('A`)ドクオはBrigade Projectにカラサワをぶち込むようです
1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
立て
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/24(月) 23:40:20.60 ID:5oBhFZC50
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/24(月) 23:41:32.37 ID:5oBhFZC50
朝靄が空を滲ませる。青の時間。
冷たく澄み切った空気が、穢れを知らぬ今日の始まりを告げていた。
かつて何らかの理由により衛星砲が形成した砲撃領域、
そのクレーター状に抉れた街の中央には地下へと繋がる唯一のゲートが存在する。
そこはかつて、【サイレントライン】と呼ばれる未踏の地であった領域。
新資源発掘区域、文明に富んだ地上都市であったであろう街並みは荒廃の限りを尽くされ、
時折鈍い地響きを上げて高層ビルの残骸が崩れ落ち、紛煙を巻き上げる。
建物の陰、渡り鳥の一群がそれに刺激され一斉に空へと羽ばたいた。
バサバサバサ!
『・・・・・・』
( ・∀・)「・・・見つけたぞ」
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/24(月) 23:42:21.55 ID:5oBhFZC50
砂埃を舞い上げ降り立った、深緑の中量二脚AC【グラッジ】。
突きつけた対AC規格大型バズーカ砲のその先。
朝霧の向こうに佇む漆黒の、ACに酷似した流線型の機体。
両肩に折りたたまれた巨大なレーザー砲台は雄大な翼を思わせる。
しかし、飛び去っていく渡り鳥を見送るその姿には、
まるで置き去りにされたはぐれのような哀愁と儚さがあった。
『・・・その機体、カラードネイルかお』
( ∀ )「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっとだ」
『・・・?』
(# ∀ )「ようやくだ!ようやく!この!長い悪夢が終わる!!!
貴様が消え!追うようにメビウスリングが消え!そしてゼロが死んだ!!!
何度だ?何機だ?何回だ!?貴様等を八つ裂きにし!
その機体をグズグズの鉄くずに変える事を思い描いたのはいったい何時からだ!?
まぁいい、いいとも、それも全て過去だ!残像だ!下らない!幻想だ!!!」
『やれやれ、八つ当たりもいいとこだお』
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/24(月) 23:43:05.20 ID:5oBhFZC50
(# ∀ )「ハハハ黙れよ・・・黙れ黙れ黙れ!黙ってくれよチャンプ!!!
ゼロを屠った貴様を殺し!!!」
フル稼働したジェネレーターが瞬く間にブースターを吹き上げ
朝の静寂を引き裂きながら深緑の機体が市街を突き抜ける。
(# ・∀・)「俺は!ゼロを越える!!!」
吐き出されるグレネード、バズーカ、展開したEOが漆黒の機体に殺到し
周囲の景色ごと爆炎と残骸の織り成す混濁界へと誘(いざな)った。
('A`)ドクオはBrigade Projectにカラサワをぶち込むようです
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/24(月) 23:44:05.61 ID:5oBhFZC50
爆風による粉塵が視界を埋め尽くし、
巻き込まれたビルが支えを失って傾き始める。
( ・∀・)「!?」
へし折れるビルと地面の隙間、粉塵の線を引いて尋常ではない飛翔速度でもって
地面スレスレにグラッジへと肉薄する漆黒の機体。
(* ・∀・)「無傷か!!ははっ面白いぞフリークス!!!」
カラードネイルはブースターを小刻みに混ぜ込みながらジグザグに後退し
目標に炸薬弾頭を浴びせ続ける。
『悪いが・・・』
宙空での高速機動から冗談のようにピタリと静止した機体は、レーザー砲を展開。
不可解な事にそのレーザーを地面に向け放射した。
(; ・∀・)「なんだとっ!?つっ!」
大気中で直進、霧散する筈の深紅の光線はまるで柵のようにその場に留まり
瞬時後退した漆黒の機体の壁になるように弾頭群を漏れなく受け止める。
その柵の隙間から淀みなく連射される球状のエネルギー弾が次々とグラッジの機体上で爆ぜる。
『まだ、死ねんお』
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/24(月) 23:44:53.17 ID:5oBhFZC50
レーザーが霧散するとそこから解き放たれるが如く高速機動を再開した機体が
跳ねるように上昇し上空から六本の超高熱線がグラッジへ降り注いだ。
( ・∀・)「・・・強いなそうだな そ れ で こ そ だ !
それでこそ貴様を殺す価値がある!!!」
急速前進したグラッジの背後でアスファルトに突き刺さった熱線が破裂した。
(# ・∀・)「ナイトウッド・ブーン・ホライゾン!!!」
撃鉄が弾かれる。
Act06 –地獄の青-
支援
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/24(月) 23:47:19.75 ID:5oBhFZC50
【レイヤード西部地区 第6住居街】
※※※※※
あいつと初めて会った時、父さんに連れられて来たあいつを私は気味の悪いヤツだと思った
※※※※※
从 ゚∀从 「こんな朝っぱらからやってるのか、サム」
散乱した室内、朝方だというのに閉め切った部屋の中はどうしようもなく暗く
開いた扉から伸びた明かりの隅には、使用済みの注射器が転がっていた。
私は「またか」という呟きをため息に込めて、それを拾い上げる。
从#゚∀从 「散らかすなっていつも言ってんだろサム!踏んで怪我でもs」
( ゞ ) 「ハイン!」
ギュゥ!
从;゚∀从 「うわ!」
いきなり抱きしめられた。
少し困惑したがこいつの奇行はいつものことだ。
薬がキマってる時は尚、何をしでかしても私は驚かない。
相手を落ち着ける意味も込めて私はサムの背に腕を回し
その背中をポンポンと軽く撫でた。
そうして私は腕の中でサムが震えている事にようやく気付く。
10 :
>>8 ありがてぇ:2010/05/24(月) 23:48:53.10 ID:5oBhFZC50
从 ゚∀从 「サム・・・?どうした、怖い夢でも観たのか?」
( ;ゞ;) 「うぁ失敗しちゃった・・・どうしよう、どうしようハイン!?
師匠が怒ってるよ、俺もハイン殺すって言ってる!」
从;゚∀从 「サム・・・・・・」
おいおいと泣きじゃくるサムの鼻水と涙が私のジャケットの肩を湿らせる。
私は少しつま先を立ててサム抱きしめ、その頭を撫でる。
从 ゚∀从 「大丈夫だ」
( ;ゞ;) 「駄目だよハイン!うぐぁ、死んじゃヤダよ!ハイン!くふっ・・・うぁ」
从 ゚∀从 「大丈夫だよサム、私は死なないし、それに父さんだって・・・もういない・・・」
( ;ゞ;) 「ひっく・・・うぐふ、ぐす」
从 ゚∀从 「それにこの前の依頼は情報よりも早く敵増援が到着した、お前の失敗じゃないさ」
少し横になれ、そう言って私はサムをベッドへ誘導し、座らせる。
サムは私の腕にギュッとしがみつく。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/24(月) 23:50:01.51 ID:5oBhFZC50
( ;ゞ;) 「何処にも、行からい?」
从*゚∀从 「ああ、起きたらお前に次の依頼の話がたっぷりあるからな!」
サムは、サム・オーランド【棺桶死】は幼少の頃より精神的に脆い兆候があった。
類い希なる天才性と引き替えに、その心は剥き出しのまま、常にその一部を
自ら破壊することによって不安定ながら保たれていたのだと
・・・今の私にはそう思える。
( ‐ゞ‐) スゥスゥ
从 ゚−从 「・・・・・・」
※※※※※
『ハイン!喜べお友達だ!』
その華奢な男の子は煤塗れで、
父さんが頭をがしがし撫でているのにまったくの無表情。
視線の先の私を見てるかどうかだって怪しかった。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/24(月) 23:51:47.66 ID:5oBhFZC50
从゚−从 『・・・・・・・』
『今日からここに住まわせるぞ』
从;゚−从 『えっ?』
私は思った事がそのまま顔に出ていたと思う。
父さんはそんな私に構わず勝手に話しを進める。
『部屋なら腐るほどあんだ、学校も面倒だからお前んとこと同じで良いか』
从゚−从 (こいつと?・・・嘘)
(メ゚ ゞ゚) 『・・・・・・』
『んな事よりハイン飯だ!今日は焼き鳥だぞwぐははっwははっww』
いきなり気味の悪い男の子と同居するのは凄く嫌だった。
でも、父さんの機嫌が凄く良かったから、怒らせたくなかったから、
だから私は何も言わなかった。
焼き鳥を買ってきた日の父さんは私を殴らない、
いつしかそれはそれ自体がなんとなく私の好物みたいになってた。
その買ってくる理由が冗談にしては最悪で、
ちっとも笑えない惨たらしいものだと知ったのはもう少ししてからだ。
※※※※※
shen
14 :
>>13 助かるわ・・・:2010/05/24(月) 23:53:11.62 ID:5oBhFZC50
【地上 資源開発地区 オオカミ】
大都市シティ・ニューソクから北に位置する大企業キサラギの傘下にある工業地域
大破壊による土壌汚染、自然破壊の残滓がこの一帯を荒野に変えている。
しかし、まったくの死の大地が広がっている訳ではない。
この荒れ果てた土地にも生物がいる、草木がある。
毒を飲み込み、その身体を歪にし、それでも尚生命は己が生を諦める事はない。
この土地を切り拓いた男が、この地で目にしたのは奇形の狼だった。
あまりにも過去の記録からかけ離れたその醜悪な姿を見て、男は何を思ったのか?
