1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
優しい声が聞こえる。
私は瞼をうっすらと開き声がした方向に顔を向ける。
「……ね、聞いてた?」
優しい声の主は私を悲しい目で見ている。
(この人は誰だろう?)
口に出して言おうとしたがダメだ声が出ない。
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 12:49:17.85 ID:Y3QvjryA0
だって私は沢庵だから
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 12:50:16.59 ID:OZxoekdp0
おわり
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 12:53:32.17 ID:sHq7JP9wO
「……寝てたの?」
辺りを見渡す。
どうやら此処は教室のようだ。
私は教室で居眠りをしていたみたい。
頷くと彼女はニッコリと笑った。
「目ちゃんと覚めてる?」
もう一度、頷く。
「じゃあ……話の続きを話すね」
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 12:58:04.38 ID:G344khakO
と、いうお話でしたとさ
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 13:01:04.32 ID:sHq7JP9wO
私は彼女とお話をしていたみたいだ。
何をお話ししていたのか分からないけど……きっと私は寝ぼけてるんだろう。
「今、私達が生きて感じている世界はひょっとして夢なんじゃないかな?」
そっか……夢のお話しをしていたんだ。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 13:11:03.73 ID:X0eJvAv8O
みーてーるーだーけー
支援
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 13:14:08.51 ID:sHq7JP9wO
彼女の手を握る。
「そうだね……私達は今お互いを見て、感じている」
彼女も私の手を握る。
「それに、こうやって手を伸ばせば触れる事も出来る。この感覚はリアルだよね」
彼女は続けて言う。
「でもね……この感覚だって結局は脳が感じている事。その脳が夢を見ていたら…?」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 13:20:49.20 ID:sHq7JP9wO
今の彼女の目はさっきまでとは違い希望に満ち溢れた目をしている。
「今、自分が起きているのか、夢を見ているのか本当の事は誰も分からない……。」
欠伸を我慢して熱心に彼女の話しを聞く。
私を眠くさせる彼女の声はまるで魔法のようだ。
別に話がつまらないと言う分けではない。
出来れば彼女の話しを永遠に聞いていたい。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 13:24:45.50 ID:sHq7JP9wO
「夢はさ、無意識が生み出す“見たい”と思ったイメージなんだよ」
彼女はより強く私の手を握る。
「あのね、こうしてアナタと幸せに生きている私、これは私の無意識が生み出したイメージなのかも知れない」
優しい風が吹く。
彼女の髪がなびいてとっても綺麗だ。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 13:26:34.14 ID:eQ+Y90eu0
keionn
keionn?
keionn
k-on!
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 13:29:08.96 ID:sHq7JP9wO
「そんな理想が生み出した世界だから、アナタはこんなに近くにいてくれて私はこんなに幸せでいられるのかもしれない」
私の頬を軽く撫でる。
「だって、夢の中なら何でも許されちゃうもん」
「私が我が儘を言ってもアナタは笑って許してくれる。そんな世界を私が望んだのかも」
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 13:33:48.73 ID:sHq7JP9wO
「アナタは幸せ?」
私は首を横に振る。
「じゃあ私と一緒にいる時は幸せ?」
首を立てに振る。
「そっか……ありがとう嬉しいよ」
だんだんと瞼が重くなって行く。
頭がボーッとして何だかとてもいい気持ち。
「また、寝るの?」
コクリと頷き机に俯せる。
「いい夢見られるといいね」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 13:38:07.28 ID:nmvcQQVq0
気持ちわる・・・
>>1の背伸びしちゃった感じがマジ寒気がするわ
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 13:43:29.02 ID:sHq7JP9wO
「私も今日いい夢を見たんだアナタと一緒にいる夢……」
瞼を閉じる。
「アナタの頭上に綺麗な光の玉が浮かんでてさ」
「その玉から白い布が垂れて下がって来てね……」
意識が遠退いて行く…。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 13:47:34.14 ID:sHq7JP9wO
