1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
代理
2 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/06/04(金) 21:21:03.66 ID:Jz77C+HGO
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/04(金) 21:22:08.50 ID:fFLxhVMsO
待ってた支援
4 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/06/04(金) 21:22:52.66 ID:Jz77C+HGO
第十七話「選択の時」
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/04(金) 21:23:26.68 ID:NGk+zK9D0
同じく待ってた支援
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/04(金) 21:23:47.64 ID:fFLxhVMsO
支援
7 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/06/04(金) 21:23:51.56 ID:Jz77C+HGO
('A`)「よし……」
戸棚を開くとそこには幾つかの包丁があった。
やはり無難に調理実習室を選んで正解だったな。
適当に刃渡り十五センチほどのセラミック包丁を二本手に取り、何回か振ってみる。
(*'A`)「…………」
小さい頃に憧れていた正義のヒーローになったみたいで、少し照れ臭くなった。
ふと開いた戸棚の隣を見ると、やけに横に長い戸棚があった。
何の気なしにそれを開くと、今の俺にとって最も理想の武器が入っていた。
('A`)「これは……」
刃渡り六十センチはある鉄製の出刃包丁が一本、そこにあった。
しっかり手入れされているようで、刃こぼれはしていないようだ。
学校で魚を捌く事なんて無いだろうに、何故こんなものがここにあるのかは知らないが有り難く拝借させてもらうとしよう。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/04(金) 21:25:58.74 ID:KnRLUsT8O
久しぶりだ
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/04(金) 21:28:07.19 ID:fFLxhVMsO
しえん
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/04(金) 21:29:58.46 ID:jCSAHPFd0
蝿野郎おおおおお!!
出刃包丁をベルトに通し、セラミック包丁を一本だけ手に取る。
よし、これで少しは戦えるだろう。
後はここから抜け出す方法を考えるだけだ。
それも実はここに来た時点で思い付いたんだがな。
('A`)「やるしかねぇよな……」
部屋の隅にある掃除用のバケツに目を移し、俺はブレザーとカッターシャツ、その下に着ていた肌着を脱ぎ捨てた。
水道水でそれらを充分に濡らし、バケツに水を溜める。
(;-A-)(嫌だなー冷てーよなー傷に染みるよなー……)
意を決してそれを被る。
心臓が止まりそうな冷たさだ。
ローファーからズボンから下着まで、存分に水を吸ってぐっしょりと重くなる。
(;'A`)「駄目押しだ!」
さらに脱ぎ捨てたブレザーやらシャツやらを水に浸し、たっぷり水を吸わせる。
12 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/06/04(金) 21:36:04.59 ID:Jz77C+HGO
足速に歩を進める。
目指す先は燃え盛る炎が行く手を阻む階段だ。
(;'A`)「…………」
茹だるような熱さを前に唾を飲み込む。
だがまぁ行くしかないよな。
どちらにせよこのまま此所に居たところで明日には焼死体となって発見されるのが関の山だからな。
最後の懸念事項?
そんなもの、答えは既に決まってるさ。
モララーと内藤のどちらにつくかなんて考えるのも馬鹿馬鹿しい。
しっかりしろよ数分前の俺。
そんな事よりも俺を散々ぶん殴ってくれたモララーの顔面に、俺をこんなところにほっぽり出した内藤の顔面に怒りの鉄拳をお見舞いしてやらないことには、俺の怒りは収まりそうにない。
(#゚A゚)「とっつげきーっ!!」
出刃包丁をベルトに引っ掛け、半裸で濡れたシャツとブレザーを振り回しながら、俺は燃え盛る炎の中へ突っ込んだ。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/04(金) 21:37:10.07 ID:fFLxhVMsO
しえんだよ!
14 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/06/04(金) 21:37:34.27 ID:Jz77C+HGO
――
( ω^)「おっおっおっ!」
(#メ・∀・)「ちょこまかうざってぇんだよぉぉぉっ!!」
モララーの激昂をそのまま具現化したかのように赤く燃える炎が地面から吹き出てくる。
火山の噴火を連想させるそれは次々に僕目掛けて吹き出ているけれど、怒りに身を任せた単調な攻撃なんかがこの僕に通用する筈がない。
( ω^)「風が気持ち良いおー」
(#メ・∀・)「てめえぇぇっ!!」
より一層激しく燃え上がる炎を僕は軽く躱す。
やれやれだ、地面から来る攻撃なんか此所にいれば楽に躱す事が出来るのに……
此所、空ではね。
(#メ・∀・)「さっさとくたばれぇぇっ!!」
モララーは両手を空に翳し始めた。
あらら……確か君、僕に腕折られてなかったかな?
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/04(金) 21:38:04.49 ID:jCSAHPFd0
頭のいいドクオスレ
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/04(金) 21:38:57.21 ID:fFLxhVMsO
しえーん
17 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/06/04(金) 21:39:26.84 ID:Jz77C+HGO
本日三度目の炎の狼。
そりゃ単調な攻撃よりかはよっぽど厄介だけどさ、そろそろ意味が無い事に気が付かないかなぁ?