男は言った。
「美しい」 と、それがこの街の由来だ。
(´・ω・`) 「美しい・・・か」
ショボンは資料室に蓄えられた一冊の本を閉じ、椅子にゆっくりと背中を預けた。
管理者のアーカイブスが提示したかつての世界に比べ、あまりにもこの世界は壊れ過ぎている。
朝陽が差し込む窓の向こうに広がる景色は、緑を僅かに散らした燦然たる荒れ地が広がる。
ショボンは思う、男が狼に見たのは、滅びを前にしてもそれを良しとしない生のあり方だと。
それは内在的に、地上へ這い上がった自らの種の肯定だ。
(´・ω・`) 「だが・・・」
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/24(月) 23:54:19.91 ID:5oBhFZC50
考えずにはいられない。
人類は再びこの空の下、土を踏みしめる資格があるのかと。
管理者を失って、世界は統一性を失った混迷の深みに嵌り込もうとしているのではないか?
兵器産業が闇雲に発達し、そして戦場は地上へとその火の手を伸ばしている。
旧世界を滅ぼした人間のその性質は何一つ、変わってなどいないのだ。
(´・ω・`) 「こんな事、俺が考えても仕方ないがな」
(=゚Д゚) 「朝から勉強熱心ですね、ショボンさん」
ショボンが背後に首を回すと、真後ろには研究衣を纏った一人の体格の良い男性が
両手にコーヒーを持って微笑んでいた。
トラッド・フィルス・シベリア
キサラギ本部研究機関の技術者である彼は、年齢こそショボンよりも一回り上だが
この一ヶ月の内にショボンのその才覚に感銘を受け、積極的に議論を交わしながら親交を深めていた。
ニューソクにあるキサラギ本社から、自らが一部管轄するオオカミにショボンを招待したのも彼だ。
Σ(´・ω・`;) 「トラさん、・・・聞かれちゃいましたかね?」
(*=゚Д゚) 「ええ、どうぞ」
(´・ω・`*) 「どうも・・・ハハ、お恥ずかしい所をお見せしました」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/24(月) 23:55:12.16 ID:5oBhFZC50
ショボンが頭を掻きながら照れくさそうに彼からコーヒーを受けとる。
大企業の重役という立場にありながら、少しも人を喰った所のない、
深慮と礼節を弁えた男だ。なによりロマンチストで頭が切れる。
ショボンはこの男に対し、頼れる兄のような印象を受けていた。
トラッドは自らが淹れたコーヒーに口をつけながら、目を細め荒野を見据えた。
(=゚Д゚) 「・・・私もよく考えてしまいます」
(=゚Д゚) 「誰かが始めた事なんです。誰もがその競争に乗る必要などなかった、
しかしこの世界はその競争を無視出来なかった世界です。
本来なら今こそ人類の意思を統一し一丸とならねばならない時代に、
思想は分裂を始め、至るところで火の粉が上っています、
近頃は企業を背景にした市民間の諍いもよく耳にします」
(´・ω・`) 「・・・」
(=゚Д゚) 「その誰かは予期していたのでしょうか?目指した場所が楽園などではなく、
地上に壊滅的打撃を与える滅びが待っていたということを・・・なんて」
(*=゚Д゚) 「兵器事業に関わる人間の言う事じゃありませんけどねw」
(*´・ω・`) 「これはお耳が痛いw」
シリアスだね しぇn
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/24(月) 23:57:55.72 ID:5oBhFZC50
(=゚Д゚) 「・・・・・・しかしこれが人間です、そしてその象徴が、今の彼等なのかもしれません」
(´・ω・`) 「レイヴン・・・ですか」
(=゚Д゚) 「例え、明日世界が終わるとしても鳥達は空を飛び続けるのでしょう」
(´・ω・`) 「・・・終末を告げる鳥、まるで旧世界の神話ですね」
(=゚Д゚) 「ですが復活の象徴であり、人類の新天地を見つけるのも彼等です」
(´・ω・`) 「・・・・・・」
ショボンはコーヒーに口をつける、淹れ立てのコーヒーは舌を焦がすように熱い
ほんの少し口に含んだコーヒーが、香ばしい苦みをじんわりと口に広げていく。
(´・ω・`) 「・・・なら、その鳥は、我々をいったい何処へ導こうというのですかね」
(= Д ) 「・・・・・・」
その問い掛けにトラッドは口を結び、ただ景色をその両の目で見続けている。
答えなど無い事などショボンも承知の上だ。
ただ、あまりにも急速に進み過ぎている世界の行く先を、問わずにはいられなかった。
ズズ…
(´・ω・`)(苦いコーヒーだ)
口にしたコーヒー、立ち昇る湯気が薄くショボンの鼻先を湿らせた。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:00:15.07 ID:bUpK9t4M0
【レイヤード西部地区 第6住居街】
サムは天才だ。それは疑いようもない事実だ。
※※※※※
『西部地区セクション11、今年度首席・・・サム・オーランド!』
( ゚ ゞ゚)
学校ではほとんど無表情で、ノートもとらずにボーっと黒板を眺めているサムは、
入学当初からほとんど友人らしい友人も作らぬままに日々を過ごし
家に帰れば地下室にあるVR訓練機器を使って昼夜問わず父さんのしごきを受ける。
勉強などする時間は愚か、するそぶりも見せない、
だというのにその成績は群を抜いていた。
〈::゚−゚〉从゚−从‘‘)*リ゚ ヮ゚ノル ^o^ | パチパチパチ…
从゚−从
比べて私は馬鹿だった。いや、きっと今も。
だから私はアイツがすぐに嫌いになった。
( ゚ ゞ゚) 『・・・・・・?』
あいつはズタズタにされた自分のバッグを見て、不思議そうな顔をしていた。
※※※※※
umu
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:01:10.62 ID:bUpK9t4M0
( ゞ ) 「ハイン・・・」
薄いシーツにくるまって猫の様に身体を丸めたサムが私の膝の上で
もぞりと不安そうな面を上げた。
从 ゚∀从 「なんだ?」
( ゞ ) 「今、夢で観たんだ・・・覚えてる?覚えてなかったら、俺嫌だな・・・」
真っ先に忘れるのはお前の仕事だろうに
要点を得ない幼児のようなサムの問い掛け、だけど、なんの事かは分からないけれど
きっと私は覚えている。
从 ゚∀从 「覚えてるよ、サム」
(* ゞ ) 「ハハ、良かったァ・・・あの時俺、ハインが笑うの初めて見たんだよ」
その言葉で私は本当に思い出す。
そこには天井はなく、通気口も見あたらないのに風が吹いていた。
足下で揺れる、青草、姫百合の花弁、広がる夜空に浮かぶ、下弦の月・・・
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:01:50.69 ID:bUpK9t4M0
※※※※※
私達が12歳を迎える頃、サムが来てから既に3年の月日が流れていた。
私達の関係は歪みを保ったまま、その歪みにそって当たり前の日常を送る。
ジュニアスクールの卒業を前にしたサムに父さんは言った。
「そろそろ実戦を見せておくか」って、サムは狂った様に喜んでいた。
それを見て満足気に笑みを浮かべる父さん、私はいつも通りサムを殺してやりたくなった。
『ハイン、お前も来るか?現場はオオカミ、地上だぞww』
从; −从『!?』
私は歓喜した!心の中で歓声を上げた!