「アナタがその布を触ったかと思うとその布はアナタの背中に張り付いて翼になった」
「アナタは宙に浮かんでとっても楽しそうだった」
「私に手を差し出して……私がその手を握ろうとした瞬間に目が覚めた」
「寝たかな?……おやすみなさい」
「この夢が実現したらいいな……」
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 13:53:07.66 ID:sHq7JP9wO
「……おい」
声が聞こえる……今度は嫌な声。
「おい!」
目を開き声がした方向に顔を向ける。
「起きるの遅いんだよ」
今度は知っている顔。
私が毎日見たくないと思う顔だ。
紬「……夢だったんだ」
「はぁ?何言ってんの?」
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 13:57:36.90 ID:sHq7JP9wO
彼女は怪訝そうな目で私を見て何かを頭にかけた。
「消しゴムのカスだよー!」
私は俯いて頭に付いた消しゴムのカスを手で払う。
「何してんの?私がせっかく綺麗にコーディネートしてあげてんのに」
紬「………………」
私を夢から覚まさせてくれたのは私をイジメてる女の子だった。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 14:06:58.39 ID:sHq7JP9wO
中学三年になってから私は彼女にイジメられるようになった。
私がイジメられるようになった理由は私の父が彼女の父親をクビにしたからだ。
「ちょっとトイレ行こうよ」
私は首を横に振る。
彼女は私の肩を強く強く握った。
紬「い……痛いわ」
「拒否すんなよ早く来いよ!」
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 14:20:14.69 ID:sHq7JP9wO
私は何も抵抗出来ずに彼女に無理矢理トイレへ連れて行かれた。
トイレには誰もいない。
「ここに入れよ」
彼女はトイレの個室を指を指して言った。
紬「……どうして?」
「いいから入れよ!」
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 14:22:38.16 ID:hSaqLcXuO
用事終わるまで残ってるといいな支援
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 14:28:53.05 ID:sHq7JP9wO
彼女から背中を叩かれた私は渋々トイレの個室へと入った。
「出てくんなよ!」
彼女はドアを勢いよく閉める……何処かから何かを取り出す音が聞こえた。
続いて蛇口が捻られる音……水が流れる音。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 14:32:50.15 ID:FBAFyQDYO
しえ
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 14:39:08.94 ID:sHq7JP9wO
彼女に水をかけられる。
ドアを開こうとしだ瞬間、冷たい水が降ってきた。
「アハハハハハハざまぁみろ!」
彼女はドアの向こうで楽しそうに笑っている。
私の父親が彼女の父親にした事に比べれば……まだ耐えられる。
「じゃあその格好で帰るんだよー」
彼女は帰って行った。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 14:48:51.86 ID:sHq7JP9wO
紬「びしょびしょね…」
上着を脱ぐ。
紬「あ……」
上着を着なおす、上着を着ていないとダメだ。
シャツが透けてブラジャーがまる見えだ。
紬「はぁ……」
濡れたままトイレを後にし教室へ戻る。
他の生徒達が私を見てクスクスと笑っている。
私には友達がいない……一人ぼっちだ。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 15:02:14.58 ID:sHq7JP9wO
何故、私には友達がいないか分かっている。
私の父親が私の父親をクビにした事をみんなに喋ったからだ。
それだけじゃない……彼女は父親がクビになった後の事もみんなに喋った。
お肉が食べれない、マンションから借家に引っ越した。彼女の父親が300万の借家を残して自殺した事も……。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 15:16:23.19 ID:sHq7JP9wO
彼女を憐れんだ人達は私を嫌い除け者にした。
私がイジメられてる現場を見ても立ち止まり笑った。
でも、私は彼女を怨んでいない。
彼女の父親が死んだと聞かされた時、胸が酷く痛んだ。
お父様に何故クビにしたか?と聞いても「子供には関係の無い話だ」この一点張りでクビにした理由を話そうとしない。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 15:22:13.02 ID:1lSeESj7O
支援
ムギの過去気になる
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 15:31:58.43 ID:sHq7JP9wO
私のお父様は仕事熱心だ。
社長だから当たり前なのかも知れない。
私はお父様に言った事がある。
アナタがクビにしたせいでクラスメイトの父親が死んだと。
