http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100629-00000074-sph-socc DF田中マルクス闘莉王(29)=名古屋=が、パラグアイ戦では遊び心を胸に8強進出を決めることを明かした。
1次リーグ3試合で2失点と鉄壁な守備の立役者は、過度に緊張せず、南米の難敵をノールックパスなどで翻弄(ほんろう)する。
また、センターバックの相棒であるDF中沢佑二(32)=横浜M=は、日本人DFとして初のW杯得点を誓った。
日本史上初となるW杯8強をかけた戦い。高揚感に満ちあふれる青きサムライの中で、誰よりも熱いはずの闘莉王は氷のように冷静だった。
「パラグアイは強い。相当緊張する試合になると思うけど、勝つには心のどこかに余裕を持つことが大事。ヘディングでクリアするふりをして川島にシュート、川島へノールックパス、そんな遊び心が大事になる」
28日の公式練習後、不敵に語った。誰もがしびれる史上最大の決戦だからこそ、“遊び心”が大事になる。
「嫌なところを突いてくる相手の逆を常に狙わなければいけない」。
16歳まで生まれ育ったブラジルでトップ下を務めた男は、最終ラインからノールックパスなど相手の読みを裏切り、巧みに攻撃を組み立てる。
ベンチスタートが濃厚な中村俊に代わりファンタジスタとして攻撃をリードする。
眼下の敵には借りがある。04年8月、アテネ五輪初戦で不覚を取った。ブラジルから応援に訪れた父・隆二さんがスタンドで号泣した姿を目にした瞬間、感極まった。
「一度も褒めたことのない怖い父が泣いていた。その姿に感動しすぎて、闘志が消えてしまった」。3―4で惜敗し、過度の高揚感と緊張感は禁物だと悟った。
父親も知っている。今大会、ブラジルから家族総出で南アまで応援に駆けつける中、実家に残った。「私は本当に行ってもいいのか?」。
息子は父を含めた一族の全旅費負担を申し出たが、隆二さんは固辞。これもアテネの過ちを避けるためかもしれない。
「ギリギリの緊張感を楽しんでいる。今、生きているという感じがする。オレのW杯はまだ終わらない」と断言する胆力を持つ闘莉王こそが、まだ見ぬ高みに日本を導く。