地上!なんて素敵な言葉だろう!今まで体裁だけを取り繕って友達面する連中が
家族に連れられてフォレストに乗る話を耳にタコが出来るほど聞いていた。
最初は冗談かと思った。でも冗談でも良かった。
父さんが私を見ていてくれるなら何処でも、嘘でも、戦場でも!
从*゚−从『う、うん』
ぎこちなく頭を縦に振る私を見て、父さんは少し訝しげな顔をした。
よもや本当についてくるとは思わなかった、そんな風に。
それで分かってしまった。やはり冗談だったのだと。
(*゚ ゞ゚)『た、楽しみだね!ハイン!師匠、う、の!火は、凄く!綺麗なんだよ!』
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:03:26.54 ID:bUpK9t4M0
落胆を隠しきれない私にサムが言葉をどもらせながら爛々とした目で語りかけてくる。
私の知らない父さんの事を我が者顔で告げてくるこいつが私は憎くて
自分でも気付いているのに握りしめた右手に、爪が食い込んでいくを止められなかった。
『まあ、そうか、そうだな・・・一人も二人も変わらんか』
そんなサムの様子を見て、父さんは気を良くしたみたいだった。
その事が益々私の手を強く握らせる。
『ぐははっww喜べお前等wピクニックだwww』
_____父さんが寝室に戻る頃、
私は壊れたラジオみたいに喋り続けるサムの頭を灰皿で殴って黙らせた。
( ゞ )『うう・・・』
頭を抱えながらうずくまって、サムは呻き声を洩らす。
从#゚−从『お前なんか・・・なんで!お前なんかが・・・!!』
もう、父さんとの初めての地上は、楽しいものではなくなっていた。
_______その筈だった。
comeon
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:05:05.48 ID:bUpK9t4M0
从*゚ヮ从『うわぁ!』
そこは草原と呼ばれる場所だった。
子供を連れての任務など緊張感の欠如も甚だしい前代未聞の愚行だが、
輸送機の乗組員は父さんの「新人教育」の言葉に渋々ながらもその行為を承諾した。
草原にはレイヤードの植物園のような目にも鮮やかな花々も草木もない。
その一帯を除けば、荒れ地と、切り立った山脈が並々と夜空を背に広がっているだけだ。
けれどその、たったそれだけの、それだけの事が私の心を強く揺さぶった。
サァァァァ・・・
从 ゚−从『・・・・・・』
大きめのカーディガンの裾を靡かせる風は地下のものとはまるで違う
さわさわと揺れる草花、鼻腔をくすぐる草の香り、土の匂い、
靴裏にざらりとへばりつく泥すらも私の胸を跳ね上がらせた。
从*゚−从『綺麗だ・・・』
砕いた硝子玉を散らしたような星の海に浮かんだ、
金の月。
まるでおとぎ話にでも迷い込んだような世界。
この世界の当たり前に比べれば、
レイヤードの粋を集めた建造物なんてただ味気ないだけの石の塊に思えた。
それほどまでに当時の私は、この生の脈動に溢れた世界に打ち震えていた。
まぁ、一時間もしないうちにそこは父さんの手で火の海になったけど。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:06:35.81 ID:bUpK9t4M0
『ハイン』
先ほどまで退屈そうに突っ立っていたサムが私を呼んだ。
(*゚ ゞ゚)『こ、こういう所が!ハインは好きなんだ!』
私は今まで自分がどういう顔をしているか分かっていなかった。
ハッとして私は思わず自らの頬に触れ、自分が笑っていた事に気付く。
最悪だ。
嬉しそうに笑うあいつの顔を見て私は全身の毛穴からゲロを吐き出しそうになる。
(*゚ ゞ゚)『なら、お、俺、ここで焼き鳥屋になるよ!』
なにこれ気持ち悪い。そう思った、けど、
私はこいつのあまりにも的はずれで手の施しようのない馬鹿さ加減に
呆れて息を零してしまった。
从*゚∀从『お前、頭良いのに馬鹿だなw』
一瞬キョトンとした顔で私を見ていたサムが嬉しそうに「うん!」と力いっぱい頷いた。
それから調子に乗ったサムが月の光という名のACパーツがある事と、
そのミラージュ製レーザーブレードの性能と傑作性、規格に至るまで細々と語り始めた頃。
私の拳が顎を捉え、サムは草の上を1、2回バウンドして大の字に転がった。
从#゚−从『何言ってるかわからん!ハッキリ喋れ!』
(;゚ ゞ゚)『ご、ごめん』
※※※※※
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:07:55.97 ID:bUpK9t4M0
【オオカミ キサラギ・オオカミ支部中央研究所 食堂】
コーヒーに胃が刺激されたか、
小腹が空いた二人は少し早めの食事を採る事にした。
(=゚д゚)「ところで、レイヴンと言えばある妙な噂がありますね」
具だくさんのクラムチャウダーを口に運ぼうとしていたショボンは
その言葉に一度食事を中断する。
(´・ω・`)「ああ、なんでも未確認ACが新資源発掘区域を襲撃しているそうですね
本社の方で酔った社員さんから聞きま・・・・・・、もしかして鎌掛けてますか?」
キサラギ本社に出向してからというもの、ショボンは本社の社員と親交を深めていた。
いや深めすぎて時として「それは外部の人間に言っちゃ駄目じゃないか?」
そう疑問に思ってしまうような事も酒の席ではしばしば耳にした。
これはトラッドが自分の知ってしまった中に、決して漏らしてはならない機密がないか
試しているのではないか?
ならばニューソクから遠く離れた、陸の孤島と言うべきオオカミに招待されたのは
もしもの時、自分を消す為ではないか。
ショボンの脳裏で思考が渦を巻き、額に汗を滲ませた。
(=゚д゚)「・・・・・・なるほど」
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:10:28.79 ID:bUpK9t4M0
瞬時にトラッドの顔から表情が消え失せ、
それがショボンの背筋を凍り付かせる。
パチン!
ガタッ!
トラッドが指を鳴らすと遠くの席を陣取っていた研究員数名が席を立ち。
トラッドと同じく無表情にショボンに視線を集める。
( -━- ω -━-)=@_ゝ@)゜3゜)
(=゚д゚)「・・・・・・」
(´・ω・`;)「くっ!」
ショボンは身を跳ね上げて手にしていたものを構え、
後悔する。
(´・ω・`;)(スプーンって!?ちょ!俺!せめてフォーク!)
( -━- ω -━-)=@_ゝ@)゜3゜)「・・・・・・」
(´・ω・`;)(チッ・・・仕方がない)
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:11:17.70 ID:bUpK9t4M0
動悸を乱したショボンはスプーンを放り捨てて大きく息を吸った、
《神》
胸の前で腕を交差させ、自らの中心にエメラルド色に輝く水晶が在ることイメージする。
《仏》
それを次第に高速回転させながら、ゆっくりと、腕を腰に戻し息を吐く。
( ´゚ω゚ ` )「コォォォォ」
《滅》
ショボンの中で水晶は眩く輝く、究極の円周率を備えた球体となり
それが巻き起こす風はショボンの皮膚の内側からはち切れんばかりに気を充実させる。
《砕!》
やがて悟りの境地は血管を伝ってショボン全身へ行き渡る。
――森羅万象――神仏滅砕拳――!!!
