ハヤテを壁に押し付けながら、
「ふん……、ぐふ」
拳を叩き込む。その時に聞こえた喉音が、妙に耳に心地よくて――
私はそのまま、拳を彼のお腹に埋めた。
「んっ……、う、う」
「ここ?」
ぐいと手首を返す。
「ぐお……おぉ……」
「ほら」
「あふ……、うえっ」
「これは?」
「ぐっ……えぇ……」
掻き回す度に、ハヤテは音色を変えた。蒼白になった彼の表情を見ていると、なぜか私の息遣いが荒くなっていくのがわかる。
興奮してる。
「なん、で……、なん……おねえ、ち」
絞り出すようなハヤテの声と涙、咳き込む姿。その全てが、私の背中を押す。
「いぐっ……いぃ!」
膝で股間を蹴り上げてみた時、彼の演奏が、また違う音色を醸し出した。
私は確かに、幸福を感じていた。
――なんで?
そんなこと、聞かれたって、わからないよ。ただ、幸せだと私が感じたっていう事実だけは、否定できない。それだけが、私の答え。
「ぎぃいあああっ!」
そこにある物体の感触を楽しんでいたんだと思う。軽く小突いてる程度。でも、かなり大きな声が出る。
――たったこれだけで?
他の部位では、到底こんな奇声は聞けないんだろう。思ってたよりずっと、ソコは脆弱なものらしい。
「ぎぁ……ああっ! あああっ!」
膝で突き上げる度に、ハヤテは絶叫した。とても素敵な声で、私を魅了する。
これ以上、私を誘惑しないで――!
そんな風に思える余裕すら、この時の私にはなかった。だから、こうなった。
必然――。 今はそう思うことで、私が私のままでいられる気がする。