お父様は顔色を変えずに「だからなんだ?出て行け」と私に言った。
きっと仕事に打ち込み過ぎて人としての心を失ってしまったんだと思う。
悲しい人。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 15:35:14.81 ID:sHq7JP9wO
カバンから蜂蜜の壷を持ったくまが描かれているタオルを取り出す。
そして頭を拭う。
紬「帰らなくちゃ」
タオルを肩に掛けてカバンを持つ。
早足で教室を後にし学校の校門を抜けた。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 15:50:59.59 ID:sHq7JP9wO
帰り道をゆっくりと歩く。
服が家に帰るまでに渇くようにね。
私はまだイジメられている事を家族には言ってない。
いや、言えない。
私をイジメている彼女事もある……それにお父様のせいでイジメられている何て言ったらきっと悲しむ。
お父様もお母様も悲しむ。
それに最近の二人は良く喧嘩しているから火に油を注ぐようなマネはしたくはない。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 15:51:16.30 ID:4kN8Sz1iO
デルフリンガーさん復活おめでとう
さようならティファニア
しえ
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 16:05:28.78 ID:sHq7JP9wO
斎藤「お帰りなさいませ紬お嬢様」
玄関を開けると斎藤が1番に挨拶をして来た。
紬「お帰りなさい」
靴を脱ぎ自分の部屋へ行く。
服はもう渇いているから何も言われずに済んだ。
制服を脱いで部屋着に着替える。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 16:08:41.32 ID:2OknPQxb0
支援age
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 16:11:57.92 ID:sHq7JP9wO
「紬お嬢様入ってよろしいですか?」
部屋の向こうから声が聞こえる。
紬「えぇ、入っていいわよ」
ドアが開きお手伝いさんが私に一礼。
「制服を取りに来ました」
制服をお手伝いさんに渡す。
「ありがとうございます」
そう言ってお手伝いさんは出て行った。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 16:22:22.93 ID:sHq7JP9wO
疲れる……。
家に帰っても何かしらお手伝いさんや斎藤が私に気を使って話しかけて来る。
だから私も彼らに気を使ってしまう。
もう少し私の事は私にまかせて欲しいのに。
だけど、私にも安息の時間はある。
ピアノを弾いてる時やお風呂に入っている時。
……夕食の時間までピアノを弾いて時間を潰していようかな。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 16:31:07.14 ID:sHq7JP9wO
斎藤「紬様夕食の時間です」
私はピアノを弾くのを止めた。
部屋から出ると斎藤が待っていた。
紬「ありがとう」
斎藤「いえ、では食卓へ参りましょう」
斎藤はスタスタと歩いて行く。
私もそれに着いて行った。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 16:42:32.08 ID:sHq7JP9wO
食卓にはお母様とお父様を取り囲むように数人の人達が座っている。
私はお母様の横に座りエプロンを首に掛ける。
父親「それではみんな揃った事だし、いただきますかな」
お父様はワイングラスを片手に持ちお母様と乾杯をした。
それが終わると食卓に座っていた人達もお互いにワイングラスを持ち乾杯し始めた。
勿論、私も乾杯をした。
もう小さい頃から何度もやっているから慣れている。
たまには家族で食卓を囲みたいなぁ……。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 16:56:32.77 ID:sHq7JP9wO
食事が終わり私はお父様の知り合いの人達に挨拶をしながらお風呂場に向かった。
早くお風呂に入りたい。
「紬ちゃんこんばんは」
紬「こんばんは……」
初老の男性に挨拶をする。
私は逃げる様に初老の男性から離れる。
私は彼を知っている。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 17:03:37.65 ID:yqhdMC7q0
軽音部に入って幸せになれて良かったねムギちゃん
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 17:09:26.76 ID:sHq7JP9wO
あの初老の男性は会社の重役らしく家に毎日来ている。
そして……私が将来結婚する事になっている男性のおじいちゃんでもある。
許婚って奴よ。
私にはまるで自由が無い。
将来、結婚する相手も決められない。
いざって時は逃げる予定だけどね。
許婚と結婚したく無いと言ってもお父様は聞く耳持たない。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 17:16:21.71 ID:sHq7JP9wO
私にも自由が欲しい。
許婚もいなくて好きな時に外に行けて。
友達と(友達はいないけど)一緒に遊んだりしたい。
もう中学三年だよ?