コンパスのように身体を捻り食堂の床につま先で線を引く。
(´^ω^`)「この中は私の制空権だ」
敬虔な僧のような顔をしたショボンは、腰を落とし半身に構え直す。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:13:41.77 ID:bUpK9t4M0
(* -━- ω -━-)*=@_ゝ@)*゜3゜)
(´^ω^`)「真にすまないが、手加減は出来ない」
(*=゚д゚)「ハハw冗談で・・・」
=(* -━- ω -━-)つ 「イーーッ!」
=(√=@_ゝ@)√ 「キェェッェエ!」
=d(*゜3゜)b 「オラァ!」
(;=゚д゚)そ「ちょw君たちw」
・:・((( ´゚ω゚ ` )));・・「喝!!!」
(=゚д゚)「へ?」
一瞬の事だった。
飛びかかった研究員達が四方に吹き飛び、椅子や机を薙ぎ倒し
呻きすらも上げる事無く、静かに昏倒した。
トラッドはその時、遠い昔にレイヤードの博物館で見た宗教上の偶像を思い描いた。
そう確かあの像の名は・・・
(;= д )「せ、千手観音・・・」
シャッ!
((((((´・ω・`)「最後の恋を思い出せ、彼女に祈る、時をやろう」
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:14:55.32 ID:bUpK9t4M0
殺気の籠もった右拳を腰に溜め、音もなくトラッドの背後に接近したショボンが耳元で囁く。
(;=゚д゚)「ぬぁお!?待って!待ってくださいって!」
(;´゚ω゚`)「やーの!もう無ぅ理ィ!げ ん か い なのぉ!」
(;=゚д゚)「冗談ですって!冗談!」
(´・ω・`)「この後に及んで命乞いとは・・・・・・、冗談?」
ふと思い立ってショボンは周りを見渡す。
弱い、よく考えれば刺客にしては彼等は弱すぎる上、武器もない。
(;´ ω `)「・・・・・・冗談?」
(;=゚д゚)「冗談、・・・です」
自分の引き起こした惨状を見渡し、さっきとは違う汗がショボンの額から吹き出す。
遠く、カウンターの向こうで食堂のおばちゃんが凄い目でこちらを見ていた。
水晶は止まって砕けた。
〜〜〜〜〜
支援
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:17:25.05 ID:bUpK9t4M0
(;´・ω・`)「すいません!本当にすいません!」
(;=゚д゚)「いえいえ、こちらも配慮が足りませんでした。そうですよね、襲撃事件の直後ですものね」
(;=@_ゝ@)「しかし凄い格闘術だ!」
(* -━- ω -━-)「どういう流派なんですか!?」
(;´・ω・`)「はぁ・・・リップソルド流・神仏滅砕拳です」
散らかしたテーブルを起こしながら、興味深々といった風に目を輝かせる研究員に、
ショボンは気まずそうに相槌をうつ。
(*゜3゜)「聞いた事が無い!革命ですよ!これは革命ですよ!」
(´・ω・`;)「いえ、そんな・・・黴の生えた古臭い武術ですよ」
(* -━- ω -━-)「いえいえそんな事は――!」
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:18:20.76 ID:bUpK9t4M0
(*゜3゜)「是非ショボンさんにタケミ・・・」
(;=゚д゚)そ「おい、馬鹿!?」
(;゜3゜)「おっと」
(´・ω・`)「?」
一瞬研究員の口を突いた単語の頭部分にショボンの好奇心が引かれたが、
すぐに思い直し聞いていない風を装い倒れたパイプ椅子に取り掛かる。
好奇心は猫を殺す。
今回はノリの良いキサラギ社員の冗談で終わったものの、こんな時代だ。
いつ先日の工場襲撃のようになるとも分からない、
何かと首を突っ込みたがる自分の性分に、ショボンは人知れず小さな溜息をついた。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:21:27.29 ID:bUpK9t4M0
【地上 新資源発掘区域】
( ・∀・)「!?」
不意に宙空に静止した漆黒の機体。
グラッジの吐き出したグレネード弾が次々と被弾しその機体を震わせる。
飛び散った装甲の一片が地に突き刺さり、舞い上げた砂塵を風が攫った。
『・・・・・・』
しかし、その機体はモララーなど気にも留めず
ただ朝霧の向こう、朧気な境界を結ぶ地平線に視線を送り続ける。
(# ・∀・)「貴様ァァッ!なんのつもりだ!?」
その姿は見るからに隙だらけだったが、そんな気の抜けた相手に
勝利した所でモララーの悲願は果たされない。
果 た さ れ る 訳 が な い !
それを分かって、あの男は動きを止めているのか?
まさかそんな馬鹿な殺すぞ
至った思考が彼の逆鱗を着火し、トリガーが強く握られる。
(# ∀ )「俺を見___!!」
『カラードネイル、応答しろ!』
間の悪い事にインカムをかき鳴らすのはオペレーターの通信だ。
shen
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:22:46.79 ID:bUpK9t4M0
(# ・∀・)「黙れ!!取り込み中だ!!」
『良いから聞k__ザー・・・聞け・・・、増援g__クソ、通信が___!』
通信が乱れている、増援。
そういえば先のブリーフィングでは他に4機のACが共同で捜索に当たるとあった。
奴等は何処にいった?
この電波の乱れはなんだ?
絡まりだした疑問をぶつけるようにモララーは浮遊した機体に視線を向け直す。
『早過ぎるお・・・』
(; ・∀・)そ「何を言って・・・っ地震?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!
突如始まった巨大な揺れが、地響きを立ててサイレントラインを襲った。
(; ・∀・)「なんだ、この音は!?」
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・
地の底から響いてくるような唸り、それはまるで、
死んだ都市が悲鳴を上げているようだ。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:23:42.91 ID:bUpK9t4M0
(; ・∀・)「何がどうなっている!?」
『ザザ・・・___カラー、−ネイル・・・ザザ・・・気を付け・・・』
(; ・∀・)「オペレーター、おい!?」
ブツン!
縄が千切れたような音を最後に通信は断たれた。
オオオオオオオオオオオオオォォ・・・・・
やがて揺れが収まっていくにつれ、その唸りも遠く、小さくなり、
そして消えた。
『・・・・・・』
( ・∀・)「・・・・・・」
訪れた静寂の中、
モララーの視線は無意識の内に漆黒の機体が見据える方角に向けられる。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:24:22.65 ID:bUpK9t4M0
( ・∀・)「あれは、何だ」
霧の向こうに、
それはいた。
shen
興
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:26:36.80 ID:bUpK9t4M0
【オオカミ キサラギ・オオカミ支部中央研究所 食堂】
(=゚Д゚)「AC・・・私の聞いていた噂と違いますね・・・」
(´・ω・`)「・・・違うというと、ACではないんですか?」
(=゚Д゚)「というかもっと都市伝説めいたモノですよ、サイレントラインの亡霊だとかw
私の聞いたモノの中で興味深かったたのはなんでも、MTを喰う、___」
(=゚Д゚)「____化け物が出るそうです」
43 :
来てくれたか、ジャック・・・:2010/05/25(火) 00:28:16.10 ID:bUpK9t4M0
【地上 新資源発掘区域】
(; ∀ )「なにを・・・しているんだ、あれは」
遠く霞みがかった視界の中にあって、その怪異の影は際だって見えた。
一機のACのシルエットが四肢の隙間から黒煙を燻らせて膝をついている。
その【何か】はその機体に身を寄せるように取り付き、忙しなく蠢いている。
青い何かは遠目からは一見人型MT、ACの様にも見えた。
『・・・取り込んでいるんだお、必要な機構を』
(; ・∀・)「ナイトウッド、お前あれが__」
何か知っているのか。そう言葉を紡ごうとしたモララーを遮り、僚機からの通信が入った。
シグナルカラーから、それが【クラフツパーソン】のものだと理解する。
どうやら妨害電波が阻害しているのは衛星を利用した広域通信に限ったもののようだ。
( ・∀・)「こちらカラードネイル」
『頼む!助けてくれ!?《ガンッ!ガンッ!》くそぉ!?畜生!畜生!!』
開かれた回線からは、取り乱したレイヴンの懇願と、
金属と金属がぶつかり合うような喧しい音が飛び込んで来る。
(; ・∀・)「まさか・・・」
あそこで、取り付かれているACは、【マスターピース】なのか?