駆け上がり、襲い来る狼をぎりぎりまで引きつけて躱す。
それでも狼は僕という標的を見失うことなく、迂回してくる。
( ω^)「ブリューナク!」
瞬時に槍を形成し、僕を食らわんと大きく広げた口に叩き込む。
内側から貫かれた炎は散り散りになり、消え失せる。
(;メ・∀・)「なっ……!?」
モララーは驚愕の表情を浮かべている。
それもそうだろう。さっきまでの僕ではこの炎をこうもあっさり打ち破ることは出来なかったから。
それをモララーは分かっていたから。
だからこその驚愕。お前の気持ちは痛いほど分かるよ。
流石兄弟を相手取った時に似たような経験をしたからね。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/04(金) 21:41:04.82 ID:fFLxhVMsO
しえん
19 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/06/04(金) 21:41:08.41 ID:Jz77C+HGO
( ω^)「お前は何にも分かってねーお」
(#メ・∀・)「あぁっ!?」
憤り、思考を停止させたモララーを見て、僕は何ともいたたまれない気持ちになった。
( ω^)「適応者の力の源は強く願う気持ち。これがどういう意味か分かるかお?」
(#メ・∀・)「んなもん分かりきってらぁ! てめーをブチ殺す!! 今の俺にとってそれが全てだ!」
( ω^)「……くっだらねーお」
いたたまれない気持ちが哀れみとなって確かな形になるのが分かった。
これが無ければモララーは僕を、ドクオすら越える最強の適応者となり得る力を持っているというのに。
強者ゆえの驕り。
それがモララーの神にも届き得る才能の弊害だ。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/04(金) 21:42:57.04 ID:fFLxhVMsO
ふむふむ
21 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/06/04(金) 21:43:16.89 ID:Jz77C+HGO
適応者なんて大層な力を持たなくてもモララーは人の上に立つ資質を持っていた。
一年と半分同じクラスで過ごしてきて、ましてや体のいい遊び道具というある意味かなり近いところでモララーと過ごしてきた僕には解る。
文武両道、容姿端麗、この二つの才があれば僕達のような高校生という団体の中では中心に立てる。
だけどそれだけじゃない。
モララーの才能で特筆すべきなのは、そのカリスマ性。
自分が他者より優れていると自負しているからこそ、身体から滲み出るそのオーラが人を従わせる。
たとえそれが自分の意志じゃないとしても。
力ある者の前では持たざる者は平伏すしかないのだ。
それが僕が力を手にしてから牙を研いでいた期間に、モララーから感じ取ったことだ。
22 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/06/04(金) 21:44:43.52 ID:Jz77C+HGO
だからこそ自分と対等に張り合える者が現われると狼狽する。
そしてその動揺を悟られない為に怒りに身を任せ、牙を剥く。
高く積み上げた威光こそ、薄く、脆い。
( ω^)「…………」
ドラム缶の中に大量に詰め込んだロケット花火が一気に点火された時のように、モララーが放つ炎はデタラメな軌道を描いて飛び交っている。
もっとも、『ように』とは言ったものの、僕はそんな危険な遊びなどしたことないのだけれど。
(#メ ∀ )「あぁぁぁぁああ゛っ!!」
危険なのは見てくれだけで、中身は空っぽ。
想いの篭っていない力は何の強さも持たない、薄っぺらな虚勢だ。
( ω^)「躱す必要もないお」
これならばまだ弟者への想いを宿した兄者、僕への想いを宿したツンの方が張り合い甲斐がある。
23 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/06/04(金) 21:46:14.21 ID:Jz77C+HGO
標的をモララーに構え、風を切って突っ込む。
撒き散らされた炎が時折僕の身体を焼くが、そんなことは関係ない。
その全てが僕の意識、反応の枠に収まっているから実質、僕の力によって全てが無力化される。
身体への負荷も大したものじゃない。
こんな薄い攻撃ならドクオのパンチを防ぐ方がよっぽど堪えるさ。
( ω^)「つーかまーえた」
一直線にモララーの元へと駆け抜け、折れている腕を左手でがっしりと掴んだ。
(;メ・∀・)「なっ!?」
さっきまでの怒りが嘘のように、モララーの顔は青褪めた。
だけどそんな事知るもんか。
僕の前に立ち塞がる者には苦痛を与えるだけだ。
(;メ ∀ )「ぐあああああっ!!」
僕は既にへし折れたモララーの腕を、容赦無く握り潰した。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/04(金) 21:47:10.16 ID:fFLxhVMsO
しえんですよ
25 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/06/04(金) 21:48:11.91 ID:Jz77C+HGO
肉が手の中で爆ぜる感触。
骨が粉々に砕ける感触。
鼻腔を突き抜ける鉄の匂い。
両耳を突き抜けるソプラノの悲鳴。
あぁ、なんて気持ちの良い景観だろう。
僕には世界変革を成し遂げるという大義名分がある。
だけどそんな事を抜きにしても僕は人を殺すだろう。
この感触、この愉悦を味わえる限り。
( ω゚)「ふふ……ふふふふ」
(メ ∀ )「あ……ぁ……」
駄目だ。このままじゃ喰われてしまう。
楽し過ぎて……
気持ち良過ぎて……
( ω゚)「あぁああああああっ!!!」
力任せに掴んだ腕を引っ張る。
ひしゃげた腕は大した抵抗もなく、ぶちりと音を立てて引き千切れた。
(メ ;∀;)「やめろぉおおおおおっ!!!」
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/04(金) 21:49:02.16 ID:fFLxhVMsO
ぶちゅり支援
27 :
◆4KLmqjbvG6 :
声にならない声を上げて、モララーは地に倒れ伏せた。
噴水のように溢れ出る血が僕の視界を埋めてゆく。
( ω゚)「あああああああああああっ!!!!!」
いい気味だ。
嫌味ごとの一つでも言ってやりたい気分だ。
でも……
どうしてだろう。言葉にしたい事は沢山あるのに、それを言語化するのも何故か億劫で……
おかしいな……
こんな筈じゃなかったのに……
何でお前がでしゃばるんだ?
ベルゼブブ。
( ω;)「うわああああああああっ!!!!」
視界が滲み、世界が歪む。
閉塞する意識の中で、僕が最後に見たのはモララーの血の赤と校舎を燃やす炎の赤、そして遠くから近付いてくる何かの赤い光だった。
僕は君に賭けるよ……
ドクオ