ある程度の自由が与えられていい頃だと思う。
こんな家に縛り付けられて毎日が嫌になる。
この事をお父様に言いたい……けどお父様が私に言う言葉は想像が付く。
「我が儘を言うな!これは教育だ」こう言うに決まってる。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 17:26:39.07 ID:sHq7JP9wO
やっとお風呂場に着いた。
服を脱いで洗濯籠に入れる。
そして、体と頭を洗い私には大き過ぎる浴槽に浸かる。
紬「ふぅ…………」
温かいお湯が一日の疲れを癒す。
紬「………………」
お風呂から上がったら、またピアノでも弾こう。
ピアノを弾いてたら時間が過ぎるのはあっという間だから。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 17:44:54.94 ID:sHq7JP9wO
お風呂から上がりバスローブに着替え真っ先に自分の部屋に向かう。
これから寝るまでは一人の時間だ。
何の汚れのないグランドピアノを見る。
毎日、私が手入れをしてるこのグランドピアノは私の1番の宝物だ。
椅子に座りピアノを弾き始める。
この時が1番幸せだな。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 17:54:06.01 ID:sHq7JP9wO
時計を見る。
時刻は11時を過ぎていた。
ピアノを弾くのに夢中になっていた。
そろそろ寝ようかな。
ベットに横になり目を閉じる。
そう言えば……今日、学校で見た夢。
凄く不思議な夢だったな。
あの人の手の感触も凄くリアルだった。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 18:06:01.82 ID:sHq7JP9wO
でも結局、誰だったんだろう?
知りたいな……。
可愛い顔をしていて髪にヘアピンをしていた。
笑顔もキュートだった。
もう一度あの人の夢を見れたらいいな。
紬「おやすみなさい」
おやすみなさい………。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 18:06:36.74 ID:2OknPQxb0
ムギちゃんおやすみなさい
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 18:21:29.13 ID:sHq7JP9wO
「おーい起きろよ!」
声が聞こえる……。
誰かが私の体を揺さぶる。
目を開いて声の主を見る。
カチューシャを着けた元気そうな女の子が私の目の前にいた。
「よっ!」
誰なの?また声が出ない。
「遊ぼうぜ!」
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 18:27:53.74 ID:sHq7JP9wO
彼女は私の手をグイグイ引っ張る。
ここで私は気が付いた……これは夢だ。
「早く立ってよ!ピアノ弾こうぜー」
私は立ち上がり彼女と一緒に椅子に座る。
「よーし!まずは弾いてみてよ」
頷き鍵盤に指を置く。
一呼吸置いて私はピアノを弾き始めた。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 18:36:02.68 ID:sHq7JP9wO
弾き終わり彼女を見る。
「うはー!すげー」
何だろう……彼女と一緒にいると凄く安心する。
「やっぱりピアノ弾くのやめた!」
私は困惑の表情を浮かべて見せた。
声が出ないから、彼女とコミュニケーションをとる唯一の方法だ。
「あ……何で弾かないのかって思った?」
頷く、彼女は私に手を見せて指をウネウネと動かした。
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 18:47:22.17 ID:sHq7JP9wO
「私こうやって指をチマチマ動かすの嫌いなんだ!」
指を動かすのを止め次は何かを叩く仕草をした。
首を傾げる。
「あー分からないか?この仕草を見て」
まったく分からない。
「そうだなー…まぁいっか!」
良くない、出来れば教えて欲しい。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 18:49:59.14 ID:sHq7JP9wO
「あ、もうそろそろ起きなきゃヤバイんじゃないのか?」
時計を見る……7時だ。
頷くと彼女は飛びっきりの笑顔を見せた。
「そっか、じゃあな!また会えたら会おうな」
彼女がそう言って数秒後……私は目が覚めた。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 19:05:39.21 ID:sHq7JP9wO
紬「楽しい人だったな……」
いい夢を見た後は何だか切ない気持ちになる。
斎藤「紬お嬢様朝です」
紬「もう起きてるわ」
斎藤「そうですか……制服はクローゼットに掛けてありますので…では」