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:28:36.72 ID:68GVwOBx0
支援
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:29:11.28 ID:bUpK9t4M0
それはまるで出来の悪いジョークの様だった、モララーと共にこの作戦に参加した
4人のレイヴンの中で、A−2ランカーカラードネイルを除けば、
C−1ランカークラフツパーソンはこの作戦で最も腕の立つ古参レイヴンだ。
モララーも幾度か彼と共に戦場を駆け抜けた、彼の機転に死の淵から救われた事もある。
MTは愚か並のレイヴンなら一度に二機は相手取る事が出来る強者だ。
作戦開始からまだ10分弱、この地で今、何が起きているというのか。
モララーが状況を整理し、ブースターを展開するよりも早く漆黒の機体は動いていた。
先手をとられたモララーのグラッジが、追うように機体速度を音速まで跳ね上げる。
大気が機体速度に裂かれ悲鳴を上げる狭い視界の中で
徐々に朧気だったその陰影が明瞭なものへと変化していく。
(; ・∀・)「クラフツパーソン!応答しろ!すぐにそちらだ!」
『カラーd__ザーガー・・・ネ《パシャ!》・・・・・・・・』
水袋を割ったような音を最後に通信は途切れ。
咀嚼を中断した何かはゆっくりとこちらに振り返る。
( ・∀・)「AC・・・なのか?」
その青い何かは、やはりACに似ていた。
shen
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:30:29.07 ID:bUpK9t4M0
全長はACと同じく10m前後の人型をしている。
時折鋭角的な機体の突起部位や関節部で深い蒼色が煌めく。
しかしこの時間帯にあってか今はそれ自体が蒼い燐光を帯びているかのように見える。
胴体から伸びた両腕の肘から先を規格外に長大なレーザーブレードに代え、
蒼い山羊の角のような機構を備えた頭部、それを乗せる胴の前面は板のように平たく、
その中央に備えられたディスプレイは青い電光を疾らせながら菱形の文様を映し出している。
( ・∀・)「違う・・・」
その菱形の文様は、まるでそれが目であるかのように、モララーを見ていた。
(; ・∀・)「こいつ・・・なんだ?」
人ではない、サイレントラインの無人ACとも企業のAIMTとも違う。
モララーの肌が粟立ち、鳥肌が隆起し、パイロットスーツの中の手に汗が溜まっていくのが分かる。
直感的にモララーが感じ取った感覚は間違っているが、ある意味では正しい。
根本的に何かが違うのだ、人間は愚か、今日までの兵器とは。
それが動きを見せるに連なり、
モララーの意思とは関係無く彼の身体に染み込んだ反射行為が機体を鋭く後退させた。
瞬間グラッジの胸部装甲を薄く抉り蒼い剣閃が横薙ぎに大気を裂く。
越えてきた死線の数が被害を装甲板一枚に留める。
しかし続く左剣が弾丸のような速度でグラッジのコア目掛け突き込まれ
(; ∀ )(死っ・・・!)
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:31:42.11 ID:bUpK9t4M0
(; ∀ )(死っ・・・!)
死を覚悟したモララーを救ったのは、上空から降り注いだ深紅の光線だ。
その一本が蒼剣の軌道を阻害し、交錯した2つの熱量は空気中で稲妻を散らしながら爆ぜた。
(; ・∀・)「!?うおおおおおおおっ!!!」
相手の左腕が衝撃に弾かれる隙を狙い、モララーは機体を後退しつつトリガーを目一杯引き絞る。
発射された炸薬弾頭と上空から降り注ぐ超高熱線が強烈な爆風を伴って絶え間なく
眼前の怪異の装甲に衝突していき、やがて一帯が壁と見紛うばかりの粉塵に覆われた。
コクピットのディスプレイには攻撃の命中を告げる「HIT」の文字が点滅している。
(; ・∀・)「やったか・・・?」
『・・・・・・不味いお、カラードネイル今すぐ回線を切れ』
通信ではなく音声拡張機を用いたナイトウッド・ブーン・ホライゾンの肉声が
不可解な警告を告げた。
( ・∀・)「何を」
『AC用パーツ入手』
( ・∀・)「は?」
不意に、コクピット内に場違いな合成音声が鳴り響いた。
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:33:37.86 ID:bUpK9t4M0
「AC用パーツ入手」「AC用パーツ入手」「AC用パーツ入手」「AC用パーツ入手」「AC用パーツ入手」
「AC用パーツ入手」「AC用パーツ入手」「AC用パーツ入手」「AC用パーツ入手」「AC用パーツ入手」
「AC用パーツ入手」「AC用パーツ入手」「AC用パーツ入手」「AC用パーツ入手」「AC用パーツ入手」
「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」
「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」
「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」
「HIT」「HIT」「HIT」「HIT」「機体損傷率30%」「機体損傷率60%」「機体損傷率30%」「機体損傷率90%」
「機体損傷率30%」「機体損傷率30%」「機体損傷率30%」「機体損傷率30%」「機体損傷率80%」
「機体損傷率100%」「テストモードを終了します」「テストモードを終了します」「テストモードを終了します」
「戦闘システム解除」「戦闘モードを起動します」「戦闘システム解除」「戦闘モードを起動します」
「戦闘システム解除」「戦闘モードを起動します」「戦闘システム解除」「戦闘モードを起動します」
「解除」「起動」「解除」「起動」「解除」「起動」「解J」「起どddddどdどどdどどdどddddd」
(; ・∀・)「なんだこれは・・・」
ディスプレイとイヤホンを埋め尽くす文字の濁流と耳障りな合成音声。
それは画面上で、羊皮紙にインクを零していくように瞬く間に広がっていく。
『カラードネイル!!』
(# ・∀・)「黙れ!!今やっている!!!」
漆黒の機体からの怒声が耳を衝く。
しかしタッチパネルを操作し、広域回線の断絶を試みるも応答は皆無。
耳障りな合成音は益々勢いを増し、その狂った情報を耳に垂れ流し続ける。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:35:43.47 ID:in2OzzoU0
しえん
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:37:00.93 ID:bUpK9t4M0
(; ∀ )「こちらの操作を受け付けないだと!?」
「CHARGING!」
「FCS ERROR!」
「DANGER HEAT!」
「OUTPUT DOWN」
「SHORT AGE EN」
「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」
「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」
「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」「DAMAGE」
「DAMAGE」「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」
「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」
「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」「DESTROY」
「アッハッハッハハハッハハッハッハハアアハハハッハッハハッハハッッハハアハッハッハハッッハハ
アハッハハッハッッハハッハハッハハッハハハあああっハッハハッははっははhあっはハッハッハア
アハッハハッハッAHAHAHHAHHAHAHAHAアッハッハッハハハッハハッハッハハアアハハハッハッハハッ
ハハッッハハアハッハッハハッッハアハッハハッハッッハハッハハッハハッハハハあああっハッハハッはは
っははhあっはハッハッハアアハッハッはっははハハハッハッハッはっはあっハAHAHAHHAHHAHAHAHア
ッハッハッハハハッハハッハッハハアアハハハッハッハハッハハッッハアハッハッハハッッハハアハッハハッ
ハッッハハッハハッハハッハハハあああっハッハハッははっははhあっはハッハッハア
アハッハハッハッッハッはっははハハハッハッハッはっはあっハAHAHAHHAアッハッハッハハハッハハッ
ハッハハアアハハハッハッハハッハハッッハハアハッハッハハッッハハ
ッハハッハッッハハッハハッハハッハハハあああっハッハハッははっははhあっはハッハッハア
アハッハハッハッッハッはっははハハハッハッハッはっはあっハAHAHAHHAHHAHAHAHAアハッハハ
ハッハハッハッハハアアハハハッハッハハッハハッッハハアハッハッハハッッハハ
アハッハハッハッッハハッハハッハハッハハハあああっハッハハッははっははhあっはハッハッ
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:37:52.78 ID:in2OzzoU0
支援
shen
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:38:09.40 ID:bUpK9t4M0
アハッハハッハッッハッはっははハハハッハッハッはっはあっハAHAHAHHAHHAHAHAHAアッハッハ
ッハハハハハッハッハハッハハッッハハアハッハッハハッッハハ
アハッハハッハッッハハッハハッハハッハハハあああっハッハハッははっははhあっはハッハッハア
ッハッッハッはっははハハハッハッハッはっはあっハAHAHAHHAHHAHAHAHA!!!」
合成音はいつしか何者かの嘲笑に形を変えコクピットを埋め尽くす。
(# ・∀・)「クッッソォ!!!黙りやがれぇ!!!」
ガシャンッ!
