
律「シュッ!」

その一瞬を逃さず律はすかさずエムジェイとの距離を詰める。
その動きに対応することもままならないエムジェイは目の前で律が振りかざすスティック腕にも反応が出来ず、

ボゴォン!
エムジェイ「プギャッ!」

スティック腕がエムジェイの脳天に直撃し、スイカ割りのようにその頭は弾け即死した。