クローゼットを開き制服を取り出す。
バスローブを脱いですぐに制服に着替える。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 19:11:45.19 ID:sHq7JP9wO
着慣れた制服……でも後六ヶ月後にはこの制服を着なくなる。
リボンを結びカバンの中を見る。
そう言えば昨日は学校の用意をしてなかった……。
学校の用意をしよう。
まだ朝ごはんまで時間はある。
今日もあの人からイジメられるんだろうな……。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 19:29:17.24 ID:sHq7JP9wO
朝ごはんも食べ歯も磨いた。
斎藤から見送られ私は家を出た。
今日もいい天気だ。
不意に誰かの笑い声が聞こえた。
後ろを振り返ると私と同じ制服を着た二人の女の子が一緒に歩いている。
また女の子が笑った。
きっと楽しいお話をしているんだろう。
私もああ言うふうに友達と何かを話しながら一緒に学校に行きたいなぁ……。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 19:38:33.21 ID:sHq7JP9wO
紬「………………」
黙って教室へ入り席に座る。
「あ、琴吹じゃん」
彼女は私をすぐに見付けた。
そして、私からカバンを取り上げる。
ジッパーを開けてカバンを逆さまにしカバンの中に入っている教科書や筆箱を床にバラまく。
「あ、ごめんねー」
わざとらしく笑みを浮かべながら私に謝る。
当然、悪いだなんて思っていないだろう。
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 19:44:01.85 ID:sHq7JP9wO
私はただ黙って床に落ちた教科書や筆箱を拾う。
「私がごめんなさいって言ってるのにアナタは私に謝らないわけ?」
彼女の顔を見る。
眉間に皺を寄せ今にも私を叩きそうな表情だ。
紬「ごめんなさい」
彼女に聞こえるように言ってまた教科書を拾い始める。
最後の教科書を拾おうとした瞬間、彼女は私の手を踏み付けた。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 19:54:10.66 ID:sHq7JP9wO
紬「い、痛いわ……」
彼女はまだ私の手から足をどかさない。
「痛く無いでしょう?」
紬「足をどけて……」
少しだけほんの少しだけ威圧するように言った。
「何?その態度」
彼女は足を退かしてくれたが今度は私の髪を掴んだ。
「お前が私達の家族に何したかわかってんの?」
支援
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 20:05:34.02 ID:sHq7JP9wO
私と彼女を黙って見ていた人達が騒ぎ出す。
「そうそうマジ可哀相」「死ね」「琴吹さんが全部悪いよね」「つーかあんな酷い事して学校に来れるアイツの神経どうかしてるよねー」
クラスメイトの人達のヤジはまるで鋭利なナイフ、私の心をズタズタに切り裂いて行く。
紬「ごめんなさい……」
涙を堪えながら彼女に謝る。
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 20:13:08.77 ID:sHq7JP9wO
「ごめんなさい?」
彼女は私の髪の毛を引っ張る。
紬「痛っ痛いわ!」
「お前のせいで私達の家族はグチャグチャなんだよ!謝っても許さないからな」
髪の毛から手を話して今度は肩を掴む。
紬「ごめんなさい……私がお父様に頼んでいれば……本当にごめんなさい」
ダメだもう堪えきれない。
涙が溢れて来る。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 20:21:09.39 ID:bVGNmbZB0
支援
wktkが止まらない。
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 20:23:22.47 ID:sHq7JP9wO
「はぁ?何で泣いてるの?意味わかんないんだけど」
ヤジも段々と酷くなる。
もうやめて……。
死ね馬鹿キモイ最低。
誰が言っているのか分からないけど……もうやめて。
「……人殺し」
紬「……え?」
彼女は私を勢いよく押した。
尻餅を付く。
「私のお父さんを殺したのはお前だよ人殺し」
違う……私じゃない。
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 20:29:14.00 ID:sHq7JP9wO
紬「違う……私じゃないわ」
「……はぁ?」
もう、こんな目に合うのは嫌だ。
紬「私のお父様でもない……アナタのお父さんは自殺よ?誰も殺していないわ……」
感情が高ぶる。
怒りが込み上げてくる。
ダメだ……今の私はこの怒りに勝てそうも無い。