殴りつけた緊急再起動スイッチが、プラスチックカバーに蜘蛛の巣状のヒビを奔らせながら
強く押し込まれ、照明が落ち、デスクトップが光りを失い、コクピット内が一時暗転する。
『アハハh・・・ブツン!』
そして姿勢制御を失った機体がほんの少し頭を垂れ、コクピット内に僅かな振動を伝える頃、
室内を震わせていた嘲笑は途切れた。
止まっていたACの駆動音が再び息を吹き返し、画面が前方の光景を映し出す
額に汗を滲ませていたモララーが再度苦々しい面持ちに表情を歪める。
飛び込んできたのは粉塵を裂いて猛烈な勢いでこちらに突進する蒼い怪異の姿だ。
(; ∀ )「チッ!」
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:39:33.20 ID:68GVwOBx0
支援
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:40:56.44 ID:bUpK9t4M0
ディスプレイの端ではCOMがまだ立ち上げ作業を進めている。
『機体制御クリア・・・ブーストシステムへ接続中・・・』
かろうじて回復した機体運動を使ってグラッジを後退させる、しかし
ブースターによる上位加速を行えない機体は、突進するそれと比べまるで亀の歩だ。
目を彷徨かせる隙にも瞬く間に接近するそれは間合いを詰めていく。
怪異が長大な死神の矛を構える。
(; ∀ )「間に合え・・・!」
『ブーストクリア』
ブースターを限界まで急展開し、グラッジは後方へ跳ね上がる。
だが足りない、迫るレーザーブレイドがコア目掛け直進する。
(# ・∀・)「舐めるなァ!!!」
機体上部を捻り上げるとグラッジは、長大な剣目掛けて左腕に携えたグレネード砲の砲身を
叩き付けた。砲身を引き裂いた熱線はそのまま軌道上にあるグレネードの弾倉を焼いて引火
強烈な振動がコクピットを襲う。
(; ・∀・)「ぐっ!」
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:42:18.55 ID:bUpK9t4M0
爆裂した炸薬はグラッジをも巻き込んで爆風を広げた。
噴煙の尾を引いて後方へ舞うグラッジ、左腕はかろうじて機体と繋がっているものの鈍色の装甲内部を
剥き出しにし、黒煙を上げながら力無くぶら下がる。
『FCS機能回復、システム戦闘モード起動します』
ギャリ!
着地した脚部が今度は火花を散らしながらアスファルトを滑る。
構えられたバズーカ砲が、粉塵の中予測される目標位置に向かい連続して吐き出される。
しかし現れた怪異の機体は右腕の長大な刀身こそ折れているもののその本体は健在だ。
炸薬弾の隙を縫うように高速で接近を再開し、左腕をぬらりと構える。
( ・∀・)「チッ・・・しつこいヤツだ」
『それはお前もだお、退がるお』
突如怪異の真横から飛び出した漆黒の機体、紫色の剣閃が網膜に薄い残像を残す。
その斬撃は怪異を突き飛ばしながらその右腕を宙に跳ね上げる。
牽制の為の一撃か、左腕を一振りして漆黒の機体から間合いをとった怪異はビルの陰に
身を翻した。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:43:10.68 ID:bUpK9t4M0
(# ・∀・)「土産だ」
ビルの陰に怪異が溶ける瞬間、撃ち込まれたバズーカ弾が怪異の頭部中央に炸裂した。
追って2つの機体がビルの陰を挟むようにして回り込んだ頃、怪異は地に穴を開け
複雑に入り組んだサイレントラインの地下へと消え去っていた。
『・・・・・・逃げたかお』
( ・∀・)「・・・結局、あの機体はなんなんだ?」
『・・・・・・』
漆黒の機体はモララーの問いには何も答えない。しかしそれで良いと思っていた。
何故なら彼の目的とはそもそも化け物退治でも、戦友の仇討ちでもないからだ。
( ・∀・)「まあいい・・・邪魔者は消えた」
疑問は残る、いや、不安感は今も彼の肌を粟立てたまま彼の本能に危険を訴えている。
それでも、イレギュラー要素が自ら消えてくれたのなら、本来の目的を遂行するまでだ。
( ・∀・)「さあっ・・・続きをやろうぜチャンピオン?」
照準が再び、向かい合わせた漆黒の機体へと向けられる。
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:45:40.40 ID:bUpK9t4M0
【レイヤード西部地区 第6住居街】
※※※※※
『チッ・・・!』
从*゚∀从『父さん、夕飯が』
『うるせぇっ!!!』
怒声を上げる父さんの腕が私の腹部に叩き付けられる。
思わず私はえづき込んで膝をつき、リビングの床に嘔吐した。
从 ∀;从:・:『うっ、ゲハッゲフッ!』
『汚らしいんだよこのクソガキが!!』
父さんは容赦無く何度も私を殴る、何度も、何度も。
自分の身体のあちこちでドンだとかピキッだとか気味の悪い音が鳴る。
私は足を滑らせて自分の吐き出した吐瀉物の上に転倒した。
パチャリと水を鳴らして私の顔面が強く床に打ちつけられる。
気持ち悪い。汚い。最悪。
でも朦朧とした意識の中で、口に広がっていた胃液の味が鉄の味に変わるのはすぐだった。
父さんは私の背に踵を蹴り入れ続ける。
『何が!新鋭だ!?天才だ!?ふざけやがって・・・ふざけやがって!!!』
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:46:47.83 ID:bUpK9t4M0
父さんがうつ伏せに身を屈める私の身体をサッカーボールみたいに蹴り上げる。
从#∀从『かはっ!』
『 ふ ざ け や が っ て !!!』
( ゚ ゞ゚)『その辺にして下さいよ、師匠』
父さんの暴力を制止したのは騒ぎを聞きつけたサムだ。
寒気がするほど平坦な眼差しで父さんを見据える。
( ゚ ゞ゚)『新顔にアリーナで負けたからって荒れ過ぎですよ』
『サム貴様ァァァ俺に口答えを!!!』
( ゚ ゞ゚)『どうでもいいじゃないですか、師匠。
どうせ俺がレイヴンになったらそいつも殺すんだから』
14歳になったサムは二年前に比べ様々なものが変化していた。
低かった背は180を越え、腕周りも胸板も過酷な訓練に耐えうる強靱さを身に付け始めた。
何よりあのオドオドとした様子と、どもりが、
あの日、私と話すようになってから何故だか少しづつなくなっていった。
今のサムは何処か鋭い刃物のような空気を漂わせていて、
昔とは違う意味で人を寄せ付けなくなっていた。
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:48:36.87 ID:bUpK9t4M0
『・・・・・・今日の成績を見せろ』
( ゚ ゞ゚)『どうぞ』
父さんがサムに言う成績は、勿論スクールのものではない。
父さんが無茶苦茶に設定したVR訓練の戦績だ。
以前見た時、サムは仮想空間で4機のACを同時に相手にしていた。
『・・・ほぅ、くくく・・・wそうだな、その通りだサァム』
顔を綻ばせた父さんがサムの肩を叩く。
サムは無表情にその賛辞を受ける。
『悪かったなァハイン?』
从#∀从『・・・、・・・ううん』
ゲロ塗れの汚らしい私はどうにかそれだけ答える。
父さんは「飯が出来たら呼べ」そう言って寝室に酒瓶を持って戻ろうとする。
『きたねぇからちゃんと掃除しとけよハイン、お前の吐いたゲロだ』
从#−从『・・・うん』
バタン。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:48:50.47 ID:P+TjPBu/0
shen
面白い
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:50:54.65 ID:bUpK9t4M0
(; ゚ ゞ゚)『・・・ハ、ハイン?大丈、夫?』
どもりながら不安そうな顔で覗きこんでくるサム。
私は口を拭って笑顔で立ち上がる。少しふらついたが問題ない。
从#ー从『うん。全然平気だ、早く夕飯を作らなきゃな』
(; ゚ ゞ゚)『・・・ハ、ハイン』
心配げにこちらを見ているサムを振りほどいて私は台所へと向かう。
从#∀从『今日は何にしようかな〜?っとその前に着替えなきゃ・・・』
(; ゞ )『ハイン!』
ガバッ
私の名を呼びながらサムは後から私に腕を回した。
私は突然の事に身体をビクリ!と跳ね上げてしまう。
从;#∀从『ど、どうしたんだよサム?やめろよ、汚いんだぞ』
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:52:11.01 ID:bUpK9t4M0
(; ゚ ゞ゚)『・・・・・・』
从#∀从『早く、夕飯の準備しないと・・・父さんが・・・』
(; ゚ ゞ゚)『ご、ご飯は、も、もう、出来てるよ・・・ハ、ハインが、作ったじゃないか・・・』
从#−从『・・・うん』
そう、夕飯はとっくに出来ている、それも今日は特別な日だ。
だからわざわざ帰ってきた父さんを呼びに行ったんだ。
分かってるよサム、でも私は台所に行きたいんだ。どうしても。
離してくれよ、どいてくれよ、我慢してるの分かるだろ?
だから今、お前が言おうとしてる言葉は飲み込んでさっさと私を開放しろよこの天才馬鹿。
(; ゚ ゞ゚)『し、師匠の、誕生日だから・・・って』
馬鹿野郎・・・・・・
从#−从『うる、うルせぇよ・・・』
駄目だ、声が上ずり始めた。ちくしょう。
こんなん全然平気なんだ!いつもの事だ!普段通りだ!
10分後にはいつもの凶暴なハインちゃんに戻ってんだ!
(; ゚ ゞ゚)『ご、ごめんよ、ハイン』
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:53:17.37 ID:bUpK9t4M0
从#;−从『うルせ、何に、謝・・・ヒック!ってんだよ、うっ!クッソぉ』
(; ゚ ゞ゚)『ごめんよ』
お前の慰めなんかいらないんだ。私には父さんしかいないんだ。
泣き崩れて膝を折る私を、サムは抱え込むようにして抱きしめる。
(; ゚ ゞ゚)『し、師匠、っも!今日はたまたま機嫌が、良くなかったン、だよ』
从;−从『違う違う違う!父さんは何も悪くないんだ!私が褒めて貰いたくて出しゃばり過ぎたんだ』
機嫌が悪いのは知っていた。父さんが出るアリーナ戦は全部観ている。
それでも最近の父さんは少し優しかったから、誕生パーティーみたいな事をすれば
もしかしたら機嫌を良くしてくれるんじゃないかって、あの日の馬鹿な私は考えていた。
从;∀从『ちょっと、考えれば、ハハ、自分が負けた日に豪華な料理なんて振る舞われたら、
父さんなら、最悪の皮肉って受け取るの分かってたのにさ・・・』
あの料理は全部捨てて出前でもとるよ。
涙だか鼻水だか分からない液体をサムの腕に垂れ流しながら私は言う。
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:54:24.88 ID:bUpK9t4M0
( ゚ ゞ゚)『ねえ、ハ、ハイン』
次にサムが口にした言葉に、私はあいつの抱擁を振りほどき突き飛ばした。
--俺が、いつか師匠を殺すよ--
从#゚−从『ふざけるなっ!私から全てを奪うのか!?私には父さんしかいないんだ!!!』
その時の、サムの裏切られたような、泣きそうな顔が忘れられない。
(; ゚ ゞ゚)『ご、ごめんよ、・・・・・・ハイン』
それから一月後、皮肉な事に父さんはミラージュ本社襲撃の任務中、
サムが手を下すまでもなくアリーナで敗れたあの新人レイヴンに殺された。
※※※※※
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:54:50.23 ID:68GVwOBx0
支援
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 00:55:21.30 ID:bUpK9t4M0
【地上 新資源発掘区域】
『人類が地上に出た所で・・・この世界を取り巻く数多の問題、
土壌汚染、大気汚染、海洋汚染、企業紛争、市民間の険悪な派閥化、
そのいずれもが、変わらず深い根を張ってこの地に根ざしているお』
( ・∀・)「スクールの教官にでも就職するつもりか?チャンプ」
『興味はないのかお?』
( ・∀・)「何の話だ?俺は今、貴様に夢中なんだがな?」
銃口は逸らさず、揺らぐ事無く漆黒の機体を目指している。
『大破壊とは、いったいなんだったのか・・・だお』
(# ・∀・)「無知か?命乞いか?それとも、俺を馬鹿にしているのか?」
人類を破滅のどん底まで追いやり、その住処を奪ったもの、《核》だ。
それは地下の義務教養を終えたものは愚か、
道端でゴミ同然に転がっている浮浪者でも知っている歴史だ。
( ・∀・)「殺すぞ」
濃密な殺意を纏った銃口が、より深い間合いでコアへと突きつけられる。
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:00:07.11 ID:bUpK9t4M0
『・・・・・・言葉を代えるお、サイレントラインの意味に、疑問を抱いた事はないかお』
( ・∀・)「この地の・・・意味だと?」
去来した問いかけ、今それはモララーの研ぎ澄まされた殺意を鈍らせるのに充分なものだった。
銃口こそ揺らぐ事はないが、一対のカメラアイが最低限の動きで左右を小さく逡巡する。
『疑問を抱くなという方が無理があるお、ましてやカラードネイル。お前は《アレ》を見たお』
浮ぶのは長大な双剣を携えた、兵器というにも余りある禍々しさを滲ませる、あの蒼色の《鬼》。
『殺し合いならいつでも受けるお、お前が万全な状態で、だお。ただし条件があるお』
( ・∀・)「条件?」
『お前には持ち帰ってもらうお、本来なら、俺が一人で完遂する予定だったが・・・
あれの成長速度は【IBIS】の演算機能を越え、
十二万三千通りから成るファイアーウォールを母体の手助けなく破り始めたお』
(; ・∀・)「【IBIS】?それはまさか、記録映像に残っていた、
お前が破壊したサイレントラインの管理者か!?」
『事態は一刻を争うお・・・、最早俺一人で処理出来る問題ではなくなったお。
・・・・・・人類は今一度、真実と相対す必要があるお。
開かれる事のなかった地上へのゲート、大破壊、サイレントライン、・・・そして』
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:00:53.41 ID:bUpK9t4M0
『 レイヴンの意味を 』
( ・∀・)「レイヴンの・・・意味?」
瞬間、蒼剣が漆黒の機体を貫いた。
(; ・∀・)「なっ!?」
『ぐぅっ・・・!!』
突如、漆黒の機体の腰から生えた蒼色の熱刀に、今までモララーとの交戦中にも一貫して
平坦であり続けたその声色に苦渋の呻きが零れた。
背面へ展開したレーザー砲が瞬時に後方へ大量の熱線を放射するも、着弾は無し。
しかしそれに合わせて蒼剣が引き抜かれ、漆黒の機体は前方に滑走し旋回。
反射的にグラッジが乱入者を迎撃する。
『なるほど・・・それが《こいつ》のやり方かお・・・!』
(; ・∀・)「レーダーに反応どころか音一つしな――!?」
バズーカを乱射していたグラッジが被弾、その装甲に黒い穴が穿たれた機体が傾いだ。
(; ・∀・)「機関砲だと!?新手か!」
『いいや、違うお』
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:02:26.32 ID:bUpK9t4M0
煙霧を纏い現れるのは、やはりあの鬼。しかしその造詣に違和感を感じる。
構えられた右腕の大口径ガトリングガン。
(; ・∀・)「あの右腕、マスターピースの・・・!?」
『そういう事だお!』
漆黒の機体から放たれたパルス弾が鬼の装甲上で連続して爆ぜる。
蒼鬼は被弾に対し、小刻みに機体を揺らしつつも正確無比な射撃で二機の装甲を削りながら
舞うようにビル郡の陰に滑り込んで行く。
(# ・∀・)「逃がすか!」
『待て!罠だお!』
追撃に乗り出たグラッジが陰に砲を撃ち込む刹那、狙い澄ましたかの如く青鬼が飛び出す。
背部から翼のような俳火を噴かせながら音速に乗った剣閃がグラッジを襲う。
(; ・∀・)「オーバーブーストだと!?」
グラッジはブースターを回し、機体を半身に逸らすもレーザーブレイドはその胸部装甲を深く抉る。
交錯した蒼鬼はそのまま流れるように向かいの建造物の陰に身を隠した。
『カラードネイル!!』
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:04:06.94 ID:bUpK9t4M0
(# ・∀・)「黙れっ!馴れ慣れしい!!!」
『・・・反抗期のガキかお』
モララーの悪態に安堵とも皮肉ともつかない呟きを洩らすブーン。
しかしお互いがギリギリの状況にある事を認識した2人の対応は早かった。
『レーダーを切るお、情報操作主軸のゲリラ戦はあっちの土俵だお』
( ・∀・)「笑えないジョークだ、まったく」
背中合わせにお互いの死角を殺し合う二機。
昨日の敵が今日の味方、或いはその逆などたいして珍しい事ではなかったが、
今日の敵に30分足らずで背中を預ける事態になる事はモララーも初めての経験だった。