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 20:32:04.91 ID:bVGNmbZB0
いいぞもっとやれ
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 20:40:17.34 ID:sHq7JP9wO
「はぁ?何言ってるんだよ!お前の父親が私の父親をクビにしたから自殺したんだよ!」
紬「そうやって何でも人のせいにすれば良いって思わないでよ!」
「うるせんだよ!」
また彼女は私を押し飛ばした。
だけど私は倒れなかった。
紬「もう私に酷い事をしないで……」
ヤジが静かになる。
彼女は膝を着いて泣いた。
紬「私をイジメないで……」
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 20:44:55.95 ID:1lSeESj7O
ムギェ…
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 20:47:25.54 ID:/Eh8zkDEI
生きてくれ、俺の天使よ
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 20:49:18.01 ID:sHq7JP9wO
クラスの人達が彼女を慰める。
ちょっと酷い事を言い過ぎた。
自分の席に戻り机に俯せる。
なんであんな事を言ってしまったんだろう……。
黙って彼女の話を聞いていればよかった。
酷い罪悪感が私を襲う。
まもなくして先生が教室に入って来てHRを始める。
そして……ただ時間が過ぎて行き放課後。
私はこの日、授業も聞かずに俯せひたすら罪悪感と戦っていた。
なぜか神様家族のメメの過去話思い出した
C
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 20:55:48.26 ID:12tCCkPiO
弱いから自殺なんてするんだよって言ってやればいい。
と思ったがこれじゃ完全に悪役だ。
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 21:04:11.63 ID:sHq7JP9wO
あれから二ヶ月が過ぎた。
相変わらず私は一人ぼっち。
そうだよね……彼女にあんな事言ったんだから。
私を見るクラスメイトの目は明らかに私を嫌ってる目をしてる。
地味な嫌がらせもしてくる。
私にわざとぶつかって来たり机の上に水をかけられたり。
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 21:12:10.96 ID:sHq7JP9wO
先生が教室に入って来た。
息を切らしている。
何かあったのかな?
「みんなすまん一限目は自習な」
クラスメイトの一人が何かあったのか?と聞いた。
「いや……何でもない」
何かを隠してる。
そんな表情をしていた。
さっきとは違うクラスメイトが話し始めた。
昨日、私は死ぬからバイバイとメールが来たらしい。
私をイジメていた彼女から……。
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 21:20:43.66 ID:sHq7JP9wO
一人一人騒ぎ始め。
私、以外の全員が彼女の事を噂し始めた。
私も頭の中で想像をしていた。
もし、彼女が自殺をしていたらどうしよう。
「落ち着け!」
先生が怒鳴るように言った。
「アイツは無事だ……」
ホッと胸を撫で下ろす。
よかった無事だったんだ……。
またクラスメイトの一人が先生に問いかけた。
「何があったんですか?」
先生が答える。
「リストカット……してしまったみたいなんだ」
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 21:25:25.12 ID:sHq7JP9wO
そんな……。
「容態は大丈夫だ心配ない……少し日にちが経てば学校にも来られる」
クラスメイトの一人が私を見る。
また一人また一人私を見る。
「じゃあ……自習だ静かにしてろよ」
先生は教室から出て行った。
いつの間にかクラスメイトの全員が私を見ている。
鋭い目付きで……私を見る。
「琴吹がリストカットに追い込んだんじゃね?」
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 21:28:01.38 ID:2OknPQxb0
リストラされたのは能力が無いからだし、自殺したのはそれがわからなかったからだろと
コレをムギちゃんの代わりに言ってあげたいな
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 21:28:50.34 ID:sHq7JP9wO
紬「ち、違う!」
否定する決して私じゃない。
確かにあの時、彼女に酷い事を言った。
だけど、もし私が言った言葉が彼女を深く傷付けてしまったなら彼女はその日の内にリストカットをしている筈だ。