(しかもその相手がコイツとは)
モララーの引きつった笑いは既に自嘲の域に達している。
( ・∀・)「今度こそ答えてもらおうか、アレは何だ?」
『アレは・・・ある兵器プラントの防衛システムの端末だお』
( ・∀・)「防衛システム?」
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:04:59.24 ID:bUpK9t4M0
『例え撃破されようともその端末は戦闘経験を統括機構に送信、蓄積したデータを元に
物理制限下において最も有効な形態に再生と進化を半永久的に繰り返す戦術兵器』
(; ・∀・)「そんなモノが起動しているのか、つくづく笑えない」
『いや、統括機構自体は現在は休眠中の筈だお』
飛来した弾丸にグラッジが反応し牽制の砲を放つ。
すばやく対応に続いた漆黒の機体がレーザーを放射し、鬼を掠ったそれがビルを抉る。
鬼はすぐさま身を陰へと忍ばせた。
(# ・∀・)「チッ!じゃあアレはどう説明する、再生し、進化しているように見えるが?」
『数百年の空白の中で統括機構がなんらかの方法で強制停止、
フレームデータを除いた戦闘履歴を消去された筈だお、
ただ・・・最後にそれぞれの統括機構が生み出した端末は特性にユニークなものを備えてるお』
端末自体の学習能力。そう言い放つ男の声色は相変わらず平坦なものだったが、
何処か重く苦い調子を漂わせていた。
( ・∀・)「そこまでいったら鉄科の動物だな」
『それでも統括機構が起動していないだけましだお、
過去の記録によれば機構制御下にある端末は24時間余りの学習で
旧世界のほぼ全ての兵器を圧倒し、あまつさえ
その本体が備える本当の機能は、世界を半壊させる史上最悪の戦略兵器だお』
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:06:35.31 ID:68GVwOBx0
支援
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:06:45.14 ID:bUpK9t4M0
( ・∀・)「ハッ!これは大した御伽噺だ!」
『・・・珍しく意見が一致したお、同感だが、
これは神話でも御伽噺でもなく《歴史》・・・だおっ!』
放たれたレーザー砲が大気を焼き尽くしながら、出現した蒼鬼に直進する。
それは宙に身を躍らせた蒼鬼の爪先を焦がしたものの空を切り、
逆に蒼鬼から放たれる機関砲は細やかながらも確実に、漆黒の機体の装甲を奪っていく。
(# ・∀・)「鬱陶しい!!!」
すぐさまグラッジが援護に移るものの、炸薬弾頭は建造物の壁に阻まれ、
身を引いた蒼鬼の姿は霧散する。
(; ・∀・)「埒があかねぇ」
そしてしばし、戦場に不気味な静寂が訪れる。
耳に届くのはACの駆動音、そしてサイレントライン独特の強風の音。
それだけが今、嫌に大きく聴こえる。
( ・∀・)「ホラームービーだな、これは」
『いいや、戦争モノだお』
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:07:47.81 ID:bUpK9t4M0
未知数の戦力を有する敵の齎した寂(しじま)に、無駄口がついモララーの口をつく。
それに軽口を返すのもまた、一時的に肩を並べているものの未知数のスペックを誇る《敵》だ。
―― 感情的になるのは甘い証拠だ、殺意は常に冷やしておけ、ガキ ――
殺したいと願う者に背中を預け言葉を交わす。いつか、昔にもこんな事があった。
そう感じた時には思い出したくもないあの男の言葉が、モララーの脳裏にまざまざと甦った。
―― 俺を殺したいのならな ――
( ∀ )「・・・るせぇ」
『・・・・・・何か言ったかお』
( ・∀・)「黙れ、このままじゃジリ貧だ」
『分かってるお』
《《 誰かっ!?頼む!助けてくれ! 》》
(; ・∀・)そ「この声は!」
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:10:41.15 ID:bUpK9t4M0
静寂を引き裂いて廃墟の街に木霊する悲鳴。
その声は今回共同で作戦に当たったDクラスレイヴン【セントジョーンズ】のものだ。
(; ・∀・)「まだ生き残りがいたのか!?」
《《 正体不明の機体に追われている!増援を! 》》
スピーカーを通して張り上げたその声に、色濃く畏怖の色が滲んでいる。
『獲物を変えたかお・・・向かうお』
( ・∀・)「!?」
現在の状況と照合し、罠である可能性と恐慌したDクラスレイヴンが戦力として通用するのか。
天秤にかけた疑念に踏鞴を踏んでいたモララーを、先程と同様に追い越して漆黒の機体は疾走する。
( ・∀・)(こいつ・・・)
クラフツパーソンの再現のようにグラッジは一足遅れで機体を走らせる。
( ・∀・)(甘過ぎる)
無防備な背中は隻腕となったグラッジの武装でも容易く撃ち抜ける事だろう。
あの時は自分は嘲っているのかとも考えたが、どうやら違うようだ。
偽善者染みた正義感の持ち主、モララーはナイトウッド・ブーン・ホライゾンをそう評した。
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:11:38.29 ID:bUpK9t4M0
《《 あ、脚をやられた・・・!クソ!何処だ!?何処に消えた!? 》》
音源が近付くに連れ、発信者に滲む絶望も度を増していく。
『間に合ってくれお・・・』
( ・∀・)「・・・・・・」
『あれかお』
( ・∀・)「・・・やはり罠か」
そして到着した朽ちかけたビルが犇く街の一角、身を隠すようにその四脚ACはいた。
見慣れぬ漆黒の機体に一瞬戸惑いをみせたものの、続いて現れたグラッジの姿に、
火花を散らす一本の脚をよたよたと引きずりながら操縦者は安堵の嬌声を上げた。
『救援感謝する!!!気をつけてくれカラードネイル!正体不明機が___』
瞬間アスファルトを砕いて現れた蒼鬼のレーザーブレイドが四脚ACを真一文字に引き裂いた。
『地下からかお!』
(; ・∀・)「化け物め!!!」
『っ!?待つお!!!』
照準を現れた蒼鬼に定めたモララーの動きを、ブーンが押し止める。
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:16:16.74 ID:in2OzzoU0
しえん
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:20:07.32 ID:in2OzzoU0
しえん
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:22:16.54 ID:in2OzzoU0
さると見てさらにしえん
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:24:25.94 ID:in2OzzoU0
さらに支援
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:24:55.72 ID:68GVwOBx0
支援
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:26:26.55 ID:68GVwOBx0
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 01:26:36.50 ID:in2OzzoU0
一応さるさんについて貼っとく
バイバイさるさん(規制)
・一定時間内に一つのスレにたくさん投稿しすぎると、バイバイさるさん(規制)を受けてしまいます
これを阻止するため作者が数レスする内に、読者からのレスをいくつか挟むようにしましょう
(これを「支援」といいます)
・なお、現時点では規制は約10分で解除されるようですが
解除されたと思ってすぐに書き込むと連続でさるさんを食らうこともあるようですので
多少時間を置き、レスがいくつかついてから書き込みをするのが安全です
旅団計画ってなにさ