「嘘付くなよ!」
誰かが私に消しゴムを投げ付けた。
「お前だろ?」
紬「ち、違うわ!」
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 21:35:18.82 ID:sHq7JP9wO
前の席の人が私にビンタをした。
紬「あぁっ…………」
「アナタでしょ?」
首を横に振る。
また誰かが消しゴムを私に投げ付ける。
紬「…………私じゃないわ信じて」
「お前以外に誰がいるんだよ」
みんな私に罵倒を浴びせ始めた。
そんな酷い言葉聞きたくない。
両手で耳を塞ぐ。
やめてもうやめて。
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 21:49:57.71 ID:sHq7JP9wO
それからずっと私は責められ続けた。
先生がいる時は消しゴムのカスを投げ付けられ。
いない時は罵倒を浴びせられる。
放課後を告げるチャイムが鳴った瞬間、私は逃げるように学校を去った。
違う彼女を追い詰めたのは私ではない。
違う……違う!
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 22:01:30.55 ID:sHq7JP9wO
家の扉を開ける。
おかしい何時もは斎藤が私を待っている筈なのに今日は誰もいない。
紬「斎藤?」
微かに誰かの声が聞こえる。
これはお父様の声だ……。
声がする方向へ近付いて行く。
お母様の声が聞こえる。
……二人はまた喧嘩しているみたいだ。
「だからあの時、おろせばよかったんだ!」
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 22:04:43.14 ID:sHq7JP9wO
「そんな……何でそんな酷い事を言えるの?」
ずっと気になっていた。何が原因で喧嘩をしているのだろう?
聞き耳を立ててみる。
「紬はダメだ!何故あの時、女とわかった瞬間におろそうとしなかった!?」
「そんな事出来る分けないじゃない!」
……私の事で喧嘩をしているみたいだ。
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 22:26:39.51 ID:sHq7JP9wO
「アイツが俺の会社が継げるか?継げないだろ!やっぱり男がよかった」
「酷いわ……」
「女に俺の会社は継げない男がよかった……」
お父様の話を黙って聞いて私は思った。
お父様にとって私は望まれた子供じゃなかったと。
もう聞きたくない。
聞こうと思ったのが間違いだった……。
部屋に行こう。
もう誰の話も聞きたくない。
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 22:33:21.07 ID:sHq7JP9wO
紬「…………ぐすっ」
涙が溢れる。
脱ぐっても脱ぐっても止まらない。
私は望まれた子じゃなかった……。
本当はお父様は男が産まれて来て欲しかったんだ……。
もう寝よう。
今は何をする気にもならない。
おやすみなさい……。
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 22:33:59.59 ID:2OknPQxb0
心が痛む
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 22:35:48.98 ID:sHq7JP9wO
すみません寝ます
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 22:36:33.36 ID:2OknPQxb0
なん…だと…
続き期待してるおやすみ
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 22:37:06.79 ID:1lSeESj7O
ふざけんな
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 22:40:00.25 ID:qiHwyRjdI
斎藤おおおおおおおおおおおお今なんとか出来んのはお前しかいねぇ!!!!!
お嬢様をお守りしろおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 22:56:43.84 ID:4kN8Sz1iO
まなやにやなや
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 23:08:50.81 ID:q7xU/6G/0
なるべく早く起きてね
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/23(金) 23:42:03.98 ID:cw7IhjGVP
ho
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
ほ